International Lavor Movement 2013/05/01(No.441 p48)
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2013/05/01発行 No.441
定価 315円(本体価格300円+税)
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月刊『国際労働運動』(441号1-1)(2013/05/01)
■羅針盤 「解雇自由化」推進する安倍
安倍政権は、「産業競争力会議」に郵政民営化を推進した竹中平蔵やブラック企業=楽天の会長・三木谷浩史などの資本家どもを入れ、「労働市場の流動化」を提唱し、「解雇の原則自由化を認めろ」などと叫び、大量解雇をさらに進めようとしている。
すでに3月雇い止め解雇通告、郵政でのスキル評価による大幅賃下げ、請負契約打ち切りによる全員解雇などが強行され、さらには1カ月に258時間もの残業で家にも帰れず過労死する労働者が生まれるなど、膨大な青年労働者がうつ病や自死に追い込まれている。資本家どもは労働者を日々殺しておきながら、それでもあきたらず労働者の10割を非正規職に突き落す全面的な雇用破壊をやろうとしている。絶対に許すことはできない。
だからこそ、労働者は団結して、闘って生き抜かなければならない。すべての労働者の怒りをひとつに束ねて、資本や権力と闘う運動こそ、解雇撤回・JR復帰を求める10万筆署名運動だ。労働者が生きていけない現実に突き落とされた、新自由主義の本格的出発点が中曽根による国鉄分割・民営化だった。ここから労働運動が大きく後退し、民営化・外注化・非正規職化が労働者に襲いかかることになった。この国鉄分割・民営化攻撃を許して、労働者の未来はない。
職場の怒りと団結を組織し、階級的労働運動をつくりだす闘いとして、解雇撤回・JR復帰を求める10万筆署名運動に、職場、地域、街頭で、全力を挙げて取り組もう。動労千葉を支援する会の会員を拡大し、物資販売を推進し、国鉄闘争全国運動が呼びかける6・9大集会に全労働者の怒りを総結集させようではないか。
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月刊『国際労働運動』(441号2-1)(2013/05/01)
■News & Review 中国
全人代、鉄道省解体―「分割・民営化」へ
「工会」弾劾する非正規労働者の闘いの勝利
3月10日、中国政府は開催中の第12期全国人民代表大会第1回会議で、鉄道省を解体し交通運輸局に統合、新たに中国鉄道総会社を設立することを決定し、全国の鉄道を各地方で分割し、民営化を進めていこうとしている。
中国では現在、非正規労働者、派遣労働者の闘いが次々と爆発し、中国スターリン主義を根底から揺さぶっている。こうした階級闘争の激動の中で登場してきたのが、今回の鉄道省解体、「鉄道改革」なのである。それは中国における新自由主義的な政策の展開を極限まで進め、破産した鉄道経営と資本を救済し、労働者の階級的闘いの背骨をたたき折る狙いを持っている。
中国で現在連日のように闘われている労働者のストライキのほとんどは、出稼ぎ労働者である農民工、すなわち非正規労働者の闘いであり、その権利を求める闘いである。この闘いが中国スターリン主義と資本を追いつめ、数々の勝利をかちとっている。
延煉サービス会社で派遣労働者化を阻止
延安市にある延煉サービス会社では、現場労働者に対して外部の派遣会社との間に新たに労働契約を結ばせて、派遣労働者とする攻撃がかけられてきた。完全な非正規雇用化である。労働者たちは「派遣労働者化反対」「同一労働・同一賃金」のスローガンを掲げてストライキなどで徹底抗戦し、年末にこれを撤回させる勝利をかちとっている。ここには「経済特区」深せん市で多くの労働争議を手がけた弁護士も駆けつけ、市政府や資本との団交を行い、この勝利に結びついている。中国の労働運動が今や全国的な連帯を形成する段階に突入したことを、この件は示している。
北京・デルファイ工場で正規雇用に
また2月4日より、米系資本デルファイ(米ゼネラルモーターズから分社した自動車部品生産)の北京の工場で、非正規労働者約400人が長期間の非正規雇用や低賃金、休暇、保険などの問題をめぐってストライキに突入した。このデルファイ北京工場には約500人の労働者がいるが、その95%が非正規労働者、生産現場にいる労働者のほとんどが派遣労働者だという。
ストライキ4日目に、ついに会社は労働者の要求ほぼすべてを認めた。@一律月給500元の賃上げ、A3年以上勤務した派遣労働者で望む者はすべて年明けに労働契約を結んで正社員とする、B5月1日より、正規職か非正規職かを問わず、すべての労働者の医療保険を会社負担で保障する――という中身であり、労働者の大勝利となった。
(写真 北京デルファイ工場でのストライキ【2月5日】)
「労働合同法」の改定と工会改革
こうした労働争議は増加の一途をたどっており、特に非正規雇用問題は資本と体制を揺るがす大問題となりつつある。この中で中国スターリン主義は、昨年12月28日の第11回全人代常務委員会第30回会議で、「労働合同法」(労働契約法)を改定し(今年7月1日より施行)、派遣業への規制を厳しくし、また派遣労働者と正規職は「同一労働・同一賃金」とすることを明記した。中国は中国スターリン主義の独裁国家であり、こうした法律が実際に現場でどこまで一般化するかは疑問があるが、しかしここには明らかに労働者の闘いに追いつめられた中国スターリン主義の姿がある。
この労働合同法の改定と並んで行われているのが工会(中国スターリン主義の御用組合)改革である。賃上げや労働条件の改善、自由な労働組合の結成を要求して昨年3月29日からの日系・オーム電機深せん工場(松下傘下)で5000人のストライキが闘われたが、この闘いは中国史上初めての工会自由選挙を昨年5月にかちとるという地平を開いた。またこのオーム電機の労働者の闘いがきっかけになって、深せんの163の企業で工会の自由選挙が同時期に次々と行われていった。
あのストライキや暴動が続発する富士康(国際的な外注請負生産企業)でも今、工会の自由選挙が行われようとしており、こうした「工会改革」を中国スターリン主義は今後次第に進めていこうともしている。中国スターリン主義と資本が追いつめられているからであるが、しかしこれは一方で、「経済開発特区」深せんなどで激しく燃え上がる労働者の闘いを体制内的に取り込む攻撃でもある。
「工会改革」弾劾するオーム電機の闘い
この工会改革、自由選挙のペテンを暴いたのが、同じオーム電機深せん工場の労働者の闘いであった。今年2月に再び、リストラや非正規雇用に抗議し、さらにこの工場の工会代表の罷免(ひめん)を要求する激しい労働争議が爆発した。
実際に、このオーム電機での昨年の「自由選挙」は、ストライキ継続を主張する多くの労働者を排除して行われており、なんら「自由」な選挙ではなかった。しかもオーム電機側は、新しく成立した工会に毎年10万元(約140万円)の活動費を提供することを約束したが、それは労組を買収する資金となって工会の「独立」を解体し、腐敗させた。
こうした状況の上で、今年2月、雇用期間の切れる労働者と会社との間で新たな労働契約の更新が行われた。中国の「労働合同法」によれば、有期雇用の労働者が同じ職場で3回目に労働契約を更新する場合は「期間の定めなき労働契約」(つまり正社員化)を結ばなければならないとされている。さらに最初の契約書では「基本給の10%の値上げ」などが謳(うた)われていた。だが、実際に労働者に署名させた契約書では「基本給の10%の値上げ」が消えており、さらには「期間の定めなき労働契約」もない労働契約書に書き換えられて労働者に署名を迫る事態となった。また22人の労働者の首切りも明らかになった。労働者の怒りは爆発し、会社を徹底弾劾する闘いとなった。
このように労働者の怒りが爆発する中で、昨年の自由選挙で選ばれた工会執行部はなんら闘おうとせず、会社の欺瞞(ぎまん)的で悪質な新労働契約締結を黙認し、労働者の権利を守る姿勢をまったく見せなかった。労働者たちはこの工会に対しても怒りをたたきつけ、2月28日にオーム電機の工会執行部に対して、工会の臨時代表大会の開催とオーム電機工会主席の罷免を要求する文書を、開催に必要な署名を集めてたたきつけたのである。
オーム電機で起きていることは、中国スターリン主義の進める「工会改革」のペテン性を鋭く暴露しており、こうした労働運動の体制内的な囲い込みに対して、それを許さない労働者の闘いが必ず爆発することを示している。
(写真 工会主席罷免要求書を張り出すオーム電機労働者と、それを破り捨てる工会主席【2月28日】)
「鉄道改革」で闘いの解体狙う習近平政権
昨年11月に成立した習近平政権は、崩壊過程に突入した中国スターリン主義の末期的な政権である。それは欧州危機や日帝との軋轢(あつれき)の激化などにより経済危機を深め、一方で労働者や農民、諸民族の反乱に直面し、経済的にも政治的にもすさまじい危機を深めている。さらに「改革・開放」政策の乱開発、バブル経済のもとで拡大している環境汚染自体が、もはや社会の存続を脅かすものにさえなっている。この政権を打倒する労働者階級の怒りの爆発はもはや不可避である。
労働合同法の改悪や工会改革で労働者階級を体制内的に取り込もうとする政策も、最初から破綻を見せている。そのペテン性が明らかになるとともに、権利をかちとった労働者はますます団結して意気高く闘おうとしている。
こうした労働者階級の闘いを解体し、国家の経済的政治的な危機を救済するために出されてきたのが「鉄道改革」にほかならない。
この政策の背景にあるのは、中国における鉄道事業の破綻であり、その乗り切りをかけた政府と資本の姿である。中国政府は、「改革・開放」政策の下で、高速鉄道政策を全力で進めている。昨年12月26日に開通した北京と広州を結ぶ世界最長(2298`)の高速鉄道は、政治の中心である北京と経済の中心である広州を直通で結ぶ高速鉄道であるが、その経営は赤字必至で年間利子だけで数億元(1元は現在14円ほど)の赤字を生み出すという。最初から採算の取れるめどはないと、中国のマスコミも報じている。こうした赤字必至の高速鉄道は、鉄道事業が巨大な経済効果を生み出すため、資本の要請、政治の要請で急スピードで建設されてきた。こうした状況の中で鉄道事業は巨大な利権を生み出すものとなり、鉄道省は「腐敗の温床」といわれ、汚職が常態化している。
こうした建設ラッシュの中で、2011年7月23日に浙江省温州市で高速鉄道事故が発生し、多数の死者を出す事態となった(中国政府の公式発表では死者は約40人とされているが、200人以上いるはずだといわれている)。
まさに中国の鉄道建設は、完全に経済的に破綻し、運営的にも危機を深めているのである。
こうして3月10日に、開催中の第12期全国人民代表大会第1回会議で、鉄道省の解体が決定され、日本の「国鉄分割・民営化」にならったという「鉄道改革」が始まったのである。「鉄路政企分開」(「鉄道での行政と経営の分離」)のスローガンの下に、鉄道省を解体して、交通運輸省のもとに「国家鉄道局」を創設し、行政面での責任を取る。一方で「中国鉄道総会社」を立ち上げて経営責任をとらせ、それも地方ごとに分割して鉄道会社を設置するという構想だ。設立される「中国鉄道総会社」は、形は国有企業になると言われるが、外資も含む民間投資を前例のない規模で広く受け入れた「独立採算制」による鉄道経営をめざすもので、実質的には民営化(私有化)と見られている。
これが発表されるや、中国のネットでは、「腐敗の温床」鉄道省解体を喜ぶ声も出る一方で、“民営化されることによる運賃の値上げ、それが物価上昇に及ぼす影響”“鉄道労働者の解雇”などの可能性を指摘する声が次々とあふれた。
2兆6000億元(約36兆4000億円)に上る膨大な鉄道省の借金は、国の借金として中国の労働者人民に増税となって転嫁されるのは必至だ。また、新設される会社は、赤字必至の鉄道経営を維持するために、労働者のリストラと運賃値上げを進めていくことも明らかだ。中国政府は現在、改革に伴う鉄道労働者の首切りや運賃値上げを否定しているが、「政企分開」の下、会社の判断で次々とやっていくだろう。
「鉄道改革」による労働者の首切り、リストラは、中国における新たな新自由主義的攻撃となって鉄道労働者に凶暴に襲いかかり、さらにその攻撃は全労働者階級に波及していくだろう。それは高揚し発展する労働者階級の闘いの背骨をたたき折り、それを真っ向から圧殺するものになろうとしている。中国の「鉄道改革」は、日本の「国鉄分割・民営化」同様、中国の全労働者階級の闘いをつぶす本質を持っていると見ることができる。
中国の労働運動は、まったく新しい段階に突入しようとしている。それは労働運動の圧殺を狙う習近平体制との真っ向からの激突であり、中国スターリン主義の打倒をかけた労働者階級の闘いに必然的に発展していくものである。中国の労働者階級との連帯をかけて、日本における国鉄決戦の爆発をかちとろう!
(河原善之)
(写真上 「 さらば、鉄道省!」と報道する中国の新聞【3月10日】)
(写真下 2011年7月23日の温州高速鉄道事故に抗議する遺族) ---------------------------------------------------
月刊『国際労働運動』(441号2-2)(2013/05/01)
■News & Review 日本
動労千葉・動労総連合が春闘ストに立つ
新たな時代の反合・運転保安闘争路線で
13春闘において、安倍政権と日帝ブルジョアジーによるベアゼロ(賃下げ)、雇用破壊の攻撃が吹き荒れ、連合などの大手組合が軒並み闘争を放棄し屈服している。その中で、動労千葉・動労総連合が断固として春闘ストライキを決行し、3月決戦の最先頭で闘い抜き、労働者階級の進むべき道を指し示した。
(写真 「事業所をつぶすならJRに戻せ!」と動労千葉が春闘第1波スト【3月1日 幕張】)
幕張事業所閉鎖に抗議し第1波スト
動労千葉は3月1日、春闘第1波ストライキを打ち抜いた。千葉鉄道サービス(CTS)の相次ぐ違法行為、新設された幕張運転車両所の外注化からわずか5カ月での閉鎖(外注化前からあった幕張事業所に統合)という暴挙に抗議し、CTS幕張運転車両所に強制出向させられた組合員が始業時から昼までのストを貫徹した。
幕張運転車両所は、昨年10月1日の外注化強行以降、過半数を組織する労働組合である動労千葉と36協定を結ばないまま、時間外労働、休日労働を強制していた。千葉県労働基準監督署がこの件について調査を行い、「是正勧告書」を発した。CTSは違法企業だということだ。
こうした中で、「36(サブロク)協定を締結しなければ幕張運転車両所をつぶす」と言って、3月1日をもって、幕張事業所への統合を強行したのだ。断じて許されない。だが、これは、動労千葉に対する組織破壊を目的として多数の動労千葉組合員を出向させたために、CTSでの職場支配権を動労千葉に握られたことに追いつめられた結果でもある。
早朝からJR幕張本郷駅前でストを伝えるビラまきが行われ、晴れやかな表情で組合員が次々と集まった。幕張支部の山田護支部長や青年部の発言に続き、駅へのライフサイクル強制配転から3月1日付で運転士に復帰した津田沼支部の滝厚弘さんが元気にあいさつした。
8時過ぎには車両センター庁舎前に移動し、「違法企業CTSを許さないぞ! 事業所をつぶすならJRに戻せ! CTS社長・後藤慎悟は出てきて謝罪しろ!」とJRとCTSに怒りのコールを浴びせた。
田中康宏委員長は「CTSには技術力も経験もない。労働基準法も守らず、労基署から摘発されて是正勧告が出たら、謝罪もせず事業所を閉鎖する。こんな会社は前代未聞というより恥さらしだ。こんな会社に安全のかかった大事な仕事を委託したJRの責任は重大だ」と述べた。
幕張支部の組合員は「こんな会社を許しておくわけにはいかない。外注化以来、連絡系統もぐちゃぐちゃだ。こんなことでは必ず事故が起こる」と怒りをぶつけた。
青年部組合員も、庁舎前に並ぶ管理者に対して「こんなことをしていたら、今の子どもが大きくなる頃には、世の中、非正規職ばっかりになってしまう。若い人のことを少しは考えろ!」と迫り、職場の仲間に「一緒に闘おう」と呼びかけた。
3・1ストは、外注化阻止決戦の第2ラウンドをこじ開ける重要な闘いになった。
第2波ストに立ち3・14総決起集会
動労千葉は3月14日、13春闘第2波となる3・14〜17連続ストに突入した。初日の14日には検修職場の泊まり勤務者が順次ストライキに入った。15日から17日にかけ検修職場で働く全組合員、旅客の全本線運転士、営業職場の組合員もストに入った。
14日午後6時から「13春闘勝利! 検修・構内外注化粉砕! 久留里線ワンマン運転絶対反対!」を掲げて総決起集会を千葉市民会館地下ホールで開催した。スト突入者を先頭に310人が結集し、熱気あふれる集会となった。
田中委員長は冒頭、13春闘をめぐる情勢について、「自動車などの『満額回答』の記事が踊っているが怒りに堪えない。全部ベアゼロではないか。目の前で起きていることは雇用と賃金の全面破壊だ。すべてがウソ、偽りではないか」と怒りをあらわにし、「安倍政権の成長戦略は『公務員制度改革』『雇用の流動化』だ。労働者の賃金を削り、もっと民営化しろ、もっと非正規職に突き落とせということだ。この現実に本当に立ち向かわなければならない」と語気を強めた。そして13春闘の最重要課題として、@検修・構内業務の外注化粉砕、A久留里線ワンマン運転導入反対、Bとりわけ貨物会社を焦点とした賃金抑制打破の闘いの3点を強調した。
続いて、この日からストに入った検修職場の組合員が登壇した。幕張支部の山田支部長は「3・1ストライキは大成功した。違法企業であるCTSに業務受託などできない。出向者と業務を直ちにJRに戻せ! JRのCTSの管理者は動労千葉の闘いに注目し、恐れている。外注化を粉砕してJRに戻るまで闘う」と力強く宣言した。
川崎昌浩執行委員が、JR東日本が過去最高益を上げているにもかかわらず「将来不安」なる許しがたい理由をこじつけて定期昇給のみ実施、ベアゼロを回答してきたことを報告。方針提起で長田敏之書記長は、今春闘の三つの課題を闘う中からなんとしても組織拡大を実現することを強く訴えた。
青年部の組合員は「闘えば元気になれる。重要なのはストライキを出発点とした職場での闘いだ。ストをやり抜き、明るく元気に管理者と闘う」と発言し会場を沸かせた。
また、14日午後には春闘貨物総決起集会が千葉市内で開かれた。千葉機関区支部の斎藤隆雄支部長が「JR貨物は国鉄分割・民営化の矛盾の集中点だ。われわれの要求は『生活できる賃金を寄こせ! ベアを実施しろ!』だ。運転保安上の矛盾も貨物に集中している。国鉄分割・民営化による構造的な矛盾は労働者の責任ではない。分割・民営化そのものが間違いであり大失敗に終わったということだ」と怒りを込めて語った。
JR貨物は15日、定期昇給のみ実施、14年連続となるベアゼロの回答を出した。しかも、一時金を年間2・5カ月に抑えようとしている。これはJR東日本の夏季手当2・85カ月をも下回る。断じて許されない。
(写真 「安全無視のワンマン化は許せない!」と、動労千葉が春闘第2波ストに立ち総行動【3月16日 木更津駅前】)
久留里線ワンマン化阻止へ木更津総行動
16日午後には全支部からの結集で木更津総行動が闘われた。今回のダイヤ改定でJR東日本は、久留里線(木更津―上総亀山)のワンマン運転導入を強行した。
久留里線では昨年12月に新型車両が導入され、保安装置もATS―P(自動列車停止装置P型)に変更されたばかりだ。その訓練もまともになされない中で、34本中24本を一気にワンマン化するなど暴挙としか言いようがない。車掌が乗務せず、運転士1人で運転から、乗降客の安全、ホームの安全の確認、ドアの開閉などをやらなければならない。久留里線では、列車とホームの段差が最大37aもあり、お年寄りや子どもにとって極めて危険である。
午後2時、JR木更津駅前には150人の組合員と支援が集まり、駅頭でのビラまきとアピール、さらに木更津運輸区門前での抗議行動を行った。木更津支部の山中茂男支部長は、現場労働者の切実な訴えをまったく聞こうともせずワンマン化を強行したJRの管理者たちに激しい怒りをぶつけた。「夜間や雨天時はミラーではほとんど見えない。いつ事故が起きてもおかしくない。しかも、何かあったらすべて運転士1人に責任を負わせる会社の姿勢は絶対に許せない」と声を強めた。
田中委員長は、「千葉支社は、動労千葉が問題点を指摘しても一切聞かない。ホームとの段差の解消など、すぐやれる対策さえなぜやらないのか。金もうけのためなら地方も安全も切り捨てていいのか。この問題の中に、国鉄分割・民営化以来のすべての問題が詰まっている」と弾劾した。
動労水戸は春闘3波のストに決起
(写真 動労水戸が全勤務者を対象にした第3波ストライキを貫徹【3月14日 勝田】)
動労水戸は3月6日、外注化された検修・構内業務をJRに戻すことや労働条件向上などを求めて春闘第1波ストライキに決起した。水戸鉄道サービス(MTS)への強制出向者を先頭に、勝田車両センターで働く組合員がストに入った。
MTSでは、この間、事業所所長などの管理者が、自ら職場代表選出の同意書の署名を職員からとって回って「選出」と称している違法行為が発覚している。そして、動労水戸との団交では「組合には説明も同意を求めることもしない。就業規則の変更など大きな労働条件の変更については組合ではなく『従業員代表』に説明する」と回答しているのだ。組合無視の不当労働行為そのものだ。
さらに、動労水戸は3月14日、外注化粉砕・春闘勝利を掲げて全勤務者の一斉ストライキに突入した。3月6日、12日に続く第3波ストだ。午後、勝田車両センター門前に続々と結集した組合員と支援者は、居並ぶJR水戸支社とMTSの管理者に対し怒りの抗議行動を貫徹した。
石井真一委員長は「JR東日本の春闘回答は、ベアゼロ・定昇維持のみ。3月16日に迫ったダイ改では、MTSは『労働条件の変更は組合には提案しない』と開き直っている。違法企業への強制出向を許さず、裁判闘争と一体で職場闘争を闘おう」と訴えた。
辻川副委員長は、「外注化とは非正規職化と解雇自由の攻撃であると同時に、労働者の生命と鉄道の安全に対する責任の放棄だ。原発事故を引き起こした東京電力と、外注化を進めるJR資本は無責任という点において同等だ。われわれは外注化を粉砕するまで断固として闘い抜く」と訴えた。
動労水戸はまた、3月25日に放射能で汚染された車両の検修作業に反対し、勝田車両センターで被曝労働拒否の時限ストを決行した。
動労西日本もスト決起
(写真 「解雇撤回! 非正規職撤廃!」を掲げ動労西日本がスト【3月15日 広島】)
動労西日本は、3月15日、広島地区で広島印刷事業所とJR五日市駅を拠点に、春闘ストライキに立ち上がった。
107人の死者を出す尼崎事故を引き起こしたJR西日本は、歴代社長が事故の責任を取らないばかりか、「経営者は安全のことなど考えなくていい。現場が考えることだ」(井手元社長)と開き直り、責任を労働者に転嫁している。人件費の抑制のために、契約社員(非正規雇用労働者)をいち早く導入したのがJR西日本だ。動労西日本は、13春闘勝利・大幅賃上げ獲得、安全崩壊をもたらす外注化阻止、青年労働者を使い捨てにする契約社員制度撤廃、山田書記長の「雇い止め」解雇撤回に向けて闘い抜いている。そして、青年部を結成し、多くが非正規職の青年労働者の決起を訴えている。3月25日には、大阪レールテックでもストを決行し、関西の労働者がともに闘った。
6・9全国集会へ
こうして動労千葉・動労総連合のストライキは、13春闘を最先頭で牽引(けんいん)し、労働運動復権の展望を指し示した。この闘いに連帯し、動労千葉鉄建公団訴訟で「解雇撤回・JR復帰」の判決を求める10万筆の署名運動に決起し、すべての地域・職場の怒りの声を6・9国鉄闘争全国運動全国集会に結集しよう。
(大沢 康)
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月刊『国際労働運動』(441号3-1)(2013/05/01)
(写真 昨年の5・15闘争。「解雇撤回・基地撤去、非正規職撤廃」を掲げ国際通りを400人がデモ【2012年5月12日 那覇市】)
■特集 4・28闘争―5・15沖縄闘争へ
沖縄を「基地の島」から「国際連帯の島」にしよう
はじめに
最末期帝国主義の絶望的な延命形態としての新自由主義の矛盾の最後的な爆発形態として、今回の世界大恐慌は発生した。それは今や帝国主義間・大国間の大争闘戦時代に突入し、一方で大失業、他方で戦争危機を生み出した。
米日帝が釣魚台をめぐる中国との戦争状態、北朝鮮のミサイル・核実験めぐる戦争状態を生み出した。その全矛盾が「基地の島=沖縄」の労働者人民に集中している。
そこで、本特集は沖縄闘争の新たな方針、「沖縄を『基地の島』から『国際連帯の島』にしよう」を打ち出した。
第1章は、新自由主義と闘う沖縄闘争を土台に、国際連帯で闘う沖縄闘争を提起している。米国、中国、韓国、北朝鮮の労働者との国際連帯が米軍基地撤去の力である。
第2章は、在本土沖縄出身労働者が闘いの総括と、国際連帯で沖縄基地を撤去しようと訴えている。第3章は、東アジアの戦争危機とオスプレイの犯罪性を弾劾している。
第1章
T 国際連帯で闘う沖縄闘争――“万国の労働者団結せよ”
安倍政権と全面対決する沖縄の闘い
2月22日の日米首脳会談で安倍は普天間基地の名護への移設をオバマに「公約」し、3月11日には名護漁協が埋め立て「容認」を決定した。安倍は「地元」の同意を得たとして、3月22日に公有水面の埋め立て申請に踏み切った。普天間基地撤去、辺野古新基地建設絶対反対の県民の気持ちを踏みにじるものだ。
96年のSACO(沖縄に関する特別行動委員会)報告以来の16年余りの闘いを経て、沖縄闘争は歴史的な決戦を迎えた。4・28闘争―5・15沖縄闘争は重大な闘争になった。
95年の10・21県民大会=10万人決起を押しつぶすために進められてきた振興策こそ、「復帰」以降続けられてきた沖縄への新自由主義攻撃を極限的に推し進めるものであった。「雇用確保」の名の下にコールセンターの誘致が行われたが、そのほとんどがいわゆる「ブラック企業」そのものだ。非正規職で低賃金・強労働を強いられ、職場を転々とすることを余儀なくされているのは、ほとんどが青年労働者だ。
沖縄全体の非正規職化が一気に進み、全国平均を超える約4割が非正規職とされている。その一方で労組組織率も全国最低の1割ほど。「振興策」とは沖縄の労働者に対して雇用破壊・団結破壊として進められてきた。沖縄の労働運動と労働組合をめぐって一切は進んできたのだ。
さらにTPP(環太平洋経済連携協定)への参加は、日米同盟の強化と一体の攻撃だ(『日米同盟、経済に拡大』=琉球新報)。その中で「サトウキビ全滅」と報道されている。沖縄の農業は壊滅的打撃を受ける(特に離島は深刻)。
このことに対する怒りが沖縄の社会に渦巻いている。「基地を持ってくれば振興策でメシを食っていける」という幻想が完全に地に落ちた。むしろ逆に、沖縄に基地を固定化するための経済振興策として新自由主義攻撃がかけられてきたのだ。沖縄の労働者を徹底的に非正規職化し、団結を破壊することで「基地で働くこと」を強制してきた。
しかし、その基地労働者にもまた、賃金カットと非正規職化攻撃が開始されている。求められていることは、新自由主義と闘う労働組合が歴史の最先頭に登場することだ。
ここから、この間の釣魚台(尖閣諸島)問題を契機として、「国防」を絶叫することで沖縄の米軍基地の強化・固定化から自衛隊の強化へという動きが顕著になっている。八重山の教科書問題から始まった動きは、名護においても連動し始めている。
このような時代と情勢に、労働者とりわけ沖縄の労働者はいかに立ち向かっていくのかを考えていきたい。
(写真 名護市辺野古に移設が狙われている新基地予定図)
世界大恐慌と新自由主義と闘う国際連帯を!
21世紀の現代世界は世界大恐慌がますます深まり、そのすべての矛盾が新自由主義攻撃として全世界の労働者階級にかけられている。また同時にこの世界大恐慌と新自由主義攻撃は大国間同士の争闘戦を激化させている。とりわけアメリカ帝国主義は対中国・対北朝鮮の対峙・対決(=新軍事戦略)を方針とし、日米同盟の強化と沖縄の米軍基地の強化=オスプレイ配備と辺野古新基地建設攻撃を強めている。
それに対して日本帝国主義もまた、世界大恐慌ととりわけ「3・11」に直撃され危機を深めながら日米同盟の強化をその基本戦略としている。その中で安倍は「領土問題」を声高に叫び、「強い日本をつくれ」「すべては国家のため」「この国に力を尽くしたい」等々と国家主義をあおり立てている。
この脈絡で4・28に「主権回復の日」として政府記念式典を開催しようとしている。この4・28については沖縄で「『屈辱の日』をお祝いするとは!」という声が上がっている。これらすべての動きを一体のものとしてとらえていく必要がある。
われわれは昨年の5・15沖縄闘争を闘う中で、「新自由主義と闘う沖縄闘争」という提起を行った。
「復帰」以降の40年間、「5・15体制」と呼んできたものは、日本帝国主義による沖縄への新自由主義政策であったということだ。その攻撃の核心は民営化・外注化と非正規職化による沖縄の労働組合の破壊と体制内的な取り込み、それを通した団結破壊攻撃である。その狙いは沖縄の米軍基地の固定化(基地がないと食っていけないという現実とイデオロギー)だった。
しかし一方で新自由主義攻撃は、沖縄と本土と、そして全世界の労働者階級を限りなく一体とする攻撃でもあった。沖縄においても本土においても、そして全世界でも多くの労働者が民営化・外注化と非正規職化の荒波にさらされている。「非正規職撤廃!」は全世界の労働者階級の共通のスローガンだ。
第2次世界大戦後の戦後世界とはアメリカ帝国主義を基軸とする帝国主義の世界支配を、ソ連や中国といったスターリン主義が補完し、さらにアジアやアフリカなどが「新植民地主義」と言われる体制下に置かれてきた。全世界が「国家」「国境」「民族」といった形でバラバラにされてきた。
しかし1970年代以降の帝国主義とスターリン主義の世界支配の危機の中で、帝国主義は新自由主義攻撃を本格的に開始する。この新自由主義はそれまでの「国家」「国境」「民族」……をすべてぶち壊した。それは労働者の立場から見たときに、全世界の労働者階級が一つに団結していく条件を圧倒的に成熟させてきたのだ。
それはマルクス・エンゲルスの『共産党宣言』の最後の一文、「万国のプロレタリア、団結せよ」の時代がついに到来したということだ。
われわれの職場での「民営化・外注化阻止、非正規職撤廃」の闘いは全世界の労働者階級の共通の課題だ。だから私たちの職場の闘いは全世界の労働者階級とつながっているとも言える。
しかしそれだけではないということだ。そもそも労働者階級は何のために、何を目指して闘う存在なのか。それは国際連帯=「万国のプロレタリア、団結せよ」にほかならない。国際連帯を実現しそれを前進させるために、私たちは「民営化・外注化阻止、非正規職撤廃」を闘うのだ。
この国際連帯の新たな闘いは今年の3・11福島現地闘争で開始された。
2013年の沖縄闘争を、国際連帯闘争を第一の課題として掲げて闘おう。
(図 八重山・宮古島への自衛隊配備計画
●宮古島 「航空自衛隊那覇基地宮古島分屯基地」がある。日本の西南海域最大の無線偵察基地である。陸自は初動対処に当たる警備部隊を配備する計画。
●与那国島 陸自は中国などの動向をレーダーで探知する沿岸監視部隊として100人規模の要員を与那国島に常駐させる計画が進行中。航空自衛隊も航空機への警戒態勢強化として、移動式レーダーを運用する移動警戒隊を展開させる予定。
●石垣島 初動対処にあたる警備部隊を石垣島に置く計画。
)
沖縄を「基地の島」から「国際連帯の島」へ!
沖縄闘争は、「基地の島」の現実との闘いが基軸となる。つまり沖縄に米軍基地があることがいかなる意味を持つのか、ということだ。
それは周知のとおり、帝国主義とスターリン主義による戦後世界の支配体制において、アメリカ帝国主義と日本帝国主義による軍事同盟=日米安保同盟が大きな位置を占めてきたということと一体の問題である。アジア太平洋地域のみならず、中東にまでも展開している米軍の出撃・兵站基地としてある沖縄の米軍基地こそ、全世界の労働者階級を分断支配する「要石」だ。
しかし、これまでに述べたように新自由主義は、全世界の労働者階級のそれまでの分断支配そのものをぶち壊した。新自由主義と闘う沖縄闘争とは、国際連帯闘争としての沖縄闘争という新たな闘いへの出発点となるのだ。
沖縄闘争は国際連帯闘争として闘われる中で、勝利をつかみ取ることができる。つまり沖縄の労働者階級と全世界の労働者階級の国際連帯を実現していく中で(あるいはそのために)、沖縄の米軍基地は撤去できるし、撤去しなければならないのである。その国際連帯とは、アメリカの労働者階級であり、中国や北朝鮮や韓国の労働者階級であり、アジアのすべての労働者階級だ。
新自由主義の行う戦争が米軍の内的危機の崩壊を促進している。なぜならば、戦場に動員される兵士=青年労働者にはもはや、なんの「大義名分」もないからだ。この間、米軍人による事件・事故が多発している現実はここにある。
それは日本において青年労働者が次々と「自死」に追い込まれている現実とまったく同じである。新自由主義の中で労働者としての共同性も階級性もずたずたにされて、未来への希望も展望をすべて奪われた青年労働者という意味において、米兵もまた同じ労働者階級の一員なのだ。
この間の米軍人による事件・事故の多発という事態は、新自由主義の破綻を最も鋭角的に示している事態である。だから沖縄の労働者階級の闘いにこそ国際連帯が求められている。アメリカの労働者階級と沖縄・日本の労働者階級の国際連帯が、米軍基地撤去の闘いを切り開いていく。
この沖縄闘争の中軸に座る存在が基地で働く労働者だ。沖縄の基地労働者が、国際労働者階級の連帯と団結の中心に屹立して闘うことが求められている。「解雇撤回・基地撤去」を掲げ、基地内決起まで闘い抜いた沖縄の基地労働者の闘いの歴史的継承とその発展をかけた闘いを開始するときが来たのだ。
(写真 宮古・八重山大会を合わせて復帰後最大規模の10万3千人が結集しオスプレイ絶対反対を宣言した沖縄県民大会【2012年9月9日】)
戦後沖縄闘争の歴史的総括をかけて
国際連帯闘争としての沖縄闘争ということから考えたときに、「独立論」「反復帰論」等々とはどういう意味を持つのか?
そもそも戦後の「沖縄独立論」とはアメリカ軍の「解放軍」規定と表裏一体の考え方だ。つまり戦後沖縄の独立論の根底には日本共産党(沖縄人民党)=スターリン主義によって支えられてきた戦後世界体制(=国際プロレタリアートの分断支配体制)という問題がはらまれている。それは「万国のプロレタリア、団結せよ」を根底的に否定する思想だ。そしてこういう形でスターリン主義は日本帝国主義による沖縄のアメリカ帝国主義への「売り渡し」を裏から支える役割を果たしたのだ。
さらに沖縄自立論も、元をたどれば沖縄独立論に行き着く。そしてその思想的支柱となるのが「差別支配」となる。「構造的沖縄差別論」とは、結局のところ「沖縄自立論」=「沖縄独立論」への思想的屈服なのだ。
ここには、歴史変革の主体としての労働者階級の存在と闘いをしっかりと措定できていないということがある。
戦後沖縄の闘いの根底に流れる沖縄の労働者階級の自己解放を求める闘い=国際的な存在としての沖縄の労働者階級の闘いの開始とその発展ということを措定することが決定的に重要なのだ。それは核心的にはスターリン主義をのりこえて労働者階級が勝利していくという主体的立場ということでもある。
だから「復帰」闘争とは、国際連帯を求める沖縄の労働者階級の闘いが、まずは本土の労働者階級との連帯を求めて闘われた闘いとして総括されるべきなのだ。
国際連帯闘争として沖縄闘争を闘うという提起は、戦後の沖縄の闘いと「復帰」闘争、そして「復帰」以降の40年余りの闘いの総括から新たな飛躍へ挑戦していこうという提起だ。しかしこれこそが、実は戦後60年余り、「復帰」以降40年余りの根底に脈々と流れ続けてきた沖縄の労働者階級の闘いの実践的総括であり具体的方針であると言えるのだ。
沖縄を「基地の島」から「国際連帯の島」へ! それを担うのは基地労働者を先頭とした沖縄の労働者階級であり、全世界の労働者階級だ。
(写真 ストに突入した全駐労が青年労働者を先頭にOBを含め700人以上が米軍司令部前に結集【2012年7月13日】)
全職場で国際連帯を貫く民営化・外注化阻止、非正規職撤廃の闘いを!
新自由主義との闘いは労働者階級の国際連帯闘争そのものだ。「民営化・外注化阻止、非正規職撤廃」の闘いは全世界の労働者階級の共通の課題だ。そう考えると、国鉄闘争=国鉄1047名解雇撤回闘争の持つ歴史的国際的意義もはっきりしてくる。
新自由主義にストライキで対決し、今も闘いを継続している動労千葉の闘い=国鉄闘争=国鉄1047名解雇撤回闘争=民営化・外注化阻止、非正規職撤廃の闘いは、全世界の新自由主義と闘う労働者階級の結集軸となる闘いであり、国鉄闘争は国際連帯闘争そのものだ。新自由主義の時代では、労働組合をめぐる攻防が一切を決める。新自由主義と対決して勝利する道は、労働者が労働組合の旗の下に団結して闘うことだ。
職場生産点から国鉄1047名解雇撤回闘争を闘おう。民営化・外注化と非正規職化と闘う労働組合を職場生産点からの闘いでつくり出していこう! 動労千葉の物販闘争をさらに強化していこう。さらに、物販闘争から「動労千葉を支援する会」の結成と、会員拡大に挑戦していこう。「動労千葉を支援する会」を職場で拡大し、労働組合を闘う労働者の手に取り戻していこう。
動労千葉が呼びかける「動労千葉・鉄建公団訴訟『解雇撤回・JR復帰』の高裁判決を求める署名運動」を当面する具体的方針として全力で取り組んでいこう。
(写真 組織拡大を誓った国鉄闘争全国運動・沖縄の第3回総会【3月17日 那覇】)
第2章
U 在本土沖縄出身労働者の挑戦――国際連帯の力で基地撤去を
沖縄出身労働者が本土へ大量に流入し始めるのは、歴史的には1920年代に入ってからである。それ以後、日帝の沖縄政策は都市部基幹産業への「労働力供給」地域として、国内の「賃金上昇抑制」地域として安価な賃金で雇える(「ソテツ地獄=飢餓地獄」として沖縄現地では生きられない現実があった)沖縄出身労働者を本土企業は採用していく。
しかも、日帝の沖縄政策は戦前戦後一貫して変わることがなかった。特に戦後、日帝は天皇メッセージで沖縄を米帝に売り渡し、米帝占領下の沖縄を日米安保条約締結後に米軍支配下におくことで沖縄を「侵略基地の島」に変貌(へんぼう)させ、日帝は帝国主義として延命したのである。
米帝は「銃剣とブルドーザー」で住民から土地を強奪し「侵略基地」を拡大してきた。また、日米帝は米軍支配下の傀儡政府=琉球政府に製造業の育成を「禁止」し、農作物の一部を除きあらゆる製品を「輸入」に依拠させ、あらゆる基幹産業が基地のためという、基地依存型社会をつくった。そこでは沖縄労働者は基地で働くか、本土で働くか以外に選択肢はなかったのである。
そうして戦前からの在本土沖縄出身定住者、戦後の米軍支配下の沖縄では職がなく、パスポートを持って本土に流出した者が在本土沖縄出身労働者を形成してきた。本土における沖縄出身労働者は始めから「季節工・臨時工・非正規」であった。
在本土沖縄出身労働者は過酷な労働環境下にありながら「沖縄現地の現状、職場での不満」を語り、本土において労働者として決起してきた。折からの「復帰闘争」では戦前からの闘士で沖縄民権の会の故古波津英興氏、そして川崎県人会青年部の座覇光子氏らとともに70年安保・沖縄闘争に決起し、職場・学園で闘いぬく。
今回は70年安保・沖縄闘争での沖闘委・沖青委の闘いの総括は割愛するが、ここから在本土沖縄出身労働者の、「沖縄奪還、安保粉砕・日帝打倒」の闘いが開始されたのである。
(写真 沖縄民権の会の故古波津英興氏。川崎の自宅で謝花昇の肖像とともに)
(写真 「沖縄返還協定」批准阻止を掲げて闘われた渋谷暴動闘争【1971年11月14日)=三留理男撮影)
在本土沖縄出身労働者の闘い
在本土沖縄出身労働者は、沖縄現地と一体となって70年安保・沖縄闘争の爆発を「沖縄奪還、安保粉砕・日帝打倒」の旗の下でその一翼を担いぬいた。その活動家のほとんどが民間産業労働者で非正規職も多数いた。
そして今日、闘う3労組の11月全国労働者総決起集会における沖縄行動団の登場は、在本土沖縄出身労働者の本土での労働者としての決起を促し、在本土沖縄出身労働者に労働組合での闘いの重要性を認識させる契機になっていく。10年8月の合同・一般労働組合結成により「派遣法撤廃」闘争から青年非正規職労働者の決起が陸続と起こり、在本土沖縄出身労働者も決起を始めていった。
もうひとつの契機は、革共同が労働運動路線の確立の渦中で血債主義、糾弾主義と決別し、綱領草案で「一切のかぎは、資本の支配のもとで徹底した分断と競争にさらされている労働者が、この分断を打ち破って階級としてひとつに団結して立ち上がることにある。この団結の発展の中に、奪われてきた人間本来の共同性が生き生きとよみがえってくる。これこそが労働者階級のもつ本当の力である。社会を変革する真の力はここにある」(革共同綱領草案第五項)と提起し、これまでの沖縄の現状(沖縄差別)が日帝・資本による「沖縄―本土労働者の分断」の結果にあり、血債主義、糾弾主義はこの分断を容認する日和見主義であることを示したことにある。
特に在本土沖縄出身労働者は本土の地に生活の基盤がある。自らの地(本土)で労働者の仲間を増やし、団結をつくっていく闘いが在本土沖縄出身労働者の使命である。それを沖縄民権の会の座覇光子氏は「私の故郷は世界の労働者階級の中にある」と喝破している。
また、「沖縄―本土をむすぶ団結」が71年11月渋谷暴動闘争で70年安保・沖縄闘争を最先頭で闘った星野文昭同志を生み出した。無実である星野同志は無期懲役で不当にも獄中38年を「沖縄―本土をむすぶ団結の証(あかし」)」として闘っている。星野同志の無実を示す「色・声・光」で全証拠開示をかちとろう。
沖縄出身労働者の本土での労働運動への決起はほとんどが非正規職で「生きさせろ」的決起である。87年の中曽根による国鉄分割・民営化は労働者・労働組合の団結を破壊し、日帝による新自由主義攻撃は青年労働者を「本土の沖縄並み雇用化」にたたき込んだ。日帝の全矛盾を抱え苦闘する青年労働者、沖縄出身労働者の組織化も「外注化・非正規職撤廃」闘争の中から生まれる。沖縄出身労働者を、闘う合同労組に組織しよう。
新自由主義との闘いは国鉄を先頭にした全職場での闘いである。国家ぐるみの不当労働行為は、すべての職場生産点で凶暴化し、全矛盾が全職場で渦巻いている。しかし、日帝はいまだ労働者階級を屈服させきれていない。外注化・非正規職化が世の中に蔓延し一見「当たり前」のように見えるが、これと激突して現実をぶち破っていく闘いが動労千葉・動労水戸を先頭にしてつくり出されているのである。
「闘う労働組合を甦(よみがえ)らせ」「資本と非和解・非妥協」で決起しよう。資本による徹底した雇用破壊と安全破壊の攻撃は、労働者を殺し、労働者の分断と団結破壊・労働組合解体を図る攻撃である。これと闘う階級決戦攻防で勝負をつけるのが国鉄決戦なのである。
10・1JR外注化阻止決戦を闘い抜き、全面外注化粉砕の第2ラウンドに突入した闘いは、階級的労働運動の再生か根絶かをかけた階級決戦だ。全産別・全職場で「外注化阻止、非正規職撤廃」で決起しよう。
(写真 無実の星野文昭同志)
(写真 全国労働者総決起集会で決意表明する沖縄行動団【2012年11月4日 東京・日比谷野音】)
基地撤去、外注化・非正規職撤廃を掲げ5・15沖縄闘争に決起を
▼新たな基地建設を絶対許すな!
戦後68年間、沖縄現地で永続的に闘われてきた「米軍基地撤去」の闘いの本質は「米帝・日帝」支配体制を打倒する闘いである。特に復帰後の「米軍基地撤去」の闘いは日帝支配の根幹を揺るがす闘いとしてあり、今もその攻防が続いている。
「抗議や陳情に終始し、大衆デモもその補助的意義しか与えられず、結局は『主席』や『首相』など他人まかせになってしまう復帰協のそうした限界を突破し、人民自身の実力闘争で帝国主義を打倒しようとする反戦派の思想と行動が沖縄にももたらされた。(中略)人間として生まれながら、資本主義社会の中で搾取され抑圧されて、ついには武器をもって殺し合いまでさせられる労働者階級としてのわれわれは、もはやそのような自己のあり方に耐え忍んでいることはできない。人間の真の自由・真の平等、世界の真の平和のために、抑圧の根源・戦争の根源である帝国主義(国家権力)を、われわれ自身の実力闘争で打倒していかなければならない。これがわれわれの思想の根本である」(『沖縄反戦ニュース5号』)。この沖縄現地からの普遍的問いかけに答え続けなければならない。
97年から続く辺野古新基地建設阻止の闘いは日米帝の思惑を吹っ飛ばして辺野古新基地建設そのものを粉砕し続けている。そこに沖縄―本土の労働者階級の勝利性がある。新たな基地建設を絶対に許してはならない。民主党そして自民党と政権が代わろうと、沖縄労働者階級の基地撤去の闘いは揺れることなく日帝を攻め続けているのだ。
▼基地問題を解決できない日米帝国主義
3・11大震災・原発事故直後に、米帝は米韓軍事演習を変更し、三陸沖に空母ロナルド・レーガンを始めとして艦艇20隻、航空機160機、2万人もの米兵を投じた「トモダチ作戦」を展開した。米軍は被災した仙台空港にパラシュート部隊を降下させて滑走路を修復し、大規模な空輸作戦を行い、「住民の安全」を確保するという名目で日米軍事演習を強行してきた。
米軍は自衛隊との日米調整所を設置し、自衛隊もまた統合任務部隊の一元的指揮のもとに陸海空10万人体制をつくり、「住人の安全」を掲げ、労働者階級に対して警察権力と一体で治安弾圧を強行した。
米帝は「トモダチ作戦」を事実上の集団的自衛権の行使として強行すると同時に、大恐慌情勢における日帝独自のアジア勢力圏化を阻止し、米帝の日米安保体制そのものを対中侵略体制下に組み敷く攻撃として強行してきたのである。
しかし、米帝は三陸沖から空母ロナルド・レーガンを早々と逃亡させ、「トモダチ作戦」の戦費は日帝に請求するなど、米帝は独自で軍事演習さえも行えない実態をさらけ出し、「トモダチ作戦」は米兵に被曝を強制させたが、被曝米兵が東電賠償裁判を行う反撃も起こっている。
何よりも東北労働者の「復興特区を許すな」「原発を廃炉に」の闘いは、闘う労働組合を甦らせ、大震災・原発事故が軍事問題―体制打倒の闘いであることを示した。
米帝は、アーミテージ・ナイレポートにおいて、原発事故を契機に最弱の環としての日帝を恫喝し、さらなる従属を強制し、屈服させることを公言してきた。
しかし、帝国主義どもは原発事故を止められないだけではなく、原発事故が人類の破滅に向かうかもしれない現実さえも資本主義の延命のために利用しようとしているのだ。反原発闘争は体制打倒闘争以外のあいまいさは許されない闘いである。ここに沖縄と福島を結ぶ闘いがある。
アーミテージ・ナイレポートにおける沖縄に関する「普天間」という項目は極めて短いものである。「日本における米国軍の存在は、共同関係というにはほど遠かった。同盟は長年にわたり沖縄の米軍基地再編についてあまりにも高い注意を払ってきた。その結果として、三次的な(優先度の低い)問題である普天間の海兵隊飛行場は今後のための最適な軍編成計画に投資できたであろう時間と政治資産を吸収してしまった。過去の再編から生じる問題はそれがどのようなものであれ、我々がもししっかりと未来に照準を合わせればより容易に解決できるものであろう」としている。
この短い項目に日米帝が基地問題を解決できなくてデットロックに乗り上げているのが読み取れる。帝国主義どもには闘う労働者階級の決起が「見えない」のである。特に沖縄現地で米軍占領下から「反基地闘争」を担う沖縄労働者階級の存在を強制的・暴力的に粉砕しろと強要しているのである。さらに基地内で今日起こっていることをよく見れば基地労働者も兵士も「外注化・非正規職」にたたき込んで、さらに基地に依拠する状況をつくり出すと公言しているのである。
沖縄現地・米軍基地を抱える都道府県で米兵の些細(ささい)な「事件・事故」であっても日米安保への怒りが蔓延している。米軍兵士の「風紀の乱れ」はベトナム戦争当時を再現しているかのようで、いつ「コザ暴動」が起きてもおかしくない状況にまでなっている。「風紀の乱れ」は、裏を返せば米帝・米軍の統制が兵士に効かなくなってきていることの現れだ。ここから兵士の決起も始まるのである。
特に沖縄基地労働者の「生きさせろ」のストライキ決起は「労働者は死んではならない。死すべきは基地だ」を突きつけている。基地労働者の「外注化・非正規職撤廃」闘争と連帯して闘うことが重要である。
▼国際連帯の力で基地撤去をかちとろう!
昨年11・4全国労働者総決起集会が開催された当日、「止めるぞ! オスプレイの沖縄配備/許すな! 低空飛行訓練11・4全国集会(芝公園)」が対抗的に開催された。主催者の思惑は、労働者・労働組合の怒りを抑え、民主党政権にオスプレイ配備はやめてくれと懇願するものでしかなかった。
また、沖縄県全41市町村長を始め代表団参加による1・27「オスプレイ配備撤回! 普天間基地の閉鎖・返還! 県内移設断念! 東京集会(日比谷野音)」も同様に政権交代した安倍政権に懇願するものでしかなかった。こんなことを何度繰り返してきたことか。これは「ささやかな沖縄の願い」さえも沖縄現地では実現できないということなのだ。
特に1・27集会は、41全市町村長・議員らが大挙参加したことに「なんらかの意義」があるのではない。住民団体・労働組合主導の11・4集会から行政主導の1・27集会としたことは「基地撤去」を労働者の決起でかちとるのではなく、「行政問題」として歪曲し、取引の材料として「基地容認」を実現するための行動でしかないのだ。
3・11福島原発事故2周年現地集会をめぐる攻防で、福島大学の清水修二は「福島復興運動を沖縄のように全市町村ぐるみの闘いにできないものか」と発言した。この発言に「原発推進・体制擁護」のあからさまな意志が読み取れる。沖縄市町村会の思惑が見透かされているのだ。「島ぐるみ」「党派を超えて」は政権・体制打倒を労働者に言わせない「口実」でしかないのだ。
また、沖縄現地と本土の沖縄出身者の「基地を今すぐ本土に持って行け」という「潮流」は、基地を必要としているのは資本家であって労働者ではないことを捨て去り、沖縄の怒りを「本土―沖縄の対立」に歪曲しているだけで糾弾主義そのものだ。
民主党・鳩山の「県外・国外移転」発言に乗っかかり民主党政権を支持することで、基地問題を「解決」できると主張し、それが民主党政権に反故にされると日帝にその発言の実施を迫る「潮流」もあるが、それらはみな、米帝・日帝打倒闘争からの逃亡、「日米安保容認=基地容認」でしかないのだ。ましてや「国外」など論外だ。
「基地はどこにもいらない」「死すべきは基地だ」の沖縄労働者の声は、沖縄の米軍基地撤去の闘いを米帝への反基地闘争として世界の労働者階級の前に示し、国際連帯・団結の力として輝きを増しているのだ。本土における「基地撤去」の闘いを、労働者階級の日帝打倒の「決起の場」として取り戻さなければならない。
(写真 3・11から2周年の反原発福島総行動で「基地撤去」の横断幕を掲げてデモ行進【3月11日 福島】)
▼国際連帯と労働者の団結の力で外注化阻止、非正規職 撤廃を闘いとろう!
沖縄全市町村において「行政改革」「民間力活用」「雇用の拡大」という国の「行政の外注化・非正規職化」政策を積極的に推進しているのは沖縄全市町村長である。「基地撤去、外注化・民営化・非正規職化賛成」というスローガンでは、資本主義のもとで基地撤去が可能であるかのような幻想をふりまき、「沖縄振興策」に依拠した現実しか生み出さないのである。それは沖縄現地の青年労働者が「生きさせろ」「非正規職撤廃」を掲げ、合同労組に加盟して決起したことで既に破綻しているのだ。
今や、資本主義体制は労働者を、特に青年労働者を「生きさせる」こともできない状況におとしめている。沖縄出身労働者も例外ではない。特に「外注化・非正規職化」は基地職場においても進行している。基地職場では、非正規職化に「これでは生きられない」という怒りの声があふれている。「安保の内実」として基地を動かしているのは労働者なのだ。だから侵略を止めるのも労働者なのである。基地労働者の決起・団結の組織化は基地労働者のみの闘いではない。「外注化阻止、非正規職撤廃」の闘いで世界の労働者階級と連帯し、自らの職場で仲間を組織するところから始まるのだ。
すべての在本土沖縄出身労働者・青年労働者は、5・15沖縄現地に結集しよう。「基地撤去、外注化・非正規職撤廃」闘争として闘おう。
(写真 スト総決起集会で決意表明する動労千葉組合員【3月14日 千葉)。ともに外注化阻止、非正規職撤廃へ闘おう!)
第3章
V 東アジアの戦争危機が切迫――オスプレイを即時撤去せよ
オバマの新軍事戦略
世界大恐慌は、世界を大争闘戦の時代へと突入させた。今やすさまじい為替戦争の火蓋が切られた。世界の市場・資源をめぐる激しい争奪戦が始まっている。世界経済のブロック化・分裂化が進んでいる。没落の危機にあえぐ米帝は、延命のために新軍事戦略とTPP(環太平洋経済連携協定)を一つのものとして軍事的外交的に凶暴化を強めている。
米帝オバマの新軍事戦略とは、アフガニスタン・イラク侵略戦争での基本的敗北の上に、アジア・太平洋地域を「最重視」するとし、中国スターリン主義への対峙・対決を貫く戦略に舵を切った。米帝の没落と財政的危機のすさまじさは、米帝がさほど軍事力を行使できないということを意味しない。逆に危機であればあるほど凶暴化する。米帝こそ世界戦争の最大の要因である。
米帝はアジア・太平洋地域の支配と勢力圏化を狙い、日米安保やTPP問題などで対日争闘戦を徹底的に貫きつつ、アジアから最大限の経済的利益を引き出し、最終的には対北朝鮮の侵略戦争をも含め、残存スターリン主義・中国の体制変更=転覆をやろうとしているのだ。
(写真 米軍普天間飛行場から離陸するMV22オスプレイ【2012年10月5日】)
(図 沖縄の米軍基地とMV22オスプレイ飛行状況)
軍事衝突・核実験・軍事演習・相互威嚇
こうした米帝の新軍事戦略の下で、1月下旬に中国軍の日帝・自衛隊に対するレーダー照射事件が起き、2月12日に北朝鮮が3回目の核実験を強行した。
日帝は、米新軍事戦略と日米同盟を支えに昨年9月11日に釣魚台の国有化を行い、新たな領土略奪に踏み切った。それが中国スターリン主義の猛反発を引き起こし、釣魚台周辺の海域では自衛隊艦船と中国艦船が対峙し、上空では米軍機と自衛隊機、中国機が飛び交う一触即発の戦争状態が生まれた。そこに中国軍の自衛隊艦船とヘリコプターに対するレーダー照射事件が起きた。
戦争寸前の危機に米帝は危機感を募らせ日中双方の自制を促したが、それは米帝のコントロールを外れる形での戦争はさせないという意味である。
3月7日、国連安保理は北朝鮮核実験に対する制裁決議を賛成15、反対0で可決し、中国も賛成した。
米韓両軍は3月1日から約21万人を動員する合同機動演習「フォール・イーグル」(4月まで)を実施し、さらに3月11日から合同軍事演習「キー・リゾルブ」を開始した。韓国軍は約1万人、米軍約3500人で21日まで行った。北朝鮮核実験に対する軍事重圧をかけた。
これに対して北朝鮮は3月5日、「3月11日から朝鮮戦争休戦協定を白紙化する」という最高司令部報道官声明を出し、8日には不可侵協定破棄と板門店(パンムジョム)の活動中断を発表し、11日を挑発Dデーと宣言した。14日には大延秤島(テヨンビョンド)などで実弾大演習を行った。さらに17日には、「わが軍は、アメリカが核戦争の導火線に火をつけるなら、侵略者たちの本拠地に対して核兵器で先制攻撃する権利を行使することになる。日本もけっして例外ではない」と脅しをかけた。
中国は世界大恐慌と大争闘戦時代への突入の中で、バブルが崩壊し8%成長を続けることができず、体制的危機を深めている。習近平体制に移行する中で、高まる労働者階級のストライキ、悲惨な環境悪化と人民の反乱、スターリン主義官僚の腐敗・汚職・弾圧への闘い、少数民族への弾圧に対する反抗など労働者人民の総反乱情勢が起きている。その中で、中国軍のレーダー照射事件があり、日帝は体制的危機を排外主義と戦争で乗り切ろうとしている。
日帝・安倍は、改憲攻撃を露骨に出し始めている。3月14日、安倍政権で初めて「衆院憲法審査会」が「国防軍の明記」などの討論を開始している。しかし安倍政権が拠って立つ日帝の体制的危機は絶望的であり、労働者人民の巨大な怒りが渦巻いている。
米軍は3月6日、普天間基地のオスプレイを岩国基地に派遣し本土・四国での初低空訓練(夜間)を開始した。
3月15日、ヘーゲル米国防長官は、北朝鮮の弾道ミサイルに対処するため、17年末までに14基の迎撃ミサイルをアラスカ州に配備すると発表した。米軍はすでに30基をアラスカ、カリフォルニアの両州に配備しており、今回の追加配備が実現すれば、計44基が北朝鮮のミサイル攻撃に対峙することになる。
このように日米帝国主義と残存スターリン主義の中国や北朝鮮との間で相互に威嚇的なやり合いが行われている。これは世界大恐慌のさらなる深化、大争闘戦時代の激烈化、つぶし合いの過程で戦争・世界戦争に向かわざるをえない。
国内では、労働者階級に対する階級戦争を全面化している。新自由主義は全世界で民営化・外注化・非正規職化、賃下げ、大失業、そして分断・団結破壊・労組破壊の攻撃を強め、一社会として成立できないほど労働者への攻撃を強めている。全世界で青年労働者を先頭に決起がわき起こり、国際連帯が進んでいる。世界革命の現実的な展望が生まれている。
米歳出の強制削減
東アジアの戦争危機が激化する中にあって、米帝オバマは3月1日、財政支出を強制削減する大統領令に署名した。
強制削減額は、10年間で1兆2千億j(約110兆円)で、このうち国防費は約50
00億j(約46兆円)を占める。国防総省はこれとは別に、2021会計年度(20年10月〜21年9月)終了までに計4878億jの国防費を削減する計画を進めている。
国防費削減によって、米本土を母港とするロナルド・レーガンなど空母4隻の運用の一時停止や航空団の訓練や偵察作戦の停止、空母1隻の中東派遣を延期、最新鋭ステルス戦闘機F35の開発や調達計画への影響などが言われている。
また空母の一時停止などによって空母など艦船の整備に当たる労働者75万人を週に1日、無給で自宅待機させ、職員は4月下旬から9月末までの間、最大22日間の自宅待機にするとしている。在日米軍基地に勤務する日本人など外国人労働者約5万人は対象外とされている。没落米帝の危機と矛盾のすべてを結局のところ労働者階級に押しつけるまさに階級戦争だ。
しかし、財政危機であればあるほど、米帝は絶望的な戦争・世界戦争に向かって進んでいくことをしっかりと見なければならない。現にオバマは北朝鮮の核先制攻撃宣言に対して直ちにアラスカに14基の迎撃ミサイル配備を決定している。
オスプレイ配備の実態
米新軍事戦略の象徴がオスプレイの沖縄配備である。
北朝鮮侵略戦争、対中国の対峙・対決、中国侵略戦争のために米軍沖縄基地は決定的な位置を占めている。だから日米帝は辺野古新基地建設に向かって攻撃を激化させ、オスプレイを沖縄に配備した。 沖縄の労働者人民を始め全国の労働者人民の反対を押し切って昨年10月1日に沖縄に配備されたオスプレイは連日、激しい訓練を行っている。そのために沖縄の労働者人民は、事故の危険と隣り合わせとなり、すさまじい騒音と地デジの受信障害の中での暮らしを強制されている。
オスプレイが米軍普天間基地に配備されてから5カ月、その飛行は沖縄全域に広がった。だがオスプレイの飛行に関する日米合意はまったく順守されていない。
日米合意は、過去に起きた墜落事故がヘリコプターモードや転換モードで頻発したことから、一つは住宅密集地上空の飛行を避ける、二つはヘリモードでの飛行は米軍施設内とすると定めた。
県と市町村の調査によると10月1日から11月30日までの2カ月間で、人口密集地上空での飛行が318件、基地外でのヘリモード飛行が74件、禁止されている深夜飛行(午後10時以降)が3件だ。
宜野湾市周辺で、オスプレイ飛行時の80デシベル以上の騒音が144件、100デシベル以上が3件あった。住民からの騒音被害や「地デジの受信障害」を訴える苦情が絶えない。
オスプレイが普天間基地から伊江島に飛来したのは昨年10月4日だった。それ以来、オスプレイが昼夜問わず、連日のように激しい訓練を実施している。
オスプレイが引き起こす騒音や粉塵(ふんじん)がひどい。すさまじい熱風を引き起こす。低空飛行で巨大なコンクリート・ブロック(約3・175dのコンクリートの塊)を吊り下げて訓練している。演習場にとどまらず、集落の上空を飛び回っている。これは住民の恐怖の的になっている。
住民の通報などをもとにした伊江村の統計がある。1月までの合計は、訓練日数22日、訓練回数は昼間478回、夜間59回、コンクリート・ブロックの吊り下げ訓練は36回、コーラル滑走路(珊瑚礁を踏み固めたもの)への着陸は38回にのぼっている。
(図 米軍が明らかにした低空飛行訓練ルート)
本土の初訓練開始
米軍普天間飛行場に配備されている海兵隊のオスプレイ3機が3月6日、和歌山県から四国上空に設定した「オレンジルート」と呼ばれる経路を使って低空飛行初訓練を6〜8日に実施した。うち2機は、基地周辺や四国上空で夜間飛行訓練を行った。米軍は日中約150b、夜間は約300bの飛行高度を通告した。
低空訓練は、レーダーに捕捉されないことを目的に谷筋を縫うように飛行するため危険性が高い。過去には、高知県の早明浦(さめうら)ダム上流に米空母艦載機が墜落し、乗員2人が死亡する事故なども起きている。夜間訓練は当然ながら危険性は増す。計画される飛行訓練は年間300回以上だ。
夜間低空訓練は、朝鮮侵略戦争の時、北朝鮮のダムやミサイル基地の近くにオスプレイを隠密に飛ばし、破壊工作を目的とした特殊部隊を送り込む作戦にオスプレイを使用するためだ。より高度な低空訓練をするために、東北や北信越の飛行ルートを使い、米軍の神奈川・厚木基地や静岡・キャンプ富士、青森・三沢基地などを前線基地にしようとしている。オスプレイの沖縄配備はもとより本土での訓練も絶対許してはならない。
昨年発表されたアーミテージ・ナイ報告の中に次のような記述がある。
「米空軍と海軍航空部隊は自衛隊と一緒に、民間空港を毎年巡回して訓練を行うべきである。……両軍により多くを体験させ、沖縄の人々に負担共有の意味を与えることができよう」
米帝は全土の沖縄化を狙っている。3・11で米軍が「トモダチ作戦」と称して朝鮮侵略戦争作戦を実行し、沖縄基地を土台にして日本の民間空港や港を思うがままに軍事使用したことの再来を期しているのだ。それは沖縄基地の軽減ではなく、さらなる強化をもたらす。オスプレイの本土訓練はその先駆けだ。
オスプレイに陸自搭乗
陸上自衛隊と米海兵隊は2月13日朝、米カリフォルニア州での日米共同訓練で、離島奪還訓練を行った。
海上の米艦を離艦したオスプレイ4機が、機体を覆い隠すほどの激しい土ぼこりを上げて海岸沿いに着陸。迷彩服姿で小銃を持った陸自隊員約50人がオスプレイから続々と降り立った。この訓練は、明らかに釣魚台が中国に奪還された場合を想定したものだ。陸自は、日本の海兵隊と位置づけられている西部方面隊。安倍は、労働者人民が猛反対しているオスプレイを自衛隊に導入し、米軍と自衛隊が一体の北朝鮮・中国侵略戦争を狙っているのだ。
防衛省は13年度予算案に将来のオスプレイ導入のため、運用実態の調査研究費として800万円を計上している。
タイでコブラゴールド
タイで多国間軍事演習「コブラゴールド」が2月11日から始まり、普天間基地のオスプレイ2機が初めて派遣された。海兵隊によるとオスプレイはタイ南部沿岸部での強襲上陸作戦を想定した訓練などに参加した。沖合に停泊した強襲揚陸艦「ボノム・リシャール」に、2機のオスプレイが次々に着艦した。演習参加国は、アメリカ、タイ、シンガポール、インドネシア、韓国、マレーシアと日本などで米新軍事戦略に基づく中国侵略戦争を想定したものだ。
ボノム・リシャールは、12年、オスプレイが発する高温の排気に耐えられるよう改修を施された、米軍佐世保基地所属の強襲揚陸艦だ。沖縄の海兵隊を戦場に送り込むのが任務だ。
以上のことから昨年10・1オスプレイ配備の強行は、米新軍事戦略の本格的発動であり、新自由主義の中国・北朝鮮への侵略戦争の凶暴かつ絶望的な出撃拠点として、米帝が沖縄を徹底的に活用しようとしていることが明らかになった。
日帝はこの米帝と結託すると同時に、日帝自身の領土略奪のための侵略戦争に踏み出す拠点として沖縄を位置づけ、沖縄全島を一層の軍事監獄的状態にたたき込もうとしている。
それに対して労働者は、「基地の島」沖縄を「国際連帯の島」とするために闘っていく。
(写真 動労千葉の外注化阻止闘争に連帯し、日本大使館前で記者会見する民主労総ソウル本部など【2012年9月27日】)
国際連帯が全世界の労働者階級のスローガン
国際連帯は、既成の体制内労働運動の口先だけの国際連帯を打ち破り、闘う労働組合の国際連帯活動として始まり前進してきた。
03年の米帝のイラク侵略戦争に反対することを契機に、新自由主義の民営化・労組破壊攻撃と闘う日本の動労千葉が呼びかけ、韓国・民主労総ソウル本部、アメリカ・ILWU(国際港湾倉庫労働組合)などの階級的労働運動を闘う戦闘的労働組合が3組合(全日建運輸連帯労組関西地区生コン支部、全国金属機械労組港合同、動労千葉)主催の11月労働者集会に結集することによって始まった。
全世界の労働運動が新自由主義の民営化・労組破壊の攻撃に悩み、どう闘うか苦闘している時に、国鉄分割・民営化攻撃にストライキで反撃して闘い抜いている動労千葉が圧倒的に共感を得たのだ。新自由主義に勝利する闘いを実践を通して示したのだ。
以後、毎年の11月労働者集会は日米韓3国の国際連帯集会として持たれている。
動労千葉は03年以後、韓国に訪問団を派遣し、組合事務所だけでなく、職場や闘争現場で組合員と交流してきた。そして民主労総ソウル本部は、昨年10・1動労千葉の外注化阻止闘争に連帯し、日本大使館前で抗議活動を連日展開した。
11〜12年には、ILWUローカル21が巨大穀物商社の外注化・労組破壊攻撃に対して、巨大な港湾占拠・封鎖闘争を行った。労組破壊に加わる伊藤忠に対し、動労千葉は弾劾闘争を行った。今年3月15日には動労千葉は三井物産本店に抗議活動を行った。これは三井の子会社がILWUをロックアウトしたことに反対する国際連帯活動だ。
国際連帯の波は3・11福島原発事故を契機に、ドイツの反原発運動の軸になっているゴアレーベン核廃棄物処分場反対同盟との連帯に進んだ。さらに在日・滞日外国人と共同闘争が進んでいる。
今年の3・11の2周年闘争はこうして形成されてきた国際連帯の力をまざまざと示した。賛同署名は全世界から450を超えた。怒りのフクシマが国際連帯のフクシマにもなった。さらに3・11はフクシマと連帯する全世界の反原発闘争の国際デーとなった。(PHOTO NEWS参照)
4・28闘争―5・15沖縄闘争を、国際連帯で闘おう。
(写真 三井物産の子会社が米ILWUをロックアウトしたことに抗議し、三井の本店に動労千葉などが抗議行動【3月15日】) ---------------------------------------------------
月刊『国際労働運動』(441号4-1)(2013/05/01)
●翻訳資料
NAFTAより過酷なTPP
2012年8月 ピート・ドラック(ジャーナリスト)
村上和幸 訳
【解説】
この資料は、昨年リークされたTPP合意文書の一部についての解説である。TPP交渉は何年も続けられてきたが、これまで公式に発表された文書はゼロであり、この資料が解説しているリーク文書のみがわれわれが知りうるTPPの中身なのである。
3月15日のTPP(環太平洋経済連携協定)交渉参加の記者会見で安倍は“参加しないと情報が取れない”ことを交渉参加の大きな理由に挙げた。
つまり、TPP交渉は、交渉者以外には漏らすことが厳禁されているのだ。現在の参加9カ国は自国の国民に交渉内容を明らかにしていない。発表はゼロ。すべてが秘密だ。
各国の国民の生活全体に影響がある経済交渉なのに、発表ゼロというのは異様だ。あまりにやましい内容だから徹底的に隠すしかないのだ。
しかし、それだけではない。極度の秘密性は、TPP締結後の経済関係そのものの本質なのだ。
ISD(投資家対国家の紛争解決)条項は、TPPの要である。これによって「投資家」は国家を国際仲裁機関に提訴できる。この国際仲裁機関は、公開原則がある通常の裁判とはまったく異なり、徹底した密室審査で裁定する。裁定の結果が押し付けられるだけだ。しかも、仲裁機関の審査員は企業丸抱えの連中ばかりなのだ。
その裁定結果は、国内法より優先される。長い闘いの歴史の結果を反映している労働、医療、農業、環境などの制度を、「国際条約は国内法に優先する」の論理で丸ごと覆そうというのだ。
TPPは、巨大独占資本によるむき出しの独裁支配をつくり出すクーデターだ。
【〔 〕は訳者による補足】
…………………………………
TPP(環太平洋経済連携協定)は、4年間にわたりオーストラリア、ブルネイ、チリ、ニュージーランド、ペルー、ベトナム、米国の9カ国の間で交渉されてきた。しかし一つとして文書が公表されていない。米議会にさえ内容が開示されていない。われわれが現在知りえたことは、漏洩されてネット上に掲載されたTPP文書の一部――投資ルールに関する文書だけだ。(http://tinyurl.com/tppinvestment)
TPPとは、どんな悪影響が出てもかまわずに多国籍企業が最大限の利益を得るためのものだ。そのために規制緩和推進のロビー活動の域を越えてルールをねじ曲げ、政府の政策に決定的影響を及ぼし、企業・政府間紛争を審査する仲裁機関が支配するものとなるということだ。この企業の目標のために好都合な道が「自由貿易」協定だった。カナダ、メキシコ、米国のNAFTA(北米自由貿易協定)が発効してから20年近くの間、企業は絶え間なく「規制が損害を与えている」として提訴してきたのだ。
例えば米国の宅配企業は、カナダの郵便制度を解体させるためにカナダ政府を提訴した。化学企業は水資源を汚染しているとして自社製品が禁止されたことに対して提訴した。NAFTAの決定的な条項は第12章だ。これは「投資家の権利」を侵害したとして、企業がいかなる規制も政府の政策も提訴できるというものだ。
通常、提訴の結果は企業が勝利の裁決を得るか、あるいは政府が最悪の結果を招かないように企業に有利な条件での和解を申し入れるかだった。多国籍企業が常に勝利したわけではない。例えばカナダは郵便制度を維持することを許された。だがTPPは、「投資家」に格段に有利になる仕組みになっている。多国籍企業にいっそう多くの「権利」を与えているだけではない。「投資家」の定義をいっそう拡張しているのだ。収益を事実上保障するに等しい「権利」を規定する詳細な規則がつくられている。しかし、労働、環境、公衆の健康や安全の規則はまったくない。
NAFTAは非常に過酷なものだ。このNAFTAがスタートラインになる。TPPの異常に一方的なルールは、このNAFTAさえ多くの点で超える。多国籍企業の産業と金融の支配を確保するための新たな土俵づくりだ。TPPには他の諸国も加入できることになっている。しかし、すでに合意した措置に反対することは禁じられている。2カ月前にカナダとメキシコがTPPに加わることを認められた。このことから見ても、TPPがNAFTAを超えることは明らかだ。
アメリカの監視グループであるパブリックシチズンは今夏初め(2012年)、漏洩されたTPP草案の投資家の章の分析を発表し、次のように警鐘を鳴らしている。
「NAFTAの投資家対国家紛争処理条項に基づき、有害廃棄物の投棄許可、材木伐採の規則、有害物質の禁止などをめぐって政府から投資家に支払われた金額は3億50
00万j以上に達する。現在、国内の環境、健康、運輸政策について『投資家対国家』の通商協定提訴の係争中の事案も130億jを超える。そして、提訴の恐れがあるからという理由だけで、大切な国民の利益を守る諸政策が何度も放棄されてきた。これが、本来ならありえない損害を国民にもたらした。にもかかわらず、TPP参加国は外国投資家に並外れた特権をさらに付加する義務に合意している。他方、TPP参加国は、健康、労働、環境に対する義務を投資家に負わせることには合意していない」
パブリックシチズンの報告によれば、規制を覆すことを目的とした国際仲裁機関の使用が過去10年間で著しく増えている。
「米国の自由貿易協定(FTA)と2国間投資協定(BIT)のみでも、7億190
0万jを超える賠償金が支払われた。うち70%が天然資源政策と環境政策に異議を申し立てるもので、従来の収用関連の提訴ではない。タバコ関連の諸企業はフィリップモリス社のオーストラリア政府に対する提訴を始めとして、この制度を利用してタバコ規制政策と争っている。漏洩された文言が大きく変更されないかぎり、TPPが締結されれば投資家対国家紛争処理によって国民の利益に関わる政策への攻撃が大幅に増大し、政府は新たな多額の財政負担に直面することになるであろう」
国際仲裁機関の使用は、2国間または多国間貿易協定の特徴であるが、見逃されてきたことが多かった。
TPPが締結されれば、国際投資紛争解決センター(ICSID)の使用が義務化されるであろう。ICSIDという仲裁機関は世界銀行の一機関である。
ICSIDの仲裁廷で行われるそれぞれの仲裁では登録名簿の中から選出された3人の審査員が裁決する。
この審査員たちは、ICSIDに加入した全世界のほとんどの国の政府によって指名される。
アメリカは8人の審査員を指名している。全員、大企業のもとで働いてきた経歴を持っている弁護士で、うち6人は現在、世界で最も強力な大企業を顧客とするいくつかの法律事務所のパートナー〔法律事務所所属の弁護士の最高ランク。共同経営者〕だ。1人は元企業弁護士の教授であり、あと1人は、企業に有利な法的な貿易ルールをつくることを目的とした財界グループのロビイストである。
アメリカが指名した8人の審査員のうち5人は歴代の共和党政権の顧問弁護士だった。そして8人のうち数人は、国際的仲裁機関で企業の代理人を務めることを専門にしている。
以下がアメリカ側の審査員である。彼らが、政府の規制に反対する企業の主張の内容を判定するというわけだ。
フレッド・フィーディング――共和党政権と企業の法律事務所を出たり入ったりしている弁護士である。彼の依頼人の中には民間軍事会社ブラックウォーター社がある。
ウィリアム・パーク――現在は法科大学院の教授で、これまで三つの企業法律事務所で弁護士業務を行ってきた。また、多くの企業仲裁機関の仲裁人をしてきた。
ダニエル・プライス――国際仲裁において企業の代理人を務める企業弁護士であり、ジョージ・W・ブッシュの元経済顧問である。
ジョン・M・タウンセンド――製薬会社の代理人を務める企業弁護士で、各国政府の規制に反対する内容の仲裁を申請する企業代理人を専門としている。また、企業のロビー活動グループの役員でもある。
J・カレブ・ボッグス3世――金融機関の代理人を専門とする企業弁護士である。そして規制機関と対峙する他の依頼人をも代表している。また上院議員の補佐として銀行の規制緩和の法律の作成にも参加した。
ウィリアム・A・ブルク――アメリカとその他の国の政府との争いで企業と企業役員の代理人を務めることに専門化した弁護士である。ジョージ・W・ブッシュの前法律顧問である。
ロナルド・A・キャス――国際通商取引法を企業に有利にもっていこうとしているロビー活動グループの議長である。二つの共和党政権の通商代表であった。
エメット・フラッド―― 政府規制に反対して争っている企業の代理人を務める企業弁護士であり、ジョージ・W・ブッシュの前顧問弁護士である。これまでの依頼人には、コウク兄弟〔石油産業関連会社などのオーナーで、ティーパーティーなど新自由主義・極右政治運動のパトロンとして有名〕などがいる。
審査員たちの裁定によってつくられる規則は、各国政府の法律に優先するものとなる。
例えばTPP12条の7には政府活動に対する多くの禁止事項が羅列されている。それに基づいて、資本規制〔資本の海外移転への課税・禁止、資本流入へ課税・禁止など〕を定めた法律(たとえ恐慌の緩和のためのものでも)、製品の国産化率を定める規則あるいはあらゆる国内産業に対するいかなる保護措置も、すべて違法とされる。
TPP12条の7は、このように規定したうえで、環境的に許される除外および他の諸措置を一般的除外項目として定めている。これらの諸措置とは、「人間、動物、植物の保護若しくは健康保護の必要性又は生物若しくは無生物の天然資源の保護への関連を有し、本協定と矛盾しない」諸措置とされている。
しかし、こうした除外は無意味だ。除外規定は、「本協定と矛盾しないもの」でなければならないと限定されている。
TPP12条の6のカギになる文言は「各加盟国は慣習的国際法に従い、秘密の投資の取り扱い方法において合致して行動しなければならない」だ。
「加盟国」とは各国政府のことだ。「慣習的国際法」とはすでにNAFTAで決められたものおよびICSIDの裁決、そしてNAFTAや他の通商協定のもとでの紛争に関する同様の仲裁機関によってなされた裁決のことである。
これらの裁決は、原告としてある企業側の申立人に有利なように著しく歪められている。
ベネズエラは最近、南アメリカ大陸で3番目にICSIDから脱退した。同国の外務大臣は、ICSIDは「創立以来234の争いを扱い、そのうち232回は多国籍企業の利益に沿う裁定を行っている」と語っている。
「政策研究所」と「食物と水の監視」が出した07年の報告書、『機関投資家の支配への異議申し立て』は、多国籍企業は70%の案件で勝訴していると言っている。
これらの仲裁は秘密裏に実施されていて、今まで公衆がその場に入れたのは、二つの仲裁だけだった。
世銀は全世界の国々に緊縮政策を強制する主な諸機関の一つである。世銀は開発途上国への融資の際、常に国営企業・公共事業の急速な民営化を求める条件を付けている。触手を伸ばしている企業は、そうした政府の生殺与奪の権を世銀が握っているのを知っているから、投げ売り価格で国営企業を入手できるのだ。
買い手企業が、予想より利益が上がらなかったと断定したときには、ICSIDに損害賠償を申し立てることができる。そのICSIDがまさしく当の世銀に支配されているのである。
一つの悪名高い例は、世銀がボリビアのコチャバンバという都市の水道の民営化を強制した事態だ。
その水道民営化の入札に応札したのはベクテル1社だけだった。その過程は秘密だった。ベクテル社は、コチャバンバの水道事業を入手すると、水道料金を市民の平均世帯年収の合計額の4分の1に等しい額にした。しかも、雨水を貯めて使うことを禁止する契約条項を強制したのだ。
地元の大規模な闘いは世界的支援を受け、ベクテルをコチャバンバからの撤退に追い込んだ。これに対しベクテルはボリビアに損害賠償および利益損失計5千万jを求めて提訴した。ベクテルが実際に投資した額は100万j以下だとみられているにもかかわらず、こんな請求をしたのだ。しかもベクテルは、ボリビアのGDPの6倍にものぼる利益を上げている会社なのだ。
ベクテルは、この支払いを受けることなく和解した。だがそれは、大規模な国際的圧力があったからこそ、そしてボリビアの人々が、繰り返しの銃撃にもかかわらず、大勢で抵抗を続けたからこそありえたことなのだ。
このケースは、非常に例外的な形で終了している。
ほとんどの場合、開発途上国がICSIDの対象とされているが、規制の撤廃は、他のところでも起こりうる。
たとえば、カナダがあるガソリン添加剤の使用を禁止した件について、米国に本社を置く化学会社がNAFTAの諸条項に基づいて提訴した。その添加剤は、以前から米国では有害物質として禁止されていたにもかかわらず。
ICSIDの裁定によりカナダはその禁止を破棄せざるを得なくなり、数百万jを「損失補填」として払い、謝罪を行った。
NAFTAの問題点の中で、TPPで再現されているものには、次のことがある。
▼各国政府が、仲裁費用を払うだけでなく勝訴・敗訴にかかわらず弁護士費用を払う。
▼徴税や規制が「間接的収用」とされ、その補償が義務化される(米国法に基づいて「収用」と規定されるためには物質的な財産の没収でなければならないが、協定では資産価値の減少だけで、収用と規定される)。
▼過去の裁定はさらなる投資家の「権利」の拡大を導く前例になるのであって、TPPのもとで要求される「投資家の権利の基準が拡大し続ける」ものとして読み取ることができる。
▼労働者の権利についての言及は存在しない。環境や健康や安全の基準についての言及もない。
05年7月、ロンドン国際仲裁裁判所の一つの仲裁廷は米―エクアドル2国間投資協定に基づく審問を行い、営業条件のいかなる変更も「投資家の権利」の侵害にあたるとオキシデンタル・ペトロリウム社の一部門に有利になる裁定をした。
このような裁定が仲裁例として受け入れられるなら、規制のいかなる試みも違法になる可能性がある。
NAFTAを超えるTPPの問題点には次のようなものがある。
▼誰をもって、何をもって「投資家」と規定するかの基準の拡大――許認可を申請している者、または事業を開始するために資金や資本を「導く」者に賠償請求する適格性があると拡大する。何をもってそうした許認可申請者、資金・資本を「導く」者とするのかの範囲は限定されない。
▼根拠薄弱な請求を排除するいかなる文言もない。
▼アメリカは国債をここでいう投資の範囲に入れようとしている。これが成り立つなら、投機者には格安の値段で購入した国債の額面価格を取り戻す権利があることになる。
▼新たな知的所有権法の要求。現在は犯罪とはされていない多くの活動が、犯罪にされる。
▼インターネットに対する企業の支配を非常に厳しくし、接続サービス会社に対して個人情報の引き渡しを強制する。
これまで述べてきたものとは別に漏洩されたTPPの一部に、医薬品を扱ったものがある。その表紙ページには興味を引く一文がある。「機密扱いの解除について。TPP協定の発効から4年後、又は協定が発効しなかった場合、交渉終了から4年後」
何を隠そうとしているのか。製薬会社の新たな独占権を隠し、米国に本社を置く製薬会社が転換したいと狙っている政策――米国よりはるかに安価な薬の販売を強制しているオーストラリアやニュージーランドなどの諸国の政策――を覆す力を隠そうとしているのだ。
「貿易に関する市民運動」の報告書が、次のように述べていることも付け加えておこう。
「このアメリカの知的所有権の提案は、ブッシュ政権がほんの4年前にペルーと締結した貿易協定の中でなされた最初の改革を後退させる。それは製薬会社の独占を長期化し、特許乱用に対する保護条項を削除し、臨床試験データに対するさらなる排他的支配を許し、巨大な製薬会社の独占的権益にとって、あらゆる段階で有利に働く」
「国境なき医師団」は次のように報告している。
「オバマ政権は、開発途上国の値頃な医療の利用を保障しようという以前の取り組みに背を向けている。開発途上国との将来の貿易協定において繰り返し適用される危険な新基準を設定している。オバマ政権は『医療利用への入り口』なるものを、医療の利用を増大させる仕組みとして大げさに宣伝しているが、実際は値頃な医療へのアクセスを混乱させようとしているのだ。ブランド薬品をいかに早く市場に投入するか、そして製薬会社の独占権をいっそう長期化し、低価格化競争を妨げ、医療を必要とする何百万の人々を医薬品利用から締め出すものだ。これが『医療利用への入り口』のすべてだ」
ホワイトハウスは次のように主張する。「オバマ政権は議会と連携して取り組んでおり、全国の利害関係者と密接に協議している。米国の企業や労働者が今日直面し、あるいは将来直面しうる問題をTPPの問題として取り組むためである」と。
これは明らかに真実ではない。上院議員も下院議員も情報開示を要求している。いかなる合意文書も、TPPのホームページに公開されていない。
小さなTPP参加国のGDPよりはるかに巨額の収入を動かしている世界最大の諸企業の幹部とロビイストは、いっそう多くの権限と支配力を得るために政府高官と秘密裏に会合している。
企業が自分の利益のために作った規則は、市場を操作する投資・金融業者と密接につながっている。彼らは自分たちが政府にやらせている緊縮政策で利益を上げているのだ。
製造業者は、自分たちの労働者から剰余価値を搾り取って利潤にし、投資・金融業者は、このプロセスを強化するためのムチを提供し、また彼らの懐に利益を流し込ませる投機証券をつくり出すのだ。
存在しうるのは、企業の独裁か、それとも民主主義かだ。両方が共存することはできない。
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月刊『国際労働運動』(441号5-1)(2013/05/01)
■Photo News
全世界で3・11から2周年の反原発闘争
(写真@)
(写真A)
3・11福島原発事故2周年を迎え、福島と連帯して全世界で反原発の闘いが行われた。
最大の反原発デモは、現在6基の原子炉が稼働中で、新たに2基の原子炉が建設中である台湾で行われた。3月9日、台湾の首都台北では、台湾史上最大の規模となる10万人を超える反原発デモが闘われた(写真@A)。デモは台中、高雄、台東でも行われ、4カ所でデモ参加者は20万人に上った。台湾の労働者人民は福島と連帯して、全原発の停止を要求する歴史的闘いを開始した。
(写真B)
(写真C)
フランスでは、3月9日、パリで反原発・反核デモが行われ、2万人が参加した。国民議会、経済省、フランス電力会社(EDF)、アレバ、BNPパリバ銀行など18の建物を「フクシマを繰り返すな」と叫びながら、「人間の鎖」で包囲した(写真BC)。福島の原発事故から2年を記念して被災者への連帯感を示すとともに、原発と核兵器廃止、とくに築30年以上の原発の閉鎖を求めた。
(写真D)
ドイツでは、3月9日、北部のグローンデ原発の周辺各地でデモが行われた。主催者によると、計2万人が参加(写真D)。同日、ウラン濃縮工場のあるグロナウでも福島と連帯する反原発集会が行われた。この集会にはNAZEN長崎・福島、8・6ヒロシマ大行動、婦人民主クラブから連帯声明が送られた。3月11日には、核廃棄物処理場が建設されようとしているゴアレーベンで、福島での3・11反原発集会・デモと連帯して現地集会が行われた。
(写真E)
イギリスでも、3月10日、ロンドンの日本大使館前で反原発集会が行われた(写真E)。
(写真F)
このほか、トルコでも原発建設予定地メルスィンで1000人の反原発人間の鎖行動が行われた(写真F)。モンゴルでも使用済み核燃料受け入れに反対するデモが行われた。
(写真G)
インドでも南部タルミナド州で3月11日、稼働が予定されているクダンクラム原発に反対する周辺の漁民ら数百人が海上デモを行った(写真G)。
(写真@A)(写真BC)(写真E)(写真F)(写真G)
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月刊『国際労働運動』(441号6-1)(2013/05/01)
■世界経済の焦点
パッケージ型インフラ輸出
大恐慌下における絶望的なアジア勢力圏化
安倍は首相になって最初の外交先として今年1月、東南アジアを歴訪し、鉄道や原発を売り込んだ。3月には「経済協力」「インフラ輸出」「資源獲得」の3分野を統合的に議論する閣僚会議として「経協インフラ戦略会議」を設置し、「アジアの成長を取り込む」と声高に叫んだ。
民主党政権下の2010年『新成長戦略』を転換点に国家戦略として据えられたパッケージ型インフラ輸出は、安倍政権の登場でますます戦略的柱として押し上がっている。脱落日帝の生き残りをかけた侵略政策だ。労働者階級の国際的団結で粉砕しよう。
□官民一体で「商圏の確保」
パッケージ型インフラ輸出とは、「インフラプロジェクトの事業権またはその一部を確保することにより、その事業運営に必要な設備・技術の導入につき、広く商圏(裁量と責任)を確保するビジネスモデル」「複数の関連プロジェクトにおいて広く商圏を確保・推進する」「インフラ商談の入札段階等で、……幅広い提案をパッケージで行う」(『内閣府パッケージ型インフラ海外展開推進実務担当者会議中間とりまとめ』、10年6月)というものである。鉄道で言えば、これまでやってきた車両製造や部品などの単体での輸出ではなく、JRをはじめとした運行事業会社が中心になって運行事業や保守部門なども含めて一括で輸出する。そのために官民一体の体制で事業権を丸ごと確保する。それを通して「商圏を確保」すると強調しているように、勢力圏形成の策動である。
(図 デリー・ムンバイ間産業大動脈構想 日本側の45億ドル事業候補リスト)
□開発から管理・運営段階に至るまで
そのための基本政策として政府文書では「広域開発プロジェクトの上流段階からの関与」「面的開発のマスタープラン作りでの関与」「有望国との政策対話の強化」「日本企業の立地が見込まれる地域全体の……開発の一体的推進」「プロジェクトの構想段階及び施行後の管理・運営段階に至るまで一貫してプロデュースできるプレーヤーの育成」(『パッケージ型インフラ海外展開促進プログラム』、12年6月)という言葉が躍っている。インフラ輸出を通して国とその地域を面的に支配するという構想である。
例えば、安倍が前回首相時代の06年12月に始まったインドの「デリー・ムンバイ間産業大動脈構想」がある。デリーとムンバイの1500`の間に貨物専用鉄道を円借款(4500億円)で敷設し、その周辺に工業団地、物流基地、発電所、道路、港湾、住居、商業施設などのインフラを整備し、そこに日本企業が全面的に進出する地域開発構想である。戦前の南満州鉄道の再来ともいうべきものだ。昨年10月には、19件の関連事業候補リストに合意した(図表参照)。
これをモデルにして、ジャカルタ首都圏を中心に開発マスタープランを策定して発電所、空港、港湾などのインフラを整備する「インドネシア経済回廊」構想や、ミャンマーのティラワ経済特区を日本企業の拠点とするために港湾と工業団地を一体的に開発するプロジェクトなどが進んでいる。
日帝はアジアをめぐる争闘戦の敗勢の中でTPPに突き進むしかないが、しかしその一方では独自のアジア勢力圏化へ必死にあがいているのだ。
このパッケージ型インフラ輸出は、新自由主義的な性格を強く持っている。
□新自由主義の絶望的な海外展開の形態
もともと、資本主義の独占段階としての帝国主義は、単なる商品輸出ではなく、「資本の輸出」を特徴とする。「資本輸出の必然性は、少数の国々では資本主義が『爛熟し』、資本にとっては『有利な』投下の場所がないということによって、創り出される」「資本の輸出は商品の輸出を促進する手段となる」(レーニン『帝国主義論』)。資本輸出を通して、資源獲得や運輸・流通の支配、商品市場の確保など、全面的な勢力圏化を推し進める。それは世界の経済的・政治的・軍事的な分割・再分割である。
現在のインフラ輸出は、こうした帝国主義的侵略のむき出しの姿であるとともに、最末期帝国主義=新自由主義として、大恐慌下の過剰資本・過剰生産力状態にのたうち回っている中での、絶望的な海外展開の形態である。
一つは、全世界的な民営化攻撃の中で「インフラ輸出」が焦点化していることだ。「アジアが急成長市場」などと叫んでいるが、それは徹底した民営化による市場開放によって無理やりにつくり出しているものであり、本来「公的」なインフラ設備に帝国主義資本が群がっているのだ。その輸出する側もまた、民営化されたJRや、水道事業の民営化・外注化を推進している東京都や大阪府などである。
そして、「日本のインフラ部門は競争のない世界に安住」(『外交』11年7月号、前田匡史)していたから遅れをとっているとか、「民間企業が国内でもインフラ運営の経験を積めるよう国内市場改革を進めていく」(経産省『産業構造ビジョン2010』)と言っているように、インフラ輸出の展開自身が、国内の民営化・外注化・規制緩和のさらなる推進と一体である。
二つに、日帝の争闘戦敗北と脱落帝国主義化のどうしようもない現状がある。日帝の基幹部門であった電機産業は今や壊滅状態であり、貿易赤字にのたうちまわり「輸出立国」の地位からは完全に転落した。さらにオバマの輸出倍増計画とアジア重視戦略の激しい争闘戦に追い詰められながら、「国内市場ではまったく成長が見込めない」「極東の一小国に転落する恐れすらある」(日本経団連)という悲鳴の中で、インフラ輸出しかないと絶望的に叫んでいるのだ。
三つに、戦争的激突という問題である。日帝のインフラ輸出の国家戦略化の大きなきっかけとなった09年12月の韓国によるUAE原発建設の受注(日本企業の敗北)の総括として、「韓国による軍事面での支援の約束」が重要項目として挙げられている。「パッケージ」の核心は軍事力である。
また、1月のアルジェリア事件を受けて、安倍は経協インフラ戦略会議初会合で「政府として海外の現場で働く邦人の安全を最優先に確保」が重要であると述べている。インフラ輸出は長期で全面的な侵略であり、日帝独自の軍事展開なしには成り立たないのだ。改憲と一体の攻撃である。
□鉄道と原発が基軸に
日帝にとって最大の柱は鉄道輸出である(次ページの表とコラム参照)。その戦略的資本こそJR東日本だ。
昨年10月に発表した『グループ経営構想X』では「オペレーション&メンテナンス分野(列車の運行や設備の保守などに関する計画・指導・支援)を含めた海外鉄道プロジェクトへの参画」「鉄道車両を中心とした総合技術力に磨きをかけ、都市鉄道から高速鉄道まで様々な海外鉄道プロジェクトへの参画」と打ち出した。JR東日本が53%出資して11年11月に発足した「日本コンサルタンツ」のもとで、インド、インドネシア、ベトナム、中国などへの高速鉄道や都市鉄道、さらにブラジルへの新幹線輸出を狙っている。昨年11月のベルギー・ブリュッセルに続き、今年3月にはシンガポールにアジア初の海外事務所を設置した。
安全を投げ捨てたJR東日本がやろうとしているのは金儲けシステム丸ごとの輸出だ。駅ナカ事業をはじめ鉄道周辺まで含めた商業圏開発やホテル運営、SUICAなど金融部門、そして外注化・非正規化攻撃などの労務政策すべての輸出である。
同時に安倍政権のもとで原発輸出が再び基軸に据えられた。今年1月にはベトナム政府と原発建設協力で合意した。30年までの14基の建設計画のうち、すでに2基分を受注している。2月には3・11後初めての新規案件として、30年までに16基の建設を計画しているサウジアラビア政府との原発輸出協議を開始した。原子力協定の締結も狙っている。
当初、原発輸出はインフラ輸出の中でも最大の柱だったが、3・11と原発への激しい怒りによって、海外展開のために10年11月に鳴り物入りで発足した「国際原子力開発株式会社」(東電が筆頭株主)も停滞状態に陥った。しかし、「震災後の日本において……インフラの海外展開・システムの輸出は、積極的に進めていかなければならない。そして原子力も、依然としてその重要な要素である」「新たな安全基準の下で世界へ打って出るべきである」(前出の前田匡史)などとして、より積極的に原発輸出に突き進もうとしているのだ。フクシマ圧殺・再稼働策動と被曝労働の輸出であり、絶対に許すことはできない。
パッケージ型インフラ輸出の核心は、新自由主義・民営化であり、帝国主義戦争である。だからこの攻撃との闘いは、新自由主義攻撃との全面的対決であり、全世界の労働者階級の団結した力で世界を変革する道である。
□階級的労働運動と国際連帯に展望が
とりわけ『経営構想X』が示すように、インフラ輸出と外注化・非正規職化は表裏一体であり、JRに限らず日帝資本の絶望的な延命策である。これを打ち破る階級的労働運動と国際連帯にこそ労働者階級の展望がある。
国鉄決戦と反原発闘争の一体的推進、何よりも動労千葉を先頭にした外注化阻止決戦、そして3・11福島闘争の爆発はインフラ輸出攻撃を根底的に痛撃している。
インフラ輸出―アジア勢力圏化を粉砕し、安倍政権を打倒しよう。
(諸岡鉄司)
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〈コラム〉 鉄道事業の海外展開が本格化
◆イギリス高速鉄道の受注
官民一体体制のもとで日立製作所が昨年7月、約30年にわたり英国主要幹線を走行する車両のリース事業及び合計596台におよぶ車両の製造並びに27年半にわたる保守事業を一括受注(事業規模は約5500億円)。
◆インドの高速鉄道計画への参入
昨年11月の日印首脳会談で、インドで計画されている高速鉄道6路線のうち、すでにフランス企業が受注に向けて事前調査を受託していた「ムンバイ―アハメダバード間」(事業費は数千億〜1兆円程度の予想)について協議入り、今年2月には、国土交通省やJR東日本、川崎重工らがインドで新幹線のセミナーとトップセールスを行っている。
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月刊『国際労働運動』(441号7-1)(2013/05/01)
■世界の労働組合 韓国編
全国鉄道労働組合
全国鉄道労働組合は、民主労総傘下の労働組合。2006年11月に組合員投票で運輸産別への転換を決めたが、その具体化である公共運輸労組への加入については2012年11月の組合員投票で否決された。組合員数約2万5千人。
■鉄道労組の歴史
朝鮮最初の鉄道は、1899年9月に日本資本によって開通した。鉄道敷設の必要性自体はその10年前から朝鮮の外交官により提起されていたが、民族資本に資金力がなく、敷設権は米国人を経て98年に渋沢栄一らに売却された。日帝が日清戦争を経て朝鮮への侵略を推し進めていた時期だった。
鉄道開通から2年後の1901年、鉄道労働者は早くも賃上げ闘争を展開し、1919年3・1独立運動に際しては機関士7〜800人が万歳デモと5日間ストに立ち上がっている。
1945年8・15解放から2カ月半後の11月2日、南北を包括した朝鮮鉄道労働組合が結成される。翌46年、米軍政による鉄道員25%合理化方針が出される中、鉄道労組は全評(朝鮮労働組合全国評議会)の9月第1波ゼネストを主導。これに対し米軍政は、武装警察隊と大韓労総(大韓独立促成労働総連盟)などの右翼を動員し闘争本部を襲撃、3人を射殺し、1800人余を投獄した。しかしこのストで鉄道労組初の労使協定をかちとり、整理解雇は撤回された。47年3月の全評第2波ゼネストも大韓労総との激突となり、全評は地下に追いやられ、48年8月に大韓民国政府によって非合法化された。
一方、大韓労総は1947年1月に産別組織として運輸部連盟を結成、鉄道労組は御用化する。この時代にも、労働3権を制限する公務員法改悪やディーゼル機関車導入に伴う現業削減、手当廃止などに反対する闘争は闘われたが、その大部分は政治交渉により妥協を強いられた。
1961年5・16軍事クーデターで政権を掌握した朴正煕(パクチョンヒ)は、直後に「政党社会団体解散令」を出し労働組合をいったん解散させ、労働者支配の道具として鉄道など十数の産別組織に再編。その連合体として61年8月に韓国労総(韓国労働組合総連盟)が結成される。
1970年、全泰壱(チョンテイル)氏の焼身決起以降、民主労組運動の摸索が始まるが、79年の軍事クーデターで政権を握った全斗煥(チョンドゥファン)は、軍隊式労務管理によって劣悪な福祉、長時間・低賃金労働、24時間2交代制と月300時間に迫る交番制、勤労基準法の5分の1水準の超過勤務手当などを鉄道労働者に強制した。
1987年6月民衆闘争と労働者大闘争を受けて民主労組運動が推し進められる中、ダイヤ「改正」に伴う労働強化などに反対し88年に7・26機関士ストが闘われる。指導部が隊列から離脱する中、一般組合員中心の指導部がつくられ、鉄道史上最も影響力のあるストとなった。このストは鉄道労組の労使協調的本質を暴き出し、89年の労組選挙では機関車乗務支部においてスト参加者が大挙当選し、労組民主化と労働条件改善に向け全機協(全国機関車協議会)が結成された。一方、この一連の過程には、他の鉄道職種が参加を拒否するという限界もあった。
1994年、機関士手当の引き上げ要求が高まる中、全機協指導部は88年機関士単独ストの限界を克服するため、職種別の要求ではなく鉄道労働者全体の労働条件改善と労組民主化とを同時にかちとるべく、勤労基準法遵守と8時間労働制獲得方針を打ち出す。この方針のもと、全機協とソウル地下鉄、釜山地下鉄が共同ストを決定。警察の事前弾圧に対しスト日程を繰り上げストに突入した(6・23共同スト)。機関士だけでなく検修や駅も参加したこの闘争は、指導部拘束、55人解雇、強制配転など激しい処分を受けながらも、鉄道労組民主化への熱望を一層高めた。
■鉄道労組の民主化
その後、労組内民主派の組織基盤が徐々に拡大する中、2000年1月に最高裁が「代議員は組合員の直接秘密無記名投票で選出されなければならない」との判決を出し、これを機に「全面的直接選挙制実現に向けた共同闘争本部」が結成され、支部レベルで民主化が進展する。これに追い詰められた鉄道労組本部が「代議員のみ直接選挙」という方針を発表したため、2月17日、共闘本部は鉄道労組本部事務所を占拠。襲撃と奪還が繰り返される中、全国署名運動を通じて共闘本部の勢力は拡大していく。これに対し、鉄道労組本部は3・7伯岩(ペガム)温泉代議員大会で全面的な直接選挙制を受け入れる一方、現委員長の任期保障を決定し、共闘本部30人を除名。それと軌を一にして鉄道庁が共闘本部に対する懲戒を開始した。
その後、労組内での激しい攻防過程を経て2001年5・21委員長選挙で金在吉(キムジェギル)民主候補が62%の得票で当選。ついに鉄道労組の民主化がかちとられ、さらに2002年11月の組合員総投票で民主労総への上部団体変更案が可決された。
■民営化との闘い
1997年秋、対外債務返済不能に陥った韓国政府は、IMF(国際通貨基金)に200億jの緊急支援を要請。そのただ中で発足した金大中(キムデジュン)政権は、IMFが支援の条件として求めた構造調整プログラムを強力に実行していく。企業、金融、労働部門に対する構造調整の突破口として公共部門が位置づけられ、その中で、鉄道庁の持ち分売却と民間委託を骨子とする鉄道民営化法案が出される。
すでに96年から実施されていた鉄道経営改善5カ年計画により、2000年までに鉄道員7400人が削減される一方、外注化により非正規職が増加していた。公務員であるため勤労基準法の適用を受けない鉄道労働者は、休日もなく、24時間交代制と不規則な交番勤務により健康を破壊され、1995年から2001年までに200人が業務で死亡し、その中で鉄道の安全も大きく脅かされていた。
2002年2月、こうした現実への積年の怒りが爆発し、発電、ガスとともに公共3部門の共同ストが3日にわたり闘われた。大韓労総時代以降初の鉄道労組のストとなったこの闘いにより鉄道民営化法案はいったん阻止された。注目すべきは、先に触れた、鉄道労組の民主化と民主労総への上級団体変更が、この過程でかちとられたことだ。
2003年に発足した盧武鉉(ノムヒョン)政権のもと、6月に鉄道産業発展基本法案が提出された。この法案は、民営化こそ明記していないものの、鉄道庁を、貨物・旅客輸送、車両整備など運営を担う鉄道公社と、鉄道施設の建設と維持・補修を担う鉄道建設公団とに「上下分割」する内容が盛り込まれていた。
この法案に対しても鉄道労組は6・28ストで立ち向かい、指導部5名拘束、79名解雇、75億ウオン損賠請求という激しい攻撃がかけられ、法案の成立こそ許したものの、闘いの結果、施設公団の担う維持・補修業務は鉄道公社にのみ委託するという条件を付した部分的な上下分離方式となった。この法律により鉄道庁は2005年1月、鉄道公社と鉄道施設公団とに分離された。(公社化により鉄道労働者は勤労基準法の適用対象となった)
(写真 鉄道労組2003年6・28スト)
■李明博政権下での攻防
民主党系の前2政権を批判して2008年に発足した李明博政権は、鉄道民営化については前政権の政策を継承し、2012年までに5115人を削減し、鉄道の営業赤字を黒字に転換できなければ民営化すると公言した。当時、韓国の鉄道は、原価に満たない運賃、公益サービス費用補償を政府から受けられない点、上下分離になってからの過当な線路使用料という3つの構造的・政策的原因によって営業赤字が発生していた。
李明博政権は、人員削減が鉄道労働者の抵抗で進まない中、相対的に労組組織力の弱い駅や施設・整備を狙って強制退職や非正規職転換などを進める一方、2012年には「競争体制導入」を掲げたKTX(高速鉄道)民営化を打ち出した。これは、2015年開通予定の首都圏新規路線を、鉄道公社ではなく民間企業に開放する、という内容だが、鉄道労組や市民団体の闘いにより頓挫した。
任期満了目前の今年1月、李明博政権は、鉄道管制業務を鉄道公社から鉄道施設公団に移管するための立法予告を行い、鉄道民営化への地ならしとの批判を受けた。
民営化に反対する鉄道労組は、上下統合と完全国有化を主張しており、攻防は2月に発足した朴槿恵政権下に持ち越された。
(写真 直接雇用を求めて雨の中をデモするKTX乗務員【2006年6月22日】)
■KTX乗務員の直接雇用要求闘争
鉄道労組の闘いを見る上で、KTX乗務員の闘いは、外注化阻止闘争と非正規職闘争の結合という点で重要だ。
2004年に営業を開始したKTXは、開通に至る過程が鉄道庁から鉄道公社への転換期と重なり、女性乗務員の雇用形態が問題となったが、最終的に鉄道子会社を設立し外注化することになる。しかし実質的には鉄道公社が管掌し、子会社の業務は実務に限定された。
そうした中、KTX乗務員は2005年12月、韓国労総傘下労組から鉄道労組KTX列車乗務支部に組織移行し、06年3月1日、構造調整阻止、解雇者復職、非正規職撤廃を掲げた鉄道労組のストに参加。KTX乗務員を鉄道公社が正規職として直接雇用するよう求めた。鉄道労組が4日にストを中止してからもKTX支部はこれを続行。4月13日、スト中の270人全員に整理解雇通知書が送り付けられた。
支部はその後、街頭アピール、占拠籠城(ろうじょう)、ハンスト、鉄塔籠城などありとあらゆる方法で闘い、2008年9月、最後まで残った34人で裁判闘争に転換する。訴訟は1、2審で「KTX乗務員の使用者は鉄道公社」との判決をかちとり、現在最高裁の段階だが、1審判決にもとづき月180万ウオンの賃金支給をかちとっている。
(写真 KTX乗務員と鉄道労組男性組合員の交流【2006年3月】)
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月刊『国際労働運動』(441号8-1)(2013/05/01)
■国際労働運動の暦 5月4日
■1919年五四運動■
中国の民族解放闘争
ロシア革命を引き継ぐ激動の中で日本の侵略に労働者学生が決起
中国の五四(ごし)運動は、朝鮮の三一独立運動と並ぶ、近代のアジアの民族解放闘争の巨大な大衆運動である。同じ1919年の闘いであることが示すように、ロシア革命に続く世界史的な大激動を表す闘いだった。
第1次世界大戦の中から生み出された1917年のロシア革命は、プロレタリア世界革命の突破口として、巨大な国際的波及力を持っていた。ヨーロッパ各国に革命の嵐が吹き荒れ、各地にソビエト権力が打ち立てられた。同時に、全世界の植民地・後進国における民族解放闘争にも巨大な衝撃力をもって受けとめられた。
1919年3月にはレーニンとロシア・ボルシェビキのもとにコミンテルン(共産主義インターナショナル=第3インター)が結成され、具体的現実的にロシア革命に続く革命の司令塔となった。
▼「21カ条要求」への怒り
第1次世界大戦の戦後処理のためのベルサイユ講和会議が1919年1月から開かれた。これより前、日本はドイツが保持していた山東省の権益を奪うことを目的に世界大戦に参戦、15年1月には「21カ条要求」を中国政府に突きつけた。「山東権益」「南満州・東部内蒙古における日本の優先権」など、日帝の中国侵略を一気に進めようとした。日本はすでに大戦中から、英、仏、伊の各国との間で講和会議で相互の利権要求を認め合うことを密約していた(領土・勢力圏の奪い合いとしての帝国主義強盗戦争の本質がよく示されている)。
4月29日、イタリアを除く4大国会議(米英日仏)で、中国の要求を退け、日本の要求をほぼ全面的に承認することが決定された。この報が5月1日に北京に届き、中国人民の怒りが一気に広がった。真っ先に北京各大学・高専の学生たちが立ち上がった。予定していた7日のデモを急きょ繰り上げ、5月4日、天安門広場に3000人が集まって「21カ条を取り消せ」「青島(チンタオ)を返せ」と書いた小旗を振りながら市内をデモ行進し、ビラを配った。デモ隊は交通総長邸内に侵入、家に放火した。学生32人が逮捕された。
この闘いは、労働者学生人民に巨大な衝撃を与え、北京から上海、天津など各地に闘いが広がり、大衆集会、デモ、日本製品ボイコットの闘いが拡大した。
6月3日、すでに一斉ストライキに入っていた北京学生連合会はこの日から連日、街頭に出て演説した。至る所の街頭で日本を弾劾する学生が軍警の手で次々逮捕され、警察の留置場は満員となった。それでも決起する学生は増え続け、ついに政府は学生逮捕を中止せざるをえなくなった。
6・3大量逮捕に対し全国に抗議の声が起こった。上海では、学生の罷課(スト)に加えて、商店が一斉に罷市(閉店スト)、労働者の罷工(スト)も拡大した(三罷闘争)。日本資本の内外綿紡績工場など2万人の労働者のストを始め、機械・造船・印刷労働者もストに突入した。港湾労働者は日本船の荷揚げを拒否した。
6月10日、北京政府はついに民衆の要求に屈し、「売国賊」と目された3高官を罷免、28日、ベルサイユ条約の調印を拒否した。
日本製品ボイコット運動はその後1年も続いた。
(写真 「21カ条を取り消せ」などと訴えて天安門広場に集まった学生【1919年5月4日】)
▼労働者階級の台頭
五四運動は、中国の歴史を画する役割を果たした。これまでの少数の革命家による政治運動ではなく、大衆的な規模の民衆自身の闘いとしてかちとられたこと。学生、労働者、商人などがそれぞれ自分の生活と生産の現場から立ち上がり、組織をつくり連帯してデモ・スト・ボイコットを武器に、底辺から政治を動かした。さらに、労働者階級が初めて政治の前面に立ち、職場からのストライキで決起するという最も力強い闘いの勢力となった。
後の中国革命の指導者となる毛沢東も周恩来もこの五四運動の大衆的指導者である。五四運動参加者に対するコミンテルンからの工作で1921年の中国共産党結成に至る。
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五四運動前後の主な動き
1911.10 辛亥革命
1912. 1 中華民国南京臨時政府成立、孫文臨時大総統就任
1914. 7 第1次世界大戦開始(〜18.11)
1915. 1 日本が21カ条要求提出
9 『青年雑誌』創刊
1917.11 ロシア10月革命
1918. 5 日中秘密軍事協定締結、北京学生反対デモ
8 日本がシベリア出兵(干渉戦争)
1919. 1 ベルサイユ講和会議開始
3 朝鮮三一独立運動開始
コミンテルン結成
5 五四運動
6 上海三罷闘争
中国代表が講和条約調印拒否
7 第一次カラハン宣言
1920. 7 コミンテルン、「民族・植民地問題テーゼ」採択
1921. 7 中国共産党創立
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月刊『国際労働運動』(441号9-1)(2013/05/01)
■日誌 2013 1〜2月 2013
1月1日 郵政職場で元旦ビラ、現場労働者と交流
正月早朝、全国労組交流センターの仲間は全国の主要郵政職場への元旦ビラ配布行動を貫徹した
7日埼玉 ジェコー労組、超反動判決に怒り
さいたま地裁熊谷支部(栗田健一裁判長)は、JAM神奈川ジェコー労働組合の高橋美和、屋代和彦両組合員が解雇撤回・原職復帰を求めた裁判で、原告の訴えを棄却する超反動判決を出した
7日東京 西部ユニオン鈴コン分会、社前闘争
東京西部ユニオン鈴木コンクリート工業分会が、新年恒例の社前闘争で迎え撃った
8日東京 大間原発中止、電源開発本社に抗議
銀座にある電源開発本社に対し、3回目の大間原発中止の申し入れ抗議行動を15人で闘い抜いた
10日東京 NAZEN杉並新年第1波闘争
NAZEN杉並は、新年第1波デモに立った
10日京都 障害者総合支援法に反対して街宣
京都で開催された「障害者総合福祉法骨格提言の完全実現」と「障害者差別禁止法の制定」を目指す全関西集会に対し、地域合同労働組合として4名の組合員で街宣登場した
11日東京 安倍打倒・原発廃炉へ官邸前行動
今年最初の首相官邸・国会前行動が行われた
12日千葉 動労千葉、旗開きで新たな戦闘宣言
動労千葉の団結旗開きがDC会館で盛大に開催された。田中康宏委員長があいさつを行った
12日大阪 八尾北・西郡 団結かたく旗開き
八尾北・西郡の団結旗開きが、八尾北医療センター労働組合・部落解放同盟全国連西郡支部・八尾北命と健康を守る会の共催で開催された
13日千葉 三里塚新年デモ、3・24大結集訴え
三里塚芝山連合空港反対同盟の新年初の敷地内デモと団結旗開きが行われた
13日茨城 動労水戸定期大会、安倍打倒を宣言
動労水戸の第31回定期大会が水戸市で開催された
14日広島 中四国革共同集会、青年指導部が登場
広島市で革共同中四国政治集会が開催され、中四国各地から130人が集まった
14日東京 婦民関東ブロックが旗開き
婦人民主クラブ全国協議会・関東ブロックの旗開きが都内で開催された
15日東京 4・24法大弾圧裁判、上告棄却弾劾
2009年4・24法大弾圧裁判で最高裁・金築誠志裁判長が上告を棄却した
15日東京 新橋アクション、50人で年初のデモ
第14弾を数える今年初の「原発とめろ!新橋アクション」東電直撃デモが50人で行われた
18日東京 国労5・27弾圧裁判、上告を棄却
最高裁第三小法廷は、国労5・27臨大闘争弾圧裁判について、国労組合員6被告の上告を棄却する反動決定を出した
18日東京 反原発金曜行動、安倍政権に怒り
首相官邸・国会前は「安倍やめろ!」「原発なくせ!」のコールがひときわ激しく響き渡った
19日鳥取 伯備線事故弾劾で集会
米子市文化ホールで、JR伯備線触車死亡事故7周年弾劾・米子支社後藤総合車両所労災死亡事故2周年弾劾の国鉄集会がかちとられた
20日大阪 動労西日本定期大会、青年軸に新体制
動労西日本は大阪市で第6回定期大会と団結旗開きを開催した
21日宮城 福島集団疎開裁判仙台アクション
仙台市内で「子どもを守ろう! ふくしま集団疎開裁判/1・21仙台アクション」が行われた
24日東京 郵政非正規ユニオン、都労委で圧勝
東京多摩郵便局の非正規労働者19人に対する雇い止め・解雇を巡る東京都労働委員会の第2回審問が行われた
25日東京 首相官邸前 原発推進の安倍に怒り
首相官邸・国会前などで安倍政権の福島圧殺と原発推進政策を弾劾する大抗議行動を闘いぬいた
26〜27日福島 全国農民会議が総会開く
全国農民会議総会・全国農民交流集会が二本松市で開かれた。三里塚に連帯し、全原発廃止をめざし、TPPに反対する志をもつ農民・農業関係者らが全国から一堂に会した
26〜28日佐賀 日教組全国教研で大情宣
日教組第62次教育研究全国集会が佐賀市を中心に佐賀県内各地で行われた。全国労組交流センター教育労働者部会は、組合員にビラを配布した
27日東京 吉祥寺デモ 3・11福島へ決起誓う
NAZEN吉祥寺は8回目の反原発・反失業吉祥寺デモを闘った
27日東京 オスプレイ反対普天間基地撤去集会
日比谷野外音楽堂で「NO OSPREY東京集会」が開かれ、4千人以上が参加した
27日東京 都革新旗びらき、原水禁発祥の地で
杉並区の産業商工会館で都政を革新する会が13年旗びらきを行った
27日広島 全証拠開示呼びかける星野学習集会
広島市東区民文化センター中会議室で星野再審広島学習集会が開かれた
28日広島 広島大へ神谷教授は福島から解任を
No Nukes HIRODAI の呼びかけで広大生が浅原学長への申し入れ行動に決起した
30日東京 法政大入試情宣禁止の仮処分を弾劾
法大当局は全学連など6人に対し、入試中の「情宣禁止仮処分」を東京地裁に申し立てた。この仮処分の審尋が、東京地裁429号法廷で開かれ、参加者は弁護団とともに怒りをたたきつけた
31日東京 自治労臨大、青年の怒り噴出
自治労臨時大会は、大阪を最先端に始まった公務員360万人首切りと全国の自治体での大幅賃下げ攻撃に対する現場の怒りと危機感が噴出する決定的な大会となった。初日、労組交流センター自治体労働者部会は、会場の日本青年館前に登場。横断幕を掲げビラ配布と熱烈なアジテーションを行い、会場内と呼応して闘いの機運を大きく巻き起こした
2月3日大阪 自治体・教労討論集会を開催
自治体労働者・教育労働者討論集会が大阪市住吉区で開かれ、18労組から60人が結集した
4日千葉 市東農地裁判で萩原進さん証言
千葉地裁民事第3部で市東孝雄さんの農地裁判が開かれ、三里塚芝山連合空港反対同盟事務局次長・萩原進さんが再び証言台に立った
4日東京 08年5・28法大弾圧上告棄却の暴挙
法大08年5・28「暴行」デッチあげ弾圧裁判の上告審において、最高裁判所第一小法廷(山浦善樹裁判長)は、「上告棄却」の反動的決定を行った
5日東京 法大入試情宣かちとる
法大文化連盟と全学連は、裁判所による不当な入試情宣禁止仮処分を打ち破り情宣活動を展開した
8日東京 首相官邸へ「原発なくせ!」
首相官邸・国会前で抗議行動を展開した
9日東京 富山再審集会、無罪かちとるまで闘う富山再審集会が品川区で行われ、58人が参加した
10日愛媛 NAZEN愛媛結成集会を開く
松山市でデモと集会を行い、NAZEN愛媛を結成した
11日広島 NAZENヒロシマ 結成1周年集会
広島平和記念資料館会議室において、NAZENヒロシマ結成1周年集会が開催された
11日岡山 オスプレイ反対、日本原演習場で集会
陸上自衛隊日本原基地撤去を求める現地集会が開催され、地元農民など220人が参加した
14日東京 郵政非正規ユニオン 都労委審問闘争
郵政非正規ユニオンつぶしの雇い止め解雇撤回を求める都労委の第3回審問が開かれた
15日茨城 動労水戸損賠訴訟、会社のペテン暴く
動労水戸不当労働行為粉砕裁判の第6回口頭弁論が、水戸地裁民事第1部で開かれた
15日東京 法大処分撤回裁判 武田君が陳述
法大・武田雄飛丸君(国際文化学部)の無期停学処分撤回を求める第1回口頭弁論が闘いとられた
15日東京 「安倍やめろ!」と官邸前金曜行動
首相官邸・国会前で金曜行動が行われた
17日東京 不当解雇26年2・17労働者集会
「国鉄分割・民営化で不当解雇から26年/2・17労働者集会」が墨田区で開かれた
17日東京 NAZEN杉並、ビキニ集会訴えデモ
NAZEN杉並が、反原発デモを杉並区阿佐谷で行い、3・1ビキニデー杉並集会を呼びかけた
17日宮城 王城寺原で米海兵隊射撃演習反対闘争
王城寺原演習場で米海兵隊による155_りゅう弾砲の実弾射撃演習に反対集会が行われた
18日千葉 農地裁判 市東さんが堂々の証言
千葉地裁民事第3部で、三里塚芝山連合空港反対同盟・市東孝雄さんの農地裁判が開かれ、市東さん本人への尋問が行われた
19日千葉 第3誘導路裁判、基準超える騒音追及
千葉地裁民事第3部で第3誘導路認可取り消し訴訟の弁論が開かれた
20日千葉 市東さんの畑に無断で「公示」看板
千葉地裁執行官が市東孝雄さんの畑に無断で侵入し、「公示書」なる看板を設置した
21日東京 前進社国賠 証拠隠しを追及
前進社不当捜索国家賠償請求訴訟の第10回口頭弁論が東京地裁民事第1部で行われた
22日東京 金曜行動、首相官邸・国会前で叫び
首相官邸・国会前などで抗議行動が行われた
23日東京 迎賓館・横田爆取弾圧裁判総決起集会
「差戻し控訴審無罪へ!福嶋再審勝利!2・23総決起集会」が迎賓館・横田裁判の完全無罪をかちとる会主催でかちとられた
23日広島 春闘総決起集会を開く
広島連帯ユニオンと広島県労組交流センターが春闘総決起集会を広島市で共催し60人が結集した
24日大阪 橋下打倒集会を開く
大阪市役所隣の中之島公園で全国から720人が集まり、橋下打倒集会と御堂筋デモを行った
24日千葉 動労千葉、ダイ改迎え撃つスト配置
動労千葉は第68回定期委員会を、DC会館で開催し、13春闘方針を決定した
24日新潟 NAZENにいがた結成1周年集会
1周年集会に約50人が結集した
24日宮城 東北春闘集会 被災地に労組甦らす
東北春闘集会には120人が結集、市内デモを貫徹
27日東京 動労千葉鉄建公団訴訟を闘う
動労千葉が国鉄1047名解雇撤回と強制出向無効確認を求める二つの訴訟が、東京高裁、東京地裁で開かれた
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月刊『国際労働運動』(441号A-1)(2013/05/01)
■編集後記
安倍政権は3月15日、TPPへの交渉参加を表明した。これは労働者や農民への歴史的な大攻撃である。
何よりもTPPが労働者にもたらすものは、さらに激しい雇用破壊・非正規職化だ。資本家どもは、米欧などの資本家との国際競争=争闘戦に勝ちぬくために、徹底的なコスト削減=合理化、外注化・非正規職化、賃下げの攻撃をさらに徹底的に推し進める。すでに「産業競争力会議」や「規制改革会議」では、TPP推進と一体のものとして解雇の自由化や正社員の全面非正規職化が叫ばれている。
TPPを粉砕する力は労働者と農民の団結だ。何よりも労働者国際連帯の闘いだ。絶対反対で労働者の国際的団結をつくりだし、腐りきった最末期帝国主義を根底から打ち倒し、労働者が真の主人公の新しい社会をつくりだそう。
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