ZENSHIN 2005/08/08(No2209
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週刊『前進』(2209号1面1)(2005/08/08)
「つくる会」教科書採択阻止へ天王山 杉並先頭に全国で勝利開け
8・6広島−8・9長崎へ総結集を
「つくる会」教科書の採択を許すのか否か――東京・杉並区教委が06年度以降の中学校教科書を採択する8月4日が目前に迫った。杉並を先頭に全国各地で全力で闘い、「つくる会」教科書を阻まなければならない。
栃木県大田原市では7月13日、全国の区市町村で初めて「つくる会」の歴史と公民教科書が採択された。教育委員のうち「つくる会」教科書に反対する1人が不在の日を狙って採択を強行するという、卑劣極まりない暴挙である。
他方、茨城県大洗町では、同県第3採択地区協議会(大洗町など14市町村で構成)が日本文教出版の歴史教科書を採択したにもかかわらず、大洗町教委が「つくる会」教科書採択を求めて抵抗するという超異例の事態が起きた。しかし国による教科書無償配布を定めた無償措置法違反になることから、同教委は7月26日、「つくる会」教科書の採択を正式に断念した。
東京都教育委員会は6月22日に「つくる会」教科書採択へ誘導することだけを目的とした「中学校用教科書調査研究資料」を発表した。続いて、7月28日に都立中高一貫校と「障害児」学校で「つくる会」教科書を採択した。都知事の権力を握るファシスト石原慎太郎との結託こそ、「つくる会」の最大の頼みの綱なのである。
しかしその東京でも、すでに品川・豊島・目黒の各区が「つくる会」以外の教科書を採択している。
また、「つくる会」公民教科書がアイヌ民族の写真をまったく無断で掲載していることが明らかになり、旭川チカップニアイヌ民族文化保存会が「アイヌ民族を侮辱し、差別する行為」として扶桑社に抗議し、謝罪と掲載取り止めを求める事態も起きている。
各地区で激しいせめぎ合いとなっている。しかも「つくる会」教科書に対しては韓国・中国の労働者人民が怒りの声を上げ、これを阻む闘いは全アジア共通の大闘争となっている。
栃木県大田原市に続いて、都と杉並区を頂点に「全国10%採択」へ突き進もうとする動きに、なんとしても決定的な反撃をたたきつけなければならない。8月4日の杉並区における「つくる会」教科書採択阻止こそ、その後の全国情勢を決する天王山であり、戦争教科書を打ち砕く最大の力である。
7月27日には400人が杉並区役所前に駆けつけ、「人間の鎖」を実現して、「つくる会」教科書絶対反対の声を上げた。この闘いに続こう。8・4杉並大行動に全力で立ち上がり、全国各地区で「つくる会」教科書採択を阻もう。
7・27杉並 人間の鎖が区役所囲む 「8・4区教委決戦へ熱気
400人が杉並区役所を包囲し、互いに手をとり「つくる会」教科書採択反対の声を上げた(7月27日)
「『つくる会』教科書を採択するな」。7月27日12時半、杉並区役所前には、「『つくる会』の教科書採択に反対する杉並・親の会」の呼びかけにこたえて400人の労働者・市民が集まった。区内はもとより都内各地、関東各県から危機感に燃え駆けつけた人びとが、区役所西の中杉通り側も、南の青梅街道側も埋めつくし、手をつないで「『つくる会』教科書採択反対!」のウェーブを何度も繰り返した。
正午、区役所前集会が始まった。「親の会」の女性が「反対署名は、6月22日の第2次署名提出行動から今日までに1万115筆、合計して2万1709筆になりました」と報告すると、ひときわ大きな拍手がわいた。小学校6年生の子どもがいる父親は「『つくる会』教科書が採択されたら、私の子どもも使わせられる。こんな独り善がりの教科書を使わせるわけにはいかない」と訴えた。
またこの日午前、杉並区教委に申し入れを行った「東アジア平和のための韓日共同行脚団」も合流した。韓国・大邱(テグ)市の20〜30歳の男女6人が「つくる会」教科書の採択に反対して行動するために来日したのだ。代表の女性は「韓国と日本の若者が和解し、ともに進んでいく未来をつくるために、過去の過ちをきちんと学び、教科書に真実を記すことが必要です」と訴えた。
親の会の会員が次々と発言した。「次の世代に平和な地球を残すため頑張りたい」「7月1日、『憲法違反のつくる会の教科書を使うな』と山田区長を提訴した。こんな恥知らずな教科書を子どもたちに渡すことはできない」「過去の戦争の過ちを潔く認め、過ちを二度と繰り返さないため行動する大人たちの姿を子どもたちに見せたい」「1カ月で1万という署名は『つくる会』教科書を採択させたくないという市民の声の大きさを示しました。区教委は誠実に行動していただきたい」。
リレートークは「人間の鎖」行動をはさんで午後2時まで続いた。後半は都教委包囲ネットの教育労働者、横須賀の教育労働者、動労千葉特別執行委員の滝口誠さん、戦争を体験した高齢の女性、在本土沖縄出身者、高校生、武蔵野から駆けつけた視覚「障害者」など多彩な発言が続いた。28日に都教委が中高一貫校と「障害児」学校で「つくる会」教科書の採択を狙っていることが報告され、緊急行動も呼びかけられた。
埼玉県所沢市の女性は「採択区協議会では『つくる会』以外の教科書が採択されたらしいが、その日程も採択結果も明らかにしない」と強く弾劾した。
午後2時半から、区役所前の通りからJR阿佐ケ谷駅へ向かうデモが行われた。先頭には太鼓と笛の音が鳴り響く。「『つくる会』教科書反対」「歴史をねじ曲げるな」「密室採択を許さないぞ」。にぎやかなデモに圧倒的な注目が集まる。立ち止まってビラを読む労働者、店の中から飛び出してきて声援を送る人、「頑張って」と声をかけていく高齢の女性。デモ解散地の公園では、8月4日までさらに総力で闘いぬくことを確認した。
午後2時からの杉並区教委では、教科書採択に関する区民の要請や展示会場アンケートの数などが報告された。住民の要請や請願、陳情は40件あったが、うち32件が反対意見で、賛成は8件のみ、しかも文面が同じで同一個人ではないかと疑われるものもあった。しかしこれらについても討論は何ひとつ行われない。「こんな区教委が『つくる会』教科書を採択することなど、絶対に許さない」とますます怒りが募った。
東京地裁は7月25日、親の会の人びとが提訴した「つくる会」教科書採択差し止め訴訟を却下した。一度の審理も開かず、しかも7月1日の第1次提訴(10人)に続く22日の第2次提訴(9人)直後の不当な却下である。徹底弾劾し、「つくる会」教科書採択阻止へ闘いを強めよう。
(本紙・上原祐希)
7・24大集会 “戦争教科書使わせない” 保護者・教員ら510人
7月24日、セシオン杉並で、「絶対使わせない!『つくる会』教科書 7・24杉並集会」が開かれた(主催/集会実行委員会)。杉並区の教科書採択が8月4日に迫る中で、“子どもたちを戦争に動員する「つくる会」教科書を絶対に使わせない”と、区民・保護者、教育労働者ら510人が集まり、熱気あふれる集会となった。
集会は、大学生と新城節子杉並区議の司会で進められた。冒頭、集会を呼びかけた「『つくる会』の教科書採択に反対する杉並・親の会」の代表が主催者あいさつを行い、採択反対の署名がこの日までに2万1千人となり、闘いが大きく広がっていることを報告した。そして、杉並区が採択の手続きを区民にまったく明らかにしない形で進めていることを弾劾し、「残り10日間の取り組みが一切を決める。私にとってもいちばん大きな岐路。集会を成功させて、全力で闘いましょう」と呼びかけた。
石原・都教委の「日の丸・君が代」強制に対して不起立で闘った都立高校の労働者が連帯のあいさつに立った。7月21日の「再発防止研修」で、被処分者が都教委職員を追及して意気高く反撃したことを報告し、「組合幹部は腐っても現場の教員は頑張っている」と連帯を表明した。
次いで動労千葉の田中康宏委員長が、動労千葉の安全運転行動に対しJR東会社が不当な処分をかけてきたことを報告し、「子どもたちを戦場に送る『つくる会』教科書とJR尼崎事故はひとつだ。労働者を犠牲にし、戦争をしなければ生きていけない社会を変えましょう」とあいさつした。
二つの講演が行われた。沖縄の「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」の桑江テル子さんは「沖縄戦の教訓」と題して講演した。沖縄戦で父と妹を亡くした桑江さんは、日本の軍隊が沖縄人民を差別し犠牲にして沖縄を戦場とした経験から「軍隊は住民を守らない」ときっぱりと断罪した。そして「つくる会」派が「沖縄の『集団自決』に軍命はなかった」と沖縄戦の真実をゆがめようとしていることを弾劾し、「死ぬことが美しいと教える教科書を使わせない。ともに闘いましょう」と呼びかけた。
「障害児を普通学校へ全国連絡会」世話人の北村小夜さんは、「戦争は教室から始まる」と題して講演した。1925年生まれという北村さんは、自らの体験から「旗と歌は人の心をそそのかす」と語り、戦争体制づくりに果たした学校(教育)の重大な役割を強調した。当時の子どもたちが「親よりも教師よりも熱心に戦争をした」と述べ、「戦争は教室から始まるというのが私の実感です」と述べた。そして、「『つくる会』の歴史教科書は私が習った国史の教科書と同じ。公民は修身の教科書と同じ」と断罪した。
桑江さん、北村さんは、自らの戦争体験を踏まえて「つくる会」教科書を鋭く弾劾した。深く心に残る講演だった。会場から大きな拍手が送られた。
続いて「『つくる会』教科書使わせない! 杉並訴訟」の原告団・弁護団が登壇し、報告と決意を述べた。7月1日の10人の提訴に続き、22日に新たに9人が第2次提訴を行ったことが報告された。小学生の子をもつ母親は、「愛するわが子に戦争の惨禍を味わわせたくない」との思いで訴訟に参加したことを語り、「この裁判を(時代の流れを変える)ポイント切り換えとしたい」と語った。
リレートークでは、87歳の沖縄出身の戦争体験者、17歳の高校生、小学校・中学校・高校の教育労働者、保護者らが次々と発言した。中学生の子を持つ親は、「(つくる会派の)松浦区議は『日本人を育てよ』と言うが、私は国のために子どもを育てているんじゃない! 誠実で、国境を越えてみんなつながっているんだと思う人間に自分の子どもを育てたい」ときっぱりと述べた。
不当解雇撤回闘争に対する組合員校内立入禁止の不当な措置と闘う都内私立高校の教育労働者は、「バブル期に青春時代を過ごした私が、今はシュプレヒコールを上げている」「今日の集会に参加して、いろいろな攻撃とのつながりが分かった。大きな闘いの輪に微力ながら参加したい」と述べた。さらに、闘う教育労働者が次々と発言し、参加者を奮いたたせた。
杉並区民・保護者と、闘う教育労働者が結びついた、熱気とファイトあふれるすばらしい集会だった。この力で採択を阻止しよう。
(本紙・畑田治)
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週刊『前進』(2209号1面2)(2005/08/08)
都教委の採択を弾劾する
7月28日、東京都教育委員会は、都立の中高一貫校4校で「つくる会」の歴史教科書を、また「障害児」学校21校(ろう学校5校、養護学校15校と分室1校)で「つくる会」の歴史・公民教科書を採択した(中高一貫校での「公民」教科書の採択は、今回は行われない)。徹底弾劾する。
「つくる会」教科書は、侵略戦争を賛美し、肯定し、天皇制への屈服を強制し、子どもたちを戦場に送る教科書である。
ファシスト石原と賛成派で固めた都教委は、多くの反対の声、申し入れを踏みにじって、6人の教育委員の全員一致で「つくる会」教科書の採択を強行したのだ。この日午前中に開かれた都教委では、なんの議論も行われず、一瞬のうちに「つくる会」教科書の採択が決められた。
この6人は木村孟委員長と鳥海巌(元丸紅会長)、米長邦雄(棋士)、内館牧子(脚本家)、高坂節三(経済同友会憲法問題懇談会)、中村正彦教育長だ。
この日、都庁には多くの労働者や市民がつめかけ、「つくる会」教科書の採択に強く反対した。
日帝と石原はこの都教委採択を突破口に、全都全国での採択を狙っている。怒りを爆発させ、杉並区と全国で採択を阻止しよう。
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週刊『前進』(2209号1面3)(2005/08/08)
戦時下の新たな闘いへ絶大なカンパ訴えます
すべての『前進』読者の皆さん、支持者の皆さん。夏期一時金の支給にあたり、革共同へのカンパを熱烈に訴えます。
05年、私たちは歴史の巨大な転換点を迎えています。帝国主義がいよいよ根本的に行き詰まり、「外に向かっての侵略戦争」と「内に向かっての階級戦争」を激化させ、あらゆる闘いを押しつぶして労働者人民を戦争に動員していこうとしています。労働者階級人民にとって、帝国主義の侵略戦争を阻止し、プロレタリア革命を実現する中にしか生きる道がないことが、ますます明らかになりつつあります。
革共同は、教育現場への「日の丸・君が代」強制と闘う今春決戦に続き、都議選を「つくる会」教科書採択阻止を訴えて全力で闘いぬきました。「つくる会」教科書は、すべての反動の集大成とも言うべきすさまじい攻撃です。この攻撃のあまりの激しさに多くの政治勢力が口をつぐみ、屈服を深めています。あるいはせいぜい「過去の歴史認識」の問題に切り縮めて言及しているにすぎません。
「つくる会」教科書採択の攻撃は、日本経団連の1・18「わが国の基本問題を考える」や、自民党の7・7「改憲要綱案」、小泉政権の6・21「骨太方針X」と完全に一体のものであり、戦争と民営化(労組破壊)の攻撃を教育をとおして全面的に押し貫こうとするものにほかなりません。戦後60年間、日本の政治の片隅にしか存在しなかったファシスト勢力の全面的な登用を、日帝ブルジョアジーの主流は決断しています。ファシスト暴力で労働者人民の闘いに襲いかかり、根絶やしにして、戦争国家への大転換を行おうとしているのです。このことを真正面から見据えなければなりません。
革共同は、この攻撃に対し、戦時下の荒々しい労働運動・大衆運動の形成をめざして都議選を闘いぬきました。当選には至らなかったものの7977票の熱い支持をかちとり、「つくる会」教科書採択阻止の闘いを強力に発展させています。
こうした闘いの前進に、国家権力は相次ぐ不当逮捕・不当捜索で襲いかかってきています。日本共産党を始めとする既成政治勢力も、これと一体となって闘いの破壊に必死になっています。「なだれうつ転向」と言われますが、権力の攻撃と闘えなくなった勢力が、その裏切りを合理化するために一気に反動の側に転化するという事態が、今、激しく進行しているのです。
こうした情勢を打ち破るのは、ひとえに労働者階級人民の主体的な決起です。革共同はその先頭で闘います。
すべての皆さん。革共同とともに、労働者階級人民の未来をかけて闘おうではありませんか。今春−今夏の決戦をともに闘ったすべての皆さん、『前進』読者の皆さん、支持者の皆さんに、絶大なカンパをあらためてお願いします。
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週刊『前進』(2209号2面1)(2005/08/08)
戦争賛美と皇国史観の復活
「自存自衛」「アジア解放」と帝国主義侵略戦争を正当化
つくる会教科書 新たな戦争動員狙う
杉並区の中学校教科書の採択日である8月4日まで数日を残すのみとなった。7月27日に続き杉並区役所を包囲する「人間の鎖」を実現し、杉並区教育委員会による「つくる会」教科書採択を阻止するために全力で決起しよう。杉並を先頭に全国で、日帝が実際に戦争のできる国家と国民をつくり、北朝鮮・中国侵略戦争に突入しようとする攻撃を断固粉砕しよう。
「居直り強盗」の論理
「つくる会」教科書は侵略戦争・帝国主義戦争を美化・肯定する教科書であり、天皇中心の皇国史観を復活させる教科書である。
それは日帝が日米枢軸のもとで新たに北朝鮮・中国侵略戦争−世界戦争に突入していくために、「戦争のできる国家」「戦争のできる国民」をつくり出すための歴史的な攻撃である。
その「つくる会」教科書攻撃の最大の焦点のひとつが、過去の日帝の残虐で極悪非道の戦争を「正しかった」と正当化する策動である。そのために日帝の戦争があたかも「自存自衛」「アジア解放」のための戦争であったと、黒を白と言いくるめることにある。
「つくる会」教科書はまずそのために朝鮮、中国への侵略戦争を完全に居直り、強盗の論理をもって正当化している。
「つくる会」教科書は当時の状況を「欧米列強は、強大な軍事力にものをいわせて植民地を広げ」「欧米列強による領土拡大政策は、帝国主義と呼ばれることがある」として、日帝がそれに対抗してアジア侵略戦争を強行し「大国の仲間入りを果たした」と言っている。このように「つくる会」教科書は、欧米については帝国主義と言うが、日帝自身についてはけっして帝国主義と言わないというペテンを使っている。
その上で、朝鮮、中国について「欧米列強の武力による脅威をじゅうぶん認識することができなかった」と言い、日帝が侵略したことを「侵略された方が悪い」のだと居直る。これこそ「つくる会」教科書の基本精神であり、強盗の論理以外の何ものでもない。
例えば「つくる会」教科書は、日清戦争、日露戦争について、ペテン的な「自衛」論で正当化を図っているが、それらもまさに強盗の論理そのものである。「朝鮮半島全体が日本に敵対的な大国の支配下に入れば、日本の独立は危うくなる」として、朝鮮の植民地化のために日清戦争を仕掛けたことを合理化している。日露戦争についても「ロシアの極東における軍事力」を口実に戦争をしかけ、朝鮮の植民地化と中国東北部への侵略を狙ったことを正当化している。
また、太平洋戦争についても「つくる会」教科書は
「こうして、米・英・中・蘭の4カ国が日本を経済的に追いつめる状況が生まれ、ABCD包囲網と呼ばれた」「日本は米英に宣戦布告し、この戦争は『自存自衛』のための戦争であると宣言した」として、米帝が日帝の動きを抑えたことに原因があるかのようにいって、当時の日帝の主張があたかも事実であるかのように書いている。
だが、日帝は日中戦争で侵略戦争を拡大しただけでなく、ナチス・ドイツのポーランド侵攻によって第2次世界大戦の火ぶたが切られて以降、ベトナムに軍隊を派兵するなど侵略戦争を拡大していたのである。
日露戦争で朝鮮併合
さらに「つくる会」教科書は、日帝のアジア侵略戦争、太平洋戦争を正当化するために、それが「アジア解放」のためだったかのようにデマを並べ立てる。
そもそも日露戦争について「つくる会」教科書は、「有色人種の国日本が、当時、世界最大の陸軍大国だった白人帝国ロシアに勝ったことは、植民地にされていた民族に、独立への希望を与えた」としている。しかし、日露戦争は植民地諸国の解放とは正反対の朝鮮の植民地化と中国東北部への侵略のための戦争だった。事実、日帝は日露戦争の5年後の1910年には朝鮮併合を強行したのである。侵略された朝鮮人民、中国人民は民族解放のために激しく日帝と闘いぬいた。
「つくる会」教科書は、第1次大戦後のアジアの民族独立運動について、「民族自決の気運の高まりの中で、アジアでも民族独立運動がおこった」とし、朝鮮の3・1独立運動、中国の5・4運動について一言触れている。しかし「朝鮮総督府は、その参加者多数を検挙したが、その後、武力でおさえつける統治のしかたを変更した」と、血の弾圧がなかったかのように書いている。
だが、この3・1独立運動で日本軍によって虐殺された朝鮮人は7500人にものぼる。これほどの人びとを虐殺したことには一言も触れないで、「多数を検挙した」として歴史の事実を完全に歪曲している。しかも、統治政策を変更したかのように書いているが、実際は、それ以降も、獄中で言語に絶する拷問を加え、獄死させられた朝鮮人革命家は数え切れない。
そもそも第1次世界大戦後の民族解放闘争の高まりは、ロシアにおいて労働者、農民、兵士がツァーリの支配をうち倒してプロレタリア革命を勝利させたことに激励されたものであり、全世界で高揚した帝国主義の支配を打倒しようとする闘いと一体だった。
太平洋戦争が「アジア解放のためだった」という「つくる会」教科書の主張は、そもそも日帝が敗勢に陥ってからカイライ政権の手先などを集めた1943年の「大東亜会議」で出した「大東亜共同宣言」にも使われ、完全に破産した大ペテンだ。そこでは「日本は決して日本の為めにのみ大東亜戦争に国運を賭するものではない。東亜の一大解放の為めに、東亜の新秩序形成の為めに、従来東亜十億の民を奴隷視し、其の国土を横領し、其の民人を虐使したる暴戻非道のアングロ・サクソンを東亜より駆逐せんが為めである」として露骨なウソを並べ立てている。
「解放」は侵略と虐殺
実際は日帝は解放どころか、アジア人民の解放闘争を徹底的に弾圧し、多くの闘う人びとを虐殺した。
当時、日本軍占領下の東南アジア各国を視察した黒田秀俊は、敗戦後その状況を「軍部のとなえる『アジア解放』とは、これらの地域からイギリス人やオランダ人を追いだして、日本の支配のもとに、もっと正確にいえば日本軍部の支配のもとに、新しい体制をつくりあげることを意味するものであった」「東亜共栄圏は、逆に東亜共貧圏に陥り、民心は急激に離反していった。軍はこれを力でおさえた。投獄もしたし、テロも行った。とくに各地の民族主義者や解放運動の推進者にたいする弾圧は峻厳をきわめた」(『軍隊』)と書いている。これが日帝が言う「アジア解放」の実態である。(黒羽清隆『太平洋戦争の歴史』より)
現実に、太平洋戦争によるアジア人民の犠牲者は2000万人にものぼった。その内訳は、中国約1000万人、朝鮮約20万人、ベトナム約200万人(大部分は餓死)、インドネシア約200万人、フィリピン約100万人、インド約350万人(大部分はベンガルの餓死者)、シンガポール8万人、ビルマ5万人と言われる。日本人も310万人が死んだ。このどこが「アジア解放」なのか。厚顔無恥にも程がある。
日帝の戦争によってアジア人民が受けた犠牲は、こうした死者の数だけにとどまるものではない。その何倍もの負傷者を出し、さらに日本軍の軍隊慰安婦とされたり、強制連行され鉄道やダム建設、鉱山などで働かされて命を奪われ、長崎の軍需工場では原爆の投下によって強制連行されて働かされていた多くの朝鮮人・中国人が殺されたのである。731細菌戦部隊による人体実験や細菌兵器の投下など、日帝が行った数々の蛮行は歴史上類例を見なかった。
ところが「つくる会」教科書は、こうした史実は抹殺しながら、人物コラムでナチスドイツの迫害からユダヤ人を救ったとして2人の人物を大きく取り上げて「背景には、人種差別に反対してきた日本政府の基本方針があった」などとうそぶいている。その一方で関東大震災での朝鮮人・中国人大虐殺を「住民の自警団などが社会主義者や朝鮮人を殺害するという事件がおきた」とまるで大したことのないように書いている。
しかし朝鮮人・中国人大虐殺は、軍部や警察が「朝鮮人が暴動を起こす」とデマを流して大虐殺を扇動し、習志野騎兵連隊を始め軍隊、警官、自警団が自ら凶行したことなのだ。これによっておよそ朝鮮人6000人、中国人600人が虐殺されたのである。
「つくる会」教科書は、侵略戦争での日帝の残虐きわまる加害の歴史を抹殺し、沖縄戦や広島・長崎の原爆や東京大空襲についてもほとんど触れない、歴史歪曲の教科書なのだ。
労働者人民を再び戦争に動員しようとする戦争賛美と皇国史観の教科書を絶対に許すわけには行かない。この8月、杉並を最先頭に
全国各地域で総決起し、「つくる会」教科書採択を絶対に阻止しよう。
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週刊『前進』(2209号2面2)(2005/08/08)
共謀罪廃案へ大攻勢 超党派集会に200人 “絶対廃案”展望つかむ
7月26日夕方、「『共謀罪』に反対する超党派国会議員と市民の集い」が、国会裏の星陵会館で開催された。国会議員22人の呼びかけにこたえ、悪天候をついて200人が参加した。
党派を超えて9人の国会議員、弁護士、刑法学者、ジャーナリスト、表現者、労働者がそれぞれの立場から「共謀罪」の廃案を呼びかけた。その思いは参加者の廃案の決意とひとつになり、集いは「共謀罪の廃案を求める」総決起集会の場となった。最後は廃案に向け、団結ガンバローでしめくくられた。
集いは海渡雄一弁護士の司会で始まり、松野信夫衆議院議員(民主党・法務委員)が衆院法務委員会での審議状況を報告した。
衆院法務委員会は「審議は7月12日の1日だけ。次回のめどがまったく立っていない」。副大臣が郵政民営化法案反対で罷免されて不在状態が続いており、そのままでは審議強行はできないという審議停止に追い込まれている。与党は継続審議に持ち込んで成立を狙っている。会期末の攻防で「継続審議か廃案か」が決まる重大局面に突入した。
稲見哲男衆議院議員(民主党)、井上哲士参議院議員(共産党)、松岡徹参議院議員(民主党)、平岡秀夫衆議院議員(民主党)、福島みずほ参議院議員(社民党党首)、近藤正道参議院議員(社民党)、小林千代美衆議院議員(法務委員・民主党)らが次々と共謀罪廃案を訴えた。
議員たちは、「労働運動の経験からこのような治安立法を絶対に許してはならない」(稲見衆院議員)、「法案の審議には入ったが成立させないところまで追い込んできた」(井上参院議員)、「共謀罪は国家権力が個人の頭と魂の中に入り、国家と個人の関係を大きく変えるもの。絶対に廃案しかない」(福島参院議員)などと訴えた。
治安弾圧と闘う現場からの報告や決意表明も行われた。休日に行った『赤旗』号外の戸別配布を国家公務員法違反のデッチあげで弾圧された堀越明男さんと立川の自衛隊官舎への反戦ビラ入れを住居侵入罪のデッチあげで弾圧された大洞俊之さんが、自らの体験から共謀罪廃案を訴えた。
篠田博之さん(日本ペンクラブ言論表現委員会副委員長)は、「言論・報道を規制する共謀罪に反対する」と訴えた。寺澤有さん(ジャーナリスト)は、7月21日に「共謀罪」の廃案を求める!表現者・言論人の緊急共同声明を呼びかけたところ、わずか3日間で300人近い賛同が寄せられたことを報告した。
刑法学者の足立昌勝さん(関東学院大学教授)は、「共謀罪は619もの罪を新設する刑法全面改悪の攻撃だ」と批判した。
「共謀罪廃案」を軸に団結したすばらしい集いであった。廃案への展望と実感をつかむことができた。
主催者から8月9日に開かれる「『共謀罪』に反対する超党派国会議員と市民の集い」の案内(別掲)が配布された。
院内集会が大成功 国会内外 反対の声上がる
これに先立つ7月21日正午、「『共謀罪』に反対する超党派国会議員と市民の集い」の院内集会が第2衆院議員会館第1会議室で行われた。150人収容の会議室がいっぱいとなり立って参加する人であふれ、参加者は170人を超えた(写真)。
円より子参議院議員(民主党)を始め11人の国会議員が発言に立ち、共謀罪廃案の決意を語った。
共謀罪の国会審議は大詰めを迎えた。廃案を求める闘いが国会内外で大きく盛り上がり始めている。
延長国会での共謀罪廃案闘争を断固として推進して8・9院内集会を実現しよう。呼びかけにこたえて大結集しよう。
院内集会
8月9日(火)正午から午後1時
参議院議員会館 第1会議室
呼びかけ人(50音順)
石毛えい子(衆議院議員)、稲見哲男(衆議院議員)
井上哲士(参議院議員)、糸数慶子(参議院議員)
小川敏夫(参議院議員)、神本美恵子(参議院議員)
喜納昌吉(参議院議員)、近藤正道(参議院議員)
小林千代美(衆議院議員)、小林元(参議院議員)
佐々木秀典(衆議院議員)、首藤信彦(衆議院議員)
樽井良和(衆議院議員)、辻恵(衆議院議員)
中川治(衆議院議員)、仁比聡平(参議院議員)
福島みずほ(参議院議員)、藤田一枝(衆議院議員)
松岡徹(参議院議員)、松野信夫(衆議院議員)
円より子(参議院議員)、水岡俊一(参議院議員)
(2005年7月25日 現在)
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週刊『前進』(2209号2面3)(2005/08/08)
中四国 採択阻止へ各地で決起 安芸高田や呉で申し入れ
杉並「つくる会」教科書決戦と一体で、採択絶対阻止をかちとる教科書決戦=8・6決戦が、広島・中四国各地で全力で闘われている。8月12日の広島県教委の採択阻止へ向かって連日の闘いが爆発している。
杉並と並んで広島で突破口を開くことを狙う「つくる会」派は、5月22日、杉並区議・松浦と島根県議会議員を県外代表として招いて、反革命総決起集会を開いた。
広島県教委は、県内に「つくる会」教科書のみを紹介する資料を配布した。この資料の配布が県議会でも問題となり、県教委はその非を認めざるをえなかった。徹底的な追及の前に、6月28日、県教委は「教科書採択基準」を公開せざるをえなくなった。だが、その採択基準は、東京都が示したものとまったく同じであり、「つくる会」教科書を採択するように誘導するものだ。
推進派は、県教委採択のほかに、県内24カ所の採択地域のうち、安芸高田市(教育委員中4人が「つくる会」派)を始め、呉市(軍港で自衛隊市政)、庄原市、三次市、府中市(以上の3市は参議院議員亀井郁夫など「つくる会」派議員の地盤)、尾道市、東広島市などでの採択を狙っている。
これに対し、「教育基本法改悪反対!ヒロシマ実行委員会」と「8・6ヒロシマ大行動実行委員会」の呼びかけによる連日の闘いが爆発している。申し入れ行動や座り込み、署名活動や街頭宣伝などをとおして、広島市、廿日市市、東広島市では採択を許さない情勢が切り開かれている。7月中をメドに採択委員会が非公開で行われ、広島市などの市町村は7月29日、広島県、安芸高田市などは8月12日に教科書採択決定の教育委員会が開かれる。
広島市では教育労働者を先頭に7月16日の県庁前集会(300人)と県教委デモが行われ、7月22日には斎藤貴男さんを講師に招いての緊急総決起集会(85人)が開催された。「気合を入れて阻止しよう」という提起が行われ、それぞれの地域・職場から取り組んできた阻止行動が報告され、決戦態勢を強化する熱気あふれる戦闘的な集会となった。
7月22日、安芸高田市教育委員会に対して、三次市議の平岡誠さんを始め10人の決起で庁舎ビラ入れ、申し入れと座り込み、戸別ビラ入れが行われた。7月23日には、呉市の市教委申し入れ・傍聴闘争が由木栄司さんを先頭に18人の参加で闘われ、連続して呉市駅前での街頭宣伝、広島市での街頭宣伝が闘われた。7月25日には、部落解放同盟全国連広島支部と青年部の呼びかけで、秋葉広島市長と市教育課に対する「『つくる会』教科書採択と学区自由化による部落差別の激化を許さない」糾弾行動が闘われた。
また、中四国各地でも、百万人署名運動連絡会を先頭に、「つくる会」教科書採択反対の申し入れ、街頭宣伝が広く闘われている。愛媛では7月22日、韓国・香港の人びとも加わった原告600人の「差し止め」訴訟が提訴され、月末の大統一デモに向かって前進している。
被爆60周年を迎えた8・6ヒロシマ闘争そのものとして、「つくる会」教科書採択絶対阻止へ、さらに総決起していこう。8・6−8・9を跳躍台に、11月労働者総決起へ前進しよう。
(投稿/広島 A・K)
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週刊『前進』(2209号2面4)(2005/08/08)
すすめる会発足 「日の丸・君が代」裁判 “不当処分を許さない”
7月23日星陵会館において、「東京『日の丸・君が代』強制反対裁判をすすめる会」結成総会が開かれ、230人が参加した。この会は「予防訴訟をすすめる会」「被処分者の会」「被解雇者の会」の3つの裁判を全国の労働者市民の力で支えていこうと発足した。
集会は、槙枝元文元日教組委員長のあいさつから始まり、準備会からの結成の趣旨説明、弁護団による審理状況の報告がなされた。次に原告団の教育労働者の決意表明が行われた。
「予防訴訟をすすめる会」の国語教員は、模造紙に書いた「君が代」の歌詞を示して解説・批判した。
「被処分者の会」の代表は、「再発防止研修」の強制に対し、逆に当局を徹底追及する場として闘ったことを力強く報告した。さらに自分自身が訪れた沖縄・辺野古の闘いを紹介し、「闘いの根は一つ。日本を戦争をしない国にするため輪を広げよう」と熱烈に訴えた。
「被解雇者の会」の教育労働者は「いよいよ証人尋問に入る。引き続き多くの傍聴を」と裁判支援を強く訴えた。
さらに「嘱託不採用の撤回を求める会」の代表は、「今年3月の定年を前に嘱託を希望したが、昨年の不起立をもって不採用にされた。8月2日に提訴を行う」と、被解雇者と連帯して闘う決意を述べた。
さらに、弁護団、保護者などからの発言が続いた。その中で「つくる会」教科書採択阻止の闘いが各地で緊迫していることが、口々に語られた。そして大田堯東大名誉教授が「教育とは何かを問い続けて」と題する記念講演を行い、原告を大いに激励した。
最後に「教育基本法の理念や平和憲法すら破壊しようとする策動と連動した『日の丸・君が代』強制を許さない」とする「アピール」が満場の拍手で採択され、集会後には入会申し込み受付に列ができた。
不屈に闘う教育労働者の裁判を支え、東京に続き全国で「日の丸・君が代」闘争の爆発を押し広げよう。
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週刊『前進』(2209号3面1)(2005/08/08)
動労千葉総決起集会 「厳重注意」処分を弾劾 安全運転行動を継続
19歳青年の新加入に沸く
7月21日、動労千葉は「不当処分弾劾! 安全運転行動貫徹! 組織拡大! 7・21動労千葉総決起集会」を千葉市のDC会館に160人を集めて開催した。19日、JR東日本千葉支社は、動労千葉の安全運転行動に対して、本部執行部8人を「厳重注意」とする処分を発令した。動労千葉は、この不当処分を徹底弾劾し、安全運転行動を継続することを確認した。また、7月1日付でJR東労組から動労千葉に加入した幕張支部のU君(19歳)が満場の大拍手で迎えられ、熱気があふれる集会となった。
“動労千葉の「勝ち」です”
冒頭、司会者から動労千葉に寄せられたメールが紹介された。
「 『本部役員』に厳重注意処分が本当ならばこの喧嘩(けんか)は明らかに動労千葉の勝ちです。現場管理者や支社課員でも足りず本社の人間まで動員させて、言葉が悪くて申し訳ありませんが『この程度』の処分ならば、会社は動労千葉の主張を『認めた』と思って間違いないです。……間違いなく『風』はそちらに向かって吹いています。ガンバッテ下さい」
処分の理由は「3月及び5月以降から行った安全運転闘争と称する争議行為は、会社の持つ運行管理権を奪う違法な争議行為であるところ、組合本部役員として同行為を決定し、所属組合員へ指示したこと」とされている。
集会であいさつに立った田中康宏委員長は、「安全を守ろうという労働組合の努力に対して処分したことを、怒りを込めて弾劾したい。JR東日本は、あの尼崎事故をさらさら考えていない。絶対に許すことはできない。処分されたのは8名だが、安全そのものを処分したということだ。『安全よりも組合憎し』『安全よりも営利優先』とJRは公言したに等しい。絶対にこんな処分は受け入れようがない」と語気を強めた。
千葉支社はこの間、@回復運転はしない、A無線通告は例外なく停車中に受ける、B総武快速線・津田沼駅〜稲毛駅間の安全運転、C外房線・東浪見(とらみ)駅構内の安全運転の4点を「会社の運行管理権を奪う違法行為」とし、さらに、@会社の運行管理権を奪う、A団体交渉を経ていない、B労働関係調整法に基づく争議予告がされていないという口実をもって「違法争議」呼ばわりしたが、これらのすべてが何の根拠もない言いがかりだ。
そもそも、運転士が「回復運転」に駆りたてられることがどれほど危険なのかを示したのが尼崎事故だった。無線通告問題については、これまで停車中の受領が明確に指導されていたにもかかわらず、走行中にメモをとって受けろということをデッチあげてきた。総武快速線のレール交換を実施することは、危険な状態であったことを証明している。東浪見駅についても、「速度超過対策個所」の一環としてATS(自動列車停止装置)−P設置工事計画が策定中である。さらに「団体交渉を経ていない」「争議予告がされていない」ということは処分理由から外されたとおり、事実無根であったことを千葉支社自身が認めたのだ。
レール交換の実現など成果
田中委員長は、「今回の処分は何によって処分されたのか、何ひとつ判然としない。つまり、労働組合が安全に関して行動を起こすことは認めないということだ」とした上で、「しかし、一方で、今回の処分は闘いの正当性を示している。この間、JR東日本は、東京、本社の管理者も動員し、運転台に乗り込んで監視・現認した。数千名が動員されている。大山鳴動して『厳重注意』8名だけだ。つまり、動労千葉の主張が完全に正しいことを当局が認めたということだ。だから、あらためて確信を込めて、安全運転行動を断固として継続する」と訴えると、大きな拍手が起こった。
田中委員長はさらに、「労働組合の団結がつぶされ、市場原理、競争原理が支配した時に何が起こるかを示したのが尼崎事故だ。いくら会社を批判し、分割・民営化の是非を言おうが、口舌の徒、口先だけの組合になってしまうのかが問われる」と安全運転行動の意義を明らかにした。
この闘いによって総武快速線と緩行線で140カ所、合計10`、千葉以東でも10`のレール交換が行われるという成果を実現したが、それは「世界中の労働組合ができなかったことだ」と誇らかに語った。
そして、組織拡大については、「正しいことを貫き通すことができるのが人間だ。動労千葉が本当に仲間を大切にしてきたことを真正面から訴えれば、必ず動労千葉に結集してくる」と確信を込めて述べて、「11月労働者集会を1万人規模でかちとろう」と訴えた。
スタンダード・ヴァキューム石油自主労組と動労千葉を支援する会の連帯のあいさつに続いて、長田敏之書記長が基調報告に立った。長田書記長は、「今回の闘争の正当性を世間も分かってきた。闘争を継続し抜本的な安全対策を求める」と強調し、「全組合員の組織拡大への総決起を」と訴えた。
新組合員加入に満場の拍手
満場の拍手の中、幕張支部の山田護支部長が「当局が一番恐れることは組織拡大だ」と述べ、新たに動労千葉に加入したU君を紹介した。U君が「お世話になります。仲間を大事にすることは大事なことです。みなさんよろしくお願いします」と元気よくあいさつすると、大歓声が起こった。
この組織拡大は、地道な活動の成果だ。幕張車両センター(電車区)のJR東労組は、他労組組合員には超勤をさせて、助役を先頭に職場集会を開き、「平成採」の組合員に「U君はなぜ抜けたのか」と聞いて回り、「動労千葉にいじめられているんじゃないか」などと言っているという。
これに続いて、各支部が組織拡大に全力を挙げる決意を打ち固めた。
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週刊『前進』(2209号3面2)(2005/08/08)
三里塚 「北延伸」決定に緊急抗議 反対同盟 「徹底的に闘う」
三里塚で7月24日、暫定滑走路北延伸阻止の現地緊急闘争が闘われた。国土交通省とNAA(成田空港株式会社)による暫定滑走路の北延伸計画の決定に対して、三里塚芝山連合空港反対同盟が呼びかけたもの。
国交省は7月15日、NAA黒野社長の申し出に基づいて本来計画とは逆の北延伸を正式に表明した。黒野はこれまで「人間としての尊厳を損なうことは2度としない」などと「謝罪」してきた。だがどうして民家40b上空にジャンボ機を飛ばすことが許されるのか。農民の生活を顧みず暴力で追い出しを狙う暴挙だ。
暫定滑走路を横から貫く東峰十字路北の開拓道路に結集し、集会を行った。司会役の伊藤信晴さんが「NAAと国交省がとんでもない野望を打ち出した。三里塚闘争破壊が狙いだ。今回の北延伸計画は、暫定滑走路の破産の中で出てきた。われわれは徹底的に闘い抜く」と緊急闘争の意義を強調した。
事務局長の北原鉱治さんは「彼らは南延伸を目指したが反対同盟が闘った結果、成功しなかった。北ならいいのか。北もダメだ。彼らのやり方は40年間まったく変わっていない。われわれは受けて立つ。これがまかり通るなら日本の将来は暗澹(あんたん)だ」と闘いの強い決意を示した。
続いて動労千葉の繁沢敬一副委員長が発言し、反対同盟とともに北延伸を阻止する決意を語った。さらに動労千葉の安全運転行動への「厳重注意」の処分を「安全無視の不当処分」と弾劾。東労組の組合員が動労千葉へ加入したことを報告した。
全学連の学生は「北延伸の攻撃を許さない。三里塚闘争は40年闘い抜かれた帝国主義を打倒する闘いだ。同盟破壊の国家権力の攻撃に対して、われわれもともに闘う」と決意表明。さらに「つくる会」教科書や小泉首相の靖国神社参拝に対する闘いを訴えた。
事務局次長の萩原進さんが「北延伸を誰が喜んでいるのか。国も苦渋。空港会社も自治体も困る。まして住民からすれば、とんでもない話。こんな飛行場があるのか。最後は形だけつくればいいというやり方をわれわれは許さない」と怒りを込めて話した。
デモは東峰十字路を進み東峰部落内を周回、市東孝雄さん宅横の団結街道を直進、現闘本部前を抜けた。
デモ終了後、北延伸阻止の今後の闘いについて、労農連帯や現闘本部裁判の意義が強調され、反対同盟の決意と闘いを全国で共有化し、裁判闘争を支援する会の会員拡大に全力で取り組むことが確認された。「ここで農業をやっていくのが自分の闘い」(市東孝雄さん)という反対同盟の力強い決意にこたえ、全国で支援する会の会員拡大を実現し、北延伸阻止へ闘おう。
三里塚闘争は、帝国主義の戦争政策の前に立ちはだかる反戦と抵抗の砦だ。「北延伸」を使った三里塚闘争破壊攻撃を粉砕し、労農連帯を断固貫き、北朝鮮・中国侵略戦争のための空港の米軍出撃基地化を阻止しよう。秋の10・9全国集会に向かって闘おう。
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週刊『前進』(2209号3面3)(2005/08/08)
郵政民営化法案廃案へ 全逓労働者先頭に小泉倒そう
郵政民営化関連法案の参議院での審議が始まり、小泉政権は8月5日にも採決を強行しようとしている。小泉は参院で否決された場合に衆院の解散・総選挙を行うと公言し、継続審議にもせず、何がなんでも成立を図ろうとしている。
だが、衆議院でわずか5票差での可決だった以上に参院での採決は予断を許さない。自民党から18人が反対に回れば否決される。小泉政権は絶体絶命の危機に追いつめられているのだ。
自民党内の争いは、350兆円に上る郵貯・簡保資金を始めとする郵政事業の利権をめぐる争いを本質としており、ここで自民党の「反対派」に下駄を預けることなどできない。
しかし今、この時、全逓労働者が職場から「郵政分割・民営化絶対反対」を鮮明に掲げて立ち上がり、法案を否決・廃案に追い込むならば、全逓労働運動の階級的再生に向けて大きな展望を切り開くことができる。闘う全逓労働者は、JPU(旧全逓)などのあらゆる行動の先頭に立ち、戦闘的に牽引(けんいん)して闘おうではないか。
郵政民営化攻撃は、日帝・小泉=奥田路線による〈戦争と民営化(労組破壊)>の攻撃の最先端の攻撃である。6月21日に閣議決定された「骨太方針X(経済財政運営と構造改革に関する基本方針2005)」では、「小さくて効率的な政府」を掲げて、公務員の削減と賃下げ、社会保障給付費の削減を打ち出したが、その第一の攻撃として、「郵政民営化関連法案の成立を期す」ことが挙げられている。
この攻撃は、また「つくる会」教科書が狙う国家改造攻撃そのものの攻撃であることを弾劾しなければならない。「つくる会」公民教科書の執筆者である八木秀次は『国民の思想』で1980年代のイギリスのサッチャー政権やアメリカのレーガン政権による規制緩和と民営化の大攻撃を「文字通りの『精神革命』であった」と言う。特にサッチャーを礼賛し、「彼女は国民の『品質』を保証するために、まず『品質』を低下させている原因を明らかにした。その病巣は国内の左翼勢力であることを確認し、徹底した左翼排除を行った」として、「国営企業を民営化し、福祉をカットして大きな政府を小さくし、教育の中央集権化を行った」と述べ、この左翼排除=労組解体こそがイギリス帝国主義の国家的再生のかぎであったとしている。
郵政民営化は、現在の郵政公社を持ち株会社のもとに4分社化し、27万人の郵政労働者(非正規雇用を含めて40万人)を〈いったん解雇・選別再雇用>するものであり、それをとおして活動家パージを強行することに狙いがある。JPU中央などの全面屈服にもかかわらず、現場に脈々と生き続ける労働者の戦闘性をたたきつぶそうとしているのである。
郵政民営化は、小泉が「改革の本丸」と位置づけているだけでなく、今や日帝ブルジョアジー本流の要求する攻撃となっている。
したがって、参院で成立すれば、07年4月の民営化に向けた攻撃が一挙に強まり、また、仮に否決された場合は自民党の分裂、民主党なども巻き込んだ新たな政界再編の中から、再び郵政民営化攻撃が打ち出されてくるものとして構えなければならない。
しかも今、現場では民営化に等しいような郵政公社による攻撃が進み、6月のJPU大会で、アクションプラン・フェーズ2を受け入れる方針が決定されたことにより、郵便内務のアウトソーシングや10時間2交代制勤務の導入などの攻撃が襲いかかろうとしている。これらは完全に民営化を前提とした合理化計画である。JPUの菰田―難波執行部が「パートナー」と位置づける生田総裁ら「公社経営陣には、郵政民営化法案の可決を望む声が強い」(7・26付朝日新聞)のだ。
したがって、JPU菰田執行部の「民営化反対」はウソであり、労働者の立場からの絶対反対論が求められているのである。菰田は2月の中央委員会で「私たちは公務員身分や処遇といった利己的な損得で民営化に反対していない」と述べた。これが労働組合の委員長の言うことか。この一言で、実は民営化に賛成だということを示している。
このようなJPU中央を打倒することと、物ダメ・ストライキを実現することで郵政民営化攻撃を粉砕しよう。郵政民営化法案を参院で否決・廃案に追い込もう。その力で、小泉政権を打倒し、戦争と民営化(労組破壊)をうち破る11月労働者総決起へ闘おう。
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週刊『前進』(2209号3面4)(2005/08/08)
「反テロ」叫ぶ日本共産党
帝国主義の虐殺と闘わず 被抑圧民族の決起に敵対
7・7ロンドン同時爆破ゲリラ戦は、帝国主義、とりわけイラク侵略戦争を続行する米英日帝に対するムスリム人民、被抑圧民族人民の積もり積もった怒りの爆発であった。帝国主義国の労働者人民は、同時にこのゲリラ戦争を、帝国主義の侵略と戦争を許している自分たち自身に対するムスリム人民、被抑圧民族人民の糾弾として厳しく受けとめ闘うことが必要である。
これに対して、日本共産党は、01年9・11反米ゲリラ戦闘の際と同様、口を極めて非難し、被抑圧民族人民の戦いに敵対する立場、したがって帝国主義権力に屈服してその攻撃を支持する立場を表明した。
彼らは事件直後の『赤旗』7月9日付の「主張」欄で「卑劣な犯罪行為を糾弾する」と題する論説を掲げた。「一般市民の生命を奪う無差別テロは、いかなる口実や背景があっても、絶対に許されない卑劣な犯罪行為であり、強い怒りをこめて糾弾します」
こう言って、日共は、ムスリム人民が帝国主義の残虐極まる侵略戦争と大虐殺に対して根底的な怒りを爆発させていることを不問にし、その闘いを否定し抹殺しようとするのだ。だが「背景」は関係ないというのは、帝国主義権力者の論理である。
しかも日共は、英国では「警備を強化していたはず」なのに、事件が起こったのは「情報当局の失敗」だったとして、治安弾圧の強化を促している。
そして「国際社会が無法なテロをばっこさせないために協力を強め」なければならないと主張する。国連事務総長がテロを非難した、G8サミットが「野蛮な攻撃を断固として非難する」声明を発表した、と完全に国連やサミットの権力者の立場に立っている。
日共は、欧州委委員長の「この犯罪行為は、……世界のすべての文明的な人々に向けられている」という発言を肯定的に引用しているが、これらの発言では、「文明的な人々」を脅かす「野蛮な攻撃」として、ムスリム人民の極限的な決起を描き出している。だが、これほど犯罪的・反動的な見解はない。
だいたい、「文明的な」国々の軍隊がハイテク装備された兵器をもって、アフガニスタン人民、イラク人民の頭上に砲弾の雨を降らせ、何万、何十万の人民を大虐殺してきた、現にしている現実を何と見るのか。
驚くなかれ、日共のこの「主張」の中には、イギリスが米帝とともに、最初からイラクに侵略軍隊を送り、大虐殺戦争を繰り返してきたということがただの一言も触れられていないのである。ファルージャのあの大虐殺が一言もない。アブグレイブ刑務所の拷問と虐待が一言もない。そうして、ひたすらサミット決議や国連安保理事会決議が共感をこめて引用されているのだ。これはもう、自分たちは、被抑圧民族人民の立場には立ちません、帝国主義権力者の立場に立って、これに協力しますと誓約する以外の何ものでもない。
帝国主義の侵略戦争と大虐殺に対して、被抑圧民族人民と連帯して決起する労働者の階級的な立場と、まったく正反対の所に日共がいることを怒りをもって確認し、弾劾しよう。
帝国主義権力への屈服と恭順
日本の階級闘争は、01年9・11と03年3・20イラク開戦をもって、戦時下の階級闘争に突入した。戦争に反対するあらゆる闘い、労働者の団結を壊滅する攻撃が激化している。
その中では、日共系の運動といえども、どんどん弾圧の対象にされている。国家公務員労働者が休日に『赤旗』を配達したことに対する逮捕・起訴、マンションビラまきを口実にした逮捕・起訴、専門学校に立ち入ったことを口実にした逮捕など、東京での日共党員への弾圧が起こっている。「テロ糾弾」と叫ぶ日共の合法主義的な活動さえも許さないと、権力が攻撃を加えているのである。
日共はこのような弾圧に震え上がり、自分たちは帝国主義支配の秩序を脅かすものではないこと、むしろ積極的に「テロ根絶」を掲げて協力していることを誓い、この秩序を破壊しようとするものは容赦なく解体することを申し出ることによって、自らの安全を守ろうとしているのだ。
こんな反革命的対応は絶対に許せない。怒りの弾劾をたたきつけよう。
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週刊『前進』(2209号3面5)(2005/08/08)
郵政民営化に異議あり やった!河原町デモ 参院廃案へ向け熱気
7月8日(金)、「郵政民営化に異議あり!行動・京都実行委員会」の主催で、郵政民営化反対のデモをやりました。
6時半、市役所前に仕事を終えた労働者が続々と集まってきます。その数120。郵政労働者は、その半数を超えました。久しぶりに顔を合わせる前任局の仲間に声をかけると、「○○さんに行ってくれ言われたんや」という答え。「やった!しっかり動員がかかってる」と感じました。
集会は、郵政ユニオンの労働者の司会で進められました。主催者あいさつとして、実行委員会から、憲法を生かす会京都、「組合の違いを超えて、多くの郵政労働者が集まり、市民運動からも多くの参加を得て、集会とデモを実現できた。参院廃案へ向けて、さらに声を上げて行こう」と訴えました。続いて、「解雇撤回・地元JR復帰を闘う国労闘争団を支援する京都の会」の大先輩は、「JR尼崎事故は、国鉄分割民営化の帰結。郵政労働者こそが、郵政分割民営化反対の行動に立て」と檄を飛ばしました。さらに、ユニオンネットワーク京都、アタック京都が発言。集会アピールは、JPU(全逓)の仲間が読み上げました。
7時、さあ、デモに出発。宣伝カーを先頭に、横断幕・メッセージボード・小旗などを掲げ、宣伝カーのウグイスとシュプレヒコール、そして沿道ビラで、郵政民営化反対を道行く人びとに思いっきり訴えました。市民の関心は非常に高く、ビラの受け取りも良く、手を振って声援してくれる人もいました。超勤を終え、途中デモに合流してくる郵政の仲間も数人おり、円山公園まで約1時間、元気いっぱいのデモでした。
実行委員会は、第2波のデモを、参院審議の山場と見られる8月8日(月)に設定しました。それへ向けて、街宣を7月19日にやりました。用意していたビラはあっという間に無くなり、確かな手ごたえを感じました。8月4日にもう一度街宣をやります。7・8は、JPU数支部で「組織的」動員があったと思われます。8・8はもっと広げられるでしょう。
郵政民営化を阻止するために、考え得るすべての行動をやり切りましょう。
(投稿・全逓阪神東支部尼崎分会/相川文男)
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週刊『前進』(2209号4面1)(2005/08/08)
自治労大会への決戦アピール
自治労は改憲勢力になるのか 侵略戦争の道=「平和基本法」粉砕を
革共同自治体労働者委員会
8月23〜26日に鹿児島市で開かれる自治労第76回定期大会で自治労中央本部は、「平和基本法」制定=9条改憲を運動方針として決定しようとしている。なぜ自治労中央は改憲を方針化し、自治労を改憲=戦争翼賛勢力へと転向させようとしているのか。それは、世界戦争情勢が切迫し、日帝がイラク侵略戦争参戦に続き北朝鮮・中国侵略戦争を決断し、戦争国家へと国家体制を全面的に改造しようとしているからである。また「つくる会」教科書として天皇・戦争・国家のために命をささげることを要求・扇動するイデオロギー攻撃が襲いかかっているからである。さらに、4月19日に日本経団連が発表した提言「さらなる行政改革の推進に向けて」という公務員労働運動破壊の攻撃、自治体労働者に天皇・戦争・国家のための官吏になることを要求する攻撃が襲いかかっているからである。自治労中央は、これら日帝総がかりの大反動攻勢に恐れをなし、屈服・転向して生き延びようとしている。だがこれは自治労の労働組合としての死であり、帝国主義の側への階級移行である。闘う自治体労働者は、このような恥ずべき屈服・裏切り・転向をきっぱりと拒否し、自治労大会での改憲方針決定、改憲=戦争翼賛勢力化を阻止し、自治労の階級的再生をかちとるために闘わなければならない。
世界戦争の過程がもう始まっている
自治労大会での自治労の改憲勢力化を阻止するために訴えたいことは、まず、帝国主義の危機がいよいよ深まり、帝国主義の基本矛盾が世界戦争として三たび爆発しようとしているという時代認識である。
米帝ブッシュ政権は今年1月、「自由の拡大」「圧制の打破」を掲げて世界戦争を宣言した。帝国主義世界経済は、基軸国である米帝の歴史的没落の中で完全に行き詰まっている。のしかかる大恐慌の重圧のもとで七転八倒している。帝国主義の分裂と争闘戦もかつてなく深まり、激化している。帝国主義間争闘戦はすでに帝国主義世界戦争の過程へと転化し始めている。01年のアフガニスタン侵略戦争、03年のイラク侵略戦争は、世界戦争過程への扉を最終的に開いた。
米帝は今日、イラクでイラク人民―ムスリム人民の激しい民族解放・革命戦争の反撃を受けて非常な危機に陥っている。しかし、米帝が帝国主義として基軸国として延命しようとする限り、自らをイラクから撤退させることはできない。イラクの植民地的支配とそれによるイラク―中東の石油支配とが米帝のイラク侵略戦争の真の目的だからだ。
米帝は、イラク侵略戦争が長期化・危機化するほど、戦争の拡大で事態をのりきろうとする。侵略戦争のイランやシリアへの拡大、さらには東アジアの北朝鮮、中国への拡大を狙っているのである。
この中で日帝は、日米枢軸を形成して米軍再編(トランスフォーメーション)を促進し、イラク侵略戦争に参戦する一方で北朝鮮・中国侵略戦争を決断し、その発動へ突き進んでいる。また日帝は、国連安保理常任理事国入りをめざして独帝などを巻き込むG4を形成し、米帝との争闘戦を展開している。
北朝鮮スターリン主義に対する米帝の戦争重圧の中で、日帝は「拉致問題」を使って北朝鮮を圧迫している。さらに日帝は釣魚台、独島、ガス田などの領土・資源略奪の動きを戦争挑発をもいとわず強めている。2・19日米安保協議委員会は、日米同盟の「共通戦略目標」として北朝鮮と中国を挙げた。
このように帝国主義の基本矛盾の爆発として大恐慌と世界戦争の危機が深まる中で、日帝は帝国主義として生き残るために必死になっている。戦後的な〈平和と民主主義〉を打ち砕くナショナリズムの大洪水を起こし、日本の労働者階級の階級意識・反戦意識を最後的に解体し、革命党も労働組合運動もたたきつぶし、総翼賛体制と国民総動員体制、戦争国家体制をつくり出し、再度の朝鮮・中国・アジア侵略戦争に突入しようとしている。そして現にイラク侵略戦争参戦をもって「新たな15年戦争」の過程に踏み込んでいる。
改憲・戦争、民営化・労組破壊をめぐる05―07年階級決戦過程が始まっている。とりわけ05年は階級的激突の始まりの年、ターニングポイントとして歴史に刻まれようとしている。
「護憲・平和」放棄し9条解体に進む
世界戦争切迫情勢の到来は自治労に反戦・平和運動に総決起することを求めている。にもかかわらず自治労中央本部は「護憲・平和」運動を投げ捨て、憲法9条を解体する平和基本法制定を運動方針としようとしている。
平和基本法制定方針は「自衛権」=「自衛戦争」の名で侵略戦争を要求する運動である。とんでもない逆転だ。絶対に認められない。自治労中央の改憲方針案を打ち砕き、自治労の改憲=戦争翼賛勢力化を絶対に阻止しよう。これが自治労大会での闘う自治体労働者の核心的な任務である。
5月の自治労中央委員会に提出された「国の基本政策検討委員会」報告(検討委報告)は「平和基本法」制定という形で憲法9条を解体する改憲方針を提起した。これを8月の定期大会で運動方針案の一節として盛り込もうとしている。
検討委報告は、平和基本法の制定を基本方針として@「個別的自衛権」を承認するAそれを前提とした「最小限防御力」を定義するB自衛隊を3部隊に再編・改組するC国連主導の「国際平和協力活動」に積極的に参加するD日米安保に代えてアジアの安全保障体制の構築をめざす――ことを提起している。
(1)「個別的自衛権」(本質的には「自衛権」)の承認とは「自衛戦争」、実は侵略戦争の要求である。帝国主義は「個別的あるいは集団的な自衛権」の行使として「自衛戦争」の名で侵略戦争を行う。個別的自衛権と集団的自衛権との間に垣根はない。むしろこの二つはワンセットだ。したがって「個別的自衛権」の承認を求める運動とは「自衛戦争」の名による侵略戦争を要求する運動である。
自治労は労働組合として日帝国家が資本家階級の利益のために行う「自衛戦争」=侵略戦争を要求するのか。こんなことは断じて認められない。労働組合の要求、運動ではない。
(2)「最小限防御力」とは「戦力」として自衛隊を保持することを意味する。いったん戦力として認めればいくらでも拡大可能だ。
@自衛権承認A戦力保持は明白に9条2項の転覆であり、そのことによる9条1項「戦争放棄」の破棄であり、9条解体である。
検討委報告は「憲法前文および9条を堅持する」と強調するが、これはまったくのペテンであり、奇弁である。平和基本法制定は前文・9条とは正反対の立場だ。「前文・9条を堅持する」のであれば「平和基本法」も「国の基本政策検討委員会」も不要なはずだ。
(3)自衛隊を国土警備、災害救援、国際貢献の三つの部隊へ再編・改組することを提起している。これはなんら「自衛隊の縮小」ではない。公然たる戦力=軍隊、海外派兵部隊の創設であり、その拡大である。
(4)国連とその集団的安全保障体制を強調し、国連主導の国際平和協力活動への参加を提起している。これは、帝国主義の世界体制・新植民地主義体制を維持するための武力行使=侵略戦争の肯定とそれへの参戦、民族解放・革命戦争を圧殺するための侵略戦争の肯定とそれへの参戦のことにほかならない。
(5)「アジア安全保障体制」とは、日本経団連の1・18提言のいう「東アジア自由経済圏」=新「大東亜共栄圏」の構築とその防衛のための日帝を中心とする集団安保体制=軍事同盟だ。アジア勢力圏構築のための軍事機構を労働組合が構想・提唱するとは、驚きと怒りに堪えない。またアジア安保体制こそ集団的自衛権である。日米安保よりもアジア安保を重視していることは、1・18提言の最も露骨な表現だ。
自治労100万が今やるべきことは、日帝・自衛隊のイラクからの撤兵を求めるイラク反戦闘争であり、自民・公明、民主、日本経団連の改憲案作り、改憲提言を激しく弾劾し、粉砕する闘いであり、改憲阻止の大運動の先頭に立つことである。そして現在の日帝・小泉=奥田の体制を打倒することだ。
全国の職場で議論を沸騰させ、圧倒的な反対意見を背景に大会に乗り込もう。大会議事では自治労中央本部執行部に反対討論の集中砲火を浴びせ、騒然たる状況をつくり出して議場を圧倒し、大会の総意として運動方針案から平和基本法制定=9条改憲方針を削除させよう。
大会で平和基本法制定の改憲方針を決定したらどうなるか。その瞬間から自治労100万の戦争翼賛勢力への転落が始まり、労働組合として死滅する。自治体労働者が再び赤紙を配る官吏の役割を果たすことを強制される。現在すでに各都道府県は国民保護計画を策定中であり、来年は市町村が国民保護計画を策定する。この攻撃は侵略戦争への労働者人民の協力=戦争動員の始まりである。自治体労働者は戦争協力、人民の戦争動員を断固として拒否しなければならない。しかし改憲方針のもとでは、この闘いは成り立たない。自治労を始め労働組合運動が中心勢力となっている各地の反戦、反核、反基地、反原発などの運動は、一切成り立たなくなる。平和フォーラムの運動も不可能になる。
ところで、連合の中央執行委員会は7月14日、憲法9条改定と安全保障法制定に関する両論併記の「国の基本政策に関する連合の見解案(連合見解案)」を発表し、10月連合定期大会で正式の見解として決定しようとしている。
「連合見解案」は、自治労の人見一夫委員長を含む連合3役会の討議の上で提出された。自治労中央は「連合見解案」をすでに承認し、率先して推進しようとしている。だが自治労が拒否すれば、連合見解案をひっくり返すことができるのだ。自治労大会で自治労中央の改憲方針を粉砕し、自治労―連合の改憲=戦争翼賛勢力化を阻止しよう。
「つくる会」教科書の思想と闘おう!
自治労の改憲=戦争翼賛勢力化は「つくる会」教科書の大攻撃への屈服を意味する。自治体労働者は、改憲を先取りし侵略戦争を扇動・推進する「つくる会」教科書の採択阻止の闘いを全力で取り組まなければならない。
「つくる会」教科書は「国のために命をささげることは尊いことだ」と教え、日帝の侵略戦争の歴史を賛美し、これからの侵略戦争を扇動し、その担い手を育成し、人民を戦争に総動員しようとする教科書だ。戦前の「国定教科書」と同じ役割を果たすことが狙われ、靖国神社の英霊思想が貫かれている。侵略戦争の指導者や戦死者らを神とたたえ、生きている人民を新たな侵略戦争に駆り立てるイデオロギーである。
西村真悟(民主党・衆議院議員)は小泉首相の靖国参拝を支持して以下のように公言した。
「靖国神社で不戦の誓いをしてはならない。靖国に参拝することによって、今度戦争をする時は断じて負けないという誓いを新たにしなければならない。近い将来、我が国は戦争を受けてたたなければならないこともあり得る。その場所は東シナ海(ママ)、台湾海峡だ。その時は勝たなければならず、ここが我が国の生命線であります。そのために靖国神社を忘れてはならない」。「つくる会」教科書の核心をなす考えだ。
「つくる会」教科書採択の攻撃は、日帝・小泉=奥田による日本の戦争国家への国家改造攻撃の最大の突破口である。「つくる会」教科書を文科省が検定で合格としたこと自体、日帝・小泉政権が国家的意思をもって「つくる会」教科書を全国的に普及させようとしていることの現れである。
「つくる会」教科書は、侵略戦争を全面的に肯定・賛美し、侵略戦争を遂行する国家体制(大日本帝国と大日本帝国憲法、天皇を元首とする専制国家)を「正しい」として全面的に賛美している。戦争を「悪」とし平和と民主主義を追求する戦後的価値観を社会から一掃することをめざしている。「つくる会」教科書は、今日の日帝・小泉=奥田がめざし描く日本の「未来図」を凝縮して示している。日帝支配階級の階級的総意が表現されている。
「つくる会」教科書は、それ自体が戦争国家への国家改造要求運動であり、戦争に反対する勢力の根絶をめざす運動なのである。日本の社会から「戦後的なもの」「階級的なもの」を一掃することをめざす大反動、大反革命である。
「つくる会」教科書の本質は「つくる会」会長の八木秀次(高崎経済大学助教授)の考え方に明確に示されている。八木はその著書『国民の思想』(扶桑社)で次のように述べている。
「市場原理の導入という経済政策は、精神革命を起こすための手段」「民営化の目的は経済効率ではない」「民営化を進めたサッチャーリズムは、社会から左翼色を一掃した」「われわれの目的は、国家を内側から食い破るシロアリの撲滅運動である」
八木は労働運動の根絶・一掃を「左翼色の一掃」「シロアリの撲滅」という言葉で展開している。何より民営化攻撃の目的は「経済効率」ではなく「精神革命」であると強調している。
今日の小泉=奥田による政治・経済攻勢は、戦争と一体の民営化攻撃、民営化と一体の戦争攻撃である。これは戦争へ向けて戦後的価値観を一掃する攻撃であり、とりわけ戦後的価値観を体現する最大の運動である労働組合を解体・根絶することを最大の課題、核心としている。八木はそれを「精神革命」として表現し、マルクス主義的なもの、階級的なもの、戦後的なもの一切の根絶を訴えている。
「つくる会」教科書こそ、戦後60年間闘われてきた反戦運動と労働運動に突きつけられた反革命の刃(やいば)なのである。「つくる会」教科書を全面的に批判し、完全に粉砕し尽くそう。「つくる会」教科書採択阻止の8月決戦に総決起し、勝利しよう。
「天皇の官吏」化を要求する4・19提言
4・19提言との闘いは、自治体労働者にとって改憲方針粉砕の闘いそのものである。同時に4・19提言は「つくる会」教科書攻撃と表裏一体の関係にある。
4・19提言は、戦争と民営化の攻撃であり、公務員労働運動の解体・根絶を狙う攻撃である。1・18の二つの日本経団連提言(改憲提言と教育提言)と並ぶ日帝資本による戦争国家体制への転換の要求だ。
その第一は、行政改革の目的・目標を「国家の生き残り」に置き、日帝の競争力の強化、それと一体のものとしての国家機能の「戦略・枠組み」の強化が必要と提起していることだ。国家のあり方、公務員のあり方を戦争のできる国家、公務員に転換・改革・再編せよと述べているのである。
そしてその核心は公務員労働運動の解体である。何より公務員労働者の階級意識を一掃して“労働者ではなく支配階級=国家に仕える忠実な公僕になれ。支配階級=国家の立場に立つ官吏になれ”と迫っている。「国益の追求を念頭において戦略的な政策の立案・企画に専心する」「首相の強力なリーダーシップの基にこれらを行う」ことが公務員に求められるのだ。
その第二は、公務員の身分保障・処遇の全面的な見直しを打ち出していることだ。「人事評価制度」「信賞必罰の人事処遇」「身分保障・処遇の見直し」「官民のイコールフッティング」「非公務員化の推進」をうたっている。公務員の大量首切りへの道、それに伴う労働法制の改悪にほかならない。
またそれと一体のものとして「給与の適正化」を打ち出し、年功序列賃金の全面的解体の方向を宣言している。
これらを受けて経済財政諮問会議は6月の「骨太方針X」で公務員の大幅削減、「総額人件費」の見直しの方針化と併せて「市場化テスト」による全面的民営化を打ち出している。
これらは郵政民営化と一体の公務員労働運動解体の全面的攻撃である。公務員制度改革も郵政民営化と同時並行で行われ、07年が決着の年とされている。
戦争と民営化と労組破壊を目的とする4・19提言―「つくる会」教科書を粉砕しよう。
自治労中央の改憲方針を粉砕し、自治労の改憲勢力化を阻止しよう。戦争と民営化と労組破壊と対決する階級的労働運動を大きく成長させ、労働者の国際連帯を発展させよう。動労千葉は、尼崎事故を弾劾し、安全運転闘争を闘っている。関西生コン支部は組合壊滅を狙った弾圧と闘っている。この闘いを全国に広げよう。港合同を先頭に倒産争議を闘いぬき、地域合同労組運動を前進させよう。8月「つくる会」教科書の採択を阻止し、広島・長崎反戦反核闘争の高揚をかちとり、4大産別決戦を闘い、戦争と民営化と労組破壊と対決する11月労働者総決起を万余の規模でかちとろう。
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週刊『前進』(2209号4面2)(2005/08/08)
連合の改憲勢力化を許すな
7・14見解案 9条解体と「安保基本法」狙う
7月14日、連合(笹森清会長)は中央執行委員会を開き、「国の基本政策に関する連合の見解(案)」を発表した。
「見解案」は@憲法9条を改正し、「安全保障基本法」のような法律を制定するA憲法9条の改正は行わず、「安全保障基本法」のような法律を制定する――の二つの方策を提起している。自民党の新憲法草案作りや日本経団連の改憲提言など、改憲攻撃がいよいよ本格化している中で、労働組合のナショナルセンターである連合がついに改憲推進を表明したことはきわめて重大な事態である。連合は、労働者階級を改憲攻撃に屈服させる犯罪的役割を担おうとしているのだ。
連合は、これを各構成組織で論議し、10月の連合大会で承認を得るとしている。情勢は重大だ。労働組合、労働運動が雪崩のように改憲に転向するのか、それとも階級性を堅持して、改憲と戦争の道を拒否して闘うのか。ここが改憲阻止闘争の核心だ。職場で組合で徹底的な批判と弾劾の嵐を巻き起こし、連合見解案粉砕へ闘おう。
「国家自衛権」論で全面屈服
連合会長・笹森は昨年8月の自治労大会で、「『護憲・平和』とほえていて本当に平和が守れるのか」と反戦闘争、改憲阻止闘争への敵意と憎悪をあらわにして9条2項の改憲に初めて言及した。9月の自動車総連大会ではさらに踏み込んで、9条に第3項を新設して「国際貢献に寄与するとの扱い方にするのがいい」とまで述べた。こうした発言の延長上に今回、連合の改憲推進案を決めたのだ。
この見解案では、連合の「基本的認識」として、日米帝国主義のアジア支配と侵略戦争のための強盗同盟である日米安保体制を、「他国からの侵略的行為を未然に防止し、またそのもとでこそ戦後の経済的発展がなされてきた」と積極的に肯定している。ベトナム戦争や湾岸戦争、アフガニスタン・イラク戦争で日米安保がどんな侵略的役割を担ってきたか、沖縄がどれほど犠牲にされてきたかなど、まったく眼中にない。
そして違憲の自衛隊を「独立国家の固有の権利としての自衛権を日本は保有し、その意味で、自衛隊が設けられていることに対する異論はない」と容認している。さらに「国連による集団安全保障活動への参画は、……『国権の発動たる戦争』には、基本的には抵触しない」として海外派兵にも賛成している。
要するに、連合は日帝・自民党政権が行ってきた自衛隊の帝国主義的軍隊化、海外派兵、日米安保同盟政策などをことごとく承認し、その上で、今回、さらに9条改憲をも容認しようとしているのだ。
だが、日帝・自民党の改憲攻撃の狙いはいったい何か。それは「自衛権をはっきり明記する」とか「自衛隊の現状と法体系の整合性を確保するため」というレベルの攻撃ではない。
日帝はすでに参戦しているイラク侵略戦争・アフガニスタン侵略戦争のさらなる激化と拡大、永続化に対応するとともに、日米枢軸のもと北朝鮮・中国侵略戦争へと突き進むために、さらには帝国主義間戦争へと発展しても戦いぬけるように、どうしても現憲法の第9条と前文を破棄して集団的自衛権を合憲・合法化し、帝国主義戦争を全面的に合憲・合法化することが必要になっているのだ。
連合の見解案は、まったくペテン的に集団的自衛権については言及していないが、連合が言うように「自衛権は独立国家の固有の権利だ」とか「自然権として自衛権がある」などという論理を受け入れれば、この自衛権はいわゆる「個別的自衛権」の当然の延長として「集団的自衛権」も正当化されうることになるのである(国連憲章でもそうなっている)。
今日の世界に存在するのは、抽象的な「国家」一般ではなくて、帝国主義国家と、その支配・抑圧のもとにある被抑圧国、従属国である。日帝は帝国主義国家であり、その「自衛権」とは、まさに「侵略戦争の権利」にほかならない。20世紀以来、帝国主義はつねに「自存自衛」「国益を守る」と称して侵略戦争を繰り返してきたではないか。
日帝が9条を改憲して集団的自衛権を全面的に行使できるようになれば、日帝は日米安保のもとで、米帝とともに世界中のどこの国に対しても「自衛戦争」「集団的自衛権の発動」の名のもとに侵略戦争を展開できることになるのだ。朝鮮半島内にも侵攻し、占領するなど、あらゆる戦争行為が可能となるのだ。
今こそ労働者は反撃しよう
このような全面的な侵略戦争に道を開く9条改憲をどうして認めることができようか!
日帝の改憲攻撃がもたらすものは、第2次世界大戦へのラセン的回帰である。第2次世界大戦への日本の労働者階級人民の反省は、けっして「つくる会」派がいうような「自虐史観」でも「東京裁判史観」でもない。かつての15年戦争の経験をもっと残酷に、もっと悲惨に繰り返すかどうかということなのだ。
出口はどこにあるか。侵略戦争で被抑圧国人民を虐殺し、自国の労働者人民を戦争に動員して犬死にを強制していくしかなくなった帝国主義など打倒するしかないのだ。
改憲は「つくる会」教科書や靖国参拝と一体であり、日帝が北朝鮮・中国−アジア侵略戦争に突入していくためのものだ。帝国主義の軍門に下った腐りきった連合中央を打倒し、階級的な労働運動の大前進をかちとろう。
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週刊『前進』(2209号4面3)(2005/08/08)
7月19日〜26日
政府「都市型訓練」中止拒否
MD迎撃で自衛隊法を改悪
●米国防総省、中国軍「確かな脅威」 米国防総省が中国の軍事力に関する年次報告書を発表。中国の軍拡路線は長期的に見て地域の「確かな脅威」になると予測。報告書は、中国軍が台湾の対岸に短距離弾道ミサイル650〜730基を配備し、年間100基のペースで増強していると指摘。(19日)
●米「都市型訓練施設は安全」 沖縄県金武町のキャンプ・ハンセン「レンジ4」都市型戦闘訓練施設での実弾射撃訓練に対し、約1万人が参加した県民大会を主催した金武町の儀武町長らが、在日米軍司令部と米大使館を訪れ、施設の即時閉鎖・撤去と伊芸地区の基地の全面撤去を要請した。米側は「レンジ4は万全の安全対策が取られている」との回答に終始。(20日)
●ロンドンで同時爆発 ロンドンの地下鉄3カ所とバスで爆発や爆破未遂が起き、一部地下鉄が封鎖された。(21日)
●国民保護計画、福井・鳥取を閣議決定 政府は、福井、鳥取両県がまとめた国民保護計画を閣議決定した。昨年6月に成立した国民保護法に基づく都道府県の計画決定は初めて。政府は3月に決めた「国民の保護に関する基本指針」に基づき、都道府県は05年度中、市町村は06年度中の国民保護計画の策定を求めている。(22日)
●ミサイル防衛、改正自衛隊法が成立 弾道ミサイルをミサイル防衛(MD)システムで迎撃する際の手続きなどを定めた改正自衛隊法が参院本会議で、自民、公明両党の賛成多数で可決、成立した。防衛出動の発令前でも迎撃ミサイルの発射が可能になる。(22日)
●ロンドン警視庁が無関係男性を射殺 21日の同時爆破事件の現場に近いロンドン南部の地下鉄ストックウェル駅で警察官の制止を振り切って車内に乗り込んだとして、警察官が男性を至近距離で計5発(25日、8発に訂正)射ち、殺した。翌23日、ロンドン警視庁は「射殺した男性は、21日の爆破事件と関係ない。遺憾である」との声明を発表した。男性は27歳のブラジル人電気技師。(22日)
●エジプトで連続ゲリラ エジプト東部シナイ半島のシャルムエルシェイクで車爆弾などによる複数の爆発が起きた。死者88人、負傷者は200人に達した。(23日)
●「靖国参拝批判は内政干渉だ」 中国や韓国が小泉首相の靖国神社参拝を批判している問題で、島村農林水産相は「(参拝批判は)内政干渉だ。別の(追悼施設)を造れというのも内政干渉だ」と発言した。(23日)
●政府、都市型再考の余地なし強調 沖縄県の稲嶺知事が防衛庁に大野長官を訪ね、金武町の米軍キャンプ・ハンセン「レンジ4」の都市型戦闘訓練施設の暫定使用中止を要請した。大野長官は「訓練の中止を求めることはできない」と従来の政府見解を主張した。首相官邸では、細田官房長官も訓練中止を米側に要求することを拒否した。(25日)
●6者協議開幕 北朝鮮の核問題をめぐる第4回6者協議が北京の釣魚台国賓館で始まった。北朝鮮主席代表の金桂寛外務次官は「朝鮮半島の非核化を実現するため実質的な進展を成し遂げることが根本だ」と述べ、「当事国の戦略的決断が必要であり、われわれは準備ができている」と表明。米国代表のヒル国務次官補は「北朝鮮は主権国家」との認識を示した上で「攻撃する意図はない」と語った。(26日)
●自衛隊が無人偵察機導入 防衛庁はミサイル防衛(MD)システムの一環として無人偵察機を導入する方針を固めた。来年度予算の概算要求に調査研究費を計上する。地対空ミサイルの届かない地上から20`高高度を長時間飛行する滞空型無人機。公海上空からミサイル基地を観測、ミサイル発射時の熱を赤外線センターで探知する。(26日)
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週刊『前進』(2209号5面1)(2005/08/08)
日帝と天皇の戦争責任暴き「靖国」を階級闘争の課題に
戦後60年8月 小泉の靖国参拝許すな
東山整一
靖国神社問題はすぐれて日本階級闘争の問題である。敗戦から60年、首相就任以来4年続けて靖国を公式参拝した小泉が、今年も参拝を強行するのか否かが鋭く政治焦点化している。会期末に向けて郵政民営化問題をめぐる自民党内の亀裂が深まり、小泉政権そのものの存立が揺らいでいる中で、今年の8・15を前後する靖国問題の展開も波乱含みとなるだろう。だがいずれにせよそれは、時を同じくして各地で闘われている「つくる会」教科書をめぐる攻防と一体のものとして、戦争と改憲に突き進む日本帝国主義との闘いの今後を左右する歴史的結節環・分水嶺(ぶんすいれい)となるに違いない。昨年までとの決定的な違いは、今年の3〜4月に韓国、中国で靖国・教科書問題などをめぐって激しい抗日(反日帝)デモが火を噴いたことである。これは疑いもなく日帝ブルジョアジーの心胆を寒からしめた。問われているのは日本の労働者人民である。靖国問題を真に日本階級闘争の正面課題として、全労働者人民的課題に据えて闘うことができるのか否かである。戦後革命の敗北をのりこえ、戦後日本階級闘争の限界を突破して、日本帝国主義の打倒を射程に入れた、新たな反戦・反改憲闘争の構築が急がれている。
今日の戦争政策に魂を吹き込む核心なす攻撃
日帝ブルジョアジーは今、靖国神社問題をめぐって深刻なジレンマに陥り、解決できない歴史的・戦略的破綻(はたん)にあえいでいる。
戦後日本国家は、憲法第9条で戦争放棄を誓ったにもかかわらず、50年朝鮮戦争を背景に、日米安保同盟政策のもとでなし崩し的に再軍備を進め、経済大国化ときびすを接する形で軍事大国化路線を突き進み、今日ではその軍事予算は世界で2、3位の規模まで膨張している。
しかも憲法第9条との関係で長く持てなかった戦争法制も、90年代後半の日米新安保ガイドライン制定をテコに、周辺事態法(99年)から武力攻撃事態法などの有事諸法制(03年、04年)として整え、また自衛隊海外派兵も、湾岸戦争後のPKO派兵や、9・11後のアフガニスタンやイラクに対する侵略戦争への参戦として、さしあたり「平和維持」「人道復興」「米軍支援」の名目のもとでだが、積み重ねてきた。
あとは9条改憲を強行し、集団的自衛権も全面解禁し、自衛隊を本物の侵略軍隊、帝国主義軍隊にすることだけが残っているように思われてきた。だがこの2、3年間の階級情勢の中で明らかになってきたことは、改憲の中心はもちろん9条にあるが、9条改憲はただ9条改憲にとどまる問題ではなく、9条改憲をとおして準備される新たな戦争を正当化するイデオロギー、歴史観・国家観を激しく求めているということである。
当たり前ではある。いくら巨大な軍備を持っても、立派な戦争法を整えてもそれだけでは戦争はできない。国家のために戦争を担う若者、生死を顧みず自らを戦場に駆り立てる兵士の心、そしてそれを裏付け、あるいは強制・後押しする「国民」的意識・世論の形成なしに戦争はできない。だからこそこの数年、靖国、教科書、「日の丸・君が代」問題などが激しい階級的焦点となり、また教育基本法改悪も日程に上り、さらに改憲では、9条改憲と一体のものとして現行憲法前文の「人類普遍の原理」を否定する形で、「国柄」が、「日本の歴史・伝統・文化」が強調されてきた。だが、まさにここにおいてこそ日帝は、最も深刻な戦略的困難にぶち当たっているのだ。
日帝ブルジョアジーは、新たな戦争を正当化するイデオロギーを、結局、かつての戦争、60年前の壊滅的敗北に終わった15年戦争、アジア・太平洋戦争を全面的に美化し、居直ることに求める以外にない。戦後60年間、あの戦争の総括を一度も行わず、冷戦下での米帝の世界政策に乗ずる形で、天皇裕仁のそれを始めとする戦争責任、植民地支配責任を一切不問にし、ひたすらほおかむりして、戦後的復興・繁栄の道をばく進してきたのが日本帝国主義である。そしてその必然的結果として日帝は今日、世界危機の中で新たな戦争に備えるために、かつての戦争を公然と全面的に居直る以外にそのイデオロギー的拠り所を見いだすことができないのだ。
一言で言えば「大東亜戦争肯定論」だが、かつては一握りの極右天皇主義者が振り回していたに過ぎないイデオロギーが、今や小泉や石原のもとで教育の現場に、国策の中心に堂々と土足で登場しつつあるところに今日の情勢の由々しさがある。と同時に重要なことは、しかしそのような暴論は、そもそも日本階級闘争以前的に、国際的にまったく通用しない、必ず国際問題化を惹起(じゃっき)する、対アジア的にはもちろん、帝国主義間関係的にもまったく成り立たない議論でしかないということだ。
最近、森岡某という低水準な政務官が、調子に乗って東京裁判否定論を公言して、小泉に「立場をわきまえてほしい」とたしなめられるという茶番があった。東京裁判は、敗戦後の大混乱、戦後革命の危機、米ソ冷戦の急展開の中で、日本を資本主義につなぎとめておくために天皇(とその「臣民」)の戦争犯罪を免責する、そのためにも戦争責任については東条ら一部A級戦犯に一切を押しつけて幕を引くために開かれた日米合作の政治裁判であった。それは敗戦後も日本が、「国体」=天皇制を維持して生き延びるために避けて通ることのできない政治的儀式だったのだ。
だから日本は52年発効のサンフランシスコ講和条約(悪名高い片面講和)で独立を回復するに際して、同条約11条で、A級戦犯の処刑を含む東京裁判の結論を受け入れることをわざわざ国際的に約束しているのだ。そしてこの東京裁判→講和条約という戦後日本の再出発にあたっての国際公約(それを貫く反革命性を見落としてはならないが)があるからこそ、中曽根(純然たる「大東亜戦争肯定論」者)でさえ、直接には中国政府の抗議を受けてだが、85年参拝の後は靖国公式参拝を断念せざるをえなかったのだ。
しかも85年から20年後の今日では、日本とアジア、日本と韓国・中国との関係は大きく様変わりしている。特に中国経済の急成長、「世界の工場」化の中で、今や日中貿易は日米貿易を上回る。長期不況の中でも日本経済が低飛行を続けられるのは、多くを中国特需に依存しているからだ。こうして日帝ブルジョアジーが21世紀の生き残りをかけた「奥田ビジョン」の結論として強調したのが、「東アジア自由経済圏」の構築だった。これは、アメリカを除くアジア経済圏を強く牽制(けんせい)する米帝との間の激しい争闘戦的テーマだが、にもかかわらず日帝の未来はここにしかない。しかしこれをいわば足元からぶち壊してきたのが、靖国にこだわる小泉のもとでの日中間の“政冷経熱”的関係だった。
だからこそ、財界・日帝ブルジョアジーの中には、小泉の靖国参拝に対してもっと巧妙に立ち振る舞うことはできないのかといういらだちも募っている。そして、A級戦犯分祀(ぶんし)とか別個の国立追悼施設建設などの議論を蒸し返して日帝の戦略的破綻を糊塗(こと)することに躍起になっている。こうした中で、最近では『読売新聞』までが、「国立追悼施設の建立を急げ」などと題して、小泉の靖国参拝に異議を唱えるに至っている(6月4日付社説)。
靖国問題をめぐっては、日本の支配階級の中に鋭い分裂・亀裂が深まっている。危機の時代に必ず起こる現象だ。一方で日帝ブルジョアジーが最も恐れているのは、抗日デモが広がり、永続化するだけではなく、それがアジア全域に展開する日系企業の労働争議に転化することである(それはすでに始まっている)。日本の資本主義経済は今日、アジア幾億労働者の搾取の上に成り立っているが、靖国問題はその全体を吹き飛ばす導火線になりかねない。しかし他方では、だからこそ日本の国益を守るために戦争に備えろ、愛国心を注入しろ、北朝鮮を攻撃しろ、尖閣列島(釣魚台)を占領しろなどという金切声が、「つくる会」の天皇主義者や小泉、安倍、石原などの極右反動政治家を始め政財界を巻き込む大合唱として高まっているのである。
だが、靖国問題を何か小泉という特異な政治家が登場したから焦点化した、小泉が辞めれば解消する問題などと勘違いしてはならない。靖国神社は、明治以来の近代日本が帝国主義に飛躍し、侵略と戦争に明け暮れる中で、天皇制と軍国主義の交差するところで「臣民」を戦争に駆り立てるために生まれた巨大な軍事イデオロギー装置なのであって、それが敗戦後60年を経て再び戦争が現実化する中で、不可避的に最焦点化してきたということだ。そこで問われているのは、死をどうとらえるか、歴史をどう総括するかという最もデリケートな、人びとの琴線に触れ、触れれば血が噴き出すような問題である。だからこそ、それは今日の日帝の戦争政策に魂を吹き込む、その核心をなす攻撃であり、同時にまたその最大の弱点、最大の破綻点に転化しうる(日本人民の闘いによって)問題なのである。
「国のための死」あおり戦争動員を支える装置
靖国神社は、明治維新を前後する内戦のただ中から生まれた。前身の東京招魂社が建設されたのが1869(明治2)年で戊辰(ぼしん)戦争の直後、これが別格官幣社・靖国神社に衣替えするのが79(明治12)年で、それは西南戦争の直後である。そこでは言うまでもなく、天皇のために、朝敵・賊軍と戦って死んだ官軍の兵士が「祭神」として祀(まつ)られ、その死が限りない名誉として賛美され、顕彰された。
小泉は、様々なところで「日本では死者はみんな仏となる。これが日本の伝統」などとほざいているが、悪い冗談と言うほかにない。靖国神社ほど徹底的に無慈悲に、あくどく死者を差別・選別する宗教施設は世界にも珍しい。戊辰戦争の帰趨(きすう)を最後的に決めた会津戦争で、天皇のために戦死した官軍兵士が「神」として祀られる一方で、朝敵・会津藩兵士の何千もの死体は、官軍によって埋葬そのものを禁じられ、腐敗し、野獣の餌食になるにまかされていたというエピソードは、靖国神社というものの本質を原点的に明らかにしている。
明治維新は、内における徳川幕藩体制の矛盾と危機、外における黒船襲来(その向こうでの隣の清国におけるアヘン戦争や太平天国の乱勃発などの進行は十分認識されていた)という文字どおりの内憂外患的危機の中で、「尊皇攘夷(じょうい)」を称える下級武士らによって断行された。だが現実に彼らが依拠し、実際に幕府を打倒に導いたのは、薩長を始めとする雄藩の軍事力だった。だからこそ、それらを倒幕の一点で束ね、倒幕後は雄藩割拠状況に陥ることを防ぎ、喫緊の課題として国家統一を保障する絶対主義的権威として必要とされたのが、天皇であり、天皇制であった。
その「玉(ぎょく)」としての最大の利用価値は、古代への復帰幻想を濃厚に持った宗教的イデオロギー的権威・伝統だった。だが、それもあらかじめあったというより、この段階で「国家神道」というエセ宗教、超宗教としてねつ造されたと言える。
神社神道は以前から存在していたが、それらは古くから日本に伝来した仏教や儒教、陰陽道などとの様々な習合を重ね、多様な展開を遂げていた。また幕府の民衆支配を下支えした最大の力は仏教だった。維新直後の神道国教化政策はここに暴力的に襲いかかった。神仏分離、廃仏毀釈(きしゃく)である。そして他方では全国の神社を、上は天皇の祖先とされる天照大神を祀る伊勢神宮を本宗とし、下は村々にある鎮守、稲荷、産土(うぶすな)などまでを官幣社、国幣社、府県社、郷村社などというピラミッド型の階層支配に組み敷いていく。だがこの初期の超復古的、祭政一致的な神道国教化政策は、仏教側の抵抗や開国に伴う対外関係の中で破産、間もなく明治政府は、国家神道=非宗教=国家の祭祀という祭教分離政策に転じ、それは明治憲法でのアリバイ的な「信教の自由」とも矛盾しない形で敗戦まで続く。だがこの宗教の上に立つ「国家の祭祀」としての超宗教が、仏教やキリスト教、その他様々な教派神道、民俗宗教などをものみ込み、組みしだきながら、日本とアジア人民に対する凶悪なイデオロギー支配として機能したことは周知のとおりである。
そしてこの中で特殊に重要な教訓を担うのが別格官幣社の登場だった。国家神道は何のまとまった教義もない祭祀・儀式中心のエセ宗教であったが、敢えてその教典とされたのは、その後発布される教育勅語であった。そこでは、「臣民」の義務として「父母ニ孝ニ、兄弟ニ友ニ、夫婦相和シ」などの儒教的徳目を羅列した上で、最後に「一旦緩急アレバ義勇公ニ奉ジ以テ天壌無窮ノ皇運ヲ扶翼スベシ」と結論付け、天皇への絶対的忠誠、とりわけ天皇のための忠死を最大・最高の栄誉としたのである。
そのために明治政府は、伝来の日本宗教の解体・再編、換骨奪胎だけでは飽きたらず、天皇への忠死を顕彰・奨励するための特別の神社を次々創建していく。南朝の忠臣・楠木正成を祭神とする湊川神社がその最初であった。その後、南朝関係を始めとする歴代の武将を祀る神社が次々生まれるが、それらは一般の神社と違って神ではなく人、それも「臣下」を祭神としたものだが、しかし格式は高くなければならないということで別格官幣社と呼ばれた。だがこの別格官幣社の中でもさらに特別なのが靖国神社だった。そこでは祭神は歴史上の高名な武将でさえなく、そのほとんどが、昨日の戦争で死んだ名もなき民百姓であったのだ。
しかも重要なことは、既述のように当初の戦争は内戦だったが、天皇の軍隊の最初の海外派兵は早くも1874(明治7)年の台湾出兵で、ここに始まり皇軍の侵略戦争における戦死者の数は、日清・日露戦争からアジア・太平洋戦争にかけて爆発的に拡大し、靖国神社はそのすべてをのみ込み、「英霊」に仕立てあげていく。東京招魂社→靖国神社には、明治初めから「現人神(あらひとがみ)」天皇自ら参拝を重ねているが、こうして(天皇のための)死を天空にまで祭り上げて絶賛・顕彰することによって、臣民に対して新たな死を要求し、強制し、そのすべての死をどん欲に吸収・合祀し、それをとおしてさらに大きな戦争=死に臣民を駆り立てるという、どこまでもどこまでも膨張してゆく巨大な死の賛美と侵略戦争推進のイデオロギー装置として、靖国神社は日本帝国主義の軍事政策の決定的な支柱であり続けた。
靖国神社の延命許した戦後革命敗北の突破を
問題はこのような靖国神社が、アジア・太平洋戦争におけるあの大敗北後も今日まで生き延びていることである。靖国神社は今日、いけ図々しくも「近代国家成立のため、我が国の自存自衛のため、更に世界史的に視れば、皮膚の色とは関係のない自由で平等な世界を達成するため、避け得なかった多くの戦い」に、「尊い命を捧げられたのが英霊であり、その英霊の武勲、御遺徳を顕彰」(同神社ホームページ)するのが使命と高言している。
靖国神社が近年発表した祭神数は、247万柱にのぼる。このうち戦争別では、「満州事変」「支那事変」「大東亜戦争」に分類される死者が234万、つまり95%を占める。ここで注目すべきは、特に「大東亜戦争」の213万の戦死者の合祀は、当然のことながら、戦後、8・15以降に行われていることだ。
戦前の靖国神社は、他の神社が内務省の管轄下なのに対し、陸軍省、海軍省の直轄下にあった。だが敗戦後の45年末までに、陸・海軍省は廃止され、また神道指令によって国家神道体制は解体された。だがこの中で靖国神社は宗教法人令に基づく一宗教法人として生き残り、陸軍省、海軍省を引き継ぐ第一・第二復員省の管轄となった。そして独立回復後の52年には、宗教法人法に基づく東京都知事の認証を得た一宗教法人となる。
問題のアジア・太平洋戦争関係戦死者の合祀(ごうし)だが、靖国神社は敗戦直後、バタバタと臨時招魂祭を開き、その一括合祀を行った。だがそれは、氏名不詳、総数も不明の仮の合祀に過ぎなかった。靖国神社における正式の合祀では、霊璽(れいじ)簿なるものに戦死者の氏名、戸籍などを一人ずつ記載することが不可欠である。この正式合祀はずっと遅れて、57年あたりを頂点に敗戦から20〜30年の歳月をかけて行われる。しかし200万を超える戦死者の氏名や戸籍その他の確定などという作業が、民間の一宗教法人になった靖国神社だけでできるわけがない。それは第一・第二復員省の仕事を引き継ぐ厚生省が、各地方自治体に問い合わせするなど全面的にバックアップすることで初めて可能となった。
もちろんその大作業には少なくない国家予算が投入された。それは、民間の一宗教団体の活動を国家が全面的に支えるという、これ以上にない憲法・政教分離原則違反行為だった。しかしそれが問われることはなかった。そしてその背後には、戦後の靖国神社を支えた「民衆の靖国」という、より深刻な問題が横たわっていたのである。
200万を超える戦死者(その他にも100万におよぶ民間人の死者がいたのだが)の後には当然その数倍の遺族が残された。肉親を失った悲しみとともに経済的困窮が最も深刻な問題だった。こうして46年には早くも日本遺族厚生連盟が結成されるが、それは当時800万票を組織する力を持っていた。それが53年には財団法人・日本遺族会となるのだが、ともかく巨大な力である。800万といえば今日公明党が組織する票数だが、有権者数が今日よりずっと少なかった当時ではより大きい政治力だった。
そしてその運動の要求が実って、独立回復後の52年には、いわゆる遺族援護法が成立し、戦後初めて軍人・軍属やその遺族に年金、弔慰金が支給された(独立とともに日本国籍を失った旧植民地出身者は除外された)。だがその遺族擁護運動に始まる日本遺族会の運動はけっして経済的次元の要求にとどまることなく、それと一体のものとして戦死者の靖国合祀や首相や天皇の靖国公式参拝を要求し、後には靖国神社国家護持運動を強力に推進する母体に成長していく。これは戦後の日本政治史の中で極めて大きい事柄だった。
戦死者(その大半は労働者農民)といえば言うまでもなく戦争の最大の犠牲者であり、その遺族は、夫や息子たちを暴力とデマゴギーによって死地に追いやり命を奪った天皇を始めとする戦争責任者を、本来であれば先頭に立って弾劾し、断罪しなければならない人たちであった。だが現実には右に見たように、その大半が遺族援護運動などをとおしてだが、「靖国の母」「靖国の妻」「靖国の遺子・遺族」としてからめとられ、日本遺族会という戦後保守党の最も強力な、最も右翼的・反動的な支持基盤に組織されていくのである。
それは戦後革命の敗北と深く連動した事柄だった。正力社長の戦争犯罪を追及する読売争議を始め、戦争責任を人民的に糾してゆく闘いは戦後革命期の労働運動の中に様々あった。それをつぶしたのが「解放軍規定」の日本共産党である。東京裁判にゲタをあずける形で、米占領軍が左右を問わず東京裁判を批判する言論を一切許さなかったことに率先協力することによって、戦後革命のある意味で最大のテーマとなっても不思議ではないはずの戦争責任問題、特に天皇の戦争責任問題は、新憲法とそのもとでの象徴天皇制の成立とともに階級闘争とは無縁のところに置き去りにされていく。
もちろんこの戦争責任問題は、より大きくは東西冷戦の進行の中で、フタをされてきたということであり、だからこそ戦後世界体制に対する全世界的スケールでの最大の反乱としてあった60年代末からのベトナム反戦闘争の中で、ドイツでもそうだが日本でも、戦争責任をあらためて問い直す動きが強まっていく。日本では70年の盧溝橋事件33周年記念日における華青闘(華僑青年闘争委員会)の日本人民・日本左翼に対する糾弾とこれに対する自己批判が重要だったが、同時にこの時期以降、全国各地の様々な個人、市民、宗教者たちによる政教分離原則を踏まえた違憲訴訟が次々と起こされる。その嚆矢(こうし)となるのは、65年に始まる津地鎮祭違憲訴訟だが、直接靖国問題に関連するものとしては、72年の山口護国神社への自衛官合祀拒否訴訟、76年の箕面忠魂碑違憲訴訟、82年の愛媛玉串料違憲訴訟などが続き、この間では首相の靖国公式参拝に対する各地での違憲訴訟、あるいは旧植民地出身戦死者遺族による靖国合祀取り下げ訴訟など、極めて多彩な裁判闘争が広がっている。
これらの闘いの特徴は、まず70年を前後して次々と始まることである。その意味でその基底には明白に70年闘争が切り開いた地平があった。しかしこれらはいずれも個人の闘いにとどまり、革新政党や労働組合は支援という形でもほとんど関わっていない。ただ個人の闘いとはいえ、これらの闘いは、たとえば山口の訴訟を起こした元自衛官の妻(キリスト教徒)に対しては、「非国民」「国賊」「亡国の輩」などという脅迫・暴言の電話、手紙、ハガキが何年にもわたって集中し、愛媛訴訟の僧侶の自宅前には右翼の街宣車が張り付き、「国賊坊主」「寺に火つけたる」「子どもを学校に行けんようにしたる」と大音響でまくし立て、家族の生活が不可能になるという中で貫かれた闘いだった。
それらの訴訟の大半は、下級審では勝っても上級審で覆されるという経過をたどっているが、愛媛訴訟の場合のように97年最高裁大法廷で愛媛県が靖国神社などに玉串料として16万円余の公金を支出したのは違憲という決定的な勝利判決をかちとった例もある。われわれはこれらの勇気ある個人、市民、宗教者たちの闘いの意義をあらためてしっかり確認し、そこから学んでいく必要があるだろう。
今日、靖国の問題は60年前の戦争をどう総括するかの問題であると同時に、それにとどまらず迫り来る新たな戦争を許すのか否かをめぐる最も核心的なところでの闘いになっている。小泉が靖国参拝にあくまでこだわっているのは、日米反動枢軸のもとで新たなアジア侵略戦争、世界戦争に突き進もうとしている日帝にとって、靖国神社がかつて果たしていた役割を復活させることが不可欠だからである。だからこそ、韓国、中国の人民はこれまでをはるかに超えるスケールと激しさで決起を開始した。これにこたえ、連帯し、今こそ靖国闘争を、さらに教科書闘争を、戦後日本階級闘争の負の遺産をのりこえた広範な全労働者人民の闘いとしてつくり出していかなければならない。その決定的正念場としての2005年8月15日が目前に迫っている。
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週刊『前進』(2209号5面2)(2005/08/08)
靖国と戦争責任をテーマに 8・15労働者市民の集い
今年も8月15日、東京・なかのゼロで「8・15労働者市民の集い」が開かれる。主催は「戦後50年を問う8・15労働者市民の集い実行委員会」。
95年から毎年続けられてきたこの集会も、今年で11回目を数えるが、今回のテーマ「60年目の戦争責任−憲法9条と靖国参拝」「国益と排外に憲法は屈するのか」が示しているとおり、敗戦60周年のこの日に開かれる集会はかつてない重要な意義を持っている。
メインの講演は、教育基本法改悪攻撃を鋭く批判し続けてきた大内裕和さん(松山大学教員)の「労働組合と平和」。さらに国際連帯アピールとして米韓日の労働者を代表してアメリカからスティーブ・ゼルツァーさん、韓国から民主労総ソウル地域本部のコジョンファン本部長がかけつけ、日本からは動労千葉が訴える。またおなじみのコメディアン松元ヒロさんが、「小泉首相」らになりきっての爆笑コントを披露する。さらに発言者として、「日の丸・君が代」処分と闘う教育労働者、「つくる会」教科書採択に反対する住民、郵政民営化攻撃と闘う全逓労働者、憲法と人権の日弁連をめざす会の弁護士が予定されている。
本格化する改憲・戦争国家化攻撃と闘う力を蓄えるために、この8・15集会はまたとない機会である。
60年目の戦争責任−憲法9条と靖国参拝
国益と排外に憲法は屈するのか
8・15労働者市民の集い
8月15日(月)正午開場、午後1時開会
東京・なかのゼロホール(JR中野駅南口下車、線路沿いを新宿方向に徒歩8分)
主催/戦後50年を問う8・15労働者市民の集い実行委員会
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週刊『前進』(2209号6面1)(2005/08/08)
労働者隊列倍増させ成田「北延伸」阻もう 関東・労働者 A・U
7月下旬に成田空港暫定滑走路の北延伸計画が発表され、三里塚は非常に緊迫している。7月24日の現地緊急闘争に私も参加した。
過去、三里塚闘争が大爆発する時は、闘う青年労働者が合流してきた。初期の強制代執行の時には社会党や共産党の裏切りをのりこえた反戦派労働者が。そして78年開港阻止決戦では、動労千葉地本(後の動労千葉)が。開港阻止決戦のころまでは自治労東京都本部の青年たちも親組合の弾圧をはねのけて闘っていた。当時の渋谷区職労は壁に大きな「団結新聞」をつくり、三里塚を訴えたそうだ。
反対同盟を激励し、三里塚を闘う労働者の隊列を倍増するような大衆闘争が必要だ。現地では私服刑事がストーカーまがいの住民監視を行い、民家のすぐ裏で航空機が騒音をまき散らしている。こんな所が日本のどこにあるだろうか。三里塚は40年間「有事法制下」で闘っている。この状況を見た時、青年労働者の怒りが解き放たれることは間違いない。
労働者は今、競争させられ、孤立し、分断されている。労働者の連帯と紐帯(ちゅうたい)を築かないことには農民や漁民との連帯もない。農業も資本の餌食(えじき)となる。離農の現実と労働者が職場を追われる現状は響きあう。
援農や現地調査、交流会や学習会をもっともっと企画しよう。全国から三里塚へ駆けつけ、北延伸を粉砕し、暫定滑走路を閉鎖に追い込み、軍事空港を廃港に追い込もう。
デモの後、事務局長の北原さんは「闘いには夢とロマンがなくてはならない。闘争が元気の源だ。青年よ、日本の将来を変えるためにともに闘おう」と訴えた。そうだ。今こそ青年労働者を組織し、隊列を倍増させ、三里塚へ駆けつけよう。
3千人の労働者集会で “生きる希望”得た 宮本絵美
私の夫は1946年に日本共産党に入党しましたが、まもなく党から追放されました。1950年8月のレッドパージで職場を失い、同一労働・同一賃金を獲得した欣(よろこ)びもつかの間。子どもが産まれ、これからという矢先で生活は苦しくなるばかりでした。子どもたちには義務教育をやっとの思いで終わらせるのが精一杯でした。
1947年1月31日の夜9時半前「私は今、マッカーサー連合軍司令官の命により……」とラジオから流れてくる言葉に耳を奪われました。ゼネスト中止が伝えられました。もしあの時、伊井弥四郎がGHQの凶弾に倒れていたら、翌日2・1ゼネストに突入していただろう私たち。その時、22歳の乙女の命も散ったかもしれません。
1957年の勤評闘争は子どもが小学生と中学生の時で、私も先生たちの闘いに参加しました。
戦後、労働者の住み良い社会ができると希望に燃えていたのに、私たちの努力は、青春を賭(か)けた私の人生は、一体何だったんだろう? 私の命のあるうちに日本の夜明け、世界の黎明(れいめい)は見られないと思っていました。
1997年の秋、安保ガイドライン反対の署名活動をしている女性と街頭で出会い、東京・日比谷公園の労働者集会に誘われました。闘う労働者がまだ3000人もいるんだと感動しました。2003年の労働者集会では韓国、アメリカの労働者の連帯の言葉を直接耳にできたことは、この上もないことでした。
そして今、私も「つくる会」教科書の採択阻止へ、地域の仲間と一緒に闘っています。
砂川闘争50年の集い “人間性の尊重学ぶ” 東京 S・T
7月24日、東京・立川市の三多摩労働会館で、故宮岡政雄氏の著書『砂川闘争の記録』が新装版として御茶の水書房から出版されたことを記念して『砂川闘争50周年講演と出版記念の集い』が開催され、反対同盟とその家族、元砂川事件弁護団、砂川を支援する労働者市民80人が結集した。
三一書房労組委員長の三角忠さんの司会で集会は始まった。大学生として砂川闘争を闘った葉山岳夫弁護士は「終生、農地死守・実力闘争、労働者・学生との共闘を追求された」と宮岡さんの闘いをたたえた。
元砂川事件弁護団の榎本信行弁護士は「孤立しながらも砂川の人たちは、ベトナム反戦闘争との連帯を忘れなかった。だから勝利できた」と振り返った。
三里塚空港反対同盟と北富士忍草母の会のメッセージが寄せられた。横田基地飛行差止訴訟団の浅野太三さんは「砂川に学び、横田も闘う」と決意を述べた。
集会の最後に、故宮岡政雄氏夫人のキヌ子さんが自らも闘争に参加しながら畑仕事を続けてきた思い出を語った。
集会後の記念パーティーでは、故宮岡政雄氏の友人であり革共同の藤原慶久さんは「農民と連帯して労働者階級が立ち上がったことが闘争の勝利を切り開いた。『砂川闘争の記録』の出版はきわめて意義がある」と述べた。三多摩労組交流センターの仲間は、今も耕作地を守りぬいていることを報告した。
最後に、宮岡政雄氏の次女の福島京子さんがお礼の言葉を述べ「今度の新装版の出版をとおして、最後まで闘った23戸の農家の皆さんがいたから砂川は勝利できたと訴えたかった」と結んだ。
第7次派兵阻止訴え大村駐屯地までデモ 長崎 大浜 豊
7月24日、「第7次イラク復興支援群」の派兵を前に、長崎県大村市で行われた「自衛隊のイラク派兵を考える大村市民ネットワーク」主催の「異議あり! イラク派兵、自衛隊の撤退を求める県民集会」と、集会後に行われた自衛隊大村駐屯地までのデモ(写真)に参加しました。
デモに先立つ集会には、約700人の労働者市民が参加。集会では、主催団体の代表である渡辺正之氏が「自衛隊派兵は明らかに憲法違反。今ここで食い止めないと60年前の日本に戻ってしまう」とあいさつ。中崎幸夫・長崎県平和運動センター議長や今川正美・社民党県連代表らが、米軍が使用した劣化ウラン弾による自衛官の健康被害の危険性を訴えました。
その後、自衛隊のイラク派兵中止・即時撤退や、帰国した自衛官に対する放射能検査を含む健康診断の徹底と、結果の公表などを求める決議文を採択しました。
集会後、陸自大村駐屯地を一周するデモを行いました。基地の中では木製の模擬銃を持たされた若い自衛官たちが10bおきに立たされ、基地の警備にあたらされていました。若い自衛官たちは「イラク戦争は侵略戦争だ」「イラクに行けば劣化ウラン弾で被曝(ひばく)する危険があるぞ」「出兵命令を拒否しよう」と呼びかけるデモ隊に対して、終始うつむいたままでした。
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週刊『前進』(2209号6面2)(2005/08/08)
不当逮捕30年 革共同の決意
生命を奪う無期懲役と闘う星野同志の奪還へ総決起を
本年8月6日、星野文昭同志は、不当逮捕から30年を迎える。われわれは、30年もの間、無期懲役の獄につながれた星野同志を取り戻すことができていない現実を見据えなければならない。それがどれほどの年月か、自分の人生と重ねてみれば分かる。その年月を、無実の星野同志は、人間としてのあらゆる自由を奪われ、徳島刑務所で闘っているのだ。革共同は、この2005年後半、革命党としての存立をかけ、星野文昭同志奪還へ総決起する決意である。
(画 星野文昭同志の自画像)
無期懲役の不当性
星野文昭同志は、1996年4月17日に申し立てた再審請求に際して、次のように述べている。
「事実でない、やっていない、無実なのに、無期懲役を強いられる。一体、こんな理不尽なことがあるだろうか。こんな不当なことがあるだろうか。
人間としての当たり前の生活、人生そのもの、自由そのものを根本から奪われ、家族や友人や社会から獄壁で隔絶され、それも二度と自由の大地で妻・家族や友人たちと手を握り、抱きしめ合うことも許されないまま、獄壁ゆえに様々な形で人間としての存在も尊厳も踏みにじられ、心身の健康が侵され、そうしてやがて獄で朽ち果てるまで、死ぬまで服役生活を強いられる、人間としての一生が踏みにじられる、これが私が確定判決によって強いられている無期懲役の現実であり、未来である。
それも、やっていないのに、無実なのにだ。
人間として、一体これほどの無念があるだろうか。世の中に、これほどの理不尽があるだろうか」(星野文昭意見書)
同志諸君。この言葉に正面から向き合ってほしい。一語、一語、声に出して読んでほしい。
星野同志は無実だ
無実の革命家が「殺人罪」をデッチあげられ、無期懲役を強いられている。家族とも同志とも、獄壁で隔てられ、自由に語り合うことも、手を握り合うこともできない。
無期懲役と有期懲役とは、本質的に違う。日帝・国家権力は、星野文昭同志に無期限の服役を強制することによって、彼の生命そのものを抹殺する攻撃をかけているのだ。
星野文昭同志は、71年11・14渋谷闘争に、人間としてのすべてをかけて決起した。直前に3度目の破防法が発動され、都内における集会・デモは一切禁止された。11・14当日、1万2千人の機動隊が渋谷を制圧した。
星野同志は、この機動隊の壁を突破して、渋谷で待ち受ける巨万の大衆と合流して闘い抜いた。その中での機動隊員せん滅は、ものすごい衝撃であった。
星野文昭同志は、代々木八幡駅から渋谷に突入した部隊のリーダーであった。彼は、そのことを隠そうとしない。いや、人生の誇りにしている。しかし、彼は機動隊員せん滅には一切関与していない。現場から十数b離れた十字路に立ち、NHK方面に姿を現した機動隊の動きに注意を集中していたのだ。これが真実である。
日帝・国家権力は星野同志を「殺人罪」で起訴した。「証拠」とされたのは、未成年者を含む闘争参加者に強要したウソの供述調書だけである。物的証拠はひとつもない。
にもかかわらず、東京高裁・草場裁判長は、一審判決の懲役20年を破棄し、星野同志に無期懲役を宣告した。上告棄却によって、これが確定判決となった。96年、再審請求書を提出し、現在、闘いの場は最高裁に移っている。
再審請求大運動を
星野同志を無期懲役とした確定判決は完全に破綻(はたん)している。これまで繰り返し確認してきたように、核心証拠と言えるK証人は、服装の色に基づく推定でしか星野同志を特定できていない。星野同志が無実である以上、「証拠」などあるはずがない。
獄中30年を迎えた星野同志を、これ以上獄に置くことはできない。05年後半、星野同志を取り戻す闘いを全力で展開しよう。
今求められているのは、全同志の総決起である。これは、革命党としての存立をかけた闘いである。すべての同志が星野裁判の内容を学び、「星野同志は無実だ」という確信を持とう。これが、一切の闘いの原動力である。そして、あらゆる闘いの場で星野同志奪還を訴えよう。
「星野さんをとり戻そう! 全国再審連絡会議」は昨年沖縄で総会を開き、本年11月に関西の地で全国集会を開くことを決定した。われわれは、これに心から敬意を表し、その成功のためにともに闘う。
再審開始を要求する巨大な運動を最高裁に突きつけ、星野同志奪還へ闘い抜こう。
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週刊『前進』(2209号6面3)(2005/08/08)
「障害者自立支援法案」を参院で廃案に追い込もう
関東「障害者」解放委員会
廃案に向けた展望切り開く
7月22日、参議院本会議で「障害者自立支援法案」の趣旨説明が行われ、「自立支援法案」の審議はいよいよ参院段階に突入した。この日も多くの「障害者」が国会前に集まり、「参議院で必ず廃案にしよう」と国会行動を行った。本会議後、社民党の福島みずほ議員は、国会前に座り込んだ「障害者」を前に「あくまで廃案をめざす」とあらためて決意を語った。
7月15日、自民党、公明党が13日の衆議院厚生労働委員会に続いて本会議で「自立支援法案」の採決を強行したことは絶対に許せない。しかし衆院段階の闘いは同時に、廃案に向けた大きな展望を切り開いている。
法案が国会に提出された2月の時点では、介護保険制度への統合に反対してきた「障害者」団体でも、幹部の間では「自民、公明が多数派の国会において廃案はありえず、原案を通させないためには修正による法案成立はやむなし」という意見が大勢を占めた。
厚労省は、法の施行日を最も早いものでは10月1日、次の応益負担導入では来年1月1日とし、もともとそこまでしか05年度予算をつけないという方法で、「もしこの法案が会期内に成立しなかったら、それ以降の予算は確保されない」と「障害者」団体や関係者を脅し、法案への賛成を強要した。他方で、法案の具体的な中身は法案成立後に定められる「政省令にゆだねる」とし、利用者の被害を隠すことによって反対の声を封じようとした。政省令は195項目にも及び、本来なら審議は不可能だ。
そればかりか当初、法案の修正を方針としていた民主党が「障害者」の強い反対に押されて与党との修正協議を拒否すると、今度は厚労省が政省令をめぐる民主党との協議を拒否するという形で、政省令を野党を屈服させるための手段にさえしてきた。もともと政府提出法案を事前に与党にだけ示すということ自体、議会制民主主義のルール違反だ。その上でこうしたやり方は絶対に許すことができない。
衆院審議の終盤で、厚労省が昨年の社会保障審議会・障害者部会で精神医療などの数字を6種類11件も偽って報告し結論を誘導していた事実が明らかになった。偽造データ問題は、こうした日帝の法案推進における不正の数々の頂点をなすものだ。
「障害者」が体を張って闘う
本格的に審議が始まった5月以降、国会前には連日のように大勢の「障害者」が詰めかけた。
炎天の日も雨の日も座り込みやハンスト、泊まり込み行動を波状的に行った。「座して死を待つより、体を張って闘おう」という命懸けの生存闘争が開始されたのである。
5月12日の日比谷集会には全国から6600人が結集し、「障害者」の長蛇の隊列が国会を取り巻いた。そして国会前のハンスト闘争が掲げた「廃案」のスローガンがデモ隊列全体のスローガンとなるような状況が生み出された。
こうした中で、介護保険統合を昨年一致した力で阻止しながら、「自立支援法」をめぐってはいったん分断されたかに見えた「障害者」運動の力が再形成され、ついに6月19日の会期内成立を不可能とするところに日帝を追いつめた。その結果「自立支援法」が都議選の争点になることが不可避になると、6月以降、衆院厚労委での審議は事実上、一時停止状態に入った。「障害者」団体は都議選で「自立支援法」に賛成する候補の落選運動を展開した。
6月下旬、与党と民主党の修正協議が決裂すると、「障害者」団体の幹部が「廃案に反対。民主党は協議に戻れ」と記者会見した。またこれに対して「障害者」から抗議が殺到するという一幕もあった。
日比谷野音に全国から1万
7月5日の日比谷野音での集会には全国から1万人が結集し、再度国会を長蛇のデモ隊列が取り巻いた。
7月8日、偽造データ問題で委員会が4回にわたって中断。急きょ12日に障害者部会を緊急招集し、厚労省が「単純ミス」と謝罪し、部会が「法案審議に影響なし」と了承する形で事態の収拾を図り、かろうじて13日の委員会採決に持ち込んだ。
委員会の傍聴人は定員の4倍ほどに膨れ、入れ替え制になって国会内にひしめいた。採決強行に対して議場は怒号に包まれた。15日に厚労省の意を受けた「障害者」団体が再度「廃案には反対」と記者会見したが、その数3団体と、6月の8団体から5団体減った。
衆議院での採決は強行されたが、闘いはまさにこれからだ。「障害者自立支援法案」の廃案をめざす闘いは、政府・与党が国会内の「数の力」だけでは事態が打開できない力関係をつくりだしている。参院で「自立支援法案」を廃案にしよう。
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週刊『前進』(2209号6面4)(2005/08/08)
江戸川区役所ビラまき逮捕 2同志奪還しよう 戦時下言論弾圧許さない
2人の同志を逮捕した東京・江戸川区役所でのビラまき弾圧(7月13日)は、絶対に許せない。全人民の闘いで粉砕しよう。
警視庁と東京地検は、2同志をなおも勾留し続けている。しかもこの逮捕を口実に、前進社や大衆団体事務所、個人宅への家宅捜索を強行している。デッチあげた「公務執行妨害」事件を、大がかりな計画的「犯行」であるかのように描きあげ、弾圧を継続している。警視庁、江戸川区役所、検察庁、裁判所が一体となった治安弾圧である。
警察は、同志が「区総務課長の公務を妨害した」「総務課長の胸を押した」などと言っている。だが、そのような事実は一切ない。10年間、3カ月に1度、定期的にまき続けてきたビラを、この日も、出勤途上の労働者にまいていただけである。それを、当日は区の秋元総務課長が警視庁公安部の星隆夫らとの共謀の上、公安刑事をあらかじめ区役所の建物内に導き入れておいて、逮捕を目的にして襲いかかったのだ。
弾圧はあらかじめ仕組まれていたのだ。立川での反戦ビラ弾圧、卒業式闘争での「日の丸・君が代」反対ビラまき弾圧、政党ビラ配布への弾圧など、この間激化しているビラまき弾圧は、戦時下に政府を批判し反戦を呼びかけることを一切許さないという政治弾圧の激化である。これを許しておいたら民衆の表現・思想・言論の自由はことごとく圧殺され、かつての治安維持法下の弾圧が復活し、労働者人民は再び帝国主義戦争に動員され犠牲にされてしまう。
7・13弾圧は、7月7日にロンドンでゲリラ戦が爆発し、日帝と東京都が厳戒態勢に入った中で強行された。アフガニスタン・イラク侵略戦争に参戦した日帝は、人民の怒りと闘いの爆発を心底から恐れており、なんとしてもこれを抑え込もうと、デッチあげ弾圧、労働運動弾圧、治安弾圧に突き進んでいるのだ。
帝国主義の侵略戦争と不屈に闘うイラク・ムスリム人民、アジア人民と固く連帯し、日帝打倒・プロレタリア革命の勝利に向かって、階級的労働運動の大前進と、革命党の強固な建設をかちとろう。
逮捕された2同志の釈放を直ちにかちとろう。
不起訴で釈放
同じ7月13日に静岡で「電磁的公正証書原本不実記録・同供用」をデッチあげられ不当逮捕された同志は、同23日に不起訴で釈放をかちとった。
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