●(6月1日) 「収用委」機能回復を(6/2千葉日報)
県町村会(会長・遠藤一郎・富浦町長)の定期総会が1日、千葉市内の県自治会館で開かれ、委員全員が辞任したままで現在機能していない「県収用委員会」の機能回復を求める提案など24議題すべてを全会一致で採択した。「収用委員会」は土地収用法に基づき各都道府県に設置されている行政機関だが、千葉県では成田空港間題をめぐって1988年、委員全員が辞任。以来、全国で唯一設置がない状態が続いている。今回、総会で「県収用委員会の機能回復について」の提案をしたのは東葛飾郡町村会(関宿町、沼南町)。「各自治体で道路事業や街路事業などあらゆる事業を実施する上で、さまざまな問題が発生している」などとして「県の相談窓口、裁決の場として、県収用委員会の機能回復を強く要望する」と提案した。
取材に対して東葛飾郡町村会は「東葛飾郡だけでなく、県内の各市町村でも補助金をもらっていながら用地交渉が難航し事業が進まずに困っているところがある」などと説明、成田空港問題と切り離して県収用委員会の機能回復を求める考えを示した。
県収用委員会の事務局によると、県町村会が県収用委員会の機能回復を求めるのは初めて。県市長会でもこれまで同問題に触れていない。
【本紙の解説】
千葉県収用委員会の委員再任命を堂本知事が行うかどうかは、堂本知事の本質が最後的に明らかになる問題である。
県収用委問題は、88年春に秋富公団総裁(当時)が石原慎太郎運輸大臣(同)承認のもとで、2期工事用地内未買収地の土地収用法による取得方針を公表したことから始まった。土地収用法の適用は、政府・運輸省・公団の航空整備計画の破たんと農民無視からくる公団への反発を、国家権力の発動で乗り切ろうというものであり、反人民的国家暴力で三里塚農民と三里塚闘争を押しつぶそうとしたものだった。
たが現在は、成田空港建設に土地収用法は適用できない。時間切れで土地収用法に基づく事業認定が失効、公団も裁決申請を取り下げたからだ。沼田前知事が、収用委員を再任命しなかったのは、国家事業失敗のツケを地方自治体に押しつけられてはたまらないとの考えからだ。強制収用(代執行)の責任者は、当該県の知事なのである。
公共事業が県民、市民、農民、地権者の納得のもとで初めて進められるのは当然のことだ。
堂本知事は県民、市民、農民の側にたって県行政を担当するのか、公共の名の下に乱開発と利権政治の代名詞である箱もの行政を続けるのか。県収用委員会の再任命問題への対応で最後的にはっきりする。4月20日の県議会での所信表明、成田新高速鉄道の無批判的推進の態度を見る限り、後者を選ぶ可能性が大である。その場合、堂本知事と三里塚闘争は絶対に相容れない全面的敵対関係に突入することになるだろう。
●(6月1日) 石原都知事/土地収用法改正案今国会成立を期待(6/2日経)
石原都知事東京都の石原慎太郎知事は1日の記者会見で、国土交通省が今国会に提出している土地収用法改正案について「改めるよう国に求めてきたものがようやく改正−案として出された」と評価し、今国会中の成立に期待を示した。石原知事は「都市の再生を進める場合、現行の土地収用法の手続きには問題がある」と述べた。
東京日の出町の二ツ塚ごみ最終処分場の未買収地の強制収用に際し、総額約6000万円の補償金の支払いのために7億円の経費を費やした事例を紹介し、「このようなことを繰り返さないよう、今国会中にこれが成就することを期待している」と話した。
【本紙の解説】
石原都知事は小泉首相と組んで、東京都の「大改造」をやろうとしている。都市再生本部での「21世紀型都市再生プロジェクト」である。それは「競争力」ある東京であり、欧米に対抗してアジアの勢力圏化を進めるためである。その中心は空港であり、鉄道、道路である。軍事機能を優先し、経済的競争で「アメリカに勝てる都市づくり」をやろうとしている。都民の反対があってもそうした東京大改造をやるためには土地収用法の改悪が必要ということである。
この石原都知事と対決し今国会での土地収用法改正案の成立を絶対に阻止しよう。
●(6月1日) 成田新高速、検討委が試算(6/2全紙の千葉版)
成田新高速鉄道に関して千葉県交通計画課は1日、同鉄道の事業化推進に関する調査結果を発表した。「成田新高速鉄道事業化推進検討委員会」(国、県、関係自治体などで構成)が昨年度に実施した調査によると、新規に開通する印旛日本医大駅−成田空港間の輸送人員は開業予定の2010年度で1日3万7400人、2015年度には同4万1400人に達する見込み。検討委は課題とされた事業費の負担方法などを今後詰める。
京成上野から北総開発鉄道などを経由して成田空港に至る成田新高速鉄道は、運行を京成電鉄が、未開通の印旛日本医大−土屋間(約10キロ)の整備は第3セクターが担うことが妥当で、ルートは北印旛沼を横断する案が有力としている。線路新設や,既存駅の増改築などに約1290億円、空港内の鉄道施設整備に約280億円がかかると試算している。
具体的な運行計画として、現在のスカイライナーを新高速鉄道経由に移行し、ほかに一般特急を運行。スカイライナーは都心乗り換え駅の日暮里から空港第2ビルまでノンストツプで走る列車と、最小限の停車駅を設ける一般特急の2タイプの列車を設定。一般特急は新鎌ケ谷、千葉NT中央、印旛日本医大、成田NT新駅などに停車することを想定した。
第3セクターの収支採算は「現行の補助制度では極めて厳しい」と指摘、第3セクターに対し受益者が払う負担金の導入や無利子融資の実行、特急料金の値上げなどの方策を組み合わせる必要があるとしている。
【本紙の解説】
成田新高速鉄道は完成したとしても完全赤字の「政治」鉄道線である。印旛日本医大−土屋間は約10キロであり、その料金は通常の私鉄運賃で180円である。1日乗降客を4万人前後と試算しているが、これで営業収入は約26億円。それにスカイライナーのライナー料金が入ったとしても、年間の総営業収入は30億円前後にしかならない。
総収入を利子返済に回しても、1600億円の利子分にもならない。この間問題になった東京湾のアクアラインや本四架橋と同じ構造である。
さらに、需要予測自体がまやかしである。地方空港の需要予測はでたらめだと最近総務庁に指摘されたばかりなのに、この成田新高速鉄道の需要予測を行ったのは何と「運輸政策研究機構」なのだ。これはこの間の地方空港の需要予測を請け負ってきた組織である。
また、この需要予測は、暫定滑走路が当初計画の2500メートル、3300メートルになることを前提にしている。実際の乗降客はこの予測の半分以下だろう。結局、異常なまでの赤字路線となることは避けられない。そのツケを払わされるのは、設置を「歓迎」している周辺自治体とその住民なのだ。
●(6月5日) ノースウエスト機がトラブル、成田空港一時閉鎖(6/6全紙)
5日午後1時半ごろ、マニラ発成田行き米ノースウエスト航空28便(乗客・乗員410人、ボーイング747―400型機)が成田空港に緊急着陸した。同機は自力で走行できなくなって滑走路上で停止。すぐさま、待機していた消防車両が出動、化学消防車がエンジンに向けて薬剤散布を始めた。けが人はなかったものの、約1時間20分にわたり滑走路が閉鎖された。
28便が着陸態勢に入ったところ、右主翼下の車輪がでないので、機長が管制官に緊急着陸を要求。機体は着陸後、右側に大きく傾いて滑走路上に立ち往生した。通常、右主翼下にある第3エンジンは地上から約1メートル上にある。しかし、機体が大きく傾いた28便のエンジンは、滑走路面から1センチまで接近していた。
機長は正常な着陸ができると判断、着陸前に機内アナウンスをしなかったという。また異常に気付いた後、着陸時の炎上などを防ぐために燃料を海上投棄するなどの対応は取らなかった。410人の乗客にけがはなかったが、大事故につながりかねないトラブルに空港内は緊張した。
【本紙の解説】
大惨事一歩手前であった。もう1センチ右に傾いていたら第3エンジンが滑走路に接触し、燃料に点火し炎上していたのである。事実を乗客に知らせなかったこと、万一に備え残留燃料を投下しなかったことは機長の過信かおごりである。人命を預かる立場から、事故の解決方法が予想通りにならないことも想定して対策を練るべきだ。今回の場合、機体が炎上しても爆燃化させないために残留燃料は投下すべきであった。
航空運輸は「キロ/人」という考え方では一番安全であると航空会社は宣伝している。キロ/人とは「一人が死ぬのに要する距離」という計算の事故率である。しかし、移動距離ではなく移動「時間」で計算すると、飛行機はいまだ一番危険な乗り物である。
それにしても現行滑走路の着陸帯300メートル(滑走路幅は60メートル)だったことに救われた。暫定の場合は着陸帯が半分の150メートルしかない。国際基準の半分だ。今回の事故は暫定滑走路なら着陸帯から飛び出し、横転気味になって炎上していた可能性がある。暫定滑走路は距離の短さが致命的だが、滑走路幅の狭さも安全性の点で大問題であることが浮き彫りにされた。
●(6月6日) 成田市久住中、移転問題で地元協議/落下物問題で(6/6千葉日報)
来年初夏に供用される成田空港暫定平行滑走路の飛行コース直下となる成田市立久住中学校(高木繁校長、生徒数95入)の移転問題で、本格的な地元協議が始まった。
同中は1971年6月、同滑走路の飛行直下となるために騒音対策を施した1級防音校舎として建設、開校した。ところが昨年3月、地元・士室区から航空機落下物に対する安全対策として移転を含めた検討を求める請願が議会に提出され、趣旨採択された。落下物問題で校舎移転がそ上に乗ったのは初めて。
久住中は久住地区内に移転適地が見当たらず間題は難航。市では「久住中移転対策協議会」(会長・野平和美久住地区区長会長)を立ち上げ、(1)久住地区内で単独移転、(2)地区外に移転し学区を再編、(3)成田中に統合─―の三案を示し、市としては「地区内での単独移転」で進めたい旨を説明した。
同協議会では年内に結論を得たい考えだが、来年初夏の暫定平行滑走路供用には間に合わない。それまでの暫定措置は次回会合(16日予定)で討議する。
【本紙の解説】
久住中学の移転問題も、空港と住民の「共生」はあり得ないことを示している。巨大化した航空機が離着陸する空港は周辺を無人化させる。公団のいう共生とは、敷地内の農地を強奪し、騒特法の特別防止地区を無人化することだ。その外側地区には「騒音対策」としてさまざまな見返り事業や供与を与え、騒音被害への文句を言わせていないだけなのである。空港の経済効果で地元が潤うというのもペテンで、本当に利益を享受しているのは資本投下した巨大資本だけである。
空港と地域、人の共生はありえない。あるのは空港による人間と生活、農業の排除だけである。
●(6月6日) 堂本知事、収用委員会再任命を表明(6/7朝日、毎日、産経の千葉版、千葉日報)
堂本暁子知事は6日、都内で開かれた「日本記者クラブ」で講演し、「三番瀬埋め立て計画は新たに『住民会議』を立ち上げ地域の住民の話を聞く。第二東京湾岸道路は国と協議する」「羽田空港を国際化するにしても騒音問題など難しい問題があり早くとも5年はかかる。首都圏空港の長期的ビジョンが必要」「県収用委員会をこのままの状態にしておくつもりはない」など、県政全般についての見解を述べた。
計画の「白紙撤回」を表明していた東京湾の干潟・三番瀬埋め立て問題については「第二東京湾岸道路、下水道処理場建設、干潟保全の三つの問題が複雑に絡んでいる。早く解いて新しい計画をつくる」と述べた。
ただし、具体的計画は「途中で私が言うとこんがらかる」と明言を避けた。下水道処理場問題は「全県的に下水処理計画を立て、その中で市川市について考える」。埋め立て地を通過する第二東京湾岸道路は「国と協議を進める」と述べた。
空港問題では「(羽田国際化を提唱する)石原都知事と似た感性かもしれないが、日本として空の便を確保しないと経済に影響する」との認識を示し、成田空港と都心を30分台で結ぶ成田新高速鉄道の早期完成などのアクセス改善を急ぐべきとした。
【本紙の解説】
堂本知事の保守政治家としての本性がますます明らかになっている。市民団体の「三番瀬Do会議」(鈴木美和子事務局長)から、堂本知事の三番瀬の「白紙撤回」は「計画の再検討を表明しただけで、これでは公約違反だ」とする意見書がだされている。
記者クラブ講演でも、第二東京湾岸道路は「受け入れ」、市川市の下水道処理場建設案も「廃止しない」考えを明らかにした。これでは干潟保全は絶対できない。堂本のいう「解決」とは、反対派の運動を解体して事業を完成させることだ。成田問題の「解決」も空港反対派の解体であり、その結果としての完全空港化なのである。
三番瀬の問題も同じだ。埋め立て反対派が「納得」するのを待っているだけなのだ。白紙撤回とは「反対派が納得するように再検討する」ということなのである。これでは公約違反といわれても仕方がない。
県収用委員会の再任命では沼田前知事以上に強硬な姿勢である。千葉県で収用委員会が解体されたことは、地権者無視の公共事業ができなくなったので住民からは歓迎されている。地権者が納得のいかない事業はできないし、やらない。これこそ民主主義だ。地権者を説得できない自治体が「収用委員会再任命」を求めているのである。
堂本知事は国土交通省や石原都知事と同じ立場だ。県収用委員会の再任命をやって「いい顔」をしたいのであろう。しかし、そのつけは途方もなく大きなものとなって回ってくることを知るべきだ。
●(6月7日) 衆院本会議、土地収用法改正案を審議(6/8朝日)
土地収用法改正案の趣旨説明と質疑が、7日の衆院本会議で行われた。改正案は公共事業用地の買収段階での公聴会の義務化、地権者への補償金支払い手続きの簡素化などが柱。与党は来週中に衆院を通過させ、会期内成立を目指している。
【本紙の解説】
石原都知事は今月1日の記者会見で、土地収用法改正案について改正案の今国会中の成立を期待すると発言、小泉首相と国土交通省にはっぱをかけた。
小泉政権は土地収用法改正案の今国会での成立に動き出した。動機は小泉政権の「構造改革」。森政権時の4月に決定した「緊急経済政策」に基づき都市再生本部が設置(5月7日)されたからである。
都市再生本部とは、「環境、防災、国際化等の観点から都市の再生を目指す21世紀型都市再生プロジェクトの推進や土地の有効利用等都市の再生に関する施策を総合的かつ強力に推進するため」に、内閣総理大臣を本部長として官房長官、国土交通大臣を副本部長、関係大臣を本部員とする会議で、閣議決定で設置された機関である。
環境対策の「エコタウン構想」云々は、実は廃棄物処理場の大々的建設計画。「防災都市」とは軍事都市への東京大改造。「国際化」は国際空港を中心にした道路と鉄道整備。具体的には羽田再拡張・国際化、外環道、圏央道建設、都営地下鉄浅草線の東京駅乗り入れなど。京浜工業地帯の低未利用地の流動化も「都市再生」の主眼。要はバブル崩壊で頓挫した大規模都市再開発である。
小泉「構造改革」の核心部は労働者へのリストラ・首切り、福祉削減だが、公共事業の重点配置と称して首都圏の公共事業を拡充し、都市部の自民党基盤再建をはかることが大きな狙いだ。80年代のアメリカ公共事業の受け売りである。
ただし、土地取得問題の環境がまるで違う。その解決のために現行土地収用法の改悪を今国会に提出した。推進の急先鋒は石原東京都知事であり、首都圏の自民党国会議員である。
東京都が今年度に最終策定をめざす「環状メガロポリス」構想も、政府の「21世紀型都市再生」と大同小異の成算のない大規模都市再開発である。
土地収用法改悪との全面的決戦である。総力でたたかいぬこう。
●(6月9日) 反対同盟 国会への緊急闘争を訴える
この国会情勢で反対同盟は緊急闘争を訴えている。以下は、反対同盟の「お知らせ」である。
■緊急闘争のお知らせ
三里塚芝山連合空港反対同盟
今国会に提出されている土地収用法改悪案は、7日に衆議院本会議で趣旨説明と質疑が行われ国土交通委員会に付託されました。
与党・小泉内閣は会期中に成立を期すとの方針で以下の集中審議を理事会で決定しております。
12日(火)午前 参考人質疑
午後 政府質疑
13日(水)全日審議
与党は来週中に衆院を通過させなければ会期中の成立は不可能との判断から、13日にも委員会採決を強行し、14日に衆院通過の強行方針です。
この動きに対して、反対同盟は国会前座り込みの緊急行動で改悪阻止を闘います。一坪共有運動を禁止し収用権限を戦前なみに強化し、有事立法につなげる法改悪に反対して、多くのみなさんがともに立ち上がるよう切に訴えます。
2001年6月9日
土地収用法改悪阻止国会前座り込み闘争
【日時】 6月12日(火)〜14日(木)
毎日午前9時30分から
【場所】 衆議院第2議員会館前
【主催】 三里塚芝山連合空港反対同盟
【連絡先】 事務局長・北原鉱治 成田市三里塚115
【電話】 0476−35−0062
●(6月11日) 東京都、外環道前倒しなど政府に提案(6/12日経)
東京都は11日、21世紀型都市プロジェクトの選定作業を進めている政府の都市再生本部(本部長・小泉純一郎首相)に対し、先に石原慎太郎知事が打ち出した「首都圏再生緊急5カ年10兆円プロジェクト」の具体案を提案した。
提案では東京外郭環状道路(外環)など三環状道路の整備前倒し(1兆5千億円)や羽田空港の沖合再拡張(8千億円)、東京・有明地区の防災拠点整備(2千億円)、また首都圏1都3県が産業廃棄物のリサイクル施設を整備、風力発電施設など新エネルギー施設などを打ち出した。
同時に道路特定財源の首都圏への配分をガソリン売り上げに見合う25パーセントに拡大(現在13パーセント)することや、福祉サービス分野への民間参入を促進する制度改正なども提案した。
【本紙の解説】
小泉内閣の構造改革は、不良債権の最終処理と称して、バブルに踊った政治家と大資本のつけを労働者のリストラ、首切りに転嫁するものである。そして、経済再生をかたって首都圏の大規模再開発を計画し、これを「公共事業の重点配備」と称している。この点で小泉内閣と石原都知事は一体だ。内閣に設置された都市再生本部(開発推進の司令部)の施策は、東京都の首都圏再生緊急5カ年10兆円プロジェクトとぴったり重なる。
それぞれが防災都市と称する軍事都市建設、環境・ゴミ処理対策(産廃処理場建設など)、土地流動化のための湾岸部再開発、その要になる空港建設と三環状道路建設などだ。バブルの処理と称する首都圏再開発でバブル再興すら狙うような政策だ。
首都圏再開発では、堂本千葉県知事も小泉や石原と同じ立場だ。
都市再生本部が「21世紀都市再生型プロジェクト」選定のために自治体や経済界を対象に進めているヒアリングで、堂本知事は東京湾岸域で植栽や植林を進め環境再生を図る「東京湾グリーンベルト構想」を提案した。三浦半島や南房総で自然林の保全・再生を図り、二重の「緑の回廊」をつくるとしているが、実は神奈川、東京、千葉の東京湾岸工場地帯の低未利用地の対策であり、湾岸再開発の一環だ。また堂本提案は、成田平行滑走路の早期整備、都心とのアクセス充実、空港や幕張新都心を核とするIT(情報技術)特区、首都圏の幹線道路網整備なども提案した。
堂本の発想は自身も認めるように石原都知事と同じである。自然環境を残すのではなく、造られた「緑」を「自然」と考えている。三番瀬をそのまま保全することは最初から考えていない。
●(6月11日) 県収用委員会会長襲撃で中核活動家逮捕(各紙)
88年の千葉県収用委員会会長襲撃事件で、警視庁公安部は11日、水嶋秀樹容疑者(53)を強盗傷害容疑で逮捕した。同事件ではメンバー3人がすでに同容疑で逮捕されている。
【本紙の解説】
水島同志の逮捕容疑は100パーセントでっち上げである。くわしくは、『前進』2008号6面記事参照。
●(6月12日) 反対同盟、国会前で座り込み
自民党などが土地収用法改悪を今国会で強行しようとする中、反対同盟は緊急国会闘争を呼びかけ12日、13日、15日の3日間を全力で闘いぬいた。座り込み現場には動労千葉、部落解放同盟全国連合会、婦人民主クラブ全国協議会、反戦共同行動委員会などの仲間がかけつけともに闘った。また、静岡空港の是非を問う住民投票の渦中で、前静岡県議の白鳥良香さんも参加してくれた。(詳細は本紙参照)(資料・反対同盟のビラ)
●(6月12日) 木更津市、首都圏第3空港誘致に意欲(6/13朝日、東京、産経、各千葉版、千葉日報)
首都圏第3空港の候補地選定問題が12日に開かれた木更津市議会で取り上げられ、須田勝勇市長が「誘致推進の機運を高めていきたい」と誘致に意欲を示した。同市は富津沖誘致の促進協議会にも加わっており、近隣市町村にも波紋を広げそうだ。
木更津沖案は「空港都市研究会」(代表・沖種郎元芝浦工大学長)と「マリンフロート推進機構」(会長・大庭浩川崎重工業名誉会長)がそれぞれ提案する2案ある。アクアライン海ほたるパーキングエリア(PA)の南側に3500メートル級滑走路2本を建設するのが空港都市研究会案。海ほたるパーキングエリアに隣接し滑走路2本を海上に浮遊させるマリンフロート推進機構案である。いずれもアクアライン経由「海ほたる」から空港に入る。
【本紙の解説】
木更津市が富津市に対抗して名乗りをあげたのは、昨年の「そごう」撤退と、「かずさアカデミアパーク」の失敗が要因(取り戻し)である。木更津市は地価下落率も日本一で、その打開策としても空港誘致を言い出した。
「かずさアカデミアパーク」は千葉県が1983年に「千葉新産業三角構想」(成田空港、幕張メッセ、かずさパーク)として大々的に打ち上げた開発計画である。リゾート開発を「学究、研究都市」と称したが大失敗し、財政破綻処理で大問題となっている。
木更津空港案はまったく地元の利益にならない。環境破壊と大騒音、交通渋滞が起こるだけだ。空港客も地元には金を落とさない。自治体は設置後の固定資産税が目当てなのである。
●(6月12日) 県民会議総会が「圏央道建設促進」(6/13千葉日報)
県内の各種団体で組織する「首都圏中央連絡自動車道(圏央道)建設促進県民会議」の総会が12日千葉市で開かれ、県内選出国会議員や沿線首長ら約200人が出席した。加賀見代表世話人は「来年には成田新滑走路も完成予定。東京湾アクアラインとつながる圏央道は重要な幹線道路。活動はこれからが正念場」と述べ、建設促進を関係機関に働きかけると表明した。
圏央道は、総延長約300キロの首都圏を環状に結ぶ自動車専用道路。県内区間は茨城県境―外房地域―木更津の約95キロ。県内区間では今年3月、木更津―茂原間で初めて起工式が行われた。大栄―横芝間も4月から予算が付き、環境アセスや都市計画策定がスタートした。しかし、木更津―茂原間でさえ用地買収が残っており、完成年度も示されていない。
【本紙の解説】
都市再生本部が空港建設と首都圏の環状道路建設を政策の柱にすえたことで、関連自治体などが道路財源や交付税配分のぶんどり合戦を始めたことの現れである。今後の成田空港建設費はわずかなので、道路や鉄道、廃棄物処理利権などに群がっている。堂本知事はこの再開発促進の立場だ。
●(6月13日) 千葉県議会/堂本知事「千葉主権」へ抱負(6/14朝日)
堂本暁子知事にとって初の定例議会となる6月県議会が13日、開会した。一般会計補正予算案、知事の期末手当の20%削減案など16議案が提出された。堂本知事は「地方財政は厳しいが、主体性と自立性を確保し、中央主権から千葉主権へ移行したい」と抱負を述べた。会期は7月3日まで。
知事は開会のあいさつで、小泉首相が構造改革の一環として「地方への金と公共事業予算の削減が対象となる」と発言したことに触れ、「地方税財政問題が急浮上している。県も主張すべきことは国に強く申し述べる」と意気込みを語った。
また、当面する課題として成田空港問題を取り上げ、四者協議会などを通じ、2500メートル平行滑走路の完成と成田新高速鉄道の早期開業を目指すことを報告した。
【本紙の解説】
国の「財政改革」のなかで、堂本知事は開発行政の強化を打ち上げた。バブル崩壊後、都道府県単位の公共事業は抑制気味だが、例外は石原知事の東京都である。堂本知事も石原と同じ開発・建設派である。今議会でも成田空港の早期完成と成田新高速鉄道、環状道路推進を表明、幕張新都心を核とするIT(情報技術)特区整備も打ち上げた。湾岸部の再開発も「緑の回廊」と称して発表するつもりである。この開発一辺倒では「三番瀬の保全」も何もなさそうだ。
●(6月13日) 三里塚現地支援連絡会議が千葉県議会闘争
千葉県議会初日、反対同盟と現地支援連絡会議は千葉県庁前で、堂本知事による県収用委員会の再建を阻止する闘いの一環としてビラまき行動を行った。(資料・反対同盟のビラ、革共同のビラ)
●(6月14日) 成田土室地区「地権者の会」発足へ 土地買い取りなど要求(6/14読売)
成田空港周辺の騒音対策などを図るため、県が先月、特定空港周辺航空機騒音対策特別措置法(騒特法)に基づいて行った都市計画決定により、土地の評価額が下がるのは財産権の侵害だとして、成田市土室地区の「航空機騒音障害防止特別地区」内の地権者約40世帯が集まり、地権者会を発足させることになった。17日に設立総会を開き、活動方針を決めるが、空港公団などに防止特別地区内の土地の買い取りなどを求めていくことになりそうだ。
騒特法の防止特別地区(うるささ指数80以上)内の住宅は移転補償の対象となるが、一方で住宅の新築などが禁止される。土室地区は暫定滑走路北側で新たに騒音にさらされる地域。約245ヘクタールのうち約79ヘクタールが防止特別地区になった。41世帯の地権者のうち、移転補償対象は5世帯。残りは防止特別地区の外に住みながら地区内に農地や山林を所有している世帯で、移転補償の対象とはならない。
地権者会では「騒音で土地の資産価値は下がるのに、農地や山林への補償はない」として、移転補償の対象にならない世帯についても、希望があれば土地を買い取ることなどを求めていく方針。地権者の一人、藤枝一男さん(52)は「空港建設に協力してきたのに、不利を受けるのはおかしい。法的手段に訴えることも辞さない」と話す。
成田市は「地元の要望を受け、事あるごとに公団に防止特別地区内のすべての土地の買い取りを求めている」(空港対策部)としているが、空港公団は「現行の法律では、買い上げることは無理」(地域共生部)との考えだ。
【本紙の解説】
空港建設の矛盾の露呈である。騒特法の特別防止地区では住居や学校、病院などの新築はできない。移転希望者には移転補償がでるが住居だけである。防止区では建築制限はないが希望者への移転補償もない。補償は防音工事の費用と毎月のエアコン電気代、NHKの受信料免除がある。そのかわり土地価格は暴落する。特別防止地区では住宅建設が禁止されるので、宅地としての価値はゼロになる。
騒音地区に入れば移転補償か防音家屋改築費用がでると公団が宣伝していたので、周辺住民は線引きの内側に入ることを希望していた。しかし、土地の値段は一挙に下がる。この現実に住民は直面し、土地の全面買い上げを希望しているのである。
しかし、騒音下の土地を全部買い上げることなど空港公団には不可能だ。わずかな補償で騒音を末代まで押しつけ、汗水流して耕作し守ってきた土地が無価値になる。これが空港建設の現実である。空港は周辺の廃村化を強制する。この問題は本誌が20年以上前から主張してきたことである(5月11日付日誌解説を参照)。
●(6月14日) 成田空港対策協議会が総会(各紙千葉版)
成田市内の商工団体が中心の「成田空港対策協議会」(鬼沢伸夫会長)の定期総会が14日、同市内で開かれ、「成田空港の将来について」を発表した。
発表には(1)アクセス充実や平行滑走路建設で国際空港として使いやすく整備する、(2)羽田と補完しあい首都圏の空港機能充実をはかる、などが盛り込まれた。
鬼沢会長は開会あいさつで、今後とも同空港を日本の表玄関としていくため、暫定滑走路の供用開始後の3年間は、空港反対派の用地問題解決に全力を挙げ、その後5年間は騒音対策や、北側に滑走路を延長して国際線に対応できる全長2500メートル以上の滑走路にすること、地域の了承を得て段階的に発着回数を30万回まで引き上げることが必要との考えを発表した。
【本紙の解説】
空港対策協議会として「羽田国際化反対」を完全に取り下げた。空対協は昨年から「羽田空港の国際化には反対しない」「暫定完成までは羽田の深夜・早朝の国際チャーター便は認める」といって、条件付きで羽田国際化を容認していた。今回は羽田の国際化の全面容認である。
空対協の以前からの主張だが「用地交渉への介入」や「平行滑走路の3000メートル級への再延長」「北側延長」などは絶対に許せない発言だ。
●(6月15日) 土地収用法改正案、一部修正で衆院通過
公共事業用地などを国や地方が強制的に買収する手続きを定めた土地収用法改正案が、15日午前の衆院国土交通委員会で一部修正の上、共産、社民両党を除く与党3党と民主党などの賛成多数で可決され、同日午後に衆院本会議を通過した。法案は直ちに参院に送られる。67年以来の抜本改正。
改正案は「事業内容の透明性確保」と称して、実は収用手続きの迅速化がねらい。(1)事業認定手続きで「公聴会開催」や「第三者機関からの意見聴取」などを形式的に義務付けるが、(2)収用裁決手続きで土地の権利者が多数にわたる場合の土地・物件調書作成を簡素化し、(3)収用委員会審理を円滑化するため、3人以内の代表当事者制度の創設――などを柱とする。
民主党の修正案は(1)第三者機関の意見聴取義務を意見「尊重」義務とする、(2)計画段階からの情報公開や国民参加を促す枠組みの検討を付則に盛り込む、など5項目。政府・与党は付帯決議などでこれを受け入れた。
【本紙の解説】
小泉政権が都市再生本部を発足させたことで、土地収用法改悪が自民党の至上課題となった。小泉「改革」に屈服した民主党を抱き込み、一挙に衆院を通過させた。何としても今国会で成立させる姿勢だ。
小泉政権は「改革の痛み」と称して労働者の首を切ることを本旨とする。公共事業に反対する民衆の闘いを国家権力の発動でたたきつぶすことも「小泉改革」の重要な一環である。「国策」のため、戦争国家への改革のために、あらゆる「痛み」を労働者人民に強制する。これが小泉「構造改革」の正体である。
しかし、三里塚闘争をはじめとする住民運動は土地収用法などには絶対に負けない。小泉「改革」は間違いなく挫折する。(資料・反対同盟が15日に国会前でまいたビラ)
●(6月16日) 公団が東峰神社の立ち木を無断で伐採強行
公団は16日12時30分から、東峰神社を機動隊で三重に取りかこみ、立ち木19本を根元から伐採した。急を聞いて反対同盟と現地支援勢力がかけつけ、伐採阻止行動を闘いぬいた。このなかで権力は不当にも萩原進反対同盟事務局次長を逮捕した。
公団は伐採の根拠について、神社の土地の登記簿上の名義人・浅沼輝雄氏から買収を済ませた(15日に登記)としている。「土地を所有できれば立ち木も公団の所有物。法律上は問題ない」と説明している。
これは法律的に大問題である。東峰神社は東峰地区の産土神(うぶすながみ)であり、所有権は部落の「総有(そうゆう)」。これは一切の私的売買が無効となる所有形態である。総有は「共有」とは違い、各構成員は持分(もちぶん)を有せず、分割請求権もない。土地登記の方法もない。私的売買はできないのだ。共有の場合は持ち分の権利委譲ができるが、総有の場合は個人には使用権しかない。したがって、総有関係にある物件は所有する団体構成員の全員の了解があって初めて近代的売買契約が成立するのである。
東峰神社は1953年に寺田増之助氏の土地の寄贈で、東峰地区の産土神社として建てられた。その時から神社の土地は総有関係となり、一切の登記・契約は無効なのである。その後寺田氏が移転、浅沼輝雄氏に家、畑などすべてを売却した時に、そのまま神社の土地も浅沼氏の名義となった。浅沼氏は1969年に空港公団に所有権を売り渡したが、神社の土地は売買できないので分筆し、さる6月15日まで浅沼名義のままになっていた。総有関係の土地は売買できないことは公団は百も承知していた。
反対同盟とわれわれの指摘で、神社の土地が部落の総有関係にあることは公団も認めていたので、立ち木伐採について公団は「同意書を取り付ける」と部落に説明してきた。
今回の伐採は、国土交通省・空港公団が違法行為を承知で行った暴挙である。東峰部落との確認事項を踏み破る点でも絶対に許せない事態である。
また政府・公団は、91〜94年のシンポ・円卓会議での社会的な確約として「空港建設にかかわる一切の強制手段を放棄し、住民の納得の上で進める」としてきた。立ち木強制伐採は、この公的な確約も踏みにじるものだ。
中村公団総裁は会見で「事前に話をすべきとは承知しているが、反対運動を目的にこの件に強い関心を寄せているグループがある。無用な混乱を回避したかった。申し訳ない気持ち」と述べ、卑劣な弁明に終始した。自らの違法行為を認めているのだ。地元住民の反対は存在しないかのような言い草も農民を愚弄(ぐろう)している。「申し訳ない」などとは論外である。
公団は立ち木伐採阻止闘争が決戦として闘われることを恐れていた。「中核派が『立ち木伐採阻止闘争』に本格的乗り出す前に先手を打った」「東京都の選挙戦支援などに勢力を注ぎこんでいる間隙(かんげき)をついて『作業のしにくい梅雨時をあえて選び』(公団幹部)作業を終えた」(6/17産経千葉版)というのが公団の本音だ。
成田空港建設は、この立ち木強行伐採と同様にすべてが「だまし討ち」である。1966年空港建設の閣議決定、71年大木よねさん宅の強制代執行、77年岩山鉄塔撤去、90年天神峰現闘本部封鎖、2000年団結街道封鎖などである。このやり方が空港公団の本質なのだ。農民無視と暴力行使によるたたきだしである。
立ち木伐採は暫定滑走路供用のためのあがきだが、小泉反動政権の成立なしにはできなかった。土地収用法改悪案の衆院通過(15日)の翌日に伐採強行したということである。改悪土地収用法は戦前の戦時収用と同じ考え方である。その考え方を東峰神社の立ち木伐採に適用したのだ。
反対同盟と敷地内農民はこの公団の理不尽な攻撃を絶対に許さないと決意を固めている。暫定滑走路建設実力阻止へ、反対同盟は7月15日に東峰現地集会を開催する。全力で参加されることを仲間の皆さんに訴える。
《資料集(6.17)》
●6月12〜13日の国会闘争で反対同盟が配布したビラ
土地収用法の改悪を阻止しよう
政府与党、13日委員会採択―14日衆院通過の強行方針
公共事業に必要な用地を確保するために、私有地をとりあげる土地収用法の「改正」案は、7日に衆院本会議で趣旨説明が行われ、国土交通委員会に付託されました。
与党・小泉内閣は、今週中にも衆院を通過させなければ会期中の成立は不可能との判断から13日にも委員会で採択を強行し、14日に衆院通過の強行方針です。
民主主義を踏み破る強引な国会運営を許さず、改悪阻止―廃案を闘いとろう。
反対運動の封じ込め
土地収用法による収用制度は、人々の生活手段である土地を国が一方的にとりあげるたいへん強権的な制度です。住民が権利を守るには、収用委員会の公開審理の場で反対意見を述べたり、権利をたがいに守りあう一坪共有運動や立木トラストで対抗するなど限られた方法しかないのです。
改悪のねらいは、このような住民の抵抗さえも、あらかじめ封じるところにあります。
たとえば、公開審理の場で反対意見を述べることを禁止します。収用手続きを簡素化することで一坪運動の効力を奪います。住民の生活権と生存権をいっさい封じ込める、たいへんな改悪です。
つよまる中央集権化 住民無視の公共事業
近年、土地の強制収用や使用を、中央政府が都合よくできるように法が改悪されてきました。97年4月の米軍用地特措法改悪による土地の強制使用、99年7月の「地方分権一括法」による国の土地収用直接処理などです。まるで戦前型の収用制度への逆戻りです。
小泉内閣はリストラと大増税の「構造改革」でバブルのツケを庶民におしつける一方、有事法制にもつながる土地収用法の改悪で、住民運動や反戦・反基地闘争をつぶそうとしています。力を合わせ法改悪を阻止しよう。
建設省(現国土交通省)は昨年5月、建設省建設経済局長の私的研究会として「土地収用制度調査研究会」を設置し、6回の会合を経て昨年12月25日に研究会報告を発表しました。
研究会報告は、土地収用法が想定してなかった問題に現在直面しているとして、「公益性」(公共の利益のこと)についての考え方を改め、手続きを簡素化し、すみやかに用地を収用できるようにすべきとしました。
改悪の核心部分はつぎの2点です。
1.「公益性」論議を禁止する
第一に、「公益性」について論議することを禁止します。収用委審理の場で、住民は反対意見を述べてはならないというのです。
収用手続きには、公益性を判断する「事業認定」段階と補償金額を決める「収用裁決」段階の二つの段階があります。
研究会報告によれば、第一段階(事業認定手続き)で形ばかりの「情報公開」「住民参加」をもりこめば、第二段階(収用裁決手続き)において、「公益性」について議論する必要はないとするのです。
「情報公開」や「住民参加」の中身は「事前説明会の開催」「公聴会開催」「第三者機関の意見聴取」などです。
これらによって「公益性」論議が保証されるように言いますが、説明会は「説明するだけ」であり、公聴会は「聞くだけ」。認定を下すための手続きにすぎないのです。
そもそも土地収用法とは、国が強権を発動して生活手段である土地を取り上げる制度です。どのようにごまかしても、事業認定は一方的に行える仕組みになっているのです。
「公益性」があるか否かは事業認定庁が判断しますが、事業認定の大半はダムや道路工事など建設省(現国土交通省)関係の事業です。これまでも建設相が自分で申請し自分で認可してきたのです。
だから、事業認定に反対する地権者は、わずかに収用委審理の場(収用裁決段階)でその違法を訴えてきました。財産権を保護する手段を奪われた地権者は、収用委審理を抵抗の場としてきたのです。
この抵抗の場を、最終的に取り払おうとするのが、今回の改悪のねらいです。
2.一坪共有運動を禁止する
第二に、地権者が互いに権利を持ちあって収用に対抗する一坪共有運動を事実上、禁止することです。
「公共事業の一層の効率化・迅速化」のためとして、「改正案」は以下の4点を打ち出しました。
(1)土地・物件調書作成の簡素化
「土地所有者本人の立ち会いおよび署名・押印」という最も基本的な手続きに代えて、土地の所在地において起業者が作った書面を公告・縦覧させることをもって調書を作成できるようにする。
(2)収用委員会審理における主張の排除
収用委員会の審理において「事業認定が違法である」等を主張させない。
(3)代表当事者制度の創設
当事者が多数の場合には、収用委員会は審理に際して「代表当事者」を選定するべき旨勧告できる。
(4)補償金支払い方法の簡素化
強制収用に先立って必要な補償金支払いを、これまでのように本人受け取りとするのではなく書留郵便の発送でよしとする。
「先補償・後取得」(さきほしょう・あとしゅとく)というこれまでの制度の基本を崩し、補償金の支払いがなくても権利取得裁決を有効とするものです。
これらはすべて、抵抗手段としての一坪共有運動を封じ込めるための措置です。
以上の二点が今回の法改悪の核心部分です。加えて、収用適格事業を一部拡大し、収用対象を無制限にひろげる道に踏み込もうとしています。
三里塚でも沖縄でも、一坪共有運動と収用委審理における闘いは、住民の数少ない抵抗手段でした。この闘い方は無理とムダの公共事業反対運動に引き継がれています。
今回の土地収用法の改悪は、これらの闘いを封じ込めるための措置なのです。
連絡先
三里塚芝山連合空港反対同盟 事務局長・北原鉱治 成田市三里塚115 (tel.0476−35−0062)
葉山法律事務所 東京都港区南青山5−10−2 第2九曜ビル505 (tel.03−3797−3690)
●(6月13日、県議会初日、反対同盟が千葉県庁前でまいたビラ)
堂本知事に告ぐ
県収用委員会を再建してはならない
堂本知事が現在機能を停止している県収用委員会の再建にのりだしました。私たち三里塚の農民は、この知事の動きに激しい怒りを抑えることができません。
三里塚の闘いは代執行官である県知事と機動隊による力ずくの土地強奪との闘いでした。71年に友納知事によって2度の代執行が行われ戦後初めて民家の収用が強行され、流血の大惨事を招きました。
この衝撃によって収用審理は長期中断し、二期工事が事実上凍結状態に入りました。
86年に二期工事が再開されるや、ゆきづまった用地問題を解決するために、千葉県は収用委員会の審理再開に動きました。流血の惨事を繰り返そうとするこの動きに抗議が殺到し、県収用委員会の委員すべてが辞任したのです。
収用委の再任命とは、三里塚に生きる私たち農民にとっては、死刑宣告に等しいことなのです。事実、自民党国会議員は「平行滑走路を完成させるために収用委員会を復活させて土地を取り上げろ」と主張しています。
暫定滑走路工事の即刻中止を!
成田平行滑走路(2500メートル)は、敷地内地権者と住民の大反対によって建設用地が取得できず破綻しました。このため公団は現在、未買収地を避けて長さを短くした「暫定滑走路」を強行しています。
工事を進めて圧力をかければ農家は出ていくと考えたからです。民家や畑を監獄のようにフェンスで囲みました。暫定滑走路が完成すれば民家の上空40メートルでジェット機を飛ばすと脅迫しています。
この国のやり方は怒りの火に油を注ぐばかりです。絶対に負けません。そこでふたたび収用委員会の再建が浮上してきたのです。
再任命の強行は今日から始まる6月県議会で策動されています。私たちは土地強奪と徹底的に闘います。堂本知事は、収用委員会を絶対に再建してはなりません。
2001年6月13日
三里塚芝山連合空港反対同盟
(連絡先)事務局長・北原鉱治 成田市三里塚115
●(6月13日、千葉県庁前でまかれた中核派のビラ)
堂本千葉県知事による収用委員会の再任命を許すな!
知事、記者会見で再建表明
県収用委員会が存在しない現状について「どうにかしなくてはいけない。ほうっておくつもりはございません」と述べ、委員会再建の必要性を示した。(6月7日付毎日新聞千葉版)
「強制的手段放棄」の確約どうした?!
保守利権政治家としての本性あらわ
堂本千葉県知事は六日、東京・内幸町の日本プレスセンターで記者会見し、現在空席(機能停止)になっている千葉県収用委員会について「どうにかしなくてはいけない。ほうっておくつもりはない」などと再建の意志を表明した。これは沼田県政からの大転換だ。今日十三日から六月千葉県議会が開催される。六月県議会は人事決定議会であり、堂本知事がこれを意識して表明したことで再建問題はいっきに緊迫した。これは空港建設(暫定滑走路工事)に反対する三里塚反対同盟・農民に対する再度の農民殺しの宣言であり宣戦布告にほかならない。わが中核派は空港反対農民との血盟にかけて、堂本知事による収用委再任命を絶対に許さない。
成田空港の事業認定は三里塚反対同盟農民の闘いで失効した。仮に今、収用委員会を再建したとしても強制収用はできない。運輸省(現国土交通省)はシンポ・円卓会議で国家権力を前面に押し立てた過去の空港建設を「反省」し「一切の強制的手段を放棄する」と確約した。成田では、法制度的にも社会的、道義的にも、強制収用は絶対に許されないのである。
だが、堂本知事による収用委再建の裏では、これを踏み破る重大な動きが進行している。県選出自民党国会議員団の会議では「成田の地位を維持するためにも平行滑走路は暫定滑走路ではなくフル滑走路にすべきだ。そのためには収用委を復活させる必要がある」という意見が噴出しているのである(同議員団会議、五月二四日付東京新聞)。要するに、「空港反対農民がいるから平行滑走路がつくれない」「ジャンボも飛べない暫定滑走路では羽田に負ける」「土地を取り上げ平行滑走路を完成させよ」「そのために収用委員会を復活させろ」と叫んでいるのである。
農家を敵視し力ずくで追い出す暴論だ。政府権力、空港公団、千葉県は、こうした暴挙を何度となく繰り返してきた。現在、地元住民の反対の声を踏みにじって暫定滑走路の工事が強行されているが、これも工事を一方的に強行し、民家上空四〇メートルでジェット機を飛ばせば騒音と恐怖で出ていくだろうともくろんでのことである。
この現実を踏まえれば、収用委再建という千葉県の策動が、将来、事業認定の「再度の認可」を含む強権発動に道を開くものであることは火を見るより明らかである。
収用審理再開を阻止し機能停止に追い込んだ八八年の地平を守り再建を絶対阻止する。
収用委再建絶対阻止し成田暫定滑走路を粉砕しよう
それにしても「環境派」「市民派」を掲げた堂本知事の豹変ぶりはどうだ。これでは自民党や県幹部の言いなりではないか。堂本知事は農民を虫けら同然に扱う役人や「首都圏再開発」と称してゼネコン救済のハコモノ行政に突進する石原都知事とまったく同じ立場だ。「三番瀬白紙撤回」でも早くも公約違反が露見した。
県収用委員会を再建することで得点を稼ぐつもりのようだが、そのツケは途方もなく大きく回ってくることを知るべきだ。収用委再建を阻止し暫定滑走路を粉砕しよう。
2001年6月13日
革命的共産主義者同盟全国委員会
連絡先 東京都江戸川区松江1―12―7
●(6月15日、反対同盟が国会前でまいたビラ)
土地収用法改悪阻止! ファッショ的国会運営許すな
本日(15日)午前9時15分に委員会開会/30分で審議うち切り/午後本会議で採決強行を策動
公共事業に必要な用地を確保するために、国が私有地を一方的にとりあげる土地収用法の改悪案が本日衆議院で強行採決されようとしています。政府与党は今日(15日)が会期内成立のタイムリミットとの判断から、午前9時15分に国土交通委員会を開会し、わずか30分でうち切り、午後の本会議で採決強行の構えです。
7日に委員会に付託されてから審議はわずか2日間、反対意見を封じ込め、力で押し切ることのどこに民主主義があるでしょうか。ファッショ的国会運営を絶対に許してはなりません。
意見表明を封じ、一坪禁圧
土地収用法は、人々の生活手段である土地を国が一方的にとりあげるたいへん強権的な制度です。住民が権利を守るには、収用委員会の公開審理の場で反対意見を述べたり、権利をたがいに守りあう一坪共有運動や立木トラストで対抗するなど限られた方法しかありません。
今回の改悪は、このような限られた抵抗さえも、あらかじめつみ取ろうとするものです。
たとえば、公開審理の場で反対意見を述べることを禁止します。収用手続きを簡素化することで一坪運動の効力を奪います。憲法で保障された財産権、生活権と生存権にかかわる重大な法改悪を、このように拙速かつ強引な手法で強行することなど絶対に認められないことなのです。
空港、ダム、道路、産廃、基地反対もつぶす法改悪
近年、土地の強制収用や使用を、中央政府が都合よくできるように法が改悪されてきました。97年4月の米軍用地特措法改悪による土地の強制使用、99年7月の地方分権一括法による国の土地収用直接処理などです。戦前型収用制度にまい戻る危険な動きです。
小泉内閣はリストラと大増税の「構造改革」でバブルのツケを庶民におしつける一方、土地収用法を改悪して、空港やダム、道路や産廃施設に反対する住民運動、沖縄の基地撤去闘争を根絶やしにしようとしています。ファッショ的な国会運営を許さず、土地収用法改悪を阻止し廃案に追い込もう。
《資料集 終わり》
●(6月17日) 萩原進事務局次長、釈放
6月16日の東峰神社立ち木伐採阻止闘争で不当逮捕された反対同盟の萩原進事務局次長に対し、千葉県警は勾留請求を行うことができず、24時間後に釈放した。反対同盟と全国の三里塚勢力の猛然たる怒りと抗議のたまものである。
事務局員の伊藤信晴さんらが勾留場所の行徳署まで出迎えた。反対同盟全員が天神峰に集まり、反対同盟の激励に訪れてくれた動労千葉の中野委員長や群馬県実行員会の青柳晃玄さんらとも合流、歓迎会をもった。北原事務局長は「昨日の闘いは、反対同盟と三里塚闘争本来の実力闘争として闘い抜かれ、団結を新たにした」と発言。参加者全員が、今後の暫定滑走路決戦への決意を固めた。(本紙記事参照)
●(6月18日) 国土交通省・小野事務次官「抜き打ち伐採やむを得ぬ」(6/19読売、東京千葉版)
新東京国際空港公団が16日に東峰神社の立ち木を地元に事前連絡もせず伐採した問題で、小野邦久国土交通事務次官は18日の定例会見で、「伐採に伴う無用な混乱を避けるためには公団の取った措置はやむを得なかった。今後とも2500メートルの平行滑走路実現のため誠心誠意話し合いを続けたい」と語った。
【本紙の解説】
だまし討ちを行った相手に対し「誠心誠意」とは、よくいったものだ。だまし討ちをする人間の誠心誠意とはいかなるものか見てみたい。国土交通省の社会的確約である「一切の強制手段を放棄する」「あくまで地権者の合意を得て工事を進める」(シンポ・円卓会議)の言動はどこに消えたのか。
各省庁と警察庁・警視庁などの治安担当者は、小泉反動政権の登場で反対派勢力を力で叩きつぶす方針で動き出した。労働運動への刑事弾圧なども一挙に激化している。ここに小泉政権の反動性と攻撃性が端的に現れている。
国土交通省・小野事務次官の言葉はそうした攻撃性を代表している。
●(6月18日) 堂本知事、鉄道を「再生本部」の事業へ(6/19読売、朝日、産経の各千葉版)
堂本暁子知事は18日、首相官邸に福田康夫官房長官を訪ね、成田新高速鉄道の建設計画について、政府の都市再生本部のプロジェクト事業に位置づけるよう要望した。小泉純一郎首相あての手紙も託した。同本部が中心に進める緊急経済対策に盛り込まれれば、膨大な事業費がかかる東京駅―成田空港間の鉄道アクセス構想の具体化に弾みがつくと判断した。これに対し福田官房長官は「悪い話ではない」と答え、その後の記者会見で「取り上げるかどうかは、これから検討したい」と述べた。
【本紙の解説】
堂本知事は、都道府県知事の政治手腕について、政府予算のぶんどり合戦にあるとでも思っているのか。そうとしか思えない行動だ。発想も手法も自民党の利権政治家とまったく変わらない。
●(6月19日) 成田と羽田を結ぶ新鉄道建設目指す自民有志初会合(6/20読売)
成田空港と羽田空港を直接結ぶ新高速鉄道の建設実現を目指す自民党有志議員の会(会長=亀井善之衆院議員)が19日、党本部で初会合を開き発足した。事務局長の林幹雄衆院議員は「国際社会でしかるべき地位を確保していくためにも、首都圏の空港へのアクセスの改善は不可欠」と話している。初会合には、東京都、千葉、埼玉、神奈川選出の国会議員29名が出席。
成田空港と都心を30分台で結ぶ成田新高速鉄道の建設計画について、(1)来年度予算の拡充強化、(2)都営浅草線の東京都乗り入れ構想の早期事業化などを確認した。
【本紙の解説】
堂本知事は、この種の自民党利権議員らのいいなりになっているのである。
●(6月20日) 防音体験車、利用は低調(6/20朝日)
成田空港の2本目の滑走路が完成すると新たに騒音被害を受ける住民に、防音工事の効果を知ってもらおうと、新東京国際空港公団が2600万円をかけて製作した防音実体験車2台が、導入から1年余たっても11回しか使われていない。公団はどうやって利用を高めるか悩んでいる。
3トントラックの荷台に、実際の防音工事と同じ20〜25デシベルの遮音効果がある部屋を積む。しかし、例のない試みだったため検討に時間がかかり、実際に導入されたのは昨年4月だった。すでに住民の騒音実体験調査はほぼ終わっており、今年5月末までの調査に同行したのは1回。そのほかイベント展示などに10回使われただけだ。
【本紙の解説】
航空機騒音の実態とその防音効果を、騒音源である公団から聞きたくないと言うのが地元住民の心情である。そこには「うまい話」(ウソ)しかないからだ。公団はうまい話で空港を持ってきたが、そこは人間の生活を排除する騒音しかなかった。
また、防音装置のない家屋では生活できないという問題も露呈している。夏でも窓を閉め切って防音しなければ生活できない。これが空港周辺の実態である。成田周辺は、夏でもエアコンが必要な日は何日もない。窓を開ければ十分涼しい。それが航空機騒音で、窓を閉めなければ生活できなくなっているのだ。
●(6月21日) 国土交通省「公共事業改革方針」で地方空港抑制(6/21各紙)
扇千景国土交通相は21日、独自の公共事業改革方針を発表した。経済財政諮問会議が経済財政運営の基本方針を決定するのと歩調を合わせる形で取りまとめた。大規模ダムについて実施計画調査の新規着手を凍結するほか、地方空港、地方港湾の新設は離島をのぞき抑制、日本道路公団が整備予定の高速道のうち整備計画が未決定の約1200キロについて採算性を精査し、地方負担の導入など整備手法を見直すことを掲げている。
重点的に推進すべき分野としては、諮問会議の最終案に沿う形で5分野を打ち出した。具体的には、都市の再生と個性ある地域・美しい国土の形成、環境にやさしい社会の実現、バリアフリー化など少子高齢化社会への対応、グローバル化の進展に対応した人流・物流の実現、安全で災害に強い国づくり――となっている。都市再生では大都市圏環状道路、国際拠点空港の整備など都市機能強化や、市町村合併を促す効果のある道路整備などを打ち出した。
「聖域なき構造改革」路線に沿って「重要分野への重点化」を進めるとしている。しかし、社会資本整備の必要性を改めて強調する内容ともなっている。
【本紙の解説】
国土交通省が経済財政諮問会議の基本方針に沿って、公共財源を「都市再生」に振り向け、首都圏の整備に重点配分せよと主張している。
「美しい国土形成」「環境」「バリアフリー」とかいっているが、経済財政諮問会議の狙いは土地の流動化だ。低未利用地を流動化させ、土地の価格が再高騰しないかぎり「2〜3年での」不良債権処理などあり得ないからだ。不良債権化している土地が値上がりしなければ、不良債権処理は破綻し、デフレスパイラルに突入する。政府与党はその危機回避のために「都市再生」を言い出したのである。
都市再生とは土地再投機のことである。労働者人民500万人の首切りを実行し、大都市の土地を再び高騰させ、銀行と大企業を救おうというものだ。
そのために「安全で災害に強い国」と称して軍事都市建設をすすめ、環状道路、国際拠点空港などの整備を進める。新たな土地投機の手始めは東京湾臨海部の再開発であり、羽田と都心を中心にした交通網の整備にある。
●(6月21日) 環境省騒音調査、9空港で基準超す(6/22朝日、毎日)
環境省は21日、全国56の飛行場(計584測定地点)について地元自治体が99年度に調べた航空機騒音の調査結果を発表した。新東京国際空港(成田)、大阪国際空港(伊丹)など23飛行場が環境基準に達しておらず、前年度と比べても目立った改善はみられなかった。
調査対象は民間空港が35、自衛隊や在日米軍基地が21、航空機騒音の環境基準は、騒音の程度を示す「うるささ指数」(W値)が住居専用地域は70以下、住居・商業・工業地域は75以下と定められている。
成田空港はW値が59〜85で、環境基準に達していたのは周辺75地点のうち31、伊丹空港は65〜85で、達成地点は16地点のうち5だけだった。米軍の厚木基地はW値が最高91で全施設のなかで最悪だった。
環境省は今後、低騒音型機の導入や運航形態の改善を国土交通省などに働きかけるという。ほかに、環境基準を達成していない空港、基地は以下の通り。
▽新千歳(北海道)、新潟、名古屋、福岡、長崎、宮崎、那覇=以上空港
▽千歳(北海道)、松島(宮城)、百里(茨城)、入間(埼玉)、下総(千葉)、横田(東京)、厚木(神奈川)、岐阜、岩国(山口)、芦屋(福岡)、築城(同)、新田原(宮崎)、嘉手納(沖縄)、普天間(同)=以上基地
【本紙の解説】
この発表は空港周辺の航空機騒音の実態と、「騒音コンター」のデタラメさを示した。とりわけ第2種空港以上の空港と軍事基地の騒音はひどい。
成田空港でW値が環境基準に達していたのは観測地点の75のうち31だけ。半数近くが基準を超えている。また厚木基地のW値91はすごい。騒音といいうより轟音である。山手線のガード下並みの轟音であり耐え難い。空港と人間生活は絶対に「共生」できないことを改めて示した。
●(6月21日) ジャンボ機の部品、茨城に落下(6/22読売千葉版)
右翼の主脚が出ずに今月5日、成田空港に緊急着陸した米ノースウエスト航空のジャンボ機から落下したとみられる部品が21日までに、茨城県桜川村で見つかり、空港公団に届けられた。緊急着陸した原因を調査中の国土交通省は、部品を受け取り、同ジャンボ機から落下したものか確認している。
公団によると、部品は桜村の水田で20日朝に見つかり、村役場を通じて届けられた。長さ約50センチ、幅約25センチの金属製。ジャンボ機の主脚格納部の開いた扉を固定する「ストライク・ボード」と呼ばれる留め金とみられる。同航空のジャンボ機は、この部品が落下したため、主脚が扉に引っ掛かって出なかった可能性が高い。桜川村は、成田空港への航空機の進入コース下に当たる。
【本紙の解説】
空港周辺は騒音だけでなく、部品と氷塊の落下物で危険きわまりない。今回の落下物は数キログラムある金属製であり、人に当たったらひとたまりもない。氷塊は高度1万メートルのマイナス40度前後の地点から急降下してくる航空機の外側に結露してでき、これが地上に近づくにつれ溶けて落下するものである。
事故は理論上も防げない。航空会社は、競争激化で整備不良機を運航しているのが実態である。氷塊の落下は内陸空港では防ぎようがない。いままで人身事故になっていないのが不思議である。桜川村は成田空港から約20キロの地点にあり、事故防止の何の保証もない村である。空港はこれほど危険なものである。
●(6月21〜22日) 千葉県議会代表質問/堂本知事「第2湾岸道路は必要」
堂本知事にとって初の議会答弁になった六月定例会の代表質問。5会派すべてが質問した三番瀬埋め立て問題への答弁が注目されたが、肝心の見直し計画案の方向性は見えなかった。
堂本知事は「計画はいったん白紙に戻し、下水処理場や第2湾岸道などを個別に検討する。『白紙撤回』の真意は本質的な自然の残し方で、全く手を加えないことではない。サンフランシスコでは鳥の飛来地をコンクリートで固めてある。埋め立てか否かの二律背反の議論では済まない」などと答弁した。
質問者が「私が少年時代のような三番瀬の姿にするのか」と尋ねたが、知事は「昔の姿に戻すことではない」と述べ、質問者は「キツネかタヌキにつままれている気がする」と感想を述べた。
第2湾岸道路(東京都大田区−市原市、約50キロ)については、「国に整備を働きかける。三番瀬とは別に考える」と述べ、必要性を認めた。現計画案では、埋め立て地内の第2湾岸道路用地は約6ヘクタール。高架式建設が予定されている。
現計画案が白紙撤回された場合、第2湾岸道は地下式の選択もあるが、形状面や膨大な経費の問題がある。
3月の知事選当選直後の記者会見で「自然回復とは何もつくらないこと。何かを建設するために埋め立てる千葉のやり方はやめたい」と断言した知事だが、今回、埋め立て地に建設予定の下水処理場と第2湾岸道路について「個別に検討」としたのは完全な転換である。
県議側から「知事は具体論になると歯切れが悪い」「県民と対話というだけの具体論では追及するにもしきれない」との不満も漏れた。
【本紙の解説】
堂本知事の「環境派」のウソは完全に明らかになった。堂本知事は三番瀬を自然のまま保全しようとはまったく考えていない。完全な選挙公約違反である。公約は「埋め立て計画の撤回も検討」との趣旨だった。公約違反でないというなら詐欺だ。裏切り者と言われても仕方ない。
第2湾岸道路と下水処理場建設の撤回なしには三番瀬の保全はない。堂本流の「環境派」はあくまで人工的なもの。鳥の飛来地はコンクリートでOKとの主張だ。そこに「三番瀬の痕跡」を残すというのだろう。
予算獲得手法は自民党の利権政治家と同じ。開発と公共事業では都市再生本部の忠実な実行者。イデオロギーは石原都知事と同じである。
「県民との対話」と称して県民の声を無視する政治手法もむき出しになりつつある。堂本を支持した人たちへのあからさまな裏切りだ。
●(6月22日) 成田アクセスを実現する会、首相に決議提出
成田空港への交通アクセス改善を目指す「首都圏空港の高速鉄道アクセスを早期に実現する会」(会長、亀井善之代議士)は22日、成田新高速鉄道の早期実現へ財政支援や用地確保を国、関係自治体が配慮・努力することを求める決議を小泉純一郎首相に提出した。
同会は千葉県など1都3県の自民党国会議員で構成。決議書では「21世紀の国際社会で地位を確保するには首都圏空港機能の拡張が不可欠。空港アクセスを改善することは一刻の猶予も許されない」などとした。
その上で(1)B案ルートは来年度予算で財政支援制度の拡充強化を行う、(2)B案ルートの事業用地確保について、自治体をはじめとする関係者は最大限の努力を行う、(3)都営浅草線の東京駅接着など関係者が協力して財政支援制度を拡充強化し、早期事業化できるようにする――ことを決議した。
●(6月22日) 成田空港国内線需要創出検討会が会合
来年初夏の成田空港暫定平行滑走路の供用を契機に、成田空港の国内線の需要を掘り起こして新規路線開設や増便につながる方策を官民で考える「成田空港国内線需要創出検討会」(座長=武藤浩・新東京国際空港公団企画室長)の第1回会合が22日、幕張メッセ国際会議場で開催された。中心課題は全国から成田空港を経由して成田周辺地域に誘客する観光・ビジネスニーズの創出。実務レベルで進め、10月をめどに結論を出す予定。
検討会のメンバーは国土交通省、空港公団、県のほか地方自治体・経済団体、旅行会社、航空会社の担当者16人。
成田空港での国内線は現在、国際線との乗り継ぎ客が中心だが、国内線の充実のためには成田周辺や首都圏と国内各地が交流するための需要掘り起こしが欠かせない。
検討会では、(1)全国から成田周辺の観光やビジネスを目的にした誘客方策、(2)首都圏利用者による観光利用の促進、(3)成田空港国内線のPR――の三つの課題を指摘。
中でも、全国から成田周辺に来てもらうための方策が中心課題。浦安市舞浜の東京ディズニーランドや南房総、銚子なども視野にした広域・滞在型観光ルートづくり、千葉市の幕張新都心でのビジネスニーズ把握が糸口になりそうだ。
その一方で、「現状では厳しい。きめ細かいパッケージ旅行商品がないと、需要が起きない」とする航空会社と「路線が少ない中では企画できない。路線や時間帯、便数増が先」とする旅行会社とで意見が対立。需要創出の難しさが早くも露呈した格好だ。
【本紙の解説】
5月8日の成田空港国内線充実対策検討会第3回会合で、国内線の充実はこのままでは不可能という現実が露呈、その突破のために「成田空港アクセス充実検討会」と「成田空港需要創出検討会」の設置を決めた。アクセス検討会は5月22日にもたれたが、近隣のバス会社が近隣と空港を結ぶ路線は採算が取れないとして成算なく終わっている。
今回は観光需要の創出を中心に検討したが、航空会社と旅行会社が対立し、的はずれの会合となった。
暫定滑走路の供用開始までに需要をつくり、便数を増やし、敷地内農民を追い出そうとの魂胆だが、このような反動的試みはうまくは行かないものである。
●(6月24日) 反対同盟が現地デモ/7・15三里塚現地闘争呼びかけ
6月24日午前、反対同盟は東峰神社立ち木伐採の暴挙に怒りを燃やし、暫定滑走路工事を粉砕する敷地内デモに決起した。午前9時、反対同盟と現地支援連は、東峰・川島さん宅前の開拓組合道路に結集、6・15収用法衆院採決―16日立ち木伐採強行と続いた暴挙に改めて闘う決意を固めた。
冒頭北原事務局長があいさつ。「突然、公団は地権者関係人に何の連絡もせず、東峰神社の立ち木を伐採した。立ち木は部落の総有の財産であり、断じて許せない。機動隊が萩原事務局次長を逮捕したことは理不尽きわまりない。暴力で押さえ込み、何をやってもいいというのか。われわれには生きる権利がある。このような暴挙ゆえに、空港は何年たってもできないし、事業計画はご破算になるのだ」と強く弾劾、「立ち木伐採は、土地収用法改悪、有事立法、教育3法と一体で歴史を逆行させるもの」と訴えた。
その後、現地支援勢力が決意表明。中核派の同志は「法を踏み破った伐採に階級的報復を」と実力反撃を訴え「背後には小泉政権の反動攻勢があり、三里塚はその先端で実力攻防に突入し、緒戦において偉大な勝利をうち立てた」とアピールした。
デモは東峰十字路から、神社入り口でいったん中断、神社境内に入って、根本から無惨に切られた立ち木に怒りを新たにし、暫定滑走路粉砕を誓い合った。その後、団結街道までデモし、7・15現地闘争への総決起を決意した。
●(6月24日) 反対同盟が7・15闘争の「お知らせ」〔全文〕
お知らせ 三里塚芝山連合空港反対同盟
6月16日、政府権力、空港公団は突如大量の機動隊を動員し、暫定滑走路の南端に位置し障害となっていた東峰神社の立ち木を、利害関係人に一言の断りもなく伐採しました。反対同盟と東峰地区住民は激しく抗議し、体を張って闘いました。このさなかにあろうことか権力は、萩原進事務局次長の不当逮捕を強行しました。私たちはこみ上げる怒りを抑えることができません。
これは権力が自ら法を踏み破り、部落の財産である神社を破壊する暴挙です。中村公団総裁は直後の記者会見で「土地は公団が取得した」「民法上、立ち木と土地は一体化しており問題はない」とうそぶいています。しかし東峰神社の土地は、断じて個人の所有物ではなく部落共有の財産です。このことは公団も周知の事実です。しかし部落のものであることを公団が認めれば、立ち木伐採には部落全員の同意が必要となることから「土地は私有地」「立ち木は土地と一体」なるデタラメ極まる論法で切り倒したのです。
この前日の15日には、反対の声を踏みにじって、住民運動をつぶし、有事の土地徴発につながる土地収用法改悪案の衆院通過を強行しました。
闘う仲間の皆さん。6・15―16は、闘いを力で押さえ込み「国益」を貫く小泉内閣の暴政を象徴する日となりました。国会では教育三法が土地収用法と同様に拙速審議で強行され、歴史事実をねじ曲げる「作る会」教科書の採択が強要されています。有事立法の検討作業が本格的に始まりました。そして三里塚で、暫定滑走路の11月完成から平行滑走路強行に向かう攻撃との闘いの火ぶたを切ったのです。
堂本千葉県知事はこの暴政に呼応して六月県議会で収用委員の再任命を強行しようとしています。
この緊迫した情勢に対して、反対同盟は7・15三里塚現地闘争を決定し夏から秋の闘いに総決起するものです。東峰神社立ち木伐採徹底弾劾! 収用委再任命を許すな! 11月暫定滑走路建設阻止へ。7・15現地闘争への結集を呼びかけます。
2001年6月24日
記
東峰神社立ち木伐採徹底弾劾!
収用委員の再任命許すな!
暫定滑走路建設実力阻止! 7・15三里塚現地闘争
【日時】7月15日(日)午後1時
【集合場所】駒之頭開拓組合道路(東峰・川島宅前)
(連絡先)事務局長・北原鉱治 成田市三里塚115
TEL0476(35)0062
●(6月25日) 全学連、三里塚現地行動に決起
全学連20人が三里塚現地行動をおこなった。東峰神社、天神峰団結街道、菱田、横堀、木の根、岩山記念館などを現地調査し、萩原進さん、市東孝雄さん、北原鉱治事務局長とそれぞれ交流会をもった。(詳しくは本紙)
●(6月25日) 成田空港アクセス検討会「鉄道大増発は困難」(6/25東京千葉版、千葉日報)
国や県、鉄道・バス会社や新東京国際空港公団が都心と成田空港を結ぶ交通網の充実策を検討する「成田空港アクセス充実検討会」の第2回会合が25日、千葉市で開かれ、運行上の問題点などを協議した。
会合では、鉄道会社から「成田空港内の線路は単線のため容量に限界がある。大幅な増発は難しい。(空港到着客が集中する)午前7時から8時までの間でも、現状では1本増やせる程度」との意見が出された。またバス会社からは「神奈川、千葉、埼玉方面への路線新設を検討しているが、浦安付近の高速道路や空港周辺などの渋滞対策や、空港内での待機スペースの確保が必要」との意見が出された。
検討会は、今回出された課題を整理し、11月中に具体策をまとめる方針。
【本紙の解説】
成田空港国内線充実対策検討会(以下「検討会」)のかけ声でワーキンググループが成田空港へのアクセスを検討しているが、ままならないのが現実である。成田空港への鉄道は土屋・成田空港間は単線であり、そこにJRと京成電車が乗り入れている。増便は1時間に1本が限界とのことである。
バス会社のいう増便は、検討会の考えとは別の増便である。検討会は「東京都江戸川区、葛飾区、千葉、茨城全域など東関東地域からの国内線旅客を対象に機能強化」を計画していた。しかし、バス会社は神奈川、埼玉からの乗り入れを「増便」しようとしている。そのために空港内の待機場(バース)の整備や、渋滞解消対策を要求している。神奈川や埼玉から空港利用者は国際線であり、バス会社は「国内線充実」に名を借りて、運行インフラの整備を要求しているのである。成田空港内はバス待機場がなく、バス会社が自前で空港周辺に待機場を確保しないと増便や新規参入ができなかった。バス会社の思惑にアクセス充実検討会は参っている。
結局、成田空港の国内線需要はない。「充実対策」は無理である。
●(6月27日) 千葉県「成田と幕張を特別経済区へ」/都市再生本部へ提案(6/27千葉日報)
千葉県企画部は26日までに、政府の取り組む「都市再生」の一環として、本県の「成田=幕張」の両地域のIT(情報通信技術)化をモデル的に推進する「IT特別経済区」として設定するよう提案した。IT特区では税制上の措置を含む進出企業への支援、IT関連人材のビザなし受け入れなどの特別措置が実施できるようにすることがポイントである。
これは、政府の都市再生本部が各県にヒアリングしたときに、県が行った提案の一つ。県は、わが国のIT化の進展が情報通信の基盤整備をはじめ、活用面で欧米やアジアの先進国に比べて遅れていることから、すでに国際的機能をもち、業務核都市としても基盤整備が進んでいる「成田」と「幕張」を「IT特別経済区」に設定するよう、国へ求めた。
この理由として、「成田」では国際空港が人・もの・情報の交流拠点となり、年間2250万人もの旅客数と香港に次ぐ世界第2位の航空貨物取扱量を有し、これらに伴う情報通信ニーズがさらに高まっていると指摘している。
「幕張」は、成田空港から30分の距離で、幕張メッセではIT関連の展示会が頻繁に開催されているほか、日本IBMや富士通、NTT東日本などの情報関連産業約80社が集積し、国際的なIT拠点化のための産業基盤が整っている。
都市再生本部はすでに、都市再生プロジェクトを行動計画として位置付けることなどを柱とする基本的な考え方を決め、第1次プロジェクトを発表したが、今後の対象プロジェクト選定に当たっている。
【本紙の解説】
環境保全を放棄して、公共事業と開発に積極的な堂本知事らしい発想だ。国家予算の首都圏開発を何とか千葉に持ってこようとする発想である。しかし、この成田・幕張構想に上総研究都市をくわえれば、沼田前知事の「三角地帯構想」そのものである。三角地帯構想では、成田の物流基地は用地買収が遅れ10年たっても完成していない。幕張もテナントががら空きで、千葉県の巨大な財政赤字要因になっている。上総アカデミアは「完全撤退」を決めている。この大破産した三角地帯構想の焼き直しを「IT」と「首都再生」で行うというわけだ。バブル時と同レベルの発想で、県財政の赤字を減らすどころか破綻の上塗りでしかない。
●(6月27日) 熱田派、立ち木伐採で国と公団に抗議文(読売、毎日、各千葉版)
暫定滑走路の建設に反発する反対同盟熱田派の農家や支援者らでつくる「地球的課題の実験村」(共同代表=大野和興氏、柳川秀夫氏)は27日、暫定滑走路供用の障害になるとして、空港公団が東峰神社(成田市東峰)の立ち木を伐採したことに抗議する文書を扇千景国土交通相と同公団の中村徹総裁あてに郵送した。
文書では、抗議の理由として「民主主義を踏みにじる暴挙で、空港問題を話し合いで解決するとした約束に違反する、東峰地区住民の財産権を侵害する、自然環境の破壊につながる」と述べている。
【本紙の解説】
東峰神社での抗議闘争や抗議文で、伐採への怒りを国や公団に突きつけるのは当然だ。しかし、なぜ「反対同盟熱田派」として抗議しないのか。「地球的課題の実験村」の抗議文だけでは、「熱田派」としては立ち木伐採に抗議しないということになる。23日に脱落党派約40人が「抗議行動」を行ったが、同盟としての行動ではない。
反対同盟「熱田派」は、シンポ・円卓会議で「強制手段放棄」のペテンと引き換えに、平行滑走路建設を「理解する」(円卓会議最終所見)とした前歴がある。「理解」とは社会的常識として承認という意味だ。彼らはこの決定的ともいえる過ちを今こそ真摯に自己批判すべきである。
●(6月28日) 公団総裁、東峰神社の移転を要請(6/29読売、産経各千葉版)
空港公団の中村徹総裁は28日の定例会見で、成田空港の暫定滑走路南端にある東峰神社の立ち木を今月16日に伐採したことに関連して、「残る神社については、公団が所有権を得たとは認識していない。神社の移転を地区住民にお願いしていく」との考えを示した。ただ、その時期については、鳥居や社(やしろ)が暫定滑走路の運用上、障害にはならないため、「従来計画の2500メートルの滑走路を建設する際にしたい」とした。
【本紙の解説】
公団総裁が「神社については、公団が所有権を得たとは認識していない」とは、決定的発言である。公団が神社の土地を「購入」したと称しているのは、東峰神社の土地が「個人所有」との立場からだ。実際には、神社は土地も社も部落の総有関係にあり個人的売買はできないが、登記簿上の前名義人・浅沼から昨年買収したというのが、公団側の「口実」である(伐採前日付で登記)。それで立ち木は土地に付属するものだから公団のものというのが、伐採の反動的いいわけであった。
その理屈だと、神社も個人所有でなければならない。東峰神社の場合、そういう誤解の余地もあった。東峰神社の祭神が元は「航空神社」だったことである。そもそもこの神社は戦前、株式会社・伊藤飛行機が津田沼の工場内にたてた「航空神社」を移遷したものであった。
戦後、伊藤音次郎社長をはじめとして伊藤飛行機の従業員は恵美開拓組合として東峰に入植。東峰は 恵美(えみ)開拓組合、駒頭(こまのがしら)開拓組合、松翁(まつおう)開拓組合の3つの開拓組合が入植した。反対同盟事務局次長の萩原さんの家は駒頭開拓組合に属していた。恵美開拓の恵美は伊藤飛行機が設計、製作した飛行機「恵美号」からきている。
東峰部落で神社を建立したいという話になり、伊藤音次郎は「航空神社」を部落に寄贈した。土地も寺田氏が寄贈。東峰部落の総出で1953年11月23日に、津田沼までご神体を迎えにいき、東峰に移した。そのとき、祭神も航空神社といういわれの祭神・天鳥船神(あまのとりふねのかみ)とともに、勤労の神である二宮尊徳を奉り合祀し、部落の産土神社としたのである。名前も東峰神社に変えた。
その証拠は、東峰神社の入り口の石柱の裏側に「航空神社」と掘った後があることで分かる。反対側に「東峰神社」と彫り直し、それを表にして建てられている。ちなみに、伊藤家が移転した後、航空神社といわれるもとの祭神である天鳥船神は、子孫である三里塚の恵美写真館の敷地に新しく神社を奉り、そこに移っている。
東峰神社が部落の神社だとすると、土地も100パーセント部落の「総有」になる。日本国で、神社本庁の神社明細帳に登録されたものは、土地も含めて神社本庁の所有となるが、各村落にある小さな産土神などは登記できない「総有」関係として存在している。
民法においても土地は20年間使用し、所有権の争いが発生しなかった場合には、使用者に所有権が発生するのである。産土神などの部落の神社で、明治以降の近代土地登記制度の制定以降に建てられた神社は、土地登記上は寄贈した元の地主のままになっている。しかし、元の地主の所有権限はないのである。
東峰神社が伊藤音次郎の伊藤飛行機の所有であり、東峰神社の伊藤家のものであるならば、その土地の売買も可能である。しかし、東峰神社は部落のものだと公団総裁はいった。ならば、どう法律的に解釈しても、その土地も立ち木も部落の総有である。
総有とは売買、登記が不可能であり、その行為を一切無効にするものである。公団がいかなる弁明をしても、神社の立ち木は東峰部落のものだ。国家権力は法的裏づけもない強制手段をもって強奪したのである。
白昼公然の強盗行為を働いた公団が、神社の移転を「要請」とは言語道断の振る舞いである。公権力が公然と犯罪行為を犯したのだ。その報いは必ずや数倍、数十倍になって襲いかかるであろう。(詳しくは2000年8月のウンチク講座参照)
●(6月28日)成田空港、関空「民営化」方針/施設リース方式(6/29日経1面)
特殊法人民営化に向けた枠組みづくりを検討している自民、公明、保守の与党行財政改革推進協議会(座長・山崎拓自民党幹事長)の報告書が28日、明らかになった。海外の事例を踏まえて巨額の負債を抱える日本、阪神高速、首都高速の三道路公団は営業権譲渡が有力とし、成田空港の長期リース方式による民営化を打ち出した。政府・与党は年内に特殊法人改革案をまとめる予定で、具体的な手法にまで踏み込んだ今回の報告書が議論のたたき台となる。
報告書はこれまでの日本の民営化が所有権の移転方法としての株式売り出しに依存してきたことを指摘し、今後は「法人売却または営業権譲渡による民営化が検討に値する」と強調した。
海外事例を踏まえた民営化の具体策として、三道路公団について「巨額債務を抱えているため単純な売却は困難。営業権譲渡による民営化の方が現実的」と指摘。
成田、関西国際の両空港については「単純な売却は困難」とし「(民営化した会社が国に利用料を支払って空港施設を使用する)長期リース方式が最大の手取り金をもたらす可能性もある」と指摘している。
営団地下鉄は株式の段階的な売却、日本中央競馬界は部門ごとの売却、NHKは営業権の売却または部門ごとの売却などの手法で特殊法人の民営化を検討している。
【本紙の解説】
公共的交通機関の民営化はいかなる手法であっても利益追求第一主義になる。そのため、例外なく人件費コストと安全コストを引き下げることになる。JRの事故頻発もそのためだ。米航空業界も80年代に「大競争時代」に入って以降、航空機事故が続出した。人件費コストの引き下げで不安定雇用の労働者を多く雇い、また労働強化で満足な航空機整備もできなくなった。大惨事となる航空機事故の危険よりも、はっきりと「利益」を優先するというのが政府の考えだ。
最近の例では昨年の10月におきたシンガポール航空機の台北での離陸失敗で70人以上が死亡した事故がある。これは台風接近で激しい風雨の中、予定の滑走路と平行した閉鎖中の滑走路入り込んでしまい、工事用車両に衝突したのである。滑走路管理と誘導の不備でこれほどの事故が起こるのである。
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