SANRIZUKA 日誌 HP版   2001/07/01〜31     

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 2001年7月

 

〔週刊『三里塚』編集委員会HP部責任編集〕 

(7月3日) 千葉県議会 「成田横風整備」の意見書も(7/4千葉日報)

 6月千葉県定例県議会は3日、一般会計補正予算案など18議案のほか、成田空港の早期完全空港を求める意見書など11発議案を可決し、閉会した。
 成田の意見書では平行滑走路の2500メートル(当初計画)の整備に加え、計画を白紙にしていた横風用滑走路(C滑走路)についても「整備する」と踏み込んだ内容だった。
 この発議案は成田空港完全化への意見書で、現在、暫定(2180メートル)で整備している平行滑走路は「2500メートルでの整備が必要」とし、これに計画を白紙にしている横風用滑走路も備え「完全成田空港化が不可欠」とした。羽田空港の国際化間題は「言語道断」とした。
 その上で(1)完全空港化を図るため明確な意思表示を行うこと、(2)「成田新高速鉄道」の整備を明確に位置付けることを関係機関に強く要望。同意見書は賛成多数で可決された。

【本紙の解説】
 この発議は、横風滑走路の建設まで提案したウルトラ反動的なものである。千葉県と千葉県議会は、これまで成田空港の建設で何度も国と公団に注文をつけてきた。それは三里塚農民に犠牲を強制していることを「成田空港建設の苦労」と称し、見返りを要求するという本末転倒した内容であった。
 今度は三里塚闘争の現状や周辺住民の騒音被害を一顧だにせず、横風滑走路まで提案した。これこそ「言語道断」である。彼らは公共事業を持ってくることが地域経済に活性化をもたらすとこの期に及んで主張する。それで生活被害がでればさらに見返りを要求しようというのだ。これが千葉県議会の立場であり、堂本知事も同じである。
 そもそも横風滑走路については、円卓会議の合意事項で「平行滑走路が完成した時点で改めて地域社会に提案し、その賛意を得て進める」との確認だ(最終所見・第6「滑走路計画」の2項)。この時運輸省は「これを地上通路として整備することは別問題」との文言でペテン的抜け道を用意、脱落派もこれを承認した。しかし、あくまで横風滑走路は「平行滑走路完成の時点で地域社会に提案」というのが公的な確認だ。
 千葉県もこのシンポ・円卓会議の「合意」に参加している。今回の発議はこの公的確認を公然と否定するものだ。この期に及んで「シンポ・円卓はただの方便」と手のひらを返したわけだ。
 公団は「あらゆる意味で強制的手段が用いられてはならない」(同・第6の1項)との公的確約も踏みにじり、先日東峰神社の立ち木を強制伐採したばかりだ。その上に今回の千葉県議会の発議は暴挙としか言いようがない。
 堂本知事はこの発議案に無条件で同調した。これが堂本流「真摯な話し合い」路線の実態である。

(7月4日)日航兼子社長、暫定滑走路で「2−3割の増便計画」(7/5千葉日報)

 日航の兼子社長は4日、暫定滑走路オープン後の国際線の増便計画について「具体的には未定だが、現状の2、3割程度の増便になると思う」との見方を示した。
 有望な路線としては、乗客数の伸びが目立つ中国や韓国のほか、ハワイ、ロンドン、イタリアを挙げ、今年末から来年初めまでに具体的な計画をまとめる予定。
 成田発の国内線の増便については「国際線の乗り継ぎ用と空港周辺の国内線需要は必ずしも合致しない」と述べ、大幅な増便は難しいとの考えを明らかにした。

【本紙の解説】
 暫定滑走路供用(来春)で日航が「2、3割の増便」とはおよそ不可能だ。どこからこんなデタラメな数字が出てくるのか。
 成田空港の日本の航空会社のシェアは約38パーセント(99年度)であり、その約4分の3を日航が占めている。つまり成田空港のスロットの約28パーセントが日航機なのだ。その「2割増便」とは全体シェアの約6パーセント、3割増便なら約9パーセントになる。
 成田空港で現行滑走路から暫定滑走路に回れる中型機以下の航空機は全体の約5パーセント以下。それをすべて暫定滑走路に回し、空いたスロット(発着枠)の全部を日航に配分しても、今回の日航の増便計画を満たすことはできない。
 中国(の一部)、韓国便は中型機以下なら暫定滑走路を使える。しかし、ハワイ、ロンドン、イタリア便などは暫定滑走路では飛べない。香港などでのテクニカルランディング(途中給油)が必要で、時間と経費両面で現実的ではない。
 このような日航の「増便計画」は、国土交通省と空港公団が、暫定滑走路を「平行滑走路」(2500メートル当初計画の呼称)と強弁していることと関係している。公団は今でも2500メートルを目指すと公言している。各国の航空会社もそのつもりで増便要求をだしている。
 東峰神社の立ち木を伐採した翌日の記者会見で、中村公団総裁は「当初計画の2500メートルは非常に厳しくなった」と表明したが、断念したとは言っていない。各航空会社には、暫定滑走路が完成すると離発着回数は現行の年間13万回から約5割アップする(ブラス年間6万回)と説明している。中型機以下しか飛べないとは正式には伝えていない。
 国土交通省も公団も、2180メートルの惨状に航空会社と利用客からの不満が噴出し、その「外圧」で3000メートルへの延長機運を作り出そうと考えているのだろう。
 ただし日航は、成田発の国内線については国内線充実検討会の要請にもかかわらず「増便は採算があわず無理」だと改めて表明した。

(7月5日) 共生委員会「伐採で」国側、農家双方を批判(7/6各紙千葉版)

 成田暫定滑走路の障害になるとして、空港公団が先月16日、東峰神社(成田市東峰)の立ち木を伐採した問題で、成田空港の建設と運用を監視する成田空港地域共生委員会(代表委員=山本雄二郎・高千穂大客員教授)は5日、「東峰神社立ち木伐採に関する見解」と題した文書を、国土交通省や空港公団、県、空港周辺九市町村に提出した。 
 国側と東峰地区に住む農家の双方を、話し合い解決に向けた努力が足りなかったと批判している。 
 見解では、農家に事前説明のないまま立ち木が伐採されたことを指摘し、「一方的な強行措置」と同省や空港公団の対応を批判。「節度ある対応が期待される」とクギを刺した。農家の姿勢についても「(立ち木の伐採で)住民との話し合いの糸口を見いだせないと空港公団側が判断したことが発端になった」として、「問題がないとはいえない」と指摘。国側との話し合い解決に努力するよう促している。 

【本紙の解説】
 共生委の見解は、「立ち木伐採は遺憾。一方的な強行措置との印象を残し残念だ」として、公団を批判しているかのように装っているが、実は公団の立ち木伐採を全力で擁護している。公団が伐採の理由とした「混乱を避けるため」「住民との話し合いの糸口が見いだせない」云々を肯定し、逆に東峰区住民に対して「地域の一員として問題解決への努力が足りない」と説教している。伐採の責任は東峰区住民にあるとの主張だ。住民が「話し合い」に応じないから伐採されたのだと言う理屈だ。暴論である。
 共生委員会は第三者機関を装っているが、しょせんは国土交通省・公団の代弁機関だ。今回は公団の悪行の「みそぎ役」を演じたまで。今年から国土交通省も公団も正式な構成員になったので「当然」の帰結ではある。

(7月5日) 堂本知事、空港問題へ積極姿勢/地連協会長に就任(7/6各紙千葉版、千葉日報)

 成田空港の建設と運用を監視する「成田空港地域共生委員会」の上部組織で、県や成田空港周辺九市町村、空港公団などでつくる「地域振興連絡協議会」(地連協)は5日、総会を開き、堂本暁子知事を会長に選出した。従来は副知事が務めていた会長職に知事が自ら就任したことで、空港周辺の地域振興に県が積極的に取り組むことをアピールしたものと受け止められている。 
 堂本会長は記者会見で「地域振興は県が地域と一緒にやる領域。力を入れていかなければ」と話し、空港と都心を結ぶ成田新高速鉄道の建設実現などと並んで、地域振興にも重点的に取り組む決意を表明した。 
 地連協は成田空港周辺の1市7町1村の首長と、地域の経済団体代表、県、新東京国際空港公団が委員となり、成田空港を生かした地域振興策についての方策や意見交換などを行っている。 
 会長に選出された堂本知事は「空港ができたことで豊かになったことを実感してもらうことが重要。原点に立ち返って地域振興に努めていきたい。実質的に何をするか、一緒に考え実行していこう」とあいさつした。 

【本紙の解説】
 堂本知事はいまでも「成田問題は一気にやってしまおうと思っている」(当選直後の言葉)のか。それとも四者協で公団から用地問題にはかかわるなとくぎを刺された(堂本が素人ゆえ)ことへの対抗か。いずれにせよ堂本知事の考えは「空港は地域を豊かにする」ので一気に完全開港をというものだ。そのために敷地内農民を「真摯な話し合い」で追い出そうという姿勢だ。もはや選挙のスローガンだった「環境派」のかけらもない。開発と公共事業の予算獲得だけだ。
 この悪らつな堂本知事の三里塚闘争破壊攻撃を絶対に許してはならない。

(7月5日) 堂本知事が立ち木伐採の手法「疑問視」(7/6読売千葉版)

 新東京国際空港公団が6月中旬に行った東峰神社の立ち木伐採について、堂本暁子知事は5日の記者会見で「(話し合い解決の)ルールから離れないで進めることが望ましい」と語り、空港公団のやり方に疑問を示した。「遺憾」見解をだした共生委員会に同調する形で、この問題については公団・国土交通省側と一線を画する姿勢を明確にした。
 堂本知事は、成田空港問題に対する姿勢について「終始一貫、とことん話し合いで、すべてを解決していくことを原則としてうち立てている」と強調した。
 同知事は4月の就任後、国、公団、県、地元自治体のトップ級が話し合う四者協議会の設置を呼びかけるなど、国、公団と協調する姿勢だった。

【本紙の解説】
 堂本知事は公団の立ち木伐採を断罪しているのではない。あくまで伐採のために「話し合い」がなかったことに疑問を示したにすぎない。堂本知事は空港建設に全面賛成で、当然、立ち木伐採は必要との立場である。その伐採プロセスを批判しているにすぎない。国土交通省や公団と対抗し、成田問題へのかかわりを持ち、見返り事業をもっと要求するという姿勢の現れにすぎない。

(7月5日)成田空港国内線充実対策検討会の第4回会合(7/6読売、東京、朝日、各千葉版、千葉日報)

 暫定滑走路供用開始後の国内線充実策について話し合う「成田空港国内線充実対策検討会」の第4回会合が5日、都内で開かれ、国内線着陸料の軽減や乗り継ぎの利便性向上などの課題をまとめた最終報告書を発表した。
 暫定滑走路供用で国内線年間発着枠は、5千回から2万回に大幅に増えるが「このまま何もしなければ枠が埋まらない」(公団幹部)との危機感があり、国土交通省と空港公団は今年2月、航空会社や旅行会社、地元自治体、学識経験者をメンバーに同会を発足させた。
 報告書では、(1)小型機の利用、(2)国内線着陸料の軽減、(3)施設整備、(4)乗り継ぎ利便性の向上――など国内線充実策に向けた課題を挙げた。
 目立ったのは、着陸料の軽減問題。空港公団はこれまで「考えていない」との姿勢を貫いてきたが、航空会社の要望が強いことから「国内線に限り検討していく」となっていた。しかし国内線着陸料だけの軽減は、国際航空運送協会(IATA)からの反発が予想され、「実際は非常に厳しい」(公団幹部)という。 
 また発着枠を埋めるために、国際線・国内線乗り継ぎに考慮したダイヤ設定の必要性を提示したが、航空会社から「双方を満たすダイヤ設定は難しい」との声もあがった。 
 このほか、新しい国内線ターミナルの整備、出発空港におけるチェックイン運用の拡大、利用者へのPRなどの方策が示された。 
 成田新高速鉄道や圏央道の推進などの空港アクセス、観光などの需要創出については、今後もワーキンググループで検討を続けていくという。 
 航空会社は秋ごろまでに、国内線の路線、便数を決める予定だ。 

【本紙の解説】
 国内線充実対策検討会はたいした成果もなく最終会合となった。当然である。暫定滑走路の便数を国内線で増やし、騒音で敷地内と周辺住民をたたきだすことのお先棒を担ぐことが検討会の役割であった。
 しかし、成田空港の国内線需要はない。ないものはない。結局、結論は小型機の使用と着陸料の値下げしかない。
 着陸用の高さはすでに昨年11月29日【同日付日誌参照】で「暫定滑走路の着陸料の高さから中型機の近距離便では採算がとれない。そのためにリースやレンタルで航空機の保有数を増やしてまで暫定滑走路の発着枠をとることには消極的なのだ。ましてやテクニカルランディングで割り増し着陸料を支払ってまで暫定滑走路を使うことはできない。また「運賃の安い国内線では採算をとるのは難しい」といってきたが、その通りになった。
 結局、暫定滑走路の国内線はたいした増便とはならない。

(7月5日) 国土交通省、成田空港の着陸料値下げ検討(7/6朝日)

 国土交通省は、成田空港に乗り入れる国内線の着陸料を引き下げる方向で検討に入った。国内線乗り入れを促し、国際線との乗り継ぎを便利にすることでハブ(拠点)空港としての機能を高めるのが狙い。50人乗り程度の小型機の駐機場設置や、国内線ターミナルの整備なども進める方針だ。
 成田の国内線の着陸料は現在、ジャンボ機の場合は約90万円で、羽田空港より3割ほど高い。今後、羽田並みに引き下げる方向で検討する。
 ただ、国内線の着陸料を引き下げれば、海外の航空会社などから国際線の値下げ要請が出てくるとみられ、調整が難航する可能性もある。
 成田では来年5月に2本目の滑走路が供用を始める見通しで、同省は国内線の発着回数を現在の年間約5千回から、2万回程度に増やす方針を打ち出している。

【本紙の解説】
 国内線充実対策検討会の意見を直ちに「検討」したわけだが、3割引き下げたとしても航空会社は動かない。成田空港の国内線利用料が下がっても、羽田―札幌、福岡、伊丹などのドル箱路線に航空機を回した方が利益はあがる。メガコンペ(大競争)時代では採算割れの路線は即撤退しかない。より利益率の高い路線に航空機を回すことになる。
 80年代アメリカの規制緩和で進行したことは、利益率の高いところはまずは価格競争で低価格になり、最後は1社独占となり、超高料金になるというものだ。ニューヨーク―マイアミ、西海岸―ハワイは独占状態になり、アメリカ東海岸から東京までの料金より高くなっている。その一方で、不採算線であるローカル線からの撤退が相次ぎ、アメリカ内陸部で陸の孤島が数多く出現した。
 国土交通省の航空政策は規制緩和であり、自由化を基本にしている。それにもかかわらず、着陸料を下げてまで成田国内線の路線開設を要求するのは異常である。成田の国内線を増やす唯一の手だては、国土交通省が羽田発のドル箱路線スロットを各航空会社に振り分ける際に、成田の国内線を抱き合わせにすることである。しかし、これは国土交通省の規制緩和、自由化政策とは相容れない。また諸外国の航空自由化の現実からみても表向きにはとれないやり方である。

(7月13日) 成田空港と周辺地域農業の共生へ(7/13千葉日報)

 成田空港と周辺の地域農業が共生できる可能性を探るため、空港周辺の1市7町1村の自治体や経済団体などからなる地域振興連絡協議会(地連協、会長・堂本千葉県知事)が実施した「空港と共生した成田空港周辺地域農業の確立可能性調査」の結果がまとまった。それによると実需者と生産者が距離的に近いだけではメリットにつながらない、と厳しく指摘。機内食では冷凍・カット野菜へのシフトなどが進む中で実需者のニーズに合った生産・販売体制の検討・構築を強調している。
 調査で、機内食製造会社は、2、3カ月でメニューが変わり青果物など食材の固定化が難しく、地域の生産者では対応が困難な実態を報告している。近年では機内食のコストの削減圧力も強く、生鮮の青果物から冷凍野菜のウエートが高まっているほか、洗浄・カット野菜といった加工度の高い食材も求められていることが明らかになった。
 生産側では、富里町のニンジン・スイカ、多古町のヤマトイモなど空港周辺地域で生産される農産物の評価は高いものの、空港関連実需者が必要としている品目とはミスマッチがあると分析。
 さらに「実需者と生産者が距離的に近い」という空港周辺農業の特性から鮮度など高い品質、納期短縮、輸送コスト削減など実需者がメリットを享受できる可能性はあるが、ただ近いだけではメリットは生まないと厳しく指摘した。
 現状では「地域の生産力に比べ、空港関連実需者の需要量は微々たるもの」だが、こうした「取り組み次第で共生は十分可能」と結論づけている。

 【本紙の解説】
 農業は本来、多品目少量生産で地域社会の中で基本的に消費されて継続されてきた。それが現在では、地域毎の特産品目生産が中心になり、大量生産になり全国的な市場と流通のなかでの農家経営が多くなっている。しかし、多品目少量生産の有機農業などの産直的農業や全国市場を相手にしている富里のスイカなどでも、空港関連の食品会社の特殊な消費機構には決して適合しない。そもそも農業は資本主義的商業生産には適合しにくい産業なのである。空港という特殊な消費機構に周辺の農業を適合させること自体が間違っている。
 地連協は、空港が騒音、落下物などのデメリットだけでなく、周辺農業へのメリットもあるとしてさがそうとしているが、そんなことはありえないことだ。空港は周辺農民、住民にとって生活妨害物以外の何ものでもない。ここでも空港との共生はありえないことが結論である。

(7月13日) 「成田発着枠の格差是正して」/全日空社長

 「8パーセントではあまりにも少なすぎる」―全日空の大橋洋治社長は13日の定例会見で、成田空港の発着枠の同社への割り当てシェアが低すぎることを嘆いた。大橋社長は「日本航空は26パーセントで(日本勢は)合わせて34パーセント。外国と比べても、日本の枠は少ない」と述べ、日本航空との格差是正と同時に国内航空会社への割り当て拡大を求めた。
 成田空港は、来年5月に暫定平行滑走路が供用され、発着枠が増える。

 【本紙の解説】
 諸外国の主要空港では自国の航空会社が50パーセント前後の発着枠をもっているのに、成田では34パーセント(今年度)に過ぎない。そうした理由でのシェア拡大要求だ。開港から23年の間に成田空港での国内航空会社のシェアは減少している。とりわけ日米路線での日米航空会社のシェアは、81年段階で日米が5対5だったものが、91年では3対7にまで開き、以後もジリジリと広がる傾向にある。80年代のアメリカ航空規制緩和による大競争時代の到来で日本が後退した結果だが、その要因としては日本の空港整備計画が三里塚闘争によって大幅に遅れたことが大きい。治安対策と警察の面子を優先させて「成田完成」に固執、首都圏第3空港への着手を大幅に遅らせたことが致命的だった。
 しかし、諸外国では自国の航空会社シェアが50パーセント前後だという、日航や全日空の主張も一面的である。ニューヨーク、パリ、ロンドンなどを例に出しているが、それらは基本的に国際・国内共用空港であり、国内線は自国航空会社が運航するのが通常だからだ。そのため国際線に限れば30パーセントでも空港全体のシェアでは50パーセント前後になる。国内線に外国の航空会社が就航することをカボタージュ(共同運航=コードシェアリングは含まない)というが、それを許可しているのは主要国ではニュージーランドぐらいである。
 いずれにしろ、三里塚闘争による成田空港建設の遅れが、日本の航空資本を追い詰めていることへの悲鳴である。

(7月15日) 三里塚現地闘争

 梅雨明けの炎天下の午後1時、反対同盟をはじめ600人の労農学が東峰開拓道路に集まり、「東峰神社立ち木伐採徹底弾劾! 千葉県収用委員の再任命許すな! 暫定滑走路建設実力阻止! 7・15三里塚現地集会」が開催された。会場となった開拓道路(駒の頭開拓組合)は、東峰十字路側から滑走路にむかって4メートル幅で長さ325メートルも食い込んでいる。郡司一司さんが所有している一坪共有地(天神峰。滑走路東側に隣接)とともに、暫定滑走路の着陸帯幅を国際基準の半分にあたる150メートルに縮小を強制している道路である。
 北原事務局長は東峰神社立ち木の強制伐採を強く弾劾し、「反対同盟はあらゆる手段で抵抗する権利がある」と宣言、今秋にもテスト飛行が予定されている暫定滑走路開港攻撃(来春予定)との徹底的な実力対決を訴えた。
 デモの途中、萩原進事務局次長、市東孝雄さん、鈴木幸司さん、小林なつさん、鈴木謙太郎さんらが、6・16の東峰神社の立ち木伐採阻止闘争の報告を、東峰神社の現場で行った。(詳しくは本紙記事=次週参照)

(7月17日) エコノミー症候群/航空当局と航空3社を提訴/豪州(7/18毎日)

 飛行機の狭い座席に長時間座ったために静脈内に血栓障害が起きる「エコノミークラス症候群」の患者らが17日、オーストラリアの航空当局と航空3社を相手取り、ビクトリア州高裁に損害賠償を提訴した。同症候群をめぐる訴訟は世界で初めてという。 
 原告は98年から2000年の間にオーストラリアから英国や南アフリカを結ぶ長距離便に乗り発症し、今も後遺症に苦しんでいる21歳から55歳までのオーストラリア人ら3人。「危険性の警告を怠った」として、オーストラリア民間航空安全局のほか、カンタス航空、英国航空、KLMオランダ航空を訴えた。弁護を務める法律事務所は「今回の訴訟は当方に寄せられた約3000件の被害の一部だ。今後は航空19社を相手取った集団訴訟を準備中だ」と説明している。
 近年、エコノミークラス症候群のため、血栓が肺や脳に達して死亡する例が世界中で報告され、航空各社は昨年以降、「機内では水分を十分に取り、足を動かして」と警告するビデオを流している。

 【本紙の解説】
 エコノミー症候群とは深部静脈血栓症のことである。長時間足を動かさずに座っていると、ももや足にある静脈に血のかたまり(深部静脈血栓)ができ、歩き始めると、その血のかたまりが血流に乗って肺に達し、肺の血管を閉塞する。呼吸困難や心拍数の増加、胸の痛み、意識消失などを引き起こす。空気が乾燥した飛行機内で水分をとらず、脱水状態に近くなると起きやすい。これはファーストクラスでも他の交通機関でも一定の姿勢のまま長時間動かなければ起こる。
 航空会社と空港は十数年前からこの症状が頻発し、数多くの死亡事故が起きていることを知っていた。しかし、利用客が減少することを恐れて公表せず、その対策法も知らせなかった。未必の故意の殺人にもなりかねない犯罪である。
 問題になり始めて昨年頃から、パンフレット、インターネット、機内ビデオで対策を教え始めた。この訴訟は当然の訴えであり、今後日本でもこの訴訟は続くとのことである。

(7月19日) 成田空港周辺の里山、航空機騒音で荒廃/千葉県副知事視察(7/20千葉日報)

 大槻幸一郎・千葉県副知事は19日午前、成田空港の騒音区域に残る貴重な自然環境を視察した。空港公団が所有する芝山町岩山の山武杉や成田空港に隣接した里山に整備された「水辺の里」、航空機見学の新たなメッカとなった「成田市さくらの山公園」、果樹園的に整備された成田市野毛平地区の里山などを視察した。
 また、成田市や騒音下住民などが整備について県の支援を求めている「成田広域公園」計画の予定地である成田市赤萩地区、さらに「成田の里山を育てる会」の高仲洋会長も駆けつけ、同会で整備を計画している同市東金山地区の里山について現状を説明した。
 個人所有の里山は、木炭づくりなどの生産活動には利用されていないので、荒廃するにまかせているのが実情。樹種も杉だけの単一種で、竹や蔦(つた)による侵食が著しい。
 成田市では航空機騒音下の土地利用を図るため、「成田百然郷(ひゃくねんごう)構想」を策定。里山の保全と活用に力を入れているだけに小川市長は「林業の専門家として知恵を貸してほしい」と協力を要請した。大槻副知事も里山管理や森林保全などについて、「空港周辺の市町村と協議して、対応を考えたい」と答えたという。

 【本紙の解説】
 空港周辺の騒音地区は人の住めない無人化・廃村化地区になる。騒特法(新築禁止などの規制法)と騒防法(移転補償などの防止法)は、空港周辺を無人化する法律である。
 空港建設は、用地内農民だけでなく、空港周辺農民・住民の生活を一変させる。まず、用地内の農民からは住宅地と農地を取り上げ、わずかな移転補償と代替地(移転前の約半分)で一からのやり直しを強制する。ほとんどの農家は営農を継続できず転職しているのが実情だ。
 特別防止地区では宅地の移転補償はでるが、農地・山林の買い上げはない。移転補償も十全ではなく、ほとんどの移転農家は自分の山林や農地を売って代替地に家を新築している。その結果、通勤農業になる。山林は二束三文になり荒れ放題。杉の国内産価格の急激な下落もあいまって、間伐する手間賃もでず、そのまま放置するので幹も太くならない。その結果、台風などで杉林が倒れるなど里山の崩壊が問題になっている。
 空港がこなければ通常の土地と同じ価格で取り引きが可能であった。空港がきたことで騒音地域となり、住宅は建設禁止で買い手はいない、工業用地として売ろうとしても買いたたかれるということになる。
 防止地区は、防音家屋への改築補償とエアコンなどの電気代の補助、NHK受信料免除などはある。しかし、移転費用もでず、山林・農地の買い上げもない。その結果、土地価格の下落と騒音だけが残る。
 空港は、周辺十数キロの範囲で騒音をまき散らす。そこは本来バッファーゾーンとして整備すべき土地だ。ということは、そもそも日本のように人口密度の高い国で、内陸に巨大空港を持ってくること自体が間違いなのである。諸外国では空港管理政策としてバッファーゾーンを整備している。しかし、日本では騒音防止地区にして、わずかばかりの騒音対策費でごまかしている。
 里山が荒れるのは当たり前だ。対策などありえない。里山を公団が通常価格で全面的に買い上げて管理せよとの声もあるが、それは現状の空港経営では採算が合わない。現状でも成田空港の空港利用料は国際基準の3倍であり、それをさらに倍にするような話でありとうてい不可能だ。
 結局、空港周辺の里山は荒れるしかない。一切の原因と責任は空港にある。

(7月19日) 全日空が中国人4人に補償、宿泊トラブル(7/20朝日)

 全日空北京支店は19日、成田空港で宿泊サービスを受けられなかったと抗議していた中国湖北省の乗客4人に対し、謝罪と補償をしたと発表した。補償額はホテル1泊とタクシー代相当分だという。
 このトラブルは今年1月1日に起きた。米国から成田経由で北京に戻る中国人客らが成田発北京行きの便に乗ったが、天候悪化で成田に引き返し、宿泊せざるをえなくなった。中国人客は全日空に宿泊サービスの提供を求めたが、ルールで宿泊代は乗客の負担となっているとして全日空側が拒否。帰国後乗客らが消費者協会などに訴えていた。
 全日空側は「当日の説明が足りなかった点をおわびした。宿泊代を負担すると認めたわけではないが、もめごとが続くことは望んでいない」と説明している。

 【本紙の解説】
 今年の2月25日には、日本航空が中国人乗客に中国人乗客に対する謝罪文書を出した。それは1月27日の北京発成田行き日本航空機が大雪のため関西国際空港に着陸し、中国人客約90人が空港に足止めされ、「中国人だけ空港に16時間も足止めされ、ろくな食事も水も与えられなかった」ことに対してである。他の国籍の乗客にはホテルを用意したにもかかわらず、中国人90人だけを別扱いにしたことであった。謝罪文書は出したが、なぜ日航はこのような露骨な民族差別を行ったのか、事実関係はいまだ明らかにされていない。謝罪とホテル代の補償だけですませたようだ。
 こんどは全日空が同じ過ちを犯した。全日空も形だけの謝罪と「宿泊代とタクシー代」だけですませようとしている。謝罪しながらも、単なる「説明不足」と開き直っている。それにしても、今年1月の問題を半年以上たってから「謝罪」とは遅きに失する。

(7月23日) 成田と関空の経営統合/国交省「考えていない」(7/24千葉日報、東京千葉版)

 成田空港地域共生委員会(山本雄二郎代表委員)は23日の会合で、今期から取り組む地域づくりに関する調査・研究について協議。その中で、成田空港の経済効果に関する定量的な実態調査や地域に開かれた空港の在り方などを具体例として、もう一度作業部会で詰めることになった。
 また、飛行コースの農業用ビニールハウスが汚染される問題で、同委員会も2年間かけた調査がスタートしたことも報告された。
 一方、小泉内閣が標榜する特殊法人の見直しで、事業資金に苦しむ関西国際空港と成田空港の経営統合が取りざたされている問題に対する委員からの質問に対し、国土交通省は「成田だけが例外というわけではないが、(同省としては)考えていない」と答えた。
 【本紙の解説】
 共生委員会の本質は、かつての運輸省・公団の周辺住民対策の別働隊であることはあらかじめ明らかだった。しかし、住民対策のためにも、「住民の側」を装って空港と航空機からの被害調査を中心テーマにしていくことが委員会の表向きの立場であった。
 ところが今年初め、国土交通省・空港公団自身が、これまでの「監査」される立場から逃れて共生委員会の正式メンバーとなったことで、委員会の性格も一変した。「空港の存在が地元へどんな利益をもたらしているか」「もたらすためにいかなる空港にすればよいか良いか」を中心テーマに活動を開始している。共生委員会自身が空港の地域広報班となっつたわけで、もはやあらゆる意味で「第三者機関」とはいえない。
 関空は完全破産である。大阪府が経済負担に耐えられず、成田空港との経営統合を国土交通省に申請したが、断られたようである。

(7月24日) 羽田空港、第4滑走路予算要求(7/24朝日夕刊1面トップ、7/25千葉日報)

 国土交通省は、羽田空港に4本目の滑走路を新設するための調査費を、02年度予算の概算要求に盛り込む方針を決めた。羽田の再拡張を明示した予算化は初めて。これにあわせ、同省は近く「羽田再拡張」への着手を正式に表明する。首都圏の航空需要の増加に対処する方式として、「首都圏第3空港」案は後回しになる。
 同省は、羽田の南東沖に今のB滑走路と平行した2500メートルの滑走路を埋め立てで建設する案を軸に、東京都や海運関係者などと調整に入っている。来年度概算要求では、「羽田再拡張」をはっきりと打ち出した十数億円の予算措置を盛り込む方針だ。今後、同省の首都圏第3空港調査検討会などの場を通じて、再拡張を最優先する姿勢を明確にする。
 新滑走路の完成は10〜15年を想定、年間27万5000回(02年時点)の発着処理能力が40万回強に増やせると試算している。

 【本紙の解説】
 第3空港は先送りで、羽田再拡張が本決まりとなった。しかし完成時期が10〜15年というのは、当初の羽田再拡張論議の倍の期間となっている。当初の論議は、「第3空港なら15年かかる。羽田再拡張なら7〜8年でできる。現在の首都圏(成田、羽田)空港の混雑状況から一日も早い完成が必要。ゆえにアクセスも整備済みの羽田拡張案が本命」だったはずだ。また「建設費」も当初論議の倍に膨れ上がっている。定期航空協案や東京都案では、羽田拡張案なら新空港を造る場合の半分、7千億〜8千億円で可能と言われていた。それが羽田案(国土交通省案=「井桁」案)本決まりの過程で、建設費が1億5000万円(!)に跳ね上がった。この期に及んでゼネコン利権構造むき出しの計画だ。ちなみに、この事実を指摘したマスコミは皆無である。
 公共事業の多くが破綻するなか、最大の公共事業配分官庁である国土交通省にとって、羽田再拡張は首都圏最後の大型プロジェクトといわれる。国土交通省は予算と工期を倍にして権益を貪り続けるつもりなのだ。
 しかしこれまでの航空業界の論議では、「2007年頃には羽田の発着枠も満杯になる」とのことだった。それで第3空港を造る余裕はなく、羽田再拡張で行こうとの方針になった。ただし10年〜15年かかるとなれば話は別だ。国交省の航空関係者は、アメリカとの航空市場競争をあきらめたのか。仁川空港(韓国)などとの空港間競争も敗北必至と諦観しているのか。事実は逆だが、客観的にはそうとしか見えない「余裕」の計画である。

(7月25日) 住宅の3分の2が遮音効果不足/成田騒音問題(7/26千葉日報、読売千葉版)

 成田空港を発着する航空機の騒音を抑えるため、開港当時から行われた住宅の防音工事が、現在でも効果を維持しているのかを確かめるため、成田市西和泉で25日、屋内騒音測定調査が行われ、かつて工事を受けた住宅の約3分の2が老朽化のため、設計上の遮音効果を発揮していないことが明らかになった。
 同地域は、成田空港の北側に約6キロ離れた発着コース下にあり、開港翌年の1979年から83年にかけて、航空機騒音防止法に基づき、空港公団が24戸の住宅を対象に、防音サッシを取り付けたり、壁や天井に遮音材を挟む防音工事を行った。 
 しかし工事から22―18年を経過。住民から「工事を受けた家でも騒音がうるさくなってきた」との声が出てきたため、住民で組織する中郷地区騒音対策協議会と同市が、公団の協力を得て、今月19、20、25日の3日間、母屋と離れの計36棟で騒音を測定した。 
 調査は、室内と庭に騒音測定器を置き、着陸してくる旅客機の騒音を同時に測る方法を採った。その結果、防音工事を施した29棟のうち19棟では、庭先の騒音が81―72デシベルなのに対し、室内では60―55デシベルで、工事後に期待された25デシベル以上の遮音効果は達成できなかった。工事後約20年が経過し、サッシが老朽化してすき間が生じたことが原因とみられる。 
 同地域は移転対象となる航空機騒音障害防止特別地区にあるが、個々の事情で直ちに移転できない世帯もある。また、サッシ交換などの防音工事も、家屋の建て替え時でなければ公団から補助が受けられず、住民は「何とか屋内の騒音を下げる方法がないか検討したい」と話していた。 

 【本紙の解説】
 共生委員会が空港の「メリット」を必死に探しているが、空港はやはり人間生活とは「共生」できない。「20年たちサッシが老朽化」というが、家そのものが老朽化しているのだ。サッシを変えたところで騒音は大して変わらない。
 問題は、騒特法の「特別防止地区」では家屋の立て替えが禁止されていることだ。したがって、老朽化した家は、最終的には移転を強要される仕組みになっている。サッシなどの「防音工事」では根本的に解決できない問題なのだ。
 空港と地域の「共生」はできない。今回の調査でこのことが明白になった。

(7月25日) 日米航空交渉/暫定滑走路供用分の配分協議(7/27日経)

 日米航空当局は25、26の両日、東京で課長級会合を開き、02年5月の成田空港暫定平行滑走路の供用開始で増える発着枠の配分などをめぐって協議した。現在の成田空港の発着枠は米航空会社のシェアが他国よりもかなり高くなっているため、日本側は平行滑走路では米航空会社への配分を少なくして全体の米国のシェアを引き下げたいと提案した。これに対し米国は、両国の空港に参入する航空会社の数や運航便数の制限を完全に撤廃するよう求め、協議は平行線をたどった。平行滑走路の各国の発着配分は11月に決まる予定。日米両国は今後も協議を継続して発着枠などについて調整することで合意したが、話し合いは難航が予想される。米国が日本の航空会社に対する制裁に踏み切るなど両国間の政治問題に発展する恐れもある。

 【本紙の解説】
 昨年11月に再開され、2月のワシントンでの2回目に続き、3回目の日米航空交渉である。アメリカの「オープンスカイ政策」による成田発着枠増加要求と、日本側の「アメリカ発着枠削減要求」と、180度の対立で双方譲歩していない。むしろ対立はより強まっている。
 対立が強まっている理由は、98年の日米航空交渉にある。98年合意事項に「一層の自由化を目指して2001年から再開する協議が暫定協定期限の切れる2002年までに合意しなかった場合の保障措置(セーフティーネット)として後発会社に2002年から2005年までに計週35便の増便を認める」という確認がある。
 今次日米航空交渉が決裂すると、日本はアメリカに週35便の発着枠を認めなければならない。アメリカの要求であり、当然、A滑走路枠になる。
 アメリカは暫定滑走路枠でも、現行シェアと同じ30パーセントの枠を要求している。しかし暫定滑走路は中型機以下の運行しかできず、アメリカ本土便はもとよりハワイ便でも離陸不可能である。ジャンボ機はまったく無理だ。
 そのアメリカが暫定滑走路枠を要求する理由は、日本の国内線にまで乗り込む戦略があるからだ。これをカボタージュ(外国航空会社による国内線運航)という。ユナイテッド航空などの巨大航空会社の参入で、日本の航空会社を経営危機に追い込み、倒産させるか吸収・合併か、子会社化するかが狙いである。
 その背景として、アジアの航空市場全体の将来性がある。現在でも毎年7パーセントの伸び率を示しており、2020年にはアジア離発着の利用客が世界中の航空需要の半分近くを占めるという予測データもある(国際民間航空機関=ICAO)。アジア、とりわけ中国の航空需要をアメリカは独占しようと狙っている。そのために日本の航空会社の体力を徹底的に削ぎ落とす。これがアメリカのオープンスカイ政策である。
 日本政府と航空会社では太刀打ちできそうにもない。その兆候が日米航空交渉で現われている。アメリカの要求のあまりの激しさから、日本側としては交渉をまとめようがないのだ。
 ただし日本側には交渉の前提段階で問題がある。暫定滑走路はどうみても暫定にとどまる公算だが、その情報を明らかにしていないのである。2180メートルではアメリカ航空会社は使いようがないのに、いまだ「2500メートルを追求している」と説明している。それに乗じてアメリカは暫定滑走路の運行シェアの30パーセントを要求している。
 公団は、暫定滑走路が暫定滑走路にとどまることを前提に、ベトナム、オーストリア、フィンランド、ニュージーランド、オーストラリアなどに対し、「離陸はA滑走路、着陸は暫定滑走路」とか、「離陸を暫定滑走路にして、途中で給油のためのテクニカルランディングをする」とかの交渉を詳細にやっている。
 しかしアメリカ、中国、韓国などのシェアの大きなところとは、暫定滑走路が暫定滑走路にとどまることを前提にせず、2500メートルになることを前提に交渉を進めている。
 この問題は国際政治上の約束不履行で、この秋にも大問題化することは必至である。日本は、二期工事の「2000年度完成」の約束が不履行となり問題化したが、今度で二度目だ。対米国際問題ゆえ、航空交渉的には大譲歩する以外に解決しない問題である。
 そのツケを成田の農民殺し(暴力的威嚇と手段を選ばぬ切り崩し)に転嫁しようとしている政府・国土交通省を絶対に許すわけにはいかない。暴力的農地強奪に失敗したあげく、政治的面子にこだわって「成田からの撤退」を回避し、治安政策的観点(反対派に勝たせるわけにはいかない)から第3空港計画を20年以上も遅らせ、成田に固執し続けたことが一切の原因である。

(7月26日) 羽田空港北側進入、異例の特別方式(7/26読売)

 満杯状態の羽田空港を有効活用するため、これまで使ってこなかった空港北側の東京・渋谷上空から着陸するルートを検討していた国土交通省は、進入空域と運航方式の具体案を固め、30日から調査飛行を開始する。対象となるのは、騒音の少ない50―60人乗り以下の小型機。同ルートの設定は、付近を飛行する民間ヘリなどとの衝突の危険がネックとなり、暗礁に乗り上げていたが、進入時にヘリコプターを進入空域から離脱させるなど、前例のない特別ルールにより安全を確保することにした。
 北側からの進入ルートは「横浜・ベイブリッジ上空を北上し、東京・渋谷上空を右旋回して羽田空港のA滑走路に着陸するもの。このルートは、騒音問題などを理由に使っていなかったが、空港の処理能力をアップするため、旧運輸省は昨年6月、小型機に限って1日最大15回、運航させる方針を打ち出した。
 ところが、羽田空港西側の市街地上空は、遊覧ヘリや消防庁、警視庁などのヘリ、報道用ヘリなど、多い時で1日50機前後のヘリが飛行する過密空域。昨年10月、同省の検査機が調査飛行したところ23回の進入飛行中、民間ヘリなどとの衝突の危険を示す衝突防止装置(TCAS)が計27回も作動するなど予想以上の混雑ぶりで、同省は今春の運航開始予定を断念していた。
 衝突の危険をなくすため、国土交通省はヘリコプター業界や関係省庁、エアーニッポンやフェアリンクなど小型機を使う航空会社などと検討会を立ち上げ、棲み分け方式について協議を重ねてきた。
 この結果、▽羽田空港管制圏の西側の空域を二つに分割し、ベイブリッジから三軒茶屋駅までは高度900―600メートルの間を、三軒茶屋駅から渋谷駅上空を右旋回して降下ずる部分は高度900メートル―210メートルの間を進入空域として設定する▽進入空域に出入りする民間ヘリなどは羽田空港の管制官に通報し、進入機がある場合は管制官が進入空域から離脱させる▽離脱が完了するまで進入機はベイブリッジ上空の待機場所で旋回しながら待機するなどの運航方式を試みることで合意した。
 この運航方式では、進入機は渋谷上空600メートル前後、五反田上空450メートル前後を飛行することになるという。
 同省では、調査飛行の結果を踏まえ、秋に開催する検討会で、進入空域と運航方式について関係団体と正式決定したい考えだ。
 現在、南風の時に羽田空港に着陸する場合、東京湾を左旋回してC滑走路に着陸するルートしかない。北側進入ルートが実現すれば、2本の滑走路に同時に着陸できるようになる。小型機の着陸枠が確保できるため、これまで参入が困難だった地方空港からの小型機乗り入れが可能になる。

 【本紙の解説】
 小型機といっているが、国土交通省と東京都の基本計画は、ジャンボ機を含めた北側進入路の全面解禁にある。羽田空港は南風の時の北側からの進入、北風の時の北側への発進を解禁し、現在すすめている同時着陸と、24時間空港化を前提にして設計されている。そうすると現行の3本の滑走路でも年間60万回の発着が可能な空港なのである。そのネックは東京都と神奈川県の騒音問題にある。小型機の解禁はジャンボ機をふくむ全面解禁の出発点である。
 ジャンボ機になった場合の騒音はひどい。25日の成田の調査で問題になった西和泉地区は成田空港北端から約6キロ地点である。羽田空港にあてはめると、五反田駅手前ぐらいになる。そこまでが、成田なら新築禁止・移転対象地域の「特別防止地区」になる。東京では財政的にも、羽田から五反田までを移転対象にするなど不可能である。防音工事も戸数が膨大で不可能だ。しかし石原都知事は、「香港の例」などを持ち出して、品川区の住民を騒音地獄にたたき込むつもりなのである。
 羽田国際化の便利さと、日米航空交渉などの「外圧」で一挙に北側進入、発進の全面解禁をやろうとしている。
 ヘリコプターとの「棲み分け」も日本では例がなく危険きわまりない。航空機事故は一度で数百人の死傷者がでる。それが人口密集地で起こるとなると、想像するだけで恐ろしい。

(7月26日) 成田でも同時平行着陸(7/26千葉日報)

 首都圏と国内外を結ぶ旅客機の交通量増大に対処するため、国土交通省は羽田で実施している旅客機の同時平行着陸を成田空港にも導入、首都圏の飛行をスムーズにする運航効率化計画を進めている。同時平行着陸は今年3月、全国で初めて羽田でスタート。着陸順番待ちでの遠回りや旋回が少なくなり、到着の遅れ解消に役だっている。
 多数の観客来日が予想されるサッカーの2002年ワールドカップ(W杯)直前の来年5月、成田の平行滑走路(2180メートル)のオープンに合わせて実施する方針。

 【本紙の解説】
 成田空港で「同時平行着陸」をうんぬんしても意味がない。暫定滑走路自体が使い勝手が悪く、年間6万回の予定が2万回前後に落ちつく予定で、事実上1本の滑走路という成田空港の特性自身が変わらない。また、そもそも着陸順番待ちはA滑走路1本で起きている問題だ。
 そして根本的には、成田空港では滑走路が仮に2本になっても、進入路と発進路がそれぞれ独立して設定できないという問題があり(成田トンネル問題)、オープンパラレル運行はできない。進入路と発進路を2組完全に独立させるには米軍空域を含む空域の全面再編が必要となるが、この核心問題に国土交通省は触れていない。「同時着陸」うんぬんの説明には明らかにウソがある。

(7月26日) 全日空、国際航空貨物グループ強化

 全日本空輸は国際航空貨物事業の強化を狙い、グループで貨物専用機2機を導入する。まず来年4月にグループの日本貨物航空(NCA)が、来夏をメドに全日空が導入する。全日空本体が貨物専用機を所有するのは初めて。航空貨物需要は米景気の減速に伴い低迷しているが、中国の世界貿易機関(WTO)への加盟などでアジア地区の需要は拡大が見込めると判断、供給体制を整える。

 NCAが導入するのは約110トンの積載能力を持つB747型の大型貨物機で、中古機を改造利用する。投資額は70億円強となる見込み。一方、全日空では積載能力が約55トンのB767型機を導入する。現在、購入かリース方式にするかを詰めている。購入の場合の投資は100億円前後で、これによりグループの専用機は12機となる。
 来春、成田空港の新滑走路が開業することで、国際航空貨物のビジネスチャンスが拡大するとみて、輸送能力の増強を急ぐことにした。
 航空貨物は米国の景気減速のあおりを受け、昨年秋から情報技術(IT)関連製品を中心に需要が低迷している。ただ、アジア地区では「実際に受注した以上の需要がある」(全日空)とみているほか、今後は中国のWTO加盟などもあり、アジア地区での需要開拓は可能と判断した。
 【本紙の解説】
 全日空は日航との対抗から暫定滑走路の完成をあてにして貨物機を導入するようだが、NCA購入のB747機はジャンボ機で暫定滑走路の使用は無理だ。また767機は、旅客機でも暫定滑走路の距離ではぎりぎりであり、旅客機より重量の重い貨物機では離陸滑走距離が最低2割程度長くなる。天候その他の条件では暫定滑走路での離着陸は不可能化する。全日空は購入かレンタルかを決めていないらしいが、暫定滑走路が暫定にとどまるのか、2500メートル以上になるのかが「不明」であること(自明だが)も決定できない要因の一つらしい。

(7月27日) 関空二期工事/事業費1400億円削減へ(7/28日経)

 多額の有利子負債を抱え経営難が続く関西国際空港会社の経営再建問題で、国土交通省と大阪府など地元の出資自治体は27日までに、二期工事の事業費を1400億円削減、無利子資金の出資額は従来通りとして同社の金利負担を軽減する再建案をまとめ、最終調整に入った。
 同省は新たな無利子資金投入による関空会社の負担減を検討してきたが、財政難の地元自治体が追加負担に耐えられないとの判断に傾いたもようだ。今回の事業費削減で、空港島造成(下物)事業費の無利子資金比率は現行の55パーセントから62・7パーセントまで上がる。
 関西空港の二期工事は現在の一期空港島の西側を埋め立て「2本目の滑走路(4000メートル)を造る計画。空港島造成(下物)には1兆1400億円(うち無利子資6270億円)、ターミナルビルなど空港地上施設(上物)に4200億円(同1260億円)の計1兆5600億円の総事業費を見込んでいた。
 しかし、関空会社は一期空港島事業だけで一兆円を超える有利子負債を抱えている上、航空需要の伸びが当初想定に達せず、経営不安が表面化。事業スキームの再構築と経営形態のあり方を検討することになっていた。
 【本紙の解説】
 関空の倒産は事実上確定した。「事業スキームの再構築と経営形態のあり方の検討」とは、第三セクターの会社特有の用語で、民間会社では倒産のことである。いままでの経営システムでは事業として成り立たないことを事実上全面的に認めたのである。
 倒産回避の唯一の方法は、無利子の地元負担金の増大しかなかった。これができない場合は、財務省管理の倒産会社になる運命であった。昨年の宮沢蔵相の「関空の抜本的改革」要求はこのことをいっていたのである。
 最近では、米ノースウエスト航空は、関空―シアトル、関空―高雄などの3路線を九月末で運休すると発表。日本エアシステムもコスト削減のために関空のカウンターと事務所の半分を解約した。
 関空の経営にもっとも責任のある大阪府は成田空港との統合を申し出ていたが、これは経営責任の投げ出しである。また2008年の大阪オリンピック誘致に失敗したので、関空二期工事の2007年までの完成の大義名分も失った。文字通り、迷走し沈没する関空島となった。

(7月28日) 反対同盟海水浴

 反対同盟は夏恒例の団結海水浴大会を九十九里海岸で開催した。首都圏の支援団体などが参加、秋以降の決戦にむけて交流を深め、多彩な催しで英気を養った。会場で今秋決戦の檄を飛ばした反対同盟・萩原進事務局次長は「10月の全国集会は暫定滑走路のテスト飛行との決戦であり決定的に重要だ。決戦にふさわしい取り組みを」と訴えた。(本紙記事参照)

(7月31日)国土交通省、羽田拡張で国際化検討に着手(8/1各紙)

 国土交通省は31日、第3空港を建設するよりも、羽田空港の国際化も視野に入れ、同空港の再拡張を最優先で進める考えを示した。東京都千代田区の東京国際フォーラムで開かれた「第6回首都圏第3空港調査検討会」で、宿沢正史同省航空局官房審議官が明らかにした。
 羽田は現在、台湾の航空会社の路線を除いて国内専用空港となっている。同省の構想では、総事業費1兆3000億〜1兆8000億円で2500メートルの滑走路を新設し、年間発着回数を27万5000回(2002年時点)から40万回強に増やす。増強で国内線の需要増をまかなうと共に、15年時点で国際線に年間3万回程度開放できるとしている。国交省が、羽田への国際定期便の乗り入れに言及したのは初めて。
 検討会は国土交通省案を了承した。これにより東京湾などの8候補地が名乗りを上げている第3空港の建設は先送りされることになった。
  国交省は「国内線は羽田、国際線は成田」という日本の航空政策の基本的枠組みは維持しながら、羽田を再拡張後、余裕ができる発着枠の一部を国際定期便に振り向けたい方針だ。これにより今年2月にスタートした深夜・早朝時間帯の国際チャーター便と合わせ、羽田の国際空港「復帰」を軸に議論が進むことになる。 

 【本紙の解説】
 首都圏第3空港を先送りして、羽田再拡張と国際化を最終決定したといえる発言である。首都圏第3空港調査検討会のメンバーもこれを了承し、反対する者はいない。千葉県も検討会に参加している。同県はこの会合で「成田の2500メートルの滑走路完成が悲願・先決であり、現時点でここまで方向付けするのはどうか」と発言しただけにとどまった。再拡張にも国際化にも反対はせず、国際化を進める性急さに「異議」をはさんだだけだ。
 これで日本の航空行政は羽田国際化を中心に進むことになる。深夜・早朝便の拡大はすでに決定している。税関や入国管理、検疫などCIQ体制の増強度合いと羽田の国際線ロビーの容量に見合った増便が可能になる。
 今回の決定で重要なのは、羽田再拡張の余裕枠で国際線受け入れ検討するという国土交通省の発言であり、それを千葉県をふくむ検討会メンバーに了承させたことだ。7月26日に発表された「羽田空港北側進入」(7月26日付日誌参照)が小型機だけでなく、ジャンボ機をふくめた北側進入路の全面解禁になった場合には、羽田を拡張しなくても現行の運用時間内で年間40万回の発着が可能だ。深夜・早朝も含めれば60万回も可能である。
 そうすると、その国内線枠をはみでる余裕分を国際線にまわすことが早晩論議にのぼることになる。この背景には日米航空交渉の圧力、日韓ワールドカップの観客移動問題の政治問題化などがあるが、いずれにせよ羽田空港国際化は一挙に進む。
 しかし、羽田再拡張が総事業費1兆3000億〜1兆8000億円、工期予定が10年〜15年、想定完成年度が2015年とはずいぶん「話が違う」。第3空港より、羽田再拡張のほうが安上がりで早いとされた当初論議からかけ離れている。定期航空会社協議会提案の羽田再拡張案は、「建設コスト6千億〜8千億円、工期は5、6年」、東京都提案の桟橋方式は「工期は10年以内で費用は8千億〜9千億円」となっていた。新たに第3空港を建設するより6千億〜7千億円も費用を削減できるとの試算だった。
 それが工期「14年」となり、総事業費も新空港で3本の滑走路を造るレベルに跳ね上がった。土建屋国家の手法はまだまだ生きている。

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