International Lavor Movement 2014/01/01(No.449 p48)

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2014/01/01発行 No.449

定価 315円(本体価格300円+税)


第449号の目次
 

表紙の画像

 

表紙の写真 中国・四川省の威遠炭鉱労働者のデモ(11月5〜6日)
■羅針盤 外注化反対・非正規撤廃を闘おう 記事を読む
■News & Review 韓国
12・7朴槿恵政権糾弾時局大会を開催  民主労総解体攻撃に対する総反撃の起点
記事を読む
■News & Review ドイツ
非正規職化攻撃と闘うドイツ労働者  新自由主義への歴史的反撃の開始
記事を読む
特集 中国は大動乱情勢に突入
バブル経済の崩壊が切迫  激発する労働者階級の闘い
記事を読む
■Photo News 記事を読む
■世界経済の焦点
欧州恐慌・緊縮財政下の大失業  過半数の青年が失業し生きられないEU
記事を読む
■世界の労働組合 韓国編  全国学習誌産業労組 記事を読む
■国際労働運動の暦/1月22日  ■1905年「血の日曜日」■
請願行進への大虐殺請願行進への大虐殺
労働組合の爆発的結成とソビエト創成、第1次ロシア革命の発端に
記事を読む
■日誌 2013 9〜10月 記事を読む
■編集後記 記事を読む
裏表紙の写真 韓国・民主労総5万人が朴槿恵打倒へデモ(11月9日)

月刊『国際労働運動』(449号1-1)(2014/01/01)

羅針盤

■羅針盤 外注化反対・非正規撤廃を闘おう

▼11月労働者集会と訪韓闘争・国際連帯闘争は、民営化・外注化反対、非正規職撤廃の闘いが労組破壊の新自由主義攻撃を粉砕する闘いの中心であることをはっきりさせた。脱落日帝の危機救済を託された最大企業JRは大量首切り、不当労働行為、偽装請負、安全破壊のブラック企業の権化だ。韓国でも「無労組企業」サムスン電子への怒りが爆発している。欧米でもアジアでも民営化・外注化・非正規職化と安全崩壊が社会問題となり、資本に屈した体制内労組幹部をのりこえる闘いが急速に発展している。
▼世界大恐慌の本格化が日帝の貿易収支を歴史的な大赤字にたたき込んでいる。安倍はそののりきりをかけて資本家の先兵となり、アジア侵略に絶望的にのめり込んでいる。日米の財政破綻も、中国スターリン主義におけるバブル経済の崩壊も、帝国主義・新自由主義の歴史的命脈が尽き果てたことを示している。
▼11月労働者集会には、怒りに燃える労働者の新しい力が満ちあふれた。国鉄分割・民営化との30年の死闘に勝ちぬき、外注化と激しく闘い続ける動労千葉。139日の産業ゼネストを打ち抜いた関西生コン支部。地域の労働者全体を組織する港合同。団結を求め闘う決意あふれる被解雇者。JR北海道の安全崩壊が分割・民営化に起因することを現場から暴露し弾劾する労働者。過労死、橋下の丸ごと民営化・労組破壊との闘い。福島圧殺・被曝労働・放射能汚染の国家犯罪との闘い。改憲阻止労組声明。三里塚闘争、沖縄闘争、星野奪還闘争。9・25判決で国家権力と資本の解決不能の矛盾を突き出した国鉄闘争。国鉄闘争と青年労働者、非正規労働者との結合。本物の労働運動を全国・全職場に拡大しよう。

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月刊『国際労働運動』(449号2-1)(2014/01/01)

News&Reviw

■News & Review 韓国

12・7朴槿恵(パククネ)政権糾弾時局大会を開催

民主労総解体攻撃に対する総反撃の起点

 労働者と農民、貧民、障害者、市民が共に

 11月9、10日の全国労働者大会は、朴槿恵(パククネ)政権の労組破壊、民主労総解体攻撃に80万組合員の総力で法の枠を突き破ってでも民主労総の原点を甦らせて闘うことを宣言した。その地平を受けて、韓国の民衆は、12月7日、朴槿恵政権糾弾時局大会を開催する。労働者と農民、貧民、障害者、市民などが共に闘う民衆闘争だ。
 民主労総、全国農民会総連盟、全国貧民連合など進歩民衆団体と送電鉄塔建設阻止密陽(ミリャン)対策委、全教組を守る全国行動、KTX民営化阻止汎対委など13の連帯単位らが11月19日、民主労総で代表者会議を開催して12月7日午後3時ソウル駅で非常時局大会を開催することを決定した。
 民衆大会要求案としては、△総体的大統領選挙介入真相究明と責任者処罰△非正規職撤廃、特殊雇用労働者性認定、源泉使用者性認定、時間制仕事場の拡大中断△労組破壊サムスングループ糾弾△年金改悪中断、基礎年金公約履行△コメの目標価格23万ウオンをかちとる、基礎農産物国家引き受けをかちとる、コメ全面開放反対△撤去民、露天商、野宿民など都市貧民に対する弾圧中断△全教組設立取消撤廃△鉄道、ガス、電力、水道民営化阻止△双龍(サンヨン)車解雇者整理解雇撤回、解雇者復職△密陽送電鉄塔中断△違憲的政党破壊の統合進歩党強制解散阻止△扶養義務制障害等級制廃止、基礎法改悪阻止△龍山(ヨンサン)惨事真相究明と責任者処罰など20余の項目だ。
 記者会見で「今崖っぷちに追いやられた労働者、農民、貧民、民衆が生きるために立った」として「朴槿恵政府が民衆の絶叫の非常時局大会要求案を受け入れないならば全体労働者、農民、貧民、民衆の巨大な抵抗を見ることになるだろう」と朴槿恵政権に対して警告した。

 全教組破壊攻撃に対し反撃の足場かちとる

 雇用労働部の全国教職員労働組合(全教組)に対する「法外労組」通告の効力が当分の間停止されることになった。ソウル行政法院行政13部は11月13日、全教組が「政府の法外労組通報は不当だ」と雇用労働部長官を相手に出していた法外労組通報処分執行停止申請を受け入れた。裁判部は解職者の労組加入を許容する全教組規約を是正せよという雇用労働部の是正命令は適法だとしながらも、全教組を法外労組と見るのかということは争いの余地があるとする判決だ。
 これにより全教組は当分の間、法的地位を維持することになった。しかし法外労組通報を取り消せと提起した本件訴訟の一審判決が出るまで裁判での「法外労組」をめぐる争いは続く。しかし労組側の弁護士は「裁判勝訴の見込みがあるからこそ、このような通報処分執行停止命令が出されたのだ」という見解を出している。
 民主労総の総体破壊の突破口として朴槿恵政権が選んだ全教組破壊攻撃が逆にその攻撃の全面破綻の糸口になったのだ。労働者の力を軽く見た結果だ。民主労総全体の朴槿恵政権糾弾闘争に対する大きな激励になるだろう。

 「鉄道民営化反対」署名が100万突破

 韓国で100万名以上の鉄道民営化反対署名が集計された。
 「KTX(韓国高速鉄道)民営化阻止鉄道公共性強化汎国民対策委員会(汎対委)」は11月20日午後、光化門(クァンファムン)のイスンシン銅像の前で記者会見を開き「鉄道民営化反対署名運動に参加した人の数が100万人を突破した。これは鉄道民営化を断固として防がなくてはならないという国民の意志の表現」だと明らかにした。
 凡対委は昨年から今年まで水西(スソ)発KTXと鉄道産業民営化反対100万人署名運動を展開してきた。ついに11月、署名が100万名を突破した。
 記者会見でパクソクウン汎対委共同代表は「鉄道の安全を脅かし料金暴騰、財閥特恵を呼び起こすKTX民営化は必ずや阻止されなければならない。もし朴槿恵政権が民営化をしないという公約を守らなければ、国民的審判を逃れられないだろう」と警告した。
 イサンジン民主労総副委員長も「今こそ鉄道民営化論難に終止符を打たなければならない時が来た。保守、進歩に関係なく100万を超える国民の鉄道民営化反対の声を黙殺したならば民主労総は闘争で国民的抵抗を拡大させるだろう」と強調した。
 キムミョンファン全国鉄道労組委員長は「国民共同の資産である鉄道を国内の少数の財閥と外国の巨大資本に売り渡そうとする試みを止めなければならない。鉄道労組は国民100万名の意志を集めて、鉄道を止める闘いをとおして民営化を妨げる」と発言した。
 凡対委は記者会見文で「われわれは今日、100万名の署名を青瓦台(チョワンデ)(大統領官邸)に伝達しようと思う。これにもかかわらず政府が引き続き鉄道民営化を推進したならば、12月に鉄道労働者たちはゼネストで鉄道を止め、汎対委と地域対策委の団体は連帯闘争を建設して必ずや民営化を阻止することを宣布する」と明らかにした。
 参加者たちは記者会見後100万人署名用紙を持って直接提出しようと青瓦台に向かったが警察権力に妨げられた。
(写真 100万人を突破した「鉄道民営化反対」署名【11月20日】)

 双龍自動車支部焼香場が平沢工場に

 11月16日、ソウル都心の大韓門(デハンムン)で双龍(サンヨン)自動車支部が24名の犠牲者の慰霊のために維持してきた焼香場を平沢(ピョンテク)の双龍自動車工場前に移すことになった。双龍車支部と「双龍車犠牲者追慕および解雇者復職汎国民対策委員会(汎対委)」は11月16日午後、移転を前にして大韓門前で、「双龍車犠牲者慰霊祭および闘争勝利決意大会」を開催した。
 この間、大韓門焼香場を守ってきた200余名の連帯単位および市民たちも大韓門焼香場前の最後の夜を共に送った。
 キムドクチュン双龍車支部長は「大韓門焼香場を平沢に移すという決定を下ろすまでたやすくはなかった。ここに来る足取りも重かった」と話した。そして「1年8カ月前、22番目の犠牲者の遺影を抱いて切迫した心情で大韓門に来た。その後、市民社会などの連帯で大韓門は追慕の空間を超えて、韓国社会で痛みを受けている人たちの抵抗と闘争の求心になった」「大韓門焼香場を平沢に移したからといって闘いが終わるものではない。支部は双龍車資本を相手に総力闘争を決意したし、今は現場で解雇者復職問題にけりをつけるための資本との一戦を準備している。すでに工場の中でも解雇者たちが復職しなければならないという声が絶えず伝えられているだけに、支部はより力強く工場前集中闘争を決意して、5回目の冬の今年を最後に勝利する。連帯の綱を離さずに、双龍車の同志たちを忘れないでくれ」と要請した。
 チョヒジュ双龍車汎対委共同代表は「慰霊祭と決意大会の後、大韓門焼香場が平沢に移されるけれども、それで終わるのではなく新しい始まりのための宣言だ。解雇労働者たちが現場に帰らない以上、われわれが行くところがどこであれ、そこがまさに焼香場になるだろう。新しく気持ちを整えて民主労総と金属労組を中心にもう一度怒りを集めて双龍車問題解決に総進軍しよう」と述べた。
 クォンヨングク民弁弁護士も「インディアンが雨乞い祭をやれば必ず雨が降る。それは彼らが雨が降るまで雨乞い祭をやるからだ」として「われわれの心の中で双龍車闘争が死なないかぎり、われわれが双龍をあきらめないかぎり、明確に勝利はわれわれの前に近づいてくるのだ。闘いの手綱を緩めない」と決意を述べた。
 またチョンヨンソプ社会進歩連帯事務処長は朴槿恵大統領に送る手紙で「われわれは双龍車の解雇者たちが必ず工場に帰り、犠牲者の名誉を回復するための闘争の新たな覚悟をする」として「あなたが労働者民衆を無視して踏みにじり、資本の宴会の場ばかりを用意することに黙ってはいないだろう。われわれの闘いがあなたの嘘の偽善に隠された反労働、反民衆の素顔を徹底的に暴露するだろう」と発言した。
 「共に生きよう、100人の希望を守る人」で活動してきたパクネグン人権財団の常任理事は大韓門を中心に行った連帯の綱を守り抜くと明らかにした。パクネグン常任理事は「大韓門双龍車焼香場を中心に龍山(ヨンサン)、江汀(カンジョン)、密陽(ミリャン)などの自然な連帯が進められてきた。われわれが持っていた希望がたとえ遅くなることも、遠くなることも、回り道することがあっても、われわれは必ず希望を共につかみ取るしかない。この間、大韓門前で闘ってきた人たちが再び集まり連帯の場としてここを守っていけたらと思う」と述べた。
(写真 双龍車犠牲者慰霊祭【11月16日 大韓門】)

 5人目の地下鉄運転士自殺の責任を問う

 双龍自動車の24人の犠牲者、サムスン電子サービス支会のチェジョンボム烈士の死と労働者の死が続くなかで、また1人の地下鉄運転士が自ら命を断ちソウル市とソウル都市鉄道公社に対する責任論が拡大している。今まで総計5人の運転士がパニック障害と神経精神疾患などで相次いで命を断ったが、再発防止策を約束していた自治体と機関が運転士の待遇改善のための合意さえも履行せずにいる状態だ。
 去る18日に自ら命を断ったソウル都市鉄道公社7号線機関士チョン氏は4年前から鬱病に苦しんで来て、去る9月にも自殺を試みたことがあり、10月からは神経精神科で薬物治療を受けてきた。遺族によると経済問題はまったくなかったものと確認されている。ソウル都市鉄道労組と遺族側は故人の死亡が劣悪な労働環境と組織文化、ひどい労務管理などによるものだと見ている。労組によると、遺族らは「故人が利用者の苦情やさまざまな車種適応の困難さに苦しんできており、苦情関連経緯書を書くのが辛いと訴えてきた。成果給に対する不利益、勤務時間外奉仕活動の強要などのために心的にとても辛いようだった」と証言している。
 また遺族らは「暑いとか寒いとかまで、俺ができることはないのに乗客は苦情を上げる。そうすると俺は始末書を書かなければならず、叱られるのがとてもいやだ。たいしたことのない成果給まで影響を受ける」と吐露していたと言う。
 地下鉄機関士が精神的ストレスを訴えて自ら命を断つのは今回が初めてではない。2003年から5名の機関士たちがパニック障害や神経精神疾患などで自ら命を断った。今年だけでも1月にファン機関士が神経精神疾患で投身し、10月にもチョン機関士が神経精神疾患を病んで自宅で死亡した。
 労組側は機関士の引き続く深刻な職務ストレスによるものであると分析している。実際に機関士たちの臨時健康検診結果、機関士たちは一般人よりも心的外傷後ストレス障害、憂鬱症などの比率が高いという結果が出ている。外傷後ストレス障害の場合、一般人よりも5・6%も高かった。
 労組は声明書で「反復する機関士たちの残念な死にもかかわらず公社は何も変えず、連続自殺事故の背景には暴圧的な組織文化、悪質な労務管理が常に存在していた。殉職事故に対して再発防止を約束したソウル市と、暴圧的組織文化と悪質な労務管理を放置して助長したイヒスン運営本部長、在任期間中の3件の機関士殉職事故を発生させたキムギチュン社長は今回の事態に対して責任を負わなければならないだろう」と非難している。
 (大森民雄)
(写真 横断幕には「人間は希望だ。これ以上殺すな」と運転士の引き続く自殺に対する責任者の処罰と対策を整えるためのソウル都市鉄道労働組合徹夜籠城と書いてある)

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月刊『国際労働運動』(449号2-2)(2014/01/01)

News&Reviw

■News & Review ドイツ

非正規職化攻撃と闘うドイツ労働者

新自由主義への歴史的反撃の開始

低賃金・雇用破壊・社会保障解体

  「高賃金・安定した雇用・社会保障制度の完備」「EUの優等生」と言われてきたドイツの労働者の5分の1が、低賃金労働者である(表参照)。この背景にあるのが、1990年代以来の「労働力市場の柔軟化」「雇用・労働形態の多様化」と称して強行されてきた非正規職の急増である。91年に、全就労者の12・8%であった非正規職労働者が、2012年には21・8%にまで増大したのだ。これは、実数でみると正規職労働者2120万人に対し、非正規職労働者は790万人である。官庁統計では「標準的就労者」(終身雇用で年金受給資格などを持つ)、すなわち正規職労働者に対して、非正規職労働者は「非典型就労者」と呼ばれ、「週20時間以下の短時間就労者」「有期就労者」「僅少就労者」「派遣就労者」などに分類され、細分化され、無権利状態にたたき込まれているのだ。
これに加えて、「失業者の労働市場への呼び戻し」と称して、失業手当を生活費の最低限の水準以下に切り下げて、ボランティアという形での非正規・低賃金労働をやらねば生きていけない現実を失業者に強制するという攻撃が行われてきた。これは、最低賃金制のないドイツにおいて、「ミニジョブ」「1ユーロ・ジョブ」(時給1ユーロ/11月22日時点で約137円)と呼ばれ、医療・保健・教育などの公的サービス部門や、流通などで、大規模に「雇用」され、正規職労働者を「駆逐」するてこにされている。
このような現実の中で、ダブル・ジョブが、高年齢層まで含めて社会的に拡大し、非正規職労働者の中では、女性の比率が激増している。
これが、失業率がEU全体の平均で12%に対し、ドイツは6・9%(いずれも201
3年9月現在)という数字の裏に隠されている非正規職化・低賃金化・社会保障の解体・民営化という新自由主義攻撃のもたらした現実だ。
こうした階級戦争を新たな段階に押し上げたのは、社民党シュレーダー政権下の20
03年来の「ハルツ改革」、すなわち新自由主義のヨーロッパ版としての戦後ドイツ社会の改革=解体攻撃であり、世界大恐慌のもとで、いっそう促進されてきた。

東西統一・新自由主義の破綻と大恐慌

 ドイツで新自由主義攻撃が本格化したのは、1990年代に入ってからである。19
90年10月東西ドイツ統一、91年7月ソ連崩壊・東欧圏解体、93年12月EU(ヨーロッパ連合)結成――この戦後世界体制の構造的崩壊を意味する三つの出来事が、ドイツ帝国主義とドイツ階級闘争に新たな局面を開いた。
ドイツは、朝鮮とともに分割国家として戦後世界体制の柱をなし、帝国主義的復活を成し遂げてきたが、1974〜75年世界恐慌の爆発による戦後的発展の終わりとその後の米帝とソ連の世界支配の動揺・後退の中で、西独帝国主義による東独の事実上の併合という形で、東西ドイツ統一を成し遂げたのであった。これはヨーロッパの中心における強大なドイツ帝国主義の復活を意味し、帝国主義間争闘戦の激化をもたらしたが、同時に、分割によって強制されたドイツ労働者階級の階級闘争の分断をのりこえ、階級的団結を奪還する条件を準備するものでもあった。
ドイツ帝国主義は、東西統一をもって、スターリン主義支配のもとにあった東独の政治と経済を解体・吸収するために、国営・公営企業の民営化(=西ドイツ企業による乗っ取り)の促進、インフラ投資などを中心に、膨大な国家予算を投入した。このため、統一ドイツは財政危機の重圧下に置かれ、失業率も11・6%(2000年)に達した。
これは同時に、チェコ・ハンガリー・ポーランドなど旧中東欧スターリン主義圏を、EU=独仏帝国主義主導下のヨーロッパに統合する過程と並行して進んだ。〔中東欧諸国のEUへの正式加盟は2004年になってからであるが、上記の中東欧主要3国は、91年にEUと「欧州協定」を締結、99年にNATOに参加している〕
こうした過程は、これら中東欧の旧スターリン主義国家の国有企業・施設の大規模な民営化、そして同時に中東欧労働者の権利剥奪として強行されていった。過剰資本の重圧のもとで、投資(投機)先を求めていた欧米資本は、金融自由化の波の中で、これを絶好機として中東欧諸国に乱入して、手厚い自国の国家的保護のもとで、これら諸国の工場・インフラ・金融機関などを捨て値で買収した。それは、まさに新自由主義を特徴づけるショック・ドクトリン≠サのもの、衝撃的国家暴力のむき出しの発動であった。〔この攻撃は、戦後体制の中でスターリン主義に対する反乱を繰り返してきた中東欧労働者人民(1956年ハンガリー、1968年チェコ、1982年ポーランドなど)の革命的決起に対する予防反革命としての意味を持つ〕
この時期、1990年代とは、米日英を先頭としてすでに80年代から開始されていた新自由主義攻撃が、「グローバリゼーション」「規制緩和」「民営化」「外注化」「労組破壊」などの形をとって、中南米・アジア諸国などにわたって展開され、帝国主義間争闘戦の激化と労働者階級に対する階級戦争として強行され、いわゆるBRICS諸国の登場とバブル的膨張の破綻が露呈されていく過程であった。

新自由主義の本格化

このような展開を受けて、90年代中ごろからEU内部において新自由主義攻撃が本格的に開始されていった。ドイツ帝国主義は、まずは保守コール政権(83〜98年)、社民党と緑の党の連立=シュレーダー政権(98〜05年)、保守党と社民党の「大連立」政権(2007〜08年)、保守党のメルケル政権(09〜13年)のもとで、新自由主義攻撃を徹底して展開していったのである。
その攻撃の第一の柱は、保守党コール政権の『アジェンダ2010』に基づいて、社民党シュレーダー政権が、02年に設置したハルツ委員会(その委員長=フォルクスワーゲン社社長の名)が策定した『ハルツ計画』である。これはドイツの過去との断絶≠掲げて、戦後的な「社会的市場経済」を解体し、労働者階級への系統的な階級戦争を開始する宣言であり、まさに中曽根・レーガン・サッチャーが口火を切った新自由主義攻撃のヨーロッパ版=ドイツ版であった。
『ハルツ計画』は、一次から四次にわたり、体系的に社会保障制度と失業手当・失業対策を、「自己責任」型に転換し、戦後的社会福祉・保障制度の根本的解体をめざすもので、その集大成である〈ハルツW〉は、ドイツ労働者人民の憎しみの的になった。それを象徴するのが、「ミニジョブ」「1ユーロ・ジョブ」である。
第二に、新自由主義下の争闘戦激化の中で、国際競争力の強化の名の下に強行された大規模で長期にわたる「賃金抑制」である。これは、ドイツ労働総同盟を引きずり込み、全産業分野で強行され、その結果、90年代の後半、ドイツ労働者の賃金は、EU諸国の中でも、上昇率からいっても、実質的な水準からいっても、大幅に下落し、冒頭で指摘したように、低賃金労働者が激増した。この攻撃は、次に述べる外注化を圧力にして、「賃上げを要求するなら、低賃金の海外に工場を移転するぞ」というブルジョアジーの恫喝をてことして行われた。
第三に、グローバリゼーションの名の下での外注化(アウトソーシング)の系統的な大規模な強行である。これは、すでに70年代のシュミット政権の時代において、74〜75年恐慌の打撃の中から、ドイツ産業の国際競争力の相対的低下は高賃金に原因がある(「産業的立地条件」)として、低賃金地帯・諸国に、工場を移転する攻撃として行われてきたものである。90年代後半から2000年代に入って、東欧スターリン主義圏の解体、EUへの吸収の結果、工場の海外移転が急激に増大した。現在では、ドイツの産業企業の約40%が、工場を海外に移転しており、その結果、ドイツでは大量首切り、工場閉鎖が頻発した。
第四に、すでに見たように、従来の雇用形態のドラスティックな解体、正規雇用労働者の減少と、非正規雇用労働者の激増である。ドイツの従来の雇用・労働形態は、一変した。「不安定雇用」が、支配的傾向となった。
第五に、賃金・労働条件などをめぐる労資交渉において、従来のような、全産業的な労資交渉によって全国均一の統一賃金協定、労働協約を締結するという形態を解体して、各企業・地方、そして工場単位に分解・解体することである。企業・工場ごとの条件(収益状況、労資の力関係など)に依拠して決定が行われ、労働者の団結は、無限に解体・破壊されていったのである。
第六に、民営化攻撃の進展である。テンポや方式は、産業分野ごとに異なるが、趨勢としての民営化は、この間、郵政・通信・鉄道を中心に大規模に進んだ(本誌11月号参照)。
第七に、この過程でブルジョアジーの先兵となったのが、社会民主党であり、その支配下にあるドイツ労働総同盟(DGB)だったということである。98年にシュレーダー政権が成立した際に、ただちに政労資の共同声明に基づいて、「雇用と競争力のための同盟」が結成され、戦後的労資協調の枠を越えたドイツ帝国主義の階級支配の柱が再構築されたのだ。
シュレーダー政権は、就任時に、前保守党政権の内外政策の基本的継承を宣言し、安保国防政策でも、「戦後ドイツ」の枠を越え、NATOによるユーゴ侵略へのドイツ国防軍派兵に踏み切った。これに対し、反体制的批判勢力を装って登場した「緑の党」は、シュレーダー内閣に参加して外務大臣の役を担い、海外派兵を推進した。そして東西ドイツの統一後に形成された「左翼党」が、これを「左」から補完し、新自由主義政策遂行の一翼を担っているのが現状である。

鉄道民営化反対・反原発軸に反撃開始

 こうした情勢に対し、ドイツ労働者階級の反撃が、この数年来開始されている。
07〜08年に「ドイツ=ストライキ共和国」を実現した鉄道労組、電気通信労組、公共サービス労働者、医療労働者の闘い、11年のゴアレーベンの核燃料廃棄物搬入阻止闘争が突破口を切り開いた。12年には、職場で闘う戦闘的労働者によるベルリンの「革命的メーデー」が、体制内労組の動員を上回る2万5千人の結集でかちとられ、会場で動労千葉からの連帯メッセージが読み上げられた。そして今回の11月集会には、「ベルリン都市鉄道民営化反対行動委員会」代表の機関士労働者が「分割・民営化、非正規職化、搾取の体制反対」というスローガンを書いたTシャツで登壇し、国鉄決戦との路線的一致を確認した。
大恐慌下における階級的労働運動の新たな国際連帯が、ドイツにおいても新たな次元を切り開きつつあるのだ。
(川武信夫)
(写真 2013年ルール工業地帯でのメーデー)
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 (表)欧州各国と日米の低賃金労働者の割合(%)(2010年/OECD)

 ハンガリー  21
 英国     20.6
 ドイツ    20.5
 アイルランド 20.1
 スロバキア  20
 ポーランド  19.6
 スペイン   15.6
 ギリシャ   13.3
 イタリア    9.5
 スイス     9.2
 ポルトガル   8.9
 ベルギー    4
 米国     25.3
 日本     14.5
「低賃金労働者」は原則としてフルタイム就業者の賃金の中央値の3分の2以下で働く人。ドイツの数字は「ミニジョブ」を含まない)〔朝日/03年7月23日〕

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月刊『国際労働運動』(449号3-1)(2014/01/01)

(写真 ストライキを闘う南昌駅の貨物労働者)

特集

特集 中国は大動乱情勢に突入

バブル経済の崩壊が切迫

激発する労働者階級の闘い

 はじめに

 新自由主義の破産としての世界大恐慌の深化、大失業と戦争と革命の時代の始まり、帝国主義間・大国間の争闘戦の激化、米帝の対中対峙対決の下で、中国スターリン主義は政治的にも経済的にも破局を深め、崩壊過程に突入している。リストラと低賃金、労働強化、異常な格差の拡大などに対する中国の労働者階級の闘いが激発し、中国はまさに大動乱情勢、階級的大激動情勢に突入している。
 第1章は、11月に開催された中国共産党第18期中央委員会第三回全体会議をもとに中国スターリン主義の現在の危機を分析し、金融恐慌や政治危機の深さを見ていきたい。
 第2章では、スターリン主義体制の下で吹き荒れる新自由主義的な政策の歴史的経緯と中身を検討し、中国における外注化と非正規職化の現状を解き明かしたい。
 第3章では、「中国鉄道の分割・民営化」に焦点を当て、労働者階級への階級的攻撃の中身を鮮明にしたい。

第1章

 T 政治的経済的に破局深める――怒りの中の第18期三中全会

 1 習近平政権と対決し激発するストライキ

(写真 警察隊と対峙する凌進電子有限会社の労働者【11月8日 深せん】)

 08年のリーマン・ショック以降の世界大恐慌に「息継ぎ」を与えたとされる中国経済は、すさまじい人為的なバブル経済であり、スターリン主義体制下での新自由主義的な政策の展開の結果である。その積もりに積もった矛盾が今、バブルの崩壊、金融恐慌として爆発しようとしている。
そしてこのバブル経済と新自由主義的な政策の犠牲にされ、リストラと低賃金、労働強化、異常な格差の拡大など、その矛盾の一切を押しつけられてきた中国の労働者階級、とりわけ派遣労働者をはじめとする非正規職の労働者の闘いが、中国スターリン主義を激しく揺さぶっている。
こうした状況の中で、中国鉄道の分割・民営化が強行され、今後の中国での「改革・開放」政策、新たな民営化政策、新自由主義的政策の突破口になろうとしている。
11月9日から12日にかけて北京で開催された中国共産党第18期中央委員会第三回全体会議(第18期三中全会)は、中国スターリン主義の経済危機、政治危機の深まりの中で、新たな新自由主義的政策、民営化政策を決定し、中国鉄道の分割・民営化を切り口に、国有企業の民営化政策を新たな規模で推進し、体制の延命を図ろうとしている。

(写真 武鳴県政府庁舎を包囲し抗議する広西省武鳴県頼坡村の村民【11月9日】)

 嵐のようなストライキ

 この会議を前後しても、労働者階級の嵐のようなストライキが中国では爆発している。11月に入ってからだけでも、5日から6日かけて広東省東莞市での日系南部プラスチック東莞会社の蘇州工場で工場の売却に抗議してストライキが闘われ、また同じ両日四川省内江市威遠県で炭鉱労働者が労働条件の改善を求めてデモに立っている。
 会議前日の8日には、広東省深せん市宝安区凌進電子有限会社で、やはり工場の移転に抗議して6日からストライキを闘っていた数百人の労働者に対して警察隊が暴行をふるい2人が意識を失い、7人が逮捕される事件が起きた。
 会議開催中の11日には、青海省格爾木市でタクシー労働者がストライキを決行し、12日には、浙江省杭州市蕭山区で賃上げを求める労働者が道路を封鎖、逮捕者が出た。これらはほんの一例に過ぎず、枚挙に暇がない。
 さらに新自由主義的政策の展開、バブル経済の下で膨大な農民の農地や労働者の宅地などの強制収用が行われ、それが労働者・農民の怒りに火をつけている。
 会議開催日の9日には、副県長が商人と結託して山を爆破し鉱山を開き、その結果空気や水が汚染されていることに抗議して、広西省武鳴県頼坡村の1千人以上の村民が、県政府に抗議し、警察に弾圧され大量の逮捕者が出る事件が起きている。
 このような労働者や農民の抗議に対して、習近平政権が行っていることは、徹底した弾圧である。労働運動活動家が次々と逮捕され、迪威信家具用品深せん有限会社のストライキを指導したとされる農民工・呉貴軍氏は160日を超える拘留をされ起訴されようとしている。
 上訴のために北京を訪れた農民たちは、上訴を聞いてもらえるどころか門前払いで、場合によっては逮捕されてしまう。ネット規制も強化され、今年8月より新浪微波(中国版ツィッターの代表的存在)上での10万3千件以上のアカウントが閉鎖された。さらに「デマ」を書き込んだとして労働者や学生、マスコミ関係者が弾圧される事件が起きている。
(写真 浙江省杭州市蕭山区で賃上げを求める労働者が道路を封鎖、逮捕者も出る【11月12日】)

 スターリン主義への怒り

 10月28日の天安門前での爆発事件、11月6日の山西省太原市での山西省共産党委員会ビル前での爆発事件は、中国スターリン主義とその新自由主義的政策への労働者階級人民の怒りとして爆発している。
 中国スターリン主義は、「背後にテロ組織が存在している」と称して、とりわけウイグル民族への民族抑圧を意図的にあおっているが、背後に組織があろうがなかろうが、これらの事件は労働者農民の中国スターリン主義の罪業への真正面からの弾劾であり、倒されるべきは中国スターリン主義であることを全世界に示している。
 中国はまさに大動乱情勢、階級的大激動情勢に突入している。こうした中で、青年労働者を先頭とした新たな労働運動と闘いも中国で始まっている。 第2節 2 金融危機の深まり、バブル経済崩壊過程への突入
 米リーマン・ショックをきっかけとした世界大恐慌の突入に対して、中国政府は恐慌乗り切りのために4兆元(56兆円)を投入する大型景気刺激対策をとった。この結果、中国経済は、短期間で「回復」し、その「回復」した中国経済に依拠することで米帝など帝国主義諸国もなんとか延命することができた。
 しかしこの中国経済の「回復」とは、実態はすさまじいバブル経済であり、次の破局を用意するものでしかなかった。
 米リーマン・ショックは、米住宅バブルの崩壊とサブプライム(低所得者向け)ローンの焦げつきによる金融商品の暴落が引き金を引いたが、それと同じような現実が今、中国バブル経済の中で再現されようとしている。理財商品の暴落だ。
(写真 山西省太源市での山西省共産党委員会ビル爆破事件【11月6日】)

 膨大な借金抱える地方政府

 すでに各地の地方政府は、膨大な借金を抱えている。バブル経済を続けるための投資が、地方政府を破局に追い込んでいる。しかし、投資をやめれば一挙に経済が崩壊してしまうため、地方政府は必死でさらに投資をし続け、バブル経済を維持しなければならない。
 ここで前提的に確認しておきたいことは、中国の地方政府は独自に債権を発行することを禁止されているということである。資金を集めるために、地方債を発行することができないのだ。でも、開発には資金がいる。そこで考えだされたのが、地方政府が資金を集めるために「平台」と呼ばれる「部署」をつくり、それが民間の金融業者などを組織して、彼らに債権を発行させるやり方であった。この地方政府の代わりに資金を集める金融業者などがいわゆるシャドーバンキングである。

 サブプライムローンそっくりな理財商品

 彼らは地方政府が進める「開発プロジェクト」を債券化して細分し、例えば年利10%の高利回りの理財商品として発行し、主として銀行などを通じて富裕層に売買させる。その売り上げは、シャドーバンキングを通じて最後は地方政府に集められ、開発計画に投資されるのである。こうした手順による無数の開発を重ねて、バブル経済が継続するわけである。
 中国の理財商品は、米のサブプライムローンと酷似している。
 だが「開発プロジェクト」の多くは、当初予想されていたような利益を生み出さない。中国には乱開発の結果建てられた、人の住まない巨大都市(ゴーストタウン)や誰も行かない巨大遊園地、テーマパークがあちこちにある。その象徴が東莞市の「世界最大の商店街」である。その結果、地方政府はますます借金を抱えることになるし、銀行も不良債権を抱えることになる。高利回りの理財商品は、完全に支払い不能に陥るか、その前にどこかで信用を喪失し、紙くずと化すのは目に見えている。
 中国社会科学院による10月9日の発表によれば、中国経済におけるシャドーバンキングの規模は、すでに20・5兆元(328兆円)となっており、これは中国のGDPの40%、融資総額の16%に達している。日本のノンバンクのバブル崩壊、アメリカのサブプライムローンの崩壊は、それぞれの融資総額がGDPの1・5〜1・7倍に達した段階で起きているが、中国はすでに融資総額がGDPの2・5倍に達しているという。
 つまり中国ではいつバブルが崩壊してもおかしくない状況に来ているのである。理財商品が引き金となって、中国で金融恐慌が爆発し、世界に波及する事態が爆発しようとしている。

 崩壊寸前のバブル経済

 中国中央政府、そして地方政府もこの危機を逃れようと必死である。
 中国はスターリン主義体制であり、すべての土地が国有である(注1)。地方政府が膨大な借金を抱えても、次々と「乱開発」を強行して経済にてこ入れするとともに、それによって土地の資産価値を上げることで「借金の担保」を地方政府は確保し、崩壊を逃れようとしている。
 結局はバブル経済を維持し、より一層推進することで「当面の危機」を乗り切ること、しかも財政が崩壊すればするほど「土地の資産価値を上げる」ためにも、それを積極的に続けるしかない。
 だがその結果、地方政府はますます経済破綻に陥り借金を増やして危機を深めていく。いくら体制が違うとはいえ、こんなやり方がいつまでも続くわけがない。ここに今の中国経済の破局的な事態が示されている。
 リーマン・ショックの危機から世界の帝国主義経済を延命させた中国経済であるが、その結果、今度は中国発の「第2のリーマン・ショック」が引き起こされようとしており、世界経済を本格的な大恐慌にたたきこもうとしている。
 中国経済は、とりわけリーマン・ショック以降、今や世界帝国主義経済体制にますます組み込まれ、巨大な影響力を持っている。金融恐慌―バブル経済の崩壊が起きれば、世界経済は破局的事態に至るのは必至である。世界史的事件になる。

(注1)スターリン主義は、一国社会主義の立場から土地を「国有」とする。これは本来の世界革命を通じて成立する共産主義社会における「社会有」とはまったく違うものである。中国スターリン主義における土地の「国有」はスターリン主義の労働者・農民支配にとって重要な役割を果たし、現在では中国のバブル経済の維持に決定的な役割を果たしているのである。
(写真 バブル崩壊でゴーストタウンと化した広東省東莞市内の「世界最大の商店街」)

 3 政治危機の深まりとスターリン主義支配体制の崩壊

 すさまじいインフレ

 こうした中国スターリン主義のとめどもないバブル経済政策は、中国の労働者と農民の生活を根底から破壊し、その怒りを爆発させている。
第一に、すさまじいインフレである。こうした膨大な資金の投入、そして経済のバブル化は、当然にも激しいインフレによる物価高を引き起こす。住宅価格の上昇は止まらず、物価水準が4〜5倍も違うのに、中国の北京の土地の値段は、日本の東京都と同じだと言われる。もちろん一般の労働者は家など買えない。中国国家統計局が10月14日に発表した9月の消費者物価指数は前年同月比で3・1%上昇した。このすさまじいインフレは、当然にも労働者や農民の家計を直撃し、その生活を破壊している。

(写真 10月24日、江西省防城港市白龍村での強制収用。執行者の暴力で村民3人が負傷した)

 農地・住居の強奪

 第二に、こうしたバブル経済による「乱開発」は、農民や労働者からの農地や住居の強奪である。中国には個人の土地所有権がない。すべて国家の土地である。したがって、政府は法的には簡単に土地を強制収用できる。ある日突然政府と企業の関係者が来て、住宅を破壊し、土地を囲い込み、抵抗する農民や労働者に暴力をふるって土地も家屋も強制収用する。このタダ同然で得た土地で、開発業者は事業を行うのである。こういうことが中国では連日あちこちで発生し、負傷者や死者まで出ている。
 だが法律がどうであろうと、こんな暴挙が許されて良いはずがない。このような土地の強奪は、農民や労働者の怨嗟の的となって闘いを呼び起こしており、工場における労働者のストライキの爆発とともに、中国スターリン主義を痛打している。
 さらに、地方政府が土地の強制収用を許可するのだが、それは開発業者のためにやるのであり、当然にもそこには腐敗した癒着が生まれ、膨大な賄賂が業者から政府関係者に渡ることになる。この腐敗に対しても、労働者、農民の怒りが爆発しているのである。
 相次ぐ労働者のストライキや暴動、土地強奪への怒りの闘いは、「開発・開放」政策で延命しようとしている中国スターリン主義の支配と真っ向から対決し、それを激しく揺さぶり、政治危機を生み出している。

 政治危機の象徴 薄煕来事件の意味

 中国が抱える政治危機を象徴的に示したのが薄煕来元重慶市書記の事件である。
 重慶市元書記薄煕来は、毛沢東を気取った独裁的な政治スタイルをとり、「紅歌運動」などの「(スターリン主義)左派」的な大衆組織化を展開した。彼はこうした政治で労働者など底辺層の人々の「改革・開放」政策への批判や不満を組織し、その力を背景に最高権力者集団である政治局常務委員入りを狙っていた。
 実際に、毛沢東派をはじめ、現政権、「改革・開放政策」に不満を持つ層が薄煕来を支持するという状況も生まれている。だが薄煕来は、一方で積極的に重慶での「開発」政策を進めており、なんら「改革・開放」を否定するものではなかった。このような毛沢東的な政治スタイルは、あくまでも彼の政治的野心のためであった。
 だが中央政府は、こうした形で労働者人民の中央への批判や不満が大規模に組織されることは、いかに薄煕来の本音ではなく野心のためであるにしても、絶対に許せないことであった。その運動自身が薄煕来自身の思惑をも超えて自己展開し、スターリン主義の一派としての毛沢東主義をも乗り越える、中国スターリン主義を真に打倒するような思想や運動が生み出されかねない危険を本能的にかぎとった。
 こうして薄煕来の直属の部下であった王立軍の米大使館逃げ込み事件をきっかけにして薄煕来は昨年4月10日に失脚し、収賄罪、横領罪、職権乱用罪で起訴され、今年9月21日に山東省済南市の裁判所で無期懲役を宣告されたのである。
 この事件が意味するものは、今の中国に現政府に対する広範な労働者階級の怒りが存在していること、それが中国スターリン主義を恐怖させており、それがスターリン主義内部での「路線対立」などの外観をとって、中国共産党指導部間の対立と分裂を激しく促進しているということである。

 相次ぐチベットやウイグルの民族暴動

 さらにチベットやウイグルでの民族解放闘争の激化である。チベットでの焼身自殺による抗議、一方でウイグル自治区での襲撃事件や10月28日の天安門前での車爆破事件など、とどまるところを知らない。
 中国スターリン主義は現在、新自由主義的な政策の一環として、諸民族に対してその自治区などでバブル経済維持のための土地強奪を次々と暴力的に行い、住居を奪い、農業や牧畜などの生業を破壊している。
 さらには言語をも奪い、同化政策を貫こうとしている。また諸民族で都市に働きに出た者は差別され、低賃金で過酷な労働をさせられ、農民工としても最低の状況に置かれている。こうした新自由主義的な現実への怒りが爆発しているのだ。それが一方で中国スターリン主義の政治危機を深化させている。
 問われているのは、中国スターリン主義の下で吹き荒れている新自由主義的な政策の展開に対して、漢民族を含めた諸民族の労働者階級の階級的な団結の形成であり、その階級的な闘いで中国スターリン主義を打倒することである。この民族の壁を越えた労働者階級の階級的な団結と闘いこそ、中国スターリン主義が最も恐れているものである。
(写真 天安門前での爆破事件【10月28日】)

 4 中国スターリン主義の危機を露呈した第18期三中全会

 こうした経済危機、政治危機の中で、中国スターリン主義は、11月9日から12日まで、北京で中国共産党第18期中央委員会第三回全体会議(「第18期三中全会」)を開催した。今後の改革開放政策を決定する重要会議≠ニされたが、この会議は労働者の嵐のような無数のストライキに包まれ、農民の抗議、上訴、そして爆弾事件までもたたきつけられた、まさに労働者階級人民の怒りの中で開催された会議となった。
 この会議は、「改革・開放」政策の破綻と、その乗り切りのための新たな新自由主義的な政策の導入を決定した会議となった。

 鉄道の分割・民営化 上海自由貿易特区設置

 

その実際の政策上の柱となるものが、中国鉄道の分割・民営化であり、もうひとつは上海自由貿易区設置である。中国鉄道の分割・民営化については後で取り上げるが、ここではその前提として、まず会議の中身について分析しておきたい。
▼「コミュニケ」と「決定」
12日の会議終了直後に「公報」(以下「コミュニケ」と略)、および15日に「中国共産党中央の改革の全面深化に関するいくつかの重大問題の決定」(以下、「決定」と略)が発表された。
それによれば、「経済体制の改革は、改革を全面的に深化させる重点である。その核心は政府と市場の関係を良く処理することで、資源の配置において市場に決定的な役割を果たさせ、そして政府の役割をさらに良く発揮するようにすることだ」として市場経済政策を一層推進するとした。
同時に「公有制を主体としながら、多様な所有制経済の共同発展を基本的な経済制度とするのが中国の特色ある社会主義制度の重要な支柱である」とし、さらに「財産権をしっかり守りながら、混合所有制経済を積極的に発展させる」(「コミュニケ」)とまで言っている。
▼「混合所有制経済」
ここで重要なのは「混合所有性経済」という言葉である。それは国有企業への本格的な民間資本の導入、民営化を意味している。
「決定」では「混合所有制経済」について、さらに詳しく次のように書かれている。
▼「非国有資本などを持ち株に入り混じらせ」
「積極的に混合所有制経済を発展させる。国有資本、集団資本、非国有資本などを持ち株に入り混じらせ、相互を融合させた混合所有制経済を、基本的な経済制度の重要な実現形式とするが、これは国有資本がその機能を拡大するのに有利である。価値を増殖させ、競争力を高め、それぞれの所有制資本が長所を取って短所を補い、相互促進し、共同発展していくのに有利である。さらに多くの国有経済とその他の所有制経済が発展して混合所有制経済となっていくことを認める。国有資本投資プログラムでは、非国有資本が株を買うことを認める。混合所有制経済は、職員が株を持つことを許し、資本所有者と労働者の利益共同体をつくりだす」
そして次のように続ける。
▼国有企業を「国有資本投資会社」に
「国有資本管理体制を完全なものとし、資本の管理は、国有資産の監督・管理を強めることを主とし、国有資本が経営権を授けるシステムを改革し、いくつかの国有資本運営会社を組織する。条件を付けて国有企業を国有資本投資会社に改組することを支持する。国有資本の投資と運営は、国家戦略目標に貢献すべきであり、国家の安全、国民経済の生命線となる重要事業や要となる領域に係わるところにさらに多く投資されるべきであり、公共サービスの提供に重点を置き、将来を展望する戦略的な重要産業を発展させ、生態環境を保護し、科学技術の進歩を支持、国家の安全を保障するのである」
このように、国有企業への民間投資を積極的に推進し民営化するとともに、国有企業自身が「国有資本投資会社」となって、従来なら国有企業がやっていた国家的事業、公的事業への「混合所有制経済」による参入を積極的に進めていく方針が「決定」には書かれているのである。
すでに中国では1992年より「所有と経営の分離」が言われて、国営企業は国有企業となり、一部の中小の国営企業は実際に民営化された経緯がある。しかし重要な国有企業は存続し、依然として中国経済の中軸を担っている。これは中国スターリン主義による経済統制、及び労働者支配という点からも維持されている。また「経営の分離」で民営化が進んだと言っても、民間資本が入り込むには規制が多く、実際にはスターリン主義官僚が利権で経営をする「民営化」であった面が強い。
だが、今回の会議は、この規制を緩めて、国有企業における民間資本の導入を一層進めた形で推進しようとするものだ。そしてさらに「国有企業」を今度は「国有資本投資会社」に改組して、全社会の民営化の推進軸にしようとしているのである。その意味で実に画期的な決定である。
事実この会議の最中の11日に、中国の国有資産監督管理委員会(SASAC)は、民間投資家がより多くの国有企業株を取得できるようにする方針を明らかにし、「民間資本による国有企業への投資を歓迎する」とした。完全に会議の中身と呼応している。
▼国有企業の民営化の突破口=鉄道の分割・民営化
この国有企業の民営化政策の突破口となっているのが、中国鉄道の分割・民営化にほかならない。すでに中国鉄道の分割・民営化に関しては、「外資を含む民間資本の導入」が言われており、この会議で決定された国有企業のより進んだ形での民営化が先取り的に行われようとしているのである。この一点からも、中国鉄道の分割・民営化問題の大きさは明らかである。
ただここで注意しなければならないことは、国有企業の「民営化」と言っても中国の場合は、あくまでも「民間資本の参入」および「経営の民営化」である。資産の民営化は原則としてない。中国鉄道の民営化も、あくまでも経営権の民営化であり、土地などの財産権は国家に帰属する。
中国では土地はすべて国有であり、国家以外のものに土地の所有権はなく、それを揺るがすことはスターリン主義支配の解体につながるからである。さらに民間資本を導入し、経営権を移譲するにしても、重要な国有企業において、スターリン主義官僚の影響力からまったく離れてしまうということは、今の中国の支配体制の現状からは考えられない。
この国有企業のより一層の民営化推進は、中国経済の危機と一体である。スターリン主義体制を維持しつつ、もっと徹底的な新自由主義的な政策を展開し、この危機を乗り切ろうとしているのである。しかしこの民営化の結果は、一層の経済の破局であるとともに、膨大な労働者の首切り・リストラであり、労働者階級の決起がさらに不可避的に増大するだろう。

(写真 北京に来て上訴する人々)

▼農村の土地問題、戸籍問題
またこの会議では、農村の土地問題、戸籍制度問題などが討議され、「速やかに新しい農業経営システムを構築し、農民により多くの財産権を与え、都市と農村の平等な商品の交換と公共資源の平等な配置を推進する」と「コミュニケ」は書いている。
さらに「決定」では「農村の集団経営農地の売買、賃貸、投資に用いることを許し、国有地の売買と同等、同権、同価格とし、強制収用地の範囲を縮小し、強制収用される農民への保障をしっかり整える。…土地の賃貸、売買、担保、抵当の流通市場を完備する」と書かれている。
(写真 一人っ子政策の結果、戸籍をもてない「黒孩子」。戸籍がほしい∞学校に行きたい≠ニ訴えている)
また「戸籍制度改革を推進する」として「鎮、小さな都市の入籍制限制度を全面撤廃し、次第に中都市の制限を撤廃し、合理的な大都市の入籍許可条件を確定し、特大都市の人口規模を厳格にコントロールする」としている。
以上の記述は、中国での農業・農民問題の深刻さを示している。中国はすでに、農業国ではない。中国の公式な人口統計によれば、11年に都市人口が農村人口を上回り、都市と農村の人口が逆転した。
だが法律上は、この都市に住む多くの人々が農民工であり、つまり戸籍上の身分は「農民」とされているのである。彼らの多くは農村に土地を持っている。中国では土地はそもそも国有であるが、その上で特に農村では集団所有(集団経営農地)という形をとっている。したがってこの農地の「使用権」すら、農民は勝手に売買はできない。その結果、未耕作地も増大し、しかもそのまま有効活用されないままに放置され、農村は荒廃していくという現実も生まれている。
だから多くの農民が都市プロレタリアートになっている現実を踏まえて、農民戸籍と都市戸籍を分けている現在の戸籍制度の改善、農地の流動化と市場経済化が論議になるのはある意味で当然の流れなのである。一方で一人っ子政策の結果、極端な高齢化社会(若年労働者不足)になろうとしており、さらに一人っ子政策に反して生まれた「戸籍を持たない子ども」(「黒孩子」)の存在問題も大きい。そこまで中国スターリン主義の農村危機は深刻なのである。
だが土地の売買や賃貸、担保や抵当の権利を認めるということは、あくまで「使用権」であると言っても、それは事実上の土地の「所有権」の売買になりかねない。そのことはスターリン主義支配の根幹をなす土地の国有制を揺るがしかねない問題をはらむ。
▼農地の同権・同価格化
さらに現実的にはこちらが大きな問題となるが、農地(集団経営農地)を一般の国有地と同様の同権・同価格とすると、地方政府としては農民の土地を強制収用する際に、その土地の価値に見合った金額の保証をしなければならなくなる。事実、「決定」は「保証をしっかり整える」と書いている。
これはただ同然で農地を取り上げ、その乱開発によるバブル経済で延命している地方政府にとっては死活問題であり認めがたいものである。それは地方政府の破産とバブル経済崩壊の引き金を引きかねない。一人っ子政策の緩和も、「決定」で方向性は示されたものの、一人っ子政策の罰金収入が今や地方政府の重要財源になっていることから、いつから緩和が実行されるかはまったく示されていない。
だからこの政策は簡単には進まない。これらの決定が、現実にどこまでスムーズに進んでいくかは極めて疑問である。
むしろ容易に想定される事態は、この農地の流通政策を促す′定を利用して、実際にはほとんどなんの保証もないままに逆に農地が今まで以上に強制収用されたり、買いたたかれたりして、農地が資本家や富農の手にドンドン集積していく事態である。これはまさに農地への新自由主義的政策の導入そのものである。
しかしそれは、農民反乱の一層の増大を招くのは必至だ。この事態と政策には、労働者のみならず農民問題という点でも、中国スターリン主義が抱えている矛盾と危機の大きさがまざまざと示されているのである。

 国家安全委員会設立

 こうした労働者階級や農民の怒りによって、いつか自分たちは打倒されると予感している中国スターリン主義は、この会議において「国家安全委員会」の設立を決定した。これはテロや暴動などに対する治安対策の最高機関であり、コミュニケによれば、「国家安全委員会を設立して、国家安全体制と国家の安全戦略をしっかりと守り、国家の安全を確保する」と書いている。国内治安を担う公安省と、対外情報機関の国家安全省などを統括する上部機関になり、米国家安全保障会議(NSC)に似た組織になるのではとも言われている。これはすさまじい治安体制の強化であるが、同時に中国スターリン主義の悲鳴そのものである。
 このように、第18期三中全会は、中国スターリン主義の危機を真っ向から示す会議となった。鍵を握るのは労働者階級の闘いである。

第2章

 U 吹き荒れる労働者への攻撃――外注化・非正規職化と闘う

 @ 飛び抜けて多い非正規労働者の実態

 中国の非正規派遣労働者の実態は、実は帝国主義諸国以上とさえ言ってもよいくらいのすさまじい現実がある。
▼中国と日本の「非正規労働者」概念の比較
 まず前提的に押さえておきたいことは、日本の「非正規労働者」と中国の「非正規労働者」には決定的な概念の相違があることだ。中国語にはそもそも「非正規(労働者)」という単語がない。あるのは@雇用期限の定めのない労働者(つまり定年まで働く労働者)、A雇用期限のある労働者、B派遣労働者、C臨時工である。そして日本の「非正規労働者」の概念で分類すれば、@は正規労働者で、それ以外のA、B、Cが非正規労働者になるだろう。
 だが、中国では一般的に@及びAは正規労働者とみなされているのである。そして特に民間企業ではAの「雇用期限のある労働者」(大抵契約期間が3年)が、派遣工とともに圧倒的な数を占めている。つまり中国では有期雇用の「正社員」(と呼ばれる人)が一般的に多数存在しており、日本とは概念に大きな違いがある。これがしばしば混乱を生む要因になる。
 中国共産党の共産主義青年団の機関紙である「中国青年報」(13年1月18日付)の記事に次のような記述がある。
▼非正規労働者の割合
 「調査によれば、03年に派遣労働者が企業の全労働者数に占める数は28・3%であったが、06年には33・8%に上昇し、07年には38・3%、08年の初頭には39・7%に達した。この2年間も上昇の趨勢にあり、業種別にみると製造業が最も多く、43・6%を占め、企業類型でみると国有企業が最も多くて47・2%を占め、個別企業では90%に至るものもある」
 これはあくまでも派遣労働者の数である。日本でいう非正規雇用職全体となると、新潟大学の溝口由己氏は、中国の統計資料を分析し、農民工の数に都市部の非正規職労働者数を加えた数から2004年段階で全労働者に占める非正規労働者の率を7割と推定している(「中国の非正規就業の問題と特徴」)。だが上述の問題が考慮されているのかどうか疑問もあり、さらに約10年前の統計でもあり、7割という数字はさらに検討の余地があるように思われる。だが、いずれにしても膨大な非正規労働者が中国に存在していることは間違いない。
 ではなぜ、このような現実が生まれているのか? 中国の新自由主義的な現実は、どういう経緯をとって生まれてきたのか、以下見てみたい。
(図 中国で派遣労働者が全労働者の中で占める割合の上昇を示すグラフ。2008年で40%近くに達している。さらにその後2年間【2009年、2010年)上昇の勢いにある。なおこれはあくまで派遣労働者の数で、非正規職全体ではない)

 A 毛沢東型社会の崩壊 「改革・開放」への転換

 ケ小平のもとで1978年末から中国では「改革・開放」政策が開始された。それから今にいたる35年間は、中国史上でもまれに見る大きな社会の変革期であった。それは毛沢東時代の社会システムのあり方を根底から解体し、新しい別の社会システムに移行していった過程であった。
▼毛沢東時代の社会の破綻
 毛沢東時代の社会は、労働者や農民は、工場や人民公社などの職場(「単位」)に所属し、大きくはその中で一生を過ごす社会であった。工場や人民公社はそれぞれ、住宅はもとより学校や診療所、風呂場や食堂などを備え、「ないのは火葬場だけ」といわれる自己完結的で閉鎖的な社会をつくっていた。1958年に完成した戸籍制度によって、都市住民と農村住民は明確に区別され、労働者も農民も人々の移動は大きく制限され、特に農村から都市への移住はほとんど不可能であった。経済のあり方は配給制であった。
 農民を農村にしばりつけたのは、都市人口を増大させず、農村からの収奪で都市住民への配給による食料を確保し、それによって都市部の産業の発展を進めていく基盤を保障しようとしたからであった。労働者の職業は政府によって決められ、労働者は決められた職場で生涯働き(事実上の「終身雇用」)、一生を過ごしていた。老後の生活も、その所属する工場が面倒を見ることになっていた。労働者も工場にしばりつけられており、なんらかの事情で旅行などに行くときは、すべて工場細胞の許可が必要な社会だった。
 こうした毛沢東時代の社会は、労働者が移動を厳しく制限され、徹底的に統制・監視される疎外された社会であったことを意味しており、労働者が社会の主人公である共産主義のあり方とはまったく別の社会であった。また配給制を採っていたということは、いかに社会が貧しかったかも意味している。毛沢東はスターリン主義者として、@世界革命から切断された一国社会主義建設を推進し、Aしかも労働者が社会の主人公ではなく、逆に労働者が徹底的に疎外された社会をつくりだした。その結果として毛沢東的な一国社会主義建設は、大躍進期(1958〜60年)での3千万人以上の餓死者の発生、そして文化大革命(1966〜77年)の大混乱を通じて最後的に破産していったのである。
▼「改革・開放」の社会
 こうした毛沢東的な一国社会主義建設の破産の中で、ケ小平の「改革・開放」政策が開始される(78年)。ケ小平は、一方で大胆な外資導入政策を展開し、一方で中華民国以来の「愛国資本家」たちを再起させて民族資本の育成を図った。そのために毛沢東時代の閉鎖的な社会のあり方を徹底的に解体して、「流動的な労働者」を大量に生み出そうとしたのである。
(写真 1958年発足したばかりの河南省のある人民公社の労働の風景。大躍進$ュ策の結果、この3年後には3000万人を超える餓死者が出る)

 B サッチャーから学んだ住宅改革による「流動的な労働者」の誕生

 中国における「改革・開放」政策は、それまで工場に付属していた住宅改革を伴った。それまで労働者の住宅は工場の付属であり、それによって労働者は工場に縛りつけられていたが、80年代から始まり90年代以降急速に進んだ住宅改革によって工場から住宅は分離され、民営化された。
 これは同時代のイギリス・サッチャーの政策の影響を受けたといわれている。サッチャーが英国での民営化政策の核心とした住宅改革を手本にして、中国での住宅改革が行われ、国有企業が有していた社員住宅は民間に払い下げられた。こうした住宅の民営化政策をひとつの突破口としながら、国営企業改革が行われていった。92年に、「所有と経営の分離」によって、従来の国営企業は国有企業となる。
▼労働者を特定工場から開放
 中国スターリン主義がサッチャーから学んだこの社員住宅の民営化は、実は「改革・開放」政策の展開にとって決定的な意味を持った。というのは、この民営化が意味するものは、特定の工場に帰属している存在だった労働者≠特定の工場≠ゥら開放し、流動的な労働力≠ノ変える意味を持ったからである。職業選択もできれば、同時に解雇される労働者となることを意味したからである。それはつまり、毛沢東時代の工場のあり方の根本的な解体を意味した。旧来の「工場」という単位≠フあり方を根底から解体させたのは、この住宅の民営化だったのである。それをサッチャーの改革を参考にして中国スターリン主義が行った。これは明らかに中国スターリン主義が、帝国主義の新自由主義政策を取り入れながら「改革・開放」政策を展開していったということを意味する。
▼労働契約制で解雇有りへ
 先立つ1986年に国営企業の労働者を対象にして、労働契約制度が導入された。それまで事実上の終身雇用であった労働者は、この労働契約制の導入によって「企業に解雇されることもある身分」となり、また企業も倒産する時代に入っていった。
 それまでの一生の生活を「保障」した工場のあり方は解体され、毛沢東時代の「事実上の終身雇用」的なあり方もなくなり、労働者は企業との間で労働契約を交わして労働年限を決める社会となった。この結果、先述の「有期雇用の正社員」が雇用形態として一般化したのである。

 C 農民工の発生 労働契約法の制定

▼人民公社も解体、「開放された農民」が都市に
 農村の人民公社も解体された。「改革・開放」政策はまず農村から始まったが、人民公社の解体とともに農地請負耕作責任制度が導入され、個々の農民が個別の土地の請負耕作を認められるようになった。農民は人民公社から「自由」な存在となったが、同時にこの結果、農村の潜在的な過剰人口が明らかになっていった。農村からの移動は事実上緩和され、農村部における潜在的な過剰労働力が、都市部における急速な工業化の進展とともに、農民工(出稼ぎ労働者)として都市部に大量に流れ込むようになった。その数は12年の段階で2億6300万人と言われている。膨大な農村からの労働者が生み出された。
 しかし都市と農村を分離した戸籍制度は、基本的に今もそのまま残っている。農村出身、もしくは農村出身者を両親に持つ者は、農村戸籍を持つ以上、事実上は都市で労働者として生活していても、身分はあくまで「農民」であり、都市の正式な住民にはなかなかなれないシステムである。このあり方が、農民工は非正規雇用にならざるを得ない現実を生み出している。
▼中国の労働法は94年から
 中国で労働法が初めて制定されるのは1994年であり、それまでは労働法は存在していなかった。この労働法制定は、1993年11月19日に深せん市の玩具工場で起きた火災で、出稼ぎ女性労働者87人が死亡し51人が負傷した事件がきっかけになっている。「労働者が製品を窃盗するのを防ぐ」という名目で、工場の窓や玄関が封鎖されており、彼女たちは逃げることができなかったのだ。
 また「労働合同法」(日本語に訳すと「労働契約法」)が中国で制定されるのは、なんと07年である。つまりそれまでは正式な労働契約の法的根拠はなかったのである。しかもこの現在の「労働合同法」は派遣労働を合法化し、しかも臨時工に対しては、書面のいらない口頭契約さえ認めている。
 こうした現実総体が生み出したものが、中国における膨大な非正規雇用労働者の存在にほかならない。したがってこの「改革・開放」政策下の約35年間というのは、毛沢東時代の旧社会が全面的に解体され、事実上の新自由主義的な政策が全面展開され、膨大な「流動的な労働者」が生み出されていった過程であり、非正規雇用が一般化していった過程そのものなのである。
 ケ小平が「改革・開放」政策を78年に開始してから94年までの16年間、中国には労働法はなかった。まるで資本主義初期のイギリスのように、まったくの無権利状態で中国の労働者は路頭に放り出され、働かされ、その奴隷のような労働の上に中国の経済成長はあったのである。
 また78年は、中曽根やレーガン、サッチャーが登場する直前である。帝国主義とスターリン主義の現代世界が本格的な崩壊過程に突入し、その一環として中国スターリン主義の毛沢東主義的な一国社会主義建設も破産していく中で、ケ小平は「改革・開放」政策を展開した。89年の天安門事件、および91年のソ連崩壊は中国スターリン主義にすさまじい衝撃を与えた。とりわけソ連崩壊の衝撃は、中国スターリン主義にも崩壊の現実性を突きつけた。。ケ小平は92年に南巡講話を行い、「改革・開放」政策を加速させる。そして帝国主義の新自由主義的な手法も取り入れた社会の大変革を行い、労働者と農民を犠牲にしながら、中国スターリン主義の延命を図ったのである。

 D 「労働合同法」改定が導いた外注化の横行

 こうして生み出された膨大な派遣労働者を先頭とする非正規労働者は、全労働者の先頭に立って今、中国全土で闘いに立ち上がりつつある。増加する労働争議は、資本と体制を揺るがす大問題となりつつある。
▼労働合同法改定
 この中で中国スターリン主義は、12年12月28日の第11回全人代常務委員会第30回会議で、「労働合同法」を改定した。それは、派遣労働者と正規職での「同一労働、同一報酬」を掲げ、派遣労働はあくまでも例外的労働であり、臨時性や補助性、代替性が必要なときにしか認められないとし、また一方で労働者派遣企業の設立条件を厳しくしている。
 これだけを見るなら、日本の現行の「派遣法」以上の中身のように一見なっているが、しかし、これは闇労働などが横行する今の中国の労働実態からはあまりにもかけ離れており、どこまで実現できるかは極めて疑問である。
 事実、今年7月1日に施行されて以降起きたことは何か? 一つは、やはり現実には何も変わらない派遣労働の現実である。二つに、派遣労働者の大量首切りである。派遣労働への規制強化に対して、企業は派遣労働者の首切りで応えている。
▼外注化の推進
 そしてもう一つは、外注化の推進である。
 それまでの労働者派遣企業は、「外注請負企業」となる。一方でそれまで派遣労働を受け入れていた企業は、その派遣労働者を雇っていた工場の部門を全面外注化し、「外注請負企業」に作業をゆだねる。従来の派遣労働者は、こんどは外注請負会社からの労働者と形だけは変わって、同じ工場で同じ仕事をすることになる。規制を逃れるために、派遣労働から外注請負労働に変わっただけである。現実は、なんら変わらない。こうした外注化が、この改定「労働合同法」の施行を契機にして、拡大しているのである。ここにも派遣労働と外注化の驚くべき関係がある。
 しかしこのような攻撃は、派遣労働者、非正規労働者の怒りをますます高めるだけである。

 E 工会支配の崩壊と工会改革

 この労働合同法の改定と並んで行われているのが工会改革である。中国スターリン主義の労働者支配は、中華総工会、すなわち中国スターリン主義が組織している労働組合が大きな役割を果たしている。それらは中国スターリン主義の行政組織の一角であり、労働者を組織し統制し、労働者が本格的な労働運動を開始すること、反体制運動に決起することを圧殺する存在となっている。
 しかし「改革・開放」政策の進展は、この総工会の労働者支配をも揺るがす事態を生み出していた。外資系企業が増大し、一方で中国資本による民間企業も乱立していく中で、労働組合自身が存在しない企業が増え、総工会に属さない労働者が増大した。
▼総工会の衰退と自主労組
 2000年代前半ですでに、総工会の組織率は、全労働者数の50%を切っていた。農民工(事実上の非正規労働者)の増大も、組合に属さない労働者の数を増大させた。しかしそれでも総工会が労働者支配に影響力を及ぼすことができたのは、国有企業が中国スターリン主義の経済と体制維持のために根幹として存在しており、そこでの労働組合の支配を総工会が持ち続けることで労働者全体に影響を及ぼすことができたからである。
 だがここ数年間、総工会が労働者の闘いに敵対し、なんら労働者の利害を代表する存在ではないことが公然となる中で、自主労組結成の動きが始まってきた。中国政府は、一方でペテン的な労働者への懐柔策をとるとともに、農民工(非正規労働者)の総工会への加盟条件を緩和し、その一方で自主労組結成の動きは徹底的に弾圧した。
 昨年5月には、自主労組の結成を要求するオーム電子(松下資本傘下)での闘いがきっかけになって深せんの163の企業で当局も容認する形での「自由選挙」が行われた。だが新たに選ばれた工会執行部はただちに腐敗した。この事態は、中国スターリン主義の進める「工会改革」のペテン性を鋭く暴露しており、こうした労働運動の体制内的な囲い込みに対して、それを許さない労働者の闘いが今爆発している。労働者自らが、闘う労働組合を結成し、スターリン主義を打倒する以外にはないのである。
(写真 工会主席【右)に罷免要求をたたきつけ、抗議するオーム電子深せん工場の労働者)

 スターリン主義下での新自由主義的政策の展開について

 新自由主義とは最末期帝国主義の絶望的延命形態である。しかしこのことは、スターリン主義が新自由主義的な政策を採らないことを意味しない。
 ここで強調したいことは、スターリン主義体制、その体制のあり方自身が、新自由主義的な政策を推進する上での決定的なテコとなっているということである。
 中国スターリン主義の独裁政治、そして土地の国有制度などのスターリン主義の制度や社会のあり方が、実は単に政治という領域だけではなく、経済という領域でも新自由主義的政策の展開に重要な役割を果たし、帝国主義に伍してその政策を推進する基盤になっているということだ。
 スターリン主義は、スターリン主義としてのその独自な政治体制、その独特の土地所有形態を徹底的に活用して、「スターリン主義体制下での新自由主義的な政策」ともいうべき政策を、延命のために積極的に展開しているのである。

第3章

 V 国有企業・民営化政策の要――中国鉄道の分割・民営化攻撃

 @ 新たな新自由主義政策 中国・国鉄の分割・民営化

 

こうした「改革・開放」政策の破産と労働者支配の危機、そして新たな国有企業民営化政策への踏み切りの中で、打ち出されてきたのが「中国鉄道の分割・民営化」である。
▼高速鉄道の戦略性
12年12月26日に開通した北京と広州を結ぶ世界最長(2298`)の高速鉄道は、政治の中心である北京と経済の中心である広州を直通で結ぶ高速鉄道であるが、その経営は赤字必至で年間利子だけで数億元(1元は現在14円ほど)の赤字を生み出すという。
最初から採算の取れるめどはないと、中国のマスコミも報じている。こうした赤字必至の高速鉄道は、しかし鉄道事業自身が巨大な経済効果を生み出すため、またその路線が中国経済全体に積極的な意味を持つことから、資本の要請、政治の要請で急スピードで建設されてきた。同時に鉄道事業は巨大な利権を生み出すものともなり、鉄道部(鉄道省)は「腐敗の温床」と言われ、汚職が常態化していた。
さらに中国スターリン主義は、中国高速鉄道の輸出政策を国策として積極的に推進し、日帝をはじめ帝国主義諸国との激しい争闘戦を展開している。中国スターリン主義にとって鉄道は、内外の政治と経済双方にとって決定的な存在なのだ。

(写真 温州高速鉄道事故【2011年7月23日】)

▼11年7・23高速鉄道事故
こうした中で、11年7月23日に浙江省温州市で高速鉄道事故が発生し、多数の死者を出す事態となった。中国政府の公式発表では死者は約40人とされているが、200人以上いるはずだといわれている。
まさに中国スターリン主義にとって中国鉄道は基幹産業そのものであるが、その建設は経済的に破綻し、運営的にも危機を深め、腐敗していたのである。
▼「鉄路政企分開」
こうして3月10日に、北京で開催中の第12期全国人民代表大会第1回会議で、鉄道省の解体が決定された。日本の「国鉄分割・民営化」にならったという「鉄道改革」が始まったのである。
「鉄路政企分開」(「鉄道での行政と経営の分離」)のスローガンの下に、鉄道部を解体して、交通運輸省のもとに「国家鉄道局」を創設し、行政面での責任を取る。一方で「中国鉄道総会社」を立ち上げて経営責任をとらせ、それも地方ごとに分割して鉄道会社を設置するという構想だ。
「中国鉄道総会社」は、形は国有企業であるが、外資も含む民間投資を前例のない規模で広く受け入れた「独立採算制」による鉄道経営をめざすもので、実質的には民営化(私有化)である。この会社は3月14日に発足した。
3月17日には旧鉄道部の建物の看板は「中国鉄道総会社」に架け替えられ、営利部門を担う「中国鉄道総会社」が発足した。この会社には、各地に分割された18の鉄道会社、三つの運輸企業などが所属している。独自の裁判所まで持ち、「独立王国」といわれ、膨大な利権と腐敗に満ちた旧鉄道部はこうして解体された。
これが発表されるや、中国のネットでは、「腐敗の温床」鉄道省解体を喜ぶ声も出る一方で、民営化されることによる運賃の値上げ、それが物価上昇に及ぼす影響∞鉄道労働者の解雇≠ネどの可能性を指摘する声が次々とあふれた。

 A 新たな民営化政策の突破口

 8月9日、国務院は「鉄道投融資体制の改革による鉄道建設推進の加速に関する国務院の意見」(以下「国務院の意見」と略)を発表した。
▼「国務院の意見」
 「国務院の意見」は、以下の通りだ。
 「鉄道投融資体制の改革を推進し、多様な方式、多くのルートで建設資金を集める。『統一計画、多元な投資、市場の動き、政策との一体化』の基本思想に照らして、鉄道発展計画をしっかりと定め、鉄道建設市場を全面開放する。新鉄道建設には分類投資建設を実行する。地方政府と社会資本に対して、都市間鉄道、市内鉄道、資源開発のための鉄道と支線鉄道の所有権、経営権を開放し、社会資本の鉄道建設への投資を奨励する」
 「鉄道用地資源の活性化への力を強め、土地の総合開発利用を奨励する。駅舎と線路用地の総合開発を支持する。中国鉄道総会社は、国家が投資機構としての権利を授けた会社として、その本来の鉄道による生産経営を土地にまで拡大し、経営権を(第三者)に授ける方法で(経営者を)配置することができ、こうして中国総会社を通じて法に基づいて(土地を)活性利用することができる。土地利用全体の計画と都市計画を統一的に照合して、駅舎と線路周辺の土地を都合よく処理し、開発建設のレベルを適度に高めていく」
 「合理的な技術を生み出し、現有鉄道用地の地上、地下空間に対して総合的な開発を進める。用地目録で建設用地に割り当てられたところは、継続して使用権が割り当てられる。(土地の)開発利用により、土地を経営する権利や土地用途を改変することができる権利は、中国鉄路総会社以外の会社にも与えられ、個人に与えられることもあるが、法による売買手続きをすることが必要である。地方政府は、鉄道企業が駅舎や線路用地の一体的計画を進めることを支持し、市場化、集約化の原則にのっとって総合開発を実施し、開発による収益を得て鉄道が発展することを支持しなければならない」
 以上の「国務院の意見」は、「鉄道建設市場を全面開放する」「所有権、経営権を開放する」と、鉄道の全面民営化を推進することを表明している。
▼旧鉄道部の意見
 またこの文書に先立って、旧鉄道部が発表した「鉄道投資への民間資本の導入と奨励の実施に関する意見」(12年5月16日)には、「多様な形式の外国投資および(外国)経済との提携を展開し、国際市場を開拓する」と書かれており、ここでの民間投資には、外資も含まれていると考えることができる。これは従来の国有企業への民間投資、民営化を超える事態であり、民営化政策が新たな段階に現実に突入していることを示している。
 また「駅舎と線路用地の総合開発」について書いているところは、今、日本のJRで起きている事態そのものである。JRは民営化の中ですでに本来の鉄道業務よりも、土地や資産での経営の方が収入を上回り、それと一体で駅業務の外注化と非正規職化が進行している。それと同じことが今中国で起こっているのである。
▼旧来のレベル超える民営化
 すでに述べたように、92年から国有企業の民営化は進んできたが、実際には民間の投資には多くの制約があった。しかし中国スターリン主義はその危機の深さの中で、こうした旧来のレベルを超える国有企業の一層の民営化、新自由主義的な政策を展開しようとしている。それを全面的に明らかにしたのが、今回の第18期三中全会であった。
 第18期三中全会は、「混合所有制経済」という言葉を用い、国有企業の新たな民営化政策への踏み切りを宣言した。この政策の先取りとして強行されたのが実は「中国鉄道の分割・民営化」にほかならない。つまり「中国鉄道の分割・民営化」とは、今後中国スターリン主義が延命策として全面的に推進しようとしている新たな新自由主義的政策、民営化政策の先取りであり、その突破口なのである。
 この一点だけでも、中国鉄道分割・民営化が中国スターリン主義の政策にとって占める決定的な意義と反動性は明らかである。

 B 労働者の階級的魂の背骨を折る攻撃

 しかし鉄道分割・民営化の反動性は、これだけにとどまらない。それは今、中国全土で決起している労働者階級の新自由主義への怒りの闘い、派遣労働者など非正規職労働者の弾劾の闘いの爆発と発展を恐れ、その闘いの背骨を折るために強行されている。
中国鉄道の職員は、およそ210万人といわれている。もっともこれは正社員の数であり、派遣労働や外注請負労働者など、膨大な非正規労働者がほかに存在している。その正確な数は不明であるが、正社員に匹敵する数、もしかしたらそれ以上の数の非正規職が存在している可能性がある(例えば、鉄道貨物労働者だけで100万人おり、そのほとんどは派遣や外注請負である)。
▼中国労働運動解体が狙い
中国鉄道の分割・民営化が決定したとき、多くの鉄道労働者はリストラの危機を感じたし、実際に民間企業として「独立採算制」を掲げて経営していく以上、大量首切り攻撃は必至ともいえる。いやむしろ、こうした大量首切りをあえて政治的にも強行することで、中国の闘う労働者に敗北感を植え付け、戦闘化し団結を広げつつある現在の中国の労働運動を解体しようとしているのである。ここにある意味では、最大の目的がある。
一切の抗議と反対の声を力ずくで押しつぶして、鉄道という基幹産業での大量解雇を何がなんでも強行し、決起しつつある中国の戦闘的な労働者の闘いの魂をつぶして、労働運動を解体しようとする攻撃が始まろうとしている。しかしこれに対する回答は、まさに闘争であり、労働者の団結の拡大である。今、中国の労働者は、この大反動攻撃に対して、怒りの決起で反撃に立っている。
(写真 リストラ攻撃と差別待遇に抗議する福建省泉州市泉州駅の派遣労働者たち)

 

(写真 分割・民営化が決定し、「さらば鉄道部」と報じる中国の新聞【3月10日】)

 C 鉄道労働者の決起が開始された!

 

今年8月13日には北京で農薬による10人ほどの集団自殺事件が発生した。自殺者の中にはハルビン鉄道の腕章を巻いた人もおり、この集団自殺事件は、鉄道の分割・民営化に伴うリストラと失業の危機に追いつめられて、ハルビンから北京まで上訴に来た鉄道労働者が抗議自殺したものと見られている。
▼福建省泉州でストライキ
また9月28日には、福建省泉州市の泉州駅で高速鉄道で働く派遣労働者207人が、彼らが乗務していた列車の便が廃止となることでリストラ攻撃がかけられ、ストライキに立ち上がった。
さらに彼らは、「同一労働、同一賃金」を真っ向から要求し、幹部の特権を弾劾してストライキを闘った。「私たち207人の派遣労働者は、公平公正を要求する。幹部たちは特権をほしいままにし、こっそりと不正をしている」「同じ仕事でありながら、どうして私たちは差別されるのか!」などの横断幕を掲げて徹底的に訴えた。
このように、中国鉄道の分割・民営化に伴う解雇攻撃は、すでに激しく始まっている。
▼南昌駅で貨物労働者がストライキ
そしてさらに10月10日より、新たなストライキが爆発した。江西省南昌市の南昌駅の中国鉄道快速運輸で働く鉄道貨物労働者160人が、賃上げや社会保障制度の適用などの労働環境の改善を求めて12日間にわたるストライキを闘った。会社は譲歩を余儀なくされた。
この中国鉄道快速運輸部門は外注化されており、彼らは外注請負会社から派遣された労働者である。
このストライキの背景には、中国鉄道の分割・民営化がある。
(写真左 ストライキを闘う南昌駅の貨物労働者)

▼早くも現れた分割・民営化の破綻
3月の鉄道分割・民営化で鉄道行政・資産管理を担当する「鉄道管理総局」と経営を担当する「中国鉄道総会社」が発足した。
その結果、6月の鉄道貨物組織改革で、それまで中国鉄道快速運輸に所属していた貨物列車、倉庫などは鉄道管理局の管轄となり、一方で貨物トラックなどは鉄道総会社(ここでは中国鉄道快速運輸)の管轄になった。鉄道管理局は経営には携わらないが、鉄道や貨物運輸の資産や業務を管理するというのである。
分割・民営化しても移譲されるのはあくまでも経営権だから、土地や鉄道資産の管理は、国を代表する鉄道局の管轄となり、動産にあたるトラックなどが鉄道総会社の管轄になったものと思われる。
貨物の資産を管理するのは鉄道管理局だが、経営しているのは鉄道総会社である。さらに彼らを直接雇用しているのは、形式的には外注請負会社である。
この結果、7月に労働者が賃上げの要求書などを出しても、3者が3者とも責任をたらいまわしにして対応を拒否するという事態になった。挙げ句の果てに外注請負会社は、労働争議の責任を逃れるために、9月に入って今後は新たな外注請負契約を結ばないと南昌駅に通告してきた。これに激怒した労働者207人がストライキに立ったのである。
▼新自由主義のデタラメ
ここには中国における鉄道分割・民営化の破綻がすでに現れている。「鉄道管理総局」と「中国鉄道総会社」という二つの体制による管理、さらに鉄道労働者における外注化や派遣労働の一般化が、労働現場をめちゃくちゃにし、ひいては鉄道管理や運営などにも致命的な影響を及ぼすという事態がすでに始まっているということである。逆に言えば、鉄道労働者の現場からの反乱は不可避だということだ。
中国鉄道の分割・民営化が新たな新自由主義、新たな民営化攻撃の突破口となっており、労働者階級の反撃を圧殺し、その階級的魂を押しつぶす目的で強行されている。だが、こうした新自由主義的な攻撃とそのでたらめさは、労働者階級の不断の決起を逆にますます促進するのである。
▼2兆6千億元の借金
さらに2兆6千億元(約36兆4千億円)に上る膨大な旧鉄道部の借金は、国の借金として中国の労働者人民に増税となって転嫁されるのも必至だ。また、新設される会社は、赤字必至の鉄道経営を維持するために、労働者のリストラとともに運賃値上げを進めていくことも明らかだ。これらのことも、労働者階級の怒りの火に油を注ぐだろう。
鉄道分割・民営化は、中国スターリン主義の新自由主義政策を根底から粉砕する、新たな労働者階級の決起を引き起こし、中国スターリン主義打倒の革命の突破口に転化していくに違いない。
(写真 鉄道部解体が決定し、記念写真を撮る人々【3月10日】)

 D 中国労働者階級と連帯し国鉄決戦に勝利しよう!

▼上海自由貿易特区
この中国鉄道分割・民営化とともに新自由主義攻撃の新たな突破口とされるのが上海浦東新区に設けられた上海自由貿易区設置(9月29日設置)である。
そこでは大幅な金融緩和や外資をはじめ資本の投資への規制緩和がされようとしている。これは今回の三中全会で決定された金融緩和、投資の自由化、外資への規制の緩和を「試験」という意味も含めて先取り的に実行するものである。この会議で明らかになった中国スターリン主義体制下での新たな民営化攻撃、新自由主義的な政策の切り口になろうとしているのだ。実際に三中全会でも、重要政策としてこの上海貿易自由区の設置が確認されている。また労働規制の大幅な緩和が行われると想定され、中国の労働者階級への新たな新自由主義攻撃そのものである。まさに新たな特区攻撃である。
中国スターリン主義は、この上海自由貿易区で新たな金融政策、投資政策などを実行し、その経験を総括しながら今後中国各地にこの新たな「特区」を設置して、中国経済の新自由主義化を一層推進しようとしているのである。また、またこの上海自由貿易区は、明らかに米TPP(環太平洋経済連携協定)への対抗策であり、米中対決のひとつの焦点になろうとしている。上海自由貿易区設置は、中国鉄道分割・民営化とともに新たな新自由主義政策の突破口であり、労働者階級への階級的攻撃そのものにほかならない。
▼原発大国化・核大国化
さらに中国スターリン主義は、米中対峙対決構造のもとで、すさまじい核大国化への道を突き進んでおり、2030年までに原発を200基に増やそうとしている。原発大国、核大国化への道である。
だがこれに対しても7月12日、広東省江門市で核燃料加工工場建設に反対する住民の1千人を超えるデモが起こり、中国での反原発闘争がついに始まった。この背景には、福島原発事故がある。
▼呉貴軍氏釈放求める闘い
中国スターリン主義と資本の新自由主義的な攻撃に対して、中国の労働者は非正規の青年労働者を先頭に、団結して新たな闘いに立ち上がっている。迪威信家具用品深せん有限会社のストライキを指導したとされる呉貴軍氏の160日を超える拘留に対して、これに抗議し即時釈放を求める行動が、国境を越えて全世界に広がっている。
新自由主義に反対する闘い、動労千葉が掲げる「国鉄分割・民営化反対」「外注化阻止」「非正規職撤廃」のスローガン、フクシマを先頭にする「原発即時廃炉」のスローガンは、完全に中国の階級闘争と一体のスローガンである。今こそ、中国の労働者との階級的連帯をつくっていく決定的なチャンスである。
国鉄決戦を爆発させ、その力で中国の労働者との国際連帯を実現しよう。そして反帝・反スターリン主義世界革命へ、中国の労働者とともに団結して進撃していこう! 日本帝国主義打倒! 中国スターリン主義打倒! この闘いを日中の労働者の共通の事業として実現しよう!
(写真 呉貴軍氏の釈放を求めて中国政府の駐香港特別行政区連絡事務所前で抗議行動を行う香港の職工盟【10月22日】)

 

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月刊『国際労働運動』(449号4-1)(2014/01/01)

■Photo News

 (写真@)

  (写真A)

 ●パククネ打倒へ、民営化・労組破壊に実力デモ

 民主労総は11月9、10日、2013年全国労働者大会をかちとり、朴槿恵政権の労組破壊=民主労総解体攻撃に対し、80万組合員の総力で法の枠を突き破ってでも民主労総の原点をよみがえらせて闘うことを宣言した (写真@)。11・3労働者集会から1週間、国際連帯の実践と発展を求めて訪韓した動労千葉、動労水戸と全国の労働者・学生80人は9日夜、ヨイド公園で開かれた非正規職撤廃全国労働者大会への参加を皮切りに、10日午前にはサムスン電子本社に対する金属労組の抗議集会に駆けつけ、午後、ソウル市庁前広場に5万人が結集した全国労働者大会をともに闘った (写真A)。大会後、ソウル都心を5万人の大デモで席巻し、パククネ政権を震え上がらせた。

  (写真B10月31日 ジャカルタ工業団地)

  (写真 C11月1日 ジャカルタ工業団地)

 ●インドネシアでゼネスト

 10月31日、11月1日を頂点に10月28日から5日間にわたって、インドネシア全土を揺るがす200万人のゼネストが打ち抜かれた。これは、ユドヨノ政権が、来年の最低賃金の引き上げ幅を10%以内とする9月27日付大統領通達で、賃金闘争圧殺に乗り出してきたことに対する怒りのストライキだ。ブルジョアジーの意を体したユドヨノに、20州の200都市と自治体で「大統領通達を撤回しろ!」「アウトソーシング(外部委託)を禁止しろ!」「派遣労働をなくせ!」「社会保険を保障しろ!」のストライキとデモがたたきつけられた (写真B10月31日 C11月1日 ジャカルタ工業団地)

   (写真DE)

 ●決起するボーイングの労働者

 米航空機メーカー、ボーイングの最大労組である機械工組合に対し、会社側は次世代大型機777Xの生産をワシントン州シアトル近郊のエベレット工場から、米南部に移転するという恫喝を行いながら、スト権の放棄と会社による年金基金への拠出の凍結や医療保険の改悪、賃金の実質的凍結などを認めさせようとする新協約の締結を迫った。だが同社の3万2000人の労働者たちは、新協約反対の集会を行い (写真D)、11月14日、この提案を67%の反対票で断固として拒否し、会社側との正面対決に突入した。組合指導部が会社側と一体となって、新協定の締結を強制しようとしたのに対し、現場の労働者たちは、指導部を徹底して弾劾し、ストライキも含めた闘争体制を作り上げる闘いを開始した。ついにランク・アンド・ファイルの労働者の怒りが爆発したのだ。ボーイング社では2008年にもストライキが行われている (写真E)

  (写真FG)

 ●カリフォルニア州で医療労働者がストライキ

 カリフォルニア大学の5つの医療センターと9つのキャンパスで働く医療労働者2万2000人が11月20日、今年5月のストライキに参加した労働者に対する活動調査や脅迫などの大学側の不当労働行為に抗議して一斉に24時間ストライキに突入した。ストライキはサンフランシスコ、ロサンゼルス、デービス、サンディエゴなどの各都市で貫徹された (写真FG)。このストライキには職種と組合の枠を越えて、大学構内で働く労働者や正看護師や技師なども参加した。1万3000人の大学院生の組合も連帯ストに突入した。連帯ストを禁止したタフトハートレー法をうち破った闘いでもあった。このストを主軸となって担ったAFSCME3299では、戦闘的指導部が執行部を奪取し、カリフォルニア大学のジャネット・ナポリターノ総長(前国土安全保障省長官)と全面対決して闘っている。

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月刊『国際労働運動』(449号5-1)(2014/01/01)

世界経済の焦点

■世界経済の焦点

欧州恐慌・緊縮財政下の大失業

過半数の青年が失業し生きられないEU

 

(図左 EUにおける失業率の推移【2000年1月〜2013年5月】)(図右 EU加盟国にみた若年失業率【2013年5月】)

 ユーロ圏の失業率が12・2%に

 大恐慌が大失業をもたらしている。ユーロ圏の失業率は12・2%(今年9月、失業者は1945万人)と過去最悪である。そのうち若年層ではイタリア40・2%、ギリシャ57・6%、スペイン56・6%である。
 ギリシャやスペインでは若者の半数以上が1年以上も職がない状態が続いている。欧州経済の危機が若年層に大きな打撃を与えている。学業を修了しても就職できない若年層は、社会生活から排除された「失われた世代」になりつつある。青年の半数以上が失業しているということは一つの社会として成り立っていないということだ。
 EU(欧州連合)では、教育や労働、あるいは職業訓練のいずれにも参加していない状態になった若者を対象に、4カ月以内に就職、継続教育あるいは見習いや就業体験の場を提供する「若者雇用イニシアティブ」の立ち上げが決定され、来年から実施に移されようとしている。だが、大失業は訓練不足や求人と求職のミスマッチで生まれているのではない。新自由主義の崩壊下での大恐慌と緊縮財政の結果である。

 ドイツの失業率5・2%とハルツ改革

 ドイツの失業率は5・2%(13年9月)と一見好調に見える。しかし、2000年代半ばまではドイツは「欧州の病人」であった。05年の失業率は11・3%であった。
 ドイツ経済を立て直したものは、EUの東方拡大とハルツ改革であった。
 「ドイツの経済再生はシュレーダー前首相の労働市場や社会保障改革のおかげ」とメルケル首相は選挙過程でハルツ改革を賛美した。
※(ハルツ改革の詳細については本誌12年3月号「ドイツ・低賃金化する非正規職労働者の現状」参照)
 ハルツ改革は02年に社民党シュレーダー政権によって開始された体系的な労働市場対策=失業者対策である。だが、実際には職を増やすのではなく、失業者の再就職を促進することを通じて失業手当の支給額を大規模に削減し、再就職にあたって低賃金を強制し、低賃金労働を普遍化した。
 ハルツ改革の中心的人物のフォルクス・ワーゲン(VW)の労務担当役員(当時シュレーダー・首相の顧問)のペーター・ハルツは、VW社の汚職・収賄に関与し07年に罰金刑が確定した。
 一見失業率は低下したが、有期労働者数は倍増した。とりわけ、新規採用者の44%(12年)が有期である。有期労働者数自体が増加傾向にあるだけでなく、期間満了後に無期転換する割合も4割程度に過ぎない。公務部門では6〜7割が有期で新規採用である。
 新規採用者に占める有期労働者数の多い産業(教育業、公務行政部門など)は、期間満了後も約6割が無期への転換ができていない。労働市場・職業研究所は、新規採用で有期契約の割合が増加するに従って、期間満了後の無期契約への転換の割合が減少すると指摘している。
 ハルツ改革は所得格差の拡大、不安定就労や低賃金の拡大をもたらした。ドイツの実質賃金は1999年の通貨統合後、ほとんど上がっていない。これがドイツの「一人勝ち」の要因だ。

 ECBが過去最低金利の0・25%に利下げ

 

ECB(欧州中央銀行)はデフレを懸念し、過去最低の0・25%に利下げを実施した(11月7日)。しかし、利下げによってユーロ圏経済を活性化させることはできない。デフレの根底にある問題は過剰資本・過剰生産力だからだ。低金利はバブルを生む。
ECBは、マイナス金利やECB版量的緩和など、さらなる緩和策も示唆しているが実現には問題が多い。マイナスの預金金利とは、市中銀行がECBに余剰資金を預け入れる際の適用金利がマイナスになることを意味する。つまり、ECBに預金すると利子がつかないどころが、手数料(マイナス金利)をとられてしまうことを意味する。ECBは余剰資金を預金しないで貸し出しに回すことを期待する。しかし、これは銀行の収益圧迫要因となり、銀行は手数料分を貸出金利などに上乗せすることが考えられる。利下げをしたはずが、銀行の貸し出し段階では利上げとなってしまう恐れがある。
FRB(米連邦準備制度理事会)や日銀のようなECB版量的緩和策の選択肢もなくはないが、ハードルは高い。量的緩和の購入対象はドイツ国債とならざるを得ないが、ドイツの基本法やEUの基本条約に抵触し、ドイツの憲法裁判所に提訴される可能性が予想される。
過剰な設備投資と高失業率の中でデフレに陥る懸念が高い。ユーロ圏の金融システムに問題があり、ECBがいくら潤沢に資金を供給しても、企業や消費者に届かず、消費や設備投資に結びついていない。スペインやイタリアなど債務危機にみまわれた南欧諸国には、なお不良債権を抱える銀行が多く、実体経済を支える本来の金融機能を十分に果たしていない。

(図 債務国では資金繰りの努力が実を結ぶ一方、貧困が増大〜貧困と社会的排除のリスクに直面している人口の割合。
【*)@可処分所得が各国の中位水準の60%以下、A社会的排除の9つの指標のうち少なくとも4つに該当、B潜在的就業能力の活用が20%以下の3つの基準のいずれかに該当する人口)

 欧州銀行の総点検

 来年、ECBが欧州銀行の総点検を行う。ユーロ圏では同じ通貨を使うのに銀行監督は各国任せとなっている。来年11月に、銀行監督権限を各国当局からECBへと一元化する。そこに向けて、年明けに主要な約128の大手銀行を資産査定する。その結果生じる資本不足や破綻処理の穴埋めをどうするかでは意見がまとまっていない中での、見切り発車だ。
 今回の資産査定は不良債権の判定など統一の基準を設け、域内行の資産が健全か、市場の急激な変動に耐えられるかを点検する。イタリア、スペインなど南欧で金融機関の不良債権が増加している。イタリアでは9月末までで16%増、スペインは8%増、ポルトガルは14%増だ。米格付け会社などは最大で1000億ユーロ(約13兆円)近くの資本不足が生じると試算している。
 不健全とされた銀行は資本の充実か破綻処理が必至だ。不足資金を欧州安全網から直接注入することにドイツが強い難色を示している。破綻処理の場合でも、安全網からの資金拠出には反対している。
 ユーロ圏の民間部門への融資は1年半近くマイナス基調を続け、特に南欧では企業が資金難となっている。資産査定を前に銀行が貸し渋りを強めれば南欧の危機はさらに拡大する。

 「ドイツ一人勝ち」に米・欧から批判

 ユーロ圏は、4〜6月期に7四半期ぶりにプラス成長に復帰した(前期比0・3%)が、7〜9月期は前期比0・1%と、かろうじてマイナス成長への再転落を回避した。青息吐息の状況だ。
 主要国ではドイツ(0・3%)とスペインがプラス成長となったが、フランス(▲0・1%)とイタリア(▲0・1%)がマイナスだ。
 ドイツは本来輸出主導型の経済である。このところユーロ圏外向け受注が回復してきており、ドイツ工作機械連盟は7〜9月の受注が前年比プラス9%となり、最悪期を脱したと表明した。
 ところが、ドイツの経常収支が9月に史上最高額になったことを受けて、ドイツの内需拡大努力が不十分で、近隣諸国の窮状を強めているとの批判が米国や欧州連合(EU)から出ている。
 米財務省が10月30日発表の半期為替報告書でドイツの経済政策を名指しで批判した。「ドイツなど巨額の経常黒字を長年維持している国は輸出主導から内需主導の経済政策に転換し、内需を拡大することで経常黒字を縮小すべきだった。にもかかわらず、ドイツはユーロ債務危機のときも、また、12年にも中国を上回る巨額な経常黒字を維持し続けた」と批判。
 EUの欧州委員会も独の経常黒字の調査に入る。
 ドイツの輸入はユーロ圏の輸出との連動性が非常に高い。輸出が拡大すれば輸入も拡大するが、逆に輸出が不振の場合には輸入はそれ以上に落ち込む傾向が強い。ただし、ドイツの輸入相手は偏っている。統一ドイツが発足した90年に比べて、オランダからの輸入額は3倍になったが、輸出品が少ないギリシャは横ばいにとどまる。ドイツ銀行の試算によると、ドイツの実質所得が1%増えても、ギリシャ経済には0・09%のプラス効果しかない。大恐慌下でのドイツ「一人勝ち」が攻防点に浮上してきた。
 経済問題に加え、メルケル首相への米国の盗聴問題についてスノーデンCIA元職員の招致案が浮上し、米独関係が新たな緊張に入っている。
第6章 独、大連立へ最終調整
 9月22日の連邦議会(下院)選挙でメルケル首相率いるキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)が41・5%の得票を得て過半数に迫る議席を獲得したが、過半数には達しなかった。連立相手の自由民主党(FDP)の票まで獲得して、FDPを国政から撤退させてしまった。FDPは第2次大戦後初めて議席を失った。FDPは中小企業を中心とするメルケル政権の支柱であったが、この支柱を失った。
 一方、今年4月に結成されたばかりの反ユーロ新党・「ドイツのための選択肢」(AFD)が、マルクの復活、欧州統合反対を掲げて登場した。ドイツはギリシャなど南欧支援を中心とする危機対策費に総額6430億ユーロ(約85兆円)を投じた。議席獲得には至らなかったが、南欧諸国支援への批判票を獲得して4・7%の票を集めた。(※ドイツの選挙制度では、比例票の5%か、小選挙区で3議席以上を獲得できなかった政党は議席を得ることができない。革命勢力の台頭を阻止する制度)
 最大野党の社会民主党(SPD)は、南欧の追加支援、所得税の引き上げ、最低賃金制の導入、米国の盗聴問題への対抗を主張したが、敗北した。
 二大政党が2カ月にわたり連立交渉を重ね、新政権の公約作りの最終調整に入っている。
 両陣営は、金融取引税を導入し市場規制を強めること、最低賃金制の導入で所得格差を是正することで妥協が成立しつつある。11月中に連立協議を終え、これがSPDの47万人の党員投票で最終承認されれば12月下旬に開かれる欧州連合(EU)の首相会議前に新政権が発足することになる。
 第2次大戦後、フランスなどは最低賃金制を導入したが、ドイツは導入しなかった。第2期メルケル政権では、連立与党の一つだった自由民主党(FDP)が最低賃金制に断固反対だった。最低賃金制の導入について「機能的な低賃金業界が必要だ」と「上から目線」(独フランクフルター・アルゲマイネ)で反対し、選挙で惨敗し、議席ゼロになった。政界での反対論が一気にしぼんだ。
 社会民主党はハルツ改革を推進して支持者を失った。今回最低賃金制の導入で挽回しようとしているが、体制内改良の余地はない。
 11月労働者集会が指し示した新自由主義と闘う労働者国際連帯こそが勝利の道である。
 (常木新一)

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月刊『国際労働運動』(449号6-1)(2014/01/01)

世界の労働組合

■世界の労働組合 韓国編

全国学習誌産業労組

 全国学習誌産業労組(民主労総・全国民間サービス産業労働組合連盟傘下)は、教育関連企業の発行する学習誌を用いて、その企業の指定するカリキュラムに沿って家庭教師を行う労働者(学習誌教師。全体で約10万人)で組織する労働組合。各地域本部の他に、才能教育、公文、テギョ、ウンジン、ハンソルなど企業ごとの支部がある。

 ■学習誌教師の労働実態

 

学習誌教師は家庭教師先から直接に授業料を受け取るが、会社側に上納する「手数料」が契約時の子どもの数で計算されるため、子どもが減っても同額を支払わなければならない。
実際、公文の学習誌教師だったイジョンヨンさんは、生徒数の拡大を求める会社側のノルマに苦しみ、1500万ウオンの借金を残して2004年に死亡した。イさんは、表向きはひと月204回の授業を行い、収入は250万円だったが、実際に行っていた授業は47回に過ぎず、134回分の200万ウオン近くについては自腹を切っていた。公文は、生徒が減れば面談と督促電話で圧力を加え、ついにはイさんを過労死に追い込んだのだ。
学習誌労組は、生活賃金獲得、労働基本権獲得、勤労基準法全面適用とともに不正業務・悪制度の撤廃を要求として掲げているが、その背景にはこうした強搾取の現実がある。

(写真 鐘楼で高所籠城する才能労組の2人の組合員【13年8月23日】)

 ■才能教育支部の闘い

 こうした現実に対し「才能教育」社と契約を結ぶ学習誌教師たちが1999年に才能教師労働組合を設立し(2006年からは学習誌労組才能教育支部)、政府労働部から労組設立認定証の交付を受けた。以降、会社側との間では団体協約(労働協約)の締結も行われてきた。
 だが、最高裁が2005年に、「学習誌教師は労働者ではない」(労働者性不認定)とする判決を出し、これを受けて会社側は労組弾圧の姿勢に転じ、2007年12月に賃金カットと解雇圧力を加えてきた。これに対し労組はソウル市惠化洞にある才能教育本社前でテント籠城に突入。2013年8月26日の合意まで2076日間、韓国最長期の闘争となった才能教育闘争の始まりである。闘争の過程で会社側は、2008年11月に団体協約を解約し、2010年12月には組合員全員を解雇した。

 ■「特殊雇用労働者」

 才能教育闘争の最大の争点は労働者性の認定と団体協約の締結だ。
 学習誌教師は契約形態としては「事業者」(個人事業主)だが、実態は雇用労働者そのものの、いわゆる「特殊雇用労働者」だ。業務を発注する側は、学習誌教師は労働者ではないとし、労働組合を認めず、団体協約を拒否する。
 学習誌教師の他にも、ゴルフキャディー、代理運転、ダンプ・トラック・宅配・バイク便運転、建設機械操縦、看病、馬匹管理、保険設計、エキストラなどが特殊雇用職であり、そこで働く労働者は劣悪な労働環境と無権利状態に対し改善を求めて闘っている。したがって才能教育闘争は、特殊雇用労働者全体(250万人とされる)の問題を代弁する闘いでもある。
 労働者の闘いにより特殊雇用問題に焦点があてられる中、2012年11月にソウル行政裁判所(行政事件を扱う第一審裁判所)は、才能教育支部の被解雇者が提起した不当解雇撤回訴訟において「才能教育の学習誌教師は労働組合法が定めた労働者」とする、2005年最高裁判決と相反する判決を出した。

 ■労使合意と意見対立

 撤去攻撃を受けながらの本社前でのテント籠城、そして2人の組合員による今年2月からの惠化洞聖堂鐘楼での高所籠城(才能教育社長室から見える)の末、8月26日、労使合意が実現した。団体協約の原状回復と解雇者12人全員の原職復帰(1人はがんで死亡)を含む内容だ。
 ただ、この合意に対してユミョンジャ前支部長とカンジョンスク前学習誌労組委員長は、「『団体協約原状回復』は事実上空文句に過ぎず、手数料制度を含むその他の合意案も実利的には何も保障されていない」として反対の立場を表明している。闘争をすべて解除した状態では、合意通り交渉を進めても核心要求をかちとることはできない、とする主張だ。
 これに対し現執行部は、教師に自腹を切らせる悪制度を廃止できなかったことなど不満も残る内容に遺憾を示しつつも、現場に復帰して組織化に力を入れると反論している。何よりも、労働組合を認めることになるため会社側が最後まで譲らなかった「団体協約の原状回復」で合意したことを最重要視している。(支部は8月25日に行われた組合員総会の場で、組合員11人のうち出席9人、賛成8人、反対1で暫定合意案を可決している。)
 いずれにしても、特殊雇用職唯一の団体協約を原状回復し、労働者性を認めさせる闘いとして、今後の原則的な闘いがますます重要になっている。

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月刊『国際労働運動』(449号7-1)(2014/01/01)

国際労働運動の暦

■国際労働運動の暦/1月22日

■1905年「血の日曜日」■

請願行進への大虐殺請願行進への大虐殺

労働組合の爆発的結成とソビエト創成、第1次ロシア革命の発端に

 血の日曜日とは、1905年1月22日(旧暦1月9日)、ロシアの首都ペテルブルク(注)での労働者の大規模請願デモとそれに対する軍隊の無差別発砲、大虐殺事件のことである。これに端を発して闘いが全土に燃え広がり、1905年ロシア第1次革命となった。
 労働者たちは、ツァーリ(皇帝)ニコライ2世に対する嘆願書を出そうと、冬宮(宮殿)に向かってデモに立ち上がった。この時、これを率いたのが司祭ガポンであった。

 ●ストから請願行動へ

 ガポンは、1904年2月に官許の合法組織「ペテルブルク市ロシア人工場労働者の集い」という組織をつくっていた。ガポン組合と呼ばれる。04年12月にプチロフ工場での4人の組合員解雇事件に対する陳情が認められなかったことから、05年1月16日、同工場のストが闘われた。ストは次第に全市に広がった。その数は、20日に382工場10万人に達した。解雇撤回だけでなく、8時間労働日、超過勤務の廃止などの要求が積み上げられ、22日には、皇帝への直接請願行動が呼びかけられた。ガポン自身は警察とも関係を持ち、反マルクス主義の立場で、闘いの革命的発展を押しとどめようとしていたことは明白である。しかし、労働者階級の怒りと闘いの意欲は日々高まっていき、支配階級との激突は非和解的になっていった。
 ガポン執筆の請願書の書き出しはこうである。
 「陛下! わたしたちペテルブルク市の労働者および種々の身分に属する住民は、わたしたちの妻や子、よるべなき年老いた親たちともどもプラウダ(正義)と助けを求めて、陛下の御許へやってきました。……しかし、わたしたちは、ますます貧乏、無権利状態、無教育のどん底に押しやられるばかりで、専制政治と横暴にのどもとをしめつけられ、窒息しそうです。陛下、もう力が尽きました」
 その日は午後2時に冬宮前に集まることになっていた。工場街にある組合各支部では大群衆が冬宮を目指して朝から行進を始めた。ガポンはナルワ支部の先頭に立った。参加者の総数は10万人近かった。ツァーリ政府の許すはずがない行動であり、市内要所要所に軍隊が配置され、阻止線が張られていた。行進が阻止線に来ると騎兵に蹴散らされ、なおも進もうとすると一斉射撃が浴びせられた。非武装の労働者は次々と銃弾に倒れた。死者千人、負傷者4千人と言われる。
 それは、階級激突が極限的に行き着くところに行ったことを鮮明に示した。皇帝への幻想も打ち砕かれた。ガボンの意思がどうあろうとも、それはプロレタリア革命の火ぶたを切る偉大な役割を果たしたのだ。

 ●「偉大な歴史的事件」

 

レーニンは、この事態に直ちに態度表明を行った。
「きわめて偉大な歴史的事件がロシアにおこっている。プロレタリアートはツァーリズムに反対して立ちあがった。プロレタリアートは政府によって蜂起に駆りたてられたのだ。政府が事態を軍事力の使用にまでもっていこうと思って、わざと比較的妨害を加えずにストライキ運動が発展するままにまかせ、また広範なデモンストレーションが始まるままにまかせたということは、いまではほとんど疑う余地がない。そして、政府は事実そこまで事をもっていったのだ! 何千もの死者と負傷者――これがペテルブルグにおける一月九日の血の日曜日の総決算である」(レーニン「ロシアにおける革命の始まり」レーニン全集第8巻)
翌23日からストライキは全国に広がり、1月だけでもスト参加者は44万人に達した(それまでの10年間で43万人)。ペテルブルク、モスクワを始め、初めての労働者ソビエト(革命の機関)がつくられていった。12月モスクワ蜂起が武力で鎮圧されるまで革命の波は続いた。それは17年ロシア革命に引き継がれた。

(注)ペテルブルクは14年第1次世界大戦開始後ペトログラードと改称、レーニン死後レニングラードに、ソ連崩壊でサンクトペテルブルクに。
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(写真 冬宮前に集まった労働者に向けて発砲する軍隊【1905年1月22日】)

 1905年ロシア革命

1.16 ペテルブルクのプチロフ工場でスト
1.22 血の日曜日事件
4.25 ボルシェビキが社会民主労働党第3回大会(ロンドン)
5.25 イワノボ・ボズネセンスクで77日間スト開始
5.27 バルト海艦隊が対馬沖海戦で壊滅
6.27 戦艦ポチョムキン号の反乱
9. 5 ポーツマス条約締結(日露戦争終結)
10.19 モスクワ・カザン鉄道労働者のスト始まる。全国的ストに発展
10.26 ペテルブルクにソビエト成立
10.30 ニコライ2世、立法権もつ議会召集を宣言
11. 8 クロンシタット海兵の武装蜂起
11.21 レーニン帰国
12. 5 モスクワに労働者ソビエト成立
12.23〜30 モスクワ蜂起、市街戦で軍隊に鎮圧される

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月刊『国際労働運動』(449号8-1)(2014/01/01)

日誌

■日誌 2013 9〜10月

9月1日東京 反原発・小出講演会に2千人
日比谷公会堂において9・1さようなら原発講演会が、2050人の参加で行われた
3日千葉 三里塚・天神峰やぐら裁判
千葉地裁民事第3部(多見谷寿郎裁判長)で天神峰やぐら裁判の弁論が開かれた
4日茨城 動労水戸、外注化阻止スト
動労水戸は、誘導・構内計画業務の10・1外注化絶対阻止を掲げて今秋第1波ストに決起した
4〜5日東京 100万人を動かす学生運動を!
全学連第74回定期全国大会が中央区の浜町区民館で行われ、100人の結集で大成功した
6日東京 金曜行動、安倍への弾劾、一層激しく
6日東京 「君が代」処分、最高裁反動判決
東京の教育労働者・米山良江さんの「日の丸・君が代」不起立処分に対して、最高裁は上告棄却の反動判決を下した
6日東京 法大無期停学処分撤回裁判
法大・武田雄飛丸君の「無期停学」処分撤回裁判の第3回口頭弁論が東京地裁民事第25部で行われた
8日福島 ふくしま共同診療所、報告会に160人
8日徳島 星野さんを返せ≠フ声届く
9・8徳島刑務所デモ集会に星野さんを取り戻そう!全国再審連絡会議を始めとして全国から430人が結集し、星野さん奪還の声を上げた
8日千葉 反対同盟 成田・芝山一斉行動
三里塚芝山連合空港反対同盟の農地裁判判決後、第2回一斉行動が行われた
10日東京 鉄道運輸機構訴訟、最高裁が上告棄却
国労秋田闘争団の小玉忠憲さんが原告の鉄道運輸機構訴訟で最高裁が上告棄却の反動判決
13日東京 反原発官邸前、安倍発言に弾劾の声
福島原発からの放射能汚染水の流出が止まらない中、労働者民衆の危機感と憤激が急速に高まっている
13日茨城 動労水戸、第2波ストに立つ
動労水戸は、誘導・計画業務10・1外注化阻止を掲げて第2波ストライキに立ち上がった
14日東京 稼働原発ゼロ迎え9千人が新たな決意
「さようなら原発」1千万署名市民の会主催の反原発大集会が亀戸中央公園で行われた
15日東京 解雇撤回・外注化阻止へ1100人
動労千葉と国鉄闘争全国運動の呼びかけた総決起集会が東京・代々木公園ケヤキ並木で開催された
19日大阪 西郡住宅裁判闘争、3証人が徹底弾劾
大阪地裁第24民事部(古財英明裁判長)で行われた。10家族の住宅明け渡し弾劾の裁判闘争だ
20日東京 官邸前行動、安倍居直り発言に怒り
「海を汚すな。汚染を止めろ」とシュプレヒコールが官邸前から国会前にかけて響き渡った
25日東京 動労千葉、控訴審で反動判決
動労千葉鉄建公団訴訟控訴審の判決言い渡しが、東京高裁第12民事部(難波孝一裁判長)で行われた。動労千葉争議団9人の訴えを退け国鉄清算事業団による90年4月1日解雇を有効とする判決が出された。他方で国鉄当局が名簿不記載基準を策定・適用し、原告らを採用候補者名簿から排除してJR不採用としたことについては、一審と同様、不当労働行為と認定し、鉄道運輸機構に慰謝料500万円の支払いを命じた
27日佐賀 玄海原発ゲート前で規制委調査弾劾 原子力規制委員会の玄海原発3号機・4号機の再稼働をねらう「調査」を弾劾する行動が行われた
27日東京 官邸前行動、若い女性ら安倍を弾劾
安倍への猛烈な怒りの発言が続いた。さらには北海道、秋田、愛媛などから人びとも駆けつけた
29日群馬 反対同盟の市東孝雄さん迎え120人
反対同盟の市東孝雄さんを迎えての7回目を数える三里塚集会が、高崎市の群馬音楽センターで開かれた
29日大阪 労組の闘いで橋下打倒を
大阪市役所を目の前にした中之島公園で橋下打倒集会が開催され、全国から450人が結集した
29日新潟 新潟で「ふくしま診療所報告会」
NAZENにいがた主催で開催され、70人が参加
30日東京 9・30意見書で全証拠の開示を要求
星野文昭同志と再審弁護団は東京高裁に全証拠開示を求める「意見書」を提出した
10月1日東京 電源開発本社にデモ
銀座にある電源開発本社に対し抗議行動を行った
5日神奈川 11・3大結集へ国鉄集会
神奈川労働者集会が横浜市内で開催され、82人が参加し、11・3労働者集会へ1千人結集を誓った
4、7日茨城 動労水戸、2波のスト
動労水戸は誘導・計画業務の外注化強行に抗議し、第3波、第4波のストを打ち抜いた
6、7日千葉 動労千葉大会を開催
動労千葉は、DC会館で第42回定期大会を開いた。検修・構内業務の外注化が強行された状況下、今回の大会は組織の存亡をかけたこの先数年の決戦方針と体制を確立する歴史的大会になった
6日北海道 タクシー労働者軸に怒りの集会
札幌で、タクシー労働者を中心に30名の結集で国鉄闘争全国運動・北海道主催の集会が開かれた
6日沖縄 労働者集会で闘う労組結成を決意
那覇市で国鉄闘争全国運動・沖縄主催の沖縄労働者集会が開かれ、新たな結集をかちとった
6日福岡 福岡市内で羽廣さん、石アさんが訴え
「解雇を許さない10・6講演集会」が開かれた
7日東京 東部で11・3へ学習・決起集会
国鉄東部集会が亀戸カメリアプラザで開かれた
11日東京 NAZEN 経産省に署名を提出
NAZEN(すべての原発いますぐなくそう!全国会議=な全)の経済産業省への署名提出行動が行われた
11日東京 『愛と革命』出版記念会開く
星野文昭さんを一刻も早く取り戻そうと、永田町の星陵会館で盛大に開かれた
11日神奈川 NAZEN神奈川を結成
「すべての原発いますぐなくそう!全国会議・神奈川」(NAZEN神奈川)結成集会が、横浜市内で開催された
11日宮城 動労千葉・田中委員長が特別報告
仙台市のエル・パークのセミナーホールでみやぎ労働者集会が行われた
12日秋田 小玉さん先頭に駅前をデモ
秋田駅東口の会場で行われた国鉄集会に40人が参加した
12日富山 北陸ユニオン主催で北陸労働者集会
北陸労働者集会が富山県民共生センターで開催された
12日東京 西部ユニオン中心の労働者集会
荻窪で、東京西部ユニオンを中心に労働者集会を50人で行った
13日東京 反原発行動に4万人
日比谷と国会前周辺において「福島を忘れるな!! 再稼働を許すな!!」を掲げ、「1013原発ゼロ★統一行動」が4万人で行われた
14日東京 首都圏青年労働者集会開く
首都圏の闘う労働組合が結集し、首都圏青年労働者集会が千葉市DC会館で開かれた
18日東京 金曜行動、幾人もが初めて発言に立つ
原発反対の労働者民衆の闘いはさらに巨大に発展しようとしている
18日青森 八戸市で三八労働者集会開く
「福島を忘れるな! 原発再稼働阻止」で成功
18日東京 法大闘争、学内での決起と合流し集会
法大キャンパス集会と総長室包囲デモ、国会直撃の霞が関デモが闘われた
19日青森 大間原発反対の声あふれた現地デモ 青森県反核実行委員会と北海道平和運動フォーラムの共催で集会・デモに600人が結集した
20日千葉 三里塚、豪雨つき730人がデモ
成田市で三里塚芝山連合空港反対同盟の主催で三里塚全国総決起集会が開催された。悪天候を突いて全国から730人の労農学人民が結集した
24日新潟 諸団体が共同で柏崎刈羽原発に反対
NAZENにいがたを始め、柏崎刈羽原発再稼働反対、廃炉を求める署名に取り組む新潟県内10団体による新潟県知事への申し入れ行動が行われた
25日東京 首相官邸前反原発行動が行われた
26日東京 東京狭山集会、全国水平同盟とともに
品川の「きゅりあん」で狭山集会が開催され、関東各地から71人が集まった
26日東京 秘密保護法絶対阻止≠フデモ
救援連絡センターほかの呼びかけで秘密保護法案絶対阻止のデモが打ち抜かれた
28日千葉 第3誘導路認可取り消し裁判
千葉地裁民事第2部(多見谷寿郎裁判長)で、第3誘導路認可取り消し裁判の口頭弁論が開かれた
29日東京 2800人が秘密保護法法案反対%チ定秘密保護法案に反対する集会が、日比谷野外大音楽堂で開かれ、約2800人が結集した
31日大阪 石川さんと連帯し狭山集会
全関西狭山集会は、八尾市西郡第3集会所に西郡住民、全関西の労働者110人が結集した
31日広島 水平社発祥の福島町で狭山集会
広島市西区福島町の旧西隣保館で、部落解放広島共闘会議主催の10・31狭山集会が開催された

 (弾圧との闘い)

9月2日東京 法大「暴処法」弾圧控訴審
法大「暴処法」弾圧裁判の控訴審5回公判が東京高裁第12刑事部(井上弘通裁判長)で開かれた
5日東京 前進社国賠、原告側証人全員採用
前進社国賠の第15回口頭弁論が東京地裁民事第1部(後藤健裁判長)で行われた
10月7日静岡 国鉄闘争への弾圧許すな
静岡で国鉄闘争を闘う仲間の2人に、「携帯電話詐欺」を口実とした不当弾圧が行われた
11日東京 前進社国賠 原告3同志が証言
前進社国賠の第16回口頭弁論が東京地裁民事第1部(後藤健裁判長)で行われた
24日東京 不当逮捕と前進社不当捜索を弾劾する
警視庁公安部によるA同志へのデッチあげ逮捕と、前進社に対する不当な家宅捜索を徹底弾劾する
24日東京 法大暴処法弾圧控訴審、全員無罪を
東京高裁第12刑事部(井上弘通裁判長)で、法大「暴処法」弾圧裁判の控訴審第6回公判が行われた

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月刊『国際労働運動』(449号9-1)(2014/01/01)

編集後記

■編集後記

 絶対反対で闘うことが最も大衆的であり、団結を拡大する道である。
 動労千葉が85〜86年のストライキを決断できた核心問題は何か。執行部は組合員を信じて徹底的に討論した。そして、「ここで立ち上がらなかったら労働者同士が互いに蹴落とし合うようになる。それだけは絶対だめだ」という結論に至った。「闘えば労働者全体に火がつく」と確信した。闘いの原則の根底には一人ひとりの組合員の自らの闘いへの誇りがあった。
 ここには労働者階級全体の利害に立つこと、正しい時代認識と路線・方針がある。そして義理人情だ。労働者を徹底的に信頼し、団結の強化を総括軸にし、困難から逃げない指導部をつくることが巨大に見える敵にうちかつ道だ。
 これこそ生きたマルクス主義である。

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