●(12月1日) 成田市長/滑走路北延伸案に反対(12/2読売、毎日、東京各千葉版、千葉日報)
成田空港の暫定滑走路を2500メートルに延伸する計画について、成田市の小林攻市長は1日、定例会見で「北延伸は考えていない。当事者(地権者)を追いやるようなやり方はできない」と述べ、用地買収ができずに進んでいない現在の計画の南側ではなく、北側への延伸に反対する考えを示した。
同滑走路延伸をめぐっては、空港周辺の経済・市民団体で構成する成田空港対策協議会が11月、成田国際空港会社などに北延ばしを求める要望書を提出している。
小林市長は「(滑走路南側に住む地権者と)今こそ話し合いを積極的に積み上げていくべきで、既定方針通り解決をしてほしい」と話した。
【本紙の解説】
北側再延長案論議は、2000年に成田空対協が持ち出し、01年に空対協の基本主張にしたことから始まる。本格的に取り上げられたのは、中村空港公団前総裁が退任の記者会見で共同通信の記者に話したことからである。就任直後の黒野新総裁は中村前総裁の対抗関係もあり、「選択肢として否定はしないが本来計画の2500メートルが理想でベスト。当面はそれに向け努力する」といっていた。しかし、すぐに、「南側延伸のための地権者の交渉と、北側延伸を両にらみで進めていきたい」といい出した。この発言の意図は北側延伸計画で地権者を脅し、用地買収を推し進め、本来計画の南側延伸を進めたいということである。その後も、北側延伸は「選択肢のひとつ」とか「ポケットの奥にある」とか、脅しの材料として使ってきた。
しかし、最近は脅しのためにも使わなくなった。その理由は北延伸の現実性が薄いからだ。北側320メートルの滑走路延伸用地はあるにはある。しかし国道51号線の本格トンネル化に数年かかり、東関東自動車道が完全にアプローチエリア(進入灯などを設置するエリア)に入る。その工事は大事業だ。
また北側に延長しただけでは、誘導路の幅が狭い問題や「へ」の字湾曲問題の解決にはならず、延伸のうたい文句であるジャンボ機も飛ばせない。騒音コンターが北側に広がる問題も深刻で、成田の土室地区などの反対運動は激しい。小林成田市長の発言は、この北側地区住民の意見を代弁しているのである。成田空港北側は騒音のため地価も暴落、山林も手入れが入らず、過疎と荒廃が進んでいる。
●(12月1日) 千葉県県議会/収用委人事案件知事に見送り要請 共産など4会派(12/1読売千葉版、千葉日報)
県議会の共産党県議団、社民・県民連合、市民ネット・無所属市民の会、水と緑の会の4会派は1日、堂本暁子知事に対し、今議会で収用委員会の人事案件提案を見送るよう要請した。また、提案された場合の議会審議を秘密会で行わないよう、議長と議会運営委員長に求めた。
県は、1988年に起きた成田空港反対派による会長襲撃事件をきっかけに収用委が″消滅″した経緯を踏まえ、委員の安全確保の観点から秘密会での審議を議会側に要請している。
これに対し、4会派の要請書では「人事案件が秘密会で決定されると、収用委の審議も非公開となる。市民の基本的権利の擁護と公共の福祉の調整を図る収用委の権限が県民の目の届かない場で行使される事態は許されない」としている。
【本紙の解説】
堂本知事は前回選挙のときは、無党派を掲げ、市民ネットなどの支持を取り付け当選した。しかし、当選した直後には、「私は長野県の田中知事とは違う。議会とは対立せずに、うまくやっていきたい」として、自民党に迎合していく方針を表明していた。来春の知事選にむかって今年に入り堂本は自民、民主の推薦取り付けに躍起になっている。そのために、堂本知事は「無党派主義ではない。選挙は勝たなきゃ意味がない」とまでいい、その集大成として、自民党千葉県連の要望が最も高い県収用委再建に踏み切ったのである。
ただし今回の4会派の要請は欺まん的だ。生活ネットなどはこの堂本知事を一貫して支持してきた。また日本共産党は収用委員会が不在なのは「異常である」として再建を促してきた。彼らが収用委再建に反対するのであれば、堂本知事の政治姿勢を根本から批判してほしいものだ。
それにしても、収用委員の氏名も公表されず、会議も秘密会で行うというのは、行政機関と独立した第三者機関として設立し、行政の独走に歯止めをかけようとした収用委員会のそもそもの趣旨もなきものにされてしまう。密室・非公開の会議では、委員は任命権者の意向に沿う決定しか行えない。このようなものは戦前ですら存在しなかった。民主主義とは、誰からも見ることができるガラス張りの議論が出発点である。秘密の指名人事と審議も非公開では民主主義の根幹を破壊する愚挙だ。
●(12月6日) 反対同盟 県収用委再建阻止 千葉県庁へデモ
反対同盟は100名の参加で6日午前10時から、収用委再任命反対の千葉市集会とデモを行った。
北原事務局長は「堂本知事は収用委員会を再建することによって、われわれ三里塚農民を脅そうとしている」と弾劾した。動労千葉の滝口誠共闘部長、婦人民主クラブ全国協議会などが発言した。萩原進事務局次長は、成田の事業認定が法的に失効していることを鮮明にした。県庁に隣接する千葉市の中心部をデモ行進して、闘いの決意をアピールした。(詳しくは本紙参照)
●(12月7日) 収用委16年ぶり再開決定(12/8千葉版全紙、千葉日報)
12月定例県議会は7日、県収用委員会の委員選任議案など23議案を可決し、閉会した。収用委員会委員の選任議案は地方自治法に基づき、県議会では初となる「秘密会」で審議された。選任された委員7人はきょう8日、堂本暁子知事から辞令交付を受け、機能停止から16年ぶりに収用委は再開される。
収用委は土地収用法に基づき各都道府県に置く独立した行政委員会。公共工事に必要な土地を取得するため、所有者の意見を聴いたり補償金の額を決めるなどの「裁決」を行う。
本県では88年、成田空港の土地問題を担当した当時の収用委会長が過激派に襲撃され重傷を負った事件などをきっかけに全委員が辞任。以来、16年間にわたって機能停止に陥っていた。現在、収用委が機能していないのは全国で本県だけ。
堂本知事は今議会冒頭のあいさつで、「収用委不在により公共事業が遅れ、県民に不利益をもたらしている」と再開方針を表明する一方、選任については委員の安全確保を考慮し、県議会では初、全国では4例目となる「秘密会」を要請した。
発議に対し3分の2以上の議員が賛成したが、共産党、社民・県民連合、市民ネット・無所属市民の会などは「重要な裁決権限をもつ収用委の委員が(県民に対し)氏名を伏せたまま選任されるのは異常」とし採決前に退席した。
傍聴者らを退席させて行われた審議では、出席した議員の全会一致で可決。委員の氏名、略歴などが記載された議案資料は採決後に回収された。
選任された7人の委員に対し、県はきょう8日付で堂本知事からの辞令を交付する。任期は3年。年明けにも最初の会議を開き、互選により会長を決める。 堂本知事は「16年間、費用や時間の面で県民に多大な不利益が生じてきた。話し合いが前提だが、収用委があることで用地交渉が進むことを期待したい」と述べた。
【本紙の解説】
県議会における秘密会開催は、これまでに和歌山、島根、長野、宮崎の4県議会での例があるだけとのこと。収用委任命では例がない。いかに民主主義とかけ離れた行為であるかを示している。収用委員会を独立機関として設立した建前は、行政側の暴走を押さえ、被収用者の権利を守るためである。その収用委員任命を秘密会で行い、委員会の審理も非公開で行うとなると、土地収用法における土地の収用採決そのものができなくなる。土地収用法では、収用委員会の審理開始とその決定は県報に載せなければならない。その報告者が匿名というのは行政行為としてありえないことで、その決定はどうつくろっても無効である。
それにもかかわらず、なぜ収用委員会を匿名で再建したのか。それは、収用法の本質の一つでもあり、堂本知事もいっているように、抜かずにすめばいい「伝家の宝刀」だからである。土地収用法と収用委員会があることによって、地権者は最後まで反対すると財産の価値の大半を失うことになるという恫喝がふりかかる。そこから「交渉」が「脅迫」になり、売却せざるを得ない状況に追い込まれるのである。土地収用法の手続きは、収用採決申請、明け渡し決定、行政代執行というプロセスをたどるが、ほとんどの例が代執行にいたる以前の過程で交渉決着となる。収用裁決申請がでた段階での決着も多い。つまり土地収用法は「抜かずに使う」恫喝法なのである。
「成田には適用しない」とか「適用してほしくない」という言葉自体が収用法による恫喝攻撃である。交渉に応じてくれれば適用はしない、交渉に応じろという恫喝なのである。成田空港の事業認定は20年で失効している。このことは起業者である政府・空港公団(当時)が、93年に収用採決申請を取り下げることで追認し、法的にも失効は確定している。にもかかわらず、再三再四、堂本知事だけが、「成田には適用しない」と叫んでいるのである。
堂本知事は来春の知事選で千葉県自民党の推薦をとるために、収用委再任命を行ったともっぱらの評判だ。自分の選挙のために、県議会の秘密会開催、収用委員会の委員と審理の非公開などという前代未聞の暴挙に手を染めたのである。
選挙母体だった市民ネットでも堂本知事のあり方への批判がでている。八ツ場ダムへの千葉県負担分として760億円にもなる事業費倍増に応じたこと、三番瀬が「埋め立て中止」なっているにもかかわらず、それと矛盾する第2湾岸道路の建設を堂本知事が推進していることも不可解だ。堂本は、三番瀬円卓会議で決定した「三番瀬再生計画案」を県議会に提案もしないし、自分の在任期間には議会にかけないとまでいっている。環境派とか市民派とかいうのは見せかけだけであり、その政治姿勢は自民党以上に自民党的である。反対同盟と三里塚闘争はこの堂本知事の政治姿勢と収用委再任命を絶対に許さない。
●(12月9日) 成田空港会社 初の中間決算発表
成田国際空港会社(NAA、黒野匡彦社長)が9日発表した民営化後初めての2004年9月中間決算(単体)は、本業のもうけにあたる営業収益が経営計画を4パーセント上回る816億円、経常利益は通期目標(218億円)の86パーセントにあたる188億円になった。
子会社、関連会社(18社)を含めたグループ全体の連結でも経常利益は189億円とほぼ変わらず、特別損失などを差し引いた中間純利益は単体と同じ16億円。
柱の空港運営事業、免税売店など非航空系事業は発着回数、旅客数増が貢献して順調な業績を支えたが、低迷する芝山鉄道を軸にしたその他事業で2億5000万円の営業損失を計上、大きな足カセになった。
05年3月期(単体)は営業収益1562億円、経常利益218億円を見込み、同社は「利益目標の上積みを図りたい」としている。
また、裸の利潤を示す連結キャッシュフローについて財務担当役員は「空港は装置産業の最たるもので借入金の比率が高く、年度通算ではマイナスが見込まれる」としたうえで「総資産に比較すれば中間期16億円の利益は厳しい」との見方を示した。
【本紙の解説】
「営業収益が経営計画を4パーセント上回る816億円」と民営化スタートが好調に滑り出したことをアピールしている。07年の完全民営化にむけて「好調さ」を打ち出したいのである。いくつかの問題を指摘しておく。
そもそも04年経営計画の目標値が不当に低く抑えられている。01年は9・11反米ゲリラ、03年はSARS問題発生で経営的には大赤字になった。通常の運航状態を維持したのは02年であり、04年経営計画もこれをモデルにしているといっている。しかし、02年の経常収益(民営化したので営業収益となった)1607億円に対して、04年経営改革の営業収益目標は(NAA単体)は1562億円で、45億円も低く見積もっているのである。また、この02年の上半期の経常収益は865億円だが、今年は49億円も下がっている。公団時代と民営化後の会計システムの違いもあるが、今年の上半期の売り上げの実態は「好調」をアピールするほどではない。
そのため、NAAの財務担当者も「総資産に比して中間期利益は低い」と警戒している。NAAの総資産は9834億円であり利益率は約0・16パーセント。この数値は圧倒的に低いのである。理由は負債が多いからである。
NAAの負債総額は5680億円(有利子)、政府出資金分の1497億円(無利子)を合わせると7130億円である。04年経営計画の営業収益目標1562億円の5倍近くも借金があり、その利払いで営業利益が帳消しになっているのだ。04年度の当期純利益目標は102億円だが、中間純利益の16億円は、その15・7パーセントにしかならない。財務担当者が嘆くのも当然だろう。
「成田はこのままでは沈む」といわれ出したが、中村前空港公団総裁も「中部空港、羽田空港の4本目滑走路などの開港を控え、成田は切迫した状態にある」(12/10毎日新聞千葉版特集『成田シンポ 円卓から10年』から)といっている。借金過多の財務体質の会社が今後より厳しい環境に入ることは確実である。黒野記者会見や会計報告にある「好調さ」アピールの狙いは、07年度株式上場対策なのである。
●(12月11日) 反対同盟 記者会見
反対同盟は顧問弁護団の葉山岳夫弁護士を加えて12月11日、天神峰において記者会見をおこなった。収用委員会再任命に関して、成田空港の事業認定が失効していることを法律的に歴史的経緯をふまえて説明した。その後、反対同盟は毎年恒例の忘年会をおこない、今年の勝利を確認し、来年への英気を養い決意と団結を固めた。
●(12月15日) 成田空港年末年始の利用客推計 0・5パーセント減(12/16読売千葉版)
成田国際空港会社は、年末年始(12月22日―2005年1月10日)の成田空港利用客の推計を発表した。昨年に比べ長期休暇が取りにくい曜日配列の影響で、前年より約0・5パーセント少ない約114万人と見込んでいる。
出発のピークは29日で約4万1600人。到着のピークは1月3日で約4万8000人。
路線別では、長距離の欧州線が落ち込んでおり、韓流ブームを反映して韓国線が好調という。
【本紙の解説】
前年と比べているが、その03〜04年の年末年始の利用者は、12月20日〜1月4日(16日間)集計で約114万5700人となっている(04年1月8日付日誌を参照)。それは、その前年の02〜03年同期より約2パーセント減少している。その理由は、SARS(重症急性呼吸器症候群)、鳥インフルエンザ、イラク戦争などであり、日本人の出国者数が極端に減少した結果である。
04〜05年の予測が12月22日〜2005年1月10日(20日間)集計で114万人である。今年は集計日を4日間も多くしたが、同じ人数予測である。落ち込みの激しかった前年より、さらに落ち込む予想である。
今年は鳥インフルエンザの再流行と報道されているが、旅行動向を左右するほどでもない。SARSは終息宣言もでた。にもかかわらず、前年よりも減少した予測しかでないのは、景気の後退と航空産業需要の傾向的停滞の結果である。欧米便の落ち込みは激しい。かろうじて、急激な落ち込みにならなかったのは韓国ドラマのブームで日本から韓国への旅行者が15・5パーセント増(12/7発表JTBの旅行動向予測)になったからである。
旅行動向としては、国内旅行で近場温泉が人気であり、海外旅行も旅費の安いアジアに集中している。航空産業の需要長期停滞動向の中で民営化された成田空港の07年上場は厳しさを増しているようだ。
●(12月16日) 日韓シャトル増便/羽田−金浦間 首脳会談で合意へ(12/16産経)
17日に鹿児島県指宿市で行われる小泉純一郎首相と盧武鉉大統領との日韓首脳会談で、羽田−金浦空港(ソウル)間の直行便を増便することで合意する見通しとなった。
羽田―金浦空港の直行便は現在、1日に4往復で、搭乗率は平均80パーセント前後に達している。成田国際空港は都心から遠く、韓国の主力国際空港である仁川空港もソウルから離れていることから、韓国側は羽田−金浦空港間の増便を強く要望していた。
具体的な増便数については、韓国側が倍増を求めているが、国土交通省は羽田の発着枠にさほど余裕がないことなどから、事務レベルの調整が続いている。
一方、韓国人への査証(ビザ)免除問題について政府はすでに、来年3月下旬に開幕する「愛・地球博(愛知万博)」の期間中は暫定的に免除する方針を決めているが、その結果を踏まえ恒久化するかどうかを決める意向であることを、首脳会談で韓国側に改めて伝える。
【本紙の解説】
現在、日韓4社(日航、全日空、大韓、アシアナ)で1日4便であり、それを倍増の8便にして各社ダブルデイリー(1日2便)にするか、6便にするかが検討されている。日本政府は羽田の離発着枠を理由に6便に抑える意向だが、航空会社はいまやドル箱路線となった羽田―金浦線のためには、採算に合わない地方路線を減便してでも枠をつくろうとしている。羽田の国際化は急ピッチで進みそうである。
成田空港の国際線で、最も便が多いのは成田―仁川線であり、1日15便、週105便で、週間の座席数は片道ベースで約3万8000席といわれている。この席数は、国内線の羽田からの大阪便、博多便、札幌便に次ぐ席数になる。航空各社は09年羽田拡張以後、韓国路線の大半を羽田に移行する予定である。成田はますます閑散となりそうだ。
●(12月16日) 羽田発着の深夜国際便/千葉県に打診(12/7毎日千葉版、日経、千葉日報)
羽田空港の国際化問題で、新滑走路が完成する09年以降、深夜・早朝に国際定期便を運航するとの打診を国土交通省が千葉県にしていたことが16日、分かった。
堂本暁子知事が県議会に行った報告によると、打診があったのは9日。内容は(1)成田は国際線、羽田は国内線の基幹空港という役割分担は変更しない、(2)成田空港が運用されていない午後11時から午前6時までの間、騒音問題に配慮しながら貨物便も含めた国際定期便を運航、(3)発着回数は全体で40万7000回を超える―など。飛行コースなど具体的な説明はなかったが、千葉県上空を通過する可能性が高い。羽田空港には現在、国際チャーター便が運航しているが、定期便は就航していない。
堂本知事は「深夜・早朝の時間帯の国際線本県上空通過は従前から了解していない。打診内容はあいまいで、日本の航空政策の中での成田と羽田空港や深夜国際定期便の位置付けなど、明確な内容で示すよう話した」という。また、県や成田空港圏自治体連絡協議会への十分な説明と理解を得るよう伝えた。
【本紙の解説】
堂本知事の県議会の報告と国交省の打診にズレがある。09年以降、羽田が国際化し、約3万便の国際定期便を受け入れることについてはすでに堂本知事は了承している。しかし、千葉県議会はこれを認めない。そのために、堂本知事は羽田の4本目の滑走路完成時の飛行コースの問題で抵抗しているのである。とりわけ、夜間飛行について抵抗している。そのため現在でも、千葉県を通過する昼間コースは千葉県にある無線施設の上を通る計器着陸装置による着陸だが、夜間は騒音のために、千葉県上空は通らずに、東京湾沿いの飛行コースで視認方式によっている。
今回の打診は、(1)の「成田は国際線、羽田は国内線の基幹空港という役割分担は変更しない」ということは、争いにはなっていない。アジア便を羽田に持ってきても欧米便は成田であり、基本役割分担の変更にはならないとの解釈。(3)の便数も争いはない。問題は(2)である。「成田空港が運用されていない午後11時から午前6時までの間、国際定期便を運航」となっている。これは字句の理解では、成田空港が運用されている昼間は、国際定期便は羽田に移行しないということになる。しかし、この間の経緯から昼間の羽田空港への近距離国際線移行は決着している。国交省は、成田が基本である欧米便も夜間だけは羽田に移行したいと打診してきたのである。堂本知事は次期知事選に自民党から推薦をうけたいのでペテンを弄したのである。
堂本知事も「深夜・早朝の時間帯の国際線本県上空通過は従前から了解していない」といっている。その通りである。昼間の羽田空港国際化と千葉県通過は了解しているが、夜間は了解していないのである。昼間も了解していないならば、あえて「深夜・早朝の時間帯」は了承していないと限定する必要はない。昼間も含めてまったく了承していないといえるはずだ。また「打診内容はあいまいで」というのは逆で、堂本知事の側が打診内容をあいまいにしたいので、こういっているのである。アジア便だけでなく、夜間は欧米便も含め全面的に受け入れると報告した場合は、千葉県自民党から総スカンをうけ、知事選への自民党推薦はなくなるからである。
●(12月20日) 成田国際空港会社/政府保証債は05年度187億円(12/21朝日、読売、毎日、東京各千葉版)
成田国際空港会社(NAA)は20日、05年度予算の政府保証債で要求していた250億円のうち187億円が認められたと発表した。保証債が充てられる05年度空港機能整備費の総額は、要求時より1億円減らし、624億円(対前年度比4パーセント減)となった。
今年4月に民営化されたNAAは、04年度予算から資金調達の一部として政府保証債を発行し、事業計画をまとめて国土交通相の認可を受けることになっている。
空港機能整備費の内訳は暫定B滑走路(2180メートル)の2500メートル化整備に46億円(同52%減)、第1旅客ターミナルの改修などに406億円(同70%増)などとなっている。
【本紙の解説】
民営化された成田空港会社は、政府予算、財政投融資がなくなった。空港整備費予算など従来、財投分だったものは政府保証債となって銀行などから借り入れるようになった。その額は政府予算として決定される。
今回焦点になっているB滑走路の2500メートル化の整備費は46億円。前年比で52パーセント減だ。今年の整備費は約88億円で03年度は73億円だった。この03年度の73億円はB滑走路整備費が4年ぶりに認められ、「未買収地が解消した場合、すぐに着工できる態勢のため」として計上したのである。しかし、03年度、04年度とも着工できずに05年度は大幅に減少したのである。
未買収地問題が解消する見通しもなく、形だけの予算を減額して残した。
●(12月21日) 成田空港会社が環境報告書発行(12/22読売千葉版)
成田国際空港会社は、環境に優しい「エコ・エアポート」に向けた取り組みをまとめた「環境報告書2004」を発行した。
同社は資源の再利用、省エネなど「循環型の空港づくり」に取り組んでいる。報告書では、これらの施策を写真や図表を多用して説明。民営化や騒音問題対策などについても特集している。約1万5000部を発行し、うち8000部を空港周辺の住民に郵送、残りは希望者に無料配布している。
【本紙の解説】
空港公団は、96年から毎年、「成田空港環境レポート」を発行していた。それを民営化しのたで、「成田国際空港環境報告書2004」と改題されただけである。内容は、電気、水、ゴミ、資材などで成田空港ができるかぎり環境に「優しい運営を」しているかを誇大宣伝している。また、飛行コースの危険性を隠蔽しその「安全性」を謳っている。しかし、今年の特徴は民営化され周辺対策費の削減が叫ばれ、実行されていることがあり、そのいいわけを述べている。民営化されても「エコ・エアポート推進委員会」を設置し、社内の推進体制を整備していく計画だと述べている。しかし、周辺対策費、騒音対策費が圧倒的に削減されていることにはまったく触れていない。
●(12月25日) 成田空港/「北伸案の打診したことない」(12/25東京千葉版)
成田空港の暫定滑走路を現在の2180メートルから本来の計画の2500メートルに延伸する問題で、成田国際空港会社は24日、「国に北伸案を打診したことはない」とする文書のコメントを発表した。
計画は南側に延伸することになっており、同社は現在、南側の未買収地の地権者と用地交渉を続けている。交渉の難航で北伸案への変更を求める意見も出ているが、計画にない北伸案を否定するコメントを出したのは異例だ。北伸案を用地交渉の材料にするような印象を地権者に持たれ、反発を招くのを懸念したためとみられる。
コメントは「地権者との方々との話し合いの状況について、現段階ではまだ申し上げることはできない」「あくまでも(南側に延伸する)本来計画を前提に話し合いを進めているところであり、今後とも誠意を持って全力で取り組む」としている。
【本紙の解説】
24日に朝日新聞千葉版に「用地交渉、硬直続く」「国、北側延伸も視野」という記事が掲載され、その他の新聞社も「NAA、南側延伸断念か、北側延伸を国打診」という記事が出そうになったことにNAAが「打診したことはない」とのコメントを出したのである。東京新聞の記事は「異例のコメント」を出したこと自体が北側延伸の現実性を示唆しているといいたいようだが、事実は違う。北伸案はあくまで「用地交渉の材料」にすぎなかったのだ。それゆえ「地権者に反発された」とたんに、しぼんでしまったのである。
北側延伸案を最初に提案したのは成田空港対策協議会だが、成田市を含む関連団体が猛反発したこともあり、正式に検討されたことは一度もない。南側延伸が不可能な場合は北側延伸もあり得ると公言したのは、公団総裁に就任したばかりの黒野NAA社長だったが、地権者への脅迫のためのブラフだったことは、本紙が繰り返し指摘してきた通りだ。
北側延伸は技術的にもあり得ない。その北側延伸を恫喝材料に使ったことが地権者たちの大反発を買ったことは当然だ。それだけに終わらずに周辺自治体からも抗議されたことで、今回のようなコメントになったのであろう。
●(12月28日) 黒野空港会社社長/「北延伸案、まだ早い」 用地交渉期限延長へ(12/29読売、毎日、産経、東京各千葉版)
成田空港暫定滑走路南側の未買収地の用地交渉期限を年内とするように、北側一雄国土交通相が成田国際空港会社に求めていた問題で、同社の黒野匡彦社長は28日、「1日も早い解決のため、年内に一定方向を出すことを目標にやってきたが、そこまでいかなかった」と述べた。その上で、黒野社長は「現段階で北伸案しかないとするのはまだ早い」と、年明けに予定されている北側国交相への報告で、用地交渉の期限延長を申し入れることを示唆。基本計画での2500メートル化の努力を続ける姿勢を強調した。
また、黒野社長は1年を振り返り「民営化した4月以降、全力で走ってきた。コストダウンなど一定の成果を挙げた」と話した。スマトラ沖地震津波については「数便の欠航と若干のキャンセルがあるが、空港全体には大きな影響はない」との見通しも示した。
【本紙の解説】
黒野空港会社社長は、07年の上場時までに「2500メートル化にメドをつける」としてきたが、その実現の可能性がないことに苦慮している。2003年12月26日の記者会見では、「反対派農家との用地交渉の期限について、何カ月という単位」と明言し、「遅くても来年末までとする」といっていた(03年12月26日付日誌を参照)。その期限が過ぎた時は「北延伸だ」と息巻いていた。
しかし、その期限の04年末までに、北側一雄国交相から11月に「年内をメドに地権者との用地交渉を急ぐよう指示」される始末であった。それに対して北側国交相に逆らって「地権者に納得してもらえるよう空港会社が考えるベストの方法で臨む」(04年11月26日付日誌を参照)と開き直っていた。
期限がきた今回の年末記者会見の趣旨は「交渉期限の継続」であり、「北延伸案はまだ早い」ということになった。黒野社長の03年末と04年末の記者会見の対比は、三里塚闘争のこの1年間の勝利を示している。
北延伸案の現実性があるならば、今すぐにでも決断すべき時期にきている。しかし、10年先、20年先の展望もない本来計画の南延伸にいまだ固執している理由は、技術的に北延伸は不可能だからである。あくまで南延伸のための脅しに使う架空の計画なのだ。北延伸とその「決断の期限」を黒野社長は何度も口走ってきたが、それは地権者への脅しそのものなのである。
●(12月28日) 成田の出国、旅客まばら 津波被害が水をさす(12/29千葉日報)
年末年始を海外で過ごす人たちの出国ラッシュが予想された成田空港は28日午前、旅行客がまばらで目立った混雑はなかった。予約状況ではこの日、約3万9000人が出国する見込だが、空港職員は「スマトラ沖地震の影響かも」と首をひねっている。ピークは29日。
成田国際空港会社の推計では、22日から来年1月10日に成田空港を出発する旅客は約70万人で前年同期比約1・5パーセント減。曜日配列の関係で長期休暇が取りにくいためとみられる。
スマトラ沖地震で大きな被害が出たタイ行きの便は全日空で数十人のキャンセルが出たが、日航のバンコク便はほぼ満席。タイ国際航空も「大きな影響は出ていない」という。
【本紙の解説】
年末年始の海外旅行は、欧米便の激減を韓国、中国、東南アジアの増加が補っている格好であった。しかし、スマトラ沖地震と津波で東南アジアへの旅行は減少している。しかし、被害の甚大さが日をおって大きくなっていることと、「感染症のまん延で犠牲者数が倍増するおそれがある」といわれ、これから旅行者が激減していくことは間違いない。1月4日の国連緊急援助調整官室の発表で犠牲者は約15万人になっている。さらに増え20万人を超えることも予想されている。その上で感染症のまん延が危惧されている。感染症で万単位の犠牲者が出た場合、その影響はSARSの時とは比較にならないほど大きい。膨大な数の犠牲者と感染症の恐怖で観光どころではないはずである。旅行会社各社は、すでに観光客の激減に追い込まれている。
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