SANRIZUKA 日誌 HP版   2001/03/01〜31      

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 2001年3月

 

〔週刊『三里塚』編集委員会HP部責任編集〕 


(3月3日) 成田空港1月の貿易額、輸出入とも伸びる(3/3千葉日報)

 東京税関がまとめた1月の成田空港の貿易額は、輸出が6955億円で前年同月比9.8%増、輸入は8408億円で35.7%の大幅増となった。輸出は20カ月連続、輸入は16カ月連続でそれぞれプラスを更新。輸出入ともIT(情報通信技術)関連製品の伸びが際立った。
 品目別では、輸出はIC(1025億円、25.5%増)が快調を持続。電気計測機器(208億円、49.6%増)なども良かった。時計・同部分品(33億円、35.1%減)などは不調。
 輸入は、IC(1346億円、40.7%増)やコンピューター(1026億円、41.0%増)の好調ぶりが目立った。魚介類(92億円、1.6%減)などは振るわなかった。
 主要地域別では、輸出はアジア、米国、EU向けがいずれもプラス。最大の取引地域であるアジアは1.0%の微増だったが、23カ月連続で前年実績を上回った。
 輸入もアジア、米国、EUからがいずれも伸び続けた。最大の取引先である米国からは39.2%の大幅増となり、9カ月連続でプラス。

(3月6日) 日通、成田に第2センター(3/6日経流通新聞)

 日本通運は今年6月、成田空港に近い野毛平工業団地に「成田空港第2物流センター」(仮称)を設ける。同センターは暫定滑走路が2002年に供用されるので、国際貨物の増加が予想されるため、荷さばき能力を引き上げるための増設である。
 日本通運は1997年から成田空港物流センターを稼働している。第2センターの稼働により、成田空港外施設での日通の貨物取扱能力は重量換算で3割程度増えるという。

【本紙の解説】
 暫定滑走路の供用が始まったとしても、貨物量は増える見込みはない。その最大の理由は成田乗り入れの貨物機が例外なく大型機であることにある。2180メートルの暫定滑走路で発着できる貨物便はゼロである。
 増加見込みがあるとすれば、現在A滑走路を使用している中型機以下の近距離便を暫定滑走路にまわし、そこに国際貨物便を差し込む方法である。あくまで机上の計算だが、成田を使用している中型機以下の飛行機は約5%、発着回数で年間約7000回(3500便=1日10便弱。一部国内線枠も含む)。これを全部(!)暫定滑走路にまわせば、その分のA滑走路枠を貨物に振り向けることも「可能」だ。
 しかし、中型機のA滑走路枠を全部暫定滑走路にまわすことは事実上不可能に近い。中型機を運航する航空会社はそれに抵抗している。中型機便は頻繁に大型機に機種変更される現実があるからだ(乗客増や整備の都合などで)。さらに、中型機のA滑走路枠(1日10便弱)は、世界の航空会社による激しいスロット獲得競争の焦点だ。貨物便にまわせる枠は最初から限定される。
 また、公団は現行の国内線枠(1日7便弱)を基本的に全部中型機に代え、暫定滑走路にまわす方向で航空会社と交渉しているが、これもスロットそのものが限定的だ。
 そのゆえに、暫定滑走路がかりに供用開始されたとしても、貨物便を増やすスロットは基本的にない。したがって、日通の資本投下はとりあえずむだな投資ということになる。ただし、羽田完全国際化や首都圏第3空港などの影響で、成田が将来、貨物専用空港(および軍用空港)になる可能性は大きく、その意味では日通の投資はむだにならないかもしれない。

(3月8日) 暫定滑走路、北側の誘導路工事開始/一坪共有地の出入り遮断

 公団は天神峰地区の誘導路工事を開始するために団結街道のルートに変更を加え、北原事務局長が所有している団結街道沿いの一坪共有地への一般の立ち入りを禁止し、届け出を要求しはじめた。

【本紙の解説】
 団結街道はもともとは直線で国道51号につながっていた。現在は天神峰現闘本部の北側、市東孝雄さんの畑の先で西側にカーブしている。直線のままだと誘導路・滑走路と交差するので、92年頃の工事で西側に曲げたのである。このカーブの手前に一坪共有地があり、今までは出入り自由だった。今回、そのカーブの曲がり口を80メートルほど南にずらしたので、一坪共有地がフェンスの内側に入ってしまったのだ。
 この一坪共有地と市東さんの畑、現闘本部の存在は、誘導路を前代未聞の逆「くの字」に曲げている要所である。
 成田市はこの件について、「切り回し道路」への変更を告知する看板を掲げた。しかし、天神峰の住民である市東孝雄さんには連絡、断りもなく工事を行っている。
 ただ、「切り回し道路」とはう回道路の意味で、誘導路工事が終了した時点で元に戻すことを市は約束した。この点、厳しく監視しなければならない。さらに、一坪共有地のフェンスの囲い込みは許せない攻撃である。今までどおりいつでも立ち入り自由にすべきである。

(3月11日) 反対同盟、現地支援 一坪共有地のフェンス囲い込みへの抗議行動

 反対同盟と現地支援勢力は3月11日の午前10時、天神峰に40人が集まり、団結街道と一坪共有地がフェンスに囲い込まれた現状を視察し、抗議行動を行った。
 反対同盟は近日中に、団結街道の無断での変更への抗議闘争と一坪共有地を囲い込んだフェンスの撤去を求めて闘争を行うことを確認した。

(3月11日) 「土地収用法シンポジウム」のホームページが開設された

 反対同盟と弁護団で開催した「土地収用法改悪阻止シンポジウム」の趣旨を貫くために、ホームページが開設された。(2001年10月末に閉鎖)
 
 ホームページアドレス http://homepage2.nifty.com/totisosi2001/
 メールアドレス totisosi2001@hotmail.com

 ホームページには、2月28日のシンポの講演、発言等が詳しく紹介されている。さらに土地収用法改悪問題の資料集が掲載されている。シンポ事務局によれば、今後の国会審議動向の紹介や、反対運動からの情報提供を「ニュース」にして全国に配信する予定とのこと。メールなどで寄せられた読者の意見や主張も随時掲載される。

(3月13日) 日本航空、中期計画を発表(3/14朝日)

 日本航空は13日に、2001年〜2003年までの中期計画を発表した。これによると暫定平行滑走路が来年5月に供用開始されるのを受けて、成田と中国の北京や上海便と韓国のソウルや釜山便を増便することを明らかにした。対欧米ではハワイ、英国路線などを増設する。暫定平行滑走路は長さが2180メートルと短めで、国際線ではアジア路線が中心になるとみられている。完成後にあわせ、現行滑走路から、暫定滑走路に移る便も出るとみられる。
 成田空港は処理できる発着回数は現在、年13万5千回。暫定滑走路が供用されれば処理能力はほぼ5割増の20万回に増える。国土交通省はこの増加分を、2010年頃までに徐々に埋める予定で、枠の確保をめぐり、各社がしのぎを削ることになる。
 日本航空は国内線の増強策をあわせ、グループ全体の航空機数を現在より2機増やして2003年末には173機にする予定。

【本紙の解説】
 日航は整備工場を成田に持っている。全日空は羽田に持っている。そのため日航は羽田国際化にあまり積極的ではない。逆に全日空は羽田国際化に積極的であり、社運をかけている面がある。一方の「成田の国内線充実化」については双方とも消極的である。需要が見込めないうえ、全日空は整備の都合が悪く、日航は保有機種の関係から消極的である。
 日航本体が現在保有している機種の138機のうち暫定滑走路で使用可能な機種はB767の10機とB737の1機の計11機だけである。グループ全体でも暫定滑走路を使用できる機種は1割もない。したがって日航の中期計画では、北京、上海、ソウル、釜山便を増便予定にしているが、暫定滑走路使用ではなく、現行滑走路での増便を希望している。
 また韓国とは昨年の日韓航空当局者間協議で、ソウル―成田便を1日11往復から2002年5月をめどに20往復に大幅増便することで合意している。中国とも今年1月19日の日中航空交渉で中国便の輸送力を旅客、貨物とも日中双方で現行より50%以上増やすことで合意した。日本側の航空会社は現在、中国便を週71便運航しているので、ジャンボ機換算では35便前後、270人乗りの737機換算では50便を増便することになっている。
 しかし韓国側の希望と本音は成田ではなく「羽田」乗り入れである。羽田の国際線定期便が解禁になれば切り替わる。中国も同じである。
 したがって今回の日航中期計画で改めて明確になったことは、暫定滑走路はソウル、北京便などの東アジア近距離しか使えないことだ。また国土交通省と公団は「国内線充実」を叫んでいるが、日航側は拡充を計画していないことだ。
 朝日の記事は、国土交通省が「暫定滑走路枠(スロット)の確保をめぐり、各社がしのぎを削ることになる」と書いているが、根拠も示さず無責任な断定記事だ。暫定滑走路のスロットが余っているので「国内線充実」を航空会社と旅行会社に押しつけている現実も見抜けないなら、論外というべき水準である。

(3月13日) 国土交通省、2000年の航空輸送実績を発表

 国土交通省は13日、2000年の航空輸送実績を発表した。国内線旅客は前年比2.5%増の9239万人、国際線旅客は同9.5%増の1921万人と7年連続で前年を上回った。貨物は同5.0%増の92万7597トンで2年連続の増加になった。

(3月14日) 成田二期工事、作業機械のショベル頭に当たり男性死亡(3/15毎日)

 14日午前11時20分ごろ、成田市東峰の成田空港の二期工事区内にある建築廃材再加工場で、滑走路や誘導路に敷設する砕石などの元となるコンクリート塊を集積していた土木会社「オバタ総業」(同市十余三)のショベルカーのショベルが、近くで作業していた同「イシカワ興運」(佐倉市井野)のアルバイト作業員、福原洋介さん(22)の頭に当たり福原さんが即死した。
 福原さんはブルドーザーでコンクリート塊を集め、オバタ総業の男性作業員がショベルカーで積み上げていた。福原さんがブルドーザーを降りてコンクリート塊に近づいたところ、男性作業員が振り下ろしたショベルで頭を打ったらしい。
 公団は「今回の事故を踏まえ、再度安全を徹底する」とコメントを発表した。

【本紙の解説】
 死亡事故が起こるような工事環境を強制したのは公団である。中村総裁は今年の1月4日の年頭記者会見で、暫定滑走路について「今年11月完成、来年5月供用開始の予定を前倒しする」と号令をかけた。理由は暫定滑走路の使用便数があまりに少なく格好がつかないことだ。供用開始直後に5月連休の臨時チャーター便を水増ししてでも飛ばしたいのである。もって敷地内農民に「騒音地獄」の脅威を与え、たたきだそうとの魂胆だ。
 チャーター便の旅行客募集は3カ月以上前から行われる。そのため、暫定滑走路の完成時期を確実にしておく必要がある。テスト飛行その他も年内に行う計画で、そのためには今年10月中にはすべての工事が完成しなければ間に合わない。
 計画では「11月30日完成、5月20日供用開始」であった。5月連休前に供用するには、それより少なくとも1カ月以上、できれば2カ月以上工事を早めたい。そのため工事会社は、この不況下で現場の安全性を犠牲にしてまで公団の「早期完成要請」を受け入れ突貫工事を続けている。死亡したアルバイト青年はその犠牲者である。

(3月15日) 反対同盟、天神峰で一坪共有地囲い込みに抗議デモ

 反対同盟と現地支援勢力約50人は15日、天神峰・団結街道の再度の路線変更と一坪共有地の工事用フェンスでの封鎖・立入禁止(日誌3月8日の項参照)措置に抗議する現地デモ(天神峰地区)を行った。
 午後1時に市東さん宅に結集し打合せの後、1時半にデモ出発。デモの解散地は一坪共有地を公団が囲い込んだ地点である。ここで萩原進さんはマイクを握り「公団は道路脇の一坪共有地を、またも地権者に断りなく囲い込んだ。地権者と反対同盟をないがしろにしている。これは犯罪だ」と強い怒りを表明した。(詳しくは本紙記事参照)

(3月15日) 国土交通省、ASEAN駐日大使を招待し朝食会(3/17朝日)

 国土交通省は15日、東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国の駐日大使を都内のホテルに招き、扇国土交通大臣との朝食会を開いた。この席でフィリピン大使が10カ国を代表して羽田空港の国際化を要望した。特に「ワールドカップの期間中に日本と韓国の航空機だけではなく、各国の航空機が自由に使えるようにして欲しい」と要望。扇国土交通相は回答しなかったが、同省の当局者は「明日、大臣が具体的な対応を発表する」と述べた。
 朝食会を持ちかけたのは大使側だが、朝食会翌日のタイミングで「羽田開放表明」の運びとなった。大使の要望を「海外からの要請」の大きさを演出する材料の1つにしたかったためとみられる。千葉県の反発は必至なので、これをかわすためのようだ。

【本紙の解説】
 国土交通省(旧運輸省)は羽田空港の深夜・早朝国際チャーター便の開放を、昨年9月の日韓首脳会議における「日韓シャトル便要求」を圧力に使うことで実現した。
 当時の運輸省は千葉県の羽田国際化反対の動きで、日韓首脳会談でのシャトル便要求を拒否していた。しかしその後、外務省、自民党、内閣が動き、運輸省の思惑以上に羽田国際化が進んだ。運輸省の計画以上にことが進んだことを示す証拠はCIQ体制(税関、出入国検査、検疫)の不備だ。計画以上のスピードで進んだゆえに要員を確保をできなかった。そのため滑走路のポテンシャルとしては1時間16回発着可能で「1日96回の発着」としていたが、現在はまだ週2便しか運航できないでいる。
 国土交通省と名称は変わったが、航空局は同じやり方で二匹目のドジョウを釣ろうとしている。W杯期間中の羽田国際化特例の推進を、ASEAN諸国の大使の要望をひとつの圧力に行うつもりだ。
 それにしても国土交通省が「羽田国際化のさらなる推進」を発表する前日に朝食会とはできすぎた話である。

(3月16日) 扇国土交通相「W杯開催中、羽田を国際線に開放」(3/17読売、朝日、千葉日報など全紙)

 扇国土交通相は16日の閣議後会見で、日韓共催で来年開かれるW杯に関し、「試合のチケットを持っているのに入国できなければ、国際問題になる」と述べ、観客の円滑な出入国を図るため、大会期間の1カ月間に限り、羽田空港を国際線に開放すべきだと表明した。扇国土交通相は、日韓を往来する観客が出発時に相手国の入国審査を済ませられる手続きの整備(出発前入国手続き制度、プレ・クリアランス)や、出入国管理スタッフの強化などの課題を指摘、「今国会中に手はずを整えなければ大会に間に合わない」として、同日の閣僚懇談で関係閣僚会議の設置を求めたことを明らかにした。
 W杯開催中は海外客の多くが東京を拠点に横浜、埼玉、茨城、静岡、宮城などのスタジアムに移動するとみられる。成田では2本目となる「暫定滑走路」が開催直前に供用を始めるが、長さが2180メートルと短く、ジャンボ機の離着陸は難しい。海外から来る航空機の主力はジャンボ機とみられるため、国土交通省は成田だけでは処理しきれないと判断した。
 しかし羽田は原則的に国内線専用空港であるうえ、世界有数の混雑空港だけに、W杯期間中といえども、「国際定期便の就航は困難」(国土交通省)だ。
 このため国土交通省は、2月に解禁した羽田空港の深夜早朝時間帯の国際チャーター便を拡充し、W杯チケットを持つ旅客専用のチャーター便を羽田に就航させることなどを軸に検討を進める。羽田への離着陸に必要な発着枠確保については、1)国内線の減便、2)1日15往復の公用機枠の流用、3)飛行機が遅延した場合に備えて確保している予備時間帯の活用、4)深夜早朝時間帯の発着枠の拡大―などが上っている。
 一方、千葉県は扇発言に敏感に反応し、同日夕には「W杯に対応するためにも成田空港の暫定滑走路整備が順調に進められているところであり、これにより大会関係者および観客の輸送については十分対応できると聞いている」との知事コメントを発表した。 加えて「羽田空港の国際線受け入れは、昨年12月に示された羽田空港の深夜早朝の有効活用方策に基づいて対応すべきものと考える」と付記した。 県企画部は「W杯に対応するため、国が暫定滑走路の整備を急いでいるはずで、それでも対応できないという大臣発言はどう意味か分からない。観客も試合のすべてが首都圏で開催されるわけでもなく、北海道や九州など国内各地に分散するのではないか」と、発言の真意に首をかしげ、冷静に受け止めている。

【本紙の解説】
 今回、国土交通相が「W杯期間中の緊急羽田国際化」を改めて打ち出した最大の理由は、「暫定滑走路が2180メートルと短く、ジャンボ機の離着陸は難しい」ことだ。海外からの航空機の主力はジャンボ機であり、「成田だけでは処理しきれないと判断した」ということである。
 この国土交通相のご都合主義きわまる物言いを絶対に許すわけにはいかない。99年5月に暫定滑走路を一方的に提案した口実は「2002年のW杯のため」であった。99年12月3日の軒先工事開始理由もW杯であった。暫定滑走路が2180メートルであり、ジャンボ機は使えないことは国土交通省の専門家は分かり切っている。W杯期間中に来日する外国人の数はサッカーが盛んな欧州と南米からが多い。長距離便ゆえ、ジャンボ機でなくとも暫定滑走路の使用は不可能である。また暫定滑走路が使えるアジア近距離便からは観客動員は少ないと言われている。また韓国―日本間の移動は大人数の移動となり、ジャンボ機以外ではまかない切れない。これに成田のアクセスの悪さも加わり、羽田―ソウルのシャトル便要望が当初からあった。
 結局、暫定滑走路が暫定のままで終れば建設の「大義名分」はなくなる。暫定滑走路建設の名分は、建設過程で敷地内・地権者農民を屈服させた時のみ成り立つのである。こんなデタラメな工事が「公共事業」の名の下に行われていることは到底許されない。
 暫定が暫定に止まれば無残である。W杯期間中も閑散となり、国際定期便の就航もほとんど見込めない中、今度は国内線を「充実」させて、その騒音で何とか地権者をたたき出そうというわけだ。
 また千葉県も千葉県で、羽田国際化「反対」を言いたいがために「国はW杯に対応するために暫定滑走路の整備を急いでいるはずで、それでも対応できないという大臣発言の意味が分からない」とか言っているが、地権者を屈服させるために暫定滑走路建設を推進してきた県は国土交通省と共犯である。むしろ敷地内農民と地権者切り崩しには運輸省以上に千葉県が積極的だった。
 当時の川崎運輸相が千葉県に「千葉県が(暫定案)をいやだというなら建設自体をやめる。暫定滑走路でよければ着工する。工事の進行で反対派を説得せよ」と申し入れられ、暫定滑走路の建設を承認し、地権者切り崩しを全面的に引き受けたのである。
 暫定滑走路工事の正当性はゼロである。完成しても使い勝手がきわめて悪く、使用回数もごく限られている。農民殺しのためにする軒先工事は、直ちに中止すべきである。

(3月17日) 成田空港 滑走路処理能力向上(3/17朝日夕刊)

 1本しかない滑走路で限界の運用が続く成田空港で、滑走路の処理能力を高める改善が今春、施設整備と航空管制の両面で始まる。
 成田空港は来年5月には2本目の滑走路が供用開始予定だが、2180メートルと短く、主流のジャンボ機が飛べないなどの問題を抱えている。それを補う今回の改善は、現行のA滑走路における新しい脱出誘導路の使用開始と、航空管制方式の全面的な切り替えの2つ。
 脱出誘導路は、着陸した航空機が滑走路から素早く出て、駐機場などへ向かう専用通路。新誘導路は滑走路北端から2100メートル地点に造られ、北側から着陸した場合に使う。公団によると、新設による、航空機が滑走路上にいる時間は、1機当たり平均71.5秒から64秒へと短縮。安全性が増すうえ、滑走路の処理能力が若干向上するという。4月19日に使用が始まる。
 現在北側からの着陸機が主に使えるのは、北端から2260メートル地点と1500メートル地点にしかなく、バランスが悪かったという。
 一方、航空管制方式の切り替えは一足早い今月25日から。遅延対策として用いてきた発着規制「3時間枠」を撤廃し、出発機と到着機の回数を様々に組み合わせることで、1時間当たりの最大発着回数を30回から32回に増やすことが可能になる。航空各社は「これまで3時間枠ではじかれていた便を就航させられる」と歓迎している。

【本紙の解説】
 滑走路からの脱出誘導路はタキシーウェイと呼ばれている。成田に北側進入した飛行機のうち95%が2260メートル地点のタキシーウェイを使っている。残り5%が1500メートル地点である。2100メートル地点にタキシーウェイが新設されると、2260メートル地点を使っていた飛行機の約半分がそれを使うことになる。
 成田でもこの新タキシーウェイは前から計画されていた。羽田では、新B滑走路が新設にあわせてタキシーウェイを増設し、発着回数を増加させている。
 成田では今度の新タキシーウェイを使うクラスの飛行機は、実は2500メートルの平行滑走路を使わせる予定であった。そのために、現行滑走路で2100メートル地点に新タキシーウェイを作っても、2500メートルの平行滑走路が完成した場合は無駄な工事になるので整備を遅らせていた。2000年5月にこの新タキシーウェイに着手した。つまり、公団は暫定滑走路の99年3月提案、12月着工で敷地内農民と地権者が屈服すると思っていた。しかし、その目論見は破産し、暫定滑走路にまわるクラスの飛行機は1500メートル地点のタキシーウェイを使う約5%しかない。現行滑走路の発着便は軽減されないことがはっきりしたために、この新タキシーウェイの整備に踏み出したのである。
 新管制方式については、日誌2月15日の「成田発着枠を拡大 新管制方式導入」を参照。

(3月21日) 千葉県都市部で目立つ羽田国際化容認(3/21千葉日報)

 成田空港と羽田空港の役割分担をめぐって千葉県の有権者の意見を聞いたところ、「羽田空港の国際線をもっと増やしてもいい」が53%を占め、羽田空港の国際化を容認する意見が過半に達した。一方で「国際線は成田、国内線を羽田」との原則の維持を求める意見は33%にとどまった。千葉県は原則維持を国に強く求めているが、県民の意識は住んでいる地域によって意見が分かれるようだ。
 羽田国際化を容認する意見は、羽田空港に比較的近い都市部で目立つ。中でも東葛地区(62%)や京葉地区(56%)が多い地区。また、成田空港を抱える地元の北総地区では、羽田の国際化容認44%、原則維持43%ときっ抗している。

【本紙の解説】
 千葉県の「羽田国際化反対」政策が県民の過半から拒否された形だ。しかし、これで千葉県の羽田国際化「絶対反対」などの極端な意見が薄まるかといえば、薄まるわけがない。千葉県と空港周辺自治体は成田空港の建設の責任は国にありとして、無責任を決め込み、空港建設の見返り事業を強く要求してきた。その見返り要求の表現方法が「羽田国際化反対」となる。羽田が国際化されると成田の整備に国は熱心でなくなる。そうなると整備事業も少なくなり、見返り事業である道路整備などもほとんどなくなるとの論理だ。
 千葉県の本音は、成田財特法(新東京国際空港周辺整備のための財政上の特別措置法)の再延長にある。この成田財特法は地方公共事業に国の補助金が上乗せされるものである。70年に10年間の期限の時限立法として制定され、98年段階までに4905億円が投入されている。その後2度も延長され、99年3月に5年間の延長が決まった。これ以上の延長はないと言われている。
 この見返り事業継続の要求が「羽田国際化反対」の正体である。県の役人にとっては、補助金要求のためなら県民意識との対立など関係ないということだ。

(3月22日) 朝日新聞世論調査/羽田国際化、6割が賛成(6/22朝日千葉版)

 朝日新聞社が、千葉県知事選中盤の17、18日の両日に実施した世論調査で、沼田知事の県政の評価や県政の主要課題について聞いた。その中で羽田国際化については6割が「賛成」と回答した。
 「羽田空港の国際化に賛成ですか。反対ですか」の問いには、「賛成」が61%、「反対」が21%、「その他・答えない」が18%だった。地域別に見ると、成田空港周辺を含む衆院千葉9区(佐倉市、四街道市など)と10区(銚子市、成田市などを合わせた地域)では、「賛成」が49%、「反対」が31%だった。「千葉都民」の多い京葉、東葛では「賛成」が73%だった。
 年齢別では若者の賛成派が多く、職業別では農林漁業者層の賛成が47%と低かった。政党支持別では、「羽田国際化賛成」は、自民支持層は56%、民主支持層は70%、公明支持層は66%、共産支持層は62%、支持政党なし層は62%であった。

【本紙の解説】
 読売新聞の調査に続いて、朝日新聞もRDD(ランダム・デジット・ダイアリング)法で調査した。
 読売新聞の調査結果以上の千葉県民の6割が羽田国際化に賛成という結果となった。成田空港周辺地区でも「賛成」が49%、「反対」が31%となったことは、県と空港周辺自治体が住民の意見に逆らっていることもより一層明らかになった。

(3月22日) 羽田空港、2機同時着陸可能に(3/21産経、3/22日経夕刊)

 羽田空港で22日から、平行して走る2本の滑走路を使い、航空機を2機同時に着陸させる新しい運用が始まった。
 国土交通省航空局によると、羽田では年間の6割を占めている北風時、南側からの進入の場合に同時着陸を実施する。上空で列をなして最終進入してくる到着機を、南北方向に並行して走るA滑走路とC滑走路に順番に振り分けて着陸させる。いままでは海側の新C滑走路を離陸用、陸側の新A滑走路を着陸用に使用しており、到着便が殺到する夕方などの時間帯に、後からきた航空機を上空待機させるなどの措置を取っていた。ただ、南風で北側からの進入の時は同時着陸できない。
 管制官を6人増員し、羽田空港の滑走路周辺をこれまで以上に細かく認識できる管制卓を導入して可能にした。
 羽田空港では1日計約700便、朝夕の混雑時には1、2分おきに航空機の発着があり、2機同時出発は既に実施されている。航空局は「これまで以上にスムーズな運航が可能になる」と期待している。

【本紙の解説】
 国土交通省は羽田空港の巨大化に全力を挙げている。そのための方策として代表的なものは、(1)北進入コースの設定と新A滑走路の北側への離着陸の制限の撤廃、(2)深夜・早朝便の開放、(3)新Aと新B滑走路の同時離発着(オープンパラレル管制方式)の導入――の3つである。
 このうち深夜・早朝便の国内線はすでに解禁されたが、対応する国内空港がないので定期便は就航していない。今年の2月から週2便の枠で国際線チャーター便が就航した。
 現在羽田空港の新A滑走路は、北側への離発着は制限され、本格的に使用されていない。騒音問題があるからである。しかし、その点も徐々に解除されつつある。昨年の7月から新A滑走路の「左旋回」コースを部分的に認めた。羽田空港を北向きに離陸した旅客機が、左旋回して東京都大田区や神奈川県川崎市上空を通る飛行コースを朝だけ、中・小型機に限り認可した。新C滑走路でも北側に離陸した場合、騒音を考慮して、右回りに旋回する飛行コースに限られている。また、新A滑走路が、北側から着陸する「北進入」(南風時)コースも今年中の運用を目指している。
 この陸側にある新A滑走路の北側進入・北側離陸が可能になると、沖側にある新C滑走路と同じ条件になる。
 新A滑走路の北側での離着陸が制限されているので、北風時は離陸が新C滑走路に限られ、南風時の着陸が新C滑走路に限られてしまう。つまり、新A滑走路は南側からの離着陸しか基本的にはできない。つまり、羽田空港は平行する滑走路を2本もっているが、事実上は約1・5本分しかスロット(発着枠)を供用できていないのである。
 南側への同時離陸(南風時)、南側からの同時着陸(北風時)だけの実施ではスロット枠は増加しない。上空の「混雑緩和」にしかならない。北側への同時離陸(北風時)と北側からの同時着陸(南風時)は、騒音問題でできていない。しかし、これが全面解禁になると、スロット枠は昼間だけでも飛躍的に増加すると言われている。現在1・5本分しか利用できていない滑走路が、文字通り2本分の滑走路として使える。さらに、オープンパラレル方式の管制で運用効率のアップもあり、年間40万回を超えることも可能である。さらに深夜・早朝便が解禁になると驚異的数字になる。
 成田の平行滑走路が「暫定(2180m)」にとどまることは確実で、その発着能力は公称で「6万回」だ。現実は「2万回」飛ばすのに四苦八苦の状態である。
 そうした事情から国土交通省は、羽田の効率的運用と北側コースの全面解禁による首都圏のスロット増加に全力を挙げているのである。
 国土交通省としては、2002年にアメリカが要求してきたオープンスカイ(日米の航空規制撤廃)政策の実施が迫っており、スロット枠の増加は対米公約事項である。もはや成田は絶望的であり、羽田の全面的国際化以外に手はない。
 なお、オープンパラレル方式は、ICAO(国際民間航空機関)基準で、平行する滑走路が1000メートル以上離れていることが最低条件で、その他の整備条件も満たしている場合に認可される。ちなみに、成田空港は滑走路間が1000メートル以下で、同時離発着は無理である。

(3月23日) 政府・与党、羽田再拡張を提案へ(3/24日経1面)

 羽田、成田に次ぐ「首都圏第3空港」を建設する問題について政府・与党は新しい空港を建設するのは困難と判断、その代替案として羽田空港を滑走路の増設で再拡張する案を近く東京都など関係者に正式に提示する方針を固めた。新空港建設は都心部からの交通の便や採算性の面で問題が多いうえ、用地買収などを含めた完成までの時間がかかりすぎるとみているためだ。羽田の再拡張が実現すれば航空発着枠の大幅な拡大につながり、同空港の本格的な国際化にも道を開く。
 国土交通省は学識経験者や地方自治体の代表などで構成する首都圏第3空港調査検討会を28日開き、同省案を正式に提示する。
 首都圏第3空港調査検討会は昨年9月に発足、新空港の建設候補地を公募してきた。九十九里沖、木更津沖、西多摩地区、横須賀金田湾など13カ所が候補地に挙がった。検討会は各候補地について実現性などを調べ2002年3月までには最終案をまとめる考えだが、国土交通省が新空港建設は難しいと判断したため、羽田再拡張案を軸に検討が進む見通し。
 国土交通省が新空港の建設が難しいとの考えを固めたのは、周辺施設、道路、などに巨額の投資が必要な点などを考慮したようだ。
 羽田拡張案は東京湾沿いのC滑走路ではなくB滑走路と平行に新滑走路をつくる内容。この場合は多摩川の水系が乱れる恐れもあるため、桟橋方式の導入などが課題となる。新滑走路の長さは2500メートルで、現在は年間約28万回の羽田の発着回数を40万回以上に増やせる。建設費は1兆5千億円に達する見込みだ。

【本紙の解説】
 すでに日誌1月23日「首都圏第3空港」の【本紙の解説】で「首都圏第3空港の選定というが、当面の方策は羽田再拡張で決まりだ。工法も井ゲタ案が本命である」としてきたが、その通りに進行している。だが、今回注目すべきことは建設費を1兆5千億円と見込んでいることだ。  定期航空会社協議会の提案の再拡張案は「建設コストは6千億円から8千億円、工期は5、6年ですむとみている」となっており、東京都提案の桟橋方式は「工期は10年以内で費用は8千億〜9千億円に収まり、首都圏に新たな第3空港を建設するよりも6千億〜7千億円も費用を削減できると試算」となっていた。東京都の試算は、「全く新たな第3空港」ならば1兆5千億円前後かかるというものだったのである。。
 当時の運輸省航空局は羽田再拡張に難色を示していた。その理由の1つは「建設費用が半分で済んでしまう」ということ。官僚の利権問題と景気対策である。首都圏第3空港は関東圏最大のプロジェクトであり、建設費が半分になるのは容認できなかったのだ。そこで今回、羽田再拡張の建設費を倍以上に膨らませることで国土交通省の合意を取り付け、自民党・亀井政調会長、大手航空会社、東京都、大手ゼネコンなどを含むコンセンサスを作り上げたという顛末である。
 成田に続き、空港整備という巨大公共事業のデタラメさを改めて証明する事態だ。決して許してはいけない。

(3月23日) 空港公団、地域振興などで周辺市町村と協定(3/24千葉日報など)

 成田空港周辺の九市町村からなる「成田空港圏自治体連絡協議会」(会長・小川国彦成田市長)と新東京国際空港公団(中村徹総裁)は23日、「地域と空港との共生」を基本理念とする協定書を同空港内で締結した。
 協定書の内容は、(1)「地域と空港との共生」を基本理念に協力して地域の発展に努める、(2)同公団は航空機騒音等の防止に最善を尽くす、(3)同公団は空港運用での安全対策、飛行コース直下の対策に最善を尽くす、(4)同公団は周辺対策や地域振興策に協力する、(5)周辺市町村は空港建設・運用に関する同公団の基本方針の実現に積極的に協力する――の5項目。
 同公団と成田市は、現在の4000メートル滑走路が供用された1978年に、騒音対策に絞った協定書を締結している。
 成田空港では暫定平行滑走路の建設が順調に進み、今年秋には完成・試験飛行が始まり、来年初夏には供用が始まる中で、騒音対策にとどまらず、いまだ具体的な姿がみえていない地域振興策への同公団による支援についても、「空港づくりは地域づくり」をうたった共生大綱の基本理念に基づき、あらためて確認する狙いがあるとみられる。
 協定締結後に会見した小川会長は「暫定平行滑走路は来年初夏に開業できる見通しとなったが、空港によるマイナスの影響を最小限にし、地域振興などプラス面を最大にするために早急に解決すべき問題点が残っている。対策が後追いにならないためには周辺自治体と空港公団が連携を密にする必要がある」と今回の協定書締結の意義を強調し、「(空港運用による波及効果の)地域間格差の是正が積極的に推進される」との期待感を表明した。
 一方、中村総裁も「公団にとっても意義深いことで、問題への対策が後追いにならないよう万全を期したい」と話した。

【本紙の解説】
 この協定で周辺自治体(成田空港圏自治体連絡協議会)は公団の完全な下僕となった。いままで、騒音問題では少なくとも表向きは「住民の立場」に立ち、公団に航空機騒音等の防止を要求してきた。もちろん、「中間的立場」を装って、空港反対派切り崩しの先兵になってきたというのが本質ではある。 
 しかし、今回の協定は、「地域と空港との共生」と称し、公団から「地域振興」で援助をもらう代わりに、公団の空港建設・運用の基本方針に積極的に追従するという内容だ。公団とまったく同じ立場で空港建設そのものを推進する立場を公然と表明したわけである。
 成田空港地域共生委員会も、すでに今年1月から「プラスの創出への関与が必要」と称して「地域振興」(利権運動への参入)を唱え始めた。そのために運輸省と公団をパートナーとして共生委員会の構成員に加えた。
 今回の周辺自治体と公団の「協定」はこれにつづく反動的動きであり、絶対に見逃すことはできない。

(3月25日) 反対同盟主催の現地闘争に全国から1550人が参加

 天神峰、東峰地区での暫定滑走路工事が本格化している。3・25集会は、東峰神社の立ち木伐採実力阻止を宣言し成功裏に闘いとられた(詳細は本紙)。
 以下に「集会プログラム」「集会宣言」を掲載する。

【集会プログラム】
成田空港暫定滑走路建設阻止、土地収用法改悪阻止、軍事空港建設粉砕3・25全国総決起集会

■司会挨拶 小林 一夫
宮本 麻子
■開会宣言 伊藤 信晴
■基調報告 北原 鉱治
■特別報告 動労千葉
■反対同盟決意表明
団結街道封鎖と生活破壊を許さない 市東 孝雄
菱田廃村化攻撃粉砕の闘争報告 鈴木 幸司
婦人行動隊あいさつ 小林 なつ
暫定滑走路粉砕特別カンパのお礼と報告 鈴木謙太郎
■土地収用法改悪問題と裁判闘争報告 弁護団事務局
■暫定滑走路粉砕決戦アピール 萩原 進
■カンパアピール 鈴木加代子
■決意表明
 ●住民団体
関西新空港反対住民、北富士
反戦被爆者の会、解放同盟全国連
都革新・長谷川英憲、婦民全国協、「障害者」、山谷
反戦共同行動委員会、三里塚・木の根全国共闘、二期阻止全国共闘
 ●共闘団体
野戦病院、中核派、解放派、戦旗派、蜂起派
■ 集会宣言 郡司 一治
■閉会宣言・デモコース説明・ガンバロー三唱
*デモコースは小見川県道→東峰神社左折→青行団結の家右折→小見川県道→団結街道→現闘本部先まで約3キロ

【集会宣言】
 本集会は暫定滑走路工事強行を徹底弾劾する。政府権力による農地強奪―追い出し攻撃に対して断固たる闘争宣言を発するものである。
 運輸省・公団は暫定滑走路の11月完成のための突貫工事を強行している。3月8日には天神峰現闘本部北側でまたも団結街道のコースを無断変更し、これまでフェンスの外にあった一坪共有地を空港の敷地内に取り込んだ。4月冒頭に、小見川県道を封鎖し、東峰の生活区域に入り込む迂回道路の開通を強行しようとしている。東峰神社の立木伐採が切迫してきた。運輸省・公団、千葉県周辺自治体、航空・旅行会社に学者まで加わって「国内線需要喚起のための検討会」なるものが動き出した。
 徹底的に住民を敵視し、追い出そうとするこれらの嫌がらせは強制代執行となんら変わらぬ農民殺しである。敢然と迎え撃ち体を張って闘いぬく。
 扇国土交通相はサッカーワールドカップ期間中に羽田空港を国際線に開放することを発表した。これもまた住民を愚弄するものである。「ワールドカップのために暫定滑走路の完成を急ぐ」としたのは世間をあざむく嘘であり農家を追い出すための口実だった。怒りの火に油を注ぐものである。
 土地収用法の改悪案が閣議決定され国会に提出された。これは一坪強奪攻撃であり、住民運動つぶしの攻撃である。三里塚と沖縄闘争を一掃し、戦時土地徴発に向かう攻撃である。「被災者支援」に名を借りた軍用機の成田軍事使用と合わせ、断じて許してはならない。
 日本の長期不況、世界同時株安など解決不能の危機が到来している。農家切り捨て、労働者の首切りが激化するなかで、政府与党・官僚の腐敗が次々に明るみに出た。国会は反動化し土地収用法、教育関連六法など反動法案の成立強行が策動されている。反対同盟は農家追い出し工事に実力で立ち向かい、国会闘争も最先頭で闘う決意である。
 春から夏の攻防に臨戦体制をもって臨み、今秋10・7全国集会に総決起することを訴える。
  2001年3月25日
 三里塚芝山連合空港反対同盟

(3月25日) カナダ機が誤進入、成田空港一時閉鎖

 25日午後5時10分ごろ、成田空港に到着したバンクーバー発エアカナダ3便が、滑走路からまだ使われていない脱出誘導路に誤って進入し、進入禁止の標識灯3基を壊して停止した。このために午後5時11分ごろから同39分まで滑走路が閉鎖され、後続の到着機9便が羽田空港へ行き先を変更した。
 この脱出誘導路は4月19日から使われる予定で、入り口には進入禁止を示す赤い標識灯が5つ設置されていた。

(3月26日) 公団、東峰地区を訪問/暫定滑走路で県道の一部廃止(3/28毎日)

 新東京国際空港公団は26日、暫定平行滑走路の工事にともない、滑走路南端部県道「成田小見川鹿島港線」の一部廃止と代替道路への切り替えを4月2日昼から行うと成田市東峰地区の農家など9軒を訪問して通知した。
 廃止されるのは、暫定滑走路南端部に位置する同県道の一部約600メートル。公団は県道のトンネル化にともなう代替道路として、現県道より南側にふくらむ幅5メートル、片側1車線の切り回し道路を建設し、農耕車両向けの側道も併設。2002年5月20日予定の暫定平行滑走路供用後も農耕車両用道路として残す。
 東峰地区は暫定滑走路の南側で、現在反対派農家など9戸が居住・営農などしている。廃止される県道は同地区の住民にとっては生活道路で影響があるため、公団は26日、地区に地図を配布して理解を求めた。公団は「住民への影響を懸念し、供用1週間前に説明した。30日に改めて告知する」としている。

【本紙の解説】
 この小見川県道一部廃止と迂回道路開通は、暫定滑走路の工事が天神峰・東峰で本格化することを意味する。すでに迂回道路と現小見川県道をまたぐ形で空港内周道路の建設が進んで、巨大な建築物ができつつある。さらに、この迂回道ができると、今度は誘導路のジェットブラスト(ジェットエンジンの爆燃音)の防音壁が高さ13メートル、ビルの4、5階建ての高さでつくられる。軒先工事の極限状態が始まるわけである。
 暫定滑走路の完成予定は今年11月30日だが、公団は暫定滑走路の供用時期を前倒しするため、死傷事故を起こしてまで工事を急がせている。「10月中の工事完成〜年内飛行テスト〜来年5月連休前供用開始」の計画だ。
 う回道路の開通で暫定滑走路建設との攻防は熾烈になる。
 反対同盟は恒例の第一公園での花見会の前に現地闘争を行うことを決定した。
 以下、反対同盟の「お知らせ」を掲載し、多くの方々の参加を呼びかけます。

 「お知らせ」 三里塚芝山連合空港反対同盟
 3・25全国集会で明らかにされた小見川県道封鎖・迂回道路開通が、4月2日正午をもって強行されることが明らかになりました。
 これは暫定滑走路にともなう大規模な地域破壊であり、直接的にも、萩原同盟員所有の耕作地につながる生活道路の廃止と、市東同盟員宅の騒音激化をもたらします。
 この攻撃に対して、反対同盟は4月8日に現地デモに決起します。緊急ではありますが、多くの皆さんの決起をお願いします。
 この日はすでに団結花見の会が予定されていますが、花見はデモの後に予定どおり行いたいと思いますのでご了承下さい。

 《記》
■迂回道路開通粉砕・生活道路廃止阻止4・8現地デモ
 集合時間  4月8日午前9時
 集合場所  天神峰・市東孝雄宅

■団結花見の会
 開始時間  4月8日午前10時すぎ
 会場  三里塚第一公園(雨天の時は岩山記念館)

(3月26日) 「堂本知事」の成田空港問題かかわる関連記事一覧

○「成田、真摯に話し合う」堂本次期知事に聞く(3/27日経首都圏版)
 千葉県知事選に当選した堂本暁子氏は26日会見し、三番瀬埋め立て計画の白紙撤回を表明、成田空港問題について次のように表明した。
「30数年間、末広がりに難しくなった。最初に国が住民の了解を十分に得なかったので、あれだけの闘争があった。可能な限り真摯(しんし)に話し合いたい」

○羽田国際化「全否定せず」 堂本・新千葉知事(産経1面トップ)
 千葉県知事に当選した堂本暁子氏は26日、産経新聞とのインタビューで、羽田空港の国際化について、「全否定はしない」と述べ、羽田空港国際化に反対姿勢を貫いてきた沼田武・千葉県知事との姿勢の違いを強調した。国土交通省や、羽田の国際化を待望している航空会社も堂本氏に強く期待しており、千葉県から吹いていた強い逆風の向きが変わる可能性がでてきた。
 堂本氏は「すぐに賛成というわけにはいかない。ただ、長期的には『羽田―成田』の機能をどうしていくかという問題にいきつく」としたうえで、「羽田の国際化を全否定はしない。ここは沼田知事とは違う点だ」と語った。
 堂本陣営は、選挙中から羽田の国際化に対して「軽々しく同調できない」としながらも、「羽田が便利な県民もいる」などと一定の理解を示してきた。
 当面問題になりそうなのが、来年のサッカー・ワールドカップでの輸送対応だ。扇千景国土交通相は今月中旬の閣議後の会見で大会期間中、羽田空港への国際線乗り入れを開放すべきだとの考えを示した。沼田知事は「成田で整備が進んでいる暫定滑走路で十分対応できる」と反発していたが、同省は今年秋口には大会期間中の航空旅客の受け入れ態勢を固めたい方針だ。この件で、堂本氏のリーダーシップが最初に問われることになる。

【本紙の解説】
 堂本新知事は記者会見で空港問題に言及し、「可能な限り真摯に話し合いたい」などと語っているが、「千葉県知事」が言う「話し合い」とは、「平行滑走路推進」「農家追い出し」のための「話し合い」である。「市民派」「環境派」と称する新知事による切り崩しである。
 堂本新知事は自己PRで得々と次のように書いている。「1996年10月より98年6月まで新党さきがけ議員団座長として第2次橋本連立政権に参画」(本人の選挙むけのホームページ)。
 第2次橋本政権は、行財政改革など数々の反動政治を推進したが、なかでも最悪なのが97年4月の米軍用地特措法の強行だ。大田沖縄県知事(当時)による軍用地強制使用の署名代行拒否に対して、その権限を奪い、沖縄の基地撤去の願いを踏みにじった法改悪だ。その時、さきがけは「不法占拠状態になるのは見逃せず、法改正はやむなし」として、社民党の反対を尻目に参院本会議で自民、平成会、民主党・新緑風会、太陽党とともに賛成し、沖縄の傍聴団を逮捕させて強行成立させた。堂本はそのときの政権与党さきがけの議員団座長だった。
 さらに経歴をさかのぼると、1989年に社会党で参議院議員に初当選。1995年参議院比例区選挙では新党さきがけから立候補して、同党参議院代表などを務めている。この過程、連立政権与党の立場で反動政治の一翼を担ってきた。
 堂本の社会党時代に、社会党の右翼転換は極まり自衛隊合憲にいきついたことも忘れてはならない。その後堂本は、驚くべきことに社会党から保守・さきがけに転身(94年12月)し比例区当選となったのである。
 成田問題では、天神峰の敷地内農家(小川嘉吉・喜平)を直接切り崩した村山(自社さ)政権の政権与党として参画した。これは決定的な経歴である。つまり、堂本は過去の敷地内切り崩し攻撃に直接責任を負っている当事者なのである。
 さらに、国会では原子力発電所の立地を推進する法案や高齢者の医療費値上げにも賛成している。
 県知事選では自民党県連顧問の水野清が堂本を応援した。「無所属」を強調し、「市民派」「環境派」のイメージを売り出しているが、これらの経歴を見れば、およそ民衆の願いとは無縁の、これを踏みにじる政治遍歴で「実績」をあげてきた人物というべきだ。
 堂本新知事は会見で「最初に住民の了解をとらなかったことで、あれだけの闘争になり犠牲がでた」「いまからでもきちっと県の立場として話し合いをする必要がある」などとも語っている。いまも現に農民殺しが強行されているのに、まるで過去のことのような言い草だ。
 住民の生活を踏みにじって暫定滑走路の工事は続いている。民家や畑、道路が監獄のようにフェンスで囲まれている。民家上空40メートルのジェット飛行と軒先100メートル先の誘導路騒音、生活を破壊して追い出す暴挙が現に進行している。千葉県はその推進者の張本人だ。なにが「真摯な話し合い」か。
 もしも「真摯な話し合い」をいうなら、千葉県の責任で暫定滑走路の工事を即刻中止し、計画自体を全面的に撤回させよ! それが堂本が成田問題を語る「大前提」だ。いまさに行われている暴力的軒先工事の現実を批判もせず容認しておいて、一方で「話し合い」を云々すること自身が農民への屈服強要だ。それは国土交通省・公団と同じ立場なのである。「真摯な話し合い」とは地上げ屋の常套句である。
 堂本新知事は、まぎれもなく国土交通省・公団の最悪の手先だ。

(3月26日) 堂本知事に不安と歓迎(3/27朝日千葉版)

 知事の警備を担当する県警警備課は「公邸か私邸かは、本人の意向を尊重する」という姿勢。中山邦文同課課長代理は「堂本さんの成田問題に対する政治姿勢が分からないから何とも言えない。『土地収用します』と言い出したら、ゲリラは動き出すだろうし……。情勢に応じて考える」と話している。

【本紙の解説】
 千葉県警警備課課長代理は、成田空港は土地収用法に基づく事業認定が失効していることを理解していないかのようである。成田では土地収用法は100%適用できないのだ。また、行政的にも国土交通省、千葉県、公団も、建前としてはシンポジウムや円卓会議で「強制的手段はとらない」としている。
 しかし、千葉県警は土地収用法の適用による農地強奪を想定した警備を計画している。同課の課長代理という立場でいっているのだから、成田問題の法的関係、行政側の「約束」を知らないはずはない。したがって、国土交通省、公団、千葉県の成田空港問題での基本姿勢である農地強奪を警察として代弁したものにほかならない。

(3月27日) ベトナムへ初の直行便(3/28千葉日報)

 全日空とベトナム航空との共同運航による成田とベトナムの首都ホーチミンシティを結ぶ直行便の第1便が27日夕、成田空港を出発した。
 全日空は1998年に成田―香港線を就航。これと接続してベトナム航空が香港―ハノイ線を就航させていたが、日本からベトナムへの直行便は初めて。週2便の運航。使用機はB777―200ERで運航は全日空が行うが、ベトナム航空の客室乗務員が乗務してサービスをつとめる。

【本紙の解説】
 ベトナムへの成田直行便は2000年の秋から日航がベトナム航空との共同運航ですでに就航している。これはすでに就航していた関空―ホーチンミンを成田発着にしたもの。したがって、この記事は全日空として初めてのベトナム直行便というもの。

(3月27日) 新規路線案に各社慎重姿勢/成田空港国内線検討会(3/28毎日)

 国土交通省は27日、成田空港の国内線の充実策を話し合う「成田空港国内線充実対策検討会」の第2回会合を開いた。
 同省は、前回2月の会合と同様、採算に合いそうな新規路線案を示したものの、航空会社などから「旅客需要は慎重に考えるべきだ」との意見が相次いだ。
 成田空港では来年5月の第2滑走路の供用開始で、国内線の増便枠が約4倍に増える。東の国内線の玄関口にする狙いもあり、同省が関係者を集めた検討会をつくった。
 前回会合で同省は、新規開設が17路線で可能との案を示したが、年間旅客数を参考にした基準は単純にすぎるとして、同案は見送られた経緯がある。27日は、同省が旅客の需要を控えめに見積もった新路線案を改めて示したが、「予測の前提条件が不明確」「羽田空港の国内線と競合しかねない」との意見が航空会社からでた。具体的な路線案は公開されなかった。次回会合は5月に開かれる。

【本紙の解説】
 すでに、この問題は日誌2月6日付の「成田空港 国内線4倍目指す」の項目で解説したが、その通りに進行している。
 成田空港での国内線で年間2万回の発着は不可能な数字である。国土交通省と公団は暫定滑走路での発着回数を何が何でも大きくさせ、その騒音で敷地内外の農民をたたきだそうとしている。そのことに、暫定滑走路を当初計画の2500メートルに延長する命運を託している。「成田空港国内線充実対策検討会」はこの国内線を各航空会社に飲ませる役割をもった最悪の反動的機関である。
 しかし、航空会社大手にとっても、この国土交通省の要請は大変な押しつけである。米国のメガキャリアとの航空路争奪戦を迎え撃ち、なおかつ「政治的赤字路線」を請け負うような余裕はない。
 そのため、国土交通省は国内線需要のねつ造のために、JTBなどの観光業界、地方自治体、学者を動員し、成田空港国内線充実対策検討会をつくった。
 また、航空会社には羽田のスロット枠拡大にともなう割り当てと抱き合わせて暫定滑走路の就航を割り当てようとしている。羽田は2002年7月に羽田のスロットが702回から52回増えして754回になる。この52回分のスロットは黒字が確実なドル箱路線である。国土交通省はこれと抱き合わせて、暫定滑走路の赤字路線の就航を強要しようとしているわけだ。
 この国土交通省の反動的役割を民間的装いで担っているのが成田空港国内線充実対策検討会である。即刻解散すべきである。

(3月28日) 羽田再拡張/B滑走路平行案重点に/国土交通省検討方針(3/29読売)

 国土交通省の首都圏第3空港調査検討会の第4回会合が28日、開かれた。会合では国土交通省が、羽田空港を再拡張する場合の手法として、B滑走路に平行な滑走路を空港南側に新設する「B滑走路平行案」を提示し、検討会として重点的に検討していく方針を決めた。
 国土交通省では、羽田の再拡張ではなく、他の地域に新空港をつくる案も含めて、来年度中に2、3案まで絞り込みたい考えだが、当面の航空需要の増大には、アクセス整備などにかかるコストが割安な羽田の再拡張で対応し、新たな空港の建設は長期的な課題とされる可能性がでてきた。
 国土交通省は、実際に航空機が離着陸した場合の発着能力をシミュレーションし、羽田空港の1時間あたりの処理能力(現行着陸28回、離陸32回)を離着陸各40回に拡大できるB滑走路平行案を示した。
 具体的には、船舶の運航に悪影響を与えないように、滑走路の位置を多摩川寄りに移動するなどした4試案があり、いずれも滑走路は約2500メートルで、滑走路の高さを現在の滑走路よりも15〜20数メートル高くする。これにより離着陸する航空機と航行する船舶が近接する危険を回避する。
 これに対し、海運会社で組織する日本船主協会の生田正治会長(商船三井会長)は28日の会見で、「安全性の確保を最優先すべき」と主張した。
 検討会では、民間航空会社で組織する定期航空協会と東京都が提案している「C滑走路平行案」や、一般公募で集まった15案の概要も説明された。「C滑走路平行案」の滑走路の長さは約3500メートルだが、国土交通省のシミュレーションでは、B平行案と同程度の処理能力の確保は困難で、滑走路上などで航空機が渋滞して欠航や遅れがでやすいとされた。

【本紙の解説】
 そもそも、応募方式での候補地検討ということに問題がある。これは国土交通省の空港位置決定の責任を回避するための演出であった。この調査検討会で来年度中に4カ所程度に絞り込み、その後国土交通省で比較検討し候補地を決定する手はずで、最終決定まで数年かかる予定であった。
 しかし、この調査検討会で聴聞会は開いたが、羽田拡張以外の候補はすべて振り落とされた。理由は「羽田拡張以外の候補地はアクセスの整備と航空管制から突っ込んだ提案でない」というもの。応募資格は地方自治体や経済団体、研究会であった。空港へのアクセス整備や航空管制システムは国の占有的課題であり、応募案に「突っ込んだ提案」がないのは当たり前である。それを地方自治体などの応募方式で決めること自体に無理がある。
 国土交通省の無責任な応募方式を破綻させたもう一つの原因は、成田の平行滑走路が「暫定滑走路」に止まり、現在の首都圏の航空需要に対応できず、「お荷物」になることがはっきりしたことだ。国土交通省は暫定滑走路の「軒先工事」で地権者をたたきだせると踏んでいたが、その狙いが完全に粉砕されたのである。

(3月28日) 全日空、航空機導入を再開(3/29日経)

 全日空は28日、2002年度を最終年度とする中期経営計画を見直すと発表した。新規機材の導入凍結を改め、B767―300型機を新たに9機導入する。来年に予定される成田空港暫定滑走路の供用開始や、羽田空港の発着枠拡大に対応する。
 B767―300型機9機は2002年度に導入する。投資額は明らかにしていないが、800億円程度となる見通し。2003年度中にはさらにA320型機も導入する考えだ。同社は1998年3月期に無配に転落してから経営の合理化を急いでおり、新機材を導入するのは2000年6月以降になる。
 機材導入に合わせ老朽機材を中心に合計18機を売却する計画。新機材による運送能力の向上や整備費用の削減により、全日空は「経常利益ベースで年間150億円の増益要因になる」と見ている。

【本紙の解説】
 成田暫定滑走路と羽田の発着枠拡大に対応し、全日空が中型機B767―300型機の導入を決めたとの報道だが、暫定滑走路ではやはりあまり使われないようだ。
 ひとつは成田暫定滑走路の国内線は採算割れで全日空としては乗り気ではない。したがってアジア近距離便のための新規機材の導入という性格が強い。
 また、アジアの近距離便は羽田深夜・早朝のチャーター便の就航で明らかになったように、成田より羽田の方が人気が高い。来年度は、そのチャーター便枠が当初計画(1時間に16回の発着)に近づき飛躍的に増大する。羽田での国際定期便就航も時間の問題となり、全日空としてはそれに対応したものといえる。
 全日空の営業実績をみると、羽田から福岡、関空(伊丹)、新千歳などの国内幹線をのぞく地方路線(観光中心)は不振であり、羽田発のアジア近距離便に社運を賭ける以外にない。また、整備工場も成田にはなく、羽田にある。
 つまり、羽田発アジア近距離便対応が狙いの新機種導入なのである。

(3月28日) 220戸が補償対象に/成田周辺都市計画案が可決(3/29読売、毎日、日経千葉版)

 県都市計画審議会は28日、成田空港周辺地域の土地利用と航空機騒音の未然防止を図る目的で、県から提出された28議案を原案通り可決した。
 その結果、特定空港航空機騒音対策特別措置法(騒特法)に基づく航空機騒音障害防止特別地区(騒音が80W・うるささ指数以上)と同防止地区(騒音が75W以上)が決定した。成田市と芝山町、多古町、横芝町にわたる約1935ヘクタールが、航空機騒音の影響が甚大な特別地区に決まった。下総、大栄、松尾の3町の多くと横芝町や松尾町の一部も含まれる区域が防止地区である。
 今後、特別防止地区では住宅や学校、病院などを地区内に新たに建てることが原則としてできなくなり、すでに地区内にある住宅約220戸については、移転を申し出れば、空港公団に実勢価格で買い取ってもらえる。防止地区では新たに住宅などを建設する場合、防音構造が義務付けられる。

【本紙の解説】
 昨年の6月に県がまとめた騒音対策基本方針が千葉県都市計画審議会で可決された。特別防止地区は住宅環境に適さず、新たな住宅建築などを原則として禁止。移転する場合は補償する。補償の有無で集落を分断しないように80W以下の場合でも防止特別地区に新たにくり入れたものである。
 県都市計画審議会が決定したので今後、各市町村で具体的な都市計画が策定される。そうすると移転対象はさらに広がる。都市計画が策定されるので、都市計画法に基づく土地収用法適用も可能になる。そのために都市計画法では、移転に反対でも強制的に移転攻撃が襲いかかる。騒特法自体には移転を強制する力はない。あくまで新築禁止などの拘束力があるだけである。しかし、都市計画法の適用で220戸の住民はその意志にかかわらず強制移転攻撃にさらされる。
 空港は騒音をたてに周辺一帯に一大無人地帯をつくりだす。そうして旧来の村落を解体していく。空港との共生はありえない。

(3月29日) 「山林も買い取りを」/騒音対策委で成田市長(3/30東京、千葉日報)

 新東京国際空港公団が成田空港周辺の騒音の影響を受ける千葉・茨城両県の15市町村の自治体・地域団体に環境対策などを報告する第28回「新東京国際空港騒音対策委員会」(委員長・永井隆男公団副総裁)が29日、同空港近くのホテルで開催された。
 会合では公団から、暫定滑走路に絡む住宅防音対策について、対象となる1328戸のうち約6割の782戸を助成、移転補償は対象の390戸のうち299戸に実施を完了したと報告があった。
 出席した小川国彦・成田市長は、来年初夏からの暫定平行滑走路供用を踏まえ、騒特法に基づく防止特別地区内のすべての土地を買い取るよう空港公団に要望した。現行の法制度では買い取れない山林等の資産価値低下を懸念する地元農家の声を受けたもので、空港公団は「基本的にはできないが、個々の事情もあるので十分相談させてもらいたい」と含みを残した。
 小川市長は騒防法の第1種区域は、当初計画より北側に800メートル位置をずらした暫定滑走路計画に対応していないとし、同区域の線引きの見直しを求めた。
 また、相川勝重・芝山町長が要望した集団移転後の歴史的建築物の保存では、「(保存後の計画など)町の考えを聞いて対応する」と前向きに答えた。
 このほか各部会からは航空機の落下物・事故対策、空港周辺道路整備などの地域振興への要望が相次いだ。

【本紙の解説】
 同委員会は1966年の空港建設の閣議決定で設置が決められたもので、72年の初会合以来、ほぼ1年に1度、3月末に開催されている。公団による騒音被害の住民対策であり、地方自治体と住民から意見聴取を行う会合である。
 暫定滑走路の移転補償は対象の390戸のうち299戸に実施を完了したと報告されているので、残りの戸数は91戸である。昨日の県都市計画審議会では暫定滑走路の移転補償の特別防止地区は220戸となっている。これは、騒特法の線引きで集落を分断しないように集落単位で線引きしたことで拡大したものか。
 いずれにせよ空港周辺の無人化・廃村化はいっそう促進される。

(3月29日) 韓国の仁川国際空港開港(3/30朝日など全紙)

 仁川(インチョン)国際空港が29日、開港した。24時間離着陸が可能な国際線専用空港で、4000メートルの滑走路を2本もち、金浦空港に代わる韓国の玄関口になる。金浦空港は国内線用となる。
 仁川空港は北東アジアの国際線の乗り継ぎ拠点「ハブ空港」を狙う。新空港建設ラッシュのアジア各国のなかでも、その規模は突出している。仁川を中心に3−5時間の飛行時間圏内に、100万人都市は43カ所。また国際線着陸料を30万円程度に抑え、成田、関空の約3分の1。ソウル便乗り入れの日本国内の空港は19空港で計298便。日本から韓国への観光客に加え、ソウルを乗り継ぎ地点として利用する乗客が増える傾向にある。成田発着の国内線は4路線。今後仁川空港の国際線ネットワークが充実すれば、成田発着の国際旅客は吸収されかねない。
 しかし、韓国内では国内線と国際線の乗り継ぎが不便になることへの不満もでている。新空港の国内線は釜山が1日3往復、済州島が週2往復だけ。地方に住む人たちがソウル経由で海外に行く場合、金浦空港から約30キロ離れた新空港まで移動しなければならない。このため、地方に住んでいる人はソウル経由を避け、成田や関空経由で米国に向かうのではないかといわれている。

【本紙の解説】
 仁川空港の開港で一番打撃を受けるのは関空である。関空は国内線と国際線が共用で、地方から乗り継ぎで海外にいけるの便利さが「売り」の空港である。しかし、着陸料の高さもあり国際路線のネットワークが不完全で、乗客が少なく、路線自体も採算割れで撤退が相次いでいる。仁川開港で関空の経営的展望は断たれた。
 成田も安穏ではない。いままでは米国東海岸からアジア大陸への直行便は無理であり、途中給油していた。その給油基地は米国西海岸であり、ハワイ、成田であった。しかし、B747−400型機など、長距離飛行が可能な航空機の登場があり、アメリカ東海岸からアジア各国への直行便が可能になりつつある。ちなみに、98年に開港した香港国際空港の到着の第1便は、キャセイパシフィック航空が運航する航空史上初のニューヨーク―香港のノンストップ便であった。成田のスロット枠の限界と着陸料の高さで、アメリカ東海岸から成田をパスしてアジアという直行便は、すう勢的に増大している。仁川空港の出現はこの傾向を決定的に促進する。
 これ以上に問題なのが、仁川空港と日本の地方空港の路線である。成田と関空を除くと17の地方空港が仁川空港とつながる。そのうち日本側の航空会社が運航しているのは日本航空の小松、広島便のみ。残りはすべて韓国の大韓航空とアシアナ航空。仁川空港で国際線との乗り継ぎ便が整備されれば、日本国内より便利な空港になる。
 皮肉にも、成田と羽田の不便さと同じことが、韓国の仁川と金浦間にある。仁川空港には韓国内の国内線は少なく。また金浦―仁川間のアクセスは鉄道整備が遅れ、高速道路だけだ。仁川空港は韓国内のハブ空港というより、日本の地方空港から海外へ行くのに便利なハブ空港である。
 これで成田空港の国内線を充実させ、「ハブ空港」として強化するという計画は全面的に破産したといえる。

(3月31日) 芝山鉄道一坪用地解消へ協力を要請(3/31千葉日報)

 芝山鉄道建設を推進している芝山町の住民団体「菱田の明日を考える会」(大木敏夫会長)は30日までに、同鉄道予定ルートにある一坪用地の解消を求める要望書を所有者に郵送した。
 同鉄道は一坪用地を迂回する暫定ルートで来年秋の開業を目指し工事中だが、同会では鉄道の安全性や地域の将来を考えて一坪解消に協力を呼びかけている。
 また、同会では同鉄道の町中心部への延伸とJR総武線への接続を目指して今後も活動する。

【本紙の解説】
 木の根の一坪共有地の解消は「鉄道の安全性や地域の将来」のためではない。横風滑走路の建設のためである。暫定滑走路が暫定滑走路にとどまり、国際空港として例を見ない無様な姿になることは明らかであり、その取り戻しのために公団は横風用滑走路の復活を狙っている。そのために、今度は鉄道の「安全性」をいいだした「菱田の明日を考える会」の運動に乗り、一坪共有地の解消を狙っている。ただし、「菱田の明日を考える会」も見返り要求のみか目的である。純然たる政治的利権獲得運動であり、「安全性」云々は取って付けた話だ。

 

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