SANRIZUKA 2002/09/01(No614 p02)

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週刊『三里塚』(S614号1面1)

 空論「北延伸」デマと脅迫による屈服強要を許すな

 「どかないなら殺す」との大暴言

 新総裁・黒野の狙いは用地交渉

 37年前と何も変わらぬ農民無視

 「南延伸」が真の狙い

 ジャンボ機が入れない「北延伸」は無意味

 空港公団新総裁に就任した黒野匡彦は、平行滑走路の反対派地権者切り崩しのために暫定滑走路の「北側延伸」問題をでっち上げ、「用地交渉と北延伸の両にらみでいく」と公言した。「両にらみ」とは、「屈服しないなら殺す」という脅しだ。暫定路開港で「頭上四十b飛行」などの極限状況に農家を追い込んだ上に、「それでも屈服しなければ、今度は大型機を飛ばして生活できなくしてやる」と凄んでいるのだ。「民主主義」の建前をかなぐり捨てたむき出しの脅迫行為である。「北延伸」それ自体は空論だ。黒野の狙いは一点、敷地内の地権者に用地交渉を強要し、空港反対闘争そのものを破壊して平行滑走路を本来計画(南側完成部分をあわせ三三〇〇b)に戻すことにある。三里塚闘争と反対同盟はこのような脅しには絶対に屈服しない。公団・黒野体制に対する全面的な反撃に打って出なければならない。
 新総裁・黒野の発言は新聞紙上でのインタビュー(産経8・14付千葉版)。暫定滑走路の北延伸について、「用地交渉と工事強行の両にらみ」を公言し、北延伸については「来年度予算での調査費計上」方針まで示唆して見せた。ねらいは、三十七年間買収出来なかった東峰・天神峰地区の地権者を屈服させること。それで暫定滑走路を、平行滑走路の当初計画(南側完成部分と接続した三三〇〇b)に戻すことである。
 そのために黒野は、空論に等しい「北延伸」問題を脅しの材料に使っている。「どかないなら延長」(黒野)とは、ジャンボ機を飛ばして地権者の生活条件を奪うという脅迫だ。八六年の二期工事着工時に「強制収用」の脅しで地権者に屈服を迫った手口と同じだ。
 国交省・公団は、かの公開シンポ・円卓会議(九四年最終報告)で、この種の脅しや強制手段を二度と使わないと公の場で確約したばかりだ。運輸省は「地権者との合意なしに着工せず」と公式文書で明言もした。「過去を謝罪する」とも表明した。
 その舌の根も乾かぬうちに暫定路開港を強行し、今回、地権者に向かって「交渉に応じなければジャンボを飛ばす」と迫っているのだ。゛いやなら殺す″という意味である。前記の確約や謝罪も、暫定路開港や反対闘争つぶしのペテンに過ぎなかったと開き直ったのだ。この農民無視の体質は、三十七年前から何も変わっていない。黒野は地権者の意思や苦悩など歯牙にもかけていない。
 反対同盟とすべての労働者人民は、この公団総裁・黒野による、一片の理もない脅迫行為に対して、あらゆる反撃の権利を有する。

 堂本と組んで地権者を脅迫

 黒野の本当の狙いは用地交渉にある。工事計画としては南側延長(当初計画への復帰)以外に考えていない。「北延伸」は、調査費をつけようが何をしようが、空論なのだ(後述)。用地交渉のあまりの困難さの前に、ウルトラな地権者脅迫を始めたにすぎない。
 黒野の用地交渉への姿勢は、総裁就任と同時に千葉県(堂本知事)や地元自治体(成田市等)との連携を打ち出したことで明らかになった。これは前総裁・中村が、暫定路開港を自分の任期中の絶対課題とし、堀越昭平(元東峰住民)の用地交渉を例外に、県や自治体の介入を拒否した姿勢とは正反対だ。
 地権者を脅すためなら、どんな手段でも使うというのが黒野の基本姿勢だ。古典的な屈服強要。これが「北延長」問題が急浮上した本当の意味である。
 共生委員会の関係者が黒野の総裁就任を歓迎しているのも「話し合い」による地権者つぶしだ。それは彼らの利権にもかかわる。共生委は「空港のマイナス面を監視する」と称し、シンポ・円卓会議に参加した旧熱田派農民の取り込みを目的に設立された。しかしいまや公然たる平行滑走路建設推進団体に衣替えした。彼らの存在意味はすでに消滅し、東峰・天神峰の地権者切り崩しを、予算確保と組織存続の口実にしようと躍起になっている。
 今後、黒野は「北延伸」を脅し文句に、県や自治体その他と連携しつつ、様々な屈服強要の場を設定してくるだろう。この攻撃に関連する一切合財に対して徹底した反撃をたたきつけることが、三里塚現地攻防の当面する課題である。

 大型機入れず北延伸は空論

 黒野がいう「北側ヘ三〇〇b延伸」は空論だ。延伸の口実は「大型機が飛べる滑走路長」だが、第二ターミナルとの連絡誘導路が狭く、大型機は通過できず暫定滑走路には入れない。滑走路を北に伸ばしてもジャンボ機は飛べない。「北延伸」自体が意味がないのだ。(本紙前号参照)
 公団はこの点を自覚しているので、天神峰・市東孝雄さん方の西側、つまり空港の外側に新たな連絡誘導路を造る計画がある、などと荒唐無稽なデマを水面下で流している。地権者脅しの常とう手段だ。
 しかし市東さん宅を完全に陸の孤島に囲い込む(市東宅の母屋と畑が空港の中に入っていまう)という滅茶苦茶な「計画」で、現実性はまったくない。
 ちなみに「西側誘導路」なるものを、大型機の双方向通過を想定して線引きすると、新たに買収対象となる地権者は数十人に上る。成田では土地収用法が適用できないことが致命的で、これだけの用地買収は十年かけても不可能だ。農家だけでなく商用地も多く、条件を満たす代替地の確保も至難の業だ。
 実例はすぐ近くにある。「成田国際物流複合基地」建設(取香地区・総面積七十八ヘクタール)だ。県の鳴り物入りの事業だが、計画から十年かかってわずか八分の一しか買収が進んでいない。三里塚闘争の影響はかくも大きい。
 要するに「西側連絡誘導路」は空論なのだ。これほど非現実的な「計画」に莫大な予算を投入できる財政状況でもない。つまるところ国交省も公団も、成田での敗北を認められず、地権者脅しに最後の望みを託しているのである。
     *
 結論。「北延伸」デマによる地権者切り崩し攻撃の一切を粉砕せよ!

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週刊『三里塚』(S614号1面2)

 公団説明より2メートル低い 排ガス対策塀

 市東宅 塀上越えて直撃

 公団、故意に嫌がらせ

 大気汚染でも公団の大ウソ発覚

 天神峰・市東孝雄さん宅へのジェット排気ガス被害で、市東さんと反対同盟が成田市空対部を通してフェンス増設などの対策を要望(五月三十日付)していた件について、空港公団は「対策の必要なし」と回答(六月二十八日付)していたが、反対同盟の調査でこの公団回答のウソが全面的に発覚した。
 焦点は市東宅を排ガスが直撃する航空機エンジンの高さと、対策フェンスの高さとの関係。公団は対策フェンスがエンジン噴射口より高く設計されているので問題なしと強弁してきた。しかし調査の結果、実際のフェンス高は公団の説明より二メートルも低いことが判明した。エンジン噴射口はフェンスより約一メートル高く、高速高温の排気ガスが市東宅を直撃しているのである。
 施工者である公団がこの事実を知っていたことは明らかで、「嫌がらせによる叩き出し」の実態が証明された形となった。
     *
 公団の説明では、市東宅に噴射口を向ける航空機エンジン(B777クラス)の高さは約二・九メートルで、対策フェンス高が「三・五〜四・五メートル」。これで航空機エンジンの排ガスは「大幅に軽減されている」(公団文書=前記)と強弁していた。
 ところが反対同盟の今回の調査で、市東宅の土地の高さが、航空機が自走する誘導路の高さより二メートルも低いため、市東宅側に建てられた対策フェンスの実質的な高さは、公団の説明より二メートルも低いことが判明したのだ。排ガスは「大幅に軽減」どころかフェンスの上から市東宅を直撃していた(図参照)。
 航空機が通過(自走)するたびに市東宅とその周辺に焼きつくような臭気が漂うのはこのためだった。
 市東孝雄さん宅は、もともと空港予定地の境界線の中にある。暫定滑走路建設の際、公団は予定境界線を内側に削って誘導路を無理やりねじ曲げて造った。その結果、許容限度をこえた排ガス被害が市東宅に及ぶことになったのである。
 東峰地区では、農家の頭上四十メートルを航空機が飛行する事態が大問題となっているが、天神峰・市東宅の排ガス被害も含め、暫定路の開港自体が許されない暴挙なのだ。国家事業といえども、地元農民の命と生活を直接脅かすような行為が許されるわけがない。
 公団は、市東孝雄さんの要求を受け入れ、直ちに対策フェンスを増設せよ! 住民の命を脅かす暫定路の運行を直ちに中止せよ!
     *
 航空機による大気汚染についても、空港公団が重大な虚偽の発表を行っていたことが判明した。

 オキシダント基準値超える

 成田市は八月九日、暫定路の飛行直下となった東峰地区における騒音被害と大気汚染の調査結果を発表した。騒音は最大時で百デシベルを超え、「住むには過酷な環境」(成田市)と発表。そして大気汚染については、光化学スモッグの原因となる光化学オキシダントの一時間あたりの積算濃度が最高で〇・一〇五PPMを記録し、国の環境基準(〇・〇六PPM)を超える発表となった。
 これは公団の公式見解を覆す重大な問題だ。
 公団は一期暫定開港直後の七九年から現在まで、二十四時間体制で空港周辺の大気質測定を行ってきたと称し、前記の市東孝雄さんの要求に対する回答書(6・28付)では「大気質に影響を及ぼす事実は確認されていない」と強弁していた。暫定路開港から二カ月を経ての回答で「確認されていない」とは、測定データの改ざんに等しい大問題だ。フェンスの増設要求を含め、公団の虚偽報告を徹底的に追及せよ!

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週刊『三里塚』(S614号1面3)

 成田高速アクセス 役員宅に爆破戦闘

 完全空港化絶対阻止へ 県・堂本体制に鉄槌

 革命軍から以下の軍報が発表された。(抜粋)
 【革命軍軍報】革命軍は三里塚闘争勝利へ戦略的価値絶大な戦闘を貫徹し、以下の軍報を発表した。
 8月6日、わが革命軍は千葉市緑区鎌取町118の8、「成田高速鉄道アクセス」監査役、佐藤厳宅に対する爆破戦闘を敢行した。
 この戦闘は、日帝・空港公団と千葉県が4・18暫定滑走路開港を強行し、殺人的な騒音・ジェット噴射で三里塚・敷地内農民の生活を破壊し、さらに北側300b延長をもって農民のたたき出しを策動していることに対する怒りの鉄槌である。革命軍は、農民たたき出しを狙う極悪非道の策動を絶対に許さない。
(中略)
 8・6戦闘は、何よりも第一に、4・18「暫定」開港と、その後の滑走路延長策動をもってする敷地内農民圧殺、農地強奪策動に対する怒りの反撃である。
(中略)
 8・6戦闘は、第二に、成田新高速鉄道に対する怒りの戦闘である。「都心と成田空港を30分台で結ぶ」と宣伝して計画が進められている成田新高速鉄道は、暫定滑走路の延長=B滑走路完成による完全空港化と一体のものである。日帝は、都心と結ぶ新たなアクセスを完成させて、「便利」さを売り物にして、完全空港化を進めようとしている。成田新高速鉄道は農民圧殺そのものだ。
(中略)
 8・6戦闘は、第三に、千葉県当局とりわけ知事・堂本に対する怒りの戦闘である。(中略)堂本は積極的・能動的に「成田空港の完全空港化」を提唱し推進している。農民を叩き出し、B滑走路を完成させるために立ち回っている。そのために地元業者や周辺自治体をかき集めて今年1月、「2500b平行滑走路の実現」をめざす「魅力ある成田空港推進協議会」を発足させ、その会長におさまった。さらに「成田高速鉄道アクセス」を4月に発足させ、その取締役会長に就任した。そして、佐藤厳を常勤の監査役として送り込んだのだ。(中略)堂本知事による、三里塚農民圧殺のための収用委員会再建策動を絶対に許すな!
(後略)
 2002年8月6日
 革命軍

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週刊『三里塚』(S614号1面4)

 ピンスポット

 県警、開拓道の不法置石撤収

 同盟、村の追及で

 県警窮地、説明もなし

 反対同盟と東峰部落が空港公団、千葉県警に撤去を求めてきた東峰十字路北側開拓道路入り口のコンクリートブロックが八月七日、取り除かれたことが確認された。同盟と東峰部落の追及に追いつめられ、県警がこっそり持ち去ったのである。
 反対同盟顧問弁護団は六月二十七日に空港公団と成田市に同コンクリートブロックの撤去を要求した。しかし問題のブロックを違法に設置したのは千葉県警であったことが分かり、七月八日には千葉県警に対して撤去を要求する書類を送り回答を求めた。
 県警は回答を一カ月近くも拒んだ挙句、八月七日までに撤去せざるをえない所に追いこまれた。これは県警の行為が何の法的根拠も無い違法なものであることを自認するものであり、反対同盟と東峰部落のたたかいに追いつめられたものである。
 それにしても謝罪も何もせず「ただ撤去するだけで頬かむり」という県警の態度は農民無視に留まらぬ違法行為の隠蔽である。

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週刊『三里塚』(S614号1面5)

 排ガスで朝顔の葉ボロボロ

 暫定滑走路による大気質汚染の実態調査の一環として市東孝雄さん宅に植えられた朝顔は、ジェット機の排気ガス直撃でボロボロになっている。公団はこの大気汚染の事実を知っていながらデータを隠していた。

 


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週刊『三里塚』(S614号1面6)

団結街道 

 読者の地元では、お盆に何の花を供えたろうか。一般的なのは「みそ萩」かもしれない。みそ萩は「盆花」とか「精霊花(しょうりょうばな)」ともいう▼「みそ」には「禊(みそぎ)」という難しい字をあてている。湿ったところが好きだから「溝」とも解釈される。お盆に、さいの目切りのなすを精霊棚だか仏壇に供えて、茶碗の水をふりかけるとき、みそ萩の花を使う地方もある▼西日本には、ヒゴタイという花があるそうだ。青紫の直径五センチくらいの丸くて可愛い花が咲く。直径五センチといってもひとつの花ではなく、ねぎ坊主のように花が丸く集まった形。このヒゴタイを盆に供える地方もある▼農家では、盆にお迎えした仏様が朝方の野回りをする習慣がある。農家が盆前に仕事のけじめをつけるように努めるのは、仏の野回りに同行するという伝習による。野まわりをする仏が被る傘に見立てて、うどんこ製の三角形のだんごを供える地方もある。迎えた仏に供えるために、朝回りをして作物を少しずつ集めるのだが、その際、仏が傘を被って同行するのである▼そして田んぼを見ては、干からびて穂も出ない様子に゛卒倒″したり、畑に行っては、自分が現役だった頃と違う雑草が増えた様子を見て「俺の頃はこんなではなかったに」とか悪態をつかれるそうだ▼それでも三日もすれば、仏は送り火に追われて無事天に帰ることに…。という仏の話を、齢を重ねた人生の大先達にしみじみと語り聞かされた今日この頃でありました。秋の気配は唯物論者にも等しく訪れ、鍬を握りて気分一新かな。

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週刊『三里塚』(S614号1面7)

 闘いの言葉

 ソビエト人民委員会は次の事を決議した。ロシア諸民族の平等と主権。分離と独立を含む諸民族の自決権。民族的な特権と制限の廃止。少数民族の自由な発展。
 一九一七年
 十一月十五日

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週刊『三里塚』(S614号2面1)

 戦後50年で1000万人殺した米国(上)

 ブッシュ政権 戦争で世界の富独占狙う

 権力の中枢に石油・軍需産業

 この秋の有事立法攻撃とのたたかいは日本の戦後史を左右する決戦となる。有事立法阻止決戦に勝利する道は、「外敵から日本を守るための防衛法」という小泉政権のデタラメなキャンペーンを完膚なきまでに粉砕することである。同法は日本がアメリカと共同的=競合的に朝鮮・中国へ攻め込んでいくための侵略戦争法案である。中国や北朝鮮には日本を攻撃する意志も能力もない。米日帝国主義の側が帝国主義的動機で戦争をしかけようとしているのである。アメリカこそ戦後だけで一千万人もの人民を虐殺してきた「悪の帝国」である。アメリカはさらに今、なぜ戦争を世界規模に拡大しようとしているのか。小泉内閣による有事法制定攻撃の背景をなすこの問題を解明していきたい。
 アメリカがイラク、イラン、北朝鮮を「悪の枢軸」と名指しし、次つぎと戦争を拡大させようとしている背景には三つの要因がある。
 まず第一には、戦後の帝国主義体制が歴史的に行きづまり、他の帝国主義国を叩き落す以外に延命の道がないことがある。戦後帝国主義経済は、資本(生産設備)や、生産力が過剰となり、もはや他の帝国主義国の権益、市場、勢力圏を奪い取る以外に延命する余地がなくなってしまった。
 アメリカは、一九三〇年代と同じような市場と資源、勢力圏を奪い合う争闘戦を、唯一のスーパーパワーとして強引に展開し始めたのである。中国やアジア勢力圏をめぐって激突した戦前とまったく同じ論理で行動し始めている。
 第二は、戦争政策を直接的な経済政策として遂行し、産軍複合体に特需を与え、景気を刺激しようとの意図である。戦争は最も効果的な経済刺激策といわれる。一九二九年大恐慌から経済が立ち直ったのも第二次大戦によってであった。とりわけアメリカでは軍需産業と国防総省関係が最大の「公共事業」であるといわれている。この「公共事業」に莫大なドルを投入する事で、業界に利益をもたらし、雇用を拡大し、景気を刺激しようというのである。さらにアフガニスタンのように経済権益の拡大(中央アジアパイプラインの敷設)を直接意図した侵略戦争をも展開しようとしている。
 第三は、アル・カイーダを先頭とするイスラム復興運動、パレスチナ人民、新植民地主義諸国でたたかう膨大な人民の民族解放闘争を、アメリカが直接軍事力でもって圧殺しようという意図である。今回はこの中で第二の要因について以下報告する。
   *
(グラフ=90年代の米国防費の現象を示すグラフ。軍需企業は大不況に陥った。そこで大軍拡のフッシュ政権を押し立てた)

 アメリカは過去も現在も石油と軍需産業と自動車産業の国である。九〇年代に入ってからはIT産業がこれに加わる。これら四つは軍需産業と一体の構造をなしている。
 例えば石油産業と軍需産業の結びつきはきわめて深い。下の表は大手石油企業と軍需企業役員の歴代の人的結合関係を示したものである。例えば世界最大の軍需産業で現在問題になっているNMD(国家防衛ミサイルシステム)計画を中心になって進めているロッキード・マーチン社(解説1)には石油業界大手のアラムコ、シェブロン、ソーカル、モービル、ARCOなどから会長、社長、重役が役員を兼任している。
 第二位のボーイングには同じくソーカル、シェブロンからそれぞれ二人、一人の役員が送り込まれている。第三位のレイセオンにはモービルの会長が重役として派遣されている。
 第四位のノースロップ・グラマンにはアラムコ会長、ハリーバートン重役が役員になっている等々(解説2)。文字どおり完全に一体である。
 軍需企業の好況はそのまま石油産業に利益をもたらす。また中東や中央アジアに展開する石油メジャーや石油関連産業は、イスラエルデッチ上げに見られるように侵略戦争と一体である。アメリカ軍の軍事力によってその権益を確保・維持し、今も拡大をつづけている。ちなみに「反テロ戦争」を口実としたアフガニスタン侵略戦争には石油大手ユノカル社(ユニオン石油カリフォルニア)のパイプライン敷設による中央アジアの石油・天然ガス資源の奪取という露骨な帝国主義的意図がはらまれていたことが今日明らかになっている。(解説3)
 これら軍需企業、石油企業、自動車、IT企業で国内総生産の多くを占める。(解説4)
 狭い意味での軍需産業に限ってもそこに働く労働者は二百五十万人から三百万人である。これに軍人と国防総省勤務者を加えると五百万人から七百万人にも達する。軍需産業と国防総省関連がアメリカ最大の「公共事業」と言われるゆえんである。
 ところが一九九〇年代にこの軍需産業が大不況に陥った。ソ連圏の崩壊による冷戦の終結である。上のグラフにあるように九〇年に三千億ドルだった国防予算は九一年には二千七百億ドルに激減。クリントン政権下で九六年には二千六百億ドルにまで減らされた。
 そのため、名だたる軍需産業が軒並み倒産の危機に陥り、二十五社あった主要軍需企業はわずか四グループに吸収合併された。
 すなわちロッキード・マーチングループ、ボーインググループ、レイセオングループ、ノースロップ・グラマングループである。
 こうした軍需企業への「救済」の意味も込めて強行された軍事行動が湾岸戦争とユーゴスラビア空爆である。
 前者では、二千七百三十三億ドルであった軍事予算に加えて戦争特需四百六十七億ドルもがもたらされた。もっとも、戦争自体わずか二カ月で終わってしまったため、特需は期待したほどではなく、需要をあてこんで生産を拡大したIT企業から政府が訴えられたほどだったが。

 ●トマホーク

 つぎに待望されたのが、NATO軍によるユーゴ空爆であった。ここでは大量の爆弾とトマホークミサイルがうち込まれ、ボーイング社とレイセオン社に莫大な利益をもたらした。
 ちなみに、九〇年代にスティンガーミサイルがユーゴやアフガニスタンを始めとした世界の紛争地に国内法規定を無視してまで大量に輸出され、後に国連で問題となったが、第五位メーカーであるゼネラル・ダイナミックスは、これで経営危機を乗り切ったと言われている。
 しかし「地域紛争」では戦争特需も高が知れている。「もっと本格的な戦争を」との待望論が軍需産業から高まった。こうして大軍拡と戦争拡大のブッシュジュニアが、産軍複合体と石油財閥の後押しの下、大統領に就任したのである。
 ブッシュがいかに軍需産業、石油産業の利益代表としてふるまっているかは、NMD計画を中心とする軍事拡大路線への転換、原子力発電所建設の再開そして現在の戦争拡大政策を見れば一目瞭然だ。
 それもそのはず、ブッシュ自身および政府閣僚と軍需企業、石油企業との結びつきがすさまじいのだ。ブッシュが自ら石油企業を立ち上げた石油産業出身者である事はよく知られているが、ブッシュ家自体がスタンダード石油グループと極めて近い関係にある。

 小泉「備えあれば憂いなし」のデタラメ暴く

 副大統領のチェイニーは、ハリーバートンという世界一の石油エンジニアリング会社の社長で、自ら国防長官(当時)として指揮した湾岸戦争後のクウェート復興で大もうけした。さらに夫人のリンが何とロッキード・マーティンの重役である。
 ラムズフェルド国防長官は軍事シンクタンク・ランド研究所の理事長を務めていた。ちなみにランド研究所の母体は銃砲製造会社のレミントン兵器と海軍技術を専門とするスペリー・ランド社という軍事企業そのもの。八〇年代この理事長にラムズフェルドが就任し「イランと北朝鮮の弾道ミサイル技術は大きな脅威となっている」と称して、NMD計画を進めている。
 この他ミネタ運輸長官はロッキードの上級副社長、エバンス商務長官はデンバーに本拠を置く石油企業トム・ブラウン社の社長、コンドリーザ・ライス安保問題担当大統領補佐官は前述の石油メジャー・シェブロンの重役、ロバート・カードエネルギー省次官は核廃棄物浄化企業・カイザーヒル社の社長等々といった具合。そしてこれは歴代政権の常識なのだ。(次回詳述)
 このように見てくると、「究極の正義」や「飽くなき自由」(いずれも対テロ戦争の作戦名)などというブッシュ政権の言葉は噴飯ものだ。ブッシュ政権自体が「究極の金もうけ」を目的とする産軍複合体の利益代理人なのである。事実、前述したようにアフガニスタン侵略戦争の目的の一つは、トルクメニスタンからアフガニスタンを通ってパキスタンにいたる石油パイプラインを実現することにあったが、カイライ政権の大統領にすえられたカルザイは、何と当のパイプライン敷設に携わるユノカル社の最高顧問だった男なのだ。

人名
石油企業の履歴
軍需企業の履歴
N.オーガスティン フリップス石油 ロッキード社長
T.バーガー アラムコ会長 ノースロップ重役
C.ヒルズ ソーカル重役 ランド研究所重役
A.マレー モービル会長 ロッキード重役
A.ニッカーソン モービル会長 レイセオン重役
D.パッカード ソーカル重役 ボーイング重役
P.マギー シェヴロン重役 ボーイング重役
R・ステグマイヤー ハリバートン重役 ノースロップ・グラマン重役
G.ワイヤーハウザー ソーカル重役 ボーイング重役

  (上表=石油大手と軍需企業の人的結合を示す表。文字どおり一心同体だ)

  (写真 ブッシュ家は元々スタンダード石油との結び付きが強い石油業界の代理人だ)

 アフガニスタン侵略戦争は莫大な石油と天然ガスの埋蔵量が確認されているカスピ海・中央アジア地域に権益のクサビを打ちこむための戦争だった。そして巡航ミサイル・トマホークは在庫が払底するほど打ち込まれた。現在ボーイング社はトマホークの増産で、フル回転だ。
 以上検討してくるとブッシュの世界戦争政策は、戦争によって巨大軍需産業に利益をもたらすという、悪らつかつ下劣な動機が背景にあることが分かる。
 産軍複合体の代理人として、次つぎに戦争を拡大する米ブッシュ政権。これを支配する石油メジャー。さらにこれを上から操るロックフェラー、メロン、モルガンなどの巨大財閥。
 ここには世界一の金持ち貴族が、その政治的代理人を使って、最も貧しいアジア・中東・アフリカ諸国に、爆弾や巡航ミサイルを落とし、あるいは「死の商人」として敵味方双方に兵器を売り付け、数百万人を虐殺することで、富と支配力を拡大するという腐り果てたおぞましい帝国主義の実態が露わになっている。
 たたかうイスラム諸国人民による9・11反米ゲリラ戦闘は、こうしたあくどいアメリカ帝国主義の世界支配に対し渾身の怒りを込めて「NO」を突きつけた決起であった。だからこそブッシュやアメリカのおごり高ぶった支配階級は根底的に打ちのめされている。
 日本の小泉は一個の帝国主義国の首相として、この争闘戦から脱落しないために今、有事立法攻撃に突き進んでいる。「備えあれば憂いなし」のデマゴギーが聞いてあきれる。これはまさに戦前の南京大虐殺の道であり、ガダルカナルの道であり、沖縄戦、広島・長崎の道だ。帝国主義を打倒し、スターリン主義を打倒して労働者人民の新たな社会をうちたてるためにたたかうことが世界の人民の唯一の回答だ。(つづく)

 解説

(解説1) ロッキード・マーチン社 ロッキードがマーチン・マリエッタを合併し、ゼネラルダイナミックスのF16戦闘機およびF22ステルス戦闘機の製造部門、GEの衛星、レーダー探知システム部門、ユニシスの防衛部門などを買収して造った世界最大の軍需企業。(広瀬隆著『アメリカの巨大軍需産業』)

(解説2) アメリカ系の石油メジャー  セブン・シスターズと呼ばれる石油メジャー七社のうち米系五社はエクソン、モービル、ガルフ、ソーカル、テキサコであったが、ガルフ石油がメロン財閥である以外はすべてロックフェラー財閥(スタンダード石油)の所有。1911年の反トラスト法でスタンダード石油が34社に解体されたうち、エクソンはスタンダード石油ニュージャージー、モービルはスタンダード石油ニューヨーク、ソーカルはスタンダード石油カリフォルニア、テキサコはスタンダード石油テキサスから生まれた。
 分割されてもすべてがそれぞれ生き残り、メジャーとしての巨大な力を維持した。現在はさらに再編され、エクソンとモービルが合併してエクソン・モービル、ソーカルとテキサコが合併してシェブロンとなり、かつてのスタンダード石油に限りなく近づいている。どの会社も名だたる石油メジャーである。(広瀬隆著『世界石油戦争』)

(解説3) 石油パイプラインとアフガニスタン侵略戦争 現アフガニスタン大統領のカルザイは米石油大手ユノカル社の元最高顧問で、タリバンとの交渉窓口になっていた。彼はCIA長官のウィリアム・ケーシーやジョージ・ブッシュ副大統領(現大統領の父)、パキスタン諜報局とも親密な関係を維持していた。つまり、アメリカの純然たるエージェントであって、タリバン政権の崩壊後、ブッシュ政権は露骨にもこのエージェントを大統領にすえ、傀儡政権にしたのである。(『世界』九月号青山貞一論文)
(解説4)軍事産業としての自動車、IT企業 自動車産業も軍需産業と深い関係がある。日本の日産自動車も堂々たる軍需企業であるのと同様、ジェネラル・モ―タースは1989年には軍需企業の第5位に名を連ねていた。フォードは、ベトナム戦争の時の国防長官マクナマラを輩出し、マクドネル・ダグラスの創業者であるジェームズ・ダグラスを技術者として育てた。
 またIT企業では、1989年にIBMが軍需企業中16位、同じくコンピュータのユニシスが18位、テキサス・インストゥルメンツが20位となっている。ちなみにIT企業大手ヒューレット・パッカードの創始者デヴィッド・パッカードはニクソン政権の国防副長官であり、その後ボーイングの重役も兼任した。

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週刊『三里塚』(S614号2面2)

 反対同盟 団結野球大会

 同盟チーム、完全優勝で4連覇

 萩原進さん サヨナラホーマーの活躍 市東さんも2塁打で貢献

 八月三日、反対同盟は毎夏恒例の団結野球大会を開催し、四チームが参加して激戦をくり広げた。
 第一試合はいきなり同盟チームと現闘チームの激突。現闘チームの打棒ふるわず3―0で同盟チームの勝ち。第二試合の支援Fチーム対連合チームは2―3で連合チームの勝ち。
 同盟チームの強さが光ったのは第三試合の対連合チーム戦。この試合に同盟チームは11―0という記録的なスコアでが大勝した。木内秀次さんがセンターをオーバーするツーベースで走者を一掃すれば、市東孝雄さんも外野を越す長打。 鈴木謙太郎さん、伊藤信晴さんもロングヒットを放って得点を重ね、鈴木幸司さんも代打でヒット。
 圧巻は第五試合。1―1の同点で迎えた最終回。勝負強い萩原進さんがレフトオーバーの大飛球(認定ホームラン)で二塁ランナーを返し、劇的なサヨナラ勝ちを演じた。
 この結果、同盟チームが 九九年以来の完全優勝で見事四連覇。他は三チームが一勝二敗の同率二位。
 最後に大会実行委員長の鈴木謙太郎さんが「来年も再来年も野球大会を開催できるように空港反対闘争をがんばろう」としめくくった。

 

左=対連合チーム戦で活躍した市東孝雄さんのスイング。外野を抜く2塁打を放ち気を吐いた。
右=今年も豪腕ぶりを見せつけた鈴木謙太郎さんのピッチング。

  

左=プレー前に大会実行委員長の鈴木謙太郎さんがあいさつをおこなった。「ケガに注意して大いに張りきり楽しもう」
中=支援Fチームとの試合でサヨナラホームランを放った萩原進さんのバッティング。反対同盟4連覇の立役者となった。
右=走者一掃の2塁打を放って同盟優勝に貢献した木内秀次さん。

 

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週刊『三里塚』(S614号2面3)

 三芝百景 三里塚現地日誌 2002

 7月31日(水)〜8月20日(火)

●反対同盟が4連覇 夏恒例の団結野球大会が三里塚現地で開かれ、反対同盟が堂々の4連覇を飾った。中でも萩原進事務局次長の打棒が光った。(8月3日)
●革共同集会に反対同盟多数
 東京・目黒公会堂で開かれた革共同政治集会に北原鉱治事務局長、萩原事務局次長、市東孝雄さん、木内秀次さん、伊藤信晴さん、野平聡一さんが参加。北原さんと萩原さんが発言して秋の有事立法決戦から10・13三里塚全国集会へ闘うことを呼びかけた。(4日=写真)
●成田新高速幹部に鉄槌 革命軍は、千葉市緑区鎌取町にある成田高速鉄道アクセスの監査役・佐藤厳宅に爆破攻撃を敢行した。(6日)
●県警、置石を撤去 暫定滑走路開港直後、東峰十字路北側の開拓道路前に違法に置かれたコンクリートブロックについて、反対同盟と東峰部落はそれぞれ公団、県警に撤去を要求すると共に抗議への回答を求めてきたが、突然、同ブロックが撤去されていた事が確認された。これは、反対同盟の粘り強い抗議に千葉県警が違法行為を維持できなくなり自主撤去したもの。違法行為の自認である。(7日)
●ジェット噴射対策塀問題で回答を要求 北原事務局長が成田市空港対策部に回答書を早く出すように電話で要求した。空対部は「もう1週間待って下さい」と苦しい弁解に努めた。(9日)
●宮岡さんの逝去20年集会に
 砂川町米軍基地拡張反対同盟の副行動隊長として砂川闘争の先頭にたった宮岡政雄さんが亡くなって20年目の今年、現地で同氏を偲ぶ「有事立法・改憲を撃つ! 8・11集会」が開かれた。反対同盟から北原事務局長がかけつけ宮岡さんの偉業を称えるとともに、夫人のキヌ子さんと故人の思い出を語り旧交を温めた。(11日)
●東峰神社で清掃 月遅れのお盆を前にして東峰部落総出で東峰神社の清掃作業を行った。東峰神社裁判の勝利へ全員で決意を固めあった。(11日)
●サニーレタスの発芽遅れる
 鈴木謙太郎さん宅でサニーレタスの発芽が遅れる異変が起きている。「今年の夏は厚さがつづいたためだろう」と加代子さん。「猛暑の時は害虫の大発生も心配」とのこと。またキューリの果肉が白っぽくズッキーニのようになる被害も出ていて「これも高音のためか」。(18日)

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