ZENSHIN 2005/07/11(No2205
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週刊『前進』(2205号1面1)(2005/07/11)
「つくる会」教科書絶対阻止!
7月杉並大行動の高揚をかちとろう
都議選決戦の地平を発展させ国鉄先頭に4大産別で前進を
7・15全国集会(日比谷野音)に結集しよう
革共同は4月から、「つくる会」教科書採択阻止を全力で闘いぬいてきた。“杉並が危ない”と訴え、闘いは広範な大衆運動に発展した。そして6月22日、800人が杉並区役所前に集まり教育委員会を包囲、1万1千を超える署名を提出し大きな展望を開いた。このような大衆的闘いの高揚の中で、採択阻止のためには都政を革新する会の長谷川英憲氏を都議会に送り込むことが絶対必要だと訴えてきた。都議選決戦は「つくる会」教科書絶対阻止を軸に大旋風を起こし、画期的情勢を開いた。そして都議選後の7〜8月上旬の杉並における「つくる会」教科書絶対阻止の決戦はまさにこれからが正念場である。4〜6月が切り開いた巨大な地平の上に「つくる会」教科書採択絶対阻止へ7月杉並大行動に決起しよう。国鉄を先頭に4大産別決戦の前進を開こう。7・15国鉄集会へ大結集しよう。
第1章 区民大衆の感動的決起
「つくる会」教科書の採択阻止をめぐる攻防はいよいよ最大の正念場を迎えた。4月以来の都議選決戦への全党・全人民の蜂起がつくり出したものは、区民の感動的決起であり、戦争教科書阻止を可能とする情勢である。この地平を発展させ、杉並7月大行動へ上りつめなければならない。
「つくる会」教科書とは戦争攻撃であり、再び「侵略戦争ができる国家」「侵略戦争のできる国民」をつくる攻撃である。
この攻撃の恐ろしさは、「つくる会」の思想宣伝書を教科書にして、それを支持する運動体をつくり、この運動体が権力を絡めとることによって、日本社会を一変させようとしていることにある。日帝は小泉・奥田体制の下、文科省と外務省が「つくる会」教科書採択の推進勢力となり、石原が都知事の権力を使って東京都で50%採択、全国で10〜20%の採択を企図し、05年で今ある日帝の階級支配関係を反動的にひっくり返すことを狙っている。
日帝政治委員会を全面的に突き動かしているのは、イラク侵略戦争参戦を契機に日米枢軸に踏み切り、北朝鮮・中国−アジアへの侵略戦争に突入していこうとしていることである。日帝の存亡を日米枢軸にかけたことが、日帝に恐るべき飛躍を突きつけ、堤防決壊的な大反動攻勢に踏み切らせたのだ。
小泉は、そもそも「つくる会」教科書推進の議員連盟である「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」座長の中山成彬を文科大臣に、同「議員の会」事務局長であった下村博文を文科省政務官にすえ、さらに01年に「つくる会」教科書を検定合格させた時の文科大臣・町村信孝を外務大臣にすえて、中国と韓国との関係に備えた。辞任を申し出ていた安倍幹事長を幹事長代理にし、自民党の「つくる会」教科書採択への突破の陣形をつくったのだ。
こうした日帝の反動の恐るべき堤防決壊的進行と、中国、韓国の全人民的規模の怒りの爆発、それに対する中国や韓国政府の危機感が、小泉の靖国参拝問題で外交的決裂状態を生み出しているのだ。
これに対して小泉が靖国問題で一歩も引かない姿勢を貫いているのは、日帝・小泉政権の「つくる会」教科書にかける階級的意図のすさまじさを表している。小泉が靖国問題で頑強に自己を貫いていることが、現在の反動を支えている。靖国問題とは、同時に内容的にも政治的にも今や「つくる会」教科書問題である。その05年採択強行をめぐる攻防である。
「つくる会」教科書とは戦争攻撃である。イラク参戦から北朝鮮・中国−アジア侵略戦争に日帝が実際に突入していく攻撃である。それは改憲の強行をまたずに「改憲後」の状況をつくり出す攻撃である。戦争が始まってからでは遅いのだ。いま闘わなかったら、もう決定的に闘えなくなるのである。
逆に言えば、今ここで「つくる会」教科書の採択を阻止し、日帝のかつてない大反動を打ち破り、労働者階級人民が4大産別を柱に労働組合、学生自治会、住民運動その他の人民の闘いの陣地を守り、堤防決壊を阻止すれば、日帝の侵略戦争を内乱に転化する展望が切り開かれていくのだ。今闘えば勝てるのだ。
「つくる会」教科書採択阻止を真っ向から訴えて闘ってきた都議選決戦が切り開いてきたものは巨大だ。長谷川氏の訴えと闘いが完全に台風の目となり、戦争教科書阻止の長谷川氏が勝利するかどうかが、都議選最大の焦点となり、関心事となった。安倍や石原らも杉並に引き込まれ、日本共産党や「市民派」を含む全反動・全政治勢力と長谷川氏が対峙し、激突する政治構図が生み出された。
杉並区民は、「つくる会」教科書やファシスト石原・山田への怒りに満ち、労働者や高齢者や子どもを持つ親や子どもたち自身が、あらゆる階級・階層の人たちが、長谷川氏とともに決起した。署名運動を推進し、区教委を包囲し、選挙戦では各所でマイクを持って、長谷川支持を訴えた。ダイナミックで感動的な決起が、区内全域でつくりだされたのだ。
とりわけ6・22の切り開いたものは巨大だった。この都議選決戦の地平をさらに発展させ、7月杉並大行動に総決起しなければならない。特に7月27日には、杉並区教育委員会を人間の鎖で大衆的に包囲し、山田らを人民の前に引きずり出し、徹底的に弾劾し、採択阻止を切り開こう。8月3日の採択阻止に向けて、署名運動と大衆運動をさらに広範に広げよう。
第2章 アジア侵略戦争の切迫
世界情勢はイラク侵略戦争を軸にして、世界戦争へと大きく転回している。
イラクでは、今までで最大規模の内戦的戦闘が闘われている。危機に立つ米帝とイラク暫定政府は、5月29日以来、米軍1万、治安部隊4万、計5万の最大規模のバクダッド掃討戦を開始した。作戦は、バクダッドを東部7地区、西部15地区に分割、675カ所の検問を設け、同市の出入り口を全部封鎖する。しかしバクダッド市内は、少なくとも5地区が武装勢力の実質的な支配下にあると言われている。
このイラク情勢が世界情勢を完全に規定している。イラク侵略戦争をめぐる米英対独仏の対立は帝国主義間対立の新たな亀裂であったが、今やこの対立はEU内に持ち込まれている。EUの統一性は帝国主義間の争闘戦と民営化・資本攻勢への労働者の拒否の両面から、決定的危機に突入している。
さらに米帝の世界戦争戦略は米軍再編(トランスフォーメーション)として進んでいる。米国防総省は、年次報告の中で、軍事力増強に進む中国を「通常脅威」の中で最も警戒すべき存在として位置づけた。米帝への「テロの脅威」と同列に置いている。このことが米軍再編を規定している。
つまり米帝にとっての米軍再編とは、中国と北朝鮮をにらんで、日米同盟を世界戦争のための同盟にすることである。すなわち日米同盟の世界規模での軍事協力体制の構築(「同盟変革」)だ。
米帝はますますイラク侵略戦争から北朝鮮・中国侵略戦争に向かって体制を全面的に再編・強化しており、日帝は日米枢軸路線をとり、米帝の世界戦争戦略の遂行の中に、日帝の帝国主義的延命の突破口を見いだしている。
北朝鮮の6者協議への復帰か否かをめぐって、この7月は大きな転機を迎えようとしている。その基本は、米日帝の北朝鮮・中国侵略戦争の切迫にある。6者協議が再開されるにせよ、北朝鮮の核問題が国連安保理に付託されるにせよ、アジア侵略戦争はいよいよ切迫しているのだ。
第3章 郵政民営化絶対粉砕へ
この戦争切迫と日米枢軸が日帝の反動的大転換を強制しているが、それは単純には進まない。そこには日本の労働者階級の階級闘争が現場において生き生きと闘いぬかれている現実があり、さらにアジア人民の日帝への怒りがある。
日帝はその反動的突破をかけて、「つくる会」教科書の攻撃をしかけてきた。これは、日教組を丸ごと完全に解体する攻撃である。「つくる会」教科書で学校教育を染め上げ、それに抵抗する教育労働者を排除・追放する攻撃だ。さらに民営化と公務員制度改悪で自治労を解体し、改憲勢力化する攻撃が強まっている。
日教組や自治労が改憲勢力に転向するということは、戦争翼賛組合に転向するということだ。労働組合が、労働者と労働者階級の階級利益を守るという目的を放棄して、「国家・国益・国民」のためと称して帝国主義者のための侵略戦争翼賛、侵略戦争協力を率先してやり、子どもを再び戦場に送り込む手先となり、地域住民を戦争に組織する国家の官吏になるということだ。事実上「つくる会」派に転向するのだ。
これは公務員労働者が血と汗でかちとってきた労働者の権利や労働組合の権利などは放棄する、賃金や労働条件やリストラは問題にせず、国家・国民・国益のための翼賛組合になり、本来の労働者階級の団結形態である労働組合を放棄する、ということだ。
しかし日教組や自治労の改憲勢力化などということが許されるわけがない。「つくる会」教科書採択阻止闘争の中で、多くの教育労働者、自治体労働者が決起を開始している。「日の丸・君が代」闘争で示した現場の教育労働者の素晴らしい決起が脈々と闘いぬかれている。この闘いをさらに発展させよう。この7〜8月、「つくる会」教科書採択阻止と一体の闘いとして、都議選決戦の地平を発展させ、国鉄を先頭に4大産別での前進を圧倒的に切り開かなければならない。
何よりも7月15日の「国鉄労働者1047名解雇撤回!原告団・闘争団・争議団を励ます全国集会」に総結集しよう。動労千葉は処分策動に抗して安全運転行動を貫徹し、組織拡大に決起している。この動労千葉を先頭に国鉄闘争の勝利を切り開こう。
郵政民営化との闘いが最大の攻防局面を迎えている。公務員労働者の資格を剥奪(はくだつ)し、大量首切りを強行するための郵政民営化法案を断固粉砕しよう。全逓労働者は物ダメ・ストライキ闘争に決起しよう。
そして8・6ヒロシマ−8・9ナガサキ、8・15敗戦60年を反戦・反核と国際連帯の大集会としてかちとろう。11月に向け進撃しよう。
さらに重大な攻撃として共謀罪の国会審議入りがある。これは現代の治安維持法である。戦前の治安維持法は「目的遂行のためにする」という項目を追加したことで弾圧対象を共産党員・支持者から最後には学者やジャーナリストまで無限に拡大できた。
共謀罪は、実行行為がなくても、共謀の事実を認定するだけで犯罪にできる。会話だけで、権力が犯罪者にしたてあげようと思えば、デッチあげを含めて必ずその口実がつくりあげられるものだ。国家権力・公安警察がいつでも、好きな時に、弾圧したい人、組織、労働組合、大衆団体を弾圧できる恐るべき悪法、それが共謀罪だ。共謀罪を大衆的怒りで粉砕しよう。
夏期一時金カンパ闘争の圧倒的貫徹を
「つくる会」教科書絶対阻止と都議選決戦の過程をとおして、革共同こそ労働者階級人民の立場に唯一立った階級闘争の牽引(けんいん)車であることが鮮明になった。「つくる会」教科書の大反革命を粉砕し、日帝の北朝鮮・中国−アジア侵略戦争への道を阻む党は革共同以外にない。侵略戦争か革命的内乱か、勝負はまさにこれからだ。
階級的労働者党建設のために夏期一時金カンパ闘争に圧倒的に決起しよう。東西革共同政治集会の成功を全力でかちとろう。
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週刊『前進』(2205号1面2)(2005/07/11)
杉並に採択阻止の旋風 都議選 長谷川氏、大車輪の闘い
東京都議選での都政を革新する会の長谷川英憲氏の奮闘は、杉並区全域に「つくる会」教科書の採択を阻止しようという大旋風を巻き起こした。
長谷川候補の訴えは、日帝・小泉、石原、山田らが進めようとする戦争教育への大衆的な憤激と決起を巻き起こした。さらに自民党の安倍晋三幹事長代理が選挙戦初日にのり込むなどの大反動に区民の危機感が高まった。長谷川候補の街頭での訴えが大反響を呼び、「つくる会」教科書採択阻止の訴えと闘いが広範な人びとの決起をつくりだしたのである。
駅前で長谷川候補が演説をしていると、「今日、長谷川さんに不在者投票してきました。前回は別の人でしたが今回は長谷川さんに入れました」と言って握手をしていく男性、立ち止まって長谷川候補の演説を聞き「つくる会」教科書反対署名をしていく夫婦、「兄は自民党だが、私は長谷川さんを支持する」と激励するヘルパーの男性、多くの労働者人民が演説に聞き入り、戦争教育への激しい怒りを持って長谷川候補に熱い期待を寄せた。
「つくる会」教科書を使わせられる当事者の中学生を中心に小学生や高校生、大学生が“自分たちの命が奪われる”という危機感から決起を開始している。
6月27日夕、荻窪駅で演説をする長谷川候補に女子中学生2人が駆け寄り、「つくる会」教科書反対の署名30筆を手渡した。クラスで討論し、署名を集めたものだ。阿佐ケ谷駅頭でも浜田山で署名用紙をもらった中学生がクラスで討論、10人分署名をした。高円寺駅前で署名をした男子中学生2人は「僕たちの命は国のためにあるんじゃない。僕たちの命は僕たちのものだ。こんな教科書は許せない」と怒りを語った。
「つくる会」教科書採択の攻撃に対し、子どもを持つ親や戦争体験者など、あらゆる世代・階層が決起し、選挙戦を自らの闘いとして担い抜いた。
長谷川候補の渾身(こんしん)の訴えが、「つくる会」教科書採択の策動を暴き出し、杉並区民の圧倒的な憤激を呼び起こした。
「『つくる会』教科書が採択されたら、戦争に行こうと思う子どもが出てくる。戦争を正しいと教える『つくる会』教科書を子どもたちに使わせてはいけない。狙われているのはみなさんの子どもです」
「今、日本はイラクに自衛隊を派兵しており、その自衛隊の車列が攻撃を受ける事態が起こった。さらにアメリカは中国、北朝鮮に対する戦争に向けて米軍再編を進めている。そして石原は中国に戦争を仕掛けろと扇動している。『つくる会』教科書の攻撃は、戦争の危機が迫っているからにほかなりません」
「クラスで討論して署名を集めた子どもたちの願いを無にしてはならない。彼らの思いにこたえて『つくる会』教科書の採択を阻止することは大人の責任です。『つくる会』教科書採択と最も真剣に闘う長谷川が勝利することが『つくる会』教科書の採択を阻止する道です」
長谷川候補の街頭宣伝には介護と福祉を要求する杉並住民の会の高齢者が駆けつけ、ともに「介護の長谷川」への支持を訴えた。また「つくる会」教科書採択に反対する杉並・親の会の会員も駆けつけてマイクを握って「つくる会」教科書と闘う長谷川候補への支持を訴えた。さらに大阪門真市の戸田ひさよし市議、泉佐野市の国賀祥司市議らが全国から応援に駆けつけ、長谷川候補への支持を力強くアピールした。
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週刊『前進』(2205号2面1)(2005/07/11)
戦争・改憲と差別主義の「つくる会」
「左翼の絶滅」と天皇中心の国家・社会を叫ぶ八木秀次 「公民」教科書 中学生を改憲へ誘導
「つくる会」教科書採択阻止の運動が東京・杉並を先頭に大きく爆発しつつある。この攻撃は労働者人民を帝国主義の侵略戦争に総動員していく攻撃である。今これと闘わなければ、戦争への流れが一挙に進んでしまう。なんとしてもここで食い止めよう。最大の激突点となっている東京・杉並での採択を7月大行動への決起で絶対に阻止しよう。全都・全国で「つくる会」教科書を完全粉砕するために闘おう。今号ではとくに、「つくる会」教科書における改憲攻撃および部落差別の扇動を暴く。
自民党の改憲案と同一主張
「つくる会」の公民教科書は、憲法9条の撤廃を始めとした今日の改憲攻撃の内容を、そのまま中学生に教え込むことを狙った教科書である。その内容は、現在の憲法を“米占領軍に押し付けられたもの”として露骨に排斥するものだ。そして歴史教科書と同じく、明治国家と明治憲法を「大日本帝国憲法の下で、近代的な民主国家づくりは進められていった」と限りなく美化している。その対極に現在の憲法を置き、即刻改正すべきだと扇動しているのだ。
具体的にも、他の教科書にはない「憲法改正」という特別の項目を設け、制定以来一度も変えないのはおかしいと書いている。国家が「自衛権」を持つのは当然とし、軍事力の保有と集団的自衛権を含む武力行使の容認を迫っている。「国防の義務」も憲法に盛り込むべきだとする。「世界中で活躍する日本人」の筆頭に海外派兵された自衛隊員の写真を置き、イラク派兵を始めとした自衛隊の侵略出兵を一層大規模に展開することを主張している。
また「領土問題」や「拉致問題」を前面に出し、周辺諸国への敵意と排外主義を大々的にキャンペーンしている。とりわけ北朝鮮と中国を“日本の安全を脅かす敵国”として描き出し、これらの国をやっつけるためには戦争も必要だとあおっている。
さらに、個人優先の考え方が家族の崩壊や社会の危機を生んでいると攻撃し、男女平等の否定を始め、社会には差別があって当然とする思想を宣伝する。天皇制を「古くから続く日本の伝統的な姿」として、再び国家と社会の中心に据える。そしてこの「社会の秩序」を守るためには基本的人権を制限して当然としている。自民党の改憲案とまったく同じ内容だ。現在の憲法について教えるはずの教科書で、逆に憲法の否定と破棄を公然と宣伝して回っているのである。
戦後的な価値観の解体叫ぶ
このように、「つくる会」教科書は歴史も公民も、まさに侵略戦争と改憲の宣伝・扇動文書となっている。だが「つくる会」の主張はそこにとどまらない。もう一歩進んで、憲法に体現される第2次大戦後の「平和と民主主義」の価値観そのものを、「亡国の思想」と呼んでその解体を叫ぶものとなっている。
「つくる会」の05年版公民教科書の執筆者は、「つくる会」会長の八木秀次だ。八木は、憲法学者でありながら改憲推進の先頭に立ち、日本の「精神革命」を呼号してきた人物である。その内容は一言で言えば「左翼思想の絶滅」だ。そこで攻撃されているのは、まず公共企業であり、次に一切の労働組合と労働運動であり、さらに国家主義を否定して個人を重視してきた戦後の教育であり、社会福祉の充実を求め続けてきたすべての労働者人民である。マルクス主義・共産主義だけでなく、戦後民主主義のもとでのリベラルな人権思想や福祉国家観さえもが、「左翼思想」としてすべて圧殺の対象となっている。
八木は、1980年代に英のサッチャー政権や米のレーガン政権が強行した労働組合つぶしの大民営化攻撃を、この立場から称賛する。そして小泉政権もこれに見習えと要求する。そのうえで、日本における「精神革命」(=左翼絶滅)とは、「縦軸の哲学」を「国家再生の哲学」として打ち立てるものだと主張する。
八木が執筆し、「つくる会」が編集・刊行した『国民の思想』によれば、「縦軸」とは「生命の連続性」「国家の連続性」を意味する。この「縦軸の哲学」こそ、八木の改憲論の核心だ。
八木はまず、「現行憲法は『日本国憲法』とは名乗っているが、歴史的共同体としての『日本』を否定している。現行憲法の最大の問題点はそこにある。それゆえに憲法改正とはまずもって歴史的共同体としての『日本』、国家としての連続性を取り戻す作業でなければならない」(『国民の思想』)と言う。ここで「歴史的共同体としての日本」と言っているのは、日本は西欧諸国のような、近代のブルジョア市民革命によって生まれた国民国家とは国の成り立ちが違うという意味である。日本の国家は「太古の昔に自然な形で生まれてきた」もので、他の諸国とはそのよって立つ原理(=「国柄」)がまったく異なると言うのだ。
そして八木は、日本国憲法がその前文に掲げる主権在民・民主主義・基本的人権の尊重といった価値観を、「日本には異質なもの」として否定し攻撃する。八木によれば、日本国家は現在生きている国民だけでなく、過去(先祖)と未来(子孫)を含めた3世代の国民から構成される。したがって、主権はこの「過去・現在・未来の歴史的な総国民」にあり、「その意思は『代表』を通じて顕在化する」と言うのである。「代表」とは、日本の「歴史・伝統・文化」の体現者すなわち天皇である。
「つくる会」の公民教科書では、「国民主権」の説明として「この場合の国民とは、私たち一人ひとりのことではなく、国民全体をさすものとされている」と書かれている。誰もが首をかしげるこの記述は、実は、主権は人民にあるのではなく天皇にあると教えるものであったのだ。
さらに八木は、現在の日本人に欠けているのは「生命の連続性の自覚」であると言い、個人は独立した存在ではなく、「肉体的にも精神的にも祖先から受け継いだものを、現在の私を経て将来の子孫に受け渡すという『役割』を帯びた存在であり、一個人、一世代では決して完結し得ない連続性のある存在」であると書いている。戦前のように、国家を一つの「家」と描き、人はみなこの家族=国家に帰依する存在になれと主張しているのだ。
新たな「玉砕」の思想強制
ここで提唱されているのは、むきだしの天皇制・天皇制イデオロギーだ。単なる「国家あっての個人」という、一般的な国家主義の主張にとどまるものではない。国家を文字どおりの運命共同体として、天皇と国のためにすべてを捧げる国民をつくりだせという主張なのである。
八木ら「つくる会」のファシスト勢力が、ここまで天皇制イデオロギーにのめり込むのはなぜか。朝鮮・中国・アジア人民虐殺の新たな侵略戦争・世界戦争に再び日本の労働者人民を駆り立てるためには、それ以外にないからである。
たとえ9条改憲を強行し、戦争のできる国家体制を作り上げても、労働者人民を実際に戦争に動員できなければ、戦争は遂行できない。そのためには労働者階級の階級性を徹底的に解体し尽くす必要がある。侵略戦争を単に容認し支持するだけでは駄目なのだ。自らすすんであらゆる犠牲を甘受し、「日本国家・日本民族」のためなら他民族へのどんな大虐殺や破壊もいとわない人間を大量につくりだすことが必要なのだ。
『国民の思想』は、「(西欧型の)社会契約論に基づく国家観からは真の国防意識は生まれない」、そうした国家観からは、結局は、戦争に協力するのがいやになったらやめてもいいというボランティア的なものしか出てこないと言う。必要なのは「縦軸の哲学」であり、「自分がその国に生まれたことを宿命として受け止め、国と運命を共にする覚悟」であると言う。そして次のように述べる。
「現在、生きている人々が、たとえその生命・自由・財産を失っても、祖先、先人が生命・自由・財産に代えて守り、伝えてきた国家を、何としてでも守っていこうという決意……がなければ、国防は説明できない。まさに、国家の連続性、生命の連続性を前提として初めて、国防は成り立つ」
これは恐るべき反人民的な思想である。かつての15年戦争で日帝は、天皇制国家のためにすべての人民がその命の最後の一片まで捧げることを絶対命令として要求した。沖縄戦でのおびただしい住民の犠牲と、肉親同士が殺し合わされた悲惨な集団死(集団自決)は、その極致として発生したものだ。「つくる会」は今日、教科書からの沖縄戦記述の抹殺を慰安婦問題抹殺に続く次の目標に掲げているが、それはまさしく新たな沖縄戦を再び沖縄の人民に強制するためだ。ひいては全労働者階級人民に、天皇と日帝のために戦争で死ねと要求するものにほかならない。
「神国日本」の復活掲げる
八木と「つくる会」はさらに、「日本は世界にただ一つの特別な国家」であると強調する。「私たちは『アジアの一員』ではない。『西側社会の一員』でもない。『日本文明』という独自の文明を構成するただ一つの国、これが日本なのである」「日本は孤立した国家である」(『国民の思想』)と言う。そして、今日の時代に「必要なのは『普通の国』を超えて自国のアイデンティティーを確立し、国益の立場から政策や戦略を構想することである」と言う。
これは、戦前・戦中の日帝が掲げた「神国日本」のイデオロギーとまったく同じではないか。かつての日帝は、日本は「世界にただ一つの神の国」であるという荒唐無稽(こうとうむけい)なデマゴギーを掲げ、その日本がアジアを征服し支配するのは正義であると強弁して侵略戦争・世界戦争に突進していった。今日、帝国主義の危機が世界恐慌と世界戦争として本格的に大爆発する時代を迎えている中で、日帝が帝国主義として生き残るためにはその同じ道を進む以外にないというのが、彼らの主張なのである。
こうした「つくる会」派の主義主張は今日、もはや「つくる会」という一グループの独自の主張にとどまるものではない。小泉政権と自民党、日本経団連・奥田ら財界中枢、民主党の一部政治家などの内部に急速に流れ込み、今や戦後の「経済大国」主義を第一としてきた従来の保守本流にとって代わろうとし始めている。日帝の体制的危機のすさまじい深まりの中で、日帝ブルジョアジーの中心部から、新たな侵略と戦争への凶暴な衝動が噴き出しているのだ。その先頭に立っているのがファシスト都知事・石原であり、「つくる会」なのだ。
その基軸・突破口がファシストによる教育の制圧を狙う攻撃だ。そのために「つくる会」教科書の採択が絶対不可欠とされているのだ。これを許せば、本当に戦争と暗黒政治が始まる。労働者階級の総決起の力で必ずこの攻撃を粉砕しよう。杉並を最先端に全都・全国で採択阻止をかちとり、ファシスト打倒の総反撃の扉をこじあけよう。
「差別は社会の安定に必要」と戦前型の身分秩序を狙う 新たな部落差別あおる 「歴史教科書」
江戸時代の身分制全面賛美
「新しい歴史教科書をつくる会」の教科書は、教育の場を使って一切の戦後的な価値観と体制を暴力的に右から破壊・転覆し、戦前型の天皇制ボナパルティズム国家への逆転的回帰・転換を扇動するファシスト運動である。これを許して教基法・改憲決戦はない。
日帝は帝国主義間の激しい争闘戦、相互絶滅戦に生き残れるのか否かという問題にぶつかっており、帝国主義国家として、「国家」のために死ねる国民をつくりだし、再び対外(侵略)戦争ができる国家に反革命的に飛躍する以外に延命の道はなくなっている。
そのために「つくる会」教科書は、何よりも日本帝国主義による15年戦争、第2次大戦についてあらゆる奇弁を弄(ろう)して開き直り、全面的に肯定し、賛美している。
しかし、それだけではない。江戸時代の身分制度をことさらに賛美した上で、皇国史観に立脚して「血統に基づく身分」としての天皇制の意義を全編で強調している。「つくる会」教科書の大日本帝国憲法の礼賛は、戦前の天皇制ボナパルティズム体制の支柱であった身分秩序を丸ごと肯定し、その再確立を扇動するものでもあるのだ。
日帝は明治以降、封建的身分関係に基づく部落差別を天皇制のもとで再編・強化し、一貫してアジア侵略と人民分断のカナメとして積極的に動員してきたが、帝国主義の基本矛盾が再び全面的に爆発する世界史的情勢の中で戦時における階級支配のカナメとして再確立・再強化しようとしているのである。それは改憲による天皇元首化攻撃と完全にひとつのものである。
「つくる会」教科書の01年版と05年版を比較するならばこのことは歴然としている。両者とも「身分制度」について特別に項をおこし、01年版では以下のように記述している。
「豊臣秀吉は社会に平和をもたらすために刀狩を行ったが、江戸幕府はそれを受けつぎ、武士と百姓と町人という身分の制度を定めた。武士は統治をになう身分として名字・帯刀などの名誉をもつと同時に、治安を維持する義務があり、城の警備や行政事務に従事した。こうした統治の費用を負担し、武士を経済的に養うのが、生産・流通・加工にかかわる百姓と町人の人々であった。このような、身分の間で相互に依存する関係が、戦乱のない江戸期の安定した社会を支えていた。このほか、僧侶や神職、さまざまな芸能にたずさわる人々がいた。
こうした身分とは別に、えた・ひにんとよばれる身分が置かれた。これらの身分の人々は、農業や死んだ牛馬の処理、皮革製品や細工物の製造に従事し、特定の地域に住むことが決められるなど、きびしい差別を受けた。このような差別によって、百姓や町人に自分たちとは別の恵まれない者がいると思わせ、不満をそらせることになったといわれる」
これほどデタラメであからさまな封建的身分制度の賛美は過去に例がない。05年版ではこれをさらに改悪し、第一に、一層明示的に「身分制度」こそが「平和で安定した社会をつくりだした」と強調し、全面的に称賛している。またこの身分制度の項に続けて「大開発の時代」と題して産業の発展のためには「身分制度による社会の安定が不可欠だった」と教え込む展開になっている。
第二に、01年版の「不満をそらせることになったといわれる」という身分制度に対するアリバイ的な批判的要素さえも、05年版ではすべて抹殺した。
第三に、05年版は、本文中に01年版にはなかった「ただし、武士と百姓・町人を分ける身分制度は、必ずしも厳格で固定されたものではなかった」という一文を挿入し、それを受けてコラムで、「職業による身分の区分であり、血統による身分ではなかったから、その区別はきびしいものではなかった」と述べている。「つくる会」の連中は、徳川幕藩体制の身分制度を、階級支配と関係のない社会的役割分担の区別であるかのようにえがきあげた上で、身分の移行が可能で、「相互依存」していたと正当化しているのである。
しかし史実はまったく違う。徳川家康は「百姓は活かさぬよう殺さぬように」して年貢を取り立てよ、と命じ、吉宗のもとで勘定奉行をしていた神尾春央は「胡麻の油と百姓は絞れば絞るほど出るものなり」と放言し、苛斂誅求(かれんちゅうきゅう)な取り立てをしたことはあまりにも有名である。そのために蜂起・逃散・越訴・強訴・うちこわし等の百姓一揆が各地で頻発し、その数3200件を超えたと言われ、江戸末期にはほとんど内乱情勢に突入していた。
いったいこのどこを指して「異なる身分の者が相互に依存して、平和な時代だった」などと言えるのか。武士が「切捨御免」の特権を持っていたことを隠しながら「江戸時代を通じて武士は尊敬された」などと言うのは、あまりにも恥知らずである。真実はむき出しの階級激突の時代だったのだ。だからこそ豊臣秀吉は「刀狩り」を行い、徳川幕府はそれを受けつぐとともに幕府権力の圧倒的な軍事力を背景とした過酷な身分制度を必要としたのだ。このようにして成り立った徳川幕藩体制を「平和で安定した社会」と描き上げるのは支配階級のイデオロギーそのものである。
その上で部落差別との関係でいえば、問題の核心は江戸時代の身分制度を「血統によるものではなく、武士、百姓、町人の3つの身分を区別するものだった」と規定し直すことによって、「えた・ひにん」を江戸時代の身分制度の枠外に実質的に追放したことである。しかし「穢多・非人」こそ江戸時代の身分制度を身分制度たらしめる根幹だったのだ。にもかかわらずこのように両者を分離させるのは「武士、百姓、町人の3つの身分は職業による区別であり、身分をかわることはできたが、えた・ひにんは血統による差別であり、身分をかわることはできなかった」ということをデマゴギッシュに暗黙の内に印象づけるためなのである。しかも、別のところで天皇を中国の皇帝と対比して「天皇の地位は皇室の血すじに基づいて、代々受けつがれた」としているのであるから、その天皇制の対極において血統による身分である「えた・ひにん」も「代々受けつがれるものである」と思わせようとしていることは明白である。
もちろん、「武士、百姓、町人の3つの身分が職業による区別であり、血統によるものではない」ということ自体が封建的身分制度の本質を否定するねつ造である。徳川幕府は武士については家格と家禄を世襲させ、各藩において武士・僧侶以下については百姓・町人の身分に応じた「戸籍」を宗門人別改帳とは別につくり、「穢多・非人」などの賤民(せんみん)とされた者には特別籍をつくって一般社会から分断し、権力による直轄支配を行った。身分をかわることも、異なる身分間で通婚することも禁止した。このように身分を固定化したのは田畑永代売買禁止令等をもって農民を土地に緊縛しつつ、封建的生産関係を維持・再生産するためである。だからこそ中期において商品経済の発展にともなって封建的諸関係が根底から動揺し始めると、徳川幕府は身分制度を極限的に強めて歴史の歯車を人為的に逆転させ、封建制を再編・強化しようとしたのである。
「つくる会」教科書はこうした史実を平然と歪曲し、「身分制度」がいかに「社会の平和と安定」にとって決定的に有効なのかということを生徒にたたきこもうとしているのである。
部落民の対極に天皇を置く
「つくる会」教科書はなぜこれほどまでに江戸時代の身分制度を全面的に肯定・賛美するのか? それは江戸時代の身分制度が大日本帝国憲法のもとでの天皇を頂点とした身分秩序の前提だからである。戦前の天皇制権力は、こうした旧社会の反動的な政治的諸権利を受けつぎ、それを自らの支配体系に適合させることで自己を確立していったのである。
戦前の成文憲法は形式上、大日本帝国憲法と皇室典範の二つで構成され、皇室典範は憲法冒頭の「告文」により憲法より上位に位置づけられていた。また明治政府は大名・公家を華族、一般武士を士族、農工商の一般庶民を平民の族籍に編成するとともに華族令を公布し、天皇を頂点とした「天皇・皇族・華族・士族・平民」の身分秩序を初期の段階で確立した。
この身分関係において「穢多・非人」と差別されてきた部落民は「賤称廃止令」により「身分職業共平民同様タルベキ事」とされたが実際には「平民の一等下に差し置かれた」。すなわち近代天皇制国家のもとで、江戸時代の封建的身分関係は天皇を頂点とした新たな身分関係に再編され、「穢多・非人」は「新平民」「特種(特殊)部落」と呼称がかえられただけでその最下位に位置づけられ残存させられたのである。
この新たな身分関係の特質は、天皇を侵すことのできない「神聖」な「現人神」と位置づけ、「身分外の身分」として超絶させると同時に、封建体制のもとで差別されてきた部落民を天皇の対極の「身分外の身分」=「人間外の人間」として徹底的に貶(おと)しめる点にあった。
すなわち、帝国憲法のもとにおいて部落差別は貴賤・上下の観念のカナメをなしていたのであり、その頂点に立つ天皇の権威は、身分序列が厳格にうちたてられ、下位との「身分的格差」が大きければ大きいほど「高め」られていく構造にあるのである。逆に、天皇を「神」の高みに祭り上げた帝国憲法のもとで被差別部落民は封建制のもと以上に「人間外の人間」として極限的に貶められることは必然であった。そしてこの天皇の統治を正当化する神的権威は究極的にはただ天照大神直系の、血脈の至高の『貴種』性に根拠があるというデタラメで無知蒙昧(もうまい)な説明をする以外になかったのである。
このように戦前の明治憲法のもとで絶対の価値とされた天皇制・天皇制イデオロギーは、部落差別を対極におくことで確立させられたのである。
日帝はいま国家のために死ねる国民をつくるために国家主義・民族主義・愛国主義・国粋主義のイデオロギーを鼓吹することに躍起になっている。それは日本という国、日本人という民族、日本という国に固有なもの、さらに国柄−天皇制と天皇制イデオロギーといったものを至上の価値として推進する以外にない。そのために、歴史的・伝統的に形成されてきた「天皇の不可侵性」のようなものをフルに活用し、それを拒否・否定する者に「日の丸・君が代」処分を始めとした理不尽な弾圧を加えてきている。そしてそれが「天皇の不可侵性」なるものを恐怖を伴って増幅させるものになるのである。
と同時に、日帝はこのような「天皇の不可侵性」を増幅させる社会メカニズムとして天皇を頂点とした新たな戦前型の身分秩序をつくりあげようとしている。天皇の対極に「賤民」をあらためて位置づけ、差別を扇動し、国民を差別・迫害に動員していくことによって天皇の「高貴さ」=「不可侵性」を国民の中に植え付け、その天皇を求心力にして再び戦争のための挙国一致体制づくりに向けて国民の統合と動員を図ろうとしている。「つくる会」教科書はそのためにその前提をなす江戸時代の身分制度を賛美しているのだ。
新「皇国臣民」づくりを許すな
このように「つくる会」教科書は部落民に対して身分制度を積極的に肯定し、新たな戦前型の身分秩序を受け入れるように強制するものである。それは「君臣一如、赤子一体」のスローガンのもとに部落民を侵略戦争に動員していった戦前の歴史を再現しようとするものであり、身分的差別と闘う部落解放運動への敵対を、教育の場を使って「国民」的に扇動し、差別糾弾闘争をたたきつぶそうとするものである。
1942年に文部省が発行した「国民同和への道」は「この部落の人々も時局に処する責務の自覚を深め差別の苦悩に堪え……戦線に出て護国の神となって散華した」という侵略思想で塗り固められていた。「つくる会」教科書も「差別に堪えて」天皇のために再び死ぬことを部落民に強制するものであり、断じて許すことはできない。部落解放同盟全国連合会とともに「つくる会」教科書の採択を阻止しよう。
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週刊『前進』(2205号2面2)(2005/07/11)
沖縄戦の歪曲に抗議 那覇で緊急シンポジウム
6月19日、緊急シンポジウム「軍隊の支配する世界〜沖縄戦の『真実』にせまる」が那覇市の八汐荘で開かれた(主催は沖縄県歴史教育者協議会、沖縄県高教組、沖縄県教組など)。集会は、藤岡信勝ら「自由主義史観研究会」が「沖縄プロジェクト」と銘打ち沖縄戦での日本軍による住民虐殺や「集団自決」を「殉国美談」に描きあげようとする策動に対する緊急行動として開催された。
120人の参加者は決議で、「集団自決強要の記述を教科書から削除する要求に抗議します」「県内外による沖縄戦研究の成果を記述にしていくよう求めます」と、沖縄から反撃ののろしを上げた。
集会では、安仁屋政昭沖国大教授と山口剛史琉大講師が基調提起を行った。安仁屋教授は「沖縄戦時の沖縄は軍事用語でいう『合囲地境』で、民政が停止され軍政下に置かれた。『部隊長の命令がなかったから、軍命による集団自決ではなかった』という藤岡らの主張は、沖縄戦の真実と実相を意図的に歪曲している」と弾劾した。山口講師は、自由主義史観グループの「集団自決強要は虚構」という「模擬授業」を実験的に展開し、それが教育としてデタラメ極まりないことを実証した。
これを受けて討論が行われ、集会終了予定を30分以上も超過する熱心な発言が続いた。口火を切った知花昌一読谷村議は、「チビチリガマの調査の経験からも、『集団自決』というのはおかしい。赤ん坊が自殺するのか! 事実は軍国主義教育による『集団強制死』だ」と藤岡らの策動に怒りをたたきつけた。
東京・杉並から駆けつけた元ひめゆり学徒の上江田千代さんは、杉並での教科書闘争を報告するとともに「軍命の有無が問題ではない。軍国主義教育で天皇・国家のためにと洗脳されたことが根本問題」「軍隊の支配する世界を出現させてはならない」と訴えた。上江田さんのアピールに拍手が鳴りやまなかった。
うないネットコザ主宰の桑江テル子さんは、「自由主義史観の主張がテレビで堂々と放映されている現実に戦慄した。扶桑社の教科書で教育されると恐ろしいことになる」「沖縄から総反撃を。私たちには全県民に訴える責任がある」と語った。
北中城村で「沖縄戦語り部運動」を行っている伊佐順子さんは、自らの戦争体験から、「もの言えない社会をつくってはいけない」「教基法改悪を許さない」と切々と語った。宮城盛光同村議は、伊佐さんらとともに「平和を守る北中城村民の会」として戦争体験の絵本読み聞かせ運動を行っていることを紹介し、「各地で戦争体験を次世代に語り継ごう」「小泉政権の戦争政策に反撃を」と訴えた。ほかに7氏が発言した。
まとめを大浜沖教組委員長が行い、「つくる会への対抗のキーワードは『合囲地境』」「教育の果たした役割の重大さを確認し、歴史歪曲教科書を採択させない運動、民主教育を発展させよう」と締めくくった。
(投稿/沖縄・真栄原晃)
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週刊『前進』(2205号3面1)(2005/07/11)
沖縄 慰霊祭の靖国化許すな 小泉出席に激しい弾劾
6・23国際反戦集会 辺野古と結び300人決起
沖縄戦終結から60年の「6・23慰霊の日」、沖縄の闘う人民は小泉の慰霊祭出席に反対して闘い、午後には辺野古現地の新基地建設阻止闘争と連帯して、国際反戦沖縄集会を闘いとった。
大横断幕
この日午前、沖縄県主催による慰霊祭への小泉首相出席に対し、沖縄平和市民連絡会有志による弾劾行動が行われた。
午前10時半、糸満市摩文仁の平和祈念公園入り口交差点に有志の労働者市民が到着するや、小泉の通過する公園入り口に近づけさせまいとする県警機動隊が阻止線を張り、これと体ごとのぶつかり合いとなった。総勢約60人となった有志は、約1時間にわたってこれと対峙し、弾圧を徹底的に弾劾しながら闘いぬいた。
11時半過ぎ、県民の怒りを恐れる小泉はダミーの車を2組も編成して走りぬけるようにして公園内に入った。これに対し大横断幕を掲げ、「ヤスクニ神社参拝弾劾」「6・23慰霊祭のヤスクニ化を許さない」「辺野古基地建設をやめろ」の声をたたきつけ、小泉出席を弾劾した。
小泉は、慰霊祭でやっとのことで発言に立ったが、「沖縄への負担軽減」の中身について何も語ることができず、なんのリップサービスもなしえなかった。
日帝・小泉政権は、内政・外交のすべてにおいて完全に破綻(はたん)し、立ち往生している姿をさらけ出した。
反戦訴え
「ひめゆりの塔」前からのデモの後、正午から糸満市米須の「魂魄(こんぱく)の塔」(注)前で一坪反戦地主会など実行委員会による「6・23国際反戦沖縄集会」が開かれ300人が集まった。
主催者あいさつに立った92歳になる沖縄戦記録フィルム1フィート運動の会事務局長の中村文子さんは、教師として教え子を戦場に送った痛苦の体験を語りながら、「『陸に一台の戦車、空に一機の軍用機、海に一隻の軍艦もない本来の沖縄を取り戻しました』と沖縄戦犠牲者に報告できるまで闘いぬく」と述べた。子どものころ「鉄の暴風」の中を逃げまどい次々と肉親を失った沖縄戦体験者が参加者に反戦を訴えた。
今年の集会には、グアム、フィリピンから代表が参加し、韓国の反基地運動団体から連帯のメッセージが寄せられた。非核フィリピン連合の代表は、辺野古での米軍基地建設阻止の闘いの重要性をくり返し強調しながら「フィリピンは米軍基地を追い出した。アジアから米軍基地を追い出そう」と訴えた。韓国の日本軍軍隊慰安婦との交流を続ける沖縄の高校生グループは、彼女たちの思いを表した創作ダンスを演じた。
集会には、同時刻、防衛施設局の工事と対峙する辺野古現地から安次富浩反対協代表の電話メッセージが寄せられた。
東京集会
6月23日沖縄戦「慰霊の日」、東京でも「沖縄米軍基地問題連絡会」の主催で集会が約200人の結集で開催された。
集会では、参議院議員・元沖縄県知事の大田昌秀さんが講演した。大田さんは、明治以降沖縄が置かれてきた差別的現実を語りながら、本土の軍の最高司令部は、沖縄戦が始まれば「玉砕」しかないことを2〜3カ月前から分かっていながら、あえて沖縄を捨て石にしてこの戦争を強行したことを語った。そして今の有事法制が、なんら住民を守るものでなく、この沖縄戦を再来させるものであり、絶対に改憲を許してはならないと強調した。
さらに沖縄平和運動センターの山城博治さんが講演し、5・15普天間包囲行動が、2万4000人のかつてない行動となったことを報告し、青年労働者や学生が辺野古の闘いに続々と駆けつけて勝利の展望を開いていることを強調、そして来年の県知事選挙に勝利しようと訴えた。
陸自100人が人目を避けて「牛島慰霊祭」
沖縄戦終結60周年に当たる05年6・23は、中国、韓国、アジア人民から弾劾され続けている小泉の沖縄県主催の慰霊祭出席も含め、「つくる会」教科書のファシストグループによる「『従軍慰安婦』の次は沖縄戦の書き換え」なる許し難い諸策動など、日帝・小泉による新たな沖縄圧殺攻撃との重要な対決構造の中にあった。
こうした状況の中で23日当日、「人目につかぬよう」早朝5時に、沖縄陸上自衛隊のトップである第1混成団長を先頭に全員制服の約100人の自衛官が、沖縄戦時の日本軍司令官・牛島の最期の地である糸満市摩文仁の「黎明(れいめい)の塔」前で慰霊祭を行った。
翌日の沖縄地元紙は、これに対する県民の怒りの声を報じている。これは重大な動きである。復帰後33年、イラクへの侵略派兵下で在沖自衛隊がついに、あの日本軍となんら変わることのない帝国主義軍隊であるという本性をむき出しにしたということである。6月23日に牛島の慰霊塔を参拝したということは、沖縄戦を公然と美化するものであり、これから牛島、旧日本軍と同じことをするという意思表示以外の何ものでもない。
沖縄戦体験に基づく県民の反戦・平和の思想、「命どぅ宝」の気持ちを「犯罪」とし、皇軍の名誉を救うと称して、今沖縄に関する価値尺度を180度逆転させようと動き始めた「つくる会」勢力と、この自衛隊の動きは完全に連動しているのである。したがって彼らの直接の言動がいかに荒唐無稽(こうとうむけい)な内容であろうと軽視してはならない。しかし同時にこれは沖縄の労働者人民の「逆鱗(げきりん)」に触れることでもある。沖縄戦で無残な死を強制され、今また、これを二度殺すようなことを始めた連中をけっして許してはならない。
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週刊『前進』(2205号3面2)(2005/07/11)
天皇が戦争責任居直る 「玉砕の島」サイパン訪問 “新たな15年戦争”宣言
天皇と皇后が6月27日、戦後60年の「鎮魂・慰霊の旅」と称してサイパンを訪問した。この海外初の「慰霊の旅」は、「つくる会」教科書や小泉の靖国参拝に対するアジア人民の怒りと闘いに対抗する形で、米帝と話をつけて、米自治領であるサイパンを訪問したものである。戦争責任を完全に拒否し、居直って強行した。これは、日帝の15年戦争の戦場となったアジア・太平洋の人民に対する「襲撃」=新たな15年戦争宣言である。徹底弾劾する。
島は超厳戒態勢の下、住民の批判は封じられ、「歓迎ムード」が演出された。しかも、抜き打ちで沖縄県出身者の慰霊塔や朝鮮人犠牲者を対象とした「太平洋韓国人追念平和塔」にも立ち寄った。事前に公表すれば批判や糾弾が起きるのを恐れたのだ。
天皇の出発の際のあいさつは実に許し難い。
第一に「(サイパンは第1次大戦後、日本の委任統治領になり)島民とともに……豊かな暮らしを目指して発展してきました」と言っている。だが事実は、日帝による植民地支配と過酷な収奪が実態だった。
日帝は、第1次世界大戦中にドイツ領だったサイパンを占領し、敗戦までの約30年間、植民地支配した。「海の満鉄」と呼ばれた南洋興発株式会社を設立し、島の7割をサトウキビ畑に変え、巨大な製糖工場を建設、巨額の利益を得た。最大時2万5千人の日本人が移民、サトウキビ栽培や砂糖生産に従事した。約6割が沖縄県出身者で朝鮮人も数千人おり、階層的な支配体系がつくられた。チャモロ人ら現地の住民は「三等国民」と呼ばれ、英語を話す住民はスパイ視された。
第二に「先の大戦により、この平和な島の姿は大きく変わりました」と自然現象のように表現している。だがマリアナ諸島での米軍との激戦を惹起(じゃっき)したのは日帝だ。
日帝は、ミッドウェー海戦の大敗北とガダルカナル島撤退の後、連合軍の反攻に対処するために「絶対防衛圏」なるものを構想し、この地域を「日本防衛のために死守する」方針を出した。そのためにマリアナ諸島は激戦の舞台となり、多数の犠牲者を出したのだ。
約3万人の日本軍守備隊が上陸し、住民は食料や家屋の供出と即刻退去を命じられ、飛行場の建設や物資の運搬などに動員された。
第三に、「食料も水もなく、負傷に対する手当もない所で戦った人びとのことを思うとき……心が痛みます」などと言っているが、まさに天皇を始め大本営がサイパン放棄と守備隊の「玉砕」を決定したのである。日本軍、民間人、現地住民も含めて降伏を許さず、まったく意味のない犬死にを強制したのである。
玉砕命令で日本軍最後の総攻撃が行われ約4千人が「バンザイ突撃」でほぼ全滅した。民間人も「生きて虜囚の辱めを受けず」と教えられ、軍が支給した手りゅう弾で「自決」したり、「バンザイクリフ」とのちに呼ばれる断崖(だんがい)から「天皇陛下バンザイ」と叫んで飛び降りた。また日本軍は投降しようとする住民を手りゅう弾で虐殺した。
こうして、日本軍・軍属4万3千人、民間人1万2千人、現地住民930人、米軍3500人が命を落とした。多数の民間人が犠牲になり、そして住民が日本軍によって死を強制された最初の激戦だった。サイパン陥落で日帝の敗勢は決定的となった。だが、昭和天皇は「国体(=天皇制)護持」のために戦争継続を主張し、日本軍は次々と敗退、45年3月以降の沖縄戦に至るのである。
第四に、「今日の我が国が、このような多くの人びとの犠牲の上に築かれている」と言って、天皇と帝国主義支配階級の戦争責任を居直り、帝国主義戦争における死と死者を「国家のため、天皇のために命を捧げた英霊」と美化し、新たな侵略戦争への国民動員を狙っていることである。
天皇のサイパン訪問は、日帝の新たな15年戦争への決定的な踏み込みであり、小泉の靖国神社参拝や「つくる会」教科書と一体の攻撃なのだ。「つくる会」教科書採択阻止へ闘おう。
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週刊『前進』(2205号3面3)(2005/07/11)
7・10関西新空港闘争へ 自衛隊の関空使用に反撃を
30余年の闘いの力を今こそ
7月10日に関西新空港反対全国集会が、大阪湾岸住民4団体と関西反戦共同行動委の呼びかけで開かれる(要項別掲)。5月に関西新空港が自衛隊に軍事使用された。軍事空港化阻止のために、多くの皆さんの参加を訴える。
イラク派兵に住民団体が抗議
5月7日、自衛隊第6次イラク派兵部隊200人が迷彩服のまま関西新空港からチャーター機に乗り込みイラクに侵略出兵した(写真)。第3師団長ら幹部自衛官が制服で一人ひとりに握手をして見送り、部隊は隊旗を持って乗り込み出発した。その様子は新聞、テレビで生々しく映された。
これより先、隊旗授与式=出陣式が行われた千僧駐屯地(伊丹市)周辺では、「第3師団からの派兵を止めよう!関西実行委員会」が、直近の組合事務所から大型スピーカーで「イラク派兵を中止せよ!」「隊員は出兵を拒否しよう!」と呼びかけ、基地申し入れと集会・デモを行い、自衛隊員、家族に呼びかけた。
また泉佐野市では、泉州住民の会が駅前で「今日、関空が自衛隊に軍事使用されようとしている。みんなで反対しよう」と宣伝した。それを聞いた市民は驚いてビラを受け取って読んでいた。また宣伝カーが市内を回って呼びかけた。
これが関西新空港を自衛隊が初めて軍事使用した日の攻防である。その後、14日に200人、22日に100人が関空からチャーター機で出発した。そのたびに伊丹市と泉佐野市で抗議行動を行った。
軍事使用する前の4月19日、住民の会は関空会社に抗議の申し入れを行った。これに対し関空会社は「検討の際の意見として聞いておく」と傲慢な対応だった。自衛隊使用前日の5月6日、再度抗議に行くと関空会社は「今回はイラク人道復興支援が目的であり、軍事使用とは考えていない」と開き直った。住民の会は「自衛隊が使うのに、どうして軍事使用でないのか」「2月には軍事物資輸送を断った。今回はどうして運ぶのか」と抗議し、怒りをこめて追及した。
また5月12日泉佐野市、17日泉南市、田尻町に抗議に行った。2市1町は口裏を合わせて「イラク人道復興支援が目的。自衛隊使用は軍事使用にはあたらない」と述べ、軍事物資についても「人道復興支援に必要なものと理解している。市に軍事使用かどうかの判断基準はない」と開き直った。武器・弾薬を運んでも「判断基準はない」と認めるとは、自治体としての死である。余りの無責任な答えに、怒りをこめて追及した。
これらの対応は、すべて国の意志に従ったものであり、関空を軍事使用するという国の意志を表明したものである。
関西新空港は開港から10年が過ぎたが、これまでは住民と労働者の闘いの爆発を恐れて、自衛隊が公然と使ったことはなかった。イラク戦争に日帝が参戦し、「戦争する国」に転換する中で、ついに日帝は関空の軍事使用に踏み切ったのである。
三里塚闘争とともに関西新空港闘争は、日帝の侵略戦争を阻止する前線の闘いになった。またアジア人民・ムスリム人民との国際的連帯のかかった闘いになったのである。
大阪湾岸住民団体は、永井満・淡路町反対同盟代表を中心に、三里塚闘争に学びながら闘い続けてきた。「軍事空港反対」が闘いの中心であった。この闘いの正当性が今ほど明らかになったときはない。関西新空港闘争30数年の闘いの歴史こそ、われわれの勝利の力であり、確信である。
朝鮮有事の使用を要求する米軍
6月4日にシンガポールで行われた日米防衛首脳会談で、大野防衛庁長官とラムズフェルド国防長官は「朝鮮半島有事の際の役割・任務分担」に関する事務当局案を承認し、有事の際に提供する民間空港・港湾、病院施設などを具体的に明記する方向が決まった。7月にも開かれる外交・防衛担当閣僚による日米安全保障協議会(2プラス2)で最終的な合意がはかられ、共同文書がつくられるという。
97年の日米新ガイドラインの際に米軍が要求した空港が11、港湾が7ある。すなわち空港は、成田、関西を筆頭に新千歳、福岡、長崎、宮崎、鹿児島、那覇である。成田と関西が中心になることは間違いない。4000b級の滑走路を持つ空港は成田と関西しかないからである。
また、「国民保護法」に基づいて、指定公共機関に指名された関空会社は「国民保護業務計画」を今年度中に作成するよう政府に求められている。国民保護法は、名前とは逆に国民を戦争に動員する法である。政府が関空に求めていることは、関空の軍事空港化計画であり、関空労働者の戦争動員計画である。
ここからも今回、小泉政権が関空の自衛隊軍事使用に踏み切った理由は明らかだ。イラク侵略にのめり込み危機を深める米帝の要求であり、また参戦国化し枢軸国として戦争国家化に踏み切るしか生き延びられない日帝の結果である。
粘り強く闘う住民団体と固く連帯し、全関西の労働組合、労働者人民の広範な決起を呼びかけて闘おう。
2期事業=軍事空港化を阻もう
関空2期事業は完全に破綻している。空港に乗り入れる便数は、問題にならないほど少ない。昨年度は10万2千回、一昨年が10万回。大阪空港(伊丹市)に逆転されている。2期説明会では今頃は「16万回」になっているはずであった。10万回なら現空港だけでも十分にまかなえる。2期の必要性はまったくない。ちなみに国土交通省は今年から行政指導で、伊丹便を関空に移動させたが、旅客は乗らず航空会社はガラガラで飛ばしている。完全に失敗しているのである。
その上に、赤字経営問題である。開港後毎年赤字を重ね、10年間の累積赤字は2116億円にもなっている。
また、埋め立てた空港島が毎年沈下している。昨年も12a沈み、合計12・3bも沈下している。ターミナルビルなど建物が傾き、ひびが入っている。滑走路、誘導路もひびが入り、陥没も起きた。関空会社は今年も150億円かけて止水壁工事と護岸工事をする。すでに330億円もかけている。いったいどこまで沈むのか、どれほど対策費が要るのか、関空会社にも分からない。地盤沈下問題は関空の致命傷である。にもかかわらず小泉政権は、今年度2期予算に530億円も計上した。小泉政権の目的は軍事空港建設である。
関西新空港を関西の侵略拠点にするな。住民、労働者、労働組合の共同の課題として闘おう。三里塚闘争とともに、民間空港の軍事使用を許さない反戦闘争として闘おう。沖縄・名護の新基地建設阻止闘争と連帯して闘おう。7月10日、泉佐野現地に結集しよう。
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週刊『前進』(2205号3面4)(2005/07/11)
「つくる会」教科書を阻止し労働者の未来開くカンパを 戦争・生活破壊と闘う革共同の訴え
都議選への支援に感謝致します
戦争、差別、排外主義を公然と主張し、労働者階級人民からは搾取と収奪の限りを尽くし、そして自らは特権に浸りきるという絵にかいたような悪代官が、今の日本では首相や都知事として権力を振るっています。
労働者人民が塗炭の苦しみの中で年金や税金を収奪されているのに、年金掛金を未納し、働きもせずに企業から手当を受け取り「大したことではない」と居直る人間が、首相として特攻隊を賛美し靖国参拝を強行し労働者人民を戦争に駆り立てようとしています。
週に2、3日、数時間しか登庁せず2800万円を受け取っている都知事が、家族や生活のために低賃金で過酷な労働を連日強いられている労働者をさげすみ、JR尼崎事故に際しては「電車の運転など簡単だ」と平然と言い放っています。
一体どうしてこの国は働く者をこれだけ侮辱し、腐敗した人間を権力の座に置いておくようになったのでしょうか。核心的問題は労働者階級人民の怒りが一つにならずバラバラにされていることにあります。それはどうしてでしょう? 私たちは、日本共産党を始めとする既成政党が、労働者人民の立場に立って闘うことを放棄し、国家権力に屈し、自己保身に走っていることに最大の原因があると考えています。
実際、私たちが都議選を「つくる会」教科書採択阻止を軸に闘っている時、共産党は「つくる会」教科書に労働者人民の怒りを向けるのではなく、「中核派=暴力集団」キャンペーンで革共同を攻撃し続けました。これが、教科書闘争をめぐって杉並だけではなく全国的に展開されたのです。
だが、そもそも「中核派」とは革共同の学生組織の通称であり、「暴力集団」とはほかならぬ国家権力がつけた呼称であって、それ自体なんの批判にもなっていません。それどころか、共産党自らがブルジョア体制の側から革共同を非難していることを自認するものでしかありません。
革共同は、本当の共産主義者の党をつくるために、闘う労働者人民とともに、半世紀に及ぶ歴史を歩んできました。革共同の誇りは、闘う労働者階級人民を根本から信頼し、口先でなく自ら闘い、けっして裏切らないというところにあります。わが党は今回の都議選を、小泉−石原による戦争と搾取の攻撃の中心が労働者階級の闘いの絶滅にあることを訴え、労働者階級の団結をつくり出すために闘いぬきました。
また石原が「つくる会」教科書採択で子どもたちを侵略戦争推進の先兵に仕立て、杉並区をその突破口にしようとしていることを見据え、この闘いの勝利を党の責任として果たすことを決断しました。「つくる会」が主張しているように「靖国と民営化は一体」であり、「つくる会」教科書は労働者階級の闘いを絶滅することに核心があるからです。「つくる会」教科書との闘いから引いたところで教労や都労連をめぐる決戦は成り立たず、未来もないと考えたのです。共産党や他の政党は「つくる会」教科書攻撃の危険な階級的本質を暴露せず、何の展望も方針も示すことができませんでした。
階級闘争の核心的課題を労働者人民に提起し、決起を訴えることなく、別なところで選挙戦を考えるところに体制内選挙党派の最大の腐敗があります。
私たちは、この点で多くの人びとがともに闘いに決起され、党を激励し続けてくれたことに本当に感謝しています。この核心的勝利を胸に、「つくる会」教科書採択阻止から05年後半決戦の勝利を切り開く決意です。
階級的労働者党建設するために
資本主義社会は資本の増殖に最大の価値が置かれ、労働力まで商品化されて、カネ=ものに人間が従属する社会です。人間関係もカネに支配され、そこで形成される人間の意識もカネ=ものに大きく支配されています。
私有という言葉の語源は「奪う」ということにありますが、私有財産制をとことん発展させた資本主義社会は、国内国外を「奪い取る」ために支配することによって成立しています。共産主義運動は、このような資本主義社会を根本から批判し、カネやものを通じた人間の人間に対する支配・蹂躙(じゅうりん)からの人類史的転換・人間の根本的解放をかけた運動です。そして、これを実現する歴史的主体は、労働者階級しかないという考え方です。
したがって革共同は、私有財産制に基づくすべての搾取、収奪、差別、抑圧、支配に根本的に反対しています。特に最大の争奪であり略奪である侵略戦争に対しその存在をかけて闘っています。その根底性のゆえに、国家権力を始め、すべての体制内諸党派が革共同を「暴力集団」として攻撃し絶滅しようとしているのです。
しかし、資本主義体制の命脈が尽きていることは、日々明らかになっています。労働者階級の不安定雇用化・低賃金化が全社会的に進められ、社会保障は事実上解体され負担増・給付減となり、所得税・消費税の大増税が襲いかかっています。さらに、自衛隊の海外派兵と、有事法制の制定を強行し、「つくる会」教科書採択、教育基本法改悪、改憲へと一気に突き進み、労働者階級を侵略戦争へ全面的に動員しようとしていることも歴然としています。
私たち革共同は皆さんの党です
資本主義は、他者の命を含めすべてを奪い尽くすことによってしか生き延びられないのです。この破局の道に誰が断を下すのでしょうか。労働者階級以外にありません。革共同は、労働者階級と、労働者階級とともに闘うすべての人民の党です。革共同が党組織を守り、維持するための財政は、労働者階級人民の意志に基づく怒りを込めた拠金によってのみ支えられています。
日本帝国主義小泉政権のもとで労働者階級人民の生活破壊が激しく進み、大変な苦しみが強要されていることを私たち革共同は痛みをもって自らのものとして感じています。それだからこそ、唯一の出口がプロレタリア革命を実現し日本帝国主義を打倒し、世界の労働者階級とともに帝国主義世界体制を打倒する以外にないということを訴えています。
これは、空論ではありません。昨年11月の労働者国際集会では、日米韓の闘う労働者階級が共通した考え方を持っていることが確認されています。世界が変わらないものとして事実を固定化する考え方は、ブルジョアジーがプロレタリアートを支配し、永遠の奴隷状態に置くための反動的な思想です。真実は、労働者階級こそが巨大で決定的な存在なのです。
帝国主義の攻撃が激しいからこそ階級の党を守りぬき発展させる闘いを、労働者階級自身の行為に転化する以外に展望はないのです。財政闘争は、この核心的課題を容赦なく突きつけています。
党友・支持者のみなさん! 労働者階級とすべての闘うみなさん! 革共同は、共産主義運動を貫徹し、日本革命−世界革命の実現に向けて存在をかけ、命をかけて闘いぬいてきた党です。党の未熟さは、みなさんの強力な支援・参加によってこそ克服していくことができます。革共同はみなさんの党にほかならないからです。
労働者階級人民の未来をかけた圧倒的なカンパをお願いします。
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週刊『前進』(2205号4面1)(2005/07/11)
共謀罪を必ず廃案にしよう
戦争・民営化と改憲攻撃へ 思想弾圧と労組破壊を狙う
6月24日、衆院法務委員会で共謀罪の新設を盛り込んだ組織的犯罪処罰法改悪案などの審議入りが強行された。共謀罪は、03年3月の国会提出以来、多くの闘う労働者や弁護士の粘り強い闘いによって、2年以上にわたって阻止され続けてきた。だが日帝・小泉政権は、戦争と民営化の攻撃を強める中であらためて共謀罪新設に全力を挙げている。「つくる会」教科書を絶対阻止する闘いとともに、今こそ〈共謀罪を廃案へ!>の大運動を巻き起こそう。7・12―14国会前ハンストに決起しよう。
日帝小泉は今なぜ共謀罪強行に走るのか
小泉政権は、今国会の会期を8月13日まで大幅に延長し、郵政民営化法案をなんとしても押し通すと宣言した。同時に、この機会に共謀罪新設をも一気に強行することを狙っている。6月24日の衆院法務委での審議入りに続いて、7月中旬にも衆院で採決を強行することを狙い、今国会中に何がなんでも成立させようと必死になっている。
日帝が今、共謀罪新設に全力で踏み込んでいるのはなぜかをまずはっきりさせておきたい。それは、単に2年間棚ざらしになっていた法案をこれ以上放置できなくなったという次元にとどまらない。また、03年提出時の延長線上の攻撃でもない。小泉=奥田がすでにイラク侵略戦争に深々と突入し、改憲攻撃と労組破壊の大民営化攻撃に乗り出す中で、その成立があらためて不可欠となっているからだ。この間の激動的な階級情勢を受けて、労働者階級のあらゆる抵抗と運動と組織を徹底した治安弾圧によって圧殺することが日帝にとって文字どおり火急の課題となってきたからだ。
共謀罪攻撃の始まりは、03年春の国会で国際的組織犯罪防止条約締結を承認したことにある。この条約自体、パレスチナ人民の民族解放闘争の圧殺を狙った米帝の主導のもとで00年末に国連が採択したものだ。その批准に伴う国内法整備と称して日帝・法務省が出してきたのが共謀罪の導入である。
だがそこには巧妙な細工が施されていた。条約は「組織的犯罪集団への参加」を処罰する規定を設けるとしているが、そこには「国際的(越境的)なもの」という要件が付いている。法務省はこれを取り外し、すべての国内犯罪に例外なく適用可能なものに拡張する形で共謀罪の新設を提案したのである。
その上で法案の国会提出後、情勢はさらに劇的に一変した。03年12月には小泉政権が自衛隊のイラク派兵を決定し、イラク侵略戦争に参戦した。005年1月には2期目の米ブッシュ政権が侵略戦争の全世界への拡大を宣言。今や帝国主義の危機の全面爆発と帝国主義間対立、ブロック化、世界戦争への情勢が音を立てて進行している。この中で日帝はついにアジアの勢力圏化をかけて北朝鮮・中国への侵略戦争に凶暴に突進し始めたのである。「つくる会」教科書や靖国神社をめぐる攻撃の激化は、日本の帝国主義ブルジョアジーが再度の15年戦争の道に自らの延命をかけて踏み切ったことを示している。
ここにおいて日帝が戦争国家へ転換するために絶対不可欠としているのが、@民営化をテコとした労組破壊と労働運動の圧殺A教科書攻撃を最先端とする戦争教育への大転換B戦争突入に対応した治安弾圧体制の全面再編――である。その核心は、労働者階級の階級的団結と階級意識の徹底的な破壊と解体、戦後的な諸権利と価値観の全面圧殺だ。この中で共謀罪の導入が今や日帝にとって待ったなしの課題としてあらためて浮上しているのだ。
破防法上回る恐るべき治安弾圧の激化へ
共謀罪の新設は、破防法を始めとしたこれまでの治安法と比べても前代未聞の恐るべき治安弾圧のエスカレーションをもたらす。
第一に、刑法上の犯罪とされた行為を単に「共謀した」というだけで、独立して処罰できるとする。その犯罪が実際には何も実行されず、したがって被害も発生せず、準備などの予備行為もまったく存在していない場合でも、合意があればその瞬間から処罰の対象になるとするのである。しかも、実際に謀議がいつ、どこで、どのように行われたかの証明も必要としない。同じ組織に所属したり同じ機関紙を読んでいるというだけで、警察官が「暗黙のうちに意思の連結(共謀)をした」とみなせば、直ちに逮捕できるのだ。
これは、人の行為とは無関係に、人間の意思、すなわち思想そのものを「犯罪」視し、処罰の対象とするものである。共謀を処罰する法律がすでにある米英諸国でも、こんなでたらめな、近代刑法の原則におよそ反するものはない。法務省自身が法制審での説明で、この法案は他国に例がない「日本独特なものだ」と公言している。
第二に、適用範囲がきわめて広く、しかも重罰である。刑法で10年以上の刑にあたるとされる犯罪の共謀をした場合は、5年以下の懲役または禁固にする。同じく4年〜10年の刑にあたる罪の共謀は、2年以下の懲役・禁固とする。対象となる罪は、実に557に上る。ここには、殺人などの罪だけでなく、労働争議で弾圧の口実によく使われる「威力業務妨害」などもすべて含まれる。
第三に、「組織犯罪」と言うが、この「組織」には政党、労働組合、市民団体から趣味のサークルまであらゆる団体が含まれる。「団体」とはおよそ言えないもの、例えば夫婦間の会話なども、2人以上が集まればすべて「団体」とみなされ、共謀罪による捜査の対象となる。
第四に、実行に着手する前に自首した者にはその刑を減免する規定が設けられている。これは、警察権力があらかじめ弾圧したいと狙っている政治団体などにスパイを送り込み、その密告によって「犯罪の共同謀議」が行われたとする話をデッチあげ、参加者を一網打尽にすることもできるということである。密告したスパイ本人だけは刑を免れるのだ。
第五に、この共謀罪の導入は、「犯罪摘発」のための新たな捜査方法の導入を不可避とする。スパイ活動(潜入捜査)やおとり捜査などが常態化し、盗聴や監視が日常的に行われる。警察権力が人民の全生活を丸ごと支配する社会に変質するということだ。
このように、共謀罪とは何よりも人民の思想・言論・表現の自由を奪うものだ。日帝・国家権力が自らの支配にとって「有害」とみなした思想をすべて「犯罪」として禁圧する、とんでもない思想弾圧に道を開く思想処罰法である。同時に、労働者階級に対する団結禁止法、労働組合弾圧法である。警察が労働争議に介入し、刑事弾圧をほしいままにし、労組の存立そのものを破壊・解体する絶好の武器となる。さらに、あらゆる反戦・反政府運動を芽のうちに摘み取ることを目的とする究極の結社禁止法である。
特高型の思想・秘密警察への改編を企図
日帝はこの共謀罪に戦前の治安維持法と同じ役割を持たせようとしている。そして、この導入をテコに警察組織をも戦前の特高警察のような思想警察・秘密警察を軸とする組織に改編しようとしている。
戦前の治安維持法と特高警察が果たした役割とは何だったか。1925年に制定された治安維持法は、「国体(=天皇制)変革」と「私有財産否定」を目的として結社を組織しそこに参加した者を、死刑を含む重罰をもって弾圧した。その対象は、共産主義者に始まって、社会民主主義者、自由主義者、宗教団体、最後は全人民に拡大した。政党も労働組合も、すべて思想警察=特高警察の厳重な監視下に置かれ、やがては解散を命じられた。特高警察ににらまれた者は片っ端から獄にぶち込まれて残酷な拷問にさらされた。作家・小林多喜二の虐殺や横浜事件はその氷山の一角にすぎない。
とりわけ1928年の改悪で導入された目的遂行罪は、弾圧を拡大する上で絶大な力を発揮した。「結社の目的遂行のためにする行為」という名目とその拡大解釈によって、学術団体や文化団体、俳句や短歌のサークル、職場の慰安旅行さえもが弾圧の対象となった。侵略戦争に少しでも非協力的な者、政府・軍部の意向に沿わない者は容赦なく摘発され、社会的に抹殺する措置がとられたのである。まさにこの治安維持法と特高警察の存在、それへの日本労働者人民の無残な屈服と敗北、協力こそが、日帝の15年戦争遂行を支える最大の柱となったのだ。
今回の共謀罪は、この治安維持法よりもさらに一層悪質だ。それは、最初からどんな対象にも無差別・無制限に適用でき、治安維持法のような拡大解釈すらも必要としない。共謀罪の導入を許すならば、それ自体が実質的にかつての治安維持法の目的遂行罪と同じ役割を百パーセント、否、それ以上に果たすことになっていくのだ。
共謀罪新設を阻止する闘いは、日帝の侵略戦争への国家総動員体制構築をその最先端で阻む闘いである。その意味で、「つくる会」教科書の採択を絶対阻止する闘いとも完全に一体のものである。「つくる会」教科書粉砕へ最後まで闘いぬくとともに、新たな戦争への危機感を燃やすすべての人びとに共謀罪阻止を訴えて闘おう。今国会での強行突破を断じて許さず、絶対に廃案をかちとろう。
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週刊『前進』(2205号4面2)(2005/07/11)
陸自車列に路肩爆弾 侵略軍に怒り高まるサマワ
自衛隊は直ちに撤兵せよ
陸上自衛隊が活動するイラク南部のサマワで23日午前9時(日本時間同日午後2時)ごろ、陸自の車列を狙った路肩爆弾が爆発した。米軍と一体の侵略軍=占領軍である自衛隊に対するイラク人民の本格的な武装闘争がたたきつけられたのだ。自衛隊撤兵の闘いを軸とするイラク反戦闘争は重大な局面に突入した。今こそ自衛隊の即時撤兵をかちとろう。自衛官と家族にイラク出兵拒否を呼びかけよう。日米枢軸をもって「新たな15年戦争」へと突き進む日帝・小泉政権打倒へ、7月教科書決戦を全力で闘おう。
“撤退せず”と小泉
陸自の車列は軽装甲機動車で警護された人員輸送用の高機動車2両の計4両で、3両目の高機動車が爆発地点を通過しようとしたとき路肩で爆発が起きた。同車両はフロントガラスにひびが入りドアがゆがんだ。隊員にケガはなかったが、場合によっては隊員に死傷者が出た状況だった。
爆発現場は陸自駐屯地から北東に約5`で、陸自部隊が日常的に使用している幹線道路上。陸自の4両はサマワ近郊で担当した道路補修工事の完成式の準備のため、隊員と外務省職員1人の計約20人を分乗させて会場に向かう途中だった。4両はそのまま宿営地に引き返し、活動を中止した。
6・23自衛隊車列への爆破戦闘は、イラク人民の武装闘争が侵略軍・占領軍である自衛隊に対するせん滅戦闘として一線を越えてたたきつけられたものだ。
大野防衛庁長官は「これまでのロケット弾砲撃などの威嚇とは違う。今回は深刻、真剣に受け止めなくてはいけない」と語った。防衛庁幹部は「自衛隊員の生命を狙った可能性がある」「防御困難な移動中を狙われた。米軍でさえ手を焼いている」と、真っ青になっている。
ところが小泉首相は事件から一夜明けた24日、自衛隊の撤退は「考えていない」と明言した。小泉は“自衛隊員が殺されても構わない。お国のために命をささげよ。死んだら靖国にまつってやる”と言っているのだ。日帝・小泉政権は隊員にどれだけ犠牲者が出ようと自衛隊を撤退させる気などない。イラク侵略戦争参戦を突破口に、北朝鮮・中国侵略戦争を遂行できる自衛隊の侵略軍隊化を目指しているからだ。軍服を着た労働者や農民である自衛隊員を侵略者として死に追いやる小泉を許すな。
日帝・小泉政権は、イラク侵略戦争への参戦をもって、二度と引き返せない「新たな15年戦争」=世界戦争への道に踏み出した。日帝は、現代帝国主義が三たび世界大恐慌と世界戦争の時代に突入する中で、帝国主義としての存亡を日米枢軸=米帝ブッシュの世界戦争戦略との一体化にかけたのだ。
そのことは日帝に恐るべき飛躍を突きつけ、日帝・小泉政権をして戦争と資本攻勢(民営化=労組破壊)、改憲の大反動攻勢に踏み切らせている。日帝支配階級が「つくる会」教科書攻撃・教育基本法改悪攻撃へと打って出ているのも、小泉が中国や韓国の批判にもかかわらず靖国神社参拝を強硬に貫こうとしているのも、このことに規定されている。
イラク反戦闘争は、日帝・小泉=奥田による戦争と資本攻勢との闘いを貫く基軸的なテーマだ。それは日米枢軸を形成し世界戦争への道を突き進む日米帝国主義を打倒する歴史的なスケールをもつ闘いだ。労働者階級の根底的な決起をつくり出すために闘おう。
米軍が「掃討作戦」
6・23爆破戦闘は、米帝のイラク侵略戦争の泥沼化と凶暴化の中で、米軍と一体の占領軍・侵略軍である自衛隊に対するイラク人民の怒りが臨界点を超えて爆発し始めたことを示した。
米軍は、イラク人民の武装解放闘争の爆発に追いつめられ、ファルージャ大虐殺に続いて住民皆殺し型の軍事作戦をイラク北西部などで続けている。またバグダッドでかいらいイラク軍4万人と米軍1万人を投入した「稲妻」と称する大規模な軍事作戦を強行し、住民を片っ端から虐殺・拘束している。日帝・自衛隊は、こうした凶暴な侵略戦争を行っている米帝・米軍との連携をますます強め、イラク人民の闘いの圧殺に血道を上げているのだ。
陸自は、サマワの一部の部族指導者らに金をばらまき、自分たちの活動を「人道復興支援」などとプロパガンダする占領政策を行ってきた。自衛隊が米軍と一体となった占領軍であるという本質を隠蔽(いんぺい)しつつ居座り続け、敵地での占領支配と住民統治のためのノウハウや経験を蓄積してきた。
他方で、自衛隊はイラク侵略戦争をとおして侵略軍・実戦部隊化を図ってきた。占領軍として存在することを隊員に絶えず自覚させ、イラク人民をいつでも射殺できるように隊員の訓練と装備を強化してきた。
昨年1月からイラク侵略戦争に投入された自衛隊員はこの1年半でのべ3300人を超えた。陸自はサマワ駐屯地内で行っていた給水活動を2月に終了し、警備部隊を増強した上で、復興事業の警備・監督という駐屯地外での活動へとシフトしてきた。他方で米軍の兵站(へいたん)活動が自衛隊のC130輸送機によって支えられていることも忘れてはならない。
28日、サマワの失業労働者500人がデモを行い、警官の発砲によって1人が死亡し、7人が重軽傷を負った。サマワでも米英日帝による占領支配に人民の怒りが沸騰しているのだ。
サマワ駐留の陸自の隊員や車両に対し、4月以降たびたびイラク人民が投石で抗議している。陸自が手がけた復興事業の現場に立てられた看板の「日の丸」は黒く塗りつぶされた。今回の爆発現場の近くの路上には「占領反対」「日本に死を」と落書きされた。5月27日のサドル師派の集会では、「占領軍(自衛隊)は市街の中にまで入るな」との警告が発せられた。こうしたイラク人民の再三にわたる抗議や警告を無視し、侵略軍=占領軍として居座る自衛隊への怒りが爆破攻撃としてたたきつけられたのだ。
イラク人民は6・23爆破戦闘で、自衛隊に撤退か、死かという選択を突きつけた。もはや一刻の猶予も許されない。自衛隊は侵略戦争参戦と軍事占領をやめて即時撤退せよ。
第3章 “抵抗は12年続く”
ブッシュ米大統領は28日、イラク人への「主権移譲」から1年を迎えたことを受け、米ノースカロライナ州の陸軍基地で演説し、「イラクでの仕事は困難で危険だ」と認めながら、無期限の米軍駐留を継続する考えを強調した。
このブッシュ演説は、イラク侵略戦争の泥沼化の中で、アメリカの労働者人民からイラク撤兵要求が噴出し、共和党議員からさえ米軍の撤退期限を決める法案が提出される事態を受けての弁明として行われた。米ギャラップ社が13日に発表した世論調査でも、イラクからの米軍の撤退を望む声が過去最高の約6割に上った。
「主権移譲」のペテンから1年、米軍はイラク侵略戦争において軍事的にもきわめて困難な局面に突入し、敗北が避けられなくなっている。とりわけ4月末のイラク「移行政権」発足は、イラク人民の武装解放闘争を一層激化させ、米帝の軍事占領支配の危機を新たな段階に突入させた。この米軍の敗勢を核心とするイラク侵略戦争の泥沼化が米帝の経済的政治的危機へと発展しているのだ。
米国防総省の発表でも、イラク戦争開戦以来の米兵の死者はすでに1700人を超えた。5月以降は1日70件もの米軍への戦闘がたたきつけられている。米軍は追いつめられて凶暴化し、大規模な掃討作戦を行っているが、成果は上がっていない。極悪非道な無差別虐殺・拘束は広範なイラク人民の怒りをさらにかき立てている。
ラムズフェルド米国防長官は26日、イラクの「武装勢力の抵抗活動は、何年も続く可能性がある。12年続くかもしれない」とし、「われわれがこれを鎮圧するわけではなく、イラク人とイラク治安部隊が抵抗勢力に勝利できる環境をつくる」と述べた。
このラムズフェルド発言は、米軍がイラク人民の武装解放闘争を鎮圧できないことを認めて、かいらいイラク軍、イラク警察を前面に立てる形でペテン的な「出口戦略」(イラクからの「撤退」ではなく、駐留規模の「一定程度の縮小」)を模索していることの表明である。イラク軍事占領を維持できない米帝は、現在100カ所以上の基地に配置されているイラク駐留米軍を4カ所の空軍基地に集約し、それらを恒久的な軍事基地にする計画を立てている。
イラク「移行政権」のジャファリ首相は訪米中の24日、ブッシュ大統領に米軍駐留継続を要請した。同政権はイラク人民に支配の基盤を持たない脆弱(ぜいじゃく)なかいらい政権であり、米軍・多国籍軍の軍事力を背景にしなくては一時も存続できない。それは「イラク新憲法」制定後にデッチあげられる「正式政権」も基本的に変わらない。米帝はイラク侵略戦争の泥沼から絶対に逃れることはできない。
今こそ闘うイラク人民と連帯し、反戦・反軍闘争の飛躍をかちとろう。陸自第4師団(司令部・福岡県春日市)を中心とした第7次イラク派兵阻止闘争を、8・6広島―8・9長崎反戦反核闘争と一体の闘いとして闘い抜こう。12月14日に期限が切れるイラク派兵の延長を阻止しよう。
(早乙女優)
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週刊『前進』(2205号4面3)(2005/07/11)
コミューン 8月号 試練下の民主労総
韓国民主労総は、労資政間の交渉路線への屈服か否か、労働者の総非正規職化を許すか否かをめぐって歴史的路線闘争の真っただ中にある。今回の特集は、この問題に焦点を絞り、韓国労働者の闘いの課題と現状を徹底的に明らかにした。
第1章では、「労使政委員会」への民主労総現執行部の参加路線に反対する現場労働者の断固たる闘いについて詳細に明らかにしている。またこの章では、韓国階級闘争、労働運動内部のNL(民族解放)系とPD(民衆民主)系などの諸傾向と、その理論、運動路線についても詳しく分析している。第2章では、労働者階級の分断・差別を極限化する非正規職法案をめぐる路線論争の現状と、各産業領域における非正規職法案粉砕の激しい闘いの実態を詳しく紹介している。
この二つの路線闘争は、階級的労働運動、ランク&ファイル運動の成否を決するものとしてあり、韓国の民主労組運動との国際連帯をめざす日本の労働者階級にとって正確な認識が要求されているものだ。
資料として、非正規職化の一挙的進行に伴う民主労総の組織的構造の変動と現状に関する最新データを掲載した。
翻訳資料は、AFL−CIO既成指導部の分裂が何を意味するかを論じた3論文と、ロサンゼルスのUNITE HERE(縫製・繊維/ホテル・レストラン労組)に所属するホテル労働者の闘いの勝利報告を翻訳、掲載した。
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週刊『前進』(2205号5面1)(2005/07/11)
被爆60年の8・6広島−8・9長崎へ
青年と4大産別を先頭に反戦反核の大統一行動を
帝国主義の侵略戦争と対決しよう
深沢明夫
被爆60周年を迎える8・6広島−8・9長崎反戦反核闘争は、労働運動と労働組合の未来を決める決定的な闘いである。既成の原水禁運動が消滅の危機を迎える中、帝国主義による「外への侵略戦争、内への階級戦争」と全面的に対決する労働運動が今こそこれに取って代わらなければならない。今春の「日の丸・君が代」決戦、それを引き継いだ都議選決戦・教科書決戦を闘ってきた全地平を、一点、この8・6−8・9闘争に結集し、反戦反核の階級的=国際的な大統一行動を実現しよう。4大産別を軸に闘う労組の総決起をかちとり、今秋11月労働者大行動へ進撃しよう。青年労働者はその先頭で闘おう。
世界戦争=核戦争の危機に階級的反撃
帝国主義の基本矛盾が全面的に爆発し、世界戦争過程−世界核戦争の危機が一段と激化している。労働者階級に対する戦争と民営化、労組破壊の攻撃が、一切の中間的あり方やあいまいさを右の側からぶち破って、むき出しの「戦争の言葉」で襲いかかっている。われわれは、あらゆる階級的攻防を戦時下の階級決戦としてとらえ、全面的な帝国主義批判を強めなければならない。
この過程は同時に、革命的情勢への急速な接近としてある。国際反戦闘争・労働運動と民族解放闘争がかつてなく激しく高揚し発展している。労働者階級全体が激しく行動的になっており、国際主義的結合が深まっている。ここにおいてこそ、帝国主義打倒=プロレタリア革命、反帝・反スターリン主義プロレタリア世界革命の必要性・不可避性を徹底的に押し出して闘おうではないか。
重要なのは、マルクス主義者としての原点的怒りと確信をもって、戦争と民営化、労組破壊の全攻撃に立ち向かい、階級的暴露と革命的宣伝・扇動に全力を挙げることである。とりわけ、帝国主義が帝国主義間の争闘戦を極限的に強め、世界戦争過程が同時に世界核戦争の危機として進行している中で、これに対する人間的怒りを階級的な帝国主義批判としてやりきらなければならない。戦争と核、その一切の根源は帝国主義にあり、帝国主義を打倒することなしに、この現実を変えることはできないのである。「核を廃絶する」ことの持っている独特の重み、それは世界革命の重みである。
ヒロシマ・ナガサキとは何か
今一度、「ヒロシマ・ナガサキとは何だったのか」をはっきりさせなければならない。
1945年8月6日広島、8月9日長崎に投下された原子爆弾によって、広島14万人、長崎7万人が虐殺された(同年末までの数字)。原爆炸裂の瞬間に放出される放射能が人体の細胞組織を破壊し、続いて超高温の巨大な火球が出現し、何千度にも及ぶ熱風が地上のものをことごとく焼き尽くした。火球は猛烈なスピードで膨張し、衝撃波と呼ばれる空気の塊が発生、この風圧によって頑丈なコンクリート以外は跡形もなく破壊された。まさに「わずか10秒間で一つの街が消滅した」(『原爆投下・10秒の衝撃』ロバート・クリスティ)。それはまさに、帝国主義戦争がもたらした人類史上類例をみない大惨劇である。
こうした阿鼻(あび)叫喚の中を生き抜いてきた被爆者の「核と人類は相いれない!」という叫びを先頭に、「ヒロシマ・ナガサキを繰り返すな」というスローガンは、戦後の反戦運動と労働運動の階級的原点となってきた。この階級的原点に自らの帝国主義への怒りを一体化させ、再び繰り返されようとしていること、いやすでに繰り返されてしまっていることを暴露・批判しよう。
「今、被爆者は怒らないといけない。多くの人に会って“二度と繰り返すな”ということを訴えなければならない。ビラをまこう、活動しよう。そのためにも一日も長く生きよう」(被爆者・肥田舜太郎さん/4・10被爆者集会の発言)
被爆者の階級的人間的怒りが、これまでの原水禁運動の限界を突き破る決起として闘われている。03年4月の被爆者集会を歴史的画期とし、05年4・10の被爆者集会に引き継がれている被爆者の自己解放的決起の始まりと、それを継承する被爆2世・3世の新たな決起。それは被爆者解放・日帝打倒に向かって開かれた根源的決起である。この被爆者の自己解放の闘いに徹底的に学び、帝国主義に対する怒りの先頭に立って闘うことである。
勝利の戦略・路線はどこにあるのか。それは自国帝国主義の侵略戦争への突入を「連帯し、内乱へ」の戦略的総路線をもって闘うことである。ここで問われているのは、すさまじい帝国主義的排外主義、愛国主義、祖国防衛主義と意識的に徹底的に闘うことである。連合指導部との対決の核心はここにある。「つくる会」教科書決戦を、こうした帝国主義的排外主義との全面的対決の決戦として闘おうではないか。
「外への侵略戦争、内への階級戦争」攻撃を一体のものとしてとらえ、その全攻撃に階級的反撃をたたきつけなければならない。「労働組合論の革命論的意義」を鮮明にさせ、その非妥協的実践をこの7〜8月攻防として闘おう。労働組合の最大の決起を8・6−8・9に実現し、労組を軸とした反戦反核大統一行動の実現に全力を挙げよう。
日米枢軸下に独自の核武装狙う日帝
帝国主義の基本矛盾が全面的に爆発し、帝国主義間の争闘戦が極限的に強まっている。イラク戦争をめぐる帝国主義間対立の激化、フランス・オランダでのEU憲法否決、NPT(核拡散防止条約)の決裂、さらに国連常任理事国をめぐる激突など、いずれも「戦争の言葉」で帝国主義が激突を始めている。
米帝ブッシュはイラクへの侵略戦争を世界戦争戦略として発動している。「恐怖と衝撃−ヒロシマ的心理効果を与える」作戦と銘打って2200dといわれる劣化ウラン弾でイラク全土を汚染した米軍。ヒロシマ・ナガサキを何度繰り返してでも生き延びようとする、帝国主義の真の姿だ。
米軍トランスフォーメーション(再編)はこのイラク侵略戦争を「不安定の弧」(北アフリカから東アジア全域)全体に押し広げ、この中でむき出しの帝国主義間の争闘戦を貫徹していくための米軍と米軍基地の実戦的再編である。そこでは劣化ウラン弾の全面使用、地下壕破壊用の小型核兵器(バンカーバスター)開発・使用も前提化されている。トランスフォーメーションの核心には、核軍事力をもっと直接に投入し、核を使って勝つための核戦略の全面的な再編・強化がある。
米帝がNPTを破壊し、全面的な決裂に追い込んだ背景には、こうした核戦略があるのである。米帝ブッシュは侵略戦争、帝国主義間戦争−世界戦争を核戦争として強行していくことを決断しているのである。
労働者階級は、帝国主義とはもはや一日たりとも共存することはできない。イラク侵略戦争に対して全世界で巻き起こっている、戦争と民営化に対する労働者と被抑圧民族人民の激しい闘いの爆発は、帝国主義を打倒するまで止むことのない根源的決起である。
帝国主義間争闘戦において敗勢にあえぐ日帝・小泉は、その絶望的突破をかけて極めて凶暴な、激しい動きを開始している。イラク侵略戦争への参戦を継続し激化するとともに、今年2月に開催された日米安保協(2プラス2)では、中国・北朝鮮対策を日米の「共通戦略目標」として確認した。そして新たな日米安保ガイドライン制定、沖縄基地の再編強化、本土全域の基地の再編・強化が策動されている。さらに6月5日に小泉政権は、ミサイル防衛(MD)を06年度から日米の共同開発として進めることを発表している。まさに日帝は米軍再編との一体化=日米枢軸体制をもって、北朝鮮・中国への侵略戦争を強行しようとしているのである。
また、「もんじゅ」の再稼働策動や、六ケ所村核燃料サイクル(ウラン濃縮・核燃料再処理工場)の本格的稼働策動、危険極まりないプルサーマル計画の採用(島根・鹿島3号炉建設など)、瀬戸内海・上関原発建設攻撃など、本格的な独自の核武装を推し進めている。日帝の国連常任理事国入り策動は、こうした独自の核武装の動きと一体のものである。さらにファシスト石原を最先兵として、朝鮮・中国への資源・領土略奪の激化と排外主義的扇動が渦巻いている。
こうしたすべての攻撃が教育基本法改悪−憲法改悪をめぐる、05年から07年決戦として開始されている。05〜07年決戦は、まさに戦後史上最大の決戦であり、日本プロレタリア革命の成否のかかった決戦である。小泉首相の8・6式典参加・慰霊碑参拝を断じて許さず、8・6−8・9反戦反核大統一行動に万余の大結集をかちとり、戦争と改憲をめぐる05〜07年決戦の歴史的突破口としよう。
「つくる会」教科書採択阻止と一体で
杉並を最大の攻防点とする「つくる会」教科書攻撃との闘いは、8月採択阻止に向け05年から07年決戦の帰すうを決する重大決戦である。帝国主義が存亡の危機の中で切羽詰まって、反革命的本質をむき出しにして労働者階級人民に襲いかかってきている。これと徹底的に対決し、勝ち抜くことなしに、いかなる改憲決戦も、4大産別決戦もありえない。
この攻撃の核心は労働者階級の階級性を全面的に解体する点にある。“国家・国益を守るためには戦争も必要だ。国家の危機に際しては国民は国家のために死ぬことができなければならない。それができてこそ真の人間であり国民だ”というすさまじい恫喝を労働者人民に加え、国益主義・愛国主義のもとへの労働者人民の屈服を迫っているのである。「つくる会」会長で、公民教科書の執筆者でもある八木秀次の主張を見てみればその狙いがはっきりとしてくる。
八木は、『国民の思想』で「福祉国家」から「品質保証国家」への転換なるものを推し進めた英サッチャー政権のサッチャリズムを「精神革命」とたたえ、「国営企業の労働組合はなるべく働かず、利益が出ていなくても賃上げを要求し……教育界でも教職員組合の影響力が強く、いわゆる偏向教育が行われていた」として、これらが「国家を内側から食い破るシロアリのようなものであった」として労働運動と労働組合を徹底的に罵倒(ばとう)している。そしてサッチャーが「教職員組合と馴れ合っていた地方の教育当局から教育課程基準の決定権を取り上げ、国が掌握することで、教育界から左翼色を一掃しようとした」として全面的に賛美するのだ。
この八木らが主導する「つくる会」教科書運動とは、まさに労働組合の全面的解体要求であり、「日教組撲滅」運動である。
「つくる会」教科書では、アジア人民への侵略戦争を全面的に開き直り、賛美すると同時に、日本の労働者人民が強制された惨劇−ヒロシマ・ナガサキ、オキナワについてもその事実を抹消し(原爆の被害者数を削除するなど)、逆に「日本の将兵は敢闘精神を発揮してよく戦った」としている。日帝が強行した「15年戦争」を全面的に開き直ると同時に、戦後の「ヒロシマ・ナガサキ、オキナワを繰り返すな!」という中に込められた労働者階級の階級性を徹底的に憎悪し、これをたたきつぶすことを目的としているのである。
これに対して、労働組合が戦後的な「平和と民主主義」を対置するだけでは勝てない。「国益」に対しては「そんな国益とは労働者は相いれない。むしろ戦争と民営化で労働者に一切の矛盾を転嫁し、労働者を死に追いやるしかない国は滅びるべきだ」という革命的祖国敗北主義を対置しなければならない。“国家と国民を守るためには戦争も必要”という主張に対しては、「すべての国の労働者は階級的きょうだいであり、被抑圧民族人民はともに帝国主義を打倒する同志である。われわれが銃を向けるのはこうした仲間ではなく、帝国主義だ!」という回答を対置しなければならない。「国のために死ね」という攻撃に対しては、「労働者は帝国主義のために命をささげることをきっぱりと拒否する。そして労働者は自分と家族、仲間たちの階級的利害をかけて、帝国主義との闘いのために自らの生涯をかける」という階級的死生観を対置して闘うことである。
そうした労働者階級の革命的回答が、ストライキを何度でもたたきつけて闘う動労千葉の中にある。そして、3〜4月の「日の丸・君が代」強制に対する教育労働者の不起立・不服従の闘いの中にある。処分攻撃をはね返し、生き生きと闘い抜く教育労働者の姿こそ、「つくる会」教科書攻撃をその根幹のところで打ち砕いている。
虚偽のイデオロギーと労働者階級の闘いへの恐怖を根底に持つ、小泉−石原−「つくる会」運動とは本質的に脆弱(ぜいじゃく)である。労働者と労働組合が決然と立って闘うならば、必ずやこのような反革命を粉砕できるのである。
日教組・自治労の改憲勢力化阻止へ
8・6−8・9闘争は、教労を始めとする4大産別決戦と一体の決戦である。8・6−8・9闘争への労組の大結集運動が、日教組や自治労をめぐる労組の改憲勢力化を打ち砕く決定的なテコとなるのである。
とりわけ日教組中央が、今春「日の丸・君が代」強制拒否の決戦に立ち上がった教育労働者の闘いを踏みにじり、こうした闘いを押しつぶして、改憲勢力として転向しようとしていることを許してはならない。
日教組委員長が右翼と対談
日教組委員長の森越は、雑誌『論座』で右翼の一水会顧問の鈴木邦男との対談に応じ、次のような驚くべき言辞を吐いている。
「『日の丸』が好きな人がいてもいいし、『君が代』に誇りを持てる人がいてもいいと思う。逆に『歌うな』とか『掲げるな』と言うのは、その人たちの思想信条を害する」「『君が代』というのは非常に平和的な内容の歌」「憲法についても、不磨の大典ではないと思っています。未来永劫(えいごう)変えてはいけない、というものではない」「(自衛隊について)国際的にも乱暴なところが出てきたときにどうするのか、そこらの論議はしていかなければならない」(『論座』6月号)
これは小泉・石原の反革命的迫力の前に屈服し、右翼の前に頭(こうべ)をたれて、「不起立」の闘いを「撲滅」することを宣言したものである。民主党・連合路線、パートナーシップ路線に沿って、改憲勢力として日教組全体を転向させようとしているのである。
また、自治労中央は「現実と憲法とのかい離を埋めるため」に自衛権を認め、自衛隊を合憲とする「平和基本法」制定の要求を掲げようとしている。「平和基本法」制定によって、憲法9条を解体せよ、という要求にほかならない。
小泉−奥田路線と労働者階級の最大の攻防点である郵政民営化阻止へ、JPU中央本部打倒と、物ダメ・ストライキの方針を鮮明にさせ、総決起しなければならない。国鉄では、JR尼崎事故への怒りを爆発させ、1047名闘争陣形と国労5・27臨大闘争弾圧裁判陣形を柱に断固として闘い抜こう。
今起きていることは、戦争と改憲、これと一体の民営化攻撃によって労働組合をたたきつぶし、丸ごと産業報国会に変質させようとしていることである。戦前の産業報国会のスローガンは「聖戦完遂・スト撲滅・労使一体・事業一家」であった。この恐るべき国益主義・愛国主義・排外主義のイデオロギーを根底的に打ち砕く現場労働者の決起が求められている。ランク・アンド・ファイル(現場労働者)運動こそ労働者の未来を切り開く決定的なカギである。
原水禁が連合との合同大会
この間後退を重ねてきた原水禁運動は、これまで続けてきた国際会議とともに開会総会の開催を放棄し、被爆60周年記念と銘打って連合・核禁会議との合同大会を開催する方針である。大会の実行委員長は9条改憲を主張する連合・笹森会長であり、核禁会議とは従来から核抑止力を容認し、北朝鮮や中国の脅威を主張する翼賛団体である。戦時下に突入した今、原水禁運動はついに戦争翼賛運動に吸収されようとしている。
戦争と民営化と闘う国際連帯を打ち固め、帝国主義を打ち倒す鮮烈な闘う労働組合が結集した昨年の11・7労働者集会の戦略的地平を引き継ぎ、この新たな潮流こそが原水禁運動に取って代わる8・6−8・9闘争の国際的な大統一行動を実現しよう。ヒロシマ・ナガサキを原点とする労働運動の伝統は、戦時下において、必ず労働者・労働組合の階級性を覚醒させる決定的なテコとなる。労働運動における「分岐・流動」情勢を、この8・6−8・9闘争でさらに推し進め、本格的な「再編・高揚」へと組織していこう。
教労を先頭に、全逓、自治体、国鉄を始め、民間労働者など全産別の労組の8・6−8・9総決起を実現しよう。そして戦後60年の8・15闘争を闘い、11月労働者大行動への決定的突破口としていこう。
部落解放同盟全国連合会を始め、戦争と差別・抑圧攻撃と闘う被差別・被抑圧諸階層人民の総決起をかちとろう。
全学連の旗のもとに全国の闘う学生、そして高校生の総決起をかちとろう。
国際的なイラク反戦闘争の爆発と連帯し、自衛隊の即時撤兵、第7〜8次派兵阻止を闘おう。米軍再編=日米安保大改定を阻止しよう。沖縄基地撤去・辺野古新基地建設阻止を闘おう。
青年労働者こそ歴史の主人公である。青年労働者・労組青年部の闘いこそが労働運動に活力を与え、労働組合を戦闘的につくりかえる。労働運動における「分岐・流動」情勢とは、青年労働者と労組青年部の中にこそある。8・6−8・9への総決起から11月労働者大行動へ、青年労働者の大躍進を実現しよう。真っ向からマルクス主義を持ち込み、全階級的に復権させ、マル青労同1千人建設をなんとしても実現しよう。
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週刊『前進』(2205号5面2)(2005/07/11)
7・18反核東京集会へ 8・6−9 全国統一実呼びかけ
8・6広島−8・9長崎反戦反核闘争全国統一実行委員会から、「あらたな核戦争をくいとめよう! 7・18東京集会」への呼びかけが発せられたので紹介します。(編集局)
反戦・反核を闘いぬく労働者・学生・市民のみなさん! 7・18東京集会への参加を呼びかけます。
全国統一実のメインスローガンである「くり返すなアジア侵略! ヒロシマ・ナガサキ、オキナワ、ビキニを」は、「核兵器は帝国主義が生み出した究極の大量・無差別殺りくの兵器であり、『核と人類は共存できない』という」立場を示し、二度とアジアへの侵略戦争を許さない決意を表しています。
「つくる会」教科書は、天皇制と天皇制イデオロギーを賛美し、「ヒロシマ・ナガサキ」「オキナワ」の犠牲者を「英霊化」することで、新たなアジア侵略戦争を推進しようとする攻撃です。「つくる会」教科書の採択は絶対に阻止しなければなりません。ともに闘いましょう。
◇集会のご案内◇
7月18日(月)
12時30分開場、13時開始
杉並産業商工会館3F講堂
▼パネルディスカッション
司会・鎌仲ひとみ(映画監督)、発言・坂井留吉(核燃から漁場を守る会)、松井英介(放射線医学者)、大石又七(第5福竜丸元乗組員)
▼特別報告「辺野古・新基地建設阻止の最前線から」
阿部和子(海上行動隊)
▼緊急アピール
杉並・「つくる会」教科書絶対阻止の闘いの現場から
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週刊『前進』(2205号6面1)(2005/07/11)
排外主義の先兵=カクマル
「ブッシュ押しつけ改憲」論で小泉の戦争への衝動免罪
中国人民の抗日決起に敵対
今年前半の闘いで決定的破産深める
ファシスト・カクマルは、今年前半において決定的に破産を深めた。
第一に、卒・入学式での「日の丸・君が代」強制攻撃に対して、不起立を訴える闘いを「挑発」と非難し、この闘いを封じるために「告訴・告発運動」なる権力利用運動を提唱したが、昨年に続く不起立闘争の爆発と、それを引き継ぐ教科書闘争の爆発によって完全に破産してしまった。
3月決戦はやはり決定的だった。卒・入学式闘争と動労千葉のストは、日帝ブルジョアジーと全面的に対決し、日本階級闘争、日本労働運動の階級的な立ち上がりに重大なインパクトを与えた。中国・韓国人民の巨大な決起と向き合って、日本のプロレタリアートが歴史的決戦を闘う道筋を切り開いたのだ。
教科書闘争は、そういうものとして4大産別の労働運動全体を決定する性格をもっている。4〜6月の闘いは、全逓、日教組、自治労の改憲勢力への転落を許さず、連合=帝国主義労働運動の屈服を切り裂いて、労働者階級が立ち上がっていく道筋をはっきりつきだしているのだ。
第二に、JR尼崎事故に直面し、JR西日本およびJR連合・西労組に問題があるかのようなキャンペーンを張ろうとしたが、そもそも日帝・中曽根のもとでの国鉄分割・民営化に黒田・松崎が協力して転向したことが、今日の出発点をなしていることは明白である。分割・民営化そのものに言及できないカクマルはノックアウト状態に陥っている。
第一と第二の問題は、戦争と民営化攻撃、戦争動員と階級絶滅攻撃に対する革命派と反革命派の明暗をくっきり分かつ問題であった。本稿では、カクマルが今日いかに路線的にも思想的にも破産を深め、スカスカの内実となり、極限的に反動化しているかを、3点に絞って暴露したい。
イラクのカイライ政権を完全に支持
今年前半期のカクマルの路線的・思想的破産を示す第一の事柄は、イラク反戦闘争において、混迷を深め、デタラメの限りをさらけ出していることである。彼らの立場はジャファリ・カイライ政権を支持し、今や米軍撤退を要求せず、カイライ軍が「武装勢力掃討」に駆り出されることも認めてしまうほど、犯罪的なものとなってきている。
カクマルは、昨年前半から「シスターニ師の熟柿戦術」と言って、今年1月の「国民議会選挙」に屈服して参加したシスターニ師を支持してきた。
そもそも1月の選挙は選挙とは言えない。米軍は、それが選挙であるという格好をつけるために、ファルージャ大虐殺までやった。そのすべてを見ぬふりをして、カクマルは1月の国民議会選挙を支持した。帝国主義支配階級以外にこのカイライ政権を支持しているのは、世界でカクマルだけである。
そして、今、ますます内戦化するイラクの事態に際し、あくまでもシスターニ師の路線が貫徹され、万々歳であるかのように描き出している。反革命通信『解放』1872号(6・13付)のSOB(中央学生組織委員会)論文では、次のように言う。
「シスターニ師は、シーア派主導のもとに『真の民族和解政府』を樹立する(同時に、その暁には米軍を撤退に追いこむ)という展望にのっとって、スンナ派とクルド人勢力のまきこみに力を注いでいる。この“戦略”にもとづいて、親米クルド人勢力と反米スンナ派勢力をまきこんだジャファリ政権を発足させたのである。また、米軍の『撤退時期明示・早期撤退』の要求も後景におしやり、アメリカに段階的な撤退をもとめるという姿勢をとっている。……米軍による『武装勢力掃討』作戦にも、あくまでも『移行』政権の『治安回復能力』を誇示するという思惑から、イラク軍を参加させるという姿勢をとっている」
カクマルがシスターニ師の「思惑」とか「言動」を描き出す時、まったく批判的コメントはない。シスターニ師を完全に支持・賛美する立場でものを言っているのである。ここではシスターニ師は、@「真の民族和解政府」を樹立する展望をもっている、A米軍の撤退時期明示・早期撤退を求めないで段階的な撤退を求めている、B米軍による「武装勢力掃討」作戦にもあえてイラク軍を参加させている――と言って、これを支持しているのである。
これは、今年の『解放』新年号論文において米帝のファルージャ大虐殺を免罪して「とにもかくにも国民議会選挙の機会を活用しようとしている」と言ってシスターニ師の支持を表明した時からさらに一段とエスカレートしている。つまり、米軍の「即時撤退」も「撤退時期明示」も求めなくていい、それどころか米軍による「武装勢力掃討」作戦(イラク人民虐殺戦争だ!)に参加してもいいと表明したのだ。「移行政権の治安回復能力を誇示する」だと? 米軍に替わって、イラク人民、ムスリム人民の闘いを鎮圧するということではないか。
「真の民族和解政府」というこの評価はいったい何だ。「樹立する展望」などと言っているが、すでに破産しきっているのだ。現実には占領下のすさまじい「内戦」が発展しつつある。民族和解の展望などない。あるとすれば、米帝の軍事力で武装勢力をせん滅することに成功することが条件だが、しかしそれはありえない。こうした現実をつくり出したシスターニ師は大きな責任がある。カクマルはそのシスターニ師とジャファリ政権そのものを完全に支持しているのだ。
だが、実際には、ジャファリ政権は、米軍なしには一日も維持できない、米軍が撤退したら即座に崩壊する体制でしかないのだ。「治安回復能力を誇示」するどころではない。米軍が単独では治安維持できない現実をカイライ軍として補っているにすぎないのだ。
カクマルは、「ヤンキー帝国のイラク軍事占領は大破綻(はたん)をとげ」と言いながら、一方でイラク人民の武装解放闘争が爆発していることについては、「『ザルカウィ』の名を騙(かた)って(米占領軍・CIAなどが)謀略テロを連日のごとく強行している」(同)と言うのだ。
彼らは、現実に現「移行」政権を揺さぶる攻撃が起きた時は、それを「米の謀略」と描き上げ、武装闘争の爆発を心から憎悪している。そうすることでカイライ以外の何ものでもない現政権の支持を表明しているのである。しかし、ジャファリ政権が占領軍の存在を認め、治安回復を掲げて米軍と共同行動をとっている以上、イラク人民がこれに徹底抗戦するのは当然のことではないか。ジャファリ政権が米帝のカイライである以上、打倒対象とされるのは当然である。
要するに、根本的には米帝の侵略とそれに対する武装勢力の民族解放闘争が激突しているのであり、帝国主義国の労働者人民がどちらの側に立つべきかは明白である。カイライ政権を民族和解政府に発展させよと言うカクマルは完全に帝国主義の立場なのだ。
カクマルの「イラク人民、ムスリム人民との連帯」論のインチキ性、反革命性はここに極まった。
「中国政府による官製闘争」と非難
今春のカクマルの路線的思想的破産を示す第二の事柄は、中国人民の反日帝の決起に対して、「北京官僚の“官製”の闘争」と言って、事実上完全に敵対したことである。「中国・韓国人民と連帯」と枕ことばのように言うけれども、実際にはむき出しの帝国主義的民族主義なのだ。
「中国政府が中華ナショナリズムを煽(あお)りたて、これに呼応するかたちで高揚したこの“官製”の闘争」(1866号、5・2付)
「中国権力者は、米・日の間に亀裂を入れることを狙う離間政策にのっとって、“日本タタキ”にうって出たのだ」(同)
ここには、日帝が現実にやっていることのすさまじさに対する怒りはまったくなく、それに対する中国人民の正当な抗議への共感もなく、ただただ、中国政府の思惑の実現としてのみ、中国人民の決起が描かれている。
カクマルは、中国人民の激しい反日帝のデモに直面して、中国政府がやらせた、という反応を、日本の右翼ジャーナリズムと歩調を合わせて行った。これは、中国人民が弾劾している、小泉の靖国神社参拝とそれについての居直り、「つくる会」教科書検定合格、日本の国連安保理常任理事国入り策動、2月の日米安保協での中国を名指しにした「共通戦略目標」、日帝の釣魚台(「尖閣諸島」)略奪などの日帝のこの間の動きに対して、日本の労働者階級としてどういう態度をとるべきかという問題で、カクマルが帝国主義的民族主義者らと一体の立場であることを歴史的に表明したということだ。
町村外相らが盗っ人たけだけしく中国政府に謝罪や賠償を要求していることを真っ向から弾劾し、日帝政府と闘うべき時に、カクマルが「中国政府のやらせ」説で自国政府と同一歩調をとったことを銘記しておく必要がある。
中国人民の決起は、日本帝国主義を弾劾すると同時に、日本の労働者人民に、日帝と対決して立ち上がることを激しく求めている。日帝の支配と抑圧と闘う労働者人民にとって、中国人民の決起は最大の階級的激励なのだ。それは確実に日本の階級情勢、階級闘争を揺さぶる。カクマルはそれが我慢できないし、恐怖の的なのだ。だから激しく罵倒(ばとう)するのだ。
これに関連してカクマルは、日本共産党に対し、「中国政府・北京官僚の代弁者」(1866号)、「胡錦濤政権の対外政策を美化している」「北京官僚の手先への“再”転身」(1872号SOB論文)とののしっている。これは、まったくとんちんかんで反動的な批判だ。
日本共産党は、中国人民の日帝に対する怒りの決起に対して「どんな理由があっても暴力はいけない」と言って非難した。デモの鎮圧で中国政府と一致したのである。日本共産党は、中国人民の激しい怒りの矛先が日帝に向けられていることに対し、「過去の侵略と現在の進出を区別せよ」と言って、現実の日帝および米帝の侵略と侵略戦争攻撃を擁護したのである。日共が自国政府の擁護者として登場したことをこそ批判しなければならないのだ。同時に、日共は、中国人民の闘いが中国政府に向けられ、第2革命に向かうことを本能的に察知して、これへの敵対を表明したのだ。
ところが、カクマルは、日本共産党が中国人民の闘いに敵対しているという肝心なことには何も言わないどころか、「胡錦濤中国が米日両国家に対して対抗的な軍拡をおしすすめ、『反日』排外主義を上から煽りたてているという反プロレタリア的な所業に手を染めていることについて見て見ぬふり」をしているのがけしからんと騒いでいるのだ(1872号、SOB論文)。カクマルはどんな意味でも「反帝・反スターリン主義」のポーズをとれない。カクマル思想の本体は、反共主義と排外主義の反プロレタリア思想そのものであることを自己暴露しているのだ。
これらのカクマルの排外主義を先頭に立って叫んでいるのが、言うまでもなく黒田当人である。
黒田寛一は、『解放』1867号(5・9付)に「〈愛国>噴炎」なる「歌」を載せ、そこで「中華思想」に対する敵意をあおり立てている。いくつか紹介すると――。
「安保理拡大に反対するこそ中華思想のあらはれなりけれ」
日本の安保理常任理事国入りに反対するのは、中華思想の現れだと非難し、日帝を擁護しているのだ。
「電網のカキコに煽られ数万のデモの隊列暴動化す」
インターネットでデモが組織されたことをもって「官製」だという。「暴動化」という言葉に、闘いの爆発に対する黒田の嫌悪感が表現されている。
「無差別の抗日暴動の炎、中日経済交流に水」
ここでは「無差別」ということで日帝資本や領事館が攻撃されたことを非難し、それが日中貿易を損なったと怒っている。
「いくさ場に散華せし兵思ふべし、『中華』ナショナリズム捨てるべし」
これはとりわけひどい。日本人の兵隊が戦場で死んだことを思えと中国人民に向かって説教している。しかも「散華」とは桜のように散ったという戦死の美化であり、靖国用語である。日本兵が中国人民を数限りなく虐殺したことは、ここではまったく語られない。それはまた、日本の労働者人民が戦争に動員され、天皇制国家に殺されたことを弾劾する立場とは無縁だ。
ここには、中国人民に対する露骨で尊大な排外主義的な敵意がある。そして、この「歌集」には、「桜」という語が十数回も頻出し、全編が「散りゆく桜」のカラーに覆われている。そこに作者=黒田の愛国心、日本主義の心情がほとばしり出ている。「〈愛国>噴炎」と題しているが、これは、中国人民の「愛国無罪」の叫びを激しくののしる黒田自身の愛国心の「噴炎」なのである。
黒田=カクマルが日本・中国・朝鮮の労働者人民の連帯闘争の共同の敵であることは明白だ。粉砕・打倒あるのみである。
「つくる会」教科書阻止の方針も欠落
今春のカクマルの路線的破産を示す第三の事柄は、「ブッシュ帝国おしつけの改憲」論である。最近の『解放』は、「改憲阻止」をペテン的に叫んでいるが、この「ブッシュ帝国おしつけの改憲」論なる対米従属論のオンパレードである。米帝の危機が深まり、そこから絶望的に凶暴な世界戦争計画をもってのりきろうとしていることに日帝が必死で対応し、日帝として国家の存亡をかけて戦争にのめり込もうとしていることに対して、カクマルは、「ブッシュに尾を振る小泉」「忠犬ポチ公」などと規定し、反米愛国主義の心情から、自国政府に対して、帝国主義としてもう少し“毅然(きぜん)”とした対応をしてほしいというような反革命的な論調で日帝・小泉を免罪ししり押ししている。
カクマルは、日帝・小泉の靖国神社参拝についての居直りや、「つくる会」教科書の検定合格などの動き、さらには朝鮮領土・独島(竹島)、中国領土・釣魚台略奪の攻撃が、日帝の帝国主義的本性をむき出しにした攻撃であることを見ようとしない。そして、これらについて一言二言アリバイ的に触れても、真っ向から弾劾するテーマにはまったくしていない。
これらの攻撃は、日帝が帝国主義として行き詰まり、米帝との矛盾を深めながら、日米枢軸を結んで激しく戦争へとのめりこんでいること、その世界戦争危機への帝国主義としての無準備性への絶望的焦りに駆られての凶暴化なのだ。そういう問題としてとらえることができないカクマルは、日帝の攻撃の重大性と切迫性と危機性がまったく分からないのだ。
それどころか、1872号SOB論文では、「(靖国問題で)居直った小泉にたいして、日本経団連会長の奥田は公然と苦言を呈した。対米従属一辺倒ではなく中国・アジアも重視する対外政策への修正をうながすという観点から、奥田は靖国参拝に固執する小泉を非難した」と言い、ブルジョアジーの理性的な判断に対して、ブッシュ一辺倒の小泉が暴走しているというように描き出そうとしているのである。この「小泉をたしなめる奥田」というような表現は、『解放』紙面にしばしば現れ、カクマルの基本的な奥田評価になっている。
しかし、奥田は何を言っているのか。03年1月の「奥田ビジョン」は、日帝の危機について「このままでは日本は崩壊する」という危機感を前面に出し、帝国主義間争闘戦に勝ち抜くために「東アジア自由経済圏」構想を押し出した。日帝の基本路線は、まさに小泉=奥田路線として、「戦争と民営化(労組破壊)」の攻撃に据えられてきたのである。それは、今年1月の日本経団連の二つの「提言」での、教育基本法改悪・憲法改悪の提起、4・19提言として、さらに強められているのである。カクマルの奥田美化論は、こうした日帝の絶望的危機と凶暴化についての度し難い認識を示している。そもそもカクマルは、03年12・9自衛隊派兵決定をもって日本が戦時下の階級闘争に突入したということが情勢認識の基本に座っていないのだ。
「つくる会」教科書採択阻止の闘いの重要性、切迫性も、この日帝・小泉=奥田路線の凶暴化との闘いとして、日帝の基本路線に対するまさに階級の存亡をかけた闘いとなっているのである。
だから、ファシスト・石原がむき出しに中国侵略戦争をあおり立てる事態になっていることは、日帝にとって何か突出した異端の出現としてあるのではなく、日帝の基本戦略を鋭く表現するものとしてあるのだ。こうした階級的認識に立たない限り、およそ戦時下の階級闘争など闘えない。
だがカクマルは、「つくる会」教科書との闘いを提起することすらしない。カクマルはすでに帝国主義の陣営に移行した存在でしかない。05年後半決戦の中で、カクマルを完全にたたきのめしていこう。
〔工藤俊夫〕
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週刊『前進』(2205号6面2)(2005/07/11)
「ヤミ専」攻撃の狙いは労働組合運動の根絶だ
大阪市労連 組織の存亡かけ反撃を
昨年来の大阪市職―大阪市労連(大阪市の主要7労組からなる。4万人)に対する攻撃が4月以降、自治体労働運動の心臓部ともいうべき現業と組合活動そのものを標的とする攻撃として激化している。
経済財政諮問会議・日本経団連・総務省などが「05年は地方公務員問題を集中的にやる」と言っているように、日帝国家・資本家階級は05年の政策のかなめ中のかなめに自治体労働運動解体を据えた。個別自治体におけるあれこれの事象が問題なのではない。戦争・改憲と民営化=労組破壊をめぐる階級決戦が自治体労働運動の戦場で荒々しく火ぶたを切ったのだ。
キャンペーンは「大阪市厚遇問題」として「共済退職金」や「事務服貸与」への攻撃として始まった。160億円の福利厚生費が削減され、国税を動員した遡及(そきゅう)課税が強行され、不当な「カラ残業」キャンペーンが張られた。
そして今や「ながら条例」(注)で認められてきた勤務時間内の組合活動、「ヤミ専(正規の手続きを踏まずに労働組合活動に従事すること・人)」に非難が集中している。関係者の誰もが知っている労使協定・労働協約・労使慣行をあたかも突然「大スクープ」であるかのようにキャンペーンしている。これは、自治体労働者が自治労に結集して闘うことそのものを否定し、辱め、葬り去ろうという凶悪な攻撃だ。
だが、こうした賃金強奪も権利侵害も組合否定も、階級矛盾が激化し、敵がこれまでどおりの支配を貫けなくなったことの現れだ。自治体労働者は、敵の危機を好機ととらえ、階級的激突を恐れず闘い、敵の弱点を突き、破綻(はたん)点に転化しなくてはならない。
戦後革命の原点に回帰して闘う
そもそも団体交渉と労働協約とは、長い労資の階級間戦争の中のほんのひとときの息継ぎの「平和協定」でしかない。当局者どもが恒常的・永続的な争議状態を望むのなら、断固として受けて立とうではないか。
自治体労働者は、戦後革命期に「天皇の官吏」であることを自ら拒否して、労働者階級の一員として闘うために労働組合を結成して闘ってきた。50年代の財政危機を突き抜けて、賃金到達闘争を始めとする自治体労働運動の反転攻勢が60年代初頭から始まった。
この中で「ながら条例」が66年、自治省の主導で各自治体によって条例化された。怒濤(どとう)のように前進する公務員労働運動にとにかくなんらかの枠をはめ込もうとしたものだ。
自治体労働運動はさらに60年代後半から70年代にかけてベトナム反戦、部落解放闘争などを担いながら強大な組織された労働者部隊として登場していった。とりわけ現業労働者はさまざまな手当をかちとり、低賃金を打破してきた。学校給食と清掃を狙い撃ちしようとした80年代中曽根行革も、自治体労働運動を屈服させ、解体することはできなかった。そして激しい90年代行革と闘い、今日の小泉「構造改革」と粘り強く闘っている。
自治体労働者は、日々の組合活動をとおしてさまざまな合理化攻撃を食い破り、権利を確保してきた。同時に安全衛生、労働時間から仕事の割り振りに至るまで、日々の勤務時間中の組合活動によって自治体の仕事が回ってきたといっても過言ではない。
われわれはいつでも恐れず戦後革命の原点原野に回帰して闘う。お前たちもその覚悟でかかってこい――これが「ヤミ・カラ」攻撃に対する自治体労働者・労働組合の基本的態度だ。
現業不採用・民営化で人員削減
今回の大阪市の「ヤミ専」攻撃の特徴のひとつは、06年度現業不採用(04年度は350人採用)攻撃と一体のものとして仕掛けられてきていることだ。
当局は「環境事業局は15%が余剰、全員が出勤すれば220人余る」「余剰人員を抱えていることがヤミ専の温床だ」と議会で答弁している。だが「全員出勤」とは、有給休暇を始めとするあらゆる権利休暇を放棄した場合の架空の数字でしかない。まさに「工場法以前」の状態で労働者を働かせ、1分の余裕も与えず、組合活動の余地など奪ってしまおうとしているのだ。こうして定員を大幅削減し、民営化を強行しようとしている。
日本経団連・奥田会長らは「07年危機は好機だ」などと叫んでいる。“07年をピークとする団塊世代大量退職期に退職不補充を貫いて、大規模な人員削減を実施する”という意味だ。
4月に出された大阪市の「市政改革の基本戦略」では、4〜9月に交通局・環境事業局・区役所を集中的に改革し、10月からは改革の本丸というべき労使関係・人事制度に踏み込む。
その際、「企業再生や国鉄分割・民営化をモデルにする」とし、JR西日本の労務担当常務をも改革本部に動員する予定でいた(JR尼崎事故に追い詰められ、JR西日本はこれを辞退した)。3月議会では、各委員会で一斉に自民党・公明党などが「ヤミ専」問題を取り上げ、現業不採用(現業切り捨て・民営化)と一体のものとして労組攻撃を始めた。
こうした攻撃を先端として、「骨太方針X」「05人勧」など、自治体労働運動の根底的な解体を狙う攻撃が集中的に仕掛けられようとしているのである。
国民保護計画=戦争動員が狙い
こうした労組否定・労組解体の攻撃は「国民保護法制」=戦争動員体制づくりの攻撃と一体である。
「知識経験者」として大阪府国民保護協議会の一員に加えられ、有事体制を労組として翼賛し支える役割を担っている連合大阪事務局長(大阪市職)さえも「ヤミ専」呼ばわりされている。「ヤミ専」攻撃の狙いが自治体労働運動の完全屈服・解体、戦争動員装置化にあることは明らかだ。
この8月には大阪府の国民保護計画概案が策定され、来年2月には議会に確定報告される。06年度末までには市町村の国民保護計画が策定される。敵は05年を戦争動員体制構築のためのぎりぎりのタイムリミットとして、今日、自治体労働運動解体攻撃に打って出てきたのだ。危機にかられた絶望的な攻撃なのだ。団結を固めて戦争協力拒否を貫こう。
自治体労働者は6月、都議選決戦を全力で闘いぬいた。7月、「つくる会」教科書採択阻止決戦に総決起しつつ、自治体労働運動解体攻撃を迎え撃とう。そして8月、自治労の改憲勢力化を阻止する自治労鹿児島大会決戦に向かおう。〈戦争と民営化>と闘う自治体労働運動を今こそつくり出そう。 (川上憲一)
注「ながら条例」 「職員団体のための職員の行為制限に関する条例」。「職員が給与を受けながら活動できる範囲」を定める。66年6月に自治省が出した「準則」(モデル)に沿って各自治体が制定した。勤務時間内の労働組合活動は当局も法律も認めてきた労働者の権利だ。
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週刊『前進』(2205号6面3)(2005/07/11)
6月22日〜28日
天皇夫妻が「サイパン」訪問
サマワ、陸自車列に本格攻撃
●靖国「核心と思わぬ」 小泉首相は衆院決算行政監視委員会で、中国、韓国が靖国神社への参拝自粛を求めていることについて「日中、日韓関係で私の靖国神社参拝が核心だとは思っていない。韓国や中国の言うとおりに全部しろ、という考えは私はとっていない。日本には日本の考え方がある」と述べた。(22日)
●靖国参拝継続を決議 「誇りある歴史、伝統をもつ日本を次代に伝える」などをうたう超党派の日本会議国会議員懇談会(会長・平沼赳夫前経済産業相)が国会で総会を開き、首相の靖国神社参拝継続を支持する決議を採択した。その際に森岡正宏厚生労働政務官は「東京裁判が本当に正しかったのかどうかということを国民に訴え、世界中の人たちにも発信すべきだ」と発言した。(22日)
●サマワ、陸自車列で爆発 イラク南部サマワで、陸上自衛隊の車両4両が走行中、路肩で爆発が起きた。車列の3番目を走っていた隊員輸送用の高機動車のフロントガラスにひびが入り、ドアがゆがんだ。隊員と外務省職員1人の計約20人にけがはなかったという。地元の警察幹部は「自衛隊を狙った攻撃だ」と述べた。イラク派遣部隊が宿営地外で攻撃を受けたのは初めて。24日、小泉首相は、自衛隊を撤退する可能性について「現在のところ考えていません」と述べた。(23日)
●沖縄戦から60年 沖縄戦「終結」から60年を迎えた。激戦地となった沖縄本島南部の糸満市摩文仁(まぶに)の平和祈念公園で沖縄県主催の「沖縄全戦没者追悼式」が行われ、小泉首相も出席した。小泉の追悼式出席は4度目で、歴代首相で最多。(23日)
●自衛隊慰霊祭に怒り 沖縄の陸上自衛隊の幹部や隊員らが、沖縄戦の現地最高指導部、第32軍司令官の牛島満中将と長勇参謀長の2人をまつった糸満市の摩文仁の黎明之塔の前で慰霊祭を開いた。第1混成団の君塚団長はあいさつで「沖縄を守るために戦った第32軍を現在の沖縄の防衛を担うわれわれが追悼することは大切なこと」と意義を強調した。沖縄戦体験者らから「戦闘に住民を巻き込んだ第32軍を賛美する行為」などと批判の声が上がった。(23日)
●「共謀罪」が審議入り 共謀罪・サイバー犯罪法案が衆院法務委で審議入りした。03年に法案が提出されたが廃案となり、04年に共謀罪とサイバー犯罪対策を併せて提案したが、審議入りしていなかった。(24日)
●水陸車沈没で米、環境調査を保留 名護市辺野古沖で6月9日米海兵隊水陸両用車が沈没した事故で、米海兵隊は、沖縄県が申請していた現場への立ち入り環境調査について「現地レベルで判断できる案件ではない。上部で検討する必要がある」と回答した。事故発生から2週間以上が過ぎるが、引き揚げ作業は行われていない。(24日)
●靖国参拝支持する「自民若手の会」 自民党の若手議員が小泉首相の靖国神社参拝を支持する「平和を願い真の国益を考え靖国参拝を支持する若手国会議員の会」の設立総会を党本部で開いた。入会者は衆参で116人。安倍晋三幹事長代理らが発起人。(28日)
●サマワで失業者デモに警官発砲 陸上自衛隊が駐留するイラク南部サマワで失業者約500人のデモに対し警官隊が発砲した。病院関係者によると、少なくともデモ参加者と警官双方で計11人がけが、うち3人は頭を撃たれるなどして重体だという。陸自がサマワに派兵されてから最大規模のデモとなった。(28日)
●天皇がサイパン訪問 戦後60年に初めて「玉砕の島」=サイパン島を訪問した天皇・皇后は、日本、米国、北マリアナ自治政府の慰霊碑などを訪れた。また沖縄出身者、韓国系住民の慰霊碑にもそれぞれ立ち寄り、拝礼した。(28日)
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週刊『前進』(2205号7面1)(2005/07/11)
国鉄1047名の解雇撤回を
尼崎事故弾劾し、国労大会決戦、鉄建公団訴訟勝利へ
7・15全国集会の成功を突破口に
JR尼崎事故は国鉄分割・民営化の帰結をまざまざと示した。しかし小泉政権は、郵政民営化を始め公務員労働者に対する民営化攻撃をますます強めている。分割・民営化と対決してきた国鉄闘争は、いよいよ重大な決戦局面を迎えた。国鉄闘争を支えてきた学者・文化人ら21人が呼びかける7・15全国集会(日比谷野音)に結集し、1047名闘争勝利へ闘おう。9月15日に判決を迎える鉄建公団訴訟の勝利へ奮闘しよう。他方、国労本部は第73回全国大会を8月30、31日に熱海ニューフジヤホテルで開催すると決定した。国労全国大会を国労再生をかけた大決戦として闘おう。大会に向け、酒田・革同執行部と真正面から対決する闘う代議員を生み出そう。
民営化体制打倒へJR本隊の決起を
尼崎事故で犠牲となった107人は、国鉄分割・民営化によって、JR西日本によって、国土交通省の規制緩和によって、闘いを投げ捨てた腐敗した労組幹部によって殺された。
20万人の国鉄労働者の職を奪い、1047名の首を切り、闘う労働組合を破壊するために不当労働行為をほしいままにしてきた分割・民営化体制=JR体制こそ、事故の元凶だ。
7・15全国集会は「ふたたび大惨事をゆるすな! かちとろう! 鉄建公団・鉄道運輸機構訴訟勝利判決を!」をスローガンに開かれる。1047名の解雇撤回闘争と尼崎事故の責任追及の闘いは、ともに分割・民営化攻撃との対決として、一体をなしている。
動労千葉に続いて闘おう
JR本隊の労働者が、1047名と並んで分割・民営化体制打倒の一方の主役として躍り出るべき時が到来した。
動労千葉は5月25日から安全運転行動に立っている。@無理な回復運転はしない、A制限速度は絶対に守る、B無線通告は例外なく停車時に受領する、C危険個所では減速する、などの行動は、この間、レール破断・破損などの重大事態が頻発している中で、安全を守るためには当然のことだ。だがJR東日本は、これに「違法争議」と難くせをつけ、監視要員を添乗させて処分の恫喝をかけてきた。これに屈せず動労千葉は安全運転行動を貫き、ついに千葉支社は140個所のレール交換を約束した。JRにはこのような危険個所が無数にある。
反合・運転保安確立を掲げて闘われた春闘ストに続く動労千葉のこの闘いは、JR東日本の資本=カクマル結託体制に大打撃を与えている。
尼崎事故後、JR総連カクマルは「JR東日本は労使で安全を築いてきた」とうそぶいてきた。だが、「ニューフロンティア21」合理化でメンテナンス部門の外注化を推し進め、安全をどこまでも解体してきたのは、ほかならぬJR東日本の資本と東労組カクマルだ。この労資結託体制を根底から突き崩す闘いが、火を噴き始めたのだ。
動労千葉に続くJR本隊の決起をつくり出し、それと固く結合してこそ、1047名闘争の勝利も実現できる。鉄建公団訴訟は、1047名の首を切って強行された国鉄分割・民営化がどれほど鉄道の安全を崩壊させたかを徹底的に暴いてきた。今や航空など全産業で大事故・労災が続発し、労働者は死に追いやられている。この現実への怒りをあらためて全社会的に巻き起こし組織すれば、鉄建公団訴訟勝利の道は切り開かれる。1047名とJR本隊が全産別の労働者と結合し、JR体制を内外から食い破る時が来たのである。
7・15集会は、昨年の4・13日比谷公会堂集会、12・1日比谷野音集会に続き、国労闘争団・全動労争議団・動労千葉争議団の3者が鉄建公団訴訟を軸に団結を固める集会として開かれる。1047名の共闘・団結こそが、解雇撤回を実現する絶対的な条件だ。
国鉄闘争の新たな発展をかけて、7・15全国集会への1万人結集をかちとろう。その成否は、とりわけJR本隊からの国労組合員の大結集にかかっている。
敗訴判決望む最悪の裏切り
国労本部は7・15集会への露骨な敵対を開始した。全労連中央の一部指導部も「7・15集会は国労本部の方針に反する。黙殺する」と放言したという。
また国労本部は、全国大会に向けて「05年度運動方針(案)第1次草案」を職場に下ろした。国労本部はそこで、「最高決議機関で決定した方針を逸脱した別方針・別行動等は団結を阻害する最大の要因であり、早期に克服されなければならない課題である」と鉄建公団訴訟への敵意をあらためてむき出しにしている。
4党合意に屈服し、JRの責任追及を放棄して、闘争団員を統制処分にかけた国労本部の暴挙こそ、国労の団結を破壊した元凶ではないか。彼らは9・15判決の敗訴を望む腐敗しきった姿をさらけ出したのだ。
また、方針案は「建交労との関係については……建交労側が信義・共同の原則を守らず中断を余儀なくされている」と叫んでいる。全動労争議団(建交労)が1047名の一員として、闘う国労闘争団や動労千葉争議団とともに解雇撤回闘争を闘っていることのどこが「信義に反する」のか!
国労本部は、04年1月の中央委員会で自ら提案した鉄道運輸機構への「新たな訴訟」についても、「政治・行政の動向および時効等を総合的に勘案し判断を行う」と言う。要は、9・15判決の結果がどうであれ、訴訟は絶対にやらないということだ。
酒田・革同執行部は「政治解決」をいまだに絶叫しているが、そこに何の展望もないことは、彼ら自身が知りぬいている。彼らはもはや、国労組織を食いものにして卑劣な自己保身を図ることしか考えていない。
労働者の命を資本に差し出す方針案
さらに許しがたいのは、この方針案には尼崎事故とそれを引き起こした分割・民営化、JR資本への怒りがかけらもないことだ。
6月19日、JR西日本は尼崎事故で不通となっていた福知山線(宝塚線)の宝塚−尼崎間の運行再開を強行した。わずかなスピードダウンとATS(列車自動停止装置)−Pの設置で安全は確保されたとJRは強弁している。だが、JR西日本は、来年3月のダイヤ改定で事故前のスピードに戻すという本音を隠そうともしない。
こんなことで安全が確保されるわけがない。ところが国労西日本本部は、JR連合・西労組とともに運行再開とJR西日本の「安全性向上計画」を全面的に容認した。だが、「安全性向上計画」は、事故によって衝撃的に突き出された分割・民営化政策の破産を居直り、分割・民営化以来の国労壊滅に向けた労務政策はすべて正しかったと居直る代物だ。こんなものを認めて、どうしてJR資本と闘えるのだ。
6月15、16日に大会を開いたJR連合は、「JRへの信頼は地に落ちた」「JRへの信頼を取り戻せ」と叫び立てた。資本の危機を救うために身を粉にして働くのが「労働組合」の役割だと言うのである。これこそ帝国主義的労働運動の極致である。
「労使安全会議」にのめり込む国労西日本本部=上村革同も、その基本的立場はJR連合と変わらない。彼らは「事故と民営化は関係がない」とまで言い、現場組合員の怒りを抑え込もうと必死になっている。
「運転士のミス」を前提に労資で「安全対策」をいくら議論しても、事故は絶対に防げない。労働組合は「運転士に責任は一切ない」という立場に立ちきって、JRや国交省、分割・民営化を徹底追及しなければならない。今回の事故が、屈辱的な「日勤教育」で運転士を速度超過に追い詰めるような強権的労務支配によって引き起こされたことは明白ではないか。
西日本の上村革同と呼応し、国労東日本本部のチャレンジらも「JR20年の検証」運動や昇進差別事件の「和解」策動によって分割・民営化反対を投げ捨て、資本への総屈服を誓っている。彼らは、一方で「ニューフロンティア2008」合理化を容認しつつ、他方で「安全総点検」を空叫びしている。だが、安全確保を本気でJRに迫るのなら、まずすべての出向者をJRに戻し、抜本的な安全対策を行えと要求すべきではないのか。
労働者が階級的に団結し、資本との闘いを貫く以外に、安全を守ることはできないのだ。
国労の再生かけて闘う代議員選出へ
国労本部による4党合意の受け入れは、JRの専制的職場支配をますます露骨なものにした。4党合意への国労本部の屈服が、合理化を一層促進し、事故の引き金を引いたと言っても過言ではない。
4党合意の受け入れは他方で、酒田・吉田・革同による組合員の警察への売り渡しにまで行き着いた。
酒田らは、闘争団への統制処分に反対して02年5・27臨大でビラまき・説得活動に立った国労組合員を警察に突き出した。その階級的大罪は絶対に消えない。こうしたやからが今、安全問題でも組合員を資本に売り渡しているのだ。
5・27臨大闘争弾圧粉砕の闘いは、国労再生のカギをなす。被告の無罪をかちとろう。国労の中にこそ「許さない会」の会員を拡大しよう。その力を基礎に、闘う代議員を全国大会に送り出そう。8月大会を国労再生の転機としよう。それは今や待ったなしの課題となった。尼崎事故を2度と繰り返させてはならないのだ。
戦争・改憲阻む闘いの先頭に
小泉政権は日本経団連・奥田とともに郵政民営化を始めとする一大攻撃を仕掛けている。6月21日に閣議決定された「骨太方針X」は、社会保障の解体と公務員労働者の大量首切り、「市場化テスト」による公共部門の民営化・民託化の全面推進を打ち出した。
他方、小泉は米帝とともに始めたイラク侵略戦争を継続・激化させ、中国・北朝鮮への戦争さえ構えている。日帝ブルジョアジー主流が改憲を決断し、「つくる会」教科書で学校を戦争教育一色に染め変えようと凶暴な攻撃を加えている。
その最先兵が東京都知事の石原だ。闘う国鉄労働者は、全労働者の命運をかけて石原と対決し、長谷川英憲氏を推し立てての都議選決戦を全力で闘いぬいた。今もなお、「つくる会」教科書採択を阻止する決戦は最大の攻防の渦中にある。
この過程は、NTT労組、日教組、自治労など旧総評中軸組合の改憲勢力への転落を許すのか否かをかけた産別大会決戦とも完全に重なった。「つくる会」らファシストどもは、民営化による労組解体・左翼一掃と侵略戦争遂行・戦争国家形成を一体のものととらえ、戦後60年を機に一挙に攻撃を強めている。
国鉄闘争は中曽根以来、こうした攻撃と全産別に先駆けて闘ってきた。改憲阻止の一大決戦の先頭に、国鉄闘争が立たなければならない。国労再生は、そのためにも絶対に必要だ。
7・15全国集会を成功させ、国労全国大会決戦と鉄建公団訴訟に勝利しよう。
国鉄労働者1047名の解雇撤回!
原告団・闘争団・争議団を励ます
7・15全国集会
ふたたび大惨事を許すな!
かちとろう! 鉄建公団・鉄道運輸機構訴訟勝利判決を!
7月15日(金) 午後6時30分開会
東京・日比谷野外音楽堂
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週刊『前進』(2205号7面2)(2005/07/11)
動労千葉定期委員会 安全運転行動を貫徹し 組織拡大に総決起へ
動労千葉は6月26日、第53回定期委員会をDC会館で開催し、「反合運転保安確立、安全運転行動貫徹、不当処分策動粉砕を中心とした当面する取り組み」について討議・決定した。
君塚正治副委員長が「尼崎事故を起こした福知山線は6月19日に運転を再開した。事故は、国鉄分割・民営化、JR西日本、国土交通省の規制緩和、闘わない労働組合に責任がある。こういう中で、われわれは安全運転行動を闘っている。当局は処分すると恫喝しているが、『闘いなくして安全なし』がわれわれの原点だ。この闘いをつうじて組織拡大の取り組みを強化してほしい」と開会の言葉を述べた。
田中康宏委員長があいさつに立ち、「尼崎事故から2カ月だが、反合・運転保安闘争という動労千葉の原点そのものが問われる課題であり、労働組合として何をなすのかが最も重要な課題だ。あの107名を殺したのは国鉄分割・民営化という犯罪的政策だと言ってきたが、JRに対する批判を百万べん繰り返しても、問題は解決しない。労働組合・労働者が闘う以外に尼崎事故のような事故を防ぐ道はない」と切り出した。
また、「『闘いなくして安全なし』というスローガンは炭坑の労働者、炭労が掲げたスローガンであり、落盤や炭塵(たんじん)爆発で仲間が殺される現実に対して、労働組合が安全を確認しなければ炭坑に下りなくてもいいという協約をかちとった。しかし、60年の三池闘争で炭労がガタガタにされ、わずか3年後に三川鉱で大炭塵爆発事故が起き、500名近くの労働者が殺された。このスローガンは、労働組合の解体か再生かをかけたスローガンだ。国鉄の戦闘的な労働運動も、あの三河島事故への怒りから始まった。資本は安全を軽視する。だから『闘いなくして安全なし』であり、闘いによって資本に安全を強制する以外にない。明日はわが身だ。あの尼崎事故の運転士はわれわれだったかもしれない。尼崎事故のような事故がいつ起きてもおかしくないJRの現実に対する怒りと悔しさを新たにしたい」と訴えた。
「安全運転行動に対してJR東日本は処分を加えようとしているが、ここで闘いを中止することはできない。安全の問題は譲ることはできない。JR東日本は社長談話ひとつ出さず、『東日本は安全だ』と繰り返し、労働者一人ひとりへの締め付けをやっている。その象徴が、千葉運転区の運転士を、運転中に携帯電話にさわっただけで懲戒解雇したことだ。今の攻防戦は、労働者と労働運動の未来がかかった攻防戦にせり上がった」
そして、この闘争の成果として、総武快速線と緩行線で140個所のレールを交換すること、千葉以東についても同程度のレールを交換することを確認したこと、また、闘いを支持するメールが連日のように寄せられていることを紹介し、安全運転行動が大きな成果を上げていると提起した。
情勢については、戦争と大民営化、労組破壊の攻撃が激化し、「つくる会」教科書採択の動き、自治労や日教組などの旧総評系の大単産が改憲推進勢力に転換し、連合全体が改憲賛成を決めようとしている状況に警鐘を鳴らした。
当面する課題として、「何よりも組織拡大に全支部が立ち上がることだ」と強調した。「『平成採』を獲得することは、会社との大戦争が始まることだ」と指摘し「堤防が決壊するまで闘おう」と訴えた。
もう一点、「今年の11月集会に1万人の結集をめざす方針を確認したい」と檄(げき)を飛ばした。
繁沢敬一副委員長が05春闘から安全運転行動に至る闘いの経過を提起し、長田敏之書記長が、情勢と、@安全運転行動貫徹、A1047名解雇撤回―鉄建公団訴訟勝利、B教育基本法―憲法改悪阻止、小泉―奥田路線粉砕、CJR総連解体―組織防衛・強化拡大――の取り組みの方針を提起し、討論では、各支部の組織拡大の展望が語られた。
田中委員長は総括答弁で、要員問題などの矛盾が噴出する中で、JR体制打倒、特に組織拡大のチャンスが来ていることを強調して、全支部の一層の奮起を促した。
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週刊『前進』(2205号7面3)(2005/07/11)
“関生支部委員長らの釈放を” 日韓連帯し反弾圧のデモ
6月27日、大阪・扇町公園に2000人の仲間が結集し、日韓建設運送労働者共同闘争委員会の主催で日韓労働者総決起集会が開かれた。
日韓建設運送労働者共同闘争委員会とは、00年に韓国の生コン産業労働者が結成した「全国建設運送労働組合」と日本の全日本建設運輸連帯労組関西地区生コン支部、交通労連生コン産労、全港湾大阪支部で構成する日韓の生コン産業労働者の共闘組織である。
00年以降、日本の太平洋セメント資本は、韓国のセメント資本を支配下に置き、大リストラと労働組合への暴力的弾圧を激化させてきた。これに対して02年6月に、日本と韓国の生コン労働者がこの共通の敵との共同闘争のために「日韓建設運送労働者共同闘争委員会」をスタートさせ、以降毎年、太平洋セメント株主総会闘争とリンクさせて日韓労働者の共同行動が展開されてきた。
その一環として、今年は6・27日韓労働者総決起集会が開催された。この集会には港合同、動労千葉、関西合同労組など、関西地区生コン支部とともに11月労働者集会を担い、関西地区生コン支部への大弾圧と共同して闘ってきた労組・労働者が多数結集した。
集会場正面には日本語とハングルで「労働法制改悪に反対しよう」「占領軍はイラクから即時撤退せよ」「日韓労働者の連帯で弾圧をはねかえそう」「セメント資本による労働者弾圧政策糾弾」の4本のスローガンが掲げられた。
集会は、おびただしい血の犠牲と果敢な闘争によって今日の日韓の労働運動が築かれたことを確認し、日韓の烈士への黙祷(もくとう)から始まった。
関西生コン支部の勇壮な生コン太鼓の後、生コン産労委員長が主催者あいさつをし、関西生コン支部への不当弾圧に屈せず運動を進めると決意を表明。さらに、韓国で争議中の仲間が車でひき殺されたことに抗議し、非正規職労働者の差別撤廃、特殊雇用労働者の労働3権確立をかちとるために7月7日から民主労総と韓国労総が共同ゼネストに決起すること、6・29太平洋セメント株主総会闘争を闘うことなどを報告して、日韓の労働者が一層団結を固めて闘うことを誓うと発言した。
同じく主催者として全港湾大阪支部委員長が発言し、「非正規職労働者の差別撤廃、特殊雇用労働者の労働3権確立で民主労総と韓国労総は連帯しているが、日本では関西生コン支部への弾圧との闘いはそうなっていない。ここを基礎に、そうした闘いに発展させよう」と訴えた。
韓国からは全国建設運送労組委員長を始め5人が集会に参加し、全員が発言した。非正規職差別撤廃闘争で昨年9月、与党ウリ党委員長室を1週間占拠した闘いに決起したパクテギュ委員長が紹介された。パク委員長は、「労働者はいつも仲間のことを考えないといけません」「今、獄中にいる人のことを思わずどうして労働運動ができるのでしょうか」「皆さんの権利のために先頭で闘った武委員長を釈放できないでいる大阪の皆さんはいったい何をしているのでしょうか」「私たちは非正規職法案に反対して闘い勝利します。皆さんは武委員長の釈放をかちとって下さい」と国際連帯の熱い思いを込めて発言した。
関西生コン支部に対する刑事弾圧と公判の報告を連帯労組近畿地本・戸田委員長が行い、「公判で、しゃぶコン、過積載、不正事業などの悪徳企業の化けの皮がはがれてきている。韓国の労働者から叱咤(しった)激励を受けた。武委員長を始め仲間を取り戻そう」と決意を表明した。
武洋一関西生コン支部副委員長がまとめを行い、団結ガンバローの後、2000人がアメリカ総領事館前を通り中之島公園までの大デモに出た。弾圧と闘う日韓労働者の国際連帯の熱いうねりが大阪の中心部を揺り動かした。
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週刊『前進』(2205号7面4)(2005/07/11)
国労弾圧公判 動揺する証人を追及
“厳しい処罰望みません” 過去の供述つきつけ
6月22日、国労5・27臨大闘争弾圧裁判の第42回公判が東京地裁刑事第10部(青柳勤裁判長)で開かれた。今回から国労長野地本中南信支部組合員の浅川初幸証人への尋問に入った。
冒頭、葉山岳夫弁護人がJR尼崎事故と本件の関係について意見を述べ、「この大惨事は国鉄分割・民営化の必然的帰結」「被告は国労のよみがえりを目指して活動している。団結破壊は安全破壊でもある。裁判所は、団結破壊の結果を直視し、本件審理を進めるべきだ」と声を強めた。
浅川証人は、検事の主尋問に答え、被告から「右肩をつかまれ激しく揺さぶられた」とか「胸ぐらをつかまれひじ打ちをされた」と証言し、検事に誘導されて「法令に従ってきちんとした処罰を」と言い放った。
佐藤昭夫弁護団長が反対尋問に立った。浅川証人は国鉄分割・民営化を前に人材活用センターに配属された経験があるという。「それでも国労をやめなかったのはなぜか」という問いに、彼は「国労を愛していたから」と返答した。
また、4党合意について聞かれた証人は、「労働者にとって大変厳しい内容」「国労に大幅な譲歩を求めるもの」「組合にきばをむくもの」と証言した。
ところが証人は、鉄建公団訴訟原告らを統制処分にかけると決定した02年5・27臨大に警備係として参加している。「闘争団員を査問することをどう思ったのか」という弁護団の問いに、彼は「気持ちは揺れていた」「訴訟を起こした人の思いも分かる」と述べる一方、「機関としての動きも分かる。解決しなければいけない時機でもあった」と返答した。
大口昭彦弁護人の尋問で決定的な事実が明るみに出た。証人は捜査段階で「殴った相手が闘争団なら、それほど厳しい処罰は望みません」と述べていたというのだ。証人はそれを肯定した。4党合意をめぐり動揺していた証人が、吉田進書記長支配下の長野地本のチャレンジ路線に力ずくで組み込まれ、被害届を出し、捜査協力するに至ったことを十分推測させる証言だ。
弁護団はさらに、証人が捜査段階で「国労の大会で中核派が暴れたと聞いた」と供述していることを追及した。証人は「(00年7・1大会の壇上占拠は)中核派が絡んでいる。表に出てこなくても後ろで操っている」と答えた。弁護団はすかさず「誰に聞いたのか。吉田書記長か」とたたみかけた。証人は「特定できない」と言いよどんだ。また、中核派が絡んでいるという話に具体的な根拠はなかったことも認めた。
松崎博己被告団長が「国労にきばをむく4党合意を進めるための5・27大会は正しくなかったのでは」と追撃した。証人は「そういう側面もあった」と言わざるをえなかった。
傍聴席には、前回公判まで証言台に立っていた長野地本の平山芳夫副委員長が姿を見せた。動揺を重ねる浅川証人に背後から圧力を加え、自身の偽証を暴かれまいと必死なのだ。だが、浅川証言はチャレンジ一派の指導の破産を突き出している。傘下組合員から誇りを奪い、闘いへの確信を失わせ、団結破壊の手先に仕立てた吉田書記長らの階級的大罪はきわめて重い。
さらに重要な攻防となる次回公判に結集しよう。8被告の無罪獲得と国労再生へ、許さない会の会員を拡大し、8月国労全国大会の決戦に攻め上ろう。
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週刊『前進』(2205号8面1)(2005/07/11)
ビラまきは一人一人に対するオルグ活動 東京 池 弘美
杉並の私鉄の駅頭で、この間、都議選決戦のビラをまいてきた。ビラまきは、政治的主張を満載した印刷物を、不特定多数の人びとに「ばらまく」という行為か。いや、その一瞬、一瞬が「一対一のオルグ」であると思う。
「戦争教科書の採択に反対しましよう」と一人ひとりに迫り、声をかけることでオルグは始まる。実際は簡単には受け取ってくれない。体力と気力の勝負だ。しかしそこには幾つもの対話と、疲れを吹き飛ばす新しい「出会い」がある。
告示直後、日曜日のK駅。幼児を連れた30歳くらいの女性が「署名はまだできますか」と私に声をかけた。「もちろんです。闘いはこれからです」と答え、署名セットや「つくる会」教科書批判のリーフを出し、都議選のことも話した。女性は署名用紙が「1枚では足りないかな」と、3枚(30人分)も持って行ってくれた。
同じ駅の商店街入口。「教科書が問題になっているんだよ」と言いながら、女子中学生らしい4人連れが店に入った。出てきた所を、「これ教科書問題のビラなんだけど」と一人に差し出したら、全員が「私にもください」と討論になった。今どうなっているか簡単に説明すると、「南京大虐殺を否定するなんておかしいよね」「石原は戦争なんか行かないくせに」「エーッ、山田区長はそんな人なんですか」など、驚くほどセンス抜群の反応。全員が署名セットも持ち帰り、両親や先生にも話そうとなる。別れ際には「暑いけど頑張ってください」。こういう中学生がいる限り、未来はあるぞと思う。
これは、土曜日のI駅。「大学生の娘がマンガのビラとかもらってきて、あの人たち朝から晩まですごい、と感心していました。暑い中ご苦労さま」。理知的な感じの中年の女性が笑顔で声をかけてきた。早速、ビラを渡し、都議選のことも話した。
駅ビラはオルグと出会いの“現場”だと痛感する。
若者の大注目集める「教科書まんがビラ」 東京・高校生 A
いよいよ都議会議員選挙が始まりました。連日のビラまきが確実に勝利への道を切り開いていることを実感できます。「朝7時から夜11時までやっている」という方も! 本当にお疲れさまです。長谷川英憲候補への注目が大きく広がってきています。
中でも「教科書まんがビラ」は圧倒的な注目を集めています。なんと、インターネット掲示板「2ちゃんねる」でも取り上げられていました。
都革新という政党に大きな注目と関心が高まっているのです。
6月20日、東京青年会議所杉並区委員会が主催する「都議会議員選挙公開討論会」が、立候補予定者12人全員が出席して開かれました。ここでも、長谷川さんの力強い発言が注目を集めていました。
しかし、日本共産党の吉田候補と「市民派」福士候補には、はっきり言って失望しました。吉田さんは、教育問題についての質問の時、最も力説していたのは「30人学級」でした。しかし、「つくる会」教科書の問題については、ほんの一言しか触れませんでした。確かに30人学級は必要かもしれませんが、内容が「つくる会」ではなんの意味もないではありませんか! また、福士さんに至っては、ついに最後まで教科書問題に「一言も」触れませんでした。そんな中、長谷川さんは、持ち時間をすべて使って「つくる会」教科書採択阻止を訴えました。
今の都議会は石原総翼賛体制です。それと正面から対決できるのは長谷川候補だけです。長谷川英憲候補の当選を全力でかちとろう!
大人は今の時代に責任もち行動しよう 兵庫 恒川るい
先日、中山文科相が「従軍慰安婦問題が教科書に載らなくなって良かった」と発言し、さらに「当時は従軍慰安婦という言葉はなかった」と暴言を重ねた。
5月末には厚労政務官・森岡が小泉の靖国参拝を賛美し、「日本ではA級戦犯はもう罪人ではない」などと勝手なことを言った。前首相の森は中韓両国が日本の教科書の歴史認識を糾弾すると「いちゃもんだ」と言い、自民党幹事長代理・安倍は「靖国参拝は首相の責務で、次もその次も首相は参拝を」と、将来のことまで口出しする。当の小泉は「適切に」などといい加減なことを言い、様子をうかがっている。
また東京都は、副知事浜渦の一件で知事側近を更迭したかと思ったら、単なる横滑り人事で、結局は浜渦だけが消えただけでお茶を濁そうとしている。こんなペテン的な横滑り人事には、都民は怒ってリコールするなどの厳罰で民意を反映させるべきだ。
国会前で小泉の靖国参拝を阻止せんと座り込んでいる人を見た。マスコミの投書欄にもっともっと靖国問題、歴史認識、教科書問題を訴えよう。石原慎太郎を「白黒ハッキリしていてイイ」などと言っている場合ではない。石原は戦争をやりたがっているのだ。戦争には反対だが石原を応援する、なんてことは許されないのだ。
過ちを反省せず過去を賛美する「つくる会」教科書が採択され子どもがそんな思想になったら、毎日の生活の中で子どもとどう接していくのか。「過ちを反省するのは自虐的だ。自分は何をやっても正しいと言って貫け」と教えるのか。大人は今の時代に責任を持とう。今どう行動するかで時代が変わる。
全金本山闘争の歴史に学び勝利を共有 新潟・民間労組 角田 豊
全金本山闘争の勝利報告集会&レセプションが5月28日、新潟市で開かれた。新潟県内の各労組などから約60人が参加、闘争の歴史や意義について学び、勝利の喜びを共有し合った。
司会は長期にわたり物資販売と支援を県内労組にくまなく訴えて回った庄子副委員長が務め、長谷委員長が勝利と職場復帰を宣言、青柳書記長が経過と解決内容、「職場に砦(とりで)を、地域に共闘を」という今後の方向を提起した。
来賓からは、長年にわたって支え続けこの日も労組動員で駆けつけた全港湾県委員長が「一人の首切りも許さないとして、不屈・非妥協で長期に闘い抜いた本山闘争は、日本労働運動史上に残るすばらしい勝利」とたたえた。県職労、県高教組の役員もあいさつ。
引き続きレセプションに移り、8人の本山労組員が紹介され、一人ずつ闘いに込めた思いや職場復帰した現状などを語った。連帯のあいさつは、国労分会、新潟市職労、新潟日報労組などが行い、ちょうど物資販売の県内オルグに来ていた動労千葉からも飛び入り発言があった。
私はこの集会に参加し、本山闘争の意義について@一人の首切りも許さないという労働組合の大原則を文字どおり貫き、最高裁の確定判決を打ち破って職場復帰をかちとったA門前闘争に象徴されるように、闘いの現場を対資本に定め、ユーザー・銀行闘争で補強し、裁判闘争に頼ることなく会社を追い詰めることに集中したB自力自闘を貫き、物資販売とアルバイトで闘争を支え、上部団体の干渉を許さなかったC対資本、対権力、反差別の闘いあるところ常に全金本山の旗が翻るというように、自ら学びともに闘う姿勢を堅持した――ということにあると受け止めました。
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週刊『前進』(2205号8面2)(2005/07/11)
EU憲法批准否定で争闘戦激化へ
仏労働者が資本攻勢に“ノン” 英仏対立でEUの亀裂が拡大
EU理事会で憲法条約発効が無期延期に
5月29日にフランスで、6月1日にオランダで、それぞれ行われた国民投票は欧州連合(EU)憲法条約の批准を否決した。EUの牽引(けんいん)車である仏の憲法条約批准否決は各国に衝撃を与えた。イギリス、デンマーク、ポーランドなど9カ国が憲法条約批准の延期・凍結を決めた。1国でも憲法条約を批准しない場合、条約の発効はない。
6月16日のEU首脳会議(欧州理事会)は、06年11月としてきたEU憲法条約発効の目標時期を07年半ば以降に先送りすること(無期限延長)を決めた。EU首脳、EU官僚が2年間議論してやっと合意にこぎつけたEU憲法条約に代わる有効な「B案」などあり得ず、無期延期しかないのだ。かといって時間が解決するわけでもない。07年に仏大統領選が実施され、新大統領が登場したとしても、国民投票で憲法条約批准可決とは自動的には行かない。
04年10月にEU首脳会議で憲法条約が承認され、今年から各国の批准作業が始められたが、批准国は9カ国にとどまる(ドイツは議会が条約を批准したが、大統領が批准書に未署名)。
さらに欧州理事会は17―18日、9000億ユーロ(約120兆円)の中期財政計画(07〜13年)でも、農業補助金とEUへの拠出金の払戻金(リベート)をめぐる英仏対立によって決裂した。
仏は年約100億ユーロの農業補助金を受け取っている最大の受益国だ。英はEUへの拠出金に比して農業補助金の恩恵を少ししか受けないことから、84年以来、特別に払戻金を受けてきた。04年は46億ユーロ還付された。05年は51億ユーロ、06年は70億ユーロと予測される。欧州委員会(EUの内閣に相当)が現在の好調な英国経済には不要として段階的撤廃を求めた。
リベートを手放したくない英は「仏が農業補助金を減らさない限りEUの払戻金返却方針に従わない」と主張したが、仏も譲らない。さらには蘭やスウェーデンなどの富裕国がEU拠出金の削減を要求した。
このように中期財政計画についても、英仏首脳が互いに非難しあい、蘭なども強く要求したため、交渉は収拾がつかなくなった。
仏、ルクセンブルクを始めとする多くの国が英のかたくなさを批判する一方、北欧など富裕国は予算交渉で英についた。EUは「二つの欧州」へと分裂を深めた。EUの亀裂は拡大するばかりだ。独仏を軸として進んできたEU統合は失速し、EUは発足以来、最大の危機に立ち至った。
会議後、EU議長国ルクセンブルクのユンケル首相は「EUは深刻な危機に直面している」と警告を発せざるをえなかった。
英帝ブレアが主導権を狙いEU改革論
英ブレア首相は6月23日の欧州議会で、7月から半年間務めるEU議長国の首脳として演説し、前週のEU理事会で決裂した予算交渉で主張した自説を譲らず、EU憲法条約の破算の危機を見透かしたようなEU改革論を提起した。
「経済のグローバリゼーション時代においては、弱者救済の発想をやめて競争力を強化するために、EU予算の4割を占める時代遅れの農業補助金を削減し、情報・知識産業の振興、教育・科学技術に回そう」「自由化を進め、アフリカ農産品受け入れを拡大しよう」「失業者が2000万人いる。労働・福祉体制を近代化しよう。(独仏が主張する)弱者保護志向の『社会福祉型』の欧州ではなく、規制のない自由競争主体の欧州を取り戻すべきだ」という主張だ。
「ニューレーバー」路線の欧州への適用だ。「リベラルな欧州」――仏独が主導し形成してきたEU像を否定する重大な挑戦だ。
ブレアは、資本主義の矛盾の爆発を社会保障政策、農業保護策などで彌縫(びほう)するいわゆる「社会的市場経済」(EU憲法条約)や「社会的ヨーロッパ」(ヨーロッパ社民)さえも否定し、恐るべきことに、資本の論理むきだしの社会をヨーロッパの理想として強調している。
サッチャーを引き継ぎ「第3の道」としてブレアが英で8年間実行してきた弱肉強食の自由競争路線、資本攻勢、私有化(民営化)政策を全欧州に広げようということだ。これは社会保障の解体、労働者の権利の剥奪(はくだつ)、搾取・収奪の極限的強化にほかならない。
英ブレアは、憲法条約批准否決で仏独―EUが陥った危機に付け込んで、EU改革を掲げ、EUの主導権を握ろうとしている。英は、EUの亀裂を広げることになろうとも、相対的に快調な英の経済力を背景にEU新規加盟国「新しい欧州」(多くは米英とともにイラク侵略戦争に参戦)を引き付け、仏独などの「古い欧州」を押しのけようとしている。
しかし、「新しい欧州」=中・東欧・バルト諸国に最も早くから経済的に進出し、マルク経済圏づくりを進めてきたのは独である。英独(仏)対立の一層の激化は必至だ。
憲法条約の基本権・労働権保障は形だけ
求心力を失い、統合路線を失速させたEUの危機に際し、英が仏独に対する争闘戦を挑んでいる。EU危機と争闘戦の激化は、世界危機の世界戦争への転化の情勢を促進する。
EU危機の引き金となったフランスの国民投票では、55%がEU憲法条約に反対、45%が賛成の票を投じた。フランスの労働者階級・人民大衆は、どのような理由で憲法条約にノンを表明したのか。
まず、昨年10月に成立した憲法条約はどのようなものか。
「均整のとれた経済成長と物価の安定を基盤とした持続的成長」「 高い競争力を備え、完全雇用と社会的発展を目指す社会的市場経済」をうたい、男女同権の推進などの市民権に言及し、「自由かつ公正な競争が保障される域内市場」「人・サービス・商品・資本の移動が自由な国境なき空間」を定めている。
「共通の外交および安全保障政策」も規定され、「テロ攻撃」を受けた場合に他国が援助する連帯条項も設けられた。EU大統領や外相の創設、欧州防衛庁の設置、EUの効率的な意思決定方式としての多数決法を定めている。
EUの最高意思決定機関はEU理事会(EU首脳会議)である。EU議会は完全な立法権をもたず、欧州理事会と共同で法を採択する。EU議会は拒否権をもつが発議権をもたない。
EUにおける市民権は各国の市民権を補完するものとして位置づけられる。2000年のニース条約で採択された「欧州基本権憲章」が憲法条約第2部に全文盛り込まれているが、英ブレアの横やりで単なる宣言の位置に引き下げられ、基本権、労働権は極度に制限された。しかもEUはなんら基本権を保障する権限、義務を持たない。それらは加盟各国に関することがらとされる。
「このような憲法条約は、資本の自由放任と労働者の無権利化を促進するだけだ」と仏―欧州の労働者階級は激しく反発した。
仏独の大失業引き起こしたEU25国拡大
仏の主要な与党(右翼)のUMP(国民運動連合)と野党(「左翼」)の社会党、緑の党、欧州労連(CES。EU憲法条約賛成)加盟の労組全国組織であるCFDT(フランス民主労働同盟)やFO(労働者の力)などの指導部は賛成方針を出した。だが、これらの政党、労組全国組織とも3分の1前後のメンバーが反対票を投じた。
「左翼」のLCR(革命的共産主義者同盟)やFSU(統一労組連合)、仏共産党、社会党の一部、緑の党の一部、CGT(労働総同盟)やジョゼ・ボベらの農民運動、Attacなどの「グローバリゼーション」反対派が反対した。
極右の国民戦線(FN)も反対した。
「左翼」は、憲法条約が資本の「自由競争」「弱肉強食」「グローバリゼーション」を解き放ち、「福祉国家」を解体し、安価な外国人労働力がフランス人の仕事を奪うことになると批判した。これは必ずしも外国人排斥の排外主義ではない。EUはまだ労働力の移動の自由を認めていない。労働力の移動の自由が認められた時に、労働者国際連帯を強め、賃金差別を認めず、労働条件の向上を共同の闘争でかちとることができるかどうかが課題となる。(欧州統合を進めるには不十分だという批判も行ったが、これは帝国主義打倒の原理のない「ヨーロッパ合衆国」という誤った主張に基づいている)
農民は、例えば「農業に市場原理が導入されて、生産性が重視され、大規模な工業的農業が有利になり、土着の農家が消えた。共通農業政策(CAP)は農業雇用と自然環境の破壊者だ」と批判している。
他方、極右は、憲法条約の内容よりもEU拡大とりわけトルコとの加盟交渉が開始されようとしていることや、04年の10カ国新規加盟承認の結果、フランスがEU中央機関に対する影響力を失ったことに批判を集中した。排外主義、大国主義の観点からの批判だ。
仏シラク―ラファラン政権(独シュレーダー政権も同様)は、ユーロ導入に伴うEU財政規律(財政赤字をGDP3%以内とする)の遵守のためと称し、またEUの自由競争路線にのっとって、年金制度を改悪し、週35時間労働制を解体し、国営企業の私有化を進め、公務員を大幅削減してきた。
特に04年EU拡大を前後して中・東欧のEU新規加盟国や中国を始めとするアジア諸国への工場・生産拠点の移転が嵐(あらし)のような勢いで強行された。「工場を東欧に移転してほしくなかったら(雇用を確保してほしかったら)労働時間延長=賃金引き下げを飲め」と資本は労働者に要求してきた。労働者はストライキで闘った。資本側の譲歩はほんのわずかだ。仏の失業率は5年ぶりに10%、250万人を超えた。独の失業者は1930年以来最悪の500万人を数えている。
04年EU拡大が一挙に悪化させた労働条件、雇用問題への怒りが憲法条約の批准否決という結果をもたらした。世論調査によると「失業率悪化への危機感」「仏の現状への不満」が憲法批准否決の主な理由だ。仏の失業率の高い地方と憲法条約反対率の高い地方とは一致している。EU憲法条約批准拒否は、失業率を悪化させたシラク―ラファラン政権に対する怒りと批判でもある。
シラク大統領は5月31日、EU憲法条約批准否決に伴って内閣を刷新し、雇用対策に重点的に取り組むことを約束した。ドビルパン新首相は、6月8日の国民議会(下院)で施政方針演説を行い、「仏を再始動させる」として45億ユーロ(約5940億円)の緊急雇用促進策を発表した。本質的に企業のための施策だが、ペテン的ではあっても雇用対策を掲げざるを得ないのが仏シラク政権の置かれている環境である。
オランダの憲法条約批准反対の最大の理由は、当初言われていた「移民の増大」ではなく、「1人当たりのEUへの拠出金が高すぎる」ということだった。
仏シラクは、EU拡大がもたらした失業率悪化に対する労働者階級の怒りの爆発でEUの牽引車としての地位から引きずり降ろされ、EU憲法条約発効の展望もほとんど失った上に、英ブレアのEU改革の攻撃にもさらされ、息も絶え絶えである。仏労働者階級は、シラク打倒に向かって68年五月革命をも上回るような大デモンストレーション、大ストライキを敢行すべき時を迎えている。
EU危機は、欧州労働者階級が国境を越えた団結の力を発揮し、延命しすぎた帝国主義を打倒する革命的情勢をたぐり寄せている。
欧州連合(EU)略年表
1952 欧州鉄鋼石炭共同体(EUSC)結成
1958 欧州経済共同体(EEC)と欧州原子力共同体(EURATOM)を結成
1967 3共同体の統合で欧州共同体(EU)成立(仏・独・伊・ベルギー・蘭・ルクセンブルクの6カ国)
1973 英・アイルランド・デンマークがEC加盟(9カ国へ)
1979 欧州通貨背戸(EMS)発足
1981 ギリシアがEC加盟(10カ国へ)
1986 スペイン・ポルトガルがEC加盟(12カ国へ)
1990 欧州通貨同盟(EMS)設立、資本移動の自由化
1992 マーストリヒト条約締結で政治協力を含む欧州連合(EU)へ/欧州通貨危機で英伊がEMU離脱/域内単一市場完成
1993 EU創設
1995 オーストラリア・スウェーデン・フィンランドが加盟(15カ国へ)
1998 欧州中央銀行(ECB)設立
1999 EMU、ユーロ導入
2002 ユーロ紙幣、通貨の流通開始
2004 中東欧バルト10カ国がEU加盟(25カ国へ)/EU憲法条約採択
〔藤沢明彦〕
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週刊『前進』(2205号8面3)(2005/07/11)
福岡 教基法改悪阻止へ 5度目の集会かちとる
教育基本法改悪阻止!実行委員会主催の第5弾の集会が、6月12日福岡市内で取り組まれた。主催者あいさつでは、街頭に打って出ようと昨年2月から始めた集会が5回目を迎え、教育基本法改悪を阻止するまで闘い抜く新たなそして固い決意が表明された。
続いて、「憲法と教育基本法改悪」という演題で福岡大学名誉教授の石村善治さんからお話があった。石村さんは、長崎県立大学の学長時代に「日の丸・君が代」に反対し闘った自らの闘いにふれ、処分覚悟の不起立闘争への期待と連帯を述べられた。会場からは熱い拍手がなり響いた。
集会実行委員会からの基調報告の提起に続き、意見交流が行われた。最初に「許さない会・九州」事務局長の手嶋浩一さんの発言があった。手嶋さんは「JR尼崎事故は、分割・民営化が原因だ。国労中央本部、日共・革同の屈服と裏切りによって事故が起きている」と述べ、5・27弾圧粉砕、1047名闘争への熱烈な支援の訴えを行った。
また、連帯のあいさつに立った部落解放同盟全国連合会の村上副委員長は、教育労働者との共闘で主任制導入を阻止した自らの闘いの経験を述べ、「労働者階級とともに共産主義の社会を実現していこう、そのために闘う」と訴え、参加者の深い感銘と感動を呼び起こした。
アメリカのイラク攻撃を許さない実行委員会代表の青柳行信さんは、春日基地からのイラク自衛隊派兵阻止闘争を訴え、6・19デモ、7・30春日基地闘争を呼びかけた。
意見交流の最後に、今年4月より試行が始まった「目標管理、実績評価」攻撃との闘いについて、闘う市教組の仲間から報告があった。この攻撃は、教基法改悪と一体となった教育労働者への戦争協力強制の攻撃、団結破壊・組合破壊の攻撃そのものだ。福岡市教組執行部は、この攻撃の先兵となり果て、自己目標を書いて提出するように組合員に強要している。これと対決し、「書かない・提出しない・面談しない」という闘いで、この攻撃を粉砕する固い決意を述べた。
労働委員会闘争に取り組む労組からの支援の訴えもあり、多くの闘う人びとの意見交流は、原則的な闘いを進めている内容とその決意に満ちあふれていた。この集会のかちとっている階級性を如実に物語っていた。
集会後、意気軒高と天神一周デモに出発した。教育基本法改悪阻止!実行委員会の闘いはますます重要となってきていることを痛感させる6・12集会とデモでした。
(投稿・K)
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週刊『前進』(2205号8面4)(2005/07/11)
『賃金・価格・利潤』 −学習の感想−
搾取との闘いが組合の原点 O・M
学習会によって、相当理解が深まりました。『賃金・価格・利潤』を読んでいく精神にかかわるようなレベルのことですが、「資本主義とは、資本家のあくなき搾取が行われている社会」であるということ、労働組合運動もこのことを原点にすえて賃金闘争を闘わなければいけないということです。
経営側の「国際競争の激化の中で、企業が生き延びていくためには、賃上げなんてとんでもない」という主張に対して、労働組合の側は、人間としてのより根源的な権利(「生命安全の原則」のような立場)の立場に立って闘っていくというのは重要な視点だし、マルクス『賃金・価格・利潤』もその立場で書かれていると思う。
労働の強化、労働時間の延長などの攻撃に対して「賃上げ要求」で闘うというのは、そうしたことを認めていくというのではなくて、それによって「過重労働を阻止」するための闘いなのだということです。マルクスはこれを、「彼ら自身および彼らの種族にたいする義務を果たすに過ぎない」と言っている。この立場は重要だと思います。
労働時間についても、労働者が「自分の自由にできるための時間を確保する」ために、労働時間の延長と闘う、8時間労働制の死守のために闘うということは、重要なことと思う。今の労働組合運動にとって、こうした視点がきわめて重要になっていると思う。
実践的革命書と強く感じた M・N
『賃金・価格・利潤』については、これまではマルクス経済学の入門書、学習の書として受け止めていました。
今回の学習会に参加して感じたことは、そうした側面、賃金問題についての本質論的提起ということについてはそのとおりですが、この本がそのまま実践的な賃金闘争論であり、あえて言えば「革命の書」としてあるということを強く感じました。
マルクスは、賃労働と資本の非和解的対立性、労働者階級は資本家階級と賃金をめぐって日々闘い、究極的にはこれを打倒せずには生きていけないのだということを、激しく提起しています。
本書でマルクスが批判している産業革命期と19世紀のイギリスの姿は、現在の日本経団連・奥田路線の攻撃とそっくりです。「8時間労働制をやめよ」「労働法制を見直し、労使自治にまかせよ」「国際競争に勝つために賃金を抑制せよ」、と。
講師の提起で印象に残ったことは、以下のことです。
資本は労働力の価値の部分=賃金(労働者自身の再生産の費用)を削って、資本の取り分=剰余価値部分をどこまでも拡大する。それには限界はない。
労働力商品として市場に出てくるかどうかだけが基準であるわけだから、賃金の基準はあるようで無いのである。賃金の決定には、労働者と資本家の間の闘い、力関係が大きくかかわってくる。
それとの関係で労働時間の重要性が提起されました。資本は、労働者の肉体の限界を超えて過労死が発生するようなところまで労働時間を延長してくる。これについても、それを阻止できるのは、労働者の団結した闘いである。
日本経団連・奥田路線の攻撃は、まさに労働者階級を働かせることも、食わせることもできなくなった、末期の資本主義の姿そのものです。打倒あるのみです。
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