地労委への救済申し立て  

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四党合意は不当労働行為
東京、大阪、千葉で地方労働委員会に救済申し立て
                        労働省で記者会見(8月25日)
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午後1時半から労働省記者クラブで記者会見する国労組合員と佐藤昭夫さん(早大名誉教授・弁護士)、宮島尚史さん(法学博士・弁護士)、代理人の弁護士たち

 

各地方労働委員会への救済申立書

 大阪

 東京(千葉)

 

不当労働行為救済申立書〔大阪〕

大阪府地方労働委員会                        2000年8月24日
会長田中治殿

申立人 〔氏名、住所――略〕

被申立人
 運輸省
  代表者 運輸大臣 森田一
   東京都千代田区霞が関2−1−3 霞ケ関合同庁舎第3号室
 自由民主党
  代表者 総裁 森喜朗
   東京都千代田区永田町1−11−13
 東海旅客鉄道株式会社
  代表者 代表取締役 葛西敬之
   名古屋市中村区名駅1−1−4 JRセントラルタワーズ
 西日本旅客鉄道株式会社
  代表者 代表取締役 南谷昌二郎
   大阪市北区芝田2−4−24
 日本鉄道建設公団
  代表者 総裁 豊田 實
   束京都品川区北品川5−20−1

不当労働行為救済申立書

 労働組合法第7条1号、3号、4号違反について、労働委員会規則第32条により次のとおり申立てます。

 請求する救済の内容

1、「4党合意」文書の下記の内容
 「JRに法的責任ないこと」
 「国労は全国大会(臨時)において決定する」
 「社民党から国労に対し、少なくともJR発足時における国鉄改革関連の訴訟について、2.の機関決定後速やかに取り下げるよう求める」
 などを取り消し、4党合意文書をなかったものとして取り扱うこと。
2、4党合意の承認を求めて、国労に対して臨時大会の開催をせまり、国労内部に大混乱を発生せしめたのは著しい支配介入であり、被申立人らによる国鉄分割民営化以来の国労への不当労働行為であることを認め、下記の文書を被申立人らは、それぞれの玄関前に(支社等含めて)、縦1.5メートル、横2メートルの白色木板に明記して2週間にわたって掲示すること。

          記            年 月 日
○○○○殿
            運輸省
             運輸大臣 森田一
            自由民主党
             総裁 森喜朗
            東海旅客鉄道株式会社
             代表取締役 葛西敬之
            西日本旅客鉄道株式会社
             代表取締役 南谷昌二郎
            日本鉄道建設公団
             総裁 豊田 實

 87年の国鉄分割民営化以降、国労の組合員に精神的肉体的苦痛を与え、不当労働行為による多大な人権侵害を行い、さらにはそれを黙認・放置してきたことを謝罪します。
 「一人も路頭に迷わせない」「組合差別はしない」という約束を破って、多くの国労組合員をJRに不採用とし、この上もない苦難を強いてきました。
 また重大な公的責任からいって絶対に履行すべき労働委員会命令をないがしろにしてきました。
 96年12月30日『アエラ』において国鉄分割民営化当時首相である中曽根の「総評を崩壊させようと思ったからね。国労が崩壊すれば、総評も崩壊するということを明確に意識してやったわけです」旨のマスコミを利用した悪質な発言が流れたにもかかわらず、これを傍観、放置し、積極的に助成してきたことは、不当労働行為であるのでここに謝罪します。
 さらに国労に対して再三にわたって「JRに法的責任がないことを認めろ」と迫り、4党合意を押しつけた行為は、不当労働行為であるのでここに謝罪します。

 不当労働行為を構成する具体的事実

1、申立人らは、いずれも国労組合員であり、「4党合意」によって国労の内部が対立し、団結権が脅かされていることに、強い危惧をおぼえるものである。
 被申立人はそれぞれ、国鉄分割民営化の当事者であり、「1047人不採用問題」の直接の当事者である。
 被申立人運輸省は、国鉄分割民営化時も、いまもJRに対する政府の直接監督省庁で、JRの最大株主である。
 被申立人自由民主党は、中曽根内閣を組閣して、国鉄分割民営化を強行したものであり、今も政権党として、4党合意の中心になっている。
 被申立人JRは87年分割民営化の採用拒否の直接の当事者であり、執行者である。
 被申立人鉄建公団は、当時清算事業団として、JRの株主であり、被解雇者のJR復帰に責任がありながら、90年1047人への二度目の首切りを執行したのである。
 それぞれに、今回の「1047人問題」についての「労働者の労働関係上の諸利益に影響力ないし支配力を及ぼしうる地位にある一切のもの」という労組法上の「使用者」にあたるものです。

2、87年2月16日、国鉄分割民営化によって、7630人の国鉄職員は、JRへの採用を拒否、解雇され、清算事業団送りにされた。90年3月31日には、1047人が、清算事業団から2度目の解雇をいいわたされた。この1047人は「国鉄分割民営化反対」を組合の方針とする国労を中心とする組合員であり、組合差別による解雇であり、明らかな不当労働行為である。
 国労は、採用拒否は不当労働行為であると、地元JR復帰を求めて、各地の地方労働委員会に救済を申立てた。
 また、本来業務から「事業部」への配属を行った、差別的配属についても、各地の地方労働委員会に救済を申立てた。

3、全国各地の地方労働委員会は、211本の救済命令を発した。しかし、JRはこれに従わずに、不服として中央労働委員会に再審査申立。中央労働委員会はここでも救済命令をだした。国労は、地労委・中労委あわせて254本の救済命令をかちとっている。
 1047人の解雇に対しては、94年中労委は「JRには法的責任がある」とする救済命令をだしている。
 しかし、政府・運輸省は労働組合法に基づく公法的履行義務のある初審命令を、無視し、JRに初審命令の実行を指導せずに、1047人を長期にわたって解雇したままの状態を強制し続けている。
 これは労働法ならびに労働委員会制度を根本的に否定するものである。

4、95年JRは中労委命令を不服として、東京地裁に提訴した。このJRの提訴は、地労委の初審命令に従わず、中労委の救済命令も拒否し、迅速な救済が必要にもかかわらず、いたずらに争いを長期化させて、1047人の闘争団を窮地に追いやるものである。

5、このなかで、96年12月30日号雑誌「アエラ」で分割民営化当時の首相であった中曽根が国鉄分割民営化を「総評を崩壊させようと思ったからね。国労が崩壊すれば、総評も崩壊するということを明確に意識してやったわけです」と発言した。これは国鉄分割民営化の目的が国労つぶしであることを時の中曽根首相が自白したものである。
 しかし、ここまで、事態が明らかになっているのもかかわらず、JRは、訴訟を取り下げず、「JRには法的責任がない」と強弁しつづけている。
 政府・運輸省、自民党も、中曽根による悪質なキャンペーンを黙認し、必要な措置をとらず、国労と1047人に違法な状態を強制しつづけてきたのである。

6、東京地裁11部、19部は、国労が要求した中曽根首相・杉浦国鉄(当時)総裁などの証人採用を拒否し、98年5月28日地労委・中労委命令を取り消す反動判決を下した。
 中曽根発言から明らかなように、自民党、政府・運輸省、JRは、電車、レール、建物などの一切を国鉄からJRに引き継ぐことにしながら、職員だけは全員解雇・選別的再雇用というやり方で、国労組合員を選別的に排除したのである。国労をつぶすための解雇・選別的再雇用ができるように国鉄改革法23条をつくり、ムチャクチャな不当労働行為を国労と国労組合員におこなってきたのである。
 JRと国鉄の同一性はあまりにもあきらかである。
 しかし、11部判決は、全国の幾多の地労委命令で確立してきた使用者概念を否定し、19部判決は、救済方法とその手段に関する労働委員会の独自の権限を否定したのである。

7、自民党は、98年5月28日の反動判決を背景にして、国労に「改革法を承認し、訴訟を取り下げよ」と迫ってきた。6月2日自民党政調会長山崎拓はJR各社に和解を働きかける条件として、@)訴訟で控訴しない。A)他労組の理解をえる努力をする。B)国鉄改革の趣旨を認め機関決定する、と従来の自民党の主張をもとにしていわゆる自民党3条件を国労に提示してきた。
 運輸省も98年5月29日閣議後の記者会見で「国労側が(JR側と全面対決する)方針を転換するのなら、政治的な高度な判断が必要な場面もあろう」と述べた。
 これらは国労の方針転換をせまる露骨な支配介入であり、労働委員会命令を否定するものである。
 この支配介入の結果、国労は99年3月18日、臨時全国大会を開催。大会は、組合員から多くの反対の声が多くでて、意見は二分し、混乱する中で、国鉄改革法承認の機関決定が強制された。

8、他方国労は98年10月にILOに提訴。ILOは、99年11月の中間報告をだして、東京地裁の98年5月28日の判決を否定したのである。
 そこでILOは、国労への採用差別がILO第98条に反するものであるという立場にたって、JRと政府の責任を追及している。JRの「それは国鉄がやったことであって、われわれの問題ではない」や政府の「あれはJRの問題であって政府の責任ではない」という態度は絶対に許されないとしている。
 またILOが「当該労働者に公正な補償を保障し、当事者の満足いく解決に早急に到達するために交渉を積極的に奨励する」として「JRが頑なな態度でどうしようもない」という政府の責任逃れを追及している。
 さらに、「司法機関を含むすべての国家機関」と司法を名指しで「言い渡される判決がILO98号条約に沿ったものになることを信じている」と勧告している。明らかに、98年の5月28日判決がILO98号条約違反であるとしたのである。
 ところが、政府はILOに、i)国鉄改革は国労の排除ではなかった。A)政府は解決のために積極的に努力してきた、などとウソの弁解に終始し、さらに、B)5月28日の東京地裁判決を尊重すると開き直っている。
 そのなかで、11月にも最終報告がだされようとしている。

9、運輸省は、99年3月18日国労臨大での改革法承認だけでは、不十分として、JRの1047人の解雇への法的責任を問題にすることができなくさせようとして、99年6月10日国労へのメモ「国労とJR各社の話合い開始について」で、国労は「JRに法的責任なしを認める」「JR不採用問題は新規採用」「訴訟を取り下げる」などの条件を満たせば、「JRとの話合いの要請をおこなう」と迫ってきた。
 さらに露骨な支配介入による不当労働行為である。

10、そうした不当労働行為の上に、2000年5月30日には「JR不採用問題の打開について」なる自民党・公明党・保守党と社民党による4党合意文書が発表された。
 これは表題のごとく、争議の解決案のごときであるが、一切の解決条件(賃金保障、解決金など)、採用条件が示されず、解決案にほど遠い被申立人の言い分の押し付けである。
 この内容は、国労にだけ、「JRに法的責任なしを認め」させ、それを「臨時大会で決定」し、「訴訟の取り下げ」まで強要するものである。自民党が99年運輸省メモの意にそって、4党合意としてまとめ、国労に突きつけたのである。

11、4党合意は、今年10月11日と11月14日に予定されている東京高裁での1047人の採用差別での判決、11月にだされる予定のILO最終報告を前にして、裁判やILOで最大の争点になっでいる「JRへの法的責任」問題で、国労にJRや運輸省、自民党の主張をすベてのめという内容である。
 4党合意は運輸省、自民党、JRによる不当労働行為である。
 労働委員会にかかわっている案件に対する不利益取り扱いであり、労働組合法第7条4号違反である。
 また、国労に路線転換をせまる支配介入であり、労働組合法第7条第3号違反である。
 さらに、解雇を認めることの強要は、労組法第7条1号の不利益取り扱いである。
 いずれも悪質な不当労働行為である。

12、4党合意は、JRと運輸省、自民党との密接な連携によって形成されたものである。
 3者の密接な連携は、98年6月づけの運輸省鉄道局の「JR採用差別問題政党間協議の経過について」で具体的に明らかになっている。
 こうしたJR、自民党、運輸省の連携した国労への不当労働行為を経て、4党合意がでてきているのである。

13、この結果、強要された7月1日の国労臨時大会は上部下部の組合員の対立をもたらし、深刻な事態におちいっている。
 運輸省は、7月l日休会になった臨大について、7月18日号の「エコノミスト」では、「形式的に組合が4党合意を認めても、過半数の闘争団が闘いを続けるようなら本当に解決したといえるのか。4党合意はなんだったのかという話しになりかねない」「自分たちが4党合意を受け入れると言いながら、まとめ切れないのでは、結局、二枚舌を使ったことになる」と伝えている。運輸省は、4党合意反対の闘争団を決定的に不利な状況に追い込もうとしているのである。
 8月26日にも、国労臨時大会の続開大会の開催が予定されていて、国労内ではさらに激しい対立が起こっている。

 以上のようにこれまでの様々な不当労働行為と4党合意という新たなる不当労働行為によって、引き起こされている結果は重大であり、早急な救済が必要と考え、申し立てに至りました。
 以上、経過に示したごとく、被申立人の不当労働行為は明白なものがあります。貴労働委員会におかれましては、早急な救済命令を求めます。


不当労働行為救済申立書〔東京〕

 申立人らは、労働組合法第7条1号及び3号違反事件について、以下の救済命令を発するよう申し立てます。
 2000年8月25日

 〔申立人の住所、氏名――略〕

 東京都千代田区霞が関2−1−3霞が関合同庁舎第3号館
  被申立人 運輸省
         運輸大臣 森田一
 東京都千代田区永田町1−11−23
  被申立人 自由民主党
        総裁 森喜朗
 東京都渋谷区代々木2−22
  被申立人 東日本旅客鉄道株式会社
        代表取締役社長 大塚陸毅

東京都地方労働委員会会長 殿

請求する救済の内容

1 被申立人らは、「四党合意」文書における次の内容を取り消すこと。
 (1)「国労が、JRに法的責任がないことを認める」
 (2)「国労全国大会(臨時)において決定する」
 (3)「社民党から国労に対し、少なくともJR発足時における国鉄改革関連の訴訟について、2.の機関決定後速やかに取り下げるよう求める」

2 被申立人らは、本東京都地方労働委員会の救済命令発令後3日以内に、別紙内容の謝罪文を申立人らに交付し、かつ被申立人自由民主党にあっては同党本部の、被申立人・運輸省にあっては同省の、被申立人東日本旅客鉄道株式会社にあっては同本社の、それぞれ正面入口の最も見やすい場所に、縦1.5メートル、横2メートルの白色木板に墨書した同謝罪文を2週間掲示すること。

不当労働行為を構成する具体的事実

第一 申立人の所属組合 〔略〕

第二 不当労働行為の具体的事実

 一 1987年の国鉄分割・民営化に際して、7630人の国鉄職員がJRへの採用を拒否され、国鉄清算事業団に送られた。JR不採用となった者の多くは国労組合員であった。その後、90年4月には、1047人が国鉄清算事業団からも解雇された。
 国労は、JRへの採用拒否は組合差別によるものであるとして、地元JRへの復帰を求めて各地方労働委員会に救済を申し立てた。
 また、分割・民営化直前の87年3月、国鉄は多くの国労組合員に対して、鉄道本来の業務を奪い、「事業部」などへの配転を強行した。こうした差別的配属についても、国労はその是正を求めて各地方労働委員会に救済を申し立てた。

 二 右申立てを受けた各地の地労委は、これら不採用や差別的配属について「国鉄がしたことでありJRに責任はない」とするJR側の主張を退け、JRに採用または配属の是正を命じる救済命令を次々と出した。JRはこれらの命令を不服として中労委に再審査を申し立てたが、中労委もJRに責任があると判断した。
 だが、これらの不当労働行為のうち、不採用にかかわる事件について、JR各社は、中労委命令の取り消しを求める訴訟を94年に東京地方裁判所に提起した。そして、同地裁は、98年5月28日右中労委命令を取消す判決を出した。これに対して、中労委及び国労は、東京高等裁判所に控訴し、現在係争中である。
 他方、国労はILOに提訴を行い、同結社の自由委員会は、右不採用についてJRに責任があることを当然の前提とした上で、「当該労働者に公正な補償を保障する、当事者に満足のいく解決を図る」よう日本政府に求める中間報告を出した。

 三 こうした中で、被申立人東日本旅客鉄道株式会社は、裁判で係争中であることを口実に、JR不採用事件について中労委が出した右命令を履行しないという違法な態度をとり続けている。
 被申立人運輸省及び同自由民主党(以下「自民党」という。)は、JRに対する監督官庁あるいは政権政党としての責任があるにもかかわらず、JRの違法行為を黙認・放置したままである。逆に被申立人らは、国労が不当労働行為責任を追及していることに「労使紛争」の原因があるとして、JRと気脈を通じつつ、再三にわたって国労に対する一方的な譲歩と屈服を求めてきた。
 本年5月30日に至り、自民党は公明党、保守党、社会民主党とともに「JRに法的責任がないことを臨時大会で決定せよ」「訴訟を取り下げろ」を国労に迫るべく、右四党間の合意文書に調印した。そして、国労の組織運営に支配介入し、国労本部を強制して、「JRに法的責任がない」ことを認めるための臨時大会を本年7月1日に開催させた。

 四 被申立人運輸省は、JRの不当労働行為を容認するばかりか、不当労働行為の是正を求める労働組合の当然の権利をも否定する行政を推し進めている。
 同省は、99年6月10日に国労に対して突きつけたメモの中で、「国労は、JR不採用問題につきJR各社に法的責任がないことを認識せよ」「国鉄改革関連の訴訟は取り下げよ」と迫っている。これは、国家の公的機関である中労委が「JRに責任あり」という判断を下した事実、及びたとえ裁判で係争中であっても中労委命令はなお効力を有するという法理をことさらに無視し、運輸省独自のゆがんだ見解に固執して、被申立人東日本旅客鉄道株式会社の不当労働行為に加担しているということである。
 国鉄分割・民営化の経緯に鑑みれば、運輸省がけっして労使関係の外に立つ「第三者」ではないことも明白である。いうまでもなく、JR各社は民間人が自由な意思で設立した会社ではない。それは、運輸省が立案・計画段階から全面的に関与した国鉄分割・民営化という国家政策によって生み出されたものである。
 JR発足時における国労組合員への採用差別にも、運輸省は内在的に深くかかわっていた。JRへの採用者の決定は、国鉄を補助機関としつつ設立委員の権限において行われたものであるが、設立委員は当時の運輸大臣によって任命され、設立委員会事務局は運輸省大臣官房内に設けられていた。採用にかかわる具体的な事務は、設立委員事務局が国鉄職員局と密接な連携をとりつつ行われた 。
 運輸省は、自らも積極的に関与した国労組合員のJR不採用という不当労働行為を押し隠すため、国労に対して繰り返し「JRに法的責任がないことを認めろ」「係争案件を取り下げろ」と迫ってきた。それは、98年5月28日の東京地裁判決以降とりわけ顕著となった。前記四党合意は、このような運輸省とJRの主張を、自民党を介して国労に押し付けようとするものである。
 さらに、運輸大臣は監督官庁の長としてJR各社に強い影響力を有していることに照らせば、運輸省がその不当労働行為責任を問われるべき位置にあることは明らかである。

 五 自民党がJRによる不当労働行為を容認し、積極的に助長してきたことについては、多言を要しない。国鉄分割・民営化当時の首相であった中曽根康弘は、雑誌『アエラ』96年12月10日号で、「総評を崩壊させようと思ったからね。国労が崩壊すれば、総評も崩壊するということを明確に意識してやった」と、国鉄分割・民営化の意図をあけすけに述べている。自民党は、この中曽根発言を否定もしなければ批判もしていない。分割・民営化当時も今日も、国労を崩壊させたいという自民党の不当労働行為意思は一貫しているのである。
 分割・民営化当時の政権政党の意図がこのようなものであったからこそ、「職員の採用については、所属労働組合等による差別等が行われることのないよう特段の留意をすること」という86年11月28日の参議院国鉄改革特別委における付帯決議は、ことごとく踏みにじられたのだ。
 このように自民党は、国労の解体を自ら企画し、実行してきた主体であるにもかかわらず、あたかもJR各社と国労との間を仲介するかのように装って、四党合意文書を作成したのである。しかし、それは、JRの不当な言い分を全面的に押し付けるためのもの以外の何ものでもなかった。自民党は、「JRに法的責任がないことを認める」という議題まで指定して国労本部に臨時大会を開かせたのであるから、これが国労への支配介入にあたることは明らかである。

 六 仮に「JRに法的責任がないことを認めよ」「訴訟を取り下げろ」という発言等が、労働委員会命令の履行さえ拒んでいるJR自身によって行われたのであれば、それは威嚇・強制を伴う使用者の言動としてただちに不当労働行為と断じられることは避けられないであろう。
 ところが、同じ言動がJRと気脈を通じた政党や運輸省によってなされた場合にはその不当性が免罪されるというのであれば、それが労働組合の団結権保護を核心とする労働組合法の精神に著しく背馳することは明らかである。ましてや、自民党や運輸省は、「第三者」などではなく、JRとまったく同一の不当労働行為意思を有し、国労差別を行ってきた張本人なのである。
 したがって、これらの経過に照らしてみても、自民党と運輸省が不当労働行為責任を負うべきことは当然である。

 七 被申立人らによる臨時大会開催の強制というあからさまな支配介入によって、国労には深刻な亀裂がもたらされている。国労の団結権は被申立人らによって大きく侵害されたのである。
 また、申立人各人には、労働委員会や裁判その他の正当な争議手段を用いて不当労働行為からの救済を求める道が閉ざされかねない危険が迫っている。

 以上のように、被申立人らの不当労働行為は明白です。しかも救済命令の遅れは回復しがたい損害を生ずることも明らかですので、貴労働委員会におかれては、早急な救済命令を発せられますよう強く要望します。
          
                                    以上

(別紙)

 1987年の国鉄分割・民営化以来、国労組合員に精神的・肉体的苦痛を与え、不当労働行為による多大な人権侵害を行い、さらにはそれを黙認・放置してきたことを謝罪します。
 「一人も路頭に迷わせない」という約束を破って多くの国労組合員をJR不採用とし、この上ない苦難を強い、労働委員会命令をもないがしろにしてきたことは、被申立人らの責任を放棄する誤りでした。
 また、国労に対して再三にわたって「JRに法的責任がないことを認めろ」と迫り、四党合意を押し付けた被申立人の行為は、国労に支配介入し、国労組合員の権利回復の道を永遠に閉ざす不当労働行為であったのでここに謝罪します。

 国労組合員 ○○○○殿
                                        運輸省
                                        運輸大臣 森田一

 上記のほか、宛先と内容は同文で、自由民主党(総裁森喜朗)及び東日本旅客鉄道株式会社(代表取締役社長大塚陸毅)名義のもの各1。