SANRIZUKA 日誌 HP版   2004/02/01~29    

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 2004年2月

 

〔週刊『三里塚』編集委員会HP部責任編集〕 


(2月2日) 堂本知事 羽田再拡張関連の特措法/「説明なく遺憾」(2/3朝日、 東京、産経各千葉版、千葉日報)

 羽田空港沖合に新滑走路を整備する再拡張事業に関連し、事業を円滑に行うための特別措置法案が3日に閣議決定されるのを控え、堂本暁子知事は2日、「本県に条文の説明がなく、遺憾」などと国土交通省に抗議した。田辺英夫総合企画部長が会見で明らかにした。
 県は羽田を離着陸する航空機の飛行ルート下、または、今後、飛行ルート下になり得る千葉市や松戸市など県内14市と協議し、堂本知事が抗議・申し入れ内容を同省事務次官らに伝えた。
 申し入れでは(1)閣議決定される条文が県に何ら説明されておらず遺憾、(2)県内からの意見を聴いておらず、県内自治体の意見を十分聴くべき、などと主張している。
 田辺部長は「条文で自治体からの意見聴取を『空港供用の条件に関し、資金を貸し付けている自治体から意見を聴く』とあるが、騒音被害を受ける県の意見も聴くべきだ」などと述べた。
 特措法は、約6900億円の事業費のうち、1300億円を東京都、神奈川県などが無利子で貸付することで事業費を確保し、円滑に整備が行えるよう閣議決定する予定。

 【本紙の解説】
 この間千葉県は、羽田再拡張工事に対してさまざまな反対を行ってきた。浦安市と木更津市による県と市が一体となった「反対運動」の作り出しである。また、漁業関係者などを組織し反対を行っている。特徴は住民の参加はなく、県が肝煎りで行っていることである。だが、国交省は基本的にそれを無視し、飛行コースはいろいろ検討しているなどといっている。
 そのため、千葉県は国土交通省が2日に、再拡張事業資金の手当てのため、周辺自治体が国に無利子貸し付けできることを定めた特別措置法を今国会に提出すると発表したことに対して、「遺憾」であると抗議を発表したのである。
 しかし、閣議決定は予定通り行われた。

(2月3日) 成田出入国者最大の9・5パーセント減/03年、新型肺炎影響(2/4東京)

 昨年1年間に成田空港を利用した出入国者の総数は2224万人で前年比9・5パーセント減となり、過去最大の減少幅だったことが3日、東京入国管理局成田空港支局のまとめで分かった。
 これまでの最大減少幅は米中枢同時テロがあった翌2002年の7・5パーセント減。同支局は「日本人旅客に与える影響は、新型肺炎の方が大きかった」と分析している。
 内訳は日本人が1555万9000人で前年比13・6パーセント減。一方、外国人は678万5000人で、過去最多だった前年より1・5パーセント増えた。

 【本紙の解説】
 日本人だけの成田空港経由の出入国が13・6パーセントも減少していることは航空産業にとって大きいことである。国内旅行より格安なアジア旅行や、米国旅行などを売り込み、不況期にかかわらず、航空運輸産業だけが右肩上がりの数字を残してきたが、イラク侵略戦争の開始、SARS流行でその動向は完全に逆転し、航空業界が昨年比では最大の落ち込みを示し始めたのである。
 国際的にも航空需要は低下している。IATA(国際航空運送協会)は1月末に、昨年の全世界の輸送実績を発表しが、前年比2・4パーセントの減少になっている。
 いま、成田―ソウル線の往復航空券で1万5000円を切るようなチケットがでても、需要は低迷しているのである。
 この航空重要の落ち込みは、成田空港民営化に暗雲をもたらしている。

(2月5日) 成田空港 テロや新型肺炎など論議(2/6毎日千葉版)

 成田空港で想定されるテロなどを見据えた「NBCテロ対策研究会」(会長・牧野俊郎新東東国際空港クリニック所長)の公開勉強会が5日、空港内で開かれた。県警本部や新東東国際空港公団など約15機関、約90人が参加し、放射線や生物・化学兵器(NBC)などを使用したテロや、新型肺炎「重症急性呼吸器症候群」(SARS)など感染症の対応について、約1時間にわたり議論を交わした。
 この研究会は、01年9月の同時多発テロや昨年のイラク戦争など国際情勢が悪化する中、「国際空港でのテロ対策は急務」と牧野会長が呼びかけ、昨年7月に発足した。今回は2回目の勉強会で、県警本部警備課の小出寛調査官が先月に成田空港で行われたテロ対策訓練の検証をした他、成田市消防本部の小倉松夫警防課主幹が総務省から貸し出されたテロ対策用防護服の役割などを説明した。
 牧野会長は「テロなどが発生した後、関係機関が横断的に対応できる土台をつくれるよう検討会を重ねたい」としている。

 【本紙の解説】
 成田空港がゲリラ戦闘のターゲットであることを認識し、その対策をとり始めたようだ。強襲的ゲリラ戦闘への対策など盛り込めるはずもなく、ただ生物・化学兵器(NBC)などへの対策にとどまった。
 また、入国・出国手続きや空港内の警戒度は01年9・11以来、異常事態を想定したフェイズEを継続したままである。なお、空港内のセキュリティー体制は、平常時のフェイズ1から厳戒のフェイズ2、とフェイズEの3段階になっている。

(2月5日) 羽田空港再拡張で千葉県と国交省が覚書 (2/6朝日千葉版)

 羽田空港の再拡張事業で、堂本暁子知事は5日、国が騒音被害を受ける千葉県などの自治体からも意見を聴くよう、国土交通省と覚書を交わしたことを明らかにした。
 閣議決定された「東京国際空港の緊急整備に関する特措法案」は、供用の条件として「事業費の無利子貸し付けをする自治体の意見を聴く」と定めていた。無利子貸し付けをするのは東京都など4都県市で、堂本知事は拡張事業により騒音被害が増大する千葉県がないがしろにされている、と抗議していた。
 覚書では、同法案は無利子貸し付けを可能にするための根拠法であることを確認。「首都圏全体で騒音問題を共有できるよう、千葉県上空だけに集中しない飛行ルートの設定」という県の要求は、この法案にとらわれず、従来通り検討していくとしている。

 【本紙の解説】
 この覚書の締結の意図は、飛行コース案を発表する2月9日の首都圏サミット(7都県市首脳会議)による「羽田空港の再拡張事業を話し合う協議会」に千葉県の出席を求めることである。この協議会は昨年の夏から堂本知事の欠席表明で開かれていない。国交省としては千葉県の「騒音反対運動」をこの協議会の中に引きずり出し、国交省データに基づく騒音予想値によって飛行コースの承認を迫ろうという狙いである。覚書を交わしたことで、千葉県はこれ以上欠席戦術を取れなくなった。

(2月6日) 羽田再拡張で国交省が飛行ルート案 都心や神奈川上空も

 国土交通省は、羽田空港に4本目の滑走路をつくる再拡張事業に伴う飛行ルート案を固めた。基本案と分散案の2案があり、大部分が千葉県上空を飛ぶ基本案に対し、分散案は一部を東京都や神奈川県、海上などに分散させている。分散案には、東京の都心部上空を通過するルートも含まれている。地上を飛行する便は騒音が少ない機種に限定したり、高度を上げたりすることで、騒音を環境基準以下に抑える。
 ルート案は、9日に開く石原国交相と東京都や神奈川県、千葉県など周辺自治体の首長らが話し合う協議会で提示する。国交省は基本案を軸に検討してきたが、千葉県の反発が強く、分散案の内容も含めて調整を進め、自治体側の同意を取り付けたい考えだ。
 基本案の到着ルートは、千葉県と東京都江戸川区上空。出発ルートは現行の千葉県、神奈川県上空に加え、東京都上空も追加する。
 2本の滑走路から同時に離陸し、残る2本に同時に着陸できるため、1時間あたりの出発と到着が40回ずつ可能になる。
 発着回数は増えるが、滑走路の増加で運用に余裕ができ、可能な限りの海上飛行や着陸機の高度上昇も組み合わせて逆に騒音を低減させる。江戸川区の騒音は現行程度、千葉県木更津市は現行以下になる。新ルートになる千葉県浦安市も住宅地は環境基準値を下回る。
 もう一方の分散案は、出発便の一部について、北風時にはC滑走路から北向きに離陸し、東京の都心部上空を飛行する「都心ルート」や、南風時にA滑走路から南向きに離陸し、東京湾を右旋回して神奈川上空から東京上空を飛行する「神奈川ルート」を設ける。
 到着便は北風好天時、木更津市上空を迂回(うかい)し、同県富津市から海上を飛行する。南風悪天時は、到着回数が少ない時間帯に神奈川県や東京都上空を飛行する「神奈川・都心北上ルート」を設ける。この場合、西方面からのすべての到着機が東京湾西側からの進入となる。
 都心ルート、神奈川ルートを飛行する機は中型機のB767とA300以下に制限する。都心ルートでは、騒音レベルの高い離陸後の騒音が問題になるため、今後検討が必要となる。

 【本紙の解説】
 国交省の飛行ルートの検討は基本案である千葉上空を中心とした案であっても、「千葉県木更津市は現行以下になる。新ルートになる千葉県浦安市も住宅地は環境基準値を下回る」というものである。分散案なら、騒音の共有化になるというもの。しかし、この分散案でも千葉上空通過は全体の90パーセント以上である。2案の検討という形で千葉県の反発をかわそうとの狙いだが、そううまくいくはずもない。
 千葉県の要求は、建前は「羽田の拡張と国際化は時代的すう勢なので認める。しかし騒音の千葉への集中は拒否」というものだ。しかし本音は、「羽田再拡張と国際化に絶対反対」であり、「成田空港の完全完成要求」なのである。
 堂本知事は最初、羽田の国際化には反対しないとして、千葉高速鉄道の政府援助を増額させたので、羽田国際化反対とは面と向かって言えなくなった。しかし、千葉県上空の騒音問題を盾に羽田国際化反対を貫こうというものである。
 この点で堂本知事は千葉県自民党と完全に共同歩調をとっている。成田空港による千葉県への税収その他は莫大なものがあり、羽田国際化による成田空港の凋落は千葉県にとって受け入れ難いのである。
 堂本知事は5日の記者会見で再選のことを質問され、「『またぜひ出なさい』というご要望があれば、ぜひ出たい」と答え、立候補に意欲を示している。立候補の決め手は県議会最大会派の自民党が対立候補擁立をどうするかにある。堂本知事は「羽田国際化反対」で千葉県自民党と共同歩調をとり、自民党から再選の支持を取り付けたいということである。

(2月6日) 成田空港の共生委員会/民営化後も存続へ(2/7朝日、読売、東京各千葉版、千葉日報)

 成田空港の建設と運用を監視する第三者機関「成田空港地域共生委員会」(代表委員=山本雄二郎・高千穂大客員教授)が6日、成田市内で開かれ、4月の空港公団民営化後も共生委が存続することで、公団、国、県側と意見が一致した。空港建設が一方的、強制的に進められたことへの反省のもと、公的機関の監視役として設立された共生委が、民営化後どうなるのか注目されていた。
 共生委は同日、「今後の共生委員会のあり方に対する見解」を発表。「内陸の成田空港にとって、地域と空港の共生は宿命的な課題」と指摘したうえで、民営化後も、騒音対策や落下物対策などに取り組んでいくと表明した。
 これに対し、公団、国交省、共生委の上部組織で県や空港周辺市町村などでつくる「地域振興連絡協議会」(地連協)も、それぞれの見解を示し、共生委存続は必要とした。
 公団は成田国際空港株式会社法や周辺自治体との覚書で、民営化後も環境・共生策を実施することを約束している。山本代表委員は「民営化は公団が地域に溶け込むいい機会。今後、積極的に地域対策を行ってほしい」と話した。
 また、公団が商法上の民間会社となることで外部監査が必要になるなど、共生委に与える制度上の影響については、今後、関係機関が協議していく方針。

 【本紙の解説】
 共生委員会の役割が、第三者的立場から空港建設に協力・貢献するものに変質していくことは最初から明らかであった。国交省と空港公団がオブザーバーから正式な構成団体に転じることによって、その性格は明白になってきた。
 民営化にともなって空港による周辺対策がおざなりになろうとしている時に、「委員会の存続」が中心議題になっていること自体がすでに屈服的だ。共生委はすでに民営化を了承し、公団の周辺対策費削減を受け入れているのである。
 民営化を前提に、公団の周辺対策費はすでに前年比で25パーセントも削減されている。このことに周辺自治体も危惧をもっている。また、公団の民営化にともなう組織再編で「エコ・エアポート推進室」が設置され、これがいままで環境・騒音・周辺対策を扱ってきた「地域共生部」より上部組織に位置づけられた。その結果、「地域共生部」は人員削減になった。つまり、本来の周辺対策は費用がかさむので、それより安上がりな「ゴミの再利用」や「太陽光発電」でもって環境対策に置き換えようという狙いである。
 本来の共生委員会ならば、いまこそ周辺対策の必要性を自治体、周辺住民とともに叫ばなければならないはずだ。自らの存続問題だけを討論していること自体がおかしいのである。
 ちなみに国交省と成田空港株式会社の本音は共生委員会の早期解散にあるとのこと。

(2月9日) 羽田再拡張の飛行ルート、千葉県が反対 騒音対策不十分

 羽田空港に4本目の滑走路をつくる再拡張事業について、国土交通相と東京都や神奈川県、千葉県など周辺8都県市の首長らが話し合う協議会が9日夜開かれ、国交省は東京都心上空などを飛行するルート案を正式に提示した。多くの便が上空を飛行する千葉県の堂本暁子知事は「騒音問題の納得のいく分担が著しく不十分で、受け入れられない」との意見書を提出し、反対の姿勢を示した。
 千葉県は、千葉県上空を通過しない形で神奈川・都心北上ルートを終日運航すべきだ、滑走路の位置やルートを見直すべきだなどと訴えた。しかし、国交省は「ルートは今後さらに検討するが、これ以上の分散は安全などの面から難しい。滑走路の位置は平行が原則で、見直すつもりはない」とした。
 東京都や神奈川県、横浜市、川崎市などは一定の評価をしたうえで、できるだけ東京湾上空を活用するよう工夫するよう注文をつけた。今後、国交省は各自治体の意見を踏まえながら協議を進める考えだ。
 ルートには基本案と分散案があり、基本案では、到着便は千葉県や東京都江戸川区上空を飛行。出発便は現行の千葉県、神奈川県上空に加え、東京都上空も飛行する。基本案の北風時の運用比率は全体の65%程度となる。
 分散案は、千葉県の「首都圏で騒音の負担を共有してほしい」との求めに応じて設けたもので、一部を東京都や神奈川県、海上に分散させている。出発便には渋谷など東京上空を飛行する「都心ルート」や、神奈川から東京上空を飛行する「神奈川ルート」、到着便には早朝時間帯のみに川崎市や世田谷区などの上空を飛行する「神奈川・都心北上ルート」を設ける。
 また、騒音が小さい機種に制限したり、高度を上げたりして騒音を環境基準以下に抑える。

 【本紙の解説】
 羽田再拡張による飛行ルートに関して千葉県は、「基本案」「分散案」の2案のいずれにしろ千葉県上空を飛ぶことが多いので反対した。他の都県市も「騒音を東京湾に閉じこめろ」という主張などで千葉県の主張に一定同調した。国交省は、「千葉県上空に関しては環境基準を満たしている。率直に言ってこれ以上分散するルートの設定は難しい」と反発している。
 焦点は、国交省がこのままのルート(滑走路の位置)で、2004年度中に設計・施工を請け負う業者を決める国際競争入札を行うかどうかになった。そのために、千葉県は「千葉県上空の騒音対策を講じない限り、拡張工事の入札を強行すべきではない」と協議会で主張した。
 千葉県は騒音の分散を要求しているが、実は東京都下のルートが環境基準から無理であることを知っての上でのためにする要求であり、その本質は羽田再拡張反対にある。そのために、国交省は千葉県の要求を基本的に無視して国際入札を強行するつもりだ。千葉県は、木更津市における高度3000フィートの騒音値(国の予想値)が、千葉県の実測値より下回っていることなどで国交省を追及していく予定である。

(2月10日) テロ対策で新部隊発足(2/11毎日、産経各千葉版、千葉日報)

 国際テロの緊張が高まる中で県警は10日、成田空港警備隊に専従の「銃器対策部隊」を発足させた。銃を使ったハイジャックや立てこもり事件への対処能力強化が狙い。
 射撃技術や冷静な判断力を持つ精鋭の部隊員には機関銃が貸与され、テロ発生時に容疑者確保にあたる。また事前のテロ情報による警戒出動も任務の一つとなる。
 この日の発足式で萱嶋満津保警備部長は「国際情勢を認識し、成田空港の安全確保へ意思統一を」と隊員に訓示した。
 同警備部警備課によると、県内の「銃器対策部隊」は第一機動隊に続いて2隊目で、「両隊の合同訓練も視野に入れてレベルアップを目指す」方針。

 【本紙の解説】
 成田空港の空港警備隊に、機関銃を装備した銃器対策部隊が数十人規模で常設された。空港警備に機関銃を使用するのは日本では初めてである。ゲリラ情報が入った場合や、銃器使用事件が発生した場合には空港の制圧と摘発にあたるとのこと。イラク戦争の警備と称して日本の治安体制が一挙にエスカレートしてきたのである。
 日帝のイラク参戦に対抗した(外国人の)ゲリラ戦争が国内で勃発することを想定したものだが、同時に国内の反戦闘争をはじめとする階級闘争の鎮圧に向けられた部隊である。朝鮮侵略戦争時には成田空港が一大侵略拠点になることは自明であり、軍事空港・成田に反対する農民や労働者・学生の闘いに機関銃をもった空警が警備にあたるということである。

(2月12日) 羽田再拡張/騒音対策協議/期限は6月まで(2/13東京)

 羽田空港に4本目の滑走路を造る再拡張事業で、国土交通省が2004年度中に設計と施工を一括で請け負う業者を決める国際競争入札を行う場合、今年6月までに公告を行う必要があることが12日、分かった。騒音被害を受ける千葉県は国交省に対し、再拡張後の飛行ルートの再検討を求めており、騒音問題をめぐる国交省と千葉県の話し合い期限は事実上、4カ月後に迫った。
 国交省の風岡典之事務次官が同日、再拡張事業の入札公告から実施まで約10カ月かかる見通しを示した。公告の期限について風岡次官は明言を避けたが、国交省は04年度予算案に入札費用などを計上、同年度中に落札者を決める方針、逆算すれば、公告の期限は今年6月ということになる。

 【本紙の解説】
 国交省は6月までに千葉県との羽田拡張計画の飛行コース案の検討を打ち切り、6月に工事の入札のための公告に入ることを国交省風岡典之事務次官が基本的に認めたという報道である。
 千葉県堂本知事が9日の8都県市の協議会に参加したことは、どう反対しても羽田再拡張の計画は進むものと踏んでいることを示している。また堂本知事はすでに羽田国際化と再拡張を個人としては承認している。
 では堂本知事の思惑は何か。それは「羽田国際化阻止・再拡張反対」を標榜して千葉県自民党に擦り寄り、上空通過が予想される千葉県内14市の首長との「共闘」を強め、もって次期県知事選で再選を狙うことなのである。

(2月14日) 成田空港圏フォーラムが開催(2/16読売、産経、東京各千葉版、千葉日報)

 空港公団の4月民営化を前に、騒音問題など成田空港からマイナスの影響を受ける周辺地域が共通認識を深め、共生に向けた新たな方向性を探る「成田空港圏フォーラム」が14日、成田市の成田国際文化会館で開かれた。
 成田空港圏フォーラム実行委員会(実行委員長・豊田磐成田空港対策協議会長)が主催、県や成田市など空港周辺9市町村、地域共生委員会、国交省、空港公団が後援した。フォーラムには地域住民をはじめ、関係者ら630入が参加してパネルディスカッションなどが行われた。
 基調講演した加藤寛・千葉商科大学長が「空港は国民の広場。空港は点でも線でもなく、大きなエリアとしての空港圏であり大都会になる要素がある」として官の規制を排除し、多様なサービスを提供する空港を育てることが必要と訴えた。
 また、加藤学長と対談した堂本暁子知事は「成田は千葉県と日本の両方の玄関。世界に冠たる魅力ある空港にするには、地域の人が参画して空港圏のグランドデザインを描くべきだ」と語った。
 フォーラムに先立ち空港公団の黒野匡彦総裁は「地域住民にがまんしてもらってこの空港が成り立っていることを一度も忘れたことはない。民営化とならび平行滑定路の2500メートル化はどんなことがあってもやり遂げなければならない課題」とあいさつした。

 【本紙の解説】
 成田空港対策協議会が中心になって周辺市町村が加わり、成田空港圏フォーラムが開催された。成田空対協は、成田空港の完全完成のために成田市の商工会議所の青年部を中心につくられた民間団体である。その民間団体が市町村を加えて集会をもった理由は、公団民営化によって周辺対策費などが減額される情勢の中で、見返り要求のためである。そのために空港経済圏の形成とかいっているが、空港周辺の経済的発展のために国と公団は援助すべきであるというのが本音である。
 空対協は、暫定滑走路の北延伸の強力な主張者であるが、集会の後援に成田市が加わっているため、北延伸要求の主張はできなかった。成田市は騒音地区をかかえているので、住民が納得のいく騒音補償が出ない限り「北延伸に賛成」とはならないからである。
 公団は民営化前に北側320メートルの北延伸計画を決定し発表したいのだが、この騒音補償の交渉が難航しているのである。

(2月18日) 芝山鉄道支援に計1億7000万円(2/19産経、東京各千葉版)

 成田市は18日、赤字の続く芝山鉄道(東成田-芝山千代田)の支援に乗り出すことを明らかにした。同日発表の新年度当初予算案に6000万円を計上。芝山町も新年度予算で、同鉄道支援に1億1000万円程度の支出を見込んでいる。
 芝山鉄道は、成田空港建設の見返り事業として新東京国際空港公団が主に出資した第三セクターが運営。一昨年10月の開業以来、利用客が伸び悩み、本年度だけで4億円の赤字になるという。
 成田市は支援事業の財源の一部に、同公団が周辺自治体に騒音対策費などとして交付した「周辺対策交付金」を充てる。小林攻市長は「空港と周辺機能充実のため、成田市は芝山町、空港公団を含めて後押ししていきたい」と話した。

 【本紙の解説】
 1年間で4億円の赤字とは大きな数字である。これは建設資金の返済や借入金の利子負担などを除いた、営業収支での赤字である。芝山町の住民は約8000人であり、2500世帯である。一戸当たり、年間16万円の税金負担がかかる計算である。公団、成田市の負担もあり、芝山町の今回の負担は1億1000円万であり、一戸当たりの計算は約4万4000円となる。成田市の補助も実際は公団の騒音対策費を回しているにすぎない。芝山町が援助する額も公団の騒音対策費である。つまり、実際は騒音対策費から芝山鉄道に4億円が投入されるのである。
 芝山鉄道は開通当時の計算で、採算ラインは1日の利用者が5400人となっていた。しかし利用者の見込みはその半分前後だとして、毎月2000万円程度の赤字を覚悟していた。しかし現実は、採算ラインの半分の2700人にもほど遠く、開通直後は1日1000人前後の乗客しかなかった。その後、公団のテコ入れで空港整備地区に勤務する4000人に芝山鉄道の使用を呼びかけた結果、一時的に1日1700人になったが、結局は1日平均1000人を割り、年間4億円の赤字となった。
 この赤字の処理を基本的に芝山町が負うことになったので、芝山町の中心である小池までの芝山鉄道の延伸プランはまったくなくなった。

(2月19日) 成田空港 D誘導路が開通(2/17千葉日報、2/21読売千葉版)

 成田空港の2本の滑走路と第1、第2旅客ビルを結ぶ、D誘導路が完成し、19日から供用が開始された。空港公団は、この区間にある3本の誘導路のうち、R誘導路の一部を閉鎖し、跡地に駐機場を設ける。これにより、2006年夏に予定されている第1旅客ビルの拡張部分のオープン時には、バスを使わずに直接、第1旅客ビルから乗降できる便を増やすことができるという。
 D誘導路は、長さ約930メートルで、2002年10月から2003年12月に建設された。総工費は約19億円。
 この区間では、従来、R誘導路1本しかなく、航空機の発着ダイヤの乱れの要因となっていたが、昨年10月、C誘導路ができ、運航が円滑になった。

 【本紙の解説】
 第1旅客ビルと第2旅客ビルの間の誘導路が2本になり、暫定的に使用していたエプロン(駐機場)内の走行路のR誘導路を閉鎖した。しかし、今回供用開始となったD誘導路も2ビルのエプロンに直接進入できず、いったんC誘導路に入って2ビルエプロンに進入することになっている。そのために、今までと同じように2ビル進入時の渋滞は起こるのである。また、1ビルと2ビル間の誘導路以上に、2ビルから暫定滑走路への連絡誘導路は何も改善されていない。暫定滑走路の離発着の渋滞は現に解消されていないのである。

(2月25日) 千葉県議会/羽田再拡張で全員協議会(2/26全紙の千葉版、千葉日報)

 羽田空港の再拡張事業に関連し、千葉県議会の全会派は25日、国土交通省が示した飛行ルート案に反対を表明した。増便の大半が県上空を通過する国の計画を議会全体で拒否した格好。国は高度を上げるなどの対策を講じると説明するが、堂本暁子県知事も反対姿勢を表明しており、国と県の交渉はさらに難しい状況に陥った。
 県議会の全員協議会に国交省の宿利正史・航空局次長らが出席。9日に公表した拡張後の飛行ルート案を説明し、質疑を行った。
 2009年の完成を目指す再拡張事業では年間の発着回数が現行の1・4倍の47万7000回に増える。拡張後のルート案では離着陸とも1時間に40便が前提で、一部が東京都心や神奈川県を通過する場合があるものの大半が千葉県上空か海上を通過する現状は変わらない。さらに、千葉県下では浦安市が新たに着陸ルートに加わる。
 国交省の説明を受けた県議団からは「千葉の騒音を軽減する案とはとても認められない」と、自民党の莇崇一(あざみ・たかいち)議員などの批判が続出。再拡張で整備するD滑走路の角度を現行案から5~10度程度変え、着陸経路を海上にずらす要求などが出された。
 国交省はD滑走路について、既存のB滑走路と平行に整備して2滑走路での同時離着陸を実現させるため「安全面を見ても位置変更は非常に難しい」(大久保仁・飛行場部管理課長)と答弁。管制技術の向上などで、千葉市や市原市、浦安市などを通る高度を現行案の3000フィート(914・4メートル)程度からさらに引き上げるなど、飛行方法の工夫による騒音軽減策の検討を約束した。
 県議会は全員協での議論をもとにルート案に関する意見書を3月4日に決議、国交省などに提出する。内容は首都圏の他都県へのルート分散や高度の見直しなどによる騒音共有を改めて求める見通し。
 国側は、既に現行案より飛行経路を分散させることは難しいとの見解を示しており、千葉県が納得する決着にはなお曲折がありそうだ。
 国交省の試算によると、羽田再拡張が首都圏1都3県に及ぼす経済効果は約1兆1900億円。千葉県議会では経済効果の内訳で1パーセントを占めるに過ぎない同県が騒音の大半を負担することに対する反発が大きい。

 【本紙の解説】
 国交省が、飛行ルート案の変更は難しいということに対して、千葉県はいままでの「騒音の分散」以上の提案をおこなった。それは、羽田D滑走路の設計を5度から10度変更し、着陸ルートを海上側にずらす案と、飛行高度を3000フィートから引き上げる案である。
 これに対して国交省は建設案の変更は拒否し、飛行高度の検討を「飛び方の工夫はできる」と回答した。質疑応答の結果、滑走路の向きの変更と飛行ルートの変更はできないが飛行方法の工夫を検討するとなった。堂本知事は「成田空港の歴史の繰り返し。県民へのだまし討ち」などという強い口調で反発はしたが、基本的に国交省に押し切られた。強い反発の姿勢は次の県知事選へのアピールとみるのは本紙だけだろうか。
 羽田空港建設に関しての次の政治焦点は入札であるが、国交省の宿利正史航空局次長は「千葉に理解を得られるよう努力する」が、入札を行うのに千葉の了解が絶対条件ではないとの発言をしている。これは千葉県の動向にかかわらず、国交省としては羽田再拡張を予定通りに進めるということだ。

(2月26日) 国交省/羽田空港拡張で千葉県内各市へ説明会(2/27読売、産経各千葉版、千葉日報)

 羽田空港に4本目の滑走路を整備する再拡張事業で、国土交通省は26日、県内の関係14市への地元説明会を始めた。各市は「再拡張後の市内の騒音値を公表できないのか」など、「実害」を示すよう要求。同省は「作業中」とし、今後提示する姿勢を示したという。
 地元説明会は、部課長など担当者レベルに非公開で実施。同日は浦安、船橋や松戸、流山など計8市を対象に行った。
 前日の県議会全員協議会で、浦安市上空を避ける「滑走路ずらし」案が事実上不可能と同省幹部が回答したことを受け、同市は理由説明を要求。
 同省は「安全確保」との答弁を繰り返したが、着陸のやり直しルートについて「設定していない」と述べ、安全性を主張する根拠への検討が不十分な状況を露呈させた。27日は市原、木更津など残る6市が対象。

 【本紙の解説】
 国交省は千葉県議会の全員協議会を乗り切った勢いで千葉県内14市の説明会を行っている。各市は同様に再拡張後の騒音値の公表を要求している。国交省は現在は作業中として、今後公表することを約束したようだ。国交省からしてみれば、障害にはならない要求である。3000フィート上空の騒音であり、基本的に騒音基準を外れる騒音値である。
 しかし、国交省は飛行ルートを変更できない理由として「安全性の確保」をあげているが、滑走路から10キロ以内はいずれの飛び方をしたとしても危険である。航空機はいまだ安全な交通手段ではない。だからこそ、空域の問題もあるが、東京上空ではなく、海上をふくむ比較的人口密度の低い千葉県上空を飛ぶコースをつくっているのである。

(2月26日) 空港公団/最後の決算赤字見通し(2/27読売、産経各千葉版、千葉日報)

 成田空港を管理する新東京国際空港公団の黒野匡彦総裁は26日の記者会見で、公団としての最終年度となる03年度決算で、最終損益が約40億円の赤字となるとの見通しを明らかにした。鳥インフルエンザなどの影響で、中国便の回復が遅れていることや、成田新高速鉄道建設にからむ特別損失を計上したためだ。
 同公団がまとめた決算推計値では、03年度の営業収益は約1500億円。これに対し経常経費は約1260億円と経常ベースでは約240億円の黒字となる。一方、成田空港と都心を30分台で結ぼうという成田新高速鉄道の建設会社に対する公団の負担金で、約280億円の特別損失を計上したため、最終損益は約40億円の赤字となるとしている。
 成田空港は4月に公団から株式会社に衣替えするため、03年度は公団最後の決算となる。

 【本紙の解説】
 公団は昨年の4月にSARSの影響での赤字を毎月15億円と計算し、9月までの6カ月間で90億円を見込み、建設費の先送りと経費削減でその90億円を埋める計画を立てていた。結局、赤字は40億円となり、やりくりが出来る範囲の赤字に収まったようだ。しかし、来年度から民間会社になり、返済義務のない政府予算がなくなり、税金負担も多くなり、また、いままでの政府予算の総額が政府出資金となり、その返済義務も1500億円分が30年分割で生じるようになる。1年で50億円である。株式会社成田空港の経営の先行きは明るくない。

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