●(6月2日) 第1旅客ターミナルビル 南ウイング開設(6/2夕刊全紙、6/3全紙)
成田空港第1旅客ターミナルの南ウイングが2日、12年越しの改修を終えてオープンした。地上5階地下1階、延べ約9万8000平方メートル。第1旅客ターミナル全体は、東京ドーム9・4個分に相当する約44万平方メートルで、国内最大の空港ターミナルとなった。
全日空は第2旅客ターミナルから南ウイングに移転。全日空などが加盟する航空連合「スターアライアンス」の10社が主に使用する。出発ロビーのチェックインカウンターは加盟社で共用し、自動チェックイン機126台が導入された。10社の集結により、加盟社間の乗り継ぎ時間が短縮されることになった。
第2旅客ターミナルには日本航空が残り、航空連合「ワンワールド」の5社が集まる。第1ターミナル北ウイングには来春、ノースウエスト航空などの「スカイチーム」が集結。航空連合を基本に、航空会社が再配置される。空港会社によるとターミナルごとに航空連合が配置されるのは世界の空港で初めてという。
テロ対策強化のため、預かり手荷物がベルトコンベヤー上を流れる間に爆発物を自動探知するシステムが導入され、チェックイン時の手荷物検査が不要になった。
国内最大級の免税店街もオープン。民営化し、上場を目指す空港会社にとって、収入増の中核と位置づけられている。
成田空港第1旅客ターミナルビル南ウイングのオープンに伴い、第2旅客ターミナルから社員約5000人が移転する全日空グループは1日から、飛行機や資機材を運び出す夜通しの引っ越し作業に追われた。
1日午後6時半ごろから、旅客機が第2ターミナルから誘導路を通って移動を始めた。旅客機のけん引車やタラップ車など、特殊車両も列をなして南ウイングへ。2日未明までに旅客機11台、特殊車両約200台が移った。同社の第2ターミナルの最後の便は、午後9時35分発のホノルル行き。「4年間働いた職場なので寂しいけど、心機一転です」と地上職の女性社員。最終便の業務を終えると、搭乗手続き用のパソコンなどの移動もスタート。混乱はなく、2日午前7時前にバンコクから最初の到着便を迎え入れ、真新しい出発カウンターを開いた。
1番機の上海便出発を記念し、記念式典も開催。約200人の関係者が空港の新装を祝った。
【本紙の解説】
1ビル南ウイング完成でアライアンス(航空会社連合)それぞれにターミナルが配置されることになった。日本の航空会社では全日空が加入しているスターアライアンスが1ビル南ウイング、1ビル北ウイングはスカイチーム、2ビルは日航が加入しているワンワールドになった。その理由は、コードシェア便(共同運航便)が多くなったことによる。今後もアライアンスごとのコードシェア便は増える趨勢にある。
コードシェア便とは1つの定期航空便に、複数の航空会社の便名で運航される。全日空(いままでカウンターは2ビル)便のチケットを購入したが、実際には1ビルの外国航空会社が運航しているコードシェア便だった場合には、1ビルに行かなければならなかった。これを間違えて2ビルに行ってしまうと、ターミナル間の距離があるので、乗り遅れることになる。ターミナルが離れている成田空港ではアライアンスごとにまとめる以外にないのだ。決して、世界初と誇ることでもない。
日航は全日空より欧米便が多い。それにもかかわらず、暫定滑走路に近い2ビルにカウンターがあり、すべての便に2ビルから搭乗させる。しかし、日航は、A滑走路発着便が多い。A滑走路へは、長い連絡誘導路を陸上走行していく。成田空港は連絡誘導路の渋滞が名物にまでなっている。
今回のアライアンスごとのターミナルにした結果、この渋滞がひどくなるといわれている。この連絡誘導路の渋滞は暫定滑走路への誘導路が片側一方通行、それと「へ」の字に曲がっていること、1ビルと2ビルの間の誘導路も不完全で分断されているからである。
南ウイング完成で、航空手荷物はインラインスクリーニング方式になった。このシステムは、タグと無線を使って、航空手荷物の検査の爆発物検知装置(EDS)と荷物操作システム(BHS)を同時に行い、時間短縮に目的がある。しかし、このシステムは荷物が検査をパスすることが前提になっている。EDSを通過できない荷物が多くなると、今まで以上に時間がかかり、システム自身が破綻することになる。
空港会社は南ウイング完成を暫定滑走路の北延伸工事の弾みにしたいようだが、騒音問題、新誘導路、ゴミ処理場のクリーンパークの閉鎖・廃止問題、国道51号トンネル化の難工事など問題は山積みであり、黒野社長の思惑通りにはいかないことは確実だ。09年度完成というのはあり得ない。三里塚闘争で予定通り完成した滑走路工事はない。
●(6月2日) 航空機の主翼一部? 成田空港近くの水田に落下(6/3読売千葉版)
成田空港近くの水田で先月23日、航空機の主翼の一部とみられる部品が見つかっていたことが、2日わかった。
成田国際空港会社と国土交通省成田空港事務所では、航空機から落下したとみて、機種の特定などを急いでいる。
同社などによると、見つかった部品は楕円(だえん)形で、長さ80センチ、幅20センチ、重さ約1・8キログラム。ボーイング777型機の主翼の一部とみられるという。
発見場所は、成田空港の4000メートル滑走路から北に約7・5キロ離れた成田市荒海の水田で、飛行ルートの直下。周辺は農村地帯で民家もあるが、けが人などはなかった。
同社は、「航空各社に機材の整備点検を強化し、再発防止に万全を期すよう要請した」としている。
【本紙の解説】
長さ80センチ、幅20センチの物体が水田に5月23日に落下して、6月2日まで分からなかったことはあり得ない。空港会社は1ビル南ウインググランドオープンの2日まで、隠していたのである。空港会社は周辺住民の生活や安全は顧みず、このような隠蔽工作をよくやるのだ。落下地点が水田であり、農家が水田の水廻りを1週間もやらないということはほとんどない。
空港の飛行コース下の10キロ地点までは危険地点なのだ。本来無人にするべき範囲なのである。空港と周辺住民の生活ははやり相容れないものなのだ。
●(6月3日) 成田空港 男が徒歩で侵入(6/4読売、日経、産経、東京各千葉版、千葉日報)
3日午前6時45分ごろ、成田空港の車両用出口で、男が警備員の制止を振り切り、徒歩で空港の敷地内に侵入した。男は約300メートル入ったところで取り押さえられ、千葉県警成田国際空港署が建造物侵入の現行犯で逮捕した。
逮捕されたのは千葉市花見川区の男性(37)。男性は「空港に来れば警察に捕まると思った」などと供述しているという。
成田空港は事件発生直後の約5分間、空港の出入り口を閉鎖したが、航空機の運航に影響はなかった。
【本紙の解説】
空港への侵入事件が相次いでいる。5月9日には、「追いかけられたい」として侵入し(06年5月9日付日誌を参照)、今回は「捕まればただで飯を食える」と話しているらしい。
空港会社と空港警備隊は、警備をより一層強化するとしているが、この種の事件は取り締まれるものではない。警備があることから事件が起こっているのである。
●(6月11日) 千葉県、騒特法特別地区 区域案あす提示(6/10朝日千葉版)
成田空港の暫定B滑走路を北側に延伸し2500メートル化する計画を巡り、県は騒音による移転補償が受けられる具体的家屋を11日、地元に正式に提示する。騒音区域の広がる成田市久住地区の要望と、県が提示する原案との間には、大きな隔たりがあると見られる。
成田国際空港会社(NAA)は、09年度のB滑走路2500メートル化を目指し、今月中に施設変更許可申請を国に出す方針だ。ただ、成田市などは地元合意を工事着工の前提としている。
騒特法(特定空港周辺航空機騒音対策特別措置法)では、騒音のうるささ指数(WECPNL)が80以上の地区(防止特別地区)になると、家屋の建築規制がかかる一方、希望する場合には移転補償が受けられる。この指定にあたっては、集落の実情が考慮される。
成田市や地元によると、騒音区域が広がる同市久住地区の移転希望家屋は125戸。このうち17戸は指数80以上で防止特別地区に指定される。集落分断を避ける配慮から、75以上80未満の13戸も指定される見通し。関係者によると、残り95戸のうち、県は75以上80未満の別の14戸程度も、防止特別地区に指定するとみられている。
前回の線引き(2000年)では、本来、防止特別地区に該当しない指数75以上80未満の一部集落も指定を受けた。県空港地域振興課の高木健一課長は「冠婚葬祭や日常のつきあいなどを極力尊重するように努めている」と言う。一方で、「騒特法の適用範囲は75以上。75未満は、どうしても防止特別地区にすることはできない」と話す。
成田市久住地区空港対策委員会の松島文哉会長(76)は、「県の方針と地元要望の間で、かなりの開きがある集落もある。いたずらに時間をかけるつもりはないが、今月中の合意はちょっと無理だ」と話す。11日の提案を受け、各集落で原案を検討すると言う。
NAAとしては、羽田空港との競争をにらむと、09年度に暫定滑走路を2500メートル化し、大型機の離陸を可能にするなどして、発着回数を20万回から22万回にするのは至上命題。黒野匡彦社長は「県や成田市が合意に向け、今月中に一定の結論を出してくれると思っている。北伸に向けた申請を今月中に出す方針に変わりない」と言う。
国土交通省成田国際空港課は「一刻でも早く2500メートル滑走路の供用を始めたい。可能な限り地元の合意を得て計画を進めるべきだ」としている。工事期間などから逆算すると、「時間的な余裕がない。今月中に申請があっても、ぎりぎりだろう」と話している。
工事着工には法的に地元の合意は必要ないが、騒特法の線引きには、地元自治体の同意が必要。それには「地元の理解」が尊重される。成田市の小林攻市長は「09年度完成に向け、NAAなどと足並みをそろえる。だが、いかに穏やかに合意に向けてまとめていくのか、妙案は浮かばない」と言う。同市は防止特別地区の指定から外れる集落を対象に、地域振興策を模索しているが、「決め手はない」(空港対策部)のが現状だ。
《キーワード》
うるささ指数(WECPNL) 国際民間航空機関(ICAO)が考案した航空機騒音の評価単位。音の大きさだけでなく飛行回数や時間帯を加味して算出する。航空機以外の音で例示すると、1日(昼間の時間帯)に「大きな声を出した時の音」が160回あった場合がWECPNL80。「電車の中程度の音」の場合が同75に相当する。
【本紙の解説】
移転希望家屋125戸のうち、特別防止地区の補償家屋は44戸で、千葉県と空港会社はこれで押し切るつもりである。成田市は「足並みをそろえる」として同意する予定。地元に11日に提示し、その説明会がどうなるかはまだ分からない。しかし、地元の要求がどうであれ、国交省、空港会社、千葉県、成田市はこれで強行し、北延伸工事をこの夏にも開始する予定だ。
今月中に計画変更申請を出し、公聴会をすぐにもやり、2〜3カ月後に着工になる。いままで飛行場設置許可申請は提出後、通常、3カ月で許可になる。今回は計画変更なので2カ月で許可が出そうだ。直ちに公聴会をやり、8月の夏の時期にも着工攻撃が現実化してきた。
用地内農民の生活、騒音下住民の要求を無視しての工事強行である。これで何度目の国家暴力の発動であろうか。こんな暴挙を決して許してはならない。
国交省と空港会社はなぜ、これほど急ぐのか。国交省は09年完成を前提にして「時間的な余裕がない」としている。それだけであろうか。着工を急いだとしても、新誘導路建設のための東峰の森伐採と分断、ゴミ処理場の閉鎖・廃棄の問題も未解決である。それ以上に国道51号トンネルの難工事もあり、09年度完成などというのは、現実性は薄い。
国交省と空港会社の本音は09年度の羽田国際化の前に成田空港会社の株式上場をやりたいのだ。どうしてか。羽田国際化の後では成田空港の地盤低下は確実であり、上場株価は額面割れもありうるからだ。そのために、羽田国際化の前に、成田空港会社の上場を済ませたいのだ。
07年の上場予定を見送った理由は、投資ファンドなどの敵対的買収の可能性があり、そうなると北延伸が中止されるということであった(05年12月31日付日誌を参照)。
それが、08年度中にも上場を検討しているのだ。それが可能になったのは、今国会で郵政民営化のために提出した会社法で「黄金株」の導入がしやすくしたからである。黄金株とは、株式買い占めなどの敵対的買収によって合併される事態に陥っても、その議案を否決することのできる特別な株券、「拒否権付き株式」である。一株だけ発行する、その一株を国が保有し、敵対的買収を不可能にしようということである。
北延伸の09年度完成は絶対に無理である。しかし、国交省と空港会社は株式の上場までは何が何でも「予定通り」で推し進めるつもりなのである。そのために、騒特法特別防止地区の線引き決定の強行を行っているのである。
●(6月11日) 羽田新滑走路、埋立て承認を申請(6/12朝日)
羽田空港に4本目の滑走路を新設する再拡張事業で、国土交通省は今月、埋立ての承認を東京都と千葉県に申請した。漁業補償交渉は決着していないが、計画通り09年末までの供用開始に間に合わせるには、可能な限り早期着工する必要があり、補償交渉と並行して前倒しで申請する異例の手続きを取った。
羽田空港は発着能力が限界に達しており、国交省は現在の空港の南東に全長2500メートルの滑走路を新設し、発着能力を現在の1時間平均30便から1.4倍の同40便(年間40万7000回)とする計画だ。特に国際競争力を高めるためにアジアを中心に国際線を拡充し、年間約3万回発着させる。
大手ゼネコンの鹿島など15社の共同企業体(JV)が埋立てと桟橋を組み合わせる「ハイブリッド工法」で整備する事業を約5985億円で受注している。
今月1日に出された申請は公有水面埋立法に基づき、埋立てと桟橋の予定地(約160ヘクタール)を含む工事区域約940ヘクタールが対象。都と千葉県は、都と千葉、神奈川両県の約30漁協(支所含む)と国との補償交渉の推移を見守りながら、計画の妥当性や承認の適否を判断するとみられる。
交渉と並行する形での申請について同省幹部は「秋には着工しないとスケジュールに黄信号がともる。承認まで数カ月かかるので、出来ることは速やかに進める必要がある」と話す。
今後の焦点は漁業補償の行方だ。この区域に漁業権を設定している関係者はおらず、補償は漁獲高の減少など影響に対するもの。事業主体の関東地方整備局は「漁業者の理解を得られるよう調整を進めている。承認にそれほど遅れずに同意を得たい」という。
【本紙の解説】
成田の北延伸工事も騒特法による移転補償が受けられる対象範囲について、11日に久住地区で説明会をもったが、地元住民は納得せず継続協議となっている。にもかかわらず、空港会社はこの6月中に計画変更申請を提出する(06年6月11日付日誌を参照)。羽田空港も漁業補償の交渉が行われていない中で、4本目の滑走路増設のための埋立て工事の承認申請をするという。
政府、国交省は農民、漁民、住民を無視して「公共」事業を強行することを再開した。国交省(旧運輸省)は一時、「成田の二の舞を演じるな」として地元合意を標榜したこともあったが、それをかなぐり捨て、地元無視で事業の完成を優先することとなった。
このように「公共」や「国益」をかざして地元住民の生活や生命を犠牲にすることをいとわない国家主義的考え方は、それ自体が改憲、戦争国家への道だ。成田暫定滑走路「北延伸」攻撃とのたたかいは、改憲阻止の闘いと一体なのである。
●(6月12日) 市東孝雄さんへ空港会社が耕作地解約取り上げ攻撃を再開
空港会社から反対同盟顧問弁護団の葉山岳夫弁護士に以下の手紙が6月12日付で送られてきた。
これは暫定滑走路「北延伸」着工攻撃の本丸である。「北延伸」の真の狙いは反対同盟つぶしだ。工事開始の重圧で敷地内農民を屈服させ、「頭上40メートルにジャンボを飛ばす」ことで東峰区の反対農家を叩きだし、南側への延伸すなわち本来計画の完成を期すことにある。北延伸攻撃そのものが敷地内農民叩き出しの攻撃なのだ。NAAは計画変更申請を6月中に行うとしている。それと並行して天神峰の市東さんや東峰地区への攻撃が強まっているのである。
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【資料】
市東孝雄様代理人
弁護士 葉山岳夫様
成田国際空港株式会社
代表取締役社長 黒野匡彦
拝啓
初夏の候、葉山先生におかれましては、益々ご健勝にてお過ごしのこととお慶び申し上げます。
さて、市東孝雄様が賃借されてきた農地で当社が取得しましたものにつきましては、代替農地や離作補償等の提示をさせて頂き、解約についてこれまでご協力をお願いしてまいりましたが、先生からは、暫定平行滑走路の供用停止を話し合いの前提としてあげられ、当社としましては、これに応じることは出来かねることから、その後の話し合いも進展せず現在に至っております。
しかしながら、当社にとりまして、上記土地は、誘導路を整備し、効率的な運用を確保するうえで不可欠な土地であります。加えて、首都圏の国際航空需要が逼迫する中、苦渋の選択として、平行滑走路の北伸案による2500m化を図ることとなりましたので、さらにその必要性は高まってまいります。
こうした事情から、市東様に上記土地の賃貸借の解約について、ご相談に応じて頂けますよう、あらためてお願い申し上げる次第でございます。
大変恐縮ですが、これにつきまして、市東様のご意向をおうかがいいたしたく、平成18年6月26日までに文書にてご回答下さいますようお願い申し上げます。
敬具
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●(6月13日) 暫定滑走路へ小型犬入り込み滑走路2分閉鎖(6/14朝日千葉版)
13日午後5時40分ごろ、成田空港の暫定B滑走路に小型の犬―匹が侵入。滑走路外に追い出すまでの約2分間、滑走路が閉鎖された。航空機の運航に遅れなどの支障はなかった。
成田国際空港会社(NAA)によると、巡回中の警備員が滑走路で茶色い小型犬を発見。NAAなどは5台の車で追いかけ、滑走路外に追い出した。
犬は滑走路近くの雑木林に逃げ込み、行方が分からなくなった。飼い犬なのか野犬なのか不明だという。
【本紙の解説】
今月7日午後6時ごろ、数十羽のカラスが飛来し、暫定滑走路を8分間閉鎖した。同日午後7時ごろ、A滑走路に着陸した日本航空機に鳥が衝突し、A滑走路も11分間閉鎖し点検した。鳥は空港内に餌を求めにやってくるとのことである。犬も餌を求めて侵入したのか。
●(6月13日) 通学の安全確保に県道の歩道整備を(6/14毎日千葉版、千葉日報)
自転車で通学する中学生らの安全確保のために成田市遠山地区のPTAら約15人が13日、県庁を訪問。県道成田・松尾線の歩道整備促進に関する要望書を堂本暁子知事あてに提出した。
要望書によると、遠山中へは1日約330人が自転車通学しているが、歩道の幅が2メートルない場所や未整備なところがあり、歩行者との接触事故もおきているという。また、県道も大型トラックなどが頻繁に通行することから、児童・生徒は危険にさらされている、として歩道整備などの早急な安全確保を求めている。
同地区による県への要望は3回目で、県土木整備部の高橋論次長に要望書を手渡した高仲寛明・同中PTA会長は基盤整備の促進を要請した。
県では1997年度から同県道の約3・6キロの歩道整備に着手しており、進ちょく率は昨年度末で74パーセント。今年度は同中学校入り口付近の70〜80メートルの整備を予定している。
【本紙の解説】
県道成田松尾線は成田治安法で撤去された三里塚闘争会館前を通っている道路である。この県道はここ10年ほど前から、大型トラックが頻繁に通るようになった。理由はいままで空港裏側として発展が遅れていた芝山町周辺に大規模な貨物施設や物流拠点が数多く建設されたからである。県道の幅はいままで通りだが、大型貨物が時間を稼ぐためにスピードを出して通行し、危険極まりない道路となっている。成田空港自体が巨大な貨物基地だが、空港周辺地区にまで危険が広がっているのだ。これも空港の存在が周辺住民の生活を脅かしている実例である。
●(6月14日) 鈴木幸司さんに一坪共有地の解約要求攻撃
反対同盟の鈴木幸司さんに一坪共有地の解約要求攻撃が開始された。解約を要求する手紙が6月14日付けで送付された(資料参照)。この一坪共有地は、空港敷地内ではなく、駒井野に千葉県が建設中の貨物基地(成田国際物流複合基地)の近くにある。この貨物基地は1990年から建設が開始されたが、その基地構想は遅れに遅れて78ヘクタールからなる全体構想はすでに破産している。その約3分の1の24ヘクタール分だけを南側三角地区として07年までに完成させることになっている。
この貨物基地構想は83年に千葉県が策定した「千葉新産業三角構想」によっている。新三角構想は成田市に「国際物流機能」、千葉市幕張に「学術・教育機能」、木更津市に「研究開発機能(かずさアカデミー)」を、というものであり、日本経済がバブル絶頂期だった頃の産物である。そのため、幕張新都心も、「かずさアカデミー」も大赤字で現在の千葉県の財政を苦しめている。しかも、成田の貨物基地はいまだ完成していない。その完成を鈴木さん所有の一坪共有地が阻んでいるのである。
しかし、今回、鈴木幸司さんにかけられた攻撃は、この貨物基地完成のためだけではない。暫定滑走路北延伸着工攻撃のためである。北延伸工事の本当の狙いが、三里塚闘争を解体し反対同盟と敷地内農家を切り崩し、本来計画である南側への2500メートル化(事実上3300メートルの滑走路になる)にある。その着工が今夏にも開始されようとしている。そのために、市東さんの耕作権強奪攻撃と同じ質の土地強奪攻撃としてかけられている。
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■資料
謹啓 初夏の候、皆様には益々ご清祥のこととお慶び申し上げます。
さて、突然のお手紙で失礼とは存じますが、現在、企業庁で進めております物流造成事業(成田市駒井野地区)につきまして、是非ともご協力を賜りたくお願い申し上げる次第でございます。
工事を予定しております区域につきましては、多くの地権者各位のご協力により用地の手当ても進み、残すところ、登記簿上、鈴木様と千葉県で共有している土地(成田市駒井野字廣田882−13原野261平方メートル以下「共有地」と言います)のみとなっております。
鈴木様の共有持分については鈴木幸司様・いと様の2名分、面積は約16平方メートルでございます。
この件につきましては、平成8年に鈴木様にご協力をお願いした経緯がありますが、残念ながら解決に至っていない状況です。
しかし、当方としては、全体事業の中でも特に遅延している本事業の早急な推進に取り組まなければなりません。それには、鈴木様のご理解とご協力をいただき、共有地の解消を図る必要がございます。お忙しい中とは存じますが、出来れば一度お会いしていろいろとお話をさせていただきたいと存じます。お時間をさいていただける日がございましたら、お手紙なり、お電話なりでご一報いただければ幸いに存じます。
ご多忙の折とは存じますが、私どもの意をおくみとりのうえ、よろしくお願い申し上げます。
謹言
平成18年6月14日
鈴木幸司様
いと様
千葉県企業庁地域整備部
建設課 課長 石塚 香
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●(6月16日) 香取市議会 成田空港の着陸便で飛行高度引き下げ承認(6/17千葉日報)
香取市議会は16日、成田空港への着陸便の飛行高度を変更することに関する確認書案を賛成多数で採択した。これを受け、香取市は今月中に国交省、県、成田国際空港会社と確認書に調印する予定。
確認書では、県上空の飛行高度は離着陸時を除き6000フィート(約1800メートル)以上を基本とすると指摘した上で、「空港北側から着陸する航空機の香取市上空の飛行高度6000フィート以上を4000フィート(約1200メートル)以上とすることについては、混雑などにより航空管制上、必要な場合に限る」とした。
また、高度変更の前後に騒音実態調査の実施と結果の報告・説明、必要な場合は常時騒音測定局の設置、同市内での騒音負担軽減への努力、同市が行う地域振興策・環境対策強化への協力などを盛り込んでいる。
国交省は成田空港の発着便の増加に伴い、空港北側からの着陸便遅延解消のため、昨年11月、着陸態勢に入る県上空での飛行高度を、これまでの6000フィート以上から4000フィート以上に引き下げることを県や合併前の佐原市など4市町に提案。県と4市町は今年3月、確認書の内容の意見書を示して受け入れを表明し、国交省も誠実な対応を約束していた。
【本紙の解説】
航空機が北側から進入する地点(南風時)であるレイクポイントは常に渋滞しているという。その遅延解消のために、レイクポイントの飛行高度を2000フィート引き下げことを香取市(佐原市、栗源町、山田町、小見川町が合併)が承認した。騒音が拡大することを住民に周知徹底せずに、「地域振興策・環境対策強化への協力」という見返り、買収攻撃に屈服したのである。その高度からの進入は来月7日から開始されるとのことである。
●(6月22日) 市東さんの耕作地契約解除へ NAA 農業委に解除申請へ(6/23朝日千葉版)
成田空港の暫定B滑走路の航空機誘導路が空港反対派農家の耕作地を迂回するため「への字」に曲がっている問題で、成田国際空港会社(NAA)はこの農家に、耕作の契約解除を求める文書を送ったことが22日、分かった。農家はNAAに対し、弁護士を通じて拒否の回答をすでに伝えている。今後、NAAは成田市農業委員会に契約解除を求める申請を出す見通しだ。解除が認められれば、「への字」の誘導路を直進する工事を着工する方針。
成田空港の用地内にこの農家が耕作している農地は2カ所あり、合計で8000平方メートル。農地の所有権はNAAが03年取得している。誘導路はこの農地と空港反対派の未買収地をよける形で建設され、大きく「への字」に曲がっている。「への字」を走行中の航空機は上空からみると滑走路に向かっているように見える。離着陸する航空機があるとき、「への字」部分の走行は制限される。
暫定滑走路2500m化で、年間の発着回数は現在の20万回から22万回に増える見通し。発着回数の増加で、誘導路上の滞留時間を少なくすることが求められる。このためNAAは北伸が決まった昨年から、誘導路の直線化に向けた計画を進めていた。
NAAは今月12日付けで、契約解除を求める文書を農家に提出。20日付けで拒否の回答があった。これを受け、同社は契約解除を求める申請を近く、成田市農業委員会に出す方針。同社は「あくまで、話し合いで解決を求める姿勢に変化はない」と話している。
【本紙の解説】
この市東さんへの耕作権の強奪攻撃は03年の12月に始まったものである。その後、04年の7月はじめに成田空港会社が成田市と千葉県に小作権解除申請を通告してきた(04年7月3日付日誌を参照)。「8月下旬に申請し、年内にも解除許可が出される見通しだ」と報道もされた。
しかし、反対同盟は、成田市農業委員会への申し入れ闘争(04年8月25日付日誌を参照)や、「話し合い」を要求する空港会社に弁護団を通して一切の「話し合い」拒否宣言(04年8月3日付日誌を参照)を行い、基本的にその年に解除申請を行うことは阻止した。
今回の攻撃を、空港会社は連絡誘導路の「への字」の部分を直線化する工事を開始するためと理由付けしているが、これは完全にでたらめである。04年当時も同じだった。誘導路が「への字」になっているのは市東さんの耕作地と天神峰現闘本部が空港敷地内に食い込んでいるからである。天神峰現闘本部裁判が現在訴訟中であり、直線化工事をするにしてもこの裁判で反対同盟の敗訴が確定しなければできないのである。この裁判はいまや北延伸阻止闘争とともに三里塚闘争の中心的課題であり、全国的支援をえて勝利的に闘われている。この裁判の結果を問題にせずに、市東さんの耕作権強奪攻撃を再び開始する意味は何か。それは北延伸攻撃の真の狙いが、実は反対同盟の解体にあるからである。北延伸工事で三里塚闘争を解体し、反対同盟と敷地内農民の切り崩しと、本来計画の南側への延伸を狙っているのである。そのために、鈴木さんへの一坪共有地の強奪攻撃、市東さんへの耕作権の強奪攻撃を開始したのである。北延伸攻撃は工事そのものとの対決と、市東さんへの耕作権強奪攻撃との闘いである。耕作権強奪攻撃に対しては三里塚闘争の歴史のすべてをかけた決戦として闘い抜くことを反対同盟と三里塚闘争は決意している。
●(6月24日) 三里塚闘争40年 反対同盟歴史パネル&戸村一作彫刻展と福島菊次郎写真展(東京・江東総合区民センター=本紙参照)
福島菊次郎写真パネルシリーズの「三里塚」が、久しぶりに日の目を見た。30数年前の三里塚の激闘の記録は単なるメモリアルではなかった。それはいままさに始まりつつある労働者と農民の歴史的決起と見事にシンクロする企画となった。あのとき三里塚の大地は人民の闘う息吹で埋まった。そして歴史は繰り返す。そんな実感がこみ上げるパネル展示となった。
●(6月25日) 三里塚闘争40年 歴史と現在(いま)を語る集い
6月24日〜25日、東京江東区の総合区民センターで行われた福島菊次郎写真展・戸村一作彫刻展および「三里塚闘争40年 歴史と現在(いま)を語る集い」には240人の労農学が駆けつけ、大成功を収めた。展示会場ではビデオ上映も行われ、三里塚闘争40年の激闘の数々の生々しい再現に歓声があがっていた。
集いはパネルディスカッションの形式で行われた。パネラーは反対同盟員5人と動労千葉の田中康宏委員長、関西実行委員会の永井満代表、顧問弁護団の葉山岳夫事務局長。第1部「40年の歴史」では、「農民無視」「実力闘争」「切り崩しとの闘い」「一切の話し合い拒否」など三里塚闘争史の断面が、北原事務局長らによって紹介された。田中委員長からはジェット燃料阻止闘争が労働組合運動に果たした意義が語られ、永井代表からは住民闘争がいかにして三里塚に決起したか、若かりし頃の心情が切々と語られた。
第2部では、暫定滑走路のもたらす被害、北延伸で何が始まろうとしているのか、攻防の焦点、人権無視の現実などが浮き彫りにされた。葉山弁護士からは、三里塚闘争が改憲阻止闘争の一翼をなしている構造が明らかにされた。
フロアーからも石原都政下の教育反動と闘う教育労働者、70年三里塚の農民放送塔戦士の大島さん、元全学連委員長の鎌田雅志さんらがそれぞれ自分の闘いの経験を紹介した。集いの参加者は240人を超え、会場は座りきれずに立ち見が出る状況だった。
■参考:当日開場で配布された資料を掲載します。 資料(PDF)へ
●(6月26日) 成田延伸 来月上旬に申請も(6/26朝日、6/27産経千葉版)
成田空港の暫定平行滑走路の北延伸に関連し、移転補償の対象となる「防止特別地区」の設定をめぐる成田市久住地区の住民と県の交渉で26日、6地区のうち同市成毛と小泉の地区で住民側の了解が得られたことが分かった。残る4地区との交渉が難航する中、成田国際空港会社は見切り発車″して、着工に必要な国への施設変更許可申請を7月上旬にも行う可能性が強まってきた。
関係者によると、成毛、小泉の両地区では、航空機騒音防止法(騒防法)に基づき、空港会社の移転補償が受けられる防止特別地区(うるささ指数、W値80以上)の家屋計3戸のほか、集落分断を避けるために設けた県の拡大基準で13戸を同地区に設定することで住民側と合意した。
県は残り4地区にとの交渉を急ぐ方針だが、補償家屋の「線引き」をめぐる交渉が難航している地区では、次回の交渉期日が決まっていない地区もあり、空港会社が目標としている6月中の決着は難しい局面となっている。
空港会社の黒野匡彦社長は「結果に期待しているが、延伸滑走路を2009年度に完成させる計画は変更できず、日程的にこれ以上待つのは厳しい」としている。
【本紙の解説】
26日に久住地区の住民との交渉が行われ、成田市成毛と小泉の地区が合意したとのことである。しかし、他の地区では合意できないので、見切り発車して、施設変更許可申請を7月上旬に行うとなっている。
交渉がまだ行われていない26日の朝日新聞の朝刊一面トップで「成田暫定滑走路 延伸計画、来月申請へ」との見出しで「成田国際空港会社(NAA)は7月上旬にも、航空法に基づく施設変更許可申請を国土交通省に出す方針を固めた。千葉県による周辺住民との移転補償交渉は決着していないが、目標の09年度末の供用開始に間に合わせるには、これ以上申請を遅らせられないと判断した。国交省は今秋にも許可する見通しだ」となっている。つまり、騒特法に基づく特別地区の線引きの交渉がどうなろうとも、7月上旬に施設変更の申請を行うということをあらかじめ決定していたのである。国交省は直ちに許可するとしており、9月にも工事が開始されようとしている。
騒特法特別地区の線引きで交渉しているのは、幡谷、大室、土室、小泉、成毛と旧下総町の高倉の6カ所であった。最も問題になっていたのは幡谷と高倉の2カ所である。それに加え、大室、土室も解決していない中での見切り発車である。住民無視の姿勢は許せない。見切り発車しても、この禍根が後をひくことは間違いない。
三里塚闘争の歴史は政府が空港の完成を急いで住民の意向を無視したことから始まっている。1966年に「羽田空港の処理能力が70年には満杯になる」として地元に一言のことわりもなく、三里塚に空港建設を決定し、暴力的に建設計画を推し進めた。今回の北延伸も「09年度に羽田の国際化する」ということが理由で暫定滑走路の2500メートル化のために、住民を無視して暴力的に推し進めている。さらに、この強権性で三里塚闘争と反対同盟を解体し地権者を切り崩し、本来計画の南側延伸を完成させ、3300メートルの滑走路にしようとしているのである。
しかし、この国交省と空港会社の空港建設初期と同じ「問答無用」の姿勢は、空港反対闘争をあらゆる面から激化させていくだろう。
●(6月26日) 脱落の主翼部品ユナイテッドか(6/27東京千葉版)
成田市荒海の水田で先月23日に見つかったボーイング777の主翼の一部は、ユナイテッド航空の旅客機から落下したとみられることが、国土交通省成田空港事務所の調査で分かった。ユナイテッド航空の同型機の同じ部品が、着陸後点検で脱落していることが判明した。
空港会社によると、部品は長さ約80センチメートル、幅約20センチメートルで、重さは約1.8キログラム。主翼中央部のカバーの一部という。水田は成田空港A滑走路から約7キロメートル北側だった。
【本紙の解説】
この落下物は5月23日に見つかっていながら、マスコミなどに公表したのが6月2日なのである(06年6月2日付日誌を参照)。公表を第1ターミナルビル南ウイングオープンまで隠していた。
空港から7キロメートル地点である。空港から10キロメートル圏内は危険であり無人化してバッファーゾーンとするのが基本である。とりわけ、飛行コース下の10キロメートルは危険がきわまりない。人口密集地の内陸に空港を建設すること自体が間違いなのである。1.8キロメートルもある物体が飛行する航空機飛行から人に落下した場合、完全に生命を奪うことになる。
しかし、このことで空港も航空会社も一片の謝罪も声明も出していない。空港は航空会社の整備の問題だとして、責任を感じていない。航空会社は、人口密集地に空港を建設した空港の責任だとしている。双方、責任をなすりあっている。空港周辺は航空機の墜落事故もあり、それ以外の事故はおびただしい数になる。にもかかわらず、空港も航空会社も一貫して、それは当然であり、しかたがないという姿勢なのである。空港と周辺住民との共存共栄とか共生はあり得ないのである。
●(6月28日) 一坪共有地裁判 引き渡し命じる(6/28読売夕刊、6/29東京、産経各全国版、朝日、読売、毎日各千葉版)
成田空港反対派らが空港内に所有する「一坪共有地」をめぐり、成田国際空港会社(NAA)が三里塚芝山連合空港反対同盟北原派の北原鉱治事務局長ら、延べ13人を相手取り、共有持ち分の引き渡しを求めていた訴訟の判決が28日、千葉地裁であった。長谷川誠裁判長はNAA側の主張を全面的に認め、共有地6件の計約600平方メートルを、計約260万円でNAAに引き渡すよう命じた。被告側は控訴する方針。
判決によると、原告と被告の共有地は、空港予定地内の航空機の誘導路近くの原野や山林など6カ所。
判決は「原告は大半の持ち分(94パーセント以上)を有しており、現物分割をしても被告らは利用価値の乏しい狭小な土地を取得するしかない」とし、共有物について「持ち分の価格を賠償することも許される」とした最高裁判決(96年10月)に従い、引き渡しを命じた。
判決を受け、NAAの黒野匡彦社長は同日、「判決のあった土地はB滑走路、誘導路周辺に所在する一坪共有地。空港の事業用地として活用するために、NAAが持ち分を全面取得することを認めた判決の意義は大きい」とのコメントを発表した。
反対派の弁護士は「事実、証拠に基づかない判決だ。控訴して戦いたい」と述べた。
NAAは02年12月、話し合いによる解決が難しい一坪共有地8件分(今回の6件を含む)を提訴。うち1件は03年3月に、持ち主が任意で持ち分をNAAに譲渡したため訴訟を取り下げ。別の1件は同年7月にNAA側が勝訴し、判決が確定している。
【本紙の解説】
一坪共有地は空港反対のために無償で共有したものである。「三里塚地区周辺に土地をもつ会」では、空港反対闘争に勝利した時に、元の地主に返却するとなっている。それ以外のいかなる譲渡も認めていない。したがって元の地主ではなく、旧公団や、空港会社が買収することは法律的にあり得ないのである。一坪はあくまで空港反対のための共有地なのである。
したがって今回の判決は、「土地をもつ会」は「民法上の組合ではない」ということが反動判決の核心にある。そのために、マンションの共有地などに適用される「大半の土地を持つもの」に処分の権限を委ねる判決となったのである。
「土地をもつ会」を民法上の組合と認めない理由は、空港建設を前提とした“国策判決”だからだ。北延伸攻撃の露払いなのである。反対同盟は直ちに控訴し、最後まで裁判闘争を闘い抜く方針を確認した。「土地をもつ会」が民法上の組合であることを控訴審闘争でかならずや認めさせるであろう。
●(6月30日) 成田空港会社 東峰地区に文書通知 地権者側は不快感(7/1毎日新聞千葉版)
成田国際空港の暫定平行滑走路(2180メートル)の「北伸」に関し、成田国際空港会社が6月末に成田市東峰地区に通知文書を出していたことが30日分かった。文書は地図付きで、北伸計画を具体的に同地区に示した形。地権者側は「直接来て話をするのが筋。一方的だ」と不快感をあらわにしている。
地権者などによると文書は同社の黒野匡彦社長名で、北伸に伴い、同地区の「東峰の森」に新誘導路を建設したり、最大地権者の畑のそばの誘導路の範囲を広げる−といった具体的な内容が、地図付きで示されていたという。また、黒野社長が同地区に顔を出していない点について「皆さんの感情を配慮して出向かなかった」と話されていたという。同地区は同滑走路の南側にある本来計画予定地で、地権者7戸がいる。黒野社長は、うち4戸と昨年4〜6月に4回の話し合いをしたが、同8月に連絡がないまま北伸を決定。その後、黒野社長は同地区を訪れていない。同社の関係者によると、文書通知は「交渉の窓口を開いておくようにという(北伸決定時の)国土交通相の指示で、東蜂の森についても話し合った上で(誘導路)を通すと(文書内で)説明している」と話している。
【本紙の解説】
空港会社は、新誘導路建設問題で東峰地区を無視して東峰の森の工事を開始できないので、6月23日付けで工事開始を文書で送りつけてきた。
空港会社はこれまで、この東峰の森を航空機騒音などのバッファーゾーンとして位置づけ、東峰地区に対して、この森は未来永劫(えいごう)残すと約束してきた。旧公団自身が残すと誓約したのである。その経緯があり、東峰地区住民を完全無視はできないのである。東峰地区が拒否すれば、この新誘導路は建設の道義がなくなる。ここは旧県有林で現在はNAAの所有だが、東峰地区の住民が戦後入植以来50年間も入会地的に使ってきた森であり、権利関係から見ても空港会社が一方的に伐採したり形状を変更することは許されない場所なのである。
そのために、この記事でも空港会社の関係者は、「東蜂の森についても話し合った上で(誘導路)を通す」言っている。また、そのように「文書内で説明している」とある。しかし、空港会社が送りつけきた「文書」ではそういうことはない。
今回、空港会社が作成した文書の1つである「東峰の森の管理についてのこれまでの経緯について」で、最後に「今後の東峰の森の管理につきましては、新たな誘導路整備のために使用する部分を除き、防風、防砂、涵養(かんよう)機能の面からもどのような方法が妥当であるか、東峰区の皆様とご相談させていただきたいと考えております」とある。
誘導路は一方的に問答無用で建設する。しかし、その「誘導路を除く部分」の管理について「話し合い」をするというのである。こんなペテンはとうてい通用しない。
この文書は前段のところで、東峰の森を公団が1997年から1999年までに整備を行ったが、「その間、東峰区の皆様より『今後の維持管理作業は公団に任せるが、森の内部については森を利用する区民が一定管理を行うので勝手に整備しないでほしい』とのご要望をいただいたことから、空港公団としては、森の外周周辺管理(草刈り/年2回)を行ってまいりました」と書いてある。このことからも、森の内部は区民が管理することを旧公団は承認し、その後空港会社は外周周辺しか管理してこなかったのである。この約束にもかかわらず、区民管理の森の内部を分断する誘導路建設を区民の承認なしにやろうというのだ。これは地域住民の生活権にかかわる契約行為の一方的な破壊でもあり、道理も何もない。
新誘導路が建設されると萩原さんの清水の畑(集会に使う畑)は、四方が空港に囲まれる。そのために、排水、土壌などの環境が変化するかも分からない。数年前に空港建設のために、排水溝が詰まり、畑が湖のようになった。このようなことも予想されるのである。また畑に行くにも新誘導路の下を通るトンネルをくぐらなければならなくなる。東峰区の農民すべてが、頭上40メートルの殺人的航空機騒音の下で、四方が空港に囲まれる環境にたたき込まれるのだ。これは国家犯罪とも言うべき次元の生活権の破壊だ。「誘導路を除く部分」の管理だけを話し合おうと言って許される問題ではない。反対同盟と東峰地区の農民はあらゆる手段でこの新誘導路建設を阻止するために闘い抜くであろう。
●(6月30日) 成田空港北伸 来週にも施設変更許可申請(6/30毎日千葉版、7/1読売全国版、朝日、産経各千葉版、千葉日報)
成田空港の暫定B滑走路(2180メートル)を北側に延ばし2500メートル化する計画をめぐり、地元との移転補償交渉が難航している問題で、成田国際空港会社(NAA)の黒野匡彦社長は30日、「地元との協議がまとまっていない。6月中の申請は見合わせるが、1週間以上遅れることは避けたい」と述べ、来週中にも国交省に施設変更許可を申請する考えを示した。
NAAは「地元合意を得た上で6月中の申請」を目標としてきた。しかし、この日までに、北伸に伴い騒音が拡大する成田市久住地区との交渉は調わなかった。
黒野社長は「国、県などと努力を続けてきたが残念ながら、6月末までに地元の了解は得られなかった」とし、6月中の申請を見送った。
新たな申請時期については「滑走路を09年度中に供用開始するためには、申請時期は1日でも早い方がいい」と述べた。
【本紙の解説】
空港会社は焦っている。そのことが黒野社長の恒例になっている月末の定例記者会見で分かる。北延伸工事を09年度中に完成させるのは無理のようである。しかし国交省からは、09年度中までと義務づけられている。予定通り9月中旬に着工しても工期は3年半である。そもそも北延伸の工期は6年間と計画されていた。それを昨年8月4日の北延伸最終決定で羽田国際化と同じ09年度中となった(05年8月4日付日誌を参照)。6年間の工事を半分近い3年半でやるのは、基本的に無理である。黒野社長は、「実質工事期間は3年1〜2カ月」との発言もあるが、三里塚で工事が計画通りに進んだ例は歴史的に一度もない。それどころか、どの滑走路も倍以上の工期がかかっている。黒野社長もこれが分かっているのか「1週間以上の遅れは避けたい」などと述べているが、わずか「1週間」が問題になるほど北延伸工事の工期は逼迫しているのである。
空港会社は、久住地区住民と騒特法特別地区の線引き交渉が6月までに不調だったので6月中の申請は見送ったというが、来週には申請するという。1週間遅らせる理由もはっきりしない。久住地区空港対策委員会の松島文哉会長は「申請前に住民の納得を得る線引きが最低限必要だ」と話しており、1週間遅らせても、住民は納得するはずもない。交渉をより長期化させるだけである。
また黒野は、申請から着工までは「2カ月半程度との見方」と発言し、9月中旬ごろの工事着手を明らかにした。
東峰の森の攻防、市東さんの耕作地取り上げ攻撃、クリーンパークの閉鎖・廃止問題を含めて9月中旬の北延伸着工まで、暑い三里塚の夏の決戦が始まった。
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