●(9月4日) 反対同盟事務局/次回東峰神社裁判のお知らせ
反対同盟員ならびに支援のみなさん。
東峰神社裁判の第8回公判が9月22日午前10時30分から、千葉地裁で開かれます。
前回公判(6月30日)で被告・空港公団は原告・東峰区住民に対して突如、和解を申し入れてきました。
その後提示された和解案の内容は「神社林の無断伐採の謝罪」「慰謝料の支払い」「神社周囲に立ち木を植栽する」などとして「譲歩」の装いをこらしていますが、肝心要の神社敷地について「公団所有」との主張を撤回していません。この和解内容が意味することは「土地は公団のものだから立ち木伐採は正当」であり、「立ち木を植え直したとしてもふたたび進入表面を突き出したら伐採する」というものなのです。このような和解案など東峰区が受け入れられるはずもありません。
第8回公判はおいつめられた公団の敗訴逃れの策動をうち破り、さらに窮地においやる重要な公判です。反対同盟は傍聴闘争に決起します。裁判闘争支援カンパとともに、みなさんの取り組みをお願いします。
2003年9月4日
記
東峰神社裁判 第8回公判
【日時】9月22日(月)午前10時30分
【法廷】千葉地方裁判所 501号
※当日は、被告・空港公団関係者等の傍聴が予想されます。傍聴席確保のため反対同盟・支援は10時に千葉地裁に集合したいと思いますので、よろしくお願いします。
●(9月5日) 羽田、新千歳など25空港/利用促進目指し協議会(9/6千葉日報)
国土交通省は5日、国が管理する空港のうち羽田や新千歳など25空港ごとに、国や自治体、空港ビル会社などによる「空港利用促進協議会」を2004年度に設置し、発着する路線の拡充や空港までのアクセス改善などの利用促進策を検討することを決めた。国交省が04年度に実施する関西国際空港連絡橋の通行料金引き下げなどの社会実験の結果も踏まえて、05年度以降に利用促進策の事業化を目指す。
協議会で議論するテーマは(1)小型ジェット機やプロペラ機の活用による地方空港間などの路線拡充、(2)旅行需要を高めるための観光資源の紹介やモデルコースの設定など。また、外国人にも対応できる観光やアクセスの総合案内所設置など受け入れ態勢の整備についても話し合う。協議会では、航空会社、空港ビルのテナント業者、旅行会社など民間から幅広い参加を求める。
【本紙の解説】
国交省の空港整備計画が完全に変わった。地方空港をふくむ建設ラッシュを一掃し、新規建設計画はゼロにした。さらに首都圏の国際便増加に対しては、首都圏第3空港と成田の完全空港化が問題になっていたが、羽田空港の拡張と国際化で決着がついた。
残った問題は、関空の借金と地方空港の赤字である。また右肩上がりできた航空需要が下がり始めたことである。そのために 国内線需要を高めることが最重要課題となり、このような協議会が設置されようとしているのである。
それにしても、成田空港建設に固執した結果が、日本の空港整備計画の大失敗という事態をもたらしたのである。国際線での競争は、韓国、中国、台湾、シンガポールなどの各空港にとうてい勝てる見込みがなくなった。そのため国内線の利用促進で、空港特別会計の大赤字を埋めることに腐心しているのである。
●(9月9日) シンガポール/SARSの疑いの男性、検査で陽性(9/10全紙)
シンガポール保健省は9日、新型肺炎SARSの疑いがもたれていた男性(27)について、2回の検査で陽性の結果が出たことを明らかにした。同省は、この男性がSARSに感染している可能性が高いと認定した。男性はシンガポール国立大学微生物研究所の大学院生で、8月下旬に研究のためSARSウイルスを扱う研究所を訪れていた。最近の海外渡航歴はないという。世界保健機関(WHO)が7月5日にSARS終息を宣言して以来、感染者と認定されたのは世界で初めて。
シンガポールのカウ・ブンワン保健相代行が9日会見し、「最終的な検査を米疾病対策センター(CDC)に依頼している」と述べ、男性を「可能性例」だとした。
男性には高熱のほか、関節炎やせきなどの症状が出ている。遺伝子検査(PCR法)でSARS陽性と出たほか、血清検査でもSARSウイルスの抗体の上昇が見られる。一方、X線検査で肺炎は確認されなかった。
現在のWHOの定義では、肺炎の症状がないとSARSにはならない。だが、カウ保健相代行は「古い定義でも、新しい定義でも、二つのテストで陽性が出た以上、公衆衛生の観点からSARSとして扱う」とした。
同省は9日までに男性の家族や接触した同僚、医師など25人を自宅隔離した。
男性は8月23日、同国内でもともと西ナイル熱を研究する環境衛生研究所を実験のために訪れた。その研究所では同17日までSARSウイルスに関する実験を行っていたという。男性の発熱は同26日に始まり、9月3日からシンガポール総合病院に入院。現在は、同国の伝染病センターに隔離されている。
最近は海外渡航歴がなく、男性の感染源が環境衛生研究所である疑いが生じているが、保健省では「研究所は厳しくウイルス管理をしているうえ、研究所内で1週間もウイルスが生存する可能性は低く、断定できない」と判断を留保した。
シンガポールはベトナム、香港などに次いで最も早い時期からSARSの被害を受け、238人が感染し、33人が死亡した。同国政府は感染者や感染者と接触した者を強制的に隔離、24時間監視する厳しい対策をとり、5月末に制圧を宣言した。だが経済や観光の受けたダメージは大きく、回復に向けて国を挙げて取り組んでいた。
【本紙の解説】
この青年は 「人から人ではなく、恐らく研究室内で感染したものだろう」といわれている。西ナイル熱の研究をしていたので、そのウイルスからの感染といわれている。西ナイル熱もSARSと同じように危険な感染症である。しかし、SARSとは違う。西ナイル熱のウイルスが変化したということか。いずれにしろ、死亡率の高い多くの感染症が猛威をふるう前兆である。今年の秋からはSARSの全世界化が問題になっていく。
ホワイトハウスの米国家情報会議は、SARSが今秋再流行するおそれがあると警告する報告書をまとめ、米中央情報局(CIA)に提出した(9月3日付毎日新聞夕刊から)。それには、流行のシナリオとして、公衆衛生の整備が遅れている国での流行、アジア各国やカナダなど今年流行した国での流行、日本や欧米をふくむ世界的な流行の三つのパターンがあげられている。つまり全世界いたるところで流行するという予測だ。こうなった場合、航空需要の落ち込みは今年の規模をさらに超えて、需要が半減することは確実であろう。来年の1月ごろの天神峰、東峰の航空機騒音はすこし低くなりそうだ。
●(9月9日) 成田空港内/1130万円相当盗難 両替用外貨など、車ごと(9/10毎日千葉版)
9日午前8時50分ごろ、成田空港の構内道路で、男性運転手(50。多古町)から約1130万円相当の外貨などを積んだ車を盗まれたと、新東京国際空港署に通報があった。同署は窃盗事件として調べている。
同署によると、盗まれたのはワンボックス型のワゴン車で、段ボール2箱に詰めた4万6000米ドルと4000英ポンド、男性の所持金約10万円などを載せていた。
男性は大手運送会社の委託で、両替用の外貨を成田市内の銀行や旅行会社に運ぶ途中だった。車を路上に止めて施錠し、貨物管理ビル内の事務所に荷物を届けていた10分間に盗まれたという。
【本紙の解説】
世界最高の警備体制をほこる成田空港だが、SARSなどのウイルスと内部からの犯罪にはきわめて弱いらしい。
●(9月10日) 反対同盟から10・12全国集会の招請状が発せられた。ここに全文を掲載します。
■招請状
三里塚芝山連合空港反対同盟
全国の闘う仲間のみなさん。来年四月の空港公団民営化が迫る中、三里塚闘争は暫定滑走路延長攻撃と闘う決戦に突入しました。この闘いは有事法制による民間空港の軍事基地化を阻止する闘いでもあります。私たち反対同盟は、十月十二日に全国集会を開催し、四月民営化に至る切り崩し攻撃との闘いに総決起する決意です。みなさんの結集を訴えます。
七月十一日、成田国際空港株式会社法が成立しました。来年四月をもって空港公団は全額政府出資の特殊会社となり、三年後の〇七年に株式上場(完全民営化)を予定しています。羽田国際化は、新D滑走路の建設決定をもって本格的に動き出しました。成田空港は現在、政府の行財政破綻がもたらした公団民営化と、航空政策の全面転換による羽田国際化によって窮地に陥っています。
周知のように暫定滑走路は短すぎてジャンボ機が飛べず、国際線は一部のアジア便を除いて就航できません。重大事故が続発する欠陥空港です。しかも羽田国際化でアジア便の大半が羽田に移れば、暫定滑走路は使い物にならず経営上の重荷ともなるのです。黒野総裁は「民営化までに二五〇〇メートルにめどをつける」と発言し、延長強行の衝動をあからさまにしています。
攻撃はすでに始まっています。東峰地区に対しては、民家上空四十メートル飛行を背景に「買収に応じなければ北側に延伸し二五〇〇メートルにしてジャンボ機を飛ばす」と脅迫しています。その工期を三年としてこの秋にも決断すると言って圧力を加えています。天神峰ではジェットブラストによる追い出し攻撃が続いています。対策フェンスのかさ上げ要求を空港公団は拒否し、成田市はこの住民無視を放置し加担しています。
東峰神社裁判では、被告・空港公団が東峰区住民に対して和解を申し入れてきました。原告の全面勝訴が立証されつつあることに恐怖した公団の敗訴逃れの動きです。公団の策動をひとつひとつ打ち破り暫定滑走路延長攻撃を粉砕する決意です。
有事法制とイラク新法で戦後の日本は一変しました。朝鮮半島危機のなかで、民間空港を侵略出撃の基地とする軍事空港化の攻撃が現実のものとなってきました。
成田空港は指定公共機関とされたことから、有事にあってはいつでも軍事基地に転用されます。新たに発表された朝鮮侵略のための米作戦計画では、来援米軍の規模は五十万から七十万へと拡大修正されました。この基地の安定的供給のために三里塚闘争破壊の治安攻撃が強まることは避けられません。
バブル崩壊後の不況は深刻さを深め、その矛盾のすべてが首切りと賃下げ、増税と社会保障制度の改悪となって私たちの生活を脅かしています。連合労働運動が右翼的転換に走るなかで、戦闘的な労働者の決起がひろがっています。
反対同盟は動労千葉を始めとする闘う労働組合と連帯して闘います。全世界で高まる反戦運動と連帯して、アフガニスタン、イラク、パレスチナにおける侵略行為と虐殺を弾劾し、朝鮮侵略のためのあらゆる準備を阻止するためにたちあがります。米反戦団体ANSWERのよびかける十・二五統一行動に総決起しよう。十・一二全国集会は、暫定滑走路延長阻止の決戦であり、侵略戦争阻止のための総決起集会です。十・一二三里塚に全国から総結集されるよう訴えます。
二〇〇三年九月十日
記
【集会名称】
イラク―朝鮮侵略戦争阻止・有事法制粉砕
暫定滑走路延長阻止し軍事空港を廃港へ
10・12全国総決起集会
【日時】10月12日(日)正午
【会場】成田市東峰 反対同盟員所有地
【主催】三里塚芝山連合空港反対同盟
(連絡先)事務局長・北原鉱治 成田市三里塚一一五
TEL 0476(35)0062
(会場案内)
▼JR成田、京成成田駅からタクシーで「東峰十字路」まで2000円
▼車は成田インターから国道295号線に入り芝山町(空港)方向。日航ホテル手前で小見川県道を小見川方向。「東峰十字路」へ
●(9月11日) アジア回復遅れ海外旅行4割減(9/12東京)
国土交通省が11日発表した7月の主要旅行業者50社の海外旅行取扱額は、新型肺炎(SARS)による影響が残り約1274億円と前年同月に比べて39・0バーセント減少した。6月よりは減少幅が12・7ポイント改善したものの、アジア方面の回復が遅れた。
【本紙の解説】
成田空港の利用客が夏の過程において前年比で8割から9割の程度まで回復したとしている(03年8月9日付日誌を参照)。
しかし、集積データがまったく違う旅行業者の取扱額だが、いまだ前年比で4割減にとどまっている。実際にビジネス客などは旅行業者を通さずに直接、航空会社から航空チケットを購入している例が多い。そのために、成田空港利用客と旅行業者取扱額に前年比の違いが出たのであろう。だが、これまで航空需要の右肩上がりの数字は一般旅行客の増加で支えられていた。その航空需要を牽引してきた原動力である一般旅行客のこれほどの減少は航空業界と旅行業界の先行きを示している。夏で4割減ということは、SARSの流行が再燃する冬から春までは、海外旅行客は激減するであろう。また、ビジネス客もSARSが流行すれば渡航を取りやめ、インターネットで取引をすませることになることも確実である。
●(9月17日) 夏休み出入国者12・7パーセント減(9/18産経、東京各千葉版)
東京入国管理局成田空港支局は17日、夏休み期間中に成田空港を利用した出入国者数をまとめた。出入国総数は約407万9000人で、前年同期より約59万1000人、12・7パーセントの減少となった。新型肺炎(SARS)やイラク戦争などの影響が残り、海外旅行を自粛する傾向が続いたことが夏休みを直撃した形だ。
調査期間は7月12日から9月9日まで。内訳では、日本人の出国者は約140万4000人で前年比18・7パーセント減。帰国者は約131万8000人で同20・5パーセント減とそれぞれ大きく減らした。
一方で外国人は、入国者数が約67万8000人で6・8%も増加しており、日本人の海外旅行自粛と好対照となった。
同支局では、新型肺炎の影響とみられる成田空港出入国者の減少幅も縮小し、8月以降は増加に転じていることから、海外旅行自粛から回復基調に入ったとみている。
【本紙の解説】
高温多湿の夏のアジアではSARS感染は完全になくなっている。にもかかわらず、日本人の出入国者は前年比で約20パーセント減になっている。欧米便も含めたデータであり、アジア便だけのデータは正確ではないが30パーセント減になっているであろう。
旅行業者の今年の夏の取扱額は4割減少している(03年9月11日付日誌を参照)。成田空港利用客は前年比10パーセント減にしかなっていないことを解説したが、これで実態が判明した。日本からの海外旅行はSARS以降も引き続き激減している。しかしアジアでSARSの心配がない国として韓国とともに日本への旅行客が増加しているということである。
夏でアジア便が30パーセント減ということは、SARSの再流行が予想される今年の冬から来春までは、アジア便はさらに激減することは確実である。
●(9月18日) 成田治安法/闘争派拠点3カ所、使用禁止1年延長(9/19朝日、毎日各千葉版、千葉日報)
国土交通省は18日、成田空港に反対する過激派が空港周辺に築いている拠点3カ所について、「新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法」(成田新法)に基づく使用禁止命令の適用期間を04年9月18日まで1年間延長すると、官報で公告した。
対象は、▽天神峰現地闘争本部(成田市天神峰)▽岩山団結小屋(芝山町岩山)▽三里塚野戦病院(同町朝倉)。「過激派が今後も使用する可能性が高い」と判断し、適用延長を決めた。
成田新法は、78年3月の開港直前に過激派が管制塔を占拠し、開港が遅れたため、過激派の活動抑制を目的に同年成立した。過激派の活動拠点など、空港の運用に支障をきたす建造物が対象で、1年ごとに更新される。
当初は空港周辺に15カ所あったが、自主的な取り壊しなどで現在は3カ所。同省航空局新東京国際空港課は「成田闘争はまだ終了していないという認識で延長を決めた。すべて取り除かれるまで使用禁止命令を続ける」としている。
【本紙の解説】
成田治安法で実質的意味を持っているのは、天神峰現闘本部だけである。成田治安法は、使用禁止処分、封鎖処分、除去処分の3段階ある。南三里塚にあった闘争会館は使用禁止処分から除去処分になって撤去された。天神峰現闘本部は封鎖処分であり、立ち入り禁止になっている。
しかし使用禁止処分になっている野戦病院と岩山団結小屋は通常通り使っている。「使用禁止」とは「暴力主義的破壊活動者」が「暴力主義的破壊活動」に使用することを禁止する法であり、生活と闘争をやっている限り、封鎖、除去はできない。天神峰現闘本部も闘争会館も「暴力主義的破壊活動」をやったことはなくその証拠もなかった。一方的に、空港反対派は暴力主義的破壊活動者であり、その闘争と活動は暴力主義的破壊活動であると見なされ、封鎖、除去処分になったのである。
成田治安法は、「破壊活動」という規定の構成要件も定かでない、でたらめな法律である。それを今も継続していること自体が許せないことである。
しかし、天神峰現闘本部は封鎖処分にした結果、誰も立ち入りできなくなっている。「暴力主義的破壊活動者」が立ち入ることもできない。その結果「暴力主義的破壊活動」に使うこともできなくなった。権力・公団は同本部を除去処分を適用するすべをなくしてしまったのである。
そのため、天神峰現闘本部は封鎖されながらも闘い続け、暫定平行滑走路の誘導路を逆くの字に曲げさせてしまった。
なお、菱田団結第一砦は老朽化したため、昨年取り壊した。
●(9月22日) 東峰神社裁判/農家側、和解案に難色(9/22読売、日経夕刊、9/23全紙千葉版)
新東京国際空港公団が、成田空港予定地内にある東峰神社の立ち木を伐採したことに対し、反対派農家ら7人が原状回復や慰謝料などを求めている訴訟の第8回口頭弁論が22日、千葉地裁で開かれた。公団側が提示した和解案に対し、農家側は難色を示し、和解の成否は次回弁論以降に持ち越された。
公団の和解案は伐採の謝罪や慰謝料支払いなど7項目で、農家側は公団が神社敷地の土地所有権を譲らなかった点を不服とした。しかし、「和解自体に反対ではない」とし、公団との決裂は回避した。公団は「引き続き和解が成立するよう努力したい」としているが、「土地の所有権は譲れない線」(公団幹部)で、難航が予想される。
2007年にも株式上場を目指す公団は、暫定平行滑走路の2500メートルを上場の条件として国土交通省から突きつけられている。和解が最終的に不調に終わった場合、「暫定平行滑走路南側の未買収地の取得も困難」として、滑走路を南側に延伸する当初計画を断念し、北側延伸を決断する可能性が強まりそうだ。
公団は一昨年6月、暫定平行滑走路供用に絡み、航空機の飛行の障害になるとして、農家側の了解なしに神社の立ち木を伐採。農家側は昨年4月、無断伐採は神社を精神的よりどころとしてきた住民の人格権侵害にあたるとして千葉地裁に提訴していた。
【本紙の解説】
公団側の和解案の基本的内容は以下の通りである。第1項で、「(1)本件土地が被告所有であること。(2)東峰区を構成する原告らが、本件土地につき東峰神社及ぴ付属鳥居、周辺立木の所有を目的とする無償の使用借権を有すること」として、第2項で「被告は、原告らに対し、前項の神社敷地内の立木を無断で伐採したことを認めてこれを謝罪し、慰謝料として各金○万円宛の支払義務があることを認め、合計金○万円を、本和解成立から10日以内に原告ら代理人大口昭彦宛送金して支払う」というものである。
第3項以下は、原告らに対し、原告らが本件土地に上記神社を存置する間、引き続き無償で本件土地を占有使用することを認める、神社としての景観を回復するため、東峰区と協議のうえ、神社周囲に立木の植栽を実施する、となっている。
この和解案の特徴は東峰神社の土地は公団のものであり、神社の立ち木伐採の権利はある。無断で伐採したことが悪いということだけである。その賠償として「無償の使用借権」を今後与えるというものである。
和解案は、神社の土地所有を根拠にして立ち木を伐採したことの正当性を主張していることにある、謝っているのは「無断」で行なったことだけである。
この和解案に対して、東峰地区の原告側は「被告は、成田市東峰笠峰53番2の土地が、東峰部落の総有財産であることを承認し、必要な登記手続について協力する」ことを要求したのである。
次回の協議で、この原告側の主張に被告・公団側がどう対応するかが焦点となる。しかし公団は、裁判の和解と暫定平行滑走路の延伸問題での和解とを完全に一体で考えているようだ。裁判で和解=平行滑走路承認、裁判で和解が不成立の場合は南側延伸を断念し、北側再延長に踏み切る、と公団幹部が言っているようだ。
公団は、裁判で原告を屈服させるために、暴力的な姿勢を見せて脅しているのだ。公団提案の和解に応じなければ北側延伸を強行し、ジャンボ機を頭上に飛ばすぞという話である。
本来、民事裁判の和解と空港問題の和解は別問題である。その点、この公団幹部は相当な勘違いをしている。公団側の和解提案が東峰地区へのかなりの譲歩だと考えているのだ。
しかし実際は、裁判で公団側は追いつめられている。判決のすう勢は、神社と土地は東峰地区の所有だと確定する方向にある。立ち木伐採は100パーセント違法行為なのだ。それは強盗罪にあたる行為であり、刑事事件にも発展する問題だ。公団はそのことを恐れ、和解で何とかけりをつけようとしているのである。それがこの裁判の現段階である。
●(9月25日) 新型肺炎で124億減収(9/26朝日、毎日、東京各千葉版、千葉日報)
新型肺炎の影響で成田空港は旅客減が続き、新東京国際空港公団は25日、2003年度上半期(4−9月)の減収額が124億4700万円に上ると発表した。減収額は同期に見込んでいた収入の19パーセントに当たる。
減収の内訳は、着陸料や施設使用料などの減収が114億6000万円。空港内の店舗を救済するために導入したテナント料の減免措置で9億8500万円。
公団の黒野匡彦総裁は「9月に入り、旅客数などが前年並みまで回復したため、現時点での減収額が上限と考えている」としている。
公団によると、4月以降の出国客数は、4月が前年比69パーセント、5月が最低の同57パーセント、6月が同67パーセントと推移。世界保健機関(WHO)がSARSの終息宣言をした7月上旬から旅客が戻り始め、7月で同81パーセント、8月で同89パーセント、9月に入り同92パーセントまで回復している。
【本紙の解説】
公団は4月にSARSによる減収見込みを4−9月期で90億円と予測し、建設事業の先送りや経費削減でその穴埋めを計画していた。その予測を大幅に上回ったことにより、今年度会計は大赤字になることがはっきりした。上半期の収入見込みの600億円が485億5300万円になったのである。これでは、来年4月からの民営化後の経営も危ぶまれるのは当然である。
黒野公団総裁は「現時点での減収額が上限で、通年で黒字決算を目指したい」と述べているが、空論である。SARSの本格的流行は今年より来年になるのではとWHOも危惧している。今年は春から本格化したが、晩秋から再び本格化すると言われている。成田空港の最大の収入を見込める年末年始の海外旅行が最大のピンチになるのである。
それにしても黒野総裁はこんなことは百も承知しているはずである。これまで現実的でリアリストであると自称していたが、空論で腹にもないことを平気で言えるようになった。公団総裁になったから性格が変わったのであろうか。
●(9月25日)反対派に用地譲渡検討/公団航路変更(9月26読売、産経各千葉版)
来年4月に民営化される成田空港で、すでに取得した空港建設用地を、空港公団が逆に反対派に譲り渡すという「ウルトラC」が検討されている。千葉地裁で反対派との和解を成立させ、最終的には建設用地取得につなげたいとの思いからで、公団は関係者と調整に乗り出した。譲渡が実現するかどうかは微妙だが、公団は「従来の用地買収ではナリタの完全解決は遠い」と異例の挑戦。「民営化」は反対派との交渉スタイルも大きく変えるかもしれない。
対象は成田市東峰地区にある東峰神社の敷地。空港公団は神社敷地を取得した上で、2本目の滑走路の離着陸に障害になると神社内に立つ樹木を伐採した。反対派は、神社は鎮守で、樹木はご神木と反発。原状回復などを求めてきたが、裁判で空港公団が謝罪したことなどから反対派も柔軟姿勢に転じ、土地を反対派に譲渡するなら和解するとしている。
25日に記者会見した空港公団の黒野匡彦総裁は「(謝罪した)空港公団の姿勢を(反対派が)評価してくれた。これを大切にしなければいけない」と述べた上で、「反対派に所有権を譲れるかどうか、私たちだけで決めることはできないので少し時間がほしい」として、所有権譲渡に向けて具体的な検討に着手。譲渡が与える影響を見極めたい考えだ。
ただ反対派への土地譲渡は前例がなく、ほかの用地交渉や裁判にも影響を与えかねない。また和解が用地交渉につながる保証もないため「譲渡が実現するかどうかは微妙」(公団)だ。
【本紙の解説】
公団も相当勘違いしているようだ。裁判で原告側は「土地の譲渡」を要求しているわけではない。譲渡とは公団の土地をもらい受けるということである。原告側の主張は東峰神社の土地は東峰地区の総有であると主張しているのである。公団の土地を譲ってくれとは言っていない。東峰地区の総有である土地を公団が勝手に「誤登記」し、それを根拠に立ち木を伐採したことに抗議しているのである。
また、民事裁判の和解が用地交渉の和解に発展していることを願望しているが、これは完全に間違っている。これは民事裁判についての無知である。今回の裁判手続きは、被告側の和解案が土地所有のことを除いて、原告側の主張を基本的に認めているので、神社の土地についての原告側主張を改めて突きつける形になっている。公団側に歩み寄ったり譲歩している点は何一つもないのである。
公団は裁判ひとつ正しく判断できないほどに追いつめれ、危機に立っている。来年民営化し株式上場は07年に予定されているが、その前提条件は暫定平行滑走路の2500メートル化だ。それができなければ株式上場は不可能になる。
さらに09年には、羽田空港の4本目の滑走路が完成し、アジア便の大半が羽田に移行する。この時点で成田空港は完全な赤字会社に転落する。株式上場どころではない事態に追い込まれる。だから黒野総裁は、07年までに完成するメドをつけたいと言っているのである。
●(9月26日) オーバーラン事故の事故調査報告/速度超過が原因(9/26日経夕刊、9/27朝日)
成田空港で1月、暫定滑走路に着陸したエアー・ジャパン機がオーバーランした事故で、国土交通省の航空・鉄道事故調査委員会は26日、追い風の中で速度超過のまま着陸、滑走路中央近くで着地したため停止できなかったとする報告書をまとめ、国土交通大臣に提出した。
報告書によると、ソウル発のエアー・ジャパン908便(B767−300ER型機、乗客・乗員102人)は1月27日夜、暫定滑走路の北端から約940メートルの地点にいったん着地した。しかし、速度超過のため再度浮上し、4秒後に1,250メートルの地点に着陸したが、滑走路を約70メートルオーバーラン、緑地帯で停止した。けが人はなかった。
事故調査委員会は、追い風の中、距離が短い滑走路に着陸するのに必要な注意を怠ったのが原因とし、機長らが滑走路の着地地点や速度超過を把握していなかったとし、着陸をやり直すべきだったと結論付けた。また、報告書は、副操縦士らから、速度超過だという指摘や着陸やり直しなどの適切な助言がなかったとして、乗員の連携を強化するよう求めている。
【本紙の解説】
追い風の方向から着陸を指示したことは管制官の責任もあるのではないか。速度超過という判断になっているが、それとともに、2180メートルの滑走路の1250メートル地点に着陸とは、追い風としても着陸ミスもあるのではないか。いずれにしろ、2180メートルという世界でも例がない短い国際空港の滑走路建設が一切の原因である。それをごまかすために機長や副操縦士の責任にしているのである。事故調査委員会は国交省の機関なので、今回の事故は短い滑走路を造った国交省に責任があるという事実を明らかにできない構造になっているのである。
●(9月29日) 日本政策投資銀、日航システム・全日空に緊急融資(9/30読売夕刊)
イラク戦争や新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SARS)の影響で業績が悪化している航空大手の日本航空システム、全日本空輸の2社に対し、政府系金融機関の日本政策投資銀行が計850億円を緊急融資することが29日、明らかになった。
2003年度上期分(4―9月)として30日までに両社に融資を実行する見込みで、2社は設備投資や社債の借り換え資金などに充てる。
緊急融資の内訳は、日本航空システムに約700億円(要請額は1300億円)、全日空には約150億円(同500億円)。下期については、今後の経営状況を見て検討する予定だ。
航空業界は今年春から、新型肺炎の深刻化で中国などアジア方面の路線が壊滅的な影響を受けた。このため、日本航空システムは2003年4―6月期の連結決算の経常利益が767億円の赤字に、全日空も273億円の赤字に陥っていた。国土交通省は航空会社の経営を支援するため、5月下旬に政策投資銀に対して緊急融資を要請していた。政策投資銀は2001年9・11後にも、国内の航空会社に対し、計2400億円の緊急融資を行った経緯がある。
【本紙の解説】
航空会社の国家援助が当然になってきた。これまで、航空会社への政府援助は不当競争になるので、航空自由化を妨げるものだというのがアメリカの主張だった。アメリカは80〜90年代を通してこの認識を世界的に強要し、航空輸送分野での独占的地位を強化してきた。
しかし、01年9・11の反米ゲリラでこれが一変した。航空需要が一挙に落ち込み、各国のフラッグキャリア(国策航空会社)が倒産に追い込まれたからである。アメリカでも政府保証も含めると500億ドルという巨額な政府援助を米航空業界に行なってきたのである。いまでも、航空会社の保安対策費用を肩代わりしている。欧州の航空会社は、このアメリカ政府の措置が政府補助金であり不当競争だと非難している。
イラク侵略戦争での物資輸送、兵士移動は大半が民間航空機が当たっている。米軍第一歩兵師団(在ドイツ)がトルコ経由でイラクに進入しようとしたが、トルコが拒否したため、急きょ民間ジャンボ機でクウェートに移動したことが明らかになった。在米本土からクウェートに派兵された第4歩兵師団も民間ジャンボ機での移動である。いま戦闘員の移動は民間航空機が輸送力でもスピードでも最強である。いまや各国のフラッグキャリアは軍隊の一部である。そのために政府援助をさまざまな形で行なうのが21世紀の常識になりつつある。
今回の日本政策投資銀行の日航システム・全日空への緊急融資もそれに当たる。イラクへの陸上自衛隊派遣も民間航空機をつかって成田から飛び立つことになる。成田からの派兵は絶対に阻止しよう。
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