ZENSHIN 2003/09/15(No2117
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週刊『前進』(2117号1面1)
自治労大会 綱領改定案を否決
戦争・改憲・民営化推進の連合に労働者の怒りの反乱が始まった
9・28続開大会で「21世紀宣言」葬れ
闘う代議員の決起で「21世紀宣言」を否決した自治労大会(8月29日 横浜)
8月26―29日に横浜市で開かれた自治労第74回定期大会で、執行部が提案した「21世紀宣言」=新綱領案が否決されるという劇的な事態が生み出された。労働運動の分岐をなす巨大な流動化が連合傘下の最大労組で始まった。01年9・11反米ゲリラ戦を転機とする国際階級闘争の新たな歴史的な高揚に突き動かされ、日本労働運動に地殻変動が起きたのだ。89年総評解散―連合結成以来の反動的「枠組み」は崩壊し始めた。労働者階級は、指導部がどんなに裏切ろうが、またどんなに資本攻勢が激しかろうが、平定され尽くすことはない。労働者階級は必ず立ち上がる。自治労大会はこのことを示した。9月28日(日)の続開大会(東京厚生年金会館)で「21世紀宣言」の廃案を決め、闘う新執行体制を確立しよう。そのために3週間さらに奮闘しよう。9・13―14国労大会決戦をともに闘おう。
第1章 連合に激震! 反動の流れ変える大勝利
自治労大会3日目の28日午後、自治労中央・執行部は新綱領(案)「自治労21世紀宣言」を投票による採決に付した。だが、賛成が採択に必要な3分の2に達せず、「21世紀宣言」は否決された。
「21世紀宣言」の採決の結果は以下のとおりである。
代議員総数 1007
出席代議員数 991
採択規定数 661
採決結果 賛成 626
反対 348
無効 17
同時に、この「21世紀宣言」の採択を前提として予定されていた役員改選も先送りとなった。
「21世紀宣言」は、01年旭川大会で討議案として提起されて以降、「不祥事」発覚による中断を挟み、3度の修正を受けた後、今大会にあらためて提案されていた。だが大会は、3年越しの新綱領論争に最終的に明示な形で「否決」という決着をつけた。歴史的な勝利である。
「21世紀宣言」は、自治労の54年基本綱領(3原則)と76年綱領に代わる新綱領である。綱領改定は「自治労の改憲」である。@階級的労働運動の放棄、A「労使パートナーシップ」路線、B「労使協働政府」構想、C憲法論議(論憲)の推進と改憲容認、D現代版「大東亜共栄圏」論――などがその内容だ。
この新綱領は、資本・当局と闘い労働者の生活と権利を守るという労働組合運動の原則を投げ捨て、大政翼賛と戦争協力を宣言する大転向だ。日本経団連「奥田ビジョン」に沿って、公務員制度改革、民営化・民託化、賃下げ、不安定雇用化、無権利化の攻撃を促進する大裏切りだ。
自治労は、02年に全競労を併合したのに続き、「21世紀宣言」を綱領として、04年に全国一般、05年に全水道、06年に都市交を次々と吸収して「地域公共サービス産別」を形成することを構想していた。
しかも自治労中央は、こうした綱領改定の反動的な意図を隠し、「21世紀宣言」をほとんど職場討議にかけないで、組合員の反撃を未然に阻止しようとしてきた。し かし、闘う自治労組合員は新綱領案の反動的な内容と本質を徹底的に暴き、全国で宣伝戦を展開した。「『21世紀宣言』の採択を阻止しよう!」との訴えが組合員・代議員の心をとらえたのだ。
白紙撤回しかない
「21世紀宣言」否決の中に組合民主主義の健在と自治労再生の可能性がある。闘いとったこの地平に確信をもち、自治労の戦闘的再生に向かって闘おう。
そもそも自治労中央執行部は「21世紀宣言」否決という事態をまったく予想していなかった。北岡委員長は否決直後、茫然(ぼうぜん)自失に陥ったことを隠そうともせず、「否決はきわめて遺憾。54年の自治労結成以来、初めての事態であり、頭の中が真っ白で、どう対処していいのか分からない」と吐露した。
29日午前に再開された大会の冒頭、北岡委員長は「否決は執行部への不信任であると理解する」と敗北を認めながら、「このまま空白をつくれば自治労は自壊する」と脅し、現執行部が居座ったまま、9月末に続開大会を開き、「修文」した「21世紀宣言」を再提案するという開き直り的な方針を提起した。
また、北岡委員長は「自治労が新綱領を採択できなかったことは、連合内での自治労の影響力の低下、労働運動全体の影響力の低下につながる。このままでは総選挙闘争を闘えない」と危機感をあらわにした。これは反対した代議員・組合員への恫喝でもある。
そして、事もあろうに最後の団結ガンバローで「続開大会では『21世紀宣言』を満場一致で採択し、新執行体制のもと自治労再生をかちとろう!」と破廉恥な言辞を弄(ろう)した。当然にも激しいやじと怒号がたたきつけられた。
代議員・組合員は、「21世紀宣言」は自治労の死だと危機感をもったからこそ、大会という最高決議機 関で不採択を決定したのだ。である以上、現執行部は責任をとって直ちに退陣しなければならない。現執行部が居座り、続開大会で「再び(同じ)『21世紀宣言』の信を問う」ことなど絶対に許されない。一事不再理の原則、組合民主主義に基づき「21世紀宣言」を廃案にする以外にないのである。
第2章 闘う執行部を樹立し自治労再生かちとれ
「21世紀宣言」の否決は自治労の反動的変質をぎりぎりのところで阻んだ。このような歴史的な事態を誰も予想できなかったのか。否だ。この兆候と根拠は確固として存在していた。
昨年の「5・16連合見解」(有事法制に賛成)をもって始まった連合の戦争翼賛体制への傾斜に対して、闘う自治体労働者は°連合の最大産別である自治労の組合員こそが連合中央打倒を決意し、先頭で闘わなくてはならない″として「1年間決戦」を決断した。だからこそ革共同の〈新しい指導方針>と4大産別決戦を党建設的に主体的に準備することができた。この過程を経て、外からは東京を始めとする全国の自治体職場への一斉情宣への決起が始まり、内からは自治労の現場からのみずみずしい決起が始まった。
新綱領案批判の学習会や合宿を県本・支部、職場で積み重ねた。新綱領案の採決を「一票投票」に持ち込み、「採択阻止に必要な3分の1の336票を獲得する」ために全力を挙げた。そして24日からの青年部総会、女性部総会、現業評議会総会での一斉決起、現地総決起集会、26、28、29日の連続的な大会会場前情宣をかちとり、4日間の大会議事過程での果敢な闘いを展開したのである。
大会初日の26日、全国労組交流センター自治体労働者部会は午前8時から30人で会場前に登場した。これに対して神奈川県警は、自治労大会史上かつてない大弾圧態勢をとった。排除方針でジュラルミンの盾を持った機動隊が闘う自治労組合員や支援の労働者を包囲し、「逮捕する」と恫喝した。国家権力は、一方でファシスト・カクマルのビラまきを容認し、他方で自治労組合員の情宣活動を禁圧しようとした。有事体制下の労働組合弾圧、国労5・27臨大闘争弾圧と同様のこの不当な治安弾圧を断じて許すことができない。
だが、会場に向かう代議員・傍聴者は機動隊の姿に驚きと怒りの声を上げ、横断幕に注目し、次々とビラを受け取った。自治労本部は、組合員の訴えを聞き入れてビラまきを認め、機動隊に規制解除を求めた。「交流センターに期待している」「頑張ってくれ」との声が寄せられ、5千枚近くのビラが配布された。
大会の討論では、「21世紀宣言」について、「討議が不十分」(秋田など)、「抽象的で理解できない」(福島)、「スト放棄が懸念される」(高知)、「闘う方針が出ない」(宮城)、「反戦運動が後退する」(栃木)、「闘う姿勢が見えない」(神奈川)、「当局としっかり対決するのが労働組合の魂」(静岡)、「頑張ろうとならない」(山形)、「『闘わない宣言』だ。現綱領の3原則の精神こそ重要」(青森)、「現綱領には階級的視点がある」(茨城)、「現綱領は階級的使命が明確」(愛媛)、「綱領見直しの必然性が見えない」(新潟)など、14県本の代議員が反対意見を述べ、圧倒した。
反戦闘争については「連合の『5・16見解』が与野党修正協議による有事3法可決・成立を導いた。自治労出身の連合中執がこの見解に賛成したことに厳しい総括を。世界では数千万人の反戦闘争の中心に労働組合が立っている。陸・海・空・港湾労組20団体との共同行動を行うべきだ」(新潟)という意見に大きな拍手がわいた。このほか改憲反対の明確化の要求、マイナス人勧を容認する中央への批判、行革リストラ・市町村合併に反対する意見が相次いだ。
自治労中央批判が続々と噴出する中で、「21世紀宣言」が否決されたのは当然の結果だと言える。
しかし、闘いはまだ開始されたばかりだ。偉大な勝利を実現したが、そこに一瞬たりともとどまってはいられない。切り開いた情勢に責任をとることができるのかどうか、続開大会こそ真の正念場である。
<11月>に大結集を
100万自治労が階級的分岐の戦場となった。このことは日本の労働運動全体、特に連合に多大な影響を及ぼす。自治労大会での闘いは、連合下で闘う全産別の労働者を励まし、闘いの連動を呼び起こす。また自治労大会の地平は、国労の自己解体―連合化を狙う裏切り執行部の打倒、国労の革命的再生に向けて闘う国鉄労働者への激励となっている。9・13―14国労大会決戦をともに闘おう。
われわれは、動労千葉労働運動、国鉄闘争の経験を有していたからこそ自治労大会で勝利的地平を切り開くことができた。動労千葉の闘いに学び、国鉄闘争を基軸的に闘い、その地平と息吹を自治体労働運動に持ち込み、自治労の戦闘的階級的再生をかちとろう。
戦争と大失業の時代にいかに闘うか。労働組合は戦争を阻止し、新しい社会をつくり出す根源的な力を持っている。闘うことによってこそ労働組合の団結が生まれ、再生が可能となる。
今や闘う新しい労働運動、新しいナショナルセンターが求められている。新綱領の採択を拒否した自治労は、続開大会でその新しい扉を押し開く歴史的使命と可能性に満ち満ちている。すべての自治体労働者に「歴史選択の1カ月決戦」への渾身(こんしん)の決起を訴える。自治労新綱領(案)「21世紀宣言」の採択を阻止した大会の総意を推し進め、自治労中央本部の反動的巻き返しを粉砕し、続開大会で新綱領を葬ろう。闘う新執行部を確立しよう!
新たな国際連帯の地平を切り開いた動労千葉を始め、3労組共闘が呼びかける11月労働者集会への大結集をかちとろう。自衛隊イラク派兵阻止を軸とする9―10月反戦政治闘争に労働者と学生は立とう。
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週刊『前進』(2117号1面2)
迎賓館・横田爆取裁判・最終弁論 「私は無実・無罪だ」 法廷圧する3被告の意見
「私は無実であり、無罪である」。被告の3同志はきっぱりと断言し、デッチあげ弾圧を弾劾した。16年の思いの丈をぶつけ、全面的に自らの無実を明らかにしきった意見陳述だった。
須賀武敏同志、十亀弘史同志、板垣宏同志の3被告の最終弁論公判が9月1、2、3の3日間、東京地裁で行われた。
3同志は、86年10月に岩手県で別件で逮捕され、翌87年10月に、86年4・15横田基地ロケット弾戦闘と同年5・4迎賓館ロケット弾戦闘で爆発物取締罰則第1条違反のデッチあげ弾圧を受け、昨年12月まで15年余も未決勾留されてきた。
1日目は須賀同志と板垣同志、2日目は十亀同志のそれぞれ最終意見陳述、3日目は弁護団の最終弁論。
恥を知れ検察官
まず、須賀同志が意見陳述を行った。須賀同志は、「私は本件両事件に一切関与していません」と断言し、「3人が岩手以前から一つの班を形成して行動をともにし、かつ岩手借家に搬入された資材を一貫して管理し続けてきたかのように言いなす検察官の主張は、完全なデッチあげである」として、そのことを詳しく明らかにした。
さらに、検察官の論告の破産点として、1985年の成田、羽田への四つの事件を突如「被告らの犯行」と言いだしたことについて、「検察官は、恥を知れ。すでに時効となった事件を持ち出しての、無実の私たちに対する『犯人』呼ばわりは重大な人権侵害だ」と、法廷を圧する大声で弾劾した。
「無実の私たちに無罪を! 『犯罪の証明』なき論告には無効の宣告を! 憲法と刑事訴訟法に従うならば、これこそが唯一正しいかつ当たり前の判決であり、これ以外の判決はありえません」と締めくくった。
次に板垣同志が立った。板垣同志は、「検察官は第1回公判で証拠がないことを自認し、論告でも証拠と根拠のない空論しか述べていない。検察官の立証は初めから終わりまで完全に破産し、失敗している」と断定した。とりわけ論告が板垣同志自身についてほとんど記述がなく、「被告人3名」とひとからげにしていることにデッチあげの破産が最も鮮明に表れていることを指摘し、断罪した。
裁判官に対して「治安弾圧を優先して侵略戦争の推進者となるか、無実は無罪に!という原則を守って無実・無罪判決を行うのか」と突き付けた。
2日目は、十亀同志の5時間余にわたる「独演会」となった。十亀同志は「本件は、典型的な政治的デッチあげ事件であり、しかもデッチあげとしてもあきれるほどにずさんな内容と、同じくあきれるほどにもろい構造しか有していません」と述べ、このような公訴によって15年余の独房生活を強いられたことに煮えたぎる怒りをぶつけた。
そして、総論において、立証の全責任は検察側にある、だが事実がないから立証が成立しない、最初から立証として立ち上がっていないことを論理的にじゅんじゅんと説き明かした。
最後に、十亀同志は立ち上がって、激しく情熱を込めて訴えた。「私たちは、無罪判決を確信しているという以上に、判決を待つまでもなく、今ここで、15年の獄中闘争と獄外8カ月のすべての闘いをやりきり、すでに勝利を手にしているということです。まだ、文字になっていないとしても完璧(かんぺき)な無実・無罪の判決は、すでに私たちの掌中にあります」。この勝利宣言に法廷中が無罪を確信した。
4弁護士が弁論
3日は、弁護団の4弁護士が交替で最終弁論を1日がかりで行った。「論告の段階に至っても被告人に関して訴因の特定がない。被告人3人のそれぞれ誰が、いつ、どこで、何を、どうしたのかというすべてに関して、具体的事実を一切明らかにできていない。また、共謀共同正犯として公訴提起していながら、共謀の証明がまったくない。論告は、要証事実をなんら証明していない」と、論告の破産をつき、全面的に反論し尽くした。検察官が13年間もかけて立証し続けてきたにもかかわらず、被告と事件を結びつけるものを何一つ証明できなかったことを暴きだした。
3日間計15時間にも及ぶ最終弁論は、文字どおり法廷を圧倒した。傍聴席は不屈の革命家たちの全生命をかけた意見陳述に震えるような感動を覚えた。2人の検察官は論告を完膚なきまでに粉砕されてグーの音も出なかった。裁判官は論告のすべてを打ち破った弁論と意見陳述の前に、逃げることなく向き合うことを強制された。
判決は04年3・25
これで結審となり、最後に木口信之裁判長が判決期日を、来年の3月25日(木)午後1時15分と発表した。
閉廷後、報告集会では、弁護団と被告たちの奮闘をたたえ、ねぎらい、絶対無罪判決をかちとろう、福嶋昌男さんの保釈をかちとろうと決意を固めあった。
白黒は完全にはっきりした。全力で3同志の無罪戦取へ運動を巻き起こそう。
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週刊『前進』(2117号2面1)
裏切り者の本部打倒し国労の〈革命的再生〉へ
歴史的分岐点に立つ国労大会 闘う路線と執行部を作ろう
9月13〜14日に国労第71回定期全国大会が東京・社会文化会館で開かれる。今大会は、国労の解体か再生かをかけた歴史的な大会である。7月に動労千葉が訪米し、サンフランシスコの戦闘的労働組合との交流を行った。8月の自治労大会では、連合路線の新綱領=「自治労21世紀宣言」を否決して執行部不信任を突きつける画期的な勝利がかちとられている。国際階級闘争の高揚の中で、日本労働運動がまったく新たな流動・再編情勢に入ったのだ。このような中で迎える国労大会で、国労を自己解体に導く裏切り執行部を打倒し、闘う国労を再生させることこそ、国鉄闘争勝利の道である。全力で大会闘争に立ち上がり、11月労働者集会に総結集しよう。
動労千葉が開いた国際連帯に合流を
日本の国鉄労働運動が、帝国主義の侵略戦争と民営化攻撃に対決する国際労働運動の一翼を担って発展する時が来た。
01年9・11反米ゲリラ―03年3・20イラク侵略戦争の開始という情勢の中で、動労千葉は3月末、90時間に及ぶストライキを敢行した。国鉄分割・民営化攻撃に対してストで闘った唯一の労組であり、その闘いを継続している動労千葉に対する共感が海を越えて広がった。訪米した動労千葉の要請にこたえて、サンフランシスコ労働者評議会が7月14日、「解雇された日本の鉄道労働者への支援と逮捕された日本の鉄道労働者を守る決議」を採択した。
この素晴らしい決議にこたえて、動労千葉とともに1047名闘争勝利、国労5・27臨大闘争弾圧粉砕へ闘おう。
動労千葉の闘いは、さらに日米韓の労働者の国際連帯闘争の道を切り開き、北朝鮮侵略戦争を阻止する展望をも指し示している。
自治労大会の勝利に続こう
今ひとつ、日本労働運動の革命的地殻変動と言うべき事態が起きている。
8月26〜29日に開かれた自治労定期大会で、「21世紀宣言」=新綱領が3分の2の賛成を得られず否決された。自治労中央は、「労使協働」をうたう「21世紀宣言」を採択することで路線問題に反動的決着を付け、新執行部のもとで連合路線を突っ走ろうとした。だが自治労組合員は、自治労における「修善寺大会」を実現してこれを阻み、9月28日の続開大会に向けて奮闘している。連合中央に対する一大反乱の開始である。このことは、国鉄労働運動と無縁なところで起きているのではない。
89年の総評解散―連合結成は、87年の国鉄分割・民営化によって強行された。日帝資本は、総評の中心組合であった国労を解体することで、右翼的な「労働戦線統一」に総評傘下の労働組合を合流させ、日本労働運動総体を労資協調路線に転換させることをもくろんだ。その先兵になったのが動労カクマルであった。
この過程で国労指導部が闘う方針を打ち出せなかったにもかかわらず、86年の修善寺大会を経て闘い続けた国労組合員が今日まで不屈に闘いぬいている。
他方、自治労など旧官公労の労働組合が「国労のようになるな」を合言葉に連合結成に合流した。だが十数年を経て、自治労組合員は、この連合路線を明確に拒否したのだ。
自治労大会の出来事は、この89年以来の労働組合の大流動・大再編情勢が到来したことを示している。
自治労は、国鉄闘争支援労組が全国で最も多く存在する産別である。ここで国鉄闘争を支えてきた組合員を先頭に自治労大会の勝利を実現した。大会会場で400人を超す組合員が国労5・27臨大闘争弾圧被告の保釈要求署名に応じた。
自治労組合員は、公務員制度改革、マイナス人勧、外注化・民営化などの大リストラが、まさに国鉄分割・民営化と同じ攻撃であることを感じている。労働組合であることを放棄する「21世紀宣言」では、これと闘うことはできないから否決したのだ。この闘いは、国鉄労働者に対する限りない激励である。
日本経団連の奥田ビジョンは、連合に対して「内部から自壊する危機に瀕(ひん)している」とやゆしている。連合が委嘱した連合評価委員会も「労働運動は足元から崩壊してしまいかねない切迫した事態」という中間報告を出した。いずれも本来の労働組合を解体し、その変質を迫るものだ。だが労働者は闘う労働組合を求めている。自治労大会の事態はそのことを示したのだ。
JR東労組の分裂は不可避
さらに、その中でJR総連カクマルの松崎支配の大崩壊が始まっている。松崎派と嶋田派の分裂は確定的であり、ついにJR東労組機関紙『緑の風』(8・6付号外)が「『反本部』で固められた長野・新潟地本大会」「『反本部』とは『反JR東労組』ということ」と公然と言い出すに至った。これは嶋田と松崎の権力争いにとどまらず、分割・民営化に賛成し国労・動労千葉つぶしを狙ったJR総連路線が大破産し、組織の大分裂の危機を深めているということだ。これも、JR労働運動の枠組みを歴史的に転換させる情勢である。
チャレンジと反動革同をたたき出せ
この時、国労が闘う労働組合として再生することこそが、日本労働運動の激動情勢を一層促進し、権力・JR資本との力関係を劇的に転換させるのだ。
だが、国労本部執行部は、分割・民営化以来、国労にとどまり続けて闘いぬく闘争団・組合員を見捨て、切り捨て、国労をバラバラに解体してJR連合に合流しようとしている。
4党合意の破産を居直りそれを取り繕うために、闘う闘争団に責任を転嫁し、今大会で査問委員会の答申を出し、除名処分にしようとしている。そして、国家権力にすがりつき、5・27国労臨大闘争弾圧で組合員を売り渡した。
さらには書記職員の強制配転・首切りを行い、その「退職金」などと称して「スト基金」を運用することを決定しようとしている。「エリア基金」への振り替えは、本部執行部内の一致が得られず今大会では見送ると言われているが、国労組織の解体に向かった準備であることは間違いない。そもそも闘いのためのスト基金を流用することなど断じて認められない。
チャレンジ一派がJR連合合流路線であることは、すでに明らかだ。北海道では鉄産労が国労との合併を公言しており、各エリアや地本ごとに具体的に動き始めている。
他方、革同はどうか。日共・反動革同は、チャレンジと結託して闘争団切り捨ての急先鋒(せんぽう)となってきた。特に、前本部中執で東京地本法対部長の鈴木勉は「権力のスパイ」とも言うべき役割を果たして、国労5・27臨大闘争弾圧に加担した。そうした中で革同が分裂し、4党合意をめぐって全労連内の激しい対立が起こったのだ。
昨年7月、日共中央は「国鉄闘争の再構築路線」と称するものを出した。あたかも日共中央が、反動革同の4党合意推進路線を批判するかのようなものだったが、反動革同の路線は変わらない。
そればかりか、綱領改定によって進めようとする「資本主義の枠内での民主的改革」路線とは、資本主義とは闘わない、資本主義を徹底的に擁護する路線である。これは「JR各社の健全な発展」というチャレンジの路線とまったく同じではないか。
革同の諸君に訴える。「1047名の解雇撤回・JR復帰」を真にかちとることは、この日共中央と決別し、権力・資本と闘うことではないのか。
今こそ、すべての組合員が「学校政治」の枠を取っ払い、党派を超えた団結を固めて大会闘争に臨むことを訴える。
分割・民営反対貫く1047名闘争を
いかに国鉄闘争勝利の展望を切り開くのか。
1047名闘争の「解決」は、国際連帯の高揚のもとで階級的力関係を決定的に転換させ、帝国主義と対決する国鉄労働運動の発展をとおして実現される。
そのためには、腐りきった現執行部を徹底的に弾劾し、引きずり下ろさなければならない。国労を解散したい連中など、たたき出せばいいのだ。そして今大会でチャレンジ・反動革同の執行部の選出を絶対に許さず、反対派の総力を結集して国労の権力をとり、新しい執行部を打ち立てることである。
鉄建公団訴訟は、国鉄分割・民営化の不正義を暴き、鉄建公団=清算事業団による解雇を撤回させる闘いだ。それは分割・民営化反対闘争を貫いて1047名闘争の大衆的陣形を広げ、その力でJR復帰をかちとる闘いである。
国家権力は、4党合意破産以後も、分割・民営化反対闘争を解体するための策謀をめぐらしている。これをはねのけ、国労5・27臨大闘争弾圧粉砕闘争と鉄建公団訴訟を闘いの両軸にして、動労千葉、全動労を含む1047名闘争の団結を打ち固めよう。
権力・資本に依存する「政治解決=和解路線」と決別し、あくまでも闘争団・組合員の団結に依拠して闘おう。国労は「労使共同宣言」路線を拒否した86年修善寺大会の経験を持っている。00年7・1臨大では4党合意受諾を実力阻止した。国労組合員にはものすごい力があるのだ。
今こそ国労の底力を発揮し、闘う旗を守れ!
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週刊『前進』(2117号2面2)
俺たちは鉄路に生きる2−−動労千葉の歴史と教訓
中野洋著 発行/労働者学習センター A5判224ページ/頒価1500円
青年労働者の闘いの糧に
『全逓労働運動史』著者 神子高人
実を言えば、著者・中野洋氏と私は(少しばかり私が年上であるが)同じ房総半島で育ち、高校を出たあと国鉄と全逓をそれぞれの労働運動の実践の場と選択して、生き、闘ってきた。
第一章Vでは、民同右派=労資協調派が仕切る組合を、青年部の活動家たちが職場闘争と反戦・政治闘争を真正面から闘い、同時にマルクス主義を学ぶことによって、その組合権力を自らの手に奪取し、闘う組合に変革していく様子が、生々しくかつ力強く語られている。それは私自身の経験とも重なるものである。だから、本書を読み進むうちに私は興奮し、老いの血が久しぶりに沸き立つのだった。これは、中野氏と同時代を生き、闘ってきた一人の労働者としての、自己再発見でもあった。
「職場闘争は職場支配権をめぐる闘いであり、激しい党派闘争である」
「すべての職場闘争は、さしあたり少数(一人)から始まる」
「核心は献身的・意識的活動家集団の質と量によって決まる」
「職場闘争は将来、組合指導部になるための能力形成の戦場である」
これは、中野氏の実践に裏付けられた重さを持つ至言である。
著者は第四章X〔動労千葉はなぜ闘うことができたのか〕のところで次のように述べている。
「労働組合とは幹部のものではなく組合員のものです。労働組合は、資本・当局のあらゆる攻撃に対して組合員の階級的利益を守るために、団結して闘いぬくものです。……労働者が本当に苦況に立った時こそ、労働組合の存在理由、存在感がある。そういうことを僕は常日頃、自分にも言い聞かせてきたし、組合員にも訴え続けてきました」
「それは根底的には、動労千葉に結集している労働者の階級性、本来労働者が持っている力を掛け値なしに全面的に信頼し、それに依拠して闘うということです。それ以外に労働者は生きようがないから。……だから僕は、自分のナマの姿をさらけ出して労働者と話をするし、付き合う。そうでないと組合員は信頼してくれません。『あいつは口ではうまいことを言っているけど、本音は違う』というんじゃダメなんですよ。だけど、僕は組合員にべたべたしないで、必要な時は叱りとばしますけれどね」
いま「第二、第三の動労千葉をつくろう」という声をあちこちで聞く。その言いたいことは「動労千葉の闘いを学び、全国の労働者に広め、動労千葉のように闘う労働組合をつくり出そう」ということかも知れない。が、私には不満である。率直に言おう。動労千葉の何を学び、どのようにして動労千葉のような組合をつくるのか、と。何故、「中野洋に学び、中野洋になろう」でないのか。
それは中野氏を偶像視することでも個人崇拝することでもない。
労働組合は幹部のものではなく組合員のものである。組合員の階級的利益を守るために団結して闘い抜くためである。労働者の階級性と持っている力を全面的に信頼し、依拠して闘う以外に労働者は生きようがない。だから自分のナマの姿をさらけ出して組合員と付き合い、信頼をかちとり、だが必要な時は叱りとばす。そう考え、そういう指導者に、おのれがなろうとするのかどうかという問題なのだ。職場闘争を職場支配権をめぐる、そして激しい党派闘争としておのれ一人でも始めるのかどうかという問題なのだ(ちなみに、職場支配権とは資本・当局の労働者支配をうち破ることによって獲得できるのであり、最も激烈な党派闘争とは資本・支配階級との闘いのことである)。
時代認識、情勢分析、あるべき労働運動の路線などについての著者の提起については、読者が本書とりわけ序章と第五章を熟読されることを期待して、あえて私が解説するまでもあるまい。「戦争を阻む労働者の国際連帯」の地平を切り開いた中野氏を始め動労千葉の役員、組合員、家族会の皆さんに、私は心底からの敬意を表するだけである。
ところで「戦争を阻む労働運動の国際連帯」についてハッキリさせたいことがある。この課題は、動労千葉の存在と闘いなしには成立しえないのだから、中野氏の「01年9・11と03年3・20情勢下の労働者階級の国際連帯」の闘いとして今年こそ11月労働者集会を満杯にすることは、「帝国主義と対決する労働運動」を闘ってきたわれわれの最低限の義務的責任である。
01年9・11の直後に、中野洋氏は、「帝国主義の打倒は、アメリカを始めとする帝国主義の労働者階級の闘いと、被抑圧民族の闘いとが結合した時に成り立つのであって、あのゲリラで倒れるとは思っていないし、そういう立場ではない。しかし、今いっせいに起こっている『報復』という風潮に警鐘を乱打し、第三次世界大戦に突入しかねない状況に対して労働者階級の立場から断固として闘わなければならない」と言いきった。
アメリカ帝国主義に対する憎しみと怒りを、自爆してでもたたきつける人たちの闘いがある。ムスリム人民、パレスチナ・アラブ人民のやむにやまれぬ訴えを受けとめる感性が自分にあるのか、と私は自分に問うた。この感性なくして、国際連帯とかプロレタリア自己解放とかおこがましくて言えない、と今はもっと確信的に思っている。
しかし、加齢とともに人間の感性はにぶくなる。
「これからの労働運動は、若き青年労働者が、責任ある主流派として指導部にならなければいけない」と私は拙著『全逓労働運動史』に書いた。そのときに寄せられた中野洋・動労千葉書記長(1982年当時)の言葉を紹介しよう。
「若き労働者諸君が本書を熟読し、闘いの糧とされんことを切望する」。その言葉は『俺たちは鉄路に生きる2――動労千葉の歴史と教訓』にあてはまる。
☆申込先 千葉市中央区要町2−8DC会館内 労働者学習センターTEL043-222-7207 FAX043-224-7197 ホームページ
http://www.doro-chiba.org/
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週刊『前進』(2117号2面3)
パンフ 動労千葉の訪米報告
動労千葉の米西海岸サンフランシスコ訪問、そして全米最強の労働組合と言われるILWU(国際港湾倉庫労組)との交流を報告する、すばらしいパンフレットが発行された。タイトルは『俺たちインターナショナル! 世界に翔びたとう−サンフランシスコでの国際連帯』。一読を強く勧めたい。実に面白い。
「動労千葉の闘いとILWUの闘いが必然的に結びついた」と語る田中康宏委員長。ILWUを日本で最も正当に評価できるのは動労千葉だ。
マフィアや軍隊と対決して闘った34年のゼネスト、御用組合ILA(国際港湾労働者協会)からの分離・独立――訪米した動労千葉の川崎昌浩執行委員は、田中委員長らとの対談で、動労本部からの分離・独立、国鉄分割・民営化攻撃との闘いなど動労千葉の歴史と経験を重ねながら、ILWUとの交流を紹介している。米国の闘う労働組合を知ると同時に、動労千葉の闘いの意義を再確認する絶好のパンフだ。
☆発行・動労千葉/B5判36n/頒価300円
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週刊『前進』(2117号2面4)
資本攻勢&労働日誌 2003 8月15日〜29日
自治労大会「21世紀宣言」否決
日産も定昇廃止/日本政府が韓国労働法改悪要求
●都庁労働者「サービス残業」1年で100億円 東京都庁職員労働組合(都庁職)の機関紙で公表。アンケート調査の結果に基づいて試算した。(15日)
●電機連合、組合員の怒り明らか 9割近い組合員が「組合は必要」と感じているが、労使関係では7割強が「組合が経営に譲っている」と怒りを持っている。電機連合の「組合員の組織活動に関する調査」で分かった。(19日)
●企業6割が「定昇廃止」希望 今後の賃金決定について「定昇制度を廃止すべき」と考える企業が6割に。日本経団連が発表した「2003年春季労使交渉に関するトップ・マネジメントのアンケート調査結果」で分かった。(20日)
●連合が年金制度改革で提案 連合は中央執行委員会で「年金制度改革実現の取り組み方針」を確認した。(22日)=別掲参照
●関西合同労組が地労委で勝利命令獲得 大阪府地方労働委員会は、00年2月に破産した書籍販売会社「駸々堂」に対し、関西合同労組の組合員が申し立てていた不当労働行為の救済について、組合勝利の命令を出した。(22日)
●労働組合員の「心の病」増加 財団法人社会経済生産性本部発表の「産業人メンタルヘルス白書」によると、67.2%の労組がこの3年間に組合員の「心の病」が増加傾向と考えている。(22日)
●全国一般、自治労との統合検討へ 連合加盟の全国一般労働組合(4万1千人)は25日まで大会を開き、自治労との組織統合について検討・協議を始めるとする運動方針を提起した。(24日)
●パート増大、正社員との賃金格差拡大 厚労省は「2003年版労働経済の分析」(労働経済白書)を発表。正社員が減る一方、フリーターやパート労働者、派遣労働者が増える現状を分析。フリーターは209万人で、20年で4倍に。賃金格差も拡大している。(26日)
●日産も定昇を廃止 日産自動車は一般労働者の賃金で、定昇制度を廃止する方針を固めた。9月にも労働組合に提案、合意すれば来春にも廃止する。(26日)
●自治労大会、宣言案否決で続開大会へ 26日から開かれていた自治労大会は、3日目の28日午後に「自治労21世紀宣言案」が否決されたことを受けて、9月末に続開大会を開いて修正した宣言案を再提案することになった。(29日)
●7月の完全失業率5.3% 総務省発表の7月の完全失業率は5.3%で、前月に比べ横ばい。厚労省が同日発表した7月の有効求人倍率は、0.62倍と前月を0.01ポイント上回った。(29日)
●韓国2大労組が日本政府非難 韓国外交通商省は、日本政府が日韓自由貿易協定(FTA)締結の前提条件として労組法改悪を求めていることを明らかに。民主労総と韓国労総が抗議声明。(29日)
連合の年金改革プランの狙い
日帝は年金制度波たんの危機に直面している。9月に見込まれる社会保障審議会年金部会の「意見とりまとめ」を受けて、厚労省は年末に改悪法案要綱を策定、来年度の通常国会に年金制度改悪法を提出しようとしている。
連合の年金改革プランは、「奥田ビジョン」と同じく基礎年金の税方式への転換を最終目的に掲げている。
当面の策として基礎年金の財源を1/2までは一般財源、1/3を年金目的間接税(消費税を想定)、1/6を社会保障税(企業の社会保険料相当分)とする。
これは現在の企業負担1/3を半分にし消費税の8%へのアップを意味する。やがて1/2の一般財源も消費税となる。その結果、消費税は約13%に。連合案は「奥田ビジョン」そのものだ。
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週刊『前進』(2117号3面1)
北朝鮮核問題 6者協議は戦争準備会議だ
無条件の武装解除要求 米帝 北朝鮮侵略戦争に反対しよう
北朝鮮をめぐる政治・軍事情勢は、イラク=パレスチナ情勢の大激動と並んで、今日の内外情勢の基本動向を決定する重大事項である。8月27日から3日間、北京で北朝鮮の核問題をめぐっての6者協議(6カ国協議)が開催された。それは北朝鮮に対する米日帝の侵略戦争準備のプロセスそのものである。
「協議継続」が唯一の「成果」
北京での6者協議は、決裂こそしなかったが、共同文書も出せず、次回協議の日程・場所も決められないまま終わった。中国が「北朝鮮の安全に関する合理的な関心を考慮して問題を解決する」「核問題の段階的、同時並行的な解決を求める」「各国とも状況を悪化、エスカレートさせる言動をとらない」など、6項目の妥協的な議長総括を発表して、何とか事態をとり繕ったにすぎない。
協議は、冒頭から、一方の最大の当事者である米帝が「完全で、検証可能な、後戻りできない」形での無条件の核開発放棄を求め、不可侵条約の締結は拒否する強硬姿勢を鮮明にさせ、他方で北朝鮮が米帝の敵視政策の転換と不可侵条約締結を求める立場を繰り返し、主張が真っ向から対立したまま推移した。完全な決裂ではなく、次回協議の道が残されたことが唯一の「成果」とされている。
北朝鮮の体制転覆狙う米帝
しかしそもそも、「6カ国協議」というが、この「6カ国」は同質・同類の国家同士ではない。根幹は米日という強大な帝国主義国家と、ギリギリの体制的危機にあえぐ残存スターリン主義としての北朝鮮(相対的には中小国家)の関係なのだ。しかも北朝鮮はすでに、米帝ブッシュの世界戦争計画の凶暴な推進の中で、「悪の枢軸」「ならずもの国家」と名指しされ、米日帝の巨大な侵略戦争重圧のもとに置かれているのだ。北朝鮮は米帝から、そもそも「スターリン主義国家」だという理由で、タリバン政権やフセイン政権と同じく転覆・打倒の対象とされてきたのである。
だが北朝鮮は、反革命的なスターリン主義であるがゆえに、この米帝の侵略戦争と体制転覆の攻撃に対して、民族解放・革命戦争、南北分断打破・革命的統一、世界革命の完遂の闘いで対決する路線を持っていない。ただただきわめて反人民的な核開発・核武装の路線をもって対抗し、瀬戸際政策に訴えて、体制の延命を図ろうと、必死にあがき回っているのである。
米帝の意図はきわめてはっきりしている。イラクに続き北朝鮮侵略戦争を強行し、スターリン主義体制を転覆することだ。そして究極的には残存スターリン主義の中軸である中国への侵略戦争発動と体制転覆だ。
それでは、今なぜ6者協議なのか。
コントロールと時間かせぎ
それを成立させている根拠は、米帝自身が陥っているすさまじい危機にある。イラク侵略戦争の予想を超えた泥沼化。膨大な戦費(年間総計450億j)とそれをも一要因とする巨額の財政赤字(04会計年度4800億j)。一方での03年度に5000億jの大台を突破する経常赤字。ドル暴落、米国債価格暴落や、米帝経済の恐慌再激化も不可避な情勢だ。そして04年大統領選挙の切迫の圧力。
このため米帝ブッシュ政権は、今は6者協議の形態をとって、時間を稼ごうとしているのである。日韓と中ロを巻き込んで対北朝鮮の国際包囲網を強め、北朝鮮情勢を米帝のへゲモニーのもとでコントロールしていきたいのだ。その先に結局は北朝鮮侵略戦争を狙っているのである。
米帝は現在、口先では北朝鮮問題の「話し合い」解決を言っている。しかし米帝が実際に北朝鮮に突き付けたことは、無条件の核開発放棄であり、武装解除だ。それを「完全」な「検証可能」で「後戻りできない」ものとして保証せよ、IAEA(国際原子力機関)の強制査察も受け入れよ、ということである。その上で国際法的拘束力を持つとされる不可侵条約は拒否しつつ、「北朝鮮を侵略・攻撃する意図はない」と、どうにでもなる口頭での表明を行ったに過ぎない。
必死のアクロバット的対応
だが北朝鮮にとっては、先に完全に武装解除すればその後で「経済支援」などを考えてもよいと言われても、信用することができない。「武装解除」し、丸裸となった瞬間、イラクと同じように米帝が侵略戦争と政権転覆に打って出てくることは明白だからだ。
北朝鮮が協議で基本的に要求したことは、4月の米朝中3者協議で提案した「4段階妥結案」であり、それは@米の重油供給再開と北朝鮮による核放棄の意思表明、A不可侵条約締結と核査察の受け入れ、B米朝・日朝の国交樹立と弾道ミサイル問題の解決、C軽水炉建設の完工と核廃棄断行、この4段階で解決ということだ。北朝鮮の要求の根幹には、まず米帝が敵視政策を転換し、不可侵条約を締結すべきだということがある。
だが、米帝の態度は(日帝とともに)強硬だった。それゆえ北朝鮮は公式協議と米朝の非公式協議の場で「濃縮ウランを使った核計画は全然持っていない」「朝鮮半島の非核化に確固たる意志を持っている」などと表明する一方で、「われわれは核兵器を持っていることを見せることができる」とも言及し、硬軟とり混ぜたアクロバット的な対応をもって米帝を揺さぶろうと必死となった。
「核」と「拉致」で強硬な日帝
日帝は米帝の基本戦略に対応して、きわめて強圧的に動いた。核問題と同時に拉致問題を振りかざし、「日朝2国間協議をやらないと国内的にもたない」と国内情勢をにらみながら、「拉致問題の解決なしに日朝正常化も経済支援もあり得ない」との態度を貫き、米帝との共同=競合の関係のもとに、日帝自身の北朝鮮侵略戦争政策を展開したということである。
中国スターリン主義は今回、徹底して米朝の「仲介者」「根回し役」を担った。そのことで米帝の対中国侵略戦争への道にブレーキをかけることを狙い、米中関係の長期的利害をにらんで、大きくは米帝の対北朝鮮政策に手を貸したのである。
米帝は、中国とロシアを6者協議に引き込むことにより、当面は北朝鮮を自己のコントロール下に置く政策が容易となる。と同時に、実際の北朝鮮侵略戦争発動という際には、それで中国とロシアの反対や抵抗を封じ込める狙いを込めている。それゆえ「6カ国」という枠組みを積極的によしとしているのだ。
しかし6者協議の結果が北朝鮮スターリン主義にとっていかに厳しいものであったかは、議長総括に賛成した後、一転して代表団声明や北朝鮮外務省報道官の談話で、協議は「期待に背く机上の空論」「百害無益」であり、「いかなる興味も期待も持てなくなった」と表明し始めたことに、激しく示されている。
次回協議こそ重大な分岐点
今回の6者協議こそは、イラク侵略戦争の泥沼化を始め政治的・軍事的・経済的な危機に立つ米帝が、当面、北朝鮮情勢を自己のへゲモニーのもとでコントロールしつつ、対北朝鮮の国際的包囲網と戦争重圧を強め、侵略戦争発動を準備していくプロセスいがいの何ものでもなかったのだ。
実際、次回協議にもし北朝鮮が参加しないと言ったり、参加しても決裂するような結果になるなら、米帝はもはや「話し合い」は無意味、北朝鮮は「説得」などできないとキャンペーンして、国連安保理決議を策動し、経済制裁発動から軍事力行使へと突き進んでいくことを狙っているのである。われわれは、今回の6者協議がこうした重大な転換点をなしていることを直視して闘わなければならない。
現実にも米帝は、北朝鮮侵略戦争に向け、韓国や沖縄基地の再編を進め、「作戦計画5030」の草案をまとめるなど、戦争準備に全力をあげている。
また6者協議の過程で、米日韓がKEDO(朝鮮半島エネルギー開発機構)の軽水炉建設の中止をついに決定したことは実に重大事態である。
われわれは今秋この日本の地で、闘う南北朝鮮人民、イラク人民と連帯し、米日帝の北朝鮮侵略戦争反対の闘いを、当面するイラク(アフガニスタン)への自衛隊派兵阻止の闘いと固く結合して、11月労働者集会に向けた一大反戦政治闘争としてつくりだしていこう。
作戦計画5030
ラムズフェルド米国防長官が指示して策定を進めている新しい対北朝鮮軍事作戦計画。金正日政権の転覆を狙う。米誌USニューズ・アンド・ワールド・リポート(7月21日付)によると、5030には@突然の偵察飛行や軍事演習を繰り返すことで北朝鮮の迎撃を誘い、不安と動揺を起こし、燃料・食糧・資源を消耗させる、A虚偽の情報やデマ、スパイ活動などで内部分裂を図り、反乱を誘発する、B金融ネットワークを混乱させる、Cそれでも金正日政権が崩壊しない場合には、大統領の承認なしでも米太平洋軍司令官の判断で多様な「低強度戦争」を仕掛ける――などが含まれる。
太平洋軍司令部を中心に作業を進めており、マイヤーズ統合参謀本部議長も7月24日、上院軍事委で、新作戦計画の策定に全力を挙げていると証言した。
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週刊『前進』(2117号3面2)
テロ対策特措法延長阻止を 自衛隊イラク派兵阻止と一体で
日帝・小泉政権は、今秋の臨時国会でテロ対策特措法を延長しようとしている。テロ対策特措法は、アフガニスタン侵略戦争、イラク侵略戦争を日帝が担うものであり、日帝の侵略戦争、人民虐殺の攻撃そのものである。しかも日帝は、労働者人民や自衛隊兵士の中に自衛隊イラク派兵反対の声が巻き起こる中で、派兵を貫くためにも、11月1日に期限が切れるテロ対策特措法を何がなんでも延長しようとしているのだ。絶対に阻止しよう。
調査団派遣
日帝・小泉政権は、9月初旬にも自衛隊イラク派兵に向けてイラクに調査団を派遣しようとしている。8月20日にはいったん当面先送りすると決めたが、米国務副長官アーミテージが「(イラク占領支援から)逃げないでくれ」などと日帝に強く要求したことを受けて、自衛隊イラク派兵をあくまでも強行しようとしているのだ。日帝は侵略戦争の戦場に自衛隊を投入し、イラク人民を虐殺し、自衛隊兵士に死を強制することで、戦争のできる帝国主義として飛躍し、帝国主義間の争闘戦に勝ちぬこうとしているのである。
テロ対策特措法下で自衛隊は何をやってきたのか。バーレーンに置かれた米中央軍の指揮下で今年の6月末までで米英軍などに265回の燃料洋上補給を行った。総量は31万2000`リットル、金額にして100億円以上を無償提供した。その他空自は米軍の人員や物資の輸送を行った。
アフガニスタンでは米軍を中心とした占領軍とアフガン人民との間で激しい戦闘が続いている。米軍やカルザイ政権は首都カブールとそのほんの周辺を制圧しているにすぎない。
ゲリラ戦争
一方イラクでは今、米英占領軍とイラク人民との間ですさまじい戦闘が続いている。米帝ブッシュが戦闘終結を宣言した5月1日以降の米兵の死者は戦闘で直接死んだ数が67人に上り、その他の死者も78人に上っている。また他方で、この戦争で殺されたイラクの一般市民の数だけでもすでに8千人に上っている。イラク軍兵士の死者の数はいまだにはっきりとはわかっていない。こうした米帝の軍事占領・植民地支配と対決して、イラク人民は命がけで闘いぬいている。
9月1日、米占領当局は勝手に選んだ25人を暫定内閣と称して発表した。25人の統治評議会を引き継ぐもので、まったくイラクの労働者人民を代表していない。植民地支配をごまかすためのペテンでしかない。
民族解放・民族自決に向かって闘うイラク人民は米帝のこうしたやり方に激しい怒りを燃やしている。8月19日の国連バグダッド現地本部への自爆戦闘に続いて8月29日にはシーア派の聖地ナジャフで自爆戦闘があり、80人以上が死亡した。この戦闘は、米帝のイラク軍事占領・植民地支配と、それに屈服していると見られたシーア派の一部に対する、人民のやむにやまれぬ特殊的=極限的な戦いとしてあった。そして、あらためてイラク人民の米帝に対する怒りが巻き起こっている。
米帝のイラク軍事占領は完全に泥沼に入っている。また、米帝がイラク侵略戦争の開戦の理由として大々的に宣伝した「大量破壊兵器」をめぐるウソが全面的に明らかになり、戦争の不正義性が暴き出されている。それでも米帝はイラクからけっして撤退しようとせず、植民地支配をあくまで貫こうとしている。そのために国連や他の帝国主義を戦争協力に引きずり込もうとしているのだ。
小泉打倒へ
この米帝に英帝とともに真っ先に協力しているのが日帝・小泉政権である。日帝・小泉政権は何がなんでもイラクに自衛隊を派兵しようとしている。イラク人民が民族解放・民族自決を求めて全力で闘っているそのイラクに自衛隊が乗り込み、闘うイラク人民を抑圧し、虐殺するのだ。小泉は、帝国主義が世界戦争の過程へと突入している中で、戦争のできる帝国主義へと転換しようと凶暴な攻撃に出ているのである。
日帝の自衛隊イラク派兵の攻撃は、同時に国内に対しては、労働者人民への階級戦争、一大資本攻勢と治安弾圧を意味する。
今や労働者人民が生きるためには、この日帝の戦争政策と真っ向から闘う以外にない。11月に向け今秋の反戦政治闘争に全力で決起し、テロ対策特措法の延長を絶対に阻止し、自衛隊イラク派兵を阻止しよう。世界の反戦闘争と連帯して闘い、米英軍をイラクから撤退させよう。
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週刊『前進』(2117号3面3)
9・1東京 戦争訓練反対デモ “関東大震災の虐殺忘れるな” 労働者・自衛官に訴え
9月1日、東京都・日野市合同総合防災訓練が、日野市東部地域11会場で、陸・空自衛隊200人を含む、総計2万8千人の参加で行われた。東京と三多摩の闘う労働者・学生・市民は、早朝から京王線高幡不動駅前、浅川スポーツ広場、新井橋の3会場で「防災訓練」反対の行動に立ち上がった。
浅川スポーツ広場には、自衛隊の装甲車が登場。自衛隊救護班のテントが建ち、自衛隊ヘリによる負傷者搬送訓練が行われた。その隣には、「NBC災害訓練会場--(危険化学物質漏洩〔ろうえい〕訓練)」と書かれた横断幕が張られ、核・生物・化学兵器対処訓練が行われた。異様なガスマスクを着けた迷彩服の自衛隊員が登場し、戦時動員訓練が住民を巻き込んで強行されたのだ。
新井橋訓練会場では、陸自による「仮設橋建設、渡河訓練」と、そのための土嚢(どのう)積み訓練が行われた。ここには高校生も動員された。高幡不動駅前では、「中高層ビルからの救出救助訓練」のために、駅前のバスのロータリーを自衛隊・警視庁・消防庁がほとんど占拠するという異常な風景となった。
闘う労働者・学生・市民は「防災訓練」に動員された住民に対して、「自衛隊の訓練は戦争のための訓練です」「軍隊は住民を守らない」「関東大震災での朝鮮人・中国人虐殺の歴史を繰り返してはならない」と訴えるビラをまき、情宣を行った。
新井橋訓練会場での情宣を終えた労働者たちが、高幡不動駅前の集会会場に向かっていた時、石原都知事の車が通りかかった。労働者たちは、すかさず車に向かって「差別者・石原は帰れ」とこぶしをあげた。すると、すぐ後ろの車に乗っていたSPたちがあわてふためいて降りてきた。「石原帰れ」の声は、確実に石原を突き刺した。
午前10時半から高幡不動駅前の「キサキ会館」で、「9・1自衛隊『防災』訓練に反対する三多摩緊急行動」の主催で「『防災』に名を借りた戦時動員訓練反対9・1三多摩集会」が80人の結集で開催され、成功をかちとった。
まず主催者あいさつとして三多摩緊急行動の代表が立ち、「自衛隊と警察によって朝の抗議行動が一方的に制約された。戦争に反対する声をつぶすための訓練だ」と発言した。つづいて日野市民が、「災害のときは外国人も日本人も助け合って生き延びるのが防災だ」とアピールした。日野の高校教師は、日野市防災課とのやり取りで今回の訓練が有事訓練であることを認めたと報告した。
東京反戦共同行動委の三角忠さんが基調報告に立ち、日野市での訓練が「団地の自治会を中心とした住民と自衛隊が一体となった訓練」であることを暴露した。つづいて「『防災訓練』は、自治会を自衛隊の指揮・命令統制下に動員するものであり、国民保護法制の先取りだ」と喝破し、「今日は関東大震災の朝鮮人・中国人虐殺から80年であり、この歴史を忘れてはならない」と訴えた。
反戦自衛官の小多基実夫さんがアピールに立ち、「イラク出兵を前にして自衛官とその家族は動揺している。私たちの必死の訴えこそが自衛官の決起を促す」と訴えた。
集会のあと、会場の真ん中を縦断する戦闘的デモに立った。自衛隊、警察で制圧された状況を突き破る唯一のデモだ。「戦争訓練反対」のシュプレヒコールが会場に響き渡った。
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週刊『前進』(2117号3面4)
東北大弾圧 中野さん(全金本山)を奪還 初公判で“ねつ造”弾劾
8月20日、全金本山労組の中野七郎書記次長の保釈、奪還をかちとった。中野さんは、東北大学当局によって「傷害事件」をデッチあげられ、6月2日の逮捕以来、80日間もの不当勾留が続いていた。8月14日の第1回公判直後の保釈請求を仙台地裁・本間栄一裁判長は却下したが、弁護団の抗告に仙台高裁が原決定を取り消し、保釈を許可する決定を行ったのだ。
中野さんが勾留されている仙台拘置所には、保釈決定の報を聞き、全金本山労組の組合員、学生などが出迎えに集まった。午後4時過ぎに中野さんが元気な笑顔で拘置所の玄関から出てくると、大きな拍手と歓呼の声で迎えた。拘置所の門前で80日ぶりの固い握手を交わし、中野さんがあいさつを行った。
「7日に石巻署から拘置所に移監となり、14日の第1回公判の夕方には『接見禁止決定』が届き、15日には『勾留期間更新決定』を見せられた。長期になると覚悟して飲食物購入を申し込んだら、今日午後に突然『保釈だから準備して』と言われて驚いた。これも、支援のみなさんの闘いが裁判所を追いつめた成果だ。全金本山闘争勝利、有朋寮廃寮反対闘争勝利と、完全無罪をかちとっていくためにがんばる」と感動的な決意を述べた。
中野さんへのデッチあげ弾圧との攻防は、ついに「人質司法」と言われる違法、不当な長期勾留攻撃を打ち砕いた。国労5・27臨大闘争弾圧を始めとする全国的な労働運動つぶし、反戦闘争つぶしの弾圧の一角に風穴をあけたのだ。
仙台地裁・本間裁判長は第1回公判のわずか3時間後に保釈請求を却下するという治安弾圧の姿勢をむき出しにした暴挙を行った。その決定を高裁が覆すことはきわめて異例だ。それだけ中野さんの獄中での闘いと県内、全国の「東北大学と宮城県警による『傷害事件』ねつ造を許すな!」の運動が司法権力を追いつめてきた証だ。さらに権力犯罪を暴き、完全無罪をかちとるために突き進もう。
90人が結集し法廷を包囲
仙台地裁で8月14日、第1回公判が開かれた。公判には開廷1時間以上前から90人を超える支援者が集まった。傍聴券は35枚、あふれた傍聴者は402号法廷前の廊下に座り込んで法廷を包囲した。
中野さんは不当にも手錠、腰縄の上に3人の刑務官がつくという重戒護状態だったが、傍聴席からの激励の声に笑顔でこたえた。
公判開始直後、まず弁護団が傍聴の交代を認めない訴訟指揮を弾劾し、その上で起訴状への求釈明を行った。「『加療約1週間の後頭部外傷を負わせた』というのが公訴事実だが、『加療』とは具体的にどのような治療か、『後頭部外傷』とは具体的にはどのような部位のどのようなケガを指しているのか。これが明らかにならなければ、弁護できない」という弁護団の要求はまったく当然だ。それに対して仙台地検・宮本検事は「釈明の必要なし」と居直り、本間裁判長も「起訴状で十分です」と、検察に加担した。
続いて弁護団が公訴棄却を求める意見を陳述した。起訴事実そのものがデッチあげであること、大学当局の一方的な廃寮決定に反対し、抗議する学生とそれを支援する市民を弾圧するためにつくり上げられた事件であることを鋭く暴露、弾劾した。
さらに廃寮反対運動に刑事司法を介入させることは、大学自治に反するものであり、大学の独立行政法人化という、大学を国家に追従させようとする流れの中での弾圧であることを指弾し、「裁判所は本件公訴をただちに棄却すべきである」と締めくくった。
裁判所は「現段階では判断できないので留保する」と答えるのみであった。
中野さんは約30分にわたる意見陳述で、「私は西森教授を転倒もさせていないし、ケガを負わせたこともありません」と公訴事実をキッパリと否定。さらに、「私は無実です。ねつ造された罪で74日間も勾留されています。公訴を棄却し、釈放を求めます」という、穏やかな中にも怒りを込めた中野さんの訴えが法廷を圧した。傍聴席から拍手と激励の声が起こった。
さらに中野さんは、「有朋寮廃寮反対闘争は、労働者、市民、学生が連帯し共闘している闘いです。今回の事件は、学内の問題と労働運動、反戦運動が合流して闘われている運動の解体を狙った弾圧事件です。反対運動は暴力で支えられているというキャンペーンづくりです」と「傷害事件」ねつ造の本質を暴き、自らの無実を訴えた。
中野さんと弁護団の追及に追いつめられた宮本検事は、「検察側証人は被害者1名を予定。後は随時」と立証計画をあいまいにして公判を終わらせようとした。すかさず弁護団が「立証計画を小出しにするやり方は手続き違反だ。検察が立証を準備できていない間は、被告人は拘置所にいろということか。それならば検事を国賠で訴える」と激しく追及した。
本間裁判長が、「今後の予定は打ち合わせで」と検察側に助け船を出して密室裁判を進めようとするが、「次回公判で何をやるかは法廷で明らかにすべき」と弁護団はさらに追及を行った。中野さんへの激励とデッチあげ強行への怒りの声が高まる中で、第1回公判は終了した。
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週刊『前進』(2117号4面1)
日本共産党新綱領案を批判する
労働者の解放闘争を削除し資本主義救済の立場を表明
日本共産党の大転向路線に対して、全労連の動揺が深まり、全労連内反対派を始め、不信と疑問の声が噴出している。日本共産党内部は、かつてない大流動の情勢に突入したのである。日本共産党の今回の綱領大改定、すなわち61年綱領(宮本綱領)を基底とする94年改定綱領(不破主導)の全面的変更の問題を軸として、日本共産党批判を圧倒的に強める必要がある。すでに、さまざまな批判論文が出されているが、さらに全力で批判していこう。
社会主義革命を否定し「資本主義の枠内の改革」に純化
今回の改定は「ルールなき資本主義」を「資本主義の枠内の民主的改革」によって「ルールある資本主義」(彼らは「ルールある経済社会」と言う)としていくという、この間の日本共産党の路線を徹底化して、綱領化したものと言える。もちろん、これまでの延長をはるかに飛び越えた内容となっている。
現行綱領は、61年綱領(宮本綱領)を不破主導で94年に大改定したものである。この両者の内容や相互の関係については、『安保・戦争を容認した日本共産党』(川武信夫著 前進社刊)の第四章・第六章で詳しく検討している。
61年綱領は簡単に言えば、戦前のスターリン主義的32テーゼ以来の二段階革命論を戦後的内外情勢の変化に照応させた、人民民主主義革命論をベースとする戦後版二段階革命論である。戦後版と言っても、本質的にスターリン主義の典型的な二段階革命論の性格を持っていた。
これに対して94年改定綱領は、不破のもとでの大改定であり、新綱領と言っていいものであった。その内容は、ソ連スターリン主義崩壊後の情勢にのっかって、スターリン主義的二段階革命論がそもそも内在化させている右翼日和見主義的部分をトコトンまで膨らませて、思い切ってデフォルメ(歪曲・変形)したものだ。
具体的に言えば、94年改定綱領は「資本主義の枠内の民主的改革」という路線を戦略化しようとしたもので、革命の第一段階としての民主主義革命段階と第二段階としての社会主義革命段階との間に、長い一時代(一時期という以上)をおく。そして民主主義革命が行われ、その事業が展開されていく一段階を設定してしまい、社会主義革命なるものははるかかなたに追いやられてしまうものであった。
スターリン的典型的二段階革命論は、第一段階から第二段階へは「直接的転化」とか「連続的移行」とか言って、プロレタリア革命への裏切りをペテン的に隠蔽(いんぺい)しようとする構造をもっていた。
しかしながら、94年改定綱領では、61年綱領のもつ米帝国主義からの独立革命を主内容とする民族民主革命の大枠を大きく完全に取り払うことはできていなかった。だから、スターリン以来の二段階革命論はデフォルメされてもまだ一定残っていたと言える。つまり、プロレタリア革命(社会主義革命)を否定するが、民主主義革命はまだ一定、革命としての体裁(体裁だけで中身は百パーセントの改良主義)は残していた。
さて、今回の改定案の特質は、純形式的には、かすかに、民主主義革命→社会主義的変革〔社会主義・共産主義社会へ〕という展開をあえて残しているが、内容的には革命にあたる内容はほとんどゼロに希薄化してしまっている。
民主主義革命という言葉は皮一枚だけ残っているが、それは副次的な意味で残っているだけで、その実質的内容は、まず変革とされ、続いて改革と言い変えられている。つまり、日本共産党が全力を挙げるのは、「資本主義の枠内の民主的改革」に百パーセント純化されている。
他方、社会主義革命という言葉は綱領的目標を示す言葉としては一切使われていない。社会主義的変革に変えている。しかもそれは、資本主義制度の廃止といった目標は一切言われず、きわめて漸進的な進歩の過程の中で、いつの間にか「生産手段の社会化」が実現されていくといったようなものとされている。
61年綱領にあり、94年改定綱領にもかろうじて残滓(ざんし)を残していた、米帝を主敵とし、日本独占資本をその目下の同盟者として位置づけ、民族独立民主革命を強調するスタンスは一掃され、米帝支配の打倒の内容は、日米関係における従属的関係の打破(真の国家主権の確立)にすり替えられている。これはかなり際だっている。宮本路線からの最後的「脱出」という感じである。
現綱領の行動綱領は、民主的改革の内容のスタティック(静的)な説明に変えられた。さらに、安保について、自衛隊について、天皇制についての改定は、すでに言及されているとおり、不破路線のもとでこの間進めてきた「暫定政権入り」路線を綱領的にも確定するもので、とんでもない内容である。
また、労働者人民の生活と権利のための闘いは、経済民主主義の実現―「ルールなき資本主義」から「ルールある経済社会」へということにすり替えられた。 これは一切が議会での多数の獲得のための闘いに還元されている、ということでもある。
労働者階級の解放闘争と諸要求の闘いをすべて削除へ
日本共産党批判の方向としては、以上のような面のみではなく、次の点を重視する必要がある。すなわち、労働者階級の解放闘争や諸要求の闘いの問題が、ほとんど百パーセント抹殺されていることである。「資本主義の枠内の改革(改良)」に事実上すべて押し込まれてしまい、革命が抹殺されたため、61年綱領やその残りかすを残していた94年改定綱領が、ペテン的ではあれ文言だけは残していた労働者階級の解放闘争という側面が、今回百パーセント削除された。
日本共産党は労働者階級の党というペテン的自己表現すらも今回すべて抹殺しようとしているのだ。この点が決定的なポイントだ。
以下、いくつかの点で、現綱領(94年に全面改定されたが、なお過渡的なものだった綱領)と、新綱領案を比較対照してみよう。この対照によって、日本共産党・不破指導部が、綱領から何を抹殺したがっているのか、どの方向にかじを切ろうとしているのかが、あぶり出されてくる。
「人民の闘争」を一掃
@「労働者階級の国際主義的な責務」「革命運動」「解放闘争」などの考え方が一掃された。
〈現綱領〉
「日本の人民が、唯一の被爆国の国民として、反核・平和のたたかいと自国の解放闘争をおしすすめることは、アジアと世界の平和と社会進歩への重要な貢献となる。また、発達した資本主義国・日本における革命運動の前進が、世界史的な社会進歩の事業にとって、きわめて大きな役割をになうことも、確実である。日本人民の解放闘争を前進・勝利させることは、わが党と労働者階級の日本人民にたいする責務であるとともに、国際的な責務である」
〈新綱領案〉
「平和と進歩をめざす勢力が、それぞれの国でも、また国際的にも、正しい前進と連帯をはかることが重要である。
日本共産党は、労働者階級をはじめ、独立、平和、民主主義、社会進歩のためにたたかう世界のすべての人民と連帯し、人類の進歩のための闘争を支持する」
民主主義革命も変化
A次に、「民主主義革命」の位置づけが、これまでの「社会主義革命への道をきりひらく」とした二段階的なものを取り払い、「資本主義の枠内の民主的改革」として自己完結的なものに変えられた。
〈現綱領〉
「この革命をなしとげること、すなわち、アメリカ帝国主義と日本独占資本を中心とする勢力の反民族的、反人民的な支配を打破し、真の独立と政治・経済・社会の民主主義的変革を達成することは、当面する国民的な苦難を解決し、国民大多数の根本的な利益をまもる道であり、それをつうじてこそ、労働者階級の歴史的使命である社会主義への道をも確実にきりひらくことができる」
〈新綱領案〉
「それら〔引用者注−民主主義革命のこと〕は、資本主義の枠内で可能な民主的改革であるが、日本の独占資本主義と対米従属の体制を代表する勢力から、日本国民の利益を代表する勢力の手に国の権力を移すことによってこそ、その本格的な実現に進むことができる。この民主的改革を達成することは、当面する国民的な苦難を解決し、国民大多数の根本的な利益にこたえる独立・民主・平和の日本に道を開くものである」
労働組合運動を抹消
B労働者階級の低賃金や首切りとの闘いも一掃された。代わって一切が「ルールづくり」に解消されている。
〈現綱領〉
「党は、日米支配層が労働者、農民、勤労市民その他にくわえている搾取と収奪に反対し、低賃金制を打破し、失業者・半失業者には仕事を保障して、人民大衆の生活を根本的に改善するために努力する」
〈新綱領案〉
「労働基本権を全面的に擁護する」
Cとりわけ、次のことは、労働運動、労働組合運動、大衆闘争の抹殺として、決定的な部分である。すなわち現綱領の次の部分が削除され、書き換えられた。
〈現綱領〉
「党は、すべての労働者の団結権、ストライキ権、団体交渉権を確保し、職場の自由と民主主義を確立し、資本主義的合理化、首切り、低賃金、労働強化に反対し、賃金の引き上げ、同一労働同一賃金を要求する。最低賃金制と労働時間の大幅短縮、非人間的な過密労働の規制その他、労働者の生活と権利を保障する労働立法を実現させる」
〈新綱領案〉
「1 『ルールなき資本主義』の現状を打破し、労働者の長時間労働や一方的解雇の規制を含め、ヨーロッパの主要資本主義諸国などの到達点も踏まえつつ、国民の生活と権利を守る『ルールある経済社会』をつくる。
2 大企業にたいする民主的規制を主な手段として、その横暴な経済支配をおさえる。民主的規制を通じて、労働者や消費者、中小企業と地域経済、環境にたいする社会的責任を大企業に果たさせ、国民の生活と権利を守るルールづくりを促進するとともに、つりあいのとれた経済の発展をはかる。経済活動や軍事基地などによる環境破壊と公害に反対し、自然と環境を保護する規制措置を強化する」
団結・国際連帯の否定
D人民の闘い、団結、国際連帯、階級的戦闘性などの言葉が一掃された。「労働者、農漁民、勤労市民の階級的な連携」がなくなり、「国民の共同と団結」として階級的な要素が一掃された。
〈現綱領〉
「日本共産党は、以上の要求の実現をめざし、……たたかうなかで、労働組合、農民組合をはじめとする人民各階層、各分野の大衆的組織を確立し、ひろげ、つよめるとともに、反動的党派とたたかいながら民主党派、民主的な人びととの共同と団結をかため、民族民主統一戦線をつくりあげる」
「党は、すべての民主党派や無党派の勤労者を階級的には兄弟と考えており、これらの人びとにむかって心から団結をよびかけ、そのために力をつくす」
「広範な人民の団結をめざすこの闘争で、党は大衆とかたくむすびつき、その先頭にたって推進的な役割をはたさなければならない。とくに労働者階級を科学的社会主義の思想、反核・平和と主権擁護の国際連帯の精神でたかめ、わが国の民主主義革命と社会主義の事業への確信をかため、その階級的戦闘性と政治的指導力をつよめる。それとともに、農漁民、勤労市民のあいだで党の影響力をひろげ、労働者、農漁民、勤労市民の階級的な連携を確立しなければならない」
〈新綱領案〉
「民主主義的な変革は、労働者、勤労市民、農漁民、中小企業家、知識人、女性、青年、学生など、独立、民主主義、平和、生活向上を求めるすべての人びとを結集した統一戦線によって、実現される〔引用者注―このセンテンスは、一体誰が結集の主体なのか不明〕。統一戦線は、反動的党派とたたかいながら、民主的党派、各分野の諸団体、民主的な人びととの共同と団結をかためることによってつくりあげられ、成長・発展する〔これも同じ〕。日本共産党は、国民的な共同と団結をめざすこの闘争で、先頭にたって推進する役割を果たさなければならない。日本共産党が、高い政治的、理論的な力量と、労働者をはじめ国民諸階層と広く深く結びついた強大な組織力をもって発展することは、統一戦線の発展のための決定的な条件となる」
革命否定した「変革」
E社会主義について。前述したように、これまでは「民主主義革命」が「社会主義的変革への移行の基礎をきりひらく」「労働者階級の権力の確立」となっていたのであるが、そのような要素を完全に一掃した。
〈現綱領〉
「独占資本主義の段階にあるわが国の民主主義革命は、客観的に、それ自体が社会主義的変革への移行の基礎をきりひらくものとなる。党は、情勢と国民の要求におうじ、国民多数の支持のもとに、この革命を資本主義制度の全体的な廃止をめざす社会主義的変革に発展させるために、努力する」
「そのためには、社会主義建設を任務とする労働者階級の権力の確立、大企業の手にある主要な生産手段を社会の手に移す生産手段の社会化、国民生活と日本経済のゆたかな繁栄を保障するために生産力をむだなく効果的に活用する社会主義的計画経済が必要である」
〈新綱領案〉
「日本の社会発展の次の段階では、資本主義を乗り越え、社会主義・共産主義の社会への前進をはかる社会主義的変革が、課題となる。これまでの世界では、資本主義時代の高度な経済的・社会的な達成を踏まえて、社会主義的変革に本格的に取り組んだ経験はなかった。発達した資本主義の国での社会主義・共産主義への前進をめざす取り組みは、二一世紀の新しい世界史的な課題である。
社会主義的変革の中心は、主要な生産手段の所有・管理・運営を社会の手に移す生産手段の社会化である」
今回の新綱領案の中には、労働者階級という言葉そのものが、戦前の記述部分に1回と戦後の記述部分に1回、計2回しか出てこない。それも、労働者階級も他の諸階層も区別がない書き方になっている。本来の意味では1回も出てこないと言ってもいい。
スターリン主義の本質貫く革命の敵対者=日本共産党
「日本共産党はスターリン主義である」という規定さえ破棄すべきところまで日本共産党の社民的改良主義政党化が進んだのではないかとさえ見える。だがやはり次の点で、日本共産党のスターリン主義的凶暴性への階級的警戒心をもつべきである。
第一に、党組織のあり方や規約に「民主集中制」(革命党のプロレタリア的民主主義的中央集権制と似て非なる、スターリン主義的官僚的党支配の論理)をあくまで貫いていること。また、不破は日本共産党という党名を変えず、あくまでこれがマルクスを引き継ぐ道であるかのように強弁して、プロレタリアートをだますことに全力を挙げていこうとしている。
第二に、「市場経済を通じての社会主義」論において、明らかに「一三億」という言い方で、中国スターリン主義を美化している段落があり、この綱領の世界把握上、決定的意味を与えられている。
「今日、重要なことは、資本主義から離脱したいくつかの国ぐにで、政治上・経済上の未解決の問題を残しながらも、『市場経済を通じて社会主義へ』という取り組みなど、社会主義をめざす新しい探求が開始され、人口が一三億を超える大きな地域での発展として、二一世紀の世界史の重要な流れの一つになろうとしていることである」
今回の新綱領案では社会主義は労働者階級の解放闘争として実現されるというエレメント(要素)は一掃され、民主的資本主義の時代の成熟の中で市場経済を通じて社会主義が次第に成立してくるように書かれている。この場合、日本共産党は中国スターリン主義が現在行っているアクロバット的なのりきり策を「市場経済を通じての社会主義」をめざす政策として美化し、中国スターリン主義を国際権威主義的に利用しようとしていることは明らかだ。中国スターリン主義をスターリン主義として規定しない日本共産党のスターリン主義性をしっかり把握しなければならない。
第三に、日本共産党の「資本主義の枠内での民主的改革」、つまり平和で民主的な高度に発達した資本主義の実現という問題の立て方は、体制危機から戦争と革命の危機に直面する資本主義の最後の救済者、帝国主義の最後の番兵として登場しようとしているということである。したがって、前掲の川武同志の著書における次のまとめは現在でも有効である。
「日本共産党は、資本主義の打倒に絶対反対しプロレタリア革命のこころみを断固として粉砕することこそが、資本主義の修正ないし修正資本主義段階の十分な成熟をへての平和的な社会主義への移行、ひいては共産主義社会の実現のために必要なのだという点で、スターリン以来の“一枚岩”の伝統を維持して、あらゆる党内反対派を『分派』として暴力的に一掃して、一致団結してつきすすむのだとしているのである。
まさにこの意味で、今日の日本共産党の路線は、たしかに現象的内容においてきわめて改良主義的かつカウツキー主義的なもので一見ふやけたものであるが、しかし階級闘争の激動的発展のなかで、その果たそうとしている階級的役割は、きわめて悪質でスターリニスト的本質につらぬかれた組織された反革命であり、しかも権力と一体化することをまるでなんとも感じない感性をもつ反革命であり、武装反革命であることを断じて見失ってはならないのである。
すなわち、日本共産党はたんに社民化の道を歩んでいるものでは断じてないのだ。日本共産党はスターリン主義の歴史的破産の時代に、究極的に変貌(へんぼう)しデフォルメ(歪曲・変形)しつつ延命しようとするスターリン主義の党である。まさに革命の敵そのものである」
真のプロレタリア革命へのすさまじい反革命として働く日本共産党ということである。スターリン主義・日本共産党を徹底的に批判・解体し、革命的共産主義の労働者党を建設せよ。
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週刊『前進』(2117号4面2)
追悼 渡辺喜美江さん 戦闘的で正義性あふれる姿
全学連北富士現地闘争本部
北富士忍草(しぼくさ)母の会会長の渡辺喜美江さんが、7月28日に逝去された。全学連北富士現地闘争本部は、北富士闘争を牽引(けんいん)しぬいてきた渡辺会長の逝去に、心から哀悼の意を表します。
北富士の闘いにおいては、ゲリラ(実弾演習阻止闘争)、入会小屋座り込み、国会闘争、裁判闘争、常に闘いの中心に、かすりのモンペとスゲ笠の渡辺会長がいました。その戦闘的で正義性あふれる姿は闘う人民を鼓舞してやみませんでした。富士を愛し平和を求め、全学連を愛し、権力と真っ向対決した渡辺会長はもういません。30年をこえる歳月を、会長さんに導かれ、会長さんとともに闘ってきた全学連北富士現闘にとって、反戦・反基地闘争の最強の闘士を失ったことは残念でなりません。
私たちは深い悲しみをのりこえ、梨ケ原国有入会地守る会と忍草母の会との血盟をさらにうち固めて、渡辺会長の遺志を引き継いで北富士闘争勝利へ邁進することを固く誓います。
渡辺さんは1960年の北富士忍草母の会結成以来、母の会会長として生涯を全うしました。47勇士の一人である夫故八雄氏の理解と家族の協力に支えられて、持てる力を遺憾なく発揮しました。渡辺会長が担った梨ケ原入会地奪還・北富士演習場撤去の闘いは階級闘争の歴史に燦然(さんぜん)と輝いています。
渡辺さんの43年間は激闘に次ぐ激闘でした。たこつぼゲリラ、木登りゲリラ、入会地死守・無断使用弾劾を掲げ演習場を縦横無尽に駆けめぐる創意あふれる演習阻止闘争が展開されました。演習場のど真ん中に建てた第1の小屋座り込みを、連日の自衛隊・米軍の排除攻撃との激闘をとおしてもぎり取り、ベトナム人民と連帯して、厳寒の冬、雪の日、雨の日、嵐の日、1日として休むことなく67年8月から70年10月まで3年3カ月、米軍演習を阻止しました。渡辺会長はこの闘いで指導性と戦闘性を発揮し、北富士闘争の基礎を築きあげました。
85年の桧丸尾決戦は、全学連にとって忘れられない闘いとなりました。1955年の村を挙げての歴史的大闘争でかちとった桧丸尾を忍草農民から強奪しようとする小屋撤去攻撃との全面対決でした。渡辺会長は、機動隊、県職員3000人の包囲する中で、砦に立てこもって仮処分執行官を舌鋒鋭く弾劾し、敢然と闘いぬきました。全学連3戦士も母の会、入会組合とともに逮捕を恐れず砦死守戦を闘い抜きました。
渡辺会長は執拗(しつよう)にくり返された権力の闘争破壊攻撃に対して、「入会権を金で売るわけには行かない」と原則性と戦闘性を発揮して一蹴し、北富士闘争の偉大な地平を守りぬきました。
「あらゆるゲリラをやってきた」「全国行かないところはない」と語った渡辺会長は、三里塚、沖縄、関西、闘う女性、労働者、学生との交流を深めてきた。私たちは全学連大会で、大学講演で勇気をいただいた。渡辺会長が貫いた入会権死守の闘いは今、三里塚で、沖縄で、闘いの武器として引き継がれています。
世界史は第3次帝国主義世界戦争の過程に突入した。世界戦争か世界革命かの激動情勢が訪れている。今こそ悪の元凶である帝国主義を打倒し、全人類の未来を切り開かなければならない。「国際的内乱」を担う戦闘的労働運動の防衛と発展が求められている。全学連北富士現闘はその一環を断固闘う決意です。
今秋イラクへの自衛隊派兵を絶対阻止し、北朝鮮侵略戦争策動を粉砕する。「富士を朝鮮・中東につなぐな」「富士を平和の山に」の会長さんの教えを実践します。
会長さん、どうか私たちを見守っていてください。
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週刊『前進』(2117号4面3)
8月26日〜9月2日
在日米軍にSM3搭載イージス艦 与党連立合意に改憲投票法
●ブッシュ「撤退はありえない」 ブッシュ米大統領がミズーリ州セントルイスでの演説でイラク情勢について「テロに直面して撤退すれば、さらに激しい攻撃を招くだけだ。撤退はあり得ない」と述べ、約14万人の駐留米軍の展開を強調した。(26日)
●北京で6者協議 北朝鮮の核開発問題をめぐる北朝鮮・米国・韓国・中国・ロシア・日本の6者協議が、北京で行われた。対話を継続することなどを盛り込んだ6項目の「共通認識」をまとめて29日に閉会した。(27日)
●パスポートに顔識別情報 日本政府は、顔の骨格などの生体情報(バイオメトリクス)を電子化してパスポート(旅券)に埋め込み、出入国審査の際の本人確認に用いる方針を固めた。来年度中に国家公務員の公用旅券の一部に導入、成田空港などの入国審査ブースにカメラつきの機器を設けて照合作業を試行するという。(27日)
●石破「民間防衛の法整備必要」 石破防衛庁長官はイスラエルのシャローム外相との会談で、「民間防衛について法整備していく必要がある」「防護マスクやシェルター(の整備)も含めて検討していくことが(テロの)抑止にもつながる。イスラエルの経験からも学んでいきたい」と語った。(27日)
●イラク民間人死者数の非公開を指示 イラク侵略戦争中の民間人死者数を集計しているイラク保健省に対し、イラクを占領統治する米国主導の連合軍暫定当局(CPA)が最終集計結果を公表しないよう指示していたことが明らかになった。米軍への批判が噴出することを懸念しての圧力とみられる。(27日)
●山崎「連立合意に国民投票法」 自民党の山崎幹事長は、与党3党幹事長の会談で、改憲案とりまとめに関連し「国民投票法制定は与党3党の問題なので、新しい政権がスタートする時の協議事項にしよう」と述べ、9月の総裁選で選出されたあと、与党3党の連立体制を確認する際の合意に盛り込むよう提唱した。(28日)
●ミサイル防衛まず首都圏 防衛庁は04年度予算の概算要求を発表した。総額4兆9600億円(前年度比0・7%増)で、弾道ミサイルを迎撃するミサイル防衛では、契約額で1423億円を計上。米国が独自開発した地対空誘導弾パトリオットPAC3を首都圏に配備するとともに、海上配備型のSM3をイージス艦1隻に搭載する。また、軽空母に匹敵する新しいヘリ搭載大型護衛艦も導入する。(29日)
●「逃げるな」とアーミテージ イラクへの自衛隊派兵問題で、アーミテージ米国務副長官が中東担当特使の有馬政府代表に対し、「(日本政府は)逃げるな。お茶会への出席じゃない」などと述べていたことが明らかになった。(30日)
●韓国紙「在韓米軍、パトリオット増強」
在韓米軍が、近く追加配備する地対空ミサイル「パトリオット」部隊を既存の部隊と合わせ、来年上半期にも新たな防空旅団の創設を検討していると韓国の東亜日報が報道した。(1日)
●日本に米イージス艦 米軍が04年から予定しているミサイル防衛配備に合わせて、在日米海軍基地に迎撃ミサイル(SM3)を搭載した米海軍のイージス艦の配備を検討していることが明らかになった。(1日)
●自衛隊に統合部隊 防衛庁は、陸上、海上、航空3自衛隊が個別に保有している通信や衛星、補給などを担当する部隊をひとつにまとめた「統合部隊」を新設する方針を固めた。石破防衛庁長官が明らかにした。3自衛隊以外の部隊が創設されれば、1954年の自衛隊発足以来初めて。また、3自衛隊を一括して指揮統制する「統合幕僚長」と「統合幕僚組織」の新設も決めた。05年の通常国会で法改定したいという。(2日)
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週刊『前進』(2117号5面1)
国際連帯の発展で世界革命へ イラク派兵阻止の大運動をキャンパスから作りだそう
全学連大会に向けて訴える
マルクス主義学生同盟中核派
はじめに
全国の学友諸君に、9・13〜15全学連大会(東京都内)への大結集を訴える。
この秋、イラクへの自衛隊侵略派兵を絶対に阻止しよう。日本帝国主義が、ついに戦後的制約を激しく蹴破って、1千人の大部隊をイラクに派兵し、強盗戦争に参戦しようとしている。日帝はさらに、イラク侵略派兵から北朝鮮侵略戦争への参戦に踏み切ろうとしている。自国帝国主義の強盗戦争への突入との歴史的決戦が始まっているのだ。
この日帝の強盗戦争への参戦と日帝・奥田ビジョンによる大攻撃をめぐって、帝国主義と労働者階級との一大激突は不可避だ。しかも日帝・小泉は、9月自民党総裁選での再選をバネに、イラク侵略派兵、奥田ビジョン貫徹の攻撃、改憲攻撃など、すべての反動攻撃を一挙に加速させようとしている。秋の総選挙はその最大の焦点である。これに対して、「小泉・自民党か民主党か」などという反動的な枠組みをぶち破って、11月労働者集会の大結集で労働者階級の階級的態度を鮮明に示そう。
今こそ、全国学生は行動に立つときだ。この秋、学生が先頭に立って9・27−10・25に数千・数万人のイラク侵略派兵反対の大デモを全国主要都市で実現しよう。労働者階級の決起で自衛隊を包囲し、イラク侵略派兵を阻止しよう。何よりキャンパスで巨大な大衆運動を爆発させ、学生運動の本格的で大規模な登場をかちとろう。このことを不退転の決意で実現しよう。今次全学連大会の任務は、ここにある。
全学連は03年前半戦で大きな役割を果たしてきた。ワールドアクション型の大衆運動は、労働者階級の全世界的なうねりをとらえ、促進し、イラク反戦とともに北朝鮮侵略戦争阻止を掲げた革命的大衆行動として、03年前半の日本階級闘争を牽引(けんいん)してきた。それは、学生を中心としながら、青年労働者・学生・高校生の広範な層を主体とした大衆行動であり、学生運動の本格的な登場の始まりなのだ。
03年後半戦で求められていることは、この開始された大衆運動をもっと大規模に大胆に発展させることだ。とりわけキャンパスにおける大衆運動を爆発させることだ。キャンパスでも始まっている大きなうねりを丸ごとつかんで、学生運動の大爆発をかちとろう。
帝国主義との歴史的な階級決戦の始まり
今秋決戦の爆発を切り開くために必要なことは、大衆闘争の大爆発が主体的にも客体的にも不可避であり、まったく可能なのだということへの圧倒的な確信である。そのことを6点にわたって述べたい。
第一に、03年前半戦における大衆闘争の空前の高揚とその後の苦闘の過程を、歴史的階級決戦の始まりという階級的認識を土台に総括することだ。
イラク戦争と有事立法をとめられなかったことは本当に悔しい。多くの学友がこう思っている。そして真剣にどうしてとめられなかったのかということにこだわっている。この思いをわれわれはしっかりと受けとめ、しかし決戦はまだ始まったばかりだと戦闘的に回答していくことである。
一つは、イラク侵略戦争の強行や、有事立法・イラク侵略派兵法・労働法制改悪などの反動法案の強行は、労働者人民の闘いを圧殺した上で行われたものではまったくないということだ。とりわけ有事立法は、その北朝鮮侵略戦争法案としての本質を覆い隠し、ペテンを使って成立させたのであって、労働者人民に向かって正面から勝負して小泉が勝ったのではない。
二つは、追いつめられているのは、イラク侵略戦争を強行した側のブッシュやブレアや小泉、つまり帝国主義の側であるということだ。イラク軍事占領はむしろアメリカ帝国主義を「第2のベトナム」情勢に引きずり込んでいる。大量破壊兵器問題でも追いつめられている。
三つには、03年前半戦の中で、大衆運動は大きく前進し、戦後的な運動の崩壊・瓦解(がかい)に代わって、新たな闘う陣形が構築されてきていることだ。
民主党・連合の全面賛成や共産党・全労連の運動圧殺、3・20イラク戦争をめぐる統一戦線の分岐などの中で、陸海空港湾労組20団体が、労働運動の新たな結集軸となって、有事立法闘争を牽引した。そして、新たな潮流運動を代表する動労千葉が3・27〜30ストに立ち上がり、アメリカの戦闘的労働組合との交流と国際連帯をかちとった。これを突破口に米日韓の戦闘的労働運動の感動的な合流が開始されている。さらに日共・全労連傘下の青年労働者の大量の反乱とともに、青年・学生層の決起のうねりが大きく始まっている。連合傘下の自治労大会で「21世紀宣言」が否決されるという歴史的勝利は、89年連合結成以来の反動体制を突き崩す事態だ。闘いは始まったばかりであり、本格的な階級決戦の爆発はまさにこれからなのだ。
第二に、いま開始されている決戦は、史上3度目の帝国主義強盗戦争の開始をめぐる世界史的な決戦であり、世界戦争か世界革命かの決着以外にない10年20年単位の歴史的な大決戦であるということだ。
米帝のイラク侵略戦争−世界戦争計画発動への全面的踏み切りは、帝国主義の強大さを示すものではまったくない。それどころか、この戦争は、帝国主義・資本主義の没落と歴史的限界性を突き出すものであり、ついに労働者階級が帝国主義を現実的に打倒していく過程が始まったということなのだ。
今やイラク・中東の新植民地主義体制の全面的崩壊、北朝鮮・中国の残存スターリン主義の体制崩壊の危機が、帝国主義の世界支配の重大な破綻(はたん)点となり、それらの転覆・解体・取り込みをめぐって帝国主義同士の分裂と抗争が強盗戦争として激発している。戦後世界体制という帝国主義の延命のための体制が行き詰まり、その全面的崩壊の中で、ついに帝国主義の基本矛盾が大爆発を開始したのだ。
しかも、このことは、資本の価値増殖を原動力とし、一握りの資本家階級による労働者階級の搾取を存立条件とする資本主義社会が、有限であり、歴史的限界をもった社会であるということを突き出しているのだ。その最高の発展段階である帝国主義、しかもその最末期の腐りきった帝国主義が断末魔のあがきに突入したのだ。人類の階級闘争に歴史的な決着をつける決戦であり、そうした決戦がついに始まったのだ。
だから、戦争とは何か、戦争に反対するとは何かという問題を戦後的な反戦意識の枠内にとどめてはならない。帝国主義の問題、帝国主義打倒の問題として階級的にはっきりさせていくことが必要なのだ。
第三に、自国帝国主義=日本帝国主義がついに本格的に強盗戦争に参戦するという大攻撃に対して、労働者階級の怒りの大爆発は不可避ということだ。
日本帝国主義は、91年1・17イラク侵略戦争以降の争闘戦重圧とバブル崩壊以降の恐慌重圧にのたうち回り、それへの対応策も破産に次ぐ破産を遂げてきた。その絶望的な危機の中から、ついに日帝は帝国主義強盗戦争への本格的な参戦を決断した。それが小泉反革命の登場であり、奥田ビジョン路線である。それは戦後体制を暴力的に打破し、内に向かっては階級戦争を強行し、外に向かっての侵略戦争にうって出るということだ。
だが、このような本格的な攻撃はまだ開始されたばかりであり、しかも戦後体制の破壊は、米帝との関係でも、アジア人民との関係でも、沖縄人民との関係でも、労働者階級との関係でも、矛盾とあつれきの爆発を不可避としている。そして、その一切は、帝国主義と労働者階級の本格的な激突を招来してしまうのだ。だから帝国主義の側は、階級決戦の爆発に恐怖しながら、ファシスト的に「改革」を叫ぶ連中を次々と登用し、労働者階級をペテンにかけながら、戦後体制の右からの破壊を強行しようとしているのだ。
この歴史的な決戦は、1920年代から30年代の歴史からも明らかなように、10年20年がかりの決戦の過程である。そこで労働者階級の団結と闘いが壊滅的に敗北するのか、逆に戦後的な限界を突き破って、帝国主義と対決する階級的な労働運動が強固に形成されていくのかで勝負が決せられていくのである。
労働者階級の闘いのうねり
第四に、始まっている労働者階級の闘いのうねりを歴史的根底的にとらえることである。
帝国主義とスターリン主義の反動体制のもとで長きにわたって抑え込まれてきた国際プロレタリアートの闘いが、反動体制の崩壊と世界戦争の始まりの中で、歴史的に登場してきた。それが01年9・11のムスリム人民による反米ゲリラ戦争の爆発であり、03年前半におけるイラク反戦の国際統一行動、日米韓の労働組合の国際連帯の形成、動労千葉のストライキ、20労組陣形の闘いの前進である。
この労働者階級の巨大なうねりは、確実に帝国主義との全面的な対決へと発展し、ついにはブルジョア国家を粉砕し、自ら権力をとって、新しい社会を建設するところまで行きつかざるをえない。断末魔の危機にあえぎ凶暴化する帝国主義を打倒して、新しい社会を建設する革命の主体が再び世界史の中心に登場してきたのである。
労働者階級のうねりがイラク侵略派兵と激突することは不可避である。帝国主義は戦後的な譲歩を取り戻そうと、労働者階級がかちとってきた戦後的な陣地をどんどん奪いとろうと大攻撃をしかけている。しかし、それは同時に、労働者階級の側が、戦後的な陣形に代わる、帝国主義との対決をとことんやりぬく新たな闘いの陣形の形成を進めている過程でもある。帝国主義の攻撃と対決できず、屈服し破産しているのは、スターリン主義や社会民主主義、その亜流の勢力と運動であり、ファシスト集団カクマルとJR総連である。それに対して、全世界的に労働運動における新たな潮流が台頭し、それが次第にスターリン主義や社会民主主義の支配をうち破り、労働者階級のうねりを公然化させているのだ。
第五に、だから今こそ、スターリン主義批判、日共批判を徹底的に行い、あらためて労働者階級自身の力で、帝国主義を打倒し、社会主義社会をつくりあげていくのだということをはっきりさせることが決定的だ。
第六に、労働者階級の巨大なうねりとともに、キャンパスでも学生大衆の巨大なうねりが始まっているということだ。このうねりをつかんで、キャンパスにおける大衆行動の大爆発を実現していくのだ。
03年前半戦は、クラス討論と扇動の変革をもって、キャンパスの闘いを大きく前進させてきた。
一つは、われわれのクラス討論は大衆運動であり、大衆自身が主体である。討論を組織すること、そこで大衆が次々と発言することが重要だ。その中で、全体が前に進んでいくようにクラス討論の政策、扇動の内容を練り上げていこう。
二つに、開始された戦争の階級的性格を全面的に暴露し、帝国主義に対する階級的怒りを組織する扇動とともに、大学の講義などで振りまかれるブルジョア・イデオロギーを対象化し、粉砕する闘いを推し進めることである。
三つに、今日の学生が直面している就職難の現実である。大企業への就職希望者約50万人のうち採用されるのはわずかに5万人、さらに中小企業にも採用されず、20万人近い学生が「卒業はしたが仕事がない」という現実である。この重圧の前に、多くの学生が早くから「就職活動」に取り組まざるをえないという事態を強いられている。
この学生に対する資本攻勢ともいうべき攻撃との闘いが、学生運動の本格的な爆発にとって重要なテーマになっているのだ。
四つに、国立大法人化による大学そのものを変貌(へんぼう)させる攻撃との闘いである。
イラク人民と連帯し10・25国際反戦闘争へ
今秋決戦の第一の方針は、自衛隊のイラク侵略派兵阻止を掲げた数千・数万人の大デモを全国主要都市で学生が先頭で実現することだ。9・27をうちぬき、10・25国際反戦統一行動の大爆発をかちとることだ。さらに11月、12月と、この大衆行動のうねりをどんどん拡大していくことだ。そして数万・数十万人の労働者階級の決起で自衛隊を包囲し、日帝・小泉政権を揺さぶり、侵略派兵を阻止していくのだ。
同時に、全国各地で自衛隊・自衛隊基地への直接行動を展開しよう。本当に侵略派兵を阻止するためには、自衛隊兵士を労働者階級の隊列に獲得することが絶対に必要だ。動揺し苦悩する自衛官とその家族への働きかけを強め、ともに闘う仲間として獲得しよう。
イラク情勢は、完全に泥沼へ突入している。8・19バグダッド国連現地本部に対する爆破戦闘につづく8・29ナジャフでの爆破戦闘は、米帝のイラク侵略戦争と再植民地化の軍事占領に対する激しい怒りを込めた、特殊的極限的な民族解放闘争の爆発である。「イラク復興」と称して行われていることは、帝国主義による民族自決の否定であり、石油資源の略奪であり、イラク人民に対する無差別の発砲と虐殺である。国連はその先兵となってきたのだ。そしてイスラムの親米派も、この帝国主義の過酷な軍事占領に屈服し、「イラクのことはイラク人自身に決めさせろ」という当たり前の要求に敵対している。8・29戦闘は、こうした現実に対する、闘うイラク人民・イスラム諸国人民のやむにやまれぬ怒りの決起だ。
米帝は、ますますイラク侵略戦争の泥沼化と凶暴化に突っ込んでいく以外にない。さらにパレスチナ人民、アフガニスタン人民の不屈の決起が、米帝の中東政策・中央アジア政策を歴史的な破綻へと追い込んでいる。こうした中で米帝足下における労働者階級の怒りの決起が03年前半をはるかにこえて大爆発することは不可避だ。
そして日帝は、どんなことがあろうと自衛隊1千人の大部隊をイラクに派兵し、イラク・中東の石油権益と支配権のぶんどり合いをかけた強盗戦争に参戦しようとしている。この秋、この日帝の強盗戦争への本格的な突入に対して、日本の労働者階級が怒りを爆発させることは不可避だ。このことを圧倒的に確信して、イラク侵略派兵阻止の大デモを絶対につくりだそう。これと一体で、臨時国会でのアフガニスタン特措法の延長を阻止しよう。
米日帝の北朝鮮侵略戦争を阻止しよう!
第二は、米日帝国主義の北朝鮮侵略戦争阻止・有事立法粉砕の闘いをイラク反戦と結合した一大大衆闘争として大爆発させていくことだ。イラク侵略派兵阻止闘争を大爆発させて、20労組陣形の「有事法制を完成させない、発動させない、従わない」の闘いと合流しよう。そして闘う在日朝鮮人民との連帯をかちとり、日帝の北朝鮮侵略戦争参戦阻止の歴史的大闘争へと発展させていこう。
重大なことは、米帝が北朝鮮侵略戦争発動への動きを加速させていることだ。8月27日から行われた6カ国協議は、米帝が北朝鮮情勢のヘゲモニーを握り、IAEA(国際原子力機関)ではなく米帝主導の査察による「検証可能で不可逆的な核開発の放棄」を北朝鮮スターリン主義に突きつけ、自己の最も都合のよいタイミングと口実で侵略戦争を発動しようとするものだ。
そして日帝は、この米帝の北朝鮮侵略戦争政策にしがみつきつつ、拉致問題を使った北朝鮮排外主義の扇動、万景峰(マンギョンボン)号に対する入港規制などを展開し、日帝自身の強盗戦争として北朝鮮侵略戦争を遂行しようとしている。しかも米日帝は、11カ国の参加で9月下旬にオーストラリア沖で対北朝鮮の臨検演習を行い、北朝鮮への戦争重圧をいっそう強めようとしている。
北朝鮮侵略戦争発動を許すのか阻止するのか、これからがますます大決戦だ。とりわけ来年通常国会での国民保護法制の制定を絶対に阻止することだ。国民保護法制は、日帝の北朝鮮侵略戦争法案であり、労働者階級人民を国家権力が支配・統制し、侵略戦争への政治的・軍事的動員を遂行するための戦争法案だ。この階級的暴露を核心にすえて、この秋から猛然と闘いを開始しよう。
さらに、日帝が通常国会での制定を策動している「海外派兵恒久法」阻止の闘いを今秋イラク派兵阻止闘争の大行動と結合して闘いぬこう。
第三は、沖縄・名護新基地建設阻止の現地闘争に全国から決起することだ。派遣団・調査団を名護に派遣しよう。
名護市辺野古沖での環境アセスメントの開始、63カ所ものボーリング調査は事実上の巨大新基地建設の着工だ。沖縄を北朝鮮侵略戦争、中国侵略戦争の出撃基地とし、日米安保の矛盾と犠牲を沖縄に差別的に集中する日帝に対して、沖縄人民の怒りの新たな大爆発は不可避だ。沖縄人民と連帯し、名護新基地建設を絶対に阻止しよう。
第四は、教育基本法改悪案の来年通常国会上程阻止の大闘争を全学連が先頭に立って切り開いていくことである。教育労働者とともに今秋から猛然と闘いを展開しよう。
さらに、小泉が05年改憲案策定を指示し、来年中にも「憲法改正国民投票法案」を制定するとぶちあげている。改憲阻止決戦もいよいよ重大な局面に突入した。イラク反戦闘争、北朝鮮侵略戦争阻止闘争を大爆発させ、日帝の改憲攻撃を粉砕しよう。
第五は、今秋臨時国会での共謀罪新設攻撃を大衆闘争の爆発の力で阻止することだ。国労5・27臨大闘争弾圧、東北大有朋寮闘争弾圧、九州大学学生自治会への治安弾圧を粉砕しよう。
第六は、法政大決戦と有朋寮廃寮阻止決戦に絶対勝利することだ。大衆闘争の大爆発は不可避であり、その力で国家権力と大学当局の結託した大攻撃をはね返そう。そして、国立大法人化をめぐる全国的陣形と大闘争をつくりだそう。
全国学友は全学連大会に結集し、ともに学生運動の本格的爆発をかちとろう。
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週刊『前進』(2117号5面2)
第5部 アジア・太平洋侵略戦争(3) インドネシアへの侵略
強制徴用による酷使と虐殺
石油略奪が目的
日帝の東南アジアに対する侵略戦争は、42年1月のマニラ占領、2月のシンガポール攻略を経てインドネシアにも及んでいった。3月1日、日本軍5万人の部隊がジャワ島に上陸し、9日にはオランダ軍を降伏させ、全島を占領した。
17世紀初頭以来、インドネシア人民はオランダの植民地支配の圧政に苦しめられていた。一方、日本軍も「白人支配からの解放」を掲げ、オランダが禁止していた「インドネシア・ラヤ」(後の国歌)を流布するなど、解放軍のように振る舞った。
しかし、その最大の目的は石油を始めとする地下資源の略奪にあった。中国侵略戦争が泥沼化する中で日帝と米英との対立は決定的に激化していた。41年8月、米帝は対日石油輸出禁止を宣言。石油や鉄の輸入を米帝に大幅に依存していた日帝は「米(A)、英(B)、中(C)、蘭(D)によるABCD包囲網が日本を苦しめている」と宣伝し、危機突破のために東南アジア侵略に突進していったのである。
開戦に先立ち、大本営政府連絡会議は「南方占領地行政実施要領」を決定(11月20日)、「占領地に対しては差し当り軍政を実施し、治安の恢復(かいふく)、重要国防資源の急速獲得及び作戦軍の自活確保に資す」ことを基本方針とした。そして「国防資源取得と占領軍の現地自活の為、民生に及ぼさざるを得ざる重圧はこれを忍ばしめ」るとした。日帝の東南アジア侵略の目的は資源の略奪であった。日帝は侵略部隊に必要な物資は現地調達するとして、一切の犠牲を占領地人民に押しつけた。
「大東亜共栄圏」を叫んで行われたこの戦争は、アジア人民を虐殺し、領土・資源を略奪した帝国主義侵略戦争以外の何ものでもない。日帝はそれを米英仏蘭帝が先行していた東南アジア植民地支配に対する植民地再分割戦争として遂行したのである。
軍政支配の破産
日本軍はインドネシアを3分割し、ジャワ島を第16軍、スマトラ島とマレー半島を第25軍、それ以外のボルネオ島などを海軍が占領し、軍政を敷いた。
しかし、インドネシア人民はオランダ植民地支配に対する闘いを通じて独立の希望を燃やし続けていた。これに対し日本軍は、集会・結社・言論を禁圧し、政党・労組を解散させ、独立運動を弾圧した。「インドネシア・ラヤ」や「メラ・プティ」(後のインドネシア国旗)を禁止、逆に「宮城遥拝(ようはい)」の強制など天皇制の押しつけに躍起となった。
日帝は産油国であるインドネシアを重視し、兵站(へいたん)基地にしようとした。そして軍政への協力を取り付けるためにさまざまな運動を作ったが、どれも失敗した。その最初が「アジアの光、日本。アジアの守り、日本。アジアの指導者、日本」をスローガンにした3A運動(対日協力運動)である。軍政当局に配属された大宅壮一ら文化人が先頭に立ち、「大東亜共栄圏」の思想を宣伝したが、これは数カ月で消滅した。
43年3月にプートラ(民衆総力結集運動)が始められた。「軍政施策の住民への徹底、軍政への協力・宣伝、物資労務の供出推進」を目的とし、インドネシア人民の「自治組織」とされた。これを推進するためにスカルノやハッタなど民族運動指導者をリーダーとして担ぎ出した。しかし、スカルノらはこの運動を利用してインドネシア民族主義の高揚を図った。日本軍はそれを許さず介入を強め、1年後には解散させた。
その頃、日本軍は42年6月のミッドウェー海戦での敗退を皮切りに、43年2月、ガダルカナル島が陥落、マーシャル諸島への米軍上陸(11月)など戦局は悪化の一途をたどった。
この中で日帝は44年3月、「戦時体制の強化推進、聖戦完遂」を掲げてジャワ奉公会を作った。文字どおりのジャワ版大政翼賛会だ。このもとで隣組、青年団、警防団などを使って労務や物資・食糧の強制供出へと駆り立てた。
ロームシャ虐待
とりわけ石油などの資源開発・工事への労働力供出のための強制徴用が組織的かつ大規模に行われた。その数は410万人にものぼった。彼らは日本軍や日本企業によって炎天下での長時間労働を強いられ、食事もろくに与えられなかった。過労や栄養失調で倒れても、治療されず、逆に殴られ、そのまま放置されて死んでいく者が絶えなかった。「ロームシャ」という日本語は、日帝の残虐な仕打ちを記憶にとどめる言葉として残っている。
また、日本軍への直接的な労働力供出として兵補(日本軍に組み込まれた補助兵)が組織された。43年4月から日帝敗戦まで4〜5万人にのぼる兵補が、雑役や炊事から軍事工事に従事させられ、さらには前線へ送られ、犠牲を強いられた。
また、拉致、監禁、強姦が横行し、軍隊慰安婦とされた女性も多数存在した。
一方、日本軍は米の供出制度を強化し、収穫量の10〜30%の供出を強制した。奉仕動員や労務者徴用などにより、農村人口と農業生産は年々は減少した。日本軍の軍政下、農村は疲弊し、農民は極度に貧窮化し、餓死者が続出した。
こうした中で、日本軍に対する農民の不満と怒りが高まり、ついに44年2月、西部ジャワの農村におけるシンガパルナ事件が爆発する。2500人余の農民がヤリや刀で武装して抗日反乱に蜂起した。この闘いは日本軍によって鎮圧されたが、その後も各地で労務者の徴用、食糧供出の強制、政治活動の禁止などに反対する闘いが続いた。
44年7月、本土防衛の最重要基地とされたサイパン島が陥落。日帝の敗戦が決定的となる中で、東条英機が首相を辞任。代わって小磯国昭が就任した。小磯は同年9月、インドネシアにも独立を許容するという声明を出し、懐柔を図った。
しかし逆にインドネシア人民は、義勇軍に組織されていた青年などを中心に、独立への気運を高めていく。45年2月、東部ジャワなどで即時独立を呼びかけて日本軍への反乱が開始され、それを契機にインドネシア各地で独立に向けた闘いは押しとどめがたいものとなっていった。
そして日帝敗戦後の8月17日、インドネシア人民は独立を宣言したのである。 (五十嵐茂生)
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週刊『前進』(2117号6面1)
社会保障の解体に反撃を 〈生きる権利〉は譲り渡せぬ
福祉を国家的に保障できぬ帝国主義は打倒されるべき
労働者階級を襲う賃下げ・首切りのあらしの中で、社会保障制度の解体をめぐる攻防は、階級闘争の重大なテーマに浮上した。小泉政権による社会保障制度の切り捨ては、膨大な高齢者・労働者をぎりぎり生存できるかどうかという状態にまでたたき込んでいる。だが、それに対する怒りは必ず噴出する。大阪府東大阪市では、食うや食わずの状態に追いつめられた人びとが新たな団結を形成し、行政交渉に立ち上がり、生きる権利を実現するための主体的決起を開始した。その要求を貫くために、さかぐち克己氏を東大阪市議会に送り出そうと闘い抜いている。東京都杉並区や、大阪府高槻市でも、高齢者を中心に介護と福祉を権利として闘い取るための運動が粘り強く展開されている。これらの地域で始まった先進的な闘いには、労働者階級全体にかかわる普遍的なテーマがはらまれている。
全世界で労働者階級の重大な攻防課題に
年金や医療、失業給付、介護、保育、住宅などをめぐる闘いは、世界の労働者階級に共通する重大な課題になっている。
今春、フランスでは年金改悪と公共部門の民営化に反対してゼネストが打ち抜かれた。スペインの労働者は、昨年6月、失業給付の大幅削減案をゼネストで迎え撃った。イギリスでも、公的年金の大幅縮減で生涯賃金を極端に減らされた労働者の怒りが、公共部門の民営化への怒りとあいまって燃え広がっている。アメリカでも、ブッシュ政権による医療給付の削減に、労働者の憤激は抑えきれないところにまで高まっている。全世界を覆ったイラク反戦闘争の背後には、資本攻勢と社会保障解体に対する労働者階級の持続的で根源的な決起があったのだ。
深まる一方の大恐慌情勢のただ中で、帝国主義各国は首切りと賃下げの資本攻勢とともに、社会保障制度の解体へと激しくのめり込みつつある。それは、資本主義・帝国主義が労働者階級の生存を保障しえなくなったということだ。
社会保障制度は、1930年代、大恐慌下の帝国主義の危機の中で、労働者階級が流血の闘いをとおしてもぎりとった権利である。帝国主義にとっては、それは労働者階級の闘いがプロレタリア世界革命へと発展することを押しとどめ、体制の秩序を回復する予防反革命の一環だった。
しかし、社会保障制度は今や帝国主義にとって決定的なくびきとなった。体制的危機を深める帝国主義は、一方で社会保障を解体してむき出しの搾取と抑圧を貫くほかなく、他方において残虐きわまる侵略戦争・植民地強奪戦争を展開するほかになくなった。30年代、「福祉国家」政策を他の帝国主義諸国に先駆けて形成した米・英は、イラク侵略戦争への突進で世界戦争情勢を推し進め、社会保障解体という点においても最も凶暴な姿をあらわにしている。他の帝国主義諸国もまた、同様の道を突き進む以外に選択の余地を失った。帝国主義は、世界革命を押しとどめる留め金を、自らの手で外そうとしているのだ。
人民に犠牲転嫁する奥田ビジョンの未来
日本帝国主義もまた、戦争と大失業、社会保障制度解体へとのめり込む以外にない。その基本プランが、日本経団連の「奥田ビジョン」である。
それは、日帝が陥った絶望的危機の産物だ。日本経団連は奥田ビジョンで、危機の突破をかけた全面的な社会改造計画を打ち出した。そこには、労働者人民をわずかでも幻惑させるような「明るい未来」像は何もない。徹底した搾取と収奪、低賃金と貧困、団結破壊、さらには死の強制が労働者人民に提示されていることのすべてである。
だが、労働者階級が帝国主義とともに絶望を共有すべき理由など何もない。奥田ビジョンは、資本主義・帝国主義の命脈が尽き果て、打倒されるべき命運にあることの告白だ。
奥田ビジョンは、その冒頭で消費税率の18%への引き上げを激しい調子で唱えている。しかも、消費税率18%というのは、年金や医療給付などを徹底して抑え込んだ上での数字だ。日本経団連は、“社会保障給付を厳しく抑制しなければ消費税率は28%まで引き上げなければならなくなる”と労働者人民を脅している。
こんな大増税が強行されたら、労働者の生活は成り立たない。また、現今の年金や医療の水準は、大多数の労働者にとっては、ぎりぎりの生活を維持できるというものにすぎない。大増税と社会保障給付の削減は、どちらも労働者にとっては絶対に受け入れることのできないものだ。
絶対に必要な闘いの獲得物
労働者が生産手段から切り離され、労働力を売るほかに生きるすべのない資本主義社会においては、労働者階級の一部分は絶えず失業・半失業状態に追い込まれる。疾病や「障害」、老齢、労災による労働能力の喪失は直ちに生存の危機に結びつく。だからこそ、資本の搾取のもとに置かれた労働者階級が、自己と家族の最低限の生活を守るためにかちとってきたのが、社会保障制度なのである。しかし資本は、それすら労働者階級への「過大な」譲歩であったとして、社会保障の全面的な解体へと突き進もうとしているのだ。
日本経団連は、あたかも社会保障制度を「維持」するためのやむを得ない選択であるかのように大増税を押し出すが、それによって「維持」されるものは、もはや社会保障とは言えないような代物だ。
例えば、公的年金については、制度の目的を「退職後の必要十分な所得の確保」から「予想以上に長生きした場合の生活資金不足の補填(ほてん)」に転換せよと唱えている。ここにあるのは、「長生きすることは迷惑だ」という考え方だ。そして、年金は平均生存年齢を超えた高齢者に、国家がいやいやながら涙金を支給するものに変えてしまうということだ。社会保障は権利ではなく、いつでも取り上げることのできる、資本制国家による「恩恵」だというのである。
医療保険についても同様だ。奥田ビジョンは、「公的保険は個人の自助努力でカバーできない医療給付に限定する」ときわめて露骨に述べている。公的な医療保険は、ないに等しい水準にするということだ。今日すでに、国民健康保険の保険料を支払えない人びとが膨大な規模で生まれている。こんなことをやられたら、普通の労働者にとって医療は手の届かないものになってしまうだろう。
その上さらに、奥田ビジョンは「企業の従業員についても、自営業者と同様、保険料を全額本人が負担する方式に改める」と言い放った。企業の社会保障負担の全面回避が、日本経団連の描く社会保障改悪の一切の前提なのである。
死を強制する「尊厳死」公言
こうした攻撃の行き着く先は、「資本にとって価値がない」とされた者への死の強制だ。奥田ビジョンは、財界の提言としては異例な形で「尊厳死」に言及した。高齢者や「障害者」は、自ら死を選べというのである。これはすさまじい踏み込みだ。資本の搾取材料として役立つ限りにおいてのみ、かろうじて生存は許されるというのである。
さらに、「死への準備教育が必要」として、「かつては日本においても、諸外国から認められるような死生観が存在していたが戦後、この意識が薄れてしまった」と嘆いている。まさにそれは、侵略戦争を担う兵士の育成ということだ。
奥田ビジョンが掲げる「東アジア自由経済圏」構想=今日版大東亜共栄圏構想は、平然と他民族を虐殺し、自らもまた国家のために死ぬことを是とするイデオロギーと一体のものとして押し出されている。
他方において日帝は、「少子化への対応」を声高に叫びながら、家族制度と女性差別を強化し、生殖をも国家管理のもとに置こうとしている。だが、「少子化」とは、帝国主義のもとでは社会が社会として成り立たないことの現れなのだ。子どもを産み、育てるという人間の自然な営みができないような社会をつくり出したのは、帝国主義にほかならない。
資本は、人民の生と死を操作する恐るべき攻撃に乗り出した。だが、これは最も奥深い怒りの反撃を引き出さずにはおかないのだ。
00年の介護保険導入が福祉解体の転換点
社会保障解体に向けての具体的な突破口は、00年の介護保険の導入によって開けられた。
それは、福祉に対する国家責任を否定し、福祉を資本の利潤追求の場に投げ出す一方、介護保険料という形で人民からの強収奪を貫くものである。ここには、社会保障・社会福祉のあり方の原理的転換があった。
戦後の社会福祉は、生存権の国家的保障を基本的な原理として成り立ってきた。その制度的な表現が「措置制度」である。高齢者や「障害者」が介護を求めたり、収入を断たれた人が生活保護を求めた場合、国家はその請求にこたえる責任を負っていた。社会福祉は基本的には公費でまかなわれるものだった。
しかし、介護保険は、介護を金で取引される「サービス」に変えた。金がなければ介護は受けられない。「措置から契約へ」の名で国家による生存権保障は根本的に否定されたのだ。
もちろん、措置制度を全面的に美化することはできない。国家は財政的制約を口実に権利の具体化にさまざまな障壁を設けてきたし、措置の名において徹底した人民分断を貫くことも忘れなかった。その典型が、「精神障害者」に対する強制入院制度=隔離・抹殺の制度化だ。措置制度には、権利の保障という面と、差別・分断の貫徹という面が、分かちがたく結びついていたのである。
介護保険の導入は、措置制度の権利保障としての側面を解体することが目的だった。さらにそれは、40歳以上の全住民を保険制度に強制的に組み込み、保険料という形をとった強収奪を貫くものである。介護保険料の強制徴収は、わずかな年金で暮らす高齢者など、多くの人びとから生きる希望さえ奪い取り、死をも強制するものになっている。
低所得者層にとって、今日の状況はきわめて過酷なものだ。小泉はこの許しがたい現実をさらに拡大し、一層多くの人びとを低所得者層にたたき込み、こうした人びとにも大増税を強制し、生活保護基準さえ引き下げようとしている。それはまた、すべての人民の生活水準を一気に低下させる意味を持つ。
年金改悪巡る激突が始まる
社会保障制度をめぐり、本格的な激突が始まるのはこれからである。社会保障制度の中で、最も大きな比重を占めるのは年金だ。政府は、次期通常国会に年金大改悪案を提出しようとしている。それは、保険料固定方式と称して、公的年金も「401k」と同様の確定拠出型に変えてしまうというものだ。保険料は大幅に上がり、支給額は大幅に減る。さらに、医療制度改悪がそれに続く。
しかし、年金や医療は制度として巨大な物質力を有し、労働者は年金を前提に生活設計を立てている。その解体への踏み込みは、支配階級にとっても断崖(だんがい)絶壁からの飛躍を突きつけられるようなことなのだ。
階級的団結うち固め権利とり戻す闘いを
これらはいずれも、労働者の階級的団結の解体によって初めて現実化されるものである。だからこそ奥田ビジョンは、「雇用の多様化」と称して終身雇用制を解体し、雇用形態をばらばらにして職場的団結の土台を崩そうとしているのだ。他方で、「労働組合に対しては、既得権益を擁護する活動の是正を求める」として、連合幹部に「産業報国会」へと純化することを迫っているのである。
こうした中で連合は、資本や政府とともに「持続可能な社会保障制度」を唱え、社会保障の改悪を容認した。そもそも、賃下げや企業年金解体=退職金削減に何ひとつ抵抗しない連合指導部が、社会保障の解体と闘えるはずがない。
公明党は、坂口力厚労相を先頭に社会保障の解体に全力を挙げている。自らの支持基盤を裏切って、小泉の先兵になり果てたのが今日の公明党の姿である。
日本共産党は、11月党大会で綱領を改定し、「資本主義の枠内での民主的改革」路線をより徹底化しようとしている。それは、社会保障の解体に道を譲ることへと結びつく。資本主義の存立にとって、社会保障制度を維持することはもはやできないからこそ、今日の激しい攻撃は引き起こされているのだ。実際、彼らは、先の国会で成立した心神喪失等医療観察法=保安処分新法にいったんは全面的に賛成し、「病者」の隔離・抹殺に加担した。
東大阪市議選に勝利しよう
こうした攻撃に直面する中で、杉並や東大阪では、これまで団結から排除されてきた中小・零細企業の労働者やその退職者が、苦難の中から新たな団結を形成し、生きる権利を求める闘いに立ち上がっている。
社会保障・社会福祉は労働者人民の権利である。団結とそれに基づく闘いを基礎にして、権利は権利として自覚される。権利を自覚した労働者人民は、積年の怒りを解き放ち、めざましい主体的・自己解放的決起を開始する。それは、労働者階級が自己を社会の主人へと高めるための第一歩である。東大阪で本格的に始まったこの闘いを市議選勝利に結実させ、闘いを全国に広めよう。
また、社会保障をめぐる闘いが真に階級攻防の決戦テーマに押し上げられるのは、基幹産業の組織労働者がこの問題を自らの課題として立ち上がった時である。現に攻撃は全労働者を襲っている。闘いを抑圧しているのは連合指導部だ。
ヨーロッパの労働運動が、社会保障解体に対してゼネストを始めとした激しい抵抗を貫いているのは、資本・権力と対決する新潮流が力強く台頭しているからだ。日本においても、動労千葉に続く闘う労働運動の新潮流が力強く登場するならば、社会保障解体の攻撃は全労働者階級の壮大な反撃に直面することになるだろう。自治労大会における「21世紀宣言」否決という事態は、その可能性をかいま見せている。11月労働者集会は、そうした闘いへの展望をも切り開く決戦なのである。
危機に陥っているのは支配階級の側だ。社会保障の解体を阻む闘いに立とう。
〔長沢典久〕
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週刊『前進』(2117号6面2)
(5)
安保・沖縄闘争の軸 全国人民の連帯の力で
米海兵隊の前線出撃基地許さぬ
シリーズの最後に、名護新基地建設阻止へ全国の労働者人民が具体的な闘いに立ち上がることを訴える。
植民地的な政治
名護・新基地建設をめぐる闘いは、あらゆる意味で21世紀の沖縄(と日米安保)の方向を決めるものである。結局のところ犠牲を沖縄に集中しながら日米安保体制を護持し強化しようとする日本帝国主義と、それを拒否し「当たり前」の生き方を要求する沖縄人民との対立は、どこまで行っても融和しない。
今日の世界情勢のもとで、ますます軍事体制を強化し侵略戦争に突き進む米帝ブッシュ、これと競合しながら独自の軍事大国化と侵略戦争に突き進む日帝・小泉政権によって、SACOのペテン的うたい文句「基地の整理・縮小」の名目で沖縄基地は一層強化され、半永久化されてしまうのかどうか。日本帝国主義は、名護新基地建設を、沖縄に対する歴史的な差別的・反人民的政治を総動員したようなやり方でやろうとしている。脅しと買収で沖縄と地元を分断しながら、強大な力にすがりつかない限り生きられないところに追いつめて、基地との共存を受け入れさせようとするそのやり方は、全国の過疎地域に原発建設などを押しつける際の自民党の伝統的買収政策の手法を超える、いわば植民地経営の政治に近いものがある。
95年9・4事件以来の沖縄の「新たな人民反乱」を抑え込み、あくまでも日米安保体制のもとに組み敷こうとする日本帝国主義、この対決構造こそ名護新基地建設阻止闘争の基本であり今日的な激突点をなしている。このように新基地建設阻止の闘いは、沖縄闘争、安保・沖縄闘争、今日の情勢の中で日米帝国主義の侵略戦争阻止闘争そのものであり、沖縄人民にとって解放のための正面課題であることはいうまでもない。
同時に、そういう問題であるからこそ全国の労働者人民にとっても、この闘いは必須不可欠の課題である。沖縄闘争を裏切りと転向を塗り隠すために利用する対象としてしか考えない既成左翼をのりこえ、労働者階級の立場に立って、沖縄闘争を自分自身の闘いの中にしっかりと位置づけなければならない。そして常に沖縄の現実を知り、政治的・階級的動向に気を配りながら連帯して闘うことが必要なのだ。
最後に、新基地建設に反対して闘う宮城康博名護市議のコメントを紹介する。
宮城市議の訴え
「新基地建設に反対する名護市民の真心として始まった運動も、旧態依然たる保革の構造に回収され厳しい現状があります。日本政府は国民の血税を湯水のように投入し、何も振興しない振興策で小さな街の権力者たちを意のままに操り、対抗する側は保革の枠組みに拘泥して現状を打破する闘いの方向性を見いだしきれずにいる。しかし、沖縄の海をつぶして新たな基地建設を進めることは、二重、三重に沖縄を差別することであり、依然として名護の新基地建設の問題は、沖縄の精神(こころ)の問題であり続けています。環境アセスなどで、より具体的な基地の姿が明らかになればなるほど、私は、名護市民は、沖縄県民は、この基地建設を許すはずがないと確信しています」
「1億3千万人の日本全体からいえば、沖縄の人口130万人はおよそ100分の1にすぎません。その沖縄に安保の矛盾を押しこめて、古臭い『アメとムチ』で沖縄を黙らせようと日本政府は全力を傾注しています。しかし、名護に造られようとしている新基地は、『帝国』意識まるだしで、『予防的先制攻撃』なる、一方的に他国の人民を殺りくする、米海兵隊の前線出撃基地です。その新基地建設を阻止することは、米国(ひいては日本国)の戦争行為に大きな『足かせ』をはめることにもなります。名護新基地建設の問題が名護市民、沖縄県民だけの問題ではないことは自明のことです。だからこそ全国の労働者・学生・市民の名護へのかかわりが不可欠です。世界的レベルで起こっている状況を考えてもけっして負けられない闘いがここにあります」
「壊滅的な沖縄の海への環境破壊、米軍の基地建設に浪費する1兆円もの血税、その上で日米両政府が認めた世界一危険な普天間基地を20年も放置し続ける、矛盾だらけのこの計画は必ず阻止・勝利できる展望のもてる闘いです。普天間の危険な現状を考えれば、私は1日でも早くこの建設計画を断念させ、本来の普天間撤去を進めさせたい気持ちでいっぱいです。そのためにはみんなの力があわさることが是非とも必要です。最近では民主党と自由党の合流でも使われている『小異を捨て、大同につく』という言葉は、本来は沖縄の闘いの歴史で培われた精神です。この精神をもう一度自分達のものとして、明るい未来を沖縄と全国の力でつくりましょう」
沖縄闘争を路線的・綱領的に学習、再学習し、労働者を先頭に名護新基地阻止の闘いを全国でつくろう。
(久場 豊)
(シリーズ終わります)
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週刊『前進』(2117号6面3)
広島 防災訓練を弾劾 自衛隊参加に怒り込め
8月27日、広島市内の太田川放水路で行われた広島市総合防災訓練に対して、広島反戦共同行動委員会は弾劾闘争に決起した。
陸上自衛隊第13師団(海田駐屯地)は、毎年この時期に行われる総合防災訓練に参加している。反戦共同行動を始め広島の闘う仲間は、その度に抗議・申し入れを繰り返してきた。にもかかわらず広島市は、自衛隊の治安出動訓練を今年も強行しようというのだ。
しかも、今年の防災訓練は、強行成立させられた有事法体制下で、文字どおり朝鮮侵略戦争への労働者人民の戦争動員訓練そのものとして強行された。
反戦共同行動委員会は、訓練会場内の奥深くまで突入し、開会式が始まると同時に戦闘的なシュプレヒコールをたたきつけた。陸上自衛隊第13師団の待機場所の直近から「自衛隊の治安出動訓練弾劾」「労働者の戦争動員訓練反対」「自衛隊のイラク出兵阻止」のシュプレヒコールが自衛隊兵士を直撃した。
あわてふためいた広島市と広島県警中央署警備課長が「威力業務妨害で全員逮捕するぞ」とわめきながら弾圧しようと飛び出してくる。反戦共同行動委員会は弾圧の口実を一切与えることなく、弾劾闘争を最後まで貫徹した。
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週刊『前進』(2117号6面4)
自治労大会で訴え熱い反響 4日間『前進』販売
「『21世紀宣言』は、組合員・代議員を信頼すれば必ず阻止できる」「労働運動の歴史的汚点を横浜で行うことなど絶対に許さない」――こうした信念で自治労全国大会の4日間、私たちは毎日登場し「21世紀宣言を否決しよう!」と訴え、『前進』販売活動を行いました。同時に、国労5・27臨大闘争弾圧反対の保釈要求署名を呼びかけ、予想を超える反響がありました。
大会の最大の焦点は言うまでもなく「21世紀宣言」です。私たちは「21世紀宣言を否決しよう!」と懸命に訴えました。ものすごい反応が返ってきました。「うちの県本部は絶対反対の発言をやるよ」「県本部は賛成討論をするらしいが、私の職場では反対が圧倒的に多い」「反日共・反カクマルの立場で頑張るから」「警察とカクマルの妨害がすごかったね」――代議員と傍聴者は口々に語っていました。また「21世紀宣言なんて職場討議にはなっていませんよ。あなたたちのビラで初めて知りました」という声もいくつかありました。
1日目よりも2日目、2日目よりも3日目と、日ごとに反対は拡大し、会場内の闘いは手に取るように感じられました。
『前進』の販売では「自治労大会に向けたアピールを書いている『前進』です。シリーズで訴えています」「社・共に代わる労働者党の新聞です」「反戦闘争と労働運動を中心に作っています」という訴えに多くの注目が集まりました。
「職場の仲間が『前進』を読んでるから知ってるよ」「自分の県の『前進』販売書店はどこ?」「動労千葉が訪米したの? すごいなあ。うちの職場でも動労千葉の物資販売を取り組んでいるよ」と、討論の輪ができました。こうして沖縄から北海道まで全国から結集した代議員と傍聴者に『前進』を販売しました。
また、「闘う闘争団を除名処分にしようとする国労大会で、反対するビラをまいただけで不当逮捕され10カ月も勾留されている国労組合員の保釈要求署名をお願いします」と訴えました。「信じられない」という驚きと怒りの声が続出。国鉄1047名闘争と動労千葉の闘いの前進、国労本部の屈服とそれを打ち破った現場の闘い、そして国家権力の不当な介入、などの討論をとおして多くの自治労組合員が快く署名してくれたのです。
大会最終日の29日は最寄りのJR桜木町駅前で中核旗をなびかせて街宣を行いました。「21世紀宣言」を否決して意気高く全国の職場に戻る自治労組合員に、「この勝利を打ち固め、続開大会にも勝利しましょう」と訴えて『前進』を販売しました。ちょうど昼休み時間で、地元横浜の労働者・市民も『前進』を買っていきました。
4日間で『前進』27部を販売する成果を上げました。
(神奈川 M・I)
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週刊『前進』(2117号6面5)
公判日程
☆迎賓館・横田裁判
福嶋昌男同志裁判
9月16日(火)午前10時
☆水嶋秀樹同志裁判
9月11日(木)午後1時30分
※いずれも東京地裁
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