●(6月3日) 経済財政諮問会議/経済活性化戦略を提示 羽田空港国際化など(6/4各紙)
経済財政諮問会議(議長・小泉純一郎首相)は3日、経済活性化戦略の報告をまとめた。6つの戦略と30の具体的な行動計画を提示。2000年代後半までに羽田空港を国際化するなど、具体策の検討・実施時期を示した今月中旬に策定する構造改革の基本方針に盛り込む。
戦略は(1)経営力、(2)産業発掘、(3)人間力、(4)技術力、(5)地域力、(6)グローバル――の6分野で構成。それぞれに3~7の行動計画が示されている。
地域力戦略は羽田空港国際化のほか、特定地域に新産業を集積させる構造改革特区の導入を明記。産業発掘戦略は、農地法の見直しによる企業の農業経営の開放や、03年度にニーズの乏しい統計の廃止などをうたった。観光産業の活性化策として、今年度中に学校の夏休みの一部を秋休みにする「休日分散化策」を推奨する。
活性化戦略は税制改革、政府系金融機関の見直しと並ぶ今年の3大テーマのひとつ。最終的に税制改革や予算編成を一体化した基本方針を策定する。
【本紙の解説】
小泉内閣の経済活性化戦略は、構造改革を進めるために「活性化」と称してバブル再来をもくろむものである。不良債権の処理を進めるひとつのポイントに土地価格の高騰が絶対条件になっている。これなしに不良債権を処理していくと、不良債権処理が新たな不良債権を生み出す結果になる。土地価格のバブル的高騰以外に不良債権処理の方法はないともいえる。
そのために、小泉内閣は都市再生本部をつくり、都市再開発を試みてきたが、基本的に失敗している。羽田の再拡張が決定したことから、国際定期便の就航を図り、東京湾の臨海地域の再生を「地域力戦略」の項目で経済活性化戦略の中心項目のひとつとして提示してきたことにすぎない。
羽田空港への国際定期便の就航が東京湾の臨海工業地帯の再生・上昇につながるとは思えないが、成田空港の地盤沈下になることだけは確実である。
●(6月3日) 昨年の航空業界/120億ドル損失(6/4日経)
世界の主要航空会社が加盟する国際航空運送協会(IATA)は3日、上海で年次総会を開き、昨年の9・11反米ゲリラの影響で旅客と貨物を合わせた2001年の世界の航空輸送量が前年より5・7パーセント減ったと発表した。業界全体の利払い後損失は過去最高の約120億ドル(約1兆5000億円)に達した。2001年の旅客数は前年比2・1パーセント減、貨物輸送量は同7・7パーセント減で、収益は1440億ドルに落ち込んだ。これに対し保険料急騰のあおりで営業経費は1535億ドルに膨らみ、大幅赤字になった。テロ対策として空港使用料の値上げが相次いだことも、負担増につながった。
【本紙の解説】
旅客数は2・1パーセント減に対して、航空輸送量は5・7パーセント減になっている。9・11の心理的影響で海外旅行などが減少し、その回復もままならないが、貨物の減少がそれ以上ということは、経済そのものが収縮していることを示している。貨物に心理的影響はなく、あくまで経済実体の反映である。景気後退がここまでくると、9・11を契機にした航空需要の落ち込みはかなり長期になりそうだ。それは世界経済の回復が前提になるからである。日本の航空業界や旅行業界は、航空需要の落ち込みは心理的要素が大きいとして、今年後半期には回復すると予測している。それは願望を予測に置き換えているだけのことだ。
●(6月5日) 新高速鉄道で成田市が91億円負担(6/5千葉日報、6/6朝日、東京、産経各千葉版)
成田新高速鉄道整備計画で、成田市は5日までに、地方負担分の総額334億円のうち、27・3%に当たる約91億円の拠出を決めた。同日会見した小川国彦市長が明らかにした。同市は6月市議会に提出する補正予算案に、建設主体となる第三セクター「成田高速鉄道アクセス」に対する負担割合の初年度分と出資金として、計2億0700万円を計上する。
同鉄道をめぐる地方自治体の負担割合については、県が昨年11月、成田市に対し、県50%、成田市40%、残り10%を他の沿線6市2村が負担する案を提示。しかし、成田市側は「負担が大きい」として反発したため、協議は難航していた。
県が新たに示したのは、県の負担を全体の65%に当たる217億円に引き上げ、成田市が27・3%、残り7・7%を6市2村が負担する案。これを成田市が了承した。残る7・7%の負担割合は、6市2村と県の間で協議が続けられる。
また、成田市が設置を求めている「土屋駅」について、小川市長は「現行のスキームには盛り込まれなかったが、2005年から始まる用地買収に間に合うよう、今後も県と協議を続けていきたい」と話した。
【本紙の解説】
千葉県が成田市の分担分を約13パーセント、約42億万円を減額し、土屋駅の設置問題で「協議」するとの約束で、成田市としても地方分担金を出資しなければならなくなった。
成田市は土屋駅設置を認めれば40パーセントの負担は応ずるといってきた。したがって、この減額は土屋駅設置を当面見送ることの引き替えである。
小川成田市長は土屋駅設置のために、「駅づくり、まちづくりフォーラム」実行委員会を設立し、集会まで開いたが、今後「協議」に委ねるという便法で、実は土屋駅問題は建設しないことで決着したのである。
●(6月6日) 国交次官/関空二期工事「需要弱く先行き.心配は事実」(6/7読売)
国土交通省の小幡政人次官は6日の記者会見で、凍結論が再燃している関西国際空港の2本目の滑走路建設について「関西の景気低迷で航空需要が弱く、先行きを心配しているのは事実だ。最近の実績なり、今後の見通しなりを慎重に分析して判断したい」と発言し、二期工事の延期・凍結に合みを残した。
二期工事をめぐっては、航空業界に当面2本目の滑走路は不要とする意見が出ており、近く開く国交省交通政策審議会空港整備部会(国交相の諮間機関)で議論の焦点になる見通しだ。
【本紙の解説】
5日に国内航空会社でつくる定期航空協会(会長・兼子勲日本航空社長)が、関空の2本目の滑走路は当面不要とした見解を発表し、近々、国土交通省に提出する。
それと、6日に国土交通省が関空の航空需要予測を下方修正し、07年の発着回数をいままで、「年間16万回」と予測していたのを「年間14万回前後」と下方修正していることが明らかになった。
このことを受けての国土交通省事務次官の記者会見である。国交省としては、関空二期工事を中止したい意向のようだ。しかし、いままで塩川財務相や扇国土交通相など自民党の関西選出議員に二期工事中止反対を叫ばれ押し切られている。そのために、定期航空協の提言や航空需要予測データをもって再度、中止を要求するのであろう。
それにもかかわらず、太田房江大阪府知事は、「ここまできたらちゃんと供用開始して、日本の空の国際競争力強化に資することが国として当然のことだ」とまでいっている。
●(6月7日) 反対同盟、成田駅前宣伝行動
反対同盟は、暫定滑走路供用開始後、騒音下を中心に5月24日から周辺宣伝を行っている。また、5月30日は天神峰の市東さん宅へのジェット噴射による排気ガス問題で成田市に抗議行動おこなった。
反対同盟は6月7日、周辺宣伝の一環として天神峰の排ガス問題を市民に明らかにするためにビラ配布を成田駅頭でおこなった。そのビラと写真を資料として添付します。(詳しくは本紙参照)
(添付資料) 反対同盟ビラ
◎吐き気するほどの異臭
◎暫定滑走路 ジェット噴射の排ガス被害
■成田市に汚染調査と対策塀の設置を要望
市民のみなさん。成田空港暫定滑走路の開港から2カ月になろうとしています。騒音は北側の成田市十余三、小泉、成毛、土室などで80から90デシベルに達し、南側の芝山町は7割近くが騒音地域になりました。窓が振動するなどの低周波騒音の被害が報告されています。芝山上空では着陸のために燃料を捨てる航空機が目撃されました。
■2日で白い紙が茶色く変色
誘導路から50メートルに農家が位置する成田市天神峰と、民家上空40メートルを飛行する東峰の騒音は100デシベルをこえます。これは許されない生活破壊・人権侵害です。
騒音だけではありません。天神峰では誘導路を自走するジェット機の排気ガスが農家を直撃します。「風がなく空気のよどむときは吐き気がする」というほどです。試験的に貼った紙が、わずか2日で茶色くなりました。
空港公団が建てたかたちばかりの「対策塀」の高さは、なんとわずか3メートル。ジェットの噴射口の高さは5~6メートルで、排気ガスはその上をこえて直撃します。「対策塀」は十余三地区では10メートルの高さです。天神峰では、わざと低くして住民を追い出そうとしているとしか思えません。
私たち空港反対同盟は、成田市空港対策部の小泉部長らを被害者宅に呼んで次の対策を要望しました。
①大気汚染調査を実施すること
②「対策塀」を10メートル以上の高さとし、光を遮ることのないように板を透明とすること
■住民生活を破壊する空港公団
「地元農家の合意がなければ着工しない」と公約したはずの政府・公団は、住民の声を無視して暫定滑走路を強行しました。だから滑走路は、短くて国際線が飛べず、誘導路が「へ」の字に曲がるなど欠陥だらけ、航空管制が混乱し着陸できない事態も起きました。
空港周辺と飛行直下の住民にとって空港は生活破壊そのものです。地域の暮らしと自然を守らなければなりません。成田市はただちに、大気汚染を調査し、対策塀を高くすべきです。
2002年6月7日
三里塚芝山連合空港反対同盟
(連絡先)事務局長・北原鉱治 成田市三里塚115

地元農家にジェット噴射を浴びせる日航の旅客機(ボーイング767型機)
誘導路の手前約50メートルのところに民家がある。5~6メートルの高さの噴射口から噴き出す排気ガスは、
手前の「対策塀」の上を通りこして農家を直撃する。成田市は、ただちに大気の汚染を調査し、塀を高くすべき
●(6月11日) 旅客実績予測割れ 半分程度の空港も(6/11朝日)
全国の地方空港の2000年度の国内線旅客実績が、80空港のうち51空港で、事前の需要予測を下回っていることが、国土交通省の内部資料でわかった。需要予測の半分程度の空港もあった。地方空港の整備をめぐって指摘されてきた「過大な需要予測」が裏づけられ、今後の空港建設にも影響しそうだ。
国交省の資料は、現行の第7次空港整備7カ年計画(96~02年度)を策定した際に使った00年度の需要予測と、00年度の旅客実績を比べている。
大都市の拠点空港である成田、羽田、関西、大阪の第1種空港を除いた80空港(地域拠点空港、離島空港などを含む)でみると、00年度の実績で、予測の半分程度かそれ以下だったのは、離島を中心に12空港。年間利用者10万人未満の小規模の空港を除くと、新幹線と競合する山形や大館能代(秋田県)、近くの福岡空港に利用者を奪われた形の佐賀空港など他の交通手段の影響を織り込んでいなかった例がある。予測を2~5割下回ったのは釧路や新潟、福島など13空港。2割以内は26空港だった。
逆に、予測を上回ったのは、福岡、那覇、広島、高松など29空港。
国交省(旧運輸省)はこれまで、個別の地方空港の需要予測を原則公表せず、全国合計値を出すにとどまっていた。「地元が設置・管理する空港の場合、需要予測も地元自治体の管轄」との理由だった。
しかし、昨年5月に総務省の行政監察で空港の需要予測の精度を高め、情報開示を進めるよう勧告されたうえ、むだの多い公共事業に対する批判が強まってきたのに配慮し、03年度からの次期空港整備計画では、既設空港の需要予測も盛り込む方向で検討している。
国交省幹部は需要予測について「計画策定時に将来の景気動向まで読み切れず、結果としてはずれることはある」と説明している。財務省や国交省内には「空港に限らず需要を過大に見積もって公共事業の量を確保するのが従来の手法。財政難のいまはもう続けられない」という声がでている。
【本紙の解説】
国交省がこのデータを出した背景は、今月の14日に交通政策審議会の空港整備部会があり、そこで、8空整の基本的内容を説明するからである。8空整は、国際空港のハブ空港建設からの撤退、地方空港の建設抑制、関空平行滑走路の供用開始の先送りとすることをすでに国交省としては決めている。しかし、空港整備からの戦略的撤退は、ゼネコン、自民党また省内の旧建設省関係から強い反対がある。国交省航空局ではその反対意見を封殺するために、航空需要そのものが後退していることを示すデータを作りあげたのである。
しかし、右肩上がりの航空需要予測データを作りあげてまで乱造してきた赤字空港の責任をどうとるつもりなのか。
●(6月11日) 堂本千葉県知事/「騒音に十分配慮を」(6/12朝日、毎日各千葉版、千葉日報)
今月3日に開かれた政府の経済財政諮問会議で経済活性化戦略の一つに「羽田空港を再拡張し、2000年代後半までに国際定期便の就航を図る」とされたことを受け、堂本暁子知事は11日、首相官邸を訪れ、福田康夫官房長官に「羽田を再拡張した場合、騒音問題に十分配慮してほしい」と申し入れた。福田官房長官は「よくわかっている」と答えたという。
堂本知事は、羽田空港の発着回数は1日750回あり、ほぼ全便が県上空を飛ぶため広範囲に騒音被害・電波障害があると説明。再拡張した場合、1日1100回の1・5倍となり、騒音が一層大きな問題となると指摘。
「羽田再拡張事業に反対するものではない」としたうえで、県上空だけを飛行するルート設定をしないよう申し入れた。
会談後に会見した堂本知事は「一つの県の知事として羽田国際化に賛成、反対ということではなく、国として関東、首都圏の国際・国内空港の構想をどう描くかが重要」などと騒音被害拡大を懸念するものの、国際化への賛否を避ける考えをあらためて示した。
【本紙の解説】
千葉県が羽田国際化に強く反対していた沼田知事時代は、成田空港建設の経緯もあり、政府・国交省も千葉県への羽田空港の騒音拡大を相当配慮していた。羽田空港の夜間チャーター便解禁の時も、千葉県上空を飛ばないよう、新しい管制方式のFMS(フライト・マネジメント・システム)が採用され、千葉県上空を飛ばずに東京湾上空を千葉県との境目をはうように飛ぶルートが決められた。
しかし政府・国交省は、成田新高速鉄道の政府無利子融資の増額と引き替えに「羽田国際化に反対しない」と約束した堂本・千葉県への配慮は薄い。「よくわかっている」との官房長官の言葉だけですまされている。
それにしても、堂本知事の「騒音に配慮」の要求もとんでもないものである。「千葉県の上空だけを飛ぶ設定はしないでくれ」というもので、東京都の上空も飛んで都側に騒音を拡大してくれという要求だ。
東京都側に騒音拡大とは、羽田空港A滑走路へ北側から進入する「ノースバード」という飛行ルートをさす。このコースは横浜ベイブリッジ周辺から北上し、東京の三軒茶屋でUターンし、渋谷、五反田、大井町を通り、羽田のA滑走路に着陸する。この飛行ルートが設定されると羽田A滑走路の南風時の北側からの着陸が可能となり、羽田空港の離発着能力は飛躍的に増加する。
しかし、この飛行コースは東京都南部地域を騒音地獄にたたき込み、ヘリコプターとの飛行コースと重なり合って衝突事故も懸念されている。昨年、同飛行コースの調査飛行が行われたが、実際のルート設定は現在棚上げされている。
このコースの飛行高度(進入機)は渋谷上空で600メートル前後、五反田上空450メートル前後だ。五反田駅あたりまでが成田空港でいうところの「騒音防止地区」になる。大崎駅ぐらいまでが新築禁止・移転対象地域の「騒音特別防止地区」だ。羽田空港C滑走路へ北側進入で千葉側から進入して左旋回して着陸する場合と、騒音レベルが数段違う。羽田空港から船橋市まで直線距離で20キロ以上あり、千葉県側を飛ぶ航空機は高度1000メートル以上の上空だ。千葉県内の騒音レベルは、夜間以外は実質的に問題にはならない。
堂本知事はこのことを理解したうえで「東京都への騒音拡大」を要求しているのだろうか。羽田による千葉県への騒音問題をかたって東京都民に大騒音を押しつけることより、成田空港の騒音をもっと問題にすべきではないか。
●(6月11日) 芝山鉄道10月27日開業(6/12読売千葉版)
成田空港と芝山町を結ぶ第三セクター「芝山鉄道」(出山隆社長、本社・芝山町)の開業が、今年10月27日と決まった。成田空港開港前年の1977年3月、同町が地域振興のため、運輸省(現在の国土交通省)に鉄道建設を要望してから四半世紀を経て、町民の願いが実現する運びとなったが、採算性など課題は多い。
同鉄道は、空港中央にある京成電鉄東成田駅と、芝山町の空港整備地区に新たにできた芝山千代田駅を結ぶ全長2916メートル。予定地に空港反対派の一坪共有地があり、一部ルートを変更。今後は、実際に車両を線路上で走らせる入線試験や運転士の訓練などを行い、運賃の認可や国土交通省の施設検査などを経て開業となる。
【本紙の解説】
芝山鉄道は徹頭徹尾、三里塚闘争を解体し、平行滑走路と横風滑走路の建設を進めるための政治鉄道である。採算は絶対にとれないことを国交省・公団はあらかじめ承知している。異常きわまりない鉄道だ。
芝山鉄道は、一期開港前後の農業振興策(成田用水工事など)と同様に、芝山町の住民を空港賛成派に取り込むために計画された鉄道である。芝山鉄道のトンネル工事は木の根の小川源、小川一彰、小川直克と芝山町民を対立させるために画策されたものだった。また平行滑走路建設が行き詰まっていた99年1月、芝山町長に収まっていた相川勝重を使って、鉄道ルート上にあった一坪共有地の解消運動も進められた。ルート変更すればいいものを、一坪共有地の解消=三里塚闘争の解体運動に利用したのだ。事実、鉄道は最終的にルート変更によって完成にこぎつけた。
しかし、芝山鉄道を利用する芝山町民は少ないらしい。利用するのは空港の整備地区に勤務する者がほとんどだ。需要予測でも利用者の大半は空港勤務者である。「1日の利用客数が5400人(空港勤務者4000人、住民1400人)」となっている。しかし、芝山町の住民は8000人である。700人が往復して1400人となるが、それだけの人が毎日、芝山鉄道に乗ることはない。通勤者のほとんどが乗用車を利用している。
第三セクターの鉄道の大半が赤字といわれている。芝山鉄道もその轍(てつ)を踏むことになる。寂しい限りの開業になることは確実である。
●(6月12日) 新高速鉄道で小川市長/巨額な地元負担金後世代に負担残さぬ(6/13千葉日報)
成田市の6月定例議会本会議で、内山健市議が成田新高速鉄道について、巨額の負担金や駅周辺開発事業費が「将来、財政破綻を導かないか」と一般質間。小川国彦市長は「後世代に過重な負担を残さないように、最大限の配慮をしていく」と約束した。市が行っている事業化調査では「駅が設置、バス路線が開設され、市北部地域や周辺市町村からの利用も見込んで需要予測している」と述べた。
【本紙の解説】
成田新高速鉄道整備計画で成田市が今月5日に、地方負担分の約30パーセント弱の約91億円の拠出が決定したことをうけて市議会での小川市長答弁である(6月5日付日誌を参照)。地方分担分の40パーセントだったものを約30パーセント弱の負担に軽減したことで、土屋駅設置問題は当面見送ることで一致したのである。
減額されたとはいえ、巨額の負担がむしろ問題になっている。ニュータウン北駅ができるとはいえ、成田市民の利用価値は低い。バス路線が現在の京成成田駅、JR成田駅のバスターミル発着便と競合し、むしろ不便になるともいわれている。
暫定滑走路の供用開始と羽田空港の国際化容認の見返り事業とはいえ、地方負担額の巨額さに小川市長、成田市当局、保守系議員はびっくりしている始末なのである。
●(6月13日) 郵送禁止の液体発見/成田空港 中国から(6/14千葉日報)
郵政事業庁千葉郵政監察室は13日、成田空港内で万国郵便条約で郵送が禁止されている「塩化スルフリル」が見つかったと発表した。
郵政監察室によると、12日午後2時ごろ、郵便物が入ったコンテナの中で郵袋から白い煙がでているのを空港職員が見つけた。中国から東京都内の薬品会社あてに送られた国際スピード郵便で、刺激臭のある液体が中の容器から漏れていた。調べたところ、塩化スルフリルだったという。
塩化スルフリルは農薬などの原料で、吸い込むと肺水腫を起こすことがあり、死亡するおそれもある。郵送された量は数百ミリリットルで、職員らに健康被害などはなかった。ラベルが溶けていたため差出人が特定できず、受取人の薬品会社に事情を聴いている。
●(6月13日) 成田空対協/「成田空港単独で民営化を」(6/14朝日、毎日、産経、東京各千葉版、千葉日報)
成田市内の商工関係者らでつくる「成田空港対策協議会」(鬼沢伸夫会長)は13日、同市内で総会を開き、新東京国際空港公団の民営化について「成田単独での民営化を求める」との見解をまとめた。
公団民営化をめぐっては国土交通省が、成田、関西、中部の3空港について空港整備を一体的な公的法人(下物法人)が受け持ち、旅客ビルなどの運営は空港ごとに民間に任せる「上下分離方式」を提案している。
これに対し、協議会は「債務超過といわれる関西空港の救済色が強い」「地域への説明、情報公開が行われていない」と批判。成田単独での民営化を求めたうえで「県、関係市町村、地域住民が経営に参画できることを前提とした民営化こそが進むべき道だ」としている。
国交省案に対しては、県や地元自治体などが3空港一体ではなく、成田単独で「下物法入」をつくることを国に要望している。
なお、この総会で、15年間務めた鬼沢夫会長(65)を相談役、同市国際交流協会の豊田磐理事長(65)を新会長とする役員人事を全会一致で了承した。
【本紙の解説】
昨年の12月14日に政府の行革推進事務局で成田空港の民営化方針は決定したが、民営化の具体的な組織形態については先送りする形になっている。国交省は成田、中部、関空の3国際空港の上下分離の民営化で「上物」のターミナルの運営は3つの民間会社、「下物」は公的法人で一括整備、管理する方式を決定している。
これに対して、石原行政改革担当相の私的諮間機関「行革断行評議会」は成田と羽田を一体化して完全民営化案を提案。自民、公明、保守の与党行財政改革推進協議会(座長・山崎拓自民党幹事長)は、成田空港の長期リース方式による民営化を提案している。
政府は今年の12月までに民営化のスキームを決定して法案化し、来年の通常国会に提出することになっている。
上記方式に対して、千葉県の堂本知事、千葉県自民党、成田空港圏自治体連絡協は、「民営化は成田単独」を提言し、「下物」整備・管理は国の関与と責任でやることを要望している。また、堂本知事は民営化の前提に4項目の実施を要求している。4項目は(1)当初計画の2500メートルの滑走路整備、(2)成田新高速鉄道の早期完成、(3)暫定滑走路の騒音対策の実施、(4)地域振興策、地域共生策の確実な実施をつけ加えている。
堂本知事をはじめとして千葉県サイドの要求は、地域振興策、騒音対策、成田新高速鉄道の建設などの、地元への見返り事業を確保するために「成田単独」を要望しているだけである。
空港の経営形態の根幹は安全を第一に据えたものでなければならない。交通事業が一般の民間事業と違うところは、事故が起こった場合の犠牲者の規模が格段に大きいことだ。航空事業はとりわけ大事故の危険が大きい。そのために営利目的だけでは割り切れない公共事業なのである。その点、千葉県や成田空対協などが地元利害だけを基準にして空港の経営形態を提案していることは論外だ。
また、国交省などの「3空港上下分離による民営化」も、関空救済をはじめとして政治家と官僚の利害をいかに守るかという案でしかなく、労働者人民にとって不愉快きわまる論議だ。
●(6月14日) 3空港民営化/上下分離を(6/15朝日、毎日、日経、東京、千葉日報)
国土交通省は14日、成田、関西、中部の3空港の一部民営化を盛り込んだ「上下分離案」を導入した場合の収支試算を示し、この収支のもとになる航空需要予測もあわせて公表した。
関西、中部が持つ債務のうち年154億円分を成田が肩代わりする構図となることを明らかにした。成田にとっては、世界一高い着陸料値下げにとってのマイナス要因ともなるだけに反発も出そうだ。
成田の民間会社が支払う年間使用料は、平準化しない場合よりも154億円多い447億円。逆に、関西は127億円少ない349億円、中部も28億円少ない130億円だった。
国交省が進める上下分離案は、3空港の用地造成で生じた債務を公的法人がまとめて引き受け、民間会社が支払う使用料から20~30年かけて返済していく計画。
航空需要予測では、2本目の滑走路が開業した成田は、00~07年度の年平均伸び率は5・8パーセント。07年~12年までは4・5パーセント。関空では、1・7パーセント、4・2%パーセント。中部で1・6パーセント、2・0パーセント(00年度は名古屋空港の実績)。その結果、関西は07年度までに16万回としていた従来の予測を大幅に下回り、13万6千回にとどまった。
【本紙の解説】
国交省は3空港の上下分離論による一部民営化のために、デタラメなデータを交通政策審議会に提出している。政府、自民党内では個別民営化や、地域統合(成田と羽田、関空と伊丹)の意見が強い。これらの民営化論と3空港統合による上下分離・民営化案の違いはどこにあるのか。
上下分離案は統合された下物法人を公的法人とすることで、事実上は民営化されず3空港を国交省の監督下に置くことになる。「ターミナルなどの施設の運営を民間会社(上物法人)」といわれるように、民営化される部分はターミナルなどの施設だけである。その年間使用料の額は国交省の監督下で下物法人が決めることになる。これでは民営化とは決していえない。
また、関空の経営破綻を救済するのための3空港統合だとの批判はその通りである。現在の財政難で、国からも地方自治体からも、地元資本からも援助が見込まれない中で、関空の倒産回避のための苦肉の策だ。旧運輸省以来の空港建設政策の失敗を取り繕うための方策である。
つまり3空港統合・上下分離による民営化は、国交省航空局による官僚的権益をそのまま維持するためにだされた提案なのだ。
また、航空需要予測も「3空港の上下分離案」をもっともらしくするためのデータである。その内容はずさん極まりない。成田で「07年まで、年平均5・8パーセントの伸び」などありえない。関空のデータはもっとインチキである。「07年度まで年間伸び率1・7パーセント」も疑わしいが、08年から急に「4・2%パーセント」とは論外の予測だ。
国交省の意図は、関空二期工事の供用開始時(07年予定)を先延ばしするために、07年までの予測をこれまでより低くし計算すること。ただし、そのままだと累積赤字が雪だるま的に増えるので、08年から需要が「急回復」することにしたもの。つじつま合わせにすぎない。
●(6月15日) 反対同盟が6・30現地闘争をよびかける
6・30現地闘争のお知らせ
三里塚芝山連合空港反対同盟
反対同盟とともに闘う支援のみなさん。
暫定滑走路の供用後、敷地内に対する権利侵害と生活破壊攻撃が強まっています。
天神峰・東峰地区における騒音とジェット噴射の排気ガスは予想以上に激しく、許されるものではありません。また空港公団は東峰十字路の北にある駒之頭開拓組合道路の入り口に、車両の通行を阻止するために3基のコンクリート塊を置きました。
同道路は開拓組合の所有地であり、通行に制限を加えることは所有権・通行権を侵害する違法行為です。反対同盟は5月20日付で通告書を空港公団に送り、成田市に対しても行政指導を求める要望書を送りましたが、公団・成田市ともにいまだ答えられずにいます。
また木の根では住民に無断で生活道路を封鎖するという攻撃がありました。
反対同盟は、騒音と排気ガスの被害を明らかにするために成田市を呼び、状況を確認させるなど生活と権利を守る闘いを始めていますが、こうした暴挙の一つ一つを弾劾しうち破る決意です。
そのために下記のとおり現地闘争に決起します。緊急ではありますが、多くの皆さんの結集をよびかけます。
2002年6月15日
記
6・30現地闘争
【日時】 6月30日(日)午後1時30分
【集合場所】開拓組合道路(東峰十字路北約100m先、川嶌さん宅前の開拓道路です)
●(6月18日) 成田新高速鉄道/県野鳥の会も知事に要望書(6/19朝日、毎日各千葉版)
成田新高速鉄道計画の有力ルート案が印旛沼を横断していることについて「県野鳥の会(富谷健三会長)は18日、経済面ばかり優先せず、自然環境保全を重視するようにという要望書を堂本暁子知事に提出した。
印蒲沼に環境省指定の絶滅危倶種「サンカノゴイ」などが生息していることから、かけがえのない自然が失われることは地域社会にとつて極めて大きな損失としている。この問題では、別の自然保護団体の「日本野鳥の会県支部」が4月に慎重なルート選定を求める要望書を知事に出している。
【本紙の解説】
成田新高速鉄道は、成田新幹線の計画が凍結された代案として計画されたものである。1982年に、運輸省の諮問機関がA案、B案、C案の3つのルートを提案した。A案は、JR東京駅から新砂町、西船橋をへて新鎌ヶ谷から北総公団線につなげるルート。B案は、京成上野から京成本線を通り高砂から北総公団線につなげるルート。C案は現行の成田エキスプレスが運行しているルートである。
A案は東京駅に接着するなど鉄道としては最適であったが、東京駅から新鎌ヶ谷までの新線建設費用が膨大であり、事実上廃棄された。C案は成田エキスプレスが運行されている。したがって、建設するとすればB案となる。また、A案も新鎌ヶ谷からはB案と同じルートである。
印旛沼を通過するため現在は架橋案で進行している。トンネルの方が環境破壊は少ないが莫大な費用がかかる。
「環境派」を自称する堂本千葉県知事は、印旛沼の環境破壊につながることを百も承知で成田新高速鉄道の建設を推進している。そのため、4月に知事あてに出した「日本野鳥の会県支部」の要望書も完全に無視している。堂本知事の環境問題の関わり方は開発や建設を優先し、その上で「人工的に自然を保存」するということである。「野鳥の絶滅のおそれ」でもって建設計画を中止するという考えは残念ながら持ち合わせていない。また、印旛沼周辺は古墳が多いところである。そのために、鉄道工事で遺跡や化石が発見される可能性が高く、そのことで工事が3年前後中断されるといわれている。
成田新高速鉄道は営業線として成り立たない赤字路線である。建設計画も、羽田が国際化されずに、成田の国際線路線が右肩上がりで増加していくことを前提にされている。周辺自治体に赤字を過重負担させることになる。
空港へのアクセス時間の短縮といっているが、実際は短縮にはならない。すでに成田エキスプレスは東京駅と空港第2ビル駅間を最も早い列車で50分である。成田新高速鉄道が都心と成田空港を36分で結ぶといっているが、それは、成田空港第2ビルと日暮里の間である。日暮里は真の都心とはいえない。日暮里から東京駅へは乗換5分プラス乗車9分かかり、36+5+9=50となり、所要時間の短縮にはならない。
成田新高速鉄道は無駄な公共投資であり、自然環境を破壊するだけであり、建設計画を即刻中止すべきである。
●(6月21日) 米大手航空会社/賃下げへ動き拡大(6/21日経)
米航空業界で賃金カットの動きが出てきた。ユナイテッド航空の持ち株会社UALとUSエアウェイズがそれぞれ労組と合意したほか、アメリカン航空なども追随する可能性がある。航空大手の賃下げ合意は湾岸戦争後の景気後退で経営が悪化した1990年代初め以来。昨年の9・11以来、落ち込んだ旅客需要の回復が遅れ、赤字経営から脱却できないのが原因だ。
UALは6つある労組のうち、もっとも賃金が高いパイロットの組合(9200人)と年間約2億4000万ドルの賃金カットで合意した。会長以下の役員や管理職など非組合員にも年4億3000万ドルの報酬カットを実施する。整備士などの労組には一律10パーセント程度の賃金カットを提案した。
USエアウェイズは2004年まで従業員の賃金を毎年5パーセント削減することで労組と合意した。さらに、今後数年間は経営が厳しいと判断、2005─09年までの5年間、毎年5パーセント以上の賃下げを実施する方針。労組には近く提案する。
米航空大手は9・11反米ゲリラの影響で2001年の最終損失が上位6社の合計で76億ドルと、過去最悪だった92年を上回った。旅客需要は今春から回復が予測されたが、業績の先行きに不透明感を強める企業が出張費用の節減を加速、収益源のビジネスクラスの不振が長引き、4─6月期も6社全社が赤字の見通しだ。
【本紙の解説】
すさまじい賃下げ攻撃である。高給取りといわれるパイロットであっても、一人あたり平均約2万7000ドル(日本円で324万円)もの賃金カットは異常な事態というほかない。一般組合員も一律10パーセント賃下げである。
USエアウェイズでは、2009年までの7年間、毎年5パーセント以上の賃下げをやろうとしている。7年間で3割以上の賃下げ計画である。米経済の景気落ち込みの深さと航空需要の後退のすさまじさを示している。
今月10日にIATAが発表した2001―05年の需要予測でも、国際定期便旅客数は全方面平均では年率3・5パーセントの伸び率が期待できるとしたが、太平洋横断路線はゼロ成長にとどまると見込んでいる。日本の航空会社は、太平洋路線でのビジネスクラスの客がもっとも重要な収益源であり、この路線の需要回復の遅れは決定的痛手となる。
日本の航空業界と旅行業界は、今年後半には航空需要の回復が見られると予測していた。実際はそれどころではない。甘い予測という以上に経営を破産させることになりそうだ。路線の縮小で乗り切る以外に破産を避ける方法はない。成田空港のスロットはさらに空きができることになる。成田の暫定滑走路の必要性はまったくなくなる。
●(6月21日) 羽田再拡張は地元も負担を(6/22朝日、毎日、日経、東京)
国土交通省は21日、羽田空港に4本目の滑走路を造る再拡張事業の財源問題で「可能な限り(国や自治体の)資金を投入して利用者の負担を減らしたい」などと、東京都など地元自治体にも負担を求める案が妥当とする考えを交通政策審議会で示した。
東京都のほか千葉・神奈川両県にも負担を求めるかどうかなど負担の範囲や国と自治体の負担割合も今後、審議会で検討する見通しだが、石原慎太郎都知事は地元負担を批判しており、調整が難航しそうだ。
国交省は再拡張事業について「国や自治体の資金を集中的に投入すれば、事業の早期完成が可能」と利点を挙げている。
国交省は財源として(1)一般会計で充てる額を増やす、(2)財政投融資や民聞の有利子資金の活用、(3)自治体の負担─―などを提示。(1)は国の財政難のため困難で、(2)は「金利負担によって利用者の負担増につながる」と否定的な見解を示した。
【本紙の解説】
国土交通省の深谷憲一航空局長は、8空港では「地方空港は概成した。今後は羽田など大都市拠点空港への投資に重点化していきたい」と述べている。(6/19産経新聞特集『転換公共投資』第7部・空港整備から)
地方空港の建設からは「概成」と称して、基本的に全面撤退。焦点となっていた新福岡空港新設に関し「結論」を見送り、来年度予算で調査費などを要求しないことを国交省は決めている。
大都市拠点空港建設でも国の財政難から、いままで通りにはいかなくなった。国が管理し、整備財源も全額を国が担う「第1種空港」でも、従来の原則を崩し、地方自治体に負担を要請してきた。
国交省はこの事態の説明として、国の一般会計の財政難を理由にしているが、それにはウソがある。空港整備の財源は、空港整備特別会計(各空港の着陸料などの利用者負担からなる収入)と一般会計からなり、それとは別に財政投融資などの借入金で成り立っている。むしろ、この間の空港建設の主力財源は財投であった。また、一般会計と特別会計の割合は、一般会計が15パーセント前後をしめているだけで、大半が特別会計であった。
この間のデタラメな空港建設で空港整備特別会計の債務残高が1兆円を超している。さらに、ほとんどの空港が赤字で、財投の借入金返済が困難化している。これが空港整備をめぐる財政事情である。国交省航空局が国の一般会計の財政難を理由に地方自治体に空港建設の負担を回すことは、自分の責任をあきらかにしないためのウソである。
●(6月24日) 東峰神社裁判第1回公判(6/25朝日、読売、毎日、東京の各千葉版、千葉日報)
新東京国際空港公団が昨年6月、成田空港予定地内にある東峰神社の立ち木を伐採したのは、神社を精神的なよりどころにしてきた地区住民の人格権を侵害したとして、成田市東峰地区の住民7入が空港公団に1400万円の損害賠償などを求めている訴訟の第1回口頭弁論が24日、千葉地裁(一宮なほみ裁判長)であり、被告の公団側は答弁書を提出し、全面的に争う姿勢を見せた。
訴状によると、空港公団は、B滑走路南端から約120メートルにある同神社の周りのヒノキ、竹など500本以上を航空法に基づいて伐採した。
原告側は、登記簿上は空港公団が所有している神社の土地について、「神社が建立された時点で、東峰地区全体の総有関係に入った」として、「(被告は)登記簿上の表見的な所有名義人であるにすぎない」と主張。損害賠償のほかに、登記簿の名義変更や立ち木の原状回復などを求めている。
これに対し公団側は、土地について「東峰地区の総有的所有の対象となった旨の主張と、立ち木が東峰神社の神社林であるとする主張に対して争う」などとして、請求の棄却を求めている。
【本紙の解説】
公団の答弁書の論旨は以下の通りである。(1)神社そのものが東峰地区の総有であることは認める。(2)神社の土地の総有関係は認めず、公団の土地買い入れと移転登記を無効とする原告側主張とは争う。(3)伐採した樹木が東峰神社を構成する神社林であったという原告側主張とは争う。
公団の主張は、神社そのものが東峰地区の総有関係にもかかわらず、その土地は売買可能な個人所有であるという主張である。共同体所有の神社が、個人の土地に立っているという例は全国でもほとんどない。氏神様の神社のような個人所有の神社をのぞき、地域共同体や氏子で成立している神社は基本的にすべて総有関係にある。総有関係は近代的登記となじまず、事実上、登記は不可能であり、登記名義はあくまで便宜的なものにすぎない。
戦後、土地登記を徹底させるために、全国の神社は伏見稲荷(ふしみいなり)大社などを例外として、ほとんどの神社が神社本庁の所有として登記された。しかしこれも便宜的であり、実際の所有は氏子の総有関係にある。
77年に闘われた岩山の産土参道破壊阻止闘争の岩山の産土神社も、名義は神社本庁であったが、岩山の地区の総有関係にあった。そのために、神社の移転には岩山地区全員の承認が必要だった。しかし、当時の行動隊長・内田寛一は神社本庁の所有であるので、反対しても意味はないとのペテンで全員からハンコをとったのである。
さらに、公団側は、土地が公団のものであったとしても、伐採した樹木が神社林であった場合は、伐採する権限がないので、神社林であることを否定してきた。これには総有関係の否定以上に、無理がある。神社にはかならず境内があり、そこに植生している樹木は神社林である。「神社周辺に植生している」として神社から境内をなくしているのである。境内がない神社はない。あり得ない論理である。
公団は、神社の立木伐採が暫定滑走路開港の絶対必要条件だったので、法的に権限がない違法行為であることを承知で伐採したのである。その違法行為を裁判ではなんとか法律的に正当化しなければならない。そのために、こんなデタラメな答弁書となったのであろう。
国家権力の無法がまかり通ってきたのが成田空港であり、それと闘ってきたのが三里塚闘争である。東峰神社裁判は、神社の土地登記の無効をかちとる闘いであるが、それにとどまらず、国家による空港建設の無法ぶりを裁く裁判でもある。
●(6月24日) 成田空港、騒音評価の改善を(朝日、東京の各千葉版、千葉日報)
成田市の小川国彦市長は24日、環境省を訪れ、現行の航空機騒音の評価基準は実情に合わないとして、大木浩環境大臣に基準の改善を求める要望書を提出した。
同市は成田空港の2本目の滑走路となる暫定滑走路の供用開始日から1週間、航空機騒音を測定。その結果、4000メートル滑走路と合わせた測定値が暫定滑走路単独の測定値よりも小さくなる逆転現象が一部地域で起きた間題で評価方法の改善を求めることにした。
現行の航空機騒音の環境基準は、1973年12月に環境庁(現環境省)が告示。通称「うるささ指数」と呼ばれる加重等価平均騒音レベル(WECPNL)を指標としている。
同日会見した小川市長は「騒音地区の線引きをする現行法は、WECPNL値をもとに決まっており、この結果では住民にとって不利益となる場合がある。成田空港周辺の実情に合った評価方法に改善してほしい」と話した。
【本紙の解説】
うるささ指数とは、航空機のうるささを示す国際基準であり、1971年に国際民間航空機関(ICAO)が採択した。1回の持続時間が短く、間を置いて継続する航空機騒音の特殊性を評価するため、計測データを数式処理した値である。騒音量に飛行回数、昼夜別の時間帯の相違などを加えて算出する。73年に環境庁が定めた「航空機騒音に係る環境基準」では、住宅専用地域はW値70以下、それ以外は75以下とされている。それ以上のうるささ指数の場合は、賠償対象にするという環境基準である。しかし、横田、嘉手納基地訴訟は75以上、小松と厚木基地訴訟は80以上と、裁判での判断はまちまちになっている。
うるささ指数の計算は、航空機騒音のない通常の状態から、航空機の飛行で10デシベル以上高くなった数値を抽出し、そのピークレベルの加重平均値(単位はデシベル)をだし、それに昼夜別など時間帯における航空機の飛行回数を勘案して算出する。
この方法だと、主だった問題点が2点でてくる。
第1は、飛行機が飛んでいない時の騒音レベルが低い地域では、50デシベル前後の低い航空機騒音でも「ピークレベルの平均値」をだすための基礎数値にいれるので、加重平均値が下がってしまう現象が生まれることである。
第2の問題点は、飛行回数の「勘案」の仕方である。
デシベルという単位は10デシベルで騒音量が約2倍になる。しかし便数換算は、便数が2倍になっても、3デシベル分ぐらいしか平均値に加算しない。夜間飛行は、昼間より3倍以上加算することになっている。
成田市大室地区の場合は、環境全体が静かであり、航空機騒音が比較的低い数値でも「ピークレベル」としてしまう。そのため、4000メートル滑走路の騒音が、むしろ全体の「加重平均値」を押し下げる結果になっている。また、便数の増加は低くしか勘案されない。そのために2つの滑走路からの航空機騒音をうけながらも、うるささ指数が実感よりも低く提示されるのである。
うるささ指数とは、航空機騒音が問題になって住民運動が起こり、その対策として打ち出された数値概念である。そのため、航空会社と空港に有利な数値がでるようになっているのである。便数の増加がうるささ指数をあまり上昇させないことはその代表例だ。
成田市の小川市長は、うるささ指数の計算の仕方だけを問題にしている。しかし、騒音問題の根本は空港の存在そのものにある。便数の増加はこの問題に拍車をかけている。元社会党の代議士だった小川市長は反対同盟を裏切って空港建設賛成に転じた。その上、あろうことか暫定滑走路の当初計画化(2500メートルへの延長)を国交省に陳情している始末だ。その市長が騒音が問題だと主張しても相手にされないのは当然だろう。
うるささ指数が日本に導入された背景には、4大基地訴訟として横田、嘉手納、小松、厚木の裁判が闘われた。その反動として、闘いを規制する目的で73年に導入された。その代償として賠償問題がある。
空港建設全面賛成にまわり、航空機の増便にも反対しない成田市長では、「成田空港周辺の実情に合った評価方法に改善してほしい」と要望しても、「うるささ指数は国際基準だ。日本だけではどうにもならない」として、門前払いされるだけである。
●(6月28日) 芝山鉄道開業で中村総裁/「自治体も協力必要」(6/28読売、毎日、東京、産経の各千葉版、千葉日報)
新東京国際空港公団の中村徹総裁は27日の定例会見で、芝山鉄道では「成功させるため、空港公団も最善の支援をしていくが、地元自治体の支えも必要」として、利用客の確保のほか必須とみられる経営赤字分の補てんについて地元自治体の協力が必要との認識を示した。また、「地元自治体の支援がないと成り立っていかない鉄道」とも述べ、支援の中に「金銭的な問題にも入っていかざるを得ない」と述べた。
記者会見では、サッカーワールドカップ(W杯)開催期間中の成田空港の利用状況(速報値)が発表された。1次リーグ期間中の今月1~10日の海外出国者数は約32万人で、前年比1・4パーセント減。11日以降に盛り返したことで、1~20日の出国者数は前年比微増の約66万5800人となった。
同公団は「一般客が混雑を敬遠してW杯期間中の旅行を控えたのか、テレビ観戦にくぎ付けになったのか」と首をひねっている。会見で、中村総裁は「観戦チケットの売り方なども影響しているのではないか。一般の旅客は減ることはないと思っていたが、予測が外れた」と話した。
一方、海外からの入国者数は、W杯開幕前の先月25日~31日の1週間で約23万3000人。前年比9パーセント増だったが、1日当たりの利用客のピークは同26日の約4万人で、5万人弱と見込んだ公団の予測を下回った。
成田空港ではW杯で入出国ラッシュを見込み、4月に2本目の暫定滑走路をオープンさせていた。
現在工事中の第1旅客ターミナルビル第3サテライトは9月30日に完成、12月16日から使用を開始することを明らかにした。
【本紙の解説】
公団総裁の芝山鉄道の地元負担への言及は、芝山町役場で前日の27日に、芝山鉄道開業予定発表の記者会見で相川町長(芝山鉄道の非常勤取締役)の発言に対応したものである。相川町長は「赤字を減らす取り組みは必要だが、日本経済を支えている空港であり、騒音直下にある町民にとって赤字であっても鉄道は必要で当然。延伸で空港と共生の地域づくりを進める」と述べている。
同席していた芝山鉄道の梅田昭文社長は、昨年まで空港公団の保安警備部長であったこともあり、公団の利害代表者として、「会社としては延伸はコメントできない」と延伸に賛成できないとの立場を表明した。芝山鉄道の赤字問題と芝山町の中心である小池地区までの鉄道の延伸問題で、公団と芝山町が全面対立に入っている。
「開業時から赤字が確実な異例の鉄道」までマスコミに報道され、それを「赤字は当たり前」と開き直った開業発表の記者会見も前代未聞である。公団は、芝山町を空港賛成にするために、芝山鉄道の建設を受け入れたのである。その芝山町が、町の中心までの延伸を要望するのは「当然」といえば当然だ。それを芝山町が「赤字は当然で公団が負担すべき」と開き直り、公団側がそれに直対応して「地元負担すべき」と対応するとは尋常な関係ではない。この対立にも、空港と周辺住民の「共生」はあり得ないことが示されている。芝山鉄道は「苦渋の発車」となるが、開業までまだまだ「迷走」しそうである。
サッカーW杯開催期間中の成田空港の利用状況(速報値)が、「前年比1・4パーセント減」とか、「前年比微増」となり、公団は「首をひねっている」とか、「予測が外れた」とかいっているが、そんなことですむ問題ではない。
そもそも暫定滑走路はW杯で成田空港が満杯になる、1本の滑走路では対応できないとして、それを理由に建設が強行されたのである。W杯を口実に、成田空港建設の歴史的経緯を無視することまでやったのだ。結果はA滑走路だけで十分対応できたのだ。
新たに騒音地獄にたたき込まれている周辺住民に、この事態をどう説明するのか。「予測が外れました」とでも説明するのか。「首をひねって」すむ問題ではないのである。
●(6月30日) 反対同盟/現地闘争
6月30日、暫定滑走路開港後初めての現地集会が東峰十字路北側の開拓道路で行われた。集会には反対同盟を先頭に動労千葉、婦人民主クラブ全国協議会、全学連など150人が参加し、ジェット騒音被害などによる叩き出し攻撃を弾劾した。北原鉱治事務局長は「三里塚は血を流して闘ってきた。私は生涯をこのたたかいに捧げる」と訴えた。(詳報は本紙参照)
●(6月30日) 国交省/自衛隊・在日米軍の訓練空域/未使用時間空域開放要請へ(6/30朝日)
民間機が原則飛行禁止となっている自衛隊や在日米軍の訓練空域について、国土交通省は、日曜日や祝日など、訓練に使用していない時間帯は、民間機の飛行を認めるよう、防衛庁や米軍に要請する方針を固めた。民間機の飛行時間の短縮や燃料の節約、交通量の拡大が可能になる。03年度からの第8次空港整備計画に盛り込み、05年度から実現させたい考えだ。
日本の上空には、国土の周囲を取り巻くように自衛隊や米軍の訓練空域が高度などにより、設定されている。民間機の飛行は、一部空域で例外的に認められているが、大半は訓練空域を迂回するように飛行、目的地へ最短距離で飛べない場合が多い。
国土交通省は今後、訓練空域を民間機が通過できるようになれば飛行経路を選ぶ幅が広がり、需要に対応しやすいと判断している。
訓練空域が条件付きでも「開放」されれば、例えば札幌―福岡の場合、少なくとも5分間の飛行時間短縮ができ、その分の燃料も節約できる。気流の悪い空域を避けられるなど、安全面の利点もある。
民間の航空路と訓練空域は現在、安全性から「完全分離」が原則だが、国交省の計画では、05年に福岡市にある「航空交通流管理センター」を大幅に拡充する。この際に、自衛隊機などの空域も訓練使用の有無を即時に把握できる仕組みをつくる。民間航空路と軍用機の訓練空域の完全分離は、71年の岩手県雫石町上空での自衛隊機と全日本空輸機との衝突事故を機に閣議決定された。
【本紙の解説】
米軍空域や自衛隊空域の「休日」を民間機が使用することを8空整は目指しているとの朝日新聞の報道だが正確さに欠いている。先月の交通政策審議会航空分科会航空保安システム整備部会は、「民間・防衛庁・米軍の空域の一元管理」を目指すと提案している。また大手航空会社で組織する定期航空協も「一元管理することで効率的に空域を利用できる」と主張、一元管理を強く要望している。一元管理とは、米軍による空域の一元的管制をさす。軍事空域の「休日使用」はこの米軍による一元管理の出発点だ。
空域の一元管理は、民間機側からみれば軍事空域の民間使用だが、日本側の有事体制が法制的にも実体的にも整えば、米軍は応じる意向である。
米軍空域への民間機の侵入は、これまで認められなかった。これは有事の際に米軍が空域を占有的に使うことが法的に保証されていなかったことによる。しかし、在日米空軍の航空管制の考え方が、新安保ガイドライン締結以降変化している。米空軍基地の軍民共用や米軍空域の開放などと言い始めた。
これは新ガイドラインで、日本の民間飛行場も「有事」の際に米軍が優先使用できるようになったこと、さらに民間機を軍事輸送に振り向ける戦略があるからだ。「米軍運用上の所要」が保証されれば、米軍空域も民間パイロットが慣熟してくれた方がいいとの判断である。
「軍事空域の民間使用」との報道は、まるで「平和利用」であるかのような誤解を与えている。事実は、「一元管理」の名の下に全空域を軍事管制下に置くという話だ。国交省と民間大手航空会社はそれを要望しており、米軍は「対北朝鮮」開戦に備えて積極的に応じる立場だ。空の全面的軍事化の始まりである。
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