SANRIZUKA 2003/07/15(No635
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週刊『三里塚』(S635号1面1)
神社裁判 窮地の公団、「和解」申し入れ
「違法伐採」は明白、公団敗訴濃厚で
崩れる公団の暴論 神社土地 東峰区の総有完ぺき
空港公団が〇一年六月、平行滑走路予定地内にある東峰神社(東峰区の所有物)の立木を一方的に伐採し、地区住民が原状回復と損害賠償などを求めている東峰神社裁判で、公団側は六月三十日、千葉地裁で行われた第七回口頭弁論において反対農家側に「和解」を申し入れてきた。原告・東峰区住民の全面勝訴、公団側の全面敗訴が濃厚となってきたためで、暫定滑走路の存在そのものの正当性が揺らぎだしたことへの危機感の表れだ。国家権力を背景に違法を承知で村の神社林を伐採し、暫定開港(〇二年四月)を強行し、地区住民の頭上四十bにジェット機を飛ばしてきた公団は、一転して窮地に立たされている。
「全面的に争う」としてきた公団が、全面敗訴を恐れ、突然「和解」を申し入れてきた。和解案の内容は明らかにされていないが、法廷での公団の主張から推察して、おおよそ以下の内容と思われる。
第一に、公団は〇一年六月の神社林伐採行為の「合法性」だけは確保したい。ゆえに神社の土地が部落の総有であるという核心問題は認めない。法廷で公団側は、「民法は総有権の発生そのものを認めていない」という、学説を無視した暴論を展開している。従って公団は、裁判が結審しては困るのだ。
第二に、見せかけの「最大限の譲歩」だ。おそらく東峰区が神社を利用する権利は認めると思われる。公団は神社の建物だけは東峰区の所有だとすでに認めているので、譲歩ではなく現実の追認にすぎない。
第三に、お得意の「謝罪」であろう。せいぜい「伐採の事前通告がなかった」ことについて「謝罪」する。その限りで「慰謝料」も支払う(自分の腹が痛むわけではない)。
そして第四。今後、東峰区が新たに植林した立木が進入表面を超えた場合の伐採権だけは確認する。ここが核心だ。
おおよそ以上のようなものだろうと推察できる。
(写真 暫定滑走路の開港は東峰神社【=写真下】立木の違法な伐採なしには不可能だった。神社裁判の進展は滑走路の存立を根底から脅かしている)
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公団は、じつに虫のいい「和解案」を準備しているのである。〇一年六月の伐採が明々白々な違法行為、犯罪であるという事実をうやむやにし、「謝罪」と「慰謝料」で伐採の既成事実を正当化しようという魂胆だ。そして結局は、今後も伐採を認めさせようというのである。
しかも公団は「和解」と「謝罪」をもって、あわよくば「未買収地交渉全体に弾みをつけたい考え」(朝日新聞6・30)だという。
これは和解ではなく居直りである。押し入り強盗が被害者に「謝罪」して家を乗っ取るという類だ。とうてい認められる筋合いのものではない。
「謝罪」で伐採正当化 所有権譲らず
公団・黒野総裁が本当に「和解」をいうなら、神社の所有権が東峰区の総有であるという核心問題を含め原告住民側の主張をすべて認め、原状回復すべきだ。さらに伐採の犯罪行為を立案した当時の責任者(前公団総裁・中村徹)と実行行為者の刑事責任を明らかにし、告発すべきである。
なにしろ公団は、多数の私服警官と機動隊が見守る中で集団で神社に押し入り、住民を力ずくで排除して伐採を強行したのだ。抗議した地権者の一人である萩原進さんが逆に逮捕されるという暴挙も加わった。
「和解」を言うなら村の全主張認めよ 神社立木の完全な原状回復を
公団はこうした犯罪行為と、その上に強行された暫定開港を謝罪し、農家の上空四十b飛行という暴挙をただちに中止すべきだ。そして欠陥と危険に満ち満ちた暫定滑走路を閉鎖すべきなのである。
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この裁判は、団体的所有形態のひとつである総有権を公団が勝手に「解釈」し、変更しようのない東峰部落の神社所有権(土地・建物その他の総有権)を、違法を承知で確信犯的に侵害し、立木を伐採(〇一年六月)したことで始まった。力ずくで開港しさえすれば「騒音直撃の住民は必ず折れる」(公団用地部)と踏んでの暴挙だった。
この公団の思惑は、神社裁判の進展の中で根底から崩れつつある。
総有権は、表見上の名義人(登記簿などの名義)にかかわらず、共同体などの団体全員が実質的な所有権を保持する権利形態で、村人の誰かが土地を提供して建立した産土神社などは、ほとんどがこの総有形態である。東峰神社(村の産土神)も例外ではない。
総有権の特徴は、当該団体の全員が同意しなければ所有権を売買できない点にある。公団もこのことは十分承知していた。それゆえ一九六九年に浅沼輝男氏から東峰神社を含む用地を買収した際、神社の部分だけを分筆し、買収手続きから除外した経緯がある。
その神社の土地を、公団は、三十年以上が経過した〇一年になって密かに形式的に「買収」手続きを取り、同年六月、一方的な伐採を強行したのである。立木が航空法に定める進入表面を侵害していて、そのままでは開港できないことが分かったからだ。公団は開港後の住民の屈服を前提に、違法行為を押し通した。
その結果、公団側が法廷で主張した論理は暴論と呼ぶにふさわしい内容だった。それは@「民法は施行後に新たな入会権(総有という概念を含む)の発生を認めていない」A「神社は入会権になじまない」である。これらはかつて、人民の生活権を守る入会権を開発資本の側から否定・解体するために作られたもので、学説によって否定された主張である。
三十日の口頭弁論で原告・住民側は、@入会権は民法施行後も、村落集団が集団として土地を取得して総有的に支配する場合に新たに発生すること、A入会権には利用形態に制限がなく、入会者の意志によってその内容を決定できることなどを、法社会学の学説と判例から明らかにした。
この日の反論は神社敷地の所有権をめぐる総有(入会権)論争の入り口にあたる。弁護団は今後、神社敷地についての地域調査報告や法社会学者の鑑定と証言等による緻密で膨大な理論展開を準備している。
(写真 東峰神社裁判第7回口頭弁論終了後、裁判の争点を改めて説明する弁護団)
次回口頭弁論は9月22日10時
次回口頭弁論は九月二十二日(月)午前十時三十分、千葉地裁五〇一号法廷にて行われる。傍聴闘争に参加しよう。
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週刊『三里塚』(S635号1面2)
解説
「総有権」民法上に厳然と成立
神社は典型、表見名義人の売買不可
東峰神社裁判の争点の核心は神社敷地の所有権が東峰区の総有(入会権)であるという点だ。
東峰神社は東峰部落の産土神社として、一九五三年十一月に部落の共同事業として建立された。敷地は東峰部落の入植者の一人、寺田増之助氏が寄贈した。寺田氏から寄贈された時点で神社敷地には総有的(入会的)権利関係が成立した。
総有とは多数の者が同一の物を共同で所有する形態の一つ。管理・処分などの権限は団体に属し、各団体員は使用権を持つにとどまる。共同体所有の中でもっとも団体主義的色彩が強い。民法で定める共有と違い、各構成員の持分はなく分割請求権もない。入会権はこれと同様の性格。
総有の典型はゲルマンの村落共同体にあるといわれる。日本でも江戸時代における村落団体の共同所有は総有だった。現在も残る入会(いりあい)はその後身として同じ性格をもつ。
神社もその典型で、敷地(境内地)は村落共同体が団体で管理することで神の加護を受ける。各構成員(氏子)には持分も分割請求権もない。村落共同体の共同所有として典型的な総有関係にあたる。
被告・空港公団は、この歴史的事実を抹殺して「入会権は徳川封建体制の遺制で、民法施行後の集団は入会権を取得できない」「神社は入会権になじまない」などの暴論を展開。便宜的な公団名義の登記簿(伐採直前に名義人から買収)を唯一の理由に「土地は公団のもの。ゆえに立木も公団のもので伐採は正当」と開き直った。
第七回口頭弁論で原告・東峰部落は「『民法は従来の入会権を認めただけで、新たに発生しない』という主張は、数多く見られる地方の習慣を無視する暴論である」(各注釈民法第7巻550頁)との法社会学の泰斗・川島武宜博士の学説を引用し厳しく批判した。
また「民法上の入会権は『各地方ノ慣習ニ従フ』べきものとされ…広範な機能を包含し、収益行為をしない場合もある共同所有の一形態であることは、多くの実態調査から明らか」(同書510頁)として、神社の総有を否定する公団主張の誤りを論断した。
総有(入会権)においては登記名義(公団が自己の所有地とする根拠)は公信性がなく法的対抗力をもたないことは学説と判例で確定している。
総有(入会権)は、岩手県の小繋村の村民の闘いが歴史的に知られている。公共事業での土地収奪に対して人民が権利を主張する論拠となってきた。東峰神社裁判は、この総有論争において、人民の権利を守る判例を残す重要裁判ともなっている。
(新井)
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週刊『三里塚』(S635号1面3)
空対協 「北延伸」論の身勝手
周辺対策後退導き 騒音下住民を無視
成田市内の三十六法人で構成する「成田空港対策協議会」(会長・豊田磐)は六月二十日の総会で、暫定滑走路の「北側延伸」による二五〇〇b化を容認する活動方針を打ち出した。騒音下をはじめ地元住民へのむき出しの敵対であり、厳しく断罪されるべきである。空対協は、〇〇年にも平行滑走路計画を三〇〇〇bにすべきだと声明、反対同盟や地元住民の強い怒りを買った。いまや空対協は、東峰区住民をたたき出すために意味のない北延伸計画を振り回す空港公団・黒野総裁の最大の先兵だ。
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同協議会では昨年、成田空港民営化に際して設備と運営を国と民間会社が分担する°上下分離案″を批判し、市当局とともに成田単独民営化を国や県に強く求め、これが通った経緯がある。空港からの税収の恩恵を市と関連利益団体が独り占めにしようとの思惑だったが、その結果、民営化後の地元周辺対策が大きな不利益を被ることになった。完全民営化だと、周辺対策の責任は法律上国のものではなくなるからだ。
利益至上主義の民間会社による周辺対策が、質量ともに低下することは明らかだ。国交省は成田市の要求を逆手にとって完全民営化を受け入れ周辺対策の責任から逃れた。
慌てた地元自治体は今年二月、国交省、県、地元市町村、公団の「四者協」で民営化後の周辺対策を保証する「覚書」を交わした。しかし国交省はあくまで法文化を拒否、周辺対策は単なる「約束事」になってしまった。市と空対協が私欲にかられて完全民営化を主張した結果だ。彼らの責任は重い。
今回、空対協が「北側延伸」を要求したのは、彼らが地元住民の利益を犠牲にしてでも私的な利益を追求する団体であることの証明だ。地元住民の怒りは日増しに高まっている。
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週刊『三里塚』(S635号1面4)
北延伸の無意味明白
反対同盟詳細調査 「ジャンボ機飛べぬ」
反対同盟は六月二十二日、東峰区の萩原進さんの畑で「暫定滑走路の北側延伸攻撃粉砕」を掲げた集会とデモを行い、敷地内住民に対する空港公団の一連の脅迫・移転強要行為を弾劾した。集会には首都圏から百十人が参加、「暫定滑走路の閉鎖を勝ち取るぞ」などのシュプレヒコールが一帯に響き渡った。
反対同盟はデモ終了後、記者会見を行い、公団・黒野が打ち出した「暫定滑走路の北側延伸」計画を詳細に批判・弾劾した。北原鉱治事務局長は会見冒頭、「公団総裁は『(暫定滑走路を)二五〇〇bにしないと株価が下がる』といっている。そんな理由で住民を騒音と危険にさらす延長攻撃は言語道断だ」と怒りを表明した。以下は反対同盟の会見要旨。
◇ ◇
暫定滑走路の北側延伸はそもそも無謀である。
第一に、事故の危険と生活破壊が強まる。@東関道と滑走路北端の距離がわずか四百bに縮まり極めて危険。この地点の飛行高度は四十b以下だ。A本来九百b必要な進入灯が四百bにとどまる。B税金の無駄遣いである。
第二に、北延伸では実質滑走路長は変わらず、オーバーラン対策にならない。
第三に、騒音等の住民被害は著しく増大する。現在東峰区の騒音は最高百デシベルを超える。滑走路北側の小泉地区などにも限度を超えた騒音被害が出る。
また、公団は滑走路の延伸で「ジャンボを飛ばす」と敷地内農民を脅しているが、現状のまま北に延伸しても連絡誘導路が狭く湾曲しており、ジャンボ機は滑走路に入れない。北延伸は脅しのための工事であり無意味だ。反対同盟は北側延伸計画の即時撤回と暫定滑走路の閉鎖を要求する。
二〇〇三年六月二十二日
反対同盟事務局
◇ ◇
東峰区住民を脅すための暫定滑走路の北延伸計画なるものは、運用上はまったく意味がない。
滑走路の二五〇〇b化を公団が言う理由は「現状ではジャンボ機が飛べない」というもの。しかし前記の通り、暫定滑走路は入り口(駐機場との連絡誘導路)が狭く、ジャンボ機は入れない構造になっている。東峰区が全部更地になり「南側」への延伸が実現すれば問題は解消するが、現状のまま北側に延伸しても意味がない。
またジャンボ機は基本的に三〇〇〇b滑走路が必要で、二五〇〇bで飛べるジャンボ機はごく一部の国内線用機種に限られる。
結局、北延伸は運用上意味がない。東峰区住民を脅すために、こうした無意味な工事に莫大な税金を投入する計画は論外だ。
反対同盟は今回の会見で、「北延伸計画」に込めた公団の意図を(脅迫)一言も批判できずにリーク情報を垂れ流した朝日新聞などの報道姿勢も批判した。
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週刊『三里塚』(S635号1面5)
イラク民衆の「非協力」は当然
苛立つ帝国主義者
殺りくのツケこれから
読売新聞に「戦後復興に協力しないイラク人」という劇作家・山崎正和氏の論評が載った。「イラク民衆は自助努力の責任に目を向けず、米軍を恨んでばかりいる」と嘆く内容。これぞ帝国主義者という思考だ。
民間人だけで三千人以上が殺されたのだ。仮に外国の軍隊が東京で三千人殺したら恨まれるのは当たり前だ。「戦闘終結」後、米軍兵士六十人が襲撃されて死んだというが、序の口だろう。
政府機関を根こそぎ解体したのも米軍だ。破壊するだけ破壊しておいて「治安維持はイラク人の責任」とはあきれる。極めつけは「米軍は民衆の同盟軍」だという感性だ。°解放してあげたのに協力しないとは何事か″というのだ。
(写真 あらゆる生活条件を破壊した米占領軍に抗議するイラク女性)
イラクの石油資源や復興利権に群がるハイエナのような米資本とブッシュ政権。これは「解放」ではない。彼らは侵略者だ。イラク人民の抵抗は絶対にやまない。山崎氏のような手合いも、必ずや歴史の審判を受けることになる。(鶉)
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週刊『三里塚』(S635号1面6)
虫の話。今年発生の筆頭はヤスデ。体長二センチ以下で黒や茶色。足がたくさんある細長い虫だ。都市にも生息する。腐りかかった建築廃材などで大量発生することがある。廃棄物の不法投棄で家のまわりがヤスデだらけになる被害も急増している▼三里塚の畑でも今年はヤスデが大量に発生した。天神峰では滑走路の軒先工事の頃、建築廃材を含む廃棄物が埋められ、年月を経てそれがヤスデの棲息する環境になったのかもしれない。空港の地下はヤスデの巣となり、いずれ陥没の原因になるだろう▼落花生畑では、タネバエが発生、発芽率が落ち込む被害が出た。余談だが、カラスに種を食われて発芽率が落ちる被害も発生している。奴らは、土の下数センチに埋められた種の在処を知っているのだ。やれやれ…▼落花生は五月下旬から六月に種をまく。タネバエは畑に産卵し、畑にまいた種を幼虫が食い荒す。今年のような過湿時に多く発生する。未熟な堆肥(たいひ)を大量に施しすぎた畑でも発生するが、今年は堆肥とは無関係のようだ▼これらは季節感あふれる話題だが情緒とは無縁。多湿で不快指数も高くうんざりする。が、落花生は三里塚名物の一つ。その香り高い味は折り紙付きだ。収穫の喜びや健康な食生活への貢献を思いつつ、苦難と格闘する日々▼この季節は曇天が多く、畑に響くジェット機の轟音がこもって増幅する。公団・黒野総裁が敷地内の農家に「開港の非を謝罪」したそうだ。で、謝る以上は滑走路を閉鎖でもするかと思いきや「出て行ってくれ」と。°虫が悪い″とでもいうべきだろうか。
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週刊『三里塚』(S635号1面7)
暫定路の閉鎖勝ちとるぞ
反対同盟は東峰・萩原進さん方で暫定滑走路北延伸攻撃に対する弾劾集会を行った。北原事務局長は「公団は二五〇〇bにしないと株が下がるという。そんな理由で住民を危険に晒すとは言語道断」と断罪した(6月22日)
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週刊『三里塚』(S635号1面8)
闘いの言葉
米国が韓半島で起こそうとしている戦争を阻止するため悲壮な決意で臨む。イラク反戦の熱気を崇高な反戦平和運動に昇華させる。
四月二日 韓国民主労総(全国民主労働組合総連盟)
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週刊『三里塚』(S635号2面1)
有事法制定=朝鮮戦争許すな
「成田空港に50万の米軍」現実に 闘う南北朝鮮人民との国際主義連帯を
日本を再び虐殺の基地にするな!
有事法制の制定によって日本は戦後史の分水嶺を越えた。二千万人以上のアジア人民の血の犠牲の上に敗戦を迎え「二度と戦争には協力しない」と誓った労働者人民のたたかいが問われている。有事体制の実体をなす労働者総動員にむけ、主要な空港と港湾、鉄道、道路その他の関連施設の取り上げと労働者自身の強制動員の攻撃が切迫しており、その焦点として成田空港の軍事基地化の攻撃が迫っている。「成田空港を軍事空港にするな」のスローガンをかかげてたたかってきた三里塚闘争の真価が問われる時だ。成田を朝鮮人民虐殺の基地にするな。軍事空港を廃港へ。イラク新法制定を許すな。
有事法制の制定で、アメリカと日本による朝鮮侵略戦争が、「開戦」にむかって動き始めた。
一九九四年の「北朝鮮核危機」で、戦争のボタンに手をかけた米大統領クリントンの決断を阻んだのは、韓国の労働者・人民の「第二次朝鮮戦争反対」「自主的・革命的統一」にむけたたたかいの高揚と日本の対米軍事支援体制の未整備だった。五〇年朝鮮戦争と同様、空港、港湾を中心として日本列島全体を出撃・輸送・兵たん基地にしないかぎり、第二次朝鮮戦争は成り立たなかったからだ。
(写真 成田空港に飛来した自衛隊のC130【2001年2月】。朝鮮侵略戦争では50万の米軍が殺到しようとしている)
当時、有事法制は法案すらできておらず、労働者の戦争動員も実現からはほど遠い状態だった。したがって九四年危機の直後から、「対米支援体制」づくりを念頭に有事体制構築の攻撃が歴代政権の戦略的課題として追求されてきた。
すなわち一九九五年の「日米安保の再定義」作業、米軍による「対日支援要求一〇五九項目」〜九六年日米安保共同宣言〜九七年新ガイドライン〜九九年周辺事態法の攻撃である。
そしてアメリカは二〇〇〇年のアーミテージ報告で「日本は有事法制と集団的自衛権承認が必要」と明言、これを契機に有事立法攻撃はいっそう具体化し、〇一年に発足した小泉政権が「有事法制制定」を正面に掲げた。これは日本が、「戦争のできる国家」への転換をかけて、きたるべき第二次朝鮮戦争へ参戦する決断と一体である。そして有事法制が六月六日、国会を通過した。
第二次朝鮮戦争は、きわめて具体的な現実として、日本の労働者人民の前に立ち現れている。アメリカは非武装地帯の在韓米軍師団を後方に下げるなど軍事編成の改編に着手、KEDO(朝鮮半島エネルギー開発機構)の中止や日本人「拉致」問題の利用(アメリカはイラク戦争における「大量破壊兵器」のような口実として「拉致問題」を使おうとしている)を決めるなど、「開戦」にむけて実戦的に動き出した。
攻防点は、有事体制の実体をなす総動員態勢づくりとのたたかいに移行した。
総動員体制づくりは主要な空港と港湾、鉄道、道路その他の関連施設などの軍事動員およびそこで働く労働者人民の戦争徴用として進められるが、この現場、職場でのたたかいが朝鮮戦争を許すか否かの火点となっている。政府は、自衛隊員の各自治体への出向を大々的に開始し、自治体の有事動員に着手した。
日本の労働者人民は、再びアジア・朝鮮侵略戦争に動員されるのか、「出撃基地」という形でこれを支えるのか、それとも「何百何千万という人びとを殺さなければ生きられない米日帝国主義の打倒に向かって、歴史の新たなページを開くのか」の決定的正念場に立っている。
米1600の航空機飛来 鉄道、港湾、自治体など動員 作戦計画「5027」
総動員体制づくりとのたたかいの焦点に、成田空港の軍事的動員を許すのか否かが重大な課題として浮上している。
成田の軍事的動員は、米クリントン政権が日本に要求した「一〇五九」項目(一九九五年)の中に、「主要空港の軍事的使用」の項目として盛り込まれた。これは日本最大の民間空港である成田空港を中心に、関西新空港、那覇空港、福岡空港、宮崎空港、長崎空港、新千歳空港、新潟空港の八空港を指名したものであった。
これに先立つ一九九四年六月には在日米軍準機関紙「星条旗新聞」が、「朝鮮有事の際に米軍は成田、新潟、千歳の定期便をストップさせ、兵員や死活的軍需物資の空輸基地に転用することを要求することになるだろう」と報じた。
4千b滑走路
背景にあるのは、現代戦において航空輸送および航空作戦の比重が飛躍的に高まっており、民間空港の大々的な動員なしに第二次朝鮮戦争はたたかえないという問題意識である。
航空輸送という点では一九九一年の湾岸戦争が軍事史を塗り替えた。投入された五十四万人の陸上部隊の内、九十%がCRAF(民間予備航空隊)と呼ばれる制度で平時から契約を結んでいる民間航空機で湾岸まで輸送された。
サウジアラビアのダーラン空港は、この戦略空輸の拠点空港となり、戦闘部隊供給の「大動脈」となった。兵たん物資の輸送でも航空機の役割は重みを増した。
一九九二年に策定され、その後二年ごとに改定されてきた朝鮮侵略戦争計画5027では、朝鮮半島有事の際、米本土から陸上兵力五十万人の来援、航空戦力千六百機の飛来、艦船二百隻を投入すると構想され、「戦術核兵器投入も辞さない」とされている。
この「来援する五十万人」の受け入れを「国際線民間パイロットが慣れている」成田空港そして関西国際空港で行うことをクリントンは要求してきた。兵員の輸送は前述の民間チャーター便で行うため、パイロットの「慣熟」が重要なのである。それから八年。「五十万の米軍来援」が現実味を帯びる段階に入ったのである。
切迫する朝鮮戦争で、成田の担う役割は米地上部隊の受け入れだけではない。そのものずばり出撃基地としての役割も重大だ。
(図 日米ガイドラインで米国が要求した8つの民間空港と港湾。有事法で動員が決定)
それは四千b級滑走路の保有という問題である。今回のイラク戦争で、B52戦略爆撃機の位置があらためて示されたが、同機が発着できる四千b級滑走路は日本に四つしかない。成田、嘉手納、横田、関西である。この内、純然たる四千bは成田ひとつだけである。(嘉手納、関西は三千五百b、横田は三二五〇b)
B52爆撃機は経年機だが、米軍は今後四十年も使いつづけることを決定している。第二次朝鮮戦争でも重大な役割を果たすことはまちがいない。「四千b滑走路を持つ成田」の軍事的価値は、戦争が具体化すればするほど決定的となっているのだ。
(写真 米戦略爆撃機B52。成田4000メートル滑走路を必要としている)
三里塚の力で軍事空港廃港に 反戦の砦に結集しよう
航空作戦(爆撃、偵察、戦闘)の比重の高まりも飛躍的で、この点からも航空基地・空港の戦略的重要性は著しい。航空戦の意義は「十年前の湾岸戦争はもはや古代史」と言われるほどの変貌を遂げている。
一九九九年のボスニア空爆では、周辺のヨーロッパ諸国・九カ国三十四カ所の軍事基地、民間空港から爆撃機が連日飛び立ち、三万四千回もの攻撃を加えてユーゴスラビアを屈服させた。中でもイタリア全土の基地・空港が全体の六割も占め決定的役割を果たした。
またドイツ最大の民間空港フランクフルト空港は、定期便を一時停止して、爆撃機の給油基地機能を担った。「地上戦力をまったく投入せずに戦争目的を達成した」と軍事革命(RMA)の成果を示した事例として一部軍事関係者から「賞賛」された作戦例である。
航空戦の「威力」はアフガニスタン侵略戦争でも同様だった。二〇〇一年十月七日の空爆開始時点で、米軍が戦域の航空基地として確保できていたのはインド洋ディエゴガルシア島一カ所だった。空爆初日の作戦参加機は、米本土からの長距離作戦と空母艦載機を含めわずか二十五機。初期的な航空作戦の規模が予想を下回るものとなった理由は、まさに基地不足だった。
「限定的」なアフガン空爆作戦が質量ともに飛躍的な変ぼうを遂げていったのは、クウェート、キルギスタン、タジキスタン、パキスタンなどの周辺国の十二カ所の空港・航空基地を確保して以降のことだ。こうして「制空権」を確保することで、優勢を拡大していった。
列島不沈空母
米軍は、相手国の反撃を避けるため「航空基地を前線から四百マイル(六百四十キロ)以遠に設定する」という原則を決めている。
同様に、一つの空港・基地に駐留する航空機は五十機以内としている。滑走路がもし相手国の反撃で損傷した場合、駐留している軍用機がただの鉄の塊になってしまう打撃を避けるためだ。
これらのため、ボスニアでもアフガニスタンでも多数の航空基地・空港を必要とした。ところが、朝鮮戦争はこれ以上である。前述したように作戦計画5027では、「朝鮮有事の際に千六百機の航空機を飛来させる」となっている。仮に「千六百」という数から空母艦載機を除いたとしても千機以上の航空機を日本列島に駐留させなければならない。
つまり二十カ所以上の基地・空港を新たに確保することになるが、現有の在日米軍基地、軍民供用空港、自衛隊基地ではとても収用しきれない。そこで、出てきた要求が「成田をはじめとする八空港の占有」という項目だった。
まさに「日本列島は不沈空母」(中曽根元首相)にされようとしている。
被抑圧人民と
成田に続々と迷彩服の米兵が降り立ち、B52を始めとした軍用機が占拠する光景が、明日にも迫っている。われわれは朝鮮人民への国際主義的連帯をかけて成田空港の軍事基地化を阻止しなければならない。
その力こそ三里塚闘争である。三里塚三十八年の培ってきた人民的正義と地域制圧力は想像以上だ。人民の怒りの声を無視して軍事使用を強行すれば、成田空港は労働者人民の反乱に包囲されるであろう。われわれはそのようなたたかいを今こそ準備し、拡大しなければならない。全世界のムスリム人民、被抑圧人民と連帯し成田空港を廃港に追い込もう。
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週刊『三里塚』(S635号2面2)
「ローマより強い」?
アメリカ、実は落日の帝国 世界戦争は危機の表れ
アメリカによる戦争の拡大が進行している。世の評論家、識者たちは「ローマ帝国以上の強大な帝国の誕生だ」などと持ち上げたり嘆息したり忙しい。右派評論家ですら岡崎久彦や田久保忠衛などアメリカの代理人を含め「アメリカの軍事力の前には何を言っても無駄」(福田和也)と慨嘆の体である。
しかし事実は逆である。帝国主義世界支配は根底から崩れつつある。世界に戦争を拡大し、最も貧しい人びとを殺しつくした上で、富を独占しようという、アメリカの「一極支配」などそもそも不可能なのである。アメリカは強いのではない。崩壊におびえる落日の帝国なのだ。巨大軍事力は、そうした危機の表現なのである。
一九九九年、アメリカは全世界十九カ国に六十一カ所の基地を保有していた。軍関係者の駐留する広義の軍事施設を含めれば数字は八百カ所以上に拡大する。「冷戦後」十年以上もたってなぜこれほどの軍事基地が全世界に必要なのか。これは、戦後一貫して世界を支配し、権益を享受してきた米のやり方が通用しなくなり、よりむきだしの力に訴えなければ立ち行かなくなっていることの証しである。
殺りくの歴史
戦後アメリカは朝鮮、ベトナム、中東、アフリカ、中南米で約千万人の人びと虐殺して、その支配を維持し独占的利益を確保してきた。「資本主義の勝利」とうたわれてきたソ連の崩壊は、アメリカの戦後支配をいっそう危機にさらすものでしかなかった。
「冷戦後」、全世界に「紛争」が拡大し、アメリカの侵略と支配に挑戦するゲリラ決起が頻発している。こうした怒りの頂点として9・11世界貿易センター、ペンタゴンへの反米決起がたたかわれた。根幹にあるのがパレスチナ人民のたたかいである。アメリカに支援されたイスラエルの途方もない殺りくと占領政策にもかかわらず、アメリカの中東支配は揺らいでいる。「勝った」はずのイラクでアフガニスタンで「ベトナム化」が始まっている。
その上に米経済の極度の落ち込み、ドル大暴落の恐怖と29年型大恐慌の切迫である。独仏など対欧州、対アジアの分裂化、ブロック化も一線を越え始めた。
二〇〇一年QDR(四年ごとの戦力見直し)、同秋ブッシュドクトリン(全世界への戦争拡大計画)は、このような支配の危機への必死のあがきである。アメリカは崩壊におののいているのだ。
多くの知識人の認識から欠落しているものがある。世界の人びとのたたかいである。これこそが歴史を動かすものである。誰にも抑えることはできない。だからブッシュは9・11にあれほど震え上がった。
イラク反戦で約二千万の人が同時に決起した。人類史始まって以来だ。「それでも戦争を阻止できなかった」と嘆くのは正しくない。帝国主義本国を含め、世界の圧倒的な労働者人民が同時に行動したのだ。帝国主義を世界規模で打ち倒す条件が成熟している。ブッシュ足下のアメリカ労働者も力強くその存在と決意を示した。歴史は確実に動いている。
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週刊『三里塚』(S635号2面3)
歴史抹殺“北叩き”の誤り
日本は南北分断の当事者だ
排外主義キャンペーンの一環として「北に甘い韓国」「太陽政策は北を利する」(産経)なる論調が目立つ。
一九四五年以来の南北分断の歴史、五〇年朝鮮戦争の歴史をまったく無視した言説に強い怒りを覚える。この記者は、「韓国は北に対してもっと強硬姿勢をとれ」と言うのだが、かの戦争で朝鮮民族がどのような苦難を強いられたかを無視している。どのような思いで「戦争は二度とくり返すな」を叫んでいるのかを抹殺している。
そもそも五〇年朝鮮戦争の決定的な原因を作り出した(南朝鮮の占領)のはアメリカと日本だ。その日本サイドから「北に甘い」などという立場自体が転倒している。
朝鮮戦争では、南北の民族同士が争い、三百万人が虐殺され、今も一千万人が離散している。こうした悲惨を二度とくり返したくないために韓国の人民は新たな戦争に反対している。現在策動されている戦争が米日帝国主義による侵略戦争でしかないことを過去の歴史から見抜き、「ノー」をつきつけているのだ。
韓国人民の怒り
南北分断を強いてきたのはだれか、加担者はだれか、朝鮮戦争で利益を得てきたのはだれなのか。韓国の労働者・学生は一九八〇年の光州蜂起を契機として、アメリカこそが分断の元凶であること、日本帝国主義が加害者であることを見抜き、「反米反日」「南北の自主的・革命的統一」へ巨歩を踏み出した。「産経」の主張は「拉致問題の解決」と称して朝鮮戦争を言う「救う会」と同じであり言語道断だ。
韓国では六月、鉄道労働者がゼネストをたたかい、「二少女虐殺一周年」を弾劾して五万人が「戦争反対」「米は出て行け」と立ち上がった。かれらと連帯し朝鮮侵略戦争を阻止することが人民の試金石である。
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週刊『三里塚』(S635号2面4)
ぜい肉の太股
50前後が曲がり角
梅雨の晴れ間、今日こそはとシーツなどを洗濯して、布団を干したところです。
七月に入ってすぐ、初回のトウモロコシを収穫しました。萩原進さんが「無農薬で作り始めて最高の出来」と言うように、見入りも甘味も申し分なく、採り立てにかぶりつくと、お茶の時間の話もはずみます。
トウモロコシは強風に合うと木が横倒しになったり折れたりしやすく、まして無農薬だと鳥や虫に食われて満身創痍になることもめずらしくありません。遅出しの分は収穫を前にして、すでに虫の被害が目立ちはじめています……。
ところで私事になりますが、六月後半の十日間ほど、坐骨神経痛で動けない状態でした。原因は長期間に少しづつ変形してきたと思われる椎間板がついに神経を刺激するまでになった、ということのようです。
ここ二年ほどは風邪で寝込むことなく仕事の疲労も持ち越さずに回復しているつもりでいましが、実は腰椎にじわじわと蓄積されていたのです。ほぼ通常の生活にもどった現在、意識的に取り組むことの必要性を痛感していることが二つ。骨への負担を減らすための筋力アップと、草取りなど長時間のかがみ仕事に対応したストレッチです。実際、スクワットをやってみて“立派な”太ももの中身はほとんど脂肪! という現実に愕然としました。
農業を始めてから三年半になる市東孝雄さんは連日の労働を十二分にこなしていますが、「前の仕事では中腰で焼き鳥を焼いていたから足腰の筋力はあるんだよ」とのこと。五十歳前後は体の故障がいろいろ出てくる時期だそうです。読者のみなさんにも体と生活の再点検をお勧めします。
(北里一枝)
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週刊『三里塚』(S635号2面5)
三芝百景 三里塚現地日誌
6月18日(水)〜7月8日(火)
●北延伸阻止で現地集会 反対同盟と首都圏の労農学110人は、敷地内東峰の畑に集まり「北延伸」計画を使った空港公団・黒野匡彦総裁の脅迫に反撃する現地闘争を行った。デモ終了後記者会見を行い同計画がいかに実現性のない「脅しのための脅し」であるかをアピールした。 (写真=22日)
●一坪強奪訴訟たたかう 空港公団が「民法で1坪共有地を強奪する」趣旨で反対同盟を提訴している裁判の訴訟で、北原鉱治事務局長、鈴木幸司さん持ち分の裁判が千葉地裁で闘かわれた(25日)。また7月1日に鈴木さんの別の持ち分の裁判が行われた。
●東峰神社裁判で公団追いつめる 東峰部落が公団に対し、盗伐した東峰神社立ち木の原状回復と登記の変更を求めている裁判の公判が闘われた。原告側から東峰部落周辺の地元神社64社を聞き取り調査した証拠が提出され、「神社には部落の入会権が成立している」「神社敷地は総有である」主張が補強された。公団側は「和解したい」と提案し「話し合い」に持ち込む策動をあらわにした。(30日)
●騒対協が北延伸に反対表明
空港公団に「騒音の見返り」を求める団体である空港騒音対策協議会の総会で「北側延伸計画に反対」の決議が行われた。同団体は地元ボスらが組織する保守系団体だが、騒音を野放図に拡大する「北側延伸」には同意できない旨表明した。(7月4日)
●伊藤信晴さんら動労千葉の地引き網大会へ 反対同盟の伊藤信晴さんらが千葉県長生村一松海岸で行われた動労千葉恒例の地引き網大会に参加して交流を深めた。(5日)
●北原事務局長が関西集会へ
大阪府泉佐野市で行われた関西新空港反対集会に北原事務局長が参加した。事務局長は有事法制制定で切迫する成田空港の軍事使用について、「関西空港反対闘争と共に、軍事空港反対が三里塚闘争のスローガン。今こそ真価を発揮するとき」と訴えた。(6日)
●東京から援農に 萩原進さん宅に東京から2人の労働者が援農に来て農作業を行い交流を深めた。(7日)
●元パイロットが証言 元パイロットの藤田日出男さんが暫定滑走路認可取消訴訟で証言台に立ち「暫定滑走路の危険性」について豊富な事故の事例を紹介して証言した。(8日)
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