ZENSHIN 2001/09/10(No2020 p08)

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週刊『前進』(2020号1面1)

革共同の9月アピール 小泉打倒! 11月労働者集会へ
大恐慌と世界戦争に突き進む帝国主義打倒へ総決起しよう
 国粋主義に転落したカクマル追撃を

 第1章 6回大会路線で武装し レーニン主義を貫こう

 米帝ブッシュ政権の登場と日帝・小泉政権の登場で世界史は一変している。二九年型世界大恐慌と第三次世界大戦への過程が急速に進行している。今こそ、革共同第六回大会路線を学習し武装し、反帝・反スターリン主義世界革命−日本革命に向かって進撃しよう。八月闘争で、日帝・小泉政権の改憲・戦争国家化攻撃への労働者人民の反転攻勢が始まった。この地平を打ち固め今秋決戦に総進撃しよう。小泉の改憲・有事立法、教育改革−戦争国家化攻撃を粉砕せよ。
 十一月労働者集会は二〇〇一年後半の最大の決戦である。小泉反革命による戦争国家化と「構造改革」に対決し、これを粉砕する労働者階級の総決起の闘いである。十月国労大会に勝利し、九月、十月のあらゆる闘いの力を十一月労働者集会に総結集していこう。レーニン主義的な党建設を前進させよう。
 十一月労働者集会を頂点とする今秋決戦の大爆発をかちとるために、革共同第六回大会路線の大学習を訴える。(その全内容は、近く『第六回全国大会報告・決定集』として刊行される)
 六回大会第二報告「二十世紀の総括と二十一世紀革命の展望に関する革共同の基本的見解」は、革共同の「現代帝国主義論」であり、世界革命完遂・日本帝国主義打倒への綱領草案的な位置を持つ提起である。
 その第一の意義は、革共同が世界で唯一、マルクス主義・レーニン主義の立場で二十世紀を革命的に総括したということである。
 二十世紀は、一九一七年のロシア革命を突破口に、プロレタリア世界革命の嵐(あらし)が帝国主義に壊滅的打撃を与え、その達成が全世界労働者階級の実践的課題となった世紀である。それは、スターリン主義の裏切りの中で帝国主義が延命し、帝国主義の基本矛盾が爆発し、戦争と反動が吹き荒れた世紀である。まさに戦争と革命の世紀であった。
 だからこそ六回大会報告は、二十一世紀においても、帝国主義侵略戦争、帝国主義間戦争の不可避性と必然性が貫かれること、そしてそれに対するプロレタリア世界革命の現実性があることを、レーニン帝国主義論に立脚して生き生きと展開しているのだ。実践的には、レーニン主義における党組織論の意義、農業・農民問題と民族・植民地問題の戦略的位置づけをはっきりさせ、レーニン主義革命論を全体系として再構築したことの意義は重要である。
 第二の意義は、マルクス主義の原理に立ち返り、レーニン主義の復権的再確立によって、スターリン主義の裏切りの核心が一国社会主義論にあることをはっきりさせたことである。スターリン主義の崩壊以降、マルクス主義の否定、レーニン主義への敵対が跋扈(ばっこ)していることに対して、実践的唯物論者として世界革命を遂行する立場を、六六年の三回大会路線の上で六回大会でさらに鋭くはっきりさせたのである。
 第三の意義は、今急速に現実化する第三次世界大戦はいかにして起こるのか、それを阻止するプロレタリア世界革命の戦略・路線は何かを明らかにしたことである。
 現代世界は、〈段階・過渡・変容・危機〉で規定される帝国主義の時代であるが、スターリン主義が二十世紀末においてついに歴史的破産を遂げ、今やこの崩壊したスターリン主義体制や残存スターリン主義体制を再び帝国主義的勢力圏へ取り込むことを決定的な突破口として、帝国主義間争闘戦が全世界の分割戦として展開されようとしている世界なのである。
 「二九年型世界大恐慌の現実化がはじまり、世界経済のブロック化がいよいよ激化してくるなかで、崩壊したスターリン主義圏と残存スターリン主義圏の取り込みをめぐって争いが具体的に激化していくとき、帝国主義対帝国主義の対立は、帝国主義である限り第三次世界大戦へとつきすすむしかない」
 六回大会路線は、こうした世界史の現実と真っ向から対決し、二十一世紀の反帝・反スターリン主義世界革命の現実性とその戦略と革命主体をはっきりさせたのである。
 日本の労働者人民の戦略は、第三次世界大戦への道を許さず、反帝・反スターリン主義世界革命の勝利をかちとることであり、その一環として、日本帝国主義打倒のプロレタリア革命を実現することである。
 三つの戦略的総路線のもとで強固な革命党を建設し、到来する革命的情勢の成熟の中で、世界革命勝利、日帝打倒のプロレタリア革命の勝利をかちとっていくことである。これこそが、革共同の二十一世紀革命の基本的綱領的路線である。総学習運動に突入しよう。

 小泉打倒の大衆行動爆発させた8月闘争

 都議選の敗北をみすえ、そそぎ、のりこえることを決意したわれわれは、その自己批判と革共同第六回大会路線の物質化をかけて八月闘争に猛然と突撃した。そして、教科書闘争、八月広島・長崎反戦反核闘争、靖国闘争などをとおして、日帝・小泉政権打倒への大きな前進を切り開いた。
 勝利の核心は第一に、小泉「構造改革」が帝国主義戦争と戦争国家化づくりの攻撃であること、同時に、戦闘的労働運動解体、階級的団結の解体攻撃であることを暴き、それに対する階級的反撃をたたきつけたことである。階級闘争における内乱的分岐と激突が激しく始まったのである。
 第二に、日帝の排外主義攻撃と闘い、朝鮮・中国−アジア人民との国際主義的連帯闘争が闘い抜かれたことである。プロレタリア革命の原点である革命的祖国敗北主義=プロレタリア国際主義を実践したのである。それは本質的に中国・朝鮮−アジア侵略戦争絶対阻止闘争である。
 第三に、小泉政権打倒の革命的大衆行動を実現することで、米帝ブッシュと日帝・小泉の登場によってもたらされた帝国主義戦争の急速な接近が、実は革命的情勢を呼び寄せているものであることを明らかにしたことである。
 この八月闘争の切り開いた地平をさらに豊かに発展させ、今秋決戦に猛然と躍り込み、何よりも十一月労働者集会の大成功に向かって闘い抜こう。

 第2章 帝国主義経済の破局の切迫と米帝の戦争政策

 米帝のバブル経済がついに吹き飛び、世界経済の収縮とブロック化が進んで帝国主義間争闘戦が激化する中で、世界は第三次世界大戦へと突き進み始めている。
 米株式市場は八月末、大幅に下落し、ついに一万jを割り込んだ。四−六月期のGDP成長率が〇・二%にまで落ち込む中で、ハイテク株から売りが拡大している。日欧の景気後退の影響も含めて、米経済は急減速し、二九年型世界大恐慌−大不況への突入が完全に不可避となっているのだ。
 米帝ブルジョアジーは七月一カ月で二十万六千人(前年同月比で三・二倍)を解雇した。今年に入って七月までにすでに九十八万人が解雇・リストラされている。かつてない激しい攻撃だ。米帝ブッシュのアメリカ労働者人民に対する攻撃を断じて許さず、アメリカ労働者人民の闘いと連帯して闘おう。
 さらにIMF報告によれば、今年の世界貿易数量の伸びは、前年比六・七%増と、昨年の伸びに比べて半減している。韓国の七月の輸出実績が、前年同月比で二〇%の大幅減などアジアにおける輸出低迷が深刻化している。
 米帝ブッシュは、進行する二九年型世界大恐慌と世界大不況に対応して、新たな世界戦略を打ち出そうとしている(九月末に「四年ごとの国防計画の見直し」として発表)。
 それは、@米世界戦略の先兵として日帝を組み伏せるという形をとった日米同盟関係の再構築・強化である。A国防戦略における「二大戦域同時対応」戦略から、中国−アジア重視戦略への転換である。Bミサイル防衛構想の大胆な推進である。
 この転換は、米帝が中国−アジアから世界大的戦争へ突入するために動き始めたということである。米軍は八月十七日、台湾海峡に近い南中国海で対中国の大軍事演習を行った。原子力空母カールビンソンを始め、軍艦十四隻、戦闘機など百五十機、参加人員は一万五千人という大規模な軍事演習である。さらに八月十日には、米英軍五十機で二月以来最大のイラク空爆を行った。
 十月十七〜二十一日のAPEC閣僚・首脳会議(上海)を前にしたブッシュ訪日(十六日)−日米首脳会談では、集団的自衛権、ミサイル防衛構想、構造改革などが議題になることは不可避である。日米同盟が軍事的・経済的にさらに強化されることは、アジア危機を激成するものになる。他方、米帝のこの戦略は完全に対沖縄戦略の決定と一体であり、沖縄基地が圧倒的に強化されることになる。米日帝の中国・朝鮮侵略戦争、沖縄基地強化の攻撃と対決して闘い抜こう。
 一方、小泉政権の反革命路線の根幹にあるのは、日帝金融・独占資本の延命の絶望的追求である。日帝は、米帝ブッシュ政権の対日争闘戦政策のすさまじい激化政策に必死に対応するために、当面は米帝の世界戦略に沿いながら独自路線を追求していく。しかし米帝と日帝の利害は中国・アジア−世界支配という点で根本的に対立しており、日米争闘戦の非和解的激化・発展は不可避である。
 それに備えるために小泉政権は、改憲・有事立法=戦争国家化と「構造改革」路線を真っ向から掲げ、日本を戦争国家へと改造していこうとしている。そのために、資本主義・帝国主義の行き詰まりに対する広範な労働者人民の現状への不満・怒り・先行き不安にこたえるようなポーズをとって取り込みながら、それを国益主義・国家主義・排外主義の方向へ反動的に動員しつつ、これまでの階級関係を暴力的に右から破壊し去ろうとしているのだ。
 小泉政権下で、さらに恐慌が激化している。NTT、電機、自動車などの基幹産業の大リストラ攻撃が始まっている。ついに、七月の完全失業率が五・〇%(五三年の調査開始以来初めて)、完全失業者数は三百三十万人となった。
 完全失業率五%を聞いて小泉首相は、「ある程度(三百三十万人が『ある程度』か!)失業者が増えるのはやむを得ない」「生みの苦しみだ」と言い、さらなる首切りとリストラ攻撃を強行すると宣言している。断じて許せない。
 以上のように、革共同第六回大会で確立した革共同の現代帝国主義論の現実が恐るべき勢いで急速に進行している。実践的には、レーニンの「革命党の三つの義務」の強烈な実践が問われているのだ。労働者階級の怒りと決起に結びつき、その階級的獲得と組織化を推し進め、革命的大衆行動を実現しよう。そのためにも労働者階級の中に深々と党を建設しよう。
 帝国主義戦争の現実的切迫に対して、労働者人民の進むべき道は、世界革命の一環として日帝打倒のプロレタリア革命を実現することである。
 今秋決戦を、改憲・有事立法・教育改革・沖縄の歴史的大決戦として実現しよう。全学連を先頭にして、巨大な反戦闘争の大爆発を切り開こう。そして、今秋決戦の一切を集約して十一月労働者集会五千人大結集を闘いとろう。
 そのために第一に、八月闘争を闘った力で、今秋臨時国会闘争に総決起することである。領域警備のための自衛隊法改悪を阻止せよ。PKOの参加五原則の見直し―PKF本体業務への参加凍結解除に向けたPKO法などの改悪、自衛隊の東ティモール派兵を阻止しよう。有事立法の中間報告と対決し、有事立法粉砕―改憲阻止の大決戦に本格的に突入しよう。教育基本法改悪策動を粉砕しよう。
 第二に、十・一六米帝ブッシュ訪日―日米首脳会談は、日帝の戦争国家化と米・日帝国主義による中国・朝鮮侵略戦争を決定的に促進することとなる。ブッシュ訪日阻止、日米首脳会談粉砕へ総決起しよう。
 第三に、三里塚反対同盟の烈々たる決意と闘いにこたえて、十・七現地闘争に全国から総結集し、巨大な三里塚闘争を構築し、成田空港暫定滑走路完成―テスト飛行阻止へ進撃しよう。
 第四に、米帝ブッシュ政権の戦争政策と対決する沖縄闘争の戦略的位置づけをさらに高めて闘おう。名護新基地建設阻止・米軍基地撤去の闘いを沖縄―本土を貫いて大爆発させよう。

 第3章 戦争と大失業の小泉と闘う階級的労働運動を

 十月国労大会決戦―十一月労働者集会を、小泉「構造改革」と対決する労働者階級の怒りの総反撃として闘いとろう。
 そのためにどのように闘うか。〈世界戦争と大恐慌情勢の切迫。迫りくるこの破局に対して労働者階級はどう闘うか〉――これに鮮明な回答を示して、労働者に訴えることだ。
 第一に、六回大会路線を猛然と学習し、その全内容で労働者を組織しよう。小泉反革命は、経済主義的反動ではない。帝国主義戦争に突入することで延命しようとするファシスト的反革命である。したがって、プロレタリア革命の戦略で闘う以外に勝利はないのだ。
 第二に、小泉「構造改革」攻撃との大決戦に突入することである。何よりも小泉「構造改革」の階級的性格を徹底的に暴露し、それとの全面的な対決を貫くことである。
 六月二十一日、経済財政諮問会議が「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針」を発表した。これを暴露・弾劾する。
 「基本方針」の核心の一つ目は、帝国主義間争闘戦における敗北的・敗勢的現実への危機感をむき出しにして、小泉「構造改革」によって、帝国主義としての「本来持っている実力にふさわしい発展をとげる」(序文)と、戦争のできる国家への改造を果たそうと宣言している点である。そのために、むき出しの国家主義、愛国主義、排外主義イデオロギーを扇動している。
 核心の二つ目は、不良債権処理が必然的に生み出す大失業を、「労働市場の構造改革」と言って強行していることだ。すでにNTT十一万人、富士通一万六千人、住友金属工業九千人を始めとして電機・金属・自動車などの大独占・基幹産業を先頭に大リストラ攻撃が嵐のように襲いかかっている。
 また、基本方針の「民営化・規制改革プログラム」「地方自立プログラム」では、郵政民営化、特殊法人合理化を強行し、それを徹底した行政改革の突破口とし、「公務員制度改革」による戦後公務員制度の解体、全公務員労働者の大合理化を強行しようとしている。
 さらに「保険機能強化プログラム」では、戦後社会保障の制度と理念を全面的に解体しようとしている。また、「確定給付型年金の改悪」「確定拠出型年金の強行」による企業年金の解体=企業の年金負担の軽減、さらに退職金の打ち切りなどの攻撃である。
 核心の三つ目は、労働運動・労働組合の解体=団結破壊攻撃の激化であり、これこそ小泉「構造改革」=基本方針の反動的核心である。基本方針が、改憲攻撃の一環でもある「司法改革」を強調しているのは、労働法制の全面的改悪や労働委員会制度の解体によって労働組合の階級的団結の徹底的な解体を狙うものだ。
 第三に、帝国主義的労働運動とファシスト労働運動との闘いを強めることだ。
 帝国主義の完全な下僕に成り下がった連合路線の帝国主義的労働運動の反動性と破産性を全面的に暴露し、連合下の労働者と固く結びつこう。
 JR東労組とJR東資本が八月一日に締結した「二十一世紀労使共同宣言」を徹底的に弾劾して闘わなくてはならない。これは、八七年の分割・民営化以来のJR資本=カクマル結託体制を「国鉄時代の旧弊を徹底的に打破し、新たな企業経営の創造に挑戦してきた」と開き直り、十月一日のJR完全民営化法施行を前にして「世の中に誇れる質の高い経営と自らの労働観を主体的に創造する」「一段と質の高い労使関係を構築する」と宣言している。これは、国家・企業とともに進むというファシスト労働運動、排外主義労働運動の宣言である。会社を救うためには一切の帝国主義の戦争政策に賛成する、侵略戦争の先兵になると言っているのだ。
 このファシスト労働運動と帝国主義的労働運動を打ち破り、国鉄決戦の新段階を切り開こう。

 10月国労大会決戦―11月集会かちとろう

 十月国労大会(十三〜十四日)の勝利へ総決起をかちとろう。
 十月国労大会は、小泉「構造改革」攻撃と最先端で対決し、国労の生死と日本労働運動の命運をかけた戦後労働運動史上、最大最高の大決戦となった。
 国労大会の課題はまず、小泉「構造改革」による国労・動労千葉解体攻撃を全面的に打ち破ることである。
 二つに、四党合意にとどめを刺し、闘争団切り捨てを粉砕し、反動執行部打倒―闘う執行部樹立をかちとることだ。
 三つには、JR東日本の「ニューフロンティア21」によるメンテナンス合理化―全面外注化攻撃と対決し、職場からの総反撃を巻き起こすことである。
 この国鉄決戦の死闘に勝利することで、十一月労働者集会の五千人結集への血路を切り開くのだ。
 労働者人民の反撃は根底的なところで始まっている。教科書闘争、広島・長崎反戦反核闘争、靖国闘争など八月闘争の爆発を見よ。教育労働者を軸とした教科書闘争は、全国に広がり勤評闘争以来の現場と地域の結合として、また国際主義的闘いとして大きく前進した。動労千葉の春闘百二十時間ストライキは階級的団結の力を鮮やかに示し労働運動に階級的再生の息吹を与えた。五・三〇国鉄闘争勝利集会は戦闘的労働運動の再生の展望を切り開いた。中小民間の労働者は襲いかかる倒産・首切り攻撃と真っ向から対決し、団結を守り抜いている。七月参議院選挙戦で連合傘下の労働者が連合中央に反乱したことに示されるように、巨大な党派闘争が始まった。
 この開始された階級的流動情勢に徹底的に依拠し棹(さお)さして、「社会主義と労働運動の結合」を実現することだ。そのためには労働運動の現場に『前進』、共産主義的政治を持ち込む、そして党組織を建設することである。
 十一月労働者集会に、小泉反革命への総反撃に立つ労働者の強固な隊列を登場させよう。国鉄決戦を最前線に全逓、教労、自治体の四大産別・全戦線で、小泉「構造改革」攻撃と全面対決を貫こう。
 さらに、小泉の「生きることすら奪い去る」攻撃、社会保障制度解体攻撃を粉砕しよう。介護保険料の十月からの二倍化を絶対阻止しよう!
 治安弾圧攻撃粉砕! 公安調査庁のスパイ化攻撃粉砕・公安調査庁解体をかちとろう。
 そして何よりも獄中同志奪還大運動をつくり上げよう。獄中同志への面会運動を組織し、獄中同志奪還の十万人署名運動を貫徹しよう。十二月奪還大集会の大成功へ全力を挙げよう。
 組織分裂で崩壊的危機に陥り、右翼国粋主義に転落を深める黒田カクマルを追撃・打倒せよ。

 『前進』読者を拡大し党勢2倍化へ闘おう

 党は、〔大会・綱領・規約〕で一致し団結し拡大することで党を組織する。
 党勢二倍化を実現するために党は何をなすべきか。第一に、六回大会路線で一致し確信を持つことである。六回大会路線で闘うことが二倍化への道である。
 第二は、党生活の三原則「会議・機関紙・財政」の非妥協的な貫徹によって党をつくっていくことである。原則的な党活動を機関紙を軸に再建していくことである。機関紙を軸にした党活動こそ党勢二倍化への道である。
 第三は、革命的情勢の切迫性・現実性を踏まえ、「革命党の三つの義務」を本格的に貫徹することである。非合法・非公然体制の強化、宣伝・扇動戦、革命的大衆行動の組織化である。ここにこそ爆発的な党勢二倍化への道がある。
 第四は、革命的情勢の急速な接近に対応して、革命党の蜂起の観点から逆規定して、地域、職場における党勢の二倍化計画を立てることである。とりわけ基幹産業、基幹部門に強力な労働者細胞を建設しよう。
 第五は、階級的労働運動をめぐる実践的プランを作成することである。その中心テーマは、機関紙を拡大し、その配付網を文字どおり網の目のように形成していくことである。
 猛然と党勢二倍化の実践に移ろう。
 今秋決戦の一切の成果を十一月労働者集会に結実させよう。

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週刊『前進』(2020号1面2)

パレスチナ人民虐殺弾劾する

 八月二十七日、イスラエル軍はヨルダン川西岸のパレスチナ自治区ラマラにあるパレスチナ解放人民戦線(PFLP)の事務所を武装ヘリでミサイル攻撃し、アブアリ・ムスタファ議長を暗殺した。この間、イスラエルはパレスチナ人民に対して激しい虐殺攻撃をかけている。米帝ブッシュ政権を後ろ盾としたイスラエルのパレスチナ人民虐殺を、わが革共同は煮えたぎる怒りを込めて徹底弾劾する。そして、あらゆる兵器を使ったイスラエル軍の攻撃にもひるむことなく不屈に民族解放闘争に決起するパレスチナ人民に心から連帯し、その勝利のためにともに闘い抜く決意である。
 昨年九月に極右リクード党党首のシャロン(現首相)がエルサレムにあるイスラム教の聖地への訪問を強行して以来、パレスチナ人民の闘いが爆発し、第三次インティファーダが開始された。戦闘機や戦車、武装ヘリ、自動小銃を使った攻撃に対して自動小銃や投石で応戦し、車載爆弾などで激しい戦闘をたたきつけている。八月九日には西エルサレムで十六人が死亡し約九十人が負傷する自爆テロがたたきつけられた。パレスチナ人民の武装解放闘争は完全に新たな段階に突入したのである。
 一九八七年からの第一次インティファーダは、一万千人の死者と四万人の逮捕者を出しながら、イスラエル軍と投石で闘い抜かれた。以来、パレスチナ人民の闘いはついにイスラエルを泥沼的な戦闘に引きずり込み、果てしない消耗戦を強いるところまで勝利的地平を切り開いている。
 こうした中で、米帝が中東支配の維持のために進めてきた「和平政策」=九三年オスロ合意とパレスチナ暫定自治政策が完全に破産を突き付けられたのだ。「自治」のペテンのもとにパレスチナ人民に米・イスラエル支配を強制する策動がパレスチナ人民から“ノー゜をたたきつけられたのである。
 これに対して米帝ブッシュは、「停戦」交渉のペテンを使いつつ、「暴力停止」の国連安保理決議をつぶすなど、イスラエル軍のテロ襲撃をそそのかし、側面から支援する態度を強めてきた。だが米帝・イスラエルの策動を打ち破ってパレスチナ人民は不屈に闘っている。
 この闘いは、アラブ反動諸国の抑圧をはねのけ、広範なアラブ人民の決起を呼び起こしつつある。一方、イスラエルは泥沼的な戦闘と経済危機の深刻化が相まって、絶望的な危機へと突入している。それゆえ一層凶暴化するイスラエルのパレスチナ人民虐殺を絶対に許してはならない。
 不屈に闘うパレスチナ人民と固く連帯し、米帝の中東侵略戦争、米日帝の中国・朝鮮侵略戦争を阻止しよう。

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週刊『前進』(2020号1面3)

10・7三里塚現地大集会へ 反対同盟が招請状 “滑走路完成阻もう”

 三里塚芝山連合空港反対同盟は、十・七全国総決起集会への招請状を全国の人民に発した。これにこたえて総結集しよう。(編集局)

 ◆招請状

 全国の闘う仲間のみなさん。
 三里塚闘争は暫定滑走路をめぐる文字通りの決戦を迎えました。突貫工事の結果、完成は十一月末の予定を約一ケ月前倒しにすることが予想されます。十・七全国総決起集会はこの攻撃を迎え撃つ一大闘争です。今秋暫定滑走路完成−テスト飛行実力阻止から来春開港粉砕へ。十・七集会に全国から総結集されることを訴えます。
 工事終了後、攻防は新たな段階に入ります。ただちにテスト飛行が始まります。滑走路・誘導路と灯火施設などの完成検査、開港三ケ月前のノータム(航空情報)発出、慣熟飛行を経て開港です。その間約六ケ月。開港圧力と、民家上空四〇メートルのジェット飛行や誘導路のジェットブラスト(排気ガスの爆燃)などが先取り的に押し寄せ、追い出し攻撃が熾烈を極めることが避けられません。
 反対同盟は、九九年十二月三日の暫定滑走路着工以来、軒先工事と対決してきました。その悪らつさは強制代執行と変わらぬものでした。団結街道をふさぎ、県道をトンネルに変え、迂回道路が人家に迫り騒音をふりまいています。空港敷地は地面から三メートル以上も高く、民家の生活を威圧しています。そして東峰神社の立木伐採とこれに抗議した萩原事務局次長の不当逮捕。公団は東峰部落の総有である神社の土地を強奪しようとしています。
 反対同盟は、こうした暴挙に続く開港攻撃を、平行滑走路(二期工事)をめぐる最大の決戦として闘う決意です。
 攻撃の激しさと裏腹に、暫定滑走路の現実はじつにぶざまです。二一八〇メートルに切り縮められた滑走路ではジャンボ機が飛べず、国際線はほとんど使えません。このため国内線の需要喚起が叫ばれましたが、そのための充実検討会も破産状態。結局、暫定滑走路では役にたたず、平行滑走路への延長計画も絶望的という事態にたたきこまれています。
 追いつめられた国土交通省は、羽田空港の深夜・早朝の国際チャーター便と北側離発着で乗り切り、二〇一五年完成予定の羽田再拡張による完全国際化で航空政策の立て直しを余儀なくされているのです。
 小泉内閣の登場によって戦争体制づくりと失業が急速に進行しています。「つくる会」教科書の検定通過に続いて靖国神社公式参拝を強行しました。有事立法・改憲の動きが本格化しています。九月下旬からの臨時国会ではPKO五原則見直しとPKF凍結解除が策動されています。失業率は五パーセントを突破しました。「構造改革」によって労働者に対する資本の攻撃はさらに激化します。三里塚における暴挙はこれらと一体です。アジアをふたたび勢力下に組み敷こうとする新たな航空政策の中軸に羽田の国際化(再拡張)と成田平行滑走路の完成を位置づけているのです。
 人々の怒りは日に日に高まっています。三里塚は、名護新基地攻撃と闘う沖縄を始め小泉の反動と闘うすべての人々と連帯し、闘いの最先頭にたつ決意です。
 土地収用法改悪を徹底弾劾し、千葉県収用委員会の再任命を許さず闘います。十・七三里塚に総決起し、秋冬の闘いに勝利し来春開港を粉砕しよう。
 二〇〇一年八月二十六日

   記
【集会名称】
今秋暫定滑走路完成−テスト飛行阻止、成田軍事空港建設粉砕
10・7全国総決起集会
【日時】
十月七日(日)正午
【会場】成田市東峰 反対同盟員所有地
【主催】三里塚芝山連合空港反対同盟

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週刊『前進』(2020号2面1)

JR東「第4次労使共同宣言」粉砕せよ
「会社のために働く」と宣言し 戦争協力を誓う松崎・東労組
 メンテ合理化粉砕、JR総連解体へ

 八月一日、JR東日本とJR東労組は、「二十一世紀労使共同宣言(新たな飛躍に向けて)」と銘打った第四次労使共同宣言を締結した。東労組=松崎・カクマルは、JR東日本の「ニューフロンティア21」の極悪の先兵となることを、ここにあからさまに表明した。東労組カクマルは、ファシスト労働運動としての延命を求めるあがきの末に黒田カクマルとの分裂・抗争を深め、ついにJR資本の忠実な手先として国労・動労千葉(動労総連合)解体へのファシスト突撃隊となることを選択したのである。それは同時に、小泉反革命のもとでの改憲・戦争国家化攻撃、「構造改革」攻撃のすべてを受け入れ、それを労働者階級に強制する極悪の役割を果たすということだ。第四次労使共同宣言を徹底的に弾劾し、JR総連カクマルと黒田カクマルをともども打倒・一掃する闘いを今こそ巻き起こそう。メンテナンス合理化と対決し、チャレンジ・反動革同を引き降ろして、国労の階級的再生をかちとろう。

 国家主義に行き着くファシスト労働運動

 第四次労使共同宣言は、次のようにあけすけに叫んでいる。
 「JR東日本グループの発展を実現するため、労使心を一つにして『ニューフロンティア21』のもと『安全』『サービス』『信頼』等の改革や業務の徹底した効率化に不断に取り組み、新しい時代を切り拓くこととする」「社員一人ひとりが、会社の発展、自己実現のために自ら何ができるかを常に念頭に置き……不断の改革に邁進(まいしん)しなければならない」「JR東日本グループが二十一世紀において更なる飛躍を遂げるためには……自らの労働観を主体的に創造していかなくてはならない」
 ここにあるのは、“会社がなければ労働者の生活もない゜“会社の発展のために身も心も主体的にささげよ゜“それこそが労働者の自己実現だ゜というウルトラな企業主義である。
 東労組が六月の大会で採択した「組織*労働生活ビジョン21」は、「ニューフロンティア21」を「時宜を得た発表」と賛美し、「組合員と家族の幸せを実現するためには会社を発展させること」などと臆面(おくめん)もなく言い放っている。そして、「必要な効率化は進める」「鉄道事業と生活サービス事業が同じ賃金体系でいいのか」などと大合理化と能力給の導入を提唱し、「雇用形態の多様化」「複線型人事の拡大」を露骨に押し出して不安定雇用の拡大を絶叫した。まさに東労組カクマルは、資本と完全に一体化し、企業主義へと全面的にのめりこんでいるのである。
 帝国主義が侵略戦争へと本気でかじを切ろうとしている時代において、企業主義の行き着く先は、国家主義、帝国主義的な愛国主義・民族排外主義である。東労組カクマルは、小泉の有事立法・改憲・戦争国家化攻撃をもすべて受け入れ、それを積極推進することを表明したのだ。
 松崎はこれまで何度も、「自衛隊を認めるんだったら核だって(認めろ)」「一番利益をあげるのは戦争だ。だったら軍需生産でもなんでもやっていくようにしていかなければならない」などと発言し、戦争協力を誓ってきた。九九年の連合大会に際して、JR総連は連合政治方針への対案という形をとって安保・自衛隊を容認し、国家の自衛権を積極的に主張して、改憲を推進することを表明した。
 だが、今回の第四次労使共同宣言は、それらを数段エスカレートさせている。小泉反革命のもと、帝国主義の侵略戦争の現実性が突きつけられる中で、東労組カクマルは日帝の侵略戦争に協力し、その最先兵になると公言したのだ。まさにそれは、連合の帝国主義的労働運動をはるかに上回る、ファシスト労働運動の極致の宣言である。

 国労解体狙い 外注化攻撃の最悪の先兵に

 「聖域なき構造改革」を唱える小泉政権のもとで、NTTや電機、自動車を始めとする日帝資本は、矢継ぎ早に大規模な首切り・リストラ計画を打ち出している。労働者を大失業にたたき込むとともに、低賃金・無権利・不安定雇用化を強制しようとしているのだ。総務省発表の統計でも失業率は五%となった。資本主義のもとでは労働者は生きていくことができない現実が、突きつけられている。
 日帝資本は今や、いかに大量かつ無慈悲に首切りを進めるかに、資本としての延命をかけている。この中でJR東日本は、諸資本と競い合いつつ「ニューフロンティア21」を打ち出した。それは、従来の鉄道会社としてのあり方を全面的に転換するとともに、賃金体系や雇用形態も大幅に改変するというものである。
 その軸をなすものこそ、「設備部門におけるメンテナンス体制の再構築」と称する保守部門の全面外注化攻撃だ。資本は国労組合員の多い保線区・電力区・信号通信区などを廃止し、現場の労働者を下請け会社に出向させ、転籍を強制し、徹底した低賃金でこき使おうとたくらんでいる。
 その根底に貫かれているのは、職場丸ごとの廃止をテコとした国労・動労千葉解体の攻撃だ。国家が総力を挙げて遂行した国鉄分割・民営化による国鉄労働運動解体攻撃の総仕上げを、力ずくで貫徹しようというのである。まさにそれは、資本攻勢の最先端に位置している。
 分割・民営化以来、十四年にわたる激烈な組織解体攻撃に抗して、国労・動労千葉は千四十七人闘争を先頭に不屈の闘いを貫いてきた。それは今や、小泉「構造改革」に怒りを燃やし、反撃を待ち望む労働者の一大結集軸となりつつある。だからこそ、権力と資本はそこに憎しみを集中し、国鉄闘争を解体しようと全力を挙げているのである。「ニューフロンティア21」には、国労・動労千葉の解体というどす黒い不当労働行為意思が、徹頭徹尾貫かれている。
 東労組カクマルは、資本が「メンテナンス再構築」によってJR本体の国労組織に壊滅的打撃を与えようと身を乗り出しているその時に、資本と一体となって労働者にファシスト的襲撃を加えることを宣言した。第四次労使共同宣言は、これまでのどの労使共同宣言をも上回る、すさまじい攻撃なのである。
 彼らは、国鉄時代の末期に、二度にわたる「労使共同宣言」を動労の名において国鉄当局と締結した過去を持つ。これを決定的な転機として、動労カクマルは広域配転や異系統配転を積極的に推進し、「血の入れ替え」と称して国労組合員を職場からたたき出す攻撃に自ら手を染めるに至ったのだ。JR体制下においても、東労組は「一企業一組合」を唱えつつ過去三度にわたって「労使共同宣言」をJR東日本と結んだ。それらは、国労・動労千葉解体への反革命的突撃を絶叫するとともに、“松崎カクマルによる東労組専制支配に逆らうな゜と傘下組合員を恫喝するものであった。
 第四次労使共同宣言は、分割・民営化以来のカクマルのファシスト的悪行の数々を、「国鉄時代の旧弊を徹底的に打破し、新たな企業経営の創造に挑戦してきた」「国鉄時代の不毛な労使関係から、労使相協力する健全な新しい労使関係へと自己改革を図ってきた」と反動的に賛美している。そうすることで、これまで以上に資本に忠誠を尽くすと誓っているのだ。

 国労現執行部打倒し 反撃へ

 メンテナンス合理化−全面外注化は、支社によっては十月一日にも実施に移されようとしている。
 六月十三日に東労組が会社提案を受け入れたことにより、JR東資本は外注化の有無を言わさぬ強行へと一挙に攻撃の歩を進めた。すでに各職場では、労働者一人ひとりを呼び付けて出向先を提示するという攻撃が始まっている。国労は現場組合員の怒りに押されていまだ「メンテナンス再構築」について妥結していないが、資本はチャレンジが牛耳る東日本エリア本部の屈服を見透かして、国労組合員に出向強要による激しい揺さぶりをかけているのである。現場の怒りはますます高まっている。
 廃止の対象とされている職場は、いずれも安全確保にとって重要な部署ばかりである。ところがJR資本は、その業務をすべて下請けに投げ渡し、現場を熟知し安全運行を守ってきた労働者に出向を強制しようとしているのだ。安全の解体に直結する方策を強行してまで、国労を壊滅に追い込もうと必死なのである。この攻撃と全力で対決することによってのみ、国労の存立は守りぬかれるのだ。
 言うまでもなく、この攻防はJR総連とのすさまじい組織攻防戦となる。JR資本が生き残りをかけて労働者に極限的な犠牲転嫁を行おうとしている時、東労組組合員といえどもこの攻撃を免れるわけにはいかない。資本の完全な手先と化した東労組カクマルに対する怒りは、東労組の内部からもいよいよ噴出しようとしている。敵の攻撃に徹底した反撃を貫くならば、それはJR総連解体の決定的なチャンスに転化する。
 だが、そのためにも国労本部に巣食うチャレンジと反動革同を打ち倒すことが絶対に必要だ。彼らは、四党合意をもって闘争団を切り捨て、国労を自己解体の道に引き込もうとしているのだ。チャレンジは今や分裂策動さえ公然化させている。それは、メンテナンス合理化への死活的反撃が求められている時に、一戦も交えることなく国労を壊走に導こうとする裏切りだ。
 チャレンジと反動革同は、「四党合意を受け入れれば、資本はカクマルを切り捨て『労使正常化』してくれる」という浅はかな思惑を労使共同宣言によって打ち砕かれ、展望も覇気も失っている。今こそ彼らを徹底的に追撃し、直ちに国労大会に向けての総決起を開始しなければならない。闘う新執行部の樹立と国労の階級的再生への大道を押し開いた時、国労組合員の真の力は解き放たれ、メンテナンス合理化粉砕・JR総連解体の壮大な闘いは必ず幕を開けるのだ。

 破産し転落を深める分裂カクマル打倒を

 敵はけっして盤石ではない。メンテナンス合理化は、資本にとっても一歩間違えれば分割・民営化体制そのものが吹き飛ばされかねない危機をはらんだものである。だからこそ資本は、自らに完全に忠実で、その意図を最も凶暴に貫徹できる先兵を必要としたのである。JR東日本にとって、その役割を果たせるのは結局のところ東労組=松崎カクマル以外に存在しない。国会でさえ「東労組のカクマル支配」が問題とされる中で、JR東・大塚は東労組カクマルを選択するほかになかったのだ。そのために大塚は、独自展開は許さないと松崎らに強力なタガをはめた上で、ファシスト労働運動としての東労組カクマルを自己の先兵として採用したのである。
 一方、東労組カクマルもこの間、ファシスト労働運動としての延命を求めてあがき続け、黒田カクマルとの分裂・抗争を深めてきた。そして、六月の東労組定期大会で松崎が会長から「顧問」に退くという形で資本への恭順を表明した上で、労使共同宣言の締結にこぎつけたのだ。
 松崎カクマルは八月九日、黒田カクマルによるJR総連OBの坂入充拉致に関して、JR総連委員長・小田の名前で権力に対する告訴を取り下げた。そこには、“黒田カクマルとの対立問題にもうケリをつけ、完全に会社の御用組合になれ゜という資本と権力の意思が強烈に働いている。
 第四次労使共同宣言が、「第一次をはじめとする労使共同宣言と同様、経営側にあっては、いかなる外部干渉をも排した自主自立した経営を堅持し、労働組合側にあっては、企業内労働組合主義の更なる徹底を図る」として、「企業内労働組合主義」をことさらに強調しているのは、そうした意味を持っている。他方、資本にとって「自主自立の経営」とは、どんなに批判があろうとも東労組カクマルとの結託を維持するということだ。
 だが、そもそも、資本=カクマル結託体制こそ、JR体制の最弱の環をなしている。千四十七人を先頭とする国労・動労千葉の存在は、資本=カクマル結託体制を撃ち続け、JR総連に幾度もの分裂と危機を強制してきたのである。
 東労組と東資本は、二年も前から「国労対策を考えた外注化」を唱えてメンテナンス合理化に向けての秘密交渉を続けてきた。だが、それを実行に移すためには、資本も東労組も、互いに危機を抱えながら、その関係を再編成しなければならなかったのだ。
 九州労の大量脱退を契機に一挙に表面化したJR総連カクマルと黒田カクマルとの分裂・抗争の決定的激化は、このことを明白に示している。松崎カクマルと黒田カクマルの双方にとって、それは絶望的な反革命的飛躍の試みと、その結果としての泥沼的対立の激化と破産を不可避とするものであった。
 黒田カクマルの側も、一度はJR総連ダラ幹に対して「階級敵」「JR総連執行部打倒」とまで宣言しながら、松崎をけっして弾劾できない体たらくだ。黒田カクマルは、松崎を批判のやり玉に挙げたとたん、自らも大混乱に陥ることに心底からの恐怖を抱いている。そして、ますます反米愛国主義・国粋主義にのめりこむ黒田を絶対化することで、危機をファシスト的にのりきろうとしているのだ。だが、それは彼らの破産をますます拡大するものでしかない。
 危機の中から一層のファシスト的純化を深める松崎カクマルと黒田カクマル。分裂カクマルをともども完全打倒する決定的なチャンスが到来した。
 今こそ、春闘百二十時間ストライキを打ち抜いた動労千葉の決起に続こう。動労千葉の闘いこそ、JR総連を根底から解体する血路を切り開いているのだ。
 闘争団の不屈の闘いとともに、メンテナンス合理化と徹底対決するJR本体の決起をつくり出そう。国労大会に向けた決戦に総決起し、十一月労働者集会の五千人結集へと奮闘しよう。

 21世紀労使共同宣言(抜粋)

 JR東日本グループの発展を実現するため、労使心を一つにして「ニューフロンティア21」のもと「安全」「サービス」「信頼」等の改革や業務の徹底した効率化に不断に取り組み、新しい時代を切り拓くこととする。
 JR東日本グループが21世紀において更なる飛躍を遂げるためには、私たち労使が、世の中に誇れる質の高い経営と自らの労働観を主体的に創造していかなくてはならない。
 第一次をはじめとする労使共同宣言と同様、経営側にあっては、いかなる外部干渉をも排した自主自立した経営を堅持し、労働組合側にあっては、企業内労働組合主義の更なる徹底を図る。
 平成13年8月1日
 東日本旅客鉄道労働組合
 東日本旅客鉄道株式会社

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週刊『前進』(2020号2面2)

失業率 最悪の5% ITバブル崩壊で一気に
 団結固め大失業攻撃うち破れ

 希望退職で自発的失業増大

 総務省が八月二十八日に発表した七月の労働力調査(速報)で、完全失業率(季節調整値)は六月より〇・一ポイント上がって五・〇%となった。一九五三年に現在の方法で統計を取り始めて以来、最悪の事態である。厚生労働省が同日発表した一般職業紹介状況でも、有効求人倍率(季節調整値)は六月より〇・〇一ポイント低い〇・六〇倍となった。
 まず目立つのは、「非自発的失業者」が前年同月と同じ九十九万人だったのに比して、「自発的失業者」が百十四万人と前年同月比で十五万人も増えたことだ。
 今年三−四月以来の恐慌過程の再激化の中で、自動車や流通業界などが「希望退職」という名のリストラ策を相次いで発表した。応募者が殺到し、一日で受け付けを打ち切ったケースが、二月のマツダ自動車、三月のスーパー・マイカル、五月のいすゞ自動車、八月の三菱自動車などと続出している。
 退職金の一定の割り増しがあるとはいえ、辞めたい労働者は本当は一人もいない。それなのに応募者が殺到しているのは、残ったとしても将来に希望が持てないためだ。「希望退職」どころか、まさに「絶望退職」とも言うべき事態が横行しているのだ。

 電機産業で新規求人が半減

 第二に、製造業、特に電機で「底が抜けた」とも言うべき雇用の落ち込みが始まったことだ。
 労働力調査によると、就業者(自営業者を含む)は、建設業が九カ月連続、製造業は三カ月連続で前年比減となった。製造業は七月に五十八万人も減少しており、二年三カ月ぶりの大きさだ。雇用者(労働者)で見ると、企業の規模が五百人以上の大企業で前年比三十四万人減となり、大企業でのリストラが激しく進行していることがわかる。
 一般職業紹介を見ると、さらにすさまじい数字が並んでいる。産業別新規求人は、サービス業を除くほぼ全産業で落ち込んだ。特に電気機械器具製造業で前年同月比四九・七%(パートを除く。パートは五四・六%)の減少、特に電子機器等は六一%(パートは六二・三%)減と、電機業界で新規求人が前年と比べ半減するという激烈な過程が進行している。
 ITバブルの崩壊がはっきりした七月以降、電機産業で大リストラが次々と発表されている。松下電器グループは、五社・約八万人の労働者のうち七万人を対象に、九月から数千人の早期退職を募集する。NECは四千人、富士通は一万六千人、日立は二万人、東芝は一万七千人(国内)の削減と、電機大資本が競うようにリストラ策を発表し、連日新聞をにぎわせるというとんでもない事態だ。
 この秋、日本の労働者はかつて経験したことのない大失業にたたき込まれることがはっきりした。闘わなければ生きられない。小泉反革命を労働者の団結で跳ね返そう。闘う労働運動の新潮流を創出し、十一月労働者集会に総結集しよう。

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週刊『前進』(2020号2面3)

資本攻勢&労働日誌 8月8日〜25日
 ●最高裁が賃金格差を容認
 ●富士通が1万6千人削減
 ●都庁職が防災訓練に反対
 厚労省「転籍助成金」創設へ

●8日 厚労省によると、44%の厚生年金基金が積み立て不足に陥っていることが明らかに。企業負担増大を口実に攻撃が激化する。
●9日 経済財政諮問会議において、2002年度予算の概算要求基準で社会保障関係費の伸びを医療制度改悪により削減し、見込みより3000億円圧縮、7000億円とした。
◇警察庁によると、自殺者が3年連続で3万人を超えた。40−50代が4割を占め、「経済・生活苦」を理由とするものが増えた。
◇日経新聞が行ったアンケート結果によると、今後3年以内に海外生産比率を上げるとした企業が
49.1%に上ることがわかった。国内生産空洞化が進行する。
●10日 NTTは退職・再雇用や出向者11万人を対象に受け皿として来春をメドに46社を新設、既存と合わせ計66社が受け皿会社に。
●11日 男女の賃金格差などを解消するための同一労働同一賃金原則について、最高裁判所が「実定法上、根拠がなく原則自体認めることができない」との見解を持っていることが、このほど明らかになった。同裁判所が1998年10月に行った労働関係民事・行政事件担当裁判官協議会(会同)で示されたもの。政府は、男女の同一労働同一賃金を定めたILO100号条約を批准するにあたり、「その趣旨は国内法ですでに規定されている」として新たな立法を行わなかった経緯があり、政府見解とも矛盾する反動的な見解。
●13日 住友金属工業の労働組合は、経営側が労働者のグループ会社への転籍にあたって提示していた約1割の賃金引き下げなどの条件切り下げにつき、大筋で受け入れる方向で最終調整に入った。
●17日 アメリカのフォードモーター社は、ホワイトカラー労働者の約10%に当たる5000人の削減に踏み切ると発表した。
●20日 富士通は全世界で1万6400人の人員削減と生産・開発拠点の統合を柱とするリストラ策を発表。国内では5000人を退職や請負要員の圧縮で削減する方針。
◇死亡した女性の「逸失利益」の算定基準が争われた控訴審で、東京高裁は高校卒業までの女子は全労働者の平均賃金を基準とすべきとし、女性差別を否定する判断を示した。高裁としては初めて。
●23日 東京都が9月1日に実施する総合防災訓練「ビッグレスキュー2001」に対して東京都庁職員労働組合(都庁職)は「総体的には自衛隊を主体においた訓練の感はぬぐえない」として、反対する見解を発表した。
◇55歳以降の賃金減額は無効との判決が札幌地裁であった。
●25日 厚生労働省は45歳以上の中高年社員を子会社や関連会社に転籍させる企業を対象にした「移動高年齢者雇用安定助成金」(仮称)を来年度創設する方針を明らかにした。(要旨別掲)

厚労省が創設を予定している「転籍助成金制度」

・名称は「移動高年齢者雇用安定助成金」
・2−3年の次元措置で来年度設立
・45歳以上の中高年労働者の転職を受け入れる子会社や関連会社が対象
・子会社が親会社より定年を遅らせることなどを条件に、転籍社員一人当たり30万円を支給
《解説》
 10月から各種助成金を統合して発足予定の「労働者移動支援助成金」(リストラで1カ月に30人以上の労働者の削減を予定している企業と、採用する企業に助成金を支給)と同様、「労働移動の円滑化」=解雇の容易化をスローガンにしているが、「転籍」を積極的に奨励している点が新たな攻撃だ。

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週刊『前進』(2020号3面1)

小泉改革と闘う新潮流を 11月労働者集会の成功のために(1)

 大失業の「痛み」強制許すな 「構造改革」と労働者
 背景に資本主義の破局的危機

 九八年以来、「たたかう労働組合の全国ネットワークをつくろう!」を掲げた全国労働者総決起集会が、毎年十一月に開かれている。全日本建設運輸連帯労働組合・関西地区生コン支部、全国金属機械労働組合・港合同、国鉄千葉動力車労働組合の三つの労働組合が呼びかけたものだ。今年の十一月労働者集会は、小泉政権による「聖域なき構造改革」と戦争国家化攻撃に全面対決する集会となる。集会の成功をともにかちとるために、本シリーズで小泉「構造改革」を弾劾し、労働者階級の反撃の道筋を探りたい。第一回は、現在の大失業の実態から、小泉「構造改革」を貫く理念について見ていく。

 失業率5%を「当然」と小泉

 総務省が八月二十八日に発表した七月の完全失業率は過去最悪の五・〇%で、初めて五%台に乗った。完全失業者数は三百三十万人に上る(季節調整値は三百三十八万人で過去最悪)。
 解雇などの「非自発的失業者」は横ばいだが、「自発的失業者」が前年に比べ一五%も増えた。特に大企業での「希望退職」の急増だ。多くの労働者が、予想される賃下げや退職金の削減を前にして、退職金の割り増しがあるうちにと退職している。いわゆる「肩たたき」や、企業が離職票に「自発的」と勝手に書いている例も多い。「自発的」と言いつつ、事実上の首切りなのだ。
 問題は、この大失業が小泉政権による「構造改革」の実行以前に発生しているということである。
 特に製造業の就業者数が前月比で五十八万人も減少した。さらに、松下電器が希望退職募集に踏み切ったのを始め、NEC四千人、富士通一万六千人(国内二千五百人)、東芝一万九千人(国内一万七千人)、日立二万人など、電機大手が軒並み大量の人員削減を発表している。電機産業は「IT(情報技術)革命」のもとでの「成長産業」のはずだった。ところが米帝のバブル崩壊−IT不況の波をもろに受けて、一気に大リストラに踏み切った。これらがさらに失業率を押し上げる。だが、これも「構造改革」で想定されていたものではない。
 これから不良債権処理などの「構造改革」を本格的に強行するなら、企業倒産が本格化し、二百万人とも三百万人とも言われる首切りの嵐(あらし)が吹き荒れることになるのだ。
 だが小泉は、八月二十三日、「改革していくうちに、ある程度失業者が増えるのはやむを得ない」と述べ、さらに二十八日には「求人数、求職数の実態を見るとかなりの線で民間の構造改革が進んでいる。生みの苦しみが今の失業率だ」とうそぶいた。
 小泉にとって、失業者の「痛み」などはまったく問題ではない。むしろ、失業者の増加が「構造改革が進んでいる」ことになると、ほくそ笑んでいるのだ。まったく許しがたい。これからも失業率の上昇が「構造改革」の進行具合の指標になるとでも言うのか。小泉は「雇用対策をしっかりやる」とも言うが、小泉政権が打ち出している「雇用対策」とは低賃金・無権利の不安定雇用での再就職で我慢しろ、ということだ。
 九〇年代初めには二%台で百万人台前半だった失業者数が、この十年で二百万人も増えた。一年以上の長期失業者は八十万人を超える。求職活動をやめてしまった人を失業者に加えれば、失業率は一〇%に達する。日本社会がかつて経験したことのない本格的な大失業時代が到来したのだ。
 「いつまで耐えれば……」。失業者のうめきが怒りの噴火口を求めて渦巻いている。労働者階級の意識変化が巨大な規模で起ころうとしている。この中で「痛みに耐えて改革を進めれば、明日はよくなる」という幻想を振りまいて登場した小泉政権に対して、労働者階級の根底からの怒りを爆発させることができるかどうか。今、労働運動の真価が問われているのだ。

 「市場」「競争」原理むき出し

 小泉の「痛みを伴う構造改革」の基本方針である経済財政諮問会議の「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針」には、何百万人もの失業という「痛み」を強制しても、自らは何の「痛み」も感じないというブルジョアジーの本性をむき出しにした理念が貫かれている。
 「基本方針」は次のように言う。
 「『創造的破壊』を通して、効率性の低い部門から効率性や社会的ニーズの高い成長部門へとヒトと資本を移動することにより、経済成長を生み出す。資源の移動は、『市場』と『競争』を通じて進んでいく。市場の障害物や成長を抑制するものを取り除く」
 それは、「創造的破壊」と称して、資本主義の原理をむき出しにして、労働者人民の雇用と生活、生命を徹底的に破壊して、その上に資本の利益を徹底的に追求しようというものだ。
 「ヒトと資本を移動」などと平然と言うが、それはヒト(労働者)をモノとしてしか考えない非人間的論理だ。「『市場』と『競争』を通じて」とは、弱肉強食の市場原理によって強い資本が生き残り、弱い資本は淘汰(とうた)されるということだ。労働者はバラバラに分断され、競争場裏にたたき込まれる。資本は、より高い利潤を得るために「市場」においてより安い労働力を求める。
 「プロレタリアートすなわち近代の労働者階級は、労働(仕事)があるかぎりで生きることができ、その労働が資本を増殖するかぎりで労働にありつける。自分を切り売りしなければならない労働者とは、他の販売品目と同じ一商品であり、したがって同様に競争のあらゆる変転と市場のあらゆる動揺にさらされる」(マルクス・エンゲルス『共産党宣言』)
 労働者階級は、「市場」と「競争」の下では、生きるためにはどんな低賃金の仕事にでも就かなければならないということだ。労働者階級は、団結してこのような資本主義を打倒しなければならない。
 だが小泉や竹中(経済財政担当相)らは、こういう社会こそが資本主義なのだと開き直って、資本主義経済が危機の時には労働者が「痛み」を受けるのは当然だ、と言っているのだ。
 さらに、小泉は、こうした資本主義の「市場」と「競争」の原理に対する「障害物を取り除く」と言う。「障害物」とは何か。あらゆる種類の「規制」である。それはもともと、資本主義の原理をそのまま貫いたら社会が崩壊してしまう、あるいは労働者階級はその生存さえ脅かされるというところから、そうならないために経済的・社会的規制を法律などによって行うということだった。
 それが自民党の政治家や官僚どもの利権と腐敗の温床になってきたという側面もある。小泉は、あたかもそうした利権構造を打破するかのように言う。だが、小泉の狙いの核心は、資本の飽くなき利潤追求の「障害」となる規制を取っ払うということだ。
 「『民間でできることは、できるだけ民間に委ねる』という原則」のもとでの、行政改革、特殊法人の見直し・民営化、郵政事業民営化、医療、介護、福祉、教育などへの競争原理の導入などだ。
 さらに「労働市場の構造改革」では、「労働力の再配置が円滑に実現できるように環境整備を進める」と称して、「派遣、有期雇用、裁量労働、フレックス就業等の多様な就労形態を選択することが可能になるような制度改革」を行うとしている。そうすることで「今後雇用機会の拡大が見込まれるサービス部門への労働移動が円滑に行われる」「五百三十万人の雇用機会の創出」が可能だとしている。要するに、今後五百万人以上もの労働者の首切りを強行し、低賃金・無権利の不安定雇用に置き換えようとしているのだ。
 ここではっきりさせなければならないことは、「市場」と「競争」に対する最大の「障害物」とは、労働者階級の団結であるということだ。

 階級的団結が資本の「障害」

 労働者階級は、資本主義の発達とともに歴史の舞台に登場し、資本の飽くなき搾取に抵抗するために団結し、労働組合を組織し、また革命党を組織して闘ってきた。そして八時間労働制を始めとする最低限の労働条件を法律として獲得し、何よりも団結権を闘い取ってきた。団結することで資本の賃金引き下げや労働時間の延長、労働強化に対して抵抗し、時にはストライキをもって闘ってきた。これこそが資本の自由な活動にとっての「障害」なのだ。「労働市場の構造改革」あるいは「労働分野に関する規制改革」などと称してやろうとしていることは、この労働者階級の歴史的な獲得物を「障害物」として破壊することだ。
 それは何よりも、労働者階級の団結、労働組合の破壊として襲いかかってこようとしている。
 小泉の「構造改革」路線の日本における源流とも言うべき中曽根の臨調行革において、国鉄分割・民営化が最大の攻撃であったが、それは「民間でできるものは民間で」ということと同時に、国労・動労千葉を解体し、総評を崩壊させることに狙いがあった。
 だから小泉は、中曽根によって壊滅することができなかった国鉄労働運動、国労・動労千葉を解体して、闘う労働組合を一掃することで、労働者階級の団結を解体しようとしている。
 これとの対決を軸にして、労働者階級こそが小泉の「構造改革」の前に敢然と立ちはだかり、粉砕しなければならない。
 重要なことは、小泉が労働者の「痛み」を分からないということは、労働者階級の怒り、力をあなどっているということだ。日経連会長の奥田(経済財政諮問会議の委員)などは、「構造改革」推進を主張しつつ、「便乗解雇が横行し、セーフティー・ネットが破たんして、社会が崩壊しかねない」(八月二日、日経連経営トップセミナー)と危機感を露骨に表明している。労働者階級の底力を爆発させた時に小泉を粉砕し打倒することができるということだ。

 戦争国家化を阻止する陣形

 小泉「構造改革」の背景にあるのは、二九年恐慌の再来と言うべき帝国主義経済の破局と帝国主義間争闘戦の激化、戦争の切迫という恐るべき情勢だ。
 アメリカ経済のバブル崩壊とともに、米帝ブッシュ政権は、米帝一国の国益を最優先する世界戦略に転換した。従来の「二大戦域同時対応」戦略から、対中国=対日重視の戦略に転換し、実際に中国・朝鮮への侵略戦争を強行しようとしている。
 日帝・小泉政権は、この米帝の世界戦略に対応し、帝国主義としての生き残りをかけて、戦争国家化の道を突き進もうとしている。小泉政権が「集団的自衛権」「憲法九条改正」を唱え、アジア人民の怒りの声を無視して教科書攻撃や靖国参拝などを強行してきたのは、朝鮮・中国−アジアへの新たな侵略戦争をやるためなのだ。
 小泉は、労働者人民に対して、「痛みに耐えよ」と言うのと同時に、「国のために命を捧げよ」と迫ってきている。この二つは、一体のものなのだ。むき出しの資本の論理とともに、国家主義・愛国主義・排外主義を扇動し、労働者階級を大失業にたたき込みながら、戦争に動員しようとしているのだ。
 労働者階級にとって、自らの生活を破壊されることはもとより、侵略戦争に動員され、アジア人民を虐殺し、自らも戦争で犠牲になることは絶対に許すことのできない「痛み」だ。
 「大失業と戦争」という小泉政権の攻撃に対して、日本の労働者階級は団結し、全世界の労働者人民、とりわけアジアの労働者人民と連帯して闘わなければならない。命脈の尽きた資本主義・帝国主義に対して断固「ノー」を突きつけて闘おう。
 十一月労働者集会の最大の課題は、小泉の大失業と戦争に向けた攻撃に対して、闘う労働組合の団結を軸にした労働者階級の壮大な反撃の陣形をつくり上げることだ。連合や全労連などの指導部の屈服・裏切りのもとで苦闘する労働者の中に分け入り、五千人の大結集に向けて全力で闘おう。
〔大沢 康〕

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週刊『前進』(2020号3面2)

高槻 介護保険料倍額化に怒り 高齢者ら200人市役所へ

 七月十八日、高槻市役所新館内で、健診介護要求者組合と高槻医療・福祉労組が主催して、十月介護保険料引き上げ反対の大衆行動が取り組まれました。当日、二百人の高齢者、その家族、現場労働者が集まり、五点の要請(別掲)と百十二人分の第一号被保険者の不服審査請求を提出したのです。第二の富田団地事件(老老介護世帯の共倒れ事件)を絶対に許さない決意で決起し、十月介護保険料の倍額値上げ阻止、保険料・利用料の減免、実態調査の開始、「障害者」への介護保険適用許すな、の声が市役所全庁舎内にとどろき渡りました。介護保険をめぐって、大きな闘いが、次々と開始される段階に入ったのです。
 市の民生部は、今回の私たちの切実な要望に対して一週間前に提出しているにもかかわらず、「一切の話し合いに応じない」「要望に回答しないと決めた」などと平然と全面拒否を通告してきたのです。こんなことがあるでしょうか!
 お年寄りの命と生活がかかった介護保険料引き上げに関する協議を拒否する姿勢は断じて許せません。一時間近く、介護保険課の窓口でやりとりしたがラチがあかないため、全員で二階の市長室に押しかけました。小西弘泰高槻市議を先頭に二百人全員で、横断幕を掲げて庁舎内デモを行いながら市長公室に出向きました。そして、市長との面談を要求しました。
 当日、対応に出た秘書長の山本は、みんなの怒りのすさまじさにうろたえながら、「こんなことするのは人間やない」などという悪罵(あくば)を投げかけたのです。
 お年寄りの年金から本人の了解もなしに、介護保険料を奪っておきながら、さらに、この十月から倍にして奪うという者が、その抗議に訪れた市民に対して、こんな暴言をはくことが許せるでしょうか? これでは、居直り強盗ではないですか。いったい、どっちが非人間的な行為なのでしょうか!
 これが、介護保険の本当の姿なのです。小泉政権の「痛み」の強制にほかなりません。介護保険を国の言うままにしか実施しない高槻市の実態なのです。高槻市は、苦しむ市民の立場に立とうという気持ちのかけらもなく、国の悪政をドシドシ強行するというのです。しかも、これを支えるのが自民党、公明党、そして国政では「野党」になっているはずの民主党=「市民連合」などの政党です。
 私たちは、高齢者、「障害者」を死に追いやるような「構造改革」を断じて許さず、ますます大きな闘いを“反乱゜として、こういう連中にたたきつけなくてはならないとみんなで確認しました。
 いざ、九月市議会へ。そして全国ネットワークの結成で、全国的な運動に発展させていきましょう。
(投稿 N・T)

 ●5点の要望事項

(1)10月からの介護保険料引き上げを中止してください。
(2)低所得者の介護保険料を減額、免除してください。
(3)介護保険料利用率の1割負担を軽減、免除してください。
(4)市内の高齢者の生活実態調査を早急に行ってください。
(5)「障害者」福祉の切り捨てをやめ、これまで以上の充実を図ってください。

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週刊『前進』(2020号3面3)

PKO法改悪阻止せよ 武器使用基準を緩和 東ティモール派兵狙う

 東ティモールへ派兵狙う法改悪

 自民、公明、保守の与党三党が、国連平和維持軍(PKF)本体業務への参加凍結を解除し、国連平和維持活動(PKO)参加五原則を見直す、PKO協力法の改悪案を九月下旬に召集予定の臨時国会に提出する方針を固めた。
 五原則のうち、@紛争当事者の「停戦合意」については、紛争当事者が特定できない場合でも、派遣先の国の同意があれば部隊派遣を可能にする、A武器使用については、現行の隊員の生命防護に加え、在留日本人やほかの警護対象者を守る目的にも使用できるようにする、など大幅に緩和するという。自衛隊の海外出兵をよりイージーにし、海外での本格的な武力行使=軍事行動を可能にするための重大な侵略戦争攻撃である。
 今回のPKO法改悪の直接の目的は、八月三十日の東ティモール制憲議会選挙後のPKOへの参加を狙ったものである。
 日帝は、九九年八月の住民投票後に設立された国連東ティモール暫定統治機構(UNTAET)の事務総長副特別代表のポストに日本人を送り込み、PKOへの自衛隊参加も狙ってきた。しかし、五原則を満たさないとして断念に追い込まれてきた。日帝はそれ以降、一貫して五原則の見直しとPKF参加凍結の解除を追求してきたのだ。
 東ティモール人民のインドネシアからの独立の意思をはっきりと示した住民投票から二年、東ティモール人民は、インドネシア国軍と独立反対派民兵による虐殺と破壊と対決し、独立に向かって苦闘を続けている。メガワティ新政権下のインドネシアは、内乱的激動を深めている。こうした中で、帝国主義は、東ティモールとインドネシアへの介入と支配を強めようとしている。東ティモールとオーストラリアの間に広がる海底油田をめぐる争奪戦も激化している。
 米帝ブッシュ政権のアジア覇権強化と対日争闘戦に対抗して、日帝・小泉政権は、対米対抗的なアジア勢力圏化とアジア侵略戦争策動に突進しているのだ。

 併合と人民虐殺を支持した日帝

 日帝の軍隊(自衛隊)が東ティモールの地に足を踏み入れることなど断じて許すことはできない。そもそも日帝は東ティモールに対して何をしてきたのか。
 第二次世界大戦で、アジア・太平洋に侵略を繰り広げた日帝は一九四二年、ポルトガルとオランダの植民地だったティモール島に侵攻・占領した。日本軍による戦闘や食料収奪・強制労働などで推定四万人が犠牲になったとも言われる。日帝の三年半におよぶ侵略と多大な住民の犠牲について、日帝は、賠償はおろか謝罪さえしていないのだ。
 東ティモールは戦後、ポルトガルの再植民地支配を経て独立しようとした。しかし一九七五年、インドネシア軍が侵攻し軍事占領、併合を宣言した。これを日帝や米帝は、公然と支持してきたのだ。国連安保理で二回、総会で八回にわたり、インドネシア軍の撤退を求める決議が採択されたが、日帝はこれらの決議にすべて反対してきた。日帝は決議をつぶすためにロビー活動さえしてきた。
 インドネシア軍による処刑や拷問などで二十数年の間におよそ二十万人の東ティモール人民が虐殺されたと言われている。日帝はこの大虐殺を支持し、手を貸してきたのだ。日帝は、東ティモール人民虐殺の当事者なのだ。
 六五年の九・三〇事件で共産党員など五十万人以上を虐殺してインドネシアの権力を掌握したスハルトは、警察・軍による恐怖政治・強権支配を行った。スハルト一族のファミリービジネスは、石油や銀行など五百社を超え、不正蓄財は百五十億jとも四百億jとも言われた。
 日帝は、この人民抑圧と腐敗のスハルト体制と結びついて莫大な帝国主義的超過利潤を得てきた。三兆円を超えるODA(九割は円借款)で借金漬けにし、ODAによるインフラ建設をテコにして日本企業が進出した。インドネシア人民の人権抑圧や生活破壊などお構いなしに、搾取と収奪を繰り広げてきたのだ。
 不屈に闘い続ける東ティモール人民の独立と解放への闘いと連帯し、PKO法改悪阻止、自衛隊の東ティモール派兵阻止の国会闘争に決起しよう。有事立法・改憲と戦争に突き進む小泉政権を打倒しよう。

 ●PKO協力法

 九二年に成立。自衛隊の海外派兵に道を開いた。アジアや日本国内で大きな反対の声が上がり、国会でも徹夜の牛歩戦術が。最後はPKF参加凍結とPKO参加五原則を加えた上で、自民党が強行採決した。
 PKF本体業務については「別途法律で定める日まで、これを実施しない」とあり、現在まで凍結は解除されてない。PKO五原則は@紛争当事者間での停戦合意成立A紛争当時者が日本の参加に同意B中立的に活動Cこの三つの条件が満たされない状況が生ずれば撤収D武器使用は自分か他の隊員の生命、身体の防衛のため必要最小限、となっている。
 これまでにカンボジア、モザンビーク、ルワンダ、ゴラン高原に自衛隊が派兵されている。

 ●東ティモールの歴史

 ティモールは、十六世紀以来、ポルトガルとオランダが植民地争奪戦を展開したが、十九世紀半ばに東西に分割され、東ティモールはポルトガルが植民地支配した。第二次世界大戦中は日帝が占領。日帝敗戦後、ポルトガルが植民地支配を復活させた。
 ポルトガルは一九七四年、海外植民地の独立を承認。七五年に東ティモール独立革命戦線(フレテリン)が独立を宣言した。しかし、スハルト政権が軍事介入し、東ティモールを併合した。
 東ティモール人民は激しい民族解放・独立運動を展開し、国連もインドネシア軍の撤退などの決議を採択した。しかし、スハルト政権は、厳しい弾圧を加え、日米帝などが公然と支持、推定二十数万人の犠牲者が出た。九八年五月にスハルト体制が打倒され、自治か独立かを決める住民投票が九九年八月に行われ、有権者の九八%が投票、七八・五%が自治案に反対した。
 しかし独立反対派民兵が、インドネシア国軍の支援を受け、テロ、脅迫を繰り返し、数日間で数百人を殺害。多数の難民が発生した。ハビビ政権は、「軍事緊急事態(戒厳令)」を布告、インドネシア国軍が軍事行動を開始した。しかし帝国主義の圧力で、多国籍軍の派遣を受け入れ、十月にインドネシア国軍が撤退し、二十四年の駐留に終止符を打った。その後、国連東ティモール暫定統治機構が発足し、八月三十日に制憲議会選挙が行われる。来年三月に大統領選挙、四月に独立を宣言する見通しである。

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週刊『前進』(2020号4面1)

爆取弾圧4同志の保釈奪還を10万人署名の力でかちとろう
 15年もの未決勾留を絶対許すな

 司法による人権侵害だ

 迎賓館・横田爆取デッチあげ弾圧裁判を闘う須賀武敏同志、十亀弘史(そがめひろふみ)同志、板垣宏同志への超長期未決勾留は、今秋十月をもってついに十五年目に突入する。福嶋昌男同志への未決勾留もすでに九年目に入っている。
 日帝・司法権力による四同志への度重なる保釈拒否をこれ以上許すことは断じてできない。第一審の判決も出ないうちから、一切の自由を奪われた拘禁生活を、これほどの長期にわたってなぜ強いられなければならないのか。
 しかも四同志は無実なのだ。警察権力自身がそのことを百も承知で逮捕し、検察官も最初から「証拠はない」と認めている。無実の人間が、不当に身柄を拘束されるばかりか、裁判抜きで十五年もの重刑を科されるに等しい扱いを受けているのだ。まずこのことに心底から怒りを爆発させ立ち上がらなければならない。
 実際に今、四同志は、三畳間にわずかな板の間がついただけの東京拘置所の狭い独房に一日二十四時間、三百六十五日監禁されている。食事も用便もすべてこの密室の中で、その全生活を昼も夜も看守によって監視される。房内には冷暖房もなければテレビもない。日中は机の前に座り続けることを強制され、気分が悪くても勝手に横になることはできず、自由に体を動かすことさえ許されない。
 家族や友人との面会も、一日に実質十五分程度のガラス越しの会話しか許されず、手紙はすべて検閲される。ラジオは当局があらかじめ選択した番組しか聞けず、新聞や書籍も当局が読ませたくないと判断した記事や写真は真っ黒に塗りつぶされる。屋外に出られるのは週に二〜三回、一回につき三十分の運動の時間だけ。日光や外の自然に触れる機会はほとんどない。
 病気になっても、十分な治療など行われないばかりか、その設備も体制もない。さらに獄外の病院で必要な治療を受ける権利すら奪われているのだ。
 これはもはや、事実上の禁固刑の先取り以外の何ものでもない。そこでは、およそ「人間らしい生活」と言えるものの一切が最初から奪い尽くされ、恐るべき人権侵害が日常茶飯事に繰り返されている。これが裁判所によって強制されている「未決勾留」の実態だ。
 そもそも、「未決」とは裁判が終わらず、判決がまだ確定していない状態を指す。警察・検察という国家権力が逮捕し起訴したからといって、即有罪とすることは断じてできない。逆に無実・無罪の可能性が大いにあり、だからこそ裁判制度があるのだ。そこでは、冤罪を防ぐために被告人は「無罪の推定」を受けるのが原則である。だが四同志に対するこの超長期の未決勾留は、憲法はもとより国際法的にも確認されているこの大原則を公然と踏みにじるものだ。
 しかも東京地裁は、本年六月の保釈却下決定の中で十五年近い勾留を「不当に長期とはいえない」(刑事一一部・木口信之裁判長)などと、真っ向から開き直ってさえいる。実に許すことのできない人権侵害であり、ここまでくればもはや司法による「犯罪」にほかならない。

 不屈に闘う同志を守れ

 東京地裁はなぜ四同志の保釈を拒否し続けるのか。それは何よりも、四同志への爆取デッチあげ弾圧の本質が、八〇年代以来の革共同の闘いと不屈の前進に対する日帝権力の卑劣な政治的報復としてあるからだ。
 一九八六年、当時の日帝・中曽根政権は、国鉄分割・民営化の強行とともに、首都を厳戒体制に置いた昭和天皇ヒロヒトの在位六十年式典と東京サミットの強行をもって「戦後政治の総決算」と軍事大国化への道を押し開こうとした。だがこの厳戒体制を打ち破って敢行された革命軍による同年五月四日の迎賓館と四月十五日の米軍横田基地へのロケット弾戦闘は、中曽根政権に大打撃を与え、逆に日帝の「国家的威信」をずたずたに引き裂いた。
 追いつめられた日帝は五月七日、警察庁長官による革共同・革命軍絶滅宣言を発して凶暴な報復弾圧にうって出た。戦前の太政官布告であり極悪の天皇制テロルの武器であった爆取(爆発物取締罰則)を全面的に発動し、十月には岩手県内で多数の同志を「爆発物の製造・所持」容疑で不当逮捕した(岩手爆取弾圧)。さらに翌八七年の十月、岩手弾圧で獄中にいた須賀・十亀・板垣の三同志を迎賓館・横田戦闘でデッチあげ再逮捕し、同じく福嶋同志をデッチあげ指名手配したのである(福嶋同志は九三年に逮捕される)。
 四同志は百パーセント無実であり、迎賓館戦闘にも横田戦闘にも一切関与していない。日帝権力はそのことを百も承知で卑劣きわまりないデッチあげ弾圧に踏み切ったのだ。その狙いは革共同に対し、その組織壊滅のために爆取弾圧の核心である爆取一条(爆発物の使用罪)を本格的に発動することにあった。すなわち「死刑・無期または七年以上の懲役」という極刑・重刑と、関与した者は「精神的幇助(ほうじょ)」だけでも重刑に処すという前近代的・テロル的な弾圧の前に党や闘う人民をふるえあがらせることで、その屈服と総転向を引き出そうと狙ったのである。しかも八七年十月とは、天皇訪沖阻止闘争の真っただ中であり、その闘いの爆発を抑え込むための弾圧であったのだ。
 だが四同志の断固とした完黙・非転向の獄中闘争と、その命がけの決起に支えられた革共同の不屈の前進は、この大弾圧を根底において突き破り、逆に大破産に追い込んでしまったのだ。今や、帝国主義の危機爆発と革命的情勢の切迫を前にして、焦りにかられた日帝は革共同への階級的憎悪をますます強めている。そしてその憎しみの最大の矛先を獄中同志に一層徹底的に集中し、獄中同志を力ずくでたたきつぶそうと全力で襲いかかっている。
 日帝の攻撃のもつこの本質的な危機性、そこからくる絶望的凶暴性を断じて過小評価してはならない。日帝権力は本気で獄中同志の存在と闘いのすべてを抹殺しようとしてきている。獄中同志を「人質」として半永久的に獄中に閉じ込め、闘う人民への見せしめにしようというのだ。検察立証が終了した今、四同志の保釈を拒否する理由などもはや形式的にも一切成り立たないにもかかわらず、あくまで勾留を継続しようとするのはそのためだ。
 長期勾留により、四同志全員がすでに体の不調に見舞われ、健康の破壊と必死に闘っている。中でも須賀同志は九八年二月の腰椎間板ヘルニア発症後、必要な治療とリハビリの保障も与えられないまま、今日に至るも歩行困難な状態が続いている。また本年三月と五月に実施された須賀同志への医療鑑定は、長期にわたる微熱や胸の痛みを始め、同志が苦しんでいる全身症状の多くが拘禁性の症状であることを明らかにした。
 戦前の日帝は、小林多喜二の虐殺に見られるようにむき出しの暴力で獄中の政治犯の生命を奪い、圧殺していった。今日の日帝は、直接の暴力をふるう代わりに、真綿で首を締めるような一層残酷なやり方で、じわじわと獄中同志のいのちを削り取ろうとしているのだ。この攻撃を許したら本当に大変なことになってしまう。あらゆる困難をはねのけて不屈に闘う獄中同志に連帯し、絶対に守りぬく闘いに立とう。今秋決戦の爆発の中で四同志の保釈奪還を必ずかちとろう。
 何よりも許せないのは、司法権力=裁判所が自らこの大弾圧の最大の、かつ極悪の手先として登場していることである。
 六月十五日、東京地裁刑事一一部は須賀・十亀・板垣三同志に保釈却下の決定を下し、七月六日、東京高裁はその抗告を棄却した。昨年十一月の保釈請求から七カ月以上にわたって動揺に動揺を重ねた末に、十五年近い勾留を「不当に長期ではない」と開き直った極反動の決定である。
 その背景には、四月の小泉政権の登場とそのもとでの「司法改革」攻撃の満展開がある。小泉はこの司法改革を今日、その改憲と戦争への国家改造計画の「最後のかなめ」と位置づけている。その中身は刑事・民事の全面にわたる司法の大改悪と、それによる治安弾圧体制の全面的再編だ。
 迎賓館・横田裁判で起きていることはまさに、この司法改革攻撃の完全な先取りである。そこでは、裁判所は検察と完全に一体となり、法廷は起訴された者をあらかじめ「有罪」として刑を宣告するための、単なる手続きの場に変えられている。
 今日、東京地裁で司法改革推進の先頭に立っている中谷雄二郎裁判官は、かつて迎賓館・横田裁判の右陪席を担当し、「証拠がないのは被告人が隠しているからだ」という恐るべき言辞を吐いた。憲法に規定された基本的人権を真っ向から否定し、無実の被告から裁判を争う権利すら奪う断じて許せないものだ。

 司法改革粉砕の突破口

 四同志の不屈の獄中闘争と裁判闘争はしかし、司法反動の牙城(がじょう)である東京地裁・高裁をぐらぐらに揺さぶり、追いつめている。無実の四同志の圧倒的な正義と迫力の前に、検察と裁判所がグルになってやっていることのあまりの違法性と不正義性が、隠しようもなく突き出されているからだ。四同志への超長期勾留を粉砕してその保釈奪還をかちとることは、無実・無罪を争えば保釈しないという「人質司法」の攻撃を決定的に打ち破る。と同時に、司法改革粉砕への突破口を開く闘いだ。
 すでに、四同志への前代未聞の長期未決勾留に対して、事実を知った多くの人びとの驚きと怒りの声が急速に広がっている。弁護士や法学者、宗教者など五十人の呼びかけで始まった「不当な長期勾留をやめさせるために! 十万人保釈署名運動」は、この一年間で二万筆の署名を集め、賛同者は百七十五人を超えた。この署名運動を広範な労働者人民の中にさらに徹底的に拡大し、今秋決戦の重要課題として四同志の保釈奪還を絶対にもぎとろう。
 七〇年安保・沖縄闘争での殺人罪デッチあげによる無期攻撃と闘う星野文昭同志を始め、全獄中同志の奪還へ、今こそ全党の総力を挙げて闘おう。
 政治犯救援の闘いを階級闘争の中にはっきりと位置づけ、獄中同志奪還の十二月大集会へ突き進もう。

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週刊『前進』(2020号4面2)

“無実の4人取り戻そう” 有楽町街宣に反響

 八月二十五日、十万人保釈署名運動による有楽町街宣が行われました(写真)。家族を始め十八人もの参加者で、新たな署名運動の大展開にふさわしい、にぎやかな街宣となりました。
 須賀武敏さん、十亀弘史さん、板垣宏さん、福嶋昌男さんの無実の四人をなんとしても不当拘禁から解放しよう、とりわけ、この十月十三日で未決勾留十五年目に突入する須賀、十亀、板垣さんの三人をこのまま獄に閉じ込めておくわけにはいかない、そのためにさらに保釈要求署名を大いに集めようと、全員が思いをひとつにして臨みました。
 夏休み最後の土曜日とあって、有楽町マリオン前は人、人の波でごった返していました。「無実の四人を取り戻そう」と書かれたのぼりと「十四年の長期勾留は不当だ! 獄外医療を認めよ」の横断幕を広げ、マイクを使っての必死の訴えかけは、道行く人びとの足を止め、大いに注目を集めました。
 三時間にわたる署名活動で二百四十八筆の署名を集めることができました。四十代の女性が訴えに共鳴し、「こんな人権侵害が起こっているなんて信じられない」と憤りながら署名をし、カンパを出し、そればかりか自らビラを持ってまき始めてくれたのです。海外在住の方で人権擁護の活動をしているとのことでした。最後は「頑張ってね!」と家族に声をかけ、固い握手。このうれしいハプニングで、私たちは勇気百倍。署名活動にも一層の勢いがつき、暑さをぶっ飛ばして街宣をやりきりました。
 このほかにも、その場で署名に応じるだけでなく、知人・友人にも働きかけるからと署名用紙を持ち帰ってくれる人が何人もいました。
 どんどん街に出ていこう。大いに署名を集めよう。  (投稿 I・S)

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週刊『前進』(2020号4面3)

つくる会教科書と闘って

 養護学校への採択の撤回求め250人で追及 愛媛 薮内 一海

 八月八日、愛媛県教育委員会は、東京都に続いて県立の養護学校の一部に「つくる会」教科書を採用することを発表した。何がなんでも採択するために養護学校を政治的に利用したのだ。こんな「障害者」差別が許せるか。
 九日、県庁は朝から県下の十数団体と個人が次々と抗議に決起した。
 加戸知事と県教委の吉野内教育長、土居委員長は、事の重大さに脅え、そろって休暇を取って逃亡していた。しかし怒りに燃える県民はついに吉野内教育長の所在を突き止め、午後七時三十分より、五十人が合同で教育長に採択撤回を迫った。
 教育長は、採択理由について「学習指導要領に沿っている」とか、「国の検定を通っている」としか答弁できずに逃げ回るのみ。参加者の激しい追及の中で、十三日に再度の話し合いを行うことを約束させた。
 この日以降、事態についての街頭での訴えに、市民からの握手や激励が相次いだ。 
 十三日、朝から県庁前で、諸団体のビラまきや街頭宣伝が続く中、午前十時から教育長との話し合いが百七十人の参加で再開された。吉野内教育長は九日と同様、具体的な記述内容には一切答えないという態度を取り続けたが、七時間に及ぶ粘り強い追及の前に、「教育委員会では教科書の内容について実質的な検討はほとんど行われなかった」こと、「『つくる会』教科書以外については検討すらしていない」ことが明らかになった。こんな採択を認めるわけにはいかない。参加者の怒りは頂点に達し、ついに他の教育委員の出席も含む再々度の話し合いを持つことを約束させた。
 こうした情勢の中で、県下の養護学校の現と元PTAのほとんどの会長、副会長による撤回を求める要望書も提出された。
 十五日、午後二時からの三度目の話し合いは、教育長を含む五人の教育委員が出席して始まった。参加者は二百五十人に達した。
 追いつめられた教育委員は、「平和主義はイデオロギー」と現憲法を否定し、「大東亜戦争・支那事変(ママ)と呼ぶことがふさわしい」とまで開き直った。
 参加者の怒号の中で教育委員が立ち往生しているその時、午後三時三十分、「時間が来た」と一方的に話し合いを打ち切り、あらかじめ用意していた非常用エレベーターなどを使って、教育委員全員が一斉に会場から逃亡し、自らの不正義性を満天下に明らかにした。県当局はこの時、県民出席者全員とマスコミを、施錠して会場に監禁するという暴挙を働いた。
 全国的には「つくる会」教科書闘争は圧倒的に不採択という情勢にある中で強行された極反動を許すことはできない。
 一方で、保守王国と言われてきた愛媛で、「障害者」を先頭に労働者・市民ら二百五十人もの闘う人びとが新たな共闘を形成し、県当局と対峙し、一歩も引かず闘いぬいたことは、今後の運動の新しい地平を感じさせるものだ。
 「まだ何も決着はついていない」−−これが全員の気持ちだ。また、愛媛県では二年後に、中高一貫教育の県立学校を開校する予定で、加戸知事はここでも「つくる会」教科書を使うと公言している。採択撤回までさらに隊列を強化して闘いぬく決意だ。
〔写真は8月15日、採択撤回を求めて愛媛県教委を追及する250人の人びと〕

 主要教委へ申し入れ 全地区で採択を阻む 青森 川口 敏郎

 青森県での教科書採択は青森・八戸両市はそれぞれ、その他の自治体は七つの地域というように、県内九つの地域ブロックで教科書をそれぞれ採択することになっていた。
 青森県では「つくる会」は運動の中心を弘前市に置き、特に昨年十二月には県議会で、続いて弘前市議会でも請願を採択させ、その他主要な各議会で同様の請願を採択させようと動いた。しかし他のところでは反対にあって、この策動は失敗した。
 「子どもたちのために、なんとしても『つくる会』の教科書採択を許してはならない。全国の仲間たちとともに絶対に阻止しよう」と、私たちは県内での反対の闘いに立ち上がった。
 まず、教育改革関連法−教育基本法改悪に反対する署名運動を県内各地で取り組んだ。実に多くの労働組合が組合全体で取り組んでくれたこともあって、短い期間で二千筆を超える署名が寄せられた。
 当時、まさに異常な小泉人気の真っ最中であったが、やはり県民は(特に労働者は)この「教育改革」攻撃に鋭い危機意識をもっていたことを私はあらためて実感した。
 これに続いて六月二十五〜二十七日に、県内で「つくる会」教科書に反対する人びととともに県教育委員会を始め青森市、八戸市など県内主要市教育委員会に申し入れを行い、またそれぞれ記者会見も行った。教科書採択をめぐる県内主要地域全体への本格的な取り組みだったので、テレビや新聞での報道を始め、県内で大きな注目を浴びた。
 こうして「つくる会」教科書への反対の闘いが強まり、県内数カ所での採択などまったく無理な情勢に追い込まれた「つくる会」の側は、「せめて県本部のある弘前市での採択を」と望みをかけ、全力を投入してきた。
 だが、栃木県や杉並での採択阻止の決定的勝利、国内での反対闘争、韓国・中国などアジア人民の抗議の闘いが爆発する中で、県内でも反対の闘いが一挙に強まり、ついにわが青森県でも「つくる会」教科書の採択を完全に阻止することができた。
 この偉大な勝利を全国でともに採択阻止の闘いに立ち上がった仲間たちとがっちり確認し、さらに小泉政権の戦争と大失業攻撃に対して苦闘しつつも激しい怒りをもって闘いぬいている労働者人民とともに、小泉政権打倒の闘いを今秋爆発させよう。

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週刊『前進』(2020号4面5)

新刊紹介 コミューン 10月号 戦争情勢への突入

 今回の特集は、昨秋以来の新たなインティファーダ(対イスラエル抵抗闘争)の爆発と武装闘争の全面的開始をもって、イスラエルとのすさまじい戦争段階に突入したパレスチナ情勢について分析した。
 第一章では、昨年九月に開始された新たなインティファーダから今年八月中旬までのパレスチナ解放闘争の武装闘争としての発展について明らかにした。米帝の中東「和平」策動を最終的に破産させたパレスチナ人民の闘いが、ついにイスラエルのすさまじい武力弾圧をものともしない本格的な武装解放闘争として爆発したことの巨大な意義について論じた。
 第二章は九三年以降の米帝による中東「和平」策動の破産について歴史的に振り返り整理した。
 第三章では、米帝ブッシュの中東政策が、イスラエルによる闘うパレスチナ人民せん滅政策を全面的に容認する新たな侵略戦争政策であることを暴露した。またイラク・イラン二重封じ込め政策の破産を、むき出しの軍事政策によってのりきろうとするものであることを明らかにした。
 今号の翻訳資料、『日本と弾道ミサイル防衛』は、ブッシュ政権の対日政策を知るためには欠かせない。ここでは、日米のさまざまな利害対立、力関係、駆け引きなどがあけすけに語られ、その中で米帝が日帝の改憲にまで踏み込んでミサイル防衛計画に日帝を全面的に引き込む政策が述べられている。

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週刊『前進』(2020号5面1)

恐慌に転落し始めた米国経済
 通信業界で空前の過剰設備・過剰債務
 ITバブル崩壊し生産急低下 借金で消費拡大する末期症状
  島崎 光晴

 昨年四月の株暴落で米バブル経済が崩壊し始めてから約一年半。ついに米経済はゼロ成長に転落しつつある。IT(情報通信)バブル崩壊で、米通信業界は空前の過剰設備と過剰債務に陥っている。ところが、依然として借金依存の個人消費が続いており、それが恐慌への突入をかろうじて防いでいる。しかし、投機の崩壊過程で末期的な投機を重ねるなどということが、いつまでも続くはずがない。米経済の恐慌への突入と二九年型世界大恐慌の本格的爆発は必至だ。ついに世界史は大恐慌と革命の時代を迎えたのである。

 今春から成長率ゼロに接近 史上初の100万人の人員削減

 まず、米経済の現状を正確に見ておこう。
 何よりも、昨年末から現在まで生産が低下し続けている。鉱工業生産指数は昨年十月に前月比マイナスに転じ、七月まで十カ月連続のマイナスだ。生産低下はコンピューター、半導体、通信機器などIT関連で最も激しい。四−六月期には全世界のパソコン出荷台数が、八六年以来初めて前年同期比マイナスとなった。このため半導体需要が激減し、史上最悪の世界半導体不況に入りつつある。
 さらに生産低下は、素材産業、自動車産業などにも広がっている。鉱工業生産は今年、通年でも前回不況の九一年以来十年ぶりのマイナスになる見通しだ。
 企業収益も一段と悪化している。主要五百社の収益は一−三月に前期比マイナスに転じた。さらに四−六月期は実に一七%もの減益となった。一割を超える減益は九一年七−九月期以来である。特にハイテク産業は六割強の減益で、化学、鉄鋼、紙・パルプなどの素材産業や消費関連産業も大幅減益となった。
 生産低下、収益悪化に伴って過剰資本状態が露呈している。七月の設備稼働率は全産業で七七%で、不況期の目安と言われる八〇%を七カ月連続で下回った。この稼働率は実に八三年以来の低水準だ。また、企業の利潤率を見ると、生産量一単位当たりの企業利潤率は昨年十−十二月期に三八・五%減と、八〇年以来二十年ぶりの大幅減となった。稼働率低下に示される生産能力の過剰とそれによる利潤率の低落−−まさに過剰資本状態そのものだ。
 こうした生産低下、収益悪化、資本の過剰によって、経済成長率も急速に鈍化している。実質経済成長率(前期比年率)は、昨年十−十二月期の一・九%から今年一−三月期は一・三%、四−六月期は〇・二%に減速した。ほぼゼロ成長に転落しているのだ。中でも企業設備投資は四−六月期に一四・六%の大幅な減少となった。特に機器・ソフトウエア投資は一五・一%減と三・四半期連続で減少している。今後、成長率はマイナスとなるだろう。
 景気減速の中で、企業の人員削減も膨大な数に上っている。一月から七月までの人員削減数は累計で九十八万人にも及んだ。史上初の百万人超が必至という人員削減ラッシュだ。人員削減は製造業だけでなく非製造業全般に、製造業でもブルーカラーからホワイトカラーに拡大している。失業率は四月には四・五%に上昇した。

 利下げと減税の刺激効果はなし

 以上、主に企業の動向から見ると、完全に「景気後退」そのものだ。こうした景気減速に対して、中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)は、FF(フェデラルファンド)金利などの政策金利を引き下げてきた。利下げは一月から八月まで計七回にも及び、累計下げ幅は三%に達した。しかし、これほど異例の相次ぐ利下げにもかかわらず、景気刺激効果はほとんどない。株価もナスダック(米店頭株式市場)は暴落したまま低迷している。
 ブッシュ政権の減税も景気を支えるほどの効果を持たないだろう。今年の減税は、各家庭に平均四百七十jの小切手を渡す形で実施されつつある。日本円にして約五万六千円にすぎない。一方で財政事情は急悪化している。二〇〇一会計年度(〇〇年十月−〇一年九月)の財政黒字予測は、当初の千二百五十億jから二十億jに大幅に減少した。景気悪化で税収が急減したため、わずか一年で黒字がほぼすべて吹き飛んでしまった。

 次々に露呈する投機の実態 通信向け融資が不良債権に

 こうした景気減速下で、ITにおける投機とバブルの実態が次々にむき出しになりつつある。
 まず、ネットバブルの徹底崩壊を経て、インターネットの実像が浮き彫りになっている。消費者向け電子商取引(BtoC)は、昨年十−十二月期でも小売り全体の約一%にすぎない。それほど小規模にとどまったネット小売りですら、今年一−三月には初の減少に陥った。他方、「企業間電子商取引(BtoB)こそネット産業の本命」と言われ、ネットで売買を仲介する「eマーケット」は米国だけで一千サイトにもなった。しかし、実際に取引が行われているのは全体の一割と言われる。
 このように、ネットの量的・質的限界がむき出しになっているだけではない。今、明らかになりつつあるのは、すべてのネット企業が株バブルの上に初めて成り立っていたことだ。インターネット事業はほとんどが赤字である。にもかかわらずインターネット事業が爆発的に成長したのは、唯一、株高だったからだ。株高のもとで資金が無尽蔵に調達できたことから、利益無視・赤字覚悟の経営でもなんとかなったのである。
 具体的には、株式の新規公開(IPO)によって膨大な資金が調達できた。また、VC(ベンチャーキャピタル)からネット企業に多額の投資も行われてきた。VC投資額は、昨年は通年で一千億j台に乗せていた。さらに、ネット企業は、他の新興ネット企業からの広告料を集めることで経営を維持してきた。ヤフーの場合、ネット広告料が売上収入の九〇%を占めていた。
 ITバブルがはじけた現在、新規株式公開は冷え込み、VC投資も急縮小し、ネット広告もドットコム企業の資金繰り悪化で激減した。資金調達が好き放題にできなくなると、たちまち経営は行き詰まらざるをえない。ネット企業の経営破綻(はたん)は一−六月累計で三百三十社に膨らんだ。高速ネット接続のDSL(デジタル加入者線)専業会社は三社すべてが経営破綻した。
 ヤフーの株価は最高値の四七五jから今では一八j近辺にまで暴落、今年は九五年の設立以来初めて通年で減収になる見込みだ。このためヤフーは、有料配信サービスに乗り出そうとしている。他のネット接続大手も低料金競争から値上げに転じており、「有料化元年」と言われている。

 光ファイバー網 稼働率3%以下

 バブル下のIT投機は、ネット企業にとどまらない。通信会社・通信機器メーカーなどの通信業界全体が、とんでもない投機にまみれていたことが露呈しつつある。その中で、米通信業界の抱える過剰設備、過剰債務が米史上でも空前のものであることが明らかになっている。
 通信業界の設備投資は過去四年間で三千五百億j(約四十三兆円)に達した。民間設備投資に占める通信業界の割合は約一割にも拡大。全米規模の長距離通信網を持つ企業は三社から十五社になった。一時は「ネットの通信量は四カ月で倍増する」と言われ、米国中が光ファイバー網の建設ラッシュとなった。
 現在どうなっているか。実際のネット通信量はバブル下でもせいぜい一年で倍増にとどまっている。このため、光ファイバーの稼働率は二・六%という恐るべき低水準にある(メリルリンチの調査)。かつてない投機熱によって、途方もない過剰な設備を生み出してしまったのだ。資本主義史上、建設された設備が最初からこれほど使われないのは前例がない。資本主義史上まれにみる過剰資本だ。
 しかも、通信業界はこの投資に必要な資金を、社債・株式発行と銀行借り入れによって調達してきた。通信業界が過去三年間に社債で調達した資金は一兆三千億j(約百五十五兆円)とも言われる。このため、有力通信会社四十四社だけで有利子負債は昨年半ばに三千億j(約三十七兆円)を突破した。売上高に対する負債の比率は平均で九七%に達し、ほぼ年間売上高に匹敵する負債を抱え込んでいる。ところが四十四社のうち昨年前半に純現金収支が黒字だったのはわずか五社にすぎない。これでは負債が返せるはずがない。

 借金返済できずIT企業破綻へ

 現在むき出しになりつつあるITバブルの実態はこれにとどまらない。需要を過大に作り出すために、大手IT企業が新興通信企業に融資して、そのカネで自社製品を買わせる、という手法が広くとられてきた。安易な融資で販売額をかさ上げするやり方だ。「取引先融資」と言われる。
 例えばネットワーク機器大手のルーセント・テクノロジーズの場合、七月末で四十六億jもの巨額の融資枠が残っている。実に売り上げ三カ月分に匹敵する額だ。ところが、バブル崩壊で新興通信企業の経営が行き詰まったため、この融資が焦げつき始めており、大手IT企業は巨額の不良債権を抱え込みつつある。
 まだまだある。大手IT企業はバブル下で他の新興通信企業を高価格で買収し、その株を保有したり売却したりして利益を得てきた。代表的なハイテク企業三十七社の昨年の利益は、株式売却益など本業に関係ない収益を除くと、発表された額より平均で二五%減るという。バブルが崩壊した現在、買収したり出資したりしてきた企業の資産内容が劣化し、保有株に大損失が発生している。
 例えば、光ファイバー部品の最大手のJDSユニフェーズは、買収した通信企業の株で評価損を抱え、六月に五百五億j(約六・二兆円)もの損失を出した。米企業としては、九二年のGMの二百三十五億jの赤字を上回る米史上最大の赤字である。
 これらすべてが、米通信業界の過剰債務問題を深刻化させつつある。今後、社債の債務不履行が続出し、通信会社の破綻が激増するのは必至だ。すでに一−三月の社債の債務不履行は三百十八億jで、四半期ベースでは過去最高となっているが、通信業界が最も多い。「通信企業の株や債券を買った投資家の損失は千五百億jにも達するとみられる。八〇年代の貯蓄貸付組合(S&L)危機の時の損失額に匹敵する水準」(ニューズウィーク六・二〇号)とも言われる。
 また、米銀の融資残高が最も多い業種は通信業だ。通信業界に対する銀行の貸し出しが不良化するのも必至だ。米銀の不良債権問題は現在、このルートから噴出しようとしている。通信業界の負債問題だけで、米金融危機を爆発させ米経済全体を恐慌に引きずり込むほどの質・量を持つのだ。

 住宅ローン増で「余裕資金」 家計も破滅的な債務漬けに

 このように企業部門でのIT投機の実態が白日のもとにさらけ出されつつある。ところが家計部門では、依然として現在も投機的な消費が持続している。
 九〇年代後半、株高による資産効果で個人消費は拡大し続けてきた。しかし、この間の株暴落でこの資産効果は消滅している。昨年十月からの半年間で個人の純資産は二兆九千億jも目減りした。にもかかわらず逆資産効果は本格的には顕在化していない。個人消費は鈍化しつつも増加し、住宅販売も高水準を保っている。
 消費・住宅販売がなおも拡大している最大要因は、家計が借金を増やし続けていることにある。特に顕著なのは住宅ローンの借り換えだ。例えば十五万jの住宅ローンを抱える人が、住宅価格の上昇で二十万jまで借りられるようになったとする。新たに二十万jのローンを組み、古い十五万jのローンを返せば手元には五万jが残る。この余裕資金で他のローンを返済したり、家をリフォームしたり、自動車や家具などの耐久財を買ったりしている。貸し出す側の銀行は、個人ローンで「過去に例のない貸し込み競争」(FRB幹部)を続けている。
 住宅ローンの借り換えは一−六月期で合計五千億j弱もあり、三百三十億j(約四兆円)もの余裕資金が生まれた、との統計もある。ローン借り換えで大金を手にした人びとが「借り換え長者」と呼ばれるほどだ。単に以前より借金を増やしたにすぎないのにだ。すでに個人債務の累計は七兆三千億j(約八百七十六兆円)と、九〇年の二倍以上に及ぶ(ニューズウィーク八・二九号)。それほど深刻な家計の過剰債務問題が、住宅ローン借り換えでさらに破滅的になろうとしている。
 今や「借金バブルは崩壊寸前」(同)だ。今後、住宅価格が下落すると、どうなるか。担保価値が下がると、家を売ってもローンを返済できなくなり、個人破産が激増する。銀行側には大量の不良債権が発生する。企業の過剰債務問題に続いて、家計の過剰債務問題が噴出せざるをえないのである。
 帝国主義世界の基軸である米帝が、投機崩壊下でなおも投機を追求するという末期症状に陥っている。それは恐慌の爆発力をさらに増進させるだけだ。今後、通信企業の債務不履行の増加と経営破綻の続出、個人消費の頭打ちと壊滅的減少、不良債権の増加と貸し渋りの強まりなどが次々と起きざるをえない。これらは一層の株価暴落と米金融危機をもたらすことになるだろう。米経済が恐慌に突入していくのは、もはや時間の問題である。

 29年型世界大恐慌の爆発へ 動揺し始めた「強いドル」

 この間の米経済のバブル崩壊と急減速は、日本経済と世界経済にも破壊的な影響を及ぼしている。
 まず貿易面では、米の輸入の激減が日・欧・アジアなど全世界の景気を悪化させ、それがまた米の輸出を減少させる、という悪循環が起きている。IT関連産業は実体面でも金融面でも世界的結びつきを強めてきており、ITバブル崩壊で世界経済総体が不況に突っ込みつつある。
 昨年十月からわずか四カ月で米の輸入は二〇%も減少した。これに直撃されて日本経済は、電機を中心に九八年以上の落ち込みを見せ、株価もバブル崩壊後の最安値を更新し、恐慌が再激化している。ユーロ圏の鉱工業生産も一−三月、四−六月と二・四半期連続でマイナスとなった。アジア各国の景気も鈍化しており、台湾の実質成長率は四−六月期にマイナス二・四%で、過去二十六年で最悪を記録した。
 ついに、世界的な不況の相互促進が始まった。この行き着く先は世界貿易の縮小、つまり世界経済の収縮だ。これこそ世界大恐慌の歯止めを外すものであるが、今やそうしたコースに踏み込みつつある。

 米製造業界からドル高是正要求

 もう一つは、七月からドル安が進み、国外から米への資金流入が細まる兆候もある。この間は、欧州から米国への直接投資と株式投資という形で資金が流入してきた。しかし今年になって、米株価の暴落と企業業績の悪化から、直接投資・株式投資は激減し、その半面で債券投資が激増している。資金流入が株式から債券にシフトしているのだ。
 そもそも債券は流通市場で売却しやすい。流入資金がそうした流動性の高いところに移動している、つまりいつでも引き揚げられる市場に逃げている。
 しかも先述したように、債券市場では債務不履行の恐れが強まっている。米債券市場が動揺するなら、直ちに資金が国外に流出しかねない。それは、ドル信認の崩壊と米金融恐慌を同時に引き起こすものとなる。
 ドル信認問題では、六月から米製造業界が米政府にドル高是正を訴えている。ドル高で輸出競争力が低下し、収益の圧迫に耐えられなくなっているからだ。九五年のドル高転換以降、国外からの資金流入に依存してバブル経済を生み出してきたが、その構図がついに限界に達している。
 しかし、安易にドル高是正策をとれば、資金の国外流出によって株価暴落とドル信認崩壊にさらされる。かといってドル高に固執し続けると、米企業の競争力低下と貿易赤字膨張をさらに加速してしまう。このジレンマの中で、確実にドルの信認は低下していかざるをえない。
 そうなると、ドル信認低下→ドル安→資金流入の減少→株安→資金流出、という悪循環に陥ってしまう。また、米に資金が流入し、米で自己増殖し、米から資金が国外に再投資される、というこの間の国際的な資金の流出入の構図も崩壊してしまう。このいずれも、米金融恐慌−世界金融恐慌の導火線そのものだ。
 このように、貿易面でも通貨・金融面でも、世界大恐慌へいま一つ重大情勢が生まれつつある。今後どういう過程をたどるにせよ、米経済の恐慌への突入、世界大恐慌の本格的爆発は避けられない。今秋が、その大きな画期となるだろう。
 日帝がバブル崩壊後十年間にわたって七転八倒してきたのに続き、より巨大なバブルを抱えてきた米帝がついに投機の全面崩壊に突入した。二九−三三年世界恐慌では、大規模な投機とその崩壊があったのは米経済だけだった。しかし現在、GDPで世界第二位と第一位の日米がいずれもバブルとその崩壊にさらされている。日米合わせて世界GDPの四割を占める経済で投機が崩壊するという、資本主義史上例のない事態だ。もはや帝国主義の命脈は尽き果てているのだ。
 世界大恐慌は、今まで以上に革命的情勢を急接近させずにはおかない。〈第三次世界大戦の道か、反帝・反スターリン主義世界革命の道か〉−−革共同第六回大会で確認したこの歴史的選択が、いよいよ全人民に問われつつある。

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週刊『前進』(2020号5面2)

一口解説 過剰債務

 過剰債務とは、企業や個人における、返済能力をはるかに超えた債務のこと。債務は具体的には、企業の場合は銀行からの借り入れや社債、個人の場合はさまざまな金融機関からのローンなどの形をとる。
 過剰債務は、バブル下で形成され、バブル崩壊で顕在化する。
 バブルは、不動産や株式などの資産価格が経済実体からかけ離れて投機的に暴騰することから発生する。資産価格暴騰の背景には、金融緩和、国外からの資金流入、信用膨張がある。
 資産価格が暴騰すると、担保価値が増大するので、債務は拡大しやすくなる。また、資産価格暴騰による資産効果から企業投資や個人消費も増加するが、その投資や消費は債務拡大を伴って進む。投機の熱中過程では、債務は非理性的に膨らむものとなる。
 資産価格の暴落は、バブルを崩壊させる。企業の場合、収益は悪化し、バブル下の投資の結果として過剰設備(−過剰資本)と過剰債務を抱え込む。個人の場合は、収入が悪化し、バブル下の消費の結果として過剰債務を抱え込む。貸し手である金融機関の側には、企業と個人に対する巨額の不良債権が発生する。
 過剰債務は一過性のものではない。必ず長期にわたる解決不能の問題となる。

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週刊『前進』(2020号5面3)

小泉靖国参拝糾弾 全アジアで怒りの決起 “日本は民族的憤怒を直視せよ”

 小泉の靖国参拝強行に対して、アジア各地で闘いの炎が燃え上がっている。
 韓国の太平洋戦争犠牲者遺族会の代表団十一人は八月十一日に訪日し、靖国神社や首相官邸で座り込みを続けた。十三日には小泉の参拝強行を直撃する糾弾闘争に決起、続く十五日にも「弾除け犠牲者二万五千の霊を故郷へ」と記した横断幕を高々と掲げ、靖国参拝弾劾闘争の先頭に立った。

 「慰安婦たちを冒涜する行為」

 韓国では、参拝強行の翌十四日にただちに各地で闘いがたたきつけられた。
 民主主義民族統一全国連合などで構成する統一連帯は十四日午前、鍾路二街で「神社参拝、歴史歪曲糾弾大会」を開き、千人余りが参加した。「小泉首相の神社参拝は、ヒットラーの墓を参拝することと同様の破廉恥な行為だ」という抗議声明を発表し、小泉首相の謝罪、正しい歴史教育と歪曲教科書の不採択、太平洋戦争の韓国人被害者に対する補償、日本軍軍隊慰安婦への公式謝罪と補償を求めた。集会後は日本大使館に向かってデモ行進に立った。これを阻む戦闘警察と激突して、韓総連の学生らを先頭に抗議の座り込みが闘われた。
 日帝強制連行生存者協議会会員約二百人は十四日午後、ソウル中心部のタプコル公園正門で「日本糾弾および光復節記念行事」を開き、「神社参拝の強行は日本の軍国主義復活の前兆」と弾劾し、「日の丸」や小泉首相の人形を燃やした。
 釜山でも五十八の市民団体約二千人が靖国参拝を糾弾する集会を開き、「日の丸」や日本製品を焼いた。
 十五日も闘いは続いた。「八・一五」は朝鮮人民にとって、日帝の植民地支配からの解放を記念する光復節の日だ。
 タプコル公園では、韓国挺身隊問題対策協議会など九つの団体が「光復節記念および小泉日本首相の神社参拝を糾弾する韓日連帯デモ」を開催した。日本軍軍隊慰安婦とされた女性たちが毎週行っている「水曜デモ」の四百七十二回目で、日本の市民団体を含む六百人余が参加。「日本が再び戦争ができる国をめざす動きだ」と非難声明を出し、「小泉首相は靖国参拝を謝罪せよ」「日本は私たちに国家補償せよ」「歴史歪曲を中止しろ」と訴え、日本大使館へデモを行った。
 挺対協の梁美康(ヤンミガン)総務は「日本軍は韓国の女性たちまで戦争の道具として利用した。侵略戦争を美化する靖国神社に参拝したことで、小泉首相は日本軍慰安婦とされたおばあさんたちを冒涜(ぼうとく)した」と怒りを表明。
 ソウル美術高校の学生と教職員約二百五十人も、冠岳区の校内で日本歴史教科書修正を要求する決議大会を開き、ソウル大学入口駅までデモを行った。
 十六日には、平壌八・一五民族統一大祝典をともにかちとった南北朝鮮人民が「日帝侵略及び歴史歪曲展示会」を開催し、小泉の靖国神社参拝を糾弾する共同決議文を発表した。「南北朝鮮、海外は、日本の再武装と軍国主義復活策動に注視し、共同で強く対応する」とし、「日本当局はわが民族の沸き上がる民族的憤怒を直視し、過去の犯罪行為に対して誠実に謝罪、補償し、歴史歪曲策動をただちに中止しなければならない」と強調した。

 「日本の軍国主義を打倒せよ」

 中国でも闘いが展開された。北京の日本大使館には十五日、学生、市民が波状的に訪れ、シュプレヒコールを叫んだり、「日の丸」を燃やしたりした。昼前には清華大学の学生ら約三十人がバスで乗りつけ、横断幕やプラカードを掲げ、「戦争犯罪を謝罪せよ」などとシュプレヒコールをした後、「小泉は中国人民の感情を踏みにじった」などと書いた日本政府あての抗議文を大使館に渡した。
 日帝の釣魚台略奪に反対して闘う香港の「保釣行動委員会」のメンバー数人は十四日、香港の日本総領事館の前で「首相は辞めろ」「日本の軍国主義を打倒せよ」などと叫んで抗議し、領事館近くの路上で日本軍の軍旗を燃やした。  
 フィリピン・マニラの日本大使館前では十四日、日本軍軍隊慰安婦とされた女性たち数十人が抗議行動に立ち、十六日にも大使館前で抗議集会を開いた。
 マレーシアの日本大使館前でも十五日、小泉の靖国神参拝に抗議する座り込みが行われた。マレーシアでは十二日から、複数の華人団体が協力して、首相の靖国神社公式参拝と教科書問題に反対する署名運動を始めた。発起人のジャーナリストの陸培春(ルペイチュン)さんは「首相の行為は『ずるい』の一言。訪問日を変えたところでいんちきに過ぎない」と訴えた。
 闘うアジア人民と連帯する日本のプロレタリアート人民の決起が求められている。小泉の改憲・戦争国家化攻撃と全面対決し、今秋闘争に総決起しよう。

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週刊『前進』(2020号6面1)

米帝ブッシュ戦略の本質 大恐慌切迫化で対中国−世界戦争に突き進む
 早乙女 優

 はじめに

 二十世紀末から二十一世紀にかけて、ソ連スターリン主義が崩壊し、続いて帝国主義戦後体制の全面的な矛盾の爆発が始まっている。米経済の巨大なバブルの崩壊が本格化し、ドル暴落による世界大恐慌、長期大不況がいよいよ現実になりつつある。
 米帝バブルの崩壊は、米帝の最後的な歴史的没落につながるものであり、それは必ず世界経済の分裂化・ブロック化と大恐慌の再来を促進する。すなわち、帝国主義間争闘戦の限りない激化であり、勢力圏分割戦を質的に新たに激化させ、基本的には第三次世界大戦を不可避とするものだ。
 そこにおいて、旧スターリン主義圏および中国など残存スターリン主義が帝国主義の世界支配の重大な破綻(はたん)点となっていること、帝国主義はそれらを帝国主義的支配体系に組み入れようとするが一筋縄で行くものではないこと、帝国主義はそれら広大な地域をはっきりと勢力圏分割戦の対象とするにいたっているということを見なければならない。
 しかも決定的に重大なことは、基軸国・米帝においてブッシュ政権が登場し、それまでのクリントン政権下のIT(情報技術)産業を軸とする経済浮揚政策とはまったく異なり、軍需産業の利害を露骨に推進する経済=軍事・外交政策を展開し始めたこと、それを最大の残存スターリン主義である中国に対する転覆と取り込みの戦争政策として推し進めていることである。
 それは米帝が戦後世界体制を自ら崩壊させ、ブロック化とむきだしの争闘戦政策=勢力圏分割戦=戦争政策に完全にカジを切ったということだ。それは全世界で戦争的危機を激化させている。
 こうしてブッシュ政権は帝国主義の市場争奪戦の最大の戦場として中国を措定し、他方で経済危機の軍事的突破もかけた対中国スターリン主義の侵略戦争を明確に措定し、そのための日米同盟重視政策を打ち出した。米帝はその世界戦略を対中国=対日帝政策を軸にして形成しつつあり、北朝鮮政策もその一環として見直した。米帝ブッシュはこの新戦略をテコにして日帝を組み伏せ、たたきつぶすことを国家戦略(帝国主義間争闘戦)の第一目標に据えて、中国・朝鮮侵略戦争を行おうとしている。
 日帝・小泉政権は、このブッシュ戦略に食らいつき、対米対抗性をもって中国・朝鮮侵略戦争への参戦を決断し、この観点から改憲=戦争国家化、大失業の攻撃に打って出ている。
 こうした米帝の世界戦争政策と米日帝国主義による中国・朝鮮侵略戦争情勢の激化は、プロレタリアート人民、被抑圧民族人民の怒りの決起を必ず引き起こし、世界革命情勢を生みだすものとなる。
 米帝ブッシュは、世界恐慌におびえ、米帝の絶望的な危機に突き動かされて、凶暴な内外政策を展開しようとしている。だが、それらはあまりにも破産的であり、米帝の思惑をも超えて情勢が激動し、アジア―全世界と、何よりも米帝の内部で新たな危機と矛盾が大爆発していくことは不可避である。
 二十一世紀の冒頭、「反帝国主義・反スターリン主義世界革命か、第三次世界大戦か」を問う決定的な時代が到来した。「二十一世紀のできるだけ早い時期に死滅しつつある資本主義=帝国主義とその支配体系の全面的打倒を」(本年新年号アピール)必ず成し遂げようではないか。
 米日帝の中国・朝鮮侵略戦争の策動と真っ向から対決し、今秋決戦の爆発で、改憲粉砕・有事立法阻止の大奔流をつくり出そう。

 「一夜明けたら戦争勃発」と戦争を挑発

 米帝ブッシュ政権は、世界恐慌と長期大不況への突入を不可避とする認識に立って、中国・朝鮮侵略戦争を世界戦争級の戦争として行おうとしている。そういうものとして米帝の世界戦略、核戦略を包括的に見直し、それをどんどん実行し始めている。
 八月十七日、米海軍第七艦隊は台湾海峡に近い海域で大規模軍事演習を実施した。原子力空母カールビンソン、空母コンステレーションを核に駆逐艦とフリーゲート艦、潜水艦など軍艦十四隻を動員し、参加人員は一万五千人という大規模なものだ。米帝はこれを中国軍の大規模軍事演習にぶつけて戦争挑発的に行ったのだ。これは韓国で行われている米韓軍事演習「ウルチフォーカスレンズ」と一体のものだ。またこれらと連動して日本各地の民間港に、五隻の米軍艦船が一斉に寄港した。
 八月十日には米英軍五十機で二月以来最大規模のイラク空爆を強行した。中東・アラブの新植民地主義支配の危機に対する米帝の凶暴な侵略戦争の継続であり、断じて許すことはできない。しかも、「中国の技術者がイラクに派遣されている」などと「中国脅威」論をあおっているのだ。
 これより前の四月一日、米軍のスパイ機EP3が偵察中に中国軍機と接触して墜落させた。この事故は中国近海で米軍の戦争挑発が日々激しく行われ、この地域がいかに厳しい戦争的緊張におかれているかを示した。米軍は、五月七日には偵察飛行を再開して、戦争挑発のスパイ行為をくり返している。
 六月一日、アーミテージ国務副長官は、自民党の山崎拓ら与党三党幹事長との会談で「一夜明けたら大戦争が勃発(ぼっぱつ)している可能性は、欧州ではきわめて小さいが、アジアでは依然としてありうる」「中国はアジアの安保問題の最大の問題だ」と発言した。このアーミテージ発言に見られる、米帝の戦争的激しさを怒りをもって見据え、これと対決しなくてはならない。

 「二大戦域同時対応」から「一戦完勝」へ

 ブッシュ政権は、「二正面戦略」からの転換(=アジア重視戦略)とミサイル防衛計画を柱とする新たな軍事戦略を打ち出した。米帝ブッシュ政権が狙っているのは中国に対する世界大戦級の戦争である。これに日帝を最大限動員し、組み伏せようとしている。それは世界大恐慌、大不況への突入が不可避であるとの認識に立った大軍拡政策であり、第三次世界大戦をも視野に入れた恐るべき核戦争政策だ。
 六月二十一日、ラムズフェルド国防長官は上院軍事委員会で「二正面戦略」からの転換を公式に表明した。二正面戦略(「二大戦域同時対応」戦略)とは、朝鮮半島と中東で、ほぼ同時に大規模な地域戦争が勃発することを想定し、この二つの戦争に対応可能な軍事態勢をとるという、従来のソ連崩壊後の米軍基本戦略である。
 ラムズフェルドは、この二正面戦略について、「ソ連崩壊後の米軍戦略の転換に積極的役割を果たしたが、軍事予算を縮小させ、優秀な人材を流出させ、将来のリスクに対処するための投資の過小を招くとともに、軍事立案者を中東と朝鮮半島の脅威への対処という短期のことに集中させ、長期的脅威への準備を怠らせるものとなった」と総括した。
 また、@米国の防衛A前方展開戦力の強化B米国の死活的利益を脅かす敵に圧勝するための能力を確保することが必要だとした。そして「結局のところ米国は、敵に決定的に勝利する力を持たねばならない」「必要とあらば、敵の領土を占領し、体制を変えることも含まれる」と述べたのである。
 さらに、新たな戦略視点は軍事的即応能力を確保すると同時に、将来の戦争への投資を可能にすることだ、と強調した。
 そして「米国が現在行動しないなら、新たな脅威が台頭し、米国を奇襲するだろう。過去もそうだったのだ。過去との違いは、今の兵器ははるかに強力だということだ」と述べた。
 ラムズフェルドは八月十七日にも記者会見を行い、四年ごとの戦略見直しが議会に提出される九月末をメドに二正面戦略を最終的に放棄するとあらためて語った。ラムズフェルドは新たな戦略の核心を「一つの大規模な紛争に決定的に勝利する」ことであり、「゛決定的″とは望むことをすべて実現できる状況であり、首都に到達したりその国を占領できることだ」と説明した。

 一方的核攻撃を狙う新ミサイル防衛構想

 五月一日、ブッシュは、国防戦略の見直しのもう一つの柱として、ミサイル防衛(MD)構想を発表した。それは米本土ミサイル防衛(NMD)と戦域ミサイル防衛(TMD)を組み合わせ、新たなミサイル防衛システム網を構築するというもので、ブッシュは同時に弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約を廃棄する方針を発表した。
 七月十四日、ブッシュ政権下で初めてのミサイル迎撃実験を行った。ブッシュ政権はこれに続き、ミサイル迎撃実験を今後五年間に二十回行うと発表し、来年四月にはアラスカ州にミサイル迎撃基地を建設し始め〇三年完成、〇四年配備に向けて動き出している。
 ミサイル防衛構想とは、弾道ミサイルを、「加速段階」「中間飛翔(ひしょう)段階」「終端段階」の三段階で、地上、海上、空中、宇宙空間から打ち落とす多層迎撃システムを世界中にはりめぐらせるという、とてつもない核戦争政策、大軍拡政策である。
 米帝は、敵の核ミサイルを無力化することで、核戦争で一方的な攻撃者の立場に立とうとしているのだ。その直接の狙いは中国・朝鮮侵略戦争を行うために、中国の核ミサイルを無力化することにある。これは「防衛」のためではなく、米帝が先制的に核戦争を発動するためのものなのだ。
 実際、敵の弾道ミサイルからの防衛という考え方はより発射に近い段階での迎撃へと向かわせ、結局は発射する前に敵の基地をたたくという考え方、すなわち核による先制攻撃で勝利するという戦略に必然的に結びつく。レーガンのSDI(戦略防衛構想)も「先制第一撃戦略」態勢づくりに向けた布石だった。
 ブッシュ政権はすでに包括的核実験禁止条約(CTBT)からの離脱を表明。また地下核実験再開のための準備期間を大幅に短縮する研究も進めている。この間、米帝は臨界前核実験をくり返し行い、実戦で使える戦術核兵器の開発を進めてきた。その核兵器の完成を地下核実験で最終的に確かめる段階に近づいているのだ。
 同時に、このMD構想には対日争闘戦の観点が貫かれている。これは日帝を米帝のミサイル防衛システムに組み込み、日帝独自の軍事戦略、核武装を封じ込める狙いを持つ。米帝は日帝を中国・朝鮮侵略戦争に最大限まで動員しようとしているが、それはあくまでも米帝の軍事戦略に補完的に組み込むこととセットなのだ。
 米帝はこのMD構想に、日帝や欧州帝を引き入れ、その技術と資金を活用しようとしている。また米帝は中国や北朝鮮をにらんで日本と日本周辺海域にMDシステムを配備することを狙っている。
 六月にランド研究所が「日本と弾道ミサイル」という報告を行った。そこでは、TMD共同研究の一部参加にとどまっている日帝を、弾道弾ミサイル防衛(BMD)に完全に引き込むための諸問題を検討している。それはミサイル防衛構想の狙いが中国の核の無力化にあることをあからさまに表明するとともに、この問題は日米同盟関係を揺るがしかねない大きな緊張をはらんでいると書いている。
 報告書は、日本が遅くとも二〇〇七年から一〇年までに、BMD配備について基本的意志決定を行う必要が出るとした上で、「FSX(F2戦闘機)の開発の場合と同じように、(日米間の)摩擦が生じてくるのは疑いない」「防衛庁の内外に、米国のシステムへの日本の依存が過剰になると懸念する人びとがいる」などと、日米争闘戦の激しさを述べている。
 これに対し日帝は、米帝の対日争闘戦的な観点を見つつも、このMD構想に食らいつき、必死に独自の核武装を追求している。日本はすでに九八年からTMDの日米共同研究を行っている。また、海上自衛隊が現行の中期防衛力整備計画(中期防)で新たに建造する二隻のイージス護衛艦にTMD機能を持たせることが明らかになった。
 六月二十二日の日米防衛首脳会談で、中谷元・防衛庁長官は「日本が仮にミサイル防衛システムを保有することになれば、国土防衛のため主体的運用を行うシステムを考えている」と発言した。後日には、この発言について「わが国独自の情報収集システムを作りたい」と説明した。すでに日帝は〇二年までに独自の情報収集衛星(偵察衛星)打ち上げを予定している。また大陸間弾道ミサイル技術に直結するH2Aロケットの打ち上げや高純度プルトニウムを生産する高速増殖炉「もんじゅ」の運転再開を狙っている。
 このようにブッシュ政権の新ミサイル防衛構想は、日帝の戦争国家化・有事立法制定、核武装化の動きを決定的に加速するものとなっている。
 「中国は戦略的敵」と転覆図る
 ブッシュ政権の国防戦略見直しのロジックを要約すると、次のようになる。
 @「二大戦域同時対応」戦略は、ソ連スターリン主義崩壊後の国防費確保のためのデッチあげ戦略でしかなかったこと、Aしかし結果として「逆に小規模紛争や平和維持活動への対応が焦点となってしまい、国防予算を減少させ、米国の即応戦略が低下する事態を招いた」ので、新戦略は国防費を増大化し、軍事的即応性を高め、将来のリスクにも対処できる戦略を打ち立てるところに趣旨があるということなのだ。
 Bしたがって、当面の北朝鮮・イラクなどの「ならず者国家」への軍事対応だけでなく、C長期的展望における中国を「米国の死活的な国益を脅かす敵」に見立てて、それに圧勝する戦略を打ち立てたということである。
 Dそのために、NMD構想を推進する(巨大な予算をつぎ込む)ことを決定し、対中国を軸にする以上、NMDとTMDの区別はなく一体であることをはっきりさせ、Eそして、この戦略のもとに日米同盟を米英同盟と同じような位置づけを与え、F対中国を射程に入れた戦略のもとに、沖縄米軍基地を強化するということである。
 また対北朝鮮政策は、クリントン政権の関与政策から転換し、「ならず者国家」規定を復活させ、基本的に敵視政策をとることにした。中国政策は軍事的対決と中国市場の争奪という二重の政策の立場をはっきり確定した。政治的には後者の問題から協調的政策を展開するが、軍事戦略は中国を「戦略的敵」とした展開になる、ということである。

 米帝資本の利害貫く“ユニラテラリズム”

 ブッシュ政権は、こうした新たな軍事戦略を強力に展開すると同時に、そうした戦争的力をも背景にして、「一方的外交(ユニラテラリズム)」を力ずくで貫き、むき出しの争闘戦政策、戦争政策にカジを切っている。
 米帝は米州ブッロク化に踏み切った。四月二十日〜二十二日、カナダで米州首脳会議が行われ、米州自由貿易地域(FTAA)を〇五年末までに実現することを目指した「ケベック宣言」を採択し、その加盟資格として「民主主義条項」を導入した。これによって、キューバを除く北米、中南米にまたがる三十四カ国の米州自由貿易圏がつくられようとしている。
 また米帝は中国スターリン主義の体制転覆を追求しつつ、他方では中国のWTO(世界貿易機関)加盟を推進し、中国市場の再分割戦を展開している。
 そして日帝の構造改革、不良債権処理をテコに日帝の金融市場の強引な開放と日本への直接投資の拡大を狙い、日米首脳会談で設置を決めた日米新経済協議をも活用し、日本とアジアの市場を日帝資本からもぎり取ろうとしている。同時に鉄鋼の緊急輸入制限や自動車の二国間協議の強化などWTOの多国間ルールを軽視し、がむしゃらに米企業の利益保護に向かっている。
 何よりも米帝は軍需産業・石油エネルギー産業の利害をむき出しにした軍事=外交政策を進め、ミサイル防衛計画などの展開による軍需産業化で経済危機の打開を狙い、戦争によって生き残りを図ろうとしている。
 例えば、五月十七日に発表したブッシュの新エネルギー政策は、エネルギー業界の意向を受けて、エネルギー浪費社会温存や原子力発電推進に約二十年ぶりに転換することを打ち出し、「地球温暖化防止に関する京都議定書」からの離脱を決めた。
 ジェノバ・サミットでもCTBTの「死文化」、ABM制限条約の破棄、小型兵器輸出規制の骨抜きを狙い、生物兵器禁止条約の検証案にも反対するなど、すべての問題で米帝のむき出しの国益を押し出し戦争的な質をもった外交政策を貫いた。

 IT産業推進から軍事経済的打開へ

 こうしたブッシュ政権の凶暴さは基軸国・米帝の絶望的な危機を体現したものだ。ブッシュ政権は深刻な国内の政治的分裂・階級支配の危機を背負い、米経済のバブル崩壊の中で成立した政権である。米帝が蓄積してきた経済、社会の危機がバブル崩壊とともに大爆発しようとしている。ブッシュ政権を根本的に規定しているのはこのことなのだ。
 ブッシュは、民主党のゴア候補との泥仕合、接戦の末、大統領に選出された。この選挙戦が示したものはアメリカ社会の大分裂=階級支配の危機であった。
 ブッシュは大統領選で「私はアメリカが、別々で不公平な二つの国に分かれつつあるのでは、と危惧している」と、階級支配の危機を完全に自覚しつつ、それを「自己責任」なる弱肉強食のイデオロギーで正面突破することを宣言した。
 またクリントン政権の中東和平政策や朝鮮半島への「関与」政策の失敗、軍事費削減を非難し、「われわれは世界最高の軍事力を高め、二十一世紀もまたアメリカの世紀にしなければならない」「中国は戦略的パートナーではなく、競争相手だ」と、米帝の危機を戦争的に突破していくことを主張し、米帝支配階級の支持を訴えた。
 九〇年代に米帝は経済安保戦略などによって日帝を没落させるとともに、ソ連スターリン主義の崩壊という世界情勢のもとで、ハイテク軍事技術の民需転用の推進者であったゴアを副大統領として、IT産業を軸とする経済浮揚政策をとり、バブル的「繁栄」をわがものにした。だが、そのことによって米帝の歴史的没落に終止符が打たれ、米帝が立ち直ったのか。まったく逆だ。それは米帝の世界支配の危機を激化させ、さらに取り返しがつかないほど経済の基礎を弱め、最後的な没落を決定づけたのだ。
 二〇〇〇年、米経常収支の赤字は四千三百五十四億jに達した。米の純在外資産(外国にある米の資産から米にある外国の資産を差し引いたもの)は、二〇〇〇年にはおよそマイナス二兆jに達すると推計される。
 このような恐るべき米帝の経常収支赤字が続いているにもかかわらず、米バブル経済によって証券投資などの資金が海外から米に流れ込むことで国際資金循環を成り立たせ、ドルの信認が支えられてきた。九八年には米バブルがいったん崩壊しかけ、国際金融恐慌の瀬戸際までいったが、米帝はさらにバブルを引き延ばし、ネットバブルというより投機的なバブルを極限まで膨らませた。また世界経済の停滞的現実や日本、アジアなどの恐慌の中で、こうした異常なバブルによる米経済の浮揚が、世界の経済をかろうじて支えてきた。ところが、そのITバブルが崩壊し、米バブル経済の本格的な全面崩壊へと突き進みつつあるのだ。それは間違いなくドル大暴落を引き起こし、米帝と全世界を二九年型世界大恐慌の時代へと、奈落の底にたたきこむものとなる。
 他方、八〇年代のレーガン政権以来、アメリカの労働者階級はすさまじい労組破壊と資本攻勢によって、労働強化と生活水準の低下を強いられてきた。こうした現実に対し、昨年のボーイング社の大ストライキのように労働者の怒りの決起が始まっている。このストは二万三千人もの組合員が四十日間も闘いぬいて勝利した。米国社会には階級的、民族的・人種的な怒りが渦巻いている。米バブル崩壊は、米帝の階級支配の破綻を爆発的に明らかにするものとなる。
 こうした米帝危機の深刻さが、ブッシュ政権の絶望的な凶暴性、戦争性となって現れているのだ。
 ブッシュ政権の登場は、クリントン政権下でのバブル経済の崩壊の危機が九七〜九八年以降鮮明になってきた中で、米帝経済が軍事的打開の衝動を強めていることを直接的には示している。前回の大統領選は、クリントン政権下のバブル的繁栄を推進したゴアのIT産業推進にさらにかけるか、それともその危機の到来の中で本来の米帝経済の「力」である軍事経済的打開にかけるかの対決としてあった。そして米帝支配階級として後者を選択したということであり、その歴史的意味は非常に大きい。

 軍需寡占体の代表がブッシュ政権中枢に

 ブッシュ政権がどのような政権であるかは、その顔ぶれからも明らかだ。
 ブッシュ政権にとって父親の後ろ盾は大きいが、その父親のブッシュの推薦を受けて政権構築に大きな力を発揮したのはチェイニー副大統領である。チェイニーは、八九年ブッシュ(父)政権時代の国防長官としてパナマ作戦、イラク中東侵略戦争(湾岸戦争)における「砂漠の嵐(あらし)作戦」を展開した。パウエル国務長官は当時の統合参謀本部議長であった。チェイニーは九三年に国防長官を退任後、九五年テキサスの石油会社ハリバートンの会長兼最高責任者をしている。
 ラムズフェルド国防長官は、フォード政権の国防長官を務めた後、現在の国家防衛戦略構想で決定的役割を果たしているランド研究所の理事長となり、NMDプロジェクトのリーダーとして動いてきた。そしてランド研究所は軍需産業のトップを走るロッキード・マーティンと組んでMD構想の国家政策としての採用を推進している。
 オニール財務長官もチェイニーの軍事的人脈であり、ラムズフェルドの後任としてランド研究所の理事長となったが、ブッシュ勝利とともに抜擢された。
 ゼーリック通商代表も、九〇年代に米海軍士官学校の国家安全保障問題担当教授や戦略国際問題研究所(CSIS)所長などを務め、いくつかの軍需産業の役員となっている。
 さらにブッシュ一家が州知事を務めてきたテキサス州とフロリダ州は宇宙防衛開発の拠点であり、ミサイルビジネスに州経済の死活をかけている。
 このようにブッシュ政権を構成する陣形は、軍人=軍需産業利害関係者とエネルギー産業利害関係者が圧倒的枢軸を占めている。ブッシュ政権の登場は、IT産業に牽引(けんいん)された経済のバブル的繁栄の瓦解(がかい)の中で、それに代わって九〇年代に激しく展開されたM&A(企業の合併・買収)をとおして生き残った四〜五社の軍需寡占体や石油・エネルギー産業の利害代表がホワイトハウス化したということである。
 それはミサイル防衛構想の大々的展開による軍需産業の発展で危機を経済的に打開しようとするだけでなく、何よりも世界恐慌と長期大不況の時代の到来を前提に、戦争そのものによって米帝の生き残りを図ろうとするものである。
 このことを理解する上で、米帝にはベトナム戦争以外に戦争の敗北の経験がないこと(その傷は大きく現在も米帝を決定的に規定しているが)、また第二次世界大戦の経験が(つまり戦後米帝体制の出発点に戻ることが)米帝にとってきわめて積極的・肯定的に総括されていることを押さえておかなければならない。米帝は、戦争と恐慌の中で壊滅的経験を味わっていない唯一の帝国主義なのである。
 二九年大恐慌と三〇年代の大不況の中で、米帝はニューディール政策を展開し、完全な自由放任主義から国家独占資本主義政策に転じた。だが、周知のようにこのニューディール政策によって危機を突破できたわけではない。実際はすさまじい規模での戦時経済に突入することが決定的な意味をもったのである。
 アメリカ経済は、第二次大戦の戦争景気で大恐慌以来の産業の停滞や失業を解消し、以降アメリカ企業家の間に軍産一体化によって危機をのりきるという方式を定着させ、戦後の軍産複合体の肥大化をもたらした。米の鉱工業生産は三九年から四四年の五年間で二倍以上に拡大、国民総生産は実質九〇%増加した。これによってアメリカ的大量生産方式による基幹的重化学工業の発展を生みだし、大手航空機メーカー八社や自動車のビッグスリーなど代表的巨大企業による生産の独占をつくり出した。
 他方、この過程で、日欧帝国主義は軍事的勝敗にかかわりなくすべて産業的に壊滅し、米帝だけが大規模な生産力を持つ帝国主義として生き残った。こうして帝国主義間争闘戦に完全に勝利した上で戦後のパクス・アメリカーナの経済的基礎をつくることになったのが、第二次世界大戦であった。
 このように戦後米帝とは、あるいはパクス・アメリカーナの時代とは、すぐれて軍事経済として構築され、一貫して産軍複合構造を土台とした準戦時経済の恒常化をテコに発展してきた。だから戦後米帝にとっては、クリントン政権下の九〇年代が非常に特異な時代だったのである。
 ブッシュ政権の登場の基底にあるのは次のことである。すなわち二九年型世界大恐慌の過程が始まり、米帝が最後的危機に陥る中で、米軍の圧倒的な軍事力による世界支配の再確立と本来の戦後米帝的なあり方への回帰を狙い、その持てる最後の力を爆発させて生き残ろうとしているということである。

 「アジアは死活的」と日米同盟を強調

 ブッシュ政権の世界戦略がどのような階級的性格を持つのか、より正確に認識するために、ブッシュ政権の戦略指針となっている二つの資料を検討したい。(『コミューン』三月号、九月号の翻訳資料参照)

 集団的自衛権を要求−−アーミテージ報告

 ひとつは「米国家戦略研究所日米関係特別報告」である。この報告書は、アーミテージ現国務副長官ら民主・共和両党の軍事戦略担当者が共同で作成し、大統領選前の昨年十月に発表したものである。これは米帝支配階級の基本的な認識であり、ブッシュ政権の新軍事戦略を方向づけた文書である。
 (1)この報告書はまず「アジアは米国の繁栄に死活的」「朝鮮半島と台湾海峡では、米国を大規模戦争に巻き込む戦争が今すぐにでもおこりうる」との認識を確認した上で、「日本の社会、経済、国家のアイデンティティー及び国際的役割は、明治維新での変化に匹敵するほど根本的に変わる可能性がある」と、日帝が没落帝国主義化を深め、戦後的あり方から大転換しつつあるという認識を示している。
 そして「日本は、米国のアジア関与の要石(かなめいし)だ。米日同盟は米国の世界安全保障戦略にとって中心的だ」と、日米同盟関係の強化こそが米帝の軍事戦略の核心に座らなければならない、と強く確認している。こうした立場から、日本の根本的転換を日米同盟関係の強化へと導くために「米国が日本との関係でリーダーシップを発揮すべきだ」と、「(民主・共和)両党の行動案を提案」している。
 その結論は日米同盟を米英同盟のような軍事同盟にすべきだ、ということである。九〇年代、日帝はバブル崩壊と米帝の「経済安保戦略」によって没落帝国主義化を深めた。その結果として日帝は改憲(=戦後的な米帝体制の打破)と独自の軍事大国化への衝動を強めている。こうした日帝の動きがストレートに対米対抗的な方向をとり、米帝のアジアでの利益を損なうことにならないように、日帝を米帝世界戦略の先兵として動員する新たな安保同盟関係に組み伏せようというのだ。
 (2)報告書は新安保ガイドラインの水準を超える共同作戦への参加を主張し、そのために集団的自衛権の行使を要求している。
 「改定された米日防衛協力の指針は、統合防衛計画立案の基礎だ。この指針は米日同盟における日本の役割拡大の天井ではなく、床と見なすべきだ」「集団的自衛権が日本で禁じられていることは同盟の協力に束縛となっている。この禁止が解除されれば、さらに緊密で効果的な安保協力が可能になるであろう」
 そして「米国政府は、日本がこれまで以上に貢献し、もっと対等な同盟パートナーになろうとすることを歓迎すると明確に示す必要がある」「われわれは、米国と英国の特別な関係が米日同盟のモデルだと考えている」として、その実現に必要な七点の要素をあげている。
 @米国は日本及び尖閣列島(釣魚台)を含むその施政権下の地域を防衛する約束を再確認すべきだ。
 A危機管理法(有事立法)の成立を始めとする、改定米日防衛協力指針の着実な実施。
 B米三軍と日本のそれらの相手との堅固な協力。八一年合意に基づく軍の役割と任務を改定・最新化(「一千カイリのシーレーン防衛」から「ペルシャ湾まで」に拡大)すべきだ。国際テロリズムや国境を越えた犯罪活動などの課題についての協力、平和維持・平和創出活動での協力のあり方を明確にすべきだ。
 C平和維持活動および人道的活動への全面参加。他の平和維持活動参加国の負担にならないように、日本は、これらの活動に九二年に自ら課した制約(PKO参加五原則)を解除する必要があろう。
 D多用途性、機動性、柔軟性、多様性、生存能力という特性を有する戦力構成の形成。米国の能力が維持される限り、米国の日本での足跡を減らすよう努力すること。これには、米軍基地の統合や沖縄に関する米日特別行動委員会(SACO)九六年報告の合意事項の早急な実施が含まれる。
 E防衛技術交流を拡大すること。
 F米日ミサイル防衛協力の拡大。
 (3)そして日米同盟に危機を及ぼす重大な問題として、沖縄米軍基地の問題を取り上げている。
 まず沖縄米軍基地の重要性、特に嘉手納の米空軍基地と在沖の第三海兵隊遠征軍の決定的な役割を確認した上で、「沖縄への米軍部隊の集中は日本に明白な重荷になっている。また日本ほどではないが米国にも、訓練の制限などによって重荷になっている」「基地周辺から圧迫され即応性および訓練はますます制約を被っている」と沖縄への米軍基地の過度な集中が、人民の闘いに包囲され、日本政府に危機をもたらしているだけでなく、米軍にとっても重荷になっていると語っている。
 九六年SACO合意に基づく沖縄米軍基地の再編・統合(=強化)を進めるべきだと強調、さらにSACO合意には米軍基地のアジア太平洋地域全体への分散化も含めるべきだった、としている。沖縄人民の闘いへの打撃感の吐露である。
 (4)また日米の諜報能力の一体化を要求し、そのために日本は機密情報保護のための新法を作るべきだという。
 (5)さらに「日本経済の健全性が二国間関係の繁栄のために不可欠だ」「日本が弱いとグローバルな資本の流れの不安定性が増す」として、ほとんど内政干渉とも言えるような対日政策を強調している。
 (6)外交については「米国は日本の国際的役割の拡大を支持してきた」「外交における独立した日本のアイデンティティーの追求は、米国外交と対立しない」などと独自の外交政策を強める日帝の取り込みを図りつつ、他方では「外交協力では不意打ちがあってはならない。日本はアジア通貨基金などの構想を米国政府との調整なしに推進したことが多かった」と日帝の対米対抗的な外交を厳しく批判した。また日帝の対外援助を利用した市場再分割戦を非難し、さらに日帝の円圏づくりを牽制している。
 以上見たように、この報告書は日帝の対米対抗的な軍事・外交政策や戦後体制の打破への衝動を、日米安保の強化によって押さえ込むことを米帝の基本戦略とすべきだとの提言を行ったものである。これがブッシュ政権の対日戦略の基準となっていることは、この間の日米首脳会談や、新軍事戦略からも明らかだ。

 沖縄基地の強化図る−−ランド研究所報告

 ランド研究所が五月十五日に「米国とアジア―米国新戦略と戦力体制に向けて」という報告書を提出した。同報告書は、米空軍に委託されて作成したもので、準公文書の性格を持つ。
 この報告書は日帝の対米対抗的な台頭を警戒して、これを阻止するために日米安保を強化することを提言している。また朝鮮有事対応の態勢は維持するものの、とくに中国・台湾有事態勢の強化へと移行すべきであり、それに対応した沖縄米軍基地の強化が必要だと論じている。
 第一に「アジアのいかなる潜在的覇権国も、アジアにおける米国の役割を浸食する」「この地域の敵対的大国による支配は世界的な挑戦となり、現在の国際秩序を脅かす」と米帝のアジア重視をはっきりさせて、中国の台頭や日帝のアジア勢力圏化を阻止することを打ち出した。
 第二に、米帝の経済安保戦略で日帝が没落帝国主義にたたき込まれたことによって、日帝が独自の軍事大国化と侵略戦争の衝動を強めており、こうした日帝の動向が対米対抗的な方向を取らないよう、日米安保を徹底的に強化し、日帝を組み伏せることが米帝のアジア戦略の核心であることを確認している。
 「ときおり、政治家や他の人々が日本の米国依存を終わらせるべきだと主張している。日本は今後十年間に大きな戦略的決断に直面しうる」「日本はすでに前記の諸課題(北朝鮮の核・ミサイル計画、中国軍の近代化)に対応する軍事力の建設を始めているし、軍事的にさらに積極的になる意志もすでにある。……決定的問題は、日本の軍増強が、また日本が軍事力使用に一層積極的になっていることが、米日同盟のコンテクストの中で起こっていることか、それともこの同盟から決別する一歩として起こっていることかということだ」
 第三に、「中国の防衛白書を検討すると、二〇一〇年までに台湾を併合することを狙っていることがうかがえる。……もし米国が中国との武力衝突を避けるようなことがあれば、米国の信頼は損なわれるだろう」と、米帝は中国侵略戦争をはっきりと構えることを打ち出している。
 とくに「台湾有事のシナリオは朝鮮半島と比較してまだまだ十分検討されていない」と述べ、台湾問題をテコに朝鮮侵略戦争の「作戦計画5027」のような中国侵略戦争計画を作成し、臨戦体制に入るべきだと主張していることは重大である。
 第四に、こうした中台軍事危機に対応する戦略から、沖縄を侵略最前線基地として強化することを提言している。
 「中台軍事危機に発展した際の米空軍の取るべき行動についても準備しなくてはならない」
 「米政府は海兵隊普天間飛行場を空軍の併用運用基地とする可能性を検討すべきだ。海兵隊の伊江島補助飛行場も使用可能だ」
 さらに「琉球諸島の一カ所あるいは複数に駐留することは台湾防衛に有利になることは明白だ。例えば下地島空港は二千b級の滑走路を持っており、台湾までわずか四百六十`しか離れていない。こうした琉球諸島南部の空港使用を求めていくことが賢明かもしれない」と述べている。米軍はすでにこうした観点から下地島や波照間島への米軍の強行着陸を行っている。
 この報告書は「日本がその安全保障の地平を領土の防衛を越えて広げられるようにするために、また共同作戦のために適切な能力を取得しうるように、憲法を改定する努力を、米国は支援しなければならない」と改憲問題にも大きく踏み込んでいる。
 米帝は、日米安保を最大限強化し、日帝を中国・朝鮮侵略戦争に徹底的に動員する体制を構築し、アジアを軍事的に再編することで日帝のアジア勢力圏化を粉砕しようとしている。そのためには、日帝の改憲衝動を高圧的に押さえ込む従来の立場からの転換が必要だという認識に立っているのだ。
 この報告書は「日本の戦略的受動性の時代は終わりを告げようとしている」「米政府、近隣諸国は将来、長期的な国益を十分念頭に置き、独自路線を歩む日本を相手にすることになるだろう」と述べ、日米同盟を強化することが日帝のアジア勢力圏化を粉砕する路線であることを強く印象づけている。

 大恐慌・大不況下で生き残る戦争戦略

 以上われわれは、さまざまな証言や資料を使い、米帝ブッシュの新たな世界戦略を分析してきた。そこから得られるブッシュ政権下の米帝世界戦略の階級的性格はおよそ次のようなものである。
 (1)米帝ブッシュ政権の階級的性格は第一に、二九年型世界大恐慌への突入におびえつつ、世界恐慌と大不況への突入を不可避とする認識を踏まえた世界戦略を打ち立てようとしていることである。IT産業をはやしたてたニューエコノミー論を謳歌(おうか)したアメリカはもはや完全にぶっとんだ。そして今や、大恐慌と大不況を生き残るためのブロック化の構築、中国・アジア市場の争奪と日帝金融市場の開放=強奪、軍需産業をテコとする経済政策へと突き進み始めた。
 (2)米帝ブッシュ政権の階級的性格は第二に、日米同盟を米英同盟と並ぶ世界戦略の要として打ち出し、それを強力に推進していることである。
 九〇年代の米帝の存亡をかけた対日争闘戦の圧倒的展開の結果として日帝を没落帝国主義にたたき込んだことを前提に、米帝世界戦略の先兵としての日米同盟関係に日帝を組み伏せるというニュアンスの対日政策を打ち出した。
 日米争闘戦は新たな段階に入った。没落帝国主義として危機に立つ日帝は、この米帝戦略に必死に食らいつき、世界恐慌・大不況と戦争の時代に生き残るための凶暴な帝国主義へと転換しつつある。
 (3)米帝ブッシュ政権の階級的性格は第三に、(1)(2)のようなブロック化、市場分割戦と対日争闘戦の政策の核心に中国・朝鮮侵略戦争の政策を据えたことである。米帝は明らかに世界大的戦争への突入を目指して動き始めたのだ。「二大戦域同時対応」戦略の放棄、アジア重視の鮮明化、ミサイル防衛構想の強力な打ち出しは、米帝が本格的に戦争に向かって突き進み始めたことを示している。
 (4)これは恐るべき戦略への転換と言わなければならない。世界恐慌と大不況の時代への突入、世界経済の統一性の崩壊とブロック化の中で、米帝は本気になって戦争の準備に突入したのである。
 しかも日米帝国主義にとって、この戦略をめぐる激しい動きの根底に、沖縄基地の動揺と危機があり、この点も非常に緊張をはらんだ過程に入っているのだ。
 (5)この世界戦略的転換がもたらすものは何か。米帝の歴史的没落のすう勢とその中での絶望的あがきの危機性、没落帝国主義日帝の危機、中国・朝鮮危機・アジア危機の激化などの中で、いつ戦争的危機が爆発してもおかしくない情勢の成熟である。

 有事立法と改憲狙う小泉政権を打倒せよ

 今や帝国主義の史上三度目の「基本矛盾の爆発」が確実に進行している。帝国主義が革命的に打倒されない限り、帝国主義の侵略戦争、帝国主義間戦争は不可避である。日本と全世界の労働者人民はこれと真っ向から対峙・対決して勝利しなくてはならない。
 日帝・小泉政権は、米帝が対日争闘戦を核心とする中国・朝鮮侵略戦争政策に踏み切ったことに対して、この米帝戦略に対応(対抗)するために改憲と中国・朝鮮侵略戦争参戦に向かって正面突破することを絶対的使命として登場した政権である。
 この小泉と対決して有事立法阻止・改憲粉砕の闘いに決起しよう。九月には有事立法の法制化に向けた「中間報告」が国会に提出され、来年通常国会には法案提出が狙われている。
 「米日帝国主義の中国・朝鮮侵略戦争絶対阻止」のスローガンを新たな構えで確立し、十月ブッシュ訪日を阻止しよう。有事立法阻止・改憲粉砕決戦に立とう!

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週刊『前進』(2020号6面2)

2001年日誌 阻もう改憲=戦争への動き 8月21日〜28日
 5米軍艦船、4港に一斉寄港
 韓国野党が小泉訪韓に反対

●地位協定の改定を否定
米国防総省のロッドマン国防次官補(国際安全保障問題担当)は、就任後初めて記者会見し、日米地位協定の改定について「改定というカードはない。日米とも(地位協定の)大きな変更に関心はない」と明確に否定した。(21日)
●ABM条約「期限11月」
 ボルトン米国務次官(軍備管理・国際安保担当)が、ミサイル防衛計画を進めるためにロシアと交渉中の弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約改廃問題について、十一月の米ロ首脳会談を事実上の期限とする考えを述べた。米高官が対ロ交渉をめぐり具体的に期限に言及したのは初めて。(21日)
●PKO局に自衛官派遣
防衛庁は、ニューヨークの国連本部PKO局への防衛庁職員派遣を可能とするための防衛庁派遣職員処遇法の改悪案を、九月に召集予定の臨時国会に提出する方針を決めた。PKO局は国連安全保障理事会によるPKO部隊派遣などの決定を受け、どの国からどんな部隊を派遣するかなど実務上の調整や企画・立案などを行う。(22日)
●米大統領がABM条約離脱に言及 ブッシュ米大統領はロシアに改廃を迫っているABM制限条約について「米国の便宜に沿った時期に離脱する」とロシアとの交渉にはとらわれずに条約から離脱する構えであることを表明した。(23日)
●日本国内初の多国間訓練
 防衛庁が、日本で初めての多国間共同訓練を二〇〇二年度に実施する方針を固めた。米国を始め周辺各国に参加を呼びかけ、日本周辺海域で海上自衛隊を中心に潜水艦救難訓練を行う予定。(23日)
●小泉が中韓訪問の意向
小泉純一郎首相が、十月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)の前に中国、韓国を訪れる意向を固め、外務省に日程調整を指示した。小泉はまた、臨時国会前に東南アジア諸国を訪問する方向。訪問先にはインドネシアやシンガポール、マレーシアなどがあがっている。(24日)
●警官5000人増要求へ
 警察庁は、全国で約二十三万人いる警察官を来年度に五千人増やす方針を決めた。来年度予算の概算要求に関係予算約六億九千万円を盛り込む。(24日)
●「沖縄の人びとはビエケスを見ている」 ジョーンズ米海兵隊総司令官が、ブッシュ政権がプエルトリコのビエケス島での軍事演習を、住民の反対運動を受けて二年後に中止すると決めたことについて、「沖縄の人びとはビエケスを見ており、このことから結論を導き出すだろう」と述べ、今回の決定の影響で、沖縄の演習継続が難しくなるのではないかとの「懸念」を示した。(24日)
●統参議長にマイヤーズ
ブッシュ大統領は統合参謀本部議長にリチャード・マイヤーズ同本部副議長(元在日米軍司令官・・太平洋空軍司令官)を昇格させる人事を発表した。ブッシュ政権のアジア重視の人選。(24日)
●外国人登録票交付は全国300人超 公安調査庁が在日朝鮮人の外国人登録原票の写しを大量に取り寄せていた問題で、同庁が交付を受けた原票の写しは、今年四月以降で大阪、札幌、北九州市など十八市と東京都の五区におよび、判明分だけで三百人を超えることが朝日新聞社の調べでわかった。(25日)
●軍港移設で協議会設置
沖縄を訪問中の中谷元・防衛庁長官が、沖縄県の稲嶺恵一知事と懇談し、那覇軍港の浦添移設で関係省庁の担当者で構成する「那覇港湾施設移設に関する協議会」を設置することを明らかにした。(24日)
●韓国で小泉訪韓に反対論
 小泉首相がAPEC前に訪韓の意向を示している問題で、韓国国会の最大勢力である野党ハンナラ党は、靖国神社参拝の謝罪などがない限り訪韓を受け入れないよう韓国政府に求める論評を出した。また超党派の議員グループ「韓日キリスト教議員連盟」も小泉の訪韓を「韓国の国民感情を無視した行動」と批判している。与党からも反対論が出始めている。(26日)
●「警官の銃、防護だけでいいか」と公安委員長 村井仁国家公安委員長が「(警察官の)銃があくまでも防護的にしか使えないようになっているのが本当にいいのだろうか。傷付けられた後しか撃てないとか、そのがい然性が高い時しか威嚇射撃できない」と現行の銃の使用用件に疑問を示した。(28日)
●東ティモール「大統領選3月、独立4月に」 国連東ティモール暫定行政機構(UNTAET)のデメロ代表が、大統領選挙を来年三月末に実施、四月に結果の発表とともに独立を宣言する、との見通しを明らかにした。(28日)
●米軍艦船が四港に一斉寄港 米海軍の駆逐艦クッシングや巡洋艦ビンセンスなど艦船五隻が、兵庫県姫路市、和歌山市、名古屋市、静岡県清水市の四港へ一斉に寄港した。(28日)

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週刊『前進』(2020号7面1)

橋本裁判の判決延期弾劾 大阪高裁は控訴を棄却せよ

 一九九三年四月の天皇訪沖に反対する革命軍の火炎ゲリラ戦闘に対する報復弾圧として「実行犯」にデッチあげられた橋本利昭同志の裁判闘争が重大局面に突入した。警察犬の「臭気選別」を使ったデッチあげを打ち砕いてかちとった一審無罪判決に対する検察官の不当な控訴により、現在、大阪高裁で控訴審が闘われている。検察側立証は完全に破綻(はたん)し、「検察控訴棄却」以外にあり得ない判決公判が、八月三十一日に予定されていた。
 ところが、大阪高裁は八月十六日、この判決公判の期日延期を突然、一方的に通告してきた。新たな期日は、一カ月先の九月二十八日である。四月二十五日の結審以来四カ月を経て、判決公判の半月前に突然延期を通告してくるなど、前代未聞の暴挙である。
 検察官が「最後のバクチ」として行った裁判所による臭気選別検証は、十五回実施して犬は何も持ってこなかった。いったい今さらなんのために、一カ月もの期日延期が必要なのか!
 裁判は、橋本利昭同志の逮捕・起訴から八年近く、一審無罪判決に対する不当な検察控訴からすでに三年近く経過している。一審では検察側立証が終わるまで四年間も不当な身柄拘束を続けた。橋本同志をこれ以上被告人の位置に縛りつけることなど、絶対に認めることはできない。検察側立証が完全に破綻した今、裁判所は一刻も早く橋本同志を被告人の位置から解放しなければならないのだ。
 さらに問題は、裁判所による期日延期の背景である。今日の日帝危機の泥沼化と、「つくる会」教科書の採択を阻止し、小泉の靖国参拝を徹底弾劾する闘いが、日本人民とアジア人民から強烈にたたきつけられる中で、日帝支配階級は、治安弾圧体制の強化=革共同壊滅という観点から、橋本裁判での無罪確定など黙過できないところに追いつめられているのだ。
 そうした支配階級の階級意思を受けて、大阪高裁が逆転有罪判決や、差し戻し決定を行うために期日を延期したのであれば、それはもはや「裁判」ではない。裁判所を包囲・監視する人民の力で粉砕あるのみだ。
 今秋の小泉反革命との全面的対決の一環として、司法制度改革−司法の治安弾圧機構化を許さない闘いと一体となって、橋本裁判の完全無罪をかちとろう。

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週刊『前進』(2020号7面2)

 改憲阻止決戦シリーズ 今、問い直す侵略の歴史
 第2部 15年戦争の末路(4)
 沖縄戦B 中南部の激戦 戦火にじゅうりんされた住民

 米軍の沖縄本島上陸に対して、当初まったく抵抗しなかった沖縄守備軍は、南下する米軍に対して、牧港(浦添市)―嘉数(宜野湾市)―南上原(中城村)の線に前哨拠点を置いた。特に嘉数高地には、洞窟・トンネル・トーチカを連結した防衛陣地を張り巡らしていた。四月五日にそのラインに達した米軍は、六日から日本軍の本格的な反撃にあった。双方が一進一退する攻防が始まった。日本軍は住民を弾薬運びなどに動員したりして巻き込みながら、急造爆雷を抱えて戦に体当たりしたり、夜間斬り込みなどの肉弾戦法をとるなど、猛烈な攻撃を連日連夜展開した。嘉数高地の守備軍が陥落するのは四月二十四日のことだった。
 こうした激戦は、戦場とされた地域の住民が巻き込まれ、一家全滅など大きな犠牲を強いられることを意味していた。

 特攻の体当たり

 沖縄現地軍の戦闘に呼応するとして、日本海軍は六日、山口県徳山から世界一の巨艦(六万四千d)と誇る戦艦「大和」以下の連合艦隊を沖縄に向けて出撃させた。片道だけの燃料を積んだ「特攻出撃」だった。だが、沖縄に近づく前に鹿児島県徳之島沖で、三百機の米軍機の攻撃を受け、応戦する間もなく五隻が撃沈された。「大和」は三千人以上の乗員を戦死させた。海上特攻隊は壊滅した。
 四月六日、大本営は神風特攻隊の出撃を命じ(菊水一号作戦)、九州の基地から沖縄海上の米艦船に向かって体当たり攻撃をさせた。作戦は六月二十二日まで十次にわたり、二千四百機が米軍に撃ち落とされるか、激突して散った。
 もはや制海権も制空権も完全に失い、武器の差から言っても日本軍の敗北は時間の問題だった。
 一方、四月十六日には米軍は伊江島に上陸した。伊江島には「東洋一」と言われた飛行場があり、二千七百人の守備隊が住民を巻き込んで六日間の激しい戦闘を展開した。この戦闘で四千七百人が死んだが、そのうち千五百人は住民だった。米軍も多数の死傷者を出した。米軍占領後、伊江島は本土への出撃基地とされた。

 住民に犠牲集中

 日本軍の司令部は首里(現那覇市)の首里城地下の壕(ごう)の中にあった。四月下旬から五月中旬、この首里をめぐる攻防戦は熾烈(しれつ)をきわめた。米軍は、戦車、自走砲、ダイナマイト、火炎放射器、ナパーム弾、白燐(はくりん)手投げ弾などあらゆる砲火器をもって攻撃した。首里市内に撃ち込まれた米軍の砲弾はおよそ二十万発に及んだという。
 米軍の猛攻に後退を強いられた沖縄守備軍は五月二十二日、司令部壕の放棄を決め、沖縄本島南部の喜屋武(きゃん)半島方向に撤退することにした。五月二十七日から撤退作戦が展開された。司令部が陥落する事態なのに降伏せず撤退した。「本土防衛のために少しでも沖縄戦を長引かせる」ことを至上命令とする日本軍にはそれ以外の選択はなかった。
 したがって、非戦闘員に対する配慮はまったくなされず、約十万人以上の住民が首里と南部の間をさまよい、多数の住民が砲弾の餌食(えじき)となった。しかも「友軍」と呼ばれていた日本軍から壕を追い出されたり、食料を強奪されるなどして、住民の犠牲はいよいよ増大した。ウチナーグチ(沖縄方言)を使ったとしてスパイ視され殺されたり、乳幼児が泣いて陣地が知られる、と親に子を殺させたりと、理不尽と暴虐がまかり通った。飢餓と負傷と疲労が深刻化する極限状況の中で、日本軍の反人民的な本質が日に日にあからさまになっていった。
 また、守備軍は、撤退の際に重度の傷病兵に青酸カリを与えて「自決」を命令した。「処置」された兵士は五千〜六千人に上った。
 米軍の攻撃は猛烈を極め、洞窟戦のために改造された火炎放射器を使って、ガマの中や森の茂みは次々と焼き払われた。また、ガマの上からドリルで穴を開け、爆弾やガス弾を投げ込んだり、土砂を流し込んで生き埋めにするなど、「馬乗り攻撃」と呼ばれた方法でガマに対する攻撃が容赦なく繰り返された。
 摩文仁一帯に撤退後、守備軍はほとんどなすすべがなかった。司令官の牛島満中将は六月十八日、第一〇方面軍あてに決別電報を送った。そして、部下将兵に対し「最後まで敢闘し悠久の大義に生くべし」と命じた。これは将兵に降伏を禁じ、「最期の血の一滴まで」玉砕せよと命ずるものである。そして、牛島は、長(ちょう)勇参謀長とともに摩文仁の司令部壕内で自殺した。
 しかし、六・二三後も戦闘は続き、米軍が作戦終了を宣言したのが七月二日、現地の日本軍が無条件降伏を申し入れ、正式に降伏文書に嘉手納飛行場で署名したのは八月十五日のポツダム宣言受諾のはるか後、九月七日のことだった。

 学徒の半数死亡

 沖縄戦の双方の死者は、米軍側の戦死者一万二千五百人、日本軍の戦死者は約九万人余(約二万八千人の防衛隊員を含む)、住民の死者は十五万人を数える。住民の実に三分の一の命が奪われたのである。
 「鉄血勤皇隊」として戦場に動員された師範学校男子部生徒や中学校生徒は千八百四十八人に上り、うち半数以上の九百四十二人が死んだ。また、「ひめゆり学徒隊」など、師範学校女子部や高等女学校の女生徒からなる従軍看護婦隊は五百九十二人が動員され、六割を超す三百五十六人が死亡した。
 「新しい歴史教科書をつくる会」の教科書は、沖縄戦について「沖縄では、鉄血勤皇隊の少年やひめゆり部隊の少女たちまでが勇敢に戦って、一般住民約九万四千人が生命を失い、十万人に近い兵士が戦死した」と記述している。少年や少女までを戦争に動員し、筆舌に尽くせぬ苦しみを与え無残に殺したことを覆い隠し、「勇敢に戦って」と描くことで国家=天皇のために命を投げ出すことを美しいことと「殉国美談」に仕立てるものだ。また、一般住民の戦死者が圧倒的に多かったことを数字をごまかしてねじ曲げている。
(高田隆志)

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週刊『前進』(2020号8面1)

小泉・石原の排外主義と対決を
9・1朝鮮人・中国人虐殺から78年
在日朝鮮人・中国人に対する破防法弾圧の激化を許すな
 佐久間 祐  

 関東大震災から七十八年、日帝・小泉政権は戦争国家化の一環として、東京都知事ファシスト石原と連動して大規模な七都県市合同防災訓練=自衛隊有事出動演習を行おうとしている。この軍事訓練は、切迫する中国・朝鮮−アジア侵略戦争に向けた自衛隊の実戦部隊化を狙うものであり、労働者人民の総動員を図るものである。われわれは、新たな戦争に突き進む日帝・小泉の反革命攻撃と対決し、教科書闘争、靖国闘争の国際主義的連帯闘争の爆発を引き継ぎ、排外主義、差別主義の扇動・組織化との体を張った闘いに立ち上がることをあらためて決意しよう。

 公調が400人以上の登録原票出させる

 九・一を前にして、日帝・小泉が在日朝鮮人への破防法弾圧を具体的に策動している重大な事実が明らかになった。公安調査庁が在日朝鮮人の外国人登録原票の写しを自治体から大規模に入手していたのである。破防法第二七条に基づく「破壊的団体の規制に関する調査のため」という口実で、これまでに判明しただけでも全国で四百人を超える在日朝鮮人の登録原票のコピーが公安調査庁に渡った。京都市八十七人、大阪市六十三人、神戸市八人、奈良市一人、北九州市六十一人、福岡市五十三人、松江市十九人、高松市二十一人、仙台市三人、札幌市三十八人、東京は、杉並区三人、江東区二人、練馬区一人、葛飾区七人、江戸川区八人など全国に及んでいる。
 外登法の登録原票制度は在日・滞日する外国人の住所、氏名、生年月日はもとより、家族構成、顔写真、指紋を始め、職業歴などの個人情報が六十六項目にわたって記入されている。これまで原票は門外不出とされ、国(公安警察)や自治体以外に閲覧を認められておらず、在日人民自身にも何が書かれているか分からないものであり、入管体制の治安的暗黒的本質を示すものであった。
 八〇年以来の営々たる指紋押捺(おうなつ)拒否闘争=反外登法闘争の中で、在日朝鮮人・中国人の闘いによって、ようやく原票の開示をかちとった。今次破防法弾圧はこうした在日朝鮮人・中国人の闘いの地平をじゅうりんするものだ。
 今回の破防法弾圧は第一に、五月の北朝鮮・金正男(キムジョンナム)の「法外入国事件」を契機に、小泉が国会の施政方針演説で「入管体制の強化」を叫んだことの実践として強行されたものであり、小泉反革命攻撃そのものである。金正男「法外入国事件」は、日帝にとって大打撃であった。「水も漏らさぬ」はずだった入管体制の網の目をくぐって数度にわたって金正男が日本に入国していた事実に驚愕(きょうがく)した。そのために異例とも言える施政方針演説での小泉の強調となり、具体化したのである。
 第二に、「朝鮮・台湾海峡有事」の際に、「ゲリラ・コマンドゥ」と一体となって反戦行動を行う「恐れ」のある在日朝鮮人・中国人を予防的に弾圧するために今回の調査を強行したということである。日帝の改憲・有事体制に向けた攻撃の大エスカレーションである。
 日帝は、「朝鮮有事」に向けて入管法・外登法の改悪を図り、戦時入管体制への転換を強行したが、それを一層エスカレートさせ、在日朝鮮人・中国人に対する排外主義・差別主義を扇動しながら改憲・有事立法攻撃を推し進めようと図っているのだ。
 第三に、この攻撃が「参政権」法案−「国籍法」改定案として進行している在日に対する融和・同和攻撃と一体となって進められていることである。「参政権がほしければ日本国籍をとれ」とする攻撃の中で、なおかつ民族性と人間的誇りを堅持して生きようとする在日朝鮮人・中国人を破防法対象者としてすえ、これまでにもまして治安弾圧を強化しようともくろんでいるのである。
 日帝・小泉は、一九五〇年の朝鮮戦争に向かう情勢下で、朝連を解体し、在日人民の戦後革命の闘いを圧殺した歴史を再び繰り返そうとしている。
 その上重大なことは、こうした破防法弾圧が、こともあろうに九・一を前にして明らかになったことだ。ここに日帝・小泉とファシスト石原のもくろみと一体となった排外主義的な外国人政策が鮮明になっているのである。
 われわれは、在日人民に対する破防法弾圧を徹底的に弾劾し、破防法・組織的犯罪対策法攻撃との闘いを労働者階級の責任ある闘いとして貫徹すると同時に、入管法・外登法−入管体制粉砕を断固として闘い抜くことをあらためて決意しなければならない。

 関東大震災直後にデマあおり大虐殺

 在日人民への破防法弾圧の中で、九・一を迎えていることを、われわれは戦慄(せんりつ)をもって確認しなければならない。
 今年の九・一防災訓練は、七都県市と東京の「ビッグレスキュー2001」が完全に一体となって、自衛隊の有事出動訓練として行われる。特に、川崎、調布という在日朝鮮人の歴史的な居住地域を対象として、治安出動した自衛隊が自在に動き回ることは、それ自身が在日朝鮮人・中国人にとって「関東大震災の再来」を思い起こさせる恐怖をもたらすものなのだ。
 関東大震災を考える場合、まず第一に、引き起こされた歴史的事実をありのまま見据えることから始めなければならない。
 「つくる会」歴史教科書では以下のように記述している。「一九二三年九月一日には、関東地方で大地震がおこり、東京・横浜などで大きな火災が発生して、約七十万戸が被害を受け、死者・行方不明者は十万を超えた(関東大震災)。この混乱の中で、朝鮮人や社会主義者の間に不穏なくわだてがあるとの噂(うわさ)が広まり、住民の自警団などが社会主義者や朝鮮人・中国人を殺害するという事件がおきた」
 あたかも「不穏なくわだて」があったから「殺害した」と言わんばかりの記述であり、デマと虐殺を肯定している。
 事実はどうなのか。一九二三年九月一日午前十一時五十八分、震度6、マグニチュード7・9の大地震が関東地方を襲った。小田原沖三十`の海底が震源地であった。東京・横浜を中心に死者・行方不明者約十四万人、負傷者十万四千人、倒壊・焼失家屋五十七万戸という大災害だった。
 「間一髪を容れず、濛煙(もうえん)四方に起こり、爛華(らんか)八方に飛び、東京市の全土は遂に火の洗礼を受く。紅蓮(ぐれん)、紅蓮、大紅蓮」(大曲駒村=おおまがりくそん『東京灰燼(かいじん)記』より)。
 被害の総額は一九二二年の一般会計予算の四倍以上の約六十億円に上ったと言われる。
 しかし、地震災害の大きさもさることながら、翌二日から引き起こされた朝鮮人・中国人大虐殺という事実こそ銘記されなければならない。
 八月二十四日に加藤友三郎首相が死に、政府は首相不在の政変状態で大地震に直面した。陣頭指揮に立った内務大臣水野錬太郎、警視総監赤池濃は、ともに朝鮮で一九一九年の三・一独立運動の弾圧の先頭に立ち、日帝の植民地支配に対する朝鮮人民の深い怒りに心底恐怖していた。水野、赤池らは謀議し、九月二日、東京市と隣接五郡に戒厳令を発布、翌三日には神奈川県、四日埼玉県、千葉県へと拡大し、十一月十六日までの二カ月半、総勢六個師団約六万人の軍隊による戒厳体制でこの危機をのりきろうとした。
 また関東各地に三千六百八十九の「自警団」が組織され、歯止めのない暴虐さで虐殺が凶行された。日本刀、竹槍、鳶口(とびぐち)、棍棒(こんぼう)、猟銃、ピストルなどで武装し、通行人を片っ端から検問し、朝鮮人・中国人と見るや見境なく暴行を加え、殺していったのだ。
 大震災直後から数週間にわたって、少なくとも六千人以上の朝鮮人と六百人以上の中国人が虐殺された。しかも、七十八年後の今もって、犠牲者の正確な数は不明である。このことの中に、虐殺がいかに問答無用に凶行されたかが示されていると言えよう。
 「朝鮮人が井戸に毒を入れた」「朝鮮人は暴動を起こす」−−こうした根も葉もないデマをデッチあげ、それを根拠に戒厳令を出し、保護すると称して朝鮮人を警察署や兵営に収容し虐殺するという、言語に絶する蛮行がふるわれた。当時約三万五千人の在日朝鮮人が存在していたが、その約六分の一が虐殺されたのである。
 この中で、九月三日には警察と軍隊の手で亀戸事件が引き起こされ、平沢計七、川合義虎ら労働運動活動家が殺された。さらに十六日には東京憲兵隊本部で、大杉栄、伊藤野枝、甥の橘宗一が殺され、裏門近くの古井戸に捨てられた(甘粕事件)。
 そしてこの一大虐殺事件を諸外国から指弾されたときの言い訳として「赤化日本人及赤化朝鮮人」の暴動説を海外に宣伝するよう準備されていた。朴烈、金子文子らの大逆事件もこうしてねつ造されていった。

 3・1独立運動を恐れた日帝

 第二に、当時の社会状況を明らかにしなければならない。日帝・政治委員会の支配の空白の中で、支配階級は革命の恐怖におののいていた。一九一七年ロシア革命の勝利が世界中の労働者階級・被差別民衆の闘いを鼓舞していた。朝鮮での三・一独立運動、中国での五・四運動は、朝鮮人民、中国人民の反日帝・民族解放にかけた熱情が爆発したのだ。
 日本においても大正デモクラシーの絶頂期にあった。一九二二年三月、全国水平社が創立され、七月には日本共産党が非公然に結成された。労働者階級の闘いは、ロシア革命を突破口に世界革命の実現に向かって確実に進んでいこうとしていた。
 また二二年に起きた信濃川発電所における朝鮮人労働者虐殺事件を契機に朝鮮人労働者と日本人労働者との連帯・合流の闘いが具体的に始まっていた。
 しかし、スターリン主義のもとでその後再建された当時の日本共産党は、この関東大震災における朝鮮人・中国人虐殺の問題と民族問題を階級の課題としてとらえきれず、労働者階級の闘いを階級的に組織しえず、血の海に沈めてしまった。関東大震災における朝鮮人・中国人虐殺という歴史的事実は、排外主義・差別主義に敗北したスターリン主義の裏切りの姿を映し出したものと言える。

 血債の立場を貫き国際主義的連帯を

 第三に、だからこそ関東大震災における朝鮮人・中国人虐殺という事実と繰り返し真摯(しんし)に向き合い、階級的に確認することが決定的に重要なのだ。
 この虐殺の歴史が日本階級闘争の中で初めて日本労働者階級の問題として暴き出され、階級的に闘う課題として措定されたのは、一九六九年以来の入管闘争−七〇年七・七自己批判を経て、ようやくのことだった。われわれは、階級的血債の問題としてこの歴史的事実を真正面から見据えていくことをとおして、排外主義、差別主義との闘いを本格的に開始していった。この課題は日帝のアジア侵略と対決する内容として決定的なのだ。
 日帝は、関東大震災における朝鮮人・中国人虐殺を含めて戒厳令体制のすべてを、今日もなお反革命的に教訓化し、実践に移しているのだ。七〇年安保・沖縄闘争の爆発と、それに対する三島反革命を経て、日帝は七一年九月一日から防災訓練と称して自衛隊を動員した治安訓練を開始し、そこに地域住民の参加を強制してきた。まさに日帝は、労働者階級の階級性を解体するために防災訓練=治安訓練を繰り返している。
 さらに今日、ファシスト石原が都知事として、自衛隊の有事出動演習、治安出動訓練の先頭に立ち、昨年四月九日の「第三国人」発言のような在日・滞日アジア人民に対する恐るべき排外主義扇動を行っているのだ。まさに関東大震災の朝鮮人・中国人大虐殺は過去のことではなく、現実の小泉・石原の攻撃と結びついているのである。
 小泉・石原の排外主義・差別主義、国益主義、国粋主義の攻撃と徹底的に対決し、支援・防衛・連帯のプロレタリア国際主義の立場を断固貫かなければならない。自衛隊の治安出動を絶対に許さず、戦争国家化=改憲・有事立法攻撃を全力で阻止しよう。

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週刊『前進』(2020号8面2)

読者からの手紙 真の労働者党へ飛躍の時だ 戸田 一郎 

 東京都議選および参院選が終わった。職場ではいろいろ話し合われた。一労働者は「真に労働者を代表する党がなくなったよな。組合はこれからどうするんだい」とポツリと語った。その言葉が強く耳にこびりついている。心底そうだと思う。
  今、労働者は小泉の「改革」に一見従っているかのように見える。しかし、けっしてそうではない。自分と家族がこれから生き延びる道を探し求めている。その不安と焦燥のため、他のことに心を砕いている暇がないのが実情である。企業が「希望退職」を募れば、数時間で企業の思惑をこえた人数が応募することにそれは示されている。
 この労働者の不安と焦燥を闘いのエネルギーに転化し、それを導く労働者の党と、その党に指導された労働組合が存在しない。
 だから、闘う労働者は孤立しながらも、その地で奮闘しつつ、真の労働者の党の出現を待ち望んでいる。
 小生は革共同しかないと思う。革共同が、今の小泉反革命の仮面を容赦なく暴き出し、労働者が闘いに決起する契機をつくり出すこと以外に、今の閉塞(へいそく)状況を打ち破る道はないと思う。そのためには革共同が、来る日も来る日も、労働者の中に入り、労働者の苦悩と怒りを受け止め、その苦悩と怒りを闘いに転化するためのアジを(ビラ一枚でも結構だから)行うことだ。
 党は戦略を持たなければならない。革共同には戦略はある。問われている問題は、その物質化である。その核心点は、日々苦闘し、焦燥し、不安で身を焦がしている労働者を運動的に組織することだろう。
 革共同が、社会的少数派として存在するのではなく、真の労働者の党として登場する絶好の機会が訪れていることを共有したいと思うのである。労働者は心から共鳴し闘いに決起する・できる契機の到来と党を待ち望んでいるのだ。

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