●(5月5日) 成田空港、このままでは”沈没”/扇千景国土交通相(5/5産経)
産経新聞の新閣僚のインタビュー「経済閣僚に聞く」で扇千景国土交通相は以下のように答えている。
―羽田空港の国際化にどう取り組むのか。
「羽田とか成田とかお互いに権益を誇示しているときではない。空港の発着量は2015年に満杯になるので、あるものを有効に使うしかない。それをしないのは政治の不在だ」
―成田空港が国際競争で苦戦しているが。
「成田では1本滑走路を増やすだけで年数がかかっている。しかも着陸料は94万円。韓国の仁川国際空港には4000メートル滑走路が2本あり、将来は4本になる。着陸料は日本の3分の1。成田は国際的なハブ空港とは言えず、このままでは国際的に沈没してしまう」
【本紙の解説】
これが、国土交通省を代表する言葉なのか。首都圏の空港のスロット枠需要が、このようになることは、70年代から当時の運輸省が予測していた。「空港の発着料が2015年に満杯になる」ことを国土交通相は人ごとのように発言している。首都圏の空港事情がこのようになった責任は、当時の運輸省、現在の国土交通省にある。三里塚闘争に屈服する(国の敗北を認める)ことを嫌い、国の面子(めんつ)を優先させてポスト成田の新空港建設をストップしていたことに最大の原因があるのだ。
政府にとって三里塚闘争の解体と、成田完全開港は悲願だった。78年暫定開港を推進した福田内閣、86年二期工事を強行した中曽根内閣、その後のすべての内閣も成田空港の完全化を優先し、首都圏の空港需要ひっ迫問題は見過ごしたのである。三里塚闘争への階級的憎悪と、そこからくる成田空港への異常なまでの固執が現在の空港「危機」をつくりだしているのである。
扇国土交通相が「成田がこのままでは」という意味は、平行滑走路が暫定のまま終わることをさす。そうすると「成田は国際的に沈没してしまう」と。
その通りである。国土交通省の三里塚闘争への完全敗北宣言でもある。しかし、国の面子から成田に固執し、敷地内農民に35年間も塗炭の苦しみを強制してきた国土交通省のトップの言葉として、実に怒りにたえない。
●(5月8日) 成田空港国内線充実検討会第3回会合/「需要あり」と予測(5/9各紙経済面および千葉版)
成田空港国内線充実検討委員会(委員長・山内弘隆一橋大教授)は8日、都内で第3回会合を開き、事務局は暫定滑走路の需要予測の試算結果を報告した。現行は4路線1日7便で年間約5000回の離発着便。国と公団は年間2万回分の発着枠を用意している。1日27便に相当する。
今回公表された予測では現在成田発着の国内線と同じ160席以上の大型機の場合なら、現行の千歳、名古屋、大阪、福岡に函館、仙台、新潟、小松、長崎の5路線を増やした計9路線1日12便、年間約8700回。130席の座席の航空機を使う場合は、さらに青森、秋田、広島、鹿児島の4路線が増え13路線になり1日18便、年間約1万3000回。近年、航空会社が取り組み始めている座席50席以上のリージョナルジェット機利用なら、年間2万回の離発着を上回る52便の需要があるとした。
しかし、採算ラインといわれる70%の搭乗率を確保できるのは9路線、1日12便への拡大の可能性がもっとも高いとしている。2005年の試算でも現行の160人乗り以上の場合は10路線、14便で年間約1万回の発着回数になる予定。
国土交通省は「大型や小型の航空機を組み合わせれば、成田に多くの国内線需要があることがわかった」と説明。ただ、会合では国内航空各社から「実際には機材の調整が難しいのではないか」「季節によって偏りがあるのではないか」などの注文も多くだされた。
また、国内線充実検討委員会が周辺住民を対象にしたアンケート結果も報告した。直近に利用した国内線がどの空港を利用したのかを聞いた質問で「成田空港発」だった住民は4%に過ぎなかった。旅行会社に申し込んだツアーが羽田利用だったことや、成田の国内線が都合の良い時間帯に就航していないことが理由だった。
【本紙の解説】
国土交通省は「来年春に年間2万回の発着枠がすべて埋まるとは思っていないが、おおむね実現できるのではないか」としているが、とても2万回にはいかない。検討委員会が報告した「9路線1日12便、年間約8700回」が上限だ。
しかし、これも実際は難しい数字である。観光地需要があまり見込めない仙台、新潟、小松は、採算割れといわれている。そうすると7000回前後に落ち着く。現有航空機使用で2005年の予測試算でも1万回であり、「2万回」という数字は大うそといえる。
本誌が昨年12月18日付日誌で予測したのが「現行の倍の1万回が最大限度で2万回は絵空事。実際は7500回が限度」としたが、実際にそのようになっている。公団の思惑どおりには事態は動いていない。座席50席以上のリージョナルジェット機を定期便に組み込み、なんとか発着便を増やそうとしているが、これも無理がある。機長などのクルーの人件費がかさみ、貸し切りなどのチャーター便でないと採算は取れない。航空会社は否定的である。
国際便も乗り入れはわずかで、国内線がこの現実では暫定滑走路は使いものにならないことがいよいよ明白になってきた。
●(5月8日) 成田商工会議所10周年記念式典(5/9千葉日報)
成田商工会議所(宮崎広郎会頭)の創立10周年記念式典が8日、成田市内のホテルに来賓や関係者ら約400人を迎え開かれた。
式典では宮崎会頭のあいさつ。高橋晴樹関東経済産業局長、堂本知事の祝辞(メッセージ)。小川国彦成田市長、林幹雄衆議院議員、中村公団総裁などがスピーチ。10周年記念ではほかに、空港平行滑走路供用にともなう地域経済振興事業や会員名鑑の発行、記念講演などが行われる。
成田商工会議所は「成田時代まつり」などのイベントを手掛ける一方、成田空港をめぐっては完全空港化の早期実現運動に取り組むなど地域のオピニオンリーダー役を担い、国際空港都市として発展する成田市の一翼を担ってきた。
【本紙の解説】
成田商工会議所は99年に「平行滑走路の早期完成を求める10万人署名」を行い、また今年の2月16日には「平行滑走路の2500メートル化」の要望書を国土交通省に提出した「成田空港早期完成促進委員会」の中心団体である。その記念式典に堂本知事が参加せず祝辞(メッセージ)を寄せただけとは、おかしなことである。林幹雄衆議院議員や中村公団総裁なども参加している。民間団体主催とはいえ公式行事に近い。堂本知事は小川市長の個人後援会のパーティーにまで乗り込こみ、成田空港の完全完成を叫んでおきながら、空港建設の最大推進団体の会合に参加せずとはバランスを欠いている。
堂本知事は最近になって「成田はもう止めた」と周囲に語っている。「成田は一気にやってしまおうと思って」とまで反動的に言い切ったのはつい先日のことだ。三里塚闘争35年間の歴史を「一気にやってしまう」といえる見識のなさも驚きだが、一転「もうやめた」とは堂本知事の人間性を疑わざるをえない言葉である。
●(5月9日)富津沖に首都圏第3空港誘致で協議会設立(5/10千葉日報、読売、毎日などの千葉版)
首都圏第3空港の富津岬沖への誘致を目指す「君津・安房地域首都圏第3空港誘致協議会」(会長・白井貴富津市長)が9日設立された。同協議会は、南房総の15市町村長(木更津、君津、館山、鴨川、袖ヶ浦、富津市と安房9町村)で構成され、「富津空港」の実現に向けて取り組むことを申し合わせた。
白井市長は「富津沖は都心とのアクセスが良く、海上で騒音問題をクリアできるなど、首都圏第3空港に最適。空港を南房総全体が発展する起爆剤にしたい」とあいさつ。
記者会見で「羽田空港は安全面でも問題点が多い。富津沖では3500メートル級の滑走路をみたてているが、4000メートル級も可能で、こちらの方が首都圏第3空港にふさわしい」と強調。
【本紙の解説】
富津沖は首都圏第3空港(本格的な新空港)としては第一候補であり、依然として本命である。運輸省(現国土交通省)と千葉県の羽田空港国際化をめぐる確執が生じたことで、富津沖はまともに検討されず、当面する首都圏の空港整備は羽田の再拡張でほぼ決まりになった。
現在の航空需要の伸びを前提にするなら、本格的第3空港は必要になる。その場合、軍事空域である米軍・横田空域、自衛隊・百里空域を前提にすれば富津案か東京湾奥が有力だ。ただし、湾奥は東京湾の船舶航路と矛盾があり、埋め立てと架橋の建設費が3兆円とも7兆円とも試算されたことで基本的に候補から消えた。
国土交通省の手順としては、十数年後を見越しての本格的第3空港に取りかかることになる。同省としては、ダムその他の公共事業の評判が悪い中、空港整備を箱物行政の主力にしようという思惑もある。地方空港が大赤字の中で、採算ベースにのることが予測できる首都圏の空港整備は何よりの関心事である。
その中で富津沖誘致運動の協議会が設立された。この富津案に堂本知事がどういう立場をとるかは見ものである。自然保護団体などの反対運動はまだ顕著ではないが、三番瀬などと同じ大規模自然破壊となることは明らかなのだ。
成田空港関連事業では、堂本知事は成田新高速鉄道の完成を推進している。4者協議会」のテーマから用地買収問題が外されたことで、鉄道が同会の最大テーマとなったわけだ。しかし、この成田新高速鉄道は印旛沼に架橋を掛ける計画だ。印旛沼の環境破壊は深刻となろう。
このように堂本知事の立場は積極的な開発推進だ。「環境問題」はその隠れ蓑にすぎない。
●(5月11日)県が空港周辺の都市計画決定/騒音区域、7市町に設定
(5/12読売、毎日の千葉版、千葉日報)
県は11日、成田空港周辺の騒音対策のため、「特定空港周辺航空機騒音対策特別措置法」(騒特法)に基づく騒音区域を7市町で設定する都市計画を決定した。あわせて周辺自治体全体を都市計画区域に組み込む決定も行ったことで、堂本暁子知事が力を入れる「国際空港都市構想」に弾みがつきそうだ。空港反対運動で中断していた地域整備が、開港23年にしてようやく本格化する。
騒特法が適用されるのは、成田市、下総、大栄、多古、芝山、松尾、横芝町の7市町にまたがる4400ヘクタール。うるささ指数80以上の「防止特別地区」では移転補償が行われるが、対象の460戸のうち203戸が、すでに事前移転か移転契約を済ませている。
今回の都市計画決定について、県企画部は「地域発展の起爆剤になる」と強調、空港周辺を地域整備していくうえでの節目と位置づけている。堂本知事は就任以来、成田空港問題に力を入れ、県と国、公団、地元市町村が参加する4者協議会を発足させたが、今回の決定により、流通基地の整備などを柱とした「国際空港都市構想」に弾みがつくものと期待されている。
また、来年5月には2180メートルの暫定滑走路が供用開始されるが、今回の騒音区域の設定は2500メートル級滑走路を前提にしたもので、ジャンボ機が発着でき、より大きな経済効果が期待できる「2500メートル」への強い期待を改めて示すものとなった。
同計画の原案は、一期開港翌年の1979年に作られたが、88年に過激派のテロで県収用委員会の委員全員が辞任した余波で作業が中断されていた。
【本紙の解説】
騒特法とそれに基づく都市計画は、空港周辺の無人化を本質とするものだ。県企画部や堂本知事は「地域発展の起爆剤になる」とか「国際空港都市構想に弾みがつく」とかいうがデタラメである。
騒特法の特別防止地区は新たな住宅建築などが禁止され、住民は移転させられる。人が住めなくなるのだ。防止地区は防音工事が義務づけられる。その他の補助はでるが住宅環境は極端に悪くなる。大阪空港やその他の空港でも、騒音地区の地価下落や定住民の減少で、町としての機能と共同性が著しく損なわれている。
巨大航空機の騒音は人を住めなくするのだ。空港と人は「共生」できるような生やさしい関係ではない。それを実体化・法制化したのが騒特法である。
「空港裏側」の芝山町などがこれで発展するというが、その内実は都市計画での国と県の資金援助頼みだ。しかし、工業団地を造っても入る企業が減少しているのが現実で、無駄な投資になることは明白だ。
また、特別防止地区に入ると移転補償で家が新築できると喜ぶ人もいるが、移転農家の建築資金は補償だけでは足りず自前の持ち出し分も多い。そして、特別防止地区の山林、原野、農地は買収対象ではなく、地価も下落する一方だ。
防止地区は移転補償もなく、生活環境が悪化するだけだ。その代償として公団から防音工事費用とエアコン使用の電気代がでるだけである(窓を開けて生活できない)。
今回の騒特法・都市計画の決定で最大の問題は、既存計画である2500メートルの平行滑走路の騒音コンター(予測図)に基づいていることである。空港北側は滑走路が800メートルも住宅に近づいたのに、騒音コンターはそのままだ。公団は「ジャンボ機を使用せず中型機なので、800メートル近づいても騒音予測は変わらない」と説明している。
しかし、ジャンボ機と中型機の騒音はあまり変わらない。今年2月3日の反対同盟による騒音調査によれば「着陸時の中型機(B767)の騒音は大型機(B747など)のそれと大差なく、せいぜい2dBの差。B777とは差がない」との結果が出た(元国立公衆衛生院院長の長田泰公氏の所見)。
さらに暫定滑走路は、2500メートルの当初計画を3300メートルに延長して使用する計画だ。800メートル北側へずらしても騒音は変わらないとする公団の説明はとんでもないペテンである。
騒音コンターの作成は数年がかりの大仕事になる。これを作り直すと暫定滑走路の供用時期が大幅に遅れるので、既存計画の騒音コンターを使ったというのが真相だ。このようなデタラメを許してはならない。
●(5月14日) 堂本知事/成田周辺都市計画で「地域活性化進めていく」(5/15読売千葉版)
騒特法に基づく騒音区域を7市町で設定する都市計画などを県が11日に決定したことについて、堂本知事は14日の定例記者会見で「街づくりに積極的にかかわり、地域活性化を進めていく方針だ。県、公団、市町村が一体となって農業振興から騒音問題、地域整備などを話し合っていきたい」と述べ、都市計画決定をテコに地域発展に力を入れていく意向を示した。
来年5月に供用開始される暫定滑走路と関連し、「滑走路とともに周辺整備が進むことが大事で、政策をどんどん実現したい」と述べ、2本目の滑走路が、これまで都市計画地域から外れて発展が遅れていた芝山町などの地域整備に結びつくべきだとの考えを示した。
【本紙の解説】
この定例記者会見で、堂本知事の成田空港建設の基本姿勢が明白になった。地域整備の開発計画による補助金ばらまき政策である。発展が遅れていた芝山町などの「振興」政策を掲げている。成田問題を金銭的なもので解決しようという最悪の保守的政治家としての本性をあらわにしたといえる。
三里塚闘争は公団の金銭積み上げによる買収工作を拒否したところから始まっている。出発点は国家によるあからさまな農民無視だ。三里塚闘争は日本国家の明治以来の農民政策を根底から問い続けている。農民を虫けらのように扱い、国策たる空港建設には従えという問答無用の国の姿勢をあくまで拒否したのが三里塚闘争である。
78年1期開港後、政府は「農業振興策」と称し成田用水などの買収策に転じ、異例ともいえる高額の補助金をもって三里塚闘争の解体を策した。しかし、それは基本的に失敗している。「農業振興策」による買収は国家による農民無視の裏返しだった。買収に屈服して用水賛成にまわったのはいわゆる条件賛成派の農民だけだった。
堂本知事はこの三里塚闘争の原点と歴史を踏まえていない。地域整備、地域振興を唱えれば農民は屈服すると考えている。「真摯(しんし)に話し合えば解決する」「成田問題は一気にやってしまおうと思って」という堂本知事の就任直後の一連の発言は、金をばらまけば成田問題は解決するという考え方に基づくものであった。浅はかとしかいいようがない。三里塚闘争を実体験した歴代知事の友納、川上、沼田に比べても、成田空港問題の理解と政治的基本姿勢のレベルが低い。
●(5月14日) 野戦病院など30カ所に家宅捜索
千葉県警公安3課と成田署は14日朝から、千葉県芝山町朝倉の野戦病院など全国30カ所を、現住建造物放火容疑などで家宅捜査した。一昨年、99年12月のゲリラ闘争(成田市選出の県議・湯浅伸一(51)方への火炎攻撃)を口実にしたもの。
●(5月14日) 「九十九里沖空港誘致懇話会」総会が開かれ、今年度事業計画案などを決めた(5/15千葉日報)
「九十九里沖空港誘致懇話会」(会長・堀内慶三大網白里町長)の総会が14日、白子町内で開かれた。今年度事業計画で、国への要望活動、最新情報の収集、地域に与える効果や影響の調査・研究と並行して、他の沿岸市町村にも呼びかけ理解を広め、声を結集していくことを決めた。
総会では昨年11月にスタートした首長会議からの2000年度事業報告に続いて、2001年度事業計画案として(1)空港建設に関する調査および研究(2)国および関係機関への要望活動(3)空港関連の研修会の参加および実施――が事務局から提案され、了承された。
同会は長生・山武郡の地域活性を目指し、沿岸の大網白里、九十九里、白子町の3町を核に、地域産業振興会議や東金市商工会議所など各商工会長ら15人をメンバーに今年1月に発足。国(国土交通省)の首都圏第3空港候補地に名乗りをあげ首都圏第3空港調査検討会の「聴取会」で説明、誘致要望を進めている。
その後、今年3月に同省が「羽田空港の再拡張案」を提示しているが、同会のメンバーから「九十九里沖空港は成田の国際ハブ空港の補完的意味合いもある。暫定平行滑走路の完成後も限界が近いので順風だ」と前向きに受け止める意見も出ている。
【本紙の解説】
首都圏第3空港に、九十九里沖案が選ばれることは100パーセントない。国交省(国土交通省)も相手にしていない。会長の堀内慶三大網白里町長だけが「本気」で、九十九里と白子町は「近所つき合い」で参加しているだけだ。堀内大網白里町長が最初に一宮、長生、白子、大網白里、九十九里、成東、蓮沼、横芝らの8町村に呼びかけ、さらに茂原市や東金市にも呼びかけたが基本的に相手にされず、九十九里、白子町だけが残った。白子町町長も二の足を踏んでいた。
しかし、このような「要求」を掲げることで、地方交付税交付金などで何らかの恩恵があるのだろう。
●(5月14日) 成田暫定滑走路工事/作業中事故で男性死亡
14日午後2時45分ごろ、成田市東峰120、成田空港2期工区のセメントと採石や砂を混ぜ合わせるプラントで、作業終了後に内部を清掃中の佐倉市、南海建設作業員、金沢元好さん(54)がミキサーに巻き込まれ死亡した。
【本紙の解説】
今年の3月14日にも2期工事区内で死亡事故がおこっている(3月14日の日誌参照)。ショベルカーのショベルがアルバイト作業員の福原洋介さん(22)の頭に当たり、福原さんは即死した。その時公団は「今回の事故を踏まえ、再度安全を徹底する」とのコメントを発表したが、わずか2ヶ月後に今回の死亡事故発生だ。
3月14日の「本紙の解説」では、死亡事故の原因は暫定滑走路の「早期完成」を強制した公団にあり、死亡したアルバイト青年はその犠牲者であると警告を発した。にもかかわらず、再びおこった惨(むご)たらしい死亡事故である。
停止中のミキサーを清掃していて、ミキサーが再び動きだし巻き込まれたのであろう。公団は安全確認の基礎的事項も守れないほどの突貫工事を下請け工事会社に強制している。建設不況のなかで中小建設会社とその労働者に競わせ、危険な作業をやらせている。多くのダムやトンネルなどの「公共事業」で経験ずみだが、現在の暫定滑走路のような無茶な突貫工事を続けるかぎり、今回のような事故は避けられない。
●(5月15日) 成田空港周辺市町村議会連絡協議会が総会/早期完全化など決議(5/16千葉日報)
成田空港周辺の11市町村議会からなる「成田空港周辺市町村議会連絡協議会」(会長・相川堅治富里町議会議長)の総会が15日、成田市役所の議会棟で開かれた。
冒頭あいさつに立った相川会長は羽田空港の国際化に触れ、「世論など風は羽田国際化に吹いているかもしれないが、皆さんが味わった過去の辛さや努力は、羽田空港が国際空港としての整備を断ったことから始まった」と指摘。
「成田空港を完全な空港にして、国際空港としての地位を守り続けることが周辺地域の私たちの仕事であり、これからも協力してやっていこう」と決意を述べた。
この後、「成田空港の早期完全化推進」「成田新高速鉄道の早期事業化と成田空港周辺道路整備の推進」「過激派ゲリラに対する徹底取り締まり」を求める3つの決議を採択。6月7日に国、県、空港公団、成田署、県選出国会議員に提出して協力を求めることを決めた。
【本紙の解説】
成田空港周辺市町村議会連絡協議会も元気がない。羽田国際化で成田空港の地盤沈下を心配している。「世論など風は羽田国際化に吹いているが、成田空港を完全な空港にして国際空港としての地位を守ろう」と訴えている。成田空港の先行き不安で心許ない心情が現れている。そのことは、堂本知事が設置させた4者協議会についての論議がこの総会でなされていないことにも示されている。
そもそも4者協議会設置は、この議会連絡協議会が熱心に要求していたことだ。昨年12月18日に運輸省が羽田国際化を承認したとき、成田空港周辺自治体協議会の9市町村に、栗源町と神崎町を加えた11市町村でつくる成田空港周辺市町村議会連絡協議会が運輸省を訪れた(2000年12月18日の日誌参照)。その時手渡した抗議文の中で羽田国際化を認める取引条件として、「用地問題の解決策、空港問題で国と県、空港圏自治体と定期的に協議する場を設ける」ことを要求していた。見返り事業要求機関を設置せよとの要求だ。年内に文書回答を求めたが、当時の運輸省と現国交省からは梨のつぶてであった。
それが堂本知事の就任時に、羽田国際化に「反対しない」ことの代償として、国、公団も4者協議会設置を認めた。議会連絡協議会はそのことを「喜んで」確認すべき立場だが、これに関する文言が何もないのはどうしたことか。
●(5月17日) 成田・旅客ビル内航空会社の新配置案まとまる(5/17読売社会面)
成田空港の旅行客の混雑緩和やスムーズな乗り継ぎを図るため、新東京国際空港公団は16日、2つの旅客ビルに分かれている航空会社の新配置案をまとめ、近く各航空会社に説明する。国際的に業務提携が進んでいることに合わせ、提携グループごとにまとめ、提携各社の搭乗手続きが同じビルでできるようにする。2005年の実現を目指す。
新配置案では、第1旅客ビルには、全日空や米ユナイテッド航空など15社で構成するスターアライアンスなど3グループ、第2旅客ビルには、日本航空のほか米アメリカン航空など8社で構成するワン・ワールドが入る。
また、2本目の滑走路が来年5月に供用開始されることで国内線の増便が見込まれるため、第2旅客ビルにしかない国内線用の搭乗口を、第1旅客ビルに新設することも決めた。
現在、第1旅客ビルは14社、第2旅客ビルは35社が使用。旅客の約6割が第2旅客ビルを使っているが、配置替えをおこなわなければ、ビル間の旅客格差が2010年には1・5倍に広がり、出国審査を待つ長い列ができるなど混雑に拍車がかかることが予測されている。提携航空会社間での共同運航便も増加しているが、入っているビルが異なることで混乱するケースも目立っている。
【本紙の解説】
旅客ビルの航空会社の新配置が提携グループごとのアライアンス別になりそうである。そもそも、第1旅客ビルは欧米の航空会社、第2旅客ビルはアジアの航空会社が入る予定で設計されている。現行のA滑走路の側が第1旅客ビルである。理由は、4000メートルのA滑走路は長距離便の欧米便が主に使い、短距離のアジア便は平行するB滑走路を使うという設計にある。
しかし、この設計コンセプトは二重に通用しなくなった。ひとつは、暫定滑走路ではアジア便でもソウル、北京、上海、香港、グアム、サイパンなどの短距離便しか使えない。ふたつめは、航空会社もコードシェアを組む提携会社グループが同じビルにないと大混乱が生じるという問題である。
A航空会社のチケットを買ってA航空会社が入っている第1旅客ビルに行ったが、そのチケットはコードシェアを組むB航空会社の航空機の便であり、B航空会社が入っている第2旅客ビルで搭乗手続きをしなければならない――このような例が続出していて、出発便に乗り遅れる利用者が頻発している。
混乱の原因は空港旅客ビルの設計コンセプトそのものにある。40年以上も前に設計された旅客ビルで使い勝手が悪すぎる。また、平行滑走路が完成していないのに第2旅客ビルだけを見切り供用したことの結果でもある。暫定滑走路が完成しても、ジャンボ機が使えないので混乱は収まらない。
そのために空港公団は昨年5月、成田で開催されたACI(国際空港評議会)で「提携関係にある航空会社は基本的に同じビルを使用することが望ましい」との決議を中村総裁の提案で採択させた。そのため、米国のユナイテッド航空、ノースウエスト航空、アメリカン航空の三大航空会社で各アライアンス(提携グループ)の中心会社と交渉し、成田空港での航空会社の入居ビルをアライアンスごとにすることを協議していた。
「旅行客の混雑緩和やスムーズな乗り継ぎを図るため」としているが、混乱は続きそうである。
●(5月17日) 成田新高速鉄道早期実現などを知事に要望(5/18読売千葉版)
北総・公団線と成田新高速鉄道の両沿線市町村の首長や衆議院議員、県議が17日、県庁を訪れ、堂本知事に新高速鉄道の早期実現のほか、北総・公団線の高額運賃見直しを求める要望書を手渡した。
要望した自治体は、成田市、白井市、印西市、栄町、印旛村、本埜村。議員は実川幸夫、水野賢一両衆議院議員や莇崇一県議ら。要望書では新高速鉄道の早期実現の必要性について「千葉ニュータウンがより発展する上でも重要な意味を持つ」「遠い、不便との指摘が多い成田空港の利便性を向上するため、都心とのアクセス改善が必須」と訴えた。また、北総・公団線の高額運賃は「千葉ニュータウン地域の住民の大きな負担となっており、適正化すべきだ」と強調した。
新高速鉄道は県や国、地元自治体などが2010年の開通を目標に、具体的な事業計画を協議している。
【本紙の解説】
空港周辺の自治体の国や県への要望の中心課題は、「成田完全空港化、羽田国際化反対」から「成田新高速鉄道の早期実現」に変わってきている。
運輸政策審議会答申では新高速鉄道の開業年度は2015年となっている。それを5年早め、2010年度開業の「早期実現」が彼らの要求である。
本鉄道は、2015年開業でも採算をとることが困難といわれている事業だ。事業主体は京成電鉄が運行を、第3セクターが鉄道整備を行う「上下分離方式」としているが、事業収入は運行経費すらまかなえるかどうかの議論になっている。建設事業費は約1300億円と試算されているが、この事業費が有利子融資の場合、新高速鉄道の経営は成り立たない。「新高速鉄道の早期実現」の意味は、この1300億円を無利子で国に融資してほしいということである。
堂本知事、周辺自治体がこぞって羽田の国際化を認めたことの代償としての1300億円の要求なのだ。また、新高速鉄道のルートは印旛沼を横断するルートで、自然環境破壊も問題になる。
また新高速鉄道は成田と都心を30分で結ぶとしているが、鉄道の完成は早くても10年後、予定では15年後、遅れれば2020年ごろになる。そのころには、羽田空港は国際化し、また首都圏第3空港も完成していると予想される。そのときまで成田空港が、現在のような旅客国際線の首都圏の中心的空港であり続ける保証は絶対にない。廃港の憂き目を見ているか、それとも貨物専用空港ぐらいが関の山であろう。新高速鉄道そのものの必要がなくなる可能性が大きいのだ。
●(5月18日) 成田空港の4者協実務者会議開催、28日に本会議開催
(5/19全紙千葉版)
国と県、空港公団、周辺市町村の代表者が成田空港の機能充実や地域振興などについて話し合う4者協議会の実務者会合が18日開かれ、協議会を28日に県庁で開催することを決めた。国土交通省航空局長、知事、新東京国際空港公団総裁、空港周辺1市7町1村の首長の4者の実質トップが一堂に会する初めての場になる。
会合では、事務局を県とすることなどを定めた運営要領案を確認した。また、協議していくテーマは「滑走路の整備」「交通アクセスの充実」「騒音対策」「地域振興策」の4項目にすることで一致した。それぞれ現状が報告された。用地取得の問題や羽田空港の国際化問題は取り上げられなかった。
会合のあと記者会見した県の田辺英夫企画部長は用地問題について「極めて微妙な問題であり、協議会の性格にそぐわない」として、4者協議会では扱わないとの認識を示した。
会合には同省と県の部長クラス、空港公団の理事、成田空港圏自治体連絡協議会の代表らが出席した。
【本紙の解説】
4者協議会は結局のところ、新高速鉄道建設費用約1300億円の捻出の検討委員会となった。暫定滑走路の整備は公団が進めており、2180メートルの暫定滑走路では、あくまで2500メートルの平行滑走路の整備を国交省と公団に要求するだけになる。また騒音対策と地域振興は騒特法の線引きとそれに基づく都市計画の決定で、その実行を確認するだけになる。地域振興のためとする周辺の1市7町1村の見返り要求の開陳を聞く場にはなるであろう。具体的に論議のテーマになるのは、新高速鉄道の建設事業費の無利子融資の分担だけだ。第1回目の会合の最大テーマは2002年度予算概算要求に、新高速鉄道の調査費などを盛り込むことになりそうである。
成田空港の用地取得に関わる2500メートル滑走路の整備問題と羽田国際化問題をテーマから外されて、会議の実質的意味はなくなった。まるで国と国交省による堂本知事「就任祝い」として設置しただけの会議のようである。。
4者協議会の構成メンバーは新高速鉄道の事業化推進検討委員会とほぼ同じ。同検討委は昨年春に国交省、県、沿線の関係自治体、新東京国際空港公団に、京成電鉄などの鉄道各社が加わって設置された。ここから鉄道会社は外し、沿線自治体を周辺自治体に置き換えると同じになる。
●(5月16〜18日) 反対同盟 土地収用法改悪阻止で国会行動
自民党総裁選の影響ですべての法案審議がストツプした国会は、今週冒頭の衆院予算委員会から論議が再開された。これにともない、反対同盟は16日から3日間、東京行動に決起し土地収用法の改悪阻止を訴えた。
初日(16日)には北原事務局長を先頭に萩原進さんと鈴木幸司さんが決起した。午前9時半に衆議院第2議員宿舎前に到着した一行は、ときおり降る雨をものともせず、マイクを握り、ビラを配布して市民に呼びかけた。北原事務局長は、今国会に土地収用法の改悪案が提出されていることを訴え、この改悪が一坪共有運動や立木トラスト運動など公共事業に反対する住民運動をつぶすものであることを明らかにするとともに、「収用法の改悪は時代を戦前に戻すものでもあります。国の一存で軍用地に使う士地を強制収用できるように変えられようとしている」として廃案に追い込もうと訴えた。
鈴木幸司さんが交代でマイクを握る一方、萩原進さんは議員会館内の事務所を訪問、国会議員に改悪阻止への取り組みを要請した。この日は葉山弁護士、動労千葉と動労水戸の組合員、学生などもかけつけ、ともに改悪阻止を訴えた。
葉山弁護士は「公共事業の本質は『公共』の名を隠れ蓑とする利権にある。ゼネコンと銀行、利権議員救済のために、市民の権利が奪われる事態は憲法違反。この問題は小泉内閣がうちだした憲法『改正』と有事立法にもつながっており、議員がこれを認めることは戦争協力を意味する」と訴えた。
2日目は三浦五郎さんと小林なつさんが決起。小林なつさんが議員事務所をまわった。葉山、一瀬、大口弁護士、婦人民主クラブ全国協議会、動労千葉、都政を革新する会、「障害者」解放委員会、部落解放同盟全国連茨城県連、反戦共同行動委などが激励に訪れ、ともに改悪阻止を訴えた。
3日目は鈴木幸司さんと郡司一司さん、伊藤信晴さんが決起し、鈴木さんが議員事務所をまわった。この日は静岡から白鳥良香さんがかけつけマイクを握り呼びかけた。また群馬の青柳晃玄さん、動労干葉、沖縄一坪反戦地主が激励しともに行動した。
(「日刊三里塚」第4278号から)
●(5月20日) 暫定滑走路建設供用開始「カウントダウン」(5/21読売千葉版、千葉日報)
成田空港暫定平行滑走路の来年5月20日のオープンに向け、新東京国際空港公団は、カウントダウンボードを京成上野駅コンコース、同日暮里駅乗り換え改札口、成田空港内の公団本社ビルの3カ所に設置、20日からカウントダウンを開始した。
同滑走路の建設工事はこれまでのところ極めて順調。周辺地域などからゴールデンウイーク前のオープン要請などもあり、中村徹公団総裁もその可能性に言及している。その場合は開業日が確定した段階で、カウントダウンボードの数字を変更する。
【本紙の解説】
供用開始日も最終確定していないのに「カウントダウン」とは聞いてあきれる。また滑走路供用が敷地内農家に与える騒音被害(40m上空を飛行!)の大きさや精神的打撃を考えれば、「カウントダウン」なるお祭り騒ぎは神経を疑う。これは確信犯の脅迫行為なのである。供用開始圧力に世論を動員し、敷地内農民と地権者を追い出すことが目的の暴挙である。(本紙記事参照)
●(5月24日) 公共用地取得進まず/復活望む声根強く(5/24東京千葉版『特報千葉』)
1988年9月、千葉市内で起きた県収用委員会会長の小川彰弁護士への襲撃事件後、沼田前知事は「収用委を再構築すると、委員が再び過激派に襲われる危険性がある」と一貫して委員の再任命をしなかった。
収用委員の不在は、自治体にとって公共事業の用地を強制収用する選択肢がないことを意味し、成田空港の平行滑走路の用地取得問題に限らず、他の公共事業の用地取得にも影響する。
2005年開業予定の常磐新線(東京・秋葉原−茨城・つくば)の県内区間の用地取得は難航し、鉄道建設公団関東支社によると、沿線の四都県の用地取得率で、本県は35%と著しく低いという。
同支社は「千葉県の地権者は強制収用がないことを認識して他県より無理な要求をして交渉が滞りがち」と収用委が機能しない弊害を指摘する。
昨秋、自民党県連の国会議員団会議で「成田の地位を維持するためにも平行滑走路は暫定滑走路ではなくフル滑走路にすべきだ。そのためには収用委を復活させる必要がある」と、複数の議員から意見が出された。同党など推薦の岩瀬良三氏は収用委の復活を公約して知事選で敗れたが、収用委の必要性を求める声は根強いという。
【本紙の解説】
東京新聞が千葉県収用委員会の再建を堂本知事に提言するという、きわめて反動的な特集記事である。
それにしても自民党の千葉県国会議員団は、成田空港と三里塚闘争について何もわかっていない。「平行滑走路をフル規格にすべきだ。収用委を復活させ強制収用しろ」との反動的言辞を振りまいている。成田空港の事業認定は時間切れで失効・消滅し、国土交通省(運輸省)も収用裁決申請を取り下げた。かりに収用委が復活しても、滑走路用地を土地収用法で強制収用することはできない。
そもそも政府・運輸省が「一切の強制的手段を放棄する」としたシンポ・円卓会議での社会的確約はどうなったのか(91〜93年)。千葉県選出の国会議員がこの程度の事実も知らないとは論外である。
この自民党千葉県国会議員団は、昨年10月12日(同日の日誌参照)に当時の運輸省航空局長・深谷憲一を自民党本部に呼び、「羽田国際化」問題についての深谷局長のペテン的説明を受けた。「国際線は成田、国内線は羽田という原則は変えない。なし崩し的な羽田国際化はしない。チャーター便は検討中」との説明である。これを議員団が承認した結果、運輸省は勢いづき、一挙に羽田国際線チャーター便(深夜・早朝)の開始に漕ぎつけたのである。
このいわくつきの県国会議員団とはいえ、土地収用法による農地強奪宣言は決して見過ごすことのできない発言である。
●(5月21日) 共生委員会、地域づくり作業班を設置
成田空港の運用と建設を監視する第三者機関「成田空港地域共生委員会」(代表委員・山本雄二郎・高千穂大学客員教授)が21日、成田市内で開かれた。第4期目の今年から、騒音や航空機の落下物問題などを点検する監査業務に加え、地域づくりに関する調査や研究の業務が加わった。この日は、調査・研究の進め方について作業班(ワーキンググループ)を設置して進めていくことが確認された。
作業班は県や空港周辺自治体、国土交通省や公団のメンバーで構成される。山本代表委員によると、各委員からは「騒音下の実態調査」「暫定滑走路建設供用開始後の国内線について」「地域に開かれた空港のあり方」などのテーマが提案されたという。
【本紙の解説】
成田空港地域共生委員会も第三者機関と名乗るのであれば、公団の立場で「地域づくり」などを云々する以前に、暫定滑走路の供用開始が住民にもたらす騒音被害対策を練るのが筋だろう。これでは空港建設の住民被害と怒りをペテン的に吸収する役割も果たさなくなる。
そもそも共生委員会は「地権者が反対している現状で軒先工事の着工は不適切」(98年11月)と公式に声明した立場を完全に反故にしている。暫定滑走路の軒先工事着工を目の当たりにして、この立場はどうなったのか。すべてウソだったというのか。いまだに一言の釈明もなく「地域づくり」云々とは、あまりにも公人として道をはずれている。
●(5月22日) 成田空港のアクセス充実へ実務者会議
成田空港の暫定滑走路供用開始後の交通アクセス充実策について、関係機関の実務担当者レベルで話し合う「成田空港アクセス充実検討会」の初会合が22日、千葉市の幕張メッセで開かれた。
メンバーは、国土交通省、空港公団、県、鉄道、バス会社などの実務者16人。2月にスタートした成田空港国内線充実対策検討会の中で、「交通アクセス問題については、ワーキンググループをつくり、検討すべきだ」との意見がでたため、発足した。交通アクセスの充実については、成田新高速鉄道や圏央道の完成が不可欠とされているが、検討会では実務担当者レベルの会合のため、「バス路線の充実や鉄道の増便など、暫定滑走路供用前という短期間のうちに、具体化できることは何かを検討したい」(事務局)としている。
【本紙の解説】
5月8日におこなった成田空港国内線充実検討会第3回会合で国内線は年間の発着回数1万回が限度で、事実上7千〜8千回になるとの試算がでた。2万回への「国内線充実」が目的だったものが半分、いやそれ以下になった。
理由は成田空港へのアクセスの悪さと千葉県の観光需要がないことにある。そのため、この検討会の下に「成田空港アクセス充実検討会」と「成田空港需要創出検討会」の設置を決めた。
しかし、空港へのアクセスもバス会社、タクシーは採算がとれず積極的ではない。また、成田空港周辺の観光資源の開発で需要を創出するというが、航空運賃を払ってまでやってくるほどの観光資源は成田空港周辺には逆立ちしてもない。幕張メッセやディズニーランドと成田のホテルを組み合わせることが本命のようだが、新幹線で東京経由のほうが圧倒的に便利だ。
アクセスを新設して観光需要をねつ造してまで国内線を充実させる意図は、騒音の意図的増大で敷地内と周辺の農民・地権者を追い出すことだけだ。
アクセス充実検討会や需要創出検討会も、「国内線充実」対策検討会の母体機関であり、騒音拡大による敷地内農民たたきだしの協力者である。絶対に許してはならない。
●(5月23日) 過大な旅客需要予測で勧告/空港整備の行政評価うけ(5/24毎日、千葉日報)
総務省が23日にまとめた空港整備に関する行政評価・監視結果で、国や地方自治体の旅客需要予測が過大に見積もられている実態が明らかになった。公共事業の効率化が求められる中で、空港の必要性を評価する重要指標のずさんな算出を重く見た同省は24日、国土交通省に対して需要予測方法の留意事項の提示や予測の検証に必要な記録の公開などを勧告する。行政評価・監視結果によると、1989年度から10年間に供用を始めて、旅客の需要予測と実績の対比ができた15空港のうち、9空港で利用客の実績が整備の際の国や地元自治体の予測値を下回り、うち4空港で半分以下だった。
総務省によると、滑走路を延長した釧路空港は90年度193万人の利用を見込んだが、実際は76万人だった。高松空港も90年度287万人の予測に対して利用者は111万人。
国土交通省や地方空港を管理する自治体は、予測方法を十分に検証できる記録を残していなかった。
【本紙の解説】
ずさんで過大な航空需要予測の理由は2つある。一つは無駄な空港でも建設過程自体が利権の固まりであること。運輸省、自民党政治家、地方自治体、ゼネコンの巨大利権である。空港建設予算に比して営業面の採算がとれるかどうかは運輸官僚は知りつくしている。しかし、最初に建設ありきで、建設が「可能」になるようにデータを作っているのである。
もう一つの目的は軍事空港の建設である。軍事的には空港(の数)は抗たん性の問題として扱われている。「抗たん性」とは軍事機能の持続性をさす言葉である。空港は戦時には最大のターゲットとなる、滑走路が破壊されると、空港だけでなく、そこに駐機している軍用機も破壊されたも同然となる(飛べない)。そのため米軍は、軍用には1空港50機までの使用と限定している。94年の朝鮮半島危機のときに、日本の空港の数の少なさにあわてふためき、日米軍事関係者は、地方空港の採算を度外視した建設を政府・運輸省に要求したのである。
というわけで運輸省は、96年からの第7次空港整備計画で地方空港の整備拡大を大々的に打ち出し進めているのである。
●(5月24日) 8空整「地方空港、新設せず」(5/24読売)
国土交通省は24日、公共事業を抜本的に見直す一環として、地方空港の新規建設を原則的に凍結する方針を固めた。現在建設中の神戸空港や能登空港などの整備は計画通りに進めるが、2003年度に始まる第8次空港整備5カ年計画からは、原則的に地方空港の新規整備は実施せず、空港の容量がひっ迫している大都市圏の空港整備に財源を重点的に振り向ける方針だ。国内の空港網の充実を目指してきた従来の空港整備政策を大転換する措置で、国土交通省は、月末に取りまとめる公共事業見直し策に盛り込む方針だ。
日本の空港には「国際線」用の第1種空港のほか、新千歳、名古屋、福岡など「主要な国内路線」用の第2種空港、地方自治体が設置・管理する「地方的な航空運送を確保する」第3種空港などがある。
このうち第3種空港は、51が使用中で、さらに現行の第7次空港整備7カ年計画にそって、神戸空港など3空港が建設中だ。国土交通省が新規建設を原則凍結する対象は、2003年度からの第8次空港整備5カ年計画で新規着工が見込まれる第3種空港となる。
【本紙の解説】
総務庁の勧告をうけ、2003年からの8空整では地方空港の建設を打ち切るとのことである。しかし、大都市圏の空港整備といっても、関空第2期工事は経営難と財源難で暗礁に乗り上げ、完成のめどはたっていない。中部国際空港(名古屋)も第1種空港とはいえ関空以上の大赤字が予想され、事実上の地方空港にすぎない。
8空整の中心は羽田再拡張である。国土交通省はダム建設も新規建設はストップする見込みであり、道路特定財源なども見直し必至となった。空港建設も将来性はない。日本の公共事業の8割を占めるといわれる巨大利権官庁の国土交通省も、統合して1年しないうちにその利権構造が揺らいでいる。不況、デフレの結果である。今後、「不良債権処理」や「構造改革」でゼネコンその他の連鎖倒産、デフレスパイラルは目に見えている。こうした事態の反映である。
●(5月24日) 成田空港/航空機事故に備え、消火救難合同訓練(5/25毎日、東京の各千葉版)
成田空港で24日、ジャンボ機が着陸後に滑走路をオーバーラン、滑走路西側の芝地で炎上し多数の負傷者がでたとの想定で、合同消火救難訓練が行われた。公団をはじめ成田市消防本部、航空会社など関係17機関から260人が参加した。成田空港では年2回同様の訓練が行われる。
●(5月25日) 成田空港/貨物地区6割拡張(5/25朝日)
新東京国際空港公団は、成田空港の貨物取扱量が増えているのにともない、空港南側に約20ヘクタールの貨物地区を新設する。公団用地に加え、日本航空の所有地約9ヘクタールを買収することで日航側と基本的に合意した。3年かけて拡張整備する。完成すれば貨物関連エリアが1・6倍と大幅に広がり、暫定滑走路の使用が始まる2002年5月以降に予想される貨物増にも対応できるとしている。
公団が買収を予定しているのは空港に隣接する日航の総合グラウンド。買収費用は数十億円。近く正式交渉に入り、日航の社内手続きが済み次第、契約する。
公団の計画では、公団用地と日航グラウンドを合わせた20ヘクタールを造成。2003−05年度にかけては毎年、1万平万メートル(1ヘクタール)程度の貨物施設を建て、順次使用していく。現在の成田空港の貨物取扱量は世界第2位の184万2500トン。これに約100万トン上積みした年間300万トンの処理能力を目指している。
【本紙の解説】
成田空港の貨物地区は、建設の失敗とつぎはぎだらけである。これは成田空港そのものが暫定空港として出発したことに由来する。成田空港は、そもそも5本の滑走路を持つはずだった富里空港が白紙撤回され、その設計図を縮小し3本の滑走路で三里塚に急きょ決定したものだ。そのとき政府と運輸省は、この空港は羽田のラッシュ状態を緩和するための暫定措置であり、本格空港の建設に直ちに着手するとの声明を発表している。
富里空港の設計図を、御料牧場とその周辺の開拓地の上にハサミで切って貼り付けたのが成田空港の設計図だ。そのため、アプローチエリアが空港本体の設計図になく、ターミナルビルも使い勝手がたいそう悪くなってしまった。日本の航空貨物の大半を扱う設計になっていないのである。
60年代中期に40年後の貨物取扱量の経済予測はできなかったにしても、最初から狭すぎるのだ。それで最初から貨物取扱いは千葉市原木の貨物ターミナルに頼ることになった。原木ターミナルは空港本体からあまりに遠いと評判が悪く、現在では空港本体のターミナルで貨物取扱いを行っている。
本来の貨物地区は狭い。その打開策として千葉県は、90年に空港貨物地区に隣接する約78ヘクタールに国際物流複合基地を整備する計画を打ち出した。しかし、用地買収が進まず、いまだに営業できていない。ようやく今年4月に南側に位置する三角地区(24ヘクタール)だけの用地買収が完了したにすぎない。2005年度にも貨物地区として開業したいとしているが、それもおぼつかない。
公団ではこの物流貨物地区の建設が遅れていたので、今年4月に国家予算の公共事業等予備費から約22億円をつぎこみ、空港内南側の整備地区に1ヘクタールの貨物上屋を完成させ供用を開始した。そして、今後の空港南側の貨物地区建設である。計4カ所、原木地区をいれれば5カ所に分散する貨物地区である。このために各空港貨物取扱業者は空港周辺に貨物センターを建設しているのである。貨物一つとっても使い勝手の悪い空港である。
●(5月28日) 四者協スタート/反対派用地問題扱わず(5/29朝日など全紙千葉版)
成田空港の機能充実と地域との共生推進に向け、国と県、新東京国際空港公団、空港周辺自治体のトップらでつくる協議機関「四者協議会」の初会合が28日、県庁で開かれた。会合では(1)本来計画である2500メートル平行滑走路整備の早期実現、(2)成田新高速鉄道などアクセスの充実――を中心に四者一体で協議していくことで一致した。しかし、現存する空港反対派の用地問題については、「個々の地権者の問題」として取り上げられなかった。
会合には国土交通省の深谷憲一航空局長、堂本知事、中村徹・空港公団総裁と成田市や芝山町など1市7町1村の首長が出席した。堂本知事は会合で、「成田空港が将来にわたって国際航空需要に十分こたえていくために国際空港としての機能の強化が不可欠」とあいさつ、協力を求めた。
終了後の会見で堂本知事は、「騒音やアクセスの問題など、用地問題以外にも早急に解決しなければならない問題がある。用地問題はこの会合では取り上げず、空港公団におまかせしたい」との認識を示した。
深谷航空局長は「2500メートル滑走路の実現に向け、四者の共通認識ができたことに意義がある」と話した。小川国彦・成田市長は「よかれと思った行政が地権者にどう認識されているか分からない。地権者の理解を得られるよう意識調査を行い、(四者協議会で)理解を深めていきたい」との見方を示した。
【本紙の解説】
四者協は開催されたが、四者の思惑はバラバラである。堂本県知事と小川成田市長は地権者対策を軸に進めようとしたが、公団の強い抵抗で四者協では取り上げないことになった。しかし、小川市長などは「地権者の理解」といって、四者協を国・公団の用地部と対抗し地権者切り崩し機関に仕立てていく心づもりである。堂本知事は「公団にお任せ」の方針だ。
会議では「2500メートルは不可欠。今後、四者が緊密に連携し早期完成へ努力」と確認はされたが、用地対策がテーマにならないので、論議は成田新高速鉄道のことだけになった。結局、四者協は新高速鉄道の予算獲得の場となった。
また、周辺自治体は「騒音問題」を新高速鉄道の次の議題にすえ、見返り事業を要求する目的で参加した。
国土交通省は、千葉県に「羽田国際化と再拡張に反対させない」ために参加している。深谷国交省航空局長の「四者の共通認識」とは、平行滑走路の2500メートルの実現だけでなく、首都圏国際空港の離発着枠の逼迫性を全体の共通確認にして、羽田国際化を進めていくということである。
●(5月29日) 成田高速鉄道/建設計画に来年度政府予算に概算要求(全紙の全国版、千葉版)
扇千景・国土交通相が29日、堂本暁子知事との会談で、成田新高速鉄道の建設計画について、来年度政府予算に概算要求する意向を示したことで、2010年度の開通実現に向けて弾みがついた。交通アクセスの悪さが指摘される成田空港だが、暫定滑走路の供用開始や海外との空港間競争をにらみ、国としてもアクセス整備に力を入れることにした。扇国土交通相は東京駅―成田空港の直結鉄道を視野に入れた都営浅草線の東京駅乗り入れ計画にも前向きの姿勢を示し、空港周辺の関係者は地域発展の夢を膨らませている。
同省はこのほか、京成電鉄と相互乗り入れしている地下鉄都営浅草線を、東京駅に乗り入れる検討を進める。東京駅と成田空港が約40分で結ばれるほか、京浜急行電鉄が乗り入れている羽田空港とも約30分で結ばれるという。扇国土相は「建設できれば便利になる。東京都と話し合って早期に取り上げたい」と述べた。
【本紙の解説】
扇国交相が来年度予算の概算要求に成田新高速鉄道の調査費を盛り込んだねらいは、堂本千葉県知事に羽田国際化「反対」を言わせないためである。日経新聞(5月30日付)にも「羽田国際化につながる同空港拡張への理解を千葉県側に求めるねらいもあるとみられる」となっている。
また、「都市再生本部」(森政権時の4月15日発足)が掲げる「首都圏改造」に国交省が便乗した面もある。同本部は小泉政権の「構造改革」で「脚光」を浴びているわけだが、その具体策の中心が国際空港建設であり、外郭環状道路なのである。都営浅草線の東京駅乗り入れも羽田空港へのアクセス強化との位置付けであり、成田新高速鉄道もその一環というわけである。
ただし、新鉄道の事業主体たる第3セクターの出資割合や無利子融資の規模などについて、国土交通省の方針はまだ定かではない。とりあえず羽田国際化問題との取り引きで新鉄道の調査費を盛り込んだのであり、採算性などの見通しはまるでたっていない。
それにしても堂本知事の政治手法は、手垢のついた利権政治家そのものだ。自民党政治家が地元にフル規格の新幹線を持ってきて、地元自治体や地元建設業界から拍手喝采を浴びるのとどこが違うのか。「我田引水」ならぬ「我田引鉄」で赤字路線を引きまくり、国鉄経営を破たんさせた腐敗政治家どもと同じだ。
成田新高速鉄道はBルートで本決まりといわれているが、このルートは印旛沼を横断するルートであり、沼の自然破壊が問題になっている。堂本知事を選挙で推薦した環境派とよばれる人たちは、印旛沼の自然破壊につながるこの成田新高速鉄道のBルートに反対しないのか。
●(5月30日) 共生財団、350戸に防音工事助成(5/30朝日千葉版)
成田空港周辺の民家防音工事について、法定以上の独自の助成をしている「成田空港周辺地域共生財団」(藤沢昌三理事長)は、来年5月に予定される暫定滑走路の供用開始に対応し、新たに助成区域を決めた。現行法ではうるささ指数(WECPNL)が75W以下で助成対象外となっている「隣接区域」で、5市町約350戸が新たに対象となる。
暫定滑走路の第1種区域の東側に幅約300メートル、長さ約20キロメートルにわたって隣接区域を設定した。成田、下総、大栄、多古、芝山の5市町、計約350戸が助成対象になる。
居住者が空調機の設置や防音効果のあるアルミサッシに交換する場合、申請すれば助成金がでる。居住開始の時期により助成額は異なるが、4人以上の世帯の場合、アルミサッシ化で325万円が上限。
【本紙の解説】
暫定滑走路の騒音コンターは当初計画のコンターをそのまま転用している。空港北側の実際の騒音は、本来、現コンターより800メートル北側にずらしたものが必要なのである。しかし公団は、暫定滑走路で使用する航空機が中型機なので、(騒音区が)800メートル近づいても騒音はむしろ低くなると言い逃れ、騒音コンターを変更していない。
反対同盟の騒音調査では、ジャンボ機と中型機の騒音の違いはほとんどないことが分かった。騒音地域はコンターよりも北側に広がるのである。
共生財団は騒特法の線引き(範囲)から外れた地域の防音工事助成を行っているが、暫定滑走路の位置で中型機の騒音範囲が実際にどうなるかを改めて調査すべきである。
●(5月30日) 騒特法/移転など相談窓口設置(6/1千葉日報)
成田空港の平行滑走路供用が近づいたことにともない、「特定空港周辺航空機騒音対策特別措置法(騒特法)」に基づく防止特別地区が都市計画で決定されたことを受け、新東京国際空港公団は、同地区からの移転等に関する相談窓口を成田空港外の2カ所に設置、相談業務を開姶した。移転対象となるのは成田市、芝山・横芝・多古町の460戸。このうち257戸が未移転戸数。相談窓口は移転希望者の手続きや土地の買い入れなどの相談に応じるもので、成田市花崎町の千葉交通ビル内にある北地域相談センターと、芝山町中央公民館千代田分館内の南地域相談センター内に5月11日に設置された。
また、移転業務を円滑に推進するため、1日から公団本社の地域共生部にプロジェクト組織として「移転業務室」も設置する。
【本紙の解説】
空港は人間の生活と相容れない。共生などありえない。空港建設の経済効果が叫ばれているが、空港周辺の無人化が進んでいる。その無人化推進機関がこの移転等に関する相談窓口である。航空機騒音と航空機事故のため、空港周辺は最低5キロを無人化してバッファゾーン(緩衝地帯)をもうけることになっている。できれば10キロは無人化しなければならない。やはり空港周辺では人間は住めないのである。このことが明らかになったので、これからの空港整備は海上空港が主流となっているのだ。用地問題の困難さから海上空港に移ったようにいわれるが、実は騒音問題と事故の危険もきわめて大きな要因なのである。
●(5月30日) 首都圏第3空港は「海上」で一致/国交省の調査検討会(5/31朝日など)
首都圏の新たな拠点空港の建設地点を選定する国土交通省の「首都圏第3空港調査検討会」が30日、東京都内で開かれ、新空港を海上に建設することで一致した。陸上では、建物や丘陵があって立地可能地点が限られるうえ、騒音による地域住民への影響が大きすぎると判断した。今後、川崎市沖など計11案を軸に国土交通省の独自案も加えて検討を進め、今年度内に3カ所程度に絞り込む方針だ。
第7次空港整備7カ年計画(1996〜2002年度)の議論の過程で旧運輸省は、海上を中心に検討することを打ち出しており、これに沿う形となる。
今後は、東京湾奥部案、川崎市沖の3案、木更津沖の2案、富津沖の2案、九十九里沖案など計11案を軸に詰める。川崎沖など複数の案がでているゾーンでは、国土交通省がそれぞれ独自案を提案する。アクセス鉄道のルート案も提示する。工法は埋め立て方式を前提とする予定だ。
【本紙の解説】
首都圏第3空港は国交省提案の羽田再拡張で決定している。にもかかわらず、検討調査会をいまだやっている理由は、国交省が位置決定を公募方式にして省の責任を逃れるという卑劣な手段を使ってきたことの後始末である。
今度は海上案を中心に3候補に絞り込むといっているが、羽田再拡張が本決まりになっているのに無意味な行為だ。
検討会はむしろ船舶航行など利害関係者の調整の場になっている。そうならそうと名前を変えるべきだろう。ただし、ここで最後の選考に残った候補地が、羽田再拡張の次の本格的な「第3空港」の有力候補になることだけは確かである。
●(5月31日) 経済財政諮問会議 成田、羽田空港の民営化検討(6/1千葉日報など)
政府の経済財政諮問会議(議長・小泉純一郎首相)31日、首相官邸で開かれ、6月下旬に策定する基本方針の原案の調整をおこない、社会法制度の再構築が指摘され、公共事業の重点配分を明確にするなどが検討された。そのなかで羽田空港の民営化や成田空港の公団民営化の検討がなされた。経済財政諮問会議では管制業務を国に残し、空港の整備、運営はすべて民営化することを検討課題とした。
空港公団の中村総裁は「成田空港の建設、運営は国と地域との信頼関係で成り立っている。国の約束を民営会社にはなかなか任せられないと思う」として慎重な姿勢を示した。
【本紙の解説】
成田は公団方式で事実上、国交省の管理下、関空と現在建設中の中部国際空港は第三セクター方式の株式会社方式である。国際空港を国の直轄経営か会社方式(民営化)にするかの違いは大きくいって二つある。
最大の問題はそこで働く労働者の雇用形態を不安定化させ、いつでもリストラ・解雇できる状態におき、労働強化を図ること。次に赤字の場合、地方自治体や、関連会社に無利子や低利融資を国からつぎ込めることである。
関空の場合も赤字の責任は当時の運輸省にある。工法をメガフロートではなく、埋め立て案にしたこと。廃港予定の伊丹空港を閉鎖せず、国内線の半数以上をそのまま伊丹に残したこと。これも運輸省の指示で行われた。その結果、大赤字になり、その責任は第三セクターの最大出資者の大阪府に転嫁された。国土交通省には責任がないかのようである。国交省はこの無責任で虫のいい民営化方式を全国の空港整備と空港運営に当てはめようとしている。
その結末は、採算がとれる空港だけが残るということだ。アメリカでは航空会社のメガコンペディションの結果、人気の航空路線が1社独占になり、異常に高い航空運賃になっている。空港もこの例にならう。離島などの採算の合わない空港が閉鎖になることも確実である。
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