SANRIZUKA 2011/12/12(No837 p02)
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週刊『三里塚』(S837号1面1)(2011/12/12)
市東東市さんの署名も公団が偽造
12・6市東農地裁判 県、市官僚の尋問決定
裁判長の結審策動許さず
12月6日、市東孝雄さんの行政訴訟・農地法の併合裁判弁論が千葉地裁民事第3部・多見谷寿郎裁判長の下で開かれ、激しい攻防を展開して重大な勝利がかちとられた。
当日朝、8時前から9時30分まで、支援連が地裁ビラまきを行い、官庁街の労働者・市民にこの日の決戦的裁判をアピールした。「私文書偽造で新証拠! 『署名も別人』の鑑定結果」というビラは道行く人に衝撃をもって受け止められた。
傍聴席を労働者・農民市民・学生が埋め尽くした。午前10時30分から弁論開始。市東さん側が準備書面の31と32を提出し、葉山岳夫弁護士ら代理人が陳述した。
この中で、成田空港会社前身の空港公団が1988年に作成した故市東東市さん(孝雄さんの父親)名の「確認書」「同意書」について、「市東東市」署名を勝手に書いていたこと、すなわち偽造していたことを衝撃的に突き出した。これは日本筆跡鑑定協会会長に依頼した筆跡鑑定で明らかになったことだ。
空港公団が、位置特定のデタラメを示す添付図面の偽造のみならず、市東東市さんのサインまで偽造していた。傍聴席から弾劾の声が上がった。 さらに、「空港敷地に転用が相当」と解約が許可された市東さんの畑の内、空港敷地外にはみ出した部分まで含まれていた問題(写真左下)について、「空港関連施設を建設する予定だった」なる空港会社の主張が、急きょデッチ上げた言い逃れでしかないことを暴いた。
当日の弁論の焦点であった証人調べの決定に入った。多見谷裁判長は「萩原進さん、市東孝雄さん、さらに空港公団職員で、農地転用申請の書類作成に関わった4人としたい」と提案した。
これに対して、弁護団が猛抗議した。傍聴席からもヤジと怒号が渦巻いた。「空港会社職員を証人として呼ぶのはいい。しかし、それだけでは決定的に不十分だ。成田市農業委員会審理、千葉県農業会議審理において、なぜ、これほどのデタラメな農地転用と解約許可処分が強行されたのか。その真実を明らかにしなければ、裁判長も本件の判断は下せないはずだ」「成田市農業委員会事務局長、千葉県農地課長の証人尋問が絶対に必要だ」と代わる代わる食い下がった。
市東さん本人も立って裁判長を追及した。
傍聴席からは「藤ア証人を認めろ」「国策裁判許すな」と抗議の声が上がり、婦人行動隊の鈴木加代子さんも「こんな不当裁判許せるか」と激しい弾劾を叩きつけた。
激しい抗議にたまらず、多見谷裁判長は3人に対して、裁判所敷地外への退去を命じる処分を強行。それでも止まない弁護団からの徹底抗議の前に、「合議します」と二人の裁判官と共に退出。ついに山崎真一(06年当時の成田市農業委員会事務局長)と渡辺清一(06年当時の千葉県農地課長)の2人の証人採用を認めざるをえなかった。
反対同盟員二人だけの証人尋問で結審させようという裁判長の策動は粉砕された。しかし、24人の証人申請を6人にしぼり、法廷期日を来年7回も入れるなど、結審にむけた動きは続いている。2012年がまさに市東さんの農地決戦となることは明白だ。
報告会が千葉県弁護士会館で行われた。市東孝雄さんがあいさつし「来年は今年以上にがんばる。攻撃が強まると思うが、ウソやデタラメを暴き、世の中変えよう」とあいさつ。
弁護団の解説の後、北原鉱治事務局長が「押さえつけられれば闘うのが三里塚闘争だ。来年も大変な年になるだろうが明るい闘いで勝ち抜こう」とあいさつしてしめくくった。
2012年は市東さんの農地決戦が待ったなしだ。全人民の力を結集しよう。
(写真 市東さんの署名も偽造だった。弁護団は筆跡鑑定書を提出した【写真はその一部】)
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週刊『三里塚』(S837号1面2)(2011/12/12)
「なぜ農地法で奪う」「三つの裁判の関係は」
“収用不能”に追いつめられ
全人民の力で市東さんの農地を守ろう
Q&A 一から分かる市東裁判
12月6日の市東孝雄さんの農地裁判弁論で、反対同盟と弁護団・支援は多見谷裁判長の結審策動はいったん押し返したが、裁判長は来年1年間の弁論日程を強引に決めるなど、2012年が市東さん裁判を先端とした農地決戦となることが明らかになった。市東農地裁判闘争に全力で取り組むため、「Q&A 一から分かる市東さん裁判」と題して、裁判に関する疑問に答え、闘いの一助にしたい。
なぜ市東さんの畑が問題に
@暫定誘導路を「へ」の字に曲げている
A暫定滑走路の開港による大騒音に屈服しなかった
B成田空港の“地盤沈下”で欠陥誘導路を放置できなくなった
Q 市東さんの住む天神峰は戦前の開拓だと聞いたけどなぜ小作なの。
A 大正時代、祖父の市太郎さんが、御料牧場の払い下げを受けた不在地主から開墾を請け負った。しかし、小作人の身分のままで所有権はなかった。本来だったら戦後の農地解放で市東さんの土地になるべきところ父・東市さんの復員が遅れたなどの事情で残存小作地として残った。
Q 市東さん宅の畑は全部で何カ所?
A 田んぼを入れて6カ所。その内裁判になっているのが、家の前の畑を含めた作業場、離れ、庭などの一角と天神峰現闘本部隣のいわゆる「南台」といわれる場所。
Q なぜ今、市東さんの畑が問題になるの。
A まず、空港予定地に関して、土地収用法に基づく事業認定の期限が切れ、失効したということが最大の問題。1966年の空港計画以降、暴力的な空港建設に対して激しい反対闘争が爆発し、今日までつづいている。その結果、事業認定は89年に失効し、93年に空港公団も認めた。(収用裁決申請を取り下げ)
追いつめられた空港公団は、02年に「飛ばせば落ちる(屈服する)」と公言して未買収地を多数残し、欠陥だらけのまま、地元の反対を無視して暫定滑走路の開港を強行した。騒音による追い出し=地上げ屋暴力団と同じだ。が、空港反対農民の陣形は崩れなかった。09年には北側に延伸する弥ほう策も行ったが、反対運動は岩盤のように固かった。
そうしている内にアジアのハブ空港競争に負けるなど、日帝の空港政策が危うくなってきた。10年、羽田の国際線化が行われる一方、成田の位置が脅かされ始めた。そこで民法や農地法を動員し、失効した土地収用法の代わりとして悪用し、裁判に訴える政策を強化した。だから市東さんが訴えられ、市東さんも逆に訴え、三つの裁判が闘われている。
(写真 AとCを空港会社は「不法耕作」と決めつけ明け渡しを求めている【耕作権裁判】。BとDを「契約地」と称し「解約」を根拠に明け渡しを求めている【農地法裁判】。しかしDを市東さん宅は一度も耕したことがない)
土地収用法の失効とは
@激しい反対運動で二期工事区域の強制収用できず
A事業認定が1989年に失効。任意買収以外に用地取得できず
B危機のNAAは農地法、民法を収用法の代わりに使い提訴を乱発した
Q 「土地収用法が失効」ってどういうこと。
A 公共事業の名のもとに、土地収用法に基づいて事業が認定されると、「いやだ」と言ってもその土地は強制的に取り上げられる。成田空港の事業認定は69年12月。しかし、B滑走路(市東さんの畑が問題になる今の暫定滑走路部分)、C滑走路(横風用滑走路=後に断念)については、反対闘争があるためにずっと収用裁決ができなかった。
何の権利でも時効がある。事業認定から20年経った89年12月には、収用法の規定で事業認定が失効した。93年6月には裁決申請を公団が取り下げた。ここで用地を強制的に取り上げる手段を失う、という前代未聞の事態となった。
Q だから農地法を持ち出したというのは分かったけど、農業を保護する趣旨の法律で農地を取り上げることがどうしてできるの。
A 農地法の理念である「耕作者主義」(第1条・農地はその耕作者が自ら所有することを適当とする)からすればありえないこと。小作耕作者が違法行為、例えば転貸しとか農地を農地として利用しないという場合は「返せ」と言うことができるが、市東さんのように誠実に耕作を続け、今後も耕作を希望する農家から小作地を取り上げることは許されない。
しかし今や農業委員会が「農地転用委員会」になっているような現状がある。底流には今の農業問題が紛れもなくある。
その上で農地法の悪用に即して言うと、「公共事業」「国策」という錦の御旗をタテに、農地法の運用としても本来違法な法の執行を強行したということだ。具体的には空港会社が「小作契約の解除」を成田市農業委員会に申請(06年7月)、農業委員会は市東さんの調査要求も無視して、千葉県農業会議に進達。農業会議〜県知事が「解約」を許可した結果、この段階で市東さんの小作権はいったん奪われた。
「小作権」は農地法上きわめて強い権利で簡単には奪えない。耕作権の一つとしてこれを保護するのが農地法の趣旨だ。しかし前述のように、地代を払わないなどの場合には農業委員会に申請して、小作権を例外的に解除する申請ができる。さらに、地主が農業以外の趣旨に農地を転用することの許可をえた場合には転用ができるが、この場合でも小作権者の承認を得、小作権を解消しなければならない。
一方市東さんには通知もなしに秘密裏に底地が売却された。農地法違反もいいところ。しかし「国策事業としての空港への転用」という一点で千葉地裁を加担させ農地を奪おうとしているのが現在の状況だ。
(写真 空港公団申請の転用対象地が空港敷地【南台41−8】からはみ出ていることを示す写真)
三つの裁判の内容は
@NAAが「不法耕作」と決めつけた畑の明け渡し請求(耕作権裁判)
A市東さんが県知事の解約許可取り消しを求める行政訴訟
B@以外の「契約地」を「解約許可」を根拠に明け渡し請求(農地法裁判)
Q 市東さんの三つの裁判の関係がよくわからない。
A 裁判は次の三つ。
@畑の一部を空港会社が「不法耕作」だと決めつけ、不当に明け渡しを要求しているのが耕作権裁判。06年10月提訴。(原告・空港会社、被告市東さん。民事第2部。裁判長は白石史子裁判官)
A賃貸借契約の解除を認めた「県知事決定」の無効を請求する行政訴訟(原告・市東さん、被告・千葉県)。07年7月提訴。11年7月にBの農地法裁判と併合された。民事第3部・多見谷寿郎裁判長。
B「契約地だ」と空港会社が一方的に決めつけた畑の明け渡しを求めて08年10月に提訴したのが農地法裁判。民事第3部・多見谷寿郎裁判長。(写真左上)
Aの行政訴訟は解りやすい。06年9月に行われた千葉県知事による市東さんの畑の賃貸借契約解除処分の取り消しを求め、市東さんが県知事を訴えている。賃貸借契約が解除されるとそれは農地取り上げと同じことになる。だから闘っている。
問題は@とB。空港会社の主張によれば、市東さんの「南台」の畑は、地主から正式に借地した「契約地」なるものと、「契約もしないで勝手に耕している不法耕作地」なるもの二つに分かれる。【この分け方自体が不当で、市東さんが耕している南台のすべての畑に耕作権がある】。
そのように勝手に分けた二つの部分の内、「不法耕作だから明け渡せ」と言っているのが@の耕作権裁判。「契約地だけれど契約は解除されたのだから明け渡せ」と言っているのがBの農地法裁判。AとBは、原告・被告が同じため、併合するのが経済的ということで、今年7月に併合された。行政訴訟と農地法裁判では原告と被告が入れ替わる。
三つを通して根本的に問題になるのが、「契約地」の位置の特定だ。 空港会社は現況を無視して、父・東市さんからだまし取った「同意書」と「境界確認書」だけを根拠に勝手に「契約地」と決めつけた。場所がデタラメだ。
Q 「位置特定の誤り」というが、その何が問題なの。
A 根本的な問題だ。空港会社は市東さんに「不法耕作地」であれ「契約地」であれ、明け渡せと言っているわけだが、明け渡す場所が明らかにならないのでは、明け渡しようがない。民法による明け渡し要求だが、事実上の強制収用と同じ。土地収用法による収用は私有財産権を侵害する極めて強権的な法の執行となるので、収用される物件や物品について、厳密に特定される。それと同じで、明け渡しを求める畑の場所を特定できないのでは、明け渡し請求の棄却ということになる。この他、「確認書」「同意書」の添付図面の偽造問題、空港敷地をはみ出す畑にも空港への転用許可を出していた問題など次々とボロが出ている。
Q 裁判闘争の意義については。
A 萩原進事務局次長が言っているように、裁判闘争は今や現地闘争の一環だ。前述したように、土地収用法による事業認定が失効した結果、空港会社は農地法や民法を悪用して、次々と裁判を起こすとともに、千葉地裁は収用委員会の代替機関と化している。
土地収用攻撃が千葉地裁―東京高裁を舞台に展開されている構図だ。土地強奪そのものが争われている現場という意味で、裁判闘争の位置は極めて重大だ。警察権力との直接の攻防ではないが、それを内包した。重要な闘いだ。
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週刊『三里塚』(S837号1面3)(2011/12/12)
ピンスポット
もんじゅ廃炉へ、1300人敦賀デモ
NAZENが牽引
12・3 核兵器燃料政策許すな
12月3日の「もんじゅを廃炉へ!全国集会」は、1300人の結集で大成功を勝ち取った。野田政権の原発再稼働、高速増殖炉政策に対して、この中で西の原発銀座の若狭から火柱があがった。
北陸、関西、中四国、東海、東京のNAZENと全学連の仲間は、本集会の前に敦賀市の白木海岸に登場し、独自の前段集会を開催し全体を高揚させた。
本集会は白木海岸で行われ、シュプレヒコールの後、デモ行進に移り「もんじゅ」の門前で抗議集会を行った。「もんじゅ」に詰めかける1300人の労働者そして学生・市民は圧巻だ! 怒りの声が渦巻いた。抗議文を受け取る日本原子力開発研究機構もまったく何もなすすべもない。
午後からは、敦賀市内のプラザ万象の大ホールに場所を移して屋内集会が行われた。前福島県知事の佐藤栄佐久さん、元もんじゅ訴訟弁護団の海渡雄一さん、元京都大学原子炉実験所の小林圭二さんの3つの講演が行われた。
小林さんは核兵器用のプルトニウムを生産する「もんじゅ」の根本目的を暴き「もんじゅ」の危険性を訴えた。市内デモは敦賀市内を席巻した。
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週刊『三里塚』(S837号1面4)(2011/12/12)
団結街道
10月27日から11月5日まで、経済産業省前で行われた福島の女たち〜全国の女たちの座り込み。それを受けて12月1日から、今度は「未来を孕む女たちのとつきとおかのテント村行動」が来年10月までの予定で始まった。当日朝9時30分ごろには福島から佐藤幸子さん、椎名千恵子さんらが続々到着、行動が始まった▼労働運動を始め、さまざまな課題を闘う人びとが昼にかけて集まり、アピールと交流が行われた。午後6時からの集会では京都でグリーンアクションの活動を主導しているアイリーンスミスさんも発言した▼アイリーンスミスさんと言えば、水俣病をライフワークにした世界的な写真家ユージンスミスさんの夫人で、自身も水俣病、反核運動の写真家だ▼思い出すのが1971年から始まったチッソ本社前での水俣病患者の座り込み。故川本輝夫さんをリーダーとする水俣病患者たちは、責任をとろうとしないチッソ株式会社に対して東京駅近くにある本社前で座り込みを開始した▼交渉に応じようとしないチッソだが患者たちの正当性に排除もできない。補償を求めた座り込みはついに1年6カ月に及びその座り込み現場が、闘いの交流の場に発展していった▼このミナマタの証人とも言うべきアイリーンさんが、経産省抗議行動に参加した。経産省前はチッソ本社前のようになり、反原発闘争が、労働運動、学生運動はもちろん反公害・市民運動などすべての闘いにつながり始めた。
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週刊『三里塚』(S837号1面5)(2011/12/12)
2万が「韓米FTA反対」叫ぶ
韓国のイミョンバク政権の11・22韓米FTA(自由貿易協定)の国会批准強行に対して、労働者人民は直ちに反撃を開始。26日にはソウル光化門周辺を2万人の労農学が埋め、「批准無効」に向け闘うことを誓った。
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週刊『三里塚』(S837号1面6)(2011/12/12)
闘いの言葉
私は分裂の時こう考えた。労組は職場を対象にする。労働者が本当に困った時に、相談に来るような組合にしなければと。それが原則だ。
10月4日 ス労自主委員長 入江史郎氏
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週刊『三里塚』(S837号1面7)(2011/12/12)
三里塚裁判傍聴を!
●1月17日(火) 団結街道裁判 午前10時30分 千葉地裁
●1月23日(月) 市東さん耕作権裁判 午前10時30分 千葉地裁
●2月7日(火) 10時30分 第3誘導路裁判
●2月20日(月) 10時30分 市東さん行政訴訟・農地法裁判
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週刊『三里塚』(S837号2面1)(2011/12/12)
「全原発の廃止は大人の責任」
10・16ティーチインちば 有機農業農家の訴えより(上)
「農」から考える放射能汚染問題
食べ物が持っている力を
「いま、社会の価値観の根底を見直すとき!知ろう!語ろう!つながろう! 10・16ティーチインちば」が千葉市で行われ、反対同盟から萩原進さんも参加した。「食の安全と放射能」で南房総市の有機農業農家・八木直樹さんが問題提起を行った。2回に分けて紹介する。
(写真 10・16ティーチインちばで発言する八木さん【千葉市】)
放射能の人体への影響
私は南房総市で田んぼ1町歩、畑が7反5畝をやっております。チェルノブイリ原発の事故が起きた時は21歳。いつの間にか原発の事が頭の中から消えていました。福島の事故が起きた時に、今のこの世の中をつくってきた大人たちには最大の責任がある、これを自分たちが自覚しやれることをやらなければならないと思っています。
放射能は人体に対して二つの影響を及ぼします。一つは、DNAを直接傷つけるということですね。それとフリーラジカルというものを発生させて、フリーラジカルによって体の一部や組織を損傷することでがんを発生しやすくさせます。フリーラジカルについてですが、物質というのは、原子とか分子の周囲には電子が回っておりますけども、それが一つ欠けると電気的に不安定になるということで周囲のものとくっつこうとする作用があります。特にヒドロキシラジカルというのが人体に大きな影響を及ぼすそうです。
ところが人間の体というのは良くできていまして、抗酸化酵素というものがあります。スーパーオキシドディスムターゼ、カタラーゼ、グルタチオンベルオキシターゼという三つの酵素がありまして、これによってキシラジカル、フリーラジカルと言われるものを分解して除かせるという作用がある。
その酵素が十分ある状態にしておけばそういう化学物質ですとか放射線の影響を最小限に食い止めることができるだろうと、考えられております。
そこから食生活を見直すということが重要なんですね。長崎の爆心地から24キロの所にあった病院で診察をしていた秋月辰一朗医師、この方が病院の職員や患者さん約70名に対して玄米と塩とわかめの味噌汁の食事を続けさせた結果、幸いなことに重症の原発症を発症した人は誰もいなかった。
自然の塩には抗酸化酵素をつくるのに必要なミネラルがたっぷり含まれている。玄米の表皮にはフィチン酸という物質がありまして、これが体外に放射性物質を排出させる作用がある。また味噌には発酵微生物なんかいますけども、こういった微生物は体外に放射性物質を排出させる作用を持っているということなんです。この味噌が発がん抑制効果をもっているということは、後に医学的にも証明されております。
食についての考え方を
またチェルノブイリの事故の後にはヨーロッパから味噌メーカーに対して注文が殺到しました。その他に、カリウムの多いものを摂ったらセシウムを摂取しないですむとか、あるいはカルシウムの多いものを食べればストロンチウムはとらないとか、言われてますが、そういう情報一つ一つに振り回されていっていいのかということを考えなくてはいけないと思うんですね。
実際に、私の知り合いが福島に行った時に、学校給食では放射能汚染が心配だからといってお弁当を子どもさんに持たせている方がいらっしゃるんだけれど、お弁当の中身は冷凍食品だったなんてこと、実際に起きているそうなんです。ですからこれでは本末転倒だと思うんですよね。
食の安全と健康について、今はもっと大きなたくさんの問題を抱えております。まず、一番目なんですけども、1981年にがんが日本人の死亡原因の一位になったことに関しては農薬、食品添加物、そういったあるいは合成洗剤ですとかいろんな化学物質によって水や土地が汚染されてきたということが回り回って人間の体に蓄積して、それが原因になったのではないかというのが専門家の指摘です。
また、今世界的に大問題になっている遺伝子組み換え食品ですね。人体や環境への影響というのは長期的にどういう影響があるのかということは検証されていないままに広がっています。自然界の生物と交雑してその遺伝子がどんどん拡散してしまうと後戻りできません。
食についての問題というのは放射能の問題だけではなくて幅広く安全性だけではなくて安心してこの先確保できるのか、食べ物を確保できるのかということを含めてしっかり考えていただきたいと思っております。
(写真 八木さんに衝撃を与えたチェルノブイリ原発事故)
放射能と有機農業の力
原発事故が起きて放射能が放出されたということで無農薬・無化学肥料でやってきた仲間は本当にショックでした。自分たちが一生懸命努力をしてやってきたにもかかわらず、まったく違うところの原因で違った汚染をされてしまったと。私たち夫婦も事故が起きてから何カ月かの間は力がわかない状態がずっと続いてきました。ですけど、有機農業をやっている意味というのを改めて考えてみたんです。
まず一つは、作物を放射能で汚染させない土をつくることです。作物にその土の中の放射性物質が入らないようにしていけば良いんじゃないかと。百姓やっている人間からすると、表面の土はものすごく大切な宝物なんですね。だからそれを奪われてしまったら、これまでのように自分たちがやってきたことができなくなってしまうという問題もあります。腐食の多い土、こういう土にはセシウムを取り込む力があり、あるいは微生物ですね、土の中に微生物が沢山いると微生物が取り込んで、取り込んでいるからこそ作物のほうにはそれが移行しないと、言われています。
そういった土作りをしていくという有機農業のこれまでやってきたことをさらに高めていくことではないか。
二番目としては、人の免疫力を高める食べ物を作ることです。自然の力で、太陽の光線で育てたものにはやはりそれだけの力があります。自然の酵素がつまっております。そういったものを食べることによって人間自体の免疫力を高めることができると思うんです。またそういったものを使った発酵食品を摂ればなおさらいいと思います。食べ物そのものが自然の力をもっているかどうかがこれから問われてくるんじゃないか。三番目ですけども、食に不安を持つ人と生産農家とが新たなつながりを作るということですね。放射能というのは誰でも避けたい。しかし、放射能だけを考えていると足をすくわれてしまう。有機農業という形でやっている農業を広めていくことがすごく大事だと思います。原発を残さない運動をしっかり続けていくことが必要です。子どもたちが原発のない社会で生きられる条件作りをやるとことが大事だと思うんです。(つづく)
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週刊『三里塚』(S837号2面2)(2011/12/12)
米大資本が日本への圧力要求
TPPは対日争闘戦
コメ開放もゴリ押し 日米協議開始許すな
TPPは、最末期帝国主義の究極の新自由主義・グローバリズムの突進であり、労働者階級人民に対する一大階級戦争攻撃だ。日帝・野田政権は、年明け早々にもTPP交渉参加のための日米協議に入る。日帝ブルジョアジーの「早く交渉に入り、日本に有利な条件を作る」と言うのはペテンだ。この日米交渉での対日要求が日本のTPP交渉参加受け入れ条件であり、これがTPP協定の内容となるのだ。
ここでは対日争闘戦としてのTPPの激しさを見ていく。アメリカの通商(交渉)権限は議会にあるため、政府が新規の参加国と交渉開始する場合には、少なくとも90日前に連邦議会に交渉開始を通知し、協議を行わなければならない。下院において共和党が多数になった結果、対日強硬策こそがオバマ政権維持のための手段となる。
米帝の対日要求は、日米経済調和対話(2月)の67項目の要求やアメリカ通商代表(USTR)の外国貿易障壁報告書(3月)を見れば明らかだ。農業・食品関連では、米国産コメの消費拡大と牛肉市場再開放・残留農薬および農薬の使用緩和と 有機農作物や食品添加物の表示緩和を要求し、医療・医薬関係では混合医療や外国資本の病院参入制限の解除と血液製剤の輸入規制緩和や外国平均価格調整ルールの運用改善などを提案している。特に対等な競争条件ということで日本郵政グループやNTTなどの政府の優遇策を批判している。
これらの政府要求の元になっているのが、各種の業界団体とその連合である。最たるものが「TPPのための米国ビジネス同盟(以下、ビジネス同盟)」である。ビジネス同盟は、加盟団体数が現在150を超え米国の農業、製造業、サービス業の多国籍企業と巨大利益団体で構成されている。08年TPP構想当初からロビー活動を行い、そのメンバーは米国シカゴのTPP第8回全体会合(11年9月)で各国交渉当事者と直接の意見交換をしている。
米国ビジネス同盟の日本のTPP交渉参加に際する前提的な要求は次のようなものだ。(米日経済協議会資料「環太平洋経済連携協定への日本参加の実現に向けて」11年10月7日)
@コメの減反制度および兼業農家への補助金制度の廃止、A物品の関税・非関税障壁の完全撤廃、サービス・投資の「ネガティブリスト方式」による市場開放、B医薬品・医療機器市場の自由化、C知財法の米国化 、D政府調達市場の開放 、E郵貯・簡保の民営化(=株式売却)、F一旦自由化したものを後退させてはならない方針、G外国労働者の規制緩和、その他である。しかもこれらの規制緩和や自由化を日帝が「自主的に」行うよう居丈高に迫っていて、「日本の政治家は自ら下せない難しい決断に必要なテコとし て、外圧に依存してきた。しかし、日本は自らの意思で判断しなくてはならない」「これは試金石だ」と強制している。
米多国籍企業の対日要求はまさに、労働者階級への新自由主義攻撃そのものである。特に@「農業分野」では「コメの減反制度および兼業農家への補助金制度の廃止に向けた具体案とタイムテーブルを示せ」。また、「(食品)法規制や衛生植物検疫基準に関連する諸問題に対し具体的な対応をとれ」と指摘し、それが日本の真剣さを示すことであり、それが不十分なままでは、日本がTPP参加の準備が整っていると主張しても説得力に乏しいとまで言いきっている。また米国コメ連合は、10月に批准された米韓FTAにおいてコメが除外されたことから、今後一切コメが除外されないよう強く要求している。農業分野では最初の日米交渉の段階から関税撤廃が強制されることは不可避だ。日本農民は、文字通り生きるためには闘わなければならない。日帝・野田は、米帝の要求に応える形をとりつつ、全ての分野において資本の自由な搾取と収奪を強化するために戦後的な諸制度を転覆し、労働者の権利を解体し家族経営の農家を潰すTPP攻撃を貫徹しようとしている。今こそ、外注化攻撃にストキで闘う動労千葉と「国益のための」農地取り上げに実力闘争を貫く三里塚がTPP反対闘争の先頭に立つ時だ。
(写真 TPP推進の先頭に立って対日強硬要求をくりかえす米USTRのロンカーク)
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週刊『三里塚』(S837号2面3)(2011/12/12)
航空法39条違反だ
第3誘導路裁判 国交省と千葉県圧倒
11月29日、千葉地裁民事第3部(多見谷寿郎裁判長)で第3誘導路裁判が開かれた。
被告の国・NAAは恥知らずにも、「第3誘導路を造っても騒音・振動はたいして増えないし、健康や生活環境に影響は出ない。だから市東さんや反対同盟に原告適格はない」と主張している。そして200億円もの巨費を投じて、第3誘導路建設工事を現に進めている。絶対に許してはならない。
反対同盟顧問弁護団は、国とNAAの主張をすみずみまで徹底的に粉砕する書面を提出し陳述した。
騒音・振動などの被害は「たいして増えない」どころか、その被害拡大によって市東さんを天神峰から追い出そうとする攻撃そのものだ。また、誘導路と滑走路の間の最小離隔距離が182b必要なのに、への字誘導路部分では120bしかないという、明白な航空法違反を犯している。
さらに第3誘導路計画は、「他人の権利を著しく侵害してはならない」という航空法39条2項にも明白に違反していながら、県とNAAは居直っている。
違法・脱法と地域住民の生活破壊を繰り返す欠陥空港の現実が明らかにされ、傍聴席を埋めた労働者、支援者の怒りを一層かきたてた。国とNAAはただちに工事を中止せよ!
閉廷後、近くの会場で報告会が開かれた。冒頭に北原鉱治事務局長があいさつした。「5月20日の東京高裁での50人不当逮捕に明らかなように、法を守るべき国家の側が法を破っている。この現実は彼らがいかに追いつめられているかを表している。成田空港建設は根本から間違っていた! 一人ひとりが立ち上がって、今の間違った政治を根本から変えなくてはならない。TPPは日本の農業を破壊するものだ。日本の未来のために闘おう」。訴えに参加者全員が拍手を送った。
続いて葉山岳夫弁護士をはじめ弁護団が、第3誘導路工事強行を怒りを込めて弾劾し、国とNAAを裁判で徹底的に追及し、現地闘争と一体で闘うことを明らかにした。
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週刊『三里塚』(S837号2面4)(2011/12/12)
12月援農へ決起を
全学連三里塚現地行動隊
今週は行動隊の正面任務の一つである援農について報告します。
例年に比べ暖かく雨も多いため野菜の育ちが早く、最近の出荷ケースには葉物と言われる主に葉を食用とする葉菜(ようさい)類がたくさん入っています。非結球性(葉が広がっているもの)と結球性(丸く固まった形状のもの)とがあり、そのほとんどがアブラナ科で、ほうれん草がアカザ科です。アカザは、夏の草取りで苦労させられる雑草(元々食用として中国から来た)で若葉が赤いためこの名が付けられています。
茎は軽く丈夫なので杖としても利用され、故鈴木幸司さんが作るのを得意としていたそうです。このアカザ科のほうれん草は、5度以下になると伸長を止め、甘みビタミンが増えます。これから美味しくなる一押し野菜の一つです。ちなみに、ほうれんとは中国語でペルシャを意味し中央アジアが原産地です。日本には17世紀にシルクロードを通って中国から日本にやってきました。
アブラナ科のチンゲンサイももちろん中国から。チンゲンサイは葉が青いのですが、葉先の色が濃く茎が白いのをパクチョイと言います。漢字は「白菜」ですが、一般の白菜とは違います。そして、白菜の仲間の代表的な中国野菜ターサイ。肥料を使わず、水と土でつくられる水菜。江戸川区小松川付近で、ククタチナ(茎立ち菜)を品種改良して栽培され始めた小松菜などがケースを賑わせています。そしてこれらアブラナ科の野菜と言えば青虫です。美味しい野菜を食べたいのは虫も同じだとはいえ、12月だというのにモンシロチョウが畑に!!
先日は、市東さんの畑の里芋掘りを初めて三里塚を訪れた学生と一緒に行いました(写真)。沖縄と同じようにそこで「普通に」生活すること自体が国家・資本と非和解となっている現実に対して、それでも意気軒高と農業を行い生活している姿に、その学生は感銘を受けたと語っていました。また、自分は大学に入って初めて三里塚闘争を知った、もっと多くの人が知って欲しいとも。
青年・学生が三里塚闘争を知り駆けつけることこそ新たな時代を切り開く最先端の闘いです。大きくなった大根、ゴボウなど多くの野菜が正月に向け、掘られるのを待ちわびています。年末援農への決起を! そして2012年を三里塚闘争飛躍の年に! 現地行動隊は最先頭で闘います!
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週刊『三里塚』(S837号2面5)(2011/12/12)
三里塚営農だより
萩原進さん宅
三里塚ではただ今、里芋の収穫が真っ盛りです。今年は雨が適度に降り里芋にとっては最高に過ごしやすい年だったようで丸々と太った芋がミッチリと付いています。
里芋は一株3`〜4`、重い物で7`以上あり、1日収穫作業となると結構、腰、腕に来ます。
しかも、筋肉痛が出るのが2日後なので辛いものがあります。有機栽培で作る里芋は特に人気があり、一年前にお試しセットを食べた人が里芋の味が忘れられずに会員に入会することも有るほどです。里芋は出荷時期も11月〜4月までと長く、その貯蔵には気を使います。
畑に掘った穴に貯蔵しますが、気温が下がる時期を見計らって土をかけたり、雨が染み込まないようにビニールをかぶせたりと手をかけます。
写真はミレーの「種をまく人」を真似た、萩原富夫さんがモデルの「手押し管理機を押す人」です。
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週刊『三里塚』(S837号2面6)(2011/12/12)
三芝百景 三里塚現地日誌
11月23日(水)〜12月6日(火)
●成田空港と羽田空港のアクセスをよくするため、国土交通省が11月上旬、「新東京駅」構想を東京都に打診していたことが分かった。これは都営地下鉄浅草線の押上駅と泉岳寺駅の間に追い越し線を整備し、東京駅丸の内側に「新東京駅」をおいて、浅草線のピーク時の最大運行本数を現在の毎時24本から28本に増やし、成田―羽田間の時間を短縮する計画。都側は費用に比べ効果が薄い、と難色を示したという。(23日)
●三里塚闘争支援連絡会議は、12・6市東さん行政訴訟・農地法裁判弁論にむけて、第3回目の早朝ビラまきを千葉地裁前で行い、裁判所職員、県庁職員、近隣の労働者にアピールした。(25日)
●第3誘導路裁判を闘う
千葉地裁民事第3部・多見谷寿郎裁判長の下で、第3誘導路許可処分取り消し裁判を闘った。(29日=2面に記事)
●三里塚闘争支援連絡会議は、12・6市東さん行政訴訟・農地法裁判弁論に向けて、第4回目となる早朝ビラまきを千葉地裁前で行った。(29日)
●法政大学から援農隊 法政大学の倉岡雅美さんと学生一人が市東孝雄さん宅に援農に入った。場所は、いつも3月の全国集会を行う畑。作業は里芋の掘り取りと収穫。重労働にもかかわらず懸命に作業。市東さんとの連帯を深めた。午後は全学連三里塚現地行動隊の案内で現地調査。最後に北原事務局長宅で交流した。特に三里塚が初めてという学生は「とても感銘を受けました」「大学に入って初めて三里塚のことを知った。もっと多くの学生に知って欲しい」と力強く語っていた。(4日)
●市東さん行訴・農地法裁判弁論に決起 市東さんの行訴・農地法裁判の決戦的な弁論となる法廷闘争に反対同盟はじめ多数の労働者・農民・学生が決起、多見谷寿郎裁判長の強権的訴訟指揮を押し返した。また、早朝の地裁前ビラまきも行った。(6日=写真=1面に記事)
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週刊『三里塚』(S837号2面7)(2011/12/12)
北総の空の下で
根菜セット
労働者への思いが
秋から冬にかけて、高温多雨の毎日に野菜の育ち過ぎや傷み、虫食いが止まりません。
とう立ちしてクリスマスツリーのようになったレタス、育ち過ぎてすあきや傷みが続出の大根…。頑張って作付けした葉物がケースに満載…。昨年の今頃は、葉物不足で苦労したのがウソのようです。自然相手の農業が、資本主義社会で冷遇される所以です。
TPP推進者が言う強い農業とは、大工場で管理された工業製品のような野菜作りや、プレミア付で金持ちに高額で売る果物作りのことです。例えば政府は中国の富裕層に100万トンの米輸出計画を進めています。TPPに参加すると米の生産は100万dに減少すると試算されているので、国内生産米の全てが、中国の金持ちに売られる計算です!
私たちが、有機栽培で手塩にかけて育てた野菜を食べて欲しいのは共に闘う労働者です。この冬、産直で根菜3品セットを作りました。人参、里芋、さつま芋各3`の詰め合わせです。実りの季節を迎えましたが、放射能不安で、産直会員の休会者が増えているため、急きょ皆さんにお願いすることになりました。忙しくて、食事に時間をかけられない労働者にこそ根菜を食べて欲しい、そんな思いも込めました。
余裕のないときは焼芋やふかし芋で主食とおかずの栄養をいっぺんに。根菜たっぷりの煮物や汁物は持久力を高めます。有機野菜は放射能を取り込みにくいというデータもあるのですよ。
北里一枝
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