SANRIZUKA 日誌 HP版   2001/01/01〜31      

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 2001年1月

 

〔週刊『三里塚』編集委員会HP部責任編集〕 

                                             週刊『三里塚』
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(1月3日) 公団総裁、地元農家訪問 (1/4産経)

 公団の中村総裁は3日、東峰地区の反対派農家など4戸を訪問した。新年のあいさつを兼ね、滑走路建設の理解を求めた。
 中村公団総裁が反対派農家を集中的に訪問するのは今回で3回目。この日は午前8時半ごろから、用地交渉担当の公団職員が同行し、島村昭治さんや萩原進さんなど計4戸を訪問した。

(1月4日) 公団総裁定例会見/暫定滑走路供用前倒しも

 公団の中村総裁は4日、年頭記者会見を行った。(1)暫定滑走路については「今年の11月に完成、来年5月供用開始の予定を前倒しして実現するように目指す」との方針を明らかにした。(2)当初予定の2500メートル滑走路の完成についても「1日も早くめどをつけたい」として今年の大きな課題とした。(3)アジア各国で大規模空港が建設される状況については「公団も、特殊法人のあり方が見直される中でハードと経営体質両面で改善を図り、競争力を強化する」と言明し、税関業務の一元化するIT(情報技術)導入も研究すると明らかにした。(4)さらに、3日早朝、東峰地区の反対派農家4戸を年賀のあいさつに訪問したことを明らかにした。(5)東峰神社の立ち木については「まだ、対応を検討していない。もう少し先でいいのではないかと」と述べた。

【本紙の解説】
 暫定滑走路の供用開始の前倒しは、新たな攻撃の開始である。供用開始の前倒し計画は東峰神社の立ち木伐採のためである。立ち木伐採は航空法による緊急性を口実とする仮処分でやろうとしている。横堀要塞の鉄塔破壊と同じやり方である。横堀要塞は78年3月26日開港予定の約2ヶ月前の2月6日であった。立ち木の伐採を早めておかないと、W杯開催と一期開港日に合わせた5月20日に 間に合わなくなるからである。
 中村公団総裁は立ち木の伐採をまだ検討していないといっているが、そんなことはない。立ち木のために、暫定滑走路は1740メートルの滑走路になってしまう。2200メートルでも使い勝手が悪いと評判なのに、さらに悪くなり、実質的に国際線には使用できなくなる恐れすらある。「順調」といっている工事の進行とは裏腹に、東峰神社の立ち木問題は暫定滑走路が使い物になるかならないかの大問題なのだ。公団としては、暫定滑走路建設における最大の問題として、昨年来、検討に次ぐ検討を続けている。その「解決策」が前倒しの供用開始計画である。立ち木伐採のための時間をとるということだ。
 東峰神社の立ち木伐採を巡る攻防は、2001年の三里塚闘争の最大の闘争課題である。
 公団総裁は、羽田空港の国際化とアジア各国で相次ぐ大規模空港建設、さらに暫定滑走路が暫定滑走路にとどまってしまうことによる成田空港の経営的危機を表明している。成田空港の国際空港としての位置の地盤沈下は不可避である。

(1月8日) 反対同盟が新年の旗開き

 反対同盟は1月8日、成田市内のレストランで新年旗開きを開催、全国から210人が集まり団結を新たにした。このなかで北原鉱治事務局長は、暫定滑走路阻止決戦の勝利性を確信しつつ、土地収用法改悪攻撃との闘いに全力をあげると表明した。
 建設省(国土交通省)が推し進めてきた土地収用法改悪策動は、三里塚闘争35年間の運動の成果を解体する攻撃である。三里塚では現在は事業認定の失効(期限切れ)が確定したので、同法は適用できない。しかし、土地収用法改悪は、三里塚闘争が全国の住民運動の中に生み出した成果と民衆的権利を根絶やしにする攻撃であり、三里塚闘争を闘う者としては絶対に見逃すわけにはいかない。
 反対同盟は、通常国会での法案通過を阻止するため、国会闘争の先頭に立つ決意を明らかにした。以下は旗開きで発せられた2001年の闘争宣言である。反対同盟員各氏の発言は本紙参照。

《2001年闘争宣言・三里塚芝山連合空港反対同盟》

 34年間不屈に闘い続けてきた三里塚闘争も21世紀に入りました。反対同盟は意気軒昂として新たな時代を迎えたことを深い歓びとし、二期阻止―空港廃港へとさらに前進します。
 農民殺しの航空政策はものの見事に破産しました。暫定滑走路計画の発表と軒先工事で予定地から農家を追い出そうとした政府権力の思惑(おもわく)は粉砕されました。昨年表面化した羽田空港国際化の動きは、平行滑走路(2500メートル)が最終的に行き詰まり、航空政策が断崖絶壁においこまれたことを象徴するものです。
 しかし政府・運輸省は、ここに至ってもなお二期工事を断念しません。そればかりかこの通常国会で土地収用法を改悪しようとしています。収用法改悪は、戦時土地徴発の先取りであり有事法制・改憲攻撃そのものです。同時に一坪共有地や現闘本部を強奪する三里塚闘争圧殺攻撃です。これによって反対同盟を叩きだし暫定滑走路を延長して、成田に2本目の4000メートル級軍用滑走路を造ろうとする攻撃なのです。
 反対同盟は、土地収用法を改悪する通常国会に対して断固闘いを挑みます。さらに天神峰団結街道廃止と東峰神社の立ち木伐採を実力阻止し暫定滑走路を粉砕します。中村公団総裁の敷地内農家への侵入は怒りの火に油を注ぎ込みました。

財政危機と長期不況は深刻さを増し、自公保連立政権は混迷の度を深めています。政府と大資本は、リストラと大増税、社会保障制度の改悪で矛盾を働く者にしわ寄せして延命を図っています。三里塚は戦争と圧制を断ち切る人民の闘いの砦です。沖縄、北富士、関西との絆をさらに強め、動労千葉を始めとする戦闘的労働者と連帯してさらに不屈に闘います。
 反対同盟は本日から臨戦体制に入ります。土地収用法の改悪を阻止しよう。天神峰団結街道を守り抜き、東峰神社立木伐採を阻止しよう。軒先工事と対決し生活と権利を守り抜こう。3・25全国集会に総決起することを訴えます。
2001年1月8日

(1月9日) 成田市円卓会議 成田駅周辺整備などを提言(1/9千葉日報)

 成田市円卓会議(座長・小川国彦成田市長)は、これまでの活動の成果の報告を提言の形で公表した。同会議は昨年1月から発足し、成田市内の各種団体からの意見聴取を皮切りに、空港関係者による講演会や騒音下住民との意見交換など9回の会合を開催。一応の筋目として提言をまとめた。
 提言は「国際空港都市としてのまちづくり」「騒音地域の対策」「地域の振興・『なりた百然郷構想』の推進」「空港問題の解決」の4項目で、それぞれ具体的な事業が掲げられている。円卓会議では今後、各事業を国、県、空港公団などの要請先を分けて提出する。
 成田市では、提言がまとまったことで円卓会議を解散することなく、継続して会合を開いて活動していくという。
 主な事業内容は、@JR・京成成田駅周辺地区の整備、A広域的な観光スポットの誘致・整備、B成田空港の国内線の充実、C騒音対策の拡大、D成田高速鉄道の事業化、E空港圏放射・環状道路の整備、F東峰地区の用地問題の話し合い解決に向けた最大限の努力と2500メートル平行滑走路の早期完成など

【本紙の解説】
 これは、すでに12月11日に発表されたものを千葉日報が改めて記事にしたものである。
 成田市円卓会議は2000年1月に発足したが、当初は「毎月2回集まって、空港の用地問題の解決と空港を核とした街づくりを話し合う。そのために空港反対派との交渉も視野に入れて活動するという」とう触れ込みでつくられた。また「暫定滑走路が着工し、当初計画滑走路(2500メートル)に延長できるかどうかが今後の焦点になることから、地元自治体として態勢づくりに乗り出した」と見られていた。具体的には「未買収用地の解決、よりきめ細かい騒音対策、騒音地域の農業振興策、空港周辺の道路整備、JR成田駅前の再開発」などと報道されていた。
 つまり、敷地内農民と地権者への切り崩しを成田市が先頭に立って行うというものだ。しかし、反対同盟がこうした市の目論みを暴いて反撃、同会議の目的は完全に阻まれた。その結果、円卓会議は見返り事業要求団体としての性格を強めている。
 今回の提言内容は国、県、公団に「金をだせ」と要求しているにすぎない。成田市をはじめとした周辺自治体の“たかり”体質には、いまさらながらあきれるばかりだ。

(1月12日) 羽田空港国際便解禁は2月中旬(1/13日本農業新聞)

 国土交通省は12日、羽田空港での国際便解禁について、当初予定の2月1日が同月半ばにずれ込むとの見通しを明らかにした。出入国手続きに必要な体制準備が間に合わないためで、担当当局との協議がまとまり次第、解禁日や運航方針を航空会社に示す。

【本紙の解説】
 国土交通省(当時の運輸省)は羽田空港の深夜・早朝の国際便解禁を急ぐあまり、出入国手続きを統括する法務省との打ち合わせなしに「2月1日」と公表してしまったのである。運輸省が、千葉県に対して羽田国際化を「承認」させたことに続いて、「追撃」的に早期解禁を公表した「勇み足」ということである。

(1月14日) 熱田派が旗開き(1/15各紙)

 三里塚芝山連合空港反対同盟熱田派は14日、横堀農業研修センター(元労農合宿所)で旗開きを行い60人が参加した。あいさつした石井武世話人は「気持ちの上では暫定滑走路を阻止したいが、来年の旗開きの時には頭上を飛行機が飛んでいるだろう。しかし中途半端に賛成することは、命のある限りしないことを約束する」と述べた。また柳川世話人は「空港への反対勢力が少なくなったが、開発や豊かさ、発展に伴う社会問題が凝縮されているのが三里塚。それをどう正すのかという重要な使命がある」として暫定滑走路阻止への変わらない姿勢を強調した。

【本紙の解説】
 脱落派の敗北主義と無責任な体質が出ている発言である。「空港反対勢力が少なくなった」と他人事のように言っているが、空港反対派の農家が減少したのは、熱田派が空港反対闘争から脱落し、政府との話し合いであるシンポジウム・円卓会議で「平行滑走路建設」を承認(!)し「闘争終結」を宣言したからである。これでシンポ・円卓会議に参加したほとんどの農家は反対運動を続けられなくなった。
 あのとき、絶対反対ではらちが明かないから「対案を出す」と称し、闘争の基本的立場を捨てたのは熱田派自身だ。その結果、熱田派傘下の支援党派はおしなべて三里塚から撤退、みずから党派としての衰退・壊滅も招いた(これは党派の責任)。
 「反対したいが、飛行機は飛ぶ。賛成しないことは約束する」という発言は、以上のような経過を無視した無責任と敗北主義である。また、三里塚闘争の営々たる成果を一掃するような土地収用法改悪案が通常国会に提出されるというのに、一言の反対もないのはどうしたものか。
 暫定滑走路の工事が「予定通り」進行していることは事実だ。しかし、東峰神社の立ち木問題など抵抗手段はまだまだある。しかも、暫定滑走路は熱田派も含む未買収地と神社の影響で実質1700メートルしか使えない。天神峰現闘本部や一坪共有地の影響も深刻で、およそ国際空港としては使い物にならない事実が明らかになった。闘いはまさにこれからなのだ。
 結論。熱田派はシンポ・円卓会議の敗北と裏切り(闘争終結宣言)を自己批判し、立ち木伐採の実力阻止を断固掲げるべきである。そうすればかつての身内(石毛・元熱田派事務局長など)から闘争継続を非難されるいわれもなくなる。また、反対同盟が掲げる「空港廃港」のスローガンは、35年にわたる政府の農民無視に対する根本的な批判である。ここに三里塚闘争の神髄があることを改めて銘記すべきである。

(1月15日) 国土交通省、土地収用手続き迅速化(1/16読売千葉版)

 国土交通省は15日、公共事業用地を迅速に収用するため、次期通常国会に提出予定の土地収用法改正案の原案骨子を発表した。旧建設省の研究会が昨年末にまとめた提言を踏まえ「土地収用法の一部改正に関する試案について」をまとめた。29日までに国民の意見を受け付けた後、改正案の作成に取りかかるとしている。

【本紙の解説】
 法案の骨子は研究会提言をそのままレジュメ化し、図表化したものである。
(1)事業認定手続について
 (1)事前説明会の開催の義務付け、(2)幅広い意見聴取のための公聴会の開催の義務付け、(3)事業認定の中立性を担保するための第三者機関の意見聴取、(4)公正の確保と透明性向上のための事業認定理由の公表――の4点を述べている。
 その理由としては「事業の公益性に関する透明性・公正性・合理性を確保するための新たな手続の導入 」としている。しかしこれは、事業認定概念の拡大と収用手続きと収用審理採決のスピード化のためである。とりわけ収用手続きの迅速化は驚くべき反動的手法である。
(2)収用手続について
 (1)権利者が多数の場合等の土地・物件調書作成の特例の創設、(2)審理の円滑かつ合理的な遂行のための代表当事者制度の創設、(3)現金書留郵便の活用など補償金払渡方法の合理化、(4)収用委員会の審理における事業の公益性に関する主張内容の整理
 以上の4点をあげている。すべてが「権利者が多数の場合」を想定した改悪である。一坪運動で権利者多数の場合は、書類作成の特例で「立ち会い、押印の義務」がなくなり、審理では全員の発言ができなくなり、補償金支払いもこれまでの「先補償、後収用」の原則を破棄、本人への手渡しでなく現金書留郵便でOKとなる。また、収用審理では、当該事業の公共性の存否をめぐる論議を排除する方針。審理では補償問題以外は扱わないということだ。公共事業として認定されたならば、地権者の合法的抵抗手段はなくなるのだ。
 これを国土交通省は「適正な手続により公益性が認定された事業について、裁決手続の合理的かつ円滑な遂行の確保 」と言っているのである。
 また、同省はインターネットなどで2週間公表、「国民の意見を受け付けた」として「改正案の作成に取りかかる」としている。このやり方は上記の「透明性・公正性・合理性を確保」と同じだ。法案骨子の事前「公表」をもって、国民全員が承認したことにするというのだ。
 三里塚闘争の名において、土地収用法改悪を絶対に許してはならない。反対同盟の旗開きは、収用法改悪阻止第一派闘争となった。さらに、全国の仲間に広く呼びかけ、対国会闘争の陣形を強化しよう。

(1月16日) 成田空港、国内線対応ゲート整備進む(1/16読売千葉版)

 成田空港で、国内線の乗客が国内線ビルから直接乗り込める発着ゲートの整備が進められている。暫定滑走路の完成で国内線需要に対応するためで、来年秋に運用開始の予定。国際線の陰に隠れて軽視されがちだった国内線の乗客対策がようやく一歩前進する。いままでは国内線ビルから離れて“沖止め”された航空機に乗るため、バスに乗ることを強いられていた。搭乗に20分以上もかかることもあった。
 暫定滑走路の完成で国内線は年間約5千回発着から約2万回に増える予定。便数が増えることで、県内や茨城県などの近隣からの利用者が見込まれ、こうした観点からも“国内化”の取り組みが求められていた。
 整備される発着ゲートは、第2旅客ターミナルビル南側にある国内線ビル近くの4ゲートで、うち2ゲートは新設される。総工費40億円。

【本紙の解説】
 暫定滑走路の国内線需要の最大限は年間1万回発着であり、現実的数字としては7500回である。これは本日誌の12月18日の項で解説した。
 今回の記事で「県内や茨城県などの近隣からの利用者が見込まれ」とあるが、見通しはお寒い限りである。県内といっても千葉市以西の総武線沿線や常磐線沿線の人は羽田空港の方が近い。茨城県も鉄道は東京につながっているので、成田はむしろ遠いのである。車で近い部分は成田に近い利根川沿いの市町村ぐらいか。
 暫定滑走路の利用についてはテレビで「乗り入れ競争激化」と報道されたが、実は国際線の需要(中型機以下の近距離線)は数えるほどしかなく、国内線を年間に2万回離発着させることで採算を取ろうとの算段だ。しかし、国内線もこの有り様ではどうにもならない。伊丹空港の存続ゆえに関空の需要が一向に伸びないのと同じ運命になる。

(1月16日) 羽田国際便、来月16日解禁(1/17各紙)

 国土交通省は16日、羽田空港の深夜・早朝時間帯を利用した国際チャーター便の運航体制について発表した。CIQ(税関、出入国検査、検疫)の要員体制に制限があるため、発着は午後11時台と午前5時台に限り、250人程度での旅客機で週2往復を上限に運航を認める。これで運行開始は予定より半月遅れの2月16日からとなった。
 CIQ要員が宿直体制をとるため、運航日は出発便(午後11時台)と到着便1便(翌日午前5時台後半)をペアで設定し、このペアを週2回実施する。CIQ要員が拡充される見込みの2002年度まではこの運航パターンをとる。
 旧運輸省では昨年末、羽田空港の国際旅客ターミナルの容量から、午後11時から午前6時までの1時間あたり出発・到着(計16回)それぞれ400人の旅客受け入れを可能としていた。しかしCIQ体制の増強が十分にできず運航に大幅な制約がついた。
 大手航空会社は「今回の内容では効率的な運航を行うには十分とはいえない」としている。

【本紙の解説】
 運輸省は現在の羽田空港の国際線ターミナルの建物の容量から1日16回の発着が可能だとしていた。しかし、税関、出入国管理、検疫の英語の頭文字を取ったCIQ体制と呼ばれる業務に関わる人の問題をまったく考慮に入れなかった。財務、法務、厚生労働など各省との折衝・協議を無視して、1日16回の発着の運航を計画し発表していた。35年前の富里空港や成田空港の位置決定で、地図上に線を引くだけで、そこで働く農民とその生活をまったく無視した歴史と共通する。成田の暫定滑走路も、目の前で生活する地権者農民を無視して建設工事が進められている。
 鳴り物入りで始まった羽田空港の深夜・早朝国際チャーター便だが、週2便では「効率的な運航は行えない」というのは事実だろう。旧運輸省、現国土交通省の体質は何も変わらない。2002年3月まではこの運航体制でいくとのこと。

(1月17日) 首都圏第3空港候補地に「九十九里沖」名乗り(1/18千葉日報)

 九十九里浜沿岸自治体が地域振興から協議していた「九十九里沖空港」構想について、地元3町と経済振興団体が17日、「九十九里沖空港空港誘致懇話会」(代表・堀内大網白里町長)を設立、国土交通省が各地から募っている「首都圏第三空港候補地」に名乗りをあげ、提案することを決めた。
 「九十九里沖空港誘致懇話会」が採択した提案書によると、九十九里沖10―15キロメートルの太平洋上に約7キロメートル四方の人工島(約4900ヘクタール)を建設、5000メートル級の滑走路3本を予定している。「将来的な拡張余力と24時間対応が可能」「国際的な航空アクセスが良好」などとし、地域の受け入れ意欲も高いとしている。
 国土交通省では、首都圏第三空港調査検討会事務局(航空局飛行場部計画課大都市圏空港計画室)を窓口に、募集を今月26日まで受け付ける。23日に調査検討会を開催、応募状況の中間報告や羽田再拡張案の議事が行われ、2月中旬に提案の聴取会を開く。

【本紙の解説】
 九十九里浜沿岸自治体はまったく現実性がないのに名乗りを上げてしまった。成田空港の利便性の悪さから、第3空港は東京湾内とほぼ確定している。また、都心から30分以内のアクセスが可能な所という制約もある。
 九十九里空港へのアクセスは「成田空港と大深度地下鉄で直線距離20キロで結ぶ」としている。都心から成田空港までが60キロ以上あり遠いとの苦情も多い中で、その成田から地下鉄を通せば20分で行けるから「近い」との発想は、奇想天外というより、千葉県らしいお笑いである。提案の真意は話題を呼び、減った観光客の呼び戻しか。

(1月18日) 暫定滑走路の運用を2002年GW前に(1/19産経千葉版)

 自民党の林幹雄衆議院議員(千葉10区)は18日、成田市内で開かれた成田商工会議所主催の賀詞交歓会であいさつし、暫定滑走路について「来年のゴールデンウイーク前には飛ばしたい」と述べ、来年の5月20日と予定されている運用開始時期が1カ月程度前倒しとなる可能性に言及した。
 また「W杯はもちろん、海外旅行客が急増する連休前にオープンさせるべきであり、運用開始時期が早くなれば、日韓W杯開催中の羽田発着日韓シャトル便の話も立ち消えになるだろう」と話した。連休前の運航開始について空港公団などに要請しているという。

【本紙の解説】
 公団総裁が前倒しを新年記者会見で述べていることに乗っかり、まるで自分の成果のように押し出している。前倒しは、暫定滑走路の国際線需要がないことの表れだ。運用開始時にゴールデンウイークのチャーター便を並べ、景気をつけたいという思惑でしかない。

(1月18日) 扇国土交通相「千葉県の権益にとらわれるな」と発言/羽田国際化問題

 扇国土交通相が18日、名古屋市内で記者会見し「羽田が国内空港というのはおかしい。千葉県の権益だけにとらわれてはいけない」と発言、あらためて羽田空港の国際化に意欲を示した。
 この中で扇国土交通相は建設中の中部国際空港に触れ、「国際空港の看板を掲げるからにはアクセスを整備すべき。成田の失敗を繰り返すな」と述べた。また来年のW杯サッカーでも「横浜の競技場へ行くのにわざわざ成田を使うのか。羽田が便利に決まっている」と厳しい口調で語った。
 一方、千葉県では権益発言に驚きと戸惑いが広がっている。昨年同相の成田国際・羽田国内の原則見直し発言では「21世紀の展望を述べただけ」と修正、問題は収束すると思われたからだ。
 「権益」と指摘されたことについて、県で空港問題を担当する企画部幹部は「権益で反対しているのではなく、羽田国際化によって新たに生じる騒音問題などを心配しているが、国から何の説明もない。そもそも棲み分け原則は国が決め、成田整備は国の事業だ。手伝う立場の県に権益などというのは認識違い」と不満をあらわにした。
 しかし、今後の対応について「国土交通省事務方は何も言ってきていないし、抗議しても持論を述べたとかわされるかもしれない。推移を見守りたい」と冷静さを見せた。

【本紙の解説】
 扇国土交通相は、千葉県の抗議による発言「修正」事件がこたえたようだ。それにしても扇大臣の無知もうまいぶりはふるっている。成田空港の失敗はアクセス整備の遅れが原因と理解している。成田問題は一方的な空港位置決定と農民無視が根本にあることが何も分かっていない。
 しかし、扇が「千葉県の権益」という理由はある。成田空港の建設見返りとして、成田財特法(新東京国際空港周辺整備のための財政上の特別措置法)で補助金が上乗せされてきたが、地方空港が一つや二つ建設できるぐらいの膨大な金額である。70年に10年間の期限の時限立法として制定され、その後二度も延長、98年段階で4905億円が投入されている。そのうえに99年3月に5年間延長が決まった。この「権益」を扇と国土交通省は言っているのである。
 しかし、千葉県の対応も昨年までとは違い「冷静」でおとなしい。羽田国際化に関しては結論が出たとして、反発する気持ちも失せたか。

(1月23日) 空港公団職員宅にゲリラ

 本紙報道記事を参照。

(1月23日) 反対同盟、団結街道破壊問題で4度目の質問状

 反対同盟は23日、成田市に対して団結街道の原状回復の意志を問う4度目の公開質問状を送付した。市は昨年10月13日付の回答で、団結街道を原状に復すと約束した。しかし、工事の様子はその回答とは違い、団結街道延長上の小見川県道トンネルとの交差部分に橋梁がないことが判明した。空港外周道路との交差部分には橋梁がある。これはやはり団結街道を廃道にする計画ではないかとの当然の疑問である。もしそうなら成田市は反対同盟を騙していたことになる。
 以下、その疑問をただす公開質問状全文。

■公開質問状

成田市道十余三―天神峰線(通称・団結街道)の道路区域変更の件

 上記路線封鎖についての昨年10月13日付、成田市土木部長ならびに同道路維持課長の回答は、「工事完了後は従来の路線に戻す」とし、その期限を「平成13年6月30日予定」とした。これは道路専用工事の完了後、すみやかに団結街道を工事が始まる以前の状態に戻す旨の回答であると解釈している。
 ところがその後の工事状況は、この成田市の回答に疑念を抱かせるものとなっている。添付写真に基づいて疑いの理由を説明し、団結街道を原状に復するか否かをあらためて問いただすので回答されたい。
 添付写真は、市東孝雄氏宅前庭にある高さ五メートルの監視台上から「北西」に向かって撮影した団結街道封鎖部分の工事状況である。本年1月21日に撮影した。
写真中
(イ)は南北に走る団結街道南側の遮断部分である(アスファルトが見える)
(ロ)は空港予定地の外周部分にあたり、現在北側から道路が整備され(a)の地点まで完成している。
(ハ)と(ニ)は新設される小見川県道トンネル部分である。
(ロ)の道路の下側にはトンネルと交差する部分で鉄骨の橋梁がかけられている。橋梁は現在(a)の地点で鉄骨がむき出しになっている。これは道路としての使用に耐えられるように強化するためのものと推測される。
 しかし団結街道(ロ)の仮想の延長部分(b)とトンネルとの交差部分に橋梁はない。道路としての使用に耐えられるように強化されてはいない。
 これらが意味することは団結街道(市道)の廃止である。工事完了後に従来の路線に戻すとした成田市の回答には偽りがあると疑わざるを得ない。
 よって以下の点につき、あらためて質問するので明確に回答されたい。

1、 市道十余三―天神峰線の封鎖部分の工事が終了した時点で、道路区域を工事が始まる前の位置(成田市告示83号で変更される前の道路区域)に戻すとした成田市の回答(10月13日付)に偽りはないか。
2、 偽りがないとするなら、団結街道部分が橋梁によって強化されていないのはいかなる理由によるものなのか。
3、 (ロ)で整備されている道路はいかなる道路であるか。
4、 (ロ)で整備されている道路は市道十余三―天神峰線と合流するか。合流するのであればどの地点か。
5、 (ロ)で整備されている道路の起点と終点、路線名を明らかにされたい。
 以上、回答は文書にて1月31日までに、下記連絡先まで送達されたい。

2001年1月23日

成田市役所土木部長 殿
 同 道路維持課長 殿

   三里塚芝山連合空港反対同盟   事務局長 北原鉱治
     同 顧問弁護団事務局長   弁護士  葉山岳夫

(1月23日) 首都圏第3空港/国土交通省、B滑走路に平行案/「富津岬沖が最適」の意見も(1/24毎日、千葉日報など全紙)

 国土交通省の首都圏第3空港調査検討会(座長、中村英夫・武蔵工業大学教授)の第3回会合が23日、同省内で開かれ、事務局の同省航空局が、羽田空港に4本目の滑走路を建設する羽田拡張案を正式に明らかにした。横風用のB滑走路と平行な新滑走路を空港南東側に拡張する素案で、検討会は今後、東京都や航空3社が提案した「C滑走路沖合平行」拡張案と比較、検討していくことを申し合わせた。
 B滑走路との平行案について、同省航空局は「C滑走路平行案は夏場の南風時に使えず、離発着の大幅増は難しい」との見解を示した上で、コンテナ船の航行や大井埠頭の港湾機能に影響しないよう、新滑走路は2500メートル級程度にし、多摩川水系にも配慮し「桟橋方式で滑走路を海面より高くする工法を局内で検討している」と紹介した。
 有識者のゲストとして招かれた日本船主協会の生田正治会長(商船三井会長)は「羽田再拡張で船舶の安全が脅かされては困る」と注文、「大型コンテナ船のマストと飛行機が接触する恐れがある」と指摘した。さらに東京湾奥に空港島を造る計画も、悪天候時に船舶が停泊する場所が減少するなどの問題があると指摘した。
 また大賀典雄ソニー取締役会議長は「都の羽田拡張案では、夏場の南風時に使えず意味がない」と述べ、第三空港の建設場所は富津市沖が最適との意見を明らかにした。
 大手の航空会社で組織する定期航空協会は羽田空港のA、C両滑走路に平行に新滑走路を建設する案を提案。この案だと南風時にも離着陸しやすいメリットがあるとしている。
 候補地の中間報告も行われ、9日から受け付けている自治体などからの提案候補地がこれまでに2カ所となっていることが示された。候補地の受け付けは26日まで行われる。

【本紙の解説】
 首都圏第3空港の「選定」というが、当面の方策は羽田再拡張で決まりだ。当初、運輸省(現国土交通省)はこれに難色を示していた。理由は3つ。1つは千葉県との関係。運輸省は首都圏第3空港を「羽田空港の補完で、あくまで国内専用」としていた。しかし、昨年9月26日の第1回調査検討会で「国際空港としての検討が必要」との意見が噴出し、それが既成事実化した。だが、羽田国際化は深夜・早朝のチャーター便のみで、昼間定期便の完全国際化はまだ何も決定していない。そのなかで第3空港自体を羽田拡張案にかぶせるのは問題がある。
 2つ目は、国土交通省としては建設費用が半分で済む空港建設にそもそも反対である。官僚の利権問題、景気浮揚問題から、数年前から首都圏第3空港は関東圏の巨大プロジェクト計画の中心だった。それが成田暫定滑走路の着工でようやく日の目を見たのに、建設費が半分ではうまみが半減する。羽田拡張案は、ゼネコンその他への天下りを目指す官僚たちには賛成できない代物なのだ。
 3つ目は、技術的なこと。船舶航路と羽田空域の狭さである。
 以上の理由で国土交通省は首都圏第3空港を羽田再拡張にする案には難色を示してきたが、政府・自民党その他の声を無視できず、現在は積極的に羽田再拡張を主張し、井ゲタ案(Bとの平行)を提案している。また、来年度の第3空港調査費の過半を羽田再拡張で使うことになった。工法も井ゲタ案が本命である。
 しかし、羽田再拡張を2010年までに完成させた上に、さらに本格的な首都圏第3空港を建設するというのが、この検討会の本当の目的である。

(1月24日) 米ミネタ運輸長官「米にも羽田発着枠を」(1/25毎日夕刊、日経夕刊)

 ミネタ運輸長官は24日、米上院商業委員会の公聴会で、羽田空港の国際便開放問題について「喜んで日米間で協議したい」と述べ、羽田国際化を推進した上で、米企業にも発着枠を与えるべきとの認識を示した。同長官は、昨年11月から再交渉が始まった日米航空交渉でも日本政府に同様の要求を出す見通しだ。
 ミネタ長官は、関西国際空港や建設中の中部国際空港での米航空会社への発着枠増加に強い興味を示し、「羽田は国際便に開放されるだろう。その際、米側にも増枠が実現できるよう検討したい」と意欲を示した。
 日本政府は、米側が国際線での本格的な羽田増便を求めたもので、日米航空交渉の難題になると困惑している。

【本紙の解説】
 羽田国際化問題が日米航空交渉の議題になったことは「事件」である。日本政府は98年1月の日米航空交渉で、週90便の受け入れを約束した。98年当時、運輸省は「2000年度平行滑走路完成」を掲げていたので、それ当て込んで約束していた。日米航空交渉は96年から本格化し、それに押されて平行滑走路の完成を急ぎ、大破産したという関係だ。約束した旅客便枠の90便増がいまだ履行できず、「紙の上での合意に過ぎない」と批判されている。
 その日米航空交渉が昨年末から再開された。交渉は完全決裂の様相である。日本側はこの間の経緯を無視し、「アメリカが成田のスロットを取りすぎている」と喧嘩腰で臨んでいる。しかし、98年日米航空交渉で「(暫定協定期限の切れる)2002年までに合意できない場合の保障措置(セーフティーネット)」として「後発会社に週35便の増便を認める」と合意した。98年合意の「90便」のうちの不履行分と合わせてこの受け入れ義務が生じる。
 成田完成の遅れを理由に合意事項の延期を認めさせてきたが、羽田国際化が問題になり、羽田のスロット枠の「余裕」もアメリカ側は承知しており、日本側は断り切れない事態に追い込まれた。
 日韓首脳会談では、羽田の深夜・早朝国際線チャーター便の解禁が決まった。日米航空交渉で完全国際化になるか。千葉県の抵抗もここまでか。

(1月25日) 首都圏第3空港誘致/九十九里沖・富津など名乗り/川崎・横須賀など各地綱引き(1/25日経など)

 羽田、成田に次ぐ首都圏第3空港の候補地をめぐる地域間の綱引きが本格化してきた。国土交通省の求めに応じ、24日までに千葉県九十九里沖など3地域の団体が提案書を出し、さらに数団体も26日までに提出する見通し。
 九十九里沖空港は地元自治体や経済団体などの空港公有地懇談会が24日、国土交通省に提案書を出した。5000メートル滑走路3本の計画。「騒音対策が少なく、24時間稼働できる」(同懇談会)ことが売りもの。
 富津市は25日に提案書を提出する。富津岬の南北2案があり、いずれも富津沖に人工島を作り、3500メートル滑走路を1本設ける。
 神奈川県、東京都側も対抗する動きを強める。川崎商工会議所が提案書を提出の予定。「羽田に近い地の利、24時間対応も可能という利点をアピール」と話す。
 三浦半島先端の金田湾沖への誘致を目指す三浦半島地域空港研究会と横須賀金田湾海上空港研究会も両者の共同案を提出する。
 都が提案している羽田再拡張案は世界的にも珍しい「海上桟橋方式」。既存インフラを利用するため、「他の方法に比べ6千億―7千億円削減できる」と優位性を訴える。

【本紙の解説】
 第3空港は羽田再拡張でほぼ決まりである。むしろその次の整備計画をこの調査検討会でつめていこうという性格である。公募方式は運輸省の責任を回避するための卑劣な方策である。
 昨年の運輸政策審議会では、空港へ向かうアクセス鉄道を整備する場合、都心部からの所要時間を30分台以内とした。このアクセス問題が第一の検討課題。その上で東京湾の船舶運航と騒音問題、空域問題をどうクリアーできるかが選定基準になる。
 その点から九十九里沖は論外。アクセスの点で富津岬沖も横須賀の金田湾沖も厳しい。やはり川崎臨港沖、横浜本牧沖、東京湾湾奥あたりまでが「検討候補」のうちだが、いずれにせよ当面の結論は羽田再拡張で決まりである。
 運輸省としては「成田のつけ」を一挙に取り戻したい。成田は最終的には貨物空港の運命か。

(1月25日) 公団、暫定滑走路の国内線増強で「勉強会」検討(1/26千葉日報)

 2002年初夏の成田暫定滑走路の供用開始を踏まえ、空港公団の中村総裁は25日、同空港で国内線の増強を図るため、関係者による勉強会の開催を検討していると明らかにした。
 公団は暫定滑走路の建設にあたり、現在は年間5000回程度の国内線を2万回に増やすことを地元自治体に約束した経緯がある。
 国際ハブ空港としての成田空港の国際競争力を強化するため、国際線と国内線の連結点としてのハブ機能を強化するには、国内線増強が不可欠と認識しており、勉強会でその方策を研究する。勉強会のメンバーは公団のほか、国土交通省、国内航空会社、県と周辺自治体も参加する。
 国際線の乗り継ぎだけでは年間2万回の需要創出は難しく、地元の国内線需要の掘り起こしに期待するとしている。
 最終決定ではないとしているが、空港公団では2月上旬にも第1回会合を持ちたい考えだ。

【本紙の解説】
 運輸省・公団は暫定滑走路発着の国内線を年間2万回と発表しているが、そんな需要はないという本紙の主張を、公団・中村総裁もついに認めたようだ。「国際線との乗り継ぎだけでは年間2万回の需要創出は難しい」のは自明である。成田近郊の県北総地域と茨城の千葉隣接地域だけでは需要の掘り起こしは無理だ。
 国土交通省と公団は暫定滑走路の離発着能力を年間6万回としている。国際線はセールスをかさねているが、まだ5カ国だけだ。オーストリアの週4回の着陸、フィンランドの週2便(離着陸4回)、ベトナム航空は週2便ぐらいか。日中航空交渉では、日中それぞれ週50便の受け入れを決定した。現行の約2倍だが、使用する空港と滑走路の細目は未定だ。中国は暫定滑走路の使用は避けたい意向である。
 最大は韓国の1日6便、週42便。フィンランドもベトナムも燃料満杯では離陸できないので、関空、ソウルその他でテクニカルランディング(給油着陸)が必要とのこと。また、フィンランドも暫定滑走路では離陸できず、着陸のみ4回で離陸はA滑走路を使う。
 この計算でも国際線はソウル線が年間約2200便、他の国は現状では年間約330便である。発着回数計算で約5000回ぐらい。ただし、ソウル線は羽田国際化で一気に羽田に流れる。
 国内線は現行の約5000回の50%アップ、7500回くらいが限度。ソウル線が減少し、他国が参入しても約1万回が暫定滑走路の需要限度である。やはり使い物にならない。維持するだけでも大赤字必至の滑走路だ。

(1月25日) エコノミークラス症候群/成田空港、8年で25人死亡(1/25千葉日報)

 航空機の狭い座席に長時間座ったため血行障害による呼吸困難などに陥る「エコノミークラス症候群」で死亡した乗客乗員が、成田空港では8年間で25人になることが、日本医科大・新東京国際空港クリニックの牧野俊郎所長の調査で分かった。これは同症候群での国内初の調査。また、同症候群により成田到着後、病院に収容された重症患者は年間50―60人。病状の軽い患者を含めると年間100―150人になるという。

【本紙の解説】
 エコノミークラス症候群とは、深部静脈血栓症のことである。長時間足を動かさずに座っていると、ももや足にある静脈に血のかたまり(深部静脈血栓)ができる。この血栓が怖いのは、歩き始めてその血の固まりがが血流に乗って肺に達して、肺の血管を閉塞するからだ。呼吸困難や心拍数の増加、胸の痛み、意識消失などを引き起こす。空気が乾燥した飛行機内で水分をとらず、脱水状態に近くなると起きやすい。これは飛行機のエコノミークラスだけでなく、ファーストクラスでも他の交通機関でも一定の姿勢のまま長時間動かなければ、起こる可能性があるとされている。
 また、成田日赤病院にかかった患者は、年齢50歳以上の女性が大半であり、身長160センチ以下の小柄で太り気味の人が多かったという。
 10年以上前から問題になっているのに、最近まで各航空会社が実態を明らかにせず対策を怠ったことは「殺人事件」に近い犯罪行為である。少なくとも安全運航義務違反である。墜落事故と本質は同じである。他の条件でも起こるとされるが、十数時間も同じ姿勢を強いられるのは飛行機以外にない。航空会社の責任である。

(1月26日) 首都圏第3空港 候補地15カ所が正式名乗り(1/27東京、千葉日報)

 国土交通省は26日、首都圏第3空港の建設予定地を選定するために開催している「首都圏第3空港調査検討会」で検討する案を一般から募った結果、民間の研究会や地方自治体など14団体から15案が寄せられたと発表した。15案には、羽田空港を活用する案や東京湾に新空港をつくる案など多岐にわたっている。航空会社や東京都の羽田拡張案はすでに調査検討会で検討されているため、今回の15提案には含まれていない。だが、今後の具体的な建設候補地選定の論議では、再拡張案を含めて取り扱う。今年度中に調査検討会で複数候補に絞る方針だが、その先のスケジュールは現段階では決まっていない。
 15提案は以下のとおり。(1)富津岬南、(2)富津岬北、(3)九十九里沖、(4)木更津沖、(5)湾央木更津沖(海ほたる空港案)、(6)羽田空港、(7)羽田空港、(8)羽田空港機能拡張、(9)東京湾奥、(10)川崎臨海部沖首都圏新空港、(11)中ノ瀬、(12)東京湾内の川崎・横浜沖、(13)横須賀金田湾、(14)扇島地区(京浜臨海工業地域の東扇島、西扇島)、(15)西多摩地区。

【本紙の解説】
 国土交通省は、「成田の二の舞は演じたくない」として、空港の候補地の公募という奇妙な方式とっている。国の候補地決定の責任が問われないようにする無責任な方式である。
 しかし、当面の首都圏での空港整備は羽田再拡張でほぼ決まりである(1月25日付解説を参照)。

(1月27日) 成田空港 ターミナルビルをつなぐ誘導路の複線化工事完了(1/27東京)

 新東京国際空港公団はこのほど、片側通行のため航空機が待機を余儀なくされていた成田空港の現行滑走路と第2旅客ターミナルビル間を結ぶ誘導路の複線化工事が昨年末までに完了し、2月5日から供用開始すると発表した。
 公団によると、これまでこの誘導路(長さ約460メートル)は未買収地(1999年2月に公団取得)を避けるために十分な幅を確保することができず、単線となっていた。1日約200機の航空機が通行するため、ピーク時間帯には2、3機が最大で約3分間待機を余儀なくされていた。公団は「渋滞が緩和され、航空機の燃料削減にもつながる」としている。

【本紙の解説】
 このA滑走路と第2ターミナルビルをつなぐ誘導路は、暫定滑走路が「完成」した場合は、今まで以上のラッシュ状態になる。第2ターミナルビルに入っている航空会社がA滑走路を使う場合に加えて、第1ターミナルビルに入っている航空会社が暫定滑走路を使うときも使用するからである。
 成田空港のそもそもの計画では、第1ターミナルビルの航空会社はA滑走路、第2ターミナルビルのそれはB滑走路となっていた。B滑走路の第2ターミナルビルは近距離のアジアの航空会社、第1ターミナルビルは欧米の航空会社となっていた。
 しかし、86年に着工した成田二期工事の失敗を取り繕うために「二期工事の概成」として、第2ターミナルビルだけの運用を開始したために、この誘導路が渋滞になっていたのである。さらに、暫定滑走路が暫定にとどまることが確定しており、今度は、第1ターミナルビルの航空会社がB滑走路に行くためにも使うことになり、複線化しても渋滞は変わらない。

(1月28日) 千葉県内の大雪で成田空港の発着に大影響(1/29千葉日報)

 成田空港では、滑走路上の積雪により27日午後6時21分に滑走路を閉鎖。同7時45分から除雪作業を行い、同10時20分に空港の運用を再開したが、出発・到着便に遅延・欠航が相次いだ。
 このため、午後11時で終了する空港の運用時間を午前3時30分まで延長して対応したが、到着便32便が関西国際空港などに代替着陸したほか、出発便も38便が出発できず、2つの旅客ターミナルビルには一時、旅行者など約7000人が滞留した。

(1月29日) 国内航空3社に米の資格取得を要請 防衛施設庁(1/29朝日1面トップ)

 防衛施設庁が、日本航空、全日本空輸、日本エアシステムの航空3社に対し、米国防総省が定める輸送資格を取得するよう要請していることが分かった。国防総省が米軍部隊や武器などの輸送を発注するにあたって、航空会社の安全管理などを審査して許可するもので、取得すると米軍の輸送業務の請負が可能になる。日米防衛協力のための指針(ガイドライン)関連法に定められた、近隣有事での米軍の輸送への民間協力を想定しているとみられるが、航空会社側には、安全運航の確保や、米軍にどこまで協力するかについて不安もあり、取得するかどうか各社はまだ回答していない。
 防衛施設庁によると、輸送資格は、国防総省の安全基準に基づいて審査される。資格がなければ、原則として米軍のチャーターは受けられない。資格を取るためには、同省の担当官の立ち入り検査などを受けるという。施設庁は昨年8月から9月にかけて、3社にそれぞれ担当者を派遣して取得を要請した。
 米軍の兵員物資の空輸は主に米軍機で行われるが、沖縄の海兵隊が本土に移動して実弾砲撃演習を行うときの輸送は、日本側が担当する取り決めがある。現在は、施設庁が米国の航空会社の旅客機をチャーターしているが、委託できる会社が少なく、日程が制約されることがあるという。また、有事になれば、輸送は米軍機だけでは足りないことも想定されるため、日本の航空会社も協力できるようにしたい考えもあるとみられる。
 施設庁は1998年にも、日航に対し資格取得を要請したが、現場の乗組員らの反対で拒否された。同庁内にも「自衛隊機での移動も可能で、今回の要請は強制的と受け止められかねない」という声がある。
 航空会社からは困惑の声が上がっている。民間機の運航は、機長の指揮監督権が航空法で定められ、積み荷の確認などは機長の権限で行われる。だが、米軍のチャーター機として運航する場合は、日米地位協定に伴う特例で、航空法の規定が適用されない。
 97年7月に山梨県の北富士演習場で海兵隊の演習が行われた時、施設庁は全日空機をチャーターし、自動小銃や短銃、弾薬を輸送した。しかし、輸送資格のないことが米軍内部で問題となるとともに、民間機の軍事協力に日本国内で批判が起こった。
 航空3社は「まだ結論はでておらず、コメントは控えたい」としているが、航空関係者の間では「米軍にチャーターされた場合、機長の権限はどこまで確保されるかなど、あいまいな点が多く、不安がある」「自衛隊機や米民間機を活用すればいいのに、施設庁の意図がよくわからない」との声も上がっている。
 防衛施設庁の話 「資格取得は強制ではなく、お願いだ。日本の航空会社が資格を取得すれば、米軍の輸送手段の選択肢が広がる。演習日程の設定なども移転先の地元の希望が通りやすくなる」

【本紙の解説】
 成田空港が日米帝の朝鮮侵略戦争で軍事基地、軍事的起点になることがこれで全面的に明らかになった。国防総省が定める輸送資格はCRAFという。CIVIL RESERVE AIR FLEET、民間予備航空隊の略称である。アメリカがベトナム戦争での敗北を教訓化し、91年湾岸戦争で適用した戦術の最大の特徴は、戦略空輸の重視である。その規模とスピードを決定的に高めるものである。その核心点は、米空軍だけでなく民間航空機にその主力をおくことにある。民間航空機の膨大な徴発である。
 91年湾岸戦争当時、米軍に506機の民間機が登録され、このうち115機が実際に動員された。飛んだのはB747、DC10など。これらの民間機だけで全体の64%にあたる約32万もの人員を湾岸に運んでいる。兵器などの貨物輸送は米戦略輸送機が主力だが、兵員などの人員輸送は民間機が主力なのである。
 CRAFにはアメリカの主力航空会社はほとんど入っており、大韓航空、クウェート航空など外国航空会社まで含まれている。
 ガイドラインの日本有事、周辺有事の際には日本の航空3社が米航空会社とともに米軍兵士の輸送の主力を担い、その飛来地点は成田になるのである。このような成田空港の軍事基地化は絶対に許してはならない。

(1月29日) 羽田空港国際チャーター便、初日は日韓の5社に(1/30各紙)

 国土交通省は29日、新たに解禁される羽田空港の深夜・早朝の国際チャーター便について、初日の2月16日は特例措置として申請している日韓の航空会社5社すべての運航を認めることを決定した。16日午後11時から17日午前0時ごろにかけて、日本航空と全日本空輸がホノルルへ、日本エアシステムがサイパンへ、韓国の大韓航空とアシアナ航空が済州島へ、それぞれ1番機を飛ばす。各社は今後、旅行会社を通じて乗客を募る。
 同省の計画では、来年3月までは、原則として午後11時台の出発便1便を週2日、午前5時台の到着便1便を週2日認めることになっており、同じ日に複数の便は飛べない。出入国手続きにあたる要員を思うように確保できないためだ。しかし、初日の運航は各社の要望が強いため、特例で認めることにした。

(1月30日) 成田空港の2000年貿易額 過去最高を大幅更新(千葉日報1/31)

 2000年の成田空港の貿易額は、輸出入とも過去最高だった前年実績を大幅に上回り9兆円台に達したことが、東京税関の調べで分かった。それぞれ国内市場で健闘するIT(情報通信技術)関連とみられる製品の伸びが際立った。取引先の米国やアジアなどの経済状況が好調なことも寄与した。空港別シェア(占有率)では成田が引き続き全国トップで、輸出は67%、輸入は76.6%と圧倒し、それぞれ2位の関西新空港を大きく引き離した。

(1月30日) 栗源町 完全空港化を決議(1/31読売、千葉日報、東京)

 「栗源5000人会」の「新春地域振興懇談会」が30日、栗源町役場で50人が参加して開かれた。講師役で招かれた空港公団の平山由次郎地域共生部長は暫定滑走路の現状を報告。出席者からは「羽田空港の国際化を受けて、成田も深夜・早朝枠の拡大ができないのか」などの意見もでた。「過激派拠点早期撤退への活動強化」「完全空港の早期整備実現」「町への反対派農家の受け入れなどの支援活動」など5項目からなる決議が採択された。

【本紙の解説】
 この日誌の12月14日付解説は、栗源町議会の「抗議決議」可決に触れて、「栗源町はボートピア(競艇場外船券売り場)の設置で町の財政赤字をしのごうとしていた。そのために団結小屋撤去運動に全町民を巻き込み、そのファシスト運動をそのままボートピア設置へもっていく魂胆があった。しかし、この魂胆が暴露されボートピア誘致は粉砕された。同時に、団結小屋撤去運動もまったく消滅してしまった」と書いた。
 これに反応して急遽、関係者が新春懇談会を持った次第である。5000人会が結成されたのは99年7月であるが、2000年にはこのような新春懇談会はやっていない。
 その上で、「羽田空港の国際化を受けて、成田も深夜・早朝枠の拡大はできないのか」の意見はひどすぎる。成田空港圏自治体連絡協議会は現在では空港建設の推進勢力であり、その見返り事業の要求は限度をこえて見苦しいものがある。しかし、その活動の出発点は航空機騒音の被害を最小限にとどめ、その補償の要求であった。栗源町はその歴史的経緯と騒音地獄で苦しむ、飛行コース直下の住民を無視して「深夜・早朝枠の拡大」を要求しているのであり言語同断である。

(1月30日) アクアライン経由で羽田へ一直線 外房発高速バス続々(千葉日報1/30)

 外房地域と羽田空港を東京湾アクアライン経由で結ぶ高速バスが続々と出てきた。昨年12月に小湊鉄道(市原市)の「茂原線」が登場したのに続き、来月9日には千葉中央バス(千葉市)の「大網線」も発進する。内房地域の先行路線が絶好調なのを受け、鉄道が頼りだった外房地域でもニーズが見込めると判断した。車社会の影響で主力の生活路線が厳しく、こうした中長距離路線を新しい収益源にしたい考えだ。
 アクアライン経由の羽田空港行き高速バスは、乗り換えなしで座っていけるほか、渋滞しないため定時で着けるのが特徴。鉄道を利用した場合に比べ、料金は同程度だが、時間は短縮されるという。

【本紙の解説】
 千葉県の羽田国際化反対のかけ声とは裏腹に、千葉県の外房地区では、成田空港よりも羽田空港の方が近くなっている。

(1月31日) 千葉県 羽田国際チャーター便 独自に騒音調査(1/30日経、1/31朝日)

 羽田空港の深夜・早朝の国際チャーター便の運航が始まるのを機に、県は独自に、航路に当たる東京湾岸沿いの県内6カ所で、24時間の騒音測定を始める方針を決めた。同便の運航開始が「羽田は国内線、成田は国際線」という原則を崩しかねないと警戒する県は、自治体から懸念の声が上がっている騒音被害の実態を把握し、被害があれば国に訴えていく考えだ。30日開会した県議会に計7500万円の予算を提案し、認められれば5月にも測定機を設置する。
 千葉県大気保全課によると、木更津、君津、浦安市に各2カ所ずつ測定機を設置する。東京湾アクアラインの湾上のサービスエリア「海ほたる」に設置したキー局で、測定された騒音と羽田に離着陸した飛行機との関係を確認し、正確な裏付けをする。
 県は国に騒音データの開示を求めているが、今のところ国からの回答はないという。

【本紙の解説】
 羽田空港の航路の騒音調査に県の予算をかけるなら、成田空港の航路の飛行コースの騒音と飛行落下物の調査も県の予算で真剣にやるべきである。千葉県は成田の騒音問題にかんしては国にその補償として公共事業予算を付けてもらうことだけをやっている。県独自で成田空港の飛行コースの騒音調査をやり、最大離発着回数の制限や夜間飛行禁止時間の拡大を要求すべきである。羽田の飛行コースの騒音と成田空港の飛行コースの騒音を比較・検討して、国に要求すべきである。そうしないかぎり「千葉県の権益」疑惑は晴れようもない。

(1月31日) 日航機ニアミス問題――静岡県焼津市上空での、羽田発那覇行き日本航空907便と釜山発成田行き日航958便のニアミス問題

【本紙の解説】
 多くのマスコミではその原因を国土交通省の東京航空交通管制部(埼玉県所沢市)の管制官が907便と958便を取り違えて指示していたためと報道している。具体的原因は調査委員会その他で明らかにされるであろう。
 しかし、ニアミスの根本原因の解明と対策は前から問題にされているが解決されず、よりいっそう悪化している。
 ニアミスが発生した最大の原因は空域問題にある。首都圏の空域には民間空域と自衛隊の訓練空域、横田空域などの米軍の軍事空域があり、横田空域が最大のスペースをとっている。そのために、今回ニアミスが発生した関東南Cセクターと呼ばれる空域は、日本で最大の過密空域になっている。軍事空域を撤去しないかぎり、ニアミスどころか事故がかならず発生する。過去にもニアミスは何度もこの空域で発生している。
 第2の原因は航空規制緩和の急激な進行にある。景気浮揚のために航空需要を作為的に作り上げている。また、アメリカのオープンスカイ攻勢に対応するためにも日本国内の空港需要を作り上げている。ここ10年間で飛行便数は約1.6倍になっている。
 規制緩和のモデルになったアメリカの航空自由化は1970年代後半から始まり、参入新会社が1000社にも上り、激しい競争を展開し、航空機事故やニアミスなどが激発したことはよく知られたことである。
 第3の原因は管制官の激務にある。アメリカにおいて、航空自由化の進展の中で、航空管制官の超勤・時間外などの労働強化が激増した。その結果、1981年8月には管制官1万3000人がストに突入したのである。当時のレーガン大統領は、48時間の猶予期間をおいて職場復帰しない1万1324人全員を懲戒解雇にした。その後、航空産業の規制緩和の名のもとでの競争激化が80年代のアメリカ資本主義の再生の見本となるのである。
 日本の管制システムもこのアメリカの制度を受け入れてできあがっている。管制官業務は、極度の緊張を継続させられる労働である。さらに、東京航空交通部管制部では4勤1休の交代制の変則勤務である。早番(午前7時から午後3時)、遅番(午後1時から午後9時半)、泊まり(午後5時から翌日の午前10時半)という激務である。一瞬の隙、ミスが数百人の命を奪ってしまうナーバスな仕事である。さらに「異常事態が発生すると極度の緊張状態、ショック状態の中で勤務を継続する」と現場労働者は告発している。管制官の指示ミスはこのような中で起っているのである。
 第4の原因は日航をはじめとする競争激化の中での合理化・リストラの問題である。日航は昨年の11月、2000年9月期連結中間決算で経常利益557億円を計上し、これは当初予想を大きく上回っていると発表した。これは、景気浮揚などで需要が伸びたからだとしているが、実はこの間の合理化、分社化(スピンオフ)などによりコスト削減とりわけ総額人件費の抑制が進んだことによるのである。
 今まで「重役以上の待遇」といわれていた機長も、人件費削減の最大のターゲットとされて、極度の労働強化と実質的な賃金のカットが行われている。
 今回のニアミスの発生はあまりに巨大な軍事空域による民間機空域の狭さの問題と、航空自由化・規制緩和という競争激化が引き起こした必然的事故である。このままでは、いずれ大惨事も免れないことになる。
 国土交通省は管制システムの全面的見直しをうたっているが、そんなことだけでは絶対に解決しない。また、警察はこの間の不祥事の取り戻しのためか、負傷者の救助が完了しないうちに刑事事件の事情聴取を先行させ、また事故原因調査よりも刑事事件の捜査を優先させ、急いで刑事事件として立件しようとしたことは、許し難いことである。
 ICAO(国際民間航空機構)の国際民間機条約では、航空機事故調査の目的は「罪や責任を課すことではなく、将来の事故防止」のためとしている。ちなみに、航空規制緩和で飛行機事故が激発したアメリカでは、航空機事故には刑事罰の免責で事故の調査をおこなっている。これは何万人ともいえる尊い人命を失ってきたからこそできた条項である。

(2月2日) 日航機の左翼フラップが欠落(2/3毎日)

 2日午後5時ごろ成田空港に着陸したホノルル発日本航空73便B747機の左翼フラップ(下げ翼)の約20センチ角の部分が欠落しているのが、着陸後の同社の整備点検で見つかった。公団は欠落部分が滑走路に落ちている可能性もあるとして午後6時1分から滑走路を閉鎖点検したが発見されず、6分後に滑走路を再開した。フラップは飛行機の上昇・降下のコントロールを補助する部分で、左右の主翼後部にある。今回欠落したのはジュラルミン製板の1枚である。
 日本航空広報室によると、欠落しても運航には支障はないが、飛行中に海上などに落ちた可能性があるとみて、出発前点検に問題がなかったを含め調べている。

【本紙の解説】
 「海上などに落ちた可能性」と表現しているが、人家や人の頭上に落ちる可能性もある。
 また、滑走路に落ちた場合はより悲惨な事故につながる。今回は、着陸後に点検整備で欠落を発見し、直ちに滑走路を封鎖したが、欠落発見前までは滑走路は、3分おきの発着という過密なスケジュールで使用されている。フランスのコンコルド機の炎上墜落の真相は、コンコルド機そのものの欠陥ではないかとの推測もあるが、公表されているのは、滑走路の落下物でタイヤが破損し、燃料タンクにぶつかり炎上したとなっている。
 航空機事故の恐ろしさは計り知れない。乗客だけでなく、周辺住民は365日その危険にさらされている。

(2月3日) 反対同盟 敷地内一坪共有地 立ち入り調査 騒音調査の結果報告

 2月3日、反対同盟と顧問弁護団は暫定滑走路工事に伴う一坪共有地の保全行動に決起、その後市東宅で記者会見を行った。暫定滑走路阻止の現地攻防を闘うとともに、切迫する土地収用法改悪攻撃に対して2・28東京行動にたつ方針を明らかにした。
 暫定滑走路の工事が住民の反対の声を押し切って強行されている。工事は関係するふたつの一坪共有地の周辺で行われており、その保全確認が必要である。
 午前10時、市東宅に集まった反対同盟と葉山、一瀬両弁護士は行動方針の確認ののち東峰十字路北側の開拓組合道路わきのゲート前に集合。共有権者である郡司一治、三浦五郎さんと、同盟員代表として北原、市東、木内さん、弁護団から葉山、一瀬両弁護士らが工事現場にある一坪共有地に立ち入った。
 立入調査はおよそ1時間にわたって行われ、終了後の11時45分から市東宅で記者会見が行われた。会見には足立満智子成田市議が同席した。
 始めに北原事務局長が発言。立入調査にふれて「共有地は保全されていることを確認した」と状況を報告し、会見の趣旨説明を行った。
 これを受けて葉山弁護士が、周囲を木枠で囲った共有地の保全状況を子細に報告。団結街道封鎖につき、4回目の公開質問状を出したことを明らかにした。団結街道を廃止する動きが徐々に浮き彫りになっている。空港の境界上にある道路には橋梁がかけられているが、団結街道にはこれがない。葉山弁護士は「工事完了後原状に復すという成田市の回答には嘘がある」と暴露し、証拠写真を添付して成田市に回答を求めたが、回答期限(1月31日)を過ぎても成田市は回答できずにいることを明らかにした。
 続いて一瀬弁護士が、昨年夏に反対同盟が実施した暫定滑走路の騒音被害調査について概要を報告した。報告書は地道な調査活動によってB767の40メートル上空飛行騒音と誘導路騒音を収録。「暫定滑走路は天神峰・東峰地区の人権を著しく侵害し、常軌を逸した騒音を強いることで住民に移転を強いるもの」と工事の即刻中止を訴えている(資料1、詳報次号)。さらに、成田空港の騒音調査を89年秋と今回の2回にわたり実地調査を行い、調査方法等について指導をしてくださった長田泰公氏の所見もあわせて発表した(資料2)。
 続いて成田市議の足立満智子さんが行政上の視点から発言、「暫定滑走路工事で住民の生活権が侵害されている。行政が守らずして誰が守るのか」と成田市の対応を批判した。
 最後に萩原進さんが、2月28日に東京都内で「土地収用法改悪阻止シンポジウム」を反対同盟と顧問弁護団の共催で行うことを発表した。「改悪内容は三里塚の地平をおしつぶし、全国で広がる一坪共有運動や立木トラストなど住民運動の抵抗手段を奪い取ろうとするもの。有事立法・改憲の動きと軌を一にする」として、改悪阻止を掲げて国会に向けデモすることを明らかにした。

○資料1(報告書全文は来週掲載)

「暫定滑走路による騒音被害 予測調査報告」(要旨)
                                    三里塚芝山連合空港反対同盟
                                    2001年2月3日

 暫定滑走路南端から民家までの距離は400mである。南側から進入する飛行機は民家上空40mの地点を通過する。地区の産土(うぶすな)神社は南端から120mの地点に位置する。空港と一体のものとして保全されるべき航空保安区域に、民家などが存在する空港は他に例がない。
 また、暫定滑走路の誘導路と民家との距離は100mである。誘導路上の航空機の移動はトーイング(牽引)によらず自走させる方針であることを、空港公団は明らかにしている。
 暫定滑走路は住民に対して激しい環境破壊を強いることが明らかである。にも係わらず、運輸省と空港公団はその被害予測を明らかにしない。騒音については、平行滑走路の当初計画(2500m)で策定した騒音コンターの範囲内であると強弁するのみである。
 反対同盟は、住民の声を押し切って強行された暫定滑走路が、いかなる騒音被害をもたらすかを明らかにするための独自調査を行った。調査は昨年7月28日から8月8日にかけて実施した。

(1)調査結果の概要
1.滑走路末端から400m地点におけるB767の離着陸騒音
 滑走路末端から400m地点におけるB767の飛行騒音は、着陸時においては80〜85dB(A)であり、離陸時には96dB(A)を超える。
 この騒音レベルはB747などの大型機とほぼ同レベルである。中型機は大型機に比べてレベルは低いとする運輸省・公団の発表は事実ではない。
 離陸時の騒音レベルは電車が通過するガード下の騒音レベルに匹敵する。
 暫定滑走路が供用されれば、400m地点直下に位置する成田市東峰の民家等には、同レベルの騒音が間断なく襲いかかることになる。

2.100m先の誘導路におけるB767の自走騒音
 誘導路を自走するB767のダイレクトの騒音レベルは、100m離れた地点で75dB(A)を記録した。この測定値は快晴・無風の気象条件のもとでの数値である。気象条件の違いによりこのレベルがさらに上がることは確実である。暫定滑走路はこの騒音を天神峰地区の民家に及ぼす。

3.東峰地区における現在の騒音被害
 空港が天神峰・東峰地区にもたらす現在の騒音レベルは、公害防止条例の規制基準をはるかにこえている。
 この一帯の騒音は第2ターミナルビルによって発生する定常騒音の上に、航空機の離着陸騒音が間欠的に重なるという複合的状況を呈している。長田泰公氏は、絶えず一定レベルの騒音を生み出すひとつの騒音工場として空港全体を捉えてよいと指摘する。
 この指摘に基づき比較すると、測定値は公害基本法が定める環境基準をはるかに超えており、騒音規制法に基づく千葉県の基準、ならびに成田市が定める公害防止条例の規制基準を大幅に逸脱している。(グラフ「時間率騒音レベル上端値と規制基準」参照)
 第2ターミナルビルから約1.2Km離れた地区の東部における騒音レベルは、夜間になるとターミナルの隣の地区西部と変わらない数値(70dB(A)前後)を示した。
 93年2月調査との比較では、地区西部においてピークの回数が増加しカウントできない時間帯が生まれた。ピークの平均値も10dB(A)程度高くなった。時間率騒音レベルも全般的に高くなっている。地区東部では最大値において2〜4dB(A)上回り、ピークの平均値も同様に増加した。

(2)長田泰公氏の所見について
 所見は、調査結果と短縮滑走路の制約を勘案すれば、空港公団の言うようにはコンターの縮小が期待できない旨指摘している。また発着回数を年間6万5000回(公団発表)とした場合、Wへの効果は1.4dB(A)であることから騒音予測を減らすことは期待できないとしている(長田所見の第3項)。
 これは暫定滑走路の騒音被害が、天神峰や東峰地区にとどまらず小泉地区など近隣地区に及ぶことを明らかにするものである。
 また空港公団、千葉県、成田市が被害実態について早く公表すべきことを指摘している(長田所見の第4項)。

(3)調査結果に基づく結論
 暫定滑走路は天神峰・東峰地区住民の人権を著しく侵害し、常軌を逸した騒音を強いることで、住民に対して移転を迫るものである。
 民家上空40mの飛行騒音にその意図が明らかである。また天神峰地区においては防音フェンスすらも設置せず、農家に対してジェットブラストを直撃させる意図が窺える。
 住民の生活と生存を脅かして移転を迫る暫定滑走路工事は即刻中止するべきである。
                                                 以上

○資料2 実地視察で得た感想        長田泰公

1. 現在使われているA滑走路北端から400mの距離にある「さくらの山公園」と、南側飛行直下の岩山記念館屋上で、騒音計を用いて観測した結果、この報告書のデータが正しいことを確認した。
2. 報告書のデータによれば、着陸時の中型機(B767)の騒音は大型機(B747など)のそれと大差なく、あってもせいぜい2dBの差である。B777とは差がない。離陸時には数dBの差があるが離陸地点によって差を生じ、離陸地点が近い場合には大型機と差がないレベルに達する可能性があるとの報告書の指摘は妥当とおもわれる。
3. 空港公団は暫定平行滑走路では騒音レベルが低く、滑走距離の短い中型機のみを使用するからWコンターが当初計画より縮小するという。しかし上記のデータからみると、着陸時のレベルは必ずしも低くなく、また計画より滑走路が短縮されるため離陸地点が滑走路端に近くなり、Wコンターの縮小が公団のいうほどには期待できないのではないか。また1日の機数が当初計画の247から暫定計画の176に減少するというが、Wへの効果は1.4dBにすぎない(10log247−10log176)。したがって中型機のみを使っても、当初計画での騒音予測を減らすことは期待出来ないとおもわれる。
4. 暫定平行滑走路が供用された場合、現在W70以下の地域や、暗騒音が40dB前後の東部地区さえ、上記の騒音に暴露されることになり、騒音被害は著しく拡大されることになる。たとえ新たなWコンターが空港公団の予測のとおりだとしても、それによる被害は深刻かつ広範である。予想される被害の実態について空港公団も、千葉県、成田市もなるべく早く公表すべきである。
5. 誘導路周辺の騒音はターミナルビルの騒音、航空機自走時の騒音、離着陸機の騒音が混在し、暫定平行滑走路供用時の状態を予測することは難しい。しかしL50で60――dBになるようであり、これは東京都内の幹線道路周辺と変わらない騒がしさである。
                                                 以上

■長田泰公氏は元国立公衆衛生院院長。大阪国際空港、米軍横田基地、沖縄米軍基地等の調査・研究を行い、また騒音公害裁判で貴重な証言を行うかたわら、騒音に係る各種の環境基準、環境庁告示の航空機騒音の基準作りに携わった。WHO(世界保健機構)の委託を受けてフィリピンの騒音対策プランニングやWHO騒音ガイドラインの策定に寄与。成田空港については89年秋と今回の2回にわたり実地調査を行い、調査方法等について指導と所見をいただき裁判でも証言されている。

(2月3日) 成田空港訴訟 和解へ 提訴21年 国側謝罪(2/3、4全紙)

 成田空港の建設を巡り、空港反対派の農家らと機動隊が衝突して流血の惨事となった1971年9月の第2次強制収用について、反対派農家の故・小泉よねさんの養子夫妻が千葉県収用委員会と建設相(現国土交通相)を相手取り、「土地の明け渡しを認めた緊急裁決は違法」などと主張して、同裁決の取り消しなどを求めていた裁判の上告審で、被告の国側が「緊急措置の必要性は少なく、原告の批判を甘んじて受ける」「対応に人間味がなかった」などと謝罪し、原告側もこれを受け入れて近く和解することが2日、明らかになった。5日午後に正式に和解する見込みだ。
 この裁判をめぐっては、原告の千葉県成田市東峰の農業小泉英政さん(52)夫妻が「国は成田空港の開港が間近に迫っているとして、緊急性がないにもかかわらず強制収用をした」などとして「空港建設の反対に対して見せしめ的に収用した」などと主張して提訴。88年の一審判決と93年の東京高裁での控訴審判決では、ともに「裁決には緊急性があり、手続きも適法だった」として原告側の主張を退けていた。

【本紙の解説】
 小泉英政氏が「和解は到達点でなく、通過点。国が謝罪したことで私は和解を受け入れたが、よねは絶対に強制収用を許さないだろう。今後も移転交渉には応じるつもりはない」と話したことは真実であろう。また、国は小泉よねの家屋を土地収用法でなく、「公共用地の取得に関する特別法」(特措法)を適用した理由は、審議を簡素化し、補償も土地収用法では「先補償、後収用」の原則があり、補償受け取り拒否の場合は収用が遅れるためであった。
 特措法は1961年に施行され、高速自動車国道、一般国道、新幹線、第一種空港、主要な利水・治水施設、発電・送電用施設など整備に緊急性があるものについては、損失補償の審理が尽くされていない場合でも概算見積りによる仮補償金を支払うだけで土地等を取得してその明け渡しを求めうる、「正式の補償金との差額は後払い」としている。そのために、被収用者には仮住居による補償請求権を認め、また現物補償、生活再建のための措置などの特例を置いている。
 国は小泉よねに対して、「生活再建のための措置」として人も住めない「プレハブ小屋」を形式的につくっただけ、特措法で定める本補償も30年たっても行わなかった。ひどい話である。
 その点で、国に謝罪させ、民事裁判での和解は「実質的な勝利である」(小泉英政氏)ことは明らかである。
 しかし、小泉氏に言いたい。「2000年春ごろ、空港公団から『小泉よね問題』を解決したいと申し入れがあった。この問題を取引や切り崩しの材料にせず、東峰の人々とここに生き続けることを前提とし『小泉よね問題』に限定した話し合いを続けてきた」(2/4朝日千葉版)というのはいただけない。小泉氏がシンポジウム、円卓会議に参加せず、当時の「話し合い」反対の立場をとっていたのであれば、なおさらである。
 「公団は今回の和解について、平行滑走路の完成のための移転交渉とは別物と強調するが、下心がないわけではない。何もしないより一歩前進、と完成に向けての思惑もあることを認めている」(2/4読売千葉版)
 公表直前の31日に東峰地区の会合で承認をとるまで、和解交渉を秘密にしたことは公団の「下心」を助長させるものになる。

 

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