SANRIZUKA 日誌 HP版   2004/08/1~31    

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 2004年8月

 

〔週刊『三里塚』編集委員会HP部責任編集〕 

(8月3日) 空港脇農地の小作権解除問題/反対同盟 話し合い拒否(8/4千葉日報)

 成田空港の暫定平行滑走路脇にある農地の「小作権解除問題」で三里塚芝山連合空港反対同盟北原派(北原鉱治事務局長)は3日、話し合いの場を求めた成田国際空港会社(NAA)の要請に対し、代理人の顧問弁護士を通して「一切の話し合いはあり得ない」と回答したことを明らかにした。
 空港反対派の男性(54)が耕作する問題の農地(畑2カ所、約0・8ヘクタール)は天神峰地区の空港用地内にあり誘導路を「へ」の字に曲げる原因ともなっている。旅客機が立ち往生したり接触事故を起こすなど安全面での欠陥が指摘され、直線化を目指すNAAが周辺の土地約1・3ヘクタールを地主から買収したうえで、金銭補償や代替地を提案して立ち退きを求め今年3月に提訴している。
 男性の耕作権をめぐっては、NAAが農地法に基づく小作権解除の許可申請を成田市農業委員会を通して県知事に行なう方針が取りざたされ、反対派が反発を強めていた。NAAは黒野匡彦社長名で反対派の代理人弁護士に「方針決定の事実はない」と7月16日付文書で憶測を否定、男性との話し合い解決に向けた「場の設定」の仲介をあらためて要請した。
 今回の回答で代理人弁護士は「農民を巻き込んだ一大対決を差し控えたことは賢明」と評価する姿勢を示したが、話し合いには「B滑走路の供用停止が解決への前提」として応じる考えのないことを表明した。反対同盟北原派は、問題の農地は男性の祖父が御料牧場時代の原野を開墾して以来、90年以上にわたって問題なく耕作を続け「権利は時効取得されている」とし、「安全な野菜、自然農法を追求して守ってきた畑を他に代えることはできず、机上の論理にすぎない」と話している。

 【本紙の解説】
 これは、黒野NAA社長の葉山弁護士への書簡(04年7月23日付日誌を参照)に対する葉山弁護士の返答を紹介している記事である。黒野社長は書簡で「今回の報道により、市東様はもとより、葉山先生にもご不快な思いをさせてしまい、誠に申し訳ありませんでした」と言っておきながら、今後解除手続きなどの強硬方針はとらないとは言明しなかった。
 むしろ7月末の記者会見(04年7月30日付日誌を参照)では、当面は話し合い路線で行くがそれが失敗し、関係者の同意が取り付けられれば、小作権解除の強硬路線をとることもありうるという含みを持たせる発言をしている。
 このような脅迫まがいの発言に対して、反対同盟と葉山弁護士が「話し合い拒否」を返答したことは当然である。
 以下は、黒野社長への葉山弁護士の書簡全文。
 ………………………………………………………………………………
 前略
 貴殿からの本年7月16日付書面を受け取りました,市東孝雄氏の小作地の件につき「小作権解除申請へ」との方針を決定した事実がないことにつきましては、千葉県知事、農業委員会をもまき込んだ全国の精農農民らとの一大対決を差控えられた点において賢明なことと存じます。
 さて、貴会社におかれては、市東孝雄宅や農地にジェットブラストを吹きつけ、周縁地区住民の頭上40メートルにジェット機を離発着させ、騒音をまき散らし、多くの勧告方式、標準に違背し、シカゴ条約に違反して、B’滑走路の供用を続けておられます。これは不法行為というべきであり、直ちに供用を停止されるべきであります。
 B’滑走路の供用停止が解決へ向けての一切の前提であります。
 当方といたしましては、この件の先履行があれば格別、そうでない限り一切の話合いはあり得ません。宜しく御理解下さい。
                      草々
                     2004年8月2日
 成田国際空港株式会社
 代表取締役 黒野匡彦様

 市東孝雄氏代理人
  弁護士 葉山岳夫

(8月4日) テロ防止で水際強化/空港到着前に不審乗客確認(8/5千葉日報)

 政府は4日までに、外国から日本へ向かう航空機に乗った乗客の名前などの情報を航空会社から通報を受け、到着前に不審者がいないかチェックする「事前旅客情報システム(APIS)」を2005年度からスタートさせることを決めた。増加する外国人犯罪対策とテロ防止のため、水際対策を強化するのが狙い。
 航空会社からの情報を集約する「情報分析官」(仮称)を警察、入国管理局、税関に新たに置く方向でも検討する。
 APISは警察、法務、財務の3省庁が共同で開発。外国から航空機で日本へ向かう乗客が外国の空港でチェックインした段階で、乗客全員の氏名や性別、国籍、生年月日が専用回線で日本国内に送信される。
 これを警察庁、入管、税関のコンピューターがそれぞれの不審者リストと照合し、航空機が日本に到着する前に該当する名前がないかチェック。不審者の名前が見つかった場合は、到着する空港に情報分析官が連絡し、係官がその人物への入国審査を念入りに行なう。

 【本紙の解説】
 「増加する外国人犯罪対策とテロ防止」としているが、APISは、9・11の衝撃を受けて作り上げたものである。世界各国で既に導入が始まっている。ゲリラ戦闘員の個人情報をプロファイリングし、国家間でデータを交換しようというものである。出国する際、航空会社から事前に情報を到着空港の出入国管理当局に送り、航空時間内にチェックを行なってしまうもの。
 また、数人のゲリラ実行者が乗っていれば、航空機を爆破する判断にも使われるということである。民間航空機が侵略戦争の手段に使われるのは現代戦争では常識になっているが、民間航空機そのものが、戦争の最大のターゲットになり、攻撃手段にまでなっている。

(8月4日) 成田空港滑走路 猛暑に負け/成田空港で無数のひび割れ(8/5朝日社会面、毎日、東京各千葉版、千葉日報)

 成田国際空港会社は4日、A滑走路(4000メートル)の北端部分約1000平方メートルの範囲で、連日の猛暑による乾燥や航空機の荷重などで、ひび割れが複数見つかり、同日から8日まで夜間工事で舗装し直すと発表した。
 補修するのは傷みが激しい長さ70メートル、幅12メートルの部分など計3カ所で、ひび割れが拡大して航空機の発着に影響しないよう予防するのが目的と言う。
 工事は劣化している表面を10センチほどの厚さで削り取り、アスファルトで再舗装する。滑走路を使わない午後11時から翌日午前5時20分までの工事で、発着に影響はないと言う。
 気温が30度以上の場合、滑走路の表面温度は50度以上になる。同空港では猛暑の影響で7月にも2度、誘導路の舗装が一部はがれ、舗装し直している。

 【本紙の解説】
 滑走路は10年ごとにアスファルトを改修している。今年はその8年目と言っている。今年の猛暑に滑走路も勝てなかったようだ。目に見える劣化や破損はすぐ補修することになるが、民営化されたNAAは、安全性より利益追求に走らざるをえず、危険は増す。
 航空も鉄道も民営化された結果、安全性が無視されることが多くなっている。民営化と安全性は相容れないのである。

(8月7日) 「成果を残せた」 イラク復興支援の佐藤隊長ら帰国(8/8読売、東京、産経各千葉版)

 イラク南部サマワに派遣されている陸上自衛隊イラク復興業務支援隊の初代隊長、佐藤正久・1等陸佐(43)が現地での任務を終え、7日夕、20人の隊員とともに成田空港着の民間航空機で帰国した。
 「ひげの隊長」としてサマワの人々に親しまれた佐藤隊長は、「満足のいく成果を残せた」などと半年余りの活動を振り返った。
 1月19日に先遣隊長としていち早く現地入りした佐藤隊長は、「サマワは私の2番目の故郷」と繰り返し発言。さらにアラブの伝統服姿で記者会見に臨むなど、現地の文化を尊重する姿勢を示し続けたこともあって、市民から「サミール」(アラビア語で仲間の意味)の愛称で呼ばれた。
 7月末には、地元の有力部族長たちを回って離任を報告。陸自の宿営地近くの部族をまとめるライサン・ムターシャー部族長(38)には、「治安情勢が良くなったらもう1度、この地を訪れたい」と再会を約束した。地元紙「サーワ」のアドナーン・サミール編集長(43)は、「軍人というより、外交官のように地元に溶け込もうと努めていた」と話す。
 この日、ともに帰国した隊員の多くは、先遣隊のメンバーとして佐藤隊長と一緒にサマワ入り。現地の人たちの要望を直接聞いたうえで、連合国暫定当局(CPA)や地元のムサンナ県などと支援活動の内容を調整する役割を担ってきた。帰国後、会見した佐藤隊長は「イラクを愛する者として、微力ながら今後も復興支援にかかわっていきたい」などと語った。

 【本紙の解説】
 イラク派兵への出発、帰還に成田空港を使うことが常態化している。絶対に許すことことができない。新聞報道されただけで、これで7回目である。政府専用機で地方空港からも出兵しているが、民間航空機を使って成田を利用するケースが最も多い。この問題の帰結は、戦争がより切迫化してくれば、兵員移送を行なう民間機が攻撃されてもおかしくないということである。

(8月20日) 反対同盟/天神峰現闘本部裁判 傍聴のお願い

 反対同盟は9月9日の天神峰現闘本部裁判に向け招請状を発送しました。全力で裁判闘争に決起することを要請します。以下、全文を掲載。

■天神峰現闘本部裁判 傍聴のお願い
          三里塚芝山連合空港反対同盟
           (連絡先)事務局長・北原鉱治 成田市三里塚115

 全国の皆さん。天神峰現闘本部に対する不当な撤去攻撃と闘う裁判闘争の第2回口頭弁論が、9月9日午前10時30分から千葉地裁で行われます。
 この裁判は、成田空港暫定滑走路の欠陥である「へ」の字誘導路の直線化のために、旧空港公団(現NAA=成田国際空港会社)が反対同盟を被告に起こした裁判です。旧地主の石橋政次の相続者から底地を買収したとして、その上に建つ現闘本部の撤去を要求しています。しかし土地は、当時副委員長の石橋政次が反対同盟に提供したものであり、本部建物は反対同盟の所有物として建築時に登記されており、提訴には法的根拠がありません。
 前回公判で反対同盟と弁護団は、土地を利用する正当な権利が反対同盟にあるから提訴は不当としたうえで、「そもそも成田治安法で封鎖されており、撤去自体が不可能。現状では原告に訴えの利益がない」として却下を要求しました。鉄板で封鎖された状態での撤去はあらかじめ不可能です。弁護団はこの矛盾を突き、適法な釈明がない限り本案には入れないと突き放したのです。
 今回の公判では、この裁判が裁判として継続できるものなのか、原告・NAAの釈明と同盟・弁護団の反論、これに対する裁判所の判断が問われることになります。
 本裁判闘争は暫定滑走路粉砕の攻防の要をなす重要な裁判闘争です。同時に憲法違反の成田治安法適用下の争いであることからきわめて特異な裁判でもあるのです。反対同盟は、天神峰現闘本部を守り抜き、自衛隊のイラク派兵と有事関連法案に明確となった成田軍事空港の廃港に向かって闘い進む決意です。多くの皆さんの傍聴をお願いします。
             2004年8月20日

    記
  天神峰現闘本部裁判 第2回口頭弁論
 【日時】 9月9日(木) 午前10時30分
 【法廷】 千葉地裁 501号法廷

※当日は多数の傍聴が予想されます。裁判所は「抽選のための整理券を当日午前9時55分を締め切りとして配布する」と伝えてきました。反対同盟は、傍聴席確保のために午前9時30分をめどに正門前に集合したいと思いますので、よろしくお願いします。

(8月20日) 成田空港/緊急連絡先を一本化、専用回線を設置(8/20毎日各千葉版)

 テロなど緊急事態があった際の連絡先として、成田空港会社は、空港内で働く従業員用の専用回線を設置した。これまで連絡先は、事案ごとに警察や消防など複数にわたっていたが従業員間で徹底されておらず、今後は警備センターに一本化した。情報の迅速な共有化と、従業員の危機意識の向上を図るのが狙いだ。回線を設置した16日以降、連絡先を書いたステッカーを空港内の約500事業者に配り、周知徹底を進めている。
 空港で緊急事態があった場合、慣例として、事件・事故は成田空港署、火災は成田市消防本部、不審物や急患は同社、に連絡することになっていた。さらに、同社への通報は、空港内の事案はサービスセンター、空港外は警備センターへと分けられていた。
 一方で、内容によっては連絡先の判別が難しく、通報が遅れるケースもあった。年間300件以上の同社への通報内容は不審物だけでなく、火災や空港への侵入事件など多岐にわたっている。今年6月、指名手配中の男が入国審査のすきを見て逃走した事件では、警備員が最初に同社に連絡を入れたため、空港署の捜査員の初動が遅れ、結果的に空港外に逃げられてしまった。
 今後は、警備センターから関係機関にホットラインで連絡する。同社保安警備部は「01年9月の米同時多発テロ以降、迅速な通報と情報の共有化が課題だった。何か起きたら速やかに連絡してほしい」と話している。専用回線は(電話0476・34・5555)。

【本紙の解説】

 成田空港に関わる最近の記事はゲリラ警戒のための防護警戒システムの強化が多い。成田空港は民営化により、経営効率を良くして収益増ためにコスト削減に全力を上げている。その経費削減の最大のターゲットが、周辺対策費と航空機安全運航のための経費である。そのために、きわめて危険な空港になりつつあり、暫定滑走路をめぐる小事故が多発している。これはかならず大事故に発展するものである。
 しかし、航空機の運航ではなく、ゲリラ警戒の経費はかなり膨らんでいる。9・11以後の米国の空港もそうであったが、日本がイラク戦争の参戦国になったことで成田空港もゲリラの最大ターゲットとなった。その対策に大わらわなのである。

(8月20日) 東峰神社、補修作業開始(8/21千葉日報)

 成田空港用地内の東峰神社本殿が20日未明、補修のため、クレーン車でつり上げられ、業者の作業所に移された。屋根を銅板にして「化粧直し」をする。
 本殿は高さ約4メートル、幅約2メートル、奥行き約1・5メートル。クレーンの先端は地上高約15メートルで、風はやや強かったが作業は無事に終わった。
 神社は、暫定B滑走路わきにあり、通常は午前6時~午後11時まで、上空約40メートルの低空を航空機が飛び交うため、万一を警戒して午前4~5時の作業になった。
 同神社は空港反対運動の象徴的な建物。新東京国際空港公団(現・成田国際空港会社)が滑走路整備を目的に、2000年に地主から同神社の敷地約150平方メートルを買収した。
 これに対し、住民が「地区の財産」と主張して民事訴訟を起こし、同公団も03年12月にそれを認め、所有権を住民側に移転した。

【本紙の解説】
 東峰部落は20日、全戸総出で東峰神社の社殿改修のための移転作業を行った。社殿の修復と屋根を銅板にふきかえるために大工の作業場に移すためのものである。また社殿の覆いを、御手洗(みたらし、参詣者が手や口を水で浄める所)に移した。改修作業は9月末に完了する予定。
 裁判闘争勝利の後、東峰地区では小田原の二ノ宮神社から苗木をいただき植樹するなど神社全体の整備に努めている。今回の社殿改修で、東峰神社は暫定滑走路粉砕のより堅固な拠点となるであろう。

(8月21日) 03年世界の空港 国際線ランキング/成田空港健闘(8/21千葉日報)

 成田国際空港会社が発表した2003年世界の空港「国際線ランキング」(国際民間航空機関=ICAO統計)によると、成田空港の旅客数(2262万人)は7年連続で8位をキープする一方、じりじりと順位を下げていた発着回数(15万9000回)も暫定平行滑走路オープン効果が現れ、一昨年の24位を底にようやく下げ止まり、17位へと大幅に回復した。
 過去、91年に11位まで国際ランクを上げた発着回数は年々下がり続け、01年には24位まで後退したが、02年は暫定平行滑走路効果で一気に18位(15万2000回、伸び率21・9パーセント)に戻し、昨年は17位(同4・9パーセント)とほぼ7年前の水準に回復。
 発着回数の世界ベスト3(03年)は、1位シャルル・ド・ゴール(パリ)44万3000回、2位ヒースロー(ロンドン)39万8000回、3位スキポール(アムステルダム)38万5000回で順位は前年と同じだった。
 旅客数は、92年に5位までランクアップしたが、97年に8位まで下げたが、その後は横バイ状態を維持した。
 成田空港の旅客数伸び率は、02年が、前年比11・3パーセント増の2476万人で8位、03年は新型肺炎SARS(重症急性呼吸器症候群)やイラク戦争の影響を受けて伸び率が前年比マイナス8・6%と苦戦したが、順位に変化はなかった。 
 韓国・仁川国際空港(ソウル)の急成長は著しく、前年比43・9パーセント増となり、2054万人と2000万人の大台を突破、成田への脅威が現実のものになり始めた。
 旅客数の世界ベスト3(03年)は、1位ヒースロー5655万人、2位シャルル・ド・ゴール4320万人、3位フランクフルト・マイン4053人となり、前年3位のスキポールが4位に後退、順位が入れ替わった。
 一方、貨物取扱量では、成田空港は世界第2位を誇っている(194万トン)が、一昨年の02年ランキングはトップの香港に次ぎ、7年連続で2位の座を守った。03年は未集計である。
 注目すべきは、前年10位に初めて顔を出した仁川空港(167万トン)が、43パーセントの驚異的な伸びでチャンギ(シンガポール、163万トン)を抜いて3位に躍進、アジアのハブ空港をめぐるし烈な国際競争を表面化させた。

【本紙の解説】
 世界の空港の中で成田空港の健闘を謳っているが、暫定滑走路の供用開始で発着回数が増加し、01年の24位から17位になっただけである。しかし、旅客数では、順位も8位で横ばいだが、旅客数も発着回数に比例して増加していない。それは暫定滑走路が中・小型機が中心であることと、むしろ、A滑走路で運航するジャンボ機の搭乗率が下がっていることに起因するのである。
 また、旅客数でも、貨物取扱量でも韓国仁川空港の飛躍的増加が著しい。旅客数では仁川空港が2054万人であり、成田空港の2262人を抜く勢いである。成田での増便が限界に達していることにくらべ、仁川空港はいまだその建設の端緒に着いたばかりである。仁川空港の現在の可稼働容量の上限は、旅客数で年間2,700万人、貨物は270万、そして24万回の離着陸が可能である。それが2020年には、旅客数が1億人、貨物が700万トン、年間53万回の離発着能力を持つ計画があり、その建設が進行中である。広さで成田の約5倍、滑走路は現在2本が4本になる。仁川空港の着陸料は成田の3分の1。成田を数倍する貨物物流基地も港湾施設をともなって建設されている。ここ1~2年で成田空港が仁川空港に追い抜かれることは確実である。東アジアのハブ空港から成田は転落し、その基軸に仁川空港が座ることになるのである。

(8月25日) 反対同盟/小作権解除申請不受理申し入れ(8/26朝日、読売各千葉版、千葉日報)

 成田空港建設に反対する三里塚・芝山連合空港反対同盟北原派は25日、成田市農業委員会に同派の農家の小作権問題に関して、解除申請があった場合、受理しないよう申し入れた。上部組織の県農業会議にも同じ文書を郵送した。
 農家の農地は成田国際空港会社(NAA)が地権者から土地を買い取り、金銭補償や代替地を提示して立ち退きを求めたが、農家は拒否している。
 このため、農地法に基づいて小作権解除を農業委員会に申請することが取りざたされたが、農家の反発が強かったため、NAAは強制的な手段は取らず、話し合い路線での解決を目指すとしている。しかし、同派は解除申請の可能性は残っているとして、事前の対策として申し入れたという。

【本紙の解説】
 萩原進さんと市東孝雄さんが反対同盟を代表して、成田市役所内に事務所がある成田市農業委員会に、成田市会議員の足立満智子さんとともに申し入れを行った。詳しくは本紙参照。以下は申し入れ書全文。

………………………………………………………………………………………………
■申し入れ
成田市農業委員会 御中
千葉県農業会議  御中

         三里塚芝山連合空港反対同盟 
         (連絡先)事務局長・北原鉱治 成田市三里塚115 

1.7月3日付読売新聞は、「小作権解除申請へ」の見出しのもとに、NAA(成田国際空港会社)が市東孝雄氏(成田市天神峰63番地)の小作権解除を申請すると報道しました。同紙によれば、「農地法に基づき小作権解除許可を千葉県の堂本暁子知事に申請する方針を決め、千葉県と成田市に伝えた」「8月下旬に申請し、年内にも解除許可が出される見通し」とされています。
 その後、NAA社長の黒野匡彦氏は、7月15日付で市東孝雄氏の代理人である葉山岳夫弁護士(東京都港区南青山5-10-2 第2九曜ビル505号)に、「このような方針を決定した事実は一切ございません」と書いた書面を送り、報道内容を打ち消しました。しかし書面には今後、解除手続きなどの強行方針を取らない旨の記述がないばかりか、月末の記者会見では、強行措置に含みを残しています。

2.問題の土地は、市東孝雄氏の祖父である市太郎さんの代に御料牧場の原野を開墾し、以後、90年近くにわたって市東家が耕作してきた農地です。戦後の農地解放で自作地とされるべき土地でしたが、孝雄氏の父・東市氏の復員の遅れによりできず、戦後に旧地主との間で賃貸借契約が結ばれました。一部契約外の農地についても市東家が開墾したことから、これまで問題なく耕作しており、権利が時効取得されています。
 NAAの前身である新東京国際空港公団は、1988年に旧地主から土地を買収したにもかかわらず耕作者の市東さんには告知せず、昨年突如、新聞紙上で買収を公表し、今回、小作権解除に動きました。
 B'暫定滑走路は、空港建設の不当ゆえに用地が取得できないにもかかわらず、あえて建設した欠陥滑走路であり、「へ」の字誘導路はその象徴です。運用に支障をきたし採算があわず民営化した会社の経営に影響するからといって、この「へ」の字誘導路にかかる市東氏の農地を取り上げようとするのは本末転倒です。オーバーラン事故、接触事故、鉢合わせ事故が発生しているB'滑走路は、そもそも供用を停止されるべきであります。

3.市東孝雄氏は、2カ所の小作地を生計の柱としています。有機・無農薬野菜の栽培に力を注ぐなど誠実に農業を続けています。「親子3代にわたって心血を注いで育てた農地は何物にも代え難く、小作権解除は到底受け入れられない」との意思を代理人を通してNAAに伝えています。
 以上のことから、反対同盟はNAAの申請行為自体が市東孝雄氏にたいする不当な権利侵害であると考えます。成田市農業委員会ならびに千葉県農業会議におかれましては、このような小作権解除申請に対しては、申請書を受理しないよう申し入れます。

                 2004年8月25日
………………………………………………………………………………………………

(8月26日) NAA/政府保証債250億円要求(8/26朝日、毎日各千葉版)

 成田国際空港会社(NAA)は26日、05年度予算の政府保証債要求の概要を発表した。要求額は250億円で、対象となる事業の空港機能整備費は計625億円(対前年度比4%減)となっている。
 空港機能整備費の内訳は、暫定B滑走路の2500メートル化整備に46億円(同52%減)、誘導路などの空港基本施設の整備に80億円(同39%減)、05年度末完成予定の第1旅客ターミナル南ウイングの改修などに406億円(同70%増)、同ターミナル前の駐車場の整備などに93億円(同49%減)などとなっている。
 今年4月に民営化されたNAAは、04年度予算から、資金調達の一部として政府保証債を発行し、事業計画をまとめて国土交通相の認可を受けることになった。

【本紙の解説】
 政府保証債とは、元利金の支払いを政府によって保証されている債券のことである。空港公団の時は、空港整備のための建設費、補修費のほとんどは国家予算であり、他は財政投融資などであった。国家予算は会計処理的には出資金扱いとなり返済義務はなかった。民営化された結果、国家予算も財政投融資もなくなり、空港整備費で単年度会計において不足部分は、政府保証債として借入金で当てることとなった。予算との一番の違いは、10年後に返済義務があることである。
 NAAは、この2年間で計5回、総額で546億5200万円の保証債を発行している。今年度は250億円である。一年平均で250億前後の政府保証債を発行しているのである。この額は、民営化され予算措置がなくなった現状で、政府出資金返済、租税負担の増大にほぼ対応するものだ。経営分析的に見れば、赤字を政府保証債で埋め合わせているのである。
 通常の空港整備ならば、数年後に利益を増大させるための借入れならば10年後の返済でも問題ない金額である。しかし成田空港の10年後は、羽田の4本目の滑走路がすでに完成している時期だ。そうなるとアジア便の大半が羽田に移行し、経営的に破綻していることは確実なのである。
 成田の政府保証債は返済不可能になるだろう。結局、政府保証での返済になりそうだ。

(8月27日) 成田空港/発着回数15パーセント増 単月で過去最高(8/28千葉日報)

 成田国際空港会社(NAA)が27日までにまとめた7月の「空港運用状況」によると、発着回数は1万5917回で開港以来、単月で過去最高を記録した。
 航空機の発着回数は対前年比15パーセントの増加、新型肺炎SARSやイラク戦争の影響を受けなかった一昨年と比べて4パーセント増えた。1日あたりでは513回で過去最高だった6月の記録を更新、4月から4カ月連続で500回を超えた。また、旅客数も280万6892人で対前年比57万人、26パーセント大幅に増え、7月の記録を塗り替えた。42パーセント増の邦人が163万人で全体を押し上げたほか、外国人も76万人で9パーセント増えた。

【本紙の解説】
 成田空港の好調さをデータで示しているが、02年との対比では、4パーセントしか増加していない。また、02年が「新型肺炎SARSやイラク戦争の影響を受けなかった」としているが、01年9・11反米ニューヨークツインタワービル破壊ゲリラ戦闘の影響で航空業界としても低迷していた年である。それとの対比で4パーセント増というのは、暫定滑走路の供用開始を計算に入れれば、とても好調と言えるものではない。それも、極端な安売りチケットでのツアー客が大半であり、航空会社の国際線の営業は赤字なのである。
 米航空大手の会社は格安航空会社の台頭とセキュリティ対策費の増大、原油高などの影響で利益分岐点の搭乗率が100・8パーセントというデータもある。満席でも赤字なのである。
 空港そのものは、着陸料と設備使用料なので、ダンピングもなく、離着陸機と旅客数の増加が収入と正比例する。しかし、航空業界全般の赤字は遠からず、空港の経営にも反映するものである。

(8月28日) 航空機と衝突防止、散弾銃を使用(8/28朝日新聞千葉版)

 野鳥が航空機に衝突する事故を防ぐため、成田空港で今夏から散弾銃による除去作戦を展開している。滑走路脇の草地に群れをなし、安全な運航に支障をきたす恐れがあるためという。1日平均500回の離着陸がある過密空港だが、離着陸機がなく、周囲への安全を確認してから発射し、焼却処分にしているという。
 成田国際空港会社(NAA)によると、銃を使ったのは7月14、29、30、31日の4回で、各2、12、1、32羽が射殺された。
 いずれもムクドリで、昨年秋から増殖し、航空機とぶつかる「バードストライク」が心配されていた。
 県の鳥獣捕獲許可等取扱要領に基づき、運航に支障があるので銃器を使用することを許可された。羽田空港など他の空港でも導入している。
 成田空港では毎年20前後のバードストライクがある。ムクドリやカラス、ツバメ、スズメなどが多いが、最近、増えているのがムクドリで、200羽ほどが群れることもあるという。これまでは、煙火を上げたり、鳥が嫌う鳴き声を録音したテープを流すなどの対策を講じたが、もっと効果的な方法として散弾銃使用を決めたという。
 NAAが野鳥除去を委託している会社の専門家が散弾銃を扱っている。
 NAA運用管理部は「散弾銃を打っても、1羽しか取れないことがあるが、このところ、ムクドリの数が減っているので、効果があったのでは」と話している。

【本紙の解説】
 航空機が飛び交う前から鳥類は空を飛んでいたにもかかわらず、航空機の安全運航のために、散弾銃で撃ち落とされるのである。バードストライクで墜落した航空機も海外ではある。エンジントラブルによる緊急着陸の原因の多くがこのハードストライクである。
 バードストライクで成田以上に問題になっているのが、新設される中部国際空港である。空港予定地のそばに、1万羽近くのカワウの生息する「鵜の山」がある。飛行ルートに交差する形で、サシバなどのタカ類や小鳥類100万羽がわたっていくルートがあるという。鳥類の生息に悪影響を及ぼすとともに、バードストライクでの航空機事故も懸念されている。

(8月28日) 反対同盟 全国活動者会議を開く

 成田参道にある成田市民ホールで8月28日、110人の参加のもと、反対同盟主催の全国活動者会議が開かれ、三里塚闘争の今後の闘いの方向などについて熱心な討論が行われた。
 成田空港が民間空港で最大の軍事空港になっていることが伊藤信晴事務局員から報告され、反戦・反基地闘争を闘う諸団体、労働組合の代表から多くの意見表明があった。また葉山岳夫弁護士と戸村義弘さんから天神峰現闘本部裁判の現状報告と支援する会の会員拡大の要請が行われた。詳しくは本紙参照。

(8月29日) NAA/社員の企業倫理向上へ(8/29千葉日報)

 3年後の07年株式上場をめざす成田国際空港株式会社(NAA、黒野匡彦社長)は、社員の企業倫理意識を高めるため中立的立場で調査にあたる社外弁護士を相談窓口にした「コンプライアンス(法令順守)社内相談制度」を来月1日、発足させる。
 同社は中期総合経営計画(06年度までの3カ年)で、世界トップレベルの空港となるための経営基盤構築、早期株式上場の条件整備を掲げ、スピード経営と法令順守によるバランスの取れたコーポレートガバナンス(企業統治)を実現するために、(1)コンプライアンス体制強化、(2)管理充実を挙げ、公団民営化を控えた02年2月の組織再編で内部監査を担当する業務監理部を独立させたほか、民営化がスタートした02年4月に全役員で構成する「コンプライアンス委員会」を立ち上げた。
 9月に発足させる「社内相談制度」は社員向け。「透明で風通しの良い社内環境を整備したい」として、不正行為の通報・通告につながるコンプライアンスに関する相談を受け付ける。
 監察部門の業務監理部長のほか、中立性を保つうえから同社が委託する社外弁護士を相談窓口にする。これら内部密告ともいえる通報や通告は匿名でも可能。電話、Eメール、ファクス、書簡、口頭(面談)などで受け付け、社長に報告のうえ、事実関係を調査して社としての対応を通報者に伝える仕組み。
 運用にあたっては、通報者に不利益が及ばないようプライバシーの保護を最優先し、相談者と調査対象者の氏名や相談内容を秘匿する義務のほか、相談した事実をもって人事上の不利益な取り扱いや差別、いやがらせは行ってはならないとしている。
 社内説明会のほか健全な企業活動として法令や企業倫理を順守するよう求める社員用向け行動規範の配布を検討。「通報内容によっては、外部弁護士の独自調査で直接、社長に報告してもらうなどして制度の信頼度を高めたい」(業務監理部)考え。
 また、職場のセクハラ(性的いやがらせ)についても社内の相談制度に加え、21世紀職業財団と契約を結び、被害を受けた社員が社外の団体に直接相談できるルートを設けた。
 同社の黒野社長は「明るいイメージで運用できるよう相談制度をクリーンラインと名付けた。セクハラの社外相談と合わせ、両制度で広義のコンプライアンスを確立したい」と話す。

 【本紙の解説】
 これまでNAAは、公団時代に数々の不祥事を起こしてきた。公表された代表的な事件は、02年に起きた貸布団納入業者からの収賄事件であった(02年7月8日付日誌を参照)。公団時代、職員の最大の問題点は下請け業者への「たかり」体質だったと言われている。空港に優先的に商品などを納入するだけで利益が上がる業者からの金銭的誘惑が日常的にあり、供応に応じることが体質化していた。
 ところが民営化されたことによって、上記のような贈収賄は「事件」として成立しなくなった。そのため、NAA社員の関連業者への「たかり」体質はますます増長している。それゆえの「法令順守」、「社員の企業倫理向上」なのだ。民間企業では当たり前のことが、今になってことさら叫ばれているゆえんである。

(8月30日) NAA/03年度決算、過去最悪の減収(9/1東京千葉版)

 成田空港会社は8月30日、民営化以前の空港公団の2003年度決算を発表した。収益は1512億円で、同年に猛威を振るった新型肺炎やイラク戦争による旅客減を受け、過去最高だった前年度の1617億円から大幅減。同社財務部によると、過去最悪の減収と言う。
 一方、費用は民営化をにらんだ経費削減などで前年度比74億円減の1555億円に抑えた。全体では43億円の赤字で、これまでの利益を繰り入れていた回収財源調整準備金を取り崩して補てんした。
 決算によると、航空会社から得る着陸料や旅客から得る空港施設使用料などの業務収入は84億円減の1478億円。費用は不要不急の施設修繕工事を先送りするなどして、業務費を48億円減少させた。

 【本紙の解説】
 すでに今年の2月26日に空港公団最後の決算は赤字の見通し(04年2月26日付日誌を参照)と言われていた。
 経常ベースでは約240億円の黒字で、成田新高速鉄道建設費の特別損失280億円を計上したために、43億円の赤字になったとしている。
 新型肺炎やイラク戦争による旅客減を受けての減収での赤字としている。実際は、建設費を極端に削ってこの数字になっているのである。「不要不急の施設修繕工事を先送り」となっているが、民営化を控えているので新たな設備投資をゼロ近くまで抑制しているのである。
 問題は民営化された04年度の決算である。03年と比べて増収にはなっているが、政府予算がなくなり、税金負担が50億円以上も増額すると言われている。決算はいろいろやり繰りして赤字を抑えるであろうが、新たな設備投資、暫定滑走路の2500メートル化予算などに、これからほとんど回せなくなる。

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