International Lavor Movement 2014/01/01(No.449 p48)

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2014/01/01発行 No.449

定価 315円(本体価格300円+税)


第449号の目次
 

表紙の画像

 

表紙の写真 中国・四川省の威遠炭鉱労働者のデモ(11月5〜6日)
■羅針盤 外注化反対・非正規撤廃を闘おう 記事を読む
■News & Review 韓国
12・7朴槿恵政権糾弾時局大会を開催  民主労総解体攻撃に対する総反撃の起点
記事を読む
■News & Review ドイツ
非正規職化攻撃と闘うドイツ労働者  新自由主義への歴史的反撃の開始
記事を読む
特集 中国は大動乱情勢に突入
バブル経済の崩壊が切迫  激発する労働者階級の闘い
 
■Photo News  
■世界経済の焦点
欧州恐慌・緊縮財政下の大失業  過半数の青年が失業し生きられないEU
 
■世界の労働組合 韓国編  全国学習誌産業労組  
■国際労働運動の暦/1月22日  ■1905年「血の日曜日」■
請願行進への大虐殺請願行進への大虐殺
労働組合の爆発的結成とソビエト創成、第1次ロシア革命の発端に
 
■日誌 2013 9〜10月  
■編集後記 記事を読む
裏表紙の写真 韓国・民主労総5万人が朴槿恵打倒へデモ(11月9日)

月刊『国際労働運動』(449号1-1)(2014/01/01)

羅針盤

■羅針盤 外注化反対・非正規撤廃を闘おう

▼11月労働者集会と訪韓闘争・国際連帯闘争は、民営化・外注化反対、非正規職撤廃の闘いが労組破壊の新自由主義攻撃を粉砕する闘いの中心であることをはっきりさせた。脱落日帝の危機救済を託された最大企業JRは大量首切り、不当労働行為、偽装請負、安全破壊のブラック企業の権化だ。韓国でも「無労組企業」サムスン電子への怒りが爆発している。欧米でもアジアでも民営化・外注化・非正規職化と安全崩壊が社会問題となり、資本に屈した体制内労組幹部をのりこえる闘いが急速に発展している。
▼世界大恐慌の本格化が日帝の貿易収支を歴史的な大赤字にたたき込んでいる。安倍はそののりきりをかけて資本家の先兵となり、アジア侵略に絶望的にのめり込んでいる。日米の財政破綻も、中国スターリン主義におけるバブル経済の崩壊も、帝国主義・新自由主義の歴史的命脈が尽き果てたことを示している。
▼11月労働者集会には、怒りに燃える労働者の新しい力が満ちあふれた。国鉄分割・民営化との30年の死闘に勝ちぬき、外注化と激しく闘い続ける動労千葉。139日の産業ゼネストを打ち抜いた関西生コン支部。地域の労働者全体を組織する港合同。団結を求め闘う決意あふれる被解雇者。JR北海道の安全崩壊が分割・民営化に起因することを現場から暴露し弾劾する労働者。過労死、橋下の丸ごと民営化・労組破壊との闘い。福島圧殺・被曝労働・放射能汚染の国家犯罪との闘い。改憲阻止労組声明。三里塚闘争、沖縄闘争、星野奪還闘争。9・25判決で国家権力と資本の解決不能の矛盾を突き出した国鉄闘争。国鉄闘争と青年労働者、非正規労働者との結合。本物の労働運動を全国・全職場に拡大しよう。

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月刊『国際労働運動』(449号2-1)(2014/01/01)

News&Reviw

■News & Review 韓国

12・7朴槿恵(パククネ)政権糾弾時局大会を開催

民主労総解体攻撃に対する総反撃の起点

 労働者と農民、貧民、障害者、市民が共に

 11月9、10日の全国労働者大会は、朴槿恵(パククネ)政権の労組破壊、民主労総解体攻撃に80万組合員の総力で法の枠を突き破ってでも民主労総の原点を甦らせて闘うことを宣言した。その地平を受けて、韓国の民衆は、12月7日、朴槿恵政権糾弾時局大会を開催する。労働者と農民、貧民、障害者、市民などが共に闘う民衆闘争だ。
 民主労総、全国農民会総連盟、全国貧民連合など進歩民衆団体と送電鉄塔建設阻止密陽(ミリャン)対策委、全教組を守る全国行動、KTX民営化阻止汎対委など13の連帯単位らが11月19日、民主労総で代表者会議を開催して12月7日午後3時ソウル駅で非常時局大会を開催することを決定した。
 民衆大会要求案としては、△総体的大統領選挙介入真相究明と責任者処罰△非正規職撤廃、特殊雇用労働者性認定、源泉使用者性認定、時間制仕事場の拡大中断△労組破壊サムスングループ糾弾△年金改悪中断、基礎年金公約履行△コメの目標価格23万ウオンをかちとる、基礎農産物国家引き受けをかちとる、コメ全面開放反対△撤去民、露天商、野宿民など都市貧民に対する弾圧中断△全教組設立取消撤廃△鉄道、ガス、電力、水道民営化阻止△双龍(サンヨン)車解雇者整理解雇撤回、解雇者復職△密陽送電鉄塔中断△違憲的政党破壊の統合進歩党強制解散阻止△扶養義務制障害等級制廃止、基礎法改悪阻止△龍山(ヨンサン)惨事真相究明と責任者処罰など20余の項目だ。
 記者会見で「今崖っぷちに追いやられた労働者、農民、貧民、民衆が生きるために立った」として「朴槿恵政府が民衆の絶叫の非常時局大会要求案を受け入れないならば全体労働者、農民、貧民、民衆の巨大な抵抗を見ることになるだろう」と朴槿恵政権に対して警告した。

 全教組破壊攻撃に対し反撃の足場かちとる

 雇用労働部の全国教職員労働組合(全教組)に対する「法外労組」通告の効力が当分の間停止されることになった。ソウル行政法院行政13部は11月13日、全教組が「政府の法外労組通報は不当だ」と雇用労働部長官を相手に出していた法外労組通報処分執行停止申請を受け入れた。裁判部は解職者の労組加入を許容する全教組規約を是正せよという雇用労働部の是正命令は適法だとしながらも、全教組を法外労組と見るのかということは争いの余地があるとする判決だ。
 これにより全教組は当分の間、法的地位を維持することになった。しかし法外労組通報を取り消せと提起した本件訴訟の一審判決が出るまで裁判での「法外労組」をめぐる争いは続く。しかし労組側の弁護士は「裁判勝訴の見込みがあるからこそ、このような通報処分執行停止命令が出されたのだ」という見解を出している。
 民主労総の総体破壊の突破口として朴槿恵政権が選んだ全教組破壊攻撃が逆にその攻撃の全面破綻の糸口になったのだ。労働者の力を軽く見た結果だ。民主労総全体の朴槿恵政権糾弾闘争に対する大きな激励になるだろう。

 「鉄道民営化反対」署名が100万突破

 韓国で100万名以上の鉄道民営化反対署名が集計された。
 「KTX(韓国高速鉄道)民営化阻止鉄道公共性強化汎国民対策委員会(汎対委)」は11月20日午後、光化門(クァンファムン)のイスンシン銅像の前で記者会見を開き「鉄道民営化反対署名運動に参加した人の数が100万人を突破した。これは鉄道民営化を断固として防がなくてはならないという国民の意志の表現」だと明らかにした。
 凡対委は昨年から今年まで水西(スソ)発KTXと鉄道産業民営化反対100万人署名運動を展開してきた。ついに11月、署名が100万名を突破した。
 記者会見でパクソクウン汎対委共同代表は「鉄道の安全を脅かし料金暴騰、財閥特恵を呼び起こすKTX民営化は必ずや阻止されなければならない。もし朴槿恵政権が民営化をしないという公約を守らなければ、国民的審判を逃れられないだろう」と警告した。
 イサンジン民主労総副委員長も「今こそ鉄道民営化論難に終止符を打たなければならない時が来た。保守、進歩に関係なく100万を超える国民の鉄道民営化反対の声を黙殺したならば民主労総は闘争で国民的抵抗を拡大させるだろう」と強調した。
 キムミョンファン全国鉄道労組委員長は「国民共同の資産である鉄道を国内の少数の財閥と外国の巨大資本に売り渡そうとする試みを止めなければならない。鉄道労組は国民100万名の意志を集めて、鉄道を止める闘いをとおして民営化を妨げる」と発言した。
 凡対委は記者会見文で「われわれは今日、100万名の署名を青瓦台(チョワンデ)(大統領官邸)に伝達しようと思う。これにもかかわらず政府が引き続き鉄道民営化を推進したならば、12月に鉄道労働者たちはゼネストで鉄道を止め、汎対委と地域対策委の団体は連帯闘争を建設して必ずや民営化を阻止することを宣布する」と明らかにした。
 参加者たちは記者会見後100万人署名用紙を持って直接提出しようと青瓦台に向かったが警察権力に妨げられた。
(写真 100万人を突破した「鉄道民営化反対」署名【11月20日】)

 双龍自動車支部焼香場が平沢工場に

 11月16日、ソウル都心の大韓門(デハンムン)で双龍(サンヨン)自動車支部が24名の犠牲者の慰霊のために維持してきた焼香場を平沢(ピョンテク)の双龍自動車工場前に移すことになった。双龍車支部と「双龍車犠牲者追慕および解雇者復職汎国民対策委員会(汎対委)」は11月16日午後、移転を前にして大韓門前で、「双龍車犠牲者慰霊祭および闘争勝利決意大会」を開催した。
 この間、大韓門焼香場を守ってきた200余名の連帯単位および市民たちも大韓門焼香場前の最後の夜を共に送った。
 キムドクチュン双龍車支部長は「大韓門焼香場を平沢に移すという決定を下ろすまでたやすくはなかった。ここに来る足取りも重かった」と話した。そして「1年8カ月前、22番目の犠牲者の遺影を抱いて切迫した心情で大韓門に来た。その後、市民社会などの連帯で大韓門は追慕の空間を超えて、韓国社会で痛みを受けている人たちの抵抗と闘争の求心になった」「大韓門焼香場を平沢に移したからといって闘いが終わるものではない。支部は双龍車資本を相手に総力闘争を決意したし、今は現場で解雇者復職問題にけりをつけるための資本との一戦を準備している。すでに工場の中でも解雇者たちが復職しなければならないという声が絶えず伝えられているだけに、支部はより力強く工場前集中闘争を決意して、5回目の冬の今年を最後に勝利する。連帯の綱を離さずに、双龍車の同志たちを忘れないでくれ」と要請した。
 チョヒジュ双龍車汎対委共同代表は「慰霊祭と決意大会の後、大韓門焼香場が平沢に移されるけれども、それで終わるのではなく新しい始まりのための宣言だ。解雇労働者たちが現場に帰らない以上、われわれが行くところがどこであれ、そこがまさに焼香場になるだろう。新しく気持ちを整えて民主労総と金属労組を中心にもう一度怒りを集めて双龍車問題解決に総進軍しよう」と述べた。
 クォンヨングク民弁弁護士も「インディアンが雨乞い祭をやれば必ず雨が降る。それは彼らが雨が降るまで雨乞い祭をやるからだ」として「われわれの心の中で双龍車闘争が死なないかぎり、われわれが双龍をあきらめないかぎり、明確に勝利はわれわれの前に近づいてくるのだ。闘いの手綱を緩めない」と決意を述べた。
 またチョンヨンソプ社会進歩連帯事務処長は朴槿恵大統領に送る手紙で「われわれは双龍車の解雇者たちが必ず工場に帰り、犠牲者の名誉を回復するための闘争の新たな覚悟をする」として「あなたが労働者民衆を無視して踏みにじり、資本の宴会の場ばかりを用意することに黙ってはいないだろう。われわれの闘いがあなたの嘘の偽善に隠された反労働、反民衆の素顔を徹底的に暴露するだろう」と発言した。
 「共に生きよう、100人の希望を守る人」で活動してきたパクネグン人権財団の常任理事は大韓門を中心に行った連帯の綱を守り抜くと明らかにした。パクネグン常任理事は「大韓門双龍車焼香場を中心に龍山(ヨンサン)、江汀(カンジョン)、密陽(ミリャン)などの自然な連帯が進められてきた。われわれが持っていた希望がたとえ遅くなることも、遠くなることも、回り道することがあっても、われわれは必ず希望を共につかみ取るしかない。この間、大韓門前で闘ってきた人たちが再び集まり連帯の場としてここを守っていけたらと思う」と述べた。
(写真 双龍車犠牲者慰霊祭【11月16日 大韓門】)

 5人目の地下鉄運転士自殺の責任を問う

 双龍自動車の24人の犠牲者、サムスン電子サービス支会のチェジョンボム烈士の死と労働者の死が続くなかで、また1人の地下鉄運転士が自ら命を断ちソウル市とソウル都市鉄道公社に対する責任論が拡大している。今まで総計5人の運転士がパニック障害と神経精神疾患などで相次いで命を断ったが、再発防止策を約束していた自治体と機関が運転士の待遇改善のための合意さえも履行せずにいる状態だ。
 去る18日に自ら命を断ったソウル都市鉄道公社7号線機関士チョン氏は4年前から鬱病に苦しんで来て、去る9月にも自殺を試みたことがあり、10月からは神経精神科で薬物治療を受けてきた。遺族によると経済問題はまったくなかったものと確認されている。ソウル都市鉄道労組と遺族側は故人の死亡が劣悪な労働環境と組織文化、ひどい労務管理などによるものだと見ている。労組によると、遺族らは「故人が利用者の苦情やさまざまな車種適応の困難さに苦しんできており、苦情関連経緯書を書くのが辛いと訴えてきた。成果給に対する不利益、勤務時間外奉仕活動の強要などのために心的にとても辛いようだった」と証言している。
 また遺族らは「暑いとか寒いとかまで、俺ができることはないのに乗客は苦情を上げる。そうすると俺は始末書を書かなければならず、叱られるのがとてもいやだ。たいしたことのない成果給まで影響を受ける」と吐露していたと言う。
 地下鉄機関士が精神的ストレスを訴えて自ら命を断つのは今回が初めてではない。2003年から5名の機関士たちがパニック障害や神経精神疾患などで自ら命を断った。今年だけでも1月にファン機関士が神経精神疾患で投身し、10月にもチョン機関士が神経精神疾患を病んで自宅で死亡した。
 労組側は機関士の引き続く深刻な職務ストレスによるものであると分析している。実際に機関士たちの臨時健康検診結果、機関士たちは一般人よりも心的外傷後ストレス障害、憂鬱症などの比率が高いという結果が出ている。外傷後ストレス障害の場合、一般人よりも5・6%も高かった。
 労組は声明書で「反復する機関士たちの残念な死にもかかわらず公社は何も変えず、連続自殺事故の背景には暴圧的な組織文化、悪質な労務管理が常に存在していた。殉職事故に対して再発防止を約束したソウル市と、暴圧的組織文化と悪質な労務管理を放置して助長したイヒスン運営本部長、在任期間中の3件の機関士殉職事故を発生させたキムギチュン社長は今回の事態に対して責任を負わなければならないだろう」と非難している。
 (大森民雄)
(写真 横断幕には「人間は希望だ。これ以上殺すな」と運転士の引き続く自殺に対する責任者の処罰と対策を整えるためのソウル都市鉄道労働組合徹夜籠城と書いてある)

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月刊『国際労働運動』(449号2-2)(2014/01/01)

News&Reviw

■News & Review ドイツ

非正規職化攻撃と闘うドイツ労働者

新自由主義への歴史的反撃の開始

低賃金・雇用破壊・社会保障解体

  「高賃金・安定した雇用・社会保障制度の完備」「EUの優等生」と言われてきたドイツの労働者の5分の1が、低賃金労働者である(表参照)。この背景にあるのが、1990年代以来の「労働力市場の柔軟化」「雇用・労働形態の多様化」と称して強行されてきた非正規職の急増である。91年に、全就労者の12・8%であった非正規職労働者が、2012年には21・8%にまで増大したのだ。これは、実数でみると正規職労働者2120万人に対し、非正規職労働者は790万人である。官庁統計では「標準的就労者」(終身雇用で年金受給資格などを持つ)、すなわち正規職労働者に対して、非正規職労働者は「非典型就労者」と呼ばれ、「週20時間以下の短時間就労者」「有期就労者」「僅少就労者」「派遣就労者」などに分類され、細分化され、無権利状態にたたき込まれているのだ。
これに加えて、「失業者の労働市場への呼び戻し」と称して、失業手当を生活費の最低限の水準以下に切り下げて、ボランティアという形での非正規・低賃金労働をやらねば生きていけない現実を失業者に強制するという攻撃が行われてきた。これは、最低賃金制のないドイツにおいて、「ミニジョブ」「1ユーロ・ジョブ」(時給1ユーロ/11月22日時点で約137円)と呼ばれ、医療・保健・教育などの公的サービス部門や、流通などで、大規模に「雇用」され、正規職労働者を「駆逐」するてこにされている。
このような現実の中で、ダブル・ジョブが、高年齢層まで含めて社会的に拡大し、非正規職労働者の中では、女性の比率が激増している。
これが、失業率がEU全体の平均で12%に対し、ドイツは6・9%(いずれも201
3年9月現在)という数字の裏に隠されている非正規職化・低賃金化・社会保障の解体・民営化という新自由主義攻撃のもたらした現実だ。
こうした階級戦争を新たな段階に押し上げたのは、社民党シュレーダー政権下の20
03年来の「ハルツ改革」、すなわち新自由主義のヨーロッパ版としての戦後ドイツ社会の改革=解体攻撃であり、世界大恐慌のもとで、いっそう促進されてきた。

東西統一・新自由主義の破綻と大恐慌

 ドイツで新自由主義攻撃が本格化したのは、1990年代に入ってからである。19
90年10月東西ドイツ統一、91年7月ソ連崩壊・東欧圏解体、93年12月EU(ヨーロッパ連合)結成――この戦後世界体制の構造的崩壊を意味する三つの出来事が、ドイツ帝国主義とドイツ階級闘争に新たな局面を開いた。
ドイツは、朝鮮とともに分割国家として戦後世界体制の柱をなし、帝国主義的復活を成し遂げてきたが、1974〜75年世界恐慌の爆発による戦後的発展の終わりとその後の米帝とソ連の世界支配の動揺・後退の中で、西独帝国主義による東独の事実上の併合という形で、東西ドイツ統一を成し遂げたのであった。これはヨーロッパの中心における強大なドイツ帝国主義の復活を意味し、帝国主義間争闘戦の激化をもたらしたが、同時に、分割によって強制されたドイツ労働者階級の階級闘争の分断をのりこえ、階級的団結を奪還する条件を準備するものでもあった。
ドイツ帝国主義は、東西統一をもって、スターリン主義支配のもとにあった東独の政治と経済を解体・吸収するために、国営・公営企業の民営化(=西ドイツ企業による乗っ取り)の促進、インフラ投資などを中心に、膨大な国家予算を投入した。このため、統一ドイツは財政危機の重圧下に置かれ、失業率も11・6%(2000年)に達した。
これは同時に、チェコ・ハンガリー・ポーランドなど旧中東欧スターリン主義圏を、EU=独仏帝国主義主導下のヨーロッパに統合する過程と並行して進んだ。〔中東欧諸国のEUへの正式加盟は2004年になってからであるが、上記の中東欧主要3国は、91年にEUと「欧州協定」を締結、99年にNATOに参加している〕
こうした過程は、これら中東欧の旧スターリン主義国家の国有企業・施設の大規模な民営化、そして同時に中東欧労働者の権利剥奪として強行されていった。過剰資本の重圧のもとで、投資(投機)先を求めていた欧米資本は、金融自由化の波の中で、これを絶好機として中東欧諸国に乱入して、手厚い自国の国家的保護のもとで、これら諸国の工場・インフラ・金融機関などを捨て値で買収した。それは、まさに新自由主義を特徴づけるショック・ドクトリン≠サのもの、衝撃的国家暴力のむき出しの発動であった。〔この攻撃は、戦後体制の中でスターリン主義に対する反乱を繰り返してきた中東欧労働者人民(1956年ハンガリー、1968年チェコ、1982年ポーランドなど)の革命的決起に対する予防反革命としての意味を持つ〕
この時期、1990年代とは、米日英を先頭としてすでに80年代から開始されていた新自由主義攻撃が、「グローバリゼーション」「規制緩和」「民営化」「外注化」「労組破壊」などの形をとって、中南米・アジア諸国などにわたって展開され、帝国主義間争闘戦の激化と労働者階級に対する階級戦争として強行され、いわゆるBRICS諸国の登場とバブル的膨張の破綻が露呈されていく過程であった。

新自由主義の本格化

このような展開を受けて、90年代中ごろからEU内部において新自由主義攻撃が本格的に開始されていった。ドイツ帝国主義は、まずは保守コール政権(83〜98年)、社民党と緑の党の連立=シュレーダー政権(98〜05年)、保守党と社民党の「大連立」政権(2007〜08年)、保守党のメルケル政権(09〜13年)のもとで、新自由主義攻撃を徹底して展開していったのである。
その攻撃の第一の柱は、保守党コール政権の『アジェンダ2010』に基づいて、社民党シュレーダー政権が、02年に設置したハルツ委員会(その委員長=フォルクスワーゲン社社長の名)が策定した『ハルツ計画』である。これはドイツの過去との断絶≠掲げて、戦後的な「社会的市場経済」を解体し、労働者階級への系統的な階級戦争を開始する宣言であり、まさに中曽根・レーガン・サッチャーが口火を切った新自由主義攻撃のヨーロッパ版=ドイツ版であった。
『ハルツ計画』は、一次から四次にわたり、体系的に社会保障制度と失業手当・失業対策を、「自己責任」型に転換し、戦後的社会福祉・保障制度の根本的解体をめざすもので、その集大成である〈ハルツW〉は、ドイツ労働者人民の憎しみの的になった。それを象徴するのが、「ミニジョブ」「1ユーロ・ジョブ」である。
第二に、新自由主義下の争闘戦激化の中で、国際競争力の強化の名の下に強行された大規模で長期にわたる「賃金抑制」である。これは、ドイツ労働総同盟を引きずり込み、全産業分野で強行され、その結果、90年代の後半、ドイツ労働者の賃金は、EU諸国の中でも、上昇率からいっても、実質的な水準からいっても、大幅に下落し、冒頭で指摘したように、低賃金労働者が激増した。この攻撃は、次に述べる外注化を圧力にして、「賃上げを要求するなら、低賃金の海外に工場を移転するぞ」というブルジョアジーの恫喝をてことして行われた。
第三に、グローバリゼーションの名の下での外注化(アウトソーシング)の系統的な大規模な強行である。これは、すでに70年代のシュミット政権の時代において、74〜75年恐慌の打撃の中から、ドイツ産業の国際競争力の相対的低下は高賃金に原因がある(「産業的立地条件」)として、低賃金地帯・諸国に、工場を移転する攻撃として行われてきたものである。90年代後半から2000年代に入って、東欧スターリン主義圏の解体、EUへの吸収の結果、工場の海外移転が急激に増大した。現在では、ドイツの産業企業の約40%が、工場を海外に移転しており、その結果、ドイツでは大量首切り、工場閉鎖が頻発した。
第四に、すでに見たように、従来の雇用形態のドラスティックな解体、正規雇用労働者の減少と、非正規雇用労働者の激増である。ドイツの従来の雇用・労働形態は、一変した。「不安定雇用」が、支配的傾向となった。
第五に、賃金・労働条件などをめぐる労資交渉において、従来のような、全産業的な労資交渉によって全国均一の統一賃金協定、労働協約を締結するという形態を解体して、各企業・地方、そして工場単位に分解・解体することである。企業・工場ごとの条件(収益状況、労資の力関係など)に依拠して決定が行われ、労働者の団結は、無限に解体・破壊されていったのである。
第六に、民営化攻撃の進展である。テンポや方式は、産業分野ごとに異なるが、趨勢としての民営化は、この間、郵政・通信・鉄道を中心に大規模に進んだ(本誌11月号参照)。
第七に、この過程でブルジョアジーの先兵となったのが、社会民主党であり、その支配下にあるドイツ労働総同盟(DGB)だったということである。98年にシュレーダー政権が成立した際に、ただちに政労資の共同声明に基づいて、「雇用と競争力のための同盟」が結成され、戦後的労資協調の枠を越えたドイツ帝国主義の階級支配の柱が再構築されたのだ。
シュレーダー政権は、就任時に、前保守党政権の内外政策の基本的継承を宣言し、安保国防政策でも、「戦後ドイツ」の枠を越え、NATOによるユーゴ侵略へのドイツ国防軍派兵に踏み切った。これに対し、反体制的批判勢力を装って登場した「緑の党」は、シュレーダー内閣に参加して外務大臣の役を担い、海外派兵を推進した。そして東西ドイツの統一後に形成された「左翼党」が、これを「左」から補完し、新自由主義政策遂行の一翼を担っているのが現状である。

鉄道民営化反対・反原発軸に反撃開始

 こうした情勢に対し、ドイツ労働者階級の反撃が、この数年来開始されている。
07〜08年に「ドイツ=ストライキ共和国」を実現した鉄道労組、電気通信労組、公共サービス労働者、医療労働者の闘い、11年のゴアレーベンの核燃料廃棄物搬入阻止闘争が突破口を切り開いた。12年には、職場で闘う戦闘的労働者によるベルリンの「革命的メーデー」が、体制内労組の動員を上回る2万5千人の結集でかちとられ、会場で動労千葉からの連帯メッセージが読み上げられた。そして今回の11月集会には、「ベルリン都市鉄道民営化反対行動委員会」代表の機関士労働者が「分割・民営化、非正規職化、搾取の体制反対」というスローガンを書いたTシャツで登壇し、国鉄決戦との路線的一致を確認した。
大恐慌下における階級的労働運動の新たな国際連帯が、ドイツにおいても新たな次元を切り開きつつあるのだ。
(川武信夫)
(写真 2013年ルール工業地帯でのメーデー)
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 (表)欧州各国と日米の低賃金労働者の割合(%)(2010年/OECD)

 ハンガリー  21
 英国     20.6
 ドイツ    20.5
 アイルランド 20.1
 スロバキア  20
 ポーランド  19.6
 スペイン   15.6
 ギリシャ   13.3
 イタリア    9.5
 スイス     9.2
 ポルトガル   8.9
 ベルギー    4
 米国     25.3
 日本     14.5
「低賃金労働者」は原則としてフルタイム就業者の賃金の中央値の3分の2以下で働く人。ドイツの数字は「ミニジョブ」を含まない)〔朝日/03年7月23日〕

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月刊『国際労働運動』(449号9-1)(2014/01/01)

編集後記

■編集後記

 絶対反対で闘うことが最も大衆的であり、団結を拡大する道である。
 動労千葉が85〜86年のストライキを決断できた核心問題は何か。執行部は組合員を信じて徹底的に討論した。そして、「ここで立ち上がらなかったら労働者同士が互いに蹴落とし合うようになる。それだけは絶対だめだ」という結論に至った。「闘えば労働者全体に火がつく」と確信した。闘いの原則の根底には一人ひとりの組合員の自らの闘いへの誇りがあった。
 ここには労働者階級全体の利害に立つこと、正しい時代認識と路線・方針がある。そして義理人情だ。労働者を徹底的に信頼し、団結の強化を総括軸にし、困難から逃げない指導部をつくることが巨大に見える敵にうちかつ道だ。
 これこそ生きたマルクス主義である。

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