SANRIZUKA 日誌 HP版   2001/09/01〜29    

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 2001年9月

 

〔週刊『三里塚』編集委員会HP部責任編集〕 

(9月2日) 関空会社廃止、民営へ/赤字解消20年以上(9/3産経)

 自民党の行政改革推進本部(太田誠一本部長)は2日、特殊法人改革の一環として関西国際空港株式会社の廃止に向けた検討を進める方針を決めた。現在の事業計画では累積赤字の解消まで20年以上かかることを踏まえ、2本目の滑走路を整備する二期工事の中止も視野に入れている。廃止後については、空港島など既存施設を国有化し、施設整備・運用を民間委託する案が、同本部内で最有力なものとして浮上している。
 太田氏は8月29日に小泉純一郎首相と会談した席上、「関空など航空整備特別会計の整理、合理化を見逃すことはできない」と強調。首相も理解を示した。自民党行革本部では「すでに事実上の破綻状況にあり、経営改善が見込めないなら二期工事自体を中止し、会社も廃止すべきだ」との意見が強まっている。
 関空会社の存廃問題は、航空政策全般の議論に発展することが避けられないだけに、年内に予定されている特殊法人の「整理合理化計画」策定に向け、改革の大きな焦点となりそうだ。

 【本紙の解説】
 関空の経営破綻を自民党が確認した。このことは、成田と関空という日本の二大国際空港の空港整備計画の破綻を示す事態である。
 この空港整備の失敗で自民党は関空の民営化を行い、二期工事を凍結・中止して航空特別会計の支出を減らそうとしている。内閣と財務省もその意向である。しかし、国土交通省と大阪府が強く反対している。関空会社を民営化するかどうかという事業スキームの問題ではなく、二期工事の存続に反対の理由がある。大阪府は成田空港との合併を希望している。大阪府はこれ以上の財政負担は負えないが、関西経済のいっそうの冷え込みを避けるためには、どうしても二期工事を継続させたいのである。この点ではゼネコンと関係が深い国土交通省も同じである。

(9月3日) 暫定滑走路、来年4月18日供用目指す(9/4千葉日報、全紙の千葉版)

 新東京国際空港公団の中村徹総裁は3日、扇千景国土交通相を訪ね、暫定平行滑走路のオープンを当初予定の来年5月20日より約1カ月前倒しして来年4月18日を目指すことにしたと表明した。
 暫定平行滑走路整備の進捗状況は、梅雨の時期の降雨が少なく工事が順調に進み、当初予定の11月30日より約1カ月早い10月末に完成する見通し。年内に国によるYS11型機を使った飛行試験で航空保安無線施設などを点検する。年明け以降に航空会社のパイロットの習熟飛行が行われる。さらに、同滑走路の供用に関する情報を全世界に周知するための手続きをへて、最も早い供用が可能である来年4月18日のオープンを目指すとの考えを表明した。 
 扇国交相は早期供用に全面的に協力するとともに、「本来の2500メートルの平行滑走路が整備されないと、国際空港とは言えない」として、本来計画の実現へ最大限の努力を続けるよう指示した。
 成田空港の用地内には反対派農家2戸の自宅や畑など約1・7ヘクタールが残る。空港公団は今回の決定を東峰地区の区長に文書で伝えただけで「ほかの農家には配布してもらう」(公団)という。
 暫定滑走路が供用されれば、自宅の約40メートル上空を飛行機が飛ぶことになる農業島村昭治さん(54)は「暫定滑走路建設が決まった時もそうだった。家の上に飛行機を飛ばすと勝手に決めて、今度は1カ月前倒しするという。反対を続けるしかないよね」と、吐き捨てるように語り、不信感をにじませた。

 【本紙の解説】
 暫定滑走路が暫定滑走路のままの供用開始は、公団の軒先工事による敷地内農民と周辺農民の切り崩しに失敗したことを意味している。そのために公団は、5月の連休前になるように供用開始を1カ月早め、供用直後の騒音をできる限り大きくして「地上げ」をやろうとしている。11月からのテスト飛行、年明けの慣熟飛行、そして連休前オープンで騒音の現実を見せて屈服を迫る考えだ。
 暫定滑走路が暫定計画のままで終わった場合、使い物にならない欠陥滑走路の実態は社会的に暴かれる。国土交通省と公団は内外の厳しい批判にさらされることになる。そのため公団は何としても暫定滑走路のオープンまでに敷地内と地権者を切り崩し、三里塚闘争を解体しようとしているのだ。
 今回の決定の通知について、公団は東峰区長へ文書を手渡し、他の農家へは区長からの配布を依頼した。この傲慢きわまる態度は宣戦布告だからである。かなりの騒音被害を受けることが予想される天神峰の市東孝雄さん方へは、その一片の通告さえない。
 三里塚闘争はこの攻撃を迎え撃ち、10・7全国集会から、11月、12月のテスト飛行阻止、年明けの慣熟飛行阻止、3月の現地集会、4月18日の開港阻止決戦を激烈に戦い抜く。すでに8月26日に反対同盟から10・7集会の招請状が全国に発送されている。この呼びかけに応え、緊迫した情勢を迎えた三里塚現地に全力でかけつけよう。

(9月4日) 国交相と都知事会談/羽田空港再拡張、国交省案に理解(9/5産経、朝日、読売、毎日、日経)

 扇千景国土交通相と石原慎太郎東京都知事が4日、都内のホテルで会談し、首都圏の交通問題ついて意見交換した。羽田の新滑走路案の立地で国土交通省と東京都案が並立している羽田再拡張では、石原知事が国土交通省案も積極的に検討する姿勢を示し、再拡張の早期実現で両者が一致した。また「羽田空港は2015年でパンクする」ため、再拡張の迅速化が必要との認識でも一致した。これにともない、通常2年9カ月かかる環境アセスメントの期限を短縮する措置の検討を始めることにした。
 さらに会談では、低公害車などの環境対策、3環状道路の整備、羽田の国際化と空港アクセスの向上の3項目でも合意した。

 【本紙の解説】
 扇国土交通相と石原都知事が緊急会合したのは、羽田再拡張2案の調整のためである。石原知事は国交省案が船舶業者に納得されることを条件に受け入れた。また、できるだけ早い時期に結論を出し、羽田の国際化を急ぎたいと述べたという。航空機の東京上空通過について石原知事は、「千葉県側にだけ負担を求めるのではなく、都が負担すべきことは負担すべきと思う」という見解を示した。
 これは重大である。羽田国際化で北側の東京・大田区と品川区住民はすさまじい騒音被害が強制されることになる。国交省は今年7月、ノースバード運航と称して羽田北側進入コースを小型機に限ってヘリコプターと棲み分ける特別方式を決定した(01年7月26日付日誌参照)。
 国交省は小型機としているが、本当の計画はジャンボ機を含めた北側進入路の全面解禁である。羽田空港でA滑走路の北側進入コースが全面解禁になったならば、発着回数は飛躍的に増大する。その増加した分を国際線にまわす算段である。
 石原知事の「都民が負担すべき」という発言は、騒音を我慢しろという意味である。大田区と品川区は議会で羽田国際化を決議しており、行政としては騒音を理由にジャンボ機の北側進入を拒否できない格好になっている。一番近い住宅地は品川区の八潮パークタウンなどの団地がある八潮5丁目。A滑走路の北側約4キロである。成田空港では宅地の新築、増築禁止の強制移転対象地区である騒音特別防止地区になる。
 また、この会談では3環状道路の整備、地下鉄都営浅草線の東京駅までの延伸について、扇国交相は都知事に協力を求め、都知事も賛成している。これは国交省が道路財源を今まで通りに確保するために、石原知事に同意を求めているのである。

(9月4日) 空港公団の民営化、「用地買収が困難に」(9/5千葉日報)

 特殊法人改革で政府の行政改革推進事務局は4日、国土交通省の回答内容を明らかにした。空港公団の民営化条件は、平行滑走路の完成や地元自治体との約束を守ることを挙げるなど、民営化のハードルは高い。
 空港公団は、現時点での民営化は国家プロジェクトヘの協力という大義名分がなくなり、残る地権者から平行滑走路用地などを買収することが一層困難になると指摘、歴史的経緯や公共性への配慮などをあげた。

 【本紙の解説】
 国交省は道路公団など6法人の民営化を政府から求められている。関西国際空港会社は、1700億円に上る累積損失を理由に条件をつけた。また、日本鉄道建設公団は「都市鉄道線は10年以内に事業廃止」とか、新幹線は整備新幹線の建設が終了した時点で事業廃止などといっている。新幹線整備などは何年かかるかわからないし、建設が終了したら鉄建公団は必要ない。つまり、国交省は利権の巣である傘下の特殊法人民営化には反対なのである。
 空港公団が民営化されたら、地権者の土地買収が一層困難になるという理屈はとってつけたものだ。国家の大義名分を振りかざし、農民を無視したことから三里塚闘争は始まった。民営化によって土地買収は楽にはならないが、それで困難になるという問題でもない。同じなのである。国家による農民無視の空港位置決定、一方的な工事見切り発車、多くの未買収農家を残したままの78年一期暫定開港、そして99年暫定滑走路見切り着工、来春の暫定滑走路見切り開港。このような農民無視の「国家プロジェクトヘの協力」だから、反対闘争が続いてきたのである。
 国交省の利権確保の理由を三里塚闘争に転嫁されては迷惑だ。政府の空港民営化案は、空港運用の合理化と称して空港労働者の労働条件の悪化を引き起こす。リストラ・首切りの促進である。空港と周辺住民に危険を押し付ける結果も生む。このような公団の民営化は受け入れることはできないが、国交省の「反対理由」はそれ以上に受け入れられない。

(9月4日) 成田四者協、2500メートル実現再確認(9/5全紙の千葉版、千葉日報)

 県や成田空港周辺の9市町村、国と新東京国際空港公団の代表者の会合である四者協議会の2回目の会合が4日、成田市役所で開かれた。空港公団は暫定滑走路の供用開始の時期を説明。協議会は当初計画の2500メートル滑走路の早期実現を改めて確認した。ただ、空港周辺の住民への情報の伝達方法については、空港公団と県との意見が食い違う場面があった。
 空港公団は3日、暫定滑走路の供用時期について、滑走路周辺の成田市東峰地区の住民に知らせるため、文書を作成して区長に手渡した。文書では、国による検査などの作業が予定通り進み、世界各国への周知期間を見込んで「供用開始が可能となるのは平成14年(来年)4月18日以降になる」として、「ご理解とご協力の程よろしくお願い申し上げます」と記されていた。
 これについて、堂本知事は4日の会見で「心が通うというか、血が通ったお付き合いの仕方が必要だ」と語り、文書だけを配った空港公団のやり方を疑問視した。一方、中村徹総裁は「冷たく事務的とは考えていない。どうすればいいのか、真剣に考えて対応している」と反論した。

 【本紙の解説】
 5月28日に四者協がスタートし、約3カ月ぶりの会合であるが、その設置理由すら疑わしい会合となった。四者協の目的は「成田空港の機能充実と地域との共生推進」となっている。最初の会合から「用地問題は地権者個々の問題」として、空港公団の申し入れで会談のテーマから外され、成田空港の機能充実の意味はなさなくなっている。それでも第1回目の会合は、成田新高速鉄道の予算獲得を四者一体でやっていくことを決定した。
 しかし、今回はそれぞれが現状を報告しただけで終わり、会談後の記者会見では地権者対策の体裁の取り方について公団と堂本知事が言い争う始末となった。
 公団は暫定滑走路の工事の現状と供用開始時期を報告し、国交省は第3空港の検討状況を報告、千葉県は羽田再拡張に関連した騒音被害の軽減を要請しただけで終わっている。地元自治体は、空港での農産物販売や騒音対策の具体化を求めた。
 堂本知事は、成田問題で地権者切り崩しの先兵になることを切望しているのか。あるいは千葉県の用地問題への介入が公団の横ヤリによってテーマ化されず、成田問題への自分の関与が拒否されたことを恨みに思っているのか。公団の地権者対策への「批判」だけが勇ましい。
 ただし、堂本知事が用地問題に手をつけても、公団以上に批判の俎上にのぼり、血祭りになって大失敗することだけは確実である。

(9月5日) 首都圏第3空港、富津岬案で県に支援要請(9/6千葉日報)

 成田・羽田空港に次ぐ首都圏第3空港の候補地選びが終盤にさしかかっている。国土交通省では現在、有力候補地を8カ所に絞り、需要、アクセス、事業費などを調査して「調査検討会」に報告。今年度中にさらに数カ所に絞り込むこととしている。8カ所のうち千葉県の自治体が関係しているのは、富津岬沖、九十九里沖案など。
 国土交通省は昨年9月、「首都圏第3空港調査検討会」を立ち上げ、6回の会合を重ねてきた。16案を整理・統合し、現在は8カ所に絞り込んでいる。8カ所は、九十九里沖、木更津沖、富津南、富津北、湾奥、川崎沖、中ノ瀬、金田湾(横須賀沖)である。
 候補地生き残りに向けて、富津岬北、同南案を示している君津・安房地域首都圏第3空港誘致推進協議会(会長、白井貫富津市長)は5日、県に支援を求める要望書を堂本暁子知事に提出。今月中に国土交通省にも出向き、国にも同様の要望を行う予定。 
 一方、九十九里沖案を示している「九十九里沖空港誘致懇話会」(代表、堀内慶三大網白里町長)は、周辺自治体に対して構成メンバーに加わるよう呼び掛け、組織拡張を図っている。今後は、県への支援要請も検討。 
 来年度予算の国土交通省概算要求では首都圏第3空港の調査費に14億円が盛り込まれ、その大部分(13億円)は羽田空港の再拡張の調査費。羽田再拡張後の首都圏第3空港候補地の調査費は1億円。 
 同省は2015年までに羽田再拡張で4本目の滑走路を整備する考えだが、整備後も2030年には再び限界に達すると想定。「将来の国際・国内需要の伸びによる空港容量の頭打ちが想定されるため、新たな首都圏第3空港の検討が必要となる」としている。将来的な需要に備え候補地を“確保”しておくことが狙い。

 【本紙の解説】
 君津・安房地域はアクアラインの開通にも関わらず、上総研究都市構想の全面破綻で地域経済は冷え込んでいる。空港誘致で何とか盛り返そうというのが、誘致推進協議会や誘致懇話会の狙いである。しかし、第3空港は当初も東京から150キロ以内となっていたが、その後の検討で都心から30分圏内と変わってきた。九十九里沖は論外としても、富津でもあまりにも遠い。首都圏の空域問題からの位置検討では富津は第一候補であったが、管制方式の変更、空域の再編問題もあり、アクセス問題で遠のいたようである。
 しかし、千葉県は羽田空港発着の千葉県通過の騒音を問題にする。羽田再拡張による15年後の騒音も今から騒ぎたて、空港建設や拡張に異議をはさんでいる。しかし、現に騒音で苦しんでいる成田空港の騒音では、補償を要求するだけである。また暫定滑走路で、滑走路末端から400メートル、頭上40メートルの騒音被害を受ける農家の問題には一言も文句をいわない。富津や木更津に空港を建設した場合、その騒音は羽田空港による千葉県への騒音被害の比ではない。
 このことを千葉県と堂本知事はどう説明するのか。どんな説明でも世間は納得しないであろう。

(9月7日) 成田・羽田民営化 新会社で経営統合/石原行革相が表明(9/8読売、毎日夕刊、9/9千葉日報)

 欧州各国を歴訪中の石原伸晃行革担当相は8日までに、ロンドンで記者会見し、特殊法人改革に関連して「成田(空港)と羽田(空港)をひとつの会社にして民営化するのが望ましい」との見解を明らかにした。
 石原行革相は、英国のヒースロー空港とガトウィック空港など、他国の首都圏の空港が多角的に運用されている例を指摘。「一社が経営した方が複数の空港をより総合的に活用できる」と述べ、より効率的な空港の運用を図るべきだとの見方を示した。
 さらに「民営化でユーザー、業者双方の利便性が高まる。株も魅力的で高値を呼ぶだろう」とし、帰国後、小泉純一郎首相にこの考えを報告すると語った。
 ヒースロー空港や運用を担当する空輸会社BAAを視察した石原行革相は「売店の配置などいろいろなアイデアが取り込まれている」と称賛。一方で、日本のシステムは「硬直的で、問題はかなり深刻だ」と批判し、改革の必要性を強調した。
 空港公団の民営化については、中村徹総裁が3日に成田空港暫定平行滑走路の整備状況を扇千景国土交通相に報告した後の記者会見でふれ、「新しい時代に対応する経営形態は、われわれとして勉強する必要がある」と述べたが、2500メートル平行滑走路を整備し、空港を完成させるという「そのハードルを越えることが大切」と、現状での民営化については消極的な見解を述べた。
 一方、空港公団との経営統合については、大阪府の太田房江知事が多額の有利子負債を抱え、経営が低迷している関西国際空港会社との経営統合をすでに国に要望。これに対し、国交省は今年7月に開かれた成田空港地域共生委員会で「同省としては考えていない」と答えている。

 【本紙の解説】
 成田空港の民営化に関してはこれまで、さまざまな意見がでている。経済財政諮問会議では5月に「管制業務を国に残し、空港の整備、運営はすべて民営化」といっている。与党行財政改革推進協議会(座長・山崎拓自民党幹事長)では、「単純な売却は困難」とし「民営化した会社が国に利用料を支払って空港施設を使用する長期リース方式」を提唱している。
 石原行革相の民営化スキームは不明であるが、8月末の外国特派員協会の講演で「羽田空港の売却金は1兆円から1兆5000億円、成田空港は3000億円から4000億円になる」と述べているので、「単純な売却」で完全民営化を目指しているのではないか。
 また、この石原行革相の発言後、国交省の小幡政人事務次官は10日の定例記者会見で、羽田・成田両空港の統合・民営化について、「羽田は1兆円の借金があり、再拡張でも新たな1兆円の借金を抱えるため、すぐに民営化はできない」と述べた。
 完全民営化(石原行革相)、管制業務だけ国に残し、建設、整備、運営の民営化(経済財政諮問会議)、管制業務と建設・整備を国でやり、管理・運営の長期リース方式(与党行財政改革推進協議会)と成田空港などの民営化の基本スキームは出そろった。
 公共的交通機関の民営化はどんなスキームであっても、それは利益追求第一主義になり、人件費コストと安全コストを引き下げ、結局、安全性が損なわれることになる。
 小泉行政改革で民営化が問題になっている空港は、黒字がでそうな成田と羽田だけである。関空は破産・倒産という事態でその整理が問題になっている。空港整備特別会計で赤字を出している多くの地方空港(第2種空港および第3種空港)は問題になっていない。民営化するといっても引き受け手がいないからだ。
 つまり、小泉行政改革のシンボルとして、成田と羽田の民営化が問題になっているのだ。また、成田は発着枠が少なく、空港利用料も高いことが諸外国から批判されている。その責任から国は逃れたいとの思惑もある。
 首都圏の空港整備計画がこのように破綻した理由は、三里塚闘争の鎮圧と成田空港完全化に固執し、計画全体の合理性を無視したことにある。成田空港はそもそも第2期工事もふくめて「74年完全開港」の予定だった。それが35年たっても完成せず、来年供用開始の平行滑走路も暫定の2180メートルに止まり、延長のめどもたたない。空港建設よりも治安問題(三里塚闘争の解体・鎮圧)を優先してきた結果だ。

(9月12日) 米ゲリラ事件で成田緊張 (9/13朝日)

 米国でおきた同時多発ゲリラ事件の影響で、成田空港には、11日深夜から12日未明に、米国の各都市行きの旅客、貨物便など計25便が引き返し、新東京国際空港公団は対応に追われた。12日には太平洋上の空域が飛行禁止になり、同日発着予定の約半数にあたる旅客、貨物計179便が欠航となった。
 一方、事件が旅客機をハイジャックして引き起こされたため、手荷物検査などの警戒態勢が最高レベルの「フェーズE(非常態勢)」に引き上げられ、空港は緊張した空気に包まれた。
 深夜から未明にかけての引き返しだったため、旅客便の入国管理業務ができず、約1000人の乗客が機内で一夜を過ごした。12日午前5時過ぎ、ようやく機外にでて入国手続きに向かった乗客は、一様に疲れた表情だった。空港ロビーには12日早朝から、同日の米国便などに乗る予定だった人たちが、空港に来て欠航を知り、係員に問い合わせたり、携帯電話で知人に連絡をとったりする姿が見られた。
 一方、空港公団は旅客の手荷物検査を厳しくした。金属探知機の感度をあげたりして、搭乗時のチェックを強化した。このため出国審査場では普段より長い列がロビーまでできた。出国審査場だけでなく搭乗口でも旅券と搭乗券を確認する二重のチェック態勢を敷いた。空港公団によると、今回適用された「フェーズE」は、3段階の警戒態勢の中でもっとも厳重な措置で、92年の基準改正以降、初めての実施だという。また、航空貨物の保安検査も最高レベルで実施された。今回のような厳重態勢は、大喪の礼と即位の礼の際に続いて3回目だという。

 【本紙の解説】
 今回の反米ゲリラは、航空機と空港を舞台に行われた。航空機と空港は、軍事産業の発展を背景とし、その軍事的支配の中ではじめて運航可能となる産業であるが、それ自身が最大の軍事ターゲットになることを改めて示した。
 航空宇宙産業・航空運輸業は軍事産業として発達してきた。航空機製造業は第一次、第二次大戦での軍用機の飛躍的発達で産業の土台ができた。その中心はアメリカである。現在、世界の航空宇宙産業の売上高でアメリカは約60パーセントを占める圧倒的規模である。82年以降のレーガン政権の軍備増強計画で、軍用機の売上が急増したことも大きい。アメリカ貿易収支全体は大幅な赤字だが、農産物と軍事産業だけは大幅な黒字である。また、航空機開発費のほとんどは軍用機の開発で、民間機はその転用にすぎない。アメリカは絶対的な軍事力を背景に産業と金融で世界支配を維持し、世界の富を独り占めにしている。
 もっともアメリカ的で、アメリカが独占しているのが航空機だ。そのアメリカの旅客機がハイジャックされ、史上最大のゲリラ戦争が敢行された。その後、アメリカの空港は3日間も航空機の発着ができなくなった。空港の軍事的管理と空域制圧がない中では、民間機も1機も飛ぶことはできない。航空機の運航自体が軍事行動であり、軍事制圧なしに成り立たないのである。
 アメリカは中東・アラブ人民、朝鮮・中国―アジア人民などを暴力的に侵略し、抑圧していながら、アメリカ国内だけは安全だと考えていた。その隙をゲリラ戦争に突かれたのである。
 その後、日本でも在日米軍事基地と日本の民間空港は厳重な警備体制に入っている。それはアフガンへの侵略戦争体制の構築であり、軍事的戦略拠点の防衛の一環である。小泉内閣は「米軍施設の防衛に自衛隊の出動も考える」として、自衛隊の治安出動と海外派兵を準備している。日本が参戦したら、成田空港は最大の出撃基地となる。そのことは、成田空港が第一級のゲリラのターゲットになることでもある。
 米帝のアフガン侵略戦争阻止、日帝の対米支援=参戦阻止、成田空港の出撃基地化阻止を掲げ、10・7三里塚集会に総決起しよう。10・16ブッシュ訪日阻止、日米首脳会談=戦争会談阻止を闘いぬこう。

(9月13日) 航空機から氷落下、温室の天井ガラス破損/成田市長が対策申し入れ(9/13産経千葉版、9/14東京千葉版)

 11日午後5時ごろ成田市荒海の農業、野口利夫さん(52)方で、農業用温室の天井部分のガラスが大きく割れているのを野口さんが発見した。野口さん方のトマトハウスの屋根ガラス(縦91センチ、横50センチ)2枚が破損し、ガラスは温室内に散乱していた。
 野口さん方は、成田空港に離着陸する航空機の飛行ルートの直下で空港から7キロ付近にある。このため野口さんは「付近に石などが見当たらず、航空機から氷塊などが落下して割れたのではないか。人にあたったら大変な事故になる」と話している。
 小川成田市長は13日、新東京国際空港公団の中村徹総裁と国土交通省新東京空港事務所の遠藤信介空港長に、氷塊などの落下物対策の徹底を求める申し入れ書を提出した。
 同市と公団、空港事務所の職員が調べたが、落下物は見つからなかった。同事務所が詳しい原因を調べている。

 【本紙の解説】
 航空機からの氷塊の落下は不可避であり、防ぎようがない。今年の6月21日にも数キログラムのジャンボ機の部品が茨城県桜川村で見つかった。
 氷塊は飛行する航空機の翼、とりわけ、主脚格納部にできる霧氷が発達し、巨大になったものである。空中にある細かい水の粒は過冷却になりやすく、0℃以下でも水のままになっていて、これが風で運ばれて物体の表面に付着すると凍結をおこす。また、気温が0℃に近い場合にできやすく、氷点下10℃以下になると発生はまれといわれている。この霧氷の発達した氷塊が、地上に近づき主脚格納部を開けた時に、溶けて航空機から落下、空中で完全に溶解しきれずに地上に落下するのである。
 羽田周辺では問題がおきていないのは、内陸側の北側進入コースを使っていないからだ。しかし羽田では、この北側進入コースがすでに計画されている。その場合、氷塊が渋谷や五反田あたりに落下することになる。
 この落下氷塊の対策としては、主脚格納部を海上で開き、車輪をだして、氷塊を海上で落下させることになっている。通称「海上脚だし」といわれる対策だが、航空会社に法的義務はない。成田空港地域共生委員会が公団を通して各航空会社に要請しているが、なかなか守られない現実がある。しかも、主脚格納部以外にできる氷塊については落下対策はない。また98年に、騒対協(成田空港騒音対策地域連絡協議会)が機体に付着した氷塊などの落下物問題での補償と対策を要求したが、具体的対策はいまだでていない。
 航空業界では、落下物は航空会社の責任だ。部品の落下は航空機の機種とその後の点検整備で「犯人」の航空機はわかるが、氷塊はどの航空機から落下したものかわからない。また証拠も溶けてなくなり、「完全犯罪」となってしまう。国際空港の周辺で発着コースに成田のように人家があるところは希である。それが、外国航空会社が「海上足だし」を守らない理由らしい。やはり空港は周辺10キロと進入コースの20キロを無人化することを前提にしているのである。
 「成田市と公団、空港事務所の職員が調べたが、落下物は見つからなかった。同事務所が詳しい原因を調べている」となっているが、無責任極まりないことである。「落下物は見つからなかった」として「原因を調べる」というが、原因は以上のように明白なのだ。しかし、「証拠」がないと言い張っている。結局、氷塊落下事故はすべて被害者が泣き寝入りする以外ないのである。

(9月14日) 成田など3空港、管理運営を民営化/国交省方針/滑走路整備、管制と分離(9/15読売)

 国土交通省は14日、成田、関西、中部の3国際空港に関連する事業のうち、空港の管理・運営事業を、それぞれの空港について新設する民営会社に移管する方向で検討に入った。現在は新東京国際空港公団や関西国際空港会社が行っているが、民営会社の下で大規模な商業施設をターミナルビル内に誘致するなどして収益を向上させる。世界の主要国際空港と比べて割高とされる着陸料の引き下げなどにつなげたい考えだ。
 一方、国の航空行政や安全確保に密接にかかわり、多額の投資を必要とする滑走路や管制施設の整備、管制業務は国が受け持つこととする。管理・運営3社に対し、空港の「使用料」を負担させ、滑走路などの整備にかかった費用を回収する仕組みとする。事業移管に伴い、中部国際空港会社をふくめた公団や空港会社の組織をどうするかについては、今後さらに検討する。
 政府の特殊法人改革の方針に伴い、石原行政改革相は、羽田と成田の統合・民営化案を打ち出している。国交省案は、これに対抗して3国際空港の管理・運営事業を「独立採算」とし、経営効率化を競わせる内容だ。

 【本紙の解説】
 国土交通省の小幡政人事務次官が「羽田は1兆円の借金があり、再拡張でも新たな1兆円の借金を抱えるため、すぐに民営化はできない」と、10日の定例記者会見で「民営化反対」の姿勢を強く示した。しかし、民営化反対を貫けないとして、4日で方針の全面転換を行った。方式は与党行財政改革推進協議会の「管制業務と建設・整備を国、管理・運営の長期リース方式」と同じである。違うのは成田、関西、中部の3国際空港にしたこと。つまり羽田を外した。ここがポイントだ。羽田は再拡張でこれから1兆円規模の公共事業になる。この利権を国交省は手放したくないのだ。羽田再拡張の建設利権は絶対に守り抜く、そのための3国際空港民営化論である。国交省は羽田も国際化するというなら、羽田も加えて4国際空港とすべきである。
 国交省にとって、ダム建設も制限され、地方空港建設もストップされ、道路も枠がはめられ、当面する巨大な公共事業は羽田空港再拡張しかない。

(9月15日) 米国行き定期便/日航、全日空が15日から再開へ

 日航と全日空は15日、米国行き定期便を再開することになった。米連邦航空局(FAA)が14日午後0時(日本時間)に空港、空域の封鎖をいったん解除したのを受けて両社とも同日中の運航再開を目指していたが、FAAが急きょ求めた新しい保安基準への対応が間に合わず、全32便が欠航した。FAAの手続きは14日までに終了し、15日朝から日航は29便、全日空は8便を通常のダイヤ通りに運航する予定。
 一方、貨物便の運航も再開された。14日から15日早朝に、日航が米国本土に向けて3便を運航したほか、米ノースウエスト航空と米国際宅配会社ユナイテッド・パーセル・サービス(UPS)も計7便を成田空港から出発させた。

 【本紙の解説】
 成田ではアメリカへの帰国、商用、今回の事件の関係者等が搭乗したが、旅行ツアー客のキャンセルが続出し、過半が空席であった。アメリカツアーをはじめてとして諸外国への旅行は、航空機利用を敬遠して取りやめが多く出ている。各旅行会社も9月末までの旅行はキャンセル料を免除している。
 航空関係者と旅行業者は、今後の需要の落ち込みに落胆している。通常の航空機墜落事故の場合、旅客需要の回復には約1年かかる。今回の事件での需要回復は見込みが立たないといわれている。民間航空機がゲリラ戦争の手段として使われたこと、また、ターゲットがアメリカのニューヨークだったことが大きい。日本での商用や旅行目的地で群を抜いて一番がアメリカである。
 それ以上に、この件でアメリカ経済を牽引してきた個人消費が落ち込むと、アメリカ経済はこの間のリセッションから一挙にスパイラル的恐慌に発展しかねない。そうした場合、航空需要の落ち込みは回復しなくなる可能性も大きい。
 成田暫定滑走路の供用開始が4月18日と発表されたが、暫定滑走路の需要落ち込みも不可避である。暫定滑走路の年間使用回数を公団は6万回と誇大発表しているが、暫定滑走路の需要が見込めないという、とんでもない事態に入っていることは間違いない。

(9月16日) 反対同盟9・16現地行動

 三里塚反対同盟は71年9・16強制代執行の30年目の9月16日、東峰の開拓道路に現地支援勢力とともに100人が結集し、「4・18暫定滑走路開港」攻撃と対決する集会と敷地内デモを行った。北原鉱治事務局長は「空港公団の農民無視はまったく変わらない。農民追いだしを目的に強行される暫定滑走路開港をわれわれは絶対に許さない」「滑走路北側の十余三、久住地区で300戸にも上る民家が反対するのか移転するのかを迫られている。われわれは百害あって一利もない暫定滑走路開港にたいして、周辺住民とともに闘おう」と呼びかけた。
 反対同盟は10・7全国集会にむけ、周辺の情報宣伝活動を強化する方針も決定している。
 集会後、参加者は東峰地区・天神峰地区で戦闘的なデモを行った。(詳しくは本紙参照)

(9月16日) 米航空業界に影響深刻(9/17朝日など)

 米国を狙った同時多発ゲリラの影響で、米航空業界が深刻な経営危機に陥る可能性がでてきた。同業界5位のコンチネンタル航空は15日、旅客需要の激減を理由に1万2000人の人員削減を発表し、倒産の可能性すら示唆した。1位のアメリカン航空を筆頭にトップ5社がすべて大規模な人員削減に踏み切る公算が大きく、「世界の航空界では10万人の削減になる」との見通しもある。
 266社が加盟する国際航空運送協会(IATA)によると、11日以降の4日間で、商業便の約1万2000機のうち約4000機が運航を中止し、100億ドル(約1兆2000億円)分の売上高が消失したという。
 米景気の減速に伴うビジネス客の減少と、燃料費や人件費の高騰にあえいでいた米航空業界にとっては、追い打ちをかける大打撃となった。コンチネンタル航空は事件発生前、2001年で黒字を計上できる2社のうちの1社と見込まれていた。だがゲリラ以降、1日当たり3000万ドルの損失となり、4日間の予約動向からみて、運航解禁後も旅客需要は半減する見通しだ。「政府の財政的な援助がなければ、来月後半には米連邦破産法11条(日本の会社更生法)を申請する」(ゴードン・ベスーン最高経営責任者)としている。
 アメリカン、ユナイテツド、デルタ、ノースウエストの航空4社も、便数の20%削減や人員の見直しを表明した。「世界の航空界では、10万人の削減になりそうだ」(同)
 さらに、全面的な運航再開となっても安全対策強化のコストがかさみ、「世界の航空各社の赤字合計が今年は20億〜30億ドルになる」(米航空アナリスト)見込み。

 【本紙の解説】
 米国の国内線航空会社ミッドウェー航空が反米ゲリラ直後の12日、航空輸送需要の落ち込みや資金難から、営業停止と1700人の解雇を即日実施した。なお、同社には連邦破産法11条(会社更生法に相当)が適用されていた。
 今回のゲリラとその後の空港閉鎖、航空需要の急激な後退で、米航空業界の純損失は100億ドルから120億ドルと試算されている。湾岸戦争時を上回る過去最大規模の損失だ。アフガンへの報復戦争が行われれば個人消費の後退が続くことは明白で、米航空業界の復活は極めて厳しい。湾岸戦争後もイースタン航空など大手や中小が相次ぎ経営難に陥り消滅したが、今回はその程度ではすみそうもない。
 事実その後、9月19日の米議会下院運輸委員会の公聴会で、デルタ航空のレオ・マリン会長が「米航空業界の上位10社のうち3社が経営破たんの危機に瀕している」と証言している。3社は具体的には明らかにされなかったが、コンチネンタル航空(全米5位)、USエアウェイズ(6位)、アメリカウェスト航空(7位)の3社である。USエアウェイズは、依然として閉鎖されているワシントンのロナルド・レーガン国際空港を拠点空港としていおり、同空港発の同社便は依然運航が再開できず、経営状態の見通しは全く立たない状態だ。全米上位4社に次ぐ5、6、7位の中堅航空会社が倒産の危機に陥っている。
 アメリカ航空産業は、IT産業、金融産業とともに、80年中頃からのアメリカの世界支配の原動力になった産業である。IT利用による他産業のリストラも、航空産業による製品、部品の流通が保証されて可能になった。またレーガン政権による労働者への資本攻勢も、米管制官スト参加者の全員首切りが始まりだった。また航空宇宙産業は、アメリカの世界支配にとって最重要の産業であり、航空機製造業自体が最大の軍事産業である。この航空運輸業と航空機製造業が崩壊の危機に瀕している状況は、間違いなくアメリカ全体の崩壊的危機を意味する。

(9月17日) ニューヨーク株式市場/航空株が下げを主導(9/19日経その他)

 約1週間ぶりの再開となった17日の米株式市場で、米中枢同時ゲリラの影響をまともに受けた航空、金融各社の株価が急落。相場の下げを主導した。
 航空最大手のユナイテッド航空を傘下に持つUA、2位のアメリカン航空を擁するAMRなど主要各社が4割前後の下げ。既に1万2000人の人員削減を発表したコンチネンタル航空は同日、7000万ドルに上る債務不履行の可能性をちらつかせ、全米6位のUSエアウェイズも1万1000人の削減に踏み切るなど「航空危機」が緊迫度を増している。ボーイング、ハネウェルインターナショナルなど航空関連株も15%以上下落した。

 【本紙の解説】
 ニューヨーク株式市場で予想通り、航空関連株と保険株が下げを主導した。保険業界も航空業界と同じで、中小保険会社の経営破たんはさけられない。
 航空関連株のあまりの急落に、米政府は同日のうちに航空会社への支援策を中心とした総合経済対策の策定方針を表明した。
 米議会では反米ゲリラ直後、ブッシュ大統領が「航空会社の経営状態を懸念している」と声明、航空会社を対象とする総額25億ドルの救済法案が提出されたが、先週末の審議で「航空会社だけを特別扱いすべきでない」との意見で法案は否決された。だが米政府は航空会社の倒産はアメリカ社会そのものの破たんにつながることと、航空会社の公益性を理由にして、政府主導の航空会社救済策を再検討することにしている。
 しかし、航空会社の経営状態の悪化は度を超えている。いかなる政府支援策でも持ち直すことは至難のわざとの意見が多い。「支援策」が具体化しても、航空関連株の下げは止まらないだろう。

(9月20日) 米英大手航空、リストラ続々(9/21読売など)

 アメリカン航空などの親会社である米航空最大手AMRと同2位のユナイテッド航空の持ち株会社UALは19日、それぞれ2万人の人員削減に踏み切ると発表した。米航空大手ではすでにコンチネンタル航空が1万2000人、USエアーウェイズが1万1000人の削減方針を打ち出している。アメリカンとユナイテッドは、両社とも保有機がハイジャックされたことから、他社に比べて顧客離れが鮮明となっている。
 また欧州最大の航空会社ブリティッシュ・エアウェーイズ(BA)も20日、全従業員の約13%に当たる7000人の人員削減を柱としたリストラ計画を発表した。イギリスではすでに、ゲリラの影響で英ヴァージン・アトランティック航空が1200人の人員削減を発表しているが、欧州主要航空会社の大規模なリストラは初めてだ。
 BAはリストラの一環として、飛行機20機の運航を取りやめることを決めた。
 一方、米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは19日、米航空大手アメリカン航空など4社の無担保債務格付けを引き下げたと発表。この結果、米大手航空6社のうち5社の債券が投機的とされる「ジャンク債」となり、各社の資金繰り悪化に拍車をかける懸念がある。

 【本紙の解説】
 米航空会社のリストラ計画は定期便の約20%以上の削減と2〜3割の人員削減と発表された。これは欧州にも飛び火し、同じように人員削減や定期便の約20%減便を言い出した。さらに航空機メーカーの最大手ボーイング社でも商用機部門で2万〜3万人の人員削減を発表。ボーイング社の商用機部門で約9万3000人いる従業員のうち、2002年末までに2万〜3万人を削減する計画だ。航空機需要の減少は避けられない情勢で、ボーイング社では商用機の受け渡し数が2割程度減少する見通しを出しており、この減少傾向は03年も続くと予測している。それ以降の見通しも出ていない。欧州の最大航空機メーカーのエアバス社も、生産拡大計画を数年間規模で凍結した。
 航空会社だけでなく、航空機メーカーがむこう2〜3年の計画で生産計画を2割程度下方修正したということは、航空需要は2〜3年のレベルでも回復しないという意味だ。

(9月20日) 成田出国者4割減(9/21日経、朝日、読売など)

 新東京国際空港公団は20日、米同時ゲリラが発生した後の12日から17日までの間、成田空港を利用し国外へ出国した人は前年同時期比で、4割強に当たる9万5895人の減少となり、13万3481人だったと発表した。空港公団は「北米路線を中心に欠航便が相次いだ上、海外の治安を心配し旅行をキャンセルする人が多かった」と分析している。
 航空各社は「米国の報復があれぱ、その影響も想定される」(兼子勲・日本航空社長)としており、世界経済の中心地である米国市場での打撃が大きく、91年の湾岸戦争当時よりも影響は大きく、米の報復作戦が開始されれば需要落ち込みはさらに激しくなるとみている。
 旅行業界も、米国向けを中心にキャンセルが続出している。業界によると、10月初旬までの収入減は取扱高で約400億円に上るとみられる。軍事報復などの事態が長引けば、経営に深刻な影響を及ぼす会社も出てきそうだ。
 成田空港内は閑散とし、飲食店などのテナントも悲鳴を上げている。公団によると188店舗の19日の平均売り上げは通常の76%に止まった。
 飲食店主(36)は「米国関連の旅客便が再開しても、客の数は半分以下で、売り上げは4割近く減ったまま。ただでさえ経営が厳しいのに、戦争が始まったら終わりだ」と肩を落とす。

 【本紙の解説】
 12日から17日の6日間の出国者が4割減になったことを、公団は北米便の欠航を理由にしている。しかし18日以降はそれに輪をかけて旅客が減少し閑散としている。北米便は乗客300人から400人乗りのB747ジャンボ機が搭乗率2割以下の50〜60人で運行している。北米便以外でも通常の3割減になっている。
 17日までは、事件関係者や報道陣で、ある程度の搭乗率もあったが、その後は商用も旅行も激減している。
 米航空会社全社が2割以上の運航便削減を打ち出し、欧州各社もそれに続いている。太平洋便も確実に2割かそれ以上の減便が確実だ。成田空港の発着枠は3分の1を米航空会社が占める。したがってアメリカ企業だけで7%の減便は確実だ。日本の航空各社はハイジャックされた米航空会社から日本の航空機への需要シフト変更を期待しているというが大いに甘い。渡米客が半減しているなかで、日本企業の北米便も2割以上減便しないと経営は成り立たなくなる。
 また米国の報復戦争は長期戦になると予想される。そうなると航空需要は今よりもさらに落ち込む。日本が参戦し、日の丸がインド洋に掲げられたらどうなるか。航空機と兵員・物資の最大の輸送拠点となる成田空港は、ゲリラの第一級のターゲットになるのである。成田空港に近づくのも命がけの行為になるだろう。アメリカでも国内線搭乗は命がけの行為で、搭乗率はほとんどゼロ化している。数10時間かかるアムトラックの大陸横断列車が満員になっている。
 成田暫定滑走路を4月18日に供用開始すると公団が発表(9/3)したが、今回の事態で暫定滑走路の需要は少なくとも向こう数年ゼロ化した。
 アメリカ航空会社の運航便2割削減は各国も追随する見込みだ。報復戦争が開戦となり長期化した場合には、さらなる減便も強いられる。成田空港全体の3〜4割は減少しかねない状況だ。閑散とした4000メートル滑走路を使わずに、わざわざ使い勝手の悪い暫定滑走路を希望する航空会社はいない。
 それ以上に惨めな破産に直面したのが「国内線充実検討対策委員会」である。危険な成田まで来て、わざわざ国内線航空機に乗る人はいなくなった。
 日本政府は、暫定滑走路を兵員と軍事物資輸送の基地として使う方針だ。そもそも成田空港の拡充は民間空港としての使用とともに、軍事使用をあらかじめ盛り込んだものだった。
 米・日帝国主義の軍事報復戦争反対! 暫定滑走路開港阻止を掲げ、10・7三里塚全国集会に結集しよう。

(9月20日) 成田久住中移転問題/3地区統合中学で提案(9/22千葉日報)

 成田空港の2本目の滑走路となる暫定平行滑走路が来年4月18日にオープンするのに伴い、飛行コース直下となる成田市立久住中学校の移転問題で、成田市側と久住中PTAなど約150人の地区住民との話し合いが20日夜、同中体育館で行われた。現地での話し合いは3回目。同日は小川国彦市長が初めて出席した。小川市長は同問題に対する市側の対応のまずさを陳謝。その上で、移転後の新校舎は久住・中郷・豊住地区の統合中学とするなどの新提案を行った。
 久住中移転問題では、市はこれまで、同中を暫定的に成田中に統合。新校舎は久住地区外に移転、将来的には隣接する学区の統合も視野に検討するとの案を提示した。
 これに対し、地元の区長やPTA役員、空港対策委員会役員などからなる「久住中移転対策協議会」は同地区内での移転と、それまでは安全対策を行った上で現校舎で授業を行うことを要請する陳情・請願を行い、市側と真っ向から対立してきた。
 同日の話し合いでは、冒頭に小川市長が久住中移転に対する市側の提案時期が遅れたこと、現在の久住中校舎がそのまま便用できるとした提案を行った結果、地元住民に誤解を招いたと反省。「迷惑をかけた」と市として陳謝した。
 その上で、航空機落下物の防止対策について公団や国に何度も要請しているにもかかわらず、4000メートル滑走路直下の荒海地区などで度々発生していることから、「久住地区でも防ぐことは難しい」として、子供の安全第一に同地区からの移転を改めて訴えた。
 これに対し、PTAや住民は「安全対策としての成田中学統合は納得できない。久住地区はどうでもいいということか。市の考えは理想論で現実的でない」との意見が相次ぎ、「市案をゼロに戻して、一から話し合いを始めろ」と迫った。
 その結果、小川市長は「市として新しい考え方を提案したい」として、@久住中は成田中に暫定的に統合。その間、久住中は休校とするA新校舎は久住中を中心に久住・中郷・豊住地区の統合中学とし、年度内に早急に結論をだすことを表明した。
 同市教委では現在、中学一校の適正配置・適正規模について、市学校教育懇談会で検討しており、そこで示された方向性を基に結論を得たい考えだ。
 一方、市長の再提案に対し、男性住民が「久住地区住民との合意なくして実施しない」との約束を求めた。小川市長は「納得のいくまで話し合いを重ね、一致点を見いだすよう努力したい」と述べたが、市側と久住地区住民とのミゾを埋めるにはほど遠い状況のまま終わった。

 【本紙の解説】
 ここにも空港と周辺住民はけっして「共生」できない現実がある。久住中学は、暫定滑走路の延長上直下約4キロ地点にある。住宅、病院、学校のなどの新築、改築禁止の特別防止地区内である。特別防止地区では移転希望者は住居の移転補償はあるが畑や山林は補償なし。現在、その山林の荒廃も問題になっている。工場などの建設はできるが、住宅が建てられないので土地価格が暴落し二束三文になっている。また杉などの木材の価格が落ちていることで、山林の下草刈りや間伐をする手間賃も出なくなった。そのため荒れ放題になり、杉が太く育たず、強風で倒れ、そこに蔦などのツルクサがまとわりついている。
 滑走路延長上の直下は航空機からの落下物が多く、子供の安全から移転しかないと成田市も説明する。落下物防止対策を公団に要請しているが、防げないというのが結論だ。学校が危険とは、特別防止区に入ること自身が危険であり、特別防止地区での田畑での作業も非常に危険ということだ。
 久住中移転問題のポイントは、久住地区内での移転・新築を成田市はやる気がないということだ。理由は生徒数の減少である。久住中の生徒数は現在3学年合わせて95人。市は学区統合で新中学を造ることを提案している。つまり久住地区から中学はなくなる。これに住民は抗議しているのだ。
 滑走路直下で騒特法の防止地区や特別防止地区に入り、住民数が減少し、少子化もあり、廃村化が進行していることへの抗議なのである。空港の存在が周辺の無人化・廃村化を進行させている。
 「空港と地域の共生」はありえない。

(9月21日) 米政府、航空業界に180億ドル支援(9/21日経など)

 米政府は同時ゲリラの影響で経営危機にある航空業界に180億ドル(約2兆円)規模の支援案を固めた。議会が関連法案を可決するのを待って来週中にも実施に移す。政府が民間企業に資金援助するのは1979年の自動車大手クライスラー以来。
 空港閉鎖命令など政府の措置で航空会社に生じた損失を埋め合わせるのが目的で、資金贈与分の50億ドルは航空機のリース代支払い、給与など当面の運転資金向け。各社の運航距離や座席数に応じて配分する。
 空港の高度な荷物点検装置導入など安全強化にも30億ドルを出す。航空会社が借り入れする際、政府が返済を保証する100億ドルの枠を設ける案も有力だ。
 連邦政府による民間への資金援助は過去に71年のロッキードに対する2億5000万ドルの債務保証、79年のクライスラーに対する15億ドルの債務保証などがあるだけ。
 金融機関に対しては80年代にコンチネンタル・イリノイ銀行、80年代後半のから90年代初めに貯蓄金融機関の経営危機で公的資金を導入したが、直接の資金贈与は例がないという。

 【本紙の解説】
 自由競争を国是としてきたアメリカが私企業に180億ドルにもおよぶ資金援助をした例はない。援助総額は180億ドルでは止まらない内容だ。
 各航空会社への直接資金援助は50億ドル。これは過去のロッキードやクライスラーの時のような返済義務のある「債務保証」ではない。空港閉鎖命令などで生じた損失金の埋め合わせの「資金贈与」だ。このような例は日本でもない。政府の債務保証枠は100億ドル。安全対策が30億ドルで合計180億ドルとなった。
 さらに航空会社の税軽減で78億ドルの支援も出そうだ。そのうえに地上の建物や被災者への賠償責任軽減、航空会社が国際線に加入している戦時保険を国内線にも適用し、その保険料を国が負担することも検討している。
 税や賠償責任の軽減、保険金への支援などをいれれば、総額では500億ドル(日本円で6兆円近くなる)にも達する支援となる。他産業の利益代表者がいる議会論議をかわすめに、今回は180億ドル分だけを強調している。
 航空会社への贈与分の50億ドルと空港警備強化の30億ドルの80億ドル分は、すでに議会が可決した報復戦争のための戦費400億ドルの緊急支出から出そうとしている。航空会社の経営維持は、国家の戦争遂行のためであり、その援助金の勘定項目は軍事費なのである。
 アメリカの航空産業は国家の土台的産業であるというだけでなく、もう一つの軍隊なのだ。航空産業の崩壊は国家の破たんであり、軍事行動の不可能化を意味する。これほどの資金援助も軍事費そのものだからだ。
 この航空業界への政府資金の援助を見て、全米旅行業協会(ASTA)も、政府資金援助の旅行会社への適用を求める要望書を米議会に提出した。理由は「旅行会社は航空会社の業務に不可欠な部分である航空券販売を行っている。旅行会社なしでは航空業界は機能しない」というものだ。今回の事態で航空業界と同じく旅行業界も過去に例がない経営危機をみまわれ、過半が倒産すると言われている。しかし旅行業界は米国の戦争遂行に直接は関係ないので、資金援助は出ないといわれている。

(9月21日) 国交省,3空港「上下分離案」を発表(9/22各紙)

 国士交通省は21日、成田、関西、中部国際空港について、各空港施設を管理・運営する計三つの民問会社と、3空港の整備や施設保有を横断的に受け持つ一つの公的法人とに分離する案を正式に発表した。施設を「上物」と「下物」に分ける「上下分離」方式を初めて空港運営に採り入れることになる。
 1兆円を超す債務で経営悪化に陥った関西空港の事実上の救済策で、中曽根民活の第1号として出発した事業の失敗を国が改めて認めた内容だ。
 国交省案では、3空港をそれぞれ空港施設の管理・運営機能に絞った民間会社(上物会社)に衣替えする。一方、滑走路やターミナルの敷地などの整備・保有機能は、新設する公的法人(下物法人)に移管する。
 公的法人は国や自治体の支援も受け、下物を各上物会社に賃貸する。上物会社は、着陸料収入などから賃貸料を払う仕組みだ。
 羽田などを含めない理由は「国内線の相互依存ネツトワークがあり、(着陸料など)勝手な判断をされると問題が生じる」というもの。
 だが、関空の債務は結局、国や自治体の負担で処理される見通しで、民間事業の失敗を国民負担につけ回しする格好だ。

 【本紙の解説】
 空港整備立ち後れの責任と関空経営破たんの責任を逃れるための「民営化論」だ。さらに経営破たんが確実な中部国際空港も抱き合わせるとは、先読みの責任放棄でもある。
 しかし、これから1兆円規模の公共投資が行われる羽田空港の利権だけは確保しようとの考えである。羽田を外した理由については、着陸料などを勝手に決められると困ると言うものだが、これは理由にならない。着陸料を公的法人が取るのか民間会社が取るのかもまだ決まっていない。民間会社が取るとなっても、整備や施設維持費をどのくらい公的法人が回収するのかも決まっていない。
 決まっているのはターミナルビルなどの賃貸し方針だけだ。これはビルのテナント方式と同じである。民営化とはいえない。国交省としては、民営化らしきものを提示しないと乗り切れないとの考えで出したまでの案だ。小幡政人事務次官が今月10日の定例記者会見で「民営化反対」を強く述べていたが、国交省の本音はここにある。完全民営化論から国交省の官僚的権益を守ることが彼らの狙いの核心だ。着陸料の徴収を公的法人がやるケースでは、民間会社がターミナルビルのテナント貸しをするだけとなる。

(9月21日) 緊急航空保安委を開催(9/22読売)

 米国の同時多発ゲリラ事件を受け、国土交通省は21日、ハイジャツク・ゲリラ対策の強化を図るため、国内大手航空会社や成田、関西空港などの警備担当者らを集め、緊急の航空保安委員会を開催した。
 同省では(1)国内線でしか実施していなかった刃物類の全面持ち込み禁止を国際線にも適用する、(2)すべての受託手荷物の中身を検査する「全数検査」を国際線だけでなく国内線でも行う―ことなどを検討したうえで、来週初めにも緊急の強化措置をまとめる。また同省は、国際民間航空機関(ICAO)の総会で、(1)保安対策の見直しのため各国の閣僚レベルでICAO特別会議を開催する、(2)各国の保安対策をICAO自身が監査する―の2点を提案することを決めた。

 【本紙の解説】
 この検問と持ち物検査の強化で「飛行機離れ」はさらに促進される。日本の国内線はJRの新幹線と競っている運航便が多い。持ち物検査が強化され厳格に実施されると、東京―大阪だけでなく、東京―福岡でも新幹線の方が時間的には早くなってしまう。
 これで最大の打撃を受けるのは、成田空港の国内線の充実をはかろうとしていた検討対策委員会である。暫定滑走路での国内線使用は充実とはほど遠く、今までの1日7便の維持がやっとではないか。

(9月21日) 米大使館上空の飛行を当面制限(9/22読売)

 国土交通省は21日午後、有視界飛行する小型機やヘリコプターに対し、東京都港区赤坂の米国大使館の上空半径約1・8キロのエリアで、高度1500メートル以下の飛行をしないよう求める航空情報(ノータム)を出した。外務省を通じて米国側から要請があった。飛行制限は当面、続くものとみられる。

(9月24日) 広がる航空産業の経営危機(千葉日報9/24)

 反米ゲリラによる大幅な旅客需要減を受けて、米国の航空会社から始まった人員削減や便数削減の動きが世界の航空各社に広がり始めた。日本の航空会社にとっても「観光客主体のハワイやラスベガス便の減便など対策を検討しなければいけない状況」(日本航空)で、米国路線は厳しい情勢となっている。
 今回の反米ゲリラで、ツアー客のキャンセルが相次ぎ、米国路線を中心に乗客数は激減。全日空によると、成田―ニューヨーク路線は、300人乗り前後の飛行機に乗客数は50―60人程度。「論外の採算割れの状況で、いずれ対策を検討することになる」という。
 需要減とともに各社の負担になっているのが保安対策。米運輸省の指示で、機内の座席下にある救命胴衣までチェックするよう求められており、時間とコスト増につながっている。
 「戦争の話も現実味を帯びており、あと半年から1年は厳しい状況が続く」(米航空業界関係者)と需要回復の見通しは暗い。

 【本紙の解説】
 米国の航空会社だけでなく、日航、全日空も20パーセント以上の減便が必要になってきた。全日空の大橋洋治社長は9月20日段階で「減収が一過性にとどまるかどうかが、分からない」と悩みながらも、ただ「米国の航空会社から他国の会社へ、旅客の志向が海外から国内になって国際線から国内線へ、といった需要シフトも考えられる」と述べていた。(9月21日朝日新聞から)
 つまり北米路線では、米国の航空会社から日本の航空会社の路線に乗り換えが起こると甘く考えていた。また、危険な国際線より、安全な国内線に需要が移ると期待していた。全日空はそもそも国内線専門の航空会社から出発しており、国内線では日航を圧倒している。営業減収より、むしろ増収を考えていた様子であった。
 現在進行している航空需要は、北米路線に止まらない。アジア便の需要も3割減である。航空機利用の国内ツアーも中止が多く、キャンセル料についてはJTB、近畿日本ツーリストともに9月末まで無料にしている。
 米国のアフガン軍事報復戦争が始まり長期化すれば、日航、全日空とも債務不履行すら起こしかねない危機を迎えることになる。

(9月25日) 国際線旅客数6%減も/IATAが2001年見通し(9/29日経)

 世界の民間航空会社約270社が組織する国際航空運送協会(IATA)は25日、2001年の国際線旅客数が最悪の場合、前年より6%減るとの見通しをまとめた。旅客機を悪用した反米同時ゲリラが深刻な影響を与えるとみている。湾岸戦争があった1991年は同5%減だった。
 今年上半期の国際線旅客数は速報値で前年同期比4・3パーセント増だが、通年で最悪の場合に6%減とみている。大西洋路線の落ち込みが大きく、下半期に25%、通年で12%の大幅減を予想している。
 米国内線も下半期に25パーセント、通年で13パーセント減る見通し。国際貨物も下半期に25パーセント、通年で13パーセント落ち込むと予測している。

 【本紙の解説】
 IATAの予測も極めて甘い。アメリカでは国際・国内両方で乗客が5割以上落ち込んでおり、日本でも2割以上減少している。しかも回復の兆しはなく、米国の軍事報復戦争が開始されれば、いままで以上に落ち込むことも確実だ。
 湾岸戦争の時は、戦争終結後にアメリカの景気回復が進み、航空需要も増大した。しかし、湾岸戦争は民間機が巻き込まれる事態はなかったので今回とは比較できない。今回は最低でも向こう3年、20パーセント程度の落ち込みは確実であり、回復の可能性も薄い。航空会社と旅行会社の落ち込みが、航空機メーカーの経営危機につながり、全産業的に波及しかねない情勢である。
 また、IATA予測は数字のトリックで影響を低く見せている。91年の湾岸戦争は1月17日(開戦日)にはじまり、わずか1カ月で終わった。それで年間5パーセントの落ち込みだった。今回は、今年上半期の国際線旅客数が前年同期比4・3パーセント増という数字が出発点だ。9月11日から落ち込みが始まって年間6パーセントの落ち込みになるためには、9月から4カ月で前年比約25パーセント減となることが必要になる。つまりIATAの予測計算でも、9・11以降で25パーセント減なのだ。しかも今回は、この落ち込みが翌年もその次の年も続く様相だ。航空機産業とその関連産業は、半分以上のビックビジネスが倒産するような抜本的再編が必至という事態に突入した。

(9月25日) 損保会社/保険料値上げと支払限度額引き下げ通告(9/26各紙)

 航空保険を扱う損保各社は25日までに、保険料の引き上げと補償限度額の大幅引き下げを通告した。保険料は旅客1人当たり1・25ドルを上乗せ。このために、日本航空、全日空では10億円前後の年間保険料に新たに60〜70億円が加わる。さらに戦争で旅客機が墜落し巻き添えを受けた人や建物への補償限度額が20億ドルから5000万ドルに引き下げられる。下げられた分を航空会社で負担することになれば、一企業では負いきれないリスクとなる。 
 国内航空会社でつくる定期航空協会は同日、急きょ国土交通省に政府支援を要請した。会見した全日空の大橋洋治社長は「引き下げられた上限額では有事の際に一企業では対応できない。自己責任で運航継続するには限界がある」と話した。また、兼子勲・日航社長も「定期運送事業の継続が困難になりかねない」という。
 定航協はまず、賠償額の差額補てんを要請。保険料の負担増や警備強化に必要なコスト増などについても「別途、何らかの支援をお願いする」(大橋社長)。
 保険会社による航空保険契約の見直しは全世界の航空会社が対象となっており、欧米やオーストラリアなどの政府が、現在までに相次いで賠償額の差額補てんなどの救援策を打ち出している。日本政府の対応が欧米に比べ遅れている背景には、有事法制がないという日本特有の事情がある。現行の法体系では国が民間企業の債務を肩代わりすることはできない。

 【本紙の解説】
 航空関連産業とともに、9・11で経営危機にあえいでいる産業のひとつが保険会社である。保険料が6倍に跳ね上がり、さらに事故以外の損害、すなわち戦争やゲリラ、ハイジャックなどで墜落し巻き添えになった建物、人への賠償責任を40分の1に引き下げた。
 このため、欧州では25日から各航空会社の全面運航停止までが懸念されていた。欧州連合(EU)の各国政府は23日までに、保険料の一部を肩代わりすることを決め、運航停止は回避された。

(9月26日) 日米航空路線縮小進む (9/27日経夕刊)

 同時テロの影響で深刻な旅客離れに苦しむ米航空大手が日本路線の見直しに動き出した。デルタ航空がニューヨーク―東京線を10月末まで運休するほか、コンチネンタル航空も同路線を週7便から5便に減らす。
 デルタのニューヨーク―東京線は8月に開設されたばかりだが、反米ゲリラが起きた9月11日以降、1便も飛んでいない。同社は欧州や中東、アジアを結ぶ路線の統廃合を検討中で、ニューヨーク―東京線をこのまま廃止する可能性もあるとしている。コンチネンタルはヒューストン―東京線を週7便から6便に、ニューヨーク―香港線を週7便から4便にともに10月から減便する。ユナイテッド航空も今月末からシカゴ―東京線を週14便から7便に減らす。

 【本紙の解説】
 アメリカでは航空会社の倒産を防ぐため、政府が大がかりな支援を始めた。直接贈与50億ドルと政府債務保証100億ドル、空港警備に30億ドル、その他、税の軽減、保険の肩代わり、賠償金の軽減などを含めれば、500億ドル(日本円で6兆円)もの援助が先週決定している。
 今週は航空機の安全をはかる治安対策を発表した。米国のほぼすべての旅客機に私服の連邦航空保安官を乗り込ませること。操縦室のドアを破られにくくする。位置情報発信装置のスイッチを切れなくするなどである。機体の改造などには政府資金5億ドル(約600億円)を充てる。
 米各航空会社はすでに約10万人規模の大合理化を発表した。減便計画も実行に移されつつある。合理化案の発表が遅れていた米航空第3位のデルタ航空も今年中に1万3000人の人員削減を実施すると発表した。デルタ空港はニューヨークとワシントン、ボストンを結ぶシャトル便がドル箱路線であったが、現在の乗客数は1日平均200人。事件前の何と7パーセントにまで激減している。
 米航空大手各社のすべてが約20%の運航便数削減に追い込まれている。航空業界全体の損失は1日当たり約30億ドル(約3500億円)といわれている。したがって、搭乗率が20パーセント程度の太平洋線を今まで通り運航する余裕はない。 

(9月26日) 日航・全日空経営危機、北米路線の減便検討(9/27日経その他)

 日本航空は26日、旅客が減少している北米路線を減便する方向で検討に入った。日本発で1日に11便あるホノルル行きなど「複数便運航している路線を中心に検討している」(兼子勲社長)。全日空も「米国行きをアジア行きに切り替えるなど柔軟に検討する」(大橋洋治社長)という。
 9・11以降、北米路線の搭乗率は両社とも5〜6割程度に低迷しており、すでに日航はホノルル線で40便以上を欠航、需要に合わせた減便を実施している。今後は運航ダイヤ自体を減らす減便となる見込み。
 日航の兼子勲会長は27日の記者会見で、来年3月末までの減収額が日航だけで数百億円規模になるとの見通しを示した。航空業界全体では「もう一ケタ上かもしれない」と述べた。
 全日空の大橋洋治社長も25日に、米路線での旅客減少などで「100億円単位で減収になる可能性がある」と述べ、事態の長期化などを懸念していることを明らかにした。
 日航、全日空ともに、バブル崩壊以降の経営再建がようやく軌道に乗ったばかりだったが、一転して今後の見通しは立たなくなった。
 乗客の極端な減少と保険料の10倍化、さらに現在の「非常態勢」(フェーズE)が続けば、保安経費の追加コストが必要になる。見通しは真っ暗だ。

 【本紙の解説】
 日本の国際線航空2社も、アメリカの航空会社なみの危機を自覚し、減便を決めたようだ。全日空は北米便をアジア便に振り返るとか、まだ甘く考えている。アジア便も含めた航空需要全体で20〜30パーセント落ち込んでおり、回復の見通しも立たない。
 さらに、米国のアフガンへ軍事報復戦争が開始され、日本が参戦し、戦争が長期化した場合は、航空需要はさらに激減する。今年度6パーセントの落ち込みと計算しているIATA予測も報復戦争開始を織り込んではいるが、さらなる反米ゲリラはないことが前提だ。米国が戦争を開始しそれへの反撃があれば、航空需要の落ち込みはさらに決定的となり、前年比で半減するともいわれている。こうなると、欧米のように有事の政府支援が法制化されていない日本の航空会社は全社倒産である。

(9月27日)緊急時/民間機の撃墜指示(9/28産経)

 ラムズフェルド米国防長官は27日の記者会見で、ハイジャックされた民間機がホワイトハウスなどの主要施設に突入を企てるような事態が起きた場合、空軍に撃墜するよう指示していることを明らかにした。
 ラムズフェルド長官は、民間機撃墜までの手順について「時間があれば軍事行動に出る前に大統領に諮るが、切迫していれば最終結論は空軍の将官にゆだねられる」と述べ、緊急事態では大統領の許可をえず軍独自の判断で民間機を撃墜する可能性があることを認めた。
 今回の措置は、テロ再発防止に向けて米政府が強い態度で臨む姿勢を内外に示したもの。だが、大統領の判断を待たずに民間機が撃墜される可能性が明らかになったことで、同時テロ発生後、利用客が減少して経営が悪化している航空業界に一層の打撃となる可能性もある。

 【本紙の解説】
 軍独自の判断で民間機が撃墜されることになった。これで米国内便だけでなく、米国行きの航空便はさらなる激減必至だ。

(9月27日) 航空各社/政府に保安経費など50億円負担要望

 航空会社の業界団体である定期航空協会(会長・兼子勲日本航空社長)は27日、政府援助を求める要望書を国土交通省に提出した。要望の内容は、戦争などの第三者(建造物やそこにいた人等)賠償責任保険の限度額が5000万ドルに引き下げられたことから、従来の20億ドルとの差額について政府補償と、新たな保安対策強化費用の全額補助、受託手荷物検査の保安要員人件費についても政府の半額補助を求める等である。補助総額は現在の保安体制を維持した場合、来年3月末までで約50億円に上る見通し。
 事件後の保安経費急増は、米国路線の乗客減少や航空保険料値上げに苦しむ航空各社の経営をさらに圧迫している。国交省は要望を前向きに検討する方向だ。

 【本紙の解説】
 要望書は「事態は企業の存立そのものを揺るがしかねない状況だ」となっている。日本の航空会社もようやく事態の深刻さを自覚したようだ。
 事態は航空会社が言うように一社の自助努力を超えた事態であり、このままでは倒産も避けられない。しかし、政府資金を求めるのは民間の航空会社としては筋違いだ。欧米では、航空会社はもう一つの軍隊であり、有事の国家支援が法制化している。したがって、アメリカやEUで保険料の肩代わりに国でやったからといって、日本でも要求するというのは許されない。有事立法の先取りである。商法的にも民間会社の債権を国は肩代わりできない。

(9月27日) 公団総裁記者会見(9/28千葉日報、各紙の千葉版)

 新東京国際空港公団の中村徹総裁は27日に成田空港内で定例記者会見をおこなった。国土交通省が明らかにした成田、関西、中部の3国際空港の「上下分離方式」での民営化方針については、中村総裁は「十分検討に値する案」と積極的に評価した。
 中村総裁は2500メートルの平行滑走路を完成させるとともに共生事業や地域振興など地域との約束は国の責任と強調。「それらが反故(ほご)にされ、地域との信頼関係が傷つくことは困る」とした上で、「(国交省案は)十分検討に値する。われわれも検討していきたいし、いい結果が出ると思う」と積極的に評価した。
 未買収の用地問題への影響については、「現状の体制の中で解決していくことが最も大切」と述べ、改革前に本来計画通りの平行滑走路建設を完了させたい考えを強調した。
 中村総裁は、反米ゲリラの成田空港への影響について、着陸料や空港施設、給油施設の使用料などの業務収入(今月12日〜16日)が、約4億5000万円の減収になったと明らかにした。

 【本紙の解説】
 国交省の上下分離民営化案が、実質的にはターミナルビルそのものをテナントにだすことと変わりないことから、公団はいままで民営化反対であったが、賛成に回ったのである。
 また9・11反米ゲリラの影響で、向こう3年間赤字は必至であり、むしろ空港公団としては、赤字の責任を回避する意味でも民営化に賛成したのか。

(9月28日) 航空保険賠償額の差額補てん、閣議決定へ(9/28各紙)

 扇千景国土交通相は28日の記者会見で、反米ゲリラにより経営悪化が懸念される航空業界への支援策について「航空輸送の公共性を考慮し、閣議決定による政府補償を検討している」と述べた。損害保険各社がテロなど事故の際に航空会社に支払う賠償額(保険金)の上限を大幅に引き下げたのを受け、事故の際に賠償請求額と保険金支払額の差額を国が補てんする措置を早ければ10月2日の閣議で決定する。
 世界の損保各社は25日から、戦争などが原因の航空機事故に巻き込まれた被害者に対する賠償額の上限を従来の20億ドルから5000万ドルに引き下げた。オーストリア政府が6040万ドル以上の保険に加入している航空会社しか同国への乗り入れを認めないと表明するなど、賠償額の不足分を国が埋めなければ日本の航空会社の運航に影響が及ぶ恐れが出ていた。

 【本紙の解説】
 「航空輸送の公共性を考慮」して政府補償をだすといっているが、有事法制のない日本で、どの財源からどの法的措置でだすのか。航空会社存続の危機のなかで、日本もアメリカと同じように航空産業の軍事的必要性から「超法規的措置」で国が支援策をだすようだ。
 また、定期航空協は保険金差額とともに、保安対策費の50億円と保安要員の人件費の半分を要求している。これについて国交省は見解をまだ出していない。これまでだすと、アメリカのように他の産業も黙っていないだろう。

(9月29日) <減便>米航空会社が日本便を(9/29毎日)

 国土交通省が認可した5社の運休・減便申請は10月1日から27日までの期間が対象。ユナイテッド航空は成田空港―シカゴを週14便から7便に、成田―ソウル―サンフランシスコは週7便を全便運休にする。ノースウエスト航空は成田―ミネアポリスの週14便を8便に、関西空港―ロサンゼルスの週7便を全便運休。コンチネンタル航空は成田―ニューヨークの週7便を5便に、成田―ヒューストンの週7便を6便に変更する。
 また、すでに成田―ニューヨークの週7便を全便運休しているデルタ航空は、同路線を来年3月15日まで全面運休することになった。コンチネンタル・ミクロネシア航空は仙台―グアムを週7便から4便に、名古屋―グアムを週14便から7便に減便する。
 アメリカの報復戦争しだいでは、利用者がさらに落ち込むことも予想され、10月28日からの冬期分の運航計画は、一層の減便・運休申請が増加する可能性がある。

 【本紙の解説】
 9月26日のデルタ航空の減便発表に続いて、ユナイテッド航空、ノースウエスト航空などの最大手米国航空会社の日本便の減便が明らかになった。
 発表された成田発着の便は56便が26便に減少している。現行の46パーセント(54%減)である。すさまじい数字だ。アメリカの航空会社は成田空港の3分の1の発着枠を占める。アメリカ航空会社の半減は、それだけで成田空港の全発着便の15パーセント減少となる。このうえに日航、全日空の航空会社の減便も不可避な情勢になっている。当然、アジア便の減便も問題になる。最低でも成田空港発着便全体の3割減便は不可避だ。3割でとどまる保証もない。米国の報復戦争の開始、それへの日本の参戦は確実になっている。それへの反発からさらなる反米ゲリラの炸裂も予想される。事態の長期化もまぬがれない。
 成田の発着便は、最終的に半減する可能性もある。成田空港の年間発着便は13万回である。その3割で約4万回。暫定滑走路は最大限6万回というが、供用開始する1年目は2万回程度と見られていた。
 今度の事態で暫定滑走路の必要性は全くなくなった。各航空会社は使い勝手の悪い暫定滑走路より、配分されている現行の4000メートル滑走路を使いたい。それでも暫定滑走路を使うとすれば、その理由は公団が騒音で敷地内農民を追い出すために、各航空会社に暫定滑走路使用を強制する場合だけである。

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