SANRIZUKA 日誌 HP版   2005/09/1~30    

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 2005年9月

 

〔週刊『三里塚』編集委員会HP部責任編集〕 


(9月3日) 広州行きJAL機、成田空港に引き返し・計器にトラブル(9/4日経)

 3日午前10時40分ごろ、成田空港を離陸直後の中国・広州行き日本航空603便(乗客乗員計115人)で、エンジンの回転数を示す計器が異常値を表示するトラブルがあり、同機は成田空港に引き返した。
 同機は午前11時ごろ同空港に無事着陸し、乗客にけがはなかった。日航がトラブルの原因を調べているが、計器の誤表示の可能性が高いという。

 【本紙の解説】
 日航のトラブルが問題になっているが、全日空も同じようにトラブルが多い。この事故は計器の誤作動で、重大インシデントにも入らない事項だが、このようなことが続くと間違いなく大事故になる。航空機事故の多発は、航空産業の規制緩和(デレギュレーション)以降、世界的現象である。
 今年の8月には航空機の大事故が4件連続した。8月2日、カナダの空港でエールフランス航空のエアバスA340型機が炎上、乗員乗客は奇跡的に全員無事。14日、ギリシャのキプロス上空でヘイオリ航空のボーイング737型機が墜落、乗員乗客全員121人が死亡。16日、コロンビアのウエスト・カリビアン航空のMD8機がベネズエラとコロンビアの国境付近で墜落、乗客乗客全員160人死亡。23日、ペルーの国営タンス航空のボーイング737-200型機(乗客92人、乗員8人)が悪天候のため緊急着陸しようとプカルパの空港付近のジャングルに墜落し、41人が死亡し、57人が負傷、2人が行方不明。
 この異例ともいわれる連続事故は9月に入っても止まらず、5日、インドネシアのマンダラ航空のボーイング737-200型機(乗客乗員116人)がメダン空港(スマトラ島北部)の滑走路500メートル先で墜落炎上した。乗客16人が生存していると発表されているが、137遺体が収容されている。住民の37人以上が事故に巻き込まれて死亡しているということである。
 この連続事故は、規制緩和のもとで格安チケットを売る航空会社が参入するなどで、競争がより激化したこと、01年9・11、03年SARSを原因とした航空不況により、世界の航空会社が安全運航を無視した経営に走ったことによって引き起こされている。
 日航も同じである。国際路線の不況から国内線中心であった日本エアシステムと合併したが、合理化と労働強化で社内が荒廃し、そのために事故が多発しているのである。
 また、上記の事故のうち空港と空港付近の事故が3件ある。メダン空港では滑走路近くの住民の37人以上が死亡している。これをみても空港周辺は危険であり、空港は周辺数キロの無人化を要求しているのである。

(9月6日) 成田B滑走路北延伸問題 騒対協、NAAに申し入れ書(9/7産経、東京各千葉版、千葉日報)

 成田空港の暫定平行滑走路を北に延伸して2500メートル化する問題で、騒音の影響を受ける成田市の住民団体「成田空港騒音対策地域連絡協議会」(騒対協=平山正吉会長、9600世帯)は6日、延伸後の飛行回数や騒音区域線引き(コンター)の提示など4項目について、早期説明を求める申し入れ書を成田国際空港会社(NAA)に提出した。
 この日午後、平山会長と騒音下4地区(久住、豊住、遠山、中郷)の代表9人が空港会社本社ビルを訪れ、黒野匡彦社長に直接、手渡した。
 平行滑走路整備に関する申し入れ書では「空港機能の拡大を最大目標にした北延伸決定は極めて遺憾」としたうえで(1)飛行回数、飛行コース、運用時間などの計画、(2)法に基づく環境影響評価調査、(3)北延伸整備による騒音コンター変更、(4)空港機能拡充に伴う騒音影響対策―の4項目について早期説明を求めた。
 騒対協幹部は「騒音地域を抱える協議会は、空港建設と運用に最大限協力してきたが、北延伸決定など事前に何の説明もない。北側住民は空港機能の拡大に不安を抱いている」と述べ、いらだちをにじませた。
 一方、黒野社長は「発着回数や騒音対策は、騒音コンターが土台になるので作成を急いでおり、最終段階にある。月内にも地元に示したい」と語り、今月中に騒音コンターを提示する考えを明らかにした。
 国が北側延伸を正式決定後、航空機騒音の影響を受ける下総町と同町の騒音下区長会(13区、790世帯)も先月18日、騒音区域の抜本的見直しと移転補償を求める申し入れ書をNAAに提出している。

 【本紙の解説】
 空港会社は騒音地区の騒音コンターの変更要求を一貫して無視している。「9月末までに騒音コンターの作成、地元に提示する」とのみ返答している。そもそも騒音コンターの作成を騒音源の空港会社が作成すること自体がおかしい。将来の騒音なので、予測値を自分に都合良くつくることも可能なのである。騒音コンターの策定は第三者の専門家か、騒音地区の住民が自ら依頼する学者などが参加しなければ正しいものはつくれない。
 また、騒対協が、「法に基づく環境影響評価調査」=環境アセスメントの実施を要求したのは当然である。国交省と黒野社長が8月4日に北延伸を決定した時に「法律に基づく環境アセスメント調査はやらずに、1年程度の環境調査を実施する」とした。このことは検討すべきであり、環境アセスメントを中止した(黒野社長は環境アセスメントをやると言明していた)理由を住民には説明すべきである。騒音コンターがどう引かれるのかはっきりしないが、この間の経緯では住民を逆なでするようなものになりそうだ。

(9月7日) 反対同盟 10・9全国集会の招請状を発した
 反対同盟は10・9全国集会の招請状を全国の各支援団体に発送した。 (PDFファイル参照


(9月7日) 全監視測定局で騒音基準を超えず(9/8産経千葉版)

 成田空港周辺地域共生財団(野村敏雄理事長)は7日、2004年度の同空港周辺の航空機騒音は、102カ所の監視測定局すべてで「公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律」に定める基準値=うるささ指数(WECPNL値)=を超えなかったと発表した。
 暫定平行滑走路の供用で、滑走路2本となった騒音値が1本の時より低くなる「逆転現象」は19カ所あったという。
 2004年度の同空港の航空機発着回数は18万6633回で、前年度より1万5506回増えて過去最高となった。同財団は「それでも基準値を下回ったのは、相対的に低騒音型の航空機が増えたことが一因」としている。

 【本紙の解説】
 騒音基準値を下回ったといっているが、問題点がいくつかある。
 まず、航空機騒音による障害の防止等に関する法律に定める基準値では、低周波騒音は含まれていないことである。成田空港でも低周波騒音の調査は03年に行い、低周波は測定されたが「人体への影響は低い」とされた(03年2月5日付日誌を参照)。現在では、低周波騒音が不定愁訴の原因になっており、通常騒音とともに問題が明らかになっている。しかし、成田の騒音調査では、03年2月以降、低周波騒音の調査は行われていない。
 もうひとつは、2つの滑走路になったことにより、実際の騒音値は上がっているにもかかわらず、闇騒音(通常の騒音値)と航空機通過時騒音との乖離の数値である「うるささ指数(WECPNL値)」は下がってしまう逆転現象は19カ所もあった。にもかかわらず、その対策と騒音測定のやり方が変更されていないことである。(04年6月18日付日誌を参照)
 「相対的に低騒音型の航空機が増えたことが一因」として空港周辺が静かになったような報告を成田空港周辺地域共生財団は行っている。その理由は、この共生財団の財源を、空港会社が50パーセント、残りを県と成田市など1市7町が負担しているからである。つまり、空港会社のひも付き財団だからである。真剣に周辺住民の命と健康、生活の立場から騒音調査するのでなく、空港会社の立場で調査しているのである。

(9月8日) 夏休みの成田利用客、3パーセント減の374万1000人に(9/9産経)

 東京入管成田空港支局は8日、夏休み期間中(7月15日-8月31日)に成田空港を利用した旅客数を発表した。
 出発、到着合わせて約374万1000人で、成田国際空港会社の見込みを下回り、前年同期比で約3.3パーセント減となった。
 同支局は「中部国際空港の開港や愛知万博で、これまで成田を利用していた旅客が中部に移ったことや、中国の反日デモの影響」などと推測している。

 【本紙の解説】
 成田空港会社は7月に「7月15日~8月31日の夏休みシーズンに、成田空港を約391万5800人が利用するとの予測を発表した。前年同期に比べ、1パーセント(約2万1000人)増え、過去最高となる見込みだ」(7/12朝日新聞)としていた。
 前年度の実績は389万4800人であり、2万1000人増える見込みが15万3800人減少した。減少率は「3.3%」とされているが実際は3.9%である(入管当局の計算ミスか?)。いずれにしろ、かなりの減少率であった。
 空港会社は「ロンドンでのテロの影響によるキャンセルも少ない」といっていたが、その影響もあったのであろう。また、中国の反日デモの影響は今後も続くであろう。それ以上に影響したのは航空機事故であろう。1カ月余りで5回の大事故で、カナダは全員無事だったが、3回は乗客乗員全員が死亡、1回は10数人が助かっただけというのでは、海外旅行の足も遠のくだろう。
 航空業界は、政治状況、SARSなどの感染症の流行、航空機事故に影響を多大に受ける産業であり、かつ需要の過半が観光旅行であり、その影響はすぐ現れる。いままで、規制緩和による競争激化のために、格安チケットが出回り、需要が増大しすぎていたのである。21世紀に入り、航空需要は基本的に横ばいであり、この傾向は当分続くだろう。
 日本の空港整備計画は右肩上がりを前提にしており、大破綻は免れない。羽田空港4本目の滑走路建設と国際化で成田の暫定滑走路そのものが必要なくなりそうである。北延伸による2500メートル化は無駄な投資になることは確実だ

(9月9日) 10・6天神峰裁判闘争の傍聴へ

 反対同盟は10月6日に行われる天神峰裁判口頭弁論の「傍聴へお願い」を出した。今回の第8回口頭弁論は、反対同盟側が現闘本部の地上権の積極的主張を展開する重要な裁判である。最も重要な局面を迎えた。全力で傍聴闘争に参加しよう。添付ファイルは反対同盟の「お願い」である。 (PDFファイル参照

(9月16日) 成田空港の着陸料、10月から引き下げ(9/17朝日、読売、産経、東京、日経、千葉日報)

 成田国際空港会社と、世界の航空会社で組織する国際航空運送協会(IATA)は16日、成田空港の国際線着陸料を10月1日から平均22パーセント引き下げることで合意した。
 低騒音の機種ほど安くなる新料金体系を導入するもので、成田空港の着陸料は「世界一高い」と批判されていたが、関西国際空港を下回ることになる。
 成田空港の現行着陸料は、機種に関係なく重量1トンあたり2400円。新料金体系は機体の騒音レベルに応じて1650~2040円の6段階に分類し、全段階で関西国際空港(2090円)を下回る。騒音が最低レベルの機種では、中部国際空港(1660円)よりも安くなる。
 ただ、駐機料や搭乗橋使用料など料金の新設や値上げも同時に行われるため、着陸料を含め各航空会社が空港に支払う使用料全体でみると、値下げ幅は平均11パーセントに圧縮される。新料金体系の導入で、成田国際空港会社は年間約65億円の減収になるという。
 昨年4月に民営化した空港会社は、着陸料を引き下げる方針を示していた。

 【本紙の解説】
 関西空港、中部国際空港より安くなるというのが売り物だが、事実は必ずしもそうではない。駐機料の値上げと搭乗橋使用料の新設などで、事実上の値下げ幅は11パーセントになる。着陸料、手荷物取扱施設使用料、国際線搭乗橋使用料などを計算すると関空よりは安くなるが、中部国際との比較で成田が安くなるのは、騒音が最低レベルの機種だけである。
 今年の夏休みのシェアも中部国際にかなり奪われた。今回の値下げで成田の競争力が増すとはいえないだろう。成田の最大の競争相手は国際化が進む羽田であり、韓国の仁川空港である。
 仁川の着陸料は成田の3分の1だ。東アジアのハブは仁川に移りそうである。
 またノースウエスト航空が倒産したことも成田の一大事だ。NWはアメリカの航空会社だが、成田をハブ空港にしていた唯一の航空会社だ。アジア諸国から成田に運航便を集めて北米便を飛ばしていたのだ。この航空会社の運航便がどう引き継がれるかが大問題なのだ。経営陣が替わってハブが仁川に移ったら、成田は大打撃を受ける。欧州便の数は、成田発より仁川発の方が既に多いのである。
 日本からの近距離便(東アジア便)の大半は早晩、羽田に移行する。成田の地盤沈下と危機はいっそう激しくなるだろう。

(9月16日) 闘争本部など使用禁止延長(9/17朝日、産経各千葉版)

 成田空港周辺の反対派の拠点とされる3カ所の工作物に対して、国土交通省は16日、「成田国際空港の安全確保に関する緊急措置法」に基づいて19日から1年の使用禁止命令を公告した。
 18日が期限になるためで、対象になるのは、天神峰現地闘争本部(成田市)、岩山団結小屋(芝山町)、三里塚野戦病院(同)の3カ所。
 同本部を巡っては、成田国際空港会社が三里塚芝山連合空港反対同盟北原派を相手に、建物の撤去と土地の明け渡しを求め、千葉地裁で争っている。

 【本紙の解説】
 天神峰現闘本部は90年1月16日以降、成田治安法によって封鎖すでに15年を過ぎている。この封鎖処分も毎年更新され、そのうえで、使用禁止処分も更新されている。封鎖処分でヘイと鉄条網で囲まれているので、使用できるはずもないのだが、毎年毎年この使用禁止処分が更新されている。刑事事件でも時効はあり、最長で15年である。こんな矛盾がまかり通っているのである。
 90年1月に天神峰現闘本部に封鎖処分が適用されそうになっていた。通例、封鎖処分に抵抗したら、撤去処分となることははっきりしていた。反対同盟は十数名の籠城を決定し、抵抗闘争を準備していた。しかし日帝・国家権力は、膨大な人々の怒りを呼び覚ますであろう反対同盟との対決を恐れ、家宅捜索と称して北原事務局長以下を叩きだし、そのまま封鎖処分にして鉄板と鉄条網で覆ったのである。その結果、現闘本部はその後今日まで15年間そのまま残った。この反対同盟の闘いの力があったからこそ、暫定滑走路が供用開始となった時、現闘本部の存在が誘導路を「へ」の字に曲げてしまうことになったのである。
 NAAはその後、現闘本部を強奪する裁判を起こしたが、反対同盟の裁判闘争が大衆的にも広がり、逆に空港会社を追いつめる結果となっている。

(9月16日) 「空の日」へ安全祈願 成田山新勝寺(9/18千葉日報)

 「空の日」を前に航空機運航や旅客の安全、成田国際空港の円滑な運用を祈る「航空安全特別大祈祷会」が16日、成田市の成田山新勝寺で厳粛に行われた。
 空の日実行委員会、成田商工会議所、市観光協会、空港関連企業、エアラインなど44社の代表ら62人が、大本堂で汚れ、煩悩の火を焼き尽くすとされる護摩木の炎に祈りを託し「空の安全」を祈願した。
 成田空港では1978年5月の開港以来、大きな航空機事故は発生していないが、米同時多発テロやロンドンテロの影響を受け、最大レベルである「フェーズE」の厳戒態勢が続く。
 また、先月19日に成田発グアム行きノースウエスト機がグアム空港着陸の際に前輪軸が折れるなど、航空機事故やトラブルが相次いでいる中だけに、参列者は気持ちを引き締めていた。
 空の日(9月20日)と空の旬間は民間航空再開40周年を記念して1992年に制定され、空の日フェスティバルが航空科学博物館(芝山町)などで23日まで繰り広げられている。

 【本紙の解説】
 実際の「空の日」は「10月25日」である。戦後の民間航空の再開は1951年10月25日、日本航空が「木星号」で東京-大阪-福岡間の運航を開始した日であった。その後、10月25日を民間航空記念日として、航空関係者は52年以降毎年、記念行事をかならず行っている。
 しかし、1992年に旧運輸省が9月20日の「空の日」を強権的に国家的記念日として決定し、記念切手まで発行したのである。9月20日とはどういう記念日なのか。1940年に政府が「航空日」と制定したことに由来している。1940年は戦時中であり、航空機が軍事作戦の中心になったことから制定されたのである。1910年に臨時軍用気球研究所の山田猪三郎氏が初の国産飛行船を製作し、山田式第1号飛行船で大崎から目黒までの試験飛行に成功した。その実際の日にちは9月8日らしいのだが、このことを記念して9月20日の「航空日」は制定され、それが1992年に「空の日」となり、国家的記念日になっている。
 「戦後の民間航空再開40周年にあたる1992年に制定された」としているのは百パーセントのウソである。戦後の民間航空の再開を記念しているのは、10月25日の「民間航空記念日」なのだ。9月20日は明らかに「軍事航空記念日」なのである。
 ちなみに、国際民間航空デーは12月7日である。これは、1944年12月7日にICAOの設立を定め、「国際民間航空条約」(シカゴ条約)の署名が行われた日に由来している。ICAOは、第2次世界大戦を反省し、民間航空機を破壊兵器として使用すること等を非難することを確認している。
 「国際民間航空条約」は、1992年の国際民間航空機関(ICAO)の総会で決定し、1994年から実施している。国際デーの一つである。国際的には戦争を反省する日を記念日にしているにもかかわらず、日本だけは「軍用飛行船の初飛行」という軍事的記念日を「空の日」としている。
 それにしても、航空機事故の多発している今、成田山新勝寺の不動明王にすがるとは、現代科学の粋を集めた航空業界もあきれたものである。事故は科学的に防ぐものであり、神社仏閣への神仏頼みで防げるものではない。

(9月19日) 反対同盟が「北延伸阻止」の緊急現地闘争

 9月19日、「暫定滑走路北延伸阻止」の三里塚現地緊急闘争が闘われた。反対同盟の呼びかけに応え首都圏から多くの労農学がかけつけ、北延伸攻撃と徹底的に対決していく決意を表明した。集会には動労千葉、都政を革新する会、婦人民主クラブ全国協議会の代表もかけつけ、新局面を迎えた三里塚闘争に新たな陣形で臨む姿勢をアピールした。集会後、参加者は北延伸攻撃を阻む各闘争拠点の現地調査を行い、北延伸攻撃の狙いが実は南進=農民圧殺にあることを確認、10・9全国集会の成功に全力を尽くすことを誓った。(詳細は本紙参照)

(9月21日) 大栄町 騒音対策で国交省に要望書(9/22朝日、読売、毎日、産経、東京各千葉版、千葉日報)

 成田空港の暫定滑走路の北延長決定を受け、大栄町の佐藤末勝町長と約480世帯の住民代表らが21日、国土交通省と県、成田国際空港会社(黒野匡彦社長)を訪れ、騒音対策などを求める申し入れ書を提出した。
 暫定滑走路は、延長で大型機が就航するようになり、周辺の騒音が増すとみられる。空港東側の大栄町は、滑走路の側面側で飛行ルート直下にはないが、申し入れ書は「独自の生活環境と被害状況の考慮を」と要望。防音林の再整備や、騒音区域の見直し、地域振興への協力などを求めている。
 黒野社長は会談後、「空港の横側についても軽く見てはいない。意見を聞いて対応したい」などと話した。

 【本紙の解説】
 大栄町の要求はしごく当然な要求であり、これに真摯に応える義務が航空会社にはある。騒音地区の見直しは絶対的要請である。
 黒野社長は「空港の横側についても軽く見てはいけない」と言っている。その通りである。このことは、空港に最も近い東峰の森を存続させなければならない。それも義務として空港会社にのしかかっている。
 しかし、空港会社は新誘導路を「東峰の森」の三分の一近くをつぶして建設すると言っている。空港会社に勝手にできない話だ。東峰地区の承認が必須条件である。
 旧空港公団は96年に周辺緑化計画として、「旧県有林(東峰の森)は樹林地として整備・育成する」と地区に示している。これは、東峰地区が、「開拓時代からあり、防音の役目もしている森が消滅した場合に地区の農業などに被害が出る」と強く主張したから確約したのである。
 また、2003年に公団が申し入れてきた東峰貨物基地構想の過程で1月30日(03年1月30日付日誌を参照)の地区の貨物基地拒否の文書に対して、2月20日(03年2月20日付日誌を参照)に回答書で「旧県有林(東峰の森)の伐採や貨物施設などの構想については、地区の了解をえないで一方的に計画を推し進めることはしない」と答えている。「東峰地区をこれ以上分断しない」(同)とも確約した。新誘導路は同地区を完全に分断してしまう計画でもある。したがって、新誘導路は東峰地区の承認なしには建設できないのである。
 新誘導路の建設ができない場合は、滑走路を北に延伸してもジャンボ機は飛べない。元の木阿弥である。

(9月22日) 「空港職員の犯罪歴調査を」/安保監査でICAO勧告(9/23千葉日報)

 航空テロ防止のため国際民間航空機関(ICAO)が成田空港で実施した保安態勢の監査で、駐機場や荷さばき所など一般旅客の立ち入りが制限された「制限区域」で働く職員の犯罪歴をチェックするよう勧告していたことが22日、分かった。
 ICAOは「日本の航空保安対策は非常に強固で優れている」と評価したが、貨物や航空機に爆発物を仕掛けるテロ防止などのため、制限区域に立ち入る職員らの身元チェックに向上の余地があるとした。
 勧告では、当面は学歴や経済状況、職業歴など現行法の枠内でできる調査を行い、将来的には犯罪歴の調査を国として検討すべきだと指摘した。

 【本紙の解説】
 いよいよ、国際的にも日本が次の国際的ゲリラ戦闘の対象国として認知されているようだ。その最大のターゲットが成田空港のようだ。しかし、この間、指名手配犯の取り逃がしが相次いでいるので、成田空港の警備状況にICAOが心配して、職員の犯罪歴調査を勧告してきたのである。これは重大な人権侵害である。しかし、当面は「現行法」の枠内と言っているが、治安対策として職員調査をやるようだ。さらに、「制限地域に立ち入る職員の身元チェック」をやると言っている。工事の下請けの職人や貨物などの配達業者まで「職員」として対象を広げるつもりである。こんな人権無視の無法調査を許してはならない。また、「犯罪歴の調査を国として検討すべき」として法改悪も要求している。「テロ防止」を口実とする人権無視を絶対に横行させてはいけない。

(9月27日) 成田空港停電で発着に遅れ(9/28朝日、産経各千葉版)

 成田空港の第2旅客ターミナルビルで27日午前、照明などを制御する変圧器がショートし、大規模な停電が起きたため、大型の掲示板や航空会社のコンピューターが止まるなどの影響がでた。停電は約10分で収まったが、その後も駐機場の照明などは消えた状態が続き、完全復旧には発生から50分かかった。成田国際空港会社(NAA)が原因を調べている。
 第2ターミナルビルの出発ロビーにいた飲食店員によると、午前9時10分ごろにロビーの中央から北側半分の照明などが一斉に消えたという。
 航空会社のチェックインカウンターのコンピューターも電源が落ちたため、チェックイン作業が中断。出発ロビーの中央に設置してある出発案内の大型電光掲示板も消えたという。
 NAAによると、手荷物を運ぶベルトコンベヤーが止まったり、出発ゲートから飛行機に移る搭乗橋も停止したりしたため、国際線の出発便のうち14便で約10分、4便で30~42分間の遅れ、到着便では1便に20分の遅れがでたという。
 一方、第2ターミナル4階の飲食店街でも、多くの店でレジが動かなくなった。調理場の火を落としたり、停電で暗くなり、料理が作れなくなったりする飲食店もあった。
 ある飲食店員は「10分ほどで回復したから大きな被害は受けなかったが、アナウンスくらいすぐにしてほしかった。お客さんも『何事か』という顔をしていたから」と話した。

 【本紙の解説】
 現代社会で停電が1時間近く続くこことは希である。電力会社や各会社での停電対策が整備されているからである。しかし03年8月、北米で起きた大規模停電のような例がある。その規模は世界史的にも過去最大のようで、影響は5千万人にも及んだといわれている。突然の停電は日常生活だけでなく、企業活動にも甚大な被害をもたらす。そのため、北米停電の教訓から、各企業には大小のUPS(無停電電源装置)が導入されている。
 しかし、米国では停電対策がいまだ進んでいないようだ。米国では、01年9月11日の反米ゲリラの前から、老朽化した送電線網を改修するべきだとの専門家の意見が多く、02年11月に、米国学術研究会議(NRC)の科学者や技術者たちが米国議会とホワイトハウスに対し、送電線網の脆弱さについて警告し、全米規模の弱点を早急に補修する必要があると指摘していた。米国ではこの03年大停電の後もその対策は本格的になされていないようだ。理由は、イラク侵略戦争とテロ対策に国策の最重点があり、停電対策まで予算が回らないことにある。
 成田空港も同じである。年間100億円といわれる警備対策費に予算がつぎ込まれ、停電対策に予算が回らないのであろう。

(9月29日) 成田新高速鉄道/環境省が野鳥生息環境確保など求める意見書(9/30(朝日、読売、毎日、日経各千葉版、千葉日報)

 東京の都心と成田空港を結ぶ「成田新高速鉄道」の建設事業に関する環境影響評価書について、環境省は28日、環境影響評価法に基づき、野鳥の生息環境の確保などを求める環境相の意見を国土交通相あてに提出した。
 評価書は、事業者の「成田高速鉄道アクセス」が今年8月、国交省に提出した。これに対し環境相は、同鉄道が県立印旛手賀自然公園内を横断する計画であることから、(1)サンカノゴイなど希少鳥類の生息環境を守るため、生息域の工事前にヨシ原などの造成に着手する、(2)工事着手前に野鳥の繁殖状況を調べ、営巣期には工事中断を含む措置を取る、(3)供用後は必要に応じて騒音対策を行う、(4)供用後、動植物の生息環境を調べ、必要な対応を図る――の4項目を求めた。
 国交相は今後、この意見を踏まえて事業者側に意見を述べ、事業者側は必要に応じて評価書を補正する。

 【本紙の解説】
 環境相からの意見書がでたので、いままででた評価書への意見書を踏まえて、事業者が評価書を書き換えて、最後の縦覧期間をへて事前の環境アセスメントは基本的に終了する。
 環境相の意見書は今年の5月18日(05年5月18日付日誌を参照)に提出された日本保護協会の意見書と真っ向から対立する反動的意見である。自然協会は「湿地生態系の分断は代替のヨシ原の造成では不十分」としてトンネル化かルート変更を求めている。それに対して環境相はヨシ原の造成で済まそうという意見である。堂本知事は、建設主体としての千葉県の立場からは県議会では、「トンネル化は百パーセント無理」(05年6月28日付日誌を参照)としているが、環境影響評価に対する知事意見としては「トンネル化の検討を求める」(05年6月24日付日誌を参照)と矛盾した意見をいっている。
 堂本知事の相矛盾する主張もさることながら、環境相の意見も環境破壊を推し進める反動的見解である。

(9月29日) ゴミ最終処分場/大幅見直し避けて処分場転用を希望(9/30朝日、読売各千葉版)

 成田国際空港会社の黒野匡彦社長は29日の定例会見で、成田空港暫定平行滑走路の北延伸予定地北端にある成田市の一般廃棄物最終処分場について、「飛行場区域の線引きが変則的になることは避けたい。どう調整できるか市と相談している」と述べ、延伸計画の大幅な見直しをせずに空港用地に転用したいとの考えを示した。
 廃棄物処理法の規定では、処分場を短い期間で空港用地などに転用する場合、埋め立て物を撤去して「廃止」する必要がある。しかし、膨大な費用の負担や撤去物の再処分をどうするかといった問題があるため、成田市は埋め立て部分を空港用地から外すなどの解決策を模索している。今後、空港会社と同市で対応を協議する。また、黒野社長は、北延伸に伴い、空港周辺住民に9月中に説明する予定だった騒音区域の新たな線引きについて、「若干詰めの作業が残っており、(説明時期を)10月初旬に延ばしたい」と述べた。騒音対策の見直し案については、線引きを説明した後、改めて住民側に提示する。

 【本紙の解説】
 北延伸問題のネックはいろいろあるが、大きな問題点は3点ある。最大の問題は空港東側に建設するという新誘導路、成田クリーンセンター(一般廃棄物最終処理場)の撤去、騒音コンターの見直しの3点である。その他の問題点は、東関東自動車道上の進入灯の設置とトンネル化、国道51号線の本格トンネル化の夜間工事問題など山ほどあるが、差し当たり北延伸を困難化させている問題は上記3点にある。
 成田クリーンセンターは、暫定滑走路が2500メートルでなく、2180メートルに止まったことの最大の理由であった。クリーンセンターの中と東関道の上に進入灯を設置することができなかったのである。
 滑走路は先端から900メートルまでの間に30メートル間隔での進入灯の設置が義務づけられている。暫定滑走路は北端延長上500メートルの距離に成田クリーンセンターがあり、北端から500メートルまでしか進入灯はない。そのために、滑走路北側に400メートル分、進入灯が食い込んでいる。したがって航空機が北側進入の時に滑走路は1780メートルしか使えない。この進入灯問題をクリアーしない限り、滑走路が2500メートルになっても北側進入の場合は、いままでと同じに1780メートル分しか使えないのである。進入灯はクリーンセンターの敷地内にタワーのように建てることは可能かもしれないが、滑走路直近のアプローチエリアで人や自動車が行きかうことはあり得ないことであり、危険きわまるものである。基本的に移転以外に安全な空港建設はできない。いま航空機の安全運航が問題になっている時にはそれ以外にない。
 しかし、成田市と航空会社はクリーンセンターを存続させ、その上に航空機を飛ばすことを考えている。このような安全無視は許してはならない。
 また、騒音コンターは、「新たな線引き」といっているので見直すのであろう。問題は、どう見直すかである。いまの騒音コンターは年間飛行回数が22万回でジャンボ機が飛ぶことを想定して作ってある。したがって騒音コンターを800メートル+320メートル=1120メートル移動させれば問題はない。しかし、国交省は、「20万回の航空機運用に対し騒音は22万回で対応している。コンターが大幅に変わることはない」(05年7月22日付日誌を参照)とまでいっている。その後、延長後は運航回数を22万回にするといっているので、騒音コンターを大幅に変えないというのは通用しない。たが、国交省と空港会社は航空機の騒音が低くなったなどといって騒音コンターの大幅な見直しはしないのではないか。
 いずれにしろ、見直し幅が少ないと北側住民の不満は闘争化し、大幅な見直しは、「部落を分断させるな」という問題になり、最終決定までは相当な年月がかかりそうである。
 新誘導路建設について「9月中にも正式に地元説明し、環境調査に入る方針」(05年8月31日付日誌を参照)となっていたが、9月末の黒野社長の定例記者会見でも「正式な地元説明」のことにはふれなかったようだ。新誘導路の幅の問題や「東峰の森」を環境対策として残すと東峰地区に確約している問題などもあり、簡単に地元説明とはならないのである。

(9月30日) 成田発韓国便乗客大幅減 羽田発の倍増が影響(9/30読売千葉版)

 今年8月に便数が倍増された羽田空港と韓国・金浦空港(ソウル近郊)を結ぶ国際チャーター便の影響を受け、成田空港発の韓国便(仁川など)の乗客が大きく減少したことが29日、成田国際空港会社のまとめで分かった。「韓流ブーム」で韓国を訪れる旅客数は増えているが、成田と仁川の両空港がともに、都心へのアクセス面で羽田、金浦より遠いことが不利に働いたようだ。
 羽田-金浦便は、2003年11月末から1日4便運航され、今年8月から1日8便に増便された。一方、成田-仁川便は現在、1日14便前後運航されている。
 同社が、羽田便が倍増された今年8月の出発便利用客数を調べたところ、羽田発が約5万4000人で、昨年8月の約2万8200人から大幅増。成田発韓国線(釜山行きなどを含む)は約11万1600人で、昨年8月の約13万9800人から、大きく落ち込んだ。両空港の増減数はほぼ同じで、同社では、成田便の減少分の多くが羽田便に流れたとみている。
 羽田が東京都心から近いことに加え、韓国側でも仁川空港がソウルの都心から1時間半近くかかるのに対し、金浦空港は40分前後で着くことができる。合計で移動時間が2時間近くも短縮できるため、各旅行会社も「羽田発」を売り物にしたツアーに力をいれていることも一因とみられる。

 【本紙の解説】
 羽田-金浦便の趨勢は09年羽田空港国際化以降の成田空港の姿を指し示している。
 成田発ソウルの格安ツアーはホテル宿泊付き2泊3日で1万5千円台も現れているが、羽田発のツアーは、最安値でも1万円以上も成田発ツアーより高く設定されている。利便さから考えれば当然であろう。都心から成田まで(ソウルから仁川まで)の時間と交通費を考えれば羽田―金浦を選択するはずである。羽田空港は、国際線の人気から04年4月1日から旅客サービス施設使用料を国際線利用者に限り、成田と同じ2040円を取り始めた。
 羽田国際線の対象は羽田から2000キロ圏内ということになっている。国交省見解は「ソウル、上海は含むが、北京、台北、香港は含まない」になっている。だが、09年にはアジアの大半の国まで拡大するといわれている。成田のアジア便が半減することは必至の情勢である。暫定滑走路は必要なくなりそうだ。成田暫定滑走路の2500メートル化は、間近いなく建設費の無駄使いになる。

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