●(10月10日) JALグループ/羽田発国際チャーター便を大幅増(日経10/11)
日本航空システム(JAL)グループはJTBなど旅行大手10社と組み、羽田空港発着の国際チャーター便を大幅に増便する。新たにサイパン線を11月から1月初めまで毎日1往復運航するなど、年間の全チャーター便数では前年度比4倍にする。成田空港発着の定期便に加えて、機動的に運航できるチャーター便を拡充、低迷する海外旅行をテコ入れする。
羽田空港の国際線利用で認められている深夜・早朝の発着枠を使う。JALは今年度、羽田発着の国際チャーター便としてホノルル、ケアンズなど計12便(片道)を運航しているが、今回のサイパン線の規模は127便(同)。前年度比で4倍以上の規模となる。
JALは新型肺炎・重症急性呼吸器症候群(SARS=サーズ)の影響で国際線が低迷、業績が悪化している。このため需要が急回復しているサイパン線にチャーター便を投入し、増収を図る。
【本紙の解説】
羽田空港が本格的に国際化するのは、4本目の滑走路が完成予定の09年となっているが、その前に事実上の国際化が大々的に始まろうとしている。羽田と金浦空港間のシャトル便運航の開始がこの11月から1日4便で始まる。
成田―仁川間が1日約15便であり、その4分の1が開設される。成田の客を奪うのか、新規に需要を作り出すのか、いまだ不明である。アジアの近隣諸国には羽田の発着が多数の要求であり、この傾向はとどめようもない。
深夜便を利用してのサイパンツアーも、成田―サイパン路線のシェアを奪う性格のものである。成田―サイパン線はノースウエスト、コンチネンタル、ジャルウェイズ(JALの系列会社)がデイリーで運航していて計3便である。それの中で、羽田から毎日1便が深夜便にもかかわらず、「定期便」化することは成田の位置を脅かすものになるであろう。
民営化する成田空港会社も、この羽田国際化に抗する手段をもっていない。そのために、千葉日報の記者会見で石原国土交通相は、「羽田を近距離国際線、成田を長距離国際線とする考えにはどうか」という質問に「民営化される成田空港の経営が成り立たないといけないので急にはできない」といっている。つまり国交省の「国際空港棲み分け論」では、成田空港の経営は成り立たないとでているのである。石原国交相は政策的に成田を保護するといっている。しかし、この羽田国際化の圧力とすう勢は政策的に保護しようのないものである。成田の暫定滑走路が使い物にならなくなるのもそう遠くはないようだ。
●(10月12日) 反対同盟主催の全国集会が1250人を結集し闘いとられた。
速報として、集会のプログラム、集会宣言、スローガン、ANSWERからの連帯アピールを掲載します。
◆プログラム
イラク―朝鮮侵略戦争反対・有事法制粉砕
暫定滑走路を閉鎖し軍事空港を廃港へ
10・12全国総決起集会
開会:2003年10月12日(日)正午
於:成田市東峰
三里塚芝山連合空港反対同盟
■司会挨拶 宮本麻子 伊藤信晴
■開会宣言 鈴木幸司
■基調報告 北原鉱治
■特別報告 動労千葉
■ANSWER(米反戦団体)からのメッセージ
■東峰神社裁判支援の訴え 萩原進
■反対同盟決意表明 市東孝雄
■三里塚裁判闘争報告 反対同盟弁護団
■カンパアピール 鈴木加代子
■決意表明
□住民団体住民団体
関西新空港反対住民、北富士、沖縄、元反戦自衛官
反戦被爆者の会、部落解放同盟全国連合会
都革新・長谷川英憲、婦民全国協、「障害者」、山谷
□共闘団体
野戦病院、中核派、解放派、戦旗派、蜂起派
■集会宣言 木内秀次
■スローガン採択
■閉会宣言・デモコース説明・ガンバロー三唱
鈴木健太郎
※デモコースは小見川県道→東峰神杜左折→青行団結の家右折→小見川県道→団結街道→現闘本部先まで約3.5キロ
◆集会宣言
政府・空港公団は来年四月に公団を民営化し、〇七年株式上場までに用地買収を完了すると宣言した。買収のための「話し合い」に応じないなら滑走路を北側に延長して東峰の頭上でジャンボ機を飛ばすとぶちあげた。天神峰ではジェットブラストを浴びせて追い出そうとしている。対策フェンスをかさ上げせよという反対同盟の度重なる要求にも、公団は誠意を示さず折衝要求すら拒絶した。
欠陥だらけでジャンボ機が飛べない暫定滑走路は、いまや成田空港を破綻に導く重荷となった。〇九年羽田国際化の決定によって成田のアジア便の大半が羽田に移る。空港公団はジャンボを使う欧米便が発着できるようにするために、暫定滑走路を二五〇〇メートルに延長しようと躍起となっているのである。
三里塚闘争はついに暫定滑走路延長をめぐる、向こう三年間の決戦に突入した。反対同盟は三十七年間の闘いを決めるこの闘いに総力をあげて決起する。
東峰神社裁判の正当な主張は空港公団を追いつめた。公団は「和解」と称して、いまだに神社敷地を公団の所有物だと主張している。敷地は東峰部落の総有財産であり神社林伐採の暴挙は違法である。裁判闘争を支援しよう。
米ブッシュ政権の侵略戦争は戦後世界を一変させた。小泉内閣はこれを好機として、来月にも戦後初めて陸上自衛隊を戦場に送り込もうとしている。成田空港をイラク侵略の出撃基地としてはならない。三里塚で勝利し全国の反戦・反基地闘争の突破口としよう。有事法制・改憲攻撃を粉砕しよう。
反対同盟は動労千葉を始め資本攻勢と闘う労働組合と連帯する。戦争翼賛のための総選挙をうち破ろう。アフガン、イラク、パレスチナで続く侵略と虐殺に抗議し、米反戦団体ANSWERが呼びかける十・二五統一行動に総決起しよう。来春三・二八全国集会へ、決戦に勝ちぬこう。
2003年10月12日
三里塚芝山運合空港反対同盟
◆10・12全国集会スローガン
一、暫定滑走路粉砕―延長阻止。軍事空港建設粉砕。成田からの自衛隊出兵を阻止しよう。
二、土地収用法粉砕・収用委再建実力阻止。地元農家を抹殺する「共生委員会」を許すな。
三、空港絶対反対・一切の「話し合い」拒否。東峰神社裁判闘争を支援しよう。.
四、一坪共有地の強奪阻止。騒特法粉砕・芝山廃村化阻止。成田治安法を粉砕しよう。
五、農地強奪の先兵=堂本知事徹底弾劾。脱落派一掃。裏切り者の条件移転徹底弾劾。
六、国際反戦運動と連帯しイラク―朝鮮侵略戦争を阻止しよう。有事法制粉砕・改憲阻止。破防法・組対法攻撃粉砕。天皇制粉砕。
七、関西新空港粉砕。沖縄、北富士はじめ反戦・反核、反基地、反原発闘争の高揚かちとろう。
八、教育基本法攻撃粉砕。動労千葉をはじめとする戦闘的労働運動と連帯して闘おう。
九、あらゆる差別・抑圧粉砕。部落解放運動連帯。入管法・外登法撤廃。排外主義を許さず、在日朝鮮・中国人民とともに闘おう。
十、拘禁二法反対。刑法改悪・保安処分新法粉砕。精神保健福祉法を撤廃しよう。
十一、国家権力と一体となって三里塚・国鉄労働運動に敵対する革マル派を職場、学園、全地域から一掃しよう。
十二、三里塚闘争勝利。来春三・二八全国集会に総決起しよう。
◆ANSWERから反対同盟への連帯アピール
2003年10月12日
私たちアメリカのANSWER連合は、成田空港近くの畑で行われる三里塚芝山連合空港反対同盟の10・12闘争に対して、連帯の意志を表明します。
成田空港の拡張と民営化に反対する反対同盟の強固で粘り強い闘志、戦闘的な闘いは、アメリカにおける私たち平和のための闘い、環境を守るための闘争を奮い立たせ、闘いを継続するための力を与えてくれています。
団結したみなさんの献身性、不屈性が、三里塚闘争を非凡な闘いに引き上げると共に私どもを鼓舞激励してくれています。
今、イラクとアフガニスタンで軍事占領という戦争が続けられています。アメリカ帝国主義は朝鮮民主主義人民共和国の人びとへの新たな戦争を画策しています。今こそ、皆さんの闘いが実現してきたような、それぞれの地域の環境運動を帝国主義の戦争反対へと結びつけることが問われています。
私たちANSWERは、来る10月25日ワシントンで、イラクの軍事占領を終わらせ、米軍を直ちに帰国させるための全国総結集デモを計画しています。同時に、“北朝鮮、イラン、シリア、ジンバブエなどに対して新たな戦争をやるな”をスローガンに掲げて闘います。
世界の被抑圧人民への“反テロ戦争”なる終わりなき戦争に、アメリカが圧力をかけて日本政府を動員しようとしていることを、私たちも承知しています。
日本の労働者、農民、学生が自国政府の戦争攻撃に対して、反戦に立ち上がっていることにアメリカの反戦運動は感謝しています。
支配階級による人民の戦争動員に対して、それぞれの国で闘うことが国際的連帯を築くために大切なことだからです。
三里塚芝山連合空港反対同盟の成田空港反対闘争万歳! 日本とアメリカの労働者・農民の連帯万歳! 全世界人民の連帯万歳!
インターナショナルANSWER
●(10月16日) 消火救難訓練/ジャンボ機使い真剣訓練(10/17千葉日報)
ボーイング747のジャンボジェット機を使って、着陸後に第1エンジンが爆発したとの想定で、航空機事故による消火救難総合訓練が16日、成田空港整備地区エプロンで行われた。
同空港では開港以来25年、大きな航空機事故が起きておらず、世界一安全な「奇跡の空港」と形容されるが、来年4月の民営化を前にした空港公団最後の総合訓練となった。医師団派遣のため、印旛村にある日本医科大ドクターヘリが運航され、空港内に配備されたばかりのハンディ型除細動器(心停止した患者に電気ショックを与える器具)2台のデモンストレーションが行われた。
航空機事故は、発生すれば大惨事につながりかねないだけに、総合訓練には空港関係者はじめ地元消防、医師会、航空会社、自治体職員ら約1000人が参加、緊急車両など140台が出動。非番の救急救命士も事故想定現場に駆けつけ、負傷の程度を4段階(死亡、重傷、中等傷、軽傷)に分けて目印のタグを付け治療の優先順位を決める「トリアージ」が実施されたほか、空港公団本社ビルに共同記者会見場が設置、報道各社への連絡や一斉放送、ファクスが行われた。
【本紙の解説】
空港の消火救難総合訓練は年2回行なっているが、昨年から空港内にテナントをもつ会社は義務参加となった。成田空港の「安全性」に対する信用も、暫定滑走路の供用後は国際的に揺らいでいる。いまでは暫定平行滑走路の発着の危険性を、多くのパイロットが指摘するようになった。すでに大事故につながる事故が二度も発生しているのだ。そのため、訓練は真剣味を増しているようだ。
また、成田空港がイラク侵略戦争に反対する勢力のゲリラ対象になっており、その点でも訓練は本格的なものになった。また火災とは違うが、これから冬に向かいSARSの流行が本格化する。SARS患者の搬送は火災以上の緊急事態であり難しい。今回はその訓練も含まれているため、医療関係者の参加が目立っているのである。
●(10月22日) 貨物便、滑走路に機体こする/5メートルの傷、骨組み変形(10/24朝日、読売、毎日各千葉版、千葉日報)
22日午後10時10分ごろ、成田空港の4000メートル滑走路を離陸直後のアンカレジ行き日本貨物航空62便(ボーイング747―200型機、垣内良啓機長ら乗員計4人)から、「離陸する際に機体後部を滑走路にかすったらしい」と、国土交通省新東京空港事務所に連絡が入った。
同機はまもなく引き返し、同日午後10時50分ごろ成田空港へ着陸した。点検の結果、機体最後部の胴体下面に長さ約5メートルの黒い帯状のかすり傷があることが判明。その付近で、機体表面内部にある骨組み(フレーム)の変形も確認された。
同省は23日、損傷の程度が、部品交換では対応できず、機体の構造に影響が及ぶ「大修理」が必要なものに該当することから、航空事故にあたると判断。航空・鉄道事故調査委員会の調査官3人を派遣し、原因調査に乗り出した。
【本紙の解説】
この事故は航空機が離陸の際に滑走路と接触したものであり、基本的に航空機の整備不良か操縦ミスが原因とみられる。成田空港での航空機の事故件数は78年の開港以来、25年間で8件である。1年間平均で0・32回となり、少ないと言える。しかし、昨年の12月からすでに3回も起こっている。1年で3回であり、計算上10倍になっている。今回の事故はA滑走路の事故であり、暫定滑走路の事故ではない。しかし、暫定滑走路が供用開始してから、その暫定滑走路ですでにオーバーランと接触事故をおこしている。
成田空港の事故がこれほど増えた原因はどこにあるのか、そのひとつは、暫定滑走路の運用が、滑走路の短さと誘導路の変形によって無理があるからである。そのために、航空機管制が複雑になり、管制機能に無理が生じている。もうひとつの原因は、航空需要の落ち込みによる営業不振で航空機整備部門でもリストラが進行し、整備がおざなりになっていることである。
これは、大事故の前兆である。本紙が何度となく警告しているが、航空機事故は小事故が連続して起こり、その抜本的解決がないかぎり、かならず大事故に発展する。成田空港での事故多発の最大原因は暫定滑走路の供用開始であり、大事故を未然に防ぐ手段は、暫定滑走路の閉鎖以外にない。暫定滑走路は滑走路としては危険きわまりないものである。これは現役の機長も断言していることである。
●(10月23日) 東峰神社裁判/公団側が和解修正案を提示(10/24毎日千葉版)
成田空港の暫定平行滑走路南側の東峰神社にあった立ち木を、新東京国際空港公団が01年6月に無断で伐採したのは地区住民の財産権の侵害だとして、成田市東峰地区の住民が公団に原状回復と慰謝料を求めた訴訟で、法廷外の協議が23日、開かれた。
この日、公団側は前回の口頭弁論で提示した和解案(原告側は拒否)の修正案を提示した。
内容について住民側の代理人は明らかにしなかったが、これまで公団が所有を主張していた神社の土地について、地区住民の主張する「総有(地区住民の共有)」に踏み込んだ譲歩案とみられる。代理人は「原告の住民に持ち帰って内容を検討したい」とだけ話すにとどまった。
公団は今年7月末、神社の土地を公団のものとしたうえで、▽伐採に対する謝罪▽立ち木の植栽▽慰謝料の支払い▽土地の無償の使用権―など7項目について提示。これに対し、住民側は公団が土地所有権を譲らなかった姿勢を不満として和解案を拒否し、修正を求めていた。
【本紙の解説】
9月22日に行われた裁判で、公団側和解案を東峰地区が拒否したことから、法廷外協議が行われた。この時に提示された公団側提案は東峰神社の土地は公団の所有であるが、「無償の使用借権」をあたえるというものであった(03年9月22日付日誌を参照)。
その後公団側は、9月25日の公団総裁の定例記者会見で、「ウルトラC」と称して「土地の譲渡」を言い出していた(03年9月25日付日誌を参照)。しかし10月12日の反対同盟の全国集会で萩原進さんは「譲渡を要求しているわけでない。神社の土地はあくまで東峰地区の総有である」と発言している。本紙やこの解説でもこの点を強調した。
その結果、公団側は今回の協議で東峰神社の土地が地区の総有であることに踏み込んだ提案をしてきたのである。
細目に関しての協議は今後も続くであろうが、いずれにしても、公団が他人所有の立ち木を白昼無断で伐採したという強盗的行為が満天下に明らかになることだけは確かなようだ。
●(10月24日) 日航貨物機事故/損傷隠すため内密処理か(10/24朝日夕刊)
日本航空の国際線貨物機で、規定外の部品を使った修理が行われ、保存の義務がある整備記録も残っていなかった問題で、日航が「整備士が機体を損傷し、急いで修理して隠蔽した可能性が高い」とする調査結果を国土交通省に報告していたことが分かった。成田空港での整備中のことと見られるが、整備士は特定できていない。同社は「再発防止に努めたい」として整備士の特定はしないという。
同社によると、3月11日に米アンカレジ空港に到着したボーイング747型機で、機体前方の下部に長さ約20センチ、幅約7センチ、深さ約6ミリにわたってへこみがあり、同社の整備規定と異なるアルミ板が使われていたのが見つかった。整備記録は残っていなかった。
調査では、へこみは2月以降に成田空港でできた可能性が高いと判断。複数の整備士が短期間で応急処理をして内密に処理したと結論づけた。
【本紙の解説】
今月22日の日航貨物機の事故で、重大なことが判明した。事故は機長も言っているように「離陸する際に機体後部を滑走路にかすった」そのために、「機体最後部の胴体下面に長さ約5メートルの黒い帯状のかすり傷」ができたのである(03年10月22日付日誌を参照)。
その原因を日航は整備ミスとしている。理由として「機体前方の下部に長さ約20センチ、幅約7センチ、深さ約6ミリのへこみ」があり、その修理を「同社の整備規定と異なるアルミ板が使われていた」ことをあげている。
整備規定と異なるアルミ板を使ったことが、必ず離陸ミスにつながるとは思えない。この航空機は2月以降に、成田空港で整備士が機体を損傷させ、それを隠蔽するために規格外の修理して記録を残さなかったと報告されている。日航は3月11日に、この航空機前方の規格外修理をアンカレジで発見したがそのまま放置した。つまり2月以降、10月22日まで8カ月前後運航していても、問題がなかった。ほぼ毎日運航、つまり約200日以上は運航していたであろう。そうすると離着陸回数は400回をオーバーしているはずである。400回前後の離着陸は無事に行われていたのである。
したがって、規格外修理を離陸ミスの直接原因に結びつけるのは無理がある。規格外修理は問題であろう。日航はそれを行った整備士の問題を指摘しているが、日航自身が3月11日にそれを発見し、事実を認めていたのであり、整備士よりも日航自身に問題がある。日航の安全無視の運航であることは明白である。航空需要の落ち込みにより、安全運航より、利益追求に走っている。この点でも航空機はいまだ危険な乗り物である。
●(10月25日) 成田空港/SARS再流行を警戒(10/25千葉日報)
秋の深まりを迎える中、成田空港の検疫所などは冬場の再流行が懸念される新型肺炎(SARS)を水際で阻止しようと警戒を強めている。関係者は予兆に目を光らせ、航空会社も乗務員にインフルエンザの予防接種を推奨するなど対策に本腰を入れ始めた。
世界保健機関(WHO)は7月に新型肺炎終息宣言を出したが、原因となるコロナウイルスは夏の間、野生生物を宿主として息を潜めているとされ、米国の国家情報会議は秋からの再流行の恐れを指摘している。
一時期、前年比の6割以下に落ち込んだ成田の旅客数は9割以上にまで回復したが、到着ロビーには入国者の体温を測るサーモグラフィーが置かれたままで「いつでも動かせるようにしてある」(厚労省成田空港検疫所)。
同検疫所の河合誠義所長は「11月以降、再発はあると考えて警戒する」と口元を引き締め、1時間以内で感染を判定できる検査キットの実用化に期待を寄せる。
空港内の診療所ではインフルエンザの予防接種を受ける客室乗務員や空港勤務者の姿が増えている。インフルエンザと新型肺炎の初期症状は似ているが、接種済みならインフルエンザの疑いは薄れ、新型肺炎の早期発見につながる。
全日空成田空港支店広報課の吉田久行リーダーは「特に客室乗務員には予防接種を求めている。地上職員にも同様の要請をする」と話す。費用は会社負担だ。空港公団も同様の制度を検討し、成田税関支署は希望職員を対象に検疫、医療関係者を招いて講習会を開く。
空港近くにある第1種感染症指定医療機関の成田赤十字病院の野口博史医師は「今春のような大流行はないだろうが、帰国者が国内で発症することもあり得る。行政は(国内で複数の患者が発生する)最悪の事態もシミュレーションすべきだ」と話す。
【本紙の解説】
SARS関係者の間では、「今春のような大流行はないだろうが」が口癖になっている。しかし、その後に出てくる言葉は、「今年の11月末からSARSの流行は本格化し、全世界に伝播し、最悪の事態に突入する」となり、実は後者に本音がある。WHOでも今年は大流行することは確実であるとしている。
またSARSの初期症状はインフルエンザと同じであり、区別がつかない。したがって、インフルエンザをSARSと考えて処置をする必要がある。そうするとSARS対策をものすごい数で行うことが必要になる。だが、そんな設備も人員もない。社会的パニックにもなる。インフルエンザをSARSとして対策し、隔離、閉鎖を実行した場合、全世界が丸ごと隔離、閉鎖になるからである。
どうしてこういうことになるのか。それはSARS対策がまだできていないからである。1年たってもワクチンは完成していない。SARSウイルスは進化し、耐性がより強くなっている。中国でハクビシンなどの獣肉を食べることから、動物に寄生するSARSウイルスが人間に移り進化したことはほぼはっきりした。しかしその動物の特定と感染方法もまだ見つかっていない。野生の獣肉を食べるのは中国の食習慣であり、SARS問題が流行していた春までは中国政府も禁止していたが、夏には全面解禁になっている。伝統的食習慣であり、長期の禁止は無理があり、できるはずもない。
いずれにしろ、関係者は昨年以上に流行することは確実とみて、戦々恐々としている。全日空は会社の費用でインフルエンザの予防接種を行っている。実際にこの記事にあるように、「(SARSか、単なるインフルエンザか)1時間以内で感染を判定できる検査キットの実用化」ができない場合は、パニックが起こりそうである。成田空港の年末年始は開港以来、はじめての閑散とした空港になるのであろうか。
●(10月30日) 空港公団/中期経営計画草案発表(10/31朝日、読売、毎日、日経、東京各千葉版)
来年4月、政府全額出資の「成田国際空港株式会社」に衣替えする新東京空港公団(黒野匡彦総裁)は30日、来年度からの3年間を「自主独立経営の基礎固め」と位置づけた中期総合経営計画草案を発表した。
民営化に伴い、アジアのハブ空港としての国際空港間競争力を高めると同時に、世界トップレベルの空港に向け、経営基盤の構築と早期株式上場への条件整備が狙い。
民営化後の単体売上目標を年2・1%増と見込み、3年目の06年度には1700億円以上(02年度実績は1562億円)とした。民営化で可能となった免税店経営など新規事業への取り組みを強め、非航空系収入で100億円の売り上げ増をめざす一方、3年間で10パーセント、約50億円のコスト削減を実施する。
また、空港容量を拡大して航空機発着回数を現在の20万回から22万回へと1割増やし、暫定平行滑走路の2500メートル化早期実現を「解決しなければならない必須の課題」と位置づけ、計画期間内に見通しをつけるとした。
収益性を念頭に置いた新規事業の開拓では、第1旅客ターミナルビル南棟で免税店はじめ旅行用品、土産物販売などを直営し、第2ターミナルビルに偏っている航空会社の再配置を行う。
さらに、強力な企業グループを構築するため、連結対象16社(子会社14社、関連会社2社)の出資比率を見直し、上場までに100パーセント子会社化をめざす。
航空会社からの着陸料引き下げ要求について黒野総裁は「グループの利益を一元化して利用者に還元するのが民営化の目的だ。その意味で着陸料引き下げは株式上場前もありうるが、経営体力に確信が持てない限り冒険はできない」と、実施時期に含みを残した。
また、平行滑走路の完全化では「この3年間に建設のメドをつけ、工事着手を実現したい」と語ったほか、発着枠の拡大は「新たな用地取得がなくても現施設の手直しで22万回は可能」との見通しを示した。
【本紙の解説】
民営化のための経営計画案であるが、楽観的な数字とは裏腹に大赤字になることは確実である。まずは民営化後は政府予算がつかなくなるという問題、さらに税金を支払う義務が生じるという問題がある。これらは収支にどう影響してくるのかを見ておこう。
政府予算の公団取り分は年によって違うが、いままでの累積が3000億円であり、年間約100億円と計算できる。これは過去の金額を含み、30年以上の貨幣価値の変動を無視した累積額なので、現在の貨幣価値に直すと実際はこの倍以上になるだろう。しかしいずれにせよ、いままで無条件に得られた年間100億円以上の予算措置(いわゆる真水予算)はゼロになる。また財政投融資分は政府保証債となり、空港会社の債務を国が保証する形となる。これは返済義務があり、収支としてはこれまでと変わらない。
税金はどうなるか。法人税は利益が出なければ発生しないので大赤字必至の「成田空港株式会社」には無縁なことである。しかし固定資産税は赤字であっても支払う義務がある。JRが民営化したときの三島会社(北海道、四国、九州の各JR)が赤字で、特別処置として固定資産税を半額に軽減された例はあるが、ゼロにはなっていない。
これは成田空港会社ではどうなるのか。公団のいままでの総事業費が約1兆5000億円で、成田空港の資産価値は約9000億円と計算されている。固定資産税は標準税率が1・4%、都市計画税が0・3%で計1・7%である。9000億円の資産をどう評価するかまだ分からないが、3分の1の3000億円と評価したとして、固定資産税と都市計画税は年間で約50億円になる。
予算措置のゼロ化と固定資産税の発生で、収入が約100億円マイナス、支出約50億円のプラスになる。民営化しただけで無条件に約150億円の負担が掛かる計算である。
これは公団の年間売り上げの1割にあたるが、売り上げを1割増やせば済む問題ではない。経費は増やさず、利益として150億円アップを実現する必要があるのだ。これは完全に不可能である。売上額に対する利益率はせいぜい1割程度だ。従って1500億円もの売り上げ増加が必要となるわけだ。これは成田空港の現在の年間総売上を超える数字である。
しかし今回の中期経営計画草案では、非航空収入を3年後に年間100億円の売り上げ増、空港収入を9%アップの約150億年の売り上げ増加を目指し、経費を50億円削減するというだけである。これで250億円の増収となり、経費削減分50億円でプラスマイナス300億円の増収が06年に実現できたとする。それでも、予算ゼロ化と固定資産税分を賄うことはできない。
250億円の増収からでる利益は、1割として約25億円にしかならない。経費削減が目標通り達成できたとしても75億円の補填ができるだけだ。この数字ですら実現は難しいだろう。
この点について計画案は「現時点では本年度の収支見通しや資本の額など不確定要因が多いことから、これらの現状を見極めつつ年度末の成案に向け引き続き検討を行っているところです」としており、自信のなさがにじみ出ている。だいたい空港外収入で年間100億円という皮算用は虫が良すぎる。実績もノウハウもなく、そもそも何をやるかも決まっていない事業で、3年後に100億円の売り上げを見込めるはずもないのだ。
* *
また空港収入を9%増やすということでは、公団の計画案は「年間20万回の発着回数を22万回にする」としている。よくこんなデタラメを経営計画として発表したものだ。
確かに成田空港の年間発着回数の限度(公称)はA・B滑走路合計で20万回である。A滑走路が13・5万回、暫定滑走路が6・5万回で計20万回とされている。
しかし02年度の実績は合計で17万6365回(A滑走路13万1644回、暫定滑走路4万4721)しかない。最大の問題は暫定滑走路の実際の容量が公称「6万5000回/年」をかなり下回ることだ。誘導路の欠陥と飛行コースの問題で現行の年間4・5万回が限度なのだ。この点は黒野総裁も会見などで認めていた。成田空港の容量はこの17万回/年で限界なのである。それを「20万回を22万回にする」という言いぐさは人をだますに等しい。
また増便という場合、A滑走路で増便する以外にないが、それはA滑走路の1日370回の限度枠をさらに拡大することになる。飛行コース下の騒音はさらに拡大する。「暫定滑走路が完成したら、A滑走路の1日の限度枠を300回に減らす」というかつての約束はどうなったのか。減らすどころか増便するというのだ。計画案を公開した公団は、この問題について一言も釈明していない。
* *
いずれにしろ、成田空港の民営化は成り立たない。国土交通省が「3空港一体の上下分離」案という一定の現実性ある「民営化」案を出していたが、自民党、成田市、マスコミなどに翻弄されて単独民営化となった経緯がある。その結果、破産必至の計画となってしまったのである。
●(10月30日) 暫定C誘導路が供用開始/待機時間短縮や混雑解消(10/31千葉日報)
成田空港の誘導路混雑解消に向け、第1と第2旅客ターミナル地区を結ぶ2本目の誘導路(暫定C誘導路約620メートル)が30日、供用開始された。9カ所の一坪共有地を避けて整備され一部が力ーブしているが、空港公団では「安全運用に支障はない」。暫定C誘導路は既存分を加え計1300メートルとなり、全体の4割が完成した。
エプロン走行路と従来の誘導路の2本で運用されてきたが、駐機場へのけん引や出発、到着機が混在したり、第2ターミナルビルに出入りする航空機の影響で、出発機が走行路に待機を余儀なくされるケースがあった。
暫定C誘導路が第1旅客ターミナル地区まで結ばれたことで、従来の誘導路と合わせ、エプロンから独立した2本の誘導路が整備された。公団では、動線改善や走行路での待機解消に役立つと期待している。
【本紙の解説】
1ビルと2ビルをつなぐ誘導路は片道誘導路が熱田一氏の田んぼに遮られて、部分的にしか完成していない。もう1本は誘導路ではなくエプロンを誘導路として代用しているところである。エプロンとは旅客の乗降、貨物の積み下ろしなどのため航空機が停留する区域、つまり駐機場なのである。また先の誘導路も熱田氏の田んぼに遮られいるため、2ビルに近づくとエプロン代用の誘導路と合流する。この合流地点で渋滞が発生するのである。今回の新設で少しは改善されるかもしれないが、しかしこの誘導路も片側通行であり、昔の木の根育苗ハウスの所でくの字に曲がっている。暫定滑走路でも屈曲している地点で事故が発生した。その二の舞を演じることになりそうだ。
●(10月30日) 首都圏4知事対談(10/31毎日千葉版)
堂本暁子県知事は29日の毎日新聞主催の首都圏4知事対談で、09年度に供用開始を目指す羽田空港の滑走路再拡張問題について、千葉上空に集中している飛行ルートの変更など「騒音の共有」を改めて求めた。
4都県は10月施行のディーゼル車排ガス規制で足並みをそろえるなど、今後も広域問題について「首都圏連合」を組んで対応していく方針だ。
しかし堂本知事は「首都圏連合ができたから、干葉はそれに従いなさいという論理は受け入れられない」と強調した。羽田空港の問題を含めて今後、堂本知事が4都県の中でどう対応していくかが注目される。
羽田空港で滑走路が再拡張されると、千葉県は甚大な騒音被害を受けると予測されている。現在、定期便の発着枠は年間27万回で、そのほとんどが千葉上空を飛行している。再拡張されれば年間13万回増えるとみられ、堂本知事は「千葉県民は」毎日被害を受けている」と改めて指摘した。
堂本知事はこの延長線上の問題として横田基地返還問題にも言及。「横田があるがゆえに神奈川も東京もほとんど(定期便は)飛べない。でもそこを飛ばさない限り千葉県民は(羽田空港の問題で)イエスと言えない」と石原都知事らに迫った。
【本紙の解説】
羽田空港の再拡張と増便に関して堂本知事は「甚大な騒音被害」とさわいでいるが、4知事の会合でも相手にされなかったようだ。それは国交省が千葉県の反対を無視して羽田の再拡張を推し進めているからである。また「甚大な騒音被害」といっているが、住民団体が反対しているわけでない。千葉県がつくりあげた「千葉県・市連絡会議」だけである。また「甚大な騒音被害」というならば成田空港の騒音を問題にするのが千葉県知事の立場ではないのか。しかし堂本知事は成田の騒音は決して問題にしない。「羽田再拡張反対」の真意が成田の完全空港化要求にあるからである。
●(10月30日) 空港公団/インフルエンザの予防接種全職員に(10/31読売千葉版)
空港公団は30日、この冬にも再流行が懸念されるSARS対策として、約900人の全職員にインフルエンザの予防接種を行うと発表した。費用は公団が全額負担し、来月4日から中旬にかけて順次実施する。また、空港内のテナントや業務委託会社に対しても、接種の実施を文書で依頼するが、公団は費用を負担しない。
【本紙の解説】
SARSの本格的流行を前にして、航空会社とともに公団も戦々恐々としてきた。対策としては、インフルエンザとSARSの区別がつかず、大混乱を避けるということだけである。インフルエンザの予防がSARS予防になることはない。しかし、公団職員に公団費用を出して、テナントと業務委託会社には文書で依頼し費用は出さないというのも、SARSによる減収と民営化前にしての公団の台所の厳しさを示している。
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