International Lavor Movement 2010/05/01(No.405 p48)

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2010/05/01発行 No.405

定価 315円(本体価格300円+税)

第405号の目次
表紙の画像表紙の写真 カリフォルニアをデモ行進する全学連(3月4日)
■羅針盤 労働者の魂を売り渡すな! 記事を読む
■News&Review 韓国
  整理解雇とストで闘う金属労組
  錦湖(クムフォ)タイヤ、ヴァレオ、韓進(ハンジン)重工業……
記事を読む
■News&Review 日本
  中野前委員長の遺志継ぎ4波のスト
  動労千葉が国鉄闘争の全国大運動呼びかけ
記事を読む
■News&Review アフガニスタン
  米軍のマルジャ大掃討作戦を弾劾する
  早期撤退を急ぐオバマの絶望的短期決戦
記事を読む
■特集 ギリシャ・EUの革命的大激動 記事を読む
■翻訳資料 3・4カリフォルニア教育闘争   村上和幸 訳 記事を読む
■PhotoNews 記事を読む
  ■世界経済の焦点 大恐慌下で危機深める連合路線
  第2次国鉄決戦に勝利し民主党・連合政権打倒へ
記事を読む
■世界の労働組合
  国際機械整備士・航空宇宙産業労働組合
  (International Association of Machinists and Aerospace Workers:IAMAW)
記事を読む
■国際労働運動の暦 5月3日
  ■1968年フランス5月革命■
  ゼネストと街頭戦闘
  「内乱かドゴールか」の恫喝に屈服
  労働者の権力奪取を提起せず敗北
記事を読む
■日誌 2010年2月 記事を読む
■編集後記 記事を読む
裏表紙の写真 法大包囲デモに立った文化連盟と全学連(3月4日)

月刊『国際労働運動』(405号1-1)(2010/05/01)

羅針盤

■羅針盤 労働者の魂を売り渡すな!

▼国鉄1047名闘争の最後的解体攻撃を粉砕し、国鉄闘争の勝利にむかって大攻勢に打って出るべき時が来た。3月18日、与党3党と公明党は、「国鉄改革1047名問題の政治解決に向けて」と題する「解決案」を国交相・前原に提示した。前原は、政府として受け入れ可能と表明したことが報道されている。同日、4者4団体は「和解する方向で協議したい」とする声明を出し、一切を受け入れる姿勢をあらわにした。解雇撤回を認めず、JRを免罪した「解決案」で、1047名闘争を終わらせようとしているのだ。
▼4党の「解決案」の核心は、国鉄分割・民営化への最後的な屈服を1047名にのませることにある。だから、敵階級は解雇撤回は絶対に認めようとしないのだ。いくら金を積まれようと、解雇撤回なき「解決」など断じて受け入れる余地はない。1047名は、23年にわたり国鉄分割・民営化絶対反対を貫き、労働者の誇りと魂をかけて闘ってきた存在だ。“国鉄改革法を受け入れ、JRに法的責任なしを認めて闘いの矛を収めろ”という今回の攻撃は、分割・民営化時のあの筆舌に尽くしがたい攻撃の一切を容認しろということだ。
▼1047名の首を切った張本人はJRだ。解雇撤回・JR復帰なき「解決」とは、そのJRにすがり「雇用」をこいねがう屈辱的立場に1047名を追い込むものだ。ところが、国労本部を牛耳る日本共産党・革同や社会主義協会派、鉄建公団訴訟原告団の一部幹部らは、「解決案」の受け入れを傘下の闘争団員に強要し始めた。1047名解雇撤回闘争の不屈の前進は、必ず労働者階級の総反乱をつくり出す。勝利の条件は確実にある。

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月刊『国際労働運動』(405号2-1)(2010/05/01)

News&Reviw

■News&Review 韓国

整理解雇とストで闘う金属労組

錦湖(クムフォ)タイヤ、ヴァレオ、韓進(ハンジン)重工業……

 □改悪労組法施行令成立

 1月1日未明、国会で強行採決された改悪労組法(労働組合および労働関係調整法)の施行令が2月9日、国務会議を通過した。これによって、「7月施行」に向かって労組専従賃金問題と複数労組交渉窓口一本化をめぐる具体的な手続きが動き出した。
 民主労総は、「労組法施行令は労働者の団結権を制限し、労働組合の活動と労使自治の原則を否定する内容に満ちている」と弾劾した。今回の改悪法は、これまで慣行として企業が負担してきた労組専従の賃金を禁止とし、それに代わる措置として労組幹部が労働組合運動を行うための有給時間を「勤労時間免除審議委員会」を設置して決めるというものだ。この「勤労時間免除審議委員会」は労資各5人と政府が推薦する公益委員5人の15人で構成される。この改悪法は、労組専従の活動内容・人数にまで政権と資本が介入し、統制しようという極悪法だ。「専従者の正当な労働組合活動を制限できない」と規定している労組法24条3項を施行令で踏みにじるものだ。
 さらに、複数労組は認められても、雇用主(資本)との交渉窓口を過半数組合に一本化することで、少数組合や産別組合の団体交渉権はなきに等しいものとなる。この勤審委に関しては韓国労総とともに民主労総の去就が注目されていた。
 民主労総は1月28日に開かれた民主労総代議員大会で第6期委員長にキムヨンフン氏(04年鉄道労組第18代委員長就任、在職中の06年鉄道ストで拘束。07年全国運輸産業労組初代委員長。全国会議所属)を選出した。
 キムヨンフン新委員長は、「労組は闘争力を基礎に交渉し、組合員の利益をかちとる組織だ」「かっぱらい通過の労組法は違憲の要素が多く、根本的にやり直すべきだ」と言いながら、「闘いながら実質的な交渉には参加すべきだ」という基本姿勢を示していた。しかし、民主労総内では現場組合員の強烈な改悪労組法絶対反対の声があり、参加については留保したままだった。
 一方、政府・労働部は、2月26日、韓国労総を取り込んで審議委員の嘱託手続きを終え、第1回勤審委を開催した。今後、5月には勤労時間免除制度を確定し、7月に実施するという計画で動き出した。しかし、韓国労総においても、労組法改悪をゼネストで阻止しようと旗を振っていたチャンソクチュン委員長が改悪推進に急旋回した裏切りへの怒りは収まっていない。2月26日の代議員大会でも代議員から委員長辞任要求が出されるなど、傘下の労組、現場組合員の怒りがみなぎっている。

 □4月末ゼネストへ

 3月4日、民主労総は記者会見を開き、2010年の主要事業と闘争方針を発表した。この席上、キムヨンフン新委員長は闘争と交渉の併行方針を再確認し、勤労時間免除審議委員会に参加することを明らかにした。「悪法改正と勤審委参加、単位事業場での団体協約締結闘争で、現行の専従活動と組合活動に対する有給保障時間を総量的に維持し、改悪労組法を無力化する」というのだ。
 さらに民主労総は3月27日にソウルに1万人を集めて総力闘争決意大会を開き、4月20日までに闘争態勢を築いて、4月末にゼネストを含む総力闘争に打って出ること、6・2地方選挙で反イミョンバク―反ハンナラ党審判に出ることを明らかにした。
 3月9日、金属労組第27回代議員大会に出席したキムヨンフン委員長は、上半期、イミョンバク政権に対するゼネストを含む総力闘争を呼びかけ、「政権との戦争が始まった。委員長に当選した時、イミョンバク政権より1日も長くやると言ったが、その約束を守れないかもしれない。ゼネストの決意が定まった」と語り、「戦争を始めるにあたり、まず留意することは流言蜚語に誘惑されず、戦いの始まりも終わりも総連盟と金属労組の指揮下で一糸乱れずに臨むことだ」と呼びかけた。
 これに対し、一部の金属労組組合員らは、民主労総の勤審委参加決定の撤回と労使関係学会懇談会発言の謝罪を要求し、抗議ピケのデモを闘った。労使関係学会懇談会発言とは、キムヨンフン委員長が学会関係者との対話で「保守言論により上塗りされ、民主労総と言えば『過激』『赤いハチマキ』『鉄パイプ』を思い出させるような歪曲されたイメージを脱し、民主労働運動が指向してきた核心的な価値である『連帯』『平等』『平和』のイメージがきちんと刻まれるよう務めたい、そのためにこれまでのどの執行部よりも積極的に対国民広報宣伝活動を展開する計画だと話した」というのだ。
 組合員の怒りが噴出するのは当然だ。昨年、77日間の工場占拠ストライキを闘ったサンヨン自動車の闘いが「歪曲されたイメージ」だというのか! 今この時も「タンギョル(団結)/トゥジェン(闘争)」の赤いハチマキをまき、「整理解雇撤回!」「工場閉鎖撤回!」を叫んで決死の闘いが続いているのだ。

 □金属労組が総力決起

 金属労組傘下の労組が整理解雇攻撃との激しい攻防を闘いぬいている。
 釜山(プサン)にある韓進(ハンジン)重工業が2500人におよぶ全職員を対象にした構造調整計画案を発表したのは昨年末のことだった。労資交渉中にもかかわらず、会社側は奇襲的に発表したのだ。金属労組釜山梁山支部韓進重工業支会は「まだ黒字企業であり、仕事も十分にある」と整理解雇の理由さえないと反撃、ただちに闘争に入った。
 会社側は1月20日に「労資交渉中には整理解雇通知をしない」と言明し、26日には整理解雇申告書の提出を留保。しかし、2月2日、会社側は釜山地方労働庁に352人の「整理解雇申告書」を提出した。
 事態は一触即発、第2の双龍(サンヨン)事態になるか! 労組は部分ストと上京闘争や大規模集会などを組織し、闘い続けた。2月9日には民主労総釜山本部と35の市民団体が集まり、「韓進重工業整理解雇阻止、釜山経済生かす市民対策委員会」が1500人の大規模集会を韓進重工業前で開き、デモ行進を行った。
 2月19日、労組は「韓進重工業の経営危機はゼロ受注に起因する」として経営陣の責任を追及し、当座をしのぐために必要な財源とされる150億ウォンのうち経営陣が100億ウォンの責任を負えば、労組が50億ウォンを負担する用意があることを示し、整理解雇中断を要求する最終案を示した。この最終案を会社側が受け入れない場合、26日から全面ストに突入することを通告した。
 23日から25日まで午後4時間ストを続け、25日には家族や地域の労働者・市民とともにスト前夜祭をかちとり、26日に全面ストライキに突入!
 26日午後8時10分、労資は「09年12月18日付の人為的な構造調整(一方的整理解雇)に関し、2010年2月26日付で中断する」という内容で合意をかちとったのだ。
 光州(クァンジュ)では、ウォークアウト(日本での会社更生法適用にあたる)に入った錦湖(クムホ)タイヤで整理解雇をめぐる労資激突が続いている。3月3日午後1時、会社側は組合員193人の整理解雇予告と1006人の外注化による請負化計画を労働庁に申告したのだ。会社側は同時に携帯メールと通知書を当該組合員1199人に送った。
 すでに錦湖タイヤ支会は3月2日、会社側との第10次交渉決裂宣言の後、拡大会部会議を開き、常務執行委員全員が徹夜座り込みに突入した。3日には争議対策委員会を招集して労働庁に争議行為調整申込書を提出し、闘争態勢を整えた。8~9日に全組合員のスト賛否投票を行い、スト権を確立した錦湖タイヤ支会は3月10日、4・1ゼネストを宣言した。
 フランスに本社があるヴァレオ資本との闘いも韓国各地で激発している。昨年5000人の減員計画を発表し、ヴァレオ空調コリア、天安工場を廃業、さらに15%を非正規職化するという計画だ。忠南地域にあるヴァレオ空調コリアでは昨年10月から工場占拠闘争が続いている。
 さらに2月16日朝6時半、慶州(キョンジュ)にあるヴァレオ電装システムズコリア株式会社が工場閉鎖を告示し、ガードマン200人を配置して労働者の出入りを阻止する暴挙におよんだ。バレオマンド支会のチョンヨンジェ支会長は「一方的な職場閉鎖は受け入れられない。外注化を防いで雇用を守る」と宣言している。
 世界大恐慌下、イミョンバク政権と資本による大失業攻撃に韓国労働者階級は、4~6月、ゼネスト闘争へと進んでいる。
 (室田順子)
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 ●「清掃労働者に温かいご飯一食の権利を」

 梨花(イファ)女子大非正規職労働者が街頭宣伝

  

 3月3日、ソウル・新村駅前。「私たちは幽霊ではない!―清掃美化労働者に温かいご飯一食の権利を」と書かれた横断幕が張られたブースが設置された(写真右)。小さな紙の裏表に「私にとってご飯は□□□だ」「清掃労働者たちがトイレで冷や飯を食べる理由は□□□□のためだ」と書かれている。その場に立ち寄った人びとがその空欄を埋めるのだ。ご飯は「生」「幸福」「人生」「生活の楽しみ」「天賦の人権」などの言葉が書き込まれた。中には「遅刻してもすること」と書いた人もいる。清掃労働者がトイレで冷や飯を食べる理由には「差別」「自分のことしか考えない雇い主」「悪い学校行政と私たちの無関心」「MB(イミョンバク大統領)」などと書き込まれた。
 102周年3・8国際女性デー行動の一環として取り組まれたこのキャンペーンを実施したのは、駅近くにある梨花女子大で働く非正規職の清掃労働者たちだ。彼女たちの出勤時間は朝7時だが、それでは学生が来る8時までに清掃が終わらない。やむをえず6時に出勤する。学校には学生食堂や職員食堂があるが、月給80万ウォン(約6万4千円)ではとても利用できない。持参した弁当を狭い休憩室で食べる。労働者に与えられた空間は「清掃用具を整理する所」か「建物の配管室の片隅」だった。「煮炊きをすると臭って火事の危険もある」とする学校側は言うが、そもそも炊事場が設置できる場所ではない。このような現状の象徴が「トイレ」だ。
 「寒い冬、温かい汁の一杯でも飲みたい」――素朴な要求が今年1月の労働組合結成につながった。労組結成の場も大学側に提供を拒否され、雨にぬれながら、結成大会をかちとった。労組の要求は、休憩室の改善と食事代支給だ。
 3月3日昼、70人が新村駅前に集まり、キャンペーンを展開した。その後、梨花女子大までデモ行進し、「労働者の権利をかちとろう」と叫んだ(写真左)。

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月刊『国際労働運動』(405号2-2)(2010/05/01)

News&Reviw

■News&Review 日本

中野前委員長の遺志継ぎ4波のスト

動労千葉が国鉄闘争の全国大運動呼びかけ

 □中野前委員長が逝去

 動労千葉の中野洋前委員長(常任顧問)が3月4日、胆管ガンのため逝去した。享年70。4年にわたる壮絶な闘病の末、最期まで動労千葉と全国の労働者を指導し抜き、半世紀にわたる労働運動の指導者としての生涯を終えた。われわれは、深い悲しみを覚えるとともに、中野前委員長の遺志を継ぎ、階級的労働運動の発展の道を断固として突き進む決意を新たにしている。
 中野前委員長は、59年に国鉄入社後、直ちに労働運動の世界に飛び込み、当時はまだ御用派執行部の動労千葉地本を戦闘的な労働組合へと変革していく運動の先頭に立った。63年には千葉地本青年部長に就任し、65年には千葉県反戦青年委員を結成、議長に就任し、5万人反合闘争(機関助士廃止反対闘争)などの職場闘争の先頭に立つとともに、ベトナム反戦、安保・沖縄、三里塚の闘いに決起した。69年には千葉気動車区の支部長に就任し、72年に起きた船橋事故闘争を76年に高石運転士の職場復帰をかちとるまで闘い、反合・運転保安闘争路線を確立した。73年には千葉地本の書記長となり、関川委員長とともに、千葉地本の戦闘的な執行部を確立した。
 77年からは、三里塚芝山連合空港反対同盟との労農連帯のもとで、ジェット燃料貨車輸送阻止闘争を闘い抜き、79年3月には、裏切りと転向を深める動労本部カクマルによる統制処分に抗し、分離・独立をかちとり、国鉄千葉動力車労働組合(動労千葉)を結成し、書記長に就任した。
 1983年10月には動労千葉の委員長に就任し、国鉄分割・民営化反対闘争の指導に当たる。85年11月と86年2月に2波のストを打ち抜き、40人の解雇者を出しながらも、動労千葉の不抜の団結を守り抜いて、JR体制との闘いに乗り込んだ。
 89年2月には、総評解散―連合結成に抗して、佐藤芳夫・元中立労連議長とともに、全国労働組合交流センターを結成。94年には全国的な闘う労働運動の新潮流を目指す運動を開始し、98年11月集会から、全日建運輸連帯労働組合関西地区生コン支部、全国金属機械労働組合港合同との3労組共闘をスタートさせた。
 01年4月には労働者学習センターを設立し、労働学校を開始。同年10月に委員長を勇退し、常任顧問に就任し、後身の指導に当たった。
 さらに03年10月には韓国を訪問し、当時のタンビョンホ民主労総委員長との会談を行い、日韓米の3カ国連帯の11月集会へと発展させた。
 こうして、動労千葉という階級的労働組合の闘いの時代認識と路線をつくり、宝石のような労働組合を残した。また、義理・人情に厚く、その人間的魅力をもって、動労千葉組合員のみならず、多くの人々を引きつけた。
 3月7日と8日の通夜、告別式には2000人もの人々が参列し、その偉業をあらためて印象づけた。

 □動労千葉が第2波スト

 中野前委員長逝去の直前、動労千葉は3月1~2日には、第1波の2・1~2スト(前号既報)に続いて、幕張支部を軸に、第2波のストを決行した。
 JR千葉支社は3月1日付で、幕張支部の執行委員2人をそれぞれ成田と木更津の検査派出に強制配転した。すでに昨年10月1以降、幕張支部の6人が強制配転され、うち5人が支部三役3人を含む役員だ。検修・構内業務の全面外注化のために、なりふり構わず、支部の組織破壊攻撃に打って出てきたのだ。このままでは、外注化4月1日実施は困難なところに動労千葉の闘いは追い詰めていたのである。
 この第2波ストは、両日とも正午から夕方までストに入る波状的戦術がとられた。徹底的に職場を揺さぶり、当局を追い詰め、組織拡大の前進をかちとるためだ。
 スト初日の1日午前11時半過ぎ、勤務以外の組合員と支援者が幕張車両センター横に陣取った。「検修外注化を阻止するぞ! 幕張支部破壊を許さないぞ!」とシュプレヒコールが響きわたる中、正午にスト突入を通告した組合員が庁舎から続々と出てきた。みな勝利感に満ちていた。当局の異様なスト圧殺体制を打ち破り、車両センターの内外で200人が抗議行動を貫徹した。2日目も同様に、50人で抗議行動を展開した。

 □ダイ改時に第3波スト

 第3波ストは、3月12~14日に打ち抜かれた。JRは3・13ダイ改で館山検査派出廃止を強行し、そこで働く動労千葉組合員を強制配転した。07年の館山運転区廃止以降も、館山駅での折り返しや始発列車が相当数あるため、検査派出は、運転保安上不可欠な職場として残されてきた。今回のダイ改でこの館山検査派出まで廃止したのだ。しかも、組合員の配転について、事前の希望調査すら行わず、一方的に配転を強行したのだ。
 3月12日午後5時から木更津運輸区前で70人が抗議行動を行った。JR千葉支社は3月11日、「社員のみなさんへ」と題する掲示を張り出した。内容は「スト破りはするな」「休日勤務はするな」「勤務変更に応じるな」などの発言をしたら「就業規則に基づき毅然とした対応をする」という処分恫喝だ。だが、スト破り拒否を訴えるのは当然のことだ。これを「パワーハラスメントを受けた」と当局に泣きついて処分・弾圧を要請したのがJR東労組なのだ。断じて許せない。
 翌13日には午後1時に全支部の組合員と支援者130人が館山駅前に結集し大抗議行動を展開した。
 総括を提起した田中康宏委員長は、「この間の闘いで、われわれは当局と東労組を完全に圧倒し、検修業務全面外注化の4月1日実施を完全に止めた! 千葉においてわれわれは2001年から足かけ10年にわたって外注化を阻止してきた。この地平に圧倒的確信を持とう。検修外注化攻撃に対して東労組や国労の中でも怒りの声が沸騰している。みんな動労千葉の言っていることが正しいと思っている。だから当局はひたすら動労千葉への組織破壊攻撃をやるしかなくなっている」と述べ、「この攻防に勝ち抜き、社会に渦巻く怒りをここに総結集した時、時代は動く。組織拡大こそが勝負を決める。全力で闘い抜こう」と訴えた。

 □貨物定昇廃止に第4波

 3月19日は、「貨物定昇廃止・ベアゼロ攻撃打破!」を掲げて春闘第4波ストが、JR貨物の地上勤務者のストとして闘われた。
 午後1時から東京・全水道会館で「スト貫徹!総決起集会」を200人で開催し、その後、JR貨物本社への抗議行動を貫徹した。貨物は、10年連続ベアゼロの上に今年は定期昇給ストップ、一時金3カ月の超低額回答をもくろんでいる。定昇廃止ということは、文字どおりの賃下げを意味する。18日の金属大手の回答は、ぎりぎり定昇は維持するが、一時金はトヨタを筆頭に大幅減だ。しかも、日本経団連は、今春闘に向けた経営労働政策委員会報告で、「定期昇給は、明治後期の官営企業の風習に過ぎない」と言い放ち、「扶養手当は賃金水準が低かった時代の名残だ」などとして、生活給という考え方をなくそうとしている。JR貨物は、こうした日帝資本の最先端の攻撃を強行している。これに対する怒りのストに立ち上がったのだ。

 □国鉄闘争の大運動へ

 19日の集会であいさつした田中委員長は、「貨物の定昇廃止は、賃金制度そのものの改悪の始まりであり、成果主義で賃金をもって労働者をばらばらにする攻撃だ」と弾劾した。
 続いて田中委員長は、「われわれの闘いの到達点」として、「動労千葉は東における業務の全面的な外注化を阻止することを焦点に、第2次分割・民営化決戦だと位置づけて闘って、4月1日実施を完全に止めた。まったくメドが立っていないところに追い詰めた。それは三つの矛盾を突いたからだ。間違いなく安全が崩壊する。もう一つは、完全に法律違反で偽装請負であることを徹底的に追及してきた。三つ目の矛盾は、検査・修繕部門で働く労働者を全部子会社に追いやって、転籍までやる。東労組の中から間違いなく怒りの声が吹き出す。特に大きいのはJR総連の中から大反乱が始まるということだ」と述べ、「日本の労働組合で外注化攻撃を止めた例はない。だから、この闘いをやり抜いたら、怒りの声を結集できる。歴史が動き始める。核心は、組織拡大だ」と訴えた。
 重大な局面を迎えている1047名問題の「政治決着」の動きについて、「4者4団体の側がさらに要求を550万円下げて、政府もそれを削減して、年度内決着で行くという動きだ。国鉄分割・民営化が、日本の労働運動の転換点になった。膨大な労働者が非正規職化され、貧困に突き落とされ、ワーキングプアとなった。今度の和解は、国鉄分割・民営化に続く転換点になる。日本の労働組合のこれから、労働者のこれからを考えたら、大変な転換点になる。国労はもう全労協を脱退して連合に行くということで、協議が始まっている。23年間闘った結果、いったい何が残るのか。国労の崩壊という、こんな情けないことがあるのか。百パーセント要求が通ることはない。しかし闘った結果、労働者が少しでも誇りを取り戻す。労働者が少しでも前向きになる。労働組合が一歩でも前進できる。これが本当の意味で成果だ。しかし、今回のはそれと逆で、国労が雪崩を打てば、自治労や日教組に攻撃が集中する。国鉄分割・民営化は総評を解散し、連合をつくる攻撃だった。今度は、連合的な労働組合も認めないという方向に雪崩を打つ。動労千葉にとっても大変なことだ。国鉄分割・民営化と闘い抜く部隊がなくなる。ここで動労千葉は一つの決断をしなければいけない。それは国鉄闘争の火は絶対に消さないという全国的な運動を呼びかけるといいうことだ」と訴えた。

 □3・20反戦闘争が高揚

 3月20日には、「イラク反戦7周年全世界一斉デモ、ワーカーズアクションin渋谷」が1880人の結集で闘われた。動労水戸は同日、ストライキをもって結集した。特別報告に立った動労千葉の田中委員長が「国鉄闘争の全国大運動」を呼びかけた。国鉄決戦と反戦闘争、特に焦点の沖縄闘争への総決起へ意気高く闘い抜かれた。
 (大沢 康)  (大沢 康)

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月刊『国際労働運動』(405号2-3)(2010/05/01)

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 ■News&Review アフガニスタン

 米軍のマルジャ大掃討作戦を弾劾する

 早期撤退を急ぐオバマの絶望的短期決戦

 □マルジャに侵攻

 オバマは昨年12月、米軍3万人の増派でアフガニスタンのタリバンを一掃し、11年7月に米軍の撤退を始める新戦略を発表した。
 増強された米軍は2月13日、アフガニスタン南部ヘルマンド州マルジャでタリバンへの大規模掃討作戦を始めた。米兵ら1万5000人を投入する過去最大規模の作戦だ。アフガニスタン政府軍が初めて参加する合同作戦になった。
 タリバンの拠点であるマルジャ地区制圧は、アフガニスタン政府への治安権限委譲に向けた分岐点と位置づけられている。また9年目に入ったアフガニスタン侵略戦争からの「出口戦略」に道筋をつけたいオバマにとって極めて重要な意味を持っている。
 カルザイ大統領は13日、作戦実施に伴い、タリバン兵に対し武装解除と投降を呼びかけた。しかしタリバンの現地司令官は報道機関に対し
「すべての兵士は現地にとどまり、米兵や政府軍と戦うよう指令した」と徹底抗戦で反撃することを明らかにした。タリバンは1月末にはヘルマンド州の州都ラシュカルガ中心部の建物を一時占拠し、政府軍宿舎にロケット砲を撃ち込んでいる。
 13日、米海兵隊員4000人と米兵300人、アフガニスタン政府軍1500人がヘリコプターで第1陣としてマルジャ地区に侵攻した。
 マルジャの人口は近郊を含め約12万人、米軍は数カ月前から掃討作戦を行うとの宣伝ビラをまいてきた。だが最大で10万人が避難せずにマルジャ市内に残っているとみられた。
 同じヘルマンド州で昨年7月に行った大規模作戦では、米軍は開戦以来最悪の戦死者を出している。同州はタリバンの本拠地であるカンダハル州の西隣りにある。マルジャ周辺では長く米英軍とタリバンの激戦が続いてきた。米軍の空爆による民間人の犠牲者が最も多い地域だ。
 タリバン軍事委員会の幹部は朝日新聞の取材に対し
「米軍は昨夜、村々を無差別爆撃し、多くの住民を殺した。我々は現地の部隊に周辺に退き、待ち伏せ攻撃で敵を釘付けにするよう命じた」と答えた。

 □相次ぐ無差別空爆

 大規模掃討戦は、多くの民間人への無差別攻撃を引き起こした。以下は、侵略軍が認めた誤爆の一部だ。
 14日、アフガニスタン駐留の国際治安支援部隊(ISAF)は、ヘルマンド州で展開中の掃討作戦で、民間人12人を誤爆し死亡させたと発表した。
 15日、ISAFは、カンダハル州で民間人を武装勢力と誤認して空爆、5人が死亡、2人が負傷したと発表した。道路脇で穴を掘っている民間人を爆弾を仕掛けている武装勢力と間違えたと釈明した。米軍・ISAFは、人が路上で動けば路肩爆弾を仕掛けていると判断し無差別虐殺に走っている。
 18日、ISAFは、タリバン掃討作戦中に誤って警察車両を敵と誤認、空爆し警察官7人が死亡、1人が重傷を負ったと発表した。
 21日、中部ダイクンディ州でNATO軍による空爆があり、アフガニスタン政府は少なくとも民間人27人が死亡、12人が負傷したと発表した。政府によるとNATO軍は走行していた3台の車を武装勢力の車列と誤認して空爆。死者には女性や子どもが含まれていた。
 こうした無差別虐殺がアフガニスタンではもう9年も続いてきた。人民の米軍への怒りが収まるはずがない。
 18日、アフガン南部のISAFを率いるカーター司令官は、マルジャ地区の掃討作戦には「抵抗が激しい」とし、作戦開始から完全制圧まで「数日以内」としていたが「さらに数日」と軌道修正した。タリバンが埋めた地雷(路肩爆弾)やスナイパー(狙撃手)攻撃にてこずっていると。
 21日、ペトレアス米中央軍司令官はヘルマンド州での大規模掃討作戦について「1年から1年半続く軍事行動の最初の作戦」と述べ、長期的な視野でアフガン政府による治安・行政の確立につなげたいと述べた。
  第3章 □マルジャを制圧したが

 □マルジャを制圧したが

 米軍によると2月27日、マルジャ北部に残っていたタリバンの主な拠点が米軍と政府軍の攻撃で制圧され、町のほぼ全域が政府側の支配下に入った。タリバンの拠点に向けて南北から二手に分かれて総攻撃した連合軍が同日、合流したという。
 しかしタリバンはマルジャの町から撤退しただけで戦力を温存している。戦いは始まったばかりだ。タリバン軍は町の周辺にいて執拗(しつよう)なゲリラ戦を継続している。路肩爆弾が毎日米軍を襲っている。米海兵隊員は必死になって路肩爆弾の摘発を進めているが、新しい爆弾が毎晩仕掛けられている。
 爆弾は海兵隊員が前日のパトロール中に立ち止まった所に置かれたり、あるいは道路の真ん中におとり爆弾が仕掛けられ、海兵隊員がそれを確認しようと車両から降りてきた時に本当の爆弾を踏むように路肩に仕掛けられている。そして車両が路肩爆弾で破壊された時に、降りた米兵をタリバンの狙撃手が狙い撃ちして来る。
 オバマは来年7月に米軍撤退開始という短期決戦に出ている。オバマはマルジャ攻略作戦に続いてタリバンの大拠点であるカンダハル攻略作戦を開始するとしている。
 アフガニスタン駐留米軍トップのマクリスタル国際治安支援部隊(ISAF)司令官は3月17日、タリバンの牙城となっているアフガン第2の都市カンダハルに対する包囲網の構築を始めたと述べた。しかし米軍がマルジャを制圧しているというのは表面的なものだ。米軍がマルジャからカンダハルに転戦すればマルジャ制圧など一挙に崩壊するのは火を見るより明らかだ。オバマの新戦略は、早くも完全に破産している。

 □オバマQDRの悲鳴

 オバマはイラク・アフガニスタンの二つの侵略戦争に勝利することに全力をあげると新たな「2010年米国防戦略見直し(QDR)」で打ち出している。QDRは、〈序文〉でも〈概要〉でも「戦時QDR」であることを強調している。
 ゲーツ国防長官はQDR〈序文〉でアメリカは今「戦時にある」とし、現下の「イラク・アフガニスタン」戦争に予算と政策と計画を最優先して集中すると言い、それは現在「アメリカの戦争」を戦っている「兵士と家族」を保障するための配分であり、兵士と家族はこれらのサポートを受けるに値する戦いをやっていると叫んでいる。
【注/米軍崩壊の惨憺(さんたん)たる状況については4月号特集を参照して下さい】
 今回のQDRの結論は、
①イラク・アフガニスタン戦争に勝利するために陸海空・海兵隊の4軍の軍事能力を「勝利できるように」改編すること。
②国防総省の組織と制度、手法を【戦場で戦っている兵士の緊急で切迫した要求に『応えられるように』変革する】こと。
③このような「改編」「変革」を土台にすることで、米国はあらゆる敵対者を打ち破り、世界支配を貫徹できる軍事力の変革をかちとることができると論じている。
 〈概要〉も「真っ先に確認しなければならないことはアメリカが戦争に突入していることだ」から始めている。
 そしてアフガニスタンでは「タリバンの勢いを止め逆転させる」戦争をし、イラクでは「イラク軍を訓練し信頼できる同盟軍へ移行させ、(米軍を)撤退させる」戦争をし、さらに「世界中のアルカイダとその同盟軍に対して」政治的・軍事的・全面的で困難極まる戦争をやっている、「世界中で戦争をやっている」などと言っている。
 さらにその上、アメリカが戦後の「60年以上にわたって」続けてきた世界支配を維持する問題があると言っている。「戦争」の勝利と「世界システム」の維持というこの「リアズムを念頭に」問題を立てると言っている。
 つまりこの戦争で敗北したら、米帝が世界中で同盟関係を形成し、「60年以上にわたって支え続けてきた」米帝支配の「世界システム」も終わりだ。「世界中の戦争」に勝利し、なおかつ他帝国主義を米帝の軍事力にひれ伏させるにはどうしたらいいのか。アメリカの軍事力は限界で本当にピンチだと真底から認めているのだ。
 そのうえで、各章的に「複雑な環境」(米帝が対応困難に陥っているような大恐慌の爆発と中国の台頭)、「アメリカの世界的役割」「防衛戦略」「現在の戦争の勝利」を論じている。
 そして「志願兵制度の維持と強化」をこれまでの国防総省のあり方の総括を含めて論じている。
 「志願兵制度の維持」に関わる「緊急・切迫の課題」を①「国防総省の主導性」のもとに課題化し、熟考し、解決していくとし、これを「国防政策」の構成要素の中核として位置づける。
②志願兵制度の確立によって、兵士達の長期の健康の維持と、持続可能なローテーションの確立を図る(現在は、軍団の【戦場―休養―即応待機―戦場】がイラク・アフガン戦争で崩壊している)。
③以上の2点を行うことで、有事即応の陸海空・海兵隊4軍のもっと高度な配備、予備部隊の動員計画も可能になるし、もっと大きな作戦も可能になる。
 要するに、イラク・アフガニスタン侵略戦争に勝利するために志願兵制度を国防総省の全力をあげて解決することに死活をかける。それをもって、より大きな戦争・世界戦争ができるようになるというのだ。兵士のために「兵士の健康問題」を取り上げているわけではない。あくまでも米帝の戦争遂行のために戦時動員制度である志願兵制度が崩壊しており、これを何とかして維持しなければならないという危機感からすべてが出発しているのだ。
 しかし兵士は軍服を着た労働者だ。帰還米兵の反戦闘争が高揚している。長い侵略戦争の中で兵士(労働者)が生きるためにはアメリカ帝国主義を打倒する以外にないところに来ている。兵士がアメリカ労働運動の高揚と共に革命の担い手として歴史的に登場しつつあるということだ。

 □相次ぐ撤退表明

 オバマが来年(11年7月)に米軍撤退開始を言い出したことを契機にしてアフガニスタン参戦国の中から撤退を表明する国が続出し始めた。 オランダの連立政権がアフガニスタンへの派遣延長をめぐる対立で崩壊したのを受け、バルケネンデ首相は、2月21日、アフガニスタン南部に駐留している陸上部隊1500人を年内に撤退させるとの見通しを示した。オランダの最終方針は5月にも予定されている総選挙で決まるが世論は撤退論が大勢を占めている。
 現在2800人を派遣するカナダも11年には撤退させる方針だ。
 イタリアのフラティニ外相は18日、アフガニスタンに派遣しているイタリア軍部隊を来年から段階的に撤退させることを明らかにした。イタリアは昨年12月にアフガニスタンに1000人を増派し、駐留規模を3800人とする方針を発表していた。
 イラク・アフガニスタン・パキスタンの軍事情勢は、米帝の軍事敗北に向かって進んでいる。侵略戦争の敗北が世界大恐慌と経済崩壊とも折り重なって、米帝の世界支配の崩壊に向かっている。アフガニスタン侵略戦争でも参戦国の相次ぐ撤退がもたらすものは重大だ。
 「対等な日米同盟」「東アジア共同体」を掲げる小沢・鳩山政権は、沖縄・安保の矛盾と危機の爆発に弾き飛ばされて政治危機を深めている。今こそ第2次国鉄決戦を柱に4大産別・沖縄・三里塚、法政大などを階級的労働運動路線で闘いぬき小沢・鳩山政権を打倒しよう。   「対等な日米同盟」「東アジア共同体」を掲げる小沢・鳩山政権は、沖縄・安保の矛盾と危機の爆発に弾き飛ばされて政治危機を深めている。今こそ第2次国鉄決戦を柱に4大産別・沖縄・三里塚、法政大などを階級的労働運動路線で闘いぬき小沢・鳩山政権を打倒しよう。 
  (宇和島 洋)   (宇和島 洋)

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月刊『国際労働運動』(405号3-1)(2010/05/01)

(写真 大失業攻撃に立ち向かうギリシャの青年労働者)

特集

 ■特集 ギリシャ・EUの革命的大激動

 はじめに

 

EU帝国主義は、世界金融恐慌の打撃を深々と受け、金融市場の崩壊から実体経済の激しい落ち込みに突き落とされ、同時に熾烈な対米対日(そして中ロなどのいわゆるBRICs諸国との)争闘戦に直面する中で、一切の犠牲を労働者人民に転嫁する絶望的な攻撃に出ている。
これに対して、ヨーロッパ労働者階級は、2010年初頭から激しい闘いを展開している。
第1章では、ギリシャでのゼネストの波、スペイン、ポルトガル、イタリアでのストやデモの爆発を概観した。
第2章では、“ギリシャの国家破産”的危機がどのようにして生み出されたのかを暴いている。それは国際金融資本がギリシャの国債を食い物にしてきたことによる。
第3章では、欧米日の争闘戦が激化し、特にアフガン侵略戦争をめぐる欧米の対立となり、イラン侵略戦争の切迫下で米帝が東欧MD計画を進めていることを暴いた。

■第1章

 ギリシャ労働者階級の決起

 世界大恐慌に立ち向かう

 財政緊縮政策に怒り

 まず、この間のユーロ圏を揺るがすギリシャ労働者階級の闘いに焦点を合わせて、EUの階級情勢を見ていこう。
 南ヨーロッパで地中海に突き出したギリシャは、2010年初頭から、労働者階級の内乱的決起でわきたっている。闘いは一国を越えて、ユーロ圏だけでなく、ヨーロッパ全体に衝撃を与えている。
 世界大恐慌の中で、財政危機に直撃されたギリシャ政府が財政緊縮政策を強行し、労働者人民への犠牲の転嫁によって危機からの突破を図ろうとしていることに対して、怒りが爆発しているのだ。
 闘いは、EU帝国主義の矛盾が集中し、ヨーロッパの「弱い環」とされている諸国、ポルトガル、アイルランド、イタリア、スペイン(これにギリシャを加えて、帝国主義者によってPIIGS諸国と呼ばれている)にただちに波及し、「ギリシャに続け」と、スト・デモが続発している。
 イギリスの経済新聞『ファイナンシャル・タイムズ』は、「恐慌対策の緊縮政策が、ユーロ圏の抗議運動に火をつけた」(2月23日)と、労働者階級の決起へのヨーロッパ資本家の恐怖を表明した。

 3回の全国的決起

 ギリシャでは、この1カ月間に、3回の全国的決起、うち2回はゼネストが決行された。
 2月10日、公務員労働者を組織するADEDY(公共サービス労組/組織員80万人)が24時間スト、全国の公共施設はほとんどストップ。続いて2月24日には、民間労働者を組織するGSEE(ギリシャ労働総同盟/組織員200万人)が、これに合流して、公務員労働者、民間企業労働者を含む文字どおりのゼネストとなった。さらに3月11日には、再度のゼネストが、この2全国組織の呼びかけで闘いぬかれ、300万人の労働者が参加した。ギリシャの労働総人口は約500万人だから、その半数以上が職場から決起したのだ。
 ゼネストは、学校、公立病院、公共サービス機関、市町村の窓口、郵便局、清掃業務、税関、そして公共都市交通、空港、海上交通などに及び、報道諸機関の労働者も合流、裁判所もストップ、さらに法的規制を打ち破って、警官や消防士、税関の職員などが、デモに代表を参加させた。文字どおり社会の全機能が停止するという、強力な闘争となった。
 首都アテネ、第2の都市テッサロニキなど、いくつもの島に散在する全国各都市で大衆的なデモが行われ、機動隊との衝突も各所で起こった。
 ギリシャの2大労組、ギリシャ労働総同盟と公共サービス労組は、いずれも現政権の成立を支えた体制内勢力で、労働者の怒りに押されて、繰り返しストを呼びかけはしたが、緊急政策そのものには反対ではないなどと繰り返し表明し、ランク&ファイルとの対立を次第に深めている。
 この間のデモや抗議集会で、これら労組の幹部は、デモ隊から、水やヨーグルトを浴びせかけられるとか、隊列に引きずりこまれて、ボディガードと機動隊に助けだされてやっと逃げ出したなどという事態が生じている。
 しかし、ギリシャ・ブルジョアジーの利益を守ることを使命とする社会党パパンドレウ政権は、EU委員会の指令のもとで、あくまでも緊急政策を強行しようとしており、体制内労働組合による闘争の抑え込みにもかかわらず、政府と労働者の激突は、ますます非和解的な対立となって展開しつつある。

 パパンドレウ政権の緊急政策

 ギリシャ・パパンドレウ政権の緊急政策の骨子は、次のとおりである。
 ①財政赤字を、09年における12・7%を、12年にはEU基準のGDP比3%以下に削減すること。
 ②公的サービス部門の賃金を凍結し、ボーナスをカットすること。
 ③公的サービス部門の離職者5人につき、補充は1人とすること。
 ④平均退職年齢を15年までに、2年延長し63歳とすること(これは年金支給開始年齢の引き延ばしである)。
 ⑤燃料、タバコ、アルコール、財産への税率を上げること。
 ギリシャの失業率は現在18%、工場閉鎖が続く中で、20%を超えるのは時間の問題と見られている。青年の失業率は、08年ですでに22%だった。賃金は、ドイツの半分、労働時間はもっと長い。ギリシャ経済の成長率は、09年にマイナス1・6%、工業生産はマイナス24・5%という状況である。
 労働者が、2月以来ストとデモに立ち上がっている中で、パパンドレウ首相は、ブリュッセルのEU官僚をはじめとして、ドイツのメルケル首相、フランスのサルコジ大統領、イギリスのブラウン首相、そして渡米してアメリカのオバマ大統領と、次々と会談、国家的財政破綻の救済を訴えてきた。
 そこで、彼が受け取ったのは、救済への約束よりも、自国労働者に対し緊縮政策を強行突破せよ、という反労働者的な恫喝だった。彼ら帝国主義支配階級は、後に見るように、ギリシャ国家財政の破綻が、まずはPIIGS諸国に波及し、ユーロ通貨の価値を揺るがし、ひいてはユーロ圏の動揺につながることを憂慮する一方で、「ギリシャの内乱」が、EU諸国の階級闘争を爆発させることに階級的な恐怖を感じているのである。
 その恐怖の中で、ドイツ支配階級は、「怠惰なギリシャ人のために、ドイツ人の税金を使うわけにはいかない。自分で招いた結果は、自分で責任をとれ」などという排外主義的な言辞をろうして、ギリシャ労働者の怒りを買っている。
(写真 デモのスローガンは「金権政治を倒せ!」)

 スペイン、ポルトガルでもストとデモ

 こうした帝国主義者の恐怖を現実のものとするように、ギリシャに続いて、まずは、他のPIIGS諸国の労働者が、ギリシャと同様の自国政府の緊縮政策に反対して、ストとデモに立ち上がりだしたのである。
 まずは、スペイン。2月23日、PSOE(社会主義労働者党)政府の年金制度改悪の攻撃に対して、全国で20万人の抗議行動が爆発した。マドリッドでは6万人、バルセロナでは5万人がデモを闘った。翌24日には、アンダルシア地方の各都市で、計4万5000人のデモが行われた。
 ギリシャと並んで、対GDP比13%の財政赤字を解消するために、政府がとろうとしている緊縮政策は、年金支給開始を65歳から67歳に引き上げるというもので、労働者の怒りを呼び起こした。スペインの失業率は20%、失業者数は400万人というのが公式発表だが、25歳以下の失業率は42%という破滅的数字である。
 こうした現実への労働者の怒りを抑え込もうという体制内労働運動指導部UGT(労働総同盟)とCCOO(労働者委員会連合)は、「スペインはギリシャとは違う」と叫んで“挙国一致体制”を構築しようとしている政府に巻き込まれ、「今こそ、ギリシャのようにゼネストで闘おう」という現場労働者の声に、正面から敵対している。
 スペインの隣国ポルトガルの労働者は、3月4日に公共部門労働者が、政府の緊縮政策に反対して24時間ストを闘った。4年ぶりの50万人の統一行動であった。学校、病院、公共施設の窓口、ごみ収集などが、全面的にストップした。
 ポルトガルの財政赤字はGDP比9・3%、やはりEU規定の上限をはるかに超えている。緊縮政策は、ここでも公共部門労働者に向けられており、民営化の推進、賃金カットと早期退職者への手当の支払いを削減しようというものだ。
(写真 「ギリシャに続け」とスペインでも決起)

 イタリアでもスト

 もうひとつのPIIGS国であるイタリアでも、労働者人民が引き続き決起している。3月12日、近距離=遠距離交通の1万人の労働者がストライキに決起した。ベルルスコーニ政権の増税政策(賃金と年金への増税)に反対して、CGIL(イタリア労働総同盟)が、鉄道労働者、航空乗務労働者と地上勤務労働者、公共交通の労働者の数時間にわたるストを指令した。
 こうしてPIIGS諸国は、破産国家グループではなくて、むしろ闘うPIIGS諸国として登場しつつあるのだ。ギリシャのデモの中で、青年たちは、わざわざ豚の仮面をかぶり、「PIGSは闘うぞ」と宣言していた。
 その闘いは、EUの中軸国としてのドイツやフランスの労働者にも、そして、やはり財政難にあえぐイギリスで闘う労働者にも、強烈な激励を与えている。

 民営化との闘い

 ヨーロッパ労働者階級の現在の闘いのもうひとつの柱は、民営化との闘いである。
 その第一の戦場は、交通運輸部門である。すなわち、鉄道、都市交通、航空事業における民営化の強行からくる安全の崩壊である。
 第二の戦場は、教育・学校の民営化に対する教育労働者と学生の闘いである。
 これらの闘いにとって、ギリシャ労働者階級の内乱的闘いは、巨大な激励を与えるものである。

 ギリシャ階級闘争史

 

ところで、いわゆるPIIGSの労働者が、この大恐慌下で決起している背景には、それぞれの国の階級闘争、労働運動の歴史的伝統があるのだ。たとえば、スペインは30年代の内乱を経ているし、イタリアの戦時の対ファシズムのレジスタンスはもとより、アイルランドは北アイルランド独立の激しい闘争を経験している。
ここでは、ギリシャの階級闘争について、歴史的に振り返っておきたい。
第2次世界大戦直後のギリシャは、対ナチのレジスタンスを戦ったパルチザンが全土の支配権を掌握し、ヨーロッパの中で労働者権力の樹立への条件が、最も熟していた。
ところが、戦後世界体制の構築のために英帝チャーチルとソ連のスターリンが会談して、ヨーロッパ世界分割の線引きを行った際に、中東欧をスターリン主義圏に編入することと引き換えに、ギリシャをイギリス帝国主義の支配下に置く、という「合意」が成立し、「ギリシャの帰属」が、ナチと戦ったギリシャ労働者人民の意志を完全に無視して決定されたのだ。
パルチザンの指導勢力のギリシャ共産党は、ソ連スター
リン主義によって、イギリス帝国主義の支配下に入ることを強制された。しかし、イギリスからパルチザンせん滅のために送り込まれた右翼部隊が襲撃してきたため、194
6~49年の3年間、ギリシャは内乱状態となり、戦後ヨーロッパを揺さぶった。
その後、ギリシャは1967年から74年まで軍事政権のもとに支配された。現政権の党PASOK(全ギリシャ社会運動)は、1974年に結成され、その後、新自由主義政策をとることになる。ギリシャ労働者人民は、2001年、08年と激しい反政府闘争に立ち上がる。
09年10月の総選挙で、カラマンリス政権の汚職・腐敗を弾劾したパパンドレウが、二つの労働組合の支持を得て勝利を収め政権に就くが、財政危機に直面し、ただちに、体制内労組幹部とともに、反労働者的な政策の実行者に転落したのである。
だが、第2次世界大戦中のレジスタンスの勝利感とスターリン主義による裏切りは、ギリシャ労働者階級の中から消え去ってはいない。体制内労働組合指導部を打倒して、階級的労働運動の再生をかちとる闘いと、スターリン主義を打倒する革命的労働者党の本格的建設が、労働者階級の任務となっている。

■第2章

 “ギリシャの国家的破産” EU財政・金融の崩壊的危機

 国家財政の破綻の開始

 “ギリシャ危機”は何を意味するか。何が今、世界帝国主義経済で起こっているのか。
 世界大恐慌が、ギリシャというEUの一角における国家財政の破綻の開始という形で、今ひとつ、重大な段階に突入したということである。07年パリバ破産をきっかけとし、08年リーマン・ショックで本格化した世界金融恐慌が、実体経済を巻き込んで世界大恐慌となって深刻化し、今、この3年間の展開の結果、金融市場の崩壊は決定的であることが明らかになり、金融機関の救済と実体経済への景気刺激政策のために、膨大な国家財政を投入して、延命を図っていくというやりかたが、完全にいきづまりつつある、いよいよ出口のない状況に入ったということである。
 金融恐慌で破産したのが、銀行や自動車産業などの大企業だったのに対し、今、破産の危機にあるのは、国家財政そのもの、そしてさらには国家の存立そのものだということだ。それが、企業間の競争にとどまらず、帝国主義国家間のつぶすかつぶされるかの、相互絶滅戦的争闘戦の中で起こり、一層それを激化させざるをえない。
 金融恐慌=世界大恐慌のすべての矛盾を負わされてきた労働者人民は、今回の危機の激化を、またしても労働者階級に対する一層の犠牲の集中によってのりきり、延命しようという帝国主義ブルジョアジーの攻撃に直面し、ギリシャ労働者人民を先頭に全世界で階級的反撃に立ち上がりつつある。世界大恐慌から帝国主義戦争への道か、労働者階級の決起による資本主義=帝国主義の打倒、プロレタリア世界革命の勝利か、道は二つに一つだ。

 “ギリシャ国債危機”を生み出したヨーロッパ投機資金

 一言で言って、ギリシャの財政危機、国債の破産状態は、世界大恐慌が、EUの「弱い環」ギリシャ経済を直撃した、ということだけで解明されるものではない。
 ギリシャ国家の財政危機を、国債のデフォルト(債務不履行)、国家的破産にいたるまで追い込んだのは、実は、国際的金融市場、投機資金が、ギリシャの国債を食いものにして、利益をむさぼろうとしてきたということである。
 ギリシャでは、昨年、汚職と腐敗にまみれた保守カラマンリス政権に代わって、社会党パパンドレウ政権が、体制内労働組合の支持によって登場した。この新内閣の手によって、ギリシャの国家財政赤字が、公表されていた対GDP比3・7%ではなく、実は12・3%という巨額に達していることが暴露された。これは、EU委員会の規定する財政赤字額の上限=対GDP比3%をはるかに超えるものである。
 この衝撃的な事実は、ギリシャ国債の信用を地に落とし、格付けは下落した。不良債券への保険であるCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)〔別項参照〕の保険金は、ギリシャの国家的破産を見越して急騰した。ギリシャの国家財政にとって、今後の資金調達には、より高い利子が必要となり、財政危機に追い打ちがかかった。ヨーロッパと世界の金融市場にショックが走った。ギリシャのデフォルトが、PIIGS諸国に連鎖反応を呼び起こして、EUの金融市場・通貨市場を激動させることを恐れたのだ。ユーロの価値は下落した。〔前政権によるこの隠蔽(いんぺい)の背後には、実はアメリカ・ゴールドマン・サックスの手が動いていた、ということが明らかになっている〕
 EU委員会は、ギリシャ財政危機が、まずはPIIG諸国に波及し、ひいてはユーロ圏の金融と通貨を動揺させることを恐れて、ギリシャ政府に緊急の赤字削減策〔第1章参照〕を指示した。
 それは、ユーロ圏加盟国に対する初めての強権的な行政的指令として、ユーロ圏追放さえもちらつかせたEU機構の権力発動として行われたのである。
 ギリシャは、EU委員会に、財政再建策を提出し、承認を受け、その実行について報告し、点検を受けるというEUの強制的管理下に置かれることになった。それは、これから述べるように、ギリシャ危機の深刻さが、世界大恐慌の重圧下でのEUそのものの危機の深さを示しているということである。
(図 ユーロ圏主要国の財政収支名目GDP比率)

 ギリシャ財政危機の要因

 

ギリシャは、EU全体の経済規模からすれば、3%程度の比重を占める。産業的基軸は、造船・海運、農業、そして観光であった。と同時に、イタリアとならんで地中海の中で戦略的な位置を占めること、さらにギリシャ系住民が多いキプロス島をめぐって、トルコとの政治的軍事的対立を継続していることから、国の経済規模からすると異常ともいえる膨大な軍事予算を投入し、強力な装備の軍隊を持っている。
①EU諸国、とりわけドイツなどにとっては、ギリシャは、まず商品市場、資本市場としてのターゲットであった〔とりわけドイツ資本は、ギリシャのインフラストラクチュアの中枢、高速道路、アテネ空港、アテネ市の地下鉄などを支配している〕。
ところがこの間、新自由主義、グローバリゼーションの展開、バブル経済の世界的膨張の中で、米欧の金融資本が、投機資金という形で、ギリシャ(と同時にいわゆるPIIGS諸国)に急激になだれこんできた。アメリカのゴールドマン・サックスをはじめ、ヨーロッパの銀行としては、クレディ・スイス・グループ、UBS、ソシエテ=ジェネラル、BNPパリバ、そしてドイチェ・バンクなどである。
②そして、これらの金融資本が目をつけたのが、世界金融恐慌、世界大恐慌の進行の中で、爆発しだした「弱い環」の財政危機であり、その危機の打開のために乱発される国債であった。サブプライムローンの破綻によって、行き場のなくなった投資資金=過剰資本にとって、ギリシャをはじめとするPIIGS諸国の国債は、格好のターゲットになり、よってたかって食いものにしたのである。
こうした投機の対象として、これら諸国の国債は、格付けされ、値が決められ、国家財政そのものが、コントロールされる、というはめに陥ったのである。そのテコとなったのが、金融資本の“大量破壊兵器”であるCDS金融取引である。
住宅ローンを対象としたサブプライムローンが大破綻した後は、行き先を失った膨大な投機資金(ヘッジファンド)が、金融危機の展開の中で、国債のリスクへの保険を金融商品化したこのCDSが、金融取引の中で、大きな位置を占めてきたのである。
とりわけギリシャの金融危機で、CDS取引の果たす役割が表に出てきた。ギリシャが危ないということを知った大銀行やヘッジファンドは、この国に押し寄せた。この数年、ギリシャ国債に関連したCDS取引は激増した。1年前は、380億㌦だったギリシャ債券への保険は、今年の2月には850億㌦に上った。こうしてギリシャ債務への保険金は、1年前からほぼ倍増した。これによって、ギリシャの財政は悪化した。国家的デフォルトの危険、すなわちCDS投機家にとっての大儲けの好機が到来したのだ。危険への期待値の高さによって、この保険証書の市場価値は上がる。
③ギリシャの財政赤字の隠蔽が暴露されギリシャ国債のデフォルトの危機が高まったこの1月に、ギリシャ国債を扱うCDS契約が3倍化した。ギリシャに襲いかかったのは、投資家、ヘッジファンド、投資銀行、格付け機関などである。ギリシャ国債への保険金は急騰し、数日間で、ドイツ国債との利回りの差(スプレード)は、史上最大となった。これは、ギリシャの国家的破産が切迫しているということを、金融市場=投機資金の側から、叫びたてているということだ。
④実際、ヨーロッパ金融資本は、ギリシャ(そしてPIIGS諸国全体)に、深々と入り込んでいる。
ヨーロッパの銀行は、ギリシャに対して、総計1840
億ユーロの信用を供与している。フランスが550億ユーロ、スイスが460億ユーロ、ドイツは310億ユーロである。
ドイツの銀行の内部文書によると、ドイツの銀行がPIIGS諸国から購入した債券は総額5224億ユーロに上る。これは、ドイツの銀行の対外債権の20%を占める。そしてドイツは、スペインとアイルランドでは第1の債権者、イタリアでは第2の債権者であるという。ドイツの銀行は、PIIGSの国家破産状態が起これば、したたかな打撃を受けるだろう、と予測されている。
⑤このCDSが、サブプライムローン破綻後の投機資金の流れを大きく決める要因となって、世界大恐慌下の世界の金融市場を支配している。
CDSを含むデリバティブの取引の世界的金融は、JPモルガン=チェイス、シティーバンク、Bank of America、そしてゴールドマン=サックスだ。 CDSを含むデリバティブの取引の世界的金融は、JPモルガン=チェイス、シティーバンク、Bank of America、そしてゴールドマン=サックスだ。
アメリカだけではない。ヨーロッパの有数の大銀行、クレディ・スイス・グループ、UBS、ソシエテ=ジェネラル、BNPパリバ、そしてドイチェ・バンクが、スワップ保険の売り手だ。
国際金融資本は、儲けの大きい、危険をはらんだ投機の形を生み出すような世界諸国の政府に寄生しているのだ。あるエコノミストによれば、「彼ら投機家は、もし税金の支えがなかったら、こんな危険な取引に手を出さないであろう」と言っている。
また、前IMF議長は言う。「ゴールドマン=サックスは、アメリカ政府の裏書で、世界一のヘッジファンドになった」と。

 

(図左 財政収支)  (図右 ユーロ加盟国の失業率)

 ユーロ圏解体の危機

 この間、世界経済、EU経済の「一定の回復」と喧伝されている内容そのものが、きわめてとぼしいものであり、世界大恐慌で落ち込んだ世界経済の生産の減退、貿易の収縮などが、あまりに巨大であったために、ごくわずかのプラスの指標を、誇大に言いふらしている、というデマゴギー的なものである。
 その「回復」なるものは、主要に、各国政府による“天文学的に膨大な”国家予算の投入、それによる銀行・金融機関の救済、自動車産業など大企業へのてこ入れによって、かろうじて支えられているもので、恐慌下で収縮するGDPにとって、財政負担は、あらかじめ限界がある。
 それゆえ、財政危機は、これらPIIGS諸国に限られたものではない、ということだ。
 ユーロ圏諸国家全体の国家財政の負債は、09年に3倍化した。08年には総GDPの2・0%だったのが、09年には6・2%となった。これはヨーロッパ通貨同盟結成以来最悪の数字である。ユーロ圏の債務残高総額は、08年にはGDPの69・4%だったのが、09年には78・7%にまで増大した。
 国ごとにみると、ギリシャ、アイルランド、スペインの3国は、09年の財政赤字が二桁であった。第1グループの諸国、ポルトガル、フランス、スロバキア、ベルギー、キプロス、スロベニアとイタリアは、5%から9・5%の高額の負債を抱えていた。さらに、次の4カ国、オランダ、マルタ、オーストリアとドイツは、3%から4・9%の負債。そして、フィンランド、ルクセンブルクだけが、GDPの3%以下の負債であった。
 このように、ユーロ圏16カ国のうち14カ国が、GDPの3%以下というEUの決めた制限を超える負債をかかえていることになる。キプロス以外は、みな財政赤字国である。ドイツとフランスを見れば、これらEUの基軸国といわれる諸国が、むしろ巨大な財政赤字、そして累積した債務残高を大きく抱え込んでいるということがわかる。
 それは、先にもふれた、この間の銀行と大企業救済のための膨大な財政投入に原因がある〔本誌3月号「世界経済の焦点/欧州経済の危機は米以上に深刻」参照〕。Bank of Englandの分析によれば、米英欧政府によって銀行支援のために投じられた総額は、14兆㌦に上り、それは全世界のGDPの4分の1にあたるという。  それは、先にもふれた、この間の銀行と大企業救済のための膨大な財政投入に原因がある〔本誌3月号「世界経済の焦点/欧州経済の危機は米以上に深刻」参照〕。Bank of Englandの分析によれば、米英欧政府によって銀行支援のために投じられた総額は、14兆㌦に上り、それは全世界のGDPの4分の1にあたるという。
 こうして、2000年にEU委員会によって策定された安定成長プラン=リスボン戦略は、世界大恐慌とEU諸国政府の財政規律ルール違反によって、吹っ飛んでしまった。
 銀行と企業の救済のための財政投入は、国家財政の赤字化を促進した。これにつけ込んだ銀行の投機活動は、通貨全体と国家そのものを揺さぶり、2008年の大爆発を超えるような新たな金融バブルを生み出しつつあるのだ。負債を、より巨大な負債で救済するという従来のあり方は、もはや成り立たない。
 EU、とりわけユーロ圏では、危機は独自の現れ方をしている。経済的社会的条件の異なった諸国が、ひとつの通貨圏・経済圏に統合されているということから生じる諸矛盾は、好況の間は激しく露呈することはなかった。しかし、現在、世界大恐慌のただ中では激しく爆発せざるをえない。
 答えは、プロレタリア世界革命だ!
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 ■CDSとは

 

CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)とは、保険の一種である。会社の社債や国の国債を発行する際に、デフォルト(債務不履行)の危険を見越して、購入者のリスクを少なくするために保険を設定して行う取引。CDSは、このような不良債券のリスクに対する保険を商品化したものである。
1990年代の末にウォールストリートで発明され、従来の保険と違って法的な規制外である。金融危機のもとでアメリカにおいて、中心的な役割を果たし、今や、ヨーロッパで投機資金がなだれこむチャンネルとなり、“猛威”をふるっている。
2000年以来、その総額は、9000億㌦から、現在の30兆㌦までに膨張している。
CDSを保有している投機家は、ある国家が破産したら儲かる。だから、投機家は、その国の債券をどんどん買って、破産を促進する。つまり、一国の財政能力を賭けの対象とするものだ。
だから、いわば、隣の家に火災保険をかけるようなもので、火事になると保険金が儲かるということから、火事を待ち望む、という衝動が金融市場にインプットされてしまう。その対象が、サブプライムローンのような、貧困階層の支払い不能なローンではなくて、財政危機に悩む国家の国債となった、ということである。

■第3章

 

 ■特集

 激化する欧米日の争闘戦 軍事動向をめぐる利害対立へ

 世界戦争への道

 米帝オバマの年頭教書での貿易戦争宣言、そしてQDR(4年ごとの国防計画見直し)で表明されたアフガニスタン侵略戦争への絶望的なのめりこみは、世界大恐慌下の帝国主義間争闘戦の新たな段階への突入を意味するものである。
 世界大恐慌に揺さぶられているEU帝国主義は、次のような諸「戦線」で、争闘戦に突入している。アフガニスタン戦争をめぐる対米争闘戦、自動車市場をめぐる米日との世界的争闘戦、中東・中央アジアにかけての燃料・資源をめぐるロシア・中国を巻き込んだ争闘戦、中・東欧への米帝の戦略的ミサイル配備をめぐる争闘戦、さらには中国・インドを中軸とするアジア諸国の商品市場・資本市場をめぐる争闘戦、等々である。
 こうした争闘戦は、欧米日資本間の争闘戦として激烈に、合従連衡(がっしょうれんこう)を含めて激化しつつ、国家間・国際機構間のレベルでも、EUの軍事防衛政策・体制とNATO(米欧間の“北大西洋条約機構”)のあつれき、ユーロ通貨圏・ヨーロッパ中央銀行とIMF(米帝主導)とのきしみとして、ますます妥協の余地なく展開されている。
 と同時に注目すべきなのは、こうした対米対日という形をとったEU帝国主義の争闘戦が、独仏帝国主義間のEU内外でのヘゲモニー争いを含んで展開されているということである。
 こうした帝国主義間争闘戦は、世界大恐慌下で、ロシア・中国などを巻き込み、テコとしつつ、相互の矛盾を激発させながら、世界戦争への道をころげおちつつある。

 アフガン侵略戦争と欧州帝の動揺

 第一に、アフガニスタン侵略戦争をめぐる米独仏の動向を明らかにしたい。
 昨年12月、米帝オバマは、アフガン駐留米軍を今年前半までに3万人増派し、アフガン側への治安権限移譲を急ぎ、2011年7月の米軍撤退開始を目指すことを柱とするアフガン新戦略を発表した。これを受けてNATOは7000人増派を決定した〔日帝は、インド洋補給支援活動に代わるアフガン支援として、5年間で約50億㌦の拠出を表明〕。
 駐留米軍の撤退時期については、ゲーツ米国防長官が、10年末時点の情勢次第と延期の可能性を示唆し、さらに、1月28日のアフガン国際会議でも「アフガン政府は、3年以内に大半の地方の治安活動で主導的役割を果たせるようにし、5年以内で治安権限移譲を目指す」との共同声明を発表したが、計画通り実施できる展望はない。
 今やアフガンは米軍10万人、全外国軍隊14万人が駐留し、米欧日の全帝国主義が参戦する侵略戦争・世界戦争の火点であると同時に、米帝にとって、また深々と参戦している欧州帝にとっても「第2のベトナム」と化しつつある。
 2月13日、アフガン南部ヘルマンド州マルジャ地区で、米軍主導で、NATO軍とアフガン軍が、2001年のアフガン開戦以来最大規模のタリバン掃討作戦を行ったが、南部の国際治安支援部隊(ISAF)を率いるカーター司令官は18日、掃討作戦が予想より長期化し、治安確保まで最短でも約1カ月かかるとの見通しを表明している。
 こうしたアフガン侵略戦争の泥沼的敗勢の中で、NATO軍の一翼としてアフガン南部ウルズガン州(米英軍などが大規模作戦を遂行しているヘルマンド州に隣接しており、タリバンの拠点に近い)に兵士約2千人を派兵しているオランダにおいて、2月20日、米帝が再三にわたって求めていた派兵延長に対し、連立3党のうち労働党が反対し、連立政権が崩壊するという事態が発生した。オランダ政府は下院を早期に解散し、総選挙を6月9日に行うと発表。しかし、総選挙後も連立交渉が長引いて次期政権発足まで数カ月を要するとみられており、アフガニスタン駐留オランダ軍部隊が予定通り8月に撤退を開始することがほぼ確定した。このオランダの撤退の衝撃は大きく、他の派兵諸国に波及している。
 ウルズガン州に、約1500人の軍隊を派遣しているオーストラリアのスミス外相は、「わが国がオランダ軍に代わって同州の司令部を担う気はない」と、肩代わりを拒否する姿勢を示している。現在、約2800人を派遣するカナダも11年には撤退させる方針だ。
 こうして、オランダ軍の撤退は、米帝オバマの増派戦略に決定的な打撃を与えている一方で、EU帝国主義もインパクトを受けている。
 ドイツは、アフガンに約4000人派兵している。今回の増派戦略には、米帝の当初要求増2000人に対して、500人の増派にとどめた。そして、2011年から段階的にドイツ軍部隊を撤退させ、2014年には治安権限をアフガン側に委譲する計画を明らかにした。2009年秋には、ドイツ軍の軍事作戦で多くの民間人が犠牲になり、国防相や軍幹部の辞任にまで発展。国内世論の6~7割が派兵継続に反対している。
 フランスの派兵は約3000人。米帝の当初要求増は1000人だが、フランスは戦闘部隊の増派には応じていない。アフガン軍や警察の訓練要員派遣を検討中という。
 こうした対米緊張が高まる中で、フランス国防省は、2月8日、ロシアが購入を打診していたヘリ空母機能を持つフランス海軍の最新鋭強襲揚陸艦「ミストラル」級(排水量2万1300㌧)について、ロシア向けに1隻を売却する方針を表明、さらに3隻の建造を検討中であることを明らかにした。ヘリ空母としての機能を持つ攻撃型艦船をNATO加盟国がロシアに売却するのは極めて異例。米帝やバルト海沿岸のNATO加盟国、グルジアなどが懸念を表明している。NATOの軍事機構に復帰したフランスだが、独自的動きを強めていると言える。
 このほか、EU内では、イギリスが約9000人を駐留させているが、今回500人増派を決定。しかし世論の6割が撤退を望む。イタリアの派兵は現在約3100人。今回1000人増派だが、7割が増派に反対している。

 米帝が新東欧MD策定

 米帝は、イランの長距離ミサイル(射程約2000㌔)攻撃に備えための抑止力を看板に、東欧MD(ミサイル防衛)計画として、2012年までにポーランドに地上配備型迎撃ミサイル(射程約2500㌔)を最大10基、チェコにレーダー施設を配備するという東欧MD計画を構想し準備してきたが、昨年9月、この計画をいったん廃棄した。
 そして、あらためて新東欧MD計画として、欧州に新たな迎撃ミサイルシステムを配備すると表明した。この計画は、イランの短・中距離ミサイルへの対処として、2011年から2020年にわたる10年間、4段階にわたる中長期計画である。
 第1段階は、イランの短・中距離ミサイルを迎撃できるSM(艦対空ミサイル)3搭載のイージス艦を、北海や地中海東部、黒海に配備する。
 第2段階の2015年には、地上発射型SM3をポーランドとチェコに配備し、新たな東欧のミサイル防衛の要にする考えだ。
 第3段階の2018年には、「ブロック2A」と呼ばれる日米が共同開発中のSM3を欧州に配備。迎撃範囲は約1000㌔延び、識別能力も格段に向上することにより、「SM3を3カ所に配置するだけで、欧州全土をカバーできる」(国防総省)としている。
 さらに第4段階として、ブロック2Aを改良しSM3に、イランから発射される大陸間弾道ミサイル(ICBM)の迎撃能力を持たせるとする計画だ。日米の開発は、イランの脅威が長距離ミサイルに変わっても、柔軟に対応できる計画の前提になっている。
 SM3の配備が軸だが、当面、地対空迎撃ミサイル「パトリオット」(射程約80㌔)をポーランド北部のモロングに配備。モロングは、欧州内にあるロシアの飛び地・カリーニングラード州との国境から約60㌔しか離れていない。米帝は、今年4月にパトリオットミサイル4~8基の配備を始め、米兵約100人を駐留させる予定である。
 この東欧MD計画に、新たにルーマニア(2015年までに地上発射型SM3の配備を協議)、ブルガリア(MD関連施設の配備を検討)も参加を表明。
 このように、新東欧MDが旧来のMDの再編・強化であることが明らかとなる中で、ロシアは、「MDはロシアを標的にしたものだ」と強い警戒感を表明し、カリーニングラード州に新型ミサイルシステム「イスカンデル」を配備すると述べ、米帝の動きを強く牽制している。〔以前ブッシュ政権が進めたMD計画に対し、ロシアは、米帝の真の狙いはロシアの大陸間弾道ミサイル(ICBM)の無力化にあると強く反発し、対抗措置としてカリーニングラード州に「イスカンデル」を配備すると警告したが、米国のMD見直し表明を受けて撤回していた〕
 またロシアは、米ロ間で交渉中の第1次戦略兵器削減条約(START1)後継条約ではMDに関する制限が盛り込まれるべきだとの考えを示唆。START1後継条約調印の遅れにもなっている。
 なお、米帝は、2月1日に発表したQDRと同時に発表した「弾道ミサイル防衛見直し」(BMDR)の中でも、「イランの脅威に備え、迎撃弾SM3の欧州配備を進める」と明記している。また、2月5日、ロシアは国防政策の新たな指針となる軍事ドクトリンを、2000年以来10年ぶりに発表。NATOの東方拡大やMDを軍事的脅威と位置づけ、米帝やNATOとの対決姿勢を強めている。イランの核開発、弾道ミサイルの脅威を理由に、米ロ緊張の中で、米帝が策動している新東欧MDは、イラン侵略戦争を促進するものとなっている。
 今や、イラク・アフガン侵略戦争の長期化・泥沼化、イラン侵略戦争の切迫化を焦点に、帝国主義間・大国間の争闘・対立は拡大し、侵略戦争・世界戦争情勢を一段と激化させている。
 “ギリシャが破産したっていいじゃないか。おれたちには失うものは何もない”“〔階級〕戦争には階級戦争でこたえるしかない”――これはギリシャだけでなく世界大恐慌に立ち向かっている全世界の労働者人民の声だ。プロレタリア世界革命へ!
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 ■世界大恐慌下で“死の商人”が暗躍

 ドイツが米ロに次いで、第3の武器輸出国へ

 SIPRI(スウェーデンの軍事研究所)の調査(2009年)によると、世界の武器輸出市場で30%というシェアを占めるアメリカが第1位、ついで23%のロシア、そして今回ドイツが11%のシェアをもって3位となったと報告されている。輸入国の方では、中国とインドがトップだ。
 全世界でのロケット、ジェット戦闘機、その他の武器と弾丸の輸出は、この5年間で22%増加した。高価なジェット戦闘機が武器取引全体の27%を占める。
 こうした武器輸出は、世界中の「紛争の火薬庫」に向けられている。火薬庫の一つ、中南米への輸出はこの5年間で150%も増加しているのだ。
 そうした中で、一つの資源大国が、たとえば高価な戦闘用航空機を大量に買い込むとすると、その“ライバル”が対抗的に買いに走る、という形で、武器輸出の増大は、軍備拡張競争を激化させている、とドイツの『シュピーゲル』誌は論じている。
 ドイツの武器輸出は、この5年間で2倍以上に拡大した。44%が潜水艦を主力とする軍艦で、戦車は27%である。輸出先は、ほとんどが、NATO内の諸国(トルコとギリシャが重要な位置を占める!)だが、南アフリカも含まれる。
 こうしたドイツ帝国主義の軍事的突出に対し、野党・社民党の安全保障担当者は「NATOの同盟国への輸出は何の問題もないが、他の国については検討を要する」と語り、もう一つの野党・緑の党は、「議会が厳重に監視、規制すべきだ」というだけで、絶対反対の立場を捨て去っている。

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月刊『国際労働運動』(405号4-1)(2010/05/01)

 ■翻訳資料 3・4カリフォルニア教育闘争 翻訳資料

 ■翻訳資料 3・4カリフォルニア教育闘争

  

村上和幸 訳 【解説】

ここでは、3・4カリフォルニア100万人決起についての商業新聞の記事を紹介していく。
APの配信記事は、「怒れるアメリカの学生、高等教育削減に抗議」という大見出しと紙面いっぱいの大きな写真つきで翌日の多くの新聞に掲載された。日頃は、デモやストライキを無視するマスコミも、一面トップで報道せざるをえなかったほど、3・4は歴史的な階級闘争の転換点だったのだ。
カリフォルニア州の北から南まで、幼稚園から大学まで、全レベルの教育機関のあらゆる職種の労働者、労働組合が決起し、学生、保護者、生徒が一体となって100万人以上が闘いに決起した。
「今までデモに一度も出たことがない中学校の教師が、同僚だけでなく、保護者にも生徒にも呼びかけて一緒にデモに出た」という出来事が、大都市でも小さな町でも起こった。
昨年からこの闘いの先頭に立ってきたのは、ロサンゼルス統一教組(幼稚園~高校の労組)とカリフォルニア大学バークレー校の闘いだ。昨年10月24日に、バークレー校で行われた組織化会議で、10年3月4日に全加州統一行動を行うことが決定され、これにAFL―CIO(米労働総同盟・産業別組合会議、ナショナルセンター)のカリフォルニア連盟など体制内労働運動指導部も参加せざるをえなくなったのだ。
体制内勢力は、必死になって労働者、学生の主体的な闘いをねじ曲げ、州議会の民主党への請願の方向にもっていこうと策動した。
今回の翻訳資料に出てくる州都サクラメントでの行動は、そうした勢力が企画したものだ。
だが、階級的に闘う勢力は、大量解雇、授業料値上げをしている大学の理事たちそのものが金融資本の代表であり、民主党員でもあることを暴き、「学生・労働者」が大学を握ることこそが核心だと批判し、動員合戦でも勝利した。
バークレーからのデモで参加したオークランドの集会では、一人といえども民主党議員の発言は許さず、徹底的に労働者・学生主体の集会を貫いた。
こうした歴史的に初めての大決起の中で、日本の全学連が圧倒的に登場した。
オークランド集会で、洞口朋子さんが発言し、法大闘争の不屈性と団結の力への圧倒的な共感を呼び、彼女のコールに全会場が唱和した。全学連は、歴史的闘いを切り開いたバークレー校で共に闘い抜いぬき、固い団結をうちかためた。ニューヨークタイムズは、全学連が参加したバークレー校のピケットの写真を掲載した。
【〔 〕内は訳者による補足】

 全米で数百万が教育費削減に抗議

 APの取材・配信

(ABC放送などで3月4日に放送された)

 ロサンゼルス発――ロサンゼルス地域全体で、州全体で、さらには全米で、数百万人が教育予算削減反対の「全米行動の日」の抗議に立った。
 教育界がすべての小学校から大学までのすべてのレベルで一緒に行動したことは前例がない、また教員と保護者、生徒・学生が一致して行動しことは前例がないと労働組合の指導者たちは言っている。
 ロサンゼルス市北部エルセレノ地区のファームデール小学校の外では、教師たちが生徒に巨大な全州「行動日」に参加するように呼びかけていた。デモ参加者は、教育予算をこれ以上削減しないように要求している。
 カリフォルニア教員協会〔NEA(全米教育協会)傘下〕のデービッド・サンチェス委員長は、「学級の人数が増え、美術や音楽などの授業が廃止され、カウンセラーは解雇されました。州議会と知事が公立学校に対してやっていることは破滅的です。犯罪です」と述べた。
 この2年間で、知事と州議会は、州の教育予算を約180億㌦削減した。ロサンゼルス統一学区など多くの学区が、予算不足で悪戦苦闘している。
 昨日、3月3日の夜にはカリフォルニア大学〔*〕の150人以上の学生が州都サクラメントの議会ホールに集まり、議員達に授業料大幅値上げに反対するように要請した。
 「私は怒っています。教育は子どもたちにとって重要なんです。未来は子どもたちが担うんです」
 リバーサイド〔ロサンゼルスから100㌔ほどの町〕では教師と生徒が街頭に出て、ジョン・F・ケネディー小学校の外で、「私たちの先生を守れ」とコールした。保護者たちには、子どもの未来が危機に瀕していることがよく分かっている。「われわれは何かをしなければならないんです。行動することが重要なんです」(保護者、オマール・ヌニェスさん)
 3月4日の最大の集会の一つは、ロサンゼルス繁華街のパーシングスクエアで行われ、午後4時にデモに出発する。カリフォルニア州立大学〔*〕ノースリッジ校やカリフォルニア州立大学ロングビーチ校でも大集会がある。
*カリフォルニアの公立高等教育は、次のような3層構造になっている。
①カリフォルニア大学
 全州に10のキャンパス。学生数19万
②カリフォルニア州立大学
 全州に23のキャンパス。学生数42万5千人
③コミュニティー・カレッジ(短大)
 112のキャンパス。学生数290万
(写真 カリフォルニア大学バークレー校のセーザー門のピケットを共に担った全学連【ニューヨークタイムズ3月5日号より】)

 カリフォルニアの学生、教育費削減に抗議 ニューヨークタイムズ3月5日号

 サクラメント発――授業料値上げと州の教育予算削減に怒って、数千の学生・保護者・教職員がカリフォルニア州中で抗議した。短大でも大学でも、そして小学校でさえ州の教育危機に対して立ち上がっている。
 「公教育を守るためのストライキと一日行動」(主催者による公式な名称)は、非常ににぎやかなものだった。所々では激しい行動も行われた。いくつかの学校では、キャンパスの門や建物の入り口が封鎖された。しかし、3月4日は、大部分は、平和的な行動だった。
 しかし、3月4日午後、オークランドでは、ハイウェイパトロールによれば、州間ハイウェイの交通を遮断したとして、150人以上が逮捕されたという。また1人の負傷者もあった。サクラメント近郊のカリフォルニア大学デービス校でも、州間ハイウェーの占拠が行われようとしたが、当局が催涙スプレーを使い、占拠を阻止した。
 他の州でも学費値上げに対する抗議行動が散発的に行われた。ミルウォーキー市のウィスコンシン大学では、デモ隊がキャンパス警察に氷の塊を投げつけて大学当局の事務所に突入し、少なくとも16人が逮捕された。
 カリフォルニアで行われた最大のデモの一つは、州議会に向けて行われたものだった。議会北側階段に1000人以上が集まり、ドラムやハンドマイクを使って若者が声をあげていた。
 カリフォルニアコミュニティーカレッジのスチューデント・セネト〔公認の学生自治組織〕議長レイドE・ミルバーンは、「クラスに入ることもできないで、われわれの未来はどうなるんですか?」と訴えると、参加者は大歓声で応えた。多くの学生が抗議の意思表示として、授業をボイコットして集会に参加した。
 前日3日に、シュワルツェネッガー知事は、州内のいくつかの学校で行われている解雇と科目の削減は「恐ろしいことだ」「問題は資金が必要だということだ」と述べた。
 その金がどこから来るのかは不明だ。州議会の多数を握る民主党会派のアルベルト・トリコ会派幹事長は、州の石油会社〔巨大石油会社シェブロンの本社が同州にある。英系メジャーのBPも同州に大きな基盤をもっている〕に12・5%の課税をすれば、高等教育の予算を20億㌦増やせると述べた。しかし、カリフォルニアでは新税の導入には州議会での3分の2の多数が必要であり、この新税導入の見通しは定かでない。
 教育関係者たちは、カリフォルニア大学よりも学費が低いカリフォルニア州立大学が特に、今度の予算削減で激しい打撃を受けると語っている。
 カリフォルニア州立大学のうちの一つであるカリフォルニア海事アカデミーの助教授、ジュリー・クリスホームは、強制休暇のために600
万円の賃金が10%削減されたという。
 サンフランシスコの南にあるサンタクルスでは、カリフォルニア大学のホームページによれば、抗議行動によってキャンパスが完全に封鎖され、少なくとも1台の車のフロントガラスが割られ、大学に来た人が脅されているという。
 カリフォルニア大学では、09年秋に大学理事会が授業料の32%値上を決定した時にデモが行われている。
 カリフォルニア大学ロサンゼルス校では、構内のブルーインプラザで抗議行動が行われた。バークレー校の抗議行動に参加した公立高校教師志望の教育学部大学院生、ラファエル・ベラスケスによれば、「教師になりたくても就職の見込みがないんです。システム全体の問題です」といいうことだ。
 経済的に打撃を受けている地域で、教育予算削減は深刻に感じられている。サンフランシスコ近くのリッチモンド市では失業率が17・6%にのぼり、暴力犯罪や貧困が日常茶飯事になっている。
 リッチモンドの小学3年生の教師、メリー・フラナガン(55)は、「食べていない学童がいるんです。ホームレスになっている子もいます。こういう問題があっても、38人~40人のクラスを受け持っている私たちには何ができますか?」と語った。
 デモ・集会の参加者は、こうした行動をさらに続けていくと語っている。特にサンフランシスコ中心部で行われた集会には大勢集まり、期待は大きい。しかし、サンフランシスコ州立大学では、150人の学生、教職員、管理者が一緒になって「宣伝的ピケット」を行ったが、その参加者の中には懐疑的な者もいた。州のリーダーを動かすには効果的ではないというのだ。
 音楽専攻の4年生、モーラ・ガイスラーは「何度も大きな抗議行動をしてきたけれど、ほとんど変わっていない。彼らは、ニュース番組のスイッチを切るだけですよ」と語った。
(写真 レーガンの州知事選挙戦を風刺したマンガ(1966年)。バークレーの学生運動が彼の主要なターゲットだった)

 教育予算のための抗議集会「一日行動」

 カリフォルニア大学バークレー校、サンタクルス校などで門を封鎖、地方の学校でもピケット
 3月4日 サンフランシスコ湾岸地域ニュースグループ取材班(オークランドトリビューン、コントラコスタタイムズなど多数の新聞に掲載された)

 今日、州内のさまざまなレベルの学校の教師と学生が熱烈な「一日行動」を行った。この行動は、カリフォルニア大学バークレー校での討論から始まり、全米に広がったものだ。
 集会のスケジュールは、カリフォルニア中の各地で設定され、他のいくつかの州でも設定された。
 バークレーでは、約80人の学生が大学のセーザー門をブロックし、「建設ではなく教育を」「大学を取り戻せ」などのスローガンを掲げた。
 6人の学生が、全日本学生自治会総連合を代表して、集会に来ていた。

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月刊『国際労働運動』(405号6-1)(2010/05/01)

 Photo News

 

●全学連、バークレー校でピケに参加(3月4日朝~昼)

  (写真 ① ②) 【写真①】全学連訪米団は、3月4日早朝、教育民営化と学費値上げに反対するカリフォルニア州および全米統一行動の最大の拠点であるカリフォルニア大学バークレー校に登場した。横断幕を掲げた全学連部隊は、大学全体をストライキに入れるためのピケットラインに参加した。ピケットラインには続々と学生が参加した。
【写真②】全学連訪米団はピケ活動を共に担う部隊として歓呼の声をもって迎えられた。

  (写真 ③ ④) 【写真③】ピケ行動の途中には、大講堂で授業が行われていると聞いた学生たちが、ハンドマイクと横断幕を持って大講堂に突入し、ストライキ行動に参加するように訴えた。
【写真④】ピケット行動を昼頃終了し、今度は近くのバンクロフト通りとテレグラフ通りの路上で2000人の大集会が開かれた。

●デモと集会で圧倒的に注目された全学連(3月4日午後~夜)

集会後、オークランドに向けて8kmの長距離デモに元気よく出発した。全学連部隊は大横断幕を広げて行進し、沿道の注目を集めた。オークランドでは現地の学生・労働者たちと合流し大集会が開かれた。

(写真 ⑤ ⑥)【写真⑤】この集会では全学連を代表して法大生の洞口さんが強烈なアジテーションを行い、全学連書記長代行の松室さんが通訳した。
【写真⑥】3000人の学生・労働者人民は、その迫力に圧倒され、「すごいアジテーションだ。英語がうまい。内容がすごい」と驚き、万雷の拍手を送った。

(写真 ⑦ ⑧)【写真⑦】集会終了後、訪米団はサンフランシスコ市庁舎前の大集会に参加した。
【写真⑧】1万5000人の大集会では、バークレー校の活動家のブランカさんが、全学連が贈った「団結」鉢巻を締め、教育民営化反対の闘いを訴えるとともに、この場に日本の全学連代表が参加して共に闘っていることを紹介し、大きな拍手を浴びた。

●闘う人々との団結と交流

全学連部隊は3日から各地でカリフォルニア州で教育民営化と闘っている人々と交流した。

 

(写真 ⑨ ⑩)【写真⑨】3日の昼には、バークレー校の学生たちと討論を行い交流を深めた。
【写真⑩】同日夜には、バークレーの活動家たちと共に闘っている労働組合の事務所に行き、4日のピケ行動とデモに使う横断幕などの作成を手伝った。

(写真 ⑪ ⑫)【写真⑪】5日にはサンフランシスコのILWUローカル10の事務所を表敬訪問し、ILWUの闘いの歴史の説明をうけ、事務所を案内された。事務所では日本での11月労働者集会に参加したことのある組合員などと再会することもできた。
【写真⑫】6日は、サンフランシスコでの集会に参加し、ILWUローカル10のヘイマンさんと再会した。ヘイマンさんが、動労千葉の中野前委員長の追悼演説を行い、全員が黙祷を捧げた。

●カリフォルニア州での闘い

3月4日は、カリフォルニア州全域で教育の民営化と授業料値上げに反対する闘いが展開された。

 

(写真 ⑬ ⑭)カリフォルニア大学では、バークレー校、デイビス校、ロサンゼルス校【写真⑬講堂を占拠】、サンタクルス校【写真⑭】

 

(写真 ⑮ ⑯)サンディエゴ校【写真⑮】など10のキャンパスすべてで集会やデモ、大学占拠の闘いが行われた。カリフォルニア州立大学でも、モントレイ校【写真⑯】

 (写真 ⑰)サンディエゴ校、ロングビーチ校【写真⑰】など全キャンパスでさまざまな抗議行動が行われた。

 (写真 ⑱)サンタクルスのカブリロ大学【写真⑱】など、コミュニティー・カレッジでも集会・デモが行われた。

●労働組合も積極的に関与

カリフォルニア州での行動には、ILWU、UTLA、UAW(全米自動車労組)などの労組も参加した。

 

(写真 ⑱)【写真⑲】ILWUローカル10はサンフランシスコの大集会に参加した。

 

(写真 ⑳、㉑) 【写真⑳、㉑】とりわけUTLAはこの闘いを主導的に担う勢力として大部隊で登場した。写真⑳はロサンゼルス市内でのデモ。写真は、ロサンゼルス校に登場したUTLAで、右端にはセシリー・マイアトクルスさんがいる。

 

(写真 ㉒) 【写真㉒】この日の行動には、多数の小学生も参加した。報道されていないものが多いが、各地域の学校でもさまざまな行動多数行われた。マスコミで報道されたようにカリフォルニア州100万人の決起に加え、全米では200カ所以上でこの日の教育民営化反対の歴史的闘いが爆発したのだ。

●全米の闘い

 (写真 ㉓)

 (写真 ㉔)

【写真 ㉓)、㉔】全米では、ニューヨークで、ニューヨーク市大学、ハンター高校などの学生1000人がデモを行った。

(写真 ㉕)

(写真 ㉖)

【写真㉕、㉖】 ポートランド州立大学(オレゴン州)では400人のデモが行われた。

テキサス州立大学、アリゾナ州立大学、ウイスコンシン大学、イリノイ大学(イリノイ州)、メリーランド大学、オリンピア(ワシントン州)、モンゴメリー(アラバマ州)、コロラドなどで集会、デモが行われた。これらの大学の闘いは、カリフォルニアのバークレー校の闘いに触発されたものであり、そこに全学連が登場して共闘したことは、全米の学生運動と全学連との国際的団結が形成されたことを意味する。

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月刊『国際労働運動』(405号7-1)(2010/05/01)

世界経済の焦点

■世界経済の焦点 大恐慌下で危機深める連合路線

 第2次国鉄決戦に勝利し民主党・連合政権打倒へ

 世界大恐慌の深化が進む中、10春闘は、国鉄1047名解雇撤回・JR検修業務全面外注化阻止の第2次国鉄決戦を最大の激突点にして、階級的労働運動の復権をかけた一大階級決戦として闘いぬかれている。
 JR東日本の検修・構内業務外注化攻撃は、動労千葉・動労水戸のストライキと組織拡大の闘い、JRの平成採青年労働者の怒りの決起により4月1日の実施強行ができないところに追いつめている。
 国鉄1047名解雇撤回闘争も、民主党・連合政権と4者4団体による解体策動との伸るか反るかの大激突だ。200人の労働者を自殺に追い込み、20万人の労働者の首を切って国鉄分割・民営化を強行したJR資本と政府に「一切の責任なし」と頭を下げることは、日本労働運動の死にほかならない。
 23年間、分割・民営化反対、解雇撤回を闘ってきた労働者はこのような屈辱を絶対に認めない。民営化の矛盾の一切を押しつけられてきた青年労働者の怒りは社会全体に満ちあふれている。国鉄・4大産別を軸にして、民営化・外注化・合理化絶対反対で闘う労働組合を甦らせ、民主党・連合政権の打倒―プロレタリア革命の勝利へ突き進もう。

 □賃上げ放棄に怒り

 「賃上げ要求をしてこそ春闘なのに、組合は弱腰。このままでは、生活は苦しくなるばかりだ」――これが現場労働者の声であり、資本・権力と一体となって民営化・合理化、首切り・賃下げを押しつけてくる連合幹部への怒りはますます高まっている。
 3月19日、連合は主要労組における10春闘の回答引き出し結果を公表した。
 「ベアなし・定昇維持」という結果に対して、日本経団連会長の御手洗は「賃金に関しては、定期昇給の実施や、賃金体系維持となっている」「雇用維持を最優先としながら、従業員の頑張りに応えるべく、配慮した結果である」などとコメントしている。
 連合会長の古賀も「賃金水準をこれ以上下げさせないという方針で、その回答を引き出した各労組に敬意を表したい」などと賞賛している。ふざけるな!

 □資本主義に未来はない

 連合中央は、10春闘を「デフレスパイラルからの脱却、内需を中心とする自律型経済成長への転換をはかっていくための闘争である」(3月4日、第4回中央闘争委員会)などと言っている。全労連も「賃金を底上げして購買力を高め、外需頼みから内需中心の経済に転換させましょう」(「2010年国民春闘アピール」)と主張している。
 どちらも同じで、これからも資本主義が続くことを大前提にしている。だが、日本の労働者階級は、崩壊する資本主義・帝国主義の延命を助けるために、10春闘を闘い、賃金闘争を闘っているのか?
 断じてそうではない。
 今日の世界大恐慌は、資本主義・帝国主義の最後の延命策としての新自由主義が、根底的に破産したところから起きている。新自由主義攻撃は、一切の労働運動、労働者の団結を解体し根絶やしにすることを基礎にして、資本に全面的な搾取の自由を与えようとするものだった。
 しかし、その攻撃は、日本における国鉄分割・民営化の攻撃が、動労千葉の闘いを原動力に1047名闘争が継続される中で破綻したことを典型例として、全世界で歴史的に破綻している。
 連合の労組幹部を政権に取り込んだ民主党・連合政権の登場は、資本主義がもはや体制内労働運動を最後の拠り所に延命を図る以外にないところに来たということだ。しかも連合の労働者支配は、政権に入ったがゆえに、ますます矛盾と危機を深めている。動労千葉を先頭とする労働者階級の闘いが、日本帝国主義をついにここまで追い込んできたということだ。

 □「株主には迷惑かけない」と完全屈服

 日本経団連は、今年1月の『経営労働政策委員会報告』(経労委報告)の中で「賃金より雇用を重視」「ベース・アップは困難と判断する企業が多い」などとうそぶき、「これからは、…年齢・勤続を基軸とした制度から仕事・役割・貢献度を基軸とした制度へと見直す」と、定期昇給制度の廃止・解体にまで踏み込んできた。
 これに対して、ベア・賃上げ要求を放棄し、資本に対して「人に投資することが競争力強化につながる」(連合会長・古賀)などという連合中央の10春闘方針は、『経労委報告』に示される日本帝国主義ブルジョアジーの「要求」に完全に呼応したものだ。
 それは、賃金や賃金闘争の原則を捨て去り、経労委報告での「生活給」解体という攻撃に歩調を合わせるものであり、“生活できる賃金を寄こせ”という労働者の切実な要求を抑えつけるものだ。
 しかも連合中央は、「株主等への配分を減額することで労働分配率をアップさせたり、賃金の引き上げを主張したわけではない」(「『10年版経労委報告』に対する連合見解と反論」)とまで強調する。“資本に打撃になるようなことは一切やりません”ということだ。

 □首切り・賃下げの「労使共同宣言」

 何より昨年来、日本経団連と連合中央が結んだ「労使共同宣言」のもとで、一体どれだけの労働者が首を切られ、路頭に放り出されてきたのか。日本経団連は「多くの企業で現場実態に即した雇用確保の取り組みが行われ」(『10年版経労委報告』)などと言っているが、実際やられたことは労働者の大量首切りであり、民営化・外注化による「9割非正規職化」の攻撃の激化以外の何ものでもない。
 自動車大手12社だけでも、08年末から09年3月の間だけで、非正規労働者を中心に1万7000人を超える労働者の首切りが、電機産業でも計2万人以上の正規・非正規労働者の首切りが強行された。
 09年平均の完全失業者は336万人で前年比で71万人の増加、「就業希望者(就業を希望しているものの、求職活動をしていない人)」も471万人となり、同じく17万人増加した(今年2月の総務省「労働力調査」)。15歳~24歳の高卒以上の完全失業者は14・2%となり、今や実質的な失業率も10%をはるかに超えている。
 賃金についても、フルタイムで働く労働者の所定内賃金(月額)は09年平均で29万4500円で、前年より1・5%減った。減少率は統計として比較できる1976年以降、最大の下げ幅だ。産業別では、運輸・郵便が25万5100円で前年比7・5%の大幅減、次いで卸売り・小売りの29万7000円で同3・1%減、製造業は28万7400円で同1・8%減となっている(今年2月の厚生労働省「賃金構造基本統計調査」)。

 □資本家と労働者は絶対非和解だ

 これまで、経団連も連合幹部も口をそろえて「企業は労使の運命共同体」と言い、資本家と労働者の階級対立は非和解であることを否定し、民営化・合理化や首切り・賃下げなどに対する現場労働者の怒りと闘いを抑えてきた。
 だが、現実はどうだ。10春闘の中で、連合幹部は、「様々な事業構造改革や緊急労務対策に従業員が一丸となって、自らの生活を犠牲にしながらも懸命に協力・努力してきた」(3月1日、電機連合「中闘指示第2号の基本的考え方」)とか、「経費節減に努めている現場組合員の努力…その成果は適正に配分されなくてはならない」(2月23日、JP労組中央委員長・竹内)などとくり返している。
 だが、その結果、現場労働者にもたらされたのは、過労死やメンタルヘルスの激増であり、安全の崩壊による死亡事故の激発ではないか。
 しかも今年1月の米フォーブス誌に掲載された「日本の富豪40人」を見よ。輸出の崩壊で大打撃を受けた自動車などの製造業でも、トヨタ自動車の名誉会長である豊田章一郎は、昨年1年間で個人資産を485億円から564億円に増やし、京セラの創業者で現日本航空会長の稲盛和夫も、同様に665億円から837億円に増やしている。
 資本家階級は、「危機」を口実に首切り・賃下げの攻撃を激化させ、剰余労働の搾取を今まで以上に強め、文字どおり私腹を肥やしているではないか。
 資本家と労働者の階級対立の非和解性はますます尖鋭になっている。

 □民営化・外注化絶対反対で闘おう

 民主党・連合政権による労働者派遣法の改悪も、10春闘の焦点の一つだ。経労委報告は、非正規労働者の激増を「規制緩和が主たる要因であると断定することはできない」として、労働者の側が「自発的に選択している」などと言ってのけた。ふざけるな。
 そして経団連は「労働者の多様なニーズに応じた多様な就業機会の確保」として、労働者派遣制度の堅持を求め、非正規雇用化をさらに徹底的に進めようとしている。
 これに対する連合の「非正規労働者の処遇改善」とは、「生産変動対応等への選択肢の一つとして非正規労働者の受け入れは必要」(自動車総連会長・西原)、「派遣・請負労働者等の受け入れや活用の適正化」(電機連合委員長・中村)というものであり、その立場は経団連のそれとまったく同じだ。
 連合会長の古賀は「不安定で疎外されている人が増えると、…日本社会全体の仕組みが崩壊する。非正規は労働問題であると同時に社会問題だ」(2月6日、東京新聞)などと言っている。民営化・外注化による非正規職化を強制されている2000万青年労働者の怒り、6000万労働者階級の怒りが資本主義打倒へと爆発することに、連合幹部は恐怖しているのだ。
 国鉄決戦を先頭にした反合理化・運転保安闘争路線の闘いは、全職場生産点に拡がっている。現場労働者が団結すれば、民営化・外注化は絶対に阻止できる。10春闘の闘いは、これからが本番だ。全世界の労働者と団結し、ストライキで闘おう。
 (柴田之雄)
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 ■2010年フォーブス長者番付「日本の富豪40人」(2010年1月12日)

順位、 名前、 資産(カッコ内は09年)
1  柳井正 ファーストリテイリング社長 衣料 8372億円(5795億円)
2  佐治信忠 サントリー社長 飲料      7826億円(3325億円)
3  森章 森トラスト社長 不動産       5551億円(3990億円)
4  孫正義 ソフトバンク創業者 IT     5096億円(3705億円)
5  毒島邦雄 SANKYO創業者 パチンコ   4823億円(4940億円)▲
6  三木谷浩史 楽天社長 IT        4277億円(3420億円)
7  山内溥 任天堂相談役 ゲーム       3458億円(4275億円)▲
8  糸山英太郎 新日本観光代表 ゴルフ場   3094億円(3515億円)▲
9  滝崎武光 キーエンス創業者 電気機器   2639億円(2280億円)
10  武井博子 武富士創業者夫人 消費者金融  2275億円(2660億円)▲
11  三木正浩 ABCマート創業者 靴・小売  1911億円(2090億円)▲
12  高原慶一朗 ユニ・チャーム会長 衛生用品 1715億円
13  永守重信 日本電産創業者 電気機器    1729億円(1140億円)
14  伊藤雅俊 セブン&アイ・ホールディングス名誉会長スーパー・小売 1684億円(2185億円)▲
15  金沢要求 三洋物産代表取締役 パチンコ  1638億円( 760億円)
16  多田勝美 大東建託会長 不動産      1593億円(1615億円)▲
17  韓昌祐 マルハン会長 パチンコ      1547億円( 950億円)  17
18  田中良和 グリー創業者 IT       1456億円( 808億円)
19  福武總一郎 ベネッセコーポレーション会長 教育・出版  1274億円(1330億円)▲
20  森稔 森ビル社長 不動産         1229億円(1045億円) 
21  船井哲良 船井電機会長 電気機器     1183億円( 836億円)
22  神内良一 プロミス創業者 消費者金融   1138億円(1425億円)▲
23  国分勘兵衛 国分社長 酒・食品卸売    1092億円 (1520億円)▲
24  島村恒俊 しまむら創業者 衣料      1001億円( 713億円)  
25  木下恭輔ほか アコム創業家 消費者金融   956億円(1805億円)▲
26  岡田和生 アルゼ会長 パチンコ       910億円( 855億円)
27  松井千鶴子・道夫 松井証券創業者一族 証券 874億円
28  稲盛和夫 京セラ創業者 電気機器      837億円( 665億円)
29  高田重一郎 タカタ会長 自動車部品     819億円
30  似鳥昭雄 ニトリ創業者 家具        810億円( 722億円)
31  増田宗昭 TSUTAYA創業者 レンタル・販売  728億円( 466億円) 
32  里見治 セガサミーホールディングス会長 ゲーム・パチンコ 710億円( 703億円)
33  笠原健治 ミクシィ創業者 IT       655億円( 456億円)
34  福嶋康博 スクウェア・エニックス名誉会長 ゲーム 646億円( 732億円)▲
35  多田直樹ほか サンドラッグ創業家 ドラッグストア  637億円( 580億円)
36  大塚実・祐司 大塚商会創業家 IT販売   628億円( 523億円)
37  安田隆夫 ドン・キホーテ会長 小売     628億円
38  重田康光 光通信創業者 IT販売      601億円( 570億円)
39  上原昭二 大正製薬名誉会長 製薬      582億円( 694億円)▲
40  豊田章一郎 トヨタ自動車名誉会長 自動車  564億円( 485億円)

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月刊『国際労働運動』(405号8-1)(2010/05/01)

世界の労働組合

 ■世界の労働組合

 国際機械整備士・航空宇宙産業労働組合

(International Association of Machinists and Aerospace Workers:IAMAW)

(International Association of Machinists and Aerospace Workers:IAMAW)

 ■概要

 IAMAWは、組合員約60万人を有する航空整備士などを代表する労働組合の連合体で、所属する組合の企業数は200社以上である。北アメリカとカナダにローカルがあり、現在は本部をメリーランド州に置く。AFL-CIO傘下の労働組合である。
 組合の創設は1888年に遡るが、発足当時はたった19人の機関車整備工の組合であった。だが急速に組合員を増やし、1年後の1889年には40のローカルが結成され、ジョージア州で最初の総会が開かれた。その翌年の1890年には、カナダにもローカルが設立された。機械・整備工の組合は北米全土に広がり、国際機械工組合(IAM)と名乗るようになり、最近になって国際機械整備士・航空宇宙産業労働組合(IAMAW)と改名した。
(写真 AMFAのストライキ)

 ■AMFAの闘いとIAMAW指導部の裏切り

 航空整備士組合の闘いで記憶に鮮明に残っているのは、私たちの11月労働者集会にも参加し、動労千葉派の労働運動が支援してきたノースウエスト航空(NWA)の航空整備士労組(AMFA)の闘いである。2005年8月19日から444日間闘われたNWAの整備士、清掃・用務労働者が不屈に闘い続けたストライキである。NWAはAMFAに所属する4400人の組合員の半数の解雇、25%賃下げ、医療給付・年金カットを提案してきた。AMFAのストライキは、このすさまじい攻撃に対するやむにやまれぬ反撃だった。
 ところがIAMAW指導部は、ピケを越えるだけでなくAMFA組合員の職域の仕事まで引き受けるように指示し、最も恥ずべきスト破りに手を染めたのである。スト破りをして自分たちの組合だけは生き延びようとしたのだ。だが、屈服すれば資本はさらに踏み込んでくる。2006年6月、IAMAWは大量レイオフ(事実上の解雇)と11.5%の賃下げなどのNWAが提示した協約案を組合員に強引に押し付けた。

 ■ボーイング社の凄まじい外注化攻撃

 アメリカで唯一の大型旅客機メーカーであり、ヨーロッパのエアバスと世界市場を二分する世界最大級の航空宇宙会社ボーイング社は、国際競争力の強化のためとして、2002年、2005年の協約ごとに労働者に徹底的なリストラとアウトソーシングを強制した。2002年以来大量の労働者の首を切ったうえで、外注先の低賃金の労働者を正規職の労働者と同じ組み立てラインで仕事をさせるという攻撃を続けてきたのだ。
 IAMAW指導部は、このボーイング社の攻撃を労働協約で承認し、現場労働者に強制してきた。労働者の怒りは、組合が会社と「了解文書」を取り交わした2002年の協約改定時における62%の反対投票によって示されていた。だが、2005年の協約では、ランク&ファイルの24日間ストにもかかわらず、組合本部はさらに屈服を続けた。その結果、「1999年には4万3000人のIAMAW組合員が285機のボーイング機を製造していたのに、今では2万5000人の労働者で441機を製造するというとんでもない労働強化が常態化している」と、IAMAWの支部機関紙は暴露した。
(写真 ストに突入したボーイング労働者)

 ■ランク&ファイルの怒りが爆発

 ボーイング社が最新型航空機737ドリームラインをもってエアバス社のA380との競争に打って出ようとしていた矢先の2008年9月6日、ボーイング社の2万7000人の労働者がストライキに突入した。ボーイング社のIAMAWの整備士たちは妥協を徹底して拒否し、87%の高率スト権を確立して団結を固め、8週間に及ぶ長期ストを貫徹した。
 アメリカの航空宇宙産業・軍需産業の戦略的中枢を占めるボーイング社と対峙したIAMAWのランク&ファイルの労働者たちは、「外注化反対、雇用確保、賃上げ、年金と医療保険の充実」を掲げてストライキを闘い抜き、世界金融大恐慌に震えあがったアメリカ帝国主義に痛烈な一撃を加えて全米の労働者を欣喜雀躍させた。

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月刊『国際労働運動』(405号9-1)(2010/05/01)

国際労働運動の暦

■国際労働運動の暦 5月3日

 ■1968年フランス5月革命■

 ゼネストと街頭戦闘

 「内乱かドゴールか」の恫喝に屈服

 労働者の権力奪取を提起せず敗北

 ●学生と労働者の連帯

 フランス5月革命は、1968年5月3日のソルボンヌ(パリ大学文学部)とパリ大学ナンテール分校の無期限閉鎖措置と警官隊導入によって、一気に拡大した闘いだ。
 前年11月にナンテールで大学のマスプロ化に伴う教室不足などの改善を要求する大学ストが起こった。それは日本、アメリカなど世界中で爆発していたベトナム反戦闘争やスターリン主義体制との闘いと一体だった。
 5月2日、フランス全学連の最左派がナンテール分校の教室を占拠、これに対しパリ大学当局が同校を無期限封鎖、翌3日、抗議する学生数百人がカルチェ・ラタンにあるソルボンヌの中庭で抗議集会を開いた。大学当局は警官隊を導入し、学生を構内から排除、学生たちは近くのサン・ミシェル通りで警官隊と激突、これが「5月革命」の口火となった。
 6日には朝から2000人の学生が警察側の禁止令をはねのけて実力闘争に決起し、夜には1万人に達した。警官隊との攻防戦は、「人民戦線内閣の登場を促した1936年の暴動以来最悪」といわれた。
 8日、ドゴール大統領は「大学制度の改革は必要」と「譲歩」姿勢を示した。しかし、学生側は逮捕者の全員釈放などを掲げてカルチェ・ラタン一帯で警官隊と激突した。
 そして10日夜から11日朝にかけて、2万人の学生がカルチェ・ラタンの各所に敷き石や自動車を並べてバリケード(パリ・コミューン以来97年ぶり!)を築き、機動隊と11時間に及ぶ攻防戦を展開した。
(写真 パリを行進する学生支援の市民デモ【68年5月13日】)

 ●共産党による圧殺

 他方、フランス3大労組連合であるフランス共産党系の労働総同盟(CGT、170万人)、キリスト教系の民主労働連合(CEDT、75万人)、労働者の力(FO、40万人)の幹部たちも闘争の巨大化と労働者の突き上げを前に対応を迫られ、13日に24時間の学生支援ゼネストを指令、同時に労学共同の大規模な反政府抗議デモを決定した。
 13日、午前零時を期してゼネスト突入。国鉄、バス、地下鉄、電気、ガス、郵便などが全国的に一斉ストップし、ベトナム戦争のパリ和平会談初日の首都は完全に機能停止した。自動車、鉄鋼などの基幹産業、学校、劇場から小さな町工場まで1000万人の労働者がゼネスト・工場占拠に突入したのだ。それは学生への連帯を発端にしていたが、ドゴール政権による合理化政策と賃金統制政策に対する怒りの決起だった。
 巨大な決起に恐怖した政府は、共産党との交渉で百万人以上の労働者に35%の賃上げ、他の労働者に対しても10%賃上げ、労働時間の短縮、年金支給年齢の前倒し、社会保障など大幅な譲歩案を示した。だが、この案を演壇から提起した共産党幹部に、ルノー自動車工場などの労働者は、ビンを投げつけ、引きずりおろした。「そんなものと引き換えに一生こんな所で働くのか! 自由な社会が欲しいんだ!」
 それまでドゴール政権を支持してきた共産党への怒りは、労働者の中にたまりにたまっていたのだ。
 だが、この共産党、労組官僚を打倒し、新たな指導部を確立する闘いを指導する革命党は存在しなかった。だから既成指導部は危機に陥りながらも地位を保ち、政労使3者のトップ会談で、スト収拾の暫定協定を結んだのだ。そして、それに勢いを得て30日、ドゴールが居直り声明を発表、「非常大権の発動」をちらつかせ「内乱かドゴールか」の恫喝をもって闘いの圧殺に突き進んだ。
 5月革命は、戦後生まれの学生の大衆的決起と、労働者階級の怒りとが結合して3週間にわたるゼネストと街頭バリケード戦として爆発したが、フランス共産党の革命圧殺を打ち破ることができず、プロレタリアートによる権力奪取に至らず敗北した。当時かなりの勢力を持っていた第4インターは、共産党を打倒し、とって代わる意志も力もなかったのだ。
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 ●1968年5月革命の経緯

5. 3  パリ大学ナンテール分校、学生と警官乱闘事件で閉鎖 5. 3  パリ大学ナンテール分校、学生と警官乱闘事件で閉鎖
5. 4  カルチェ・ラタンのソルボンヌも閉鎖、学生デモ広がる 5. 4  カルチェ・ラタンのソルボンヌも閉鎖、学生デモ広がる
5. 7  凱旋門を占拠 5. 7  凱旋門を占拠
5.11 警官隊と大乱闘
5.13 パリの学生と労働者、ゼネスト決行
5.17 オルリー空港、機能停止に
5.19 ゼネスト全土に拡大
5.24 ドゴールが国民投票を提案
5.27 政労使の3者トップ会談で暫定協定合意
5.30 ドゴールが辞任せず、議会解散し総選挙を言明
6. 6 ゼネスト解除に向かう 6. 6 ゼネスト解除に向かう
6. 7 ルノー工場に警官導入 6. 7 ルノー工場に警官導入
6.12 カルチェ・ラタンで大激突、学生1500人逮捕
6.23 総選挙、第1回投票でドゴール派勝利

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月刊『国際労働運動』(405号A-1)(2010/05/01)

日誌

■日誌 2010年2月

1、2日千葉 動労千葉が48時間スト
動労千葉は、第1波48時間ストを意気高く貫徹した。午後には、習志野運輸区(船橋市)への抗議行動が280人で闘われた。ストに入った各支部組合員と支援の労働者学生が津田沼駅前に続々と集まった。習志野運輸区門前まで詰め寄り、二つの入り口を制圧して抗議集会を開いた。午後3時からは千葉市内で総決起集会が400人を超える結集で開催された
1日千葉 耕作権裁判 NAAの暴論を追及
千葉地裁で市東孝雄さんの耕作権裁判が開かれ、反対同盟と支援の労働者・学生・市民70人が傍聴しともに闘った。閉廷後、千葉県文化センターで記者会見と報告集会が持たれた
3日東京 全学連と法大文連が抗議声明
法政大学の入試期間中の宣伝活動を禁じるために東京地裁が下した「仮処分決定」に対して、全学連と法政大学文化連盟が連名で抗議声明を発した5日東京 警視庁が6学生を不当逮捕
文化連盟と全学連は法大正門前と飯田橋駅前で入試情宣に立ち上がった。正門前で新入生に、向け「法大の監獄支配を打ち破ろう」とアピールした。その学生たちに対し、警視庁公安警察が襲撃し6人を不当逮捕した
6~7日茨城 交流センター第17回総会
全国労組交流センターの第17回定期全国総会が、茨城県内で行われた。170人の代議員・傍聴者は、大恐慌の時代と対決する交流センターのランク&ファイル運動が国際的な階級的労働運動の主流派として登場することを誓った
7日東京 全学連と文化連盟が弾劾声明
全学連と法大文化連盟は、法大市ケ谷キャンパス入試会場前で6人の学生を不当逮捕した2・5弾圧に対する弾劾声明を発した
7日大阪 泉佐野市議選必勝へ決起集会
泉佐野市内で、道州制と戦争の激しい攻撃と真っ向から対決する集会が開かれた。階級的労働運動路線で5月泉佐野市議選に必ず勝つための決起集会だ。地元・泉佐野の80人を中心に全関西から160人が集まった
10日千葉 “団結街道の廃道許さぬ”
三里塚芝山連合空港反対同盟は、「第3誘導路」建設とそれに伴う団結街道廃道化の計画を打ち出した成田市に対して、徹底弾劾と撤回要求の闘いに立ち上がった
11日広島 今春不起立闘争へ団結
「『8・6処分』撤回! 不起立で『是正指導』ぶっとばせ! 職場の団結をとり戻そう! 2・11広島教育労働者集会」が広島市西区民文化センターで開かれ、教育労働者を先頭に70人が集まった
13日東京 JR東本社に怒りの大デモ
「国鉄1047名解雇撤回! 検修業務の全面外注化阻止! 反合理化・運転保安確立!」を掲げて全国労働者総決起集会が、東京・代々木公園で開催された。全国各地から1850人の労働者・学生が結集し、朝から雨と雪がちらつく悪天候をはね飛ばし、熱気あふれる集会とデモを貫徹した。国鉄決戦を軸に、大恐慌に立ち向かう階級的労働運動の力強い隊列が登場した
14日東京 反戦共同全国活動者会議
東京都内で反戦共同行動委員会全国活動者会議が開かれた。動労千葉の2・1~2ストから2・13全国労働者総決起集会、JR本社デモの高揚を受けた活発な討議が行われた
16日東京 不当捜索・勾留延長に怒りを
東京地裁は2・5法大入試情宣弾圧で逮捕された6人の学生に対して、不当にも10日間の勾留延長を決定した。2・5不当逮捕の後、警視庁は広島、富山、仙台、東北大学、東京の学生アパート、東京の前進社本社など6カ所を不当捜索した(19日現在)
16日千葉 農地裁判、「不在地主」を追及
千葉地裁で三里塚芝山連合空港反対同盟・市東孝雄さんの二つの農地裁判(①行政訴訟、②農地法裁判)が連続して開かれた。終了後、千葉市ビジネス支援センターで記者会見と集会が開かれた
18日千葉 “JP労組本部打倒”中央委で情宣
全国労組交流センター全逓部会はJP労組第5回中央委員会に対する弾劾・情宣活動に立ち上がった。午前8時過ぎ、部会の仲間は会場の千葉県浦安市のジェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテル正面入り口前で行動を開始した
18日アメリカ 米学生 日本領事館に抗議
昨年の11・1全国労働者総決起集会に参加したカリフォルニア大学バークレー校のSWAT(学生・労働者行動チーム)のクレア・キーティングさんらが、2月5日に法大正門前で逮捕された学生6人の即時釈放を求めてサンフランシスコの日本領事館に抗議・申し入れ行動を行った
19日東京 ワーカーズアクション実行委員会
イラク反戦7周年3・20ワーカーズアクション第1回実行委員会が開催された
19日東京 “力合わせ裁判員廃止へ”
「裁判員制度はいらない!大運動」の記者会見が東京・霞が関の弁護士会館で行われた。昨年5月に裁判員制度が強行されて約9カ月が経過したが、裁判員制度の反人民性は完全に明らかになった。現状を明らかにし、名簿記載者の怒りの声を全国に届けようと記者会見が行われた
19日大阪 国鉄軸に10春闘勝利へ
関西労組交流センター春闘決起集会が、大阪市内で開催され110人が参加した。職場生産点での激戦激闘をふまえた内容豊かな報告・発言が続いた
19日岡山 動労西日本、JR西・岡山支社にデモJR西日本は、動労西日本の山田和広副委員長に対し、雇い止めの通告を強行してきた。動労西日本は、1047名解雇撤回闘争と固く団結し、雇い止め解雇を撤回させるまで闘いぬくことを宣言した
21日福岡 3・20へ青年先頭に街宣行動
青年労働者を先頭に、福岡県労組交流センター、合同労組レイバーユニオン福岡、百万人署名運動福岡県連絡会などが「3・20ワーカーズアクションin渋谷」に向けて天神で街頭宣伝に決起した
23日韓国 韓国鉄道労組 4月ゼネストへ
昨年11月、韓国鉄道公社による一方的な団体協約破棄の通告に対し、9日間のストで闘った全国鉄道労組は、2月23日の拡大争議対策委員会で4月末ストライキを含む総力闘争を決議し、団体協約が失効する5月24日を前に総力闘争に入る
14日東京 “星野さんの再審・釈放を”
「星野さんをとり戻そう! 全国再審連絡会議」は霞が関の裁判所前で街宣を行い、その後、全学連と一体になり、東京高裁への申し入れ行動を行った
25日千葉 三里塚現闘本部判決で「仮執行」粉砕
千葉地裁・仲戸川隆人裁判長は、三里塚反対同盟所有の天神峰現闘本部建物を撤去し成田空港会社(NAA)に土地を明け渡せと命ずる反動判決を出した。だが仲戸川は、判決確定前に強制撤去を行える「仮執行宣言」を付すことができなかった。千葉市中央公園に全国から385人が結集、9時から反対同盟の総決起集会がかちとられた
26日千葉 市議会闘争、成田市長にヤジと怒号
三里塚芝山連合空港反対同盟は団結街道廃道化絶対反対の決意も固く、成田市議会傍聴闘争に決起した
26日宮城 解雇1周年、怒りの声が門前を制圧
昨年2月末の全員解雇から1年、東北石けん労働組合は、解雇撤回闘争を貫く意志を固めて地域の仲間とともに一日行動を打ち抜いた
27日茨城 “仲間を切り捨てるのか”
全国労組交流センター自治体労働者部会と茨城県労組交流センターを中心とする闘う労働者50人が、茨城県つくば市で自治労社会保険職員労組解散大会弾劾行動に立ち、国鉄・社保決戦勝利総決起集会を開いた
28日千葉 動労千葉定期委員会で方針
動労千葉は、第62回定期委員会をDC会館で開催し、検修外注化阻止闘争の第1ラウンドの大勝利を確認するとともに、3・1~2ストから第2ラウンドの闘いに猛然と突入することを宣言した
28日大阪 八尾北医療センター民営化阻止
八尾・西郡で総決起行動が打ち抜かれた。桂人権コミュニティーセンターには、八尾北医療センター労組・部落解放同盟全国連西郡支部・八尾北命と健康を守る会など地元の労働者、住民と、関西、広島、東京の闘う仲間250人が駆けつけた
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 (弾圧との闘い)

9日東京 法大4・24解放闘争裁判
法大4・24解放闘争裁判の第9回公判が東京地裁刑事第17部で行われた。冒頭に、2月5日に不当逮捕された6学生への勾留決定と、情宣禁止の仮処分決定を行った東京地裁に対する怒りの意見表明が倉岡雅美さんから行われた
10日東京 暴処法弾圧 出廷刑事に怒り沸騰
法大暴処法弾圧裁判の第8回公判が東京地裁刑事第1部で行われた。冨田正道と江上潤の2人の警視庁公安刑事が検察側証人として登場した。織田陽介全学連委員長が意見表明に立った
15日東京 開示公判で6学生と合流
6学生の勾留理由開示公判が、東京地裁で行われた。前代未聞の弾圧に加担したのが、刑事第14部の鈴木巧裁判官らである。完黙を貫き元気に出廷した6学生と弁護団、法大文化連盟と全学連の仲間らが鈴木裁判官を徹底的に追い詰めた
22日東京 法大暴処法弾圧裁判
法大暴処法弾圧裁判の第9回公判が東京地裁刑事第1部で行われた。この日は、法大OBで本件当日に被告人と行動をともにしていたという玉聞(ぎょくぶん)祐樹が、検察側の証人として登場し法大闘争に分断を持ち込む最悪の裏切り者として、5人の被告人と全法大生に敵対する証言を行った
23日東京 法大4・24解放闘争裁判
法大4・24解放闘争裁判の第10回公判が東京地裁刑事第17部で行われた。冒頭、内海佑一君が2・5弾圧の6学生釈放を訴えるとともに、22日の暴処法裁判での玉聞証人によるデッチあげを徹底的に弾劾した。続けて、斎藤郁真君の被告人質問が開始された

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月刊『国際労働運動』(405号B-1)(2010/05/01)

編集後記

■編集後記

 3月7日の朝日新聞は、1面に「悪夢『20××年日本破綻』」なる「未来予測」記事を載せた。「消費税25%」「株価が暴落」「物価が高騰」の見出しが飛び交い、「借金頼み、大丈夫?――先進国で最悪。あと10年もつかどうか」の横見出しが踊っている。
 ギリシャの国家財政破綻がヨーロッパ全体を覆っている。ポルトガル、スペイン、イタリアだけではない。フランス、ドイツにも危機は波及する。
 そしてこれは日本の前途を示している。世界大恐慌がさらに「二番底」へと深まれば、ドル暴落が不可避に起こり、そうなれば米帝はもとより日帝も破綻する。「あと10年もつかどうか」は超楽観的な見通しだ。
 「日本破綻を防ぐには――」と問いを発しているが回答は一つしかない。資本主義を打倒するプロレタリア革命を実現し労働者の社会をつくることだ。

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