SANRIZUKA 日誌 HP版   2003/12/01~31    

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 2003年12月

 

〔週刊『三里塚』編集委員会HP部責任編集〕 


(12月4日) 羽田再拡張に着手へ(12/5東京、千葉日報、12/6朝日千葉版)

 2004年度事業着手を目指している、総額約7000億円の羽田空港再拡張事業について、松沢成文神奈川県知事と中田宏横浜市長、阿部孝夫川崎市長は4日、同県庁内で会談し、国土交通省が求めていた総額約300億円の無利子貸し付けに応じることで大筋合意した。東京都も約1000億円の貸し付けに応じる可能性が強く、来年度の事業スタートがほぼ確実になった。
 多摩川を挟んで空港の対岸にある川崎市とを結ぶ新橋の建設や道路整備など、空港の「神奈川口」づくりの検討を国交省が約束したことを受け、3県市が譲歩した。
 3県市は約300億円の分担額を神奈川県と横浜市が40パーセントずつ、残りの20パーセントを川崎市が負担する方向で調整している。再拡張では、滑走路や誘導路などの本体事業費約7000億円のうち約20パーセントの約1300億円を国に無利子貸し付けするよう国交省が8月、再拡張事業協議会を構成する7都県市に負担を要請していた。しかし、発着枠の拡大で騒音増加が予想される千葉県のほか、経済波及効果が見込めない千葉市や埼玉県については負担要請を撤回していた。

 【本紙の解説】
 国交省は、羽田再拡張において千葉県を完全に無視することを最終的に決定し、その財政的裏付けも確保したようだ。
 羽田再拡張の総事業費は9000億円であり、国交省はその3割にあたる2700億円の負担を東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県などの地元自治体に求めていた。しかし、千葉県の反対に東京都も同調し、国交省の要請は不調に終わっていた。
 そのために、今年8月に国交省は、羽田再拡張事業の一部を民間資金を活用した社会資本整備(PFI)で建設することにし、9000億円と見込まれていた総事業費を7000億円まで圧縮し、自治体負担を1300億円にした(03年8月1日付日誌を参照)。その内訳は、東京都が1000億円、残りの300億円を神奈川県と横浜市、川崎市としたのである。千葉県の反対を押し切るためであった。
 この1300億円について東京都と神奈川県が受け入れることが見込まれたことから、千葉県の要請で進めていた羽田空港から東京上空ルートの検討を「飛ばすことが難しい、千葉県の騒音問題を回避する可能性が高い」といって12月5日に打ち切ったのである(12/6産経千葉版)。
 それに対して、千葉県の堂本知事は、「お金の話の前に騒音問題を共有することが前提だ」と不快感を表明したようだが、国交省がすでに今年8月に千葉県への資金協力を撤回してきたことも知らなかったような談話であった。堂本知事は、この件に関しての国交省と関係自治体との6月協議会で「羽田再開発の協議会開催そのものがおかしい」と発言した。この発言は次の協議会のボイコット宣言として、国交省や他の都県市に受け取られた。そのために、その後、協議会は開催せずに、負担金も1300億円に圧縮し、東京都と神奈川県だけに要請し、千葉県などに対しては撤回していたのである。つまり、羽田再拡張問題から完全に千葉県は外されていたのである。しかし、外されていたことさえ堂本知事は知らなかったようだ。金を出さなければ、拡張事業がスタートしないと思っていたのであろう。

(12月4日) 成田空港訴訟、反対派の敗訴確定 提訴から33年 (12/4全紙夕刊、12/5全紙千葉版、千葉日報)

 新東京国際空港(成田空港)の建設をめぐり、空港反対派の農民らが国を相手に、土地強制収用の事業認定の取り消しを求めた行政訴訟で、最高裁第一小法廷(横尾和子裁判長)は4日、「事業認定や関係する法律は、憲法に違反するとはいえない」として、28人の上告を退ける判決を言い渡した。農民側の敗訴が確定した。反対派と機動隊が衝突して流血の事態を招いた71年の1期工事用地強制収用の法的根拠となった事業認定が、提訴から33年、上告から11年を経て、最終的に追認されたことになる。
 今回の訴訟は、成田空港をめぐって展開された法廷闘争の中でも空港建設の是非を正面から問う中心的なものだった。
 取り消しを求めたのは(1)土地収用法を適用して69年に空港公団による用地全体(1、2期各工事分の計約1065ヘクタール)の取得を認めた事業認定、(2)うち1期分約550ヘクタールの建設事業について「公共用地の取得に関する特別措置法」を適用し、「緊急に施行を要する事業」と認めた70年の特定公共事業認定。
 裁判では、土地を収用して建設を進める公益上の必要性や緊急性があったかどうかや、土地収用法と特措法は適正手続きの保障や財産権を定めた憲法に違反するかどうかなどが争点となった。
 第一小法廷は、事業認定を適法とした二審判決について「正当として是認できる」と判断し、事業認定や土地収用法、特措法は憲法に違反しないと結論づけた。
 公団側が収用裁決の申請を取り下げた一部の原告については「取り消しを求める利益も消滅した」として、請求を棄却した一、二審判決を破棄し、訴え自体が不適法として却下した。
 一審・東京地裁は84年、国の主張を認め、「三里塚地区を新空港の適地とし、空港建設で実現される公共の利益は『農業適地を失う』などの地元の不利益に優越するとした建設相(現国交相)の判断に誤りはない」と判断。土地収用の必要性と1期工事の緊急性を認めて事業認定に違法はない、と結論づけた。
 二審・東京高裁は92年、「長年労苦を重ねて開墾した農業適地を失わせるなど地元住民に与える痛手は決して少ないものでなく、騒音対策も万全とはいいがたく、住民らが被る不利益は大きい」と農民側の主張に一定の理解を示しながら、「わが国の代表的国際空港を建設する必要性と公共の利益ははなはだ大きい」として一審判決を支持し、農民側の訴えを退けた。

 【本紙の解説】
 この判決は二重三重に不当判決である。成田空港建設の是非が争われた裁判であったが、事業認定と特別措置法の根拠になった収用法は合憲、農民の不利益に対しては補償金があり、「正当な補償がされる」として、空港建設の適地判断、農民の生活に関しての是非は判決に含まれていないのである。裁判の価値判断は、「農民の不利益より、公共の利益の方が大きい」ということになっている。しかし、成田空港建設の適地判断は、すでに政府、国交省では大失敗であったという結論がでている。内陸空港は人口過密な日本ではつくるべきでない。だから、その後、「成田の二の舞を演じてはならない」と内陸の国際空港の計画はないのである。
 また、「利益」を貨幣価値に換算できる利益として、判決がなされているが、そこで生活している農民、住民の在り方、そこに無理やりに政府が生活破壊を持ち込んだことを判断すべきだった。この点についても、政府自身が「謝罪」し、「間違い」を認めている。
 つまり、現実の三里塚闘争が「判決」を出していることなのである。事業認定は失効し、政府も取り下げ、すでに「勝訴」しているのである。事業認定が合憲との判決は、時代錯誤の判決である。裁判よりも現実の方が正しく「判決」が書けることを示した「裁判」である。

(12月5日) 東峰神社立ち木伐採訴訟(12/3読売夕刊、12/4朝日、東京、読売各千葉版、12/5読売社会面、千葉日報、日経夕刊、12/6朝日、読売、毎日、東京各社会面、朝日、読売、毎日、産経各千葉版、千葉日報)

 成田空港・暫定滑走路の航空安全確保に支障があるとして滑走路南側の東峰神社の立ち木を新東京国際空港公団が地元に何の事前通告もなく伐採したことをめぐる訴訟で、成田市東峰地区の原告住民は5日に、公団との和解に応じた。記者会見で農民側は、「住民の名誉を取り戻した」「地域の財産を守ることができた」と事実上の勝訴に安堵(あんど)しながらも、「用地交渉の始まりにはならない」と、未解決の用地交渉に入るとみられる公団側をけん制した。
 「神社敷地は地域の共同所有」とする空港反対派農家の主張に、空港公団側が大きく譲歩し、農家側の“勝訴”となった。しかし、農家側は、「空港問題全体とは別」と断言。和解を契機に話し合いの糸口を見出したいとする公団の思惑に、不信感と警戒感を募らせている。
 和解の最終確認が行われた進行協議は予定時間を5分オーバーし、同日午後4時40分に終了。記者会見した農家側の大口昭彦弁護士は「東峰神社を守り抜き、地域の名誉を回復するという主張が十分に達成された。提訴の目的が完全に果たされたと判断し、和解で決着させることにした」と述べた。
 そのうえで、「今回の和解によって公団との信頼関係が回復するとの見方があるが、決してそうしたものではない」と強調。騒音と事故の危険にさらされている東峰地域の現状など、空港問題をめぐる現実は何も変化していないとして、「公団が問題解決につなげようとするなら、その誠意に不信感と警戒心を抱かざるを得ない」と語気を強めた。
 一方、黒野匡彦空港公団総裁は同日夜記者会見。「地区の信仰の対象である神社に対するわれわれの気持ちが至らなかった」と語り、無断伐採したことを陳謝した。
 所有権の移転登記をめぐる手続きでは、過去の土地取得で公団側に非があったことを認めるのかとの記者団の問いには「過去に違法行為があったわけではなく、和解した現時点での総有を認めた。法律論はいろいろあるだろうが、真意として元に戻すという気持ち。ぎりぎりの譲歩だ」との認識を示した。
 また、来春の民営化を控え「アジアの中でわが国の空港整備が遅れているという思いが解決を急がせた」と和解を優先させた事情を語り、「片思いかもしれないが、姿勢を評価してほしい」と用地交渉の進展に期待した。

 【本紙の解説】
 各マスコミはこの和解を、公団が用地交渉のために全面譲歩したという内容で報道している。これは、基本的に間違っている。もし、公団が用地交渉のために和解交渉を進めたいのであれば、すべての民事裁判で和解案を出すべきである。公団は、一坪共有地の強奪のために、共有者を訴えて裁判を起こしている。また、天神峰の反対同盟本部を成田治安法で封鎖処分にしたままである。一方の裁判では和解し、他方では公団自身が農民を土地強奪のために訴えているのである。
 神社裁判で和解に出てきたのはその裁判固有の理由がある。東峰神社裁判では、神社は東峰地区の総有であり、公団が神社林を伐採したことは違法であることが、裁判進行上ではっきりした。このことが公団が和解提案してきた理由である。原告側の全面勝訴、公団の全面敗北が現実化していたのである。
 裁判が長期化する上に、敗訴判決になるなら、自ら敗北を申し出た方がいいという政治判断である。そのために、敗北をぬぐい去るために、「この裁判の和解を用地交渉へつなげたい」といっているだけなのである。原告側は「この裁判和解は空港問題、用地交渉とは無関係」と明言している。そのために、黒野総裁は、「和解を契機に対立の解消を見いだしたい」といっているが、他方で自ら「われわれの片思いかもしれない」といっているのだ。
 黒野総裁と公団が敗北感にうちひしがれている証拠がある。黒野総裁の記者会見でのことである。会見内容も「しどろもどろ」だったらしいが、「骨子」として配布された和解内容は、裁判の本質部分を削っていたのである。公団記者会見の前に東峰地区が会見したことから、和解内容の全文が全社の記者に渡されており、公団のペテンはその場で明らかになった。一部のマスコミはルール違反だと問題にしているようだ。
 以下は、公団が配布した和解内容(骨子)である。

 1.被告は、原告らに対し、東峰神社境内地内の立ち木(神社林)を伐採したことについて、心から謝罪する。2.原告らと被告は、本件土地が東峰部落の総有財産であることを相互に確認し、被告は、原告らに対して所有権移転登記手続きをする。3.東峰部落の総有に属するため、原告ら各自は、登記簿上の表記にかかわらず、持分を有しない。4.被告は、東峰神社の景観を回復するため、東峰神社周辺に立木を植栽するものとし、その費用は被告の負担とする。5.被告は、東峰部落に対し、損害賠償等の支払義務があることを認める。6.原告らと被告は、東峰神社に関する事項について被告が、一定の現状変更等を望むときは、東峰部落に対して協議を申し入れるものとすることを、相互に確認する。
 和解全文(末尾に掲載)を読めば明らかだが、和解内容の本質部分は、東峰神社が建立された「53年以来、原告らで構成される東峰部落の総有財産であることを相互で確認する」ということと、「被告は、本和解成立後直ちに原告らに対して、本件土地についての真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記手続きをする」というところである。これを意図的に削っている。
 これは和解内容の改ざんである。記者の質問に対して黒野総裁は「過去に土地取得で公団側に違法行為があったわけではなく、和解した現時点での総有を認めた」と答えているが、百パーセントウソである。和解合意の文言は、「53年以来の総有を相互に認めている」「真正な登記名義への所有権移転手続きをする」となっている。この部分は、公団が提示した和解案を原告側が強く主張し、書き直させた部分である。
 53年以来東峰部落所有の土地に無断で押し入り、立ち木を伐採し、強奪したのである。和解時点での総有を認めたのではない。53年以来の総有を相互に確認したのである。黒野総裁は和解全文を読み直すべきである。
 三里塚闘争にとってこの東峰裁判の勝利はきわめて大きい。東峰神社裁判だけの勝利ではなく、暫定滑走路の完成による完全開港を未来永劫に阻止する勝利でもある。

  和解条項
1 被告は、原告らに対し、被告が別紙物件目録記載の土地(以下「本件土地」という。)上の東峰神社境内地内の立木(神社林)を伐採したことについて、心から謝罪する。
2 原告らと被告は、本件土地が1953年以来、原告らで構成される東峰部落の総有財産であることを相互に確認する。
3 被告は、本和解成立後直ちに原告らに対して、本件土地について真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記手続をする。登記手続費用は、被告の負担とする。
4 本件土地は、上記東峰部落の総有に属するため、原告ら各自は、登記簿上の表示にかかわらず、持分を有しないことを相互に確認する。
5 原告らと被告は、東峰神社の景観を回復するため、別途協儀のうえ、東峰神社周辺(神社敷地の外側)に立木を植栽するものとし、その費用は被告の負担とする。
6 被告は、東峰部落に対し、損害賠償等として金500万円の支払義務があることを認め、本件和解成立後10日以内に同部落を構成する原告らの代理人にこれを送金して支払う。
7 東峰神社に関する事項について被告が、一定の現状変更等を望むときは、被告は必ず、原告らによって構成されている東峰部落に対して協議を申し入れるものとすることを、原・被告は確認する。
8 原告らと被告の間に、本件につき、本和解条項で定める他、何らの債権債務のないことを相互に確認する。
9 原告らは、その余の請求を放棄する。
10 本件訴訟費用は、当事者各自の負担とする。

(12月11日) 成田空港年末年始利用客/過去最高の見通し(12/12産経、千葉日報)

 年末年始を海外で過ごすため成田空港を利用する旅客数が、過去最高だった前年同期を上回る見込みであることが11日、新東京国際空港公団の推計で分かった。
 公団によると、12月19日から来年1月5日までの18日間に成田空港を利用する旅客は約133万人で、前年同期の約131万人を上回る見込み。
 新型肺炎の影響で落ち込んでいた海外旅行が回復してきたことが最大の要因。路線別では、感染者の出た中国、台湾路線は依然として低迷しているが、ハワイ路線が例年を上回る伸びを見せているという。
 出発のピークは12月28日、帰国のピークは1月4日の両日曜日。

 【本紙の解説】
 年末年始の海外旅行客見込み数が大方の予想を裏切って増加しているようだ。しかしこれは、航空需要の落ち込みにより、激安チケットと激安ツアーが出回っていることによる。路線によって異なるが、おおむね昨年より最安値は数万円も下落し、平均で2~3割の安値安定になっている。また、SARSが再発してないことが増加の理由のひとつである。しかし、SARSが本格化すれば海外旅行客が激減することは間違いない。また、イラク侵略戦争への自衛隊派兵で、日本版9・11が現実化しているが、これが起こった場合も旅行客は極端に落ち込む。航空運輸業は政治情勢、戦争情勢、感染症などの状況に左右されるものであり、安定的に発展する時代は終わり、縮小・再編の時代に入ったと言われている。

(12月12日) テロリスト入国防止へ/「危機管理官」空港・港に配置(12/13朝日)

 イラクなどでテロが頻発しているのを受け、政府は12日、関係省庁の局長らによる「テロ対策関係省庁会議」と「空港、港湾における水際対策幹事会」を首相官邸で開いた。テロリストの入国を防ぐため、内閣官房に「水際危機管理チーム」を設置、主要な空港や港に「危機管理官」を置くなど体制整備を進めることを決めた。
 イラクでは日本外交官殺害事件や日本大使館に向けた発砲など日本を標的にしたテロの疑いがある事件が発生。国際テロ組織アルカイダを名乗る組織は「イラクに自衛隊を派遣すれば東京を攻撃する」との声明を出している。福田官房長官は同日の記者会見で、アルカイダメンバーが入国している可能性について「おそらく、確認された人はいないのではないか」と述べたが、自衛隊派遣を控えて対策強化が必要と判断し、会議を開いた。
 「水際危機管理チーム」は内閣官房と警察庁、入国管理を担当する法務省、税関を所管する財務省、空港・港湾を管理する国土交通省などの課長級で構成。情報交換し、テロリスト入国のおそれがあると判断した場合、空港の手荷物検査やパトロールの人数、回数を増やすなど必要な措置を現場に指示する。

 【本紙の解説】
 日本版9・11に備えて、「主要な空港、港に危機管理官を置く」という対策だが、警備方針としても根本的なところで間違っている。水際で入国を阻止し、ゲリラを未然に防ぐということだが、アルカイダなどのイスラム戦闘組織が得意としているのは、航空機や空港などの航空関連をターゲットとするゲリラ戦である。東京の六本木ヒルズが最大のターゲットと言いはやされているが、成田空港そのものも最大のターゲットのひとつである。そのターゲットの中で水際作戦というのもおかしい。
 94年に、9・11の原型の作戦といわれている「ボジンカ(大爆発の意味)計画」と呼ばれる戦闘が成田空港を舞台にして敢行されている。これは、フィリピン航空機(マニラ発成田行き)を沖縄上空で爆破した作戦である。ボジンカ計画は、予定通りに敢行されていれば、1995年1月に成田、ソウル、台北、香港、バンコク、シンガポールから米国へ向かう米旅客機11機に爆弾を仕掛けるというものであった。この作戦計画が発展し、9・11になったと言われている。
 また、インドのシーク教徒のゲリラ戦が85年に成田を舞台にして起き、6人が死傷している。85年6月に、アイルランド沖でインド航空機を爆破し(329人が死亡)、その1時間前に成田空港でカナダ太平洋航空機の手荷物を爆発させたものである。
 成田は歴史的に空港反対のゲリラ戦のターゲットであるとともに、すでに国際ゲリラのターゲットにもなっている。

(12月12日) 羽田空港/都など1300億円貸し付け、新滑走路、来年度着手へ(12/13朝日、読売、毎日、産経、日経)

 石原伸晃国土交通相は12日の閣議後の記者会見で、4本目の滑走路を整備する羽田空港再拡張事業で、東京、神奈川、横浜、川崎の関係4都県市が国に計1300億円の無利子貸し付けを行うことで合意したと発表した。これにより平成16年度の着工と21年10月の供用開始はほぼ確実になった。今後は来年度予算の財務省原案内示前に国交、財務両相が折衝し、国負担分などを詰める見通しだ。
 この事業は国・地方の負担で新滑走路(7000億円)と民間資金を活用し駐機場など(2000億円)を整備する計画。国交省は当初、総額9000億円の事業費の3割にあたる2700億円を東京、神奈川、埼玉、千葉の地元自治体に負担してもらう方向で検討していたが、自治体側の反発が強いため、1300億円の無利子貸し付けに変更した。それでも千葉県は「首都圏による航空機騒音の共有」にこだわり、結局国交省は千葉、埼玉両県市を「再拡張による経済的メリットが少ない」と無利子貸し付けの対象から外し、四都県市とのみ交渉していた。交渉は神奈川県が要望している、空港と川崎市を結ぷ橋や道路、空港施設を設置する「神奈川口」構想に石原国交相が前向きな姿勢を示したことで合意に達した。負担は都が約1000億円、神奈川県・横浜市・川崎市が各100億円。国交省は16年度当初予算に再拡張事業分として100億円の計上を計画。滑走路設計・施工の入札・発注や環境アセスメントの実施を予定している。東京都の石原慎太郎知事は12日の記者会見で、無利子貸し付けについて「羽田再拡張は首都圏だけでなく、日本全体の再生の端緒を切り開く重要な国家プロジェクトだから、財政事情は厳しいが都も協力を約束した」と述べ、再拡張の早期実現を求めた。また、神奈川県の松沢成文知事は、国交相と3県市の首長らが協議会を作り「神奈川口」構想を実現することに意欲を示した。一方、千葉県の堂本暁子知事は12日「飛行ルートの実現が最優先課題で、それを決めずに条件整備だけを既成事実化することは理解できない」と批判。「羽田空港の整備効果は全国に及ぶため、国の負担と責任で整備すべきだ」としている。

 【本紙の解説】
 すでに先週、このことはふれたが、千葉県堂本知事の意見と立場は、国交省と東京都、神奈川県などに完全に無視された(03年12月4日付日誌を参照)。また、堂本知事のために、首都圏サミットは空中分解したようだ。
 堂本知事の立場は一貫していない。堂本知事は、成田新高速鉄道の国からの資金援助の増額と引き替えに羽田の国際化と再拡張を承認したにもかかわらず、飛行コース問題を盾にして羽田の再拡張に反対を貫こうとしているのだ。そのために、飛行コースと羽田拡張の自治体負担金について首都圏サミットの協議会で検討していたのであるが、それを堂本知事はボイコットした。そのため、国交省は千葉県を資金援助の対象から外し、同時に飛行コースの検討も取りやめたのである。
 それに対して、堂本暁子知事は「首都圏で騒音を共有する飛行ルートの実現が最優先課題。それを決めずに建設推進のための条件整備だけを既成事実化することは理解できない」とのコメントを発表しているが、飛行コースの検討の場をボイコットしたのは自分であることを隠している。
 また、千葉県が「事業費は全額、国が出すべきだ」と主張しているが、そのことを国交省と東京都などが「尊重」し、自治体負担ということでなく、「無利子貸し付け」に変更したのである。「無利子貸し付け」ということは、事実上は負担と変わらないが、会計処理上はあくまで、「事業は国が全額責任」もってやる建前にはなっている。
 堂本知事と千葉県が羽田拡張反対にこれほどまで固執する理由は、成田の完全完成を国に要求していることにある。堂本知事は羽田の騒音を問題にしているが、その数倍、数十倍の成田の騒音はまったく問題にしていないのである。堂本知事と千葉県は最悪の成田空港完成推進主義者である。

(12月13日) 成田物流施設/外資系が国内最大級の物流施設着工へ(12/13千葉日報)

 物流倉庫を建設・運営する外資系企業の「AMBブラックパイン」(松波秀明・在日代表、東京都千代田区)は12日、成田市南三里塚の成田空港南部地域に国内最大級の物流倉庫の建設を決め、来年3月に着工することを明らかにした。事業は敷地面積約14万平方メートルに5棟の倉庫(総床面積約16万平方メートル)を建設する「成田パークプロジェクト(仮称)」。同社が倉庫を建設・運営し、賃貸方式でテナントを募る物流の新しい経営方式。合理化徹底を目指し、賃料を空港内同様施設の半額程度に設定した。また、空港地域で認定された「成田空港特区」を活用し、一層の物流効率化も狙っている。
 成田パークプロジェクトは、成田空港南側の第6ゲートから約3・5キロ、車で5、6分に立地。物流倉庫5棟を3期に分けて建設する計画。総事業費は約200億円。
 来年3月着工の一期工事は、2階建ての「ユニットA(延べ床面積約1万平方メートル)」と一部4階建ての「ユニットB(同5万3600平方メートル)」の2棟を建設。同年12月完成、翌年2月からの運用開始を目指す。
 二期分には2階建て(同6700平方メートル、同1万3700平方メートル)の2棟、三期には一部4階建て(同7万4500平方メートル)を次々と建設し、07年四月には全5棟(同約16万平方メートル)が完成する予定。
 徹底的な合理化を目指し、賃料は1平方メートル当たり約1400円程度に抑制。空港内の同様施設の半額から約3分の1程度の低額に設定し、物流会社の集積を図る。
 同社は成田の施設を皮切りに、東京都、大阪府、愛知県の空港周辺地域への進出も狙い、県内では浦安、市川、船橋市などへの展開も検討。今後およそ2~5年で、国内で約1000億円の資産規模を目指している。
 また、県が申請し国に認定された「国際空港特区」の利点を生かし、民間企業でも可能になった「総合保税地域の設置・運営」を視野に入れる。東京税関に許可されれば、外国貨物の運搬、保管など「保税蔵置場」の機能や、加工、製造など「保税工場」の機能を1カ所に集約できる。納期や輸送コストの縮減も見込めるなどメリットも多い。
 松波在日代表は「今後は物流倉庫の賃貸方式が日本に根付く。世界的には標準的な経営方法だ。立地や安い賃料などの好条件をそろえれば、需要は見込める」と話す。

 【本紙の解説】
 成田空港の貨物取扱量が増加し、それに比して貨物基地が不足していたことはあった。とりわけ保税地域の貨物基地が不足していた。そのために、公団は天浪地区増設、空港南側20ヘクタールを新設している。さらに、千葉県が空港北側に「成田国際物流複合基地事業」(総面積78ヘクタール)のうち、「南側三角地区」(24ヘクタール)の開業が05年に予定されている。将来の需要予測を上回る貨物基地の建設ラッシュといえる。
 しかし、この千葉県物流基地建設の遅れと公団貨物基地の賃料の高さを理由に外国資本が台頭してきたのである。保税倉庫とその品物の加工、配送処理なども同じところでできるのであれば、需要は高まるであろう。一番打撃を受けるのは、北側に千葉県が建設している物流基地であろう。貨物基地の建設ラッシュで「東峰貨物基地構想」は露に消えたようだ。

(12月16日) 石原東京都知事/羽田国際化に意欲(12/17東京)

 東京都の石原慎太郎知事は16日、東京新聞のインタビューに応じ、来年度の着工が決まった羽田空港の再拡張事業について「東南アジア、北京行きを羽田で飛ばしたらいい」などと述べ、同空港の国際化に強い意欲をみせた。
 石原知事は「横田基地から飛行機を飛ばせばいい。国内線も横田で飛んだらみんな御の字だ。そうすることで羽田が空いてくる。それで国際化する」と述べ、横田基地の軍民共用化が実現すれば羽田空港の国際化も進展するとの見方を示した。
 さらに「国内線だって羽田はいっぱい。新しい滑走路をそれに使おうということとなると思うが、国際線もアジア関係を羽田から飛ばす。東南アジア、北京行きを羽田で飛ばしたらいい」と述べた。
 また、横田基地の軍民共用化については「(道筋は)見えてきた。小泉純一郎首相が言ってくれた。外務省に話をすると時間がかかるから」などと述べ、実現に自信を示した。「やっと滑りだして、都と関係省庁の連絡会ができた」と述べた。

【本紙の解説】
 羽田空港の再拡張はすでに本格的に動き出し、09年10月供用開始と決まっている。再国際空港化という面では、新滑走路の供用開始を待たずに、現行のグアム、サイパン、韓国線のみならず、中国線の運航にまで着手しようとしている。
 しかし、ここで国交省として問題が出てきた。09年でアジア便の大半が羽田に移行すると、民営化後の成田が赤字に転落してしまうことである。公団・黒野総裁も、この点が民営化の最大の悩みだと漏らしている。
 国交省としても、成田の赤字転落は好ましくないので、航空会社への「行政指導」を強め、成田と羽田のバランスと取ろうとしている。羽田の国際化は進めるが、成田が赤字にならないレベルでの国際化という考えだ。
 ここで2つの問題が生じる。羽田が再拡張され離発着枠が増大しているにも関わらず、各航空会社の運航便を「自由競争」が建前の中でコントロールできるかという問題である。もう一つは、国交省の行政指導に成田空港株式会社の経営が左右されることになり、民営化されたにもかかわらず、成田空港は国交省への一層の隷属化が進むことである。
 石原都知事は、横田の軍民共用化で威勢のいいことを打ち上げているが、米軍はいまのところ横田の軍民共用化までは考えていない。むしろ日本の民間空域と民間空港の米軍使用を積極的に追求している。朝鮮侵略戦争が開始された場合、日本周辺の空域はすべて軍事空域として米軍が一元管理するということである。
 そのために、平時で米軍機が使用しない時にかぎり、米軍空域を日本の民間機が通過することを許可しようとの検討が始まっているのだ。戦時はすべての空域を米軍が一元管理し、その代わり平時は、米軍空域の空き時間を日本の民間機にも提供しようというわけだ。その一環として、一部の米軍飛行場の民間機使用も検討されているのである。
 三沢空港がその一例である。三沢では75年に民間航空の運航が再開された。現在、在日米軍、航空自衛隊、民間航空の三者が共同使用している唯一の飛行場である。そして運航などの空港管理は米空軍、航空管制は、航空自衛隊がやっている。このように、米軍は空域も民間空港も独占的に軍事化したいという動機から、「横田の軍民共用化」の交渉を受け入れているのである。

(12月16日) 羽田空港再拡張 国交省説明に、千葉県会全会派が反発(全紙の千葉版、千葉日報)

 羽田空港に4本目の滑走路を建設する再拡張事業について、騒音問題を理由に千葉県が異議を唱えていることから、国土交通省の大久保仁管理課長が16日、県議会全員協議会で経緯などを説明、理解を求めた。自民、民主など6会派はいずれも「千葉の合意なしに事業着手を当然視するような国交省の姿勢に不信を抱いている」などとして、現状での事業化に反対を訴えた。
 大久保課長は「羽田空港の発着容量はすでに満杯で、増便に対応できない」と述べ、「国内線の基幹空港として再拡張事業を進めると共に、国際化も進めたい」と構想を語った。
 騒音問題について「千葉の要請を踏まえて、騒音を軽減するような飛行ルートを検討している」と理解を求めた。事業費の一部は、東京、神奈川など4都県市から1300億円の無利子貸し付けを受けると説明した。
 これに対し自民の花沢三郎県議は「堂本知事が再三騒音の押しつけ反対を訴えているのに、国交省からの回答がない。泣きを見るのは千葉県民だけということがないよう、訴えを真剣にとらえて」と要求。民主の田中明県議も「国策なのに近隣都県市に負担金を求めるのはおかしい」と訴えた。
 ほかにも「羽田空港が国際化すれば成田空港はどうなるのか」「騒音被害についての資料を何も持たずに千葉に説明に来るとはどういうことか」など国の姿勢をただす質問が相次いだ。各会派と堂本知事が「国対県」の構図の中で共同歩調を取って論陣を張った。
 協議会後、堂本知事は「議員がそれぞれの言葉で直接意見を訴えていた。国も議会側も理解が深まったと思う」と話した。大久保課長は、県側が要求している飛行ルートの提示については、「なるべく早く示したい」とだけ述べた。
 協議会での説明は、来年度の事業化着手が決定したことを受け、堂本知事が国交省に依頼した。協議会が、政策協議を目的に開催されるのは異例という。

【本紙の解説】
 千葉県議会全員協議会への国交省の説明が担当課長の大久保仁管理課長というのもなめられたものである。本来ならば、航空局長クラスが出向き、説明すべき性格の問題である。またその説明も振るっている。羽田拡張の必要性だけを唱え、最後には羽田の国際化の決意まで述べている。千葉県議会が要望している飛行コースは提示もされなかった。千葉県が羽田の拡張に反対する本当の理由は、成田の地盤沈下であるが、その点の説明もまったくなかった。
 このような「異例」の全員協議会がなぜ開かれたのか。それは、堂本知事が羽田再拡張の経緯を説明すると、知事批判が吹き上がることを懸念し、知事が国交省に説明を依頼したのである。それは協議会終了後、堂本知事だけが「国交省、県議の双方が理解を深めるために意義があった」と積極的に評価している点からもうかがえる。
 自民党千葉県連の幹部が「来年度予算の最終調整の段階では遅い。単なる『ガス抜き』になりはしないか」と心配しているが、その通りである。まさにこの協議会は、国交省と堂本知事の合作による千葉県議会に対する「ガス抜き」そのものであった。

(12月16日) 成田入国/外国人審査時間短縮へ(12/17東京)

 国土交通省と法務省は16日、成田空港での外国人に対する入国審査の待ち時間を短くする方針を決めた。観光担当相を兼ねる石原伸晃国交相が同日の閣議後会見で「早期に是正する」と明らかにした。法務省は待ち時間の表示板を設けたり、外国人が多数到着した時は日本人の審査担当者を振り向けたりするなどの改善に乗り出す。
 法務省の1月の調査では、日本人の待ち時間が最長13分なのに対し、外国人は33分と3倍近くで、平均待ち時間の差は4倍に達した。今月6、7日の調査では外国人の待ち時間は最長44分だった。
 政府は2010年までに現在年間520万人の外国人観光客を倍増させる「ビジットージャパン・キャンペーン」を展開中。成田空港では年問325万人の外国人が入国しており、キャンペーン促進のため、国交省と法務省は出入国審査の迅速化を進める。

【本紙の解説】
 観光客の呼び込みのキャンペーンの一環だが、昨今の日本版9・11に対する警戒や「成田空港での水際作戦」と逆行するものである。審査担当官を増加すれば効率は上がるが、法務省入国管理局も経費削減のため、審査官は増やさず効率化を高めるというものであり、かなり無理がある政策である。そう簡単に是正はできないだろう。是正はイコール、入国審査自体の手抜きと、ずさん化になることは明らかである。「水際作戦」は失敗することになるだろう。

(12月17日) 空港関係者 新型肺炎に警戒強める (12/18読売千葉版)

 台湾で新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SARS)患者が見つかったことで、航空会社など成田空港関係者は17日、感染拡大に対する警戒感を強めた。
 感染したのは、台湾のSARS研究者。関係者の多くは「研究所内での感染であり、一般の人へ感染が広がったわけではない」と冷静に受け止めているが、冬休みの旅行シーズンを控える航空会社などは「今後の動向を注意深く見守る」としながらも、「騒ぎが大きくなるのが一番心配」と書き入れ時への影響に気をもんでいる。感染が広がった場合に、機内の消毒作業がすぐにできるよう準備を整える方針だ。
 また、SARS患者を水際で発見し、国内流入を防ぐ厚生労働省成田空港検疫所も「研究所は隔離された空間で、感染範囲は限定的」とコメント。ただ、「今年前半のように再発する素地は残っている。いよいよ、感染拡大が懸念される季節に入った」と気を引き締めていた。

【本紙の解説】
 この感染はSARS研究者の感染であり、一般感染ではない。しかし、冬の到来で気候が下がり乾燥したことでSARS菌が勢いを増し、人に感染できるようになったと言うことだ。研究者の感染だからと高を括るとひどい目にあうだろう。
 成田空港の正月の旅行客も昨年並みになろうとしているが、このSARS情勢次第で激減することにもなる。

(12月18日) 空港設置認可取り消し訴訟/敗訴確定(12/19千葉日報)

 成田空港の建設に反対する農民ら8人が、国の空港設置認可取り消しなどを求めた訴訟で、最高裁第一小法廷(横尾和子裁判長)は18日、農民側の上告を退ける決定をした。提訴から36年8力月ぶりに敗訴が確定した。
 1967年1月、運輸省(当賄)が新東京国際空港公団に設置工事実施計画を認可したことに対し、同年4月に農民らが「騒音被害が予想されるほか用地取得も確実ではない。認可は航空法違反」として提訴した。
 東京地裁は27年近くたった94年1月に請求を退け、東京高裁も昨年1月港建設には高度の公共性があり、利益侵害の程度が高まるのはやむを得ない。国を挙げての土地の補償や騒音対策実施が決まっている」と、認可を適法と判断していた。
 成田空港をめぐっては、設置認可後の事業認定取り消しを求めた訴訟も今月4日に最高裁で農民側の上告を退ける判決が言い渡され、敗訴が確定している。

【本紙の解説】

 三里塚が実力闘争的発展を遂げる前の裁判であり、三里塚闘争が行った最初の民事裁判である。事業認定取り消し訴訟の時もそうだが(03年12月4日付日誌を参照)、司法が現実を反映していないことの例証にもなる裁判であり判決である。この裁判の争点のひとつに「用地取得も確実ではない」ということがある。これこそ、現実が完全に示している。いまだ、用地取得が出来ていなく、暫定開港状態が続いているのである。むしろ、そのために、暫定滑走路が2180メートルということが成田空港の命取りになりかねないものになっている。ジャンボ機が飛ばないことで、アジア便が羽田に移行すれば、成田は大赤字に転落するのである。67年段階で「用地取得も確実でない」という争点を加えたことは三里塚闘争の発展を見据えた反対同盟と弁護団の卓越した主張である。
 最大の焦点であった「騒音被害が予想される」ということも、運輸省、国交省は「内陸空港は国際空港に適さない」「成田の二の舞だけは演じたくない」ということを公式にも非公式にも表明している。内陸の成田は空港適地ではなかったことは、歴史的にも現実的にもはっきりしている。すでに現実が「判決」を下していることなのである。その現実的「判決」と異なる「農民敗訴」という「判決」は、時代錯誤そのものである。また、すでに空港としては、完成せずに老齢期むかえた成田空港の設置をめぐる判決をいまごろ出してどうなるものか。反対闘争にも何らの影響もない。判決よりも闘争的正義が明らかになるだけである。

(12月20日) 来年度予算・財務省原案内示/成田空港財特法5年延長

 04年度政府予算の財務省原案が20日、内示され、成田空港をめぐる財政上の特別措置法の延長や空港整備費などの内示があった。
 成田空港周辺の2市6町で行われている県道整備など9事業について、原案で来年3月末に期限切れとなる「新東京国際空港周辺整備のための国の財政上特別措置に関する法律(成田財特法)」の5年間の延長が認められた。堂本暁子千葉県知事は「県や市町村に不可欠な制度。引き続いて地域振興を推進したい」とコメントを出した。

【本紙の解説】
 成田財特法(新東京国際空港周辺整備のための財政上の特別措置法)とは、成田空港建設の見返りとして周辺自治体の事業などに補助金が出る法律である。69年度から10年間の期限の時限立法として制定され、その後79年、89年と2度も延長された。その30年間で4905億円が投入されている。それで打ち切りの予定であったが、暫定滑走路の工事開始のために、99年度から03度までの5年間の延長が決まった。これ以上の再延長はないとの確認によって、いままで10年間の期限であったものを5年間として延長された。03年度で成田財特法はなくなる予定であった。
 成田財特法は三里塚闘争の発展の中で、騒音対策協議会や周辺自治体を空港推進派に取り込み、反対派を地域から孤立させるために使われてきた。30年間で約5000億円という地方空港が建設できるほどの買収費用を投入したのである。その後の99年からの統計は明らかではないが、この約5年間でも2000億円近い額が使われている。総計で約7000億円である。成田空港の総事業費が約1兆5000億円でる。その半分ほどの額が周辺自治体の事業援助、農業振興などの名目で買収費として投入されてきた。成田空港建設の本質を示す数字のひとつである。
 03年度で打ち切り予定が延長になった理由は2つある。成田空港が民営化され、周辺対策費が激減することに対応したものである(03年8月27日付日誌を参照)。民営化した成田空港会社は「共生費」を段階的に減額していく。そのカバーを国が成田財特で行うというものである。もう一つの狙いは、羽田の再延長計画と国際化に反対する千葉県への対策で延長されたものである。千葉県が総務省、国土交通省に提出した「平成16年度国の施策・予算に対する重点提案・要望」の最初の項目が「成田空港の機能充実と周辺地域の整備促進」であり、その冒頭が「成田財特法の期限延長」である。この千葉県の要望をのむことで羽田再拡張反対の矛先を鈍らせるという思惑が成田財特の延長になったのである。

(12月24日) 公団/未買収地1.36ヘクタール取得(12/25朝日、読売、日経、産経の各全国版、全紙の千葉版と千葉日報)

 新東京国際空港公団は24日、成田空港用地などの未買収地約1.36ヘクタールを買収し、所有権移転登記を申請したことを明らかにした。大半は暫定滑走路の誘導路が蛇行する原因になった未買収地だが、現在も空港反対派が農地などとして使用している。公団は今後、反対派に土地の明け渡しなどを求め、誘導路の直線化を実現したい考えだが、反対派側は拒否する構えを見せている。
 公団が今回取得した土地は、成田市天神峰の暫定滑走路誘導路西側の農地約1.33ヘクタールや、芝山町岩山のA滑走路南側の航空保安用地にある反対派が使用していたとみられる団結小屋の敷地など。
 このうち、男性地権者2人が所有していた農地は、公団が暫定滑走路の供用開始までに買収できず、これを避けてつくった誘導路も飛行機同士のすれ違いさえ困難な蛇行を余儀なくされた。
 この農地は、現在も反対派農家が借りて使用しているが、公団の買収で今後の賃借関係は公団と反対派農家との間に継承される。
 公団側は反対派男性や団結小屋を使用していたとみられる三里塚・芝山空港反対同盟北原派の北原鉱治事務局長に、所有権が公団に移ることを伝え、賃借関係の解消と明け渡しを求める方針。
 公団側は同日、空港内の会見で「所有権を取得したからといっても、強制的な手続きを取るわけではない。あくまでも話し合いで協力を求めたい」とした。この農地を借りている反対派農家の男性は「土地を明け渡すつもりはない。名義が公団になっても何も変わらない」と話している。北原事務局長も「公団の要求に応じるつもりはない」としている。

【本紙の解説】
 所有権移転登記を提出したのは、天神峰の市東孝雄さんが耕作している畑2カ所、天神峰現闘本部、岩山にある野戦病院、蜂起派が生活している岩山団結小屋の計5カ所である。市東さんの畑の地主は藤崎政吉と岩沢和行である。孝雄さんのおじいさんの代から、つまり、戦前から耕作してきた畑である。耕作権が確立している。土地所有者の名義が誰であろうとも、耕作権は保証されているのである。
 現闘本部の土地は登記上、かつての反対同盟副委員長の石橋政次のままであった。ここは、反対同盟が地上権を持っている。野戦病院と岩山団結小屋は居住権がある。すべて、実際の土地売買は数年前にすんでおり、公団が事実上所有していたのである。公団はこの名義変更で、暫定滑走路の「逆くの字」が解消するかのようなキャンペーンを行っているが、そんなことはありえない。公団自身も簡単にいくとはまったく思っていない。浅子直樹・用地部長は「借地権があり、何年かかっても粘り強く説得するしかない」と話しているのである。耕作権であり、耕作する意志があるかぎり、空港建設に使うことはできない。
 野戦病院も岩山団結小屋も居住権があり、人が居住している限り、撤去は絶対にできないのである。
 土地登記の変更手続きをしても、実際には現状変更できないにもかかわらず、暫定滑走路の「逆くの字解消へ」というキャンペーンをなぜ行うのか。それは、東峰神社裁判の完敗で、成田空港の完全完成は不可能ということが満天下に明らかになった。民営化のために、それを打ち消すことが狙いなのであろう。
 反対同盟は27日土曜日に天神峰で抗議の集会とデモを行うことを決定した。

(12月25日) SARS判定2時間で 成田空港 (12/26朝日千葉版)

 新型肺炎SARSに感染しているかどうかを短時間で見わける簡易キットが25日、成田空港に配備された。これまでの判定方法では、結果がでるまでに数日かかっていたが、簡易キットなら約2時間で精度の高い判定ができるという。
 この日、同空港で判定の手順が紹介された。まず、成田空港検疫所の職員が人工的に作ったSARSコロナウイルスの疑似遺伝子を、試薬の入ったキットに混ぜ、判定機の中に入れた。試薬の色が白く変わっていき、紫外線を当てると、緑色の蛍光色を発した。「これがSARSの疑いが強いという反応です」
 成田空港には20セットの簡易キットと判定機、パソコンが配備された。判定機械とパソコンで200万円、キットは1セット12万円で48人分の検査ができる。
 簡易キットの対象は、(1)過去10日以内にSARS流行地域に滞在したことがある(2)38度以上の発熱(3)呼吸困難などの症状がある--などの条件が重なった人。便やのどの粘膜から採取した検体から、SARSコロナウイルスの遺伝子を抽出する作業をし、0.02ミリリットルの試薬の入った透明のキットに混ぜ、判定機に入れる。
 SARSを判定する場合、早期発見、早期の隔離、患者と接触した人の健康監視の3点が最も重要という。簡易キットの一番の効果は迅速に診断できることだ。簡易キットは成田空港を含め、全国13カ所の空港や港湾などの検疫機関に配置された。

【本紙の解説】
 SARSが再流行したら、航空、旅行業界と空港はその瞬間に需要は半減すると言われている中で、成田空港もその対策に追われている。この検査の簡易キットは便利のようであるが、SARSに感染しているかどうかの最終判断はできない。あくまでインフルエンザ感染かSARS感染かどうかの第一次振り分けができるだけである。これで、発熱しているインフルエンザ感染の人をすべてSARSとして扱う必要がなくなるという合理化はできる。
 しかし、SARS感染の怖さは、感染して10日前後発熱はしないが、人に感染はさせるということにある。今年の春にSARSの流行地から帰国した人に10日間、自宅待機という業務命令を出した企業が多かったのである。

(12月26日) 公団総裁 用地交渉不調なら北側延伸を明言(12/27読売、毎日、東京、産経、各千葉版、千葉日報)

 空港公団の黒野匡彦総裁は26日の会見で、平行滑走路の2500メートル化に向けた成田市東峰地区の反対派農家との用地交渉の期限について、「何カ月という単位」と明言し、遅くても来年末までとする考えを示した。また、用地交渉が不調なら暫定平行滑走路の北側延伸に踏み切る可能性にも言及した。
 黒野総裁は、東アジアで大規模空港が整備されていることを挙げ、「日本の表玄関の成田がいつまでも中途半端な状態でいるのは決して許されない」と指摘。用地交渉期限について「何年なんて言っている余裕はない。月単位で(判断する)」と明言した。また「北側延伸はあり得る。農家に『脅しじゃないか』と言われるかも知れないが、東峰がダメなら、もう手がないというのでは無責任」との考えを示した。

【本紙の解説】
 公団と黒野総裁は、今年最後の定例記者会見で、事実上の暫定滑走路の「北延伸」を宣言した。用地交渉の見通しに「確信はない」と述べ、その期限は「数カ月」として区切った。つまり、用地交渉の失敗が確定した場合、そのまま「用地交渉が不調で、もう手がないでは無責任で許されない」として、「北延伸」で暫定滑走路を2500メートルにすると言い放ったのである。
 民営化とともに、北延伸攻撃とその工事が始まることが明らかになった。三里塚闘争のあらたな決戦が始まったのである。
 しかし「北延伸」は追いつめられた公団の最後のあがきだ。工事自体も使用中の滑走路の先に巨大クレーンを立てての工事で夜間工事中心となる。また滑走路を2500メートル化しても、誘導路が今の幅ではジャンボ機は通過できず滑走路に入れない。無理に使えば、また事故が発生することになる。
 羽田の再国際化で、アジア便が成田から羽田に移行することに対応して、見せかけだけでも2500メートル滑走路にするという工事である。このようなデタラメな工事のために農民の生活を破壊することを絶対に許してはならない。

(12月26日) 空自先遣隊第1陣が成田空港から出発(全紙)

 イラク復興支援特別措置法に基づき、復興支援物資などを空輸する航空自衛隊の先遣隊第1陣が26日、成田発の民間航空機でクウェート、カタールに出発した。
 自衛隊の派遣は特措法の成立から5カ月を経て初めて実現し、自衛隊の海外任務は新たな段階を迎えた。先遣隊は米軍との調整などを行い、来年1月にC130輸送機などで現地入りする本隊を待ち受ける。陸自も1月中旬にはイラク南部のサマワに先遣隊を派遣、海自も2月下旬には輸送艦を出す予定だ。
 出発したのは、空自の先遣隊48人のうちの約20人。テロを警戒して自衛隊員とわからない私服姿で、クウェート組とカタール組の2つに分かれ、昼前後に外国の民間航空機で出発した。残る二十数人も今後、数班に分かれて現地に向かう。
 空自は安全に配慮して派遣日程を公表せず、現地で活動の拠点となるクウェート軍基地やカタールの米軍司令部の外では私服で通すことにしている。
 先遣隊を率いてカタールに向かう宮川正・1等空佐は、出発前、報道陣に「肩ひじを張らず、みなで一丸となってやっていきたい」と話した。
 空自によると、先遣隊はクウェート軍基地内に宿営地を設け、イラクのバグダッド、バスラ両国際空港などへの飛行ルート、空港周辺の治安状況などの情報を収集する。カタールでは、空輸物資などについて米軍司令部と任務を調整する。
 政府が計画している空自の派遣部隊は計276人。来年1月末までにC130輸送機3機とともにクウェート入りし、飛行ルート、航空管制の調整、各空港での離着陸訓練などを行ったうえ、2月中旬以降、輸送機によるイラク国民や米英軍の生活関連物資などの輸送に当たる。
 政府は、今月9日にイラク復興支援の基本計画を決定。石破防衛長官は18日に実施要項を決め、19日、陸海空の3自衛隊に派遣準備命令、空自先遣隊に派遣命令を出した。
 これを受けて空自は「イラク復興支援派遣輸送航空隊」を編成し、24日、小牧基地で小泉首相らが出席して部隊編成完結式を行った。

【本紙の解説】
 成田空港から26日、27日、28日と3日間にわたって、空自先遣隊が私服で出発した。現代戦争では民間空港はすべて軍事空港に転用される。巨大空港で、運航便が多いところが最大の軍事拠点になる。兵員と物資を迅速に戦場に送り込むためには、拠点国際空港と民間航空機でなければ用を足さなくなっているのである。民間空港と民間機が軍事化するというレベルではなく、現代戦争の最も重要な構成要素になっているのである。民間機の運航状態そのものが軍事力なのである。
 日帝の海外派兵が本格的に始まったことにより、成田空港が軍事空港であることはより明らかになるであろう。日米帝の朝鮮侵略戦争が始まれば、成田は日本で最重要の兵站拠点であり、軍事的起点になるのである。
 三里塚闘争は、闘争当初から「三里塚軍事空港反対」を「農地強奪反対」と並ぶ2大スローガンとして闘ってきた。日帝の海外侵略が本格的に始まり、朝鮮侵略戦争が切迫する情勢で、三里塚闘争のあらたな発展が開始されようとしている。

(12月27日) 反対同盟/天神峰で現地闘争に決起

 12月24日に公団が「未買収地所得、土地の明け渡しなどを請求」を公言、暫定滑走路誘導路の直線化攻撃を始めたことに対し、反対同盟は27日、直ちに反撃の闘いに決起し、集会・デモおよび記者会見を行なった。この闘争は同時に、成田空港から航空自衛隊のイラク派兵の先遣隊が出発したことに抗議するものとして闘いぬかれた。
 以下は反対同盟の「弾劾声明」である。闘争の詳細は本紙に掲載予定。

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◆弾劾声明  三里塚芝山連合空港反対同盟

 12月24日空港公団は、天神峰3カ所と岩山2カ所の土地買収を公表し、「へ」の字に曲がった誘導路を直線化すると表明した。わが反対同盟は満身の怒りをこめてこの暴挙を弾劾する。
 5カ所の土地はいずれもはるか以前に条件移転した者たちの所有地である。しかし、このうち天神峰の2カ所は反対同盟員が大正期以来三代にわたって賃貸借し営々と耕し続けた農地である。他の3カ所は天神峰現闘本部と三里塚野戦病院、岩山団結小屋の敷地である。反対同盟は天神峰現闘本部に地上権を保有している。三里塚野戦病院と岩山団結小屋には数十年にわたって住人が生活している。
 今回の土地買収にあたり、空港公団は耕作者や居住者、建物所有者など関係人に一言の断りもなく、秘密裏に買収と所有権移転登記手続きを済ませ、一方的に会見発表した。しかも事後の通告書で「金銭補償」や「代替地」による貸借の解約を要求し、居住者にはその立ち退きを強要するなど言語道断である。
 これが果たして、「過去の謝罪」や「誠意ある話し合いによる空港建設」などと言えるものなのか。空港公団は、暫定滑走路の開港のために東峰神社の神社林を盗伐したが、これも伐採前日に秘密裏に違法な所有権移転登記を行い強行している。今回の土地買収もまた、この暴挙と同様、権利侵害と住民無視に貫かれている。こうした空港公団の暴挙の積み重ねの上に、欠陥だらけでジャンボ機も飛べない暫定滑走路の現実があることを、反対同盟は世の人々に強く訴えるものである。
 だが、空港公団がこれらの土地を買収したからといって、「へ」の字に曲がった誘導路が直線になることはない。反対同盟はこの暴挙と闘い農地と権利を守りぬく。土地収用のための事業認定は、空港反対闘争の力によってすでに失効し、おいつめられた公団は自ら収用裁決申請を取り下げた。空港公団による用地の完全取得は不可能である。
 来年四月の成田空港民営化を前に、空港公団はおいつめられあがいている。国交省と空港公団は、07年株式上場までに2500メートル平行滑走路を完成させると表明し、用地問題を解決すると宣言した。だが、東峰神社裁判の原告勝利の決着は、平行滑走路の中央部に買収できない土地を残して2500メートルの当初計画に断を下した。今回の土地買収の暴挙では暫定滑走路の欠陥が固定化し、公団はいよいよ破たんした滑走路をかかえて民営化に踏み切らざるをえなくなったのである。暫定滑走路の重大欠陥である「へ」の字の誘導路が直線化にむけて前進したかのようにデマ宣伝するのはこのためである。わが反対同盟は、暫定滑走路の北側延伸攻撃を全国の支援者とともに実力で粉砕する。
 小泉内閣は昨日、成田空港から民間機を使って、航空自衛隊の先遣隊をイラクに向けて出発させた。戦地に出兵する以上、この移動は明確に軍事行動である。成田空港が軍事使用されている。反対同盟は成田空港をイラク占領のための出撃基地とすることを許さない。
反対同盟は全世界の人々と連帯して戦争反対を訴えるとともに、暫定滑走路の延長をねらう成田民営化と闘い空港廃港へと邁進する決意である。

2003年12月27日

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