ZENSHIN 2006/06/26(No2251
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週刊『前進』(2251号1面1)(2006/06/26)
「検問はやめろ!」の大コール
法大生1000人が当局追及
織田全学連委員長ら4人逮捕許すな 国会へデモで進撃
退学処分と逮捕に怒りが爆発 文学部生3人への退学処分、学生4人の不当逮捕に怒り、全学生への学生証チェックを強行した張本人=安東学生部長(中央ネクタイ)を包囲し追及する法大生(6月15日)
6月15日昼休み、法政大学キャンパスは再び人、人、人で埋め尽くされた。「退学処分撤回」「教基法改悪粉砕・改憲阻止」を掲げた6・15法大集会に1000人を超える学生が集まった。集会の爆発を恐れた法大当局は、前夜から泊まり込みで構内を封鎖し、正門での学生証チェック体制を敷いて集会圧殺を図った。警察権力は、早朝から抗議した学生4人を不当逮捕した。しかし、5月26日の集会をはるかに上回る学生が結集し、警察と大学当局の集会圧殺策動は完全に打ち破られた。29人逮捕の3・14弾圧以来の倒すか倒されるかのやり合いに勝ち抜き、壮大な改憲阻止決戦の号砲がうち鳴らされたのだ。(関連記事3面)
開構時間の午前8時、法政大学は異様な緊張に包まれた。正門以外の入り口はすべて封鎖、正門には「検問所」のテントが建てられ全員に学生証チェックが強行されている。法大前の道路は200bにわたって数十台の警察車両が埋めつくし公安刑事どもが弾圧の機会をうかがっている。まさに戒厳令だ。
5・26集会の爆発に恐怖した法大当局は、前夜から泊まり込み体制をとって大学を封鎖し、警視庁公安部と連絡を取り合いながら絶対に集会をやらせない体制で臨んできたのだ。
登校する学生に対して、ビラまきが始まる。
9時20分。学生には検問をしながら、警視庁の公安刑事どもはフリーパスで学内に入れていることを学生が摘発した。これに対して抗議を始めた被処分者の法大生や織田陽介全学連委員長を始めとする学生に対し、警視庁公安一課が襲いかかり、「暴力行為」「建造物侵入」容疑をデッチあげて4人を不当逮捕した。暴行したのは法大当局の方だ。4人逮捕は、法大当局と警視庁が仕組んだ第2のデッチあげ大弾圧だ。
10時過ぎには大量の警察部隊が正門前に殺到し、門前で抗議していた学生に「市ケ谷駅まで退去しろ」と通告。駅前の公園まで暴力的に排除し、周りを取り囲んで拘束までしてきた。集会破壊のために法大当局が警察を呼んだのだ。
11時。警察の包囲をうち破って、法大正門前に再結集した学生は、全国から駆けつけた学生と合流。国会前でビラを受けとった労働者もたくさん駆けつけている。誰もが「この大学は本当にむちゃくちゃだ」と、口々に法大当局の異常きわまりない姿に怒りをあらわにしている。集会発言と監視弁護にやってきた山本志都弁護士(立川反戦ビラ弾圧弁護人)、法大OBのコメディアン松元ヒロさんも職員によって入構を阻止された。山本弁護士は「弾圧監視に来た弁護士まで排除するとはあまりにおかしい」と当局を弾劾した。
12時半の授業終了とともに、法大生が続々とキャンパス中央に集まってきた。校舎の窓という窓、屋上からも学生が鈴なりになって集会に注目している。
集会中、検問体制に抗議し、学生証提示を拒否した大学院生に対して、法大当局は羽交い締めにし、暴力的に学外に追い出そうとした。この暴挙に、キャンパスに集まった学生の怒りが爆発した。1000人の学生が、安東学生部長などを包囲し弾劾の嵐を浴びせる。キャンパス全体から「通せ、通せ!」の大コールがまき起こった。学生証提示を拒否した大学院生はマイクをとり、「法大はこんな大学じゃなかったんですよ。なんだ、この警備員の数は!」と激しく当局を弾劾した。
退学処分を受けた学生がマイクをとった。
「私を退学処分にして大学から排除したら、次は学生証チェックの検問ですよ。しかも今朝、検問に抗議しただけで4人も学生が逮捕された。こんなことを許したらサークルも何もかもできなくなってしまう。
そこに立っている教職員のみなさん! 法大は、もっと自由な大学じゃなかったんですか。こんな法大でいいんですか。なんで学生証チェックなんかやってるんだ! あんたら教授失格なんだよ! 言論を一方的に封じておいて抗議したら逮捕、退学。こんな大学は一回ぶっ壊した方がいいんだ。大学を変えられるのは学生の力だけです。退学処分の再審査も却下されたけれど、私は毎日ここにきて徹底的にやります。学生が主人公の大学に法大をつくり変えよう!」。この熱いアピールに、キャンパスの学生が一つになった。
集会の最後には松元ヒロさん扮する「小泉首相」が登場。「学生のみなさん、国会で会いましょう!」と国会デモへの参加を呼びかけた。
●国会へデモ
午後1時半、集会を終えた学生300人は、「不当逮捕弾劾」「退学処分撤回」「教基法改悪・共謀罪・改憲反対」を掲げて国会デモに出発した。沿道の注目も圧倒的だ。
この日は、60年安保闘争を闘った人びとがつくる「9条改憲阻止の会」が「6・15」を期して国会請願デモを計画していた。デモ解散地の日比谷公園に到着したデモ隊は、このデモに合流。新旧の「全学連」が一つになり国会前まで元気にデモをやり抜いた。
国会前の総括集会では、法大など首都圏5大学、東北大、山形大、弘前大、富山大、京都大、広島大の学生が、それぞれ勝利感あふれる発言をした。法大の被処分学生は「今日は、たくさんの法大生が決起してくれたし、全国からも来てくれて、本当に素晴らしい一日だった。今の大学を変えるためには、学生が立ち上がるしかない」と訴えた。
闘う法大生は、文学部生3人の退学処分撤回、法学部生2人への処分策動粉砕へさらに闘いを強め、断固たる裁判闘争にうって出る。不当にも逮捕された4人の学生の即時奪還を! 警視庁と法大当局に、猛烈な抗議を! 法大救援会にカンパを集中しよう!
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週刊『前進』(2251号1面2)(2006/06/26)
国会闘争の地平から夏秋へ
9条改憲絶対阻止を訴え 労働者階級の全力決起を
第1章 教基法改悪と共謀罪攻撃を押し返したぞ
通常国会は6月18日に閉幕した。
この国会闘争において、とりわけ共謀罪と教基法改悪に反対する闘いが高揚し、採決を阻んで押し返したことはきわめて大きな意義がある。共謀罪に対しては、ジャーナリストや国会議員に働きかけを強め、大きな反対世論を形成するまで闘いが粘り強く継続された。そして度重なる強行採決のたくらみを阻み、今回も成立を阻止した。「現代の治安維持法」に対する労働者人民の怒りが壮大な革命的闘いに発展することに小泉ら支配階級は恐怖し、強行を断念したのだ。
さらに、教育基本法改悪に対しては、日教組の国会前座り込み闘争の割り当て動員を超えて、北海道を始め全国から闘う教育労働者が結集し、闘った。日教組・森越委員長は、超反動的な民主党案を支持し、国会闘争も途中で放棄したが、こうした日教組中央の屈服をものりこえる力が確実に存在しているのだ。
一方、今国会で小泉政権は、許しがたいことに行政改革推進法(5月26日成立)や医療制度改悪関連法(6月14日成立)、改悪入管法(5月17日成立)などの成立を強行した。
さらに、自民、公明、民主の3党は国会最終盤になって、「北朝鮮人権法」なる排外主義立法をたくらみ、質疑もなしに採決、成立させた。委員長提案による国会提出から、参議院での可決・成立までわずか3日。これは北朝鮮の内政に踏み込んで制裁を加え、米帝と共同して北朝鮮侵略戦争を強行するための法律だ。断じて許せない!
5〜6月国会闘争の地平を踏まえ、今こそ日本の労働者人民は改憲阻止闘争の本格的な爆発に向かって闘いを巻き起こす時だ。改憲と戦争への日帝権力・支配階級の反革命攻撃の嵐は、これに対する労働者階級・人民の怒りの爆発と闘いの力を生み出している。
日本帝国主義の危機の深まり、労働者階級の闘いの高まりは、革命的情勢の接近である。改憲攻撃が日程に上ってきたことは、戦争か革命かが問われる情勢だ。支配階級がこれまでどおりにやっていけなくなっており、それを打倒する主体の側の飛躍が問われているのだ。労働組合をめぐる苦闘をとおして、連合や日本共産党の制動を打ち破る労働運動の地平を切り開き、階級決戦に躍り出る時が来た。
憲法闘争の最大の主体として、教育労働者、自治体労働者、全逓労働者、国鉄労働者の4大産別の労働者を始め、労働者階級が立つことが勝利のかぎだ。日教組と自治労における改憲勢力化を阻めば、労働者階級の総決起を生み出し、連合の改憲勢力化を阻止することができる。
戦後労働運動の柱となってきた公務員労働運動を解体しなかったら、日帝にとって戦争に突入することは問題にもならない。逆に言えば、公務員労働者が階級的に決起するならば、改憲攻撃は決定的に打ち破ることができる。その闘いの道筋はすでに動労千葉労働運動が鮮明に指し示しているのである。
小泉とともに5年間にわたって二人三脚で戦争と民営化の攻撃を推し進めてきた奥田に代わって、キヤノンの御手洗冨士夫が日本経団連の会長になった。就任あいさつで奥田路線の継承を宣言した御手洗は、格差拡大を「経済活力の源」と開き直り、より一層新自由主義的な弱肉強食社会をつくり上げようとしている。
しかし、それがもたらしているのは、ライブドア・堀江や、村上ファンド・村上のような金もうけのためなら何でもやるという人間の横行である。堀江や村上の存在は、小泉改革の民営化・規制緩和と市場万能主義が生み出したものだ。
改憲と民営化・労組破壊の攻撃を継続する御手洗経団連と対決し、闘おう。
第2章 労働者の力で8月反戦反核闘争の高揚を
8月6日の広島、9日長崎の原爆投下から661年の闘い、8月15日の日本帝国主義の敗戦から661年の闘いは、今年はとりわけ重要だ。教育基本法改悪と憲法改悪が図られている中で、あらためて「あの戦争」は何だったのかをとらえ直し、現実の戦争の切迫と対決しよう。改憲阻止闘争の最大の焦点は9条改憲だ。憲法の前文と9条を覆し、戦争を繰り返そうとする攻撃に断固対決しよう。
広島、長崎の原爆は、大量破壊兵器が大都市の住民を大量に虐殺した人類史上繰り返してはならない戦争犯罪だ。今日、広島、長崎の何万倍もの威力を持つ核兵器を帝国主義が独占し、米帝は常に先制攻撃において核を使用することを選択肢に入れている。日帝もまた、核武装の道を狙っている。9条改憲は核武装に行き着く。8・6広島、8・9長崎反戦闘争は、今日のイラク反戦闘争、北朝鮮・中国侵略戦争反対闘争、そして何よりも改憲阻止闘争の重要な一環としてある。
また、小泉が今度こそとばかり8月15日の靖国神社参拝を強行しようとしていることは絶対に許せない。これまで5回にわたり、日時をずらして参拝してきた(これ自体が挑戦的攻撃だ)小泉は、中国政府や韓国政府が何と言おうと、またアジアの人民の闘いがどれほど爆発しようと、8・15靖国参拝を強行しようとしている。それは、あの戦争で死んだ兵士を「英霊」としてたたえることは、次の戦争を準備している日本帝国主義として譲れない一線だと宣言するものである。そして、これはポスト小泉政権が、この靖国参拝路線を継承することを求める行為でもある。つまり小泉は、自分があくまで靖国参拝を貫くことで、戦後政治を完全に転換しようとしているのだ。
昨年以上の決意と態勢で8・15闘争を闘いぬこう。
それは同時に、韓国・民主労総を始め、アジア人民、アメリカ人民との国際連帯の闘いでもある。
第3章 沖縄と三里塚軸に米軍再編粉砕の闘いへ
米軍再編と対決する闘いを沖縄を始め各地の闘いを軸に、新たな安保・沖縄闘争、一大反戦・反基地闘争として爆発させよう。
座間、横田、横須賀の首都圏に陸・海・空軍の司令部機能、出撃機能が集中し、そこに自衛隊も完全に一体化するという米軍再編は、実に重大な攻撃だ。
防衛庁の「省」昇格は、自衛隊の海外派兵の本来任務化と一体となった攻撃であり、米軍再編に対応した日帝軍隊の態勢をつくることを狙ったものだ。
また、沖縄に関しては、これまでのSACO(沖縄に関する日米特別行動委員会)路線の完全な破産の中で、むしろこれを公然と開き直り「SACOの破棄」として、新たな攻撃を加えてきている。6月23日の沖縄戦終結の日の追悼式典への小泉の参列を許すな。
6・26小泉訪米、日米首脳会談を粉砕しよう。
また、米軍再編は、全国の民間空港を米軍が自由に使うことと一体の攻撃だ。三里塚闘争は40年間、軍事空港建設に対する闘いでもあった。今こそ、この原点を明確にし、6・25東京集会、7・2三里塚現地の闘いに大結集しよう。
第4章 小泉後継選びの反動キャンペーンと対決
秋の自民党総裁選に向け、5月24日、安倍晋三官房長官は事実上の出馬表明をした。安倍はそこで「憲法改正は次の内閣の課題」「アジアの自由主義陣営を結んだ戦略対話の枠組みを提唱する」と言い、小泉と同様に米帝ブッシュの対中国戦略(在日米軍再編)に一体化して改憲を遂行する決意を表明した。
そもそも小泉後継選びの過程は、重大な反革命政治攻撃だ。自民党内のどの人物が「小泉改革」を続行するか、改憲へ突っ走るかが焦点であるかのような世論誘導のキャンペーンがマスコミによって展開される。この大反動を打ち破り、小泉後継政権と闘おう。
教基法改悪との闘いは今秋の最大の決戦だ。教基法改悪は改憲攻撃そのものである。絶対に阻止しよう。
通常国会での成立を阻んだ諸法案は、改憲のための国民投票法案を含めて、すべて自民党総裁選後の秋の臨時国会に持ち越された。
それゆえ今秋の闘いは、戦争と改憲をめぐる5〜6月以上の大決戦となる。この戦後を画する攻撃との闘いを貫き、今年の11月労働者総決起に上り詰めよう。60年安保、70年安保・沖縄闘争を超える大闘争への突破口をこじ開けよう。
フランス、ドイツ、イギリスなどで大規模な労働者人民の闘いが爆発した。帝国主義の体制が行き詰まり、労働者が階級的に真っ向から対決する世界史的な闘いの時代が始まったのだ。日本でもそれが現実化し始めている。「日の丸・君が代」強制と闘う教育労働者を見よ。「闘いなくして安全なし」を掲げて運転保安闘争に立つ動労千葉を見よ。そして処分攻撃と闘う法政の学生を見よ。巨大な闘いの季節が始まった。
法政大では、6・15にまたしても4学生逮捕の弾圧が襲いかかったが、学生千人の決起と国会デモが闘い抜かれた。権力と法大当局の大弾圧は、改憲阻止の学生運動の爆発に対する恐怖の現れだ。敵はすでに墓穴を掘っている。
労働者・学生の階級的総決起へ全力を挙げよう。
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週刊『前進』(2251号1面3)(2006/06/26)
全逓大会 「本部一任」拒否を訴え
民営化推進の執行部弾劾
J P U中央は民営化の具体策を当局に要求するところまで転落した。闘う全逓労働者は「首切りと改憲容認の本部打倒を」と訴えた【6月14日 神奈川県民ホール】)
全逓(JPU)は6月14〜16日、第62回定期全国大会を神奈川県民ホールで開催した。大会で菰田委員長は「民営郵政の健全経営」へ「労働組合の立場からも積極的に提言する」と言い放った。JPU中央は一切を「本部一任」とすることで集配拠点の大合理化を認め、大量首切りを進めようとしている。改憲のための国民投票法案も容認し、全郵政との統合問題にも今まで以上に踏み込んできた。
これに対し、労組交流センター全逓労働者部会の呼びかけで全国から集まった全逓労働者は大会初日、代議員へのビラ配布とリレートークで本部案否決を訴え、会場包囲デモで「郵政民営化粉砕」の声を響かせた。これに動かされ、代議員から「米軍再編と闘う方針を」「集配局統廃合は認められない」などの意見が噴出した。(詳報次号)
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週刊『前進』(2251号2面1)(2006/06/26)
職場から闘いを巻き起こそう
教基法改悪の狙いは何か
教育労働者は絶対に阻む
日帝・小泉政権は、通常国会に教育基本法改悪案、国民投票法案など改憲に直結した諸法案を提出し、新憲法制定に踏み込んできた。しかし労働者の闘いは連合指導部の制動をうち破って大きく広がり、その力が確実に情勢を突き動かした。共謀罪新設はまたも阻止され、教基法改悪に対しては全国の教育労働者が日教組本部の制動を突き破って立ち上がり、今国会成立を阻んだのである。闘いは今秋の臨時国会へと引き継がれた。7〜9月を反撃に向けた組織化の時とし、連合指導部を突き動かす闘いを職場から猛然と巻き起こそう。教育労働者を先頭に8・6ヒロシマ大行動を成功させ、臨時国会闘争に攻め上ろう。
(写真 被処分者を先頭に「教育基本法改悪を阻もう」と渋谷をデモ【6月9日】)
「国家による国家のための教育」へ転換
教基法改悪案は、与党が3年間、計70数回も議論を重ねた法案である。その一つひとつの条文に巧妙な狙いが隠されている。改悪反対運動を巻き起こすためには、先取り実施されている教育現場の実態と必死で苦闘している教育労働者が、暴露と批判を展開することが重要である。
教基法改悪案の第一の核心は、「国家による国家のための教育」への大転換である。これは自民党新憲法草案が国家と人民の権利・義務規定を逆転させたのと一体である。
新憲法草案は前文冒頭で「象徴天皇制は、これを維持する」とし、続けて「日本国民は、帰属する国や社会を愛情と責任感と気概をもって自ら支え守る責務を共有」するとうたい、愛国心と国防を「国民の責務」と規定した。戦争国家に向けた総動員体制づくりそのものだ。教基法改悪は新憲法草案と車の両輪であり、その核心は教育労働者の戦争動員である。
改悪案は愛国心を軸に、以下の柱で国家主義教育を貫徹しようとしている。
(1)まず教育基本法と現行憲法との一体性を破棄し、教育勅語同様の教育原理の復権を狙っている。
教育基本法は、戦前の帝国憲法=教育勅語体制のもとでの皇民(臣民)教育との決別の上に成立したものである。それゆえ、前文で「(日本国憲法の)理想の実現は、根本において教育の力にまつべきものである」と、憲法との一体性を強調したのである。
改悪案はこの言葉を削除し、それに代わって「公共の精神を尊び」ということを前面に押し出し、「伝統を継承し、新しい文化の創造を目指す教育」を打ち出した。改悪案が強調する「伝統・文化の尊重・継承」とは、天皇制イデオロギーにもとづく「国民道徳」である。かつて戦時体制を支えた国民学校教育の復活を狙うものである。
(2)改悪案は第2条を新設し、五つの「教育の目標」を打ち出した。@豊かな情操と道徳心を培い、健やかな身体を養う、A個人の価値・能力を伸ばし、勤労を重んじる態度を養う、B公共の精神に基づく社会貢献、C生命を尊び自然・環境の保全(社会的安寧秩序のこと)に寄与する態度を養う、D「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養う」。総じて「滅私奉公」と「実直かつ従順な国民」づくりを意図したものだ。
中でもDの「愛国心」の明文化を徹底的に弾劾する。多くの論者は「法律による強制はなじまない」と論評しているが、問題はそれだけではない。愛すべきとされる国や郷土は抽象的な存在ではない。今後突き進んでいこうとしている戦争国家の国や郷土を含んでいる。それは私たちが生活する場であり、階級対立や矛盾を抱えた現実の存在である。それゆえ国や郷土に対する価値観は個々人にとって多様なものである。このような価値観を「愛国心」を強制して組み敷こうとしているのである。
格差を拡大させ、労働者から生きる権利まで奪い取る、こんな国を誰が愛せるか。沖縄や三里塚・北富士の人民に愛国心を強制することは、国益優先の名により戦争協力を迫ることを意味する。一般的な「内心の自由」論ではなく、戦争協力を拒否する職場闘争・地域闘争こそ、愛国心強制と対決する闘いである。
(3)改悪案が明示する五つの「教育の目標」の末尾は「態度を養うこと」となっている。すなわち、内心の領域だけに限らず、具体的な態度表明を要求し、それを「評価」の対象としようとしているのだ。
すでに現場では観点別評価が導入され、愛国心を始めすべての評価項目に「意欲・関心・態度」が設けられている。これはまず何よりも教育労働者に対する攻撃である。愛国心指導が教育労働者の「職務」とされ、日常から愛国心指導を率先垂範しているかどうかが点検と評価の対象とされる。「指導力不足」「不適格」と認定されれば、教員免許更新制により10年ごとの更新時に免許が奪われる。「日の丸・君が代」強制と同じく、愛国心の強制は教育労働者にその矛先が向けられているのである。
今でも「愛国心」を通知票の評価項目とした学校が13都府県に190校もあることが明らかになっている。教基法が改悪されれば、全校で「国を愛する態度」が評価をもって強制されることになるのだ。
(4)「教育の目標」の「5」には、愛国心とともに「国際社会の平和と発展に寄与する態度」が並記されている。これは、新憲法草案が現行憲法9条の「戦争放棄」条項を解体し、集団的自衛権による海外派兵も可能にしようとしていることと一体である。
「国際社会の平和と発展」とは、帝国主義の国益擁護のための世界秩序の安全確保のことだ。日米軍事同盟の強化と東アジア・中東侵略戦争発動に死活をかける日帝にとって、愛国心は戦争動員の要なのだ。それは軍事的貢献の実践につながるものだ。「日の丸」を掲げて「君が代」を歌い、「我が国」に誇りと忠誠心を持って侵略戦争を担う「実直な精神を持った日本人」の育成こそ、改悪教基法の核心なのだ。
競争原理や能力主義による差別と選別
教基法改悪案の第二の核心は、「教育の目的」を、国家と資本に役立つ「人材育成」に純化させたことである。競争原理や能力主義を徹底させ、差別・選別教育を推し進めるものだ。
条文の各所に「能力、資質、自立、社会への寄与」の言葉が組み込まれ、他方で「9年の義務教育」条項と「男女共学」条項を削除した。「大学の目的」は、学問の自由を前提とした「応用的能力を展開させること」(学校教育法52条)から、「社会の発展に寄与するもの」に純化された。「社会教育」は、「個人の要望や社会の要請にこたえ」るためとして、自己責任論に立った「生涯教育の理念」に組み入れられた。
さらに現行法7条(社会教育)は「家庭教育及び勤労の場所その他社会において行われる教育は、国及び地方公共団体によって奨励されなければならない」として、「勤労の場所」を社会教育の機会の一つとして位置づけてきたが、改悪案は「勤労の場所」を意図的に削除した。労働者が職場で社会問題や労働問題を学習し、自己解放の主体として立ち上がっていくことを恐れているのだ。改悪教基法は労働運動に対する抑圧の意図を持ったものだ。
また6条「学校教育」では「規律を重んずる」「学習に取り組む意欲を高める」ことを「教育を受ける者」に求めている。現行の「義務教育」概念を逆転させ、国家のための教育に従わない者は排除・追放しても当然という論理なのだ。
教育を通じた人民支配と地域の制圧
教基法改悪案の第三の核心は、教育を通じた人民支配・地域制圧を確立しようとしていることである。 改悪案は、新たに「家庭教育」「幼児期の教育」「学校、家庭及び地域住民等の相互の連携協力」の条文を新設した。「家庭教育」では「父母その他の保護者は、子の教育について第一義的責任を有する」と規定し、「生活のために必要な習慣」や「心身の調和」にいたるまで教育行政が干渉しようとしている。不登校や問題行動をする子どもは親(家庭)の責任とするこの発想は、戦時中の発想とまったく同じである。
「幼児期の教育」では「生涯にわたる人格形成の基礎」と位置づけ、「良好な環境の整備」「適当な方法によって、その振興に努め」るとした。優生思想にもとづく能力主義による早期選別・分離教育の推進を打ち出したのである。
「学校、家庭及び地域住民等の相互の連携協力」が新設された意味は大きい。「等」の一文字に警察や自衛隊、行政や民間資本を含め、学校を地域支配の拠点にしようとしているのだ。「防犯」に名を借りた治安維持、「奉仕活動」に名を借りた教育労働者と子どもたちの戦争動員、さらには国策の宣伝の場としての学校を想定している。学校における「日の丸」掲揚は国家権力による地域制圧のシンボルでもある。
さらに「宗教教育」は、「宗教に関する寛容の態度、宗教に関する一般的な教養」となった。この条項は、靖国参拝を始めとした国家神道と教育の関係が問われる部分である。新憲法草案は、信教の自由に関して「社会的儀礼又は習俗的行為」は国及び公共団体が行うことも許されるとした。改悪教基法が言う「寛容・一般的な教養」とはまさにこれと一体である。”国民的習俗だから、内心の自由に踏み込むものではない”として、靖国参拝を始めとする神道的行為が強制されようとしているのだ。
教育労働者の支配・統制と日教組の解体
教基法改悪案の第四の核心は、教育労働者の支配・統制、日教組運動解体である。改悪法案は「教員」の条文を新設し、徹底した教員統制システムをつくり出そうとしている。
現行法6条の「教員は、全体の奉仕者であって」の言葉を削除し、新たに「自己の崇高な使命を深く自覚し、絶えず研究と修養に励み、その職責の遂行に努めなければならない」とした。教員が国家意思の忠実な体現者となることを要求し、愛国心教育・能力主義教育がその職務とされ、その実践に応じて身分と待遇を保障するというのだ。
すでに中教審は教員免許更新制の08年度実施へ動き始めた。日案・週案・授業観察で日々点検され、人事考課で査定を受け、官製研修に追われ、行事ごとに「日の丸・君が代」の踏み絵を踏まされ、そして10年ごとに免許が更新されるかどうかのふるいにかけられる。多忙化地獄の中で、職場の団結が解体されれば、考える時間も語る時間も奪われる現実がある。こうした中で改悪案は、教育労働者から民主主義的価値観を一掃して日教組運動を解体することを宣言し、教育労働者に再び「死の手配師」になれと迫っている。
改悪案の第五の核心は、教基法の柱である10条の改悪である。教育全体を教育行政が全面的に支配するフリーハンドを握ろうとするものである。
現行法10条は「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものである」とし、2項で「教育行政は、この自覚のもとに、教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目標として行われなければならない」と教育内容への介入を排除した。
改悪をめぐる議論の中では当初、1項の主語を「教育行政は」に置き換えようとしたが、最終的に改悪案16条では「教育は、不当な支配に服することなく」の言葉は残し、「国民全体に対し責任を負って行われるべき」を削除、新たに「この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべき」と加えた。
さらに2項を全面改悪し「国は……教育に関する施策を総合的に策定し、実施しなければならない」に変更し、これを受けて17条「教育振興基本計画」を新設、予算措置を背景に教育全般を統制・支配しようとしている。教育振興基本計画とは、〈計画―評価―強制〉をシステム化し、政府が定めた計画を貫徹することを教育労働者に無条件に強制するものだ。
この10条改悪は文字どおり教基法に対する死刑宣告である。教基法改悪の後には学校教育法を始めすべての教育関連法規を改悪し、法律の名によって支配・統制しようとしている。
主流派として大胆に闘おう
重大なのは、「教育振興基本計画」を要求してきたのが日教組本部だということだ。03年に中教審が「教育基本法の見直し」最終答申を出して以降、日教組本部は「改悪反対」を掲げもせず、「教育振興基本計画については……財源措置の伴った実効ある教育改革をすすめるものとすること」という請願署名運動を組合員に押しつけてきたのだ。
この現実に対して、「教え子を再び戦場に送るな」を胸に刻んで闘う現場組合員の怒りが噴き出している。今こそ、少数派から多数派に転じる大胆な闘いで、主流派へ躍り出て、闘う日教組を再生しよう。4大産別を軸に労働者の底からの決起を巻き起こそう。
教基法改悪の問題点を全面的に暴露して、改悪阻止を教育労働者はもとより父母、地域住民、労働者、宗教者、生徒・学生との共同闘争課題へ押し上げよう。
(山崎哲生)
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週刊『前進』(2251号2面2)(2006/06/26)
医療奪う改悪法弾劾する
高齢者に大幅負担増 10月実施阻止へ闘おう
6月14日の参議院本会議で医療制度改革関連法案の採決が強行され、可決・成立した。国の財政負担削減のために高齢者・労働者人民から医療を奪い生活を破壊する医療制度の改悪を怒りを込めて弾劾する。制度改悪の強行を阻止するためにさらに闘い抜こう。
今回の医療制度改悪は、患者の窓口負担の引き上げに加え、長期入院患者の療養病床を大幅に削減し、療養病床に入院している高齢者の食費・居住費を全額自己負担にし、さらに高齢者医療制度を新設し、高額の保険料を徴収しようとするものである。収入の少ない高齢者は、病気になっても医者にかかれないだけでなく、保険料負担のために生活できなくなるのだ。
まず、この10月から患者の窓口での自己負担増が始まる。70歳以上で一定所得以上の人の窓口負担が現在の2割から3割になる。一定所得以上の対象者の下限も、夫婦で年収621万円、単身で年収484万円を、それぞれ520万円、383万円に引き下げる。
また療養病床に入院している高齢者の食費・居住費が全額自己負担になる。食費が4万6千円、居住費が1万円、合わせて5万6千円を自己負担しなければならなくなる。払えなければ病院から出ざるをえなくなる。基礎年金受給者の平均額が月5万1千円という中で、これは医療を受けさせないということなのだ。さらに70歳未満の人も医療費の自己負担の月額上限が7万2300円から8万100円に引き上げられる。
08年4月からは75歳以上が全員加入する高齢者医療制度が新設される。これによって全国平均で月6200円程度と見込まれる保険料を払わなければならなくなる。月5万円以下の年金の中からどうやって6千円もの保険料を払えと言うのか。大半の高齢者がわずかな年金だけで生活しているのだ。
同時に一般的な所得の70〜74歳の高齢者の窓口負担が1割から2割に引き上げられる。75歳以上は1割のままだが、保険料負担は払わなければならない。
さらに12年度までに全国に約38万床ある療養病床が15万床に削減される。削減される23万病床分は老人保険施設や有料老人ホームなどに移行させるとしているが、行く当てのない人が膨大に生み出されることは必至だ。現在、特別養護老人ホームや老人保健施設が極端に不足している中で、約32万人が入所待ちだといわれている。入所できるまでに2年、3年待ちは当たり前で、入所待機者はさらに増えている。こうした状況で23万床も減らせば、医療・介護が必要な高齢者が施設入所待ちの「難民」となることは避けられない。すべてが労働者家族の負担として強制されるのだ。
介護保険制度の実施で収入の少ない高齢者は生きていけない状態を強制され、孤独死や高齢者家族の無理心中が多発している。この上に強行される今回の医療制度改悪は、高齢者に死ねと言うに等しい攻撃なのだ。法律が成立したからといってこのまま黙っていることはできない。医療制度改悪を撤回させるために全力で決起しよう。帝国主義の延命のため人民を犠牲にする小泉政権を倒そう。
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週刊『前進』(2251号2面3)(2006/06/26)
都教委包囲ネット “心の国家支配を許さない”
渋谷の街をデモ
不起立の闘いに確信
6月9日夕、「都教委包囲・首都圏ネット」の呼びかけで、教育基本法の改悪を止めようと渋谷デモが行われた。教育労働者を先頭に150人が参加し渋谷の街をデモ行進した。
デモに先立ち、渋谷駅近くの宮下公園で集会が開かれた。冒頭、司会者が教基法改悪は改憲と連動した大攻撃であることを弾劾し、「日の丸・君が代」強制や教員免許改悪の攻撃がたくらまれている中で、学校現場と固く連帯して教基法改悪反対の運動を広げていこうと呼びかけた。
「日の丸・君が代」不当処分撤回を求める被処分者の会の労働者は、03年10・23都教委通達以来3年間でのべ350人が処分を受けたこと、それでもみなが正しさを確信して闘っていると誇りをもって語った。そして愛国心を押しつける教基法改悪を批判し、「何をどう愛するかは、個人が決めること。国家が個人の心に介入することは許せない」とアピールした。
04年3月の都立板橋高校卒業式で国歌斉唱時の不起立を呼びかけて「威力業務妨害」罪で起訴された板橋高校元教諭の藤田勝久さんは、先日の東京地裁の不当な有罪判決を弾劾した。そして、「今や司法は行政の走狗(そうく)だ」と弾劾し、控訴審闘争を闘う決意を述べた。
都高教の労働者は、都教委が前日、4月入学式で生徒に「内心の自由」を説明したなどの理由で教員7人の「厳重注意」処分を決定したことを報告し、「都の教育には、もはや憲法はない」と怒りを込めて弾劾し、教基法改悪・改憲を先取りする都教委と対決して闘おうと呼びかけた。
また「破防法・組対法と闘う共同行動」の代表は、停職3カ月の処分を受けながら不屈に闘っている中学校教員の国会前での発言に大いに勇気づけられたと感想を語り、共謀罪阻止・教基法改悪阻止へともに闘おうと呼びかけた。
集会後、渋谷の街を1周するデモに出発。工夫を凝らしたプラカードや横断幕を掲げ、「教基法改悪反対」「愛を法律で縛るな」と訴えると、多くの若者たちが足を止めて注目した。
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週刊『前進』(2251号2面4)(2006/06/26)
“つぶせ 愛国心法案”
6・4大阪 会期末見据え200人立つ
6月4日、大阪市北区住まい情報センターで「みんなでとめよう!教育基本法改悪6・4全関西の集い」が開催され、教育労働者を先頭に200人が梅田までのデモに立ち上がった。
全関西の集い実行委員会は、大阪の「日の丸・君が代」被処分者を中心として2年間、闘いを積み重ねてきた。5月6日に緊急行動、さらに続いて街頭宣伝を行い、この6月4日には「ぶっつぶせ!『愛国心法案』」をメインスローガンに会期末を見据えた総決起集会を呼びかけた。
冒頭、実行委事務局が国会情勢と、教基法改悪の政府案・民主党案の批判のポイントを提起した。
続いて大阪教育法研究会の羽山健一さんが講演した。羽山さんは、政府案のキーワードとなっている「公共の精神」を取り上げ、これが「国を愛する態度」と一体となって、お国のために命を投げ出す国民の育成を狙っていることを批判した。さらに「福祉国家など一度も実現したことがない」と断罪して、新自由主義的改革を批判するとともに、すべての問題を教育問題にすり替える小泉らの手口を批判した。
フリートークでは、卒業式に不起立で闘おうとしている部落解放同盟全国連合会の中学生と、民族学級を担当する在日の教育労働者からアピールが発せられた。続いて闘う教育労働者が、5・27芝公園での日教組集会に動員枠を広げさせて参加した報告や、教基法改悪阻止闘争の中から闘う日教組運動を再生させるための各府県の現場における闘いを報告した。
その後、集会参加者は、天神橋六丁目から扇町を通って梅田まで、沿道の市民に全国連絡会作成の教育基本法リーフを手渡しながらデモ行進を行った。
(写真 教育労働者を先頭に、「教育基本法の改悪をとめよう」と訴えながら梅田までデモを行た【6月4日】)
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週刊『前進』(2251号2面5)(2006/06/26)
帝国主義打倒めざして闘う革共同にカンパを
昨年の小泉による9・11総選挙反革命に対して労働者階級は、今年3〜4月、教育労働者の「日の丸・君が代」不起立闘争と動労千葉のストライキ・運転保安闘争を最先端に激しく反撃してきました。さらに共謀罪制定や教基法改悪案・国民投票法案など超反動法案の国会提出に対して、連日の国会闘争へと決起してきました。
闘いは日々拡大し、連合中央の制動を打ち破る労働組合・労働者階級の大きな決起を実現して、いずれの法案も成立を阻止するという大きな勝利を実現しました。9・11反革命をはね返す労働者階級の大勝利です。
国会闘争の山場において、デッチあげ逮捕による全国一斉捜索や、迎賓館・横田爆取裁判での不当判決、法政大学での29人の学生の逮捕・退学などの攻撃がかけられてきました。これらは、日帝・支配階級が、自らの深刻な危機の時代に革共同が労働者階級の党として登場することに恐怖していることを示しています。
資本家階級は自動車・銀行を始めとして史上最高の利益を上げ、他方で労働者階級は塗炭の苦しみにあえいでいます。改憲攻撃とリストラ、医療・福祉切り捨ての攻撃はまったく一体です。
このように今激しく闘われている攻防にいかに勝利していくのか。労働者人民が帝国主義によって日々絞め殺されているこの時代に、現実を変革する力は唯一、労働者階級の闘いにこそあります。そして攻防の焦点は国鉄・自治体・学校・郵政などの職場・労働組合です。その路線の正しさは動労千葉の闘いが実証しています。韓国・民主労総、アメリカ・ILWU(国際港湾倉庫労組)との国際連帯闘争の発展が証明しています。
労働者階級の行動、闘いの中に一切を革命する力があるという立場に立って労働者階級とともに行動・実践する党、マルクス主義で労働者階級の武装を推し進める党が切実に求められています。
1〜6月の闘いをさらに推し進め、この闘いを最後まで貫いて、プロレタリア革命の勝利を闘いとるために、圧倒的な資金カンパをお願いします。
革共同は、資本主義に引導を渡し、共産主義社会を実現するために、その闘いの主人公である労働者階級の最先頭で闘います。労働者階級に根ざし、向き合い、苦楽をともにして、一緒に勝利する党になるために、全党員が飛躍を誓い、総力で実践に突入しています。
みなさん、革共同に参加してください。資金カンパに全力で立ち上がってください。危機に立つ帝国主義を打倒するために、ともに闘いぬきましょう。
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週刊『前進』(2251号3面1)(2006/06/26)
模擬投票で次々“共謀罪廃案”
6・10 「一億二千万、共謀の日」
全国で一斉行動に立つ
6月10日、「一億二千万、共謀の日」と銘打っての共謀罪廃案の多彩な行動が全国各地で繰り広げられた。共謀罪の「息の根を止める」まで手をゆるめず闘いぬこう。
●有楽町
(写真左 シール投票で圧倒的多数が「反対」【有楽町】) (写真右 「デモやめろ」と挑発する右翼を弾劾【数寄屋橋】)
東京・有楽町マリオン前では午前11時から街宣と模擬投票が行われた。宣伝カーから道行く人に共謀罪反対の訴えが行われる中、共謀罪の賛否を問うシールによる「投票」が呼びかけられた。約1時間後の投票結果は、反対88に対し賛成はわずか4。よって圧倒的多数で共謀罪の「廃案」が決まった。
●日比谷公園
「共謀の日記念」弦楽四重奏(日比谷)
午後1時半から日比谷公園内のカフェテラス「グリーンサロン」で「一億二千万・共謀の日記念/室内楽演奏会」が開かれ、モーツァルト、シューマンなどの弦楽四重奏の美しい調べが人びとを魅了した。曲の合間には演奏家から「音楽は演奏者同士の呼吸を合わせた『共謀』によってこそ成り立つ。音楽家と共謀罪は相いれない」との納得の発言があった。
●秋葉原
秋葉原では午後1時から表現者を中心に街頭宣伝と模擬投票が行われた。すでに共謀罪反対の街頭行動ではおなじみとなった「自給自足ミュージシャン」ZAKI氏が、「へんな共謀罪」をギターを弾いて歌いまくった。
♪変な共謀罪だから
へんな共謀罪
相談しただけで
逮捕される
裏切って自首すりゃ
自分は無罪になる
はっきり言って
密告制度だろう!
またメイド服コスプレの「アンチ共謀罪ガールズ」のアピールを中心ににぎやかに盛り上がり、ここでもシール投票は113対7の圧倒的多数で共謀罪の「廃案」が確定した。
万世橋警察署の警官がパトカーで乗りつけ「道路交通法違反だ」といちゃもんをつけてきたが、弁護士を先頭に「ビラ配りは憲法21条で保障された権利だ」と猛然と抗議すると、結局すごすごと逃げ帰った。
午後4時半から水谷橋公園で集会が開かれた。司会の救援連絡センター事務局は「今国会の成立を阻止したが、政府・与党はまだあきらめていない。夏から秋、さらに大衆的な闘いを広げて、共謀罪を永久に葬り去ろう!」と訴えた。国際共同署名運動の呼びかけ人を代表して、関東学院大学教授の足立昌勝さんは、「廃案に向け、外に出ていろんな共謀をやろう」と呼びかけた。
動労千葉の川崎昌浩執行委員は千葉駅頭の「ビラまき共謀」で1時間に1千枚のビラがはけたことを報告し、さらにこの間の安全運転行動に対し当局が事情聴取で「組合の中でどういう議論をしてきたのか」などと聞いてきたことを取り上げ、「組合への介入であり争議権の否定だ。共謀罪につながる攻撃がすでに始まっている」と弾劾した。
午後5時には日比谷公園に向かってデモ出発。途中、デモ隊列に向かって右翼の宣伝カーががなりながら突っ込んできて周囲は一時騒然となったが、参加者は右翼の挑発行為を一蹴し、デモをやり抜いた。
●渋谷
渋谷では午後2時、若者を中心とした街頭宣伝が行われた。
以前イギリスでタクシーの中でパンクバンド「クラッシュ」のヒット曲「ロンドンコーリング」を聴いていた青年が、その歌詞の中に「戦争が宣言された、闘いが始まる」という一節があったことから運転手によって「テロリスト」と疑われ警察に通報され尋問されるという事件があった。このニュースに危機感を募らせた若者が、「日本もこのままでは音楽も自由に聴けない社会になる。表現の自由と社会的弱者の団結を訴えたい」と呼びかけたもの。渋谷のハチ公前でロックを爆音でかけながら、共謀罪廃案を訴えた。
●大阪
大阪ではこの日、連帯労組関西地区生コン支部の2台の車がそれぞれ外環から大阪府下と大阪市内一円を昼から夕方まで、ZAKIさんの「へんな共謀罪」をがんがん流してアピールしながら走りまわった。
また門真市議会議員の戸田ひさよしさん(連帯労組近畿地本委員長)の「共謀罪反対」で派手にデコレーションされた宣伝カーが、難波から大阪駅および守口、門真などを流し、人びとの注目を集めた。
百万人署名運動関西連絡会が主催する共謀罪反対街頭宣伝がJR大阪駅前で行われた。
反戦団体のA&U大阪も加わり、「本日、一億二千万共謀の日。みんなで国会突入し共謀罪をぶっつぶそう」と書かれた横断幕を掲げ「へんな共謀罪」をBGMに、「今日は共謀の日でーす」とビラを配り、注目度は満点だった。
●全国で
廃案署名が各地で(神奈川・橋本駅)
その他、国立、埼玉、千葉、神奈川、和歌山、京都、岡山、広島、福岡など全国各地の街頭で大中小のユニークな「共謀」企画が企まれ、実施された。またインターネット上の無数のホームページ、ブログなどでこの日にちなんだ「共謀罪反対」のアピールが行われた。
「共謀の日」は全国津々浦々で1億2千万人が“共謀する”こと抜きには毎日の生活と闘いが成り立たないことを浮かび上がらせた。まさに共謀罪は、警察が労働者民衆の日常のすみずみまで監視・抑圧し、声を出すことを封じるような超治安弾圧体制をつくろうとしているのである。
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週刊『前進』(2251号3面2)(2006/06/26)
6・13東京 廃案めざし集会
国会議員と市民が共闘
6月13日夕、東京・千代田区の日本教育会館で「共謀罪の新設に反対する/超党派国会議員と市民の大集会」が開かれた。共謀罪の今国会での未成立は確定したが、継続審議を許さず法案の息の根を止めようと、300人が参加した。
集会では冒頭、民主党、日本共産党、社民党の5人の国会議員があいさつした。「大衆運動の力がなければ、採決の強行は阻止できなかっただろう」「秋の臨時国会に向けて共謀罪廃案の世論を大きくしていこう」と決意が語られた。
続いて発言に立った刑法学者の足立昌勝さん(関東学院大教授)は、「政府案はずたずたになった。もう審議することはない。継続審議なんて許せない。絶対廃案にしよう」と呼びかけた。
日本ジャーナリスト会議の丸山重威さんは、「私たちの会は、“ふたたび戦争のためにペン、カメラ、マイクをとらない”と誓って結成された」と原点を語った。そして治安維持法弾圧で60人が逮捕され、30人が有罪とされ、4人が獄死した戦争中の横浜事件の大弾圧を語り、今、共謀罪に反対して闘うことの重要性を訴えた。
このあと連合、全労連、市民運動団体の代表が発言した。また全労協の参加が紹介された。この間の反対運動の成果を確認し、秋の臨時国会決戦に向かって共謀罪の反人民的な正体をさらに多くの人民に訴え、労働者を先頭とした広範な統一戦線を発展させていこうと誓いあった。
(写真 「絶対に廃案へ!」と誓い合った【6月13日 東京】)
(解説) 闘いの陣形一層拡大を
6・10「一億二千万、共謀の日」行動は全国で繰り広げられ、共謀罪に対する怒りと危機感は全国に広がっている。
今国会で6度もの強行採決の危機をはね返し、また国会最終段階で「民主党案丸飲み」の自民党のもくろみを粉砕した力も、根源的には「破防法・組対法に反対する共同行動」を始めとするこの間の大衆運動の力であることを確信しよう。
追い詰められた政府・自民党は継続審議の手続きをとり、次の臨時国会で成立させることを狙っている。だが、この間の法務委員会審議では政府・自民党が答弁できずに立ち往生してしまう場面もしばしばであり、さらには答弁で一貫して否定してきた民主党案を丸飲みするなど、彼らの論理は完全に破綻している。継続審議など絶対に認められない。
共謀罪の起源をたどれば中世のイギリスの絶対王制の時代にさかのぼり、18〜19世紀にかけては労働組合の弾圧に使われた。
この歴史からも明らかなように、「共謀」とは「団結」のことであり、「共謀罪」とは「団結禁止法」なのだ。
6・13集会では、現行法のもとでも「共謀」概念がどんどん拡大され、「こんなことまで共謀とされるのか」と専門家も驚くような最高裁判決が出されている事実が報告された。ましてや共謀罪が創設されたら、どんどん拡大適用され、労働者人民の弾圧に使われることは明らかである。
さらに、闘いの陣形を強固に打ち固めよう。
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週刊『前進』(2251号3面3)(2006/06/26)
法政大 法学部で処分阻む
6・15の圧殺狙い 門を封鎖し検問
当局に学生の怒り
法大キャンパスでは、6・15闘争の高揚にむけて、激しい攻防が闘い抜かれた。連日、クラスやサークルで、国会デモをめぐって真剣な討論が交わされ、「デモに行く」という学生が次々と現れた。あるクラスでは、全員が処分反対署名を行った。ある学生は「デモに行こう」と呼びかける文章を書き、キャンパスでビラまきとアジテーションに決起した。
当局が検問のため用意したテントと資材(6月14日)
文教授会は再審査却下の暴挙!
6月12日には法学部生2名への処分決定を阻む重大な勝利をかちとった。
この日、2名の法学部生を先頭に、法学部の教授会の会場となる80年館の前に終日陣取り、「処分決定するな」と訴え続けた。ビラを配り、マイクで訴えると、学友が次々と応える。法学部教授会が処分を決定するのか否か、全学生が注目している。
当該学生の怒りの訴えの前に、法学部教授会は長時間に及ぶ議論によってもこの日の処分決定を出すことができず、「2週間後の教授会で継続審議」としたのだ。
平林総長ら法大当局中枢は、学部長会議などを通じ、この日の教授会で「退学処分」を決定するよう、ゴリゴリと圧力を加えていた。そして、6・15闘争を迎える前に、5人全員を「学外者」としてキャンパスから追放することを画策していたのだ。この日の決定を阻んだことは決定的だ。さらなる処分反対の闘いで、6・26教授会では、「いっさいの処分はしない」との決定をかちとろう。
一方、14日、文学部教授会はまったく不当にも3名の文学部生の再審査請求を却下する暴挙を行った。3名はそれぞれ詳細な異議申立書を提出し、退学処分決定が「業務妨害」の内容すら明らかにできないまま「結論ありき」で行われたことを徹底的に弾劾した。しかし、文学部の教授らはその訴えに一切耳を傾けることなく、処分決定を居直ったのだ。
かつての法大が、三木清教授を大学から追放し、侵略の先兵の道を進んでいったのとまったく同じ道を進んでいるのだ。文学部教授会の暴挙を、全学生と全人民の怒りの声で追及しよう。腐り果てた教授会を弾劾し、大学を学生の手に取り戻そう。
改憲攻撃の先兵平林総長打倒へ
法大当局は、6・15闘争の爆発に心底脅えていた。12日からは、「最近学内で不審者が発見されます。学生のみなさんも注意してください。また、学内では常に学生証を携帯してください」という構内放送が繰り返し流され、当然にも学生や教員の間からは「あの放送はなんだ!」という怒りの声があがった。被処分者の学生を「不審者」といいなす許しがたいキャンペーンであると同時に、15日当日に、全学生に対し学生証チェックを行うことをあらかじめ宣言していたのだ。
6・15前日の14日には、入学試験時のようなテントが門に設置された。当日の集会圧殺のために、門をすべて封鎖し、正門にバリケードを築いて、40人の教職員で検問と学生証チェックを行うためだ。学生に向けた事前の告知すら一切なされなかった。
そして被処分者ばかりか、改憲・戦争の先兵へと転落した法大当局に怒りを燃やして駆けつけた法大卒業生や全国の学生をたたき出し、キャンパスを教職員が暴力的に制圧して、キャンパスの法大生の決起を弾圧すると同時に集会そのものを破壊してしまおうとしたのだ。本当に許せない! これが大学のやることか。集会圧殺のために門を封鎖するなど、法大の歴史始まって以来の暴挙だ。
しかし、弾圧のエスカレートは、恐怖の裏返しだ。平林総長らがどれほど6・15の爆発に戦々恐々としていたかを示してあまりある。そして現実の6・15闘争の大高揚がますます学生の怒りに火をつけ、法大当局への怒りをかき立てた。平林総長は自らの墓穴を掘ったのだ。
6・15闘争の大勝利に続き、さらに小泉と平林を串刺しにし打倒する闘いに猛然と立ち上がろう。
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週刊『前進』(2251号3面4)(2006/06/26)
〈焦点〉 「奥田路線の踏襲」を宣言
御手洗・日本経団連と対決を
日本経団連は5月24日に総会を開き、会長が奥田碩トヨタ自動車会長から御手洗冨士夫キヤノン会長に代わった。
日本経団連は02年5月に経団連と日経連が統合した“財界総本山”だ。日経連時代を含めると奥田会長の7年間は01年4月に誕生した小泉内閣の5年間と完全に重なっている。奥田はそれまでの歴代会長よりも突出して小泉支持、自民党政権支持を露骨に打ち出し、小泉=奥田路線により小泉の構造改革政策を支えてきた。小泉にとって「財界総理」たる奥田の支持こそ最大の支えだったのだ。
小泉内閣のこの5年間は、徹底した戦争と民営化(労組破壊)攻撃の推進であり、「格差社会」と言われる労働者階級の貧困化の進行だった。しかも奥田は、小泉の靖国参拝を支持し、奥田ビジョン(東アジア自由経済圏構想)を打ち出し、日本経団連の改憲提言までも発表した。
日本帝国主義の戦後的あり方の全面的な行き詰まりの中で、奥田は小泉と一体となり、改憲と戦争国家化、労働者への犠牲転嫁、労組破壊の攻撃を全面的に推進してきたのだ。
この奥田に代わって会長に就任した御手洗とは、いかなる人物だろうか。
「格差は経済活力の源だ」と!
御手洗はキヤノンの会長として、戦後初めてのIT業界出身の会長である。だがそのキヤノンこそ「セル方式」と呼ばれる強搾取の新しい生産方式を本格的に導入した企業なのだ。
それはベルトコンベアー方式に代わり、数人のチームで生産し、個人を競わせる生産方式だ。これを全面的に導入し、派遣労働者を徹底的に搾取・収奪することでキヤノンは「高収益」企業に成り上がった。
御手洗は、このセル生産方式を中国を含む全世界に展開してきた日帝ブルジョアジーの資本攻勢と侵略の先兵となってきた。
御手洗の就任あいさつは、彼が奥田のあとを引き継ぎ、徹底して構造改革路線を推進していくことを露骨に示している。
御手洗は、まず「奥田前会長が示した『活力と魅力溢れる日本をめざして』(奥田ビジョン)の路線を踏襲する」と述べている。つまり奥田の「東アジア自由経済圏構想」、現代の大東亜共栄圏政策を徹底推進することを日帝ブルジョアジーに誓っているのだ。
その上で「『平等』から『公平』へのパラダイムチェンジが歴史的必然」「官や国への安易な依存心を持たない」などと、小泉=奥田や竹中流の新自由主義を振りまき、「いわゆる格差の拡大が問題視されておりますが、公正な競争の結果として経済的な格差が生じることは当然のことであります。この場合、格差は問題というよりも、むしろ経済活力の源」なのだと、決定的言辞を吐いている。
小泉とともに「格差拡大こそ経済活力の源」などという人物を許せるだろうか。御手洗は小泉=奥田路線を継承し、労働者への搾取と収奪、戦争と民営化(労組破壊)攻撃を強化すると言っているのだ。
「愛国心」強調し改憲攻撃を推進
御手洗は、さらに根っからの改憲論者でもある。
彼はあいさつで、福沢諭吉のことばを引用しながら、“こうした思いやりや公徳心を、私は「愛国心」と呼びたい。この愛国心があればこそ、他人の気持ちや痛みも理解することができ、他国を尊重する態度も生まれる”などと言い、愛国心を強調している。
この論理こそ、教育基本法改悪法案の言う「我が国と郷土を愛する態度」そのものだ。それが侵略戦争への道であることは歴史を見れば明らかだ。ところが御手洗は、愛国心を強調して教基法改悪・改憲攻撃を推進すると誓っている。
労働者は小泉=奥田路線の継承を宣言する御手洗・日本経団連と徹底対決し闘わなければならない。
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週刊『前進』(2251号3面5)(2006/06/26)
〈焦点〉「小泉改革」が生んだ腐敗
村上ファンド事件の核心問題
村上ファンドの村上世彰が証券取引法違反(インサイダー取引)で逮捕された。ライブドアがニッポン放送株を大量に買う情報を知って自ら大量の株を買い集め、高くなった段階で売り抜けて巨額の利益を上げた。このことがインサイダー取引に問われた。
この事件で、村上と小泉政権−小泉改革の一体性も浮き彫りになってきた。
小泉政権の民営化・規制緩和と市場万能主義のもとで、株の売買で「めちゃくちゃもうけた」(村上記者会見)連中が、村上を始めとしてたくさんいる。
村上ファンドは、7年間で2000億円の利益を上げた。投資資産は設立時の40億円から今年春で4300億円に膨れあがった。村上ファンドの運用資金は海外からが83%だが、国内の生命保険会社の資金が、海外の投資ファンドを経由して大量に入っているといわれる。利益の源泉は、元をたとれば労働者階級から搾り取ったものだ。
小泉改革にのっかり、巨利を得た村上やライブドア堀江の姿は、労働者階級の苦しい現実の対極にある。多くの労働者が朝早くから夜遅くまで働いても毎月かつかつの賃金しか得られず、賃下げや首切りの恐怖の中で長時間過密労働に駆り立てられている。その対極で、資本家どもは労働者から搾り取り、マネー・ゲームで巨額の利益を上げているのだ。
村上逮捕で示されたことは、そうした我慢のならない「格差社会」の、氷山のほんの一角である。
福井、宮内、牛尾らが出資し巨利
村上の犯罪は小泉改革、小泉=奥田路線と一体だ。そのことは実体的にみると一層はっきりする。
小泉改革を率先して進めてきた宮内義彦・オリックス会長、牛尾治朗・ウシオ電機会長、福井俊彦・日銀総裁らが村上ファンドに投資し、利益を上げていた。
宮内は、村上の最大の支援者だった。村上ファンドの最初の運用資金(40億円)の大部分(30億円)を出資した。その後さらに積み増して200億円の運用を委託してきた。
その宮内は、政府の規制改革・民間開放推進会議の議長である。91年に初めて行革審の委員になって以来一貫して、規制緩和の旗を振ってきた。タクシー業界の規制撤廃、労働者保護規制の撤廃、民営化攻撃、公務員リストラ、賃下げ攻撃の先頭に立ってきた。過労死・過労自殺、労働災害が続出するような過酷な状況に労働者を追いやってきた元凶だ。しかも宮内自身は、自ら推進した「規制緩和」の波に乗って巨額の利益を上げ、会社を大きくしてきた。
牛尾は村上ファンドに17億円出資して利益を上げてきた。牛尾は経済財政諮問会議の民間委員であり、トヨタ自動車の奥田とともに、郵政民営化、行財政改革、公務員リストラ、社会保障解体を強力に主張し推進して来た。
さらに、あろうことか日銀総裁の福井までもが、村上ファンドに1千万円を投資して2千万円もの利益を上げてきたのである。
また村上の出身官庁である経済産業省の官僚は、組織的に1口100万円単位で資金を募り、村上ファンドに投資していた。
また自民党自体が村上を「モノ言う株主」「改革の旗手」と持ち上げ、関係をつくってきた。自民党法務部会は昨年2月に村上を呼んで講演会を行っている。さらに官房長官・安倍晋三は、村上と「食事をともにする仲」(村上)だったという。
こうして「小泉改革」に群がり、利益を上げたブルジョアジーから、巨額のカネが自民党森派に流れ込んだと言われる。政財官一体の腐りきった日帝の姿だ。
民営化・規制緩和と対決しよう!
ところがここにきて、日帝国家権力・検察は、村上をスケープゴートにして資本の動きを一定程度抑えることに踏み切った。それは、体制的危機を深める日本帝国主義の体制を、プロレタリア革命の大波から守り抜くためである。そこにはまた、支配階級内部の利害対立や、それを反映し自民党総裁選に向かって激化する自民党内部の抗争もあり、今後村上問題がどのような展開をたどるかは、予断を許さない。
だが、はっきりしているのは日帝が未曽有(みぞう)の危機を深めていることである。日帝・検察は「公正な競争を守る」とか「一般投資家を保護する」とか、きれいごとを言っているが、日本資本主義、帝国主義そのものがどうしようもなく腐りきっているのだ。
小泉を打倒し、ポスト小泉での戦争と民営化・規制緩和攻撃と徹底対決しよう。
労働者の力で日本帝国主義を打倒し、労働者が主人公の社会をつくろう。
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週刊『前進』(2251号4面1)(2006/06/26)
北朝鮮・中国侵略戦争を狙う米軍再編
座間が世界戦争の司令部
横須賀と横田「ミサイル防衛」の最前線
3500人が参加した5・14沖縄県民大会。辺野古への新基地建設案に怒りのこぶLを突き上げた(宜野湾市)
5月1日の米軍再編「最終合意」、5月30日に閣議決定された米軍再編の実施方針は、沖縄と神奈川―日本全土を世界戦争、北朝鮮・中国侵略戦争の前線司令部・出撃基地にするものであり、9条改憲と一体の大攻撃だ。06〜07年改憲阻止決戦の重大な一環として、米軍再編―日米同盟再編を破綻(はたん)に追いこむ新たな安保・沖縄闘争が求められている。
座間に米陸軍新司令部が!
第一に、キャンプ座間(神奈川県相模原市、座間市)に移駐されようとしている米陸軍第1軍団新司令部の恐るべき性格である。
●第1軍団とはどんな部隊か
”米陸軍最強”と言われる米陸軍第1軍団は、横須賀の米海軍第7艦隊、沖縄の第3海兵遠征軍とともに米太平洋軍の3本柱の一つだ。米陸軍第1軍団が、これまでいったい何をやってきたのかを見れば、キャンプ座間移駐の狙いが浮かびあがってくる。
マッカーサーとともに沖縄戦、日本占領に従事した米陸軍第1軍団は、1950年朝鮮侵略戦争の開始とともに50年8月にプサンに司令部を移転、休戦が成立するまで米軍の中心部隊として朝鮮半島を焼土と化す侵略戦争を展開した。その後、米西海岸にあるワシントン州フォートルイスに拠点を移し、ベトナム戦争、湾岸戦争、イラク戦争などで常に最前線に動員されてきた。イラク戦争時には、米陸軍が占領した大統領宮殿の中に第1軍団司令部の士官たちが仮設司令部を置いてイラク国内での指揮を執った。
●最前線の総司令部
米軍はいま、全世界どこへでも短時間で展開できるように部隊編成と配備の見直しを全面的に進めている。太平洋軍の管轄では、ハワイに広域司令部(UEy)、キャンプ座間と韓国オサン(烏山)基地(ピョンテク)に前線司令部(UEx)を設置する。
座間にやってくる第1軍団新司令部(UEx)の性格は、企業にたとえれば各地の支社を統括する本部の役割を果たす。UExは、通常は固定した部隊を持たず、戦闘に応じて必要な部隊を編成・指揮し、海軍・海兵隊・空軍の部隊も必要に応じて指揮下に組み込む。また、戦闘の必要に応じて前線に本部を移動(=前方展開)して指揮を執る。
湾岸戦争やイラク戦争では、陸軍が全体の指揮をとった。実際の北朝鮮・中国への戦争では、キャンプ座間の新司令部が米4軍を指揮する総司令部になることは間違いない。
須賀に原子力空母を配備
第二に、横田基地・横須賀基地強化の重大性だ。
横須賀基地は、08年に原子力空母ジョージ・ワシントンの母港化が狙われている。それと一体のものとして、ミサイル防衛(MD)の拠点として強化が進められている。8月から海上配備型の迎撃ミサイルSM3を搭載するイージス艦シャイローが配備される。これは、米軍にもまだ3隻しかない最新鋭艦だ。海上自衛隊でも、SM3を搭載できるようにするイージス艦の改修が07年度中に完了し、10年度までには計4隻がそろう。MD面での日米一体化はすでにどんどん進んでいる。
さらに、在日米空軍司令部のある横田基地には、空自航空総隊司令部が移転しミサイル防衛のための「日米共同統合運用調整所」が設置される。
総じて、キャンプ座間の新司令部を軸に、陸自中央即応集団司令部(座間)、横須賀基地、横田基地、相模総合補給廠(しょう)、さらに在沖米軍基地、ピョンテクを始めとする在韓米軍基地、グアム基地が一体となった恐るべき軍事中枢、侵略戦争体制がつくられようとしているのだ。
米軍再編「中間報告」(05年10月)や06年QDR(2月)では、中国を日米共通の戦略的打倒対象として名指しした。キャンプ座間の新司令部は、中東から東アジアに至る「不安定の弧」全体を射程に入れ、何よりも北朝鮮・中国をにらむ侵略戦争態勢の中軸になるのだ。
辺野古沿岸案に総反撃を
「V字沿岸案」面積は2倍に
第三に、沖縄だ。5・30閣議決定は、ペテン的に具体的地名や「V字形滑走路」などの表現は削除しているが、「5月1日に日米安全保障協議委員会において承認された案を基本とし」と明記した。頭越しの「V字沿岸案」閣議決定そのものだ。地元住民は「これがこの国の民主主義なのか。あまりにも住民とかけ離れたところで物事が次々に決められ現実感さえ失いそうだ」(『沖縄タイムス』)と激しい怒りを表明している。
「V字沿岸案」による新基地の総面積は180f、海上埋め立て面積はその約8割(140f)になる。総面積は99年に閣議決定された海上案の2倍、「旧沿岸案」の1・4倍である。1800b滑走路2本、軍港施設、駐機場、格納庫、装弾場などを備え、キャンプ・シュワブ、辺野古弾薬庫と一体となった巨大基地建設が決定されたのだ。しかも、5月31日には在沖米軍トップのジョセフ・ウェーバー4軍調整官が、垂直離着陸機MV22オスプレイを、2014年から16年の間に新基地に配備することを明言している。
同時に重大なことは、5・30閣議決定に「『普天間飛行場の移設に係る政府方針』(99年12月28日閣議決定)は廃止する」という一文を明記したことだ。沖縄県と北部市町村は、最後までこの一文の削除にこだわったが、政府・防衛庁サイドはけっして譲らなかった。
●北部振興策を打ち切り
@これは99年に閣議決定された「10年で1000億円」の北部振興策を、06年度で(07〜09年度を残して)打ち切ることを意味する。
これまで「北部振興と基地はリンクしていない」と言ってきた建前すら完全に投げ捨て、むき出しの兵糧(ひょうろう)攻め、沖縄圧殺を宣言したのだ。
すでに09年度までの振興策を前提にして予算を組み立ててきた北部関係自治体は大混乱に陥っている。
Aさらに99年閣議決定の廃止は、「軍民共用」「15年使用期限」という考え方すら100%消し去ったことを意味する。5月31日の衆院外務委員会で、照屋寛徳氏(社民)の「(軍民共用、15年期限という二つの考え方は)完全に消えたと理解していいのか」という質問に対して、麻生太郎外相は「そのように理解していただければ幸いだ」と言い放った。
「軍民共用」「15年使用期限」そのものが、稲嶺沖縄県知事が名護新基地を受け入れ、沖縄人民を裏切るためのペテンでしかなかった。しかし、小泉政権があえてここに手をかけたことは、沖縄米軍基地を半永久的に固定化することをあからさまに宣言する重大極まりない変更なのだ。
●グアムの軍事要塞化
第四に、グアム島の基地強化だ。
グアム島は、太平洋における米軍の戦略展開拠点(PPH)だ。日米協議の米側責任者であったローレス米国防副次官は、「海兵隊部隊の沖縄からグアムへの移転は、地球規模の米軍再編にとって本当に重要な部分であり、太平洋地域での前進拠点づくりだ」(5月23日)と語っている。
すでに、攻撃型の原子力潜水艦やB52やB1といった戦略爆撃機の配備が強められており、さらに在沖海兵隊司令部がグアムに移転し本格的な海兵隊基地として強化される。また、グアム島北の北マリアナ諸島に大規模な演習施設の建設が狙われており、米高官は「グアムの施設が完成すれば自衛隊も使用し共同訓練をする」と述べている。
まさに、海・空・海兵の3軍が一体となった強力な軍事要塞が造られようとしているのだ。
米軍再編粉砕・改憲阻止へ!
米軍再編は、日米同盟の実質的な大改定であり、自衛隊再編である。それは同時に、官民をまきこんだ日本の国家体制そのものの再編とならざるをえない。ローレス米国防副次官は「日米同盟の変革、それ自身がわれわれの目的だった」(6月9日 NHK)と語っている。米軍再編は、ストレートに改憲(9条改憲)と直結している。
世界支配の危機に立つアメリカ帝国主義は、日本帝国主義の力を世界戦争戦略のもとに補完的かつ全面的に動員しようとしている。 他方、日本帝国主義・小泉政権もまた、どこまでも日米一体化を進めることで本格的な侵略帝国主義へと「飛躍」することを基本路線として確定し、5・30閣議決定をもって決定的一線を越えた。
米軍再編の全面的実行は現行憲法とは100%相いれない。とりわけ、すでにどんどん実行に移されているミサイル防衛では、米軍と自衛隊が情報を共有し、将来的には「米軍と自衛隊の間で共有できる共通の作戦画面を開発する」(中間報告)ところまで一体化を進めようとしている。米本土を攻撃する弾道ミサイルに対して日米が共同対処することは、いかに取り繕おうとも集団的自衛権の行使そのものだ。
また、「最終合意」ロードマップでは、米陸軍第1軍団司令部の座間移駐を08米会計年度(07年10月〜08年9月)までと明記しており、すでに目前に迫っている。日本帝国主義・支配階級にとって06〜08年過程での改憲は、この面からも待ったなしなのだ。
沖縄人民は、「国民・県民の意志を置き去りにして政府が突っ走って築きあげた閣議決定など、砂上の楼閣にすぎない。世論の前に必ず崩壊する」(山内徳信氏『沖縄タイムス』)と5・30閣議決定の危機性、破綻性を喝破し、直ちに新たな闘いに入っている。
05年10月「中間報告」以降の沖縄、神奈川・岩国をはじめとする全国基地闘争は、小泉政権を決定的に追いつめてきた。何よりも、600日に及ぶ闘いで海上案を実力で葬り去った辺野古の闘いこそ、小泉政権を根底から追いつめている。
沖縄・辺野古の闘いと固く結合し、キャンプ座間への新司令部移駐阻止を始めとした全国基地闘争を爆発させよう。米軍再編粉砕・改憲阻止の巨大な闘いをまきおこそう!
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週刊『前進』(2251号4面2)(2006/06/26)
海外派兵が「本格任務」に
「防衛省昇格法案」粉砕しよう
小泉内閣は6月9日、防衛庁を「省」に格上げする防衛庁設置法改定案と自衛隊法改定案をあわせて国会に提出した。1954年に発足した同庁を防衛省に格上げする法案が政府によって国会提出されたのは初めてだ。
この法案は、単に「庁」から「省」に看板を掛け替えるだけの代物ではまったくない。海外への自衛隊侵略派兵を「本来任務」と位置づけ、本格的な侵略軍隊へと自衛隊を丸ごと変貌(へんぼう)させ、改憲を先取りして実質的に憲法9条を変えてしまう大攻撃だ。
政府・防衛庁は、防衛施設庁主導の官制談合発覚で見送った(2月)法案を、公明党の賛成により会期末ギリギリに提出し、今秋の臨時国会でなんとしても成立させようとしている。
改憲先取りするクーデター
昨年10月に自民党が発表した「新憲法草案」には、「自衛軍の保持」と「国際社会の平和と安全を確保するために協調して行われる活動」が盛り込まれている。「防衛省」設置法案と自衛隊法改悪案は、こうした「日米同盟の新段階」と9条改憲をクーデター的に先取りするものだ。
これは歴史的に見れば、1935年のナチス・ヒトラーによる「ドイツ再軍備宣言」にも等しい事態だ。第一次世界大戦後、戦勝帝国主義によって軍備を制限されてきたドイツ帝国主義は、1933年1月のナチスの政権獲得を経て1935年3月ヴェルサイユ条約の軍備制限条項を破棄、徴兵制復活、軍隊を50万人に増強する再軍備宣言を行った。
日帝は今、米軍再編攻撃と一体のものとして、「防衛省」格上げにより、海外への侵略派兵の「本来任務」化をなし遂げ、名実ともに侵略帝国主義として名乗りを上げようとしている。法案提出や予算要求権限を「防衛省」が獲得し、戦争準備と大軍拡の道に突き進もうとしているのだ。
この法案の恐るべき内容を徹底的に暴露・宣伝し、夏〜秋の闘いの中で絶対にこの法案の成立を阻止しなければならない。
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■「防衛省」法案のポイント
国会提出された法案は、@防衛庁を「防衛省」へと格上げする防衛庁設置法改定案、A自衛隊の海外活動を付随的任務から本来任務に格上げする自衛隊法改定案を一括して改定するものだ。省昇格法案は64年の池田内閣時にも閣議決定されたが国会提出は見送られた。01年に旧保守党が議員立法で提出したが、03年の衆院解散で廃案になった。
●防衛庁を「省」に格上げする防衛庁設置法改悪案
現在、内閣府の外局の位置にある防衛庁を独立の「防衛省」に格上げし、防衛庁長官は「防衛大臣」とする。これによって、閣議開催の要求や財務大臣への予算要求などが直接可能になる。また「周辺事態」の際やテロ特措法・イラク特措法にもとづく米軍支援の実施など「内閣府の長」としての首相権限を防衛大臣に移す。「自衛隊の最高指揮監督権」や「防衛出動の下命」など内閣の長としての内閣総理大臣の権限は変えない。また防衛施設庁を2007年度に廃止し、防衛庁に統合することも付則に明記した。
●海外侵略派兵を「本来任務」化する自衛隊法改悪案
現行自衛隊法では、自衛隊の任務は「侵略からの防衛」(3条)と規定されている。今回の改悪でこの自衛隊法3条に第2項を新設し、「周辺事態」への対応と「国際協力の推進」を追加する。
自衛隊の「本来任務」に格上げされる海外での活動は、@国際緊急援助活動、A国連平和維持活動(PKO)、B機雷等の除去、C在外邦人等の輸送、D周辺事態法にもとづく船舶検査などの後方支援、付則のEテロ特措法の活動、Fイラク特措法の活動――である。こうした自衛隊の海外派兵は、これまで自衛隊法100条「雑則」各号に追加する形で自衛隊の任務とされてきた。
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週刊『前進』(2251号4面3)(2006/06/26)
三里塚の闘魂にふれよう
6・24−25東京 戸村・福島作品展
(写真【左】 作品「闘う大木よね」と戸村一作 【右】福島菊次郎氏撮影の少年行動隊)
三里塚反対同盟が呼びかけて、6・25三里塚東京集会―7・2現地闘争が行われる。
6・25東京集会に合わせて24、25日の両日には同じ会場で、反対同盟委員長であった故・戸村一作の彫刻展、報道写真家・福島菊次郎氏の写真展が開かれる。
(要項1面)
戸村委員長は反対同盟結成の66年から79年に死去するまで、運動、組織、理論のすべてにわたって三里塚闘争を指導してきた比類なきリーダーであった。その激烈で明快な演説は、破壊活動防止法の適用が真剣に検討されたほどである。
激闘のさなかで、戸村委員長は彫刻作品の制作にいそしんでいた。農機具商として彼の仕事場は同時に彼のアトリエであり、彫刻刀をふるう代わりに農機具の鉄の素材を溶接機で加工した。そこから生み出された武骨とも言える作品群は、国家権力の暴虐を告発し農民たちの怒りを直接的に体現するパワフルなものであった。代表作に、故・山崎博昭に捧げられた「真理と自由」、脱穀機にしがみついて代執行の暴力に抵抗した大木よねを描く「闘う大木よね」、ゆがんだ空港建設を象徴する「管制塔」(未完)など。
福島菊次郎氏は、三里塚を撮りつづけた報道写真家としてもっともよく知られている。戦争、原爆、公害などの重いテーマを追ってきた社会派の彼にとって、代執行時の三里塚が主要な被写体になるのは当然のことであった。
彼がファインダーを通して切り取った一つひとつの情景が、政府・空港公団による力ずくでの農地取り上げという理不尽を無言で鋭く告発しながら、同時に無名の農民たちの大地に根ざした明るさ、したたかさ、力強さを伝えている。現在は引退し山口県に在住。
2人の闘う表現者の作品が今再び一般に公開されるのは重要である。特にこれから三里塚を知り、闘いに決起しようとする若い人々の参加・鑑賞を望みたい。
(本紙・石井良久)
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週刊『前進』(2251号4面4)(2006/06/26)
6月6日〜13日
「北朝鮮人権法」が衆院通過
ブッシュ極秘にイラク訪問
●即応訓練で騒音激化 米空軍嘉手納基地で地上爆発模擬装置(GBS)などを使用した即応訓練が実施され、嘉手納町が同町屋良に設置した騒音測定装置では、70デシベル(1b先の電話のベル音に相当)以上の騒音発生回数が186、157回と、昨年度の同地点における1日平均発生回数107回を大幅に上回った。(6、7日)
●防衛省法案を国会提出 政府は、防衛庁を省に昇格させる法案を閣議決定し、国会に提出した。自衛隊の海外活動を「付随的任務」から「本来任務」に格上げする自衛隊法改正案も含まれる。政府・与党は省昇格法案を今国会では継続審議とする方針。(9日)
●グアンタナモで収容者3人「自殺」 米国防総省によると、キューバ・グアンタナモの米海軍基地内の対テロ戦収容施設で、収容されていた3人が独房内で首をつっているのが見つかり、間もなく死亡が確認された。「自殺」したのはサウジアラビア人2人とイエメン人1人。具体的な容疑の伴わない「敵性戦闘員」という分類で、司法手続きにかけられないまま、期限を切らずに拘束されていた。(10日)
●民主・小沢が防衛庁「省」昇格に賛成
民主党の小沢代表は、青森市内で記者会見し、防衛庁設置法等改正案について「国防の任務は国家の機構の中で正当に位置付けられなければならない」と述べ、基本的に賛成の立場を明らかにした。(11日)
●巡視船のODA供与を閣議決定 政府は、政府の途上国援助(ODA)としてインドネシアに巡視船3隻を無償供与することを閣議決定した。防弾装備などが「武器」にあたるが、安倍官房長官は、海外への武器輸出を事実上禁じる「武器輸出3原則」の例外とする談話を発表した。ODAで武器を供与するのは初めて。(13日)
●10都道府県でテロ想定訓練 政府は、8月から来年2月にかけて国民保護法に基づく実動訓練や図上訓練を10都道府県と共同で実施すると発表した。国内施設へのテロ攻撃や国籍不明の武装集団の侵入などによる「緊急対処事態」を想定する。警察や自衛隊、医療機関なども参加し、住民避難誘導や情報伝達などを訓練する。実動訓練は8月に北海道で石油コンビナート、9月に茨城県で原子力発電所、11月に鳥取県で大規模集客施設が、それぞれテロ攻撃を受けたとの想定で実施する。茨城、鳥取両県では住民も参加する。(13日)
●ブッシュがイラク訪問 ブッシュ米大統領が極秘にバグダッドを訪問。イラクのマリキ首相と会談した。ブッシュのイラク訪問は、03年11月以来2度目で、イラクの正式政府発足後は初めて。(13日)
●米軍人・軍属の検挙は2727件 警察庁の縄田修刑事局長は参院財政金融委員会で、沖縄県内の米軍人・軍属による無免許、スピード違反、飲酒の道路交通法違反による検挙件数が01―05年の5年間で、2727件に上ることを明らかにした。殺人、強盗、強姦、放火の凶悪犯罪の検挙件数も11件あった。全国の米軍人・軍属による刑法犯全体に沖縄が占める割合は05年で50・5%と過半数になる。(13日)
●北朝鮮人権法案が衆院を通過 政府に拉致問題解決に向けた取り組みの強化を促す「拉致問題その他北朝鮮当局による人権侵害問題への対処に関する法律案(北朝鮮人権侵害問題対処法案)」が、衆院拉致問題特別委員会で、平沢勝栄委員長の提案として国会に提出され、質疑なしで採択、自民、民主、公明3党などの賛成多数で可決、衆院を通過した。社民党、共産党は「脱北者の支援」を盛り込んだことは内政干渉にあたるとして反対した。(13日)
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週刊『前進』(2251号5面1)(2006/06/26)
改憲阻止へ行動の時
改憲必要論に答える (片瀬涼)
イラク侵略戦争 03年3月の開戦で空爆されたイラクの首都バクダッド。軍事施設と関係ない施設も無差別に攻撃された
自民党が新憲法草案を発表し、今国会には国民投票法案も提出された。労働組合でも憲法に対する態度をめぐる路線論争が激化している。右翼メディアだけでなく職場や大学でもさまざまな改憲論が出ている。本稿は「改憲必要論に答える」と題して、労働者の改憲に対する態度はどうあるべきかを考えたい。
改憲は必ず戦争に行き着く
◎現実に合わせて憲法を変えるだけでは ◎時代も変わったし、変えてもいいのでは ◎あんなひどい戦争はもうしないだろう
「現実に合わせて憲法を変えるだけだけで、まさかあんなひどい戦争は二度と起きないだろう」という意見がある。結論を最初に言えば、改憲は必ず戦争に行き着く。憲法9条を廃止すれば、日本は再び戦争に向かう。というより戦争をするために憲法を変えるのだ。
日本国憲法は、一切の戦力と戦争の放棄が最大の特徴だ。一読すれば「日本は二度と戦争を行わない。一切の戦力を放棄する」と宣言していることが分かる。改憲の一番の標的はこの点にある。だから当然、改憲は戦争に行き着く。
国家を制約する憲法
そもそも近代の憲法の考え方(近代立憲主義)は、人民の基本的人権を擁護するために憲法によって国家と為政者をしばる、という点にある。
近代憲法は米国の独立(1776年)やフランス革命(1789年)のようなブルジョア革命の中で生まれた。その考え方は、政治の「原則」を国の最高法規である憲法に定め、その憲法に従って政治を行う、つまり憲法に反する国家権力の組織や行使を無効なものとする、という考え方だ。
逆に言えば、支配階級は、憲法(立憲主義)によって、自分たちの政治支配・政治権力を正当化しているのだ。もちろん資本主義的な所有諸関係と国家暴力の独占がブルジョアジーの階級支配の基礎である。だから憲法は、超階級的な理念ではなく、階級闘争と革命の中で生まれたある種の歴史的存在であり、「建前」でしかないとも言える。しかし、政治支配も裸の抑圧ではうまくいかない。封建勢力を打倒して支配階級となったブルジョアジーは、憲法や法律の建前に依存して階級支配を正当化しているのである。
まさしくこの点において、支配階級の政治支配を正当化する日本国憲法が「戦争と戦力放棄」を厳格に規定していることが問題なのだ。だから、戦争を行うためには現行憲法を根本から覆すことが絶対に必要なのだ。これこそが改憲が必ず戦争に行き着く最大の理由である。
話を戻すと、憲法の形式は国家と為政者の権力濫用を抑制するという形で存在する。だから基本的に憲法には「あれしろ、これしろ」ではなく、国家がしてはならないことが書いてある。例えば、侵略戦争をしてはならない、人民の基本的人権を侵害してはならない、権力を特定の機関に集中してはならない、などだ。
思想・信仰・学問・表現などの精神活動の自由、奴隷的拘束と意に反する苦役の禁止、逮捕・捜索についての令状主義の保障、刑事手続き法定主義、無罪推定主義などの身体の自由――これらの憲法に書かれている基本的人権は、歴史上、それが国家によって侵害されてきたことを示しているのだ。
つまり、憲法の文言は、単純にその理念が素晴らしいということではなく、国家によって精神活動の自由や人民の身体の自由が侵害されてきた歴史があり、被支配階級が国家によるさまざまな抑圧と闘ってきた歴史があることを法的に表現しているのである。
近代ブルジョア革命とその後のブルジョアジーとプロレタリアートの階級闘争の中で形成されてきた近代の憲法とは、文字どおり階級闘争で流された血によって書かれている。だからこそ国家は憲法にしばられるし、そのことが現在の階級関係を大きく規定するのだ。
戦後革命と現行憲法
(写真 戦後革命期の労働者の闘い 戦後初のメーデーは米軍による監視と対決してかちとられた【1946年】)
では、戦後の1947年5月3日に施行された日本国憲法は、どのような歴史(の文脈)の中で生まれたのか。
戦争と戦力放棄を規定する現行憲法が日本帝国主義の15年戦争とその敗北に強く規定されていることは明らかである。だがそれは「戦争の反省」などという生半可なものではない。
戦前の日本は、日清・日露戦争をへて台湾と朝鮮を植民地化し、中国東北部での「満州国」デッチあげから15年にわたる侵略戦争を強行した。天皇の軍隊は、東アジア、東南アジア一帯の広大な地域に、南京大虐殺、731部隊、皇民化政策、創氏改名、軍隊慰安婦政策などの筆舌に尽くせぬ侵略と戦争の爪痕(つめあと)を残し、約2千万人のアジア人民を殺したのである。
同時に、他民族虐殺の侵略の銃を握った日本の労働者人民にも大きな惨禍をもたらした。赤紙一枚で侵略戦争に動員され、アジア人民に銃を向け、自らも戦死し、特攻隊として死を強制され、沖縄戦、大空襲、広島・長崎を体験した。
憲法制定過程で根本的に問題になっていたのはこの点だった。未曽有の侵略戦争を引き起こし、アジアと日本の多数の人命を奪い、敗戦後の生き地獄のような現実をつくり出した体制の存否が問題になっていたのである。
この時、敗戦によって日本の社会・経済が完全に崩壊し、すさまじい食糧危機とインフレが進行する中で、労働者階級は、生きるために闘っていた。労働者は生活と仕事を確保するために怒濤(どとう)の勢いで労働組合を結成し、激しい労働争議・生産管理闘争を闘った。戦争体験に加え、階級闘争の高揚の中で労働者階級の意識は急速に変化した。
他方で支配階級の側は、明治以来続いてきた天皇制国家が崩壊し、それに代わる統治形態、階級支配が形成できない状況だった。46年4月の戦後初の総選挙の結果、幣原内閣は政治基盤を失い、総辞職した。その後1カ月にわたり政府不在、政治空白期が続いたのである。
こうした中で日本の労働者人民は、帝国主義社会のあり方を根底から問い直し、根本的な社会変革に向かったのだ。憲法施行の数カ月前の47年2月1日には全国で600万人を超えるゼネスト体制が構築されるにまで至った(2・1ゼネスト=後に挫折)。まさしく「革命」が歴史的な課題に上っていたのだ。
日本国憲法は、敗戦後の革命と激動の中で制定されたのだが、支配階級にとって、新憲法制定は、戦後革命を圧殺する上からの予防反革命だった。それは一方で、天皇に戦争責任なしとして象徴天皇制を規定して日本帝国主義の戦争責任を卑劣に回避し、他方で、帝国主義国家としてはほとんど自己否定とも言える「戦争放棄」と「一切の戦力の不保持」を規定したものだった。新憲法制定は、戦争責任の追及から戦争を不可避とする体制を転覆する労働者階級の闘いを封殺する狙いに貫かれていた。米占領軍の軍事力を背景として、日本共産党の屈服と裏切りを引き出し、貫徹していったのだ。
この現行憲法をめぐる歴史の事実と労働者階級の歴史認識、戦争に対する怒りと警戒心を根底から覆すことなしに、日本帝国主義は、戦争できない。
だから改憲は必ず戦争に行き着くという問題をはらむのだ。逆に言えば、憲法を変えて侵略戦争をするしかないこの帝国主義社会こそが問題であり、戦争を不可避とする体制を根本的に変革する革命が必要なのだ。
戦争は自衛の名で行われる
◎どこの国にも自衛のための軍隊はある ◎侵略戦争はしないよう歯止めをかけたら ◎中国や北朝鮮の脅威に備える必要がある
「自衛戦争に限定した改憲ならいいのではないか」という意見も多いが、これはまったくの虚構だ。事実は逆である。古今東西、日本や米国のような帝国主義国は、「自衛のための戦争」という理屈で侵略戦争を行ってきた。
現実世界を考えて欲しい。03年に米国が始めたイラク戦争でブッシュ大統領は、イラクの「大量破壊兵器の保有・開発」や「アルカイダとの関係」を主張して、脅威が現実になる前に先制攻撃するという「先制自衛」論を提唱してイラクに軍事侵攻した。
しかし、フセイン政権が核兵器開発のためニジェールから大量にウランの購入を図ったというブッシュ大統領の演説はデッチあげた情報に基づくものだった。イラクに大量破壊兵器はまったくなかった。ブッシュ政権は、石油の略奪と世界支配を貫くために偽情報と情報操作でイラク戦争を強行したのだ。
すでにバグダッド陥落から3年以上が経過し、開戦以来の米軍の死者は2500人を超えた。イラク人は、米軍の対テロ掃討作戦などによって20万人以上の民間人が死亡した。最近では、米海兵隊員がバグダッド北西の町ハディサで民間人を殺害し、事実関係を隠した疑惑が米国社会を揺るがしている。犠牲者には高齢者や幼児、女性も含まれている。ベトナム戦争中の米兵による虐殺「ソンミ村事件」(68年)と比較されている。
ベトナム戦争も同じだった。米艦船が北ベトナム軍の魚雷攻撃を受けたという64年のトンキン湾事件で、米軍は北爆を開始し、ベトナム戦争に全面介入した。米議会は「大統領が侵略阻止に必要なあらゆる措置をとることを認める」という決議を可決した。
しかし、後にトンキン湾事件はねつ造だったことが明らかとなった。調査では「スクリュー音を魚雷と取り違えた」と結論づけられ、当時のマクナマラ国防長官も「攻撃はなかった」と告白した。
ベトナム戦争やイラク戦争のような侵略戦争を行うために「自衛権」「自衛戦争」の理屈が使われてきたのだ。
改憲をめぐって論議されている「自衛」や「自衛軍」「集団的自衛権の行使」は抽象的な話ではない。われわれが生きるこの現代世界で、現にイラクで戦争が続き、イランや北朝鮮への戦争が問題になる中で議論されているのだ。
米軍は現在、イラク戦争型の戦争を世界中で行うために米軍トランスフォーメーション(変革と再編、再配置)を進めている。その柱である在日米軍再編をとおして日米は同盟関係を強化し、日本は憲法を変えて、自衛隊と米軍がパートナーとなって、「自衛戦争」と称する侵略戦争を行おうとしているのだ。
2項削除で飾り文句
では自民党の新憲法草案で、9条は具体的にはどう変わるのだろうか。
現行憲法は、第2章の表題が「戦争の放棄」となっており、第9条の1条だけで構成されている。その1項では「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使」を永久に放棄すると宣言している。さらに2項で「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」と明記している。
自民党の新憲法草案は、まず第2章の表題を「戦争の放棄」から「安全保障」に変えている。そして1項はそのまま残しているが2項は完全に廃止し、新たに「第9条の二」として「自衛軍」に関する規定を新設している。
自民党は、9条1項を残すので現行憲法の「平和主義」は変わらないと言う。しかし、それはインチキだ。9条は、2項の「戦力不保持」「交戦権の否認」があって初めて意味を持つ。2項が削除された1項は、ただの飾り文句でしかない。これでは、9条は完全に無力化され、まったく侵略戦争の歯止めにはならない。
9条1項について言えば、第1世界大戦後に結ばれた1928年のいわゆるパリ不戦条約にも同様の文言がある。だが、この不戦条約は「自衛戦争」を例外とした。不戦条約で軍備を廃止した国もない。自衛戦争を例外としたために逆に不戦条約を口実に各国が侵略戦争に突入する結果になった。ナチス・ドイツの東方侵略も日本の中国侵略戦争もすべて自衛戦争の名で強行された。
「自衛戦争」という概念は、常に拡大解釈され、歴史上ほとんどの戦争が「自衛戦争」の名で行われてきた。ブッシュ政権は、予防戦争や自衛のための先制攻撃を「ブッシュ・ドクトリン」という名前で国家戦略にしているのだ。
米軍と自衛隊の融合
(写真 日米共同演習を行う米軍と自衛隊の指揮官)
「中国や北朝鮮の脅威」を理由に改憲が声高に叫ばれるが、実際に東アジアで戦争を準備しているのは、米国と日本の側である。
日米両政府は5月1日、在日米軍再編に関する最終報告に合意した。ここで問題になった日米同盟再編の戦略目標は、朝鮮半島有事と台湾海峡有事を想定した日米の戦争体制を構築することであり、さらに日米安保の対象範囲を極東から中東・北アフリカを含む「不安定の弧」まで拡大することだ。
米日両政府は、中国や北朝鮮に対する米軍の先制攻撃開始を想定した具体的な戦争計画を持っているのだ。97年の日米安保新ガイドラインの締結後、米軍と自衛隊は対中国、対北朝鮮の共同作戦計画を策定し、調印している。そこでは「日本防衛」と「周辺事態」を最初からひとつのものとして扱っている。
そのために米軍と自衛隊の融合・一体化を進めているのだ。米軍と自衛隊がひとつの指揮・統制のもとで共同作戦を行えるようにするのが在日米軍再編の狙いの一つだ。自衛隊が米軍と肩を並べ、共同で侵略戦争を行うのである。
さらに、沖縄―日本全土を最前線の出撃・兵站(へいたん)基地として自由自在に使うことが狙われている。朝鮮半島や台湾海峡での軍事作戦を指揮する拠点として座間(神奈川県)に米陸軍第1軍団司令部を改編して移設する。さらに在日米軍と在日米空軍の両司令部がある横田基地(東京都)には航空自衛隊航空総隊司令部が移転する。
自衛隊は、すでに他国を攻撃する能力を持っている。航空自衛隊のF2支援戦闘機と空中給油機を使えば、海外の基地も攻撃できる。精密誘導爆弾を使用すれば爆撃も可能だ。敵の戦闘機を監視する空中警戒管制機(AWACS)もすでに配備済みだ。自衛隊機は攻撃的な武器類をそろえ、敵基地を攻撃できる能力を持っているのだ。
戦争を準備し、周辺に脅威を与えているのは、米日の側なのだ。軍事費も軍事能力も比較にならない。「自衛のため」「中国や北朝鮮の脅威」論は、事実を逆に描くものなのだ。
戦争が必要な体制は打倒へ
◎国民投票になったら反対票を入れる ◎仮に戦争になっても自分は行かない ◎あまり自分に関係ある問題と思わない
「国民投票になったら、みんなで反対票を投じて阻止すればいいのでは」という意見がある。投票だけを取り上げれば確かにそうだ。しかし、改憲という問題は、日本が再び戦争を行うことを意味するのである。
いろいろ議論して、投票して、勝敗を決めれば良いという問題ではない。再び戦争を不可避とするこの社会のあり方が問題なのだ。侵略戦争の賛否を投票で決めるのか。改憲も国民投票も粉砕の対象であり、改憲と戦争を不可避とする帝国主義をプロレタリアートの階級闘争によって打倒することが問題なのだ。
改憲をめぐる問題は、けっして抽象的な頭の中の問題ではない。遠い将来の戦争が問題なのではない。われわれの生きているこの現代世界で、日本が再び戦争を始めるのかどうかが問題なのだ。
そもそも支配階級にとって、改憲という問題は「国民でよく話しあって決めて下さい」という問題ではない。現代世界は、2度の世界大戦を引き起こした帝国主義の時代であり、その帝国主義の危機の中で再び世界の再分割をめぐって、戦争の時代に入っているのだ。日本帝国主義はその存亡をかけて憲法を変えて戦争を行おうとしているのだ。
支配階級は、改憲を労働者人民に強制しようとしているのであり、日本とアジア人民に、再びみたび未曽有(みぞう)の惨禍をもたらした侵略と戦争の歴史を強制しようとしているのだ。改憲と国民投票に対する労働者階級の態度は、この点を考慮しなければならない。
教基法改悪と共謀罪
改憲とは何か、を端的に示すのが国会で審議されている国民投票法案、教育基本法改悪案、共謀罪新設法案だ。
国民投票法は形式としては、憲法改正手続きを規定する96条に基づき、国会が発議した改憲案を国民投票にかけるために必要な実施方法を定める法律である。
しかし、この法案の重大な問題点は、改憲に反対する自由な政治活動に規制を加え、言論・表現の自由を奪い、警察権力の介入と統制で改憲阻止の運動を未然に鎮圧することにある。具体的には、公務員労働者や教員による国民投票運動を禁止し、メディアを規制して、改憲に批判的な報道や言論を封殺しようとしているのだ。自治労や日教組の改憲反対運動を重罰で禁止し、改憲に反対する言論・表現を制限するのだ。
国民投票法案には、平和的に議論を尽くして投票で賛否を問うという指向はまったくない。「国民投票で改憲案を否決する」という議論は、国民投票法案の反動性を過小評価するものだ。
現行の教育基本法は、国家が教育や思想を統制することを固く禁じている。これが教育基本法の基本だ。国家は、教育の内容に干渉してはならないし、「日の丸・君が代」の強制や「愛国心」教育など問題外だ。教育基本法も憲法と同様に日本帝国主義の戦争責任と戦後革命の問題から来ているのだ。明治以来、文部省が教育の内容を統制して人びとを侵略戦争に駆り立てたことに対する責任追及が教育基本法の背後にあるのである。
教育基本法改悪案は、「愛国心」について「我が国と郷土を愛する態度を養う」となっている。国家の教育への介入を禁じた10条には「法律の定めるところにより行われるべき」を書き加えている。法律で教育が決められるのだ。
「愛国心」評価はすでに一部の公立学校で始まっている。「国を大切にする心情」を通知票の評価項目に盛り込んでいる公立小学校が、少なくとも13都府県39市町村に190校あることが全国調査で明らかになっている。(6月10日付朝日新聞)
かつて、ナチスがドイツ人民の自由を奪った方法として、小学校の生徒に配布した家庭調査があった。調査票には、親の政党所属関係を記入する項目があった。当時、ナチスの支持者はまだ多くはなく大多数の親は、この項目に記入しなかった。子どもたちは、学校でこの項目の記入を要求され、家では、親に記入を拒否され、学校と家庭の板挟みになって、学校に行くのを嫌がり、自殺する子どもも出た。ついに親たちの多くは、この家庭調査のためにナチスに入党せざるをえなくなったのである。
国家による教育の支配とは、こういう問題があるのだ。愛国心教育は、子どもの心を支配するだけではない。社会すべての自由を圧殺するのだ。教育基本法改悪の狙いは、国家による学校と思想の統制であり、誰も戦争に反対できなくすることなのだ。いま法政大学で起きていることも同じだ(1面記事参照)。戦争に反対する教員や生徒、学生は学校から追放されるのだ。
共謀罪とは、実際には何もしなくても「犯罪」の相談をしただけで罪に問うという法案だ。労働組合や宗教団体、会社やサークルなどの友人と話したことも「犯罪」とされる。対象となる犯罪は600を超える。
共謀罪の恐ろしいところは、共謀の成立の判断が警察や裁判所にゆだねられることだ。だから「現代の治安維持法」と呼ばれるのだ。戦争に反対する者、政府に批判的な者に対して、共謀と決めつけて牢獄に送り込むことが狙いなのだ。
改憲の問題を民主主義一般の問題としてではなく、戦争の問題、国家による教育の支配、思想・言論弾圧の問題として考える必要がある。問われているのは戦争を許すのかどうかであり、戦争を不可避とするこの社会のあり方なのだ。国民投票での1票ではなくて、改憲と戦争を阻む行動と闘いが何より必要なのだ。
米日帝国主義は、より近い将来に、北朝鮮や中国への侵略戦争を準備している。そのために日本の支配階級は「二度と戦争はさせない」という歴史的階級的制約である現行憲法を破棄しようとしているのだ。それはナチス・ヒトラーによるワイマール共和制打倒・ベルサイユ条約打破にも匹敵する攻撃だ。
改憲は社会を変える
改憲と戦争に関係のない人はいない。 米国では、イラク侵略戦争が泥沼化するにつれ、軍が新兵の募集に躍起になっている。米国の若者は戦地に行くのを嫌がり、補充が難しくなっているからだ。軍の採用担当官は勧誘電話で「大学の学費は全額出す。仕事も探してあげる」と言う。公立高校は生徒の氏名、住所、電話番号を保護者が拒否しない限り、軍の担当採用官に提供することが義務づけられている。従わなければ学校は連邦予算から補助金を削られるのである。
改憲はこういう事態を社会にもたらすのだ。学校だけでなく労働者の戦争動員についても、「国を守る責務」規定が盛り込まれれば、労働者の戦争動員のあり方も劇的に変わる。改憲と戦争はすべての労働者や学生に関係する。すべての労働者や学生が改憲阻止へ行動する時だ。
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週刊『前進』(2251号6面1)(2006/06/26)
岩国駅で署名運動と改憲賛否シール投票 向井原信治
6月3日、百万人署名運動広島西部地区連絡会が主催する岩国駅での憲法9条についての「シール投票」と9条改憲反対署名の駅頭宣伝に参加しました。
年齢、国籍を問わず、2時間足らずで187人が投票に参加しました。9条を「変えない」が158票、「わからない」が25票、「変える」はわずか4票という結果となりました。
5月のシール投票では、9条を「変えない」は全国平均で70%台後半、沖縄、広島は飛び抜けて80%台半ばと報告されています。
今回、岩国では84・5%の人が9条改憲に反対で、その過半数の人が署名に応じてくれました。さらに青年労働者、60代半ばの女性、専門学校生、高校生ら6人が署名拡大を引き受けてくれました。中でも60代の女性は、即座に知り合いに呼びかけて署名を募り、「岩国が戦争の街、出撃基地になるのは絶対ダメ。私ら地元が先頭でやらんとね。ありがとね」と言って署名用紙をいっぱいに埋めて持ってきてくれました。
岩国基地への空母艦載機移転の賛否を問う住民投票が始まる前に比べ、断然、反戦・反基地の意識が前進しています。住民投票の圧倒的勝利、艦載機移転白紙撤回を掲げて市長選で勝利したことの自信が大きいと思います。何よりも国が、小泉政権がこの歴史的な住民の圧倒的多数の意思を問答無用で踏みにじったことへの人間的怒りの強さだと感じます。
沖縄をはじめ全国の基地と闘う労働者住民と連帯交流しながら闘うことで、岩国の労働者住民はすばらしく変わり前進しています。
今の岩国住民の怒りと闘いをスローガン的に表現すれば「米軍再編粉砕、9条改憲阻止!」「基地撤去、9条改憲阻止!」です。
シール投票の結果報告の時に再び小学校6年生の子どもたち4人が来て、「9条変えるにシールはった人はどんな人? 許せない!戦争をどう思ってるんだろ。やっつけてやりたい」と言いました。子どもたちの意識はすばらしく主体的で健全だ! ここに社会を変える希望と確信をさらに深めた岩国街宣でした。
ムスリム社会と共産主義について思う 千葉 Y・S
私はかつてムスリムの知人を訪ねて西アジアや東南アジアを何度か訪れた。ムスリム社会は、人間社会の共同性をものすごく大切にしている。個人主義に慣れている者にとっては「熱すぎる」と感じる面もあるようだが、付き合いが深まるにつれ、その人間的な温かみこそが本来の人間社会のあり方ではないかと思うに至る。日本に住むパキスタンやイラン、アフガニスタン、クルドの労働者と接していてもそのことを強く感じるし、ムスリム地域について書かれた書物を読んでもそう感じる。
ところで、共産主義(コミュニズム)とは「コミューン」(共同体)の「イズム」(思想と実践)だ。資本家階級による階級支配を労働者階級自身の手で打ち倒し、賃労働と資本の関係を廃絶し、人間社会の真の共同性を奪還するというところに核心がある。そう考えると、ムスリム社会と共産主義はなんら相反するものではない。
もちろん、ムスリム社会の女性が置かれた厳しい状況など、人間社会の真の共同性に反する現実は存在する。しかし、アフガニスタンやイラク、パレスチナ、クルディスタンなどで女性自身による解放の闘いは連綿と続けられている。それぞれの社会で、人民自身の手で労働者階級の解放、人間解放の闘いは進められている。何よりも、帝国主義の侵略戦争と命をかけて闘っていること自体が、本質的には共産主義の実践的闘いと言えるのではないか。
本紙2249号「団結ひろば」で秋月同志が述べている実践的立場に賛成する。ムスリム人民にマルクス主義を説教するのではなく(そういうあり方自体マルクス主義とは無縁)、労働者階級と共産主義者の資本主義打倒、帝国主義打倒の実践こそがムスリム人民の自己解放闘争と結びついてゆくということではないか。お互いの、命をかけた帝国主義打倒、革命政権樹立の闘いの中で、労働者階級同士の感動的な合流が必ずや実現すると確信する。
利用者に負担を強い福祉を切り捨てる国 兵庫 福祉労働者 M・K
僕は転職により職場を障害者福祉から高齢者福祉に移ったのですが、両者は使われている制度が異なります。一方は4月から施行された障害者自立支援法。もう一方は介護保険制度。
この両者に共通していることは、利用者により多くの負担を強いていることです。けれども「障害」があって働きたくても働くことができない人や貧しい高齢者なんていくらでもいるのです。そういった最も福祉を必要としている人たちを切り捨てることが今の日本の施策です。
福祉に携わる者として、というより人として、それは許されることではありません。それは基本的人権にかかわってくる問題でもあります。国が人権を侵害していることになります。こういった困っている人に手を差し伸べないのなら国(政府)は存在する意味がありません。
お金がないと国は言います。国のお金は僕たちの税金です。そのお金を使ってイラク戦争には協力しているわけです。金がないなら戦争にも金使うなよ。
僕は福祉労働者です。生活もあるし仕事は頑張らないといけません。これからはその介護保険の真っただ中で働いていきます。
「今の世の中では誰もが矛盾を抱えている」。そこから大きな視点で物事を見て、おかしなことには声をあげていかないといけないのです。
「弱者」切り捨ては差別だ。差別っていうのは「上見て暮らすな。下見て暮らせ」というお上の施策です。高齢者・「障害者」差別しかり、部落差別しかり、在日朝鮮人差別しかり。問題は一体だと思う。
僕たちに必要なのは、階級や差別や戦争のない社会、自己解放、人間解放を目指すことです。
星野さんに手紙出しストレートに結合を 中四国 吉島 光
5月25日から獄中の星野文昭さんに直接手紙が出せるようになりました。「外から中へ」は制限なし。すでに友人面会、文通が実現。労働者階級は日帝の獄壁の一角に着実に穴を空けつつあります。明治以来、労働者の反乱者、朝鮮・中国人民の反乱者を獄死させてきた日帝監獄。それをも食い破りつつあります。
3月の法政大学29人完黙の貫徹は、そのとどめの一撃でした。もちろん刑務所の階級的暴力支配の本質は変わらず、多くの問題点をはらむ受刑者処遇法です。
闘いはこれからです。職場細胞の皆さん。中央の皆さん。この夏、ぜひともストレートに星野同志と結合してください。31年の獄中者にとって『前進』で知るだけだった4大産別はじめ階級本体からの手紙、彼がまだ訪れたことのない沖縄現地からの手紙、『前進』読者の皆さんからのさまざまな手紙をきっと楽しみにされているはずです。いろんな分断を乗り越えましょう。
外の私たちにとっても獄中同志との交流は、かけがえのない初志貫徹の原点です。秋の改憲阻止・1万人結集に向けての底力になるはずです。お忙しいとは思いますが、よろしくお願いいたします。
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週刊『前進』(2251号6面2)(2006/06/26)
イラク情勢 続発する米軍の人民虐殺
隠蔽工作と虚偽報告
ブッシュ政権 危機と凶暴化
米軍がイラクで連日のように人民虐殺をくり返している。この暴虐を絶対に許すな。米軍のイラク人民虐殺はアメリカ国内でも大問題になり始めた。米紙ニューヨーク・タイムズが5月26日、昨年11月に起きたハディサでの住民虐殺について報じ、その後、APテレビがイラク人学生の撮影した映像を放送した。米軍がイラク人民を虐殺したことが映像によりはっきりと示されており、米軍の行ってきた説明がこの事実を隠蔽(いんぺい)するためのデマ宣伝であることがはっきりと暴かれたのだ。
武装解放闘争で占領泥沼化
米軍が5人の子どもや女性たちの頭を撃ち抜いて虐殺した映像は、「イラクのソンミ村事件」として全米に衝撃を与えている。米軍は、事件を調査するとしているが、その結論が出るまで半年以上かかると言われている。米軍が事態の隠蔽を図っていることは、その後明らかにされたイシャキの事件を「米軍は何も悪いことはしていない」と結論付け、居直ったことに示されている。また米マスコミはこうした事件を「一部の兵士が行ったこと」と説明しているが、実際にはこれは氷山の一角に過ぎず、こうした人民虐殺は毎日毎日くり返されているのだ。(別掲参照)
米軍は、イラクの民間人が米軍の攻撃によって死亡した場合に、1家族あたり2500jを賠償金として支払っている。この賠償金の総額は、04年には500万jだったが、05年には2000万jに跳ね上がっている。単純計算すると05年だけで8000家族が肉親を失ったことになる。
これは、米軍の攻撃によって誤って死んだり、けがをしたと米軍が認めた場合に限られており、武装勢力の攻撃によるものだなどとされた場合は除かれている。わずか2500jで人民虐殺を隠蔽すること自身が絶対に許せないことであるが、それにしても、米軍が認めただけでもこれほどの多くのイラク人民を虐殺しているのだ。
米軍のイラク人民大虐殺の象徴がファルージャの包囲攻撃だ。米軍は、04年4月と11月の2回にわたってゲリラ戦争の中心地となっていたファルージャを攻撃した。武装勢力の大反撃を受け、凶暴化した米軍は住民を無差別に虐殺した。
特に11月の攻撃では、事前に住民に町を立ちのくよう強制し、残った者はみな武装勢力だとして、避難先のない住民を大虐殺した。その中で大量破壊の化学兵器である白リン弾や新型ナパーム弾を使って無差別虐殺を行ったのである。イラクの人権監視団体によれば、4千〜6千人の市民がこの攻撃で虐殺されたと見積もられている。
こうした米軍によるイラク人民虐殺は、帝国主義の侵略戦争が必然的にもたらすものである。日帝は朝鮮、中国、東南アジア侵略戦争で何千万もの人民を虐殺した。ナチス・ドイツはユダヤ人を大虐殺した。そして米帝はベトナム侵略戦争で200万人ものベトナム人民を虐殺した。
米帝のイラク侵略戦争は、何の正当性もない帝国主義の強盗戦争である。イラクの石油を強奪し、中東を米帝が制圧し、独、仏を始めとした他の帝国主義を争闘戦でたたき伏せることが目的だ。そのために米帝は、イラクの大量破壊兵器とりわけ核兵器開発なる虚構をデッチあげ、強引に侵略戦争に突入したのだ。
こうした帝国主義侵略戦争の必然として米軍はイラク人民無差別虐殺を続けてきた。だが、その事実が暴かれても、米帝はこれまでそれを一切無視・抹殺してきた。しかし、ついにそれを抹殺することができなくなっているのだ。それは、全世界の人民のイラク侵略戦争に対する怒りが抑えがたく高まっているからだ。
米帝は、簡単にイラクを占領・植民地支配できると考えていたが、その思惑は完全に粉砕された。米帝の侵略に怒ったイラク人民が不屈の武装解放戦争に決起することによって、米帝のイラク占領は泥沼に陥り、抜き差しならない状態に陥っているのだ。
米軍にしても、イラク人民の解放戦争を制圧できる展望などまったく持っていない。むしろ、焦りに駆られて人民虐殺をくり返せばくり返すほどより広範な人民が武装闘争に決起しており、危機が深まっている。
米軍兵士は、どこに武装勢力がいるかも分からないまま町のパトロールをさせられており、ただただ標的となるために町を巡回するような任務の中で極度の緊張に疲れ果てている。そして米軍の「まず撃て。尋問は後からだ」という指示のもとに無差別虐殺をくり返している。ハディサの虐殺が米軍車両が攻撃されたことへの報復だったように、バグダッドの南ラティフィヤ地区での虐殺は、ヘリコプター撃墜への報復だった。相手が見えない戦争の中で侵略軍は焦りに駆られ人民大虐殺をくり返していくのだ。
侵略軍自衛隊は即刻撤退を
6月8日、第2歩兵師団第3旅団のアーレン・ワタダ中尉が「侵略に値することをしてもいない国民に対する不法で不道徳な戦争に加担することを拒否する」としてイラクへの派兵を拒否した。これまで何人もの退役将軍がラムズフェルド国防長官の退任を要求する事態が起こっているが、ワタダ中尉の例は、部隊を指揮する将校が派兵を拒否した最初のケースである。
これは、米帝の戦争態勢が崩壊の危機に瀕(ひん)していることを示す重大な事態だ。米国内でのブッシュ政権支持はすでに30%を切るところまで落ちており、米軍兵士の戦線逃亡や兵役拒否がさらに広がっている。労働者人民、兵士・家族の怒りが極限的に高まっているのである。こうした中で米軍は崩壊的危機に直面しているのである。
ブッシュは6月13日、バグダッドを電撃訪問し、米軍兵士と会って激励し、イラクかいらい政権のマリキ首相と会談した。このイラク訪問は、マリキ首相にも知らせていない超極秘の訪問として行われた。それは、米軍の占領支配がいかに危機的であるかを如実に示している。ブッシュが電撃訪問で米軍兵士を激励したからといって米軍の崩壊的危機が解決するわけではない。また、ブッシュはマリキ首相と治安の改善について話し合ったと言っているが、現実にはそんな展望はまったくない。
米帝は6月8日、イラク・アルカイダ機構のアブムサブ・ザルカウィ氏を殺害し、これを戦果として大々的に発表した。しかし、これによってイラクの民族解放戦争が弱まることなどない。米帝が「外国人テロリストがテロを行っている」という宣伝のためにザルカウィ氏を大映しにしてきただけで、実際にそれほど大きな役割を担っていたわけではない。むしろザルカウィ派は、イラク人が戦果発表しないのに、イラク武装解放勢力の戦闘を勝手に自分たちの戦果として発表してきたことをイラク武装解放勢力から批判されてきた。このためザルカウィ派は軍事的には独自行動をとるが、政治的にはイラク人武装勢力の指導に従うことが合意されていた。
実際にイラクで戦われている戦闘の9割以上、ほとんどがイラク人自身によるものだ。ザルカウィ氏が死亡したからといってイラク人民の武装解放戦争が弱まることなどあり得ない。
イラク人民の民族解放の武装闘争はますます激しく燃え上がっている。米軍はアンバル州の州都であるラマディへの包囲を強めているが、いまだ成功していない。バグダッドでは武装解放勢力の一掃・制圧作戦を開始したが、直ちにイラク警察のパトロールが攻撃される事態となっている。
イラク正式政府は、選挙から半年もたってようやく発足したが、イラクを掌握する力はまったく持っていない。イラク軍は、賃金もきちんと払われず、食事も与えられないまま戦闘に駆り出されるという状態で、一カ月に数百人も脱走するという状態が続いている。
さらにイラク戦争の泥沼は、原油価格の高騰をとおして帝国主義世界経済を崩壊の危機に突き落とす要因になりつつある。世界的な帝国主義打倒の情勢が近づいているのだ。
今こそ自衛隊イラク撤退、教育基本法改悪阻止、改憲阻止、国民投票法案粉砕の大運動を巻き起こし、日帝打倒へ突き進もう。
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週刊『前進』(2251号6面3)(2006/06/26)
最近の米軍による人民虐殺事件
●ハディサで住民24人虐殺(05年11月19日)
米軍のパトロール部隊が路肩爆弾で攻撃され、兵士1人が死亡した後、米軍は近くの民家に次々押し入り、住民24人を撃ち殺した。米軍は、この事件を路肩爆弾が爆発したあと銃撃されたので米軍が応戦した。住民は路肩爆弾に巻き込まれて死亡したようだと発表した。しかし、住民は夜間着のままで頭を撃たれてベッドの中で死んでおり、意図的に虐殺したことは明白である。
●ラティフィヤで住民25人虐殺(06年3月13日)
米軍がヘリコプターからの空爆で住民の家を空爆。家族は激しい砲撃から身を守るためにマザル方面や用水路に逃げたが、米軍はヘリを着陸させて彼らを追いかけ、25人以上を殺し、6人を拘束した。
この攻撃はそれだけではとどまらず、15日には米軍は再び住民の家族を攻撃し、多数の住民を拘束した。一部は逃げたが、米軍狙撃兵が逃げる住民を民家を使って銃撃した。
この攻撃について米軍は、41人のゲリラを殺した戦果として発表し、各メディアがそのように報じた。
●バグダッドのヤルモウク地区で住民2人を虐殺(3月15日)
米軍がエッサン・ラウィさんの家を攻撃し、彼と息子のアハメドさんを虐殺した。米軍はラウィさんの甥(おい)を拘束し、2人の遺体をその家に移した。
●イシャキで住民11人を虐殺(3月15日)
米軍が民家を襲撃し、5人の子どもと4人の女性を含む11人を虐殺した。11人は手を縛られて、頭を銃で撃たれており、遺体は一つの部屋に集められていた。その後、ヘリコプターからの空爆で家が破壊された。
米軍は当初、ゲリラが建物から発砲したので、ヘリからの攻撃で家を破壊し、この攻撃でゲリラ1人と2人の女性、1人の子どもが死亡した、と発表していた。6月2日になって英BBCが破壊された家のがれきから引き出された遺体などの映像を放送し、米軍の発表が事件を隠蔽したものであることが明らかになった。
BBCの放送やイラク政府の弾劾を受けて、米軍は事件について調査すると言っていたが、6月5日に米軍がイシャキで住民を虐殺したという主張は完全に誤りで、米軍は何も悪いことはしていないと発表した。
●ハダミヤで「障害者」の男性を虐殺(4月26日)
海兵隊が夜中の2時ごろハシムさんの家に入り、52歳で「障害者」の彼を家から連れ出した。しばらくして銃撃の音が聞こえたが、家族は米軍が怖くて家を出ることができなかった。翌朝、ハシムさんを捜しに出た家族は、海兵隊が彼の遺体を警察署に届けたことを聞かされた。米軍の主張は、ハシムさんが路肩爆弾のための穴を掘っていた、というものであった。米軍は彼のそばにシャベルとAK―47銃があったと主張した。
近所の住人であるフセインさんは、そのシャベルとAK―47は海兵隊が自分の家に来て持っていったものだと説明している。彼は警察に行き、シャベルと銃が自分のものであることを説明し、取り戻した。
●サマラで家族を虐殺(5月5日)
米軍への攻撃があった後、米兵がジダン・ヒードさんの家に押し込み、一家を虐殺した。両親のほかに6年生の娘や「障害者」の息子が殺された。
●サマラで妊婦と従姉を虐殺(5月30日)
妊婦のナビハ・ジャシムさんが出産のために兄弟のレダム・ジャシムさんが運転する車で病院に向かう途中、米軍に銃撃されて、従姉のサリハ・ハッサンさんとともに殺された。米軍は警告を無視して監視所の禁止区域に入ったために撃ったと説明したが、2人は明らかに背後から撃たれており、後部座席にいたナビハさんの脳が運転していたレダムさんの方に飛び散った。レダムさんも目撃者も米軍は何の警告もしなかったと説明している。
●ラマディで住民8人を虐殺(5月28日)
米軍はラマディの民家を空爆し、この空爆で住民8人が死亡した。米軍は、イラク人民の激しい武装解放戦争が続く同市の包囲を強めており、総攻撃に向けた作戦の一環として空爆が行われたと見られている。
(写真 イシャキで殺された家族。子どもたちも頭を銃で撃たれている)
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週刊『前進』(2251号6面4)(2006/06/26)
星野再審闘争 星野同志との面会実現
徳島救う会が熱い交流
6月6日、星野再審闘争史上、画期的な勝利がかちとられた。この日、星野暁子さんと一緒に徳島刑務所を訪れた徳島「救う会」の2人が、約30分間、星野文昭同志との面会を果たしたのだ。
その様子は徳島新聞でも大きく報道された。面会した人は「星野さんは感慨ひとしおという様子だった。画期的で、大きな扉が開いた」と喜びを語っている。
星野同志も、「すごくうれしい。初めてなのに懐かしい気がする。多くの友人との交流が実現することで、社会復帰に向けた大きな流れができると思う」と話している。
星野再審連絡会議のホームページによると、握手の代わりにガラス越しに手を広げてくっつけあったそうで、その場の感激が伝わってくる。1987年の徳島刑務所移監以来、親族・弁護士以外の人が面会するのは初めてのことである。
「星野文昭さんと面会」というニュースは、熱い風となって全国を駆けめぐっている。刑務所のコンクリートに風穴が空いたのだ。「星野さんに会える。星野さんに会いたい」という思いが、全国で闘う人たちの胸にふつふつと沸き上がっている。
(写真 最高裁判所に再審開始の請願行動を行った星野再審連絡会議の人びと【6月14日 最高裁前】)
弁護人面会は立ち会いなし
これに先立つ5月25日には、再審弁護団の鈴木達夫弁護士が、看守の立ち会いなしの面会をかちとった。
これまでは、再審を担当する弁護人でありながら、立ち会い看守の前でしか星野同志と会えない状況が続いていた。今回、鈴木弁護士は「立ち会いなしの面会」を要求する申入書を徳島刑務所に送り、約2時間にわたる2人だけの面会を実現した。再審闘争を進める上で不可欠の「秘密交通権」が復活したのである。
さらに、友人が出した手紙が次々と星野同志のもとに届いていることも判明した。われわれが手紙や面会をとおして星野同志と直接交流できる条件が切り開かれた。
これらを実現した最大の力は星野同志自身の不屈の闘いである。全国の闘う人たちは、ここ数年、徳島刑務所に何回も行き、神山森林公園から激励行動を行ってきた。二つの闘いが結合して、ついに大きな前進を切り開いた。
星野再審連絡会議に結集する人たちと協力して7月全国総会を成功させ、11月には、最大規模の星野集会を実現しよう。この力で、星野同志奪還へ突き進もう。
最高裁に請願行動 再審開始を熱烈に要求
6月14日午後、「星野さんをとり戻そう!全国再審連絡会議」の人たちが最高裁判所を訪れ、星野文昭同志の再審開始を訴える請願行動を行った。
12時、参加者たちは霞が関の裁判所前に集合し、そろいのゼッケンを着けてビラまきとマイクによるアピールを行った後、最高裁に向かった。
今回の請願行動には、星野同志のご家族と東京周辺の救う会が参加した。最初に、全体の請願書が読み上げられた。請願書は、東京高裁の棄却決定を取り消し、再審開始を決定するよう強く求めている。そのために、@事実調べを行うことA検察官がいまだに隠し持つ証拠の開示を命じること――の2点を具体的に要求した。
特別抗告を行ってから、すでに2年半たっている。星野同志は無実でありながら、獄中で60歳の誕生日を迎えてしまった。これほどの月日を要するのは我慢ならない。直ちに再審開始を決定せよと、怒りに満ちて突きつけた。
続いて家族の請願文、群馬、杉並からの申し入れ、さらに参加者個人の請願文を読み上げて、最高裁に提出した。参加者の肉声による訴えも行われた。
この日までに集まった1512筆の再審要求署名が提出された。裁判所に提出された署名は、これで総計9万2828筆となる。
こうやって請願行動を行っている時も、星野同志は徳島刑務所で闘い続けている。彼は31年にも及ぶ不屈・非転向の闘いを貫きとおし、再審開始と労働者階級の勝利を訴えている。参加者は、その思いを胸に、再審の開始を熱烈に要求した。
今年は1971年の渋谷闘争から35年になる。06年を決定的な飛躍の年としよう。
全国でかつてない闘いを爆発させ、なんとしても星野同志を取り戻す展望をこじ開けよう。
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