International Lavor Movement 2011/04/01(No.416 p48)

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2011/04/01発行 No.416

定価 315円(本体価格300円+税)


第416号の目次

 

表紙の画像

表紙の写真 ストに突入したエジプト公共交通労組(2月14日 カイロ)

■羅針盤 ムバラク打倒した労働者階級の威力 記事を読む
■News & Review 韓国
 現代車非正規職支会が第2波ストへ
 「現場の団結した力で懲戒阻止!」
記事を読む
■News & Review エジプト
 世界を揺るがすエジプト革命革命の連鎖に震撼する米・EU帝国主義
記事を読む
■News & Review アメリカ
 朝鮮侵略戦争へ新「国家軍事戦略」
 米帝の戦争政策を打ち砕くエジプト革命
記事を読む
■特集/国鉄全国運動柱に4月選挙戦勝利を 記事を読む
■翻訳資料
 ムバラク独裁の暴虐を暴露したウィキリークス
 鵜川遊作 訳
記事を読む
■Photo News 記事を読む
■世界経済の焦点   絶望的危機示す2011年度予算案
 「社会保障と税の一体改革」は消費税大増税
記事を読む
■世界の労働組合 イギリス編
 イギリス消防士組合(Fire Brigades Union:FBU)
記事を読む
■国際労働運動の暦/4月17日   ■1964年4・17春闘スト■
 不発の戦後最大スト
 太田−池田トップ会談で中止取引 日共が「米帝の挑発」とスト破り
記事を読む
■日誌 2011年1月 記事を読む
■編集後記 記事を読む
裏表紙の写真 エジプト大使館前で抗議闘争(2月9日)

月刊『国際労働運動』(416号1-1)(2011/04/01)

羅針盤

■羅針盤 ムバラク打倒した労働者階級の威力

▼エジプト革命は、労働者と労働組合の根底的な階級的威力を指し示している。ムバラク打倒にまで到達したエジプトの蜂起と革命は、第一に何よりも、官製労組の支配を打ち破って新たなナショナルセンターを設立した青年労働者を始めとする労働者階級の、嵐のような決起とストライキの爆発が、最大の原動力となった。
▼新自由主義は全世界で、農漁民や遊牧民から土地と海を奪うと同時に、膨大な賃金労働者を生み出し、それを「資本主義の墓掘り人」に変えることで「大恐慌をプロレタリア世界革命へ」の闘いを現実化した。今やチュニジア、エジプト、モロッコなどの北アフリカ諸国は超低賃金下で「ヨーロッパの新工場」、生産基地となっており、日本企業も次々に参入している。
▼しかもエジプトの青年労働者は慢性的失業状態にあり、大恐慌前の2005年段階でも若者の失業率は23%におよび、人口の4割が「一日2j以下」の貧困生活を強いられてきた。大恐慌下で、さらなる大失業、食糧価格高騰、インフレが労働者を襲った。独立労組連盟や08年のストライキや「食糧暴動」のただ中から生まれた「4月6日運動」の労働者や学生のグループが、決起を呼びかける指導部となり、ムバラク打倒という、プロレタリア革命完遂への第一段階の勝利を切り開いた。
▼スエズ運河の6千人の労働者のストを始め、鉄鋼、交運、病院、電気、ガス、製薬、新聞など、エジプト全土での労組・労働者のストの爆発こそが、タハリール広場防衛や、100万人デモの組織化を支え抜き、米帝などの策動やムバラク派の反革命を押し返したのだ。
 3・20渋谷反戦デモを5千人の大結集で闘い抜こう。

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月刊『国際労働運動』(416号2-1)(2011/04/01)

■News & Review 韓国

現代車非正規職支会が第2波ストへ

「現場の団結した力で懲戒阻止!」

 現代(ヒョンデ)車非正規職支会第4工場事業部のチョミソン現場委員が訴えている。(写真=2月17日、第2波スト出征式)
 「(昨年)11月15日に第1工場で占拠座り込みを始め、12月9日にストライキを中断して降りてきました。その翌日、使用者側はこっそり憲法裁判所に旧派遣法は違憲だと申請しました。本当にとんでもないことですよね。平和期間と誠実交渉の決裂宣言は使用者側が先に行いました。使用者側はこの数日間チラシをまいて、使用者側案は『合理的な』『現実的な』『代案』と主張しましたが、これは私たちの闘争を押し倒す弾圧です。
 そして、支会が使用者側の案を受けず、名ばかり社長を押し出して不法を働いたから懲戒を受けろというのです。この懲戒が正当ですか。絶対違います。7月22日の大法院判決、2月10日のチェビョンスン判決(ソウル高裁が一審に続き、現代自動車蔚山(ウルサン)工場で2年以上働いた非正規職労働者は実質的な正社員として認めなければならないと決定)です。私たちが懲戒される理由はありません。
 懲戒されたら支会が全組合員を招集して、蜂の群れのように不当懲戒を無にしなければなりません。皆さん、そのために何が必要でしょうか? ストライキ指針が必要です。すでに第1工場のイミナ同志が今日付けで不当解雇の通知を受け取りました。明日、懲戒委員会が開かれるそうです。来週もあちこちで懲戒委員会が開かれるでしょう。支会は懲戒委が開かれたらストライキ指針を出して下さい。現場でしっかり団結した力で懲戒を阻止すれば、隊伍は壊れません。
 皆さん、第2派闘争の開始を知らせる懲戒撤回闘争! 懲戒にはっきり答えを出し、われわれの要求である正規職化を争奪しましょう。第2波ストを組合員が作っていきましょう。不当解雇を粉砕して正規職化をかちとろう!」

 □殺されてたまるか!

 現代車非正規職支会は2月7日に臨時代議員大会を開き、第2波ストの組織化に踏み出した。
 現代車資本は工場占拠を解けば交渉に応じると言いながら実際にやってきたことは、組合員に対する巨額の損害賠償請求や告訴告発、労組への弾圧と分断工作でしかなかった。解雇者の復職も一部の選別的復帰しか認めないと主張した。金属労組現代車支部(正規職労組)執行部は1月25日の交渉で、会社側の主張を大幅に受け入れた内容で合意し、その合意案をのむよう非正規職3支会に迫った。しかし、現代車非正規3支会(蔚山、牙山(アサン)、全州(チョンジュ))はこれを「われわれ組合員をみな殺しにする案だ」と即座に拒否した。
 7日の代議員大会であらためて「正規職と非正規職が共同で作業し、元請け管理者からすべての作業指示を受ける製造業では、下請け労働者は不法派遣だという昨年7月の大法院判決の根拠は一つも変わっていない。現代車工場の中で働くすべての下請け労働者が現代車をつくってきた事実も変わっていない。現代車工場の全労働者が団結して闘える要求、『すべての社内下請労働者を正規職に転換せよ』という要求は正当だ」と、第2波闘争方針を決定した。
 この方針を受け、9日午後からイサンス支会長と現代車非正規職解雇者の2人がソウルの曹渓寺(チョゲサ)で無期限座り込みに入った。イサンス支会長は昨年の工場占拠ストにより指名手配され、蔚山の現場で陣頭指揮することができない中で非正規職闘争の正当性と指名手配の解除を訴えてハンストに突入したのだ。イサンス支会長は「交渉に期待したため活動が萎縮し、混乱した。だが現場にはまだ闘う力が残っている。私をはじめ仲間たちは『仲間を信じ、私を信じ、正規職化をかちとろう』というスローガンが一番好きだ。おそらく会社は組合員にさまざまな懐柔カードを持ち出すだろうが、互いを信じ、これをのりこえることが必要だ」とアピール。
 この日、現代車蔚山工場烈士広場の前では全組合員決意大会が開かれ、 集まった250人の組合員が第2波ストライキを決意した。  この日、現代車蔚山工場烈士広場の前では全組合員決意大会が開かれ、 集まった250人の組合員が第2波ストライキを決意した。
 2月12日、現代非正規職支会のノドグ前主席副支会長、キムテユン組合員が良才洞現代起亜車本社前で高空籠城に突入した。
 2月14日、現代非正規職支会は争対会議で「4項目の議題に関する交渉にはもう参加しない」ことを決め、17日のスト出征式で公式に交渉決裂を宣言することにした。
 翌15日、イサンス支会長の曹渓寺ハンストが6日目を迎え、現代車本社前高空籠城も3日目を迎え、現代車蔚山非正規職支会の組合員45人が上京し、現代車本社前で非正規職撤廃集中集会が開かれた。現代車本社前の30bの広告看板の上で座り込み中のノドグ、キムテユン組合員からは「私たちの目的はただ一つ、最高裁判決による現代車非正規職労働者の正規職転換だ」とのメッセージが届いた。
 この日、韓進(ハンジン)重工業のキムジンスク指導委員の高空籠城は40日を超え、前日の14日朝には韓進重工の幹部2人も高空籠城に突入していた。集会では約60日間、富平のGM大宇(デウ)工場正門で高空籠城を続けたGM大宇非正規職支会のファンホイン組合員もマイクを握り、「満足できない結果で座り込みをやめたこと、現代車の仲間より先に闘争を終えたことは申しわけない。だが闘争で得たのは、闘争の意志さえあれば何でも実現できると知ったことだ」と連帯を表明した。10月からフランス大使館の前で野宿座り込みを続けているヴァレオ空調コリア支会の組合員たちもともに闘った。
 他方、15日夜、現代車は支会組合員が所属する社内下請け業者に懲戒委員会再開を告知し、懲戒対象者を発表した。現代車は特別交渉期間中は懲戒を留保すると言っていた。16日現在、支会が確認した解雇者リストはイサンス支会長を始め31人に上った。
 迎えた2・17スト出征式当日、現代車は会場として予定されていた烈士広場周辺を管理者千人以上と大型バスを配置して封鎖した。この暴挙にも正規職労組である金属労組現代車支部は沈黙。この屈服に乗じ、会社管理者たちがバイクで出勤する現代車支部代議員のヘルメットを強制的に脱がし、後ろ髪をつかむという事態に至った。
 非正規職支会は2月16日発行の争対委機関誌で「警備隊が出勤の途中、正規職組合員の身分をいちいち確認しており、正規職代議員を阻止し、身元確認と所持品確認を要求している。こんなに現場が蹂躙されれば現代車支部24年の歴史でかちとってきた現場権力は一日で崩れる。現代車支部と活動家が社側の露骨な現場統制に積極的に抗議して闘争を組織しなければならない」と訴えている。
 しかし非正規職支会は、この弾圧を突き破り、17日午後5時半、組合員500人を現代自動車蔚山工場正門前に集結させ、ストライキ出征式をかちとった。現代車支部は公式には参加しなかったが、参加した現代車支部活動家は非正規労働者とともに闘う決意を明らかにした。
 現代車非正規職支会のユンソゴン事務局長は「16日から全工場で解雇懲戒が出されたいる。だが8年間守ってきた労働組合だ。解雇・懲戒を堂々と突破して前進する」と断言し、「25日間の工場占拠ストライキは殴られ、血を流して守ったストライキ闘争だ。スト中断後に行われた5回の交渉で現代車は告訴・告発・損賠を撤回せず、不法派遣特別交渉を回避している。こんな提案に合意できるわけがない。懲戒・解雇を振り払い、8項目の要求(注1)をかちとるための第2次全面スト闘争を組織するため、前だけを見て着実に歩いていこう」と訴えた。
 曹渓寺でハンスト中の現代車非正規職支会のイサンス支会長は電話で「サイトに書き込まれたストライキ出征式の写真を見た。仲間の目が生き生きしていた。きょう現代車は平和な集会を妨害した。現代車が弾圧するほど、彼らの正当性が消え、私たちの正当性がさらに確保される。第2波ストライキは第1波ストライキより苦しいかもしれないが、現場を組織して組合員と共に現代車を降伏させる」と決意を明らかにした。
 続けて「組合員が現場で闘争を展開すると信じている。欺瞞的な4議題(注2)でぶれたのも事実だが、これ以上欺瞞的な4議題で悩まず、8項目の要求(すべての社内下請を正規職化しろ)、ただこの要求だけで力強く第2波ストライキ闘争を組織しよう」と呼びかけた。
 翌18日午後4時、警察は現代車本社前の高空籠城に対し警察特殊部隊を投入。非正規職支会組合員2人を広告塔から引き下ろし、瑞草警察署に連行した。ストライキ闘争の前進に追い詰められた許し難い暴挙だ。
(写真上 第2波ストライキ闘争の出征式【2月17 日 現代車蔚山工場正門前】)
(写真下 2月12日、現代車非正規職支部組合員2人が本社前の30bの広告看板で無期限高空籠城に突入!)

 □4時間ストを闘って

  怒りに燃えた労組は、2月21日午後1時から4時間のストライキに立ち上がった。これは直接には第4工場のフャンホギ代表、エンジン変速機のシンミョン企業での集団懲戒に対する抗議ストライキだったが、これに第1工場、第2工場の組合員が合流して闘った。
 シンミョン企業の組合員は「午後1時にシンミョン企業の前に組合員が集まったが、第2工場の組合員も来て80人ほどになった。管理者が妨害した。代表2人が業者社長に懲戒について抗議した。ぶつかりもせずに押し出されたが、きょうの部分ストは意味があった。第2工場の仲間たちが来てくれてありがたい。私たちが一つになった感じを受けた。持続的にゲリラストライキをして、管理者の封鎖を突破するまで闘い続けなければならない」と語った。
 第1工場の組合員も「緊急の指針だったが組合員が集まってくれたので自信がついた。組合員の意志を確認した。きょうの部分ストは当然だ。不当懲戒に対して指針が必要だったし、意味あることだった。私たちはまだ負けていない。最後まで、勝つまで闘う」と意気高い。
(写真 現代車非正規労組は不当懲戒に対抗して4時間ストを闘った【2月21日 蔚山】)

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注1/昨年9月、現代車非正規職3支会(蔚山、牙山、全州)は現代車に「不法派遣撤廃! 非正規職即刻転換」のための交渉を要求、労使合意事項として要求したのが以下の8項目。@非正規労働者と3支会および対国民謝罪、A社内下請け労働者全員の正規職化、B全解雇者の正規職化、C同一部署・同一勤続による未払い賃金支給、D不当懲戒および拘束・手配に対する補償、E故リュギヒョク烈士の名誉回復、F現在進行中の整理解雇の即刻中止、G今後、不当な非正規職労働者を使用しないこと。

注2/「特別交渉」は予め現代車(元請け)と非正規職支会との労使交渉ではないとされた上、@告訴・告発、損害賠償、治療費などの解決、A雇用保障、B非正規職支会指導部の社内での身辺保障、C不法派遣交渉対策の4議題も、25日間に及んだ工場占拠ストの引き金となったドンソン企業(社内下請け業者)廃業へのストに限られた。特別交渉中、現代車は懲戒を保留するとされたが、労組の事実上の争議放棄が前提なのだ。
 (室田順子)

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月刊『国際労働運動』(416号2-2)(2011/04/01)

■News & Review エジプト

世界を揺るがすエジプト革命革命の連鎖に震撼する米・EU帝国主義

  第1章 □エジプト革命の巨大なインパクト

 □エジプト革命の巨大なインパクト

 労働者階級の歴史的決起によってムバラク打倒をかちとったエジプト革命は、アメリカ帝国主義を主軸とする戦後世界体制の中東における柱を決定的に打ち砕いた。
 世界大恐慌と侵略戦争開始情勢のただなかで、労働者人民の怒りがどんなに深く、激しいか、そして労働者階級の力がどんなに巨大であるかを、エジプト革命は、すでに決起を開始している全世界の労働者に対して、あらためてさし示した。この闘いは、エジプト労働者階級とともに、帝国主義の中東支配の支柱である反動的政権のもとで数十年のあいだ苦しんできた中東アラブ諸国の人民に、限りない自信を与え、解放への展望を示すものである。また、地中海をへだてたギリシアを先頭に、EU帝国主義の緊縮政策の名による階級戦争と闘っているヨーロッパ全域の労働者人民にとって、巨大な同盟軍が登場したことを意味する。
 そしてさらに、ムバラク打倒によって、巨大な打撃をこうむったのが、アメリカ帝国主義だけでなく、中東全域に巨大な利権を抱える英独仏を先頭とするEU帝国主義であることが、日々明らかになり、世界プロレタリアートの共通の敵の姿が、ますます鮮明になってきた。以下、エジプト革命がEU階級闘争に対して与えているインパクトについて明らかにし、階級的労働運動の世界的勝利の道が、どこにあるかを明らかにしていきたい。

 □新自由主義のエジプト・中東進出

 エジプトがムバラク政権下で、米帝の戦後世界体制の中東における最大の支柱であったこと、率先してイスラエルへ手を差し伸べ、他の反動政権の盟主となって、パレスチナに代表される民族解放闘争の解体において米帝の手先となったこと、そして、帝国主義にとって死活的な石油・天然ガスなどの資源を確保するために中東地域を反動的に制圧する役割を果たしてきたことは、周知の事実である。
 その確認のうえで、今回のエジプト革命で次のような点が暴き出されてきた。すなわち、第一に、この間の新自由主義の展開のなかで、とりわけEU帝国主義が、エジプトを先頭とする中東諸国〔西アジアとも呼ばれる〕を格好のターゲットとして資本を集中してきたことである。
 第二に、それによって中東・アフリカが経済的・金融的・産業的・社会的に大変貌をとげてきたことである。
 第三に、その手先としてムバラク政権が強権的支配体制を強化し、帝国主義の延命のために強行していた新自由主義政策が、中東に膨大な労働者階級を新たに生み出してしまった、ということである。
 第四に、この若々しい労働者階級が、世界大恐慌のただなかで、エジプト、チュニジアを先頭に、ついに巨大な歴史的反乱を開始し、それが湾岸諸国の労働者階級の決起を促し、プロレタリア世界革命への大合流が現実化してきている、ということだ。
 21世紀に入ってから、新自由主義が、ラテンアメリカ諸国、アジア諸国をへて、中東・アフリカに押し寄せた。狙いは、石油など資源の要衝であるこの地域の金融的支配、国有企業の民営化による民間資本への開放、エネルギー部門の拡充・インフラ開発・IT情報産業などによる新規分野の開拓、そしてとりわけEU諸国からの工場移転(国境をこえた外注化)などである。
 その集中的表現として、EU帝国主義の直接投資が急増した。エジプトは、中東の大国として、石油輸送の大動脈=スエズ運河を押さえ、石油、天然ガスの産出国でもあることから、サウジ、UAE(アラブ首長国連邦)と並んで、最大のターゲットとなった〔表T参照〕。
 EU帝国主義は、戦後世界体制のなかで、米帝に奪われていた中東支配を奪い返すべく、独仏英間の帝国主義的争闘戦を含みながらエジプトに進出、国内市場にくいこみ、エジプト労働者を、EU諸国よりもはるかに低い賃金で搾取していった。
 フランスは二十数社が進出し、5万人の労働者を雇用、ドイツは、直接投資額が5億ユーロ、2万人を雇用している〔表U参照〕。
 EU金融資本も侵入。フランスはエジプト最大の債権国で、資産が170億j、次はイギリスで107億j、第三位がイタリアで63億j、その他の諸国を含めて、エジプトにおけるEU諸国の資産総額は403億jにのぼる。

 □ムバラク政権は、新自由主義攻撃の手先

 このような新自由主義のエジプト・中東進出の道を開いたのがムバラク政権であった。規制緩和・民営化・外注化・労組つぶしなど、EU帝国主義の利益の実現を、他の中東反動政権に先んじて、ムバラクが体現していった。
 2004年には、抜本的な税制改革を行い、外国投資家に対して、財産相続税、資本所得税を廃止するなどの優遇政策を約束した。そして、会社設立の手続きを簡略化し、経済自由地域を開設するなど、「投資に良好な環境」を整備し、欧米資本の流入を促進したのである。
 その結果、世界銀行は「エジプトは、この間、有効な経済改革を実行した世界の10の国のなかで、第六位」「中東・西アジア地域で、最も投資環境がいい国」と賞賛した。
 したがって、ムバラク政権の階級的性格は、たんなる専制的暴力支配、民主主義のじゅうりんという次元にあるのではなく、帝国主義の新自由主義攻撃に労働者人民をさらし、極限的な搾取を強い、そこから必然化する労働者階級の反乱を、徹底的に抑圧・弾圧することにあったのだ。そして、このムバラク体制の労働者支配の支えとなったのが、体制内労働運動〔ETUF(エジプト労働組合総連合会)〕である。〈4月6日青年運動〉と呼ばれる労働者の階級的結集の出発点となった2008年の労働者反乱は、このような新自由主義への一大反攻ののろしであった。
 世界大恐慌直前のヨーロッパの投資会社のパンフレットには、次のような文言があふれていた。「エジプトはアフリカへの資本進出の門戸」「エジプトへの投資は安全な賭け=v「エジプトはアメリカ、EUと完璧な信頼関係にたっており、政治は安定、人びとは平和に暮らしています。投資環境は最高」等々。

 □中東の労働者決起に恐怖するEU帝国主義

 こうしたことから、チュニジア労働者の決起に間髪をいれずに、エジプト労働者人民が立ち上がったときに、アメリカ帝国主義とイスラエル、中東の反動的政権はもとより、EU諸国のブルジョアジーは、文字どおり真っ青になった。
 2月初旬にミュンヘンで行われたNATO定例会議でも、ブリュッセルのEU外相会議でも、予定した議題は吹っ飛び、「エジプト情勢」にどう対応するかが、大問題となった。NATO司令官ラスムッセンは「エジプトの激動は、中東だけでなく全世界に地殻変動をもたらすものだ」と叫び、独仏英などのEU中心国は、EUの協議を待たずに、「事態の平和的で、秩序ある展開を希望する」などという緊急声明≠出して、対米対抗姿勢と、EU内部の分裂の隠蔽を試みたのである。
 一方、EU企業は、エジプト現地スタッフに避難命令を発し、工場の本国への撤退計画、危機管理対策などに追われた。
 帝国主義者は、「イスラム原理主義の脅威」などと言っているが、実は彼らが、最も恐れているのは、中東全域の労働者人民の決起が、すでにギリシャを先頭に開始されているEU労働者のデモやストライキによる決起と合流し、ついにプロレタリア世界革命へ向けて大爆発するにいたることである。

 □EU全土でエジプト革命支持のデモ

 それでは、EUを始めとする全世界の労働者は、エジプトの労働者反乱に対して、どのような反応をしているであろうか。
 チュニジアに続くエジプト労働者人民の決起に、全世界で連帯のデモが広がった。
 ヨーロッパでは、パリ、ロンドンを始め、ベルリン、マドリード、ウィーンなどでエジプト大使館への抗議行動として、在住のエジプト人と合流したデモが行われた。
 アメリカでは、全国各地に行動が広がり、ここでも在米エジプト人民との共闘が闘われている。
 注目すべきは、中東諸国の動向である。ムバラクとならぶ反動政権への怒りを爆発させたデモが続発していることだ。アルジェリア、イエメン、リビア、ヨルダンなどで、反政府デモが闘われており、ヨルダンでは内閣の打倒をかちとっている。
 とりわけ、パレスチナ各地では、「中東人民に誇りと自信を回復させてくれた」と叫んでエジプト革命を支持したデモが行われた。
 ところが、西岸を支配する反動アッバス自治政府は、このデモをただちに弾圧し、ムバラクを電話で激励した。ガザを支配するハマス政権もデモを弾圧した。にもかかわらず、西岸地区でもガザ地区でもデモが続けられている。
 ギリシャに続け≠ノ始まったヨーロッパ労働者階級の決起は、地中海をわたって中東・アフリカ人民を動かし、それが再びヨーロッパの階級闘争へと還流して、国際連帯のうねりをつくりつつある。
 現に、ギリシャの労働者階級は、政府の緊縮政策への闘いを非妥協的に年を越えて継続している。2月1日、アテネの交通労働者は、公共交通の民営化へ向けての動きに抗議して、2日にわたって首都のバス、地下鉄を止めた。裁判所のスト中止命令は粉砕された。また、政府の医療部門の経費削減計画に反対する医師たちは、2月2日、24時間ストを宣言して、厚生省の会議室を占拠、座り込みを続けている。

 □体制内派の壁と衝突

  こうした闘いは、いずれも労働運動の体制内指導部との熾烈な闘争を不可避としている。イギリスやフランスのデモでは、体制内派は、なんとかエジプト革命の階級的爆発力がEU労働運動に感染≠キることを阻止しようと、既成政党の「エジプトの民主化」アピールに同調するなどの策動を行い、階級的労働運動の発展に敵対しているのである。
 エジプト革命をかちとったエジプト労働者階級と連帯し、世界大恐慌と戦争との全世界労働者人民の闘いを、プロレタリア世界革命の勝利へ前進させる唯一の道は、体制内指導部を打倒し乗り越える階級的労働運動の職場での実践である。その基軸は、新自由主義・民営化・組合破壊攻撃と闘う国鉄全国運動である。
 (川武信夫)

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表T  西アジア諸国(*)への直接投資流入額(100万j) 表T  西アジア諸国(*)への直接投資流入額(100万j)

        2003   2004   2005   2006   2007   2008    2009         2003   2004   2005   2006   2007   2008    2009
エジプト      450  2,161   5,376  10,043  11,578  9,495    6,712 エジプト      450  2,161   5,376  10,043  11,578  9,495    6,712
サウジ       778  1,942 12,107  18,400  22,821  38,151  35,514 サウジ       778  1,942 12,107  18,400  22,821  38,151  35,514
UAE       4,292  10,089 10,901  12,815  14,184  13,700    4,003    UAE       4,292  10,089 10,901  12,815  14,184  13,700    4,003   
チュニジア     584     639      783     3,308    1,616    2,758    1,688 チュニジア     584     639      783     3,308    1,616    2,758    1,688
総計    10,843 19,992 37,943   55,562 総計    10,843 19,992 37,943   55,562

【国連UNCTAD資料】(*中東12カ国/チュニジアは含まれていないが参考に付加)

西アジア諸国への直接投資流入額の対GNP比

     2003   2004   2005   2006      2003   2004   2005   2006
エジプト 0.61    2.62    5.46   8.79 エジプト 0.61    2.62    5.46   8.79
サウジ  0.36    0.78    3.94   5.30 サウジ  0.36    0.78    3.94   5.30
UAE  4.84    9.72    8.16   7.77 UAE  4.84    9.72    8.16   7.77
平均   2.00    3.18    4.87   5.99 平均   2.00    3.18    4.87   5.99

【国連UNCTAD資料】

 表U エジプトにおける外国企業

▽フランス:〔銀行〕BNPパリバ、クレディ・アグリコール、ソシエテ=ジェネラル、〔IT〕フランス・テレコム、〔製造業〕ラファルジュ、シュネーダー、〔自動車〕ルノー、バレオ(日産)、〔エネルギー〕トタール、〔交通〕EADS、エアフランス、〔百貨店〕カルフール

▽ドイツ:〔化学製薬〕バイエル、BASF、〔鉄鋼〕ジーメンス、テュッセン=クルップ、〔自動車〕ダイムラー、BMW

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月刊『国際労働運動』(416号2-3)(2011/04/01)

■News & Review アメリカ

朝鮮侵略戦争へ新「国家軍事戦略」

米帝の戦争政策を打ち砕くエジプト革命

 米統合参謀本部は2月8日、米軍制服組による軍事戦略の報告書「国家軍事戦略」を公表した。
 大統領が出す「国家安全保障戦略」(昨年5月)や、国防総省の「4年ごとの国防戦略見直し(QDR)」(同2月)を受け、軍の運用指針をブッシュ政権下の04年以来、7年ぶりに全面改定した。

 □新軍事戦略の概要

 米の新国家軍事戦略の特徴の第一は、「米国は当面は経済的、軍事的に世界で一番である」と傲慢にも言い張って、今後とも米帝基軸の世界支配を護持する態度を示したことだ。
 その上で、今後は「アジア太平洋地域への関与の優先度が高まる」と言い、「今後数十年間も北東アジアにおける強固な米軍戦力を維持する」と、アジアの軍事支配を永続的に強化する方針を鮮明にしたことだ。
 第二は、朝鮮侵略戦争を真っ向から打ち出している。「北朝鮮の核能力や潜在的に不安定な権力継承は、地域の安定や国際社会の核不拡散努力に悪影響を与える危険性がある」と。そして、「韓国は米国の不変の同盟国。北朝鮮が挑発的な脅威であり続ける中、米国は韓国に対し、揺るぎない責務を持つ」と、たとえ韓国が嫌だと言っても米帝は朝鮮半島に軍事介入する決意を表明している。
 そして、朝鮮侵略戦争において、日帝自衛隊の動員を強力に提起していることだ。「自衛隊の国際平和協力活動の能力拡大を支援する」「日本と韓国の防衛協力を後押しする」と言っている。
 第三に、「QDR2010」に基づいて、中国との戦略対峙・対決・戦争をはっきりと打ち出したことだ。「米国の同盟国を脅かしたり、国際公共財やサイバー空間への権利を危険にさらすいかなる行動にも、米国は反対のために必要な手段を講じる用意がある」
 さらに「中国の軍事力拡大と、軍拡が台湾との軍事バランスに与える影響を注視。宇宙、サイバー空間、東中国海、南中国海に関する中国の攻撃的対応に懸念を持ち続ける」としている。

 □大恐慌が世界革命を

  世界大恐慌の深化が、11・23の南北砲撃戦をもたらした。米帝の朝鮮侵略戦争が始まった。次いでエジプトで革命が起こり、世界大恐慌は世界革命を現実のものとした。米新国家軍事戦略が描いていた世界地図が瞬く間に変わったのだ。エジプトを始め北アフリカ・中東地域は、革命の波で洗われている。   世界大恐慌の深化が、11・23の南北砲撃戦をもたらした。米帝の朝鮮侵略戦争が始まった。次いでエジプトで革命が起こり、世界大恐慌は世界革命を現実のものとした。米新国家軍事戦略が描いていた世界地図が瞬く間に変わったのだ。エジプトを始め北アフリカ・中東地域は、革命の波で洗われている。
 米帝の中東石油支配の要であるエジプトの失陥は、米帝の世界支配の崩壊の始まりを意味する。革命の火の手は、米帝の中東軍事支配の中枢で米第五艦隊の基地があるバーレーンにも広がった。バーレーンがあって初めてイラク侵略戦争、アフガニスタン侵略戦争が可能になった。米帝の世界軍事戦略が一挙にその足場を失うような事態だ。
 世界最大の石油産出国であるサウジアラビア、さらに中東石油支配の最後の拠点であるイスラエルの存立さえも危うい事態となる。
 米帝軍事中枢が描くシミュレーションが、労働者階級人民の階級闘争によって、容赦なく踏みにじられていく、そうした時代が始まった。
 エジプト革命の巨大なうねりは中国13億の人民を飲み込もうとしている。中国スターリン主義の反人民的独裁政治の打倒、中国第二革命が現実的な問題になりつつある。
 米帝は、対中国の軍事重圧を加え、ソ連を崩壊させたように中国スターリン主義を崩壊に追い込もうとしている。しかし、中国スターリン主義は中国の労働者階級の革命によって打倒されるのだ。その革命は、米帝打倒を中軸とする世界革命の一環だということだ。その時、米帝は中国革命を圧殺するための中国侵略戦争に出てくる。しかし中国革命を圧殺することなどできない。それは、米帝の命取りになることは間違いない。

 □朝鮮侵略戦争反対

 01年9・11に対して、米帝ブッシュは「対テロ戦争」を叫び、アフガニスタン侵略戦争を開始し、さらにイラクに侵略戦争を拡大した。それから10年の「長い戦争」の中で、米軍は疲弊し尽くした。死傷者が続出し、厭戦気分が蔓延している。軍事において完敗したのだ。「軍事的に世界で一番」などとは言えない。
 そして世界大恐慌が襲い、経済的没落は激しく、「財政赤字が国家安全保障上の深刻なリスク」と告白している通り、一旦ドル暴落にでもなれば、「経済でも一番」などとは言えない事態にすぐなる。
 そして米帝のアジア支配である。
 中国の台頭に対して、米帝は対峙・対決を強め、対中国の軍事重圧を強め、中国突き崩し戦略をとっている。同時に朝鮮危機に対しては、朝鮮侵略戦争で朝鮮半島の南北統一を米帝が主導することを通して、朝鮮半島を制圧し、もってアジア支配を強固なものにしようとしている。
 そのために米韓同盟で韓国軍を動員し、そして日米同盟で自衛隊を動員し、さらに日韓同盟を結ばせて、周辺事態法を改悪して自衛隊をできるだけ朝鮮半島の戦域の近くまで動員しようとしている。
 しかし、その前には日米韓・日中朝の階級闘争が立ちはだかっている。韓国、北朝鮮、日本、アメリカ、アジアのすべての国の労働者階級人民は朝鮮侵略戦争に反対している。最大のカギを握っているのが日本の労働者だ。さらに沖縄の労働者人民の普天間基地撤去、名護新基地建設反対の闘いは日米同盟を揺るがす闘いになっている。
 エジプト革命が立証したのは闘えば勝てるということだ。問題は、「闘っても勝てない」という闘いへの絶望を振りまく体制内労働運動の指導部だ。この打倒の中にエジプト革命≠ェある。
 国鉄闘争全国運動を柱に、朝鮮侵略戦争反対、菅内閣打倒、沖縄奪還、日米安保粉砕・日帝打倒の闘いが大きく発展する情勢を迎えている。
 3・20渋谷反戦デモに決起しよう。
 (宇和島 洋)

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月刊『国際労働運動』(416号A-1)(2011/04/01)

編集後記

■編集後記

 戦後も一貫して戦争と革命の時代だった。エジプト革命をもって、世界恐慌を世界革命へと転化する時代が始まった。
 スターリン主義の裏切りによって辛うじて延命してきた米帝基軸の帝国主義世界体制は、新自由主義をもって労働者階級人民にその全矛盾を押しつけ、さらなる延命を図ってきた最末期の帝国主義であった。この体制は、中東石油支配体制をパレスチナ人民に対する白色テロ国家であるイスラエルを柱に、それをエジプトの極反動的な独裁体制が支えて成り立ってきた。
 エジプト革命はその反動体制に労働者革命をたたきつけ、米帝に重大な打撃を与えた。北アフリカ、中東、アジア、全世界の労働者人民への限りない檄となった。アジアにおける朝鮮侵略戦争反対の闘いが決定的だ。情勢は一変した。3・20渋谷反戦大デモに決起しよう。

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