●(7月6日) 中部空港から独へ貨物直行便(7/7東京)
日本航空と独のルフトハンザカーゴは6日、中部国際空港と独フランクフルトを結ぶ貨物直行便を9月下旬から共同運航すると発表した。中部空港からヨーロッパへの貨物直行便は、9月2日に就航予定の日本貨物航空に次いで2例目。
運航は、週2便(往復)。ルフトハンザカーゴ社のMD-11型貨物専用機(最大搭載量95トン)を使用する。両社の共同運航は、フランクフルト-成田空港(週8便)、関西空港(週4便)に次ぐ3路線目。東欧に進出が進んでいるトヨタ自動車など自動車産業、製造業による貨物需要を見込む。ドイツからは自動車関連部品に加えワイン・チーズなど飲食品の輸送も期待される。
会見で、日本航空インターナショナルの吉野豊取締役は「かつては中部の貨物の半分が成田や関空から飛んでいたが、中部空港になって取り戻してきた。われわれの便も中部発着の貨物で満載にしたい」と話した。
ル社のアンドレアス・オットー営業最高責任者は「フランクフルトはヨーロッパでも最大の貨物基地。ハブ(拠点)空港として欧州各地に貨物を運べる」と新路線の有用性を強調した。
現在、中部空港から欧州への貨物輸送は、成田空港経由や上海経由が大半。空港会社の平野幸久社長は「直行便への期待は大きい。今後貨物拠点空港を目指すため、地元企業に利用してもらえるよう努力したい」と話した。
【本紙の解説】
中部空港開港前は、成田空港の貨物量で中部・近畿圏からきている貨物シェア(占有率)は、輸出で34パーセント、輸入で15パーセントであった。当初からその半分が中部空港に奪われると言われ、成田空港会社もそれは予想していた。
しかし、現実はそれ以上の勢いで進んでいる。すでに北米線の貨物便を増便し、欧州便の充実を図っている。中部は日本の最大工業生産地であり、かつ関西圏も近いという地理的優位さとトヨタ資本の全面的バックアップがある。こうした条件に支えられ、成田の国際貨物便は、その大半が中部空港に移行することが確定的となった。中部空港会社社長も「貨物拠点空港を目指す」と意気をあげている。
●(7月7日) ロンドンへ向かう観光客らに不安や戸惑い(7/8日経)
ロンドン同時テロの発生を受けて8日午前、成田空港や関西国際空港からロンドンに向かう観光客やビジネス客からは不安や戸惑いの声が相次いだ。
「やっぱり不安。市内はタクシーで移動するつもりだし、現地の様子によっては帰国する」。ロンドンで3日間観光する予定の都内の男性会社員(27)は顔を曇らせた。この朝の便は成田空港の雰囲気次第でキャンセルも考えていたという。「現地の友人とはようやく連絡が取れた。改めて気をつけたい」と表情を引き締めた。
「五輪開催決定の翌日に同時テロなんて。サミットで厳戒態勢のはずなのに」。8月からロンドンに赴任するため家の下見に向かう都内の女性会社員(40)は驚きと不安を隠せない。
出発延期も考えたというが「一家で現地に暮らすことになるから(危険とも)向き合わねばならない」。地下鉄でのテロに「われわれは性善説のもとに乗っている。狙われるとどうしようもない」と嘆いた。
【本紙の解説】
欧州便やロンドン便のキャンセルが出ているとは言われていないが、航空需要の中でも観光旅行目的のものは政治情勢や治安情勢に左右されやすい。今後、国際航空需要の落ち込みは確実だろう。2001年9・11とイラク侵略戦争による航空需要の落ち込みからようやく回復しつつある中での7・7のロンドン地下鉄ゲリラである。イラク侵略戦争の泥沼化の中でゲリラ戦闘は全世界的に拡大しそうだ。国連常任理事国入りを目指している日本は米国、イギリスの次のターゲットと言われている。航空業界は原油高とダブルパンチの危機に見舞われることになる。
●(7月9日) 黒野社長/北延伸決定し、2007年秋の上場を目指す(7/10読売)
成田国際空港会社の黒野匡彦社長は、暫定平行滑走路の延伸問題について、滑走路南側の未買収地(計約3・1ヘクタール、成田市東峰地区)の地権者との話し合いが今月中旬まで進展しない場合、従来の南側への延伸を断念し、北側国土交通相に「北側延伸」を申し出る考えを明らかにした。また、政府が同社の株式を100パーセント保有している状態を解消し、「2007年秋をめどに東京証券取引所への株式上場を目指す」との考えも示した。
黒野社長は、用地交渉開始の前提となる2500メートル滑走路の必要性の是非について、地権者と協議する場の設置を提案していることを明らかにした。その上で、「(北側国交相が交渉結果の報告の期限としている)7月中旬までに(協議の場を)セットできなければ、『北側に延伸するしかない』と報告せざるを得ない」と述べ、「そうなれば(国交省も)北側延伸案を採用するのは間違いない」とした。
昨年4月、新東京国際空港公団を、政府が全額出資する株式会社として発足した同社の完全民営化の見通しについては、「上場に堪えうる経営基盤が整いつつある。今秋にも、社内に常駐職員5~6人で構成する上場準備組織を設置したい」と説明。上場後に政府が保有する同社株の割合について国交省と調整し、東京証券取引所への株式上場に向けた準備作業を本格化させるという。
【本紙の解説】
黒野社長が北延伸決定と07年秋の東証上場予定を同時に記者会見で述べている。これには重要な関連がある。東証上場のためには、暫定滑走路の2500メートル化の計画が定かでない限り、政府保有株の高値売却はできない。国交省がこの間に、それを無視して「無理押しだ、昔の問答無用と同じだ」と地権者、農民から批判されても、北延伸決定を推し進めてきたのはこのためだ。成田空港株の売却益で関空の赤字を埋めなければならないからだ。
一方、政府保有株式の全株売却を早期に実現し、成田空港会社を完全民営化し、国交省からの支配を脱却したいというのが、黒野社長の本音である。そのために、上場、北延伸の決断を同時に述べているのである。
一方で黒野社長は東峰地区の地権者に対して、「国交省によって北延伸が決定されてしまう。それを阻止するために地権者らに「話し合いに応じてほしい」と申し入れてきた。にもかかわらず黒野は、北延伸を自分から国交省に申し入れてしまった。これで話し合いに応じた脱落派は「二階にあげられ梯子を外された」となってしまった。黒野社長の卑劣漢ぶりが改めて示されたが、シンポ・円卓会議の敗北を何も教訓化していない脱落派(元熱田派)にとっては自業自得のそしりを免れないだろう。
●(7月11日) 成田滑走路問題 堂本知事ら訪問に地権者家族(7/11読売夕刊、7/12日経首都圏版、朝日、毎日、産経、東京各千葉版)
成田空港の暫定滑走路の延長問題で、11日に国土交通省の岩崎貞二航空局長、堂本暁子知事、小林攻成田市長らが同市東峰地区の最大地権者の男性方を訪問。週内にも決まる見通しの北延長に向け、手続きが大詰めを迎えていることをうかがわせた。一方、男性の家族は「1時間(の訪問)で溝が埋まるわけがない」と漏らした。
3人はこの日の午前8時前から、約40メートル上を飛行機が通過する男性方を次々と訪問。それぞれ約1時間ずつ、用地を売るよう求めたという。
話し合いの後、男性は「向こうには、こちらが生活していることが見えていない。うちの方も理解するつもりがないわけではないが、北延長ありきでは仕方がない」と売却に応じる考えがないことを説明した。
3年前、暫定滑走路の供用開始をテープカットで祝ったのは堂本知事だった。その堂本知事は離着陸する飛行機の音を聴いて「人間が生活する状況でない。別の生き方を願っている」と用地売却を説得したという。
また、「県益を考えると(南に延長する)本来計画で2500メートル化を実現させてほしい」と記者らに語った。県は近年、空港会社からの要請もあり、先頭に立って成田問題に関与することはなかった。堂本知事は「会わなかったわけではない」とこの間も地権者と対話していたことを強調したが、この日の訪問に違和感を覚える人もいた。
国交省関係者は「今さら出てこられても。それならもっと前から出てくればいいのに」と冷ややかな反応だった。また、航空業界関係者からは「何もしないのに、羽田の国際化に横やりを入れてもらいたくない」と批判の声も出ていた。
【本紙の解説】
国交省は前日の10日とこの日で東峰地区の地権者7戸全員を訪問した。4月末の北側大臣書簡(05年4月30日付日誌を参照)での土地売却申し入れの返事を聞きに来たのである。それは、今月15日予定されいる北側―黒野会談で北延伸が事実上決定するので、その前に聞き取りを急いで行ったのである。北延伸決定の通告のための訪問であった。
それとは別個に堂本知事と県議2人、さらに小林成田市長がそれぞれ地権者宅を訪問した。本来計画の南側延伸のために用地交渉に応ずることを要請にきたのである。そのためか、国交省関係者は「今さら出てこられても」と堂本知事の登場に迷惑顔であったとのこと。また航空会社からは、「何もしないのに、羽田の国際化に横やりを入れてもらいたくない」とまで言われている。
北延伸決定の大きな理由として、成田空港の事業計画をこれで終了させ、千葉県が「成田が完成してない」ことを理由に羽田国際化に「横やり」を入れることほ止めさせることがあった。そのために、国交省以下が堂本知事の登場をいぶかっていたのである。
堂本知事が北延伸決定の最終局面で登場したのは、千葉県への見返り事業の要求と羽田国際化反対の主張を言い続けるためであろう。堂本知事は「この騒音では地権者は生活できない、別の生き方を願っている。本来計画のために土地を売ってくれ」などと厚かましくも申し入れ、地権者からひんしゅくをかった。
●(7月15日) 成田滑走路 本来計画を断念し、北延長へ(7/16全紙の全国版、千葉版)
成田空港の暫定滑走路の延長問題で、国土交通省は15日、本来計画とは逆の北側に延長して予定の2500メートルを確保する方針を決めた。成田国際空港会社(黒野匡彦社長)から、計画地にある南側の未買収地の用地交渉にめどが立たないと報告があり、北側一雄国交相が決断した。地元自治体などと調整し、今月中にも正式決定する。
同滑走路の2500メートル化が実現すれば、空港の基幹整備は事実上終了する。1966年に建設が閣議決定されてから、反対運動で11人が死亡、数千人が逮捕された成田空港は、話し合い解決が図られずに反対派農家が居住を続ける異常事態のまま、計画を変更して完成を目指すことになった。
本来計画の未買収地は約3・1ヘクタールで、地権者は7戸。暫定滑走路は中型機しか運用できないが、2500メートルになればジャンボ機が離着陸できる。国交省は、飽和状態の首都圏の航空需要に対応するほか、2年後に目指す空港会社の株式上場、国際的な拠点空港争いも意識し、滑走路延長を急いできた。
だが、暫定滑走路は、やはり用地買収の不調から計画よりすでに北側にずらして供用が開始されている。再度の北延長でターミナルと滑走路を結ぶ誘導路がさらに大きく迂回(うかい)することになるほか、現在の管制塔から最北端が目視できなくなるなど、運用上の問題も拡大する。また、地下化されている国道51号と交差するため補強工事も必要。今回の北延長のための用地は買収済みだが、工期6年弱、工費約330億円と、ともに本来計画(約3年、約190億円)から大きく膨らむことになる。
今後、環境影響評価(アセスメント)も行われるが、大型機の発着で騒音が増すことに反対農家がさらに態度を硬化させるのは必至とみられる。騒音対策の見直しを迫られる地元自治体も難色を示している。
【本紙の解説】
最終的に北延伸が決定したが、国交省や黒野社長は落胆の色が濃い。その理由は、本来の滑走路整備の目的ならば、南側への本来計画でなければ意味がなかったからである。
北延伸の非合理性は浮き彫りになっている。(1)滑走路の距離が伸びても発着回数が増えるわけでない。(2)旅客ターミナルからの誘導路がより長くなるので、発着便に遅れがでる可能性が高い。(3)誘導路を新設しなければ、ジャンボ機は飛べない。東峰地区の道路に挟まれて誘導路の幅が狭く、ICAO規則でジャンボ機は通行できないのである。新設誘導路の候補地は飛行コースを横切り、東側に迂回し、滑走路南端にまできて、こんどはオーバーラン帯に沿って再び飛行コースを横切って現在の誘導路と合流するしか方法はない。これは飛行コースを2度も横断するという世界的にも例がない前代未聞の誘導路になりかねない。(4)騒音コンターの策定、環境アセスメントのため、着工は早くても3年後になる。ちなみに成田高速鉄道は2002年7月に第三種鉄道事業許可を受け、翌月の8月に「環境影響評価方法書の公告・縦覧」を行い、環境アセスメントに入ったが、3年たってもいまだ結論がでていない。(5)工事費が基本計画の倍かかる。(6)国道51号線のトンネル化は夜間工事だけになり、難工事になる。さらに東関道の簡易トンネル化の問題もあり、その完成は黒野社長は6年強といっているが、それ以上かかりそうである。
そのため、黒野社長は「8割残念、2割安堵」などといっているが、取りたくない選択肢を取ったのである。国交省はいままで、北延伸ならば「交渉は打ち切る」という北側書簡を覆して、「空港会社は、今後も用地交渉するであろう」と申し訳なさそうにいっている。これは
「北延伸で交渉は打ち切る」と強く言えば、地権者は屈服するとの情報を信じて書いたが失敗だった。情報が間違っていたと反省しているらしい。
このようになった根本的原因は、暫定滑走路の開港で、40メートル頭上に飛行機を飛ばせば、農民は生活できずに屈服すると見込んでいたことの破産である。その失敗を取り戻すために、こんどは北延伸でジャンボ機を飛ばすといえば屈服するだろうと攻撃を仕掛けてきたのである。その過程で、一坪共有地強奪のための提訴、天神峰現闘本部の撤去裁判の提訴、市東孝雄さんの畑取り上げの訴訟準備など、この2年ほどで矢継ぎ早の大攻撃を仕掛けてきた。しかしながら、東峰神社裁判の勝利、天神峰現闘本部裁判の勝利的進展が地権者と支援者の団結を強め、三里塚闘争を高揚させ、国交省、空港会社の攻撃を完全に粉砕してきたのである。
暫定滑走路開港の轟音も北延伸の脅しも完全粉砕した結果が、国交省と空港会社を北延伸に追い込んだのである。また、北延伸それ自体も公聴会、環境アセスメントなど着工までのハードルは高い。一つ一つが闘争的ターゲットであり、今後10年以上の北延伸阻止闘争として三里塚の闘いは発展していくであろう。6年強という工事期間もあまりに楽観的な数字だ。成田空港は決定からすでに40年間も経過しているのだ。滑走路1本が10年で完成したためしがない。成田の工事期間は予定の数倍かかっていることを、国交省も空港会社も一番知っているはずだ。完成までに成田空港は、羽田国際化と近隣諸国の大空港建設によって競争力を完全に失って沈没する憂き目にあうであろう。
●(7月17日) いびつ誘導路「危険」(7/17東京、読売各千葉版)
成田空港暫定滑走路の北側への延長問題で、国土交通省と成田国際空港会社は、ターミナルと滑走路を結ぶ誘導路を滑走路の南端から横断するコースで新設する方針を固めた。未買収地を避けて迂回(うかい)する必要があるためだが、遠回りになるうえ、滑走路の先端部分を横切ることになり、航空業界から「安全面でも効率面でも大きな欠陥があり、世界で例を見ない形の空港になる」と批判が出ている。
暫定滑走路を現在の2180メートルから、本来計画の2500メートルに延長するのは、助走距離の長いジャンボ機の離着陸を可能にするのが目的。しかし、未買収地の間を通る現在の誘導路は幅員が狭い部分があり、中型機しか通れない。このため、幅の広い誘導路を新設する必要があった。
一方で、ターミナルと滑走路の間には未買収地が点在。誘導路に十分な幅を確保するには大回りして滑走路のすぐ先を横切るコースしかない。誘導路を造るため、滑走路の南端を北にずらす必要もあると言う。
今回の計画について、航空業界関係者は「北側から着陸した際のオーバーランなどの可能性を考えれば、滑走路ぎりぎりの部分を航空機が横切るなんてあり得ない」と安全性を問題視する。
また、安全上、離着陸の間、航空機は滑走路を横切ることができない。このため、滑走路とターミナル間を効率良く行き来できず、発着回数増の足かせとなる。同省関係者も「空港は本来の能力を発揮できない」と認める。
航空機の地上走行は、自動車に例えるとローギアで走る形で、誘導路が長くなるほど燃料負担は大きい。「遠回りで増えるコストは、年間で億円単位になるのでは」とみる航空会社もある。
ある航空会社の社員は「滑走路と誘導路は一体であるべきで、これでは2500メートル化のありがたみは半分もない。暫定滑走路が延びても多くの航空会社が不満を漏らし、使いたがらないだろう」と話している。
【本紙の解説】
暫定滑走路を北側に再延長しただけでは、誘導路が狭いため、ジャンボ機は通れず、発着できないことを認めたようだ。この現実をごまかすために、前代未聞の「東側」誘導路を造ると、一部の新聞にリークしだした。その理由は今の誘導路だとジャンボ機が通らないとの認識が本紙などの暴露で定着してきたので、北延伸の決定が地権者への脅しにならなくなったことだ。またジャンボ機が飛べないと、07年株式上場も高値に誘導できない。そのために前代未聞の「東側」誘導路なるものを一部新聞社にリークしたのである。
北延伸計画が表面化したときに、いまの誘導路ではジャンボ機が通れないことを本紙はいち早く暴露した。当時の公団はこれに対応し、非公式に「西側」誘導路を新たに造るとの噂を流した。「西側」誘導路とは市東さんの自宅西側の空港敷地外に造る「計画」だ。ところがこの計画だと予定地内に地権者が数十人もいて、この買収には少なくとも10年以上かかることが本紙の暴露で明らかになった。これでは北延伸計画にとても間に合わないことが分かったのだ(02年8月13日付日誌を参照)。
このやりとりで「西側」誘導路なる計画は噂の段階で完全に消滅した。その後、再び噂として、今度は反対同盟が集会を行う萩原さんの清水の畑(B滑走路本来計画に食い込んでいる)の脇をかすめる「東側」誘導路なるものを流し始めた。しかしこの計画では、誘導路が滑走路延長上を2回も横切るものとなり、その両方に信号機をつけて飛行機の発着時には通行を止める必要がある。これでは暫定滑走路の運用をいま以上に非効率にするだけであり、採用はほとんど疑問視された。空港の設計としてあまりに危険であり、世界的に例がないからだ。
北延伸計画はそもそも地権者への脅しが本質で、本音としては造りたくないものだった。この事情は現在も同じだ。しかし北延伸を事実上決定ししてしまった今、誘導路が狭くてジャンボ機が使用できないことが明らかになり、窮余の策として「東側」誘導路なるものをまたぞろ持ち出したのである。
航空会社も言うように、このような誘導路は造ったとしても使える代物ではない。北延伸の工事を短縮して5年半ぐらいで造りたいとしているが、それでも完成は2011年だ。そのときすでに羽田空港は再国際化しており、成田は閑散となり、暫定滑走路「北延伸」も造る必要自体が消滅するか、造っても無理してジャンボ機を飛ばす必要などなくなってしまうだろう。
●(7月21日) 黒野社長/「至らず」と陳謝(7/22朝日、読売、毎日、産経、東京各千葉版、千葉日報)
国交省と成田国際空港会社(NAA)が暫定平行滑走路の北延伸に合意した問題で、滑走路北側に住む成田市の住民団体「久住地区空港対策委員会」(松島文哉会長、1080世帯)は21日、NAA本社に黒野匡彦社長を訪ね「騒音が拡大する北延伸に反対する」と抗議した。
空港の北側に位置する同地区はほとんどが騒音区域。騒特法(特定空港周辺航空機騒音対策特別措置法)ではうるささを表すW値70以上(防止地区)で防音工事を施し、W値80以上(防止特別地区)が移転対象となるほか、騒音の及ばない「谷間」地域があり、住民団体は従来から騒音対策の線引きによる地域分断の解消や住民の実感に見合う騒音評価方法の見直し―などを求めてきた。
この日、松島会長や役員ら11人が同社を訪れ黒野社長に「北延伸で合意する前に、なぜ地元住民の了解を得る努力をしなかったのか」と抗議、「滑走路は当初計画で整備すべき」と要望した。
会談を終え黒野社長は「至らなかったことを率直にわびた。北延伸を避けたいと思い(滑走路南側の)東峰地区との話し合いにエネルギーを注ぎ過ぎた。怒りはごもっとも」と述べ、地元との話し合いを申し出た。
今後について松島会長は「国交省の説明を成田市議会空港対策特別委員会で聞いたうえ幹事会で協議する。地区の要望は何度も提出しているので分かっているはずだ。道筋はついた」と話した。
【本紙の解説】
成田市久住地区は、北延伸で騒音が拡大し、村が廃村化の危機にさらされている。暫定滑走路の供用開始で一挙に廃村・無人化が進んだ芝山菱田地区と滑走路からの距離は同じ地域になる。「久住地区空港対策委員会」には1080世帯も参加している。国交省と空港会社の北延伸のテーマで、南延伸するうえで必要不可欠な地権者との「話し合い」は論議したが、一大騒音地域にたたき込まれる久住地区は一度もテーマ化しなかった。無視されていた。
黒野社長は、そのことを謝罪し、今後、地元と話し合いを申し入れたとのことである。しかし、問題はこれからである。騒音コンターの再設定により、防止地区の範囲は広がり、移転対象となる特別防止地区の線引きなど時間のかかる作業が続くのである。
●(7月21日) 国交相が堂本知事、地元9市町村に北延伸を説明(7/22東京全国版、朝日、読売、毎日、産経、東京各千葉版、千葉日報)
成田空港の暫定B滑走路を2500メートルに延伸する問題で、北側一雄国交相が21日、県庁を訪れ、堂本暁子知事と地元の9市町村長と会談した。北側国交相は、本来計画とは逆の北側に滑走路を延長する方針を知事らに説明し、理解を求めた。
大臣は会談後に「基本的に理解いただけた」と語ったが、知事らは「(国際空港の)厳しい競争にさらされている情勢は十分認識する。北伸は苦渋の選択だと重く受け止める」としながらも、「今日はあくまで大臣の説明を伺った」と述べ、北伸計画への賛否の明言は避けた。
地元自治体からは同滑走路南側の地権者との話し合いの継続や、北伸した場合の騒音問題などについて、地域住民への説明を求める要望が出た。大臣は「地権者との話し合いは成田国際空港会社を通じてしっかりしたい。丁寧にコンセンサスづくりに努めたい」と話したという。
県と9市町村は、説明を受けた北伸計画を地元に持ち帰り、課題と要望をまとめて国交相に報告するという。「北伸」の最終判断について、大臣は「(地元から)様々なご意見をお持ちいただくことになる。それを待ちたい」。知事は「県議会や地元への説明が必要で、話を詰める必要がある。できるだけ早くまとめたい」と話した。
北伸による騒音区域の拡大について、大臣は「技術的には区域そのものの見直しは必要ではない」との見解を示したが、知事らは「今後の課題の一つだ」とした。
【本紙の解説】
北延伸の説明を受けた千葉県と9市町村は、この席では賛否の明言は避け、7月26日に対応を協議し、7月中に回答するとしている。
北側国交相はとんでもないことをこの席で述べた。騒音地区の変更・見直しは必要ないと言ったのである。
とんでもない暴言であり、これでは空港周辺自治体は受け入れられないであろう。B滑走路を北側に800メートルずらして暫定滑走路に変更したときに、それでも騒音地域の変更をしなかった理由は、「当初計画より、便数も少なく、ジャンボ機も飛ばないので、北側に800メートルずらしても騒音は拡大しない」と言い張ったのである。実際には騒音は拡大すると予測していたが、騒音コンターの変更となると数年かかり、暫定滑走路の開港がその年数遅れるので、騒音地域の見直しをしなかったのが真相である。今回は、便数も計画通りにいままでの年間6万便枠から8万便枠に増便する予定であり、ジャンボ機も飛ぶと称しているのである。そうすると、単純に考えても騒音地域は、当初計画から北へ800+320で1120メートル分北側へ拡大するのが当たり前である。
このように騒音対策地域の拡大を認めないのであれば、周辺市町村としては決して北延伸は認められないであろう。
●(7月22日) 北延伸方針を説明/国交省 成田市議会特別委に(7/23朝日、産経各千葉版、千葉日報)
成田空港の暫定平行滑走路延伸問題で成田市議会は22日、空港対策特別委員会を開き、国交省の石指雅啓成田国際空港課長から北延伸方針の報告を受けた。
石指課長は、滑走路南側地権者と用地交渉に入る見通しがつかず、国と成田国際空港会社は北延伸を選択せざるを得ないことで認識を共有したと報告。
委員との質疑に応え騒音コンターについて「予測騒音値を検討している最中だ。20万回の航空機運用に対し騒音は22万回で対応している。コンターが大幅に変わることはないが、騒音対策は必要」とした。
また、北延伸が正式決定した場合の工期は「6年程度だが、工夫してできるだけ短縮したい」としたが、空港を運用しながらの工事のため夜間に限られ、国道51号のトンネル補強工事になるため時間がかかるとした。
委員からは騒音区域の見直しや南側地権者との交渉継続、地元への説明責任を果たしてほしいとの要望が出された。
【本紙の解説】
前日の北側国交相の「騒音地区の見直しは必要ない」との発言から、質疑は騒音コンターに集中した。国交省航空局の石指課長は、「コンターが大幅に変わることはない」と微妙な発言をしている。今の騒音コンターは成田空港の発着便を22万と計算しているが、20万回だといままでの騒音コンターのままでいいということである。これでは、いくら「騒音対策は必要」と言っても、成田市をはじめとして騒音下の住民は決して北側延伸を認められない。
また、工事は夜間だけになり、国道の51号トンネルは難工事になることを認めた。それでも、工期の6年を短縮したいと言っているが、成田空港の滑走路の工事が工期通りに完成できたためしはない。これから、騒音コンターの見直し問題、環境アセスメント、誘導路問題もあり、用地が取得済みだとしてもそう簡単にできるわけでない。また、羽田の国際化が先であり、北延伸そのものが必要なくなる可能性すらある。
北延伸はいまだ、地権者切り崩しのための脅しであり、07年株式上場時の株価を高めに誘導することが、完成そのものより大きな狙いなのである。
●(7月24日) 反対同盟 北延伸決定へ緊急現地闘争
反対同盟は、7月15日の北側国交大臣と黒野社長との会談で北延伸が事実上最終決定したので、直ちに記者会見を行い、24日に現地緊急闘争を提起していた。
24日、反対同盟と支援勢力100人は、東峰の開拓組合道路に結集し、北延伸は地権者への恫喝であり、たたき出し攻撃であること、絶対に建設させないことを宣言した。また、国交省は暫定滑走路供用開始で三里塚闘争を解体し、地権者を切り崩そうとしたが、それが失敗し北延伸に追い込まれたことも力強く確認した。(詳しくは本紙参照)
●(7月25日) 国交省 地域に説明(7/26朝日、読売、毎日、日経、産経、東京各千葉版、千葉日報)
成田空港の暫定平行滑走路延伸問題で、千葉県議会は25日、総合企画水道常任委員会協議会を開き、国土交通省から説明を受けた。議員からは「国は最後まで責任を持つべき。騒音対策も不十分」との発言があった。同日は県議会のほかにも、成田空港地域共生委員会や成田空港騒音対策地域連絡協議会など、きょう26日に予定されている空港周辺9市町村長による協議をにらみ、国交省が北延伸案への理解と協力を求める“説明行脚”を実施。地域側からは騒音対策への質問や丁寧な説明を求める声が相次いだ。
□県議会・常任委協議会
県議会・常任委協議会には、委員会メンバーのほか、各会派の代表、地元成田市選出の議員や堂本暁子知事が出席した。
国交省からは井出憲文大臣官房審議官らが出席し、本来計画の断念と北延伸をめぐるこれまでの経緯を報告。その上で、「北延伸はベストではないが、ベターな選択だ」と理解を求めた。
質疑では、自身も騒音直下に住むという議員は「滑走路延伸は国策。交渉を見守るだけでなく、国が最後まで責任を持ってやってほしい。騒音対策など不十分であり、現時点では地元は(北延伸に)反対せざるを得ない」とし、同日、成田市の住民団体「久住地区空港対策委員会」(松島文哉会長、1080世帯)が白戸章雄副知事に対し、北延伸への反対を表明したことを明らかにした。
また、別の議員は「北延伸時の誘導路問題に改善策はあるか」とただした。この意見に対し、同審議官は「滑走路の設置主体はあくまでNAA。他空港とのバランス上、国は過剰介入できない」としたほか、「誘導路は買収した土地の中から増設していく」などと答えた。
□成田空港騒音対策地域連絡協議会
成田市内の騒音地域住民団体からなる「成田空港騒音対策地域連絡協議会」(平山正吉会長、騒対協)は25日、国と空港会社が「北延伸案」で合意したことを受け、緊急常任理事会を成田市役所内で開き、意見交換を行った。
理事会では、騒対協傘下の久住地区空港対策委員会が県、成田市、空港会社に「騒音が拡大する北延伸に反対」と抗議した経緯を説明した。
また、国交省の石指雅啓・成田国際空港課長も出席、北延伸案への理解と協力を要請した。
石指課長は「騒音対策に関する質問が多かった」と感想。久住地区への対応として「騒対協とも相談。必要に応じて空港会社とともに十分に説明したい」と話した。
平山会長は「大臣が北延伸を決定する前に、地元説明してほしい」と話した。
□下総町議会の特別委員会
「北延伸」になると騒音被害が大幅に拡大する下総町では、町議会が空港対策特別委員会を開き、国に説明を求めた。
出席者らによると、議員から「騒音区域の線引き見直しはどうなっているのか」「地元への説明を早期に行うべきだ」などの意見が出された。
□成田空港地域共生委員会
成田空港の建設と運用を監視する第三者機関 成田空港地域共生委員会(代表委員・山本雄二郎高千穂大学客員教授)の第53回委員会が25日、成田市三里塚の共生委事務所で開かれた。
暫定平行滑走路の北延伸問題について山本代表は「不幸な選択であり重大な関心を持っているが、もう少し様子を見守る必要がある」と述べ、共生委としての見解表明には至らなかった。
共生委には国交省の井出審議官が出席。委員から暫定滑走路南側にある東峰地区との地権者交渉を成田国際空港会社に委ねた国交省に対して「自責の念はないか」と厳しい質問が出され、同審議官は「非常に残念な事態、自責の念にかられる」と答えた。
また、県や国、空港会社に「周辺自治体の多くは東峰地区との交渉を継続すべきとの意見が多く耳を傾けるべきだ」との要望が行われた。
委員会後、山本代表は滑走路北側に住む久住地区騒音対策委員会の抗議には「大きな問題。北へいけば騒音が増える。騒音コンターに収まる、収まらない以前の問題だ」と語った。
【本紙の解説】
北延伸について地元説明をしているが、各団体への説得は不調である。説得力がないのだ。国交省は北延伸決定の理由を、「国際航空の需要が高まっている」というだけである。その国際航空需要の増大についてのデータも出していない。国際航空の需要に関して国交省は、国内旅客が12年度まで年平均で国際線が約5パーセント、国内線が約3パーセント増加するとしていると予測しているが、ここ5年は01年の9・11の反米ゲリラ、03年SARSの流行、イラク侵略戦争の開始で基本的に横ばいになっている。また、09年に羽田国際化による成田の国際便が最低3万回分、羽田に移行する計画だが、そのことによる成田空港の需要の変化についての説明もまったくない。
成田空港の2500メートル化が切迫した理由は航空需要の高まりではないのだ。「37カ国の成田へ乗り入れ希望」を待たせているという常套句があるが、乗り入れ希望国は基本的に週1便程度であり、年間換算しても発着便計算で4000回弱である。アジア便を中心に3万回が羽田に移行すれば、現在のままで乗り入れは可能だ。北延伸の完成は09年の羽田新滑走路完成の数年後なのである。
北延伸は07年株式上場時の株価つり上げのためであり、もう一つは、成田の「完成」によって千葉県サイドからの羽田国際化への抵抗を奪うためのものだからである。
国交省は、この説明行脚の中で重要なことを2点言明している。ひとつは騒音地区の線引き見直しを確約せず、何と線引きは変更しないと言い出したのである。これでは空港建設賛成派も納得できないだろう。
もう一点は誘導路の建設に関して、「買収した土地の中から増設していく」と回答したこと。現在の誘導路ではジャンボ機は飛べないことを認めたのだ。理論上、新たな誘導路を東側にもう一本造る以外にないということになってしまったのだ(05年7月17日付日誌を参照)。
「誘導路建設はあくまで成田空港会社が設置主体であり、過剰介入できない」としているが、これは滑走路延長上を2回も横切るという世界に例がない危険きわまる誘導路建設への国交省の責任回避でしかない。
●(7月26日) 成田空港圏自治体連絡 「北伸案」への要望(7/27朝日、読売、毎日、産経、東京各千葉版、千葉日報)
成田空港の暫定平行滑走路について、国が本来計画とは逆側に伸ばす「北伸案」を近く正式決定することを受け26日、空港周辺9市町村で構成する「成田空港圏自治体連絡協議会」(会長、小林攻成田市長)が成田市内で開かれ、国への要望事項がほぼまとまった。
北伸で騒音地域が広がる下総町の住民説明会が30日にあるため、この日は、北伸案に対する協議会としての態度の最終方針はあえて決めなかった。一方で、北伸決定時の国への要望は、(1)住民への十分な説明(2)本来計画地の地権者との対話継続(3)騒音対策や住民との共生策の充実--などとすることになった。
協議会終了後、小林市長は「正式決定した場合は緊急に集まって協議する。国への要望については(各自治体で意見の)差異はないのですぐ集約できると思う」と話した。
【本紙の解説】
空港圏自治体はいままで、騒音対策費の獲得のため基本的に国交省、空港会社への要望では一致していた。しかし、今回の北延伸では、空港北側の、騒音が増大する飛行コース直下の成田市久住地区、下総町と空港南側の富里市、芝山町などの北延伸推進自治体と二つに対立している。
そのために、北延伸反対も推進も掲げられなくなっている。本来計画のために、地権者への対話継続を掲げたが、騒音下住民へは、住民説明と騒音対策の充実だけになっている。騒音コンターの線引きの変更も掲げていない。
これでは、いままで無視されてきた成田市久住地区住民や下総町住民への怒りは収まりそうにない。
●(7月26日) 国交省 北延伸を下総町に説明(7/28千葉日報)
成田空港の暫定平行滑走路延伸問題で、国土交通省や県、成田国際空港会社(NAA)は26日夜、下総町の共同利用施設で、北側延伸の方針について説明した。
説明会には、同町内の13地区から区長ら約30人が出席した。同省やNAA、県の担当者がこれまでの経緯などを説明した。出席者からは「騒音対策を本来計画のままで実施するのは(下総の)住民を愚弄(ぐろう)している」「半永久的に騒音に苦しめられることになる。国は対応してくれるのか」などと、騒音区域の見直しに関する質問が出た。
これに対し同省の石指雅啓・成田国際空港課長は「現在、NAAで検証中。その結果を受け、あらためて判断する」などと述べた。
同町では31日午後3時、同7時から同施設で住民を対象にした説明会を開催する予定。
【本紙の解説】
下総町での説明会の焦点は騒音コンターの線引きを変更するのか、しないのかであった。国交省の石指課長は、騒音に関してはANNが検証中といっただけである。北延伸を決定した後に、騒音コンターの線引きを変更するかどうかを判断するというのだ。これでは、滑走路直下の住民は決して北延伸に同意などできるはずもない。800メートル北側にずらした暫定滑走路も本来計画のままの騒音コンターのままであった。成田市はその時点の騒音を調査している。それは、800メートルずらしたことだけでもいままでの騒音コンターではカバーできないことは明らかであったはずだ。それに加えて320メートルさらに北側にずれ、ジャンボ機も飛ばすというのである。騒音コンターの線引きの書き換えは絶対に必要なのである。住民の生活が破壊され、廃村化することは、空港南側の芝山町菱田地区や岩山地区をみれば、それは明らかである。騒音コンターを書き換えたとしても無人化、廃村化は引き起こされる。しかし、騒音地区の組み込まれなければ、補償もゼロなのである。
●(7月28日) 天神峰現闘本部裁判
北延伸問題が政治焦点化する中で、天神峰現闘本部裁判の第7回口頭弁論が開かれた。現在の争点は、「地上権」を反対同盟が持っているのかどうかである。地上権の要件は(1)建物が登記されていること、(2)その登記建物が現存していることの2点。
反対同盟は、木造の旧現闘本部が現存しており、これを鉄骨建物が取り囲む二重構造になっていることを写真などで明らかにしている。それに対して原告空港会社は、「木造建物は、その一部が解体され、これを吸収する形で鉄骨造りの建物が建築されたため、鉄骨造り建物の一部となり、独立した建物としては現存しない」と主張している。
この日弁護団は、「一部が解体」としているが、「一部」とは建物のどの部分か。「吸収」とはどのような状態をいうのか。「独立性を喪失」とあるが、その根拠を釈明せよと要求した。
空港会社は「解体部分は、木造建物のうち東側部分の土間を取り囲む三方の周壁」「吸収とは、木造建物の残存部分が建物としての独立性を失い、鉄骨建物の一部分に取り込まれたことを意味する」「独立性を喪失したというのは、相当部分の周壁が取り壊されたことにより外気分断性を喪失し、もはやそれ自体では集会所としての用途に供される状態になく、独立した不動産としての取引性も認められない」と釈明した。
しかし「三方の周壁」というが、そもそも窓と引き戸であり、これを外しただけである。解体ではない。逆に、原告側は屋根、柱、礎石のすべてと西側部分の「周壁」がそっくりそのまま現存していることを認めてしまっている。また「吸収」という言葉は法律用語にはない。木造建物を建て増して周囲を鉄骨建物で囲ったのだから、「外気分断性の喪失」というのもデタラメだということは明白である。
裁判闘争はいよいよ最大の攻防を迎えた。この裁判闘争はこの口頭弁論で2年目に入った。天神峰裁判闘争支援する会が新たな会費納入を訴えている。支援する会のアピールを添付する。 アピールへ
●(7月28日) 成田空港対策協議会 NAAに暫定滑走路の早期完成を要望(7/29千葉日報)
地元経済団体などで組織する成田空港対策協議会(空対協、豊田磐会長、36団体)は28日、北延伸による平行滑走路の早期完成を求める要望書を成田国際空港会社(NAA)に提出した。要望は昨年11月以来3度目。
今回は付帯条件として(1)滑走路南側の用地内地権者との交渉継続(2)、騒音下住民への説明責任と環境、共生策推進、(3)2500メートル化による市税増収分を騒音、隣接地区に集中、効率的に配分する――ことを求め騒音下住民への配慮を強調した。
要望書を黒野社長に手渡した豊田会長は「(平行滑走路の南側を整備する)本来計画がベストだが、現時点では実現できておらず、残された道、次善の策である北延伸に決まりそうだ。決めた以上は早期に整備してほしい。加えて騒音下住民への環境対策を実施することが早期完成への早道になる」とした。
これに対し黒野社長は「力強い要望に意を強くした。(正式決定すれば)一日も早く供用開始できるよう全社あげて頑張る」と述べた。
現状では環境影響調査関係に2年、誘導路新設や国道51号トンネル化補強工事など滑走路を運用しながらの夜間工事に4年を要し完成までに約6年かかるとみられているが、国交省では「工期短縮に努力したい」としている。
【本紙の解説】
空港周辺の商工会などは、北延伸による経済効果を当て込んで2500メートル化の早期決定・完成を国交省や空港会社に要望している。28日の成田空港対策協議会の要望書提出を前に、26日は芝山町商工会(飯高稔雄会長)、27日には成田商工会議所(野間口勉会長)と富里商工会(木川義光会長)が同じ内容の要望書を空港会社に提出している。
しかし、北延伸による経済効果は基本的に望めないのである。北延伸で2500メートル化したとしても誘導路がそのままではジャンボ機は飛ばないし、便数もいままで以上に増便はできない。そのため、何としてもジャンボ機を飛ばすために、出てきたのが東側誘導路の新設である。しかし、2ビルエプロンからすぐ滑走路延長上を横切り東側に出て、こんどは滑走路南端のぎりぎりの部分を横切って「へ」の字部分直前で合流するものである。これは、安全性が大問題なのだが、経済効率としても失敗である。そのために、国交省も「本来の能力を発揮できない」と認め、航空会社は、「遠回りで増えるコストは、年間で億円単位になるのでは」といっている。さらに「滑走路と誘導路は一体であるべきで、これでは2500メートル化のありがたみは半分もない。暫定滑走路が延びても多くの航空会社が不満を漏らし、使いたがらないだろう」とまでいっている(05年7月17日付日誌を参照)。
それ以上に暫定滑走路の2500メートル化は2012年予定であり、羽田新滑走路の完成後であり、日本と周辺アジア諸国の空港再編が終わった後であり、こんな使い勝手の悪い滑走路を使いたがる航空会社はないだろう。
暫定滑走路は本来計画の南側延伸で初めてその経済効果を計算できるのである。ここを空港対策協議会も各商工会も思い違いをしている。
中部国際空港の開港、韓国・仁川空港による追い上げ、そして羽田国際化で成田空港が競争に敗北するのではとの危機感から北延伸による2500メートル化でなんとか、危機を脱出したいという願望は分かるが、それは北延伸による2500メートル化で解決しようがないのである。むしろ、北延伸は建設費の増大で成田空港の危機を促進するものでしかない。
●(7月28日) 国交省次官 北延伸決定、来月に延期(7/29読売千葉版)
成田空港暫定平行滑走路の北延伸をめぐり、国土交通省の岩村敬次官は28日の会見で、北側国土交通相が北延伸を正式決定する時期について「7月末に住民説明を予定している自治体もあり、月内のとりまとめは難しい」と述べ、8月に延期する考えを明らかにした。
国交省は7月30日に成田市久住地区、同31日に下総町で住民説明を予定。また、8月1日に成田市など9市町村長の会合、同2日に県議会の全員協議会が開かれるため、正式決定は3日以降になる見通し。
岩村次官は「非常に大きな判断なので、地元の意見を全部くみ上げた上で最終決断することが大事」と述べた。
一方、堂本知事は28日の定例会見で、成田空港暫定平行滑走路の北延伸について、来週前半にも県の意見を北側国交相に伝えたいとの考えを示した。
堂本知事は「オール千葉として国にアプローチする」と述べ、関係市町村の意向を踏まえる姿勢を強調。その上で、国交相に意見を伝える時期については「来週前半」とした。
堂本知事は29日、同滑走路北延伸について県選出国会議員に説明する。
【本紙の解説】
国交省は成田市久住地区の反対を押し切って、北延伸の最終決定を行うために、成田市久住地区、下総町の北延伸反対住民への切り崩しに躍起になっている。北延伸の最終決定を7月末としていたが、「北伸で騒音被害の拡大が懸念されている久住地区の理解が得られていない」(黒野NAA社長=7/28毎日千葉版)ので、国交省は千葉県や空港周辺地区の意見を聞き判断するとして8月に決定を延期するとしている。
しかし、久住地区への説明をして納得をかちとろうというものでない。あくまで、予定の説明会を開いた後にすぐにでも決定というのだ。これでは、久住地区は納得もできないであろう。国交省と空港会社は久住地区の1081世帯3351人と、下総町の大半の反対を押し切って北延伸に着手するというのだ。これは第二の成田闘争の始まりである。成田空港と北延伸は十数年たっても完成しないという羽目に再び陥りそうだ。
●(7月30日) 成田市久住地区 国交省説明会開催(7/31朝日、読売各千葉版、千葉日報)
成田空港北側の騒音区域内にあり、暫定平行滑走路の北延伸による2500メートル化に反対している成田市久住地区の住民団体「久住地区空港対策委員会」(松島文哉会長)は30日、北延伸について国土交通省の石指雅啓・成田国際空港課長から説明を受け、意見交換を行った。
説明会は地区内の公民館で開かれ、住民ら約80人が参加。成田国際空港会社や県の担当者、成田市の小林攻市長も出席した。この中で石指課長は、「未買収地の用地交渉が進まず、残念だが北延伸せざるを得ない。我々のできる騒音対策はきちんとやらせていただく」と述べ、理解と協力を求めた。
これに対し住民からは、本来計画より800メートル北にずれている同滑走路の北端が北延伸でさらに320メートル伸びることについて、「いずれ本来計画に戻すというから暫定滑走路に我慢してきたのに、北延伸するのでは納得がいかない」との批判が相次いだ。また、「我々にとっては騒音や振動が増すだけで、国のやり方はまるで地元の切り捨てだ」などの意見も出た。
説明会終了後、松島会長は、「現段階で反対姿勢に変わりはなく、改めて国と空港会社の説明を待ちたい」と話した。
国交省による地元説明は、きょう31日に下総町でも行われる。
【本紙の解説】
国交省の石指課長は住民の要求である騒音コンターの見直しには絶対に触れなかった。「騒音対策はきちんとやらせていただく」と言われても具体的にどうなるのかはっきりせず、久住地区住民は納得しないだろう。
石指課長は、7月22日の成田市議会空港対策特別委員会で「20万回の航空機運用に対し騒音は22万回で対応している。コンターが大幅に変わることはないが、騒音対策は必要」と述べている。つまり、いまの騒音コンターは22万回の航空機運用で対応しており、いまの運用範囲は20万回なので、騒音コンターの見直しは必要ないと言っていた(05年7月22日付日誌を参照)。
これは800メートル北にズラして暫定滑走路を決定した時に使った便法である。ジャンボ機も飛ばないし、便数も少ないので、騒音コンターの見直しをやらずにきた。しかし今回はさらに320メートル北にずらして、ジャンボ機も飛ばすと言っているのだ。さらに7月22日の時と違う点は、北延伸した場合、誘導路も新設するので発着回数上限が現在の20万回から22万回に増便できると言い始めたことだ。
ここから導き出される結論は、いままでの石指課長の言動からも騒音コンターの見直しは必要になるということだ。うたい文句としてジャンボ機も飛ぶ、回数も現騒音コンター策定時の根拠となった22万回に達するというのだ。そして騒音域は800メートル+320メートル北に拡大するのだ。コンター見直しは当然の措置だろう。それをなぜ言明しないのか。騒音コンターの再策定は時間がかかるからだ。北延伸の工期を短縮したい国交省はやりたくないのである。
このような騒音コンター見直し拒否は、住民の怒りを無視するもので許されないことである。
●(7月31日) 下総町で住民説明会 騒音対策求める意見(8/1朝日、読売各千葉版、千葉日報)
成田空港の暫定平行滑走路の北延伸問題で、下総町の住民を対象にした説明会が31日、同町共同利用施設で開かれた。
説明会は2回に分け行われ、国土交通省航空局の石指雅啓・成田国際空港課長が、延伸問題のこれまでの経緯を説明、住民に理解を求めた。
住民側からは「(北延伸した場合の)騒音区域の線引きはどうなるのか」「住民が納得する説明をしてから(北延伸を)お願いしたい」などと、国や成田国際空港会社(NAA)に騒音対策の説明を求める質問が出た。
これに対し、石指課長は「(NAAの)作業が終わり詳細なデータがまとまり次第、地元に説明したい」などと述べた。
同問題をめぐっては、30日にも成田市の住民団体に説明会が実施され、騒音対策への不満が続出していた。
【本紙の解説】
成田市久住地区と同じように騒音コンターの線引き見直しが最大の関心事であった。ここでも石指課長は騒音コンターの線引き見直しには言及せず、空港会社の作業がまとまったら説明すると言い逃れた。
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