ZENSHIN 2005/06/06(No2200 p06)

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第2200号の目次

杉並区教育委員会が開かれた5月25日、区役所前で訴える長谷川英憲氏(都革新代表)

杉並区教育委員会が開かれた5月25日、山田宏区長の日露戦争などを美化する発言を弾劾し、区役所前で訴える長谷川英憲氏(都革新代表)。力を込めた訴えが区民の共感と決起を広げている

1面の画像
(1面)
「つくる会」派の策動粉砕を  ファシスト石原・山田打倒へ
動労千葉の安全運転行動突入と連帯し都議選勝利へ蜂起しよう
記事を読む  
侵略美化と新たな15年戦争突入を狙う小泉の靖国参拝
闘う中国・朝鮮人民と連帯し 日帝・小泉政権を倒せ
記事を読む  
(2面)
日露戦争を「自衛」「朝鮮独立」の名で礼賛する山田杉並区長
「日本海大海戦」上映会あいさつ 「つくる会」の凶悪な先兵
右翼集会を区教委が後援  怒りの区役所包囲行動へ(5月22日)
記事を読む  
セクト的利害で統一戦線を破壊する日共を弾劾する
戦時下階級闘争の発展への恐怖
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杉並先頭に採択絶対阻止へ 「つくる会」教科書を暴く(4)
改憲を扇動  ●「国家」=「公」への忠誠要求
「国防の義務」を盛り込む
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(3面)
 「つくる会」教科書8月上旬採択阻止へ 6月の闘いが勝負
日露戦争賛美許さない  区教委闘争 長谷川氏が山田区長弾劾(5月25日)
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新城区議が新事実暴く 教員・専門家の意見排除
議会だまし採択制度改悪(5月17日)
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“改悪採択要綱は撤回せよ”
杉並区議会 5・17文教委員会の質疑応答(抜粋)(5月17日)
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「日の丸・君が代」周年行事処分 “不当処分撤回を”
公開口頭審理が始まる(5月23日)
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夢中で闘った1年  「被解雇者の会」が報告会(5月21日) 記事を読む  
韓国 闘う蔚山建設プラント労働者  非正規職労組抹殺に抗し 記事を読む  
(4面)
動労千葉が安全運転行動に突入
回復運転せず制限速度厳守  “大惨事二度と起こすな”(5月25日)
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鉄建公団訴訟開く  国交省・JR東に申し入れ(5月25日) 記事を読む  
05年夏季物販に全力を  動労千葉の闘い持ち込む時 記事を読む  
国鉄闘争支援を広げ
4・15大阪 400人が熱気の集会(投稿/関西合同労組・井村俊一)(4月15日)
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関生弾圧第2回公判 伝聞だけで主尋問
大谷生コン資本に怒り(投稿/関西HR)(5月16日)
記事を読む  
日誌 '05 5月18〜24日
中国副首相、小泉との会談中止  石原が沖ノ鳥島に視察上陸
記事を読む  
(5面)
労働組合の闘いこそが安全守る
尼崎事故は民営化の帰結だ JR体制打倒へ総力で闘う  革共同国鉄委員会
記事を読む  
三一労組に勝利命令  中労委 “懲戒解雇は不当労働行為”(5月20日) 記事を読む  
資本攻勢&労働日誌 2005 5・1〜5・22
経済同友会 公務員身分保障撤廃へ提言  労組7割が成果主義に不満/ダイエー人員削減へ
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(6面)
団結ひろば 投稿コーナー 記事を読む  
共謀罪に“目的遂行罪”  現代版治安維持法を廃案へ 記事を読む  
辺野古 24時間の激闘に突入  “勝てる!これが実感だ” (投稿・T)(4月26日) 記事を読む  
5・22狭山闘争 第3次再審へ戦闘宣言
石川さんの決意をともに  300人が最高裁糾弾デモ(5月22日)
記事を読む  
最高検に糾弾行動  人権擁護法案粉砕へ街宣(5月23日) 記事を読む  
党学校 『共産党宣言』 −学習の感想−
人間の自由について考える H・L
記事を読む  
解同全国連寝屋川支部弾圧  4人に無罪判決(5月25日) 記事を読む  

週刊『前進』(2200号1面1)(2005/06/06)

 「つくる会」派の策動粉砕を

 ファシスト石原・山田打倒へ

 動労千葉の安全運転行動突入と連帯し都議選勝利へ蜂起しよう

 この4〜5月、杉並での街頭宣伝を中心とする「つくる会」教科書採択阻止の闘いは、今日、階級闘争の重大な攻防点に押し上げられた。戦時下の階級闘争が不可避とする人民内部の分岐・流動が、「つくる会」教科書への絶対反対運動をつうじて生まれている。さらに大衆運動を巻き起こし、杉並区議会・区役所を包囲し、採択絶対阻止を切り開こう。「つくる会」教科書採択を阻止するためにも今次都議選における長谷川英憲氏の当選をかちとること、そうして長谷川氏を都議会に送ることが、石原・山田体制に打撃を与え、「つくる会」教科書採択を粉砕する道である。7月3日投票日まで1カ月、全力で闘い勝利をもぎりとろう。

 第1章 「軍隊慰安婦抹消の次は沖縄戦」と藤岡信勝

 「つくる会」は、もはや一部の右翼ファシスト運動ではない。都知事ファシスト石原を総元締めとし、都教委の横山教育長が各区市教委に採択を迫り、その先兵に杉並の山田区長などがいる。背後には中山文科相、そして小泉と奥田(日本経団連会長)がいて全力で推進している。日帝自身が、「戦争のできる国家」をつくり、「戦争のできる国民」をつくることへの転換をここで突破することを狙っているのだ。
 「つくる会」教科書は、 教育基本法と憲法の改悪の先取りとして、教育内容を侵略戦争賛美の愛国主義、国家主義、民族排外主義、天皇制賛美に変えてしまう恐るべき攻撃だ。
 石原の03年10・23通達によって学校行事を愛国心と天皇賛美に変える「日の丸・君が代」強制との闘いは、教育労働者を先頭に「日の丸・君が代」決戦の継続・発展を切り開いた。
 「日の丸・君が代」強制の次に押し寄せてきているのが「つくる会」教科書採択のとんでもない大攻撃だ。これを全力で粉砕しないと、教育基本法改悪阻止・改憲阻止の労働者階級人民の堤防が決壊するような事態になりかねない。その最大の攻防の焦点が杉並だ。杉並で止めれば、全都でも全国でも止められる。
 そして、都議選決戦を教科書決戦として闘い、勝利することが、杉並区において教科書決戦を全面的に爆発させ、教科書決戦全体を勝利させていく重要なテコになる。都議選で「つくる会」教科書採択阻止を徹底的に闘い、それをやりぬく人が選挙に勝利して都議会に議員として乗り込んでいくこと、それが石原・山田体制にどれだけ打撃を与えるかはあまりに明白だ。
 「つくる会」派と山田区長の意志を受けて、杉並区教育委員会は密室で教科書採択要綱を議会無視、現場無視、住民無視で教育委員会が独裁で決められるものに変えた。5月17日、都政を革新する会の新城議員が区議会文教委員会でこの問題を徹底的に追及し白紙撤回を求めた。採択要綱をこのように変えることは「つくる会」派の戦略だ。
 5月20日付の朝日新聞東京版によると、「つくる会」が東京の7区市議会、5区市教委に採択の請願運動を開始した。また「東京で50%、愛媛で100%の採択の可能性がある」ということを内部の会議で確認しているという情報もある。全国で10%を狙っているとも言われる。容易ならざる情勢である。
 「つくる会」副会長の藤岡信勝が5月20日に沖縄に調査と工作に行き、「軍隊慰安婦は抹消に成功した。次は沖縄戦だ。沖縄の集団自決は住民の意思である」と公言している。これは反戦・反基地闘争の怒りの島である沖縄を冒涜(ぼうとく)するものだ。再び沖縄を戦場の島に変えようとするもので、到底許しがたい。こうした恥知らずなファシストどもに人民の怒りの鉄槌(てっつい)を浴びせてやらなければならない。彼らは、6月4日に東京で反革命の総決起集会を開こうとしている。
 そして「つくる会」教科書採択阻止を先頭に立って訴える長谷川氏の闘いに恐怖し、「なぜ戦争は悪いのか」「戦争賛美の教科書ではない」「しかし戦争はどうしてもしなければならない時はある」「自衛戦争の準備は必要だ」などと「反論」を開始している。
 しかし「つくる会」の主張の最大の弱点は「戦争賛美の教科書ではない」と弁解せざるをえないという点にある。全ページで「アジア解放の戦争だ」「自存自衛の戦争だ」と疑問の余地なく戦争賛美をしておきながら「戦争賛美でなぜ悪い」と開き直ることができないのだ。
 ここを徹底的に突きまくることだ。戦争賛美と肯定の「つくる会」教科書は絶対許されないことを満天下に明らかにしていくのだ。
 帝国主義は、今や米帝も日帝も、あのおぞましい第2次世界大戦以上の第3次世界大戦を繰り返すことによってしか延命できなくなっている。世界の労働者階級人民は、被抑圧民族人民と連帯し、今度こそ帝国主義を打倒しよう。世界革命を達成しよう。それなしに歴史の出口はない。
 その現実性が04年11・7の日米韓の労働者国際連帯の中から生まれてきているのである。

 第2章 「日本海海戦」を礼賛する杉並区長の山田

 杉並で「つくる会」教科書採択を凶暴に推進する山田区長は、5月22日、映画「日本海大海戦」の上映会で超反動発言をした。
 山田は日露戦争を賛美して「有色人種が白色人種に勝った。日本の文明力、日本の知的水準がいかに高かったか」と公言する。しかしこれはとんでもない歴史の歪曲だ。日露戦争はロシアの南下政策に対し日英同盟(1902年締結)をもって日帝が朝鮮と中国東北部の支配をめぐって激突した世界史上最初の帝国主義間戦争だった。日本政府はイギリスとアメリカで巨額の債券を発行して戦争資金を集め、初めて戦争遂行が可能になった。
 山田は、日露戦争での「日本海大海戦」の勝利を最大限に美化するのに、その結果として行われた韓国併合、朝鮮植民地化の事実には一言も触れない。さらに日露戦争のほとんどを占める陸戦、特に旅順制圧の白兵戦で屍(しかばね)の山となった無数の日本軍兵士のことは一言もない。日露戦争でロシアが和平に応じたのは1905年にロシアで労働者革命が起きたためであったことなどはなおさら言わない。
 山田は「東京裁判史観という戦勝国の歴史観の呪縛(じゅばく)がとけ始めてきた」「太平洋戦争は戦勝国の言い方、大東亜戦争だ」とうそぶき、アジア太平洋戦争とは、欧米の白人支配からアジアを解放する戦争だった、つまり「大東亜共栄圏」は正しかったと「つくる会」と同じことを主張している。
 山田の言辞はトコトンまで戦前のアジア侵略戦争と対米英戦争の賛美である。ここには侵略戦争によって、抑圧され、支配され、虐殺されたアジア人民、植民地人民や、侵略戦争に駆り立てられ虐殺に加担し、そして死んで行った日本の労働者人民、そしてヒロシマ・ナガサキ、沖縄戦や東京大空襲のことがまったくひとつもない。
 戦争で甘い汁を吸ったのは一部の大ブルジョアジーと地主階級だけだ。人民は過酷な犠牲だけを負わされたのである。日帝ブルジョアジーと「つくる会」の反動的走狗(そうく)、ファシスト山田の戦争賛美演説を徹底的に粉砕しよう。

 第3章 「三峡ダムも北京も破壊せよ」と叫ぶ石原

 ファシスト石原は、東京都知事の権力を使って、「つくる会」教科書採択を強力に推進している。石原はすでに4年前に都立養護学校で「つくる会」教科書を採択し、今年4月に開校した中高一貫校の都立白鴎高校付属中学に「つくる会」教科書を採択した。
 石原は、小泉=奥田の最先兵となって、日帝の最も鋭い切っ先として、首相や閣僚ならとても言えないことを都知事の地位を利用して放言し、労働者人民に襲いかかっている。
 5月20日、石原は、都職員、学者、マスコミら110人を引き連れて海面下に沈みかかっている「沖ノ鳥島」に上陸・視察をし、「あれは島だ。日本の領土だ。文句あるか」と反動的パフォーマンスを行った。これは中国の「沖ノ鳥島は岩であり、日本はEEZ(排他的経済水域)を設定できない」という主張を牽制(けんせい)するものであり、中国への戦争挑発だ。釣魚台(「尖閣列島」)略奪攻撃と結合した排外主義的な領土拡大の野望をむき出しにした反革命行動そのものである。
 石原は「尖閣諸島は日本の領土である。だから自衛隊を派兵し実効支配せよ」と中国への侵略戦争を挑発している。
 釣魚台は歴史的にも地理的にも中国の領土である。日清戦争で日帝が1895年に台湾併合とともに清国から略奪した。敗戦後、日帝は中国からたたき出されたがこそくにも「尖閣列島」については完全に開き直って領有権を主張してきたのである。
 「尖閣列島」を日中間の領土紛争にしているのは日帝の側なのだ。一方的に中国にケンカを売り戦争挑発し、日本の領有権を主張し、海上保安庁が「尖閣列島」を警備しているのだ。
 この中国領・釣魚台に「自衛隊を派兵せよ」などと言うことは、まさに中国への侵略戦争を開始するということだ。当然にも中国は宣戦布告と受け取る。石原はそれで中国の艦船が「領海内」に侵入したら撃沈せよ、紛争になったら日米安保でアメリカを巻き込み、米軍の巡航ミサイルで「三峡ダムも北京も破壊される」などとマスコミで放言しているのだ。戦前の中国侵略戦争の発端となった31年9・18柳条湖事件や、侵略戦争を全面化させた37年7・7盧溝橋事件を再現することが狙いである。
 つまり石原は、中国領・釣魚台に自衛隊を派兵し、そこから中国侵略戦争を拡大せよと叫んでいるのである。これは米日帝の北朝鮮・中国侵略戦争の扇動そのものであり、ファシスト石原がその先兵の役を担っているということである。ファシスト石原を今こそ打倒しなければ、本当に米日帝による中国と北朝鮮への侵略戦争になり、世界戦争になるということなのだ。
 今や「つくる会」教科書批判はもとより、日帝やファシスト石原の帝国主義としての延命をかけた凶暴な諸攻撃に対しては、帝国主義打倒とマルクス主義と労働者自己解放の立場を鮮明にすることなくしては批判し、対決することができなくなっている。帝国主義批判こそが必要なのだ。
 小泉や石原・山田は、こうした中国や北朝鮮への侵略戦争を実際にやりぬくために、子どもたちに「つくる会」教科書の内容を教え込まなければならないとしているのだ。戦争賛美の行き着く先は、「国家・国益を守るためには戦争も必要だ。国家の危機に際しては国民は国家のために死ぬことができなければならない。それができてこそ真の人間であり国民だ」ということだ。かの「教育勅語」の内容である。これが「つくる会」教科書に盛り込まれている核心である。
 こんな教科書を杉並や全国の中学校に絶対に持ち込ませてはならない。朝鮮・中国・アジア人民は「つくる会」教科書、小泉の靖国神社参拝、国連安保理常任理事国入り、イラクへの自衛隊派兵、米軍再編と台湾有事の軍事介入策動、そして経済侵略の激化などの日帝の攻撃にすさまじい危機意識を持って反日帝=抗日の闘いに決起している。この闘いに連帯し闘おう。
 革共同と全都・全国の労働者階級人民は、「つくる会」教科書採択阻止と都議選決戦を一つのものとして、この6月、総蜂起しよう。「つくる会」教科書採択阻止の闘いの爆発で都議選に勝利し、都議選の勝利で8月上旬採択を絶対に阻止するのである。
 動労千葉はJR尼崎事故から1カ月の5月25日、安全運転行動に突入した。この不屈の決起と連帯し、全国の力で都議選決戦に勝利しよう。戦争・民営化と社会保障解体の日帝・小泉=奥田体制、ファシズム石原都政打倒に総決起しよう。

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週刊『前進』(2200号1面2)(2005/06/06)

 侵略美化と新たな15年戦争突入を狙う小泉の靖国参拝

 闘う中国・朝鮮人民と連帯し日帝・小泉政権を倒せ

 日帝・小泉政権は、小泉首相の靖国神社への公式参拝をめぐって、朝鮮・中国人民の怒りの声に対する居丈高な居直りをますます強めている。5月23日、中国の呉儀副首相が小泉の言動に抗議し、会談予定を急きょキャンセルして帰国したことを逆に「非礼」と非難し、再びマスコミを総動員して反中国の排外主義を猛烈にあおっている。26日には、森前首相が「いちゃもんもいいところ」とうそぶいた。
 この靖国問題は、「つくる会」教科書攻撃とも密接に結びついている攻撃である。かつての侵略戦争を公然と正当化し、新たな15年戦争への総動員体制形成を狙うものだからだ。
 今回の中国副首相の会談拒否の直接の原因は、4月23日のジャカルタでの小泉と胡錦涛国家主席の会談や、5月6日と7日の日韓・日中外相会談で中韓両国が小泉首相の靖国参拝中止を強く求めたのに対し、小泉が国会で、これを頭から無視し拒否する発言を繰り返したことにある。
 すなわち、5月16日の衆院予算委で小泉は、「どの国でも戦没者を追悼する気持ちを持っているはずだ。追悼の仕方を他国が干渉すべきではない」と言い、A級戦犯の合祀(ごうし)についてもその本来の意味を逆転させて「『罪を憎んで人を憎まず』というのは中国の孔子の言葉だ」と言い放った。さらに、「いつ行くかは適切に判断する」と、今年も参拝を継続する意志を明言したのである。
 続く5月21日には、武部自民党幹事長が訪中しての会談で「中国の批判は内政干渉」と発言し、中国側を激怒させている。
 これらの言動は、その一つひとつが許すことのできない居直りであり、恥知らずなペテンそのものだ。
 第一に、小泉の言う「戦没者追悼」は大ウソだ。靖国神社は戦没者を追悼するための施設などではまったくない。それどころか逆に、戦争犠牲者の中から“天皇と国に命をささげた忠勇の士”だけを選んで「英霊」としてたたえ、それ以外の戦死者への追悼は一切拒否する施設なのだ。
 その証拠に、靖国神社には、第2次大戦の戦没者のうち、数十万人に達する民間人の犠牲者は一切まつられていない。広島・長崎の原爆犠牲者も、東京大空襲を始め各地の空襲の犠牲者も、全島民の3分の1が犠牲となった沖縄戦での住民の死者も、最初からすべて排除されている。民間人で合祀されているのは軍に徴用されてその作業中に戦死した者だけだ。
 軍人・軍属でも病気や飢えで死んだ者は「名誉の戦死」とはみなされない。したがって「英霊」となる資格はないが天皇の「慈悲」によって合祀するとしてきたのだ。日本軍と戦った側の外国人の戦争犠牲者への追悼は、もとより最初から拒否している。日本の行った戦争を「聖戦」として、そこで死んだ兵士を「国家的英雄」にまつりあげ、その後に続けと労働者人民に強要するための装置――これが靖国神社の本質だ。
 第二に、靖国神社そのものが、日帝による侵略戦争と植民地支配をすべて正しかったとする歴史観を、戦後も一貫して体現し続けてきた施設なのである。宗教施設の装いをとった、きわめて政治的な施設なのだ。
 靖国神社は中国侵略戦争と第2次大戦を「大東亜戦争」と呼び、それは「日本の自衛のため」であり「東アジアを解放し自由で平等な世界を達成するためのものであった」と全面的に正当化することを、その公式見解としている。これは「つくる会」教科書とまったく同じである。
 また東条英機以下のA級戦犯についても「一方的に“戦争犯罪人”という、ぬれぎぬを着せられ、むざんにも生命をたたれた」と公言し、朝鮮・中国人民への謝罪も「必要ない」とその拒否を要求し続けてきた。1978年のA級戦犯合祀は、まさに侵略戦争を公然と居直ることを実際の行動に移したものだ。
 この靖国神社に小泉が首相として参拝し続けることは、日帝がかつての侵略と戦争を国家として公然と正当化し、中国・朝鮮への新たな侵略戦争にのりだす宣言以外の何ものでもない。だから小泉も石原も参拝を絶対にやめないのだ。また日帝が虐殺した2千万のアジア人民はもとより、日本の労働者人民310万人の戦争犠牲者の遺志をもとことん踏みにじるものだ。
 小泉の靖国参拝を絶対に許さず、闘う中国・朝鮮人民と連帯して、日帝・小泉=奥田とファシスト石原を打倒するために闘おう。

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週刊『前進』(2200号2面1)(2005/06/06)

 日露戦争を「自衛」「朝鮮独立」の名で礼賛する山田杉並区長

 「日本海大海戦」上映会あいさつ 「つくる会」の凶悪な先兵

 右翼集会を区教委が後援

 怒りの区役所包囲行動へ

 右翼ファシスト団体「新しい歴史教科書をつくる会」の「歴史」「公民」教科書の採択阻止をめぐる攻防は日ましに激化している。「つくる会」派は、区長の山田宏が積極的な推進派である東京・杉並区で採択させようと全力を挙げている。教育委員の入れ替えで5人中3人が「つくる会」派とも言われている。怒りと危機感をもって採択絶対阻止へ、杉並区役所を包囲する大衆的闘いの大爆発に向けて闘おう。6月が勝負だ。7月3日投票の都議選に勝利し、その力で8月上旬採択絶対阻止へ突き進もう。

 山田区長が戦争賛美集会に祝辞と感謝

 5月22日、セシオン杉並で「日本海大海戦100周年記念上映会」が開かれた。この企画は「つくる会」系の団体が主催したもので、「日露戦争のような勝利をもう一度」と願う、とんでもない反動的集会だ。あろうことか杉並区教育委員会がこの上映会を後援し、山田宏区長自ら出席して得々と侵略戦争賛美発言を行ったのである。
 こんなことが許されるだろうか。子どもたちが真に生き生きと、のびのびと学べる教育環境は、戦争とは絶対に相入れない。ところが教育環境の整備を責務とする教育委員会が、率先して戦争、つまり人間同士の殺し合いを賛美する集会を後援し、区長自らが参加し、お祝いと感謝の言葉を述べたのだ。
 この一事を見ても、またこの間、区教委が採択制度
を改悪してきたことが示すように、山田区長と杉並区教委は「つくる会」教科書の採択を杉並でこそ狙っているのである。都政を革新する会は長谷川代表を先頭にして、区教委と山田を徹底弾劾して闘っている。
 司会者から「日露戦争の日本海海戦に非常に詳しい方」と紹介されてあいさつに立った山田区長は冒頭、「本当に意義ある映画会を開催していただき、心から感謝し、お祝いします」と述べた。戦争礼賛の映画会を「意義ある」と述べ、感謝と祝いの言葉を贈るとは!
 さらに、「例の東京裁判史観と呼ばれる戦勝国の歴史観の押しつけの呪縛が少しずつとけてきている」「私はことさら戦争を美化するつもりはございませんが……以前の歴史を現在の人間の価値観で判断することほど危険なものはない」と、「つくる会」教科書とまったく同じ論理と語り口で、日本の侵略戦争を全面賛美した。日清戦争を「朝鮮の独立を支えようとやった戦争」と正当化し、日露戦争やアジア・太平洋戦争を「国家の自衛のための戦争」だったと正当化したのである。
 「明治維新以来、日本が自国の独立を意識しながら、朝鮮半島について何度も何度もいろんな意味で朝鮮の独立を支えようと、日清戦争で中国を破り、下関条約で朝鮮の独立を清国に認めさせ、しかしその一方で三国干渉があり、日本は遼東半島を返還した」
 「そういった中で朝鮮半島がどんどん日本にとって見ればロシアの脅威を強く感じる中で、警告を発してきたが、結局それが受け入れられず、やむにやまれず1904年に日露開戦とあいなった」
 そして山田区長は、「有色人種が白色人種に勝った」ことが「世界の歴史に与えた影響はきわめて大きかった」「日本の文明力、日本の知的水準の高さを世界に示した」と自慢した。

 世界史上最初の帝国主義間の戦争だった

 @まず、日露戦争を語る時に、日本海大海戦でロシアをうち破ったことに一面化して語ることはまったく歴史の歪曲である。この戦争が中国東北部と朝鮮を戦場にして両軍が激突し、中国・朝鮮人民の土地を踏み荒らし多大な損害を与えたこと、またロシアと日本の労働者人民を犠牲にしたことが、山田区長の口からは一言も語られない。逆に、日本海大海戦での日本海軍の兵器や火薬の殺傷能力の高さを自慢しているのだ。なんということだろうか。
 A日露戦争は、山田区長が言うような、「ロシアの脅威から日本を守るための自衛戦争だった」のか。とんでもない。
 日露戦争は、日本とロシアの世界史上初の帝国主義間戦争であった。それは19世紀末以来の帝国主義間対立、植民地・勢力圏の奪い合いのもとで、帝国主義強盗同士が、朝鮮半島と中国東北部の支配権をめぐって激突したものである。
 戦時の国民の苦しみは深刻であった。交戦20カ月間に日本の軍隊は11万人が戦死・病死し、17万人以上が負傷した。国内では増税に次ぐ増税、献金・公債の強制割り当てなどの負担は耐え難く、物価騰貴が生活難を倍加した。働き盛りの男は次々と兵隊に取られ、軍夫に徴用された。動員兵力は108万人に達し、農家の役畜と荷車までも徴発された。そのために1905年は大凶作となった。
 このように帝国主義国家と労働者階級人民の利益は真っ向から対立する。一握りの資本家、地主階級と明治天皇制国家のために、労働者農民はどれほど苦しめられたか。山田区長はこの事実にまったくふれない。
 B山田はまた、「日露戦争までの日本という国は、とにかく自国の独立と朝鮮の独立を非常に意識してここ(日露戦争)に至った」などと言っているが、「強盗の居直り」である。
 山田が言及している下関条約(1895年)の「朝鮮国の独立承認」とは、朝鮮の真の独立のためではなく、日本が朝鮮を従属させることについて清国に一切干渉させないということだった。だからこそ日帝はその後、朝鮮に日本軍の作戦および食糧供給などの便宜の提供を義務づけ、さらに95年10月にはソウルの王宮を襲撃して閔妃(ミンピ)を虐殺するなどの蛮行を働いたのだ。日露戦争勝利後の1905年11月には、韓国の外交権を全面的に奪い、10年には韓国併合を強行し、朝鮮を日帝の完全な植民地とした。そして朝鮮人民の独立闘争を徹底的に弾圧したのだ。
 このどこをとったら「日本は何度も朝鮮の独立を支えようとした」などと言えるのか。

 新たな侵略戦争をあおる山田弾劾を

 C山田は明治天皇を持ち上げて、「国際条規に反することなく、規律高く、国難に臨んでいったことが詔勅に読みとれる」などと言っている。だが、日清戦争後のいわゆる「三国干渉」で、遼東半島の返還を余儀なくされた時、明治天皇は伊藤博文に何と言ったか。「(遼東)半島を取ることは急速にも及ぶまじ。このたびの戦争(日清戦争)にて地理人情も相わかりおれば、遠からず朝鮮よりか又は何所かより再戦の機来るべし。その時に取りてもよろしかるべし」(『明治聖上と臣高行』。井上清著『日本の歴史』下より)
 明治天皇自身が帝国主義的な侵略戦争と領土略奪の野望をこのように語ったのを山田は何と言うのか。これほどまでに山田の言っていることはデタラメだ。
 山田は、講演の中で「心の中で私たちの先祖、国の置かれてきたさまざまな状況をひとつにして歩んでいくことが、これからの日本の平和と発展のために非常に役立つ」と言い、まさにこれからの戦争のために日露戦争を称揚している。現に行われているイラク侵略戦争、日米枢軸の米軍再編の攻撃を居直り、戦争国家体制づくり、戦争動員をめざす日帝の先兵の役割を果たしているのである。
 山田のこのような戦争賛美と歴史歪曲の教科書が、「つくる会」教科書なのである。杉並で「つくる会」教科書の採択を絶対に阻止しよう。

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週刊『前進』(2200号2面2)(2005/06/06)

 セクト的利害で統一戦線を破壊する日共を弾劾する

 戦時下階級闘争の発展への恐怖

 自衛隊のイラク参戦、米軍トランスフォーメーションと沖縄基地強化・名護新基地建設の攻撃、憲法改悪・教育基本法改悪策動、そしてビラまき弾圧などの治安弾圧の激化。このような戦時下の階級闘争の重大化の中で、労働者階級人民は、今こそ巨万の大衆決起、広範な統一戦線を形成して闘わなければならないという危機感を持って立ち向かい始めている。有事法制を「完成させない、発動させない、従わない」を旗印に結集した陸・海・空・港湾労組20団体の呼びかける闘い、また大内・小森・高橋・三宅の4氏を呼びかけ人とする教育基本法改悪阻止の闘いに、広範な労働者が結集して大きな運動を形成していることは、そうした怒りと危機感の結集である。労働組合の既成のナショナルセンターの枠を越えて闘いの輪が広がろうとしていることもその現れである。
 ところが、日本共産党は、こうした闘う労働者人民の切実な要求とその闘いの発展にこたえるのではなく、これに背を向け、統一行動・統一戦線を破壊し、セクト主義的な分断を図っている。昨年3・20イラク開戦1周年の闘争で、20労組の呼びかける日比谷公園の集会をボイコットし、芝公園集会を設定したのは日本共産党と全労連指導部だった。さらに、有事立法に対する闘いを押しとどめる「6月反動」を画策したのも日本共産党と全労連指導部だった。
 日本共産党は、戦時下の階級闘争が、権力の弾圧と妨害をはねのけてどこまでも発展することに死ぬほど恐怖している。帝国主義の侵略戦争に対して労働者階級人民の闘いをもって激突することに本質的に反対なのである。このような分裂主義と闘争破壊を露骨に示したのが、5月18日付「赤旗」の記事である。「暴力集団の“泥合戦”」というキャンペーンである。
 この記事は、こともあろうにファシスト・カクマル(権力と一体となった白色テロ集団であり国鉄分割・民営化の先兵だ)と中核派を同列に並べ、カクマルの反革命的言辞、非難中傷に依拠して中核派を攻撃するという悪質なやり口である。そして、何よりもわが革共同を「ニセ左翼暴力集団」と規定し、ののしっている。これは革命的左翼を「極左暴力集団」と呼んで弾圧する公安警察とどこが違うのか。
 だが、こんなことが現在の階級闘争の中で真剣に闘おうとする多くの人びとに通用するはずがない。
 彼らは自らは左翼であるかのような態度をとっているが、昨年1月の党大会で綱領を改定し、「労働者階級の闘い」を一掃して「国民政党」を名実ともに確定することで「左翼」であることを自ら放棄したのだ。
 また、中核派が「テロリストを絶賛」し「陰惨なテロ体質をもっている」と書き立てているが、これは許しがたいことである。日本共産党は、アメリカ帝国主義の積年の被抑圧民族に対する侵略と戦争と抑圧と暴虐に対するやむにやまれぬ反撃の闘い、極限的特殊的決起を帝国主義と同じ立場に立って「テロ」と非難し、「テロ根絶」を叫んでいるのだ。これほどあからさまな、被抑圧民族人民の闘いに対する敵対はない。
 このような日本共産党の異様な攻撃は、闘いを抑圧し、サボタージュしてきた日本共産党が、闘いの発展を恐れ、その矛先を革共同に向けることで、乗り切ろうとするものである。
 だから、まじめに大衆運動に取り組んできた労働者や、市民団体や、日共の党員大衆から、「日本共産党はこのような統一行動を分断するようなことをして、まじめに憲法改悪や教育基本法改悪攻撃と闘う運動をつくっていく気があるのか」という怒りの声が巻き起こっている。労働運動、大衆運動にまともに取り組まない、闘いの陣形が広がろうとすると必ずそれを阻害してくる、「日の丸・君が代」強制の攻撃に対しても、不起立の闘いに敵対して自ら率先して起立斉唱するという態度をとおした日本共産党が、大衆的な闘いの爆発に追いつめられ、危機を深めて、その本性を露呈し始めたのである。
 セクト主義と統一戦線破壊は、破産した残存スターリン主義としての日本共産党の反動的本質そのものである。断じて許すことはできない。

 「戦争のできる国民」づくりに完全に屈服

 日本共産党は都議選を前に、あたかも自らが「反石原勢力」であるかのように装っている。だがこれはペテンだ。
 石原は都知事就任以来6年間、露骨な反中国・反北朝鮮の排外主義的な言動を繰り返してきた。最近も中国との戦争をあおる発言を週刊誌上などで平然と展開している。石原は戦争と民営化(労組破壊)の小泉・奥田路線を先頭に立って切り開くファシストである。かつてオーストリアでファシスト・ハイダーが首相に選ばれた時、ヨーロッパ中から非難の声が渦巻いたが、石原が帝国主義日本の首都の首長になっていることはそれとは比較にならないほど巨大な恐るべき事態である。労働者階級は、これに対して「ファシスト石原打倒」を掲げて総決起しなければならない。
 ところが、日本共産党は当初から「石原都政に対しては是々非々で」と称して、「銀行への外形標準課税には賛成」とか「首都移転反対では一致できる」と言って石原を擁護してきた。労働者階級の石原弾劾の声が高まって、さすがに最近では「是々非々」とは言えなくなったが、石原と真っ向から対決する路線ではない。むしろ、主眼を「民主党批判」などにおいて石原との対決をあいまいにしている。
 なぜ日本共産党は、中国侵略戦争を扇動する石原に対して、沈黙してこれを許してしまうのか。
 5月12日、日本共産党議長の不破哲三は、各国大使館やマスコミに呼びかけて「時局報告会」を開き「日本外交のゆきづまりをどう打開するか」と題する講演を行った。不破は、「日本外交のゆきづまりの大もと」は「過去の戦争や植民地支配の問題」だと主張し、日本の戦争が侵略戦争であったことを認めることを提唱している。
 しかし、問題は、日本の戦争が帝国主義の侵略戦争だったということだ。不破の講演にはこの「帝国主義」という語が一度も出てこない。不破は帝国主義という言葉を知らないのではない。よく知っているからこそ、戦前も戦後も帝国主義と認めないのである。侵略戦争をやらなければ延命できない体制である帝国主義は労働者階級の力で打倒しなければならないということを認めないからだ。
 不破講演の最も大きな問題は、小泉の靖国神社参拝や、「つくる会」教科書が、過去の戦争の総括の問題にとどまらず、今日の戦争の問題、「戦争のできる国家」「戦争のできる国民」をつくるための攻撃であることについて一切問題にしないことである。
 靖国神社への参拝は、日帝が現にイラク侵略戦争に深々と参戦し、周辺事態法や有事法制を成立させ、米軍のトランスフォーメーションを進めることで、北朝鮮・中国侵略戦争に踏み込もうとしているからこそ、つまり新しい戦死者を生みだそうとしているからこそ、絶対に中国や韓国に「屈服するわけにはいかない」として固執しているのだ。このことを不破は知っていながら、あえてまったく問わないのである。
 したがって、不破は、いま現に問題になっている、そして中国人民、韓国の人民から激しく弾劾されている「つくる会」教科書を採択させてはならない、そのために中朝人民と連帯して巨大な大衆運動を巻き起こそうということを絶対に言わないのである。
 結局、不破は階級的な立場ではなく、帝国主義の立場、日本国家の立場で問題を提起しているのである。

 「30人学級」の要求は逃げ

 日本共産党は、教育問題を前面に押し出し、「30人学級実現」を公約に掲げている。だが、これは教育内容にまったく言及しない点で、とんでもない方針だ。
 日本共産党が都議選政策で「教育」に関して掲げているのは次の諸点である。
「どの子も基礎学力と社会性が身につく学校へ、教育を改革する◎30人学級を実現◎学校の改修を緊急にすすめる◎ゆきすぎた競争主義を是正する◎私学助成を充実する◎都立大の改革は学生と教師の意見を反映して◎子どもをまもる社会的モラルを確立」
 日本共産党は、「いじめや不登校、学級崩壊、学力の低下など、学校教育の現状は深刻」として、その大もとにある「ゆきすぎた競争と管理による教育のゆがみ」に歯止めをかけ「東京都が少人数学級化など教育条件の改善に力をいれるよう、教育行政のあり方を転換します」と言っている。
 このように、都民の切実な要求にこたえるかのようなポーズをとりながら、実際には戦争に向かっての教育の動員という攻撃との一番重要な闘いを完全に無視抹殺してしまうのだ。
 教育の環境を整えることを、教育の中身の問題を抜きに要求することはできない。「30人学級」の問題よりも、子どもたちを戦場に送り出す教科書を認めるかどうかの方が重要であることは言うまでもないことだ。より整備された教育環境のもとで、教えられる内容が戦争教育だったら、どうなるのだ。
 教育問題に関するさまざまなおしゃべりは、結局現下の最重要課題である「つくる会」教科書との対決を避けるための方便である。それは、教育労働者の「日の丸・君が代」強制拒否の闘いに敵対して、不起立の闘いを抑圧してきたこと、そして労働者の戦争協力拒否の闘いを抑圧していることと一体の問題である。
 もともと「日の丸・君が代」の強制は、日本共産党が「日の丸・君が代」には法的根拠がない、と言って「国旗・国歌法」の法制化に道を開いたという経緯がある。日共は今日の「日の丸・君が代」強制攻撃の留め金を外した張本人として、自己批判なしに発言権はない。
 「つくる会」教科書採択との闘いを争点にしない日本共産党は、労働者階級人民の味方ではない。今こそ、闘う労働者は日本共産党と決別し、「つくる会」教科書採択阻止、JR尼崎事故弾劾、運転保安確立の闘いで、闘う労働運動を切り開こう。日本共産党の妨害と攻撃を打ち破り、「石原都知事に挑戦状」を掲げて闘う長谷川英憲氏の都議選勝利を必ずかちとろう。

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週刊『前進』(2200号2面3)(2005/06/06)

杉並先頭に採択絶対阻止へ 「つくる会」教科書を暴く (4)改憲を扇動

 ●「国家」=「公」への忠誠要求

 「国防の義務」を盛り込む

 「つくる会」の公民教科書も、歴史教科書以上に許すことのできない内容である。歴史教科書が日本帝国主義の明治以来の侵略と戦争を美化し肯定するのに対応し、公民教科書はまさにその同じ論理をもって、今日の日帝の日米枢軸下での新たな侵略戦争・世界戦争への突進を全面的にあおるものとなっている。

 国家こそすべて

 05年版の扶桑社の公民教科書は、「つくる会」の会長である八木秀次が自ら監修して作成した教科書である。八木は「つくる会」の集会で、これまでの公民教科書を「左翼の政治ビラと同じだ」と言って否定し、攻撃している。差別や人権の問題に多くのページが割かれ、日本国民である以前に「地球市民」の一員であるという思想を教えているからというのがその理由だ。そして、“こんな教科書では国家のために自分の命を投げ出すという覚悟が育成できない”とする主張を露骨に展開している。
 「つくる会」の公民教科書は、まさにこれまでの教科書を全面否定し、新たな戦争への精神的総動員を最大の狙いとしている。その核心は徹底して国家主義・愛国主義をたたき込むことにある。そこに貫かれるのは、個人や人権などの前にまず国家があるということであり、国民は“お国のために命をささげよ”とするイデオロギーである。
 この教科書はその冒頭で「人は共同社会をつくっている限り、『私』の利益を追求する場合でも、社会のルールを守り、社会生活を改善し、社会を外敵から守るという課題を引き受けなければならない」と言い、これを「公民」の定義としている。また「人間は集まって『国』をつくり(集団をなして)暮らす存在」とも書かれているように、ここに言う「共同社会」とは国家、具体的には天皇を中心とする日本国家のことだ。しかしそれは真の「共同社会」などではない。階級対立とその中で動く資本主義・帝国主義の社会であり国家でしかないのだ。
 この国家を=「公(おおやけ)」として、それに「私」を捨てて忠誠を尽くし「義務」を果たせと教えるものが、「つくる会」の公民教科書なのだ。

 人権より義務

 ここでは、他の教科書が書いている個人の尊厳や、基本的人権が「侵すことのできない永久の権利」として憲法で保障されていることについては、ほとんど何も語られない。逆に“人権は無制限に認められるものではない、社会の秩序を混乱させるようなことは許されない”といった「つくる会」の党派的主張に、一切がすりかえられている。国家が個人の尊厳や人権よりも優先する価値として押し出されているのだ。
 その上で最大の特徴は、それらの結論として、納税などの「国民の義務」を「国を維持・発展させていくために欠かせない重要な義務」として強調し、その一環としてなんと「国防の義務」を書き込んでいることだ。「憲法で国民に国を守る義務を課している国は多い」として、ドイツ、中国、スイスの例を挙げ、「これらの国の憲法では国民の崇高な義務として国防の義務が定められている」と記している。
 「国防の義務」という場合、当然それは兵役の義務、すなわち徴兵制の導入を含んでいる。第2次大戦の反省に立って戦争を放棄している現憲法にはない「国防の義務」の導入を公然と主張しているのだ。
 したがって、「つくる会」の公民教科書は現在の憲法とその原理である〈平和主義・基本的人権・主権在民>といった考え方をすべて否定・追放する。それに替えて、現実には階級社会であり資本主義・帝国主義の国家である日本国家への「義務」と忠誠を、第一義的な価値観として中学生に教え込もうとしているのである。
 それは同時に改憲の主張に直結している。実際に、憲法9条は「時代に合わない」論を始めとして、この教科書に書かれているのは自民党の改憲草案とほとんど同じ内容である。あからさまな改憲論を、教科書でまず次世代を担う中学生に、さらにはその親や家族に教え込もうとしているのだ。

 武力行使あおる

  「国防の義務」の提唱と一体のものとして、軍事力の保有を国家に不可欠なものと描き出し、さらに北朝鮮や中国を「敵国」扱いして侵略戦争を露骨にあおっているのも、この教科書の大きな特徴である。
 教科書を開いて最初に見るのは、グラビアのトップに飾られた3枚の自衛隊の写真だ。PKO派兵された自衛隊が「世界中で活躍する日本人」の筆頭に挙げられている。そして次のページでは、「わが国周辺の問題」と題し、北方4島と独島(「竹島」)、釣魚台(「尖閣諸島」)の写真を並べ、「わが国固有の領土」であるのに他国に「不法占拠」されているなどと強調。その右側はテポドンや拉致問題など北朝鮮脅威論のキャンペーンで埋めつくされている。
 課題学習のテーマにもこれらの問題を取り上げて、「日本海周辺では、漁船などに偽装した工作船が数多く出没していることが明らかになっている。これらの工作船は、麻薬の密輸や日本への工作員の潜入などに使われているとみられている」などと、露骨な排外主義が扇動されている。実際には日帝の側が領土略奪と侵略にのりだしているのに、その事実を百八十度歪曲して北朝鮮や中国を逆に日本を狙う“危険な国”と描き出し、これに対して軍事力の発動で対抗するのは当然と、侵略戦争をあおっているのである。

(検定合格した05年版「つくる会」公民教科書より)

▼「『私』の利益を追求する場合でも、……社会を外敵から守るという課題を引き受けなければならない」
▼「憲法で国民に国を守る義務を課している国は多い」「これら(ドイツなど)の国の憲法では国民の崇高な義務として国防の義務が定められている」
▼「日本海周辺では、漁船などに偽装した工作船が数多く出没している……これらの工作船は、麻薬の密輸や日本への工作員の潜入などに使われている」

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週刊『前進』(2200号3面1)(2005/06/06)

  「つくる会」教科書8月上旬採択阻止へ 6月の闘いが勝負

 日露戦争賛美許さない

 区教委闘争 長谷川氏が山田区長弾劾

杉並区教育委員会が開かれた5月25日、区役所前で訴える長谷川英憲氏(都革新代表) 5月25日、都政を革新する会の長谷川英憲氏が杉並区教育委員会に対する弾劾の区役所前街宣を行った。街宣には介護と福祉を要求する杉並住民の会の高齢者や「つくる会」教科書に怒る区民、さらに相模原市議会議員の西村綾子さんも応援に駆けつけ、結柴誠一区議、新城節子区議も長谷川氏とともに「つくる会」教科書採択阻止を熱烈に訴えた。長谷川氏は、石原のファシスト都政と杉並区長・山田の「つくる会」教科書採択の動きを怒りに燃えて暴き、通りがかりの区民がその訴えに聞き入った。
(写真 杉並区教育委員会が開かれた5月25日、山田宏区長の日露戦争などを美化する発言を弾劾し、区役所前で訴える長谷川英憲氏【都革新代表】。力を込めた訴えが区民の共感と決起を広げている)
 マイクをとった長谷川氏は、まず5月22日にセシオン杉並で開かれた「日本海大海戦100周年記念上映会」と銘打った集会での山田区長の日露戦争を賞賛する発言を弾劾した。長谷川氏は日露戦争について「朝鮮と中国東北部の植民地化、勢力圏化をめぐる帝国主義強盗同士の戦争だった。この戦争で労働者・農民がかり出され、実に11万人もの人が命を落としました。山田区長はこの戦争で『勝って良かった』と賛美する発言をし、もう一度日本を戦争に引きずり込もうとしている」と核心を暴いた。
 山田は、第二次世界大戦の日米戦争についても「マッカーサーも日本の戦争は自衛戦争だったと証言している」と語った。長谷川氏は「日本とアメリカの戦争も強盗同士の戦争です。日本は朝鮮を36年間植民地にした。台湾もそうです。中国の東北部にカイライ政権をつくり、支配した。この絶対に許せない侵略戦争を合理化するのはとんでもない態度です」と弾劾した。
 さらに、区議会の文教委員会をもだまして教科書採択要綱を改悪した策動を暴き、「実に許しがたい山田区政だ。教育労働者は『教え子を再び戦場に送るな』と闘ってきましたが、『つくる会』教科書が採択されれば、教え子を戦場に送る教育をすることを強制されるのです」「『つくる会』教科書採択反対の運動に参加してください」と訴えた。山田区長の戦争推進の姿勢に通りがかりの区民も驚き、「山田区長は『つくる会』と同じファシスト」と呼びかけるビラを受け取って行った。
 長谷川氏は小泉の靖国神社参拝問題を取り上げ、「A級戦犯を始めとして戦争で亡くなった人をまつらないと次の戦争ができないからだ」とその狙いを暴いた。石原の「中国に戦争を仕掛けよ」という発言を弾劾し、そのための「つくる会」教科書であることを暴き、6月2日の「つくる会」教科書採択阻止杉並大集会への参加を呼びかけた。
 長谷川氏は、さらに浜渦副知事の偽証問題を取り上げ、「石原知事は今、福祉の民営化を進めています。そして民営化には巨額の利権が生じます。その利権をめぐって石原都知事と与党・自民党サイドとの熾烈(しれつ)な対立が爆発した」と事態の本質を明らかにした。「この責任は、都政独裁をやってきた石原都知事にある」と暴き、「今度の都議選は石原都知事を打倒する選挙だ。石原都知事と対決できる人に投票すべきだ」と訴えた。そして「与党である自公民を一人も当選させてはならない。共産党は石原と対決しない。福士さんは『いいところもある石原都政』と賛美している」と激しく弾劾し、支持を訴えた。
 午後2時からの教育委員会には50人近くの人たちが傍聴に詰めかけた。ところが傍聴は20人に制限され、怒りの声が上がった。
 教育委員会では重大な問題である改悪された規則、要綱、手引きによる中学教科書採択の調査事務日程が、「昨年と同じですよね」という一言で、大改悪が行われているにもかかわらず何も審議しないで終了した。集まった区民は「こんなことで『つくる会』教科書が採択されるのか」と驚き、怒った。
 この日決まった教科書採択のための調査事務日程で6月が重大な勝負となった。8月上旬採択に向けて、6月に調査委員会や種目別調査部会、中学校、107条教科書調査委員会の調査が行われ、種目別調査部会と中学校の報告は6月中旬に出される。
 「つくる会」教科書採択を阻止するために今こそ大衆的な闘いの大爆発が必要だ。6月都議選で長谷川英憲氏の勝利をなんとしてもかちとり、「つくる会」教科書を絶対に阻止しよう。

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週刊『前進』(2200号3面2)(2005/06/06)

 新城区議が新事実暴く 教員・専門家の意見排除

 議会だまし採択制度改悪

 前号既報のとおり、5月17日、杉並区議会文教委員会で新城節子区議の追及で重大な事実が明らかになった。「つくる会」、石原都知事、都教委と共謀した山田区長が議会もだまして教科書採択制度を大改悪していたのだ(質疑応答別掲)。
 杉並区は昨年、教育委員会で小中学校教科書の採択要綱を改悪した。その狙いは、調査研究機関の報告を単なる参考資料にし、現場の意見にまったく縛られることなく教育委員会の独断で教科書採択が行えるようにすることである。
 昨年4月28日、教育委員会で「小中学校事務処理要綱」が審議され、これまでの「要綱」に代わる「教科書調査事務処理要綱」を提案した。そして、その審議は大した議論もなく了解された。ところが5月26日の教育委員会で、区当局は「要綱というレベルではなく、規則で規制したほうがいい」として「区立学校教科用図書の採択に関する規則」を提案した。その時に4月28日に出した要綱は廃案になった。区は区教委で何も説明することなく重大な改悪を行ったのである。
 新城区議は、区が区議会文教委員会に昨年の区教委での要綱改定を報告していないことを追及した。区は当初説明したかのように言ったが、それは採択手続きの流れを示した図を提出しただけなのだ。この点をつかれて区は要綱を示していなかったことを認めた。
 また、区は要綱改定について「教育長に権限が偏っている」ことが理由で大きな変化はそこだけであるかのように言ったが、実は重大な改悪が行われていた。採択審議会を調査委員会に変えたのだ。「協議し答申する」と「調査を行い結果を報告する」では決定的な違いがある。参考資料に変えられたのである。
 さらに、4月28日に出された案にすらあった「調査委員会の協議」「研究部会は専門的な観点で調査・研究」「小中学校長は所属教員の意見を聞き」などの文言を削り、現場の意見が反映しない形に変えている。新城区議の追及に教育長はまったく答えられず、区のペテンは完全に暴かれた。
 日帝は、01年の教科書採択に当たっては、教育委員会の指導の下に各採択区の採択要綱が変えられ、「学校票」や「絞り込み」を廃止した。その上に今回杉並区は審議会の答申にも縛られないように委員会の「報告」に変えたのだ。

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週刊『前進』(2200号3面3)(2005/06/06)

 “改悪採択要綱は撤回せよ”

 杉並区議会 5・17文教委員会の質疑応答(抜粋)

 5月17日の杉並区議会文教委員会での新城節子区議(都政を革新する会、写真)の質問と区側(区教育委員会事務局)答弁を紹介します。(編集局)

 なぜ採択要綱を変えたのか

 新城 採択事務の要綱について、(資料を)他の委員に配布していただきたい。(配布される)
 去年、改訂された教科書の事務処理要綱について質問する。
 私は前回4月19日に中学校教科書採択要綱が大改悪されていると問題にしましたが、その際、区は「すでに昨年小学校教科書採択の折に規則をつくって議会にも報告しました」と答弁しました。昨年のいつ報告されたのか。
 庶務課長 昨年5月18日の文教委員会で報告させていただいております。
 新城 昨年5月18日の文教委員会で報告されたのは、採択についてのフロー図、流れの図式だけですね。「こういう要綱に変わりました」という説明を受けていない。
 指導室長 要綱はお示ししていなかったと思います。ただ、教科書の採択時の流れについてご報告したと記憶しています。
 新城 流れ図を見れば、「審議会」が「調査委員会」に変わったとある。それについて一言も説明がない。教育委員会では報告され、一定の議論もされながら、なんで議会に報告しなかったのか。議会を軽視している。
 指導室長 けっして議会の軽視という認識はございません。
 新城 私たちも教育に関わる所管の常任委員会ですよ。教育委員会を監視する立場にある。その点では結果的にそうなったことについては問題がある。
 文教委員会が要綱の改定の中身について、フロー図を示されただけで、何の説明も受けていない。区の姿勢はおかしい。要綱は撤回すべきだ。
 新城 昨年5月26日の教育委員会に「規則」が突然提案された時に、4月28日の教育委で了解された「事務処理要綱」が別の事務処理要綱に変わっている。これはどういうことか。
 指導室長 教育長に権限が偏り過ぎているという委員の声を考慮して、規則を制定し、それに沿った要綱を定めたものであります。
 新城 たった一カ月で前の要綱が廃止され、しかも「規則」に基づく新たな「事務処理要綱」と「調査事務に関する手引き」が5月26日付で策定された。簡単な説明だけで、これについての審議がまったくない。「事務処理要綱」から「規則」そして新たな「事務処理要綱」、「手引き」に変えた理由は何なのか。
 指導室長 廃案にしました「事務処理要綱」というのは、教育長の権限に偏りすぎている。このあたり課題があった。規則という形の方がよろしいということで提案があった。
 新城 廃止となった「事務処理要綱」の中身である「調査委員会の協議」「研究部会は専門的な観点で調査・研究」「小中学校長は所属教員の意見を聴き」という点、そして「情報公開」の項目が、新たな「規則」「要綱」「手引き」の中では完全に削除されている。その点についてなんなのか。
 指導室長 「要綱」というレベルではなくて、きちんと「規則」として定めたほうがよいということで、このようなことになった。
 新城 重大な中身が削られている。やはり、審議会を調査委員会に変えたということ自身が、単なる資料提供機関に変えてしまうという重大な改定だったわけです。それにもかかわらず5月26日の教育委員会の審議は、「趣旨は前と大体そんなに違いませんので私は結構でございます」とかいうやりとりだけです。
 当局が教育委員会にさえ説明していないということがここに現れている。教育長が教育委員会をもだましたと言わざるをえない。
 指導室長 私どもはそうした意識はまったくございません。適切な議論が行われたと認識している。
 新城 01年の採択要綱、細目の中には「採択審議会は協議し答申する」とありました。そこから上がってきた答申や報告を尊重しなさいとなっていた。ところが04年の改定で、調査委員会は「すべての教科書について調査を行い結果を報告する」として、参考資料に変えられています。報告に基づいて教育委員はやってくださいということですか。それともこれはあくまでも参考ということなのか。
 指導室長 まず、教科書採択の採択権は、教育委員会にあるということで、このような要綱を定めてきたところであります。調査委員会等々の中で専門的な調査も十分に行われるものと認識しています。

 つくる会放送局を区が後援

 新城 「新しい歴史教科書をつくる会」は、4年前、扶桑社版の教科書が採択されなかったことに対して、今回は「リベンジ」を主張している。そのために「採択システムの適正化」とか「静謐(せいひつ)な採択環境の確保」とかの方針を打ち出している。
 この中に「関係者との対話」が出てくる。「直接採択権限を有する教育委員と、間接に政治責任を負う首長に協力を求める対話活動は重要」「直接の当事者を含む、さまざまな採択関係者に協力を求める」と打ち出している。区の教育委員会、教育長へはどうだったんですか。
 指導室長 まったく存じかねます。教育長等々に何らかのアクションを起こしたということはうかがっておりません。
 新城 チャンネル桜は「つくる会」の放送局ですね。その番組に関わることは「つくる会」の関係者との対話の一環であると区長は気づかなかったのか。教育長はどうなんでしょう。
(教育長答えず)
 庶務課長 お話の講演会については、教育改革についての会議を行うということで、教育委員会としては名前を出してきたということだけです。

 専門家の評価無視する暴論

 新城 やはり、専門家からあげられてくるものを重視してそれに基づいて教科書採択がなされるべきだと思いますが、今回の杉並区教育委員会の流れを見ていて非常に危惧(きぐ)する。
 昨年の小学校の採択に関する教育委員会の議事録、調査委員会の報告書、各種部会の報告書を読みました。例えば算数ですが、現場の専門家の意見・客観的な評価が、どう見ても啓林館よりも東京書籍のほうがいいという表現です。しかし、教育委員会は啓林館を採択した。その理由はなんですか。
 指導室長 教育委員会の独自の調査・研究、経緯等々を踏まえた判断と理解しています。
 新城 審議の中で「報告書の中の欠点は長所と理解する」として、現場の教育専門家の評価と180度逆の評価をしている。「教えにくい、使いにくい」という現場の声に対して、「何で使いにくいのかな。私は実際に教壇に立った経験がないからわかりませんが、ちょっと理解できない」として、さらには「優秀な先生はどんな教科書を与えてもきちっとした授業ができますが、逆にダメな先生は、立派な教科書を与えてもダメなのです。先生方には勉強してもらいたいと思います」と宮坂さんはおっしゃっている。
 教育長は「教科書が変われば、3倍ぐらい負担がかかる。それは当たり前。使いづらいというレベルの問題だとすれば、教える側の努力の範囲できちんとやるべきです」と発言している。
 現場の意見とか専門的調査機関の意見をまったく無視して、ずぶの素人である教育委員が、教育の専門家が「欠点」と指摘していることを「長所」だと言いくるめ、逆に「使いにくいというのはダメな先生だ」という暴論を吐いているのです。調査委員会を設置する意味があるのか。
 指導室長 規則で規定されているとおり、意義があるものと考えております。
 新城 「規則」の「採択の基本方針」にいう「専門的な調査を行い、その成果を生かす」にさえ反する。こういう形で現場の意見が無視されるんだったら、「手引き」の「調査の観点」で「使用上の便宜」の文言を盛り込む必要もないじゃないですか。
 新城 採択制度の改悪によって、もはや専門的な研究の意味が失われて、教育委員会による独善と偏見がまかり通っている。やはり山田区長が中学校の社会科で「つくる会」教科書を採択しようという政治的意図から、今回の調査機関の結論に拘束されないための仕組みを作ったのではないかと考えるわけです。
 そもそも議会に報告もなくて一方的に2度にわたる改定が、しかも教育委員会の形骸化を利用しながら行われた。この要綱・手続きはいったん撤回すべきです。撤回して、もう一回審議を教育委員会でも文教委員会でも審議すべきです。その点を、私は是非求めておきたい。
 それから、教育委員会の採択において、現場の意見や調査委員会の評価が、本当に反映され尊重されること、調査・研究の成果が生かされるシステムに私は戻すべきだと思います。

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週刊『前進』(2200号3面4)(2005/06/06)

 「日の丸・君が代」周年行事処分 “不当処分撤回を”

 公開口頭審理が始まる

 東京都教育委員会が2003年に発した「10・23都教委通達」に抗して「日の丸・君が代」不起立などを貫いた教育労働者への不当処分は、延べ300人に及ぶ。8割を超える被処分者が処分撤回を求めて都人事委員会に不服審査請求を行ったが、人事委が審議も開始しないまま05年春も新たな不当処分が乱発された。
 こうした中で5月23日、03年11〜12月の都立高創立記念行事で処分された7人について、初めての公開口頭審理が行われた。提訴から実に1年2カ月である。
 100人以上の傍聴希望者が殺到したが、傍聴席は29席しかなかった。しかも処分者(都教委)側席には都教委関係者は一人もいない。審理では冒頭、請求人(被処分者)と代理人が「もっと広い会場で審理し、傍聴席を増やせ」「横山洋吉教育長と教育委員が出席すべき」などと求めた。しかし都人事委の審査員である元都副知事・檜垣正巳は、いずれの要求もまともに取り合わず、怒りの声が満ちた。
 続いて7人の請求人のうち5人の意見陳述が行われた。「卒・入学式とは違い、儀式的なことは排して芸術鑑賞などを中心に行われようとしていた創立記念行事が『10・23通達』で壊された」「『日の丸・君が代』強制は、全校生徒を前にした『踏み絵』。教育現場にあるまじきことです」「『10・23通達』による『命令による強制』は憲法・教育基本法にも違反する」。信念を貫いた自らの行動について堂々と陳述する姿は感動的だった。
 次回は、残る2人の意見陳述と、都立深沢高校校長の尋問が行われる。
 同日、今年3月卒業式の「君が代」不起立で処分された教育労働者3人が、処分撤回を求めて不服審査請求を行った。
 また被処分者の会と弁護団は、今春の被処分者に対する再発防止研修を行わないよう、横山教育長に申し入れを行った。

 被処分者の会が記者会見

 午後4時半から被処分者の会が記者会見を行った。審理開始を遅らせる都人事委と、審理も始まらないまま新たな処分を強行した都教委を弾劾し、「公開口頭審理を通じて、『日の丸・君が代』強制の実態を白日の下にさらし、東京都の教育を都民の手に取り戻すため闘う」と声明を発した。
 午後6時からは、角筈地域センターで「一人の被処分者も孤立させず職場ぐるみ・都高教ぐるみで人事委員会審理を支えよう/5・23周年行事人事委員会審理報告集会」が行われた。周年行事の被処分者7人が所属する都高教3分会が主催し、100人が参加した。
 7人の請求人が発言し、「今『日の丸・君が代』強制に沈黙していると、われわれ自身が子どもたちを『お国のために死になさい』と送り出すことになりかねない」という発言や、「今日の陳述は非常に楽しかった。ぜひみなさん、1回・2回、どうでしょうか?」と不起立を呼びかける訴えなどが続いた。
 都高教から鈴木副委員長があいさつし、若林委員長のメッセージを代読した。

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週刊『前進』(2200号3面5)(2005/06/06)

 夢中で闘った1年

 「被解雇者の会」が報告会

 04年3月卒業式における「君が代」不起立を理由に解雇された「被解雇者の会」が、5月21日、文京シビックセンターにおいて報告集会と総会を行った。
 前半は「被解雇者の会」報告集会。主催者あいさつを行った被解雇者は、解雇されて精神的にも生活的にもよりどころを失って混乱していた状況から、04年6月に裁判を起こし、第6回口頭弁論を終え立証段階を迎えたこの日までの「無我夢中で走ってきた1年間」を報告した。都高教本部に取り組みを訴えて「解雇裁判」傍聴者の「組合動員扱い」や都労連への協力要請、機関紙発行の便宜協力などをかちとってきた成果を報告した。連帯あいさつでは、都高教の鈴木副委員長が発言し、若林委員長のメッセージを紹介した。
 川口・水口両弁護士は、この訴訟は「解雇無効、現場に戻せ」「働く権利と地位を求める」民事訴訟であると説明し、同時に「日の丸・君が代」の血塗られた歴史の片棒を担いできたという教員の自覚を受け止めて、解雇を強行する都教委に対して、弁護士もともに闘っていく決意を述べた。
 被解雇者が決意を表明し、家族も裁判傍聴などで支えてくれていること、5万筆の解雇撤回署名が集まったことなどを報告した。
 後半は「『君が代』解雇裁判を共にすすめる会」の総会。まず「嘱託不採用撤回を求める会」が、04年3月卒業式で戒告処分を受けた教育労働者5人が今春嘱託不採用とされたことについて、「不当な見せしめ攻撃と闘う」と述べた。
 活動方針案、予算案などを承認した後、「共にすすめる会」の代表世話人が「『お上の言うことを聞けば生活は保障する』という分断攻撃を打ち破り、若い人たちのことも念頭において、裁判の傍聴や広報活動を強化し、解雇撤回の10万人署名運動を展開して、なんとしても裁判に勝とう」と提起した。
 支援の全国組織を立ち上げることと、解雇裁判を共にすすめる会の世話人を確認して、集会を終えた。

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週刊『前進』(2200号3面6)(2005/06/06)

 韓国 闘う蔚山建設プラント労働者

 非正規職労組抹殺に抗し

 本格的な賃団闘(賃金団体協約交渉)の季節を迎えた韓国で、ノムヒョン政権と資本が非正規職労組抹殺攻撃に出ている。その最火点が蔚山(ウルサン)建設プラント労組の闘いだ。
 精油化学工場施設の維持・補修を行う社内下請けの労働者たちが昨年1月、組合を結成。1日8時間労働、有給休暇、最小限の安全装備の支給、トイレ、食堂、更衣室の設置などを掲げて、蔚山地域の専門建設業者らに団体交渉を要求した。しかし業者はことごとくこれを拒絶。これは蔚山地域の専門建設業者を牛耳るSK資本グループの意向によるものだ。労組は14回もの交渉要求を拒否され、今年3月18日、全面ストライキに突入した。
 4月8日には市庁舎に座り込んだ組合員825人が連行(9人逮捕、100人余が非拘束立件)されるという空前の弾圧が起きた。4月30日にはソウルのSK建設現場で3人の組合員がタワークレーンを占拠し高空ろう城に入った。翌5月1日にはSK蔚山工場内の精油塔を占拠、70bの高空ろう城に突入した。
 スト61日目を迎えた5月17日、積もりに積もった怒りが爆発した。午前中に開かれた蔚山建設プラント労組のスト集会では、パクヘウク委員長が「これだけやられてどうして我慢できるか。この非正規職闘争は全国の民主労組が解決すべき最も重要な事案だ。粘るやつが勝つ。最後まで闘争しよう!」と訴え、組合員1000人が「トゥジェン(闘争)!」と答えた。
 午後のゼネスト決意大会には、光陽、麗水、浦項などからプラント建設労働者が結集。清州からは、スト突入から120日、工場閉鎖・契約解雇と闘いぬいているハイニックス・マグナチップ下請け支会の労働者が駆けつけた。警察の大部隊が検問を敷き、放水車などで鎮圧態勢がとられた。
 集まった3500人を前に民主労総蔚山本部のイホング本部長は、「2カ月間休みなしに闘ってきたが、勝利するかやられるか、きょうが分水嶺。団結して闘おう」と力を込めた。27日に蔚山で5千人規模の全国労働者大会を開催することが宣言され、高空ろう城中の組合員から「勝利して降ります」の声が届いた。
 午後4時40分、蔚山プラント労組を先頭に街頭行進に出た。精油工場近くの交差点は警察によって完全にふさがれている。「どこまで労働者を踏みつけるのか!」「交渉に応じよ!」――労働者たちの手には鉄パイプが握られていた。警察部隊が投石で鎮圧に出るが、労働者の怒りに圧倒されて後退。労働者はコンテナを引き倒して精油工場へと迫った。多数の負傷者を出しながらも、労働者の闘志は不当な弾圧を圧倒して跳ね返した。
 翌18日朝、労組の座り込み現場に捜索が入り、委員長以下7人に逮捕令状が出された。同日夕、精油塔に断食ろう城中の組合員に放水され、十数人の特殊部隊が襲いかかって連行するという暴挙に及んだ。
 さらに5月23日、ソウルに上京し、三歩一拝のデモを行った蔚山建設プラント労組組合員580人が連行された。翌日には大部分は釈放されたが、17人は身柄を蔚山に送られるなど、凶暴な弾圧が続いている。
 6月国会を控え、政労使代表者会議再開の動きがある中、5・27から6月ゼネストへ、非正規職労組をめぐる攻防が最大の焦点となっている。団結し闘う労働者と国際主義的結合が求められている。

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週刊『前進』(2200号4面1)(2005/06/06)

 動労千葉が安全運転行動に突入

 回復運転せず制限速度厳守

 “大惨事二度と起こすな”


尼崎事故を許すな 1カ月を期して「明日はわが身」と安全運転行動への総決起を誓い、“団結ガンバロー”を行う動労千葉の組合員ら(5月24日 千葉市文化センター)

 国鉄千葉動力車労働組合(動労千葉)は、107人の命を奪った4月25日のJR西日本福知山線(宝塚線)尼崎事故から1カ月の5月25日を期して、「安全運転・危険個所総点検行動」に突入した。闘いの戦術は、列車が遅れても回復運転をしないことや、制限速度を厳守すること、レール破断多発個所で最高速度を90`に制限することなどだ。前日の24日には千葉市文化センターで「あの大惨事を二度と起こすな! 運転士への事故責任転嫁粉砕! 尼崎事故糾弾/動労千葉総決起集会」を160人を集めて開催し、動労千葉の原点である「闘いなくして安全なし」のスローガンを怒りを込めて掲げ、反合・運転保安確立に向けての総決起態勢を確立した。

 尼崎事故1カ月に不屈の決起

 動労千葉が安全運転行動として組合員に指示した内容は以下のとおりだ。
 @回復運転はしない。A制限速度を絶対に遵守(じゅんしゅ)する。B運転中危険と認めた時は必ず列車を止め、あるいは速度を落とす。C遅れは必ず報告する(運転状況報告書については組合にも1部提出すること)。D無線通告は、例外なく停車中に受ける。E総武快速線津田沼駅―幕張駅間(上下)については、最高速度を90`とする(レール破断、レール損傷多発個所)。F外房線東浪見(とらみ)駅(上り)について、場内信号機で45`に減速して進入すること(構内45`ポイントに対する安全対策)。G無理な運転時分が設定されている区間、振動の激しい個所、運転保安上危険と思われる個所、車両故障等についてすべて組合に報告すること。H体調不良の時は必ず当直助役に報告し、指導員の添乗を要請すること――。
 これらの行動は、尼崎事故のような大惨事を繰り返さないための当然の行動である。列車を止めるものではなく、安全を守るギリギリの判断に基づくものだ。 だが許せないことにJR東日本千葉支社は、これを「会社の運行管理権を奪う違法な行為」だとして「厳正に対処せざるを得ない」と申し入れてきた。動労千葉は、これに対してあらためて「争議行為」とすることを通知した。千葉支社は、これにも「違法な争議行為」だと難癖をつけて「中止」を申し入れてきたのだ。動労千葉は、この処分恫喝をはねのけて、怒りを込めて整然と安全運転行動に突入したのだ。

 総決起集会で闘争貫徹訴え

 総決起集会であいさつに立った田中康宏委員長は、「尼崎事故で亡くなる方が増える事態を見て、労働組合がダメになると労働者は殺されるという腹の底からの悔しさを感じた。結局、運転士個人の責任になろうとしている」と怒りを込めて弾劾し、「動労千葉は、『闘いなくして安全なし』のスローガンに魂を入れたい。事故の原因を闇から闇へ葬るな。明日はわが身だ」と訴えた。「あの現実は、東日本の現実でもある。レール破断が次々起きている。誇りを持ってハンドルを握っている運転士として、庫(くら)の中で電車を直している検修の労働者として、もう一回、胸に刻んでほしい」として、次の四つを挙げた。
 @国鉄分割・民営化という犯罪的な政策によって107人は殺された!
 Aその結果、利益と効率ばかりに走ったJR西日本という会社に殺された!
 B安全に対する規制をなきに等しいがごときまで徹底して規制緩和と称して撤廃した国土交通省、つまり政府に殺された!
 C資本の手先になり果てた腐りきった労働組合の幹部によって殺された!
 さらに、余裕時分を全部取り払ったスピードアップ、過密ダイヤ、これを維持するための非人間的な労務管理、「日勤教育」などを挙げた。また、車両の軽量化やボルスタレス台車(梁〔はり〕を取り払った台車)など、すべてがコスト優先、営利優先があの事故を引き起こしたと指摘。JR西日本の大阪支社長の方針の第一が「稼ぐ」であり、JR東日本も同じだと弾劾した。
 田中委員長は「ボウリング大会とか宴会に行ったことが騒がれている。マスコミは『国鉄時代の悪習が残っている』と言うが、国鉄時代には絶対にそんなことはなかった。団結が破壊されたからだ」と述べた。
 最後に、「1962年の三河島事故で160名が亡くなり、翌年の鶴見事故では163名が亡くなった。 三河島事故から動労の反合・運転保安闘争が始まった。その後、動労(現在のJR総連)は変質し、動労千葉だけが引き継いでいる。安全と解雇の問題だけは妥協できない」と語気を強めて訴えた。

 “腹の底からの怒りを込めて”

 スタンダード・ヴァキューム石油自主労組と動労千葉を支援する会の連帯あいさつを受け、長田敏之書記長が基調提起を行った。
 長田書記長は、「腹の底から怒りを込めた闘いに決起しよう。怒りをなくしたら、労働者は終わりだ。動労千葉の原点に立って闘争に突入したい」と訴えた。
 そして、反合・運転保安闘争の強化・再構築のために、@鉄道の安全は労働者の闘いによってしか守ることはできない、A事故は労働者が階級的立場を守り抜くことによってしか防ぐことはできない、B反合・運転保安闘争はJR体制を粉砕する最大の戦略である、C分割・民営化攻撃と唯一闘い抜いてきた動労千葉の位置と権威が決定的に高まっている、D組織拡大の決定的チャンスが訪れている――と奮起を訴えた。
 運転士で組織する乗務員分科の代表は、「われわれは多くの命を託されている。安易にハンドルを握れない。運転士の原点に返って、不安を感じたら速度を落とし、危険と感じたら止めることが大切だ」と決意表明した。

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週刊『前進』(2200号4面2)(2005/06/06)

 鉄建公団訴訟開く

 国交省・JR東に申し入れ

 安全運転行動に突入した25日には、動労千葉の9人の清算事業団被解雇者による鉄建公団訴訟の第2回口頭弁論が行われた。弁護団から、慰謝料請求の根拠となる不法行為について、鉄建公団(現・鉄道整備・運輸整備支援機構)側が解雇は正当であり賃金請求権は時効で消滅していると主張していることに対して、雇用関係があり時効消滅はとんでもないと反論し、今後、国家的不当労働行為の全容を暴いていくと訴えた。また、尼崎事故に関連して、安全問題の背景にも組合差別の不当労働行為があることも明らかにしていくと提起した。
 裁判後の報告集会では、原告の中村俊六郎さんが、勝利まで闘う決意を語った。また、傍聴に駆けつけた国労闘争団の鉄建公団訴訟原告団長の酒井直昭さんが、7・15全国集会(日比谷野音)の成功から9月15日の鉄建公団訴訟勝利判決をかちとるために、ともに闘う決意を表明した。動労千葉の田中委員長は、郵政民営化を始めとする大民営化攻撃の中で、1047名闘争が闘われている意義を語り、この日からの安全運転行動に勝負をかける決意を明らかにした。
 田中委員長らは、その後、国土交通省を訪れ、北側一雄国土交通大臣あてに、尼崎事故、レール破断の多発などに関し、国土交通省令の大幅な規制緩和の見直しなどを求める申入書を提出し、回答を求めた。JR東日本の大塚陸毅社長あてにも、利益や効率化を最優先する経営姿勢からの脱却を含め、安全対策の抜本的な強化、見直しを求める運転保安に関する申し入れを行った。
 動労千葉の安全運転行動に連帯し、ともに闘おう。

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週刊『前進』(2200号4面3)(2005/06/06)

 05年夏季物販に全力を

 動労千葉の闘い持ち込む時

 05年夏季動労千葉物販闘争は、尼崎事故のもとでの物販闘争となった。尼崎事故の元凶は国鉄分割・民営化にある。JR資本と結託したJR総連・JR連合など闘わない労働組合にある。今ほど分割・民営化とストライキで闘いぬいてきた動労千葉の闘いが、尊敬の念をもって注目されている時はない。動労千葉の闘いがすべての労働者に受け入れられる絶好の好機が到来している。
 3月27日、DC会館において全国物販担当者会議が開催された。動労千葉協販部からは、04年冬季物販の実績が03年冬の水準を達成したことが報告された。
 特徴的なことは、新規注文数が04年夏冬合わせて174件となり、03年よりも50件も増えていることである。これは11・7全国労働者集会の地平が、動労千葉物販という形で引き継がれていることを示している。
 討論においても「物販オルグは、闘う労働運動再生にとって最高の武器になることがあらためて確認できた」「動労千葉の闘いを、われわれの考え方を宣伝しなくてはならない。今回の物販は今までの延長ではダメだ。物販闘争は新たな段階に入った」など、動労千葉物販の意義が今までの「支援」のレベルを超え、まったく違う次元で位置付き始めている。
 動労千葉の闘いは階級闘争史上において本当に誇るべき闘いである。
 動労千葉は05春闘において3月15日から安全運転闘争に、17日からは72時間ストライキに立ち上がった。JRにおける相次ぐレール破断、安全の崩壊に対し「抜本的な安全対策」を要求し闘った。しかし、ついに尼崎事故が起こってしまった。動労千葉は、この事故から1カ月を期して、「あの大惨事を二度と起こすな」と安全運転行動に立ち上がっている。
 今、国鉄に始まり郵政で、自治体で、学校で民営化の攻撃が襲いかかっている。しかし、民営化の行き着く先は尼崎事故だ。尼崎事故は民営化がいったい何をもたらすかを全社会に暴露した。また、石原東京都政のもとで都営地下鉄と都営バスの民営化が強行されようとしている。それは、第2の尼崎事故の道だ。絶対に許してはならない。1047名解雇撤回を掲げ民営化と闘う動労千葉の道こそ、労働者が自らの安全と生命を守る唯一の道だ。
 昨年12月に動労千葉が鉄建公団訴訟に踏み切ったことで、1047名闘争は、まったく新しい段階に突入した。3闘争団・争議団が一丸となって鉄建公団訴訟を闘う体制が確立した。1047名闘争が、戦争と大民営化の攻撃の嵐にさらされながらも労働組合の旗を守り苦闘する全国の労働者の結集軸となろうとしている。
 またその一環を構成する物販闘争が、より広い労働者の中に根を張る決定的チャンスだ。労働者と労働組合が動労千葉を必要としたのだ。だから、あらゆる反動と妨害にもかかわらず、鉄建公団訴訟の陣形が実現したのだ。事態の核心はここにある。
 昨年11月労働者集会の高揚と結集は、そのことを証明している。動労千葉の闘いが韓国・民主労総ソウル本部、米ILWU(国際港湾倉庫労働組合)ローカル10との国際連帯を生み出した。「動労千葉のように闘おう」を合い言葉とした時、「新しい潮流」運動は、これまでにない広範な労働者階級の結集を実現したのだ。
 05年の歴史的階級決戦に際して、この動労千葉と隊列をともにして進めることの意義は決定的だ。百万言を費やすより動労千葉の現実の闘いの説得力が労働者階級を獲得しつつある。
 05年11月労働者集会へ闘いはもう始まっている。動労千葉物販こそ、その最大の武器だ。すべての労働組合に動労千葉物販を! 新たな段階に入った動労千葉物販を全力で取り組もう。

 ◇販売品目◇(円)
1 ゆで落花生 400
2 とうふクッキー 500
3 天津甘栗 500
4 ゆず寒天ゼリー 600
5 チーズするめ 600
6 焼カシューナッツ 600
7 ほたて貝柱 900
8 プーさんタオルセット 1800
9 国産天然はちみつ 1500
10 キャロット&フルーツジュース 1500
11 純米焼酎 2000
12 山梨ワイン 2900
13 りんごジュース 2600
14 夕張メロンゼリー 3000
15 パスタとソースセット 3000
16 発電ラジオ 5000
17 静岡茶 600
18 モカブレンド 1000
19 もずくスープ 500
20 即席みそ汁 1200
21 野菜たまごスープ 1200
22 レアチーズケーキ 1000
23 おやつセット 1100
24 ペリカン石けん 1200
25 ポケットチーズ 700
26 もりおか冷麺 1000
27 冷し中華(生) 1000
28 寒干しラーメン 1200
29 島原てのべそうめん 1300
30 北信濃手折りそば 1600
31 稲庭うどん 2000
32 スモークドチキン 1300
33 ドライカットわかめ 500
34 ひじき 600
35 根昆布しょうゆ 600
36 梅にんにく 1300
37 だしパック 1200
38 ナガイ焼のり5帖 1700
39 紀州南高梅 2500
40 ビーフカレー20食 3000
 申込先/動労千葉協販部 TEL043(227)7833 FAX043(227)8125
〒260-0017千葉市中央区要町2番8号

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週刊『前進』(2200号4面4)(2005/06/06)

 国鉄闘争支援を広げ

 4・15大阪 400人が熱気の集会

 大阪市の港区民センターの大ホールで4月15日、「関西地区生コン支部に対する不当弾圧を許すな! 国鉄労働者1047名の解雇撤回、鉄建公団訴訟勝利! 4・15関西集会」が開催されました。400人の大結集で9・15鉄建公団訴訟の勝利へ5カ月を全力で闘おうと熱気あふれる集会となりました。
 集会は、鉄建公団訴訟原告団と国鉄闘争支援関西共闘会議(準)の呼びかけで開催され、従来の関西支援共闘会議の枠組みをこえる150以上の団体・個人の賛同が寄せられました。原告団の佐久間誠事務局長、九州原告団から平嶋慶二副団長を先頭に原告団員・家族7人が参加しました。また、鉄建公団訴訟をともに闘う動労千葉争議団の参加も得られ、1047名闘争の共闘陣形を一層打ち固めるものとなりました。
 司会の関西合同労組泉州支部の女性組合員による2波のストライキ報告から集会は始まりました。
 原告団の平嶋副団長が開会あいさつを行い、「JRの100%株主であり監督官庁である鉄建公団との裁判に勝利し、JR復帰を追求する。千葉動労、全動労が提訴し、総勢376人になる。1047名の中で多数派を形成した」と勝利への決意を示しました。
 次に、闘う闘争団を支援する京都の会の野坂昭生会長が「2年前に定年退職を迎えたが労働運動には定年退職はない。1047名の解雇撤回・JR復帰の闘いこそ、日本労働運動の再生に向けた闘いだ」と連帯のあいさつを行いました。
 全日建運輸連帯労組関西地区生コン支部の高英男副委員長が「今回の弾圧は、関生支部が生コン産業において推進している産業別運動に対する破壊攻撃だ。第1回公判で裁判所を包囲するヒューマンチェーンで抗議したが、数十年できなかった大行動だ。平日にもかかわらず65の団体と1200人が参加した。今回の弾圧に、これまでの運動を凌駕(りょうが)する運動でこたえる」と弾圧との闘いを報告。
 国労5・27臨大闘争弾圧被告団の橘日出夫副団長が「国労本部はJR総連やJR連合以上に労使共同宣言派として資本の奴隷になることを方針化し、国鉄闘争終結を策動している。半年間が国労の存亡のかかった決戦だ」と決意表明。
 鉄建公団訴訟弁護団の佐藤昭夫団長の講演は「鉄建公団訴訟は、原状回復、不当労働行為がなかった状態に戻せ、JRに採用させろという闘いだ」「組合員を権力に売るような本部は、辞めてもらうほかない。国労を再生させ、1047名闘争を貫徹していこう」という力強い訴えでした。

 闘争団・家族会が決意を表明

 原告団の佐久間事務局長が「国会で、清算事業団が雇用あっせんをしたと言われた。しかし架空会社までつくってあっせん回数をごまかしている。清算事業団の3年とはまったくのでたらめだった。最高裁判決が出る前にJRともう一方の不法行為の共同正犯である旧国鉄、鉄建公団を相手に鉄建公団訴訟を決断した」と訴えました。
 続いて、博多、長崎、佐賀、熊本の各闘争団原告団と熊本闘争団・家族会の8人が鳴りやまぬ拍手の中で登壇、決意表明を行いました。「広域採用で関西に来た仲間と18年ぶりに会った」と再会の報告もありました。家族会の「結婚して21年目に入りましたが、長い闘いの歴史の花にしっかりとした実を結ぶために、あきらめず最後まで頑張っていきたい」という訴えに会場全体が感動しました。
 動労千葉争議団の高石正博さんは「分割・民営化に唯一国鉄内でストライキを2波行った。その処分で28人の解雇と12人の清算事業団送りが行われた。昨年12月に鉄建公団訴訟を提訴し、3月に第1回公判が開かれた。この公判を勝利に結びつけていきたい」と決意表明しました。
 高槻医療福祉労組のカンパアピールをはさみ、「国鉄闘争の勝利へともに闘う」として、国労のJR本体の仲間と民営化攻撃と闘う自治労の仲間が発言。
 国労京滋保線分会の労働者が「ものすごい合理化で触車事故が多発している。オーバーランなどのミスをすると、次の日は日勤教育。あまりのイジメに自殺した仲間や職場をやめた仲間もいる」と訴えました。自治労奈良市従の労働者は「大阪市職員への厚遇問題は、ヤミでもカラでもなく、労使協議で決めた決定事項だ。それがヤミだというのなら労働組合の存在意義を失う。公務員バッシングの裏には政府の決断がある」と訴えました。
 最後に、港合同からの集会宣言の提起を満場の拍手で確認し、団結ガンバローで意気高く終了しました。
 4月25日、尼崎事故が発生しました。国労西日本本部は、JR連合と一緒にJRの危機を労使一体で乗り切る翼賛運動を開始しています。動労千葉のように闘うことでしか安全はかちとれません。今こそ、4・15集会陣形を発展させ、1047名闘争勝利、酒田・反動革同体制打倒、国労再生、JR体制打倒の大運動をつくりだし、戦争と民営化攻撃と闘おう。
 (投稿/関西合同労組・井村俊一)

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週刊『前進』(2200号4面5)(2005/06/06)

 関生弾圧第2回公判 伝聞だけで主尋問

 大谷生コン資本に怒り

 全日建運輸連帯労組関西地区生コン支部への不当弾圧裁判の第2回公判が5月16日、大阪地裁で行われた。1200人による地裁包囲闘争を行った4月7日の第1回公判に続き、この日も公判開始1時間以上前から連帯労組の組合員や支援の港合同、関西合同労組などの仲間が160人を超えて駆けつけた。
 にもかかわらず、大阪地裁は100以上の傍聴席がある大法廷使用の要求をはねつけ、わずか45傍聴席の803号法廷で強行した。傍聴席は満席となり廊下に人があふれた法廷に、武建一委員長、片山好史執行委員、武谷新吾執行委員、福嶋聡執行委員が拍手の中で登場した。みんな健康そうで、手を振って、あいさつを交わし、短い時間であるが心からの交歓を行った。
 今回の公判は、弾圧の手先になった大谷生コン資本の常務と称する田中某なるやからの「強要罪立証」のための検察側主尋問だ。冒頭に「威力業務妨害」を示すという、わずか1分半のビデオを「証拠」と称して上映した。
 2時間以上のテレテレとした主尋問も、社長の大谷某からの伝聞ばかりだ。弁護団は「伝聞ではなく、証人自身の行動を質問せよ」と異議を出し、ようやく裁判長も検察に注意する始末である。検察側の立証を長引かせ、その間に「証拠隠滅防止」を口実に不当に長期勾留を図るとんでもないたくらみだ。こんな裁判は許し難い。傍聴席は時を追うごとに怒りが充満した。
 しかも、大谷生コンがシャブコン(必要以上に水を加えて品質を落とし作業効率を上げた生コン)を行っている加水作業を映したビデオについて、この田中常務は「洗車」などと言い逃れしようした。それならば、なぜマスコミが取り上げることを恐れるのか? これこそ、シャブコンを実証しているではないか。
 また、西淀川署とグルになって、関生支部の弾圧のために「立ち入り禁止の看板設置」「ビデオ収録」「門扉の閉鎖」など、ていねいに指導されている。
 本当にこんな弾圧を許していいのだろうか。傍聴者全員があらためて、国家権力のどす黒い労組つぶしのたくらみを実感した。弁護団による反対尋問が楽しみだ。
 次回公判の6月9日には、今回を倍する人数で参加しよう。そして、大法廷の使用を認めさせよう。
 (投稿/関西HR)

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週刊『前進』(2200号4面6)(2005/06/06)

日誌 '05  5月18〜24日

 中国副首相、小泉との会談中止

 石原が沖ノ鳥島に視察上陸

●米軍再編、夏めどに中間報告 町村外相は衆院外務委員会で、在日米軍の変革・再編について「ある種の中間報告という性格のものをまとめる。そのうえで各自治体などに提示、説明し、できる限りのご理解を得る」「夏ごろにはまとめなければいけない」などと述べた。(18日)
●自民新憲法起草委、改正要綱一本化で初会合 自民党新憲法起草委員会が初会合を開き、4月4日にまとめた10小委員会の憲法改正要綱を一本化する作業を始めた。6月中に終了し、11月の結党50周年に合わせた改憲草案公表を目指すという。(18日)
●民主・岡田、東アジア共同体を提唱 民主党の岡田代表が「開かれた国益をめざして」を発表した。東南アジア諸国連合(ASEAN)と日中韓の13カ国による東アジア共同体の実現を目指すことを提唱。具体的にはFTA(自由貿易協定)の締結を急ぐ方針を表明した。また、国連平和維持活動(PKO)の参加5原則での武器使用基準の緩和を打ち出した。(18日)
●石原が沖ノ鳥島を視察 東京都の石原知事が「日本最南端の島」と称している沖ノ鳥島(東京都小笠原村)に上陸、視察した。「あれは島だ。日本の領土だ。文句あるか」と語った。(20日)
●米、核兵器の近代化を肯定 核不拡散条約(NPT)再検討会議で米国が自国の核軍縮について説明し、「新型核兵器の開発はだめだが、核兵器の近代化なら問題ない」などと独自の理屈を展開した。(20日)
●FA18、嘉手納に緊急着陸 米海兵隊岩国基地(山口県)にローテーション配備されているFA18C戦闘攻撃機(ホーネット)1機が、米軍嘉手納基地を離陸後、車輪を収納できないまま飛行し、同基地に緊急着陸した。(20日)
●滑走路に自衛隊機、着陸やり直し 那覇空港への進入許可を得て着陸態勢に入っていた全日空機が滑走路手前約6`に差し掛かったところで、管制官から着陸のやり直しを指示された。同機は再び急上昇し、約40分遅れて同空港に着陸をやり直した。同機が着陸態勢に入った際、滑走路上では航空自衛隊所属のファントム2機がエンジンの掛かり具合をテストしていた。(23日)
●靖国・教科書「目にしたくない」 中国を訪問した自民党の武部、公明党の冬柴両幹事長は、北京で胡錦涛国家主席と会談。胡主席は、「目にしたくない動き」として小泉首相の靖国神社参拝、歴史教科書、台湾問題の3点を具体的に挙げ、日本政府の対応を批判した。(22日)
●中国副首相、小泉首相と会談中止 午後に予定されていた小泉首相と中国の呉儀副首相との会談が「国内の緊急の公務のため」とする中国側の申し入れで、急きょ中止になった。中国外務省の孔泉報道局長は、「呉儀副首相の訪日期間中、日本の指導者が、靖国神社の参拝について連続して中日関係改善に不利となる発言をしたことは大変不満」との談話を発表した。(23日)
●駐留米軍に「行動の自由」 米ホワイトハウスは、訪米したアフガニスタンのカルザイ大統領とブッシュ米大統領が署名した共同声明「戦略的パートナーシップ」を発表した。アフガニスタンの空軍基地の使用や軍事作戦を実施する上で必要な行動の自由を引き続き認めるなど駐留米軍や多国籍軍の「行動の自由」を盛り込んだもの。(23日)
●「靖国が原因」 中国外務省の孔泉報道局長が記者会見で、呉儀副首相が小泉首相との会談を取りやめて帰国した理由について、「日本の首相、指導者が呉副首相の訪日期間中、連続して中日関係の発展に不利な発言をしたことが、会談に必要な雰囲気と条件をなくした」と述べた。(24日)

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週刊『前進』(2200号5面1)(2005/06/06)

 労働組合の闘いこそが安全守る

 尼崎事故は民営化の帰結だ JR体制打倒へ総力で闘う

 革共同国鉄委員会

 JR西日本の尼崎事故は107人を殺すJR史上最悪の惨事となった。高見隆二郎運転士と106人の乗客は、国鉄分割・民営化という犯罪的政策によって、営利追求と安全無視をほしいままにするJR西日本によって、規制緩和を強行してきた国土交通省によって、そして闘いを裏切り労働者の抑圧者に転じた労組幹部によって殺された。動労千葉は尼崎事故から1カ月目の5月25日、安全運転行動に立ち上がった。回復運転はしない、制限速度は守る、レール破断が続発した線区では90`に減速するなどのこの行動は、安全を守るためには当然のことだ。だがそれは、動労千葉が階級的団結を維持しているからこそ可能になった。動労千葉に続き、階級的労働運動を再生させよう。われわれは今こそ革命的に生まれ変わり、新指導路線のもとで実践的に一致して、小泉=奥田の戦争・民営化の攻撃と闘いぬく。事故で殺された107人の怒りと恨みを引き受け、JR体制=分割・民営化体制打倒へ総決起する。

 労組破壊・団結解体がもたらした大惨事

 尼崎事故は国鉄分割・民営化によって引き起こされた。このことを徹底的に明確にしなければならない。
 事故の直接的な原因が、過密ダイヤとスピードアップにあったことは明らかだ。JR西日本は、競合する私鉄から乗客を奪うため、列車増発とスピードアップを追い求めた。その結果、一駅の停車時分が15秒とされたことに象徴される無謀な「殺人ダイヤ」が設定された。これでは乗客の乗り降りはもちろん、安全確認のために運転士に義務づけられている基本動作も行えない。そこでJR西日本は、必然的に生じる遅れを「回復運転」で取り戻すよう、運転士に強いていたのだ。高見運転士も、事故直前、列車指令から回復運転の指示を受けていたことが明らかになっている。
 数秒の遅れやわずかなオーバーランをことさら問題にして懲罰的に行われてきた「日勤教育」も、無謀なダイヤを運転士に強制するために必要とされた。だから井手正敬らJR西日本の首脳陣は、今もなお「日勤教育はやめない」と言い張り続けているのだ。
 強度に欠く軽量車両は事故の被害を拡大した。これもJRがスピードアップとメンテナンスコストの削減を追い求めた結果だった。分割・民営化以降、車両設計でも「経済効果」が最優先され、事故の発生は「想定外」となり、安全はどこまでも切り捨てられた。
 また、「ボルスタレス台車」が使用されていたことも事故につながった。ボルスタレス台車とは、旧来型車両では作り付けられていた頑丈な枕梁(まくらばり・ボルスタ)を取り払った台車のことだ。これも、極限的な車両の軽量化を目的に導入された。ボルスタレス台車は、車両と台車の位置関係がとりわけカーブで不安定になりやすい。事故を起こした電車は急カーブに突っ込んで宙に舞った。JRは安全性が確証されていない車両を強引に導入し、乗客を乗せて「人体実験」を続けていたのだ。
 さらに、列車がカーブで遠心力により転倒しないために造られるカント(外軌と内軌との段差)や、直線からカーブ(円曲線)への移行区間に設けられる緩和曲線の長さなど、線路構造にも欠陥があったと指摘されている。これもまた、JR西日本が無理やり進めてきたスピードアップとコスト削減によるものだった。

 西日本だけの問題ではない

 これらは、JR西日本だけに現れた問題では断じてない。JR各社は、国鉄分割・民営化によって生み出された。民営化とは、弱肉強食の市場原理にすべてをゆだねるということだ。営利優先・安全無視は西も東も異ならない。尼崎事故に至った要因は、全JRに共通してはらまれている。
 とりわけそれは、01年の本州JR3社の「完全民営化」(政府保有株の全面民間売却)を前にあからさまになった。「株主の利益」がすべての評価基準になり、人員削減やメンテナンス部門の外注化など、安全の解体と技術体系の崩壊は急速に進行した。
 JR西日本大阪支社の「支社長方針」は、まず最初に「稼ぐ」とうたっている。JR東日本の中期経営計画「ニューフロンティア21」も、「ステーションルネッサンス」すなわち駅空間を利用した金もうけを第一の課題に掲げている。鉄道事業は二の次、三の次、安全などは顧みないというのが民営化の実態だ。JR全体ですでに220人を超える労働者が事故で殺されている。それをすべて居直ってきたのがJR体制だ。

 職場支配権を奪った民営化

 国鉄分割・民営化は20万人の国鉄労働者から職を奪った。解雇の恫喝のもと、すさまじい労組破壊の攻撃が吹き荒れ、90年4月には1047名が2度目の解雇を強いられた。
 営利優先も他社との競争も、労組を徹底的に破壊しなければ成り立たない。分割・民営化の目的は何よりも、労働組合から職場支配権を奪うことにあった。
 尼崎事故は、闘う労働組合が破壊され、労働者が分断されて孤立無援の状態に置かれた時、いかなる惨事がもたらされるのかを、あまりにも悲痛な形で示したのだ。高見運転士は、遅れを回復しなければ乗務を降ろされ屈辱的な日勤教育を強いられるという強烈なプレッシャーの中でノッチを握りしめていたに違いない。だが、労働組合・労働者が階級的に団結していれば、安全を無視した資本の理不尽な命令・指示をはねのけることはできたのだ。
 今日、マスコミは、事故直後にJR西日本の社員がボウリングや宴会をしていたと書き立て、井手も「かつての国鉄がもっていたあしきものがまた復活した」とわめいている。だが、国鉄時代であれば、仲間が殺されている時に官製行事など絶対に許さなかった。JR体制のもとで団結が壊され、支社間で、職場間で、個々の労働者間で「成果」をめぐって競争が強いられているからこそ、こうした事態が生じたのだ。分割・民営化が、ここまで職場の人間関係・労資関係を荒廃させたのだ。
 国鉄分割・民営化は、スト絶滅を誓い国労・動労千葉解体の先兵となったJR総連カクマルの反革命的裏切りがあって強行できた。

 JR総連こそ安全の破壊者

 JR総連カクマルは今、「安全を軽視するJR西日本の企業体質」は問題だが「JR東日本は労使で安全哲学を築いてきた」だの「国鉄改革の原点に返れ」だのとほざいている。ふざけるな! 資本と結託して安全を破壊してきたのはお前たちではないか。東労組カクマルが率先推進したメンテナンス外注化の結果、レール破断が続発しているのはJR東日本の管内だ。東日本でこそ、いつ大事故が起きるか分からない。
 JR総連の言う「責任追及から原因究明へ」なるスローガンは、事故問題で資本の責任追及は絶対にしないということだ。結局それは、“事故の責任は労働者にある”ということに必ずなる。事実、97年の大月駅事故に際して、彼らはいち早く「責任は運転士にある」と表明し、労働者を権力に売り渡したのだ。
 JR連合も、東海以西のJRでカクマルの後がまに座り、資本と結託して労働者を抑圧してきた存在だ。
 4党合意によって決定的な裏切りに踏み切った革同支配下の国労西日本本部もまた、これに加わった。
 現場労働者を抑えつけ、団結を解体し、資本の強権的労務支配をまかり通らせてきた労組幹部にこそ、この事故の責任があるのだ。

 規制緩和した国交省は共犯

 事故の原因は、国土交通省による規制緩和にもあった。国土交通省がJR西日本を非難していること自体が、許しがたいペテンだ。
 国交省の省令改悪で速度制限は撤廃された。信号は絶対に守らなければならないという原則さえ投げ捨てられた。電車・線路の検査周期・検査基準も廃止され、鉄道事業者の判断に任されている。安全基準を決める国交省の研究会にはJR各社も参加している。もはや規制はなきに等しい。
 小泉政権は、規制緩和により「市場原理にゆだね、事業者の自主性に任せ、行政は事前規制型から事後チェック型に転換する」という。だが、事故が起きた後にいったい何をチェックするのか。奪われた人命は取り返せないのだ。
 民営化・規制緩和による安全の崩壊は、今や全社会を覆っている。雪印、JCO、ブリヂストン、新日鉄、エクソン・モービル、三菱自動車、日航と、名だたる大企業で労災事故・不祥事が立て続けに起きている。その典型は、国鉄民営化後に続発したイギリスの鉄道事故である。
 尼崎事故は、小泉政権の登場から4年目に発生した。9割の労働者を無権利の不安定雇用に突き落とすとした95年日経連プロジェクト報告路線の貫徹へと小泉=奥田が本格的に乗り出してきたことが、国鉄分割・民営化以来の積もりに積もった矛盾と結合し、事故の引き金を引いたのだ。

 ファシスト石原こそ民営化攻撃の最先兵

 小泉政権は、尼崎事故の直後に郵政民営化法案の閣議決定を強行した。労働者の命がどれほど奪われようと、「骨太方針W」に基づく民営化路線を押し貫くという反動的挑戦だ。
 これは、中国や韓国とのきしみも辞さず領土略奪に走り、国家主義・排外主義をむき出しにする日帝の凶悪な姿と完全に重なる。
 小泉=奥田=石原は、杉並区を手始めに全都の中学校で来年4月から「新しい歴史教科書をつくる会」の教科書を使わせようと全力を挙げている。平和教育を一掃し、戦争教育で学校を塗り替えなければ、侵略戦争は遂行できない。「つくる会」教科書は全労働者に突きつけられた刃(やいば)である。
 小泉=奥田=石原を駆り立てているのは、帝国主義の絶望的な危機にほかならない。米帝はイラク侵略戦争にのめり込み、米軍再編(トランスフォーメーション)で戦火を全世界に拡大しようとしている。日帝は米帝と枢軸関係を結び、軍事的突出を開始した。
 だがイラク人民の民族解放戦争は一層激化し、日帝の「東アジア経済圏」=勢力圏形成の野望は朝鮮・中国労働者階級の激しい反日帝・抗日のデモとストライキに迎え撃たれている。だからこそ日帝は、凶暴きわまる戦争と民営化の攻撃を貫こうとしているのだ。

 教科書決戦の先頭に立とう

 都知事・石原は尼崎事故後、「運転士の資質の問題だと思いますよ。私は車庫の中で電車の運転てのを体験させてもらったけど、そんなに難しいもんじゃない」と言い放った。その石原が「公共事業なんてみんな民営化したらいい」とうそぶきながら、医療や福祉、都営交通など都の事業をことごとく民営化しつつある。だが、尼崎事故は「民営化して市場原理にゆだねればサービスは向上する」という反動的主張の破産を突きつけたのだ。
 「つくる会」一派は、教育を始め公共部門からの「左翼の一掃」=労組解体と靖国神社公式参拝は「国民精神を覚醒させる精神革命」として一体のものだ、とかねてから主張してきた連中だ。
 かつて中曽根も、国鉄分割・民営化について「国労が崩壊すれば、総評も崩壊するということを明確に意識してやった」「行政改革でお座敷をきれいにして、立派な憲法を安置する」と豪語した。「つくる会」一派は、教労、全逓、自治労など国家機構内の労働組合を破壊しなければ戦争はできないことを強烈に意識している。「つくる会」教科書との闘いは、4大産別決戦の最先端での攻防だ。
 教労、自治労を始め全逓やNTT労組でも、この夏の定期大会は改憲をめぐっての激突となる。連合中央は、これら旧総評の主要単産を改憲派に転向させて、秋の連合大会で改憲方針を押し通そうと策している。
 すでに国会は改憲勢力によって占められ、憲法調査会の最終報告が出されている。日本経団連は1月18日の提言で、ブルジョアジー主流の階級意志として改憲を押し出した。これに加えて連合が公然と改憲派に転じつつある。この事態を直視すれば、この夏〜秋が05〜07年決戦の全体を決める攻防となることは明白だ。
 その最大の焦点は「つくる会」教科書採択阻止の闘いにある。6月都議選での長谷川英憲氏の勝利は、「つくる会」教科書を阻む巨大な力になる。
 ファシストが都知事として君臨している事実を座視して、労働運動の階級的再生はありえない。教育労働者の「日の丸・君が代」強制拒否の闘いは、石原打倒の突破口を押し開き、「つくる会」教科書をめぐる決戦情勢をたぐり寄せた。これは、教育労働者だけの闘いではない。教科書決戦−都議選決戦を闘いぬき勝利する力を持たなければ、国鉄闘争を闘うこともできないのだ。国鉄労働者は、自らが担うべき課題として、教科書決戦−都議選決戦を最先頭で闘いぬこう。

 安全運転行動を貫く動労千葉に続こう!

 反転攻勢の時が来た。5月25日からの動労千葉の安全運転行動は、尼崎事故を引き起こしたJR体制=分割・民営化体制への労働者階級の鮮明な回答だ。利潤追求に走る資本は、常に安全を犠牲にして合理化・効率化に突き進む。安全と資本の利益は相入れない。だから、安全をめぐる闘いは、労働者階級に最も深く根ざした闘いになる。
 動労千葉の船橋事故闘争は重大な教訓に満ちている。72年、船橋駅構内で高石組合員の運転する電車が停車中の電車に追突した。原因は信号の停電にあった。当時、国鉄は、信号現示停止の場合は列車を止めるという規定を無視し、過密ダイヤを維持するために「ATS(列車自動停止装置)を切ってゆっくり進め」と指導していた。事故はその結果だったのだ。動労千葉は数波にわたるストライキ、順法闘争をたたきつけ、高石組合員への刑事休職を粉砕し、職場に取り戻した。この闘いは、「事故問題は労働運動の課題にならない」という当時の動労本部やカクマルの妨害を打ち破り、反合・運転保安闘争として闘われた。
 東中野駅事故糾弾の闘いも重要だ。88年、東中野駅で追突事故が起こり、運転士と乗客が殺された。動労千葉は翌89年、JR発足後初めての本線運転士のストライキに立った。この事故の原因は、JR東日本による無謀な運転時分の短縮にあった。今回の尼崎事故と同様、遅れを取り戻すための回復運転の強要が、事故を招いたのだ。動労千葉のストライキにより、JR東日本は運転時分を元に戻さざるをえなくなった。
 05春闘で動労千葉は、昨年来続発するレール破断に対し、安全運転闘争と72時間ストライキを貫徹した。そして、今、満を持して安全運転行動に立っている。
 この闘いに続こう。JR職場には運転、検修、施設を問わず事故につながる要因が山積している。その一つひとつを暴き、職場からの反撃をつくり出そう。
 動労千葉の闘いに学び、この闘いを全労働者に浸透させれば、闘う労働運動の新潮流をつくり出す運動は、昨年を超える巨大な発展を遂げるに違いない。

 資本の救済者に転じた革同

 国労の再生は今や喫緊かつ重大な課題だ。尼崎事故に対する国労本部、国労西日本本部の対応は、労働者を資本に売り渡すものといって過言でない。
 国労西日本本部が出した見解は、事故が“運転士のミス”で起きたことを大前提にし、過密ダイヤへの追及もせず、「『日勤教育』について国労は否定しません」とさえ言っている。革同上村一派は、激しい社会的糾弾にさらされたJR西日本の資本と同化し、資本の危機の救済者として自らを押し出しているのだ。彼らは今や、「事故は民営化とは関係ない」とまで言い始め、傘下組合員の激しい怒りを浴びている。
 これは、上村革同が「1047名はイラクに行け」というイラク鉄道復興支援運動にのめり込み、国鉄闘争の敵対者に転じたことと一対をなす。JRの首切り責任を免罪した彼らは、ついにJRの事故責任も免罪したのだ。
 酒田・革同執行部打倒=国労再生は急務である。国労の中にこそ、動労千葉に続く闘う勢力をつくり出さなければならない。
 国労再生の戦略的環は、国労5・27臨大闘争弾圧粉砕の闘いにある。闘争団を統制処分にかけ、それに反対する組合員を平然と警察に売り渡した腐敗したやからに、事故から組合員を守ることなどできるはずがない。5・27臨大闘争弾圧被告と固く団結し、粘り強く現場の国労組合員に働きかけて、「許さない会」の会員を拡大しよう。
 動労千葉の田中康宏委員長は、安全運転行動への突入を宣言した24日の総決起集会で「安全問題と解雇問題では絶対に妥協できない」と断言した。まさにそのとおりだ。尼崎事故を徹底的に弾劾し、JR本体からの総決起をつくり出そう。国鉄1047名闘争の勝利も、この闘いと固く結合することによってこそ、切り開かれるのだ。

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週刊『前進』(2200号5面2)(2005/06/06)

 三一労組に勝利命令

 中労委 “懲戒解雇は不当労働行為”

 5月20日、三一書房労組は中央労働委員会の完全勝利命令をかちとった。この命令は、01年9月13日に東京都労働委員会が発した三一労組への勝利命令に追いつめられた鈴木経営の再審査申立を棄却し、解雇撤回と未払い賃金の支払いを命じたものだ。改悪労組法が施行され労働委員会制度が改悪される中でかちとられた画期的な勝利である。
 この命令の第一の意義は、「三一労組は菊地を経営者として認めているから、自分たちは当事者ではない」という鈴木経営の主張を完全に否定したことだ。命令は、「雇用関係はないとする会社の主張は失当」と鈴木経営の責任を認め、「組合が菊地を過半数株主の代表者と考えていたことが全く理由のないことだったとまでは言い切れず」「菊地代表から宿直要請が出されていた」として、組合による職場確保闘争の正当性も認めている。
 第二は、「株式増資」に関する問題は団交議題ではないとする会社側の主張を「組合員の労働条件に密接に関係するもの」と明快に否定した。企業の経営形態の変更を組合が団交議題にできるということであり、同じ課題で闘う多くの労組にとって意義ある命令だ。
 第三に、「暴力団交」という会社側の主張を退けたことだ。会社側は都労委での審問拒否の態度を一変させ、中労委に膨大な証人と書証を出してきたが、命令は「暴力」はなかったとし、「組合と組合員を嫌悪した会社が、組合員らの言動をことさら大げさに捉えて……組合の活動を弱体化することを企図したもの」と、刑事免責の考え方を基礎に会社側の主張を完全に否定した。
 第四に、「業務が阻害されたとしても、スト本来の目的が正常な業務運営に影響を与えることを通じて自らの要求を実現しようとするもの」として、民事免責と労組のストライキ権を真正面から認めている。
 第五に、鈴木経営が行ったロックアウトについても「本件ロックアウトはロックアウトとしての正当性も疑わしい……組合を活動の拠点である本社社屋から閉め出し……組合の闘争力を減殺することを主に狙ったもの」と明確に否定した。
 このように、今回の中労委命令は労組法の改悪にもかかわらず、労組法の核心である刑事免責、民事免責、団結権、ストライキ権、不当労働行為などを認めた画期的なものだ。

 社前報告集会で勝利わかちあう

 5月23日午後6時前から、職場確保の闘いを闘いぬいている文京区本郷の三一書房本社前で「中労委勝利命令緊急社前報告集会」が開催され、出版労連や労組交流センターの労働者140人が集まり、喜びをともにした。
 三一書房争議支援共闘会議議長、出版労連委員長、文京区労協事務局長のあいさつに続き、主任代理人の鈴木達夫弁護士が「この勝利は大きい。全金本山労組は34年闘って全員職場復帰をかちとった。全逓4・28裁判は25年闘って高裁で逆転判決をかちとった。労働者が団結してひるまず正しく闘えば、どんなに世の中悪くなっても勝てることを示している」と語った。
 小番(こつがい)伊佐夫書記長のお礼と、支える会事務局長の連帯のあいさつの後、当該の組合員全員が今後も闘い解決をかちとると決意を述べた。
 最後に三角忠委員長が「命令を闘争勝利に向けて生かすも殺すも私たちと支援の団結にかかっている」と述べて、団結ガンバローを行った。
 命令書が交付された5月20日には、記者会見が行われた。
 記者からは、出版界の「事件屋」で現在、三一書房の社長を名のる岡部清や、争議開始時から黒幕として暗躍し、現在東京高裁で始まっている和解交渉で会社側代表として登場し、ライブドアのニッポン放送株買い占めでも名前の出てくる「総会屋」下野順一郎のことが質問され、三一経営の悪らつさが明らかになった。翌日の各紙朝刊には「三一労組へ勝利命令」の記事が掲載された。
 三一闘争勝利のためにともに闘おう。

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週刊『前進』(2200号5面3)(2005/06/06)

資本攻勢&労働日誌 2005  5・1〜5・22

 経済同友会 公務員身分保障撤廃へ提言

 労組7割が成果主義に不満/ダイエー人員削減へ

賃金制度見直しに労組の7割が「問題あり」 企業の約6割、労組の約7割が賃金制度見直しに満足していないことが、4月26日発表の東京都産業労働局の「賃金制度と労使交渉に関する実態調査」で分かった。(1日)=要旨別掲
ダイエーが2割の人員削減へ ダイエーは、08年2月までにグループ全体で従業員数を2割程度減らす計画を明らかに。(10日)
処分不当と大阪市職員が提訴 カラ残業をしたとして大阪市が3月に職員を大量処分した問題で、現役の職員ら2人が「カラ残業は市と労働組合の取り決めが原因で起こったもので、処分は不当だ」として訴訟を起こした。(11日)
東京・養護学校で教員らが都教委などを提訴 都教委が都立七生(ななお)養護学校の性教育を「不適切」として教材を没収したことに対し、同校教員や保護者らが東京都・都教委・都議3人・問題を報道した産経新聞社を相手に、教材の返還や慰謝料支払い、謝罪記事の掲載を求めて東京地裁に提訴した。(12日)
行政事務委託で「1円」落札 行政事務の民間開放に向けた「市場化テスト」のモデル事業として、今年度初めて競争入札にかけられた厚生年金の加入促進事業が、1円で落札された。(13日)
経済同友会、公務員制度改革を提言 経済同友会は「開かれた公務員制度の構築を」と題する提言を発表。自衛隊や警察などを除く公務員に労働基本権を付与し、身分保障は撤廃することも議論すべきだとしている。(13日)
郵政民営化反対で1万人集会 「STOP!郵政民営化 怒りの反対宣言 一万人の東京大集会」が江東区の有明コロシアムで開かれた。(15日)
連合がホワイトカラー・エグゼンプション制反対の報告書 連合は米国のホワイトカラー・エグゼンプション(労働時間規制の適用除外)に関する調査団報告書を発表し、「導入すべきではない」と強調。(16日)
日本経団連、医療保険給付の効率化を要求 日本経団連は「医療制度のあり方について−制度存続のための公的給付費の効率化・重点化」と題する提言を発表し、給付の効率化を要求した。(17日)
労働弁護団、労働契約法制立法へ提言 日本労働弁護団は「労働契約法制立法提言」を発表。判例法理だけでは解決できない重要な労働契約上の問題点も、立法化によって解決を図るべきと主張している。(19日)
JPU委員長が全逓労働運動を「謝罪」 全国特定郵便局長会の総会に出席したJPU(日本郵政公社労組)の菰田義憲委員長は、「過去の事実を重く受け止め反省したい」と述べた。(22日)

 「賃金制度と労使交渉に関する実態調査」(東京都産業労働局)の概要

 定期昇給制度がある企業は全体の7割。そのうちの半数が「見直しを考えている」とし、方法としては「自動的昇給部分を引き下げ、職務・成果に応じた部分を増やす」(41.8%)と「定昇を廃止し、成果や業績による賃金決定」(31.7%)の二つが目立つ。
 すでに成果主義を導入した企業は全体の31.7%。千人以上規模では57.1%に達し、大企業で導入が進んでいる。
 すでに行った賃金制度見直しについて、「問題があり再度手直しを検討している」は企業の8.1%、労組の17.4%。「必ずしも満足ではないが現状ではやむをえない」は企業の51.8%、労組の48.2%。これらを合わせると企業の約6割、労組の約7割が「問題あり」「満足していない」と考えていることになる。

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週刊『前進』(2200号6面1)(2005/06/06)

団結ひろば 投稿コーナー

 卒業式のビデオ上映 藤田先生の無罪明白 東京 斎藤詩織

 5月12日、都立板橋高校元教諭・藤田勝久さんに対する「威力業務妨害」デッチあげ事件の第2回公判を傍聴しました。板橋高校の教員が撮影した卒業式記録ビデオが法廷で上映されたので、紹介します。
 開会前の式場に「卒業生が入場します」のアナウンスがかかり、ブラスバンドの演奏が流れ、卒業生が整然と入場。司会の「開会の辞。お立ち下さい」で一斉に起立。開会の辞が終わると、全員起立したまま、司会が「国歌斉唱」と発声。
 すると! 300人近い卒業生がさぁっと着席していく。焦った校長が「卒業生の諸君、ぜひ立って歌ってください」。「立て、立ちなさい」と怒鳴る声(これが、悪名高い土屋都議だそうです)。「思想・信条を持って座っている者以外は立ちなさい」と教頭。しかし卒業生は立たず、数十秒たってからピアノ伴奏が始まる。生徒の歌声はほとんど聞こえず、来賓や管理職の(と思われる)声ばかりです。続く「校歌斉唱」では、卒業生は一斉に起立して斉唱しました。
 そして卒業証書授与などが行われ、最後は卒業生の「旅立ちの日」の合唱。視覚「障害」の女子高校生が弾くピアノ伴奏に合わせて心を込めて一生懸命歌う姿に式場の拍手が鳴りやみませんでした。
 ――これが、板橋高校卒業式の「真実」です。
 ほとんどの卒業生が着席する現実を目の当たりにした土屋都議が、「あおった人間がいなければ着席するわけがない」と言って都教委や警察とともにねつ造したのが、藤田先生の「威力業務妨害」事件だということは、このビデオを見ただけであまりに明らかです。
 そもそも「あおった教員がいるから着席した」なんて、高校生を見くびっています。板橋高校の卒業生たちは自らの意思で着席したのです。高校生は「子ども」じゃないぞ!
 藤田さんの無罪をかちとるため、今後も傍聴などに参加したいと思います。

 初めて辺野古に立つ “海の上の三里塚だ” 東京・三多摩 中原一朗

 5月16日、私は初めて沖縄・辺野古に立った。現地では、昨年の9月以降、まさに暮れも正月もゴールデンウイークもない、昼も夜もない闘いが続いている。平良夏芽さんは支援の仲間にこう言っていた。「(昼も夜も海に出ていて)24時間労働、36時間労働が続いています。労基法違反だよ(笑)。だれを訴える? 小泉純一郎?」
 この日の闘いでは、防衛施設庁の下請けの業者の出した作業船団は、四つある櫓(やぐら)のうちの、特に第3ポイントの櫓に襲いかかった。下請けの作業員は櫓の下半分に張られた金網に「立ち入り禁止」の札を張ろうとする。それを阻止しようとする仲間との間で怒号が飛び交う。金網の外に出て櫓にしがみつきながら作業船を必死に押し返そうとしていた仲間が船と櫓の間に挟まれてケガをした。辺野古では連日このような闘いが続いている。
 午後、私も海上行動に出た。初めてであり、波も高く正直怖かったが、第3ポイントに敵の作業船と警戒船(権力も乗っている)が突進するのを見て、恐怖心が薄らぎ、逆に怒りがわいた。そして思った。「これは海の上の三里塚だ」と。
 夜、私は泊まり込み態勢に入った。この日の夜は作業船は出なかったようで、静かな海だった。ウミンチュが私に語った。
 「連中が暴力的に出ているのは、そろそろ焦り始めた証拠だよ。われわれは絶対に勝つよ」「5・15普天間包囲行動が参加者が増えたのは、辺野古があったから」「私の夢は普天間包囲行動をヤマトの助けを借りずにウチナーの力だけで勝利すること。それができないところに沖縄の現実がある。あんたは東京の人か。横田や厚木を包囲する闘いをやってもらいたい。そうすれば日本は変わるよ」

 「障害者自立支援法」は生存権の否定だ! 「視覚障害者」 石野鉄也

 「障害者自立支援法案」をめぐる衆議院の審議は大づめを迎えた。全国の「障害者」は強い危機感をもって陸続と決起している。5月11日の厚生労働委員会での審議開始に対し、抗議の闘いが連日続けられた。12日には日比谷に6千人を超える人びとが全国から結集し、国会デモも闘われた。国会前では、廃案を求め、4日間のハンストが泊まり込みで行われた。厚生労働省前でも、同時に3日間の徹夜の闘いが行われた。
 この「障害者自立支援法案」は、「障害者」が介助を受けることに対して新たに応益負担を導入するなど利用料の大幅アップが行われる一方で、福祉の水準を大幅に引き下げようとしている。施設利用者の支払いを2倍に引き上げ、在宅での介助などは非課税世帯からも数万円を徴収できる制度を作ろうとしている。
 30年以上にわたった闘いでかちとってきた地域での介助制度を介護保険なみに引き下げ、医療制度も改悪し、多くの制度が縮小され存続さえ危うくなる。地域での生活が破綻(はたん)する仲間が続出し、命の危険にさらされる。文字どおり生存権の否定である。
 決起した人びとは真剣だ。体の痛みや薬を飲まなければならない状況を抱えながら寒風や雨さえも突き破る。しかし、既存の大きな「障害者」団体の幹部は「慎重審議」しか要求していない。厚労省や与党、民主党におもねってのていたらくだ。
 廃案を掲げ国会を包囲する大闘争を実現しよう!

 “医療観察法廃棄を”精神神経学会で発言 関西・「精神障害者」 S・K

 5月18日から20日、埼玉県大宮で精神科医らが集まる第101回日本精神神経学会が開催されました。今年は医療観察法の廃棄という方針がとられることが求められていました。
 2日目の総会では「精神障害者」が「法が審議されている時に学会は『再犯予測』は不可能であると表明し反対した。金沢学会以来、保安処分に反対してきた立場を貫いて法に反対の決議をあげていただきたい」と発言しました。
 担当の法関連問題委員会は20日のシンポを踏まえて立場を表明すると述べ、3日目が勝負となりました。
 20日のシンポジウムでは、6人の発言者のうち法を支持する立場は一人でした。二人が運用上の疑問を、一人は法の施行を延期し抜本的再検討が必要と言い、一人は矛盾点を挙げ法の白紙撤回を求め、一人は反対の立場から疑問点を述べました。
 「精神障害者」もフロアから発言に立ち、「政府は『危険な精神障害者』が野放しになっているから特別施設を造って収容する必要があると扇動して法を作った。だったら地域住民が危険な施設を近くに造るなと反応するのは当然。政府が施設が必要だと言えば言うだけ差別があおられ、地元との建設合意は不可能化する。厚労省は子どもが外にいる時間に外出させないとまで言っている。夜陰に乗じて外出させるとでもいうのか。このまま進めば外出も外泊も通院もないという文字どおりの監獄と化す」と発言しました。
 結局、まとめとして「ねじれが生まれている。指定入院機関・通院機関を受けるのが困難なのは承知のとおり。学会は批判的反対の立場であったが今が問われている」とされ、医療観察法に批判的でありながらも対応を今後に持ち越しています。反対決議をするか「精神障害者」を踏みつけにするか、二者択一です。

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週刊『前進』(2200号6面2)(2005/06/06)

 共謀罪に“目的遂行罪”

 現代版治安維持法を廃案へ

 共謀罪法案の審議入りをめぐる国会情勢は最大の山場に突入している。郵政民営化法案をめぐる国会「空転」によって5月下旬の審議入りはなくなったが、法務省はすきあらば一気に突破する構えを崩してはいない。延長国会が不可避の情勢の中で、6月中旬に審議入りを強行する可能性が高い。
 共謀罪法案も郵政民営化法案も小泉=奥田路線による戦争と民営化攻撃の一環だ。労働者人民の総力を挙げて粉砕しよう。

 「準備行為」処罰

 自民党が野党に提示した修正案のポイントは「準備のためにする行為」との文言を構成要件に加えることだ。日弁連執行部が作成した修正案の「(範囲を制限するために)『具体的な準備行為』を構成要件に付加する」という内容を取り込みながら行われた攻撃だ。修正案は共謀罪の適用を制限などしていない。それどころか「現代版治安維持法」としての役割を飛躍的に強化する内容だ。
 「準備のためにする行為」とは、「共謀の目的を果たすために何らかの行為を行うこと。その実現に不可欠な行為である必要はない」と言われている。対象となる行為は、会議などの打ち合わせ、各種の連絡(電話・手紙・ファクス・メール・インターネット)、犯行手段の準備など広範囲にわたる。
 具体的な例を想定してみよう。Aさんが参加した組合の執行委員会で「社長と徹夜でも団交を行う」ことが決定された。これを警察権力が「組織的な逮捕・監禁の共謀を行った」と一方的に認定した。その時点からAさんの行動はすべて「準備のためにする行為」の捜査対象となる。同時にAさんとかかわった全員が「共謀罪」の捜査対象者となる。例えば、Aさんに借金を返済したBさんは「逮捕・監禁のための資金援助を行った」と認定され、同じ共謀罪に問われるのだ。

 戦前と同じだ

 「何々のためにする行為」の規定こそ、1928年8月に治安維持法改悪で導入された「結社の目的遂行の為にする行為」(目的遂行罪)そのものだ。
 この目的遂行罪は、権力(警察・検察)が「日本共産党の目的遂行に寄与する」と認定するだけで適用できた。ジャーナリズムや文化運動、宗教団体、俳句や短歌の結社、職場の慰安旅行までもが弾圧の対象となった。治安維持法違反の起訴者に占める目的遂行罪の割合は30年が41%、41年には87%にまで拡大した。
 共謀罪法案は治安維持法を超える悪法となる。絶対廃案あるのみだ。

 戦時下での闘い

 日帝・小泉政権は、北朝鮮・中国侵略戦争の遂行に不可欠の侵略翼賛体制づくりが不十分なまま、戦時下へ突入した。革命党(革共同)は毅然と闘いぬき、動労千葉を始めとした階級的労働運動(組合)も確固として存在している。この点がかつての治安維持法時代と決定的に違うのだ。
 共謀罪法案は、警察権力が労働者人民の思想・信条の内容まで立ち入り、反体制的なものを弾圧(重罰)で一掃し、翼賛思想のみを容認する攻撃である。戦後憲法体制を真っ向から解体する攻撃であり、労働者人民の巨大な決起を必ず引き起こす。それは「日の丸・君が代」闘争での教育労働者の決起や「つくる会」教科書採択阻止の闘いでも端緒的に示されている。
 「闘えば勝てる」確信のもと共謀罪法案を廃案に追い込もう。6・14国会前集会(11時半〜13時)に全力で結集しよう。

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週刊『前進』(2200号6面3)(2005/06/06)

 辺野古 24時間の激闘に突入

 “勝てる!これが実感だ”

 4月26日深夜に、防衛施設局は誰もいない単管やぐらに夜襲をかけ、四つあるやぐらのうちの三つに金網を張った。そしてその日から、反対派がいない時を狙って夜間工事を連日強行しようとしてきた。
 この日から、闘いは24時間の闘いとなり、休日もない連日の闘いとなった。反対派は昼間のやぐらでの座り込みに加えて、夜間の座り込みを続けて行っている。雨が降ろうと風が吹こうと、工事強行の恐れのある限り、反対派は男性も女性も連日海上のやぐらに泊り込んでいる。
 施設局はやぐらの周辺に3〜4人が乗ったゴムボートを配置し、終夜見張り、すきあれば襲い掛かろうとしている。ギリギリと緊張した夜が毎日続く。
 敵は施設局だけではない。雨風が嵐のようになり、波が高くなる、すでに崩壊の一歩。手前のやぐらが、危険な状態になる。そういう時は、施設局の避難を確認し自分たちの命を守るために、夜撤退しなければならない。真っ暗で荒れた海でのやぐらからの撤退は、それ自身命がけだ。陸に上がれば、今度は敵の動きを明け方まで監視しなければならない。休みのない日々だ。
 敵は明らかに消耗戦に持っていこうとしている。反対派を疲れさせて、一挙に工事を強行しようとしているのだ。
 昼間の闘いも激しくなっている。施設局は、新しい単管やぐらを数カ所つくろうとする。反対派は海中に飛び込み、体を張ってこれを阻止している。飛び込みは肉体疲労もすさまじい。一方でやぐらへの工事強行が昼間も狙われている。緊張の連続。倒れる者が出るのも当然だ。そしてスパット台船やスーパー固定ブイなどを持ってきて、さらに厳しい闘いとなる沖合での作業を強行しようと狙っているのだ。
 反対派は、人間とは思えない生活を強いられながらも、勝利の展望をしっかりと感じている。8年間、そしてこの1年間の海と陸での闘いにより、政府と防衛施設局は追いつめられている。63カ所の調査地点のうち、1カ所も調査できていないのだ。SACOは、明らかに破産している。
 この事態の前に、公然と「辺野古海上移設見直し」論さえ出てきている。6月にアメリカは、米軍再編のアメリカ側の案を日本側に提示しようとしている。あせった防衛施設局は、あくまで従来の「辺野古海上移設」案を維持するために、4月末から暴力的な夜間工事を強行しているのだ。だがこの夜間工事強行も、反対派の英雄的闘いの前に何の成果もあげていない。そして県民の怒りの空前の高まりが始まっている。
 勝てる! これが反対派の実感だ。だからどんなに疲れても、不死鳥のように反撃に立っているのだ。一見すると、アリと象の闘い。このアリが確実に日米両政府を追いつめているのだ。勝たねばならない。
 現地への支援を強化し6月の辺野古大決戦に勝利しよう。トランスフォーメーション粉砕へ!(投稿・T)

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週刊『前進』(2200号6面4)(2005/06/06)

 5・22狭山闘争 第3次再審へ戦闘宣言

 石川さんの決意をともに

 300人が最高裁糾弾デモ

 5月22日、部落解放同盟全国連合会の主催、部落解放共闘会議の共催で「不当逮捕42カ年、第2次再審棄却決定糾弾!第3次再審勝利!人権擁護法案粉砕!5・22狭山中央闘争」が行われた。全国から集まった解同全国連の支部員、解放共闘の労働者・学生ら300人は、不屈の闘志を燃やす石川一雄さんに固く連帯し、最高裁の3・16特別抗告棄却決定を糾弾、第3次再審闘争への戦闘宣言を発し、戦争と差別の政治を強める小泉政権に反撃した。
 永田町の星陵会館で行われた集会の初めに石川さんの全国の支援にむけた5・23メッセージが紹介された。「決定文を読むと最高裁こそが狭山差別裁判の元凶であり、腸(はらわた)が煮えくり返る思いの憤りを禁じえません。しかしながら、私は打たれ強いので、第三次、否、えん罪が晴れるまで、とことん闘い抜く所存です」。参加者は石川さんと決意をともにして闘う決意を新たにした。
 解同全国連中央本部の中田潔書記長が基調報告を提起した。「あらゆる敗北主義をのりこえて全国連の闘いで狭山第3次再審闘争の勝利をかちとろう」と熱烈な戦闘宣言を発し、@石川さんとともに第3次再審へA戦時下の部落差別に対して糾弾闘争に立ち上がろうB労働者階級の闘いと合流しよう――の3点を訴えた。「最高裁の特別抗告棄却決定はあまりにもでたらめであり、裁判の名に値しない」と怒りを表明、第3次再審闘争の闘い方として「狭山事件を一般的な冤罪事件として公正裁判を要求してきた解同本部派の闘い方ではなく、国家権力の差別犯罪、権力犯罪を糾弾する差別糾弾闘争として闘おう」と提起した。そして再審闘争勝利の確信の根拠として「第一に、石川さんが今日も不屈に闘っていること、第二に、石川さんが無実であることを証明する最も核心的な事実は、石川さんが強制された『自白』と客観的事実との食い違いにあるだけではなく、石川さんに対する捜査と『自白』のねつ造の過程で警察が何を行ったのかという事実にあること」を挙げ、「狭山闘争を国家権力に対する糾弾闘争として土台から再建する」ことを訴えた。
 また中田書記長は、部落差別の攻撃の激化は小泉、奥田(日本経団連会長)の戦争政治に原因があるとし、それとの対決を訴えた。さらに、差別糾弾闘争の撲滅を狙う人権擁護法案の今国会提出を阻止するために闘おうと訴え、圧倒的な拍手で確認された。
 全国連狭山闘争本部の小森勝重事務局長が狭山闘争報告として、3・16再審棄却決定を厳しく糾弾、石川さんと怒りをともにして勝利まで闘おうと訴えた。
 また、茨城県連の井橋昌夫事務局長が最高裁の棄却決定を批判した。最高裁の棄却決定は第2次再審請求を棄却した東京高裁の高木・高橋決定よりもひどい内容の差別的な決定であると断罪、とりわけ最高裁が一度も証拠調べをされていない「弁護団資料」のごく一部を取り上げて「石川さんは自らの心情、意図を的確に表現する能力があった」と断定し有罪としていることを厳しく糾弾した。
 全国連の大阪・寝屋川支部が5月25日の支部弾圧判決公判への結集を呼びかけたほか、兵庫・芦原支部、京大解放研が差別糾弾闘争の取り組みを報告した。住宅闘争の現状と決意を同住連、広島支部、大阪・荒本支部が報告した。広島支部の青年が8月全青交への結集を訴え、長野県連が6月5日の県連大会成功への決意を表明した。
 集会後、最高裁前で怒りのシュプレヒコールを上げ、四谷まで再審棄却への怒りと第3次再審勝利の決意を込めてデモした。

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週刊『前進』(2200号6面5)(2005/06/06)

 最高検に糾弾行動

 人権擁護法案粉砕へ街宣

 翌23日、解同全国連と解放共闘の30人が昼休みに国会前と霞が関・弁護士会館前で人権擁護法案提出阻止、狭山再審棄却糾弾の街頭宣伝を行った後、最高検察庁に対する糾弾行動に立ち上がった。最高検は、狭山事件は係争中ではないとして、不当にも「要請行動」としての対応を拒否、「請願文を受け取るだけ」とし、門を閉じて警備員でバリケードを作って阻止してきた。これに対して全国連は村上久義副委員長を先頭に30分以上にわたり激しく抗議した。全国連中央本部を始め茨城県連、長野県連、福岡県連(準)などがそれぞれ「検察は狭山事件における部落差別に基づく起訴、取り調べ、捜査、論告を自己批判し取り消せ! 未開示証拠の隠蔽(いんぺい)を自己批判し、すべての証拠を開示せよ!」と糾弾、請願文を受け取らせ、松尾邦宏検事総長の文書回答を強く要求した。

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週刊『前進』(2200号6面6)(2005/06/06)

党学校 『共産党宣言』 −学習の感想−

 人間の自由について考える H・L

 『共産党宣言』は、短い文章の中に、時間的にも空間的にも非常にスケールの大きな思想、かつ根底的な(ラジカルな)思想が語られていて、これを学習することにより、とても自分が豊かになった気がします。大いに学習意欲が刺激される講義でした。
 私が質問した個所、「ブルジョア社会では、資本が独立して人格をもっているのにたいして、活動する個人は独立しておらず、人格ももっていない」(『新訳・共産党宣言』36n)という部分の「活動する個人」とは、主要には資本家階級のことを言っているのだということを正しく理解することは重要だと思います。正しく理解することで、ここの部分が一層深くとらえられる。
 要するに、資本家階級とは「人格化された資本」以外の何ものでもなく、資本に突き動かされ、引きずり回される存在だということ。そのような意味においては、「人格ももっていない」と言えるし、ブルジョアジー自らがしがみつく「人格」というのは、実に薄っぺらなものでしかないということ。「近代的自我の自立」「個人の自覚」などというブルジョア・イデオロギーの階級的内容は、自由な独立した人格などからはほど遠い、ということです。(『マルクス主義基本文献学習シリーズ3「共産党宣言」』には、そうした正しい解釈がちゃんと書いてあることを、あとで知りました。)
 人間を搾取することを基本原理として成立する資本主義社会では、「人格」とか「人間の自由」「人間の尊厳」などと言っても、およそ真の意味での自由とか尊厳ということとはほど遠いものであること、しょせん、資本という、人間から疎外された力によって縛りつけられているものでしかないということです。
 だから、「人格=自立した人間のあり方」を確立するためには、ブルジョア的な「人格」の廃止、否定が必要なのであり、プロレタリア革命をとおして、資本への隷属からの解放=賃金奴隷からの解放が必要であること、「共同で生産する自由な諸個人」として、真に自由な、共同性に満ちた人格性が、それによって回復されるのです。
 以上が学んだ内容ですが、いろいろと人間について、人間の自由について、示唆に富む提起であると思います。
 これに関連して『マルクス主義基本文献学習シリーズ3「共産党宣言」』の184nの提起、すなわち、マルクスがフランス革命のブルジョア革命としての限界を批判して、ブルジョアジーが言う人権とは「利己的人間の権利、人間および共同体から切り離された人間にほかならない」(『ユダヤ人問題に寄せて』1843年)と言っていることも、とても深い内容をもっていると思いました。
 このような、ブルジョア革命の限界性と資本主義社会への根底的批判、その積極的な止揚として、『共産党宣言』第2章の結語で、「一人ひとりの自由な発展が、すべての人びとの自由な発展の条件となるような協力体(アソシエーション)」すなわち共産主義が提起されていることを、学ぶことができました。

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週刊『前進』(2200号6面7)(2005/06/06)

 解同全国連寝屋川支部弾圧

 4人に無罪判決

 5月25日、大阪地裁において、デッチあげ「恐喝罪」で一昨年5月に逮捕され、6月に起訴されていた部落解放同盟全国連合会寝屋川支部の滝口敏明支部長ら4人が無罪判決をかちとった。全国連と差別糾弾闘争をつぶすことを狙ったデッチあげ治安弾圧を粉砕した偉大な勝利だ。不屈に闘えば勝利できる。寝屋川支部の建設の飛躍的前進につながる。この勝利に続き、狭山第3次再審闘争を全国連とともに闘おう。

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