SANRIZUKA 日誌 HP版   2005/06/1〜30    

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 2005年6月

 

〔週刊『三里塚』編集委員会HP部責任編集〕 


(6月1日) 成田市長/北延伸 「交渉打ち切り」に不快感(6/2毎日千葉版、千葉日報)

 成田空港の暫定平行滑走路延伸問題で、北側一雄国交相が東峰地区地権者に示した「北延伸した場合、これ以上用地交渉することはない」との大臣書簡に対し、地元成田市の小林攻市長が「よくない」と国交省側に不快感を表明していたことが1日、明らかになった。
 小林市長はこの日、定例記者会見で「そういうことはよくないと公式、非公式にかかわらず市の意向は何度か話の中で伝えてある」と語り、交渉打ち切りは地元自治体の考えに反するとの意向を示した。
 書簡は地権者への「揺さぶりと思う」と印象を語り今後、国から公式にリアクションがあった場合は「市としてもなんらかの対応をせざるを得ない」とした。
 同日、相川堅治富里市長も記者会見し「北に伸ばしたら交渉しないと言うのは、地元首長も了承できないのではないか」と述べた。
 地元の2市長が大臣書簡に対して不快感を公式表明したのは初めて。
 相川市長は「北延伸への賛否はともかく大臣が近く判断するとした以上は、早く判断すべきだ」と語り、「滑走路を造るのと航空機を飛ばすのは別もの。そこに住み続ける人に対して過大な騒音を与えるべきでない」と交渉打ち切りではなく、騒音下に住む地権者の環境改善に全力を挙げるべきとして、国の方針をけん制した。
 大臣書簡は、4月30日に国交省の岩崎貞二航空局長が成田市東峰地区の地権者7戸を訪問、本来計画での滑走路延伸に協力を求めたが、「用地問題が解決できない場合は本来計画を断念する。その場合、北延伸以外に選択肢はなく用地交渉は打ち切る」との方針を示していた。

 【本紙の解説】
 北側大臣書簡は、長い三里塚闘争の歴史の中でも、最も低劣で反人民的な文書である。そのため本紙でも全文を紹介した(05年4月30日付日誌を参照)。
 そもそも北延伸決定後に「用地交渉を打ち切る」ことは実際にはあり得ない。滑走路用地以外の騒音下ならともかく、現在の東峰・天神峰地区の滑走路予定地は、北延伸した場合でも引き続きアプローチエリアの用地となり、、成田空港はこれを「買い取る義務」があるのだ。それを大臣が「用地交渉しない」と書簡に書きしるす意図はどこにあるか? 三里塚闘争を「ごね得」の闘争と思っているからである。「長く反対すれば高く買ってもらえるから反対を続けている。したがって、もう交渉しないと銘打てば、農民はあわてて土地を売る」というレベルで三里塚闘争を見ているのである。
 大臣書簡に対して、成田市長と富里市長の2人が「不快感」を公式に表明した。当然ではあるが、地方の一市長が国家である国交省大臣に不快感表明とは異常なことでもある。
 すでに北側書簡から1カ月たっている。この1カ月を使って国交省は周辺自治体、騒対協などを北延伸問題で丸め込もうと、見返り事業をちらつかせながら躍起となってきた。今回の不快感表明は、国交省の周辺自治体工作が不調に終わっていることを示している。
 ところで黒野社長は以前から「南側延伸のための地権者交渉と北側延伸を両にらみで進める」としてきた。北延伸計画で地権者を脅し、用地買収を進め、本来計画の南側延伸に戻したいのである。国交省の北延伸攻撃の強まりを利用し、脱落派の取り込みと用地交渉を進める算段である。
 しかし、国交省の北延伸も、黒野社長の「話し合い」交渉も、三里塚闘争の力の前には失敗する成り行きだ。仮に北延伸が「決定」されたとしても永遠に着工できそうもない。

(6月1日) 反対同盟が街頭演説(6/2朝日、毎日各千葉版、千葉日報)

 三里塚芝山連合空港反対同盟は1日、下総町で街頭演説などを行い、暫定平行滑走路の北側延伸中止を訴えた。
 この日はJR滑河駅前や同町名古屋地区で、北原鉱治事務局長が街頭演説を行った。
 北原事務局長は「政府は、国際的な地位が低下するという立場に追い込まれ、やむにやまれず北側延伸を進めている」と指摘。そのうえで「(滑走路を)北側に伸ばすとすれば、下総町は騒音と公害のまっただ中に置かれる。平和な生活を守るために立ち上がるべき」と訴えた。
 反対同盟は、騒音の影響を最も受ける町内各地区を回り、延伸の中止を求めるビラ約500枚を配布した。

 【本紙の解説】
 反対同盟は北延伸工事で新たに騒音地区に組み込まれる地域への宣伝を開始した。駅は久住駅(成田市)、滑川駅(下総駅)、地区では成田市の幡谷、大室、土谷、小泉、下総町では滑川、西大須賀、高倉、名古屋で演説とビラまきを行った。演説した北原事務局長は歓迎され、ビラまき隊は「頑張ってください」「絶対に北延伸を許してはなりませんよ」と激励された。反対同盟は今後もこの騒音下に組み込まれる地区への宣伝活動を継続していく計画である。
 以下は配布した反対同盟のビラ(PDFファイルへ)。

NAAの株価つり上げ目的で
滑走路が北へ北へとせり上がる
  ――こんな身勝手は許されない!
暫定滑走路の延伸を阻止しよう
                     三里塚芝山連合空港反対同盟

 北側国交大臣が強引に主張する暫定滑走路の北延伸計画。地元住民はもちろん、関係自治体が反対。NAA(空港会社)までもが、造っても使いものにならないからと抵抗。しかし北延伸はそもそも黒野社長の発案です。まったくデタラメきわまりない! 国交省とNAAの身勝手は絶対に許せません。

●騒音レベルは上がり地価は下落
 そもそも今の暫定滑走路は、本来計画より800メートル北にずらして建設されました。そのうえ320メートル北に延ばせば、合計1120メートルも北にせり上がります。
 そうなると、たとえば北側飛行直下で滑走路に一番近い小泉地区は、滑走路北端から1.5キロです。ここにジャンボが飛べば、騒音(現在80〜90デシベル)はガードレール下並の100デシベルに上がります。十余三、大室、土室、成毛、幡谷、下総と、騒音は軒並み上がり、逆に地価は下落する一方です。
 北延伸は住民を苦しめるばかりではありません。暫定滑走路の欠陥と危険を増幅させます。
@東関東自動車道が北端から400メートルの地点を横断することになります。この地点は本来無人とすべき危険区域。わずか40メートルの高さで航空機が進入するのです。
A緊急着陸などのために平らであるべき「着陸帯」に、段差4メートルの巨大な穴と「へ」の字誘導路。いずれも買収できず残ります。
B管制塔から遠すぎて、滑走路が見えません。
Cターミナルと滑走路を結ぶ誘導路が狭く、ジャンボの走行は安全基準を逸脱します。
 しかも国道51号のトンネル工事は夜間のみの難工事。巨額の予算が必要です。

●強引に進める理由はNAA株価つり上げ
 4年後には羽田空港の新滑走路が完成し、成田空港に占める約50パーセントのアジア便の大半が羽田に移ります。中部国際空港の開港でこれまで成田を使っていた中部・近畿の貨物が徐々に新空港に移っています。航空需要の観点からしても、4000メートル滑走路1本で十分。暫定滑走路の北延伸は無意味です。
 無理を押し切る国交省の目的は、2年後に上場予定のNAA株価のつり上げです。株券を高く売るために「2500メートル滑走路は完成した」ことにしたいのです。
 「今でも危険な滑走路をさらに広げるべきではない」──これが南側の住民の声です。北延伸は阻止できます。ともに反対の声を上げましょう。

(6月7日) 地権者と3回目の会談(朝日、毎日、産経、東京各千葉版、千葉日報)

 成田市東峰区の滑走路予定地内地権者7戸のうち4戸と黒野社長の「第3回会談」が7日午後8時から約1時間半、同市遠山公民館で行われ緊急措置延長を説明した。
 会談では、地権者から出た暫定滑走路供用に伴う騒音、振動、風圧問題や運用時間、住居や職場の防音、水害対策など8項目について空港会社からこれまでの対応と今後の方向性が示された。
 運用問題では、夏ダイヤ(10月29日まで)で実施している平行滑走路の早朝・深夜便発着を制限する緊急措置を引き続き冬ダイヤにも延長する考えを用地内地権者に提示した。運用制限は3月下旬から実施されており、午後10時から翌午前6時半の時間帯は原則として暫定滑走路の使用を取り止めた。用地交渉に配慮した緊急措置だが、これを夏ダイヤ後も継続するよう国土交通省に要請していることを会談の席上、地権者側に示した。
 また、騒音発生源対策として低騒音機の導入促進、大型機の就航規制継続のほか、東峰区に接する遮音壁延長、水害発生に備え排水経路の管理徹底による被害防止――などの対策を提案した。
 会談には前回同様、未買収地の半分を所有する最大地権者は出席しなかった。提案説明の積み残しがあり新たな要望を含め次回の話し合いに持ち越された。日程は決まっていない。
 会談後、記者会見した地権者の代表は「説明を受け質問した。(納得がいくような)段階には至っていない。静かな村を取り戻すための話し合いだ。4人の意見をまとめたいが、8項目の要望がさらに増えるかもしれない」と述べた。
 黒野社長は「率直に意見交換できた。国交省には内容のある話し合いができたと報告したい。これなら了解が得られると思う」と語り、回答項目には地権者の反応に濃淡があるものの、話し合いのテーブルができたことで交渉継続を優先させたい考えを示した。
 国は、地権者との交渉に具体的な進展がない場合、逆方向の北側延伸を「近く判断する」との姿勢を変えていない。

 【本紙の解説】
 空港会社と地権者との「話し合い」であるが、用地交渉だけが目的の空港会社と、中心的な地権者が交渉自体を拒否している現実との狭間で、実質的内容のない会談となった。時間もわずか1時間半。空港会社の説明だけで終わっている。黒野社長も会談の内容よりも「話し合いのテーブルができたことで交渉継続を優先させたい」と語り、とにかく会合を開いたこと、交渉の継続を確認したという以上の意味はないと漏らしている。
 空港会社としては、たとえ1日でも「用地交渉」らしきものを成立させなければ、国交省に会談そのものを打ち切られ、意味のない北延伸が決定されそうなのだ。この3回目の会談がなければ、1〜2週間のうちに決定がでるとの観測からこの会談が持たれた。
 会談参加者の思惑もバラバラだ。参加者の1人は「三里塚闘争の成果は何を勝ち取れるか」「騒音などの生活改善をはかりたい」と条件交渉に入りたい意向を示しているが、「用地交渉にはしない」「国は北延伸決定を遅らせるだけ」と言っている者もいる。「話し合い」の趣旨については地権者側も一致していない。
 翌日、黒野社長は国交省に報告したらしいが、「(用地交渉は)いつ解決するのか」と質問され返答に弱ったらしい。国交省は「会談を見守る時間はわずか」と言っている。
 会談が失敗した最大の原因は、東峰地区の他の3軒から「話し合い」を拒否されたからである。いかなる内容の会談であっても東峰地区全員がまとまらない限り、農地とともに神社、墓地の移転は不可能であり、滑走路の南側延伸はできるはずもないのである。どうあがいても空疎な会談にしかならないのだ。

(6月7日) 中部空港からの製品輸出が急増(6/8読売、東京)

 名古屋税関が7日発表した航空貨物概況によると、東海5県(長野、岐阜、静岡、愛知、三重)で生産された輸出品の取り扱い空港の比率(重量ベース)は、昨年11月時点の名古屋空港は24・2%にとどまっていたが、今年3月の中部国際空港は47・0パーセントに跳ね上がった。
 一方で同時期の成田空港は55・4パーセントが38・9パーセントに、関西も19・4パーセントが12・8パーセントに落ち込んでおり、東海経済圏の荷主が新空港を積極的に利用している状況が確認された。

 【本紙の解説】
 中部国際空港は開港前から国際貨物便が強いと予想されていた。成田のシェア(占有率)を相当奪うのではないかと言われていた。具体的には、成田空港貨物シェアの輸出34パーセント、輸入15パーセントが中部・近畿圏からきていて、その半分が中部空港に奪われると成田空港は予測していた。トヨタ、シャープなど生産工業があり、日本の最大の生産拠点である中部の貨物が中部国際空港に流れることは当然である。
 中部国際空港の貨物専用便はいまや週33便になっている。名古屋空港では週5便だったことからみれば急増である。これは中部国際空港の地域的な強みである。今年秋にはマレーシアの航空貨物専門会社トランスマイル航空が週3便を就航し、合計で週41便に拡大する。「貨物の中部シフトはまだ続きそう」と名古屋税関はいっている。
 成田空港にとって、貨物取扱量の1割以上が中部国際空港に流れることは、経営的に重大な打撃であるが、それ以上に中部空港が国内線から国際線へのハブ空港として機能し、その評判も上々だったことに脅威を感じている。
 成田空港にとって中部国際空港の開港でこれだけ経営的圧迫を受けることとなったが、09年の羽田国際化で成田空港のあり方そのものが一変しそうだ。

(6月10日) 成田空対協 「北延伸、選択すべき」(6/11毎日千葉版、千葉日報)

 経済団体など36団体で組織する成田空港対策協議会(豊田磐会長)は10日、成田市内のホテルで「定時総会」を聞き暫定平行滑走路延伸問題について「北延伸による整備を選択すべき時期」との基本方針を了承した。
 用地交渉に費やす余裕はないとして「時期を逸することなく決断すべき」と北延伸への判断を促し、延伸後も用地交渉を打ち切ることなく「3300メートル以上の滑走路として利用するため話し合いの努力をすべき」と要望。2500メートル化で増額となる税収を一般財源化せず、騒音地区への環境、共生策や地域整備にあてるべきとしている。
 本来計画実現にむけて空港会社と地権者との話し合いが進む中、豊田会長は「現時点ではこれに期待しているが、時間は限られており(事態を)見守りたい」と述べた。
 また、空港会社の黒野匡彦社長は「今朝、国交省に(第3回会談の内容を)報告したが、いつ解決するのかと単刀直入に言われた。従来の時間感覚では国は許してくれない。なんとかスピードアップして目標に到達したい」と語った。
 
 【本紙の解説】
 成田空対協は地元で唯一、北延伸を推進する勢力である。しかし、北延伸の欠陥、2500メートル化しても誘導路がそのままではジャンボ機は飛べない。同じ理由で発着便も増えない。工事が早くても6年強かかる――などのことが明白になるにつれ、成田空対協の総会も沈滞気味になってきた。
 おもだった来賓は小林成田市長と黒野空港会社社長であり、ふたりとも北延伸反対で本来計画の2500メートル化を述べており、空対協の意気があがらないのは当然だろう。
小林成田市長は「北延伸しても供用開始まで6年、本来計画なら3年」と述べ、空対協総会もかかわらず、空対協の総会決議と正反対の主張をしている始末である。
 空対協はこの総会で北延伸の主張より、07年の成田空港会社の株式上場にむけ、持ち株会方式による株式取得の勉強会を始めるという。もはや意味のない北延伸の可否はどうでもよく、主眼は株式の取得にあるようだ。「持ち株会」を組織して空港経営に参画していくことを目指しているのである。

(6月12日) 成田空港誘導路の中心線灯5個が消える(6/14毎日千葉版)

 12日午後7時50分ごろ、成田空港で誘導路の中心線を示すライトが消えているのが見つかった。滑走路を約6分間閉鎖し点検したところ、中心線灯5個が消えていた。
 成田国際空港会社によると、消えていたのは航空機を滑走路からターミナルビルに導くため15メートル間隔で埋め込まれている誘導路中心線灯で、配線の劣化で断線したらしい。
 配線などの点検は半年に1回、定期的に行われている。今年は今月上旬に点検したばかりで、異常を見落としていたという。同社は「運航には影響はなかったが、点検を強化したい」と話している。

 【本紙の解説】
 航空業界は、航空会社による重大事故の連続発生、国交省の職員である管制官の誤進入指示、空港の事故など、この間、重大インシデントが続いている。これは大事故の予兆を示している。航空会社は何回も記者会見し、安全運航を誓っている。しかし、事故は止まらない。この原因はどこにあるのか。
 その一つは、国交省の航空規制緩和政策への転換が事故を頻発させていることである。1986年、運輸審議会答申で、航空政策は規制緩和と競争促進へと方針転換された。(1)国際線の日本航空一元的体制から複数社制への変更、(2)日本航空の完全民営化、(3)国内線でのダブルトラッキング、トリプルトラッキングの推進(同一路線複数社乗り入れ)――の3点が確認され、日本の航空規制緩和は出発する。その後、航空会社の新規参入、運賃の規制緩和と競争激化が急速に進むのである。米国のメガキャリア(巨大航空会社)との競争、格安チケット合戦となり、各航空会社は経営合理化を強いられ、経費削減と安全運航の軽視が一挙に進む。
 もう一つの原因は、航空運輸業の本格的発展は第2次世界大戦以降であり、その歴史は浅く、いまだ航空機の安全性が検証されていないことである。航空機はいまだ開発途上であり、経済的競争に耐えうるものではない。空港にも競争激化が波及している。空港間競争とも呼ばれ、着陸料の引き下げが生き残りのための絶対課題になってきている。そのために各空港は空港の安全より、コスト削減を強いられてきた。成田空港も民営化とともに、安全無視の経費削減が推し進められた。今回の故障の直接的原因は明らかではないが、コスト削減がその遠因であることは明白である。
 歴史的な航空大事故がきわめて近い将来におこることは、この間の重大インシデントの頻発からみて間違いない。日航機御巣鷹山墜落事故の教訓を忘れてはいけない。日航機墜落事故が1985年8月12日で、その1年後に規制緩和の運輸審議会答申がでているのである。

(6月13日) 全日空のタラップ車/誤進入で電話切断(6/14朝日千葉版)

 成田空港の制限エリア内の道路を走行していた全日空(ANA)のタラップ車が、本来は通行しない道路に進入し、同空港内にある第18監視塔と県警成田国際空港警備隊を結ぶ専用電話の線を切断していたことが13日、わかった。
 成田国際空港会社などによると、11日午後10時ごろ、電話線のある道路の手前で左折して誘導路を横断する道路に入るはずだったANAのタラップ車(車高約6メートル)が誤って直進し、監視塔と高さ7メートルの電柱を結ぶ専用電話の線を切断してしまったという。
 この道路は普段、工事用の車両などが通行し、タラップ車は通らないという。13日午前に電話線が復旧するまで同監視塔は、別の監視塔と連絡をとり空港警備隊との通信をしたという。

 【本紙の解説】
 この事故は空港警備の監視体制を破綻させただけで終わり、航空機事故とは直接関係ないようだ。しかし、空港内は一歩間違うと航空機の進路を塞いだり、衝突することもありうる。事故になった場合は、通常の自動車事故とは比べものにならない規模になる。
 成田空港も78年開港以来、事故の少ない空港であったが、02年の暫定滑走路供用開始以降、重大インシデントが頻発している。これは民営化によるコスト削減と暫定滑走路が異常な形状をしていることによる。成田での航空機の大事故も予想しなければならない。

(6月16日) 成田国際空港会社/熱田派拠点の半分を買収(6/17読売、6/18朝日、毎日、産経、東京各千葉版)

 成田空港の横風滑走路予定地(計画凍結中)内にあり、かつては空港反対運動の拠点にもなっていた横堀地区(千葉県芝山町)のうち、横堀墓地(約350平方メートル)の4分の1の所有権を16日、成田国際空港会社が取得した。
 横堀墓地は、三里塚・芝山連合空港反対同盟熱田派の「旗開き」が行われるなど空港反対運動の象徴的な場所。反対運動支援者の墓や、反対派が建てた高さ十数メートルのやぐらなどがある。
 所有者で、熱田派の熱田一・元代表(86)の娘婿にあたる男性(59)が同日、土地の半分の売買契約を空港会社と結んだ。横堀地区の居住者は、土地の残り2分の1を所有する熱田元代表夫妻だけとなる。横堀墓地の所有権を巡る裁判では1997年、熱田元代表らと新東京国際空港公団(当時)が、約710平方メートルの土地を半分に分割して所有することで和解。今回の売買で、空港会社は4分の3の所有権を持つことになった。

 【本紙の解説】
 脱落派の代表であった熱田氏が、三里塚闘争から「引退」し移転するようだ。脱落派の末路を象徴するものである。
 今回の横堀墓地は横堀部落の総有であったにもかかわらず、公団が土地の仮の名義人から買い上げたとして、空港公団名義に書き換えたことから、1981年から裁判になった。1審を経て、2審の東京高裁で裁判所の和解要請を原告・被告双方が受諾し、1997年に公団と横堀地区が墓地の土地の半分ずつを所有することとなった。その時の横堀地区の構成員は、熱田一氏とその娘婿の下山久信氏の2軒であり、その2軒が4分の1ずつ持っていた。
 今回、下山氏が移転にともない、墓地(4分の1の持ち分)を公団に売却したのである。下山氏はかつて第4インターの活動家であった。第4インターの消滅、脱落派の崩壊の中で、かなり前から空港建設に全面屈服していた。しかしながら、熱田一氏が横堀で生活を続けていたので移転はできなかった。今回、熱田氏の高齢を理由にし、移転を強引に推し進めたのである。
 熱田氏は「空港問題が解決するまでは土地は売らない」としている。また、熱田氏の後継者である元青行隊の熱田誠氏は三里塚現地を離れている。脱落派は自らの拠点であった横堀を完全に放棄してしまったのである。これが83年の反対同盟分裂の結末である。

(6月20日) 羽田―金浦シャトル便、8月から1日8便に倍増(6/21朝日)

 小泉首相と盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領は20日の首脳会談で、羽田空港とソウル・金浦空港を結ぶシャトル便を1日4便(往復)から1日8便に倍増させることで合意した。8月1日から実施する。今回の合意により、都心部から韓国への「日帰り」出張が容易になる。
 現在、羽田―金浦間の飛行時間は2時間〜2時間半で、金浦から羽田への最終便は午後3時台だった。増便により、午後7時過ぎに金浦空港を出発する便などが新設される見通しで、日帰りビジネスの要望に応える便数となる。
 両首脳は昨年12月の鹿児島県指宿市での会談で、両国の相互訪問者を03年の約360万人から05年は500万人まで拡大することを目標に掲げ、その具体策として羽田―金浦空港間のシャトル便の倍増を検討することで一致していた。

 【本紙の解説】
 成田―仁川便は共同運航を除くと1日10便である。羽田―金浦便が1日8便になり、羽田便の方が搭乗率がいいので、乗客数では逆転すると言われている。羽田国際化の要望は強く、今月16日の日中航空協議でも、中国側は上海―羽田の定期便乗り入れを要求し、日本は中部―上海の週4便のデイリー(毎日運航)化をはじめに運航拡大・増便を要求したが、物別れに終った。
 国交省は、成田を国際空港、羽田を国内空港と位置づけている。羽田は韓国・金浦空港線を除き国際定期便は就航しておらず、同省は今回も「原則」を譲らなかったと報道されているが、これは日本の側が分が悪い。
 日韓シャトル便はサッカーワールドカップ日韓大会から、シカゴ条約の機会均等主義により、国内線の最長が羽田―石垣で約2000キロであることを援用して、外国でもその範囲の距離の羽田乗り入れを許可した結果である。
 2000キロ圏内というと、「ソウル、上海は含むが、北京、台北、香港は含まない」が、現在の国交省の見解である。したがって、羽田―ソウル便が許可されているならば、羽田―上海便は許可されなくてはいけない。日本側が拒否している表向きの理由は、羽田の運航枠が満杯というものだ。しかしソウル便が増便できるなら、上海便も増便できるはずだと中国側も要求できる。そのためか日韓シャトル便の増便決定は日中航空交渉の後に発表となった。
 いずれにしろ、アジア近隣諸国からの羽田乗り入れ要求は強く、羽田国際化は予定の09年を待たずにチャーター便を中心にすでに大々的に進行している。

(6月20日) 成田空港エコキッズクラブ発足(6/21朝日、読売各千葉版)

 成田国際空港会社は20日、空港周辺の自然に触れ合い、子供たちに環境の大切さを学んでもらうことを目的とした新規事業「成田空港エコキッズクラブ」の会員募集を開始した。
 同社が掲げる「エコ・エアポート基本計画」の一環。第1期生として、小学5、6年生50人を募集し、学校の休日を利用して年3回、自然体験エコ・ツアーに参加してもらう。第1回は8月18日に行う予定で、空港内の太陽光発電システムなどの見学と同社が隣接地に整備した公園「水辺の里」での自然観察会を行う。第2回は11月3日、第3回は来年3月31日に実施し、里山ハイキングや空港の整備地区見学などが予定されている。

 【本紙の解説】
 空港は周辺の自然と共存できないばかりか、それ以上に危険であり、人間生活までも破壊する危険性があるので、基本的に飛行コース20キロまで無人化を要求する。それは多くの航空機事故や騒音被害で証明されている。最近は諸外国の空港もそれを隠すことに必死に取り組んでいる。
 成田空港でもエア・エコポート計画と称して様々な取り組みを行っている。だだし使用電力量のわずか0・1パーセントを太陽光発電でまかなったからといってエコ・エアポートとはとうてい言えない。ゴミの堆肥(たいひ)化も同じである。堆肥化するのは空港の出すゴミの量の0・077パーセント以下なのである。このようにエコ・エアポート構想とは表向きの顔にすぎない。0・1パーセント以下の行為で、他の悪い面を全部覆い尽くすことを狙った一種のペテンなのだ。
 このキッズクラブも同じである。空港という巨大な環境破壊物が、あたかも自然を守っているように錯覚させることが目的だ。こうした教育は犯罪的といえる。

(6月21日) 国交相/地権者との会合「見える成果を」(6/22読売全国版、朝日、産経各千葉版)

成田空港暫定平行滑走路の延伸問題で、国土交通省は、成田国際空港会社の黒野匡彦社長に対し、7月11日をメドに未買収地(千葉県成田市東峰地区)の地権者との交渉状況を北側国交相に報告するよう指示した。
 北側国交相は、「進展がない」と判断した場合、本来計画とは逆の「北延伸」を同社に指示する。
 地権者と同社との4回目の会談は、6月中にも開かれるが、未買収地のうち最大の土地を所有する農業男性(58)は、対話拒否の姿勢を崩していない。このため、国交省は「具体的進展がない場合、議論を続けてもらう余裕はない」(同省幹部)として、早期決着を促した。
 北側国交相も21日の定例会見で、「4回目の会談で空港会社に国交省指示は用地交渉につながる成果が必要」と、交渉にメドをつける必要性を強調した。
 同省は当初、大型連休明けにも「北延伸」を指示する方針だった。しかし、地権者7人のうち4人が、同滑走路についての黒野社長の謝罪文を受け入れ、東峰地区の航空機騒音問題などで同社と協議を始めたため、「経緯を見守る」として指示を保留してきた。

 【本紙の解説】
 国交省の北延伸案の決定時期が二転三転している。見識を疑いたくなる。まず、昨年段階で年内に用地交渉の進展をみて今年の初めに決定するとなっていた。それが成田空港会社から3月末までに待つことを要求され、承諾した。ここまではよくあることである。
 その後、北側―黒野会談は4月15日に行われた。その結論は「着工の目途がないことは大変遺憾。なお努力してほしいが、今回の報告を基に大臣、国土交通省、政府として判断し、近日中に指示を出す」となった。黒野社長は東峰地区地権者との話し合いの場が設置できたことなどを示し、「もう少しだけ時間をいただきたい」と要請したが、それを受け入れてもらえずに、「近日中」として、連休前に最終決定すると示唆し、マスコミもそう報道した。
 しかし連休前には最終決定できず、国交省は4月22日に堂本暁子知事や成田市の小林攻市長を訪問し、交渉経過を報告し、北延伸の決定が近いことを申し入れた。どうやら、これが不調に終ったらしい。そのために最終決定が延び延びになっているのであろう。
 4月30日に、岩崎貞二航空局長が北側一雄国交相の手紙をもって東峰地区の地権者宅を訪問している(05年4月30日付日誌を参照)。この手紙で大臣は「協力が得られなければ北伸案を選び、交渉を打ち切る」との最後通告を行ったが、これに地権者のみならず周辺自治体も反発を強めていた。
 5月11日(05年5月11日付日誌を参照)には、国交省が歴史上はじめての騒対協と初会談を行った。そこで、「用地交渉に進展がない場合は近く北延伸を最終判断する」とする大臣方針を説明している。
 5月26日に黒野社長は定例記者会見で、私の推測と断った上で「国土交通省も、(待っても)1カ月という感じではないか」として6月下旬までに用地交渉に何らかのメドをつけたいと発言した。それに対して、国交省の岩村敬次官は、黒野社長の用地交渉期限について、「話し合いが進んでいるからこそ推移を見守っている。『ひと月ありき』ではない」と否定し、交渉期限はどんなに長くても1カ月以内だと性急に成果を要求している。しかし、その後国交省の動きはない。
 連休前に決定のはずが、地元の反対もあってできなかった。そのための地元自治体対策、地権者対策も功を奏さなかった。各報道機関は連休後に最終決定とみていたがそれもなかった。
 5月末に黒野社長の「残された期間は1カ月」との発言に対して、「1カ月も待てない」と注文をつけたが、用地交渉の期限は1カ月以上先の7月11日となった。
 しかし、最終決定、最終決定と振りかざしては何度も失敗してきたものが、果たして7月11日に決定できるものであろうか。
 北延伸を決定したとしても、用地交渉は今後も継続し、用地問題が解決した場合には本来計画にするという玉虫色の決定にしかならないだろう。この北延伸決定はあくまで07年の株式上場のためであることが明らかだ。

(6月22日) 成田空港社長、地権者を訪問/本来計画への協力改めて要請(6/24読売千葉版)

 成田空港暫定平行滑走路の延伸問題で、成田国際空港会社の黒野匡彦社長は、国土交通省から7月中旬に未買収地(成田市東峰地区)の地権者との交渉状況を北側国交相に報告するよう指示されたのを受け、各地権者を訪問、本来計画への協力を改めて要請した。
 黒野社長は21、22日の両日、地権者7人のうち都合がついた5人と個別に会い、国交省からは、7月中旬までに本来計画実現に向けた「具体的成果」を求められていることを説明した。
 このうち、最大の土地を所有する農業男性(58)には、本来計画実現への協力と、同地区の騒音問題などについて対話を進めているほかの地権者への支援を要請した。また、6月末に4回目の会談を開く予定の4人には、対話のスピードアップなどを求めた。
 国交省は、「地権者全員に用地交渉に応じる兆しがみられなければ、本来計画とは逆の北延伸を決断せざるを得ない」(幹部)としており、地権者の意思確認などを経て、7月下旬にも最終判断する見通し。

 【本紙の解説】
 黒野社長も用地交渉期限を7月11日と切られたので東峰地区をまわっているようだ。しかし、国交省が要求する「全員の用地交渉」はどだい不可能である。現在「話し合い」を推し進めている4軒であっても、それは不可能である。では、国交省は「本来計画とは逆の北延伸を決断せざるを得ない」と言っているが、この北延伸工事がどのようなものか、分かっているのであろうか。
 国交省は株式上場のためと、羽田国際化について千葉県と成田空港からフリーハンドの立場を得るためにしかこの北延伸決定を考えていない。実際に2012年にできるかどうかには関心はないのである。北延伸工事完成予定の2012年より、07年株式上場、09年羽田国際化が前にあり、これをなんとか乗り切ることが北延伸決定の本意であるからだ。

(6月22日) 成田の仮設住宅来月までに撤去(6/23毎日千葉版、6/25千葉日報)

 成田国際空港会社は22日、成田市天神峰地区に設置した仮設住宅3棟を7月10日までに撤去すると発表した。
 この仮設住宅は02年4月に同社の前身の新東京国際空港公団が設置。暫定平行滑走路の供用開始に伴って、南側からの着陸機が同市東峰地区の約40メートル上空を通過することから騒音が激しくなると利用を呼びかけたが、住民は拒否していた。同社の担当者は「東峰地区の方々の立場に立った対応ができなかった」と話しいる。

 【本紙の解説】
 40メートル頭上に航空機を飛ばすという殺人的騒音の社会的批判をかわすために、仮設住宅をつくっただけなのである。当初から公団は東峰地区の住民が使わないことを承知で建設したのである。「東峰地区の方々の立場に立った対応ができなかった」ときれいごとをのべているが、そんなことは最初から考えてもいないのだ。東峰地区の立場に立った対応というならば、暫定滑走路は建設すべきでなかったのである。暫定滑走路を建設すれば、たたき出せると考えていたのである。頭上40メートルに航空機を飛ばすことの罪悪感からのがれるために、公団の立場に立ってつくった仮設住宅なのである。周りを鉄板で覆われた収容所のような仮設住宅に、だれも近寄るはずもなかったのである。

(6月23日) 警官転び短銃暴発(6/25毎日、産経、東京各千葉版)

 23日午後10時40分ごろ、千葉県成田市東三里塚、同県警成田国際空港警備隊警備犬センターで、入り口の門扉付近を警備していた同隊の男性巡査(27)が転倒、右腰のホルスターに入れてあった短銃が1発暴発した。けが人などはなかった。
 門扉は、県道から約250メートル離れており、隣接する草むらの方向へ発射されたとみられるが、弾は見つかっていない。同隊によると、巡査の短銃管理などに問題はないといい、「転倒した際にホルダー内で撃鉄が下りるなどして、衝撃で暴発したのではないか。大変まれなケース」としている。

 【本紙の解説】
 果たして事故なのかどうかも疑わしい事件である。警察官の不祥事が多発しているが、これもその類の問題ではないか。「足がもつれて転んだら発射された」との警察官の話に、報道も疑問を呈している。「事故現場の地面はコンクリートで雨にぬれていたわけでもなく、足場は悪くなかった」となっている。事故ではなく、事件に近いとの示唆である。千葉県警も「転倒などの衝撃による暴発事故はあまり聞いたことがない」と言っている。ますます、事件の臭いが強くなってきた。

(6月24日) 成田新高速鉄道/堂本知事一部トンネル化の検討を求める(6/25朝日、読売、毎日、日経各千葉版、千葉日報)

 都心と成田空港を結ぶ成田新高速鉄道と北千葉道路(印旛村―成田市間)の環境影響評価(アセスメント)で、堂本暁子知事は24日、アセス準備書に対する知事意見を、事業者の鉄道会社と県に通知した。知事は鉄道と道路の建設を推進してきたが、今回の意見では環境に「重大な影響を及ぼす」として、路線の一部トンネル化の検討などを求めた。
 北千葉道路は、市川市から印旛村の千葉ニュータウンを経て成田市を結ぶ約45キロの道路。未着工の印旛村から成田市までの約14キロは成田新高速鉄道との一体的な整備が予定されている。
 印旛沼周辺は、環境省のレッドデータブックで絶滅危惧種に指定されているサギ科サンカノゴイの国内有数の繁殖地。計画されている鉄道と道路の路線は県立印旛手賀自然公園の区域内を横断するため、知事意見では「重大な影響を及ぼす」と指摘した。
 また、猛禽類のサシバやオオタカなどの営巣地で営巣木が伐採される場所もあるため、意見では「サシバの繁殖期には工事をしない」ことなどを求めた。

 【本紙の解説】
 トンネル化の検討を堂本知事が要求したが、これはどういうことであろうか。いくつかの整理を行おう。
 成田新高速鉄道は印旛日医駅から成田市土屋まで10・7キロの工事であり、北千葉道路が併設されるので、一体的工事となる。この10・7キロの鉄道の総事業費は1286億円であり、国の補助が33パーセント、借入金が359億円、地方負担分が334億円である。最大の出資者は国を除けば千葉県である。地方分担金の約半分が千葉県である。したがって、第三セクターの責任は千葉県になる。工事計画の決定、工事開始も千葉県が最大の決定権をもっているのである。
 トンネル化は膨大な資金が必要であり、印旛沼の自然環境を守るために検討したが、資金的に無理があり、高架となったのである。印旛沼の甚平大橋の南側をトンネル化することになり、最低でも2キロのトンネル化は必要と思われる。トンネル化は工法にもよるが、1キロ当たり150億円はかかるとのこと。そうすると2キロなので300億円はかかる。総事業費が大幅に上乗せになる。
 成田高速鉄道は、政府援助が当初約18パーセントの231億円だったものが、約33パーセントの424億円に増額になったので認可された経緯がある。政府援助が193億円増額された結果、借入金が減額したので、計算上開業から26年目の黒字化が見込まれ、鉄道建設が許可されたのである。しかしトンネル化は事業費を200億円から300億円上乗せする。そうすると鉄道経営の黒字化が永遠になくなり、鉄道工事は事実上、不可能となる。
 堂本知事は成田高速鉄道の政府援助の増額との取引で羽田国際化を容認した。堂本知事は鉄道工事の認可をとり、千葉県民の人気を取りたかったのであろう。成田高速鉄道のトンネル化の要求は事実上、成田高速鉄道工事の中止である。建設主体の千葉県知事が環境問題で三番瀬保全の約束を実行しないという悪評を挽回するために、トンネル化を要求しているのであろう。最終的にどうなることか、いまだ分からない。

(6月26日) 成田空港の滑走路4分間閉鎖 JAL機の部品欠落点検(6/27朝日、毎日)

 25日午後3時25分ごろ、成田発韓国・釜山行きの日本航空957便(ボーイング767型)が釜山空港に到着した際、部品の一部が欠落していたと日航から成田国際空港会社に連絡があった。このため、成田空港の暫定B滑走路を同3時27分から4分間閉鎖し、点検したが異常はなかった。
 日航によると、欠落したのは左の水平尾翼の端に付いているプラスチック製の静電気放電棒(長さ10センチ、直径5ミリ)で、運航に支障はないという。

 【本紙の解説】
 航空機の部品落下は以前から頻発していた。しかし、あまり問題にされなかった。成田周辺で部品が飛行コースで発見されて初めて問題になるのである。たとえば03年に茨城県総和町であった日航機のエンジンの一部が落下した事故(03年8月21日付日誌を参照)は建材会社の屋根を直撃し穴をあけたので、被害者が問題にした結果、航空機が判明した。最近までは部品の落下があっても航空会社は申告しなかった。落下が海や山奥では問題にされることもなかった。しかし、現実に飛行コース周辺の20キロ圏は日常的に航空機落下物の恐怖にさらされているのである。
 にもかかわらず国もNAAも「落下物は航空会社の問題」であり、空港とは直接関係ないとの立場をとっている。今回の事故もマスコミは日航を問題にしているが、空港側の責任は問題にされていない。航空機に落下物はつきものである。責任は航空会社はもとより空港にもあるのだ。
 落下物は航空機部品だけでなく、氷塊、ジェット燃料などの落下物がある。今回の落下物は長さ10センチ、直径5ミリで比較的に小さいものだが、人体を直撃すれば命をも奪いかねない問題だ。また、「運航に支障はない」とマスコミは報道しているが、これも問題である。滑走路になかったので、飛行コース上に落下したのであろう。このように空港も航空会社も、落下物の直撃を受けている空港周辺の住民を理解する立場はない。周辺の市町村は、小中学校などは決して飛行コース直下には建てない。空港は飛行コース20キロメートル範囲の無人化を強制している。この現実の意味を関係者は深く自覚すべきだ。

(6月26日) 成田騒対協総会/「北伸ばし」文言を入れず(朝日、読売、東京各千葉版、千葉日報)

 成田空港の暫定滑走路の延長問題で、騒音下の地域の住民団体「成田空港騒音対策地域連絡協議会」(平山正吉会長)が26日、成田市内で総会を開き「空港が最も効率的に機能し、新たな騒音区域の拡大のない整備を」などとする決議文を採択した。本来計画の推進を要望する内容だが、「北伸ばし」「本来計画」の文言は入れず、本来計画の要望を明記していた従来と比べ論調を弱めた。
 北延長をめぐっては、実現すれば騒音被害が増える空港北側の成田市などと、空港南側の芝山町などの間で、反対姿勢に温度差が出てきている。
 また、国土交通省の担当課長は総会で、一部地権者と話し合いをしている空港会社に対し、7月中旬までに用地交渉につながる見通しを求めていることを説明。「いずれ判断する時期が来るが、地域のみなさんと相談して決めたい」と述べた。

 【本紙の解説】
 騒対協はやはり条件派そのものである。「北延伸反対」「本来計画の実現」を決議文に書くと、北延伸した場合の騒音対策費が削減されるのでないかとの思惑から、「決議文」から削ったのである。しかし、今年度の活動方針案には「(滑走路を南側に伸ばす)本来計画の早期実現」と書いてあり承認されているのである。
 国交省から騒音対策費を大盤振る舞いすると5月11日の正式会談で伝えられたことで、それまでの「北延伸反対」の姿勢を曇らせ、騒音対策費の増大という見返りを得る方針に転換したのである。騒対協がこれでは、騒音下の住民の生活は大変である。反対同盟の成田市久住地区や下総町への北延伸反対の宣伝活動では、住民の北延伸絶対反対の声と行政・騒対協への批判が多く寄せられている。

(6月28日) 堂本知事 一部トンネル化は難しい 成田新高速鉄道(6/29日経首都圏版、読売、毎日各千葉版、千葉日報)

 成田新高速鉄道線と国道464号(通称・北千葉道路)の建設について、堂本暁子知事は28日の県議会で、費用面などから「一部トンネル化は難しい」との考えを示した。国道の事業者は県、鉄道は県を含む第三セクター。堂本知事は24日に送付した両事業者の環境影響評価に対する知事意見で、環境への「影響が重大」として、トンネル化検討などを求めており、矛盾する結果となった。
 両事業は首都圏から成田空港へのアクセス向上を目指し、印旛村から成田市までで計画されている。絶滅危惧種「サンカノゴイ」の最重要繁殖地である北印旛沼には、道路と鉄道の高架橋がかかる。繁殖や景観について、知事意見は「重大な影響」があるとしていた。
 28日、高崎照雄氏(公明)の「知事意見を受け、事業者としてはどのような対応をするか」との質問に対し、堂本知事は「経費や地層の問題がある」とし、費用の増大や地下水の問題を理由にトンネル化に難色を示した。さらに「環境を保全しつつも道路は必要だ。知事としては片方の側に立つわけにはいかない」と述べた。

 【本紙の解説】
 成田高速鉄道問題での堂本知事の態度は実に不誠実である。成田高速鉄道の建設主体である千葉県知事の立場としては「トンネル化は100パーセント無理」といっているのだ。これは先週の「本紙の解説」でも書いたが(05年6月24日付日誌を参照)、トンネル化した場合は事業費が増え、借入金が増大し、計算上も永遠に黒字化しないので工事が認可できないのである。
 にもかかわらず、環境影響評価に対する知事意見としては「トンネル化の検討を求める」などと矛盾したことがまかり通ると思っているのであろうか。
 知事個人としてはどちらなのかを明らかにすべきなのである。「矛盾を認めている」と県議会で答弁しているが、政治家個人としてそれはあってはいけないことである。
 堂本知事は「知事としては片側に片側に立つわけはいかない」として道路、鉄道の必要性を述べているが、ここに堂本知事の本音がある。堂本知事は鉄道、道路建設の推進の立場である。環境影響評価に対する知事意見は、「環境派」と自認していることの人気取りに過ぎなかったのである。先週の解説でも「環境問題で三番瀬保全の約束を実行しないという悪評を挽回するために、トンネル化を要求しているのであろう。最終的にどうなることか、いまだ分からない」としたが、その通りであった。

(6月30日) 空港会社 地権者と4度目の会談(7/1毎日、東京各千葉版、千葉日報、7/2読売、毎日、産経各千葉版、千葉日報)

 成田空港の暫定平行滑走路延伸問題で、成田国際空港会社と同滑走路南側の用地内地権者4戸との第4回会談が30日夜、成田市内で聞かれた。
 地権者からは「同滑走路の使用中止ができないなら、夜9時から翌朝7時までの離発着を制限すべきだ」との要望が出されたほか、東峰区に対する警察やガードマンによる過剰な警備体制は生活監視につながるとして警備軽減を求めた。
 暫定滑走路は地権者に配慮して、国交省が3月下旬からの冬ダイヤで深夜・早朝(午後10時〜午前6時半)時間帯には原則として使用しない運用制限の緊急措置を実施している。地権者の要望に空港会社は「受け入れる余地がなく不可能」と回答した。
 会談後、記者会見した地権者は主張と意見は次回(第5回)で詰め一定の結論を得たい。北伸案はもってのほか。受け入れがたい」とし、国から「北延伸」の指示が空港会社にあった場合は「解決に向けた話し合いが進む以上(空港会社にはその話を)返上していただく」と語った。
 一方、黒野社長は「本来計画による2500メートル化の必要性を議論するかどうかを提案する雰囲気ではなかった。議論を急ぐよう要請したが、中旬までに次回が開かれなければ現時点の状況を報告するしかない」と述べた。国交省は中旬までに交渉経過の報告を受けたうえで、最終方針を決める意向。

 【本紙の解説】
 北延伸をめぐる国交省と空港会社のやり取り、空港会社と脱落派との「話し合い」会談も実質の伴わないものになっている。
 国交省はしゃにむに北延伸決定を押し切ろうとしているが、彼らの真意は強引に押し通せば、地権者は屈服するという傲慢な考えだ。三里塚闘争の歴史をまったく教訓化していない。北側大臣書簡にある「協力が得られなければ北伸案を選び、交渉を打ち切る」という立場である。強引に事を推し進めれば農民は屈服する。三里塚闘争を「ごね得闘争」とでも思っているのである。しかし、農民が一人でも反対すればその立場は崩れるのである。
 しかし、北延伸を国交省が決定したとしても、その建設主体は空港会社であり、空港会社もいまは、100パーセント政府が株主の特殊会社であるが、07年には完全民営化する予定であり、政府・国交省の直接支配下からは外れる。北延伸工事の実際の着工は、環境アセスメントや騒音コンター作成が完了した後なので、実質的には最短で約3年後だ。この時点で、空港会社は国交省の決定に拘束されなくなっている。
 にもかかわらず、国交省が強引に北延伸決定に持ち込みたいのは、上場時の株価を高値に誘導したいこと、そして強引に事を進めれば反対農家が屈服し、本来計画の南側延伸も可能となるかもしれないとの皮算用である。
 黒野空港会社社長は、国交省のやり方ではいままで以上に農民が反発してしまうので、「話し合い」を重ねていこうとの戦術である。しかし黒野社長のやり方は、国交省が空港会社を批判しているように「百年河清を待つ」ようなものだ。空港会社は、暫定滑走路の北側延伸による2500メートル化は、ジャンボ機も飛ばず、誘導路が一方通行であり、増便もできないことを知っている。それゆえ現時点での北延伸はやりたくないのである。たとえ「百年河清を待つ」ようなものでも、本来計画の南延伸しか考えられないのだ。それで黒野は、国交省がどのような決定をしようと「話し合い」は継続するといっているのである。
 最終報告が7月中旬、最終決定は7月下旬かと言われているが、これも再びずれ込む可能性もある。仮に北延伸を強引に「決定」しても、一方で「話し合い」を継続するというような、どうにでも解釈できる決定しかできないだろう。

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