●(4月1日) 「北伸」 居住者ら3人が反対声明(4/2朝日、読売、毎日各千葉版、千葉日報)
成田空港の暫定平行滑走路(2180メートル)の南側の居住者ら3人が1日、国土交通省と成田空港会社などに向け、滑走路の本来計画(2500メートル)を北に伸ばす「北伸」への反対声明を出した。居住農民ら同地区の地権者2人は、声明に参加しなかった。
声明は、地権者ら同意さえ得られないのに、国交省や空港会社は勝手に北伸案に動いていると批判。「すべての情報を開示し、その上で地域をはじめ多くの関係者の議論を待つべきだ」としている。
北側一雄・国土交通相は今年1月、3月末までに用地交渉に進展がなければ北伸するよう同社に指示。黒野匡彦・空港会社社長は近く交渉の進み具合を北側国交相に報告する予定。声明については「いまは本来計画の実現をお願いしている段階。北伸についてコメントするのは適当でない」としている。
【本紙の解説】
声明を出したのは脱落派の石井恒司と現地支援から東峰に住んでいる樋ケ守男、東峰でらっきょう工場を経営している平野靖織の3人である。彼らは北延伸を「シンポ・円卓会議」と同じような「話し合い」でストップしようとしているのである。しかしシンポ・円卓会議は何をもたらしたか。ひとつは「熱田派(脱落派)」の組織としての崩壊である。事務局長であった石毛博道はいまや空港建設の積極的推進者に成り下がった。石井新二、島寛征などは無惨なほどの腐敗堕落の道に陥った。
そしてもう一つは暫定滑走路の着工と建設である。隅谷意見書が何を言っても政府・国交省は相手にしない。それどころか、これほど「話し合い」をゃったのだから、工事は当然だという論理を許してしまった。
今回の三者声明の題目は「成田空港の形は国交省-空港会社だけできめていいものですか」という呼びかけだ。論理的な帰結は「空港の形を地権者も含めて話し合おう」ということだ。「話し合い」の結果は目に見えている。「話し合い」の内容いかんにかかわらず、権力に取り込まれ、工事開始の口実になるだけなのだ。シンポ・円卓会議の無惨な結果を改めて総括すべきだろう。
●(4月7日) 暫定滑走路問題/2500メートル化 交渉継続(4/8朝日、読売、毎日、日経各全国版、読売千葉版、千葉日報)
成田空港暫定平行滑走路(2180メートル)の2500メートル化をめぐり、同滑走路南側の未買収地(成田市東峰地区、約3・1ヘクタール)の地権者との用地交渉について国土交通省は7日、成田国際空港会社による交渉の継続を認めた。空港会社の黒野匡彦社長は、読売新聞成田支局の取材に「これ以上の期限延長はない」と述べ、延長された期限が地権者との交渉のタイムリミットとの認識を示した。
国交省航空局も、「(次回報告で)仮に空港会社から交渉期限の延期を要請されても、認められない」としている。また、交渉継続の期限について、黒野社長は「そんなに長くは認めてもらえない」ととらえており、大型連休前まで地権者との交渉にあたり、それまでの経過を国交相に報告する考えを示した。
同滑走路の2500メートル化については、北側国交相が今年1月、同社に対し、滑走路北側の保安用地などを活用した北延伸計画の具体的検討と、3月末まで用地交渉し、その進展状況の報告を指示。
空港会社は、暫定供用強行についての謝罪文案を提示し、3月27日からは早朝・夜間の発着制限も行って、地権者に話し合いのテーブルに着くよう呼びかけてきた。
地権者の一部には、これらをある程度評価する声もあるが、話し合いが用地交渉に直結することを警戒する意見もあり、空港会社側が求めている地区全体としての協議には応じていない。
こうした状況から、黒野社長は、「交渉は流動的。会社として一定の方向性を持って大臣に説明できる材料がまだない」とし、同省に交渉経過の報告延期を求めた。
交渉継続が決まったことについて、約1・6ヘクタールを所有する最大地権者の男性(58)は、「(交渉に)期限があることに変わりはない。期限付きの交渉に応じることは難しい」と話した。
【本紙の解説】
国交省と空港会社との間で、北延伸をめぐって鋭い対立抗争が発展している。黒野社長は延期の申し入れの理由として「会社の話を聞いていただけそうな地権者と、厳しい意見をお持ちの方がいる。会社として一定の方向を持って大臣に説明できる材料がない」(4/8千葉日報)と言っている。「一定の方向」とは、地権者との交渉テーブルを持ち、南側延伸のための切り崩しを開始するということだ。しかし、まだ国交省を説得できるほどはっきりしていない。このままでは、北延伸を押しつけられる。あと少し延期してほしい、ということである。空港会社の本音は何とか「話し合い」(用地交渉)のテーブルをつくり、北延伸を取り止めたいということである。
一方、国交省北側大臣の方はある理由から北延伸を強行したいようだ。「延期も1カ月、2カ月待つという話ではない」「空港会社からの報告に基づく判断だが、滑走路を今後どうするのかという最終判断になる、3月末と言ったことは重さがある」と発言している。これは次の報告が事実上、北延伸の決定になるという意味だ。何が何でも決定したいのである。
なぜ、国交省と北側大臣はこれほどまでに北延伸を焦っているのか。国交省は一貫して三里塚農民の生活と闘いを無視してきた。それが三里塚闘争を全国的闘争として発展させ、40年も闘争を継続させる根本問題だった。66年成田空港の位置決定の経緯、71年代執行、78年暫定開港、86年二期工事開始、02年暫定滑走路供用開始と、すべてがその歴史である。
しかし、今回の北延伸は今までと違う。当事者の成田空港会社が嫌がっているものを押しつけているのだ。空港会社だけでなく、周辺自治体も反対している。これをねじ伏せようとしているのである。
この強硬方針の最大の理由は07年株式上場にある。上場時に暫定滑走路が2500メートル化しているかどうかで株価は数倍の開きがあるという。株券販売の収入は空港会社には一銭も入らず、全額国庫に入る。空港整備特別会計である。そのため、どうしても05年に延伸を決定し、06年に着工に持ち込みたいのだ。もうひとつは、成田の未完成を理由に羽田国際化に反対している千葉県の抵抗を止めさせたいという問題もある。
そして今回の北延伸問題で隠れた動機は、実は関空である。空港特別会計の使い道の大半は、関空の赤字埋め合わせと関空二期工事の資金として計画されている。北側一雄大臣は関空のお膝元、大阪市堺市が中心の大阪16区選出の衆院議員だ。前任の扇千景大臣の跡を継いで、この空港特別会計から関空二期工事の資金を捻出するために全力をあげているというのが本音であろうか。
黒野社長は「声明」をだした一部グループ(05年4月1日付日誌を参照)の動きを使って交渉テーブルをつくり、暫定滑走路の2500メートル化に関して空港会社のヘゲモニーを握りたいところである。しかし、いずれの思惑も粉砕されるであろう。
●(4月7日) 着陸した貨物機のタイヤから煙 成田空港(4/8朝日、読売、毎日、日経、東京各全国版)
7日午後1時27分ごろ、米国アンカレジからの日本貨物航空の貨物専用ジャンボ機(ボーイング747型)が成田空港のA滑走路に着陸した際、タイヤ付近から大量に煙が上がった。成田国際空港会社(NAA)によると、機体のエンジンカバーが滑走路脇の滑走路灯数個に接触して破損、滑走路灯も壊れた。発火はしなかった。
NAAによると、着陸時に強風にあおられて機体のバランスを崩したことが原因とみられる。
A滑走路は午後1時28分から約36分間閉鎖され、点検と破損部品の回収が行われた。この事故や強風のため、午後2時30分までに、同空港に着陸予定だった12便が羽田、中部国際、関西などの各空港に到着地を変更した。
午後1時前には、北京発成田着予定の全日空機が強風のため上空で待機中に燃料が少なくなり、羽田空港に午後1時15分に緊急着陸した。
成田航空地方気象台によると、同空港上空は高気圧の影響で南西からの強い風が吹き込んでおり、午後2時ごろには風速17.5メートルを観測した。
【本紙の解説】
日本貨物航空は、全日空の子会社である。日航の整備不良や事故が連日、新聞をにぎわしているが、全日空も同じ航空情勢の中にあり、条件は同じである。問題になる整備不良などが表に出ないだけである。
今回の事故は整備不良(航空荷物の積み方もふくむ)と気象条件のふたつが複合的に重なって起きたものであろう。航空貨物は荷物の積み方を調整して前後、左右の重量のバランスを取っているのである。
もうひとつは成田空港が平行に南東から北西に走る滑走路が2本だけしかないことが原因になっている。南西からの強い風だと進入方向に対してまともに横風になる。いまは、計器着陸なので、真横からの強風でも進入する。横風滑走路のない成田ではなおさらである。
気象条件と横風滑走路のない空港に着陸指示した管制の問題と厳しい条件での操縦技術の人的問題も出てくるが、それ以上に整備、強風の横風でも進入させる空港政策の方が問題なのである。
いずれにしろ、航空産業は供給過剰で厳しい競争の中で、人件費コスト、整備コストを極限まで削減し、きわめて危険な航空機の運航を行っている。そのツケは航空機の大事故として回ってくるのである。
●(4月10日)反対同盟、団結花見の会
反対同盟は春恒例の団結花見の会を、三里塚第一公園で開催した。動労千葉をはじめとする共闘団体など約100人が参加、桜吹雪舞う中で和やかな時間を過ごし親睦を深めあった。(詳しくは本紙参照)
●(4月11日) IATA事務総長/成田の着陸料「20パーセント程度削減を」(4/12朝日、毎日、日経)
約270社の航空会社が加盟する国際航空運送協会(IATA)のジョバンニ・ビジニャーニ事務総長が11日、東京で記者会見し、「航空業界は燃料費以外で年数パーセントのコスト削減努力をしている。独占的に経営している空港も着陸料などを引き下げるべきだ」と語り、成田空港についても「着陸料を20パーセント程度削減してほしい」と注文した。
ビジニャーニ事務総長は「原油価格の高騰で、03年に430億ドルだった燃料費は05年は760億ドルに膨らみ、業界全体では55億ドルの損失になる」との見通しを述べた。事務総長は、航空各社の営業費用のうち約10パーセントを空港使用料などが占めていることから、使用料引き下げなど空港側の努力も求めた。
また米国同時多発テロ後に、各国が打ち出した航空保安対策のシステムの仕様などが異なるために、航空会社と利用者が56億ドルを負担していると指摘。航空業界と各国が協議して統一したシステムを作るべきだと強調した。
【本紙の解説】
IATAは成田空港が世界一の着陸料であるとして、いままで何回も値下げを強く要求してきた。しかし、成田空港は、首都圏における唯一の国際空港であり他に代替がないことを盾にとって要求を無視してきた。しかし、民営化の理由がコスト削減と着陸料の値下げであることから無視できなくなった。それ以上に、今年の中部国際空港の開港、09年の羽田の国際化で首都圏の唯一の国際空港という独占権益もなくなってきたことと、韓国仁川などの周辺諸国空港との競争力を欠いてきたことが値下げせざるを得ない本当の理由である。
だが、成田空港は民営化したが、目に見えて経営状態が良くなっているわけではない。これから「北延伸」という難題を国交省から押しつけられ、巨大な建設費がかかり、経営破綻も予想されており、値下げもそう簡単なことではない。
●(4月14日) 成田到着の日航機の左翼部品欠損(4/15朝日、読売、毎日)
14日午後5時20分ごろ、ホノルルから成田空港に到着した日本航空73便のジャンボ機(ボーイング747―300型、乗客乗員428人)を点検した整備士が、左主翼の部品の一部が欠損しているのを見つけた。同空港はA滑走路を午後6時から3分間、閉鎖して調べたが、部品は見つからなかった。日航によると、なくなっていたのは左主翼の前縁にあるフラップ(高揚力装置)の表面を覆うカバーの一部で、長さ約1メートル、幅約30センチのアルミ製の部品。空気の流れを整えるための装置のカバーで、一部が脱落しても飛行の安全に支障はないと言う。
【本紙の解説】
成田での落下物事故があった14日は、日航にとって相次ぐ運航ミス、事故などで国交省から出された「事故改善命令」に、社内調査結果と再発防止策をまとめて提出した矢先であった。事故の理由を合併による社内体制の不備と効率優先のあまり安全に対する認識不足と結論づけた。これは、きれいごとの報告書である。その中で、効率優先を定時運航のためとしている。実際は効率優先とはコスト削減であり、整備を極端に合理化したことが大きい。外注化などで航空機整備の優先順位を下げれば事故は多発することは分かっているが、経営政策上あえてやってきたのである。
04年度の航空機落下物事故は、国内航空会社が起こしたものは156件とこの4月10日に国交省から発表された。前年度の1・6倍であった。この数字は航空機はきわめて危険な交通機関であることを示している。2、3日おきに落下物を落としているのである。この数字に外国航空会社の落下事故は含まれていないので、日本における落下事故は、実際はもっと多い。04年度に成田空港で落下物による滑走路点検回数は19回あり、羽田では49回もあった。落下物は滑走路だけでなく、近隣の住宅地、農地にもひんぱんに落ちている。
日航のトラブルが問題になり出したのは、2月28日新千歳空港での管制無視による離陸滑走路、3月11日仁川空港での滑走路の誤進入からである。その後、落下物、尻もち事故などがマスコミを連日にぎわしているが、実は落下物はいままでも日常茶飯事であった。
航空機の運航は便利であるが、いまだ未完成の交通手段であり、危険が付きまとっている。それゆえ、なりよりも安全対策を優先しなければならない業界である。規制緩和と競争重視で、効率や利益を安全性よりも優先させたことが、今日の日航の現状をつくり出したのである。
安全に対する「ハインリッヒの法則(1:29:300の法則)」というものがある。アメリカのハインリッヒ技師が労働災害の統計を分析し、導き出だした法則である。数字は、重大災害を1とすると、その背景には軽傷の事故が29、そして無傷災害は300があるという警告である。この法則によれば日航による重大事故は間近である。85年の日航機東京-大阪123便の御巣鷹墜落事故から20年だが、このような大惨事が起こりかねないのである。
国交省は、一連のトラブルを「ヒューマンファクター(人的要因)が多い」と他人ごとのように言うが、部品交換せず誤使用を続けるなどの整備ミスによるトラブルは、自らが原因をつくり出した問題である。日航は93年以降、日航本体での整備士の採用を中止し、整備部門の分社化や海外委託化などを進めてきた。その結果、ベテラン整備士が整備現場以外への転出を強制されるか、人手不足の中で過酷な勤務を強いられているのである。これは、明らかに整備コストの削減のためである。安全対策と整備を犠牲にして収益優先の運航をしているのである。
●(4月14日) 成田空港会社社長、暫定滑走路問題で地権者らに謝罪(4/15読売、日経各全国版、毎日、産経各千葉版、千葉日報)
成田国際空港会社の黒野匡彦社長は14日、用地買収交渉が難航している2本目の滑走路近くに住む地権者らと会談し、地権者らの反対を押し切って暫定滑走路の供用を2002年4月に始め騒音被害を与えたことなどを謝罪した。
黒野社長は15日に北側一雄国土交通相に交渉の進ちょく状況を報告する。黒野社長は今後、交渉が進展する可能性があるとみて、報告の中で「このまま話し合いを継続すべき」との意見を述べる方針。
一方、国交省では交渉の進展に厳しい見方もある。空港会社が話し合いを継続するのか、あるいは交渉を断念して本来の計画とは逆の北側に暫定滑走路を延長するのか、どのような結論に達するかは依然、不透明な状況。
関係者によると、会談では「地元との話し合いで問題解決にあたる」としながら暫定滑走路の供用を強行した空港会社の姿勢に、地権者側から厳しい意見が出た。今後の交渉については、具体的な話はなかったと言う。
【本紙の解説】
黒野社長は4月7日に、地権者との交渉期限である3月末の延長を国交省に申し込んだ(05年4月7日付日誌を参照)。黒野社長は、その後の記者会見で「大型連休前まで地権者との交渉にあたり、それまでの経過を国交相に報告する」と話した。連休前までに交渉し、連休後に国交省に報告という考えであった。約1カ月の延長である。
しかし、北側大臣は「1、2カ月延ばして、交渉が大きく好転する強い見通しがあるなら別だが、昨年(交渉加速を)お願いしてから相当時間がたっている」と言って、交渉を打ち切るかどうかを決断する時期が迫っていることを強調した。同じく国交省・岩村次官は「目に見える成果が上がっていないことは残念だが、移転交渉に全力を尽くしているNAAの判断を尊重したい。報告が1カ月とか2カ月といった先になるとは思っていない」と言っている。
つまり、黒野社長は1カ月の延長を申し入れたが、「1カ月先とは思っていないと」と拒否された格好になっている。実際に報告したのは、この会談の翌日15日であり、約1週間であった。
そのために、黒野社長と「北伸」に反対声明を出した3人が(05年4月1日付日誌を参照)中心になって会談を組織し、黒野社長が通り一遍の謝罪文を提出したのである。国交省が現時点で北延伸強行を決定することは阻止したいということが両者の思惑であり、その下でもたれた会談である。それだけが目的であり、用地交渉が出来ない現状では会談の内容の具体的な進展など望むべくもないのだ。
●(4月15日) 成田空港暫定滑走路 「北延伸」に大きく近づく(4/16全紙)
用地交渉が難航している成田空港暫定平行滑走路問題で、成田際空港会社の黒野匡彦社長は15日、北側一雄国土交通相を訪れ、用地交渉の現状報告を行った。黒野社長は滑走路延長予定地区の成田市東峰地区地権者と初の会合を持つなど、用地交渉に努力を傾注していることを説明。なお交渉への時間的猶予を要請した。これに対し、北側国交相は、近日中に黒野社長を呼び、最終方針を指示することを伝えた。南側の未買収地を避け、滑走路を当初計画と逆の北に延伸して整備するかどうか、同省の判断が示される。黒野社長は北延伸に大きく近づいたことを認めながらも、予定されている次回の東峰地区地権者との会合の成果に交渉継続への期待をつなぐ。
北側国交相への報告で黒野社長は、東峰地区地権者との話し合いの場が設置できたことなどを示し、「もう少しだけ時間をいただきたい」と要請した。
説明を受けた北側国交相は、空港会社のこれまでの努力を評価しながらも、「着工の目途がないことは大変遺憾。なお努力してほしいが、今回の報告を基に大臣、国土交通省、政府として判断し、近日中に指示を出す」と国として最終方針を示す考えを伝えた。
空港会社は当初計画での完成を目指し、地権者との交渉や環境づくりに努力してきた。14日には、黒野社長と東峰地区地権者との話し合いの場が初めて設けられ、黒野社長は地権者側の意向に反して暫定滑走路の運用を始めたことを謝罪した。
しかし、用地交渉まで踏み込むことはできず、目立った進展はない状況。このため、同省では用地買収は困難との判断に傾いており、北側国交相から北延伸の指示が出される公算が強まった。
ただ、北延伸を判断する際、北側国交相は「地元自治体、関係者と話をする必要がある」とも述べ、国が一方的に決めるのではなく、地元の意見を聞いて決める意向もみせた。
報告後に会見した黒野社長は「ここまで来ましたと説明できるものがなく、じれったい。大臣としても形のないものに、これ以上時間をかけるわけにはいかないのだろう。一歩、二歩と北延伸案に近づいたと言わざるを得ない」と認識。「大臣からきちんとした指示が出た以上は従う」と述べた。
ただ、地権者の理解を得る見通しでは「もっと時間があれば、可能性はあるかもしれない」と話し、ギリギリまで努力する一方、社内部では北延伸の準備も進めていく。
一方、ようやく実現した東峰地区地権者との話し合いは次回会合が決まっている。黒野社長は「なるべく早くセットし、地権者の理解を目に見える形で手にしたい。それによっては、大臣の指示が先延ばしになることも期待できる」と、一縷(る)の望みを託した。
【本紙の解説】
前日に行った東峰地区との会談を「着工の目途がないことは大変遺憾」と北側大臣からののしられ、近日中に最終方針を指示することになった。「国交省は、暫定滑走路を南に延ばす当初計画を断念し、反対の北側を延伸するよう成田国際空港会社に月内にも指示する方針を固めた」(4/16日経)と報道されている。それに対して、空港会社もこの指示に従う見通しと言われている。
北側大臣と国交省は何が何でも暫定滑走路の2500メートル化の見通しを株式上場時までに確定させたいのである。40年間にわたる空港建設で地地元農民を無視し、一方的に計画をごり押ししてきたことが今日までの反対闘争を生みだした原因だったと政府自身が認めた経緯に照らしても、北側大臣の態度はあまりに傲慢である。あのシンポ・円卓会議(94年に最終報告)の場ですら、政府は今後、地権者の同意なしに一方的な建設は決して行わないと公的に確約したのではなかったか。この期に及んでぶっきらぼうな「謝罪文」を突きつけ、これをのまなければ延伸する(ジャンボ機を飛ばすとの脅迫)という大臣の姿勢は、それ自体が厳しく批判されるべきだ。また、シンポ・円卓会議の政治談合を「民主主義の偉大な成果だ」と絶賛したマスコミ全紙が、今回の北側国交相の姿勢を一言も批判できないていたらくは誠に無様である。
06年度から北延伸工事を開始しても、実際に工事に取りかかるのはその約3年後の08年である。それまでに、環境アセスメントと騒音コンターの新規作成が行われる。暫定滑走路の800メートル延長に関しては、北にズラしてもジャンボ機が飛ばないので、騒音はいままでと騒音コンターと同じとしてきた。環境アセスメントも必要ないということであった。しかし、こんどの320メートル北側での再延長は、建前上、ジャンボ機も飛ぶので、800プラス320=1120メートルの延長として、騒音コンターの策定と環境アセスメントが必要になるのである。
09年には羽田4本目の滑走路の供用開始と国際化が始まる。実際に成田空港にとって暫定滑走路の2500メートル化が必要かどうかが改めて判断されることになるだろう。
今回の決定は実際にどう運用されるかよりも、株式上場のためである。また、北延伸を最終決定し、その軒先工事の恫喝で地権者を屈服させるためである。黒野社長は、地権者の会談を「なるべく早くセットし、地権者の理解を目に見える形で手にしたい。それによっては、大臣の指示が先延ばしになることも期待できる」と言っているが、北延伸阻止を目的として集まった会談が不調に終わった中でそれは難しいことではないか。自分の手で北延伸を進めながら、会談をやるというのは、地権者の切り崩し目的だけであり、それは不可能であろう。
実際の北延伸は国道51号の本格トンネル化、東関道の簡易トンネル化、誘導路の問題(いままではジャンボ機は通過できない)、管制塔からの視野の問題などがあり、形だけ2500メートルにして、運用はいままでのままとなるしかないようだ。これは、株式上場のためのジャンボ機が十全に飛べるというウソであり、詐偽に近い行為である。
●(4月18日) GWの成田利用、過去最高に 出国ピークは29日(4/19朝日、毎日、日経)
成田国際空港会社(NAA)は18日、ゴールデンウイークにあたる28日~5月9日に89万7637人が成田空港を利用するとの予測を発表した。前年同期に比べ、5.9パーセント(5万134人)増で、この期間の利用客としては過去最高となる見通しだ。
NAAによると、長期休暇が可能な曜日の配列のため、欧州や米国本土などに出かける旅客が多い。ただ、中国での反日デモの影響が懸念材料という。
出国客は44万2091人(前年同期比7.1パーセント増)、到着客は45万5546人(同4.8パーセント増)。出国のピークは4月29日の5万8069人で、同空港の1日あたりの出国者数としては過去最高となる見込み。到着のピークは5月7日の4万9605人。
【本紙の解説】
今年のゴールデンウイークは休日の配列で欧米便が多いといっても、成田出国では中国を中心とするアジア便が過半数を超えている。その中国でキャンセルが相次いでいる。
全日空では、今月11日から15日までの5日間だけでも、中国行き団体客のキャンセル数が1日平均1000人、合計5000人に上ることを発表した。今月末までに、キャンセル数はすくなくとも1万2000人に上るといっている。
日本航空では、4月・5月分の日本発中国行き団体客らのキャンセルは、デモ開始から18日までに5500人あまりに達しているとのこと。
この日航、全日空の発表は、全国の空港からのものであるが、成田空港からが半数近くになるらしい。
また、香港の地元旅行業者は、「前年より20~30パーセント程度減る」との予測している。
航空運輸産業は他の交通機関と違って、政治情勢によって変動を受けやすい。理由は航空需要の約半分が観光旅行であり、目的地が危険な状態となれば、あえて無理をしない旅客も多いからだ。航空業界の基盤のもろさを示す事例である。
●(4月19日) 国交省 羽田再拡張 深夜に国際貨物便/旅客は700万人想定(4/19日経)
国土交通省は羽田空港に4本目の滑走路を建設する再拡張事業で、国際線ターミナル施設の事業実施方針をまとめた。事業の前提となる条件として、午後11時から午前6時の深夜時間帯に、国際貨物便を就航させる方針を正式に示した。旅客は年間3万回程度の国際定期便の発着で約700万人が利用すると想定した。昼間と合わせ、年間50万トンを取り扱う貨物上屋や、積み込みなどを行うトラックヤードを整備する。
就航路線は従来の方針通り「羽田発着の国内線の距離を目安とする」と明記した。羽田-石垣空港間の約1900キロメートルが基準となるため、韓国の釜山やソウル、中国の上海、大連などが対象となる見込み。ターミナルはPFI(民間資金を活用した社会資本整備)方式で建設する。7月ころに事業者を募集、2006年に事業者と契約を結び、09年の施設使用開始を目指す。
【本紙の解説】
羽田空港国際化が具体化してきた。旅客便は年間3万回、700万人。深夜時間帯には、欧米からの貨物便も就航させる予定。貨物取扱量は年間50万トン。なお、まだ決定していないが、深夜の時間帯には欧米からの旅客便も受け入れることを千葉県に申し入れている。
成田の国際線旅客は年間で約2600万人、貨物取扱量は年間で約200万トンである。基本的に旅客も貨物も成田空港利用の4分の1が羽田に移行することになる。羽田国際化による新需要の創出と航空需要の拡大ということもあるが、この間の航空需要の推移をみてみると基本的に横ばいである。航空需要は01年9・11反米ゲリラ、03年イラク侵略戦争の開始、SARSの流行などで乱高下しているが、基本的には増加していない。
それ以上に、深夜時間帯に欧米便の旅客便を受け入れるとなることも計画されている。1900キロメートル圏の釜山、ソウル、上海などの便は乗り継ぎ便を除き、全便羽田移管となりそうだ。その結果、成田の経営は成り立たなくなることは確実だ。
●(4月20日) 成田騒対協 「北延伸」容認できぬ/成田市長と会談(4/21読売千葉版、千葉日報)
成田空港暫定平行滑走路の延伸問題で、航空機の騒音下に暮らす成田市民で作る「成田空港騒音対策地城連絡協議会」(騒対協、平山正吉会長)は20日、成田市役所で小林攻市長と会談した。騒対協側は「北延伸は到底容認できない」として、滑走路を南側に延ばす本来計画での2500メートル化実現を国などに働きかけるよう要請した。
会談は騒対協の平山会長ら役員5人と小林市長が出席して非公開で行われた。出席者によると、騒対協側からは、未買収地地権者との交渉など成田国際空港会社のこれまでの取り組みを評価する意見が出た。北延伸案については、騒音被害拡大などの懸念から、住民の間には批判的な意見が出ているとの指摘があった。
会談後、騒対協は「協議会の意見をくんでいただき、本来計画による早期整備に格段の配慮をお願いしたい」との要望書を小林市長あてに提出。同様の文書を成田国際空港会社にも提出することにしている。
これを受けて小林市長は成田商工会議所など36団体で構成する「成田空港対策協議会」や成田市議会からの意見も聞いたうえで、来週にも、同市を含む空港周辺9市町村で国交省に本来計画の実現を要望する。
小林市長は読売新聞の取材に対し、「暫定平行滑走路の問題を、これまでのように国と空港会社だけで決めてはいけない。本来計画を求める地元の意見も反映させるべきだ」と語った。
【本紙の解説】
国交省は、周辺住民が空港の設置でどれほど苦しんでいるのか理解していない。空港設置による経済効果を宣伝しているが、空港の飛行コース直下の生活は悲惨である。騒音による身体的病気や精神的不安定の発生は数限りない。また、騒防法によって自宅の防音家屋への改築を行ったが、援助枠以上に建築費がかかったり、防音家屋にしたが、夏でも窓を開けられず、エアコンでの暮らしになったという例がある。
それ以上に騒音地区であり、新規転入者は皆無となり、廃村化が進行している。また騒音下なので山林や田畑の地価の値下がりも著しい。航空落下物による危険にも一年中さらされている。
騒対協がこの住民の声を反映し成田市や国交省への抗議をどこまでやれるのであろうか。今までも騒対協は条件派であり、騒音対策費の拡大で言いくるめられてきた。しかし、民営化した成田空港会社には騒音対策費を拡大する余裕はない。また、国交省も羽田の4本目の滑走路建設、関空の赤字補填、関空二期工事の建設費用などが必要であるが、空港整備特別会計が約1兆円の赤字を抱えており、成田に落とせる財源などない。今回の北延伸の決定も成田空港会社の株式上場でできる限り高値で売りたいという発想から出発したもので、地元の利益など考えられていない。再び三度、地元の要求は国交省によってねじ伏せられることになるのである。
●(4月22日) 成田暫定滑走路で国交省 最終方針前に経過説明(4/23東京全国版、朝日、読売、毎日、日経、産経各千葉版、千葉日報)
用地交渉が難航している成田空港暫定平行滑走路の2500メートル化問題で、国土交通省は22日、堂本暁子知事や成田市の小林攻市長らと会談し、これまでの交渉経過と合わせ、交渉が困難な場合は、本来計画とは逆の北に延ばす案について説明を行った。
同省の岩崎貞二航空局長は県庁に堂本知事を訪問。国として暫定滑走路問題をどうするか、近日中に最終判断を示すとした北側一雄大臣の方針などについて説明した。
岩崎局長は会談後、記者団に「本来計画でできれば良いが、めどが立たなければ北伸を考えねばならない。そんなに長い時間をかけてやっていくことではない」と述べ、国の最終判断を示す時期が近づいていることを改めて示唆した。
堂本知事は「空港会社も時間がほしいといっているので、もう少し待ちたい」とする一方で、「本来計画の方が時間的にも早く完成できる。一日も早い完全空港化のために地権者の方に協力してほしい。要望があれば県としても役に立ちたい」と述べ、交渉成立に期待を示した。知事は近く北側大臣とも会う予定。
一方、同省の井出憲文審議官は成田市役所に小林市長を訪ねた。北延伸案に対して空港周辺9市町村が本来計画の推進を要望していることなど地元の情勢について意見交換した。
小林市長は会談後、「大詰めに来ている現状について説明を受け、地元の事情について話した」と述べたうえで、「きょうは意見交換だけで、国からの説明という段階ではない」ことを強調。改めて「本来計画通りが望ましい」との認識を示した。
【本紙の解説】
国交省はこの連休前までに黒野社長を呼びつけ、北再延伸決定を指示するはずであった。しかし、周辺自治体への説得を欠いており、そのために最終決定が遅れている。
「成田空港圏自治体連絡協議会(成田、富里、大栄、多古、下総、芝山、横芝、松尾、蓮沼の周辺9市町村で構成)」が25日に、開催され、そこで「本来計画の南側への延伸を求める要望書を提出する手筈になっている。空港圏自治体連絡協議会の会長の小林成田市長は、「国は空港問題がこじれた原因と同じ手法を取ろうとしている。北側国交相の姿勢は前向きとは思うが、地元の声にも十分耳を傾けてほしい。このまま北延伸が決まるようなことがあれば、新たな火種が増える」(4/22千葉日報)と北延伸強行決定反対を表明している。
小林市長が述べているように、国交省は、成田空港を地権者のことだけでなく周辺住民のこともまったく無視して空港建設を推し進めてきた。これが三里塚闘争の歴史である。国交省はまた同じ手法で2500メートルをやろうとしている。空港圏自治体連絡協議会を北延伸賛成に持ち込むために千葉県と成田市を訪れたのである。周辺自治体は周辺対策費のばらまきで何とか空港建設推進の立場を取ってきた。成田空港建設のために周辺対策費はこれまでに3000億円を超える。しかし、その周辺対策費が成田空港の民営化で激減しており、周辺自治体は成田空港と国交省に不満が募っている。小林市長も民営化の時に、「民営化で地元対策が切り捨てられるのではないか」と懸念を表明していたが、その通りになっている。国交省は最終決定を力でねじ込むのか。それとも伝統的手法で周辺対策費をばらまくのか。いずれにせよ決定ありきである。今回の訪問はその通過儀礼にすぎない。
●(4月22日) 暫定滑走路/中国東方航空機、着陸直後に立ち往生(4/23朝日、東京、日経、千葉日報)
22日午後7時15分ごろ、北京発成田行きの中国東方航空271便(エアバス320型、乗客・乗員73人)が成田空港に着陸直後、タイヤから出火して滑走路上で動かなくなった。同航空の点検で、主翼の下のタイヤ4本がすべてパンクしているのを確認。乗員・乗客にけがはなかったが、同航空は運航不能とみて乗客を滑走路上で降ろし、旅客ビルまでバスで誘導した。
成田国際空港会社(NAA)によると、タイヤの出火は、NAAの消防センターが消火した。同空港は事故直後から同機が着陸したB滑走路(2180メートル)を閉鎖。その後に予定されていた発着機はすべてA滑走路(4000メートル)に振り分けた。
【本紙の解説】
航空機事故が頻発している。このような事故は前から多発していたのであるが、日航の問題でたまたまマスコミが注目しているにすぎない。日航だけでなく、全日空の航空機も22日小松空港で管制違反の無許可滑走を行い、緊急停止させ、離陸をやり直している。
航空機は危険な未完成な交通機関であり、整備がなおざりであったり、管制システムがいい加減であれば必ず大事故は発生する。航空業界は、米国の規制緩和要求によって競争が激化してきた。その結果、安全対策を無視しての運航が頻発しているのである。事故に関して「ヒューマンファクター」が原因のものが多いというのも、乗務員などへの労働条件の悪化と労働強化が推し進められている結果である。
中国東方航空271便の事故により暫定滑走路はこれ以降、終日閉鎖になった。4本のタイヤのパンクと出火の原因の解明はこれからであるが、タイヤに無理な力がかかったことは確実である。暫定滑走路が短いことにより、無理矢理に急ブレーキをかけたためではないか。整備不良ということも考えられるが、4本ともということで暫定滑走路の短さが原因の一つだと推察できる。
●(4月25日) 成田空港圏自治体連絡協議会/「本来計画」推進を要望(4/26朝日、読売、毎日、東京各千葉版、千葉日報)
成田空港の暫定平行滑走路を2500メートル化する延伸問題で、「成田空港圏自治体連絡協議会」(会長・小林攻成田市長)は25日、滑走路南側に伸ばす「本来計画」推進の要望書を北側一雄国交相に提出することを決めた。
今日、26日、小林会長はじめ協議会メンバーが国交省を訪ね、要望書を渡す。
空港圏協議会(成田、富里、大栄、多古、下総、芝山、横芝、松尾、蓮沼の9市町村で構成)は25日、多古町で開かれた総会で成田市から提案された要望書の取り扱いを協議。
国が成田国際空港会社に検討を指示した「北延伸」案に、地元自治体として反対を意思表明する意向が示されたが、メンバーから「国と地方が対立している印象を与えるのは良くない」といった慎重論や「現状では(北延伸に)容認でも、絶対反対でもない」といった意見が出され、文案を修正のうえ、北延伸にはふれず本来計画推進に絞ることを決めた。
協議会終了後、成田市の小林市長は「国には、本来計画で誠心誠意努力して欲しい―との要望を行い地元の意思を伝えたい」と述べた。
国交省は、空港会社が進める平行滑走路南側用地内に居住、耕作する東峰地区地権者との用地交渉に進展がみられない現状では、滑走路を当初計画とは反対の北に延伸せざるを得ないとの判断を固めており、連休明けにも官邸との調整のうえ最終決断をする方針。
【本紙の解説】
暫定滑走路直下の成田市小泉地区などの騒音地獄にたたき込まれる住民の反対を受けながらも、空港圏自治体連絡協議会は「北延伸反対」の文字を消してしまった。北延伸で騒音下が広がるのは成田市の久住地区と下総町である。その成田市の提案が北延伸反対(あくまで南側延伸=本来計画のための用地交渉)との立場である以上、それを連絡協議会の案にするのが筋であろう。
ところが各周辺自治体は、空港会社からの周辺対策交付金の増額が目当てなので、正面から国交省・空港会社と対決できず、早々と条件賛成派の旗幟を鮮明にしたのである。
それにしても歴代の成田市長の中で、小林市長ほど指導性のない人はいなかったのではないか。
●(4月26日) 「本来計画通りに」 自治体連絡協、国に要望書(4/27朝日、読売、毎日、産経、東京各千葉版、千葉日報)
成田空港暫定平行滑走路の延伸問題をめぐり、空港周辺の9市町村で組織する「成田空港圏自治体連絡協議会」の小林攻会長(成田市長)らは26日、国土交通省を訪れ、滑走路を本来計画通り南に伸ばして2500メートル化するように求める要望書を、岩崎貞二航空局長に渡した。
国交省は連休明けにも、滑走路を北に伸ばす「北伸案」を成田空港会社に指示するとみられるが、小林会長は「地元としては最後まで本来計画を訴えていきたい」と話した。一方、岩崎航空局長は「(北伸案は)一日や二日で結論を出す問題ではないが、月単位の時間をかけるつもりもない」としながらも、「要望は聞いたので、意見交換をしていかないといけない」と話した。
また同日、成田市内の住民団体「成田空港騒音対策地域連絡協議会」(平山正吉会長)が成田空港会社を訪れ、本来計画で滑走路を整備することを求める要望書を、黒野匡彦社長に提出した。
平山会長は「北伸は騒音問題の拡大が懸念され、住民としては納得できない」とする一方で、「正式に北伸を決めるなら、その前に地域と話し合ってもらいたい」と「北伸」に理解を示す姿勢もみせた。黒野社長は「残された時間は長くないが、最後まで地権者に本来計画への協力をお願いしていく」と述べた。
【本紙の解説】
空港圏自治体連絡会議も北延伸反対の言葉を避け「本来計画を」と後退した中で、騒対協も後退している。「北延伸を決定する時は地元に十分相談するように求めた」と条件交渉を要求しているのである。そのために、黒野社長にも「北延伸に絶対反対とは聞いていない。騒音下の久住地区の話は十分承知している」と開き直られている。
しかし、成田市久住地区は昨年「北延伸は基本計画と異なるもので、騒音下住民の存亡にかかわり到底認められない」と決議をあげ空港会社に申し入れている。空港南側のA滑走路直下の芝山町大里、暫定滑走路直下の菱田地区が廃村化の憂き目にあっている。成田市の遠山地区の十余三も廃村化に陥っている。久住地区は地区の存亡がかかっているのに、周辺自治体も騒対協も北延伸問題を騒音補償増額のための材料としか考えていない。このことを国や空港会社から見透かされているのだ。それで「絶対反対ではない」などといわれ、金でどうにでもなるという扱いになってしまっているのである。
●(4月28日) 空港社長/前向き地権者と交渉先行の用意(4/29読売、毎日、産経各千葉版、千葉日報)
成田空港暫定平行滑走路の延伸問題で、成田国際空港会社の黒野匡彦社長は28日の定例会見で、成田市東峰地区の地権者7人との交渉について、地区の了承を得たうえで、用地交渉に前向きな地権者から先行して話し合いを進める用意があることを明らかにした。これまで話し合いは、あくまで会社と地区の間で行うとの方針だった。しかし、北側国交相が近日中に、本来計画とは逆の北延伸を指示する可能性が高いことや、地権者の間でも対話の進め方に考えに違いがみられることなどから、一部地権者との交渉を進展させ、本来計画続行を国交相に求めるとみられる。ただ、国交省は「地権者全員が近日中に移転につながる動きをみせない限り、北延伸は避けられない」(航空局)との考えを変えていない。
【本紙の解説】
黒野社長は国交省の北延伸計画を“拒否”し、本来計画に戻したいようだ。本来計画とは、この期に及んで地権者との「話し合い(用地交渉)」をやりたいという意味だ。そのために4月14日に行った東峰地区の有志の話し合い(05年4月14日付日誌を参照)の2回目を強引に開催しようとしているのだ。
しかし、4月14日の会談では全員の合意が得られなかった。このままでは国交省の北延伸強行方針に逆らえないので、「地区の了承を得たうえで、用地交渉に前向きな地権者から先行して話し合いを進め」ようというのだ。この交渉は純然たる「用地交渉」であり、別の新聞にも「用地買収交渉を個別に進める可能性を示唆した」(4/29産経千葉版)とまで評されている。
空港会社も用地買収交渉といっているが、国交省側は「地権者全員が近日中に移転」するのでもない限り、北延伸を強行するといっている。「話し合い」に応じる姿勢をみせている一部地権者は「対等の会談」とか「シンポジウム・円卓会議の継続」だとかいっているようだが、事実は単なる用地買収交渉だと黒野社長自身がはっきり表明している。
しかし、国交省が北延伸を最終決定するというのもおかしな話だ。北延伸を実行する主体は空港会社である。その空港会社が“反対”しているのだ。政府が全株式を保有する特殊会社ではあるが、それは07年上場までのことだ。それ以降は政府の意向は反映されにくくなる。羽田の国際線枠の決定権を盾にした行政的締め付けということになる。
北延伸の工事は環境アセスメント、騒音コンターの策定などにより、実際に工事が開始されるとしても、3年後の08年ごろになる。07年上場で空港会社が完全民営化された後なのだ。
国交省は北延伸決定で上場時の株価つり上げに必死だ。北延伸で頭上40メートルにジャンボ機を飛ばされる農家の怒りや苦悩など、およそ考慮の外といった感じである。
●(4月29日) 羽田空港/滑走路閉鎖中に着陸(4/30夕刊全紙、5/1全紙)
東京・羽田空港で29日夜、日本航空機2機に対し管制官が誤った着陸許可を出し、うち1機が補修工事で閉鎖中のA滑走路に着陸していた問題で、閉鎖を事前に知っていた日航機2機の操縦士が4度にわたり、「(着陸許可は)間違いないか」などと問い合わせたにもかかわらず、管制官が「間違いない」などと応答していたことが30日、国土交通省の調べで明らかになった。
また着陸をやり直した飛行機に対して管制官は、閉鎖の事実に気づいてからも、そのまま着陸を強行するよう指示。事故を恐れた機長が自らの判断で、閉鎖滑走路への着陸を回避していたことも判明した。
航空機の操縦士が管制官の指示が誤っていないかどうかを問い合わせたり、指示に逆らって着陸のやり直しを行ったりするのは、極めて異例な事態。
29日夜は、たまたま補修工事開始が午後9時30分の滑走路閉鎖後の約1時間半後に始まる予定だったため、飛行機と工事車両の接触などを免れた。国土交通省は、一歩間違えば大事故につながる異常なミスの連鎖だったとして、当該の管制チーム18人を業務から外すとともに、同省航空・鉄道事故調査委員会も原因を解明している。
航空法は管制官や操縦士に対し、業務に入る前に、空港の閉鎖などを告知する「航空情報」を確認することを義務づけている。ところが当該管制チーム18人が業務に入る前、全員で事前の打ち合わせを行ったものの航空情報の確認を怠り、全員が滑走路閉鎖を忘れてしまった。
一方、日航機の機長らは航空情報を確認していたため、誤着陸した日航1158便と、着陸をやり直した同1036便の操縦士は、閉鎖滑走路への着陸指示に誤りがないか管制官に照会。しかし管制官が誤った回答をしていた。
1036便担当の管制官は、交代予定だった別の管制官から指摘を受けて閉鎖に気づき、「A滑走路は閉鎖中です」と日航機に伝えた。にもかかわらず、その後「そのままA滑走路に進入を継続せよ」と矛盾した内容を指示。
さらに着陸継続を指示しながら「(A滑走路への着陸は)できません」と指示するなど混乱が続いたため、日航機の機長は着陸には危険が伴うと判断、自ら着陸やり直しを宣言し、管制官も機長の判断を追認した。
この異常な管制指示について、同空港事務所は「とっさの判断に迷って着陸指示を出してしまったようだ」と説明している。
【本紙の解説】
管制官18人で構成するチームの全員が失念していたことは、単なるヒューマンエラーということですまされない。システム自体の問題と総括すべきである。この管制官のチームはこの日、午後3時から午後10時まで勤務であった。A滑走路の閉鎖時刻はこの日は午後9時30分からであり、勤務時間と重なる時間は30分であり、閉鎖時間は夜勤の時間帯と思っていたとのことであった。つまり、その日の事前のブリーフィングでも説明はなかった。また、工事情報は、3月上旬に掲示板と文書で伝えられたとのことである。そのために、「頭の片隅にあったが、失念していた」とのことであった。
問題は管制官の激務にある。日勤、夜勤と三交代制を6チームで回しているのである。事前のブリーフィングも20分間前後である。航空機の管制業務は少しのミスも許されない。その重圧と緊張に耐えられる集中力と体力が必要なのである。しかし、航空業界の競争激化、各空港間の競争の中で、強労働が強制されているのが管制官である。
米国における資本攻勢の一大激化が81年の米空港管制官ストライキに対するレーガンの制裁から始まったことは象徴的だ。カナダでも2003年6月10日に労働協約暫定案に調印するまで、管制官が30カ月もの長期労働争議を闘っている。航空管制官(2300人)を組織するCAWローカル5454とNAVカナダ(航空管制公社)との間の争いで、労働強化のための休暇削減が対決案件であった。
いずれにしろ、航空産業の労働者の中でもっとも過酷な労働の一つが管制官の労働なのである。このことは羽田でも成田でも同じである。日航など航空会社が事故で問題になっていることと同じことが、管制官でも起こっているのである。
●(4月30日) 環境保全へ数値目標 成田空港(4/30朝日千葉版)
成田国際空港会社(NAA)は、環境保全に対する具体的な取り組みを示した「エコ・エアポート基本計画」を発表した。航空機の発着回数1回あたりの大気汚染物質や地球温暖化物質の排出量を、06年度までに02年度比で5パーセント削減するとしている。
計画では、窒素酸化物などの大気汚染物質、二酸化炭素などの地球温暖化物質、一般廃棄物などを重点項目に掲げている。中期目標を06年度、長期目標を10年度までとし、削減目標を数値化した。
空港関連の約500の事業者が取り組む。中期目標が達成された場合の窒素酸化物の削減量は、10トントラック約5万7千台が東京、大阪間を走る際に排出する量に相当するという。
対策としては、低排出ガス航空機やハイブリッド車など低公害車両の導入を航空会社に要請するほか、施設に太陽光発電などを採り入れることをあげている。
【本紙の解説】
このエコ・エアポート計画もペテンである。窒素酸化物などを5パーセント削減すると「10トントラック約5万7千台が東京、大阪間を走る際に排出する量に相当する」といっているが、実際は、その20倍の大気汚染をしている。つまり、成田空港は年間で「10トントラックが約5万7千台」の20倍の窒素酸化物を排出しているのである。
航空機と空港はそれ自体がすさまじい環境破壊をもたらすものだ。自然環境だけでなく、人間生活も破壊する。それゆえ空港は、飛行コースの周辺約20キロを無人化する性質を持っているのである。航空落下物や墜落の危険も含め、危険きわまりない存在なのだ。人口密集地に建設するようなものではないのである。それをエコ・エアポート計画だとか。空港と人間の共生だとかいうこと自体が、本質を覆い隠すペテンなのだ。
●(4月30日) 東峰地区へ航空局長訪問/住民ら憤り(5/1朝日、読売日経、東京各全国版、朝日、読売、毎日、産経、東京各千葉版、千葉日報)
成田空港の暫定B滑走路の2500メートル化問題が、大きな山場を迎えている。30日、国土交通省の岩崎貞二航空局長らが北側一雄国交相の手紙を携えて同滑走路用地内の成田市東峰地区の地権者宅を訪問した。しかし、大臣の手紙で示された「協力が得られなければ北伸案を選び、交渉を打ち切る」などという国の方針に、地権者らは一様に厳しい反応を示した。
国交省の岩崎局長と井手憲文審議官はこの日、午後0時半ごろから、各戸を訪問。不在だった2戸を除く5戸とそれぞれ約20~50分間話し合い、国の考え方を説明。近日中に売却への意思を示して欲しいとした。
これに対し、地権者の1人は「航空局長が来るというのだからもう少し地域を理解してもらえると期待したが、かえってマイナスだった」と話し、「立ち退かないと騒音から逃れられないのは強制収用に匹敵する。売る気はさらさらない」と国の姿勢を批判した。また、別の1人は「手紙は読んだが、受け取らなかった。交渉してくれ、そうでなければ北に伸ばしますでは脅しとしかいえない。最後通告ともとれる」と憤った。岩崎局長は「全体的に厳しい反応だった。今後は省内に持ち帰って検討する」としている。
同地区の5戸は29日夜、成田国際空港会社(NAA)の黒野匡彦社長が14日の同地区との初会談で示した「過去の一方的な手法に対する謝罪」の受け入れを確認したばかり。地権者の1人は「国は、謝罪する一方で脅すとはどういうことだ」としているが、黒野社長は「最後の最後まで地権者の方々と話し合いを続けたい」と話している。
【本紙の解説】
国交省の姿勢は66年の成田空港位置決定の時とまったく変わっていない。「一方的建設手法を真摯に反省」、「我が国の全ての公共事業にとって、永遠の教訓」といっていながら、また再び一方的に北延伸を住民無視で決定するというのだ。
「国際航空需要に対応」するということで、「喫緊の課題」、「一刻の猶予も赦されない状況」といって北延伸を無理矢理押しつけようというのだ。この「国際航空需要」なるものがいままで空港建設を強行してきた元凶である。66年の位置決定の時も「羽田空港はすでに満杯であり、一刻の猶予もない」といっていた。しかし、成田空港が暫定開港するのは78年であり、決定の22年後なのである。「一刻の猶予もない」といいながら、羽田空港はその後、22年間も首都圏における唯一の国際空港としてあったのである。「一刻」が22年間なのである。成田の農民はこのように歴史を学んできた。いまさら「一刻の猶予もない」という言葉で脅されるほどヤワではない。
国際航空需要の増加を国交省は年5パーセントと予測しているが、これもまやかしである。2000年から2004年の国際航空需要は実は横ばいなのである。01年9・11反米ゲリラ、03年イラク侵略戦争開始、03年SARSの流行などの理由で、航空需要は増加していない。航空需要の過半数以上が観光客であり、政情不安や感染症の流行によって左右されやすいからである。今後も政情はさらに不安定になり、感染症の流行もより懸念されている中で、国際線航空旅客は増えることはない。
この北側大臣の手紙で特筆すべきことは、「北伸となる場合は、これ以上の用地交渉をお願いすることはないと考えております」という部分である。国交省も北延伸を決定したとしても用地問題が解決した場合は本来計画に転換するといっていた。また、本来計画の方がいいと本人もいっているのである。にもかかわらず、用地交渉は打ち切りということをなぜわざわざいうのであろうか。それは北側大臣の三里塚闘争に関しての理解度の低さを示して余りある。もう用地交渉は打ち切りだといえば、「ごね得」の人は用地交渉に応じるのではないかと考えているのだ。三里塚闘争を「ごね得」の闘争とみているのである。
これほど三里塚闘争の歴史を理解していない大臣をみたことがない。だからこそ、これほどまでに強引に北延伸を押しつけてくるのであろうか。
以下は北側大臣書簡の全文である
■北側大臣の手紙全文
前略
国土交通大臣の北側でございます。書面にて失礼ながら成田空港平行滑走路の整備について、私どもの心底をお伝え申し上げたいと存じます。
成田空港の長く重い歴史の積み重ねの中で、私どもは、空港建設に反対する方々の意見を伺い、地域との対話を軽視した一方的な建設手法を真摯に反省し、成田空港問題シンポジウム・円卓会議を開催して、今後は話し合いにより用地交渉を行うこと、地域と共生する空港を理念とすることを約束いたしました。成田空港建設反対運動は、空港建設にとどまらず、我が国の全ての公共事業にとって、永遠の教訓となっております。
暫定平行滑走路の整備は、話し合いによる用地問題解決の糸口を見いだせない中で、当面の航空需要に対応するための苦渋の選択の結果、やむを得ないものでありました。暫定平行滑走路直近の生活環境には、想像を上回る厳しいものがあるものと拝察申し上げます。
その後、空港会社において、東峰神社訴訟の和解をはじめとする対応を行ってお互いの距離も縮まり、何度もの真剣な話し合いが積み重ねられてきました。また、先般は、内外の多くの航空会社や相手方空港の協力を得て滑走路運用時間を制限し、先日、東峰区と空港会社との話し合いが行われたところであります。
国際航空ネットワークは、我が国の経済、社会、文化等の全ての分野において、ますます必要不可欠なものになっております。成田空港は、我が国と世界の国々とをつなぐ空の表玄関であり、内外の増大する国際航空需要に対応できていない容量不足を解消するための平行滑走路の2500メートル化は、いうまでもなく喫緊の課題であり、一刻の猶予も赦されない状況にあることをご理解願いたいと存じます。
平行滑走路の2500メートル化については、本来計画による整備が望ましいということはいうまでもありません。そのためには、これまで話し合いを積み重ねてきた用地問題の解決が不可欠です。貴殿の人生の一部であり、精魂と慈しみをこめて育ててきた大切な土地をお譲りいただきたく、何卒、ご理解とご協力をお願い申し上げます。ご意志を近日中にお示しいただければ幸甚です。
話し合いによる用地問題の解決が大前提でありますので、この件について貴殿の理解が得られないのであれば、誠に残念ではありますが、本来計画を断念して、北伸案をとる以外の選択肢はなくなると考えております。なお、北伸となる場合は、これ以上の用地交渉をお願いすることはないと考えております。
私どもも、これまでの空港建設の教訓を生かし、シンポジウム・円卓会議で結実した地域と共生する空港を基本的理念として、マイナスの影響の除去のみではなく、空港の発展が地域の発展につながるよう、地域と連携した施策展開に努力して参りました。今後とも、地域と空港が相互理解の下で互いの発展を目指していく方向は、決してゆるがせにせず、空港の発展を地域の発展につなげていく所存です。
この成田地域や、地域の皆様のためにも、本来計画による平行滑走路の整備についてご理解とご協力を賜りますよう、お願い申し上げます。
早々
平成17年4月
国土交通大臣 北側一雄
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