SANRIZUKA 日誌 HP版   2003/08/01~31    

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 2003年8月

 

〔週刊『三里塚』編集委員会HP部責任編集〕 


(8月1日) 羽田再拡張に民間資金/PFIで3000億円(7/31日経、8/1読売、8/2朝日、毎日、日経、産経、東京)

 国土交通省は1日、羽田空港の再拡張事業のうち、ターミナルや駐機場、管制塔などの施設を、民間資金を活用した社会資本整備方式(PFI方式)で建設する方針を発表した。事業規模は3000億円程度と国内PFIで過去最大となる。財源難を民間が補うことにより、9000億円と見込んでいた公共事業費を6000億円に減らせると国交省はみている。羽田再拡張は来年度着工に向けて動き出す。
 再拡張事業では現在の羽田空港の沖合に4本目の滑走路を新設。航空機の発着回数は1・5倍に増え国際便も就航する。
 国交省は8月末までにPFIを柱とする資金調達の仕組みについて与党や財務省、東京都や神奈川県などの周辺自治体と協議。調整が付けば来年度に着工し、2009年の完成を目指す。
 国交省は当初、今年度の着工を目指していたが9000億円の事業費に財務省が難色を示した。そこで、周辺自治体に事業費の3割(2700億円)を負担させる計画を立てたが、これも地元の了解が得られないまま着工は延期になりそうであった。
 国交省はPFIの導入で公共事業費を6000億円に圧縮したうえで、その3割に当たる1800億円の負担を自治体に求める考え。負担額が減るため、自治体も受け入れる公算が大きい。
 PFIは民間の資金やノウハウを活用して公共施設を整備する手法で、日本では1999年のPFI推進法施行によって本格的に導入された。設計、建設から資金調達、維持管理までを民間企業に委託する。委託先は入札で最も良い条件を提示した企業に決定する。
 今後、3000億円の投資採算を民間がどう判断するかが焦点となるが、国内でも最も利用客の多い空港だけに採算は十分合うとの見方が多い。
 受託した民間企業は、建設したターミナルを有料で貸し出したり、航空会社から駐機場の利用料をとって収入を得る。管制塔などの公的施設は国から使用料を徴収する。こうした収入を原資に20~30年間かけて建設資金を回収する。

 【本紙の解説】
 羽田空港再拡張でのPFIの導入は、空港特別会計の破綻で事業資金をまかなえなくなったことで決定された。9000億円の羽田再拡張事業費のうち約3割、2700万を首都圏サミット参加の地元自治体に負担を計画していた。東京都の石原知事は当初、賛成の意向だったが、千葉県の強引な反対に歩調を合わせていた。その後「羽田空港の再拡張事業を話し合う協議会」に千葉県が抗議の欠席表明を行うなど、地元負担は暗礁に乗り上げていた。
 千葉県の堂本知事は千葉上空1000メートル以上の騒音を問題にしているが、本音は羽田国際化そのものに反対である。昨年11月の7都県市首脳会議で堂本知事は「そもそも国は成田、羽田、関空をどう位置づけるのかといったビジョンが確立していない」と発言している。(02年11月13日付日誌を参照)
 今回のPFI導入は、この千葉県と堂本知事の「羽田国際化反対」「千葉上空の騒音反対」「事業費の地元負担反対」を押しのける意図で行なわれた。地元負担分は計画として1800億円残っているが、財務省としては6000億円の政府負担はあらかじめ計画していたので、基本的に自治体負担がゼロになっても事業資金不足問題は決着したということだ。これで来年度の着工は事実上決定した。
 しかし、PFIは事業リスクも出資した民間資本が負うことになり、はたして空港ターミナル経営などの変動の激しい事業に見合うものかどうかが疑問視されている。これまでのPFI事業で最大規模は、約1000億円の中央合同庁舎7号館(東京・霞ヶ関)の建て替えであった。つまり、利用者は政府機関である。他のPFI事業もそのほとんどが公務員宿舎、福祉施設の建設などであり、規模も小さく、利用者は政府や自治体という公的機関なのである。

(8月4日) 国交省、空港着陸料の来年度引き上げ撤回(8/5日経)

 国土交通省は4日、2004年度に計画していた国内空港の着陸料引き上げを撤回することを決めた。当初は現行の割引制度を打ち切って計230億円の値上げを実施する計画だったが、来年度も割引制度を維持し、着陸料を据え置く。着陸料の引き上げにともなう航空運賃の上昇を回避するのが狙い。ただし、着陸料などを収入源とする空港整備特別会計の資金繰りはひっ迫しそうだ。
 着陸料は空港に着陸する度に航空会社が国交省などに支払う。国内便の正規料金は主力機のボーイング767―300型で1回21万7000円で、各国の主要空港と比べて突出して高い。

 【本紙の解説】
 国土交通省が国内空港の利用料の割引制度を打ち切り、正規の料金に戻すことを取りやめた背景は国内航空会社の経営危機である。イラク侵略戦争、SARS問題で国内航空会社の経営危機が自助努力では立ち行かなくなっているからだ。自民党の国土交通部会でも航空会社への経済援助を声高にさけんでいる(03年7月18日付日誌を参照)。
 しかし、空港整備特別会計の破綻はいっそう深まる。現在、空港特会は約1兆円の借入金があり、毎年約1千億円近くを返済する一方で、そこから約500億円を借り入れている。空港利用料の収入約2000億円、一般会計からの受け入れ約1000億円、この収入が空港特会の大半である。この財源規模から毎年1000億円近い借入金返済は底をついていた。そのために国内路線の利用料の値上げを考えていたのである。国土交通省としては、成田の民営化にともなう株式売却益の5000億円前後をあてにしているのか。しかし、それも暫定滑走路が暫定のままだと額面割れの1000億円を切る可能性もあるのだ。

(8月5日) 羽田再拡張 千葉県・市連絡会議初会合/騒音、首都圏で分担を(8/6朝日、読売、毎日、日経、産経、東京各千葉版、千葉日報)

 羽田空港再拡張事業にともない、県上空を通過する飛行機の騒音悪化が懸念される問題で、県は5日、飛行ルートになっている東京湾岸部の10市と協議する「県・市連絡会議」を発足させ、初会合を千葉市内で開いた。10市は、県が国交省などに対し主張してきた「首都圏全体で騒音を共有し、納得の行く分担を実現させる」という方針に賛同。今後、住民が騒音被害などの不利益を受けないように連携していくことを決めた。
 会議には、千葉、市川、船橋、木更津、習志野、市原、君津、富津、浦安、袖ヶ浦の県内十市の関係者が出席。県が羽田空港再拡張事業の経緯と現在の状況などを説明し、出席者からは、今後、増大する騒音を懸念する意見などが相次いで出された。
 会議後、記者会見した堂本知事は、「羽田の国際化は否定しないが、千葉だけが騒音の受け手になる構図は脱却しなければ、納得が行かない。その方針に全市が賛同してくれた」と述べ、今後、国から新たな飛行ルート、飛行回数などの提示を受けた上で再び連絡会議を開き、意見聴取などを進める考えを示した。
 また、今月1日に、扇国土交通相が、滑走路整備の事業費の一部を千葉県や東京都などに負担させる方針を示した点について不快感を示し、引き続き、国の負担と責任で整備するよう求める姿勢をみせた。

 【本紙の解説】
 国土交通省が羽田拡張総事業費9000億円のうち2700億円を地方自治体に要請していたが、千葉県が反発していた。そのため、財源が最終的に決まらずに、夏の予算シーリングまでに事業計画の来年度スタートのメドが立つかどうか危ぶまれていた。
 国土交通省は千葉県の反対に対してPFI(民間資金の導入による公共事業の整備)に3000億円を振り替え、地方自治体は1300億円の負担に切り替えた。その結果、千葉県などの反対があったとしても予算審査を通過することになり、来年度から事業がスタートすることになった。
 この経過に業を煮やした堂本知事が県だけでなく、騒音下の住民も反対しているという運動をつくるために千葉県・市連絡会議をつくりあげたのである。
 しかし、これは決して住民運動ではない。あくまで県と市の行政の連絡会議である。それにしても、成田の切実な騒音を不問に付して、上空1000メートル以上の騒音にこれほどの情熱を注ぐのはおかしなことである。
 千葉県は羽田の国際化に前から強く反対していた。堂本知事は成田新高速鉄道の政府補助金の増額と引きかえに羽田国際化に賛成してしまった。そのために、面と向かって「羽田国際化反対」は言えない。それで「騒音問題を首都圏全体で共有できるような飛行ルートの設定が事業の前提」ということを持ち出して羽田拡張・国際化反対の行政主導の運動をつくりだしたのである。

(8月5日) アルカイダの反米ゲリラ/厳戒態勢に

 米国がアルカイダの反米ゲリラをにらみ警戒態勢を強めている。国土安全保障省が5日、小型の電気製品が爆発物に転用される可能性があると警告を発し、全米の空港は厳戒態勢に入っている。
 5日の警告は、中央情報局(CIA)が海外のアルカイダ拠点を襲撃したことがきっかけとなった。その際、カメラのフラッシュを小型の爆発装置に転換する実験を行った形跡があることを発見。カメラ、自動車の電子キー、携帯電話、ラジオなどへの警戒を強めるよう指示した。飛行機や公的施設を標的にする恐れもあると指摘している。国土安保省は2日には、主に南米大陸からの旅客を対象とする、ビザなしでも米国の空港で乗り継ぎできる制度を60日間凍結する方針を打ち出した。

 【本紙の解説】
 航空機ゲリラの警戒で米国国内航空の需要の落ち込みは一段と激しくなっているだろう。しかし、米政府は大手航空会社は軍隊の一部ということで莫大な政府援助を行っている。戦争による航空会社の損害は政府が保証することになっている。米政府は、今回のイラク侵略戦争開始による航空会社の収入減を補う財源をイラク戦争の戦費から出している。
 米国の主導で航空会社の巨大化と航空需要の飛躍的拡大が80年代以降続いてきたが、それは終止符を打った。航空需要の先行きを示す民間機製造の受注が01年9・11以降、30パーセント前後落ち込んでいる。このデータは数年先の航空需要も30パーセントほど低下することを示している。

(8月7日) 羽田再拡張に予算100億円/国交省が概算要求へ(8/8朝日)

 国土交通省は8月7日、羽田空港に4本目の滑走路をつくる再拡張事業で、04年度予算の概算要求に約100億円を盛り込むことを決めた。国交省は現地調査を実施するとともに、設計・施工を一体的に入札・発注する計画で、設計や環境影響評価(アセスメント)などに着手するための費用となる。
 再拡張事業の総事業費は1兆円。国交省はこれを、滑走路整備(7000億円)、ターミナルビルや駐機場などの整備(2000億円)、旧整備地区(整備場や格納庫)などその他工事(1000億円)の三つに分け、周辺自治体の協力と民間活力の導入で事業を進める考えだ。
 ターミナルビルと駐機場(各1000億円)の整備にPFI方式を取り入れ、国や地方の負担を圧縮する。周辺自治体には滑走路整備にかかる7000億円の約2割に当たる1300億円の負担を求めている。
 再拡張事業は09年の完成を目指している。12年度には発着回数を現行の27.5万回から1.5倍の40.7万回に増やす計画。このうち、国際線の発着回数は3万回となる見通し。国際定期便は韓国や中国などの「近距離国際線」とする方針だ。

 【本紙の解説】
 羽田の再拡張が本決まりになり、来年度から建設事業がスタートする。09年完成・供用開始にむけ、工事は猛スピードで進むことになる。羽田で国際定期便年間3万というのはかなりの数字である。成田暫定滑走路の昨年度1年間の使用回数は約4万4000回である。暫定滑走路の約70パーセントが羽田に移る計算になる。羽田国際化の制約はアジアの近郊便ということになるので、暫定滑走路を主に使っているアジア便がほとんど羽田に移行することになる。
 また、3万回という数字も正確ではない。これは国土交通省が01年に行った羽田空港の需要予測をもとに割り出している。羽田空港の国内線利用者数が99年度では5227万人であったが、15年度は7900万人になると予測し、この場合に必要な航空機の発着回数は、37・3万回になる。01年当時は羽田の新滑走路(2500メートル)の完成のメドは15年であった。完成すると約41万回の発着回数枠が確保され、国内線需要の37・3万回の余剰枠が約3万回生まれるとして、これを国際線にあてるというところからでている。
 つまり、01年から毎年、国内線の発着が約7000回増加し、15年度に37万回になるという荒っぽい計算である。しかし、15年度完成が09年度になった。そうすると国土交通省の予測通りだとしても09度には約7万回の余剰枠がでる。01年の国土交通省の予測データも千葉県の羽田国際化反対の声で控えめな数字を出していたのである。
 その千葉県の国際化反対の声もない。したがって、09年度から羽田国際化の便数は3万回より大幅に増えそうだ。
 09年の羽田再国際化で成田のアジア便はほとんど羽田に移ることになりそうだ。成田の02年度の年間発着回数は17万6000回、国際旅客便は約13万8000回、国際貨物便が2万6000回、その他の国際便2000回、残りが国内便で1万1000回である。この国際旅客便の半分がアジア便であり、その大半が羽田に移る。昨今の羽田の深夜・早朝チャーター便の搭乗率が90パーセントを確実に超えている。また今年11月から羽田-金浦間のシャトル便が1日4便運航される。これが成功すると航空会社はアジア便を成田から羽田に全面転換することになる。
 羽田国際化で成田は閑散となり、暫定滑走路の騒音も少しは緩和されることは間違いない。

(8月9日) 成田空港では出国ラッシュ(8/9毎日夕刊)

 夏休みを海外で過ごす旅行客の出国ラッシュが続く成田空港では9日、今夏のピークとなる約4万3800人(新東京国際空港公団調べ)が海外へ飛び立つ。
 同公団によると夏休み期間中(7月18日~8月31日)の出発客は、新型肺炎「重症急性呼吸器症候群」(SARS)の影響が尾を引き、昨年同期比2割減の推計約146万1100人。それでも海外で過ごそうとする旅行客らで出発ロビーは朝早くからにぎわっていた。同空港の帰国のピークは17日ごろの見込み。

 【本紙の解説】
 夏休み期間中の成田空港利用客は2割減から1割減の間に落ち着くと見られている。航空機利用客の減少はSARSの影響もあるが、景気の後退、イラク戦争、そして反米ゲリラの警告などの複合的要因によるものである。したがって、減少傾向は一時的なものではなく、21世紀に入り定着しつつあるといえる。
 そもそも20世紀後半、特に90年代が、航空業界の競争激化で航空需要を異常なまでに増加させすぎたのである。減少したといわれる現在の航空需要だが、むしろ正常値に戻ったと理解すべきだろう。
 それにしても、航空機をターゲットにしたゲリラが国際ゲリラ戦闘の主役に躍り出たようである。7月末に米国安全省が、アルカーイダによる航空機をターゲットにした反米ゲリラの警戒を各航空会社に呼びかけ、ブッシュ米大統領も記者会見で、「航空機を使った新たなテロを計画している」との情報について「現実味のある脅威だ」と述べた。
 さらに、英国の新聞に「サウジの過激派アジトに英旅客機攻撃の計画文書」と8月14日に報道されている。真意のほどは定かではないが、「サウジアラビアで、アルカーイダとの関係が指摘されるイスラム過激派のアジトで、英航空大手ブリティッシュ・エアウェイズ(BA)の航空機を攻撃する計画文書が見つかった」「リヤド国際空港に駐機するBAの約300人乗りボーイング777旅客機に対する攻撃計画が記されていた」と話は具体的である。
 その結果、ブリティッシュ・エアは8月13日から英国とサウジ間の旅客機の運航を当面中止している。
 米国務省も同日、テロ発生の恐れがあるとして、サウジへの渡航を自粛するよう勧告している。
 昔は外国に行くのは命がけであったが、そうした時代が復活しつつある。

(8月11日) 空港反対派を小林市長が訪問(8/12読売千葉版)

 成田市の小林市長は11日、成田空港・平行滑走路予定地に住む同市東峰の空港反対派宅を訪問した。小林市長は市議会6月定例会の一般質問で、「地元首長として空港用地内の住民と誠意を持った話し合いをしたい」と述べ、農家との直接対話に取り組む姿勢を示していた。ただ、空港問題や用地交渉に関して具体的なやりとりはなかった。今回の訪問は4月に市長に当選してから2回目。

 【本紙の解説】
 訪問は区長である地権者宅への訪問だけで、それもあいさつ適度の形だけのものであったようだ。反対同盟の萩原宅への訪問はなかった。
 小林市長は6月市議会で、未買収の空港用地内農家との話し合いについて「議会終了後に行動を起こしたい」と述べ、用地問題の解決に意気込んでいた。
 話し合いに行くものが「行動を起す」といういい方は許せないと弾劾したが、実際は議会で発言した手前の形式的なものになったようだ。(03年6月16日付日誌を参照)

(8月12日) 日航・全日空 政策投資銀に融資要請(8/13産経、東京)

 新型肺炎(SARS)の影響などで業績が悪化している日本航空システムと全日本空輸の航空大手2社が、日本政策投資銀行に合計約1800億円の緊急融資を要請していることが12日までに明らかになった。両社ともアジア向けを中心に国際線を減便、旅客数の落ち込みが経営を直撃している。これに対し同行も、融資を実施する方向で検討している。
 融資の対象は、設備投資や社債の借換資金など。日航システムが約1300億円、全日空が約500億円の融資を要請している。返済期間は10年程度(うち3年間は据え置き)で、通常より低利で借り受ける。
 航空会社への融資については、政府が5月、公共性が高い事業で急激な経済情勢の変化に対応するための「緊急対応等支援制度」を適用することを決めた。政策投資銀行は2001年9月の米中枢同時テロの際にも、減収を余儀なくされた航空各社に対し、01年、02年の両年度で約2400億円の緊急融資を実施している。

 【本紙の解説】
 緊急対応等支援制度は無利子に近い低利である。通常利子の利ザヤが2パーセントとしても、1800億円×0・02で年間32億円の無償援助になる計算である。ここれが返済減額によるが、利子分の援助が10年で300億円近くになるのである。
 今年度の日航と全日空の赤字総額の予測は、2003年4-6月期間業績では日航が772億円、全日空が182億円を計上している。航空会社の赤字は様々な要因で発生するが、社会的要素からの赤字だと説明がつく時は、国が全面援助することが定例化したようだ。これは民間航空会社が軍需輸送の重要な一環を担うもので、事実上軍隊の一部を構成しているからである。

(8月16日) 成田空港の誘導路に穴(8/17読売千葉版)

 15日午後3時15分ごろ、空港公団が成田空港の4000メートル滑走路を点検中、滑走路わきの誘導路に穴があいているのを発見した。航空機の運航には影響がなかったが、同5時すぎから同日いっぱいこの誘導路を閉鎖した。穴はすり鉢状で、長さ約35センチ、幅約8センチ、深さ約7センチ。表面のアスファルトがはがれたようだった。同空港では午前零時から午後5時までに100ミリの雨量が観測されており、公団は雨の影響ではないかと見ている。

 【本紙の解説】
 これは事前に発見され大事には至らなかったが、問題は民営化された成田空港が安全対策にどれほどの対策をとるかである。
 安全対策はそれ自身が直接利益を生まない経費である。交通関係の民間会社は大事故が起こるまで安全対策を怠り、事故が起こってその補償費用との換算で安全対策の費用を決めていることが多い。しかし、最近は安全対策より事故補償の保険費用が安上がりなので、安全対策をさらにおざなりにする傾向があるようだ。これは欧州、米国の格安チッケト専門の航空会社が使うローカル空港に多い。成田の民営化がこのようにならないという保証はない。むしろ環境対策、安全対策が営業第一主義によっておざなりにされることは確実である。

(8月18日) 東峰神社裁判 空港公団が和解案(8/19読売千葉版、8/20毎日千葉版)

 空港公団が一昨年6月、成田空港平行滑走路予定地内にある東峰神社の立ち木を無断伐採し、成田市東峰地区の空港反対派農家らが原状回復などを求めている訴訟で、公団は18日までに、具体的な条件を示した和解案をまとめ、農家側に提示した。公団は和解をはずみに、用地交渉を進展させたい考えだが、農家側には反発する声もあり、応じるかどうかは不透明だ。和解案によると、提示された条件は7項目。立ち木の無断伐採の謝罪と慰謝料の支払いのほか、神社周囲に立ち木を植栽することなどを柱としている。
 農家側は土地の所有権を主張しているが、公団は「土地は公団所有」とし、農家側に「所有を目的とする無償の使用借権を有する」と提示している。しかし、公団は立ち木伐採の根拠を所有権に求めており、農家側は「新たに植えた立ち木を再度伐採されかねない」などとして、この条項に強く反発している。
 公団は6月末の弁論で農家側に和解を申し入れており、和解案の具体的な条件を7月末に弁護士を通じて正式に提示した。農家側は内容を検討したうえで、9月22日の次回弁論で和解交渉に応じるかどうか態度を表明する。
公団は暫定平行滑走路供用前の一昨年6月、飛行の障害になるとして、農家側の了解なしに神社の立ち木を伐採。農家側は昨年4月、神社を精神的よりどころとしてきた住民の人格権の侵害にあたるとして千葉地裁に提訴していた。

【本紙の解説】
 空港公団は和解案の提出について「用地交渉が進展」するだろうとの期待を込めてマスコミなどに流している。しかし和解案の本当の提出理由は「用地交渉」の進展のためではない。東峰神社裁判そのものにおいて原告側全面勝訴が現実化してきたことにある。公団にとって同裁判の敗訴は、暫定滑走路開港の法的正当性を失う致命的問題だ。それゆえ「完敗」だけは逃れたいとの思惑で、今回の和解案を提出してきたのである。
 だいいち公団自身、和解案が成立するとは思っていない。マスコミも「農家側には反発する声もあり、応じるかどうかは不透明」(読売)、「住民の中には暫定滑走路の供用開始や無断伐採の経緯などから公団の示す譲歩を懐疑的に見る姿勢もあり」(毎日)などと報道している。
 「和解案」の内容の核心は、公団の無断伐採の開き直りにある。裁判上の争点の核心である土地の所有権については「神社の土地は公団のものだ」と主張。東峰地区側の権利は、神社を維持管理する「使用借権」だけなのである。あまりに虫のいい「和解案」である。公団の「譲歩」とはとうてい言えない内容だ。
 東峰神社の土地は東峰地区の住民全員が所有する「総有」で、登記名義が誰になっていようがそれは仮の名義で、所有権そのものは部落全体にある(2000年8月24日付の「うんちく講座」を参照)。
 立ち木伐採の根拠を、伐採直前にでっち上げた「公団による土地所有権の買収」にもとめ、「立ち木は土地の付属物なので切ることは自由」とするこれまでの立場を変えていない。立ち木もあくまで公団のものだが、「無断で」伐採したことだけを「謝罪」するという内容。「断わって伐採すれば正当」だと主張している。「殴る権利はあるが、殴ると言わずに殴ったことを謝る」というわけである。このような和解案が東峰部落で受け入れられるはずもなく、早晩拒絶されるであろう。裁判では今後、神社の土地は誰のものかという本質的争点をめぐる弁論が展開される予定。

(8月21日)茨城総和町/旅客機の部品落下 会社屋根を直撃

 日本航空の成田発ローマ行き国際線旅客機(ボーイング747)が先月31日、エンジントラブルを起こし、茨城県総和町稲宮の住宅地に、エンジンの一部の金属片2個を落下させていたことが21日、わかった。一つは建材会社の作業場のスレート屋根を直撃し、屋根に直径約五センチの穴が開いたが、けが人はなかった。もう一つは約25メートル離れた町道で見つかった。
 国土交通省新東京空港事務所などによると、金属片はいずれもエンジン内で高速回転する羽根(エンジンブレード)の一部。長さ約14センチ、幅約5センチ、厚さ約0・2センチで、重さは約90グラム。
 旅客機は、先月31日午後1時半ごろ、高度約5500メートルで、第3エンジンが不調になり、成田空港に引き返した。日本航空が金属片を調べ、エンジンの一部とわかった。

【本紙の解説】
 航空機落下物は大きくは3つある。一番多いのは氷塊、次は着陸時に廃棄するジェット燃料、三番目は一番危険な航空機部品の落下物である。
 航空機部品の落下物はいままで空港から20キロ以内で問題になっていた。それは、離陸してすぐに航空機の欠陥が現われると理解されていたのである。しかし、茨城県総和町は成田空港から北西の方向約80キロの地点である。航空機の高度も5000メートル以上であり、騒音もあまり問題にならず、空港問題と関係ない地点であった。
 しかし今回の事件で分かったことは、航空機は離陸地点からの距離を問わずに、整備不良の度合いで落下物が生じるということである。
 いままでもこのような遠方での落下物が多くあったと思われるが、実際は人家の少ない山の中や海上だったので問題にならなかっただけかもしれない。航空需要の落ち込みが急激になり、航空会社の赤字が激増している。そのため経費削減が叫ばれ、整備要員の削減が進んでいる。その影響で整備不良による事故が多発している。
 これは航空機の墜落という大事故の前触れである。航空機の大事故は運航技術、管制技術、航空機のあらかじめの欠陥をふくむ整備不良の3つの要因で生じる。航空機落下物も墜落の前触れと言えるのである。
 それにしても、航空機はいまだに工学的に完成したものでなく、危険なものであることを今回の事件は示している。

(8月26日) 成田空港/「南部貨物ビル」2棟が完成(8/26千葉日報、8/29朝日千葉版)

 活発な航空貨物の需要増を追い風に、成田空港の整備地区南側に整備が進められていた「南部貨物ビル」2棟が完成、供用が開始された。年10万トンの貨物処理能力がある。南部貨物地区でのビル供用は初めて。
 同地区は3期に分けて整備が進められており、今回の供用は第1期分。空港公団貨物ターミナル部では「第2期は来春、第3期は再来年春をメドに供用を開始したい」と話している。
 それぞれ床面積5000平方メートルの貨物上屋2棟ずつを建設、05年までに上屋6棟、計30万トンの処理能力アップを図る。成田空港全体の貨物取扱能力は、現在の中央部にある貨物地区と4月に完成した北側・天浪地区の6万トンと合わせ年206万トンだが、再来年には「240万トン体制」へと増強される。
 今回、供用が始まった南部第1、第2貨物ビルは今年2月に着工、半年かけて完成した。輸出入の貨物上屋2棟(延べ床面積1万平方メートル)、事務棟(600平方メートル)、トラック待機場で構成され、総工費は13億円。日本貨物航空、日本航空の2社が航空貨物積み込みと積み降ろしに利用する。
 成田空港の国際線航空貨物は、イラク戦争や新型肺炎SARS(重症急性呼吸器症候群=サーズ)の逆風下でも順調に伸び続け、今年3月末に年200万トン(02年度実績)の大台を突破、5月には開港以来、累計で3000万トンに達した。
 世界の空港国際線ランキング(貨物取扱量)でも香港に次ぎ6年連続で世界第2位(01年)を誇る。空港公団では、2015年度には取扱量が年300万トンに達するとの将来見通しに基づき、整備を進めたい考え。

 【本紙の解説】
 南部貨物地区は日航グランド跡地約9ヘクタールの土地と公団の取得済み用地を合わせ計20ヘクタールに新設されたものである。
 空港中央部にある現行の貨物地区の年間取扱量は200万トンが限度であった。2014年には年間300万トンになるという予測で、建設を計画していた。現在の貨物地区が32ヘクタールでその約6割の広さである。最終的にここで年間100万トンの貨物取扱量になる計画である。この南部貨物地区の完成に先立ち現行貨物地区に隣接する天浪にも取扱量年間6万トンの貨物基地を今年4月に増設した。
 2014年に300万トンに増えるという予測もはなはだ怪しい数字である。1990年から2000年の過去10年間に貨物取扱量が輸出入とも約1・4倍の増加になったことを根拠にしている。かつ暫定滑走路がジャンボ機が飛べる本来計画の滑走路になることを前提にした数字である。その90年代はバブルとその後の経済が膨張し続けた10年間であった。それを今後の約10年に当てはめることはできない。さらに09年に羽田の4本目の滑走路が完成し、アジア便の大半は成田から羽田に移ることになる。
 また駒井野に千葉県が準備している「成田国際物流複合基地」がある。総面積78ヘクタールである。その一部である「三角地区」の24ヘクタールが05年に完成する予定である。この物流複合地区は現行の貨物地区とも隣接しており、南側貨物地区より貨物の扱いには便利になると言われている。この複合地区は「三角地区」だけでも100万トン、すべて完成すれば300万トン以上の貨物取扱が可能になる。総計600万トンにもなる。
 これを見ていけば、黒野公団総裁がいう「貨物量が増大しているが、貨物基地が足りないので、東峰地区に貨物基地を建設したい」ということがいかにペテン的であることがはっきりする。

(8月27日) 空港公団/政府保証債375億円要求(8/28朝日、毎日、東京各千葉版、千葉日報)

 成田空港の整備を進める新東京国際空港公団は27日、04年度政府保証債の要求案(旧概算要求)をまとめた。政府保証債は公団の債務負担行為を国が保証する財政投融資の一環。7月に成立した成田国際空港株式会社法の規定に基づき、国土交通大臣の認可を得て決定される事業計画に先立ち行われるもので、要求額は前年度を24億円下回る375億円となった。
 対象事業となる空港機能整備費の総額は対前年度比6パーセント減の751億円。内訳は平行滑走路に89億円(対前年度比22パーセント増)、エプロン新設や誘導路など空港の安全運用にかかわる基本施設整備に144億円(48パーセント増)、将来の需要増に備えた第一旅客ターミナルビル改修など旅客取扱施設に304億円(17パーセント減)、貨物取扱施設などその他整備に214億円(20パーセント減)。また、防音工事助成や移転補償、緩衝緑地帯の整備など共生事業の充実に111億円(25パーセント減)を投入する計画。共生事業費の減少の大半は、騒音地区住民の移転補償が進んだことによるとしている。
 公団によると、天浪貨物地区の混雑解消に向けて専用道路を新たに設置するが、空港整備の大半は継続事業という。平行滑走路の2500メートル化は、用地間題が解決した際、すぐに工事に着手できるよう計上しているもので、03年度からの3年間で総額152億円を見込んでいる。

 【本紙の解説】
 民営化された「成田空港会社」の予算は今年度までの「出資金扱い」の返済義務がない予算がなくなり、財政投融資分が「政府保証債」となったのである。
 来年度も平行滑走路予算89億円がついたことは悪辣な農民脅しの攻撃である。今年度も73億円がついたが、基本的に使われていない。用地問題の解決のメドもないのに、再び三度、軒先工事を始めようとする攻撃である。具体的には北側再延伸を予算的に裏付ける意図をもった攻撃である。
 共生事業が4分の1カットされ111億円になったことは、民営成田空港会社の未来と本質がうかがわれる数字である。すでに黒野は7月11日の記者会見で「(地元対策は)常識的に見て必要があればやるが、必要がなければやらない」などといっていた(03年7月11日付日誌を参照)。来年度予算はこのことを裏付ける数字となった。減額の理由を「騒音地区住民の移転補償が進んだ」としているが、それは「共生費」の一部でしかない。民営化が周辺対策費、騒音・環境対策費の減額になると予測していた周辺自治体の予想が初年度から的中したものとなった。

(8月28日) 羽田再拡張の調査予算概算要求/堂本知事、騒音未解決と批判(8/29読売、東京千葉版)

 羽田空港の沖合に4本目の滑走路を建設する再拡張事業で、国土交通省が新設滑走路の調査や設計などの費用として107億円を2004年度予算の概算要求に盛り込んだことについて、堂本暁子知事は28日、定例記者会見で「まだ千葉県が納得がいくような飛行コース、騒音の共有について合意も出ていない。建設の話だけが進むのは時期尚早ではないか」と国交省の対応を批判した。
 国交省は7月中にも、県が提示した飛行コースなどについて話し合う関係都県との協議会を開く予定だったが、開催が遅れている。堂本知事は「騒音問題が解決しないまま進められ、概算要求という形だけついている」と既成事実の積み上げに対する危機感を表明した。
 羽田空港から発着する航空機は現在、ほとんどが県上空を通過する。再拡張されると、同空港の発着回数は1・5倍と予測され、堂本知事は首都圏での騒音の共有などを国に求めている。

 【本紙の解説】
 国土交通省は羽田の4本目の滑走路建設と飛行コースの決定に千葉県の反対を基本的に無視して進めることにしたようだ。飛行コースが環境基準に触れなければ、その決定は国の専権事項であるとして、ことを進めようとしている。
 周辺自治体との話し合いにおける国土交通省の立場は、飛行コースの問題を無視し、建設費用の3分の1を周辺自治体に出資してもらうということであった。首都圏サミット構成自治体との協議会はそのために設定した。出資金と飛行コース問題とを絡めて、千葉県が猛反対を唱えたのであった。そのために、急きょPFI(民間資金等活用事業)方式で2000億円分を調達することにした。基本的に千葉県からの出資を当てにしなくてもいいようにしたのである。その結果、国土交通省は関係自治体との協議会を7月中に開催し、飛行コースを提示すると約束していたが、千葉県堂本知事の欠席発言などもあり、協議会の開催もとりやめ、来年度予算の要求までいったのである。
 しかし、堂本知事も堂本知事である。成田空港の騒音をまったく顧みずになぜ、上空1000メートル以上の飛行で環境基準以下の羽田の騒音にこれほどまでに反対するのであろうか。それは、国土交通省に成田空港の完全完成を要求し、羽田空港の国際化に反対することに理由がある。もし、羽田が完成し、国際空港機能の半分が羽田に移転した場合には、それが千葉県経済にとって痛手になるからである。千葉県による貨物基地建設や幕張メッセの存在価値は半減するからである。
 千葉県と堂本知事は、羽田空港の飛行コースを理由に滑走路建設に反対という形を取っているが、実は成田空港の地権者と周辺住民をたたき出し、成田空港の完全完成を国交省に要求しているのである。

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