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●(12月1日) 羽田空港の滑走路2本増設案(読売12/1)
首都圏第3空港論議に関連し、羽田空港を改造して滑走路を2本増設する構想を民間の研究機関が研究していることが30日に明らかになった。神奈川県の依頼を受けた「安全都市調査会」(会長、石原信雄・元内閣官房副長官)が、神奈川県の臨海工業地帯の再開発と災害時の防災拠点の整備に絡めて研究を進めている。調査会は専門家の助言を得て構想を詰め、運輸省に正式に提案し羽田の拡張論議に加わりたい考えだ。
羽田空港を再拡張し滑走路を1本増やす提案は、定期航空協と東京都が10月に発表済みだ。これに対し、調査会の構想は羽田にある3本の滑走路に2本の滑走路を加える案だ。新滑走路は現滑走路のAとCに対して20〜30度傾けて交差し、ほぼ南北の方向に位置する。この改造だと、他案のようにコンテナ船航路に張り出して大井ふ頭の機能を低下させ、多摩川の船舶の障害になる懸念がないという。南北方向に滑走路を新設できるのは、多摩川をはさんだ羽田空港対岸にある浮島地区を再開発し、緊急時のヘリポート建設などの防災基地構想とセットのためだ。浮島地区に石油コンビナートがあるが、老朽化で移転の可能性が高い。
調査会の野沢次郎事務局長は「石油コンビナートを移転して、防災地区を整備し浮島上空を開放すれば、羽田の年間発着回数は27万回から40万回以上に増える」と試算している。
【本紙の解説】
滑走路が交差している空港はあるが、過密空港での管制は難しい。また、安全性の検証がされていない。仮に滑走路として合理性があった場合でも、運輸省は採用しない。超大型の建設プロジェクトは首都圏では第3空港しかない。運輸省はみずからの利権、権益拡大のためとゼネコンの経営危機を「救う」ことが第一で、予算が少なくてすむ再拡張案にも反対なのである。桟橋も、埋め立ても、メガフロロートも使わずに、既存空港の中に滑走路をつくるという計画は「名案」ではあるが、現在の日本の運輸行政の中での採用の見通しはない。
●(12月1日) 運輸省、千葉県へ羽田国際化の最後通牒
運輸省は「羽田空港における深夜早朝の有効活用方策について(案)」として以下の内容の提案(要旨)を千葉県に示した。千葉県が拒否しても実行するという最後通牒としての通告である。
「羽田空港は国内線、成田空港は国際線の基本を維持することを明示した上で(1)羽田空港で深夜早朝帯の国際チャーター及び国際ビジネス機の運航を認める、(2)運航時間帯は成田空港の運用時間を考慮して、原則として午後11時から午前6時とする。ただし、修学旅行や国際イベントなどの場合は、午後10時台の出発と午前6時台の到着を認める、(3)午後11時から午前6時までの間は基本的に千葉県の上空を飛行しない経路とするなど騒音問題に配慮する。
発着回数については、国内線と合わせて午後11時から午前6時まで1時間当たり最大16回(到着は8回)程度としている」
【本紙の解説】
運輸省は満を持して、羽田国際化の通告を千葉県に行った。
運輸省は今年3月の「羽田空港の有効活用検討委員会」の設置以降、千葉県の説得に奔走した。
千葉県選出の自民党国会議員団に対しては10月12日に深谷憲一航空局長が「勉強会」に招かれて「羽田国際化」についての説明を行った。運輸省は「国際線は成田、国内線は羽田」という原則は崩さず、「なし崩し的に羽田国際化はしない」と約束した。千葉県選出国会議員団はこの「勉強会」の内容を基本的に了解した。
また、12月12日から日韓航空会議で、羽田―ソウル間チャーター便の具体化を示す必要があり、この日の通告になったのである。
この羽田の有効活用案の内容は、千葉県への配慮で遠慮している表現ではあるが、実際は羽田完全国際化への布石以外のなにものでもない。まず、1時間当たり、発着16回という数字はかなりの発着枠の拡大である。1日7時間×16回=112回、365日×112回=年間4万0880回になる。年間で4万回を超える発着回数は、滑走路1本を増設するに等しいものだ。成田の暫定滑走路が完成した場合の年間離発着目標は6万回である。実際は1万回前後しか需要はないといわれている。2500メートルの平行滑走路が完成しても8万回が目標であった。つまり、羽田の夜間の年間4万回という数字は暫定滑走路の実際の発着回数を上回るものである。
夜間であり、当面は千葉上空を飛行しないので1時間当たり8回としているが、「活用案」で16回と千葉県に対して提案している経緯から、早晩16回になる。また、深夜の2―4時台の時間帯は利用客が少ないと見込まれ、当面は3便(6回)程度の利用しかないともいわれている。だが、離陸は2―4時台には少ないと予想されるが、着陸はこの時間の方が多くなると予想される。
また、出入国審査、検疫の制約があり、1時間当たり400人ジャンボ機なら1機分しかできないともいわれている。現在の羽田の国際線は、台湾の中華航空だけが乗り入れているので、到着ロビーその他が狭いことは事実である。しかし、そのロビーの拡大の予算もすでに羽田の国際化を前提にとってある。
またチャーター便も、修学旅行や墓参団などが利用する団体型チャーター便だけでなく、募集型チャーター便(包括旅行チャーター便)を認めたことは、事実上の「国際旅客定期便」を認めたに等しい。パック旅行などの募集型チャーター便は、宿泊ホテル付き格安チケットで大量に出回るものである。運輸省は羽田の深夜・早朝の国際化でこの募集型チャーター便を認めるかどうか決めていなかった。理由は事実上の国際定期便になるからである。しかし、千葉県をねじ伏せる中で一挙に盛り込んだということである。
この羽田の深夜・早朝の国際線解禁で暫定滑走路の近距離便の需要はさらになくなることになる。
●(12月2日) 森田運輸相、内閣改造前に成田空港視察
2日、内閣改造前に森田運輸相が就任以来初めて成田空港を訪れ、建設中の暫定滑走路予定地や管制塔などを視察した。森田運輸相は「厳しい面はあるが、2500メートル滑走路の建設は最後まであきらめない」と話し、当初計画の実現に意欲を見せた。羽田国際化については「東京都などから強い要望があるが、管制などの処理能力や国際化に伴う千葉県の騒音問題などを考えると、簡単には実現できるものではない」との見解を示した。また2500メートル滑走路の建設は可能かという問いかけに、「姿勢としては頑張っていきたい」と述べるにとどまった。
【本紙の解説】
閣僚辞任前の儀礼的な成田訪問である。羽田国際化の提案をすでに運輸省が千葉県にしている中での訪問であるにもかかわらず、「国際化は簡単に実現できるものではない」との発言は白々しいものがある。
●(12月3日) 反対同盟 現地闘争(本紙573号参照)
●(12月3日) 工事着工1年の新聞特集記事の中から
▼読売の特集「2002年W杯ジャンボ機は飛べない?」
島村昭治さん「滑走路を造るという前提で進められても、話はかみ合わない。公団は生活する側のことを考えていない」と憤る。
▼産経の特集「成田空港暫定滑走路着工から1年」
東峰神社の立ち木をめぐっても波乱が予想される。高さ約10メートルの立ち木は、着陸時の障害とならないように設定されている「進入表面」に突き出しており、航空法で伐採することになっている。
しかし、農家は「神社は地区の共有物件。絶対に切らせない」と反発。神社だけでなく、島村さん方の立ち木なども障害となりそうで、滑走路が完成しても十分に活用できるかどうか不安視される。さらに、反対派を支援する過激派の動向も注目される。今年のゲリラは3件だけだが、来年以降の“決戦”に備え、勢力を温存しているとの見方もあり、警備当局は警戒を強めている。
島村昭治さん「公団が自分の土地で工事を進めるなら、こっちも自分の土地で農業を続けていくだけだ」と移転を拒否する。
●(12月5日) 東峰地区での工事拡大
成田・小見川県道から東峰部落に通じる道路2本を囲うフェンスの移動工事を機動隊を大動員し、ものものしい警備の中で開始した。う回道路のところのフェンス移動である。う回道路工事とローカライザー(計器着陸誘導装置)設置にともなう工事のためである。
●(12月5日) 扇千景国土交通相(運輸相)発言/一坪共有地の強制収用示唆(11/7産経)
国土交通相(運輸・建設・北海道・国土)の扇千景は5日夜、運輸省での記者会見で成田空港の未買収地問題に触れ、「もともとそこに住んでいた方は分かるが、一坪共有地は反対のための運動」として、一坪共有地については強制収用を示唆する発言を行った。用地問題では、国と反対派との話し合いの結果、強制収用を行わないことで合意しており、扇国土交通相の発言は波紋を広げかねない。
会見で平行滑走路の建設に向けての質問には扇国土交通相はまず、「成田の場合は、住民との最初の話し合いが足りず、反省すべきこと」と過去の誤りを認めた。
しかし、一坪共有地については「狭い土地に1000人以上の反対運動者がいるというようなことが各地で起こることにもなり、日本にとって問題だ」と批判した。
さらに「国際国家たりうる公共工事をするためには、土地収用法の見直しなどが必要」として、一坪共有地に対しては強制収用をにおわせた。
なお土地収用法については、手続きの迅速化などを図るため、改正案が次期通常国会に提出される見通し。また空港建設も新たに発足する国土交通省の所管となる。
この発言に対して反対同盟の北原事務局長は「なぜ反対運動が30年以上も続いてきているのか分かっていない。強制収用しようと思っているから、そういう発言をするのだろう。許せない」と反発した。現在、成田空港の拡張工事予定地には21カ所の一坪共有地が残っている。
【本紙の解説】
建設省では今年の5月から秘密裏に「土地収用制度調査研究会」を設置して土地収用法の反動的改悪に取り組んでいる。具体的には(1)収用手続きの簡素化、(2)補償制度の強化、(3)軍用地(自衛隊関係など)の強制収用も可能とする――などが焦点である。
「公共事業の迅速化」のための土地収用法見直しという問題は、実は国家権力の発動、戦時体制づくりの基本的骨格をなす。土地の「死刑執行人」である土地収用法を、審議も簡素化してすぐ執行できるようにする方向での改悪である。土地所有者の権利制限を強めるということであり、有事立法攻撃の先取り的攻撃である。
扇国土交通相は、11月9日の森首相の諮問機関である「産業新生会議」で「土地収用法改正」と発言している。「公共事業用地の収用手続きの透明化などを柱とする土地収用法改正案を来年の通常国会に提出する」と建設省の方針を明らかにした。
また扇は今回、土地収用法の改悪後の最初の適用対象を三里塚闘争の一坪共有地にすると反革命的に宣言した。三里塚闘争の最大敵対者の一人になるという表明である。われわれはこれを断固として受けてたち、三里塚闘争34年の歴史にかけて粉砕しなければならない。
ただし、成田空港の公共事業認定は時間切れで失効している。このことは運輸省も建設省も確認ずみである。事業認定が失効している中で「土地収用法の執行の示唆」とはどういう法律感覚の持ち主かといぶかる声も多い。大臣としての資質も疑わしい。しかし扇国土交通相の言葉は、三里塚の一坪共有運動が成田空港の建設を決定的に遅らせ、空港そのものの危機にまで追い込んだこと、またこの運動が三里塚から全国に波及し、国家と地方自治体の不当な公共事業の強行を阻止していることの証でもある。政府と支配階級の三里塚闘争への反革命的な憎悪の表現である。
成田空港の公共事業としての再認定策動と土地収用法の適用を絶対に許してはならない。有事立法の先取り的攻撃である土地収用法の改悪を絶対阻止しなければならない。これは来年の三里塚闘争の一大テーマである。
建設省は運輸省と合併し国土交通省となり、その初代大臣が記者会見で土地収用法の適用を公言し、三里塚闘争への最悪の敵対を宣言した。三里塚の激烈な闘争史の中でも例がない反動的態度である。絶対に容赦のない反撃を叩きつけることを三里塚闘争の名にかけて宣言する。
(なお、99年地方分権一括法で収用委員会にかわって国が裁決する道を開く大改悪が行われている。土地収用法改悪問題とあわせ、詳しくは『週刊三里塚』本紙、および『前進』1984号赤坂潤論文参照)
●(12月5日) 運輸省、空港周辺自治体へ羽田の夜間・早朝国際化を最終通告
運輸省は1日に千葉県に提示した「羽田空港における深夜早朝の有効活用方策について(案)」を成田空港の周辺自治体に対して5日、運輸省の幹部が直接訪れ説明した。成田空港圏自治体協議会は同日夕、急きょ会議を開いて意見交換。「夜間早朝の羽田国際化はやむを得ない」と条件と2項目の要望をつけて受け入れることでまとまった。
要望したのは(1)成田空港の騒音対策と地域振興策に成田空港圏自治体協議会の要請に基づき十分な対応を図る、(2)国、県、同協議会との協議の場を設けるの2点。
条件は、(1)県上空を飛んでいないことを確認するため情報公開する、(2)2500メートルの平行滑走路の実現に努力する、(3)都心と成田空港を結ぶ成田新高速鉄道を早期実現する――などである。
【本紙の解説】
周辺自治体の首長たちは「運輸省は強行するだろう。それなら成田新高速鉄道促進など、地域振興を運輸省に求めるのが得策ではないか」との思惑で羽田国際化を容認した。千葉県と空港周辺の自治体の「羽田国際化反対」の目的は空港建設のための見返り事業の要求である。このことを運輸省に見透かされて県が承諾する前に手を打たれてしまったということである。
それにしても、ことここにまで及んでも「騒音対策」「地域振興」という名の見返りを要求している姿に怒りを通り過ごし、あきれるばかりである。
●(12月6日) 扇千景国土交通相 反対派農家との話し合いに意欲 「羽田国際化は必要」(11/7読売、千葉日報)
扇国土交通相は6日、記者会見で建設中の平行滑走路については「できるなら時期を見て、予定地内に残る2軒の農家と会って話をして、意見を聞いてみたい」と述べた。ただ反対派農家との面会の仕方については「陰で会うというのは性格的にも合わないので、マスコミにもオープンにするという条件なら、お目にかかりたい」とするにとどまった。
羽田の国際化については「国際都市の条件として国際空港は欠くべからざるもの。東京都が国際都市であるならば、羽田空港の国際化は必要。国際都市に欠けているものについて対応しなければならない」と述べ、東京都が国際都市ならばという条件付きで羽田を国際化する可能性を示した。
【本紙の解説】
一坪共有地への土地収用法の適用(強制収用)を公言しておいて「反対派農家にお目にかかりたい」とはどういう政治感覚の持ち主か。扇国土交通相がどうあがいても話し合いに応じる農民はだれもいない。
●(12月6日) 千葉県、羽田の夜間国際化容認(千葉日報その他全紙)
羽田空港の国際化問題で、千葉県は6日に、運輸省から示されていた羽田空港の深夜早朝の国際チャーター便就航を容認する方針を決め、同省に伝えた。千葉県は成田空港への影響と千葉県の騒音被害を理由にして反対していたが、運輸省が「千葉上空を飛行しない」と提案したのを受け、条件付きで容認する方向転換に踏み切った。
千葉県は運輸省の「羽田空港における深夜早朝の有効活用方策について(案)」に対して、「羽田空港の深夜早朝時間帯に、県上空を飛行しない経路」など条件をつけて羽田空港の国際化を容認する方針を明らかにした。ただし、運用時間は成田空港の運用時間外の午後11時から午前6時までの時間帯に限定し、「運航時間について一切の例外は認めない」とした。
千葉県の田辺英夫県企画部長は記者会見で運輸省の手続きを批判し、なし崩し的に羽田国際化を進めかねないと懸念を示し、条件付きながら羽田国際化を認めたことは苦渋の選択だったと述べている。田辺企画部長は「最終通告に等しい案が、事前の説明もなく突然に示され、しかも関係市町村などへの説明に必要な時間も十分取れない中で、運輸省が本県の理解を求めてきたことは、国が成田空港問題の歴史と教訓から何を学び、どう生かそうとしているのか、深い疑念と失望を抱かざるを得ない」と語り、強い不快感を示した。
また、“条件付き”ながら、羽田空港の深夜早朝便の飛行を認めたことについて「国際化を容認したわけではなく、このままではなし崩しに国際化につながることを危惧しているため」と弁明した。
運輸省の案に対して、県は運輸省に「意見書」を提出。県議会で「羽田空港国際化反対」の決議を2回行ったことや、成田空港を建設する経緯などを指摘し、「運輸省案をそのまま認めることはできない」と批判している。「県が守らなければならないのは平穏な県民生活の確保と成田空港が一刻も早く十分な機能を有する国際空港となること」として6項目の意見を回答した。
意見書では、羽田空港からの国際チャーター便・国際ビジネス機の運航を、午後11時から午前6時の間で認めることとした。また、現在の国内線の飛行経路を使用する午後11時台の出発、午前6時台の到着については、県上空を飛行することとなり、航空機騒音の影響が生じるため受け入れられるものではないと“拒否”。特に午前6時台の到着について県民の安眠を妨げることはできないと強く反発した。
さらに「羽田空港に発着する国内便を含めた全便の飛行軌跡、航空騒音の状況の公表」「成田空港が十分な機能を有する国際空港となるよう2500メートルの平行滑走路や成田新高速鉄道の早期実現に努力すること」などを盛り込んだ。
【本紙の解説】
千葉県が運輸省に押し切られ、苦渋の選択を飲まされた。千葉県は「『なし崩し的に羽田国際化』することを阻止するために、条件付きながら羽田国際化を認めた」といっている。また、「千葉県上空を通過しない」といわれ、反対する論拠もないのである。
運輸省は千葉県の「意見書」を尊重するとはいっているが、本音は「全面的なし崩しでの羽田の国際化」にある。千葉県は容認したことで「なし崩し国際化」だけは阻止したと思っているが、実はそうではない。
運輸省のプランは以下の通りである。2002年の春までは今回確認した内容で進む。深夜・早朝の羽田国際化だけで、1年で離発着4万回になる。太平洋便でアメリカから日本に来る便は時差の関係でむしろ、日本の深夜到着の方が便利になる。またアジアの近距離便もビジネスや観光を帰りの日の夜まで有効に使え、深夜羽田に到着し、仮眠して出勤というスタイルは便利でもある。日本の長距離高速バスの感覚である。体力のある人、若い人には時間が有効に使えて歓迎であろう。成田の地盤沈下は避けられない。チャーター便という形で実質定期便化したパック旅行の格安チケットが出回ることは確実である。
2002年の春はW杯への対応として、羽田―ソウルのシャトル便をジャンボで昼間も解禁する。理由は成田の暫定滑走路はジャンボが使えないことである。
運輸省の計画ではこのW杯までに(1)第3空港の候補地を決定する、(2)暫定滑走路を何とか完成させたい。立ち木問題を解決し1740メートルでなく、2180メートルをフルに使えるようにしたい。
さらに、成田の「一段落」で羽田の全面的国際化を一挙に進める予定である。2002年7月には羽田の発着枠をさらに拡大する予定になっている。この時が羽田の全面的国際化の時である。
来年の2001年から日米航空交渉が2002年のオープンスカイ(航空路線の全面的規制緩和)にむけて、首都圏の発着枠に余裕がないと国際公約違反になり、対日制裁が厳しく行われ、日本の航空産業は全滅しかねない危機を迎えることになる。
運輸省としてはそのために、千葉県の「羽田国際化反対」にはつきあっていられないのである。このことが今回の運輸省の対応の根拠である。いずれにしろ、成田空港開港の遅れ、78年に開港したものの拡張工事の全面的破綻が今日の運輸省の窮状を作り出しているのだ。農民と農業の無視が今日の一切の原因である。
●(12月7日) 梅崎運輸次官、「羽田国際化」早期実施へ意欲
運輸省が示した羽田空港で深夜・早朝帯に限って国際チャーター便を就航させる方針に対し、千葉県が事実上容認する考えを表明したのを受け、運輸省の梅崎寿事務次官は7日の定例会見で「(航空機が千葉県上空を通過しないなど)千葉県の意向を踏まえて、できるだけ早く具体案を決めたい」と述べ、年明けにも第1便の飛行を認める方針を固め、早期実施に意欲を示した。
具体的な開始時期や路線については「具体案を固めた上で(航空会社などの)希望を聞いて検討したい」と述べるにとどまった。
●(12月7日) 中村公団総裁 南側に300メートル延長し2500メートルへ(12/8読売、朝日、千葉日報など)
中村公団総裁は記者会見で7日、用地買収のめどがつけば、建設中の暫定滑走路(2180メートル)を南側に300メートル延ばして、2500メートルにすることも可能であるとの見解を示した。中村総裁は「2002年5月の滑走路供給開始前には、2500メートルという旗は降ろせない。最終的な目標は当初計画通りの平行滑走路(2500メートル)だが、工期の問題もあるので、一つの方法として考えられる」と話した。
羽田の深夜・早朝のチャーター便の乗り入れを千葉県が容認したことについては「運輸省は『成田は国際、羽田は国内』という基本線を変えないで、羽田を有効活用していこうという考えだと承知している」などとして、今後、運用面で成田空港に影響が出ることはないという認識を示した。
扇国土交通相が一坪共有地の強制収用を示唆する発言を行ったことについては、中村総裁は「成田の問題に特定したものではなく、公共事業の進め方について政治家としての抱負を述べたものと認識している」と述べた。
【本紙の解説】
南側への300メートルの延長という発言は許せない発言である。運輸省と公団は地権者との合意なしに工事を行わないと表明してきた。この立場の抜け道で「用地内に地権者がいない」ということで暫定滑走路を着工してきたのである。このこと自体、公約の無視である。しかし、そこに住んでいる人がいるにもかかわらず、「用地買収のめどがつけば」とし、延長の計画を表明することは絶対に許されないことである。しかし、この発言はこの間の北側への延長案が出ていることに対して、その可能性はないことを示唆している面も強いのである。
今年の10月24日に成田空港対策協議会が暫定滑走路の北側に300メートル延長する要求をしている。(日誌10月24日の項参照)
●(12月8日) 扇国土交通相の「羽田国際便の発着枠拡大」千葉県が反発・扇大臣発言が波紋
扇国土交通相は初閣議後の記者会見で、「21世紀には新しい考え方があって良い。成田空港は国際線、羽田空港は国内線には発想の転換が必要」と述べ、役割分担を見直す方針を示唆した。また、羽田空港国際チャーター便の運航についても、「半歩前進。せめて午後9時からにすれば利便性が高まる。遅い時間だとモノレールや電車が動いていない。政府専用機や国賓を迎えるのも羽田。まだ空いているなら昼間でも国際チャーター便を飛ばしたい」と省内で羽田の発着枠を調査し検討させる意向を示した。さらに、成田空港に関しては「千葉県の努力は認めるが、開港から23年たって滑走路1本しかないというのは努力の成果が見えていないということ」と述べた。
羽田国際化に強く反発する千葉県はこの扇発言への不信感をあらわにする。従来の見解を覆された運輸省も戸惑いを隠せない。新大臣の主張との調整はかなり難航しそうで、運輸省は第3空港など首都圏空港行政の議論前倒しも迫られそうだ。
この扇発言に対し、沼田知事は「成田空港の建設に努力した関係者の信頼を踏みにじるもの。許されない」と猛反発した。
千葉県の田辺企画部長は記者会見で「真意なら大変遺憾。成田空港整備のこれまでの歴史を覆すものだ。運輸省に真意を確認したのちに対応を協議する」と猛反発。自民党千葉県連の飯島幹事長は「発言が真意なら、成田空港建設の長い歴史に対する認識不足だ。無知で軽率な発言であり、担当大臣としての資質を問いたい」と怒り、抗議の意を表した。
【本紙の解説】
「従来の見解を覆した運輸省」といっているが、運輸省の本音を扇国土交通相がいったまでである。運輸官僚のレクチャーが不十分なので「本音」と「従来の見解」の区別がつかずに言いたいことをいっている。
だが、空港建設の主体が運輸省の所管にあることも理解していない大臣とは前代未聞でもある。それ以上に三里塚闘争への無知も甚だしいものがある。扇国土交通相が在任中に三里塚闘争の歴史を学ぶことを強制しなければならない。
●(12月8日) 羽田空港再拡張案「12億円の調査費」/石原都知事議会答弁(12/9毎日)
東京都が国に提案した羽田空港の桟橋方式による再拡張案について、石原慎太郎都知事は8日の都議会本会議で「12億円の調査費が予算付けされた」と答弁した。運輸省は来年度予算の概算要求で同空港の再拡張案を含む首都圏第3空港調査費として12億円を要求している。大蔵省の予算原案の内示は20日に行われる。
【本紙の解説】
石原都知事は、羽田再拡張案の調査費12億円が付く予定になっていることを自分の成果と押し出しているが違う。それは、そもそも運輸省が来年度予算で要求している首都圏第3空港の調査費の12億円であった。そのうち10億円を羽田の新滑走路の調査費に転用するということを亀井政調会長が梅崎事務次官に言い渡したということだけである。
第3空港の初めての本格調査予算である12億のうち10億円を羽田再拡張の調査に回すとの自民党方針は、運輸省の新規の空港建設を止めろという意味だ。しかし、調査費の運用主体は運輸省であり、その運輸省は羽田再拡張には本音のところで反対である。したがって、羽田再拡張案か新規の第3空港かは、まだ決まっていない。
再拡張案は羽田の国際化推進のための方策という面が強い。運輸省は千葉県との関係で「羽田=国内線、成田=国際線」の原則を崩せないので、羽田国際化要求に羽田は国内線だけで発着枠が満杯であると弁解している。それなら羽田を再拡張しろというのが、東京都などの提案である。
羽田空港の空域、騒音の問題が「解決」し、新A滑走路の北側発着制限を撤廃すれば、2本の滑走路がオープンパラレル方式で管制できるようになる。そうなると発着枠は飛躍的に増大する。深夜・早朝の国際チャーター便が認可されたので、名実ともに24時間空港になる。1本の滑走路の24時間使用で1年間約20万回の発着は可能である。オープンパラレル管制ならば、2本でその2倍、約40万回の年間発着回数は確保できる。
運輸省の計画では羽田の国際化は2002年以降である。そのために、北側の進入調査と航路の選定をしている。羽田の発着枠が増大し国際化すれば、再拡張案は消える運命でもある。
●(12月11日) 扇国土交通相発言に千葉県猛反発
◎沼田知事は不快感を表明
沼田武知事は11日の定例記者会見で、先日の扇千景国土交通相発言について、「発言の真意を確認する」とした上で、基本原則が崩れてくるということならば「羽田の条件付き国際化」を撤回することもありうることを示した。
また、同相が「23年たっても2本目の滑走路ができなかった。千葉県の努力の成果が見えていない」と述べたのに対しても、「成田は国が責任を持つ国際空港であり、地方空港ではない。遅れているのは国の対応が悪いからで本末転倒だ」と反論した。
さらに羽田国際化問題に「成田の2本目の滑走路を整備して完成空港となる前に議論する問題ではない。成田空港が完成空港となり、(その後で)状況を見ながら、その議論が必要かどうかを含めて検討すべきだ」とした。
◎臼井日出男代議士ら自民党千葉県選出国会議員団は運輸省に抗議行動
臼井日出男代議士ら県選出国会議員団は運輸省の泉信也総括政務次官に対して「扇発言は極めて遺憾。成田空港問題で犠牲になった人もいる。陳謝、訂正してほしい」と抗議。
泉信也総括政務次官は「私の力が及ばずご迷惑をかけた。大臣の発言は長い将来的なものに対する考え方と混合しているのだと思う。『千葉の努力不足』と受け取られる部分は、明らかに大臣の心配りが足りなかった」などと弁解した。
◎成田市議会は扇発言に抗議決議上程へ
成田市の小川国彦市長は11日、記者会見し「大臣としてはあってはならない発言だ。県と共同歩調で、誤った認識の撤回を求めたい」と述べた。12日には、県庁で沼田知事と成田空港周辺の9市町村の首長が会い、意見の調整を図るという。
◎一方、扇国土交通相は仙台で開き直りの会見
扇国土交通相は問題になっている羽田国際化について11日に仙台で記者会見し、「だれだって成田より羽田が便利だと感じている。千葉県の県益とか東京都がどうだとかではなく、みんなで国際社会で生き残っていく策を考えるべきだ。21世紀は発想の転換が必要だ。2本以上の滑走路があって初めて国際空港といえる。成田を造る時に羽田と直結で湾岸道路を造るべきだった。成田が便利だと思っているのは一部の地域の人」などと述べた。
◎石原都知事は扇発言に賛意を表明
東京都の石原慎太郎知事は11日、扇運輸相が「成田は国際線、羽田は国内線」という原則の変更に肯定的な発言をしたことについて、「東京に住んでいればだれでもわかること。成田空港はアクセスが乏しく、平成17年(2005年)には国際線はパンクする。日本に飛行機を飛ばしたいと言っている国はいくつもあるのに受け入れられない。これは私が国会議員のときも言ってきたが、少数意見でしかなかった」と述べ、扇氏の発言に賛意を示した。
◎梅崎運輸事務次官は定例記者会見で弁明
梅崎事務次官は11日の定例記者会見で、原則見直しについて、「(扇国土交通相は)将来展望として持論を発言されたと思う」と説明。そのうえで見直し議論を始めるには「成田を(2本の滑走路を備えた)完全空港にすることが大前提」と強調した。同次官は「完全空港」とは「2本目を2500メートルにすること」とした。
また、扇発言に関して、「大臣には大まかにお話ししたが、就任直後でもあり、細かくは説明できていなかったと思う。(4省庁兼務で)時間が足りなかった面もある」と釈明した。
「成田空港問題は運輸省の『最もデリケートな問題』として、歴代大臣が就任する都度、最優先の説明事項とされてきたが、5日に就任した扇運輸相は、国土交通省を構成する4省庁の大臣・長官をかけもちしているせいもあり、『説明時間が足りなかった』と運輸省の担当者らはぼやいている」
【本紙の解説】
扇発言で千葉県が猛反発しているが、そのやりとりの過程で浮き上がったことは運輸省の「羽田国際化プラン」である。羽田国際化プランは「成田の完全空港化が前提」として2002年と発表したことだ。これは、沼田知事の「羽田国際化問題は成田の2本目の滑走路を整備して完成空港となる前に議論する問題ではない」という言葉をかりて、運輸省が平行滑走路の完成が原則見直しの時期と攻めたてているのである。千葉県としては「成田の完全空港化は平行滑走路の2500メートルの完成」と釘をさすにとどまっている。いずれにしろ、2002年5月以降に羽田空港が国際化することは基本的に確定したといってもいい。千葉県が「完全完成ではない、暫定完成」だといっても、その時は負け犬の遠吠えに等しく、相手にされないことは確実。
沼田知事の抗議も実際は弱々しい。扇発言について「発言の真意を確認する」として、「撤回することもありうる」といったまでである。「大臣発言は個人的のものだと受け止める。基本的には静観する」ともいっている。
行動化したのは、千葉県選出の自民党国会議員団である。これは、運輸省の勉強会で唯々諾々と受け入れてしまったことの取り戻しである。10月12日に千葉県選出の自民党国会議員会議で運輸省の深谷憲一航空局長に「羽田国際化」の説明を受け、「なし崩し的に羽田国際化はしない」として、「深夜・早朝のチャーター便」を基本的に了承したことである。国会議員団は「釘をさした」といっていたが、実はここで羽田の深夜・早朝のチャーター便は千葉県側としては確認してしまっているのである。(日誌10月12日の項を参照)
成田市などの空港周辺自治体は抗議声明として、見返りの増額要求をしていることは見え見えである。
もう一つの問題は、扇運輸相への運輸官僚の説明不足である。成田問題は「本音と建て前」および、さまざまな経過が入り組んでおり、どんなに説明しても理解できないものがある。空港整備計画が30年以上も遅れており、時代にそぐわなくなっているので無理もない。これは成田空港建設が不正義の農地強奪から出発したことが最大の原因である。この三里塚闘争の出発から説明しなければ、「羽田、成田問題」を理解することはできない。
●(12月11日) 成田市円卓会議で4点提案
成田市と成田商工会議所、成田空港対策協議会など10団体が参加する成田市円卓会議(座長・小川国彦市長、今年1月18日発足)が11日、活動のまとめとして、「21世紀の『なりた』へ向けての提言」を発表した。
提言は、(1)空港都市としてのまちづくり、(2)騒音地域の対策、(3)地域の振興・「なりた百年郷構想」の推進、(4)空港問題の完全解決に言及。各種施設の整備や騒音対策の充実、交通アクセスの改善などを要望。平行滑走路の早期完成にむけての努力をうたった。
【本紙の解説】
「成田市円卓会議」は今年1月8日に「反対派農家との話し合い解決のめどが立たず、暫定滑走路建設が進む中」で、未買収用地の具体的解決方法をさぐるために設立されたものである。そのための便法として、地域振興、発展を盛り込み、空港周辺の地域で会合を持って反動的大衆運動を目論んだ。その政治的意図は完全に粉砕され、単なる都市計画の文書づくりに終わった。
●(12月11日) 大蔵省、関空会社の経営見直し/収入減の国費補てん20億円は認めない方針(日経)
大蔵省は巨額の有利子負債を抱える関西国際空港会社について、地元自治体や財界に無利子資金の追加負担を求めるなどの経営抜本改革は2002年以降とする方針を決めた。来年度予算では国際線の着陸料引き下げに伴う関空会社の収入源の国費による補てん(20億円)は認めない方針だ。
大蔵省は巨額の有利子負債を抱えているにもかかわらず、総事業費1兆5600億円の二期工事を進めていることを問題視。国、自治体、財界が追加出資して無利子資金を投入する新たな資金枠組みを策定するように求めていた。
【本紙の解説】
大蔵省は地元が無利子資金の投入をしないなら、二期工事を中止に追い込む考えだ。一方、関空側はこの大蔵省に対して11月13日に関空二期予算の満額確保を要求して大阪府などが与党幹部と運輸省に要望している。そのことで運輸省は航空局内に「関西国際空港に関する検討委員会」を設け、自民党、公明党、保守党の与党3党は「関西国際空港二期事業の促進に関する決議」を上げ、森首相に手渡している。
大蔵省は、与党に手を打たれたので来年度の二期工事予算の減額はせずに、着陸料引き下げの補てん(20億円)をカットする方針に変更したのである。今年度補正予算が運輸省の要求の10分の1になったことをあわせて、来年度二期工事予算の事実上の減額である。
●(12月12日) 扇国土交通相修正発言/羽田と成田の役割見直しは「21世紀の将来展望」
扇千景次期国土交通相は12日の閣議後の記者会見で、8日に「羽田空港は国内、成田空港は国際」という役割の見直しを示唆したことについて、「21世紀の将来展望として申し上げた。明日からできるわけではない」と述べた。また、羽田国際化について「今までの(運輸省と千葉県の)話し合いに口をはさむつもりはない。日本の国際空港はどうあるべきか21世紀の展望を話した」と述べ、原則見直し発言を修正した。
ただW杯サッカーにむけた航空輸送力の増強策として、「羽田空港で1日に30便確保してある公用機のうち、使っていない発着枠を活用することも検討する」と述べ、W杯期間中の特例措置として、羽田空港に国際便を運航させる意向を示した。
国土交通相は8日の記者会見で、羽田と成田の役割分担について「21世紀は発想の転換が必要」と発言。羽田国際化に強く反対している千葉県が猛反発していた。
【本紙の解説】
8日の発言の修正ではあるが、実質的には2002年のW杯での羽田の昼間の国際化の宣言になっている。これは運輸省の計画を大臣名で大々的に発表したことである。この修正発言で千葉県が反発しないということは、いままでの抗議はなんだったのか。「原則見直し」どころか、2002年にはW杯期間中の特例措置とはいえ、昼間の羽田空港に国際便を運航させると宣言している。
●(12月12日) 首相、「羽田拡張」「国際化」に前向きの考え表明
12日、都知事・石原と森が会談、石原は都が提案している「桟橋方式」での羽田空港拡張と同空港の本格的な国際化について実現を要望。森は会談後に記者団に、「2001年ワールドカップが(航空政策の)一つの転機だろう。実行できるものは実行していきたい」と述べ、「羽田国際化も視野に入れてということか」との質問に「そうだ」と明言した。
森が羽田の国際化に触れたことについて千葉県幹部は「羽田は国内、成田は国際の原則を守ってほしい」として、羽田の再拡張問題と国際化問題がなし崩し的に結びつくことへの警戒感を示した。
【本紙の解説】
同日の扇国土交通相の記者会見と同趣旨の発言である。2002年に羽田の全面国際化が官邸と運輸省の一致した見解になったのである。千葉県の「抗議」が羽田国際化をより一層確定させた結果になっている。
●(12月12日) 羽田国際化は来年2月、運輸省が正式発表
運輸省は12日、羽田空港の深夜・早朝を利用した国際チャーター便、国際ビジネス自家用機の運航を、来年2月をめどに開始すると発表した。午後11時から午前6時まで、成田空港が使われていない時間帯。羽田の国際線ターミナルの容量から、1時間あたりの出発、到着とも400人に限定、発着回数は1時間に最大16回。不特定多数の乗客を集める「ITCチャーター」(募集型チャーター便)も認め、目的地、距離も制限しない。
米国の航空会社がすでに関心を示し、国内の航空会社も「積極的に活用していく」(日本航空)との意向を表明している。羽田―ソウルだけでなくグアム、台湾などを結ぶ便もでてくると見られる。
運輸省は当初、午後10時台と午前6時台にも乗り入れを検討したが、千葉県が「成田の運用時間外」と強く主張したことから断念した。
この運輸省の正式発表が千葉県にもたらされたのは、沼田知事と成田空港周辺9市町村長の会議の最中で、県幹部は「もう、ここまで決まったのか」と驚き、その場にへたり込んだ。同省からは2月就航開始について、事前説明はなかった。
【本紙の解説】
この深夜・早朝の国際チャーター便の解禁は、年間発着4万回にもなる。また、募集型チャーター便も認め、目的地、距離も制限しないことで、事実上の国際定期便の全面解禁ともいえる内容である。国際線ターミナルの容量から1時間当たり400人に限定としているが、早晩1時間16回になることは確実。千葉県の抵抗もこれで薄れるので、それ以上になることも明白である。
また、この計画発表を千葉県に事前説明せずに行ったのは、内閣で2002年での羽田の国際化方針が決定したことによる。運輸省としては、形式はともかく、事実上は千葉県を無視して羽田の国際化を計画通り進めるということである。
●(12月12日) 成田空港周辺自治体、千葉県庁へ 成田空港の自治体協議会が意見書提出へ
千葉県と成田空港周辺の9市町村で作る成田空港圏自治体連絡協議会は12日、扇発言につき緊急会合を開き、「地元の信頼を踏みにじるような発言は極めて遺憾」とする意見書を採択、運輸省に提出することを決めた。
【本紙の解説】
すでに、運輸省に全面屈服した千葉県に出向いて意見書を提出してもなにも意味はない。しかし、空港見返りの事業とその権益だけはむさぼろうとする周辺自治体の醜い姿がここにある。
●(12月13日) 千葉県が運輸省に全航跡の公開を要求
羽田空港の国際チャーター便の解禁が決まり、千葉県は13日、県上空を飛ばない運航経路の順守と全便の飛行航跡の公開を改めて運輸省側に口頭で求めた。県企画部は「飛行経路には幅が生じうる。今回のルートが正確に守られない場合、県民は真夜中に騒音被害にあう。全飛行軌跡の公開は譲れない」としている。
運輸省が示した経路は、富津岬をかすめて海岸線を北上し、木更津沖から東京湾を横断して羽田空港に向かうもので、県の上空は飛ばないとしている。しかし、木更津市や浦安、市川市など羽田空港の国内便の騒音被害を受けてきた自治体からは「果たして守られるのか」と警戒する声もでている。
この日、田辺英夫・県企画部長から電話で要請を受けた同省の深谷憲一航空局長は取材に対し、「経路は守る。公開の問題は、その他の要請と合わせ、今後検討したい」と話した。
●(12月14日) 成田市議会が森・扇発言に抗議文
成田市議会の議員25人は14日、森首相、扇国土交通相あてに羽田国際化の発言に対する抗議文を提出した。運輸省では泉信也総括政務次官に手渡した。森あて抗議文は千葉県選出の林幹雄代議士(自民党交通部会副部会長)に託した。
森への抗議文を安倍晋三官房副長官に手渡した林幹雄は「羽田空港の有効活用を検討するより先に、都心から成田空港までを30分で結ぶようアクセスの整備を強く申し入れた」と述べた。
●(12月14日) 栗源町議会「抗議決議」可決
栗源町議会は12月定例議会初日の14日、扇国土交通相の発言に対して抗議決議を全会一致で可決した。決議文は扇発言について「成田空港の歴史を無視し、地元の信頼を踏みにじるもので、極めて遺憾である」と厳しく批判。
【本紙の解説】
栗源町がこのような決議文を可決したのは初めてである。栗源町はボートピア(競艇場外船券売り場)の設置で町の財政赤字をしのごうとしていた。そのために反対同盟の団結小屋撤去運動に全町民を巻き込み、そのファシスト運動をそのままボートピア設置へもっていく魂胆があった。しかし、この魂胆が暴露されボートピア誘致は粉砕された。同時に、団結小屋撤去運動もまったく消滅してしまった。町の財政赤字を解決していく方策は、佐原市と合併するしかない。それを回避したいがための対策がこの「扇発言抗議決議」で、何らかの見返りの事業を要求しているのである。さもしい限りである。
●(12月14日) 千葉県、収用委員会崩壊に「支障なし」
成田空港に反対する過激派のテロで千葉県収用委員会が崩壊していることについて、武藤和宏県土木部長は14日、「事業の必要性を(地権者に)理解していただきながらやっている」として、現段階で他の公共事業に大きな支障はないとの認識を示した。「収用委員会で一刀両断に事業を進めるのではなく、基本は事業の必要性を説明してご理解いただくのが大原則」とした。収用委の再建については「今の状況では委員を引き受けてもらえる人はいない」と否定的な見通しを示した。
収用委をめぐって県は、「成田空港問題解決のめどが立つまで再任命はできない」との見解だったが、沼田知事は先月6日の記者会見で、「公共事業は話し合い解決が前提なので、収用委がなければ進まないということではない」との認識を示しており、土木部長の発言はこれを再確認したかたち。
県土木部によると、沼田知事の発言に対して、土地収用を所管する建設省から事実関係の照会があったが、「話し合い解決について述べただけで、土地収用制度を否定したわけではない」と回答したという。
【本紙の解説】
現在、建設省が土地収用法の改悪に乗り出している。収用法の改悪の根拠は、(1)ガイドライン体制のための軍事徴発のためであり、(2)公共事業の迅速化である。
戦後の土地収用法は、明治憲法下の土地収用法と比べたら地権者の権利は拡大しているが、基本は「私権の制限」にある。しかし、三里塚闘争の30年以上の闘いでこの土地収用法が事実上適用できなくなっている。また、一坪共有地運動を生み出し、土地取り上げに対しての有効な闘争手段になっている。
三里塚闘争によって粉砕された土地収用法の全面的改悪を建設省は進めている。建設省の「土地収用制度調査研究会」がそのための調査を千葉県に行っている。千葉県土木部長の見解はその回答である。
建設省は政府が行う公共事業は都道府県の収用委員会にかけるのではなく、内閣所管の政府レベルの収用委員会の設置を策動している。今回の調査はそのためのもの。
●(12月15日) 日韓航空協議、成田―ソウル間1日20便に
日韓航空当局協議は15日に終了、暫定滑走路が完成する2001年5月以降、成田―ソウル便を現在のほぼ2倍にあたる1日20便に増やすことで合意した。韓国の航空会社に1日3便、日本側に3便の発着枠を新たに配分(B767=250人乗りで換算)。すでに日本側に配分済みながら空港設備不足の制約で未使用だった3便枠も活用して、現行の1日11便から20便になる。
この結果、東京―ソウル便は、ほぼ1時間に1便程度のシャトル便が可能となる。平均搭乗率91.3%(1999年)が今後10%の増加を見込んでも69%に低下し適正化する。
日本側が提案した韓国内の地方空港への乗り入れ自由化は合意しなかった。しかし、ソウル便の開設要求の強い秋田、米子、出雲、宮崎の4空港の追加は合意した。
日本側は羽田空港の深夜・早朝を活用した国際チャーター便の来年2月開始を説明。韓国側は午後11時から午前6時の時間帯の拡大と、羽田への国際定期便の就航を求めてきたが、日本側は「できない」とした。
なお、成田線ではソウルのほか、釜山などの路線で週8便増やす。これにより成田の韓国便は暫定滑走路の供用後、現行より最大で週71便増える。またW杯サッカーの航空需要は日韓約13万人ずつ計26万人とした。
【本紙の解説】
暫定滑走路の供用開始を当て込んで、日韓双方で1日6便の成田─ソウル便を決めた。しかし、暫定滑走路のためにB767(250人乗り)である。羽田が国際化することはほぼ確定的であり、着陸料の問題とアクセスの悪さからそれだけの需要があるのか、採算はあうのか疑問である。
韓国側の羽田のチャーター便の時間帯拡大と羽田への国際定期便の就航を日本側は「建前上」拒否したが、事実上はその要求を受け入れている。それはこの間の森首相、扇国土交通相の発言をみれば明らかである。その点でも暫定滑走路使用での6便は割に合わないものになる。
●(12月15日) 首都圏第3空港検討会 羽田拡張案の説明を聞く
首都圏第3空港の候補地選定に向けて、運輸省が設置した「調査検討会」は15日、都内で第2回の会合を開いた。運輸省は羽田再拡張案について説明した。また来年2月中旬に自治体や各種団体が示す候補地を聴取することを決めた。
運輸省が羽田再拡張案について説明し、発着回数が約4割程度増加することなどを示した。また、今回の会合で第3空港候補地抽出に向け、需要やアクセス、騒音などの7項目を視点とすることを確認した。
●(12月15日) 羽田国際化で議員連盟が発足
首都圏の自民党議員が「羽田国際化を推進する議員連盟」を発足させ、15日、党本部で設立総会を開いた。会長は小林興起衆院議員。「千葉県の協力を得て、(羽田は)一部国際化が進んだが、全面的な国際化に向けて本格的な行動を起こしたい。羽田と成田両空港は対立するのではなく、両方ともアジアを代表する空港として必要」とあいさつした。
総会で、(1)羽田は国内、成田は国際とした従来の政策を改め、いずれも国際、国内の乗り継ぎが可能な空港にする、(2)羽田空港の再拡張をただちに決定、着工する、(3)羽田空港の国際線就航に必要な出入国のための要員、施設を整備する、(4)羽田、成田のアクセスを改善する――を決議した。
【本紙の解説】
扇発言と千葉県の反発問題で結局のところ、羽田の国際化は12月12日に確定した。その結果、千葉県を除く首都圏選出の自民党議員は選挙目当てに、「羽田国際化を推進する議員連盟」を発足させたのである。この議員連盟自身が空港問題や航空事業に意見を持っているわけでない。よくある選挙目当ての議員連盟にすぎない。
●(12月15日) 「収用委崩壊支障なし」発言に千葉市助役が反発
県収用委が空席になっていることにつき、県土木部長が「支障はない」との認識を示したが、15日千葉市の島田信助助役は「現実には県内市町村の実施する公共事業に大きな支障がでている。認識不足だ」と批判、同日、土木部に抗議したことを明らかにした。千葉市は千葉駅西口の再開発の遅れが懸案になっており、県の態度にいらだちを募らせている。
●(12月15日) 東京都が横田空域の返還要求へ
東京都は15日までに米軍の横田空域の返還を策定中の「航空政策基本方針」に盛り込むことを決めた。都は羽田空港の国際化推進を国に求めており、横田空域返還で同空港の処理能力を高めたい考えだ。
横田空域は東京西部から伊豆半島、長野、新潟の上空約7000メートルまでをエリアとする国内最大の軍事空域で、米軍管制下でしか飛行が認められていない。1992年に一部の高度空域が返還されたが、羽田発着の民間機はこの空域を避けて航行する。
都は羽田の新滑走路建設で発着回数25万回を41万回にできると試算。横田空域が返還されれば飛行ルートが多様になるとして処理能力が拡大できるとする。
広大な空域が日本側の管制に戻ることで、羽田空港や首都圏第3空港に新しい可能性を切り開くと期待する航空関係者も多い。
【本紙の解説】
羽田の国際化と発着枠の増大に影響する課題であり、本来運輸省がやる課題である。それを東京都がやろうということは、石原都知事の人気取りである。また、国家が日米安保条約などの理由で積極的に空域の返還交渉をやれないことを、石原都知事は積極的に推し進め、国家の危機を救うという反動的役割を果たそうとしているのである。その手初めに、都民のだれも反対しない横田基地の返還だとか、軍民共用だとか、空域返還だとかをいっているのである。しかし、その本質はファシスト的手法であり、危険きわまりないものである。
●(12月17日) 亀井政調会長 羽田の国際化を強調
(12/18産経)
自民党の亀井政調会長は17日、羽田空港の国際化について「成田空港が当面、約2200メートルという短い滑走路しかできないことになって、キャパシティーが足りない。成田もきちんと国際化していくが、それを補完する意味においても羽田国際化を急がないといけない」とその必要性をあらためて強調、東京都の石原知事が提案している桟橋方式による新滑走路建設に強い意欲を示した。
また亀井氏は「完成には4〜5年かかる。その前に定期便まで入れる形になんとか持っていきたい」と述べ、新滑走路完成までに国際定期便を就航させたいという考えを示した。
【本紙の解説】
扇運輸相発言を受けて、政府・運輸省が羽田国際化についての態度を明確にした。12月12日の閣議決定で「当面は『成田は国際、羽田は国内』の空港棲み分け論は崩さないが、2002年の暫定滑走路完成時に羽田の国際定期便就航を受け入れる」との基本方向を決定していた。
その当日「森発言(羽田国際化容認)」「扇運輸相修正発言」と続き、運輸省は勢いづいて「羽田国際化を来年2月に開始」と正式発表した。
亀井はこの問題をおおげさに打ち上げたのである。また、「羽田再拡張」の方はまだ一切が未確定だ。
●(12月17日) 沼田千葉県知事定例記者会見/県収用委崩壊について(千葉日報など12/19)
千葉県の沼田知事は18日に定例記者会見で、亀井自民党政調会長が羽田国際化に積極論を示したことについて「羽田は国内、成田は国際という基本原則はあくまで守ってほしい」とあらためて国に注文した。さらに、「国と話し合いながら、国の国際航空行政に協力するということから羽田の深夜・早朝の国際チャーター便を了承したもので、国もそういう方向でまとめる努力をしてもらいたい」と、国の主体的な判断を期待する趣旨の発言を繰り返した。
成田空港の地元などに扇千景・国土交通相(運輸相)の視察を求める声があることについては「県から要請することはない」と述べた。
成田闘争の影響で県収用委員会が崩壊していることが、成田空港完成の遅れにつながっているとの国会内の声には「収用委は制度であり、当然あることが望ましい。ただ千葉県は成田空港問題を抱えており、他県とは環境が違う。成田はこれまで話し合いで解決してきており、この路線を継続しないと、これまで協力した人を裏切ることになる」とした。
【本紙の解説】
「羽田は国内、成田は国際という基本原則」論議で、千葉県が政府と運輸省に抗議しても後の祭りである。千葉県としても羽田完全国際化のすう勢は追認しなければならないところに追いつめられている。しかし、千葉県としては「抗議」することで権力の強権発動を引き出し、成田暫定滑走路を2500メートル(当初計画)に延長しろと要求しているのである。
その絡みで千葉県収用委員会の崩壊問題に触れているのである。今年の3月24日に自民党千葉県連が二階運輸相と亀井政調会長に羽田国際化反対を要請したおり、亀井政調会長は「羽田国際化は千葉県とも相談してやっていくが、千葉県収用委員会を再建できないのは、いかがなものか」と逆襲している。亀井政調会長は千葉県に収用委員会を再建させ、成田の未買収地を強制収用しろと要求している。
沼田としては、政府の強権発動による平行滑走路完成を要求する場合、収用委崩壊問題についての「弁解」が必要なのである。
千葉県の基本的態度は、羽田の国際化に反対し、成田での国家権力の強権発動を呼び込むことである。
●(12月18日) 成田共生委員会、検討報告を了承/運輸省は国内線2万回程度配分方針(12/19東京、産経など)
成田空港地域共生委員会は18日、第34回会合を開催、運輸省航空局から2002年5月に供用開始予定の暫定滑走路の年間発着回数6万5千回のうち、2万回程度を国内路線(国際ビジネス機をふくむ)に配分する方針が示された。この発着枠が最大限活用されれば、現在の成田空港の国内線年間発着回数が、約4倍に大幅拡大できる。
会見した山本代表委員は「地元だけでは需要は少ないため、枠が増えても国内線を増やすことは難しい。千葉や船橋なども巻き込んで需要を増やす努力をすべきだ。成田空港を経由するツアーなどアイデアを出し合う必要がある」との見解を示した。
会合では「今後の共生委のあり方に関する検討委員会」が11月13日にまとめた報告が了承された(日誌11月13日の項へ)。報告書ではこれからの共生委の目的に、空港の活力を生かす観点から地域づくりに貢献するための調査・研究を追加するとしている。今月末の地域振興連絡協議会総会で了承を得るなどしたうえで、共生委の設置要項が改正され、新体制で来年1月10日からの第4期がスタートする予定。
【本紙の解説】
運輸省は暫定滑走路案の提示の時から使用回数は年間6万5千回になると強弁し続けている。そのうち国内線に年間2万回を割り振っている。しかし航空会社などはそんな需要はないと考えている。現行は週45便で夏期、年末年始の臨時便などが増便され、年間発着回数は約5000回である。成田空港の国内線は国際線との乗り継ぎがほとんどである。首都圏から成田経由で、札幌、名古屋、大阪、福岡への国内線だけの利用は少ない。成田空港の年間乗降客の総数は約1000万人前後である。そのうち、九州、関西、北海道からの利用は2割もない。したがって、この地方の乗り継ぎ客が国内線を使ったとしても年間200万人程度になる。暫定滑走路が使用できるB767中型機の平均客席は250人前後である。したがって、乗客率8割の計算で、200万人÷200人=1万回(発着回数)になる。成田発着の国内線需要は現行の倍である1万回が最大限度だ。運輸省予測の「2万回」は絵空事である。実際は現行の5割アップの7500回が限度ではないかと航空会社の関係者は計算している。
一方、共生委が「マイナス面の監査機能」から「プラス面の創出」へと立場を変えたとしても、空港公団や航空会社の企画・営業担当になるというのは行き過ぎである。
「今後の共生委員会のあり方に関する検討委員会」の報告書は、三里塚闘争への敵対を全面的に明らかにしたものだ。いままでは三里塚闘争への裏切りを本質に持ちながら、「第三者機関」と称して「中立」を装っていた。しかし今回の「報告書」では、共生委自身が空港建設推進の主体となっている。山本代表委員はまるで公団職員のようなことを言っている。
報告書では、空港づくりに関して「暫定平行滑走路建設が進められているが、平行滑走路問題の根本解決が求められている」といっている。2180メートルではなく、2500メートルへの「平行滑走路の根本解決」が必要と述べている。共生委は用地内農民をたたき出す立場に完全に立ったのである。
また、運輸省・公団について「パートナー的な役割を期待されるので会議の構成員にする」とした。共生委の主発点である円卓会議合意事項の変更をいいだしたことも、共生委の全面的反動化・反革命化の証しである。円卓会議的な折衷案もかなぐり捨て、空港建設推進の立場を鮮明にしたということである。その責任は必ず取ってもらう。
●(12月18日) 周辺自治体、運輸省に抗議(12/19全紙)
成田空港周辺の9市町村で自治体協議会に、栗源町と神崎町を加えた11市町村でつくる成田空港周辺市町村議会連絡協議会の総勢64人は18日、運輸省を訪れ、扇千景国土交通相(運輸相)の発言に対する抗議文を提出した。
抗議文は「成田は国際、羽田は国内」の基本原則の位置づけや、用地問題の解決策、空港問題で国と県、空港圏自治体との定期的に協議する場を設けるなど5つの項目について、国はどのような方針、態度で望むのか、年内に回答を求めている。
成田市長の小川会長は「5項目すべて、前向きな回答をもらった。年内に文書で正式回答をもらいたいと伝えた」と、国側から一定の理解が得られたとの認識を示した。
【本紙の解説】
成田の小川市長の一貫している運輸省への要求は「空港圏自治体との定期的に協議する場」の設置にある。運輸省の暫定滑走路案提示に反対して2500メートルの完全開港を要求し、暫定滑走路案を承認する条件としているのが運輸省と県、成田市の協議の場の設定であった。国との常設協議会を市町村が持つこと自体、異例なことである。この協議会の設置で空港建設の見返り要求を「常設」にしたいという考えである。今回の抗議団も千葉県選出の国会議員団もあわせて70人近くになり、「見返り要求」の大デモンストレーションである。
●(12月18日) 成田空対協、羽田の国際化絶対反対の決議(12/19千葉日報)
成田空港周辺1市8町の経済団体で構成する「成田空港早期完成促進協議会」(会長・宮崎廣郎成田商工会議所会頭)は18日、成田市内で会合を開き、「羽田空港の国際化には絶対反対」を決議した。近く扇千景国土交通相に決議文を提出する。
【本紙の解説】
成田空港周辺市町村議会連絡協議会の運輸省抗議の援護射撃である。
●(12月18日) 関空予算削減で合意(12/18日経、産経)
宮沢喜一蔵相と扇千景国土交通相(運輸相)は18日の閣僚折衝で、関西空港に2本目の滑走路を建設する二期工事の予算措置に関して、来年度は埋め立て工事の事業規模を縮小することで合意した。一方、予定通りの2007年の供用開始を目指すことも確認した。来年度の埋め立て工事を3割程度縮小する。
大蔵原案に計上する予算額は運輸省の要求額より約100億円少ない1100億円程度にする見込み。着陸料引き下げのための国費からの援助20億円は計上を見送る。また、来年8月末に締め切る2002年度予算の概算要求に向け、関空会社の経営形態を見直すための検討を続けることも決まった。地元追加負担、株式会社方式の見直しなどが今後論議になる。
【本紙の解説】
表面的には関空側と大蔵省の痛み分けの結論ではあるが、実際は二期工事の中止に向けた第一歩ともいえる。関空側は予定通りの二期工事計画を要求していたが、補正予算でも要求の10分の1となった。来年度予算で予算額は1割程度の削減に止まったが、工事計画は3割程度縮小に。また、着陸料引き下げのための援助も見送られた。
地元負担の追加は不可能で、経営形態の変更は避けられない。「国営」になれば地元要求は取り下げられ、二期工事は中止になる。しかし、地元との調整不十分のため、来年度予算で1100億円程度を無駄金としてぶち込むことになった。
●(12月18日) 運輸省 羽田空港 北側進入を延期(12/19読売、毎日)
東京・渋谷上空から羽田空港に着陸するする北進入運航(NorthBird運航)ついて、運輸省は18日、予定していた2001年春からの運用を延期すると発表した。飛行検査の結果、ヘリコプターと接近するケースが多いことなどが分かったためで、来月にも検討会を設置し、安全確保のための解決策を探る方針。
北進入運航は、横浜・ベイブリッジ上空から東京三軒茶屋まで北進し、渋谷上空で旋回、羽田空港のA滑走路に着陸するルート。騒音の少ない小型機に限定し、有視界飛行で1日15回の着陸を来春から運用する予定だった。
10月下旬に実施した飛行調査の結果、経路となる横浜港や都心上空などを1日数十機のヘリコプターが飛行。航空機の接近を示す衝突防止装置が度々作動するなどかなりの混雑状態で、安全性の確保が難しいために来春の運航は延期になった。
【本紙の解説】
ヘリコプターの運航規制をしなければ当然の結果である。ヘリコプターの運航も運輸省の認可事項であり規制はできる。運輸省とへリ関連会社その他の折衝が不調に終わり、ヘリが飛行調査実施日には普段より多く飛んだとの話もある。結局は、ヘリの運航規制を関係団体に飲ませるために時間が必要ということだ。
●(12月18日) オオタカ ハヤブサを確認(12/19千葉日報)
空港公団が成田空港周辺の樹林地帯で実施した「動物相実態調査」の結果が18日公表され、「絶滅の恐れがある野生動植物の種の保存に関する法律(種の保存法)」や「千葉県版レッドデータブック(動物編)」などで貴重種に指定されているオオタカとハヤブサが確認されていることがわかった。
●(12月19日) 富里町議会も扇発言に抗議(12/19千葉日報)
富里町議会の12月定例会は19日、本会議を開き、扇千景国土交通相の一連の発言に対する抗議の決議を採択した。「国際線は成田、国内線は羽田」という基本原則を堅持し、成田空港の完成にあたっては慎重に対応するように求めた。
●(12月19日) 九十九里沖空港構想、要望決議持ち越し(12/20千葉日報)
沿岸自治体が「九十九里沖空港」構想を協議する「長生・山武地域の海岸活性化における首長会議」が19日、大網白里町で開かれた。国県への要望は年明けに決議、意思決定される。
先月の初会合に続き今会議では規約が提案され、「成田空港の完全化を前提とした補完の24時間国際空港」の九十九里沖空港について協議。
林和雄白子町長の「国の空港需要など可能性を見極めて論議すべき。構想はわかるので、もう少し時間をかけ議決は次回に」という意見に対して、堀内慶三大網白里町長は「首都圏第3空港が叫ばれているなかで時期に遅れることなく手をあげて主張することから夢が始まる」と積極論を主張。議決は次回に持ち越された。
成田空港周辺など3町村は「成田問題の解決が先決」と参加を見合わせた。
【本紙の解説】
あまりの突飛な構想のために決定に至らなかった。賛成しているのは提案している大網白里町長だけである。
●(12月20日) 羽田国際チャーター便、全日空が2月めどに運航
(12/21日経)
全日空の野村吉三郎社長は、20日の記者会見で羽田空港の深夜・早朝の国際チャーター便の解禁にあたり、「今月内に運航路線など具体案を決めたいとの考えを明らかにした。路線としては韓国、中国など近距離のほかハワイ、グアムなどを候補としてあげた。野村社長は「運航開始に向けて万全な体制で臨む」と強い意欲を示した。羽田の国際チャーター便は、日本航空や日本エアシステムも検討を始めている。
【本紙の解説】
これで成田の暫定滑走路の需要はますます小さくなる。近距離の海外旅行では、やはり羽田の方が便利である。
●(12月20日) 亀井氏「当然の話」羽田国際化めぐり(12/20産経)
自民党の有志議員でつくる「羽田国際化を推進する議員連盟」の小林興起会長らは20日、自民党本部に亀井静香政調会長、首相官邸に福田康夫官房長官をそれぞれ訪ね、早期に国際化するよう申し入れた。
これに対し、亀井氏は「成田は成田として整備するが、羽田は日本の玄関口。国際空港化していくのは当たり前の話だ」と述べ、積極的に取り組む姿勢を改めて表明した。福田長官は同日午後の記者会見で「国際チャーター便」の発着を決めたばかりで、その様子を見ながら考えるべきだ。21世紀の課題と考えたらいいのではないか」と述べた。
●(12月20日) 来年度予算、成田平行滑走路に満額/大蔵原案(12/21日経千葉版、読売千葉版など)
2001年度政府予算の大蔵原案が20日内示された。首都圏では国際化論議が活発な羽田空港の再拡張を視野に入れた首都圏第3空港の調査費が大幅に増額されるとともに、成田空港の平行滑走路などの整備費にも要求額がほぼ付いた。
首都圏第3空港の調査費は満額の12億円。前年度の2億7000万円から4倍以上に増えた。運輸省は羽田再拡張の調査に予算の半分超を重点する方針。
一方、成田空港は建設事業費955億円(要求額1100億円)などが原案に盛り込まれた。空港機能の整備事業費は総額で622億円(要求額768億円)。内訳は暫定滑走路の整備費は要求どおり230億円(滑走路整備分が115億円で、第2給油センター建設費の初年度分が115億円)である。誘導路の改修など空港の基本施設整備に86億円、第1旅客ターミナルビル改修などに183億円、貨物施設その他の整備費として123億円が認められ、計622億円。共生事業費191億円と管理費142億円を加えて、総額955億円になった。
また、要求額1100億円との差額145億円のうち、57億円分は、今年度の補正予算ですでに確保している。
【本紙の解説】
平行滑走路整備ではほぼ満額が付いたとしているが、そもそも要求が暫定滑走路の整備分だけである。2500メートルの当初計画については要求をあきらめている。未買収地取得が可能になった場合は、別途予算措置を取るとしているが、2002年5月20日の暫定滑走路供用開始までは完全に間に合わないことを認めた要求だ。
運輸省は東峰神社の立ち木の伐採攻撃を仕掛け、暫定滑走路をいったん完成させ、飛行テストでの爆音で地権者農民を追い出すことを狙っている。
●(12月21日) 沼田千葉県知事、運輸省に直談判/成田・羽田空港問題で(12/22千葉日報。その他)
千葉県の沼田武知事は二十一日、運輸省を訪れ、梅ア壽事務次官に対して成田と羽田の空港棲み分け運用の基本原則を維持することを確認。梅ア事務次官からは「基本原則を変えるつもりはない」とする回答があったという。基本原則を見直す趣旨の「扇千景運輸相発言」後、沼田知事が運輸省を訪れるのは初めて。沼田知事は「成田空港は国が責任を持って整備する空港。2500メートルの平行滑走路を早期完成させ、完全空港とすることが先決」と述べるなど、羽田空港の国際化議論より先に成田空港整備を行うべきだ、とする考えを伝えた。
会談後に会見した沼田知事は、空港棲み分け原則の維持のほか、(1)成田空港の2500メートル平行滑走路の早期完成、(2)騒音問題への対応、(3)空港アクセスの整備などを運輸省側に要望したと述べた。
成田空港の整備について沼田知事は「成田空港を国際空港として造り上げるためには、現在の4000メートル1本だけの運用に、2500メートルの平行滑走路を早く造るべき。その後で航空需要の関係で羽田国際化の問題が出るかもしれないが、それはあくまで先の話」と、成田整備に全力を尽くすよう求めた。
梅ア次官は「国としても二本目の滑走路の整備に全力を挙げていきたい」と答えたという。
また、騒音問題については「(羽田空港を離着陸する航空機が)千葉県上空を飛んで、騒音だけを県が引き受けている現在の状況はおかしい。空を公平に使うべきだ」と指摘。梅ア次官は「その点はよく分かる。検討する」と答えたという。
さらに、扇運輸相が「成田空港の整備が遅れているのは千葉県の努力が足りないからだ」と大臣就任直後に発言したことについて、知事は「(扇運輸相は)成田空港を地方空港と間違っているのではないか」と批判した。
【本紙の解説】
運輸省としては、深夜・早朝のチャーター便の枠をとってあるので、後は、千葉県の要求は基本的に受け入れる立場で会見に望んでいる。問題は、平行滑走路(当初計画2500メートル)の完全完成問題である。運輸省が平行滑走路を暫定に止め、その後羽田国際化、再拡張、完全国際化に流れることを千葉県は恐れている。その流れを阻止し、暫定滑走路開港から敷地内の切り崩し行なうことを運輸省と千葉県は確認したのである。
運輸省としては、羽田は羽田で国際化を進め、成田は成田で暫定滑走路を供用開始し、轟音で農民をたたき出し完全開港を目指すとの立場。さらに、羽田の再拡張、第3空港への着手という計画である。三里塚闘争による首都圏空港整備計画の30年の遅れを一挙に取り戻そうとしている。
いよいよ、暫定滑走路をめぐる最大の決戦を来年の2001年に迎えることになる。
● (12月21日) 梅崎運輸事務次官記者会見/羽田国際化で運輸省が表明(12/22読売)
運輸省の梅ア事務次官は21日の定例記者会見で、羽田空港の深夜・早朝チャーター便運航に際して、航空機の飛行軌跡や騒音を調査して公表する考えを明らかにした。同日の沼田知事の要求に応えたもの。
梅ア事務次官は「少なくとも国際チャーター便に関しては、飛行軌跡をきちんと取り公表する。国内便については、これから検討する」と語った。
さらに2001年度予算の大蔵原案に、首都圏第3空港の調査費12億円が計上されたことについて、「羽田空港の再拡張が可能かどうか、できるだけ早く結論を出すべきだと思う」と述べ、首都圏第3空港の候補地選定に先行して、羽田の再拡張に関する調査を行うべきとの考えを示した。「再拡張で空港容量を増やせるかどうかが、首都圏第3空港を整備すべき時期などを大きく左右する」とし、この問題が首都圏第3空港候補地選定作業の前提である点を強調した。
【本紙の解説】
これで羽田の深夜・早朝のチャーター便については、運輸省と千葉県との間で「完全」に一致した格好になった。にもかかわらず、成田空港周辺自治体と議会の「羽田国際化反対決議」が上がっているのは、見返り要求以外何ものでもない。
梅ア事務次官は、沼田知事が要求した成田の平行滑走路の完全完成問題については定例記者会見では話題を避けた。
●(12月21日) 自民東京湾開発委、「羽田国際化」で論議(12/22千葉日報)
21日午後の自民党東京湾開発委員会(委員長・中村正三郎衆院議員)で、羽田空港の国際空港化などについて論議があり、国家的な大規模プロジェクト推進にあたっては、過去の経緯を十分に踏まえ、政府・与党と中央省庁、関連する地元自治体が一体となった取り組みの必要性が強調された。
千葉県からは、中村委員長、臼井日出男、森英介、浜田靖一の各代議士、島崎副知事らが出席。浜田代議士は「羽田が近いからと、国際線を羽田に戻すというのは、過去の経緯を無視し、空港の役割分担、基本的な役割を逸脱する。成田が都心から遠いことは最初から分かっており、それを、どう克服するかは当初からの課題だったはずだ」と強調した。臼井代議士も「期待された成田高速鉄道の整備は進んでいない。運輸省は都心とのアクセスの在り方をしっかり見直してもらいたい」と発言。
これに対して、運輸省航空局の馬場飛行場部長は「首都圏第3空港の候補地選定にあたっては、羽田再拡張への対応も含め、あらゆる可能性を求めた調査検討を幅広く進めている」と答えた。
【本紙の解説】
千葉県の自民党議員が羽田国際化反対を叫び、成田高速鉄道の整備など、都心とのアクセスの改善を要求している。運輸省は受け流し、第3空港問題を通り一遍の説明に終始して終わっている。
●(12月22日) 都が初の「航空政策基本方針」(12/23産経、日経)
東京都は22日、羽田空港の全面国際化や米軍横田基地の軍民共用化など、都が実現をめざす初の「航空政策基本方針」を発表した。
都はこの中で、首都圏の空港能力は国際線で5年後、国内線も10年後に満杯になると予測し、「桟橋滑走路方式」による羽田空港の拡張と全面国際化を改めて提言。横田基地の民間利用や、米軍が管制している横田空域の管制権を日本側に取り戻すことなど、石原知事がかねてから主張する航空政策を体系的に打ち出した。
また、東京都は羽田空港を国際化した場合の経済波及効果を試算した。旅客便が1日90往復、貨物便が同25往復飛んだ場合、概算で年間約3兆円と見込んでいる。
試算は施設関連投資と旅客・貨物関連需要の予想額を合計して算出した。旅客便1日90往復、貨物便同25往復を前提とすると、施設関連投資は約7000億円、旅客・貨物関連需要は約2兆3000億円を試算。誘発される雇用者数は17万人程度と見込んでいる。
都は羽田だけでなく、横田基地、成田空港、首都圏第3空港などを含めた首都圏全体の課題を整理した「航空政策基本方針」を策定、近く公表する。
【本紙の解説】
米軍横田基地の軍民共用化は、石原の「横田基地返還要求」という都知事選のスローガンを裏切るペテンである。石原都知事に投票した人の多くは、「横田基地返還要求」などの「現状破壊」的な政策に賛同した面が強い。それを「軍民共用化」でごまかした。ファシスト的デマゴーグである。
また、横田空域の返還は運輸省航空局の悲願でもある。しかし、日米安保体制の下で正面切っての要求はできない。石原都知事はこの国家の弱点をついて自分の売り出しに使っている。この手法もファシスト的だ。
羽田国際化の経済波及効果論もデマゴーグ的宣伝である。今回の羽田の深夜・早朝のチャーター便の解禁は1時間枠で最大16回の発着であり、16回×7時間で112回、1日56便である。また、国際貨物便は、国際定期便と同じく決定していない。チャーター便90便、貨物便25便と実際の最大限の2倍もの数字を掲げ、「飛んだ場合を前提にすると」と仮定の計算としているが、これを読んだ多くの人は、実際のことと勘違いするように書いてある。羽田国際化の経済波及効果はかなりあることは確実であるが、石原知事の言動にはかなりの上げ底がある。
●(12月23日) 羽田再拡張 B滑走路平行案浮上、C平行案より発着枠拡大(12/23毎日)
運輸省は23日、羽田空港の横風用のB滑走路に平行する新滑走路案について本格的な検討を始めたことを明らかにした。これまで、東京都や航空大手3社がC滑走路の沖合に平行する新滑走路を提案していた。運輸省の新滑走路案は、羽田空港の南東側を拡張してB滑走路に平行する4本目の構想。B滑走路と同じ2500メートル級に建設を想定している。
現在のB滑走路は北東側からの離着陸にしか使用できないし、離陸はC滑走路と重なるために使用回数全体で16〜17%と少ない。運輸省案はこのB滑走路と平行して着陸できるうえ、C滑走路ルートとも重ならないため離陸にも使いやすくなる。現在の年間離着陸24万回が40万回前後に増やせると見ている。
これまで東京都などがA、C滑走路と平行する案を提案しているが、運輸省の調査ではこの案では両滑走路と離着陸ルートが重なるため、発着枠の増大にならないという。ただ、運輸省案でも東京湾の船舶の通航ルートを妨害する恐れがある。また、南側を埋め立てると、多摩川の水系に影響を及ぼす可能性もあり、桟橋方式の導入なども検討する。
運輸省は、来年度予算の大蔵省原案に盛り込まれた第3空港調査費12億円の半分以上を羽田再拡張の調査費用に当てる方針だ。
【本紙の解説】
これは、東京都の石原知事のパフォーマンス的な突出的提案にたまりかねて、運輸省が非公式に新たな検討案をマスコミに流してきたものである。石原の桟橋方式も都議会保守系都議の質疑から提案されたものに乗っただけであり、管制問題などについては不備な点が多い提案であった。また、航空会社大手の提案の方がFMS(フライマネジメントシステム)という管制方式と飛行コースの提案もあり、まだ現実的であった。
東京都提案だと、A,C滑走路と同じ運航コースになり、同時着陸できるオープンパラレル方式でないと離発着枠の増大はあまり望めない。
その点を運輸省の官僚が突いて今回の提案になった。B滑走路はあまり使われていない。そのB滑走路との運航コースと同じ新提案の滑走路建設で、離着陸枠を増大しようというものである。
●(12月26日) 運輸省が羽田空港再拡張で独自案/B滑走路と平行に建設(12/26朝日全国版)
首都圏の航空機発着枠の不足を解消するため、運輸省は、羽田空港のB滑走路と平行に新たな滑走路を建設する独自の再拡張案の準備に入った。羽田では来年から早朝・夜間の国際チャーター便が解禁されるが、運輸省は将来、昼間の定期便の受け入れも避けられないとみて、発着回数を最も増やせる案として取りまとめる考えだ。羽田の再拡張へ向けた検討が本格化しそうだ。
首都圏の発着枠不足をめぐっては、首都圏第3空港として東京湾内に新空港を建設すべきだとの意見もあるが、運輸省は都心に近く建設費も安い羽田の再拡張を優先して検討する方針を決めている。運輸省案は、来年1月にも開く首都圏第3空港調査検討会に提案される。
運輸省案は、羽田の南東側を拡張し、B滑走路に平行に4本目の滑走路を建設する内容。新滑走路の規模はB滑走路と同じ2500メートル級を想定している。東京都などによるC滑走路平行案だとA、C両滑走路と離着陸ルートが重なって発着回数を増やせない難点があるが、運輸省案ではその心配がなくなるという。さらにB滑走路と十分距離を取れるために同時に離着陸できる利点もあり、年間27.5万回の発着回数(2002年段階)を少なくとも40万回に増やせるとみている。工法は、埋め立てのほか、柱で滑走路を支える桟橋方式も検討している。
B滑走路平行案は当初、航空大手3社も検討していたが、離着陸の際に東京湾の第1航路を横切るので船舶への影響が大きいとして除外した経緯がある。今後、港湾管理者の東京都や海運業界との調整が必要になる可能性もある。
【本紙の解説】
この40万回は深夜・早朝を除いた時間帯での現在の27万回に対応した数字である。深夜・早朝の管制方式と騒音問題の解決ができれば56万回になる。
成田の現在の年間離発着回数は13万回であり、その数そのものを飲み込んでしまう数字である。そして、27万回(現在の羽田の離発着回数)+13万回(成田)=40万回、それでも羽田の空きスロット分約16万回と成田13万回があり、首都圏の空港需要は賄える。
問題の背景には、航空業界の規制撤廃=アメリカの「オープンスカイ」攻勢とメガキャリアの進出、それによる日本の航空企業存続の危機という問題がある。そしてもう一つは成田空港が「第2の関空」に転落する危機である。
関空の経営破綻は埋め立て方式の問題やいろいろな原因はあるが、直接的原因は伊丹空港を廃止しなかったことが大きい。羽田が成田以上の国際空港になった瞬間、成田は「貨物専用空港」に転落しかねないのである。羽田を近距離のアジア便、成田を欧米長距離便に棲み分けて運用する案もあるが、各空港会社は収益率の高い長距離便を羽田で運航したいのが本音。成田の地盤沈下はいずれにせよ避けられない。
●(12月26日) 土地収用の迅速化を提言/建設省(12/27朝日、読売など全国版各紙)
建設省の土地収用法制度調査研究会(建設経済局長の私的研究会)は26日、土地収用法改正案の原案となる報告書をまとめた。事業認定に先立つ事前説明会や公聴会の開催を義務づける一方、補償金の支払い手続きなどを大幅に簡素化する内容となっている。廃棄処分場建設などをめぐる各地の住民運動に影響を与えることになりそうだ。建設省は法案化作業を進め、来年の通常国会に改正案を提出する。
報告書に盛られた新方式は、認定申請前に事前説明会を開き、申請後、これまで任意だった公聴会開催を義務づける。その一方で、認定後の手続きは迅速に進めることになっている。補償金の支払いも現金書留で送ればよいことにする。
東京都日の出町の廃棄処分場の場合は、共有地を2800人が所有していたため、収用に3年かかり、総額5700万円の補償金を手渡すのに7億円の費用がかかったという。
今回の法改正は東京都の石原知事らが建設省に強く要請したことがきっかけとなり、扇千景国土交通相も通常国会で法改正を目指す方針を明言している。
【本紙の解説】
「土地収用法制度調査研究会」が公的な審議会や諮問委員会ではなく、建設省の建設経済局長の私的研究会になっている理由は、会員名簿を公表できないことにある。建設省では「研究会は法学界、環境、マスコミ等の分野の有識者で構成されているが、成田の例もあり公表できない」と説明している。いかがわしい説明である。
研究会での主要な検討事項は「一坪共有地運動」や「補償金受け取り拒否運動」などの解体である。三里塚闘争をはじめとした地域住民の反対運動が公共事業の多くをストップさせていることに対応し、国家の土地収用権を強化しようとの意図がむきだしだ。それゆえの「非公開・秘密会議」なのである。法「改正」の内容があまりに反動的なので、反対運動に火がつくことを恐れているわけだ。
事業認定に先立つ事前説明会や公聴会の義務化をうたっているが、主眼は収用委員会審理そのものの空洞化にある。それを「迅速化」と称している。また、事業認定の概念を拡大し、民間事業に近いものまで公共事業に組み入れようとしている。
これらの行く先には有事法制がある。土地収用法「改正」はその先取りだ。有事法制の主な内容は(1)軍隊(自衛隊)の行動上の制約撤廃、(2)人・物・土地の徴用・徴発、(3)政府機関の臨戦化である。ここで人民の利害と最も衝突するのが(2)の土地収用。これだけは金を積んでも調達できないケースが大半だ。有事立法の制定に先立って土地収用法に手をつけたのはこのためである。
三里塚闘争は通常国会での土地収用法改悪を阻止するために総力で闘うことを改めて宣言する。
●(12月26日) 海運業界 羽田再拡張に懸念(12/27読売、日経)
航空業界と東京都が提案している羽田再拡張案に対して、海運業界は26日、羽田空港の再拡張案を含めた海上空港は、船舶の航行に悪影響を及ぼすとの懸念を表明した。
海運会社で組織する日本船主協会の生田正治会長(商船三井会長)は26日、緊急記者会見を開き、「第3空港の候補地選定や羽田空港の再拡張の検討は、安全面など船舶の航行条件が現在よりも悪化しないことを大前提とすべきだ」と表明した。「反対とは言わないが、海上空港案は船舶の航行に問題点がある」と事実上反対する見解を示した。
●(12月26日) 運輸省、首都圏第3空港候補地案を公募(12/27東京)
運輸省は26日、第3空港の候補地案を、2000年1月9日から26日までに募集すると発表した。応募できるのは自治体、商工会議所、民間研究機関などの各種団体で、個人は除く。2月中旬に応募者から提案内容を直接聞く場を設ける。聴取結果を首都圏第3空港調査検討委員会に報告する。
【本紙の解説】
運輸省は「成田の二の舞は演じたくない」とのことから、第3空港の候補地の公募という奇妙な方式を取り始めた。候補地の選定を国・運輸省が勝手にやったのではなく、地域の自治体や団体の要請を受けて決定したという形にしたいのである。海上空港でもアクセスの道路建設その他の土地取得があり、また、空港という巨大建築物とジャンボ機は、騒音をはじめ、生活と暮らしと抵触する様々な問題を持ち込むものである。この建設過程と完成後の運用での問題を地元自治体などにその解決の責任に当らせるか、少なくとも運輸省の候補地決定の責任が問われないようにする無責任な方式である。
●(12月26日) 地域共生財団が「地域振興」へ事業を拡大
成田空港と地域との「共生」のために法制度の枠組みを越えた航空機騒音・周辺対策を実施する「財団法人・成田空港周辺地域共生財団」は26日、理事会を成田市内で開き、今後の方向性について協議した。その中で、騒音対策を中心とした事業から地域振興にも事業の幅を拡大し、これと合わせて平行滑走路関係の民家防音事業なども実施することを決めた。その事業費は運用財産のうち運用益を生み出すために事業費には使わないとした財産から充当して対策の強化を図ることになった。2001年度までの費用は同財団が負担し、2002年度以降を各事業主体が費用を負担することで決着した。
【本紙の解説】
昨年の5月から成田市市長の小川国彦や市議会は、「成田空港周辺地域共生財団」の財源について不満を述べていた。「成田市などが負担している財産が、県OBの理事長の報酬など経費に必要以上に使われているのではないか」との不満があり、問題になっていた。具体的には、財団事業の費用分担について、受託事業として自治体からの負担を求める財団と、財団の運用財産からの事業費の捻出を主張する成田市が対立していた。財団が立て替えたシステム整備費9600万円と年間運用費約2100万円の回収を各自治体に請求したからである。
「成田空港周辺地域共生財団」は、シンポジウム・円卓会議の結論を受けて設立し、騒防法の補償対象外の地域の騒音対策を実施している。基本財産6億円、運用財産100億円でそれぞれ半分を空港公団、25パーセントを県、残りを成田市など周辺市町村が拠出した。
この県と成田市の利権争いは、でたらめな見返り事業と金のばらまきで反対闘争を解体するやり方が失敗したことから起こっていた。
しかし、今回の理事会ではこの問題は解決せず、先送りで当面の間しのいだにすぎない。2001年度までの事業は受託事業とはせずに、財団の運用財産で負担することになったが、2002年度以降は各事業主体が費用を負担することになった。2002年度以降はこの財団は消滅することを前提にした「根本的解決」のための決定なのかもしれない。
●(12月26日) 共生委要綱改正、地連協と国が同意
(12/27朝日千葉版)
成田空港地域共生委員会の業務見直しについて、共生委員会の上部組織「地域振興連絡会」(会長・島崎実千葉県副知事)と運輸省などは26日、成田市内で会議を持ち、共生委員会の設置要綱改正案に、全会一致で同意した。「隅谷調査団」に報告し、来月10日から実施される見通しだ。
●(12月27日) 成田新高速鉄道、2010年開業目指す(12/28千葉日報)
成田空港の基幹アクセスとなる成田新高速鉄道の事業化推進検討委員会の幹事会は27日までに、これまでの検討状況を同委員会へ報告した。事業主体は、京成電鉄が運行を、第3セクターが鉄道整備を行う「上下分離方式」とし、開業目標年度を2010年度に設定した。事業費は概ね1200億円から1300億円と積算され、今後第3セクターの採算性や巨額事業費の負担などの課題解決に向けて、さらに検討が進められることになる。
同検討委員会は、今年3月に運輸省、県、沿線の関係自治体、新東京国際空港公団、京成電鉄などの鉄道各社が加わって設置され、これまでに2回の委員会と5回の幹事会を開き、新高速鉄道の早期事業化へ向けての調査・検討が進められてきた。
新線のルートは、都市整備公団鉄道の印旛日本医大からJR成田線の土屋地区までの間では印旛沼を横断するルートとされる。
先の運輸政策審議会答申は、新高速鉄道について「2015年までに開業することが適当」と位置付けたが、幹事会報告では開業時期を5年早めて、2010年度を目標と定めた。これは鉄道の設計、アセスメント、路盤などの整備を行う場合の最短の期間とされる。
また、先に扇千景運輸相の成田空港アクセス問題での発言から、成田空港のアクセス改善へ向けて、国と関係自治体とで早急なコンセンサスの形成が必要になってきていることも早期事業化への“追い風”と期待されている。
【本紙の解説】
2010年に新高速鉄道が完成したときに成田空港がどうなっているか。貨物空港になっている可能性が高い。しかし、周辺住民の通勤・通学の便がよくなることは確実である。しかし、JR、京成、第三セクターの3本の鉄道で採算が取れるのか疑わしい。芝山鉄道ほどではないが、それに近い運命である。採算が合うならば、京成が運用だけでなく、経営にも乗り出すはずである。第三セクター方式は今や採算が取れない赤字鉄道を地方自治体が引き受ける方式になってしまった。千葉県と周辺自治体の利権筋は成田空港の見返り事業として要求しているが、運用の赤字は自治体にまわり、地域住民の負担となる。
●(12月27日) 全日空 共同運航でソウル便増強
全日空は27日、韓国のアシアナ航空と日韓路線での共同運航を始めた。羽田から関空を経由してソウルに向かう路線(1日2便)である。全日空のソウル便は関空発の1日2便と成田発のユナイテッド航空との共同運航便の1日1便の計3便が運航している。アシアナ航空が運航している2便を共同運航にすることで、全日空の便数を増やすことになる。
なお日航も2月をめどに、成田―ソウル便を1日2便増便し、週9便とする。日航は他の国際線に使用している成田発着枠をソウル便に振り向ける。
【本紙の解説】
全日空とアシアナ航空の共同運航による関空経由・羽田―ソウル便の運航は昨年の8月に決まったが、これは羽田空港国際化の先鞭をつけたものである。これまでに、関空経由の羽田空港への共同運航は、全日空とユナイテッド航空、日本航空とアメリカン航空がある。しかし、国内線は共同運航を認められていなかったため、関空―羽田は、全日空、日航の飛行機が運航していた。そのために国際線が外国航空会社の時は、関空で飛行機を乗り換える必要があった。
しかし、昨年の6月に日韓の政府間交渉で国内線の共同運航(コードシェア)が認められたため、今回の全日空とアシアナは国内線も共同運航になる。関空では入管手続きだけを済ませ、飛行機を乗り換える必要はなく、そのまま羽田に到着する。事実上の昼間の定期便での羽田国際化の始まりである。そのうち、入管手続きも羽田でやるようになる。
●(12月28日) 扇発言反発の3県議、保守党の看板下ろす(千葉日報12/28)
成田、羽田両空港の棲み分け見直しに言及した扇千景国土交通相(保守党党首)の一連の発言に抗議している保守党所属の千葉県議3人が28日までに、県議会の会派名を保守党から「県民クラブ」に変更した。
県議の一人で、保守党千葉県連の黒田雄・幹事長によると、黒田県議を除く県議二人が「扇発言は千葉県の立場を分かっておらず、理解できない」との理由で離党し、今後は無所属で活動を続けることを表明したため、保守党の看板を下ろしたという。
黒田県議も扇発言に抗議する気持ちは変わらないが「扇発言は党全体の考えではない」として党にとどまる。 同県連は扇運輸相の発言直後の十一日、国土交通相あての抗議文を提出、「党首としての立場を越えた発言」として撤回を求めていた。
●(12月30日) 千葉日報インタビュー「扇千景・国土交通相に聞く」(一部)
(質問)土地収用法についての考えは。
(答え)「成田空港建設の過程で『一坪共有地』という形で狭い土地に千人以上が土地を所有している状況がある。もともと住んでいる人は別だが、一坪共有地は反対のための反対運動で、全国各地で起こる可能性があり、問題がある。建設省の研究会がまとめる報告を参考に、次期通常国会に土地収用法の改正案を提出したい」
【本紙の解説】
収用法改悪の目的が、有事立法の先取りである公益概念の拡大とともに、三里塚闘争によって全国的に拡大した一坪共有運動の解体にあることがむきだしになっている。国土交通相自身が三里塚闘争への敵対意志を公言したという意味でも重大だ。
三里塚闘争が作り出した地平が、全国各地で公共事業と称する国家権力の土地取り上げをストップしていることは事実である。それを反動的に転覆するための土地収用法改悪なのである。
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