International Lavor Movement 2012/11/01(No.435 p48)

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2012/11/01発行 No.435

定価 315円(本体価格300円+税)


第435号の目次

表紙の画像

表紙の写真 オスプレイ配備に反対する沖縄県民大会(9月9日)

■羅針盤 JR職場は激しい反撃と怒り 記事を読む
■News & Review 中国
 延安で石油労働者が無期限ストライキ
 正社員と同じ待遇を要求、非正規化に反対
記事を読む
■News & Review 沖縄
 オスプレイ反対沖縄県民大会に10万人
 北朝鮮・中国への侵略戦争策動を許すな
記事を読む
■News & Review 日本
 強制出向の事前通知強行に猛反撃
 動労千葉など「10・1」へギリギリの攻防
記事を読む
■特集 日中韓の国際連帯で排外主義を打ち破れ 記事を読む
■討議資料 記事を読む
■Photo News 記事を読む
■世界経済の焦点
 ユーロ成立とその危機
 財政主権なしの統一通貨の矛盾が爆発
記事を読む
■世界の労働組合 韓国編
 民主労総(全国民主労働組合総連盟)
記事を読む
■国際労働運動の暦 11月28日
 ■1985年動労千葉スト■
 分割・民営化に反撃
 中曽根「戦後総決算」攻撃の頂点に労働組合の存亡をかけて実力で対決
記事を読む
■日誌 2012年8月 2012 記事を読む
■編集後記 記事を読む
裏表紙の写真 シカゴ教組のストを支援する高校生たち(9月11日)

月刊『国際労働運動』(435号1-1)(2012/11/01)

羅針盤

■羅針盤 JR職場は激しい反撃と怒り

▼JR東日本の検査修繕部門と構内運転業務の10・1外注化阻止に向けた闘いは正念場に入った。現場では怒りが渦巻き、反撃の闘いが連日爆発している。千葉市民会館で9・14動労千葉総決起集会が闘い取られ多くの支援が結集した。動労千葉組合員の怒りの決起が職場を制圧している。事前説明への徹底した追及と抗議、ストライキなど日々が大決戦だ。うそ八百の「報告」で出向と外注化を受け入れその先兵となっているJR東労組カクマルと、全面屈服して闘わない国労指導部への怒りと反乱が日々拡大する情勢だ。
▼脱落日帝の命運を背負ったJR東資本は、この10・1から3段階、1年がかりで外注化を強行し、動労千葉と動労水戸の組織破壊をたくらみ、JRからすべての労働組合とその団結を根絶・一掃することを狙っている。そのために「出向規程があるので、本人の同意は必要ない」(動労千葉との8・23団交)とうそぶいている。そして外注化=出向を強制しようとしている。
▼外注化を強行すれば、JRの運転保安は解体され、乗客と乗務員の安全は崩壊する。第2、第3の尼崎事故が発生する。JRを始めすべての産別・職場で総非正規職化が進行し、労働者は生きていけなくなる。10・1外注化阻止にすべての労働者の現在と未来がかかっている。
▼JR東資本は、強制出向で職業安定法違反の「労働者供給」をやろうとしている。転籍・非正規職化と偽装請負で人件費を削減し、労働者を直接雇用する場合に負うべき責任やリスクを子会社に全部ほうり投げ、労働組合を解体・一掃しようとしているのだ。絶対許せない。労働契約法に照らしても明らかに違法なこの犯罪行為を断固粉砕しよう。

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月刊『国際労働運動』(435号2-1)(2012/11/01)

News&Reviw

■News & Review 中国

延安で石油労働者が無期限ストライキ

正社員と同じ待遇を要求、非正規化に反対

 □ストライキと道路封鎖の実力闘争で訴える

(写真 延煉サービス会社で無期限ストライキに突入した労働者。「期限の定めのない労働契約」や「同一労働同一報酬」を掲げる【延安】)

 8月20日より、中国陜西省延安市にある延煉サービス会社(延煉実業グループ企業総合サービス会社)でストライキが爆発した。彼らは「同一労働、同一報酬」をスローガンに掲げ、さらに労働契約の変更によって、いつでも首切り可能な非正規雇用労働者にさせられることに抗議し、無期限ストライキに突入し、9月に入っている。
 延安は、毛沢東が1934年〜36年にかけて江西省瑞金から陝西省延安までの長征の末、革命の根拠地にしたところであり、「革命聖地」とされている。
 彼らは国道210号線を封鎖するなど実力闘争にも立ち上がり、自分たちの境遇を社会に訴え、支援を求めて闘い続けている。
 この延煉サービス会社は、1987年に、国有企業であった延安煉油工場(石油精製工場)の失業者やその家族の就職を確保する目的で建設された。毛沢東時代のような、労働者の所属する工場が労働者の住居から就職、さらに退職後の生活の面倒まで見るという社会のあり方(社会保障制度)が崩壊する中で、こうした関連企業を建設し、そこに労働力を吸収することで乗り切りを図った。仕事は延安煉油工場の製品の出荷や販売、工場の広告づくりや清掃事業などだ。
 この会社の労働者の構成は、延安煉油工場や西安延煉貿易会社から派遣された正社員74人、市の労働部門が集めた労働者(集体工)175人、さらに延安煉油工場の労働者家族の労働者(家族工)約640人、そして臨時工が75人前後という構成となっている。家族労働者が多数を占めている。正社員は一握りだ。
 待遇には極端な差がある。正社員の基本給が1400元(約1万7000円)なのに対して集体工や家族工は700元(約8500円)と半額、生活補助も正社員が580元(約7000円)なのに対して集体工と家族工は200元(約2400円)、職務手当も正社員が最低で640元(約7800円)なのに対して集体工と家族工は最高で180元(約2200円)である。さらに正社員は、企業福利住宅に入る権利など、企業福利や社会福利の恩恵を受けているが、集体工や家族工はそれもない。
 さらに会社は、旧来の労働契約を破棄して、これらの集体工や家族工を「いつでも首の切れる」非正規雇用労働者にしようとしている。会社の設立の趣旨は、解雇・失業に直面した労働者の雇用の保証であったが、この本来の趣旨を否定し、膨大なリストラ・首切り攻撃を強行しようとしてきたのだ。
 労働者の怒りが爆発した。彼らは「同一労働、同一報酬」のスローガンを掲げて、賃金ならびにほかの待遇も含めて正社員と同じ待遇を要求するとともに、何よりも非正規雇用化を阻止するために決起した。中国スターリン主義の組織している「労働組合」である総工会は、この無期限ストライキを一切無視し、支援しないどころか、敵対を深めている。延煉サービス会社の労働者の闘いは、こうした中国スターリン主義の体制内労働組合の敵対とも真っ向から対決して闘われている。
 労働者の四つの要求は次の通り。
 @集体工と家族工を非正規雇用にしようとしている会社の計画と処理に徹底的に抵抗し、その撤回を要求する。工場の幹部が労働法に違反し、すでに長期にわたって続いてきた集体工と家族工との労働契約に基づく合法的権益を、ほしいままに侵していることの法的責任を追及する。
 A会社に対して、すでに長期にわたってこの会社で働いてきた集体工と家族工に対して、「期限の定めのない労働契約」を必ず締結することを要求する。
 B順次に正社員と集体工・家族工との著しい格差を是正することを要求する。当面、賃金はボーナスも含めて格差は最大で1000元(約1万2400円)を超えてはならないし、最終的には、「同じ労働に対して、同じ報酬、同じ福利」を実現すべきである。
 C工会(スターリン主義体制の労働組合)は、労働者の民主的選挙で選出されておらず、さらに重要なことは、労働者の代表として労働者の合法的権益を守るという職責をまったく履行していない。労働者は工会の指導部の罷免を要求し、工会委員会の再選挙を求める。

 □爆発する闘いの懐柔に労働合同法の修正法案

 延煉サービス会社の闘いなどを先頭に、中国全土で非正規雇用化に反対し、あるいはその撤廃を求める労働者の闘いが頻発している。これは資本家を追いつめ、中国スターリン主義を揺さぶっている。こうした中で、追いつめられた中国スターリン主義は労働合同法(日本でいえば、労働契約法)の修正の検討を今進めている。
 その中身は、非正規雇用労働者と正規職での「同一労働、同一報酬」を掲げ、派遣労働者は「派遣元で労働契約を締結するとともに、派遣先で労働協議を行い、(派遣先で)『同一労働、同一報酬』に基づく賃金の支払いなどの明示な契約を結ぶこと」とか、非正規雇用はあくまでも例外的労働であり、臨時性や補助性、代替性が必要なときにしか認められないとか、また一方で派遣労働者を雇える企業の条件を厳しくしたことなどがある。
 これだけを見るなら、日本の現行の「派遣法」以上の中身のようになっているが、しかし、これは闇労働などが横行する今の中国の労働実態からはあまりにもかけ離れており、このまま成立したとしても、どこまで実現できるかは極めて疑問である。特にこの労働契約法が一方で、アルバイトなどの労働者に「口頭による労働契約」を認めていることは、明らかに抜け道を用意しているとも言える。
 他方で、5月下旬に広東省の「経済特区」深せん市の163の企業の工会(労働組合)で、工会代表の直接選挙が初めて行われた。これは、直接的には労働組合の自由選挙を要求して3月に爆発した松下・オーム電機でのストライキが契機となっている。
 こうした労働合同法の「修正」や工会の自主選挙の容認などの対策の背後には、労働者の闘いに追いつめられている中国スターリン主義の姿があることは明確であり、体制内的な取り込みを狙ったものであった。

 □青年中心の労働者支援NGOを次々閉鎖

 こうした懐柔策の一方で、中国スターリン主義は労働者の闘いの暴力的な圧殺を進めている。今年の2月以降、深せん市に10以上ある労働者支援のための民間のNGO組織が市政府によって次々と閉鎖された。団体としての許可を取り消され、事務所の賃貸契約を解除され、引っ越しを強制されている。
 中国には現在、こうした労働者支援の民間のNGO団体が代表的なものだけで50〜60あるとされている。深せんあり、8月に閉鎖の攻撃にあった「手に手をとって 労働者の仲間たちの活動室」という労働者支援NGO団体は、07年に広西省から来た女性労働者である陳燕■(女弟)とその友達によって設立された。02年に中学校を卒業した陳燕■(女弟)は、広西省貴港市から広東省深せん市に来て、工場でずっと3年間働いていた。05年8月に、彼女は右手の指が機械に挟まれて変形してしまい、障害を持つ身となった。
 「家族や友達にどう説明したら良いのか分からない。それ以上に、今後どう生きていったら良いのか分からない」と彼女は悩んだ。
 中国では、多くの労働者が20歳で労働災害に遭い、ひどいケースでは、18歳で遭う者もいる。この窮状から抜け出せないと、彼らの後半生は困惑と苦悶(くもん)の中で生きていくことになる≠ニいう。
 陳燕■(女弟)の素直な言葉は、仲間の援助を生み出し、彼女は事故の暗影から抜け出ることができた。同時に、労働災害にあった労働者に精神的な支援などを与える仕事を決意させ、07年の末に、「手に手をとって」は生まれるべくして生まれたのである。
 「事故が起きてから救うのでは遅い。事前の訓練は、事後の対応よりもずっと大切だ」と陳燕■(女弟)は考えた。そしてこの理念の下に、以降5年間、「手に手をとって」は職業安全教育を重視し、さらに労働者のメンタルケア、法律教育や法律相談などの社会サービスも行ってきたのであった。
 この「手に手をとって」のように、深せんを始めとして今、中国各地でつくられている労働者支援の民間NGO団体は、その多くが労働者自身の手でつくられており、「80後」といわれる80年代に生まれた青年労働者によってその多くが運営されている。いわゆる「新農民工」といわれる世代である。
 中国では、労働運動が激しく爆発しているが、自主労働組合を中国スターリン主義は弾圧の対象としていることから、その結成は困難な状況にある。こうした中で、労働者は労働者支援のNGOを立ち上げ、良心的な弁護士なども組織して労働相談などをやり、中国の労働運動の促進要因となっている現実がある。
 とりわけその対象となっているのは農民工とその青年労働者だ。農民工のほとんどは非正規労働者であることから、非正規労働者の労働者としての権利を守り発展させる運動が高揚し、ストライキなどの労働争議を促進し拡大する要因にもなっている。
 この事態を中国スターリン主義は、もはや容認できなくなっている。深せん市政府は2月以降、労働者支援NGOの大弾圧に乗り出し、その閉鎖を次々と進めている。
 この攻撃が、労働合同法の「修正」や工会における自主選挙の容認と一体で進められていることに敵の弱点がある。中国スターリン主義は、一方で労働者階級の闘いを徹底的に弾圧しながら、工会などの再建を図り、労働者の闘いを体制内的に取り込み解体してしまおうという意図が見え見えである。
(写真 労働者支援の民間NGOの閉鎖に抗議する青年労働者【深せん】)

 □労働運動の新時代到来

 全事態が示していることは、中国における新たな労働運動が力強く開始されようとしているということだ。労働者支援民間NGOの設立なども通じて、青年労働者は闘いに決起している。まさに89年天安門事件(東欧革命と一体となった労働者学生人民の中国スターリン主義打倒の闘いに対する人民解放軍の大虐殺の反革命)以来の、労働運動をめぐる中国スターリン主義と労働者階級の新たな激突が始まっているのだ。
 中国スターリン主義は、10月の第18回中国共産党代表大会を習近平新体制をつくる大会としようとしている。しかし直面している現実は、中国経済の行き詰まり、中国バブル経済の崩壊的危機である。そして釣魚台をめぐる反日デモも含めて、政府や資本に対する怒りが爆発し、そういう中で、労働者と政府・資本の間で新たな階級闘争が激しく開始されている。今回の党大会は、中国スターリン主義の危機を象徴し、それを促進する歴史的な大会になろうとしている。
 労働者階級は、世界革命を放棄し、一国社会主義建設を自己目的化し、改革・開放政策を推し進めるスターリン主義を打倒し、労働者の国際連帯をかちとって世界革命を実現する以外に未来はないことを示している。
 中国の労働者、青年労働者との団結をかちとり、11・4国際連帯労働者集会を成功させよう!
 (河原善之)

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月刊『国際労働運動』(435号2-2)(2012/11/01)

News&Reviw

■News & Review 沖縄

オスプレイ反対沖縄県民大会に10万人

北朝鮮・中国への侵略戦争策動を許すな

 □沖縄・岩国・東京で

 9月9日、「オスプレイ配備に反対する沖縄県民大会」が宮古・八重山大会を合わせて、復帰後最大規模の10万3千人で開催された。同日、東京では1万1千人が国会を包囲し、山口県岩国ではオスプレイが搬入された米軍岩国基地に対し怒りのデモが闘われた。オスプレイ絶対反対の闘いがフクシマの怒り、反原発20万人決起と結合し、全国闘争として広がった。
 会場にはパート導入撤回を求めて7・13ストライキを闘った全駐労沖縄地本が組織参加したのを始め、自治体労働者や教育労働者、民間労働者など労働組合の旗やのぼりが林立、会場の半分は労組隊列で埋まった。
 採択された大会決議は、「沖縄県民はこれ以上の基地負担を断固として拒否する。そして県民の声を政府が無視するのであれば、我々は、基地反対の県民の総意をまとめ上げていくことを表明するものである。日米両政府は、我々県民のオスプレイ配備反対の不退転の決意を真摯に受け止め、オスプレイ配備計画を直ちに撤回し、同時に米軍普天間基地を閉鎖・撤去するよう強く要求する」と結ばれた。
 実行委員会から行動方針が提起され、団結ガンバローを三唱。八重山、宮古での闘いを含め、オスプレイ拒否の島ぐるみの闘いが始まった。
(写真 オスプレイ配備に反対する沖縄県民大会。宮古・八重山大会を合わせて10万3千人で開催された【宜野湾海浜公園】)

 □エアシーバトルの要 迅速移動のオスプレイ

 オスプレイは、米日帝の北朝鮮・中国侵略戦争の殺人兵器だ。沖縄の米海兵隊を迅速に東アジアから西太平洋地域の戦地に展開するためのものだ。
 米帝オバマは、今年1月に「アジア太平洋重視」の新軍事戦略を発表した。それに基づき米軍は、中国侵略戦争を構え、海空両軍の統合作戦能力を高める「エアシーバトル構想」を打ち出した。エアシーバトルは、中国のアジア・太平洋への軍事進出を抑え込む大規模な戦争計画である。
 中国は、米軍を中国軍の作戦海域(東中国海や南中国海)に接近させない戦略を採り、中国海軍の太平洋進出能力を向上させ、米空母を標的にした対艦弾道ミサイルを開発している。
 米軍は、これらを無力化するために新型の有人・無人ステルス爆撃機の開発や、対潜能力の向上などを進めている。エアシーバトル構想とは、イラク・アフガニスタン侵略戦争の大敗北にもかかわらず、次の新たな戦争として中国侵略戦争を構える大軍拡計画である。
 さらに米帝は、エアシーバトルで、対中国の軍事包囲網をつくろうとしている。これは、TPP(環太平洋経済連携協定)とひとつのものである。米帝のアジア太平洋経済ブロック政策と新軍事戦略が表裏一体になっている。世界大恐慌による米帝の崩壊的危機、経済的没落、財政危機、そしてイラク・アフガニスタン侵略戦争の敗北による米軍事力の地盤沈下を、中国を取り囲む同盟国を動員し、その力で補おうというものだ。
 中国は、半円を描く長大な海岸線を持っている。しかし太平洋には直接に接していない。太平洋との間には、黄海・東中国海、南中国海があり、日本列島・南西諸島・台湾、フィリピン・マレーシアなどでつくるラインが中国と太平洋との接点を封じ込めるように存在している。
 米帝は、エアシーバトルの一環として、同盟国や友好国に以下のような対策を取っている。
【台湾】
 中国と対峙する台湾に対して、台湾が保有するF16戦闘機の戦闘能力向上を図ろうとしている。
【フィリピン】
 南中国海を挟み中国と向き合っている。南中国海に浮かぶ三沙諸島の領有権をめぐって中国と激突している。また西太平洋から南中国海を通りインド洋に抜ける要所を占めている。米帝はここに対中国軍事包囲網の軸足を置こうとしている。米沿岸警備隊のカッター船の無償供与を行い、海兵隊のローテーション配備や南中国海でのP3Cの配備を打診している。
【シンガポール】
 シーレーンの要衝であるマラッカ海峡の入り口にある。ここに米軍は最新鋭の沿海域戦闘艦(LCS)のローテーション展開をしていく。
【オーストラリア】
 海兵隊のオーストラリア北部ダーウィンへのローテーション展開を開始した。2016年までに海兵隊は2600人まで拡充される。
 米空軍航空機のオーストラリア北部へのローテーション展開を増やす。
【インドネシア】
 中国との間で取り合いになっているが、米帝の側に引き寄せるためにF16戦闘機24機の無償供与をする。
 さらに米軍はエアシーバトルのための以下の計画を立てている。
▼中国・北朝鮮のミサイルを念頭に、アジア・太平洋地域でミサイル防衛網を拡充させる計画を進めている。早期警戒レーダー(Xバンドレーダー)の沖縄への配備を検討している。
▼オーストラリア西南部パースのスターリング海軍基地に米核空母打撃群を前方配備する計画を検討している。
 エアシーバトルは、北朝鮮侵略戦争をも構えている。最も軍事的に緊張しているのが北朝鮮との関係であることは明らかだ。8月20日〜31日まで、米韓連合軍指揮所演習「乙支フリーダムガーディアン」を実施した。米軍3万人、韓国軍5万6千人。実動演習としてソウル市内などで実戦さながらの「対テロ対策訓練」を行った。
 オスプレイの航続距離は3900`、マニラ、シンガポール、グアムなどに直行できる。兵員24人搭乗時の行動半径は600`。オスプレイ用に佐世保に新たに配備された強襲揚陸艦ボノム・リシャールに搭載されて戦場近くまで行けば、さらに600`先まで行ける。
 朝鮮半島はもとより、中国軍事包囲網の同盟諸国の基地に瞬時に移動できる。エアシーバトルの要をなす兵器だ。米帝は、侵略戦争の最前線に立って上陸作戦を展開する海兵隊用に、ヘリ機能と固定翼機能を兼ね備えたオスプレイに300億jもの金をかけて開発してきた。
 しかし、実際に飛行させてみれば墜落死亡事故が多発し、「未亡人製造機」なるレッテルを貼られた。夫や息子を失った家族が怒りの弾劾を浴びせている。ところが帝国主義者どもは、米兵の命よりは、帝国主義者のための侵略戦争が大事なのだ。事故の責任はパイロットの操縦ミスで乗り切ろうとしている。こんなデタラメが通用するわけがない。アメリカでもオスプレイ配備の基地でオスプレイ反対運動が起きている。そして日本では沖縄、岩国、全土でオスプレイ反対の大運動が起きている。
(図 「在沖米海兵隊の役割」を宣伝する地図【防衛白書】)

 □エアシーバトルの焦点となった釣魚台

 米新軍事戦略の下で釣魚台(尖閣諸島)が焦点化してきている。日帝は新軍事戦略を支持し、それと一体となって「動的防衛力の強化」を叫んでいる。その内容は「島嶼防衛」を口実とした釣魚台略奪の日米帝の侵略戦争である。「動的防衛力」と言うが、その中身は釣魚台略奪を柱とする対中国侵略戦争体制を構築するということだ。
 8月21日〜9月26日までの37日間、沖縄の米海兵遠征軍(3MEF)と陸自西部方面隊の15旅団(沖縄)、佐世保の普通科連隊の島嶼防衛実動訓練が行われた。米海兵隊・陸自共同の島嶼上陸奪還作戦だ。これは、米日帝の中国侵略戦争そのものだ。これがエアシーバトルのひとつだ。
 5月9日付の産経新聞によると、これに先立って、自衛隊は昨年11月14〜18日、九州南西・沖縄方面を主な訓練場として約3万5千人が参加する大規模演習を行った。これは自衛隊単独の中国侵略戦争演習だった。
 この統合演習は、沖縄近海の地域を尖閣諸島に見立て、@平時での不法行動A武力攻撃予測事態B武力攻撃事態と3段階の事態を想定しての着上陸作戦だった。
 まず中国側の漁民を装った「海上民兵」が不法上陸、これを契機に中国海軍が周辺地域に展開、九州周辺にも中国軍機が到来するとしている。 これに対し自衛隊は、中国の「尖閣」上陸後、中国海空軍の動向から「国家意思」を確認した段階で、島嶼防衛の中核部隊と位置づけられる陸自「西部方面普通科連隊」(長崎)が佐世保から海自輸送艦で緊急展開。海自・佐世保基地の艦艇、空自の築城(福岡)・新田原(宮崎)・那覇(沖縄)の3基地の戦闘機を投入、中国のミサイル攻撃に備えた陸自高射特科やPAC3の動員、着上陸作戦で、中国の水陸両用部隊や空挺部隊を排除する。
 日帝は、「尖閣諸島」問題で、中国との戦争を構えていることが、自衛隊の大規模演習、日米共同演習という形で明白に突き出された。
 「武力攻撃事態」を認定することは戦争状態を認定することであり、宣戦布告ということである。
 日帝は憲法9条「戦争放棄」の下で、解釈改憲なるペテンを使って数々の侵略戦争に参戦してきた。ある時は国連PKOの姿をまとい、イラク侵略戦争ではサマワに陸自を派兵し、「サマワは非戦闘地域だから武力行使に当たらない」「自衛隊が活動しているところが非戦闘地域だ」(小泉首相/03年7月)とウソとペテンと居直りを押し通してきた。空自のイラク派兵では「武装米兵」輸送を主な任務としていたことが明らかになり、名古屋高裁で違憲判決(08年4月17日)が出た。
 しかし中国侵略戦争では、日帝は武力攻撃事態を認定し、自衛権の発動という形で日帝の全面侵略戦争を遂行することを企んでいる。
 世界大恐慌の深化、加えて3・11東日本大震災と福島第一原発事故で大打撃を受けた日帝は、帝国主義からの脱落を深め、米帝の「トモダチ作戦」で自衛隊は対応不能をさらけだした。自衛隊内部では、隊内暴力、いじめ、そして3・11救援活動におけるPTSD(心的外傷後ストレス障害)発症や被曝労働などで危機を深めている。そしてアフガニスタン・イラク戦争への長期動員で疲弊している。
 そして日帝・野田の新自由主義の攻撃、消費税大増税、原発再稼働、オスプレイ沖縄配備、10・1JR外注化・非正規職化の攻撃に対して数十万人規模の人民の怒りが爆発している。根底には新自由主義の下での労働者階級人民に対する生活破壊がある。労働者は生きていけない現実から非和解的に決起し、日帝・野田を追いつめている。
 日帝・野田は、戦争と改憲の攻撃を橋下を先兵にして激化させている。釣魚台では、野田が釣魚台国有化で先鞭を付け、石原を始め極右反動どもが一斉に中国への排外主義を叫び立てている。これは中国侵略戦争のための宣伝・煽動だ。徹底的に粉砕しなければならない。
 労働者は闘えば勝てる。オスプレイ反対の沖縄10万人集会が全駐労の労働者を先頭に闘い抜かれ、反原発の闘いが数万から20万人規模で連続的に闘われ、消費税大増税への怒りは燃えたぎっている。動労千葉・動労水戸を先頭とする国鉄決戦が不屈に闘い抜かれている。階級的労働運動が前進し、国際的な団結が発展している。領土をめぐる排外主義の攻撃に対して「労働者階級は国際的にひとつであり、労働者に国境はない」というマルクス主義の立場で闘おう。
 (宇和島洋)

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月刊『国際労働運動』(435号2-3)(2012/11/01)

News&Reviw

■News & Review 日本

強制出向の事前通知強行に猛反撃

動労千葉など「10・1」へギリギリの攻防

 □千葉、水戸、高崎の計60人が仮処分申立

 前号で報じたとおり、動労千葉、動労水戸、動労連帯高崎の組合員が8月28日、検修・構内業務の全面外注化の「10月1日実施」と強制出向差し止めの仮処分を求める集団訴訟を東京地裁に起こした。動労千葉49人、動労水戸10人、動労連帯高崎1人の合計60人が申立人となった。自らの権利と労働者としての誇りをかけた渾身の決起である。
 「ありとあらゆる闘いで外注化と強制出向を絶対に止める!」――この日、検修職場の全組合員を対象にした24時間ストライキに決起し、千葉労働局に偽装請負問題について職場への立ち入り調査を要請してきた動労千葉組合員を先頭に、水戸、高崎の組合員、動労千葉を支援する会の労働者ら250人が東京地裁前に結集して、怒りのシュプレヒコールを上げ、代理人の弁護士、申立人を東京地裁に送り出した。第1回の審尋は9月19日に行われ、激しい怒りをたたきつけた。
 JR外注化に伴う強制出向と偽装請負の問題を一大社会問題にして、労働者の首切り・非正規雇用化を推進する新自由主義攻撃と闘う労働運動を甦らせようという画期的な闘争が始まったのだ。
(写真 「強制出向差し止めの仮処分」集団訴訟に立ち上がった動労千葉・総連合組合員と支援の労働者【8月28日 東京地裁前】)

 □何の必要性もない強制出向

 こうした中で、千葉では先行的に管理者16人に出向の事前通知が発令された。動労千葉との団体交渉では何らまともな回答もできないにもかかわらず、9月7日にはJR東労組との団交を終え、当局は、「現場説明会」なるものを設定したり、「ロッカーを整理しろ」などと言ってきたり、なりふり構わず、10月1日の外注化を強行しようとしてきた。
 そして、JR千葉支社は、ついに9月12日から、強制出向の事前通知を強行した。千葉では全体で91人で、うち動労千葉組合員44人が対象となった。
 事前通知は、現場長と管理者、さらに千葉支社から運輸部の課員が派遣された中で行われたが、現場長は通知を読み上げた後、組合員などから出向の理由を聞かれても何も答えることができず、逆に現場からの抗議の嵐に包まれている状況だ。なかには事前通知を受け取らせるために、所長のところまで来いという業務指示まで出して事前通知を強行しようとした。だが、ことごとく事前通事は拒否されたのだ。
 今回の外注化による強制出向は、JRにとってもまったく必要性がないことは明らかだ。外注化の理由として千葉支社は、「エルダー(定年退職後の高齢者)の雇用の場の確保」と説明している。しかし、今年度から3年間は、ほとんど退職者が発生しないため、「エルダーの雇用の場の確保」という口実そのものが成り立たない実態だ。
 また、出向の口実として「技術力の継承」を挙げているが、委託先の千葉鉄道サービス(CTS)には検修・構内業務の技術を受け継ぐべきプロパー社員(CTSで採用された社員)はただの一人もいない。伝えるべき者がいない以上、出向の必要性もないということだ。
 JRは、来年以降、CTSで検修・構内部門の労働者を採用すると言っているが、「それは正規職なのか非正規職なのか」という動労千葉の問いに対して「下請け会社が行うことなので分からない」と回答しているという。実際に、ほとんどが「契約社員」という形で非正規職にされようとしているのだ。賃金を始めとする労働条件もめちゃくちゃにされ、雇用も不安定という中で、そもそも「技術力の継承」など成り立たないのだ。そうなれば、安全は確実に崩壊する。

 □戻る場所のない出向で「転籍」に

 一方、JR東労組は、「(出向についての)労働協約を締結していない組合に所属する者は『原則3年』の縛りがないから適用されない」、つまり動労千葉の組合員はJRに戻ることがないことを千葉支社と確認した旨を交渉報告に記載している。
 しかし、これ自体まったくのウソ・ペテンだ! 業務外注化と強制出向反対を掲げているのは動労千葉だけだから、このまま行ったら出向に反対している動労千葉に平成採の青年たちが加入しかねないという危機感の中で、苦し紛れのペテンを弄して組合員をだまそうとしているのだ。
 そもそもJR東日本の就業規則、出向規程には、「3年」という文字はない。つまり、出向になった場合、期間の定めのない出向もできることになる。しかし、裁判での判決などにおいて、出向にあたっては労働条件や出向の期間を明示しなければならないとなっている。そうなると、就業規則に期間の定めがないまま出向を行った場合、違法な出向になるということだ。
 このためJRは、出向協定に「原則3年」を入れて東労組などと協定を締結し、違法性を免れようとしたのだ。
 こうしたことを考えると、動労千葉組合員に、就業規則によって出向を強制した場合、就業規則に「3年」の定めがない以上、期間の定めのない出向=違法な出向になるということだ。
 東労組は、自分たちが業務外注化を認め、組合員を出向に駆り立てる側にたっていることをごまかすためにこのようなウソとペテンを並べているということだ。
 そもそも、「3年で戻せ」という前に、出向に出させないようにすることを東労組の組合員も求めているはずだ。戻るべき職場がなくなるのだから、職場がなくなる前に、職場を守り、鉄道の安全を守るために検修・構内業務の全面外注化に反対し、強制出向に反対することが最大の課題なのだ。
 外注化・強制出向差し止め仮処分訴訟の代理人の石田亮弁護士は、「今回の出向命令の最終的な目的は、正規雇用の職員を転籍させることによって、人件費の大幅な削減と、労働者を雇用するにあたって負うべき責任やリスクを子会社に放り投げていくことにあると言わざるをえない」と、その狙いを明快に語っている(9・10付『前進』)。
 検修・構内運転業務の労働者、とりわけ青年労働者を転籍―非正規職化していく強制出向をなんとしても阻止しなければならない。

 □団結を破壊する攻撃

 

今回の外注化攻撃は、同時に団結を破壊する攻撃だ。東労組本部―本社間では機動班業務を残すとして妥結しながら、京葉車両センターでは、その機動班から3人も出向者を出している。どういう基準で選んでいるのか分からない状況だ。
 構内でも6人が出向に出されようとしているが、どういう基準で選んでいるのか分からない。結局、会社のやりたいように好き勝手に出向を行おうとしている。まさに団結を破壊し、労働者の中に疑心暗鬼を生み出し、バラバラにして労働組合そのものをつぶそうとしているのだ。
 今度の外注化による業務委託は偽装請負であり、そのための強制出向は絶対に認められるものではない。しかし、JR東日本は、外注化―出向を無理やりにでも強行することで既成事実をつくって、後はなし崩し的に全部の業務での外注化を行おうとしているのだ。
 今回は構内と車輪転削、信号、派出業務だが、外注化はこれだけに止まらない、検修職場で働く全員にかけられた攻撃なのだ。そして、日本中でやられている非正規職化の攻撃にさらに拍車をかける攻撃だ。なんとしても阻止しなければならない。

(写真 10・1外注化阻止! 強制出向絶対反対! 組織拡大! 9・14動労千葉総決起集会【千葉市民会館】)

 □9・14総決起集会開く

 こうした攻防のまっただ中で、9月14日に動労千葉は、「10・1外注化阻止! 強制出向絶対反対! 組織拡大!」を掲げて総決起集会を開催し、徹底抗戦を宣言した。
 最大の検修職場である幕張車両センターで闘う幕張支部の山田護支部長は、「就業規則には『会社の業務上に必要な場合は社員に出向を命じる』とありますが、『業務上の必要性とは何か?』と会社に聞いても何も答えられない。答えられない出向に私たちは行くつもりはない」と言い切った。そして、「『エルダー社員の雇用の場の確保』『技術指導のため』、全部嘘ばっかりです。工具もロッカーも含めて職場全部を10月1日に下請け会社に持って行く。偽装請負そのものです。こんなことは認めるわけにいかないし、法律上から言っても絶対止められる。絶対に止めます!」と決意を表明した。
 事前通知を受けた組合員がそろって登壇し、決意を表明した。「JRからの出向を前提としなければCTSは技術・経験のある会社にならない。ここに根本的な問題がある」「コスト削減のために外注化するなんて言ってますが、われわれは安全が売り物なんです」「これから本当の闘いが始まる」「通知を受けた東労組の若い人を見てると本当に落ち込んでいる。うちの青年部を守るのは当然ですが、東労組の若いのも獲得したい」「事前通知以降、これまでになかったほど職場が沸き立っている。平成採も怒り心頭ですごい勢いだ」「運転職場の若い連中も興味を持ち始めています。組織拡大に向けてともに闘う」
 田中康宏委員長は「事前通知の強行には、頭に血が上っている。体が震える思いだ。しかし、現場は屈服していない。外注化との闘いは通知が出ようが出まいが終わらない。10月1日強行を阻止するために当面する2週間、12年間の闘いのすべてを込めて闘い抜こう」と熱烈に訴えた。
 当面する取り組みについて長田敏之書記長が提起し「教育や訓練など外注化のための準備作業に対して指名ストで闘う。事前通知強行と東労組の裏切りへの怒りを組織拡大に転化するために闘おう。あらゆる闘いがひとつになった時、必ず外注化は阻止できる」と確信を込めて述べた。

 □動労水戸・西日本で青年労働者が決起

 動労水戸は、8月24日、外注化阻止に向けて全組合員がストに立った。直後の28日、JR東労組大子支部の青年部長を務める青年運転士が、東労組に脱退届をたたきつけて動労水戸に加入した。
 さらに、事前通知の強行に対して9月14日にストを決行。東労組の青年労働者が集団的にスト破りを拒否する事態が生まれている。
 また、動労西日本では、8月24日、大阪で「レールテック」に出向中の青年労働者が加入した。そして、9月27日に、4月に加入した青年組合員が大阪・四条畷駅でストを打ち抜いた。

 □11・4労働者集会へ

 今や、JRの外注化阻止決戦を先頭に、労働組合を甦らせる決定的なチャンスが到来している。こうした中で開催される、今年の11・4労働者総決起集会(東京・日比谷野音)が極めて重要な闘いになる。
 外注化阻止・非正規職撤廃の闘いと、動労千葉の鉄建公団訴訟6・29判決から解雇撤回・JR復帰を目指す闘い、反原発・反失業、そして、この間、1千人の組織拡大を実現している全日建運輸連帯労組関西地区生コン支部の闘いに学び、「組織拡大大会」にすることが組織方針だ。
 この日本で労働運動の再生を掲げる唯一の大集会である11・4集会の成功へ、ともに闘おう。
 (大沢 康)

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月刊『国際労働運動』(435号3-1)(2012/11/01)

月刊『国際労働運動』(435号3-1)(2012/11/01)

(写真 8・29ゼネストを貫徹し、ソウル乙支路入り口交差点の道路を占拠して集会を開く1万5000人の民主労総組合員【8月31日】)

特集

■特集 日中韓の国際連帯で排外主義を打ち破れ

 はじめに

 ヨーロッパの恐慌は、大恐慌を深化させ、米帝の没落、中国バブルの崩壊、日帝の脱落を加速している。そして反米デモがイスラム圏二十数カ国に広がっている。
 こうした全世界的な激動にあって、日帝野田は、政治支配の危機突破をかけて、排外主義と戦争政策に向かっている。野田は釣魚台(尖閣諸島)の「国有化」を強行し、これに抗議する反日デモが中国全土で吹き荒れている。
 この問題に対する労働者階級の階級的立場は、日中韓労働者の国際連帯で排外主義を打ち破ることにある。その土台は、03年から始まった動労千葉と韓国・民主労総との10年にわたる日韓連帯の中で粘り強く形成されてきた。
 第1章は、民主労総が今年闘い取ったゼネストの意義について、第2章は、民主労総を柱とする韓国労働運動の歴史と総括について、第3章で「領土」問題についての労働者階級の階級的立場について全面的に提起している。

第1章

 民主労総ゼネストを戦取――労働者の生存をかけた決起

 ゼネストに至る12年前半の闘い

 2012年、民主労総の最大の事業が2012年民主労総ゼネストをかちとることだった。
 今、韓国では李明博(イミョンバク)政権の下、資本の生き残りをかけた新自由主義政策がすべての犠牲を労働者階級に転嫁して推し進められている。何よりも非正規職問題が噴出している。
 25日間の工場占拠で闘った現代自動車非正規職の正規職化の要求闘争に対して現代自動車は無視し、むしろ攻撃を強化した。構造調整整理解雇が吹き荒れ、それと同時に民主労組に対する暴力的破壊攻撃が激しく進行している。複数労組制施行1年でそれを悪用した資本の労組つぶし攻撃が金属労組の現場を始めとして顕在化している。双龍自動車では復帰できない労働者の「死の行列」が続いている。KTX(韓国高速鉄道)を始めとして公共部門の民営化が一挙に推し進められようとしている。
 このままでは労働者が生きていけないということは労働者の誰もが切実に感じている。労働者の怒りは満ちあふれている。大統領選挙を前にして与党セヌリ党の朴槿恵候補まで「非正規職対策」を公約に掲げて労働者の怒りを取り込もうとしているほどだ。
 今、民主労総がゼネストをもってこれら一切の新自由主義攻撃に対する反撃に立ち上がらなかったら、それは民主労組運動の死につながる。民主労総は非常の決意をもって2012年ゼネストを準備し、闘い取ったのだ。

 定期代議員大会でゼネスト方針決定

 第52次民主労総定期代議員大会が1月31日午後1時からソウルのヤンチョン文化会館で開催された。この日の大会では2012年民主労総ゼネスト勝利と総選挙大統領選挙勝利を含んだ1年の事業計画と予算を審議・確定し、2011年事業評価と決算の件、規約改定の件などを審議し、決議した。また6期役員補充選挙でチョンヨンギ事務金融連盟委員長とヤンソンユン公務員労組委員長を副委員長に選出した。
 代議員たちは「ゼネスト闘争に勝利して世の中を変えよう!」「民主労総の総団結でゼネスト闘争に勝利しよう!」「整理解雇を粉砕して現場に帰ろう!」「ゼネスト闘争で整理解雇を粉砕しよう!」と叫んで2012年ゼネスト勝利を決意した。

 単位事業場代表者会議で意志一致

 4月11日の総選挙が終わって間もない4月24〜25日、2012年民主労総ゼネスト勝利のための全国単位事業場代表者修練大会が開かれた。ここで2012年ゼネストに対する現場の強固な意志一致がかちとられた。ここから8月ゼネスト組織化が具体的に始動した。
 600名の全国地域の単位事業場代表者たちが一堂に集まり、下からのゼネストを決意して、その実行計画を具体的に討論した。金属労組、建設産業連盟、保健医療労組、公共運輸労組・連盟が産別計画を発表し、キムヨンフン民主労総委員長がゼネスト闘争の今後の計画を説明した。
 単位事業場代表者たちは産別・連盟別に編成された組単位に集まり分班討論を開いた。参加者たちは6月末警告ゼネストと8月ゼネストの意義と必要性、6月末警告ゼネストと8月末ゼネスト成功のために多様な実践と課題を討論し、ゼネストを成功させるための決意を固めた。その後、代表者たちは産別連盟別に集まり総合討論を行った。
 全体集会で各労組委員長らが闘争決意発言を行い、民主労総委員長がまとめの発言をした。
(写真 釜山新港の貨物連帯ストライキ出征式【6月25日】)

 口火を切った貨物連帯と建設労組ストライキ

 

貨物連帯(組合員1万2千人)が6月25日朝から無期限全面ストライキに突入した。同時に、コンテナ輸送の中心地である釜山新港と京仁ICD(内陸コンテナ基地)で、釜山支部長、京畿支部長がそれぞれの物流拠点で高空籠城闘争に決起した。スト初日、釜山港を往来するコンテナ車両約2千台のうち600台以上の運行がストップ。1日1万台を超える全車両運行量が30%以上も減少した。大型トラックは全国で運行している8万2千台中、初日には37%にあたる3万台が止まり、2日目からは8万台以上がストに参加した。非組合員も含め90%以上が運行を拒否し、浦項鉄鋼工業団地、釜山港などで80%以上の運行が止まった。
 「車を走らせる奴隷」とまで呼ばれる貨物労働者は、個人事業主と定義され労働三権を認められていない特殊雇用労働者だ。多段階下請け構造のもとで斡旋手数料という形で中間搾取され、受け取る運送料は荷主が支払った運賃の63%。しかもその中から道路費と燃料代を含む油類税を負担し、買い取った車両の代金を返済しなければならない。その上、自動車用軽油価格の高騰が続いている。軽油に付加される税は約40%、1人の貨物労働者が納める油関連税は収入の58%にも上る。
 日常的な長時間労働と深夜運行、交通事故発生率の増加、死亡事故……。しかし労災保険はない。黙っていたら殺される! ともにストに立ち上がった建設労組も同じだ。
 全国建設労働組合(2万9千人)は、6月27日から18項目の対政府要求を掲げて無期限の全面ストに突入。翌28日には組合員1万5千人がソウル市庁広場の総決起大会に集まった。タワークレーン操縦士たちが現場を放棄し結集したことで全国1千カ所、80%の工事現場が止まり、非組合員のスト参加が広がった。
 現在、韓国の建設労働者の70%が臨時・日雇いであり、低賃金の上、慢性的な賃金・建設機械賃貸料の未払い問題に苦しんでいる。労災での死亡率も高いが、特殊雇用労働者のため労災保険が適用されない。昨年1年間に建設現場での事故で死亡した建設労働者は577人に達した。安全対策が軽視され構造的な大規模事故が多発している。
 建設労組は28日の対政府交渉で前向きの回答を引き出したとして一部地域を除きストを中断し、貨物連帯も29日、運送料の9・9%引き上げをもってスト中断を決定したが、闘いは続いている。

(写真 金属労組現代自動車支部のストライキ出征式【7月13日】)

 6月警告ストライキ

 6月28日午後5時、「非正規職撤廃! 整理解雇撤廃!労働悪法改正!」の3大要求を掲げて民主労総が、ソウルの汝矣島の国民銀行前で警告ストライキ・集会を開いた。25日から全面ストに突入した貨物連帯、27日からストに入った建設労組を始め、金属労組、公共運輸連盟、保健医療労組、事務金融連盟、化学繊維連盟、公務員労組、女性連盟、民主一般連盟、地域本部組合員など3万人を超える労働者が結集した。
 民主労総は、李明博政権に対し3大要求の実現とともに労働弾圧中断、労働基本権および民衆生存権保障のための10大課題、79項目の社会改革立法を要求し、政府・資本が応じない場合は8月28日から無期限ゼネストに突入する方針を明らかにした。

 ゼネストを力強く牽引した金属労組

 金属労組は7月13日、20日、8月10日、17日と4次にわたるゼネストを展開した。このストライキには10万人以上の組合員が参加した。それぞれ4時間の時限ストライキであるが、これは2006年に金属労組が発足して以来最大規模のストライキだ。△深夜労働撤廃△非正規職正規職化△元下請不公正取引根絶△労働時間短縮ともに用役侵奪(警備員による職場制圧)、労働弾圧糾弾などを掲げてストライキに立った。
 現代自動車支部4万4千、起亜車支部3万がストライキに参加したが、それぞれ4年ぶり、3年ぶりのスト突入だった。この金属労組ゼネストは中央・支部別交渉が進められている渦中で展開された。中央・支部別交渉の最大の核心は昼夜2交代制の実施だ。
 そして金属労組のゼネスト闘争が行われている同時期に自動車部品のマンドとSJM、パレオ電装などでの会社と公権力が一体となって用役暴力ガードマンを大量動員した攻撃的職場閉鎖、それに引き続く御用第2労組をつくり上げて多数労組にして金属労組を無力化してしまう労組破壊攻撃が次々発生した。これに対する労働者の怒りが4次にわたる金属労組ゼネストの原動力ともなった。

 16地域でストライキ

 拠点籠城に突入
 8月29日のゼネストを前に民主労総が全国16の地域でストライキ拠点籠城に突入した。16日午前11時、民主労総は国会近隣の産業銀行前で記者会見を行い、ゼネスト準備状況と8月28日までのストライキ拠点籠城の突入を表明した。
 そして「民主労総は8月31日、大規模ソウル集結を頂点として再び力を結集して11月全国労働者大会、その後の大統領選挙闘争に至るまでより大きく、より強く闘う」と表明した。

 ゼネストから下半期の闘いへ

(写真 8・31集会隊列がソウル駅を出発して南大門、韓国銀行前を過ぎてウルチ路まで行進した)

(写真 民主労総は8月政治ゼネストに続き9月下半期闘争を警告した)

 8月29日、民主労総13万余ゼネスト突入

 民主労総は8月29日、ゼネストに突入した。
 民主労総は用役暴力糾弾と非正規職撤廃などを掲げたこの日のゼネストに金属労組など組合員13万7000余人が参加したと発表した。
 集会は問題となっているSJMの工場がある安山市で行われた。午後3時、京畿道安山市庁前でゼネスト集会を開きSJMの違法職場閉鎖と用役暴力を糾弾した。この集会には民主労総傘下のソウルと京畿地域の金属労組、建設労組、保健医療労組、公共運輸労組など民主労総組合員と市民社会団体2千人が参加した。集会で「用役ヤクザの暴力侵奪糾弾と責任者処罰」「職場閉鎖即刻撤回」「特殊雇用労働者基本権をかちとる」などを要求した。
 集会後、雇用労働部安山支庁に行進してSJM事態解決を要求し、安山のパンウォル工業団地内のSJM工場に移動して集会を続けた。
 SJM工場前に到着した集会参加者たちは鉄条網の撤去を始め警察に妨害された。武装警察の撤退を要求してぶつかり合いも生じた。工場正門前で7時30分からSJM闘争勝利のための文化祭を行い29日の日程を終えた。

 8月31日ゼネスト集会

 民主労総は8月31日、民主労総組合員1万5千人が参加する大規模都心デモを行った。この日の都心デモと集会には地域別ストライキに参加していた組合員の一部がソウルに上京して闘った。
 31日午後3時、ソウル駅に集結して乙支路入り口まで都心デモ行進を繰り広げた。午後4時からは乙支路入り口十字路を占拠して1時間30分ほどの集会を行った。
 労働者たちは1時間30分の間、乙支路入り口駅一帯の4方向の全車線を占拠して民主労総ゼネスト要求を叫んだ。
 「社会両極化を煽る非正規職を撤廃しよう!」
 「解雇は殺人だ。整理解雇を撤廃せよ!」
 「労働者を弾圧する労働法を再改定せよ!」
 「労働時間短縮で徹夜労働をやめさせよう!」
 「巨大企業の腹を肥やす民営化を阻止しよう!」
 また組合員たちはそれぞれのチョッキと帽子、ハチマキをして、政権と資本の用役を使った労働現場侵奪と暴力、資本の腹を肥やす民営化、労働組合を締め付けて破壊する労働悪法を糾弾するプラカードを掲げた。
 「用役暴力を傍観する労働部を糾弾する!」
 「ゼネスト闘争で労働法全面改訂」
 「SJM暴力侵奪用役ヤクザ出て行け!」
 「医療、KTX、空港、ガス、地方自治体清掃業務の民営化反対!」
 午後5時30分頃,集会を終えて現場に戻った。

 下半期の闘いの展望

 8月末の民主労総ゼネストを経て、民主労総の下半期の闘いの展望と政権・資本との激突点はどこにあるのかを簡単に見ておこう。
 民主労総は9月6日の中央執行委員会と9月26日の臨時代議員大会などを経て△役員直選制△下半期闘争△大統領選挙など新しい課題を遂行して行くという方針をうち出す。
 これに従い、民主労総は9月第1週の保健医療産別ストライキを始まりに、「整理解雇反対闘争、非正規職のない仕事場をつくる1千万宣言運動」と「非正規職10万ロウソク行進」などの闘争を続けていく計画だ。また10月公務員労組のゼネスト闘争と公共運輸労組連盟の総力闘争、教育大改革など大規模闘争も計画されている。
 民主労総は「このような下半期闘争は11月全国労働者大会を経て頂点に向かうものであり、闘争の社会的影響は大統領選挙政局をとおして表面に出てくる」としている。
 大統領選挙闘争の過程で「非正規職問題」を選挙闘争の争点に押し上げることが重大な課題となっている。また金属労組のマンド、SMJを始めとする現場で進行している民主労組つぶしの資本の卑劣な戦略的な攻撃を全労働者階級と全資本の激突闘争としてそれに勝利し抜く闘いをつくりあげていくことが重要な課題だ。

第2章

 韓国労働運動の歴史と総括――新自由主義粉砕、非正規職撤廃へ

 民主労総の創立と闘いの発展

 「社会改革の原動力」を謳い1995年に設立

 民主労総は、1995年設立の韓国の労働組合の最大のナショナルセンターである。その設立宣言では「世の中の主翼であり、社会改革と歴史発展の原動力であるわれわれ労働者は今日、自主的で民主的な労働組合の全国中央組織、全国民主労働組合総連盟の創立を宣言する」と端的に謳いあげている。
 さらに次のように高らかに宣言している。
 「(民主労総は)統一と団結した力を基礎に自主的で民主的な労働組合の全国中央組織を結成する。民主労総に結集したわれわれは人間らしい生活と尊厳性を維持できる労働条件の確保、労働基本権の争取、労働現場の非民主的要素を剔抉し(えぐり出し)、産業災害追放と男女平等の実現のために苛烈に闘争するのだ。さらにわれわれは社会の民主的改革を通して全体国民生活の質の改善とともに祖国の自主、民主、統一を早めるための苛烈な闘争を展開する。これとともに国境を越えて全世界の労働者の団結と連帯を強化し、侵略戦争と核兵器収束を通じた世界平和実現のために努力する」
 「このような課題を実現するために民主労総は未組織労働者の組織化と組織の拡大強化に拍車をかける一方で、産業別共同闘争と統一闘争を基礎にし、産業別労組を基礎にした全国中央組織として発展するのだ。また民主労総は政権と資本からの自主性と組合内民主主義を強化し、全体労働組合運動の統一と団結のために邁進し、諸民主勢力と連帯し、政治勢力化を実現する」
 そのために別掲(次ページ)の課題を掲げている。

 新自由主義粉砕、非正規職撤廃へ

 民主労総は現在25の産業別組合・連盟と16の地域本部によって構成され、70万人弱の組合員から成っている(33n参照)。世界大恐慌がますます深化し、2番底、3番底に向かう帝国主義と対決する韓国労働者と日本の労働者の、国際連帯の共通で共同の課題は、新自由主義粉砕、民営化粉砕、非正規職撤廃だ。
 設立当時から非正規職撤廃を掲げる民主労総は、96〜97年ゼネストを経て、韓国資本主義のIMF危機(アジア通貨危機に際して、韓国はIMF〔国際通貨基金〕の管理下に置かれた)の攻撃によって、整理解雇制などが導入され、新自由主義構造調整攻撃に対する苦闘を強いられてきた。しかし、2009年の双龍自動車支部労働者の77日間の平沢本社工場占拠ストライキから製造業部門の新自由主義攻撃への反撃に転じ、2012年の歴史的情勢を迎えている。
 現在に至る主客の情勢の推移を07年から見ていく。

 イミョンバク政権下での闘いの展開

 2007年12月の大統領選で当選した李明博は、続く08年春には米国産牛肉のBSE(牛海綿状脳症)問題で輸入に反対する100万人のロウソクデモでほとんど打倒寸前に追い込まれた。労働組合―民主労総の対応が遅れたために大衆的闘いと結合できず政権はかろうじて延命する。
 李明博政権が成立した07年秋にはサブプライム住宅ローン問題が爆発し、ついに08年秋にはリーマン・ショックによる世界大恐慌情勢への突入で韓国資本主義と李明博政権は崩壊寸前の局面だった。野放図な資本の投入などで延命を図った米帝などとともに、韓国資本主義が息継ぎできたのは、日帝の脱落状態と円高のもとでの輸出攻勢であり、中国市場を中心としたアジア市場への拡大などであった。
 同時に、すさまじい新自由主義攻撃として労働者階級への非正規職化攻撃が襲いかかった。韓国の非正規職の比率は、公式統計でも2009年には55%を優に超えていた。新自由主義構造調整攻撃と大量の資金投入で98年のIMF危機を乗り切ったかに見える韓国資本主義は、その矛盾を抱えたまま、労働者への整理解雇攻撃と非正規職労働者の量産によってしのいだに過ぎない。
 しかしその攻撃は苛烈を極め、非正規職労働者の相次ぐ焚身(焼身)や自殺など、労働運動の存否が問われる情勢が2000年代初頭から韓国労働者を襲った。「労使政協議」などへの民主労総の抱きこみ攻撃=体制内化攻撃、労使協調路線への屈服を迫る攻撃に、民主労総指導部が対応し切れたとは言えない。
(写真 ソウルの清渓広場で行われた米国産牛肉の輸入に反対するロウソクデモ【2008年5月3日】)

(写真 警察部隊の工場突入を阻止する双龍自動車支部組合員【2009年7月22日】)

 双龍自動車ストと韓進重工業籠城闘争

 しかし、87年労働者大闘争以来間断なく闘い抜いてきた韓国労働者の民主労組運動の新自由主義攻撃に対する反転攻勢は、08年世界大恐慌突入情勢下の整理解雇攻撃に対する反撃として09年6〜8月の双龍自動車労働者の工場占拠ストライキの77日間の闘いとして爆発した。
 そして2010年11月、韓国資本主義の総本山の一角を占める現代自動車の本社工場、蔚山工場の非正規職労働者の正規職化を要求する25日間の工場占拠闘争として爆発した。
 この渦中で延坪島への北朝鮮の砲撃に対して「戦争はここ蔚山で戦われている」と言った韓国労働者の闘いこそ、北朝鮮・中国侵略戦争策動に走る米帝への一大反撃となった。
 またこの時期、同時に、釜山の韓進重工業の整理解雇攻撃に反対する労働組合員と民主労総釜山地域本部指導委員キムジンスクさんが、影島工場の85号クレーンに登ってこれを占拠し、03年の支部長の死に対する反撃として、整理解雇攻撃の撤回を求める、ほぼ1年にわたる籠城闘争を貫徹した。この闘いに呼応した韓国の労働者と市民運動が、あの「希望バス」運動であり、釜山の韓進重工業の闘いに連帯して決起した。数次にわたる「希望バス」は、延べ10万人を超える労働者人民がその隊列に参加した巨大な闘争となって、2011年11月上旬、韓進資本についに整理解雇撤回を約束させ、キムジンスク指導委員は生きて85号クレーから降りた。連帯した労働者らと実に感動的な対面を果たした。
(写真 韓進重工業の85号クレーンから笑顔で降りるキムジンスク女史【20011年11月10日 釜山】)

 複数労組制による御用労組との闘い

 この間には、2011年5月に現代自動車などにベアリングを供給するユソン企業労働者が「夜は眠りたい」という切実な要求に基づくストライキを行った。この年7月に施行された複数労組制―交渉窓口単一化による第2組合=御用労組設立攻撃が相次ぎ、ユソン企業でも用役ガードマンの暴力と工場立ち入り禁止、第2組合設立の攻撃で厳しい局面に立たされたが、労働者らは組合に団結しており、自動車産業労働者の過酷な殺人的労働に反対する闘いは現在進行形で継続されている。
 双龍自動車支部の労働者は無給休職からの復職を協定し籠城を解いたが、会社は約束を守らず、誰一人復職をしていないばかりか、労組解体攻撃と第2組合策動などの攻撃が続き、22人の労働者が自ら命を絶った。
 韓進重工業でも整理解雇を撤回すると協定したが、いまだそれは実現されていないばかりか、影島工場での生産縮小攻撃で仕事を奪われ、労組は団結を守っているが、苦闘を続けざるを得ない状態だ。
 現代自動車非正規職支会の労働者も、大法院での下請不法判決をかちとったが、正規職には転換させない資本の攻撃が続き、労組破壊のための用役ガードマンの暴力的襲撃が日常化している。工場内の組合事務所に立ち入ることさえできずにいたが、この間の闘いで出入りすることをかちとっている。

 日本遠征で整理解雇を撤回させたKEC支会

 また、金属労組亀尾支部KEC支会は度重なる会社側の襲撃に300日を超えるストを貫いたが、2011年7月の複数労組制施行で第2組合がつくられ交渉窓口を奪われ、2012年初めには75名が整理解雇される事態となった。KEC支会は会社の不正経理を暴くため、動労千葉の支援で日本遠征闘争を行い、ついに不正の暴露を恐れた会社が75名の解雇撤回を約束し職場復帰を果たした。韓国労働運動史上初めて整理解雇撤回で復職したのだ。だが第2組合との交渉窓口設置などの攻撃と闘いながら、いまだ多数の被解雇者全員の復職をかちとるため、隊列は強固に維持されている。
 整理解雇をかちとり現場に復帰することがいかに困難なことか。その意味でも双龍自動車支部や韓進重工業支部の労働者の闘いはこれからであり、現代自動車非正規職支会の労働者の闘いも始まったばかりだと言うことができる。
(写真 KEC日本子会社TSジャパン抗議訪問に動労千葉青年部など30人が結集【5月22日】)

 金属労組の5回にわたるゼネスト

 すべてがこれからだ。世界大恐慌が2番底、3番底に向かう今、韓国資本主義はその生き残りをかけて激しい新自由主義攻撃をかけている。金属労組のマンド支会、SMJ支会などへの職場閉鎖攻撃と用役ガードマンの暴力と第2組合設立などだ。金属労組はこれに対し7月の2回の13万人のゼネストに続き、8月の3回のゼネストを貫徹して団結を固めている。
 現代自動車やサムソンを中心とする資本は新自由主義の絶望的展開で延命を図ろうとし、それに対し生きるための金属労働者の闘いが金属労組のゼネストであり、非正規職撤廃の闘いだ。09年の双龍車77日の闘いなどに続く、韓国労働者階級の第2ラウンドの闘いが金属ゼネストであり、それは「総資本対労働者階級の決戦」となっている。現場労働者が民主労組運動の旗を守り抜き闘いを進めているのだ。

 2000年代初めの民営化・非正規職化

 このように、2008年のリーマン・ショックに始まる世界大恐慌下で、韓国資本主義の非正規職化攻撃と整理解雇攻撃に対して韓国の労働者は巨大な底力を発揮して大反撃を開始している。
 2003年〜2000年代初めの新自由主義攻撃は、一方では公企業の民営化攻撃として加えられ、他方では製造業部門、とりわけ金属産業の非正規職化と整理解雇攻撃として加えられてきた。
 民営化攻撃に対して02年初めには、鉄道、ガス、発電の3労組が共同でゼネストに立ち上がった。特に発電労組は40日に及ぶストを貫いて闘い抜いたが、執行部がスト収拾方針を出すなか、発電産業の4分社化と労組破壊攻撃で8000人の組合が現在2000人にまで減少した。
 しかしこの3労組のゼネストは盧武鉉政権の労使和解攻撃に立ち向かう労働者の反撃ののろしとなった。また鉄道労組は公社化されたとはいえ、その後も果敢にストライキを貫いて、激しい組合破壊攻撃、懲戒処分攻撃による解雇や減給攻撃にも屈せず、現在も2万7千人余の組合員が団結してKTX(韓国高速鉄道)の民営化を阻む中心に立っている。
 金属産業に加えられた非正規職化攻撃は熾烈を極め、03年前後には現代重工業のパクイルス烈士を始め多数の労働者が焚身抗議自殺を行った。当時のタンビョンホ民主労総委員長は「十数回も葬儀で組合員を送らねばならなかった。これ以上死なせてはならないと思った」と述べている。

 非正規職撤廃を正面に据えなかった指導部

 民主労総は95年の設立当初から「非正規職撤廃」を掲げている。すでに韓国資本主義は非正規職量産の激しい攻撃を加えていたのだ。しかし民主労総指導部が非正規職撤廃を正面課題に据え切ることはできなかった。そのためIMF危機後の激しい攻撃にも十分に対応できず、むしろ非正規職労働者が全体の半数を超える事態を生み出してしまった。これは内部からの批判にもあるとおり、民主労総が大単産の正規職を中心に構成されていることによるものと言えるし、民主労総指導部が非正規職撤廃の闘いに力を注いでこなかったからであった。
 新自由主義攻撃の核心とも言える民営化と非正規職量産に対し闘ったのは、ほかならない当の非正規職労働者であり、それは当初、絶望的な焚身抗議であった。現場労働者らはこれに激しく反応し、非正規職撤廃の攻撃が開始されていく。その頂点に立つ闘いが現在闘われている現代自動車非正規職支会の闘いだ。
 非正規職撤廃に民主労総指導部が対応し切れなかった理由として、その過半数を占める政派が体制内化を進めているからである。民主労総指導部と現場労働者の間にはねじれが存在する。「官僚化」した指導部を交代させろと叫ぶ現場労働者も多くいる。

 労働者の「政治勢力化」の課題

 離合集散し統合進歩党に 現場からは激しい反発も

 民主労総指導部は「2012年に労働者政治勢力化」を実現しようと呼びかけ、2012年4月の総選挙と12月大統領選に進歩勢力が勝利することを目標に掲げた。そうして始まったのは、08年に分裂した民主労働党と進歩新党の統合方案であった。政派でいえばNL系と中央派(後述)が再び統合することであった。
 これには現場労働者から激しい反発が起きたし、自派の勢力拡大に走った各政派は離合集散を繰り返し、結局、進歩新党の一部と民主労働党が統合し、国民参与党や社会党も加わり「統合進歩党」を立ち上げ、総選挙に臨んだ。残った勢力は「進歩新党」を名乗り総選挙に出馬した(議席はなく、得票数も足りず解散し、再建中)。
 「統合進歩党」は総選挙では過去最高の13議席を獲得したが、その直後から比例区候補選定のインターネットでの党内投票で主流派たる「党権派」による不正投票が発覚し、現在も収拾のめどが立たない状態が続いている(分党することになる)。「党権派」があくまで当選者の辞任を拒否し続け、反主流派と激しく対立している。大統領選の12月が近づき候補選定が迫る中でのこの事態だ。この場合も統合時と同じように妥協に走るのが党権派であり、反主流派も同じ穴の何とかだ。
 韓国は保守政党として「セヌリ党」(旧ハンナラ党)があり、李明博現大統領出身の政党で、12月の大統領選には朴槿恵(パククネ)が候補に決まった。第2の勢力が民主党から名を変えた「民主統合党」で、続いて「統合進歩党」である。「進歩新党」や「緑の党」などが再建途上にある。

 NL系と中央派

 いわゆる政派について考察してみる。
 かつて80年代に「社会構成体論争」で韓国社会を「半植民地半封建社会」と規定し「反帝反封建民族解放闘争」を中心に活動を進めるグループをNL系と総称する。労働運動内の過半数を占める多数派である。現在的には民主労働者全国会議(全国会議)≠ェその中の多数派で、民主労総の中央執行権力を握っている。「統合民主党」内で「党権派」といわれるのがそれだ。北朝鮮スターリン主義の主体思想を理念としていると言われる。この全国会議のほかに、ここから分離したグループに現場連帯≠ェある。また「非党権派」として革新連帯(国民派)≠ェある。これまでは全国会議と歩調を合わせてきた。かつての民主労総委員長のイスホやイソッケン、チャスリョン保健医療労組元委員長などが有名だ。
 またNL系列と言われ、左派からは右派、右派からは左派といわれる独特の存在がチョンテイルに続く民主労働研究所とサイバー労働大学≠セ。教育研究を中心としている独自の形態を取っており影響力も大きく、左派との連帯活動を強めている。
 中央派と総称されるグループは、いわば現場左派(PD派)とNL派の中間に位置するグループのことだ。かつては前進≠ニいう名でグループを形成していたが解消した。旧「進歩新党」がそれに当たる。代表的人物としてタンビョンホ元民主労総委員長や金属労組の事務処長だったシムサンジョン統合進歩党現国会議員が有名だ。現場労働者としては金属労組や公共連盟の前委員長らを擁する現場労働者会≠ェある。またかの02年発電ゼネスト時の委員長イホドンもかつて前進≠ノ名を連ねていた。

 PD系列(現場派)と政派に属さない活動家

 PD系列(現場派)には多様な政派がある。最大政派は社労委(社会主義労働者政党建設共同実践委員会)≠ナ、その中心の労働者の力#hが呼びかけて2010年に形成された。綱領草案をめぐる討論で2011年春に社労委から離脱した労革推(労働者革命党推進委員会)≠ヘ社労委とともにマルクス主義を正面に掲げた運動家らで構成されている。
 解放連帯≠ヘ最近、国家保安法弾圧を受けた政派で、反資本主義共同戦線構築と社会主義労働者政党を提起している。社会進歩連帯≠ヘPD系列の核心的な変革論である「社会構成体論争」における「新植民地国家独占資本主義論」を基盤とする「反帝反独占民衆民主革命論」を提出したグループで、ソ連崩壊後のフランスのアルチュセールらを思想的根拠としている。自身を社会主義勢力としつつ「大衆運動の復元と拡大」に焦点を据えている。
 労建闘(革命的労働者政党建設現場闘争委員会)≠ヘかつて社労連に結合した組織で「現場の中から」という旗幟の下、現場闘争に焦点を当てている少数のグループだ。党建設運動を事実上放棄しているようだ。労政協(労働者政治協議会)≠ヘ少数で労働社会科学研究所を中心に活動している。チェマンス氏らが理論的中心で、スターリン主義的グループといわれている。労働解放≠燻ミ労委離脱グループだ。
 タハムケ≠ヘトロツキー主義のグループで、イギリスの社会主義労働者党(SWP・トニー・クリフなど)の系列だ。当初国際社会主義(IS)≠ニして出帆し、2000年代初めにISを解散して民主労働党への加入戦術をとりタハムケ≠ノ改称した。
 「現場派」はこうした政派はむしろ少数であり、それに属さない多くの現場活動家が存在している。「現場派」といわれるゆえんだ。こうした現場派の活動家が下から民主労組運動を支えている。
 これらに加え、労働戦線≠ニいう統一戦線的グループがある。いわば労働運動内の左派活動家の運動団体だ。数百名がその影響下にあると言われている。11年4月30日、メーデー前日にマロニエ公園で社会主義を公然と掲げた政治集会が大雨を突いて行われた。朝鮮戦争以来初めての社会主義者の公然集会だ。民主労総執行権力の限界を突き破ろうとする新たな時代を告げる集会だ。

 議会主義は労働者に支持されず闘い爆発

 民主労総を中心に2012年労働者政治勢力化を進めた背景には、階級情勢の激動期への突入がある。先に見たように07年サブプライムローン、08年リーマン・ショックで主客の情勢は一変した。09年には双龍車支部のストが始まり、11年にはチュニジア、エジプトの革命が起こり、ギリシャやスペインの労働者が激動期を前進させている。
 こうした情勢に乗って民主党とともに議会で多数を制することができるともくろんだ統合派は「統合進歩党」を無理やりつくり出したのだ。民主党も韓国労総の委員長と統合して「民主統合党」となったが、総選挙では過半数を制することができず、朴槿恵の「セヌリ党」がかろうじて過半数を制した。
 民主労総設立時から「労働者政治勢力化」が掲げられているが、議会主義で世の中を変えるとは労働者の誰も信じてはいない。議会での交渉のたびに妥協を重ねるやり方に対する不信は山積していたのだ。労働者の命がけのストライキを交渉のための道具としてしまう議会主義的やり方は支持されなかった。そしてその対極で現代自動車非正規職の闘いや韓進重工業での籠城闘争が貫徹されたのだ。

 民主労組運動の苦闘

 韓国の労働者は、新たな民主労組運動を構築するために整理解雇粉砕、非正規職撤廃、新自由主義粉砕を継続して闘い抜いている。日本の労働者も非正規職撤廃、新自由主義粉砕、民営化阻止の闘いを動労千葉、動労水戸を先頭に闘っている。全世界の労働者が新自由主義粉砕、非正規職撤廃を闘っているのだ。
 日韓労働者の国際連帯は今年、新たな局面に入ったのだ。同じ闘いを自らの現場で闘い抜くことこそ国際連帯だ。11・4労働者総決起集会を圧倒的にかちとり、日韓、世界の労働者の国際連帯をさらに前進させよう。
【戦後から民主労総結成までの韓国労働運動の歴史については本誌「世界の労働組合」(韓国編/民主労総)を参照して下さい】
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 ◎民主労総創立大会で掲げられた闘いの課題

・自主的で民主的な労働組合運動の歴史と伝統を継承し、これを発展させる
・人間の尊厳性と平等が保障された本当の民主社会を建設する
・労働者の政治勢力化を実現し、諸民主勢力との連帯を強化する
・言論、出版、集会、結社、示威、祖国の自由などの民主的諸権利を争取する
・民族の自主性を確立し、分断された祖国の平和統一を実現する
・産業別共同交渉、共同闘争体制を確立し、産業別労働組合を建設する
・未組織労働者を組織し、全体労働運動を統一する
・権力と資本の弾圧粉砕と教師、公務員の団結権などの労働基本権の完全争取
・資本の合理化戦略による労働統制と労働強度強化を阻止する(非正規職撤廃)
・共同決定を基礎にした経営参加を拡大し、労働現場の非民主的要素を剔抉する
・生活賃金と週40時間労働制を争取し、有給休日、有給休暇を拡大する
・男女、職種、学力、国籍間差別を撤廃し、同一労働同一賃金を争取する
・解雇と失業を防止し、完全雇用と雇用安定を争取する
・「産業災害と職業病を追放し、快適で安全な作業環境を争取する
・男女平等を実現し、母性保護を拡大し、女性の生涯的職場を争取する
・社会保障制度と住宅、教育、医療制度を改革し、全国民の人間らしい生活を争取する
・国内外の独占資本に対する規制を強化し、中小企業と農業を保護・育成する
・税制、財政、物価、金融、土地、環境、交通などと関連する制度と政策を改革する
・退廃的な(資本の)文化を剔抉し、健康な民族文化を確立する
・全世界の労働者と連帯を強化し、戦争と核兵器の脅威に対決し、世界平和を実現する

第3章

 「領土」問題への階級的立場――国境を越えた国際的団結を

 日韓、日中の対立的事態と排外主義の本質

 世界大恐慌の激化と新自由主義の絶望的凶暴化のもと、脱落日帝の改憲・戦争策動として「領土」問題が噴き出している。それが独島(竹島)と釣魚台(尖閣諸島)問題だ。
 中国は、今やアメリカに次ぐ世界第2位の経済大国となった。新自由主義のもと、13億人の巨大市場と安価な労働力を狙って各国帝国主義がこぞって中国市場に参入し生産基地とした。その結果、中国全土に巨大な規模で労働者が生み出され、スターリン主義の統制と弾圧をはねのけ、自主的に団結し、資本との闘いに立ち上がっている。
 さらに、帝国主義資本の中国進出の結果、今年7月の米貿易赤字は420億jに拡大。うち対中国赤字が293・8億jという。米シンクタンクによれば2001年から11年の10年間に対中国貿易赤字によりアメリカ国内で270万人以上の雇用が喪失したというのだ。米帝はTPP(環太平洋経済連携協定)を対日争闘戦と「中国包囲網」として位置づけて進めている。
 米帝オバマは、今年1月に「アジア太平洋重視」の新軍事戦略を発表した。これは、軍事的・経済的に台頭した中国スターリン主義を脅威と認定し、対中対峙・対決戦略をもって「アジア太平洋での米軍の増強」を図るものだ。
 この新戦略に基づき米軍が打ち出した大規模な中国侵略戦争計画が「エアーシーバトル」だ。これは海空両軍の統合作戦能力を高め、中国のアジア・太平洋への軍事進出を抑え込もうというものであり、垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの普天間飛行場への配備もその一環だ。オスプレイを沖縄に配備すれば、東アジアから西太平洋地域における米海兵隊の緊急展開能力は格段に向上する。
 この中で自衛隊がエアーシーバトルの一翼を担うことになり、日米軍事演習などの激化と自衛隊の実戦的強化と直結し、日帝を凶暴な改憲と戦争衝動に駆り立てている。自民党総裁選の面々の言動を見よ! 原発再稼働・原発政策の維持・強化、領土・改憲・戦争の言葉しか出てこない!
 そして、日韓、日中間での「領土」問題をめぐる対立が激化している。
 8月10日、韓国の李明博大統領が突然、現職大統領としては初めて独島(竹島)を訪問した。14日には天皇の訪韓には謝罪が必要だとの発言が飛び出した。以来、外交文書のやりとりすらままならない状態となっている。
 釣魚台をめぐる事態は、8月の香港活動家らの上陸・逮捕、入管法違反での強制送還から、対する日本の国会議員や右翼メディアらの上陸騒ぎなどで緊張が増す中、民主党・野田政権は9月11日、「地主」の男性から3島(魚釣島、北小島、南小島)を20億5000万円で購入し、国有化したと明らかにした。これに対し、中国、台湾では大規模な抗議デモが激発し、北京の日本大使館には数千人が押し掛ける事態となっている。日中双方のマスコミや政治家がこぞって「領土を守れ」と叫んでいる。
 福島の現実と原発再稼働、消費大増税、オスプレイ配備、外注化・非正規職化に対する激しい怒りが爆発し、今や統治能力崩壊の危機に直面している野田政権が、この「領土」問題を使って中国や韓国への排外主義を扇動し、労働者人民の決起を分断、圧殺しようとしているのだ。

 民主労総の闘いに追い詰められた李明博

 また同じように政治危機、体制危機を深める韓国・李明博政権、中国の残存スターリン主義政権も、領土問題をむしろ反動的に組織し、支配の危機を排外主義と労働者人民の決起の圧殺でのりきろうとしている。
 この夏、民主労総は傘下の金属労組のゼネスト決起を牽引軸として、@非正規職撤廃、A整理解雇撤廃、B労働悪法再改正、C長時間労働時間短縮、D民営化阻止を5大要求として全面ストライキ方針で闘った。この労働者階級の闘いに追い詰められ、さらに実兄が汚職で逮捕されるなど、政治危機の真っただ中にある李明博は、12月の大統領選挙に向けて、独島訪問のパフォーマンスで政治的な起死回生を狙った。だがそんなことでは怒りに燃える労働者階級を、民主労総を黙らせることなどできない。

 中国労働者の怒りが反日デモとして爆発

 中国、台湾でも、反日抗議闘争に立ち上がっている労働者人民の怒りは、同時にスターリン主義官僚や工場主、さらに日帝資本に向かっている。その怒りは早晩、中国スターリン主義体制の打倒にまで成長するだろう。
 最末期帝国主義の絶望的延命策である新自由主義は、強欲な利潤追求のためにいともたやすく国境を越え、世界中に侵出・侵略した。その結果、世界中で膨大な労働者が生み出された。
 体制的危機を抱えた中国スターリン主義は79年「改革・開放」路線を打ち出し、外資導入へと道を開けた。以来、安価な労働力と13億人を擁する中国市場には帝国主義資本が殺到している。今や日本を抜いてGNP(国民総生産)世界2位の中国市場。しかし、それを支える中国人労働者の賃金は、1カ月1000元(約1万2500円)程度なのだ。
 10年5月、ストライキで中国にあるホンダ全工場の生産をストップさせた中国人労働者たち。80年代生まれの青年労働者は「ホンダ! 世界500強の企業の一つで09年には40億元(約500億円)以上ももうけた会社がたった64元しか賃上げしない!」「ホンダは日本企業だ!日本は資本主義の国だ! 中国は社会主義の国だ! 中国に投資しているんだろ! 郷に入っては郷に従え! 資本主義を押しつけるな!」と叫んだ。
 05年4月にも日本の国連安保理常任理事国入りに反対する抗議デモが激発したことがあるが、その時のデモの主体となった労働者たちは日系企業で賃上げを要求するストライキも闘っている。今回も、デモの主体となっている労働者の怒りは、超低賃金・劣悪な労働条件で過酷な搾取・収奪を行っている日系企業への怒りと一つとなっている。
(写真 中国・湖南省で行われた反日デモ【9月18日】)

 真の敵は中国スターリン主義と見ぬく

 9・18柳条湖事件(1931年9月18日、中国東北部にある柳条湖で南満州鉄道の線路が爆破され、日帝の「満州侵略」の発端となった。爆破は日本軍の自作自演だった)81周年を迎え、反日デモはさらに拡大・激化している。このデモの拡大と暴動化は、すでに中国スターリン主義の指揮・統制を跳ねのけ、全土を覆ううねりとなっている。重要なのは、この中で、中国の労働者の中から帝国主義とスターリン主義の釣魚台をめぐる争奪戦の正体を見抜き、こうした民族主義的排外主義的な反日デモをのりこえ、中国スターリン主義を真の敵として明らかにし、今回の事態に対応する勢力が登場しつつあることである。
 広州のデモの中には「自由・民主・人権・憲政」と書かれた横断幕が登場し、タクシードライバーが「反腐敗、抗日」のステッカーを張っている。「反腐敗」は中国スターリン主義官僚の腐敗を弾劾する言葉だ。
 以下は中国版ツィッター(ウェイポ)に書き込まれたものだ。
 「君たちは、釣魚島を守るためには、日本との開戦も辞さないという。しかし、私たちが自分たちの土地や家を守ろうとすると、(中国政府によって)労働教養所(裁判なしで人を収容できる強制収容所)にたたきこまれ、監獄にぶちこまれ、さまざまな理由をつけて弾圧され抑圧されるではないか! これで良いのか!」
 「人権がなければ、国土面積が増えても、奴隷労働の土地が増えるに過ぎない。……公平がなければ、経済発展が進んでも、(労働者は)搾取の苦難が増すだけだ」
 「自分の家を(中国政府の強制収用から)守りぬくことさえできないのに、小島の主権を守ろうとする。みんなは利用されており、それをまだ『愛国』だと思っている」
 こうした声は、特に経済特区である広東省深せん市の労働者から出ている。新世代農民工といわれる深せんの青年労働者(ほとんどが非正規労働者)たちは、日常的にストライキ闘争などの資本との闘いを激しく闘っている。さらに今年8月には自分たちのつくった青年労働者支援団体が中国当局によって閉鎖されるなど大弾圧を受けている。そうした弾圧への怒りが、青年労働者の階級的自覚を生み出している。
 この怒りに日本の労働者はどのように向き合い、中国の労働者に何を呼びかけるべきなのか。

 「領土」問題は排外主義・国家主義だ

 そもそも資本主義・帝国主義の「領土」問題とは何か。それは国家・領土を振りかざしての排外主義・国家主義への労働者人民の取り込みであり、ごり押しするならば必ずや戦争・改憲へと行き着く問題なのだ。
 「領土」をめぐる歴史は侵略と侵略戦争、植民地支配とともにあった。釣魚台は、日本絶対主義が1894〜95年に強行した中国侵略戦争=「日清戦争」で強奪したものである。72年沖縄「返還」で釣魚台の施政権も日本に移ったというのが日米帝の見解で、一角にある無人島、赤尾嶼と黄尾嶼は、米軍に射爆場として貸し出されており、「国有化」後の3島が海上保安庁による軍事支配に置かれることと併せ、いずれも軍事的緊張が激化するのである。
 それは韓国との緊迫状態が続く独島(竹島)も同じだ。日本は帝国主義段階への歴史的移行のもと、1905年、日露戦争のただ中で独島を「日本領土」と閣議決定して島根県に編入した。日帝は日露開戦と同時に韓国に「日韓議定書」を強要し、1次から3次に及んだ「日韓協約」から1910年韓国併合で植民地化していく過程での略奪だったのだ。日韓条約に至る協議過程で当時の朴正煕大統領が「韓日友好の妨げになる無人島など爆破してしまえ」と言ったという話があるが、「棚上げ」以外に解決できない。それが資本主義・帝国主義のもとでの「領土」問題だ。
 侵略戦争で略奪した釣魚台、独島を「固有の領土」などと強弁するのは、強盗の論理そのものだ。さらに日帝の侵略と侵略戦争、植民地支配の歴史は、謝罪・賠償はおろか、戦争責任の所在さえいまだ日帝は認めていない。

 民族・国籍・国境を越えた労働者の連帯を

 だからこそ、この歴史の決着も含め、労働者国際主義に立った日中韓3国の労働者の国際連帯が求められている。
 新自由主義が世界を覆っている。労働者階級の共通の敵の姿が今や誰にも見えるではないか。労働者階級の敵は、1%の資本家であり、その資本家を守る「国家」なのだ。民族・国籍・国境を越えた労働者の国際連帯の前で「国家」の虚像は崩れ去る。労働者階級に国境はない。マルクス・エンゲルスの『共産党宣言』も言うように労働者階級に「祖国」はなく、国境もない。「固有の領土」など存在しない。領土問題への万国の労働者の立場は、国境を越えた国際的団結とプロレタリア世界革命だ。日本・韓国・中国の労働者の国際連帯で、「領土」をめぐる排外主義と戦争の攻撃を断固粉砕しよう!
(写真 2011年11・6労働者集会で登壇した民主労総の労働者【日比谷野音】)

 日韓連帯10年の地平で11・4労働者集会へ

 来る11月4日、全国労働者総決起集会(東京・日比谷野外音楽堂)が、全日建運輸連帯労組関西地区生コン支部、全国金属機械港合同と国鉄千葉動力車労働組合の3労組と「国鉄分割・民営化に反対し、1047名解雇撤回闘争を支援する全国運動」の4者の呼びかけで開かれる。
 掲げられたスローガンは「新自由主義とたたかう労働組合のネットワークを!」「国鉄1047名解雇撤回! 外注化阻止・非正規職撤廃! 反原発・反失業をたたかう国際統一行動を!」だ。
 「領土」問題は、新自由主義と闘う労働者階級の国際的団結を破壊するために打ち込まれた刃だ。しかし、一見凶暴に見えるこの攻撃も、実は敵の弱点に過ぎない。すでに分かちがたい国際的結合が進行し、自らの職場から、地域から在日・滞日外国人とともに闘いは進んでいる。
 3・11大震災と福島第一原発事故とその後の事態を見極めた10万、20万の人びとが、「みんなウソだった!」「黙っていたら殺される!」というこの国の現実に怒って動き始めている。首相官邸・国会、さらに経産省や文科省へ数万の毎週行動が取り組まれ、9・9沖縄県民大会には県民の10人に1人、10万人を超える人びとが集まり、オスプレイ拒否を宣言した。この怒り、「生きるためにこの社会を、この世界を変えてやる!」と闘っている世界の労働者とのネットワークが動き出している。
 韓国民主労総と動労千葉との国際連帯は10年の歳月をかけて築き上げてきたものだ。日本での新自由主義攻撃としてかけられた国鉄分割・民営化攻撃に対し、解雇されても逆に団結を強化し、退くことなく闘いぬいてきた動労千葉の存在と闘いが、信頼と団結を勝ち得たのだ。その結合が、血債主義との断固たる決別へと導いてくれた。労働者階級の歴史的使命が明らかとなった。
 まさに、最大の焦点は、労働組合と労働運動をめぐる革命と反革命との激突にある。ここで苦闘し、闘う労働組合と階級的労働運動を甦らせることができた時、帝国主義とスターリン主義のもとで抑圧民族と被抑圧民族に分断されてきた労働者階級が、プロレタリアートとして国際的=階級的団結を回復することができる。民族・国籍・国境を越えたプロレタリアートの階級的団結こそ、帝国主義による侵略戦争・世界戦争を実力で阻止し、プロレタリア世界革命を現実にたぐり寄せるものなのだ。自信をもってこの道を進もう。
 非正規職撤廃は今や世界の労働者のスローガンだ。韓国民主労総やアメリカILWU港湾労働者、ドイツのゴアレーベン、日本企業と闘い抜く中国やインドの労働者、ブラジルやトルコを始め世界の労働者との「反原発・反失業をたたかう国際統一行動」として、11・4日比谷に集まろう! あふれる怒りと結びつき、この怒りをひとつに束ねて、世界を変えよう! 11・4を21世紀革命を準備する世界労働者大会としてかちとろう!

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月刊『国際労働運動』(435号3-2)(2012/11/01)

討議資料

■討議資料

 ■民主労総の組織現況■

出典:民主労総ホームページ(2010年10月現在の組織現況)

(図 民主労総の16地域本部)

●組合総数(支部も含む):1,768組合
●組合員数:677,790名
●加盟組織総数:16組織(下記一覧参照)
●組合員数に対する産別転換率:80.7%
●産別労組数:25組合
●産別組合員数:547,430名

 ――傘下組織――

●地域本部:16地域本部
 ソウル、仁川、京畿、忠北、大田、忠南、全北、光州、 全南、大邱、慶北、釜山、蔚山、慶南、江原、済州
(各地域名に「地域本部」が付く)
●地区協議会:45
●直接加入労組数:
 130組合
●直接加入労組組合員数:
 13,760名

●加盟組織(16)
 全国建設産業労働組合連盟
 全国公共運輸労働組合連盟
 全国公務員労働組合
 全国教授労働組合
 全国教職員労働組合
 全国金属労働組合
 全国大学労働組合
 全国民間サービス労働組合連盟
 全国保健医療産業労働組合
 全国金融事務労働組合連盟
 全国民主環境施設一般労働組合連盟
 全国IT産業労働組合連盟
 全国言論労働組合連盟
 全国女性労働組合連盟
 全国化学繊維労働組合連盟
 韓国非正規職教授労働組合

 87年労働者大闘争以後2000年までの労働運動の主要な闘い

 ▼1987年6月抗争

 1月にパクチョンチョル烈士が虐殺されたことを契機に、野党と在野勢力は5月に大統領直接選挙制を要求し「民主憲法獲得国民運動本部」を結成。6月10日、明洞聖堂を拠点に6月抗争が始まる。6月23日の平和大行進を頂点に、全国34都市、4郡以上の地域でデモ・集会が行われ、延べ400〜500万人が参加。「6・29宣言」(盧泰愚政権による「民主化」宣言)受け入れで次の局面に。
(写真 1980年代末の労働法改正を求める労働者階級の闘い)

 ▼1987年7〜9月労働者大闘争

 7月5日、蔚山の現代エンジンの労働組合結成で火がつき、9月4日の公権力投入で小康状態に至るまで、3300余の工場で全労働者の3分の1を超える労働者がスト隊列に結集。1300余の労働組合が結成された。民主労組運動の巨大な大衆的出発点。在野勢力や学生運動から労働運動が主導する社会運動に。
 86年には2675組合103万6千人、89年には7883組合193万2千人余になる。

 ▼1987年12月、地域別組合協議会(地労協)結成

 87年12月、製造業中小企業組合は87年12月のマチャン(馬山・昌原)地域組合総連合結成に始まり、真珠、ソウル、仁川、全北などを経て89年11月、大邱労連に至るまで16地域で地労協が結成され、630労組26万組合員が参加。

 ▼ 1987年11月、全国事務金融組合連盟結成

 87年11月、全国事務金融組合連盟結成を先頭に業種別組合が結成される。88年までに、病院、貨物、言論、出版、建設、専門技術など13業種で業種別組合協議会が建設される。690労組、17万組合員。

 ▼1987年8月、現労協(現代グループ組合協議会)結成

 財閥傘下の労組結成はグループ別連帯で進む。現労協は、現代グループ労働組合連合を経て、90年に現総連(現代グループ労働組合連合)へ発展。大宇、起亜グループ労働者も同様に進んだ。

 ▼1988年6月、労運協(全国労働運動団体協議会)結成

 6月7日、労運協結成で全国ネットワークを形成。後に地労協・業種協などとともに全労協へ発展する礎に。
 88年8月、「全国労働法改定本部」結成、11月13日、5万余名参加でチョンテイル精神継承および労働悪法改定のための全国労働者大会♀J催。これを土台に12月、地域、業種別全国会議(全国会議)≠16地労協、4業種、20万余組合員参加で結成。

 ▼1990年1月22日、全労協結成

 1月22日、全国労働組合協議会(全労協)を結成。自主性、民主性、連帯性、階級性、闘争性、変革志向性を民主労組運動の基本原則とし、産別労組建設を組織戦略と宣言。全労協を瓦解させるため、時の盧泰愚政権と資本は執拗に弾圧し、全労協脱退を拒否していた韓進重工業労組パクチャンス委員長が監獄で疑問死した。

 ▼1989年5月28日、全国教職員組合が結成

 盧泰愚政権は強硬弾圧手段で、1500余人の加入教師全員を解職にした。

 ▼1990年5月4日、全労協がゼネスト

 現代重工業労組のゴリアテストライキとKBSストライキの支持援護のために全労協は5月4日、146事業場、12万余名の労働者が参加のゼネスト。

 ▼1993年6月、全国労働組合代表者会議に改編

 韓国のILO(国際労働機関)加入を契機に全国労働組合代表者会議≠ノ改編。民主労総設立につながる。

 ▼1995年11月11日、民主労総創立

 全国民主労働組合総連盟(民主労総)が862単位労組、42万余組合員で創立される。産業別連盟単位で組織し、同時に地域本部体制への再編が推進される。
(歴史的な民主労総の創立大会【1995年11月11日】)

 ▼1996年12月26日、民主労総がゼネストに突入

 12月26日未明、金泳三政権が整理解雇制の導入を中心とする労働法改定を7分で抜き打ち通過させた。この間ゼネストを準備してきた民主労総はただちにゼネストに突入。起亜自動車、現代自動車など88事業場、15万余名の労働者が参加。ゼネストは1997年2月末まで4段階で進行する。約40日間のスト参加累積規模は3206労組、延べ359万7011人に達した。「朝鮮戦争以後最大の政治ゼネスト」と言われる。労働法改定案は3月末に通過した。

 ▼1998〜IMF危機と構造調整整理解雇に反対する闘い

 1998年現代自動車整理解雇阻止闘争、マンド機械整理解雇阻止闘争、サンミ特殊鋼雇用承継闘争、2000年自動車4社組合共闘、2001年大宇自動車海外売却阻止闘争。公共部門私有化(民営化)反対闘争は1999年ソウル地下鉄労組闘争、韓国重工業闘争、2000年韓国通信スト闘争などが闘われる。

 ▼1999年11月、民主労総合法化をかちとる

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月刊『国際労働運動』(435号4-1)(2012/11/01)

Photo News

■Photo News

 ●シカゴ教組が大ストライキに突入

 (写真@)

 (写真A)

 9月10日、CTU(シカゴ教職員組合、組合員2万9000人)が歴史的ストライキに突入した。各学校の教職員のほとんど全員がピケットラインに立ち、「ラーム・エマニュエル(市長)はやめろ!」「学校閉鎖をやめろ!」「解雇された教員を復職させろ!」などのをコールをあげた(写真@)。生徒や父母も一緒に校門前に立ち、「先生を守れ!」と叫んだ。
 また、チームスターズ(トラック運転手などの組合)705支部や、AFSCME(アメリカ自治労)第31地域協議会、UNITE HERE(ホテルなどのサービス業労働者の組合)なども、ピケットや抗議集会、デモ(写真A)に参加するなど、広範な労働者が支援行動に決起した。学校の公設民営化や、廃校化、教育労働者の大量首切りなどの新自由主義政策に対し、ついに歴史的反撃の闘いが開始された。

 ●インドで銀行員100万人がストライキ

  (写真BC)

 インドでも新自由主義政策に対する巨大な反撃の闘いが開始されている。8月22日から23日にかけてインドで銀行労働者たちが、前代未聞の100万人ストに突入した(写真BC)。このストで、ATMは全国で使用不能になるなど、銀行業務はほとんど麻痺状態に陥った。ストライキは、外資によるインドの銀行の株式保有比率の上限引き上げや、事業の一部の民営化と外注化で大規模な首切りが行われることに反対して行われた。

 ●韓国・金属労組が10万人ストに連続決起

  (写真DE)

 金属労組は7月13日、20日、8月10日に続き、17日に10万人を超える規模の第4次ストライキに突入した(写真DE)。スト要求として「深夜労働撤廃、非正規職労働者の正規職化、元下請不公正取引の根絶、労働時間短縮と用役(=暴力ガードマン)による襲撃・労組弾圧糾弾」が掲げられている。第1次、第2次ストは賃金団体交渉をかねたストで金属労組発足以後最大の13万人を超える組合員が決起した。第3次、第4次ストもすでに交渉を終えた組合支会や支部がある中での10万人を超えるスト決起となった。

 ●深せんの石塚感応電子工場でストライキ

  (写真FG)

 8月24日、中国の深せん市宝安区沙井鎮ににある日系石塚感応電子工場で、1000人を超す全労働者が賃下げに反対して一斉ストライキに入った(写真FG)。石塚感応電子は、労働者との何の話し合いもないままに、一枚の通達で、夜勤の交通費手当と夜食費用を削減すると通達してきた。これは実際には賃下げそのものである。これに怒った労働者は、24日にストライキに突入し、さらに大通りを封鎖し、動員された警察隊や武装警官と激しくぶつかった。警察隊は前方にいた2人を捕まえ、顔面を殴るなどの暴行を加えたが、この1人が妊婦であった。この暴行に労働者の怒りはさらに爆発し、会社を徹底弾劾してストライキを闘った。

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月刊『国際労働運動』(435号5-1)(2012/11/01)

世界経済の焦点

■世界経済の焦点

ユーロ成立とその危機

財政主権なしの統一通貨の矛盾が爆発

 ユーロはEU(欧州連合)の正貨である。帝国主義国家同士が統一通貨をつくったなどということは、歴史上かつてなかった。それはなぜ生まれたのか。
 それは二つの契機で生まれた。

 □ニクソン・ショックから守ることが契機

 ひとつは、1971年8月15日のニクソン・ショックから身を守るためである。
 ドイツ帝国主義は1871年の普仏(プロシャ・フランス)戦争の勝利によって統一国家となった。ドイツ国家の新通貨マルクはフランスからの賠償金を準備金として、金に裏打ちされた統一通貨として1875年に登場した。
 第1次世界大戦でドイツは敗北し、巨額の賠償金を課せられた。ドイツの賠償金支払い問題がドイツ経済を疲弊させ、ナチスの台頭と第2次世界大戦の背景となった。
 統一通貨ユーロは、こうした独仏間の800年わたる確執・戦争を永遠になくすかの幻想をかもして登場した。しかし、帝国主義戦争を永遠になくすには、レーニンの実践を引き継ぎ、プロレタリア世界革命を実現する以外にありえない。現実の統一通貨の誕生は、もっと血生臭い帝国主義間の利害と攻防の所産であった。
 第2次世界大戦後の国際通貨体制(ブレトンウッズ体制)は、戦勝国のなかでも経済的・政治的・軍事的に最大の力を持ったアメリカ帝国主義の通貨ドルと、それを裏打ちしていた金によって成り立っていた固定相場制であった。アメリカはドルと金の兌換を公約し、各国は自国通貨とドルの為替相場を維持する努力をはらってきた。
 71年のニクソン声明は、この兌換の一方的中止を宣言した。アメリカとドルの凋落の結果であった。当時円は、1j=360円に固定されていた。最近では77円台である。アメリカの財政危機によって増刷されるドルによって、ドル価値は4分の1〜5分の1になった。
 「ユーロ圏は静寂のオアシスだ」――ECB(欧州中央銀行)の初代総裁、ウィム・ドイセンベルグの言葉である。世界の為替市場がどんなに荒れすさぼうと、ユーロ圏内にその影響が及ばないようにしたいということだ。

 □東西ドイツの統一に対する危機意識から

 もうひとつは、ドイツの東西統一である。
 89年11月に「ベルリンの壁」が崩壊し、90年10月に東西ドイツが統一し、91年7月にソ連が崩壊し東欧諸国が解体した。統一ドイツを封じ込めたいというきわめて政治的な要因が、欧州単一通貨を誕生させた。
 経済大国の西ドイツが、政治大国・統一ドイツとなり、東欧に向かって勢力圏を拡張していくようになったら大変だという危機意識が、単一通貨導入に関するフランス帝国主義はじめ欧州各国のためらいを払拭した。通貨主権の放棄を嫌っていたフランス帝国主義は、統一ドイツを統合欧州の中に封じ込めておくために、急きょ通貨統合推進派に転じた。
 89年9月、サッチャーはミッテランに「統一されたドイツに圧倒されることを恐れているのか」とたずねた。ミッテランはドイツの勢力増大に対する答えは、EMU(経済通貨同盟)にあるとして、次のように述べた。
 「ドイツが統一後の諸困難を克服して強大になったとしても、EMUが、EMUだけがドイツの勢力を抑制できるであろう。……共通通貨がないため、われわれ欧州諸国はすべてがすでにドイツの意志に服従している。彼らが利上げをすれば、われわれは追随を余儀なくされ、EMSに参加していない貴国も同じようにしている! したがって、発言権を確保する唯一の方法は欧州中央銀行を設立することだ。そこなら決定は共同で行われる」
 サッツチャーは納得せず、ドイツの統一を阻止するためにゴルバチョフの説得を試みたが失敗した。サッチャーはイギリス保守党内部の権力闘争にも敗北し、首相を降りた。

 □統一通貨と各国の財政主権の矛盾

 EUは欧州27カ国で構成される国家連合体である。人口4億9千万人、GDPは約11兆ユーロである。人口ではアメリカをしのぎ、GDP(国内総生産)ではアメリカに匹敵する規模となっている。ユーロはEUの正貨である。現在導入しているのは17カ国である。いずれ、EUのすべての国で導入され、あたかも一つの国民経済のように経済統合することが目指されている。
 しかし、財政権限は各国政府にあり、統一政府が財政権限を持っているわけではない。ユーロ圏の17カ国は、統一通貨・統一金利のもとにありながら、財政は経済力も競争力も経済規模もまるで違う諸国家の主権のもとにある。ユーロ圏はこの矛盾を最初から持っている。
 ドイツ帝国主義、フランス帝国主義は、この矛盾を敢えて生じさせてでも、帝国主義的利害のためにユーロ体制を形成し、それを米帝・日帝などへの経済的防波堤としてきた。そのもとで、資本と商品の輸出を圧倒的に展開し、利益を上げてきた。
 ユーロの根本矛盾とは、プロレタリア世界革命によってしか解決しえない帝国主義の矛盾を、国家主権を維持したまま、国家連合という形で擬似的に解決できるとしているところにある。
 92年に欧州連合条約(マーストリヒト条約)が調印され、 99年ユーロの流通が開始され、2002年に紙幣と硬貨の一般流通が開始された。通貨と金融を統一しながら、財政が統一されていない矛盾は現在、国家財政危機、ソブリン(主権)危機として現れている。

 □競争力の格差と累積債務問題

 ユーロ導入で為替リスクのない人口3億人の市場が誕生した。ユーロ圏は、消費や投資、輸出入が活性化し、経済成長率は96年の1・8%から04〜07年の平均2・5%に高まった。
 しかし、中軸であるドイツは低成長であった。東ドイツの政治と経済を解体・吸収するために、膨大な国家予算を投入した。同時に、堰を切ったように「東方への進出」を開始した。「首を切られたくなかったら、賃金切り下げを受け入れろ」と、賃金抑制、工場国外移転、工場閉鎖、労働法制改悪を労使一体で推し進めた。ドイツは2000年代に入っても06年半ばまでゼロ成長を続けた。その原因は低賃金による消費の低迷にあった。一方、競争力は強化された。
 他方、所得水準が相対的に低い周縁諸国は高成長した。スペインはユーロ導入の99年から06年まで平均4%近い成長を遂げた。
 ECBの政策金利は低成長のドイツを基準としているために低く抑えられており、スペインの短期金利(インフレを取り除いた分)は実質マイナスで推移していた。マイナス金利ということは、借りれば借りるだけ利益が出るということであり、これがスペインに10年間にも及ぶ住宅バブルをもたらした。
 こうした状況を07年パリバ・ショック、08年リーマン・ショックが直撃した。
 周縁諸国では金融危機による不況と税収減によって財政赤字は増大したが、インフレによって国債利払い費は軽減され、国債発行の抑制がきかなくなっていた。特に南欧諸国では輸出競争力が大幅に悪化し、経常赤字・累積債務が増大した。
 単一通貨・統一金利のために、産業競争力の強い国(ドイツなど北欧)はいつまでも為替相場の割安感を受け、弱い国(周縁諸国)はいつまでも割高感に苦しむ。経常収支黒字国で黒字が拡大し、赤字国で赤字が拡大する。この動きが「ユーロ圏」という仕組みによって増幅され、固定化された。

 □ECBに矛盾が集中

 

(図 TAGET2残高【年。月末、10億ユーロ】)

 2000年代初頭から08年の数年間は、欧米を中心に与信が拡大した。特にユーロ圏では、スペイン、アイルランド、ギリシャなどのいわゆる周縁国で与信が拡大した。資金の出し手は、圧倒的にドイツの銀行が多い。周縁国では内需が拡大し、そこへドイツ製品の輸出が伸びた。当然、経常赤字が拡大するが、資金繰りはまたドイツを中心とする金融機関に支えられていた。このため、ドイツの輸出も強まり、経済全体が活性化した。
 リーマン・ショック以降、ドイツの銀行が周縁国への出資を減らし始め、その結果、銀行間取引が急減した。資金を引き揚げたドイツの民間銀行に代わって、ギリシャの資本収支を支えてきたのは、ブンデスバンク(ドイツ中央銀行)であった。
 通常は経常赤字国は、外国からの投資や借入で赤字分を調達しなければならない。これができない場合は外貨準備を取り崩さなければならない。しかし、ユーロ圏は統一通貨のために、赤字国の中央銀行と黒字国の中央銀行の貸借によって収支を決済する仕組みがある。これがユーロシステムのターゲット2と呼ばれるユーロ圏統一決済システムである(グラフ参照)。
 単一通貨ユーロが導入され、ECB(欧州中央銀行)が設立されたが、各国中央銀行がなくなったわけではない。
ユーロ圏17カ国の中央銀行と、その中枢としてのECBを合わせたものが「ユーロシステム」である。ECB政策理事会で決定した方針を実行するのは17の中央銀行である。単体としてのECBの占めるウェイトは1割程度である。
 世界金融大恐慌開始以前の06年のECBの総資産は1兆ユーロあまりであったが、リーマン・ショック後の08年には約2兆ユーロに、そして現在は3兆ユーロに迫っている。
 各国中央銀行間の貸借を示すターゲット2は、06年時点ではどの中央銀行の残高もゼロに近かった。最近の残高は8400億ユーロ、そのうちドイツの残高は6986億ユーロで、全体の83%である。
 ドイツの民間銀行が対外債権を縮小し始めた09年から、ブンデスバンクの対外債権が拡大し始め、一方では南欧諸国の対外債務が拡大し始めた。ドイツの民間銀行が手放した南欧の債権を、ブンデスバンクが引き取ったということである。銀行間市場が機能不全に陥り、中央銀行が一手に支えている。FRB(米連邦準備制度理事会)のQE3(金融の量的緩和第3弾)決定も同じである。このような構造がいつまでも続くはずはない。ここで生ずる損失は結局はECBとその最大の担い手であるドイツに向かうのである。

 □労働者階級の屈服を強要する緊縮策

 財政主権なしの通貨と金融の統一が生み出したユーロ危機への対策として、今年6月末のEU首脳会議は、ユーロ制度を強める工程表のたたき台を示した。
 財政同盟(加盟国予算決定への関与強化、ユーロ共同債発行)、銀行同盟(金融監督、預金保険制度、金融危機管理の一本化)、経済同盟(共通経済政策の調整強化)、政治同盟(欧州議会、各国議会の権限強化)の4本である。10月に中間報告、年末に最終報告の予定である。これらは加盟国が財政主権をEUに委譲することを段階的に迫ろうとするものである。
 喫緊の課題はギリシャ、スペインの財政破綻対策である。
 支援を要求するなら労働者を屈服させて緊縮財政を行え。それができないなら財政主権をよこせ。さもなくば出て行け≠ニいうことである。独仏対立をはじめとした帝国主義間対立はさらに激化する。ユーロ維持の名による緊縮財政の強要に、ゼネストで決起したギリシャ、スペイン、イタリアをはじめ、ヨーロッパの労働者階級は団結を固め、新自由主義を打ち倒すまで闘い抜くであろう。今こそ、労働者階級は、生きるための革命に立つべき時である。
 (常木新一)
(写真 スペインのバルセロナでカタルーニャ州の自治権拡大と反緊縮を訴えるデモ(9月11日】)

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月刊『国際労働運動』(435号6-1)(2012/11/01)

世界の労働組合

■世界の労働組合 韓国編

民主労総(全国民主労働組合総連盟)

 ■民主労総再生かけ8月ゼネスト

 韓国最大の労組ナショナルセンターである民主労総(全国民主労働組合総連盟)は、8月29日、「非正規職撤廃、派遣法廃止、労組法全面再改正、労働時間短縮、民営化阻止」を核心要求に掲げ13万7千人がゼネストを闘い取った。新自由主義による激しい攻撃と闘う金属労働者はこのゼネストの最先頭に立っている。
 民主労総は9月の臨時中央委員会などで、10月の対国会闘争と11月の大規模全国労働者大会、12月の大統領選挙闘争につながる下半期闘争を宣言した。◆役員直接選挙制、◆下半期闘争、◆大統領選挙方針といった新しい課題を遂行していく方針だ。
 民主労総はまた、9月前半、保健医療労組の産別ストを始め、整理解雇反対闘争、「非正規職ない職場作り1千万宣言運動」と「非正規10万キャンドルデモ」などの闘争を続ける計画だ。さらに10月には公務員労組の総会闘争と公共運輸労組連盟の総力闘争、教育大改革などの大規模闘争も計画されている。
 民主労総は「こうした下半期闘争は、11月の全国労働者大会で頂点に向かう。民主労総の闘争の社会的影響は、大統領選挙政局で現れるだろう」と明らかにした。

 ■解放後からの労働者の闘いの歴史

 1945年8月、日本の朝鮮植民地支配から解放されると同時に朝鮮労働者階級は、すぐさま労働組合の組織化に着手した。同年11月には朝鮮労働組合全国評議会(全評)を設立、社会主義理念の路線を掲げて、経済闘争と政治闘争の統一などを打ち出していた。当時50万人を組織していたと言われている。鉄道、電気、鉱山などに強力な左翼労組を次々に結成していった。45年8月から47年3月までの過程で2388件の労働デモが闘われ、参加者は総勢60万人に上った。歴史的には1987年労働者大闘争以前において最も激しく労働運動が展開された時期といわれている。
 しかし46年3月には右翼団体が米軍政を後ろ盾にして大韓独立促成労働総連盟(大韓労総)を結成、労資協調を掲げ、全評を解体することを目的とした、組合とは名ばかりの団体だった。47年1月の鉄道ストライキを契機に左派労組指導者が数百人の規模で殺害されたり処刑されたりした。その上、数千人もの主力活動家が投獄され、全評は抹殺されてしまった。この時期、朝鮮共産党も非合法化された。この後1960年までの李承晩時代に大韓労総は与党・自由党の組織に公式に統合し李承晩の動員マシーン化していった。労働運動が最も停滞した時期といわれている。
 1954年大韓労働組合総連合会設立。その後59年に大韓労総に反対する独立的な労働運動指導者が全国労働組合協議会(全国労協)を結成。1960年4・19革命を経て、大韓労総と全国労協が統合し、60年11月、韓国労働組合総連盟(韓国労連)の設立へと至る。基本的には国家権力の手先となって、労働者階級を抑圧する存在として機能していった。61年8月末、産業別労働組合の連合体として韓国労総(韓国労働組合総連盟)が結成される。産業別とはいえ、軍事政権が労働組合を上からコントロールするために産別化を進めたものでしかない。
 韓国の労働者階級は、軍事独裁政権による支配のもと、過酷な労働条件、徹底的な団結破壊攻撃、政治的な無権利状態を強いられてきた。1970年11月に「勤労基準法を順守せよ」と縫製労働者チョン・テイル氏の焼身決起に衝撃を受け、その精神を継承すべく70年代〜80年代にかけて中小零細事業所を中心に、御用労組と激突しながら民主労組を結成し死守する闘いを繰り広げた。
 その際、大きな力となったのが軍事政権に対する民主化闘争を闘い抜いていた学生、教会、文化人、知識人の存在だった。教会は工場労働者たちに対する夜学運動を推し進め、労働者たちの社会に対する認識を教育し続けた。
 87年の6月民主化闘争とそれに続く労働者大闘争を通して軍事独裁政権を追い詰め、政権・資本との力関係を押し返した労働者階級は、民主労組運動を全国・全産別的に一つに束ねる粘り強い努力を積み重ねてきたのだ。1990年、民主労組運動の到達地平として、全国労働組合協議会(全労協)を結成するにいたった。
(写真 87年8月、労働者大闘争の先頭で闘った現代グループ労働者)

 ■95年11月、民主労総結成

 こうしてついに1995年11月11日、民主労組のナショナルセンターである民主労総を結成した。折しもこの時期は、世界的に新自由主義攻撃が吹き荒れ、労働組合運動が後退を強いられていた時期であっただけに、民主労総の結成は全世界の労働者を大きく鼓舞した。戦闘性と不屈性は世界最強の労働組合として称賛されてきた。
 民主労総は毎年11月、「チョン・テイル烈士の精神継承」を掲げて大規模な労働者集会を開催している。

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月刊『国際労働運動』(435号7-1)(2012/11/01)

国際労働運動の暦

■国際労働運動の暦 11月28日

■1985年動労千葉スト■

分割・民営化に反撃

中曽根「戦後総決算」攻撃の頂点に労働組合の存亡をかけて実力で対決

 1982年に登場した中曽根政権は、「戦後政治の総決算」を掲げ、その攻撃の頂点に国鉄分割・民営化を据えた。最大の狙いは、戦後労働運動の中心勢力であった国鉄労働者の闘いを壊滅させることであった。中曽根は後に「国鉄分割・民営化は国労を崩壊させるためにやった。国労が崩壊すれば総評が崩壊することを明確に意識してやったわけです」と「総括」している。当時は「国鉄労働者は社会の敵」という悪宣伝が連日展開されていた。
 85年7月の国鉄再建監理委員会の最終答申は、国鉄を7分割し、全員解雇・選別再雇用で大量首切りする、国鉄債務37兆3千億円は人民に押しつける、という超反動的な内容だった。
 これに対して労働組合の側はどうするのか。この攻撃に真っ先に降伏し、自分たちだけの生き残りのために中曽根の手先となって分割・民営化に率先協力したのが当時の動労を牛耳る松崎・カクマルだ。松崎はそれまでの闘いをブルジョアジーにわび、分割・民営化の推進のために国労・動労千葉破壊の先兵役を買って出た。国労もまた、何ら闘う方針を打ち出せず、有効な反撃を何一つ組織できなかった。

 ●死中に活を求める闘い

 動労千葉は、「立ち上がって闘い、敵の攻撃を打ち砕いて生き残るか、屈服して奴隷となるか、二つに一つしか道はない」(当時の中野洋委員長)と宣言し、1100人の組合員の戦闘的団結で立ち向かった。
 9月、動労千葉定期大会で、11月末スト決行を決定した。スローガンは@国鉄分割・民営化反対、A10万人首切り合理化反対、B運転保安確立、列車の安全を守る、C国鉄労働運動破壊を粉砕せよ、の4本。11月末に、動労千葉、国労、全動労に対し て雇用安定協約を再締結しないという当局の攻撃に対する反撃の闘いであった。中野委員長は、「3人に1人の首切りに対して闘わなかったら、団結は破壊される」として「死中に活を求め」て闘うことを熱烈に訴えた。組合員も真っ向からこれに応え、満場一致でスト方針を決定した。自らのストで国鉄労働者全体の巨大な決起を切り開いて分割・民営化を必ず粉砕するという強い意志を込めた闘いだった。
 当初、11月29日始発からスト突入方針を打ち出していたが、これに対して権力が1万人の警官を総武線沿線に配置し、動労と国労がスト破り体制を敷いてくる中で、これへの反撃として、28日正午から前倒し24時間ストに突入した。スト対象は、津田沼電車区と千葉運転区、総武線の緩行・快速を止める闘いだ。津田沼駅構内は3000人の機動隊に重包囲された。動労千葉組合員は、津田沼電車区内で、機動隊と鉄道公安官と激突し、闘い抜いた。

 ●国労組合員も呼応し決起

 

津田沼駅前の津田沼公園に動労千葉支援共闘会議の労農学2400人が集まり夜を徹して計10波のデモ、集会、電車区への激励の行動に立ち上がった。
 動労千葉の決起は、同じ職場で働く国労千葉地本の労働者に衝撃を与えた。国労中央の出したスト破り方針は激しい弾劾にさらされ、国労津田沼電車区分会では、スト破りを強要された組合員が国労バッジをたたきつけて拒否、2人が動労千葉にその場で加盟してストに決起した。運休本数243本に上った。
 この動労千葉の決起を支持し、何としても成功させるために、11・29浅草橋駅戦闘がかちとられ、また各地でゲリラ戦争が闘われた。
 松崎は「まさしく政治スト。全く犯罪的」と真っ青になって叫んだ。86年2月には第2波のストライキに立ち上がり、二つのストで大量処分攻撃(第1波で20人解雇を始め120人の処分、第2波で8人解雇を始め272人の処分)を受けながら、順法闘争などの不屈の闘いを貫き、87年4月1日のJR発足を迎えた。この分割・民営化に対する実力反撃の闘いがあったから、その後の1047名解雇撤回の闘いが生まれ、その後の国鉄闘争陣形が築かれたのである。
(写真 機動隊、職制のスト破壊から職場を守る動労千葉津田沼支部)

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 ●動労千葉ストをめぐる日誌(1985年)

6.21 仁杉国鉄総裁更迭、杉浦新総裁就任
7.26 国鉄再建監理委員会が、国鉄7分割を基本とする「国鉄改革に関する意見」の最終答申発表。87年4月1日実施へ次国会で関連法 案提出を決定
8. 2 分割・民営化抗議千葉県総決起集会に動労千葉、国労千葉地本先頭に3000人
9. 9、10 動労千葉第10回定期大会、スト方針決定
10. 5 国鉄、国労と動労千葉に雇用安定協約の継続を破棄する通告
10. 9 国鉄当局、「今後の要員体制の考え方について」(首切り具体案)を発表
10.11 政府、「国鉄改革のための基本方針」決定
11.17 日比谷野音で動労千葉主催、全国鉄労働者総決起集会
11.20 千葉鉄道管理局、ストに対し全員解雇の恫喝を掲示
11.28 動労千葉、24時間ストに突入

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月刊『国際労働運動』(435号8-1)(2012/11/01)

日誌

■日誌 8月 2012

1日福島 福島意見聴取会、細野に怒り集中
政府主催の「エネルギー・環境の選択肢に関する福島県民の意見を聴く会」が、福島市の福島テルサで開かれた。参加者の怒りが爆発した
3日東京 国会・官邸前を8万人が埋めつくす
のべ8万人の労働者人民が首相官邸前―国会前、環境省前を埋め尽くした。福島集団疎開裁判を闘っている人たちの文科省前抗議行動、環境省前に数千人が集まり、原子力規制委員会人事案の白紙撤回を求める抗議行動を行った
3〜5日高知 自治労全国保育集会で対訴え
自治労第33回全国保育集会が、高知市で開かれ、全国労組交流センター自治体労働者部会の仲間が登場し「子ども子育て新システム反対」を訴えた
5日広島 郵政非正規ユニオン全国協を結成
広島市広島東区民文化センターで、郵政非正規ユニオン全国協議会の結成集会が行われ、全国の郵政労働者を始め約150人が参加した
5日広島 全国青年労働者交流会開く
「オキナワとヒロシマを結ぶ全国青年労働者交流集会in HIROSHIMA」が、広島市東区民文化センターホールで開かれた
5日広島 反原発、野田打倒へ全国学生集会
全国学生集会が広島市東区民文化センターで打ち抜かれた
5日広島 NAZEN結成1周年集会開く
広島市東区民文化センターで、「よみがえれ反核運動/再稼働ゼッタイ許すな/全原発の廃炉をかちとるNAZEN結成1周年集会inHIROSHIMA」が開かれた
5日広島 見学会で放影研の正体を見た
広島市内の比治山にある放射線影響研究所(放影研)の見学会が、8・6広島―8・9長崎反戦反核闘争全国統一実行委員会の主催で行われた
6日広島 朝の記念式典に怒りの大デモ
フクシマの怒り、核と原発への全世界の怒りをともにする「被爆67周年8・6ヒロシマ大行動」が打ちぬかれた。原爆ドーム前では、早朝から記念式典会場の野田首相を直撃するヒロシマ・アピール集会と弾劾デモがかちとられた
6日広島 8・6ヒロシマ大行動に1300人結集
「被曝67周年 8・6ヒロシマ大行動」集会が、広島市の総合体育館小アリーナで行われ、1300人が結集して大成功した。福島第一原発事故を絶対に許さず、ヒロシマ・ナガサキがフクシマと怒りをともにして闘われた。さらに核と原発をめぐる日帝との最大の攻防点である内部被曝と被曝労働の大テーマに切り込む画期的な闘いとしてかちとられた
7日千葉 動労千葉、強制出向粉砕へ指名スト
動労千葉は、京葉車両センターで働く繁沢敬一副委員長と小林俊雄さんへの不当な業務指示、露骨な組織破壊攻撃に対して、指名ストに立った
7日佐賀 九州電力の玄海原発に抗議申し入れ
8・6広島−8・9長崎反戦反核闘争全国統一実行委員会は、九州電力の玄海原発に抗議・申し入れを行った。20人余りが参加した
7日山口 ゴアレーベン、上関・祝島−福島へ
ドイツのゴアレーベン核廃棄物処分場反対同盟のマーティン・ドナート委員長、ケアスティン・ルーデック前委員長、広報担当のレナート・ミュラーさんは、8・6広島闘争の翌日に、中国電力・上関(かみのせき)原発建設予定地である山口県の上関町長島を訪問した
8日長崎 長崎大で山下弾劾の大宣伝
闘う労働者・学生は、長崎大学本部キャンパスを訪れ、長崎大生への宣伝活動と、山下俊一教授の福島派遣中止・解任を求める申し入れを行った
9日長崎 核と原発の廃絶を誓う集会とデモ
被爆67周年の8・9長崎反核・反原発闘争が圧倒的に打ち抜かれた。野田首相の平和祈念式典参加を弾劾して午前中、80人の集会とデモが闘われ、午後には長崎反原発反戦反核集会が105人で福島との熱い連帯のもとに闘いとられた
10日東京 国会前・首相官邸前に9万人
原発再稼働反対、野田打倒の労働者人民9万人が首相官邸前と国会前を埋めた。その後、環境省を包囲して「原子力規制委員会人事案撤回を」の声を上げた
11日福島 福島診療所建設へシンポジウム
JR福島駅前のコラッセふくしまで「民衆の手による診療所を!8・11福島シンポジウム」が開催された。福島診療所建設委員会が主催した
15日東京 早朝、靖国弾劾のデモに立つ
法政大学正門前で、靖国弾劾デモの主催者・反戦共同行動委員会の北島邦彦事務局長がマイクを握り、「8・6広島、8・9長崎の成果の上に、本日の8・15靖国弾劾デモを闘いぬいて、10・1JR外注化阻止を闘いぬこう!」と訴えた
17日東京 官邸前、6万人が反原発行動
首相官邸・国会前に「原発いらない福島の女たち」の女性たちなど6万人の労働者民衆が集まり、「原子力規制委員会人事案反対」「原発やめろ!」「福島の子どもたちを守れ!」と闘いぬいた
17日韓国 民主労総 金属労組が13万人スト
非正規職化攻撃と整理解雇攻撃に対し、韓国の金属産別労働者は激しく闘っている。金属労組は7月13日、20日、8月10日に続き、17日に10万人を超える規模の第4次ストライキに突入した
18日東京 自治労青年部総会で橋下打倒訴え
日本教育会館で開かれた自治労青年部総会の会場前で、全国労組交流センター自治体労働者部会が9・16橋下打倒集会への結集を呼びかけた
18日東京 自治労女性部総会で大反響
砂防会館で第57回自治労女性部総会が開催された。全国労組交流センター女性部は、ビラまき情宣を開始、圧倒的な反響を得た
23日大阪 西郡住宅闘争、10家族の裁判始まる
大阪地裁第24民事部(古財英明裁判長)で、八尾市西郡住宅から10家族を追い出す攻撃と真っ向から対決する新たな裁判闘争が始まった。八尾市と裁判所は、10家族をバラバラにして裁判をすべて分離する許しがたい分断攻撃をかけてきた。しかし、供託者の団結と法廷内外の戦闘的闘いによって一つに併合、統一裁判を裁判所に認めさせる決定的勝利をかちとってこの日を迎えた
24日東京 官邸・国会前、霞が関に数万人
野田は、原子力規制委員会の人事案の閣議決定を強行した。首相官邸・国会前には数万の労働者民衆が駆けつけ、激しい抗議の声を上げた
24日茨城 動労水戸、外注化反対でスト
動労水戸は、検修外注化絶対反対を掲げて全組合員がストに立ち総決起集会とJR水戸支社抗議行動を闘った。午後から水戸地裁で開かれた損害賠償請求訴訟に臨んだ
25〜26日神奈川 婦民全国協全国総会開く
横浜市鶴見で婦人民主クラブ全国協議会第29回全国総会が開催され、全国から会員・読者が結集した。総会は新代表に三浦正子さんを選出した
26日東京 11月労働者集会へ第1回実行委員会
11月労働者集会の開催に向けた第1回実行委員会が、浜町区民館で開催された
26日愛媛 交流センター、自治労連大会で訴え
全国労組交流センター・自治体労働者部会は、愛媛県松山市で開催された自治労連大会に登場し、ビラまきと9・16橋下打倒集会の署名を集めた
28日千葉 ストライキと集団提訴で決戦に突入
動労総連合は、「強制出向粉砕・偽装請負弾劾」を掲げて外注化阻止総行動に立ち、ストと労働局申し入れ、さらに外注化と強制出向差し止めを求める集団訴訟を東京地裁に起こした。動労千葉は、検修職場の全組合員が24時間ストに決起した。DC会館で開催されたスト突入集会に各職場から続々と組合員と支援が結集した。この渦中で動労水戸、動労西日本で組織拡大を実現する決定的前進が切り開かれた
28日 各地で動労総連合の連帯行動
広島では、動労西日本、広島連帯ユニオン、動労千葉を支援する会・広島の仲間15人が、早朝からJR西日本広島支社前での街頭宣伝に決起した。岡山では山田和広副委員長を先頭に街頭宣伝に。米子の後藤総合車両所や香川・徳島・愛媛でもJR職場へのビラまきが行われた
29日大阪 入れ墨調査拒否者への処分に反撃
橋下による「入れ墨調査拒否」への処分に対する反撃が大阪市役所前で始まった。処分された当該の大阪市職の赤田由行さんを先頭に、9・16橋下打倒集会実行委員会に参加する労働者総勢50人が抗議の宣伝活動を行った
29日東京 原発発いらない福島の女たちが集会
「女が変える!政治もくらしも原発も/原発いらない女たちアクション第3弾」が行われた。原発いらない福島の女たちなどが呼びかけ、福島から駆けつけた女性、福島から各地に避難している女性など、各地から女性が集まった。経済産業省のテント前の歩道でかんしょ踊りを踊った
29日韓国 民主労総14万人ゼネスト
韓国・民主労総13万7千人がゼネストに立ち上がり、非正規職撤廃へ総力闘争を宣言した
30〜31日北海道 自治労函館大会で署名270人
函館市内で開催された自治労第84回定期全国大会会場前に、全国労組交流センター自治体労働者部会と北海道労組交流センターの仲間25人が登場。橋下打倒闘争へ270筆の賛同署名が寄せられた
31日東京 金曜行動、4万人が野田を包囲
首相官邸前・国会前・霞が関抗議行動に4万人が集まった。誰もが野田に怒り、原発絶対反対、再稼働絶対反対、全原発廃炉のシュプレヒコールを叫び続けた
31日東京 集団疎開裁判の会、文科省前で抗議
首相官邸・国会前の行動と並行して、文科省前で「ふくしま集団疎開裁判の会」が抗議行動を行った。スタートしてから6週連続

 (弾圧との闘い)

3日広島 免状不実のデッチあげ弾圧を粉砕
7月24日、広島県警・警視庁公安部によって「免状不実記載」をデッチあげられ不当逮捕されたAさんを、広島西警察署から奪還した
10日千葉 三里塚、逮捕の同志奪い返す
7月31日に千葉県警と埼玉県警によって「免状不実記載」でデッチあげ逮捕されたB同志を奪還

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月刊『国際労働運動』(435号9-1)(2012/11/01)

編集後記

■編集後記

 「2030年代に原発ゼロを」なる「新エネルギー戦略」は、「原子力規制委員会」委員長の田中俊一を筆頭に「原子力ムラ」そのものであるこの委員会を使って原発再稼働を進めるものだ。しかも核燃料サイクル政策も維持する。社民党などの「脱原発基本法」制定の動きをも取り込んで反原発運動を分断し解体するのが野田の目的だ。
 首相官邸や国会前、文科省前で野田政権の原発推進を弾劾する行動が続いている。「福島の子どもは避難先で出身地がわかると診察してもらえない。山下俊一の指示だ。福島県民はモルモットじゃない。人間だ!」
 これほど高い放射線量の地域に、長期に渡り住み続けた経験を人類はもっていない。それを日帝は今、福島県民に強制している。反原発闘争は社会のあり方を根本から変える怒りの爆発だ。

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