ZENSHIN 2006/09/11(No2261 p08)

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第2261号の目次

織田全学連委員長を先頭にしたデモの「戦争動員訓練許すな!」の訴えが沿道からの熱い注目と共感を呼んだ(9月1日)

1面の画像
(1面)
改憲阻止の学生ゼネストを  安倍の登場と対決し国会決戦へ
全学連大会への大結集を訴える  革共同中央学生組織委員会
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「防災の日」 “戦争協力拒否を”
東京足立 治安訓練をデモで弾劾(9月1日)
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(2面)
11月総決起へ闘いスタート
闘う労組の全国ネットを  3組合が11・5集会よびかけ
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“11月へ職場で格闘”
第1回実行委 1万人結集の熱い決意(8月27日)
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デモが石原・都教委包囲
首都圏ネット “教基法改悪阻止するぞ”(8月30日)
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採用基準で釈明迫る  動労千葉の鉄建公団訴訟(8月30日) 記事を読む  
労政審が審議を再開
8時間労働制解体へ 労基法の空洞化狙う(8月31日)
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(3面)
現場の怒り本部を圧倒
8・24−25自治労大会 “自治労は改憲阻止の先頭に”
労組交流センター ビラ・リレートークで訴え(8月24、25日)
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討論終了後に配布  大会宣言 「改憲阻止」方針なし(8月25日) 記事を読む  
黒田寛一の恥多き死
日本主義・国粋主義への転落  カクマルの歴史的敗北を刻印
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自治体労働者は改憲・民営化と闘う  (7)大阪市の任用替え攻撃
当局の先兵化拒否せよ  反合闘争貫き職場を守ろう(川上憲一)
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訂正 記事を読む  
(4面)
教育基本法改悪阻止 教育労働者先頭に総決起を!
全国の職場から国会闘争へ
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(5面)
教育基本法改悪阻止 教育労働者先頭に総決起を!
教育基本法改悪と闘う現場から
東京で反乱が始まった  石原・都教委の狙いは破産(本紙/大西晶)
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教員統制と靖国崇拝の道  民主党改悪案を批判する(下) 記事を読む  
新刊紹介 コミューン 10月号  職場で勝てる団結 記事を読む  
(6面)
三里塚 9・14農業会議包囲へ  「市東さんの農地守れ」の声を 記事を読む  
安倍登場に労働者の総反撃を
戦争態勢への大転換を狙う  極右国家主義者の正体
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「抵抗勢力は官公労」  中川発言 4大産別決戦で対決へ(8月19日) 記事を読む  
2006年日誌 8月23日〜29日
ミサイル防衛予算は56%増  「シャイロー」が横須賀配備
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(7面)
 「改憲」が「政権公約」は戦後初  安倍は戦争を狙っている
派兵「恒久法」で掃討作戦も  日本版NSC 大統領型権力づくり
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06年防衛白書 侵略戦争が“本来任務”に
日米枢軸強化で破滅の道
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名護新基地 “戦時使用”と海兵隊司令官
建設計画策定−着工阻止を
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米・日帝が朝鮮侵攻計画
「北の核」口実に先制攻撃  自衛隊は積極的参戦狙う
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(8面)
団結ひろば 投稿コーナー
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激動の世界  イラン制裁策動許すな
米帝はイランに圧力強め戦争の発動を狙っている(秋原義明)
記事を読む  

週刊『前進』(2261号1面1)(2006/09/11)

 改憲阻止の学生ゼネストを

 安倍の登場と対決し国会決戦へ

 全学連大会への大結集を訴える

 革共同中央学生組織委員会

(写真 都教委包囲・首都圏ネットワークの8・30都教委包囲デモには闘う教育労働者を先頭に400人が集まった。都庁で石原・都教委を包囲・糾弾した【8月30日 新宿】)=記事2面

 すべての労働者、学生のみなさん。動労千葉など3労組が呼びかける11・5全国労働者総決起集会に集まろう。1万人結集−全国学生1千人結集を実現すれば、戦争と改憲は阻止できる。プロレタリア革命勝利の展望がここにある。闘う学友は、9月14日〜16日の全学連大会に総結集しよう。全学連大会は、11月労働者集会への全国学生1千人決起と法大を先頭にした改憲阻止ゼネストに突き進む決戦態勢を確立する歴史的な大会だ。安倍政権の登場と対決し、臨時国会での改憲4法案(教育基本法改悪案、共謀罪新設、国民投票法案、防衛省格上げ法案)を廃案にたたき込もう!

 第1章 戦争の歴史をくり返すな

 小泉が8月15日に靖国神社参拝を強行したことは、日帝による新たな朝鮮・中国・アジア侵略戦争宣言だ。靖国参拝に異論を唱えた加藤紘一衆院議員の自宅と事務所が右翼に焼き討ちされた。日本の労働者階級と学生は、1930年の浜口首相暗殺と31年柳条湖事件からの15年戦争突入の情勢に比すべき、歴史の分岐点に立っている。1930年代、日帝・支配階級は分裂しながらも、反動的エネルギーを吸収し、労働者階級の闘いをたたきつぶして帝国主義戦争に突入していった。この歴史を繰り返してはならない。
 小泉の靖国参拝以後、情勢は激しく進展している。何よりも、小泉後継として登場してきている安倍は、戦争と改憲に突き進むことを公言している。
 安倍は、集団的自衛権を行使できるように憲法解釈を変え、首相官邸に日本版国家安全保障会議を設置し、自衛隊派兵恒久法を制定せよと言っている。何よりも、憲法改悪と教育基本法改悪を政権公約として戦後史上初めて真っ向から掲げて登場するのだ。安倍は、敵基地先制攻撃論をとなえ、02年の官房副長官時代にも「核兵器使用は違憲ではない」などと発言している極右政治家だ。著書『美しい国へ』では特攻隊を全面美化している。そして「自分のいのちは大切なものである。しかし、ときにはそれをなげうっても守るべき価値が存在する」「日本という国の悠久の歴史が続くこと」を願って特攻隊の若者は死んだと言っているのだ。安倍が言う教育改革とは、国のために命を投げ出す戦争教育だ。
 また安倍の「再チャレンジ」も絶対に許せない。安倍は次のような労働者の怒りの声をよく聞け。「暮らしに困らない人が、いわゆる『落伍』した人々を見下して、手を差し伸べ、『頑張れ、仕事を与えてやろう』と言っている意味合いに思えてならない。『格差社会ありき』が前提の『再チャレンジ』を、得々と述べる政治家の気が知れない」(東京新聞の投書)
 なぜ、安倍は「再チャレンジ」と言っているのか。「貧しい労働者が増えれば、怨嗟(えんさ)の声は日増しに大きくなり、やがてそれは国家にむかう。社会の不安定化は暴動を誘発し、革命にまで発展することもありうる」「やみくもに小さな政府を求めるのは、結果的に国をあやうくする」(『美しい国へ』)。要するに安倍は、小泉「構造改革」が労働者階級の生活を破壊し、労働者階級の革命的な行動が開始されていることに革命の現実性を感じ、怒りと闘いが爆発することに恐怖しているのだ。
 だが安倍は、労働者階級の生活をさらに激しく破壊する。安倍政権の登場は、小泉政権5年間の矛盾の噴出を加速させ、青年労働者や学生の怒りに爆発的な火をつける。9条改憲阻止の闘いを大爆発させ、60年安保闘争の時に何十万もの労働者や学生が安倍の祖父・岸信介を包囲した以上の闘いをたたきつけてやろうではないか。

 青年はお国のために命などささげない!

 さらに小泉や安倍は、特攻隊を美化して、青年労働者や学生を侵略戦争に動員しようとしている。しかし、青年労働者や学生は、国のために命をささげようとはまったく考えていない。青年労働者や学生に再び「死のイデオロギー」を強制することは簡単なことではないのだ。
 だからこそ、安倍は、今秋臨時国会で教育基本法を改悪して暴力的に愛国心や国を愛する態度をたたき込めば、国のために命をささげる若者を育成できると考えているのだ。そのために日教組などの教育労働者の闘いを解体しようとしているのだ。ふざけるな。
 教育基本法改悪の核心は、「お国のために命を投げ出しても構わない日本人を生み出す」(衆院議員・西村真悟)ことにある。政府の教育基本法改悪案では、「国を愛する態度を養うこと」が「教育の目標」になる。国を愛することを態度で示すとは、安倍が言うように、「自分の命をなげうっても国を守る」ということなのだ。
 だが、「国を愛せ」「国を守れ」というが、その国とは何か? 大銀行やトヨタなどの大企業が労働者階級から搾取して金もうけするために、資本家階級が労働者階級を支配している国家ではないか。労働者の年金、医療、介護などを切り捨て、増税して収奪している国家ではないか。戦争と改憲に反対する立て看板の撤去に抗議しただけで、逮捕する国家ではないか。青年労働者や学生は、国のために命をささげるどころか、自分たちを抑圧している国家に対して激しい怒りを燃やし、こんな国家を一刻も早く打倒しようと思っているのだ。
 国を守るための自衛戦争だと? ふざけるな。巨大資本の利益のための強盗戦争ではないか。15年戦争でも、三菱や三井などの財閥の利益のための侵略戦争をやり、今度はトヨタやキヤノンが中国人民から強盗的利益を上げるための侵略戦争をやるというのか。そのために、朝鮮や中国に対する排外主義なんか扇動するんじゃない!
 日本帝国主義は、第2次世界大戦で完膚無きまでに大敗北した。再び戦争をくり返すことなど断じて許さない。15年戦争では、日帝の強盗的利益のために、2千万人ものアジア人民を虐殺し、310万人もの日本の労働者人民も死んだ。小泉や安倍は国のために死んだと言って美化するが、戦場に行った労働者や学生のほとんどは、餓死で死んだのだ。7bの棒の先に爆弾をつけて、潜水服を着て、敵艦船に体当たりさせるという無謀な特攻作戦、伏竜特攻隊を見ろ。日帝は、青年労働者や学生を消耗品のように扱ったのだ。人間扱いしなかった。そしてまた国のために戦えだと? 冗談ではない。

 労働者と学生を使い捨てにする日帝資本

 今、青年労働者や学生に対しては、同じような攻撃が始まっている。青年労働者の非人間的現実を見よ。いつでも解雇できるような非正規雇用にたたき込み、労働安全上の責任や使用者責任もあいまいにし、人材派遣会社などがわずかな賃金さえもピンハネしているではないか。労働災害で死に追い込まれている青年労働者がいるではないか。今また特攻隊と同じ使い捨ての消耗品扱いではないか。
 学生に対する反動的支配も同じだ。大学当局は、サークルなど学生による自主的創造的活動を弾圧する一方で、「社会に求められる人材の育成」「就職支援」(法大・平林総長)などと称して、日本商工会議所などのブルジョア経済団体と結託して、資本の役に立つ人間を育成することが大学の役割だとぬかしている。教育基本法改悪案では、「社会の発展に寄与する」=帝国主義の強盗的利益のために大学を動員するとしている。大学当局は、学生を人間と見ていない。資本に売り込む「商品」と思っているのだ。こんな大学に存在価値はない。こんな大学はぶちこわし、改憲阻止・日帝打倒の砦(とりで)にしようではないか。
 労働者や学生の闘う武器は、団結だ。団結すれば勝てる。それを示しているのが動労千葉の闘いだ。職場の団結を武器にして、資本による安全破壊をうち破り、国際連帯にまで団結を広げている動労千葉の闘いに続こう。労働者と学生の団結した力で、自分たちを非人間扱いし、侵略戦争に動員しようとする日帝を打倒し、労働者や学生が主人公の新しい社会をつくろう。

 第2章 労働者の怒りと結び闘う

 帝国主義は、破局的な危機を爆発させている。米国における住宅バブルの崩壊は始まっている。1929年型世界大恐慌は不可避だ。米帝は、イラク軍事占領が完全破産し、イスラエルを使ってレバノン侵略戦争へと戦火を拡大した。これもヒズボラを先頭にした中東人民の闘いによって、大破産した。さらにイランなどに侵略戦争を拡大しようとしている。
 この帝国主義による侵略戦争・世界戦争を阻止できるのは労働者階級による帝国主義打倒の闘いだ。とりわけ、日本の労働者階級と学生の闘いが重要な位置をもっている。
 米・日帝国主義は、「新世紀の日米同盟」によって、沖縄米軍基地を始めとする在日米軍基地を中東からアジアに対する侵略出撃基地として大再編しようとしている。
 これと一体で、日帝は、憲法第9条第2項の「戦力不保持・交戦権の否認」を破棄して、自衛軍の保持とあらゆる帝国主義戦争を可能にする9条改憲に突き進んでいる。9条改憲は、日帝が世界戦争の放火者として歴史の前面に登場するということだ。これに対する日本とアジアの労働者階級の闘いは激しく燃えあがる。戦後革命期に問われた日帝打倒の情勢が来たのだ。
 それは現実に始まっている。6千万労働者階級は、資本による極限的な搾取や収奪、生存破壊の攻撃や、戦争と改憲攻撃に対して闘いを開始した。自民党の中川政調会長が「次期政権の最大の抵抗勢力は官公労だ」と叫んでいるように、日帝は4大産別の労働者の闘いを解体できていない。8月自治労大会では、改憲阻止決戦に立ち上がるべきだという組合員の発言が続出した。日帝が「城内平和」なき侵略戦争に突入したことによって、4大産別を先頭にした労働者階級の闘いが爆発すれば、日帝を最後的に崩壊にたたき込むことができるのだ。
 その中で、学生運動の位置は決定的だ。学生は、3・14法大弾圧以来、国家権力と法大当局が一体となった計37人もの不当逮捕を粉砕し、退学処分・停学処分の強行を法大生の全学的決起へと転じてきた。法大を先頭にして、学生の積もりに積もった怒りが帝国主義に向かって爆発を開始した。法大決戦の革命的息吹が全国300万学生に急速に波及している。60年、70年を超える学生運動の嵐のような登場が、青年労働者を始めとした労働者階級の激しい怒りと結合して、マグマのように爆発を開始しているのだ。
 青年労働者と学生の闘いが「戦争か革命か」の時代を決する。かつては青年労働者や学生が戦争に動員された。だが、今や、青年労働者と学生が戦争を阻止し、プロレタリア革命の先頭に立って闘っているのだ。
 世界では、フランス、アメリカ、ドイツ、イギリスなど帝国主義諸国で、中東や韓国で、労働者階級と被抑圧民族人民の世界革命に向けた自己解放的な決起と反乱が巻き起こっている。もはや、世界革命に向けた労働者階級の闘いを押しとどめることは絶対にできない。
 戦争と革命の時代に勝利するのは労働者階級だ。勝利をかちとる現実的闘いが、11月労働者集会の1万人結集、そこへの全国学生1千人の大結集だ。全国学生は、法大での全学ストライキを爆発させ、11・5労働者集会への1千人結集をかちとろう。
 闘うすべての学友は、マルクス主義学生同盟に結集しよう。前半期の勝利的前進の中で、多くの学友がマル学同への結集を開始している。マル学同に結集した同志が直ちにマル学同拡大の先頭で闘っている。君もぜひマル学同に結集して、ともに革命勝利に向かって闘おう。
 闘うすべての学友は、9・14〜16全学連大会に総結集しよう。

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週刊『前進』(2261号1面2)(2006/09/11)

 「防災の日」 “戦争協力拒否を”

 東京足立 治安訓練をデモで弾劾

 9月1日、「総合防災訓練」と称して行われた治安出動訓練に対して、反戦共同行動委員会は弾劾闘争に立ち上がった。石原都知事は今年のメイン会場を足立区に設定し、自衛隊に加え在日米軍の部隊や艦船・ヘリまで出動させてこれを実施した。まさに戦争態勢づくりそのものだ。反戦共同行動委は憲法改悪阻止の固い決意をこめて、訓練会場周囲に弾劾の声をとどろかせた。
(写真 織田全学連委員長を先頭にしたデモの「戦争動員訓練許すな!」の訴えが沿道からの熱い注目と共感を呼んだ【9月1日】)
 午前7時過ぎ、北千住駅西口前での街頭宣伝から、この日の闘いは始まった。「戦争協力を拒否しよう」の横断幕が広げられ、通勤通学途中の人びとに訓練を弾劾するビラが次々とまかれた。
 8時半から中居町公園で集会が開かれた。普段は静かな住宅街に、警察車両や機動隊、私服警官が大挙押し寄せる中、50人の結集で集会が始まった。付近の住民も激励を寄せ注目している。
 とめよう戦争!隊員家族と元自衛官連絡会の小多基実夫さん、青年アジア研究会、婦人民主クラブ全国協議会、都政を革新する会の北島邦彦事務局長、東京労組交流センター、全学連の織田陽介委員長がそれぞれマイクを握り、石原都政と小泉政権による戦争へ向けての攻撃を許さない決意を表明した。特に織田委員長は、この日、安倍が自民党総裁立候補を広島で行おうとしていることを強く弾劾し、「改憲の安倍を許さない。秋の臨時国会へ突き進もう」と力強く訴えた。
 9時にデモ出発。沿道の人びと、デモを見守る住民にビラが手渡された。みな熱心に読み、宣伝カーからのアピールに聞き入っている。
 足立区は在日朝鮮人が多く居住し、荒川河川敷には今も関東大震災で虐殺された朝鮮人・中国人の遺骨が眠っている。今回の「防災訓練」が、北朝鮮のミサイル実験などを口実とした排外主義の洪水の中で、在日を標的として設定されたものであることは明らかだ。デモ隊は怒りをたぎらせて「訓練」の主会場である荒川の土手(写真下左)・西新井橋のたもとに迫った。この時から機動隊と私服刑事の動きがにわかにあわただしくなり、会場に近づけまいと暴力的な弾圧を加えてきたが、デモ隊はこれをはね返し、雨の中闘志にあふれるデモをやり抜いた。

 

 石原の要請で米軍が初参加

 北千住駅前も、この日の訓練の主会場となっていた。人だかりができ、「高所ビル救出」などを想定した大々的な訓練が行われていた。迷彩服の自衛隊員が物々しいいでたちで動き回っている(写真上右)。小さな子どもたちがおそろいの防災ずきんをかぶせられ、「避難誘導訓練」に引き回されている。デモ終了後、北千住駅を利用したデモ参加者たちはこうした光景にあらためて怒りをかきたてられた。
 ここで駅まで陰湿な尾行を続けてきた私服刑事たち20人余りの弾圧に全学連を先頭に猛然たる抗議闘争が闘われ、「防災訓練」一色だった駅前・駅構内が、「戦争動員訓練弾劾」アピールで一気に塗り替えられた。
 今回の訓練では荒川河川敷を主会場に陸上自衛隊が中心となり、堤防復旧訓練や仮設橋設置訓練が行われた。さらに東京都・石原の要請で米軍が初めて「帰宅困難者の輸送」「医療物資の輸送」を名目に横須賀基地(神奈川県)のフリゲート艦と横田基地のヘリを動員し、訓練に加わった。首相官邸では小泉も参加して「総合防災訓練」が行われた。
 この間、東京、首都圏、さらに全国各地で「国民保護計画」の発動として「戦争」「テロ」を想定した訓練が住民を巻き込んで次々と行われている。9・1に続き、自治体労働者を先頭に戦争協力・戦争動員を拒否する闘いを貫こう。

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週刊『前進』(2261号2面1)(2006/09/11)

 11月総決起へ闘いスタート

 闘う労組の全国ネットを

 3組合が11・5集会よびかけ

 

改憲・戦争と民営化−労組破壊の攻撃が強まる中、11・5労働者総決起集会はこれと立ち向かう重大な決戦だ。全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部、全国金属機械港合同、国鉄千葉動力車労働組合が出した同集会への「賛同と参加のお願い」を紹介します。(編集局)

 たたかう労働組合の全国ネットワークをつくろう!
 改憲・戦争と民営化―労組破壊にたち向う労働者の国際的団結を!
 11・5全国労働者総決起集会への賛同と参加のお願い

  全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部
  全国金属機械労働組合港合同
  国鉄千葉動力車労働組合

 全国のたたかう労働者のみなさん!
 憲法改悪が具体的な政治日程にのぼるなど、私たちは歴史の大きな分岐点にたっています。
 先の通常国会に提出された、教育基本法改悪法案、改憲国民投票法案、共謀罪新設、防衛庁の防衛省への昇格法案は、いずれもこれまでの社会の在り方を根本から覆す歴史的な反動法案です。小泉政権は、国会の三分の二議席を超す数の力を頼りに強行採決し、改憲に突き進もうとしました。しかし、時代への危機感が充満し、我慢のならない怒りの声がいつ噴出するかもしれない状況を恐れて採決できず、闘いは秋の臨時国会にもちこされました。秋に向け、再び全力を尽くして闘いを組織しなければなりません。
 日米安保の飛躍的強化がおし進められ、憲法九条改悪の布石として、ミサイル実験を口実に「北朝鮮脅威論」がマスコミを使って洪水のように宣伝され、排外主義や国家主義が煽りたてられています。ブッシュや小泉は、泥沼化するイラク侵略戦争の危機に突き動かされ、戦争を世界に拡大しようとしています。
 一方、行革関連三法や、医療制度改悪法の制定が強行され、八時間労働制や労働者の団結権を解体する労働契約法の制定が画策されています。それと一体で、闘う労働組合や市民運動の存在そのものを否定する刑事弾圧が相次いでいます。
 政府・財界の激しい攻撃のなかで、すでに無数の労働者が団結や雇用を破壊され、無権利の非正規職に突き落とされています。年収二百万円以下の世帯が五世帯に一世帯を上回るという「格差社会」が止めどなく進行し、年金や医療制度をはじめとした社会保障制度が解体され、闘わなければ生きていくことができない時代が到来しています。
 この現実は、労働組合が変質し、団結が破壊され、市場原理主義の暴走を許したときに何がもたらされるのかを鮮明に示しています。今、何よりも求められているのは、労働運動の現状を変革することです。団結を取り戻し、労働組合を甦らせることです。今こそ不一致点は留保し、一致点を拡大して、改憲・戦争と民営化―労組破壊攻撃にたち向う共同行動をつくりだそう。闘う労働組合の全国ネットワークをつくりあげよう。
 現在の攻撃の出発点であった国鉄分割・民営化について、中曽根元首相が「国労を潰し、総評、社会党を崩壊させて、立派な憲法を安置するためにやった」と繰り返し発言し、今また森前首相が「郵政民営化で全逓、自治労、日教組をつぶす」と公言しているとおり、民営化―労組破壊攻撃と憲法改悪は一体で進められました。以降労働運動は止めどない変質を深め、今、改憲容認にまで転落しようとしています。しかし、そうした否定的現実やナショナルセンターの枠をこえて現場からの怒りの声が高鳴りはじめています。
 この一年、私たち三組合は、労働運動の再生をめざして闘いを積み上げてきました。連帯労組関西地区生コン支部は大弾圧を毅然とはね返して、永年の闘いによって築きあげてきた産別政策闘争の画期的な地平を守り、さらに発展させようとしています。港合同は「団結こそ命」を掲げ、矛盾が集中する中小零細企業に働く仲間を地域で組織し、倒産・解雇攻撃と対決して闘いぬいています。動労千葉は、国鉄分割・民営化によってもたらされた尼崎事故―安全の崩壊という現実に対し、不当処分をはね返して反合理化・運転保安確立の闘いにたちあがり、一〇四七名の解雇撤回闘争を継続しています。また、「日の丸・君が代」強制を拒否する教育労働者の闘い、民営化―労組破壊攻撃の矢面にたたされている郵政や自治労の仲間たちの現場からの闘い、日米安保の再編に対する沖縄の闘いなど、新たな闘いが職場・地域から火の手をあげはじめています。今春の共謀罪、教基法改悪反対闘争が示したように、労働者の闘いこそが事態の本質を社会的に明らかにし、情勢を動かす力です。闘えば必ず展望は開かれる……私たちはそのことを実感しながら、団結して闘いの道を貫いてきました。
 全世界で闘いが燃え上がっています。フランスの労働者・学生は、三百万のデモとゼネストで初期雇用契約法を撤回させました。韓国の労働者は幾度ものゼネストで非正規職関連法の制定を阻止しています。アメリカでもストライキが激発し、一千万の移民労働者が立ち上がっています。こうした闘いは、新たな情勢のなかで、労働運動の変革・再生を求める現場からの声が大きなうねりとなり、力となって登場する時代が到来していることを示しています。
 私たちは、表記集会に全国の職場・地域で奮闘する多くの仲間たちのご参加をいただき、怒りの声をたぎらせて、支配の厚い壁を突き破る、闘う労働組合の全国ネットワークをつくりあげたいと考えております。志を同じくするすべての皆さんの賛同と参加を心よりお願い申し上げます。
 二〇〇六年八月
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●集会名称 「たたかう労働組合の全国ネットワークをつくろう!改憲・戦争と民営化―労組破壊にたち向う労働者の国際的団結を!11・5全国労働者総決起集会」
●とき 11月5日(日)正午開会
●ところ 東京・日比谷野外音楽堂

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週刊『前進』(2261号2面2)(2006/09/11)

 “11月へ職場で格闘”

 第1回実行委 1万人結集の熱い決意

 8月27日、東京都内で11・5労働者集会に向けての第1回実行委員会が開催され、120人が結集した。「すべての参加者が11・5集会の主催者」(田中康宏動労千葉委員長)との言葉どおり、多くの労働者がそれぞれの職場闘争の方針を持って臨み、会場全体に熱気があふれる実行委員会となった。
(写真 職場から闘いを起こして11・5集会1万人結集へ。参加者は決意を固めた【8月27日 東京】)
 司会を動労千葉の繁沢敬一副委員長が務め、呼びかけ3労組からの提起が行われた。
 最初に全国金属機械港合同の辻岡尚執行委員が、「9月末より憲法改悪の攻撃と労働運動が全面対決していく局面を迎える。労働契約法の審議会は空中分解しているが、来年の通常国会には必ず上程してくる。労基法の8時間労働制解体攻撃と対決しよう。偽装請負問題、大阪での市労連や部落解放運動への攻撃などを見る時、必要なのは根本的反撃だ。闘う労働運動の責任が問われている」と檄を発した。
 次に全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部の高英男副委員長が、「今月24日、3回にわたる不当弾圧についての1審判決が出た。罰金刑という判決はまったく不当なものだが、生コン支部の組織破壊、武委員長の幽閉という敵の狙いを、総力挙げた反撃で粉砕したという勝利の総括でとらえている。労働運動や市民戦線へのあらゆる弾圧が激化している中で、反撃の拠点は労働運動であり職場だ、ということをはっきりさせよう。1047名問題も、職場での原則的な運動をやって敵を押し込むことだ。11月集会に向け、そういう運動をつくっていきたい」と確信に満ちて訴えた。
 続いて国鉄千葉動力車労働組合の田中委員長が基調報告を行った。「今年で9回目を迎えるこの集会は確実に運動の輪を広げてきているが、それだけでいいのか。大失業時代の現実、そして闘う労働運動の展望というのは何よりも自分の職場にこそある。ここで格闘し、一から労働運動をつくっていく。それが全国で100、1000と伸びていけば、闘う労働運動の全国ネットワークを必ずつくることができる」と力強く提起した。
 さらに「動労千葉の『第2の分割・民営化』攻撃との闘いは、資本との闘いであると同時に、職場で組合員と格闘し団結を一からつくり出していく闘いだった。このことを甘く見ないでほしい。こうした職場での闘いで状況を打開できるということに確信を持とう」と自らの教訓を踏まえて訴えた。
 その上で「この10年間で状況は一変している。全世界で体制内労働運動がすでに完全に破綻(はたん)している中で、闘う労働運動が1万人を結集させる可能性が無限に広がっている。この状況を生かせなかったら何のための11月集会か。チケットを売り、組合賛同集めに総力で取り組もう」と全体を熱く鼓舞した。
 3労組からの提起を受けて参加者が次々と発言に立った。自治労の労働者は、「全国大会で本部の改憲勢力化−民主党支持方針と全面対決して闘った。明らかに現場には分岐が生まれている。今こそ職場闘争を闘い、11月へ」と決意を表明。教育労働者は「教育基本法改悪阻止の国会闘争を全力で取り組み、11月1万人決起で世の中を変えよう」と発言した。さらに国労、全逓の労働者や合同労組、医療労働者などが、職場闘争の具体的報告と11・5の1万人結集に向けた決意を語った。
 最後に辻岡、高、田中の各氏がまとめの提起を行い、11・5労働者集会への力強い第一歩を踏み出した。

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 憲法9条改悪阻止! 戦争と民営化−労組破壊攻撃に立ち向かう

 9・23労働者集会

 日時/9月23日(土)午後1時開場・1時30分開始
 場所/文京区民センター 都営地下鉄・春日駅下車すぐ 東京メトロ・後楽園駅下車200メートル JR水道橋駅下車800メートル
 ○基調講演/動労千葉執行委員長・田中康宏
 ○特別報告/「処分粉砕・基地廃止粉砕闘争」動労千葉
 ○発言/9条改悪阻止全国署名の訴え 百万人署名運動事務局
 職場・労組で闘う仲間から 全逓・自治体・国鉄・教育・医療・金属ほか
 ○集会後デモ

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週刊『前進』(2261号2面3)(2006/09/11)

 デモが石原・都教委包囲

 首都圏ネット “教基法改悪阻止するぞ”

 8月30日午後、「教育基本法改悪を阻止するぞ! 『日の丸・君が代』処分を撤回しろ! 東京オリンピック反対! 教育と福祉に金を回せ!」――東京・新宿にそびえ立つ都庁第2庁舎に向け教育労働者を先頭とする400人余のデモ隊がこぶしを上げた。
(写真 「国会に直接出向いて阻止しよう」と教基法改悪との闘いを訴える大内さん【8月30日 新宿】)
 「石原・中村都教委の暴走をとめよう!都教委包囲・首都圏ネット」が主催した石原・都教委糾弾8・30包囲デモは、今秋臨時国会へ向けた教育基本法改悪絶対阻止の“第1弾の闘い”となった。包囲ネットの5台の宣伝カーも、都庁から新宿駅周辺で街頭宣伝をした後、都庁第2庁舎前に勢ぞろいし、都庁を包囲していた教育労働者たちとともにデモ隊と合流、「石原知事よ、都教委よ、よく聞け!」とシュプレヒコールに力が入った。甲州街道から新宿駅南口を通り明治通りへ。沿道の女子中学生たちから「先生たち頑張れ! 『日の丸』反対! 一緒に闘うぞ!」と熱い声援が飛び、デモ隊の教育労働者も笑顔で手を振った。
 午後3時半、デモに先立ち新宿・柏木公園で行われた集会では、「教育基本法の改悪をとめよう!全国連絡会」呼びかけ人の三宅晶子さんが「あきらめず、こわがらず、奪われつつある憲法、教育基本法の1条1条を奪い返そう」と呼びかけた。
 同日夜、新宿文化センターで交流集会が開かれた。全国連絡会呼びかけ人の大内裕和さんが講演した。「自民党はすでに『国家戦略としての教育改革』を発表し、秋の臨時国会では教基法改悪成立を至上命題としている」と指摘、07年予定の教員免許更新制法案や全国学力テスト実施などを具体的に批判し、「国鉄分割・民営化で国労をつぶし、郵政民営化で全逓を、闘う労働運動を解体し、なんとか憲法を変えようとしてきた。今の教育改革や公務員制度改革の狙いも明らかだ。支配層は階級的利害で攻撃している。こっちも階級的闘いで反撃しなければならない」と訴えた。「毎日毎日を闘い、10月の衆院通過を止め、全国連絡会の11・12集会(日比谷野音)の成功を」と提起した。
 同じく全国連絡会呼びかけ人の小森陽一さんも自民党の改憲案を批判し、「公務員は上を向くな。主権者である国民の方を向け」と力説。「労働組合の闘いが重要。労働者としての階級性そのものが問われている」と結んだ。
 集会では続いて、9月21日に判決を迎える予防訴訟を進める会、7・21再発防止研修の実態を暴露した今春の不起立者、被解雇者の会、不採用裁判原告など、東京の闘う教育労働者が次々と発言に立った。
 今春3度目の不起立で停職3カ月となった根津公子さんは、「各自が工夫して闘い、来年3月にはみんなで不起立しよう。大勢でやればそれだけ力になる」と訴えた。
 さらに「つくる会」教科書や共謀罪、防災訓練との闘いの報告があり、全国各地からの参加者、鉄建公団訴訟を闘う国労闘争団などが発言した。最後は闘争宣言、行動提起、団結ガンバローを行った。8・30包囲行動は今秋国会攻防へ力強く第一歩を踏み出す闘いとなった。

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週刊『前進』(2261号2面4)(2006/09/11)

 採用基準で釈明迫る

 動労千葉の鉄建公団訴訟

 国鉄分割・民営化によって解雇された動労千葉の組合員9人が、鉄道運輸機構(旧国鉄清算事業団−鉄建公団)を相手に解雇撤回などを求めている裁判の第8回口頭弁論が8月30日、東京地裁民事第11部(佐村浩之裁判長)で行われた。
 動労千葉は、館山運転区・千葉運転区木更津支区の廃止を始めとした基地統廃合の攻撃や、幕張車両センターにおける事故を口実とした組合員への重処分策動との激しい攻防の渦中にある。それと並行して闘われている動労千葉争議団の鉄建公団訴訟は、国鉄分割・民営化反対闘争の原点を問うものとして1047名闘争を牽引(けんいん)する位置を持っている。
 動労千葉争議団の9人はいずれも、分割・民営化反対の2波のストライキに対して加えられた不当な停職処分を口実にJR採用候補者名簿から外された。国鉄は、分割・民営化を前に大量の退職者が発生し、本州JR3社が定員割れとなる見通しが明らかになった段階で、「停職6カ月以上または停職2回以上の処分を受けた者は採用候補者名簿に登載しない」という基準を急きょ設定した。これは、動労千葉や国労の排除を叫ぶ改革労協(後のJR総連やJR連合)の横やりを受けて定められたものだった。他方、改革労協所属の者は、酒気帯び出勤などで停職処分を受けていても「特別の温情」で採用候補者名簿に登載された。
 被告の鉄道運輸機構は、動労千葉組合員のJR不採用について「公労法違反のストライキをした者は採用されなくて当然」と居直っている。中曽根が「総評と国労を解体するために国鉄分割・民営化をした」と公言しているように、それは徹頭徹尾、国鉄労働運動の壊滅が目的だったのだ。
 この日の口頭弁論で、動労千葉弁護団の葉山岳夫弁護士や大口昭彦弁護士、佐藤昭夫弁護士らが「停職6カ月以上または停職2回以上という基準はどういう経緯で定められたのか」「『過去を反省した者は特別の温情で採用された』と言うなら、『過去』とは争議行為をしたことか」と被告に釈明を迫った。ところが被告代理人は、おごり高ぶった態度で釈明を拒み、裁判長もそれを援護する不当な訴訟指揮に終始した。
 これは、国鉄分割・民営化が司法権力を含む国家総ぐるみの不当労働行為として今なお貫かれていることを示している。

 敵に頭を下げて解決できるのか

 裁判の傍聴には、動労千葉の組合員や動労千葉を支援する会の労働者、鉄建公団訴訟を闘う国労闘争団員などが駆けつけた。裁判を終えての総括集会で、田中康宏委員長は「今の国鉄闘争に危惧を持っている。政治解決と言って敵に頭を下げても解決するはずがない。解雇撤回闘争が厳しいのは皆、同じ。労働者には、厳しいという思いと頑張ろうという思いが同時にある。そのどちらを組合指導部が引き出すかが問われる。労働者は元気になれば団結して、自分で闘い始める。国鉄闘争は本来、もっと大きな可能性を持っている。1047名が中心に座れば大きな労働者の団結をつくることはできる。分割・民営化から20年たってそういう時代が来た」と提起し、「政治解決」路線を批判した。
 11・5労働者集会への1万人結集を実現し、労働者階級の巨大な反撃をつくり出そう。そこから国鉄闘争勝利の血路を切り開こう。

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週刊『前進』(2261号2面5)(2006/09/11)

 労政審が審議を再開

 8時間労働制解体へ 労基法の空洞化狙う

 労働法制改悪に向けて政府は再び攻撃を強めている。8月31日、厚生労働省は中断していた労働政策審議会労働条件分科会での改悪案の審議を再開した。厚労省は、労働時間規制の解体(「ホワイトカラー・エグゼンプション」の導入)や、解雇の金銭解決などを柱とする労働契約法制の新設をもくろんでいる。
 そのために出された厚労省の素案をめぐり、6月27日の労働条件分科会では労働側が反対し、使用者側も労働時間規制の実質撤廃と引き換えに提案された時間外賃金の割り増し案に異論を唱え、審議は約2カ月にわたり中断していた。
 こうした中で、オリックス会長の宮内義彦が議長を務める規制改革・民間開放推進会議が、全面的な規制撤廃を求めて厚労省案を批判する異例の意見書を提出し、安倍官房長官が主催する「再チャレンジ推進会議」も「非正規労働を巡る問題に対処するための法的な整備等の取り組みを進める」とした「中間取りまとめ」を公表し、厚労省は、いつまでも審議を止めておくことができなくなった。そこで、連合出身の労働側委員の合意も取り付け、審議再開へと突っ走ったのだ。政府はあくまで来年の通常国会に改悪案を提出する構えでいる。
 たくらまれている労働法制改悪の要点の一つは、8時間労働制の解体だ。厚労省は、「自律的労働にふさわしい制度の創設」などという言い方で、労働時間規制を実質的に撤廃しようと策している。
 これは、「労基法は工場法時代の遺制」と叫ぶ資本の意図を露骨に貫こうとする攻撃だ。日本経団連は、昨年6月に出した提言で、「年収400万円以上」の労働者は時間規制の対象外にしろと叫んでいる。こんなものを認めたら、正規雇用の労働者の大部分は、残業代も払われず無制限にこき使われることになる。
 労働契約法制の中には、解雇の金銭解決制度が盛り込まれた。金さえ払えば解雇は資本の自由になるということだ。また、就業規則の一方的な改悪で労働条件をいくらでも切り下げられる仕組みも導入される。さらに非正規雇用の拡大も労働契約法制の狙いだ。
 これは、労働条件の最低限を定めた労基法の実質的な解体につながっている。労基法は「労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである」と定めるが、その前提にあるのは労働組合の存在だ。労働者が職場で団結していなければ、「労使対等」などあり得ないからだ。
 ところが労働契約法は、一切を資本と労働者個人の契約関係に解消する。そこでは“どんな劣悪な労働条件でも契約に基づく以上は文句を言わず堪え忍べ”ということに必ずなる。
 労働法制改悪をめぐる攻防は、労働者の団結をめぐる攻防そのものだ。それは改憲阻止闘争とも一体をなす。この秋の臨時国会決戦を全力で闘い、11・5労働者集会への1万人結集を実現し、労働者の闘う団結を取り戻そう。その力で労働法制改悪を阻みぬこう。

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週刊『前進』(2261号3面1)(2006/09/11)

 現場の怒り本部を圧倒

 8・24−25自治労大会 “自治労は改憲阻止の先頭に”

 労組交流センター ビラ・リレートークで訴え

 8月24―25日、さいたま市で自治労第78回定期大会が開かれた。本部は、政労協議による労働基本権の回復と来年7月参院選勝利による政権交代の幻想で組合員をからめ取り、自治労を丸ごと改憲勢力化することを狙っていた。しかし、全国の多くの県本部、代議員から戦争と改憲、民営化=労組破壊と闘わない自治労本部への怒りが噴出し、本部の思惑は完全に吹き飛ばされた。労組交流センター自治体労働者部会は議場内外で「自治労本部の政労協議―民主党支持一本化路線を粉砕し、現場の力で改憲を阻止しよう」と訴え、大会議論を事実上リードした。この地平を秋の国会闘争―改憲阻止闘争の爆発、11・5労働者集会1万人結集に結実させるために闘おう。

  “民主党支持は認めない”

 本部は、行革推進、参院選民主党支持一本化を決めて自治労の改憲勢力化・翼賛勢力化を図ったが、労組交流センターの暴露・批判や代議員の怒りの噴出、反対意見の続出への対応に追われた。
(写真 大会1日目の昼休み、労組交流センター自治体労働者部会は改憲反対の署名を集めながらリレートーク【8月24日 さいたま市】)
 労組交流センターは会場前で2日間フルに大情宣を展開。「現場の力で改憲を阻止しよう」と大書した横断幕を掲げ、アジテーションやリレートークを行い、ビラ・リーフレットを配った。
 代議員は、これに勇気と確信を得て本部・議案を批判・追及し、議場を怒りで席巻した。「現場は我慢の限界だ。民主党支持を組合員は絶対に認めない」。小泉政権の行革リストラ・民営化に無方針の本部を弾劾し、賃下げ、戦争・改憲との闘いを訴え、本部の民主党支持一本化の07年7月参院選方針に反対する意見が全体を制した。
 本部の岡部謙治委員長は冒頭のあいさつで、@労働基本権回復の取り組みA小泉構造改革への対抗B平和への取り組みC7月参院選挙闘争D不祥事の続く自治労の信頼回復――の5点を提起したが改憲問題に言及せず、争点をそらそうとした。
 また1日目の午後、あいさつに立った連合の高木剛会長は「雇用調整本部は首切り本部ではない」と弁解した。
 だが、多くの代議員が職場の反民営化・反合理化闘争・賃金闘争と反戦闘争・改憲阻止闘争を一体的に闘うことを提起、教基法改悪、国民投票法案、共謀罪、防衛省昇格法案の改憲4法案の廃案は共通の課題となった。
 米軍再編反対・基地闘争、反原発闘争も強調された。とりわけ2日目の討論に立った沖縄の代議員は「米軍再編によって有事が来ようとしている。実際に戦争になろうとしている。沖縄だけの問題ではない。やるかやらないか分からない方針ではなく、憲法改悪に反対して自治労が全国の仲間とともに闘うという方針を出し、自治労を再生させ強くしよう」と真剣かつ熱烈に訴え、大会最大の拍手を浴びた。全国の自治労組合員の気持ちを代弁しとらえたのだ。
 こうした現場の怒りに押されて、本部の笠見猛副委員長は議案提起と答弁で「教基法改定案、国民投票法案は改憲の露払い。2法案とも野党案を含めて廃案に」「憲法改悪反対の取り組みを全体の課題として強める」と言わざるをえなかった。
 だがこれがまったく口先だけのペテンにすぎないことは明らかだ。具体的な闘争方針、スケジュールを提起せず、大会宣言にも改憲反対の文言を盛り込んでいないことがそれを示している。
 本部にとっては、行革推進専門調査会での政労協議と07年7月参院選の民主党比例代表に相原久美子組織局次長を組織内協力候補として擁立し、民主党支持一本で闘うことがすべてだからだ。
 この専門調査会こそ労使共同で公務員の大量首切りを進める場だ。労働基本権回復の議論はそのカムフラージュにすぎない。岡部委員長はあいさつで「労働基本権回復は既定ではない。専門調査会は回復の範囲を議論する場だ」と述べた。また自治労は連合をつうじて内閣官房行革推進室に役員を派遣し(大会で承認)、首切りを自ら推進しているのだ。

 職場闘争で国会と11月へ

 大会の主要議案は@第1号議案「2007年度行動計画」A第2号議案「当面の闘争方針」B第3号議案「自治労第2次賃金政策」の3議案だ。
 @は行革リストラ推進と労働基本権をめぐる政労協議の路線化であり、「質の高い公共サービス」論に貫かれている。政労協議で労働基本権回復などあり得ない。「質の高い公共サービス」論は「働こう運動」だ。
 Aの問題点は、改憲4法案の廃案のかかった国会闘争の方針、改憲阻止をまったく打ち出さず、政治闘争を07年7月参院選闘争に絞り込んでいることだ。民主党支持こそ形を変えた9条改憲であり、改憲勢力化だ。
 Bの問題点は、新たに「公正な職務評価」を掲げて、現業職と行政職の同一給料表を否定し、能力・実績主義賃金と査定給を全面的に容認したことだ。地域給導入に続く大幅賃下げ、労働者の分断、労組破壊だ。
 本部は、官民比較対象企業の拡大で基本給、一時金を据え置いた8月8日の人事院勧告を「認めない」と言ったが、賃金闘争の原則において屈服・後退しているのだ。
 自治労本部は連合路線のもと、戦争・改憲、行革リストラ・民営化の諸攻撃と闘う方針を出さず、地域給導入―大幅賃下げをのんできた。現場では人員削減による過重労働で病気休職や過労死、自殺が続出し、職場が奪われ、単組が解散・消滅に追い込まれた。
 現場では血のにじむような反撃の闘いが粘り強く闘われていることが全国の代議員から報告された。本部は「これまでの取り組みは不十分だった」「しっかりやりたい」と受け止めたふりをした。本部は行革リストラ推進、戦争翼賛、改憲勢力化の確信犯なのだ。
 2日間の闘いは、自治労本部の改憲勢力化の狙いを根底において打ち砕いた。100万自治労組合員の怒りを解き放ち、動労千葉労働運動を実践し、職場から国会決戦と改憲阻止闘争に決起しよう。11・5労働者集会1万人結集へ進撃しよう。

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週刊『前進』(2261号3面2)(2006/09/11)

 討論終了後に配布

 大会宣言 「改憲阻止」方針なし

 自治労大会第2日目、議案の討議が終わり、採決のために議場閉鎖が行われる中、ようやく本部が大会宣言(案)を配布し始めた。いつもは大会最終日の朝には配られている。そしてなんと大会宣言(案)には「憲法改悪阻止」の文言がないではないか。あれほど議論になり、答弁でも「憲法改悪に反対し闘う」と明言したのに。
 また秋の臨時国会で継続審議されようとしている与野党の教育基本法改悪案、憲法改悪国民投票法案、共謀罪法案、防衛省昇格法案の改憲4法案を「廃案にしよう」の文句もない。多くの代議員が異口同音に4法案の廃案をめざして闘おうと訴え、特に初めの2法案について本部も「改憲の露払い」「断固廃案に」と断言したにもかかわらず。本部は大会討議をなんと心得ているのか。
 大会宣言(案)の第一は質の高い公共サービス論、第二は秋の賃金確定闘争、第三は地公3単産統合、第四は男女平等社会の実現、第五は平和への取り組み、最後は統一自治体選と参院選となっている。
 議場閉鎖後に配ったのは、大会宣言(案)をめぐっては一切討論させないということだ。また議場の外の労組交流センターが批判の演説をできないようにしようということだ。議論に火が付いたら困るからだ。
 本部は「改憲阻止」「4改憲法案を廃案に」のスローガンを絶対に闘争方針にしたくないのだ。改憲と闘わない自治労とは何なのか。
 自治労こそ憲法の申し子だ。自治労は、公務員を戦前のような天皇と国家に仕える官吏ではなく、労働者であると自己規定してきた。だからこそ労働組合を結成し、団結して闘ってきた。最大の法的根拠が憲法だ。
 改憲の最大の狙いは戦争国家への転換だ。9条改憲で公務員は再び「赤紙」=召集令状を配らされることになる。自治労はその反省から反戦・反基地闘争の先頭に立ってきたのではないか。改憲を認めて自治労運動は成り立たたない。
 自治労組合員は「改憲阻止」抜きの今大会宣言を拒否し、本部をのりこえ打倒して闘う。

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週刊『前進』(2261号3面3)(2006/09/11)

 黒田寛一の恥多き死

 日本主義・国粋主義への転落

 カクマルの歴史的敗北を刻印

  (一)

 ファシスト・反革命党派、カクマルの頭目である黒田寛一が6月26日に死亡していたことが明らかになった。革命的共産主義運動から脱落・逃亡し、ファシスト反革命としてあらゆる極悪非道をなしてきたカクマル頭目の恥多き死である。黒田の死とともに反革命カクマルも組織的死を刻印された。
 われわれは、三十数年にわたるカクマルとの闘いの勝利の到達点を力強く確認すると同時に、カクマル完全打倒・一掃まで徹底追撃することを宣言する。
 本多延嘉書記長虐殺の75年3・14反革命を頂点とする革共同および闘う労働者に対する数限りない白色テロルのすべての指揮者は黒田である。権力と闘う革命党派を背後から襲撃することを路線化したカクマルは、国際階級闘争に類例のないファシスト反革命である。
 われわれは、71年のカクマルの武装襲撃以来、全党・全軍、闘う人民の死力を尽くした闘いを展開し、カクマル戦闘力を粉砕してきた。この闘いが黒田を追いつめ、ついに打倒したのだ。

   (二)

 黒田を神聖不可侵な唯一者に押し上げ、あがめてきたカクマルは、黒田の死に直面して完全に方向を失い、判断停止状態に陥ってしまった。6月26日に最終的に死んでから、8月10日の朝日新聞朝刊で暴かれるまで、カクマルは超長期の死の沈黙を続けた。
 8月12日に開いた記者会見で、カクマルは「同志黒田のたっての意志とわが党組織の国家権力にたいする防衛の観点から、彼の逝去の事実の公表を今日までひかえてきた」と弁解したという。笑止千万ではないか。黒田は「1カ月半は公表するな」と遺言したのか。「防衛の観点」とは何だ。死亡届は出さなかったのか。火葬はしなかったのか。権力には知られてもいいが、社会的には知られたくないと隠しただけではないか。8月6日のカクマル「国際反戦集会」でも、黒田死亡がカクマル内ですでに知られているのに、なかったかのように振る舞ったのだ! いったい何を恐れ動転しているのか!
 やっと夏休み明けの反革命通信『解放』8月28日付で朝倉、西條ら4幹部が、5n分を使って「追悼文」を書いているが、50年前の黒田がいかにすごかったかを賛美する言葉ばかりで、その末路がどうであったかを誰も見据えられない。「革命党派」としてどのように闘っていくかという路線と展望は皆無である。

   (三)

 わが革共同は、01年の第6回大会で壊滅的にカクマルを批判し、対カクマル戦争の歴史的勝利を確認した。6回大会はカクマル黒田を打倒した歴史的な大会であった。
 そこで黒田・カクマルの歴史的破産の指標として4点を指摘している。
 第一は、カクマルの綱領的破産の決定的深化。91年ソ連スターリン主義の崩壊は同時に黒田・カクマルのエセ「反帝・反スタ」の最後的崩壊だったということ。
 第二は、謀略論路線の大破産。74年以来30年以上にわたって政治と社会の諸現象を「権力の謀略」と説明する観念論的倒錯は、「権力万能」神話の黒田自身が主導したカクマル基本路線であった。最末期の神戸謀略論運動では、住居侵入や盗聴にまで踏み込み、完全に破産した。カクマル自身の謀略党派化とその末路である。
 第三は、JR総連路線の破産である。国鉄分割・民営化の積極推進派として中曽根の先兵になったのは、黒田の決断による。その破産がカクマル労働運動の最大実体である松崎・JR総連との分裂となって現れた。それは黒田の組織現実論の完全破産を示すものだ。
 第四は、「黒田哲学」の反革命的正体の暴露とその破産の宣告である。この中にすべてが集約されている。黒田哲学が裏返しのヘーゲル主義に転落し、唯物論の大地から昇天してしまったものでしかないことを完膚なきまでに暴き出した。
 そして、黒田哲学の行き着いた先が黒田の「最後の大著」『実践と場所』である。そこには日本礼賛と反米国粋主義が満展開していることを壊滅的に批判したのだ。
 カクマル黒田は6回大会に完全に打ちのめされ、一言半句の反論もできず、敗北を自認した。

   (四)

 黒田の遺書『自撰歌集・日本よ!』は、黒田の行き着いた果ての惨状を自白している。なんとファシスト石原の産経新聞連載エッセイと同じタイトルで、石原と国粋主義、愛国主義を競っているのだ。しかも、どれひとつとして歌の水準に達しない、黒田の嘆きと呪いの垂れ流しである。そこにはもはやマルクス主義の要素はかけらもない。黒田はこうして自らの総破産をさらけ出しつつ死んだ。まさに恥多き死を強制したのだ。
 われわれは、ここにカクマルの死とわが革共同の勝利を高らかに宣言し、マルクス主義を復権させ、新指導路線のもと労働運動の戦闘的再生をかちとり、その中で黒田の片割れ=松崎とJR総連を解体・打倒し、プロレタリア世界革命に向かって強大な労働者党を建設することを宣言する。

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週刊『前進』(2261号3面4)(2006/09/11)

 自治体労働者は改憲・民営化と闘う

 (7)大阪市の任用替え攻撃

 当局の先兵化拒否せよ

 反合闘争貫き職場を守ろう

 大阪市では、「職場は奪われても首は守る。新たな職と職域を確立する」という組合(大阪市従業員労働組合)方針のもと、市当局による大規模で矛盾に満ちた配転や任用替え(注)が強行されている。
 4月、大阪市の現業労働者8445人中521人が局をまたいだ異動に直面した。特に24の区役所には大量の現業労働者が新たに配転された。

6月15日付毎日新聞夕刊 治安に動員

 一つは、公用車の廃止に伴って運転手224人が「地域安全パトロール」業務に配転されたことだ。「地域安全パトロール」は、毎日、区役所から自転車で出発し、小学校や保育所の通路を巡回したり、小公園の不法投棄や野宿生活者を監視したりする新規業務だ。
 これに対して、早くも「9時出勤では通学路の安全監視にならない」「なくてもよい業務だ」などという不当なキャンペーンが始まっている(6月15日付毎日新聞夕刊=写真)
 「地域安全」を掲げたこの配転の本質は、「首になりたくなければ治安政策に志願せよ」というところにある。行き着く先は戦争協力、戦争動員の先兵だ。
 野宿者に対する襲撃とテント撤去が行われた1月31日を前後して、「危険作業手当」「取締折衝業務手当」など特殊勤務手当の改廃や適用範囲、「小公園内の不法投棄や野宿者への対策」などが当局から提案され、交渉が行われていた。そうした中で「地域安全パトロール」業務の開始に至った。
 もう一つは、介護施設や国保徴収の現業労働者がケースワーカーに任用替えされ、「生活保護業務の充実、就労促進」と称して生活保護支給を打ち切る仕事に配属されていることだ。
 「生活保護業務の充実」の実態は、「稼働能力の活用で保護率を引き下げる」、つまり生活保護受給者を戸別訪問して「保護を受けずに働け」と言って回ることだ。
 大阪市は、生活保護を引きはがすために生活保護要員を150人も増員しようとしている。
 生活保護打ち切りには、生活保護申請を受理せず「相談扱い」で処理する「水際作戦」と生活保護支給後の「適正化」政策がある。
 京都市は、生活保護支給を打ち切れる可能性が高いとされた「自立助長推進世帯」をケースワーカーが5世帯選び、頻繁に家庭訪問し、就職したり勤務時間を増やすよう働き掛け、生活保護打ち切りに持ち込むことをノルマ化している(8月4日付京都新聞)。
 この原型は北九州市が1979年に始めた「自立重点ケース」制度だ。これは1年以内に「自立」が見込まれるケースをケースワーカーごとに5件抽出し、重点的に自立指導を行う制度だ。
 生活保護受給者が激増する中、大阪市やその他の自治体も次々に生活保護の打ち切りに走っているのだ。

 任用替え

 7月末の自治労現業評議会総会(宮崎市)では任用替えが大きなテーマとなり、「任用替えの当局提案は、現業労働者および現業職場の削減・合理化提案として受け止め、これに反対する」という2006年度方針を確認した。
 しかしながら「民営化反対の空叫びでは雇用を守れない」「すでに任用替えを受け入れ、職場を守れなくても雇用を守るということに踏み込んだ」「合理化反対では職場は持たない」など任用替え攻撃を容認し、屈服を合理化する発言も飛びかった。
 大阪市従が言うような「新たな職の確立に向けての組合員の必死の取り組み」が行われているのも事実だが、それを「質の高い公共サービス」の追求としてではなく、あくまで反合理化闘争、職場支配権の確立と団結の維持・強化の闘いとして貫くことが必要だ。

 対立恐れず

  大阪市は、「労使関係アンケート」「団交ガイドライン」「組合事務所立ちのき訴訟」など、労働者の団結、労働組合運動そのものへの攻撃をしかけてきている。あまりにも不当な攻撃だ。
 攻防の行方は大きな意味を持っている。敵はけっして労働者を平定することができず、労使対決・労使矛盾を激化させることによってしか立ち現れることができない。階級対立の激化を恐れているのは当局だ。動労千葉のように労働組合が団結を維持・強化して真っ向から闘う時、勝利の展望が開かれる。
 自治体労働者は、国・自治体の同和施策廃止や社会保障・社会福祉切り捨て、大増税に対する労働者階級・人民大衆の怒りと日々向き合っている。こうした諸攻撃は帝国主義の危機に起因している。自治体労働者は、国・自治体当局の先兵となることを拒否し、階級的共同闘争の担い手として登場し、帝国主義打倒の究極目標に向かって闘い、階級的団結を強化しなければならない。
(川上憲一/シリーズおわり)
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 任用替え

 現業職の労働者に試験を受けさせるなどして非現業の事務吏員(行政職)へ「任用を替える」こと。現業職場をなくす攻撃であり、また任用替えで配転された労働者の多くが退職や発病を強いられてきた歴史がある。任用替えで現業労働者としての権利は奪われる。自治労は基本的には「反対」の立場だが、現実には多くの自治体・単組で任用替えが強行されている。

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週刊『前進』(2261号3面5)(2006/09/11)

 訂正

 前号3面「1年迎えたAMFAスト」の記事の最後から10行目「NWAのAMFA組合員は……ストライキを行う」とあるのは「AFA−CWA組合員は」の誤りでした。編集上のミスです。

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週刊『前進』(2261号4面1)(2006/09/11)

 教育基本法改悪阻止 教育労働者先頭に総決起を!

 全国の職場から国会闘争へ

 次期首相として登場している安倍晋三が、改憲と教育改革(教育基本法改悪)を公約の柱に掲げ、教基法改悪を秋の臨時国会で成立させようとしている。安倍は教育基本法改悪を、戦争と改憲に突進する突破口と位置づけているのだ。戦後60年以上手をつけられなかった憲法と教育基本法に日帝・支配階級がいよいよ手をつけてきた今、労働者の力で、戦後最大の闘いをたたきつけよう。すべての労働者が今秋国会闘争に立ち上がり、教基法改悪をなんとしても阻止しよう。教育労働者は、日教組本部の屈服を突き破る闘いを職場・単組から巻き起こし、闘いの先頭に立とう。

(写真 「日の丸・君が代」強制に不起立で闘った仲間の「再発防」上研修」に抗議する被処分者ら【7月21日 水道橋】)

 第1章 「教育改革」を叫ぶ安倍

 特攻賛美する国粋主義者 「臨時国会で成立」と公言

 命を超えた価値
 安倍は著書『美しい国へ』で「教育の再生」という章を設け、教育改革の推進を叫び、学力テストの実施、教員免許更新制、学校評価制度、ボランティア活動の義務化などを提唱している。
 中でも重要なのは、公約に掲げた首相直属の「教育改革推進会議」設置である。小泉政権下の経済財政諮問会議の教育版と言うべきものである。強力な権力機関によるトップダウンで、「教育改革」をどしどし実行に移そうというのだ。しかも、改悪教基法に新たに盛り込まれようとしている教育振興基本計画を策定する機関を、教基法が改悪されることを前提にして設置しようとしているのだ。
 そしてもう一点、決定的なのは、安倍が特攻隊の生きざま(死にざま)を全面的に美化していることである。
 安倍は前述の著書で、戦死した特攻隊員の日記の「はかなくも死せりと人の言はば言へ/我が真心の一筋の道」という一節を引用し、「とりわけわたしの胸に迫ってくる」と絶賛している(別掲)。そして「この自由や民主主義をわたしたちの手で守らなければならない」「わたしたちの大切な価値や理想を守ることは、郷土を守ることであり、それはまた、愛しい家族を守ることでもある」などと続けている。ここに記してはいないが、特攻隊を賛美する安倍の一番の本音が“国家と天皇・天皇制こそ、自分のいのちをなげうっても守るべき価値”と押しつけることであるのは間違いない。
 朝鮮侵略を扇動
 安倍晋三は1954年生まれの51歳。70年安保・沖縄闘争や総評労働運動の全盛期を政治家として過ごしてきた60代半ばの小泉や民主党・小沢らとはまったく異なる世代である。
 衆院議員に初当選したのは93年7月。つまり当選と同時に自民党は野党に転落し、細川政権が発足した。90年代以降の十数年は、世界史的に言えば91年にソ連スターリン主義が崩壊し、帝国主義間の争闘戦が本格的に爆発し、世界戦争の時代が始まった時である。そして戦後の日本経済の「右肩上がり」に終止符が打たれて、資本家階級が労働者に大量首切りと賃下げ、終身雇用制の解体の攻撃で襲いかかった過程である。こうした時代に、弱肉強食の論理を平然と振りかざして、労働者を見殺しにしてきた人物なのだ。
 その中でも、安倍がとりわけ突出して立ち回ってきたのは、日本人拉致問題やミサイル問題、日本軍軍隊慰安婦問題や歴史教科書問題などをめぐる、北朝鮮敵視と排外主義政策であった。
 歴史教育をめぐっては、「新しい歴史教科書をつくる会」とまったく同じ価値観の持ち主だ。中学校の歴史教科書から「従軍慰安婦」の記述を削除するためにつくられた「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」事務局長を務め、「つくる会」教科書へのアジア人民の批判を「日本の教科書であり、明らかに内政干渉だ」と非難し、抗議行動に公然と敵対を重ねてきた。
 また「神道政治連盟」の中心人物として靖国神社参拝を重ねてきた、根っからの国粋主義者、天皇主義者である。
 安倍が掲げる「教育改革」とは、特攻隊のように「国のために命をささげる」死生観をたたき込み、北朝鮮・中国侵略戦争に突き進んでいくための「教育」への大転換なのだ。断じて許してはならない。
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 「はかなくも死せりと人の言はば言へ/我が真心の一筋の道」(戦死した特攻隊員の日記の一節)
 今日の豊かな日本は、彼らがささげた尊い命のうえに成り立っている。だが、戦後生まれのわたしたちは……国家のためにすすんで身を投じた人たちにたいし、尊崇の念をあらわしてきただろうか。
 たしかに自分のいのちは大切なものである。しかし、ときにはそれをなげうっても守るべき価値が存在するのだ、ということを考えたことがあるだろうか。
(安倍晋三著 『美しい国へ』第3章「ナショナリズムとはなにか」)

 第2章 愛国心と能力主義教育

 「1%のエリート」育成と侵略戦争担う兵士づくり

 教育基本法改悪の核心的な狙いは、言うまでもなく、愛国心教育の徹底である。
 政府改悪案では、新設する第2条〈教育の目標〉に「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する……態度を養うこと」と盛り込み、すべての教育の中心に愛国心教育を置いた。憲法を改悪して公然と軍隊を保持し、侵略戦争へと突進していくことを前提として、“国のため・天皇のために生き、侵略戦争を進んで担い、命を投げ出す”青少年を育成しようとしているのだ。
 また、改悪案では「義務教育9年」「男女平等」など一切の「平等」は消し去られた。格差の拡大と階層化を前提とした「公」教育に転換しようとしているからだ。
 愛国心教育の徹底と、能力主義教育、差別・選別教育の画然たるエスカレーションは、表裏の関係にある。それは、日帝ブルジョアジーの労働者政策と直結している。
 非正規化に対応
 日帝ブルジョアジーの総本山・日本経団連は、05年1月に出した教育改革提言「これからの教育の方向性に関する提言」において、「教育は国の発展の基盤である」と宣言した。そして戦後教育を「戦後から最近に至るまで、学校教育の現場では……郷土や国を誇りに思う気持ち(国を愛しむ心)を自然に育んでこなかった」と総括し、「こうした状況を放置したままでは……21世紀の国際競争を勝ち抜き、国際社会に貢献していくことはできない」と危機感をあらわにして、教基法の改悪を求めた。
 愛国心教育と能力主義教育は、激化する帝国主義間争闘戦の中で日帝ブルジョアジーが生き残るための労働力を育成するものであり、大量首切りと賃下げ、非正規雇用化攻撃と一体である。教育現場は「外への侵略戦争、内への階級戦争」の最前線なのだ。
 日帝・支配階級はこの十年余、1995年の日経連プロジェクト報告「新時代の『日本的経営』」が打ち出した“常用雇用は1割、残る9割は非正規雇用にたたき落とす”という方針にのっとって、非正規雇用化の攻撃を推し進めてきた。その結果、今や労働者全体の3人に1人、1600万人余りがパートやアルバイト、派遣社員といった非正規雇用労働者にたたき落とされた。若者の半分は、生涯賃金が正規雇用の約4分の1というフリーターにしかなれない。しかも支配階級はこの格差をさらに拡大していこうとしている。
 この現実に輪をかけて、教基法改悪によって、画然たる能力主義教育、差別・選別教育に大転換しようとしているのだ。「能力」によってあらかじめ子どもたちを「ほんの一部のエリート層」と「能力なき者」に振り分け、「能力なき者」には9年の義務教育すら保障しないということだ。
 競争原理の導入
 教育現場に資本の論理が続々入り込んでいる。学校選択制、通学区域の自由化などの競争原理の導入や、「規制緩和」による民間の参入(株式会社や公設民営型)などが動き出している。
 しかも今、親の所得が子どもの教育に直結するという傾向に、ますます拍車がかかっている。都市部では私立中学・国立中学に進学する小学生が3分の1を超えている。そのため、大半の小学生が連日の塾通いとテストづけで競争にたたき込まれている。そこでは、財政的に塾通いや中学受験をさせられない労働者家庭の子どもたちはあらかじめ排除されている。
 そして来年4月、40年ぶりに全国一斉学力テストが強行されようとしている。小学6年生と中学3年生が対象だ。県ごと、市区町村ごと、学校ごと、クラスごとにテスト結果が発表されれば、教育労働者も子どもたちも、点数を上げるためだけの競争にますます追い立てられていく。学校選択制とも結びついて学校の序列化を推し進め、学校評価による予算配分などで格差をさらに拡大していくものだ。
 「エリート教育」とは、“1%のための教育を重視する”というだけのものではない。かつて「ゆとり教育」の答申をまとめた三浦朱門(中教審教育課程審議会・元会長、作家)は、「(エリートは)百人に一人でいい。非才、無才には、せめて実直な精神だけを養っておいてもらえばいい」と語った。残る99%の子どもの教育は切り捨てて、「実直な精神」、つまり進んで戦場におもむき侵略戦争を担う愛国心だけをたたき込もうというものなのだ。
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 「いずれは就学時に遺伝子検査を行い、それぞれの子供の遺伝情報に見合った教育をしていく形になっていきますよ」(江崎玲於奈)
 「労力を、できる者を限りなく伸ばすことに振り向ける。百人に一人でいい、やがて彼らが国を引っ張っていきます。限りなくできない非才、無才には、せめて実直な精神だけを養っておいてもらえばいい」(三浦朱門)
(斎藤貴男著「機会不平等」)

 第3章 職場支配権めぐる攻防

 「教え子を戦場に送るな」 聖職教師にならない決意

 教基法改悪をめぐる最大の攻防は、教育労働者の支配と統制、日教組つぶしである。教基法に「国を愛する態度」を盛り込もうと、能力主義の徹底をうたおうと、子どもたちの教育を実際に担うのは現場の教育労働者である。現場労働者が戦争教育を拒否して団結して闘う限り、戦争教育を貫徹することは絶対にできないからだ。
 そのため、「教育は、不当な支配に服することなく」として国家・教育行政による教育支配を禁じた現行法10条を解体しようとしている。また新設した9条〈教員〉では、「教員は、自己の崇高な使命を深く自覚し、絶えず研究と修養に励み、その職責の遂行に努めなければならない」とした。「崇高な使命」とは、愛国心教育を始め国家が定めた教育目標に忠実に遂行せよ、ということであり、その「使命」をまっとうしない者は排除するということだ。
 新勤評・新職攻撃
 教基法改悪に先駆けて、戦後60年間、教育現場をめぐって争われてきたことがすべて、あらためて攻防になっている。
 1950年代、日教組がストライキで立ちはだかった勤務評定が、人事考課制度―教員評価システムとして新たに登場し、全国で攻防が続いている。1956年から実施された全国一斉学力テストは、日教組の刑事処分を含む激烈な闘争で66年に中止に追い込まれたが、来年4月、40年ぶりに実施されようとしている。1975年に制度化された主任制をめぐっては、「任命主任」を許さず主任手当拠出や職場民主化闘争に取り組み管理職化を阻んできたが、その現実をひっくり返すため、全国で「主幹」「総括教諭」など新職設置の攻撃がかけられている。
 これらはすべて、教育現場を教育労働者が支配するのか国家が支配するのかをめぐる激突だ。
 そして「日の丸・君が代」強制もまた、職場の支配権を組合員から国家へ奪うための攻撃だ。しかし、職務命令と処分という強権によってしか強制できないことは「日の丸・君が代」攻撃の最大の弱点でもある。10条を解体する教基法改悪は、それを突破する攻撃でもあるのだ。
 教員免許更新制
 こうした中で、教基法改悪と並行して大変な攻撃が準備されている。教員免許更新制の導入の動きである。08年度からの導入をめざして、来年の通常国会における法改悪が策動されている。
 免許更新制とは、国鉄分割・民営化において国鉄労働者にかけられた攻撃、郵政民営化によって全逓労働者にかけられようとしている攻撃とまったく同じく、「いったん全員解雇し、選別して再雇用する」ということだ。しかもそれが1回だけでなく、10年ごとにやってくる。国の教育政策に従わない者から教員免許を剥奪(はくだつ)し、闘う教育労働者を現場から根絶やしにしようというのだ。
 日教組解体狙う
 敵の側は、民営化や免許更新制の狙いが労働組合つぶしであると公言している。国鉄分割・民営化当時の首相・中曽根康弘は「国鉄民営化は、国労の崩壊、総評の崩壊、社会党の崩壊のため」と言い、森喜朗は「(郵政民営化も)全逓をつぶし、民主党を支える連合の左派中心勢力である日教組、自治労をつぶし、民主党を大きく変化させるためのもの」と言い放っている(『文芸春秋』05年12月号)。
 さらに中川自民党政調会長は8月19日、「次期政権の最大の抵抗勢力は官公労だ」と宣言した。
 労組全体の組織率が20%を切り、多くの労組が御用組合化しているのに、なぜ彼らはここまで労組つぶしに躍起になるのか? 労組のもとに労働者が団結した時、ブルジョアジーの支配を崩壊させる力を持つことを、敵こそが最も自覚しているからだ。
 教育現場にはいまだに30万人の日教組組合員が存在し、全体の50%はなんらかの組合に組織されている。日教組本部が文部科学省との「パートナー路線」に変質しているとは言っても、現場労働者は、日教組の存在意義は〈平和と民主主義教育〉だと誇りを持って職場を守っている。日帝ブルジョアジーはいまだに教育現場を完全に制圧することができていないし、この現場労働者の怒りに火がつき、反乱がまき起こることを何よりも恐れているのだ。
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教育基本法

第六条(学校教育) 2 法律に定める学校の教員は、全体の奉仕者であつて、自己の使命を自覚し、その職責の遂行に努めなければならない。このためには、教員の身分は、尊重され、その待遇の適正が、期せられなければならない。

第十条(教育行政) 教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負つて行われるべきものである。
 2 教育行政は、この自覚のもとに、教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目標として行われなければならない。

政府改悪案

第九条(教員) 法律に定める学校の教員は、自己の崇高な使命を深く自覚し、絶えず研究と修養に励み、その職責の遂行に努めなければならない。
第十六条(教育行政) 教育は、不当な支配に服することなく、この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきものであり、教育行政は、国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の協力の下、公正かつ適正に行われなければならない。

 第4章 全面屈服の日教組本部

 政府案より悪い民主案を批判せず闘いの抑圧者に

 日教組本部が教基法改悪に対して掲げているスローガンは、「改悪阻止」ではなく「教育基本法を守り、生かす運動」である。そのもとで実際に行っているのは「衆参両院に教育基本法調査会を設置すること」を求める請願署名である。組合員から「改憲勢力が3分の2を占める翼賛国会に対して、改悪を前提にした調査会設置を求めるのはおかしい」「改悪反対の署名を集めるべき」と批判されても、「この署名なら連合も取り組んでくれる。この署名なら民主党も紹介議員になってくれる」と開き直るありさまだ。
 さらに重大なのは、政府改悪案以上に「愛国心教育」を露骨に記した民主党改悪案の取りまとめに、日教組の森越委員長が全面協力したことである。5月に民主党改悪案をめぐって日教組の組織内議員である日政連議員約10人と森越委員長が対応を協議した際、森越は「(大事なのは)政府案成立阻止だ」と言って民主党案に同意した。
 民主党はすでに昨年4月には愛国心を前文に盛り込んだ党草案を発表している。日教組本部はとっくの昔に、愛国心教育に合意していたのだ。日教組本部が進める「調査会設置要求」運動も、その実態は新教育基本法制定運動にほかならない。
 今春通常国会をめぐっては、現場の怒りに突き上げられ、5月に全国から代表派遣で約10日間の座り込みを設定したが、「継続審議」が報道されると、第2次座り込み行動は中止した。国会闘争を継続すれば、現場の怒りがますます高まり、「政府案も民主党案も廃案に」という闘いが大きく燃え上がることに恐れをなしたのだ。
 平和基本法方針
 教基法改悪に対する屈服は、憲法改悪に対する全面屈服と一体のものである。日教組の森越委員長はすでに昨年春、雑誌で新右翼・一水会顧問の鈴木邦男との対談に応じ、「憲法についても、不磨の大典ではないと思っています。未来永劫(えいごう)変えてはいけない、というものではない」(『論座』6月号)と述べている。
 さらに今年2月に日教組憲法論議対策委員会が発表した「憲法論議に関する日教組の基本的考え方(中間報告その2)」では、「平和基本法」制定方針を打ち出した。その核心は、自衛権とその発動としての戦争を容認し、自衛隊を容認する点にある。日教組本部は今や、「改憲阻止」の旗を自ら引き降ろして、改憲推進勢力への道を突き進もうとしているのである。
 職場闘争の放棄
 日教組本部のこの現実は、ここ十年余、職場闘争の放棄を公言し、とりわけ「日の丸・君が代」闘争を放棄してきたことと連なっている。
 日教組は1995年に職場闘争5項目(「日の丸・君が代」強制反対、主任制反対、官制研修反対、教育課程の自主編成、職員会議の最高議決機関化)を棚上げした。それ以来10年間、現場組合員は大変な苦闘を強いられてきたが、その最たるものが「日の丸・君が代」闘争であった。
 組合費は払っているにもかかわらず、組合員が不利益処分を受けても賃金回復はされなくなった。教組が掲げる「『日の丸・君が代』強制反対」の中身は、いつの間にか「個人の思想・信条の自由、内心の自由を守れ」へとすり替えられた。戦争教育に反対する労働者としての階級的闘いではなく、「個人の内心の自由」=人権闘争に限定されたのだ。そして、団結を守りぬく組織的闘争から個人の組合員の人権闘争へ、闘いを分断する口実となっていった。
 表向きは「(「君が代」斉唱時の起立を命ずる)職務命令を校長に出させない取り組み」を掲げるが、その実は「職務命令が出されたら従う」という全面屈服方針。それでも組合員が「職務命令には従えない」と不起立して処分を受けると、「組合の方針でない」と言い、「組合の統一と団結に反する」として、闘う者を排除する口実にもされた。不起立した組合員を、教育委員会よりも先に組合役員が呼び出して、「なぜ座ったんだ」と問いただすというケースまである。
 組合執行部は組合員には「職務命令には従え」と言いつつ、「子どもの内心の自由を守る取り組みを」と言うが、そんな主張は現実にはまったく無力だ。東京では生徒の不起立を理由とした「厳重注意」に続いて、今年3月には生徒指導の新たな通達まで出された。教育労働者が自分自身への強制を拒否して体を張って行動することこそ、子どもの内心の自由をも守るのだ。
 しかし、日教組本部や教組既成指導部が現場組合員の闘いを「組合」の名で鎮圧しようとすればするほど、現場組合員の怒りに火をつけ、既成指導部の屈服を突き破る決起が次々とまき起こっている。この力こそ、階級的労働運動を現場からつくり出す展望をすべての労働者に指し示し、教育労働運動だけでなく、すべての労働者の闘いの展望を切り開いている。
 教育労働者の中に積もりに積もった怒りに火をつけることができれば、腐敗した既成指導部を吹き飛ばし、教基法改悪阻止闘争を爆発させることは絶対に可能だ。----------------------

戦死せる教え児よ 竹本源治

逝(ゆ)きて還らぬ教え児よ
私の手は血まみれだ!
君を縊(くび)ったその綱の
端を私も持っていた
しかも人の子の師の名において
嗚呼(ああ)!
「お互いにだまされていた」の言訳が
なんでできよう
慚愧(ざんき)、悔恨、懺悔(ざんげ)を重ねても
それが何の償いになろう
逝(い)った君はもう還らない
今ぞ私は汚濁の手をすすぎ
涙をはらって君の墓標に誓う
「繰り返さぬぞ絶対に!」

1952年、高知教組の機関誌「るねさんす」第44号に発表された。同詩の額は、日教組本部のある日本教育会館3階ホールのロビー壁面に今も掲示されている。

 第5章 「不起立」が決定的な力

 「日の丸・君が代」闘争勢力先頭に闘う日教組再生を

 日教組本部の屈服を突き破って国会闘争を巻き起こすために、何よりも「日の丸・君が代」闘争勢力が先頭に立とう。
 「日の丸・君が代」強制をめぐる攻防は、99年の「国旗・国歌法」制定から7年たつ今も、まったく決着はついていない。それどころか、ますます強固に、広がりをもって発展している。
 1985年に文部省が「日の丸・君が代」指導徹底通知を出して以降、処分を受けた教育労働者は1000人をはるかに超える。そして03年「10・23都教委通達」以降、かつてない厳しい処分と激突してきた東京の教育労働者は、今春、3年目の不起立闘争を断固としてたたきつけた。
 さらに「東京を孤立させるな!」と全国各地の教育労働者が陸続と立ち上がり、北海道から沖縄まで全国で数万人の教育労働者が不起立闘争を闘いぬいている。この闘いは、「教え子を再び戦場に送るな!」を掲げる教育労働者にとって、けっして譲れない闘いなのだ。
 不起立闘争は、日教組の屈服方針ゆえ後退を強いられてきた教育労働運動において、攻守ところを変える決定的な力を持った。「処分で脅せば従うだろう」などと教育労働者を見くびっていた石原と都教委の思惑を、完全に吹き飛ばしたのだ。
 「日の丸・君が代」闘争は、教育の国家統制を許さない、教基法改悪阻止の闘いそのものである。それは「日の丸・君が代」闘争が職場からの戦争協力拒否闘争だからだ。陸・海・空・港湾労組20団体が呼びかける、有事法を「完成させない、発動させない、従わない」闘争そのものである。教基法の条文を書き換え愛国心を盛り込もうとも、全国で30万日教組組合員が処分を恐れず「日の丸・君が代」不起立闘争を闘うならば、まったく無力となるのだ。
 民主案も廃案へ
 しかも、「日の丸・君が代」闘争は、階級的労働運動の再生へ向けて、労働運動の地図を塗り替える闘いである。東京の被処分者は、組合大会で処分撤回闘争を組合の課題に押し上げ、役員選挙で執行部に被処分者を送り込み、闘う日教組再生に向けた拠点をつくり出してきた。首をも賭けて闘い続ける被処分者がその先頭に立ち、闘う教育労働者を鼓舞している。教基法闘争をめぐっても、日教組本部の足元から、本部の完全屈服を突き破る「政府案も民主党案も廃案へ」という闘いがまき起こっている。この力こそ、日教組を現場組合員の手に取り戻し、闘う日教組を再生させ、政府・支配階級の日教組つぶしをうち破る力である。
 また、「日の丸・君が代」闘争が爆発したことで、05年夏の日教組大会においても改憲方針を正面からうち出せなくさせた。この闘いが自治労組合員の闘いと相まって、05年10月の連合大会では改憲推進方針を提案できないという力関係を生み出したのだ。
 「日の丸・君が代」を闘う教育労働者の潮流が組合員を牽引(けんいん)する指導部になることこそ、日教組を再生していく具体的道筋である。その闘いは、今年3年目となった8・6ヒロシマ教育労働者全国交流集会の大成功によって、ますます着実に広がっている。
 9月22日に開会されようとしている臨時国会の会期は2カ月余。各単組執行部を突き上げ、日教組本部を突き上げ、全国闘争指令を出させよう。
 さらに、日教組本部の指令がなくても、各単組から、各職場から、手弁当で仲間とともに続々駆けつけよう。
 職場闘争がカギ
 何よりも、職場から闘いを巻き起こそう。国会闘争をめぐっても、一切の土台は職場における闘いである。国会闘争に駆けつけるためにも、学校現場での極限的な多忙化との闘いが欠かせない。
 動労千葉の労働運動も、一切の土台は職場闘争である。資本の合理化攻撃と闘わなければ、自分たち労働者が殺される――この現実に怒りを燃やして、職場において資本・当局と徹底的に闘うことが出発点だ。
 それは、極限的多忙化によって現職死亡や病休、早期退職へと追いやられている教育労働者も、まったく同じだ。教基法を改悪して「教え子を戦場に送る」帝国主義戦争の先兵になることを強制するものと、教育労働者を極限的な労働強化によって死にいたらしめるものの根っこは一つだ。
 教育を戦争の道具とし、教育労働者をその手先にする国家こそおかしいのだ。そんな国家は打ち倒して、労働者の社会をつくろう。帝国主義体制と真っ向から対決し、国家体制を揺るがす闘いをやろう。
 自己保身と体制の維持を図るだけの既成指導部を吹き飛ばして、現場から、教育労働者の未来を開くため、教育労働者の解放をかちとるために闘おう。
 今秋、改悪案成立をなんとしても阻もう。ただちに国会闘争へ向けて闘おう!

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週刊『前進』(2261号5面1)(2006/09/11)

 教育基本法改悪阻止 教育労働者先頭に総決起を!

 教育基本法改悪と闘う現場から

 東京で反乱が始まった

 石原・都教委の狙いは破産

 教育基本法改悪によって、教育現場はどう変わるのか。「改悪教基法の先取り」と言われる東京の学校の現実を知るため、教育労働者Aさんの職場である都内の小学校を訪ねた。(本紙/大西晶)

 夏休みが奪われ官制研修の強制

 訪問したのは、8月の平日午後。「夏休みだから人もまばらだろう」というのは一昔前の話だ。子どもも教員も連日のように学校に来ている。
 教員にとって夏休みは、授業内容などを準備する研修を行う貴重な期間であったはずだ。しかし今は、長期休業中の自宅研修権はない。夏季休暇や年休を取らない限り、連日の学校通いだ。夏休み中も官制研修に追われ、ほとんど休みをとれない教員も多い。
 Aさんは言う。「それでも『研修承認願』を提出すれば自主的な研修も認められていたんですが、主催団体によって『研修と認めない』と言い始める校長が年々増えています」。認めるかどうかは「校長の裁量」が建前だが、実際は教育委員会の「指導」による。
 「教育労働者が自主的に研修すれば、当然、教育行政に批判的な視点が出てくる。そういう視点を持つことを認めない、『意識改革』攻撃です。官制研修以外の研修は認めないってことです」
 では、都教委が実施する官制研修とはどんなものか? 採用1年目は初任者研修、その後は2・3年次研修、加えて今、4年次研修も始まっている。10年目に行われる10年研修は「地獄の10年研」と呼ばれ、青年労働者の間では「来年は10年研だから、子どもはつくれない」と言われるほどだ。
 初任研は、校外研修・校内研修を合わせて実に年間300時間で、これは強制だ。研修を受講した後には膨大なレポート提出が義務づけられ、これがチェックされ何度も書き直すことが命じられる。まったく無意味なレポート提出をこなすために、連日夜9時、10時まで学校にいるのも当たり前、というのが現実だ。また初任者が課せられる「研究授業」は、教育委員会の指導主事、校長もしくは副校長、指導教官が授業を観察する。
 初任者や青年労働者にとってさらに深刻なのが、管理職によるパワーハラスメントだ。「避妊しているか?」と問われた女性、妊娠したと報告したら校長に「新採のくせに妊娠するなんて」となじられた女性、親が亡くなり慶弔休暇で実家に戻っていたら「早く出てこい」と呼び戻された男性、等々。
 こうした現実をエスカレートさせるのが、教員免許更新制の導入だ。教基法の改悪を見込んで、来年の通常国会には免許更新制のための法改悪案が提出されようとしている。10年ごとに30時間の研修を義務づけ、その結果によっては免許が更新されないというものだ。「『上からの命令に服して、黙って働け』ということですよね。『管理職の言うとおりに働かなければ、更新時に免許を奪うぞ』と脅し、『物言わぬ教員』にしていこうというんです」
 都教委による異常なまでの管理と抑圧に加えて、校長・副校長らの嫌がらせ、そして際限のない長時間労働の中で、怒りをため込んでいる青年労働者が激増し、ここ最近、組合加盟が始まっている。石原・都教委の「教育改革」とは、組合つぶしが最大の狙いだが、そのあまりにひどい現実が、逆に組合加盟に結びついているのだ。石原・都教委の攻撃のほころびが始まっている。
 全国に先駆けて03年度に導入された主幹は、「副校長を補佐し、教諭等を指導・監督する職」と位置づけられている。
 1975年の主任制闘争以来の闘いで主任を管理職とすることを阻んだ結果、学校の管理職は校長・教頭だけ、それ以外は全員同格だった。この現実を都教委は「横並び意識」「鍋蓋(なべぶた)型組織」と罵倒(ばとう)して、上位下達の管理システムを確立することを狙ったのだ。
 それ以降、各道府県に総括教諭、主席、指導教諭などの「新たな管理職」の設置が進んだ。
(写真 国会前で闘う東京の教育労働者【6月2日】)

 新たな管理職=主幹設置は破綻

 主幹配置が始まって4年目の現場はどうなっているのか。規則では「小学校は2人配置、中学校は3人配置」と定めているが、なんと主幹がゼロや1人だけの学校が続出しているという。
 なぜか? 主幹に応募してくる教員が圧倒的に足りないからだ。今年度、都教育庁は「補充人員」として約900人を募集したが、実際に応募したのは500人余だった。給料表に一般教員(2級)よりワンランク上の「特2級」を設け、賃金は年間約25万円アップさせたが、それでも応募に結びつかないのだ。
 Aさんは言う。「現場で働いてきた者は”学校は自由で民主主義的であるべき”と思っています。だから主幹になりたがる人がいないんです。上からは管理され、現場教員からは不満をぶつけられるだけだから」

 「民主案も廃案」修正案を可決

 東京の教育労働者にとって、とりわけ教基法改悪への危機意識は強い。
 この7月、Aさんが所属する東京教組の定期大会で、修正案が提出され「政府案にも、民主党案にも反対し、廃案をめざして闘う」という方針が確立された。「民主党案は批判しない」という日教組本部の足元から、屈服方針を突き破る反乱がまき起こっているのだ。
 「教育基本法の改悪をとめよう!全国連絡会」が主催した6月2日の全国集会と国会デモも、東京の教育労働者が大挙参加した。集会が始まった18時から国会デモに出る19時ころまで、職場から駆けつける人が後を絶たなかった。「今、17時に職場を出ること自身がものすごく大変。でもみんな『今日は絶対に行くんだ』という熱意を持って駆けつけたんです」
 秋へ向けて、国会闘争をつくり出すことが勝負だ。教基法改悪に反対という思いは強くても、「こんなに忙しくちゃ年休が取れない。国会に行けない」というのが現実だからだ。「教育現場の現実をつくったのは教基法を破壊した石原です。『ここで教育基本法が変えられたら、どんな時代になるのか』と議論を重ねて、国会闘争をつくり出していきたい」
 公務員労働者が「ストライキ」という言葉を使うことができなかった50年代、日教組は勤務評定導入を阻止するために「10割年休闘争」で実質的なストライキを闘い取った。「あの時とまったく同じことが問われています」とAさんは語る。
 日教組の組合員は30万人余。全員が1日国会前に来れば、1万人の国会闘争が30日できる組織力がある。そういう闘いをたたきつけたら、教育基本法改悪など吹き飛ぶに違いない。「教育労働者の生きざまをかけて、この秋、闘います」。Aさんは力を込めた。

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週刊『前進』(2261号5面2)(2006/09/11)

 教員統制と靖国崇拝の道

 民主党改悪案を批判する(下)

 教員の闘いを抹殺

 民主党が「日本国教育基本法案の解説書」と称して、自治労などでばらまいている「教育のススメ」を、前号に続いて批判する。
 「学校の自主性・自律性」(4条3項)、「教育行政は民主的な運営を旨とする」(18条1項)「学校理事会による学校の主体的自律的運営」(同4項)など新たに盛り込まれている規定は、美辞麗句でしかなく「現場主権・地域主権」を保障するものではない。「『不当な支配』をめぐる不毛な論争を教育現場から一掃する」などと言って、教育労働者の闘いの歴史と数々の判例に裏打ちされた現行法10条を抹消していることは、万死に値する犯罪だ。
 さらに「地方教育行政は、その長が行う」(18条2項)とし、教育行政の独立性を否定している。首長による教育行政の一元化は、「現場主権」どころか、首長によるトップダウンの政策決定の現場への押しつけをもたらす。教員は行政官庁の命令系統に組み込まれ、権力の末端機構の担い手とされるのだ。
 前文に盛り込まれた「愛国心」については、「我々の教育の結果として……子どもたちがそうした心を自然に習得してくれることは望ましい」から「『自然に水がしみ込むように育む』という意味の『涵養』という言葉を用いた」のだという。マインドコントロールで愛国心を植えつけるというのだ。
 宗教教育については、「宗教の意義の理解を教育上重視」「宗教的感性の涵養を教育上尊重」と、「宗教に関する一般的教養」を盛り込んだ政府案以上に踏み込んでいる。宗教的情操教育は、儀式的行事による「日の丸・君が代」強制を正当化するものだ。
 「教育上重視」するという「宗教的な伝統や文化に関する基本的知識」とは、まさに国家神道・神道儀礼のことであり、他方、「目的・効果」基準を意識して「特定宗教のための宗教教育その他宗教的活動」を禁じた現行法2項の文言を「特定の宗教の信仰を奨励……するための」と禁止対象を狭めている。「社会的儀礼・習俗の範囲内」として、靖国見学・参拝をやろうというのだ。

 「テロは心の問題」

 愛国心を法案に盛り込んだことについて、「教育のススメ」では、あらゆる奇弁と反労働者的イデオロギーを総動員して弁解につとめている。「従来の近代国民国家システムは崩れ始め、近代(モダン)は終わりつつある」という時代認識を押し出し、環境問題、格差問題、財政赤字、テロなどの課題は、「コミュニケーション・知恵・文化を重んずる新たな文明の創造」によってしか解決しないという。日本太古からの「共生」と「和の精神」が「環境問題とテロの恐怖に怯える世界から必要とされている」などと、「新文明創造」の名による侵略イデオロギーを振りまいている。
 「テロの根絶はいかにテロリストの心を変えていけるかにかかっています」「環境問題も……『足るを知る』精神や共生の思想を理解し……行動パターンを改める問題に帰着します」「(社会サービスの維持のためには)公助に自助・互助・共助を加え……より多くの人々にボランティア精神をもっていただくことが極めて重要」という。
 構造改革・規制緩和が問題なのではなく、心の問題であり、学校で愛国心・宗教教育をやることで解決するというのだ。これで、民主党の「格差社会批判」の化けの皮もはがれたというものだ。

 連合・民主党の弱点

  民主党は、「民主リベラル」の仮面を最後的に投げ捨て、愛国主義・排外主義を基調とする帝国主義ブルジョア政党として登場しようとしている。「日本国教育基本法案」と「教育のススメ」は、連合・民主党路線の最弱点だ。労働者を民主党の尻尾に結び付けようとする策動を怒りをもって粉砕し、戦争と民営化攻撃と闘う労働運動の再生をかちとろう。全国の教育労働者は、臨時国会決戦に総決起し、11・5労働者集会−11・12教基法改悪反対集会(日比谷野音)に総結集しよう。
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 民主党「日本国教育基本法案」

 @「国家による国家のための教育」 国家間競争−戦争に勝ちぬくための「人材の育成」に転換
 A「日本を愛する心を涵養」とうたい、戦争のための「愛国心」教育
 B「宗教的感性の涵養」で天皇制教育、靖国参拝に道を開く
 C能力主義教育と外国人生徒への排外主義・同化主義教育
 D10条抹殺で、教育労働者の闘いを否定。教育の権力統制を強化

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週刊『前進』(2261号5面3)(2006/09/11)

 コミューン 10月号

 職場で勝てる団結

 動労千葉は勝っている。闘って、危険個所のレールの大量交換を実現した。全国のJRの検修職場で千葉だけが外注化を阻止できている。
 大労組の幹部が、今はストなどできる情勢でないと言っている時、なぜ一地方の組合にすぎない動労千葉が、スト、安全運転闘争ができるのか。そして実際成果を上げることができるのか。
 本号の特集は、この勝利の秘訣を具体的な職場の闘いを通じて明らかにしている。全国のさまざまな職場で奮闘している労働者に希望を与え、闘いの羅針盤になる。
 第1章は、分割・民営化反対のストを唯一貫徹した動労千葉が、組織破壊をはね返し、反撃に転じた姿を描く。特に、小泉「構造改革」と一体のすさまじい「第2の民営化」に対して、5年間の闘いで勝利していく姿は圧巻だ。
 第2章は、今年4月の幕張車両センターでの事故に際し、組合員を守り抜いてきた団結に迫っている。そして、館山運転区と木更津支区を廃止し、職場丸ごと奪って動労千葉をつぶす大攻撃との攻防戦に進む。
 翻訳資料は米帝の06年『国家安全保障戦略』。02年のブッシュ・ドクトリンの改定版だ。「圧制体制」と「大量破壊兵器との結びつき」を強調し、「圧制の打倒」を口実とした侵略戦争の拡大を宣言している。

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週刊『前進』(2261号6面1)(2006/09/11)

 三里塚 9・14農業会議包囲へ

 「市東さんの農地守れ」の声を

 「市東さんの農地を守れ」。これをすべての労働者人民の合言葉にしなければならない。
(写真 への宇誘導路を眼前に農作業に励む市東孝雄さん。この農地強奪を許すなす【成田市天神峰】)
 9月14日、この日千葉市内で開かれる千葉県農業会議に対し、三里塚芝山連合空港反対同盟は集会とデモを呼びかけている(要項1面)。「農地強奪申請を却下せよ」の声で、農業会議を包囲しよう。
 成田空港会社(NAA)は7月に、暫定滑走路の敷地に食い込み誘導路をへの字に曲げている反対同盟の市東孝雄さんの畑について、「農地法に基づく耕作権解約許可申請」を提出した。「空港にじゃまだから農業をやめて出ていけ」というのだ。欠陥だらけの空港・滑走路を造った責任を転嫁し、農民に立ち退きを迫る、こんなデタラメで理不尽な要求があるか。千葉県農業会議と堂本知事がこれにわずかでもお墨付きを与えるような「判断」や「決定」を出すことを絶対に許してはならない。
 市東孝雄さんの耕作地は「大正」期に開墾した祖父の代から90年間も耕作を続けてきた農地であり、耕作権ははっきりしている。本来は戦後の農地解放で市東家の所有になるべき耕作地が、祖父の復員が遅れたことで小作地のままになった。ところが18年前に空港公団(現NAA)はこの土地を旧地主から買収し、その事実をひた隠しにして登記もせず、何くわぬ顔で旧地主に地代を受け取らせてきた。それが今になって土地を空港のために差し出せとは、これこそが農地法違反であり、売買契約自体が無効である。しかもNAAの申請書は位置の特定が、実際の耕作地とずれているというずさんさだ。
 そもそも農業会議は農民、農地、農業を保護・育成すべき存在であり、千葉県は農業県として新規就農者への援助や指導を行っている。その千葉県農業会議が営農を続けたい農民の農地強奪に手を貸すとしたら(しかも農地法を使って!)、それは日本農民全体を敵に回す犯罪的な所業だ。例えて言えば、教育委員会が子どもたちに学校へ行くなと強制するようなものだ。こんなことが許されるはずがない。
 言うまでもなくこの農地強奪申請はNAAと日帝による暫定滑走路「北延伸」攻撃そのものである。40年間不屈に闘う反対同盟が収用法による農地取り上げを完全に粉砕したことで、追いつめられた国家権力は法も道理も踏みにじる方法に訴えるしかなくなったのだ。
 暫定滑走路09年完成など、絶対に不可能だ。反対同盟と全国の労働者人民が、現実の闘いでそれを証明するだろう。
 心ある人びとの「農地強奪許すな」の声を集中し、8月を上回る大結集で9・14千葉県農業会議を包囲しよう。
 8月3日に暫定滑走路南側の東峰区の住民が出した公開質問状に対し、NAAは黒野社長の署名で8月18日付の「回答」を送りつけてきた。その一言一句が怒りなしに読めない文章である。

 NAA黒野の「回答」に怒り

 東峰の森を破壊しての誘導路建設計画について、「話し合いを重ね、森の管理に努めてきた」が「みなさまの所有される用地を避ける形で誘導路を建設するとなると、どうしても東峰の森を通る案とせざるを得ません」と言い、また「みなさまとの話し合いに具体的に進展が見えなければ、延伸に要する用地の取得を終えている北伸案に変更せざるを得なくなることを再三申し上げてまいりました」「北伸案を取らざるを得なかったことは、私共にとって苦渋の選択」などと言う。
 要するに「東峰の森は残す」と再三約束したことを平然と破りすて、「森をつぶして誘導路を造る、立ち退かないから北に滑走路を延ばして造る、話し合いに応じないから造る」と一方的に通告しているだけだ。言葉遣いのわざとらしいていねいさの中に、農民を無視し農地を強奪して暴力的に「北延伸」を強行するNAA・黒野の意図が込められている。反対同盟の怒りは誰よりも大きい。これが「回答」か。まさに居直りの「北延伸」着工宣言だ!
 9月着工を絶対に阻止し、東峰の森と市東さんの農地を守りぬこう。

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週刊『前進』(2261号6面2)(2006/09/11)

 安倍登場に労働者の総反撃を

 戦争態勢への大転換を狙う

 極右安倍晋三国家主義者の正体

 「改憲」を公約の第一に掲げた首相が登場しようとしている。自民党総裁選の最有力候補である安倍晋三は、戦後かつてない極右・国家主義者であり、極端な天皇主義者である。「新しい歴史教科書をつくる会」とまったく同一の歴史観とイデオロギーをもっている。日帝の未曽有(みぞう)の危機に突き動かされ、「改憲と教育改革」で日本を戦争のできる国に根本的に作り変えようとしているのだ。この安倍の本性を、安倍自身のこれまでの言動から暴きだしていきたい。
安倍晋三

 憲法 “新憲法制定を日程に” “解釈改憲もはや限界”

 安倍は、8月22日の横浜での自民党北関東・南関東合同ブロック大会で「新憲法制定を政治スケジュールにすべくリーダーシップを発揮すべき時がきた」と明言し、要するに”次の首相になる自分がそれを実行する”と事実上宣言した。
 改憲を具体的に打ち出して総理大臣になった人間は歴代の自民党総裁の中にはいない。安倍は、94年の1年生議員だったころ、「自民党基本問題調査会」が開かれ、そこで出された「自民党新宣言」の案に「自主憲法制定」の文字がなかったことに「とうてい納得できなかった」と大反対し、書き換えさせたということを自慢している。いわば改憲のために政治家になったような人物だ。
 それでは、安倍は現行憲法に対して何と言っているのか。以下引用は安倍の『美しい国へ』(文春新書)からである。
 現行憲法前文について、安倍は「敗戦国としての連合国への”わび証文”のような宣言」と言い、「列強の国々から褒めてもらえるよう頑張ります、という妙にへりくだった、いじましい文言」と嫌悪感を示している。
 また、9条について、自衛隊の結成過程での吉田内閣の「戦力とは言わない」とか「違憲ではない」という説明について「矛盾に満ちた説明」で、「後に日本の安全保障にとって大きな障害になった」と「批判」し、同じ敗戦国であった西ドイツが主権回復と同時に国防軍を創設したのとの違いを強調している。

 「現実に合わせ」

 つまり安倍は敗戦帝国主義としての日本が強いられてきた制約を突破し、他の帝国主義と同様の軍隊を持ちたいと言っているのである。「わが国の安全保障と憲法との乖離(かいり)を解釈でしのぐのは、もはや限界」として、「現実に合わせて憲法を変えろ」と要求しているのだ。
 「守るべきもの」として安倍は「国家の独立」「国家の主権」「平和」「生命と財産」を挙げ、さらに「わたしたち日本人が紡いできた歴史や伝統や文化」を挙げて、これらのために憲法を変え、軍隊を持つ必要があるとするのだ。
 だが、守るべき国家とは何か。それは超階級的なものではなく、一握りの資本家階級のためのものだ。それを「国家のため」と言いくるめて労働者人民を戦争に動員したのが戦前の侵略戦争、帝国主義戦争の歴史だ。
 結局、安倍は「守るべきもの=国家」を掲げて、そのために人民に命を投げ出すことを求めているのである。

 教育 “自虐的歴史教育排除” “国に誇りを持たせる”

 安倍は「憲法と教育」を公約の中心に掲げ、首相になれば、臨時国会の第一の目標に教育基本法改悪をすえると宣言している。首相直属の「教育改革推進会議」を設置して、教育改革を改憲の突破口にしようとしている。
 同書の「第七章 教育の再生」の冒頭、安倍は次のように言う。
 「戦後日本は、60年前の戦争の原因と敗戦の理由をひたすら国家主義に求めた。その結果、戦後の日本人の心性のどこかに、国家=悪という方程式がビルトインされてしまった。だから、国家的見地からの発想がなかなかできない。いやむしろ忌避するような傾向が強い。戦後教育の蹉跌(さてつ)のひとつである」
 この「国家=悪という方程式」と闘うというのが同書の大きなテーマになっている。この方程式を粉砕して「国に誇りを持たせる」「国のために命をささげる」ということを教育の中心に持ってこようとしているのである。それが安倍の「教育改革」の目的なのだ。
 そして安倍は、「自虐的な歴史教育」をただすというテーマを、イギリスのサッチャーが80年代に行った「教育改革」に引き寄せて論じている。イギリス帝国主義の歴史を正しく教えることを「自尊心を傷つける教科書」と称して、サッチャーが「バランスをとった」教科書に変えたというのだ。安倍はイギリスにかこつけて、アジア侵略戦争の歴史を考える日本の教科書が「自虐的」だと言いたいのである。

 「ボランティア」

 さらに、安倍は学校だけではなく家庭と地域社会についてまで「教育改革」を及ぼそうとしている。これは教育基本法改悪案と同じ考えだ。
 その中で次のようなことまで言っている。
 「そこで考えられるのが、若者たちにボランティアを通して、人と人とのつながりの大切さを学んでもらう方法だ。……たとえば、大学入学の条件として、一定のボランティア活動を義務づける方法が考えられる。……たとえ最初は強制であっても、まず若者にそうした機会を与えることに大きな意味がある」
 これは西尾幹二編著『すべての18歳に「奉仕義務」を』(小学館文庫)などに見られる、教育の中に「奉仕」を盛り込むことで、「道徳」や「忍耐」や「自己責任」をたたき込むという主張と同一だ。苦役の強制に屈従させるものであり、徴兵制の地ならしだ。

 格差社会居直り

 また、安倍は、「格差社会の到来を心配する声」について、「競争がおこなわれれば、勝つ人と負ける人が出る。構造改革が進んだ結果、格差があらわれてきたのは、ある意味で自然なこと」と居直り、格差拡大をどんどん推進する立場に立っている。
 実際、教育基本法を改悪して「第2条 教育の目標」や「第5条 義務教育」に能力主義を持ち込み、初期の段階から能力を前提に選別する教育がやられていけば、格差は助長され、固定化されることは明白だ。
 貧困と格差を拡大する小泉=奥田の構造改革路線を継続・強化するのが安倍なのである。

 戦争 “国のために命捨てよ” “日本版NSC新設を”

 戦争責任を回避

 日本帝国主義の15年戦争、中国・アジア侵略戦争と対米英帝国主義戦争の歴史に対してどういう態度をとるかは、その人間の歴史観、世界観を示す試金石である。
 靖国神社に6年連続して反対を押し切って参拝した小泉以上に、安倍にはあの戦争に対する反省の意思はかけらもない。安倍の祖父である岸信介は、開戦時の東条内閣で商工大臣を務めたA級戦犯容疑者である。人は犯罪者の子や孫に生まれたからといって、それだけで非難されるべきではない。しかし「身内ながら誇らしく思う」と祖父を尊敬している安倍は、同類として断罪されなければならない。
 安倍の『美しい国へ』の結語は次のように記されている。
 「日本の欠点を語ることに生きがいを求めるのではなく、日本の明日のために何をなすべきかを語り合おうではないか」
 これは、明らかに日本帝国主義のアジアに対する侵略戦争と虐殺の歴史を直視し、戦争責任の明確化、責任者処罰、被害者への補償などを求める、闘う労働者人民を念頭に置いた言葉だ。このような労働者人民やアジアからの告発の声に対して、真剣に向き合おうとすることを「日本の欠点を語ることに生きがいを求める」ものとして、排斥しようと言うのだ。

 戦争体制の構築

 安倍は、この間、北朝鮮に対する国連制裁決議策動の中心人物となり、また「敵基地攻撃能力論」をぶち、「集団的自衛権行使」を叫び、さらに「自衛隊派兵恒久法」が必要だと叫んでいる。
 それだけでなく先の横浜での演説では、「首相官邸に日本版NSC(国家安全保障会議)を設置する」という意向を示した。米ホワイトハウスと直結した戦争指導体制をつくろうというのだ。

 「闘う政治家」

 『文芸春秋』9月号の安倍インタビューのタイトルは「『闘う政治家』宣言/この国のために命を捨てる」となっている。ここに安倍の本質が表現されている。そこで安倍は、7月5日の北朝鮮スターリン主義によるミサイル発射に対して、直ちに行動を起こしたことを自慢している。
 北朝鮮の「拉致問題」に対して、安倍が官房副長官として、あるいは自民党幹事長として、「毅然(きぜん)たる態度をとってきた」ことで、排外主義的な人気を集め、頭角を現してきた。北朝鮮スターリン主義の反人民的な政策を口実に北朝鮮侵略戦争を現実に狙っているということである。「闘う政治家」とは、対北朝鮮侵略戦争を断固実行する政治家になるという宣言なのだ。
 最後に、安倍のような人物が首相になるのは、ブルジョアジーがそれを選択したということである。安倍は本質的にきわめて脆弱(ぜいじゃく)である。労働者階級が真っ向からこの改憲政権の登場と対決して闘えば、圧倒的な勝利の道が開かれる。

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安倍語録(『美しい国へ』から)

●「闘う政治家」
 「闘う政治家」 とは、ここ一番、国家のため、国民のためとあれば、批判を恐れず行動する政治家のことである。
●海外の日本人
 企業の駐在員をはじめ、海外で活動している日本人はたくさんいる。犯罪者やテロリストにたいして、「日本人に手をかけると日本国家が黙っていない」という姿勢を国家が見せることが、海外における日本人の経済活動を守ることにつながるのである。
●戦後の日本
 ひるがえって日本の戦後はどうだったろうか。安全保障を他国にまかせ、経済を優先させることで、わたしたちは物資的にはたしかに大きなものを得た。だが精神的には失ったものも、大きかったのではないか。
●日米関係
 アメリカのいうままにならずに、日本はもっといいたいことをいえ、という人がいるが、日米同盟における双務性を高めてこそ、基地問題を含めて、わたしたちの発言力は格段に増すのである。

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週刊『前進』(2261号6面3)(2006/09/11)

 「抵抗勢力は官公労」

 中川発言 4大産別決戦で対決へ

 自民党の中川秀直政調会長は8月19日、名古屋市内で講演し、「官公労は次期政権の最大の抵抗勢力」「官公労は、自民党が増税して、その結果(自民党が)選挙で敗北、政権交代するのを待っているのではないか。(次期)党総裁は官公労と対峙する気概が求められる」と語った。これは、自治労・日教組など公務員労組に対する重大な挑戦状である。絶対に許すことはできない。
 中川は、自民党森派の実力者であり、安倍にも近い政治家だ。7月に閣議決定された「経済財政運営の基本方針(骨太方針)06」を中心的にまとめた人物だ。「骨太方針06」は、破局的な財政危機と世界戦争への準備の立ち遅れにあえぐ日帝が、一切の犠牲を労働者階級に転嫁して延命するための大攻撃である。改憲攻撃そのものである。
 その中川の発言は重大である。小泉の跡を継ぐ安倍政権が、公務員労働者を「改革を阻む抵抗勢力」と真正面から攻撃し、自治労・日教組・全逓(JPU)の破壊・解体に全力を挙げるという宣言である。
 「骨太方針」が出されたとき、日本経団連の御手洗会長は、「具体化には多くの困難と障害が予想される。後継首相の強い指導力と政府・与党の揺るがぬ姿勢が望まれる」と強調した。中川発言は、この日帝支配階級・財界の要求に呼応するものである。郵政民営化問題で自民党内の「抵抗勢力」を一掃した地平を踏まえて、改憲と戦争国家化の成否をかけて、いよいよ全面的・本格的な階級決戦にうって出ようということである。
 中川は公務員リストラの先頭に立っている。連合中央や自治労本部を「スト権」論議に引き込んで屈服させ、人事院勧告制度を廃止し、民間と同様の能力・成果主義賃金を導入して、大幅賃下げ可能な体制をつくり、分限免職の乱発による大量首切りを狙っているのだ。
 しかし同時に、中川発言は、「骨太方針06」や改憲をなし遂げるにあたって、最大の障害が官公労=公務員労働運動であり、4大産別であることを敵の側から認めたものである。
 中川が恐れるとおり、官公労=公務員労働者が最先頭で4大産別決戦を闘いぬくならば、改憲と戦争、「骨太方針06」を粉みじんに粉砕することはまったく可能である。中川発言は敵の弱点をさらけ出している。
 さらに中川は、24日に那覇市内で講演し、「日本のリーダーの一部は、『日本は弟分の周辺国に譲ってやれ』という古い感覚のまま将来に向かおうとしている。最悪のシナリオは、古いアジア重視派が古い感覚のまま周辺国に譲歩し誤解を与えることだ」と述べた。
 これは小泉の靖国神社参拝を批判している谷垣財務相や加藤紘一元幹事長らを攻撃したものだが、日帝支配階級の分裂と危機の深刻さを示している。安倍・中川らは、その危機を超反動的な国家主義、愛国主義、排外主義と北朝鮮・中国侵略戦争で突破しようとしている。
 中川発言からも明らかなように、4大産別決戦は日帝・安倍次期政権とのすさまじい激突戦だ。戦後階級関係の右からの破壊を許さず、労働者階級の未来を切り開く闘いこそ、動労千葉を先頭とする4大産別の攻防である。今秋決戦の爆発で、公務員にかけられた攻撃をはね返し、改憲攻撃を粉砕しよう。
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 公務員の大量首切りと労組破壊を狙う中川政調会長の発言

 「次期政権の最大の抵抗勢力は官公労だ」
 「官公労は、自民党が増税して、その結果(自民党が)選挙で敗北、政権交代するのを待っているのではないか。(次期)党総裁は官公労と対決する気概が求められる」

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週刊『前進』(2261号6面4)(2006/09/11)

日誌'06 8月23日〜29日

 ミサイル防衛予算は56%増

 「シャイロー」が横須賀配備

●滑走路1800bは有事想定 沖縄県名護市の米軍キャンプ・シュワブ沿岸部に建設予定の米軍普天間飛行場代替施設について、メディーナ在沖米海兵隊基地司令官が衆院沖縄北方特別委員会の委員に対し、日米で合意された滑走路が1800bになったのは「有事の際にC130(輸送機)や、MV22オスプレイを使うのに必要な滑走路の長さだ」と述べていたことが分かった。(23日)
●パトリオット、最大80発供与 米政府が日本政府に対し最新鋭の地対空誘導弾パトリオット(PAC3)を最大80発追加供与が可能であると伝達していることが分かった。(23日)
●米給油機ホース落下 米空軍嘉手納基地で、同基地から離陸した米イリノイ州空軍所属のKC135空中給油機が給油ホースを失った状態で帰還した。(23日)
●自衛隊派遣の「恒久法」 自民党の防衛政策検討小委は、自衛隊が国際平和協力活動を行う際の海外派遣要件を定める「恒久法」の条文案の概要を了承した。日本独自の判断で自衛隊の派遣を可能とし、正当防衛を超える武器使用も認めた。(23日)
●安倍「自衛隊派遣恒久法いる」 安倍官房長官は、特別措置法による自衛隊の海外派遣が続く現状について「恒久的な法律が必要ではないか」と述べた。(25日)
●テロ特措法1年延長へ 政府は、11月に期限切れとなるテロ対策特別措置法を延長する方針を決めた。07年11月までの1年間延長で調整しており、自民党総裁選後に召集する臨時国会で法改正案の成立を目指すという。(25日)
●東ティモールPKO復活 国連安全保障理事会は、日本が提案した国連平和維持活動(PKO)「国連東ティモール統合派遣団(UNMIT)」を設立する決議案を全会一致で採択した。(25日)
●F15照明弾誤射 米空軍嘉手納基地所属のF15戦闘機1機が訓練から嘉手納基地に戻る際、フレア(訓練用照明弾)を誤射した。米陸軍貯油施設(桑江ファーム)に落下し、芝約25aを焦がした。(25日)
●政党ビラ配布、無罪 東京都葛飾区内のマンションに04年12月、政党ビラをまくために立ち入って住居侵入罪で起訴された被告の住職に対し、東京地裁は、無罪(求刑・罰金10万円)を言い渡した。(28日)
●米イージス艦シャイロー横須賀配備 弾道ミサイルの迎撃能力を備えた米海軍のイージス巡洋艦シャイローが神奈川県の横須賀基地に配備された。北朝鮮のノドンを迎撃可能な対空ミサイルSM3の発射機を備えている。(29日)
●普天間協議に知事ら出席 政府は首相官邸で「普天間飛行場の移設に係る措置に関する協議会」の第1回会合を開催した。同日未明まで不参加の方針を決めていた稲嶺沖縄県知事と島袋名護市長らは方針を一転し、出席した。小池沖縄担当相から北部振興策を着実に実施するとの方針が示され「環境が整った」と説明した。(29日)
●ミサイル防衛関係は56%増=迎撃用PAC3前倒し導入−防衛庁概算要求 防衛庁は07年度予算の概算要求をまとめ、自民党国防関係合同部会に説明した。総額は今年度当初予算比730億円増の4兆8636億円。このうち、ミサイル防衛(MD)関係は、北朝鮮の弾道ミサイルが発射された事態を踏まえ、08、09年度に予定した航空自衛隊の地上配備型迎撃ミサイル(PAC3)弾を一部前倒し導入するなどの対応が加わり、同56・5%増の2190億円となった。また、普天間飛行場(沖縄県)移設に関する調査費など、在日米軍再編経費を初めて本格計上した。(29日)

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週刊『前進』(2261号7面1)(2006/09/11)

 「改憲」が「政権公約」は戦後初

 安倍は戦争を狙っている

 派兵「恒久法」で掃討作戦も

 日本版NSC 大統領型権力づくり

図 「安倍政権」下で準備されている攻撃 安倍官房長官はこの間の講演で、憲法改悪と並んで海外派兵「恒久法」制定、武器使用基準の全面的緩和、集団的自衛権をめぐる憲法解釈の変更などについて相次いで発言している。その内容は、小泉政権下で激しく進められてきた自衛隊の侵略軍隊化をもはるかに超える恐るべきものだ。とりわけ自衛隊の海外での活動に、掃討作戦も可能とする「治安維持活動」を加えると言っていることはきわめて重大だ。安倍は、イラクで米英軍が展開している殺し・殺される戦闘に自衛隊を突入させようとしている。9条改憲を待たずどんどん侵略戦争をエスカレートさせ、また、それをもテコにして改憲を強行する情勢をこじ開けようとしているのだ。
 「憲法改正と教育改革」を政権公約の柱に掲げる「安倍政権」下で、戦争への具体的・全面的な攻撃が準備されている。その一つひとつが歴史を画する重大攻撃だ。
 @日本版NSC(国家安全保障会議)の創設
 安倍は22日の講演で、日本版NSC(国家安全保障会議)を創設する構想を明らかにした。安全保障担当の首相補佐官を置き、安全保障会議の専従スタッフを大幅拡充して情報収集・分析や政策立案の機能を持つ新組織にする。安倍は日本版NSCの創設で、絶大な権限が集中する大統領型の統治形態への転換を狙うとともに、首相官邸と米ホワイトハウスとを直結して定期的な戦略対話を行い、日米同盟を飛躍的に強化することを狙っている。大変な攻撃だ。
 A海外派兵「恒久法」の制定
 自民党防衛政策検討小委員会(石破茂委員長)が8月30日、自衛隊の海外派兵をいつでも可能にする「恒久法」の原案をまとめた。その内容はきわめて重大だ。原案は、名称を「国際平和協力法」とし、国連決議や国際機関の要請がなくても多国籍軍に参加できるよう派兵要件を緩和し、紛争当事国からの要請がない場合の派兵も認める。そして海外での「治安維持活動(安全確保活動)」「警護」「船舶検査」の3活動を新たに追加し、いずれの場合にも武器使用を認める。
 これは、無制限・無制約の侵略派兵参戦に道を開く超重大攻撃だ。とりわけ「治安維持活動」は、家屋への立ち入りや住民の一時拘束も認め、相手が武器を持っている「疑い」があり暴行・脅迫の「高い蓋然(がいぜん)性」があると判断すれば殺傷しても構わないという内容になっている。米軍がイラクでやっている「テロ掃討作戦」を自衛隊自身がやることを可能とするものだ。
 安倍は25日の講演で、「恒久法を作ることで機動的な対応も可能となる」とし、同小委の案を軸に政府として法案化にむけた調整に入る考えを示した。自民党は、この法案を07年通常国会に提出しようとしている。 
 B解釈改憲で集団的自衛権行使へ
 安倍はこの間の講演で「一緒に活動する外国軍隊が攻撃されたとき、黙って見ていなければいけないのか」と述べ、憲法解釈の見直しで集団的自衛権の行使ができるようにする方針を示した。
 安倍は、明白な集団的自衛権の行使にあたる戦闘行為を、個々のケースごとに「個別的自衛権の発動」や「正当防衛」と強弁して突破しようとしている。例えば、「他国の軍隊と自衛隊が共同で活動中に他国軍が攻撃を受けた」時、自衛隊が反撃することは集団的自衛権の行使となるが、これを「正当防衛による武器使用」と認定する。あるいは、「米軍艦船と海上自衛隊が共同行動し、米艦船がミサイルなどで攻撃を受け、1`離れた海自艦船も射程に入っている」というケースでは、海自の敵国への反撃は集団的自衛権の行使そのものだが、自衛隊艦船も射程に入っているのだから「個別的自衛権の発動」として認められないかなどとしている。
 このようにこじつけていけば、あらゆるケースが該当することになる。事実上の集団的自衛権の解禁そのものだ。
 その上で安倍は、現行憲法9条を破棄して集団的自衛権を全面解禁することを狙っている。

 自衛隊を殺し・殺される戦闘に

 衛隊と米軍が最前線で一緒になって戦闘に突入することが想定されているのだ。
 小泉政権の5年間で自衛隊の侵略軍隊への変貌(へんぼう)が激しく進められてきた。しかし安倍がやろうとしている攻撃は、小泉政権下の動きすらエピソードにしてしまうような恐るべきものだ。米英軍が強行しているイラク侵略戦争、イスラエルがレバノンやパレスチナで強行している無差別虐殺を日帝・自衛隊がやるのだ。その断絶性・飛躍性を徹底的にはっきりさせよう。
 しかし、小泉と比べても安倍の危機性・脆弱(ぜいじゃく)性は明らかだ。日帝の危機と矛盾は、これからいよいよ全面的に爆発する。総力を結集して、安倍の登場と対決し打倒しよう。
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以下、上の図(「安倍政権」下で準備されている攻撃)のテキスト版

「安倍政権」下で準備されている攻撃

@日本版NSC(国家安全保障会議)の創設
A世界中へいつでも侵略派兵できる海外派兵「恒久法」の制定
 →07年通常国会での提出を狙う
B集団的自衛権の解禁
 →解釈改憲での突破から明文改憲での全面的解禁へ
C防衛庁の「省」格上げと海外派兵の本格的任務化
 →6月に国会提出。臨時国会での成立を狙う
D敵基地攻撃能力の保有
 →自民党国防部会での具体的検討に着手
E核武装
 →安倍は「核兵器使用は違憲ではない」(02年5月、早稲田大学での講演)と主張する核武装論者

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週刊『前進』(2261号7面2)(2006/09/11)

 06年防衛白書 侵略戦争が“本来任務”に

 日米枢軸強化で破滅の道

 8月1日に閣議で了承された06年版防衛白書は、こうした「安倍政権」下での戦争政策の歴史的エスカレーションを準備するものだ。白書の内容は、完全に改憲を先取りしており、名実ともに本格的な侵略軍隊へと自衛隊を作り変える宣言となっている。

 自衛隊を侵略軍に大改造

 06防衛白書の第一の特徴は、防衛庁の「省」格上げと海外派兵の本来任務化を前面に押し出していることだ。額賀防衛庁長官は巻頭言で「防衛庁は、真の政策官庁として生まれ変わろうとしています」と述べ、高揚感すらみなぎらせている。
(写真 日米共同訓練で戦闘訓練をする陸上自衛隊員【2月22日 岡山県日本原演習場)=米海兵隊ホームページより)
 06防衛白書は、まず新防衛大綱について詳述した上で、「新たな役割を果たしうる組織へ」と題して「省」格上げと本来任務化について大きなスペースで解説している。
 日帝は戦後、「必要最小限の基盤的な防衛力を保有し、侵略を未然に防止する」という「基盤的防衛力構想」という考え方に立ってきた。しかし、04年策定の新防衛大綱は、91年「9・11」後の国際情勢に対応するために、安全保障の二つの目標として、「@わが国に直接脅威が及ぶことを防止・排除すること」(日本防衛)と「A国際安全保障環境を改善しわが国に脅威が及ばないようにすること」を掲げた。
 新大綱で「国際的な安全保障環境の改善」を日本防衛と並ぶ”安全保障の2大目標”に据えたことは、「専守防衛」という戦後的な安保防衛政策から最後的に決別する大転換であった。日帝は、この転換を「抑止力重視から対処能力重視へ」とか「存在する自衛隊から機能する自衛隊へ」(石破元防衛庁長官)と表現してきた。
 要するに、「国際的な安全保障環境を改善する」と称してどんどん海外派兵し、他国に軍事介入することが「日本防衛」になると言っているのだ。これは”脅威が現実となる前に先制攻撃する”というブッシュの「先制攻撃戦略」とまったく同じ考え方だ。
 06防衛白書は、この「新たな任務」を実行しうる組織へ防衛庁を反動的に飛躍させるために、「省」格上げと海外派兵の本来任務化がぜひとも必要だとしている。日帝は本格的な帝国主義軍隊としての「建軍」とも言える大転換をやろうとしているのだ。
 こうした中で、必然的に浮上してきているのが「敵基地攻撃能力の保有」論なのだ。7月5日の北朝鮮のミサイル発射をきっかけにして、安倍官房長官、額賀防衛庁長官らが「敵基地攻撃能力の保有を検討すべき」と相次いで発言した。これを受けて、自民党防衛政策検討小委員会が8月4日の会合で「敵国」のミサイル発射基地などへの攻撃能力保有に関して具体的な議論に着手した。きわめて重大な踏み込みだ。
 政府は、先の通常国会に防衛庁の「省」格上げ法案を提出し、継続審議に持ち込み、秋の臨時国会での成立を狙っている。法案は、@防衛庁を「防衛省」に格上げする防衛庁設置法の改定とA自衛隊の海外での活動を付随的任務から本来任務に格上げする自衛隊法の改定を一括して進めるものだ。成立を絶対に阻止しなければならない。

 北朝鮮・中国の「脅威」扇動

 06防衛白書の第二の特徴は、「日米安保体制の強化」(4章)を初めて独立した章立てとして設け、米軍再編合意を「速やかに、かつ徹底して実施する」ことを強く確認していることだ。
 白書は4章の冒頭で、「同盟に基づく日米間の緊密な協力関係」は「世界における多くの安全保障上の困難や課題に効果的に対処する上で重要な役割を果たしている」と述べ、6月29日の日米首脳会談での合意文書「新世紀の日米同盟」の意義について詳しく解説している。日帝は、米帝ブッシュ政権の世界戦争戦略にとことん食らいつき、世界戦争にむけた日米反動枢軸を形成しようとしている。イラク・中東侵略戦争を継続・激化させるとともに、地球的規模で米軍と自衛隊がどんどん侵略戦争を発動していくと言っているのだ。
 さらに白書は、米軍再編に関する日米合意の内容と具体的再編計画について32nにもわたって詳述、米陸軍第1軍団の座間移転、名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への新基地建設、神奈川県横須賀基地への原子力空母移駐も含めて全面的に記述し、どんな反対があっても強行する姿勢をあらわにしている。
 自衛隊は、今年3月から陸海空3軍の統合運用体制に移行している。司令部を頂点とする米軍と自衛隊の「融合・一体化」をとことん進め、沖縄と神奈川―日本全土を最前線の出撃基地・兵站(へいたん)基地にすると言っているのだ。
 重要なことは、こうした日米枢軸の形成が、北朝鮮と中国に対する侵略戦争計画の具体化としてリアルに進められていることだ。白書は、中国の軍事動向(11n)、北朝鮮動向(7n)に多くの紙幅を割いて分析し、「中国の脅威」「北朝鮮の脅威」を国家的に扇動している。そして、ミサイル防衛(MD)の強化、ゲリラ・特殊部隊への対応、島嶼(とうしょ)部侵攻への対処、南西海域での中国・北朝鮮に対する警戒強化を強く押し出している。日帝は、対中国・対北朝鮮の侵略戦争においてはむしろアメリカに先んじて軍事的対抗の前線に出ることすら狙っている。
 とりわけ、MD体制の強化が突出している。防衛庁は07年度予算の概算要求で、各省庁が予算縮減を求められる中、今年度当初予算比1・5%増の4兆8636億円という強気の要求を出している。とりわけ、ミサイル防衛関連予算は56%増と際立っている。
 そのほか、概算要求では在日米軍再編関連でキャンプ座間への陸自中央即応集団司令部の移設(調査費)や、横田基地への空自航空総隊司令部の移設(施設整備費)などに計159億円を計上している。

 臨時国会闘争から11月へ!

 06防衛白書と「安倍政権」の登場は、この間進められてきた「新世紀の日米同盟」宣言や米軍再編、米軍と自衛隊の一体化が、いったいどこに向かうものなのかを鮮明に突き出している。米帝がイラクで強行している一大侵略戦争、無差別虐殺戦争の最前線に自衛隊が躍り出るということだ。断じて許すことはできない。「防衛省」法案、海外派兵「恒久法」を絶対に阻止しよう。臨時国会闘争に立ち、11月総決起へ進撃しよう。

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週刊『前進』(2261号7面3)(2006/09/11)

 名護新基地 “戦時使用”と海兵隊司令官

 建設計画策定−着工阻止を

 米軍再編を「速やかに、かつ徹底して実施する」とした06年版防衛白書はあらためて沖縄米軍基地の半永久的な固定化を宣言するものでもある。
 白書は「沖縄は、東アジアの各地域に対して、米本土やハワイなどからよりも距離的に近い位置にある」ため、東アジアの各地域への迅速な展開が可能であるとし、在日米軍の75%が集中する沖縄の現実を真正面から正当化している。
 また、普天間代替施設の移設先についても、在沖米海兵隊が実際の運用において相互に連携しあう必要があるから「沖縄県内に設ける必要があるとの認識に至り、その上で検討を行った」と記述している。県外移設や国外移設の選択肢は最初から除外していたと平然と述べているのだ。白書は「普天間飛行場は沖縄県外、日本国外には移転できないのですか?」と題するコラム欄をわざわざ設け、そこでも「(米海兵隊は)1つのまとまりとして迅速に展開し、様々な事態に柔軟に対応しなければなりません」と県外移設の要求を踏みにじっている。怒りなしには読めない代物だ。
(写真 キャンプ・シュワブ兵舎地区【名護市辺野古】)

 “第2ラウンド”の攻防が本格化

 11月沖縄県知事選の情勢をにらみながら、名護新基地をめぐる”第2ラウンド”の激突が本格化している。
 8月23日、在沖米海兵隊基地司令官のジョセフ・メデーィナ准将が、名護市キャンプ・シュワブ沿岸部に建設が狙われている新基地の滑走路が1800bである理由について「有事の際、C130(輸送機)やMV22オスプレイ(垂直離着陸機)が使用するために必要な長さだ」と説明した。
 今年5月に公表された米軍再編のロードマップは、名護新基地から「戦闘機を運用する計画を有していない」と明記していた。またもや日本政府の許しがたいペテンが明らかになったのだ。これについて防衛庁の守屋事務次官は28日、「日本防衛のために米軍が必要なもの(航空機)がやってきたときに『小型の航空機しか認めない』という話にはならない」と述べ居直っている。
 メディーナ准将はまた、MV22オスプレイを2014年〜16年の間に普天間飛行場所属ヘリの後継機として配備する計画を明らかにした。オスプレイは、現在の主力機に比べて2倍の速度、5倍の航続距離、3倍の積載能力を持ち、格段に戦闘能力が高い。また、従来機とは比較にならない騒音をまき散らし、試験段階から死亡事故を繰り返している欠陥機だ。名護新基地が地元にとってはとんでもなく危険でうるさい基地になり、何よりも朝鮮・中国人民虐殺の最前線の侵略出撃基地になることはいよいよ明らかなのだ。

 建設予定地の兵舎移設に着手

 政府はこの間、新基地建設予定地(陸上部分)にある海兵隊兵舎移設に関連して、年内にも基地内の文化財調査を行う意向を明らかにした。10月までに日米間で代替施設の建設計画を決定、文化財調査を経て、来年1月にも兵舎移転工事を始めようとしている。
 また、自民党の中川秀直政調会長は8月24日、普天間飛行場に関する沖縄県及び北部市町村との協議機関設置の条件として「政府は基地問題の解決と(北部振興策を)リンクさせたい」と発言した。露骨な兵糧攻めで沖縄を圧殺しようとしているのだ。
 新基地建設をめぐる攻防が激化し、その中で9月沖縄地方選―11月県知事選が行われる。極反動「安倍政権」下での新たな激突に絶対に勝利しよう。沖縄―本土を貫く闘いで米軍再編を粉砕し、名護新基地建設を阻止しよう!

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週刊『前進』(2261号7面4)(2006/09/11)

 米・日帝が朝鮮侵攻計画

 「北の核」口実に先制攻撃

 自衛隊は積極的参戦狙う

 「安倍政権」は、北朝鮮侵略戦争への突撃内閣である。安倍晋三は「自衛のために敵の核基地を攻撃する能力を持つべき」と主張し、さらに最近出した『美しい国』で、「日米同盟における双務性を高めてこそ、基地問題を含めて、私たちの発言力は格段に増す」と発言している。
 ここに明白なように、日帝は「安倍政権」のもとで、米帝の北朝鮮侵略戦争を自らの戦争として全面的に共同参戦することによって、帝国主義間争闘戦の激化に必死に対応し、延命を図っている。

 北朝鮮「脅威」をあおる安倍

 米ABCテレビは8月17日、米政府が得た情報として、北朝鮮が地下核実験の準備を進めている可能性があると報じた。ただ、政府当局者は「断定的な情報ではない」「実際に実験につながる兆候かどうかは不明」とも伝えた。
 このように、確度のまったくあやふやな「情報」がきわめて政治的な意図を持って米政府から流されている。
 そして、この情報を受けて、安倍官房長官は8月25日の記者会見で、「仮に核実験を行うようなことがあれば、日本や北東アジア地域、国際社会の平和と安全に対する重大な脅威である。断じて容認できない」と述べた。テレビでは「死の灰が日本に飛んでくる」などと、北朝鮮に対する排外主義が宣伝されている。それらはすべて米帝と日帝の北朝鮮侵略戦争のための策動だ。
 米帝は、北朝鮮の核について、たとえ開発段階でも、さらには情報が不確定でも、軍事作戦を行使すると公然と語っている。今年3月発表の「国家安全保障戦略」では次のように述べている。
2003年11月7〜11日に海自佐世保地方隊が実施した実動演習の概要図 「米国益と米国民を核攻撃から守るため、同攻撃の目標と時が不確定のままであっても、先制的に武力行使を実施する。これは米国の有する固有の自衛権である」
 こんな得手勝手な論理で侵略戦争を強行しようとしているのだ。
 すでに詳細な作戦計画がつくられている。『軍事研究』9月号は、アメリカの軍事専門家の話として、北朝鮮を攻撃する3種の軍事オプションがあるとし、@核・ミサイル関連施設限定の破壊作戦、Aプラス小規模地上軍投入作戦、B中・大規模地上軍投入作戦を挙げている。
 Bは5〜7万人の地上軍で北朝鮮に攻め込む作戦である。陸海空・海兵隊を動員した大規模な侵略戦争計画である。
 米ワシントン州の陸軍第1軍団司令部を再編して座間基地に持ってくるのは、朝鮮侵略戦争の前線司令部づくりだ。横田・座間・横須賀などで米軍と自衛隊の陸海空司令部が同じ場所に配置するのも、朝鮮侵略戦争を日米共同の戦争として強行するためだ。

 海自が朝鮮侵略想定し演習

 この間、インターネットをつうじて流出した海上自衛隊佐世保地方隊の実動演習計画の内容が暴露されている。それは、米帝の朝鮮侵略戦争で海上自衛隊が米軍と共同作戦を行うという想定だ。実際、この想定に基づく実動演習が03年11月に実施された。(図)
 米日帝国主義による朝鮮侵略戦争の切迫に対して、闘う朝鮮・アジア人民と連帯し、安倍打倒、米軍再編粉砕、改憲阻止の闘いを大爆発させよう。
(図 2003年11月7〜11日に海自佐世保地方隊が実施した実動演習の概要図。「緑軍」は米軍を指しており、朝鮮半島全体にわたる作戦を展開している【海自の作戦計画資料をもとに作成 月刊『現代』6月号より】)

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週刊『前進』(2261号8面1)(2006/09/11)

団結ひろば 投稿コーナー

 8・6ヒロシマ−産別交流集会から

 “闘わない本部が問題”と若者 郵政労働者交流集会 中四国 田島映二

 今年の郵政労働者交流集会は、昨年に比べて青年の参加が増え、活気に満ちた交流会になりました。地元中国・四国地方からのあいさつと、「この秋、教育基本法改悪案、共謀罪法案、国民投票法案などの春からの継続法案を、4大産別を先頭とした労働者の力で廃案に追い込み、11月労働者集会に1万人結集しよう。そのために日頃から原則的な労働組合運動に取り組み、分会、支部権力に必死になって挑戦しよう」という問題提起がありました。
 これを受けて、各地から若者を中心に積極的に意見が出ました。今の職場実態を反映して、ゆうメイトの仲間から「低賃金できつい仕事を押しつけられる」「組合に言っても当局と一緒になって説得される」と、労資協調路線への怒りが出されました。
 トヨタ方式(JPS)に対しては、「ムリ、ムラ、ムダが多い」「2ネットは破綻(はたん)している」「不合理なことに対して文句を言わせないために、あえてメチャクチャなことを押しつけている」「そもそも闘わない本部が問題」というような声があがり、本部に代わって自分たちが職場の団結を取り戻す決意を固めました。
 前段より後段のほうに時間を割くという、郵政労働者ならではの気配りで2次会に移りましたが、一人ひとりの自己紹介が、職場報告から闘いの報告、決意表明と盛りだくさんで、あっという間に2時間が過ぎ、お開きになりました。
 中国・四国からの参加者は、2日間合わせて20人を超えました。職場で仲間が声を掛け合い、参加しました。動労千葉の運動に触発され、影響を受けながら、労働者らしく明るくまっすぐに生きようと話し合い、11月にはまた全国の仲間や韓国、米国の仲間との団結をつくりたいと思います。全国の郵政の仲間。お疲れさんでした。

 8・6ヒロシマ−産別交流集会から

 民営化に怒り職場闘争報告 自治体労働者交流集会 東京 川寺 敦

 自治体労働者は「戦争を止めよう/民営化に勝とう/全国自治体労働者交流集会」を開き、全国から70人が参加した。呼びかけ人に名を連ねた地元の岩国市職や愛媛県職の労働者が集会をリードした。職場の闘いの報告、情報交換で交流を深めると同時に8月24―25日の自治労さいたま大会への決意を固め合った。
 愛媛県職の労働者は特に四国電力伊方原発プルサーマル計画に反対する闘いを紹介し、プルサーマルは核開発だと暴露し、計画反対の運動の強化を訴えた。山口・上関原発、九州・玄海原発プルサーマル計画の反対運動も活性化している。連帯して闘えば勝てる情勢にあることを感じた。青年部は「反核平和の火リレー」を行い、手ごたえがあったと報告した。
 また愛媛県職の労働者は「自治労大会の第3号議案・第2次賃金政策は、生活給から能力・成績主義給への転換を容認しており、団結して闘う方針がない」と批判。議案の問題個所を下線で示してくれた。「これで問題点が分かった」との反応が上がった。
 岩国市職、豊中市職、大阪府職などの青年労働者が現況を報告した。大阪府職の労働者は、生活できない低賃金なのに賃上げストップという現状に対し、賃上げ要求すると同時にマルクス『賃労働と資本』の学習会を開いていることを報告、希望がもてると語った。
 豊中市職の労働者は、高齢者介護の労働で水も飲めず、トイレにも行けない激務を強いられ、毎日午後9時、10時ま働いていると報告、マスコミの公務員バッシングへの怒りを表明した。
 もうひとりの大阪府職の労働者は、国民保護計画反対の闘いに組合が「戦争反対では無責任」と言って取り組まない方針をとっていることを暴露し、戦争と核攻撃を前提にした国民保護計画の業務を拒否しよう、単組で闘おうと呼びかけた。
 最後に「労働3権と引き替えに改憲と戦争協力へかじを切ろうとしている自治労本部を許さない。自治労大会決戦を闘おう」とまとめが提起された。

 8・6ヒロシマ−産別交流集会から

 労働契約法に反対する戦線 合同労組交流集会 広島 T・O

 8月5日の夜に、闘う合同労組の全国交流集会が開催されました。今回は2回目ということでしたが、昨年以上に現場で労働争議を闘っている組合活動家の参加が多く、実践経験の交流が進み、職場闘争の報告と情報交換がある程度できたと思います。
 とりわけ、戦争と民営化−労組つぶしが、現実に労働現場に何をもたらしているかが、民間の職場であるからこそ逆に浮き彫りになったのではないでしょうか。4大産別の労働者の闘いが激しく闘われると同時に、中小民間の職場も、これと一体となった小泉改革との激しいやりあいの場になっています。「闘わなければ殺される!」ということです。
 郵政職場の外注化−「業務請負」という不安定雇用で働く中で、首切り攻撃を受けながらも不屈に闘う関西合同労組の関西トランスポート分会や養護学校での非常勤職員の排除攻撃、さらに養護学校のスクールバスへの一般競争入札制導入による交通労働者の切り捨てと闘う交通労組の仲間など、郵政や公務職場での民営化が引き起こしている攻撃と闘う非正規雇用労働者の姿が鮮明になりました。この闘いを4大産別の仲間と一体となって闘うことの重要性をあらためて知らされました。
 また、「労組結成−即解雇」の攻撃を跳ね返した群馬合同労組の闘いの報告、「合同労組首都圏連絡会」からの「ヒロシマアピール」の提起は、憲法改悪・労働法制の全面的な改悪攻撃に対して、全国の闘う合同労組が連帯し共闘していこうというものであり、非常に重要な報告だと感じました。とりわけ「労働契約法反対の一大戦線を生み出そう!」という行動方針の提起には、全国の仲間が注目していたように思います。
 4大産別と非正規雇用労働者の闘いを一体のものとして、職場・地域で闘いをつくり出すことが、11月集会への1万人結集を実現する道ではないでしょうか。合同労組の役割は極めて重要です。

 8・6ヒロシマ−産別交流集会から

 「就労闘争」に立ち解雇撤回 合同労組交流集会 群馬 S・K

 私は昨年12月に地域の仲間たち数人と地域合同労組を結成しました。以来、2月、5月の「闘う合同労組全国交流会」に参加してきました。今年の8・5交流会は、労組交流センターの闘う合同労組交流会運動の、ちょうど1周年になります。
 私たちの組合は本当に素人集団でスタートしました。去年は広島の交流会には参加しなかったのですが、自分たちでも地域で職場で組合を作ろうよということで、ほとんど勢いで若い仲間と合同労組結成を呼びかけました。すると「自分もクビを切られかけた」という地域の知人や、自分の職場では労働運動の条件がないような活動家が呼びかけにこたえてくれました。規約作り、結成大会、職場での組合通告、節目節目で頼りになったのは、闘う合同労組全国交流会の仲間の皆さんでした。
 極めつけは、仲間が組合通告と要求書を提出しようとしたらその場で解雇通告されたときです。ほとんどパニック状態。交流会の仲間の指導、援助、激励を受けて「地位保全の仮処分申請」を準備し、「就労闘争」に立ちました。
 就労闘争にあわてたのは今度は会社でした。大騒ぎした末、弁護士に諭されて、解雇撤回と謝罪を申し入れてきました。「会社に文句を言えばクビ」という世の中。しかし闘う合同労組があれば「クビにならないために、会社にギャフンと言わせるために、労働組合に入ろう」と胸を張って言えるのです。
 今年の8・5交流会は大成功だったと思います。全国で同じように闘っている仲間の貴重な経験や教訓を共有することができました。迷っているあなた、次は参加しよう!

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週刊『前進』(2261号8面2)(2006/09/11)

激動の世界 イラン制裁策動許すな

 米帝はイランに圧力強め戦争の発動を狙っている

 イスラエルのレバノン侵略戦争がイスラム政治組織ヒズボラのゲリラ戦争によって敗北し、中東危機がさらに深まったことによって、米帝はさらに凶暴化し、戦争拡大の策動を強めている。特にイランの核開発を口実にして、イランに侵略戦争を強行し、政権を転覆しようという策動が強まっている。米帝を先頭とした帝国主義のイラン侵略戦争策動を断じて許してはならない。

 イランがウラン濃縮停止の包括提案拒否

 国連安保理常任理事国とドイツの6カ国によるイランのウラン濃縮停止を要求する包括提案に対して、イランは8月22日に回答書を出した。回答に当たってイランの核交渉責任者のラリジャニ最高安全保障委員会事務局長は各国大使らに対し、「問題解決のための建設的な道を提供し、交渉を開始する用意がある」と述べ、各国に交渉再開を求めた。無条件の話し合いを開始すれば、その中で濃縮活動を停止することも有り得るという逆提案を行ったのだ。
 これに対して米帝は、6カ国の包括提案の要求を満たしていない、としてイランに対する政治・経済的制裁を発動しよういう動きを強めている。米国連大使ボルトンは、米帝は同盟国とともに国連とは独自にイランに対して海外資産凍結や貿易制限などの制裁を発動する準備ができていると主張した。「制裁を発動するに当たって安保理の権限は要らない」とし、経済封鎖という形での戦争を発動することを宣言したのだ。
 また米国防長官のラムズフェルドは、「もし他の国が、アメリカはイラクに13万6千人の兵力を派遣しているからもう一つの戦争をできないと考えているのならあいにくだ」と、米帝はもう一つの戦争を戦うことができるとして戦争恫喝を行った。これはイランへの直接の戦争恫喝であると同時に、国連安保理でのイランへの制裁に拒否権を発動する可能性のあるロシア、中国に対する恫喝でもあり、さらにイギリス、フランス、ドイツへの恫喝でもある。
 こうした米帝の戦争恫喝に対して、イランは8月27日、19日から行われている軍事演習の中で潜水艦発射対艦ミサイルの発射実験を行い、牽制(けんせい)した。イランは、このミサイルはレーダー探知が不可能だとしている。イランは、すでに数隻の潜水艦を保有しており、魚雷に加えてもう一つのペルシャ湾岸を航行する艦船への攻撃手段を持っていることを示した。すでに射程約2千`のシャハブ3ミサイルを保有しており、これはイスラエルに届く射程だ。
 イランのアハマディネジャド大統領は29日、米帝の戦争恫喝を「気休めにすぎない」とはねつけ、「誰もイランの平和的な核開発を止めることはできない」と6カ国提案による最後通告期限の8月31日を無視する姿勢を示した。
 イランはこの間、核開発については単なる平和目的であると主張し続けている。イランは4月11日にウラン濃縮の成功を発表したが、その濃縮は3・5%で、核兵器のために必要な90%以上には遠く及ばない。イランは軽水炉原発を建設すると主張しており、軽水炉原発は3・5〜5%の濃縮ウランで稼働できるとされている。したがって、たとえイランがこのままウラン濃縮を継続したとしてもすぐに核兵器を保有するわけではない。
 だが米帝は、制裁発動への工作を決定的に強め、さらには侵略戦争に突入しようとしている。そのために、イランがイラクのシーア派ゲリラを訓練しているとか、武器を与えているといった非難をくり返している。武装勢力に手製爆破装置の技術を与えたということも言っている。これらはまったくいい加減な、ためにする口実だ。
 イラクのシーア派は米帝・占領軍の先兵となって政権を握ろうと画策しており、むしろ米軍とともに武装勢力を攻撃している。手製爆破装置を開発したのは民族主義の武装勢力であり、彼らはイランとのつながりなどまったくない。米帝はイランへの侵略戦争を強行するために、口実をデッチあげているのだ。

 中東全域に拡大するヒズボラ支持の動き

 米帝は01年9・11後、アフガニスタン、イラク侵略戦争で中東支配を再編し、帝国主義間争闘戦を暴力的に推進する道に踏み込んだ。第3次世界戦争へといたる戦争の道へと突進しているのである。その中で、イラク侵略戦争で泥沼に陥り、イスラエルのレバノン侵略戦争の失敗で中東危機がさらに激化した現状を米帝は放置しておくことはできないのだ。この事態を突破するために凶暴に侵略戦争を拡大しようとしている。
 実際に、レバノン侵略戦争でのヒズボラの勝利で、シーア派のみならず、またレバノンやパレスチナのみならず、アラブ人民全体にヒズボラ支持が急速に広がっている。ヒズボラの指導者ナスララ師のポスターがあちこちに張られている。このままではエジプトやヨルダン、サウジアラビアの現体制が打倒されそうな状況をつくり出している。しかも、イラクでは、人民の武装解放闘争がますます広がり、米軍支配の危機はさらに深刻になっている。イギリス軍は南部の町アマラの基地を放棄し、イラン国境を警備するという口実で砂漠地帯に逃げ出した。連日連夜のロケット弾攻撃にたまりかねたのだ。中部の町ディワニヤではサドル派から分裂した武装勢力が政府軍との激しい戦闘の末に町を制圧する事態が起こっている。
 こうした中で、米帝は中東支配の危機を突破するために、ただただ焦りに駆られて侵略戦争を拡大しようとしているのだ。特にイラク人民の武装解放闘争やヒズボラを制圧できない原因をイランに求め、イランへの侵略戦争を強行しようと狙っている。

 中東石油資源の支配めぐる争闘戦が激化

 米帝が、中東危機の激化を絶対に放置できない背景には、これが独仏(さらには中ロ)などとの争闘戦での勝敗を決するような問題となっていることがある。中東は戦略的資源である石油の産出地帯であり、だからこそ米帝は帝国主義間争闘戦をかけて、ここを暴力的に制圧しようとして侵略戦争にうって出た。この戦争で敗北すること、あるいは侵略戦争の泥沼の中で帝国主義として疲弊してしまうことは、帝国主義間争闘戦の敗北を導くことになるのだ。
 一方、日帝は、米帝ブッシュ政権のアフガニスタン・イラク侵略戦争にかけた決断の激しさを見て取り、日米枢軸を形成し、この侵略戦争に参戦し、実際に戦争のできる帝国主義への飛躍をかけて改憲攻撃を貫徹することに踏み切った。
 国連による経済制裁は侵略戦争の前段作戦そのものとなる。イラン人民、中東人民を大虐殺し、全世界を巻き込んだ戦争へと突進する米日帝のイラン侵略戦争を絶対に許してはならない。そのために改憲阻止闘争を軸として、米日帝のイラン制裁・侵略戦争阻止へ全力で決起しよう。
 (秋原義明)

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