International Lavor Movement 2012/03/01(No.427 p48)
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2012/03/01発行 No.427
定価 315円(本体価格300円+税)
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月刊『国際労働運動』(427号1-1)(2012/03/01)
羅針盤 4月JR全面外注化粉砕!
▼1月16日の最高裁による「日の丸・君が代」不起立裁判判決は、不起立を最先頭で闘う者への上告棄却と分断の攻撃であり、3・11情勢下の大阪市長・橋下を先兵とする公務員攻撃への怒り、子どもたちを放射能汚染にさらす東電・文科省に対する教育労働者の怒りの決起への恐怖にかられた、分断と圧殺の攻撃である。この敵の狙いを見抜き、怒りと誇りをもって闘うなら、勝利は必ず切り開かれる。
▼新自由主義の絶望的凶暴化の最先兵・JR資本による新たな4月全面外注化攻撃は、脱落日帝・野田政権の大増税、原発再稼働、労働運動解体攻撃と完全に一体のものだ。JR資本は尼崎事故という大犯罪の責任を免れ、構内業務と駅業務全体の外注化・非正規化を強行して、国鉄労働運動を全面解体しようとしている。
▼これに対する1月10日の動労千葉によるJR京葉車両センターのストは、労働者の正義性と誇りに満ちた階級的反撃だ。JRはわずか1日勤の外注化のための訓練さえ、偽装請負でしかやれない。ストに決起した繁沢敬一副委員長は、「追いつめられたJR当局は何十年も運転をしていない人間に2週間の訓練で事故の一番多い構内運転の(外注化による)仕事をやらせるという。安全無視は絶対許さない」と弾劾し、青年部員は「東労組の裏切りを見ただろう。しかしまだやれることはたくさんある。自分たちの仕事を奪う訓練なんかに協力しないで一緒に闘おう」と、職場の青年労働者に訴えた。さらに1月18日、和解を拒否して闘う4人の国労闘争団員が国労本部を相手に組合員籍奪還裁判を開始した。2・15国鉄集会を成功させ、連合・全労連下の反乱を国鉄決戦と反原発闘争の爆発へ転化しよう。
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月刊『国際労働運動』(427号2-1)(2012/03/01)
News
& Review 韓国
希望テント村拠点に双龍(サンヨン)自動車包囲闘争
韓進(ハンジン)重工業に続く整理解雇撤回闘争の柱
□「2次包囲の日」
1月13日午後7時から、「双龍自動車工場2次包囲の日」が始まった。整理解雇撤回を要求し、双龍自動車平沢(ピョンテク)工場前に「希望テント村」ができて会社や権力から激しい攻撃を受けてはね返し、クリスマスイベントを大成功させての36日目だ。
この日、ソウル上京闘争を終えた金属労組の組合員や多くの市民と学生が集まった。ほとんどが「希望バス」で韓進重工業整理解雇撤回闘争に連帯した人々だ。
双龍車家族対策委の挨拶(あいさつ)でイジョンファ氏は「希望テントとクリスマスイベントを通して、解雇されたすべての人が作業服を着て工場の門の中に歩いて入ることができる日、『ともに生きよう』と書かれたチョッキを脱ぐことができる日が来ることを。私の声がかすかな鐘の音で皆さんに届き、3次、4次の希望テントで勝利できることを祈る」と話した。
パクソンチョル金属労組委員長の「今から双龍車工場を包囲する」という宣言で参加者3000人の「包囲作戦」が始まった。それぞれが爆竹を手に工場の正門に向かい、双龍自動車の国政調査を要求する横断幕を掲げ、12月30日に使用者側によって押し出された野宿座り込み場の位置を元に移動させた。
2部の集会では、双龍車支部のキムジュンウ支部長が「もうこれ以上死ねない。闘う者だけが未来をかちとり希望を得ると習った。民主労総、金属労組、市民の名でもっと多くが集まり、整理解雇・非正規職のない世の中のために共に闘おう」と訴えた。コオロン、才能、仁川(インチョン)空港税関、全北(チョンブク)高速労組の闘争事業場の発言と、韓国合成、スターケミカルズ、韓進重工業、チュヨンテック労組など闘争勝利の事業場からの発言があった。
「文化大騒ぎ」の3部は韓進重工業の85クレーンで309日間高空籠城(ろうじょう)を続けた民主労総釜山(プサン)本部のキムジンスク指導委員の発言で始まった。「解雇は殺人だという気持ちで影島(ヨンド)まで来て、放水銃にも毅然としていたその気持ち、キムジンスクをクレーンで越冬させない、そうした気持ちで最後までやりぬいた仲間たち。双龍車の仲間を生き返らせよう。19番目の殺人をしたあいつらの20番目の殺人を防ごう」と話した。
翌14日、工場前の集会で韓進重工業家族対策委ホンミエ会長は「解雇は殺人だ。一家庭を死に陥れることをすべての事業主は知るべきだ」と弾劾した。
集会後、正門から裏門へとデモ行進を行い、総括集会で双龍車支部のキムジョンウ支部長は感謝の言葉を述べ、「仲間の連帯の気持ちを抱いて工場に入る日まで固く団結して闘争する。少しも動揺せず、続いて3次包囲の日を準備する」と述べた。3次包囲の日は2月15日、双龍車平沢工場の前で行われる。
1月19日には「非正規職、整理解雇のない世の中に向かう希望の歩みの参加者」が主催する「希望の歩み」の記者会見が金属労組事務室で開かれた。日程は1月28〜29日の才能1500日闘争から始まり、1月30日〜2月11日の「希望歩き」に続く。
これは才能本社前を出発し平沢双龍自動車まで闘争事業場と象徴的な場所を歩くイベントだ。キムジンスク指導委員、俳優のキムヨジン、メンボンハク両氏、キムソヌ詩人、ピョンヨンジュ映画監督が参加する。その期間中、韓進重工業の解雇者が全国闘争事業場を巡回し、各事業場の要求が入った「希望の塩の花の木の実」を集め、2月11日〜12日の双龍自動車「希望キャンプ」で塩の花の木を咲かせる日程だ。
□現代車労組員の焚身
1月8日午後12時10分頃、蔚山(ウルサン)市南区の現代(ヒョンデ)自動車エンジン5部事業場で金属労組現代車支部のシンスンフン現場委員(44)が焚身(ふんじん)した。全身の70%以上の火傷で手術できないと診断、釜山ハナ病院に運ばれた。組合などによれば、秩序遵守など使用者側の現場統制が強まり労働強度が上がって労使対立が深まっていた最中のことだった。
金属労組現代車支部はこの日午後4時に「対策委員会」を構成し、事態が解決するまでエンジン5部の生産ラインを全面的に止めることを決めた。労組が公開したシンスンフン現場委員のパソコンのメモには、1月7日シン現場委員が作業中、チェ某部長が「作業場(テスト工程)から離脱するな」と言い、これに対し「ここも作業場に含まれる」と抗議した。
その日の午後1時30分頃、班長が班員を集め「作業工程から離脱すれば勤務時間から除く」と言った。シンスンフン現場委員はこれに抗議する意味で一部の班員とともに午後5時に定時退社した。
シンスンフン現場委員はエンジン不良と品質問題に関して副社長に意見書を送り、5日に会社は改善対策を立てるという副社長名の回答書を送り、本館の監査チームがエンジン5部工場の監査をすると発表した。これに緊張したエンジン5部の工場管理者が7日、シン現場委員に現場統制をしたという。
シンスンフン現場委員は「なぜ現場を弾圧するのですか。監査室への投稿は報復するようなことではありません。テストベンチに関する件は数年にわたり作業をしながら問題提起をしたのです。改善しないので監査室にメールで改善を要求したのです」と書いてあった。
現代車支部は「シンスンフン組合員の焚身は、生産第一主義による現場統制と現場弾圧」だとして、会社の現場統制の中断を要求して闘争すると明らかにした。
シン組合員が所属するエンジン事業部は、現代車内でも長期労働時間で有名なところだ。10年にはエンジン変速機素材部門の労働時間は年間2709時間で、蔚山工場の組立部門の2376時間より333時間、現代車平均労働時間の2488時間より22
1時間多い。現代車各事業場のうちエンジン事業部より労働時間が長いのは全州(チョンジュ)工場(2770時間)だけだ。
OECDの会員国の平均労働時間は年間1749時間、韓国の平均労働時間は219
3時間。会社は労働時間を短縮するために特別勤務、残業を統制すると言いつつ現場統制力を強化していた。
現代車支部は1月9日の記者会見で関連責任者の厳重処罰と代表理事の公開謝罪、現場弾圧中断などを要求した。「いつからか工場革新チームといった現場統制と監視のための制度と機構が導入され、現場労働者を苦しませてきた。使用者側が一方的に毎年高く設定する生産目標はあっても、設備投資や人材補充はない」と弾劾した。支部によれば、工場革新チームは現代車本社の直属機構で、作業場を歩き回って、現場労働者を覆面監視し、現場労働者との摩擦を生んできた。
1月18日午後5時30分、民主労総蔚山本部などが、冬の雨が降る中、蔚山工場本館正門前で故シンスンフン烈士追慕集会を開いた。シンスンフン現場委員は、15日午前、家族の嗚咽(おえつ)を後にして亡くなった。現代車労使は11日の協議で、シンスンフン現場委員の治療のすべてと生計費に関する労災処遇に準じる支援と工場革新チーム解体、関連責任者処罰と代表の謝罪に合意していたが、シン現場委員は帰らぬ人となった。
(写真 「双龍自動車工場2次包囲の日」に双龍自動車平沢工場の正門から裏門へデモ行進【1月14日】)
□現代起亜車グループ本社前で3千人集会
1月13日、良才(ヤンジェ)洞の現代起亜車グループ本社前で全国金属労組幹部3000人が結集した。深夜労働撤廃、不法派遣正規職化、労働法全面再改正を掲げ2012年闘争宣布大会を開いた。
金属労組のパクサンチョル委員長は1月8日に起きたシンスンフン組合員の焚身闘争に言及し「労働者がシンナーをかぶらなければならないこの嫌な世の中を私たちが終わらせよう。勝利する闘争を共にしよう」と声を高めた。
良才洞現代起亜車グループ本社前の集会のために、現代車非正規職組合員は昨年の11月15日から瑞草(ソチョ)警察署の前で20日以上野宿をしなければならなかった。会社側の用役が先に陣取り、同じ場所で集会申告をするからだ。
用役の策謀を打ち破って奇襲的にかちとった現代車非正規職支会の第3次野宿座り込みは1月10日から始まった。野宿座り込み2日目、闘う労働者の48時間共同行動の企画で、共同闘争団が座り込み場を占拠した。300人ほどの全国長期闘争事業場労働者が一堂に会した。双龍車、シグネティクス、プンサンマイクロテック、大宇(デウ)自販、コルト楽器、ASA、ユソン企業、ボウォーターコリア、韓進重工業、そして現代車蔚山、牙山(アサン)、全州支会の労働者が整理解雇粉砕、不法派遣撤廃、非正規職正規職化争奪の旗を掲げ、双龍車希望テントを目的地に3日間の野宿座り込みに参加した。希望テント参加後も野宿座り込みは15日まで続いた。
(写真 現代自動車工場前で開かれた故シンスンフン烈士追慕集会【1月18日】)
□民主労総代議員大会
1月31日に民主労総定期代議員大会が開かれる。そこでは民主労総の政治方針、4月総選挙、12月大統領選挙の方針が議論される。ここで民主労総執行部は排他的政党支持の方針を決定しようとしており、これに反対する現場の声が高まり、激しい論戦が展開されようとしている。
民主労総の排他的支持政党方針とは、12月に出帆した統合進歩党のみを支持する方針のことだ。また、民主労総は進歩政党に統合進歩党、進歩新党(独自派といわれる脱党しなかった部分)、社会党を挙げている。他方、民主党は、韓国労総と統合し統合民主党を立ち上げた。統合進歩党は、旧民主労働党、進歩新党脱退グループ=進歩統合、国民参与党(前身は盧武鉉大統領時代のヨルリンウリ党の盧武鉉(ノムヒョン)派)が統合したものだ。
12年総選挙と大統領選を前にこの2年余り、政党の統合と再編が画策されてきたが、民主労働党と進歩新党、社会党の統合が失敗に帰し、このような形になった。いわば、野党圏の離合集散の結果であり、総選挙と大統領選ごとに繰り返されている。政権末期を迎えた李明博政権と与党ハンナラ党も腐敗、汚職事件などで分裂の危機を内包している。
こうした中で昨年12月12日、民主労総の前職、現職幹部と現場活動家173人は「3者統合党への立場と正しい労働者階級政治のための千人宣言」を提案した。提案者たちは統合進歩党は発足の過程で労働者中心性を失ったと批判し、民主労働党の解散と国民参与党の統合は民主労総の議論がなかったと指摘した。
「千人宣言および決意発表」は、▽3者統合党は進歩政党ではない、▽「3者統合党への排他的支持案」は即刻撤回、▽「排他的方針案を12年民主労総代議員大会に上程すれば、否決するために全力を挙げる」と宣言した。
1月5日、宣言運動本部は記者会見を行い、排他的支持への反対と正しい労働者階級政治を実現するための民主労総組合員宣言運動に突入すると発表した。この席には宣言運動本部共同本部長キムソンミン忠北(チュンブク)本部長、イムスングァン非正規教授労組委員長、イサンム公共運輸労組委員長、チャンベッキ大学労組委員長、クムヒジュン江原(クァンオン)本部長、ホンジウク金属労組副委員長、キムドンド済州(チェジュ)本部長、ペソンテ前京畿(キョンギ)本部長が参加した。1月17日には賛成、反対の論戦が民主労総政治方針討論会として民主労総ソウル本部の主幹で開催された。
韓国は「政治の季節」が到来したといわれている。しかしこの根底にあるのは政党の統合や離合集散などではなく、キムジンスク指導委員や希望バスの闘い、現場労働者の闘いであり、左派、とりわけ社会主義者たちの新たな階級的労働運動を生み出そうとする必死の格闘だ。
民主労総の代議員大会がどのようになろうとも、希望バスが広げた「希望ウイルス」は誰も押しとどめられない。世界史が世界大恐慌を深化させ、世界の労働者が澎湃(ほうはい)と決起した世界革命の流れは、韓国労働者階級の新自由主義粉砕の闘いとして再び激動期に突入したのだ。 (本木明信)
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月刊『国際労働運動』(427号2-2)(2012/03/01)
News
& Review ドイツ
低賃金化する非正規職労働者の現状
戦後社会保障制度の解体―「ハルツ改革」
欧州危機が、中国を含めた全世界をのみこみ、世界大恐慌を一層激化させつつある。この中でEUの中軸をなすドイツで、民営化・外注化・非正規化攻撃に直面している労働者階級の現実はどのようなものか。職場の現実と闘いを見て行こう。
□〈1ユーロ・ジョッブ労働者〉の激増
「ベルリンでは、公共サービス関連の予算が大幅に削減され、正規職労働者がどんどん首を切られ、公立学校の営繕作業、給食業務、さらには事務労働までもが〈1ユーロ・ジョッブ労働者〉によって行われている」
「ザクセン州やハンブルク市で学校運営は、〈1ユーロ・ジョッブ労働者〉なしには成り立たないところまでいっている。守衛、清掃だけでなく生徒の監督・相談が〈1ユーロ・ジョッブ労働者〉によって担われている」
「学校だけでなく全ドイツの医療機関、老人ホームや福祉施設、公共交通機関などでも専門職の労働者が職を追われ〈1ユーロ・ジョッブ労働者〉にとって替わられている」これはドイツの職場の状況を伝えるレポートの抜粋だ。
ところでこの〈1ユーロ・ジョッブ労働者〉とは、どのような労働者なのか。彼らは労働契約のない非正規職で、実は失業中の労働者なのだ。失業手当・生活保護などの支給を受けてはいるが、低額の受給額だけでは生きていけないので〈1ユーロ・ジョッブ〉あるいは〈ミニ・ジョッブ〉と呼ばれる超低賃金の仕事をジョッブ・センター(PSA=ハローワーク)から紹介≠ウれ派遣≠ウれている人々だ。
〈1ユーロ・ジョッブ労働者〉が受け取るのは、賃金ではなく「超過支出補填費」(MAE)と呼ばれる。つまり失業手当・生活保護などの支給額が低いのではなくて、受給者の支出が収入を超過しているので、その補填を自力で行うための職を斡旋されているということだ〔1ユーロは現在の相場で約95円〕。
これは、これから述べる「ハルツ改革」という社会保障制度改革の結果として生じた。結論からいうと、この「改革」によって、従来の失業手当が実質上廃止されて生活保護に一体化され、支給額が大幅に削減されたことから、失業者に強制された事態なのである。
この「ハルツ改革」の結果、〈1ユーロ・ジョッブ労働者〉が激増し、職場と労働市場に、重大な変化をもたらしているのだ。
□失業手当を削減する「ハルツ改革」の狙い
「ハルツ改革」とは、02年に、社民党シュレーダー政権によって開始された体系的な労働市場対策=社会保障制度改革である。その実行のために組織された「労働市場におけるサービス近代化委員会」の議長ハルツ(フォルクスワーゲン社の取締役)の名をとっており、委員はダイムラー=クライスラー社、ドイチェ・バンク、金属労組、サービス労組、大学教授、労働社会大臣、各州関係当局などの代表者が名をつらねていた。
02年当時、東西統一から10年たったドイツでは、失業者が400万人に上っており、その数を「4年間に半分にまで減らす」ということを掲げて打ち出されたのが、「ハルツ改革」であった。だが実際は職を増やすのではなく、失業者の再就職を促進することを通じて失業手当の支給額を切りつめ、社会保障費を大規模に削減すること、そして同時に再就職にあたって低賃金職場を強制し、低賃金労働を普遍化することだった。
ハルツ改革は、TからWまでの四つの法案で具体化され03年から05年の間に実施に移された。従来の社会保障制度からの決定的な転換点をなしたのは、「ハルツW」である。その核心は〈失業保険金U〉の導入である。その狙いは、次の言葉にはっきりと示されている。
「就業能力のある者に与えられていた従来の失業扶助と社会扶助は、一つの新しい給付システム、すなわち求職者基礎保障に結合される」「この求職者基礎保障は、就業能力のある困窮者〔求職者〕の自己責任を強化し、彼らが自力で努力することに寄与しようとするものである」「彼らにとっての生活費の確保のための給付の一つが、失業保険金Uである」。
こうした考え方によって、失業手当・生活保護などの受給者は、次の三つに分類されることになる。第一グループは、失業保険金T(保険金からの支払い)であって、これは従来の失業手当受給者と同様の資格であるが、受給期間18カ月(従来は2年間)を経ても、新しい職についていない場合は、この資格を剥奪され、第二のグループである失業保険金U(税金からの支払い)受給者となる。
これは、失業手当と生活保護の統合といわれるが、実質的には失業手当がなくなり、従来の生活保護額をはるかに下回る給付〔月額350ユーロ(ほぼ3万円!)程度といわれる〕しか与えられないことになる。しかも、再就職あっせんのジョッブ・センターに定期的に出頭する義務を負い、そこで提供された職を拒否する場合は理由を明らかにしなければならない。そのうえ給付額が減額される。
さらに拒否が3回におよんだ場合は、失業保険金Uを失うことになる。〔第三のグループは、再就職の能力がないと判断された人々である〕
ここで、ジョッブ・センターから提供されるのが〈1ユーロ・ジョッブ〉(あるいは〈ミニ・ジョッブ〉)である。これは先にも述べたように賃金労働ではなく、生活保護費を自力で稼げという趣旨で「公共サービス部門での自主的奉仕」を行い、賃金ではない「超過支出補填(ほてん)費」という名の超低額をその報酬として受け取るということだ。
ジョッブ・センターから〈1ユーロ・ジョッブ〉を提供された場合は、これを受け入れることが法律的に義務付け(強制)されることから、当人のこれまでの職歴、経験、技能、資格などは完全に無視される。ここから、〈1ユーロ・ジョッブ労働者〉は、経験のない職場に訓練も受けずに入ることになり、受け入れる職場の方では、未経験の労働者に仕事をまかせることになる。
これは、失業者の求職活動を促進するという名目で、失業手当を早期に(18カ月)打ち切り、それを低額の生活保護給付金と統合することによって、社会保障支出を大幅に削減することを狙ったものである。実際は、失業手当(保険金から支払われていた)そのものを撤廃し、企業負担をなくすという狙いを持つものであった。
こうした給付額の削減を、失業者の求職における自己責任として、低賃金の〈1ユーロ労働者〉に追い込んでいくというのが狙いなのだ。同時に公共サービス部門において、正規職労働者を解雇しコストのかからない 〈1ユーロ・ジョッブ労働者〉 に置き換え、労働者の中に分断を拡大していこうという政策である。
以上述べた〈失業手当保険金U〉をめぐる攻撃以外にハルツ改革は、「労働者派遣法」の改定を行い、派遣労働に関する規制を次の項目に関して撤廃した。すなわち派遣期間の2年間の上限の規定、ダブルジョッブの禁止、再雇用の禁止などが廃止された。実際、派遣労働者あるいはパートタイム労働者の数はこの間激増している。
□ドイツにおける新自由主義攻撃
ドイツ・ブルジョアジーは90年の東西ドイツ統一、ソ連・東欧スターリン主義体制の崩壊、EUの拡大(中東欧諸国の包摂)などによって、巨大なインパクトを受け、この過程で進行した新自由主義のもとでの世界経済のグローバル化、帝国主義間争闘戦の激化のなかで、国際競争力の強化を死活的問題として突きつけられた。
こうした中で、戦後ドイツ帝国主義の延命・再建の路線=「社会的市場経済」の重要な柱として、労働者階級を階級協調に引きずり込むテコとしてあった社会福祉国家〔失業手当、生活保護、年金を三つの柱とする〕は、重荷になってきた。そこで、戦後的「社会福祉国家」の改組=根本的解体に取り組んだのが、ハルツ改革である。その社会的性格は、まさに一つの階級戦争に他ならなかったのである。
ドイツにおける新自由主義政策の貫徹として、ドイツ・ブルジョアジーは一方ではこうした社会保障制度の全面的解体を強行しながら、他方では自動車・電機・鉄鋼などを先頭に、大規模な外注化、下請け化を追求し、低賃金・無権利の労働力を求めて、従来のスペイン、ポルトガルなどに代わって、中東欧諸国に工場移転や直接投資を行っていった。
それは、ドイツ人労働者にとって、工場閉鎖や大量首切りによる大失業時代、賃金削減、さらに社会保障制度解体の時代の開始を意味した。この間、ドイツ労働者の実質賃金は低下傾向にある。ドイツの失業者数は、この間、減っているように見えるが実は先に述べたように失業者でも、〈失業手当保険金U〉の受給者は統計に算入されておらず、しかもその数は激増している。
公共部門における非正規職労働者による正規職労働者の置換≠ノよる減少(首切り)については、すでに触れたが、ドイツの民間企業において、膨大な職が、海外に流出し、同時に正規職労働者の解雇、派遣労働者の採用が激増している。
□労働者の憤激の現れ
ハルツ改革、とりわけ「ハルツW」の実施は、労働者の間に憤激を巻き起こした。これは、「公的機関による悪質な派遣業だ」「現代の奴隷労働だ」「労働力商品化の極致だ」という声が上がり、いくつもの抗議デモ・集会が行われた。それはもちろん、この「改革」に加担したDGB(ドイツ労働総同盟)指導部に対して向けられれた批判でもあった。
その一つの現れとして、05年の連邦議会選挙では、政権党である社民党も、野党である保守党も、いずれもハルツ改革の推進者として多数を獲得することができずに、社民=保守の〈大連立〉政権を形成するしかないところに追い込まれたのである。
こうした中で、欧州裁判所、ドイツ連邦裁判所がハルツ法は人権侵害、あるいはドイツの基本法(憲法)違反であるという判決を下した。
しかし、この〈大連立〉政権はあくまでもハルツ改革を軸とする新自由主義政策を強行し、さらなる民営化、年金支給年齢の引き上げなどの攻撃を緊縮政策としてかけてきた。
(写真 シャリテのストライキ【2011年9月15日】)
□世界大恐慌とドイツ帝国主義の危機
ドイツは、「輸出大国」である。海外経済との相互関連はきわめて深い。貿易依存度はGDPの35%を超え、世界で例外的な比重を占めている。その7割近くが、EU諸国であるが、この間、中国を先頭とするBRICS諸国との貿易・金融関係が急速に比重を増し、とりわけ世界大恐慌の進展の中で重大な位置と意味を持ってきている。現在進行中の欧州危機は、こうした意味で、世界経済全体を揺るがし、それがまたドイツに反作用をもたらす関係となっている。
EU分裂・解体の全重圧を受けているドイツ帝国主義は、その矛盾の一切を、結局はドイツ労働者階級人民に押し付けてくる。
新自由主義の二十数年の中で犠牲を強いられてきたドイツ労働者階級は、これ以上の犠牲の強要を拒否して、立ち上がりつつある。その先頭に立っているのが、ゴアレーベンの反核・反原発運動であり、民営化反対闘争を闘っている鉄道労組(GDL)であり、ベルリン市当局の新自由主義攻撃に職場から反撃しているシャリテ大学病院の医療労働者たちの民営化反対のストライキ闘争である。
今や労働者は、大恐慌と対決し生き抜いていくためには、世界中どこでも階級的労働運動を闘うことのできる労働組合を必要としている。国際連帯の階級的前進が死活的である。
(川武信夫)
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月刊『国際労働運動』(427号2-3)(2012/03/01)
News
& Review 日本
動労千葉が検修職場で1・27全日スト
京葉車両センター構内一部外注化を弾劾
□わずか「1日勤」で外注化を強行
(写真 【上】京葉車両センター門前集会であいさつする田中委員長 【下】DC会館で行われたスト突入総決起集会【1月27日】)
1月27日、JR東日本千葉支社は、京葉車両センターの構内運転業務の一部外注化を強行した。動労千葉はこれを徹底弾劾するストライキを打ち抜いた。京葉車両センター、幕張車両センターを始め、検査派出を含む全検修職場を対象に、日勤者は始業時から終日、泊まり勤務者は始業時から午後5時までのストライキを貫徹した。
1月10日の京葉車両センターでの時限ストに続いて、総力で立ち上がった。
厳寒の早朝から京葉車両センター門前に、スト突入者を先頭にした動労千葉組合員と動労千葉を支援する会などの支援の労働者ら100人が集まり、午前8時から意気高くスト突入集会を開催した。
「京葉構内外注化の強行弾劾!」「全面外注化を阻止するぞ!」「1・27ストライキを貫徹するぞ!」「動労千葉に結集してともに闘おう!」――怒りのシュプレヒコールが、居並ぶJRの管理者やガードマンらにたたきつけられた。出勤してくるJR東労組組合員らに、闘いを呼びかける檄となった。
京葉支部でストに入る繁沢敬一副委員長がマイクを握り、「最後までストを貫徹したい。千葉支社は昨年10月1日に『2日勤』を外注化すると提案しながら、外注化ができなかった。1月になって、『1日勤』をこの27日から外注化すると修正提案してきた。訓練の中で速度超過が多発したり、一旦停止しなければいけない所で前進全ノッチを入れて加速するという事象が起こっている。このままデタラメな外注化の強行を許してはならない。全面外注化を阻止するために総決起する」と宣言した。
田中康宏委員長があいさつを行い、「1日勤の外注化を徹底弾劾したい。こんな外注化は絶対に破産に追い込んでやる。直営に絶対に戻す。そうしなかったら重大な事故が起こる。そんなことは認められない。今日から4月の全面外注化を阻止する新しい闘いに入る。その決意を固めたい」と訴えた。
その上で「もうひとつ許せないことがある。一昨日、東労組は新人事・賃金制度を大筋妥結した。現場の東労組の組合員はよく聞いてほしい。誰がそんなことを認めたのか。誰も認めていないのに、本部が早々と妥結した。労働者を競争に駆り立てることは認められない。人事・賃金制度の改悪は業務の外注化とひとつの攻撃だ。現場の仕事は全部アウトソーシングする。だから管理者だけを厚くする制度を設けた。労働者一人ひとりは誰がいくらの賃金か分からなくして、団結を破壊して分断する。これを裏切り妥結する東労組は、業務の全面的な外注化でも裏切ろうとしている。仕事を人間ごと下請け会社に放り出されてからでは遅い。闘わなければ強制出向になる。労働者が仕事ごと下請けに突き落とされる。しかし、今立ち上がれば、こんな理不尽なことは絶対に止められる」と呼びかけた。
京葉支部の青年労働者は、「東労組は『自分たちもやっている』と言っているが、訓練が強行されていた当日の昼休みに東労組の分会長は将棋をやっていた。こんなことは許さず、全力で闘う」と決意を語った。
幕張支部の山田護支部長は、「絶対に外注化を止める。私も絶対に行かない」と決意表明した。
さらに各支部の代表や青年部の代表が次々と決意表明し、構内の労働者にともに闘うことを呼びかけた。
長田敏之書記長が基調報告を行い、「1日勤の外注化は業務的にはまったく意味がない。『エルダーの雇用の場の確保』などと会社は言うが、その時点でエルダーはすべて雇用されていた。今年度採用になるエルダーも勤務地が指定されていた。しかし、本人が希望しない場所を指定し、その後に『京葉車両センターで構内運転のハンドルをやらないか』と言ってくる。こんな許せないことをやって外注化要員を確保しようとしてきた」とJRを弾劾した。
その上で、動労千葉が10年間にわたって外注化を阻止してきた闘いを振り返り、「当初は、シニア制度(定年退職者の再雇用機会提供制度)と外注化をセットで提案してきた。これ自体許せない。これを受け入れたらどうなるかと訴えて締結を拒否した。動労千葉の組合員であるというだけで再雇用を拒否された先輩たちと討論しながら、一緒に闘った。そのため、千葉だけは外注化ができなかった。そして、動労千葉が多数を占める幕張支部に対して、役員の強制配転を強行してきた。それに対しても団結を固めてはね返してきた」と述べ、「今回の外注化は、千葉だけまったく外注化が手の着かない現実の中で、1日勤でも外注化を強行し、実績をつくって全面外注化をしようという狙いだ」と明らかにした。
そして、「本社は、偽装請負という指摘に『問題ない』と言っている。千葉鉄道サービスは何も回答できない。東労組は、本社―本部間で、全面外注化のための交渉を行っている。だが、絶対に止められる。団結して闘おう」と訴えた。
支援の労働者・学生からもともに闘う決意が次々と表明された。
その後、10時30分からDC会館で「京葉構内外注化・全面外注化阻止! 組織拡大!1・27動労千葉スト突入総決起集会」を開催し、150人が結集した。
田中委員長があいさつに立ち、「今日から新しい闘いが始まった。4月全面外注化は絶対に止めてやる」と述べた上で、決戦の性格について明らかにした。
「JRの全面的な再編が始まる。その中心的な攻撃が全面的な外注化だ。検修・構内だけではなく、すべてを外注化する。これを止めることができるかどうかに、JRの労働者が将来にわたって権利と雇用を守れるかがかかっている。2001年に保線、信号通信などが外注化され、30
00人弱が強制出向に駆り立てられた。これから始まる外注化はそのレベルにとどまらない。4月1日に東労組も国労も外注化を飲もうとしている。東労組が組合案なるものを出した。それは『各支社1カ所だけは仕業検査を残してほしい』という一点だけだ。それ以外は外注化を認めたということだ。これが強行されれば、職場丸ごと千葉鉄道サービスに明け渡すことになる。残るのは管理者と事務の技管だけ。その時点で100
0〜1200人が強制出向になる。帰る場所がない。工場と技管だけが残る。転籍が問題になる。その次には間違いなく非正規化することになる」
そして、「組織の総力を挙げれば必ず勝てる」と檄を飛ばした。
□完全な偽装請負
今回の京葉車両センター構内運転業務の外注化は、わずか「1日勤」に過ぎないが、全面外注化の突破口にしようとする攻撃だ。今回、構内運転業務を請け負う千葉鉄道サービス(CTS)は、列車の清掃などの業務を行っている会社だ。CTSは、車両の検査・修繕や構内運転業務の経験もノウハウもまったく持っていない。JRの指導なしには、構内運転業務を請け負うことなど不可能なのだ。それは違法であり、完全な偽装請負である。請負ができるのは、JRとは独立して業務を行う場合に限られる。
だから、JR千葉支社は、CTSが構内運転業務をやることができるという「実績」を何がなんでもつくるために、「1日勤」の外注化を強行したのだ。しかし、それは当初予定していた「2日勤」の外注化のための要員が集まらなかった結果でもある。
動労千葉は、外注化の提案以来、運転業務の経験があり請負の対象となるエルダー社員(JRを定年退職し、外注会社に再雇用された労働者)に対し、動労千葉の組合員だけでなく東労組など他労組の組合員も含めて、絶対にJRの労働者から仕事を奪うことに協力するな≠ニオルグしてきた。青年労働者に対しては、将来にわたってJRの労働者として働くことができずに非正規職に突き落とされる外注化を阻止しよう≠ニ訴えてきた。その結果、ほとんどの対象者が拒否した。
そうした中で当局は、東労組カクマル分子2人と元管理者の3人だけをようやく要員として確保したのだ。しかし、その元管理者は実に20年以上も運転をしておらず、訓練では速度超過や一旦停止の場所で逆に加速するという事態が起こっているのだ。実にデタラメな外注化なのだ。
しかも、予定されていた「2日勤」は一つのセットになっている業務であるにもかかわらず、「1日勤」にしたために、もう「1日勤」はJRの労働者が行い、それと一緒に「1日勤」をCTSが行うということになり、JRの指示なしには業務を行えないという偽装請負であることがより鮮明になってしまった。
□外注化―非正規職化を阻止する闘い
その上で、4月にも狙われている検修・構内業務の全面外注化では、およそ7割の業務の外注化が狙われている。JR東日本は、車両センターなどで働く労働者を、東日本全体で1000人から120
0人も強制出向に出す。しかも、全国一斉に強行すると言っている。強制出向に出された後、再びJRに戻れるのか。構内運転はすべて外注化であり、戻れる職場自体がなくなる。信号も計画も外注化だ。検修で残るのは、千葉では西船橋の派出と新系列の機動検査だけだという。当局は、「10年後に戻す」と言うが、その場合でも工場か技管(技術管理の管理者)だけなのだ。工場は、千葉に一番近い所でも大宮工場だ。他には郡山工場だ。
一部の管理者になる者や遠方の工場への配転に応じる者以外の大部分の労働者はJRに帰ることはできず、そのまま外注会社に転籍にされてしまうということだ。
しかも、数十の車両整備会社にバラバラにされることによって、技術継承は絶たれ、安全が崩壊し、第2の尼崎事故が起こる。
動労千葉の闘いは、こうして検修・構内で働く労働者の大多数を転籍し、非正規職に突き落とす攻撃を阻止する闘いである。また、安全を守る闘いでもある。
今、日本の雇用労働者の約39%が非正規職になっているという現実は、資本の攻撃であるだけではなく、それに労働組合が屈服した結果、起こっていることだ。そうした中で、正規職の労働者が非正規職化を許さない外注化阻止の闘いは、日本の労働運動を根底からつくり変える闘いである。新自由主義攻撃の根幹に真っ向から立ち向かう闘いなのである。
動労千葉は、業務の外注化とセットになったシニア制度の締結を拒否したのを始め、出向協定なども締結していない。だから、強制出向などできないのだ。動労千葉は、「外注化で出向の対象となる組合員が出向に同意せず拒否すれば、外注化は絶対に阻止することができる」と訴えている。そのために、2〜3月を決戦として構え、とりわけ組織拡大に全力を挙げる方針だ。
すべての産別・職場で、ともに外注化・非正規職化攻撃と闘い、階級的労働運動の復権をかちとろう。
国鉄分割・民営化で不当解雇から25年の2・15労働者集会(午後6時30分、東京・すみだ産業会館)に総結集しよう。反原発の3・11福島現地大集会(郡山)に全国から総決起しよう。それと一体の闘いとして、職場から連合支配を打ち破る12春闘に全力で立ち上がろう。
(大沢 康)
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月刊『国際労働運動』(427号3-1)(2012/03/01)
(写真 【上】京葉車両センター門前集会であいさつする田中委員長【下】DC会館で行われたスト突入総決起集会【1月27日】)
特集 青年先頭に外注化・非正規化阻止を
はじめに
世界大恐慌の爆発と3・11情勢―新自由主義の破綻の中、2012年春闘(12春闘)は巨大な階級決戦となった。「賃上げは論外」「企業の存続が一切だ」と叫び立てる日本経団連と春闘圧殺に全力を挙げる連合を、生産点からの怒りと闘いでぶっ飛ばし、春闘を荒々しく復権させるのだ。その先頭に青年労働者が立とう。
特集は12春闘爆発に向け、その課題と展望を提起した。第1章では、すでに12春闘がJRの全面外注化阻止決戦として始まっていること、その先頭に動労千葉青年部が仁王立ちし、全労働者に勝利の展望を指し示していることを提起した。第2章では2011年の闘いを、全世界の闘いと一体で青年が闘いを牽引してきたことを改めて明らかにした。第3章で、新自由主義攻撃の中で青年労働者が置かれた非正規職化と被曝の強制という現実を暴露し、青年の決起と革命の必然性を明らかにしている。
■第1章
JR全面外注化阻止へ――青年部先頭に闘う動労千葉
1月23日に公表された「経営労働政策委員会報告」で日本経団連は、世界大恐慌の爆発と3・11情勢をタテに「今年は定昇(定期昇給。同じ職場で働き続ければ賃金が上がっていくということ)を凍結する」という方針で臨もうとしている。「賃上げなどビタ一文まかり通らせない」ということだが、そもそも「復興・創生マスタープラン」などで彼らが言っていることは「アジア並みの賃金にせよ!」である。その最大の軸が、全面的な外注化であり、それを通した非正規職化である。
これに対し連合は表向き「定昇の維持」を掲げてはいるが、本気で闘おうなどとはまったく考えていない。その核心は非正規化や外注化と一切闘わないところにある。彼らは資本と一緒になって「不況だから、震災があったから要求しても通らない」などと青年を始めとする現場労働者の怒りを徹底的に押さえつけているのだ。こうした現実は、多くの青年を労働組合に対する絶望に追いやっている。団結して闘うことの素晴らしさを知らないでいるのだ。しかしこの構造が昨年3・11以来、青年自らの力で打ち破られつつある。これを徹底的に拡大し、爆発させ、新たなリーダーを生み出すことこそ12春闘のテーマである。
具体的にはJR青年労働者に続いて「外注化・民営化絶対反対! 非正規職撤廃!」をすべての職場で闘うことだ。
■JRの4月全面外注化を阻止しよう!
国鉄分割・民営化の失敗と青年労働者の怒り
何よりも、4月全面外注化を狙うJR資本との闘いが12春闘の最先端だ。
国鉄分割・民営化から25年を迎える2012年、JRは@北海道、四国、九州の経営破綻状態、A1047名解雇撤回闘争という形での国鉄闘争の継続という「国鉄分割・民営化の失敗」ともいうべき現実に直面している。
そこでJRは、一方での「第2の分割・民営化」攻撃というべき大外注化・非正規職化攻撃と、そのことをも通して他方におけるJRの労務支配の大再編、すなわち動労千葉・動労総連合を解体し、JR総連カクマルとの結託体制を清算し、資本による労働者への直接支配を打ち立てようと動き始めた。
世界大恐慌の激化と3・11情勢、日帝の脱落状況という中で、原発や鉄道などのインフラ輸出の推進ということも含め、脱落日帝救済の最先頭に立つことを決断したのだ。 JR東日本は1月、『駅業務委託のさらなる推進について』を提案した。実施日は今年4月1日。これまで進められてきた駅業務の委託=外注化をさらに推し進めるということだ。動労水戸との団交においては「新入社員が始めから出向ということもある」とまで言われている。「一体、俺はどこの会社に就職し、毎日働いてきたんだ!」「これでは詐欺ではないか!」という青年の怒りはまったくの正義だ。こんなことを断じて「仕方のないこと」「当然のこと」にしてはならない。
京葉車両センター業務外注化との闘い
この攻撃と真正面から闘っているのが動労千葉であり、とりわけ青年部だ。昨年、京葉車両センターの構内業務外注化を阻止してきた闘いの先頭に立ってきた青年が、職場のすべての労働者の怒りを体現して闘い抜いている。
今回は、構内業務(車両センター内や、車両センターと駅の間の運転などする業務)の1日勤(一つの職場を一日回す体制として、例えば「2徹2日勤」という言葉を使う。これは、2人の泊まり勤務〔徹夜の「徹」〕と2人の日勤という意味。このうち1人の日勤だけを外注化するというのが今回の攻撃)の外注化である。しかし、4月には駅とともに検修職場を丸ごと外注化してしまおうとする計画が進んでいる。
今年に入って、外注会社である千葉鉄道サービス(CTS)の要員が職場に送り込まれ、外注化に向けた訓練が開始されている。1月5日から机上訓練を行い、7日から構内の見習いにつけるということが強行されている。
CTS京葉事業所では、外注化のために「副所長4人」という異例の人事が行われた。そのうち2人が構内のハンドルを握ったり、運転責任者になったりするという。年末年始の休みが明けて職場に出てきた時には外注化への一歩が進んでしまっているという汚いやり方で青年が働く職場が奪われようとしているのだ。すでに動労千葉の組合員は日勤から外されている。
この許し難い攻撃に全組合員が怒りを燃やし、動労千葉は青年を先頭に1月10日、時限ストライキに突入した。当日朝には京葉車両センターの前で抗議行動を闘った。門前で青年組合員は訴えた。
「今日は、俺と繁沢さん(副委員長)がストに入るけど、その穴埋めは誰がやっているの。東労組の若い連中じゃん。それを指示しているのは誰なんだ。東労組の管理者じゃないか。なんで東労組は仲間を守らないんだよ。みんな組合費、払ってるんだろ。弱いもんを守るのが労働組合じゃないのかよ! 今回の訓練で、俺たち動労千葉の組合員は日勤の仕事から外された。その仕事は2年前ぐらいにハンドルを持った若い連中がやらされている。その中には最近、子どもが生まれた人もいる。自分たちの仕事を取られることを分かりながら、なんで訓練に協力しなきゃいけないのか。一緒にやろうよ! 仕事がなくなってからじゃ遅いよ! みんなで闘おう!」
そして、動労千葉は、京葉車両センターの構内業務の一部外注化が強行された1月27日、全検修職場で全日ストを打ち抜いた。
(写真 「一緒に闘おう」と訴える動労千葉の青年組合員【1月10日 京葉車両センター】)
組合の違い超えて決起
今回の外注化攻防で重要なのは、動労千葉の組合員だけでなく職場の全員がこの外注化に反対の声を上げていることだ。昨年10月の外注化が止まったのは、CTSで働くエルダー労働者(JRを定年退職し、CTSに再雇用された労働者。車両清掃が主な業務)がみんな外注化に向けた構内運転を拒否した結果、外注化に必要な要員が足りなくなったからだ。
エルダーの労働者にとって、自分のことだけ考えれば清掃業務をするより、構内運転をした方が楽である。しかし彼らは「若い世代の仕事を奪うわけにはいかない」と拒否した。エルダー労働者には動労千葉の組合員だけではなく、東労組や国労、鉄産労の組合員もいる。組合の違いを超えて労働者が立ち上がったのだ。外注化要員に手を上げたのは東労組元役員のカクマル2名と業務命令の管理者だけだった。
切り捨てられる東労組カクマル
動労千葉を先頭とする現場労働者の怒りに突き上げられ、東労組の千葉地本は当初、千葉支社の外注化提案を拒否した。にも関わらず年末には、会社の「修正提案」を受け入れた。
東労組千葉地本の幹部たちは、千葉支社や本社から「東労組本部は業務委託協定を締結し、『委託のさらなる推進案』も認めようとしているのに千葉地本は何をやっているのか」「京葉車両センターの反対の声一つ抑えることができないのか」と叱りつけられ、例年行われている支社から組合への「年始のあいさつ」も拒否されたという。
国鉄分割・民営化以来のJR資本―JR総連カクマルの結託体制がついに崩壊を開始し、それが動労千葉の闘いによって「現場労働者の怒りの噴出」「東労組内の平成採の大反乱」、そして「動労千葉の組織拡大」へと向かっていくかどうかの大攻防に突入している。ここに12春闘の爆発、階級的労働運動復権の帰趨がかかっている。
動労千葉青年の訴えは春闘の檄
動労千葉青年部の平成採の仲間に対する訴えを再度、聞いてほしい。
「自分たちが信じられる仲間を見つけてほしいですね。『おかしい』と思ったら一緒になって意見を言えるような仲間を作って、仲間の大切さに気付いてほしい」「あともう一つは、絶対にあきらめるなってことですね。あきらめければなんだってできますからね。俺もあきらめたくないから動労千葉で闘ってるんです。だから、あきらめずに一緒に闘いたい」(京葉車両センター・横尾隆之さん。『動労千葉新聞』より)
「鉄道会社の看板を掲げる会社が、安全を無視し、鉄道業務を切り捨てようとしています。これを止めるには、現場で働く若い人たちの力が必要です。自分たちの職場と生活を守り、そして明るい未来を切り拓くために、皆さんが動労千葉に結集してくれることを待っています。
業務の外注化阻止! 運転基地―組織破壊攻撃を許すな! 『ライフサイクル』撤廃!へともに闘いぬきましょう」(青年部長・北嶋琢磨さん。『日刊動労千葉』より)
彼らの訴えこそ、12春闘決起の最高の檄だ。この動労千葉を先頭に、放射能汚染・被曝労働とストライキで闘い、青年を獲得し、いわきに新事務所を開設した動労水戸、職場から放射能汚染を追及する闘いを開始した国労郡山工場支部を始めとした国鉄労働者の決起に続き、自らが「動労千葉」となってすべての職場で「外注化反対・非正規職撤廃」の闘いを具体的に開始しよう。
郵政非正規ユニオン、東京西部ユニオン鈴木コンクリート工業分会の解雇撤回・非正規職撤廃の闘いに勝利しよう。全国の職場に新自由主義に対する反乱を巻き起こし、動労千葉の組織拡大をかちとり、4月全面外注化を阻止しよう。
■「復興特区」粉砕!全原発止めろ!の闘い
12春闘のテーマとして二つに、被災地における「復興特区」攻撃粉砕の闘いだ。
昨年12月7日、東日本大震災復興特別区域法(復興特区法)が参議院で全会一致で可決・成立した。野田政権が進める復興特区とは、TPP(環太平洋経済連携協定)や道州制と完全に一体の新自由主義攻撃の全面的激化である。その内容は、日本経団連の「復興・創生マスタープラン」や「経団連成長戦略2011」を忠実に実行するものであり、徹頭徹尾資本家階級の利益を貫徹するものである。
(写真 昨年11・6労働者集会の後、青年を先頭に意気高くデモ行進する労働者ら)
資本による無制限の搾取狙う
「復興特区」攻撃は国や行政が、がれき撤去や放射能対策もまともに進めないまま、被災地を「国内植民地」のように位置付け、大企業が農地や漁業権を買収し、地域丸ごと民営化・非正規職化し、労働法制も徹底的に解体する攻撃だ。
「マスタープラン」では「アジア各国との立地コストを比べると、日本は事業を運営していく上で極めて高いコストがかかっている」「日本の労働コストは中国の約20倍」と指摘し、「アジア並みの賃金」「法人税の大幅引き下げ」を主張している。これを「9割非正規職化」を決定的テコにやろうというのである。
また、福島医大を中心とする「放射線医療特区」計画をもって、福島県民の被曝データを「商品」として製薬会社に売り飛ばし、新たな金もうけの手段にしようとたくらんでいる。福島こそ、「復興特区」攻撃との最大の戦場である。
こうした「復興特区」攻撃の核心は、徹底した労働組合の解体攻撃だ。被災地からの「反原発・反失業」として激しく始まった労働者人民の怒りと闘いを抹殺する階級戦争攻撃なのだ。そしてそこに「資本の独裁王国」を打ち立てようというのである。
かつて支配階級は、海外植民地における低賃金を土台に一部の御用労組幹部を育成、買収して労働者を支配してきた。しかし、新自由主義の破産としての世界大恐慌と3・11情勢は、支配階級をしてその余裕すら失わせているのである。階級対立はますます非和解になり、労働者・学生・農漁民の怒りは、とりわけ被災地で爆発する。それはとりもなおさず、資本と階級的労働運動の一騎打ちということだ。
3・ 福島現地へ
3・11福島現地(郡山)大闘争を、原発再稼働を絶対阻止する決戦であると同時に、「職場からの反原発闘争」を開始した国労郡山工場支部や動労水戸、そして福島県教組、さらには職員の死亡事故を反合理化・人員確保闘争として闘いを開始した仙台市職ととことん一体化して全国の職場から原発廃炉、再稼働絶対阻止へ闘う労働組合の大結集として闘い抜こう。3・11大結集は、連合支配を打ち破る12春闘の決定的テーマだ。
■西郡・八尾北決戦を闘い、橋下の道州制・労組破壊攻撃を迎え撃とう!
三つに、西郡・八尾北闘争を12春闘の重要テーマ、とりわけ橋下を打倒する闘いとして闘い抜こう。
最高裁は昨年12月1日、応能応益家賃制度に反対して供託で闘っている西郡の3家族に対して「住宅から出て行け」とする超反動判決を下した。八尾市議会は日本共産党を先頭に、同じく供託で闘う11家族を住宅明け渡しで提訴する議案を採択した。反対する傍聴者を全員排除しての暴挙だ。絶対に許すことはできない。決戦は住民たたき出しの強制執行との対決という、きわめて緊迫した情勢に突入した。
佃文弘・部落解放同盟全国連合会西郡支部青年部長は「こんな議会で自分の人生が決められるなんて絶対に許さない! ムラの団結、全国の労働者の団結で、住宅追い出し、八尾北医療センターつぶしを打ち砕く!」と全身で訴えている。
西郡の住宅明け渡しと廃村化、八尾北医療センターつぶしの攻撃は、JRの全面外注化や「復興特区」、福島への「棄民」政策・被曝の強制と一体の新自由主義攻撃そのものである。
したがってこの攻撃との対決は、野田のファシスト的先兵である橋下反革命を根幹から打ち破るきわめて具体的な闘いだ。12月八尾市議会において、11家族への住宅明け渡し提訴議案と市職員の3%賃金カット議案が同時に提出されたことが重要だ。この攻防を闘い抜くことを通して、八尾北医療センター労組との団結を八尾市全体の団結に拡大することは絶対にできる。橋下の公務員労組解体・丸ごと非正規職化―道州制攻撃を真正面から迎え撃とう。
(写真 八尾北・西郡決戦へ新年団結旗開き【1月14日 八尾北医療センター】)
マルクス主義で武装した若きリーダーを
国鉄を先頭とした以上三つの闘いを軸に全国・全職場で民営化・外注化―非正規職化攻撃と闘う12春闘をつくり上げよう。この激闘と完全に一体で、労働者自己解放の思想=マルクス主義で武装した、階級的労働運動の若きリーダーを次々とつくり出そう。
■第2章
11年を牽引した青年労働者――国鉄・反失業・反原発で
先陣を切るJR平成採
青年労働者は2011年、一昨年4月9日の国鉄闘争の「政治和解」と3・11による「政治休戦」攻撃を打ち破る闘いの先頭に立ち、文字通り革命の扉を押し開いた。
2011年の闘いは、1月19日、動労千葉平成採のライフサイクル(運転士の駅への強制配転)阻止のストライキから始まった。青年労働者の生活と誇りを踏みにじり、駅外注化・非正規職化の矛盾を押つけるJR会社に対する渾身の反撃だ。職場の仲間も必ず立ち上がると確信し立ち上がった。「労働組合は闘っても勝てない」という「4・9政治和解」の攻撃を、実践的に職場生産点から打ち破る闘いだった。
この1年間のJR平成採の闘いは、その苦闘も含め、全国・全世界の青年労働者のそれと一体であり、その勝利の方向性を身をもって示すものだ。
動労千葉の平成採は、3月31日に青年部再建委員会を発足させ、9月30日、外注化阻止のストライキの最中に青年部を結成した。支部と青年部の動員を引き受けながら、11月集会の先頭に立ち、年明けには京葉車両センターで業務外注化阻止のストライキに立ち上がっている。この過程は何よりも職場の仲間の動労千葉への加盟=組織拡大に向けた苦闘の連続であった。
水戸支社では10月、ついに東労組の平成採が動労水戸に加盟した。JR会社が青年に被曝労働を強制する中での決起であり、職場生産点からの反原発の闘いでもある。
彼らの闘いの根幹にあるのは、ライフサイクルや外注化により青年の未来を踏みにじるJR会社、そして裏切り者の東労組幹部への怒りである。同時に労働組合の下で団結し闘えば絶対に勝てる、仲間は必ず立ち上がるという確信だ。この思いは、全国の仲間の前進・苦闘と寸分も違うところがない。
「4・9政治和解」攻撃の主戦場はあくまでJRである。国労や東労組、グリーンスタッフを含め、JRにおける青年労働者の怒りと結びつき、平成採の仲間とともに青年の大反乱を必ずや実現しよう。
(写真 駅への配転阻止へ指名ストに立った動労千葉の青年組合員【2011年1月19日】)
全世界で反乱巻き起こす
2011年は全世界で労働者の反乱が巻き起こった。そしてその先頭には常に青年労働者の姿があった。
▼「アラブの春」
10年12月17日、チュニジアの26歳の失業者・モハメド・ブアジジさんの抗議の焼身自殺から始まった青年労働者の闘いは、瞬く間にアラブ世界全域を席巻した。チュニジア、エジプト、リビア、イエメンでは長期独裁政権が次々と打倒され、多くの国々で独裁体制をガタガタに揺さぶっている。まさに青年が歴史を動かす瞬間だ。
彼らの怒りは、新自由主義の下での低賃金や失業、出稼ぎ先での非人間的扱いに対するものだ。典型的な労働者としての決起であり、「民主化」のレベルで解決できるものでは到底ない。エジプト議会選挙ではいったんはイスラム勢力が圧勝したが、闘いは次の段階に入っている。新自由主義による支配を打ち破るまで、彼らの決起が収まることなどあり得ない。
▼「We are the 99%」
アラブでの決起は、新自由主義の牙城である米帝足下の青年労働者へと引き継がれた。金融独占の総元締めであるニューヨーク・ウォール街を数千人が占拠した。「99%が1%の強欲と腐敗のために支配されている。1%の支配を打ち倒そう!」――この訴えは全米各地から全世界へと広がり、「99%」は世界の労働者の合言葉となった。
金融恐慌に揺れるヨーロッパでも、労働組合のゼネストの嵐が吹き荒れた。イギリスでは青年の怒りが暴動となって爆発した。これを前にして幾多の政権が崩壊し、かつ解決の糸口さえ見いだせない。資本主義が死の苦悶にのたうち回っているのだ。青年労働者と労働組合はその墓掘り人だ。世界は文字通りの革命的情勢に突入している。
(写真 エジプト革命の勝利に沸くタハリール広場【2011年2月11日】)
大震災情勢と対決し6万決起を切り開く
3月11日の東日本大震災は、未曽有の被害をもたらした。一瞬にして約2万人が死亡・行方不明となった。35万戸以上の家屋が破壊され、最大時40万人が避難所暮らしを強いられた。300以上の港、2万3600fの農地が被害を受けた。そして何より、福島第一原発が爆発し、膨大な放射性物質がばらまかれた。 被災現地では、青年の仲間たちがすぐさま生き抜くための闘いに立ち上がった。既成指導部が組合活動の一切を放棄する中、自治体の仲間は救援物資を持って点在する職場を駆け廻った。ある職場では、震災解雇が吹き荒れる中、仲間の雇い止めを阻むため管理職を追及した。「救援本部ニュース」を職場に配り、労働組合の果たすべき役割を訴えた。
全国の仲間は、被災地支援とともに、全原発の即時停止を求め3・17〜3・20デモに立ち上がった。政府・財界・労組幹部の「政治休戦」恫喝を切り裂く先端である。その結果、反原発をめぐって統一地方選が激しく闘われる最中の4月10日、1万5千人もの青年労働者が高円寺に結集し反原発のデモを打ち抜いた。彼らの多くは労働組合への不信に満ちた非正規の青年労働者である。しかし、怒れる青年は必ず立ち上がるのだ。そして、闘いの最中で自己解放の精神と団結を取り戻すのだ。
これ口火に全国各地で青年のデモが連日のように闘われ、創意工夫に満ちた様々な運動が生み出された。労働組合の現場から反原発の取り組みが始まった。NAZEN(すべての原発いますぐなくそう!全国会議=な全)が結成された。そしてそれらが母親たちをはじめとする福島現地の「怒」と結合した。
9月19日、明治公園から溢れかえった6万人の決起は、澎湃と巻き起こる全国の青年の闘いが、「政治休戦」に逃げ込む既成労組指導部を追いつめた結果である。そして労働組合が中心に座った瞬間に、既成指導部の思惑を乗り越え、人民のあらゆる階層がその下に結集したのである。労働組合が果たすべき役割、その力、可能性が、具体的に提示され、証明されたのだ。この過程を闘った多くの青年が11月集会に結集した。
(写真 福島からの参加者を始め6万人の人々が明治公園を埋めた昨年9・19反原発集会)
職場で開始された労働運動の実践
これら一切の過程の基礎にあったのが、一人ひとりの青年労働者の職場における血の滲むような苦闘である。それは、労働組合を現場の手に取り戻す闘いであり、職場に労働組合をつくる闘いであり、労組執行部として組合員に責任を取る闘いであった。
民営化や不当処分に反対し、役員選挙に果敢に挑み、多くの支持をかちとった。職場からのひとりの決起にこだわり抜いた。職場の仲間の生活・家族関係まで掌握し、真剣に向き合い、団結を呼びかけた。職場の仲間とともに職制に抗議をぶつけた。労組の闘いで組合員の雇い止めを阻止した。これらの一つひとつが全世界で繰り広げられる闘いの基礎であり、勝利の路線を実践的につかみ取るための苦闘であった。
(マル青労同機関誌ソリダリティー8号を読んで欲しい)
「非正規職撤廃」の路線的確立
2011年は、そのような中で「非正規職撤廃」の路線が実践的にうち立てられた年であった。JRでの外注化阻止の闘いであり、郵政非正規ユニオンの闘いである。
▼非正規は「半失業」
本来、「雇用」とは労働者家族が生活できる賃金を前提としている。結婚・子育ても出来ないことを前提とした「雇用」など、失業の一形態であり、人間の尊厳を踏みにじるものだ。そして非正規化とは、雇用者にも失業者にも属さない「半失業」を制度化し、大失業の実態を覆い隠すものだ。
▼職場での反合闘争がカギ
非正規職の導入や外注化は、何よりも要員削減や労働強化といった職場での合理化攻撃を切り口とする。まずは徹底的に人を減らし、年休も取れず、残業しなければ仕事にならない状況に追い込む。そして「要員の補充は無理」とした上で、恩着せがましく「業務軽減」「賃金確保」のためと称して非正規職を導入するのである。
したがって非正規職撤廃の闘いは、まず何より労働組合の職場における反合理化の闘いにかかっている。ここでの妥協を繰り返すことは、非正規職を生み出すのみならず、正規職の賃金・労働条件・職場を奪い、組合自体をますます闘えなくするのである。
逆に言えば、正規職にとっても非正規職にとっても、敵はひとつだということだ。正規・非正規の分断は、何よりも経営・資本との闘いの中でこそ乗り越えられる。組合の反合理化の闘い、あるいは「年賀の自爆営業の拒否」といった反合闘争の実践、これと郵政非正規ユニオンのような非正規労働者自身の主体的決起が結びついた時に、非正規職撤廃の展望が切り開かれる。
それは同時に、「非正規あっての正規の労働条件」と言ってはばからない、既成労組指導部の腐りきった思想を打ち砕き、徹底的に対決し、階級的団結を労働組合に取り戻すことである。
反合理化・運転保安闘争路線の下で貫かれる動労千葉の10年越しの外注化阻止闘争、そして郵政の闘いは、非正規職撤廃の路線を見事に提示してみせた。
闘う青年部運動の復権へ
このように2011年、日本・世界の青年労働者の闘いは階級情勢を牽引し、支配階級を震撼させている。
野田政権にとって連合=労働組合は日本経団連に並ぶ基盤である。したがって新自由主義を推進する野田政権にとっては、階級的労働運動を一掃し、連合ダラ幹支配を通じて労働組合を屈服させ、協力させることが存立条件である。「4・9政治和解」は、労働者に「労働組合は闘えない」という認識を強制し、屈服と妥協の中に利己的利害を見いだすよう差し向けることに本質がある。
これまで見てきたように、2011年の青年労働者の闘いは、この「4・9政治和解」の反革命体制に対し実践で風穴を穿った。これを大胆に押し広げ、野田政権を打倒するのが2012年である。青年が先頭に立ち、闘う労働運動組合が闘いさえすれば、野田政権を打倒できるのだ。
そのカギを握るのが、青年労働者の団結形態としての青年部運動の復権である。今現在も多くの組合・職場において、青年活動家が原発に怒りを燃やし、職場をなんとかしたいと苦闘している。そしてこの1年を必死で闘い抜いたわれわれがいる。全国各地で企画される青年労働者の春闘集会は、これらを結合し、押し上げ、社会的勢力として登場する挑戦だ。あらゆる壁を乗り越え、絶対に成功させよう。何人たりとも、青年から夢や希望を奪い去ることなどできはしない。動労千葉青年部を先頭に、2012年を全国的青年部運動の躍進の年としよう。すべての青年労働者はその先頭に立とう。
■第3章
青年のすべて奪う新自由主義――大失業・非正規化と被曝
■大失業、非正規化(=半失業)攻撃
震災前から生きられぬ青年の現実があった
「震災前から大恐慌、働きたくても仕事がない、仕事があっても食ってけない、こんな社会はもう変えよう!」。このデモコールが、反原発デモに立ち上がった青年の圧倒的共感を呼んだ。3・11以前から生きられない現実が青年労働者を覆っていた。
厚生労働省が昨年12月22日公表した9月の生活保護受給者数は206万5896人。前月より6025人多く過去最多を更新。7月以降、過去最高を更新し続けている。
受給世帯は149万732
9世帯で、前月より4099世帯増加した。世帯別では「高齢者」が最も多く63万3393世帯だが、働く能力がある受給者を含む「その他」は25
万3932世帯で、前月より850世帯増えた。
昔、生活保護受給者が過去最高だったのは日帝敗戦直後の1951年。若干時期はずれるが1955年のGDP(国内総生産)は約8兆円だった。現在のGDPは500兆円弱である。経済が50倍以上の規模となり、他方、人口は1・5倍ぐらいしか増えていない。にも関わらず現在の方が貧困者が多いというのである。こんな転倒、矛盾した社会があるだろうか。
青年に襲いかかる失業・半失業攻撃
この矛盾の一切が押しつけられているのが青年労働者だ。
11年11月の完全失業率は4・3%。15〜24歳の青年層8・0%。しかし、この数字は就職をあきらめたり、正規職になりたいがパートで我慢している「潜在失業者」を除いている。総務省の調査では昨年7〜9月期の完全失業者数は277万人、潜在失業者数は469万人。合計は746万人で、実質的な失業率は11〜12%となっている。
また、10年10月時点の非正規雇用は全体の38・4%。(過去最高)
青年労働者の非正規雇用比率は男性で15〜19歳で91・6%、20〜24歳で46・7%とはね上がる。女性では15〜19歳で95・8%、20〜24歳で44・2%。
この非正規職比率は、賃金の低さに直結する。非正規男性の月額賃金は、10万円未満が15〜19歳で79・4%、20〜24歳で44・7%。20万円未満となると15〜19歳で98・5%、20〜24歳で91・3%だ。
世界の失業率を見れば現実はより深刻である。青年の完全失業率が、実に50%に近い。すでに1930年代をはるかに超える水準に達している。本当に生きられない現実が、青年を怒り・闘いに駆り立て続けているのだ。
日本では、全体として見ても青年層を見ても、非正規雇用の比率は90年代後半以降、はね上がった。小泉構造改革、「外注革命」などと言われた時期だ。JR東日本でも2001年、「ニューフロンティア21」と称する第2の分割・民営化攻撃が始まった。この時、10年間外注化を阻止してきた動労千葉を除き、既存の労働組合は外注化や非正規化を「当たり前のこと」「仕方ないこと」としてすべて認めてきた。
崩壊する社会
その結果、JRは鉄道事業そのものを完全に投げ捨てるに至っている。何よりも、JRで働く青年労働者を人間として扱っていない。誇りを持って鉄道を動かしているという一片の敬意さえ払わない。そして、2005年の尼崎事故、翌年の羽越線事故をあげるまでもなく、鉄道輸送の根幹である安全が崩壊している。
2007年に強行された郵政民営化から5年、郵政事業は大破綻を繰り返し、巨額の赤字を出すたびに賃金や人員が削られ、もはや日常の業務さえまともに回らない。正規・非正規を問わず、青年労働者の怒りはすべての郵政職場にあふれている。自治体や学校現場でも「財政悪化」を口実に人員が極限的に削減されて日々の労働が膨大になり、その「穴埋め」という形で非正規職がどんどん導入されてきた。医療や福祉も投げ捨てられた。要するに社会全体を破壊しながら、民営化・外注化は行われてきたのだ。小泉が言っていた「官から民へ」などというデマゴギーに、あらためて怒りがこみ上げてくる。
非正規職化とは巨大な賃下げ攻撃であるとともに、労働者を「半失業」状態に追い込む失業攻撃そのものである。しかし実は、非正規職化の核心は団結破壊・労働組合破壊にあり、これを通して労働者の誇りを奪う攻撃なのだ。
ここに3・11が襲いかかった。国鉄分割・民営化以降、約30年にわたって強行されてきた新自由主義は、社会を崩壊させ、災害への対応能力を失わせていた。行方不明含め1万9千人余に及ぶ犠牲者は新自由主義による殺人だ。
しかし野田政権が青年に対してやろうとしていることは、新自由主義のさらなる推進だ。TPPや「復興特区」、道州制によって、9割の労働者を非正規にするというのだ。3・11前からすでにあった生きられない現実を拡大することで延命しようとしている。絶対に許せない。
その矛盾の一切を、さらに一層背負わされようとしている青年労働者にこそ、この社会を変える権利があり、またその力もある。今やそれは歴史的任務ですらある。階級的労働運動の復権と労働者革命党の一体的建設を、革命の戦略的準備として青年労働者を先頭に成し遂げよう。
■被曝の強制を許さない!
さらに福島第一原発事故は世界最悪の原発事故として、大量の放射能を日本全国、いや全世界ににまき散らした。放射能汚染はこれからますます広く、深く、労働者の生活をむしばんでいく。日本と世界の青年労働者は、この放射能汚染の現実と将来、長きに渡って向き合っていくという、人類史上経験したことのない試練のまっただ中にいる。すでに体調の悪化を訴える人が膨大に出てきている。
東電・政府は責任をとれ!
しかしこの福島第一原発事故を引き起こした張本人である東電も、政府も何の責任も取ろうとしていない。放射能汚染の現状すらまともに調べようとしない。動労水戸を始めとする労働組合や市民、一部のマスコミ、心ある学者の追及や自発的な測定などによって、深刻な放射能汚染が次々と明らかになっているのが現状だ。
日帝・野田政権や東電を始めとする資本、マスコミや「ニコニコしていれば大丈夫」などと抜かす御用学者、裁判所といった「原子力ムラ」がやっているのは要するに「放射能について一切考えるな」「何事もなかったように生活しろ」という「究極の無責任」だ。放射能・放射線に関する科学的認識や、それも含めておよそ科学や学問といったもの全体、家族関係や地域的な紐帯も含めた人間的な団結やつながり、一人ひとりの現在の健康や生命そのもの、さらに未来……すべてのものを奪いつくしながら原発と資本主義体制を維持しようとしているのである。
●原発再稼働めぐり激突
3・11以来開始された「フクシマの怒り」を先頭とする青年労働者やその家族である母親や子どもたちの反原発闘争への決起はその一切を奪い返すものだ。生きるためにそれらが絶対に必要だからだ。両者は絶対に和解できない。 昨年12・16の野田による「事故収束」宣言以来本格化する再稼働の動きに対して実力闘争がたたきつけられた。
1月18日には、経済産業省の原子力安全・保安院の福井県・大飯原発再稼働のための「ストレステスト審査会」に対して、傍聴排除をはねのけ実力で原発推進派の委員を弾劾、原発反対派の「審査委員」とともに会場を占拠して再稼働を徹底弾劾する場に転化した。再稼働推進派の委員は別室にたたき出され、密室で「審議」せざるを得なくなった。原発再稼働をめぐる攻防はこうした非和解的関係をますます激しく促進していく。
(写真 写真 原発再稼働のためのストレステスト審査会の強行に抗議【1月18日】)
職場から反原発闘争を
はっきりさせたいことは、青年労働者が団結すれば原発再稼働を阻止し、生きるために必要な一切を彼らから奪い返すことはできるということだ。その土台は、実は一人ひとりが働いている職場にあり、日々の労働を労働者の手に取り戻すことの中にある。
計画的避難区域内にある採石場から高濃度に汚染されたコンクリート材料である砕石が出荷され、コンクリートとして流通、昨年7月に新築されたマンションの建築材料として使われた。その結果、今年になって室内で高線量の放射線が検出された。この住宅は、原発事故から避難した家族が住むために自治体が借り上げた住宅だった。採石場では40シーベルト/毎時という、非常に高い放射線量が測定された。これを材料に作られたコンクリートで、仮設住宅が作られた可能性もあるという。
これは、住んでいる人が被曝させられているという問題でもあるが、被曝労働の問題でもある。採石、輸送、コンクリート製造、建築作業などすべての過程で労働者が被曝させられているのである。本当に許すことができない。
しかし、現場から被曝の危険を告発する力、団結して被曝を強制される労働を拒否する力を労働者が持っていれば自らも被曝し、さらに被曝を拡大させるような労働は成立しえないし、そもそも原発など成り立たない。労働組合は本来、そういう力を持っているのだ。
動労水戸の闘いに続こう
それを実際にやったのが昨年の動労水戸の闘いだ。動労水戸は、JR東日本による被曝労働強制に2波のストライキで決起し、汚染車両の検修業務と清掃作業を中止に追い込む決定的勝利を切り開いた。「闘いなくして安全なし!」「安全なくして労働なし!」の階級的立場を貫き、「古里をかえせ」のフクシマの叫びをわがものとして、反原発を職場の課題として正面から闘ったのである。
それは職場の全労働者が生きるための決起であり、被曝労働から青年を守り、地域住民の命をも守るための決起であった。だからこそ組合の枠を越えて職場の全労働者の魂をとらえ、地域住民の中に労働組合への大きな信頼を呼び起こした。労働組合の活動は狭く利己的なものではなく、踏みにじられている幾百万の人民の解放を目指すものである≠ニいうマルクスの言葉がそこに甦ったのだ。この闘いを突破口に全国で被曝労働を拒否し、放射能汚染を弾劾する闘いが、国鉄職場を始めとして開始されている。
大失業・非正規職化攻撃にしても被曝労働にしても明らかなことは、3・11があろうがなかろうが、否3・11が起きたからこそなおさら、青年の現在と未来を奪い、さらには社会そのものを破壊し続けない限り資本主義・新自由主義は一秒たりとも生きていけないということだ。もはや、労働者一人ひとりの生存、社会そのものの存続と資本家の延命は1%も相いれない。青年労働者が階級的団結を奪い返し、人間的なもののすべてを豊かに奪い返して、支配力を喪失した資本家どもを打ち倒す時代がついに訪れたのだ。
(写真 被曝労働を拒否してストに決起した動労水戸【11年10月13日】)
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月刊『国際労働運動』(427号4-1)(2012/03/01)
翻訳資料 アメリカ新軍事戦略と軍=警察国家化
村上和幸 訳
【解説】
ここでは、@2012年度国防権限法(NDAA)第1021条、A昨年12月31日にNDAAに大統領署名して法律として発効させた時のオバマの声明、そしてB1月5日の「全世界における米国のリーダシップの堅持―21世紀の国防戦略の優先事項」(国防戦略の指針)、Cその発表の際のオバマの演説を翻訳、紹介する。
このオバマ政権の新戦略についてマスコミは、「二正面作戦の放棄」「軍事予算の削減」と報じているが、大きなことを落としている。
オバマ政権がブッシュ政権以上の軍事予算を使い、軍拡を継続すること、そして13世紀のマグナカルタでさえ認めた最低限の民主的権利さえ蹂躙していることだ。
対中国シフト
1月5日の新戦略は、アジア太平洋地域を徹底的に重点化することを打ち出した。特に中国をイランと並列して述べていることは、極めて重大だ。
軍事予算拡張は続く
「今後10年間で4800億jの軍事予算削減」と報じられている。だがそれは、今後10年間で途方もなく増額するという議会予算局の予測値を基準にし、それより4800
億j少ないということに過ぎない。
Cで「増加は続く」とオバマ自身が言っている。
@のNDAAでは、201
2年度6620億jの軍事支出が承認された。11年度と比較すると若干減少しているが、ブッシュ政権時代より多く、歴史的な大軍拡予算が続いている。
しかも、春ごろに追加軍事予算が決定される。
NDAAは本来、予算のための法律だが、オバマの12月31日の声明は、NDAAの中の「テロリスト勾留」に関する諸条項についての居直りと大統領権限への制限条項を無視するという論点に集中している極めて異常なものだ。今度のNDAAが、それだけ超重大な問題をはらんでいるということだ。
戒厳令・軍事独裁化――米軍が無期限に裁判な
しで投獄≠ニ明記
12年度NDAAは、アメリカ合州国又はその「連合パートナー」に対する「敵対行為に関与」しているアルカイダ又はタリバンに「関係した」勢力を「実質的に支援した」者を米軍は拘束できる≠ニ規定している。「関係した勢力」も「実質的に支援」も意味は定義されていない。米軍最高司令官である大統領が、「疑わしい」と言えば、外国人も米国人も「裁判なしで戦争の終結まで拘束」(C) (1)項〕できる。12月31日の声明は、「米国市民の無期限の裁判なしの勾留を認可するつもりはない」と言っているが、こうした口約束は簡単に破られる。実際、オバマは08年大統領選時の「グアンタナモ収容所を閉鎖する」という公約を破って、収容所を継続したばかりか、世界中に同様の収容所を何カ所も作ったのだ。拷問も、「強力な尋問手段」の名の下に、継続・拡大している。
また、グアンタナモの被勾留者を外国に移送する自由を主張していることも許しがたい。ウィキリークスが暴露した通信記録でも明らかになったが、アメリカは、ムバラク政権下のエジプトなどに「テロ容疑者」を送り、残虐な拷問を行わせている。無期限投獄と拷問の外注化を自由にやらせろと言っているのだ。
軍が国内の警察業務を行うことも異常だ。南北戦争以来、国内で連邦軍が実力行使することは、これまで禁止されてきた。これを破ることを宣言したのだ。まさに、日常的にアメリカを戒厳令下に置き、軍事独裁化、警察国家化することを狙っている。
また、大統領の権限を議会の法律で制約することは憲法違反≠ニして一切の制約を無視すると宣言していることも、非常に重大だ。軍最高司令官として大統領が無制限に権力をふるうということだ。
オバマは1月5日、歴代大統領の中で初めて国防省で記者会見を開き、新戦略を発表した。軍の最高司令官としての独裁的権力を強調するためだ。
巨大な階級闘争のうねりへの恐怖
昨年は、チュニジア、エジプト革命から始まり、全世界を労働者階級の闘いが席巻した。
アメリカは帝国主義世界体制の中心であり、これまでアメリカ帝国主義の全体重をかけて階級闘争を抑え込んできたが、2011年、ついに堤防の決壊が始まった。
2月、ウィスコンシン州の公務員労組破壊立法に対するストライキと巨大集会、州議事堂占拠は画期的だった。「マディソン(州都)をタハリール広場に」を合言葉に、10万人以上の労働者大衆が労働組合を守るために実力闘争に決起したのだ。
そして6月から始まったILWUローカル21(国際港湾倉庫労組第21支部)の実力闘争は、労働者自身の力で未来を切り開く展望を示した。だからこそこれが、「ウォール街を占拠せよ」運動に火を付けたのだ。
08年のリーマン・ショックは、30年にわたる新自由主義の「市場原理」「自己責任」宣伝のウソを全大衆の前で暴き出した。ブッシュ・オバマ両政権は破綻した金融資本に計約1兆6千億jもの救済資金を与えたのだ。
労働者の大量解雇、賃金・年金・医療のカットは強行されたが、金融資本幹部のボーナスはお手盛りで2倍化、3番倍化した。
この中で、「われわれは99%だ」のスローガンを掲げた占拠運動が全米―全世界に爆発的に拡大した。ILWUローカル21を守るために、占拠運動が西海岸全体の港湾を封鎖するところまで進んだ。労働組合をめぐる攻防こそが中心課題であることを、未組織労働者も含めて、巨万の労働者が理解し、行動に決起したのだ。
アメリカ帝国主義は、国際的にも国内的にも階級闘争の大激流に飲み込まれる恐怖に震え、必死になって弾圧しようとしている。
【強調と( )は原文のまま。〔 〕は訳者による補足】
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@2012年度NDAA(国防権限法)
第1021条 軍事力行使権限法による、同法適用人物を勾留する権限の確認
(a)総論――議会は2001年の軍事力行使権限法(公法107―40、合衆国法典第50編第1541条注)による、すべての必要かつ適切な力を使用する大統領の権限を確認する。それには、戦争法に基づく処分に至るまで(本条(b)で定義された)適用人物を勾留する合衆国軍の権限を含む。
(b)本条適用人物――本条に基づく適用人物とは以下のすべての人物を指す。
(1)2001年9月11日に発生したテロ攻撃の計画、認可、実行又は援助を行った人物又はそれらの攻撃に責任ある者を匿った人物。
(2)米国又はその連合パートナーに対する敵対行為に関わっているアルカイダ、タリバン若しくは関連する勢力の成員又はそれらを実質的に支援した人物。それには、戦闘行為を行ったすべての人物、又はそのような敵勢力を援助するそのような敵対行為を直接に支援した人物も含まれる。
(c)戦争法に基づく処分――本条(a)に記された戦争法に基づく人物の処分には、以下を含めることができる。
(1) 軍事力行使権限法により承認された、敵対行為が終結するまでの間、裁判なしの戦争法による勾留。
(2)合衆国法典第10編第47章A(2009年のミリタリー・コミッション法により修正(公法111―84の第18編)に基づく裁判
(3)適法な管轄権を有する代替法廷又は有資格の法廷による裁判のための移送
(4)当該人物の出身国、他の外国又は他の海外地域での収監又は管理のための移送
(d)解釈――本条内のいかなるものも、大統領の権限又は軍事力行使権限法の適用範囲の制限若しくは拡張を意図するものではない。
(e)権限――本条内のいかなるものも、合衆国市民、合衆国の適法居住者又は合衆国内で捕捉若しくは逮捕された他のあらゆる人物の勾留に関する在来法規又は権限に影響するものと解釈してはならない。
(f)議会への報告義務――国防長官は、本条に記された権限の適用に関して、定期的に議会に概要報告をしなければならない。それには、(b) (2)の目的のために「適用人物」と見なされる組織、団体、個人も含まれる。
A2012年度NDAAについての大統領見解
本日、下院第1540法案=「2012年度NDAA(国防権限法)」に大統領署名を行い、発効させた。……このNDAAには数百条もあり、合計500nに上る。国防省の健康保険費の高騰を抑える政策や、海外でのテロ対策の拡充、枢要なパートナーの安全保障能力の増強、部隊の近代化、世界的な軍事作戦の効率性・効果性の向上などの重要な政策が含まれる。
この法案全体に私が署名したことは、その中の個々の条項に私が同意したことを意味しない。とりわけ、テロ容疑者の勾留、尋問、起訴を規制する諸条項については、重大な保留があるにもかかわらず、この法案に署名したのである。私の政権は、この数年間、テロ容疑者の勾留、尋問、裁判のための、効果的で持続可能な枠組みを練り上げてきた。これによってわれわれは、急速に事態が変化する状況の中での諜報収集の能力を最大限に高め、また危険人物を無能力化することができている。われわれが達成したこの成果は、否定できないものだ。アルカイダとその構成員に対するわれわれの成功は、変化する状況に適応するために必要な柔軟性と明快性をわが国のテロ対策専門家たちに与えたことによってもたらされたのだ。またそれは、米国民を最も良く守れるように、あらゆる権限を使えるようにしたことによってもたらされたのだ。そして、われわれの成功は、世界の模範となるわが国の価値観を尊重するものとなっている。
このように成功した実績があるにもかかわらず、議会の中には、わが国のテロ対策専門家の使える選択肢を制限し、これまでわれわれの安全を守ってきたまさに作戦そのものに介入することに固執し続けている者もいる。最終的に私がこの法案に署名することを決めたのは、この法律が軍人とその家族に決定的に重要なサービスを提供し、国家安全保障計画の権限を与えるからだけでなく、議会が、米国人の安全と自由を脅かす諸条項を修正したからである。私の政権は、次に述べる諸条項を最も柔軟に解釈し、適用していくであろう。その柔軟性こそが、わが国の安全性を保障するのであり、又その柔軟性を基礎にしてわが国の価値観も守られるのだ。
第1021条〔軍事力行使権限法による、同法適用人物を勾留する権限の確認〕は、2001年の軍事力行使権限法=AUMF〔注〕が適用される人物を勾留する行政府の権限を確認するものである。この条は、新たなものを切り開いておらず、不必要な条である。その権限は、2001年のAUMFに含められており、それ以来、最高裁判所でも下級裁判所でも確認されている。……私の政権は、軍による米国市民の無期限の裁判なしの勾留を認可するつもりはないことを明らかにしたい。そうした行為は、われわれの最も重要な伝統と国としての価値観から離れるものだと私は信じている。私の政権の第1021条の解釈は、政権が認可するいかなる勾留も、憲法、戦争法規、及び他の適用諸法規に従うものだということである。
〔注〕2001年AUMF――9・11直後、9月14日に上下両院で決議され、18日にブッシュ大統領の署名により発効した。「2001年9月11日に発生したテロ攻撃の計画、認可、実行又は援助を行ったと大統領が決定した国家、組織若しくは個人、又はそうした組織若しくは個人を匿っていると大統領が決定した者に対して、大統領は、そうした国家、組織又は個人による米国に対する将来のいかなる国際テロ行為も防止するために、すべての必要かつ適切な力を行使する権限を認められる」
……
第1023条〔キューバのグアンタナモ湾米海軍基地に勾留中の人物の定期的な勾留見直し〕、第1024条〔(AUMFによる)被勾留者の地位の決定の手続〕、第1025条〔グアンタナモの被勾留者の外界との〕コミュニケーションを規定する国家安全保障上の手続の要件〕は、行政府の被勾留者の地位見直し手続に対する不必要な介入である。私の政権は、第1024条をアフガニスタンにおける被勾留者の地位見直しについて国防長官に広い裁量権を与えたものと解釈する。
第1026条〔グアンタナモ米海軍基地の被勾留者を収容するための米国内における施設の建設又は改築への資金使用の禁止〕、第1027条〔グアンタナモ米海軍基地の被勾留者の移送又は釈放のための資金使用の禁止〕、第1028条〔グアンタナモ米軍基地の被勾留者の外国及び海外地域への移送に関する証明の要件〕は、行政府の選択肢を狭める資金使用制限であり、賢明でない。……数十年にわたって共和党政権と民主党政権は数百のテロリストを連邦法廷に訴追するという成果を上げてきた。この手段を行政府から奪うことは、国家安全保障には役立たない。しかも、こうした介入は、憲法による三権分立の原則に違反するおそれがある。
第1028条は、外国に被勾留者を移送する行政府の権限の不当な制限を修正してはいるが、基本的に残している。これは、第1027条同様、行政府の軍事、国家安全保障、外交の諸活動の能力を阻害するものであり、ある種の状況の下では、憲法の三権分立の原則に違反する。行政府は、被勾留者移送の状況に関する諸外国との交渉においては、迅速に動く柔軟性を持っていなければならない。第1027、1028条の法的制限が三権分立の憲法原則に違反するように作用する場合には、私の政権は憲法違反を回避するように、これらの条文を解釈する。……
本法案の他の諸規定も、憲法で定められた私の外交権に干渉する恐れがある。第12
44条〔弾道ミサイル防衛に関する米国の秘密情報のロシア連邦との共有〕は、弾道ミサイル防衛に関する米国の秘密情報をロシアと共有する60日前に議会に報告を提出することを義務付けている。そして第1244条は、提供される秘密情報の詳細な記述をその報告書の中で行わねばならないと定めている。私の政権は、弾道ミサイル防衛に関するロシアとの協力について議会に全面的に情報を伝える意図を持っているが、大統領の外交を遂行する憲法上の権限に干渉されないように、また微妙な外交通信を不適切に公開しないように、第1244条を解釈し、適用していく。他の諸条にも同様な問題がある。第1231条〔持続する自由作戦(アフガニスタン戦争)を支援する作戦のためのパキスタン政府への連合軍支援基金の支払いに関する報告〕、第1240条〔ロシア核戦力に関する報告〕、第1241条〔アフリカ連合のアフリカ待機軍の機動化の進捗に関する報告〕、第1242条〔グルジア共和国との防衛協力〕は、微妙な外交通信及び国家安全保障上の秘密の公開を義務付けていると読みうる。また第1235条〔リビアにある携帯式地対空ミサイル(の移転・拡散防止)〕、第1242条、第1245条〔イランの金融部門に関する制裁措置〕は、外国政府と交渉又は議論するにあたっていかなる姿勢で臨むべきかを行政府に指示する大統領の憲法上の外交遂行権限に干渉しかねない。第1244条同様、これらの諸規定が私の憲法上の権限に反する場合には、私は、これらの規定を拘束力がないものとして扱う。
B合衆国の世界的リーダーシップの持続――21世紀 の防衛の優先事項 12年1月5日発表(部分訳)
厳しい世界的安全保障環境
世界的安全保障環境は、ますます困難性とチャンスが入り混じってきている。それには、アメリカの国力のあらゆる要素を用いねばならない。オサマ・ビン・ラディンの死、そして他の多くのアルカイダメンバーを捕え、あるいは殺したことによって、このグループは、かつてよりもはるかに弱体化した。しかしながら、アルカイダとその成員は今もパキスタン、アフガニスタン、イエメン、ソマリアなどで活動し続けている。
他の暴力的な過激派も、アメリカの利害、同盟国、パートナー、アメリカ本土を脅かし続けるであろう。こうした脅威の主要な位置は、南アジアと中東である。破壊的なテクノロジーの拡散によって、こうした過激派はわれわれの安全と繁栄を直接に影響する破局的な脅威をもたらしかねないものになっている。
予見しうる将来にわたって、米国は同盟国及びパートナーと協力して統治されていない領域へのコントロールを確立し、また必要な時は最も危険なグループや個人を直接に攻撃し、非国家勢力の活動による世界的な脅威をモニターしてこうした脅威に対抗する積極的なアプローチを続けていく。
米国の経済上・安全保障上の利益は、西太平洋と東アジアからインド洋と南アジアにかけて広がる弧の動向と密接不可分に結びついている。この弧が、困難性とチャンスの入り混じった状況をもたらすのだ。したがって、米軍はグローバルに安全保障に貢献し続けるが、わが国がアジア太平洋地域の方向にバランスを変更するのは必然である。アジアの同盟国と枢要なパートナーとわが国との関係は、この地域の将来の安定と成長にとって決定的である。われわれは、アジア太平洋安全保障の死活的な基礎となる現存の同盟国の重要性を強調していく。また、アジア太平洋全域で台頭するパートナーたちとの協力のネットワークを拡大し、共通の利益を守るための集団的な能力を確保していく。米国は、インドが地域の経済的な安定装置として、また広い意味でのインド洋地域の安全保障の提供者として役立つ能力を支援するために、インドとの長期的な戦略的パートナーシップのために投資していく。さらに、核兵器プログラムを積極的に進めている北朝鮮の挑発を抑止し、それから防衛するために同盟国や他の地域的な諸国家と効果的に協力し、朝鮮半島の平和を維持していく。
このダイナミックな地域における平和、安定、通商の自由および米国の影響力の維持は、軍事力と軍事プレゼンスの根本的なバランスに依存する。長期的には中国の地域大国としての台頭は、米国の経済と安全保障にさまざまな形で影響する可能性がある。米中は、東アジアにおける平和と安定に大きな利益を持っており、協力的な相互関係の構築を利益としている。しかしながら、地域における摩擦の回避のためには、中国は、軍事力の拡大の戦略的意図を明快に示さねばならない。米国は、条約上の義務と国際法にのっとりながら、地域にアクセスし、自由に作戦する能力を維持するために必要な投資を続けていく。われわれは引き続き、同盟国・パートナーと緊密に協力しつつ、根本的な安定性を確保し、新勢力の平和的な台頭、経済的ダイナミズム、建設的な防衛協力を促す、ルールを基礎にした国際秩序を推進していく。……
米軍の主要な諸任務
この環境の中で米国の国益を守り、「2010年国家安全保障戦略」の目標を達成するため、下記の諸任務を達成するために、統合軍はその能力を再調整して選択的に追加投資を行う必要があろう。
対テロ及び非正規戦争(略)
侵略の抑止と撃破(略)
接近阻止・領域拒否の困難性を乗り越えた戦力投入
潜在的な敵を抑止し、また彼らの目的達成を阻止するためには、米国は、わが国のアクセスと作戦の自由が挑戦を受けている諸地域に戦力を投入する能力を維持しなければならない。こうした地域では、高度な敵が、われわれの作戦計画を困難化するために、電子的戦争、サイバー戦争、弾道・巡航ミサイル、先進的な防空、地雷やわれわれの戦力投入を阻止する他の手段も含めて、非対称的な能力を使用するであろう。中国やイランといった諸国は、わが国の戦力投入能力に対抗する非対称的な手段を、追求し続けている。また、高度な兵器と技術は、非国家勢力にも拡大している。したがって米軍は、接近阻止・領域拒否(A2/AD)環境で効果的に作戦する能力を確保するために必要な投資をしていく。これには、水面下能力の維持、新たなステルス爆撃機の開発、ミサイル防衛の改善および宇宙に設置された決定的な能力の抗たん性と効率性の強化の努力の継続を行い、統合作戦アクセスコンセプトを実施していくことが含まれる。
大量破壊兵器との対決(略)
サイバースペースと宇宙に おける効果的作戦(略)
安全、確実、効果的な核抑止力の維持(略)
国土防衛と文民当局への支 援提供(略)
安定化のためのプレゼンス の提供(略)
安定化作戦及び対反乱作戦(略)
人道作戦、災害救援及び他 の作戦(略)
C防衛戦略見直しに関する大統領見解
2012年1月5日、国防省にて
〔軍への賞賛、オバマの軍事政策の自画自賛などの部分省略〕
簡略に言えば、われわれは国を守ることに成功した。敵と戦い、危険にさらされている米国人の数を減らし、アメリカの世界的なリーダーシップを回復した。……
この成功によってわが国は再び転換の時期を迎えたのだ。アフガニスタンではわが部隊が戦い続けているが、戦争の潮は引きつつある。わが部隊は今日の任務を優先しているが、われわれは将来の必要性に向けての戦力を展望するチャンスと責任を有している。
同時に、わが国の国内において経済力を回復させねばならない。経済力は、全世界におけるわが国の力の基礎なのである。経済力の回復には、財政を正常化することも含まれる。その目的のために、議会が、共和党・民主党の支持によって昨年通過させた予算管理法は、防衛予算を含む連邦支出の削減を義務付ている。私はこの責任を果たすことを主張してきた。わが国と米国軍人の安全は、このことにかかっている。
これが、この包括的な防衛見直しを指示した理由である。急速に変化する世界の中でのわが国の戦略的利益を明らかにし、今後10年間の防衛の優先事項と支出に指針を与えることだ。というのは、わが軍と防衛予算の規模と構造は、戦略から導き出されねばならないのであって、その逆ではないからである。そして、われわれは歴史の教訓を思い起こす必要がある。第2次大戦後、ベトナム戦争後に将来への備えが不足したという、過去の誤りを、最高司令官として私は繰り返すわけにはいかない。
賢明で戦略的な優先順位が必要である。国防省が本日発表する新たな指針こそ、まさにそれなのである。
オーストラリアで私が明らかにしたように〔11年11月7日のオーストラリア国会での演説で「アメリカは太平洋国家として戦略的決定をした」「アジア太平洋の安全保障が最優先課題」と宣言した〕、われわれはアジア太平洋でのプレゼンスを強化する。そして予算削減はこの決定的な地域を犠牲にしては行わない。わが国は、NATOを含む決定的なパートナーシップと同盟に投資し続ける。それは最近のリビアで示されたように、力を増幅するものであることを、何度も示してきた。われわれは特に中東で、警戒し続ける。
イラクとアフガニスタンの戦争の先を考える時、また、大規模な軍を伴った長期的な国家建設が終わった後のことを考える時、われわれは、小規模化した通常地上兵力によってわが国の安全を確保することができる。今後とも、時代遅れになった冷戦時代のシステムを廃棄し続け、将来必要になる諸能力に投資できるようにする。諜報、監視、偵察、テロ対策、大量破壊兵器対策や敵がわれわれのアクセスを妨害する環境下での作戦能力などだ。
したがって、確かにわが軍はスリム化されるが、迅速かつ柔軟であらゆる種類の有事や脅威に対処できる軍事力を持ったアメリカの軍事的優越性は維持されるのである。……
9・11以来10年間、わが国の防衛予算はただならぬ速度で拡大したことをすべての米国民が思い起こすことが重要だと思う。これからの10年間、防衛予算の拡大は遅くなる。しかし事実は、それでも拡大するということだ。というのは、わが国はグローバルな責任を有しており、それがわが国のリーダーシップを求めるからだ。事実、軍事予算は、依然として、ブッシュ政権の最後の軍事予算よりも大きいままであろう。おおよそ、2位以下10カ国の合計より大きな防衛予算を継続することによって強力な米軍を維持し、国の安全保障をすることができることを米国民は理解すると私は確信している。
〔以下、謝辞などを省略〕
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月刊『国際労働運動』(427号5-1)(2012/03/01)
Photo News
●ドイツの仲間とともに反原発闘争うち抜く
(写真@A)
(写真BC)
1月14日と15日に横浜で開催された脱原発世界会議に参加するために来日したドイツ・ゴアレーベンの核廃棄物処分場絶対反対で闘う3人のドイツの仲間は、14日に行われた神奈川・東電デモ実行委員会主催の反原発デモに合流した。桜木町駅前広場に集まった80人のデモ隊は、ドイツの仲間たちを迎え、東電神奈川支店に向けて元気よくデモを行った
(写真@A)。解散地では、ドイツの闘う女性が発言し、団結してともに闘おうと訴えた。
ドイツの仲間たちは、16日に行われた新年第1回目の法大デモにも参加し、法大生に対して、ともに反原発の闘いに決起することを訴えた
(写真BC)。
●中国各地で労働者人民が陸続と決起
(写真DE)
(写真FG)
中国ではバブル経済が崩壊する中、各地で暴動やデモ、ストライキが激発している。1月1日には、河南省安陽市で詐欺まがいの投資資金集めで被害を受けた住民による3万人の暴動が起きた
(写真D)。1月4日には、江西省悟州で、残業代金未払いに抗議する1000人の労働者がストライキに決起
(写真E)。江蘇省無錫市では、中国最大の全自動洗濯機製造会社の労働者が賃上げと年末手当不払いに抗議して1000人以上のストライキに決起した。四川省成都市では、製鉄・製鋼加工会社の数千人の労働者が、待遇の不公正と官僚の腐敗などに抗議し、デモに決起した
(写真F)。1月14日には、広東省深市にある日系サンヨー電機工場で、約4000人の労働者全員が参加する大ストライキに突入した
(写真G)。中国の労働者はスターリン主義の制動を打ち破って決起を開始したのだ。
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月刊『国際労働運動』(427号6-1)(2012/03/01)
世界経済の焦点 中国バブルの崩壊加速
蓄積された改革開放路線の全矛盾の爆発へ
□4四半期連続でGDP成長率縮小
中国経済の失速はいよいよ誰の目にも明らかになった。不動産バブルの崩壊は日に日にその深刻さを現しながら加速している。
大恐慌情勢のもとで欧州各国が債務危機=ユーロ危機に陥る中で、中国の高成長の持続が世界経済の最後の頼みの綱とされてきたが、それが2012年いよいよ崩壊のふちに立たされた。
中国国家統計局が1月17日に発表したデータによると2011年第4四半期国内総生産(GDP)の成長率は前年比8・9%に低下した。この数字は4四半期連続での成長率縮小であり、2年半ぶりに9%を下回る低水準となった。
自動車販売台数、不動産投資、貿易(とりわけ欧州向けの)などあらゆる数値において成長率がかげりを見せ、これまでつま先立ちで2桁の高成長を誇ってきた世界第2位の経済大国・中国は紛れもなく失速の過程に入ったのである。
一方で消費者物価指数は11月で前年同月比4・2%の上昇。9月(6・1%)、10月(5・5%)に比べると低下はしたが相変わらず庶民の暮らしを強力に締め上げている。
□不動産バブル加速したインフラ整備
中国の不動産バブルは中国政府による08年の4兆元(57兆円)の景気対策に端を発している。リーマン・ショックによる世界経済全体の急激な落ち込みに直面し、中国政府はただちに4兆元という途方もない額の財政投入を実行した。そのうち約8割が鉄道、道路、空港、送電網、公共住宅などのインフラ関連で占められていた。
だが投資負担の内訳を見てみると、中央政府が1兆1800億元、地方政府が1兆200億元、国有銀行・民間企業などが1兆5700億元と、地方政府、国有銀行・民間企業に巨大な財政負担を強いるものだった。
地方政府が債券を発行したり直接借り入れを行うことは、法律によって禁じられている。そこで地方政府は融資平台(融資プラットフォーム)と呼ばれる投資会社をつくった。この融資平台は実は定義も法的根拠もあいまいで、いわば地方政府のダミー会社だ。これが「城投債」と呼ばれる金利の高い中期債を発行し、金融機関から資金を集めインフラ整備などの事業を行った。
さらに地方政府はインフラ整備と合わせて、周辺の土地の使用権も不動産開発業者などに売りまくった。中国では土地は国の所有であり、安すぎる補償金と引き換えに農民・住民から土地を収用・強奪し使用権を売却する。
地方政府が保証するわけだから、金融機関は惜しげもなく金を貸す。こうして土地・不動産の価格が「上がるから買う、買うから上がる」というまさにバブル的高騰をたどる基本的関係が形成され、そこに社会全体が巻き込まれていったのである。
だがそれがバブルである以上、崩壊の日は必ず訪れる。中国の地方政府の負債総額は国家審計署(会計検査院にあたる)によれば、2010年末で10兆7千億元(133兆円)でこの年のGDPの4分の1にあたる。アメリカの格付け会社によれば、実態はさらに巨大で14兆2千億元(173兆円)と見積もられる。
4兆元財政投入が招いた結果がこれだ。もはや中央政府による規制や対策でどうにかなるような規模のものではない。地方の投資会社は同じ地方の投資会社同士で保証しあってリスクを減らしているので、債券の暴落がほかにドミノ的に波及していく危機をはらんでいる。
バブルによる投機を中心に、無計画、情実、癒着などに深々と侵された中国経済は、地方からその矛盾を全面的にさらけ出そうとしているのである。
□バブルの担い手の成り上がりと凋落
近年、中国人観光客が大挙して日本の観光地を訪れ、あるいは都心で家電、化粧品、玩具などを大量に購入する(爆買い)状況がよくマスコミで取り上げられる。
むろんそれは中国人民の「平均」でも「標準」でもないが、膨大な人口を擁する中国においてこれまでの経済成長の恩恵に浴して多くの富裕層が生まれたこと、その量的規模が日本などに比べてとてつもなく大きいことも現実の一端と見るべきだろう。
中国の住宅バブルを推進した投機マネーを操る象徴的存在として「温州炒房団」と「煤老板」がよく引き合いに出される。
温州炒房団は浙江省温州一帯で靴、洋服、ボタン、ライターなどのさまざまな商品を生産し世界に輸出することで財産を築いてきた民間企業経営者を中心とした、投資グループである。「炒房」とは住宅を料理のように炒めて値上がりさせるという意味。
「温州人」の気質は銀行預金を嫌い株や金融商品にもあまり興味はなく、もっぱら集団で不動産の買い付けにいそしむと言われる。温州なまりの強い普段着姿の彼らが集団で突如現れて、マンションなどの高級物件を片っ端から買いあさり、たちまち価格が20〜30%も跳ね上がるという逸話が各地で聞かれる。2010年春節休暇を利用して温州炒房団によるドバイ不動産購入ツアーが組まれた。
煤老板は、石炭の大産地である山西省や内モンゴル自治区で民間の中小炭田経営者が、ここ数年の石炭の需要増、価格上昇で莫大な利益を上げ、資産家となった人びとのことを指す。やはり高級マンションをフロア単位で、あるいは棟ごと購入するといった金遣いのあらっぽさではひけをとらない。
破天荒な高騰によって住宅購入の願いを打ち砕かれる庶民的な一般都市住民にとってはこうした投機集団は怒りの対象だが、地方政府は彼らをむしろ歓迎する。なぜならば、こうした買い付け投機グループが押しかけることによって不動産の価格が上がることは、当地の経済発展に新しい活力となるからという理由だ。中国の地方政府にとっては土地使用権の売却は、重要な財政収入であり、GDP(域内総生産)の数値を2桁に上げるための活動になるからだ。
また政府機関や国有企業に勤めていた比較的裕福な労働者も、不動産投資の大きな担い手だった。彼らは住んでいた社宅を1〜2万元という超安値で払い下げられ、共働きだった夫婦がそれぞれ払い下げられた住宅のうち一つを市場価格で売却して、300〜400万元という利益を得て、それを原資に銀行からローンを受け、投資用マンションを買う――というパターンで「転がし」を行っていた。
しかし本来の使用価値を忘れ去られたマンション・住宅があまりにもおびただしい数で造られたことによって、今や不動産市場は反転し、歯止めを外した「売り」と「下落」の展開に支配されつつある。炒房団や煤老板は、本来の軽工業製品輸出や採炭の事業での苦境にあえぎ、手持ちの不動産の処分を余儀なくされているという。
これら不動産バブルの担い手の「成り上がり」と凋落は、搶ャ平による「一部分人先富起来」(まず豊かになれるものから豊かになれ)のかけ声に象徴される中国スターリン主義の改革開放路線の破産を表している。
□ASEANから日韓に深刻な打撃へ
中国経済の急激な失速・没落は、中国依存の大きい日本、韓国とともに東南アジア諸国連合(ASEAN)の国々へ深刻な打撃を与えるだろう。
シンガポールは2010年に14・5%という建国以来の高成長を達成したが、主因はセントーサ島とマリーナベイに相次いで誕生した二つのカジノである。ここでは「ハイローラー」と呼ばれるVIP客が売り上げの3分の2を占めるが、その大半は中国人企業経営者である。彼らの足が遠のいてしまえば、シンガポール経済に大打撃となる。
インドネシアのカリマンタン島には、世界有数の石炭資源を保有する炭田が集中している。この数年、石炭の中国への輸出が急増してきたが、ここへきて発電用、鉄鋼関連など中国国内の需要が減り始めた。中国の景気の落ち込みがインドネシアの石炭産業を直撃する。
中国とASEANは昨年初めに自由貿易協定(FTA)を発効させた。タイ、インドネシア、マレーシアなど主要6カ国については90%以上の品目で関税がゼロになり、ベトナム、カンボジアなどの国も15年までにほぼゼロにする。ASEANにとっては中国市場へのアクセスが今や最大の潜在的力になっており、ベトナム、カンボジアなどへの外資系企業の工場進出は対中輸出の狙いが込められている。
ASEAN市場がダメージを被れば、ここを巨大な収益源としてきた日本企業、韓国企業へとさらに影響は広がる。中国経済の失速がASEANを媒介として、すでに大恐慌情勢のもとにある世界経済へさらなる追い打ちをかけるというプロセスは十分予想されるものである。
そして今アジア経済全体が物価高騰、インフレの危機にさいなまれている。世界から投機資金の流入、不動産、原料、農産物への投機などがアジア各国に生じており、その結果として住宅、食品、耐久消費財などの価格が高騰し庶民の暮らしを圧迫している。その結果労働者人民の切実な賃上げ要求の声もまた、アジア各国に広がっている。
バングラディシュ、インドでは2011年夏、賃上げを求める工場労働者のストが大規模に起きた。中国全土でも賃上げを求める闘いは拡大している。
人件費の安さをもとめ、すなわち労働者へのより強度な搾取を求めて資本がアジア国境を移動するというあり方が、もはや歴史的に終止符を打たれたのだ。
□改革開放路線の矛盾噴出し党内対立激化
改革開放路線の開始以来、中国経済は平均年10%近い成長を続けてきた。だがそれは中国の豊かさではなく、所得格差の深刻な拡大、都市と農村の分断、投機経済の満展開などの深刻な矛盾をもたらしたことが今や誰の目にも明らかになった。
胡錦濤・温家宝政権は「和諧社会」のスローガンでその是正を図ったが、失敗に帰した。そして今年秋の中国共産党大会で習近平を総書記とする新たな指導体制が築かれようとしている。
中国共産党内では「団派(共産主義青年団出身者)」=胡錦濤派と「太子党派(党幹部二世グループ)」=江沢民派の二潮流がせめぎ合っていると言われる。
昨年、太子党派の朱鎔基前首相と温家宝首相との間で不動産バブルをもたらした責任をめぐって互いをなじり合う対立が生じた。
1994年に朱が制定した「分税制」(国税と地方税に税目を分ける制度。結果として地方政府が土地使用権を開発業者に転売して財政収入を得ることを常態化した)がその争点であった。今、中国スターリン主義は、迫り来る経済の大崩壊とそれに連なる政治的体制的危機に脅えながら、秋の党大会へ向けて党内対立を深刻化させている。
◇ ◇
改革開放路線推進によってもはや建前上も一切の「革命」的な建前をもかなぐり捨てて、帝国主義と張り合って経済発展を追求する存在になり果てたのが今日の中国スターリン主義だ。その中で中国労働者、農民、人民は自らの生存をかけて闘いに立ち上がっている。革命の疎外物であり、その変質を極めた中国共産党とその支配への怒りは日々拡大している。
われわれは、中国労働者階級人民のスターリン主義打倒・中国第2革命への決起をあらゆる方法で支援・激励し、何よりも日本階級闘争の前進をもって彼らと連帯しなければならない。
(田宮龍一)
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月刊『国際労働運動』(427号7-1)(2012/03/01)
世界の労働組合 フランス編
フランス民主労働連盟(Confdration franaise dmocratique du travail:CFDT)
■概要
フランスの5大労働組合ナショナルセンターの1つであるフランス民主労働連盟(CFDT)は、組合員数では8万人を超えフランス最大の規模を誇る。しかし、企業内の組合(サンディカ)で代表を決定する選挙の得票率はフランス労働総同盟(CGT)が最高位にある。フランスと日本では「労働組合」の概念が違い、サンディカと呼ばれる企業内の労働組合は活動家組織に近い。サンディカは選出された代表の所属するナショナルセンターの影響力が強くなるので、得票率が重要な要素となる。2008年の代表者選挙でのCFDTの得票率は21.8%で、CGTの34%に次いで2位であった。
CFDTの現書記長は、2002年以来3期目の最終任期を務めるフランソワ・シェレックである。
(写真 2010年9月7日のゼネストと大衆デモ)
■社会民主主義路線
CFDTはキリスト教の労働組合運動にそのルーツがある。1895年に設立されたCGTが、ボルシェビキを支持する「革命派」と穏健路線の「改革派」に激しく分岐していく中で、1919年にキリスト教サンジカリストが脱退してフランスキリスト教労働者同盟(CFTC)を結成した。1964年11月6日にCFTCの組合員の70.11%という圧倒的多数の支持で、キリスト教から分離した労働組合として「フランス民主労働連盟(CFDT)」と改名して新たに出発することを決議した。だが、少数派がこれを断固拒否してCFTCに残った。
新たに誕生したCFDTは、階級闘争をバックボーンに闘いを進めると宣言し、1960年代および70年代の労働者自主管理運動に関与したが、後に左派キリスト教徒と非マルクス主義のグループを代表するミシェル・ロカール率いるフランス社会党右派と緊密な関係を結んだ。この一派は、フランスの社会主義が市場主義を受け入れたヨーロッパの社会民主主義路線であるべきことを主唱した。
(写真 2009年1月29日ゼネストのCFDTジャーナリスト労働組合員)
■労使協調路線とSUDの誕生
80年代に入って社共連合のミッテラン政権が誕生すると、フランスの労働運動はCGTもCFDTも労使協調路線をとるようになって、労組幹部の官僚化が進んだ。ミッテラン政権の打ち出した緊縮財政を支持したCFDTは、鉄道・郵便・通信・水道などの公的部門が民営化攻撃を受けた際に、郵便局とフランス・テレコムの民営化に同意した。そして1988年に、民営化に反対して闘う急進派潮流の1000人の労働者を郵便・通信・医療部門から除名した。
除名された労働者は、連帯・統一・民主―郵便・電信電話労組(SUD―PTT)を結成して戦闘的に闘い、CFDTを脱退したランク&ファイルの労働者が次々に加盟して、その後SUD−PTTは1万2000人に組織を拡大した。とりわけフランス・テレコムではCGTに次ぐ組織率となり、CFDTや労働総同盟・労働者の力(FO)を追い越した。
また、この動きに連動してSUD参加が引き続いている。政府の赤字ローカル線の廃止攻撃に対して、国鉄でも1996年にはストライキに消極的なCFDTから脱退した労働者が、SUDの鉄道部門労組(Rail)を結成し、民営化に反対してストライキで闘っている。SUD―Railは4年間で国鉄第3位の組合に成長した。さらに看護師など医療職場や教員でも、闘いを求める労働者がSUDに参加する労働組合を結成している。CFDTは、1995年の年金改革を支持してストライキ労働者に反対し、2003年にも年金改革を支持し、急進的潮流の新たな脱退を引き起こした。
(写真 2009年1月29日ゼネストへのCFDTの呼びかけ)
■相次ぐ大規模ゼネスト
こうしたランク&ファイルの労働者の戦闘的な闘いに押され、CGTやCFDTも各ナショナルセンターの壁を越えて、人員削減・民営化攻撃に抵抗する全国一斉ストライキを担わざるをえなくなった。2009年3月には200カ所以上の都市で300万人がストに参加し、2010年にも「反サルコジ」の闘いは、5大労組全国組織による全国一斉ストライキと街頭デモをもって闘われた。現在に至るまでフランスの新自由主義政策に真っ向から反対する労働者の闘いは戦闘的に続いている。
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月刊『国際労働運動』(427号8-1)(2012/03/01)
国際労働運動の暦 3月15日
■1928年3・15弾圧■
戦前日共への大攻撃
治安維持法による共産主義と革命の一掃をたくらんだ全国一斉検挙
3・15事件は、戦前の日本共産党に対する最大規模の弾圧事件である。日本共産党は、ロシア革命の影響を受けて、コミンテルン(第3インターナショナル=国際共産党)の日本支部として1922年7月に結成された。だが、翌23年9月の関東大震災の戒厳令下で動揺した幹部が敗北主義的に解散を決めてしまっていた。これを克服するとして、再建のための会議(第3回大会)が26年12月に行われた。その後、28年2月の第1回普通選挙に非合法だった共産党は労働農民党から候補者を擁立した(労農党候補40人中11人が共産党員)。警察の激しい選挙干渉、弾圧にもかかわらず、大衆の前に公然と宣伝戦を展開した。
(写真 3・15弾圧を報じた『東京朝日新聞』28年4月11日付)
●激化する治安弾圧体制
当時の日本帝国主義権力は、ロシア革命の世界的拡大に怯(おび)え、日本の労働者階級の決起に恐怖し、治安弾圧体制を強めつつあった。1925年に普通選挙法(25歳以上の一般男子への選挙権)とセットで治安維持法を制定した。これは、「国体ヲ変革シ又ハ私有財産制度ヲ否認スルコトヲ目的トシテ結社ヲ組織シ又ハ情ヲ知リテ之ニ加入シタル者ハ十年以下ノ懲役又ハ禁錮(きんこ)ニ処ス」として、共産主義者の結社(共産党)を禁止し、プロレタリア革命を予防鎮圧するための法律であることをもろに打ち出していた。治安維持法ができたばかりの25年12月1日に京都学連事件で、野呂栄太郎、岩田義道など後の共産党中央委員を含む38人が被告になっている。
普通選挙法と治安維持法、この二つの法律の本格的発動が28年2月の第1回普通選挙であり、3・15弾圧だった。
3月15日午前5時、全国一斉の家宅捜索と逮捕が秘密裏に指令され、発動された。全国1道3府(東京、京都、大阪)・27県にわたり、家宅捜索百数十カ所、党員およびシンパと見なされ逮捕された者約1600人、その後も逮捕が続き28年中に3400人に及んだ。4月10日には、日本労働組合評議会、労働農民党、全日本無産青年同盟の3団体に解体を命じた。全国の警察署で、凄惨な拷問が行われた。翌年4月16日には、約300人が逮捕される大弾圧が強行された(4・16事件)。
権力は、内部に送り込んだスパイなどを通じてかなり組織掌握をしていたが、最高幹部は把握しないままの弾圧強行だった。大量逮捕のわりには重要幹部を「取り逃がし」ていた。弾圧をまぬかれた渡辺政之輔、佐野学、鍋山貞親らが党の再組織化に動いた。
●革命の現実性
権力の凶暴な弾圧は、帝国主義権力の強さではなく、共産主義とプロレタリア革命に対する権力の恐怖の大きさを示していた。
問題は、日本共産党がスターリン主義に指導された党だったことだ。一国社会主義論を本質とするスターリン主義は、世界革命の党であるはずのコミンテルンをソ連防衛の機関に変質させ、そこから日本共産党を指導した。プロレタリア革命の綱領と路線を持たず、非合法・非公然の党を建設することにおいても不徹底だった日本共産党が、その弱点をつかれ、攻め込まれたと言える。
30年代になると、獄中の共産党幹部から佐野、鍋山を始め転向者が続出する。厳しい弾圧に屈したと言うより、天皇制イデオロギーに屈服し、「共産主義」を捨てていったのである。
戦前の共産党の組織は最盛時でも600人程度に過ぎなかったと言われており、幹部以下20代、30代の青年ばかりであった。だが、その影響力は巨大なものがあり、それは日本の労働者階級が自己解放を求めて澎湃(ほうはい)と立ち上がった中で生み出されたものだった。権力は革命の現実性の前に心底から恐怖し、構えていたのである。
共産党の党組織は35年には壊滅状態となり、『赤旗(せっき)』は35年2月をもって停刊状態になった。45年までの治安維持法による検挙者は数十万人、送検は7万5千人と言われる。獄中の待遇もひどく、拷問その他獄中死が千数百人に上った。
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日共再建から大弾圧まで
26年12・4 日共再建のため第3回大会開く
12・25 天皇死亡。昭和と改元
27年4・20 田中義一内閣成立
5・28 第1次山東出兵
5・30 京都地裁、学連事件に有罪判決
7・15 コミンテルン「日本問題に関する決議」(27年テーゼ)
12・1 共産党拡大中央委員会、27年テーゼによる党建設を決議
28年2・1 日共機関紙「赤旗」創刊
2・20 初の普通選挙
3・15 日共に対する全国一斉検挙
4・10 労農党など3団体解散命令
6・29 治安維持法改正公布(死刑、無期を追加)
7・17 第6回コミンテルン大会
12・25 日本労働組合全国協議会(全協)結成
29年4・16 再度の日共一斉検挙
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月刊『国際労働運動』(427号9-1)(2012/03/01)
日誌 2011年12月
1日東京 女たちのとつきとおかのテント村行動
霞が関の経済産業省前で「未来を孕(はら)む女たちのとつきとおかのテント村行動」が始まった。呼びかけたのは、10月27〜29日の「ついに女たちは立ち上がり、そして座り込む! 原発いらない福島の女たち100人の座り込み」の世話人・椎名千恵子さんら、福島の9人の女性たち
1日東京 西郡住宅闘争、最高裁の上告棄却弾劾
最高裁は、解同全国連西郡支部の岡邨洋支部長ら3家族の訴えを棄却する反動判決を出した。西郡支部は、「12・1最高裁上告棄却弾劾!3家族の住宅追い出しを阻止しよう!新たな11家族の住宅明け渡し提訴を許すな! 西郡更地化=廃村攻撃をうち破ろう!」との弾劾声明を発した
2日東京 福嶋昌男被告ら最高裁へ申し入れ行動
迎賓館・横田デッチ上げ弾圧裁判の福嶋昌男被告は上告審闘争の一環として「迎賓館・横田裁判の完全無罪をかちとる会」の支援者とともに最高裁へ申し入れ行動を行った
3日福井 もんじゅを廃炉へ!¢S国集会
「もんじゅを廃炉へ!全国集会」が、敦賀市で開催され1300人が結集した
5日東京 東電と原賠審に署名提出
原賠審の前日、子どもたちを放射能から守る福島ネットワークなどの呼びかけで、東電と原賠審に対する署名提出行動と記者会見が行われた。呼びかけられた2614筆の署名を提出した
6日東京 原発事故賠償指針「一律同額」に怒り
「警戒区域、計画的避難区域以外からの自主避難者に対して、正当な賠償を行え!」の切実な訴えが大きく広がる中で、政府の原子力損害賠償紛争審査会(=原賠審)は、この要求を真っ向から踏みにじり、福島県内23市町村の全住民について一律同額の賠償を行うという追加指針を決定した
6日千葉 市東農地裁判、早期結審策動を粉砕
千葉地裁民事第3部(多見谷寿郎裁判長)で市東孝雄さんの行政訴訟・農地法裁判(2裁判を併合)の口頭弁論が開かれた。三里塚芝山連合空港反対同盟、顧問弁護団、傍聴の労働者・市民が一体となって、証人調べを切り捨てて早期結審へ進もうとする千葉地裁の策動を完全に打ち破った
7日東京 八重山住民、文科省に3万署名を提出
沖縄・八重山地区(石垣市、与那国町、竹富町)の教科書採択問題で、八重山住民の代表7人が上京し、文部科学省に対する抗議・要請を行った。午後から参議院議員会館で院内集会が開かれた
7日宮城 東北石けん地労委一日行動
東北石けん地労委一日行動が打ち抜かれた。朝8時に愛島台新工場門前を制圧した当該・支援の仲間は「畑惣商店と畑文雄こそ、解雇の最大当事者だ!」と怒りの弾劾をたたきつけた
8日東京 原発事故のもとで進む改憲に警鐘
「原発事故のもとで進む改憲への道」集会(8・15集会実行委員会主催)が杉並区産業商工会館で開かれ、50人が集まった
8日愛知 「浜岡原発を廃炉に」申し入れ行動
愛知労組交流センター、三重労組交流センター、東海合同労組が呼びかけた「浜岡原発を廃炉に!政府・電力会社はフクシマ事故のすべての責任を取れ!」中部電力本店抗議・申し入れ行動が闘われた
9日宮城 東北大自治会選に勝利
東北大学学生自治会執行部選挙が行われた。「たかせ統一候補」の信任投票になり、投票総数1124、信任票732を得て、新執行部が確立した
10日千葉 この地で農業続ける℃s東さんの会千葉市文化センターで市東さんの農地取り上げに反対する会の主催で「人の命か『国策』か――フクシマ、沖縄、成田をつらぬく棄民政策・農業つぶし」と題したシンポジウムが開かれた
10〜11日 全国で反原発大行動が闘われる
10日東京 さようなら原発1000万署名集会
日比谷野外音楽堂で作家の大江健三郎さんらが呼びかけた「がんばろう!さようなら原発1000万署名」集会が開催された。5500人を超える参加者は9・19反原発6万人集会の高揚を引き継ぎ、原発再稼働阻止、全原発廃炉への決意を一層固めた
10日東京 全学連拡中委で3・11福島集会方針
反原発デモの後、全学連拡大中央委員会が都内で開催された
10日北海道 すべての原発いますぐなくそう!全国会議(NAZEN)・北海道(準備会)は札幌の大通公園で街頭宣伝を行い、1時間余りで50筆の署名が寄せられた
11日宮城 「すべての原発いますぐなくそう!全国会議(NAZEN)みやぎ結成集会」を仙台弁護士会館で100人の参加でかちとった
11日福島 福島市で「子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク(子ども福島)」の12・11企画、生活村&デモが行われた
11日千葉 原発なくせ!ちばアクション実行委員会の呼びかけで、船橋で初めてデモが行われた。県内各地から180人が参加して大成功した
11日神奈川 「とめよう原発!神奈川・東電デモ実行委員会」が呼びかけるデモは、10、11月に続き3回目。前回を上回る130人が参加した
11日埼玉 さいたま市で講演会「肥田舜太郎さんに聞く!!」と反原発デモが行われた。主催は「埼玉反原発アクション」。講演会には150人、浦和駅までのデモには200人が結集した。
11日新潟 新潟市で実行委員会主催の「脱原発アクションinにいがた」に90人の労働者・市民が結集、デモと集会を闘った
11日茨城 脱原発ネットワーク茨城12・11アクション実行委員会の主催で「ハイロパレードinつくば」が開催され、県内各地から550人が参加した。集会後、デモにうって出た
11日沖縄 那覇市国際通り沿いの牧志駅前ほしぞら公民館で、福島とつながる沖縄デモ実行委員会が主催する矢ケ附飼nさんの講演会が行われた
10日福岡 NAZEN福岡は、福岡市天神コア前で街宣行動に決起した。13日には、1万5千人が結集した「11・13さよなら原発!福岡1万人集会」実行委員会の主催で約40人が参加した九電申し入れ・弾劾行動に参加し、ともに闘った
11日広島 NAZENヒロシマ準備会が主催したトーク&アクションが、平和公園の原爆資料館内の会場をあふれる70人の参加で大成功。NAZENヒロシマ結成に向け大きな一歩を踏み出した
11日島根 NAZEN山陰が呼びかけた「松江アクション」に、鳥取・島根両県で反原発を中心的に闘う30人が結集した
11日岡山 「こども未来・愛ネットワーク」が呼びかけた「原発いらないパレード」に、11月20日に原発再稼働反対を訴え独自デモを行ったNAZEN岡山も合流した。200人が集まった
11日青森 坂井留吉さんを偲ぶ会開く
「核燃から漁場を守る会」の坂井留吉さん(享年87歳)を偲ぶ会が青森市で開催された。主催は「坂井留吉さんを偲ぶ会」実行委員会。全国から60人が結集した
11、12日千葉 動労総連合大会、決戦方針確立
動労総連合は、DC会館で第26回定期全国大会を開いた。各単組とも激闘の2011年を総括し、組織拡大を軸とする2012年の決戦方針を確立した
12日東京 鈴コン分会、解雇日に社前闘争
東京西部ユニオン鈴木コンクリート工業分会に対して、7日の分会長解雇に続き、12日は分会会計の解雇日だ。早朝から門前に分会員、西部ユニオン組合員、支援者を合わせて20人が集まった
12日大阪 西郡、末光市議と共に議会闘争
八尾市議会建設産業常任委員会は佃照夫さんら11家族を住宅明け渡し裁判にかける議案を強行採決した。怒りに燃える当該を先頭に30人近くが市議会に詰めかけ傍聴。10人以上が退場になりながらも、末光道正議員と一つになり闘いぬいた
12日東京 死の商人∴ノ藤忠弾劾
米西海岸港湾封鎖と連帯し日本では動労千葉、全国労組交流センター、全学連、星野再審全国連絡会議などが参加して、東京・青山の伊藤忠本社に対する弾劾行動が行われた
12日東京 PAL東京支店に申し入れ行動
フィリピン航空(PAL)東京支店に対して、動労千葉、全国労組交流センター、星野再審全国連絡会議は、外注化・労組破壊停止要求の申し入れ行動を行った
17日茨城 動労水戸定期大会を開く
動労水戸は、水戸市内で第30回定期大会を開いた。動労水戸はさらなる組織拡大を軸とする2012年の運動方針を確立した
18日岡山 動労西日本、定期大会で運動方針確立
動労西日本は岡山市内で第4回定期大会を開催した。非正規職撤廃・組織拡大の方針を決定した
18日東京 東日本解放共闘総会開く
部落解放東日本共闘会議の第20回総会が、全水道会館で開かれた。部落解放同盟全国連合会杉並支部と品川支部を先頭に75人が参加した
19日千葉 庁舎前で意気高くスト突入集会
動労千葉は、JR東日本による銚子運転区廃止―佐倉・銚子運輸区新設に反対し、強制配転のための線見訓練を拒否する指名ストライキを継続している。20日からは千葉運転区支部組合員も指名ストに突入した。19日には千葉運転区支部が運転区庁舎前でスト突入集会を開催した
21日大阪 末光市議と一体で八尾市弾劾闘争
新たに11家族を西郡住宅から追い出す議案の採決を絶対許さないと家賃供託者を先頭に部落解放同盟全国連西郡支部など労働者100人が末光市議と一体となって八尾市弾劾闘争を闘った
22日東京 鈴コン分会、解雇撤回へ総決起集会
北区の赤羽会館で東京西部ユニオン鈴木コンクリート工業分会の「解雇撤回!非正規職撤廃!総決起集会」に合同・一般労組全国協議会の仲間を先頭に、340人が集まった
23日新潟 羽越線事故6年で集会・デモ
JR羽越線事故から6年、新潟市で階級的労働運動の力強い登場を目指す集会デモが50人の県内外からの結集でかちとられた
28日東京 福島の女達が「御用納め」に上京行動
「原発いらない福島の女たち」が東電・経産省前で「女たちの御用納め」行動に立った。福島から大型バス1台、約50人、参加者は300人になった
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月刊『国際労働運動』(427号A-1)(2012/03/01)
編集後記
稼働原発が4 基に落ち込む中で、野田政権は再稼働に躍起となっている。1月下旬からの六ケ所核燃再処理工場の試験再開策動、伊方3号機、東通原発の再稼働が最大焦点だ。1月17日には原発運転を最長60年間とする方針を打ち出し、18日には大飯原発の「安全評価」を強行した。
だがこれは人民の怒りの火に油を注いでいる。1月14〜15日、横浜で世界30カ国1万1500人の参加による反原発の国際会議が大高揚した。勝負はいよいよこれからだ。
重要なことは、福島原発事故という人類が経験したことのない国家と資本の大犯罪への責任追及を貫くことだ。事故は「収束」するどころか、放射能汚染はいよいよ深刻化している。2・11代々木公園反原発大集会、3・11福島現地決戦(郡山)へ組合旗を林立させて大結集を!
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