International Lavor Movement 2012/04/01(No.428 p48)

ホームページへ週刊『前進』季刊『共産主義者』月刊『コミューン』出版物案内週刊『三里塚』販売書店案内連絡先English

2012/04/01発行 No.428

定価 315円(本体価格300円+税)


第428号の目次

表紙の画像

表紙の写真 東京・代々木公園での反原発集会後のデモ(2月11日)

■羅針盤 福島の怒りと一つに闘おう 記事を読む
■News & Review 中国
 アップル委託生産・富士康で労働者が決起
 低賃金・長時間・危険な労働に怒り爆発
記事を読む
■News & Review イラン
 米帝のイラン侵略戦争が切迫
 ホルムズ海峡への自衛隊派兵策動許すな
記事を読む
■News & Review 日本
 外注化阻止、組織拡大へ2・15集会
 国鉄闘争を先頭に労働運動の再建を誓う
記事を読む
■特集 全世界に拡大したウォール街占拠運動 記事を読む
■翻訳資料
 中国・富士康の労働現場の現実
 2012年1月25日 ニューヨークタイムズ
 河原善之 訳
記事を読む
■Photo News 記事を読む
■世界経済の焦点
 消費大増税は非正規を直撃
 日本国債暴落で破産するのは「1%」の資本家
記事を読む
■世界の労働組合 フランス編
 フランス労働総同盟・労働者の力
 (Confederation generale du travail - Force ouvriere:CGT−FO)
記事を読む
■国際労働運動の暦 4月28日
 ■1952年4・28沖縄デー■
 沖縄の売り渡しの日
 米軍の軍事的分離支配を打ち破る沖縄人民の「屈辱の日」との闘い
記事を読む
■日誌 2012年2月 記事を読む
■編集後記 記事を読む
裏表紙の写真 ゼネストに決起したギリシャの労働者(2月7日)

月刊『国際労働運動』(428号1-1)(2012/04/01)

羅針盤

■羅針盤 福島の怒りと一つに闘おう

▼原発いらない! 3・11福島県民大集会(郡山市)は、原発推進に突き進む野田政権との大激突であり、労働者の未来をかけた大決戦だ。2月20日には関西電力の高浜原発3号機が定期点検のために停止した。全54基中、稼働原発は2基となる。全原発停止は目前だ。だからこそ野田は、大飯原発(関西電力)や伊方原発(四国電力)の再稼働に全力をあげているのだ。
▼野田政権は、福島第一原発が危機的状況に突入しているにもかかわらず、昨年末の「事故収束宣言」を押し通し、福島県民の怒りを圧殺するために全力をあげている。「低線量被曝や内部被曝は問題ない」「除染すれば安全」という大デマで、膨大な人たちを被曝させ、汚染地域への帰還を強制しようとしている。福島県民を孤立と分断と絶望に追い込むあらゆる策動を3・11でぶっ飛ばそう! 野田政権は、3・11にぶつけて政府主催の「追悼集会」を東京や被災地で行い、原発事故を引き起こした東京電力や政府、資本家どもの責任を居直り、免罪し、「復興のためには安定的な電力が必要」と原発再稼働に突き進んでいる。断じて許すな!
▼福島県民は3・11福島県民大集会のメインスローガンに「原発いらない!」を掲げ、全国からの大結集を訴えている。子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク世話人の椎名千恵子さんは「3月11日は福島の現場に立っていただきたい。命の問題というのは肌身で、皮膚感覚で物事を見るということ」「線量が高いところですけれど、そこに立って感じることによって、原発をなくすための次の行動に進むことができると思います。郡山にぜひいらしてください」と訴えている。これに応えて3・11郡山に大結集しよう。

------------------------TOPへ---------------------------

月刊『国際労働運動』(428号2-1)(2012/04/01)

News&Reviw

■News & Review 中国

アップル委託生産・富士康で労働者が決起

低賃金・長時間・危険な労働に怒り爆発

 □アップルの生産拠点は中国

 1月9日、湖北省武漢市にある台湾系企業「富士康」(Faxconn)の工場で、従業員100人が屋上に立てこもり、不当な配置転換に抗議し、賃上げを要求した。
 発端となったのは、マイクロソフトのゲーム機が販売停止となり、それに伴う配置転換。抗議する労働者は工場で集団で座り込み・ストライキを行ったが、工場側は「持ち場に戻らないなら、労働契約の解除に同意しろ」と迫った。この対応に怒った労働者たち100人は屋上に上がり、「賃上げが認められなければ、飛び降りる」と決死の闘いを展開した。市長が駆けつけて労働者を説得する事態となり、夜10時になってようやく労働者は屋上から降りたという。
 富士康は、電子機器の生産を受け持つ電子機器受託生産(EMS)では世界最大といわれる鴻海精密工業のブランド名である。アップル、マイクロソフト、ソニー、デルやヒューレットなどのパソコンパーツや組み立てを行っている。とりわけアップルのiPhoneやiPadなどの生産を請け負っていることで有名である。生産拠点は主として中国である。
 今やiPhoneは、スマートフォン(多機能携帯)を代表するブランドとなり、世界中で販売されている。日本でも多くの人たちがiPhoneなどスマートフォンを使用しているが、今後、従来の携帯電話は生産が激減して、残るのは高齢者用の簡易携帯電話くらいとなり、数年で主流はスマートフォンになると予想されている。
 かつてはアップルも米国内で生産をしていたが、今日では海外に生産を委託している。ニューヨークタイムズによれば、2010年は7000万台のiPhone、3000万台のiPadを始め、アップル製品のほとんどが海外生産になっている。
 有名なエピソードがある。2011年2月、米カリフォルニア州で開かれた夕食会で、オバマ大統領は今は亡きジョブズ(アップルの創立者)に「米国内でiPhoneをつくってはどうか?」と聞いたところ、ジョブズは「そうするつもりはありません」と、言下に拒否したという。
 大失業に病むアメリカだが、ジョブズら米帝ブルジョアジーは国内に投資して雇用を増やすつもりなどさらさらない。ブルジョアジーは自分の儲けしか考えない。あくまで人件費が安く労働者を酷使できる海外市場、この場合は中国にこだわっているのである。
 だがその中国での労働現場の実態はあまりに非人間的で劣悪であり、低賃金と長時間労働、危険な作業に対する労働者の怒りが職場では渦巻いている。
 2010年1月から5月27日までの間に、深せんの工場で13人の労働者の連続飛び降り自殺が発生し、大きな社会問題にもなった。今年1月1日にも、山東省煙台の富士康の工場で、労働者が飛び降り自殺をしている。さらに高等専門学校などの学生が、「研修」の名目で低賃金で富士康に派遣され、奴隷のように使われる実態も明らかになっている。
 また富士康の工場には寮が完備され、カフェテリア、病院、映画館やプールなどの娯楽施設も備えられていて、一見すると福利厚生が優れているように見える。だが、IT産業は最先端産業であり、その技術が今や一級の企業秘密であり、こうした設備の存在は、異常な長時間労働とあいまって、なるべく労働者を工場区から外に出さず、外部との交流を切断するためだともいわれている。実際に、外部との交流が遮断されている工場もあるという。こうした非人間的な閉鎖性が労働者を自殺に追い込んでいる一因だとも指摘される。
 スマートフォンの花形とされるiPhoneの背後には、実はこうした中国の労働者の非人間的な過酷な労働がある。
(写真上 工場に座り込みストライキで抗議する富士康の労働者【1月9日】)
(写真下 労働者の自殺を阻止するために、四方に網の張られた富士康の従業員宿舎)

 □欧州危機、バブル崩壊 大動乱に突入した中国

 明らかに今、時代は変わろうとしている。ヨーロッパでの経済恐慌は中国経済を直撃し、製造業、とりわけIT産業を揺るがしている。そしてこれと一体で中国のバブル経済は崩壊へと急激に突き進んでいる。倒産はもとより、外資産業の中国からの撤退や内陸部への工場の移動などが急増し、労働者の首切り・リストラが一挙に進行している。 こうした中で、中国における労働者階級の闘いが、歴史的な高揚期に入った。昨年10月のシチズン争議は、武装警察によるストライキ圧殺、工場支配という攻撃と真っ向から対決して不屈に闘争を続け、中国史上初めての団体交渉による勝利をかちとっている。このシチズン争議のみならず、多くの労働争議がこの間、資本とスターリン主義の弾圧に抗して勝利をかちとっている。
 この一方には、広東省の烏坎村での村民の自治を求める闘いがある。この烏坎村の闘いに追いつめられた中国スターリン主義は、村民の要求をすべて認める形をとり、一方で一度は指名手配までした村の闘いの指導者・林祖戀氏を村の共産党組織の最高幹部にすることで運動を解体しようと狙っている。
 だが、中国スターリン主義の政治的思惑がどうであれ、村人による直接選挙を認めてしまったことはやはり決定的な意義を持ち、今や「烏坎村に学べ!」「うちの村でも自主選挙を!」「腐敗した幹部を倒せ!」の声があちこちの村から上がっている。
 その自治への要求は、中国スターリン主義の支配の根底を揺るがす事態に今後発展していくことは間違いない。
 そしてチベット情勢である。チベットでは今年に入ってから次々と反乱が発生し、警察や軍隊との衝突が起きていると伝えられている。現在チベットは事実上の厳戒態勢が敷かれ、「職務怠慢」で3人の幹部が処分されたという。「改革・開放」政策による格差の拡大と諸民族地域の破壊は、ますます諸民族のスターリン主義への怒りを増大させている。ここでも闘いの爆発は今後ますます必至である。民族間の労働者の階級的団結の形成をテコに、中国スターリン主義打倒への道を切り開いていかなければならない。

 □決起する富士康労働者 米中労働者の連帯闘争

 こうした中国における大激動情勢の中で、IT産業の中軸である富士康の労働者の闘いも新たな段階に突入している。自殺の相次いだ2010年にも成都の工場で労働争議が起きているが、今年に入って武漢にある工場で、富士康の労働者が団結して座り込み、ストライキを闘ったことは、富士康の労働者の闘いが新たな段階に入ろうとしていることを意味している。
 実際に、IT産業の労働者の決起は他でも力強く開始されており、昨年10月22日には、やはりアップルやIBMのパソコンパーツなどを作成している広東省深せん市の沙井にある精模電子の工場で1000人のストライキが爆発している。
 富士康を始めIT産業の労働者は、今や団結を取り戻し、中国スターリン主義と資本に対して、真っ向から闘いを挑もうとしているのである。
 一方で、本号翻訳資料「中国・富士康の労働現場の現実」で紹介しているニューヨークタイムズの記事が大きな話題となり、アメリカで富士康の労働者の待遇改善を求めて署名運動が始まり、2月9日に20万を超える米労働者を中心とする署名がニューヨーク中央駅近くにあるアメリカ最大のアップルの販売店に提出された。またこの日、アメリカではさらにワシントンやサンフランシスコでも、さらにはオーストラリアのシドニーやインドのバンガロール(やはりIT産業の街)でも、全世界一斉にアップルへの抗議行動が闘われているのである。
 中国でアメリカ資本の下で行われている暴挙に対する怒りが、アメリカの労働者の中でも湧き起こっており、全世界で連帯行動が始まりつつある。米中労働者の階級的団結の形成が始まろうとしている。その実現のためにも、日本における階級的労働運動の組織拡大と国際団結闘争の発展が求められている。
 (河原善之)
(写真 アメリカでアップルに抗議する労働者【2月9日】)

------------------------TOPへ---------------------------

月刊『国際労働運動』(428号2-2)(2012/04/01)

News&Reviw

■News & Review イラン

米帝のイラン侵略戦争が切迫

ホルムズ海峡への自衛隊派兵策動許すな

 □ホルムズ海峡危機

 米帝は、イランの核開発を口実として制裁措置を決定し、1月2日にオバマが署名した。これに対してイランの有力紙『ホラサン』は8日、革命防衛隊幹部の話として、イラン産原油の輸出に制裁が科された場合、ホルムズ海峡の封鎖を命じることを指導部が決めたと伝えた。
 ホルムズ海峡は、ペルシャ湾の入り口にあって、世界の原油の約3割が通過する原油輸送の要所である。海峡の幅は30キロb。大型タンカーが通過できるのは中央の幅3キロbで、ここにイラン軍が機雷を敷設したり、潜水艦、艦船、さらにはイラン沿岸部から攻撃が行われれば直ちに通行不能となる。
 これに対して、直ちにアメリカのパネッタ国防長官とデンプシー統合参謀本部議長は、実力で封鎖を解除する意思を示し、イラン侵略戦争への突入を宣言した。
 米帝は、空母2隻をペルシャ湾とアラビア海に配置して軍事的圧力を加えている。米空母「エイブラハム・リンカーン」は1月22日、ホルムズ海峡を通過し、ペルシャ湾に入った。ペルシャ湾で米軍とイラン軍のにらみ合いが続いている。

 □石油輸出禁止、金融制裁

 事の発端は、昨年11月、国際原子力機関(IAEA)の報告書が、「イランは、原子力の平和利用だけでなく、核兵器の開発を、現在も密かに続けている可能性がある」と指摘したことだ。言うまでもなくIAEAは米帝の御用機関である。米帝の指示を受けてのことだ。
 これを口実に米帝は、12月、イランが原油を輸出できなくすることを狙った制裁法案を成立させ、1月2日、オバマが署名した。
 その内容は、イランの中央銀行と取引がある各国の金融機関(中央銀行と民間銀行)に対して取り引き中止などの経済制裁を実施するものだ。経済制裁されるのは、日本を含む同盟国などの金融機関だということだ。最も打撃を受けるのは、日帝で、すさまじい対日争闘戦である。
 結果として、イラン中銀は、各国とのイランの原油取引の決済ができなくなる。つまりイランは原油の輸出が禁止されてしまうということだ。取引内容によって2〜6カ月の警告期間を置いた後に実施される見通しだという。
 これは重大な制裁措置だ。米政府はイランの石油化学分野の企業と米企業との取引や技術提供も併せて禁止し、違反した場合には経済制裁を発動することも決めた。イギリスとカナダも同調した。
 ガイトナー米財務長官は記者会見で「世界の金融機関は、イランとのビジネスの危険性を真剣に検討すべきだ」と警告した。さらにイラン政府のすべての資産を凍結する追加制裁に踏み切った。
 EU・ヨーロッパ連合も、先月、イラン産原油の域内への輸入を、今年7月1日以降、すべて禁止するとともに、イラン中央銀行の資産を凍結する制裁措置を決めた。米欧ともに、イラン経済の生命線である原油の輸出を止める制裁に踏み切った。これは事実上の戦争の発動である。
 イラン革命記念日の2月11日を前にした3日、最高指導者ハメネイは、国民向けに演説を行い、この中で、
「制裁によって核開発は妨げられない。脅威に対しては、脅威による報復の手段がある。われわれは、イスラエルと戦うあらゆる勢力を支持し、支援を与える」と述べた。
 アフマディネジャド大統領は、2月15日、国営テレビを通じて演説し、核開発に進展があったと発表した。中部ナタンズのウラン濃縮施設で遠心分離器を6千台から9千台に増設。また、新たに開発した「第4世代」の遠心分離器は従来の3倍の能力があるとした。大統領は「西側諸国はイランの発展を止めるため制裁を科し、我々の科学者を殺害した【注】。しかし、発展は誰にも止められない」と述べた。
【注 1月11日、テヘランで走行中の乗用車に、バイクが近づき、磁石付きの爆弾を車体下部に取り付けた。直後に爆弾が爆発し、工科大学・核科学者、ムスタファ・アハマディロウシャン教授(32)が即死。イランの核開発プロジェクトに関係したと見られる科学者がテヘラン市内の路上で殺害されたのはこれで4人目。イラン当局は、「米国および犯罪的シオニスト政権の仕業」と糾弾している。すでに戦争が始まっている】
 欧米各国の独自制裁で、イランの国庫収入のおよそ70%を占める原油の輸出が止められることになる。中央銀行が原油を始め貿易取引の決済ができなくなることにより、イランの貿易全般にブレーキがかかり、イランの通貨リアルの価値は、50%近く暴落、輸入品を始め、物価の高騰を招いている。輸入に頼っていた必要な医薬品が手に入らなくなり、コメなどの穀物の輸入も難しくなっている。
 イランには、膨大な石油があるが、精製能力が不足しているため、ガソリンなどは、3分の1を輸入している。欧米は制裁の中にガソリン輸出停止を含めている。燃料不足によって、工場の稼働率が大幅に落ち込み、失業率もさらに上昇するなど、欧米の独自制裁は国民の暮らしを直撃している。
 イランの核開発を重大な脅威とするイスラエルは、イラン核施設に対する先制攻撃に踏み切ろうとしている。
(写真 ホルムズ海峡に近い海域で行われた軍事演習で新型ミサイルを発射するイラン軍艦船【1月1日】)

 □イスラエルの核施設攻撃が切迫

 『ワシントン・ポスト』は、2月2日、「アメリカのパネッタ国防長官が、今年4月から6月までの間に、イスラエルが、イランの核施設を攻撃する可能性が高いと分析している」と伝えた。
 また、イスラエルのバラク国防相は、2月2日、「イランの核開発は、阻止できない領域に入りつつあり、このままでは手遅れになる。制裁が目的を果たさなければ、行動を起こす必要がある」と述べた。
 イランが聖都コム近郊の地下格納庫に「核開発事業の製造物(濃縮ウラン)」を移動させてしまえば、破壊できなくなるという焦りだ。
 イスラエルはこれまで2度、核施設に対する攻撃を行っている。1回目はイラク原子炉爆撃。イスラエル空軍機がイラクのタムーズにあった稼働前の原子力施設を「バビロン作戦」の作戦名で1981年6月7日に攻撃した。「自衛」目的を理由に先制攻撃を行ったものだ。これに対してイスラエル非難の国際連合安全保障理事会決議487〔1〕がなされた。
 2回目は、シリアの核施設。イスラエル空軍機は07年9月、シリアのこれも稼働前のダイルアジュル原子炉施設を爆撃し、全部破壊した。北朝鮮の支援を受けて建設中だった。
 イスラエルは、自らは核武装しながら、周辺の反イスラエル国が核武装することについては死ぬほど恐れているのだ。
(図 ホルムズ海峡周辺の主な軍事基地とイランの核関連施設( )内の数字は石油関連生産量。単位はバレル/日 【米軍事研究機関「グローバル・セキュリティー」の資料などから作成】)

 □米新防衛戦略の破綻

 米帝のイラン侵略戦争への策動は、米新防衛戦略の一環である。イラン制裁とアジア・太平洋重視戦略への転換が同時に行われていることからも明らかだ。
 オバマは1月5日に発表した新防衛戦略についての見解の中で、「アメリカは太平洋国家」「アジア太平洋の安全保障が最優先課題」と宣言した。ここでは兵力は削減しない。そして「NATOを含む決定的なパートナーシップと同盟に投資を続ける」と述べた後で、「われわれは特に中東で、警戒し続ける」と言っている。さらに新防衛戦略の中で対抗的な国として「中国やイランという諸国」と並べて言及している。
 さらにオバマは、「これからの10年間、防衛予算の拡大は遅くなる。しかし事実は、それでも拡大するということだ」と、米帝は世界のリーダーシップとしての責任を果たすと言い切っている。
 世界危機は、朝鮮半島・東アジアと中東を焦点にますます深まっていく。ところが世界恐慌と米財政危機、そしてイラク侵略戦争とアフガニスタン侵略戦争の敗北による米軍、特に陸軍の疲弊・崩壊が米帝の没落を決定づけた。
 米帝は、新軍事戦略の重心をアジア・太平洋、特に軍事大国化する中国に対する対峙・対決戦略に移した。これまでの陸軍中心の戦争からエア(空軍)シー(海軍)バトル戦闘を軸にした戦争に切り換えた。陸軍と海兵隊はスリム化し、空母11隻体制を堅持していく。重心は太平洋に移すが、中東も「警戒し続ける」。
 イラン侵略戦争においては、イラク・アフガニスタン侵略戦争のような大規模な陸軍を送る戦争はもうできない。空海型の侵略戦争を構える。イラン人民への虐殺戦争を許してはならない。
 オバマは、軍事面では米軍のイラク完全撤退、アフガニスタン撤退開始、ビンラディンの虐殺、そしてイランの核開発を中止に追い込むことを「戦果」として、今年12月の大統領選挙再選を狙っている。
 しかし、オバマの思惑通りに事は進まない。米軍は、イラクの石油労働者を先頭とする全人民の闘いでイラクから完全撤退させられた。20万人の米軍が撤退し、500以上あった米軍基地が消滅した。これによって中東に巨大な軍事空白が生まれた。
 米帝の中東支配の要であるイスラエルが圧倒的に孤立し、危機を深めている。イスラエルはイラン核施設攻撃を単独でも強行しようとしているが、米帝がイスラエルを抑え込めるか分からない。
 イランは、79年イラン革命の前は、米英帝にとっては「ペルシャ湾の憲兵」であった。米帝は、イラン革命つぶしのためにイラクをけしかけイラン・イラク戦争を8年間戦わせた。その米帝に支援されたイラクがイラン・イラク戦争で強大化すると、今度は米帝は91年イラク・中東侵略戦争(湾岸戦争)でイラクを敗北させ弱体化した。そして03年のイラクへの新自由主義の侵略戦争でフセイン政権を打倒した。フセイン後に生まれたシーア派のマリキ政権は、イランと密接な関係をつくっている。
 エジプトはアラブの春≠ノよって、親米・親イスラエルのムバラク政権が青年労働者の決起によって打倒された。今は軍部打倒の第2革命に突入している。
 サウジアラビアは、91年イラク・中東侵略戦争の時には、米軍のイラク侵攻の基地であった。ところが9・11を敢行したサウジアラビア出身のビンラディンが反米に転じる契機となったのが、イスラムの聖地サウジアラビアに異教徒である米軍基地があることは許せないということだった。03年のイラク侵略戦争でサウジアラビアは自国米軍基地からの米軍機の出撃を拒否し、戦後には撤去された。
 昨年12月29日、オバマは、サウジアラビアに対しF15戦闘機84機など総額294億j(約2兆4000億円)の武器売却に合意したと発表した。対イラン侵略戦争体制の一環である。
 シリアではアラブの春≠ェ波及してアサド独裁打倒の全人民の蜂起が起きている。アサドは流血の弾圧を加えている。シリアは軍事大国でイランと同盟関係を結び、ロシアの支援を受けている。
 イランは、レバノンのヒズボラを支援している。ヒズボラは、00年にレバノン南部を実効支配してきたイスラエルに対する武装解放闘争を行い、06年には米・イスラエルのヒズボラ掃討の共同作戦を打ち破りイスラエルを撃退した。イスラエル打倒の闘争で圧倒的な支持を集めている。
 ハマスはイランの革命記念日には国賓待遇される関係にある。イランの支援を受けている。ガザを支配しイスラエルと対峙している。
 そしてイスラエルで労働者階級人民の世界史的決起が始まっている。昨年の9月3日に60万人を超える巨大な青年労働者のデモが闘い抜かれた。イスラエルの青年労働者たちは、中東においてはアラブ人の労働者もユダヤ人の労働者も結局は資本家に支配されていること、エジプトの労働者のように敵は資本家であることをつかみ、民族の分断を越えて、国境を越えて労働者の団結で闘おうと踏み出している。ここにイスラエルを先兵とする米帝の中東支配を打倒する力がある。イスラエルにおける新自由主義の浸透が新しい労働者の決起を生み出している。
 そしてイスラエル最大の労働組合のナショナルセンターであるヒスタドルート(労働総同盟)は、2月8日午前6時、政府が雇用する25万人の非正規職の直接正規雇用を求めて無期限ゼネストに決起した。全国の50万人の労働者がストライキに入った。
 イランでは、アフマディネジャド政権下で労働者の権利擁護について、きわめて重要な役割を果たしてきた独立労働組合を標的とし、大量逮捕を行った。労働組合を国家の完全な統制下に置こうとするものだ。逮捕された全員が労働運動家か、政府が認めていない独立労働組合の組合員だ。逮捕のほとんどが、国際労働者デーを記念する取り組みの実施中、または上記組合が呼びかけたストライキの実施中に発生した。なおストの多くは数カ月にわたる未払い賃金の支払いを求めるものだ。
 米帝のイラン侵略戦争が切迫する情勢下におけるアフマディネジャド政権の労働運動弾圧に対して、イラン自由労働組合とバス労働者組合、サトウキビ労働者組合、南部石油労働者などを先頭に労働者は、国家権力の嫌がらせ、出頭命令、逮捕、起訴、有罪宣告などに反撃して闘っている。

 □自衛隊のホルムズ海峡派兵

 さらに重要なことは、米帝のイラン侵略戦争が、米帝の対日争闘戦であることだ。
 ホルムズ海峡にイランが機雷をバラ撒けば原油の大動脈が止まる。日帝は、中東への石油依存度は90%近い。ほとんどがホルムズ海峡を通過する。日帝にとってはまさに生命線の危機となる。
 しかし米帝の中東石油への依存度はわずか15%だ。ホルムズ海峡が封鎖されてもほとんどダメージを受けない。
 米帝は日帝の脆弱性を突いて、日帝を帝国主義から蹴落とす争闘戦を展開してきている。日帝は、イラン原油輸出禁止の制裁措置を緩和してもらうよう米帝に必死に懇願しているが、米帝は厳しい態度を崩していない。
 日帝は、原発事故のみならず、イラン問題でも帝国主義として脱落をますます深めている。日帝に未来はない。
 田中防衛相は、2月17日の衆院予算委員会で、自衛隊のホルムズ海峡派遣の可能性を検討していることを明らかにした。凶暴な侵略戦争の策動であり、粉砕しなければならない。
 世界情勢の緊迫に対して、国鉄決戦・外注化阻止・非正規職撤廃・反失業・反原発を真正面から掲げ、階級的労働運動を前進させることが労働者人民の回答である。
 (宇和島 洋)

------------------------TOPへ---------------------------

月刊『国際労働運動』(428号2-3)(2012/04/01)

News&Reviw

■News & Review 日本

外注化阻止、組織拡大へ2・15集会

 国鉄闘争を先頭に労働運動の再建を誓う

(写真 570人が団結ガンバロー=y2月15日 すみだ産業会館】)

 国鉄闘争全国運動が呼びかけた「国鉄分割・民営化で不当解雇から25年/2・15労働者集会」が2月15日、東京・錦糸町のすみだ産業会館で開催され、570人が結集し、大成功をかちとった。
 25年前の2月16日は、7628人の国鉄労働者のJR不採用=解雇が決まった絶対に忘れることのできない日だ。国労本部などの4者4団体が2010年4・9「政治解決」によって闘いを放棄する中で、2・15集会は、「国鉄闘争の火を消すな」と、あくまでも解雇撤回をかちとるまで闘い抜くことをあらためて宣言した。また、今日、「国鉄型」の大民営化・非正規職化の攻撃が、より大規模な形で全社会的に始まる中、JR東日本による検修・構内業務、駅業務の全面的な外注化攻撃を阻止する闘いを先頭に、全産別で民営化・外注化・非正規化攻撃に反撃することを誓い合う場となった。

 □“国鉄闘争の関ケ原”に会員の拡大を

 司会は、昨年秋に全国運動の呼びかけ団体となった全金本山労働組合の長谷武志副委員長と、動労千葉争議団の中村仁さん。長谷さんが「4・1外注化阻止決戦に全国の力を集中し、同時に、全国に動労千葉のような拠点をつくる決意を本集会で固めよう」と訴え、中村さんは「全金本山は動労千葉の闘いの先輩。本山の物販はお手本だった。本山が解雇撤回で職場復帰をかちとったように、動労千葉も解雇撤回で勝利して必ず職場に戻る」とあいさつし、戦闘的に集会が始まった。
 呼びかけ人を代表して世田谷地区労顧問の花輪不二男さん、愛媛県職労の宇都宮理委員長があいさつに立った。花輪さんは「国労の1047名の問題も『勝った』と言う人がいるが、実際には戻れないのに、なんで『勝った』と言えるんですか。勝利と言うためには、解雇された労働者が職場に戻る条件を満たすものでなければならない。労働者を人間らしく扱えない資本家たちを許しておいて世の中がよくなりますか。闘いましょう」と呼びかけた。宇都宮さんは「大阪では橋下市長が不当労働行為丸出しのアンケートを職員に強制している。拒否すれば処分すると言う。労働組合が団結すればこんなものは吹き飛ばせる。自治体職場でもアウトソーシングの攻撃と闘う」と語った。さらに、新たに呼びかけ人に加わった佐藤功一さん(元国労横浜支部執行委員、国労新鶴見操車場分会長)のメッセージが紹介された。
 連帯あいさつでは「日の丸・君が代」不起立闘争被処分者の根津公子さんが、1月16日に出た最高裁判決を怒りをもって弾劾し「動労千葉の闘いが乗客の安全を第一にしていることから学ぶことが多い。最高裁判決では私の仕事ぶりが問題にされた。『日の丸・君が代』を拒否することは、子どもたちが主権者として育つことを手助けすること。それに対する処罰だ。向こうが一番嫌がっている不起立を続けることが、解決する道だ。一緒に不起立しましょう」と発言した。
 NAZEN(すべての原発いますぐなくそう!全国会議)の富田翔子事務局次長は「原発再稼働阻止の闘いが焦点になっています。多くの人が全原発が止まっても電力が足りること、原発に頼らない社会を実現できることに気づいています。動労千葉の闘いと反原発の闘いの共通点は、命を守る、人間の尊厳を守る闘いであり、分断されず団結することをあきらめない闘いです。分断を打ち破り団結の力を信じて頑張る」と述べ、3・11福島県民大集会への結集を呼びかけた。
 続いて田中康宏委員長が「動労千葉からの報告」を行った(要旨13n)。田中委員長は、全社会に怒りの声が満ちている情勢の中で「労働組合が本来の力を取り戻せば間違いなく時代は動き出す」と確信をもって語り「動労千葉はその先頭で外注化阻止決戦に決起する」と表明した。
 全国運動呼びかけ人で動労千葉を支援する会事務局長の山本弘行さんが「国鉄闘争全国運動からの提起」を行った。山本さんは現局面を「国鉄闘争の関ケ原だ」と訴え、「今こそ国鉄闘争全国運動が、日本の労働運動に責任を取る勢力へと飛躍しなければなりません。ありとあらゆる職場に入りましょう。そして、私のような寝ても覚めても国鉄闘争全国運動≠ニいう活動家を全国各地につくり、2000口への会員拡大を絶対にかちとりましょう。JR東日本での4・1外注化をなんとしても阻止し、6月10日の全国運動結成2周年の集会へと向かおう」と熱を込めて訴えた。
(写真 動労千葉と動労水戸から外注化阻止へ決意表明)

 □被解雇者の決意に大きな拍手

 被解雇者の決意表明に移り、まず、動労千葉争議団の高石正博団長が、「物販で北海道から沖縄まで歩き回っています。みなさんとともに全国運動の会員を拡大していきたい。この拡大こそが104
7名闘争を勝利に導くということを肝に銘じ、前へ前へという気持ちで闘っていきたい」と決意を語った。国労旭川闘争団の成田昭雄さんは、4者4団体による「4・9和解」に対する激しい怒りを表明し、「『25年』と口で言うのは簡単ですが、この25年間には言い尽くせないことがたくさんありました。今の学生や青年たちに、俺たちと同じ轍を踏ませるんですか。ここに、この闘いの大きな使命がある。物販をよろしくお願いします」と訴えた。
 動労千葉顧問弁護団長の葉山岳夫弁護士が、動労千葉の鉄建公団訴訟を始めとする裁判に勝利し、1047名解雇撤回をかちとる決意を表明した。争議団・闘争団の熱い思いと決意に、参加者は大きな拍手で応えた。

 □外注化を止めてJRに残る!

 次は現場からの「JR外注化阻止の決意」だ。
 動労千葉幕張支部の山田護支部長は「4月全面外注化阻止へ全力で闘っています。動労千葉は出向協定も締結していません。出向に出すなら会社は承諾書を私たちに書かせなくてはならないが、私たちは書きません。絶対に外注化を止め、JRに残ります。その中で組織拡大を実現していきたい。東労も国労も、外注化反対の声を上げずに裏切り妥結しそうです。闘うか闘わないかしかない。闘って外注化を止めて、どちらの組合にも反対している人はいますから、そういう人にはうちに来てもらって絶対に止めていきたいと思います」と決意を表明した。
 動労千葉青年部の代表は「1月27日に京葉車両センターの1日勤が外注化されましたが、4月全面外注化をにらんだものです。これに対抗するのは組織拡大の一点だと思います。東労組は腐ってますが、その中には反対の人がいます。そういう人たちにどんどん訴えていきたい。今年は山場の年。青年部は有言実行で動労千葉の先頭に立ちます」と述べた。
 さらに運転基地統廃合攻撃と闘う銚子支部の渡辺靖正支部長が、「銚子運転区の廃止、成田車掌区の廃止、佐倉運輸区の新設には何の合理性もない。銚子支部の組合員は、全員が銚子運転区を希望しています。支部一丸となって闘います」と述べた。千葉運転区支部の大野茂支部長は、「自分も線見訓練を指定され、指名ストを闘っている。組織破壊は絶対に許さない! 強制配転も絶対に許さない! それでも強制配転するというなら、やってやろうじゃないですか。動労千葉の旗を高々と掲げて闘います」と決意を語った。
 動労水戸の石井真一委員長は、外注化についての本社団交を報告し、「絶対に阻止できる」と語った。そして、北海道の石勝線のトンネルで起きた列車火災を想定した訓練が14日深夜から15日未明にかけ、わざわざ福島第一原発30`圏内の久ノ浜駅〜末続駅間トンネルで行われたことを激しく弾劾し、「もう安全なんだ、戻れ、というキャンペーン粉砕する道は、3・11郡山集会に大結集することです。国労郡山工場支部の闘いが国労再建の突破口となる」と訴えた。
 最後に、決戦のまっただ中にある八尾北医療センター労組の灰垣美佐子書記長、解雇撤回闘争を闘い抜く東京西部ユニオン・鈴木コンクリート工業分会の吉本伸幸書記長、仙台市役所・動労千葉を支援する会の青年労働者、全国運動・東京東部の会の代表が決意を表明。動労千葉の長田敏之書記長の音頭で団結ガンバローを行い、意気高く集会を締めくくった。
 (大沢 康)
 --------------------------------------------------------------

 ■労働運動復権の先頭に立つ

 動労千葉からの報告 田中康宏委員長

 国鉄分割・民営化の過程での採用差別・不当解雇から明日で25年です。長い間のご支援に心からお礼を申し上げます。動労千葉が今日まで闘い抜けたのも、これだけの支援があったからです。今日この場に立ち、あらためて「国鉄分割・民営化を絶対にあいまいにしない。絶対にケリを着ける」という決意を新たにしています。どれだけワーキングプアや貧困、格差と言われながら突き落とされたのか。この出発点がこの国鉄分割・民営化です。
 去年の3・11大震災・原発事故の「復興」と称して、もっと大規模な民営化、新自由主義政策の横行、労働者を競争原理にたたき込む政策が貫徹されようとしている。その核心は、労働組合の抵抗を徹底的に打ち砕くこと、組合つぶしです。
 JRでも何も決着していません。尼崎事故の判決を見てほしい。なんで前社長が無罪になるんですか。国鉄分割・民営化にふたをしてはなりません。原発事故も同じです。間違った世の中の流れに対して、労働者の団結が弱すぎる。今、必要なのは労働組合が本来の力を取り戻すことだと思います。怒りの声は満ちている。この時に、労働組合が息を吹き返したら、間違いなく時代は動き出します。
 民営化の攻撃は、労働者を、鉄道の安全を徹底的に破壊し尽くすまで終わらないということです。あらゆる業務をアウトソーシングすることです。JR東日本では業務の全面外注化が進められ、鉄道業務が数百もの会社にバラバラに丸投げされようとしています。外注化は雇用を破壊します。非正規職化は人生のすべてを資本に奪われるということです。これに対して労働組合が立ち向かえた例はない。動労千葉は「どこかでこれを止めないといけない」という思いで必死に闘い、千葉では10年以上にわたって検修業務の外注化を止めてきた。闘えば止められるんです。闘う労働運動を取り戻すこと、それが外注化阻止闘争です。
 正規職の労働者が自らの職場で闘う、非正規職に突き落とすことを止めるという闘いがあって初めて、正規・非正規が連帯できる。
 労働者にとっては非常に厳しい状況ですが、労働運動が反撃を開始するチャンスだと思います。その土台、すなわち職場で闘う労働運動、労働組合をなんとしてもつくることです。
 動労千葉はその先頭で、4月1日の全面外注化阻止に全力で立ち上がります。その中で、これまで日本の労働組合ができなかった本格的な組織拡大をなんとしてもかちとる決意です。

------------------------TOPへ---------------------------

月刊『国際労働運動』(428号3-1)(2012/04/01)

(写真 「刑務所ではなく保育園を!(写真 ペリカンベイ刑務所)ハンストに連帯」「権力と闘い、すべて奪い返せ!」とデモ行進する教員組合の隊列【2011年11月2日 オークランド】)

特集

■特集 全世界に拡大したウォール街占拠運動

 はじめに

 「われわれは99%だ!」を合い言葉に闘うウォール街占拠(オキュパイ)運動は、たちまち全米に、全世界に拡大した。新自由主義による団結破壊を乗り越えて99%がひとつになって1%と闘うことに圧倒的な喜びがある。また、従来の労働運動のあり方には絶対に収まりきれない新しい世代の運動が急速に台頭していることを示している。
 本特集の第1章は、労組絶滅攻撃と実力で対決したILWUローカル21(国際港湾倉庫労組第21支部)が、ウォール街占拠運動の爆発的発展にいかに寄与したかを描く。
 第2章では、新自由主義の破産からTPP政策が生まれ、それがさらに危機を深めていくことを示す。その中で、「知的所有権」との闘いの重要性を述べる。
 第3章では、占拠運動が、最初からエジプト革命を始めとする国際的な闘いと結合しており、世界革命に発展していくものであることを述べていく。

第1章

 巨大独占に勝利したILWU――職場実力闘争で全階級を牽引

 ■港湾の職場を奪還

 2月7日、ILWUローカル21の組合員は、ワシントン州ロングビュー港でEGT社の穀物輸出作業に就労した。ILWUを排除してきた巨大独占資本の攻撃は、2年越しの激闘の末、ついに打破された。この勝利は、アメリカ階級闘争の力関係を逆転させる転換点と言っても過言ではない。
(写真 線路内で穀物列車を阻止【11年9月7日】)

 外注化させない闘い

 数年前、新たにロングビューへの進出を計画した輸出用穀物施設会社EGTは、労働組合を徹底して排除しようとした。EGTは、公共施設であるロングビュー港の敷地に2億jもの資金を投じて巨大な倉庫・施設を建設した。「地元に大きな雇用を生み出す」との触れ込みで登場し、州や港湾当局から税の軽減を始め、多くの優遇措置を受けた。
 だが、EGTは施設の建設の時から、労働組合運動の拠点地域であるワシントン州の労働者ではなく、南部から労働組合に加入していない労働者を劣悪な条件で雇って建設作業に当たらせた。
 竣工した施設の雇用については、ILWUローカル21との事前交渉で、時間外手当なしの長時間労働、安全規定の半減、賃下げなど、とんでもない条件を提示してきた。そして、港湾当局との土地貸借契約に記載してあったはずの「EGT施設はILWU組合員を雇用する」との条項を守らず、港湾労働の経験がまったくない別の建設分野の労働者をEGTで働かせた。しかも、「GC社」という、これまた穀物倉庫運営の経験のない会社に業務を請け負わせ、GC社がその建設労働者を雇ったのだ。
 もともとロングビュー港を含む西海岸の港湾施設は、70年以上ILWUの組合員を雇用してきた。これは20世紀初頭以来の長い闘いでかちとってきた権利だ。そして、港湾労働者はILWUの組合員でなければならないこと――ILWUの管轄権――を港湾の経営者団体にも港湾当局にも認めさせてきた。
 かつて港湾では、船が港に入ってくるたびに大量の労働力が必要になるために労働者は不安定な日雇いにされていた。経営者は雇用をやくざ手配師などに請け負わせていた。手配師に従順に従う者以外は排除されるため、賃金不払い、とんでもない危険な作業が横行していた。これを1934年の西海岸一斉港湾スト、サンフランシスコのゼネストでひっくり返し、もぎりとったのがハイヤリングホール制度だった。労働組合員が組合員の中から民主的に選んだディスパッチャー(派遣指令員)が、ハイヤリングホールという建物に集まった組合員の中から、誰がどの岸壁で就労するか日々差配する。これによってILWUは、雇用主から独立した労働組合の職場支配権を確立した。ハイヤリングホールは、組合員がいつ来てもよいたまり場となり、コーヒーを飲み、チェスをし、また集会をする場ともなった。ハイヤリングホールは、ILWUの団結そのものとなった。ここを軸にして、ILWUはアメリカで最も誇り高い労働者集団として、階級闘争の最先頭に立ってきた。EGTは、このILWUの力の源泉、「雇用を組合の団結で平等に確保する力」に手をかけてきたのだ。
 昨年6月3日、ILWUの大反撃が始まった。組合員1千人以上がEGTの本社前で抗議集会を開き、戦闘宣言を発した。7月11日には、EGTの穀物輸出ターミナルに向けてデモが行われた。組合員は門を打ち破って構内に突入し、抗議集会を開いた。これに対して警察は、集会を襲撃し、指導部を含む100人の組合員を逮捕した。だが、組合員はそれをものともせず、数百人の組合員が線路を封鎖し、穀物列車を完全に阻止した。
 EGTが一方的にILWUの管轄権を侵害したのであり、ILWU側に理があるのは明白だった。だが、連邦裁判所は、ILWUのピケットを禁止する命令を出した。命令に反すると巨額の罰金が科せられ、指導者は投獄される。これまでの「労働運動の常識」では、ピケットを止め、裁判所や全国労働関係委員会(日本の労働委員会にあたる)での争いに転じるはずだった。だが、ILWUは、職場での実力闘争を続行した。
 EGT側は、最初からILWU破壊のための部隊を用意していた。ひとつは、南部アトランタ州で労組破壊工作の経験がある宣伝会社を雇って、ILWUローカル21に対する誹謗中傷の大宣伝をやらせた。放送局、新聞社への工作やインターネットでの宣伝ビデオ掲載などあらゆる手段で、ILWUへの不信や敵意をあおった。
 あとひとつは、民間警備会社を使い、暴力的に襲撃させたことだ。彼らは、組合員の自宅にまで押しかけた。また、警察も、ピケの現場では見逃して、組合員を家に帰らせてから子どもの目の前で逮捕したり、家の前に駐車し、夜どおし寝室の窓をサーチライトで照らして眠れなくさせるなど、家族破壊を狙った攻撃をかけてきた。
 これに対してILWUローカル21は、70年以上の闘いの誇りをもって、毅然として立ち向かった。祖父母や子どもを含む家族も実力闘争に立ち上がった。というより、現役組合を弾圧から守るために、むしろ家族のほうが最前線で闘ったのだ。また、EGTやマスコミのデマ宣伝に惑わされなかった。ロングビュー地域の住民たちは、ローカル21が地域の労働者の権利を守る闘いの先頭に立ってきたことを知っていたし、家族ぐるみの付き合いをしてきた地域の仲間なのだ。
 9月7日には、警察は実力闘争に立ったILWU本部のマケルラス委員長に暴行し、逮捕した。この報は世界を 駆けめぐり、国際運輸労連なども弾圧を非難し、ILWUとの連帯が広がった。
 この闘いを聞いたエジプトの労働者は、「ついに野獣の腹の中から反乱が始まった。これで勝てる」と叫んだ。世界の帝国主義の基軸国の労働者が立ち上がった時、世界は変わるのだ。
 このロングビューの闘いの意義を見るために、少しさかのぼって2月からのウィスコンシン州の闘いから見てみよう。
(写真 「ここはウィスコンシンじゃないぞ!」と港でピケットを張るILWU組合員)

 エジプト労働者と連帯

 2011年2月11日、エジプトのムバラク大統領が辞任に追い込まれた。中東石油地帯の中心にある最大国家であり、アメリカ帝国主義がイスラエルと並んで最大級の援助を与えてきた軍事独裁政権との長年の苦闘が、ついに2月革命勝利に結実したのだ。
 ちょうどその数時間後、ウィスコンシン州の共和党ウォーカー知事が「ウィスコンシン予算修復法案」を州議会に提出した。財政危機克服に名を借りた、公務員労組絶滅のための法案だ。@公務員の団体交渉権をなくすA公務員労組は毎年、組合認証選挙を行う義務を負う。組合賛成票が足りない場合、ないし選挙が不正とされた場合は労組としての承認が取り消されるB組合費のチェックオフ廃止――という法案だ。
 アメリカの制度の下ではストライキその他の争議行為は、団体交渉に伴う行為としてしか認められない。団交権の廃止とは、実質的に労働組合が労働組合でなくされるということだ。
 ウィスコンシン州は、アメリカ労働運動の拠点である五大湖周辺の地域である「中西部」に属する。これまでアメリカ南部を中心にして行われてきた極度の労組絶滅政策がついに中西部のど真ん中に公然と登場したのだ。これは単なる州レベルの動きではなく、全米的な大攻撃が、戦略的な照準をウィスコンシンに定めて襲ってきたということだ。
 実際、ウォーカー知事は、「茶会(ティーパーティー)運動」という名の全米的な極右新自由主義運動の知事候補として、特に巨大石油・ガス・化学会社であるコーク産業の莫大な資金援助を受けて登場したのだ。また同様の法案がオハイオ州、ユタ州、ネバダ州でも次々に出されていった。
 これに対して、ウィスコンシンの労働者は、「マディソン(州都)をタハリールに」を合い言葉に大闘争に立ち上がった。今回の法案の適用外とされた消防士労組や民間労組を含め議事堂内占拠闘争を行い、10万人が州議事堂前に結集し、タハリール広場同様の大量のキャンプを張って連日の闘いを貫いた。教員組合は、州都マジソン一帯で、山猫ストを闘い抜いた。
 労働組合の圧力を受けて、野党・民主党の議員たちが州外に移ったために、州議会は、定足数不足で議会が開会できなくなった。そしてこの労働組合員の断固とした闘いの姿は、全人民を獲得する力を持っていた。
 80年代以来のマスコミの公務員労組たたきキャンペーンにもかかわらず、USAトゥデー・ギャラップの全米での世論調査で、61%が「ウォーカー法案反対」と回答した。ニューヨークタイムズ・CBSの「財政危機だ。公務員の給料が高すぎる」という世論誘導に対しても、56%が「公務員の給料を下げるべきではない」と答えている。
 今まで労働運動の経験がまったくない人を含めて、人民大衆はけっしてマスコミの意のままに操作される存在ではない。大衆は自分たち自身の生活を破壊している新自由主義に怒っており、それを宣伝してきたマスコミに不信感を持っている。
 公務員たたきキャンペーンが威力を発揮するのは、公務員労組側がそれによって孤立感に陥り、萎縮するからにすぎない。ウィスコンシンの闘いが示したことは、労働者が団結し、断固として闘い抜くならば、遠く離れた地方にいる大衆の間でさえ、公務員労働組合への信頼が大いに高まるということだ。

 民主党支持運動への歪曲

 この議事堂占拠、議事堂前広場の大集会の闘いは、ほぼ1カ月続いた。そしてこれは組合員自身の直接行動だった。組合員自身が職場で討議し、議事堂前に結集し、議事堂を占拠し、指導部の指令なしで、学校を閉鎖していった。既成の労働組合の体制内指導部は、この組合員の巨大で戦闘的な決起を前にして、非常に「戦闘的」な演説をした。そうしなかったら、組合指導部ではいられないと皆感じたのだ。
 だが、ウォーカー知事が奇弁を使って定足数問題をすり抜け、法案を強行採決すると、こうした体制内指導部は急速に通常の労組運営に戻っていった。つまり、組合員自身の闘いと討論で団結を強化し、道を開いていくのではなく、議員や裁判所の力に依存するということだ。議員への手紙や電子メールによる陳情の集中、そして法案に賛成した共和党議員をリコールし、民主党議員を新たに選出することが、その後の労組の主要活動方針となった。
 特に、2012年が大統領選挙の年なので、AFL―CIO(米労働総同盟・産業別組合会議)中央指導部を始めとした民主党支持運動に集約していく圧力が強く働いた。
 ウィスコンシンの労働者たちは、既成の労働運動の限界を突破し始めたが、また再び大きな壁にぶつかっていた。これを突破したのが、ロングビュー港の闘いだった。

 職場の団結を軸にする

 ILWUローカル21も、逮捕・起訴、ピケ禁止の裁判所命令、損害賠償命令に直面し、裁判闘争や全国労働関係委員会での闘いをやった。だが、主要な闘いは港の現場での闘いだった。また、他の港のILWU組合員との団結を重視し、地域の労働者、全米、全世界の労働者との団結を強めていった。
 組合員の決起に押され、一時は「戦闘的」な姿勢をとっても、結局は裁判所や民主党に依存する体制内労働運動は、すでに80年代以来の新自由主義によってみじめに破綻していた。ウィスコンシンでも民主党に依存した結果、ますますウォーカー知事に攻め込まれ、既存の多くの労働協約まで破棄されるありさまだった。
 ILWUは遠いウィスコンシン州議事堂占拠に全米の諸労組に先んじて駆けつけ、ともに闘った。だが、ロングビューでは、敢えて「ここはウィスコンシンではないぞ!」というスローガンを掲げたのだ。意識的にウィスコンシンの壁を乗り越える路線を追求したということだ。

 ■波止場のウォール街

 組合員220人のILWUローカル21の相手、EGTは超巨大企業だ。EGTは世界の3大穀物商社の一つ、バンジー社と日本の5大総合商社の一つ、伊藤忠、韓国の海運会社、STXパンオーシャンが共同で作った子会社だ。世界の3大穀物商社は、全世界の穀物貿易量の40%のシェアを持つ。穀物貿易は、超独占市場になっているのだ。
 他方、穀物生産は、オーストラリアやアメリカの広大な農場でも基本的に家族経営であり、その土地やトラクターなども銀行からの借金で成り立っている。消費も、個々の労働者人民だ。だから、資金力、貯蔵・運搬設備、世界各地の生産・消費の変動などの情報を有する巨大独占資本が、生産者と消費者の双方に対して独占的な価格支配権を持つ。
 1994年発足のNAFTA(北米自由貿易協定)では、バンジーなどの穀物商社は、アメリカ政府の莫大な補助金を獲得して超安値で穀物をメキシコにダンピング輸出した。それでメキシコ農民は破産し、現在では主食のトウモロコシさえ、ほとんどアメリカからの輸入に依存せざるをえない状態になっている。アメリカ農産物に対する補助金は、意識的にメキシコ農業を破壊するために使われたのだ。農業の壊滅によって大量のメキシコ農民を都市に流入させ、安価な労働力として使うことができるからだ。
 NAFTAの重要な目的が、アメリカ国内の産業の外注化と生産拠点の国外移転だった。五大湖周辺(中西部)を始めとする伝統的な工業地帯の戦闘的な労働運動を外注化・工場閉鎖によって壊滅させることが、資本家階級の主要政策だった。
 また、アメリカ国内にメキシコから大量の「不法難民」を流入させた。現在では、「不法移民」数は700万〜2000万人(推計者によって異なる)に達している。
 資本は社会保険番号(公式の身分証明)が正確でなくても、それを承知で雇い入れる。そして、その労働者が権利を主張したり、組合活動をした時に入管局に通報し、強制送還させる。
 バンジーなどの穀物商社は巨大銀行・証券会社と一体化している。穀物商社はそれ自体が一種の金融会社だ。生産者や卸売り業者、大規模小売会社などに資金を自ら貸し付けたり、銀行からの借り入れの仲介をしたりしつつ、大量の穀物を買い占め、価格をつり上げ、暴利を得るのだ。
 07年サブプライムローンのバブルが崩壊した。アメリカの巨大銀行・証券会社は、返還不能になったローンがサブプライムローンを組み込んだ証券を破綻させる時期が迫っていることを知っていた。この時期、ゴールドマンサックスは、一方で顧客にはサブプライムローン証券の購入を推奨しつつ、自分では、それを先物売りして暴利を得ていた【SEC(米証券取引委員会)に詐欺罪で告発された。史上空前の金額の犯罪であるが、投獄されていない】。同時にゴールドマンサックスなどは、資金の投資先をこうした証券や株式などから、穀物や石油の先物取引へと移していった。バンジーなどもそれと一体となって、穀物を買い占めた。
 そうした銀行・証券と穀物商社の融合体は、政府とも融合している。アメリカ政府はトウモロコシを原料にしたバイオエタノールの生産に莫大な補助金を出した。現在では、アメリカのトウモロコシの40%はバイオ燃料の生産のために使われているというほどだ。これによってさらに穀物価格は上がった。
 まず生産費を度外視した安値で大量の穀物を輸出しメキシコ農業を壊滅させた。その後で、食料を買占め、価格をつり上げた。だから、メキシッコではかなり前から食料暴動が起こっている。
 最も急激に価格が上昇した08年にはエジプトでも食料暴動が起こった。この怒りが、11年のエジプト革命につながったのだ。
 穀物商社は、人為的に食料不足・飢えをつくり出すことを日常業務にしている。まさに、死の商人なのだ。

 TPP=労組壊滅攻撃

 NAFTAと同様、TPPの焦点は、労働組合に対する壊滅攻撃だ。そしてそれは、農業破壊と融合した形で進められる。
 バンジーとともにEGT社を作っている伊藤忠の小林栄三会長は、TPP推進のために設置された「食と農林漁業の再生実現会議」の委員である。そして伊藤忠は現在、世界第2位のウラン取引会社である。そもそも伊藤忠が巨大総合商社に成長していったのは、50年代に伊藤忠に入った元陸軍参謀の瀬島龍三が海軍出身の空自幹部、源田実や児玉誉士夫、政財界幹部と組んで自衛隊にアメリカから輸入した武器を売り込んだことから始まる。そして80年代に瀬島龍三は伊藤忠元会長として第2臨時行政調査会に送り込まれ、国鉄分割・民営化を推進した中心メンバーになった。日本帝国主義の中でも労働者階級攻撃の最先頭に立ってきたのだ。

 ■ロングビュー連帯が占拠運動の中心に

 ILWUローカル21の闘いは、労働者自身の団結を軸にして闘うことで、ウィスコンシンの壁を突き破り、アメリカの労働者階級の希望となった。
 70年代までは、アメリカでも裁判所のピケット差し止め命令、スト中止命令などを無視してストライキに突入した闘いは何度もあった。本部の指令に反して、支部が山猫ストをしたことも多かった。この隠され、忘れられていた戦闘的伝統を古い活動家が各地でよみがえらせ、また新しい活動家が続々と生まれていった。
 昨年10月25日、カリフォルニア州オークランドのオキュパイ(占拠)運動は、警察の襲撃を受けた。それに対する反撃として、総会で決定したことは11月2日のオークランド・ゼネストだった。2日、オークランド港は完全に封鎖され、市役所、学校などでも多くが年休闘争で閉鎖された。
 オキュパイ運動の中で議論されたことは、労組破壊と実力で闘うILWUローカル21との連帯だった。ローカル21のダン・コフマン委員長もオークランドを訪問し、支持・連帯を訴えた。
 地元にILWUローカル10という最も戦闘的な組合があるから、多くの活動家はILWUを守ることの重要性は理解していたが、急激に拡大したオキュパイ運動の中には、ILWUどころか労働組合を知らない人も多い。非正規職、失業者も多い。その中でオキュパイ運動全体をローカル21との連帯に結びつけることは、簡単なことではないはずだ。ILWUを守ることは、アメリカの労働者階級の普遍的な利益であることは、オークランドの活動家にとっては当たり前のことだった。だが、もっと広範な層に普遍的なものと受け取られるかどうかは別のことだ。
 だが、新たに決起した層の圧倒的多数が、ILWUローカル21を守るために熱烈に決起したのだ。それは、労組破壊をしているEGTが港のウォール街≠ナあることを明らかにしたからだ。あのウォール街の奴らが、自分たちの首を切り、学校や病院を閉鎖して地域を住めなくし、詐欺ローンで住宅を差し押さえている。税金で救済資金をもらっているくせに、自分のボーナスは恐慌前の3倍にも上げている。あの強盗どもと体を張って闘っている労働者なら絶対に守ろう、ということだ。そしてあの闘いができるILWUという労働組合の重要性が、急速に理解されていった。
 ローカル21を始めとするILWUの活動家、オキュパイ運動の活動家たちが、新たに決起した層を全体としてロングビュー闘争に獲得できたことは実に偉大なことだ。
(写真 ロングビューとともに全米で実力闘争。銀行に差し押えられた住宅を奪還占拠【11年12月6日 ニューヨーク】)

 全米的・全世界的な団結の勝利

 12月12日、オキュパイ運動が、「ILWUローカル21との連帯」を掲げて西海岸全体の港湾の封鎖闘争を行った。
 1月末〜2月初めのEGTからの第1回目の穀物搬出と貨物船の入出港を実力阻止するためのロングビュー地域の地区労や各地のオキュパイ運動は、多くの労働組合を回ってオルグし、ロングビューへの大量動員を組織していった。
 動労千葉と労組交流センター、全学連は伊藤忠への申し入れ、抗議闘争を行い、オーストラリア、韓国、日本などの港湾労組は、ILWUの要請に応えて連帯を表明しており、韓国、日本でのスト破り船入港反対闘争が予想された。オバマ政権は、軍の一部である沿岸警備隊に、スト破り船を労働者の闘いから守るように命じたが、これも一層労働者の怒りを拡大させた。
 ローカル21の職場の団結に応えて、労働者の連帯がアメリカと世界に拡大、強化されたことでEGTとアメリカ帝国主義国家権力を追い込み、ILWU組合員を就労させざるをえなくさせたのだ。

第2章

 労組破壊・対中対決のTPP――破綻必至の新自由主義策


 前章の中で、NAFTAがアメリカ階級闘争にとって重大な意味を持っていたことについて触れた。現在、そのNAFTAの問題点を格段に拡大するものとして、TPP(環太平洋経済的連携協定)が推進されている。紙面の制約上、次のことを焦点にして書いていく。
 第一に、TPPがアメリカ帝国主義にとっても合理的な整合性をもつものではなく、危機の必死の乗り切りのための、矛盾の塊だということだ。
 第二に「知的所有権」が、TPPのあらゆる条項を貫いているということだ。

 ■NAFTAの破綻

 労組破壊と反革命暴力

 80年代のレーガン政権以来の新自由主義政策の核心は、PATCO(航空管制官労組)の暴力的な破壊を突破口にした労組破壊だった。そしてそれを全世界に拡大していったことだ。新自由主義は、本人たちが主張するような「レッセフェール」(自由放任)の経済政策ではない。単なる市場原理主義ではない。
 本格的に国家レベルで新自由主義を導入したのは、数万人を虐殺した1973年のチリのクーデターでできたピノチェト軍事独裁政権が初めてである。チリの軍・警察はアメリカで治安情報の収集、暗殺や拷問の仕方を訓練された。経済政策もそれと不可分一体でアメリカから直輸入された。新自由主義イデオロギーの本家本元であるミルトン・フリードマンの弟子たち、シカゴ・ボーイズが直接にチリの経済政策を担当した。フリードマン本人もチリで指揮した。
 だが、こうして暴力的に労働運動を内外で破壊し、安価な労働力を確保したにもかかわらず、アメリカの製造業は凋落の一途をたどり、長年の蓄積も食い尽くして、1986年には純債務国に転落した。

 分裂化・ブロック化

 こうした中で推進されたのが、GATT(関税貿易一般協定)ウルグアイ・ラウンド(86年〜95年)であり、知的所有権政策の大転換(80年〜)だった。いずれも、単なる平和的な通商交渉ではなく、貿易戦争≠ニ言われる激烈なつぶし合いだった。そして、その根底に流れるものは、外注化・海外移転・委託生産、労組破壊の攻撃であり、労働者・農民、中小自営業者からの暴力的な収奪だ。
 こうした中で、従来、戦後世界の盟主として曲がりなりにも世界経済の統一性の基軸となってきたアメリカが、自ら世界経済を地域的に分裂させるFTA(自由貿易協定)の締結に乗り出していった。
 NAFTA締結に向けての交渉の開始は86年、GATTウルグアイ・ラウンドの開始と同年だ。少なくとも建前上は世界経済の統一性向上を目指していたはずのGATTと同時に、あからさまな分裂化・ブロック化が推進されたのだ。
 アメリカのウルグアイ・ラウンドでの主要なテーマは、@農業補助金A外資の投資制限Bサービス貿易と銀行業務C知的所有権だった。通常、最も量が多い工業製品の貿易ではなく、@〜Cを焦点にしたのだ。最初から、製造業ではなく金融業が重点だったのだ。
 @は一見すると農業問題であるかのようだが、実際は、ウルグアイ・ラウンドの農業分野の合意文を起草したのは、カーギル社(世界最大の穀物商社)の経営者、ダン・アムスタッツであり、金融資本の利害が問題なのだ。Bの銀行業務は言うまでもなく、「サービス」も保険、証券、不動産などのことであり、金融問題だ。
 アメリカは製造業の凋落は挽回不可能であることを前提にして、金融部門に焦点を移したのだ。
 表は、アメリカの金融取引量のGDP(国内総生産)に対する比率を示したものだ。2000年には、アメリカの実際の経済活動の50倍以上の金額が銀行、証券、保険会社等を通過している。相互の遊休資金の融通を仲介し、現実の経済活動をスムーズにしていくという資本主義の金融の建て前から遠くかけはなれ、実際の50倍ものカネをやり取りして利益を吸い取っているのだ。
 だから、対外貿易交渉も、こうした意味でのアメリカの「金融サービス」を自由に参入させろという要求をメインにしたものになったのだ。これが、きわめて強引で暴力的な政策なしに貫徹できなかったのは当然だ。
 80年代から、アメリカ主導でIMF(国際通貨基金)と世界銀行が中南米・アフリカの債務国に対して、構造調整政策(SAP)の導入を強制していった。サハラ以南のアフリカでは、9割以上の国がSAPを導入した。ここではIMF・世銀が派遣したエコノミストが全権を持ち、当該政府の経済政策の決定権を握った。従来の傀儡政権でさえなく、IMF・世銀の直轄支配になった。
 歳出の超急激な削減、民営化・政府資産の売却によって対外債務の返済資金が絞り出されただけではない。むしろ、中長期的には対外債務の返済に役立つはずの輸出産業の発展さえ、SAPは妨害し、破壊したのだ。民営化した公的資産も、アメリカ金融資本が短期の買収・売却の利鞘をかせぐ道具として使われ破綻させられていった。
 こうした政策は、労働者人民だけでなく、そこの反動的な支配階級の基盤さえ破壊していった。当然、アメリカの世界的な支配力を崩壊させていった。NAFTAは、ようやくカナダ、メキシコに認めさせ1994年に発足させることができた。だが、そのメキシコさえ、NAFTAの中南米への拡大には協力しなかった。また、9・11以降のアメリカ帝国主義の対外政策からも距離を置いた。03年のイラク戦争の開始をめぐる国連の協議では、安保理の理事国だったメキシコのフォクス右派政権が反対に回った。
 そして、もともと中米・南米全域に拡大する予定だったNAFTAは、中南米諸国での反対があまりに強くなったため、小規模国家だけを集めたDR―CAFTA(ドミニカ・中央アメリカ自由貿易協定。05年に締結)に縮小せざるをえなくなった。
 TPPは、こうしたNAFTA政策の破綻の結果、つくられた政策なのだ。それはさらに必死になって労組を破壊するものだ。
 そして、アメリカに対する最大の債権国として台頭した中国と対峙・対決し、また中国の労働者階級の革命的決起に敵対することを狙っている。
 アメリカ帝国主義は、経済においても軍事外交においても、あがけばあがくほど自分の崩壊を促進しているのだ。
(写真 トウモロコシ価格暴騰に怒りのデモ【07年2月 メキシコ】)

 ■知的所有権政策の転換

 新自由主義は、「知的所有権」(特許権・著作権・商標権など)を度外れに強調する。知的所有権とは、その所有者が独占的にそれの使用権を持つということだ。
 新自由主義は、宣伝されているような自由競争の推進ではない。確かに労働者・農民や中小自営業者には競争させるが、巨大独占資本の独占は、むしろとことん推進するものだ。新自由主義の「自由」とは「独占資本の自由」に他ならない。
 知的所有権による独占は、とりわけアメリカ帝国主義に都合がよい。というのは、産業的な衰退にあえぐ中で、通常の商品の独占支配は困難になりつつある。しかし、知的所有権には世界的に共通な明確な規定が存在せず、あいまいなものだから、アメリカが自分の基準を暴力的に押し通すことができるからだ。また、学生運動、教職員の闘いなどの拠点となり、階級闘争全体に大きな役割を果たしてきた大学を、「知的所有権」を使って資本が直接に支配できるからだ。
 そのために、1980年、アメリカ連邦最高裁は、生物に特許を認める判決を出し、それ以降、特許権の範囲を拡大する判決を次々に出していく。レーガン、中曽根、サッチャーが登場し、新自由主義が全世界を席巻する80年代の出発点で、アメリカ帝国主義は特許政策を大転換したのだ。
 従来は、特許権の承認は限定的で生物の用法などにはある程度認められても、生物そのものは自然界にすでに存在するものだから絶対に特許権を与えられることはなかった。また、医師の手術の手法なども、倫理的観点から、特許権は不適切とされていた。
 これらがすべて転換され、また経営の手法(ビジネスモデル)など、あいまいなものや、誰でも簡単に思いつくものにまで特許が拡大された。人間個人の遺伝子も「発見者」が特許権を持つ。

 「知的所有権」のウソ

  そもそも「知的所有権」とは何であろうか。
 「デカルトがなしとげたことは大きな前進だった……。私がもっと遠くまで見通せるのは、巨人の肩の上に乗っているからだ」(ニュートン)
 もともと人間の全活動が共同の活動だ。とりわけ知的活動は、どこからどこまでがその当人の活動の成果かを確定し、その部分だけを所有物として商品にすることは絶対にできない。不可能なものを可能であるとして、強引に押し通すのが新自由主義なのだ。
 知的所有権を推進する本人たちでさえ、所有権を与える確定的な基準は持っていない。どこからどこまでが、先行する発明と実質的に同じで、どこからが意味がある変更点だと判定されるのか。それは膨大な判例を調べないと分からない。また、それで分かったとしても、80年の生物特許判決が典型的だが、最高裁は、以前の自分の判例を自由に覆すことができる。以前とまったく違う判決は珍しくない。
 だから、大企業同士の特許紛争でさえ、互いにどちらが勝つか分からないことが多い。負けて、アメリカ市場で製品を売れなくなるリスクは大きいから、ほぼ負けそうだと思っている側が、和解に応じ賠償金を払う例も多い。
 こうした不明確性こそが、アメリカ帝国主義にとって有利であり、知的所有権問題がアメリカの通商交渉(通商戦争)の中心的な武器になる。また、日本・欧州も近年はそれを対外的な武器にしだしている。

(表 米国とカナダの医師処方薬の価格比較 左から、アクトス【糖尿病薬)、エフェクサー【抗うつ剤】、リプトール【高脂血症剤】、シングレア【抗アレルギー剤】プレバシド【胃酸抑制剤)の例。米国が最大211%も高い】)

 ■知的所有権と医療独占

 ここで際限なく拡大されてきた「知的所有権」が具体的に何をもたらしたか見てみよう。

 薬価の人為的高騰

 07年8月、乳児のけいれんを抑える薬、アクサーの卸値が1650jから2万3000jに値上げされた。同年2倍以上に値上げされた医薬品は26種類にもなる。11年はさらにひどく、アメリカの病院では、抗がん剤などが品切れ状態になり、闇のルートで入手せざるを得ない状態が続出したという。
 巨大製薬会社が特許期間切れの医薬品(ジェネリック)の認可への圧力をかけ、また自社の薬の出荷をあえて抑え、薬価をつり上げている。

 薬害の拡大

 アメリカではインフルエンザで毎年3万人以上死亡しているが、そのほとんどが子どもと高齢者で、しかも栄養などの生活状態が悪い貧困層だ。したがって、そのワクチンはアメリカではカネにならないため製薬会社はまともに開発しない。そのかわり特効薬として売り出したのがタミフルだ。
 タミフルについては、すでに05年に日本の医師が睡眠中に死亡した例や幻覚を起こして数十人が飛び降りた例などを報告し、警告を発していた。しかし、09年、メキシコで豚インフルエンザが発生するとWHO(世界保健機構)が、20億人が感染し100万人が死亡する可能性があるという勧告を出した。中国では豚を屠殺し、国境を閉鎖した。エジプトではカイロの豚をすべて殺し、小農民が破産させられた。
 だが、製薬会社だけは暴利を得た。アメリカ政府だけで20億j、欧州が10億jのタミフルを購入した。日本でも「タミフルが足りない」という危機感があおられ、買いだめ備蓄に走った。
 実際の豚インフルエンザでの死亡者は、全世界で1万8000人で、ほとんどが、元から別の病気を持っていた患者だった。しかも、例年のインフルエンザ死亡者数より少ない。
 こうしたインチキがまかり通るのは、「知的所有権」によって医薬品の開発過程が以前よりはるかに秘密のベールに覆われているからだ。タミフルの治験(動物実験の後で薬品を人間に投与して作用を調べる)について、それが知的所有権だからということで全面公開が今なおされていない。それゆえに、他の研究者がその内容を正確に知り、批判的に検討することができないのだ。
 また、タミフルを投与された子どもの幻覚や飛び降りなどの行動について厚生労働省研究班が調査したが、そこに中外製薬からの寄付が行われていた。中外製薬はホフマン・ラロッシュの子会社であり、重大な利害相反だ。そうして、タミフルの副作用は小さいという結論を出した。こうした利害相反が、「誤解を受けかねない」といったあまりに軽い言葉ですまされている。これは徹底追及すべき重大犯罪なのだ。

 イデオロギー支配が新自由主義のカギ

  そして新自由主義政策は、労働組合を破壊し、階級間の力関係を根本から変えて資本が生き延びようとするものだ。そして団結を芽のうちに摘み取るために、あらゆる「共同的なもの」を破壊し、人間を徹底的に個人主義的な存在に分断しようとする。そのために社会の全構造を変えようとする。だから、新自由主義はきわめてイデオロギッシュなものであり、イデオロギー支配を徹底的に重視している。
 また、新自由主義は「競争」と言いつつ独占を強化する。「市場原理」「自己責任」「小さな政府」と言いつつ、巨大な市場介入を行っている。会計監査さえない軍需産業への支出や為替相場への介入、そして何次にもわたって繰り返されている金融機関救済資金は、新自由主義以前の歴史の中では例がない、あまりにも巨大なものだ。
 こうした現実の矛盾を押し隠すためにも、ますますイデオロギー支配が重視される。そのためにも「知的所有権」イデオロギーが使われる。自由な討論、自由な情報交換の圧殺の道具として「知的所有権」を使っているのだ。

〔表〕アメリカの金融取引量の対GDP比率

年、1980、1990、2000
金融取引量(10億j)、17,804、222,448、508,456
GDPの金融取引量に対する比率、15,7%、2.6%、1.9%

 

第3章

 世界革命の道は開かれた――エジプト革命と結合した運動

 ■タハリールからウォール街へ

 ウォール街占拠運動は、最初からエジプト革命と一体となって生まれた。

 インターネット時代の国際連帯

 エジプト革命も、ウィスコンシン、ロングビューの闘いも、インターネットでたちまち全世界に伝えられた。単に情報が早く伝わっただけではない。最も重要な役割を果たしたことは、真剣に運動をつくる意欲を持った労働者人民が、とことん深く知り、深く討論し、団結をつくることができたということだ。
 インターネットでは、その時の闘争の報道だけではなく、関連団体の歴史や綱領も知ることができる。例えば、マルクス主義インターネットアーカイブ(英語版)というサイトにはマルクス・エンゲルス、レーニン、トロツキーなどの全集がすべて収められているだけでなく、主要なマルクス主義者の著作や主要団体の綱領的文献もそろっている。こうしたものを使って多くの読書会、学習会が行われてきたのだ。
 したがって「自然発生的に」生まれ、急激に拡大した、「指導者がない運動」と呼ばれているオキュパイ運動には、実際には、相当に学習し、討論を積み重ねてきた無数の指導者がいるのだ。
 ここに、ILWUローカル21の闘いを急速に理解し、合流していったひとつの理由がある。また、非常に広範な人々がエジプトなど遠い国の運動を、商業マスコミの表面的な報道からだけではなく、運動の主体と直接に通信し、直ちに一体化できた理由がある。

 アスマ・マフーズ登場!

 10月24日、ウォール街占拠運動が占拠しているズコッティ公園に26歳のエジプト人女性、アスマ・マフーズさんが登場し、圧倒的な歓声を浴びた。ズコッティにいた誰もが、1月に彼女がタハリール広場への結集を呼びかけたビデオ映像を見ていた。その本人が今ここにいる。タハリールの闘いは彼女の命がけの呼びかけから始まった。ムバラク独裁政権下での逮捕・拷問・虐殺の危険を冒し、実名で自分の顔をさらしてムバラクとの闘いを訴えたのだ。
 ウォール街占拠では最初からエジプト革命への感動が語られ、そしてエジプトではウォール街占拠が語られている。それが現実に結びついたのだ。オークランドなど全米各地の占拠運動にも、エジプト、チュニジア、ギリシャなど世界各地の革命の担い手たちが登場している。

 「不法移民」弾圧反対

 アメリカ国内の外国人労働者との団結は、国際連帯を大きく前進させている。各地の占拠運動で、必ず入管当局の弾圧反対、移民弾圧立法反対が掲げられている。また、各地の占拠運動では、独自に外国人労働者委員会がつくられ、移民局占拠闘争などが行われた。
 オークランドでは、10月25日の警察の襲撃・テント村撤去に対して、市庁舎前で座禅をして動かなかった青年が、「不法移民」ということで強制送還の攻撃にあった。他の被逮捕者は釈放されたのに、彼だけ罰せられるのは許せないと大きな闘いの焦点になり、奪還をかちとった。
(写真 「入管局を占拠せよ!」「移民は99%の一部だ!」サンフランシスコ占拠運動のデモ【11年12月】)

 ■東京の伊藤忠抗議闘争、オークランド占拠闘争の前面に

 東京で動労千葉、労組交流センター、全学連が行った伊藤忠への申し入れ・抗議闘争は、ILWUローカル21の組合員に直ちに伝えられ、「東京でもやってくれているのか」「あ、ILWUのTシャツを着たやつがいるぞ」などと、組合内で大騒ぎになったという。03年11月集会以来のILWUとのつながりも理解され、ローカル21組合員は自分たちの闘いがどこでも通用することに確信を深めていった。
 ILWUローカル21のダン・コフマン委員長は、激闘の最中なのに日本の11月集会参加のために駆け付けた。
 12月12日の西海岸港湾占拠闘争でも、東京の伊藤忠闘争と動労千葉からの連帯メッセージが真っ先に取り上げられ、組織化のために使われた。
 動労千葉労働運動の国際連帯が、新たな職場の闘いを生み出している。そして、カリフォルニアのディアブロ・キャニオン原発などの停止を始めとした、反原発闘争との結合を生み出しつつある。核・原子力の総本山であるアメリカの闘いとの結合は決定的だ。

 大学の営利化との闘い

 ミルトン・フリードマンは、早くも50年代に教育民営化を重視した論文を書いている。新自由主義は、その教育全体の民営化のカギは、大学の営利化だと位置づけている。
 彼らによれば、大学は公立から私立に変えれば良いのではなく、経営の根本精神の転換が必要だ。大学のトップは学長ではなく、企業と同じく「CEO」(最高経営責任者)という肩書きでなければならない。学生は「クライアント」(顧客)だ。
 そうした転換のテコになるのが第2章で述べた知的所有権だ。人文系も理科系も大学の研究実績のすべてが、著作権や特許権、つまり知的所有権の対象となる。すなわち独占権を与えられた私有財産となる。教員・研究者は、知的所有権をどれだけ生産したかによって評価される。
 これは新自由主義の建て前的イデオロギーであって、現実には、大学教員の成果は本人の私有財産になることは稀だ。大資本の都合が一切を決める。
 企業にとっては、完全な私立大学化は都合が悪い。むしろ公立大学の営利化のほうが良い。税金を投入された公立大学に、寄付金を出す。そして企業は公共的な寄付だということで税の控除を受け、研究の成果は、丸ごと自分のものにできる。企業自身の研究所の何倍も安上がりだ。しかも、知的所有権・秘密保持契約で縛りをかければ、特許にしにくい微妙な成果も、発表せずに独占することができる。こうして、大学の公開性が失われ、営利主義と秘密主義がはびこり、分断されていく。
 公立であるカリフォルニア大学でも、ほとんどの新しい建物は、企業の寄付によるものだ。そして、大学の理事は、ほとんどが企業の取締役だ。それも銀行、証券、不動産、原子力産業の面々だ。新自由主義化、金融化したアメリカ資本主義が、直接大学を支配している。彼らが、教職員の賃金を下げ、大学授業料を毎回大幅にあげて、学費ローンに頼らざるをえなくさせているのだ。そして、自分の銀行のローンに学生を誘導している。
 今、全米の学費ローン残高は、全米のクレジットカードの借金残高より多いのだ。世界的にも名だたるカード社会のカードローンと比べてさえ多いのだ。しかし、学費ローンは他の借金とは法律的に別扱いで、支払い不能になっても個人破産ができない。一生、借金の奴隷になるしかない。共和・民主両政党を握っている大銀行は、決してこの不当な法律の改正を認めない。こんなことをやっているのが、大学の理事たちなのだ。
 カリフォルニア大学バークレー校の学生たちは、隣町のオークランドゼネストに参加し、大学占拠闘争に決起するとともに、大学前の銀行支店の占拠闘争に決起している。「ウォール街占拠」「1%との闘い」は、学生の要求そのものだ。
 今、階級的な新たな労働組合の潮流が台頭し、それとともに闘う巨万の学生が生まれている。エジプトの不屈の若者を見て、自分たちも勝てると確信している。機動隊の至近距離からの警防乱打や催涙ガス攻撃にも動じず、スクラムを組み続ける学生がいる。世界の支配者アメリカ帝国主義の体内からこの荒々しい力が現れた。世界革命は必ず勝利する。
 国鉄闘争、反原発闘争に全力を挙げ、職場・学園を拠点化し、TPP・復興特区攻撃を粉砕しよう。医療の「知的所有権」のために福島を人体実験の場合にする医療特区を許すな!
 8・6、8・9反原発国際連帯集会を世界的規模で組織しよう。11月労働者国際連帯集会をともにかちとろう。
(写真上 「ディアブロキャニオン原発止めろ!」「ノーモア原発」【11月4日 サンフランシスコのカリフォルニア州電力委員会前】)
(写真下 泊まり込み闘争への警察の襲撃にスクラム【11月9日 カリフォルニア大学バークレー校】)

------------------------TOPへ---------------------------

月刊『国際労働運動』(428号4-1)(2012/04/01)

■翻訳資料

中国・富士康の労働現場の現実

2012年1月25日 ニューヨークタイムズ

河原善之 訳

 【解説】

 この翻訳資料は、ニューズ&レビュー「中国」と一体のものである。
 中国の富士康の労働者の労働現場の現実を示す資料として、1月25日にニューヨークタイムズが報道した記事「中国で、iPadに組み込まれる人間の値段」(中国語訳、「血と汗の労働の代償としてのアップル」)が大きな反響を呼んでいる
 今回は、この記事の翻訳の抜粋を資料として掲載する。なお翻訳に当たっては、英語原文のほか、中国語訳も参照した。中国語訳には、英語原文にない、付け加えられた詳しい事実の記述や若干の訂正があり、それらも特に(注)の断りなしに訳出に加えていることを断っておきたい。

 「中国で、iPadに組み込まれる人間の値段」(抜粋)

 2011年5月の金曜日の晩、(富士康の)A5ビルを爆発の衝撃波が貫いた。爆発による炎と轟音によって折れ曲がったパイプは、捨て去られた藁のように四方に散乱した。食堂で食事を食べていた労働者たちは、工場の外に走って出てきて、窓が割れ、そこからもうもうたる黒い煙が不断に中から吹き出しているのを見た。その爆発した煙の出ているところは、労働者が1日に数千に及ぶiPadのアルミの外装ケースを磨いている場所であった。
 2人の労働者が即死し、十数人が負傷した。負傷者は、急いで救急車に乗せられたが、1人は負傷が特にひどかった。彼の顔はすでに血と肉がごちゃごちゃになっていて、爆発の衝撃と高温で焼け爛れてしまっていた。目鼻は判別できなくなっていて、もともと鼻や口のあった場所はただ赤と黒の固まりとなっていた。
 「あなたは頼小東のお父さんですか?」、頼の実家の電話がなり、かけ手は聞いた。 6カ月前に22歳(注 中国語訳では「数え年」なのか23歳となっている)の頼小東は故郷の綿陽市から車で3時間のところにある成都に就職で出てきた。ここには最精密製品を製造する世界で最大規模、生産率最高の工業設備のシステムがある。この膨大なシステムは、アップル及び数百の科学技術会社の電子製品を考えられない高速で生産することを可能にしている。頼小東は、この膨大なシステムの運動を支える数百万の「人肉の歯車」の一つとなったのである。
 「彼は事件に遭いました」と頼の父親にかけ手は伝えた。「大至急、病院に来て下さい」
 過去10年間で、アップルは世界で最大規模、資金も最多の最も成功した企業の一つとなった。この成功の大部分は、アップルが地球規模で製造業をコントロールし、生産拠点の移動を通じて生産コストを抑えたことによる。
 アップルと他のハイテク企業は、――無数の他のアメリカの産業同様に――近代史に例を見ないと言えるスピードで工業技術の革新をかちとった。しかしながら、労働者の証言、あるいは弁護士や企業自身が出している文書によれば、iPhoneやiPadをなどの電子製品をつくっている労働者はむしろ常に苦しみに置かれており、ひどい場合には命に関わる環境の下で仕事をしている。
 労働者の労働は(1日の労働が)極度な長時間労働で、ときには1週間7日労働し、人の詰め込まれた寮で生活している。数人の労働者は、長時間の立ち労働で、彼の足には水腫ができてしまい、早く歩くことができなくなったと訴えている。
 労働者の権利擁護団体(信頼すべき独立した監視者と中国ではしばしば考えられている)、およびアップル自身が発表した報告書によれば、子どもが雇われてアップル製品を製造している状況が確実に存在し、会社の下請け業者は違法に有害な汚染物を処理してデジタルデータを改竄している。
 2年前、中国東部にあるアップルの下請け工場で、iPhoneのスクリーンをきれいにするために有毒の化学物質を用いた作業を命令されて、137人の労働者が神経系統に損傷を受けた。昨年の過去7カ月間の間に、成都の事件を含めて二つのiPad製造工場で、似たような爆発事件があり、二つの事故で4人が死亡し77人が負傷している。
 ある中国の団体が、爆発事故が発生する前にアップルに対し、成都の工業区の仕事環境は非常に危険だと公然と警告していた。その団体の言うところによればアップルはその工場の安全対策を強化していないからだという。
 「もしアップルに警告を発したのに、アップルが何もしなかったなら、アップルは事態の責任を負うべきである」。職業安全と健康の全国建議委員会(この委員会は、アメリカ連邦労働局への提言を行っている)前主席のニコラス・アシュフィールドは言う。「しかしある国において道徳的に不愉快な行為が、別の国でビジネスの実践として受け入れられるなら、これらの企業はその利益を得ることができるだろう」(中略)
 「アップルは、品質の向上とコストの削減以外に関心はない。労働者の健康など会社の利益とはなんの関係もないのである」と李明啓は言う。李は(爆発事故直前の)4月まで上級管理職の身分でアップルの最重要パートナーである製造企業の富士康に勤めていた。彼は(成都工場への異動を拒否して解雇された)自分の解雇をめぐって富士康を訴えているが、5月に爆発事故を起こした成都の工場の経営を手伝っていたのである。(注 中国語翻訳では、3月に解雇されたとされている)(中略)

 成都への道

 2010年の秋、それはiPad工場の爆発の半年前であるが、頼小東は専門学校を卒業したばかりだった。彼はスーツケースの中で折れないように、卒業証書を大切に衣服にくるんで中にしまった。友達に別れを告げ、毎週1回やっていたポーカーゲームができなくなるとわびた。そして先生たちにも別れを告げた。小東は、はやく成都に行って仕事をしたかった。そこは1200万人の人口を持つ大都市で、急速に世界の最重要な製造基地のひとつになったところなのだ。
 小東は恥ずかしがり屋で、看護学校の美人の女子学生と付き合っているとは、家族の誰も想像もできなかった。二人は結婚したいと思っていてお金を稼いで2人の部屋を買うんだ≠ニ彼は言っていたという。
 成都では、大小のさまざまな工場が、数百の企業のために仕事を請け負い、いろいろな製品を生産している。小東は富士康科技グループを選んだ。120万人の労働者を抱える企業であり、その輸出量は全中国トップであり、労働者の数は屈指である。富士康は全中国に工場を持っており、地球上で消費されている電子製品の40%を組み立てている。その請け負っている企業には、アマゾン、デル、パッカード、任天堂、ノキア、そしてサムソンが含まれている。しかしその最も重要な顧客はアップルであり、アップルが昨年売りさばいたすべての製品の大半は、富士康の工場を経由して組み立てられているのだ。
 富士康の成都の工場が抜きん出ているところは、工場の中で作られている製品が、アップルの最新の、そしておそらく有史以来最も優れた製品であるiPadであることだということを、小東は知るのだった。
 小東が富士康で、工場の機械の補修の仕事を始めた時、最初に気づいたことは、作業場にずっと消えずに灯っている明かりだった。富士康は24時間、労働者が働いているため、部屋の中は昼間のように明るいのだ。いつもたくさんの労働者がベルトコンベアーの脇に立っていたり、あるいは長いすに座っていたり、あるいは機械の傍らにうずくまっていたり、あるいは製品を上げたり降ろしたりして忙しく走り回っている。
 ある労働者は、長時間立っていたために足に水腫ができ、ひょろひょろ歩きとなった。趙晟という若い工場労働者は、「一日中立っているのは、とても耐えられない」と、工場付近の茶館で記者に話した。そばにいた彼の同僚も、同意してうなずいた。
 工場の作業場には、さまざまな標語が張られていて、仕事をしている12万人の労働者に警告をしている。「今日必死で仕事をしないと、明日必死で仕事を探す身になる」というのは、その中の一つだ。 アップルの請負業規則は明確に規定している。「特殊な状況を除いて、1週間の労働時間は60時間を超えてはならない」。しかし取材記録や労働者の労賃計算表、あるいは外部の団体の調査によれば、富士康では多くの労働者の労働時間が60時間をはるかに超えている。
 小東の労賃計算表は、彼の1日の労働時間が12時間で週6日間働いていたことを示している。遅刻すると反省文を書かねばならず、場合によっては罰として総裁語録の書き写しをしなければならない。ここにはまだ一種の「両連班」制度と呼ばれる制度があるが、これは労働者が連続して二つの勤務時間を続けて働かなければならない制度を指している。
 小東の1日あたりの賃金は、残業代も入れてだいたい22米j(注 1700円位か)。彼は専門学校の卒業証書を持っているので、初任給は大多数の普通の労働者に比べて2倍である。
 小東は毎日仕事が終わると自分の借りている一部屋のアパートに帰る。部屋は大きくなく、ベッド、衣装ダンス、机という最低限の家具があるだけだ。小東のガールフレンドの羅小紅によると、小東は借りているアパートに帰ると、「地主との闘い」という名のゲームをすることが、主な娯楽だったという。
 どんなに条件が苦しくても、小東の借りている部屋は、ほかの7万人の労働者が住む富士康の宿舎よりはまだ良かった。3部屋で一室の宿舎は、時には(一室に)20人が詰め込まれているのだ。
 昨年、労資が紛糾した時、労働者は怒り、宿舎まで騒動が発生した。怒った労働者は、宿舎から下に瓶やゴミ箱、火をつけた紙を放り投げた。
 目撃者によると、その地域の200人の警察が工場地区に入ってきて8人の労働者を逮捕して、ようやく事態が収まった。事件の後、1人の富士康の上級管理職は、「宿舎の中に置いてあったゴミ箱はすべて回収した。しかしたまってくるゴミと常に発生するネズミが新たな問題になった」と言ったという。小東は一人部屋を借りて住んでいたために、この種の面倒から逃れることができ、自分は幸せだと密かに思った。
 富士康は声明の中で、「両連班」制度、長時間残業労働、人の詰め込まれた寮、そして昨年の騒動の原因などを否認した。そして富士康は会社の作業の一切が、アップルの請負業規則に準じているとし、さらに会社の政策規定は業種内の国際基準に準じ、国際法を遵守しているとした。
 「すべてのベルトコンベヤー労働者は、正常な休憩時間を享受しており、その中には1時間のランチタイムがある」。会社の声明は、このように書いている。会社はさらに言う。「ただ5%の労働者が立ち作業をする必要があるのであり、工作台は人体工学の基準を満足させる設計になっている。そして労働者には、仕事場を変えたり、栄転させる機会を与えている」
 「富士康は一貫して良好な安全記録を保持しており、会社は作業場の環境の改善、労働者に配慮して絶え間ない努力を行っており、国内の同業企業の中で模範になろうと思います。」
(中略)
(写真上と下 富士康で働く労働者)

 爆発

 iPadの作業場が爆発する日の午後、頼小東はいつものように彼のガールフレンドに電話した。彼らはこの日の夜、会おうとしていた。だが支配人が彼に残業を命じたため、そのことを彼女に告げようとしたのだ。
 頼小東の富士康での昇級は非常にはやかった。入社して数カ月の後、小東は、iPadの外装ケースを磨く機械の作業班の責任者となった。研磨の作業場は、非常に騒がしく、アルミニウムの粉がたちこめている。労働者はマスクをし、耳をふさいでいるが、しかし彼らが何度風呂に入るかにかかわらず、彼の頭や目じりから、キラキラ輝く残留アルミ粉が出てくるのが、ここの労働者なのである。
 爆発事件の2週間前に、香港の人権団体が発表した文書で、成都の工場の労働環境の危険性を警告していたが、その中には可燃性のアルミ粉の問題が含まれていた。
 この「学生と研究者による不良企業監督行動」(Sacom)という団体はビデオ撮影機でマスクをしたアルミ屑だらけの男を撮影した。この組織の報告書には「成都工業区の職業の健康と安全問題は深刻であり、労働者たちは空気流通の悪さと防護設備不足の問題を強調している」と書かれている。
 Sacomの報告はアップルに送られたが、「何の回答も無い」とSacomの陳詩韵は言う。「数カ月後に私たちはアップル社のカリフォルニア総本部に行き、会社のロビーに入ったものの、誰も私に会おうとしなかった。私たちはアップルのいかなる人のいかなる回答も得ていない」
 爆発事故の日の早朝、頼小東は自転車で会社に行った。iPadは数週間前に売り出されたばかりであり、労働者たちは毎日数千の外装ケースを磨かなければならないといわれていた。彼らが言うには、工場全体が異様に忙しく、高速の外装ケース研磨機が配置され、マスクをした労働者がボタンを押し、ひとつの作業ごとに上方で巨大な排気管が作動するが、しかし3カ所で間断なく行われている生産ラインが出すアルミ粉を排出することなどできず、粉末は至る所に散っている。
 粉塵の危険性は公認されている。2003年にアメリカのインディアナ州で起きたアルミニウム紛の爆発事故は、工場を破壊し、労働者1人の命を奪った。2008年には、アメリカの製糖工場で農産物の粉塵が爆発し14人が死亡した。金属粉はもっと危険である。なぜならその温度が高温となって皮や肉を激しく焼くからである。
 爆発が起きた時、頼小東は(「両連班」制による)第2(勤務時間帯)8時間の最初の2時間をちょうど過ぎたところだった。工場は傾き、足元は地震のようだった。労働者の回想によれば、爆発音はあちこちから起きた。
 誰かが大声で叫びだした。
 その時の写真を携帯電話で撮った人がいるが、頼小東の同僚たちが工場の外に飛び出した時、工場に開いた大きな穴からは濃煙がもくもくと噴出し、そぼそぼと降っていた小雨と交差していた。2人はその場で死んだ。最終的な死亡者の数は、4人死亡、18人負傷である。
 病院で、頼小東のガールフレンドは、彼の皮膚がほとんど焼け爛れているのを見た。「私は、彼の足から、彼だと分かった。そうでなければ私は、この人が誰か、絶対に分からなかっただろう」と、彼女は言った。
 最後に彼の家族も来た。「彼の皮膚は全部焼けていて、水泡もあった」と彼の弟は言う。「母は、一目見て、すぐに部屋の外に走って行ってしまった。私も泣いた。誰もこのような情景には耐えられないだろう」。小東は話すことができず、医者が呼吸管を挿入した時もまったく口を開くことができなかった。顔中が焼け爛れ、血と肉がごちゃごちゃになっていた。小東のお母さんが戻って来た時、彼女は息子に触るのをやめようかと思ったという。彼の苦痛を増大させないために。
 「もし当時、私が、小東はその後死ぬと知っていたら」と母は言う。「私は彼の腕をつかんで死ぬ前に撫でてあげたのに」。そして「彼は非常に強い子だ。2日間も頑張ったのだから」と言った。
 成都の富士康の爆発事故で世を去った頼小東の父親は、息子の卒業証書を受け取った。
 頼小東の両親は、彼の遺体を村にもって帰ろうとした。しかし富士康の支配人は、「もし賠償して欲しいのなら、先に火葬に同意しなければいけない(さもないと払わない)。遺体を焼いた上で、別の地域に持っていくことを、中国の法律は要求しているのだから」と言った。頼小東の父親は、(遺体が勝手に火葬場に運ばれるのを阻止しようと)病院の門に立ちふさがって、この提案を拒絶した。すると1人の保安員が威嚇して、彼を連れて行ってしまった。
 数日後、富士康の労働者が車を運転してきて、頼小東の故郷に骨壷を運んできた。富士康はその後、頼小東の家族に90万元(注 英原文15万j、約1200万円)を送ってきた(富士康は「賠償金を払わない」と脅すことなどしていないと、声明の中で言っている)。
 アップルと富士康は、事故の調査を開始している。1人のアップルのメッセンジャーは、「(アップルは)富士康成都工業区の悲劇を心底悲しんでいます。私たちの心は彼らの家族と共にあります。私たちは富士康と緊密に協力して、この恐るべき事件が起きた原因を明らかにします」と言った。
 富士康は声明の中で、成都工業区は、爆発事故発生前にすべての関連する法律法規を遵守しており、あわせて「すべての死亡した労働者の家族の要求にしっかりと応えた上で、私たちはすべての負傷した労働者に最高の質の医療を保障しました」。
 爆発事故の後、富士康はすべての外装磨きの作業を中止し、通風孔や粉塵処理についての従来のやり方の改善をし、労働者の安全向上のための新技術も導入されたという。
 しかし、アップルにせよ富士康にせよ、事故調査に関する文献は、いまだまったく発表されていない。
 (以下略)

------------------------TOPへ---------------------------

月刊『国際労働運動』(428号5-1)(2012/04/01)

Photo News

■Photo News

 ●イスラエルで正規職化求めゼネスト

  (写真@A)

 イスラエルの労働者は、体制内労組のナショナルセンターであるヒスタドルート(労働総同盟)を下からの闘いで突き上げ、2月8日、政府が雇用する25万人の非正規職労働者の正規雇用を求める無期限ゼネストに突入した(写真@A)。ストには、官民の労働者50万人が参加し、すべての省庁、鉄道、港湾、空港、郵便局、銀行、病院、精油所などがストップした。テルアビブでは、数十万人がデモに決起した。この結果、数千人の労働者の正規職化と、その他の労働者の職場の保証、最低賃金の引き上げ、正規職と同等のボーナスや有給休暇、年金などの権利を獲得した。これは重要な勝利であるが、労働者たちは、この成果で満足せず、さらなる闘いで25万人の非正規職すべての正規職化をかちとる闘いを継続している。

 ●ギリシャでも2回のゼネスト

  (写真BC)

 ギリシャの労働者は2月7日の24時間ゼネスト(写真B)に続いて、2月10にも、48時間ゼネストに突入した。(写真C)ギリシャの労働者は、IMF、EU、EU中央銀行による1300億ユーロの救済措置の条件として、労働者の最低賃金を極限にまで引き下げることを要求したことや、緊縮政策による公務員の削減、医療や社会保障のカットが行われることに怒りを爆発させたのだ。この決起は、労働者に犠牲を集中して資本主義の危機を乗り切ろうとする資本家とその政府に対する反撃の闘いであり、資本主義との徹底的闘いと革命を求める闘いに発展しつつある。

 ●中国富士康の工場でストライキ続発

  (写真DE)

 2月11日、中国の富士康(台湾系資本)傘下の寧波奇美電子で、数千人の労働者が賃上げを要求してストライキに決起した(写真D)。これに先立つ1月9日には、湖北省武漢市にある富士康の工場で、従業員100人が屋上に立てこもり、不当な配置転換に抗議し、賃上げを要求する闘いがあった(写真E)。この企業は長時間労働、低賃金、労働者の酷使で有名な企業であり、これに対する労働者の怒りがついに爆発したのだ。

 ●「希望テント」運動が双龍自動車の工場を包囲

  (写真FG)

 韓進(ハンジン)重工業のキムジンスクさんの闘いを支えた「希望のバス」運動は、その後も各地の労働争議現場への連帯を組織する運動となって継続されている。1月13、14日の両日には、双龍(サンヨン)自動車平沢(ピョンテク)工場前に設置された「希望テント村」で、全国から結集した約3000人の労働者・市民による工場包囲闘争が闘われた(写真F)。集会にはキムジンスクさんも参加し、発言した(写真G)

------------------------TOPへ---------------------------

月刊『国際労働運動』(428号6-1)(2012/04/01)

世界経済の焦点

■世界経済の焦点

消費大増税は非正規を直撃

日本国債暴落で破産するのは「1%」の資本家

 野田政権は1月17日、「社会保障・税一体改革大綱」を閣議決定した。「大綱」には、消費税の税率を2014年4月に8%、2015年10月に10%に引き上げることが明記された。消費税増税を巡る一大階級決戦が開始されたのだ。
 野田を突き動かしているのは、国債暴落がいつ日本を襲うか分からないというすさまじい恐怖だ。アメリカの格付け会社S&Pが1月13日、ヨーロッパの9カ国の国債格付けを一斉に引き下げた際、野田は「欧州危機は対岸の火事ではない。今のままの財政運営でいったら日本にスポットライトが当たってしまう」と危機感もあらわに表明した。そこまで日本帝国主義は追い込まれている。

 □ギリシャ上回る累積財政赤字

 2012年度政府予算案は一般会計で総額90兆3339
億円、それをまかなう歳入の内訳は、税収が42・3兆円、新規国債発行が44・2兆円とされている。当初予算の段階で国債発行額が税収を上回るのは、これで3年連続だ。
 12年度末の累積国債残高は739兆円、国と地方自治体の長期債務残高は940兆円に膨らむ見通しだ。OECD基準による「一般政府債務残高」の対GDP比は、12年には219・1%に達する。ギリシャの場合、この数値は181・2%だ。
 しかも、12年度末の債務残高がこれにとどまる保証は何もない。11年度の場合、4次にわたる補正予算が組まれ、新規国債発行額は当初予算の44・3兆円から最終的に55・8兆円に増大した。当初予算はもはや「予算」としての意味をなさない状態だ。
 さらに短期債務(借入期間1年未満の債務)も増えている。短期債務や借入金も含めた国の債務残高は、11年12月末には958・6兆円に膨らみ、12年度末には1085・5兆円に達する見込みだ。
 短期債務が増大する主要因は、円高の進行をくい止めようとして繰り返された為替介入にある。政府は昨年10月31日の1日だけで約8兆円もの円売りドル買い介入を行った。こうした為替介入に要する円は、国庫短期証券(短期国債)の発行によってまかなわれる。「円高をなんとかしろ」と叫ぶ資本の要求に応えるために、政府は1日で8兆円も借金を増やす政策さえいとわないのだ。

 □「財政再建」はすでに全面破産

 国家財政の実態は、一般会計だけではつかめない。一般会計と特別会計を併せ、重複計上分を除いた12年度予算の純合計額は228・8兆円に達する。その支出内訳は、国債の元利払いに84・7兆円、社会保障費に75・8兆円などだ。借金返済のための費用は、すでに社会保障費をはるかに上回っている。
 消費税増税を強行したとしても、財政危機は何ひとつ解決しない。野田政権自身、1月24日に公表した「経済財政の中長期試算」で、計画通り消費税を引き上げた場合でも、国と地方自治体を併せた基礎的財政収支は20年度に16・6兆円の赤字になると認めている。10年6月に菅政権が新成長戦略とともに打ち出した財政運営戦略では、20年度に基礎的財政収支の黒字化を達成するとうたっていた。これは全面的に破綻した。基礎的財政収支の赤字が続けば、債務は雪だるま式に増えていく。その悪循環から逃れる道はないのである。

  □消費税増税分は企業減税に回る

 野田は、「社会保障のための消費税増税」という。だが、消費税増税により国家財政が好転したり、社会保障が充実したことなど一度もない。なぜなら、消費税の増税分は、法人税減税を始めとする企業減税に回されてきたからだ。消費税導入以来の消費税の総額と、法人税減税の総額はほぼ等しい。
 野田政権は、今年4月から法人税の実効税率を5%引き下げると決めている。その上で法人には12年4月から3年間、「復興特別法人税」がかけられるが、それでも11年度と比べれば減税になる。にもかかわらず経団連は、12年版経営労働政策委員会報告で、「法人実効税率を早期に主要国並みの30%とし、その後もアジア諸国と均衡する25%程度まで引き下げる」と叫びたてた。だが、「日本の法人実効税率は高い」という資本の主張にはうそがある。租税特別措置による減税制度があるため、大資本への課税は利益の約30%程度にすぎない。
 さらに、復興特区では新設企業の法人税は全額免除され、既設企業についても人件費の一定割合が税額控除されることになっている。
 野田政権はまた、今春で期限切れとなるエコカー減税の3年延長を決めた。11年度第4次補正予算に盛り込まれたエコカー補助金と相まって、自動車会社に巨額の国家資金が投入されるのだ。
 そもそも自動車会社を始めとする輸出企業は、消費税の輸出還付金として国から膨大なカネを受け取っている。その額は09年の場合、トヨタが2106億円、ソニーが1060億円、日産が758億円と推定される。輸出還付金は消費税率が上がるほど増える。ここにも、大資本が消費税増税を叫ぶ理由がある。

 □「復興」を口実にまたも資本救済

 大資本こそ、国家財政の赤字をここまで拡大させた張本人だ。97年の金融恐慌以降、政府は銀行を始めとする大資本を救済するために野放図に財政赤字を拡大してきた。08年のリーマンショック後、これはさらに加速した。ところが、国家財政に大穴を開けた資本家たちは、その責任を何ひとつ取らず、むしろ企業減税の恩恵に浴してきた。
 野田政権は「震災復興」を掲げて総額12兆円の11年度第3次補正予算を成立させた。そこには被災地の人民の生活を直接に保障するための支出項目はほとんどない。まして、緊急に必要とされている原発事故汚染地域からの避難のための予算など絶無だ。「特区」向けとされる復興特別交付金を始め、ほとんどは企業に対する発注や補助金という形で使われる。「除染対策費」などは、被災地の労働者に被曝労働を強制しつつ、ゼネコンをもうけさせて、「原発事故収束」をキャンペーンするものでしかない。
 さらに野田政権は、東電に1兆円の公的資金をつぎ込んで救済し、原発を維持しようと躍起になっている。
 政府や資本は、増税の口実として「将来世代に負担を残さない」と唱えるが、原発再稼働をたくらむ彼らに「将来世代の負担」を語る資格などまったくない。

 □年金削減を始め社会保障は解体

 「社会保障のための消費税増税」という言い分がうそであることは、現に野田政権が進めている政策を見れば明らかだ。年金支給額は、物価下落を口実に今年6月支給分から引き下げられる。
 「社会保障・税一体改革大綱」には、年金の「支給開始年齢引き上げの検討」も明記された。年金支給開始年齢の65歳への引き上げは現在進行中だが、そのさらなる引き上げが強行されたら、もはや社会保障などないに等しい。
 JR東日本の「シニア制度・エルダー制度」を典型に、この間、資本は、年金の支給開始年齢引き上げを逆手にとって、「定年退職後の再雇用の場の確保」を口実に業務の外注化と非正規職化を推し進めてきた。こうした攻撃は一気に激化する。
 政府はまた、消費税増税の口実として、ヨーロッパ諸国では付加価値税の税率が10%台後半から20%台となっていることを挙げる。しかし、ヨーロッパの場合、食料品などの生活必需品は非課税または軽減税率となっている国がほとんどだ。にもかかわらず「社会保障・税一体改革大綱」には「単一税率を維持する」と明記された。
 これに加え、震災復興を口実とした臨時増税が襲いかかる。その内容は、@所得税を13年1月から25年間、一律2・1%増、A住民税(地方税)の均等割りを14年6月から10年間、年1000円増というものだ。他方で、法人に課せられる「復興特別法人税」はわずか3年で終わる。
 消費税率の10%への引き上げと臨時増税を合わせれば、夫婦と子ども2人で年収500万円の世帯の場合、年間の負担増は31万4千円に上るという試算もある。まして年収200万円以下の非正規職労働者の場合、増税はまさに生存を脅かすものとなる。

 □銀行資本の利益擁護が狙いだ

 野田は、国債が暴落し、国家が破産してもいいのか≠ニいう恫喝で消費税増税を強行しようとしている。大阪市長・橋下に至っては、「公務員の組合をのさばらせておくとギリシャのように国が破綻してしまう」と絶叫して、労組絶滅攻撃に乗り出してきた。野田もまた、「社会保障・税一体改革」とセットになった行政構造改革実行法案に、国家公務員の人件費2割削減を盛り込む構えだ。
 だが、国債暴落を「国民」に等しく襲いかかる災難であるかのように言うこと自体がデマゴギーだ。国家が1000兆円近い借金を抱えているのは、裏を返せばそれだけのカネを貸した者がいるからだ。11年9月末時点で、国債の43・7%(326・6兆円)が郵貯を含む銀行や投資信託、ノンバンクなどに、20・8%(155・3兆円)が簡保を含む生損保会社によって保有されている。国債暴落に直撃されるのは、まさに金融でもうけてきた連中だ。
 銀行は、大恐慌の中で企業への貸し出しを減らす一方、相対的に有利な国債への投資を増やしてきた。銀行が保有する国債は、08年のリーマン・ショック直後から10年4月までの3年足らずで約2倍に増えた。大手銀行5グループの11年9月期決算でも、利益の約3割を国債売買益に依存する構造だ。こうして国債投資で膨大な収益を手にしてきた銀行も、ついにここに来て、国債から手を引く準備をし始めた。
 12年度には、借換債112・3兆円も含めて174・2兆円もの国債が発行される。銀行が今までどおり国債を買い続けなければ、それだけで国債は暴落する可能性がある。
 国債暴落による損失を避けようとする銀行の行動が、国債暴落の現実性を引き寄せかねないという点で、まさにこれはジレンマだ。この窮地から銀行を救い出すために、野田は消費税増税を強行しようとしているのだ。およそ預貯金などできない状態にある非正規職労働者は、銀行が破綻したところで何の被害も受けない。ところが、その非正規労働者の懐にも手を突っ込んで、銀行救済のための税金をふんだくろうというのが野田の政策だ。まさにこれは、「99%」の労働者人民を犠牲にして、ほんの「1%」の搾取者・収奪者の利益を守ろうとするもにのほかならない。
 この攻撃に対抗できるのは労働者の階級的団結と闘いだ。橋下は「ギリシャでは労組が国を破綻させた」とわめくが、ギリシャの労働者階級は、度重なるゼネストによって独仏を始めとした銀行資本がギリシャ国家に対して持つ債権の約5割を切り捨てさせた。ギリシャの労働者階級には、最低賃金の22%引き下げや年金削減、公務員労働者1
万5000人の削減などの厳しい攻撃が襲いかかっているが、それでも銀行資本によって労働者がとことんしゃぶり尽くされることを防いでいるのは、階級的団結に基づく闘いなのだ。この攻防は、プロレタリア世界革命以外に決着がつかない。
 日本の労働者階級も同様の決戦に突入しつつある。ブルジョア国家の打倒とそれによるブルジョア国家の債務の廃棄のみが財政赤字を「解決」し、労働者に生きる道を保障する唯一現実的な方策だ。
 (岩谷芳之)

------------------------TOPへ---------------------------

月刊『国際労働運動』(428号7-1)(2012/04/01)

世界の労働組合

■世界の労働組合 フランス編

フランス労働総同盟・労働者の力

(Confederation generale du travail - Force ouvriere:CGT−FO)

 

 

(写真 2011年12月29日、シャルル・ドゴール空港でのデモ。「我々の給与を上げろ」の横断幕を掲げて【左)。300人を超える警備員も決起【右】)

 ■概要

 フランスの5大労働組合ナショナルセンターのうち、フランス労働総同盟(CGT)とフランス民主労働連盟(CFDT)に次いで第3位の労働総同盟・労働者の力(CGT−FO)は、30産別1500組合が加盟するホワイトカラーと公共部門の労働者が主力の組織である。
 現在のフランスの5つのナショナルセンターはいずれもCGTを起源としているが、第2次世界大戦後にCGTの右派が、マーシャルプラン受入れをめぐって共産党系指導者のゼネスト決行に反対し、CGTを脱退して1948年にCGT−FOを結成した。CGT−FOが組織名にCGTの文字を残しているのは、1906年以来のCGTの基本的な民主主義の原則をFOが引き継いでいるとの考えによるものである。当時CGTの組織人員は500万人であったが、100万人近くが脱退してCGT−FOに加盟したと言われる。2004年以来ジャン・クロード・マイイが総書記を務める。
(写真 2006年3月、反CPE【初期雇用契約】のデモ)

 ■米帝AFLの支配介入で誕生し

 たCGT−FO
 CGT−FOは労働組合の独立性を主張し、その運動方針として、「政党ばかりでなく、政府、使用者や宗教からも独立した組織として議会制民主主義を前提とし、労働者の生活を維持向上させるために経済問題について使用者と交渉する」としている。しかし、フランスの左翼新聞『リベラシオン』(Liberation)が1980年代に、「1948年のFOのCGTからの分裂はCIAが巨額の資金援助をAFLのアーヴィング・ブラウンを通して行い、CGT−FOを反共組織として設立させた」と報じた。
 世界的に労働者階級の闘いが高揚した第2次世界大戦後、戦後革命情勢を恐れたアメリカ国務省は、1944年にAFLに設立された自由労働組合委員会(FTUC)と結託し外国への干渉を深め、階級的労働運動を破壊しようと躍起になった。
 1946年1月のFTUCの会合で、フランス最大の労働組合組織で左派のCGTの次の大会の代議員の中に反共ブロックを作って大会を分裂させる計画を決定し、10万jの資金をブラウンに与えてこの計画を実行させが、失敗に終わった。しかし1947年初め、再びFTUCは5万jを使ってCGTを分裂させ、誕生させたのがCGT−FOである。

 ■衰退を示す得票率の減少

 代表者選挙の得票率ではいまだ第3位に位置しているが、CGT−FOの得票率は2000年に入ってから年々減少を続けており、2008年の得票率は15.81%であった。
 現在に至るまでCGT−FOの組合員数は公式に発表されていないが、30万人とも50万人とも報道されている。

 ■腐敗した労組幹部を跳ね返す

 労働者の大ゼネスト
 近年、サルコジ政権が強行する激しい人員削減・民営化攻撃にフランスの労働者の怒りは沸点に達し、「反サルコジ」の闘いは、CGT−FOも加わった5大労組全国組織による大規模な全国一斉ストライキと街頭デモをもって激しく闘われている。
 しかし、労組の執行部は本気でサルコジ政権や大企業と対決するつもりは毛頭なく、「労働者の不満をガス抜きするために、ストライキを計画し、数時間で終わらせる」のである。そして、政府や企業の利益を守る側に立ち、労働者の権利を売り渡していく。2010年3月にエアーフランスのパイロットのストライキに管制官も加わろうとしたときには、5大労組と経営側の合同折衝で管制官のストを事前に中止し、パイロットを孤立させる策に加担した。このとき、CGT−FOの執行部は、「重要な一歩が築かれた」とスト中止宣言をしたのであった。
 こうした腐敗した労組幹部の妨害を跳ね返して、ランク&ファイルの労働者の闘いはますます激しくなっている。2012年に入ってもフランスの航空労働者のストライキは繰り返し戦闘的に行われており、サルコジ政権の緊縮政策に反対する労働者の怒りは、中東やアメリカの労働者の闘いと結合して燃え広がっている。
O)

------------------------TOPへ---------------------------

月刊『国際労働運動』(428号8-1)(2012/04/01)

国際労働運動の暦

■国際労働運動の暦 4月28日

■1952年4・28沖縄デー■

沖縄の売り渡しの日

米軍の軍事的分離支配を打ち破る沖縄人民の「屈辱の日」との闘い

 4月28日は、1952年4月28日発効したサンフランシスコ対日講和条約で、それまで連合国の占領下にあった日本が独立したのと引き換えに、沖縄が切り離されて米軍の支配下に置かれた日だ。「屈辱の日」として語り継がれてきた(奄美群島を含む北緯29度線以南とされたが、奄美は53年12月に本土復帰した)。講和条約と同時に日米安保条約(旧安保。60年に改定)が結ばれ、戦後の日米安保同盟体制が始まった日でもある。今年は講和発効から60年になる。
 日米帝国主義間の太平洋戦争の最後の激戦地であった沖縄戦を制した米帝は、ただちに沖縄に軍政を敷き占領支配した。戦後のアジア支配の拠点として位置づけていた。一方、日帝は沖縄を売り渡すことで延命を図った。それは47年の天皇メッセージ(昭和天皇がマッカーサーあてに、沖縄の25年ないし50年の長期占領を自己の延命と引き換えに提案した)ことにも示されている。「国体護持」のために沖縄を捨て石にしたのと同じ発想と政策がそこには横たわっている。
 沖縄はアメリカの施政下に置かれ、住民の自治は否定された。琉球政府主席は米民政府・高等弁務官が任命した。9条を始め戦後憲法の「平和主義」は、沖縄を除外していただけでなく、沖縄が軍事基地の島として支配されていることで成立していた。しかし、沖縄の労働者人民は、この理不尽な体制のもとでも、けっして屈服せず、労働組合を先頭に連綿たる闘いを築き上げてきた。
(写真 祖国復帰県民総決起大会【1961年4月28日】)

 ●復帰協の結成

 1960年安保改定の年の4月28日に、沖縄教職員会(沖縄県教組の前身)や県青年団協議会、沖縄官公労などによって沖縄県祖国復帰協議会(復帰協)が結成された。だが、本土の安保改定阻止闘争(いわゆる60年安保闘争)においては社会党、共産党はもとより革命的左翼においても、沖縄が分離され米帝の軍事支配のもとにおかれてきたこと、それが安保体制の重大な内容をなしていることに対する関心はほとんどなかった。沖縄と本土は徹底的に分断されていた。
 63年2月、タンガニーカで開かれた第3回アジア・アフリカ諸国人民連帯大会が「4月28日を沖縄デーとして国際的共同行動を行うよう、すべてのアジア・アフリカ人民に訴える」という決議を採択した。それ以来「沖縄デー」はいわば国際的な闘いの日となった。
 63年からは、4・28を分断を打ち破る日として27度線で海上の交歓の闘いが行われた。沖縄本島最北端の辺戸岬と鹿児島県与論島の間でかがり火を焚いて呼応しあい、また漁船で双方から近づいて合流し、海上集会を行った。

 ●破防法をはねのけて

 67年の10・8羽田闘争を経て、沖縄闘争は、革命的左翼の正面課題としてとらえられるに至った。70年闘争は安保・沖縄闘争、すなわち、「沖縄奪還、安保粉砕・日帝打倒」の闘いになった。沖縄奪還とは、「永久核基地化阻止、本土復帰・基地撤去」の闘いだ。
 69年4・28に中核派は、「首都制圧・官邸占拠」を掲げて労働者学生の総決起を呼びかけた。これに対して、国家権力は、破壊活動防止法40条(扇動罪)をふりかざして革共同の本多延嘉書記長らを逮捕し、襲いかかった。沖縄闘争が革命の問題であることを権力の側も認識したのだ。弾圧をはねのけ闘いが爆発した。
 日帝は、沖縄人民の「本土復帰」要求の大衆的爆発に追い詰められ、その要求を逆手にとって、それに応えるかのようにして「基地の島沖縄」の永久化をもくろんで、沖縄返還協定を米帝との間に結んだ。激しい安保・沖縄闘争がたたきつけられた。72年5・15をもって沖縄「返還」体制がスタートした。5・15返還の正体は、今日の普天間基地の県内移設=辺野古新基地建設の攻撃を見れば明らかだ。73年以降、「4・28」に代わって、「5・15」が新たな闘いの日となったが、その元である4・28は屈辱の日として今も語り継がれ闘いの日となっている。
 --------------------------------------------------

 各年の4・28の動き

52年 サンフランシスコ対日講和条約と日米安保条約発効
60年 沖縄県祖国復帰協議会結成
61年 復帰協結成1周年祖国復帰県民総決起大会、以後毎年県民大会開く
62年 講和発効10周年県民総決起大会
63年 辺戸岬で与論島と呼応してたき火大会、海上交歓
64年 第2回海上集会
65年 東京で沖縄返還要求全国大会
69年 東京で4・28沖縄奪還闘争前夜に破壊活動防止法適用で弾圧
71年 「日米共同声明路線の返還協定粉砕、完全復帰を要求する県民総決起大会」
72年 「自衛隊反対、軍用地契約拒否、『沖縄処分』糾弾、完全復帰を要求する県民総
決起大会」。東京では全国反戦など8000人が集会・デモ。自衛隊派兵に反対し反戦自衛官6人が隊内決起

------------------------TOPへ---------------------------

月刊『国際労働運動』(428号9-1)(2012/04/01)

日誌

■日誌 2012年2月

1日 元旦に全国で全逓ビラ
全国労組交流センターは元旦、全逓労働者部会の仲間を先頭に全国の主要局で元旦一斉ビラ入れを行った。北海道から沖縄まで、年賀状配達に出勤してきた労働者たちにビラが手渡された
6日東京 鈴コン分会、社前で新年の闘争宣言
鈴コン分会と都内各ユニオンの支援合わせて30人が鈴コンの舟渡工場正門前に登場した
6日栃木 スーダン派兵やめよと申し入れ
南スーダンへの第1陣の派遣が11日にも強行されようとしていることに対し、陸上自衛隊宇都宮駐屯地の中央即応連隊に派遣決定の弾劾と中止を求め、とめよう戦争への道!百万人署名運動・栃木県連絡会が申し入れを行った
7日千葉 動労千葉旗開き、決戦本番へ決意
動労千葉の団結旗開きが、DC会館で開催され、170人が集まった。検修構内業務の外注化攻撃が動き出し、基地統廃合反対の指名ストライキを闘う中での開催となった
7日東京 東洋大、「放射能安全」シンポやめろ
東洋大は「東電福島原発事故に伴う放射性物質への対応策」というシンポジウムを行い、「100_シーベルト以下なら健康に影響はない」とデマを主張する人物に基調講演をさせようとしていた。東洋大反原発学生会議はシンポジウムの中止、大学の見解を明らかにせよと申し入れた
7日千葉 鈴木謙太郎さんが急逝
三里塚芝山連合空港反対同盟事務局員・鈴木謙太郎さんが午前10時9分に入院先の病院で急逝された。死因は心原性脳梗塞(こうそく)。57歳だった。倒れて入院、そして一度は危難を脱したかに見えたが、容態が急変し帰らぬ人となった
8日千葉 三里塚反対同盟が新年デモ・旗開き
三里塚芝山連合空港反対同盟の新年初の現地デモと団結旗開きが行われた。東峰開拓組合道路を会場に、反対同盟と支援の労働者人民140人が結集した。司会の萩原富夫さんが反対同盟事務局員・鈴木謙太郎さんの急逝を報告した。黙祷を捧げ、伊藤信晴さんが反対同盟の「2012年闘争宣言」を読み上げ、反対同盟の新年の決意を表し、3・25三里塚全国総決起集会への大結集を訴えた
10日千葉 動労千葉、外注化阻止の正念場に
動労千葉は、京葉車両センターにおける構内運転業務の外注化強行の動きに対して時限ストに決起、早朝からの緊急抗議闘争を打ち抜いた
11日徳島 徳島NAZENが発足
徳島のNAZEN発足会が行われた。子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク世話人の佐藤幸子さんが原発事故と補償をめぐる現状を報告した
13日東京 在日クルド人、トルコ政府弾劾デモ
トルコ政府がクルド民間人35人をF16戦闘爆撃機で虐殺した事件に抗議する在日クルド人のデモが、東京で行われた。渋谷・神宮通公園に家族ぐるみのクルド人たち約120人が集まり、牛久入管収容所問題を考える会と東京入管収容所を考える会、東部ユニオンや全学連も参加した
13日茨城 動労水戸旗開き、反原発の先頭に
動労水戸の旗開きが水戸市内で意気高く開催された。石井真一委員長は、昨年の闘いを振り返った上で、野田政権による原発事故「収束」宣言に強い怒りを表明した
14日大阪 八尾北・西郡団結旗開き
八尾北医療センター労働組合・部落解放同盟全国連合会西郡支部・八尾北命と健康を守る会の団結旗開きが八尾北医療センターで行われた。青年を先頭に地元や関西各地から110人が結集した
14、15日神奈川 脱原発世界会議に1万1500人
横浜市西区のパシフィコ横浜で「脱原発世界会議2012 YOKOHAMA」(「脱原発世界会議」実行委員会主催)が開催され、メイン会場を中心に1万1500人が駆けつけた。「原発を廃炉に」「再稼働反対」「原発やその部品の輸出禁止」などをうたった「原発のない世界のための横浜宣言」を発した。世界会議と深く結び横浜市内で二つのデモも闘われた。午前11時40分には、止めよう原発!神奈川・東電デモ実行委員会主催の東電神奈川支店デモ第4弾がJR桜木町駅前をスタート。80人の参加者が東電に弾劾の声をたたきつけた。デモにはゴアレーベンのルーデックさんらドイツの3人も参加した。さらに午後3時からは、ポートサイド公園で首都圏反原発連合主催の集会とデモが行われた。この行動は「脱原発世界会議」の一環として取り組まれ、神奈川・東電デモ実行委も合流し、4500人が参加した
15日広島 中四国革共同集会かちとる
革共同中四国政治集会が広島市東区民文化センターにおいて開催され、130人が結集した。4時間にわたる集会がかつてなく白熱的感動的にかちとられた
16日東京 「君が代」処分最高裁判決弾劾
最高裁で、「日の丸・君が代」不起立闘争を闘いぬいた東京の教育労働者171人に対する反動判決が下された。判決は、不起立で戒告処分を受けた168人については処分を取り消した高裁判決を破棄して容認。他方、河原井さんの停職1カ月、1人の減給1カ月については「裁量権を超えて違法」とし、処分を取り消した。ところが根津さんの停職3カ月については上告を棄却して処分を容認した。許しがたい分断攻撃だ
16日東京 法大デモ、大学から原発とめよう
新年1回目の法大デモが行われた。スローガンは@原発再稼働阻止A処分撤回Bフクシマ連帯の三つ。脱原発世界会議に参加するため来日したドイツ・ゴアレーベンの反原発運動の人士も参加し、国際連帯の発展もあり、大成功した
17日千葉 団結街道裁判 廃道処分は違法
千葉地裁で団結街道裁判の口頭弁論が開かれ、三里塚芝山連合空港反対同盟と顧問弁護団、支援の労働者、学生、市民が一体となって闘いぬいた
18日東京 国労組合員資格確認訴訟
和解を拒否した国労闘争団員4人が国労本部を相手に訴えた組合員資格確認訴訟の第1回口頭弁論が、東京地裁民事第11部(白石哲裁判長)で開かれた
18日徳島 星野獄中弾圧で高松矯正管区に抗議
岡山・大阪・徳島の星野救援会が、星野文昭さんの手紙の字数制限をしないこと、暖房、湯たんぽの使用を認めることなどを要求する請願行動を高松矯正管区に行った
20〜22日徳島 徳島で星野絵画展開く
徳島市の駅直近の「ぽっぽ街」という商店街で、星野文昭同志の絵画展を開催した。今回の絵画展は、2・5徳島刑務所包囲デモに向けての前段の闘いとして、星野同志の獄中からの提起に応えて取り組んだ
21日鳥取 伯備線事故6周年で集会
JRの保線労働者3人が殺された06年1月24日の伯備線事故から6年を迎え、「伯備線事故6周年・後藤工場労災事故弾劾!米子国鉄集会」が行われ、37人が結集した
23日千葉 耕作権裁判 署名偽造を徹底追及
市東孝雄さんの耕作権裁判の弁論が千葉地裁民事第2部(白石史子裁判長)で開かれた。市東さんを始め三里塚芝山連合空港反対同盟、顧問弁護団、そして支援・傍聴の労働者・農民・学生・市民が「農地死守」の決意で法廷を満たし闘った
25日東京 現闘本部裁判、最高裁の上告棄却弾劾
最高裁第2小法廷は、天神峰現地闘争本部建物の収去・明け渡し裁判の上告を棄却した。満身の怒りを込めて上告棄却の反動判決を弾劾する
26日東京 交流センター、自治労中央委へ訴え
日本教育会館で始まった自治労中央委員会参加の労働者に対して、労働組合交流センター自治体労働者部会の仲間が熱烈にアピールした
27日千葉 4月外注化阻止で動労千葉終日スト
JR東日本は、京葉車両センターにおける構内運転業務の一部外注化を強行した。動労千葉はこれを徹底的に弾劾するストライキに決起した
27日東京 750人が経産省前テントの撤去を阻止
経済産業省前テント「撤去」期限の午後5時前。現場は急を聞いて駆けつけた人、人、人で埋まった。司会がマイクを握り「今、午後5時ちょうどです。撤去を阻止しました!」と宣言した
28日茨城 動労水戸 平支部の事務所を開く
動労水戸は福島県いわき市に平(たいら)支部事務所を開設し、事務所開きを盛大に行った
28〜30日富山 教研集会、福島県教組と連帯
日教組第61次教育研究全国集会が富山市で開催された。今次教研集会は、野田政権の原発再稼働と対決し、日教組本部の制動を突き破って現場から3・11福島現地闘争への総決起をつくりだしていく決定的な場となった
29日東京 都革新が新年団結旗びらき
都政を革新する会の2012年団結旗びらきが、95人の結集で開催された
29日神奈川 吉田義久さんの遺志継ぎ闘う
相模原市で、12月19日に逝去された吉田義久さんを偲(しの)ぶ会が盛大に行われました
31日東京 NAZEN 経産省に申し入れ
NAZEN(すべての原発いますぐなくそう!全国会議)が経産省に対する申し入れを行った

 (弾圧との闘い)

11日神奈川 神奈川労組交流センター弾圧
神奈川県警公安3課は「詐欺」容疑をデッチあげ、神奈川労組交流センター副代表Aさんと事務局員Bさんを逮捕し、同13日、10日間の勾留延長を強行していたが、20日の勾留理由開示公判直前に2人の仲間は奪還された
13日東京 法大暴処法弾圧裁判、最終弁論
法大暴処法弾圧裁判の第27回公判が東京地裁刑事第1部(若園敦雄裁判長)で行われた。2009年5月15日の不当逮捕以来、織田陽介君、新井拓君、内海祐一君、恩田亮君、増井真琴君の5人は2年半を超える弾圧との闘いに勝ち抜き、最終弁論を元気に迎えた
17日東京 ビデオ国賠 証拠「紛失」許さぬ
東京地裁民事第45部において、星野文昭同志のビデオ国賠第4回裁判が行われた。星野同志の無実を証明する重要な証拠であるビデオテープも警視庁公安部が「紛失」したのだ

------------------------TOPへ---------------------------

月刊『国際労働運動』(428号A-1)(2012/04/01)

編集後記

■編集後記

 大阪市長・橋下は2月9日、「労使関係に関する職員のアンケート調査」なるものを出してきた。これは労働者を分断し、団結を破壊し、労組絶滅を狙う最悪の思想調査であり、究極の不当労働行為だ。
 さらに橋下は「日本の統治機構を変える」とわめき、「維新八策」なるもので道州制、首相公選制、参院廃止などの超反動公約を並べ立て、改憲攻撃に絶望的に突進しようとしている。
 橋下よ、労働者をなめるな! 労働者の怒りの反乱が始まった。2月13日の大阪市労連集会には1千人の組合員が結集し、橋下に対する階級的大反撃が始まった。その途端、2月17日、担当者の野村修也は職員調査の凍結を表明した。完全粉砕へさらに怒りを爆発させよう。国鉄・反原発決戦の力で、3・18八尾北・西郡全国闘争の爆発で、橋下を打倒しよう!

------------------------TOPへ---------------------------