SANRIZUKA 2002/09/15(No615 p02)

ホームページへ週刊『前進』月刊『コミューン』季刊『共産主義者』週刊『三里塚』出版物案内販売書店案内連絡先English

週刊『三里塚』(S615号1面1)

 「両にらみ(立ち退きか死か)」公言した黒野新総裁の農民無視と傲慢を許すな

 「過去を謝罪」の下の根も乾かぬ暴言

 暫定路を閉鎖せよ

 「40メートル飛行」は国家犯罪だ

 空港公団の黒野匡彦新総裁は、就任直後から平行滑走路の未買収地に生活する地権者に対して「出て行かないなら(滑走路の北延伸で)殺す」という趣旨の「両にらみ」方針を表明していた。地権者の生活条件を人質にして、期限付きで立ち退きを迫ったのである。これに関連して、国交省は来年度予算の概算要求で東峰地区の未買収地を滑走路として整備する予算請求を行った。人の土地の処分を勝手に決めてしまう傲慢な予算請求だが、「北延伸」問題のねらいが地権者への屈服強要にあることをはからずも暴露した格好だ。「北延伸」デマの空論性も完全に明らかになった。暴力団の地上げ屋まがいの手法で地権者を脅迫する、公団・黒野に対する渾身の反撃をたたきつけよう。10・13全国集会に集まろう。
 黒野新総裁は就任直後、大型機が飛べないなどの深刻な欠陥があらわになった成田暫定滑走路について、「地権者が用地交渉に応じるか北延伸かの両にらみ」(産経8・14付千葉版)と凄んだ。「北延伸」とは、暫定路を大型機を飛ばせる長さに延長するという意味。
 実際は大型機は暫定路に入れず(誘導路が確保できない=別記事)「北延伸」は空論だ。それでも黒野はジャンボ機を地権者の頭上に飛ばすと脅迫する。「両にらみ」とは゛出て行かないなら殺す″という二者択一の脅し文句だ。
(写真 「両にらみ」の新総裁・黒野)
    *
 成田空港建設は、三十七年目のこの期に及んで、空港公団の最高責任者が゛立ち退きか死か″などと公言する国家事業だ。
 周知のように成田空港建設は、地元農民・地権者に一言の相談もなく位置決定(一九六六年)を行い、土地収用法と警察力による強制収用をくり返してきた。この強制力の一方的な行使について、国は、かの公開シンポ・円卓会議(九一〜九四年)で公式に謝罪、この種の強制手段や脅迫を二度と行わないと確約した。平行滑走路については「地権者の同意なき着工は行わない」と文書で確認された(円卓会議最終報告)。
 その舌の根も乾かぬうちに、彼らは今年四月、暫定滑走路の開港を強行した。反対同盟・地権者の抗議を無視し、農家の軒先まで一方的に滑走路を造り、その頭上四十bに飛行機を飛ばした。公団用地部は「飛行機を飛ばせば地権者は必ず折れる」と公言した。シンポや円卓会議などの政治ショーは、農民をだまし、たぶらかすための百パーセントのペテンだったと、公団は自ら告白した。
 しかし農民たちは屈服を拒んだ。一部脱落派との取引で「過去を謝罪」し、「二度と強制手段を使わない」と確約しながら、交渉に応じない者には一転して暴力に訴える政府の姿勢にとうてい我慢ならなかったのである。
 政府の姿勢は三十七年前と変わっていない。彼らの「話し合い」は、暴力を背景にあらかじめ答え(用地売却)が決まっている。
 これらの政府・公団の行為は、人間としての尊厳の最後のひとかけらを奪うものだ。農民たちは苦悩しつつ、自らの身を晒してでも暫定路開港の国家犯罪を世に告発する道を選んだ。「飛ばせば必ず折れる」としていた公団の思惑は外れた。こうして政府・空港公団側の不条理が天下に暴露された。窮地にたった公団は、暴力的威嚇をエスカレートさせてきた。今回の黒野新総裁の「両にらみ」発言である。
 「四十b飛行」下で札束を突きつけ、買収に応じなければ今度は大型機を飛ばすぞと迫る公団・黒野。これは「民主主義」とはおよそ無縁の国家暴力である。
 四月の暫定開港後、読売新聞の論説は「用地への居座りは国家的迷惑」と断じ、反対同盟・地権者の怒りを逆なでにした。わずかでも歴史を踏まえれば、東峰・天神峰地区の農家が用地売却を拒否する現実は「居座り」の類とは正反対のものとわかる。農民無視の極限、生存権さえ奪って立ち退きを迫るジェットブラスト噴射や「四十b飛行」の国家犯罪。農民たちが政府への協力を一切拒み続けるのは、これらの長い歴史から紡ぎだされた回答であり、あまりにも正当な告発なのである。
     *
 暫定滑走路を直ちに閉鎖せよ。「北延伸」デマの脅迫による地権者切り崩しの一切を粉砕せよ!

------------------------TOPへ---------------------------

週刊『三里塚』(S615号1面2)

 東峰区造成を予算化

 概算要求 甚だしい知権者無視

 国交省と空港公団が八月二十八日に発表した来年度予算の概算要求で、平行滑走路の未買収地となっている東峰地区を勝手に滑走路として整備するための予算請求を行っていたことが明らかになった。
 農民の意志を一方的に踏みにじって力ずくで建設を強行したことが、三十七年間の三里塚闘争の出発点を作り上げたことは周知の事実。この歴史を踏まえることもなく、この期に及んで地権者農民の意志や怒りを無視した一方的な予算請求に、改めて地元農民の怒りが高まっている。
 問題の予算要求は、B滑走路(平行滑走路)の当初計画用地にあたる東峰地区の未買収地を造成、舗装するための費用七十三億円。同地区の農家全員が売却を拒否している。

------------------------TOPへ---------------------------

週刊『三里塚』(S615号1面3)

 誘導路不可!「北延伸」は空論だ

 新総裁・黒野がいう暫定滑走路の「北延伸」は空論だ。延伸の理由は「大型機が飛べる滑走路長にする」というもの。しかし第二ターミナルとの連絡誘導路の幅がICAO(国際民間航空機関)の規定より狭く、大型機は通過できない(しかも片側通行)。大型機は暫定滑走路に入れないのである。「北延伸」はまったく意味がない。地権者を脅すためだけの悪質なデマである。
     *
 「北延伸」の空論性を自覚している公団は、天神峰・市東孝雄さん宅の西側に大型機が通過できる新たな誘導路(双方向)を造る計画がある、などという荒唐無稽なデマを水面下で流している。この種のデマは地権者脅しの常套手段だ。
 しかし「西側誘導路」はおよそ空論である。大型機の双方向通行を想定して予想可能なルートを線引きすると、新たに買収が必要となる地権者は五十人を超える。片側通行幅でも約四十人。農家だけでなく商用地も多く、条件を満たす代替地確保も至難の業だ。これだけの用地買収は十年かけても不可能だろう。
 成田では土地収用法が使えないのが致命的だ。この一帯の用地買収がどれほど困難かは、現場からすぐ近くの「成田国際物流複合基地」建設(取香地区・総面積七十八ヘクタール)の惨状が証明している。計画から十年かけて、買収できた用地は全体のわずか八分の一だ。これも三里塚闘争の影響である。

写真 「西側誘導路」10年かけても買収不可能! 公団は「北延伸」で地権者を脅し「西側誘導路計画」のデマを流したが、地権者は約50人も、収用法も適用できず買収は不可能だ

------------------------TOPへ---------------------------

週刊『三里塚』(S615号1面4)

 10・13全国集会招請状

 三里塚芝山連合空港反対同盟

 以下は反対同盟の10・13全国集会招請状(一部略)
   ◇   ◇
 闘う仲間のみなさん。小泉内閣は臨時国会で有事関連法案を再度強行しようと策動する一方、成田空港暫定滑走路の延伸を公然とうちだしました。私たちは十月十三日に全国集会を開催します。
 黒野匡彦空港公団新総裁が打ち出した暫定滑走路の延伸計画を絶対に許すことができません。黒野新総裁は、二五〇〇メートル平行滑走路の完成を掲げて敷地内農家に「話し合い」を強要しています。他方で「地権者との交渉と北側延伸を両にらみで進めたい」と語り、農家が「話し合い」に応じなければ暫定滑走路をさらに北側に延長すると脅迫しています。国交省は農家の移転を前提にした「平行滑走路整備費」を、来年度予算の概算要求に盛り込みました。
 暫定滑走路は平行滑走路の破綻を取り繕うとした運輸省(現国交省)と空港公団の窮余の一策でした。民家にジェットブラストを浴びせ、上空四十メートルでジェット機を飛ばすなどは常軌を逸した暴挙です。それでも用地が強奪できないとわかると「こんどはジャンボ機を飛ばすぞ」と脅し移転を迫っているのです。北側に延長しても、ジャンボ機は連絡誘導路の欠陥と限界によって滑走路に来ることができません。生活破壊と脅迫による追い出し攻撃は粉砕あるのみです。
 不況は深刻さを深め、すべてが戦前に舞い戻ろうとする動きの中で、言論を統制し、労働運動を弾圧し、土地を徴発して人民を戦争に駆り立てる有事法制の立法化が強引に進められ、朝鮮半島有事の際の兵たん・出撃基地として成田空港が指定されているのです。
 私たちは「国策」に対して闘う正義を確信します。「国策に歯向かうなら代執行だ」という三十年前の言葉は、「国のために土地と命を差し出せ」という戦時の言葉に替わって全国民に向けられようとしています。暫定滑走路開港の前日、読売新聞社説は「個人の権利は国益に従属する」と主張し「用地での居座りは国民的迷惑だ」と敷地内の農家を攻撃しましたが、これこそ有事法制と侵略戦争の論理なのです。
 「国益」のもとに他国を侵略して人々を殺害し、自らも殺される悲惨な戦争を絶対に繰り返してはなりません。そのために今、体を張って闘うべきなのです。
 十・一三全国集会は、朝鮮・中国、アジアに侵略するための有事立法攻撃と闘い、暫定滑走路延伸攻撃を粉砕する総決起集会です。イラク侵略戦争と自衛隊の派兵を阻止しよう。ジェットブラスト被害を防ぐための対策フェンスをなんとしても設置させ、天神峰の生活を守り抜こう。東峰神社裁判の支援を強化し勝利しなければなりません。
 暫定滑走路の開業で成田空港は矛盾をさらに深めました。空域問題と「へ」の字に曲がった誘導路に象徴される暫定滑走路の欠陥によって、航空管制の混乱と遅れが日常化しています。この現実から逃れたいという公団のあがきが暫定滑走路延伸攻撃です。反対同盟はこのぶざまな滑走路を閉鎖させ、軍事空港を廃港に追い込む決意です。十・一三全国集会に総結集されるよう呼びかけます。
 二〇〇二年九月四日

     *
【集会名称】
暫定滑走路延伸阻止、有事立法粉砕
10・13全国総決起集会
【日時】十月十三日(日)正午
【会場】成田市東峰 反対同盟員所有地
【主催】三里塚芝山連合空港反対同盟
(連絡先)事務局長・北原鉱治 成田市三里塚一一五 電話0476(35)0062

------------------------TOPへ---------------------------

週刊『三里塚』(S615号1面5)

 立木は神社林だ!

 東峰神社裁判第2回公判 原告住民、綿密な論証

 八月二十六日午後、千葉地裁民事第二部で、東峰神社裁判の第二回公判が行われた。昨年六月、東峰部落が所有する東峰神社境内の立木を、空港公団が暫定路開港に差し障るとして勝手に盗伐した事件で、東峰部落住民全員が提訴し原状回復を求めている。
 今回の公判では、原告・東峰部落住民と被告空港公団双方から準備書面が提出され、神社裁判の争点が明らかになった。
 初回公判までに提出していた答弁書で空港公団は、伐採した立木は東峰神社の「周辺」に生えていたものだと強弁した。伐採した樹木は神社に帰属する神社林ではなく、ただの立木だから伐採しても問題ないという主張である。
 これは東峰神社には境内はないという荒唐無稽な主張だ。公団は一方で、神社の建物や鳥居が部落の総有関係にあることを認めている。立木は神社建立の際に「鎮守の森」として植樹されたもので証拠もある。立木だけ所有権が別だとの公団主張は成り立たない。
 公団はこうした低水準なこじつけによってしか、神社林盗伐を説明できないのである。
 原告側は準備書面で、東峰神社建立の詳細な経緯、さらには日本の神社一般の成り立ちも含めて明らかにし、公団側主張のデタラメさを論証した。
 また争点の核心部にあたる神社敷地の所有権について、公団は以前は常識的に認めてきた「部落の総有関係」との立場を転換し、登記名目上の旧地権者から買収したので公団所有であると言い張っている。この点について原告弁護側は次回、全面的に反論する。
 神社裁判は、暫定滑走路開港の不法性を社会的に明らかにし、農民殺しの滑走路運行を停止させ、滑走路の延伸計画などを阻止するたたかいである。裁判闘争へのさらなる支援運動を組織しよう。
写真 建立当時の東峰神社。住民が植樹した木々の苗が見える。ご神木の代表たる榊(さかき)もある。神社林である証拠だ

------------------------TOPへ---------------------------

週刊『三里塚』(S615号1面6)

 

ピンスポット 直ちにフェンスかさ上げを!

 公団発表覆す調査

 市東孝雄さん、怒り訴え

 敷地内・天神峰でたたかう反対同盟の市東孝雄さんに、ジェット噴射対策フェンス問題で再び拒否回答を行った空港公団への怒りを伺った。
   *
 予想していたことではあるが、改めて公団の農民無視を弾劾したい。今回の拒否回答は前回のものに比べても「ひどい」の一言に尽きる。
 前回公団は現在の対策フェンスの高さと飛行機の噴射口の高さを図で示して、「対策は十分」と言ってきた。それに対してわれわれは「畑と滑走路・誘導路面との段差が二bもあり、公団の説明図によっても噴射口はフェンスから飛び出ている」と具体的な調査と根拠に基づいて再回答を求めた。しかし、言ってきたのは「平面的立体的に検討して問題ない」という寝言のような話。こちらの指摘に一言も答えていない。
 本当にふざけている。要するに追い出すためにわざとジェット噴射を噴き付けている事実を白状したということ。暫定路閉鎖までたたかいぬくだけだ。
写真 ジェットブラストを使った公団の嫌がらせに怒りを語る市東さん

------------------------TOPへ---------------------------

週刊『三里塚』(S615号1面7)

団結街道 

 アメリカ支配階級の権力の源泉は石油だ。彼らは石油確保のためには手段を選ばない。「世界の利益」(ブッシュ)と強弁し、累々たる屍の山を築く。戦争の口実にデマを組織するなんて朝飯前。国防総省には嘘情報の流布が任務の「戦略的影響局」なる部局も▼石油はどこから来るか。日本の場合、中東から八六%。イスラム諸国か否かで分けると、九三%がイスラム国家。石油は何に化けるか。この活字のインキも中東・イスラム諸国から来た。すべての新聞、雑誌も同様だ▼自動車のガソリンや灯油、道路のアスファルト、電線、電話線、パソコン、携帯電話、テレビや家電製品、フィルム、染料・塗料、建材、家具、医薬品、入れ歯、衣類、サンダル、傘、バケツ、電卓、ライター、ペットボトル、包装材、スキーや釣竿、防寒具、メガネのレンズ、ボールペン…▼まさに住まいと生活の隅々まで、石油なしに「現代文明」は成り立たない。そしてアメリカ帝国主義こそがずば抜けた保有者である大量破壊兵器の数々。そしてロケットやミサイルなどの運搬手段▼日本の原油消費量は、国民一人あたり一日で一升瓶三本分。一年で一人千本。アメリカ人はその二倍も使う。これら石油が生み出す途方もない富と暴力手段を独占するために、アメリカは第二次大戦後だけで、世界で一千万の人々を殺してきた▼アメリカ本土の石油埋蔵量は底をつきそうだ。サウジに次ぐ埋蔵量のイラクに矛先が向く。王制が倒れかねないサウジの危機。「対イラク開戦」の意味は語るまでもない。日本帝国主義がこれにくらいつく。

------------------------TOPへ---------------------------

週刊『三里塚』(S615号1面8)

 闘いの言葉

 抑圧民族の国際主義とは、諸民族の形式的平等だけでなく過去の償いとなる不平等を忍ぶ事だ。これが民族問題をプロレタリア的に解決する要諦である。
 一九二二年 レーニン
 「自治共和国化」問題

------------------------TOPへ---------------------------

週刊『三里塚』(S615号2面1)

 戦後50年で1000万人殺した米国(中)

 「石油」が富と権力の源泉 ”世界一の軍隊”資本の私兵

 世界最大のゼネコン・ベクテル社

 サウジ支社がCIA支部!

 歴代政権全員多国籍企業の代理人 イラク侵略の狙いは油田の制圧に

 アメリカは戦後五十年、朝鮮でベトナムで計六百万人にもおよぶ人民を虐殺し、パレスチナ・中東、中南米などで四百万人以上の人民の生命を奪ってきた。死屍累々たる血の上に築かれているのがアメリカ支配階級の莫大な富と利権である。しかし、世に悪徳が栄え続けた試しはない。世界が大不況に転落し、帝国主義の歴史的行きづまりが明らかになる中で、アメリカの世界支配の根幹が揺らぎ始めている。かれらの生命線が「石油」だ。「石油」のためには国連も国際法も無視するというのがかれらの行動原理である。そして今、サウジアラビアに変わる中東石油の拠点としてイラクの油田が狙われているのだ。アメリカの権力構造の特徴は、巨大独占体と政府の想像を絶する癒着にある。「一心同体」「運命共同体」という以外に表現する言葉を持たない。かれらの行動を支配しているのは、むきだしの私的利益である。かれらは軍隊を私兵の如く使い、CIAを操り、侵略戦争、軍事クーデターなど「やりたい放題」をやってきた。このアメリカ帝国主義を延命させる戦争はいかなる動機で遂行されているのか、その実態を暴露し、告発しなければならない。9・11反米ゲリラ戦士たちの怒りの深さに迫らなければならない。小泉政権による有事法制制定攻撃は、この帝国主義強盗どもの分け前戦争に参戦するためのものである。今こそ有事立法攻撃阻止へたたかおう。

 第1章 軍需産業出身の閣僚がぞろぞろ

 現ブッシュ政権の閣僚が石油・軍需産業幹部で占められていることは前回紹介した。しかしアメリカでは巨大独占と政府・大統領の人的癒着は代々常識なのである。
 例えばレーガン政権では、レーガン自身が世界最大の建設会社ベクテル社の強固な後ろ盾を得て、政治家の階段を上ってきた人物である。シュルツ国務長官が同ベクテル社の社長、ワインバーガー国防長官が同じくベクテル社の副社長、エネルギー省次官のケネス・デイヴィスが同社の副社長である。ベクテル社という石油産業と一体の大手建設会社から三人もの閣僚が入閣しているのだ。
写真 1980年、大統領の作戦を練るレーガンとブレーンたち。右からチャールズ・ウォーカー、シュルツ。レーガン、一人おいてグリーンスパン。いずれもゼネコンや石油産業・軍需産業出身の多国籍企業代理人だ
 この他、リーガン財務長官はメリル・リンチ証券の会長、スミス司法長官はモルガン系生命保険会社重役、ワット内務長官はモルガン・ロックフェラー連合の法律事務所長、ピアース住宅都市開発長官がアメリカ証券取引所の会頭という具合である。
 ブッシュ(父親)政権ではベーカー国務長官がケミカル銀行の大株主、ブレディ財務長官が大手証券会社のディロン・リード会長等々。
 クリントン政権では、ゴア副大統領がオクシデンタル石油の利権者、ルービン財務長官がゴールドマン・サックス証券会長、オルブライト国務長官が鉄鋼王グッゲンハイム財閥の一族、バーシェフスキー商務長官は輸出入銀行幹部、コーエン国防長官も退任後軍需産業大手の役員に就任。そして閣僚の内十二人までがユダヤ系資本の代理人である。(レーガン政権以前については左の表参照

 第1節 ●「運命共同体」

 まさに資本と政治の一体関係が一目瞭然だ。しかもかれらはバーシェフスキー(ランド研究所)やコーエンに見られるように、政権から離れればまた軍需産業や石油産業、自動車産業の社長、重役に迎えられ、その政治的影響力を私企業のために行使して恥じない。「国防長官だった経歴が軍需産業トップとしての仕事に役立っている」「戦闘機の受注を手土産にする」と言った発言がまかり通るのである。
 こうした米支配階級の核心をなすのが石油産業である。巨大財閥といわれるロクフェラー、メロンがそれぞれスタンダード石油、ガルフ石油から出発し、今日でも絶大な力を確保していることを見ても明らかだ。 この石油のためであれば「何でもあり」という国がアメリカなのである。石油利権の維持・拡大のためにはどんな非合法手段も戦争もいとわない。
 その典型がイスラエル国家デッチあげであり、シリア(一九四九年)やイラン(一九五三年)におけるCIAの軍事クーデターである(解説1)。また今回のアフガニスタン侵略戦争自体が中央アジアからアフガン―パキスタンに至る石油パイプラインの敷設を目的のひとつとしている。

 第2章 血と闇にまみれて

 では、多国籍企業と米CIAや軍部との連携プレーがどのように行われるのか。ここでは、世にあまり知られていない前述したベクテル社という建設会社とアメリカ軍部、CIAの癒着構造を紹介する。
 ベクテル社は一九〇六年に創設された世界最大の総合建設会社だ。一九八三年には百四十一億ドル(当時の円レートで三兆六千億円)という莫大な収益を記録した。
 これほどの大会社でありながら会社を一族が保有し、株式公開していないため、大半が秘密のベールに包まれている。
 同社は世界の石油パイプライン、石油精製施設のほとんどを建設し、原子力発電所の半分を造ったというとてつもない実績を持っているが、その成長の過程は、血と闇にまみれている。
 まず第二次大戦直後、アメリカがサウジアラビアに石油利権を獲得するのに功績のあったのがベクテル社だった。同社は石油パイプライン建設事業で一九四三年よりサウジで事業を展開しており、中東にいち早く展開した多国籍企業だった。そこで利権をあてこんで同社のサウジ支社をCIA事務所として米政府に提供したのである。

 第3章 イラン・モサデク政権の転覆を主導

 当時のアメリカの懸案事項はイランをめぐるソ連との利権・勢力圏争いとイスラエル国家樹立問題だった。一九四七年、ベクテルはサウジのラスタヌーラに建設した精油工場に、私服の海軍士官数人を受け入れた。ここで得られた情報はベクテルがひそかに同地に建設した海軍情報センターに送られた。
 一九四八年には第一次中東戦争の戦局を左右する貴重なアラブ側の軍事情報を、ベクテル社のプロジェクト主任がCIA副支局長に送った。「アラブ陸軍は国境に向け北に移動している。全軍が集結を図っている」等々と。この秘密情報がイスラエル軍の圧勝をもたらしたとされる。
 米政府に「利益」を与えたベクテルが今度は政府からの「恩返し」を受ける番だった。一九四九年、イスラエルを支援したアメリカにシリア政府が激怒し、ベクテル社が建設するパイプラインのシリア国境横断許可を取り消してしまった。このままでは同社が大損害を受けるのは必至だった。
 ここで動いたのがCIAである。同年CIAが指揮する軍事クーデターで文民政府が倒され、シリア横断パイプラインは「めでたく」開通した。この裏にはベクテル社トップ直々の政治的要請があった。
 一方、ベクテル社二代目=ステファン・ベクテルの義理の叔父でベクテル社重役のジョン・シンプソンが後に国務長官とCIA長官になるダレス兄弟との絆を深めていた。当時CIA副長官だったアレン・ダレスは、一九五一年にパーレビ王朝から政権を奪取し、石油を国有化したモサデク政権が、石油をソ連に輸出するためのパイプライン建設の技術を持っているか、という懸念についてベクテル社の情報を求めてきた。
写真 世界最大のゼネコン社長にして”闇商人”ステファン・ベクテル(右)と共同経営者ジョン・マコーン。マコーンはベクテル社の利益を代表して61年から65年までCIA長官を務めた
 シンプソンがベクテル社技術者を使って集めた情報に基づく答えは「イエス」だった。こうした情報が、モサデク文民政権への危機感を高めさせ、一九五三年のCIAクーデターにつながったと言われている。
 このようにベクテル社はCIA、米政府と一体だった。この後同社の共同経営者だったジョン・マコーンや幹部だったリチャード・ヘルムズがCIA長官に就任している。また前述したようにレーガン政権には幹部三人が参加している。おぞましい一体ぶりである。
 こうして、ベクテル社は政府筋からの秘密情報をもとにインドネシアからアフリカからプエルトリコなど中南米まで、全世界のパイプライン、精油所、原子力発電所の建設事業を受注して世界最大の建設会社にのしあがった。まさに政治家と資本が完全に一体だ。
 そしてこの関係は今も続いている。クリントン政権が日本に建設工事の開放を要求したこと、現ブッシュ政権が原発建設再開を言い出したことの裏には、ベクテルなど産軍複合体の露骨な要求が存在している。

 第4章 9・11は歴史の必然だった 有事立法阻止せよ

 以上紹介したベクテル社の政権との一体構造は、他の石油メジャーを先頭としたすべての多国籍企業に共通する。米政権は常々「アメリカの死活的利益を守るために世界の海に艦隊を展開する」と公言してはばからない。この言葉はまさに、「多国籍企業の利益を守る用心棒として米軍が存在している」ということと同義なのだ。
 最後に、中南米からアフリカにいたるまで、全世界で非合法活動の限りを尽くすCIAそのものが、独占資本と人的に癒着している事実を紹介する。
 ベクテル社からだけでもジョン・マコーン(六一年〜六五年)とリチャード・ヘルムズ(六六〜七三)という二人のCIA長官を出しているが、その他もすべてが大企業出身である。
 一九四六年に就任したソーアーズはマクドネル航空機の重役から抜擢された。一九五〇年から五三年に務めたスミスはユナイテッド・フルーツの重役、アレン・ダレス(五三〜六一)はBP石油とシュローダー銀行顧問、レイボーン(六五〜六六)はエアロジェット副社長、シュレジンジャー(七三)はランド研究所幹部(後にフォード政権国防長官)、コルビー(七三〜七六)は悪名高いドノバン法律事務所幹部、ブッシュ(七六〜七七)は後に大統領で石油産業出身、ターナー(七七〜八一)は薬品大手で枯葉剤を製造したモンサント重役、ケイシー(八一〜八七)は輸出入銀行総裁、ウエブスター(八七〜九一)は軍需企業ゼネラル・ダイナミックスとマクドネル・ダグラス関係者、ゲイツ(九一〜九三)は軍需企業TRW幹部、ウールジー(九三〜九五)は軍需大手マーティンマリエッタ(当時、現ロッキードマーティン)重役、ドイッチ(九五〜九六)は軍需三位の大手レイセオン重役といった調子である。産軍との癒着関係が判明していないのは一九四七年から五〇年に長官だったヒレンケッターただ一人というすさまじさである。(解説2
 こうした巨大独占出身のCIA長官が、中東、グアテマラ、インドネシアなどで軍事クーデターをほしいままにし、要人や元首の暗殺までしたい放題にやってきたのだから、アメリカの語る「正義」や「自由」にだれも見向きもしなくなることは理の当然なのだ(解説3)。そういうアメリカの悪行の山積に対する答えが9・11ゲリラ戦争であり、今米国内で高まる反戦闘争である。
 小泉政権の有事立法攻撃はこうした危機に立つアメリカのイラク、朝鮮・中国侵略戦争に共同的=競合的に参戦し、帝国主義強盗どもの分け前ぶんどり戦争に加わるための戦争準備である。今こそ有事立法粉砕決戦を爆発させよう。
 (つづく)

◎ ノート ◎
(解説1) モサデク政権打倒のCIA軍事クーデター

 一九五一年、イラン国民議会の指名を受けて首相に就任したモハマド・モサデクはブリティッシュ・ペトロリアム石油(BP社)との契約をすべて破棄、国営イラン石油を設立した。一九五三年に就任したアイゼンハワー政権のCIA長官アレン・ダレスは兄で国務長官のジョン・ダレスとともに、BP社の顧問を務めていた。アレンは一九五三年四月モサデク政権転覆のために予算百万ドルを承認、六月十日にCIAとイギリス情報組織が作戦行動を確認した。八月十九日、クーデターが決行された。パーレヴィ国王支持派がCIAに動員され、街頭に集結した。クーデターに必要な小銃、トラック、戦車、無線機がすでに国王支持派に渡されていた。
 ドル札で買収された群衆が街頭で暴動を起こし始めた。隠れていたザヘディ将軍が姿を現し、軍を率いるクーデターを強行、モサデクを逮捕して、政権は崩壊させられた。

(解説2) CIAと大資本の結びつき

 長官の出身は本文に記した通りだが、副長官も大資本の代理人どもである。一九七八〜八一年まで副長官を務めたカールッチはその後レーガン政権の国防長官になったが、軍需企業大手のウエスチングハウス、ゼネラルダイナミックスの重役、カーライル・グループの会長に収まった。一九八一〜八二年ケイシー長官の下で副長官を務めたインマンは軍需産業サイエンス・アプリケーションズ・インターナショナルの重役出身である。

(解説3) やりたい放題のCIA

 一時禁止されていたCIAによる外国要人の暗殺がブッシュ政権で解禁になった。またラムズフェルド国防長官は現在、陸軍特殊部隊を戦闘目的で各国に密航(!)させ、その国の許可なしに勝手に戦闘行動を起こす行動を検討しているという。その国の法律も何も無視して、第三国で勝手に戦争行動を起こそうというのだから、懲りない「悪の帝国」ではある。

《米国歴代閣僚の出身大企業》

人名
出身企業
《トルーマン大統領》  
顧問 ジョージ・アレン ヴァルティ航空の大株主
国務長官 バーンズ ニューモント鉱業重役
国務・国防長官 マーシャル パン・アメリカン航空重役
財務長官 ヴィンソン ロッキード社重役
財務長官 スナイダー ナショナル銀行副社長
陸軍長官 ロイヤル メリル・リンチ証券重役
司法長官 マックダグラス ミーチュアル証券関連会社
商務長官 ソーヤ モルガン商会重役
《アイゼンハワー大統領》  
特別補佐官 アンダーソン ウェスチングハウス重役
財務長官 アンダーソン USスチール重役
国防長官 マッカロイ GE重役
郵政長官 サマーフィールド GM関連会社重役
内務長官 シートン ナショナル銀行重役
《ケネディ大統領》  
特別顧問 ソレンセン GM顧問弁護士
国防長官 マクナマラ フォード社長
国防長官 ディロン ロックフェラー財団理事長
《ジョンソン大統領》  
財務長官 ファウラー USインダストリーズ重役
国防長官 クリフォード GE重役
司法長官 クッツェンバウク IBM副社長
保険教育福祉長官 ガードナー カーネギー総裁
運輸長官 ボイド アメリカ高速鉄道会長
《ニクソン大統領》  
特別補佐官 ハーロー プロクターギャンブル副社長
国防長官 シュレジンジャー ランド研究所重役
内務長官 モートン シティ銀行関連会社重役
《フォード大統領》  
副大統領 ロックフェラー ロックフェラー財閥後継者
国防長官 ラムズフェルド ランド研究所重役
運輸長官 コールマン IBM重役
《カーター大統領》  
副大統領 モンデール コントロールデータ社重役
国務長官 ヴァンス IBM重役
財務長官 ミラー テクストロン会長
司法長官 ベル IBM重役
商務長官 クレプス AT&T重役
エネルギー長官 ダンカン コカコーラ社長
トルーマンからカーターまでの歴代政府閣僚が産軍複合体といかに癒着した関係にあったのかを示す表。レーガン以降は本文で詳述。

 

------------------------TOPへ---------------------------

週刊『三里塚』(S615号2面2)

北総の空の下で ニセ有機野菜

 顔の見える関係で

 お盆前に草取りを手伝っていた時のこと。山際の畑で早くも赤とんぼが群れているのに驚きました。猛暑の夏から秋がかけ足でやって来るのかと思いきや、九月の声を聞いても強い日差しが衰える気配はありません。夏野菜は最後のがんばりを見せていますが、人間の方は少しバテ気味……です。
 ところで皆さん、「無農薬野菜」と「有機野菜」で、安全性が高いのはどちらか分かりますか? アンケートでは前者と答える人が多いそうですが、答えはノー。無農薬野菜は農薬を使っていないというだけですが、有機野菜は三年以上農薬も化学肥料も使わない畑で作った野菜のことなのです。
 有機とは生命を有するの意。一昔前までは堆肥や腐葉土を使った有機野菜が当たり前でした。ところが、より早く、よりたくさん、金もうけ主義で生産するために、農薬と化学肥料が多用されるようになり、不ぞろいで手間のかかる有機野菜は市場から姿を消しました。虫がついたり形が悪くても安全でおいしい野菜を求める産直運動の中でのみ受け継がれてきたのです。
 ところが農水省によって、有機野菜にJASマークをつけて区別する認証制度が始まって以来、この「安全性のお墨付き」に業者が注目するようになりました。認定マークがあれば、手に入らなかった有機野菜を店頭で手軽に販売できるのです。生産者と消費者の信頼関係の上に成り立ってきた有機野菜が利潤追求の手段になり、ニセ表示の摘発も相次いでいます。飛行機がゴーゴーとうなりをあがる三里塚現地ですが、豊かに実った有機野菜が「私の居場所はここ」と主張しているようで頼もしいかぎりです。
 (北里一枝)

------------------------TOPへ---------------------------

週刊『三里塚』(S615号2面3)

 三芝百景 三里塚現地日誌 2002

 8月21日(水)〜9月3日(火)

●ジェット噴射対策塀で公団が拒否回答 市東孝雄さん宅東側のジェット噴射対策塀問題で、反対同盟は空港公団あてに「対策フェンスをカサ上げしろ」と再要求・再質問を出していたが、公団から成田市空港対策部を通して拒否回答が送られてきた。反対同盟の「滑走路面は市東さんの畑より2b盛土されていて、対策フェンスは事実上2b低い。だから第1回目の公団回答はまちがっている。ただちに対策フェンスを高くしろ」という要求に対して、公団は何らの理由を示すこともできず、ただ「平面的立体的に検討して現在のフェンスで十分」という前回以上に農民無視の回答を寄こした。市東さんはじめ反対同盟の怒りが高まっている。(21日)
●婦民全国集会に鈴木いとさん 神奈川県相模原市で開かれた婦人民主クラブ全国協議会の第19回定期大会に反対同盟婦人行動隊から鈴木いとさんが参加して「暫定滑走路による追い出し攻撃に反対同盟は負けません」「10・13全国総決起集会への参加をお願いします」と訴えた。(24日)
●3大学から援農隊 首都圏3大学から援農隊が現地入り。鈴木幸司さん、木内秀次さん、市東孝雄さん宅で草取りなどの作業を行った。(25日)
●第2回東峰神社裁判 東峰神社の底地と立ち木の強奪に抗して東峰部落が提訴している東峰神社裁判の第2回公判が千葉地裁で行われた。公団は「寺田増ノ助氏が東峰部落に土地を譲渡した証拠はない」「だから底地は貸与していたもの。公団への名義書き換えは合法」と答弁書で強弁した。これに対して部落は「底地を借地として建立された神社は例がない」「東峰神社が建てられた時点で土地も社も神社の総有になった」と反論して公団側のデッチ上げと無知を弾劾した。(26日)
 

●萩原さんと鈴木さんで稲刈り 敷地内東峰の萩原進さんと芝山町中郷の鈴木幸司さん宅で稲刈りが行われた。熱い夏のおかげで今年も豊作。フサオトメ(萩原さん)、コシヒカリを収穫した。鈴木さんでは後2カ所の稲刈りに取り組む予定。(31日=写真
●「欠陥ナリタ、改善急務」の報道 暫定滑走路について航空機発着の大幅遅れが問題になっている、との報道が行われた。「便数の増加が皮肉にも誘導路不足など機能的欠陥を浮き彫りにした」と指摘している。(9月1日)

------------------------TOPへ---------------------------