ZENSHIN 2003/05/05(No2100
p10)
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第2100号(春季特別号第1部6ージ)
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(1〜6面)
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春季特別号第1部
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週刊『前進』(2100号7面1)
有事立法阻止へ総決起を
4月統一地方選勝利の地平から5〜6月戦後最大の政治決戦へ
STOP有事法制 5・23大集会に結集しよう
城戸 通隆
世界危機の爆発、帝国主義の基本矛盾の全面的爆発とその世界戦争への転化の趨勢(すうせい)が、完全に現実のものとなった。唯一の超大国としての米帝は、世界を戦争的プロセス=世界戦争へとたたき込んでいくことによってしか、世界帝国として延命できない。イラク侵略戦争の強行は、そのことをはっきりと突き出した。「戦争終結」「イラク解放」「戦後復興」といった帝国主義の反動的虚構の大宣伝に怒りを爆発させ、米英日帝のイラク軍事占領・再植民地化とシリア・北朝鮮への侵略戦争の拡大に反対する革命的な反戦闘争を、日本と全世界で強力に組織していこう。この闘いと一体となって、5〜6月、日帝・小泉の北朝鮮(中国)侵略戦争のための有事立法を阻止する闘いに全力で決起しよう。戦争と反動、抑圧と搾取の日帝・小泉政権を今こそ打倒せよ!
第1章 国際階級闘争と3大決戦が開いた素晴らしい経験
われわれは今年の1月〜4月、03年新年号政治局アピールで提起した路線のもとに、革共同と労働者人民の総決起で、イラク反戦を軸とした3大決戦を全力で闘いぬいてきた。
3大決戦とは、言うまでもなく、@イラク反戦と北朝鮮侵略戦争阻止=有事立法粉砕の決戦、A国労5・27臨大闘争弾圧粉砕の闘いと03春闘決戦、B4・27統一地方選決戦の三つである。
この3大決戦の基軸をなすものは、何よりもイラク反戦闘争であった。われわれは新年号アピールで、すでに新帝国主義世界戦争のプロセスが始まっており、それに対して全世界で反戦闘争がダイナミックに爆発を開始し、階級闘争が革命的胎動を見せ、レーニンの言う革命的情勢が全世界的につくりだされてきていると言いきった。とりわけ全世界で爆発する反戦デモが、大不況下の一大資本攻勢と階級的に対決している労働者によって担われていること、しかもそれが各国の膨大なムスリム人民との連帯を契機とし、国際連帯の積極的なアピール性をもっていることに圧倒的に注目した。
イラク反戦デモはこの1〜4月、昨年の闘いをはるかに上回り、開戦前にベトナム反戦闘争を超える規模をもって空前の爆発をかちとった。特に2月15日を前後する闘いは、地球を一周する全世界で1500万人もの反戦ウエーブとなり、帝国主義の歴史的な亀裂・分裂を突き破って、米英日帝のイラク侵略戦争開戦への野望を痛撃した。
英帝ブレア足下で200万人を大結集した2・15ロンドンの反戦デモは、今日の闘いの構図を象徴している。昨年9・28に40万人を集めたデモの主催者である「戦争阻止連合」と「英国ムスリム連盟」にさらに「核軍縮運動」などが加わり、労働組合とムスリムを階級的な軸として、統一戦線は一層広がった。「戦争阻止連合」のアンドリュー・マレー会長自身、労組活動家である。
こうした労組・労働者を最大の実体とし軸とする大統一戦線であることは、アメリカ、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、韓国など全世界で基本的に同じである。ここに今日のイラク反戦闘争の階級性、国際性があり、帝国主義打倒を核心とした闘いへの発展の根拠と可能性がある。世界革命までやむことのない階級的闘いが始まっているのだ。
国際連帯の新時代へ
日本におけるイラク反戦闘争も国際統一行動の一環として、2・14明治公園の2万5千人(20労組)や3・8日比谷の4万人(ワールド・ピース・ナウ)を始め、数千、数万の規模で爆発がかちとられた。われわれは反戦共同行動委の闘いを展開すると同時に、20労組や百万人署名運動など広範で自主的な統一戦線の闘いと連帯し、東京でも100万人の反戦デモを絶対に実現する決意も固く、反戦闘争の爆発のために全力で奮闘した。
さらにこの1〜4月のイラク反戦の闘いの中で、全学連アメリカ派遣団とそのワシントンデモ、米英空爆下のバグダッドでの反戦デモ、さらに米ANSWER連合との連帯・交流など、具体的な国際連帯行動においても、画期的で歴史的意義のある闘いが実現された。
そして特筆すべきことは、法政大学の学生が呼びかけて開始され、すでに5度にわたって2〜3千人の集会とデモが東京・渋谷で実現された「ストップ・ウオー! ワールド・アクション」だ。この闘いは学生や青年労働者を中心に、あらゆる層の人びとが主体的、自己解放的に決起して開始された運動であり、階級性(労組性)と国際性に満ち満ちた、新しいタイプの反戦闘争である。この闘いは全国にも広がっている。
新たな情勢におけるイラク反戦闘争は、革共同が新年号アピールで提起したように、21世紀の今日の現実に即して、新しい型の『社会主義と戦争』(世界大戦下のプロレタリアートの任務)の内容を創成しつつ闘うことを求めている。その核心は、レーニン主義を断固継承し、帝国主義の侵略戦争―世界戦争を、革命的祖国敗北主義に立って自国帝国主義打倒の内乱(国内戦)、国際帝国主義打倒の国際的内乱に転化するために、反戦闘争を闘うということである。
次に、国鉄決戦と春闘においては、まず国労5・27臨大闘争弾圧粉砕の闘いが国労組合員と支援の被告8人と、家族の不屈の決起を先頭に、それと連帯して5回にわたる公判闘争が圧倒的に闘いぬかれた。そして「国労5・27臨大闘争弾圧を許さない会」を広範な大衆運動として組織する闘いが前進してきた。この弾圧粉砕の大衆的闘いこそは、国労本部の闘争団切り捨て―国労自己解体の策動と対決して、1047名闘争勝利と国労の階級的再生をかちとる闘いである。さらに全力で強化されなければならない。
ベアゼロはおろか定昇解体の全面的な賃下げ攻撃の中での春闘は、動労千葉が3月27日午前5時から30日午後8時過ぎまで4日間ストを打ち抜き(スト参加者数は延べ540人、運休本数591本)、総反撃の先頭に立った。このストは米英のレーバーネットで「イラク戦争、民営化と抑圧に抗して600本の列車を止めるストライキを敢行」と報じられたように、国際的な衝撃を呼んだ闘いであり、賃下げ阻止とイラク反戦への労働者の渾身(こんしん)の決起であった。
偉大な動労千葉ストと結合し、「03春闘勝利! 3・29全国労働者集会」が代
々木公園で1600人を結集してかちとられた。この闘いは動労千葉ストとともに、03春闘の頂点に位置し、連合などの屈服と裏切りを突き破り、帝国主義の侵略戦争と一大資本攻勢への日本労働者階級の総反撃の道筋を示す闘いとなった。
さらにわれわれは、3大決戦の全体を集約する最高の闘いとして、4・27統一地方選決戦に持てるすべての力を傾注して総決起した。
「反戦一辺倒、介護一辺倒」に徹し、日本共産党や、生活者ネットなどの「市民派」の口先だけの反戦、あるいは反戦も言わぬ腐敗と犯罪性を断固批判しながら、徹底的な反戦派、侵略戦争絶対反対派として登場し、「反戦と福祉の新党」を実現するために闘いぬいた。
とりわけ、杉並区議選での3候補全員の絶対当選以外には勝利はないことを固く決意し、宣伝革命、演説革命を推進しつつ、区民・住民の自主的決起と一体となって、われわれ自身の全労働者人民の中への公然たる政党的登場をかけて、闘いぬいたのである。
以上、今年1〜4月の3大決戦の勝利の地平から、さらに5〜6月の次なる大決戦に突き進んでいこうではないか。
5〜6月の最大の課題は、有事3法案と個人情報保護法案を阻止する有事立法決戦を、戦後最大の政治決戦として、20労組の闘いなどと連帯しつつ、全力で闘いぬくことだ。それをイラク侵略戦争絶対反対、シリア・北朝鮮への侵略戦争の拡大を阻止する革命的な反戦闘争と結合して全面的に爆発させることである。
そしてこの闘いのただ中で、それと一体のものとして、@国労5・27臨大闘争弾圧粉砕、労働法制改悪阻止、教育基本法改悪阻止を基軸とした労働運動の前進、A学生運動の爆発的発展の闘い、Bマル青労同再建への全力をあげた闘い、C秋を展望した星野文昭同志奪還、福嶋昌男同志奪還の闘いなど反弾圧闘争の推進、D3月全国機関紙担当者会議で圧倒的に確認された機関紙拡大闘争への総決起、E路線的破産と分裂の危機を一層深めるカクマル中央派とJR総連松崎派に対する追撃の闘いなどを、とりわけ強力に推進していくことを訴えたい。
第2章 イラク戦争は帝国主義の一方的な侵略・虐殺戦争
イラク情勢は重大な新局面に突入している。帝国主義とそのマスコミは、米帝(米英日帝)のイラク侵略戦争は長期の泥沼化どころか「短期決戦」でフセイン政権崩壊と全土の軍事制圧で決着し、イラクは「解放」され、あとは基本的に「戦後復興」の問題だと反動的キャンペーンを展開している。しかしこれは、とんでもない虚構である。
米英日帝の侵略戦争は現実には継続・拡大され、イラク軍事占領と再植民地化が進められ、シリア・北朝鮮へと侵略戦争は拡大・激化しようとしているのである。帝国主義の虚構を怒りを込めて粉砕し、イラク侵略戦争絶対反対の闘いを強化しなければならない。
第一に、まず何よりも確認すべきことは、この戦争は米帝(米英日帝)による一方的な恐るべき侵略戦争であり、虐殺戦争だということだ。単なる2国間、あるいは国家間の戦争などではない。世界の唯一の超大国で基軸帝国主義である米帝が、圧倒的な国力差・軍事力差のある戦後新植民地主義体制下の国であるイラクに、「大量破壊兵器」の問題を口実に襲いかかったのだ。しかもイラクは91年の戦争で決定的に痛めつけられ、その後も空爆と経済制裁を受けてきた国だ。
このイラクに米英帝はすでに2万3000発以上の数々の精密誘導弾をぶち込み、イラク軍せん滅はもとより、大統領宮殿などあらゆる国家機構、インフラ、住宅地、病院、市場、報道機関を爆撃し、破壊し、大虐殺を行ったのである。地上戦での戦車やアパッチ・ヘリによる砲撃がこれに加わり、イラクは虐殺と破壊の焦土と化したのだ。これは一方的な憎むべき帝国主義侵略戦争である。
第二に、これに対してイラク人民は、決死のすさまじい軍事的反撃、とりわけゲリラ的反撃を展開した。開戦後、トルコ基地を使えず南部からの侵攻戦略をとるしかなかった米英軍は、「解放軍」としては迎えられず、バスラ、ウムカスルなどでは激しいゲリラ戦的戦闘を浴びせられ、都市制圧がなかなかできなかった。伸び切った米軍の補給線が一時危機に陥った。それを突いたゲリラ戦は米帝にかなりの打撃を与えたのである。
イラク人民の反撃戦
バグダッドでも、ゲリラ戦的な市街戦は十分には爆発しなかったが、厳しい報道管制下で、一定激しいゲリラ戦が戦われている。4月5日、首都侵攻の米軍戦車の司令官がハッチから体を出していて、手投げ弾を受けて死んだ。それを投げたイラク人民の戦闘は壮絶である。「2両後方にいたトンプソン3等軍曹は手投げ弾を投げたイラク人を見た。『足がなかった』が、なんとか投げた。戦車の司令官はそのイラク人を機関銃で殺した」(4・7付朝日新聞)
今でもゲリラ戦の火は各地で燃え続けている。イラク人民は純然たる侵略軍・占領軍としての米英軍に対し、必ず創意的・創造的なゲリラ戦、民族解放・革命戦争をもって立ち上がり、帝国主義をたたき出し勝利するまで闘い続けるに違いないのだ。イラク人民の民族解放闘争は、フセイン政権の反人民的抑圧のもとでは不可能であった激しさをもって本格的に激化・発展していく。英国亡命中のイラク人女性作家ハイファ・ガンザナは次のように語っている。「民衆は米英軍と闘い続ける。それはサダムの軍隊に強制されてではなく、サダムが倒れた後もです。その昔、民衆は英国の支配を覆した。同様に米国の統治プランも崩れるでしょう」(4・9付東京新聞)と。
すべてのイラク人民は米軍を「解放軍」などとはまったく思っていない。侵略者、虐殺者として怒りと憎しみの対象なのだ。
すでにイラク人民の大衆的な反米闘争が爆発しつつある。北部のイラク人の集会では「フセインも、アメリカもいらない」のスローガンが掲げられ、バグダッドでも4月中旬以降、「アラブはアラブ人の手に」と連呼する反米デモが起きている。そこでは「血とともに、命とともに、われわれはイラクを守る」の合唱となった。4月15日には南部でシーア派住民2万人が「フセイン反対、アメリカ反対」と叫んでデモに立ち、18日にはバグダッドでシーア派に協調と反米を呼びかけたスンニ派の大規模デモが展開された。22日にはシーア派の聖地カルバラで200万人の巡礼大集会が開かれた。
軍事占領・再植民地化
第三に、今日の情勢で決定的なことは、米英日帝のイラク軍事占領・再植民地化の攻撃である。米帝は国連ルートの政治的介入を許さず、米国防総省の一部局として「復興人道支援室」(ORHA)なるものを立ち上げ、退役米陸軍中将ガーナーを「イラク総督」として米軍政を敷き、イラク石油と1000億j(12兆円)と言われる「復興ビジネス」を米資本で独占しようとしている。
米軍は破壊と殺りくの限りを尽くしたが、唯一制圧して「守った」ものは油田と石油省であった。サウジアラビアに次ぐ世界第2位の確認埋蔵量を持ち、未確認分を含めれば3000億バレル強と言われサウジをしのぐ石油資源を、米帝が独占する意図であることは明々白々である。
だが軍事占領下に「暫定統治機構」をつくり、カイライ政権をデッチあげようという米帝の植民地支配の野望は、4月15日の反フセイン勢力を集めた暫定政権協議をシーア派の主要組織、イラク・イスラム革命最高評議会がボイコットしたように、初めから拒否と混乱に突入している。イラクの人民は、クルド人も南部のシーア派も、「一人の独裁者が別の独裁者に代わることを拒む」と、米帝支配に反対しているのだ。
第四に、米帝のイラク軍事占領・再植民地化の攻撃の強行は、イラクを含む全中東、全イスラム世界、さらには全世界の体制を根底から揺るがし、破壊するものになるということである。
まず、米帝の帝国主義むき出しの政策は必ず行き詰まり、泥沼化し、広範なイラク人民の反米帝(反米英日帝)のゲリラ戦やインティファーダ(民衆蜂起)を引き起こす。これに対し米帝は強圧と白色テロルをもって対応するしかないが、この攻防の激化は全中東・ムスリム人民を揺るがし、全世界人民を揺るがす。
さらに米帝の軍事占領・再植民地化は、パレスチナを始め、シリア、ヨルダン、サウジ、イラン、トルコ、エジプトなど近隣諸国の激しい反応を引き起こす。今や米帝は全中東・ムスリム人民の巨大な怒り、憎しみのすさまじい激化に包囲されており、アラブ民族主義とムスリム人民の反米感情は、イラク侵略戦争をめぐって沸騰点に達している。「百人のビンラディン」が新たに生まれ、無数の9・11が起きる情勢なのだ。これは「全中東の民主化」という侵略拡大政策と結合し、今や中東全体が大動乱、大戦乱に突入していくことは避けられない。
ネオコン(新保守主義)などと言われる米帝の保守反動勢力は、「イラク戦争は新たな中東づくりの一部にすぎない」と公言し、中東での次の敵は「イランの宗教支配者、シリアのファシスト、アルカイダなど国際テロ組織」であるとうそぶいている。こうした中で早くもブッシュは、シリアに対する非難を開始し、シリアがフセイン政権関係者をかくまい、生物・化学兵器を開発しているなどと攻撃し始めた。イラク侵略戦争を別の形で継続し、シリアへと侵略戦争を拡大しようとしているのだ。
しかしここで重要なことは、米帝は超大国として未曽有(みぞう)の体制的危機にあえいでいるということである。実は今日、米帝の国内情勢、米帝をとりまく国際情勢は、ブッシュにとってきわめて危機的である。第一は、米帝経済と世界経済の危機だ。第二は、中東支配・中東石油支配における絶望的破産だ。第三は、独仏を軸としたEU(ユーロ)の台頭、ブロック化の進展に代表される帝国主義間争闘戦での歴史的後退である。
ここでは特に第一の点について見ると、米帝経済は21世紀に入ってからのバブルの崩壊以降、過剰資本・過剰生産力にあえいできたが、今やイラク戦争の影響も含めて、29年型大恐慌の本格的爆発、激化を不可避としている。企業収益・収益率は極度に悪化し、株価も個人消費も低迷している。とりわけ5000億jの経常赤字、3000億jの財政赤字はともに過去最大で、80年代の「双子の赤字」問題のより危機的な再来だ。「戦争に強いドル」は今回はついに起こらず、マネーはEUに流れ、ユーロの上昇基調が続く。ドル暴落の危機である。こうした中で米帝支配階級の経済政策は、金持ち優遇の超大型減税をめぐって動揺と分裂を深めているのである。
過剰資本・過剰生産力問題の歴史的激化と世界経済の分裂化・ブロック化が結合し爆発する時、29年型世界大恐慌と30年代を超える体制的危機が本格化する。米帝ブッシュは今や未曽有の経済的大破局にのみ込まれつつあるのだ。
こうした中でブッシュ政権が、あるいは米帝の帝国主義ブルジョアジーそのものが、01年版QDR(4年ごとの戦力見直し)と02年国家安全保障戦略(ブッシュ・ドクトリン)による世界戦争計画を継続・拡大し、帝国主義侵略戦争―世界戦争へとより凶暴に突進していく可能性と現実性はきわめて強い。米帝が延命し、米帝の国益を貫くためには、世界に次々と侵略戦争を拡大し、究極的には対中国、あるいは対他帝国主義の戦争も辞さないということである。
こうして、今やイラク侵略戦争がさらにシリアに拡大し、また早晩、北朝鮮侵略戦争が現実化する情勢が完全に到来しているのである。
帝国主義間の争闘戦
第五に、米帝(米英日帝)がイラク侵略戦争を強行し、イラク軍事占領・再植民地化に突入したのは、根底的には帝国主義間の分裂と争闘戦が、米帝ブロック対EUブロックとして爆発的に激化してきているという世界史的情勢に規定されている。今日的状況は帝国主義の分裂と対立をいよいよ非和解的にしている。
仏独ロは今日、イラク戦争が米帝的な一定の決着をみたと判断し、またイラクの石油利権・復興利権の米帝による独占は放置しえないとして、米帝のイラク政策を肯定するかのような言辞を弄(ろう)して、「国連主導」を主張しつつ米帝にすり寄る動きを強めている。だがこれはけっして米欧分裂を修復するものとはならない。米帝は戦場で血を流して獲得したものを簡単には手放さないと言っているからだ。帝国主義の二大陣営的な分裂は、今後のイラク政策、シリア(イラン)、北朝鮮への侵略戦争策動の中で再び劇的に深まっていくのだ。
第六に、3・20イラク開戦は、国際・国内階級闘争を根底的にまったく新しい段階(歴史的地平)へと引き入れた。この間のイラク反戦の全世界・全日本を席巻した巨大な闘いの波は、もちろんイラク侵略戦争の戦況の推移の中で、一定の大きなうねりをなし、また一定の山と谷をつくって進む。
だが、始まっているイラク侵略戦争は、日帝の歴史で言えば1937年の7・7盧溝橋事件の時点であり、ドイツ史的には1938年3月オーストリア併合以降の東欧侵略の開始である。
今後の国際反戦闘争は、諸情勢の展開に規定されつつも、基本的にますます大きくなる階級闘争のうねりとして発展していくであろう。
われわれはこの大きなうねりの中で、その先頭に立って闘う。それとともに、この世界史的・激動的な情勢を根底で規定しているもの、戦争と反戦、戦争と革命の対立を根底から規定しているものが、帝国主義とその基本矛盾の世界史的爆発であり、その根底的な突破の道は、全世界の労働者階級と被抑圧民族の団結による反帝・反スターリン主義世界革命の実現以外にありえないことを訴え、階級的・戦闘的な労働者人民の前衛部隊を党としてつくりあげ、その党と階級の生き生きとした相互交流の中で、プロレタリア革命の勝利に向かって力強く突き進んでいかなければならない。
そのために、以下のイラク反戦闘争のスローガンを高く掲げて闘いぬこう。
☆米英日帝のイラク侵略戦争絶対反対! イラク侵略戦争の継続と拡大を阻止しよう! シリア・北朝鮮への侵略戦争の拡大を許すな!
☆米英日帝のイラク軍事占領、再植民地化を許すな!
☆イラク人民の革命的ゲリラ戦争(民族解放・革命戦争)と連帯し、全世界労働者人民の総決起をかちとろう!
☆闘うイラク人民・ムスリム人民と全世界労働者人民の団結力で、米英日帝・侵略者をイラクからたたき出そう!
☆全世界の反戦闘争と連帯し、東京100万、日本1000万の革命的反戦闘争の爆発で、米英日帝のイラク侵略戦争続行・拡大を阻止し、帝国主義侵略者を打倒しよう!
☆イラク侵略戦争反対、北朝鮮侵略戦争反対の闘いと固く結合して、有事立法阻止闘争に立ち上がろう!
☆戦争と反動、抑圧と搾取の日帝・小泉政権を打倒しよう!
第3章 米日帝が北朝鮮を先制的に攻撃するための有事法
イラク侵略戦争のこの間の推移の中で、北朝鮮をめぐる国際情勢が激しく流動を開始している。
米帝(米英日帝)が圧倒的な軍事力でフセイン政権を転覆した情勢に対し、北朝鮮は4月12日、「米国が対北朝鮮政策を大胆に転換する用意があるなら、われわれは(米朝2国間協議という)対話の形式にはさしてこだわらない」と表明、これを受けて4月23〜25日の北京での米朝中3者協議が設定された。しかし18日に北朝鮮がこれを事実上の「米朝2国間協議」と位置づけ、同時に「使用済み核燃料の再処理施設稼働」をちらつかせたことで、米国防総省の強硬派などが反発し、北京3者協議は「再検討」という経緯をたどって開催された。
しかしここでわれわれが明確にしなければならないことは、米帝の世界戦争政策はなんら理性的でも合理的でもないということだ。
米帝は、イラク侵略戦争によって古今未曽有の泥沼戦争に突入し、体制的危機を深め、危機にのたうち回っている。イラク軍事占領、再植民地化が拡大し、シリア侵略戦争への展開もあり、北朝鮮侵略戦争への展開もありうるのだ。
この情勢はまた、有事立法3法案と個人情報保護法案の攻撃の急切迫としてある。これらの法案の成立を阻止するために今こそ総決起すべきである。
「悪の枢軸」論の重圧
昨秋来、北朝鮮をめぐる情勢は、米帝の思惑を超えて激しく動いてきた。この間の北朝鮮情勢の激動的展開の一切の根源は、米帝のイラク攻撃への突進と「悪の枢軸」論による「次は北朝鮮だ」という戦争重圧が北朝鮮スターリン主義・金正日政権を存亡の体制的危機に追い込んだことにある。米帝ブッシュや日帝・小泉は、昨年10月に訪朝した米国務次官補ケリーがウラン濃縮計画の「証拠」を突きつけ、北朝鮮がその事実を「認めた」ことが一切の起点であるかのように言っているが、事実は逆である。
米帝ブッシュの「悪の枢軸」論と世界戦争計画があって、イラク攻撃としてそれを実践に移したことが、一切の起点なのだ。ケリーは昨年10月、米朝高官協議の場で「へたなまねをすると米国は核攻撃も辞さない」と公言しており、米国防政策諮問委員長パール(当時)は昨秋、日本のテレビ報道で「勝手なことをしてはいけない。次はお前の番だよ、金正日」とうそぶいている。これは北朝鮮にとっては体制存亡の事態なのだ。
これに対して北朝鮮がとった捨て身の対抗策が、一連の核開発政策の公表であり、NPT(核拡散防止条約)脱退宣言やミサイル実験の動きだった。確かにそれはスターリン主義的・反人民的な政策だ。しかしそれは、北朝鮮人民、南北朝鮮人民が国際連帯の中で闘いに決起して解決すべき問題であり、米帝や日帝がそれを口実に侵略戦争をし、体制転覆することが許されるものでは絶対にない。
ところが米帝は、北朝鮮の必死の対抗策を口実に、95年のKEDO協定に基づく北朝鮮への重油供給を停止するという体制解体的な政策に出たのだ。確かに米帝は、イラク攻撃との二正面作戦を避けるため、この間は北朝鮮情勢の爆発を抑え込む政策をとってきた。しかしイラク侵略戦争で一定の決着がつけば、次は北朝鮮に対し、その核開発路線などの反人民的・軍事的な対抗策につけ込み、それを口実として、体制転覆と人民大虐殺の侵略戦争を強行しようとしているのだ。しかも米帝はそれを対中国侵略戦争の決定的な布石とも位置づけている。
新たに動き出した米朝中3者協議などで、米帝が北朝鮮に突きつけようとしているものは何か。高濃縮ウラン計画や黒鉛炉再稼働計画の放棄、徹底的な査察の受け入れ、さらには通常戦力の削減である。これは「席に着くなり、真っ裸になれというのと同然」の武装解除要求だ。これに対し北朝鮮が要求しているのは、単なる口約束やいつでも反古(ほご)にできる文書確認などではなく、きちんとした国際法的価値を持つ米帝自身による体制保障=不可侵条約の締結である。それがなければ、いくら国連などで外交を尽くしても、米帝は自らの世界戦争プランにのっとって侵略戦争を仕掛けてくるからだ。今やイラク侵略戦争の継続・拡大として、米帝(米日帝)の北朝鮮侵略戦争が、遅かれ早かれ現実化する過程に突入したのである。
「予測事態」の重大性
日帝・小泉が今国会で強行しようとしている有事立法攻撃(有事3法案と個人情報保護法案)は、米帝の北朝鮮侵略戦争の動きに対して、日帝が帝国主義としての存亡をかけて対応しようとしているものである。それは米帝の世界戦争政策に全面的に共同=競合しつつ、北朝鮮(中国)侵略戦争に参戦し、日帝自身が先制攻撃や「敵地」攻撃に一気に踏み出そうとする恐るべき攻撃である。
第一に、武力攻撃事態法案を軸とする有事3法案の最大の核心は、「日本有事」の概念を大幅にエスカレートし、武力攻撃が現実に「発生」した事態や「切迫」している事態だけでなく、「予測」される事態で、日帝が先制攻撃できるとしている点にある。新たに国会に提出された修正案では、武力攻撃事態の定義は次のように2段階になっている。
@「武力攻撃事態 武力攻撃が発生した事態又は武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至った事態」
A「武力攻撃予測事態 武力攻撃事態には至っていないが、事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態」
これでは、例えば米帝が北朝鮮への軍事的対決を強め、それに対抗して北朝鮮が一定の応戦態勢をとった段階で、日帝は早くも北朝鮮による在日米軍基地などへの武力攻撃が「予測」されると強弁して、武力攻撃事態法を発動できる。そして政府は首相独裁の武力攻撃事態対策本部を設置し、自衛隊は「展開予定地域」において陣地構築など「防御施設」の建設を開始できる。つまり、まだ一発の砲声も聞かれないはるか手前で、日帝は先制的に戦争態勢に突入できるのだ。
第二に、政府は日本への武力攻撃には、日本の在外公館や船舶(ひいては日本企業)への攻撃も含まれるとし、また修正案では「武装した不審船の出現」や「大規模なテロリズムの発生」への対処措置が盛り込まれていることから、国益論や生命線論的な拡大解釈によって日帝・自衛隊が世界中どこへでも派兵されることになるということだ。
第三に、有事立法は新ガイドライン(97年締結)や周辺事態法(99年成立)と一体のものだということである。
周辺事態法では「周辺事態」(正確には「周辺地域事態」)という概念が導入され、安保条約第6条の「極東の範囲」を越えて、朝鮮・中国・アジア諸国だけでなく全世界にまで適用範囲が拡大され、「周辺事態」で軍事行動を開始した米軍に対する「後方地域支援」を始めとした日帝と自衛隊の全面協力が詳細に取り決められている。
そして新ガイドラインでは、@日本に対する武力攻撃(日本有事)には日米間で「共同作戦計画」を検討し、A日本周辺地域における事態で日本の平和と安全に重要な影響を与える場合(周辺事態)には、「相互協力計画」を検討しておく(この計画は昨年2月に日米間でサインされた)と規定され、しかも@とAの間での「整合を図るよう留意する」と書かれている。さらに周辺事態が日本への武力攻撃に「波及する可能性のある場合」と「両者が同時に生起する場合」に、適切に対応するとも規定されている。
新ガイドラインでは今ひとつ、平素から「共同作戦計画」と「相互協力計画」の検討を含む日米共同作業のために「包括的メカニズム」を構築すると規定されている。これは日米両政府の関係機関が関与する、軍事的な最高意志決定機関である。また同時に、両作戦計画の調整を行う「調整メカニズム」を平素から構築すると規定している。これは事実上の戦時の統合作戦司令部である。
第四に、こうして新ガイドラインと周辺事態法に、今回の有事3法案を重ね合わせてみると、次の2点が確認できる。
@ひとつは、新ガイドラインでは「日本への武力攻撃」についてまだ抽象的な規定が多かったが、有事立法では武力攻撃の「発生」「切迫」に加え「予測される」ケースがあるため、武力攻撃が実際に発生するはるか以前の段階で、「共同作戦計画」が発動されるということだ。それは、周辺事態法の「後方地域支援」が直ちに「日米共同作戦」へとエスカレートされるということでもある。
A今ひとつは、新ガイドラインと周辺事態法によって米軍の軍事行動への支援・協力が動き出すということは、実質的に米軍の対北朝鮮・対中国の侵略戦争の発動や開始を意味するので、それはほとんど同時に「切迫」や「予測」される事態となり、武力攻撃事態法の発動に直結するということである。いやむしろ新ガイドラインは周辺事態が日本有事に「波及」するか「同時に生起」するケースを規定しており、米日帝が周辺事態法と武力攻撃事態法をほとんど同時に発動して北朝鮮(中国)侵略戦争への突入態勢をつくることが、今回の有事3法案の狙いだということだ。
百数十万人の死傷者
第五に、北朝鮮侵略戦争とは、具体的には何を意味するか。2年ごとに改訂される米韓連合軍の「作戦計画5027」がある。北朝鮮の人民軍の反撃を大空爆と地上部隊で食い止めつつ、米韓軍が38度線を突破し、ピョンヤンに進撃し、金正日政権を打倒し、ピョンヤンから北の全域まで占領する――という北朝鮮侵略戦争の計画だ。この作戦で百数十万人の死傷者が出ると想定されている。沖縄を始め日本全土は完全な出撃・兵站(へいたん)基地となり、日本は戦争態勢にたたき込まれる。自衛隊は米軍の「後方地域支援」や機雷掃海や船舶臨検など、あらゆる軍事作戦行動に突入する。
しかもこの「作戦計画5027」は98年版から、北朝鮮に3日間の全面降伏の猶予を与え、それでも北朝鮮の開戦の決意が固いと判断すれば、先制攻撃するというシナリオに変わった。
圧倒的な国力差、軍事力差をもって米日帝が北朝鮮に攻めかかり、先制攻撃し、政権転覆と100万人の朝鮮人民を虐殺するような侵略戦争を本当に許すのか。許していいのか。断じて否である。有事立法3法案こそは、そのための侵略戦争法案なのである。
第六に、有事立法攻撃と一体のものとして、この間の石破防衛庁長官の、@燃料注入段階で日本が北朝鮮のミサイル基地をたたくことは可能という発言(1月24日衆院予算委)、A巡航ミサイル「トマホーク」など自衛隊が敵基地攻撃能力を持つことは検討に値するとの発言(3月27日衆院安全保障委)、Bさらに3月28日の日本初のスパイ衛星2機の打ち上げ、などを重視して闘うことである。これらは、日帝が北朝鮮への先制攻撃をやろうとしていることを示している。
日帝・小泉は「日米同盟関係」と「北朝鮮の脅威」を振りかざして米帝を全面支持し、イラク侵略戦争に参戦した。これは日帝が、米帝の北朝鮮(中国)侵略戦争に、帝国主義としての生き残りをかけて協力=参戦し、急速に戦争国家へと反革命的に変貌(へんぼう)しようとしているからである。
有事第4法案としての個人情報保護法案は、北朝鮮侵略戦争に向かって報道・言論・出版・表現の自由を圧殺し、国家権力や政治家や官僚の機密や腐敗は「保護」しながら、労働者人民に対しては住基ネットと一体となって管理・統制しようとする戦時の悪法である。
日帝・小泉は、連休明けにも個人情報保護法案と有事3法案を衆院通過させ、今国会で早期成立させることに総力を挙げている。有事立法阻止の闘いは戦後最大の政治決戦である。イラク侵略戦争絶対反対の闘いと結合し、シリア・北朝鮮侵略戦争阻止、有事立法粉砕の闘いに総決起しよう。闘うイラク人民・ムスリム人民、闘う朝鮮人民・中国人民、全世界労働者人民との国際連帯で、絶対に勝利を切り開こう。
第4章 国鉄闘争と労働法制改悪阻止軸に労働運動前進へ
帝国主義の基本矛盾が大恐慌と世界戦争として爆発しつつある中で、帝国主義間争闘戦は今や完全に相互のつぶし合いとして進んでいる。帝国主義にとって外に向かっての侵略戦争は、内に向かっての階級戦争ということだ。帝国主義戦争はレーニンも言うように、植民地支配と民族抑圧と「賃金奴隷制」の強化という「三重の意味で奴隷制強化のための奴隷主の戦争」なのだ。このもとでは戦後史を転覆するような激しい資本攻勢とそれに対する階級決戦が、反戦闘争の爆発と同時に進行するということである。
帝国主義の戦争(侵略戦争)と一大資本攻勢、この一個二重の攻撃に対する労働者人民の決起こそが、革命的情勢の成熟の主体的契機をなしている。この攻防に勝利することが、すさまじい死闘戦、階級決戦としてある現在の政治決戦に勝利する道なのである。
日帝の現在の資本攻勢とそれに対する闘いの方針については、『動労千葉』23(有事体制下の労働運動と03春闘方針)が全面的に提起している。日帝は、日本経団連が昨年12月17日に発表した「経営労働政策委員会報告」(経労委報告)と、1月1日発表の『活力と魅力溢(あふ)れる日本をめざして―日本経団連新ビジョン』(奥田ビジョン)という形で、資本攻勢の全体像を打ち出し、労働者への全面攻勢をかけているが、それは95年の日経連プロジェクト報告「新時代の『日本的経営』」の本格的な貫徹の攻撃そのものとしてある。
「経労委報告」と「奥田ビジョン」をもって貫こうとしている攻撃は第一に、労働組合のあり方を根本的に変質させ、春闘も解体、終焉(しゅうえん)させてしまうことである。労働者の要求を貫いて闘う組合から、国家や日本経済や資本の「存続」と「防衛」のために考え、行動する組合に変えること、すなわち労働組合の「産業報国会」化ということだ。「経労委報告」は03春闘について「労組が賃上げ要求を掲げ、実力行使を背景に社会的横断化を意図して『闘う』という『春闘』は終焉した」とうそぶいている。実際に今春闘で定昇解体と賃下げに全面的に踏み込んできたのである。
第二に、徹底的な雇用破壊、賃金破壊である。「経労委報告」は雇用情勢の「一段の悪化は避けがたい」「一層深刻の度を増す」と大失業を前提化し、報告の原案では日本の賃金を「発展途上国並み」にすべきだと明言している。終身雇用制と年功賃金も本格的に解体しようとしている。「新時代の『日本的経営』」は労働者を「長期蓄積能力活用型」「高度専門能力活用型」「雇用柔軟型」の3グループに分けているが、第一のグループに属する労働者を10%足らずにし、それ以外は雇用も年金も退職金もまったく保障しないという、すさまじい攻撃をかけようとしているのだ。
第三に、以上の攻撃を貫くために、憲法28条とそれに基づく労組法や労働基準法を始めとした戦後の労働者保護法制を根本から改悪・解体しようとしていることだ。その現実の攻防が、今通常国会の最大焦点のひとつである労基法など労働法制の抜本改悪攻撃であり、ここで日帝資本は解雇の原則自由化や終身雇用制解体に一気に突き進もうとしているのだ。
第四に、公的年金制度、医療保険、介護保険、雇用保険など社会保障制度の抜本的な改悪である。奥田ら日帝ブルジョアジーがぶち上げている消費税16%化は、大幅な法人税減税要求と合わせ、社会保障制度解体の攻撃と一体のものとしてあるのだ。
第五に、日帝と日本経済が生き残る道は、結局「東アジア自由経済圏」しかないというブロック化の大攻撃である。「奥田ビジョン」の基礎にあるのは「東アジア諸国とともに自由経済圏を構想してグローバル競争を挑む。この東アジア経済圏は、遅くとも2020年の完成を目指して、今年から着手する。これは『第三の開国』だ」(03年1月1日、記者会見)という構想である。
これは、帝国主義間争闘戦の全面的激化の中で、日帝がEUやNAFTA(北米自由貿易協定)と対抗して、東アジアに日帝の経済圏=勢力圏を形成するということであり、新たな型の「大東亜共栄圏」の攻撃だ。第2次大戦でたどったコースを再び突き進むということだ。
重大なことは、以上のような戦後の労資関係を根底から反革命的に転覆する一大資本攻勢、戦争と大失業の攻撃が、基本的に連合などとの「一致」「合意」のもとに出されていることである。
だがこうした攻撃は、一面では日帝と資本が完全に破産し、展望を失い、もはや労働者を「食べさせる」こともできなくなり、戦争と大失業しかないということの告白である。
今や労働者階級は、帝国主義の侵略戦争―世界戦争の攻撃と一大資本攻勢と対決し、総反撃に立つべき時を迎えた。いやすでに2・15を始め、全世界で資本攻勢と闘う労働者階級が巨万の反戦デモに決起し、その中心を担っている。イラク侵略戦争が中東・ムスリム人民、全世界の被抑圧民族人民へのすさまじい抑圧・大虐殺の攻撃であり、それはさらに労働者階級自身を帝国主義の侵略戦争―世界戦争に駆り立てるものであることを自覚して、陸続と決起している。このことが全世界で革命的情勢をいよいよ急速に成熟させている。
日本の労働者階級は、全世界の労働者階級、被抑圧民族人民と連帯し、革命的な反戦闘争と有事立法阻止決戦に全力で立つと同時に、「経労委報告」「奥田ビジョン」として現れている戦後を画する資本攻勢の激化と、今国会での労働法制の大改悪の攻撃を粉砕するために総決起していかなければならない。今こそ連合、全労連、そしてカクマルとJR総連の屈服、裏切り、敵対を粉砕し、のりこえ、連合指導部を打倒して、労働運動と資本攻勢をめぐる大攻防に勝利しよう。
この闘いの基軸、突破口をなすのは、国鉄決戦である。国労5・27臨大闘争弾圧を粉砕する闘いである。1047名闘争に勝利し、国労再生をかちとっていく闘いである。そして何よりも、4日間に及ぶ世界にとどろく春闘ストを打ちぬき、3・29春闘総行動を牽引(けんいん)した動労千葉の闘いに今こそ学び、連帯して闘いぬくことである。国鉄決戦を突破口に、自治労、教労、全逓を始め全産別で、決戦を迎えている攻防を強化して闘おう。3労組陣形、20労組陣形の闘いをともに発展させるために粘り強く奮闘しよう。
動労千葉ストライキと3・29総決起の地平から、夏―秋への大展望を打ち立て、この5〜6月攻防を闘いぬくこと、新生マル青労同建設をその闘いの展開の環にしっかり位置づけて闘うことを確認して前進しよう。5・1メーデーへの決起を突破口に夏―秋へ闘おう。
5〜6月の闘争課題
われわれはこの5〜6月、米英日帝のイラク侵略戦争の継続と拡大、シリア・北朝鮮への侵略戦争の拡大に反対して、さらに強力に反戦闘争を爆発させていく。そして、日帝・小泉の有事立法3法案、個人情報保護法案の早期成立策動に全面対決し、有事立法阻止を政治闘争の前面に押し出し、最大の政治決戦として闘う。そのために20労組呼びかけの5・23闘争に総決起することを訴えたい。
そして、こうした帝国主義の侵略戦争との闘いにおいて、沖縄闘争の位置が決定的に重要になっている。「沖縄をイラク・シリア・北朝鮮侵略戦争の出撃基地にするな! 普天間基地実力撤去・名護新基地建設阻止!」を高く掲げて闘おう。さらには三里塚、北富士、日本原、横須賀、佐世保など全国基地闘争と反軍闘争が重要である。断固として闘おう。
また、この激動期、革命的情勢への移行が急速に進んでいる中で、学生運動の爆発的発展をかちとる闘い、入管闘争、部落解放闘争を始めとした諸戦線の闘いの大胆な前進、星野同志、福嶋同志奪還、迎賓館・横田爆取デッチあげ弾圧での無罪判決戦取の闘いなど反弾圧闘争への決起などの重要性を断固確認したい。
激動期にこそ党建設と機関紙拡大闘争を
最後に圧倒的に訴えたいことは、この世界史的激動期だからこそ、党建設に全力を挙げようということである。全世界的な革命的情勢の成熟において、レーニンの3大義務と新しい型の『社会主義と戦争』の内容を貫く闘いは、宣伝・扇動と、革命的大衆行動と、党建設によってなされるのである。党なしには一切が空語となる。権力と対峙し、ファシスト・カクマルに圧倒的にうちかってきた地平を最大限に活用して、党勢拡大と党建設に、今こそ本格的に取り組もう。
その環は機関紙である。全世界のすべての党と革命グループは機関紙拡大に必死になっている。また、今や職場で、学園で、街頭で、『前進』が求められ、売れる情勢である。3月全国機関紙担当者会議で確認されたように、03新年号で提起した新しい型の『社会主義と戦争』の内容を創成し実践する環は機関紙活動だ。指導部を先頭に全国で機関紙拡大闘争に猛然と決起しよう。
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週刊『前進』(2100号7面2)
イラク反戦闘争スローガン
☆米英日帝のイラク侵略戦争絶対反対!
イラク侵略戦争の継続と拡大を阻止しよう!
シリア・北朝鮮への侵略戦争の拡大を許すな!
☆米英日帝のイラク軍事占領、再植民地化を許すな!
☆イラク人民の革命的ゲリラ戦争(民族解放・革命戦争)と連帯し、全世界労働者人民の総決起をかちとろう!
☆闘うイラク人民・ムスリム人民と全世界労働者人民の団結力で、米英日帝・侵略者をイラクからたたき出そう!
☆全世界の反戦闘争と連帯し、東京100万、日本1000万の革命的反戦闘争の爆発で、米英日帝のイラク侵略戦争続行・拡大を阻止し、帝国主義侵略者を打倒しよう!
☆イラク侵略戦争反対、北朝鮮侵略戦争反対の闘いと固く結合して、有事立法阻止闘争に立ち上がろう!
☆戦争と反動、抑圧と搾取の日帝・小泉政権を打倒しよう!
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週刊『前進』(2100号8面1)
北朝鮮を先制攻撃100万人以上が死傷
侵略戦争で政権転覆狙う有事3法案絶対阻止せよ
日帝の侵略戦争を合法化 武力攻撃事態法案
「武力攻撃事態」の定義
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修正案
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武力攻撃事態
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武力攻撃予測事態
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政府案
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武力攻撃が発生した場合 |
武力攻撃の恐れがある場合 |
武力攻撃が予測されるに至った事態 |
相手国の動き
(政府見解) |
/
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・日本への攻撃を行うとの意図を明示
・多数の艦船、航空機を集結 |
・予備役の招集
・軍の要員の禁足、非常呼集
・軍事施設の新たな構築 |
自衛隊
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防衛出動など
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防衛出動待機命令
防御施設構築など |
前国会で継続審議となり今国会で審議が再開された武力攻撃事態法案、自衛隊法改正案、安全保障会議設置法改正案の有事関連3法案と個人情報保護法案は、日本が北朝鮮、中国へ侵略戦争を行うための法案です。【戦争放棄】を規定する憲法9条を完全に否定し、日本が再び対外侵略戦争を行うことを合法化するものです。法案をよく読んでみると、「武力攻撃が予測される」段階で、自衛隊だけでなく国の全省庁とすべての都道府県・市町村、指定公共機関、「国民」を総動員した有事=戦時体制を立ち上げ、「武力攻撃事態への対処」と称する先制攻撃で日本を戦争に突入させようとしていることがわかります。有事3法案が具体的に想定する戦争とは、イラクに続いて朝鮮半島を戦場とし、北朝鮮の金正日政権を転覆する戦争です。米軍当局が「核兵器を使用しなくても百万人の死傷者が出る」と公言する戦争です。日帝は、この戦争に自衛隊を参戦させ、この戦争を遂行するための戦時体制を規定する法律を作ろうとしているのです。この「批判と暴露のポイント」は、北朝鮮・中国への侵略戦争法である有事3法案の正体を、法案を具体的に引用し、図や表を使って、分かりやすく暴露・解説したいと思います。今国会には、前国会で継続審議になった政府案に対して与党側の修正案が提出されました。基本的にこの2つの法案を対象に考えます。(片瀬涼)
日本の対外戦争を規定 一方的に「武力攻撃事態」宣言して日本側から戦争
武力攻撃事態法案の最大の特徴は【武力攻撃事態】といういくらでも拡大解釈できる新たな概念を導入して、武力攻撃事態への【対処】という形で、日本の対外的な武力行使、つまり戦争を規定したことです。武力攻撃事態に対する【対処措置】として第2条には「武力攻撃を排除するために必要な自衛隊が実施する武力の行使」とハッキリ規定されています。
修正案では、この「武力攻撃事態」を「明白な危険が切迫」している事態を含む「武力攻撃事態」と「武力攻撃予測事態」の2段階に分けています。ここで注意が必要なのは、「予測事態」には、日本に対する武力攻撃発生のかなり以前の範囲まで含まれていることです。昨年5月16日に政府が示した見解(5・16政府見解)は、「予測されるに至った事態」について以下のように規定しています。
「(ある国が日本攻撃のため)予備役の招集や軍の要員の禁足、非常呼集を行っているとみられることや、我が国を攻撃するためとみられる軍事施設の新たな構築を行っている」
これではわずかな軍事的緊張だけでも「予測事態」となります。つまり日本に対する武力攻撃発生のかなり以前の段階で「予測事態」を宣言することが可能なのです。少し先回りして解説すると、この法案では、「予測事態」認定とともに、武器を持った自衛隊が「予定地域」に展開し、陣地構築など軍事行動を開始できるようになります。また自衛隊だけでなく国土交通省などの国の全省庁、都道府県などの地方自治体から鉄道や航空会社などの公共機関、そして「国民の協力」までを含めた国の総力をあげた有事体制が発動されるのです。
実際にどうなるのでしょうか。米帝ブッシュ政権は、イラク戦争に次いで北朝鮮の金正日政権の転覆と人民虐殺の侵略戦争を狙っています。この場合、対イラク戦争前にイラク周辺国で行った戦争準備のように、数カ月にわたって数十万人の兵士や膨大な兵器や軍事物資を韓国や日本に集結させる戦争準備を行い、戦争を実際に強行するのです。
日帝の動きはどのようなものになるでしょうか。日帝は99年成立の周辺事態法に基づいて「周辺事態」を宣言し、米軍の後方支援活動(共同作戦態勢)に入ります。しかし有事法制ができた場合はそれだけに終わりません。周辺事態の宣言と同時に、北朝鮮からの反撃(弾道ミサイルやゲリラなど)の可能性を理由に「武力攻撃が予想される」としてこの武力攻撃事態法などの有事法制が発動するのです。
5・16政府見解は「武力攻撃とは……攻撃の大小、期間の長短や攻撃が行われる地域、攻撃の態様も様々」と言っています。これだと小規模なゲリラや日本の船舶への攻撃も、すべて武力攻撃事態の発生になります。つまり米帝が北朝鮮侵略戦争を決断し戦争準備を開始→周辺事態→米軍の後方支援活動を行う自衛隊に対する武力攻撃が「予測」――というように非常にイージーに「予測事態」が成立することになるのです。
しかも「自衛権の行使としての先制攻撃を憲法は妨げていない」(石破防衛庁長官)などと小泉政権は、ミサイル発射前に相手国の基地を攻撃することも許されると主張しています。結局、武力攻撃事態法案は、究極的には、日本の自衛権の行使と称して、日帝と自衛隊が戦争にストレートかつ全面的に参戦することを狙っているのです。
このように武力攻撃事態法案の特徴は、「武力攻撃事態」「武力攻撃予測事態」という新概念を導入することによって、「日本が侵略を受けた場合」ではまったくなくても、一方的に「武力攻撃(予測)事態」を宣言し、逆に日本側から先制的に戦争へと突入していくことを合法化するものなのです。
閣議決定で直ちに実施 国会承認を待たずに対処措置を実施−防衛出動も
有事法制の発動――つまり日帝の戦争(準備)開始の前提となる「武力攻撃(予測)事態」の認定はどのようなプロセスで行われるのでしょうか。武力攻撃事態法案の第2章「武力攻撃事態への対処のための手続き等」(第9条〜20条)を読んでみると、驚くべきことに、【対処基本方針】は閣議決定だけで対処措置の実施が可能となっています。つまり閣議決定すれば直ちに自衛隊を出動・展開させ、対策本部を設置して各種機関を総動員しての戦争突入が可能なのです。国会は、この決定過程から基本的に排除されています。
法案は「政府は、武力攻撃事態に至ったときは、武力攻撃事態への対処に関する基本的な方針(対処基本方針)を定める」と規定しています。対処基本方針とは、@武力攻撃事態の認定、A武力攻撃事態への対処に関する全般的な方針、B対処措置に関する重要事項――の3点です。
日本の戦争状態への突入の基点となる武力攻撃(予測)事態は、この対処基本方針の閣議決定によって認定されるのです。
武力攻撃(予測)事態の認定を含む「対処基本方針」の策定と実施のプロセスは以下の通りです。@首相はまず、自らが議長を務める安全保障会議を開催し、諮問する→A実質的にはこの安保会議の場で「対処基本方針」を策定・答申する→B閣議決定をへて国会承認――となります。
このBの部分が注意を要します。実は、この「対処基本方針」は、国会の承認を待たずに開始できるのです。確かに法案には「(対処基本方針の)閣議の決定があったときは、直ちに、国会の承認を求めなければならない」と書いてあります。しかし、直ちに国会承認を求めなければならないということは、国会承認が必然的に「対処基本方針」実施後の事後承認になることを意味しています。また、国会が「対処基本方針」を不承認とした場合には「対処措置は、速やかに、終了されなければならない」ともなっています。これも「対処基本方針」が、国会承認の有無に関わらず、閣議決定後からすでに実施に移されていることを意味します。
それでは自衛隊の「防衛出動」に関する国会承認はどうでしょうか。第9条の第4項は、「対処基本方針」に記載すべき事項として、防衛出動について、@内閣総理大臣が国会に事前に承認を求める場合と、A緊急の場合に国会承認前に内閣総理大臣の権限で防衛出動を命ずる場合とを並列で規定しています。
しかし、現行自衛隊法は「国会の承認を得て命ずることができる」となっていて、国会承認が原則です。緊急の場合の国会承認抜きの命令は例外規定です。ところが今回の改正案は「国会の承認を得て」が削除され、代わりに「武力攻撃事態法の定めるところにより」となっています。
巧妙なやり方ですが、これまでの「原則事前承認、緊急時には事後承認」という建前が、武力攻撃事態法の規定でただ防衛出動命令を出せるとなり、可能なら事前の国会承認を求めるになっているのです。事前承認を得てからのケースと事前承認なしのケースが並列化されているのです。
しかも対処基本方針を2つに分け、すでに首相権限で防衛出動を命じている時には一緒に承認を求めるが、そうでない時には防衛出動の事前承認以外の部分だけを国会にかけ、防衛出動の国会承認は、それとは別個に国会にかけることができるようになっています。要するに、防衛出動の可否以外の部分の対処基本方針が国会承認され、すでに日本が事実上の戦争状態に入っている中で、防衛出動の国会承認を求めることもできるのです。
また対処基本方針の中での自衛隊に関する事項で@予備自衛官、即応予備自衛官の招集、A防衛出動待機命令、B防御施設の構築−−などは、すべて防衛庁長官の命令に首相が承認を与えて実施できるものばかりです。特に自衛隊による防御施設の構築は、武力攻撃予測事態から、自衛隊が指定された「展開予定地域」に事前展開して、陣地などを構築することができます。その際、住民の土地や家屋も強制的に接収・使用できるし、武器の使用もできるのです。これは事実上の防衛出動です。
対策本部は戦争総本部 首相の下に全権限を集中 政府全体が臨戦態勢に
対処基本方針に基づく【対処措置】は、閣議決定を経て国会の承認を待たずに実施に移されます。内閣には「武力攻撃事態対策本部」が設置され、首相は対策本部長として、事実上全権を掌握して、対処措置を指揮します。
対策本部の実体は、戦争そのものの遂行と戦争遂行上必要な調達・動員の全体を指揮する戦争総本部です。対策本部長となった首相のもとに戦争指導上の全権限が一元的に集中され、自衛隊、国の行政機関、地方自治体、指定公共機関、国民あげた「対処措置」が実施に移されます。
内閣に設置された対策本部は、全閣僚が対策本部員になりますが、各大臣の所掌事務の分担管理を原則とする内閣とは組織原理が異なり、各閣僚の権限は対策本部長=首相に集約され一元化されます。また対策副本部長には、副総理がなるとは指定されていないので、防衛庁長官が副本部長になることも予想されます。首相と防衛庁長官が政府全体の指揮をとる体制になるのです。
首相は、対策本部長として、対処基本方針に基づき行政機関、地方自治体、指定公共機関が実施する対処措置を「総合調整」し、他方で首相としては、対処措置の実施を内閣を代表して各行政機関を指揮監督することになります。さらに首相は、対策本部長である自分の求めに応じて、地方自治体や指定公共機関に対処措置の実施を指示することができます。
またその際、95年の沖縄県の大田知事が米軍用地収用のための代理署名を拒否した時のように知事などの反対にあった場合、首相は自ら、または大臣を指揮して対処措置を直接実施する権限が与えられています。総合調整→首相の指示→それでもだめな時は、首相が強制的に実施したり、実施を命令できるシステムになっているのです。この首相の権限は国の全省庁、すべての地方自治体、指定公共機関に及びます。
第13条には、対策本部の職員が、対処措置の実施権の全部または一部の委任を受けることができるという規定があります。これは対策本部の設置によって首相に集中した権力が「権限の委任」という形を通して、対策本部の職員に委任できるようになるということです。職員には自衛隊員も予想されます。対処措置の実施の現場では自衛隊員が指揮命令することも考えられるのです。
このように対策本部の設置によって政府全体(権力機構)が臨戦態勢に切り替わるのです。国と地方自治体、公共機関との関係も上意下達の関係に組み替えられ、戦争遂行のための高度な中央集権的国家体制に移行して、対処措置=戦争を実行に移していくのです。
地方自治体には、第5条で対処措置の実施の責務が規定されています。地方自治体の病院は米兵・自衛官の死傷者の受け入れが優先され、そこで働く医療労働者が動員されます。また自治体が管理する港湾や空港では、兵員・軍事物資輸送が最優先されます。自治体管理の海岸・河川・公園などが自衛隊の陣地構築に使われるのです。
憲法では国と地方自治体が対等であることと自治体の自治が保障されていますが、武力攻撃事態法案では、これが完全に否定され、首相の命令で上意下達式に戦争動員が強制されるのです。また自治体労働者へも職務命令という形で戦争協力が強制されます。
同じく指定公共機関には、第6条で対処措置の実施の責務が規定されています。現行自衛隊法でもJRやNTTは自衛隊への協力が義務づけられていますが、武力攻撃事態法案では、それ以外の民間企業も「指定公共機関」に指定することで戦争動員が強制されます。この指定は政府が一方的に政令で定めます。@金融機関では民間の都市銀など、A医療機関も民間の主要な病院、Bマスコミも民放や新聞社、C鉄道では基地・空港・港湾周辺の私鉄、D輸送部門では日通などの運送会社、F日航、全日空などの航空会社、G主要な海運会社などが指定公共機関の候補にあがっています。
これらの指定公共機関に対しても、@対策本部長=首相の「総合調整権」、A首相の「指示権」、B「代執行権」−−によって戦争協力が強制されるのです。自衛隊法との関連で言えば、指定公共機関で働く労働者のうち、医療、土木建築工事または輸送業者は、103条によって、業務従事命令で強制動員されることになります。
「国民保護法制」の正体 すべてが戦時統制と強制 米軍には行動の自由保障
武力攻撃事態法案の第3章は、「事態対処法制の整備」として、@国民の生命、身体及び財産の保護、または国民生活及び国民経済への影響を最小とするための措置(いわゆる国民保護法制)、A自衛隊の行動を円滑かつ効果的にするための措置その他の武力攻事態を終結させるための措置、B米軍の行動を円滑かつ効果的にするための措置――の3つをあげています。その基本的方向と内容は、戦争にともなう人民の生活や経済、日常活動や政治活動などのすべてが、戦時統制と戦時強制を受けるということです。
第22条第1号の「国民保護法制」については、@警報の発令、避難の指示、被災者の救助、消防等、A施設及び設備の応急の復旧、B保健衛生の確保及び社会秩序の維持、C輸送及び通信、D国民の生活の安定、E被害の復旧――があげられています。
これらは実際のところ、労働者人民に戦争への協力を要求し、「国民の生活や国民経済」を戦争に従属させ、統制支配しようとするものです。
例えばD国民の生活の安定を検討してみましょう。昨年の5月16日に政府が示した「生活関連物資の価格安定」等の措置では、(1)生活関連物資などの生産・輸入などに関する指示、(2)生活関連物資等の買い占め・売り惜しみに関する指示と命令、(3)石油の使用制限などを想定しています。
これは戦時に、労働者人民の石油使用を制限し、自衛隊・米軍に石油を提供したり、物資生産業者に軍需物資の生産を義務づけ、買い占め・売り惜しみを行う業者に自衛隊・米軍への販売を強制することができるということです。物価の戦時統制や配給を想定しているのは明白です。
@の「警報の発令、避難の指示」は、米軍や自衛隊が自由に移動・展開するために、人民の外出禁止や交通の規制を行い、軍事輸送のために道路を確保するためのものです。Bの「社会秩序の維持」では、反戦集会やデモ、ストライキやサボタージュなどが禁止されます。
4月18日に福田官房長官が衆院有事特別委で示した国民保護法制の骨子では、土地・家屋の使用や救援物資の収用について都道府県知事に強制措置を認めるなど、人民の権利制限に大きく踏み込んでいます。また都道府県の対策本部に自衛隊員の出席を認め、行政と自衛隊の指揮・対策系統の融合化を盛り込んでいます。石破防衛庁長官は、「国と自治体の連絡係に自衛隊員を連絡要員として派遣する」と述べています。
第2号の「自衛隊の行動を円滑かつ効果的にするための措置その他の武力攻撃事態を終結させるための措置」は、自衛隊の行動にフリーハンドを与えるためのものです。自衛隊が全面的に武力行使を行うために、その行動の自由と諸権限を定め、労働者人民の自由・権利・生活・職場などをそれに沿って制限し、従属させ、犠牲にするのです。
具体的には、民間の船舶や航空機が戦争のために優先動員され、その労働者が軍需物資や兵員の輸送に動員されるということです。また地方自治体が管理権を持つ空港や港湾を米軍・自衛隊が自由に使用できるようになるのです。
第22条第3号の「米軍の行動を円滑かつ効果的にするための措置」は、具体的な項目の列挙もなく、小さな問題のような体裁をとっています。しかし、北朝鮮侵略戦争の最大の主体は米帝・米軍なのです。いざ戦争となれば約50万人の米軍が日本に集結・出撃します。米軍が日本国内で自由に動きまわり、これを支える兵站(へいたん)活動を少し想像すれば、この米軍関連の法制の重大性がわかります。
重大な戦争重圧
イラク侵略戦争の一方で米日帝は、北朝鮮に対し軍事重圧をかけ、重大な戦争挑発を行っています。
米軍は3月、94年以来で最大規模となる米韓軍事演習フォール・イーグルを実施しました。この演習に合わせて、戦略爆撃機や最新鋭のステルス戦闘機、陸軍部隊の一部を韓国やグアムに前線配備させています。
今回のフォール・イーグルには、沖縄に駐留する第31海兵遠征隊に加え、空母戦闘群や強襲揚陸即応群も参加し、韓国の浦項近くの海岸では敵前上陸演習を行っています。米本土から参加したステルス戦闘機は、イラク開戦当日、フセイン大統領を狙った攻撃を行った米空軍機です。また、この演習に合わせて米軍と自衛隊も共同訓練を行っています。
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週刊『前進』(2100号9面1)
自衛隊法改正案
軍事優先と戦争動員強化 「予測」で事実上防衛出動
自衛隊法改正案の基本的内容は、自衛隊が実際の戦争を想定して、その時に必要なさまざまな権限を自衛隊に与えることを目的としています。
自衛隊法103条第1項は、自衛隊が防衛出動した場合に@病院、診療所その他の施設の管理、A土地、家屋もしくは物資の使用、B物資の生産、集荷、販売、配給、保管もしくは輸送を業とする者に対する物資の保管、収用命令を規定しています。さらに第2項は、医療、土木、建築工事または輸送を業とする者に対する業務従事命令を規定しています。
しかし、現行自衛隊法では、これら103条の物資等の使用、保管、収用、業務従事命令についての公用令書の交付などの手続き規定がなく、罰則もありません。事実上使えない規定でした。そのため今回の自衛隊法改正案では、この103条についての手続き上の諸規定を定めたのです。
また改正案は、自衛隊による土地の使用に関連し、立木等の移転、処分、さらに家屋の形状変更を可能とする規定を新設しました。これにより自衛隊の任務遂行上、邪魔だとすれば、家屋以外のものはすべて取り壊し、居住している家屋も「形状変更」と称して取り壊すことができるのです。
さらに、実は防衛出動前でも、展開予定地域で自衛隊は陣地など防御施設を構築できるという規定が新設され(77条の2)、この時点ですでに自衛隊は土地使用や立木等の移転・処分ができるという規定が新設されているのです。また防衛出動時に自衛隊が私有地を通行できるという緊急通行の規定も新設されました(92条の2)。
さらに改正案124条は、土地の使用、物資の保管、収用のための立ち入りについて立ち入り検査や報告義務の規定を新設し、検査拒否、虚偽報告などについての処罰規定を新設しています。物資保管命令違反には6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金も規定されています。
今回の自衛隊法改正案の最大の問題点のひとつが77条の2(防御施設構築の措置)の新設です。これによって自衛隊は、「予測事態」の段階で、従来のようにたんに「防衛出動待機命令」だけでなく、「展開予定地域」に事前展開して、防衛出動の際にまず必要な「防御施設」構築の活動ができるのです。その際、民間の土地を強制的に接収・使用できるし、武器の使用もできるのです。地方自治体や指定公共機関も総動員されます。また国会の事前承認もまったく必要ないのです。
これは事実上の防衛出動が「予測事態」段階から、全面的・本格的に始まることを意味します。つまり実質的には、戦争の前倒しです。「予測段階」を宣言することで先制的に、対空ミサイル基地、レーダー基地、対ゲリラ用の監視施設などの対ミサイル攻撃、対ゲリラの体制をとるのです。現代の戦争の常識からすれば、こうした防御体制とは、同時に攻撃体制が整ったことを意味します。相手国からすれば攻撃開始を意味するのです。
以上のように自衛隊法改正案は、武力攻撃事態法案と一体で、「予測事態」という非常に前倒しされた早期の段階で、国会の事前承認抜きで首相命令だけで、77条の2の発動として、実質的な防衛出動=戦争突入ができることを狙っているのです。
また、改正案には、出動した自衛隊が自由に展開し、陣地などの防衛施設を自由に構築して戦闘態勢を形成することを目的とした、各種の規制法令の適用除外を新設しています。しかも、76条の防衛出動と先ほど検討した77条の2の出動がまったく同権・同列に適用除外されている点は重大です。
例えば、@道路法の適用除外によって自衛隊は道路にバリケードを築いて封鎖することもできます。A都市公園法の特例などで都市公園に陣地その他の軍事拠点を設けることもできます。これによって法的には自衛隊が東京や大阪などの大都市を制圧し、戒厳体制下に置くことも可能となるのです。
またB医療法の適用除外によって野戦病院が設置できます。C墓地、埋葬等に関する法律の適用除外で戦死した自衛隊員をどこででも火葬し、許可なく埋葬できます。D森林法や海岸法などの特例で森林や海岸、河川などに自由に陣地構築ができます。こうした適用除外の条文が20個も新設されているのです。
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週刊『前進』(2100号9面2)
安保会議設置法改正案
戦争方針を実質的に策定 新ガイドラインと連動
今回の安全保障会議設置法改正案の概要は、@会議の審議対象に「武力攻撃事態への対処」を加える、A会議の議員に経済産業大臣、国土交通大臣、総務大臣を新たに加える、B情報収集、分析機能などの強化のために「事態対処専門委員会」を設置する――の3点です。
今回の改正によって、安全保障会議は、たんなる諮問機関ではなくなります。戦争発動の実際は、国会や内閣でさえなく、首相を議長とし最高指導者とする安保会議が行うようになるのです。法案によれば、対処基本方針は、首相があらかじめ安全保障会議に諮問した上で閣議決定します。つまり「武力攻撃(予測)事態」の認定とこれに基づく対処措置などの対処基本方針の策定は実質的に安全保障会議が行うのです。
安全保障会議の運営方法は、閣議とは根本的に異なります。閣議の議決方法は全会一致が原則です。しかし、安保会議の議員である大臣は、「意見を述べる」だけです。安保会議のメンバーは秘密の漏洩(ろうえい)が禁じられ、会議の内容は分かりません。
特に「事態の分析及び評価」などの軍事方針を策定する場合は、首相、内閣官房長官、防衛庁長官、国家公安委員長、外務大臣、国土交通大臣の6人に絞られます。他方で戦争遂行上、総動員体制づくりに必要な経済産業大臣、国土交通大臣、総務大臣を加えて体制を強化し、さらにそれ以外にも、地方自治体の動員、民間防衛、経済統制などのための所管の国務大臣を随時、議員として加えられるようにしています。
安全保障会議は、メンバーが内閣と重なりますが、首相へ権限が集中し、秘密主義的な軍事機関そのものなのです。ここで対処基本方針=戦争方針を実質的に策定し、首相に戦前のような戦争大権を付与する装置として位置づけられているのです。
また、新たに事態対処専門委員会が設置されます。専門委員会は、内閣官房長官を委員長に、内閣官房職員や他の行政機関の職員を充てるとしていますが、自衛隊の統幕会議議長や、外務省の北米局長など、新ガイドラインで設けられた日米軍事協力の仕組みに参加する日本側メンバーが予定されています。さらに自衛隊情報本部、内閣情報調査室、警察庁公安部などの情報関係の専門家がメンバーになると思われます。
事態対処専門委員会の構成からして、結局は安全保障会議で策定される対処基本方針=戦争方針は、米帝の北朝鮮侵略戦争の展開の中で、新ガイドラインの「包括的メカニズム」並びに「調整メカニズム」による共同作戦計画プランの作成や実施の動きと一体で進行するのです。
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週刊『前進』(2100号9面3)
個人情報保護法案
戦争へ報道・言論を圧殺 国が人民の個人情報を支配 権力や政治家の機密は保護
個人情報保護法案は、「メディア規制法案」と批判されているように、「ロッキード事件」や「リクルート事件」に代表される政治家・官僚・資本家の汚職や腐敗を、雑誌などの「スクープ記事」の暴露からいかに防衛するかという論議から生み出されました。国家権力は、始めから人民大衆の個人情報を保護することなど念頭になかったのです。
自治体が自衛隊に情報提供
小泉政権は、与党3党での強行採決も辞さず5月連休明けの衆院通過をもくろんでいます。人民の怒りの決起で国会を包囲し、有事3法案もろとも絶対に阻止しよう。
個人情報保護法案の第一の断罪点は、私たち人民大衆の個人情報はまったく保護されず、逆に管理・支配に使われることです。
行政機関によるデタラメな個人情報利用の現状を示す事件が4月22日の報道で発覚しました。
防衛庁が自衛官などの募集用に、満18歳を迎える適齢者の情報を住民基本台帳から抽出して提供するよう全国の自治体に37年間にわたって要請し、少なくとも3割の自治体が応じていたことが判明しました。石川県などの自治体では、閲覧が認められていない健康状態や家族についての情報も提供していました。
個人情報を利用された母親は「家庭環境まで推測できる名簿を市役所が自衛隊に渡していたなんてショック。許されないと思う」と怒っています。
この名簿は、「自衛隊適格者名簿」と呼ぶべきものであり、「徴兵名簿」に直結しています。この事実は、新法案が有事体制と一体で侵略戦争を推進するものであることを如実に示しています。
さらに、警視庁による「個人情報盗用事件」があります。3月26日に東京高裁は、会社員が警視庁を相手に「情報提供への謝礼の領収書などに勝手に名前を使われた」として損害賠償を求めた裁判で、「領収書は警察官が作成したと推定する以外ない」との判断を示し、会社員への損害賠償を認めました。
このような現実を前にしても小泉首相は、行政機関を対象にした新個人情報保護法案に職員への罰則規定を新設することで、個人情報の乱用を防ぐことができると主張しています。
ところが、この罰則規定はザル法です。例えば、「個人情報ファイルの提供は罰則の対象となるが、プリントアウトされた書類の提供は罰則の対象とならない」などの抜け道がいくつもあります。さらにこの法案は、個人情報を「必要な限度での内部利用」という形で「目的外利用」することを認めています。
ところで、名前も知らない業者から自宅にダイレクトメールが届いた経験は、誰にもあると思います。業者が利用する個人情報の入手先は、住民基本台帳(住民票)です。役所では、住民票の「大量閲覧用リスト」が作成されていて、誰でも書き写すことができます。また、世の中には「名簿業者」なる商売があり、個人情報が日常的に「売り買い」されています。
すでに、私たちの個人情報は、資本家もいつでも自由に利用できる状況にあるのです。
この現状の中で私たちの個人情報を保護するためには、個人情報が利用されるさまざまな分野ごとに規制のための法律(個別法)をつくる以外にはありません。ところが、新法案はすべての分野を規制する「包括法」としてつくられているため、私たちの個人情報はまったく保護されないのです。
ネットや携帯電話にも介入
個人情報保護法案の第二の断罪点は、政治家・官僚・資本家など国家権力にかかわる個人情報は徹底的に保護されることです。
この法案は「個人情報取扱事業者」を設定し、義務規定を定め、違反者には罰則(6月以下の懲役又は30万円以下の罰金)を科す構図をつくりあげています。
細田科学技術担当相は、個人情報取扱事業者を「名簿を5千人以上持つ業者」「子どもも対象になる」と説明しています。また自分で5千人のデータを保有していなくても、端末から5千人のデータベースに継続的にアクセスできる個人も適用対象となります。
例えば、5千人以上の名簿を持つ団体(労働組合、反戦運動団体、同好会など)の一員で、その団体の名簿にパソコンや携帯電話でアクセスできる個人も対象となります。
したがって、インターネットや携帯電話の普及した現代社会ではあらゆる団体と個人が対象となると言っても過言ではありません。
さらに、義務規定と罰則で個人情報取扱事業者は、日常的に主務大臣の「報告の徴収」「助言」「勧告及び命令」の対象となります。そして主務大臣は、個人情報取扱事業者を管理・統制していくのです。
細田科学技術担当相は、この間の国会論議で、厚生労働相は労働組合の主務大臣として「勧告及び命令」できると答弁しています。さらに、「自動車教習所の個人データが漏えいしたケースでは、(主務大臣として)地方公安委が調査することになる。調査の実働部隊は県警ということもある」と述べています。新法案は、警察権力強化法案でもあります。
このようにして私たち一人ひとりに主務大臣が設定され、国家の管理・統制を受けるのです。
そうなれば、当然のこととして主務大臣は、国家権力にかかわる個人情報を私たちの暴露や追及から防衛・隠蔽(いんぺい)します。その一方で、私たちの個人情報を都合のいいように利用するのです。
報道の検閲に道を開く悪法
法案の第三の断罪点は、日帝の北朝鮮侵略戦争に向けて報道・言論規制を徹底強化することです。
憲法第21条は、「言論、出版その他の一切の表現の自由は、これを保障する」と定めています。これは、第9条と並んで戦後憲法の骨格をなすものです。
米帝ブッシュとともに北朝鮮侵略戦争を推進する小泉政権は、報道と言論の侵略翼賛化を狙っています。
そのために、報道や言論にかかわる団体と個人に対して新法案の規制の網をかぶせ、「適用除外」と、戦後初めて法律で定義した「報道」規定の恣意的な運用を行い、国家権力が報道や言論の内容を点検し決定する体制(検閲そのもの)をつくろうとしているのです。
71年の「外務省密約事件」では、沖縄返還交渉での日米間密約を内部告発情報として報道した新聞記者が国家公務員法違反(機密漏洩)で逮捕されました。法案は、このような国家権力に都合の悪い情報の内部告発を禁止したり、マスコミの取材や情報収集もできなくしてしまうものです。
福田官房長官は、02年7月3日の衆院有事法制特別委員会で、有事の際に報道機関が自主的に報道を控える「報道協定」について「必要な場合はお願いする」と述べています。また、今年4月18日には、国民保護法制にかんして、警報などの緊急情報を伝達する責務を負う指定公共機関について「民間放送事業者が指定される可能性はある」とも述べています。
報道・言論規制と有事体制は一体のものであることは明白です。
4月15日、横浜地裁は、第2次大戦中の最大の言論弾圧である「横浜事件」の第3次再審請求について再審開始を決定しました。無実を訴え再審を求めて闘った元被告たちと、その闘いを継承した遺族の不屈の執念が実ったのです。戦争も言論統制もけっして過去のことではありません。
絶対阻止へ
4月15日の国会で銀行口座の開設時などに本人確認書類として住基ネットの「通知書」を利用していた金融機関は、全国銀行協会(全銀協、182行)加盟行の約4割に上ることが明らかになりました。「通知書」の11けたの番号は、すでに身分証明の役割を果たしているのです。
国家権力は、8月の住基ネットの本格稼働により、労働者人民の個人情報を一元的に管理・支配しようとしています。法案の絶対阻止と同時に住基ネットの廃止を実現しよう。
多くの労働者人民が個人情報保護法案の廃案を要求しています。4月8日、日本雑誌協会(浅野純次郎会長、92社加盟)も、週刊誌など約20誌に「個人情報保護法案は雑誌を黙らせる法律です」と訴える意見広告の掲載を発表し、以後続々と雑誌に掲載しています。
小泉政権による衆院強行採決を許してはいけません。連休明けの国会闘争に全力で立ち上がり、法案を絶対に阻止しよう。
(山本 茂)
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週刊『前進』(2100号9面4)
対外攻撃能力もつ自衛隊 おおすみで強襲揚陸作戦 空中給油機で空爆作戦も
有事法案の審議の中で石破防衛庁長官は、自衛隊が敵基地攻撃能力を持つことは検討に値すると公言しました。実際、自衛隊は「専守防衛型」から、日本本土を離れて軍事作戦を行う能力(敵基地攻撃能力)を形成しつつあります。
海上自衛隊に配備されている「おおすみ」型強襲揚陸艦は、兵員や戦車を上陸させる任務の艦艇です。すでに「おおすみ」「しもきた」の2隻が呉基地(広島県)に配備され、3番艦は今年就役予定です。「おおすみ」型は満載排水量が推定で1万5千dで、約330人の兵士と90式戦車なら10両を搭載する能力があります。「おおすみ」型が3隻就役すれば、兵士約千人、戦車30両が輸送できます。陸上自衛隊1個普通科連隊を運べます。
「おおすみ」の特徴は、上陸用エアクッション艇LCACを運用していることです。LCACは戦車も上陸させることができる巨大な揚陸ホバークラフトで、多少のデコボコがある地形の海岸にでも上陸でき、世界の75%の海岸に上陸が可能と言われています。
またヘリコプターを使用して前線に兵士を送り込むヘリボーン作戦用戦闘艦が、現在建造中のヘリコプター護衛艦(新DDH)です。満載排水量1万8千d級の大型艦です。防衛庁はごまかしていますが、空母型のDDHが設計されているとも言われています。これは実質的に空母です。公式発表では搭載するヘリコプターは4機となっていますが、実際必要があれば8機以上が運用可能です。また垂直離発着型の戦闘機を搭載し軽空母として運用するのではないかとも言われています。(図)
また各種の特殊部隊が次々編成されています。99年に習志野(千葉)の第1空挺団普通科連隊に「誘導隊」という特殊部隊が編成されました。これは戦争勃発(ぼっぱつ)時に在外日本人を救出する作戦が任務です。佐世保(長崎)には02年、陸自西部方面隊普通科連隊が新設され、全国から約660人が選抜されています。この部隊は「有事即応部隊」とされています。海自では江田島(広島)に01年、「特別警備隊」が編成されています。
空中給油機(写真上)は現在の中期防で4機購入が決まり07年度から運用試験を始める予定です。空中給油機は、戦闘機の航続力を大幅に増大させ、外国への攻撃能力を高めます。給油機で燃料を補給すれば、自衛隊の戦闘機はミサイルや爆弾を満載して朝鮮半島上に長時間留まることも可能になります。自衛隊は、世界最強の戦闘機F15を約200機も持っています。F15は空中給油装置や爆撃装置をつけたまま自衛隊に配備されています。「空飛ぶ司令部」と呼ばれるE767早期警戒管制機(AWACS)と空中給油機が同行すれば、他国の空域で制空権を確保して空爆作戦を行うことも可能です。
また防衛庁は、北朝鮮の弾道ミサイルに対抗するために、巡航ミサイル「トマホーク」など、他国への攻撃が可能な長距離ミサイル配備の検討を始めています。3月末にはスパイ衛星を打ち上げました。
自衛隊は「専守防衛型」ではけっしてなく、恐るべき侵略能力を持った軍隊へと変ぼうしているのです。
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