(写真 8・29ゼネストを貫徹し、ソウル乙支路入り口交差点の道路を占拠して集会を開く1万5000人の民主労総組合員【8月31日】)
■特集 日中韓の国際連帯で排外主義を打ち破れ
はじめに
ヨーロッパの恐慌は、大恐慌を深化させ、米帝の没落、中国バブルの崩壊、日帝の脱落を加速している。そして反米デモがイスラム圏二十数カ国に広がっている。
こうした全世界的な激動にあって、日帝野田は、政治支配の危機突破をかけて、排外主義と戦争政策に向かっている。野田は釣魚台(尖閣諸島)の「国有化」を強行し、これに抗議する反日デモが中国全土で吹き荒れている。
この問題に対する労働者階級の階級的立場は、日中韓労働者の国際連帯で排外主義を打ち破ることにある。その土台は、03年から始まった動労千葉と韓国・民主労総との10年にわたる日韓連帯の中で粘り強く形成されてきた。
第1章は、民主労総が今年闘い取ったゼネストの意義について、第2章は、民主労総を柱とする韓国労働運動の歴史と総括について、第3章で「領土」問題についての労働者階級の階級的立場について全面的に提起している。
第1章
民主労総ゼネストを戦取――労働者の生存をかけた決起
ゼネストに至る12年前半の闘い
2012年、民主労総の最大の事業が2012年民主労総ゼネストをかちとることだった。
今、韓国では李明博(イミョンバク)政権の下、資本の生き残りをかけた新自由主義政策がすべての犠牲を労働者階級に転嫁して推し進められている。何よりも非正規職問題が噴出している。
25日間の工場占拠で闘った現代自動車非正規職の正規職化の要求闘争に対して現代自動車は無視し、むしろ攻撃を強化した。構造調整整理解雇が吹き荒れ、それと同時に民主労組に対する暴力的破壊攻撃が激しく進行している。複数労組制施行1年でそれを悪用した資本の労組つぶし攻撃が金属労組の現場を始めとして顕在化している。双龍自動車では復帰できない労働者の「死の行列」が続いている。KTX(韓国高速鉄道)を始めとして公共部門の民営化が一挙に推し進められようとしている。
このままでは労働者が生きていけないということは労働者の誰もが切実に感じている。労働者の怒りは満ちあふれている。大統領選挙を前にして与党セヌリ党の朴槿恵候補まで「非正規職対策」を公約に掲げて労働者の怒りを取り込もうとしているほどだ。
今、民主労総がゼネストをもってこれら一切の新自由主義攻撃に対する反撃に立ち上がらなかったら、それは民主労組運動の死につながる。民主労総は非常の決意をもって2012年ゼネストを準備し、闘い取ったのだ。
定期代議員大会でゼネスト方針決定
第52次民主労総定期代議員大会が1月31日午後1時からソウルのヤンチョン文化会館で開催された。この日の大会では2012年民主労総ゼネスト勝利と総選挙大統領選挙勝利を含んだ1年の事業計画と予算を審議・確定し、2011年事業評価と決算の件、規約改定の件などを審議し、決議した。また6期役員補充選挙でチョンヨンギ事務金融連盟委員長とヤンソンユン公務員労組委員長を副委員長に選出した。
代議員たちは「ゼネスト闘争に勝利して世の中を変えよう!」「民主労総の総団結でゼネスト闘争に勝利しよう!」「整理解雇を粉砕して現場に帰ろう!」「ゼネスト闘争で整理解雇を粉砕しよう!」と叫んで2012年ゼネスト勝利を決意した。
単位事業場代表者会議で意志一致
4月11日の総選挙が終わって間もない4月24〜25日、2012年民主労総ゼネスト勝利のための全国単位事業場代表者修練大会が開かれた。ここで2012年ゼネストに対する現場の強固な意志一致がかちとられた。ここから8月ゼネスト組織化が具体的に始動した。
600名の全国地域の単位事業場代表者たちが一堂に集まり、下からのゼネストを決意して、その実行計画を具体的に討論した。金属労組、建設産業連盟、保健医療労組、公共運輸労組・連盟が産別計画を発表し、キムヨンフン民主労総委員長がゼネスト闘争の今後の計画を説明した。
単位事業場代表者たちは産別・連盟別に編成された組単位に集まり分班討論を開いた。参加者たちは6月末警告ゼネストと8月ゼネストの意義と必要性、6月末警告ゼネストと8月末ゼネスト成功のために多様な実践と課題を討論し、ゼネストを成功させるための決意を固めた。その後、代表者たちは産別連盟別に集まり総合討論を行った。
全体集会で各労組委員長らが闘争決意発言を行い、民主労総委員長がまとめの発言をした。
(写真 釜山新港の貨物連帯ストライキ出征式【6月25日】)
口火を切った貨物連帯と建設労組ストライキ
貨物連帯(組合員1万2千人)が6月25日朝から無期限全面ストライキに突入した。同時に、コンテナ輸送の中心地である釜山新港と京仁ICD(内陸コンテナ基地)で、釜山支部長、京畿支部長がそれぞれの物流拠点で高空籠城闘争に決起した。スト初日、釜山港を往来するコンテナ車両約2千台のうち600台以上の運行がストップ。1日1万台を超える全車両運行量が30%以上も減少した。大型トラックは全国で運行している8万2千台中、初日には37%にあたる3万台が止まり、2日目からは8万台以上がストに参加した。非組合員も含め90%以上が運行を拒否し、浦項鉄鋼工業団地、釜山港などで80%以上の運行が止まった。
「車を走らせる奴隷」とまで呼ばれる貨物労働者は、個人事業主と定義され労働三権を認められていない特殊雇用労働者だ。多段階下請け構造のもとで斡旋手数料という形で中間搾取され、受け取る運送料は荷主が支払った運賃の63%。しかもその中から道路費と燃料代を含む油類税を負担し、買い取った車両の代金を返済しなければならない。その上、自動車用軽油価格の高騰が続いている。軽油に付加される税は約40%、1人の貨物労働者が納める油関連税は収入の58%にも上る。
日常的な長時間労働と深夜運行、交通事故発生率の増加、死亡事故……。しかし労災保険はない。黙っていたら殺される! ともにストに立ち上がった建設労組も同じだ。
全国建設労働組合(2万9千人)は、6月27日から18項目の対政府要求を掲げて無期限の全面ストに突入。翌28日には組合員1万5千人がソウル市庁広場の総決起大会に集まった。タワークレーン操縦士たちが現場を放棄し結集したことで全国1千カ所、80%の工事現場が止まり、非組合員のスト参加が広がった。
現在、韓国の建設労働者の70%が臨時・日雇いであり、低賃金の上、慢性的な賃金・建設機械賃貸料の未払い問題に苦しんでいる。労災での死亡率も高いが、特殊雇用労働者のため労災保険が適用されない。昨年1年間に建設現場での事故で死亡した建設労働者は577人に達した。安全対策が軽視され構造的な大規模事故が多発している。
建設労組は28日の対政府交渉で前向きの回答を引き出したとして一部地域を除きストを中断し、貨物連帯も29日、運送料の9・9%引き上げをもってスト中断を決定したが、闘いは続いている。
(写真 金属労組現代自動車支部のストライキ出征式【7月13日】)
6月警告ストライキ
6月28日午後5時、「非正規職撤廃! 整理解雇撤廃!労働悪法改正!」の3大要求を掲げて民主労総が、ソウルの汝矣島の国民銀行前で警告ストライキ・集会を開いた。25日から全面ストに突入した貨物連帯、27日からストに入った建設労組を始め、金属労組、公共運輸連盟、保健医療労組、事務金融連盟、化学繊維連盟、公務員労組、女性連盟、民主一般連盟、地域本部組合員など3万人を超える労働者が結集した。
民主労総は、李明博政権に対し3大要求の実現とともに労働弾圧中断、労働基本権および民衆生存権保障のための10大課題、79項目の社会改革立法を要求し、政府・資本が応じない場合は8月28日から無期限ゼネストに突入する方針を明らかにした。
ゼネストを力強く牽引した金属労組
金属労組は7月13日、20日、8月10日、17日と4次にわたるゼネストを展開した。このストライキには10万人以上の組合員が参加した。それぞれ4時間の時限ストライキであるが、これは2006年に金属労組が発足して以来最大規模のストライキだ。△深夜労働撤廃△非正規職正規職化△元下請不公正取引根絶△労働時間短縮ともに用役侵奪(警備員による職場制圧)、労働弾圧糾弾などを掲げてストライキに立った。
現代自動車支部4万4千、起亜車支部3万がストライキに参加したが、それぞれ4年ぶり、3年ぶりのスト突入だった。この金属労組ゼネストは中央・支部別交渉が進められている渦中で展開された。中央・支部別交渉の最大の核心は昼夜2交代制の実施だ。
そして金属労組のゼネスト闘争が行われている同時期に自動車部品のマンドとSJM、パレオ電装などでの会社と公権力が一体となって用役暴力ガードマンを大量動員した攻撃的職場閉鎖、それに引き続く御用第2労組をつくり上げて多数労組にして金属労組を無力化してしまう労組破壊攻撃が次々発生した。これに対する労働者の怒りが4次にわたる金属労組ゼネストの原動力ともなった。
16地域でストライキ
拠点籠城に突入
8月29日のゼネストを前に民主労総が全国16の地域でストライキ拠点籠城に突入した。16日午前11時、民主労総は国会近隣の産業銀行前で記者会見を行い、ゼネスト準備状況と8月28日までのストライキ拠点籠城の突入を表明した。
そして「民主労総は8月31日、大規模ソウル集結を頂点として再び力を結集して11月全国労働者大会、その後の大統領選挙闘争に至るまでより大きく、より強く闘う」と表明した。
ゼネストから下半期の闘いへ
(写真 8・31集会隊列がソウル駅を出発して南大門、韓国銀行前を過ぎてウルチ路まで行進した)
(写真 民主労総は8月政治ゼネストに続き9月下半期闘争を警告した)
8月29日、民主労総13万余ゼネスト突入
民主労総は8月29日、ゼネストに突入した。
民主労総は用役暴力糾弾と非正規職撤廃などを掲げたこの日のゼネストに金属労組など組合員13万7000余人が参加したと発表した。
集会は問題となっているSJMの工場がある安山市で行われた。午後3時、京畿道安山市庁前でゼネスト集会を開きSJMの違法職場閉鎖と用役暴力を糾弾した。この集会には民主労総傘下のソウルと京畿地域の金属労組、建設労組、保健医療労組、公共運輸労組など民主労総組合員と市民社会団体2千人が参加した。集会で「用役ヤクザの暴力侵奪糾弾と責任者処罰」「職場閉鎖即刻撤回」「特殊雇用労働者基本権をかちとる」などを要求した。
集会後、雇用労働部安山支庁に行進してSJM事態解決を要求し、安山のパンウォル工業団地内のSJM工場に移動して集会を続けた。
SJM工場前に到着した集会参加者たちは鉄条網の撤去を始め警察に妨害された。武装警察の撤退を要求してぶつかり合いも生じた。工場正門前で7時30分からSJM闘争勝利のための文化祭を行い29日の日程を終えた。
8月31日ゼネスト集会
民主労総は8月31日、民主労総組合員1万5千人が参加する大規模都心デモを行った。この日の都心デモと集会には地域別ストライキに参加していた組合員の一部がソウルに上京して闘った。
31日午後3時、ソウル駅に集結して乙支路入り口まで都心デモ行進を繰り広げた。午後4時からは乙支路入り口十字路を占拠して1時間30分ほどの集会を行った。
労働者たちは1時間30分の間、乙支路入り口駅一帯の4方向の全車線を占拠して民主労総ゼネスト要求を叫んだ。
「社会両極化を煽る非正規職を撤廃しよう!」
「解雇は殺人だ。整理解雇を撤廃せよ!」
「労働者を弾圧する労働法を再改定せよ!」
「労働時間短縮で徹夜労働をやめさせよう!」
「巨大企業の腹を肥やす民営化を阻止しよう!」
また組合員たちはそれぞれのチョッキと帽子、ハチマキをして、政権と資本の用役を使った労働現場侵奪と暴力、資本の腹を肥やす民営化、労働組合を締め付けて破壊する労働悪法を糾弾するプラカードを掲げた。
「用役暴力を傍観する労働部を糾弾する!」
「ゼネスト闘争で労働法全面改訂」
「SJM暴力侵奪用役ヤクザ出て行け!」
「医療、KTX、空港、ガス、地方自治体清掃業務の民営化反対!」
午後5時30分頃,集会を終えて現場に戻った。
下半期の闘いの展望
8月末の民主労総ゼネストを経て、民主労総の下半期の闘いの展望と政権・資本との激突点はどこにあるのかを簡単に見ておこう。
民主労総は9月6日の中央執行委員会と9月26日の臨時代議員大会などを経て△役員直選制△下半期闘争△大統領選挙など新しい課題を遂行して行くという方針をうち出す。
これに従い、民主労総は9月第1週の保健医療産別ストライキを始まりに、「整理解雇反対闘争、非正規職のない仕事場をつくる1千万宣言運動」と「非正規職10万ロウソク行進」などの闘争を続けていく計画だ。また10月公務員労組のゼネスト闘争と公共運輸労組連盟の総力闘争、教育大改革など大規模闘争も計画されている。
民主労総は「このような下半期闘争は11月全国労働者大会を経て頂点に向かうものであり、闘争の社会的影響は大統領選挙政局をとおして表面に出てくる」としている。
大統領選挙闘争の過程で「非正規職問題」を選挙闘争の争点に押し上げることが重大な課題となっている。また金属労組のマンド、SMJを始めとする現場で進行している民主労組つぶしの資本の卑劣な戦略的な攻撃を全労働者階級と全資本の激突闘争としてそれに勝利し抜く闘いをつくりあげていくことが重要な課題だ。
第2章
韓国労働運動の歴史と総括――新自由主義粉砕、非正規職撤廃へ
民主労総の創立と闘いの発展
「社会改革の原動力」を謳い1995年に設立
民主労総は、1995年設立の韓国の労働組合の最大のナショナルセンターである。その設立宣言では「世の中の主翼であり、社会改革と歴史発展の原動力であるわれわれ労働者は今日、自主的で民主的な労働組合の全国中央組織、全国民主労働組合総連盟の創立を宣言する」と端的に謳いあげている。
さらに次のように高らかに宣言している。
「(民主労総は)統一と団結した力を基礎に自主的で民主的な労働組合の全国中央組織を結成する。民主労総に結集したわれわれは人間らしい生活と尊厳性を維持できる労働条件の確保、労働基本権の争取、労働現場の非民主的要素を剔抉し(えぐり出し)、産業災害追放と男女平等の実現のために苛烈に闘争するのだ。さらにわれわれは社会の民主的改革を通して全体国民生活の質の改善とともに祖国の自主、民主、統一を早めるための苛烈な闘争を展開する。これとともに国境を越えて全世界の労働者の団結と連帯を強化し、侵略戦争と核兵器収束を通じた世界平和実現のために努力する」
「このような課題を実現するために民主労総は未組織労働者の組織化と組織の拡大強化に拍車をかける一方で、産業別共同闘争と統一闘争を基礎にし、産業別労組を基礎にした全国中央組織として発展するのだ。また民主労総は政権と資本からの自主性と組合内民主主義を強化し、全体労働組合運動の統一と団結のために邁進し、諸民主勢力と連帯し、政治勢力化を実現する」
そのために別掲(次ページ)の課題を掲げている。
新自由主義粉砕、非正規職撤廃へ
民主労総は現在25の産業別組合・連盟と16の地域本部によって構成され、70万人弱の組合員から成っている(33n参照)。世界大恐慌がますます深化し、2番底、3番底に向かう帝国主義と対決する韓国労働者と日本の労働者の、国際連帯の共通で共同の課題は、新自由主義粉砕、民営化粉砕、非正規職撤廃だ。
設立当時から非正規職撤廃を掲げる民主労総は、96〜97年ゼネストを経て、韓国資本主義のIMF危機(アジア通貨危機に際して、韓国はIMF〔国際通貨基金〕の管理下に置かれた)の攻撃によって、整理解雇制などが導入され、新自由主義構造調整攻撃に対する苦闘を強いられてきた。しかし、2009年の双龍自動車支部労働者の77日間の平沢本社工場占拠ストライキから製造業部門の新自由主義攻撃への反撃に転じ、2012年の歴史的情勢を迎えている。
現在に至る主客の情勢の推移を07年から見ていく。
イミョンバク政権下での闘いの展開
2007年12月の大統領選で当選した李明博は、続く08年春には米国産牛肉のBSE(牛海綿状脳症)問題で輸入に反対する100万人のロウソクデモでほとんど打倒寸前に追い込まれた。労働組合―民主労総の対応が遅れたために大衆的闘いと結合できず政権はかろうじて延命する。
李明博政権が成立した07年秋にはサブプライム住宅ローン問題が爆発し、ついに08年秋にはリーマン・ショックによる世界大恐慌情勢への突入で韓国資本主義と李明博政権は崩壊寸前の局面だった。野放図な資本の投入などで延命を図った米帝などとともに、韓国資本主義が息継ぎできたのは、日帝の脱落状態と円高のもとでの輸出攻勢であり、中国市場を中心としたアジア市場への拡大などであった。
同時に、すさまじい新自由主義攻撃として労働者階級への非正規職化攻撃が襲いかかった。韓国の非正規職の比率は、公式統計でも2009年には55%を優に超えていた。新自由主義構造調整攻撃と大量の資金投入で98年のIMF危機を乗り切ったかに見える韓国資本主義は、その矛盾を抱えたまま、労働者への整理解雇攻撃と非正規職労働者の量産によってしのいだに過ぎない。
しかしその攻撃は苛烈を極め、非正規職労働者の相次ぐ焚身(焼身)や自殺など、労働運動の存否が問われる情勢が2000年代初頭から韓国労働者を襲った。「労使政協議」などへの民主労総の抱きこみ攻撃=体制内化攻撃、労使協調路線への屈服を迫る攻撃に、民主労総指導部が対応し切れたとは言えない。
(写真 ソウルの清渓広場で行われた米国産牛肉の輸入に反対するロウソクデモ【2008年5月3日】)
(写真 警察部隊の工場突入を阻止する双龍自動車支部組合員【2009年7月22日】)
双龍自動車ストと韓進重工業籠城闘争
しかし、87年労働者大闘争以来間断なく闘い抜いてきた韓国労働者の民主労組運動の新自由主義攻撃に対する反転攻勢は、08年世界大恐慌突入情勢下の整理解雇攻撃に対する反撃として09年6〜8月の双龍自動車労働者の工場占拠ストライキの77日間の闘いとして爆発した。
そして2010年11月、韓国資本主義の総本山の一角を占める現代自動車の本社工場、蔚山工場の非正規職労働者の正規職化を要求する25日間の工場占拠闘争として爆発した。
この渦中で延坪島への北朝鮮の砲撃に対して「戦争はここ蔚山で戦われている」と言った韓国労働者の闘いこそ、北朝鮮・中国侵略戦争策動に走る米帝への一大反撃となった。
またこの時期、同時に、釜山の韓進重工業の整理解雇攻撃に反対する労働組合員と民主労総釜山地域本部指導委員キムジンスクさんが、影島工場の85号クレーンに登ってこれを占拠し、03年の支部長の死に対する反撃として、整理解雇攻撃の撤回を求める、ほぼ1年にわたる籠城闘争を貫徹した。この闘いに呼応した韓国の労働者と市民運動が、あの「希望バス」運動であり、釜山の韓進重工業の闘いに連帯して決起した。数次にわたる「希望バス」は、延べ10万人を超える労働者人民がその隊列に参加した巨大な闘争となって、2011年11月上旬、韓進資本についに整理解雇撤回を約束させ、キムジンスク指導委員は生きて85号クレーから降りた。連帯した労働者らと実に感動的な対面を果たした。
(写真 韓進重工業の85号クレーンから笑顔で降りるキムジンスク女史【20011年11月10日 釜山】)
複数労組制による御用労組との闘い
この間には、2011年5月に現代自動車などにベアリングを供給するユソン企業労働者が「夜は眠りたい」という切実な要求に基づくストライキを行った。この年7月に施行された複数労組制―交渉窓口単一化による第2組合=御用労組設立攻撃が相次ぎ、ユソン企業でも用役ガードマンの暴力と工場立ち入り禁止、第2組合設立の攻撃で厳しい局面に立たされたが、労働者らは組合に団結しており、自動車産業労働者の過酷な殺人的労働に反対する闘いは現在進行形で継続されている。
双龍自動車支部の労働者は無給休職からの復職を協定し籠城を解いたが、会社は約束を守らず、誰一人復職をしていないばかりか、労組解体攻撃と第2組合策動などの攻撃が続き、22人の労働者が自ら命を絶った。
韓進重工業でも整理解雇を撤回すると協定したが、いまだそれは実現されていないばかりか、影島工場での生産縮小攻撃で仕事を奪われ、労組は団結を守っているが、苦闘を続けざるを得ない状態だ。
現代自動車非正規職支会の労働者も、大法院での下請不法判決をかちとったが、正規職には転換させない資本の攻撃が続き、労組破壊のための用役ガードマンの暴力的襲撃が日常化している。工場内の組合事務所に立ち入ることさえできずにいたが、この間の闘いで出入りすることをかちとっている。
日本遠征で整理解雇を撤回させたKEC支会
また、金属労組亀尾支部KEC支会は度重なる会社側の襲撃に300日を超えるストを貫いたが、2011年7月の複数労組制施行で第2組合がつくられ交渉窓口を奪われ、2012年初めには75名が整理解雇される事態となった。KEC支会は会社の不正経理を暴くため、動労千葉の支援で日本遠征闘争を行い、ついに不正の暴露を恐れた会社が75名の解雇撤回を約束し職場復帰を果たした。韓国労働運動史上初めて整理解雇撤回で復職したのだ。だが第2組合との交渉窓口設置などの攻撃と闘いながら、いまだ多数の被解雇者全員の復職をかちとるため、隊列は強固に維持されている。
整理解雇をかちとり現場に復帰することがいかに困難なことか。その意味でも双龍自動車支部や韓進重工業支部の労働者の闘いはこれからであり、現代自動車非正規職支会の労働者の闘いも始まったばかりだと言うことができる。
(写真 KEC日本子会社TSジャパン抗議訪問に動労千葉青年部など30人が結集【5月22日】)
金属労組の5回にわたるゼネスト
すべてがこれからだ。世界大恐慌が2番底、3番底に向かう今、韓国資本主義はその生き残りをかけて激しい新自由主義攻撃をかけている。金属労組のマンド支会、SMJ支会などへの職場閉鎖攻撃と用役ガードマンの暴力と第2組合設立などだ。金属労組はこれに対し7月の2回の13万人のゼネストに続き、8月の3回のゼネストを貫徹して団結を固めている。
現代自動車やサムソンを中心とする資本は新自由主義の絶望的展開で延命を図ろうとし、それに対し生きるための金属労働者の闘いが金属労組のゼネストであり、非正規職撤廃の闘いだ。09年の双龍車77日の闘いなどに続く、韓国労働者階級の第2ラウンドの闘いが金属ゼネストであり、それは「総資本対労働者階級の決戦」となっている。現場労働者が民主労組運動の旗を守り抜き闘いを進めているのだ。
2000年代初めの民営化・非正規職化
このように、2008年のリーマン・ショックに始まる世界大恐慌下で、韓国資本主義の非正規職化攻撃と整理解雇攻撃に対して韓国の労働者は巨大な底力を発揮して大反撃を開始している。
2003年〜2000年代初めの新自由主義攻撃は、一方では公企業の民営化攻撃として加えられ、他方では製造業部門、とりわけ金属産業の非正規職化と整理解雇攻撃として加えられてきた。
民営化攻撃に対して02年初めには、鉄道、ガス、発電の3労組が共同でゼネストに立ち上がった。特に発電労組は40日に及ぶストを貫いて闘い抜いたが、執行部がスト収拾方針を出すなか、発電産業の4分社化と労組破壊攻撃で8000人の組合が現在2000人にまで減少した。
しかしこの3労組のゼネストは盧武鉉政権の労使和解攻撃に立ち向かう労働者の反撃ののろしとなった。また鉄道労組は公社化されたとはいえ、その後も果敢にストライキを貫いて、激しい組合破壊攻撃、懲戒処分攻撃による解雇や減給攻撃にも屈せず、現在も2万7千人余の組合員が団結してKTX(韓国高速鉄道)の民営化を阻む中心に立っている。
金属産業に加えられた非正規職化攻撃は熾烈を極め、03年前後には現代重工業のパクイルス烈士を始め多数の労働者が焚身抗議自殺を行った。当時のタンビョンホ民主労総委員長は「十数回も葬儀で組合員を送らねばならなかった。これ以上死なせてはならないと思った」と述べている。
非正規職撤廃を正面に据えなかった指導部
民主労総は95年の設立当初から「非正規職撤廃」を掲げている。すでに韓国資本主義は非正規職量産の激しい攻撃を加えていたのだ。しかし民主労総指導部が非正規職撤廃を正面課題に据え切ることはできなかった。そのためIMF危機後の激しい攻撃にも十分に対応できず、むしろ非正規職労働者が全体の半数を超える事態を生み出してしまった。これは内部からの批判にもあるとおり、民主労総が大単産の正規職を中心に構成されていることによるものと言えるし、民主労総指導部が非正規職撤廃の闘いに力を注いでこなかったからであった。
新自由主義攻撃の核心とも言える民営化と非正規職量産に対し闘ったのは、ほかならない当の非正規職労働者であり、それは当初、絶望的な焚身抗議であった。現場労働者らはこれに激しく反応し、非正規職撤廃の攻撃が開始されていく。その頂点に立つ闘いが現在闘われている現代自動車非正規職支会の闘いだ。
非正規職撤廃に民主労総指導部が対応し切れなかった理由として、その過半数を占める政派が体制内化を進めているからである。民主労総指導部と現場労働者の間にはねじれが存在する。「官僚化」した指導部を交代させろと叫ぶ現場労働者も多くいる。
労働者の「政治勢力化」の課題
離合集散し統合進歩党に 現場からは激しい反発も
民主労総指導部は「2012年に労働者政治勢力化」を実現しようと呼びかけ、2012年4月の総選挙と12月大統領選に進歩勢力が勝利することを目標に掲げた。そうして始まったのは、08年に分裂した民主労働党と進歩新党の統合方案であった。政派でいえばNL系と中央派(後述)が再び統合することであった。
これには現場労働者から激しい反発が起きたし、自派の勢力拡大に走った各政派は離合集散を繰り返し、結局、進歩新党の一部と民主労働党が統合し、国民参与党や社会党も加わり「統合進歩党」を立ち上げ、総選挙に臨んだ。残った勢力は「進歩新党」を名乗り総選挙に出馬した(議席はなく、得票数も足りず解散し、再建中)。
「統合進歩党」は総選挙では過去最高の13議席を獲得したが、その直後から比例区候補選定のインターネットでの党内投票で主流派たる「党権派」による不正投票が発覚し、現在も収拾のめどが立たない状態が続いている(分党することになる)。「党権派」があくまで当選者の辞任を拒否し続け、反主流派と激しく対立している。大統領選の12月が近づき候補選定が迫る中でのこの事態だ。この場合も統合時と同じように妥協に走るのが党権派であり、反主流派も同じ穴の何とかだ。
韓国は保守政党として「セヌリ党」(旧ハンナラ党)があり、李明博現大統領出身の政党で、12月の大統領選には朴槿恵(パククネ)が候補に決まった。第2の勢力が民主党から名を変えた「民主統合党」で、続いて「統合進歩党」である。「進歩新党」や「緑の党」などが再建途上にある。
NL系と中央派
いわゆる政派について考察してみる。
かつて80年代に「社会構成体論争」で韓国社会を「半植民地半封建社会」と規定し「反帝反封建民族解放闘争」を中心に活動を進めるグループをNL系と総称する。労働運動内の過半数を占める多数派である。現在的には民主労働者全国会議(全国会議)≠ェその中の多数派で、民主労総の中央執行権力を握っている。「統合民主党」内で「党権派」といわれるのがそれだ。北朝鮮スターリン主義の主体思想を理念としていると言われる。この全国会議のほかに、ここから分離したグループに現場連帯≠ェある。また「非党権派」として革新連帯(国民派)≠ェある。これまでは全国会議と歩調を合わせてきた。かつての民主労総委員長のイスホやイソッケン、チャスリョン保健医療労組元委員長などが有名だ。
またNL系列と言われ、左派からは右派、右派からは左派といわれる独特の存在がチョンテイルに続く民主労働研究所とサイバー労働大学≠セ。教育研究を中心としている独自の形態を取っており影響力も大きく、左派との連帯活動を強めている。
中央派と総称されるグループは、いわば現場左派(PD派)とNL派の中間に位置するグループのことだ。かつては前進≠ニいう名でグループを形成していたが解消した。旧「進歩新党」がそれに当たる。代表的人物としてタンビョンホ元民主労総委員長や金属労組の事務処長だったシムサンジョン統合進歩党現国会議員が有名だ。現場労働者としては金属労組や公共連盟の前委員長らを擁する現場労働者会≠ェある。またかの02年発電ゼネスト時の委員長イホドンもかつて前進≠ノ名を連ねていた。
PD系列(現場派)と政派に属さない活動家
PD系列(現場派)には多様な政派がある。最大政派は社労委(社会主義労働者政党建設共同実践委員会)≠ナ、その中心の労働者の力#hが呼びかけて2010年に形成された。綱領草案をめぐる討論で2011年春に社労委から離脱した労革推(労働者革命党推進委員会)≠ヘ社労委とともにマルクス主義を正面に掲げた運動家らで構成されている。
解放連帯≠ヘ最近、国家保安法弾圧を受けた政派で、反資本主義共同戦線構築と社会主義労働者政党を提起している。社会進歩連帯≠ヘPD系列の核心的な変革論である「社会構成体論争」における「新植民地国家独占資本主義論」を基盤とする「反帝反独占民衆民主革命論」を提出したグループで、ソ連崩壊後のフランスのアルチュセールらを思想的根拠としている。自身を社会主義勢力としつつ「大衆運動の復元と拡大」に焦点を据えている。
労建闘(革命的労働者政党建設現場闘争委員会)≠ヘかつて社労連に結合した組織で「現場の中から」という旗幟の下、現場闘争に焦点を当てている少数のグループだ。党建設運動を事実上放棄しているようだ。労政協(労働者政治協議会)≠ヘ少数で労働社会科学研究所を中心に活動している。チェマンス氏らが理論的中心で、スターリン主義的グループといわれている。労働解放≠燻ミ労委離脱グループだ。
タハムケ≠ヘトロツキー主義のグループで、イギリスの社会主義労働者党(SWP・トニー・クリフなど)の系列だ。当初国際社会主義(IS)≠ニして出帆し、2000年代初めにISを解散して民主労働党への加入戦術をとりタハムケ≠ノ改称した。
「現場派」はこうした政派はむしろ少数であり、それに属さない多くの現場活動家が存在している。「現場派」といわれるゆえんだ。こうした現場派の活動家が下から民主労組運動を支えている。
これらに加え、労働戦線≠ニいう統一戦線的グループがある。いわば労働運動内の左派活動家の運動団体だ。数百名がその影響下にあると言われている。11年4月30日、メーデー前日にマロニエ公園で社会主義を公然と掲げた政治集会が大雨を突いて行われた。朝鮮戦争以来初めての社会主義者の公然集会だ。民主労総執行権力の限界を突き破ろうとする新たな時代を告げる集会だ。
議会主義は労働者に支持されず闘い爆発
民主労総を中心に2012年労働者政治勢力化を進めた背景には、階級情勢の激動期への突入がある。先に見たように07年サブプライムローン、08年リーマン・ショックで主客の情勢は一変した。09年には双龍車支部のストが始まり、11年にはチュニジア、エジプトの革命が起こり、ギリシャやスペインの労働者が激動期を前進させている。
こうした情勢に乗って民主党とともに議会で多数を制することができるともくろんだ統合派は「統合進歩党」を無理やりつくり出したのだ。民主党も韓国労総の委員長と統合して「民主統合党」となったが、総選挙では過半数を制することができず、朴槿恵の「セヌリ党」がかろうじて過半数を制した。
民主労総設立時から「労働者政治勢力化」が掲げられているが、議会主義で世の中を変えるとは労働者の誰も信じてはいない。議会での交渉のたびに妥協を重ねるやり方に対する不信は山積していたのだ。労働者の命がけのストライキを交渉のための道具としてしまう議会主義的やり方は支持されなかった。そしてその対極で現代自動車非正規職の闘いや韓進重工業での籠城闘争が貫徹されたのだ。
民主労組運動の苦闘
韓国の労働者は、新たな民主労組運動を構築するために整理解雇粉砕、非正規職撤廃、新自由主義粉砕を継続して闘い抜いている。日本の労働者も非正規職撤廃、新自由主義粉砕、民営化阻止の闘いを動労千葉、動労水戸を先頭に闘っている。全世界の労働者が新自由主義粉砕、非正規職撤廃を闘っているのだ。
日韓労働者の国際連帯は今年、新たな局面に入ったのだ。同じ闘いを自らの現場で闘い抜くことこそ国際連帯だ。11・4労働者総決起集会を圧倒的にかちとり、日韓、世界の労働者の国際連帯をさらに前進させよう。
【戦後から民主労総結成までの韓国労働運動の歴史については本誌「世界の労働組合」(韓国編/民主労総)を参照して下さい】
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◎民主労総創立大会で掲げられた闘いの課題
・自主的で民主的な労働組合運動の歴史と伝統を継承し、これを発展させる
・人間の尊厳性と平等が保障された本当の民主社会を建設する
・労働者の政治勢力化を実現し、諸民主勢力との連帯を強化する
・言論、出版、集会、結社、示威、祖国の自由などの民主的諸権利を争取する
・民族の自主性を確立し、分断された祖国の平和統一を実現する
・産業別共同交渉、共同闘争体制を確立し、産業別労働組合を建設する
・未組織労働者を組織し、全体労働運動を統一する
・権力と資本の弾圧粉砕と教師、公務員の団結権などの労働基本権の完全争取
・資本の合理化戦略による労働統制と労働強度強化を阻止する(非正規職撤廃)
・共同決定を基礎にした経営参加を拡大し、労働現場の非民主的要素を剔抉する
・生活賃金と週40時間労働制を争取し、有給休日、有給休暇を拡大する
・男女、職種、学力、国籍間差別を撤廃し、同一労働同一賃金を争取する
・解雇と失業を防止し、完全雇用と雇用安定を争取する
・「産業災害と職業病を追放し、快適で安全な作業環境を争取する
・男女平等を実現し、母性保護を拡大し、女性の生涯的職場を争取する
・社会保障制度と住宅、教育、医療制度を改革し、全国民の人間らしい生活を争取する
・国内外の独占資本に対する規制を強化し、中小企業と農業を保護・育成する
・税制、財政、物価、金融、土地、環境、交通などと関連する制度と政策を改革する
・退廃的な(資本の)文化を剔抉し、健康な民族文化を確立する
・全世界の労働者と連帯を強化し、戦争と核兵器の脅威に対決し、世界平和を実現する
第3章
「領土」問題への階級的立場――国境を越えた国際的団結を
日韓、日中の対立的事態と排外主義の本質
世界大恐慌の激化と新自由主義の絶望的凶暴化のもと、脱落日帝の改憲・戦争策動として「領土」問題が噴き出している。それが独島(竹島)と釣魚台(尖閣諸島)問題だ。
中国は、今やアメリカに次ぐ世界第2位の経済大国となった。新自由主義のもと、13億人の巨大市場と安価な労働力を狙って各国帝国主義がこぞって中国市場に参入し生産基地とした。その結果、中国全土に巨大な規模で労働者が生み出され、スターリン主義の統制と弾圧をはねのけ、自主的に団結し、資本との闘いに立ち上がっている。
さらに、帝国主義資本の中国進出の結果、今年7月の米貿易赤字は420億jに拡大。うち対中国赤字が293・8億jという。米シンクタンクによれば2001年から11年の10年間に対中国貿易赤字によりアメリカ国内で270万人以上の雇用が喪失したというのだ。米帝はTPP(環太平洋経済連携協定)を対日争闘戦と「中国包囲網」として位置づけて進めている。
米帝オバマは、今年1月に「アジア太平洋重視」の新軍事戦略を発表した。これは、軍事的・経済的に台頭した中国スターリン主義を脅威と認定し、対中対峙・対決戦略をもって「アジア太平洋での米軍の増強」を図るものだ。
この新戦略に基づき米軍が打ち出した大規模な中国侵略戦争計画が「エアーシーバトル」だ。これは海空両軍の統合作戦能力を高め、中国のアジア・太平洋への軍事進出を抑え込もうというものであり、垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの普天間飛行場への配備もその一環だ。オスプレイを沖縄に配備すれば、東アジアから西太平洋地域における米海兵隊の緊急展開能力は格段に向上する。
この中で自衛隊がエアーシーバトルの一翼を担うことになり、日米軍事演習などの激化と自衛隊の実戦的強化と直結し、日帝を凶暴な改憲と戦争衝動に駆り立てている。自民党総裁選の面々の言動を見よ! 原発再稼働・原発政策の維持・強化、領土・改憲・戦争の言葉しか出てこない!
そして、日韓、日中間での「領土」問題をめぐる対立が激化している。
8月10日、韓国の李明博大統領が突然、現職大統領としては初めて独島(竹島)を訪問した。14日には天皇の訪韓には謝罪が必要だとの発言が飛び出した。以来、外交文書のやりとりすらままならない状態となっている。
釣魚台をめぐる事態は、8月の香港活動家らの上陸・逮捕、入管法違反での強制送還から、対する日本の国会議員や右翼メディアらの上陸騒ぎなどで緊張が増す中、民主党・野田政権は9月11日、「地主」の男性から3島(魚釣島、北小島、南小島)を20億5000万円で購入し、国有化したと明らかにした。これに対し、中国、台湾では大規模な抗議デモが激発し、北京の日本大使館には数千人が押し掛ける事態となっている。日中双方のマスコミや政治家がこぞって「領土を守れ」と叫んでいる。
福島の現実と原発再稼働、消費大増税、オスプレイ配備、外注化・非正規職化に対する激しい怒りが爆発し、今や統治能力崩壊の危機に直面している野田政権が、この「領土」問題を使って中国や韓国への排外主義を扇動し、労働者人民の決起を分断、圧殺しようとしているのだ。
民主労総の闘いに追い詰められた李明博
また同じように政治危機、体制危機を深める韓国・李明博政権、中国の残存スターリン主義政権も、領土問題をむしろ反動的に組織し、支配の危機を排外主義と労働者人民の決起の圧殺でのりきろうとしている。
この夏、民主労総は傘下の金属労組のゼネスト決起を牽引軸として、@非正規職撤廃、A整理解雇撤廃、B労働悪法再改正、C長時間労働時間短縮、D民営化阻止を5大要求として全面ストライキ方針で闘った。この労働者階級の闘いに追い詰められ、さらに実兄が汚職で逮捕されるなど、政治危機の真っただ中にある李明博は、12月の大統領選挙に向けて、独島訪問のパフォーマンスで政治的な起死回生を狙った。だがそんなことでは怒りに燃える労働者階級を、民主労総を黙らせることなどできない。
中国労働者の怒りが反日デモとして爆発
中国、台湾でも、反日抗議闘争に立ち上がっている労働者人民の怒りは、同時にスターリン主義官僚や工場主、さらに日帝資本に向かっている。その怒りは早晩、中国スターリン主義体制の打倒にまで成長するだろう。
最末期帝国主義の絶望的延命策である新自由主義は、強欲な利潤追求のためにいともたやすく国境を越え、世界中に侵出・侵略した。その結果、世界中で膨大な労働者が生み出された。
体制的危機を抱えた中国スターリン主義は79年「改革・開放」路線を打ち出し、外資導入へと道を開けた。以来、安価な労働力と13億人を擁する中国市場には帝国主義資本が殺到している。今や日本を抜いてGNP(国民総生産)世界2位の中国市場。しかし、それを支える中国人労働者の賃金は、1カ月1000元(約1万2500円)程度なのだ。
10年5月、ストライキで中国にあるホンダ全工場の生産をストップさせた中国人労働者たち。80年代生まれの青年労働者は「ホンダ! 世界500強の企業の一つで09年には40億元(約500億円)以上ももうけた会社がたった64元しか賃上げしない!」「ホンダは日本企業だ!日本は資本主義の国だ! 中国は社会主義の国だ! 中国に投資しているんだろ! 郷に入っては郷に従え! 資本主義を押しつけるな!」と叫んだ。
05年4月にも日本の国連安保理常任理事国入りに反対する抗議デモが激発したことがあるが、その時のデモの主体となった労働者たちは日系企業で賃上げを要求するストライキも闘っている。今回も、デモの主体となっている労働者の怒りは、超低賃金・劣悪な労働条件で過酷な搾取・収奪を行っている日系企業への怒りと一つとなっている。
(写真 中国・湖南省で行われた反日デモ【9月18日】)
真の敵は中国スターリン主義と見ぬく
9・18柳条湖事件(1931年9月18日、中国東北部にある柳条湖で南満州鉄道の線路が爆破され、日帝の「満州侵略」の発端となった。爆破は日本軍の自作自演だった)81周年を迎え、反日デモはさらに拡大・激化している。このデモの拡大と暴動化は、すでに中国スターリン主義の指揮・統制を跳ねのけ、全土を覆ううねりとなっている。重要なのは、この中で、中国の労働者の中から帝国主義とスターリン主義の釣魚台をめぐる争奪戦の正体を見抜き、こうした民族主義的排外主義的な反日デモをのりこえ、中国スターリン主義を真の敵として明らかにし、今回の事態に対応する勢力が登場しつつあることである。
広州のデモの中には「自由・民主・人権・憲政」と書かれた横断幕が登場し、タクシードライバーが「反腐敗、抗日」のステッカーを張っている。「反腐敗」は中国スターリン主義官僚の腐敗を弾劾する言葉だ。
以下は中国版ツィッター(ウェイポ)に書き込まれたものだ。
「君たちは、釣魚島を守るためには、日本との開戦も辞さないという。しかし、私たちが自分たちの土地や家を守ろうとすると、(中国政府によって)労働教養所(裁判なしで人を収容できる強制収容所)にたたきこまれ、監獄にぶちこまれ、さまざまな理由をつけて弾圧され抑圧されるではないか! これで良いのか!」
「人権がなければ、国土面積が増えても、奴隷労働の土地が増えるに過ぎない。……公平がなければ、経済発展が進んでも、(労働者は)搾取の苦難が増すだけだ」
「自分の家を(中国政府の強制収用から)守りぬくことさえできないのに、小島の主権を守ろうとする。みんなは利用されており、それをまだ『愛国』だと思っている」
こうした声は、特に経済特区である広東省深せん市の労働者から出ている。新世代農民工といわれる深せんの青年労働者(ほとんどが非正規労働者)たちは、日常的にストライキ闘争などの資本との闘いを激しく闘っている。さらに今年8月には自分たちのつくった青年労働者支援団体が中国当局によって閉鎖されるなど大弾圧を受けている。そうした弾圧への怒りが、青年労働者の階級的自覚を生み出している。
この怒りに日本の労働者はどのように向き合い、中国の労働者に何を呼びかけるべきなのか。
「領土」問題は排外主義・国家主義だ
そもそも資本主義・帝国主義の「領土」問題とは何か。それは国家・領土を振りかざしての排外主義・国家主義への労働者人民の取り込みであり、ごり押しするならば必ずや戦争・改憲へと行き着く問題なのだ。
「領土」をめぐる歴史は侵略と侵略戦争、植民地支配とともにあった。釣魚台は、日本絶対主義が1894〜95年に強行した中国侵略戦争=「日清戦争」で強奪したものである。72年沖縄「返還」で釣魚台の施政権も日本に移ったというのが日米帝の見解で、一角にある無人島、赤尾嶼と黄尾嶼は、米軍に射爆場として貸し出されており、「国有化」後の3島が海上保安庁による軍事支配に置かれることと併せ、いずれも軍事的緊張が激化するのである。
それは韓国との緊迫状態が続く独島(竹島)も同じだ。日本は帝国主義段階への歴史的移行のもと、1905年、日露戦争のただ中で独島を「日本領土」と閣議決定して島根県に編入した。日帝は日露開戦と同時に韓国に「日韓議定書」を強要し、1次から3次に及んだ「日韓協約」から1910年韓国併合で植民地化していく過程での略奪だったのだ。日韓条約に至る協議過程で当時の朴正煕大統領が「韓日友好の妨げになる無人島など爆破してしまえ」と言ったという話があるが、「棚上げ」以外に解決できない。それが資本主義・帝国主義のもとでの「領土」問題だ。
侵略戦争で略奪した釣魚台、独島を「固有の領土」などと強弁するのは、強盗の論理そのものだ。さらに日帝の侵略と侵略戦争、植民地支配の歴史は、謝罪・賠償はおろか、戦争責任の所在さえいまだ日帝は認めていない。
民族・国籍・国境を越えた労働者の連帯を
だからこそ、この歴史の決着も含め、労働者国際主義に立った日中韓3国の労働者の国際連帯が求められている。
新自由主義が世界を覆っている。労働者階級の共通の敵の姿が今や誰にも見えるではないか。労働者階級の敵は、1%の資本家であり、その資本家を守る「国家」なのだ。民族・国籍・国境を越えた労働者の国際連帯の前で「国家」の虚像は崩れ去る。労働者階級に国境はない。マルクス・エンゲルスの『共産党宣言』も言うように労働者階級に「祖国」はなく、国境もない。「固有の領土」など存在しない。領土問題への万国の労働者の立場は、国境を越えた国際的団結とプロレタリア世界革命だ。日本・韓国・中国の労働者の国際連帯で、「領土」をめぐる排外主義と戦争の攻撃を断固粉砕しよう!
(写真 2011年11・6労働者集会で登壇した民主労総の労働者【日比谷野音】)
日韓連帯10年の地平で11・4労働者集会へ
来る11月4日、全国労働者総決起集会(東京・日比谷野外音楽堂)が、全日建運輸連帯労組関西地区生コン支部、全国金属機械港合同と国鉄千葉動力車労働組合の3労組と「国鉄分割・民営化に反対し、1047名解雇撤回闘争を支援する全国運動」の4者の呼びかけで開かれる。
掲げられたスローガンは「新自由主義とたたかう労働組合のネットワークを!」「国鉄1047名解雇撤回! 外注化阻止・非正規職撤廃! 反原発・反失業をたたかう国際統一行動を!」だ。
「領土」問題は、新自由主義と闘う労働者階級の国際的団結を破壊するために打ち込まれた刃だ。しかし、一見凶暴に見えるこの攻撃も、実は敵の弱点に過ぎない。すでに分かちがたい国際的結合が進行し、自らの職場から、地域から在日・滞日外国人とともに闘いは進んでいる。
3・11大震災と福島第一原発事故とその後の事態を見極めた10万、20万の人びとが、「みんなウソだった!」「黙っていたら殺される!」というこの国の現実に怒って動き始めている。首相官邸・国会、さらに経産省や文科省へ数万の毎週行動が取り組まれ、9・9沖縄県民大会には県民の10人に1人、10万人を超える人びとが集まり、オスプレイ拒否を宣言した。この怒り、「生きるためにこの社会を、この世界を変えてやる!」と闘っている世界の労働者とのネットワークが動き出している。
韓国民主労総と動労千葉との国際連帯は10年の歳月をかけて築き上げてきたものだ。日本での新自由主義攻撃としてかけられた国鉄分割・民営化攻撃に対し、解雇されても逆に団結を強化し、退くことなく闘いぬいてきた動労千葉の存在と闘いが、信頼と団結を勝ち得たのだ。その結合が、血債主義との断固たる決別へと導いてくれた。労働者階級の歴史的使命が明らかとなった。
まさに、最大の焦点は、労働組合と労働運動をめぐる革命と反革命との激突にある。ここで苦闘し、闘う労働組合と階級的労働運動を甦らせることができた時、帝国主義とスターリン主義のもとで抑圧民族と被抑圧民族に分断されてきた労働者階級が、プロレタリアートとして国際的=階級的団結を回復することができる。民族・国籍・国境を越えたプロレタリアートの階級的団結こそ、帝国主義による侵略戦争・世界戦争を実力で阻止し、プロレタリア世界革命を現実にたぐり寄せるものなのだ。自信をもってこの道を進もう。
非正規職撤廃は今や世界の労働者のスローガンだ。韓国民主労総やアメリカILWU港湾労働者、ドイツのゴアレーベン、日本企業と闘い抜く中国やインドの労働者、ブラジルやトルコを始め世界の労働者との「反原発・反失業をたたかう国際統一行動」として、11・4日比谷に集まろう! あふれる怒りと結びつき、この怒りをひとつに束ねて、世界を変えよう! 11・4を21世紀革命を準備する世界労働者大会としてかちとろう!