ZENSHIN 2011/05/02(No2486 p10)
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週刊『前進』(2486号1面1)(2011/05/02 )
春季特別号紙面案内
6・5国鉄大集会の成功へ
大失業粉砕・全原発廃棄に総決起し連合打倒、労働運動の再生かちとれ 7-9面
エジプト革命と中東情勢 10面
尼崎事故弾劾、現場へデモ 2面
物販を持って階級の中へ 3面
現地救援対策本部の報告 4面
中央学生組織委のアピール 5面
高山俊吉弁護士は語る 6面
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週刊『前進』(2486号1面2)(2011/05/02 )
マル青労同の2011年メーデー・アピール
反失業・反原発の大闘争を
連合の産業復興運動を打ち破り労働運動の力で青年の未来開け
政府・東電・御用労組の大犯罪に断を
「この社会はいったい何なんだ。私たちと子どもたちのために原発はいらない」――4月10日、東京杉並区・高円寺で1万5千人が原発廃止のデモに立ち上がった。「原発とめよう。社会を変えよう」のスローガンこそこの資本主義社会に対する私たち青年労働者の回答だ。福島第一原発の爆発により日々、放射性物質がばらまかれ、青年が生きていけない状態が刻一刻と進行している。すでに08年リーマン・ショック時を超える雇い止め・解雇が始まっている。しかしあらゆる体制内勢力が原発をなくせとは言わない。震災解雇を許すなとは言わない。労働者の闘いの日であるメーデーを「産業復興集会」にすり替えようとしている。絶対に許せない。反原発・反失業メーデーを自分たちの手でつくりだそう! 東京電力に怒りのデモをたたきつけよう!
(写真 3月20日の渋谷反戦大デモを闘う青年労働者と全学連。被災地支援・全原発即時停止をアピール) 原発とめ社会変えよう
3月11日に東北・北関東を襲った大震災と津波は数万人の死者・行方不明者、数十万人の避難民という大惨事をもたらした。事態は日を追うごとに悪化している。いまだ東北地方は海から数キロ離れたところに船が乗り上げ、つぶれた車が数段にも積み上がったままだ。さらに震災直後から全国で雇い止め・解雇が始まり、仕事すらない状況になっている。
最大の問題は原発だ。福島第一原発事故はチェルノブイリ原発事故に匹敵する最悪のレベル7に引き上げられた。放射能汚染は拡大し、数万人が古里を追われた。土地も海も汚染され農漁民の生きる糧が奪われた。福島の子どもたちは外で遊ぶこともできない。茨城と千葉では母親の母乳から放射性物質が検出された。そして今もなお原発で働く非正規職の青年労働者は「限度量」を超える被曝(ひばく)で命の危険にさらされている。国家と資本の犯罪で、すべてが殺されようとしているのだ。
日本経団連会長の米倉は言い放った! 「日本の原発は津波によく耐えた。日本の原子力政策は胸を張っていい」「東電の技術力の高さ、モラルの高さは世界最高」だと。テレビでは連日、原発御用学者の「原発は安全」とのデマを垂れ流している。連合は世界へ向けたアピールで「健康に影響する強さの放射線は、発電所の近接地域を除いて、まったく検出されていない」とまで言ってのけた! 全部デタラメだ。こんなやつらに殺されてたまるか!
統一地方選挙でいったい誰が「今すぐ原発をなくせ」と訴えたのか。西村綾子(相模原市)、北島邦彦(東京都杉並区)、末光道正(八尾市)の筋金入りの革命家だ。他はせいぜい、「安全な原発ならいい」「安全点検をすればいい」「段階的に自然エネルギーへの転換を」とか言っただけだ。東京電力でも言える原発推進論ではないか。「原発をなくせ」ということが日本帝国主義打倒とイコールだから資本主義擁護のためにペテンを使っているだけなのだ。
しかし、もはや完全にはっきりした。原発なしでは成り立たない資本主義、新自由主義は完全に終わった。原発をすべて廃棄し、新たな社会システムを私たち自身の手でつくりだそう。核武装と金もうけのために原発政策にしがみつく菅政権や資本家たちにとってかわって、団結した労働者が社会の主人公となれば、それは絶対にできる。震災後や東電の「無」計画停電の中で、現場をまわし社会を動かしてきたのは、菅政権や日頃えらそうにしている経営者たちではなく、現場で働く私たち労働者ではないか。
「日本は強い、必ず甦(よみがえ)る」というプロパガンダは、3・11をもって支配者が完全に統治能力を失ったというギブアップ宣言だ。菅政権と財界は最後の悪あがきで「国難」をあおり、「政治休戦」「労使一体」「挙国一致」を叫んで、労働者人民の「生きさせろ」の決起を抑え込もうと躍起になっている。今こそ、被災地の労働者・農民・漁民の根底的怒りと一緒になって、デモやストライキをやりまくる時だ。5・1反原発・反失業メーデーはその出発点だ。
震災解雇・リストラをぶっとばそう!
反原発と反失業の闘いは完全に一体だ。日本のナショナルセンターである連合は大震災にあたって、政労使一体で「国難」をのりこえろと言い、春闘交渉を中断した。そのもとで何が起きているのか。雇い止め大量解雇だ。現に被災地では膨大な労働者の首が切られている。ハローワークで5時間待ちは当たり前、満員電車のような状況だ。福島原発事故関連で5万人が失職したといわれている。震災解雇100万人という情勢がもうそこまで来ているのだ。
菅政権は、資本家は救済するが労働者は救済しない。日銀が120兆円もの金を数週間でブルジョアジーにばらまく一方、全国で膨大な労働者の首を切っている。
経団連会長・米倉は、「業界や企業ごとの節電目標を4月中に取りまとめ、工場の操業を夜間や休日に移す」と言った。原発をとめても電力は十分あることがハッキリしたにもかかわらず、この状況を利用して休日労働や夜間労働を一挙に推し進め、労基法を解体しようとしているのだ。そして公務員労働者360万人解雇の道州制が一気に動き出そうとしている。日本郵便大リストラで、非常勤の雇い止め、一時金カットが強行されている。こうした攻撃に対して、今こそ「ふざけるな」と職場から怒りを爆発させよう。
そしてこの腐った社会を根本から変えよう。菅政権、大資本、連合や全労連などの体制内労組幹部が癒着し、私たち青年労働者を非正規職や被曝労働で犠牲にしながら暴利をむさぼっている。連合や全労連などの御用労働組合が労働者の決起を抑え込む役割を担っているのだ。この腐敗の鎖を断ち切ること、これが私たち青年労働者の「生きさせろ」の闘いだ。
どんなにうそで塗り固めようとも、今も放射能がまきちらされ、労働者が解雇され、私たちの未来が奪われようとしている現実は押し隠せない。この現実を突きつけられた私たち青年労働者は、自分の将来、未来について真剣に考え、そして行動を始めた。「原発とめよう。社会を変えよう」。これが私たち青年労働者の資本主義社会への回答である。
いざ5・15沖縄闘争へ
2011年、世界では何が起きていたのか。世界大恐慌下で、大失業と戦争という労働者階級とは相いれない事態が深刻に進んでいた。新自由主義政策というむき出しの競争原理で民営化、外注化、規制緩和が推進され、青年労働者は非正規職にたたきおとされてきた。職がない。その裏では一握りの大資本が青年労働者の生き血を吸って太っている。このデタラメな社会に「もういいかげんにしろ」と根底的怒りが爆発した。
チュニジア、エジプトで始まった革命は、今や北アフリカ、中東を覆い全世界に波及している。
この革命の中軸を担ったのは労働組合だ。御用組合の圧制の中で意識的組合活動家が不屈に労働者を組織していた。そして多くの青年労働者に宿る新自由主義と腐敗した政権に対する根底的な怒り。この怒りが昨年12月、チュニジアの一人の青年労働者の焼身抗議によって、ついに堰(せき)は切られた。エジプトのタハリール広場に集まった多くの青年労働者は「もうこんな腐りきった社会はごめんだ」と声を上げ、その行動を通して「やればできる」「闘えば勝てる」と肌身を通してつかんだ。だから各国帝国主義は震え上がった。今度は自分たちが打倒される番だと思った。リビアへの軍事介入の真の狙いは革命を圧殺することだ。国際連帯で、大恐慌・大震災を世界革命へ転化しよう。
国鉄軸に闘う労働組合を甦らせよう
日本においても、「もういいかげんにしろ」という怒りが東電、菅政権、御用学者、御用労組に対して爆発している。
日本の原発政策は日本の戦後革命期に世界で初めて停電ストに決起した電産という労働組合を解体し、電力労働者の団結を解体していくことで進められてきた。原発労働者の実態はその労働自体が被曝労働である。そして農閑期の農民や非正規職の青年労働者を原発は安全だと洗脳して働かせている。これを今の電力総連、電機連合が率先して推進しているのだ。こんなメチャクチャが許されていいはずがない。東電は、放射能にまみれた汚染水を海に垂れ流し、危険な作業は非正規労働者に押し付けて「今すぐに人体に影響するものではない」と言い放っている。これを東電労組は全部認めている。だが逆に電力労働者が団結すれば、原発を止め絶望的な事態を突破することもできるはずだ。
青年労働者の非正規化に対する怒りが社会の腐敗・不正に対する怒りとなって爆発している。国鉄分割・民営化に端を発する民営化・規制緩和によって圧倒的多数の青年労働者が非正規職あるいは失業を強制されてきた。御用労組幹部は会社がもうかれば労働者の生活もよくなるというが、現実は逆だ。会社の利益のために首を切られるのだ。3・11大震災で真っ先に非正規労働者は首を切られ、働く場もない。労働組合に入って団結し、解雇撤回で闘わなければ生きていくことさえできない情勢、それが大震災情勢なのだ。
国鉄1047名解雇撤回闘争の解体を狙った昨年の4・9政治和解の大反動に対して、国鉄闘争全国運動は解雇撤回を掲げて立ち向かってきた。新自由主義政策と、「闘っても勝てない」という体制内指導部の敗北主義を打ち破ってきた。それは動労千葉青年部再建の闘いとともに多くの青年労働者を獲得し、労働組合はいかに闘うべきかという展望を示している。その中で闘う青年部を甦らせようという青年労働者の主体的決起が始まっている。国鉄闘争を軸に闘う労働組合を甦らせよう。
資本救済ではなく怒りのメーデーを
連合はメーデーを大幅縮小、デモも中止した。5・15沖縄平和行進も本土の動員はなし、わずか2時間のデモに縮小された。被災地ボランティアのスローガンは「一人はみんなのために、みんなは日本のために」だ。被災地の労働者人民は救援の対象ですらない。1千兆円を超える借金まみれのこの国を助けようというのだ。震災解雇もやむなし、資本主義を救うためだから我慢しろということだ。
連合、全労連は今年のメーデーを「産業復興メーデー」だというが、こんなことが許せるか。
高円寺に集まった青年は1万5千人が自分と同じ思いであることを知った。デモを通して、一人の意思が集団的意思になり行動になった。いまや反原発と反失業は2千万青年労働者のスローガンであり、資本主義体制を根底からひっくり返す引き金になろうとしている。反原発・反失業5・1メーデーをともに闘い、輝ける青年の未来をともに切り開こう。5・15沖縄闘争―6・5国鉄大集会へ、青年労働者は総決起しよう。
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週刊『前進』(2486号1面3)(2011/05/02 )
統一地方選 社会変革訴え偉大な地平
杉並 北島候補「原発絶対反対」貫き
八尾 党派闘争制し末光候補が当選
(写真左 選挙戦最終日の23日夜、JR荻窪駅前で労働者にアピールする北島候補。闘う弁護士、高山俊吉さんが情熱を込めて応援演説)
(写真右 激しい選挙戦を闘い、最終日の23日、西郡市営住宅の住民に最後の訴えを行う末光候補。八尾北労組の総決起が全体をけん引)
4月24日投開票の統一地方選挙後半戦で、われわれは東西で偉大な前進をかちとった。
東京・杉並区議選では、相模原選挙闘争の地平を引き継ぎ、北島邦彦候補が「原発絶対反対」「原発を廃止して社会を根本から変えよう」と訴えて闘い抜き、1764人がともに闘う決断をし投票に決起した。54位(定数48)で当選には至らなかったが、3・11情勢下、被災地人民、青年労働者の怒りと結び付く巨大な階級決戦・政治決戦に首都東京で挑戦し重大な突破口を開いた。
一方、大阪府の八尾市議会議員選挙で末光道正候補は2065票を獲得し、堂々の再選をかちとった。部落解放同盟全国連西郡支部、八尾北命と健康を守る会、八尾北医療センター労組、関西労組交流センターを始め闘う仲間の渾身(こんしん)の決起の勝利だ。(関連記事2面)
杉並の選挙戦は、大恐慌下の3・11情勢の中で、真っ向から日本帝国主義、菅政権・東京電力・経団連・警視庁公安部・全体制内勢力と対決して闘い抜かれた。
全政治勢力が「国難」「救国」を叫んで、日帝国家と資本救済へ走った。これと根底的に対決して労働者階級の権力を訴えて闘い抜いた。北島邦彦候補はその最先頭で、新たな運動と組織への大衆的リーダーとして躍り出て、圧倒的に認知された。党と労働組合、闘う人民の団結が強力に拡大した。
八尾市議選の勝利は重大だ。世界大恐慌下の大震災、労働運動絶滅攻撃と激突して、新自由主義を打ち破り、もぎりとった勝利だ。
西郡支部は、解同本部派を打ち倒して新たな解放運動の拠点をつくり出そうと闘った。選挙戦の全体を支えたのは八尾北労組の総決起だ。地域の拠点労組として、解放運動を含む一切に責任をとる労働組合に飛躍し、これが新しい歴史を作り出す力だと確信を深めて前進した。このすべての力が勝利をもたらした。
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週刊『前進』(2486号1面4)(2011/05/02 )
前進速報版から
▼中国電力前制圧の一日行動▼広島で原発に怒る1500人がデモ▼北陸電力へ抗議行動▼「浜岡原発とめろ」静岡で800人がデモ
◎休刊中の最新ニュースは『前進』速報版に随時掲載します。
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週刊『前進』(2486号2面1)(2011/05/02 )
統一地方選 闘う団結と組織が前進
杉並 “社会変えよう”訴え
北島候補大いに奮闘
杉並区議選の最終日夕方、北島邦彦候補は、西荻窪駅北口と荻窪駅北口で相次いで最後の街頭宣伝を行い、渾身(こんしん)の訴えを行った。
「この杉並の中でこそ、原発絶対反対、原発を止めて新しい社会をつくろうの運動を開始しましょう。原発のない新しい社会とは、現場で働いている労働者が社会の生産と運営を団結した力でやっていく社会です」
原発廃棄の要求が社会の根本的変革であることを真っ向から鮮烈に提起した。この心意気に応えて、多くの応援弁士が北島候補への熱烈な支持を表明し、投票を訴えた。
憲法と人権の日弁連をめざす会の高山俊吉弁護士は、裁判所が原発にお墨付きを与えてきたことを弾劾し、「この国のあり方を根本から変えていく闘いに北島候補は立とうとしている」と支持を表明した。
沖縄民権の会の座覇光子さんは、「北島さんは私たちと一緒に闘ってきた信頼できる議員」と推薦した。法政大学の倉岡雅美さん、地域の青年労働者などが次々とマイクをとって支持を訴えた。
山田宏前区長らが他候補の応援に来ていたが、北島陣営の街頭宣伝は他を圧倒する怒りと正義性と迫力に満ちあふれ、午後8時まで多くの区民、労働者の注目の的になった。マイクを使えなくなった後も各駅で宣伝戦を展開した。最後まで鮮明な革命の訴えを「値引き」せずに貫き、闘いぬいた選挙戦だった。
北島候補は、自身のブログで選挙戦を総括して次のように言っている。「『当選するためにはどういう主張をするか』ではなく、『この社会情勢のなかで何を主張すべきか』ということを『原発絶対反対―この社会を変える』として貫徹したことに確信をもっています」「これまでも多くの労働者の仲間たちに支えられて選挙を闘ってきましたが、今回ほど選挙闘争においてその団結と集中性が強まったことはありませんでした。これからの階級的労働運動を実践していくうえで、これほど重要な成果はありません。結果は残念で悔しいものでしたが、しっかりと前を向いて前進していきます」
(写真 選挙戦最終日、労働者の心をとらえた北島候補の渾身の訴え【4月23日 荻窪駅前】)
青年とともに
杉並区議選・北島選挙は、3・11情勢下、首都東京における巨大な階級決戦に果敢に挑戦した。とりわけ4・10高円寺1万5千決起として始まった青年労働者の根源的な怒りと行動の中に全身投入した選挙戦となった。
3・11情勢のもと、まさに革命そのものが問われている。大恐慌をプロレタリア革命へ、の決定的な出発点をつくった。
第一に、「すべての原発をただちに止め、社会を変えよう」の根源的な怒りと革命のスローガンを貫いた。労働者階級の命と生活を守る死活的要求を、最後までいささかもぶれずに掲げぬいた。3・11直後から「自粛」「政治休戦」の中で唯一われわれだけが街頭に登場し、17日から団結署名を開始し、4月冒頭から3週間で反原発1千万署名を6千筆集めた。杉並区議選は東京で唯一、原発に対する態度を問う選挙になった。権力の異常な弾圧と、「原発はエネルギー政策として必要」という宣伝が日共スターリン主義や脱落諸派らをも使った北島落とし攻撃としてかけられたが、街頭・地域・職場から感動的な決起が次々とかちとられた。1764票の背後には数千数万の人生をかけた決断がある。
第二に、大恐慌下の大震災・原発事故と真っ向から闘う階級的労働運動を発展させる大きな出発点をつくった。青年労働者のほとんどが非正規であり、その怒りと結び付くため選挙をとことん利用した。北島候補はその最先頭で新たな運動と組織の大衆的リーダーとして圧倒的に認知された。「生まれて初めてこんな政治家を見た」と多くの新たな支持者を得た。
第三に、党と労働組合、闘う人民の団結が強力に拡大した。地区党の団結と決起はその中心を担った。東京西部ユニオンを始め闘う合同労組、労組交流センターの団結の無限の力を示した。
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週刊『前進』(2486号2面2)(2011/05/02 )
統一地方選 闘う団結と組織が前進
八尾 末光候補が堂々再選
労組の総決起が牽引
4月24日、八尾市議会議員選挙で末光道正候補は、2065票を獲得し、堂々の再選をかちとった。ともに激しい選挙戦を闘いぬいた部落解放同盟全国連合会西郡支部、八尾北命と健康を守る会、八尾北医療センター労組、関西労組交流センターを始め共闘の同志たちが夜遅くまで固唾(かたず)を飲んで開票を見守る中、開票所からの当確の報告に一気に喜びが爆発した。
本当にすごい勝利だ。世界大恐慌下の大震災、労働運動絶滅と激突して、新自由主義を打ち破りもぎり取った勝利だ。末光候補を結び目に、八尾北労組が土台となり、西郡支部、守る会、共闘の労働者・学生が固く団結しかちとった勝利だ。
4議席減で定数28人に33人が立候補し、泡沫(ほうまつ)候補は一人もいなかった。全勢力が末光落としで結束し、これとの大党派闘争の選挙であった。最低得票が1528票という少数激戦の中で、末光陣営が闘う拠点を持つ力ある革命派として登場して勝利できたことが決定的だ。
革共同関西地方委員会と地区委員会は「大恐慌を革命へ! 大震災を革命へ!」と徹底して国鉄全国運動の路線を貫き絶対反対で団結して闘いぬいた。そして2065票を組織し末光再選をもぎり取ったことは、真に価値ある勝利である。
この勝利は、党の路線を貫く拠点建設の死活性、勝利性を鮮明にさせている。
部落解放同盟本部派を打ち倒しムラの権力を取り、新たな解放運動の拠点をつくり出そうと闘い、青年部は最終日には雨の中でスポット演説に決起、候補者と一体になって「この選挙でムラを変えよう」と訴えた。本部派議員を必死の言い訳に追い込み、最後の練り歩きでは激突情勢をつくり出した。このうねりが診療圏全体にも波及し、守る会の闘いが大きく動き出した。
こうした選挙戦の全体を支え牽引(けんいん)したのは八尾北医療センター労組の総決起である。地域の拠点労組として、部落解放運動を含む一切に責任を取る労働組合に飛躍し、これが新しい歴史をつくり出す力だと確信を深めて前進した。
これらの闘いの一切合切が2065票の末光支持へと結晶したのだ。末光議員の再選に大打撃を受けているのは民主党・菅政権であり、田中市長、日本共産党、解同本部派だ。
今こそ一切を6・5国鉄闘争全国運動大集会の成功に向かって総決起しよう。
(写真 開票所からの「当確」の報告を受けて、八尾北医療センターに詰めかけた多くの支援者に勝利宣言を行う末光道正市議【4月24日 大阪・八尾市】)
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週刊『前進』(2486号2面3)(2011/05/02 )
尼崎事故弾劾! JR体制打倒!
350人が事故現場へデモ
吹き荒れる風雨を突き破り、4月23日、JR尼崎駅北口広場に全国から350人の労働者・学生が結集し、尼崎事故弾劾の現地闘争が闘われた。
05年4月25日のJR西日本・尼崎事故から6年の今年の闘争は、動労千葉と国鉄闘争全国運動・関西準備会の呼びかけで開かれ、大震災情勢に立ち向かう新たな国鉄決戦を宣言する集会となった。7波のストライキで2年連続、外注化を阻止した動労千葉の闘いを受け継ぎ、JR体制を打倒し、国鉄分割・民営化との闘いに決着をつける新たな出発点を築いた。
田中康宏動労千葉委員長が主催者としてあいさつし、「尼崎事故も福島第一原発事故も民営化が引き起こした。24年前の国鉄分割・民営化に絶対にこだわって闘い続ける決意を新たにしよう」 「労働組合が闘わなければいけない時に闘わなかった結果が尼崎事故、福島原発事故だ。これに対する回答は、闘う労働組合を絶対によみがえらせるという一点に尽きる」「全国で数百万の労働者が解雇され、大失業時代が到来している。資本と政府と官僚、御用学者、マスコミが一緒になって原発は安全だとうそをついてきた支配の構造に対しても、闘いを準備しなければならない。今日を出発点に、本物の労働組合をつくり出そう」と力を込めて訴えた。
全日建運輸連帯労組関西地区生コン支部の武谷新吾執行委員が、「今春闘は、昨年のストライキに対するゼネコンの巻き返しを跳ね返し、大きな成果をかちとった。闘いなくして成果なし、闘いをやめなければ必ず勝つ。国鉄闘争も今がチャンスだ。闘う労組の全国ネットがさらに広がっている。原発問題と国鉄闘争を今年中に解決するという勢いで、ともに闘っていきたい」と連帯のあいさつを行った。
基調報告に立った国労近畿地本兵庫保線分会の富田益行さんは、「尼崎事故も大津波災害も原発事故もすべて国家と資本の犯罪だ!」と弾劾し、「事故責任を高見運転士に押しつけ、分割・民営化の矛盾を青年労働者に押しつけるJR体制に反合理化・運転保安闘争で反撃し、青年労働者の決起をつくり出そう」と闘いの方針を打ち出した。
被災地から国労郡山工場支部の橋本光一さんが発言し、「福島では今この時も災害が拡大している。この社会を打ち倒して新しい社会をつくるしかない。安全無視のJR外注化を阻止し、日本中の全原発の廃止・廃炉を目指して闘っていく」と鮮明な闘う決意を明らかにした。
続いて国鉄労働者が次々と登壇。動労千葉争議団の高石正博さん、国労秋田闘争団の小玉忠憲さん、国労小倉闘争団の羽廣憲さんが発言し、羽廣さんは「国労を闘う組合に変え、分割・民営化に決着をつけてJR体制を打倒する」と断言した。さらに、動労水戸、動労西日本、国労米子、国労新潟、国労東京の労働者が、青年労働者を組織し労働運動をつくり変える決意を明らかにした。
特に国労米子・後藤車両所分会の鷲見貢さんは、4月7日に後藤車両所で起きた1人の労働者がクレーンにはさまれ圧死した労災事故を徹底的に弾劾、「『事故と弁当は自分持ち』などということは絶対に許さない」と戦闘宣言を発した。
動労西日本の山田和広副委員長のカンパアピール、八尾北医療センター労組の藤木好枝委員長、ス労自主の上村敏行執行委員、そして地元兵庫の自治体労働者が次々と決意表明。青年労働者を代表して大阪市職の赤田由行さん、学生からは冨山小太郎さんが熱く闘いの決意を語った。
集会のまとめを提起した全国金属機械・港合同の中村吉政副委員長は、「困難な中で闘い続ける国鉄、動労千葉の闘いがある限り、私たちは必ず勝利する。昨年4月に一定の結論を出した闘争団は、この3月、雇用の行動を中断した。闘いは運動があってこそ成果が上がる。今こそ自分たちの足元、職場、地域から労働組合の旗を掲げ、原発反対、JRに謝罪させる闘いを展開しよう。関西からも6月5日の集会に多数の参加をかちとり、1047名解雇撤回の運動を大きくつくりあげよう。今すぐ原発を止める闘い、被災地労働者と連帯する闘いを必ずや勝利させよう」と訴えた。
直ちに国鉄労働者を先頭にデモに打って出た。激しく降り続く雨を突き破り、デモ隊は尼崎事故の現場に向けて意気高くデモをやり抜いた。
3・11大震災情勢下で闘われた今年の尼崎闘争は、国鉄闘争全国運動6・5大集会の歴史的成功に向かう決定的な出発点となった。
(写真上 動労千葉ら闘う国鉄労働者を先頭に尼崎事故の事故現場横を進むデモ。事故を居直るJR資本と電力資本への怒りのシュプレヒコールがとどろいた【4月23日 尼崎市】)
(写真下 大震災情勢下の新たな国鉄闘争を切り開く決意に燃え、激しい雨の中を350人が結集【4月23日 尼崎駅北口広場】)
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週刊『前進』(2486号2面4)(2011/05/02 )
“被告代理人は東電の手先”
鉄道運輸機構訴訟 小玉さんが意見陳述
4月26日、国労秋田闘争団の小玉忠憲さんを原告とする鉄道運輸機構訴訟の控訴審再開第3回口頭弁論が東京高裁第14民事部(設楽隆一裁判長)で開かれ、裁判長の交代に伴う弁論更新手続きと、原告代理人弁護士による弁論が行われた。
この日は早朝から、闘う国鉄労働者らが東京高裁前を制圧し、裁判への結集と1047名解雇撤回を訴えるビラまき行動を貫徹した。傍聴には国労郡山工場支部の組合員も駆けつけ、被災地の労働者と固く連帯する闘いとして闘いぬかれた。
昨年の4・9政治和解を拒否し、国鉄1047名解雇撤回をあくまで貫く小玉さんの闘いは、東日本大震災を機に一挙に深まった大失業情勢と対決する決定な位置にある。法廷を圧した小玉さんと代理人団の闘いは、そのことをあらためて浮き彫りにした。
小玉さんは、国鉄分割・民営化に際し、「6カ月以上または2回以上の停職処分を受けた者はJR採用候補者名簿に登載しない」という不採用基準によって、JR採用を拒まれた。この基準は、「国鉄分割・民営化に反対した国労組合員は採用するな」と叫ぶ旧動労カクマル松崎一派の反動的突き上げを受けて、国鉄が急きょ設定したものだ。それにより小玉さんは、当初はJR採用候補者名簿に登載されていたにもかかわらず、名簿から削除され、JR不採用とされたのだ。
更新意見の陳述に立った小玉さんは、不採用基準を「正当なもの」と言い張る被告・鉄運機構を徹底的に弾劾し、「これを国家的不当労働行為と言わずに何が不当労働行為になるのか」と声を強めた。また、不採用の理由とされた停職処分自体が不当であり無効であることを強調した。
小玉さんはさらに、原発をめぐる数多くの訴訟で、「原発に危険性はない」という反動判決を繰り返してきた裁判所を怒りを込めて弾劾した。そして、鉄運機構の代理人である西、向井、富田の各弁護士が、福島第二原発の運転差し止めを求める訴訟などで東京電力の代理人となっていた事実を指摘し、「原発を推進した責任者を一人残らず監獄にぶち込まなければならない」と断言した。
西、向井、富田弁護士は、JR東日本の代理人でもあり、国鉄分割・民営化以来のJRの数限りない不当労働行為をことごとく居直り、JRに不当労働行為を指南してきた張本人だ。JRと東電という2大極悪企業の手先を努める被告代理人に舌鋒(ぜっぽう)鋭く詰め寄る小玉さんの陳述に、被告代理人は日頃の尊大な態度も失って、顔を引きつらせた。
続いて原告の代理人が更新意見を陳述し、東日本大震災と福島原発事故は新自由主義による犯罪だと断定、原発推進に加担してきた裁判所を徹底的に弾劾した。そして、この新自由主義の攻撃が、国鉄分割・民営化を原点とすることを徹底的に突き出した。
さらに原告代理人は、小玉さんの停職処分の無効と国鉄改革法の違憲・違法性、小玉さんを排除した不採用基準の違法・不当性を全面的に明らかにする弁論を展開した。
これに対して鉄運機構は、「停職処分を受けた者はJRにふさわしくないから名簿不登載とされて当然」という従来の主張を繰り返した。法廷は怒りの声に包まれた。
和解を拒否した国労闘争団の裁判は、動労千葉争議団の訴訟と並び、とことん階級性を貫いて闘われている。国鉄闘争全国運動の6・5集会に結集し、震災情勢下の大失業攻撃と立ち向かおう。
(写真 東京高裁前を制圧し、1047名解雇撤回を訴える国鉄労働者ら。署名も続々と集まった【4月26日】)
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週刊『前進』(2486号3面1)(2011/05/02 )
物販を持って階級の中に 6・5国鉄集会へ大結集を
1047名解雇撤回−反失業大闘争を全国でまきおこそう
3・11大震災をもって階級情勢は完全に一変した。労働者階級の意識には巨大な化学変化がおこっている。国鉄闘争全国運動を軸に、今こそ大胆に、大胆に労働者階級の中に飛び込む時だ。その最大最強の武器は夏季物販だ。”国鉄1047名解雇撤回―震災解雇粉砕”の大闘争を巻き起こし、国鉄闘争全国運動6・5大集会の大結集・大成功へと突き進もう!
(写真 動労千葉は11春闘を総力で闘い、昨年に続いて検修全面外注化を阻止する決定的勝利をかちとった。写真は2・1〜2ストでの千葉運転区抗議行動)
階級意識の巨大な転換が起きている
大震災は新自由主義の破綻を決定的に突き出した。大震災の甚大な被害の一切は、支配階級による地方切り捨て、安全切り捨てが引き起こしたものだ。”今まで正しいと思ってきたことが実は間違っていた”と誰もが気づき始めている。既成の価値観はもはや通用しない。「他者をけ落として自分だけ生き残る」という新自由主義の弱肉強食の論理は吹き飛んだ。
あの大震災の日、そしてそれ以降、多くの労働者が自らを危険にさらして仲間を守るため、他人を助けるために必死で行動し、今も行動し続けている。あらゆる労働者が被災地の顔も知らない仲間を助けるために何らかの行動を起こしている。
”仲間のために何かせずにはいられない”――労働者とは本来そういう存在だ。新自由主義の支配が破綻した瞬間、「一人は万人のために。万人は一人のために」という労働者の階級的本能が噴き出している。
今や誰も政府を、資本を、現体制を信じていない。4月12日の福島第一原発事故「レベル7宣言」はそれにトドメを刺すものとなった。すべての労働者が今までと違う価値観でものを考え始めている。
それはまだ革命的行動にはいたっていない。しかし、確実に労働者階級の意識には革命的化学変化が巨大な勢いで起こっている。問われているのはわれわれの側の意識転換だ。
こうした時代の転換期には、「あらかじめ」正しい方針など存在しない。まず階級の中に飛び込んで行動することだ。方針の是非が重要なのではない。間違ったら反省すればいいだけだ。
重要なのは労働者階級自身が、自ら考え、判断し、行動し、失敗し(あるいは成功し)、みずから総括し学んで次の一歩を踏み出していくことだ。これは動労千葉労働運動の神髄でもある。
ここでの党の任務は何か。故中野洋動労千葉前委員長は言っている。「党とは最も困難な局面において、最も困難な部署で、最も困難な任務を、最も献身的に闘い抜く者のことだ」と。そして労働者と寝食をともにし、喜怒哀楽をともにして闘い抜いた時、初めて階級は「こいつをおれたちの指導部として育ててやろう」と考える。
国鉄闘争全国運動とはそういう運動だ。昨年の激しい攻防を通して全国運動という基軸を確立したことは決定的だ。このヘゲモニーをけっして手放すことなく、今こそ母なる階級の海へ飛び込もう。物販は最強の武器となり、道を指し示す羅針盤となる。
労働者階級の共同体として労働組合を再生することが本当に可能な情勢が到来している。動労千葉夏季物販、国労原告団物販を基軸に据えて、国鉄闘争全国運動6・5大集会への圧倒的結集を闘い取ろう。
検修全面外注化を2年連続で止めた
動労千葉は今春闘で、検修・構内業務の全面外注化阻止、人事・賃金制度改悪阻止、新小岩派出廃止粉砕、ライフサイクル強制配転反対のストライキを闘い抜いた。そして、昨年に続いて検修・構内業務全面外注化の強行を阻止した。
東労組は3月ギリギリまでJR東日本との外注化裏切り妥結に向けて動いた。にもかかわらず、2年連続で全面外注化を阻止したという事実は、新自由主義の外注化がいかに破綻しているかをあらためて証明している。
外注化は労働組合が反対すれば絶対に阻止できる。今社会で進行している業務外注化は、すべて労働組合の協力によって初めて可能になっている。労働組合が問われているのだ。
国鉄1047名解雇撤回闘争をめぐる昨年4月9日の政治解決は「@国家的不当労働行為を不問にする。A自由な解雇の解禁。B資本には解雇の社会的・法的責任はない」というものだ。
1047名闘争をつぶすことで、解雇と闘う戦後的な労働運動を解体することがその狙いだ。
すでに国労本部は、国労解散―連合合流に向けて完全にかじを切っている。これと同時平行で、社会保険庁民営化と大量解雇、日航の指名解雇が強行されたのだ。
こうした中で連合は、震災による「政治休戦」をうたい、メーデーすら自粛しようとしている。4者4団体は「大災害の現状を考慮し雇用問題の政治への取り組みを当面中断します」という声明を出すにいたっている。
目の前で、大震災によって大量解雇が強行されている。今雇用問題を取り組まなくていつ取り組むのだ。今こそ労働組合の出番ではないのか。
動労千葉は3月15日「声明」を発し、東日本大震災救援対策本部を設置するとともに、仙台市役所・動労千葉を支援する会の仲間を先頭に現地対策本部をも立ち上げ、被災地の仲間の支援に乗り出している。
労働相談を先頭に実践に飛び込もう
連日のように大震災に便乗した数百人規模での自宅待機や解雇が強行されている。震災解雇は被災地にとどまらず、関東全域から全国にまで巨大な規模で広がっている。”震災解雇を絶対に許すな! 1047名解雇撤回”の反失業大闘争を国鉄闘争全国運動を基軸に巻き起こそう。被災地での労働相談を先頭に、全国で労働相談という実践に飛び込もう。
現情勢下での労働相談は、今までの労働相談とは根本的に次元の違うものになることは間違いない。1047名解雇撤回闘争と労働者の怒りが結びつき、数万人、数十万人の規模での反失業大闘争に必ず発展する。
同時にそれは、4大産別(国鉄、全逓、自治体、教労)と医療・福祉における攻守逆転の大チャンスでもある。道州制攻撃による自治体業務の民営化・外注化、要員削減と非正規職化が、震災の被害を悲惨なまでに拡大したことは明らかだ。今の自治体には、大規模災害に対応できる体制も人員も存在しない。それは他の4大産別でも同じだ。
被災地の医療・福祉職場では、今も物資と人員不足の中で、本来なら助けられる命が次々と失われている。道州制による地方切り捨て、そして民営化による外注化、非正規化が、3万人にも及ぶ人々の命を奪ったのだ!医療改革が助かる命を奪っているのだ! お前たちのやってきたことは全部間違いだ! 要員をよこせ! すべての非正規職員・臨時職員を正規職にしろ! すべてを民営化前に戻せ!
ある給食調理員は「学校給食が廃止されなければ、各学校の調理場で被災者数百人分の食事なんて簡単に作れるんだ」と言った。ある水道労働者は「複数系統を持つかつての水道なら、こんな簡単に断水になんかならないんだ」と述べている。ある自治体労働者は「東京の自治体の倉庫には災害用物資が山のように眠っている」と語っている。
現場のことは現場が一番知っているのだ。どのような合理化が、どのような被害を引き起こしたのかを徹底的に究明し暴露し抜こう。そして、要員要求を軸に、とことん具体的な要求案を練り上げてたたきつけよう。あらゆる要求闘争が、今なら圧倒的な正義性をもって全職場労働者から支持され、当局を追い詰めることができる状況にある。問題はそれを力強く要求し闘う労働組合の復権だ。
物販闘争を基軸に労働組合の再生を
菅民主党政権は、福島第一原発で命がけで対応に当たっている現場労働者の被曝限度量を事故直後に引き上げた。これは政府、電力資本そして労働組合の、絶対に許されない犯罪行為だ。労働組合が屈服する時、ここまで労働者の命が切り捨てられていく。
かつて電産(日本電気産業労働組合)は組織人員13万人を数え、戦後革命期の闘いの中心を担い、47年2・1ゼネスト敗北後も日本労働運動を強力に牽引(けんいん)し抜いた。しかし、電力9分割―電産解体攻撃によって第2組合である電力労連に吸収されていく。それでも電産中国地本は1千人ほどの少数組合になりながらも電産の旗を守り抜き、「反原発」を掲げて豊北原発の建設計画を阻止する画期的な勝利を闘い取った。闘う労働組合が存在すれば、原発建設を阻止することも可能なのだ。
80年代の中曽根政権下で、国鉄分割・民営化と労働者派遣法制定が強行されたが、実は原子力政策の大転換も同時に強行された。中曽根は土建族を牛耳る田中派に対抗し、電力資本や原子力関連資本と手を組み、天文学的な利益を生み出す原子力発電所を次々と建設することで中曽根派の地盤を固めていった。
福島第一原発の事故は、電産が解体され、国鉄分割・民営化が強行され、総評が解体されて労働組合が連合化して闘わなくなった結果として起こった。原発問題は労働組合の問題なのだ。
国鉄闘争全国運動を基軸に、闘う労働組合を再生しよう。全国運動の柱は物販闘争だ。
分割・民営化−総評解体攻撃に対して、動労千葉だけがストライキで闘い、1047名解雇撤回闘争を生み出した。そして、日本の労働者階級は、くびをかけてストライキを闘った動労千葉をけっして見捨てることなく動労千葉の物資販売の訴えに応えてきた。
それは、全国の労働者の支援によって動労千葉の団結が守られたというだけではない。連合が結成され総評が解散するという中で、日本の労働者階級の団結は解体の危機に直面していた。しかし、物販を通して1047名闘争を支援することで、労働者階級自身も自らの団結を守ってきたのだ。
1047名解雇撤回闘争とは、物販闘争を通して労働組合の団結を再生していく闘いだ。職場の支援する会は、その団結の核となる。支援する会を結集軸に1047名闘争を支援する労働組合を、党派や思想に関係なく、幅広く結集するのが各地区の全国運動だ。それはかつての地区労の役割を担うものとなる。
大震災と原発事故によって労働者階級の意識は大きく転換しつつある。動労千葉夏季物販、国労原告団物販を持って階級の中に飛び込み、今こそ労働組合の階級的再生を実現しよう。6・5国鉄集会の大結集を闘いとり、”震災解雇許すな! 1047名解雇撤回!”の反失業大闘争を巻き起こそう。
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週刊『前進』(2486号3面2)(2011/05/02 )
5・20三里塚現闘本部裁判へ
高裁の反動判決絶対許さず全人民の砦=現闘本部守ろう
東京高裁・井上繁規裁判長(民事第15部)は5月20日に天神峰現闘本部裁判控訴審の判決を強行しようとしている。井上裁判長は2月4日、石橋恵美子証人ら重要証人の取り調べや建物の現場検証も行わないまま問答無用に結審を強行した。井上裁判長が三里塚闘争の象徴であり、全人民の闘いの砦である現闘本部を撤去・破壊する反動判決を狙っていることは間違いない。怒りの総決起で東京高裁を包囲し、反動判決を絶対に粉砕する闘いに立とう!
(写真 2月4日の裁判前に、反対同盟の北原鉱治事務局長を先頭に東京高裁を包囲するデモに決起)
被災地・反原発の怒りと結合し
世界大恐慌の激化と新自由主義政策の破綻が深まる中、3・11東日本大震災と福島第一原発の大爆発事故は日本の階級情勢を一変させ、全世界をも激しく揺り動かしている。とりわけ福島原発事故は日本の労働者人民のみならず、世界の労働者人民を襲い、高濃度の放射性物質を今も海と大気中に放出し続け、日々深刻の度を増している。
大震災で3万人近くの人々が死亡・行方不明となっており、そのうえ放射能事故によって数十万の人々が避難を余儀なくされている。立ち入り禁止20`圏内を始め人々は住み慣れた地を追われ、戻るあてのない避難生活を強いられている。被災した福島の農民は「われわれ農民・農業者になんの落ち度があったのでしょうか。原発とわれわれは絶対に共存できません」と怒りをあらわにして毎日牛乳を捨ててきた。人間の力では原子炉・放射能は制御不可能だ。これは国家と資本による犯罪であり、最末期帝国主義・新自由主義の腐敗の極致だ。原発なしに成り立たない帝国主義など打倒あるのみだ。
3・11の人災は、利益最優先の新自由主義政策のもと大量の労働者の首切りや農業・漁業、地方の切り捨てによってもたらされたものだ。
「国策」を掲げて農民を追い出し、農地を強奪してきた成田空港建設や、今また「国益」を叫んで農業壊滅に突き進もうとしているTPP(環太平洋パートナーシップ協定)と根本の構造は同じだ。被災地の労働者人民、農漁民は怒りを煮えたぎらせている。
裁判所=高裁は原発推進の先兵
原発の安全神話は崩壊した。原発の利権構造の中に行政やマスコミ、学者連中を莫大な金で絡め取って原発を推進してきた歴代自民党政権と民主党政権、日帝支配階級、東電を始めとする電力資本の犯罪は万死に値する。多くの裁判で「安全だ」「クリーンだ」と原発推進の先兵となってきた裁判所も同罪だ!
その裁判所=東京高裁が5月20日、国家の理不尽な暴挙と非妥協で闘ってきた三里塚闘争の象徴である天神峰現地闘争本部をめぐる控訴審で、国家意思をむき出しにした仮執行宣言付き反動判決を策動しているのだ。
東京高裁が国交省・成田空港会社(NAA)の先兵となって反動判決を出すようなことがあれば、われわれは絶対に容赦しない。原発容認・推進によって世界を放射能の恐怖に陥れている裁判所が、今また同じように国策の手先となって農地を奪い、農民を追い出すために反動判決を強行することをどうして許せるか。今こそ全人民の激しい怒りの炎を東京高裁・井上裁判長にたたきつけてやろう。被災地人民の怒りを共有し、全原発の即時停止・廃炉に向けた闘いと一体で5・20現闘本部控訴審の反動判決阻止闘争に決起しよう。
「仮執行付判決」狙う井上裁判長
5・20現闘本部裁判控訴審判決闘争は、すでに重大な決戦に入っている。最大の攻防は、何よりも井上裁判長に反動判決を出させないこと、とりわけ「仮執行宣言」を粉砕することだ。東京高裁・井上裁判長は、控訴審において1人の証人調べもせず、わずか3回の弁論で結審を強行した。階級意思むき出しの強権的訴訟指揮だ。
天神峰現闘本部の敷地は百パーセント、反対同盟に地上権と賃借権がある。1966年12月、反対同盟は同盟員の資材・労力提供によって天神峰現闘本部を建てた。この木造建物の建物登記も行った。石橋政次元副委員長は、戦列を離れて移転する際に「現闘本部敷地については反対同盟で自由に使ってもらって構わない」という念書を残した。自宅と敷地を空港公団(当時)に売り渡す際にも現闘本部敷地20坪だけは分筆して売らず反対同盟のために残した。さらに、反対同盟は一貫して地代を払い続け、その領収証も証拠として存在している。あらゆる点から現闘本部に関する反対同盟の地上権、賃借権は成立している。
しかし一審でNAAは、それらを否定するために自らに都合のいいようにうそで塗り固めた「石橋恵美子陳述書」を提出、千葉地裁・仲戸川隆人裁判長が反対尋問権を奪ったままで証拠採用した。反対尋問を経ない「陳述書」など、最高裁判例によっても証拠価値はまったく無い。
井上裁判長は、反対同盟の「証拠・証人調べの実現」という正当な要求を一顧だにせずに結審を強行した。反動判決を出そうとしていることは間違いない。特に最重要の証人である石橋恵美子氏の喚問を拒否したことは絶対に許されない。
井上裁判長は、さらに「仮執行宣言」を付けようと狙っている。NAAは途中で「附帯控訴状」を提出し裁判長に「仮執行宣言付き判決」を求めた。井上裁判長がこれに対して第2回弁論でNAAの意見を求めていることからも明らかだ。仮執行宣言付き判決が強行されれば法的にはいつでも現闘本部を撤去・破壊することが可能となる。現地は一挙に激突情勢となる。なんとしても「仮執行宣言」を粉砕しようではないか。
反対同盟を守り抜き空港廃港へ
現闘本部は反対同盟と三里塚闘争のかけがえのない拠点でありシンボルだ。反対同盟は「死守する」と宣言している。全国労農学人民の全身全霊を傾け、東京高裁・霞が関を揺るがす大街宣闘争をやりぬこう。5・20までの残る期間を”現闘本部裁判決戦”として総力で闘おう。45年にわたる反対同盟の圧倒的正義性と怒りで5・20高裁包囲デモに総決起しよう。
5・20反動判決攻撃は反対同盟が45年にわたる農地死守・空港絶対反対の闘いで、成田空港の完成・国策をいまだ阻止し続けていることへの恐怖と大反動だ。
昨年の羽田空港国際化で成田空港の地盤沈下が激しく進み、NAAは危機感を深めている。
追い詰められて焦る国交省・NAAは、市東孝雄さんの農地強奪と、天神峰現闘本部の破壊・撤去を企んでいる。さらに市東さん追い出しを狙って無駄な3本目の誘導路建設を行っている。
反対同盟をつぶさない限り空港完成はない。日帝は、三里塚闘争が日本と世界の巨万の労働者人民の闘いと合流することを恐れている。朝鮮侵略戦争を契機とした世界戦争突入情勢下で軍事空港=成田の完成は日帝にとって緊急の課題だ。だからこそ日帝国家権力は三里塚闘争つぶしに必死となり5・20反動判決を策動しているのだ。
今こそ、どんな攻撃をも粉砕して闘う三里塚闘争45年の底力を見せつけてやろうではないか。国鉄闘争全国運動を軸とした被災地支援・反原発の闘いと一体で、反戦反権力の砦=三里塚闘争の勝利、成田空港廃港に向け5・20高裁大包囲闘争に全国から総決起しよう。
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週刊『前進』(2486号3面3)(2011/05/02 )
三里塚裁判日程
5・20現闘本部裁判控訴審
▽東京高裁包囲デモ 5月20日(金)午前11時半
日比谷公園霞門集合
▽傍聴闘争
午後1時高裁前集合、午後2時から裁判
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市東さん行政訴訟
5月24日(火)午前10時30分 千葉地裁
市東さん農地法裁判
5月24日(火)午前11時10分 千葉地裁
※傍聴券抽選のため9時30分に集合を。
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週刊『前進』(2486号4面1)(2011/05/02 )
原発とめろ!震災解雇を許すな!
闘う労働組合をよみがえらせ菅政権と資本家を打倒しよう
労働者が権力を取る時がきた
東日本大震災現地救援対策本部
はじめに
全国の仲間たち!
3・11大震災・原発大事故から1カ月半。被災地においてわれわれは「ただちに原発とめろ! 震災解雇を許すな!」を掲げ、日帝・菅政権と対決し闘う労働運動を打ち立てる闘いを開始した。
「すべての原発の即時停止・廃止」を求める1千万人署名運動は、被災現地の労働者・農民・漁民の根底的怒りと結合して爆発的に進み出した。福島労組交流センターの仲間はその先陣を切った。東北大学全学学生自治会の仲間は東北電力に対する抗議行動に立ち上がった。執行委員会決定で署名運動に取り組む労組が登場した。
東日本大震災現地救援対策本部に結集する仲間は、津波の直撃を受け職場を丸ごと失った組合員を訪ね、安否を確認し、動労千葉が全国の仲間に呼びかけ届けられた救援物資を持って、被災した組合員を支援し始めた。みやぎ連帯ユニオンの仲間は震災解雇に対する解雇撤回闘争を開始した。これら一つひとつが震災情勢下で労働運動を一掃しようとする資本・当局との闘い、体制内労働運動幹部との闘いとして前進している。
闘う労働組合をよみがえらせ、資本家と菅政権を打倒し、労働者階級が権力を取るときが来た。われわれは連合のメーデー中止を打ち破り被災地で5・1メーデーを闘いとる。被災地において国鉄闘争全国運動の本格的発展をかちとり、6・5全国集会に総決起する決意だ。被災地から報告と決意を送る。
(写真 「すべての原発をただちに止めよう」の訴えに続々と署名に応じる仙台の人びと【4月17日】)
資本と国家の階級的大罪を許さない
われわれは、3万人もの犠牲者と数十万人の避難民を生み出した資本と国家の階級的犯罪を絶対に許さない! 20bの津波で壊滅させられた町も、放射能汚染で壊滅させられようとしている農地や海も、最末期の資本主義、新自由主義が人間と自然との関係を根底的に破壊している現実を示している。
3・11以降、日帝・菅政権がやってきたことはいったい何か! 最初から救援を放棄し、被災地の労働者人民を見殺しにした。原発事故で大混乱したうえ、自衛隊10万人動員のために高速道路と幹線道路を封鎖し、ボランティアと救援物資を拒絶し、数万人を孤立状態にたたき込んだ。陸前高田市では唯一の連絡手段である衛星電話が失われ、「自治体から要請がない」からと支援物資は数日間も届けられなかった。「平成の大合併」で広域都市となった石巻市、とりわけ津波で全戸が壊滅した旧雄勝町地区では、10日間も支援物資が届かなかった。
その間にどれほどの命が奪われたか! 3万人もの命が一瞬にして失われたわけではない。津波で生き残った人びとが氷点下の雪の中で飢えと寒さと闘っているとき、菅政権とブルジョアジーは水・食糧・燃料のライフラインを断ち切ったのだ!
石巻市では、避難所で三食を確保できるようになるまで1カ月かかった。仙台市ですら、避難所に指定された学校での非常食の備蓄は1日乾パン1個、水の配給は霧吹きで行った避難所が出るほどわずかだった。おかずが支給されるのは1日1回だけという避難所がいまだに1割以上ある。そして避難所で数百人のお年寄りが栄養不足と感染症で亡くなった。これが地方を徹底的に切り捨ててきた新自由主義がつくり出した現実だ。
自衛隊・米軍の遺体捜索の「共同作戦」とは、この国家による虐殺を覆い隠し、有事体制によって労働者人民の怒りを圧殺しようとするものだ。
そして「チリ地震を想定していた」津波対策のペテン性が次々と明らかになっている。仙台市・蒲生、荒浜地区では「津波ハザードマップ」のデタラメさが問題とされ、指定避難所を、津波が来る沿岸部の小学校から高さ6bの東部道路に変更する署名運動まで起きていた。しかし市当局はこれを拒否していたのだ。1千人もの遺体が収容された名取市閖上(ゆりあげ)地区では、「りんかいニュータウン」と称して海岸線ぎりぎりに住宅地が造成されていた。
これほどデタラメな津波対策が通用していたのは何ゆえか? 一切は地方切り捨てのせいであり原発建設のためだ。冷却水として大量の海水を必要とする原発は、28bの津波を想定していたら建設できない。原発建設を最優先した新自由主義の国策が3万人の犠牲者を生んだのだ。
反原発闘争を圧殺し続けてきた連合
福島第一原発事故では3月12日から16日の炉心溶融と水素爆発で大量の放射性物質をぶちまけておきながら事実を隠蔽(いんぺい)し、デタラメな避難勧告を繰り返し、数十万人の労働者・農民・漁民の生活を破壊してきた。福島県は乳牛1万千頭、肉牛7万8千頭、豚20万頭を飼育する酪農王国だ。多くの農民・漁民は帝国主義の農業・漁業切り捨て政策から自然と農地を守り、豊かな海を守り抜いてぎりぎりの営農・漁業を続けてきた。原発事故はこれらすべてをぶち壊した。
被災地では日々、放射線によって水も土地も農作物も汚染され、膨大な家畜が殺され、農業・漁業が壊滅させられようとしている。福島原発から30`圏内では4800事業所・6万人の労働者が失業し、沿岸部をはじめ数十万人の労働者への解雇攻撃が始まった。大震災も原発事故も大失業問題そのものだ。
文科省は、内部被曝(ひばく)を最も避けなければならない子どもたちの「屋外活動制限」に「年間20_シーベルト」という、放射線作業に従事する成人の基準を適用するに至った。農漁民や母親たちの怒りはいたるところで噴出している。
これほどのデタラメがまかり通っているのは、連合のもとで労働組合が反原発の闘いを放棄しているからだ。原発事故は資本とその国家の犯罪であると同時に、連合の犯罪だ。国鉄分割・民営化攻撃による総評労働運動解体と連合結成以後、連合は労働組合の原発反対の闘いを圧殺し、資本と一体となって安全イデオロギーを振りまき、54基もの原発建設と輸出産業化を進めてきた。
日共・全労連も「原子力の平和利用」「科学の進歩」の名のもとに原発建設に協力し、原発労働者に被曝を強制してきた。国家ぐるみの権力犯罪に加担してきたのだ。原発問題とは、資本の階級支配に対する労働組合のあり方をめぐる問題なのだ。
福島、郡山の仲間は、闘う労働組合の復権と階級的団結をかけて反原発闘争の先頭で闘い抜いている。そしてついに原発事故の極限状況から東京電力内部で労働者の反乱が始まった。
労働組合をよみがえらせ、団結して闘うならば、全原発をただちに停止・廃炉とすることができる。原発を止め、原発事故を封じ込めることができるのは労働者階級だけだ。
資本主義の下での社会の復興はない
大震災と原発大事故を前に、日帝・菅政権、資本家階級は無為無策をさらけ出し、事態を解決する能力も、意志もないことを示した。
日帝・菅政権が「復興」の名のもとに進めているのは、炉心溶融と放射能の垂れ流し、原発増設計画の強行であり、核武装政策の堅持だ。数十万人の労働者の解雇であり、労働組合の解体だ。壊滅した港の大規模港への一極集約と切り捨てであり、TPP(環太平洋経済連携協定)による農漁業の切り捨てだ。仮設住宅も、雇用対策も、被災地住民の怒りをかわすためのその場しのぎでしかない。すべては被災者の全面的切り捨てだ。
日帝・菅政権、資本主義のもとでは社会の復興はあり得ない。東北地方の工場が壊滅した瞬間に全世界の自動車産業がストップしたことはその象徴だ。
半導体基板やマイコンという主要部品の生産すらも外注化を極限的に進めてきた自動車産業は、部品が下請け・孫請けの連鎖の中で、いったいどこで生産されているのか自社でもわからなくなっていた。震災で部品供給がストップして初めて部品調達先を知ったのだ。それほど新自由主義は社会をバラバラにした。
もはや資本主義は自らの社会を掌握できなくなっていた。日帝・菅政権のもとでの「復興」は、破産した資本主義の延命をかけたなりふり構わぬ労働者階級人民に対する階級戦争であり、3・11をはるかに上回る社会の破壊、そして侵略戦争なのだ。
暴走した原発を止め、食糧、住宅、雇用、すべてを保障することは、破産した資本主義にはできない。それができるのは、すべての生産を担っている労働者階級だけだ。3・11を生き抜いたわれわれ労働者階級の任務は、日帝・菅政権を打倒し、自らが社会を復興する主人公として登場することだ。革命こそが現実的な回答だ。
大震災と原発事故を前に労働者、農民、漁民、すべての住民は資本主義とは相いれないことを思い知った。飢餓と寒さと必死で闘ったのは沿岸部だけではなかった。家族や仲間を失いながら数十万人の労働者人民が食糧を求めて数時間もの列をなしていた。コンビニと大手スーパーが閉鎖された瞬間に、都市労働者、とりわけ蓄えのない非正規の青年労働者とお年寄りは飢餓に直面した。商品経済のもとでは労働者は生きられない、新自由主義のもとでは殺されるという現実にすべての労働者が直面した。
同時に「団結こそが生きる希望だ!」という確信を誰もがつかんだ。被災地で生き抜くために労働者人民が築き上げた規範は「万人はひとりのために、ひとりは万人のために」だった。だからこそ日帝・菅政権は避難民を転々と移転させ、あるいは避難所を解体するなど、労働者人民のあらゆる団結体の萌芽(ほうが)を解体することに全力をあげたのだ。
問われているのは労働者階級の団結体である労働組合と党のあり方なのである。
国鉄闘争全国運動の発展かちとろう
ところが体制内労働運動指導部は震災と同時に「組合活動の行事・催事・会議の中止」を指令し、一切の権利を投げ捨てた。「震災復旧最優先」の名のもとで、24時間労働が当たり前のように強制され、交通手段が遮断されるなかで、職場泊まり込みの過密労働が強制された。組合員は今日が何日で何曜日かわからない状態にたたき込まれた。
深刻な人手不足のなかで、3月末には非正規労働者に対する大量解雇が強行された。宮城県教育委員会は避難所で子どもたちと生死をともにしてきた教育労働者に4月1日、人事異動を無慈悲に発令した。
このようななかで仙台市役所・動労千葉を支援する会に結集する仲間は、体制内執行部の制動を打ち破って執行委員会を開催し、組合員の声と怒りを束ねる闘いを開始した。救援物資を積み、職場を丸ごと失った組合員、家を失い、家族を失った組合員の職場、支部を訪ね、話を聞き、励まし合いながら一歩一歩階級性を回復し、団結を再生しながら市当局と闘う態勢を整えていった。東日本大震災救援対策本部の日刊ニュースを職場でまき、「原発とめろ!」の先頭に労働組合を登場させる闘いを開始した。
この闘いが組合員の根底的な怒りと結合した。3月11日、市当局は、昨年2月のチリ沖地震(10bの津波、2万人の死者)を想定して避難所指定から外していた沿岸部の小学校に市職員4人を派遣、さらに広報車を派遣してはならない沿岸部に2人の労働者を派遣した。2人の労働者はいまだ行方不明のままだ。市当局によって仲間が殺されたのだ! 市当局の責任を絶対あいまいにしない! 極限的労働強化と合理化を阻止する労働組合の闘いが必要だ!
当局に対する組合員の怒りは出口を求めていた。原発事故に対する危機感と怒りは行動方針を求めていた。市当局はただちに支援する会の仲間に対する5月1日配転攻撃をかけてきた。
この事態に、体制内労働運動幹部は「津波は想定外」「原発は政府の課題、労働組合の課題ではない」「配転は問題ない」と言い放ち、一切の責任を問わず、労働強化を受け入れ、原発事故への組合員の危機感と怒りを封殺することに全力をあげた。
また外注化に次ぐ外注化で労働者を非正規雇用、派遣労働者にたたき込んできた資本・当局は、いまや外注化という手法すらとらず、震災を口実にした全員解雇、非正規化を強行している。震災を口にすれば、解雇も非正規化も賃下げも労働強化もすべて自由であるかのよう振る舞っている。これに対し、みやぎ連帯ユニオンの仲間は震災解雇に直面している仲間とともに労働組合をつくって団結しよう! 生きぬこう!」と呼びかけ、解雇撤回闘争を開始した。
震災下における職場生産点での攻防、体制内労働運動幹部との攻防はこれからが本番だ。一切の体制内労働運動幹部が闘いから逃亡し、唯一われわれのみが震災情勢に立ち向かえるのは、国鉄1047名解雇撤回闘争を最大の焦点とした新自由主義と闘い抜いてきたからだ。われわれは震災下で労働組合の解体をかけた資本・当局の攻撃と真っ向から対決し、職場・生産点から闘う労働運動をつくり出し、国鉄闘争全国運動の力強い発展をかちとる。
全国の仲間たち! 新自由主義と闘い抜いてきた国鉄闘争全国運動が大震災・原発大事故に立ち向かい、新自由主義を打ち破る最大の正念場を迎えている。反失業・反原発の闘いは、震災下の職場・生産点において反合・運転保安闘争路線を貫いて資本・当局と闘い、党を建設し、労働組合権力を奪取する闘いだ。原発への全人民の怒りのなかに労働者階級の階級性と主導権を打ち立て、プロレタリア独裁の思想と労農同盟論をもって全人民を組織し、資本主義を打倒する闘いである。ここに最大の飛躍点がある。
東日本大震災救援現地対策本部はその任務を全うするために全力を尽くす決意である。
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週刊『前進』(2486号4面2)(2011/05/02 )
被災地救援10億円カンパを
現地で闘い抜く仲間たちの縦横無尽の活動を支えよう
全国の同志・支持者の皆さん! 『前進』読者の皆さん!
東日本大震災と福島第一原発の事故による被災現地では、数十万人の住民が生きるために必死で闘っている。その先頭に革共同の同志、労組交流センターや全学連の仲間が立っている。衣食住すらままならない状況で不屈に闘い続けている。そうした困難な闘いを物質的に支えるために、10億円救援カンパへの協力を心から訴える。
大震災は、地震と津波だけでなく、原発の炉心溶融事故による放射能の大量流出という史上未曽有の大災害となった。被害は今なおも拡大している。これは完全に資本主義による犯罪である。資本主義の最後の段階である帝国主義の、新自由主義政策という最期のあがきが招いた事態なのである。
世界大恐慌とそのもとでのこの事態を前にして、世界の労働者階級人民は、資本主義を打ち倒し、共産主義社会へ突き進む大変革の時代が到来したことに気づき始めている。動労千葉への世界中からの連帯・支援の集中が示すように、日本の労働者階級がどのように闘うか、全世界の労働者が注目している。
1カ月半が経過して、1万5千人近い犠牲者に加え、今なお1万2千人近い行方不明者がいる。肉親や同僚を失った悲しみや、明日の食い扶持(ぶち)すらない絶望、放射能への不安はとてつもなく重い。支配階級は、それすら付け入る好機とみて、戦時体制に誘導しようとしている。
だが、現地には革共同と11月集会派が誇る労働者・学生の仲間がいる。その決起が真の元凶を暴き、悲しみや絶望を怒りに変えて、明日への希望を広げている。その仲間たちに縦横無尽の活動を保障することが救援の土台だ。
10億円カンパはけっして世間一般の通常の救援カンパではない。現地の声に応えた物資を労働者から労働者へと直ちに届けるものであり、同時に被災者自身によって階級的団結をつくりだし、震災解雇・大失業との闘いを支援するものだ。
通常のカンパは被災者に届くまでに長い時間を要し、多くが復興資金や雇用創出という名で資本の救済資金に化けてしまう。地震・津波を経験したことのある労働者は「普通のカンパでは善意が届かないから」と協力を申し出てくれた。
救援対策本部ニュースが日々報じているように現地では労働者人民が、労働組合や学生自治会に結集する仲間たちを中心にして闘っている。それは、震災解雇や便乗解雇、労働条件の切り下げ、被曝労働に対する怒りを通して、この大災厄をもたらした元凶=資本主義を打ち倒すための巨万の決起に向かう必然性を持っている。
資本主義の復興に希望はない。資本主義が復興すればもっとひどい災厄を労働者人民にもたらすだけだ。それは菅政権の原発護持の姿勢と復興税構想にも明らかだ。
事故から1カ月半もたった現在も東電は、原子炉の自動停止から津波で電源が失われるまでの間、炉内で何が起きていたのかまったく把握していないし、1号機の格納容器内の水漏れの経路も分かっていないと言っている。こんな無責任な連中をたたき出す以外に放射能の流出を止め、地震列島の至るところに造られた原発を止めるすべはない。
階級的団結の前進こそが、原発と不可分一対の資本主義の息の根を止め、共産主義社会を打ち立てる鍵だ。電力産業では、戦後の電力9分割と電産解体で労働者が資本と御用組合に支配され、現場からの告発も押しとどめられてきた。原発事故の責任の半分は連合や電力総連にある。
動労千葉は、合理化による安全の切り捨てと対決し、国鉄労働運動を解体するための分割・民営化攻撃と24年も闘い抜いて、政府・JR資本を窮地に追い込んでいる。こうした階級的労働組合運動を、現地を先頭に全国で無数に生み出そう。そのためにも10億円カンパへの圧倒的な協力を訴えたい。
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週刊『前進』(2486号4面3)(2011/05/02 )
4月19日〜25日
「集団自決」軍関与認めた判決確定/シリアで大デモ、軍と衝突
●福島県内で学校の屋外活動制限 文部科学省が福島県内の小中学校と幼稚園・保育園のうち、年間に浴びる放射線量が20_シーベルトを超えるとされる13の学校・園に、屋外活動を1時間以内に制限すると通知した。(19日)
●キューバが市場経済導入 キューバ共産党大会が14年ぶりに開かれ、市場経済の一部導入を決定、カストロ前議長の引退を正式に承認した。(19日)
●英仏伊がリビアに軍事顧問団 フランス、英国、イタリアの3国が、軍事作戦の経験豊富な将校らで組織する顧問団を技術指導のため、リビア反体制派の拠点・ベンガジに派遣することを決定した。(20日)
●米軍トップがパキスタン批判 パキスタンを訪問した米軍制服組トップのマレン統合参謀本部議長が、パキスタンの三軍統合情報部(ISI)はタリバンとつながっていると批判した。アフガニスタン戦争での両国の協力に亀裂が入った。(20日)
●米がリビアに無人攻撃機投入 ゲーツ米国防長官がリビアでの軍事作戦に無人攻撃機プレデター2機を投入したと発表した。(21日)
●「集団自決」への軍関与認めた判決確定 沖縄戦で日本軍が「集団自決」を命じたとする記述が名誉毀損(きそん)として作家の大江健三郎氏らが訴えられた裁判で、最高裁が原告側の上告を棄却し、軍の関与を認めた二審判決が確定した。(21日)
●チベット自治区で住民と治安部隊が衝突 中国四川省のチベット族自治州で、治安部隊が僧侶300人以上を拘束、連行を阻止しようとした住民と衝突し、住民2人が死亡した。(21日)
●原発から20`圏を封鎖 政府が福島第一原発の半径20`圏内を「警戒区域」に指定し封鎖を開始した。立ち退きや立ち入り禁止を命じ、従わない者には10万円以下の罰金などの罰則が適用される。一時帰宅は1世帯で1人、2時間以内に限定。さらに20`圏外で放射性物質の累積値が高い地域を「計画的避難区域」に指定、5月末までに避難を終えるよう求めた。(22日)
●北沢防衛相がCBIRFと自衛隊の共同訓練視察 北沢防衛相が米軍横田基地を訪問し、米海兵隊の放射能対処専門部隊「CBIRF」と自衛隊中央特殊武器防護隊による共同訓練を視察した。(23日)
●北朝鮮人民武力相が戦争の切迫訴え
北朝鮮のキムヨンチュン人民武力相が軍創立79周年を祝う大会で、「いま朝鮮半島には、いつ戦争が起きるか分からない緊張した情勢がつくり出されている」「(米韓が)侵略戦争を挑発するならば、一撃に撃滅掃討する」と演説した。(24日)
●シリアでデモ鎮圧に戦車投入 反政府デモが続くシリアで、アサド政権が鎮圧に数千人の軍と戦車部隊を投入、発砲により多数の死傷者が出た。隣国ヨルダンとの国境は閉鎖された。政府は21日に強権支配を支えた非常事態法を半世紀ぶりに解除したが、22日には全土で十数万人のデモが起き、治安部隊との激突で130人以上が死亡する事態となっていた。(25日)
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週刊『前進』(2486号5面1)(2011/05/02 )
反原発の巨大な大衆運動の創造へ
反原発闘争と安保・沖縄闘争で帝国主義の核戦争阻止しよう
革共同中央学生組織委員会
原発と核武装をあくまで必要とする帝国主義体制の擁護か、その打倒か。歴史を分かつ大衆運動の時代がついに到来した。革命的共産主義者は、この情勢を真正面から受け止め、「反帝国主義・反スターリン主義プロレタリア世界革命」の綱領的立脚点に立ちきるとともに、大衆的な怒りの爆発の先頭に大胆に立たなければならない。綱領的立場なき大衆迎合やセクト主義的孤立のどちらをも排し、帝国主義に対する労働者人民の怒りを解き放ち、かつ労働組合・学生自治会の大衆的建設と反スターリン主義・革命的共産主義の党建設を貫いて闘おう。
(写真 「すべての原発をただちに止めろ!」の横断幕を掲げ、のぼりを林立させデモ行進【4月22日 東京・内幸町】)
青年・学生の怒り解き放ち
「次世代のために今すべての拳を上げろ、声を上げろ!」――4月10日、東京・高円寺で1万5千人が原発廃止を掲げてデモを闘った。そのほとんどが青年労働者と学生だ。各地で5千人規模のデモが次々と打ち抜かれている。4月22日には処分・逮捕に屈せずに闘い抜いてきた法大文化連盟と全学連が法大と東京電力本店にデモを行い、原発即時停止・廃止署名2348筆を東電にたたきつけた。3・11東日本大震災から一カ月半、日本プロレタリアート人民は「政治休戦」を打ち破り、大衆運動の時代をたぐり寄せた。切り開いた情勢の巨大さに対応した綱領的・戦略的構えを組織的につくり出さなければならない。
革命的共産主義者の第一の任務は、始まった怒りの爆発を根底的に解き放っていくことだ。「計画停電」「原発事故収束見通し」などの大本営発表的デマゴギーや吹き荒れる「震災解雇」を許さず、大衆の怒りと行動を守り発展させることだ。
原発に立ち向かうなかで鮮明になったことは国家丸ごとの腐敗だ。原発で働く非正規労働者の被曝(ひばく)と死は闇に葬られ、電力資本の役員は平均報酬年7700万円の豪邸暮らし。原発1基の建設費は5千億円と言われ、その3%(150億円!)が政治家にキックバックされる。被曝労働からの搾取と独占価格で大もうけした金で大学もマスコミも買収、裁判所までがグルになって原発推進。この結果が福島原発事故だ。こんな社会では青年や学生は幸せになることなどできない。資本主義・帝国主義総体に対する怒りを根底的に解き放ち、街頭闘争を巨大に爆発させよう。
第二の任務は、このエネルギーの一切を職場とキャンパスに還流させていくことだ。青年労働者運動と学生運動の大爆発を切り開くことだ。核と原発をなくす道は、いかに困難であろうと階級的労働運動路線の貫徹以外にない。青年労働者による国鉄闘争全国運動の巨大な発展をつくり出そう。新自由主義大学の腐敗に対して逮捕・処分を引き受けて闘い抜いてきた全学連・文化連盟の学友は、今こそその生きざまをもって訴えよう。
第三の任務は、街頭と職場・キャンパスのうねりを核戦争阻止、日米安保体制粉砕の反戦・反核・反基地闘争に結合させていくことだ。
地震列島日本に存在する54基の原発はいかにして導入されたのか。
1929年の世界大恐慌と世界経済のブロック化は、再び帝国主義同士が巨大な軍事力をもってつぶし合う強盗戦争を引き寄せ、ソ連スターリン主義をも巻き込む第2次世界大戦へと発展した。大戦末期、米帝は1945年8月6日ヒロシマ、9日ナガサキに原爆を投下、瞬時に二十数万人の命を奪った。
それは日本帝国主義の敗戦と第2次大戦の終結を決定づけ、米帝を盟主とする帝国主義による戦後世界体制、すなわち核の脅威による世界支配の開始を意味した。
米帝は戦後、ドルを基軸通貨とするIMF体制とNATOや日米安保、国連という国際的集団安保体制を構築し、世界の盟主となった。それを補完したのがソ連スターリン主義だ。この世界支配はプロレタリアート人民の闘いを暴力的に圧殺し続けることによって成り立った。世界革命の闘いの圧殺の柱となってきたのが核と安保だ。
核を独占する米帝とソ連スタによる世界支配に真っ向から対決したのが日本プロレタリアート人民の反核闘争だった。
戦後革命は圧殺されたが、54年3月1日のビキニ環礁における米帝の水爆実験と第五福竜丸などの被爆を機に反核運動が燃え上がった。翌55年8月の第1回原水禁大会までに国内署名3280万、世界では6億7千万を数える一大反核運動となった。これを破壊するために日帝は「原子力の平和利用」を宣伝、「毒をもって毒を制す」と原発の導入に踏み切った。日米安保同盟のもと原発の形で核武装化政策を進めてきたのだ。
帝国主義とスターリン主義の世界支配の要をなす核・原発を廃止する闘いは、世界革命の闘いにとって決定的に重要な位置を持っている。
原爆こそ帝国主義の正体だ
核と原発を歴史的に規定している要因は何か。 第一に、世界支配をめぐる帝国主義同士の戦争、第2次世界大戦の帰結としての原爆投下である。
帝国主義とは死滅しつつある資本主義であり、世界戦争が世界革命へと転化する時代である。
資本主義社会は「労働力の商品化」の基本矛盾に基づく「資本の過剰」を恐慌の形で暴力的に破壊し現実的に解決していくことで成り立つ特殊な歴史的な一社会である。しかし帝国主義段階の資本主義は、金融寡頭制と結びついた独占資本の巨大な生産力を容易に破壊できず、過剰資本を抱え込む末期的危機的体制だ。そこで絶えず政治的軍事的な「外部要因」をもって突破を図る。
帝国主義は自己の延命のために帝国主義国や植民地を焼け野原にし、膨大な生産力を破壊し、何より何億もの労働者人民を虐殺してきた。帝国主義とは自らの矛盾の解決のために戦争や「天災」すら求める。賃労働と資本の矛盾は恐慌、侵略戦争・世界戦争として爆発する。この帰結が原爆の投下だったのだ。
第二に、ロシア革命によって切り開かれた世界革命、社会主義への過渡期に対する帝国主義の反動、反革命である。
1917年のロシア革命は世界史上初めてプロレタリアートが独裁する国家を打ち立てた。ブルジョアジーはプロレタリアートに暴力的に打倒され、私有財産を奪われた。彼らはこの恐怖をけっして忘れない。だから帝国主義の体制維持のための核と安保は、世界を革命的に変革しようとする青年と学生にこそ向けられているのである。
第三に、革命ロシアを簒奪(さんだつ)したスターリン(主義)による国際共産主義運動の歪曲・裏切りである。
スターリン主義は、大恐慌下、歴史的に高揚した30年代の階級闘争を裏切り、敗北に導いた。アメリカ共産党はニューディール政策に協力し、ドイツ共産党はナチズムに敗北、世界戦争への道を促進した。
第2次世界大戦と原爆投下は、世界革命を裏切り、帝国主義との平和共存を追求し、ソ連防衛のために国際階級闘争を帝国主義との取引材料にし、結局は破産したソ連スターリン主義の大戦への参戦なくしてはありえない。
5・15沖縄闘争に総決起を
第四に、帝国主義とスターリン主義による戦後世界体制(ヤルタ=ジュネーブ体制)の成立である。
帝国主義とスターリン主義によるプロレタリア革命と民族解放闘争の圧殺をとおして戦後世界体制が成立した。
日本では47年2・1ゼネストを頂点に戦後革命が敗北に終わった。この敗北の最大の要因こそGHQを「解放軍」規定した日本共産党スターリン主義だ。電産労働者は46年の「十月闘争」に見られるように中心を占めた。しかし朝鮮戦争とレッドパージ、電産9分割に対する52年の電産争議(96日間のスト、28波の電源スト、6波の停電スト)は敗北した。これが原発導入の決定的布石となる。電産ストにおいて米軍への送電だけは維持していたように、日共の指導こそ最大の敗因だ。
にもかかわらず日本のプロレタリアート人民の反核運動は歴史的な大高揚をかちとった。米ソの核実験を弾劾し、帝国主義とスターリン主義の戦後世界体制と根底的に対決する闘いとなった。
戦争を止め、核を廃絶する力はスターリン主義の核武装ではなく、労働者階級の国際的団結であるというマルクス主義の原理を復権し、反スターリン主義・革命的共産主義の党を建設することをとおして反核闘争は前進した。そして70年安保・沖縄闘争の歴史的な高揚へと引き継がれた。
核と安保という戦後世界体制の支柱を粉砕する戦闘的反戦闘争を引き継ぎ、青年・学生こそが反戦反核闘争に立とう!
第五に、新自由主義とその破産としての今次世界大恐慌、朝鮮侵略戦争の危機である。
帝国主義の核政策は「原子力の平和利用」=原発と核兵器にペテン的に分割されている。金もうけのための原発の拡散と核の独占を同時に遂行しなければならない。しかし、一方では原発産業の労働組合幹部の買収として、他方では北朝鮮や中国の核を口実とした排外主義と日本の核武装化の正当化として、既成の反核闘争、反原発闘争を買収し屈服させてきた。
新自由主義の破産が世界大恐慌として爆発・深化・発展するなかで朝鮮侵略戦争が切迫している。新自由主義に屈服した連合や全労連と、勇気をもって新自由主義と対決する動労千葉を先頭とする階級的労働運動との分岐はますます鮮明となっている。
われわれは、必死に反原発闘争を闘い抜いてきた人びとに率直に学び、ともに徹底的に闘うとともに、新自由主義と全面対決してきた自らの闘争と生きざまをもって勝利の道を明らかにしていく。反原発の闘いは、崩壊を深める帝国主義とスターリン主義の戦後世界体制と全面対決する階級的な青年労働者運動と戦闘的学生運動の復権、反スターリン主義・革命的共産主義の強大な党建設をもってのみ真に勝利する闘いなのである。
よって最後に、マルクス主義の復権と、革共同とマル青労同・マル学同の強大な建設を訴える。
帝国主義による核と原発の保有は、放射能=死の灰によって体制維持と世界支配を図る(世界を破滅させる)という帝国主義の自己矛盾と破産を示している。同時に、人間が人間らしく生きられる社会への変革をめざすマルクス主義の思想と労働者階級の存在に対する反革命的挑戦である。
死刑求刑―無期攻撃という、人間が生きることそのものを奪い尽くすような攻撃と対峙し36年間の獄中闘争を闘う星野文昭同志の革命戦士としての出発点がヒロシマであった。
人間の根底的な闘志を生み出すのは、人間を根底的な社会変革の主体として位置づけるマルクス主義である。これを復権する力は帝国主義とスターリン主義の戦後世界体制とその核武装の体制に根底的に対決する反スターリン主義・革命的共産主義の思想と勇気ある実践にほかならない。
反核・反原発闘争と安保・沖縄闘争を結合し、帝国主義の核戦争を阻止しよう! 北沢防衛相の訪沖と2プラス2による辺野古新基地建設強行を許すな! すべての学生は5・15沖縄闘争に立て!
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週刊『前進』(2486号5面2)(2011/05/02 )
福島原発事故 殺人的な被曝労働を強制
規定値の4倍近い現実も
女性労働者が内部被曝した
福島第一原発事故の対応をめぐって菅政権と東京電力資本が、現場で苦闘する労働者の健康や生命をことごとく無視し破壊していることが暴かれている。口先で「英雄」などと「賞賛」しつつ、実は「許容量」をはるかに超える被曝を強制しているのだ。
事故発生時に現場にいた東京電力の50歳代の女性労働者が、3月11日から22日までの間に17・55_シーベルトの被曝をしていたことが判明した。原子炉などで働く女性の被曝の限度は3カ月で5_シーベルトと厳しく決められている。わずか11日間でこの4倍近くにもなる量だ。東電は「健康への影響はない」としているが、断じて許せない。そもそも「許容量」などという概念自体が実にあくどいペテンだ。放射線はどんなに少ない量でも人体にとって有害であり、それ以下なら安全という限度など存在しないのだ。
もっと深刻なのはこの女性労働者が内部被曝していることだ。体内に入った放射性物質は、細胞に放射線を照射し続け、10年、20年後にがんなどを発症させる危険性がある。「健康に影響がない」などとは絶対に言えないのだ。
250ミリシーベルトの手帳記載なし
原発で働く労働者は自分が浴びた放射線量を記載する「放射線管理手帳」を持つこととなっている(実態は、会社が手元に置く場合が多い。これ自体許せない)。ところがその手帳に放射線量が記載されていないことが判明した。
原発労働者の被曝線量の上限は5年間で100_シーベルトと定められている。今回の事故対応で菅政権は、それを250_シーベルトに引き上げる「特例措置」をとった。当然この数字は、手帳に記載されなければならない。だが、復旧作業にあたる下請け会社の男性労働者は「今回浴びた線量は手帳に載らない」と説明されたという。東電も「特例措置については通常規則とはリンクせず、緊急時における別枠」と語っている。250_シーベルトとは、一度に受けた場合、白血球が減少するほどの数値だ。「手帳に記載しない」とは、それすらも上回る被曝をしても構わないということだ。
さらに政府が一時、「志願」して現場で活動する労働者は被曝線量を「限度なし」とするよう検討していたことが判明した。「労働者は死んでもいい」と考えているのだ。こんなことを検討すること自体、とうてい許されない。
菅政権と東電は、原発周辺住民を始めとする数十万〜数百万〜数千万人の健康・生命も日々奪っている。原発周辺からの避難は、住民一人ひとりの人生と生活の破壊でもあるのだ。原発を推進してきた日帝と東電資本の責任は万死に値する。
文科省は福島県の児童生徒の年間被曝線量の暫定基準を20_シーベルトと通知し小学校などの屋外活動を制限した。「一般の人が1年間にさらされてよい人工放射線の限度」とされるのが1_シーベルトだ。これがいかに大きな数値であるかは明白である。これで、成人以上に放射能の影響を受けやすい子どもを守れるはずがない。
すべての原発を廃止せよ! 現場で苦闘する労働者、そしてすべての子ども・住民の生命と健康を守るために闘おう!
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週刊『前進』(2486号5面3)(2011/05/02 )
全学連一日行動 法大・東電直撃デモ
“大学から原発を止めよう”
「大学から原発を止めよう!」「御用学者を許さないぞ!」
怒りとエネルギーに満ちたコールが法大前と東電本店前に響き渡った。4月22日、法政大学、東北大学、広島大学を先頭に全国から学友が駆けつけ、全学連は法大と東電本店へのデモを行う一日行動を闘いぬいた。
デモに先立つ飯田橋街宣では、朝の忙しい時間帯にもかかわらず反原発署名が1時間足らずで36筆集まり、ビラが次々と手渡された。
正午、デモの出発点である東郷公園は、全国から駆けつけた学友の熱気にあふれた。3・11大震災以降初めて東北大の学友とともに法大闘争を闘う喜びを実感しながら、集会が始まった。
冒頭、法大文連委員長の斎藤郁真君が力強く確信に満ちたアピールを行った。「なぜ法大と東電へ二つのデモをするのか。3・11以降法大当局が行ったことはキャンパス封鎖と倉岡さんへの処分だけだ。3・31倉岡無期停学処分に今の大学の腐敗が象徴されている。学生運動を復権させ、大学から原発を止めよう」
倉岡雅美さんも「世界の学生の反原発の闘いとともに今日の行動を闘おう」と処分への怒りをたぎらせアピールした。
さらに東北大学学生自治会の石田真弓委員長、法大2年生の発言を受け、反原発のぼりを掲げていざ法大へデモ出発!
街頭では多くの人びとが鈴なりになってデモに注目。とりわけ青年労働者、学生の視線が熱い。
門前に到着すると、デモへの合流を阻止するため何十人もの公安警察、機動隊、警備員が人の壁をつくっていた。「これが大学の姿か?」「こうやって大学が原発政策に加担してきたんだ!」と全国の学友から驚きと怒りの声が噴出するなか、キャンパス広場からの法大生の圧倒的注目があり、警備員の阻止線のギリギリまで駆け寄ってくるグループもあった。
午後2時半、日比谷公園霞門に集合し、東電を弾劾する霞が関・銀座デモへ出発! ネットで見たという青年グループやすぐに署名を提出したいという女性が駆けつけ、法大新入生の参加もあった。3・31にも増す警察の超厳戒態勢を打ち破り、デモ隊は意気軒高と闘いぬいた。デモ後は、3週間足らずで集まった反原発署名2348筆の提出と各大学からの申入書を東電本店前で読み上げた。
許しがたいのは、東電の態度だ。「集団での申し入れは受け付けない」と言い、門前で警備長が受け取り、申入書の読み上げを5人までと制限したのだ。「謝罪」はまったくのウソ! 警察・機動隊に守られながら反対の声を押しつぶす――これが東電資本の正体だ。このようななか、申し入れ内容に感動した通りがかりの女性が東電を弾劾し、その場で3千円のカンパを寄せた。
一日行動を闘いぬいた全参加者は、さらなる反原発署名運動の推進と反戦・反核・反基地闘争の決定的意義を確認した。いざ5月オキナワ―8月ヒロシマへ!
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週刊『前進』(2486号5面4)(2011/05/02 )
静岡 反原発署名が続々
中部電力抗議800人デモ
「浜岡原発を今すぐとめろ!」
4月24日、静岡市で800人が県と中部電力への抗議デモに立ち上がった。福島の原発事故は、東海地震で浜岡原発がどうなるかを今日明日に差し迫った問題として突きつけた。静岡労組交流センターは連日、静岡県下での情宣活動を行っている。この日も全力で闘いぬいた。
前日の大雨とはうって変わって朝から晴れ上がったこの日、集会場の青葉公園B地区は、みるみるうちに老若男女であふれかえった。
呉服町通りに置いた署名机はいつも人だかりだ。「全原発を今すぐ止めろ!」「国鉄1047名解雇撤回」ののぼりを見て、また「浜岡原発を止めろ署名」「ヒロシマ・フクシマ発1千万人署名」に目をとめて、多くの参加者が労組交流センターの仲間たちに次々と声をかけてきた。
「私は1号機建設の時から浜岡原発に反対してきた」という男性が現れ、「地元で運動することがどんなに大変だったか。これまでの活動は今のためにやってきたのだ」と、運動の歴史を語ってくれた。街頭署名で出会った青年たちも駆けつけてきた。
ヒロシマ・フクシマ発の反原発1千万人署名が284筆集まった。地元の運動体が呼びかけている浜岡原発停止署名は298筆。そして計4千枚のビラを手渡した。また反失業・反原発メーデーを訴える『前進』が15部売れ、「これこそ労働者のメーデー・スローガンだ。頑張って!」という激励が寄せられた。
主催者は「原発反対とかデモとか言うと大勢集まらないから、みんなで考えるパレードと銘打った」などと説明していたが、実際にはこの原発事故にみんな心底から怒っている。集会では、参加者がリレートークの形式で次々と浜岡原発への怒り、不安などを訴えた。「今日から私は革命家になる!」という発言にはものすごい拍手がわいた。「反原発」は3・11をもって革命の中心スローガンになったのだ。
長蛇のデモが繁華街を進んだ。呉服町から七間町を通り、県庁へと向かった。さらに中部電力静岡支店の前では口々に怒りの声を上げ、「浜岡原発を今すぐ止めろ!」のコールが繰り返し響き渡った。
中部電力は、新しい研究によって地盤のもろさがよりハッキリしても、「建物のコンクリートがまがい物だ」と耐震偽装を業者が告発しても、マグニチュード6・4の小さな地震で建屋にヒビが入っても、「大丈夫だ」と開き直ってきた。
自治体も国と中部電力から莫大(ばくだい)な金をもらって言いなりになってきた。川勝平太・静岡県知事は3・11後、平然と「原発は危険だが、新幹線も事故を起こさず走っている」と発言した。だが、浜岡原発の危険性は世界中の人が知っている。
次は5月の行動だ。必ず浜岡原発を止める!
(写真 列をなして原発反対署名する人々【4月24日 静岡市】)
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週刊『前進』(2486号6面1)(2011/05/02 )
裁判員制度廃止!5・20日比谷野音へ
“被災者に裁判を強制するな”
憲法と人権の日弁連をめざす会代表 高山俊吉弁護士は語る
「5・20を裁判員制度廃止記念日に!全国集会in日比谷」が5月20日夕、日比谷野外音楽堂で開かれる。主催者の裁判員制度はいらない!大運動の呼びかけ人の一人であり、憲法と人権の日弁連をめざす会代表の高山俊吉弁護士に、3・11東日本大震災・福島原発事故と裁判員制度をめぐる現局面と闘いの方針を語っていただいた。5・20日比谷野音へ!(編集局)
(写真 高山俊吉さん 裁判員制度はいらない!大運動呼びかけ人/憲法と人権の日弁連をめざす会代表/東京弁護士会所属)
ポイントは原発問題だ
3・11東日本大震災の究極のポイントは原発問題です。危険性の認識は発生する結果の重大性との関係で決まるというのが危険論の常識ですが、原発の場合にはそういう考えをすること自体無意味です。中身が人類の死滅そのものに直結するのですから。核は人類と共存できないと言われますが、原発は本来あってはいけないものだった。「想定外の事故」という言葉は原発に使うことは許されない。
日本には原爆が投下されたヒロシマ・ナガサキがあり、ビキニで被爆した第五福竜丸の人たちがいる。肌で感じる違和感や反発や拒否の姿勢が求められていたのにと思います。原発を進めさせてきた運動側の責任も非常に大きい。あとの世代に残してはいけない、立ち上がらなければいけない。
誰が推進したか
裁判員制度との関係で原発を考えると、二つ軸がある。一つは、財界がどう原発を推進してきたのかです。実は、原発政策の責任当事者が裁判員制度をしっかり支えてきているのです。財界がいかに原発を推進しているかを見ましょう。
福島第一原発事故の被害がこれからどう広がるかわからないという現状を尻目に、原発推進政策は微動だにしないと宣言しているのが日本の財界です。
4月6日に経済同友会の桜井正光代表幹事が「2007年の中越地震以来休止している柏崎刈羽原発の原子炉3基を早期に復活させろ。そうすれば東電の電力不足は解消される」と言った。東電の柏崎刈羽原発は原子炉が7基もある世界最大の原発です。米国にもフランスにもこんなに大きな原発はありません。
地震直後の3月16日には、米倉弘昌日本経団連会長が「福島第一原発が千年に一度の津波に耐えているのはすばらしい。原子力行政は曲がり角にきてなどいない」と言いました。これほどの事件が起きても、このように言い切れる人たちでないと、日本の経済界のボスにはなれない。
このように原発を推進している勢力が裁判員制度の先頭にしっかり立っています。
東京電力は裁判員制度が実施される前から裁判員制度推進にお役に立ちたいと裁判所に協力を申し出ています。制度実施前の時期ですが、模擬裁判を計画した東京地裁に東電の社員名簿を出し、この中で選んでくださいと言いました。模擬裁判だってやりたくないとみんなが思っていた時期に、率先して協力を申し出た。これで東京地裁は模擬裁判の裁判員を確保できたのでした。
裁判員制度が始まった段階で、東京電力は早速、裁判員有給制度を導入しました。社員はみんなで裁判員に応じようと、一般的な有給制度とは別に「裁判員有給制度」を作り、裁判所と「いい関係」を作った。それは原発の建設にかかわった東芝も同じです。進んで裁判員休暇制度を作ったのですから。
(写真 「裁判員制度はいらない!大運動」は3・11大震災直後、「挙国一致」「政治休戦」を突き破って闘われた3・20渋谷反戦デモに参加した。多くの弁護士とともにデモ行進する高山俊吉さん【左】)
滅私奉公を強制
裁判員制度が始まった2009年の日本経団連の会長は御手洗富士夫でした。彼はこう言った。「裁判員になることは国民の社会貢献だ。全面的にバックアップします」と。「社会貢献人間」を育てるという司法政策です。批判が東電に向かわない、批判が経団連や東芝などに向かわないように、滅私奉公の人間を作るのが裁判員制度のもくろみです。だから作った、だから推進する、だから支持するという構造がある。これが経済界、大企業と裁判員制度の深いつながりです。
最高裁が原発資本擁護
もう一つは、その原発推進の大資本を裁判所は徹底的に擁護してきたということです。
日本ではこれまで原発に関連する訴訟で三十数件、裁判所の判断が出ている。金沢地裁などでわずかに原発側を負けさせる判決が出たことがありますが、最高裁の判決は見事なまでに原発勝訴です。そこにどんなに深い因縁があるのかを紹介しましょう。
古い判決ですが、愛媛県に四国電力の伊方原発があります。原子炉の設置許可の取り消しを求める住民訴訟で、原発の下に活断層があることが原子炉設置後に発見されたので許可を取り消してくれという要求に対し、一審松山地裁は「新たな活断層の発見を踏まえても安全性は十分だ」と言い切った。それが高裁でもそのまま通り、1992年10月の最高裁判決でも維持されたんですね。申請をした時には活断層はまだ見つかっていなかったのだからそれでいいんだというのです。
三権一体の敵対
2000年12月に、宮城県の東北電力女川(おながわ)原発の最高裁判決で住民の要求がやはり棄却されました。
今度の震災で女川原発も被害をこうむっていますから、闘っていた人たちは悔しくてしょうがないと思うんですが、女川原発の判決は「原発の安全確保は合理的である」「具体的な危険性はない」という理由で住民の要求を否定しました。
この判決が出た時に女川原発の原告団長の阿部宗悦さんが「三権一体の正に住民に敵対する行為に外ならない」と言われました。そのとおりです。司法と行政と立法が一体となって住民と敵対している――これが日本の最高裁の姿勢です。
2004年11月の日本原子力発電の東海第二原発の事件でも最高裁は住民を負けさせた。この事件の東京高裁判決が話にならない。「住民は国の安全審査の合理性を直ちに覆すものと断定できるまでの立証責任を負う」と言った。「こんな高いハードルを越えられるわけがないだろう」と住民たちは怒ったのですが、最高裁はその判断をそのまま容認しました。
03年に名古屋高裁金沢支部が出した福井県の高速増殖炉もんじゅ建設許可を無効とした画期的判決も、最高裁は05年5月に「国の安全審査に見過ごせない過誤や欠落は認められない」と言って覆した。
最近では09年4月に新潟県の柏崎刈羽原発の原子炉の設置許可の取り消しを求める住民訴訟で、最高裁は住民の要求を退けた。
07年7月に中越地震が起きて柏崎刈羽原発は止められました。高裁判決は中越地震を踏まえていなかったので、住民は最高裁に「中越地震で原発はいま止まっている。これを永久的に止めてほしい」と言った。これだけの地震が起きたんだから、いくら何でも最高裁は無視しないだろうと思ったんですね。しかし最高裁は「中越地震があったことで下級審の司法判断を変える必要がない」と言って住民の声を完全に無視しました。
昨年10月にも最高裁は、石川県の北陸電力志賀(しか)原発訴訟で住民の上告を棄却しました。耐震設計が不備だとした一審金沢地裁判決を覆した高裁判決を確定したのです。
裁判より生きるが大切
最高裁がいかに原発推進政策の先頭を走っているか、よくよくわかる話ばかりです。財界・企業と裁判員制度、最高裁を中心とする司法と原発、それがガチッとつながっている。つまり最高裁は、じゃあ裁判員制度をやめようかなんて簡単には言えない全体構造の中にある。
地震から2週間目の3月25日、最高裁は「盛岡と仙台と福島の地方裁判所で裁判員たちの出頭に支障がない事件の公判を開く」と発表しました。しかも3日後の28日から開くというのです。それこそ裁判員候補者は亡くなっているかもしれないし、避難所生活をしているかもしれない。だいたい呼び出し状が届かない状態でしょ。よく言ったもんだと思います。
ここからが興味深いのです。4月1日に仙台高裁がホームページで発表した。その内容は「仙台地方裁判所、裁判員裁判の予定はありません」「福島地方裁判所、裁判員裁判の予定はありません」「盛岡地方裁判所、裁判員裁判の予定はありません」。つまりこの三つの裁判所には、最高裁の言う「出頭に支障のない裁判員事件」は一件もないという発表です。号令する最高裁と現場を無視できない仙台高裁との間に発生したきしみです。足並みの乱れや亀裂や不協和音が私たちに、はしなくも見えてしまいました。彼らも大きな矛盾を抱えているのです。
闘いの芽がある
地震直後に東京地裁で開かれたある裁判員裁判で100人の候補者のうち18人しか出てこなかった。出頭者の中からも辞退した人が9人出て、残りが9人になってしまった。もう選ぶも何もない人数です。究極の末期症状と言ってよい。東北でも北関東でもない東京でこんな事態になっている。被災地は推して知るべし。裁判員制度はやめろという、これほど明確なサインはない。
私たちは、5・20全国集会のスローガンを「人を裁くよりも生きぬくこと、裁判員裁判直ちに廃止! 被災者に裁判を強制するな!」としました。大切なのはまさに生きぬくことです。人を裁いているどころの話ではありません。裁判員なんかやってられないという気分が一気に高まっていますが、「冗談じゃない」という思いを「つぶそう」という怒りの心と行動のエネルギーに変えて闘うという勢いが生まれています。
それは、今年の初めから始まったチュニジア、エジプト、リビアと広がってきた北アフリカ・中東の住民と労働者の決起につながります。
1万5千人が原発反対で集まった東京・高円寺の集会を見ても、私たちの視点や姿勢が揺らがない限り、多くの青年、学生、労働者、市民が必ず一緒に行動すると確信します。あれがチュニジアであり、カイロのタハリール広場だろうと思うんです。闘いの萌芽(ほうが)がある――そのことに対する根本からの楽天的な見方が大切です。
厳しいところに追い込まれた勢力が、追い込まれたがゆえにこのような反撃をしている。裁判員裁判に市民を動員し、国の担い手は自分たちだと思わせたい、その役割を裁判所が果たす――これは、彼らにとってこの時代が文字どおり危機の時代だからなのです。
司法体制というのは、この社会の舞台配置の後景に控えている国家組織です。司法なんて国民生活からあまり見えないほうが、縁遠いほうが、国の統治はある意味うまくいっているのですね。「一生のうち裁判なんかお世話になることないよ」って言っているほうが普通であり、穏便なんです。時々は社会の前面に出てきて、公害事件で住民を勝たせたり、労災事件で労働者を勝たせたりする。で、裁判や裁判所はニュートラルなんだという姿も見せて国民を安心させる。そこで役割を果たすんですね。
ところが、今やそんなのんきなことを言っていられなくなった。格好つけてなどいられなくなった。だから裁判員制度を導入した。本音を言えば、できればやりたくなかったでしょう。しかしというか、だからというか、そこで導入された裁判員制度がまるきりうまくいっていない。破綻の状態に陥っている。
どうにもこうにもうまくいかないところに、この大震災が起きてしまった。泣き面に何とかですね。とうとう国民がだまされなくなってしまった。政府もマスコミも本当のことを書いてないのではないかとみんな思うようになった。最も根幹の国策を国民が冷ややかな目で見るという状況です。縦糸の原発と横糸の裁判員制度が重なりあって、今や彼らにとって最も致命的な弱い環として、原発と裁判員制度のクロス情勢があると思います。
野音を怒りのるつぼに
5月20日の日比谷野音の全国集会にたくさんの人に集まってほしいと思います。
この国が根本のところからおかしいということを、原発政策を通してみんなが告発し、労働者が置かれた現場から告発し、それが裁判員制度の告発にも重なっている。闘いがるつぼのようになっている。個々人の問題意識や怒りが実は深いところでつながっているとみんなが腹の底から感じている。小難しい議論はいらないと言ってもよい。歴史的な民衆決起の姿を見ると、みんなが一気に立ち上がる時というのは、すべてそうだったのではと思います。一人ひとりが核と原発に対決し、裁判員制度に反発し、そして自分はここで頑張りますという。その間にずれも違和感もない。そういう集まりとして5月20日が成功したらいいなあと思っています。
3月11日からみんなそれぞれが試されていく時期に突入した。3月11日はそういう意味でも画期的です。ここで私たちの状況が大きく変わったという意味で画期的だと言いたい。
弁護士がチュニジアでもエジプトでも学生や青年労働者とともに立ち上がった。弁護士も、学者も、医者も、専門家が自分の存在意義を深く問われる時代になった。敗戦直後に私の家の近くの町医者が「原爆の患者さんに少しでも効く薬が作れないかと私も頑張っている」と話していました。朝日新聞(4月21日)の川柳に「学者出りゃどちらか探るくせが付き」というのがありました。その時代ですね。
私は、方針の基本が間違っていなければ、潜在的可能性は必ず顕在化し、花が開くと思います。私が長崎の学習会に参加した時に「初めてこのような集まりに来ました」と言われた若い女性が、5・20集会に行きたいと発言されるのを聞きました。たまたま長崎駅前でビラをもらって集会に来られた方です。東京の集会に行きたいが旅費がないという。じゃあ、みんなでお金を集めようということになったと聞きました。これがタハリール情勢だろうと思うのです。
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週刊『前進』(2486号6面2)(2011/05/02 )
星野第2次再審闘争勝利へ
無実を証明する「補充書(2)」D
「耳撃証言」の不確かさをデッチあげの手段に悪用
少年らの記憶を誘導して歪める
星野文昭同志に無期の獄を強いている確定判決は、星野同志の「機動隊員殴打と火炎瓶投てきの指示」を認定している。このうち、機動隊員殴打に関する核心的証拠とされていたKr供述がデッチあげられたものであることをこのシリーズで徹底的に暴いてきた。
では、「火炎瓶投てきの指示」に関する証拠とされたAoおよびAr供述はどうなのか。実は、まったくのデッチあげが行われており、そのことが厳島鑑定書で明らかにされた。
今回の補充書と厳島鑑定書では、人間の記憶がいかにわれわれの「常識」とは異なったものであるかを、現在の心理学の地平から科学的に明らかにしている。
厳島教授の鑑定書によれば、この最先端の心理学的研究の成果を司法における「目撃証言の信用性」などに生かす研究は、日本においては20年そこそこで非常に日が浅い。そして「耳撃(みみげき)証言」に関しては、日本においては研究も始まったばかりで、今回の鑑定を機に厳島教授が『季刊刑事弁護』に掲載した「発話者の同一性識別と耳撃記憶の心理学」(A・ダニエル・ヤーミー=厳島行雄・笠原洋子訳)以外にはほとんど文献らしいものも見あたらないという状況である。
目の機能によって視覚的にもたらされる情報処理者の能力にかかわるのが目撃(eyewitness)であるのに対して、耳撃(earwitness)というのは、耳の機能によって聴覚的にもたらされる情報処理者の能力にかかわる言葉であり、厳島教授による翻訳語である。
検察官は、日本において「耳撃証言」に関する科学的認識が欠如している現状を徹底的に悪用して、AoおよびArら少年たちの不確かな声の記憶を「誘導と繰り返し」で徹底的に破壊し、デッチあげのストーリーに沿った記憶に歪め(作り変え)て供述調書を作り上げたのである。そもそもAoは、公判廷では「火をつけろ」の声は聞いていないと証言している。
確定判決は、「火炎瓶投てきの指示が誰の声か分からない」、さらに、その声が星野同志のいた方向とは「別の方向から聞こえた」というKr供述は排斥し、「火をつけろ」という星野同志の声を聞いたというAoの供述と、「離れろ、火炎瓶を投げろ」という星野同志の声を聞いたというAr供述を証拠として、星野同志の火炎瓶投てきの指示を認定している。
声だけでは人は特定できない
しかし、AoもArも、星野同志が火炎瓶投てきの指示を発するところを見たとは供述していない。したがって、確定判決は、ただ、AoとArが火炎瓶投てき指示の声を星野同志の声だと供述していることだけに依拠していることになる。だが、「耳撃証言」の研究によれば、特別に信用できる要因が見いだされない限り、「耳撃証言」の信用性は否定されなければならないのだ。
実は、ここに確定判決の決定的破綻点=デッチあげ性が全面的に暴き出されている。厳島鑑定は、声のみで人を特定することはきわめて困難であり、「耳撃証言」がどれほどの冤罪を生み出してきたかを科学的に立証している。
確定判決は、Kr供述を排斥しながらなぜAoとAr供述を採用しているのか、その根拠は何ひとつ示していない。3人の供述調書から都合のよいところだけをつまみ食いして星野同志を有罪にしているのであり、絶対に許すことができない。
当日の現場の状況は200人近いデモ隊の喚声と機動隊との衝突音、ガス弾と火炎瓶の音が交錯する極度に緊張した喧噪(けんそう)の中で、飛び交う声も怒号と緊張でほとんどがかすれ声になっていたことが証言されている。つまり怒号と緊張で「擬声」状態が生み出されている中で、声のみで人を特定することなど不可能だったのだ。
今回提出した「補充書(2)」で星野同志の無実はいよいよ鮮明になった。星野同志はすでに獄中36年、もはやこれ以上投獄を1日たりとも許すことはできない。無実の星野同志をただちに釈放せよ。再審を開始せよ。
6・24東京高裁包囲デモに結集し、星野同志の奪還をかちとろう。
(連載おわり)
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週刊『前進』(2486号6面3)(2011/05/02 )
日程 5・20を裁判員制度廃止全国集会、法大裁判
●裁判よりも生きぬくこと
裁判員裁判直ちに廃止! 被災者に裁判を強要するな!
5・20を裁判員制度廃止記念日に! 全国集会in日比谷
とき 5月20日(金)開場午後6時 開会午後6時30分
ところ 東京・日比谷野外音楽堂(千代田区日比谷公園内)
主催 裁判員制度はいらない!大運動
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法大裁判に集まろう!
★暴処法弾圧裁判
第23回公判 5月19日(木)午後1時30分
東京地裁429号法廷
12時30分に傍聴券配布所に集合
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週刊『前進』(2486号7面1)(2011/05/02 )
6・5国鉄大集会の成功へ
大失業粉砕・全原発廃棄に総決起し 連合打倒、労働運動の再生かちとれ
国際連帯の発展で日帝・菅政権倒そう
(写真 3・20渋谷デモ 3・11東日本大震災と原発大事故の直後、すべての政治勢力が「政治休戦」を決め込む中で、全学連を先頭に動労千葉などの闘う労働者・学生が「全原発の停止・撤廃」「震災解雇を許すな」の鮮烈なスローガンを掲げて立ち上がった)
T3・11大震災と原発大事故で階級情勢は完全に一変した!
(1)新自由主義の腐敗と破産がもたらした未曽有の災害
3月11日に発生した東日本大震災と原発大事故は、全階級情勢を一変させた。大震災の発生からまもなく2カ月を迎えようとする今日なお、被災現地は「復旧」どころか依然として生きるか死ぬかの必死の闘いの渦中にある。死者・行方不明者はなおも増え続け、余震の頻発、放射能汚染の拡大、首切り・失職と生活基盤の全面崩壊が、膨大な労働者と農民・漁民、都市の零細自営業者の上に襲いかかっている。
この大災害は、政府・資本家階級やブルジョア・マスコミが言う「天災」などでは断じてない。徹頭徹尾、階級的で社会的な災害だ。それも単なる人災ではない。資本の利潤追求を他の一切に優先し、労働者人民の生命や生活などまったく無視し、踏みにじって当然としてきた新自由主義とその政治こそが、地震と津波の被害をここまで広げたのである。とりわけ小泉政権以来の10年間に進行した地方の徹底的な切り捨てこそ最大の元凶だ。民営化・過疎化による地方自治体の機能の解体と地域社会崩壊の現実が、数万人もの命を奪い、何十万人もの家と故郷を一瞬にして奪う大惨事を生んだのだ。
福島第一原発の事故に至っては、東京電力を始めとする日帝ブルジョアジー中枢と歴代の政権が繰り広げてきた、完全に意図的で犯罪的な行為の結果である。彼らは労働組合の解体と御用組合化の上に、原発の危険性を覆い隠し、「絶対安全」の大ウソとデマで人民をだまし、地震の巣である日本列島の上に54基もの原発を次から次へとつくってきた。反対の声は札束で買収され、あるいは陰湿な暴力で圧殺された。電力会社を中心に、大銀行・大企業、政府・行政、国会議員、裁判所、大学、マスコミから労組幹部までが一体となり、ひたすら原発を推進してきた癒着と腐敗の構造は、まさに「原発マフィア」とも言うべき資本と国家の恐るべき独裁体制をつくり出していた。
核開発(核武装化)という日帝の「国策」と、そこに生まれる巨額の利権のためなら労働者の安全などどうなってもいい、人間の命などどうでもいい――これが政府と財界を先頭とした原発推進派が一貫してやってきたことである。原子力安全委員会の委員長である斑目(まだらめ)は、安全の確保にこだわっていたら「原発はつくれない」と公言していたことが暴露されているではないか。地震と津波による地域の壊滅に加えて、福島第一原発からまき散らされる「死の灰」という途方もない災厄は、まさに彼らの手によって不可避に、必然的に引き起こされたのである。
このすべてが、国家と資本による、労働者人民への階級的大犯罪以外の何ものでもない。その極悪さは、かつての侵略戦争での戦争責任にも匹敵するものだ。しかも事態は何ひとつ終わっていない。原発事故は収束するどころかますます深刻化し、打開の方策さえ立っていない。これからもっと大変な過程に入っていくことは明らかなのである。
今や、大震災の衝撃と日々の困苦との闘いの中から、資本家階級とその政府に対する膨大な労働者と農民・漁民、全人民の激しい怒りがふつふつとわき起こっている。日帝ブルジョアジーと菅政権はこれに恐怖し、一切は「想定外」だ、「不可抗力の天災」だとして必死に居直り、逃げ回っている。
救援でなく治安出動
彼らが震災直後、真っ先にやったことは何か。大資本救済のための政府・日銀による120兆円(国家予算の1・3倍)にものぼる巨額の資金供給だ。その一方で被災地の人民に対しては、救援ではなく治安出動のために10万人もの自衛隊や米軍を動員し、被災地を徹底的に制圧・封鎖した。日米安保の有事体制が、一種の戒厳令的状態をつくり出すために発動された。支援物資の補給や肉親の捜索は、現地と幹線道路を制圧した軍隊によって禁止され、妨害され、多くの人民が水も食糧も燃料もない状態に捨ておかれた。
さらに、戦時中さながらの情報統制を強行し、御用学者とマスコミを総動員して原発事故の真実を覆い隠すのに全力を挙げた。そして「国難」「挙国一致」を叫び、春闘と統一地方選挙のさなかに「労使休戦」「政治休戦」を強要し、労働者階級のあらゆる闘いの解体と労働組合の変質・国家主義的総動員を一気に推し進めようとしてきたのだ。これらのすべてが、日帝支配階級の陥った未曽有の危機と、労働者人民の怒りの爆発へのすさまじい恐怖、人民の総反乱を未然に圧殺しようという必死の衝動を示している。
そして今日、日本経団連を始めとした財界首脳と政府・支配階級は、「復興」の名のもとにあらゆる犠牲を労働者人民に押しつけて生き残ろうという、どす黒い心情をむき出しにしている。経団連会長・米倉は「甘かったのは東電ではない。国の安全基準だ」と、東電資本の免罪・免責を公然と主張し、賠償は国の責任(すなわち労働者人民から奪い取った血税)で行えと要求し始めた。4月に発足した復興構想会議は、必要な財源は「国民全体で負担していく」ことが必要と、大増税を真正面から打ち出した。
冗談ではない! まさに東電資本や米倉を筆頭とする財界こそ、この大災害を引き起こした第一級の戦犯ではないか。その連中が自らの責任を平然と居直り、大震災を口実に労働者人民への極限的な収奪にのり出すなど、断じて許すことはできない。そもそも米倉らは被災者への賠償など最初から考えてはいない。自らの損失補填(ほてん)には120兆円もの資金を出させながら、生活基盤のすべてを破壊されて放り出された膨大な労働者や農民・漁民に対してはわずかな補償金すら出し渋っているのが、彼ら帝国主義ブルジョアジーの正体であり、現実ではないか!
菅政権と日帝ブルジョアジーが考えているのは、労働者人民の怒りをいかに抑え込んで自らの支配を守りぬくかということだ。それと同時に、被災地の困窮を逆に資本の新たな「ビジネスチャンス」として、徹底的に食い物にしていくことを狙っている。そのためにもっと資金を、税金を! と言っているのだ。ここに彼らの「復興運動」の本質がある。どこまで卑劣であくどいのか!
こんな吸血鬼のような連中をもはや絶対に許してはならない。
(2)国家と資本の犯罪許さず「挙国一致」打ち破り闘おう
労働者階級がやるべきこと、目指すべきことは何か。日帝ブルジョアジーが国家総ぐるみで引き起こしたこの巨大な犯罪の責任を、一つ残らず徹底的に追及することだ。彼ら全員を支配の座から引きずり降ろし、監獄にぶち込むこと、その全資産を凍結・没収することである(これだけで何十兆円、何百兆円にもなるはずだ!)。
日本経団連を始めとする金融資本・巨大独占資本の頭目たち、その意を体現して強大な国家権力を握って労働者人民を支配し続けてきた歴代政権とその与党、そこに群がり、利権のおこぼれに預かることで私腹を肥やしてきたすべての連中に、実際に身をもって被災者への責任をとらせること。「収奪者を収奪する」根底的な闘いに立ち上がること――これが社会を立て直す一切の出発点であり、それなしに労働者人民の生活の真の再建はありえない。ここを絶対にあいまいにしない闘いをやりぬいていくことである。
労働組合幹部の犯罪
何より必要なのは、労働組合の幹部がこの数十年行ってきたことの犯罪性を今こそはっきりさせることである。
福島第一原発で起きた史上最悪の事故に最大の責任を負っているのは、東電資本とともに労働組合の幹部だ。電力総連は原発推進を公然と掲げ、資本の完全な手先として行動してきた。電力総連だけではない。連合の幹部が新自由主義による民営化・外注化・非正規職化攻撃に率先協力し、労働者の安全を進んで売り渡してきたことが、3・11にまで行き着いた今日の社会の恐るべき現実をつくり出してきた、資本と並ぶいまひとつの元凶である。労働組合がここまで腐敗し変質していなかったら、これほどの惨事に発展することはなかったはずなのだ。
今や彼らは、ブルジョアジーが叫ぶ「政治休戦」「労使一体で国難打開を」というスローガンに全面的に唱和し、政府・資本と自らの責任を隠蔽(いんぺい)し居直ることに必死となっている。電力総連のような正真正銘の労働貴族はもとより、自治労や日教組を始めあらゆる体制内労働運動の指導部がこぞって民主党政権の一角を占め、日帝救済のための挙国一致体制へとなだれ込んでいる。連合は春闘を休戦し、原発事故にはひたすら沈黙を決め込み、メーデーも菅政権を支える「復興支援」の集会にねじ曲げた。全労連も、国労本部など4者4団体も、「政治休戦」に完全に呼応し、一切の闘いを放棄する側に回っている。
このまま行けば、労働運動そのものが日本の社会から消えてなくなる。だが、闘う労働者が現場から、自分の職場から、もうこんなことは断じて許さないと立ち上がった時、事態は根本から変わるのだ。階級的力関係は実際には、3・11によって激変している。日帝支配階級は統治能力の完全な崩壊をさらけ出し、大混乱に陥っている。
菅政権と民主党の無為無策、自民党を始め全野党の右往左往の現実を見よ。財界もまた、何の手も打つことができず危機感と焦りをつのらせるのみだ。労働者階級が「国難」「挙国一致」を真っ向から打ち破って決起するならば、すべての関係は革命的に逆転する。日帝打倒への圧倒的なチャンスが急速にたぐり寄せられてくる情勢を迎えているのである。
被災地と団結し闘う
動労千葉は3・11後直ちに声明を発し、全国の労働者に被災地と団結して闘いに立ち上がることを呼びかけた。動労千葉と全国労組交流センターが組織した東日本大震災救援対策本部は、自衛隊・米軍・警察を総動員した菅政権による道路封鎖と治安弾圧体制を打ち破って、被災地の闘う労働者・労働組合と全国の闘う仲間の感動的な合流と団結をつくり出した。全学連を先頭に闘われた3・17緊急闘争、3・20渋谷大集会・デモの爆発、3・31東電抗議闘争は、東電防衛に必死となった公安警察の弾圧をはねのけ、原発大事故への大衆的怒りを解き放つ突破口を開いた。
闘えば勝てる! 国鉄1047名闘争解体を狙った昨年4・9「政治和解」の反革命を突き破り、国鉄闘争全国運動をつくり出して闘ってきた動労千葉を先頭とする階級的労働運動の前進は、今日の情勢に真っ向から立ち向かっていく道をすでに決定的に切り開いている。このことにあらためて確信をもち、怒りを倍加させ、新自由主義・資本主義・帝国主義を根底から打倒する闘いに突き進もう。
何よりも全労働者の総決起で連合支配を今こそ打倒し、腐敗し変質した労組幹部を追放し、日本労働運動の巨大な階級的再生をかちとろう。
革共同は、3・11に対する動労千葉の声明に応え、「被災地の労働者・農民・漁民・自営業者のみなさんと6千万労働者階級に訴える」という党声明(本紙第2480号)を発し、日帝を打倒して労働者階級自身の革命的権力を打ち立てていく闘いに断固として突入することを決意した。この道をまっしぐらに進もう。全党の同志は今こそ6千万労働者、農民・漁民、全人民の怒りの先頭に立ち、この怒りをひとつに結集し、プロレタリア革命勝利の力に転化するために全力を挙げて闘おう。
U大恐慌の激化―大失業・戦争と世界革命情勢の急速な成熟
3・11は、新自由主義・資本主義・帝国主義の最末期の姿、その全面破産と恐るべき腐敗をさらけ出した。そしてこれは、これから起きることのまだ序の口だ。07年のパリバ・ショックに始まり、08年のリーマン・ショックによって一挙に爆発した現在の世界大恐慌は、3・11の衝撃によってさらに急速かつ激烈に深化しようとしている。日本の「震災恐慌」への突入が、世界をどん底まで突き落とすさらに恐るべき大恐慌の引き金を引くのは不可避である。
それは、世界史的に未曽有の大失業となって労働者階級人民の頭上に襲いかかる。膨大な労働者が、職も家も食糧も奪われて路上に放り出されるのだ。農民や漁民も生業を成り立たせることができなくなり、生きる手だてを奪われた難民となって都市に流入するしかない。金融資本・巨大独占資本が生き残りをかけた激烈な争闘戦に突入する中で、中小零細業者は次々と倒産を強いられ、失業者の列はとてつもない勢いで膨れ上がっていく。資本主義・帝国主義はこの大失業を、絶対に解決することができない。
震災解雇を許すな!
すでに、震災解雇がすさまじい勢いで始まっている。震災で家族を失い、住居の破壊・喪失やライフラインの寸断に苦しむ労働者階級の上に、突然の失職と解雇が次々と襲いかかっている。3月末の段階で、東北3県では一挙に数万人が失業し、労働相談は8千件を超えたという。
被災地だけではない。大震災とそれに伴う「計画停電」を口実に、全国いたるところで非正規労働者に対するせきを切ったような雇い止め解雇、派遣切りの嵐が吹き荒れ始めた。賃金からの「義援金」の天引きを始め、「非常時」を口実にした賃金カットが全労働者に当然のように強制されている。厚労省は”計画停電による休業には労働者の賃金保障をしなくてよい”との通達を出した。政府自ら、戦後の労働法上の規制をすべて取り払い、資本のやりたい放題を野放しにしようとしてきている。
そして今、「復興」の名のもとに進行しようとしていることは、新自由主義攻撃の一層全面的、極限的な激化である。仙台の自治体労働者の仲間は訴えている(本紙2484号参照)。人手がまったく足りない中で、通常の業務に加え避難所の運営に身も心も限界になるまで駆けずり回っていたが、なんと3月31日で臨時職員は全員雇い止めされた。その一方で仙台市当局は、退職者を「無報酬」で嘱託職員に募集することを決めた。一方で大量の労働者を解雇しながら、他方では人手不足を無償労働で穴埋めする! なんという矛盾、なんという恥知らずか。だがここに、菅政権と日帝がやろうとしていることの核心がある。
日帝は今や資本の延命に一切をかけ、労働者や農民・漁民など死んでもかまわないとし、逆に労働者人民を徹底的に犠牲にすることで資本主義・帝国主義として生き延びようとしているのだ。それが被災地の切り捨てであり、公務員労働者を始めとした大量首切りと賃金カット、全労働者の非正規職化の攻撃であり、戦後労働法制の全面破棄と「ボランティア」という名の無償労働の強制だ。その上にさらに、大増税と福祉切り捨て(「自己責任」への転化)という、極限的な収奪が襲いかかろうとしている。文字通りの階級戦争への突入だ。
事実、日本経団連と菅政権は、大震災の発生以前に総力を挙げていた道州制導入や公務員労働者360万人の大量首切り、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)への参加、社会保障制度の全面解体などを、3・11後もまったく中止しようとはしていない。沖縄への辺野古新基地建設を始めとする日米安保強化、戦争・改憲の攻撃についても同じだ。それどころか逆に、3・11を契機にしてすべての攻撃を一気に、クーデター的に押し通そうと狙っている。
その最大の狙いは、プロレタリア革命の予防反革命的圧殺のための労働組合と労働運動の徹底的な根絶・一掃と、それをテコにした侵略戦争への国家総動員体制づくりにある。3・11後の情勢下で日米安保体制強化と有事体制づくりが一挙に進められたように、ここで従来の壁を突き破ることに、彼らは自己の命運をかけている。
命脈尽きた帝国主義
しかし、日帝ブルジョアジーがどうあがこうと、今日陥った危機からの脱出は絶対にできない。現在の大恐慌は、資本主義の最後的な大恐慌であり、戦後世界体制の総崩壊がすでに始まっているのだ。これに対する労働者階級のプロレタリア世界革命への一大決起も、エジプト2月革命を突破口としてすでに世界史的に始まっている。日本階級闘争はこの中で、3・11を歴史的転換点に、いよいよブルジョアジーとプロレタリアートの死活をかけた非和解的・内乱的な激突の真っただ中に突入したのである。
今日の世界大恐慌の根底には、戦後の資本主義・帝国主義が74〜75年恐慌で直面し、その後も増大の一途をたどってきた過剰資本・過剰生産力のどうにもならない現実がある。新自由主義はこの壁を、民営化・外注化をテコとした労働者の非正規職化・低賃金化と極限的な労働強化によってのりこえようとしてきた。東日本大震災は、今回の被災地が実は、日帝の大資本が工場移転と外注化のもとで地元の労働者を徹底した低賃金労働力として搾取する国内有数の生産拠点となっていた事実を衝撃的に暴露した。
新自由主義によるサプライチェーン(供給連鎖)とアウトソーシング(外注化)を使った搾取と労働者支配の構造が、大震災で一挙に崩壊し、大破産したのだ。被災による東北地方の工場群の壊滅は、自動車産業やIT産業を始め多くの産業への部品・素材供給の鎖を絶ち、トヨタの全工場をも生産停止に追い込んだ。輸出の急減によって3月の日本の貿易黒字は一挙に前年比78・9%と急減し、今年後半には赤字に転落すると言われている。供給不安と減産は連鎖反応となって世界に拡大し、米欧や中国の工場にも多大な影響を与えている。
@チュニジア・エジプト革命に始まる帝国主義の中東石油支配の大崩壊、Aギリシャ・アイルランド・ポルトガルを筆頭に深まる欧州の債務危機、Bこれに加えて東日本大震災が今、日本発の新たな大恐慌の引き金になろうとしているのだ。このことに、世界のブルジョアジーは震撼(しんかん)している。
3・11によって、投機マネーの原油や食糧へのなだれ込みが一層激化し、インフレが全世界的に爆発しつつある。さらに、リーマン・ショック後の恐慌対策として発動されてきた巨額の財政出動は、各国の財政危機を一斉に爆発させている。とりわけ米の財政赤字は国家破産=デフォルト(債務不履行)寸前の水準に達し、4月18日にはついに米国債の格付けが引き下げられる事態に突入した。ドル体制の全面的な崩壊が、今や目前に迫っている。
ブルジョアジーにとって、大恐慌の新たな、一層激烈な爆発を回避する道などどこにもない。資本主義の命脈はもはや完全に尽きたのである。大恐慌が生み出すのは、ひとつは果てしない大失業であり、いまひとつは戦争だ。すでに、帝国主義国はもとより、残存スターリン主義の大国である中国なども含めた諸大国による世界の資源・市場・領土・勢力圏略奪への突進と、その奪い合いをめぐる対立抗争が激しく開始されている。3・11と時を同じくして始まった米英仏によるリビアへの軍事介入は、イラクとアフガニスタンに続く侵略戦争の重大なエスカレーションであり、石油支配をめぐる各国間の暗闘が新段階に突入したことを示している。
この大恐慌・大失業と戦争をプロレタリア世界革命に転化することだけが、破局への行進から唯一、世界を救い出す道だ。日本の労働者階級がその最先頭に立ち、全力を挙げて闘いぬく時が来たのである。
Vプロレタリア革命の勝利こそ原発廃止・社会再生への道だ
(1)核・原発は人間社会と絶対非和解、今こそ全面廃棄を
福島第一原発の事故がすべての労働者階級人民に突きつけている問題は、今日の革命情勢下においてきわめて重大な位置をもっている。
革共同は創立以来、労働者階級の党、マルクス主義の党、反帝国主義・反スターリン主義プロレタリア世界革命のために闘う党として、「核の平和利用」など断じてありえないという立場に立ってきた。原発には絶対反対以外なく、核兵器の廃棄と全原発の廃棄は一体のものであるととらえてきた。
だが今日あらためて明確になったことは、原発(核)との対決には、プロレタリア革命の核心にかかわる問題がはらまれているということである。反原発闘争を、反失業闘争とともに新自由主義との対決の最前線に押し上げ、資本主義社会を根底から転覆していく闘いとして、その大爆発をかちとることは急務である。
直ちに全原発止めよ
第一にはっきりさせたいことは、原発は即時全面停止・廃止以外にない、核・原発と人間社会は絶対に共存できないということである。
原子力エネルギーは、帝国主義戦争の中で、それまでとはケタ違いの大量殺傷兵器をつくり出すために開発されたものである。米帝による原子爆弾の製造とその広島・長崎への投下は、人類が過去に経験したことのない恐るべき惨禍をもたらした。広島で12万人、長崎で7万人が一瞬にして虐殺されただけでなく、降り注いだ「死の灰」による放射能汚染にさらされた膨大な人びとが、その後も次々と命を奪われていった。被爆後の5年間に死者は広島で20万人、長崎で14万人に拡大した。当時の人口は広島で42万人、長崎は24万人。その半数ないしそれ以上が1発の原子爆弾の炸裂(さくれつ)によって犠牲となったのだ。
原子力はこの原爆=核兵器の製造のためにこそ開発された。本来、人間によるコントロールなど不可能な原子力が、人間を大量に殺せるというその一点において開発され、一個の「技術」に仕立て上げられたのである。〈人間を生かすためではなく、殺すための技術〉――ここに原子力技術の本質がある。その「平和利用」など原理的にも現実にも成り立たない。
その犯罪的な正体は、原発がそこに働く労働者の被曝(ひばく)を、すなわち労働者の生命を日々犠牲にすることを前提にして初めて成り立っているところに端的に示されている。「核と人類は相いれない」という時、その最大の核心はここにある。
実際にも、原発はいったん稼働させれば「安定停止」などありえない。福島第一原発の事故が日々示しているように、核燃料は運転を止めても不断に冷却し続けない限り、それ自身の発する熱によって溶融・爆発する危険を常にはらんでいる。さらに、原発が生み出す猛毒の放射性物質=「死の灰」の完全な封じ込めは不可能である。それを可能にする技術などこの世に存在しないことは原発推進派自身が認めている。
原子炉1基を1年間運転すれば、広島に落とされた原爆の1千個分の「死の灰」がつくられるのだ。自然界にはもともと存在せず、生物に有害な放射性物質を大量に含む「死の灰」を、「安全な処理」など根本的に不可能なままひたすら生産し、たれ流しているのが原発である。この一点をとっても、原発の存在そのものが人間社会と絶対非和解の関係にあることは明らかである。原発を直ちに廃棄する以外に全人類の未来はない。
(2)戦後帝国主義が国家戦略として推進した原子力産業
第二に、第2次大戦後の帝国主義において、原発建設は核武装・核軍拡と完全に一体のものとして、国家の基本戦略として推進されてきたという問題である。
原子力産業とは巨大な軍需産業である。そしてこの「核による支配」こそ、戦後の帝国主義による労働者支配・世界支配の最大の中心に位置していたということだ。旧ソ連や中国のスターリン主義もまた、帝国主義の核に核で対抗することでそれを支え、帝国主義との核軍拡・核開発競争にのめり込んできたのである。これが原発推進の土台にあるのだ。
戦後世界体制は、戦争の終結を前後して全世界にわき起こったプロレタリア世界革命の大波を、帝国主義が――スターリン主義の裏切りに助けられて――かろうじて圧殺した上に成立した、きわめて危機的な体制である。米帝を盟主とする戦後の資本主義・帝国主義は、スターリン主義圏との間に軍事的緊張関係を不断につくり出すことをテコに、むき出しの軍事力で世界を制圧することで、労働者階級人民に対するその搾取と収奪の体制を維持してきた。その決定的武器が米帝による核独占だった。
「原子力の平和利用」とは、その核独占をソ連の核保有によって打ち破られた米帝が、米帝の絶対的な軍事的優位を確保し続けるために新たな戦略を打ち出したことに始まる。1953年、当時の米大統領アイゼンハワーが国連総会で演説し、原子力に関する知識や技術を第一級の国家機密としてきたそれまでの方針を転換し、「平和利用」のための技術は友好国にも供与すると宣言したのが出発点だ。米帝は、核の拡散が不可避となる中で、米帝の核独占をより現実的に貫くために、各国の原子力開発を「援助」しつつ監視し統制する方式に転換したのである。
日帝の原発建設もまさにここから出発した。それは当初から一貫して核武装の完全な偽装形態だった。その提唱者は9条改憲論者の中曽根康弘であり、第2次大戦のA級戦犯だった読売新聞社主の正力松太郎であり、同じくA級戦犯で60年安保当時の首相だった岸信介である。中曽根らは、1954年のビキニ水爆実験と日本漁船の被曝を契機に爆発した日本の原水爆禁止運動が、反帝国主義の巨大な闘いに発展していくのを阻むためにも、「平和利用」のペテンを前面に押し出すことを必要としていたのだ。
原水禁運動の指導部だった日本共産党や社会党は、「原子力の平和利用」論に屈服すると同時に労働組合をめぐる攻防から逃亡した。特に日本共産党は、原子力エネルギーの開発それ自体は「科学の進歩」であると全面賛美した。彼らは「軍事利用」には反対するが「平和利用」には反対しない、むしろ半ば積極的に容認するという態度をとり、原発導入を事実上後押ししていった。
こうして始動した日本の原子力産業は、今日、国内に稼働中の原発54基に加え、核爆弾の材料であるプルトニウムを取り出すのに必要な再処理工場をも持つまでに巨大化した。それは日帝が、その気になればいつでも大量の核兵器を生産できる能力を持ったことを意味している。北朝鮮の「核の脅威」をあおりながら、実は日帝こそそれを何十倍、何百倍も上回る「核大国」として、朝鮮人民や中国人民を威圧しているのが現実なのである。
「原発利権」に群がる
第三に、原発は核武装への道を開いただけではない。それは同時に、資本の巨大な金もうけの手段となった。とりわけ資本主義・帝国主義の最末期である新自由主義のもとで、第一級の花形産業となり、帝国主義ブルジョアジーの腐敗と危機性を最も鋭く体現するものとなっていった。
その転換点となったのは、1982年の中曽根政権の登場である。すでに73年の第1次石油危機と74〜75年恐慌の爆発以降、原発建設は加速していたが、中曽根の登場は原発の増設に次ぐ増設に一気に火を付けた。それだけでなく、中曽根とレーガンの間で82年に交渉が開始され、87年に締結された日米新原子力協定のもとで、六ケ所村への再処理工場の建設や高速増殖炉「もんじゅ」の開発、プルサーマル(ウランとプルトニウムの混合燃料を使って原発を運転する)などの核燃料サイクル確立への第一歩が踏み出された。
中曽根は、周知のように日本での新自由主義攻撃の突破口を開いた国鉄分割・民営化を強行した張本人である。80年代の国鉄分割・民営化と総評解散は、同じくこの時期に強行された労働者派遣法の制定と一体となって、今日に至る労働者の圧倒的な非正規職化・無権利化に道を開いた。これと並んで中曽根がつくり出したのが、国鉄資産の売却や原発建設に伴って発生した新たな巨額の利権であり、そこに全ブルジョア社会があぶく銭を求めて群がっていく構造であった。
電力会社がばらまく金のもとに、政府高官はもとより与野党の国会議員、地方自治体の首長、学者・文化人、労組幹部などが大量に吸い寄せられた。財界と歴代の政権を中心に、国と地方の行政機関、裁判所、大学・研究所、マスコミ、労組幹部までが一体となって、原発推進のためなら何でもやるという状態が生み出された。「原子力村」と呼ばれているような、グロテスクな癒着と腐敗の構造が全社会的につくり出されていったのだ。
安全を根本的に否定
そこでは、安全への関心など最初から存在しない。そもそも原発は被曝労働を前提とする点でも、本質的に制御不能な技術であるという点でも、人間社会にとっての安全という思想を根本的に否定した上に成り立っているが、新自由主義はその上に、事故を起こさないための最後の歯止めさえ取り払った。
それを象徴するのが御用学者が先頭に立って推進した「原発は安全でクリーン」の一大デマキャンペーンである。東大教授や原子力の専門家という肩書きをもった連中が一斉に、「放射能はこわくない」「多重防護で絶対安全」「環境にやさしいエネルギー」などというウソをまことしやかに大宣伝し、大衆を文字通り”洗脳”して歩いた。その一方で、現実に起きている無数の事故は必死に隠し、地震による危険の指摘をも握りつぶした。そしてそれをこともあろうに「科学」の名をもって居直り、合理化した。その罪は万死に値する!
こうした御用学者の買収のために、東大には年間5億円もの金が東電から流れていたという。学問・研究自体が根底から歪められていたのである。新自由主義がこの底なしの腐敗を全社会にまんえんさせた。大学だけではない。新聞やテレビは丸ごと原発賛美の宣伝隊となり、疑問や批判の声はすべて排除される事実上の言論統制が行われた。
そしてまさに、電力資本が組織したこの「原子力村」に代表されるあり方こそ、最末期の資本主義における帝国主義ブルジョアジーの典型的あり方だ。この全矛盾の頂点でついに、「フクシマ」が大爆発したのである。
(3)御用労組幹部打倒し電産労働運動の魂を甦らせよう
第四に、国家と資本が癒着したこの巨大な構造物である原子力産業と対決し、全原発の廃止をやりぬく決定的な力はどこにあるのかということである。その鍵を握るのはやはり労働組合である。
今日の電力総連を先頭とする労組幹部が資本の手先となり、資本と一体となって原発推進の先頭に立ってきたことこそが、「フクシマ」を引き起こしたのだ。「フクシマ」は国家と資本の犯罪であると同時に、御用労組幹部による犯罪だ。逆に言えば、労働組合が、労働者が団結して資本と闘う武器としての本来の姿を取り戻すならば、現在のような資本のやりたい放題をこのまま続けることはできなくなる。
現場を実際に動かしている労働者、生産の担い手であり社会の本当の主人公である労働者が、団結の力で職場の支配権を資本の手から実力で奪い取ることが必要だ。それが原発の停止・廃止を実際に闘いとっていくことを可能にする。原発を廃止する闘いとは、電力産業の現場に階級的労働運動をよみがえらせる闘いそのものである。もちろんそれは、労働者が正規・非正規と重層的な下請け構造のもとで無数に分断され、原発推進派のウソと暴力による支配に長期にわたってさらされてきた現実の中では、多大な困難との格闘を必要とする。しかし、不可能なことでは断じてない。
戦後革命と電産労組
電力総連傘下の労働組合は、最初から今日のような札付きの御用組合だったわけではけっしてない。その逆である。1945年の敗戦直後、焼け跡の中から労働者階級が生きるために労働組合をつくって続々と立ち上がっていった時、その先頭で、最も戦闘的な闘いを展開していたのは当時の日本電気産業労働組合(電産)だった。電産労働者は、米占領軍=GHQの恫喝をもはねのけて停電ストに決起し、みごとな勝利を切り開いた。47年の2・1ゼネストを準備する過程で官公労とともに最大の主力となったのが電産だ。
当時、首都圏への電力供給のほとんどは福島県猪苗代湖の水力発電所によってまかなわれており、しかも電産猪苗代分会は1800人の組合員のうち350人が日本共産党員という、最大最強の組合であった。電産労働者の職場支配が京浜工業地帯の全工場にも影響を及ぼし、ブルジョアジーの息の根を止めることのできる鍵を握っていたのである。
日帝はこの電産労働運動の解体を、自らの延命と再建にとって絶対不可欠の課題とした。50年朝鮮戦争の前夜、レッドパージによって職場から追放された共産党員の最大多数が電産だった。だがそれによっても電産労働者の闘いをつぶすことはできなかった。朝鮮戦争のさなかにGHQの肝いりで結成された総評は、半年後には帝国主義者の期待を裏切り、「全面講和・中立」「軍事基地反対」「再軍備反対」を掲げて左旋回するが、それを牽引(けんいん)したのも電産だった。
これに対して日帝は、国家と資本の総力を挙げて電産攻撃にのり出した。その決定的手段となったのが、51年5月に強行された電力9分割である。政府管理の国策会社だった電力会社を民営化し、全国を九つの地域に分割して、発電・送電・配電を一括して行う9電力会社体制を発足させたのである。その上に立って52年、電産に対して統一労働協約の締結拒否と賃金・労働条件の大幅切り下げの攻撃が仕掛けられた。電産はこれに28波もの電源スト・6波の停電ストを含む86日間のストライキで必死に闘ったが、各企業ごとの第二組合の発生を許す中で敗北した。【なお、80年代の国鉄分割・民営化は、この電産つぶしをモデルにして行われたことが明らかになっている】
原発止めた電産中国
戦後革命期の労働運動を担いぬいた電産は、電力分割・民営化をテコとした労組破壊攻撃によって1956年には中央本部が解散に追い込まれ、解体された。だがそれですべてが終わったのではなかった。電産の中国地方本部は少数第一組合として生き残った。58年には九州で第二組合から再分裂した労働者が闘う新組合(九電労)を結成した。68年日放労長崎分会の反戦派労働者の闘いが爆発した時、地区労内で支援の先頭に立ったのは九電労の労働者だった。
重要なのは、70年代に入って電産中国の労働者が労働組合として原発反対闘争に真っ向から立ち上がったことである。74年、中国電力島根原発の運転開始に反対してストライキで決起し、77年には豊北原発の建設攻撃に対して地元の農民・漁民とともに決起、約1年間の闘いの末についに中止決定に追い込んだ。
闘う労働組合があるならば、電力資本の支配下にある労働者が原発反対を掲げて闘いに決起することはできる。そしてひとたび立ち上がったなら、たとえ少数組合であっても、資本が命運をかけた原発建設を中止に追い込むほどの力を発揮することができる――電産中国の闘いはこのことを事実をもって示している。
電産中国や九電労は最終的に90年代に解散、電力総連に統合されたが、闘う労働者の魂はけっして消え去りはしない。職場の深部に必ず生き残っている。一切は、労働組合の再生にこそかかっているのである。
連合打倒の闘いが鍵
今日、連合会長の古賀は、原発事故に対して日本の国内では「死の沈黙」を守る一方で、英文で世界に発信したメッセージの中で次のような大ウソをついている。いわく、「人々の健康に直接に影響する強さの放射線は、発電所の近接地域を除いて、まったく検出されていません」「北は遠く北海道から東京の西まで、原発事故による影響はありません。むしろ、日本の内外のうわさによって引き起こされた損害が、人々の生活と産業を阻害しているのです」と!
菅政権や経団連の米倉でさえストレートには言えないような悪質なデマを「労働運動の指導部」を名乗る者が平然と流す。これが連合の正体だ。こんなやつらをのさばらせておいて、労働者の生命をどうして守れるか! 今こそ打倒するために立ち上がらないでどうするのか。
連合打倒の闘いが全労働者の怒りを総結集して爆発し、国鉄闘争全国運動を先頭に日本労働運動の階級的再生を求める闘いが飛躍的な大前進を闘いとっていった時、電力労働者の中から再び、根源的な怒りの決起がわき起こってくる日は必ず来る。資本と御用組合の支配のもとにどんなにがんじがらめにされ、抵抗など何ひとつできないような状態に置かれていても、労働者が労働者である限り、人間としての尊厳と労働者としての誇りをかけて立ち上がる時が必ず来るのだ。労働者階級とはそういう存在なのである。
3・11情勢は、まさにそのことを可能にする巨大な流動情勢を生み出している。今こそ労働組合と労働運動をめぐる攻防に一切をかけ、全力で連合打倒の勝利をもぎとろう。
絶対非和解の激突へ
以上のことから導き出される結論は、ただ一つである。原発はその存在そのものが反労働者的であり、資本主義の腐敗の極致であり、人間社会に敵対している。労働者階級にとっても、また全人類にとっても、全原発の即時停止・廃止以外にとるべき道はない。
だが帝国主義者は原発推進を絶対にやめようとしないし、やめられない。そこに資本主義・帝国主義が帝国主義として生き残れるか否かがかかっているからだ。ここでの激突は、ブルジョアジーとプロレタリアートの絶対非和解の激突として、どこまでも発展していく以外ない。
突きつけられているのは根源的な問題だ。もはや資本の支配を打ち倒さない限り、労働者人民の未来はなく、人間が生きる社会も、自然も守れない。資本主義の全面的な転覆、プロレタリア革命の実現以外に、この社会を社会として再生させる道はない。このことがあらゆる意味ではっきりしたのである。
W戦後革命期の敗北をのりこえ労働者権力樹立めざし闘おう
(1)2・1ストを再び組織する巨大な闘いに挑戦しよう!
今や、プロレタリア革命権力の樹立へ向かってまっしぐらに突き進む時代が訪れている。戦後革命期の闘いを今こそ引き継ぎ、その敗北を断固としてのりこえて進むことが問われている。
敗戦直後の労働者階級と農民、全人民の大決起は、朝鮮・中国・アジア人民数千万人を虐殺し、日本人民もまた三百数十万人が犠牲になった戦争による廃虚の中から、こんな戦争を強行した国家と社会を根本から変えたいという、心の底からの欲求のほとばしりであった。それは体制の全面的変革を求める、まぎれもない一個の革命であった。
その核心は、第一に、日々の生存の確保が死活問題となる中での、一人ひとりの労働者人民の死活をかけた「生きさせろ!」の叫びと決起であった。第二に、天皇と日帝支配階級の戦争責任に対する激しい、絶対に許さないという火のような怒りの爆発である。第三に、闘いの中心に労働組合がすわり、あらゆる決起を一つに結合する巨大な求心力と指導力を発揮したことだ。これら三つの要素が互いに結合し、過去に類例のない空前の大決起に発展したのである。
戦時中、労働組合はすべて解散され、戦争への総動員機関である産業報国会に変質させられていた。だが労働者は、何もないところから直ちに闘いを開始した。敗戦の年の1945年10月にわずか4組合・4千人だった組織労働者の数は、約1年後の46年末には1万7千組合・485万人へと急増した。ストライキ、デモ、職場占拠、生産管理闘争が次々と闘われ、組合結成と同時に争議が始まり、あるいは闘いの中から組合が誕生した。農民・漁民や、空襲で焼け出され路上生活を強いられていた人びとも、次々と労働者の闘いに合流した。
これらの闘いは47年、当時の組織労働者の99%が参加したという2・1ゼネストを準備するところまで上りつめていった。その主力は国労や全逓を先頭とする官公労と、電産や炭労を中心とする基幹産業の労働組合だった。支配階級が統治能力を失い、旧来の国家体制が総崩壊する中で、これらの職場を労働者が完全に支配し、生産管理をも行う力をもったことが決定的だった。これが日帝を打倒の寸前まで追いつめた。
敗北をのりこえる道
だが当時の労働者階級の闘いは残念なことに、いくつかの点で致命的な弱点を抱えていた。最大のものは、プロレタリア革命の思想と路線で武装された真の労働者革命党をもっていなかったことであり、その結果として「産業復興」イデオロギーに屈服したことである。当時の労働者階級の指導部だった日本共産党は、スターリン主義の党として、プロレタリア革命を最初から否定していた。逆に資本主義のもとでの産業と経済の「復興」を掲げ、GHQが主導する「民主的改革」を支持する立場に立っていたのである。これが2・1ストの挫折(GHQの中止命令への屈服)を招き、最終的に戦後革命を敗北に導いた。
また、やはり革命の路線が欠落していた結果として、戦後の農地改革において労働者と農民の分断、労農同盟の破壊を許したことや、朝鮮革命・中国革命との結合を意識的に闘いとる立場に立てなかったことも大きかった。
当時は朝鮮半島や中国などアジア全域を始め、世界全体が革命情勢に突入しており、日本革命の勝利は世界革命の勝利に直結する位置をもっていた。日帝はもちろん、第2次大戦の戦勝国として日本を占領した米帝もこのことに震え上がり、プロレタリア革命への発展をなんとしても阻止し、「民主化」の枠内に押しとどめることに全力を挙げたのである。その結果が、日米安保体制によって補完される戦後の憲法体制と、そのもとでの日帝の延命であった。
今日のわれわれはしかし、この敗北をのりこえることのできる地平をすでに完全に切り開いている。何よりも、革共同の綱領草案は今日、マルクス主義を全面的に復権させ、反帝国主義・反スターリン主義プロレタリア世界革命の思想と路線を、1917年ロシア革命を引き継ぐものとして明確に打ち立てた。そして日本の労働者階級と農民はその最先端で、動労千葉の闘いや三里塚闘争、さらに国境を越えたプロレタリアートの国際的団結という、戦後革命期の闘いを最も深いところでのりこえる地平を獲得しているではないか。
ここに圧倒的な確信をもち、2・1ゼネストを再び組織するような大闘争に、今こそ全力で立ち上がっていく時を迎えたのである。
エジプト革命に続け
世界革命情勢はますます成熟している。エジプト2月革命に始まる北アフリカ・中東人民の革命的決起の爆発は、21世紀のプロレタリア世界革命へ向けたまったく新たな、決定的な情勢を生み出している。
新自由主義は、民営化・外注化・非正規職化によって国内の労働者を極限的に搾取する体制をつくり出すとともに、工場の海外移転によって東欧などの旧ソ連圏や、中国、アジア、中東・北アフリカ、中南米諸国などの人民を超低賃金労働力として徹底的な搾取・収奪の対象としてきた。それは各国の社会構造・産業構造をも破壊し、膨大な労働者階級を全世界的規模で生み出した。
大恐慌は、この労働者階級を一挙に、生きるか死ぬかのぎりぎりの状態にたたき込んだ。そして、戦後世界体制の矛盾の集中点である中東・北アフリカにおいてついに21世紀革命への火ぶたが切られたのである。
それは、労働者階級と資本家階級の対立こそが現代世界の対決基軸であり、労働者階級の解放の中にこそあらゆる差別・抑圧からの解放があることを、1917年のロシア革命に続いて、あらためて全世界に示した。そして労働組合に組織された労働者の階級的団結こそが、ブルジョアジーのあらゆる反革命的あがきを打ち破って、革命を勝利に導く決定的力であることを突きつけた。
今日、エジプト革命はムバラク体制を打倒したところから、労働者権力の樹立に向かう革命の第二段階に入り、暫定権力を握った軍と労働者階級との激突が開始されている。その勝利を決めるのは、エジプト国内での闘いの前進とともに、全世界の労働者階級との団結だ。すでに世界のいたるところで、エジプト革命に連帯し、エジプトに続こうという闘いが始まっている。
帝国主義者のリビア軍事介入は、この波及をなんとしても阻止し、国際ブルジョアジーの命綱である石油支配を守ろうとする必死のあがきだ。だがそれは、戦争か革命かの情勢をますます全世界的に、白熱的に激化させていくことになる。
これと並んで、今や東アジアが大激動の渦中に入ったのだ。昨年11・23朝鮮半島での砲撃戦発生に続く3・11東日本大震災の発生は、日本・朝鮮・中国という東アジア全域をきわめて不安定で危機的な状況にたたき込んでいる。しかも日米安保体制は、普天間基地問題をめぐる沖縄労働者人民の怒りの爆発によってぐらぐらに揺さぶられ、それ自体が崩壊のふちに立たされている。
米帝と日帝は、この危機を突破するためにも、北朝鮮・金正日政権の転覆をかけた朝鮮侵略戦争に突き進んでいくしかない。それは同時に、韓国や日本の労働者階級に対するむき出しの圧殺攻撃となる。ここにおいても階級的激突は必至であり、それは革命と反革命との非和解の激突となっていく。
3・11を契機に、今や日本革命がエジプト革命と並ぶプロレタリア世界革命の重大焦点にせり上がってきたのである。このことを重大な決意をもって確認し、断固として前進しよう。
(2)体制擁護派との党派闘争貫き組合権力奪還へ進もう
一切は、労働組合と労働運動をめぐる巨大な分岐と大激突に勝ちぬくことにかかっている。資本主義のもとでの「復興」か、資本主義打倒の革命か。現在の国家体制の防衛か、その革命的転覆に向かって進むのか。この一点をめぐって、連合中央に代表される帝国主義労働運動との間で、また日本共産党・全労連や協会派などの社民勢力を始めとした体制内労働運動との間で、全労働者、全大衆を巻き込んだ大党派闘争がすでに始まっている。
ここにおいて、動労千葉労働運動の切り開いてきた地平に立ちきること、その路線を貫いて闘うことが今こそ決定的に重要である。
動労千葉が呼びかけ
動労千葉が、昨年4・9「政治和解」の大攻撃と真っ向から対決し、これを打ち破って進むことを全国の闘う労働者人民に訴えて立ち上がったことは決定的だった。この呼びかけに全国の闘う労働者・労働組合や人士が呼応し、ともに決起して開始された国鉄闘争全国運動は、国鉄1047名解雇撤回闘争の新たな不屈の発展をつくり出した。それは同時に、新自由主義の前に果てしない屈服と後退を重ねてきた日本労働運動が、階級的な力と団結を取り戻していく画期的な出発点となった。一言で言えば、ここから労働組合と労働運動再生への本格的なスタートが切られたのである。
それを可能にしたのは、動労千葉が第二の分割・民営化攻撃とも言える検修・構内業務の全面外注化攻撃と全面対決し、これを実力阻止した闘いのもつ勝利性と階級的正義性にあった。動労千葉が72年以来営々と築き上げてきた反合理化・運転保安闘争の路線が、新自由主義攻撃をその根幹から打ち破る路線として偉大な力を発揮し、その力を全社会に示したのである。そこには、戦後の体制内改良主義の労働運動とはまったく異質な、しかし労働組合本来のあり方をまっすぐに貫いた闘いがあった。すなわち、資本との絶対非和解を貫き、仲間の団結と労働者としての誇りを何よりも大事にし、団結を一切の総括軸にして前進していく闘いだ。
本年1〜3月、動労千葉は、3波のストライキ決起をもって外注化を再び阻止した。その地平の上に青年部建設・組織拡大への戦闘宣言を発し、JR体制の打倒へ向けた全JR労働者の総決起をつくり出していく闘いに突入した。そして3・11東日本大震災による階級情勢の激変に対して被災地救援への総決起を呼びかけるとともに、階級的労働運動が今こそ主流派として躍り出るため、これまでとは次元を画するまったく新たな闘いに突入することを訴えた。
動労千葉の呼びかけに全面的に応え、闘う労働組合をよみがえらせるために、これまでをはるかに超える激戦激闘に突入しよう。情勢は、「いま立たずしていつ立つのか!」を全党の同志に、すべての闘う労働者に突きつけている。戦後革命期を超える階級的労働運動の大爆発をつくり出す時は今だ。あらゆる職場で総決起を開始しよう。連合支配の打倒に向かって攻め上ろう。
闘う労組甦らせよう
この闘いはしかし、これまでの延長線上にはかちとれない。根本的な飛躍が求められていることをはっきりさせなければならない。
3・11情勢下の闘い、反失業・反原発の闘いは、まさに戦後革命期の原点に再び全労働者、全人民を立たせるに等しいものである。闘わなければ生きることもできない現実と、国家と資本の犯罪に対する怒りはむしろもっと深く激しい。そして先に述べたように60年前の先輩たちとは異なり、今日のわれわれはプロレタリア革命の思想と路線を明確にもっている。だがただ一つ、最も決定的なものが欠けている。この革命の中心軸となり、革命の成否を決する最大の主力となる闘う労働組合と労働運動の存在だ。
今日の日本の労働運動の恐るべき後退と変質・腐敗の現状をまず根本的に覆すことぬきに、革命など問題にならないのだ。腐敗した幹部から組合権力を実際に奪い返し、御用組合を下から闘う組合に画然とつくり変えていく闘いが、全国・全産別の数千、数万という職場に次々とわき起こってこなくてはならない。職場の全労働者の怒りが底の底から解き放たれる必要がある。そのためにどうするかを真剣に考え、一つひとつ必死にこじあけ、資本・権力・御用幹部との激しい攻防の中から、戦後革命期の労働者階級がもっていたような強固な職場支配権を再び圧倒的に打ち立てていく必要がある。
さらに、そのほとんどが未組織の状態にある非正規職労働者、青年労働者の怒りの結集軸を明確に打ち立てて闘うことが求められている。1万や2万ではなく数十万、数百万の労働者がゼネストや首相官邸包囲といった革命的行動に立ち上がっていくような、労働者階級の組織された力をここ数年のうちに急速に築き上げていかなくてはならないのだ。
(3)国鉄闘争全国運動を軸に反失業・反原発の大運動を
そのためにまず必要なことは何か。次の四つの課題に断固として挑戦することだ。
国鉄決戦が正念場に
第一に、昨年来の闘いを引き継ぎ、国鉄闘争全国運動をさらに大発展させていくことである。
「政治休戦」の大攻撃、「産業復興」を合言葉に襲いかかる攻撃は、労働組合破壊を徹底的に貫く攻撃であり、昨年4・9反革命のすさまじいエスカレートである。闘う労働組合と労働者への弾圧も激化している。だが恐怖し、追い詰められているのは敵の側だ。闘う労働者が職場の団結にかけて現場から立ち上がるなら、恐れるものは何もない。
国鉄闘争全国運動が呼びかける6・5全国集会を、3・11情勢と対決し、階級的労働運動の一大飛躍をかちとっていく集会として大成功させよう。1047名解雇撤回闘争の旗をさらに高く掲げて闘おう。被災地支援の闘いと結合し、動労千葉を支援する会、共に闘う国労の会を拡大し、階級的労働運動派の闘いの拠点を全国につくり出そう。
国鉄決戦は今や、最大最高の正念場に突入している。分割・民営化攻撃の最先兵だったJR総連カクマルの没落と総崩壊が始まっている中で、ここでJR体制を打倒することが階級的労働運動が主流派へと飛躍する鍵を握っている。そして国鉄決戦の命運を握っているのが平成採の青年労働者の決起である。動労千葉・動労水戸・動労西日本など動労総連合の闘い、国労共闘の闘いを大前進させよう。
尼崎事故から6年、JRの現場では労働者の死亡事故がますます増えている。反合・運転保安闘争にJRの全職場から決起しよう。国労共闘を先頭に、国労の解散を絶対に許さない闘いをやりぬこう。
反失業闘争の爆発を
第二に、反失業闘争の全国的な大爆発をつくり出すことである。
全国労組交流センターは、メーデーの「自粛」と「復興支援集会」へのねじ曲げという重大攻撃を打ち破って、5月1日のメーデーを反原発・反失業メーデーとして闘いぬいた。この場で発せられた「全国震災解雇労働相談センター」結成の呼びかけは、3・11を契機に吹き荒れる大失業攻撃を全労働者の怒りの総決起に転じていく戦闘宣言である。何よりも被災地を先頭に、最も深刻な状況に置かれている青年労働者、非正規職労働者の根源的な怒りを総結集し、まさに「生きぬくための闘い」として反失業闘争の爆発をかちとろう。
大恐慌下の大失業は、3・11を受けてすさまじい勢いで増加し、深刻化している。何百万人もが職を失い、路頭に放り出されつつある。職場に残った労働者も、極限的な労働強化の地獄にたたき込まれている。団結して闘うことだけが生きる道だ。敵の攻撃を逆に階級的団結のチャンスに転じよう。
4大産別の労働者は今こそ、正規・非正規の分断を打ち破り、解雇を許さない闘いの先頭に立とう。郵政職場や自治体職場で激化する雇い止めを阻止しよう。昨年、国鉄闘争全国運動とともに闘いとられた合同・一般労組全国協議会が、その活動をフル回転させる時が来た。全国の職場と地域で未組織の仲間を労働組合に結集させ、新たな団結を無数につくり出す闘いをやりぬこう。
全国学生は反原発の大闘争に決起しよう
第三に、福島を先頭とした全労働者と農民・漁民の「原発なくせ!」の巨大な怒りの決起と合流し、反原発闘争の大爆発を闘いとることである。この闘いを、国家と資本の犯罪を暴き、ヒロシマ・ナガサキとともに「フクシマ」を二度と許さない世界的な大運動に発展させることである。
自殺した農民、漁場のすべてを奪われた漁民、子どもの命を守ろうと必死に立ち上がった母親たちの、悲痛な叫びと悔しさ、怒りをわがものとしよう。これまでの限界を画然と突破していく闘いをやりぬこう。教育労働者は福島の母親に連帯して決起しよう。広島・長崎の被爆者の闘いや、推進派によるあらゆるいやがらせにも屈せず原発反対を不屈に貫いてきた人びとの闘いにあらためて学び、かつての原水爆禁止運動をものりこえる歴史的大闘争をつくり出そう。その中心に、何よりも人類の未来を背負う青年・学生が、そして闘う労働組合が立とう。
とりわけ学生戦線はこの闘いの最先頭で、最大の牽引車となって総決起しよう。原発推進で労働者人民の命と引き換えに利益を得てきた連中の中でも、最も犯罪的なのが御用学者だ。彼らが国家・資本の手先となり原発推進・増設のためのデマゴギーを流し、ついには大学を丸ごと資本に奉仕する場に変質させてきた。「放射能はたいしたことない」の大ウソをデッチあげるためだけに、放射線医学の「研究」が行われてきたのだ。こんな大学はぶち壊し、御用教授を一人残らず追放して、大学の本来の主人公である学生の手で根本からつくり変える以外ない。法大を先頭に今こそ、新自由主義大学解体の闘いに立ち上がろう。
今年の8・6広島―8・9長崎は、きわめて重要な闘いとなった。8・6広島集会を、反原発・反核・反戦の世界大会としてかちとろう。
国際連帯の大発展へ
第四に、国際連帯の飛躍的発展をかちとることである。
大震災と原発大事故に立ち向かい、生きぬくための闘いを開始した動労千葉を先頭とする日本の闘う労働者・労働組合に、全世界の労働組合や労働者から熱烈な連帯と支援の物資・カンパが寄せられている。とりわけチェルノブイリを超える原発大事故という世界史的大惨事に対し、これを資本主義による犯罪として告発し、全原発の廃棄と全世界的な体制変革に向かってともに進もうというアピールが発せられている。この国際連帯をさらに強め、拡大し、世界革命へ向かって進撃するプロレタリアートの国際的大隊列をつくり出そう。
日本国内で、在日・滞日労働者との民族・国籍・国境を越えた団結をつくり出すことはその重要な一環だ。ここでの一層の前進を切り開こう。
三里塚・沖縄先頭に
これら四つの課題への挑戦の中から、ブルジョアジーの打倒、プロレタリア権力の樹立を実際にやりぬくことのできる階級的な力と戦列を、強固に築き上げていこう。階級的労働運動の大発展をつくり出し、そこに社会の根本的変革を求めるあらゆる諸階級・諸階層人民の合流と決起をかちとろう。
労農同盟を柱に不屈に闘いぬかれてきた三里塚闘争、新たな発展を切り開きつつある沖縄闘争、弁護士戦線を先頭にした裁判員制度との闘い、星野文昭同志奪還の闘い、部落解放闘争を始めとする諸戦線の闘いなど、階級的労働運動の前進と一体となってかちとられてきたこの間のすべての闘いの前進を、四つの課題と結合し、革命への道を積極的に切り開く闘いとしてさらに発展させていこう。
4月統一地方選挙は、相模原・杉並・八尾のすべてで3・11情勢と真っ向から激突し、激烈な闘いとなった。八尾では共産党や解同本部派との大党派闘争を通して末光道正市議の堂々の再選をかちとった。杉並と相模原では当選には至らなかったが、唯一の原発絶対反対派として最後の最後まで路線を貫いて闘い、文字通りの内乱的分岐をつくり出し、青年労働者の怒りの決起との感動的な合流を闘いとった。
これまでの選挙闘争とは次元を画する闘いに突入し、〈革命を準備する選挙闘争>としてやりぬき、反失業・反原発の大運動を組織する出発点が圧倒的に築かれた。ここからさらに、全国・全戦線で白熱的な決戦に打って出よう。
X巨大な労働者人民の怒りと結びつき決定的に組織しよう
この決戦をやりぬくにあたって、わが革共同に突きつけられている課題はきわめて大きいことをすべての同志に訴えたい。求められているのは、党自身の根本的な飛躍と変革である。
一言で言えば、革共同が、真の労働者階級の党、マルクス主義・レーニン主義の党としてぶっ立つことである。党の全組織が、一つ残らず本物の組織者集団に生まれ変わることである。
われわれ自身の内部にまだ残っているサークル主義的な傾向を一掃しよう。自分たちだけの小さな世界に閉じこもって自己満足しているようなあり方は、もう許されない。どんなに正しいことを言っていても、それが実際に多くの労働者の心をつかみ、仲間を拡大し、階級全体の団結と決起をぐいぐいと組織していくものにならなければまったくの無力でしかない。今必要なのは、革命党の党員が、巨万の労働者人民の怒りと完全に結合することだ。この怒りを国家と資本に向けて解き放つ闘いの先頭に立ち、その決定的な組織者となることだ。
綱領草案は次のように提起している。「プロレタリア革命は、階級対立の中から自然に成長して実現されるものではなく、自らの歴史的使命を自覚したプロレタリアートによるブルジョアジーの打倒・労働者階級の政治的権力樹立という、目的意識的な闘いをとおして初めて達成される」(第3項)。さらに「労働者階級は党をつくり出すことで、自らを一個の政治勢力として登場させる。党は階級闘争の先頭に立ち、その中でつねに労働者階級の部分ではなく全体の利害を代表し、運動の現在だけでなく未来を体現し、社会革命の諸条件とプロレタリアートの歴史的使命を全階級の前に正面から提起して闘う」(第7項)と。
党とはこうした目的意識的な闘いを、労働者階級の中にあってその最先頭で、自らの全生活・全人格をかけて担いぬく存在である。党は労働者階級の闘いの最前線に常に身を置き、労働組合の闘いと結合して、労働者の階級的・大衆的な怒りと要求の最も優れた体現者として行動し、最も困難な任務を率先して引き受けて闘うのだ。ロシア革命を勝利させたボルシェビキ党は、まさにそうした党として自己を形成したのである。
革共同を今こそそのような党として建設しよう。そのために必要なあらゆる自己変革をやりぬこう。綱領草案の大学習運動を組織し、マルクス主義であらためて自己を徹底的に武装して闘おう。
非・非の党の建設を
革命情勢の深まりは、国家権力との死闘をますます激烈化させる。敵階級がプロレタリア革命へ向けた労働者階級の前進を阻むために、その中心に立つ革命党の組織絶滅を狙って一層凶暴に襲いかかってくるのは不可避である。党の非合法・非公然体制の強化は第一級の任務だ。どんな弾圧をもはねのけて進むことのできる党、権力との死闘に勝ちぬく党の強固な建設をかちとろう。
すべての闘う労働者階級人民は革共同に結集し、全世界の変革へともに闘おう。マルクス主義青年労働者同盟、マルクス主義学生同盟に結集する青年・学生の同志はその先頭に立ち、自分自身と全階級・全人民の未来をかけてプロレタリア世界革命への扉を押し開こう。
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週刊『前進』(2486号10面1)(2011/05/02 )
世界革命きり開く中東の闘い
全権を握る軍政権の打倒へ不屈に前進する労働者階級
ムバラク打倒後のエジプト革命
エジプトの労働者階級は今、2月革命後の力の均衡を破り、国家権力を解体し、自分たち自身が権力を握る闘いに入っている。4月8日のタハリール広場の100万人集会では、現政権=軍最高評議会タンタウィ議長を始めとするムバラク体制の不正腐敗・弾圧の責任者の解任・処罰要求を突きつけた。これに実弾射撃、2人の虐殺で応えた軍に対して、労働者人民は一歩も引かずに闘い、タハリール広場を守りぬいた。中東全体の革命、世界革命への進撃が始まったのだ。
治安警察を実力で解体 ムバラク逮捕要求貫徹
弾圧機構温存
エジプト革命の現局面に至る過程で決定的だったのはSSI(国家保安捜査局)の解体だった。
ムバラク辞任後に権力を握った軍最高評議会は、民主的改革を約束し、旧政権の何人かの要人を「腐敗」の容疑で逮捕するなど、革命を認めるかのような姿勢を示した。だが、この新政権は、SSI廃止の要求には応じなかった。10万人のSSIこそが警察国家エジプトの核心中の核心であり、将来の革命圧殺のためには絶対に必要だからだ。
そして、支配階級と体制内勢力は「革命」「民主化」を賛美しつつ、「過去ではなく、未来へ進もう」「仕事に復し、エジプトを再建しよう」というスローガンを宣伝した。その陰で軍は労働者のストライキを選別的に弾圧してきた。
2月中旬、スエズでは座り込み実力ストライキに決起した労働者を軍警察(憲兵隊)が逮捕した。釈放を求めて結集した仲間や家族に軍の車両を突っ込ませ、高齢の女性をひき殺した。カイロでも座り込みストライキに決起した鉄道労働者が5人逮捕された。大宣伝によって大衆的に「日常への復帰」のムードを作り、「一部の活動家」を孤立させて撃破しようという作戦だった。
(写真 軍と警察を撃破してSSI【国家保安捜査局】本部に突入、占拠したエジプトの労働者【3月5日 カイロ】)
経営者・官製労組を追及!
だが、労働者にとって2月革命の勝利は、事の始まりにすぎない。大恐慌の中で激化した失業、物価高騰、過酷な労働条件に対する怒りは、ますます高まり、経営者や官製労組の不正腐敗や弾圧の追及闘争が大爆発している。
各官公庁、国営石油ガス会社などでは2月革命中やその直後に旧経営者を追放したが、3月、4月になって民間工場でも大きな闘いが起こっている。たとえば、国営企業をインドネシア資本が07年に買収して経営されていたシュブラ・エルコムの繊維工場では、解雇撤回、安全確保、不当な安値で国有財産を売却した当局と資本の癒着の追及、工場の再国有化を求めて3月初めから1カ月以上の座り込み占拠を行っている。
こうした闘いは支配階級の存続そのものを脅かす。国家権力は必死になって弾圧してくる。だから労働者は国家権力機構の粉砕を必ず正面課題にせざるを得ないのだ。
証拠書類奪取
3月4日、5日、エジプトの労働者人民は、首都カイロ、第二の都市アレクサンドリアを始め、全国各地のSSIビルに突入し、占拠した。カイロのSSI本部ではシュレッダーにかけた書類を満載したダンプカーを摘発し、「SSIの証拠隠滅を許すな!」という怒りで付近の大衆を組織し、軍と警察のSSI本部防衛部隊を撃破して突入した。
処分しきれなかった書類から得た情報の多くがインターネットで公開された。
第一に、SSIがコプト教会爆破・虐殺をした証拠だ。今年1月1日の新年ミサの時にアレクサンドリアでコプト教会(伝統的なエジプトのキリスト教会)が爆破された事件は、SSIの仕業だったという証拠もあがった。ムスリムとキリスト教徒(人口の約10%)の宗教的な対立をあおり、分断することによって労働者階級人民の団結を破壊し分断する策動にムバラク体制は全力をあげていたのだ。
第二に、選挙の不正操作を行った裁判官についての書類など、官公庁、民間企業幹部の犯罪行為、スパイの身元などの証拠が多数入手できた。
社会のあらゆる部署からムバラク独裁の共犯者たちを追放していく闘いを促進するものだ。
第三に、SSIと並んで官製労組のETUC(エジプト労働組合総連合会)が2月3日、4日のタハリール広場の襲撃(「ラクダの戦闘」)の主犯だったことの証拠だ。
4・8大集会
4月8日、カイロのタハリール広場で旧政権の腐敗と弾圧の加担者の処断を求める「腐敗一掃の金曜日」が行われた。軍は、この日の前後に何度も部隊をタハリール広場に突入させ、9日未明には2人を虐殺したが、労働者部隊はバリケード戦で軍を撃破して広場を守り抜いた。
この集会には軍の禁止令に公然と反抗して、多数の陸軍下級将校が軍服姿で登場した。2月革命の時は、軍司令部は兵士・下級将校の反乱を恐れて、デモ隊への弾圧を命令できなかったが、革命側も下級将校をデモに参加させるところまでは獲得できていなかった。そうした均衡が破られたのだ。
この力関係の中で軍最高評議会は4月13日、ついにムバラク逮捕に踏み切った。汚職容疑と1〜2月のデモ隊への発砲・殺害命令をした容疑だ。
このようにエジプト労働者階級は、支配階級の全力をあげた圧殺策動を押し返し、とどまることなく前進している。ロシア革命でいえば「10月革命」こそ次の課題だ。
リビア、シリアで労働者人民と独裁政権が激突
チュニジア、エジプトでの革命の勝利は、全中東の労働者人民の積もりに積もった怒りを連鎖的に爆発させている。リビアでも2月15日、北東部ベンガジでの反体制派人権活動家の拘束に抗議し数百人の住民が決起、41年間のカダフィ独裁体制を打倒する闘いが開始された。これへの警官隊の激しい弾圧に対する2月17日の「怒りの日」の闘いで、一気に労働者人民とカダフィ政権との激突へと発展していった。
16日と17日の反政府デモでは暴力的弾圧によって24人が殺害されたが、労働者人民は屈しなかった。むしろこれに抗議し、カダフィ退陣を求める闘いが東部地域の諸都市に瞬く間に拡大していった。それは、カダフィ政権による石油利権の独占と腐敗への弾劾とともに、03年の米帝との関係改善以降、カダフィ政権が米欧資本を導入して新自由主義政策を満展開し、労働者人民の生活を破壊してきたことに対する根底的な怒りの爆発であった。
労働者人民は各都市ごとにさまざまなソビエト的組織を形成し、当初から軍隊と激突しながら、兵士を丸ごと獲得する闘いに勝利した。総崩壊の危機に直面したカダフィ政権は、特殊部隊や傭兵(ようへい)を総動員した残虐な空爆・砲撃で必死に延命を図っている。
巨大な石油利権の喪失の危機に直面した欧米帝国主義、とりわけ米帝は、この時点で中東諸国とリビアにおける労働者人民の革命を圧殺することを決断した。米帝は有力な産油国リビアの革命を暴力的に圧殺し、親米産油国のバーレーンやサウジアラビアへの革命の波及を阻止しようとしているのだ。
(写真 政府軍から奪った戦車とともに進む反カダフィ派民兵【4月22日 リビア・ミスラタ】)
「国民評議会」は米帝の画策
こうして米帝は、リビア国内に「怒りの日」からわずか10日後の2月27日に「国民評議会」なるカイライ暫定政府を創設した。実権を握ったのは3月23日に暫定政府の首相に任命された前リビア国家経済開発局長のマフムード・ジェブリルである。ジェブリルは米国で教育を受け、「米国に近い考え方をもつ重要な(米国の)対話相手」(ウィキリークスが暴露)であり、首都トリポリの米国大使館と密接な関係を有していた人物だ。評議会の軍事面での実権を渡されたハフテ大佐は、1980年代にチャドで反カダフィ運動が開始された際に、米帝とイスラエルから2千人の反カダフィ軍を与えられた人物だ(同)。ハフテはこの運動に失敗した後、CIAの手引きでアメリカに亡命していた。
米帝はこれらの人物に資金と武器を供与し、ハフテが組織した部隊を基盤にして「リビア救国国民戦線」を組織させた。
(写真 シリアの港湾都市バニアスでアサド政権の退陣を求めて労働者がデモ【4月20日】)
米欧がリビア侵略戦争開始
その上で米帝は、労働者人民の革命を圧殺し国民評議会派のカイライ政権を樹立して利権を確保するために、軍事介入を開始した。3月19日から開始された米仏英伊などによる軍事侵略は、「リビアの国民をカダフィ軍の攻撃から守る人道的措置」という口実で行われた。だが実際には、米軍艦船からの160発以上の巡航ミサイル攻撃やB2ステルス戦闘爆撃機などによる空爆、仏空軍によるリビア軍戦車や軍事施設、輸送路などへの空爆、米軍無人機による政府軍歩兵などへの攻撃が、多数のリビアの住民を巻き込むことも辞さずに強行された。しかも許しがたいことに、戦車破壊のために大量の劣化ウラン弾が使用され、住宅地に放射性物質がまき散らされた。
にもかかわらず、米英仏軍はカダフィの軍隊を解体することができず、国民評議会派の軍隊は劣勢に立たされたままである。なぜなら、国民評議会派が労働者人民の革命的決起の成果を奪い取り、帝国主義諸国と連携するブルジョア的国家を再建しようとしていることを、多くの労働者人民が知っているからである。労働者人民の全面的支持のない軍隊では衰退したカダフィ軍にも勝てないのだ。
米帝はカイライ政権を一挙に樹立することもできないまま、リビアにおける利権をめぐる帝国主義諸国間の対立、NATO内の利害対立などにも対処しながら、生きるため革命に決起した労働者人民と激突せざるを得ない状況に追い込まれている。4月20日までに英仏伊は軍事顧問団派遣を決定した。米欧の帝国主義は地上軍の本格投入で侵略戦争を一段とエスカレートさせようとしている。だが、リビアの労働者人民は必ずやこうした侵略戦争を跳ね返す闘いに決起するであろう。
アサド体制の護持狙う米帝
シリアでも、エジプト革命の影響を受け、3月下旬からアサド独裁体制に対する労働者人民の民主化要求の全国的デモが爆発した。これに対しアサドは治安部隊による激烈な弾圧を強行、数百人の労働者人民を虐殺した。アサド政権は、開始されたシリア革命を圧殺するために、弾圧体制を全面的に強化する一方、48年ぶりに非常事態令を解除し、オタリ内閣の総辞職と政治犯の釈放、政治改革を行い、労働者人民の怒りの沈静化を図っている。だが、アサド体制打倒の闘いは、ますます巨大な波となって全国に波及している。
米帝は、中東革命の波が中東の大国・シリアに波及したことに驚き、米帝の中東支配を最後的に崩壊させる「第二のエジプト革命」を阻止するために、アサド体制護持の方針を打ち出している。米帝は、カダフィと同様に労働者人民を虐殺しているアサドに対しては軍事介入をしないとする声明を直ちに出したのだ。エジプトに次ぐシリアの革命はイスラエルを重大な危機にたたき込む。これを恐れる米帝のアサド体制護持路線と対決して闘うシリア人民と連帯して闘おう。
中東石油の確保と原発推進に死活かける日帝
エジプト革命は、モーリタニアからスーダンまで、そしてイエメンからシリアまで、北アフリカ・中東のすべての国の労働者階級を激励し、革命が広がっている。
この地域は全世界の石油生産量の3分の1、埋蔵量の2分の1を占めており、ここの支配こそがアメリカ帝国主義の世界支配の要だった。
だが、アメリカ以上に中東革命に打撃を受けているのは日本帝国主義だ。
日帝は主要帝国主義の中で唯一、超巨大石油企業や超巨大な石油・天然ガス開発利権を持っていない。大恐慌下での争闘戦の激化の中で、日帝のエネルギー基盤は最も脆弱(ぜいじゃく)なのだ。そのため日帝は、すでに60年代末〜70年代初めの米帝のベトナム敗戦過程から石油の大量備蓄プロジェクトを開始している。この過程で行われた沖縄のペテン的「返還」と並行して、石油備蓄基地建設が沖縄金武湾で強行され、全国的に拡大されていった。
こうして日帝は、一方で160日分以上の膨大な石油備蓄をするとともに、原子力を「純国産エネルギー」と位置づけて推進しているのだ。ウランは輸入品だが、石油の100万倍の熱量を出すので、原発建設は超大量の石油備蓄に等しいということだ。
日帝は、資源の争奪戦の中で“対外的に強い態度に出る自由”を確保するために死活的に原発を必要としている。だから史上最悪の福島原発事故を起こしてもなおかつ居直り、原発をさらに推進しようとしているのだ。
国鉄闘争を軸に労働運動をよみがえらせ、原発推進=国際競争・争闘戦激化の道を粉砕し、エジプト・中東、全世界の労働者階級との団結の道を切り開こう。原発なしには生きられない日帝を打倒することこそ、エジプト革命との連帯だ。
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週刊『前進』(2486号10面2)(2011/05/02 )
国際労働運動 6月号
原発廃止へ大運動を
歴史的な重大事故の中で、本号はページ数を増やして原発大特集を組んだ。被曝(ひばく)労働が不可欠とし、労働者階級と相いれない原発は廃止しかありえないという立場を全体に貫いている。
第1章は、原発政策を守るために福島原発事故を拡大し、労働者人民を犠牲にする民主党・連合政権を弾劾する。そして、事故を激烈化させた原因が新自由主義、特に民主党・連合の新成長戦略にあることを暴いている。
第2章は、巨大独占資本の利益と原爆製造のために、人体実験でおびただしい犠牲者を出しながら核技術が開発された歴史を示す。その中で、核開発を守るために「人体への影響」が研究され、その基準が現在も使われていることを明らかにしている。
第3章は、震災・津波と原発事故の危機の中で、生きるために団結をつくり出し決起している労働者階級、農民、漁民、自営業者に反原発運動の巨大な陣形をつくろうと提起している。そのために、原発政策を推進している連合や“安全な原発”がありうると宣伝して反原発運動を破壊する日本共産党を批判する。そして、電力労働者が日本階級闘争の先頭に立った歴史を振り返り、今こそ電力・原発労働者を始めとする全労働者人民の知恵と力を結集して闘うことを訴えている。
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