●(5月9日) 成田の検問所また突破(5/10全紙)
9日午後1時20分ごろ、千葉県成田市の成田空港の一般車両入り口「第2ゲート」検問所で、軽乗用車がプラスチック製の遮断機を折って突破し、逃走した。成田国際空港会社は一般道への出入口の全8カ所を約40分間封鎖した。軽乗用車は約1時間後、川崎市内の首都高速で見つかり、成田国際空港署は高速道路を歩いていた男を同署に任意同行し、遮断機を壊した器物損壊容疑で逮捕した。
男は調べに対し「空港を見ていて追いかけられたくなった。気が付いたら高速道路にいた」などと供述しているという。
調べでは、軽乗用車はスピードを落とさずに検問所の遮断機(2万円相当)を折り、第2旅客ターミナルビル方向に走り去った。検問所には警察官が常駐していたが、止められなかった。空港敷地内から高速道路に入って逃げたらしい。車は滑走路などがある立ち入り制限区域には入らず、航空機の運航に影響はなかった。警備員らにもけがはなかった。第2ゲートでは昨年11月にも車が突破し、同県佐倉市内まで追跡した警察官2人が運転していた男に殺傷される事件が起きた。
【本紙の解説】
検問やフェンスを突破して空港に突入する事件が全国的に頻発している。成田空港でも昨年の11月8日、今年の1月13日にも起き、これで3回目である。昨年の11月には佐倉市内で殺傷事件にもなった。1月は、泥酔した運転手が検問中の警備員の制止を振り切って入り込んだ。
全国的にも今年の4月だけで3件起きている。4月8日、神戸空港で、四輪駆動車で空港内を暴走した。4月20日、羽田空港で、高校生が道に迷い空港内に入ってしまった。4月30日、宮崎空港で、駐機場への不審人物の潜入事件があり、経路もいまだ分かっていない。空港への侵入事件頻発の原因ははっきりしない。ひとつだけ言えることは社会不安の増大であろう。
成田空港は、空港周辺部も視野に入れて警備の強化を抜本的に見直すとしているが、突入事件を警備の強化で防止することは不可能である。一般車両や旅客は空港に出入りするので、警備の強化は空港機能の停止につながりかねない。01年9・11反米ゲリラの後、米国では警備を極端に強化し、多くの空港が機能停止に陥った。公共交通機関は社会的安定を前提にしてしか運行されないのである。
成田空港も同じである。成田空港が周辺農民や住民の反対を押し切って建設された結果、膨大な警備費用がかかっており、それでも突入事件は起きている。空港への百パーセントの社会的承認がなければ、こういうことは永遠に起こる。警備を強めればそれへの反感も生まれる。また、今回の事件のように「追いかけられたくなった」とか「逮捕されたかった」ということで、むしろ厳重な警備があるところを選んで事件を起こすような者もいる。成田空港では車両検問をなくし、滑走路などの施設と搭乗ゲート内以外は、公園のようにだれでも入れるようにするしかないのでないか。
●(5月10日) ゴールデンウイーク成田の出入国者、3.5パーセント増の73万人(5/11日経)
東京入管成田空港支局は10日、ゴールデンウイーク期間中(4月28日―5月7日)の成田空港の出入国者数が、前年同期比約3.5パーセント増の約73万3900人になったと発表した。同支局は「今年の大型連休は連続した休みが取りやすかったことなどが増加の原因」とみている。
同支局によると、期間中の日本人の出国者数は同約6.1パーセント増の約26万5900人で、帰国者数は同約4.2パーセント減の約27万5500人。外国人の入国者数は同約6.4パーセント増の約9万800人で、出国者数は同約18.7パーセント増の約10万1700人だった。
【本紙の解説】
3パーセント増の予測を若干超えて達成した(06年4月28日付日誌を参照)。これは、曜日配列に恵まれたため増加しただけのことである。このことは、JRグループの主要路線のゴールデンウイーク期間利用状況が前年比で9パーセント増加したことを見ても明白である。東海道・山陽新幹線は10パーセント、上越新幹線が9パーセントなどである。
航空需要は基本的に横ばいであり、成田空港の実情は、羽田の国際化と着陸料金の値下げもあり、経営不安はむしろ増大しているのである。
●(5月11日) 天神峰現闘本部裁判 第11回口頭弁論
第11回公判は裁判長と右陪席裁判官が替わったために、更新手続きが行われた。更新にあたって葉山主任弁護士が、成田空港建設の不当性と三里塚闘争の正義性について全面的に陳述し、本裁判はそこから派生した不当な提訴であり、訴権の乱用であるから即刻却下されるべきものと主張した。
続いて、原告・空港会社側と被告・反対同盟側の立証計画が確認された。本裁判の核心は現闘本部が建つ土地の権利関係(反対同盟が保持する地上権)にあり、その争点は3点である。(1)登記された木造建物(旧現闘本部)が当時のまま存在しているが、原告側は「解体され存在していない」と主張している。(2)反対同盟は地代を支払い続けており領収証もあるが、原告側は、領収証を「形だけのもの」として地代は受領していないと主張している。(3)木造建物の登記名義は、不動産登記法上は「反対同盟」の名義とならないことから、地元選出の社会党議員(当時)小川三男氏の名義にした。これに対して原告は、登記名義は反対同盟の代表者=戸村一作でないと対抗力がないと主張している。裁判はこれから立証過程に入るが、以上の争点をめぐり双方から立証計画が出された。
この日の口頭弁論では、前回追及されシドロモドロになった原告側の地代支払いに関する主張の矛盾について、原告から釈明がなされた。地代について原告は、準備書面(8)で、旧地主の石橋は反対同盟に「返却した」と記述した。ところが準備書面(9)では「(石橋は)受け取ってない」と言い換えている。この矛盾を鋭く突かれた原告・空港会社は「地代は受け取ってはいない。『返却した』というのは不正確な記載だった」と訂正した。
では、地代支払の時に交付された領収証はどのように説明するのか? 「地代は受け取ってはいない」「領収証は形だけのもの」という説明は、絶対に通用しない。このやり取りでも、反対同盟の主張の正しさがますますはっきりした。地代が支払われ、領収証があれば地上権は存在する。だから原告側はシロをクロと言いくるめても、「地代はもらってない」とするしかなかったのであろう。領収証は無効とする以外にないのである。
次回口頭弁論は7月6日(木曜日)になった。6・25東京集会(24~25日 パネル展)、7・2三里塚全国集会に続いての毎週の闘争になった。(詳しくは本紙参照)
●(5月13日) 化学兵器テロ対応部隊発足(5/13千葉日報)
県警はテロが発生した際に緊急対応するため、「NBCテロ対応専門部隊」を創設し、千葉市稲毛区長沼原町の第2機動隊の敷地内で総合訓練を実施した。部隊は地下鉄サリン事件などを教訓に設置されたもの。特に千葉県は成田空港、千葉港、東京ディズニーランドなど、不特定多数の人が多く集まり、テロの標的になりやすいエリアを多く抱えているため、部隊設置が待ち望まれていた。
全国で9番目となる県警の専門部隊は地下鉄サリン事件や細菌テロのような事態が起きた場合にも対応できる防護服や除染車両などを備えている。隊名の「N」は核、「B」は生物、「C」は化学を意味する英語の頭文字で、部隊は放射性物質や生物・化学兵器などを使用したテロに対応する。
佐藤正夫県警本部長も見守る中、総合訓練は、通勤ラッシュ時に駅構内のトイレに置かれたスポーツバッグが発火、正体不明の液体が流れ出し、多数の負傷者が出たという想定で実施された。
参加したのは専門部隊の指揮官以下160人。化学防護服や生化学防護服を着た隊員が、負傷者を救出して、ビニールプールや簡易シャワールームなどに運び入れて除染作業をてきぱきと進めていた。また、汚染物質をふた付きの缶に入れて回収した。
【本紙の解説】
成田空港警備隊には2004年1月16日に、NBCテロ対応専門部隊が発足していたが、それは本隊ではなく初動措置班としての設置であった。千葉県警への設置は、警視庁、大阪府警、北海道警、宮城県警、神奈川県警、愛知県警、広島県警、福岡県警に続いて全国で9番目である。
成田空港では、「NBCテロ対策研究会」(会長・牧野俊郎新東東国際空港クリニック所長)が03年7月から発足していた。そのために、初動措置班が早く作られたこともあるが、成田空港が日本で最大のNBCテロのターゲットとなっていることによるのだ。空港は航空機の騒音と事故で危険であるというだけでなく、感染症が最初に侵入し流行する場所でもあり、戦争になれば最大のターゲットになる。周辺住民の安全な生活とは相容れないものである。千葉県警への部隊の設置も9番目で、破格的な扱いである。それも成田空港という危険なターゲットがあるためだ。
NBCテロ対応専門部隊は警察に設置されているが、さいたま市にある陸上自衛隊化学学校で教育を受けて、部隊の編成、運営、化学物質の扱いなどは、基本的に自衛隊の指揮にある。この陸上自衛隊化学学校は、核・生物・化学兵器による大規模なテロまたは攻撃に対処するために設置されていると説明されているが、むしろ、核・生物・化学兵器の研究を米軍と共同で行っていると見られているところである。むしろ生物兵器への防御ではなく、その製造技術の研究を行っているのだ。NBC部隊は、化学防護服、化学防護車、化学物質を検知する器材、除洗器材などを保有しているが、これもすべて自衛隊化学学校の指揮下で行われている。NBC部隊は警察の下にあるが、対NBC出動は基本的に軍隊の出動である。
●(5月17日) 反対同盟 ゴミ処理場問題で成田市追及行動に決起
反対同盟は17日、成田市に、成田クリーンパークの空港用地転用問題で追及行動を行った。反対同盟は処分場問題について、いままで4回(昨年11月9日、11月30日、12月20日、今年3月30日)の公開質問状を送付して質問してきた。しかし、市当局の回答は「協議の相手(空港会社)の信頼を損ねるので答えられない」などと反対同盟の質問を無視してきた。
そのため、同盟は北原事務局長、萩原事務局次長を中心にして、小川公司環境部長、芹山弘道環境計画課長を追及した。
処分場問題処理の方法とプロセスを、成田市は「覆土での閉鎖、廃止」をマスコミに報道していた。この真偽と、全量撤去(埋まっているゴミをすべて撤去して廃止)の考えはあるのかどうか、法律で定められている閉鎖後2年間のモニタリング期間はどうするのかなどを追及した。
これに対して、市当局は「処理方法については全量撤去も含めて検討している。2年間のモニタリング期間については、クリーンパークの廃止に適用されます。それも地下水がきれいになった後から2年間ということになります」と明言した。
クリーンパークを空港用地に転用するには、ダイオキシンなど有害物質が発生しないことが百パーセント明確にならない限りできない。つまり、全量撤去せず覆土しただけで廃止し、空港用地に転用してしまってからダイオキシン等が発生した場合、もう工事はできないのである。それは航空機が離着陸している中で、航空保安地区での工事は不可能だからである。結局、クリーンパークの閉鎖方法は全量撤去による廃止しかないのだ。反対同盟はこのことを成田市民全体に訴え、クリーンパークの違法転用を許さず闘い抜く決意である。(詳しくは本紙参照)
●(5月17日) 航空運賃格安競争激化 ANA、JAL本格参入(5/17毎日)
運賃を巡る航空会社の競争が激烈さを増している。アジア市場での格安航空会社の勢力拡大に対抗するため、全日本空輸(ANA)は、アジア路線を専門とする格安航空会社の設立を検討し始めた。日本航空(JAL)も既存の子会社を活用し、低運賃の路線や便数を増やす方向だ。国内線でも、格安会社を意識した大手の値下げが目立っているが、安全運航が緊急課題となる中、値段だけで競争を勝ち抜けるかどうかは微妙な状況だ。
ANAの山元一生社長は「09年までにグループ内で格安航空会社を持つべきだ」と意欲的だ。その背景にあるのが09年の羽田空港再拡張。これを機に「アジア諸国の格安航空会社の飛行機が羽田に飛来する可能性か強く、競争が激化する」(ANA関係者)と危機感を強める。具体策は検討中たが、中国や韓国などの路線で格安運賃での運航を模索中だ。
JALは、新会社の設立ではなく、アジア路線を低コストで運航している子会社(JALウエイズ)の路線や便数を拡大し対抗する方針だ。
国内線では、格安航空との間で、すでに運賃競争が激しさを増している。JALとANAは4月末に決めた7月前半の羽田-福岡線の割引運賃が、スカイマークエアラインズより最大1万円程度高くなったため、5月上旬に急きょ、引き下げるなと対抗意識をあらわにした。
ただ、航空会社は、最近の原油高を受けた燃料費の増大を受け、経営体力に余裕がない。燃料費増加分を航空運賃に上乗せして回収している状況で、原油高騰がさらに続けば、運賃競争を見直さざるを得なくなる可能性もある。
JALやスカイマークで運航トラブルが相次いだこともあり、航空関係者は「運賃値下げ競争よりも信頼回復を最優先すべきだ」との声が強い。乗客に支持される運賃体系と安全運航の両立が、大きな課題となっている。
【本紙の解説】
羽田空港の国際化は、首都圏航空需要の成田空港とのシェア争いだけでなく、アジア圏の航空会社の再編を含む航空業界の大変動を引き起こすようだ。羽田空港は、09年にD滑走路が完成すると、年間発着回数はいままでの28万5000回から40万7000回に増えることになる。国交省はその増便枠の3万回を国際線に割り当てている。しかし、その枠は、7万回とも10万回とも言われている。
そのため、アジアの格安航空会社も参入することになりそうである。そのため、ANAもJALも運賃の格安競争に乗り出すとしている。国交省が成田、羽田のアジア便の枠組みを決定するが、こうなると経済的にはアジア便の大半は羽田に移りそうだ。
成田空港の将来は欧米便と貨物の専用空港として特化していくしかないようだ。
●(5月18日) 成田空港会社3月期決算/初の配当、20億円(5/19日経、東京、産経各全国版、朝日、読売、毎日各千葉版、千葉日報)
成田国際空港会社(NAA)は18日、06年3月期決算を発表した。グループ22社を含む連結ベースの営業収益は1712億円だった。04年4月の民営化後初めて、100パーセント株主の国に対し20億円の配当をすることも明らかにした。
飲食店など収益は増えたが、05年10月からの着陸料引き下げなどによる空港運営事業の収益減が響き、営業収益は前期比3億円減となった。だが、経費削減などの効果で、経常利益は同25億円増の320億円だった。
民営化後初めてとなる配当について、黒野匡彦社長は「NAA単体での純利益は141億円。財務体質強化に重きを置きながらも株式会社として利益を還元することにした」と説明。民営化1年目の05年3月期決算で、NAA単体の純利益は72億円だったが、株主への配当はしていなかった。
05年度の航空機発着回数は約18万8千回、旅客数は約3100万人、航空貨物量は約224万トンで、いずれも前年度並みの実績だった。
【本紙の解説】
05年度の決算報告は、航空需要が横ばいないし落ち込み傾向にあり、決して好調ではないことを示している。航空機発着回数は前年比0・7パーセント増、18万7888回で過去最高であったが、旅客数は1・0パーセント減で、3144万5000人にとどまった。
便数が増えたにもかかわらず、旅客が減少した直接的な原因は、羽田空港発着の日韓チャーター便が1日4便から1日8便へと増便されたことによる。趨勢的な原因は、航空需要そのものの落ち込みにある。実際、今年の夏ダイヤの国際線旅客便発着回数は冬ダイヤから1週間単位の便数で6・5便減少、発着回数では13回減った。05年の夏ダイヤとの比較では旅客便は便数で16.5便の減少にもなっている。
昨年10月から着陸料の値下げの影響もあり、営業収益は前年比3億円の減収になっている。着陸料の値下げの影響は05年度は半期であるが、06年度は全期にわたっての影響となる。また、航空会社各社も着陸料の低い低騒音機を成田に配置してくるので、着陸料はより一層の減収になる。
しかし、経費削減などによって営業利益は約2億円増加し、平均金利の低下によって、経常利益は8パーセント増で、約25億円増加した。固定資産などの特別損益を計上せずに、純利益は倍増し約230億円となった。その結果、20億円を株主である政府に配当するという。特別損益の計上などは作為的にできるものであり、公団時代にも経常利益が多い年は特別損益を計上し、少ないときや赤字の時は計上しなかった。
07年の予定であった株式上場が見送られたことに打撃を受けている黒野社長は、どうしても今年度中に上場の時期を確定したいらしい。そのために、この配当は「上場に向けての、株主へのアピールになることを期待している」(黒野社長の記者会見談話)なのである。しかし、上場は、空港会社への敵対的買収対策と長期債務の着実な減少がない限り、できないのである。
航空会社への敵対的買収が行われると経営的メリットのない暫定滑走路の北延伸は中止になるためである。また、長期債務についても北延伸工事のために、完成予定の09年、10年に債務額がピークになる。黒野社長は記者会見で「2010年以降に毎年300億円程度を着実に減らしていけるかどうかが問題」と述べている。羽田空港とのシェア争いもあり、長期債務の着実な減少などは無理なのである。05年度の決算報告では有利子長期債務残高は前期末より40億円増加している。成田空港の財務状況を09年羽田国際化というフィルターを通してみると、お先真っ暗なのである。
●(5月18日) 経済財政諮問会議 羽田輸送力4割増強などを提言(5/19日経)
政府の経済財政諮問会議は18日、日本の国際競争力向上を目的とする「グローバル戦略」をまとめた。「人材」「産業」「地域」「国際貢献」の4分野で2010年までに達成すべき目標を盛り込み、「若者フリーターの2割減」や「羽田空港の輸送力を4割増強」などと数値で示した。研究者ら高度な技術を持つ外国人の受け入れ拡大も課題に挙げている。
政府は与党と協議し、6月にもまとめる「骨太方針2006」に同戦略の具体策を反映する。同戦略では中国やインドが台頭する国際環境で、日本の存在感発揮に不可欠な課題を列挙。目標を達成できれば、所得収支の黒字がさらに拡大し、高い国際競争力を維持できるとしている。
外国人受け入れでは、在留しやすい環境つくりを課題とし、原則3年の在留期間を5年に延ばしたり、子どもと配偶者に認めている家族滞在の範囲を親に広げたりする見直し案を示した。高齢者の看護や介護にあたる外国人も柔軟に受け入れる方向を打ち出した。
【本紙の解説】
6月の「骨太方針2006」を前にしてその目標だけを「グローバル戦略」として、5月18日の経済財政諮問会議で発表した。航空関連だけを取り出すと、「成田空港(約1割)、羽田空港(約4割)の能力増強のための施設整備」、「外国人旅行者数1000万人、都心から成田空港までの鉄道によるアクセス30分台」が出されている。
空港整備問題は、羽田の4本目の滑走路建設で発着数が1.4倍の年間約40万回になること、成田は、暫定滑走路の北延伸によって、発着枠が2万回増えて22万回になるなど、いま進行している計画を盛り込んだだけだが、問題はこれだけの「能力増強」に追いつける航空需要はないことである。
現状の羽田、成田の合計発着回数枠は28万回+20万回で約48万回である。これが、予定では62万回になり、14万回も増加する。しかし、この間の航空需要は横ばいであり、増加は見込めない。
そのために、経済財政諮問会議では「外国人旅行者数1000万人」を取り上げたのである。03年に国交省が中心になり、旅行会社と空、海、陸の交通会社を加えて、ビジット・ジャパン・キャンペーン(VJC)を開始している。日本人の海外旅行者は約1600万人に対して、外国人旅行者は約500万人に過ぎないことから、外国人旅行者を1000万人にすることが目的である。しかし、05年度の外国人旅行者は673万人であり、1000万人は無理な計画である。旅行会社もこの数字には疑問を呈している。それでも、首都圏の空港整備とそれを賄う需要を拡大するには外国人観光客を呼び寄せる以外に方法はないのである。
また、発着枠の余り分には外国航空会社が入り込むことになり、日本の航空会社との熾烈な競争になる。いままで、「成田の発着枠の限界」をタテに日米航空交渉などで米国航空会社の強引な増便要求を拒否してきたのであるが、これができなくなる。また羽田にはアジアの格安航空会社が乗り入れてくる。羽田国際化は、成田空港の経営的破産だけでなJAL、ANAの経営的破綻にも及びそうである。
●(5月22日) 成田空港地域共生委員会 離着陸午後10時台、過去最多14.1回(5/23朝日新聞千葉版)
成田空港の運用を検討する第三者機関「成田空港地域共生委員会」(代表委員・山本雄二郎高千穂大客員教授)が22日、成田市内であった。05年度の午後10時台の離着陸数が、円卓会議で合意された「1日10便以下」を大幅に上回る14・1回となり、過去最多となったことが明らかになった。
騒音問題などから、午後10時台の離着陸回数は、94年の円卓会議で「1日10便以下とする」と、空港側と地元間で合意されている。
しかし、97年以降、10便以下を上回る状況が続き、05年度には過去最多の14・1回になった。
委員会は冒頭以外は非公開。会議終了後に会見した山本代表委員は、午後9時台に出発予定だった貨物機が、集荷の遅れなどで遅延するケースが目立つと指摘した。
出席した委員らからは「空港側は約束したことは守るべきだ」「地元との信頼関係を守ってほしい」など、厳しい意見が出たという。
今後、国は1日10便以下となるよう各航空会社の指導を強化していくという。
【本紙の解説】
午後10時台の出発便は、その約70パーセントが離陸重量の重い貨物便である。機種もB747、MD11などの大型機がほとんどである。離陸重量が重いと騒音レベルは大きくなる。それも雲が厚く低い時は、場所によって騒音レベルが90デシベルを超えた轟音になる。雲による騒音のエコー現象も加わるのであろう。時間帯もあり、住民の安眠を妨害する。それは前から問題だった。貨物の集荷が交通渋滞などを理由に遅れて、9時台の離陸予定が、10時台にずれ込んでいるのである。それが常態化し、空港会社が容認してきた結果なのである。空港会社が翌日出発にすれば、貨物航空会社も大損害になり、是正されるはずなのである。にもかかわらず、遅れを数年間容認してきたのである。それは、中部空港などとの国際航空貨物のシェア争いがあるためである。
そして、空港も航空会社も、天候を理由に飛行禁止時間帯の深夜に離着陸することが多い。天候が理由で深夜帯に着陸するよう場合は、安全運航を確保するためにも、ダイバード(目的地変更)をするべきなのだ。しかし、ダイバードは経費負担がかさみ、また機材繰りや旅客への対応などのため最後の選択肢になっている。営利優先のためである。空港会社は、民営化したために、営利優先で、周辺住民の生活を顧みないことがより強まっている。空港会社の側に立っている共生委員会も問題を指摘しただけで終わっているのである。
●(5月23日) カラスの大群、滑走路を閉鎖(5/24朝日、産経各千葉版)
23日午後2時40分ごろ、成田空港のB滑走路付近で、約50羽のカラスの群れが見つかり、追い払って安全を確認するまでの約4分間、同滑走路が閉鎖された。航空機の運航に遅れなどの支障はなかった。
成田国際空港会社(NAA)によると、安全点検中に滑走路東側の草地でカラスの群れを発見。NAA職員が滑走路を車で走り、群れを追い払った。安全確認後、閉鎖を解除した。カラスの一群は北西の方角に飛んでいったという。
飛行機と鳥の衝突は「バードストライク」と呼ばれ、機体やエンジンが故障する場合がある。この危険を避けるための措置で、NAAによると、成田空港で05年度の1年間にカラスなどの鳥による滑走路閉鎖は21件あったという。
【本紙の解説】
バードストライクは、日本国内において年間、数百件から千件近く起こると言われている。そのために、エンジンの損傷や航空機の空港への引き返しなどが起こっている。現在のジェットエンジンの主流がターボファンエンジンで、空気の吸入量が多くなっている。燃料に使う空気量とファンから吸い込む空気量との比をバイパス比というが、ボーイング747はパイパス比が10で、それ以上が高バイパス比となり、いまではバイパス比25のエンジンもある。それによって、エアインテーク(空気吸入口)に鳥が吸い込まれる事故が多くなってきたのである。高速で飛行している航空機にとって、小型の鳥でも衝突時のエネルギーは大きく、最悪の場合、墜落になるケースもある。
そのために、各空港には野鳥駆除専門の委託員がいて、バードパトロールと呼ばれている。今回もこのチームが追い払った。バードストライクは航空機が離陸動作中や着陸動作中の速度が比較的遅く、高度が低い時に起こりやすい。そのためにバードストライクの事故は空港内か空港周辺で起こるのである。
新型機のバイパス比はより高くなっており、バードストライクの危険も増している。航空機と空港はまだまだ、危険が免れない交通機関である。乗客はそのことを覚悟しているかもしれないが、空港周辺で生活する住民は、騒音とともに空港の危険はたまったものではない。
●(5月23日) 成田空港 航空機事故消火救難合同訓練(5/24朝日、産経各千葉版)
成田空港で23日、「航空機事故消火救難合同訓練」が行われ、消防や県警、医療機関など関係19機関約340人と車両約55台が参加した。
訓練は成田市消防本部と成田国際空港会社が主催。中型ジェット旅客機(B767型)が着陸に失敗し、A滑走路東側の芝地で左側エンジンが炎上、乗客らに10人の負傷者が出たとの想定で実施した。
駆け付けた空港消防隊などの化学消防車が模擬飛行機に向けて一斉放水。市消防が現場指揮本部を設置するとともに、事故機に見立てたコンテナを消防や警察の救難隊員らが特殊工具で機体を切り裂いて機内の「乗客」を次々に救出した。
けが人は近くに設営された救護所に運ばれ、医療班によって処置されて搬送された。
【本紙の解説】
3月に、NBCテロ対策合同訓練が行われたが(06年3月14日付日誌を参照)、2ヶ月後に事故消火救難訓練である。成田空港ではこのような訓練が年に4、5回行われている。それは空港が極めて危険であり、また、現代戦争における最大のターゲットであるからだ。また感染症などがはじめに流行する所でもある。空港の危険性を示すものがこの訓練である。安全確保と言っているが、空港がなければ、ここは安全そのものの北総大地なのである。
●(5月24日) 成田滑走路北延伸 迫る着工 進まぬ地元同意(5/24読売千葉版)
成田空港暫定平行滑走路の北延伸で、着工の前提となる「地元同意」の手続きが難航している。着工許可申請を今年7月までに提出したい成田国際空港会社に対し、延伸で騒音被害が拡大する成田市久住地区の住民が「騒音対策の検討が不十分」と反発。同市も「住民理解が得られていない」として、延伸後は年間発着回数を22万回に増やす空港会社の方針に同意しておらず、7月までに解決するかは微妙な情勢だ。
「空港整備のみが優先される現状に住民は戸惑い、危機感を抱いている」。住民組織「久住地区空港対策委員会」の松島文哉会長は4月14日、堂本知事にこう書かれた要望書を手渡し、移転補償が受けられる「防止特別地区」の線引きを、十分に時間をかけて協議するよう求めた。
騒特法に基づく県の基準では、防止特別地区は、WECPNL(うるささ指数、通称・W値)が80Wを超える騒音被害を受ける世帯に加え、こうした世帯と地域社会の結びつきが強い世帯も含む。北延伸に伴い、成田市久住地区と下総地区(旧下総町)の5集落約30世帯が新たに80Wを超える。さらに同市内では約100世帯も移転補償を希望しているが、県と折り合いがついていない。
防止特別地区の策定方針は今年2月から3月にかけて地元に示し、具体的な調整が進められている。久住地区空港対策委員会の役員の1人は、「(北延伸の)着工時期が迫っているのは住民もよく分かっているが、移転を巡る住民の考えも様々。短期間でまとめられるかどうか……」と話す。
また、昨年8月に北側国交相が正式指示するまで、「北延伸はしない」と住民に説明し続けてきた空港会社に対する不信感も根強く、「心情的に同意したくない」と話す住民は少なくない。
県はこうした事情に配慮し、「まずは騒音対策で合意できる策を講じることが重要で、スケジュール調整は住民との相談次第」(空港地域振興課)と、協議に期限を設けない方針だ。
一方、空港会社は、羽田空港の4本目の滑走路がオープンする2009年度に間に合わせるよう、北延伸の完了時期を当初より約1年半前倒ししており、着工延期は避けたいところだ。黒野匡彦社長は「1日も早く地元が納得してほしい」と理解を求めている。
法的には地元同意なしでも着工申請はできるが、空港会社の担当者は「地元を無視した『見切り発車』はできない。住民との協議の長期化は悩ましいところ」と気をもんでいる。
【騒特法】 正式名称は「特定空港周辺航空機騒音対策特別措置法」。騒音被害の未然防止などを目的に、空港会社の要請で、県が地元住民などの意見を聞いて騒音対策基本方針を決める。この中で、県は、空港会社から移転補償を受けられる防止特別地区を定める。
【本紙の解説】
うるささ指数80W以上の騒特法特別防止地区に入っているのは久住地区の幡谷、大室、土室、小泉と旧下総町の高倉である。そのうち、幡谷と高倉の2集落が分断される。とりわけ、幡谷にある須賀辺田(すがべた)の集落が完全に分断になる。そのために、須賀辺田は全戸移転を希望している。
特別防止地区の線引きで集落が分断されるとしている。また、特別防止地区の線引き外になると、特別防止地区とほぼ同じような騒音で、つまり、人間が生活できない騒音下で、生活を強制されようとしているのである。
ここで起こっていることは北延伸のために今年の3月末まで、6月末までとか時期を区切って、空港建設を承認しろというものである。用地内農民の買収攻撃と同じである。時期を短時日に区切るのは農民の生活と時間の感覚が違うのである。また、黒野社長が久住地区の住民に「南側延伸が基本で、北延伸工事はしないつもり」と言い続けてきたにもかかわらず、昨年夏に一転して北延伸強行になったことに不信をもっているのである。
特別防止地区は建物の新築はできなくなる。防止地区で様々な制限があり、この線引きは財産権の権利を剥奪することになる。それにもかかわらず、住民との合意なしに、線引きをして、強引に北延伸工事を進めようとしているのである。
空港会社は今年の3月に、「騒特法での合意がない限り、工事の着手はできない」(06年3月23日付日誌を参照)と言っていたが、今回は、「法的には地元同意なしでも着工申請はできる」としている。天神峰や東峰で生活している農民、騒音下の農民や住民を無視して工事を強行しようとしている。
成田空港会社は、6月末に変更許可申請し、公聴会をやり、9月にも許可されると計画している。また、空港本体工事と切り離してこの夏にも国道51号のトンネル工事をやることも目論んでいる。
今年は、三里塚闘争40年目であるが、空港建設が40年もかかっても完成していないということなのだ。北延伸が4年間でできるはずもない。
●(5月25日) 黒野社長 施設変更許可申請6月末に予定(5/26朝日、読売、毎日各千葉版)
成田国際空港の暫定平行滑走路を本来計画とは反対の北に延伸する「北伸」について、成田国際空港の黒野匡彦社長は25目の会見で、航空法による施設変更許可申請の時期について「6月いっぱいが目標」と述べた。供用開始時期については「10年3月に開始するスケジュールを絶対守る」と改めて強調した。
北伸に関しては、騒音被害が拡大する成田市久住地区など地元住民からの理解は得られていない。うるささ指数80W以上の地域は県が「防止特別地区」に指定し、同社が移転補償する予定だが、周辺住民で組織する「成田市久住地区空港対策委員会」(松島文哉会長)は十分な話し合いを求めている。黒野社長は「法的には許可申請が先でもいいが、地元住民の理解を得てから申請したい」と話した。
【本紙の解説】
成田空港会社は計画通りに、6月末に施設変更許可申請をすることを公表した。しかし、騒特法特別防止地区の線引きで久住地区住民の意向を無視してやるかどうかを検討している。
完成時期は09年度中と変わらず、今年の9月に着工しても工期は3年半しかない。着工をこれ以上遅らせることはできない。そもそも、北延伸工事が3年半で終わるはずもない。東峰の森への新連絡誘導路建設、クリーンパークの2年間のモニタリング期間もある。国道51号線のトンネル工事は夜間工事の難工事である。さらに、株式上場問題もあり、これ以上、工事を遅らせることはできない。
黒野社長は、「法的には許可申請が先でもいいが、地元住民の理解を得てから申請したい」と言っているが、地元住民の意向を無視して建設を急ぐのが成田空港のこれまでのあり方だ。そのために40年もかかっても空港は完成していない。この轍をまた踏むのであろう。
●(5月27日) 中部、成田、関西3社長が名古屋で討論(5/30東京)
航空輸送に関する国際会議(ATRS、中日新聞社後援)が27日、名古屋市熱田区の名古屋国際会議場を主会場に2日間の日程で始まった。「空港間の競争と協調」をテーマにした討論では、中部、成田、関西の国内3大国際空港会社社長が初めて顔をそろえた。
アジアや日本各地で空港整備が進む中、連携を訴える提言があった一方で、いかに独自性を持つかが重要と、国内での空港間競争を見据えた意見も出た。
中部空港の平野幸久社長は成田、関空との関係について「競争よりも協調すべき点が多い」と指摘。中国の北京、上海、韓国の仁川といった近隣諸国の巨大ハブ(拠点)空港に対抗するために、3空港が協力して国際競争力を高めていくべきだと主張した。
成田空港の黒野匡彦社長は、2009年に第4滑走路が完成する羽田空港の国際化を意識して「近くに競争者がいるのは励みになるが、どのようにすみ分けするかを明確に決めておかねばならない」と発言した。
来年夏ごろから第2滑走路の使用が始まる関空の村山敦社長は「これまで中部との競争を騒ぎ立てられてきたが、ようやく関空の潜在能力をフルに発揮できる」と自信を見せた。
ATRSは、世界各国の航空交通研究機関、航空産業、行政機関の関係者が集まって学術発表やシンポジウムを続けており、日本初開催。昨年2月の中部空港開港をきっかけに、名古屋市が会場に選ばれた。2日間で600人以上の参加者を見込む。
【本紙の解説】
成田、関西、中部の3空港は、いままで空港間競争で張り合ってきたが、「協調、連携」が中心の会議のようであった。ここには、成田空港にとって09年以降の最大のライバルになる羽田空港の発言が取り上げられていない。黒野社長は羽田空港との関係を「どのようにすみ分けするかを明確に決めておかねばならない」と発言している。これは黒野社長の本音である。決めるのは国交省である。この国交省の「すみ分け」方針で、成田空港の運命が決まる。羽田空港は、国交省管理の国営空港である。この「すみ分け」はあらかじめ、成田空港株式会社にとっては不利である。また、航空需要と経済市場にあわせての自由競争では、成田の敗北は確実である。いまから国交省に哀願していく以外生きる道はないよだ。09年度の羽田国際化は、「協調、提携」とは無縁な空港間競争が激化し、「すみ分け」にはなりそうもないようだ。
●(5月28日) 反対同盟 7・2全国集会を呼びかける
反対同盟は、7月2日に全国集会の招請状と、その1週間前の6月25日の東京集会と同時に開催される戸村一作彫刻展、福島菊次郎写真展(24日、25日)の案内を発送した。以下は招請状とビラ。
■6・25東京集会
三里塚闘争40周年 歴史と現在(いま)を語る集い
――6・25東京集会――
※福島菊次郎写真展と戸村一作彫刻展 6/24~25
青年労働者・学生・市民の皆さん。成田空港の建設が始まって40年、いまだに滑走路は計画の半分しか完成していないことをご存じですか? 戦後最大の農民反乱といわれた三里塚闘争は現在もなお続いています。
きたる6月25日、反対同盟は「三里塚闘争40周年 三里塚の歴史と現在を語る集い」を東京で開催します。24日と25日の両日、報道写真家・福島菊次郎さんの写真パネルと反対同盟委員長でありキリスト者で彫刻家の故・戸村一作の作品を展示します。多くの皆さんのご参集をお待ちします。
1966年の「空港設置閣議決定」以来の警察権力による一方的な強制収用は、幾たびもの流血の抵抗闘争を生み出し、ついに政府は私たち農民の土地を完全に収用できないまま、強制収用の期限切れを迎えてしまったのです(1989年)。政府は表向き「過去の一方的な空港建設を謝罪する」(1993年)と表明しました。「強制的手段を永久に放棄する」とも公式に確約しました。
ところが現在、成田空港では2本目の暫定滑走路(2180メートル=02年供用)の南側の農家上空わずか40メートルにジェット機が飛び交うという、信じられない人権破壊がまかり通っています。誘導路のジェット機から猛烈な排ガスの直撃を受けている農家もあります。
政府は約束を破り、未買収地の反対農家の軒先まで暫定滑走路を造って飛行機を飛ばしてしまったのです。「飛ばせば(あまりの騒音で)反対農家は屈服する」(NAA=成田空港会社)とのごう慢な見切り発車でした。情報が遮断されている(報道されない)ことをいいことにした国家犯罪です。
しかし反対同盟と地元農家は屈服を拒みました。頭上40メートルにジェット機が行き交う厳しい環境に身をさらしてでも、政府の人権破壊と国家犯罪を告発する道を選びました。
そしていま、この国家犯罪の露見を恐れる政府とNAAは、暫定滑走路を北側に延伸して2500メートルにする「北延伸」を計画しています。農家の頭上に大型ジャンボ機を飛ばして何が何でも叩きだそうというのです。NAAはこの北延伸工事を夏~秋にも強行する構えです。反対同盟はこの暴挙を絶対に許しません。
*
多くの心ある皆さんに改めて三里塚の現実を知って欲しい。「歴史と現在を語る集い」は、そうした願いを込めた企画です。
…………………………
□三里塚闘争40年 歴史と現在(いま)を語る集い──6・25東京集会
【日時】6月25日(日)午後1時
【会場】江東区総合区民センター
□福島菊次郎写真展と戸村一作彫刻展
6月24~25日の2日間
午前10時~午後5時
区民センターの展示ホールにて
※三里塚の歴史パネル&ビデオ上映も
【主催】三里塚芝山連合空港反対同盟
■7・2全国集会招請状
全国の闘う仲間のみなさん。改憲攻撃を頂点に歴史を画する大反動が襲いかかるなか、三里塚は暫定滑走路北延伸の着工をめぐる決戦に突入しました。国交省・NAA(成田空港会社)はこの夏~秋にも、着工を強行する構えです。あの空港設置閣議決定から40周年を迎え、反対同盟はきたる7月2日、全国総決起集会を開催します。三里塚に心を寄せてくだる皆さんの大いなるご参加を訴えるものです。
NAA黒野社長は先日、暫定滑走路の北延伸について「2010年3月(9年度末)の供用時期は絶対守る」として、この6月にも国交省に空港計画の「変更許可申請」を行う意志を明確にしました。何がなんでも東峰・天神峰地区の上空40メートルにジャンボ機を飛ばし、反対農家を叩きだそうとの意思表示です。空港建設40年におよぶ不当な農地取り上げの歴史と、暫定開港の恐るべき国家犯罪を闇に葬り去ろうとしているのです。この暴挙を私たち反対同盟は絶対に許しません。農家の上空40メートルにジェット機が飛び交うような、およそ憲法が保障する基本的人権さえも無視する現実を、これ以上一刻も許すことは出来ません。地元住民や全国の労働者・学生・市民の力を合わせ、国と空港会社の犯罪行為を世に問い、暫定滑走路を閉鎖に追い込む決意です。
* *
7・2全国集会で反対同盟は、着工阻止決戦と同時に憲法改悪阻止への闘いを断固として宣言します。改憲の目的は戦争のできる国家体制づくりです。それはとりもなおさず三里塚のような人民の抵抗を二度と許さないという攻撃です。改憲に反対する運動自体を禁止する「国民投票法案」も国会に出されました。子どもたちに「愛国心」を法律で強制する教育基本法改悪も切迫しています。人の心を罰する「共謀罪」新設の攻撃も抜き差しならない段階にきました。そして小泉政権の「構造改革」で、ごく一握りの大富豪が生まれ、圧倒的多数の働く者がリストラにあい、働いても働いても報われない社会に変貌しています。年間310000人が自殺する社会。これが小泉「改革」の正体です。
三里塚は政府の「国策」を40年間阻んできました。農民と労働者の正義が国家の論理を打ち負かしてきた。それが三里塚闘争です。改憲が通れば国防は「国民の義務」となります。反戦運動は「犯罪」となります。お上に逆らうこと自体が犯罪になるのです。それが改憲の本質です。三里塚はここで再び立ち上がらなければならないと覚悟しています。改憲を阻止し戦争の道をストップするために、三里塚闘争はここで何としても勝ち抜かなければならない。北延伸着工阻止決戦の行方は、すべての労働者人民の未来と一体なのです。
* *
あの1966年7月4日の「空港設置閣議決定」から遂に40周年を迎えます。多くの同志、仲間たちが団結し、血を流して政府・権力の農地強奪と闘い、現在なおも軍事空港の完成を阻み続ける三里塚。このかけがえのない砦を、北延伸着工阻止決戦、そして改憲阻止の歴史的闘いのなかで、すべての皆さんとともに守り抜くことを心から訴えるものです。6・25東京集会(歴史勉強会とパネル展示)および7・2全国集会の成功のために、多くの労働者・学生・市民の皆さんが力を貸してくださることを心から訴えます。
2006年5月28日
三里塚芝山連合空港反対同盟
(連絡先)事務局長・北原鉱治 成田市三里塚115
TEL 0476(35)0062
(記)
【集会名称】
暫定滑走路「北延伸」着工阻止
憲法改悪絶対反対 三里塚闘争40周年
7・2全国総決起集会
【日時】7月2日(日)正午
【会場】成田市東峰・反対同盟員所有地
【主催】三里塚芝山連合空港反対同盟
●(5月29日) 黒野社長 6月に施設変更許可申請へ(5/30朝日千葉版)
北側一雄国交相は29日、成田空港の暫定B滑走路(2180メートル)の2500メートル化をめぐり、「空港の機能の強化は、待ったなしの課題で、海外の主要空港との競争に負けないようにしたい。暫定滑走路の2500メートル化をできるだけ早く、実現していきたい」などと語った。同日開かれた第1旅客ターミナルビルオープン記念式典の祝辞の中で述べたもの。
同じくあいさつに立った堂本暁子知事は「2500メートル滑走路を実現し、これから空港と一緒に発展する成田市、県でありたい」と話した。
暫定滑走路の延伸問題では、騒特法(特定空港周辺航空機騒音対策特別措置法)の移転補償対象となる区域の線引きをめぐり、県と地元との交渉は難航している。成田国際空港会社(NAA)の幹部は朝日新聞の取材に対し、「成田市や県が地元対策でどうしても待ってくれ、というなら話は別だが、来月に施設変更許可申請を国に出したい。騒音対策は供用開始(10年3月)までに十分に行いたい」などと話した。
南ウイング開設を6月2日に控えた成田空港で29日、第1旅客ターミナルビルのグランドオープン記念式典があり、北側一雄国交相や堂本暁子知事らが出席した。
式典には自治体や航空関係者ら約850人が参加。国内空港最大の免税店街「ナカミセ」の内覧なども行われた。
式典で北側国交相は「使いやすいという印象を持ってもらい、日本の玄関として魅力ある空港にしてほしい」とあいさつ。また、成田国際空港会社の黒野匡彦社長は「足かけ12年にわたる大工事が無事終わり、最新のセキュリティーシステムの導入など、安全性と利便性が飛躍的に良くなった」などと述べた。
オープニングでは、北側国交相や黒野社長、イメージキャラクターを務める女優、菊川怜さんらが発着便の案内などを表示する「インフォメーションボード」のスイッチを押し、新しい成田空港がスタートした。
第2ターミナルから南ウイングに拠点を移す全日空の山元峯生社長は「南ウイングを訪れたのは今回で2回目。特にナカミセは、画期的な広さと店構えだ。評判が評判を呼び、大勢のお客様に利用して頂けるのではないか」などと話した。
【本紙の解説】
第1旅客ターミナルビル、南ウイングのグランドオープン記念式典は、北延伸工事の強行を宣言する場になった。黒野社長は、「地元がどうしても待ってくれ、というなら話は別だが」として、「スケジュール調整に期限を設けない方針」を転換して、千葉県と成田市を恫喝し、6月に施設変更許可申請を出すことを明言した。黒野社長は先週24日の記者会見(06年5月24日付日誌を参照)では、「地元を無視した見切り発車はできないという」空港担当者などの意見もあり、「1日も早く地元が納得してほしい」と弱気な発言をしていた。これが、一変し、地元住民無視の本質を露わにした。堂本千葉県知事もこれに完全に呼応している。
これ以上遅れるなら、09年にアジア便の大半を羽田に移行させられると国交省に予定通りの着工を要求されたのだ。
「騒音対策は供用開始(10年3月)まで」というのは暴言である。地元住民が納得しなくても建設は進めて、合意しないならそれまでだという態度である。三里塚闘争の歴史を顧みない態度である。黒野社長自身も、地元住民の立場を尊重すると発言してきたことを完全に裏切ることだ。
●(5月31日) 成田市長/滑走路延伸問題 「遅れ取らないように努力」(6/1毎日千葉版)
成田市の小林攻市長は31日の会見で、暫定平行滑走路を本来計画とは反対の北に延伸する「北伸」について「成田国際空港会社や国が求めている(10年3月までに供用開始したいという)スケジュールに遅れを取らないように努力したい」と述べた。
騒特法により、うるささ指数80以上の地域は県が「防止特別地区」に指定し、同社が移転補償する予定だ。しかし、騒音被害拡大が予想される同市久住地区などの理解はまだ得られていない。
小林市長はこの点について「最終説明会をしている。地元の声を県や国にきちんと届ける」と説明した。
【本誌の解説】
成田市は久住地区と騒特法特別防止地区の線引きとその補償で住民と空港会社との間で、中間主義の立場を装ってきた。住民の要求を直接的には拒否はしないできた。しかし、空港会社が6月中に施設変更許可申請を提出することを決定したので、小林市長は北延伸推進の本質を露わにした。
いままでの立場では、空港会社からの騒音対策費を取ることができない。そのために、久住地区の住民の要求を全面的に無視することにしたのである。久住地区の住民の怒りは激しく、今後、空港騒音のあり方をめぐる住民闘争として発展していくであろう。
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