SANRIZUKA 日誌 HP版   2000/11/01〜30      

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 2000年11月1日〜30日

〔週刊『三里塚』編集委員会HP部責任編集〕

                          週刊『三里塚』
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(11月2日) 石原都知事「羽田新滑走路は国際線も」(11/3各紙)

 石原都知事は2日の記者会見で、巨大な桟橋型の工法で羽田空港を再拡張し、国際化したい意向を表明した。自民党の亀井静香政調会長に具体案を盛り込んだ要望書を提出しており、亀井氏の指示で運輸省が検討を始めている。会見で知事は「成田にはいろいろ問題もありすぎて首都圏の空港の容量が限界を突破している。国も首都圏第3空港の検討を始めたが、実現はいつになるか分からない。もう少し実現性があり、早くできコストの低い方法を考えた」と述べた。
 成田空港の比重の低下を恐れる千葉県の反発も予想されるが、知事は「空港整備は21世紀の日本の命運にかかわる問題。千葉県知事の沼田さんは地方の政治家であると同時に日本人だから、国益を考えるべきだと思うし、そういう点では沼田さんも正確な理解をしてくれるものと思っている」と述べた。

【本紙の解説】
 東京都の提案も先週の本欄で紹介したように、航空管制問題も航路問題も考慮していない。つまり、安全性を問題にしていない低水準な代物である。しかし、その東京都知事に批判されている千葉県と沼田知事の「羽田国際化反対」はどう見ても通用しない論理ではある。

(11月3日) 関空の二期工事の延期検討(11/3朝日全国版トップなど)

 政府は関西国際空港の二期工事の延期も含めた建設計画の再検討に入った。関空の需要が当初の予測より伸び悩んでいるためで、二期工事の休止や凍結までにはいたらないまでも、来年度予算以降の配分額を抑えて建設のペースを落とし、需要を見極める考えだ。ただ、運輸省と運営主体の関空会社は予定通りの開業を強く主張しており、年末の予算編成まで調整が続きそうだ。公共事業見直しの波が、アジアの拠点空港を目指した巨大プロジェクトにも及んできた。
  第7次空港整備計画によると、関空の発着回数は2000年度には15万回となり、空港容量をほぼ満たすと予想されていた。ところが、昨年度実績で11万8千回にとどまり、「開業5年で単年度黒字」との目標は修正を余儀なくされた。1500億円を超える累積赤字を抱えるうえに、一期工事の負債1兆円の金利負担が年間400億円以上にのぼり、重くのしかかっている。
 運輸省は便数増加を目指すため、着陸料を2年間にわたって引き下げる原資にするため、来年度予算で関空会社への20億円の支援を要求している。
 大蔵省は「1本の滑走路で需要引き留めに必死になっているのに、なぜ2本目の滑走路を急ぐ必要があるのか」(大蔵省幹部)と難色を示し、二期工事の建設期間延長を提案。運輸省は「工期を延長すると金利負担などでかえって高くつくおそれがある」とし、予定通りの開業を主張している。
 関空会社は体裁としては民間会社のため、国の支援には限界もある。政府内には、近い将来に経営組織としても抜本的対策を加え、関空会社を公団などに組織替えして空港整備特別会計から資金投入できるようにする案などが取りざたされている。

【本紙の解説】
 関空会社の解体を最終的に政府と大蔵省が決断した。運輸省と大阪府と関西のゼネコンが組んで、関空再建の経営方針を出せるかどうかだけの問題である。政府に財政支援だけを要求して経営方針は口出しさせないことが、関空会社と大阪府の方針であった。その理由はただ一つ。二期工事を計画通りに進めるためだ。1兆円の負債と1500億円の累積赤字を省みず、需要予測までも無視して二期工事を進めるのは、関西経済を何とかどん底から浮揚させたいとの願望だ。しかし、このような建設業界に資金投入しても経済不振は立ち直らないことは分かり切っている。
 関空二期工事のあまりの無謀さに、政府・自民党も「公共事業の見直し」という選挙目当ての政策を掲げている手前、無視できなくなったのである。「公共事業の見直し」の最大案件である関空を見逃しておいて、他の「公共事業見直し」はできなくなった。
 これで二期工事は基本的に終わるであろう。あとは関空の建て直しと称した利権争いが、関空破産の第二幕である。関空の失敗は「民活」と称した中曽根内閣の80年代反動政策の全面破産を象徴している。

(11月3日) シンガポール航空機事故原因「閉鎖滑走路進入」と断定

 シンガポール機の事故原因を調査している台湾行政院(内閣)の航空機飛行安全委員会は3日、回収したボイスレコダーなどの解析結果を発表。事故原因は、事故機が誤って閉鎖中の滑走路に進入し、滑走開始後2メートル弱離陸したとき、滑走路上にあった物体(掘削機など)に衝突した、とする調査結果を明らかにした。
 この会見に先立って行われた台湾・交通部(運輸省)民間航空局の記者会見では、正しい滑走路に導く誘導看板や正しい方の左側の滑走路の誘導灯などは正しく点灯していたとして、空港当局や管制官のミスを否定した。

【本紙の解説】
 閉鎖滑走路への進入が基本的原因であるということは、事実関係からして間違いない。しかし、台湾の交通部民間航空局が、中正国際空港の整備と管制官ミスはないと言っているが、そんなことはない。管制官は航空機の操縦士とともに、航空機の離着陸を成功させる義務を負っている。また、滑走路の閉鎖の「ノータム(NOTAM)」をICAO(イカオ=国際民間航空機構)に出していたのかどうかも明らかにされていない。空港側の責任もまぬがれない。

〔注〕NOTAM
 notice to airmanの略称で、航空情報のこと。航空保安のための施設、業務、方式などの設置または変更、危険の存在などについて運航関係者に対して国が行う告示である。気象情報とともに航空機の運航に欠くことのできない重要な情報である。パイロットは飛行の前にかならずノータムをチェックし、出発の可否、コースの選定など飛行計画作成の資料としている。また、ノータム・クラスIと呼ばれる突発的事項についても早急に周知させる場合は、ICAO(国際民間航空機構)のノータム電信符号によりテレタイプで送付される。長期的事項は平文で印刷され郵便で配布される。

(11月5日) 反対同盟「12・3現地闘争」の方針を決定

 反対同盟は12月3日に天神峰・東峰で現地闘争を行うことを決定、『お知らせ』を発送した。以下、全文を掲載。

『お知らせ』 三里塚芝山連合空港反対同盟

 闘う仲間のみなさん。三里塚現地は12月3日に暫定滑走路着工から一周年を迎えます。弾劾の嵐のなかで強行した工事は、滑走路と交差する小見川県道のトンネル工事に始まり、現在、滑走路と誘導路部分の造成工事に入りました。10月下旬には東峰の生活区域へとフェンスを押し広げ、今後、一部畑をつぶして竹林を刈る工事を強行しようとしています。絶対に許してなりません。
 農家を追い出すための工事は、進めば進むほどますます矛盾を深めます。天神峰団結街道の破壊と東峰神社の立木伐採は、暫定滑走路を滑走路として完成させ運用するために避けることのできない暴挙なのです。反対同盟は総力をもってうち破る決意です。
 しかしこれらのすべては30余年にわたる破産の結果です。成田に拘泥した結果、遅れに遅れた航空政策はついに限界を迎え、「羽田空港の国際化」と「首都圏第3空港構想」が堰をきって動き出しました。追いつめられた千葉県は「平行滑走路の早期完成」をけたたましく叫び、成田の地盤沈下の危機をあおって収用委再建の衝動を強めています。
 わが反対同盟は、この秋の全国集会で暫定滑走路粉砕の一年間決戦を宣言しましたが、着工強行一周年にあわせて現地闘争に立ち、2001年の勝利へと前進します。成田で2本目の4000メートル級軍用滑走路建設につながる暫定滑走路を粉砕し、戦争体制づくりと有事立法を阻止しよう。多くの皆さんの決起を呼びかけます。
 2000年11月5日

《記》
暫定滑走路着工粉砕闘争一周年 12・3三里塚現地総決起闘争
【日  時】12月3日(日)午後1時30分
【集合場所】天神峰・市東孝雄宅前
【主  催】三里塚芝山連合空港反対同盟
(連絡先)事務局長・北原鉱治 成田市三里塚115
(TEL.0476−35−0062)

(11月6日) 沼田知事定例記者会見/収用委崩壊からまる12年「支障なし」/羽田再拡張「国際線対応」で石原都知事を批判(11/7産経、千葉日報ほか)

 1988年に成田空港に反対する過激派のテロや脅迫により千葉県収用委員全員が空席になってから24日で12年を迎えるが(※正しくは10月24日)、沼田知事は6日の定例記者会見で「公共事業は収用委員会がなければ進まないということではない」と述べ、収用委崩壊による大きな支障はないとの認識を示した。
 会見で沼田知事は「収用委員会が解散するときの状況を見ると、ああいう状態が復活したら、委員を引き受けてくれる方はいないだろうと思う」と再任を否定した。
 さらに、「現在はどっちにしても、一般の道路や公共施設についても話し合いが前提だから、収用委がなければ進まないということではないし、なるべく強制収用する方法をとらないで、相手の方に理解していただきながら事業を進めるのが本当の姿だ」と述べた。
 収用委の再建問題について、沼田知事はこれまでの議会での答弁や記者会見で「現状では無理」との表現だったが、公共事業に大きな支障がないとの認識は、土地収用制度のあり方も含めて論議を呼びそうだ。
 また東京都の石原知事が羽田を再拡張し国際線を乗り入れることを提案している問題について、沼田知事は「石原さんは運輸大臣をやっていたので、成田は国際線、羽田は国内線ということをよく知っているはずだ。運輸大臣のときに羽田の国際化を一言もいっていないのに、知事になったら発言が変わるのは理解できない」批判とした。

【本紙の解説】
 沼田千葉県知事は、成田の土地収用を県の責任ではなく国でやってもらいたいとの考えだ。成田空港は、国の事業でありながら土地収用法による収用裁決を県収用委員会で行い、その執行(強制収用)は県が代行する(代執行)仕組みになっている。これに不満を表明しているのだ。農地強奪への当然の反撃(ゲリラを含む批判・弾劾)を恐れ、“政府の事業だから国が収用せよ”といっている。
 沼田は、成田の暫定滑走路(2180メートル)を当初計画の2500メートルに延ばし、さらに4000メートル級の軍用滑走路にすることを最も強硬に主張している人物でもある。それは収用法が失効した現状では、国が特別立法を含む強権発動を行うことが前提だ。これは県収用委崩壊後の、沼田の一貫した持論でもある。
 報道されている「土地は話し合いで取得」云々の「民主主義的」言辞はデタラメである。沼田の過去と現在の言動を注意深く観察すれば、知事が何を考えているかは一目瞭然なのである。

(11月6日) 宮沢蔵相「関空の抜本的改革」を要求(11/7各紙)

 宮沢蔵相は6日、関空の発着回数が予想を下回り、経営難に陥っている関西空港会社に対して、2本目の滑走路をつくる二期工事を進める前提として、経営難の抜本的改革と地元の増加負担を求めた。関空会社は将来の経営形態の転換も視野に入れた改革を迫られた形だ。
 宮沢蔵相は6日、大蔵省で関空会社の新宮康男会長と会談。新宮会長は「昨年度で11万8千回の発着回数が毎年6千回ずつ増えていけば、累積赤字は残るものの、単年度黒字は何年か後に達成できる」との中期の経営見通しを示した模様だ。これに対して、宮沢蔵相は「単年度黒字になっても、1兆5千億円を超える投資が必要な二期工事を進めるには有利子負債が重すぎる」と指摘。大阪府などの自治体や地元企業に追加負担を要請。それに応じて国も無利子資金を投入する考えを検討していることを伝えた。
 国の支援としては、(1)増資に応じる、(2)利子補給する、等の案が有力になっている。だが大蔵省は将来的には、一般会計や空港使用料などを原資とする空港整備特別会計を活用できるようにするため、「ほかの公団との統合や国の直轄運営などドラスチックな改革が避けられない」と見ている。

【本紙の解説】
 10月3日に大阪府の太田知事は府議会で、国に空港用地の買い上げなど抜本的な対策を求めることを表明している。また、関西経済団体はこの太田知事と大阪府議会の方針に賛成し推進していた。今回の宮沢蔵相発言はこれへの回答である。大蔵省としては、地元負担がまず先決であり、その度合いに応じて国も支援するということだ。結論は、大阪府のいう「国が空港用地を買い上げる」という虫のいい要求を拒否するということだ。
 「民活」方式のモデルケースで、その最大事業であった関空会社の完全な経営破綻である。運輸省の航空政策、空港整備計画自体の全面破綻、空港の候補地選定と建設方式の失敗。それにとどまらず、80年代バブルに踊った日本経済の大破綻である。不良債権と同じ性格のものである。大蔵省と大阪府が1兆5千万円といわれる負債と累積赤字の処理をめぐって争っている。
 しかし、一期だけでも経営の将来見込みがない経営体にさらに1兆円もの追加投資をするなどとは、常識では考えられない暴論である。これは経済不況に陥った日本資本主義(帝国主義)の典型的な姿だ。既得権益にすがり、税金を投入してでも経営危機を繰り延べ、赤字を拡大する。そして、結局は危機を膨張させる。最後はクライシスだ。

(11月7日) 首都圏サミット(7都県市首脳会議)/石原都知事「東京上空飛ばす」(11/8千葉日報ほか)

 羽田再拡張と国際化をめぐり、推進と反対で意見が割れている石原慎太郎・東京都知事と、沼田武・千葉県知事が7日、木更津市で開かれた首都圏の知事と政令指定都市の市長が広域的な課題を話し合う「7都県市首脳会議」で顔を合わせた。しかし両知事がこの問題で話し合う場面はなく、「ここで話し合う問題ではない」とお互いをけん制しあった。会議後、石原知事は報道陣に「後は国がやることで都と県がやる話じゃない」とし、沼田知事との話し合いは「必要があればするが、国益なので、国が仲裁に動かなければ」とした。また千葉県側が騒音公害の拡大を憂慮し、国際便は東京上空を飛ぶべきだなどと指摘していることについて、「その通り、当然です。東京上空を飛ばす」と羽田国際化の意欲を示した。
 一方の沼田知事は「もともと羽田は国内、成田は国際という国の基本方針が示され、それに沿って協力してくれといわれ、県も努力してきた。国の方針に沿って、県がやってきたことが『国益』だったはず。途中で変更するのは理解できない」と重ねて不満を表した。

(11月7日) 千葉県選出自民党国会議員団会合/羽田国際化で運輸省に苦言(11/8東京、毎日)

 自民党の千葉県選出の国会議員団は7日、都内で会合を開き、羽田空港の再拡張問題と同空港から3回目の国際チャーター便が運航されることについて、運輸省の担当幹部に説明を求めた。
 運輸省側は亀井静香・自民党政調会長から首都圏第3空港の建設の代わりに羽田空港の再拡張の検討を進めるように指示された経緯を説明。これに対して、中村正三郎・自民党千葉県連会長は「検討するのは自由だが、首都圏第3空港は羽田以外にも候補地の富津市や九十九里町などを公平に調査、検討してほしい」と要望した。
 また、国際チャーター便については「今後、羽田から運航する場合は、われわれ議員団の了解を得てほしい。成田空港からも国際チャーター便を運航すべき」とし、石原都知事らが意欲を示す「羽田国際化」をけん制した。

【本紙の解説】
 千葉県自民党は運輸省の官僚にいいようにあしらわれている。運輸省が亀井自民党政調会長の指示で、羽田再拡張で動いている説明を聞いて納得させられている。「検討するのは自由だが」ということは、検討の全面承認である。代わりに千葉県案も公平に検討してくれといっているが、予算で運輸省は完全にしばられている。来年度予算案の第3空港調査費12億円のうち、10億円が羽田再拡張の調査費に充てられた。
 また、「成田空港からも国際チャーター便を運航すべき」とはどういう意味か。成田からは定期便以外にも国際線チャーター便が離発着していることを千葉県選出の議員は知らないのか。このレベルの低さ。運輸官僚に煙に巻かれてしまうのも無理はない。

(11月7日) 宮沢蔵相、関空二期「地元負担増か延期か」(11/8朝日)

 宮沢蔵相は7日の定例会見で、関空に無利子資金を大幅に投入する必要性を強調した。最終的には国も負担するが、まずは関西経済界と大阪府に利子補給や無利子貸付などを求める内容だ。地元の追加負担か、さもなくは開業延期などの抜本見直しか、という内容。景気低迷にあえぐ関西経済界と財政難の大阪府にとって、二つ返事で応じられる話ではない。
 7日夕、関西経済連合会の秋山喜久会長は「追加負担の話は、公式にも非公式にも聞いていない。一期も二期も、資金の枠組みの話はもう終わっているはずだ」と戸惑いを見せている。関西財界には、すでにかなりの負担をしているとの思いがある。二期工事では、下物(空港用地)と上物(空港施設)を別の枠組みで整備する上下分離方式としたが、上物をつくるため、地元企業が420億円の増資をすることが決まっている。
 大阪府の太田房江知事は7日の記者会見で「地元応分の負担をすることは覚悟しなければならない」と述べたが、具体策には触れなかった。しかし府議会からは国による滑走路買い上げなどを求める声が出ており、調整が難航する可能性もある。
 一方、森田運輸相は「関空会社の経営状況の前途が非常に暗いということはない。9日に発表する長期経営見通しを見て改めて検討する」と語るなど、危機との認識はない。「関空会社の抜本的な経営改革の問題や、国からの新たな支援策は、来年度予算とは切り離して考える問題」であり、経営改革の解決策は少し先になるとの見方を示した。さらに、「二期工事は遅らせることは絶対にないように大蔵大臣に申し入れている」とし、関空会社がこのままで大丈夫かのような発言に終始している。

【本紙の解説】
 大蔵省の関空支援基本方針が決定したことで、大阪府と関西経済界に激震が走っている。そもそも府は、関空の全面的経営破綻のなかで、なおかつ二期工事を進めるために財政支援を国に求めていた。「滑走路を国が買い上げる」案はその柱でもあった。これに関西経済団体は景気浮揚の夢を託していた。
 太田知事は「地元応分の負担」といっているが、府にそんな財源はない。また関西財界も「追加負担」を出す余裕などない。結局、関空の経営破綻で、二期工事は無期限の先送りになるしかない。

(11月8日) 革命軍、公団幹部宅にゲリラ戦闘(本紙次号の報道を参照)

(11月9日) 関空経営予測発表(11/10各紙)

 関空会社は9日、2本目の滑走路を使う二期供用開始(2007年)以降の長期見通しを発表した。試算によると、一期で対応できる総発着回数に達するのが最短で2006年度、最長でも2007年度になるとした。その上で、最短では二期供用開始後の単年度黒字達成は2012年度、累積損失解消は2024年度、最長でもそれぞれ2020年度、2037年度とした。試算は、(1)2000年度上半期並の需要の伸びが続くと想定、(2)堅めの需要の伸びを想定、(3)より厳しい需要の伸びを想定、の3つのケースで行った。もっとも現実的な想定としているケース(2)の場合で、発着回数の伸びを年平均2・6%としている。
 ただし中部空港開港の影響につては「あらためて考慮していない」とするなど、前提は、需要予測が大きく外れた第7次空港整備5カ年計画(7空整)に基づいており、不透明な要素も多い。

【本紙の解説】
 アジア近隣諸国、国内の空港整備の現状を考慮にいれない経営予測などというものは社会的に通用しない。どんな経営でも競合企業の新たな参入を考えて経営戦略は立てている。
 アジアでは一昨年の98年に、マレーシアのクアラルンプールと香港で大型空港が開港した。今後も韓国の仁川国際空港の稼働やシンガポールのチャンギ空港、タイのバンコク空港、中国上海の浦東空港などの拡張整備が予定されている。
 関空の需要予測が大きく外れた原因は、この近隣アジア諸国のハブ空港としての整備が進んだことにある。また、国内の中部空港、首都圏第3空港などの整備も考慮に入れずに将来の経営予測をしている。
 最近の例でも10月29日の毎日新聞で、オーストラリア最大の航空会社であるカンタス航空は成田空港発着便を増便する意向を示したが、関西空港の予定はない、とわざわざ付け加えているほどである。関空が海外の航空会社に人気がないことを表している。
 この計画書を見ると、空港島が地盤沈下する事態を引き起こしているのは自然環境に対する無知からであったが、関空会社経営の沈没は社会と人間に対する無知によるものといわなければならない。

(11月9日) 産業新生会議で扇建設相「土地収用法の改正」発言(11/9日経)

 森首相の諮問機関である「産業新生会議」は9日午前、4回目の会合を開き、国内産業の高コスト構造の是正などを協議した。その結果、情報技術(IT)を活用して電子取引などを加速することで一致した。
 扇千景建設相は道路整備などのハード面からも物流効率化を進めるため、公共事業用地の収用手続きの透明化などを柱とする土地収用法改正案を来年の通常国会に提出する方針を表明した。

【本紙の解説】
 来年の通常国会で土地収用法の改悪法案が国会に提出されることが明白になった。この間、東京都秋川市のゴミ処理場建設で自民党都連が土地収用法の改悪で強制収用の簡素化を提案していた。また東京都は、国の来年度施策に対する提案要求の一つとして今年の6月に「公共事業推進のための土地収用法等の改正」を上げていた。
 この動きを受け、森内閣としても政府方針として土地収用法の改悪を政治課題として取り上げ、その攻撃を開始した。これは、有事立法の先取り的攻撃であり、絶対に粉砕していかなければならない問題である。三里塚闘争はその闘いの先陣を切ることを宣言する。この土地収用法改悪攻撃との闘いは、暫定滑走路決戦とならぶ三里塚闘争の最重要課題である。

(11月10日) 大蔵省、関西国際空港関係の補正予算を大幅減額(11/11日経ほか)

 大蔵省は運輸省から出されていた関西国際空港2期工事関係の補正予算請求を大幅に減額した。運輸省は一般会計で86億円を要求していたが、大蔵省はおよそ9分の1の査定で10億円に減額した。これで、関空二期工事事業費の補正予算における増加分は、財政投融資分をあわせて27億円になった。

【本紙の解説】
 今年度の補正予算で関空の二期工事分が運輸省要求の9分の1となったことで、来年度予算と今後の関空二期工事の運命は明白となった。

(11月12日) 元熱田派、東峰で130人が集会

 元熱田派(脱落派)は12日、東峰で集会を開きデモを行った。東峰在住の石井武氏は東峰神社の杉の木問題に触れ「滑走路の近くに障害物があったら飛行機が飛べないのはあらかじめ分かっていたこと。なのに建設する政府のやり方は違法」とのべた。同石井紀子氏は「神社の杉は東峰地区のもの。地区で一致団結して勝手には切らせない」と話している。

(11月13日) 関空二期、予算「満額確保を」/大阪府など与党幹部に要望(11/14朝日全国版他)

 大阪府と地元4自治体と関西経済連合会などの首脳が13日、上京し、与党3党の幹事長に事業を着実に推進するように要望した。与党は14日にも事業推進を求める幹事長名の申入書を政府に提出する方針。年末にかけて本格化する予算折衝に向け、巻き返しを図りたい考えだ。
 要望には、太田房江大阪府知事、秋山喜久関経連会長、御巫(みかなぎ)清泰関空会社社長らが参加。一行は衆議院内で与党3党の幹事長に会い、「地元として関西空港の国際競争力強化や利用拡大を検討する」としたうえで、1220億円の来年度概算要求額について「満額確保に配慮をお願いしたい」とする要望書を渡した。自民党の野中幹事長は「地元の熱意は受け止めた」と理解を示した。また与党側は政府案に浮上している地元負担の追加案についても「実現は難しい」との認識を示した。

【本紙の解説】
 今年度の補正予算案が10分の1近くになったことから、来年度予算もその割合で減額されることが明白になった。これへの関空関係者の巻き返しである。大蔵省方針は有利子負債を地元負担で減額せよ、その度合いに応じて政府予算を計上するという考えである。太田知事は地元負担を何とか考えるといっている。しかし、実際は地元負担は無理で、大蔵省は関空二期を中止か延期に追い込む考えだ。今回の上京団は「地元として関西空港の国際競争力強化や利用拡大を検討する」というだけで地元負担にはふれていない。
 与党3党の幹事長は参院の選挙前なので請け負っているが、自民党方針の公共事業の見直しはどうなっているのか。

(11月13日) 成田共生委員会の「業務改善案」まとまる(11/14各紙千葉版)

 成田空港地域共生委員会の業務見直し作業を行ってきた「今後の共生委員会のあり方に関する検討委員会」は13日、会合を開き「共生委設置要項改正案」改善案をまとめた。(1)これまでの監視機能―騒音被害や移転対策などに加え、(2)共生活動の充実―地域振興研究、運輸省と公団の職員を会議の構成員と位置づける、(3)委員会の活性化―成田空港地域共生財団など関係機関との連携を深めるとともに、新たに連絡調整会議を設置し、関係自治体の担当課長から地域の意向を共生委の活動に反映させるとしている。
 今後、設置要項を改正するため、空港周辺自治体でつくる地域振興連絡協議会などに報告され、了解を得て来年からの適用をめざす。
 共生委はその役割を「マイナス面の監視だけでなく、プラスの創出への関与が必要」との提言で、地域づくりへの貢献として地域振興などの調査・研究機能を加えることにした。またそのために、これまでのは「非監視側」との理由から議題提案などができなかった運輸省と公団を「被告席に座らされた監査対象から、地域整備のあり方を一緒に考えるパートナーへと改めるもので、地域と国の対立構造が大幅に解消したあかし」として共生委の構成員と位置づけた。

【本紙の解説】
 共生委員会は今まではペテン的に「中立」を装い、空港建設を肯定しながら空港被害を「監視」し、その補償を公団に請求してきた。この基本スタンスの反動的転換を行う見直しである。運輸省と公団を共生委の構成員に加えている。公団の住民対策機関としての反動的宣言である。その理由を「地域と国の対立構造が大幅に解消したあかし」としている。
 三里塚闘争の存在を抹殺し、敷地内農民と地権者を徹底的に無視・抹殺するものである。また、平行滑走路が暫定滑走路になっている現実の無視である。シンポ・円卓会議で「話し合い」解決するとしたことの全面破産の結果でもある。
 共生委は運輸省と公団と一緒になって住民、地域無視で空港建設を推し進めることを反革命的に宣言したのである。運輸省や運輸省、共生委がいう「地域」とは実は周辺自治体のことであり、敷地内農民は抹殺の対象だ。これは、円卓会議での決定「地権者の納得がない限り、平行滑走路の建設は進めない」としたことの否定でもある。

(11月13日) 九十九里沖空港を提案へ/成田空港の補完に (11/14千葉日報)

 九十九里浜沿岸の自治体が協同して「九十九里沖空港」構想を提案、早急に県、国に要望していくことが13日分かった。きょう14日に大網白里町で町村長が集う初の協議会が設立される。九十九里沖空港を成田空港を補完する24時間国際空港と位置づけている。羽田空港の国際線拡張案や首都圏第3空港の候補地選定で揺れる中での新提案は、用地買収や騒音問題がなく実現可能性や将来性が高い点を強調している。
 構想案によると九十九里浜の沖合10〜15キロの洋上に人工島を築き4500メートル級の滑走路を建設する。飽和状態の成田空港と両立して、それを補完することが前提。当面は滑走路一本で成田空港の管制塔を供用し管制空域を調整する。交通アクセスは大深度地下鉄で直線距離20キロ、高速道路で圏央道と連絡して20分程度で結べるとしている。
 予定地付近は水深30メートル前後のため工法的にも可能で、首都圏の産業廃棄物や一般廃棄物の処理場の完全焼却溶融炉を人工島に建設すれば、各地で懸案のゴミ問題も解決。このスラグを空港の埋め立て拡張に利用し、スペースシャトル帰還用の6000メートル級滑走路拡張や5本以上の4000メートル級滑走路増設も可能で、「国際ハブ(軸)空港となる」と将来性も明示している。
 14日の協議会では地域振興から「海岸の活性化における趣意書」として提案される。
 参加するのは沿岸の一宮、長生、白子、大網白里、九十九里、成東、蓮沼、横芝らの町村長で、以後茂原市や東金市にも呼びかける。
 空港問題は、首都圏第3空港候補地に富津市などが名乗りをあげ、羽田空港の国際化を都知事が提唱する中で、県は国際空港成田の完全化を強く主張しているが、新たな視点の「成田補完空港」をどうとらえるか注目される。

【本紙の解説】
 首都圏第3空港の検討を開始した初期に「鹿島空港」が真剣に検討されたことがあった。これは、成田の3本目の滑走路を鹿島まで持っていくという考えであった。その時期に九十九里沖空港も名乗りをあげた。まだ、日本経済が世界的競争力をもっていた80年代である。
 現在では、日本の空港整備の遅れと成田の不便さで日本における国際会議も敬遠されており、90年以降は欧米企業間のアジア統括事務所や支店が東京から香港やシンガポールに移っている。金融関係やコンピューター関係はとくにそうである。日本を通りすぎる時代になっている。この時期に成田以上に不便な空港をつくることは政府、運輸省とも考えていない。
 その点では現実化はあり得ない空論である。しかし、成田空港の限界は千葉県としては否定できない。暫定滑走路も完成したとしても国際線としては使えない。限界にきている首都圏の空港事情に対して千葉県だけが、第3空港の調査検討まで反対していては相手にされない。そのために、成田空港の拡張案として、千葉県と大網白里町の町長が名乗りを上げたのではないか。
 第3空港としては羽田再拡張案がでる前は「富津沖」が最有力候補であった。メガフロートでの建設案は実際に進んでいたのである。羽田の再拡張が国際化を前提に出されたことで千葉県は第3空港の検討にまで反対した。その結果として富津沖は基本的になくなったといわれている。その巻き返しとして、このマンガ的な九十九里案を出してきたということである。

(11月14日) 「九十九里沖に国際空港を」大網白里町提案/「成田」と地下鉄で連絡

 九十九里浜に接する長生・山武地域の町村長が集まり、海岸地域の振興策を協議する首長会議が14日夕、大網白里町の町老人福祉センターで開かれ、成田空港を補完する国際空港を九十九里沖に誘致することが大網白里町から提案された。
 首長会議は、災害や地域振興などについて町村間で連携を取ろうと、大網白里町が開催を呼びかけ、九十九里浜に接する横芝町から一宮町まで8町村の首長らが参加した。
 九十九里沖空港計画に対し、成東町や横芝町などからは「将来の方向性としてはいいが、成田空港の完成が第一義で、結論を出すのは難しい」などの慎重論が出された。これに対し、大網白里町の堀内慶三町長は「将来のビジョンとして、成田空港を補完する空港の建設を早急にまとめていくべきだ」と話し、引き続き協議していくことを決めた。

【本紙の解説】
 提案者の大網白里町以外の周辺自治体は現実性のないことから「できるならいいが」として相手にしなかったようである。

(11月14日) 関空二期工事で運輸省、見直し圧力に巻き返し(11/15産経)

 運輸省は14日、航空局内に「関西国際空港に関する検討委員会」(委員長・深谷憲一航空局長)を設け初会合を開いた。来年度予算編成を控え、財政当局は関空の運営について抜本的な見直しを要求する動きを強めており、検討委員会は、背水の陣にある運輸省が独自で改善策を打ち出していく役割を担っている。
 この日の初会合では、今後の日本の経済動向や関空の長期的な需要見通しを踏まえ、運営主体である関空国際空港会社の長期経営見通しを立て、二期事業の進め方を検討していくことを申し合わせた。
 また、自民党の野中広務、公明党の冬柴鉄三、保守党の野田毅の与党3党の幹事長は14日、国会内で森首相に会い、「関西国際空港二期事業の促進に関する決議」を手渡した。決議文は(1)建設中の新滑走路を予定通り2007年に供用開始できるように、国は2001年度予算で事業費を確保する。(2)関西国際空港会社は、経営改善や国際競争力強化に努める。(3)関西の自治体や関西経済界は、二期工事を今後も支援する――などを求める内容になっている。
 宮沢喜一蔵相は14日の参議院本会議で関西国際空港に二本目の滑走路を建設する二期工事について「しばらく休んだらどうだというのは賛成できない」と述べ、工事の休止や延期に慎重な姿勢を示した。ただ関空会社が二期工事で有利子負債を抱え込むことに改めて懸念を表明している。

【本紙の解説】
 宮沢蔵相と大蔵省の立場は正面切って二期の延期や中止を掲げてはいない。あくまで、地元負担の増加で有利子債務の軽減である。その地元負担ができないならば、国の支援はないということである。与党3党の決議文には「関西の自治体や関西経済界は、二期工事を今後も支援する」とはなっているが、応分の地元負担はない。
 成田空港の建設が計画決定から35年もたって完成していない。このことが、日帝の航空政策、空港整備を根底から破産に追いやった。その結果がこの関空の破綻である。「成田の二の舞はしない」ということが、関空建設にあたっての最大問題であった。その結果、大阪の中心から遠く離れた沖合の埋め立て地となり、その不便さが伊丹空港を存続させ、関空利用は低迷。おまけに埋め立て地そのものが地盤沈下する始末となった。「成田の二の舞をしない」という考えが、「成田の二の舞」を生んだのである。

(11月16日) 防衛施設庁、米軍横田基地の滑走路改修へ/W杯活用不可能に(11/17東京)

 在日米軍基地の整備を協議する日米合同委員会は16日、横田基地の滑走路を全面改修することで合意した。工事は49億円を投じ来年度から3年間の予定で行われる。2001年10月から2002年6月までの9カ月間は滑走路の半分ずつ閉鎖され、プロペラ機以上の大型機は離発着できなくなる。東京都が関係省庁に要望していた2002年W杯での横田基地使用は、事実上不可能になった。

【本紙の解説】
 横田基地はすでに軍事物資の輸送に民間機の離発着を認めている。貨物航空輸送会社のフェデラル・エクスプレスのチャーター機が乗り入れしている。フェデックスはベトナム戦争の軍事物資の輸送を中心を担ったフライングタイガー航空を引き継いだ会社であり、米軍との関係は強い。
 また、アメリカ当局は成田の離発着枠が少ないなら、横田基地をアメリカの航空会社の専用空港として軍民共用空港にする考えもある。米軍も戦時の占有さえ確保できれば軍民共用は構わないという考えだ。
 戦時にはすべての民間空港を軍事使用することが現代侵略戦争の常識。その考えから、すべての民間航空機と空港の軍事使用を前提に戦争計画はたてられている。そのために、民間機も軍事基地・横田への離発着について平時から慣熟しておく必要がある。
 石原都知事はこうした米航空当局と米軍の考え方を知っていて、軍民共用化を要求しているのである。そして「大衆受け」をねらって「横田返還」を唱えている。事実、石原は「横田返還問題は軍民共用のためのネゴシエーション」とあけすけにいっている。
 しかし、朝鮮侵略戦争の切迫は石原都知事とW杯に合わせてはくれない。日米帝国主義者にとって軍事的整備が優先である。

(11月16日) 日米航空交渉、アメリカが「全面自由化」要求

 日米の航空当局が国際線の取り扱いなどを話し合う日米航空交渉が2年8カ月ぶりに15、16日の両日、東京で再開された。米国側は、両国の空港に参入する航空会社の数や運行便数などの制限を完全になくす「オープンスカイ」と呼ばれる完全自由化を日本に要求。日本側は、成田空港で外国空港会社の中で米のシェアが突出している現状を是正し公平な競争条件を確保するのが先決と主張し、論議は平行線をたどった。

【本紙の解説】
 98年の日米航空交渉では、日米の離発着枠の増加、共同運行や以遠権の自由化、日米間の運賃の自由化などを4年間の暫定協定として結んだ。なお、その時に「一層の自由化を目指して2001年から再開する協議が暫定協定期限の切れる2002年までに合意しなかった場合の保障措置(セーフティーネット)として後発会社に2002年から2005年までに計週35便の増便を認める」ことも盛り込まれていた。
 これはオープンスカイを要求する米国側に対して日本側は、成田空港整備の遅れを理由にして対抗し4年間の暫定協定になったものである。「4年間」となったのは、当時平行滑走路が「2000年度中の完成」を掲げていて、2001年には供用できるつもりでいたからである。
 日本政府と運輸省は完全に追い込まれている。「成田空港での米のシェアが突出している」問題は、この98年の航空交渉での合意の結果でもある。したがってシェア問題は日米交渉では通用しない。
 このことは運輸省も分かっているが、荒唐無稽な主張をするには理由がある。成田の平行滑走路完成が前提になっていた98年交渉とは条件が変わっているからである。平行滑走路が2200メートルの暫定滑走路計画になり、これは国際線では使えない。太平洋横断のアメリカ便はまったく使えない。A滑走路を使用している中型機を暫定滑走路に回し、A滑走路の空きスロットをつくるといっているが成田は大型機がほとんど占めている異常な空港であり、暫定滑走路に回せる路線は少ない。
 日米航空交渉の前提が成田空港建設の破綻で崩れている。オープンスカイを受け入れる条件はまったくない。また、交渉が決裂した場合の「 保障措置(セーフティーネット)として後発会社に2002年から2005年までに計週35便の増便を認める」という条件もない。その点では運輸省は強気である。しかし、米国側はこの保証措置が認められない場合は、別の対日制裁措置をとってくることも明白である。これに運輸省はどう立ち向かうのか。要するに羽田国際化しかないのだ。

(11月17日) 米政府当局、羽田の夜間国際化「米社参入を期待」

 米政府当局者は17日、運輸省が羽田空港に早朝夜間に限ってチャーター便を認める方向で検討していることについて、「米国のチャーター機会社も利用できるものであると期待している」と述べ、米国企業の参入を求めていく考えを示した。また、再開した日米航空交渉については「航空自由化のゴールは、オープンスカイ協定を結ぶことだ」として、協定締結を目指す考えを改めて示した。

【本紙の解説】
 米国はオープンスカイを実現するために、羽田国際化を要求してきた。現実的要求は早朝、夜間のチャーター便の米航空会社乗り入れであるが、本音は全面国際化であり、昼間の定期便の完全乗り入れである。運輸省は2001年までにこの羽田国際化を実現しない限り、国際協定違反を問われ、対日制裁も受け入れる以外なくなる。国際問題にまで発展した羽田国際化に千葉県はどう対応するのか。

(11月17日) 首都圏新空港研究会、第3空港で「国際・国内併用」を要求

 経団連などでつくる「首都圏新空港研究会」(斉藤英四郎会長、130社参加)は17日、新空港に関するアンケートをまとめた結果を運輸省に提出した。要望書は羽田、成田に次ぐ首都圏第3空港について、国際線・国内線両用の空港と整備することなどの内容であり、第3空港を羽田を補完する国内専用空港と位置付ている国の方針の変更を求めている。
 調査は経団連加盟企業1179社・団体の代表者を対象に実施した。回答率は24・9%。その中で成田空港については現在の規模では将来の航空需要に「対応できない」という回答が8割を占め、この結果、全体の5割が「取引先との折衝など日常業務に支障が生じている」とみている。

【本紙の解説】
 この団体が民間ではもっとも熱心に第3空港を推進してきた。97年に東京湾の本牧沖、湾奥、横須賀沖、富津岬南と九十九里沖の5カ所を海上候補地として選定していた。それを99年の12月30日にこの5候補地に羽田沖を付け加え、政府に提案している。この提案の中で 羽田沖は(1)都心からのアクセスの良さ、(2)ターミナルなどの関連施設が整備されている、として第一候補として押している。
 経団連の主張する羽田沖とは羽田再拡張のことであり、その国際化を要求しているのである。運輸省は自民党政調会、定期航空協、そして経団連からも羽田沖の再拡張案の決定を要求されている。なお、来年度予算も第3空港の調査費の大半を羽田沖の再拡張案に使うことを強制されている。

(11月20日) 沼田知事引退声明(11/21千葉日報 他)

 5期20年を努めた沼田武千葉県知事(77)が21日の県議会で「今期をもって知事の職を辞任したい」と正式に引退を声明した。81年から続いた沼田県政は来春で幕を閉じる。沼田知事は戦後まもない1947年に県職員となり、6年間の副知事時代を含め県政に携わってきた。
 20年間の業績には幕張メッセを含む幕張新都心の建設、ゴルフ場の無農薬化、環境面からは大規模開発をチェックする「県環境会議」の設置などがあげられる。社会基盤では成田空港や東京湾アクアライン推進にも力を注いだ。

【本紙の解説】
 沼田知事が在任した20年間は、成田二期工事の20年間でもある。平行滑走路の建設開始を検討しはじめたのは80年前後である。千葉県もこの成田二期工事を含んだ一連の公共事業を「三角地帯構想」とうたいあげていた。「成田空港の平行滑走路の完成」「新都心幕張メッセの建設」「東京湾アクアラインと上総研究都市計画」である。バブル的発想で千葉県全体の歓心を得ようとの考えであった。このうち、成田平行滑走路とアクアライン、上総研究都市は完全に失敗。アクアラインは通行料金が高く黒字化は100年先でも展望できない。上総研究都市はいまでは知っている人も少ない。
 平行滑走路は「90年度完成」を目標に86年に着工したが失敗。92年に第2ターミナルビルとそのエプロン完成をもって「二期工事概成」といいくるめた。再び97年に平行滑走路建設に動き出すが、これも99年5月に断念。その結果、「2002年度完成目標」の暫定滑走路案に転換し99年12月に着工した。失敗につぐ失敗である。
 千葉県収用委員会は1988年に崩壊したまま現在に至る。さらに三角地帯構想(トライアングル構想)で成功しているかのように見える幕張メッセも、実状は苦しい。基本的完成がバブル崩壊後になり需要も激減、財政的には採算レベルにはほど遠い。この幕張メッセと上総研究都市などで県の財政負担は増大、債務はこの20年間で6倍に膨れ1兆8000億円となっている。
 県環境会議の設置など環境面への貢献を新聞はうたっているが、この三角地帯構想にみられる開発に次ぐ開発で、千葉県の自然はこの20年間に極端に破壊され続けてきた。
 最後に「羽田国際化反対」で政府自民党と運輸省にたてついたが、それも押し切られそうだ。

(11月22日) 自民党外交部会「羽田空港余裕あり」(11/23朝日経済面)

 自民党政調会外交部会が22日に開かれ、運輸省と中条潮・慶応大学教授(公共経済学)の間で日韓シャトル便論争があった。ソウル便の羽田乗り入れは、もともと韓国側の提案で、ソウル・金浦空港と羽田空港で、1時間に1便程度就航するシャトル便を求めているが、運輸省は「羽田空港は満杯」などと慎重で、空いている早朝深夜に限ってチャーター便を認めることで対応しようとしている。
 しかし中条氏は「昼間も発着の余地はある。日韓シャトル便は可能」と主張。理由としては、@公用機枠や遅れが後に影響しないようにするための予備枠が必要以上に設けられており、その一部を使えば1日20便近く増やせる、A管制方法を変え、航空機が着陸後速やかに滑走路から離れるように指導すれば1日60便は増やせる――等と指摘。
 これに対して運輸省の担当者は「公用機枠は運用実績を踏まえているし、予備枠も安全問題がありすぐには減らせない。管制の変更もすぐには困難」と反論した。

【本紙の解説】
 羽田空港の発着容量は、2002年の日韓シャトル便を運行させることができる十分な処理能力がある。運輸省の基本的考え方は羽田国際化を段階的にはかっていくことにある。この間の成田空港と千葉県との約束、騒音問題の解決、空域での米軍はじめとする交渉などを段階的に解決していかないと、それらが羽田国際化の障害になるという考えだ。また首都圏第3空港は羽田拡張ではなく、別の空港を建設というのが現時点での運輸省の基本的方針。
 羽田の離発着回数は、今年7月に1日62回分増えて計702回になった。2002年7月にも52回増やして754回にすることを決めている。これは運輸省が98年に日航など航空大手三社の実務者を交えて設置した「空港処理容量検討委員会」で、99年10月に決定している。同委員会では「管制官が航空機に離着陸の許可をだすタイミングの変更は可能」、「着陸した航空機を迅速に滑走路の外にだす高速誘導路設置が、新B滑走路の供用開始にともない可能になった」などが報告されている。離発着の間隔をつめることは可能なのだ。
 W杯は2002年6月の開催(約1カ月)である。その直後の2002年7月に羽田空港の発着回数を52回(1日当たり)増やす予定になっている。この枠をW杯期間中に間に合うように1カ月前倒しで実施すれば日韓シャトル便は問題なく運航できる。航空各社への通常枠増便分はその後配分すればいい。中条氏の見解は現行の運行条件でも空きスロットはあるとのことだが、2002年には処理容量の増加がすでに決まっているのだ。
 運輸省はすでに、99年10月から東京上空通過にむけて東京都と大田区の調整に入っている。今年の10月には東京上空の北方向からの着陸実験を開始している。運輸省は「実験がうまくいけば今年度中に北側からの着陸を公用機などの小型機に限って開始する」とまで言っている。それ以上に、新A滑走路が北側からの発着コースをとり、新C滑走路と「オープンパラレル」方式のダブル管制となれば、2つの空港のようになり発着回数は飛躍的に増加する。最近の諸外国の巨大空港はこの方式が多い。
 羽田の処理容量の問題は技術的にはいかようにも解決できる。「羽田の限界」をことさら言う理由は、運輸省自身の利害と成田空港を抱える千葉県への対応にある。羽田の全面国際化については第3空港が確定してからというのが運輸省プラン。第3空港を羽田再拡張で済ませたくないという、ゼネコン利権がらみの本音もある。羽田の国際化が先行し、そのポテンシャルの高さが明らかになると、第3空港建設そのものが危うくなる危険もある。羽田再拡張で済まされてしまう可能性もあるからだ。また「国際線は成田、国内線は羽田」の原則的確認を千葉県が強く求めていることもあり、羽田の国際線はあくまで「成田空港がクローズしている深夜と早朝に」という制約もある。
 だがこうした運輸省の基本プランも危うくなってきた。成田に見切りをつけ、羽田国際化、再拡張を求める声があらゆる方面で強くなっている。
 ただし成田問題は治安問題の要だ。土地収用法改悪や有事法制がらみで成田二期攻撃のエスカレートが一方では始まっている。

(11月28日) 森田運輸相成田空港を視察(11/29千葉日報など)

 森田運輸相は28日午後、平行滑走路の工事現場などを視察した。その後成田空港内で記者会見に応じた。会見では2002年初夏のW杯サッカーまでに当初計画の2500メートルの滑走路が実現できるかどうか、その見通しを聞かれ、「厳しいが、姿勢としては望みを捨てず、最後まで誠心誠意取り組む」と、従来通りの考えを示した。
 千葉県が反発している羽田国際化問題では、「羽田が国内、成田は国際の原則は崩さない」と明言。その上で「羽田を深夜、早朝に活用しなくてはいけない」とも述べ、千葉県の意向を十分に聞き了解を得て進める考えを強調した。また、省庁再編で国土交通省になった後も「基本的な考え方は変わらない」と述べた。
 特例として認めている羽田空港からの国際チャーター便では、東京都が特例ではなくルール化するよう求めていることに触れ、「容易ではないが、どう調整するか」として千葉県の理解を得て調整したい意向を示唆した。
 羽田の再拡張では(1)処理能力(2)騒音問題(3)港湾機能への影響(4)航法の4つの問題を示し、「十分な検討が必要だ」として、慎重に対処する姿勢をみせた。

【本紙の解説】
 森田運輸相の発言は運輸省の考え方を述べている。成田の暫定滑走路は暫定にとどまり、2500メートル滑走路は無理。羽田の深夜・早朝の国際線チャーター便はルール化する。第3空港の整備を羽田の再拡張ですませることには反対。これが運輸省の現在の立場である。問題は千葉県の反発をどう押えるかにある。
 羽田の再拡張は政府・自民党、東京都、大手航空会社の意向であるが、それは拒否したいというのが本音だ。そのために、問題点として4点をあげている。騒音、船舶航路、航法の3つの障害があるので、拡張しても処理能力は思ったより増加しないという論法で反対するということである。
 ここで運輸省の基本的考えを整理しておく。まず、成田に関しては2002年初夏までに2500メートルの平行滑走路を完成させることは無理。まず「暫定」(2180メートル)で飛ばして地権者をたたきだし延長をはかる。ただし延長といっても、進入灯など付帯設備の関係で、滑走路を運用しながら延長工事を行うことは基本的に無理であり、工事の間は滑走路を閉鎖しなればならない。またそもそも、用地問題解決の可能性はまったく保証されていないので、計画としては立てられない。
 羽田に関しては2002年までは成田空港がクローズしている深夜・早朝の国際化を促進したい。この2002年までに第3空港の候補地と概括的計画を決定する。その後、羽田の国際化を昼間も含めて進め、また再拡張もしていくというプランである。成田の平行滑走路問題も打開できれば、それも3000メートル級にしていくプランである。そうして、30年間の空港整備の遅れを取り戻したい考えである。
 しかし、この考えもあまりの空港整備の遅れから羽田国際化と再拡張の圧力が強く、また一方では羽田国際化への千葉県の反対もあり、最初から迷走している始末である。

 ※航法とは、航空機が一定のルールに基づいて安全な航路を選び、そこを正確かつ安全に航行する技術のことを指す。羽田での具体的問題点は米軍空域と騒音の関係で航路が狭いこと。そのことを空域の返還と東京上空の騒音規制区域を飛行するコースをとることで解決しようとしている。また、管制方式の改善で発着回数の増加をはかろうとしている。

(11月28日) 運輸白書を提出 既存インフラの活用を(読売11/29)

 森田運輸相は28日の閣議に『2000年度運輸白書』を提出し、了承を得た。白書は今後の交通インフラの整備について、国と地方の財政状況が悪化していることから、既存のインフラの有効活用と整備の重点化と効率化を徹底する必要があると提言した。現在の交通インフラが100パーセントの能力を発揮していない可能性があるとの認識に立ったもので、巨額の公共投資を投じることでインフラを新設するのではなく、ソフト面などの改良を行うことで安いコストで既存インフラの機能向上を図るねらいがある。騒音などの問題から夜間や早朝が制限されている空港の運用期間を延長したり、管制方法を見直すことで、発着枠の拡大が可能になる。鉄道では、線路幅が異なる在来線と新幹線を自由に乗り入れることができる「フリーゲージトレイン」の導入で利用者が列車の乗り換え時間を省くことができる。

【本紙の解説】
 航空交通に関しては、地方空港建設の抑制と羽田空港の深夜・早朝の国際線の解禁が当面の運輸省のプランである。また、この深夜・早朝の国際化をふまえて、第3空港が決定したら、直ちに羽田の昼間も含めて全面的国際化に乗り出すための計画を提示している白書である。

(11月29日) JAS、JALとのソウル便共同運航中止(11/30日経全国版)

 日本エアシステム(JAS)は29日、成田―ソウル線の日航との共同運航を来秋に中止する方針を固めた。このソウル便の共同運航はJASの発着枠を使い、JALの機材で運航している。2002年5月に予定される成田空港の第二滑走路の供用開始にともなう発着枠配分をにらみ、自社機での運航実績を増やすのがねらい。JASは、ソウル便を暫定滑走路にして空くA滑走路の発着枠は中国線に振り当てる。成田の発着容量拡大を1年半後に控え、空港権益の確保を目指す航空会社の動きが今後本格化する見込みだ。

【本紙の解説】
 暫定滑走路の完成で発着枠の争奪戦が本格化すると言っているが、そんなことはない。外国の航空会社で乗り入れが決定しているのはベトナム航空とフィンランド航空の2社だけである。
 今年の1月21日にベトナム航空の暫定滑走路の成田乗り入れが決定したが、運輸省の積極的交渉でも後は続かなかった。その後ようやく、フィンランド航空の成田暫定の使用が決定したのは、10月13日の日本とフィンランドの航空当局間協議であった。B757機(オールエコノミーで219席)で暫定滑走路から離発着し、途中でいずれかの空港にテクニカルランディング(給油のみのための離着陸)をしてフィンランドまで行くという航路。テクニカルランディングのためにもう一つの空港で着陸料を支払うことでコストはかさむ。
 暫定滑走路はテクニカルランディングしなければ、短距離のソウル、上海、グアム、サイパン線などアジア・オセアニア路線のみしか就航できない。その点で外国航空会社が競って発着枠を取り合うことはない。
 また、国内航空会社もJASを除けば、暫定滑走路を使うことに消極的である。その理由は、保有航空機の大型化が進み、使えないということ。日航の保有航空機(1999年1月現在)は138機であり、暫定滑走路を使える機種はB737の5機だけである。B777(通称スリーセブン)は7機ある。公団はスリーセブンを使うと裏では言っているが、神社立木問題があり、無理であろう。つまり、JALは保有総数の4%しか暫定滑走路をつかえる機種を持っていない。それもすべて国内線用であり、国際線に転用することは考えていない。
 ANAも保有航空機総数143機のうち暫定滑走路で使えるのはB767が17機、A320(エアバスインダストリー)などが27機である。保有機全体の33%であり、基本的にこれも国内線用である。唯一JASだけが、保有機87機のうち45機が中型機以下で、暫定滑走路での使用に乗り気なのである。しかし、JASは国内線主体であり、その暫定滑走路使用の便数はたかがしれている。
 暫定滑走路の着陸料の高さから中型機の近距離便では採算がとれない。そのためにリースやレンタルで航空機の保有数を増やしてまで暫定滑走路の発着枠をとることには消極的なのだ。
 ましてやテクニカルランディングで割り増しの着陸料を支払うことまでして暫定滑走路を使うことはない。さらに、航空料金の安い国内線では採算をとるのは難しい。
 いずれにしても暫定滑走路は完成しても使えない滑走路である。

(11月30日) 空港署の巡査部長を懲戒処分/交通事故でひき逃げ(12/1毎日千葉版)

 佐倉市の国道で12日、新東京空港署の巡査部長が事故を起こし逃走した問題で県警は30日までに同署警務課、小沢拓己巡査部長(25)を定職6ヵ月の懲戒処分にした。小沢巡査部長は同日までに依願退職した。
 小沢元巡査部長は12日午前6時10分ごろ、佐倉市の国道51号で走行中、センターラインをはみ出し、千葉市の男性会社員(27)の乗用車がけん引していた故障車に衝突、男性ら2人に軽傷を負わせ、そのまま逃走した。

 

 

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