International Lavor Movement 2013/06/01(No.442 p48)
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2013/06/01発行 No.442
定価 315円(本体価格300円+税)
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月刊『国際労働運動』(442号1-1)(2013/06/01)
■羅針盤 5月スト−6・9国鉄大集会へ
▼4・26自治労統一ストライキ闘争方針が全国の単組・職場で必死に訴えられ、闘いが組織されていった。職場に怒りは充満している。その怒りに火を付ける時が来たのだ。「労働者は闘っても勝てない」「ストライキを闘う力がない」。言い古されてきた敗北と屈服の思想を、マルクス主義の思想と時代認識・路線を武器に徹底的に議論し宣伝し、現場の怒りの先頭に立って行動を起こし打ち破る闘いが始まった。
▼賃下げ絶対反対のストライキの貫徹をめぐり、当局や体制内労組幹部によるスト圧殺策動との白熱的な攻防となった。ここで、党が職場の全労働者の怒りを体現し組織してストライキで闘い抜ける労働組合をつくり出せるかどうかが問われた。
▼労働組合を拠点として打ち固め組織する階級的指導部の建設と強力な労組活動家集団の形成が焦眉の課題となった。職場細胞と地区党建設、産別委員会建設が一切の土台だ。機関紙拡大がいよいよ決定的課題になった。何度もストに立ち上がる動労千葉・動労水戸に徹底的に学ぼう。労組交流センターの組織拡大や動労千葉を支援する会、国鉄闘争全国運動の活動が大きな力を発揮する時だ。それは労働者が労働者階級としての自信と誇りを取り戻していく闘いだ。
▼闘いはまだ始まったばかりだ。労働者の怒りはこんなものではない。階級的労働運動の発展でプロレタリア革命の勝利を開こう。5月1日、動労千葉・動労総連合の呼びかけでJR貨物本社抗議行動と新宿メーデーが戦闘的に闘い抜かれた。闘う5・1メーデーから自治労5月ストライキを闘い抜き、6・9国鉄闘争全国運動大集会の成功をもって、安倍打倒に攻め上ろう。
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月刊『国際労働運動』(442号2-1)(2013/06/01)
■News & Review 韓国
現代車非正規職の渾身の闘いが続く
蔚山工場送電鉄塔籠城が200日目に
現代起亜自動車本社前籠城闘争を展開中
現代自動車蔚山工場の非正規職労働者2名の鉄塔籠城が5月4日で200日目を迎えた。5月4日午後、ソウルのヤンジェ洞現代起亜車本社前には300余名の労働者市民が集まった。警察の鉄壁のような警備で四方が塞がれている中で、10年もの間、不法派遣を行っているチョンモング現代車会長を声高く弾劾した。しかし、チョンモング会長は朴槿恵大統領訪米の経済使節団の一員としてアメリカに逃げ出している。
ヤンジェ洞の現代起亜自動車本社前では現代車非正規職解雇労働者たちが野宿籠城を続けており、13日目になる。30余人の現代車非正規職解雇労働者たちは、毎日、警察との衝突に耐え抜いている。毎日2、3回、警察とぶつかり合いをして籠城場を死守している。4月26日には現代、起亜車非正規職上京闘争の時に設置したテントも撤去されてしまった。
彼らは非正規職の正規職転換とチョンモングの拘束、そして鉄塔籠城の同志が降りてくるまで本社前の野宿籠城闘争を続けると決意を固めている。
資本の側は恐れおののいており、保守マスコミを使って「円安情勢下での会社の苦境を顧みない労働者たち」と攻撃している。
(写真 現代起亜車本社前の抗議闘争【5月4日 ソウル】)
現代嘱託職労働者の自殺と起亜社内派遣労働者の焼身が契機
4月14日と16日、現代車嘱託職労働者の自殺と起亜車の社内派遣労働者の焼身が決定的な引き金になった。もうこれ以上耐えられないと、現代起亜車非正規職労働者が集中闘争に立ち上がった。4月24日から現場ストライキと本社前上京闘争で闘っている。
現代自動車では社内下請け労働者に対する会社の一方的な選別「新規採用」が進められており、これに多くの非正規労働者が群がっている。一方で嘱託職化が進められている。この嘱託職が偽装請負を糊塗し労働者をいつでも解雇しようとするものでしかないことが、今回の嘱託職になった労働者の絶望による自殺で明確に示された。
焼身が起こった起亜車の光州工場では62万台増産にともなって新規採用が迫っていた。会社が数百人を選ぶという広告を出すと3万2千人がこれに応募したという。しかし29歳以下という年齢制限があり、大部分の社内下請け労働者は30代中盤であって年齢制限に引っかかるという。そもそも「新規採用」は会社の一方的な選別で、年功も考慮されずに「新規採用」するというものだ。不法派遣労働者の正規職転換とはまったく異なるものだ。
不法派遣を糊塗するための「新規採用」
昨年12月27日、現代車非正規職労組が社内下請け労働者の一部を選別採用するということに反対して労資特別交渉が中断され、新年早々新規採用強行が始まった。しかし非正規職労組の組合員は新規採用願書を出さなかった。
会社は8500人の社内下請け労働者の中から「採用基準に適合した」1552人を経歴職新規採用として選別するとしている。これらの中で一部は正規職の定年の後を埋めるなど必要な場所に配置するとしている。その空いた職場は誰が埋めるのかというと、もちろん非正規職だ。
経済危機が押し寄せて、自動車が売れなくなっても現代自動車が約束を守ると仮定して、2016年上半期まで4000人以上が正規職になったと仮定する。それでも会社の適合基準に合わずに採用されない4500人がおり、非正規職が働いていた場所に埋められる労働者は労資合意によって不法派遣を免れた「合法請負」労働者になるのだ。
会社は正規職新規採用に社内下請け労働者を優先すると言うが、経済危機と自動車販売減少、新車生産と自動化など多くの理由でいつでも首を切ることができるようになるのだ。5千人の社内下請け労働者は永遠の奴隷労働者になるのだ。「経歴職新規採用」とは不法派遣を隠蔽して免罪符を与えるものだ。
現代車では非正規職の正規職転換をめぐる「特別交渉」は中断したままである。近く再開されるとしても会社側は現在進めている「新規採用」方針のゴリ押しで何とか乗り切ろうとするであろう。非正規職闘争の最大の焦点である現代車非正規闘争の突破口を切り開く労働者階級の全力結集が求められている。
(写真 民主労総の主催で1万5千人が参加したメーデー大会。下は「整理解雇・非正規職のない世界!」のスローガンを掲げる女性労働者たち【5月1日 ソウル市庁広場】)
(写真 保健医療労組の事前集会【ソウル駅前。右から2人目がキムスギョンさん】)
(写真 公共運輸労組の事前集会【「2013年世界労働節祈念公共運輸労働者決意大会」】)
123周年メーデーを民主労総が各地で闘う
5月1日メーデーは、民主労総の全国15地域で同時多発で行われた。
ソウルでは5月1日午後3時、ソウル市庁広場で「非正規職の正規職化」「労働基本権保障」「社会公共性をかちとる」ことを掲げて1万5千人が参加するメーデー大会が民主労総の主催で行われた。
公共運輸連盟、公務員労組、民主一般連盟、サービス連盟、保健医療労組など五つの民主労総傘下の連盟、労組も午後3時の本大会に先立ってそれぞれ事前集会を開いた後、ソウル広場に集まった。
123周年メーデー集会は「労働のない朴槿恵政権」を糾弾して、メーデーを契機に労働の社会的価値と位相を高めるという目的で行われた。このために民主労総は「労働者権利宣言」を発表して△公共部門労働基本権をかちとることと民主労組強化△整理解雇撤廃、解雇者復職、非正規職の正規職化△公共医療院廃業を防ぎ医療の公共性、社会公共性強化△業務上災害死亡処罰法強化、最低賃金引き上げの実現、南北対決中断、対話復旧と平和協定締結などを要求した。
ヤンソンユン民主労総副委員長は大会で「民主労総の歴史上初めて委員長のいない大会を開くことになったことに対して深い謝罪の言葉を伝えたい。お互いの差異を克服できずに指導部選出が遅延する状況はわれわれすべての責任だ。そしてわれわれの状況は誰かのせいにして責任を問うというような悠長なものではない」と述べた。
続けて「今、民主労総が指導部空白状態の長期化という初めての危機にあるが、民主労総の主人は組合員であり、依然として進歩民衆陣営を先導せよという時代的役割を付与されている」として「民主労総は闘う組織」だと強調した。そして「万国の労働者よ、団結せよ、不義と差別に抵抗せよという100余年前の叫びを教訓にして今日の危機と悪環境を災い転じて福となす≠ニいう知恵を出して突破して跳躍するものである。今日、全労働者の権利を宣言して平等な世の中の建設を叫んで闘う決意をする」と明らかにした。
一方、メーデー本大会が終わるころ集会参加者らがソウル市庁広場から百数bほど離れた双龍車の大韓門焼香場に追慕しに行こうとすると、警察がこれを妨げて対峙・衝突する事態が発生した。
キリュン電子分会組合員が8年5カ月ぶりに現場復帰
2005年の解雇の後、約6年間の街頭闘争、それから2年6カ月の復職猶予を経たキリュン電子分会組合員10人が5月2日、約8年5カ月ぶりに現場に戻った。
長い間待った時間は「闘争の歴史を書き換える」というほどの崖っぷちの闘争を続けた時間だった。1895日という最長期闘争記録を立て、生死をさまよう3回の断食闘争と2回の高空籠城を行ったりもした。8年ぶりに出勤の途に立った組合員たちは、その苦痛の時間と、離れていった組合員たちへの思いを消すことができず涙を流した。
キムソヨン前分会長は「闘争を始めた時は300人の現場労働者たちがいたし、200人の組合員がいたけれど、今はみんなどこかに消えて私たち10人だけぽつんと残った。ここには数多くの労働者のハン(恨み)が立ち込めているから、私たち10人は労働者のハンを解いて非正規職のない世の中のためにこれからも一騎当千で闘っていく」と語った。
キリュン電子分会組合員たちの現場復帰の日の5月2日午前8時30分、新デパン洞にあるキリュン電子新社屋はいつもより騒がしかった。この間、闘争に連帯してきた人たちと闘争事業場労働者たちが集まってキリュン組合員たちの出勤を迎えた。キリュン電子分会は出勤前、記者会見を開いて闘争を共にしてきた人たちに感謝の挨拶を伝えた。
ユフンヒ・キリュン電子分会長は「初めて労組を結成したときの心を忘れずに、現場でも最善を尽くす。これまで待ってくれた同志たちと8年6カ月を耐えてくれた組合員たちに感謝して、これからも失望させないようがんばる」と発言した。
ユンジュンヒ組合員は「2
005年4月30日解雇の電話を受けて、5月3日に出勤するなという携帯メールを受けた後、8年ぶりに工場に戻ることになった。これから工場でどんなことが起こるか知れないが、どんな状況になっても毅然と対処していく」と発言した。
オソンソク組合員は「双龍自動車、才能教育など闘う労働者たちを復職させたいと心が痛い。しかし私たちがまた現場で力を入れて整理解雇と非正規職、特殊雇用労働者の問題の解決の先頭に立つことを約束します」発言した。
(大森民雄)
(写真 現場復帰を果たしたキリュン電子分会のユフンヒ分会長【中央)を始めとする組合員【5月2日】) ---------------------------------------------------
月刊『国際労働運動』(442号2-2)(2013/06/01)
■News & Review ヨーロッパ
緊縮政策と対決し各地でメーデー2013
ギリシャのゼネストを先頭に怒り爆発
闘いの伝統の復活
世界大恐慌6年目のメーデーは、ヨーロッパ各地で、緊縮政策への労働者階級の怒りを爆発させた。これまでのメーデーを超える激しい憤激の中で闘われ、文字通り、労働者階級の国際的闘争日となった。
「EU全体で失業者数が2600万人に上る中で、今年のメーデーからは、一切のお祭り気分は一掃されていた」と、ヨーロッパのマスコミは伝えている。
「おれたちは、恐慌のつけは払わないぞ!」「もうこれ以上我慢はできない。ノーの声を上げよう」「私たちは奴隷ではない」「闘いに立ち上がらなければ、殺されてしまう」「緊縮政策は労働者を傷つけ、殺す」「EU理事会―ヨーロッパ中央銀行―IMF(世界通貨基金)のトロイカの新自由主義政策反対」「おれたちの生命と職は組合ボスにまかせてはおけない」――という横断幕やプラカードを掲げているデモ隊の顔は、どこでも怒りとともに誇りに満ちている。
ギリシャではゼネスト
2013年のヨーロッパ・メーデーの先頭に立ったのは、ヨーロッパ帝国主義の緊縮政策=新自由主義攻撃の最前線で闘い続けてきた不屈のギリシャ労働者階級だ。今年のメーデーを、ゼネストで闘ったのだ。ギリシャ全土の交通網は遮断され、フェリー(地中海国家ギリシャの重要な交通手段)は、波止場に係留されたまま。学校はストップ、病院は緊急要員を除いて、休止状態。ギリシャのゼネストは、今年に入ってすでに2回目、恐慌突入以後のゼネストは、なんと21回目となる。
メーデーの直前、ギリシャ議会は、EU、ヨーロッパ中央銀行、IMFからの融資の条件として緊縮政策の強行を承認、公務員労働者1万5千人の首切りを2014年までに実施することを議決した。これに対し、ギリシャの二大全国労組組織である公共労組(ADEDY)と民間労組(GSEE)が共同で、メーデー当日にゼネストに突入することを決定したのだ。
ギリシャの失業率は27・2%、失業者の67・1%が青年労働者だ。たびかさなる賃下げ、増税、年金の大幅削減などに対し、労働者人民の怒りはねばり強いデモやストとして燃え上がっている。社会保障制度への解体的攻撃で、病院は人員削減・設備老朽化のために荒廃し、失業と病気に追いつめられた人民の殺到に対応できなくなっている。病院ストに立ち上がった医療労働者の怒りは、新自由主義攻撃の生み出したこうした現状への抗議が含まれている。
メーデー当日、ギリシャ国家権力は大規模に機動隊を配備し威嚇したが、労働者はアテネ市内のデモを意気高く完遂した。
(写真 「制限のない闘いだ」のスローガンを掲げるスペインのメーデー・デモ【5月1日】)
共同アピール発したスペイン
ギリシャに次ぐ戦場は、スペインだ。二大全国労組組織、CCOO(労働者評議会)とCGT(労働総同盟)は、メーデー共同アピールを発した(9nに掲載)。
このアピールは、体制内労働組合でさえ、新自由主義の破産を弾劾するこのようなアピールを出さねばならないところまで、労働者人民の怒りが高まっていることを示している。
メーデー当日、首都マドリードを始め、バルセロナなどで、大規模なデモが行われた。
独立メーデー実現したイタリア
3月の選挙の結果、内閣の組閣ができず、政治的空白状態が続いていたイタリアでは、体制内労働組合とは別の独立メーデーが行われた。それは〈ユーロ・メーデー〉と名のり、CUD(現場労働者統一同盟)という独立労組組織の呼びかけで、他のEU諸国の独立労組と連帯して、北イタリアの工業都市ミラノで行われた。そのスローガンは、次の通り。
★非正規労働者、イタリア人労働者と移民労働者は、団結しよう。そして、健康、交通、住みやすい公共住宅のために闘おう!
★今こそ、恐怖と欠乏の牢獄を打ち破ろう!
★われわれは、〈彼ら〉の恐慌のつけを、払わないぞ。ストライキへ、ともに進もう。労働条件の悪化と公共サービスの切り捨てを招く政策に反対しよう!
ここでは、非正規労働者との連帯、移民労働者との連帯が、力強く呼びかけられていることが注目される。
【ドイツ・フランス・イギリスについては、次の機会に触れたい】
弾圧下で闘われたトルコのメーデー
イスタンブールでは、街の中心地でのデモが禁止された。しかし左派労組DISKは、この禁止を無視することを決定。デモ隊に対し、機動隊が放水と催涙ガスで攻撃。
労組は「今回の弾圧は忘れないぞ」と声明。
注目を集めたヨーロッパ・メーデー
2013年メーデーについて特徴的なのは、冒頭にも触れたように、欧米のマスメディアの注目度の高さである。とりわけ注目すべきなのは、イギリスのガーディアン紙が、数十ページの現場ルポを掲載していること、そして、AP通信が「全世界で、怒れる労働者がメーデーで団結」という見出しを掲げて、大論文の報道をしているということである。この記事では、「今年のメーデーは、緊縮政策に対して怒ったヨーロッパから、低賃金と劣悪な労働条件に憤激したアジアにいたるまで」「労働者の声を無視した政治家や財界に向けて、強烈な抗議がたたきつけられた」と言っている。
大規模化するアジアのメーデー
そこで触れられているアジアについて、二つの例を引いておきたい。
一つは、インドネシアである。メーデーの結集は、全国20地域で60万人。その首都ジャカルタでは、15万人がデモを行った。要求は、賃上げ、福祉医療制度の保障など。ジャカルタのデモには、近郊の工業団地から、労働者が続々と結集、大統領宮殿や国会へ向けて、隊列を組んで行進した。インドネシアには、日本企業を始めとする外国資本が、近年、政府の外資優遇策などによって、大規模に流入している。昨年末、この新自由主義攻撃に対して、200万人規模の労働者の抗議闘争が、「非正規職撤廃」を掲げて闘われたばかりであった。
もう一つの例は、バングラデシュである。ここでは、外資のブランドもの衣服製造工場の倒壊事故による750人以上の労働者の死に対する怒りの爆発が、メーデーを前後する期間、バングラデシュを暴動状態に突入させているのである。
この事故は、五つの工場が入居する雑居ビルが、違法な手抜き工事のせいで崩壊し、工場内で働いていた2500人の労働者を押しつぶしたり、負傷させたものだ。事故の前日にこのビルの柱にいくつもの亀裂が見つかり、行政から退去命令が出されていたにもかかわらず、資本家たちがこれを無視して労働者を工場で強制的に働かせていた結果、この事故が起きたのだ。労働者の人命を無視し、これを引き起こした会社資本と、日本企業を含むすべての外国資本に対して怒りが渦巻いているのだ。
このほか、アジアでは、ソウルを始め、フィリピン、カンボジア、台湾、そして香港などでの、メーデーを前後する労働者の激しい闘争が伝えられている。
最末期帝国主義の延命策である新自由主義は、世界大恐慌のただなかで、ヨーロッパとアジアの労働者の闘いの連帯の条件を生み出しているということだ。
(写真 インドネシアのメーデー【5月1日 ジャカルタ】)
革命的指導部の形成を
昨年11月14日の全ヨーロッパ反緊縮政策統一行動に引き続いて、2013年のメーデーでは、ヨーロッパ全域に広がる新自由主義への怒りが、かつてない激しさと巨大さをもって爆発した。EU帝国主義が、緊縮政策を継続すれば経済成長の回復は阻害され、大失業がますます拡大し、労働者階級人民の怒りは、極限的に高まる。アメリカでも、日本でも、ヨーロッパでも、帝国主義=資本主義に展望はまったくない。まさに、プロレタリア世界革命以外に歴史の突破口はない。このロシア革命以来最大の革命情勢を、本当に革命の勝利へ導くためには、階級的労働運動の革命的指導部の形成が、死活的な条件だ。
30年代内乱・内戦の敗北が第2次世界大戦への突入を許したという経験を持つヨーロッパ労働運動、階級闘争が、今度こそ勝利するためには、スターリン主義への屈服が敗北の原因であったと総括しきることが、絶対に必要だ。2013年、ギリシャ・ゼネストを先頭とするヨーロッパ・メーデーの大爆発は、歴史の総括をつうじての勝利の展望をかちとること、すなわち反帝国主義・反スターリン主義の革命党を、階級的労働運動の復活と一体的にかちとっていくことが、現在、緊急の課題となっていることを示している。
(川武信夫)
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●スペイン労働者評議会と労働総同盟の2013年メーデー共同アピール(抜粋)
2013年メーデー、われわれの権利のために、一切の制限なしに闘おう
★失業反対! 雇用を保障せよ
★労働に関する規制緩和反対! 労働者の権利と団体交渉権を守れ
★民営化反対! 公共サービスと社会的安全の解体を許すな
★社会的政治的危機と闘おう! 民主主義を守ろう
メーデーは、労働者の国際連帯の日だ。EUと各国政府の経済政策は、完全に破産した。現在のEUの社会体制と決裂しなければならない。
現在の危機は、国際金融機関の危機から出発している。そのもとで、社会的格差は拡大し、貧困は増大している。労働者の権利を始め一切の社会的権利は破壊されている。昨年11月14日のヨーロッパ統一ストライキで発揮されたような労働者の力を、メーデーで再び爆発させよう。今、ヨーロッパ労働者の直面している現実は、新自由主義政策の破産の結果である。
2013年のメーデーに向けて、UGTとCCOOは、政府の改革政策に反対を表明する。それは、労働者の権利と社会保障をドラスチックに削減し、団体交渉の権限を縮小し、経営者の権限を強化し、彼らの思いのままに、解雇ができようにするものである。この改革法は、公的部門での労働条件を悪化させ、失業者の保護をカットする。すでに職場では、緊張と紛争が激化、頻発している。
労働者評議会と労働総同盟は、労働法の改悪に反対し、雇用の確保と福祉社会の維持を要求する。
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月刊『国際労働運動』(442号2-3)(2013/06/01)
■News & Review 日本
F35で武器輸出三原則を大転換
大争闘戦時代に武器輸出の本格化を狙う
(図 世界の軍事企業売上高(2010年 ストックホルム国際平和研究所)(図のテキストは下)
(図 防衛庁の装備品契約高上位企業【2012年度】)(図のテキストは下)
□安保とTPPはひとつ
今や大恐慌は、帝国主義間・大国間の相互つぶし合いの争闘戦に突入している。TPP(環太平洋経済連携協定)を軸とする米帝のきわめて帝国主義的でブロック的な通商政策が、日帝と全世界を揺るがしている。米帝オバマはそれを貫徹するために新軍事戦略を打ち出したのだ。対中国の軍事体制をアジア・太平洋に構築し、中国を包囲・制圧し、最終的にソ連を崩壊させたように解体することを狙っている。TPPは何よりも対日争闘戦である。米帝は日帝をTPPの枠内に取り込み、押さえつけ、取れるものは奪い取ろうとしている。
日帝はTPPに参加せざるをえない。日帝が生き残るには日米同盟が絶対不可欠だ。その中で日帝は利益を絶望的に追求する以外にない。
そのために安保防衛政策ですさまじい反動的飛躍をとげなければならないところに追いつめられている。
その具体的内容が4月24日に発表された自民党の新防衛計画大綱に関する提言骨子案である。
○自主憲法制定=9条改正、国防軍設置▽国家安全保障基本法制定▽日本版NSC(国家安全保障会議)設立▽秘密保護法制定▽国防基本方針見直し▽防衛省改革
○動的機動防衛力▽強靱な防衛力▽骨太の防衛戦略
○隙間のない事態対応▽島しょ防衛態勢の強化=海兵隊的機能の整備▽核・弾道ミサイル攻撃への対応能力の強化▽原子力発電所の警備・防護
○集団的自衛権行使の検討加速化▽日米の適切な役割分担の下での策源地(敵基地)攻撃能力保有▽普天間移設問題の解決
○自衛隊の人員・装備・予算の大幅拡充
追いつめられ打つ手がない安倍は戦争によって一日でも延命しようとしている。
ここでは、安倍が戦争に向かって武器輸出三原則を反動的に転換し武器輸出を本格化する策動について弾劾していきたい。
F35部品輸出を例外に
安倍内閣の菅(すが)官房長官は3月1日、航空自衛隊の次期主力戦闘機F35(11年12月に野田内閣が選定)について、紛争当事国への移転を禁じた武器輸出三原則の例外扱いとし、日本企業の部品製造への参画を容認する官房長官談話を発表した。米国を中心とするF35の製造への参画は「わが国の防衛生産および技術基盤の維持・育成・高度化に資する」とし、国内企業を育成する意義を強調した。日本の防衛産業・経団連と安倍の要求である。
F35はロッキード・マーティン社製で、米英など9カ国が共同開発する最新鋭ステルス機。長距離攻撃能力と爆撃能力を保有する北朝鮮・中国侵略戦争のための攻撃兵器だ。日本は共同開発に加わっていないが、国内で日本企業が機体の最終組み立てと主翼などの部品製造に参加することが決まっている。
日帝は、部品のライセンス生産比率4割を獲得し、さらに部品を世界向けに製造して対米輸出を狙っている。あからさまな武器輸出を策動している。米帝の側も日本企業を参画させ、日本企業が生産した部品を米政府の一元管理の下、共同開発国同士で融通し合う仕組みを作り上げている。日本で製造された部品がアメリカでF35に組み込まれ全世界に輸出されていこうとしている。
これは明らかに武器輸出三原則に反するものだ。
そこでF35選定直後の11年12月、野田内閣は武器輸出三原則の例外適用対象国を大幅に拡大した。
野田内閣の藤村官房長官は、「日本の安全保障に資する」武器を「日本と安全保障の面で協力関係にある国家」と共同開発する時は、その武器開発に必要な部品を共同開発国に輸出できるように拡大したとの談話を出した。ただし申し訳のように「国際紛争等を助長することは回避する」とのただし書きをつけた。
今回、菅は日本企業が部品製造に参画することを認め、防衛産業を育成していく立場を公言した。さらに菅は、藤村発言にあった「国際紛争等を助長することを回避する」の文言を削り取った。
これは、日本で製造された部品がアメリカに輸出されF35に組み込まれ、そのF35が近隣諸国に侵略戦争を繰り返しているイスラエルに渡る可能性があるからだ。そうなれば日本が「国際紛争を助長」することになる。こうした批判から言い逃れるために生み出された居直り談話だ。
菅は、「移転を厳しく制限する」と言うがF35は米政府の下にあるのだから実質的な意味がない。事実上イスラエルに武器輸出する可能性を容認し、武器輸出三原則を完全に骨抜きにしている。
軍事産業の要求貫徹
安倍は、日本軍需産業の武器輸出の拡大に踏み出した。これは軍需産業の利益を貫徹し、アジアと世界の武器市場をめぐる大争闘戦に突入しようとするものだ。
F35は16年度に導入開始の予定で42機購入する計画だ。米国防総省側の12年5月の見積もりで総額8千億円とされる(1機190億円)。米軍需産業の要求を丸飲みしたとてつもない超高額兵器だ。人民から税金を搾り取り、人民を戦争に動員して人民の命を奪い取る兵器だ。
購入費用は、政府は初年度となる12年度は1機102億円(4機購入)だったものが、13年度予算案では2機で299億円と1・5倍になっている。そして13年度米国防予算に計上された米空軍用のF35の価格は1機195億円である。天井知らずの高騰を示している。
F35は、一部の完成機輸入を除いて国内軍事産業が機体組み立てや部品生産を始める。機体は三菱重工、エンジンはIHI(石川島播磨重工業が名称変更)、電装品を三菱電機がそれぞれ担う。政府は、13年度予算案にF35国内生産ライン整備のため830億円も計上した。
破綻が相次ぐF35
3月、米政府監査院(GAO)が新たにまとめた報告書で、最新鋭ステルス戦闘機F35の試験飛行で見つかった不具合を修復するため、約17億j(約1630億円)が必要になるとの見通しを示した。さらにF35の運用には高額の維持費が必要としている。敵のレーダーに捕捉されにくい高度なステルス性能の維持に巨額の費用がかかるという。
F35戦闘機は第5世代と言われ、いまだに研究開発中である。カナダやオーストラリアは価格の高騰や調達時期の不透明などを理由に白紙撤回や先送りを決めている。米帝はこうしたF35に巨額の軍事予算を付けて軍事産業を保護し、戦争を促進している。
F35は、ステルス機能や電子機器満載のネットワーク機能を加え、なおかつ戦闘、爆撃などの能力を維持するために機体に不具合が生じているのだ。そもそも国際共同開発という外注化で破産している。人間が扱える限度をはるかに超えているのだ。核と原発で起きていることと同じだ。最末期帝国主義の腐敗がここにも現れている。
海自飛行艇を印へ輸出
3月24日、政府が、海上自衛隊に配備している水陸両用の救難飛行艇「US―2」(新明和産業)をインドに輸出するための手続きに着手したことが分かった。これまで自衛隊が運用する航空機だとして輸出はタブー視されてきた。
だが、11年12月の武器輸出三原則の緩和で「平和貢献・国際協力」に「合致」するものであれば「武器」の輸出を容認したことに伴い、政府はタブーを取り払った。タイやインドネシア、ブルネイなど東南アジア諸国への武器輸出も狙っている。武器輸出と軍事産業の拡大と戦争は一体で進む。絶対許してはならない。
世界大恐慌と大争闘戦時代への突入、3・11大震災と福島原発事故の下で労働者階級の怒りは高まっている。安倍政権打倒へ、外注化阻止・非正規職撤廃、被曝労働拒否を水路に階級的労働運動で闘おう。
(宇和島洋)
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世界の軍事企業売上高(2010年 ストックホルム国際平和研究所)
兵器の売り上げ 総売上高
1 ロッキード・マーティン 米 357億3000万j(2兆8584億円) 458億300万j(3兆6642億円)
2 BAEシステムズ 英 328億8000万j(2兆6304億円) 346億900万j(2兆7687億円)
3 ボーイング 米 313億3600万j(2兆5088億円) 643億600万j(5兆1444億円)
25 三菱重工 日 29億6000万j(2368億円) 330億800万j(2兆6464億円)
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防衛庁の装備品契約高上位企業(2012年度)
1 三菱重工業 2888億円
2 川崎重工業 2099億円
3 三菱電機 1153億円
4 日本電気 1151億円
5 富士通 529億円
6 東芝 504億円
7 IHI 353億円
8 小松製作所 334億円
9 日鉱日石エネルギー 272億円
10 日立製作所 255億円
・三菱重工業/戦車、支援戦闘機、戦闘機、潜水艦、地対空誘導弾
・川崎重工業/輸送ヘリコプター、対戦車誘導弾、中等練習機
・三菱電機/地対空誘導弾改善用装備品、中距離地対空誘導弾
・日本電気/音響信号処理装置、師団通信システム、ソーナー
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●武器輸出三原則
日本帝国主義は敗戦の結果、米占領軍の下で徹底的な軍隊と軍需産業の解体が進められた。しかし米帝国主義とソ連スターリン主義の対立が激化すると、米帝は一転して日帝に再軍備を求めた。そして1950年に朝鮮戦争が勃発すると、日本全土が大兵站基地となり、また朝鮮戦争特需によって軍需産業は息を吹き返した。
その後、輸出貿易管理令によって武器は通産大臣の許可をえなければ輸出できないとされたが、朝鮮戦争後も東南アジアや中東諸国向けに銃弾、砲弾などの小型武器の輸出は続行された。しだいに日本の軍需産業は主要兵器の生産能力を回復し、ベトナム侵略戦争のための武器輸出が活発化し、沖縄はもとより日本全土が米帝のベトナム侵略戦争の大兵站基地となった。
ベトナム侵略戦争が激化し、全世界の労働者人民のベトナム反戦の声の高まりを受けた野党は「平和憲法の建前から武器輸出は行うべきではない」と佐藤内閣を徹底的に追及した。
その結果、佐藤内閣は1967年4月(佐藤ベトナム訪問阻止10・8羽田闘争の年)、共産圏諸国、国連決議によって武器輸出が禁止されている国、国際紛争当事国又はその恐れのある国に対しては武器輸出を認めないという方針を打ち出した。これが武器輸出三原則である。
▼三木内閣は1976年(サイゴンが陥落し、米帝がベトナム戦争で敗北した翌年)に、三原則対象地域以外にも武器輸出は慎む、武器製造関連設備の輸出も武器に準じて扱うと武器輸出三原則の強化を打ち出した。
これに対して米帝は、日米相互防衛援助協定を楯にとって、日本側からの武器技術供与を要求した。
▼1983年、新自由主義を標榜する中曽根内閣は、対ソ対決と日米同盟強化を前面に押し出し、米国に対する武器技術の提供を武器輸出三原則の「例外」とすることを認めた。
▼05年小泉政権は、アメリカとの弾道ミサイル防衛システムの共同開発・生産は武器輸出三原則の対象外とすると発表した。
▼10年1月、鳩山内閣の北沢俊美防衛相が東京都内で行われた軍需企業が参加する日本防衛装備工業会で「そろそろ基本的な考え方を見直すこともあってしかるべきだと思う。10年末に取りまとめられる防衛計画の大綱(新防衛大綱)において武器輸出三原則の改定を検討する」と発言し、見直しの内容としては「日本でライセンス生産した米国製装備品の部品の米国への輸出」や「途上国向けに武器を売却」をあげた。
▼11年12月、野田佳彦首相は就任当初から武器輸出三原則の緩和に意欲を見せ、国際共同開発・共同生産への参加と人道目的での装備品供与を解禁するとして藤村修官房長官による談話を発表した。
▼13年3月1日、安倍内閣の菅義偉官房長官は、次期主力戦闘機F35について、紛争当事国への移転を禁じた武器輸出三原則の例外扱いとし、日本企業の部品製造への参画を容認する談話を発表した。
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月刊『国際労働運動』(442号3-1)(2013/06/01)
(写真 「ウォルマート=貧困化」「労組破壊をやめろ!」。ウォルマート労働者とILWUなどがロサンゼルスでデモ【2012年6月】)
■特集 アメリカの戦闘的労働運動
歳出削減で公務員へ攻撃 米労働運動の拠点で激突
はじめに
FAA(連邦航空局)は4月25日、ボーイング787の運航再開承認を発表した。事故多発の原因が不明のままでの見切り発車は、アメリカ帝国主義の焦りを示している。アメリカ製造業が最後の砦としてきた航空宇宙産業・軍需産業も、外注化によってボロボロだ。オバマは「輸出2倍化」を掲げているが、戦争的手段によらなければ部分的実現さえ不可能だ。
本特集の第T章は、連邦公務員20〜30%賃下げ・自治体解体=解雇と公的年金・医療制度破壊、そしてオバマ政権の軍事独裁化の実態と階級攻防を見ていく。
第U章は、アメリカ帝国主義が対中対決・対日争闘戦にのめりこみ、ますます危機を激化する姿を暴く。
第V章は、米本国の戦闘的労働運動の拠点職場と外注化・海外移転先の労働者の闘いが国際的に団結し、勝利していく闘いの始まりを見ていく。
第1章
T 連邦公務員20〜30%の賃下げ――地方公務員も連動し削減
階級戦争のための歳出強制削減
二期目のオバマ政権は、「財政の崖」に直面し、全世界がアメリカ経済の崩壊の接近にかたずをのんだ。「崖」からの転落を先延ばしにしたのと引き換えに出してきたのが、3月1日にオバマが発令した「歳出の強制削減」だった。
削減される分野は、労働者人民の雇用・生活関連に集中している。軍事予算の削減も騒がれているが、アラスカでの演習の中止などのパフォーマンスがほとんどで、イラク、アフガニスタン戦費はむしろ拡大する。F35などの超高額の兵器開発・調達費も手付かずだ。
07、08年以来、すでに巨額の歳出カットで大量解雇が行われてきた上に今回の強制削減が加わる。
今回、149の航空管制塔が削減され、1500人の連邦管制官には毎週平日の無給休暇が取らされた。ニューヨーク・シカゴ便、ロサンゼルス便などの主要路線でも多数の欠航と2、3時間の遅れが発生している。
連邦職員100万人に無給休暇が強制され、20〜30%の賃下げとなる。また、インフレ加算が停止したので、実質賃金はさらに下がる。
また400万人の長期失業者が連邦失業給付金を11%削減される。
そして、ソーシャルセキュリティー(公的年金)、メディケア(高齢者・障害者医療保険)を大幅カットした。
ソーシャルセキュリティーは、30年代大恐慌下の戦闘的な労働運動の結果かちとられた成果であり、これまでレーガンもブッシュも手をつけられなかった。ソーシャルセキュリティー会計は、一般の連邦財政から独立しており、今も黒字であって、連邦財政の危機を理由にしたカットは本来ありえないものなのだ。
メディケアは、60年代の公民権運動、ベトナム反戦運動、労働運動の全社会的な高揚の中でジョンソン政権が64年に「貧困との戦い」を打ち出さざるをえなくなり、その一環として作られた制度だ。
30年代、60年代の階級闘争の成果に対して、オバマは正面攻撃をかけてきたのだ。オバマは、レーガン、両ブッシュを上回る大反動だ。
(写真 「ストップ歳出強制削減!」「雇用を守れ!」。首都ワンシントンで開催された連邦職員労組の集会)
地方公務員への攻撃
連邦歳出の強制削減は、各州や地方自治体の財政にも連動し、公務員への大攻撃、医療・福祉・消防・教育などの削減攻撃がかけられている。
カリフォルニア州では、州政府が従来の削減に加えて今回、8760万jの小中高校の予算を削減した。これで新たに1万人の教員が解雇されるという。6290万jの障害児予算もカットされた。
地方自治体では、消防署の丸ごと廃止も行われている。
破産管財人がデトロイト市の独裁官に
デトロイトは、アメリカの基幹中の基幹である自動車産業の中心地だ。
デトロイトを首都とするミシガン州、そして五大湖周辺の「中西部」と呼ばれる諸州は、30年代の全米自動車労組のGM工場の座り込み占拠ストライキなどの実力闘争で労働組合の権利をかちとってきた地域だ。メーデー発祥の地シカゴ(イリノイ州)も、米史上最大といわれる34年の三つのゼネストが行われた都市のうちの二つ、ミネアポリス(ミネソタ州)とトレド(オハイオ州)も中西部に含まれる。
このアメリカ最大の労働運動の拠点に対しては、これまでの政権は、なかなか正面攻撃ができなかった。オバマは、この労働運動の本丸への総攻撃の先頭に立っている。
(写真 「学校閉鎖実力阻止!」。シカゴ教組はストライキに決起し、学校給食労組や地域の諸労組、住民団体とともに道路座り込みなどで闘っている)
◆シカゴ公立学校の大民営化
オバマの出身地であるシカゴは、19世紀から戦闘的な労働運動の拠点だった。そこは同時に、ミルトン・フリードマンらシカゴ学派(新自由主義のイデオローグ)の拠点であり、両者が激突してきた。
シカゴは、AFT(アメリカ教員連盟)の発祥の地であり、AFTローカル1(第1支部)を名乗るCTU(シカゴ教組)が労働運動の軸を担ってきた。それを間近に見つつ、フリードマンは50年代からバウチャー制(私立学校への入学チケットの公費負担)を提唱してきた。学校民営化の突破口を開くことを、全社会の新自由主義化の鍵としてきたのだ。
90年代から、シカゴ学区の運営を徹底的に営利企業化する「教育改革」が強行された。シカゴの財界団体、コマーシャルクラブが直接に学区幹部の任命権を握り、教育改革プロジェクトの審議会を直接に運営した。
学区トップの名称も他学区のような「本部長」や「教育長」ではなく企業と同じ「CEO〔最高経営責任者〕」にした。
04年に開始されたシカゴの教育改革プロジェクト、「ルネッサンス2010」が全米の中でも突出してチャータースクール化=公設民営校化を進めてきた。シカゴ教組の破壊を狙った大攻撃だった。
オバマは07年の大統領選で勝利すると直ちに、シカゴ学区CEO、ダンカンを連邦教育長官に任命し、シカゴモデルの全米への普及のために全力を挙げた。08年リーマン・ショックの中で、各州の財政の締め上げが、最大のテコとなった。@標準学力テストの成績Aチャータースクール化規制の撤廃の度合いを基準にして連邦資金の配分をストップする圧力をかけ、RTTT(トップに向かっての競争)を導入した。RTTTは、学力テストの点数で学校や教員を評価し、学校丸ごと閉鎖=全員解雇や個々の教員の賃下げ、解雇をするシステムだ。
だが、10年6月、シカゴの教育労働者が大反乱を起こした。ルネッサンス2010や連邦政府のRTTTに屈服してきたシカゴ教組の執行部に対して現場で闘ってきた組合員が決起し、新執行部が樹立され、ストに向かって各職場での組織化が進められた。
オバマは直ちに巻き返しに出た。同年9月、大統領府の最高責任者で民主党の全米レベルの選挙最高責任も歴任してきた実力者、ラーム・エマニュエルをシカゴ市長に送り込んだのだ。
エマニュエルは、都市再開発のために市営住宅や学校の跡地利用を狙う金融資本・不動産会社と結託し、学校の閉校、地域の荒廃化、市営住宅からの住民追い出しをセットにして推進した。不動産業者は、チャータースクール化運動の中心的推進者にもなっていた。資本家階級のあらゆるエネルギーを結集して、シカゴ教組を破壊することにかけたのだ。
こうしたオバマらのシカゴでの労組攻撃を皮切りにして、11年冬には、北隣のウィスコンシン州知事が、公務員の医療給付等カット、実質賃下げ、団体交渉権の剥奪などを含む法案を提出した。
10万人の労働者が州議事堂前に結集し州議事堂占拠、山猫ストで闘った。「エジプトのタハリール広場のように闘おう」がスローガンになった。このウィスコンシンの闘いが、ウォール街のオキュパイ(占拠)運動を呼び起こし、全米に広がった。
◆デトロイト学区の財政非常事態管理人が教員全員解雇
そして同じ11年、さらに激しい労組破壊攻撃がミシガン州で行われた。
各学区の財政破綻に乗じて独裁権限を与えられた財政非常事態管理人が学区権力を握り、クーデター的攻撃をかけてきたのだ。
ミシガン州は、こうして財政危機が加速された各学区に、市長さえ飛び越えて州知事が直接に「学区財政非常事態管理人」を派遣した。そして11年には、学区財政非常事態管理人に「労働協約の一部又は全部を拒絶、改定、又は終了させる」全権を与える州公法4号を成立させた。
11年4月、デトロイト学区非常事態管理人は、デトロイト教組の組合員5466人全員に通知を送った。
「貴殿を解雇する。再就職希望者は期日内に申請せよ」
多くの再雇用が拒否されたため組合員は4100人に激減した。
さらに12年4月にも同様の全員解雇が繰り返された。学区スポークスマンによると、解雇したい者だけに通知を送らず全員に送る理由は「先任権制度」に対処するためだという。
◆学校のマクドナルド化
「先任権制度」とは、就職した年次の順に優先権が与えられることだ。先任者は、解雇の際には後まで職場に残り、再採用の際には早く職場に戻る権利を持つ。
経営者の都合による人事評価が入り込む余地なく自動的に順番を決める制度として、労働組合の闘いの歴史の中でかちとられ、定着してきたものだ。
それに対してミシガン州は、新たな州法で再雇用の基準に先任権を用いることを禁止した。職場の労働者を次々に入れ替え、団結を破壊する意図を露骨に示している。
だが、この州法では、解雇の時の基準に先任権を用いることを禁じることはできなかった。そのためデトロイト学区は、まず全員解雇し、再雇用の際に「教員評価」を基準にしたという。
「教員評価」の一つは、州の一斉テストでの生徒の点数を基準にした評価点だ。あと一つは、こうした生徒の点数を上げるための教材の使用をマニュアルどおりに行っているかどうかが監視され、それが評価点になる。
民間の教材会社が作った教材は、生徒への問いかけの言葉まで指定されている「シナリオ教育」というシステムだ。教員は脚本どおり台詞を語る俳優になれ、アドリブは許さない、ということだ。
教育労働者を次々に入れ替え、マニュアルどおりに授業をする低賃金労働者にしていく。教員の非正規職化だ。
教育目標についてはどうか。
デトロイトが教組攻撃のモデルにしているシカゴでは、前述のコマーシャルクラブが1999年に出した『メトロポリス2020』という企画書で、一方でハイテク中心地として発展するために高度に訓練された才能ある人材が必要といいつつ、他方で
「新たな経済は、少なくともマニュアルを読むことができ、基本的な計算ができ、意思疎通ができる従業員を求めている」
と書いている。教育の極限的な2極化だ。
ちなみに、企画書を作ったプロジェクトチームの議長はマクドナルド社の取締役会長、アンドリュー・マッケナだ。「マクドナルド化」は比喩ではない。
デトロイト市を破産管財人が独裁支配
昨年秋、デトロイトの小中高の全教員が解雇された。
ミシガン州の知事が「非常事態管理人」としてケビン・オアを任命した。州法によってオアには、市長や議会に優先する全権が与えられた。市民の発言権はすべて否定された。独裁官だ。
オアは、巨大法律事務所ジョーンズ・デイ所属の弁護士で、米金融資本の代理人だ。オアは08〜09年のGM、クライスラーの倒産過程の管財人として、UAW組合員の大量解雇、医療・年金カット、賃金半減をやった人物だ。
デトロイトの債務は、自動車産業の外注化・海外移転の波とGM、クライスラーの破産によって作られた。その債務が、金融資本が売りつけたデリバティブ(金融派生商品)によって、人為的に膨張させられた。
だから、本来は金融資本こそが不良債権の損害をかぶるべきものだ。
だが、金融資本の代理人オアは、現存の債務をさらに膨らませ、それを「返済」することを一切に優先している。
IMF(国際通貨基金)と世界銀行が80年代からアフリカ、中南米などで行った累積債務の取り立て、全社会的な民営化と荒廃化=「構造調整計画」をそっくりそのまま実行するということだ。
オアは市予算の大幅カットで大量の公務員を解雇し、学校など公共施設を大量に閉鎖している。
また、市をいくつかの地区に分け、グッド地区とバッド地区に分類した。「バッド」とされた所には予算をつけない。そこを生活不可能な地域にし、住民を団地丸ごと移住させ、大規模な不動産投機の対象にしようとしている。
基準金利の不正操作=巨大金融詐欺
たしかに、資本による詐欺は、いつの時代にも存在した。
しかし、資本主義の根本原理は、価値どおりの売買の形をとった、労働生産過程を通じた剰余価値の搾取だ。詐欺とは別のことだ。
現代のように、中心企業中の中心企業、超巨大資本が、国家ぐるみで露骨で大規模な詐欺をしつづけることは、資本主義の最末期の姿だ。
たしかに、こうした資本の厚顔無恥な強欲と悪辣さに、労働者人民の怒りは煮えたぎっている。体制そのものの打倒まで終わらない怒りだ。
なぜならば、現代の資本主義は、超巨大な過剰資本・過剰生産力の矛盾に押しつぶされているのであり、延命のために詐欺に走らざるをえないからだ。
◆「金利操作は詐欺、しかし州・自治体への損害賠償は却下」
LIBOR(ライボー)=ロンドン銀行間取引金利は、英国銀行協会(BBS)が発表しているものだが、実際はアメリカ金融資本が大きく支配している。シティーグループ、バンク・オブ・アメリカ、モルガンスタンレーなどの米トップ銀行が、英バークレーズ、スイスのUBSなどとともに、金利をBBSに報告する地位にある。それをBBSが集計してLIBORを発表する。
LIBORは全世界のほとんどあらゆる金利の基準になっている。
重大なことは、バンク・オブ・アメリカ、メリル・リンチなどがLIBORを決める地位にあり、同時に、巨額のデリバディブやローンの販売者であることだ。彼らは、実際に銀行間で資金の取引をする時の金利と違う金利をBBSに申告し、人為的に金利を上げたり、下げたりし、それで巨額の利益を上げていたのだ。特にデリバティブの場合、基準金利が0・1%変わっても、デリバティブ価格は10倍、20倍も変わる(いわゆるレバレッジ)。
財政危機の中で何度も各種の州債、自治体債を発行してしのいできた各州、各自治体は、諸種の債券の金利負担の平準化をはかるためという理由で、銀行から「金利スワップ」というデリバティブを売りつけられた。それが銀行に都合のいい方向でLIBORが操作されたため、少なくとも100億jを銀行に余分に支払うことになった。住宅ローン金融機関であるファニーメイとフレディーマックは30億j以上の損失を受けた。他の金融機関、諸団体、一般企業、さらにはローンを組んだ個人も過払いを強いられ、合計すると何百億jになるか分からない。史上最大の金融犯罪だ。
LIBOR不正操作は、国家ぐるみの詐欺だった。ニューヨーク連銀は、遅くとも2007年には不正操作を知っていたが、容認しつづけた。当時のニューヨーク連銀総裁は、08年からオバマ政権の財務長官となるガイトナーだ。
また連邦裁判所は今年3月29日、LIBOR操作で巨額の損失を受けた州、市、年金基金などによる銀行提訴に対して「詐欺だった」と認定したが、「すでに罰金を支払っている」として、損害賠償を却下した。100億j以上の過払いをした原告には1jも払い戻されないのだ。銀行は、総計で25億jの罰金を払ったにすぎない。このようにして加速された州、自治体の財政破綻を理由にして、前記のような公務員への大攻撃が行われているのだ。
また、ローン地獄にたたき込まれた労働者の住宅差し押さえ、路頭へのたたき出しが、大規模に行われている。
労働者の怒りは煮えたぎっている。「ウォール街を占拠しよう!」「やつらを監獄にたたき込め!」のスローガンは、ますます広がっている。
労働者人民からのローンの取り立ては悪辣だ。銀行の「手違い」によって、ローン返済「遅延」が作りだされている。コールセンターの外注化・海外移転で苦情のたらいまわしが行われ、その間に、利子と遅滞金が膨れ上がる。
特に学費ローンは、法的に個人破産さえできない。多くの若者がローン無間地獄にたたき込まれている。
詐欺をしても免責される巨大銀行への人民の怒りは煮えたぎっている。
「働く権利法」=労組敵視法の導入
本誌32nの翻訳資料に書かれているように昨年、ついにミシガン州にまで「働く権利法」=労組敵視法が導入された。つい最近まで、「働く権利法」制定が中西部で実現可能などとは誰も考えていなかったのだ。
この法律の条文はユニオンショップ制(全員加盟制)の禁止である。これ自体、重大だ。しかし問題は、それにとどまらない。
この法律の名称は、「組合に加入しない労働者の働く権利を奪ってはならない」という主張からきている。「労働組合=労働者から働く権利を奪う、労働者の敵」という主張だ。「労働組合は経営者の敵」ではなく「労働者の敵」とすることに意味がある。組合は役立たないとか、不利益があるというレベルの反組合宣伝ではなく、働き、生きる権利を奪う憎き敵として、労働者を労働組合にけしかけるのだ。
この「労組=労働者の敵」論を法制化、全社会化し、労働組合を取り締まることが、この法律の核心だ。実際、働く権利法を導入した諸州では、全員加盟制以外の領域でも、労組活動の妨害、禁止が拡大している。
TPPで階級支配の全面転換狙う
TPP(環太平洋経済連携協定)は、貿易協定と報道されているが、漏洩された文書を見ると、貿易をテーマにした章は二つだけで、あとはすべて企業の権利を定めたものだ。
それは基本的に、@知的財産の保護A投資家保護という言葉で表されている。
「知的財産保護」は第U章で述べるように、国家間対立の戦略的武器として使われているが、階級支配強化の決定的な柱でもある。
「知的財産権の侵害の取り締まり」は組織・個人の日常業務・日常生活の内側まで入り込み、監視しなければ貫徹できない。つまり「知財保護」を口実にすれば暴力的支配体制の強化ができるのだ。
日本で行われている大反動である「司法改革」が開始される大きな動因となったのも、知財を巡る日米争闘戦と階級支配の問題だ。1982年6月FBIの日立、三菱電機社員逮捕(IBM産業スパイ事件)がアメリカの対日知財戦争の始まりだった。弁護士の大増員も知財訴訟・企業間、企業・国家間訴訟の激増が大きな契機だ。
大学改革も資本とタイアップした知財生産・知財効率利用・知財保護で国際競争に勝つことを目標として行われた。学問研究の目的を、真理の追究ではなく知財生産・利用・保護の場に転換したことは、大学における研究のあり方の根本からの転換だった。この転換をテコにして大学を学生運動や職員の労働運動の存在を許さないものにしようとしたのだ。
知財はTPPの単なる一分野ではなく、TPP全体を貫く軸なのだ。
投資家保護条項は、TPPの目的を最も露骨に表している。投資家(金融独占資本)が利益を上げることが保障されているのだ。見込んだ利益が上がらなかった場合、ISD条項(投資家対国家の紛争解決)で投資家が国家を国際仲裁廷に提訴できる。巨大独占資本が投資をして損したら、彼ら以外の全員が税金を出し、彼らの尻拭いをしろということだ。
それだけではない。通常の裁判ではなく仲裁だから、基本的に公開されない。判例(仲裁の前例)にもしばられない。一審制で控訴なしだ。つまり、恣意的な仲裁判断が横行するが、それが確定判決と同じ効力を持ち、以後法廷で争うことはできない。仲裁廷で仲裁判断を行う仲裁人は、ほぼ全員が大企業の顧問弁護士などだ。金融独占資本の代理人だ。
長い間の労働者の闘いで蓄積され、国内法で規定された権利が、国際仲裁廷で一挙に破棄される。
だから、日米の資本は互いに争闘していても、労働者の権利を奪うために協力しあう。アメリカに投資した日本資本が、米国法の労働者保護条項が投資利益を損なうと提訴することは、米資本にとって自国の労働者の権利の剥奪のために役に立つ。日本資本にとっても、米資本が日本法の労働者保護条項を提訴すれば役に立つ。
安倍は「情報を得るためにはTPP交渉に参加する必要がある」と言った。実際、TPPの内容についての公式な発表はゼロだ。なぜ各参加国の国民にも何も知らせてこなかったのか。理由は、TPPの目的そのものにある。
TPPとは、金融独占資本の利益のために、国内法に優先する専制的立法機関・司法機関を作るシステムだ。各国の階級的力関係でこれまで作られてきたものを一挙に無にするシステムだ。金融独占資本の専制だ。彼ら以外には、発言権のかけらも残さない。目的がそうだから、TPP締結に至る過程も自分たちだけで専制的に決める。
TPPとは、労働者の権利の一部否定ではなく全否定だ。これに対して、改善要求は無意味で粉砕あるのみだ。
ボストンがバグダッドになった
ボストンマラソンの爆破事件の直後、オバマ政権は異様なまでに迅速かつ大規模に州兵、FBI、対テロ部隊を投入した。
ボストン市と周辺の住民の権利が、公然と踏みにじられたのだ。州兵の大部隊とFBIがボストン一帯を制圧し、公共交通機関はストップされた。夜間外出が禁止され、街にいた住民は強制的に家に追い返された。令状なしの家宅捜索が大規模に行われ、しかも夜間まで続けられた。
イラクやアフガニスタンで米占領軍がやっている夜間の住宅強襲が、そのまま米国内に持ち込まれた。憲法が停止され、事実上の戒厳令が敷かれた。
そして、19歳の容疑者の逮捕後は、「黙秘権、弁護士選任権の告知をしない」ことを発表した。憲法に違反することを公然と宣言したのだ。
米国憲法どころか、13世紀のマグナカルタ(大憲章)以来の「権力行使にはデュープロセス(適正手続き)」が必要とする規定さえ廃棄するものだ。
すでにオバマは08年の就任直後から、グアンタナモ基地で01年以来の裁判なしの勾留や拷問を受けつづけている人々の釈放を拒否している。また、無人機でのパキスタン爆撃をエスカレートさせ、疑わしきは処刑すべしと住民を次々に虐殺していった。
16歳の少年を含む米国市民を法的手続きなしで無人機で処刑し、「テロ対策だから当然」と公言している。
また、リン・スチュアート弁護士は獄中にいる依頼人の見解を獄外に伝えただけで、28カ月の刑を受けていたが、オバマ政権の圧力で10年に延長させた。現在彼女は重度のがんで医療刑務所にいるが、4・5`の足かせ、手かせをはめられている。星野再審弁護団も米司法長官、刑務所長らに抗議と即時釈放要求の申し入れをしたが、今も医療刑務所に入れられたままだ。
こんなオバマを民主主義者だと評価し、書簡を送って返事が来たと喜んでいる日本共産党の「民主主義」とは何か。労働者が主人公になる社会主義革命に反対する口実として「資本主義の枠内での民主的改革」というための道具でしかない。
アメリカの労働者階級の中では今、労働者自身の団結の力で闘い、オバマなどのブルジョア政治家依存の思想を打ち破る、戦闘的、階級的階級的労働運動が巻き起こっている。
(写真 装甲車、機関銃、軍用へりを展開し、ボストン市街で占領軍としてふるまう州兵部隊【2013年4月】)
第2章
U 大恐慌、対中対決と対日争闘戦――TPPで侵略戦争と階級戦争へ
第1章で述べた階級攻防の根本にある問題は、巨大な過剰資本・過剰生産力が新自由主義のもとで累乗化され、その矛盾がすさまじい勢いで爆発しているということだ。帝国主義はとことん腐りはて、数世紀にわたる資本主義の歴史の最末期に突入している。
世界各地で支配体制が危機に陥っている。
特に、戦後帝国主義世界体制の基軸国として世界を支配してきたアメリカ帝国主義においては、世界各地の危機の爆発が、直接に国内階級支配の危機を激化させている。
そこでこの章ではまず、アメリカの世界支配の危機から見ていこう。
(図 米軍のアジア太平洋への展開)
オバマの「東アジア最重点化」戦略
◆対中国戦略
2011年秋からオバマ政権は、さまざまな戦略文書・発言を通して、「東アジア最重点化」戦略を打ち出してきた。
もともとアメリカ帝国主義は1990年代から、数次のQDR(「4年毎の国防見直し」)などで「中国の地域大国としての台頭」の重大性を重視し、「アジア太平洋地域重視」の戦略を出してきた。オバマ政権は、これをさらにエスカレートさせ、欧州・中東重点の戦略から東アジア重点戦略への大きな「転換」として打ち出したのだ。
米議会調査部が12年3月に出したまとめによれば、
「特に中国が影響力をいっそう増し、地域大国として台頭しているため」「アジア太平洋の発展の基準とルールの形成に米国の影響力をいっそう行使していくことが東アジアへのシフトの根本的な目標である」
という。また、
「ブッシュ前政権時代から推進してきた韓国とのFTA締結、TPP(環太平洋経済連携協定)交渉への米国の参加などは、さらに推進していくが、オバマ政権が最も劇的に変えるのは、軍事の側面だ。南西太平洋への米軍の駐留を増強し、また常駐ではなくローテーションで配備する部隊も増強し、新設する。インド洋も広い意味でのアジア太平洋地域に含めて沿岸諸国に米軍を配備する。財政難のために軍事費を抑える必要がある場合でも、アジア太平洋地域は犠牲にしない(中東も)」
という。
この間、アメリカが戦略爆撃機やミサイル防衛システムまで大々的に展開し、朝鮮半島で2カ月間の米韓合同の大規模軍事演習をし、北朝鮮に対する軍事挑発をしているが、真の目標は対中国戦略だ。
◆TPPは対中戦略
またTPPも、中国を排除した経済協定であり、軍事戦略的意味が非常に大きい。たとえば、イラクのサダム・フセイン政権に対しては、20
03年の開戦前に数年間の「経済制裁」を行っているが、TPPは、それに類する一種の戦争的行為なのだ。
漏洩した文書で知ることができるかぎり、TPPの協約内容の軸は@知的財産権条項とA投資家保護条項(ISD条項)だ。「知的財産権」(知財権)とは、特許権、著作権、著作隣接権、商標権などの総称である。
客観的な基準などありえないのが「知財」の性格だ。これらの権利を認める範囲(特許権を設定できる分野、著作権の有効期限等々)は歴史的に各国でバラバラだった。だから、国際的に知的財産権の基準を決めるのにものをいうのは国家の総合力だ。たとえば、生物に特許権を認めたのは、1980年のアメリカの裁判所が初めてだった。アメリカは、通商戦争の手段を使って、この特許権の新基準を次々に世界的に強制していった。
安倍政権との激烈な対立
◆通貨戦争
アメリカ帝国主義・オバマ政権の「東アジア最重点化」戦略のもうひとつのターゲットは日本である。「同盟国」という建前上、公然と中国のように扱われているわけではないが、この間、安倍政権に対するオバマ政権の態度は、異様なまでに冷たいものになっている。
2月の安倍訪米の際も、共同記者会見も晩餐会も開かれなかった。発表された共同声明でも、安倍が大きな成果としたかった、尖閣諸島問題や北朝鮮問題には一言も触れられないという冷たさだった。
昨年9月総裁選で安倍が「日銀が輪転機をじゃんじゃん回してお札を刷って、国債を引き受ける」とインフレ政策を掲げて登場して以来、アメリカの支配階級全体が激しく反応してきた。
1月に入ってからは、アメリカのマスコミが一斉に安倍の経済政策を「通貨戦争の引き金を引いた」と大見出しで批判しはじめた。
「通貨戦争」は単なる比喩(ひゆ)ではない。世界大戦の歴史で明らかなように実際の戦争につながる行為だ。近年のイラク侵略戦争もサダム・フセイン政権が石油貿易をドル建てからユーロ建てに変更したことが決定的要因になった。国際通貨ドル体制は崩壊寸前であり、そこに最後の一撃を加えれば、アメリカ帝国主義の死活にかかわるからだ。
世界第2位の帝国主義国、日本の「異次元の金融緩和」は巨大な衝撃力があり、世界中に通貨戦争の連鎖を引き起こす。基軸通貨ドルを生命線とするアメリカ帝国主義にとって由々しき事態だ。
◆釣魚島(尖閣諸島)、靖国めぐる日米対立
安倍が「日米安保で尖閣を守る」ことを求めたのに対してオバマ政権は「領土問題で米国はどちらの側にも立たない」ことを強調した。アメリカの各マスコミは、そろって「ちっぽけな島をめぐる紛争」と報道している。
アメリカのための戦争に日本を動員するのは必要だが、日本の都合でアメリカを戦争に巻き込むなどもってのほかというわけだ。
4月末、麻生副首相ら3閣僚と168人の議員が靖国に参拝し、安倍は国会答弁で、「脅しに屈しない」「侵略の定義は国際的にも定まっていない」と居直った。
米金融独占資本の意思を最も直接に反映するウォールストリートジャーナル、ビジネスウィークを始め、ニューヨークタイムズ、ワシントンポストなど主要マスコミは一斉に大見出しで「歴史を無視」と批判の社説を掲げた。イギリスのフィナンシャルタイムズは、「アメリカ高官が日本の外交官に安倍の議会での発言に非公式に懸念を表明した」(4月28日)と暴露した。「非公式」であったはずの批判をあえて公然化させたのだ。外交上のやり取りとして異例であり、対立の深刻さを物語っている。
安倍の靖国居直りも「主権回復の日」の式典開催も、サンフランシスコ条約、アメリカを軸とする戦後世界体制への露骨な挑戦だ。同条約は明文で、極東国際軍事裁判を日本が受け入れることを規定しているのだ。
確かに以前にも安倍は「東京裁判は勝者による断罪」だとして「A級戦犯」を認めない言動をしてきた。安倍に代表される日本支配階級のこの態度についてアメリカ帝国主義は百も承知の上で、彼らが日米安保強化路線をとるかぎり、その矛盾を見てみぬふりをしてきた。だが、今回のように米軍の日本占領、サンフランシスコ条約への挑戦を全世界に向けて野放図に表明されては見過ごすことは不可能だ。
これまでの深刻な日米経済対立に加えて、いよいよ政治的、軍事的にも重大な対立が現れてきたのだ。
TPP交渉参加に向かう日米の事前交渉でも、アメリカは、@日本の自動車へのアメリカの関税は引き下げないA日本へのアメリカの輸出には事実上、聖域は設けないという激しい条件をつけ、安倍にそれを飲ませた。「尖閣」については前述のとおり、あえて突き放した。
それでも日本帝国主義は、アメリカとの同盟強化以外に選択肢はなく、この条件の下でTPP、安保強化に突進している。
こうして日米帝国主義はそれぞれ危機を加速している。
外注化・海外移転と産業の衰退
◆ボーイング787事故
60年代以後、アメリカの製造業は、繊維、鉄鋼、家電、自動車……と次々に国際競争力を失って、衰退し、最後に残された砦が、航空・宇宙産業と軍需産業だ。航空機は、広大な国土と人口を有するアメリカの飛びぬけて世界トップの国内空路網が基礎にある。軍需産業は世界の他国の合計より大きいアメリカの軍事予算で成り立っている。
この一見して他の追随を許さない条件を持つ「最後の砦」さえ現在、重大な危機に陥っている。アメリカの産業的衰退は、最終局面に至ったのだ。
787の大部分は、設計段階から海外の外注先に丸投げされ、ボーイング社の工場では、つなぎ合わせるだけだ。設計段階での各社間の「すり合わせ」もまともにできず、バラバラに作られたユニットは、いざ組み立ててもなかなか適合しない。多数のユニットにまたがる飛行制御システムの電力使用量、バッテリーの制御システム、そしてバッテリーそのものとの間での連携もバラバラで、互いにどうなっているのか闇の中だ。他にも適合しないものがいくつあるか、誰も知らない。
今回の連続事故を調査しても原因の解明がいつになるか、展望が示せない。
だから、FAA(連邦航空局)は見切り発車で787の運航許可に踏み切らざるをえなかったのだ。
◆軍需産業の腐敗と空洞化
武器の製造は、一見してアメリカ国内に維持しているように見えるが、核心的部品や素材は、ますます多く海外に依存している。
もともと軍需では、受注した価格よりコストが上がっても、「開発費がかさんだ」等と申告すれば、ほぼ自動的に値上げが認められる。納期の遅れにもルーズだ。一般の商取引、契約とは別世界だ。
最新型のF35戦闘機のプロジェクトにすでに使った費用は、840億jまで膨張している。今後かかる1機当たりの費用は1億6千万jで、10年前の見積もりの2倍に膨らんだ。現在の「歳出強制削減」でも、F35の予算は手付かずだ。従来の戦闘機と比べても段違いに高価なF35だが、ジェットエンジンのブレードの破損など致命的故障が続発し、アメリカの軍事専門家さえ破局的な戦闘機と言っている。
新自由主義のイデオローグは「市場原理」「自由競争」「小さな政府」「民間主導」と宣伝しているが、ウソ八百だ。労働者には相互の競争を強いるが、自分たちは独占と癒着だ。新自由主義の旗手、レーガン政権は軍事予算を急増させ、大規模な為替介入や補助金などで市場への政府の介入を桁違いに大きくした。金融資本は「銀行と産業・軍・政府の融合・癒着」「独占資本」としてますます肥大化したのだ。
戦争経済化
29年世界恐慌に対してアメリカのニュー・ディール政策が行われて以降、不況や恐慌に対しては「景気刺激策」がとられてきた。実際には、ニューディールは、一時的な、表面的な効果をあげたにすぎず、第2次大戦で、過剰資本・過剰生産力の整理が行いえたのだ。
新自由主義はそうした政策が表面的効果さえ失ってきた時代に台頭した。どれほど景気刺激策をとっても資金は投機に流れ、実需とは桁違いの資金が世界をかけめぐる。経済に占める金融業の比重は、ますます膨張していった。
特にアメリカでは産業的衰退のため、以前から「経済のFIRE(ファイア)化」が進行していた。「FIRE」とは(金融・保険・不動産)の頭文字で、広い意味での金融業のことだ。
金融業務は、それ自体では価値を生まない。産業に遊休資金を融通する役割を担うことによって、産業が生み出す剰余価値の一部を与えられるにすぎない。実需とかけ離れたFIREなど、自己矛盾だ。だから国家権力による強力な対外的・国内的なプッシュがなければFIRE経済は成り立たない。
例えば、天文学的な規模で経常収支の赤字を垂れ流しても、ドル相場がそれなりに保たれたのも「有事に強い」ということがあったからだ。
石油のドル建て取引が続いてきたことも、サダム・フセイン政権など非ドル貿易を行った政権に戦争をしかけ、見せしめにしてきたからだ。
また、労働力の確保という点では、中南米に対する絶えざる侵略戦争によって難民がアメリカに大量に流入し、いわゆる「不法移民」となり、いつでも強制送還できる無権利の低賃金労働力にされたということがある。
そして、最後に残された国際競争力がある製造業、軍需産業・航空宇宙産業が莫大な利益を上げてきた。むろん、軍需産業は実際に戦争を起こし、あるいは緊張を激化させることで、世界中で兵器の需要を喚起してきたのだ。
このようにアメリカ帝国主義は第2次大戦以来、戦争経済化をますます進めることで生き延びてきた。だから米軍がどれほど弱体化しようとも、戦争拡大以外に道はないのだ。
◆イラク・アフガニスタン戦争・占領の戦略的敗北
レーガン政権以来、それまでと比べても急速な軍事予算増大、軍産政複合体の肥大化があったが、米軍は逆にボロボロ化していった。
60年代のベトナム戦争時よりはるかに小規模なイラク・アフガニスタンの武装勢力を相手にして苦戦し、首都バグダッドやカブールさえ米軍は制圧できない。ベトナム以上のアメリカの敗戦なのだ。
F22、F35戦闘機などイラク・アフガニスタンの戦場では何の役にも立たない。実際に使われている銃や装甲車は老朽化し、メンテナンスも不十分で故障だらけだ。兵器調達予算が巨額化すればするほど、兵器不足、老朽化、ボロボロ化が進行するという信じがたいことが現実に起きている。
占領軍の作戦の半分以上は、民間軍事会社に外注化されている。軍事会社は戦争が続けば利益があるから、戦勝のために戦う動機はまったくない。民間軍事会社は米政府や米軍幹部と癒着し、競争入札なしで請負契約している。腐った食料を米軍部隊に配っても何のとがめも受けない。
アフガニスタンの北部連合の諸軍閥とカルザイ政権は、アヘンの栽培・密輸で暴利を上げている。米軍と民間軍事会社は、こうした組織と癒着しており、01年の米軍の占領開始以来、アヘン生産量は急速に増大している(次ページのグラフ参照)。
これはけっして一部軍人、一部企業の腐敗ではない。すでに数十年前から、中南米の麻薬マフィアとアメリカの中南米支配は、癒着してきた。麻薬組織の資金洗浄も、トップ銀行であるシティーバンクを始め、アメリカ金融資本の枢軸中の枢軸が行ってきたのだ。
アメリカ帝国主義の不正義きわまる戦争目的と、以上のような腐敗した戦場の実態の中で、部隊がボロボロになり、米軍兵士の自殺や上官への反抗が頻発しているのは当然だ。
このように戦争が泥沼化すればするほど、アメリカ帝国主義は戦争を拡大している。
(図 アフガニスタンのアヘン栽培量)
◆世界的な戦争拡大
米軍部隊の危機の中で、特に無人機による爆撃への依存が増大している。無人機作戦は米軍自体に人的被害がない代わりに、安直な無差別爆撃となり、多数の民間人犠牲者が出る。
公式には敵国ではないパキスタンへの無人機爆撃が、オバマ政権になってから急増した。報告されているだけで少なくとも176人の子どもを含む約3千人のパキスタン人が殺された。イエメンやソマリアにも無人機爆撃が行われている。
そして米国防総省の議会への報告書によれば、アメリカ本土上空にも3万機の無人機を展開するという。
「アメリカ人は、軍とCIAの無人機がパキスタン、イエメンその他で、テロ容疑者――アメリカ人を含む――を攻撃したという日常的なニュースに慣れている。だが、数千の無人機がアメリカ上空を飛び回ったらどうだろうか。
政府の推計によれば、今後10年間で3万の無人機がアメリカでの諜報収集と警察活動の一環として使われる」(クリスチャンサイエンスモニター、12年6月16日)
従来は世界で最もアメリカの足がかりが少なかったアフリカに対しても、08年に「米アフリカ軍」が作られ、各地に米軍の基地・施設を建設しだした。今年1月のフランス軍のマリ侵略戦争に際しては輸送機や無人機を出して、参加した。
アフリカへの米軍の進出も実は、中国とのアフリカをめぐる対決の要素が非常に大きい。
(写真 無人機攻撃に抗議するアフガニスタン住民)
朝鮮侵略戦争
こうしたアメリカの戦争拡大の中心が、東アジアだ。現在の北朝鮮に対するアメリカの軍事挑発は、ますます重大になっている。この間、ミサイル防衛システムの対北朝鮮配備、3〜4月の米韓合同軍事演習に戦略爆撃機や核搭載可能な戦闘爆撃機が大挙参加したことに見られるように、核戦争への傾斜を強めている。
第3章
V 外注化・非正規職化阻止へ――国際連帯が画期的に大前進
前章で見たように、国家間の対立は深刻になっている。だから、排外主義の洪水で大変だと、いわれる。
はたしてそうか。国家間の対立で大変なのは、支配階級のほうだ。労働者は国際連帯で勝利できる。実際、この危機の中心であるアメリカ帝国主義の体内で、労働者階級の国際連帯が画期的な大前進をなしとげている。
(写真 カリフォルニア州サンディエゴでTPP反対デモ【2012年7月】)
(写真 ウォルマート労働者のスト【2012年10月 カリフォルニア州】)
(写真 歴史的なストを闘ったメンフィス市の清掃労働者の“I AM A MAN”【私は人間だ)のスローガンを掲げてストに決起したファストフードの労働者【4月4日 ニューヨーク】)
ウォルマート、ファストフードの大ストライキ
ウォルマートは、アメリカ最大の雇用者であり、「ウォルマート化」という言葉が社会現象となるくらいに、同社の最悪の労働条件、強権的な労組結成妨害が他社、他産業のモデルになってきた。
そこで辛抱強く水面下で労組結成活動をしてきた労働者たちが昨年10月、ついに州をまたいだ多数の店舗で大規模ストを打った。労組結成前の法律で認められていないストだったが、資本は、解雇も損害賠償提訴もできていない。労組結成活動への職場からの参加者は増え続けている。大勝利だ。
このストは、「アメリカ国内での国際連帯」の成果だ。中南米からの移民が多く、非正規職が多いスーパーマーケット業界で、アメリカ国籍所有者と移民労働者、また正規職と非正規職が協力して作り上げた運動なのだ。また、ILWU(国際港湾倉庫労組)やUTLA(ロサンゼルス教組)など長い伝統がある労働組合が、労組を最初から作らせないウォルマート方式を階級戦争の主要問題として、ウォルマート労働者支援デモやストのピケットラインに大挙参加している。
同社は、外注化、海外移転の最先端としても労働者の憎しみの的だ。ウォルマートブランドの製品の製造を中国へ、さらにバングラデシュへと外注化、移転してきた。(過酷な労務管理も外注化・海外委託も、日本のユニクロのモデルである)
バングラデシュの工場火災、ビル崩壊
そのウォルマートが製造委託しているバングラデシュの縫製工場で昨年11月、火災が起きた。以前から労働運動活動家が防災設備のでたらめさをその縫製工場にも委託元のウォルマートもに指摘していたのに、無視された。火災当日、煙を感じて逃げようとした労働者を管理職が無理やり職場に戻し、ドアを閉じた。少なくとも117人の死者が出た。殺人そのものだ。
火災直後から、バングラデシュ労働者は、権力の暴力的な弾圧をはねのけて、大デモを行い、主要道路封鎖、多くの工場の操業阻止などの実力闘争に立ち上がった。
そして今年4月24日、工場ビルが崩壊した。瓦礫(がれき)がまだ積み重なっているので全容は不明だが、5月9日の報道では750人の死者が確認されているという。以前からビルの大きな亀裂が問題となっていて、1階の銀行、店舗は避難していて被害者は出ていない。24日当日、工場の労働者は、きしみ音も聞いてビル内に入るのを拒否したが、監督が無理やり中に入れたのだ。ここもウォルマートなどの委託先だ。
ユニクロ会長・柳井もこれまでの中国から、さらにバングラデシュに進出している。
柳井は、こうした殺人工場でぼろもうけしながら、「世界同一賃金」を主張しているのだ。それが、殺人工場のいっそうの労働条件悪化と世界中の殺人工場化を意味することは明らかだ。
今、世界の労働者が、同じ敵に直面し、同じように日常的職場闘争をし、ストや占拠闘争をしている。日々、自分の職場で国際連帯をしているのだ。
動労水戸の被曝労働拒否のストライキと青年労働者を圧倒的に獲得する闘いは、港湾合理化・安全破壊と闘うILWUの労働者の圧倒的共感を呼び、国際連帯を深め、また全世界の反原発運動に巨大なインパクトを与えている。
星野再審闘争の前進は、アメリカの無実の政治犯ムミア・アブ=ジャマル氏の闘いと結びつき、同氏の解放闘争を港湾封鎖で貫いてきたILWUを始めとした戦闘的労働運動との連帯をさらに強化している。
(写真 工場の安全を要求してデモするバングラデシュの労働組合、NGWF【全国繊維労働者連盟】)
ILWUの伊藤忠・丸紅・三井との闘い
ILWU(国際港湾倉庫労組)は、34年の西海岸統一港湾ストとサンフランシスコゼネストの勝利によって作られ、その後も最も戦闘的、階級的に闘ってきた組合だ。この組合も、米中西部と同じく、アメリカ労働運動の最強の拠点だ。
オバマ政権とアメリカ支配階級は、このILWUに対して、米中西部と同様の大攻撃をかけてきている。
ワシントン州ロングビューのILWUローカル21の穀物ターミナル職場を守る闘いに対して、オバマは、軍の一部門である沿岸警備隊に出動命令を出し、弾圧を指揮した。
ILWUローカル21を穀物ターミナルから排除する攻撃の一翼を担ったのが、日本の総合商社、伊藤忠だ。ロングビューの巨大穀物倉庫は、TPPによる日本への穀物輸出の急増のために建設された施設だ。
そしてTPPは、前述のように、労組破壊相互協力協定であり、伊藤忠などがアメリカの労組破壊の先頭に立つのが約束事だ。伊藤忠は、穀物ターミナルでの就労の条件として、ILWUに34年のゼネストでかちとった権利の核心部分を全部放棄せよと突きつけ、非ILWU組合員を就労させたのだ。ILWUがILWUでなくなるまで就労させないということだ。
また、同州バンクーバーの穀物ターミナルでも、ロングビューを前例にした攻撃がかけられている。今度は、三井物産の100%子会社、UGC社によるロックアウトだ。これは、今も続いている。
動労千葉が戦争協力拒否宣言を出し、職場でストライキを闘い、ILWUローカル10(第10支部)が軍需物資輸送阻止のピケットラインで警察の襲撃を受けた03年以来、ILWUの組合員が11月集会に参加し、動労千葉も訪米団を派遣してきた。UTLAとは2007年以来、連帯を強めている。
08年のILWUによるイラク反戦のための西海岸全港湾封鎖は、戦略的な職場を握るILWUの団結の力を全世界に見せつけた。動労千葉も07年のサンフランシスコ国際会議に参加し、ともに職場生産点で反戦を貫く路線を討議し、08年港湾封鎖の組織化を準備した。
新自由主義の核心、外注化に対する動労千葉の死活をかけた闘いに対しては、ソウルの日本大使館に対する全力抗議行動で、韓国民主労総ソウル本部が国際連帯の切っても切れない強さを示した。
伊藤忠と三井物産に対しては、動労千葉と労組交流センターが抗議行動を行い、さらに国際連帯を強化している。
こうした職場の闘いに基づく固い日韓米の労働者国際連帯を発展させれば、現在の北朝鮮をめぐる侵略戦争策動は絶対に粉砕できる。労働者を食わせられなくなった新自由主義の賃金破壊、解雇攻撃をはね返し、帝国主義を打倒できる。
労働者の最強の武器は、職場が国際連帯の場だということだ。
帝国主義間争闘戦の激化、国家間対立の激化の時代は、国際連帯の飛躍的発展の時代だ。どの帝国主義の命脈も尽きた。世界革命が絶対に必要だ。必然だ。
職場の団結を強化・拡大しよう。それが国際連帯だ。それが世界革命の道だ。
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月刊『国際労働運動』(442号4-1)(2013/06/01)
●翻訳資料
「働く権利法」との闘い
労働組合敵視の全社会化への反撃を 村上和幸 訳
【解説】
「働く権利法」が昨年12月にミシガン州議会で可決された。同法の規定については、翻訳資料(1)に書かれているとおりだが、日本とアメリカは、労働法制の枠組みが違うので、なぜ「働く権利法」が決定的な意味を持っているのか、若干の解説をしておこう。
アメリカでは、日本のような単なる有志による労働組合の設立は認められない。必ず、当該職場の50%+1人以上が組合設立賛否投票で賛成票を入れなければならない。
ビラをまいて宣伝し、賛成票を集めることは困難だ。この段階で組合設立委員会のメンバーが解雇されたらどうなるか。まだ労働組合ではないから、団体交渉を申し入れることはできない。数年間は解雇撤回はできず、職場から排除されたままだ。主要活動家が排除され、見せしめにされ、職場に残されたシンパと疑われた労働者には、職制による日常的な嫌がらせや、「労働組合反対」と大書きしたTシャツを着せられるなどの圧力がかけられる。賛成票は切り崩される。
だから、50%どころか80%以上の賛成票を固めるまでは公然化できず、水面下で秘密に組織するのが組織化運動の常識になっている。
しかも、こうした困難を乗り越えて組合設立が出来たとしても、資本が再び激しい圧力をかけて署名を集め、「組合不認可賛否投票」を行う場合が多い。
だからこそ、組合加入を職場の全員に義務付けるユニオン・ショップ制が死活的な意味を持っている。
組合設立は過半数の賛成がなければ認めないのに、組合からの脱退は1人でも自由、などということは、絶対に認められないのだ。
「働く権利法」の本質は、「労働組合=悪」という組合敵視を全社会化することだ。労働者の団結を悪とし、個人の利益だけ追求すべきだという攻撃だ。
またそれは、組合員と非組合員を相互に敵対させるものだ。
したがって、「働く権利法」に対する反撃は、団結の強化でなければならない。実際、資料(1)が言及しているUAWは、ワグナー法に依存して結成されたのではなく、同法制定以前の弾圧下で秘密活動と実力闘争を続けた結果として設立されたのだ。そして労組をなおも承認しないGMの工場を、37年の工場占拠ストライキによって闘争によって、GMに労組を認めさせ、UAWは一挙に大労組に成長した。
労働者自身の団結の力ではなく民主党への依存を主張するマカレイ氏の見解は、まったく逆転している。
(1)ミシガンを失う 労働者はいかに反撃すべきか
デービッド・マカレイ
『カウンター・パンチ』誌 2012年12月13日号
労働組合の歴史、その誕生、発展、軌跡の詳細を知った人なら、この偉大なミシガン州で現在起きていることにショックを受け、憤慨するに違いない。ミシガン州は、アメリカで最強で、最も有名な労働組合の拠点のひとつであったが(UAW・全米自動車労組はワグナー法が法律化された1935年に設立された)、今日、『働く権利法』を持つ24番目の州になってしまった。
『働く権利法』(私はこの不愉快きわまりないスローガンが大嫌いだが)を持つ州とは何かについて、なじみがない人に解説すれば、雇用される条件として、労働組合に加入し組合費を払う必要がない州ということである。これの逆が、ユニオン・ショップ制である(場合によっては「エージェンシー・ショップ」)。ユニオン・ショップとは、雇い入れと同時に労働組合加入が必要になる会社のことである。
ミシガン州での敗退を受けて、メディアはユニオン・ショップ制を「クローズド・ショップ制」と同じものと報道しているが、正しくない。(新規に雇用される者は、雇用される前に、別の組合であっても何らかの組合にすでに所属していることを要求される)クローズド・ショップ制は、何十年間も違法であった。1947年のタフト・ハートレー法によって禁止されたのだ。
働く権利法を適用される州における不当きわまる問題は、この法律が非組合員のただ乗りを認めていることだ。誰もが知っているように、組合員の賃金と諸手当は、総じて非組合員の賃金や諸手当より約15%高い。さらにまた、組合員の働く施設は概して非組合員の働く施設よりも安全である。それは組合の労働協約には、安全規則や各部門の安全委員会について記載されているからである。
信じられないことに、働く権利法が適用されている州にある組合の職場で働きながら、組合加入を身勝手にも拒否している従業員もまた、組合の労働協約に規定されている有利な権利を享受している。これは事実だ。彼らは清潔で安全な環境で働くこともできるし、組合の賃金交渉団が血を流して交渉しかちとった普通よりも15%多い賃金や諸手当を享受できるのだ。彼らは誠実さや組合に加入する道義的勇気を持っていないのに、これらの利益をすべて享受できる。
それだけではない。彼らはちゃんとした組合員と同様に苦情申し立てまでできる。まったくとんでもないことだ。それは無神論者がカトリック教会に行き、自分を聖人と認めろと要求するようなものだ。実際、これらのただ乗り者たちは、組合の役員選挙への出馬や、組合選挙での投票を認められないということを放棄しているだけだ。そいつはすごい。だが、組合員だって、役員選挙に出馬することは多くはない。
ミシガン州の逆転に対して、労働組合はいかに反撃すべきであろうか。ヒステリックに反応すべきだろうか。この一地域だけで起きた不幸な出来事を、われわれを待ち構えるこの世の不可避的な終末の先触れとなるとみなすべきだろうか。それとも深呼吸をして、冷静に現在受けた打撃を評価すべきだろうか。私の個人的意見は、ヒステリックに反応すべきというものだ。
このミシガン州のこの決定はひどいものだ。1981年のロナルド・レーガンの航空管制官の首切りと同様に、組織労働者に対する巨大な打撃になりかねない。陳腐に聞こえるかもしれないが、感覚がすべてなのだ。レーガンがPATCOの労働者の首を切った時には、彼はそれだけでアメリカにおける労働組合の力に関する感覚を一変させたということを忘れないようにしよう。
航空管制官の組合員を丸ごと大量解雇することによって、レーガンはすべてを一変させた。レーガンがアメリカの大企業に示したことは、組合の指導部に対抗する胆力と確信があれば、勝利する大きなチャンスがあるということだ。実際、これが労働組合をいかに扱うかに関するレーガンの遺産であった。労働組合を攻撃せよ。そうすればわれわれは、意識の変化の結果として、経済の展望も変わってくる、というものだ。
同様のことはミシガン州の事態の影響に関しても当てはまる。労働組合の力が強いミシガン州さえ働く権利法を持つ州に転換したのだから、アメリカのどの州も同じことができる可能性があるということを意味する。これらの州に必要なのは、共和党の州議会であり、共和党の州議会議員であり、法案に進んで署名する共和党の知事である。
ここにはひとつの教訓がある。その教訓とは、民主党に投票するということである。
(以下、省略)
(2)搾取する権利 働く権利法は階級戦争の武器だ
ロバート・ハンハム
『カウンター・パンチ』誌 2013年1月11〜13日号
ミシガン州で働く権利法が通過するや否や、法案の推進者たちは自分たちの勝利と他の州も餌食にする展望が出てきたことを祝って、大挙して街頭に繰り出した。
働く権利法がまだない州である、アラスカ、イリノイ、ケンタッキー、ミネソタ、ミズーリ、モンタナ、ニューハンプシャー、ニュージャージー、ニューメキシコ、オハイオ、ペンシルベニア、ウエストバージニア、ウイスコンシンなどの州が、すべて次の餌食の候補に挙げられている。最も頻繁に候補に挙げられているのは、ミズーリ、オハイオ、ペンシルベニアの各州である。現在、24の州に働く権利法が導入されている。つい最近、2012年にインディアナ州とミシガン州が加わった。
働く権利法の背後にある論拠は単純である。それは国家による強制を使って、資本に利益の獲得(労働者の搾取)を増進させるものだ。別の言い方をすれば、働く権利法は、生産された剰余価値のうちの資本の取り分を、労働者に犠牲を強いることで増加させるものだ。それは働く権利とは何の関係のないものなのだ。
働く権利法は賃金削減(経済政策研究所によれば年間平均賃金を1500j削減)、〔医療等の〕諸給付や年金の会社負担分の労働者への転嫁、不健全な労働環境の創出などによって労働組合の力を弱めることでこれを実現している。
私は、現在の経済不況の下で、働く権利法がある州とない州で資本と労働者の取り分がどうなっているか調査してみた。米経済分析局の最近の資料を使いながら、それぞれの州の民間部門のGDPに占める労働者の取り分、つまり剰余価値のうちのおおまかな労働者の取り分を計算した。そして、働く権利法のある州とない州での労働者の取り分の平均を計算してみた。
2011年には、労働者の取り分は働く権利法のある州では平均して47・5%であったが、働く権利法のない州では50・6%であり、両者の相違は3・1%であった。働く権利法は、明確に実現しようとしたものを得たのである。つまり、利潤獲得を増大し、労働者の搾取を強化している。
働く権利法の推進者が、なぜ上に列挙した諸州を将来働く権利法を導入する候補と考えているのかを見出すのは難しいことではない。2011年には、働く権利法のない28の州のうち23の州においては、働く権利法のあるすべての州の平均(47・5%)よりも労働者の取り分の割合は多い。このことが働く権利法の推進者たちに、この法律による搾取を導入する準備を強めさせているのだ。
さらに、働く権利法の推進者が、この法律を導入すべき候補として非常に頻繁に挙げている諸州は、労働者の取り分が非常に高い州である。特にペンシルベニア州(55%)、オハイオ州(54%)、ミズーリ州(54%)などである。働く権利法が導入される以前のミシガン州も、労働者の取り分が非常に高い(54%)州であった。
資本は働く権利法の導入によってどの程度財政的に利益を得るであろうか。働く権利法のある州とない州では、労働者の取り分の平均的差が州のGDPの3・1%であるので、もし働く権利法がなかったとすれば、現在、働く権利法のある州では、労働者の取り分は現在受け取っている額よりも3・1%多くなったはずであると私は考える。
働く権利法のある州のGDPの3・1%を合計してみると、それは資本にとってこれらの諸州に働く権利法を強制する価値基準になる。働く権利法が22の州で存在した2011年のこの合計額は509億jになる。これは巨額であり、しかもその額はわずか1年分なのである。
もちろん、このようなことが実際に起きると考えることは非現実的であろう。だが、このような計算はどれだけの金額が問題になっているかに関しては、鮮明な認識を与えてくれる。より具体的に見ると、2012年にインディアナ州とミシガン州に働く権利法を強制して資本が得た額は、最初の1年間だけで約183億jになる。
資本にとって働く権利法によって得られる財政的獲得物は巨大なものであり、これが最も肝心な問題なのである。働く権利法は階級戦争の道具なのだ。それは間違った名前をつけられており、搾取する権利法と呼ばれるべきものだ。
(写真 ミシガン州立大学で教師として働く院生たちも働く権利法に反対して集会を行う)
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月刊『国際労働運動』(442号5-1)(2013/06/01)
■Photo New
●バングラデシュで労災事故に抗議行動
(写真@)
(写真A)
(写真B)
(写真C)
4月26日、バングラデシュの首都ダッカで、繊維労働者ら5000人が抗議行動に立ち上がった
(写真@AB)。これは24日に、5つの縫製工場が入っていたビルが倒壊し、750人を超える労働者が死亡し、2000人以上が重軽傷を負い、いまだに100人近くが行方不明という労働災害が起きたことに対する激しい怒りの決起だ。この事故は、ビル全体の倒壊の前兆があり、行政から使用禁止指示が出されていたにもかかわらず、資本家たちが労働者たちをこのビル内で強制的に働かせた結果起きた人災だ。この事故以後、4500の縫製工場は、労働者の怒りの労働拒否によって操業を停止せざるを得なくなっている。そして5月1日のメーデーにはダッカだけで数万人の労働者が事故の責任者の重罰での処分を要求してデモをした
(写真C)。全国の諸都市でも同様のデモが行われた。新自由主義の最後のフロンティアであるバングラデシュで、非人間的な労働条件と超低賃金のもとでの労働強制への怒りが爆発し始めたことは、新自由主義をさらなる破産の危機に追い詰めるであろう。
●香港の港湾非正規労働者のストライキ拡大
(写真D)
(写真E)
(写真F)
(写真G)
3月28日から、賃上げを求めて開始された香港の港湾非正規労働者の歴史的闘いは、ますます拡大している
(写真D)。4月1日には、2000人の集会が港湾で開催され、4月7日には、香港国際コンテナ埠頭を支配する香港最大の資本家・李嘉誠の長江実業グループの本部および香港特別行政地区政府への5000人の大デモが行われた
(写真E)。国内的・国際的支持も急速に拡大している。東南アジアから香港に働きにきている外国人労働者たちも港湾労働者を支持して決起した
(写真F)。北京大学の学生たちも港湾労働者の闘いの支援に立ち上がっている
(写真G)。アメリカ西海岸のサンフランシスコとオークランドの港で働く港湾労働者の組合である国際港湾倉庫労組(ILWU)のローカル10も連帯声明を送った。香港の港湾非正規労働者自身による「外注化阻止、非正規職撤廃」の闘いは、アジアや全世界の非正規労働者の新自由主義への巨大な反撃の闘いの開始の合図となった。
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月刊『国際労働運動』(442号6-1)(2013/06/01)
■世界経済の焦点/キプロスの国家破綻
EU支援策の強行がユーロ崩壊を促進
今年3月のEUのキプロス支援策をめぐる事態は、世界金融大恐慌が、帝国主義間・大国間争闘戦を激化させ、ユーロ崩壊、キプロス国家崩壊へと進みつつあることを衝撃的に示した。
銀行取り付けと預金課税
キプロスは人口110万人強(2011年)、GDPはユーロ圏の0・2%の地中海に浮かぶ小国である。
このキプロスへの100億ユーロ(約1兆2000億円/1ユーロ=120円)の支援策をめぐってEU・IMFとロシアが攻防をくりひろげた。ひとまず棚上げされたとはいえ、全預金者への課税という、いまだかつてなかった対策がトロイカ(EU・ECB・IMF)から提起された。ユーロが暴落し、銀行取り付けと全銀行閉鎖という1930年代の世界大恐慌のような事態が生起した(EU=欧州連合 ECB=欧州中央銀行 IMF=国際通貨基金)。
支援策はひとまず4月30日のキプロス国会で、僅差で承認されたが怒りは大きい。野党共産系の労働人民進歩党(第2党)キプリアヌー党首は「ユーロ離脱の可能性も含め、キプロスは別の形で資金確保を検討すべき」と述べている。
ユーロはユーロ圏では同じ価値を持つものと決められているが、キプロスから国外に持ち出す資本規制が行われている。10万ユーロまでの預金は課税の対象ではなくなったが、1日300ユーロまでしか下ろすことはできず、銀行に凍結されたままである。金融サービス業がGDPの80%、雇用の72%を占めるキプロスで資本規制が行われればキプロスは国家崩壊・社会崩壊とならざるを得ない。キプロスの破綻からユーロは崩壊に向かいつつある。
第1次支援策は国会で賛成ゼロで拒否
キプロスがEUに正式に救済要請を行ったのは12年6月であるが、EUは緊縮反対派の大統領(共産系労働人民進歩党)の要請は無視した。
13年2月に民主運動党(中道右派)のアナスタシアディス党首が大統領になった。3月15日のユーロ圏緊急財務相会合は、翌朝未明までの討議で、銀行の預金課税や民営化などを条件に、基本合意した。これが抗議の嵐の中、3月19日のキプロス議会で賛成0、反対36、棄権19、欠席1で拒否された。
預金者が混乱する恐れがあるにもかかわらず、預金者負担にこだわって強行突破したのはドイツであった。キプロスの大口預金者の大半はロシア、英国、中・東欧などの富裕層。マネーの4割が資金洗浄(マネーロンダリング)などに関わっている可能性があるとドイツでは報道されている。
▼具体的な合意内容
・ユーロ圏(EMS90億ユーロ)、IMF(10億ユーロ)による100億ユーロの支援。キプロス側が預金課税など自助努力で130億ユーロの資金を捻出する。
・2位のライキ銀行を破綻処理する。
・1位のキプロス銀行と2位のライキ銀行に口座をもつ10万ユーロ超の大口預金者に損失負担を求め、両行の資本増強や破綻処理に充てる。
・キプロス銀行の大口預金者は預金の37・5%を同行株式と交換する。
・ライキ銀行の大口預金者はほぼ全額が回収不能になる。
・ライキ銀行の無担保債券保有者もほぼ全額の債権放棄が求められる。優先債はローリスク・ローリターンの金融商品として流通しているが等しく損失負担を求められる。
・3月28日の銀行営業再開に際して、EU発足後初めて、銀行預金の引き出し制限という資本規制を導入した。1日引き出し可能な金額の上限は300ユーロ。小切手の現金化、定期預金の満期前解約、1000ユーロを超える現金の持ち出し・海外送金の禁止など。
▼その問題点
・キプロスの全銀行預金者に例外なく負担を求めたこと。最終的には2大銀行の大口預金者のみの負担に改められはしたが、預金課税で守られる10万ユーロ未満の預金者まで課税対象とされた。
・優先債も損失負担を求められること。
・資本規制=預金引き出し制限や海外送金の禁止などが導入されたこと。その結果、キプロス国内で流通するユーロの流動性は低下し、他国で流通するユーロに比べ概念上通貨価値が目減りする。ユーロが実質的に単一性を失い「キプロス・ユーロ」になった。当初7日間に限定されていたが、延長されている。解除はキプロス銀行が信用をとりもどし、資金流出する恐れがなくなった時期であるが、その日は来るのか?
アイスランドはEU非加盟であるが、08年に資本規制を導入した。IMFの支援プログラムを終えた現在に至ってもいまだに解除できていない。
EUはキプロスを防衛できなかった。単一通貨ユーロは、キプロスにおいては「キプロス・ユーロ」になった。ユーロはキプロスから堤防決壊が始まった。
キプロスの特殊な位置
EUがキプロス切り捨て的な対応をしてきたのはキプロスの特殊事情も絡んでいる。
キプロスはトルコの懐に抱かれた地中海の小島であり、現在は分断国家となっている。いわゆる「キプロス」はギリシャ系住民が多く住み、EU加盟国であるキプロス共和国(キプロス島の3分の2、南キプロス)であり、ギリシャ軍が駐留している。首都ニコシアは南北に分断されており、キプロス島の北部はトルコ系住民が住む「北キプロス・トルコ共和国」(キプロス島の3分の1。トルコ共和国のみが承認)であり、トルコ軍が駐留している。1960年に英国から独立したが、英国の治外法権のある軍事基地がある。
(図 海外からロシアへの直接投資)
▼人口の1割がロシア人
キプロス政府統計では、ロシア出身者は1万520人とされるが、実際にはその約10倍の10万人程度が在住しているといわれる。ロシア人資本家は、法人税が安く金融管理も甘いキプロスにペーパーカンパニーを乱立させ、自国の課税を逃れてきた。海外からロシアへの直接投資の40%がキプロスからのものである(表参照)。
キプロスはEUに支援要請する一方でロシアにも支援交渉する二股をかけていた。
ロシアの企業と銀行はキプロスに約310億j(約2兆9200億円)の預金を持つとされる。それ以外にも名義人はキプロス人ながら実質的にロシア人のものと考えられる預金が同程度あるとみられ、キプロスの大口預金の大半を占める。
EUは、キプロスを救済すれば結局はロシアの富豪を救済することになると支援要請を放置した。ロシアのプーチン大統領は3月18日、EUのキプロス救済策は「不公平、素人のやり方」と批判した。
キプロス財務省は今年1月、ロシアからの25億ユーロの融資の期限を5年延長し21年までとし、金利を4・5%から2・5%に引き下げることを要請したほか、50億ユーロの追加融資も求めた。3月にはキプロスのサリス財務相はロシアのシルアノフ財務相に要請したが合意にはいたらなかった。キプロス側は支援の見返りに、天然ガス開発権の譲渡をロシアに提案したといわれている。
英紙デーリー・テレグラフはロシアがキプロスへの基地建設を狙っていると報じた。交渉では、キプロスにロシアの海軍基地を設置する計画も議論されたという。ロシアにとっては、これが実現すれば、旧ソ連圏外に連合国を保持できるだけでなく、EUからキプロスを引き離すこともできることになる。高額預金者への負担を強いるEUへのロシアの批判が強まり、蜜月関係にあった独露間に亀裂が入っている。
経済危機が政治的・軍事的対立に向かい始めている。キプロスはその火点となろうとしている。
▼4年間で33%のマイナス成長
当初、キプロスの銀行の資本増強78億ユーロ必要と予想されていたが、今では106億ユーロが必要になる可能性があるという。現在14%の失業率が上昇し、不動産価格が下落するにつれ、不良債権は急増する見込みだ。3月の新車販売台数は前年比59%減になった。キプロスのGDPは11年から4年間の累計で33%減少すると予想され、ギリシャの6年間の予想減少率24%をも上回ることになる(英「エコノミスト」誌13年4月27日号)。
キプロス経済の危機は、キプロスへのロシア人の大流入とは逆に、大流出の開始となるであろう。「ロシア人向けの美容室で働くモスクワ出身のマリナさんは『客も減るのでロンドンに移り住む』と話した」(4月4日付朝日新聞)
階級的労働運動の復権を
マスコミは一斉にキプロス危機は一段落と報道しているが、はたしてそうか。
第一に、キプロス危機の原因は世界金融大恐慌の深化にある。04年のキプロスのEU加盟はギリシャの後押しによるものであるが、ギリシャの財政破綻がキプロス危機の直接の引き金となった。12年3月のギリシャ・デフォルト(債務不履行)が致命傷になった。
第二に、恐慌の深化の中でEUの危機とロシアとの争闘戦の激化が、「ロシアの富豪を救済するな」と全預金者課税へとエスカレートした。小国を破滅させながら、帝国主義・大国は延命を図ろうとする。
第三に、預金者負担や優先債の負担は、EUの銀行同盟創設に向けて議論されていることの先取りである。ユーロ圏財務相会合の議長を務めたオランダのダイセルブルム財務相が3月25日に「キプロス銀行再編が他のユーロ圏の手本になる」(3月25日)と発言し、その後火消しに躍起となったが、これが本音である。
第四に、ドイツは緊縮財政による財政赤字の削減によってユーロ価値を維持し、ユーロを防衛しようと躍起になってきたが、そのユーロ防衛策がユーロ危機を促進している。12年初めには、ギリシャの財政破綻を封じ込めようと、ギリシャ国債のデフォルト(債務再編)を強行し、これが引き金でキプロスが破綻した。
第五に、ユーロの唯一の防衛策である緊縮策が、労働者階級の怒りによる相次ぐ政権の崩壊で、もはや維持できなくなった。フランスでは緊縮策反対で社会党のオランド大統領が登場した。イタリアでは総選挙後2カ月の政治空白の末に、レッタ大連立政権が4月30日に誕生したが、モンティ前政権の緊縮策を転換して成長戦略に転換した。
ユーロ圏の新自由主義的な緊縮財政を打ち破ったのは労働者階級の闘いである。階級的労働運動を復権し、国際連帯闘争を強めよう。
(常木新一)
(写真 キプロス国会の外側で預金課税を条件とする金融支援の受け入れに抗議する人たち【4月19日 ニコシア】) ---------------------------------------------------
月刊『国際労働運動』(442号7-1)(2013/06/01)
■世界の労働組合/韓国編
公共運輸社会サービス労働組合
民主労総傘下の公共運輸社会サービス労働組合(公共運輸労組)は、運輸も含めた公共部門で働く労働者の広範な組織化を目指す産別労働組合で、組合員は14万人。組織対象は、健康保険公団・韓国ガス公社などの公共機関、トラック・バス・タクシーなど運輸部門、医療機関、保育・老人介護など社会福祉部門、地方自治団体・大学・大型ビルディングなどの清掃および施設管理業務、文化芸術、専門技術分野、経済社会団体などで働く正規職・非正規職の労働者となっている。
公共運輸労組は長い準備期間を経て2011年6月に発足したが、未加入の個別単組は、過渡的体制としての公共運輸連盟のもとで公共運輸労組への加入を模索している。全国鉄道労組の場合、12年11月の組合員投票で公共運輸労組加入を否決したが、公共運輸連盟にはとどまっている。
■公共運輸労組設立に至る経緯と課題
(写真 公共運輸労組・連盟が軸となり「公共部門の労働基本権獲得と民営化阻止・社会公共性強化のための共同闘争本部」が立ち上げられた【4月11日】)
1987年の労働者大闘争を経て飛躍的前進を開始した民主労組運動は、大きく3つの組織を軸に産別的結集が進められた。製造業部門の労組を中心とした地域別組織、非製造業部門の事務職・専門職労組を中心とした業種別組織、大企業生産職労組を中心とした財閥グループ別組織の3組織のうち、業種別組織がいち早く産別労組建設への挑戦を開始する。業種別組織傘下の労組の多くは公共部門の労働組合であり、公共部門では労使関係の決定権が事実上、個別使用者ではなく政府に握られているため、対政府交渉を担える組織力が求められていたのだ。
公共運輸労組設立の前段階として、87年以降、トラックなど貨物や地下鉄、バス、タクシー、研究機関などで民主労組が作られ、それぞれが連盟や協議会などの形で業種別組織をつくっていく。その一つとして94年に142の企業別労組から成る公共部門労働組合代表者会議(公労代)が立ち上げられるが、これは同年に闘われた地下鉄と鉄道労働者の共同ストや、造幣公社スト、韓国通信労組の民主化などがその契機となっている。続いて97年には、韓国通信、造幣公社など17労組が公共連盟(旧)を立ち上げ、公共産別の軸を形成する。さらに99年には、この旧公共連盟と公益労連、民主鉄道地下鉄労組連盟が統合して新たな公共連盟を発足させ(統合と同時にソウル地下鉄がストに突入)、2002年には、この公共連盟傘下の鉄道、発電、ガス労働者が共同ストを展開した。
05年7月、公共連盟、貨物統合労組準備委、民主タクシー労組連盟、民主バス労組の4組織が統合準備委員会を立ち上げ、07年末までに統合産別労組を建設することで合意し、統合に至る過渡的形態として全国公共サービス労働組合と全国運輸産業労働組合が結成された(06年11月と12月)。さらに07年1月には、やはり過渡的形態として、公共連盟、貨物統準委、民主タクシー、民主バスが統合して公共運輸連盟がつくられ、先の公共サービス労組と運輸労組もその傘下に入った。
その後、各労組内部の意見対立により統合の時期が延期されつつも、公共サービス労組は08年9月の代議員大会で合併決議を通過させた。だが、もう一方の運輸労組は、代議員大会の定員不足や流会により組織統合に関する議案の採択には至らなかった。
その後、紆余曲折を経て2010年3月、公共運輸連盟が臨時大会で産別労組建設方針を確定し、それを受けて4月に公共運輸労組準備委が立ち上げられる。産別労組建設をめぐり各労組内に意見対立があったにもかかわらず準備委が立ち上げられた背景には、建設時期が明記されなかったことと、何よりも08年に発足した李明博政権による全面的な公共部門労働運動つぶしの攻撃があった。激しい労組弾圧により公共部門を中心に民主労総脱退が相次ぐ一方、使用者側による団体協約解除などの事態も発生し、また、10年7月施行の専従者賃金支給禁止や、公共機関賃金ピーク制、成果年俸制の導入案など相次ぐ攻撃に直面する中、早急な戦列整備が求められていたのだ。
こうした経緯を経て2011年6月、ついに全国公共運輸社会サービス労働組合(公共運輸労組)の結成に至る。
とはいえ、冒頭にも触れたように鉄道労組が加入を否決させており、「公共サービス」と「運輸」を結ぶ軸となるべき鉄道労組の加入が今後の大きな課題となっている。
公共運輸労組は活動の柱として、公共部門労働者の権利獲得とともに「社会公共性の強化」を掲げており、李明博政権の新自由主義・民営化路線を引き継ぐ朴槿恵政権に対し、公務員労組や全教組も含めた公共部門労働者の共同戦線構築に力を入れている。
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訂正 前号40nの「全国機関士協議会」は「全国機関車協議会」の誤りでした。
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月刊『国際労働運動』(442号8-1)(2013/06/01)
■国際労働運動の暦/6月23日
■1945年沖縄戦「終結」■
「捨て石」作戦の末路
国体=資本主義の体制を守るため 労働者人民を殺し合わせる戦争
6月23日は、沖縄戦終結の日とされている。沖縄では、この日を「慰霊の日」として、最後の激戦地である糸満市摩文仁で沖縄県主催の沖縄戦全戦没者慰霊式典が行われる。「沖縄県慰霊の日を定める休日条例」で休日となっている。
だが、6月23日は、沖縄戦終結の象徴的な日であって、その日をもって沖縄戦が現実に終わったわけではない。日本軍の司令部が牛島中将と長参謀長の2人の自刃によって壊滅した日が6月23日だ。正式に降伏し、戦闘を責任をもって終わらせたわけではない。それどころか、自決の4日前、牛島は「各部隊は各地における生存者中の上級者之を指揮し、最後まで敢闘し、悠久の大義に生くべし」との軍命を出した。これは、全兵士に対し、捕虜になることを許さず敵弾に倒れるか自決することを迫るものだった。自分は責任をとらずに「最後まで戦え」という破廉恥な行為は、帝国主義軍隊の非人間性の極致だ。
▼6・23以後の日本軍の虐殺
6・23後の残虐な事件のうちの一つは、8月18日、久米島の仲村渠明勇さん一家が「スパイ容疑」として皆殺しされ家を焼き払われた事件だ。仲村渠さんは、嘉手納の捕虜収容所にいたところ、久米島出身者だということで米軍の久米島攻略に同行を求められ、郷里の人を救うためこれに応じた。上陸に際しての米軍の艦砲射撃を「久米島は無防備だから」と制止してもいる。そして島民に積極的に投降を勧めて歩いた。当時、久米島守備隊(鹿山正兵曹長・隊長)は約30人いた。仲村渠さんの活動がスパイ行為だとして日本軍に殺害されたのだ。このほかにもその2日後の朝鮮人・谷川昇さん一家虐殺など、久米島における戦争犠牲者40人のうち兵士も含む29人が守備隊による殺害だという。
そもそも沖縄戦は、もはや日本軍として米軍に軍事的に対抗できる力を完全に失っていたにもかかわらず、本土防衛の時間稼ぎ、国体(天皇制)を守るための捨て石作戦として、強行された。日本軍が米軍を沖縄で「迎え撃つ」作戦を立てたこと自体が、天皇制を頂点とする日本のブルジョア支配体制を守るためなら、沖縄人民の命、そして日本軍の兵士の命がどれほど失われても良しとするもので、許しがたい犯罪なのだ。
沖縄戦の米軍の死者1万4千余人、日本軍の死者9万余人、当時の沖縄の総人口45万人のうち県民の死者総数14万9千余人。
米帝は、沖縄戦に総力を傾注し、54万人の兵士と戦闘機、空母など艦艇1500隻を投入して戦った。それは、日帝を滅ぼし、制圧するにとどまらず、戦後のアジア・世界支配の拠点を奪取することを目的としていた。戦後の米帝の沖縄政策を見れば、それは歴然とした事実である。
▼戦争を革命へ
沖縄戦に至った日帝の戦争政策とは何だったのか。帝国主義の延命のために、労働者階級の闘いを圧殺し、労働組合を解体して産業報国会として国のために命を投げ出す機関に変え、労働者農民を戦争に動員し、住民をも巻き込んで死の淵にたたき込む。ここに資本主義の本質がある。軍服を着た労働者・農民である日米の兵士の間には、殺し合わなければならない何の理由もない。資本家どもの延命のために、その道具として殺し合わされる。このことを第2次世界大戦は、世界の労働者人民に教えたのだ。
このことに対する階級的怒りと憎しみは決して消えない。肉親を奪われた労働者人民の怒りを共有し、2度とこのような戦争への道を許さない闘いをあらためて決意しよう。
殺し合わされた双方の労働者が、同じ階級として団結すること。要するに、帝国主義戦争をプロレタリア世界革命に転化することが、沖縄戦総括の根本に据えられなければならない。それは、今日的には朝鮮・アジア侵略戦争のために、沖縄基地を強化し、新基地建設を強行しようとしている日米帝国主義に対して、労働者国際連帯の力で対決しようということである。
(写真 沖縄戦「終結」を迎え、壕の中でなんとか生き延びた人々)
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1945年沖縄戦の推移
3月23日 米軍、沖縄に激しい空襲
26日 米軍、慶良間諸島に上陸、日本軍、集団自決を強要
4月1日 米軍、沖縄本島西海岸から上陸
4月7日 戦艦大和など海上特攻隊が撃沈
首里をめざす米軍と大激戦始まる
4月20日 米軍、沖縄本島北部を制圧
5月22日 沖縄守備軍、首里城地下の司令部を放棄し、南部へ撤退開始
5月30日 米軍、首里城を占領
6月19日 牛島司令官、「最後まで敢闘せよ」の軍命
6月23日 牛島、長参謀長が自決
6月26日 米軍、久米島に上陸
7月2日 米軍、沖縄作戦の終了を宣言
8月15日 天皇がポツダム宣言受諾の放送
9月7日 日本軍、正式に降伏文書に調印
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月刊『国際労働運動』(442号9-1)(2013/06/01)
■日誌 2013 3月
1日千葉 JRに戻せ!動労千葉が第1波スト
動労千葉は千葉鉄道サービス(CTS)の相次ぐ違法行為、外注化からわずか5カ月の事業所閉鎖―統合に抗議し春闘第1波ストに立った
1日東京 3・1集会 杉並から反核反原発を
セシオン杉並大ホールで「ビキニ水爆実験・被ばくから59年−原発いらない杉並集会」がNAZEN杉並などの実行委員会主催で行われた
1日東京 反原発金曜行動 米仏から連帯参加
官邸・国会前行動は世界からも注目を集め、外国人も数多く参加している
2、3日 東西で国際婦人デー集会
東京 2日、国際婦人デー集会が杉並産業商工会館で開催された。第五福竜丸の元乗組員でビキニ事件の被爆者である大石又七さんを招いた
関西 3日、3・8国際婦人デー集会が約80人の参加で「エル・おおさか」で行われた。ふくしま合同労組委員長の市川潤子さんが発言した
3日千葉 首都圏青年春闘集会開く
千葉市DC会館で首都圏青年春闘集会が開かれ、13春闘と13年前半の決戦方針を打ち立てた
3日北海道 NAZENさっぽろ結成
NAZENさっぽろ結成集会が開かれ、20人が参加した
3日島根 「さよなら島根原発」集会に400人
松江市の「くにびきメッセ」において、「さよなら島根原発 未来のために」(主催=さよなら島根原発ネットワーク)の集会が行われ、約400人が結集した
3日岡山 星野さん救う会学習会で無実を確信 岡山・星野文昭さんを救う会は、全証拠開示を求める学習会を開いた
5日東京 星野闘争、デモで東京高裁包囲
星野さんをとり戻そう!全国再審連絡会議の呼びかけで今年第1波の東京高裁包囲デモが闘いとられた。全国から120人が結集した
5日東京 ビデオ国賠 ニュース映像採用
星野文昭同志のビデオ国賠第11回裁判が東京地裁民事第45部(石井浩裁判長)で開かれた。東京高裁包囲デモと署名提出行動を闘いぬいた全国の救う会や首都圏の労働者が傍聴席を埋めた
6日茨城 動労水戸、MTSの違法行為追及
動労水戸は、外注化された検修・構内業務をJRに戻すことや労働条件向上などを求めて春闘第1波ストライキに決起した
6日 チャーター機 強制送還を弾劾
霞が関の日比谷公園から法務省へ、仮放免者の会のデモ隊は怒りの声を上げながら進んだ。関西、東海からも仮放免者が駆けつけ350人の大デモとなった
7日千葉 第3誘導路供用に反撃
三里塚反対同盟の呼びかけで成田第3誘導路供用開始に対する緊急現地闘争が闘われた
7日千葉 三里塚、新誘導路に怒りのデモ
三里塚芝山連合空港反対同盟の呼びかけで、第3誘導路供用開始に対する緊急現地闘争が断固闘われた
9日東京 明治公園、労組を中心に1万5千人
明治公園において「つながろうフクシマ!さようなら原発大集会」が1千万署名市民の会主催で行われ、1万5千人が結集した
9〜10日 労組交流センターが福島市で総会
全国労働組合交流センターは、福島市内で第20回定期全国総会を開いた
10日東京 日比谷・霞が関に4万人
首都圏反原発連合主催の「原発ゼロ☆大行動」が日比谷野外音楽堂で開催され、多くの労働者民衆とともにNAZENの仲間たちも最先頭で闘いぬいた
11日福島 3・11反原発福島行動に1350人
東日本大震災と福島原発事故から2年目の3月11日午後、福島市の福島県教育会館大ホールにおいて「3・11反原発福島行動13」が実行委員会の主催で行われ、1350人が怒りあふれる集会とデモをやり抜いた。2年目の「3・11」の福島現地行動をねじふせようとするあらゆる圧力と分断策動を突き破って闘いぬかれた同行動は、福島と全国、そして全世界の根底的な怒りと巨大なエネルギーを解き放ち、「3・11をけっして忘れない! 原発再稼働を絶対に許さない!」という大闘争となった。
12日千葉 団結街道裁判 市道廃止の根拠示せ
反対同盟が団結街道廃止処分の許可取り消しを求めて成田市とNAAを訴えている団結街道裁判の第10回弁論が、千葉地裁民事第3部(多見谷寿郎裁判長)で開かれた
13日東京 国労組合員資格訴訟 本部を徹底追及
国労組合員資格確認訴訟の第7回口頭弁論が、東京地裁民事第11部(団藤丈士裁判長)で開かれ、国労本部に対する追及が行われた
13日東京 弁護団が要請、東京高裁で3者協議
東京高裁第12刑事部で星野文昭同志の証拠開示に関する3者協議が行われた。弁護団の反論と強力な要求によって、裁判官は検察官に証拠開示を促す発言をせざるをえなかった
14日東京 法大、武田君の処分撤回を
法大文化連盟と全学連は06年3・14法大弾圧から7周年を迎えた3月14日に今年一発目の法大包囲デモを意気高くうちぬいた
14日東京 郵政非正規ユニオン、井上を弾劾
都庁において郵政非正規ユニオンの第4回東京都労働委員会が行われ、元東京多摩局ゆうパック課総括課長の井上真二を徹底的に追及した
14〜17日千葉 総力で第2波ストに立つ
動労千葉は春闘第2波ストライキを敢然と打ち抜いた。検修職場の全組合員、全本線運転士と営業職場の組合員が連続的にストに入った
14日茨城 動労水戸、強制出向者を先頭にスト
動労水戸は、外注化粉砕・春闘勝利を掲げて全勤務者の一斉ストライキを貫徹した。午後、勝田車両センター門前に続々と結集した組合員と支援者は、居並ぶJR水戸支社と水戸鉄道サービス(MTS)の管理者に対し抗議行動を貫徹した
15日広島 動労西日本、広島地区でスト貫徹
動労西日本は、広島地区で広島印刷事業所とJR五日市駅を拠点に13春闘ストに立ちあがった
15日東京 三井物産本店に抗議
動労千葉と全国労組交流センターは、東京・大手町にある三井物産本店への抗議行動に立ち上がった。米ILWU(国際港湾倉庫労組)の港湾労働者との国際連帯の怒りの抗議行動である
15日東京 官邸・国会前、参加者拡大す
首相官邸・国会前などで金曜行動が行われた
16日北海道 柴田作治郎さん追悼の会
星野奪還に最後まで尽力され、今年1月に85歳でご逝去した柴田作治郎牧師の「告別の会」が、札幌の北海道クリスチャンセンターで開かれた
17日千葉 千葉県三里塚集会 3・24決起誓う
千葉市のDC会館において、千葉県三里塚集会が実行委員会主催で開かれた
17日沖縄 国鉄全国運動・沖縄第3回総会
国鉄闘争全国運動・沖縄の第3回総会が那覇市内で開かれた
17日富山 北陸春闘集会を開き斉藤さんが講演
北陸ユニオン主催、ス労自主・NAZEN北陸共催で「13春闘勝利!3・17北陸春闘集会」を富山県民会館で行い、元原発労働者の斉藤征二さんが特別講演
19日広島 中山崇志同志を奪還
不当な治安弾圧で獄中に捕らわれていた中山崇志広島連帯ユニオン草津病院支部委員長が、不屈の完黙・非転向を貫き、勝利者として出獄した
20日岡山 解雇撤回訴訟を提訴し春闘総行動
動労西日本は、13春闘第2波行動として3・20岡山春闘総行動に立ち上がった
22日東京 経産省前、テント撤去許さぬ300人
経産省前テントの撤去攻撃に抗議する集会がテントひろばで行われた。集会には福島の女性や避難者を始め約300人が駆けつけた
23日東京 雇い止め・強制配転阻止へ郵政集会
港区で、「雇い止め・強制配転絶対反対! もの言える職場をとり戻そう! 3・23郵政春闘集会」が開催され60人が集まった
24日千葉 三里塚 市東さん農地決戦を宣言
三里塚芝山連合空港反対同盟の主催で、成田市天神峰の市東孝雄さんの畑において、三里塚全国総決起集会が開かれた。農地決戦の渦中にふさわしく、参加者・発言者の覚悟と意気込みが鋭い集中性と緊迫感となって終始貫かれた集会となった
25日茨城 動労水戸、勝田車両センターでスト
動労水戸は、勝田車両センターで午後4時から1時間の時限ストライキに立った
25日大阪 動労西日本、レールテック初のスト
動労西日本は、JR西日本大阪支社内にある外注会社「レールテック」の職場で春闘ストを貫徹
25日東京 迎賓館・横田爆取弾圧裁判 無罪主張
迎賓館・横田爆取デッチあげ弾圧裁判の差し戻し控訴審第6回公判が、東京高裁第6刑事部(山崎学裁判長)で行われ、被告・弁護団が満を持して最終弁論と最終意見陳述に立った
26日東京 賃上げ求め日本機械工業労組がスト
日本機械工業労働組合は、ストに決起した
28日神奈川 労組交流センター、黒岩知事に抗議
神奈川労組交流センターは、朝鮮学校に対する補助金打ち切りを決定した黒岩祐治知事、阿部孝夫川崎市長に対し抗議・申し入れ行動を行った
29日東京 官邸前、民衆の力なめるな
官邸前での抗議行動は今回から2年目に入った
29日東京 法大「暴処法」弾圧裁判 完全無罪へ
一審で無罪の法大「暴処法」弾圧裁判控訴審の第1回公判が傍聴席を埋め尽くす結集で行われた
29日東京 前進社国賠 異様な弾圧を弾劾
前進社国賠裁判の第11回口頭弁論が東京地裁民事第1部(渡部勇次裁判長)で行われた
31日東京 渋谷、「解雇撤回」とどろく
東京西部ユニオンと郵政非正規ユニオンの呼びかけ、春闘渋谷アクションのデモと解雇撤回・JR復帰10万筆署名の街頭宣伝が120人行われた
31日東京 5・1メーデー方針を決定
都内で開かれたメーデー闘争実行委員会は、4・26自治労ストライキ貫徹を頂点に5・1メーデーに向かって、真正面から闘う決戦態勢を整えた
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月刊『国際労働運動』(442号A-1)(2013/06/01)
■編集後記
安倍の金融緩和政策「アベノミクス」が世界的な資本主義の崩壊の中で行われている絶望的な最後の延命策であることは明白だ。全世界で資本主義体制は崩壊のふちにある。日帝・安倍政権とブルジョアジーは世界大恐慌と争闘戦時代に突入する中で追いつめられ、あがいている。
6月に策定される安倍政権の「成長戦略」の核心は解雇・賃下げの自由化=「雇用の流動化」だ。資本に対する全面的な規制緩和であり、その中心が労働規制の全面撤廃だ。
安倍政権の危機を引き寄せているのは新自由主義政策だが、その延命のためには、また新自由主義攻撃を絶望的に激化させる以外になく、労働者の雇用と賃金、職場と社会の安全を破壊しまくっている。
このように絶望的にもがく安倍政権を、5〜7月の闘いで打倒しよう。
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