SANRIZUKA 日誌 HP版   2005/03/1〜31    

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 2005年3月

 

〔週刊『三里塚』編集委員会HP部責任編集〕 


(3月1日) 成田空港/非常用管制塔で訓練(3/2朝日、産経各千葉版、千葉日報)

 台風や地震などの災害で管制塔が長期間、機能マヒに陥った場合に備えた非常用管制塔設備の「展開訓練」が1日、成田空港で公開された。
 非常事態発生に備えた設備は管制塔と電源の2つのシェルターで構成。ふだんは羽田空港で管理され、いざ災害発生時に被災空港へ移送される仕組み。
 移動作業が先月上旬から行われ、この日は国交省成田空港事務所の航空管制官や機器類の保守を担当する管制技術官ら20人がA滑走路脇に設置された非常用管制塔に昇り装置やシステムを確認した。
 非常用管制塔シェルター(3トン)には管制卓(3卓)はじめ多重無線、風向や風速をはかる気象観測、空気調和、昇降などの各種装置が積み込まれ、3階ほどの高さに持ち上げられたシェルター(約8平方メートル)の室内から職員が航空機の離発着や地上走行の様子に視線を注いだ。
 現在、空港で運用される管制塔は地上から床面までの高さが約80メートルありA、B両滑走路(暫定平行滑走路)をカバーしているが、非常用設備は「能力的にはかなり落ちざるを得ない」(成田空港事務所)という。
 訓練は羽田と成田で隔年ごとに実施され、成田では02年10月以来3年ぶりになる。6日まで続けられ、延べ180人が参加する。

 【本紙の解説】
 「台風や地震などの災害で管制塔が長期間」使えなくなった場合の非常用管制塔と言っているが、台風や地震で滑走路、給油施設などの整備がダメージを受けずに管制塔だけが機能しないということはほとんどない。管制塔だけが破壊されるのは、戦争においてゲリラ的手段か、ピンホール的に小型ミサイルで撃破されるとき以外に想定できない。したがって、この非常用管制塔は戦闘時の空港の機能をいかに維持させるかの役割をもつのである。
 現代戦争において航空機のもつ位置はきわめて大きい。戦闘機だけではなく、人員と物資の輸送においては民間機が軍用カーゴ機以上に使われる。そのために、民間専用空港も戦時には軍用空港とともに戦争体制に組み込まれる。また、10メートルほどの管制塔では、空港全体を見渡せることはできない。あくまで、目の前の滑走路を管制するだけの機能である。そのため、発着便も極端に制限される。軍用機と空港の整備を復旧させるための機材の運搬のための貨物機が主に使うのであろう。

(3月1日) 新千歳空港/停止せよ!管制官連呼、1000m先には着陸機(3/1朝日、読売、毎日、日経)

 「直ちに停止せよ」――管制官は連呼した。新千歳空港で今年1月、管制官に無許可で離陸を開始した日本航空機が、着陸して滑走路にいた全日空機にあわや追突しそうになったトラブルは、雪による視界不良と、滑りやすい路面状況という、真冬の北海道特有の悪条件の中で起きていた。
 専門家は、「一歩間違えば大きな事故につながりかねなかった」と指摘しており、国土交通省は再発防止を徹底する方針だ。
 関係者の証言などによると、新千歳空港のトラブルは、降雪で視界がきわめて悪い夜間に発生した。1本しか使えなくなり、離着陸を相次いで行わざるを得なくなった滑走路に、乗客115人を乗せた関西空港発の全日空1717便(エアバス320型)が着陸したのは午後9時14分。
 羽田へと飛び立とうとしていた乗客201人乗りの日航1036便(ボーイング777型)には、その1分後に、自衛隊の管制から滑走路への進入許可が出されたが、全日空機が滑走路から外れ、誘導路に出るまでの間、待機が命じられた。自衛隊機と共用の新千歳空港では、管制業務は航空自衛隊が担当している。
 しかし、日航機は滑走路に進入した9時16分に離陸滑走を開始した。約10秒後、許可を得ていない離陸滑走をレーダーで確認した自衛隊の管制官が2度にわたって「ストップ・イミーディエットリー(直ちに停止せよ)」と緊張した声で呼びかけた。日航機の機長は離陸開始から約15秒後に呼びかけに応じた。
 管制官は同便に対し「離陸許可は出しておりません」と注意を促したところ、同便は「大変失礼しました」と謝罪した。滑走から約40秒後には滑走路上に停止した。約1000メートル先の全日空機は減速中で、この時点では、まだ、滑走路上に残っていた。
 ボーイング777の離陸時の速度は最高で時速200キロ以上にも達するとされる。離陸には2000メートル前後が必要とされ、全日空機は、離陸ポイントに近かったが、当時は、雪に加えて滑走路が滑りやすい状態にあったため、日航機がそのまま離陸を続けていれば、全日空機の後方に追突していた可能性は否定できない。
 国交省幹部も、今回のトラブルについて、「管制官の適切な判断で緊急停止ができたため、事なきを得た」と指摘している。日航側は、このトラブルについて数度にわたって自衛隊側に謝罪した。
 真冬の雪という悪条件がある新千歳空港。あるベテランパイロットは、「離陸直前は、翼に雪が積もっていないかなどのチェックなどでコックピット内はかなり忙しい。うっかりミスは起きうる」と話したうえで、「降雪でブレーキの利きが不十分な状態で、前機が確認できなかったとすれば、なおさら危険だった」と指摘する。
 日航では、昨年4月、100%子会社の「ジャルエクスプレス」の伊丹発熊本行き2385便(ボーイング737―400型、乗客59人)が、管制官の指示とは反対方向から進入し、航空自衛隊の練習機が離陸を中断するトラブルを起こしたばかり。
 国交省は28日、日航幹部を同省に呼んで厳重注意した際、再発防止策をまとめるよう求めた。

 【本紙の解説】
 日航のパイロットは日航本社の運航本部へは滑走路上にいた全日空機を「滑走路から外れ、誘導路に出たと思った」と報告している。その結果、運航本部は「重大な危険はなかった」として国交省への報告義務はないとしている。しかし日航は、管制官の許可なく離陸した管制指示違反は認めており、事後に新千歳空港の管制を担当する自衛隊に日航幹部が出向いて謝罪している。
 新聞では日航の報告義務違反だけを問題にしている。しかし、新千歳空港では自衛隊が管制を行っているが、その自衛隊も国交省への報告義務があったはずである。これは日航と自衛隊が共同して大事故につながる重大インシデント(小さな出来事)として報告すべきことを隠蔽したのである。航空機の大事故はこういう重大インシデントを末梢なこととして無視したことから起こるのである。日航と自衛隊はそれを行ったのである。
 ボーイング777(通称トリプルセブン)は中型機とはいえジャンボ機に近い大きさの機体だが、1600メートルあれば離着陸は可能であるとして成田の暫定平行滑走路でも運航している。同滑走路の長さは2180メートルだ。
 新千歳空港の滑走路は3000メートルで、着陸した全日空機は滑走路の端から2キロの地点にいた。つまり滑走を始めた日航機との距離は2000メートルもあったのだ。にもかかわらず重大インシデントとなった。
 つまり、成田の暫定滑走路(2180メートル)をトリプルセブンが使っていること自体が重大インシデントになる寸前の状態なのだ。暫定滑走路でのトリプルセブンの運行は危険であり、即刻止めるべきである。

(3月8日) 羽田に国際貨物便、2009年就航…深夜・早朝を利用(3/9読売)

 国土交通省は8日、羽田空港で4本目の滑走路の利用が始まる2009年から、深夜・早朝時間帯(午後11時〜翌日午前6時)に国際貨物便を就航させる方針を固め、貨物量や飛行ルートの具体的な検討を始めた。
 増え続ける国際航空貨物に対応するのが狙いで、4月にもまとめる羽田空港の再拡張事業の実施方針に盛り込む。
 首都圏の国際貨物便は成田空港が一手に担っているが、同空港は騒音問題などで深夜・早朝の発着ができない。昼間も国際線の発着枠は満杯で、貨物、旅客便とも新たな乗り入れが困難になっている。
 羽田空港の発着枠は再拡張により、現在の年約28万5000回から、2009年には40万7000回に増える見通し。国交省は、現在は国際チャーター便を除いてほとんど便がない深夜・早朝に国際貨物便を就航させれば、限られた首都圏の空港施設を効率的に活用できるとみている。成田と住み分けるため、羽田の国際旅客便の発着はアジアなど近距離路線に限定するが、貨物便は欧米線など長距離路線の就航も認める方向だ。
 ただ、深夜便の就航は、騒音問題に敏感な千葉県の反発も予想されるため、国交省は、同県上空を避ける飛行ルートで何便の発着が可能かなどを詰める。

【本紙の解説】
 「空港間競争の時代」と最近言われだした。成田、羽田、中部に関空を加えて、国内の国際便のシェア争いのことである。そもそも、空港間競争とは、十数年前からアジアのハブ空港をめぐる競争として使われ、成田、香港、浦東、仁川、チャンギ、啓徳などのシェア争いのことを指していた。そのアジアのハブ空港をめぐる競争で浦東、仁川が勝ち名乗りを上げており、成田は完敗の憂き目にあっている。
 こうした状況によって、国交省は数年前から日本の空港整備計画の全面的転換を余儀なくされたのである。それまでは、成田空港の完全化が至上課題であり、成田で国際便が満杯状態であっても首都圏第3空港や羽田の国際化を論じること自体がタブーだった。成田のB滑走路完成がまず何よりも優先課題だったのである。
 しかし2001年3月、仁川空港が開港した前後から成田一辺倒からの転換が始まった。2000年末から首都圏第3空港の候補地応募が始まり、2001年夏には首都圏第3空港を新たに建設することの代案として羽田を拡張・国際化することをほぼ決定する。
 つまり、アジア周辺諸国の巨大空港との競争で完敗した結果、いままでのように首都圏第3空港や羽田国際化を先延ばしできなくなったのだ。これまで政府・国交省は、治安政策的な面から成田に固執しすぎていたのである。
 今度は一転して、成田空港や千葉県の要望を押しつぶし、羽田国際化一辺倒になってきた。09年に羽田へのアジア便の移行は3万便以上で一説には7万便ということも言われている。また、深夜・早朝にこの3万便の枠外で国際旅客定期便を運航する計画である。こんどは、貨物便はアジア便だけでなく、欧米線など長距離路線の就航も認めるという決定である。成田空港の国際便の発着は03年度実績で約16万回、そのうち約2万5000回が貨物専用便である。アジア便貨物便の大半と欧米便貨物とそれに深夜便もつくるという決定である。成田空港の貨物便の半数近くを羽田に移行する計画である。旅客便3万、貨物便1万以上、旅客便は、一説には7万回まで計画しているといわれている。航空需要の右肩上がりが終息した現在、09年羽田新滑走路の供用開始が、民営化した成田空港の経営を危機に陥れることは確実となった。

(3月9日) 日航機/無許可離陸滑走を「軽微な事案」と判断(3/10読売、毎日、日経、産経)

 北海道・新千歳空港で1月、日本航空1036便が無許可で離陸滑走した問題で、日航は9日、担当者間があいまいな連絡をしていたうえ、引き継ぎも不十分なまま「軽微な事案」と判断していたとの調査結果を明らかにした。同社は(1)管制との確認徹底(2)連絡体制整備(3)グループの安全管理や監査強化など再発防止策を国土交通省に提出した。
 日航の調査によると、1月22日夜、同便の機長らは、着陸機がいるため管制官(航空自衛隊)から待機を命じられたのに離陸滑走を開始、「止まれ」の指示によって約1キロ先で止まった。翌23日、本社(東京)オペレーション・コントロールセンターや運航本部安全推進部の管理職らが連絡を取り合ううち「滑走路に他機はいなかった」とする機長証言だけが残った。事実経過などの引き継ぎも不十分なまま、「安全上問題はなかった」と結論付け、国交省へ報告しなかった。
 日航の新町敏行社長らグループ3社長は記者会見し、「乗客に不安を与え痛恨事。安全の意識を見直す」と謝罪した。小松原光雄・日航ジャパン社長と松本武徳専務がそれぞれ1〜4カ月の報酬を10パーセント返上するほか、深井祥治常務の取締役降格、運航安全推進部長厳重注意などの処分を発表、機長らの処分も検討する。

【本紙の解説】
 日航は問題点を整理しているが、肝心な機長による有視による滑走路前方の確認の問題を無視している。現在の航空機の操縦は有視での確認より計器での確認、管制塔誘導を優先しているようだ。1月22日の千歳空港は、降雪で視界がきわめて悪く、問題も夜間に発生している。しかし、前方2000メートルに全日空機がいたのであり、それはまず、有視界で確認し、視界不良であったならば、管制塔に航空機の側が確認すべきことなのである。
 日航の記者会見は、管制塔との連絡問題だけにこの問題を限定している。航空機操縦の基本は、計器や計器による誘導がいかに発達したとしても機長の判断であって、その上での計器での誘導がある。
 また、日航内部で隠ぺいしたことを「連絡体制」のミスと処理している。「軽微な事案」であり、「重大インシデント」としなかったので、国交省への報告義務はなかったとしている。これにはウソがある。「滑走路に他機はいなかった」という機長報告で、「軽微な事実」としているが、ではなぜ管制塔から「ストップ・イミーディエットリー(直ちに停止せよ)」との命令が出され停止したのか。滑走路に他機がいないならば、この管制塔からの命令は間違いであり、日航側は管制をしている自衛隊に抗議すべきなのであろう。
 事実は、降雪中の夜間、午後9時16分であり、これ以上、離陸が遅れると滑走路の積雪で離陸できなくなり、運休になるのではないかと考え、焦って管制塔指示を待たずに離陸を開始したのである。また降雪が原因で2本ある滑走路のうち1本しか使えなかったことも管制塔指示を無視して離陸した要因のひとつである。日航は機長の報告が不備であったとしているが、実際は報告義務のない「滑走路に他機はいなかった」という報告におきかえているのであろう。
 航空事故は乗員・乗客の多くが死亡する事故が多い。このような「重大インシデント」を無視することは許されない。

(3月10日) 暫定滑走路/国に運用制限を要請 用地交渉進展目指し(3/11毎日、3/12産経、東京、千葉日報)

 成田空港2本目の暫定平行滑走路(2180メートル)について、運用の大幅な制限を検討するよう、成田空港会社(黒野匡彦社長)が国土交通省に要請していることが10日分かった。未買収地の地権者側(千葉県成田市東峰)に配慮し、こう着状態の用地交渉を軌道に乗せたい意向で、地権者側にも打診。同省は今月末をメドに交渉に進展がない場合は計画を北方へずらす「北伸」案を準備するよう同社に指示しており、流血の「成田闘争」を生んだ同空港をめぐる交渉は新たな局面を迎えた。
 平行滑走路は02年4月、本来計画の2500メートルより320メートル短いまま暫定運用を開始。滑走路南側の計画地約3・1ヘクタールに居住・耕作する農家などが7軒あり、空港会社は用地交渉のテーブルに着くよう求めていた。
 現在、同滑走路は1日約150便の発着がある。運用制限は午前6時台と午後10時台の各1時間程度。4000メートル滑走路に振り替える案が浮上している。1日10便程度になる見通しだが、交渉が本格化した場合、数十便に増やしたり、期間長期化も含め、同省に検討を要請している模様だ。
 同社は地区同意なしに滑走路供用を開始した経緯があり、地権者には「運用以前に戻すことが条件。用地交渉とは別物」と反発もあるが「話し合いに向けた最低条件」と一定の評価を示す声もある。

【本紙の解説】
 空港会社は、3月までに地権者との交渉の進展がなければ、北側320メートルの再延伸の工事に着手しなければならなくなる。これは用地交渉の最後的決裂が確定する問題なので、黒野社長は成田市とも共同歩調をとり、北延伸「阻止」のために地権者との「話し合い」に躍起になっているというのが今回の問題である。成田空港会社は、話し合いの条件として朝6時台と夜11時台の運航制限や、謝罪文などを用意してきた。準備している謝罪文の内容は「暫定滑走路の供用開始を1カ月前倒しにしたこと」などとしている。翌日の11日に北側国交相は、記者会見で「空港会社で社長以下が、地権者との交渉を前向きに行っている中での判断だと思う。尊重しなければならない」と述べている。
 午前6時台と午後11時台はA滑走路も空きがあり、暫定滑走路の分をA滑走路に移行するのは難しいことではない。いままでそうしなかったのは、深夜、早朝の航空機騒音で地権者を追い出すためだ。「嫌がらせを止めるから交渉に応じてくれ」ということである。ヤクザなどを使った地上げ行為と同じ手法である。
 謝罪文も暫定滑走路の供用開始を1カ月前倒しにしてきたことに限定した「謝罪」というペテンだ。
 地権者および周辺住民は、「暫定滑走路の供用そのものへの謝罪と運用中止」を求めているのであって、供用を「1カ月前倒し」したことの「謝罪」など求めていない。運用制限と運用中止とはまったく異なる問題だ。
 こんなペテンを使って「話し合い」交渉ができるはずもない。そのことは黒野社長も百も承知である。ただ自分の責任で進めてきた買収交渉の最後的破たんが確定してしまうが故に、3月末で北側再延伸が決定することを嫌い、「話し合い」の仮象をつくりたいのである。そもそも「北側延伸」は黒野社長による農民への恫喝材料にすぎなかったが、それを真に受けた国交省が本気になり、逆に空港会社に強要してきたのである。
 本来計画の南側延伸なら工期3年、北側再延伸なら6年強ということと、北側再延伸は期間だけでなく、建設費も膨大にかかり、空港会社の経営を圧迫することになる。また、完成しても、誘導路の改善が不可能である、ジャンボ機も満足に飛ばせないのである。

(3月11日) 日航機、滑走路に誤進入 ソウルの空港(3/13全紙)

 韓国の仁川国際空港(ソウル)で11日、成田行きの日本航空機が、管制官の指示を聞き間違え、無許可で滑走路に進入し、着陸態勢に入っていた別の旅客機が着陸をやり直すトラブルを起こしていたことがわかった。
 日航は、今年1月、北海道・新千歳空港で、管制官に無許可で離陸滑走を始めるトラブルを起こしたばかり。日航では、「機長が管制指示を明確に聞き取れなかった。必要があれば再発防止を図りたい」としているが、同社の安全体制が問われそうだ。
 日航によると、トラブルがあったのは成田行きの日航954便(ボーイング767型機、乗客231人)。11日午後6時ごろ、離陸のため滑走路手前で停止していたが、管制官から「待機せよ」と指示されたのを、「進入して待機せよ」と聞き間違え、そのまま滑走路に入っていた。
 日航機が滑走路に進入した時は、大韓航空機が同じ滑走路に向けて着陸態勢に入っており、滑走路まであと数分の距離に迫っていた。このため、管制官が急きょ、大韓航空機に着陸やり直しを指示。日航機には、「進入許可は出していない」と注意した上で、そのまま離陸許可を出した。成田空港が霧で閉鎖のため、日航機は目的地を羽田空港に変更し、約1時間遅れの午後9時すぎに着陸した。
 日航では、「機長は滑走路に進入する際、着陸機を視認していたが、特に脅威は感じなかった」としている。また、管制官の指示を聞き間違えたことについては、「機長は、『滑走路に進入して待機する』と復唱していたが、管制官から訂正されなかった」という。

 【本紙の解説】
 日航は重大事故につながるトラブルを連続的に発生させている。日航経営陣は、機長や整備関係者の責任を暗に表明しているが、事故の責任はそこにあるのではない。1月の新千歳空港での管制誘導を無視して滑走路に進入したことについて、機長は報告書を提出した。しかし、提出されたら、国交省への報告と公表という問題が生まれるので、会社側が抑えたといわれている。日航の会社経営方針に問題があるのだ。それは、桜町敏行日航社長(兼子会長に代わるグループの新CEO)が、記者会見で「安全体制は万全ではなかった」といっているように営利優先の安全無視が原因である。
 70年代終わり頃から始まった米国航空産業のディレギュレーション(規制緩和)を契機に、世界の航空産業はメガコンペティション(大競争)の時代に突入、日本の航空政策も85年から規制緩和に踏み切った。安全運航よりも競争に勝ち抜く政策を優先することにしたのである。利益がすべてとなり、あらゆるコストを削減し安全性の確保は無視された。今回の事件で国交省は日航に業務改善命令を出しているが、トラブルの根本的な責任は、やみくもな規制緩和を推進した国交省自身にある。
 トラブルの原因のもう一つは、航空業界の低迷にある。日航は日本エアシステムとの合併(02年)によるスケールメリットで航空業界の低迷を打破し競争に勝ち抜こうとした。日航は全日空に対して国際線の圧倒的優位を保持しており、この合併で国内線でも優位に立とうとしたのである。しかし、01年9・11、03年イラク侵略戦争開始、SARSの流行により、国際線収益が激減した。ICAOや国交省の国際線需要予測は7パーセント、5パーセントという右肩上がりになっているが、現実は極端な低迷に陥っている。ダンピング的格安航空運賃は収益を圧迫し、今後より一層の落ち込みが予測される。
 成田空港も民営化し、安全より収益第一主義になった。航空会社各社の安全無視と相まって、成田における大事故が起こる要因が高まっている。

(3月16日) 成田手荷物爆発事件で無罪 カナダの高裁、2被告に(3/18千葉日報)

 カナダのブリティッシュコロンビア州高裁は16日、日本人2人が死亡した1985年6月の成田空港手荷物爆発事件およびそれと同時に発生し乗客・乗員329人が犠牲となったインド航空機爆弾テロで殺人罪などに問われたリプダマン・シンハ・マリク被告(58)ら2人に無罪の判決を言い渡した。
 2被告は、シーク教徒過激派の拠点となっていたシーク教総本山に対しインド政府が84年に行った突入作戦に反発、両事件に関与したとされた。しかし物証などが乏しい上、被告が犯行を打ち明けたとする証言も、高裁は「信頼できない」と退けた。検察側は上訴するとみられる。
 ロイター通信によると、法廷には爆弾テロで犠牲となった乗客の遺族ら約70人が世界各地から訪れ、「無罪」に失望と落胆の声を上げた。
 成田空港での事件では荷降ろし中の手荷物が爆発、作業員2人が死亡、4人が負傷した。
 2被告はいずれも同州在住で、2000年10月に逮捕。検察側はこれまでの審理で、両事件の主犯格はシーク教徒過激組織の創立者だったと指摘したが、創立者は92年に死亡。事件ではほかに1人が起訴され、爆発物製造関与の罪で服役を終えている。

 【本紙の解説】
 成田空港手荷物爆発事件とは、1985年6月23日、カナダの航空機に積まれて手荷物が、成田空港でインド航空機に積み替えられる直前に爆発し、航空手荷物サービス社員の2人が死亡し、4人が怪我を負ったことである。その約1時間後に、カナダからロンドン経由でインドに向かっていたインド航空機がアイルランド沖に墜落、乗客・乗員329人全員が死亡した。カナダ政府はシーク派教徒であるというだけで、2被告を逮捕し起訴したのである。無罪は当然であるといわれている。
 9・11反米ゲリラ関連の事件でも無罪がでている。米国、カナダ、欧州では、イスラム復興主義であるとか、シーク派教徒であるという理由だけで“ヘイトクライム”といわれる集団襲撃事件を起こし、さらに逮捕し起訴している。この事件も同じである。
 カナダには多くのシーク派教徒が住んでいる。ブリティッシュコロンビア州には15万人ものシーク人が住んでいる。その中から犯人を作り出し逮捕したのである。

(3月17日) 日航を航空法違反で厳重処分へ 緊急脱出用装置のミス(3/18全紙)

 日本航空の羽田発札幌・新千歳行き1021便(ボーイング767型機、乗客・乗員267人)が緊急脱出用装置を作動させないまま飛行した問題で、国土交通省は17日、同社を航空法違反(運航マニュアル違反)で処分すると決めた。同日午後にも同社幹部を呼んで事情を聴く。日航では整備ミスや管制指示違反が相次いで発覚している。国交省は乗客の安全性にかかわる重大なミスと受け止めており、厳しい処分を下す方針だ。
 日航や国交省によると、16日正午に羽田空港を離陸する直前、客室乗務員の責任者が機内4つの扉の近くにいる客室乗務員に対し、装置を作動させるよう機内放送で指示するのを忘れた上、機長には「作動させた」と誤って報告した。
 日航は客室乗務員6人を乗務から外して再訓練を始め、全客室乗務員に文書で注意を喚起した。

 【本紙の解説】
 この事件でも日航は「客室乗務員の責任者」に責任を押しつけるようだ。そもそも、日航は契約制客室乗務員を最初に積極的に導入した会社である。
 契約制スチュワーデスは、航空会社の人件費削減の目玉であり、正規雇用に対しての割合が年々増加している。また、契約制社員といっているが、海外のエアラインなどの契約社員とは違い、待遇面でも極端に差があり、アルバイトと同質の待遇である。そのために、「パートタイムスチュワーデス」といわれている。航空会社の客室乗務員が、就職人気業種であり、特に女性には人気があるために、経費削減の対策手段になっているのである。待遇の悪さから退職が相次でいるが、希望者が多いので雇用には困らない。つまり、低賃金で使い捨てにしているのである。
 ここに、安全性より経費削減の考え方が典型的にでている。「客室乗務員の責任者」の責任を問う前に、客室乗務員の雇用条件や待遇の現状を見てから、今回の問題を考えるべきである。

(3月17日) 中部空港1カ月の利用者ら200万人、集荷安定が課題(3/18読売)

 中部国際空港が開港して17日で1カ月となったが、利用者と見学者は約200万人を超え、このペースで推移すれば当初計画(年間1500万人)を上回りそうだ。
 国内線と国際線が同じターミナルビルから出発・到着する「一体型」の利便性から、地方都市からの利用客も集まっている。トヨタ自動車など製造業の航空貨物需要に応える「物流拠点」も目指しているが、貨物の集荷が今後の課題だ。
 空港には、名古屋駅から名古屋鉄道を使って最速28分で到着する。この便利さから、名鉄空港駅の1日平均の乗降客数は予想(2万4000人)を上回る約3万5000人だ。名鉄は22日から増発や車両の増結など緊急対策を実施する。旅客ターミナルビルに隣接した二つのホテルも平均稼働率が90パーセント超と好調だ。
 中部空港からは海外25都市、国内24都市へ就航している。日本航空が就航させた午前10時発のパリ直行便には、福岡、仙台便で早朝に到着した旅行客らの利用がある。加えて、前日着の鹿児島便、ソウル便からの利用者もあり、これら4都市から1日20〜30人が乗り継いでいる。全日本空輸も、搭乗客数が名古屋空港時代と比べ約10パーセント増となった。
 一方、貨物専用便は、北米やアジアに週26便運航している。国土交通省は、羽田空港に2009年から国際貨物便を就航させる方針を固めており、航空貨物をめぐる成田、関西空港との「争奪戦」も予想される。中部空港会社の平野幸久社長は「貨物需要自体が増えており、争奪戦はない。まず中部空港の貨物の取扱量を安定させたい」と、足元の需要に応える方針だ。

 【本紙の解説】
 中部国際空港は好調のようである。開港後1カ月をみて、平野社長は、16日の定例会見で、年間で「航空利用客1200万人、商業施設の利用客300万人」の当初計画を上方修正すること表明している。しかし、「開港特需」の側面もあるとして、売上高500億円などの詳細は今後、詰めていくといっている。
 名古屋空港の時より、乗降客も確実に増加しているようだ。しかし、問題は国際便が決定的に少ないことにある。日本初の本格的な国内線・国際線のハブ空港と銘打っているが、国際線が少ないことでは、成田、関空のあとを追うことになり、韓国・仁川空港に勝てるはずもない。
 しかし、貨物空港としての需要は確実に増加するようだ。貨物専業の航空会社の日本貨物航空(NCA、東京)が中部国際空港に欧州線の新設と米国線の増強を9月から行うと発表している。路線は、欧州の航空貨物拠点であるアムステルダムを経由しフランクフルトへ向かうルートが有力という。米国線は、シカゴ便で開港時、週1便であったが、自動車部品を中心に満載状態が続いていることから週3便にする。トヨタの後押しもあり、日本の生産拠点である中部における貨物輸送は成田のシェアを確実に奪っていくであろう。
 成田の貨物量の約10パーセントが中部国際空港に奪われるのは確実であり、そのことは成田空港会社にとっては折り込み済みでもある。成田にとって問題は09年の羽田での4本目の滑走路の供用開始である。
 成田空港会社は、羽田への移行はアジア旅客便だけと見込んでいたが、実際はその上に、深夜・早朝には成田空港が使用できないという理由で、欧米旅客便定期便と欧米貨物便も羽田就航になりそうである。羽田は、首都圏最初の本格的24時間国際空港になる。
 確かなことは、国際線の成田一人勝ちの時代は終焉したことである。

(3月18日) ノースウエスト機、乱気流で4人けが 成田に緊急着陸(3/19朝日、日経、産経)

 18日午後6時45分ごろ、サイパン発成田行きの米ノースウエスト航空75便(ボーイング747―200型機、乗客・乗員計362人)が、太平洋上空で乱気流に巻き込まれ、優先権を得て成田空港に緊急着陸した。国土交通省成田空港事務所などによると、米国人の客室乗務員2人と日本人乗客2人の女性4人が病院で手当てを受けた。成田市消防局などによると、頭や首、ひざを打ったが軽傷という。
 同事務所によると、乱気流に巻き込まれたのは成田空港南約90キロの高度約4500メートルの上空。同機は着陸に向けて高度を下げていた。
 乗客の女性(22)によると、機内に「あと20分で到着します」とアナウンスが流れた直後に機体が上下に大きく数回揺れたという。ある男性客(22)は「約30秒間、ジェットコースターのように急降下した。怖かった」。
 都内の大学生(22)は「シートベルトをしていなかった乗客が座席から飛ばされ、席に着いていなかった女性の客室乗務員が床に倒れ込んだ」と話した。成田空港の到着ゲートにでてきた乗客らは「怖かった」と青ざめた表情で話した。
 成田航空地方気象台によると、当時、現場付近は気圧の谷や寒気の通過で乱気流が起きやすい状態だったという。

 【本紙の解説】
 当日は気圧の谷の通過があり、その後冬型の寒気が上空に入り、強風が関東平野にも吹き荒れた1日であった。成田空港の乱気流は空港北側の利根川流域でおこることが多いが、南側の太平洋上では珍しいことである。
 乱気流はさまざまな気象条件で発生する。代表的なものが積乱雲中の乱気流で、積乱雲は空気の対流により発生する雲で、対流は熱交換を伴い激しい乱気流状態になる。積乱雲や雄大積雲の下では、強烈な下降気流によりダウンバースト、マイクロバーストなどの破壊的乱気流を伴うことがある。成田空港北側の利根川流域はこの下降気流の名所である。
 その他には晴天乱気流がある。これは晴天時にあらわれる乱気流で、高度1万6千フィート(約4900メートル以上)のジェット気流の高さで発生するといわれている。
 寒冷前線通過の時の乱気流は、前線上で積乱雲や積雲が発生し、その下で発生する。今回遭遇したのはこの乱気流らしい。
 さらに、人工の乱気流がある。ビル風や建造物に強風が当たって発生する乱気流だ。その代表的なものが、大型機が通過したあとに引き起こすウェークタービュランスがある。これは大型機が離陸直後、次に離陸した航空機を墜落させることで有名である。
 さらに、それ以上に恐ろしいといわれる山岳乱気流がある。
 いずれにしても、乱気流は航空機運航の天敵である。成田周辺は乱気流の名所もあり、その点でも空港適地ではない。

(3月22日) 現実味帯びる「北側延伸」(3/22千葉日報)

 反対農家らの土地を買収できず、本来計画より短い2180メートルで運用している成田空港の暫定平行滑走路の計画通りの延長を目指し、空港側は「早朝・深夜の暫定滑走路運用制限」の交渉カードを切ったが、地権者側の反応は冷淡だ。国土交通省が定めた事実上の「交渉期限」は3月末。南側の未買収地を避け北に延長する可能性が高まっている。
 「地権者側に投げた最後のボールだ」。成田国際空港会社は、地権者側に示した暫定滑走路の運用制限案についてこう強調する。しかし地権者は「話し合いは暫定滑走路の騒音を止めてから。求めている運用中止と懸け離れている」。国交省も「これでどうなるという期待はあまりない」と悲観的だ。
 空港側が滑走路延長を急ぐ背景には、首都圏の国際航空需要がパンク状態という事情がある。
 成田への新たな乗り入れ希望国は37カ国。発着回数は2008年現行枠上限の20万回に達する見込みで、旅客増に対応するにはジャンボなど大型機の発着を増やすしかないが、暫定滑走路は短く、大型機は発着できない。
 空港会社は07年度にも株式上場を目指すが、暫定滑走路の延長決定なしに市場評価は定まらない。「韓国や香港で国際拠点空港の建設が進み、日本の地位が低下する」との危機感もある。
 一方、空港と国に対する反対農家などの不信感は根強い。
 1966年の空港設置の閣議決定で、農地を空港建設に奪われることに農家が反発。反対派と警察が衝突し、双方に多数の死傷者を出す反対運動に発展した。
 さらに02年、日韓共催のサッカー・ワールドカップ(W杯)に合わせ、国は未買収用地を避けて建設した暫定滑走路を「見切り開業」。反対農家の頭上40メートルをジェット機が飛び交い「騒音で追い出すつもりだ」と反発が強まった。
 北延長を決断しても問題は多い。新たな環境調査や、延長部分の地下を通る国道51号の補強工事などで工期は本来計画の2倍の6年以上、工費も大幅に増える。取り残された地権者の頭上をこれまで以上に騒音の大きいジャンボ機が飛び交うことになり、さらに態度を硬化させるのは確実だ。
 空港設置決定から39年、開港から27年続くボタンのかけ違い。事態は滑走路の北側延長という「誰も喜ばない解決策」(空港会社幹部)に向かいつつある。

 【本紙の解説】
暫定滑走路の北延伸による2500メートル化を「首都圏の国際航空需要がパンク状態」の解決と結びつけるのは間違いである。暫定滑走路が本来計画の南側延伸した場合には、年間8万回の着陸回数が可能になる。本来計画が北側へ800メートル延長し2180メートルになった結果、誘導路が未買収地に阻まれて信号がつき、一方通行でもある。そのために、B滑走路の当初予定の発着回数8万回を公称年間6万5千回にした。しかし、実際には4万5千回が限度である。その理由は1旅客ターミナルビル、2旅客ターミナルビルの各エプロンから滑走路のまでの誘導路が一方通行のうえ湾曲している等の理由で渋滞するからである。たとえ、暫定滑走路が北側に延伸して2500メートル化しても、これ以上増便できないのである。
 また北延伸では、誘導路の不備は解決できない(未買収地)ので、IATA規定でジャンボ機の通過はできない。
 乗り入れ希望国の問題も切迫したものではない。世界の主要国はすでに運航便を持っている。新たな乗り入れ希望国の実情は、ほとんどが週1便程度なので、全部を受け入れたとしても年間4000回の発着回数であり、現行のA滑走路でも受け入れることはできる。さらに「発着回数は2008年で現行枠上限の20万回に達する見込み」というのもいい加減な数字である。現行で約17万5000回である。国交省の航空需要予測は国際線で年5パーセントの増加で、この予測通りいくと20万回になるが、この予測は旅行業界も信じていない。さらに、08年で満杯になるといっているが、その1年後の09年にも羽田の4本目の滑走路が供用開始になり、成田のアジア便の大半が羽田に移行し、成田はガラガラになるのである。
 首都圏国際便の需要に滑走路が足りないというのは真っ赤なウソである。この論理は歴史的にも成田空港建設過程の暴力の発動を肯定するための論理であった。
 北延伸を「誰も喜ばない解決策」と空港会社はいっているが、一番喜ばないのは空港会社なのである。見せかけの2500メートル化であり、ジャンボ機も飛べない。増便もできない。ただ建設費が膨大に掛かるだけの工事だからである。

(3月22日) 日航機からパネルの一部脱落 成田空港一時閉鎖(3/23朝日、読売、毎日各全国版)

 22日午後8時40分ごろ、オーストラリア・ブリスベン発成田行き日本航空のジャンボ機が成田空港に着陸後、整備をしたところ、エンジン付近のパネルの一部が脱落していたことが分かった。同空港は同日午後9時25分からA滑走路(4000メートル)を一時閉鎖して点検したが、部品は見つからなかった。
 日航によると、脱落した部品は長さ30センチ、幅20センチ、厚さ約2ミリのアルミ製で、空気の流れを整えるものといい、同社は脱落しても、飛行には影響がないとしている。

 【本紙の解説】
 日航機の事故が連日報道されている。この22日だけでもこの事故を含めて、4件が起きている。福島空港で大阪発福島行き日本航空2261便ボーイング767−300型が尻もち着陸。徳島空港で点検中だった羽田行きの日本航空1438便エアバスA300−600Rに高所作業車が接触し左翼の端を破損し、整備士が飛行不能と判断。広島発羽田行きの日航1600便エアバス300―600型機の操縦室で煙を感知する警報が表示され、緊急着陸。
 航空機のこのような故障、事故は報道されなかっただけで、連日のように起こっているようだ。報告がないことや、航空会社内部でもみ消したもの、公表されたが、マスコミが取り扱わなかった例などさまざまである。
 今回の福島空港で起きた尻もち事故、テールスキッドと滑走路との接触事故を見てみよう。尻もち事故は、機体の(滑走路への)接触を防ぐテールスキッドが接触したもので、危険な事案だとはとらえていない」としている。年に数回、同様の事態が起きているという。昨年10月にも秋田空港でテールスキッドの接触事故があり、最近でも複数の同種事故があったという。
 また、国交省も、事故につながるおそれのある「航空重大インシデント」には該当しないといっている。
 航空機事故への対応がこのような安全性を軽視する体制にゆだねられているならば、早晩、大事故は不可避であろう。

(3月23日) 周辺自治体、B滑走路本来計画の実施を要望(3/24朝日、東京各千葉版、千葉日報)

 成田空港周辺の騒音下の自治体などでつくる「成田国際空港騒音対策委員会」(委員長=玉造敏夫・成田空港会社副社長)が23日、成田市内のホテルで開かれた。暫定平行滑走路の延伸問題に絡み、周辺自治体の代表者から本来計画の実施を要望する意見が相次いだ。
 委員会は、17市町村の首長や国土交通省の職員ら約40人が出席した。今回は32回目で、成田地区部会(成田市)や大栄・多古・下総地区部会などから、平行滑走路の2500メートル化は「本来計画で行うことが騒音直下で生活する住民の要望だ」と強調する発言があった。
 国交省側は「本来計画の早期実現に向けて努力している」と述べるにとどまり、地権者との交渉状況には触れなかった。
 平行滑走路をめぐっては、北側一雄・国交相が今月末をめどに用地交渉の現況報告を求め、進展のない場合は本来計画を変更して2500メートル化を図る「北伸」の準備を指示している。

 【本紙の解説】
 国土交通省は、北延伸を急いでいる。北延伸は、周辺自治体も、騒音対策協議会も反対している。空港会社も「最悪の選択」として回避したいのが本当のところである。しかし、長年の用地交渉失敗の責任を国交省から問われるので、北延伸決定延期を真っ向から主張できないでいる。
 北延伸を要望しているのは、成田の商工業者の寄合組織である成田商工会議所であり、その構成部分のひとつである成田空港対策協議会だけである。彼らは相当な誤解に基づく主張を持っているが、暫定滑走路が2500メートル化すればジャンボ機が飛び、便数が増え、その結果、成田の経済が活性化するというものである。しかし実際には北延伸で2500メートル化してもジャンボ機は飛べず、便数も増えない。だから「誰も喜ばない解決策」(成田空港会社の言葉)なのだ。
 ではなぜ国交省は北延伸を急ぐのか。それには二つ理由がある。
 ひとつは、たとえ北延伸でもB滑走路をとにもかくにも「2500メートル」化し、成田空港を「完全完成」したいのである。09年に始まる羽田4本目滑走路の供用開始と国際化、24時間空港化を一番反対しているのが千葉県だが、その反対理由は「成田が未完成である」ことと、千葉県民の騒音問題だ。騒音が環境基準を下回っていることから、成田を北延伸であっても「完全完成」にしたいのである。
 もう一つは、07年空港会社の株式上場問題である。株式販売の収益は政府に入る。入金先は空港整備特別会計である。国交省はこの収益を期待しているのである。暫定滑走路がこのままでは株価の上昇は見込めない。したがって、実際、ジャンボ機は飛べないのだが、北延伸で飛べるような仮象をつくりたいのである。上場が07年であり、そのためには前年の06年中に工事を始めないと、07年上場時にジャンボ機が飛べるという仮象はつくれない。06年に工事を開始するためには、今年の夏の予算シーリングまでに予算提出しなければならない。成田空港は民間会社になったが、政府100パーセント出資の特殊会社であり、政府の予算と同じように国会承認が必要なのである。
 つまり、北延伸強行の本質は羽田国際化と株価つり上げのためだけであり、成田空港会社の反対も押し切って進めようという異常な攻撃である。

(3月24日) 東峰裁判第5回口頭弁論

 現闘本部裁判の第5回口頭弁論が24日午前、千葉地裁民事第5部(安藤裕子裁判長)で行われた。裁判は「地上権」(反対同盟が土地を使用する正当な権利のこと)をめぐる本格的論戦に突入した。弁護団は原告・空港会社の論理矛盾を突く鋭い弁論を展開し、原告側を窮地にたたきこんだ。
 建物が登記されているか、地代を支払っているかどうかは、地上権の重要な要件である。この二つがあって地上権がないことはありえないのだ。しかし、公団側の提訴といままでの準備書面ではそれを否定していた。この第5回口頭弁論で原告(空港会社)側の主張に根拠がないことが明らかになった。
 空港会社は、旧現闘本部(木造建物)が登記されている事実を認めている。しかし、鉄骨造り3階建て(一部木造)の現闘本部は、登記されていない。旧現闘本部は消滅している。したがって鉄骨造り3階建てと旧現闘本部の「同一性はない」、鉄骨造り3階建ての建物の登記はないとしている。
 また旧地主の石橋政次から「所有地を無償で使用させてきたにすぎない」と言い張っている。つまり、「無償で借りていた」ので地上権はなく、地権者が請求すればいつでも返還しなければならないと主張していた。
 この日、弁護団は地代支払いの領収書を提出。否定しようのない証拠を突きつけられた原告側(空港会社)代理人は顔面蒼白になった。続いて遠藤弁護士が、(1)「既存の木造建物」とは旧現闘本部の木造建物を指すのか、(2)「既存の木造建物」は明け渡し対象物件に含まれているのか、と核心点を鋭く追及した。「次回書面で」と逃げる原告側代理人に対して、「訴状を書いたのであるから、訴えの対象物件が何か即答できないはずはない」とたたみかけると、代理人・上野弁護士が蚊の鳴くような声で「木造建物はあると主張するのか」などと応えた。「もとより」の声にがっくりと肩をおとし崩れるように着席した。
 裁判はいよいよ核心に迫る本格的論戦に突入した。この裁判は延伸攻撃粉砕の重要裁判である。支援運動をさらに広げよう。

(3月24日) 暫定平行滑走路、27日から運用制限(3/25朝日、読売、毎日各全国版、東京千葉版、千葉日報)

 国土交通省と成田空港会社(黒野匡彦社長)は24日、成田空港で暫定運用されている平行滑走路(2180メートル)で早朝・深夜の発着時間を調整する運用制限を今月27日から実施すると発表した。2500メートル化を目指し、本来計画地約3・1ヘクタールに居住・耕作する農家ら7軒の騒音被害を軽減する。
 同社などによると、午後10時台の発着21便(1週間あたり)を同9時台に繰り上げ、早朝6時半までの着陸9便(同)を同6時半以降に繰り下げる。期間は10月29日までの約7カ月間。1日3〜5便の運用制限となる。
 同社は今月末をメドに用地交渉の報告をするよう国交省から求められており、進展がなければ逆方向に延伸して2500メートル化を図る「北伸」を迫られる。黒野社長は会見で「精いっぱいの努力を示し交渉にのぞみたい」と話した。02年に地権者の同意を得ずに平行滑走路の運用を強行した経緯があるため、地権者の農家には「恫喝(どうかつ)ではないか」「運用停止が前提。(制限が)努力の成果なのか」などの疑問の声がある。

 【本紙の解説】
 黒野社長の運航制限の緊急処置の目的は、地権者との交渉期限(3月末)の延長を国交省に認めさせることにある。しかし、地権者はこんな運航制限で交渉に臨むことはありえない。地権者と反対闘争の要求は暫定滑走路の運用の全面停止である。しかし、「地権者がもう1時間の運用制限を要求してきたらどうか」という記者からの質問に「まずは不可能です。これ以上の拡大は困難だと思います」と言い切っている。
 こんなペテン的手みやげで「話し合い」交渉が行われると思うこと自体がこの間の地権者の苦しみを理解していないことの証しである。黒野社長は国交省に対して交渉期限の延長を「しっかりとした根拠もなく時間をのばすことは許してもらうことはできない」とがっくりと肩を落としているとのこと。黒野社長は、「北延伸という最悪の選択になったら職を辞する覚悟で用地交渉にのぞむ」といっていた。黒野社長のこの間の動向を見ていると、職を辞することになりそうだ。

(3月26日) 成田暫定滑走路の用地交渉、延長は困難・国交相(3/26日経、千葉日報)

 北側一雄国土交通相は25日の閣議後会見で、用地買収交渉が難航している成田国際空港の暫定滑走路について、「暫定のままでいることが我が国の国益、経済の発展を阻害している」と強調した。成田空港会社に3月末までの交渉状況を報告するよう求めているが、「3月末に区切った意味は軽くない。(期限の延長は)それだけの理由がない限りできない」と述べ、進展がない場合、交渉継続は難しいとの考えを示した。

 【本紙の解説】
 国交省と成田空港会社のせめぎ合いは、用地交渉期限を3月で区切り北延伸とするか、6月まで延長するかにある。北側国交相は、どうしてもこの3月末で用地交渉を打ち切って北延伸を決定したいようだ。黒野成田空港会社社長は、それを何とか延期させようともがいている。黒野社長はそのために、東峰区に対しての「謝罪文」を作成したりしているが、東峰区からは拒否されている。また、運用制限を行って何とか、用地交渉に地権者と東峰区の住民を引きずりだそうとしているのである。何とか、「話し合い」の出発点をつくって北延伸の決定を延期させたいのである。
 北延伸決定と工事の開始は成田空港と空港会社の命取りになりかねない事業である。北側に再延長しても完成は6年か7年後、そして、ジャンボ機も飛ばない、増便もできない工事である。何のための工事が分からないのである。ただ、ただ。「完全完成」の装いのためだけである。そのため、国道51号の本格トンネル化、東関道の簡易トンネル化で莫大な工事費が掛かる。採算にあわない工事は民営化した成田空港会社にとってはやりたくないのである。

(3月27日) 3・27全国総決起集会

 3月全国集会は1200人が集まり開催された。国交省と空港会社の北延伸攻撃に大打撃を与えた。また、天神峰裁判闘争の進撃は集会参加者を激励し、裁判闘争のよりいっそうの発展と拡大を誓い合った。(詳しくは本紙参照)

■集会プログラム
 暫定滑走路「北延伸」3月決定粉砕
 軍事空港建設粉砕、現闘本部裁判支援運動の拡大を
    3・27全国総決起集会
        三里塚芝山連合空港反対同盟
 開会:2005年3月27日(日)正午  (於)成田市天神峰

□司会挨拶                宮本麻子
                       太郎良陽一
□開会宣言                鈴木幸司
□主催者挨拶               北原鉱治
□基調報告                萩原進
□特別報告                動労千葉
□「北延伸」攻撃粉砕と天神峰現闘本部裁判闘争
                       反対同盟顧問弁護団
                       市東孝雄
                       野戦病院
                       ほか
□軍事空港建設反対の闘い      伊藤信晴
□カンパ・物販アピール         婦人行動隊
□決意表明
住民団体
関西新空港反対住民、北富士、沖縄、反戦被爆者の会、部落解放同盟全国連合会、都革新・長谷川英憲、婦民全国協、「障害者」、山谷
共闘団体
 中核派、解放派、統一委、蜂起派
□集会宣言               野平聰一
□スローガン採択、閉会宣言・デモコース説明・ガンバロー三唱
                    鈴木健太郎
*デモコースは小見川県道→東峰神社左折→青行団結の家右折→小見川県道→団結街道→現闘本部先まで約3.5キロ

■3・27全国集会スローガン
一、暫定滑走路「北延伸」3月決定粉砕。軍事空港建設に反対し成田空港からの自衛隊出兵を阻止しよう。
二、空港絶対反対・一切の「話し合い」拒否。収用委再任命徹底弾劾。収用法攻撃を粉砕しよう。
三、天神峰現闘本部裁判闘争に勝利し、市東さんの農地を守りぬこう。野戦病院、岩山団結小屋の明け渡し要求拒否。
四、一坪共有地強奪阻止。騒特法粉砕・芝山廃村化阻止。成田治安法を粉砕しよう。
五、農地強奪の先兵=堂本知事徹底弾劾。脱落派一掃。地元農家を抹殺する「共生委員会」を許すな。
六、国際反戦運動と連帯しイラク―朝鮮侵略戦争を阻止しよう。有事法制粉砕・改憲阻止。破防法・組対法攻撃粉砕。天皇制粉砕。
七、関西新空港粉砕。沖縄、北富士はじめ反戦・反核、反基地、反原発闘争の高揚をかちとろう。
八、教育基本法攻撃粉砕。動労千葉をはじめとする戦闘的労働運動と連帯して闘おう。
九、あらゆる差別抑圧粉砕。部落解放運動連帯。入管法・外登法撤廃。排外主義を許さず、在日朝鮮中国人民とともに闘おう。
十、拘禁二法反対。刑法改悪・保安処分新法粉砕。精神保健福祉法を撤廃しよう。
十一、国家権力と一体となって三里塚・国鉄労働運動に敵対する革マル派を職場、学園、全地域から一掃しよう。
十二、三里塚闘争勝利。今秋10・9全国集会に総決起しよう。

■集会宣言
 07年の株式上場が迫る中、小泉内閣・国交省は暫定滑走路の北延伸を挑戦的に表明した。3月末を期限に、用地買収に応じなければ北延伸を強行すると脅迫している。わが反対同盟は満身の怒りを込めて、この暴挙を弾劾する。
 空港会社の黒野社長は東峰部落に対してペテン的な「謝罪文」を提示したが、部落は怒りを込めてこれを拒否した。「謝罪」にいまさら何の意味があるというのか。24日には1日わずか1時間程度の「運用制限」なるものを認可したとして、「精一杯努力した」のだから「話し合い」に応じろと迫っている。人々を愚弄するにもほどがある。
 しかし北延伸の決定は、用地買収の最終的な破綻を意味する。暫定滑走路は重大な欠陥をかかえたまま空港の重石(おもし)となり、廃港へと道をつけるものとなるだろう。
 空港会社の行きづまりは、現闘本部裁判においても明白となった。空港会社自ら登記の事実を認めた旧現闘本部の存在が、空港会社を決定的な窮地にたたきこんでいる。この裁判は暫定滑走路粉砕の重要裁判である。全国的な支援運動をさらに強化・発展させるよう切に訴える。
 小泉内閣はイラクに自衛隊を派兵し、9条改憲を政治日程に乗せて、戦時国家へと逆戻りしている。「拉致問題」と核武装論の台頭、さらに教育における「日の丸・君が代」の強制と郵政民営化による組合つぶし、農業破壊と農家切り捨ての攻撃を激化させている。
 そして世界的な米軍再編のもとで、在日・在韓米軍の実戦配備と日米安保の変質が企てられている。成田空港の基地・拠点化阻止の闘いは、沖縄・辺野古の新基地建設阻止闘争と一体である。いまこそ労農連帯の闘いを推し進め、戦争への道を阻止しよう。反対同盟は暫定滑走路の延伸を阻止し、全国の皆さんと共に闘う決意である。

  2005年3月27日
三里塚芝山連合空港反対同盟

(3月27日) 成田着日航機で左翼部品脱落…トラブル相次ぐ(3/28全紙)

 27日午前8時ごろ、成田空港に到着したインドネシア・ジャカルタ発日本航空726便(ボーイング777型機、乗客・乗員182人)の左翼部分からゴム製部品が脱落しているのを、整備士が見つけた。滑走路に落ちていないか一時閉鎖して、捜したが見つからなかった。
 日航によると、脱落したのは、揚力を調節する「フラップ」にあるゴム製シール(幅約3センチ、長さ約1メートル)。金属板のすき間を埋めるために使われている。運航に支障はなく、滑走路閉鎖による影響もなかった。
 成田空港では22日にも、日航機からアルミ製パネルが脱落し、滑走路が一時閉鎖された。
 一方、27日午後1時45分ごろ、埼玉県上空を飛行中の成田発イタリア・ローマ行き日航409便(ボーイング747型機、乗客・乗員225人)が、左翼フラップに異常を示す表示があり、成田空港に引き返した。同便は欠航となった。日航は、計器の誤表示だったとしている。

【本紙の解説】
 日航の整備不良のトラブルが連日起こっている。国交省も28日、日航に「安全体制の見直し状況」の査察を日航に行い、「人為的なミスが多い。まずは現場の声をきっちり吸い上げ、万全の体制でやってほしい」といっているという。しかし、日航のトラブルは国交省の航空政策と一体で起こっているのである。
 国交省の航空政策の規制緩和へ転換(78年)から、各航空会社は安全運航第一から効率優先に置き換えたのである。そして、それが激甚に進行したのは、90年代末の日経連の総額人件費削減の推進からである。交通関係は公共性の高い部門であり、利益優先、効率優先では成り立たない事業なのである。
 日航が今日の航空業界の世界的不振、各国のメガキャリアが倒産している現実の中で生き残りのためには、効率優先しかとれないのである。
 日航は安全のために見直しをすると言っているが、格安チケットで運賃をダンピングしなければならない現状では根本的見直しは無理である。航空需要の右肩上がりの予測、需要の人為的捏造と競争の激化を煽り、そのため航空券のダンピングという悪循環を断ち切らない限り、日航などの航空業界のトラブルは終わらない。
 JRのレール断絶、東武鉄道の踏切事故なども同じ利益優先、効率優先の中で起こっているのである。

(3月28日) 成田に危機管理専門会社 テロ、事故に迅速対応(3/27千葉日報、3/28毎日千葉版)

 成田空港会社は、「警備センター」(職員約40人)と「消防センター」(同)を一元化した子会社を新年度内に設立する方針を固めた。警備と消防の両方の知識と技能を身に着けた計約80人の「危機管理のプロフェッショナル」育成を目指す。
 空港で航空機事故やテロが起きた場合、消防センターの職員は、成田市消防本部や県警特殊部隊らと活動することになっている。また、警備センターの職員は危険区域の指定や、旅客の避難誘導などの役割を担っている。
 両センターの分業体制で弊害があったわけではないが、空港を狙ったNBC(核・生物・化学)兵器テロなどの警戒が世界的に広まる中、同社は「より迅速で的確な救急活動を行えるシステム作りが必要」と判断した。
 今後、第2旅客ターミナルビルに隣接する警備センターと、整備地区にある消防センターの建物や設備を統合する一方で、各所属の職員の訓練を行う。

【本紙の解説】
 成田空港は日本における最大級の警備地点である。その費用も莫大だ。外国ゲリラ部隊の進入阻止のための水際作戦の最前線なのだ。
 成田空港が民営化された時、警備問題と警備費が問題になった。それまで警備費の大半が千葉県警の経費で賄われていた。それを成田空港会社が負うべきだという意見が出たのだ。成田空港会社はそれを極力避け、そのまま県警費用で行っている。今回の成田空港社の警備部門と消火部門の切り離しも、警備費の負担回避と削減のためだ。分社化し経費を削減していくものである。いままで、警備の大半を空港用地の元地権者の警備会社に委託してきた。民営化とともにその警備費を1割近く減額している。大手警備会社がより安い費用での請負を申し出てきているので、それに乗り換えようとしているのだ。今回の成田空港会社から警備部門の分社化は元地権者の警備会社を切り捨てる布石でもある。

(3月28日) 成田に第3滑走路/A滑走路平行 混雑緩和へ新構想(3/30産経)

 成田空港の発着能力を増やすため、現在のA滑走路の外側に4000メートル級の平行滑走路となる「第3滑走路」を新設する構想が浮上していることが28日、明らかになった。成田国際空港会社は一昨年4月、暫定開業した2本目のB滑走路を当初計画通りの長さに延伸するため、3月末を期限に地権者との用地交渉を続けているが、解決のメドは立っていない。成田空港には海外から乗り入れ要請が相次いでおり、混雑緩和には抜本的に空港計画を見直す必要があると判断したとみられる。
 関係者によると、第3滑走路はA滑走路から約300メートル離して建設。間隔が狭いため同時発着は難しいが、現在年約20万回の発着回数を5、6万回増やすことができるという。予定地は一部民有地にかかっているが、大半は空港敷地内で現在、動物検疫所や空港石油ターミナルがある。用地取得は比較的容易だが、実現には周辺地域の騒音対策を見直し、成田空港の基本計画を改定することが必要になる。

【本紙の解説】
 A滑走路の西側に3本目の滑走路建設という設定は百パーセントありえない。成田空港建設についての見識を云々する以前的な荒唐無稽な記事だ。「28日、明らかになった」と書いてあるが、どこで明らかになったのかも書いていない。28日に「明らかになった」ものが産経新聞に掲載されたのが30日だ。他の新聞社は一紙も書いていない。成田で3本目の滑走路建設が検討されていることが事実なら、それだけで全国紙一面トップ級の記事だろう。この記事は経済面の片隅の2段見出しという扱いだった。
 4000メートル級の滑走路が距離300メートルで平行しているなどという滑走路は危険きわまりない。建設するとなると、成田空港計画の全面変更であり、その手続きと工事で10年はかかる。また、滑走路予定地に空港石油ターミナルなどがあり、「用地取得は比較的容易」などといっているが、石油ターミナルを移転するとした場合に、これだけでも5年前後の工事になる。また空港敷地内に代替用地もない。
 空港会社は暫定滑走路の北側延伸は6、7年かかり、建設費も膨大で可能な限り避けたいのである。そのために、「誰も喜ばない」北延伸とまで空港会社が言っているのである。6、7年後には、首都圏の空港は供給過剰になると航空会社は予測している。そのために、年数と建設費のかかる北延伸を避けたいのである。それ以上の年数と建設費のかかる3本目の滑走路とは、あまりに漫画的であり、「誰も相手にしない」滑走路といったところか。

(3月29日) 成田空港 民営化後初の決算 3月期見通し/最終益70億円に(3/30朝日、読売、毎日、東京各千葉版、千葉日報)

 成田国際空港会社(NAA、黒野匡彦社長)は29日、民営化後初めてとなる05年3月期決算(単体)見込みを発表した。順調な航空旅客の伸びを追い風に、本業のもうけにあたる営業収益は経営計画を4パーセント上回る1620億円、経常利益は27パーセント増の280億円に達し、税引後の最終利益は70億円を確保できる見通しとなった。
 グループ18社の連結決算が確定後、民営化の目標の一つである世界一高いとされる着陸料を引き下げる方針。
 06年3月期(単体)予測は、発着回数が処理能力の上限20万回に近づきつつあることから航空需要が微増にとどまるとして、営業収益1630億円、経常利益280億円と今期並みを予想。減損会計による損失がないため、最終益は「160億円ぐらいの腹づもり」(黒野社長)と強気の読みを示した。
 05年度経営計画によると(1)着陸料引き下げ(2)空港能力拡大(暫定平行滑走路2500メートル化、第一旅客ターミナルビル南棟改修、航空会社再配置)(3)成田新高速鉄道整備の促進―を最重点施策として取り組む。
 EDS(爆発物検知装置)導入はじめ警備・消防業務の分社一元化、空港施設の耐震性向上、コスト10パーセント削減、直営店舗運営会社設立のほか、暫定平行滑走路2500メートル化の状況を見極めながら準備組織を設置、07年度上場に備える。
 成田空港会社の黒野匡彦社長は同日、暫定平行滑走路を2500メートルに完全化するための整備費にふれ「本来計画の南で200億円弱、北なら200億円の上乗せになる」と北側に再延伸(北伸ばし)した場合の工事費は400億円必要となり、本来計画に比べて倍かかるとの見通しを示した。

【本紙の解説】
 05年の3月期決算を見込みで「経常利益は27パーセント増の280億」となり、着陸料を引き下げる方針を打ち上げた。着陸料の引き下げを明らかにしたのは初めてである。いままでは、民営化しても簡単には着陸料の引き下げは無理だと言ってきた。ICAOは再三再四、成田空港の着陸料の引き下げ勧告してきたが、無視してきたのである。
 引き下げの根拠を経常利益の増大にしているがそうではない。この黒字は単に、民営化して最初の会計であり、大幅な利益を計上したものにすぎない。成田空港の決算はいままでもきわめて政治的に処理されてきた。営業利益、経常利益が増えると特別損失を計上し、税引前の当期純利益はほとんどゼロか若干の赤字にしてきたのである。それも巨額な財投(民営化されてからは政府保証債という借金)があって初めて成り立ってきたのである。
 成田空港の総事業費は約1兆5000億円といわれている。これまで成田空港建設に投入されてきた税金の総額である。資産価値は約9000億と試算されているが、借金が6600億円(有利子)、政府返済金1500億円(無利子)で計8100億円もの負債があり、事実上の資産価値は1000億円しかない。資産価値を1兆円と見込んでも時価は2000億円である。借金と税金で賄ってきたのが、成田空港である。
 中部空港の好調、09年羽田の国際化という国際空港間の競争激化のなかで、成田は着陸料の値下げなしに生き残れなくなったのである。「成田一人勝ち」の時代は完全に終わった。しかし、いままでの財務体質のまま民営化した成田空港会社にとってこの値下げは経営破綻の呼び水になりかねない。

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