●(12月1日) 誘導路2本新設/発着遅れ解消へ(12/1読売)
暫定平行滑走路の運用開始後に深刻化した成田空港の発着遅れを改善するため、新東京国際空港公団は、航空機の渋滞が激しい第2旅客ビル─A滑走路間の誘導路を新たに2本設ける方針を固めた。2004年初めの完成を目指す。この発着遅れを巡っては、航空会社60社でつくる団体が、経費削減と定時運航率向上のため、国や公団に改善を申し入れるなど“国際問題”化していた。
誘導路は、滑走路と駐機場を結ぶ航空機の通路。新たに設けるのは長さ約1300メートルと約700メートルの2本で、第2旅客ビルとA滑走路を結ぶ区域に現在ある2本の誘導路の南側に設ける。工費は約36億4000万円。
現誘導路の1本が同ビルや第1旅客ビル南横の駐機場に近接しているため、駐機場に出入りする航空機などで通行が遮断され、渋滞の原因となっていた。新誘導路はこの場所をう回し、通行遮断で生じる混雑を緩和できる。
暫定平行滑走路は今年4月、成田の2本目の滑走路としてオープン。これにともない、航空機の発着数は約1・3倍の1日約480回に増え、誘導路不足と狭い空域が重なり、遅れ問題が深刻化した。
公団が8月に調査したところ、出発便で定刻より30分以上遅れたのは全便の11パーセント、到着便で20分以上遅れたのが全便の3パーセントあった。
新誘導路の効果について、公団は「遅れは大幅に解消できるはず」としている。
【本紙の解説】
暫定滑走路の設計上の無理がこのように誘導路の渋滞に表れている。木の根の誘導路は、木の根にあった育苗ハウス(成田治安法により90年に撤去される)があった場所の一坪共有地などによって、実質的に1・5本しか整備されていない。今度の計画で「約1300メートルと約700メートルの2本」を造るといっているが、一坪共有地などの闘争拠点によって阻まれているので、直線では造れない。
また、これで渋滞が解消できるわけでもない。確かに第2ビル─A滑走路間の渋滞はある程度なくなるだろう。しかし、暫定滑走路関係の渋滞の最大原因は、第2ビル駐機場と暫定滑走路を結ぶ連絡誘導路が一方通行で、そのうえ滑走路脇の誘導路が蛇行しているためだ。これは未買収地の問題が原因なので解決できない。
われわれが指摘してきた通り、欠陥が「国際問題」に発展している。やはり暫定滑走路の欠陥度は相当なものである。
●(12月1日) 成田空港接触事故、管制対応後手/公団発表遅れ(12/2夕刊全紙、12/3全紙と全紙の千葉版)
成田空港の開港以来、初めて航空機同士の接触事故が起きた。現場は、ターミナルと暫定滑走路を結ぶ誘導路。用地買収が思うように進まず狭く蛇行した誘導路に、同空港の運航を管制する国土交通省新東京空港事務所は、以前から航空機がすれ違う危険性を認識していた。しかし、事故現場に擦れ違いの明確な指針はなかったという。暫定滑走路の供用開始から半年余りも、接触の危険と背中合わせでいたことになる。
1日に発生した事故の現場は、暫定滑走路の南端誘導路。離陸待ちの中型機の後方を大型機が通過する際に起きたが、滑走路の手前の停止線と、後方を通過する誘導路の中心線の間は約94メートルしかない。ここに、全長54メートルの中型機が待機したため、残された幅は約40メートル。このスペースを長さ30メートルの主翼の大型機が通過するのだから、約10メートルしか余裕がない。
ただでさえ狭いのに、同誘導路は反対派農家の所有地を避けるため蛇行しており、さらに両機は接近する。パイロットには高度な技術が要求される地点だった。
これまで、同事務所はボーイング777機(全長74メートル)同士のすれ違いは不可能として禁止していたが、それ以外の機材は、管制官とパイロットの経験と裁量に一任していた。ボーイング777以外でも、計算上は擦れ違いが不可能な機材の組み合わせはあるのに、通行を禁止する規定はなかった。事故を起こした両機とも管制から通行許可を得ていた。
同事務所の藪野真次長は規定の不備を認め「あらゆる組み合わせについて検証する」とした。当面は、すべての擦れ違いを禁止し、離陸待ちがある場合は、後方誘導路の通行を禁止する。
誘導路が1本しかない暫定滑走路では、離着陸が集中する時間帯は、今でも待ち時間の長さが航空会社などで不評だったが、今回の擦れ違い禁止で、混雑にさらに拍車がかかる可能性もある。
【本紙の解説】
暫定滑走路の欠陥性から起こるべくして起こった事故である。人命にかかわる事故でなかったことだけが救いだった。
飛行場はターミナルビルの周りにサテライトと駐機場があり、それを中心に滑走路が配置されている。滑走路が1本でも、2本になっても、またそれ以上になっても、井げた状でも平行状でも基本構造は変わらない。滑走路は、着陸が南側からの場合には、離陸は北側発進になる。風に向かって離発着するからである。つまり到着した航空機も、これから発進する航空機も誘導路上は同一方向に進むことになる。世界的にも地上走行中の航空機の衝突事故は、駐機場内の事故がほとんどであり、誘導路上での衝突事故は起こり得ないものとして設計されているからである。
ここに暫定滑走路の最大の欠陥性がある。連絡誘導路が交互通行の上に一方通行になっているのである。第2ターミナルビルのサテライトから東峰地区を通って市東さんの前にくる間である。これは前代未聞の誘導路である。滑走路自体の短さはもとより「極めて危険である」と各国のパイロットが指摘していた。
事故地点は、北側から来て「逆くの字」をへて、連絡誘導路に入る手前で右側にカーブを切る所だ(地図を参照)。蛇行を繰りかえしながら、発進待ちの航空機の尾翼との幅が10メートル未満の所を右にカーブを切りながら通過しなければならなかった。
ボーイング777型機(通称トリプルセブン)は全長74メートル。センターラインと停止線との間隔が94メートルなので、約20メートル以上の主翼を持つ航空機が後方を通過することは不可能である。公団はトリプルセブンが待機中は、他の航空機の進行をストップしていた。公団は今後、航空機の型式の組み合わせによって、離陸待機中の後方通過を許可するかどうかを決めるとしている。それができるまでは通過禁止の措置をとった。
これは永遠に禁止する以外に安全は保たれない。単に通行可能な幅だけの問題ではないからだ。地図を見ると分かるが、北側からきた場合に逆くの字をへて蛇行した後、待機中の航空機のところで最後のカーブを右に切るのである。通常の倍以上の幅がなければ通行不可能だ。
また、事故地点は管制塔から死角になっている地点でもある。暫定滑走路は管制塔からの死角が多い上、800メートル北側にずらして造ったので、管制塔からの距離が遠く視認が難しい。欠陥空港としか言いようがないのである。
この事故の教訓を生かすとすれば、暫定滑走路の構造上、北風の時は航空機が滑走路手前で待機できないことになる。運航を半減するしか安全性は保てないということだ。
また、公団は今回の事故発生から丸1日、24時間も報道管制を敷き、事実を公表しなかった。これには重大な意味がある。事故の事実関係を隠蔽しているのだ。この事故にはまだ知られていない深刻な問題性があると見るのが自然である。いずれにせよ、このまま暫定滑走路を運用した場合、安全性は保てないことが明らかになった。
また、事故の当事者であるルフトハンザ機について公団は「事故と認定していないので、機長からの事情は聴いていない」としている。この種の航空機事故の場合は通常、双方が事故と認定し原因と責任を明らかにする。それは保険などの関係からも厳密に行われる。しかし今回は、そうしたレベルの原因究明はネグレクトした。理由は暫定滑走路の問題点が全面的に暴露されるからだ。公団も「事実調査」「事故原因の解明」と表向き言っているが、事実の隠ぺいに走った事実は消えない。
このような危険な暫定滑走路は、1日も早く運用を停止し閉鎖しなければならない。これほど危険な滑走路を建設した理由は、航空機を頭上に飛ばせば地権者は屈服すると踏んだからだ。それで当初計画(2500メートル)を完成させる計画だった。暫定滑走路はあくまで暫定であり、危険性は承知の上で不問に付して供用を開始したのである。
したがって、当初計画の滑走路建設計画が完全に破綻した以上、暫定滑走路は閉鎖する以外にない。このまま運用を続ければ大事故の発生は避けられない。
(地図参照)

●(12月6日) 交通審最終答申/大都市圏の空港に重点投資(12/7朝日、読売、日経、産経、東京)
03年度からの空港整備計画を検討する国土交通省の交通政策審議会(国土交通相の諮問機関)航空分科会は6日、最終答申をまとめた。新東京(成田)と関西、中部の3国際空港は個別に民営化するほか、需要の多い東京国際(羽田)など大都市圏空港に重点投資することを明記した。さらに、国内空港の整備をまかなう空港整備特別会計の財源が限られるなか、これまでの地方空港偏重を改めるなど、従来の航空行政を転換した。
しかし、空港ごとの課題は山積している。答申で「もっとも重要かつ喫緊の課題」と位置づけた羽田再拡張事業は、東京都が「従来通り国の責任で整備すべきだ」として事業費の一部負担を拒否し、来年度の本格着工は難しい情勢だ。成田は2180メートルの暫定第2滑走路を、2500メートルに延長することを明記したが、反対派地主との用地買収交渉のめどはたっていない。
1兆円に上る有利子負債を抱える関空は、完全民営化の実現のため、「将来の経営改善につながる条件整備」の必要性を盛り込んだが、肝心の需要回復策は不透明なままだ。大阪国際空港(伊丹)は騒音対策費の利用者負担を決めたが、航空会社や地元自治体から激しい反発を受けている。
審議会答申では、空港は国の国際競争力を向上するうえで欠かせない公共事業として、国費投入を大幅に増やすよう求めている。しかし、財政当局の理解を得るのは容易ではなく、国交省は地元自治体の協力体制や需要回復案を示すなど、自らの責任を果たす必要がある。
【本紙の解説】
交通審の航空部会の最終答申は、ここ30年間のデタラメな航空政策の総決算というべき内容になった。具体的には地方空港の抑制、大都市圏空港の整備強化となっているが、実際は関空の有利子負債の財源のメドもたたず、羽田の新工事の地方分担分が頼みの東京都にも断られ、二進も三進も(にっちもさっちも)いかなくなったことを答申しただけである。
財源的には空港特別会計に1兆円以上の借入金があり、毎年約1000億円の返済となっている。にもかかわらず、毎年約500億円の借入を続けている。毎年約500億円借りて、約1000億円を返済している計算である。その返済額が来年から約100億円増額する。それを伊丹の利用料の増額か、地方路線の減額の是正に求めようというのが答申の趣旨である。
空港特別会計がここまで大赤字になった理由は、国土交通省の空港整備計画が、官僚的思惑によるずさんな右肩あがりの予測データをもとに行われてきたことにある。しかし、その本質は別なところにある。国際空港をめぐるアジア近隣諸国との競争に完敗したことが真の原因である。空港特会の収入で大きな位置を占めるのが空港の着陸料である。
日本の位置は北米路線のハブ的位置にある。航空機の性能からアメリカ東海岸とアジア大陸との直行便はだせない状態にある。ようやくボーイングB747-400型機が途中給油なしで、アメリカ東海岸からアジア各国への直行便で飛べるようになったが、少数しか運航されていない。途中給油はアメリカ西海岸、ハワイ、日本である。そのなかでアジアへのスポーク・ハンド・ハブの絶好の位置にあるのが成田、羽田という首都圏空港であった。
成田空港に異常なまでに固執することによって、第3空港の建設が20年も遅れたのである。そのなかで進行したのが、近隣諸国の驚異的な国際空港の建設であった。成田が「アジアのゲートウェイ」の位置から完全に転落した結果、空港特会の赤字が激増してきたのである。日本の土地が高く、人件費が高いのでアジアとの競争に勝てないと国交省の官僚は弁解しているが、それはウソである。土地が高いということは、それだけ産業基盤が厚く、航空需要も多いことを表している。それを成田の失敗で失ったのである。ここに空港特会の赤字と空港整備計画破産の原因がある。
しかし、こんどの答申で成田条項はお寒いかぎりとしかいいようがない。「完全民営化に向けて、平成16年度に一体として特殊会社化し、本来の平行滑走路(2500メートル)等の早期整備を着実に推進し、できる限り早期に株式上場を目指すことが必要」となっているだけである。成田民営化に付随して平行滑走路の早期整備といっているだけである。二期工事を国策的にしゃにむにやってきた面影もない。
●(12月9日) 米ユナイテッド航空、会社更生法適用申請 運航は継続(12/9全紙)
経営危機に陥っていた米航空2位のユナイテッド航空は9日、イリノイ州の裁判所に連邦破産法11条(会社更生法)の適用を申請した。同社の資産は241億ドル(約3兆円)。負債総額は228億ドル(約2兆8000億円)とみられ、米航空業界では最大の経営破綻。昨年9月、反米ゲリラ後の航空大手の会社更生法の申請としては、当時6位だったUSエアウェイズに続く2社目となった。ユナイテッドは通常通り運航を続けながら、裁判所の監督下で合理化を加速させ、会社再建を目指す。
同社は世界最大の航空連合「スターアライアンス」の要。日本では全日空と共同運航を行っているが、当面はこうした共同運航やマイレージサービスにも影響はないという。全日空は「ユナイテッドが、共同運航路線で運休を決めるなど影響がでれば、自社便に振り替えるなど柔軟に対応する」(広報担当)としている。
同社にとって最大の課題はパイロット、整備士など5つの従業員組合の了解を得ながら合理化を進めることだった。組合員を含め従業員が55%の株式を握る筆頭株主である。これまで激しい労使対立が続いてきた。
だが今年9月、新しい最高経営責任者(CEO)に就任したグレン・ティルトン氏は組合と精力的に交渉を重ね、「5年半で計52億ドルの労働コスト削減」で合意。9000人の削減を柱とする合理化の具体策を米政府に示し、金融機関から20億ドルの融資を受けるための債務保証を申請したが、政府は4日、「合理化不足」として申請を却下。多額の債務返済の期限も迫り、資金繰りに行き詰まることがはっきりした。
ユナイテッドは裁判所の監督下で不採算路線の廃止、従業員の賃金カットなど合理化を加速する一方で、金融機関との間で債務の借り換え交渉を進め再建を目指す。
米航空業界では今年8月、USエアが会社更生手続きに入ったが、運航は通常通り継続。アラバマ州退職者年金基金の大型投資を受けて合理化を進め、来春の再建完了を目指している。
【本紙の解説】
米政府が航空資本の過剰状態の整理に入った。いままで、軍事産業の一環として需要を国家的援助でねつ造して運営してきたのが米航空業界であった。01年からの景気後退でその航空各社が軒並み赤字に転落し始めた。9・11はその経営悪化を加速させ、全米第2位のユナイテッドの倒産に行き着いたのである。通常の時期であれば米政府はユナイテッド航空を救済していたといわれている。
政府援助を拒否した理由については、ユナイテッド株式の55パーセントを組合が保有しており、合理化が計画通り行かないことがあげられている。しかし、これは理由のひとつで、それも副次的理由でしかない。最大の理由はイラク侵略戦争を年明けにも開始することにある。これで民間航空需要は9・11以上に落ち込むと予測しているからである。
この大風は日本にも直接吹いてくる。日本の国際線需要は9・11以降、顕著な回復が見えず、依然として低迷している。近隣のアジア便のみが若干の増加を示している。それも、北米便、欧州便の減便分の機材と人員をアジア便に回し、低価格で乗り切っているだけである。
イラク侵略戦争の開始はアジア便も含めて需要の大激減をもたらしそうである。ゲリラがあったインドネシアのバリ島への直行便はすでに減便している。全路線が再び減便、休便、運航中止に追い込まれそうである。成田空港の需要も一挙に下がる。暫定滑走路はますますその必要性がなくなっている。
●(12月10日) 全日空、事故地点で後方通過させないようバイロットに周知(12/11読売千葉版)
全日空の大橋洋治社長は10日、成田空港内で会見し、接触事故地点で待機中の航空機がある場合、後方の誘導路を通過しないようパイロットらに周知したことを明らかにした。大橋社長は「不測のことが起こる環境は早期に改善されないといけない」と指摘し、「暫定滑走路は使うのに神経を使うし、待ち時間も長い。早く解消されるようお願いしたい」と国や空港公団に注文をつけた。
【本紙の解説】
事故直後、公団は接触事故があった時点の通過を「航空機の型式の組合せによって、離陸待機中の後方通過を許可するかどうかを決める」とした。それができるまでは通過禁止の措置にした(02年12月1日付日誌を参照)。これに対して本紙では、臨時措置を「永遠に禁止する以外に安全は保たれない」と警告を発していた。
その後、公団も「停止線に航空機がいる際、後方の誘導路の通過させないよう管制の運用を改めた」(12/10朝日)とのことである。組合せでなく、全機種通行禁止にしたのである。当然である。
しかし、これで木の根の連絡誘導路をあらたに建設しても、暫定滑走路の渋滞は絶対に解消されなくなった。運用を半分近くに減便することが「渋滞のない運用」となるのである。暫定滑走路は現在1日120回の発着である。それを70回前後にしない限り、渋滞は避けられなくなった。やはり、平行滑走路は暫定ではつくるべきでなかったことが改めて明らかになった。
全日空もパイロットに周知させたらしいが、暫定滑走路の使い勝手の悪さは改善不可能である。即刻、運用停止にすべきである。
接触事故のあったJAS機が離陸を取り止めたので救われたが、飛び立っていたら墜落の可能性が大であったといわれている。ルフトハンザ機は走行していたこともあり、接触したことを機長は自覚していないといっている。このように、航空機の外部に亀裂が入っているにも関わらず、それを自覚せずに飛び立つことがどれほど危険かはこの間の航空機事故が示している。
暫定滑走路の危険性は、日本の国民以上に世界のパイロットに知れ渡っている。成田の暫定滑走路への着陸を理由に搭乗を拒否した機長もいるほどなのである。
●(12月10日) 中国機から白煙/滑走路で立ち往生
10日午後3時10分ごろ、西安発上海経由の中国西北航空271便(乗客162人)が成田空港に着陸後、左側第1エンジン付近から白煙があがった。同機は走行できなくなり、A滑走路上に立ち往生した。けが人はなかった。滑走路上にオイルが漏れていた。国土交通省新東京航空事務所はけん引車で移動させるとともに、漏れていたオイルのふき取り作業をした。
【本紙の解説】
この事故は直接的には中国機の整備不良が原因である。しかし、航空機の大事故は接触事故とか、滑走路上での走行不能とかの小さな事故が続いた後に発生するのが世界的パターンになっている。それは、その空港の整備、航空機整備の問題がまずは小事故として何度も発生し、その改善がないと大事故になるのであり、決して不思議なことではない。
成田も最近は管制官の強度の疲労と使い勝手の悪い暫定滑走路の運用で、管制業務が破綻しているといわれている。こういう時に大事故が発生するのである。民営化論議はそれを改善するのではなく、加速するだけである。
●(12月14日) 反対同盟忘年会
反対同盟のおもだったメンバー全員が天神峰の市東さん宅の離れに集まり、1年間の闘いの労をねぎらった。今年は暫定滑走路が供用開始され、三里塚闘争解体攻撃が強まったが、それをはね返して闘いぬいたことを全員で確認した。その結果、国交省、公団が追いつめられ、暫定滑走路の欠陥と破たん性が世界的にも明らかになり、12月1日には事故も発生した。事故が避けられないことは、反対同盟と三里塚闘争が一貫して主張してきたことであり、闘いの優位性を示していることでもある。このことを共通に確認し、来年への決意を全員が述べた。
また、イージス艦派兵阻止横須賀現地闘争に、反対同盟として翌日参加する木内秀次さんから闘争への決意表明がなされた。(詳しくは本紙参照)
●(12月17日) 北原事務局長 成田市へ天神峰フェンス設置要求行動
市東さん前のフェンスは、「滑走路面と市東方畑との高さの段差がある」ことにより、「航空機エンジン噴射口がフェンスの最上部の高さからより突き出している」という反対同盟の主張を空港公団は基本的に認めた。にもかかわらず、「回避版があるので、排ガスの直撃受けることない」という暴論を10月10日付けの書面で回答してきた。
12月17日、北原事務局長は成田市空対部に「要望書」(下記参照)を提出し、書面をもって公団の暴論をただし、フェンスの嵩上げ(かさあげ)を成田市に強く要望した。
成田市はあと2メートルの嵩上げは必要であり、それを公団に要求していると回答した。もし、市がその立場であるならば、公団に強く実現を迫るか、成田市民の生活を守るために市の責任で建設すべきである。
反対同盟は要望書に対する返答を見て、さらに厳しく天神峰のフェンスの嵩上げを要求していく決意である。(詳しくは本紙参照)
■要望書
2002年12月17日
成田市長・小川国彦殿
三里塚芝山連合空港反対同盟
事務局長・北原鉱治
成田市三里塚115
ジェット噴射による排ガス対策フェンスの設置と汚染調査の件
10月10日付当反対同盟の要望書(02年10月10日付日誌を参照)に対して、空港公団は10月30日付で成田市を通して回答書(02年11月8日付日誌を参照)を送付してきました。この書面で初めて空港公団は、誘導路上の航空機エンジンの噴射口がブラスト対策フェンスの上端部より高い位置にあるという事実を認めました.「航空機のエンジン中心の延長線の高さとフェンス上端との差は約0・6メートル」であるとして、エンジン口がフェンスの上に突き出ているという反対同盟の指摘を認めたのです。
にもかかわらず空港公団は、「ブラスト回避板を設置している」ことにより「市東宅に直撃はない」と主張しています。
噴射口がフェンスの上端部(ブラスト回避板)よりも高い位置にあってなお、市東宅を直撃しないとする公団の主張については、現在その当否を確認する術はありません。しかし確実に指摘できることは、ブラストの直撃があるか否かは別として、気象条件によって激しい悪臭が市東宅を覆うという事実です。特に東風が吹くときには気分が悪くなるほどの悪臭がたちこめます。これによる人体への悪影響を考慮し適切に対策すべきことは、空港設置者ならぴに自治体としての当然の義務であるはずです。
フェンスをさらに数メートル嵩上げして噴射口をふさげば、排気ガスの影響は激減します。空港公団は「日照への間題、心理的圧迫感等への影響が最小限」になるようにフェンスを低くしたと再三にわたって書き記していますが、当事者である市東孝雄さん自身が、対策フェンスの嵩上げを申し入れているのです。このことを理由に嵩上げしないとすることは矛盾そのものです。ジェットブラストと悪臭の被害を防ぐべく、あらためてフェンスの設置を要望します。
以下、誠意ある回答を求めます。
●(12月16日) 第3サテライトを再開(12/17朝日、毎日千葉版)
成田空港で16日、増改築工事のため閉鎖されていた第1旅客ターミナルビル「第3サテライト」が約2年半ぶりに使われ始めた。サテライトには乗降客用のゲート7カ所と、米ユナイテッド航空の旅客用ラウンジなどがある。これでビルの延べ面積は3万5900平方メートル広がって28万7700平方メートルとなる。
【本紙の解説】
日本航空システムの兼子勲社長は11日に新聞社の記者会見で、米国などがイラク攻撃に踏み切った場合の航空業界への影響について、「航空燃料費の問題よりも、消費者心理にマイナスになり、海外旅行全体に影響することを恐れている。米国や欧州への国際線に打撃を与えかねない」と述べ、強い懸念を表明している。
ユナイテッド航空への政府援助を拒否し倒産させたのも、米政府のイラク侵略戦争開始の決断が最大の理由である。成田の第3サテライトはこのユナイテッド航空が大半を使用するものである。ユナイテッド航空は現在、連邦破産法11条(会社更生法)の適用を申請しており、裁判所の監督下で不採算路線の廃止と合理化の加速、金融機関との間で債務の借り換え交渉を進め再建を目指している。これは、再建されたとしても、かなりの不採算路線の廃止を伴うことは確実である。ユナイテッド航空の不採算路線は国内線の東部エリアと国際線では太平洋路線であるといわれている。そのために、成田発着のユナイテッド航空便は半数近く減便すると見られている。再建ができなければ他社に奪われることになる。
第3サテライトは供用を開始したが、皮肉なことに閑散とすることだけは間違いないようだ。第3サテライトは「吹き抜けも多く、開放感ある空間」になったといわれているが、その実体は「吹き抜けの先が見えない、閉塞感が漂う空間」になってしまったのである。
●(12月18日) 政府保証枠1800億円 関空支援で財務相と国交相合意(12/19朝日、毎日、読売、日経)
塩川財務相と扇国土交通相は18日、1兆2000億円の有利子負債を抱える関西空港の支援策で合意した。負債完済に向け関空会社に30年間にわたり補給金を支給(03年度は90億円)するほか、03年度に発行する社債に対して1800億円弱の政府保証枠を創設して資金繰りを支える。関空会社にも、年間30億円の経費削減、従業員の1割削減などを目標とする経営改善計画策定を求める。
07年を目標としている平行滑走路(2期工事)の開業時期は「今後の需要動向や会社の経営状況などを見つつおこなう」として判断を先送りした。05年度政府予算が固まる04年末までに延期するかどうかを決める。
関空会社は03年度、約1000億円の社債が償還を迎える。新たな社債を発行して借り換える必要があるが、引受先の金融機関などから信用補完を求められていたため、利子負担の軽い償還期間5年以内の社債に政府保証をつけることにした。
【本紙の解説】
関空はこの政府支援で倒産を回避することはできた。来年償還を迎える社債分の1000億に800億円を上乗せした政府信用保証と30年間の毎年90億円以上の利子補給(最低でも2700億円)である。約4500億円の政府支援策である。地方空港がひとつ建設できるほどの支援策である。
毎年の利子補給分の90億円は伊丹空港と羽田空港の着陸料の値上げで賄うつもりらしい。
しかし、この支援策で関空の経営が正常化するわけではない。これは有利子借入金の利子返済と社債の借り換え問題で、当面の乗り切り策でしかない。関空経営の正常化は通常の運営でもほど遠いのである。それ以上に、イラク侵略戦争の開戦情勢の切迫は、航空需要をさらに押し下げており、関空の再度の経営危機間近に迫っているのである。
●(12月20日) 成田空港滑走路延伸 整備費、満額の73億円(12/21読売、東京、産経各千葉版)
03年度政府予算の財務省原案が20日、内示され、成田空港予算としては、今春供用された暫定平行滑走路を当初計画通りの2500メートルへ延伸する整備費として、73億円が満額認められた。また民営化を控え、資本を適正規模にするため、空港公団として、はじめて政府出資金がゼロとなった。
新東京国際空港公団によると、内示された予算総額は1070億円で、前年比55%の大幅増。4月に供用された成田空港2本目の滑走路、暫定平行滑走路をジャンボ機が離着陸できる2500メートルに延伸するための整備費が4年ぶりに予算化された。
国土交通省では、反対派用地を避け、北側に滑走路を延伸することで2500メートル化する計画も検討されているが、同公団では、来年度予算の整備費は、従来計画による予算と説明している。
一方、財源では、新東京国際空港債が812億円、業務収入717億円などで、来年度以降の空港公団の民営化を前提にして、さらに政府出資金を増やすことは適当ではないとして、公団発足からはじめて、前年まで年80億円程度あった政府出資金がゼロになり、空港公団の財務は大きく様変わりした。
このほか、第一ターミナルビルの改修工事などに366億円、誘導路混雑で発着に遅延がでている現状を解消しようと、誘導路整備などに98億円が計上されている。
【本紙の解説】
暫定滑走路の2500メートル化の予算が73億円も認められてもそれを支出することはなさそうだ。この73億円は昨年8月に概算要求したものであり、その時期は黒野公団総裁の「北延伸」が話題となり、その「北延伸」の真実味がある証拠として調査費として要求されたのである。当時の公団はもったいぶって、「本来計画の南側を目指したもの」と説明しているが、それは「北延伸」がもっともらしいこととして演出するための説明だった(02年8月28日付日誌を参照)
問題の木の根連絡誘導路に「誘導路整備などに98億円を計上」としているが、これも調査費どまりの予算であり、工事は04年以降になりそうだ。したがって、暫定滑走路の渋滞は当面解消されそうもない。
●(12月21日) 一坪地主提訴で空港公団
(12/21朝日、毎日、読売各夕刊、12/22全紙千葉版)
成田空港用地内の一坪共有地の一部について、新東京国際空港公団が、民事訴訟で解決の道を探る方針を固めた。一方で、公団は「8カ所以外は提訴するつもりはない」と強調、話し合いで解決を探っている残りの13カ所の共有地への影響をとどめようと躍起になっている。
ここ10年ほどは話し合いを原則に、共有地の取得を進めてきた。今回、提訴を検討している8カ所の共有者は、三里塚・芝山連合空港反対同盟北原派の支援者がほとんど。公団は「一切話し合いに応じないグループが共有している場所で、基本はこれからも話し合い」と強調している。
8カ所は、安全性などが問題になっているB滑走路の誘導路の近くや計画地にあり、公団が最も取得を急がなければならない場所にある。
最高裁は96年、共有物の分割について新たな判断を示した。それまでは「現物分割」と「競売後の代金分割」の二つの方法しか認められなかったが、「持ち分の価格を賠償することも許される」としたのだ。持ち分が9割以上ある公団は、空港の公共性を訴え、共有者の持ち分を価格賠償し、土地を引き渡してもらうことを目指している。
【本紙の解説】
この一坪の強奪攻撃は、昨年8月に、成田空港に乗り入れる航空会社60社でつくる「新東京国際空港航空会社運営協議会(AOC)」が航空機の発着が大幅に遅れているとして、渋滞を解消することを申し入れたことから出発している(02年8月3日付日誌を参照)。具体的には「空域混雑」とともに、暫定滑走路と駐機場を結ぶ誘導路が1本しかない上、狭いことを指摘した。
今回の8カ所は木の根が4カ所であり、それは新たな誘導路建設計画地にある一坪共有地である。後の4カ所は東峰と天神峰であり、暫定滑走路の着陸帯2カ所と誘導路、エプロンの改修工事のための強奪攻撃である。
つまり、基本は暫定滑走路の渋滞回避のためである。さらに、暫定滑走路の着陸帯の2カ所は本来の空港の安全基準をはずれて建設したことを合理化するために同時に提訴してきたのである。
しかし、土地の共有権を分割請求するという訴訟はことごとく敗訴している。土地所有という私有財産権の護持は資本主義社会の基本原理であり、公権力も及ばない領域である。例外的に金銭授受をもって認めた判例が一件だけあり、公団はこの判例を基礎に提訴してきた。しかし裁判でも原告(公団側)の勝算は薄いのである。
その裁判が続く限り、木の根誘導路工事はできないのである。この裁判は5年や6年で決着がつくような内容ではない。公団の主張が認められ、木の根誘導路が完成してもそれは10年以上先のことになりそうだ。その時は羽田の4本目の滑走路は完成し、いま暫定滑走路を使っているアジア便はほとんど羽田からの発着になる。木の根誘導路が完成したとしてもその時、暫定滑走路は閑散として使い道もなくなっている可能性が強いのである。
それではなぜ、このような一坪強奪のための裁判を提訴したのか。それは暫定滑走路の渋滞、使い勝手の悪さが国際問題に発展し、何らかの措置をとる義務が公団に生じたことによる。
●(12月25日) よねさんの畑収用問題で、謝罪の覚書 代替地を提供(12/25毎日夕刊、12/26朝日、読売、東京各千葉版、千葉日報
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成田空港の建設をめぐり、反対派農家として唯一、自宅と土地を強制収用された故小泉よねさんの問題で、新東京国際空港公団は24日、よねさんの養子、小泉英政さん(54)に対し、空港計画地内の土地10アールの使用権を認める異例の措置を取った。両者の間で交わされた覚書で、公団は「よねさんが開墾し耕した畑を法的手段で一方的に取り上げたことを心よりおわびする」と謝罪している。
収用された土地の事実上の代替地と言える。よねさんについては、成田空港工事の象徴的問題となっていたが、土地については25年ぶりに一定の解決に至った。公団の決定の背景には、空港用地問題の根本的な解決を進めるため、空港問題の禍根を解消する意図があるとみられる。
覚書によると、使用権を認めた土地は成田市東峰地区の公団所有地。現在ある暫定平行滑走路の南先端部分に当たり、未買収地が点在している場所で、当初計画では、2500メートル滑走路の中央部分になる。使用の期限は定めず、耕作以外に使わないことが条件になっている。
よねさんは空港計画地内の同市取香に1人で居住。戦後、配分を受け、開墾した土地で耕作していたが、71年に自宅を強制収用された。その後、同市東峰地区の借家に移住し、73年に66歳で死去。土地(広さ約10アール)は英政さんが引き継いだが、計画地内だったため、公団が明け渡し請求訴訟を起こし、77年に取得した。
【本紙の解説】
公団が小泉英政氏に公団用地の使用期限のない耕作権(永代小作権)を認めたことは当然である。強制収用しただけでその対価を補償しなければ、それは強奪そのものである。しかし、それを30年間してこなかったことは、裁判中ということが理由であるが、もうひとつは空港敷地内の耕作権を要求していたからである。公団が平行滑走路の建設用地内の永久使用を認めたことは、本来計画の平行滑走路の完成目標を後退させたとの見方もできる。公団は東峰部落丸ごとの条件交渉に引き込まない限り、平行滑走路は完成しないことをようやく認識したのである。
公団はいままで、暫定滑走路の供用を開始し航空機を飛ばし、騒音で航空計画用地内に家屋がある市東さんと島村さんの2軒をたたき出せば、三里塚闘争も解体し、後は何とかなるという考えであった。しかし、東峰には開拓道路があり、墓地もあり、東峰神社があり、それはすべて東峰地区の総有や組合有になっており、1軒でも反対していれば空港は完成できないことが突きつけられていた。結局、一人一人を個別に切り崩しても空港はできない現実を突きつけられたのである。
暫定滑走路の開港直前に始まった東峰神社裁判はそのことを示した。無期限耕作権の認知は、死してなお戦い続ける大木よねと東峰地区の団結が闘いとった偉大な勝利である。
●(12月27日) 公団民営化で国土交通省 法案の概要固める(12/28読売)
国土交通省は27日、新東京(成田)国際空港公団を民営化するため、2004年度に公団が解散し、国の全額出資の特殊会社を設立する法案概要を固めた。新法の名称は「成田国際空港株式会社法」とし、地元の要望を受け入れて空港の正式名を新東京国際空港から「成田国際空港」とした。
法案は(1)事業内容に空港の設置・管理のほか、空港周辺の騒音防止などの環境対策や地域との共生策を明記する。(2)業務の自由度を高め、免税店などの商業施設も営業できるようにする。(3)国が監督命令をおこなうことができる――が柱だ。次期通常国会に提出し、07~08年ごろの上場を目指す。
法案では約3000億円に上る公団への国からの出資金の取り扱いは明示していない。国交省は約1000億円を資本金、約500億円を資本準備金として成田会社に残す。残りの約1500億円については、空港用地のうち約1500億円分を国有化し、成田会社が国に年60億円の賃借料を25年間支払う方法で調整。経費として扱えるようにして会社の負担を軽減する方針だ。
このほか法案では、国が監督権限をもつことで、環境対策などの確実な実施に不安を抱える地元に配慮した。
これまで成田公団は、空港施設以外の事務所や店舗の建設管理が認可制となっているなど、新規事業への参入に厳しい制限があった。滑走路の発着枠は既に90%が使用され、着陸料など航空収入の伸びは期待できないことから、成田会社は免税店やホテルなどの事業に進出し、現在30%の非航空収入を欧米空港並みの50%以上に高める考えだ。
【本紙の解説】
成田空港の民営化の基本方針がでたようだ。07年から08年に上場を目指し、完全に民営化される。ここで完全に成田空港は営利第一主義の民間会社になる。そもそも、国際空港は民営化になじまない。問題は山ほどある。安全性、整備問題、環境問題と営利とはほど遠い問題を空港は抱えている。
環境問題は地元住民、自治体にとっても関心事である。国交省はこれを発表し、すぐに千葉県で4者協をもって説明している。しかし、環境対策を社会事業とすることと、住民の生活に配慮するということの確認、それに対して国が監督命令を行うことができるとしただけである。監督命令を文言化したが、具体的な環境、住民対策の基準はまったく設けなかった。
これでは、何を基準に監督命令を出すのか不明である。しかし、千葉県をはじめ地元自治体は民営化に賛成し、推進してきたいきさつから反対できず、環境対策の事実上のゼロ化に困惑しつつ、文句も言えない状況になっている。
上場が07年をメドにしているので、暫定滑走路の整備問題もそれまでに完成させなければ歴史的に葬られることになりそうだ。
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