SANRIZUKA 日誌 HP版   2002/10/01~31    

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 2002年10月

 

〔週刊『三里塚』編集委員会HP部責任編集〕 

(10月1日) 扇国交相/北側延伸は時期尚早(10/2千葉日報)

 扇千景国土交通相は1日、羽田空港の再拡張事業について「国際3空港(成田、中部、関西)の上下分離と同じで、滑走路など下の整備は国が責任をもってやり、最大限努力する。ただ、整備を早くするため地方にお願いするというのはお互いさま」と述べ、早期整備のためには東京都など地元に負担を求める考えをあらためて示した。
 成田空港の暫定滑走路の北側延伸には「まだそこまでいっていない。公団と(土地を売らない)反対の人の話し合いを見守っていきたい」と述べ、延伸の検討は時期尚早とした。

【本誌の解説】
 扇国交相は、国交省が9月27日に「上下分離」を白紙撤回したことも知らないようだ。 羽田が「公団方式」「第3セクター方式」でもなく百パーセント政府管理の空港であることも理解していない。羽田空港は整備・管理・運用とも国交省直轄の国際空港なのである。東京都や周辺自治体に負担援助を求めるならば、この間の空港整備の失敗と破綻について、まず弁明するのが筋というものだろう。
 国交省航空局は「過大需要データに基づき、過大な空港整備」を行ってきた失敗を認めている。間違った理解で「国が責任をもつ」といわれても、周辺自治体も困惑するだけだ。東京都をはじめ神奈川、千葉なども財政難であえいでいる状況だ。国の失政の責任を地方がとらされてはたまらないだろう。
 しかし、それ以上の無責任は、暫定滑走路の「北側延伸の時期尚早」発言である。黒野匡彦公団総裁が就任する際に、「いかなる手段を使っても暫定滑走路を2500メートルにせよ」と申しつけたのは扇国交相その人だ。ちょっと評判が悪いとなれば動揺する。言葉の強さとは裏腹の扇国交相の性格でもある。
 しかし、これで暫定滑走路の北側延伸は完全になくなったようだ。黒野総裁の「両にらみ」論、つまり「条件交渉に応じなければ北側延長」という空論による地権者脅しと切り崩しは、千葉県、周辺自治体、騒対協など空港建設推進勢力を“敵”に回しただけで終わったようだ。

(10月1日) 台風21号/市東さん宅のカシの巨木倒れる

 台風21号は、反対同盟に甚大な被害をもたらした。萩原進さんをはじめとしてこの周辺のビニールハウスのほとんどが損壊した。葉物は倒れぼろぼろになっており、里芋の葉がすだれ状、サツマイモの葉もなくなっている。芋類の被害はこれから明らかになる。
 最大の被害は市東さん宅である。庭にあるカシの巨木が根本から倒れた。作業場の一部も損壊、畑のビニールハウスは吹き飛んだ。近くに駐車してあった反対同盟の宣伝カーはかろうじて無事であった。
 また、市東さんの裏庭に建設した反対同盟の大看板「down with narita airport」のポールの一部が曲がってしまった。ベニヤ板は無事だった。
 翌日2日に早朝5時から現地支援連の人たちが市東さん宅に結集し、カシの木の片づけ作業をはじめとした復旧作業がはじまった。東京からも6人の応援が駆けつけた。しかし、カシの木そのものの撤去は1日では終わらなかった。また、反対同盟の大看板補修も後日となった。
 空港も午後6時までに11便が欠航、13便が出発や到着を翌日にずらすなどダイヤが大幅に乱れたようだ。しかし、市東さん宅が甚大な被害になったのは空港建設の結果である。空港が出来る前はそれぞれの家が防風林をもっており、また「風の通り道」には竹林を植えるのが習いであった。滑走路南端の誘導路のところは天神峰の共同の竹林であった。これがないため、平坦な空港から強風が直接、市東さん宅に吹き付け、カシの大木が倒れたのである。
 幸い人命の被害や母屋の損壊、車の破壊にはならなかった、一歩間違えばその危険もあった。
 空港のフェンスはジェット噴射による排ガス問題のためだけでなく、伐採した天神峰共同竹林の代わりも果たすべきものである。

(10月3日) 成田市久住地区住民/北側延伸反対の申し入れ(10/4読売千葉版、千葉日報)

 成田空港・暫定平行滑走路の北側にあたる成田市久住地区の区長会(松田正徳会長)と空港対策委員会(松島文哉会長)は3日、暫定滑走路の北側延伸に反対する申し入れ書と、同地区の住民ら2395人分の署名を空港公団の黒野匡彦総裁に提出した。
 「新旧総裁から北側延伸発言があり、住民は大変困惑し、不信感を募らせている」と訴え、「延伸の検討を即刻取りやめることを地区の総意として申し入れる」としている。
 申し入れ書を受け取った黒野総裁は、「当分は東峰地区の用地間題解決に全力を尽くす。もし北側延伸を決断しなければならない事態になれば、十分に説明させていただく」と述べ、松島会長は「我々はどんな場合でも北側延伸に反対する。その認識はもっていてほしい」と応じた。
 黒野総裁は7月末の就任会見で、「選択肢としては否定しない」と延伸の可能性に言及したが、9月末の定例会見では、「しばらくトーンを下げておきたい」と話していた。

【本誌の解説】
 久住住民が住民総意の署名をもって空港公団と黒野総裁に抗議した意味は大きい。黒野総裁が「仮に『北側』という話になったときには事前に十分な話し合いをさせてもらいたい」と述べたことに対して、「我々はどんな場合でも北側延伸に反対する。その認識をもっていてほしい」と表明した。これは北側延伸への絶対反対の表明だ。公団はもうひとつの「反対闘争」を作り上げてしまった。公団の姿勢は一貫している。それは住民無視である。
 それにしても、黒野総裁は「現状の中で北側延伸の検討は行っておらず、当初計画通りの完成を目指すことを考えている」とまでいっているのだから、北側延伸はないといえばすむことだ。事実、公団企画室では北側延伸の具体的検討はまったくしていない。北側延伸はあくまで架空の方針であり、地権者切り崩しのために政治的虚言にすぎない。
 だからこそ、扇国交相も堂本知事も「時期尚早」とか「住民の納得なしには反対」とまで表明している。にもかかわらず黒野総裁は「トーンと下げても」「北側延伸の可能性は否定しない」と言い張っている。
 これは漫画である。すでに本当のことが明らかになり、地権者への恫喝材料にもならない北側延伸にまだ固執するのはどういう了見か。黒野総裁の就任早々の大失敗で、反黒野の公団幹部らが総裁方針に従わない空気になったことが原因らしい。「切れ者」官僚といわれ、就任直後には「私には、経験を背景に思い切ったことができるだけの貯金がある」とまでほざいていた黒野だ。前言の全面撤回は面目にかかわるということか。早くも成田市あたりでは、黒野総裁は「裸の王様」などと揶揄されている。
 就任早々成田市長、下総町長、騒対協、久住地区住民からの立て続けの抗議を受けた黒野総裁。国交相、千葉県知事にも反対された。そんな「方針」に固執する公団総裁など今まで一人もいない。この失態も後々の「経験」にしてもらいたいものだ。

(10月8日) 国際空港評議会 浦安で総会開幕(10/9産経、10/8朝日各千葉版)

 世界の空港管理者が集まる国際空港評議会(ACI)の第12回世界総会が8日、浦安市内のホテルで開幕した。成田空港を管理する新東京国際空港公団がホスト役を務めた。世界約50カ国から約1000人が出席し、11日まで「逆境における空港運営」をテーマに、テロに対する空港の保安体制や空港経営のあり方などを協議する。
 世界の航空会社で組織する国際航空運送協会(IATA)のジョバンニ・ビジニァーニ事務総長も講演し、「成田空港は世界で最も高い着陸料が続いており、ビジネスの常識に目を覚ますべきだ」とする厳しい注文をつけた。
 記者会見したアーロンソンACI事務総長は「米中枢同時テロ事件以降、世界の航空業界は危機的状況にあるが、その中でアジア地域では旅客量が急増するなどめざましい動きがある」と話し、世界の航空業界の中で、アジアの占める重要性を強調した。

【本誌の解説】
 国際空港評議会が日本で最初に開かれたのは2000年5月(成田のホテル)のことであった。これはACI環境委員会が企画した第2回「グリーンポート2000」であり、中心テーマは「地球上で共に生きる」であった。
 今回は日本で最初の総会であるが、中心テーマが「逆境における空港運営」であり、航空業界の低迷を反映したものになった。「逆境」を空港関係者がいくら論議しても解決はしない。空港運営の合理化と警備経費の政府援助を要求するぐらいしかできない。この総会のもうひとつの重要課題は成田空港の着陸料の引き下げ要求である。すでに国際航空運送協会のジョバンニ・ビジニャーニ事務総長は総会前の記者会見で「成田の着陸料は世界の主要空港の2から15倍の高水準」として、小泉純一郎首相に引き下げを求める書簡を提出したと述べている。
 この総会のホストは空港公団であり、2000年の9月に当時の中村総裁は、世界総会を成田市を中心にした成田空港周辺地域に誘致し、空港周辺のホテルを会場にする意向であった。しかしながら、会場は成田ではなく浦安になった。総会のホストの意向に反して会場変更になったのは、この成田空港の値上げ問題と関係があるとウワサされている。

(10月8日) 成田空港職員が拾得物盗む(10/9全紙の千葉版、千葉日報)

 成田空港で落し物として届けられた財布などを盗んだとして新東京空港署は8日までに、窃盗の疑いで新東京国際空港公団職員斉藤繁容疑者(55)を逮捕した。斉藤容疑者は同公団のサービス課長代理で、拾得物を保管する立場にあった。
 調べでは、斉藤容疑者は3月、同空港の拾得物保管庫にあった財布(2万円相当)を盗んだほか4月から7月にかけ、指輪や時計など拾得物4点(計8万7000円相当)を盗んだ疑い。同被告が1999年5月から計59回、拾得物を不正に廃棄扱いにしていたことが判明。同被告は「すべて盗むためにやった」と話し、同署は余罪を追及している。
 公団では7月、前警備計画課長代理が収賄容疑で逮捕、起訴されたばかり。8日午後、同空港内で会見した公団の玉造敏夫理事は「度重なる不祥事に恥ずかしく残念でなりません。あらためて服務規律と指導監督を強化したい」と苦渋の表情で話した。公団は事件発覚後、同容疑者を3カ月の停職処分とした。さらに厳しい処分を検討するとともに、拾得物のリストを所属部長がチェックするなどの再発防止策を実施している。

【本誌の解説】
 公団職員の不正行為がつぎつぎと明らかになっている。前回は給油事業部事業課長代理、高村文彦容疑者(52)であり、今回も55才の課長代理である。2人とも公団の中堅幹部社員である。空港公団は、下請けや発注工事業者などからの宴席接待、贈り物などをかなり頻繁にうけており、企業倫理もいちじるしく低下していると、関係者は話している。事実だろう。
 これは氷山の一角。公団の腐敗構造はもっと深く大きいことは明白だ。このような腐敗しきった公団に農民の土地を強奪する権利はない。私利私欲のために下請け業者に接待を要求し、取得物を窃盗する輩に「空港建設は公共のためだ」などと言う権利があろうはずもない。

(10月10日) 天神峰フェンス問題/反対同盟 成田市に追及行動

 反対同盟は10月10日(木)午後1時30分から、成田市庁舎会議室において天神峰フェンス問題の追及行動をおこなった。北原事務局長、市東孝雄さん、足立満智子・成田市議などが参加した。
 最初に北原さんが「成田市の姿勢を正したい。住民が現に苦しんでいる。これまでの回答に誠意が感じられない。成田市は住民の立場にたって対策を講じるべし」という見解を強く表明した。
 次に反対同盟が作成した要望書を読み上げ、その要望書の趣旨と測量報告を詳細に説明した。それを踏まえて協議に入った。(要望書、測量報告添付)
 成田市側は「2メートル段差の存在と1メートル近く噴射口が飛び出している事実」について完全に認めた。また成田市は、「この調査報告は現場をみたのでわかります。空港公団にこれを報告します」とのべた。
 また、このやりとりの中で「段差の存在」の事実について、空港公団は承知しているのかと聞くと、「知っている」と答えた。成田市との折衝のなかで空港公団は認めているという。
 成田市の追及行動で天神峰フェンスが2メートルの段差があり、ジェットエンジンの噴射口がフェンスの上から1メートル程度飛び出している事実を公団も承知していることが判明した。「フェンスをかさ上げするには基礎から作り替える必要があるので難しい」と公団が言っているなどと成田市は報告した。
 公団はこれまで、市東宅のフェンスについて「立体的、平面的」に設計したのだから問題ないと回答してきたが、それが完全にウソであったことが明らかになった。
 反対同盟は公団と成田市の追及行動をさらに続けていく方針を確認している。
 以下、要望書と測量報告の添付します。

■要望書
 2002年10月10日
 成田市長・小川国彦殿
 三里塚芝山連合空港反対同盟
 事務局長・北原鉱治
 成田市三里塚115

ジェットブラストによる排ガス対策フェンスの設置と汚染調査の件
(1)ブラストフェンスについて
 市東孝雄宅に対するブラスト対策は現状のフェンスで「十分効果的」とする空港公団と成田市空対部の回答は、事実に反しており承諾できません。
 空港公団は「平面的、立体的条件を考慮のうえ……高さを設定した」(9月20日付回答)としていますが、「立体的条件」の具体的内容については書かれていません。
 この公団の誤りを正すために、反対同盟は別添書類のとおり測量を行いました。その結果、ブラストフェンスが立つ市東孝雄宅畑と誘導路舗装表面との間には約2メートルの高低差が存在し、噴射口はフェンスの頂点から0.8メートル以上飛び出している事実が判明しました。ジェットブラストはフェンスに遮られることなく市東宅を直撃します。
 反対同盟は、成田市が実地に同様の測量を行い、この測定結果を確認するよう要望します。
 具体的に以下の確認と計測を求めるものです。
 1)フェンスの基礎はどこにあるか(市東宅畑か空港舗装表面か)
 2)市東宅畑と空港舗装部分の段差は存在するか
 3)段差は何メートルか
 4)フェンスの高さは何メートルか
 5)ジェットエンジンの噴射口の高さは地上から何メートルか
 6)噴射口はフェンスから上何メートル飛び出すか

(2)大気汚染調査について
 「東峰地区に対して光化学オキシダントが環境基準を達成できない日があることの説明は行っております」との9月26日付回答につき、以下質問します。
 1)回答は環境基準を超える事実を認めるものであるのか
 2)いかなる対策を実施するのか
 3)空港公団に対してどのような行政指導を行うのか

(3)成田市の姿勢について
 標記の件に対する成田市の対応について、あらためて責任と主体性ある対応を要望します。
 住民の被害の救済は行政としての責務です。「空港公団が対策すべき」と言いますが、それで事足れりとすれば行政としての責任放棄です。成田市は「対策させる」べく行政指導すべきであり、公団が従わなければ自ら対策すべきです。成田市の姿勢は協議の前提をなすものであり、重ねて誠意ある対応を要望するものです。
 以上、10月25日までに回答を求めます。
………………………………………………………………………………
■測量報告
ブラストフェンスが立つ市東孝雄宅畑と誘導路舗装表面との高低差の測定結果

2002.10.10
三里塚芝山連合空港反対同盟 事務局

(1)結論
 ブラストフェンスが立つ市東孝雄宅畑と誘導路舗装表面の間には、約2メートルの高低差が存在する。

(2)測定日時と測定地点
 ・2002年8月17日
 ・北側離陸の発進地点(暫定滑走路南端部)に進入するために、噴射口を市東宅に向けた地点に対応する、市東宅畑と空港敷地との境界部分。

(3)測定方法――水盛り缶による水準測量
 1)この地点におけるフェンスの高さは4.1メートルである。(巻き尺を使って実測)
 2)フェンスの頂点と同じ高さで水平面を得るために、水盛り缶による水準測量を行い、フェンスから市東宅側30mの地点にある杉の木に印をつけた(写真の青いテープ。根本から3.4メートル)。
 3)上記の水準で誘導路上の航空機を撮影した(写真参照)。ジェットエンジンのカウリング(直径2.4メートル)の上側8割以上がフェンスの上にあり、噴射口はフェンスの頂点から上約0.8メートル地点であることがわかった。
 4)カウリングの中心の高さは地上から2.9メートル(6月28日付空港公団回答書)であるから、次の計算によってブラストフェンスが立つ市東孝雄宅畑と誘導路舗装表面の間の高低差がわかる。(フェンス高)+(フェンスの頂点と噴射口の垂直距離)-(噴射口の高さ)=4.1+0.8-2.9=2.0メートル


(10月11日) 成田空港の先行単独民営化固まる(10/11夕刊、10/12全紙の全国版、千葉版)

 成田、関西、中部の3国際空港の民営化で、国土交通省の交通政策審議会空港整備部会は11日、3回目の関係者ヒアリングを行い、新東京国際空港公団の黒野匡彦総裁は「経営の自主性を尊重するため単独民営化してほしい」と、単独民営化を正式に要望した。中部国際空港会社も現行の株式会社での運営を強く求めた。関空会社は3空港一体の上下分離方式を主張したが、他の方策の検討を排除しないと表明した。
 これを受けて、国交省は3空港を一緒にした上下分離方式による民営化の正式撤回を表明、単独民営化案が事実上決まった。今月末にも3空港の個別民営化の具体案を示す予定。
 国交省は成田空港について、2003年通常国会に、公団を国が出資する特殊会社にする法案を提出、04年度に発足させ、将来、株を国が売却して完全民営化する方針。アジア諸国の基幹空港に対抗するため、国際的に高い水準の着陸料の値下げを目指す。
 中部空港会社は05年の開港後の経営状態をみて完全民営化を目指す。
 1兆円超の債務を抱える関空の民営化の時期は先延ばしとなった。成田の株の売却益を救済に回すなどのテコ入れが必要だ。
 成田空港の民営化の枠組みで残る問題は、施設の管理・運営を民間企業(上物法人)が行い、施設の整備・所有は公的法人(下物法人)とする「上下分離」方式にするか、すべてを一体化して完全民営化する「上下一体」方式にするか、どちらを選択するかだ。
 成田市や同議会、地元の空港関連団体は「上下一体」方式を主張。地元として一番の懸念材料である共生策、環境対策の担保としては「国が株式を100パーセント所有する特殊会社、あるいは自治体も株式を所有することで担保できる」(小川国彦市長)としている。
 一方、県は「単独上下分離」を主張。空港周辺自治体の中にも県に同調して「何らかの形で国が関与しないと、共生策、環境対策の担保は無理」とする意見があり、空港周辺自治体の中で足並みは揃っていない。

【本誌の解説】
 交通政策審議会の最後のヒアリングで、成田単独民営化は決定したようだ。「上下一体」「上下分離」のスキームはまだ分からないらしい。
 国交省は思惑は、「3国際空港一体の上下分離案」で成田空港の利益から年間165億円のうち140億円を関空の借金返済に、25億円を中部空港に回すということであった。この「上下分離」案が評判悪いことから、成田空港を単独民営化し、その資産の売却益で関空の借金を返済することになりそうだ。
 しかし、「上下分離」でも「上下一体」でも成田の資金を関空の借金返済に回すことに違いはない。毎年の「利益」か売却「資産」かの違いしかない。
 成田空港の資産価値はいくらか。野村総研では「非航空収入の伸び次第では企業価値が1兆円、負債を考慮しても時価総額は5000億円になる」と評価している。昨年の夏、石原伸晃行革担当相は「羽田空港の売却金は1兆円から1兆5000億円、成田空港は3000億円から4000億円になる」と述べている。「単純な売却」か「株式上場」か未だ不明だが、いずれにしても「数千億円」の売却益か株式上場益が入ってくる。
 売却益ならば、その金利負担。株式上場なら株主配当という形で、成田の新たな民間企業が、その利益から支払わなければならない。成田空港を5000億円で買い取ったとして、その金利負担を4パーセントとしても、年間200億円になる。「3空港一体の上下分離案」以上の負担になる。国交省が急激に上下一体化での単独民営化に傾いた根拠はここにある。関空の借金が一挙に返済できる可能性がでてきたのである。
 成田市や周辺自治体も、上下分離成田単独民営化から、上下一体での民営化に意見がまとまってきた。理由は、国交省が提案していた上下分離の一体民営化論だと年間140億円が関空に回り、その分の周辺対策費が減額されるとの危惧からだった。しかし、成田市は誤解している。上下分離の場合は、周辺対策費は整備費の一部なので公的法人の範囲だが、上下一体民営化だと完全に民間会社が行うことになる。経営的にはこの方が周辺対策費は確実に減額される。小川成田市長の見解はこの点を理解していない。
 成田空港の総資産が5000億円というのも、総建設費から見て安すぎるといえる。正確なデータはないが、総建設費は軽く1兆円を超えている。周辺対策費だけで3000億円を超えている。この一点をみても、空港は営利事業としては成り立たない。安全対策費、周辺対策費が膨大にかかるからだ。民営化した場合は、この2つの支出がまず真っ先に削減される。
 やはり空港は民営化に適さない。最大の根拠は安全性が損なわれることであり、周辺住民の生活破壊がより大きくなるからである。

(10月11日) 公団総裁発言/成田空港の暫定平行滑走路 「延伸、民営化後でも」(10/12産経千葉版)

 成田空港を単独民営化する案をまとめたことを受け、新東京国際空港公団の黒野匡彦総裁は11日、「暫定平行滑走路の2500メートルの延伸ができなくても民営化を進めたい」などと述べ、民営化を最優先で進める考えを示した。延伸問題は、反対派用地を避け北側へ延伸する案に対し地元から反対も出ており、加えて民営化が優先されれば、延伸そのものが「先送り」される可能性もある。
 この発言は、同日開かれた国土交通相の諮間機関「交通政策審議会」の航空分科会空港整備部会で黒野総裁が言及したもの。
 この中で、平行滑走路整備と民営化のタイミングについて聞かれた黒野総裁は、「(B滑走路の)2500メートルへの延伸後に空港公団を民営化するのが望ましいが、延伸はいつになるか分からない。2500メートル化ができなくても、民営化を進めたい」と述べた。
 従来、空港公団は、民営化までに2500メートルのめどをつける方針で臨んでおり、そのために、反対派用地を避けた北側延伸を検討してきた。

【本誌の解説】
 黒野総裁は暫定滑走路の2500メートル化を自分の任期内に完成すると大言壮語してきたことを、早くも2カ月で棚上げした格好だ。04年度の民営化まで棚上げするということは、暫定滑走路の延伸に取りかかるのは05年からになる。黒野の総裁任期は4年間といわれている。06年7月までである。事実上、暫定滑走路の2500メートル化を放棄するという表明である。
 それも仕方がないであろう。黒野プランが総破産したからである。黒野は着任早々、暫定滑走路の北側延伸を打ち上げた。「本来計画は南延伸。地権者が用地交渉に応じなければ北側延伸」という「両にらみ」でいくと見えを切ったのである。
 北側延伸は事実上工事としては不可能であるが、それを打ち上げた意図は、地権者の屈服を引き出すことにあった。しかし、その思惑は完全にはずれた。まず、北側延伸の空論性を全面暴露され、地権者の恫喝にならなくなった。とりわけ北側延伸とともに出された西側連絡誘導路の「計画」は笑い物になった。次に、本当はできもしない北側延伸に成田市、下総町、成田市久住地区などからの反発がおこり、堂本千葉県知事からの批判の声まで浴びせられた。さらに、この大失態で公団幹部が黒野総裁の言うことを聞かなくなったこともある。顧問として残っている中村元総裁がいまだ院政をしいているとの噂もささやかれている。
 これで、暫定滑走路の供用開始攻撃で三里塚闘争を解体し、地権者を屈服させる計画は失敗した。「飛行機を飛ばせば(地権者は)落ちる。そうすれば三里塚闘争はなくなる」。これが公団の願望だったが、それは霧散したようだ。

(10月13日) 反対同盟が全国総決起集会(記事は本紙参照)

 10・13全国総決起集会でだされた反対同盟の公式文書を転載します。
 ………………………………………………………………………………
【集会式次第】
暫定滑走路延伸阻止、有事立法粉砕
10・13全国総決起集会
三里塚芝山連合空港反対同盟
開会:2002年10月13日(日)正午  (於)成田市東峰

■司会挨拶 小川 陽一、宮本 麻子
■開会宣言 鈴木 幸司
■基調報告 北原 鉱治
■特別報告 動労千葉
■事業認定審議会設置反対・堂本知事弾劾決議    鈴木 謙太郎
■読売新聞社弾劾声明               伊藤 信晴
■反対同盟決意表明
 敷地内の決意 萩原 進/市東 孝雄
 婦人行動隊あいさつ  萩原 静江/鈴木 加代子
■三里塚裁判闘争報告 反対同盟顧問弁護団
■カンパアピール   木内 秀次
■決意表明
 住民団体 関西新空港反対住民、北富士、沖縄、反戦被爆者の会、部落解放同盟全国連、都革新・長谷川英憲、婦民全国協、「障害者」、山谷、反戦共同行動委員会、三里塚・木の根全国共闘、二期阻止全国共闘
 共闘団体 野戦病院、中核派、解放派、戦旗派、蜂起派
■集会宣言     郡司 一治
■スローガン採択    〃
■閉会宣言・デモコース説明・ガンバロー三唱    野平 聡一
 *デモコースは小見川県道→東峰神社左折→青行団結の家右折→小見川県道→団結街道→現闘本部先まで約3.5キロ
………………………………………………………………………………
【集会宣言】
 暫定滑走路の開港から半年が過ぎた。反対同盟は騒音とジェットブラストによる追い出し攻撃を粉砕し、意気高く闘いぬいている。暫定滑走路の延長を実力阻止し、空港廃港へと追い込む決意である。
 開港は暫定滑走路の矛盾を全世界にさらけ出した。限界が日々明らかになっている。誘導路の欠陥は運行の遅れを深刻にし、空港管制を混乱させている。航空需要は低迷し、開港で増便した分、搭乗率が下がっている。開港は政府・公団の体面を保つための、成算なき暴挙であった。
 おいつめられた公団は、「北側延伸」のデマを流して脅迫した。用地が買収できないのに平行滑走路の予算を盛り込んだ。堂本県政は収用手続きにかかわる新条例の制定に動き、収用委の再建を策動している。
 だがこれらに屈する反対同盟ではない。黒野公団総裁は「北側延伸」をみずから撤回する醜態をさらけだした。「居座りは国民的迷惑」として敷地内農家を攻撃した読売社説を徹底弾劾する。とりもどしにあえぐ公団の暫定滑走路延長攻撃を粉砕する決意である。
 イラク侵略戦争に反対し、反対同盟と三里塚勢力の力で自衛隊の参戦を阻止しよう。戦争のための有事三法を廃案に追い込もう。北朝鮮を排撃し戦争体制づくりにつなげる動きを許してはならない。
 成田空港を侵略のための兵たん・出撃基地としてはならない。暫定滑走路延長阻止へ。秋・冬の闘いに勝利し、来春三・三〇全国集会に総決起しよう。
二〇〇二年十月十三日
三里塚芝山連合空港反対同盟
………………………………………………………………………………
【十・一三全国集会スローガン】 三里塚芝山連合空港反対同盟
一、暫定滑走路粉砕―延長阻止。軍事空港建設を粉砕しよう。
二、土地収用法粉砕―収用委再建実力阻止。地元農家を抹殺する「共生委員会」を許すな。
三、空港絶対反対・一切の「話し合い」拒否。東峰神社裁判闘争を支援しよう。敷地内農家に敵対する読売新聞社徹底弾劾。
四、一坪共有地の強奪阻止。騒特法粉砕・芝山廃村化阻止。成田治安法を粉砕しよう。
五、農地強奪の先兵=堂本知事と小川成田市長徹底弾劾。脱落派一掃。裏切り者の条件移転徹底弾劾。
六、イラク侵略戦争阻止。有事三法粉砕・改憲阻止。破防法・組対法攻撃をうち砕こう。天皇制粉砕。
七、関西新空港粉砕。沖縄、北富士はじめ反戦・反核、反基地、反原発闘争の高揚かちとろう。
八、教育基本法攻撃粉砕。動労千葉をはじめとする戦闘的労働運動と連帯して闘おう。
九、あらゆる差別・抑圧粉砕。部落解放運動連帯。入管法・外登法撤廃。排外主義を許さず、在日朝鮮・中国人民とともに闘おう。
十、拘禁二法反対。刑法改悪・保安処分新法粉砕。精神保健福祉法を撤廃しよう。
十一、国家権力と一体となって三里塚・国鉄労働運動に敵対する革マル派を職場、学園、全地域から一掃しよう。
十二、三里塚闘争勝利。来春三・三〇全国集会に総決起しよう。
………………………………………………………………………………
【事業認定審議会設置反対、堂本知事弾劾 集会決議】
 堂本知事と千葉県議会は明後日(10月15日)の議会最終日に、「事業認定審議会」の設置条例を制定しようとしている。
 「事業認定審議会」は土地収用のための機関である。土地収用の前提をなす事業認定に際して、都道府県知事に調査・意見を具申する。委員は知事が任命し、学識経験を有する者7名以内で構成される。昨年7月の土地収用法改悪で、収用手続きの簡素化の一環として新たに制度化した。
 「公平な第三者機関」というが、知事の恣意的人選で委員が任命されることに明らかなように、土地強奪のための機関そのものである。
 現在、千葉県に収用委員会は存在しない。成田空港二期工事のための収用審理再開に対する大衆的弾劾によって、87年10月に委員全員が辞任した。
 この千葉県において、「事業認定審議会」の設置条例を強行するねらいは収用委員会の再建である。これは収用委再任命の第一歩である。堂本知事は審議会委員を収用委員に横滑りさせるねらいをもってその設置を強行しようとしているのである。
 さらにこの動きは、土地・家屋の戦時徴発と労働者への業務命令、違反者への罰則を可能とし私権を剥奪する有事立法攻撃と完全に一体である。
 本集会は「事業認定審議会設置反対」、「堂本知事弾劾」を決議し、10・15千葉県議会闘争に立ち上がることを呼びかける。
2002年10月13日
三里塚芝山連合空港反対同盟

★10・15千葉県議会闘争のお知らせ
10月15日(火)
・県庁前ビラまき行動  午前8時、県庁前集合
・決起集会       午前9時、千葉市よし川公園(中央公園から徒歩3分、JR千葉駅から徒歩8分)
・デモ         午前10時
・主催 三里塚闘争支援連絡会議

(10月15日) 現地支援連/事業認定審議会設置反対の県議会闘争

 三里塚闘争現地支援連絡会議(中核派、解放派、戦旗派、蜂起派)は千葉県9月議会の最終日の10月15日に、事業認定審議会のための設置県条例案反対をかかげ、千葉県庁にむけてデモをおこなった。
 事業認定審議会は土地収用の前提である事業認定について、都道府県知事に調査・意見を出す機関である。昨年7月の土地収用法改悪で、収用手続きの簡素化の一環として新たに制度化されたものである。
 収用手続き簡素化の特徴は、事業認定の認可から執行までの期間が極めて短くなったことである。収用委員会の場では、事業認定そのもの是非は審議されない。補償額を決めるだけの通過儀式にすぎなくなる。事業認定を認可した瞬間、土地収用は決定する。それで事業認定審議会が、以前の「収用委員会」での議論の一部を代替するという位置づけだ。
 千葉県に収用委員会は存在しない。にもかかわらず、事業認定審議会を設置する意味は、収用委員会の再建以外にありえない。堂本知事は審議会委員の選考後に収用委再建を策動している。
 成田空港建設は事業認定そのものが失効・消滅しているので、収用法の適用は不可能である。しかし、事業認定審議会設置と収用委員会再建は、三里塚闘争の階級的正義によって崩壊した暴力的土地強奪システムを、14年ぶりに復活させるということだ。それは三里塚闘争の現地平に対する最大級の敵対であり攻撃である。絶対に許してはならない。

(10月16日) 成田空港/南ゲート開門 (10/17毎日、産経の各千葉版)

 成田空港で16日、空港南側の芝山町大里地区に面する通用門「空港南ゲート」が開門した。これで北側の成田市側2カ所に加え芝山町側からも空港への出入りが可能になる。同町など南側市町村は「南からのアクセスが向上し企業進出など地域発展につながる」と歓迎。新東京国際空港公団は「周辺道の渋滞も緩和できる」としている。
 空港南側には78年開港以来、未買収地の影響で通用門がなかった。このため南側地域の利用者は本来計画の通用門から4~5キロ先の北ゲートまで迂回(うかい)しなければならず、空港を縦貫する国道295号など周辺道路混雑の一因となっていた。
 このため芝山町など空港南側11市町村は周辺道の渋滞緩和と空港活力の南地域への注入などを求め昨年2月、航空会社や公団関係者専用だった南ゲートの一般開放を要望した。
 南側地域は開港以来、航空機騒音を受けながらも北側の成田市に比べ空港の経済効果が波及せず「空港の裏」と呼ばれてきた。芝山町の相川勝重町長はこの日「念願の開門で表も裏もなくなる。物流基地計画など南側発展に役立てたい」と語った。

【本誌の解説】
 空港本来の設計図では一般ゲートは南北2カ所になっている。完成が遅れていたのである。その理由は加瀬勉氏(多古町在住)が所有している木の根の溜め池によって道路を直線で造れなかったことにある。芝山鉄道を迂回させた理由と同じだ。道路もこの溜め池を避ける形で約200メートル迂回ルートし道路を完成させた。
 空港公団は航空機の誘導路ですら「逆くの字」に曲げるほどだから、道路を200メートルぐらい迂回させるのは得意技である。しかし、芝山鉄道と同じで、未買収地を買い上げるために、芝山鉄道や南側ゲートの建設を遅らせてきたのである。
 しかし、これで便利になって「空港の裏」も発展するという思惑は早計のようだ。航空運輸関連の設備投資は基本的に終わった。いまや過剰設備が問題になっている。南側に一般ゲートができたことで「裏側も表側もない」とはならない。大消費地=東京へは、やはり芝山側は遠い。場所によっては1時間も違う。
 空港は芝山を廃村化し、過疎にしたことだけは間違いない。このことは84年が鈴木幸司さんが町会議員に立候補したときの基本スローガンのひとつだった。当時の保守派は「芝山廃村化なんてありえない」といっていたが、現在は「(反対同盟が警告してきた)廃村化はその通りになった」とだれもが漏らしている。南側ゲートの開通で、廃村化問題の本質は何も変らない。これで芝山過疎化の現実を変えることはできないのだ。

(10月17日) 旅客機事故想定/消火や救出訓練(10/18朝日千葉版、千葉日報)

 着陸した旅客機のエンジンが爆発し炎上したとの想定による消火救難訓練が、成田空港であり、空港関係者ら約1100人が参加した。
 消防車から旅客機に放水後、乗客役の訓練参加者が脱出シュートを使って次々とすべり降りた。その後、レスキュー隊員らが機内に乗り込み、負傷した乗客役の人たちを担ぎ出した。
 空港周辺の病院や医院から訓練に参加した医師や看護師は、負傷者役の人たちをけがの程度によって治療や病院への搬送を指示していた。
 今年は初めて、日本医科大学付属北総病院のドクターヘリが訓練に参加する予定だった。だが本当の患者が出たため、ヘリはそちらに向かい訓練に参加できなかった。

【本誌の解説】
 成田空港は、三里塚闘争の標的だけでなく、アルカイダなどの航空機ゲリラの標的になっている。そのゲリラがアジアでも頻発している。
 米帝のイラク侵略戦争の切迫で、反帝国主義ゲリラ・パルチザン闘争がいたるところでおこっている。イエメン沖で起きたフランスの大型タンカー爆破やクウェートでの米軍兵士銃撃を、オサマ・ビンラディン氏が「信心深い戦士たちによる英雄的なジハード(聖戦)」と称賛している。また、米国はインドネシア・バリ島で起きた爆破事件を「アルカイダの仕業だ」といっている。18日には、フィリピン南部ミンダナオ島サンボアンガ市の繁華街でも爆弾闘争がおこっている。
 成田空港は東アジアでの反米ゲリラの最大のターゲットである。94年10月11日のマニラ発セブ島経由成田行きフィリピン航空機の爆破が、9・11の出発点になっている。成田空港は太平洋線路線が最も集中する空港だ。成田そのものと成田を経由しての米本土攻撃という位置づけだろう。
 今回の救出訓練は成田空港の旅客機事故としているが、実はゲリラ対策訓練であり、そのために、参加者は例年になく真剣であったとのことである。

(10月18日) 羽田空港国際線ターミナル新設へ(10/19朝日)

 羽田空港の沖合展開で生じた跡地約200ヘクタールについて国土交通省案がまとめた利用計画案が18日、わかった。それによると、羽田空港の国際化をにらみ、羽田東急ホテル(東京都大田区)付近に国際線旅客ターミナルを新設するほか、国際線貨物施設も充実させる。
 これらの施設を建てた後に余る土地は約53ヘクタールの見通し。同省は今後、東京都や地元の大田区などと、この利用計画案をたたき台に調整に入る。
 国交省の計画案では、国際線の定期便就航を視野に入れ、羽田東急ホテル付近を国際旅客ターミナル地区として、ターミナルビルやアクセス道路などを設置するほか、国際貨物を処理するための荷さばき施設も整備する。4本目の滑走路を新設する再拡張計画に伴い、整備施設などを空港西側に配置する。

【本誌の解説】
 当初、羽田のD滑走路は03年の着工で工期10年、2013年頃完成予定となっていた。しかし、最近の情報では09年完成予定という新聞報道もあり、完成を急いでいるようだ。そのために、工法も一番早く完成する浮体工法(メガフロート)にほぼ決まったようだ。工法は、浮体工法、桟橋、埋立て・桟橋複合の3工法を検討していた。国土交通省は今月23日、「工法を限定せずに入札で選ぶ」との方針を決定した。入札で設計と施工を一括発注し、自然災害以外の原因による工費の増加は受注者が負担する契約にすることも決めた。
 羽田の沖合は超軟弱地盤で建設費が増加することを懸念してのことだが、明らかにメガフロートに有利な決定である。埋立てや桟橋業者は、建設費の増加を見込んだ入札価格では、メガフロートに太刀打ちできないからである。メガフロートを推す造船業界は「建造に3~5年かかる船舶でも、最初に契約した費用で完成させてきた」と鼻息が荒くなっている。
 国土交通省は、工法をメガフロートに変更してでも完成を急ぐ意向のようだ。今回の跡地利用計画では、大々的な国際線ターミナルと国際貨物基地の建設も発表された。150ヘクタールとは膨大な広さである。成田のターミナルビルの1ビル、2ビルの敷地面積を合わせて15ヘクタールほど。貨物地区が全部で30ヘクタールくらいだ。
 「国際線の定期便就航を視野に入れ」とかいっているが、成田のアジア便は全面的に羽田にもっていく計画である。そもそも、この跡地は東京都などに払い下げるために「跡地利用計画調査委員会」が設置されていた。しかし、成田の平行滑走路が暫定滑走路にとどまることが明白となってから論議がストップし、開催されていない。羽田国際化が叫ばれ、国際線ターミナルになると、その頃からいわれてはいたが、これで本決まりである。
 いずれにせよ、羽田D滑走路が09年供用開始予定となると、成田の暫定滑走路の「2500メートル化」は見る影もなくなる。黒野公団総裁は、暫定滑走路の2500メートル化は成田空港の民営化後でも良いと発言している。民営化移行は04年である。
 未買収地が取得不可能になっているなどの問題を抜きにして、純粋物理的に工期を計算してみる。延長工事は滑走路使用中での増設工事なので夜間中心。工期は通常の倍はかかる。4、5年の工期だ。羽田のD滑走路の完成と同時期になる。これでも、完成した瞬間にアジア近距離便は羽田に移ることになるだろう。
 現実に戻ろう。用地問題の解決は不可能だ。成田は着工することもできない。アジア便は間違いなく、09年から羽田に移ることになりそうだ。これで暫定滑走路の必要はまったくなくなる。

(10月20日) 島村さんの作業場の瓦落下(10/22朝日、読売の各千葉版)

 成田空港のB滑走路南端から約400メートルの島村昭治さん方で、鉄骨2階建て作業場の屋根瓦の一部がずれて、落下していたことが21日わかった。新東京国際空港公団は、今週中にも業者を呼んで現状を把握する予定で、成田市も島村さん宅の上空約40メートルを飛ぶ航空機と、瓦の落下の因果関係を調査する方針でいる。
 島村さんによると、屋根瓦が落ちたのは20日の午後8時ごろ。家の中にいて、瓦の割れる音に気づいたという。屋根の南側と北側の2カ所で数枚の瓦が同時にずれ、うち北側の1枚が落下した。
 B滑走路は4月に供用が開始された。瓦がずれたのは、今回が5回目。ほとんどが、南側からの着陸回数が増えた10月に入ってから、毎回5~10枚の瓦がずれている。これまでは島村さんが自分で修理したという。

【本誌の解説】
 冬が近づいて、北風が多くなり、南側着陸が増えたので、航空機が起こす爆風で瓦が飛んでいる。公団は「航空機からの原因というがい然性が高いので、再発防止策を考えたい」(10/22読売)といっているが、がい然性でなく、航空機の爆風であることは間違いない。再発防止を考えるというが、飛行停止以外に方策はない。着陸時の爆風を低減する方策などないのだ。
 そもそも人家の40メートル上空を飛ばすこと自体が殺人行為だ。それが現実化しているのである。

(10月23日) 日米規制改革協議/空港着陸料の下げ盛る(10/25朝日、東京)

 米通商代表部は23日、日本との規制改革協議の米側要望書を公表した。以前から力を入れてきた電気通信やエネルギー分野などでの規制緩和のほか、空港の着陸料の引き下げなどを新たに盛り込んだ。主な項目は以下の通り。
 ▽成田や関西空港の着陸料は世界一高く、着陸料の引き下げは経済全体を活性化させる。国際的な会計基準を採用し、サービス提供にかかる実際のコストをもとに、透明性の高い方法で着陸料を算出する。
 ▽総合的な医療制度改革のため首相直属の諮間委員会を設立し、医療システムの効率性を高めるため、外資系企業も含めた関係者で協議する。
 ▽通信事業で、支配的な力をもつ事業者への規制に力を入れる一方、そうではない事業者の当局への報告に伴う事務量を減らす。
 ▽電力・ガス市場の自由化の中身やスケジュールを明確にし、03年度末までに詳細な手順を決める。
 ▽その他、略。

【本誌の解説】
 アメリカの「国際的な会計基準を採用」「透明性の高い方法で着陸料の算出」とは国土交通省にとって辛い話である。空港整備特別会計のカラクリが問題になっているからである。成田空港の着陸料のかなりの部分が空港特別会計に入り、他の赤字空港の補てんに使われている。
 また、着陸料が国家間交渉で論議されるということは、国際空港が本来、民営化にはなじまない領域であることを示している。交渉のテーマである医療、電力、ガス、通信などは行政的規制の緩和要求であり、国家で決定できる問題でもある。しかし、空港の着陸料はこれらの規制緩和とは問題の性格が違う。着陸料は空港経営の基本収入である。その価格が国家間交渉で決定するなら、民営化は不可能だ。電力・ガス料金、私鉄運賃などの公共料金は政府が認可するが、あくまで申請は企業がするものである。
 また、民営化された場合、どうしても利潤追求が第一になり、経費削減はまず人件費から始まる。その結果、安全性が損なわれるのである。次に直接利益を生まない周辺対策費である。その次が設備投資だ。
 また当然だが、設備投資は収益性を考えて行われる。これまで治安政策を判断基準にして建設計画が進められてきたのが成田空港であり、二期工事はその典型であった。収益性から判断すれば、暫定滑走路の延伸などは出てくるべくもないのである。

(10月26日) 反対同盟 芝山鉄道開業式典粉砕闘争に決起

 反対同盟は、空港反対闘争の切り崩しのための買収を目的に造られた芝山鉄道の開業を弾劾する集会とデモを行った。(詳細は本紙参照)

(10月27日) 芝山鉄道/日本一短い鉄道営業運転を開始(10/27全紙の千葉版と千葉日報、11/2毎日、東京)

 成田空港建設の見返り事業として、建設が進められてきた同空港と千葉県芝山町を結ぶ第三セクター「芝山鉄道」(公団、千葉県、航空会社などが共同出資)が27日開業し、営業運転を始めた。営業距離は空港内の東成田─芝山千代田駅間2・2キロと日本一短い。芝山駅から京成・押上まで最短80分、同・上野まで90分で結ぶ。
 同鉄道は77年、航空機騒音など空港の「負の影響」を受ける周辺市町村に対し、国が地元対策として建設を約束。空港反対闘争の影響で用地買収が進まず、計画は大幅に遅れたが、未買収地を避けて建設し開通にこぎつけた。
 前日26日に、開業を祝うセレモニーが、芝山町の芝山千代田駅でおこなわれ、関係者ら約200人が参列し、テープカットやくす玉を割って開業を祝った。相川勝重・芝山町長は「南ゲートとともに、空港南側の地域の振興に大きな役割を果たしてくれると期待している」と話し、待ちに待った同鉄道の開業を喜んだ。また黒野匡彦・新東京国際空港公団総裁は「芝山鉄道のような地域共生策を確実に実施していく」と述べた。

【本誌の解説】
 芝山鉄道は芝山町が空港建設を受け入れる条件の一つであった。78年の一期開港の前年に当時の運輸省が受け入れ、暫定開港にこぎつけたのである。
 芝山鉄道の最大の問題点は赤字の負担問題である。採算ラインの乗客1日5400人に対して、見通しは半分程度と計算されている。芝山鉄道は「2018年に単年度黒字、2032年に累積赤字解消」としているが、単年度黒字になる根拠はあげていない。芝山町周辺の通勤者はほとんどがマイカー通勤であり、定期乗車は見込めない。空港勤務者で整備地区に勤務する人が乗客の大半であり、それが倍になることは考えられない。
 開業後の収支は、毎月約2000万円以上の赤字がでると予想されている。建設費の借入金その他の返済、利子支払いを除いた営業赤字分である。この赤字負担は最大出資者である公団になる。しかし、公団が03年には民営化される。空港が経営的観点から見直され収益第一主義になる。そうなると、年間2億円から3億円の赤字をそのまま引き継ぐことはできないことになりそうだ。
 今年6月に中村公団総裁が芝山鉄道に関して芝山町も赤字補填分の財政的支援も必要と述べたことがあった(02年6月28日付日誌を参照)。その理由は相川芝山町町長の前日の芝山鉄道開業予定発表の記者会見での発言にあった。相川町長は「騒音直下の町民にとって赤字であっても鉄道は必要で当然。延伸で空港と共生の地域づくりを進める」と述べた。空港見返りのために赤字は当然、芝山町の中心の小池までの延伸を要求したのである。
 公団が「地元も赤字補填を負担すべき」と発言したことに恐れをなしたのか、開業セレモニーで相川町長をはじめとした芝山町関係者から「小池までの延伸」要求の発言は消えた。これが今回の開業を寂しいものにした理由である。開業はしたが、公団が民営化した暁には、この鉄道がはたして動いているのかさえ不安なのであろう。芝山町は約2000戸である。1軒あたり年間10万円の負担で鉄道は動きそうだが、芝山町民が鉄道に乗るのは年に1回か2回しかない。それに10万円も? という状態である。とうてい受け入れることはできない。
 日本一短い鉄道を全国にアピールし、鉄道マニアを呼ぶことでも始めるしかない。しかし、運賃は190円。鉄道マニアを大動員しても赤字を埋めることにならないらしい。

(10月31日) 公団総裁月例記者会見 空港公団民営化「上下一体で」(11/1読売、東京各千葉版、千葉日報)

 空港公団の黒野匡彦総裁は31日、記者会見で公団の民営化の形態について、「組織としての効率性と職員の士気から、上下一体が望ましい」との見解を初めて明らかにした。
 空港周辺9市町村の大半は、騒音問題などが下物の公的法人により維持・充実されることを求めて上下分離方式を主張してきたが、黒野総裁は「上下一体でも何らかの形で対策を担保できると思う」と述べた。
 国土交通省は当初、3国際空港の経営主体を一体化し、民営部門と公的部門に上下分離する案を検討してきた。しかし、関空救済との批判が高まったことなどから、今月初めに方針を撤回した。公団単独の民営化を決定し、公団を上下分離か上下一体のどちらの方式で民営化するかが焦点になっていた。
 また、平行滑走路の未買収地間題について、黒野総裁は、現時点では反対派農家との交渉に期限を設けない考えを示した上で、「平行滑走路(2500メートル)ができていなくても民営化することはあり得る。民営化を遅らせるつもりはない」と述べた。

【本誌の解説】
 公団の上下分離か一体化かのどちらにしても、地元への見返りは激減する。
 上下分離で空港本体と整備は公的法人となっても、空港特別会計への資金が流れるだけで、地元への還元は少なくなる一方である。
 上下一体の場合は、公的立場が完全になくなる。経営効率、利潤追求が第一になる。騒音対策費、安全運航のための経費、収益性の見込めない整備からの撤退となる。
 成田空港の周辺対策費、地域振興費は、他の公共事業に比して異常に高かった。その理由は、反対闘争が激しいことから闘争切り崩しのための対策費の色合いが強かったのである。しかし、空港整備特別会計も底をつき、借金が1兆円近くにもなり、余裕がなくなったのである。
 また黒野総裁は「現時点では反対派農家との交渉に期限を設けない」と述べた。このことは、北側延伸計画の撤回を意味している。黒野総裁はこれまで、「南側の用地交渉が進展しなければ北側に延伸する。いつまでも待つわけにはいかない。期限を設ける」として、北側延伸の可能性を表明していた。「期限を設けない」との言い方は、北側延伸計画への強い批判に抗しきれず、ノックアウトされたというところだ。公団の当面する方針としては、本来計画である南側(東峰部落)買収による2500メートル化をめざすことになるが、そもそも南側の買収が完全に行き詰まったことが「北延伸」デマの発端だった。黒野総裁の周囲には敗北感がただよっている。

(10月31日) 成田空港冬ダイヤ発表/国際線、夏より増便1日平均で27便(11/1朝日、産経各千葉版、千葉日報)

 新東京国際空港公団は31日、成田空港を利用する定期航空会社別の今年冬ダイヤの状況を発表した。
 それによると、国際線の週間発着回数では旅客便が今年夏ダイヤより115便増の2703便、貨物便も好調な航空貨物需要に対応して80便増の548便。国際線全体の1日平均便数では464便と今夏より27便増えた。目立った増便は日本航空がハワイを含む北米線の需要の回復に伴い増便したことなど。国内線は夏ダイヤとまったく同じで増減はない。
 今年4月にオープンした暫定滑走路では、夏ダイヤに比べ169便増の940便(週間)。総発着枠に対する使用率は76・3%と余裕があるが、実際には航空会社の使い勝手のよい時間帯はすでに満杯状態で、「思ったより早く限界がくるかもしれない」(黒野総裁)としている。
 (注、ここの便は発着回数のことで、片側計算の便数のこと)

【本誌の解説】
 暫定滑走路の1日あたりの発着回数は24回増えるという。4月オープン時が1日平均100便前後だったものが、120便前後になりそうだ。公団は暫定滑走路は年間6万5千回の発着回数といっていた。1日平均180便前後である。しかし、それは無理だ。黒野総裁も事実上の「満杯」といってる。
 このことは、時間帯のこともあるが、片側通行の連絡誘導路、逆くの字の誘導路のために、これ以上の増便は無理なのである。これで暫定滑走路は満杯なのだ。2500メートルに北側延長してもジャンボ機を暫定滑走路に入れられる連絡誘導路がない。あったとしても、すでに発着枠がないのである。これでは北側延伸の意気込みをなくしたのも無理はない。やはり北側延長論は地権者をたたき出すための恫喝でしかなかった。
 増便した20便も、インドネシアのバリ島の爆破事件などでアジア便に陰りがみえ、便の維持が可能かどうか。イラク侵略戦争が開始されれば運航休止か減便が続出するであろう。

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