SANRIZUKA 日誌 HP版   2003/01/01~31    

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 2003年1月

 

〔週刊『三里塚』編集委員会HP部責任編集〕 

(1月4日) 公団黒野総裁、東峰地区に潜入

 1月4日に公団黒野総裁は、年始の挨拶と称して東峰地区の各農家を訪問した。萩原さん宅では手みやげを置いて行けずに追い帰された。(詳しくは本紙参照)

(1月6日) 成田空港B滑走路の2500メートル化「上場までに結論を」(1/7朝日、読売、東京、産経の各千葉版)

 新東京国際空港公団の黒野匡彦総裁は6日、新年の記者会見で、当初計画より短い2180メートルで運用しているB滑走路の2500メートル化について、公団民営化後、株式上場するまでに結論を出すという考えを示した。昨年7月、2500メートル化を目標に掲げて就任した黒野総裁が、延伸の時期に言及したのははじめて。
 黒野総裁は会見で「上場するというタイミングでも、まだめどがついていないということでは世の中から許してもらえないと思っている」と話した。さらに「できれば工事が始まっているとか、そういう段階にもっていきたい」とも語り、2500メートル化に取り組む強い姿勢を見せた。
 用地交渉が難航している当初計画を変更し、北側に延伸する案については「あり得ないことではないが、今の段階では本来計画の2500メートルを目指したい」と話した。
 空港公団の株式上場については、国土交通省が検討している民営化案で「04年度に特殊会社化して、できる限り早期に目指すことが必要」とされており、今月からの通常国会で民営化法案が審議される予定。

 【本紙の解説】
 黒野総裁は公団の職員を前にした年頭の挨拶で「用地問題に解決のためには土下座しろいうならします」とのべたらしい。反対同盟も、地権者も「土下座しろ」とは一度も言っていない。三里塚闘争は「土下座」して解決すむような生やさしい問題ではない。闘争での命を奪われた人や自殺者が何人も出た闘争である。公団総裁の土下座というパフォーマンスをやればなんとかなるという感覚そのものが間違っている。農民が30数年間闘ってきた基本的立場を理解していないのである。
 株式上場の時期をメドにしているが、実は羽田の4本目の滑走路の完成・供用開始が09年ということが一番の関心事なのである。09年に羽田が定期便も国際化していることは確定している。国際線のターミナルビルも成田の数倍の敷地面積で建設することも決定している。09年には中国便を中心としたアジア便は基本的に羽田発着になる。成田発着便は現在ノースウエスト航空などが北米便への乗り換え便だけが残ることになる。暫定滑走路はこのままでは閑散としてしまう。暫定滑走路を当初計画の2500メートルで完成させ、北に800メートル伸びた分を加算し、3300メートルの滑走路として北米便のジャンボ機を飛ばせなくては、事実上の廃港の憂き目に合うことは確実なのである。
 そのための口実として「上場をメド」といっているのである。また、完全民営化した場合に赤字確実な設備投資をおこなうことはない。これは国交省も認めていることであり、そのために平行滑走路の整備に関しても「監督命令」をつけたのである。つまり、07年が暫定滑走路の廃港かどうかの分かれ目である。
 暫定滑走路の閉鎖、廃港まで、全力で03年もがんばろう。

(1月12日) 反対同盟、新年旗開き
 
 反対同盟は芝山町で2003年の新年旗開きを行い、力強い闘争宣言を発した。(詳細は本紙参照)

 ■二〇〇三年闘争宣言

 暫定滑走路の開港攻防から一年、反対同盟は勝利の確信固く新たな年を迎えた。空港廃港に向かう闘いをさらに強め、明日にも本格的に開始されようとしているイラク侵略戦争に反対し、有事立法・改憲攻撃と闘う決意である。
 反対同盟は欠陥だらけの暫定滑走路の即時閉鎖を要求する。昨年十二月の接触事故は人命に関わる大事故の前ぶれである。民家をかすめる超低空飛行とジェットブラスト、周辺住民への大騒音、そして構造的欠陥をかかえる暫定滑走路は、初めから破綻した無謀な計画だった。
 そのすべての責任は、これを承知で強行した政府・国交省、空港公団にある。「四年後の株式上場までに延伸のめどをつけたい」とする公団総裁発言は、その非を顧みることなく、矛盾を農家におしきせ生き延びようとするものである。なんと悪らつなことか。一坪強奪のための法理にはずれた不当な提訴と、東峰部落の県有林伐採による空港拡張策動は言語道断である。
 成田市と空港公団はまずもって東峰地域の破壊をやめ、天神峰のジェットブラストフェンスを設置せよ。反対同盟はさらに二十年、三十年闘ってでも、住民無視の空港づくりを粉砕する決意である。
 米・ブッシュ政権は世界を核戦争の危機に叩き込んでいる。イラク侵略戦争とともに北朝鮮に対する攻撃が現実のものとなった。有事三法案はこの戦争のための体制づくりである。北朝鮮を排撃し戦争に向かう動きを許してはならない。
 成田空港を米軍・自衛隊の出撃基地にしてはならない。三里塚は反戦・反核闘争の砦である。いまこそ全世界の人民とともにイラク侵略戦争を阻止しよう。有事三法案を廃案に追い込もう。反対同盟はその闘いの先頭にたつ決意である。
 三・三〇全国集会に総決起することを呼びかける。

 二〇〇三年一月十二日        三里塚芝山連合空港反対同盟

(1月12日) 成田空港・貨物地区 東峰地区に整備構想(1/13読売千葉版)

 成田空港の反対派農家が住む成田市東峰地区に、航空貨物の積み降ろしなどをする貨物地区を新たに整備する構想が12日、明らかになった。空港公団はすでに構想を農家側に伝えている。世界2位の貨物量を誇る成田空港では、稼働中の貨物地区は1カ所だけ。公団は「貨物の処理能力は限界に達している。東峰は拡充候補地のひとつ」としているが、農家らは「空港の拡張で集落が破壊される」などと反発している。
 構想では、本来計画の平行滑走路予定地東側の公団所有地を活用。平行滑走路予定地から東側に広がる東峰地区のほぼ中央に貨物機の駐機場などを整備する。
 ただ、公団は「2500メートル以上の滑走路が完成しないとジャンボ機の貨物便が利用できない」と説明。暫定平行滑走路を2500メートル以上の滑走路に整備することが、構想を具体化する前提としている。
 東峰地区は、反対派農家5戸と漬物会社などが点在しており、平行滑走路の未買収約4・5ヘクタールのうち、約3ヘクタールが集中している。反対派農家らは「集落が破壊されることになり、受け入れられない」などと構想に反発している。

 【本紙の解説】
 昨年の春、暫定滑走路開港前後から東峰地区に巨大な貨物地区をつくるという構想がウワサとして持ち上がっていた。ウワサの出所は、暫定滑走路の供用開始をもって東峰地区の全面的切り崩しを計画していた人たちである。この計画は2500メートルの当初計画が完成し、反対同盟が東峰地区で集会をやる際に使用する萩原進さん方の“清水の畑”を買収しなければ成立しない。清水の畑が貨物地区への誘導路になっているのである。つまり、平行滑走路が当初計画で完成し、東峰地区の全員が条件派にならない限り絵空事なのである。
 ではなぜ、東峰地区切り崩しが挫折している現状で、暫定滑走路が無惨な暫定のまま固定化している中で、これが新聞紙上に発表されたのか。
 それは、地権者の存在と神社、墓地、開拓道路などによって、平行滑走路は絶対に完成しない現実を突きつけられた黒野総裁が、平行滑走路(当初計画)の完成のために最大限努力していることを示すアリバイ行為なのである。
 最近公団は、貨物地区建設の予定地の県有林伐採を東峰地区に申し入れてきた。完成する展望もないし、まだ予算もついていない事業のために県有林の伐採を行うとは、住民への脅迫とアリバイ行為以外の何ものでもない。

(1月16日) 羽田空港再拡張で7都県市首長初協議(1/16読売、日経各夕刊、1/17毎日、東京、産経の各全国版、朝日、読売の各千葉版、千葉日報)

 羽田空港に4本目の滑走路をつくる再拡張事業の推進へ、扇千景国土交通相と千葉県など7都県市の首長による協議会の初会合が16日、都内で開かれた。約9000億円に上る同事業費のうち、約3割の地元負担に首長側から反対意見が相次ぎ、扇国交相は協議会後の記者会見で「国が(事業費の)全額を持つのが理想。国が持つ方向で努力する」と地元負担を見直す意向を明らかにした。
 同日の「羽田空港再拡張事業に関する協議会」は、国と7都県市が協力体制を築き、意見交換・調整して円滑に事業を進めるため設置。
 会合の冒頭で扇国交相は「羽田(の発着枠)はすでに満杯。諸外国の空港が24時間体制で運営する中、首都圏が発展するためにも受け入れ態勢を考えなければならない。羽田がどうあるべきか意見をうかがいたい」と羽田再拡張の必要性などを訴えた。
 会合後に扇国交相が会見し「羽田再拡張事業に首長は総じて賛成、必要との認識で、事業費の地元負担は受けられないとのことだった」など説明。
 地元負担には「あるか、ないか現段階で明解には答えられない」としながらも、「国が全部負担して、どうぞ使ってください、というのが公共事業の理想。第一義的に国が全面負担するよう努力する」と述べた。
 事業費削減へは「設計、施工を一括入札とし、さらに、工期を短縮するよう努めている。今後も国で知恵を出していく」とした。
 一方、羽田を発着する航空機のほとんどが県上空を飛行している現状を踏まえ、堂本知事は騒音の拡大を懸念し、「発着回数が増えた際、千葉だけが騒音影響を担うのでは、県民理解が得られない。東京、神奈川など首都圏の都県市で共有することが必要で、合意してもらうのが再拡張事業への条件」と主張した。
 協議会のメンバーは扇国交相のほか、千葉、東京、神奈川、埼玉の4都県知事と、千葉、横浜、川崎の3市市長。

 【本紙の解説】
 国交省も空港特別会計の逼迫で大変である。羽田4本目の滑走路建設予算9000億円をまかなえないのだ。地方自治体に約3割の負担を押しつけたいのである。扇国交相は「国が全額を持つ、努力する」といっているが、「早くつくりたいというなら地元負担してくれ」といっている。この会議自体が、地元負担を受け入れた東京都と反対した神奈川県、千葉県などと共同歩調をとるために設定された会合だ。地元負担はいったん「白紙」にもどし、再度提案し直すことが狙いの会合である。
 千葉県の堂本知事は「東京、神奈川県の騒音の共有」と称して東京都を巨大な航空機騒音都市にたたき込もうとしている。「騒音の共有」とは羽田空港の陸側に近いA滑走路の北側への離発着をやれと言っているのである。通称ノースバード計画とよばれている。国交省は実現する方針だが、ヘリコプターの運航と重なり合い、実現できていない。このノースバード計画は、五反田上空約600メートル上空を通過するほどの騒音になる。
 つまり、千葉県側の騒音とは桁違いな騒音になる。それを「騒音の共有」として押しつけようとしている。堂本知事は成田空港の騒音を不問に付して、それと比べものにならない羽田の騒音を問題にし、それに反対するでもなく、東京も神奈川も共有してくれといっている始末なのだ。国交省に文句を言っているように見えるが、実はノースバード計画の露払いの役割を担っているのである。

(1月20日) 成田国際空港への改称(1/21読売千葉版)

 空港公団は20日、公団民営化を機に、成田空港の正式名称を「新東京国際空港」から「成田国際空港」に改めるよう求める要望書を扇国土交通相に提出した。
 要望書では、国際的にも「成田」の名称が定着していることや、周辺自治体などから改称の要望が寄せられていることなどを挙げ、「空港と地域のつながりにおいて極めて重要」として、空港名の改称と、民営化に伴う新会社の名称を「成田国際空港株式会社」とすることを要請している。
 国土交通省は昨年12月、公団民営化法案の仮称を、「成田国際空港株式会社法」とすることを明らかにしている。また、周辺自治体や県も昨年11月、国に対して「地元が愛着や誇りをもてる名称にしてほしい」と要望していた。

 【本紙の解説】
 新東京国際空港が、民営化を契機に成田空港に改称されることになった。しかし民営化によって環境対策や騒音補償、空港の安全対策などがなおざりになることが懸念されていたが、その通りになりそうだ。その責任の所在は抽象的に法文化されただけで、具体化については民営化された新会社に委ねられる。「成田空港」になった瞬間、空港は周辺住民の生活を妨害するだけの代物になりそうだ。

(1月21日) 成田空港、02年の出入国者が過去最多に(1/22朝日、読売、日経、東京、産経)

 東京入国管理局成田空港支局は21日、昨年1年間に成田空港を利用した出入国者数(速報値)は約2450万6千人で、00年の2358万1146人を抜き過去最多だったと発表した。前年比では約269万人増えた。
 日本人の出国者数は約903万5000人(前年比約11パーセント増)、入国者数は896万4000人(同約9パーセント増)。外国人の入国者数は325万4000人(同約19パーセント増)、出国者数は325万4000人(同約20パーセント増)だった。
 同支局は「昨年4月の2本目の滑走路の供用開始で便数が増えたのと、米国同時多発テロの影響が収まったため」と話している。

 【本紙の解説】
 過去最高と喧伝されているが、それまでの最高だった00年からは約95万5000人増加であり、比率で約4パーセント増加しただけである。それも昨年4月から暫定滑走路の供用が開始された分を含んでいる。4月の暫定滑走路供用後、1日の離発着回数はA滑走路が約350回、B滑走路が約120回である。昨年1年間のA滑走路の発着回数は11万9168回、B滑走路が2万8717回である。B滑走路は中型機が中心だがA滑走路の約3割。総数では14万7885回となっている。
 00年は約13万回である。つまり、航空機の離発着が約2万回増加、約15パーセント増えたにもかかわらず、乗客は4パーセントしか増えていない。結局、関空の目減りを成田がある程度吸収したものにすぎなかった。つまり、暫定滑走路が運用開始されても、その分の増加がなく、実質的には成田の乗降客も目減りしていたのである。
 暫定滑走路供用開始の効果も薄く、9・11ショックの立ち直りも依然としてならず。そのために航空会社の経営危機も深刻である。

(1月22日) アメリカン航空、苦境。「大胆な経費削減必要」(1/24朝日)

 世界最大手の航空会社、米アメリカン航空の親会社のAMRのカーティー最高経営責任者(CEO)は22日に声明を発表し、「経費を大幅に削減する方策が見つからないと、当社の先行きはおぼつかない」とし、大胆なコスト削減の必要性を強調した。
 同日発表されたAMRの02年決算では、年間の最終赤字が、01年の約12倍に当たる35億ドル(約4100億円)に上がった。
 四半期業績も、10~12月期決算は、最終損失が5億2900万ドル(約620億円)。前年同期(7億9800万ドルの赤字)より赤字幅は縮小したが、大幅な損失が出ている状況には変わりがない。
 カーティーCEOは声明で「こうした業績を続けていくことができないのは、明らかだ」として、人件費などを大幅に削減する必要性に言及した。
 業績を悪化させているのは、もともと高コスト体質に加え、収入源であったビジネス客の需要の回復が遅れていることが大きいという。さらに、昨年12月に連邦破産法11条(会社更生法)を申請して経営破綻し、現在経営再建中のユナイテッド航空が運賃を値下げしていることが業界全体の運賃の下落圧力になっている。

 【本紙の解説】
 アメリカの航空運輸業の危機は本格的である。世界第2位のユナイテッド航空の倒産につづき、世界第1位のアメリカン航空も大幅な赤字を出し続けている。このままでは倒産だとして、その原因を「高コスト体質」に求め、労働者の解雇を含む大幅な人件費削減で対応しようとしている。
 しかし、航空会社の危機の原因は9・11と侵略戦争にある。航空機製造業は軍需産業そのものであり、民間航空会社も兵員輸送のための巨大な空輸戦力として組みこれている。アメリカはこの航空関連の軍事力を保持するために、航空需要をバブル的に作り上げてきたのである。そのバブルが9・11で弾け、需要後退にアフガニスタン侵略戦争が追い打ちをかけ、さらに昨年からのイラク侵略戦争切迫情勢で航空需要は落ち込む一方である。
 それにしても、アメリカン航空の危機の原因が倒産したユナイテッド航空の運賃値下げにあるとは皮肉なことである。連鎖倒産になりかねない事態である。航空会社は実需の数倍の運航能力があり、約半分が過剰な設備投資といわれている。つまり、全世界の航空会社が半分になるまでこの倒産はつづくということである。

(1月23日) 全日空が不採算路線を整理、国内5路線から撤退(1/24読売)

 全日本空輸は23日、03年度のグループ運送事業計画を発表した。日本航空と日本エアシステム(JAS)の経営統合などをきっかけに価格競争が厳しくなっていることから、国内便5路線から撤退、4路線で運航便数を減らすなど、不採算路線を大幅に整理する。
 一方で、羽田―伊丹間などの主要幹線を増便する計画で、採算路線への集中により、収益力を高めたい考えだ。
 撤退する国内路線は、福岡―宮崎、鹿児島線(ともに現行1日4往復)、羽田―青森、徳島線(ともに同2往復)、羽田―旭川線(同1往復)で、福岡発着の2路線が3月31日、羽田―青森、徳島線が4月24日、羽田―旭川線が7月17日を最終日に運航を停止する。このうち、羽田―青森、徳島線については、スカイマークエアラインズが路線を引き継ぐことが決まっている。
 一方、主要幹線である羽田―伊丹、福岡線をそれぞれ、現在よりも1往復増便するほか、7月をめどに羽田―能登線を新設する。

 【本紙の解説】
 航空需要の低迷から、航空会社は統合・再編、不採算路線からの撤退というおきまりのコースに全面的に入りつつある。航空運輸は鉄道などのように巨大なインフラを必要としない。そのために離島、地方路線にその活用の本来の意味がある。にもかかわらず、地方路線は不採算路線で、今後は全面撤退になるだろう。また、人気のある幹線も安売り運賃競争で1社が勝ち残ると、その路線は鉄道などの代替交通手段がない場合は、すぐさま値上げになる。それは、伊丹─羽田などで新幹線との価格競争に勝てる範囲での値上げがすでに始まっている。そのことで国交省との調整がつかずに対立案件になっているのである。

(1月24日) 反対同盟から東峰神社裁判闘争のお知らせがでましたので、以下に掲載します。

  お知らせ
                              反対同盟事務局
 反対同盟員ならびに支援のみなさん。
 東峰神社裁判の第4回公判が2月3日午前10時30分から、千葉地裁で開かれます。
 前回公判(11月25日)で原告・東峰部落は、暫定滑走路の南側進入表面上に突き出していた神社林を含む物件について、変更認可申請段階で公団が作成した一覧表の提出を要求しました。この一覧表には神社林が神社境内に立っていた事実が明記されており、「立ち木は神社の周囲に植生」していたとする公団のでたらめな主張をくつがえす有力な証拠となるはずのものです。公団側は現在に至るもこの書面を提出しようとしません。
 第4回公判は、裁判長も代わることから、あらためて公団の主張のでたらめさを追及し、東峰神社の敷地強奪と神社林盗伐の不当性を明らかにします。
 東峰神社は暫定滑走路の延長を阻止する闘いの拠点です。反対同盟としても傍聴闘争を取り組みたいと思いますのでよろしくお願いします。
 2003年1月24日
 記
 東峰神社裁判第4回公判
 【日時】2月3日(月)午前10時30分
 【法廷】千葉地方裁判所
 ※当日は、被告・空港公団関係者等の傍聴が予想されます。傍聴席確保のため反対同盟・支援は10時に千葉地裁に集合したいと思いますので、よろしくお願いします。

(1月27日) 成田空港でオーバーラン あわや大事故(1/28日夕刊全紙、1/29日各紙千葉版、千葉日報)

 27日夜、成田空港の暫定平行滑走路に着陸した韓国・仁川発のエアージャパン機(乗客・乗員102人)が滑走路をオーバーランし南端先の芝生帯で止まった。大事故寸前で回避された事態に航空会社や新東京国際空港公団は徹夜の復旧にあたった。国土交通省は「航空法上の重大インシデント」として28日、調査に乗り出した。機体の損傷やダイヤへの影響もなく「不幸中の幸い」と安どの声ももれた。
 航空機は滑走路先70メートルの芝生帯まで走り、前脚が南端に右主脚も西側に脱輪し土にめりこんだ。100人以上の作業員が午前6時すぎ、けん引車で引き上げた。
 午前から同省・事故調査委員会の調査官3人が格納庫の機や現場を検分した。新東京空港事務所や関係者によると、発生当時周辺の天候は雨、最大13メートルの西風。定刻より10分遅れていたが、機のシステムなどに異常はなかった。操縦は機長と副操縦士、訓練生の3人があたり、操縦桿は機長がコントロールしていたという。
 事故調査委員会は今後、飛行記録や関係者から事情を聴き原因を解明する。

 【本紙の解説】
 反対同盟は1月12日の新年旗開きで「昨年12月の接触事故は人命に関わる大事故の前ぶれで」であり、「欠陥だらけの暫定滑走路の即時閉鎖を要求する」と警告した。それから半月もたたずに、今度は大事故の前兆というべき重大事故が起こった。起こるべくして起こった事故である。
 事故を起こしたB767-300型機の着陸必要距離(着陸滑走路長)は約1700メートルである。しかし雨天時の着陸必要距離は約15~20パーセント伸びる。事故当日は雨天であり、これだけで約1950~2000㍍の滑走距離が必要になる。さらにランディングゾーン(航空機の着地点)は滑走路末端から約200メートル地点。これを差し引くと、滑走路の全長(2180㍍)からの余裕分はわずか30㍍、最大ではマイナスになってしまう。
 着陸時の航空機の速度は時速約300キロ。秒速で83メートルである。わずか1秒に満たない距離でオーバーランになる計算だ。暫定滑走路は、こうした恐るべき状態での運行が日常化しているのである。
 さらに事故当日は、風の速度や方角が急変する「ウインドシア」と呼ばれる状態だった。これは水平または垂直方向に風が強く乱れる状態で、予測は困難である。強い風雨を示す「レーダーエコー」も記録されていた。暫定滑走路の地名は天神峰、東峰だが、北総大地に峰があり風が舞いやすい地形なのである。峰の由来のひとつは房総と北総の境という意味もある。内陸性気候と海洋性気候が衝突するところなのだ。寒気と暖気が衝突し、霧が発生しやすく、風が舞いやすいところなのである。
 事故は昨年の12月(接触事故)、1月(今回)と連続的だ。この背景としては今冬ダイヤの便数もある。暫定滑走路の便数を約2割増加し、1日平均約120便にしていたからである。管制塔からの離着陸指示と誘導路の通行指示が十全に機能していない。
 暫定滑走路の運用を中止しない限り事故はさらに起こる。航空機事故は小さな事故がつづき、抜本的改革がないと必ず巨大事故につながる。これは世界的にも、歴史的にも明白な事実である。暫定滑走路の即時閉鎖を要求する。

(1月28日) 反対同盟が抗議声明

 反対同盟は27日のオーバーラン事故について「危険な暫定滑走路の即時閉鎖を要求する」との抗議声明を出した。以下は声明全文。
《抗議声明》
 1月27日午後9時49分、成田空港暫定滑走路で韓国・仁川発のエアジャパン航空908便(乗客・乗員102人、ボーイング767―300型)が滑走路南端から70メートルオーバーランし、航空灯火に激突して停止するという重大事故が発生した。
 三里塚芝山連合空港反対同盟はここに緊急声明を発し、国交省と空港公団に対して暫定滑走路の運用を即刻停止し、閉鎖することを強く要求する。
 停止地点は滑走路延長線上に位置する東峰神社の手前わずか50メートル地点である。また停止地点から200メートル先には小見川県道が横断しており、その先には人家が並んでいる。航空機がさらに滑走した場合には、東峰・天神峰地区住民と公道の通行車両に大惨事を引き起こすばかりか、乗客と乗員労働者に多数の死傷者をもたらすことが必至の重大事故であった。
 昨年12月1日には誘導路上で航空機同士の接触事故が発生している。それからわずか2ヵ月にしてふたたびあわや大惨事の重大事故が発生し、その原因究明と対策が講じられないまま、翌朝には運用を再開するとは言語道断である。
 暫定滑走路は構造的問題を抱えた欠陥滑走路である。未買収地を残したまま当初計画より320メートルも切り縮めて強引に建設した短縮滑走路である。計画当初からオーバーランの危険が指摘されてきたのである。のみならず、誘導路は2ヵ所で「へ」の字に湾曲し、うち1ヵ所は滑走路間際に大きく食い込んでいる。保安のための着陸帯はICAO(国際民間航空機関)の安全基準を逸脱し、幅は基準の半分に削られている。空港安全基準を遵守すれば本来建設できない違法な構築物なのである。あいつぐ事故の責任は、構造的欠陥を押して計画申請した空港公団総裁とこれを認可した国土交通大臣にある。
 欠陥だらけの暫定滑走路において、今回の事故をはるかに上回る大惨事の発生は必至である。国交省と空港公団は暫定滑走路の運用を即刻停止せよ。乗員労働者が、ともに立ち上がることを切に訴える。
2003年1月28日

三里塚芝山連合空港反対同盟
(連絡先)事務局長・北原鉱治 成田市三里塚115

(1月30日) 成田空港の工事実施計画取り消し訴訟、高裁判決/反対派の控訴棄却(1/31朝日、毎日、東京)

 成田空港の建設に反対する農民ら17人が、国土交通相に1967年の空港設置認可取り消しなどを求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は30日、請求を退けた一審東京地裁判決を支持、農民側の控訴を棄却した。
 判決理由で、村上敬一裁判長は「空港建設には高度の公共性があり、利益侵害の程度が高まるのはやむを得ない」と指摘。「国を挙げての土地の補償や騒音対策実施が決まっている」として許可処分を適法と判断した。
 判決によると、運輸相(当時)が67年1月、新東京国際空港公団に設置工事実施計画を認可したことに対し、同年、農民らが「騒音被害が予想されるほか用地取得も確実ではない。認可は航空法違反」として提訴。東京地裁は27年後の94年1月に請求を退けた。
 設置認可後の事業認定の取り消しを求めた訴訟は一、二審とも住民側が敗訴し、上告中。
《農民側の代理人弁護士の話》
 極めて不当な判決で断固上告する。裁判の中で成田空港の危険性を主張してきたが、危ぐどおり昨年12月に航空機同士の接触事故、今月27日にはオーバーラン事故と、暫定滑走路で2件の事故が起きた。違法な手続きで強引につくった空港は許し難く、上告審でさらに闘う。

 【本紙の解説】
 この裁判は開始から36年つづいている。高裁だけでも9年である。しかし、判決はたったの2秒間、「本件の控訴を棄却する」の裁判長の主文言い渡しだけで終わった。
 「空港設置認可取り消し」の要求は棄却されたが、36年たっても成田空港は完成していない。現実が空港の完成を拒否しているのである。この一点で、三里塚への空港設置は間違っていたことが証明されている。裁判の判決よりも、現実こそが真実である。

(1月30日) 東峰地区 公団の空港拡張構想拒否/住民ら申入書 (1/31朝日千葉版

 新東京国際空港公団が、成田市東峰地区の住民に空港拡張構想を打診していた問題で、同地区の住民らが30日、空港公団に「地区として構想は受け入れられない。計画化も具体化もするな」とする申入書を手渡した。公団側は「あくまでも構想の段階」と住民らに説明した。
 同日午後、住民ら7人が空港公団の担当者4人と会い、申入書を手渡した。申入書は「構想は地区としての存在を消滅させようとするものであり、断じて受け入れることはできない」としている。
 旧県有林(東峰の森)については「開拓時代からあり、防音の役目もしている森が消滅し、地区の農業などに被害が出る。公団が96年に森を樹林地として整備・育成すると地区に示した周辺緑化計画を自ら否定するものだ」などとした。
 公団側は住民らに「あくまでも構想の段階で、旧県有林に対する(公団の)考え方も変わっていない」と説明、改めて回答を約束したという。住民の一人は「人が住んでいるのに、構想を考えること自体もってのほかだ」と話した。
 黒野総裁はこの日の記者会見で「一般論としては、なるべく地域のつながりを壊さないよう集団移転をお願いしてきたが、基本的には個々の住民の方の判断。今は東峰地区全体について話せるだけの準備とコンセンサスに至っていない」と話し、具体的な構想には言及しなかった。

 【本紙の解説】
 具体的な構想にもなっていない「貨物基地の建設」を理由に県有林の伐採を東峰地区に申し入れてきたとは奇怪である。反対の申入書を公団に突きつけ抗議に行った東峰地区住民に対しても「まだ構想の段階だから」として、具体的な説明は何もしなかった。
 貨物地区は現在2カ所が建設中である。現在、第5ゲート(芝山の千代田地区)近くの整備地区に近い貨物地区が使われている。これを補完する目的で空港北側(成田市取香地区)に千葉県企業庁が「成田国際物流複合基地」を建設しているが遅れている。そのために、第5ゲート近くの旧日航グランドに貨物地区を増設中だ。県の物流基地は、仮に完成しても、貨物業者はすでに自前の流通基地を持っているので、テナントの販売はできないとの判断で、計画は縮小されている。
 成田空港の貨物取扱量が増加しているとはいえ、4カ所目の貨物基地は必要ない。
 今回の「貨物地区構想」の真相は、東峰地区を集団で条件交渉に引き込むための舞台づくりにある。実際に貨物基地をつくる計画はない。形式的に東峰地区全体を「空港敷地内」に組み込み、地区全体に集団移転攻撃をかけるためだけの机上の構想なのである。黒野公団総裁も「地域のつながりを壊さないよう集団移転」とこの構想の本音を語っている。それ以上のものはないので、具体的計画については言及できるはずもない。
 それにしても、黒野公団総裁は「滑走路の北延長」「天神峰西側誘導路」や「貨物基地」など、実現不可能な空論で地権者を脅すことが得意なようだ。そうした手法は、何度も使うと手あかに汚れて効果は薄れる。この点は分かっているのであろうか。

(1月30日) 成田空港旅客数、15%増え過去最多2908万人に(日経、読売千葉版、千葉日報)

 成田空港の航空機発着回数、旅客数、貨物量が昨年、過去最高を記録したことが、空港公団の調べでわかった。近距離便の利用が中心の暫定平行滑走路が供用されたことで、アジア方面が大幅に伸びた。
 昨年の発着回数は約16万3000回で、これまでの最高記録だった2000年の約12万3000回よりも約32パーセント増加。旅客数は約2900万人で過去最高だった同年の約2700万人を上回った。貨物は約194万トンだった。
 路線別では中国、韓国、東南アジア線が特に好調。旅客便発着回数では、中国線が前年比2倍の約1万5000回。韓国線や東南アジア線も同比30~40パーセント増を記録した。

 【本紙の解説】
 今月21日の成田空港の出国者数(03年1月21日付日誌を参照)でも書いたが、過去最高と喧伝されているのとは裏腹に、国交省、成田空港と各航空会社の内実は苦しいものがある。成田空港の離発着便数は2000年と比べて約32パーセント増加しているにもかかわらず、旅客数は4パーセントしか増加していない。1便あたりの乗客数は、00年が220人、02年は178人になっている。暫定滑走路が中型機中心ということから、1機当たりの乗客数は激減している。
 また各航空会社のドル箱線は北米路線である。中国が倍増、韓国が41パーセント増、東南アジアが31パーセント増となっているが、北米路線は3パーセント減である。北米路線のビジネスクラスは各航空会社の最大の収入源であるが、これが激減している。
 つまり航空会社は、航空需要の長期的落ち込みで、暫定滑走路を使用した中型機の使用で乗り切っているということである。中型機の使用は乗員コストもかかり、格安チケットの観光旅行客が主な対象であり、利益増は見込めない。
 また成田空港の便数増加といっても、関空の激減分を吸収しているにすぎない。昨年の関西空港の旅客数は前年より10パーセント減って約200万人である。成田の増加はこの関空の乗客を吸収しただけとも言える。

(1月30日) 成田空港平行滑走路でオーバーラン 公団総裁が会見(1/31千葉日報)

 成田空港暫定平行滑走路で発生したオーバーラン事故で、新東京国際空港公団の黒野匡彦総裁は30日、成田空港内での定例会見で、「いくつかの不幸な原因が重なって起きた事故。従来通りの運用を継続する」として、特別な安全対策をすぐ実行する考えはないことを明らかにした。
 黒野総裁は会見冒頭、「(事故を)重く受け止めないといけない。関係者におわびしたい」と、成田空港開港以来の事故の発生を陳謝した。
 その半面、オーバーランした事故機であるB767─300型機が通常の離発着で2000メートルの長さの滑走路を必要とすることから、「2180メートルの暫定滑走路では短いのではないか」との指摘がある点については、「従来より慎重に運用するが、国土交通省や航空会社と相談して決めたこと。その議論をやり直すことはない」と断言。
 「(当初計画の)2500メートルなら、防げた可能性はある」とも述べ、「改めて2500メートルの必要性が身にしみた」との心境も吐露した。
 2500メートルの滑走路整備で計画用地内に住む反対派農民宅などを避け、滑走路北側に延長して建設する案の着手については「今しばらく、本来計画に力をそそぎたい」と、これまで通りの方針で進める意向を示した。
 また、羽田空港の国際化に関しては「平行滑走路が2500メートル化しても早晩、能力の限界となる。その時の受け皿として羽田に能力があれば国際化は当然のことだと思う」として、09年に予定している羽田空港の国際化に反対しない意向を表明した。

 【本紙の解説】
 黒野公団総裁との定例記者会見であったが、オーバーラン事故についての初めての釈明会見となった。しかし、再発防止策は一切取らないと開き直っている。黒野総裁は、今回のことを「重く受け止め、おわびしたい」といいながらも「いくつかの不幸な原因が重なって起きた事故」として、あたかも自然災害のように表現し、「従来通りの運用を継続する」と言い放った。つまり、改めての対策は取らないといっているのである。
 公団内部や管制官などから、12月の接触事故に続いての事故であり「滑走路が短いのだから、使用機材を変更すべき」との意見が噴き出ている。つまり、B777(通称トリプルセブン)やB767―300機など、中型機の中でも比較的大きな機種の使用は中止すべきとの意見が多いのである。このまま運用を継続すれば間違いなく大事故が起きると断言する人も少なくない。
 にもかかわらず、黒野総裁は「滑走路が短かったから事故が起きたわけではない。長ければ防げた可能性が高い」とわけがわからない禅問答を記者会見で述べている。黒野の真意は短い滑走路を一方的に建設した自分の責任を棚上げし、反対派地権者に責任を転嫁することにある。地権者が土地を売って滑走路が2500メートルになっていれば事故は起こらなかった、という転倒した論理の言い訳である。
 原因は雨や風にもあるが、オーバーランなのだから、滑走路が短いことが最大の原因である。国際空港とは呼べない短さの滑走路をつくり、離着陸距離の限界に近いB777機やB767―300機を運用させてきた公団に一切の責任がある。にもかかわらず、農家が用地を売らないことが事故の原因であるかのような転倒した発言をしているのである。
 その農家の1人が「国や公団は滑走路が短くて危険なのを承知で供用を始めた。危ないから用地を売ってくれ、というなら話が違ってくると思う」としているが当然である。
 この間の事故の連続を放置すれば大事故につながることは間違いない。公団内部でも深刻に論議されている。すくなくとも、B777や今回のB767―300の使用はやめるべきであるという意見は根強い。
 われわれは、この危険な暫定滑走路の即刻閉鎖を求めるものである。

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