●(3月1日) 除雪車 航空機に衝突(3/2東京千葉版、千葉日報)
成田空港では1日、今冬初めて約1センチの降雪を記録した。
空港公団運用管理本部の調べでは、滑走路の運用に支障はなかったが、航空機の機体に積もった雪を取り除く作業などのため、出発便のうちスイスインターナショナルエアラインズ169便が最大4時間43分遅れたほか54便に1時間以上の遅れが出た。到着便への影響はなかった。
また、同日午後1時5分ごろ、75番スポットに駐機中のオーストリア航空旅客機エアバス(乗客238人)の第4エンジンに除雪作業車後部の屋根に設置されたハシゴが接触、エンジン外縁部が損傷し幅約15センチ、長さ30センチのへこみができた。この接触事故で同便は欠航した。
【本紙の解説】
約1センチの降雪で、54便に1時間以上の遅れが出たということは、降雪対策が弱すぎることを示している。また、除雪車と旅客機が衝突した事故それ自身は、へこみができた程度としているが、欠航している。衝突事故は、航空機の配置、地上管制が許容量を超えているか、管制が間違っているか、空港の配置が合理的に整理されていないことによる。成田空港で最近、衝突事故が頻発しているが、それは、空港の設計がつぎはぎであることと、地上管制が追いついていないことが原因である。本紙が何回も警告しているが、これは大事故の前兆である。
●(3月1日) 米国土安全保障省/成田などに検察官配置を検討(3/2日経)
米紙ウォールストリートジャーナル(電子版)は1日、米国行きの旅客機の乗客を検査するために米国土安全保障省が日本の成田空港など国外の一部空港で米国の検査官を配置する計画を検討していると報じた。
米税関当局トップの話として伝えた。テロリストの可能性がある人物を米国行きの旅客機に搭乗する前に拘束するのが目的という。検査官の配置を検討しているのは7つの国際ハブ空港で、ロンドンのヒースロー空港や日本の成田空港が含まれる可能性がある。当局者は「相手空港側の意思を尊重する」として、検査官を置くことが義務ではないことを強調している。
この計画では米国の検査官が各空港で航空会社の担当者と協力し、疑わしい乗客を特定。パスポートなどを調べるほか、米国の訪問計画について質問するという。これに対し、欧州航空協会の代表は「政府間で十分に議論される前に計画が明らかになるのはおかしい」として不快感を表明した。
【本紙の解説】
米国の検査官(警察官)が逮捕権(拘束力)をもって日本に配置されることは法律的に問題がある。テロ対策というと何でも許される治安情勢になってきた。日本政府は治安情勢が最も危険であり、いまのままでは維持できないと叫び、さまざまなエスカレーションをしてきた。その一端が成田空港警備隊に専従の軽機関銃装備の「銃器対策部隊」を発足させたことである。
日本政府も不慣れな国際テロ対策を米国に応援を期待しているのである。
●(3月5日) 羽田再拡張/騒音軽減へ意見書(3/5日経、千葉日報)
羽田空港に4本目の滑走路を整備する再拡張事業で、県議会は4日、国土交通省が提示した飛行ルート案に反対し、騒音を軽減した新たなルート提示を求める意見書案を、全会一致で可決した。
同日、篠田哲彦議長が国交省を訪れ、国交相あての意見を林幹雄国土交通副大臣(衆院千葉10区)に手渡し、総理大臣にも提出した。
意見書では「国交省案では、着陸便の大部分が県上空を通過し、首都圏での騒音共有を真摯(しんし)に受け止めた提案と認められない」などと批判。「騒音を一方的に千葉県に負わせようとしている」とし、受け入れられないと表明。
その上で騒音軽減へ(1)新滑走路の位置・角度の変更などで、浦安方面の低空騒音を回避、(2)千葉市・市原市の高度引き上げ、(3)実測データに基づく騒音予測値の見直し、など8項目を求めた。
篠田議長から意見を受けた林副大臣は「千葉県民は騒音との戦いで、不安は痛切に感じている。県の意向に応えられるよう検討をあらためて指示した」と述べた。
また、県議会では、再拡張の事業化を進める国交省の姿勢を批判した決議案も全会一致で可決。決議では「県と関係14市の主張を満たす新たな飛行ルート案を提示すべき」「県の同意なしで新年度に滑走路建設の入札を強行すべきではない」とし、あらためて議会としての姿勢を示した。
【本紙の解説】
千葉県議会での羽田飛行コースの新提案を意見書としてまとめたものである。国交省としては、D滑走路の位置の変更は受け入れ難いが、飛行高度のより高度化の再検討、騒音予測値の見直しなどはやる予定らしい。しかし、04年度にD滑走路の入札は計画通りに実行するのであろう。国交省と千葉県との「確執」は09年のD滑走路の供用開始まで残り、千葉県の主張をできる限り受け入れる形で、事態は進行するが、D滑走路の建設と09年の供用開始はこれで本決まりになったようだ。
これで、現在成田空港発着アジア便の3分の2以上は09年以降、漸次羽田に移行することになる。アジア便の大半が羽田に移行すると成田の経営はおぼつかなくなると、黒野総裁はすでに泣き言を漏らしている。成田空港と国交省との間では、アジア便の羽田への移行が次の焦点になる。
羽田発着のアジア便の人気はすでに運航している羽田―金浦線で実証されている。羽田―金浦線の建前はチャーター便であり、パッケージツアーが基本になっているが、全座席数の半分未満であればバラ売りをしてよいことになっている。旅行会社各社がエコノミークラスの正規割引航空券(PEX航空券)を販売している。価格は4万3000円以上になっている(パッケージツアーでは、2泊3日で4万円前後からある)。それに比べ、成田―仁川線は、最安値で1万5000円台からあり、格安の平均価格は2万円前後になっている。羽田発が成田発の2倍になっているのである。
アジア路線は地理的に成田は羽田にかなわないのである。そのため、空港権益の後退を恐れる千葉県は、空港公団以上に羽田の再拡張と国際化に「反対」しているのである。
●(3月9日) 成田空港会長にJTB松橋氏起用 社長は黒野公団総裁
(3/10朝日夕刊、3/11日経、千葉日報)
政府は9日、新東京国際空港公団が4月1日に民営化して発足する成田国際空港の会長にJTB取締役相談役の松橋功氏(70)を、社長に公団総裁で元運輸事務次官の黒野匡彦氏(62)を起用する方針を固めた。3月下旬に開かれる創立総会で正式決定する。
成田国際空港会社は国が全額出資する株式会社で、世界一高いとされる着陸料の引き下げと07年度の株式上場をめざす。成田空港の民営化は、小泉首相が進めた特殊法人改革の目玉事業の一つ。民間人の起用で国際空港の「第二の開港」を印象づけるとともに、官僚OBである黒野総裁の社長横滑りへの批判をかわす狙いもありそうだ。
松橋氏はJTBの社長、会長を歴任。日本旅行業協会会長として01年の米同時多発テロ発生直後にはハワイに視察団を送るなど、海外旅行の需要回復に奔走。運輸、ホテルなど観光関連業界の横断的組織、日本ツーリズム産業団体連合会(堤義明会長)の設立でも中心的役割を果たした。02年には観光の政策面の役割をまとめ、海外からの観光客増をねらった政府の「ビジット・ジャパン・キャンペーン」のたたき台になったとされる。
【本紙の解説】
民営化で会長を民間から登用して、国交省管理会社の匂いを消そうとしているが、成田空港株式会社は新東京国際空港公団以上に、国交省の下に組み敷かれるといわれている。理由は経営問題である。国家予算という援助がなくなり、逆に民間会社として税負担が増加する。それ以上に、30数年間の国家予算分約3000億円が公団の財務では政府出資金として勘定されていたが、民間会社の財務では借入金となり、そのうち半分の1500億円を30年間で返済する義務が生じる。
また、成田空港の経営は航空機の発着回数と空港利用料によっているが、羽田の4本目の滑走路ができ、国際化が本決まりになったことで、アジア便は大半が羽田に移るすう勢となった。その移行のテンポと規模を決定するのは国交省である。また利用料の決定について、形式的には成田空港の権限になっているが、外交問題もあり、国交省がその実質的権限を握っている。空港の収入の大半を占める航空機の発着回数とその料金について国交省が事実上の権限をもっていては、民間経営とは決していえない。成田空港が航空外収入をいかに増やそうともこの関係は変わらない。
●(3月11日) 「成田空港地域共生委」の2部会が移管へ(3/12毎日千葉版)
成田空港の建設と運用を監視する第三者機関「成田空港地域共生委員会」の4部会のうち、空港問題の資料収集などを行う2部会が、別法人などに移管されることが11日までに決まった。委員会を間接的に財政支援する新東京国際空港公団のコスト削減策の一環。強制的な空港建設を検証した「シンポ・円卓会議」(91~94年)を機に発足した委員会だが、利益を目指す公団の「民営化」策の影響を受けた形だ。
委員会は95年に設立。代表委員の山本雄二郎・高千穂大客員教授のほか地元の農家、成田市助役ら計16人で構成。委員会の本会議が円卓会議で合意した22項目について、公団と国が順守しているかどうか点検を行い、必要に応じて是正を要請してきた。
委員会の運営資金は、委員会の中立性を担保するため、公団が負担金名目で「地域振興連絡協議会」(会長=堂本暁子知事)に年間6800万円を拠出。うち約6500万円が委員会の運営や、部会の調査・研究費に充てられてきた。
一方、来月から株式会社化される公団は、将来的には株式上場を目指しており、増収を目指す一方、公団本体だけでなく関連・子会社、関係団体への支出の見直しを進めてきた。
その結果、委員会への負担金名目での支出は税制上の優遇を受けない「寄付行為」などにあたると判断。4部会のうち空港問題の資料収集や聞き取り調査などを行う「歴史伝承部会」と地域活性化の調査・研究のための「地域づくり部会」の2部会についてそれぞれ財団法人・航空科学振興財団と地域振興連絡協議会に移管することが今月1日、国・県、公団、委員会との話し合いでまとまった。
委員会はこれまで47回開かれ、今年2月に山本代表委員が、公団の民営化後も「地域環境の改善事業を続ける」などと述べ、騒音対策や航空機からの落下防止策に継続して取り組むことを表明していた。委員会事務局は「地域共生を目指す方向に変わりはない。(委員会は)監視機関として機能する」と話している。
【本紙の解説】
株式会社成田空港が経営改善のために行うことは第1に周辺対策費の削減であり、次に航空機運航の安全対策費削減である。実際に目に見えた利益を上げない部門から切り捨てられる。さらに下請け企業に対する経費の低減要求がある。
成田空港地域共生委は、もともと、空港公団がその経費の大半を負担していた。公団としては、住民懐柔策の一環として出資していたのである。さらに共生委の構成団体に空港公団と国交省が正式に参加し、その性格はより明らかになった。空港民営化が本決まりになったとき、共生委は解散することをいったんは決めた。しかし、03年2月5日の共生委員会(03年2月5日付日誌を参照)で「空港が株式会社になった場合、現在の委員会ではなくなるかもしれないが、空港がある以上、衣替えして存続させていく」としたのである。いま、その事実上の消滅が始まったのである。
共生委が公団の出先機関化していたとはいえ、このことは、成田株式会社の周辺対策の削減に関して象徴的なことである。
●(3月12日) 空港公団、成田団結小屋撤去求め提訴へ(3/12読売総合版、産経千葉版、日経夕刊、3/13朝日、読売、毎日、産経、東京各千葉版)
成田空港暫定滑走路の誘導路わきにある団結小屋「天神峰現地闘争本部」の明け渡しを求め、千葉地裁に12日、訴えを起こした新東京国際空港公団は「同誘導路の蛇行を解消するため撤去は不可欠」と説明した。しかし、提訴された三里塚・芝山連合空港反対同盟北原派は「明け渡しには応じない」と争う姿勢だ。
この団結小屋は、かつて中核派などの活動拠点になり、1989年に成田新法に基づく使用禁止命令が出され、90年からは封鎖されている。公団は昨年11月に地主から土地を買収、北原派に書面などで明け渡しを求めていたが、反対派も公団も使用できない状況が続いている。
北原派の北原鉱治事務局長は「封鎖されていなければ、会議などで使う。明け渡しに応じるつもりはなく、法廷でも徹底的に争う」としている。
一方、誘導路蛇行の原因となっているのは団結小屋のほか、北原派の農家が耕作している農地(所有権は公団が取得)など約1・4ヘクタールが残る。
今回の訴訟で公団が勝訴したとしても、蛇行解消に直結はしないが、4月の民営化を直前に控えた公団は「できることはすべてやっておき、農地の明け渡しなども引き続きお願いしたい」としている。
【本紙の解説】
天神峰現闘本部の地上権は反対同盟にある。明け渡しに応じる義務はまったくない。公団は、元の地主に「民営化までにきれいにしたい」として、名義の書き換えを行ってきた。しかし、公団は裁判に訴えるしか明け渡しの手段がない。そのために、長期の裁判を経てなおかつ公団側が「勝訴」しないかぎり、撤去は不可能なのである。
反対同盟はこの裁判を最重要の裁判と位置付け全力をあげて闘う決意である。そして決定的な問題は、市東孝雄さんの耕作地(現闘本部の北側に隣接)があり、誘導路の「逆くの字」状態を解消することはそもそも不可能であるということだ。公団は「民営化前にできることはすべてやっておく」として、このような強硬な手段をとっているが、その本意は「平行滑走路予定地内土地を所有する農家への好影響を期待している」(3/13読売新聞千葉版)ことにある。
問題はまだある。仮定の問題として誘導路の「逆くの字」を解消できたとしても、東峰地区を通過する連絡誘導路の幅が狭く(しかもクランク状の坂道)ジャンボ機は通過できない。東峰の開拓道路がそれを阻んでいるのである。暫定滑走路を北側にさらに320メートル再延長し、「逆くの字」を解消したとしても、ジャンボ機が飛べるようにはならない。この誘導路の欠陥問題の解決は、東峰と天神峰の農家がすべて空港建設に協力しない限り不可能なのである。公団の提訴の狙いは、地権者の農家への脅しである。
反対同盟が解散し、天神峰と東峰の農家の闘いが一掃され、三里塚闘争が解体しないかぎり、平行滑走路にジャンボ機を飛ばすことは不可能なのである。
それ以前的な問題もある。09年に羽田の4本目の滑走路が完成し、アジア便の大半が羽田に移行すれば、暫定滑走路そのものが必要なくなるだろう。
●(3月16日) ANA機立ち往生で滑走路を閉鎖/成田空港、3便に影響(3/17朝日)
16日午後2時40分ごろ、成田空港に着陸したニューヨーク発の全日空9便(ボーイング747―400型機)が、A滑走路から誘導路に入ろうとした際、油圧系統の故障で前輪の操作ができなくなって立ち往生した。乗客、乗員にけがはなかった。
牽引(けんいん)車が同機を移動させるまでの12分間、同滑走路は閉鎖され、後続のコンチネンタル航空9便など3便に最大で約20分の遅れが出た。
【本紙の解説】
この事故も直接的に成田空港の責任ではない。着陸した全日空の整備不良が事故の原因である。だが、3月1日の降雪時に続いての事故である(04年3月1日付日誌を参照)。しかし、航空機の事故は、空港、管制側の責任と航空機の整備、操縦の責任の事故がある。そして、その複合的原因で大事故は発生する。全日空は成田空港では日航に続いての保有機の多い航空会社である。航空各社の競争の激しさで整備の手抜きが行われはじめたといわれている。小事故の連続は大事故をかならず引き起こすことになるのは、航空業界では常識である。成田での大事故寸前情勢である。
●(3月16日) 羽田飛行ルートで衆院総務・国交委(3/17千葉日報)
羽田空港に4本目の滑走路を整備する再拡張事業で、今国会に提出されている「特措法」関連の審議が16日、総務と国土交通の両委員会で行われた。
国土交通委員会では国交省が示している再拡張後の飛行ルート案について、騒音間題を中心に議論した。
佐藤泰三・国土交通副大臣は「千葉県から寄せられた8項目は、可能なもの、困難なものがあるが、回答に向けて検討している」と述べた。
総務委員会では、新滑走路を海側に約10度ずらす案や、千葉市、市原市上空を飛ぶ航空機の高度を上げる案など騒音低減策について「早い時期に県に回答すべく検討中」などと答えた。
【本紙の解説】
3月5日の本紙の解説で、「国交省は、D滑走路の位置の変更は受け入れ難れいない。飛行高度の再検討、騒音予測値の見直しなどはやる。04年度にD滑走路の入札は計画通りに実行する。D滑走路の建設と09年の供用開始はこれで本決まり」と予測したが、その通りの進行になっている(04年3月5日付日誌を参照)。むしろ、国交省は余裕を持って千葉県の意見を受け入れている。それは、羽田D滑走路の建設にさえこぎつければ後はどうにでもなると考えているのである。千葉県もなめられたものである。しかし、堂本知事は成田新高速鉄道の政府援助の増額とともに、羽田の滑走路増設と国際化をあらかじめ認めているので、それは当然の成り行きである。
●(3月16日) 事業終了まで期限延長(3/17千葉日報)
成田空港周辺のインフラ整備を後押しする「成田財特法」の改正法案の審議が16日、衆議院総務委員会で行われ、麻生太郎・総務相は、延長する5年間で事業が終了しなかった場合、再度期限延長する方針を明らかにした。道路や下水道整備などの公共事業で国の補助率を手厚くしたり、事業採択順位を優先したりする優遇措置で、周辺市町から期限延長を求める声が強かった。麻生総務相の延長表明で、現行事業が終了するまで優遇措置継続が担保された。
財特法は1970年に制定。これまでに4回、期限延長されており、今月末に期限を迎えるため、さらに5年間延長する改正法案が今国会に提出されていた。質疑後に採択が行われ、全会一致で可決された。
今回の延長では、対象事業を、現行の整備計画で未了となっている県道、市町村道、下水道など8事業分野に限定。新規や追加事業は対象としていない。事業の進ちょく率は02年度末で約95パーセントに上っているが、5年で決着が付かない場合でも優遇措置が継続されることになる。
【本紙の解説】
衆議院総務委員会では、千葉県上空の飛行コースの検討と同時に成田財特の延長を議決した。千葉県の羽田再拡張反対を和らげるためなのであろうか。成田財特は、2000年の延長のときに再度の延長をないとの確認で10年延長でなく、5年延長にしたのである。
なぜ、それが5年の再延長になったのか。それは、成田空港が民営化され、周辺対策費が激減することと、羽田の再延長計画と国際化に反対する千葉県への対策である。千葉県が「04年度国の施策・予算に対する重点提案・要望」の第1要求項目が「成田財特法の期限延長」であった。それは昨年の12月の財務省原案内示で決まっていたことである。しかし、延長の条件を検討してみると「現行の整備計画で未了となっている県道、市町村道、下水道など8事業分野に限定。新規や追加事業は対象としていない」となっており、基本的にいままでの計画分の未了部分に予算を付けるだけであり、成田財特の打ち切りという本質はそのまま貫かれている。成田空港の民営化とともに、空港周辺への対策費が激減することだけは確実である。
●(3月16日) 新東京国際空港公団/新会社、23日に設立総会(3/17朝日、毎日の千葉版、3/18千葉日報)
4月から株式会社に移行する新東京国際空港公団の第3回設立委員会が16日、都内のホテルで開かれ、株式会社法に定める手続きはこの日で終わり、設立総会が23日、都内ホテルで開かれることが決まった。創立総会では、会社設立に関する諸事項を決めるほか新会社の取締役、監査役を選任後、第1回取締役会が開かれ、代表取締役の認可を国土交通大臣に申請する。
新会社には会長職が置かれ、民間人が起用される見通し。政府は会長にJTB取締役相談役の松橋功氏(70)、社長に元運輸事務次官で空港公団総裁の黒野氏(62)を充てる意向を固めたが、創立総会で正式決定する。
公団を民営化するための第3回設立委員会(杉山武彦委員長)が16日に都内ホテルで開かれ、新会社の定款案や役員候補者案など創立総会に付議する6議案が協議、了承された。代表取締役など役員人事は、創立総会が終わるまで公表しない方針。
4月1日の新会社設立で同日、公団法が廃止される。新会社の発行株数は200万株(1株7万6000円)が見込まれ、公団が取得した株式は政府に無償譲渡される。新会社は資本金1000億円、資本準備金500億円とすることが決まった。自己資本比率は15パーセント強になる。公団への政府出資金は約3000億円に上り、公団は新会社に1500億円を出資、残り1500億円は無利子借入金に振り替え新会社が14年かけて毎年111億円を返済する計画。
新会社は全額政府出資の特殊会社として発足するが、07年に株式上場を予定。その後、政府株を順次放出して完全民営化をめざす。
公団が昨秋、発表した新会社の「中期総合計画草案」(04~06年度)によると06年度単体売上高を1700億円以上、グループ経営による新規100億円の売上高を見込み、民営化による経営効果で航空会社から要望の強い着陸料引き下げをもくろむ。
【本紙の解説】
資本金1000億円、準備金500億円で発行株券が200万株。額面は5万円である。準備金を資本金に組み込んだ計算で、成田空港株式会社の評価を1株7万6000円と見込んでいるのである。
成田空港の総資産は約1兆円弱であるが、公団の総負債総額は、6600億円(有利子)あり、それに政府返済金1500億円(無利子)が加わり、8100億円にのぼり、事実上の資産価値は2000億円しかない。
そのために、JRや日本たばこ産業のように、株式上場で額面の数倍になることはないようだ。それ以上に、空港経営が赤字になった場合は、株式の売却は思うようには進まない。航空外収入の増加も計画通りにはならないと公団内部でも言われている。結局この空港経営の危機を突破する道は、暫定滑走路をジャンボ機が飛べる滑走路にするしかないのである。それが天神峰団結小屋の明け渡し請求訴訟の提訴を始めとする暫定滑走路の再延長攻撃となっているのである。
しかし、暫定滑走路を北側に再延長しても誘導路の狭さや北側東関道の問題(露天の高速道がありアプローチエリアが確保できない)からジャンボ機の運航は不可能なのである。空港経営を順調に経営していく道は平行滑走路の計画通りの完全完成(南側に延長する本来計画)しかない。だが、それは不可能である。東峰神社裁判で公団はこのことを思い知ったのである。
●(3月17日) 空自クウェート派遣部隊、交代要員90人余が出発(3/17朝日夕刊、読売夕刊)
イラクへの物資の空輸にあたる航空自衛隊派遣部隊の交代要員が17日、成田空港から民間機に乗り、クウェートに向けて出発した。現在活動中の第1次派遣隊員と交代し、1次隊の半数にあたる約100人が来週帰国する。一連のイラク派遣で部隊の交代は初めて。
交代要員は、C130輸送機の搭乗員や整備員、基地業務に従事する隊員ら98人。入間基地(埼玉県)や百里基地(茨城県)、新田原基地(宮崎県)など全国各地から集められた。
交代要員のうち90人余りは17日朝、背広姿で百里基地からバスで成田空港に移動。空港近くのホテルで家族や同僚と記念写真を撮るなど出発前のひとときを過ごし、同日午前の民間機でクウェートに出発した。残る数人の隊員も近く出発する。
【本紙の解説】
成田空港が完全に軍事空港として使われている。公団は民間航空会社に私服で自衛隊員が乗ったまでのことだと説明している。しかしこれは嘘である。公団は「空港の軍事使用はしない」という建設当初の確約が反故になって反対運動が爆発することを恐れ、防衛庁に私服での搭乗を強硬に「申し入れ」たのである。軍事使用の本格化が始まっているという事の本質は隠しようもない。
すでに交代要員のほとんどは成田を使用すると言われている。来週帰国する第1次派遣隊員も成田を使うとのこと。日帝のイラク侵略戦争の軍事的起点として成田が機能し始めたのだ。米日が策動する朝鮮侵略戦争では軍用機も飛来し、成田空港は文字通りの軍事基地となる。成田周辺の倉庫群は軍用備蓄倉庫となり、空港周辺のホテル群が兵舎になるのもそう遠くないようだ。
有事法制、国民保護法制で、成田の軍事空港化は首相の強制権の発動も明記して決定された米軍への提供も強制権が保証された。政府の正式見解は、いまでも「成田空港は軍事転用はしない、あくまで民間空港である」ということになっている。しかしこの問題と有事法制との関係を政府は一度も説明していない。また千葉県、周辺自治体も成田空港の軍事使用に反対の立場を表明しているが、イラク出兵に成田空港が使用されたことを黙認している。
反対同盟と三里塚闘争にとって、軍事空港反対は当初からの闘争スローガンである。いまこそこの闘いの真価を発揮させ闘いぬこう。反対同盟は千葉県と周辺自治体への抗議行動に決起することを決定し、3・28全国集会にのぞもうとしている。
●(3月17日) 収用委会長襲撃、中核派活動家に無罪…共犯の供述疑問(3/18朝日全国版、朝日、読売、毎日、産経、東京の各千葉版、千葉日報)
1988年、千葉県収用委員会会長が襲撃された事件で、強盗傷害罪に問われた中核派活動家・水嶋秀樹被告(56)の判決が17日、東京地裁であった。
川口宰護(しょうご)裁判長は「被告が事件を指揮したという共犯者の供述は信用できない」と述べ、無罪(求刑・懲役15年)を言い渡した。検察側は控訴する方針。
水嶋被告は88年9月、成田空港2期工事を阻止するため数人と共謀し、千葉市内の路上で同収用委会長を鉄パイプで襲って重傷を負わせ、約46万円を奪ったとして指名手配され、2001年に逮捕された。
検察側は、共犯者の1人が捜査段階で水嶋被告の写真を指し、「この人が事件を指揮した」と供述したことなどから、首謀者と認定した。しかし、判決は「写り具合に問題があった」と指摘。この共犯者が法廷で被告と対面した時には「別人ではないか」と証言していることなどを理由に、「捜査段階での供述は信用できない」とした。
事件を機に、同収用委は委員9人が全員辞任した。
【本紙の解説】
千葉県の収用委員会はいまだ再建されていない。これは、千葉県警にとって警備・治安体制の汚点と感じている。そのためにデッチあげであることが百パーセント明らかな水島さんを逮捕し、起訴したのである。無罪は当然であり、その当然のことが判決となったのである。
それは水嶋さんを先頭にした強力な闘いがあってはじめてかちとられた勝利である。国家権力は、自らの失態をでっち上げで正当化しようとし、無実の人を長期に監獄に閉じこめてきた。この権力犯罪をわれわれは絶対に許さないだろう。
いまだ千葉県収用委員会は再建されず、三里塚は力強く闘いぬいている。この勝利を引き継ぎ、検察側の控訴攻撃を粉砕し闘いぬこう。
●(3月18日) 政府、空港・鉄道の警備強化(3/19日経)
政府は国内の空港、港湾、鉄道の警備体制を一段と強化する。空港や港湾のテロ関連情報などを一元的に扱う「危機管理担当官」を4月にも新設し、全国の25空港、約120港湾に順次配置。鉄道でも鉄道警察隊などによる駅、列車内の巡回を徹底する。スペインの列車爆破テロや、国際テロ組織アルカイダ系グループが日本をテロの標的に名指ししたことを踏まえ、陸、海、空の3方面からテロ対策に全力を挙げる。
福田康夫官房長官は18日の記者会見で「首相官邸主導で関係省庁が連携し、必要な措置を講じている」とテロへの警戒強化を表明した。空港・港湾に関して、政府は年初から成田、関西の両国際空港と東京、横浜、名古屋、大阪、神戸の5港を重点的に警備するため、内閣官房に所属する「危機管理官」を置いた。日本に入る外国人、貨物の約8割の詳細な情報を把握できるようになった。
【本紙の解説】
スペインのマドリードで起こった同時爆破ゲリラは、イラクに派兵している国の治安情勢を一変させた。次のゲリラ戦闘を予告された日本はなおさらである。日本でも空港警備に加えて、新幹線を中心とする警備を開始したが、警備している警察自身が無力感を露呈している。当然である。不特定多数の人が出入りする場所での警備はやりようがないのである。
千葉県は、千葉県における攻撃を受ける可能性が高いターゲットを公表した。その第1は成田空港、第2が千葉市稲毛区穴川にある放射線医学総合研究所(放医研)、第3が浦安にあるディズニーランド、第4が京葉工業地帯となっている。空港は交通の要衝であるということで攻撃対象になっているだけではない。むしろ、攻撃拠点であり、戦争の戦略拠点であるために、第一級のターゲットなのである。
成田空港の軍事使用を千葉県も容認している。そのために成田のターゲット性はより一層高まっているのである。イラクから自衛隊を撤兵させることが、最大のゲリラ対策になりはしないか。
●(3月20日) 成田空港警備体制/現行最高が最低線(3/22千葉日報)
航空機や空港へのテロ防止のため、国土交通省は20日までに、航空会社が空港で実施する保安検査の基準を再編・強化し、現行の最高レベル「フェーズE」を基礎レベルとしてさらに厳しいレベルを設ける新基準の本格的な検討を始めた。
レベルの変更も、現在は全国の空港一斉に行っているが、新基準ではテロの危険性が特に高い航空機や空港、地域に限ってレベルを引き上げるなど個別的な対応を可能にする方向だ。
国交省は、警察庁など関係機関と新基準の内容を調整し、2004年度中の具体化を目指す。
現行の基準は、平時の「フェーズⅠ」、緊迫時の「フェーズⅡ」、非常事態の「フェーズE」の3段階。段階が上がると、手荷物検査や金属探知機による搭乗者チェックのほか、不審者の身元確認などが厳しくなる。2001年の米中枢同時テロ以降は「E」が続いている。
関係者によると、新基準では「I」と「Ⅱ」を廃止。「E」を基本レベルとして、さらに厳しい2段階程度のフェーズを追加する。
テロ情報の内容によっては、機内の持ち込み荷物を開けて中身を確かめる検査を拡大するなどの対応を航空会社に求めるとみられる。
国際民間航空機関(ICAO)は米中枢同時ゲリラ後、保安基準を改訂し、昨年、国際民間航空条約の締結国に対する安全監査を開始しており、これに対応した措置。
【本紙の解説】
空港警備を平時と緊迫時を廃止し、非常事態の「フェーズE」を基礎にするといっている。非常事態の上の概念は、戦争準備段階、戦争状態しかないはずである。空港警備を「航空機や空港へのテロ防止」として位置づけているが、このことは、航空機と空港が現代戦争の中心的役割を果たしていることを示している。空港は戦争の出撃拠点、兵たん基地であり、空港をめぐる攻防が戦争の成否を決めるからである。したがって、空港警備のエスカレーションは単に「テロ防止」ということにとどまらず、戦争準備そのものなのである。
●(3月22日) 反対同盟/軍事使用禁止求め成田空港で要望書(3/23毎日千葉版、千葉日報)
成田空港の建設に反対する三里塚芝山連合空港反対同盟・北原派(北原鉱治事務局長)は22日、成田市役所を訪ね、成田空港の軍事使用の禁止を求める要望書を小林攻市長に手渡した。
要望書は、民間空港であるはずの成田空港から陸上自衛隊先遣隊がイラクに派遣されるなどした一連の行為は軍事行動であり、(1)市は政府、公団に対し自衛隊による成田空港の軍事使用に抗議する、(2)今後、軍事使用させない確約をとる、(3)異常警備を止めさせる――として月末までに文書回答するよう求めている。
同文書は同日、芝山町にも提出されたほか、航空機騒音の影響を受ける横芝町など7市町村にも郵送された。
【本誌の解説】
千葉県と空港周辺自治体は、成田空港の軍事使用に反対してきた。軍事空港にしないとの国の約束で空港建設を容認した経緯がある。しかし、現に空港が軍事使用されているにもかかわず、それに対して抗議も行わない。反対同盟は以下の文書を、成田空港圏自治体連絡協議会を構成する9市町村(成田市、富里市、芝山町、大栄町、多古町、下総町、横芝町、松尾町、蓮沼村)に申し入れた。
◇成田空港の軍事使用の禁止を求める要望書
成田市長・小林攻 殿
三里塚芝山連合空港反対同盟 事務局長・北原鉱治
成田市三里塚115
民間空港であるはずの成田空港が軍事使用されています。3月17日、航空自衛隊の交代要員98名が、イラクでの輸送任務にあたるために成田空港を出発しました。昨年12月には航空自衛隊先遣隊が、今年1月には陸上自衛隊の先遣隊がともに成田空港を使用してイラクに向け出発しました。
これら自衛隊の派遣はイラク復興支援特措法と自衛隊法に基づく軍事行動です。民間航空会社の旅客定期便(ブリティッシュ・エアウェイズと米・ノースウエスト)を使用し、成田空港から出発することは、乗客・乗員、空港関係者、地域住民を戦争にまきこむ危険を極度に高めるものであり、認められることではありません。
これらの軍事使用と前後して、政府は成田空港に危機管理官を任命し、千葉県警は空港警備隊に軽機関銃を装備する「銃器対策部隊」を新設しました。米国土安全保障省の検査官をゲリラ警備として成田空港に配備する計画があることも暴露されています。軍事使用のために空港の軍事化が進行しているのです。
「成田空港は民間空港であり軍事使用しない」が政府の国会答弁です。歴代の市長は議会等で「民間空港なので軍事使用はありえない。軍事使用しないと信じる」と答えてきました。これらの公約を踏まえて、以下要望します。
1.成田市は、政府・空港公団に対して、自衛隊による成田空港の軍事使用に抗議すること
2.今後、成田空港の軍事使用を一切行わない旨、政府・空港公団に確約させること
3.軍事使用のための異常警備をやめさせること
これらのことは空港建設を推進してきた成田市としての責務であると考えます。3月31日までに本要望書に対する文書による回答を求めます。
2004年3月22日
●(3月22日) 空港公団/騒音区域あいさつ回り(3/23東京千葉版、千葉日報)
民営化まであと10日と迫った22日、新東京国際空港公団による航空機騒音区域住民へのあいさつ回りが始まった。公団がなくなる31日までの10日間をかけ、約1万世帯を訪問する。対象地域は成田、富里両市のほか横芝、芝山、松尾、多古、下総、大栄町と茨城県河内町の2市7町。航空機騒音の影響を受ける騒防法第一種区域や隣接住民宅を訪問する。公団職員延べ390人を動員、2人1組で1日平均1000軒を回る。
この日、午前10時に公団第2ビル会議室に集合した幹部職員ら第1陣40人が、地域共主部の職員から訪問先の地図や記念品の特製切手シート(80円×10枚)、あいさつ文を受け取り雨の中、受け持ち地区へと向かった。
【本紙の解説】
成田空港は周辺自治体と住民に対する見返り、買収をふんだんに行うことではじめて建設された。買収によって騒音対策協議会や周辺自治体を空港推進派に取り込み、反対派を地域から孤立させたのである。買収資金の総額は、三十数年間で約5000億円ともいう。地方空港が軽く建設できる額であり、成田空港の本質を示す数字のひとつである。
しかし、成田空港が民営化され経費削減が叫ばれる中でいままでのような「ばらまき」は無理になった。その代わりに空港職員、延べ390人が出向くことで批判を「空港と危険、騒音」への非難をかわそうという狙いである。切手シート800円×1万軒=800万円で済まそうということである。
●(3月23日) 成田空港会社、来月発足 新社長「早期上場を」(3/24読売、東京、日経、産経、千葉日報)
政府は23日の閣議で、新東京国際空港公団が民営化し、4月1日に発足する「成田国際空港株式会社」の会長、社長人事を了解した。空港公団は同日、空港会社の創立総会を開催後、会長に就任する松橋功JTB取締役相談役と、社長に就任する黒野匡彦公団総裁が会見、黒野氏は「民営化3年の決算をみて(株式を)上場するという、最短距離を狙っている」と述べ、早期の上場に強い意欲を見せた。
同日発表した04年度から3年間の中期経営計画では、最終年度となる06年度の目標として売上高を1700億円、経常利益を250億円に設定したことを明らかにした。「減価償却などの費用がかさむ」(黒野氏)ものの、「3年間で10パーセント以上の経費削減目標」の設定で乗り切るという。
公団では、03年度決算で240億円の経常利益を見込む。イラク戦争や新型肺炎(SARS)の影響で「厳しい環境だった」(同)が、営業費用など約80億円の削減が奏功。黒野氏は、「給与返上など経費削減策をやった結果」と、早くも民間経営手法によるコスト削減の成果に胸を張った。
一方、当面の課題である、世界で最も高いとされる着陸料の引き下げについて、黒野氏は「引き下げで収益は下がるが、それが民営化の目標」として、あくまで早期の値下げを目指す考えを強調した。ただ、暫定平行滑走路を、計画通り2500メートルに延伸することについては、「微妙な時期。一日も早くめどをつけたい」と述べるにとどまり、時期については明言を避けた。
会長に就任する松橋氏は「利用客の立場にたった経営とコスト削減、(他の国内外の空港との)競争という、三つの視点から民間経験を生かしたい」とし、課題として混雑具合や利用客の利便性の低さなど「(外国人に)いい印象でない。そこから改革を始めたい」と述べ、日本の“玄関”としての空港整備に注力していく考えを強調した。
【本紙の解説】
民営化後の3年目の経常利益を250億円に設定しているが、これを達成できるどうかも定かではない。下請けに請負値段を圧縮し、また建設関係の発注も随意契約や指名入札から競争入札に変更し、経費削減に躍起になっている。しかし、航空外収入の増大の道は厳しいといわれている。騒音地域の空港保有地にスポーツジムやレストランをつくる案もでていると聞くが、スポーツジムなどは、バブル崩壊後、各地で倒産が相次いでいる。航空外収入の道が、むしろ成田空港経営の赤字分の増大になりかねないのである。
また、250億円の経常利益がでたとしても、そこから政府出資金返済金111億円、固定資産税、事業税など約70億円の支払い義務が生じる。したがって、200億円の経常利益がなければ最終利益はでないことになっている。250億円の経常利益の目標ということは、最終利益は50億円前後でしかないのである。しかしこれでは、いままで政府予算(政府出資金)でまかなわれていた建設費はでなくなる。暫定滑走路の建設費用も今年度の政府予算の70億円が繰り越しになるだけでおわりそうだ。
さらに、07年度から、羽田の国際化枠はいっそう拡大し、成田空港の経営を圧迫し、09年には羽田の4本目の滑走路が供用開始され、羽田が本格的に国際化し、アジア便の大半は羽田に移行することになる。また、05年度から中部国際空港も完成し、東海地方の貨物(成田空港貨物取扱の26パーセント)のかなりの部分が中部に移行する。国際空港で成田のみが事実上「黒字」という一人勝ち的状況は、民営化とともに終焉しそうだ。
●(3月24日) テロ防止に新検査機 成田空港で試験運用(3/25朝日千葉版、3/27毎日千葉版)
成田空港などの手荷物検査場で24日から、ペットボトルのふたを開けずに中の液体が危険物かどうかを見分ける検査機の試験運用が始まった。
検査機はペットボトルを載せると、瞬時に危険物なら赤いランプが点灯、ブザーも鳴って知らせる。新東京国際空港公団によると、350ミリリットル~2リットルのペットボトルと一部のガラス瓶が判別可能。金属容器も判別できるよう改良を目指す。
開発した東京ガスの説明では、床暖房センサーの技術を応用し、可燃性とそうでない液体の電気的特性の違いを判断する仕組みという。
同公団によると、イラク戦争が始まった昨年3月から、テロ防止のため、ペットボトルの中身を検査していた。1日約3万5千人の出国者がある同空港では、検査を受ける搭乗客の3人に1人がペットボトルを持っている。これまでは開封後のボトルの場合は持ち主に中身を飲んでもらったり、検査官がふたを開けてにおいをかいだりして確認していた。
国土交通省は試験運用の結果を見て、各空港に配備する予定という。
【本紙の解説】
空港警備も厳重化で大変な事態になっているようだ。搭乗手続きの時間が通例の2倍ほどかかり、貨物の点検も通常の数倍の時間と労力がかかっているらしい。ペットボトルの検査が簡素化したとしても、アルコール飲料が入っているガラス瓶の判明は、「一部のガラス瓶」でしかないようだ。どんなに厳しい検査をしたとしても、それはイタチごっこでしかない。ゲリラ実行犯の完全封殺などできるはずもない。ただただ、一般の人への威嚇作用しかない。
スペインの派兵弾劾列車ゲリラ以降、日本でも新幹線を中心として列車ゲリラ警備が始まった。しかし、不特定多数が出入りし、空港と違い、「搭乗手続き、手荷物検査」もできないので、制服警察官がものものしく「警視庁、police」と書いた台の上に立っているだけなのである。これでは何らゲリラ戦闘の防止になるわけもない。ただ、ゲリラが起こったときの責任逃れのアリバイ行為でしかないのである。
このペットボトル検査もそれと同じである。
●(3月25日) 騒音対策委員会/株式会社後も騒音対策の改善要望(3/26毎日千葉版)
成田空港の騒音対策について新東京国際空港公団や地元自治体などが話し合う「第31回新東京国際空港騒音対策委員会」(委員長・玉造敏夫公団副総裁)が25日、成田市内のホテルで開かれた。各自治体は4月の公団の株式会社後も、対策の継続や改善を要望した。
委員会で小林攻・成田市長は「02年4月の暫定平行滑走路の供用開始で空港北側の騒音被害が拡大している。平行滑走路は(さらに北へ延ばさない)本来計画を」と求めた。公団側は「あくまでも本来計画を目指し、地権者に理解を求めている」と答えた。
【本紙の解説】
成田空港の民営化で一番問題になっていることは暫定滑走路建設の2500メートル化である。しかし、本来計画の南側への2500メートル化は不可能である。南側の延伸は滑走路中心に東峰神社や墓地があり、そして開拓組合道路が横切っている。東峰神社裁判で東峰神社の土地は東峰地区の総有であることが確定した。地区全員の同意がなければ公団=成田空港株式会社は土地を取得できない。現実的には数十年、百年先でも東峰地区の用地取得は不可能となった。2500メートル化の残った選択肢は北側延伸しかない。
黒野総裁(民営化後の社長)は、成田空港株式会社創立の4月1日までを「民営化のフェーズⅠ」として、「民営化のフェーズⅡ」は株式上場の07年までとして、その主要課題を暫定滑走路建設の2500メートル化としている。したがって、北延伸を4月1日の株式会社創立のときにぶち上げる予定であった。
しかし、反対同盟との闘いと騒音下住民の反対でその北延伸計画の発表は先になりそうな雲行きなのである。この時期に成田市長が「本来計画を」といっていることは、反対同盟と地権者に対する攻撃であるが、北延伸計画に反対という表明である。
民営化騒ぎで中止になっている暫定滑走路の2500メートル化は、実はこのように暗礁に乗り上げているのである。
●(3月28日) 3・28三里塚全国集会
反対同盟は3・28全国集会を1250人の結集を得て開催、空港民営化による北延伸攻撃の激化、市東さんの農地強奪攻撃、天神峰現闘本部等撤去攻撃を弾劾し、この攻防に絶対に勝利すること誓った。また成田空港の軍事基地化を弾劾し、有事関連7法案に対する反対を決議した。
集会では反対同盟の販売した落花生と干し芋が飛ぶように売れた。(詳しくは本紙次号参照)
以下は集会プログラム、スローガン、集会宣言、有事関連7法案反対決議。
■イラクへの自衛隊派兵阻止・有事法制粉砕
暫定滑走路延伸攻撃粉砕し軍事空港を廃港へ
3・28全国総決起集会
三里塚芝山連合空港反対同盟
開会:2004年3月28日(日)正午 (於)成田市天神峰
◇司会あいさつ
◇開会宣言 鈴木 幸司
◇基調報告 北原 鉱治
◇特別報告 動労千葉
◇空港民営化と暫定滑走路北延伸粉砕の闘い
底地買収・不当提訴粉砕闘争報告
反対同盟顧問弁護団
市東 孝雄
野戦病院
岩山団結小屋
◇方針提起と決意
萩原 進
◇米反戦団体・ANSWERからのメッセージ
◇有事関連7法案反対決議
◇カンパ・物販アピール婦人行動隊
◇決意表明
住民団体関西新空港反対住民、北富士、沖縄
反戦被爆者の会、部落解放同盟全国連合会
都革新・長谷川英憲、婦民全国協、「障害者」、山谷
共闘団体中核派、解放派、戦旗派
◇集会宣言
◇スローガン採択
◇閉会宣言・デモコース説明・ガンバロー三唱
*デモコースは小見川県道→東峰神社左折→青行団結の家右折
→小見川県道→団結街道→現闘本部先まで約3.5キロ
■ 3・28全国集会スローガン
1、空港民営化のための暫定滑走路北延伸攻撃粉砕。軍事空港建設に反対し成田空港からの自衛隊出兵を阻止しよう。
2、空港絶対反対・一切の「話し合い」拒否。土地収用委の再建を阻止し収用法を粉砕しよう。
3、底地買収攻撃粉砕。市東さんの農地を守り抜こう。天神峰現闘本部、野戦病院、岩山団結小屋の明け渡し要求拒否。
4、一坪共有地強奪阻止。騒特法粉砕・芝山廃村化阻止。成田治安法を粉砕しよう。
5、農地強奪の先兵=堂本知事徹底弾劾。脱落派一掃。地元農家を抹殺する「共生委員会」を許すな。
6、国際反戦運動と連帯しイラク―朝鮮侵略戦争を阻止しよう。有事法制粉砕・改憲阻止。破防法・組対法攻撃粉砕。天皇制粉砕。
7、関西新空港粉砕。沖縄、北富士はじめ反戦・反核、反基地、反原発闘争の高揚かちとろう。
8、教育基本法攻撃粉砕。動労千葉をはじめとする戦闘的労働運動と連帯して闘う。
9、あらゆる差別抑圧粉砕。部落解放運動連帯。入管法・外登法撤廃。排外主義を許さず、在日朝鮮中国人民とともに闘おう。
10、拘禁二法反対。刑法改悪・保安処分新法粉砕。精神保健福祉法を撤廃しよう。
11、国家権力と一体となって三里塚・国鉄労働運動に敵対する革マル派を職場、学園、全地域から一掃しよう。
12、三里塚闘争勝利。今秋10・10全国集会に総決起しよう。
■集会宣言
4月1日の民営化は成田空港廃港の第一歩となるであろう。羽田国際化と中部国際空港の開港は、成田のさらなる没落をもたらすに違いない。ジャンボが飛べず欠陥だらけの暫定滑走路をかかえた民営化は必ず破産する。
当初計画の平行滑走路をつくることができず追いつめられた空港公団は、暫定滑走路の北延伸と「へ」の字誘導路の直線化にのめり込もうとしている。だが、欠陥だらけの暫定滑走路をさらに320メートル北に延ばして2500メートルにしても、ジャンボを飛ばすことはできない。そればかりか、滑走路北端から400メートルの保安区域を東関道が横断するという新たな危険を生み出す。わが反対同盟は暫定滑走路の北延伸を阻止する。
公団は誘導路の直線化のために市東同盟員の畑と天神峰現闘本部の底地を買収し明け渡しを要求しきた。この農地強奪攻撃と現闘本部撤去の不当提訴を粉砕する。一坪共有地を守りぬく。野戦病院と岩山団結小屋の撤去攻撃を粉砕する。「3年後の株式上場までに2500メートルの目途をつける」と公言する公団に対して、反対同盟は決戦をもって闘いぬく。
成田空港がイラク占領の恒常的な出撃基地となっている。われわれはイラク戦争に反対し、自衛隊と占領軍の即時撤兵を要求する。
成田空港の軍事使用は「イラク占領を認めよ」と、われわれに迫るものでありがまんできない。自衛隊員の部隊移動は乗員・乗客と空港周辺住民を戦争の危険にさらすものである。成田空港の軍事使用をただちにやめよ! 成田からイラクに自衛隊を出兵させるな!
有事関連7法案で成田空港が戦時体制に組み込まれようとしている。本集会は特別決議をもって法案成立阻止の国民的大運動を訴える。
動労千葉の春闘ストライキに連帯し、賃下げと首切り、合理化、社会保障制度の改悪と闘う労働者とともに決起しよう。
成田空港の民営化と北延伸は航空政策の破たんの結果であり、これをよりいっそう促進する。成田軍事空港の廃港へ、3年間の決戦に総決起しよう。
2004年3月28日
三里塚芝山連合空港反対同盟
■有事関連7法案 反対決議
政府が今国会に提出した有事関連7法案の中に、空港や港湾などの軍事使用を定める「特定公共施設利用法案」があります。米軍と自衛隊が軍事行動を起こす際に、日本の飛行場や港湾、道路などを軍が占拠・使用するための法律です。
「有事」とは朝鮮戦争のことです。この戦争において、成田空港は米軍の兵たん・出撃拠点とされます。首相は強制的に使用命令を出すことができます。1950年の朝鮮戦争と同じことが、いま目の前で準備されつつあるのです。
また「国民保護法」という名の新たな国家総動員法においても、成田空港は政府が指定する特定公共機関とされ、戦時体制に組み込まれようとしています。
私たちは本集会の名において以下、決議します。
一、有事関連7法案の提出を弾劾し、全国民的な反対運動で法案成立を阻止しよう。
一、闘う朝鮮、アジアの民衆と連帯し、北朝鮮への侵略戦争を阻止しよう。
一、三里塚軍事空港を人民の怒りで包囲し、廃港に追い込もう。
2004年3月28日
三里塚芝山連合空港反対同盟
●(3月30日) 防音工事助成348戸追加(3/31朝日、読売各千葉版)
財団法人「成田空港周辺地域共生財団」は、航空機騒音防音工事の助成対象となる「隣接区域」に、暫定平行滑走路東側にあたる成田市と芝山町、下総町、大栄町、多古町の計348戸の民家を新たに追加した。隣接区域は計2973戸となる。
財団は、同滑走路がサッカー・ワールドカップ開催を控えた2002年4月に供用開始したのに合わせ、東側の364戸を新たに隣接区域に指定した。しかし、線引きが飛行ルートに沿ったもので、騒音下住民から「助成を受けられる家と受けられない家とで、集落が分断される」と不満の声が上がっていたため、線引きを集落単位にあらためた。
防音工事、サッシや空調機の修繕に助成金を支払う制度は、空港公団が、「公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律」(騒防法)に基づく騒音区域(75WECPNL以上)内の4918戸を対象に行っている。財団は、この制度を補完する本県独自の取り組みとして、騒音が区域内とほとんど差がない地域に、公団に準じた助成金を払っている。
【本誌の解説】
騒防法に基づく騒音区域に対する助成金は、一戸あたり平均約1000万である。さらに、エアコンの電気代が毎月支払われる。またテレビ受信料が免除されることになる。
しかし、成田空港周辺地域共生財団による「隣接区域」に対する助成金は、「公団に準じた助成金」となっている。
この共生財団の財源は、空港公団が50パーセント出資、残りを県と成田市など1市7町が負担している。しかし、自治体の負担金は公団の地元対策費から出ており、事実上100パーセント公団負担である。だが、いまのところ共生財団は地元自治体の意見が強い。地元自治体の判断としては、民営化後に騒音対策はおざなりになることは確実であり、そのために駆け込み的に「隣接区域」の対象件数を追加したのである。これが民家に対する最後の騒音対策費になりそうだ。
●(3月31日) 日航と全日空に緊急融資、リストラ条件に…政策投資銀(4/1朝日、読売、日経)
政府系金融機関の日本政策投資銀行は31日、新型肺炎(重症急性呼吸器症候群SARS)などの影響で業績が落ち込んでいた航空大手の日本航空システムと全日本空輸の2社に対し、計550億円の緊急融資を実行した。
内訳は日航システムに200億円、全日空には350億円で、両社はこの資金をリストラ関連費用や設備投資などに充てる。
航空業界は、新型肺炎の流行でアジア方面への旅客が激減し、2003年9月中間連結決算は、両社とも減収となっている。そのため国土交通省が昨年5月、政策投資銀に対して緊急融資を要請しており、同行は大規模なリストラによる強固な財務体質の構築を条件に、融資実行を決めた。
同行は昨年9月にも日航システムに700億円、全日空に150億円の緊急融資を行い、同行による融資額の合計は日航システムが900億円、全日空が500億円となる。
【本誌の解説】
政策投資銀による緊急融資は、01年9・11反米ゲリラの時も、「減収」を理由に航空各社に対し、約2400億円の緊急融資を実施している。したがって、上記記事「同行による融資額の合計は日航システムが900億円、全日空が500億円」は間違いである。政策投資銀の融資合計は、両社で3800億円にも及んでいるのである。政策投資銀の融資はきわめて低利子であり、3800億円の一般銀行の利子分の差額を政府負担していることになる。つまり、毎年100億円以上を民間の航空会社に政府が援助していることになる計算だ。それも、01年、03年、04年と立て続けの緊急融資である。「緊急」とは名ばかりで「恒常」融資になっている。これは、航空業界が構造的不況で、日本の航空会社が欧米、アジアの航空各社とまともに競争した場合に倒産しかねないからである。EUでは自由競争が建前で、各国のフラッグキャリアへの政府援助を原則として禁止している。そのためにスイス航空などが倒産している。日本もこの政策投資銀の融資がなければ、同じ運命になっているのである。
政府融資の理由は、民間航空会社が軍隊の兵員輸送の主要手段になっているからである。しかし自衛隊のイラク派兵では日航、全日空とも自衛隊の使用を断った。今回の融資決定の背景には、次の兵員輸送時に日航、全日空が交代で兵員輸送を買って出る約束があるとも言われている。
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